財政委員会速記録第五号

平成二十二年三月十八日(木曜日)
第二委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十四名
委員長中屋 文孝君
副委員長原田  大君
副委員長たぞえ民夫君
理事鈴木 隆道君
理事上野 和彦君
理事西岡真一郎君
三宅 正彦君
福士 敬子君
西沢けいた君
関口 太一君
斉藤やすひろ君
中谷 祐二君
菅  東一君
石毛しげる君

 欠席委員 なし

 出席説明員
財務局局長村山 寛司君
経理部長藤原 正久君
契約調整担当部長奥田 信之君
主計部長長谷川 明君
参事関  雅広君
財産運用部長松本 泰之君
建築保全部長金子 敏夫君
技術管理担当部長山本 康友君
施設改修担当部長末菅 辰雄君
参事山藤 敏明君
会計管理局局長新田 洋平君
管理部長山本  隆君
警察・消防出納部長稲田 正純君
会計制度担当部長土渕  裕君

本日の会議に付した事件
 会計管理局関係
  予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成二十二年度東京都一般会計予算中、歳出 会計管理局所管分
 財務局関係
  予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成二十二年度東京都一般会計予算中、予算総則、歳入-財務局所管分、歳出-議会局・財務局所管分、債務負担行為-財務局所管分、都債
 ・第十五号議案 平成二十二年度東京都用地会計予算
・第十六号議案 平成二十二年度東京都公債費会計予算
  付託議案の審査(質疑)
・第五十二号議案 東京都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例
・第百八号議案 全国自治宝くじ事務協議会への相模原市の加入及びこれに伴う全国自治宝くじ事務協議会規約の一部の変更について

○中屋委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり会計管理局及び財務局関係の予算の調査並びに財務局関係の付託議案の審査を行います。
 これより会計管理局関係に入ります。
 予算の調査を行います。
 第一号議案、平成二十二年度東京都一般会計予算中、歳出、会計管理局所管分を議題といたします。
 本案については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 ご発言願います。

○関口委員 平成二十年秋に発生した、いわゆるリーマンショックに端を発した金融危機以降、急速な悪化が続いていた日本経済は、金融政策や経済対策の効果もあり、最悪期を脱したというものの、依然楽観するにはほど遠い状況であります。
 また、法人二税が税収の大半を占める都の財政状況に関しても、平成二十一年度の都税収入が、前年度決算額の五兆二千八百一億円に比べて約一兆円減少することが見込まれるなど、依然厳しい状況が続いております。
 こうした財政の悪化は、都の公金運用に対しても大きな影響を及ぼすこととなるゆえ、本日は、都の公金運用について何点か質問してまいります。
 会計管理局が運用する資金には、日々の支払い等に備えた歳計現金といわれる会計と、そして運用対象となる基金、この二つ、大きく分けて二つ存在しています。
 中でも、都税収入の落ち込みが直ちに影響するのは歳計現金であります。歳計現金は、都税を初めとする収入の受け入れや、公共工事代金等の支払いに充てられている日々の重要な資金でありますが、まず、歳計現金をどのように局は管理をしているのか、お尋ねします。

○山本管理部長 まず、歳計現金でございますが、これはいうまでもなく公金でございますので、その管理に当たりましては、安全性を第一に行うことはもちろんでございますが、日々の支払いに充当するための資金であることから、流動性の確保も重視をして管理をしております。
 その上で、効率的な管理運用という、いわゆる効率性の観点から申し上げますと、歳計現金の年間の動向を見た場合、その残高は月々の単位で大きく変動いたします。
 特に、例年、法人二税が収入される六月、十二月などには残高が大幅に増加をする一方、さまざまな支出が集中する五月末から、多額の都税が収入されます六月初めまでにかけましては、逆に残高が大幅に減少することから、長期の運用はなかなか難しいという特徴がございます。
 このような中でも、その運用に当たりましては、可能な限り運用収入を増加させるために、支払い準備金や普通預金をできるだけ圧縮をして、定期性預金を設定することといたしております。

○関口委員 ただいま答弁にもありましたけれども、歳計現金では、手元に置く流動性を高めるための支払い準備金と、そして普通預金、そして定期性預金、この三つで資金繰りの効率を最大限高めていると、こういうご答弁だったと思います。
 公金である以上、資金繰りの効率を常に意識して管理をしていくということは、会計管理局としては、まさに使命であろうかと思いますし、そのためには、支払い準備金というものを極力圧縮し、預金、特に定期性預金の比率を高めて、運用益を少しでも、一円でもふやしていくということが非常に重要であると、そういうご答弁だったわけですから、その点は私も全く同感でありますし、その意識を常に今後持っていっていただきたいと思います。
 さて、先ほどのご答弁の中で、支払いが集中する期間としては五月、六月という言及がありました。今から七年前の平成十四年度から二十年度までの毎年度の資金計画である歳計現金保管表を調べたところ、見事に毎年、この五月、六月にかけて急激に落ち込んでいると。つまりは毎年ゼロをこの時期に割り込んでいる、マイナス状態になっているというのが、毎年の表からうかがえます。
 つまりは、この歳計現金だけを見れば、この時期に資金ショートを起こしているともいえるわけですが、このマイナスの部分を局はどのように補てんをしているのか、お尋ねします。

○山本管理部長 歳計現金の残高がマイナスになることが見込まれる場合には、外部からの借り入れ、もしくは内部の基金からの借り入れのいずれかの方法を採用することになりますが、都では、内部での調達が可能でありますことから、基金から一時的に借り入れを行いまして、支払いに支障を来さないようにしております。

○関口委員 今、東京都の中の内部の基金から借り入れているというご答弁だったと思います。外から、外の金融機関から借りるわけではなく、内部の中の基金であるという意味だったと思うんですけれども、とはいっても、その基金から一時的にでもお金を取り崩して借り入れるということは、その金額分、そしてその時間の分の基金の運用益は減るわけです。
 公金を扱う会計管理局として、公金を一円たりともむだにしないという使命がある以上、毎年この時期に同じようにマイナスに陥り、いわゆる資金ショートを発生させて基金から借り入れているという現状は、決して適正な状況であるとはいえないと考えます。毎年毎年、恒常的に発生しているこの課題を解決するために、局はどういう手当てを行っているのか、お尋ねします。

○山本管理部長 歳計現金の残高は、都税を初めとする収入と、事業者への支払いや交付金、補助金の支出などのさまざまな支出により変動いたします。
 このうち収入につきましては、例えば都税につきましては、その納期が定められていること、あるいは支出につきましても、交付金や補助金等の支出期限、あるいは各局の契約に定められました支払い期限などによりまして、その時期が決まってきますことから、ある一つの時期をとらえてみますと、収入と支出との間に不均衡が生じていることは事実でございます。
 このような不均衡を解消し、例年生じる五月末の残高の減少を当局におきまして抑制するということは、なかなか困難であるかと考えておりますが、そのような中でも、各局と連携をいたしまして、資金収支の見通しを十分立て、基金から一時借り入れを行う場合であっても、必要最小限の額にとどめるといった努力を行っております。

○関口委員 今、さまざまな対策を講じられており、基金からの一時借り入れも極力最小限の額にとどめていると、そういう努力をしているんだというご答弁だったと思いますが、とはいえ、結果としては、毎年毎年、同じ時期に、歳計現金の残高がマイナスになっているという事実は厳然としてあるわけであって、そのマイナスになっているということを防ぎ切れていないというのは、どういうことなのかなと私は思ってしまう、考えてしまうわけです。
 局として、いわゆる資金ショートによる基金からの借り入れは、ある意味いたし方ないと考えているのか、あるいは基金からの借り入れは避けるべきであると考えているのか、局の見解をお尋ねします。

○山本管理部長 資金ショートという言葉でございますと、単に資金残高がマイナスになっているという意味のみならず、資金繰りが既に破綻を来しているという意味合いにもとられるかなと。都財政の状況は、そういうことではないということかと思っておりますが、お尋ねの件につきましては、先ほどご説明をさせていただいたとおり、収入と支出との間に不均衡が生じているときがあるということは事実でございます。
 このような問題が、制度面あるいは事業執行面などから解決をされて、その結果基金からの借り入れが不要になれば、効率的な資金運用という面からは理想であるというふうに考えてございます。
 ただ、現状を申し上げれば、当局といたしましては、各局の円滑な事業執行を支えるという役割を果たすために、資金収支の実態に応じまして、必要最小限の範囲において基金からの一時借り入れにより対応しているところでございます。

○関口委員 今、会計管理局としては、いわゆる資金ショートはなくした方が理想的であると、それは望ましいことであるというご答弁がありました。
 ただ、こうしたこの時期に資金がマイナスに陥っているという状態は、恒常的な課題になっているわけですね。その根本的な要因がどこにあるのかと私は考えるわけですが、何よりもその原因の一つは、支払いの時期が五月、六月に集中し過ぎているということが挙げられると思うんですが、なぜこの時期に支払いが集中しているのか、その原因が何であるのか、お尋ねします。

○山本管理部長 お話の課題は、例年五月末から六月の初めにかけまして、支出と収入との不均衡が顕著になっているということから生じているものでございますけれども、この時期に支出が集中する要因について申し上げますと、地方公共団体におきましては、地方自治法の規定に基づきまして、前の会計年度末までに確定をいたしました債権債務で所定の手続を完了したものについて、現金の未収未払いの整理を行うために、出納整理期間が設けられております。会計年度終了後、翌年度の四月一日から五月三十一日までの二カ月間がこの期間に該当いたします。
 五月末日は出納整理期間の最終日でございまして、この日をもって出納が閉鎖され、その後は前会計年度に係る一切の現金移動ができなくなりますことから、前会計年度のさまざまな支出が同日付近に集中すること、また、これに加えまして、現会計年度の支出も重なりますことから、このような状況になっているものと考えられます。

○関口委員 今の説明で、会計等の支払いの時期等々が決められておったり、あるいは出納整理期間が五月末日までの二カ月間、四月、五月の二カ月間がこの時期に該当するんだと、だからこの時期に支払いが集中しているんだというご答弁でありました。
 私は、その先をさらに分析をするべきだと考えるんですけれども、その支払いが集中しているうちの大半は、いわゆる工事代金の支払いなんじゃないのかと。つまりは、前年度の三月に集中しがちな公共工事がその四月、五月二カ月間の支払いに集中し、いわゆる歳計現金の計画がこの時期にマイナスに陥ってしまっているんじゃないのか、この三月の工事集中というものが、一つの要因であるんじゃないのかと、こう私は考えるわけですが、局の見解をお尋ねします。

○山本管理部長 委員ご指摘の工事代金の支払いでございますが、大半といいますか、その要因の一つであるということはいえるのかなと思います。
 三月末にそうした工事、あるいは工事に限らず、委託業務などが完了した場合、あるいは物品が納入された場合、その納入された後に、工事、委託業務の履行内容や、納入されました物品につきまして検査確認等を行いました上で、業者からの請求書の提出を受け、支払い手続に入るわけでございますので、その支払いにつきましては、出納整理期間である四月から五月にかけて行われることになろうかと思います。

○関口委員 大半じゃないけれども、三月の工事が間違いなくその支払い集中の一因になっているのは確かであると、こういうご答弁でありました。
 私の周りの方々も、一般の都民の方々も、口をそろえて、三月には工事が多いと、これは予算の使い切りじゃないかと、いつも私もいわれるわけです。
 先日も遅くまで都議会で仕事をして、十二時過ぎに車で自宅に帰ろうとし、あと二十メーターで私の自宅に到着すると思ったとき、工事やっていました。がっかりしました。大分遠回りして、これかと思ったわけですけども、予算の使い切りであるかどうかは置いておいて、確かに三月に工事が集中しがちだという事実は、まさに都民の感覚もありますし、それは正しいのかなと私は思うわけです。
 よって、この歳計現金の資金、これをマイナスにならないようにしていくためには、まず支払いの集中することを何とかして緩和できないかと考えるわけです。何か工夫できないのかと。
 例えば各局に対し、工事の発注時期等々をもう少し分散できないかとか、そうしたさまざまな策を考えていくべきだと思います。毎年毎年同じ時期に、こうしたマイナスに陥っているということは、そこに原因があるとしか私は思えないわけです。
 よって、公金を最大限効率的に運用していく使命を持つ会計管理局として、恒常的なこの四月、五月のマイナスに陥るという問題、課題を解決するために、新たな視点での対策を講じていく必要がある。
 例えば各局には、本当に現場の方々に、契約を結ぶ際の意識を、支払いというものを踏まえて意識をしてもらうとか、さまざまな意識啓発等々を会計管理局として各局に求めていく、施していく必要性がこの課題解決のためには必要であると私は考えるわけですが、見解を伺います。

○山本管理部長 会計管理局といたしましては、各局の円滑な事業執行の下支えといたしまして、適切な資金管理を行うという役割を果たしつつ、歳計現金のみならず、基金とあわせた公金全体につきまして、効率的な運用を今後とも行っていくことが重要であると思っております。
 これまでも、公金の効率的な運用に向けまして、各局に対し、支出面のみならず、収入面におきましても、国庫支出金の受け入れの早期化を促したり、あるいは一定以上の金額の支出案件につきましては、事前に連絡を求めるなどの取り組みを行ってまいりましたが、今後とも、引き続きましてこのような取り組みを通じて、各局の公金運用に関する意識の啓発を積極的に行っていきたいと考えております。

○関口委員 毎年度毎年度マイナスになっているこの時期は、外の基金から借り入れているということは、間違いなくその時間とその額分は運用益にロスを生じていることは、これは間違いないわけですから、そうした意識をぜひ会計管理局の方々にさらに持っていただいて、今、部長からご答弁がありましたけれども、各局に対する意識の啓発、これぜひやっていただいて、この恒常的な課題解決に向けて、なお一層の努力をしていただくことを求めて、私の質問を終わらせていただきます。

○鈴木委員 私からは、公会計制度について質問させていただきます。
 予算委員会の中でも、特に公認会計士である公明党の東村先生からも、具体的な公認会計士としての質問の角度で非常に鋭い質問があったんですが、私はちょっと違うというか、わからない点もあるので、その点も踏まえながら、考え方も踏まえながら少し質問してみたいと思っています。
 都は、国や全国の自治体に先駆け、従来の官庁会計に複式簿記・発生主義会計の考え方を取り入れた新たな公会計制度を導入いたしました。
 新たな制度に基づいて作成された本格的な財務諸表は、施策内容の検証に活用され、また二十二年度の予算編成にも反映させるなど、都財政の運営にとって重要なツールとなっています。
 東京都のように、先進的に取り組む自治体がある一方で、全国の状況を見てみますと、公会計制度改革は十分に進んでいるとはいえない状態だと思います。
 総務省は、全国の自治体に、今年度中に財務諸表を作成するよう要請をしており、また、先日の新聞報道にもありましたが、自治体に対して住民にわかりやすい財務書類を開示するよう求める報告書を公表いたしました。
 しかしながら、総務省が作成した今回のものは、作成の基本となる全国標準の会計基準を整備していないどころか、内容の大きく異なる二つの公会計モデルを提示しており、自治体が困惑するような事態になっているのも現状であるような気がします。
 このような状況の中で、公明もそうですが、我が党もかねてから、全国に先駆けての新公会計制度を導入した実績を踏まえて、都は積極的に他の自治体への支援やさまざまな普及活動を行うなど、地方自治体のリーダーとしての公会計制度の推進に寄与すべきだと主張してきました。
 これを受けて、都は、これまでさまざまな支援活動を行ってきましたが、こうした活動が具体的に実を結び、このたび大阪府が新公会計制度の導入に向けた準備を本格的にスタートすることになりました。
 そこで、まず、大阪府の新公会計制度導入に向けた準備の状況についてお伺いをいたします。

○土渕会計制度担当部長 大阪府につきましては、昨年四月、橋下知事から石原知事に対しまして、新制度の導入に際して都の支援を受けたいとの要請があり、都のノウハウを実践的な形で提供し、また助言を行うため、職員の相互派遣を行いました。
 大阪府では、専門家である公認会計士をメンバーとしたアドバイザリー会議の意見を聞きながら、制度導入に係る会計処理の考え方やシステムの整備、職員の研修や活用方策の検討を進めてきたところでございます。
 都のノウハウ提供などの支援によりまして、検討のスピードが増したこともあり、昨年十二月には、これ非常に短期間であったわけですけれども、平成二十四年度に複式簿記を本格導入するまでのロードマップを示した中間報告を公表するに至りました。
 中間報告では、総務省が提示している二つのモデル、民間の企業会計基準、国際公会計基準などを比較検討した結果、東京都方式に準じた会計基準を採用し、日々仕訳を行うシステムを導入するとしております。
 また、今後は、大阪府も、システム改修のノウハウなどの情報提供を通じて、他団体の新公会計制度導入の検討に協力していくとしているところでございます。

○鈴木委員 大阪府が、専門家を交え、さまざまな検討を行った結果、東京都方式に準じた複式簿記を導入することを決めたことは、やはり都の新公会計制度の優位性、またはその必要性というか、そういうものが確実に評価をされたことであると私は考えます。
 また、大阪府が、これまでの支援を受ける立場から、支援をする側になっていくということは、今後の本格的な複式簿記・発生主義会計の全国普及に向けて、大変心強いものとなっています。
 次にお伺いいたしますが、大阪府ではこのように都の支援の成果があらわれたわけでありますが、都として、他の自治体に対してはどのような支援活動を行っているのかをお伺いをいたしたいと思います。

○土渕会計制度担当部長 今ご答弁申し上げましたとおり、大阪府に対しましては、職員の相互派遣を初め、最大限の支援を行ってまいりましたが、他の自治体にも、説明会の実施や都のシステムの視察受け入れ、制度導入を検討する自治体の検討会にアドバイザーとして職員を派遣するなど、各自治体の実情に応じ、さまざまな支援活動を行ってまいりました。
 また、総務省が、今年度中にすべての自治体に対し財務諸表の作成を要請している中で、財務諸表作成のノウハウを持たないことなどにより対応に苦慮する自治体に対し、東京都方式簡易版を提供しております。
 東京都方式簡易版は、官庁会計決算のデータを組みかえることにより、都の財務諸表とほぼ同様の勘定科目体系を有する財務諸表を短時間に作成することが可能で、小規模な自治体でも容易に導入できるものでございます。
 このように、各自治体の実情を踏まえ、本格的なシステムの導入支援から日常的な相談まで、さまざまなメニューを用意して支援活動に取り組んでおります。

○鈴木委員 自治体の実情に合わせたさまざまなメニューを用意して支援活動を行っているということは、非常に評価ができることだと思います。
 また、総務省が、すべての自治体に対し今年度中に財務諸表を作成するよう要請している中で、都は、ノウハウを持たない小規模な自治体などに対する支援として、東京都方式の簡易版を提供しているとのことであります。
 都でも、最初に貸借対照表をつくったときは、非常に苦労したと聞いておりますが、財務諸表作成の経験もなく、マンパワーも少ない小さい団体では、相当な困難を伴うことが推察をされるわけであります。
 そこで、都は、都内の小規模な自治体に対し具体的にどのような支援を行っていくのか、お伺いをいたします。

○土渕会計制度担当部長 現在、島しょ部の町村すべてと西多摩の一部の町村につきましては、東京都方式簡易版の提供に加え、簡易版による財務諸表作成の支援を行っており、これらの自治体では、年度内に財務諸表が作成できる見込みでございます。
 具体的な支援内容といたしましては、例えば、財務諸表作成において負担が大きいと考えられる開始貸借対照表の作成に際しての支援が挙げられます。
 開始貸借対照表は、初めて財務諸表を作成する際に必要となるもので、これまでデータとして蓄積していなかった資産や負債の現在高を過去にさかのぼって洗い出すなどの作業負担が生じるものでございます。
 その作成時に、町村からの資料をもとに、財産データの整備や作成した財務諸表をチェックするなどの支援を行っております。
 このように、財務諸表作成の作業全般を通じて、具体的なノウハウ提供を行ってきましたが、今後とも、ノウハウの蓄積を踏まえた支援を継続していくことにより、将来的には、各自治体において都からの支援がなくとも作成が可能になるものと考えているところでございます。

○鈴木委員 都は、東京都方式の簡易版を提供するだけではなく、その後のフォロー面においても極めて細かい支援を行っているということであり、非常に心強く感じるところであります。
 これまで、都は孤軍奮闘であったにもかかわらず、今後、大阪府も普及活動を行っていくということでありますので、今後の普及支援活動を改めてどのように進めていくのかをお伺いいたします。

○土渕会計制度担当部長 大阪府は、現在、本格的な複式簿記・発生主義会計のシステム導入に取り組む一方で、他団体への支援活動にも意欲を示しており、都と大阪府が連携協力していくことにより、支援できる範囲も数も広げることが可能となります。
 今後は、都がこれまで培った普及支援活動のノウハウを大阪府と共有し、東京、大阪を東西の拠点として、新たな公会計制度の導入を、近隣を初め他の自治体に働きかけるとともに、全国に向けた発信力を高めるなど、相乗効果を発揮した普及活動を行ってまいります。

○鈴木委員 私はこれまでも申し上げてきましたが、公会計制度改革というのは、単に会計帳簿の様式を変えるということだけではなく、自治体経営そのもののあり方を変えるというふうに考えています。
 すなわち民間企業と同様の複式簿記・発生主義会計を導入することによって、資産、負債などのストック情報や真の事業コストが明らかになり、都民、国民目線から見て、税金の使われ方など財政運営の透明性が格段に高まることとなります。さらに、事務事業評価や予算編成に活用することにより、行政運営に経営の視点を一層確立していくものになるというふうに思っています。
 国は、二十二年度予算編成の過程で事業仕分けを行いましたが、複式簿記・発生主義会計を導入することでわかってくるストック情報や真の事業コストなど、その前提となるべき情報がないままで今みたいなことを行っておりますと、パフォーマンスというふうに見えても仕方ないのかなというような思いがいたします。
 いうまでもなく、行政とは、民間企業とは異なり、営利を目的とするものではなく、行政、福祉の向上を使命として担っているものであり、施策事業の中には、長い目で見て効果があらわれてくるものもあるわけであります。
 都は、複式簿記・発生主義会計を導入することにより、一層効率的な行政運営を行うとともに、このような行政の特質を踏まえつつ、住民福祉の向上を実現しようとしているわけであります。
 この取り組みは、東京都だけではなく、国や全国自治体で行っていくことが、非常に必要かつ、これは必要十分条件になってくるというふうに私は思っています。
 知事は、施政方針で、大阪府と共同プロジェクトを立ち上げ、公会計のあるべき姿を発信しながら、導入に意欲的な自治体を支援すると言及をしております。地方分権という意味でも、地方自治体が互いに協力し、改革を進めていくということは、非常に意義のあることだと思います。ぜひこのプロジェクトを推進し、全国の公会計制度に寄与してもらいたい、制度改革に寄与してもらいたいと思います。
 ということなんですが、私は基本的にちょっと悩みがあります。それをちょっと聞いていただきたいんですが、それは、例えばこの公会計制度を行っていく中で官と民の関係というものを考えたときに、実はその役割分担をきちっとお互いに理解をしていかないと、今もいったのですが、そのことがないと、この公会計制度の本当の趣旨が生かされていかないような気がしています。
 ここに至るまでには、役人の方々が非常に努力をして、今いったように、その公会計制度のためのことをやられてきたわけですが、民間というのはお金をもうけているわけですからね。国とか皆さんは、税金をいただいて、あと使うだけということですから、あんまりいいたくはないんだけど、その辺のことをしっかり理解をして、それは単にコストのことだけでいえる問題じゃないような気がしていますので、やはりその辺のことを考えてもらうということが第一だと思っています。
 それから、もう一個は、今そういうふうに行っている、これ反面教師なのかもしれないんですが、今行っている公会計制度が本当に唯一無二、一番いいものなのかということに対しても、もう一個疑問を持って、より進めていく必要があるのかなと思うんですね。
 というのは、これは世界基準もあるし、世界的にはそういう方向で進んでいる、またそれを現実に行っているわけですが、そういう潮流にあっても、民間との--民間の考え方を取り入れていくとはいうんだけども、公がなすべき役割というのはすごくあるわけでしょう。新銀行東京なんかは一つの例なんだけども、いろんなことを批判されていても、実際には公がやるべき、やらねばならない使命みたいなものもあるわけじゃないですか。その辺が、実はこの公会計制度の中で具体的に出てきたときに、きちっとこたえられていく公の役割みたいなもの、そういうものもきちっとこの公会計制度の中で出てくるわけですよ。
 そのかわり、そうじゃない、厳しい、コストに対してそうした事務事業評価も行われていかなきゃいけないという両面性を持っている制度なわけだから、単に民間が、僕らが自分の会社でやっているような、株主総会に出してこうだああだといっているものとは、また違う難しさが非常に含まれているということもあるわけで、だからこそ逆に、東京都はこの公会計制度に自信を持って、自信を持って発信をしてもらって、全国、また国も動かしてもらって、むしろ世界の中で一番そういう会計制度、または公が行うべき会計制度というすばらしいものを日本がやっているというところまで東京が示して、国もそういうふうになっていってもらえれば、一番僕はありがたいと思っています。今のは私見ですから、僕もまだわからないところがあるので、これから勉強させていただきたいと思いますが、今のところの考え方だけいわせてもらいました。
 最後に、この公会計制度に向けた局長の決意を伺います。

○新田会計管理局長 公会計制度改革は、単式簿記から複式簿記へ、現金主義から発生主義へという単なる会計制度上の変更にとどまらず、ご指摘もございましたとおり、行政に経営の視点を一層取り入れていく重要な契機となるものでございまして、自治体運営を旧態依然の運営からマネジメントへと、質的に変革をさせる大きな可能性を有しているものだと認識しております。
 現在、我が国行政は、真の地方分権に向けた歴史的な転換点に差しかかっておりますが、自治体が住民の期待にこたえ、新時代にふさわしい担い手へとみずからを改革していくためには、新しい公会計制度の導入は必要不可欠なものというにとどまらず、もはや、やり遂げなければならない必然であると思っております。
 新しい公会計制度の導入によりまして、真の事業コストが明らかになり、そうした客観情報をもとに事業評価が適切に行われることで、効率的な行政運営を実現していくということはもとよりでございますが、その上で、さらに進めて、理事のお話もございましたとおり、民間とは異なる行政の特質、役割を踏まえた長期的な視点からしっかりと事業評価を見定め、施策を推進していくことが、これからの地方の時代にふさわしい自治体経営の姿であろうと思っております。
 こうした改革を推し進めていくためには、都として、さらに財務諸表の活用実績を積み重ねながら、全国の自治体に改革ムーブメントの輪を広げていくことが極めて重要でございます。
 都といたしましては、これまで、いわば孤軍奮闘で他自治体の実情に合わせたさまざまな支援を行ってきたわけでございますが、今後は、大阪府という強力なパートナーが加わりますことから、全国への普及支援も新しい局面へとステップアップしていけるものと思っております。
 都議会の先生方のご指導をいただきながら、大阪府との共同プロジェクトを着実に推進して、多角的な運動を展開し、お話もございましたとおり国も動かしてまいりまして、我が国の公会計制度改革を牽引し、積極的に貢献してまいりたいと思います。

○中屋委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中屋委員長 異議なしと認め、予算案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で会計管理局関係を終わります。

○中屋委員長 これより財務局関係に入ります。
 予算の調査及び付託議案の審査を行います。
 第一号議案、平成二十二年度、東京都一般会計予算中、予算総則、歳入、財務局所管分、歳出、議会局・財務局所管分、債務負担行為、財務局所管分、都債、第十五号議案、第十六号議案、第五十二号議案及び第百八号議案を一括して議題といたします。
 本案については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○藤原経理部長 それでは、先日の委員会において要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の財政委員会要求資料をごらんください。
 最初に、表紙をおめくりいただきたいと存じます。今回要求のございました資料は、目次に記載してございますとおり、一件でございます。
 一枚おめくりいただきまして、要求資料第1号、国直轄事業負担金の推移、決算額をごらんください。
 平成十一年度から二十年度までの十年間における国直轄事業負担金の決算額の推移を、建設費、維持管理費のそれぞれについてお示ししたものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○中屋委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 ご発言願います。

○中谷委員 私からは、事務事業評価と財産の利活用についての質問をさせていただきます。
 平成二十二年度予算は、大変な不況のあおりを受けて、想定を超える大幅な税収減の中での予算編成となっております。
 そうした中だからこそ、事務事業評価の果たすべき役割というものは、近年にも増して大きなものであると考えております。財政再建後も、事業の見直しを継続して実施するための制度であり、件数も今年度は二百七十一件と、昨年度と比べると倍増していることについては評価に値すると思います。
 しかし、知事が、以前、国が事業仕分けをする前から都は対応済みであるという発言を過去にされておりますけれども、私は果たしてそうなのかなと思う面もあります。
 民主党政権において事業仕分けが行われましたけれども、国民の皆さんになぜあれほどまでの共感を与えたか。それは、やはり公衆の面前で情報公開をして、第三者が評価をした、正確には少し違う面もありますけれども、そういう形に見せたというところが、大変な共感を得たわけであります。要は、事業仕分けをする、その事業の選定者が役人なのか政治家なのかが、大きくこの仕分けの作業効果を出す、出さないのキーポイントになると思います。
 都においては、昔は知事本局がこういう評価をしておったと。ただ、今は財務局による評価でございますが、財務局だけによる自前の評価からの脱却を図るべきであると考えております。
 昨年の財政委員会でも、事務事業質疑のところで私は指摘をさせていただきましたけれども、事務事業評価をより効果的に機能させるためには、局同士の連携のもと、複数の局にまたがるような事業については、幅広い視点や検証、そして見直しをすることが必要でありますけれども、これは本当にいうはやすし行うはかたしで、なかなか進んでいないのが現状だと思います。
 その意味では、今回、情報システム関係評価というものが、公表対象六十一件でございましたけれども、財務局とそれぞれの部局が一体となって検証する新たな取り組みを行ったということは評価に値すると思います。
 現実的な対応として、都が手がける本当に多くの事業すべてを事務事業評価対象にすることは、物理的に無理があります。どうしてもそのチョイスをするときに、顕著に効果があった事業や話題性のあるもの、あるいはどうしても評価をしておきたい事業、そういうものが選ばれている可能性があります。ですから、評価対象の選定をどうするかということは、今後も課題であると考えております。
 先日の本会議の代表質問で、財務局長のご答弁の中で、来年度からは監理団体も事務事業評価の対象とするということでございました。若干遅きに失した感もありますけれども、これは極めて意味のある取り組みであると考えております。要は、都税が投入されていること、都の行政を補完しているという視点に立つならば、監理団体であれ、報告団体であれ、その決算状況を検証し、見直し、再構築、拡大充実など、事業を評価して、むだなく効果的に都民の税金が使われているか否かの検証をする仕組みをつくることが大事であると考えております。
 そこで、まずは監理団体を事務事業評価の対象にしたことについての意義についてお答えいただきたいと思います。

○長谷川主計部長 事務事業評価につきましては、お話にありましたとおり財政再建後も事業見直しの努力を継続して実施していくための制度として立ち上げたものでございまして、ここに来て、ようやく予算編成過程における重要なツールとして定着させることができておりますけれども、今後都がなすべき役割を継続的、安定的に果たしていくためには、評価対象の拡大や手法の一層の充実など、さらなるステップアップが必要であると認識しております。
 そのためには、事務事業評価において、都民から負託を受けた貴重な税金が効率的、効果的に活用されているか否かを検証するという機能をさらに高めていく必要があると考えておりまして、これまでは、都が直接実施する事業が主たる評価対象でございましたけれども、監理団体などの団体を通じて実施する都の事業につきましても、改めて事務事業評価制度の対象として焦点を当てるということで、こうした機能を一層高めていくことができるのではないかと考えたところでございます。

○中谷委員 ただいまの答弁からしますと、都民の税金が使われている事業を展開している団体については、評価の対象となり得るということであると思います。
 本来、監理団体を指導監督するのは、総務局の行政改革推進部でありますけれども、監理団体の事務事業評価には、間違いなく総務局との連携が不可欠であると考えております。財務局で事業評価できる部分と、総務局でないと把握をしていない監理団体の事業、経営状況などの情報をしっかりと共有して事務事業評価をしていく必要があると考えますが、その点について見解を伺います

○長谷川主計部長 事務事業評価を的確に行う上では、それぞれの事業の性格に応じて、関連する専門部署との連携を図っていくことが重要と考えております。そうした意味で、二十二年度におきましても、システム、あるいは施設の改築、改修、「十年後の東京」の実行プログラムなどを所管するそれぞれの部署と連携をして取り組んできたところでございます。
 また、具体的な仕組みはこれからでございますけれども、過日、財務局長が本会議で答弁申し上げておりますように、監理団体などを通じて都が実施する事業につきましても、関係局と連携しながら事務事業評価を行っていくという予定でございまして、お話しのように、監理団体を所管している総務局とも密接に連携をした上で取り組まなければならないと考えております。
 これによりまして、これまでの実施状況や実績などの分析検証をともに進めまして、その結果を事業の見直しや改善に着実につなげていくことで、事業の効果や効率性をさらに高めてまいります。

○中谷委員 どのような事務事業であっても、最初から税金のむだ遣いをしようなどという事業はないわけで、結果的に行政経費がかさんだり、過去には必要であったけれども今は必要でない事業、また民間で十分対応できるのに官が取り組んでいたりする事業、そういうものをやはり変えていく必要があると思います。
 本定例会でも、監理団体の役員報酬や契約の仕方、天下りなどの問題が議論されましたけれども、これらの見直し自体は、総務局の改革の中で進めていただき、財務局のかかわりとしては、都が出資や継続的な財政支出をしているそのお金の流れの部分で、団体を通じて行われる事業をしっかりと検証を進めていくことが重要であると思います。引き続きの取り組みに、大いに期待をしているところであります。
 引き続いて、財産利活用についてお尋ねをいたします。
 今後、都の財政状況の見通しは、これからも不況が続けば、当然法人二税の増収を望むことは厳しい局面であります。
 歳入が厳しい中で、歳出面の見直しはもちろんですけれども、そうなりますと、限られた財源の中で都がなすべき役割を確実に果たすためには、都がストックしている財産の積極的活用が大変重要になってくるところであります。
 過去、平成十二年の財産利活用総合計画のときに、このときは積極的な都の財産の売却を図ったということで、約一千四百億円の土地を売却したとのことでありました。その後、平成十八年までの間に都合二千百億円もの売却をし、施設統廃合も約八十件、かなり急ピッチでこなしてきた経緯があります。
 財務局は、どのような視点でこのような財産利活用についての具体的な支援を行ってきたのか、また実際効果が上がっている事例を交えて、今後目指すべき財産利活用の姿を具体的にお聞かせいただきたいと思います。

○松本財産運用部長 都有地は都民から負託された貴重な財産であることから、都の行政目的の達成のために効果的に利用することが、まず必要でございます。
 また、直接の行政目的に供さない場合でございましても、財産価値を最大限発揮させるとともに、環境負荷の低減など都の施策への貢献を図っていくことが重要でございます。
 こうした基本的な考え方に立ちまして、先ほどお話しの平成十九年六月に策定をいたしました今後の財産利活用の指針では、基本的な財産利活用のあり方として、第一に、民間の力を生かした施策連動型の財産利活用の推進、第二に、コスト感覚を持った各局の主体的な財産利活用の推進、そして第三に、財産価値の保全と向上、これら三つの視点から財産利活用に当たっていくこととしてございます。
 具体的な事例を申し上げますと、未利用となっております財産につきまして、例えば建設局の廃止工区の他の用途への転用、あるいは福祉施設用地としての民間への貸し付け、通常の一・五倍の緑地創出を条件とした定期借地による貸し付けなどの取り組みを行ってまいりました。
 また、各局が所管する行政財産につきましても、その余裕部分を活用することについて支援を行いまして、具体的には、都税事務所などの庁舎敷地のコインパーキングとしての貸し付け、太陽光発電や次世代省エネ基準などの条件を付した環境配慮型住宅展示場としての貸し付けなどを行っております。
 このように、今後とも、福祉施策、環境施策などの推進にも役立つような財産利活用を図ってまいります。

○中谷委員 具体的な取り組みと、その効果について確認ができました。
 平成二十年の九月三十日現在でありますが、財務局が所管する都有地が約二千件、五百ヘクタール、財務局以外が所管する都有地が、これは公営企業財産と準公営企業財産分を除きますが、八千件で八千ヘクタール、それぐらいの規模の都有地を有しているとのことであります。
 未利用になっている都有地について、財務局は、まず各局の取り組みを支援する立場にありますけれども、ある程度その期間を経たものから、順次、各局の事業目的を果たした財産などは、早期に本来財務局が引き継ぐべきであると考えております。
 この事業目的を果たしたかどうかの判断も、局によって差があるかと思いますが、一定のルールづけをして、最終的には財務局に総合調整権があるわけですから、他局の理解をしながら、しかし、時には鬼になっていただいて、物を申していただきたいと思うのであります。
 私も民間の企業に七年勤めておりましたけれども、だれからも好かれる上司なんていうのはろくなものじゃないんです。財務局も僕は同じだと思うんです。他局から嫌われてでも、都民のために、また将来の東京のためになるのであれば、英断を振るっていただきたいのであります。ちゃんと見てくれる人が必ずいますから、自信を持ってやっていただきたいと思います。
 現行の仕組みでは、未利用予定地調査書に基づいて、各局とのヒアリングであるとか、現地調査などを行っておりますが、過去の財政委員会の財務局長の答弁によりますと、そうはいっても各局もいろんな事情があって、なかなか手放したがらないこともあるとのことでありました。局長が各局との調整力を発揮したい、そういう強い思いがあっても、しっかりとした仕組みが担保されていないと、事はなかなか進まないんじゃないかと思うのであります。
 事業目的を果たした財産などは、早期に財務局に引き継ぐことで情報の一元化を図り、局の枠を超えて他の行政目的へと転用を図り、あるいは貸し付け、売却など検討するべきであります。
 何でも売ってしまえばいいという話ではありませんし、更地で所有していることも意味をなすこともあると思います。そのような細かい情報も含めて、財務局で一元管理する方が、むだなく利活用ができるのではないかと考えております。
 しかしながら、各局での本来用途が終わった後や、未利用な状態でも各局が持っていて引き継ぎが行われていないものもあるやに伺っておりますので、それは具体的にはどのようなケースがあるのかをお伺いをいたします。

○松本財産運用部長 引き継ぎの問題でございますけれども、引き継ぎなどの局間での財産の異動というものにつきましては、東京都の公有財産規則に諸手続が規定されております。
 今お話しの、局の事業が終了しながら未利用となっている財産でございますけれども、これにつきましても、直ちに不要となった施設の撤去等を行った上で財務局長に引き継ぐということになってございます。
 しかしながら、局の事業終了後に他の局が引き続き使用する場合は、局間で財産の所管がえを行いまして、その間各現局で保有していると、そういった場合もございます。
 また、各局が所管している財産の中には、道路予定地などの将来的な利用が予定されているが現時点では使わないということで、とりあえず所管局で所有しているといったものもございます。
 また、境界未確定、あるいは地下埋設物があるなどのために、財産の活用に当たって整理を要するということがあって、引き継ぎに時間を要しているといったような場合もございます。
 こういった場合が、未利用になった場合でもまだ各局にあるといった場合の事例かと思います。

○中谷委員 幾つかのケースがあると伺いました。
 ただ、その中で問題なのは、次なる用途が定まっていないのに、一応転用用途がありますといって、各局で抱えている土地が、どうもかなり多いというふうに認識をいたしました。
 しかし、これから財産を利活用していくためには、いわゆる機会損失することなく、利活用可能財産の正確な現状把握と活用する際の形態や市場性の調査を行って新たな活用方法を検討するなど、ぜひとも財務局にリーダーシップを発揮していただきたいと考えております。
 有効な利活用推進のために何が必要なのか、局長の見解をお伺いしたいと思います。

○村山財務局長 確かに財産というのは、ある局である仕事をして、使っているときはもちろんそうなんですけれども、だんだん終息に近づいてきたときに、その次にどういうふうにしていくのかというときに、できれば自分の局で使いたいなというふうに思うということはもちろんあるわけでございまして、その辺のところも含めた、それこそ各局間の縄張りを超えた調整というのが私どもの役割であるというふうに認識しておりますが、ただ、そういういわゆる縄張り主義だけではなくて、いろいろ財産の引き継ぎをすっと財務局の方に移せない事情については、それぞれにいろいろな事情がありまして、例えば、今、部長から答弁申し上げたように、境界確定が済んでなくて、東京都が自分の局で使っている分には境界確定があいまいでもいいんだけど、いざだれかに譲ったりするときにはぴしっと権利関係を明確にしておかないとまずいというものとか、地下埋設物があっていろいろ関連事業者との関係の整理が必要だとかということもありますけれども、それは実は結構処理するのに専門的な知識が必要なことから、各局の場合にはスタッフの問題とかなんかでどうしても後回しになってしまう、そのことがずっと持っている一つのきっかけになってしまうというふうな面もございまして、その辺については、今お話のございました仕組みづくりも含めて、今後、財務局として、専門的な立場から、その支援といいましょうか、かかわりをしながら引き継ぎを円滑にできるように努力をしてまいろうと思っております。
 それから、道路予定地のように都市計画決定がちゃんとされていて、事業も予定があるんだけれども、例えば事業認可までまだしばらく時間がかかるけれども、やっぱり事業用地なのでしかるべきところでずっと管理をしておいた方がいいものは、それは確かにあるわけですけれども、そういうものについては、事業が実際に進んでいくまでの期間などについてよく我々として吟味をしながら、各局の事業にも支障がないように、かつまた、そうであるにもかかわらず相当長期にわたって閉鎖管理がされていて使われないというふうなことがないように、緑化というふうなこともあるでしょうし、さまざまな収益面の確保の方途もあるでしょうし、最近は行政財産の貸し付けという手法もございますので、その辺については各局とよく連携しながら、事業という視点を踏まえつつ我々としては活用を進めていきたいと思っております。
 それから、今お話のございました他用途への転用を予定しているというふうなあたりがなかなか微妙なところがございまして、その辺についても、全庁的な立場から、さまざまな用途、転用するならば速やかに事業化を進めるということも含めて、積極的に調整に入ろうと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、厳しい経済環境、財政環境ございますので、貴重な都民の財産であるそうした不動産等々につきましては、ぜひとも、お金の面での有効性もございますし、都の政策面での有効性もございますので、各局所管の財産について全庁調整する立場から、嫌われ者にはなれておりますので、積極的に活用してまいります。

○中谷委員 ありがとうございました。都が所有する未利用地の中に、実は、平成元年まで日本社会事業大学が使っていた神宮前一丁目の土地があります。一万九千三百四十一平米というものであります。都では、本件土地については、神宮前一丁目民活再生プロジェクトをPFI事業として実施をしております。平成七十二年までの定期借地権の設定がなされた土地利用でありますが、暫定利用であるということ、それと他局に事業監督が移行したわけではないということで、財務局としては未利用地という認識であるということでありました。
 実は私は、その辺の認識から変えていく必要があると思っておりまして、他局に対して、事業目的を果たしたならば早期に財務局に引き継ぐと主張するのであれば、五十年利活用を予定していても、未利用地という種別をするのではなくて、暫定利用地としてしっかり種別管理していくこと、そしてまた他局の土地利用の開始時期については、きちんと言質をとる努力が必要だと思います。
 ぜひとも財務局が先頭に立って、限られた貴重な都有財産の有効な利活用で、都財政が少々の不況でも揺るぎない体制となることを強く希望いたしまして、私の質問を終えさせていただきます。

○鈴木委員 私からは、契約を含めた公共事業の件に関して少し質問をさせていただきたいと思います。
 平成二十二年度の予算は、都税が大幅に減少する中でありますが、政策的な経費である一般歳出が、逆に一・九%の増加となっているわけであります。とりわけ投資的経費は四・七%伸ばし、石原都政初となる八千億円台とするなど、公共事業を積極的に推進しています。
 その意味については、大きく二つあると思います。一つは、東京の将来を展望し、都市基盤の整備を着実に進めるということであります。もう一つは、雇用の創出と中小企業の受注機会の拡大といったような経済波及効果を図ることでもあります。
 特に企業数の多く占める中小企業を活用することで、その効果も、より拡大すると考えるのは当然のことと思います。
 さきの予算委員会においても、我が党の質問でもありましたが、中小企業ができるだけ早く予算の効果を実感できるよう、精力的に取り組んでいく必要があると思いますので、改めて見解を伺います。

○長谷川主計部長 平成二十二年度予算では、公共事業の分野におきまして、東京外かく環状道路や区部環状、多摩南北方向の道路などの骨格幹線道路の整備、あるいは鉄道の連続立体交差の推進など、東京の将来を展望した都市基盤の整備を着実に進めることと同時に、事業そのものが持つ本来の効果に加えまして、中小企業の受注機会の拡大や雇用創出といった効果をあわせ持つ事業にも重点を置いて積極的に推進することとしております。
 これは、具体的には、教育や医療施設などの計画的な改修、あるいは道路、河川などの良好な維持管理、あるいは病院や社会福祉施設、学校の耐震化などがそれに当たります。
 今後は、ただいま話がございましたように、この予算を速やか、かつ着実に執行していくことが重要でございまして、来年度においても、予算上の措置としては、いわゆるゼロ都債を活用いたしまして、年度初めの端境期を解消して、年間を通じ切れ目のない形で、中小企業の受注機会を引き続き確保してまいります。
 また、今後予定されております二十二年度予算の執行に関する通達においても、円滑かつ着実な執行の旨を徹底いたしまして、各局と連携しながら迅速な対応を図り、都民の雇用や生活への不安の解消に向けて全力で取り組んでまいります。

○鈴木委員 現下の厳しい経済状況または財政状況の中で、前年度に増して公共工事の確保を図っていることは、景気対策または景気回復に向けた適切な対応であると考えます。
 一昨年秋のリーマンショック以来、景気回復がおくれている中では、公共事業の役割は極めて重要であるというふうに思います。
 特に公共工事は、民需が縮小し、回復していない中で、現場で働く労働者の方々の雇用だけではなく、工事で使われる資材、機材需要を喚起するという効果があります。
 また、そうした直接的な需要を喚起するだけではなく、施設完成後の各種備品の大量調達、また道路完成後のまちづくりに伴う民間工事などのように間接的に民需を喚起していくことにもつながっていくため、景気や雇用に与える波及効果というものは非常に大なるものがあります。
 現在大きな問題となっています雇用問題などについても、緊急対策や規制強化はもちろん重要ではありますが、根本的には行政による規制などは最低限にとどめ、経済対策として景気回復を進めていく中で、その解決を図っていくことが極めて重要であると考えます。
 もちろん景気対策といって必要のない工事を無理やり実施することは、税金のむだ遣いであり、許されない。このことはいうまでもないことであります。
 しかし、都の現状を見れば、必要のない工事どころか、高度成長期に建設した老朽化が進む都市インフラの維持更新のための工事、中央環状道路や環二工事のように、都のみならず首都圏全体の交通インフラを大きく改善する工事など、早急に進めなくてはならない必要な公共工事がメジロ押しの状況にあることは自明の理であります。都市インフラ整備のためには、まだまだ公共工事は必要不可欠であるといわざるを得ません。
 今回の予算は、都市インフラ整備と同時に、景気回復に目を配った意義ある予算であると改めて評価をしたいと思います。今後、この予算を早急に執行し、できるだけ早く景気回復につなげていくことが重要と考えます。
 とりわけ厳しい経済情勢の中で、経営余力に乏しい中小企業への工事発注については、できるだけ早期に行っていく必要があります。財務局からも、工事発注する各局に対して早期発注に向けて働きかけていただくことをお願いをしておきたいと思います。
 さて、こうした予算措置がされていても、実際により多くの中小企業が受注をできなければ意味がありません。厳しい経済状況下で全国的に工事量が減少している中、建設企業の競争は激しさを増しております。
 こうした中で、せっかく地元の中小企業向けに発注した工事が、全国規模で受注しているような大企業などが受注してしまうようなこともあるのではないかという心配もあります。大企業ばかりが受注するようなことがあっては、都内の中小企業に配慮した予算も、効果が半減してしまうということになると思います。
 こうした点について、入札でどのように対応しているかを具体的に伺います。

○奥田契約調整担当部長 工事の適正な履行とともに、企業規模に応じた公平、公正な競争を確保するため、完成工事高、自己資本額、あるいは技術者数などの客観的な企業情報に基づきまして、事業者を工事の種類、業種ごとにランク別、順位別に分類し、入札参加有資格者名簿に登録しているところでございます。
 工事の発注に当たりましては、この名簿に基づき、発注金額に応じてランク等を指定いたしまして、当該工事の規模や特性に応じた企業規模や売り上げ実績などを有する企業に対して入札参加を認めるとともに、都内の中小企業については優先的に指名しているところでございます。
 こうしたことによりまして、企業規模等に応じた受注機会の確保を図るとともに、地域の中小企業の育成にも配慮しているところでございます。

○鈴木委員 競争入札とはいっても、経営体力に大きな差がある大企業と中小企業が同一の条件で競争するというのでは、真の意味からいって、本当にそれは公平な競争といえるのでしょうか。
 競争入札は、技術的に困難な工事、特殊な機材が必要とする工事など特別な理由がある場合を除いて、できる限り当該発注ランクと同一ランク、あるいは意欲と実力のある直近下位のランクの企業で行うことが、むしろ公正な入札の姿だと私は考えます。今後も、そうした方向、方針を堅持することを特にお願いをしておきます。
 また、発注に当たって、都内の中小企業を優先しているとのことでありましたが、地域の実情をよく把握している地元の中小企業が受注することは、周辺の住民に配慮した円滑な施工につながることにもなります。ともすると、単に地元だからということで、理由もなく優先するように見られがちな点はあるかもしれませんが、工事の適正な履行と、すなわち品質確保の点から地元活用にメリットがあるということを私は強く指摘をしておきたいというふうに思います。
 都は、こうしたメリットも踏まえていただいて、引き続き都内の地元中小企業の活用に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、中小企業の受注機会の拡大について伺います。
 先日の予算特別委員会の我が党の質疑で、都は、分離分割発注や共同企業体発注に取り組んでいるとの答弁がありました。分離分割発注や共同企業体発注の具体的な内容と現状について、改めて確認をさせていただきたいと思います。

○奥田契約調整担当部長 都は、中小企業の受注機会の拡大を図るため、いわゆる官公需法、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律でございますが、その趣旨を踏まえまして、価格面、数量面、工事面等から、経済的、技術的な合理性に配慮しつつ、分離分割発注に積極的に取り組んでいるところでございます。
 具体的には、一棟の建物の建設工事を建築、電気、給排水、空調などの複数の種類の工事に分けて発注する分離発注、また大規模な施設で建物が多数ある場合には建物ごとに分けて発注する分割発注を、都の工事発注に当たっての基本方針としております。
 さらに、一定金額以上の大規模工事では、大企業だけでなく、中小企業が工事に参加できるよう、中小企業を構成員といたします共同企業体への発注を原則といたしまして、中小企業の受注機会の拡大とともに、中小企業の技術力向上に配慮しております。
 こうした取り組みによりまして、この十年間における中小企業の工事受注件数は、全発注件数の約八割以上の水準を維持しているところでございます。

○鈴木委員 今、答弁にもございましたが、全契約件数の八割以上にわたって中小企業が受注をしているということであります。これは、都の分離分割発注や共同企業体への発注の取り組みが、全体としてかなり徹底されているということを示すものと考えられますので、歓迎をすべき結果だと思います。
 ただ、細かい話になりますが、中小企業には、さまざまな種類の工事を幅広くこなしている企業だけでなく、特定な設備などの専門工事に特化して営業している企業も多く存在をしているわけであります。こうした中小企業は、民間工事では通常下請として工事にかかわることが多く、なかなか元請として工事を請け負う機会がないというのが実情であります。
 このような専門工事業者の育成を図っていくためには、下請としてではなく、請け負った工事に対して主体的な責任を持つ元請としての経験を積んでいってもらう必要があるのではないかと思います。そのためには、都が、こうした中小の専門工事業者に対して直接工事を発注していくことが重要と考えますが、この点について都の取り組みを伺います。

○奥田契約調整担当部長 ご指摘のとおり、専門工事を中心とする中小企業の育成を図っていくため、都が専門工事業者に対して直接発注をし、受注機会の確保に配慮していくことが重要なことと認識しております。
 工事の発注に当たりましては、先ほど申し上げました発注ランクとともに、発注業種を指定しております。都では、その発注業種につきまして、建設業法で規定されている二十八区分を、工事の内容の専門性に応じて発注できるよう百八区分にきめ細かく分類し直しております。
 さらに、複数の業種に登録している企業が入札への参加を希望した場合には、発注業種を専門とする企業を優先して指名いたしまして、専門工事業者の受注機会の確保に努めているところでございます。

○鈴木委員 都が、中小の専門工事業者の受注拡大のために、工種を細分化し、発注に当たってきめ細やかな配慮をしていることは確認ができました。現在、全案件の八割以上の案件で中小企業が受注をしているとのことでありましたので、実際の工事現場の管理や工程調整を考えると、今以上に細分化して発注することは困難な面が多いとは思います。できる限り専門工事業者に発注できるよう、今後も工事ごとに十分に精査して発注をしていただくことをお願い申し上げたいと思います。
 この件に関しては、我々の党として、それぞれの団体から、かなりの要望とかいろんな意見を聞いています。それぞれの業者またはそれぞれの専門的な特別なそういう技術を持っている方々を、もっともっと今の地域の中でまたは工事の中で生かしていくということも、これはこういう工事業者だけでなくして、東京自体が持っている中小企業のインフラそのものを高めていく意味でも、私は必要だと思っているんですね。
 ただ、実際に、これから、今いったように国の方は少し公共工事を発注していかない、鈍化しているような傾向にいっているみたいでありますが、東京そのものが、世界の都市の中で見たときに、現実にはまだまだ幹線道路を含めて、例えば中国の北京でも五本の環状線があり、ヨーロッパを見ても三本から五本、みんな環状線がある、物流はきちっと整備されて、その中で航空、港湾、それから今いった道路、それが三位一体になって整備をされていることを考えてみれば、まだまだこの首都圏東京というのは、その点から見たら、世界から見たら、おくれているといってもこれは過言ではないわけでありますね。
 そういうようなことで、これからまだまだ東京は老朽化してくる施設等をこれからどのようにして、時間的にも考えて工事を行っていくのかも含め、また新しいものを含めて考えていけば、私はまだまだ知恵を絞って、また予算、財源を考えていけば、今いった工事をきちっと進めていく、またそういうところに中小の方々を使っていく、中小企業の方々にもご努力をいただいていくというようなことも、知恵を絞れば私出てくると思いますので、そういうことをぜひ、今の経済状況を考えて、ひとつお知恵を出していただきたいということを要望して、最後に、厳しい経済状況の中で一生懸命努力している中小企業の受注確保と受注拡大に向けた取り組みについて、予算と契約を所管する局長の決意を改めて伺って、質問を終わります。

○村山財務局長 二十二年度予算に込められた中小企業の受注あるいは雇用の創出という目標を実現する上では、執行段階で、実際に中小企業に発注していくときに、入札契約制度の仕組みとともに、その仕組みをちゃんと運用することによって問題を実現していくということが重要だというふうに思っております。
 公共調達における入札契約制度は、納税者の負担のもとで行われるわけですので、当然のことながら透明性、競争性、品質確保というのが要請をされておりまして、中小企業への発注を充実させていくというのは、もちろん厳しい中での中小企業に対する配慮というものも一面あるわけでございますが、同時に公共工事の品質確保という面においても、それを基礎で支えている中小企業がしっかりと力をつけていく、あるいは規模は小さくても技術力のある中小企業が力を発揮していくということがあってこそ、東京における公共工事、公共調達、あるいは都民に資する施設の機能というものが還元されていくわけでございまして、そういった観点に立って、中小企業の育成という観点からも、活用が重要な課題だというふうに私ども思っております。
 そのため、今、部長からご答弁申し上げましたとおり、分離分割発注などに取り組んでおりまして、八割以上中小企業が受注するという形になっております。
 もちろん分離分割発注に際しましては、中小企業の受注確保、拡大と事業の効率的執行という間で、どの程度まで分離するのか、どの程度まで一緒にやるのか、分割するのかというあたりのところは常に課題となっておりまして、その辺のバランスをどうするかが、私どものいわば工夫のしどころということになるわけでございますけれども、当然のことながら分割発注によりまして、現場管理の煩雑化とかスケールメリットがなくなるということでは、かえってマイナスのこともありますので、その辺はもちろん重視しているわけでございますけれども、経済的合理性、それから中小企業の受注確保のバランス、現在置かれている中小企業の厳しい状況、それからお話のございました中小企業の専門性の発揮、これらの点に十分留意をしながら、今後とも積極的に分離分割発注に取り組んでいきたいというふうに思っておりますので、今後、各局とも連携しながら、迅速な対応を図って、予算の執行に万全を期したいと、かように考えてございます。

○上野委員 私からは、まず初めに、都有施設の更新の取り組みについてお聞きしてまいりたいと思います。
 都におきましては、老朽化した都有施設の改築、改修を進めるための計画を策定しまして、順次更新に取り組んでいるところでございます。
 民間におきましても、高度成長時代に建てられた老朽化した多くの施設で、この維持更新のための取り組みが今後進められていくことと思っております。その際には、やはり都における取り組みが大いに参考になるものと、このように考えております。
 そこで、都における改築、改修の取り組みについて、幾つか質問してまいりたいと思います。
 まず、都における温暖化対策を推進するためには、オフィスビルの省エネが欠かせません。広く民間オフィスビルに省エネ技術の導入を促すためにも、都は、今後の大規模都有施設の建築の際には、民間のモデルとなるような建築を目指すべきと考えておりますけれども、見解を求めます。

○山本技術管理担当部長 東京都は、平成十九年五月に省エネ東京仕様二〇〇七を策定いたしまして、環境局の東京都建築物環境計画書制度に定める省エネ評価の最高段階を目指した取り組みを行っております。
 例えば施設整備では、外壁、窓ガラスの高断熱化やひさしの設置などを仕様に組み込み、熱負荷を抑制するほか、照明や空調設備の高効率化などを進めております。
 今後は、この東京仕様に基づき整備した建物の省エネ性能を実際に検証するとともに、費用対効果を分析しつつ、順次仕様の改定を進め、有効な最新技術の導入を図ってまいります。
 主要施設十カ年維持更新計画に基づく施設の改築、改修に当たっては、東京仕様の改定内容を反映させ、より一層の省エネ化を推進し、民間のモデルとなるように取り組んでまいります。

○上野委員 省エネ東京仕様の改定を行い、これを踏まえて、民間のモデルとなるような都有施設を整備していくとのことでございますが、今後も省エネへの取り組みを着実に進め、省エネ東京仕様を民間へ周知していただくことを期待するものでございます。
 次に、超高層ビルである都庁舎の設備更新について伺います。
 都は、都議会議事堂を皮切りに、新宿の都庁施設の大規模な設備更新に取りかかっていく予定ではありますが、特に超高層ビルである都庁本庁舎の設備更新は、業務を継続しながらの工事であり、極めて困難な作業になると感じております。
 超高層ビルの大規模設備更新としては、過去に、世界貿易センタービルと霞が関ビルで対照的な手法が用いられたと、このように聞いております。
 世界貿易センタービルの場合は、オフィスを使いながら休日を利用して工事を行ったということであります。また、霞が関ビルの場合は、仮設建築物を利用することによって、オフィスをあけて、そして工事を行ったということであります。
 そこで、都庁本庁舎ではどのように対応していくのか。また、工事完了後にはデータを公表し、今後の民間の設備更新のモデルとなる取り組みとすべきと考えますが、あわせて見解を求めます。

○山藤参事 大規模な設備更新を進めるに当たりましては、それぞれの建物の構造やその利用形態などに合わせまして、最も合理的な方法を選択する必要がございます。
 都庁舎の場合は、構造上の特徴としまして、空調機がすべての階の天井裏や機械室内に設置されている点がございますことから、改修時には、天井を全面撤去しまして、そのフロアを閉鎖して工事を行う必要がございます。
 このことから、今回の設備更新では、建物内で執務室の閉鎖、移転をフロア単位で順次繰り返しながら、工事を進めていくことを予定しております。
 工事に際しましては、手の戻りや二重投資を避けるため、天井の撤去時にそのフロアの照明や防災設備などを一括して施工することなど、合理的な手法の導入に努めますとともに、共通して適用できる手法につきましては、民間のモデルともなるような取り組みを進めてまいります。

○上野委員 相当困難な工事になると思いますので、関係者の理解と協力を得ながら十分検討を重ね、特に安全には十分留意しながら、都民サービスに支障を来すことのないよう円滑な工事実施を望むものでございます。
 また、このような都におけるノウハウをぜひとも民間に公表して、都全体の社会資本整備と温暖化対策に役立てていけるよう期待するものでございます。
 次に、事務事業評価について、何点かお聞きしてまいりたいと思います。
 都におきましては、事務事業評価制度が事後検証システムとして構築され、マネジメントサイクル機能を高めるため、十八年度から財務局に所管されることになったわけでございますが、これまでその歩みを進め、都庁の中に着実に根づきつつあります。
 そもそも事務事業評価が導入されるに至った経緯について振り返ってみますと、平成十年度決算において巨額の赤字を計上し、財政再建団体転落の危機に直面する中、都は二度にわたり財政再建推進プランを策定しました。その後、全庁挙げて集中的に事務事業の見直しに取り組んで、財政再建を達成したわけでございます。
 その上で、事務事業評価は、ポスト財政再建という新たなステージにおきまして、経常的な取り組みとして、財務局で本格的に実施されたものであります。
 このような時間軸の中で、事務事業評価をとらえるとすれば、いわば財政再建期における集中的な施策の点検検証が制度化されたものであると位置づけることができるわけでございます。
 都議会公明党は、平成十七年第三回定例会の代表質問におきまして、公会計制度改革と同時に、都の行財政に対して、新たな計画、実行、評価、改善というPDCAサイクルを制度化すべきであると主張したわけでございます。事後の検証システムの制度化について提言してまいりました。このような我が党の提言を踏まえて、財務局が、庁内各局と連携いたしまして、汗をかいて汗をかいて現在の事務事業評価制度に結実したわけでございます。
 その意味で、国の二十二年度予算編成過程で、事業仕分けがあたかも先駆的な取り組みとして注目されたようでございますけども、都政におけるこれまでの一連の取り組みは、国よりも一歩も二歩も先んじたものであることを、ここに改めて主張しておきたいと思います。
 こうした現状認識に立った上で、今回の事務事業評価を見ますと、財政再建の成果に決して安穏とすることなく、その取り組みを着実に前進させていることが明らかになってまいります。
 まず、評価されるべきは、事務事業評価の量的拡大でございます。今回の事務事業評価では、公表対象件数は二百七十一件であり、前年度と比べて二倍を超えています。そのうち、見直し再構築が百四十件であります。これが約二百億円の財源確保につながっており、まさに評価されるべきものであります。さらに大事なことは、事務事業評価制度は単なる当座の財源確保のみを目的とするものではないということであります。
 国政においては、マニフェスト実現のための目先の財源確保のために、事業仕分けというツールが活用されたわけですが、この点が事務事業評価との相違点の一つであると思っております。
 すなわち、事務事業評価は、制度の仕組みの変更や工夫によって、一層効率的で実効性の高い施策を構築する取り組みであるということであります。この点が実は重要であります。
 そこで、今回の事務事業評価におきまして、制度や仕組みの変更、工夫によって施策の効果を高めた具体的な事例とその効果についてお伺いいたします。

○長谷川主計部長 二十二年度予算の編成に向けて、事務事業評価の中で制度や仕組みの変更、工夫によって施策の効果を高めた取り組みということでございますけれども、その一例としては、道路等の維持管理に関する評価の中で、工事の標準化を図ったということが挙げられます。
 通常、工事の起工から発注、施工までには、入札や契約などの手続に二、三カ月かかっているわけでございますが、一方で、単年度の事業につきましては、年度をまたいだ契約ができない中で、四月から契約に向けた準備を開始いたしますと、どうしても第一・四半期の工事の発注件数が大きく落ち込まざるを得ないということで、これがいわゆる年度の壁というふうにいわれております。
 そこで、工場を早期に発注するために、当該年度の歳出はゼロであるけれども、翌年度への債務負担行為を設定するという、予算上の手法であります、いわゆるゼロ都債の活用について検討いたしました。
 このゼロ都債を活用して、年間を通して切れ目ない発注を行うということで、年度初めの端境期を解消することが可能となりまして、中小企業の受注機会の確保に資するものというふうに考えたものでございます。
 また、このほか事業の内容の面でも、例えば雨期前に側溝を新設することで冠水事故の防止を図ることができるとか、あるいは植物の生育時期である春から夏にかけて早期に除草、剪定を行うことで交通阻害の防止や環境保全につながるなど、道路等の機能の低下を抑止するというような効果なども期待されます。
 このように、道路等の維持管理における工事を年度をまたいで継続的に行い平準化を図るということで、施策の有効性、効率性の向上も図られるということでございました。
 今後とも、事務事業評価をする中で、制度や仕組みの変更、工夫を積極的に行いながら、都民に役立つ施策の構築に努めてまいります。

○上野委員 事務事業評価といいますと、事業の廃止やコストカットが目的であるととらえる向きもあるようでございますが、今の答弁でもありましたように、事業のむだを省く一方で、事業をよりよいものに充実させ、都民サービスの向上につなげていくための取り組みでもあるということであります。
 先ほどのゼロ都債の活用の例がありましたけれども、この維持管理を含めて平準化を図っていくということは、特に今の厳しい経済状況の中で、まさに中小企業の皆さんにとっては、本当に喜ばしいことでございます。ぜひとも事務事業評価を通じまして、さらなる都民に役立つ施策の構築に努めていただくとともに、またこのことを広く都民に理解していただくよう努力されることを期待しているものでございます。
 次に、事務事業評価における新たな公会計手法の活用についてでございます。
 公明党は、本定例会の本会議代表質問におきまして、新たな公会計制度には、日々の会計処理自体に、むだや非効率を排除する仕組みが内部化されているはずである、これを活用しながら事務事業評価を進化させることが重要であると提言いたしました。
 これに対しまして、財務局長からは、事務事業評価について、評価対象の拡大に加えて、内容面で新公会計をいかに一層多角的に活用するかということが大変重要な課題であると認識していると、このようにご答弁があったわけでございます。
 さらに、先週十一日の予算特別委員会総括質疑におきまして、公明党の東村議員が、新たな公会計制度につきまして、これからはミクロの観点から、各局の事業について、バランスシート、行政コスト計算書、キャッシュ・フロー計算書を活用して費用対効果の観点から事業を評価し、むだを削減していくべきであると、このように提言したわけでございます。
 この提言に対しまして、財務局長から、個々の事業を評価する際、その時点のコストのみならず、将来の資産や負債にどのような影響が及ぶかなど、より複眼的に事業の効果、問題点を検証していくことが重要であり、そのため、新しい公会計制度の多面的な活用方法を検討しながら、事務事業評価の取り組みを積極的に推進していくとの力強い答弁があったわけであります。
 これらの財務局長の答弁は、まさに公明党の問題意識と軌を一にするものでありまして、新たな公会計制度の導入の効果を最大化するためにも、ミクロ的視点からの活用がより一層重要になってくると考えております。
 私は、昨年九月十七日の第三回定例会の財政委員会で、新公会計制度をマクロ的視点から活用した年次財務報告書の分析を中心に質疑を行ったところでございますが、今回の質疑では、このミクロ的視点からアプローチしていきたいと思います。
 そこで、まず、今回の事務事業評価におきまして、新たな公会計手法の活用内容とその効果についてお伺いいたします。

○長谷川主計部長 事務事業評価におきまして、新たな公会計手法をいかに活用するかということで努力しているところでございますが、今回は、主に三つの観点から活用に努めたところでございます。
 第一には、事業別の財務諸表を活用した分析でございます。個別事業ごとの財務諸表を活用して、事業の現状や課題について、主としてコストや効率性の面から分析をしております。
 第二には、財産の有効活用の視点からの分析でございます。例えば財産の活用について、中長期のスパンでの保有ストックの有効活用という観点も含め、複眼的に検証をしております。
 第三には、事業費に人件費も加えたフルコストという視点からの分析でございます。具体的には、退職給与引当金繰入額や減価償却費、金利などの従来の官庁会計では明らかにならなかったコストも取り入れた上で、事業の検証を行っております。
 このように、新しい公会計手法を事務事業評価に活用することによりまして、中長期的な視点も踏まえ、施策の必要性や有益性、将来への影響などをより深く検証することが可能となったものと考えております。

○上野委員 ただいまのご答弁で、新たな公会計手法が、今回の事務事業評価におきまして主に三つの視点で効果的に活用されているということでございました。すなわち、事業別財務諸表を活用した分析、財産の有効活用の視点からの分析、人件費も含めたフルコストという視点からの分析という点であります。
 そこで、まず第一に、事業別財務諸表がどのように事務事業評価に活用されたのか、具体的な活用実績についてお伺いいたします。

○長谷川主計部長 今回の事務事業評価におけます事業別の財務諸表の活用例の一つといたしまして、都庁舎の管理が挙げられます。
 都庁舎に関しましては、竣工から二十年近くが経過いたしまして、設備の老朽化への対応や維持管理のさらなる効率化などが求められることから、新しい公会計手法を活用し、設備更新の必要性や庁舎管理の効率性の検証を行ったところでございます。
 設備更新の必要性につきましては、貸借対照表の設備減価償却累計額を分析することで、設備の老朽化の進行度合いを検証いたしました。
 この結果、空調などの設備につきましては、ほぼ償却が完了し、本格的な設備更新の時期が到来しているということが裏づけられたところでございます。
 また、庁舎管理の効率性につきましては、行政コスト計算書の維持補修費などに着目して分析を行っております。
 その際、都庁舎は、そもそも費用を使用料で賄うということを目的とした施設ではありませんので、都庁舎のフロアを民間ビル並みに貸し付けたと仮定した上で、これまでの維持管理コストに加えて、民間ベースに合わせるために金利や公租公課の負担をも含めて試算をいたしましたところ、収益が費用を上回りまして、一定の採算性を確保するという結果となっております。
 このことによりまして、維持管理コストが効率的な水準にあるということが改めて確認できたところでございます。
 これらの分析を通しまして、設備更新の計画的な実施の必要性や維持管理コストの妥当性について、より実証的に確認することができたと考えております。
 このように、新たな公会計手法を活用することで、従来の官庁会計では明らかにならなかった側面をも把握することが可能となっておりまして、今後とも事業別財務諸表を積極的に活用することによって、事業のコストや効率性、将来への影響などを多面的に分析、検証してまいります。

○上野委員 まさに今のご答弁にもありましたように、この新たな公会計手法というのが、実は都庁舎のような行政財産の管理の効率性や、また設備更新時期を判断する際にも活用されたということであります。これがなかなか知られてないわけでありまして、これを明らかにさせてもらいました。
 次に、財産の有効活用という観点からの事務事業評価についてお聞きいたします。
 土地を初めとした財産は、従来の官庁会計では現金主義がベースであるため、保有ストックの有効活用という観点では、中長期的な時間軸の中での検証が十分になされていたとはいえない、そういう状況でありました。今後とも、この厳しい財政環境が想定される中にあって、従来にも増して都が保有する財産が最大限有効に活用されることが重要でございます。
 そこで、財産の有効活用という観点から、この事務事業評価において、新たな公会計手法がどのように活用されたのか、具体的な事例を交えて説明していただきたいと思います。

○長谷川主計部長 財産の有効活用という観点から、新しい公会計手法を活用した具体的な取り組みといたしまして、試験会場として使用する施設をふやす際にどのように確保するかということについて評価、検証を行った事例を紹介させていただきます。
 この事例では、近年、技術認定試験の受験者が急増し、現在の試験会場に加えて新たな試験会場を確保するという必要が生じたことから、新規で会場を借り上げる方法と、既存の都有施設を改修して使用する方法等を検討するという必要がございました。
 いずれにしましても、ふやした試験会場については、その業務の内容などにかんがみまして、しばらくは継続的に活用されるということが想定されますので、コスト比較に当たりましては、発生主義の考え方を踏まえて、単年度だけではなく、中長期的な視点を考慮して分析を行っております。
 その結果、現金主義で初年度支出のみを比較いたしますと、借り上げ方式が優位であったものの、発生主義で年間費用を平準化して比較いたしますと、改修に伴う減価償却費を考慮に入れても、改修方式の方が安価であるということが明らかになったことから、このケースにおきましては、既存の都有施設を改修して使用するという方式を採用することとしております。
 このように事業の将来にわたる費用対効果を判断するという上では、単年度の現金支出だけにとらわれるのではなく、中長期的な時間軸の中でのコスト分析が重要でございまして、今後とも、都が保有する財産をより有効に活用するという観点から、新しい公会計手法を一層積極的に活用してまいります。

○上野委員 土地や建物を初めとした都が保有する財産は、都民の血税を原資として取得、管理されております。したがいまして、こうした貴重な財産を最大限有効に活用することは、都政に課せられた重要な使命の一つでもあります。そのためにも、新たな公会計手法を積極的に活用して、効率的、効果的な財産の利活用を行っていただきたいと思います。
 次に、三点目のフルコストという視点からの事務事業評価について伺います。
 新たな公会計制度が導入されたことによりまして、従来の官庁会計では欠落していた時間に対するコスト、こういう概念が都庁にもたらされました。このことは、実に非常に大きな意味を持っていると思っております。
 時間に対するコストは、現金の出入りを伴わないために、官庁会計では着眼されにくいものであります。こういった概念を含めて施策を判断することは非常に大事なことだと思います。同時に、事業の特性によるところもあるとは思いますが、人件費も含めたフルコストで、施策の必要性や有効性を判断することも重要であります。
 そこで、時間に対するコストや人件費も含めたフルコスト分析を行った事務事業評価の実例について、具体的に説明していただきたいと思います。

○長谷川主計部長 今回の事務事業評価におきまして、フルコスト分析の事例といたしましては、自習とパソコンでの学習を組み合わせた研修方式でございますeラーニング研修という研修方式の検討が挙げられます。
 このケースにおきましては、eラーニング研修の導入検討に当たりまして、従来から一般的に行われている集合研修による場合とのコスト比較分析を行いました。
 発生主義によるフルコスト分析によりますと、集合研修の場合には、システム開発経費や運用経費は必要ございませんけれども、講師給与、旅費などのほか、研修を受けるために拘束されることによるコスト、すなわち時間コストもかかることから、これを研修期間中の研修生の給与相当分に換算して加えた結果、研修生一人当たりのコストは、計算上、このケースでは四・一万円というふうになりました。
 一方、eラーニング研修の場合には、初期経費としてシステム関連経費は必要となるものの、拘束時間が少ないということから、時間コストが低廉で済みまして、さらに講師給与や旅費も不要でございますので、システムの経費を含めても、研修一人当たりのコストは一・七万円ということで、集合研修に比べて三分の一にとどまるということが明らかになっております。
 このように、eラーニング研修の活用は、コストメリットという面ではメリットが大きいということが判明しております。
 ただ、eラーニング研修につきましては、学習到達度などの効果検証が不可欠でございまして、さらに、研修目的によっては、例えば接遇のように対面の研修でなければ効果が上がりにくいというものがございますので、受講生の状況や研修内容に合わせて、研修の一部をこうした形で行うということは有効というふうに評価をしております。
 今後とも、事業の特性を踏まえながら、フルコストの視点を持って多角的なコスト分析を行うことで、より効果的な事務事業評価を実施してまいります。

○上野委員 ただいま答弁いただきましたように、フルコスト分析も、実は発生主義がベースにあるわけです。事業特性を踏まえつつ、ぜひこういった視点からの分析を効果的に活用していただきたいと思います。
 さて、現在、国政では、二十三年度予算編成に向けまして、新たに事業仕分けの第二弾が検討されているようでございます。この事業仕分け自体は、否定しない、もともとは公明党がいい出した話でございます。財務諸表がそろっていて、初めて事業仕分けは生きると思います。そうしないと、主観的な観点でしか事業仕分けはできないことになります。つまり事業仕分けの大前提として、新たな公会計制度があるわけです。
 本定例会の本会議代表質問における公明党の質問に対しまして、石原知事からも次のような答弁がございました。国は、今さら事業仕分けなどせずに、新しい公会計制度できっちりした財務諸表が出てくるわけだから、余計なことをしないで済むわけだ、先進国はどこでもやっている、日本だけやっていない、新しい公会計制度を取り入れるべきであると。
 私は、まさに知事の答弁のとおりだと思っております。都の財政再建において、新たな公会計制度は、最大で一兆円を超えるまで膨らんだ隠れ借金の存在を顕在化させたわけです。大きな役割を果たしました。
 もし国が本気で財政再建に取り組むのであれば、場当たり的に削りやすいところから歳出削減に取り組むのではなくて、この新たな公会計制度を導入した上で着手する、それが最も、本当の事業仕分けをしている意味がそこに出てくるわけであります。
 国政においては、マニフェスト実現に向けた目先の財源確保が喫緊の課題であることもわかりますけれども、パフォーマンスではなくて、より本質的な事業の見直しが行われることが望まれるわけです。
 今回の質疑で明らかになった新たな公会計手法の活用事例を大いに参考にしながら、ぜひ都議会民主党さんも国にいってもらいたいと。国においても、ぜひ積極的に新たな公会計制度を活用していただいて、事務事業の見直しのレベルをもう一段上げていただくことが肝要であると強く申し添えておきます。
 国の先陣を切る都の事務事業評価に話を戻しますけれども、最後に、この間、事務事業評価の取り組みを積極的に推進してきました財政の実務を取り仕切る財務局長の立場から、これまでの取り組みの総括と今後の決意を伺いまして、私の質問を終わります。

○村山財務局長 東京都は、石原知事が就任してから財政再建に取り組んできたわけですけれども、前回の委員会でも申し上げましたように、二次にわたり集中的な事業見直しをやってまいりました。これは、危機的状況にあった都財政を再建する上では、非常に大きな貢献をしたわけでございます。
 この事務事業の見直しと事務事業評価の関係でございますけれども、この七年間にわたる事務事業の見直しの成果を踏まえて、財政再建が達成された後も継続的に組織として見直しを実施していくという、そういう制度をつくって、そのことによって、いわば見直しを都庁組織の中に内在化させようという、行政自身の体質を改革していこうという、そういう位置づけとしてこの間定着に向けて努力をしてきたつもりでございます。
 この間、事業を担当する各局と協力をしながら、新しい公会計制度も活用しながら、事業の点検、見直しをいわば日常化させてまいりまして、事務事業検証システムとして定着できたのではないかというふうに考えております。
 このプロセスでは、今申し上げた新公会計制度を活用いたしまして、時間軸であるとか、あるいは資産概念というようなものを事業の評価の中に活用することによって、立体的な事業の評価、見直しをできるという手法について確立を目指してきております。その一つの到達点が、今回の二十二年度予算編成における取り組みであるというふうに私としては総括ができるものと考えてございます。
 今後、この事務事業評価が庁内に定着しつつあるという段階の次のステップといたしまして、この制度の取り組みをもう一段発展させ、都民から負託を受けた税金の効率的、効果的な活用についての一つの道具として機能をさらに高めていくためには、さらにもう一つ努力が重ねられなければならないということで、今回、監理団体を通じて実施している都の事業、あるいは二十二ございます特別会計を評価対象に加えるなど範囲も拡大し、また、今るるご指摘をいただきました新しい公会計制度手法についても、さらにミクロ的な活用を充実させていくというふうな課題に向けて、これから、これまでの経験を生かしてさらに不断に探求していくつもりでございます。
 今後とも、こうした努力を重ねることによって、都政の積極的な展開を日常的に継続的に組織としてやっていくという行財政体質の改革を志向しつつ、都民に役に立つ都政を支え得る都財政を築くべく頑張っていきたいと考えております。

○たぞえ委員 私は公契約について伺いたいと思います。
 今、経済危機のもとで都民の暮らしの実態は極めて深刻です。失業や賃下げ、倒産、どの指標をとってみても、史上最悪の数字が更新されているところです。
 この経済危機から都民の暮らしを守るために、公共事業に係る業務に従事する労働者への適正な労働条件が確保されているのか。公共事業の質を確保して、公的契約の社会的責任と価値の向上が図られているか。そのために都政が何をなすべきか、この点から幾つか質問もして、提案もしたいと思います。
 今開かれている予算特別委員会に提出された資料によりますと、二十年度の財務局発注工事での全契約発注件数は四百二十件です。契約額は四百九十四億三千三百万円で、中小企業を除く契約数は五十五件、二百五十三億三千百万円と明記されています。
 大手ゼネコンの契約件数は一割強ですけども、契約額はどうかと見ると、半分以上を占めているわけです。工事契約の多い局では、例えば建設局ですが、年間三千百五十六件の発注に対して、大企業への発注率は約二割ですけども、額では六割以上というのが数値です。
 前回の補正予算中途議決の際に提出していただいた委員会資料によると、十八年度後、都議会の議決に付した九億円以上の土木工事契約だけでも、ここにかかった委員会ですが、九十五件に及びます。その中でも断トツに多いのが、毎年契約で複数に発生している中央環状品川線関連工事は、この四年間で八回の契約が行われていると記載がされていました。一件当たりの契約額で、最高でシールドトンネル工事で四百七十二億円、最低でも立て坑設置工事で二十三億円、合わせて八本の契約で千二百八億円に及ぶ工事であります。
 この八回の契約発注には、立て坑の設置、またシールドトンネル工事、換気所下部工事、ジャンクション仮設工事など、そういう工事の内容ですけども、契約ごとのJVの組み合わせ方はどうなのか。また、それぞれの入札の落札率はどうだったのか、まず伺いたいと思います。

○奥田契約調整担当部長 中央環状品川線関連工事八件ございますけれども、今ちょっとすぐ手元に出るのは、最低と最高は出るんでございますけれども、それを申し上げますと、落札率が最も低かった案件は、平成十九年度に発注いたしました中央環状品川線中目黒換気所下部工事でございまして、落札者は株式会社間組、落札率は五五・三三%でございます。
 最も落札率が高かった案件は、平成二十年度に発注いたしました中央環状品川線シールドトンネル工事のその二で、落札者は大成・大豊・錢高建設共同企業体、落札率は九四・九五%でございます。

○たぞえ委員 金額も大変大きいわけですが、参加する企業も、日本で名立たる大手ばかりです。シールドトンネル工事では、今いわれた大成などが必ず参入して、年度をまたいで継続し請け負っている、これが特徴です。落札率は、述べられたように、二十年度のシールドトンネル工事二というのがありますが、九四・九五%で高い率の契約でした。十九年度の同じシールド工事では六一%と、三四%もの開きがあるわけです。それだけでなく、十八年度と十九年度の四回とも、五〇%台から六〇%を少し超える低価格での落札率を占めています。
 そこで、二つ目に伺いますが、十九年度に契約した中目黒換気所下部工事ですが、契約金額は四十八億五千九百万円、いわれた落札率は五五・三三%、都が予定していた入札価格は幾らだったんでしょうか。

○奥田契約調整担当部長 予定価額は八十七億八千万円ほどでございます。

○たぞえ委員 都が積算していた予定価格よりも約半分程度と、大変低い契約額でした。これは、発注者である東京都が設計や積算を通して算出した公共構築物を完成させるまでに要する価格の根拠が高過ぎたのか。一方、市場の積算とかけ離れていたのか。このことが品川線の換気所で顕著にあらわれました。
 予定価格の約半分程度の低入札価格契約となれば、都が積算していた予定価格を構成している材料費や労務費には根拠がないということになるのではないでしょうか。

○奥田契約調整担当部長 中目黒換気所下部工事は、一般競争入札の結果、入札価格が調査基準価格を下回りましたので、低入札価格調査を実施いたしまして、当該入札を行いました。また、企業に対しまして、積算資料などの提出を求めまして、ヒアリングなどによる詳細な調査を実施いたしました。
 その結果、工事施工上の工夫によりまして、工事に使用する資機材損料の低減が図ることができるなど、技術的理由などが確認されまして、工事の適正な履行が可能と判断されたことから、契約締結いたしました。
 労務費や材料費を含めまして、予定価格等に問題があったとは認識しておりません。

○たぞえ委員 問題ないというわけですが、現実には、都が積算した材料費や労務費より大きく下回るわけですから、重層下請制度といわれるもとで、契約の相手である元請は、下請に仕事を回した段階で、都が示した単価より低い単価に切り下げ、現場に働く建設労働者の低賃金労働条件に何らかの事態があらわれてくるということが想定されるのではないかと、だれでもが思うわけです。
 こうした行き過ぎた低価格競争が、結果として工事の品質低下や不良工事の発生、さらに労働条件の悪化、労働災害につながることが懸念されます。
 建設業界では、こうした重層的な下請構造が常に問題になっています。その下請に対して賃金が支払われているのか、労働条件が適正なのか検証するための取り組みが必要ではないかと思いますが、見解を伺います。
 できれば答弁をゆっくりお願いいたします。

○奥田契約調整担当部長 都と元請企業とが直接締結している契約でありましても、契約相手である元請企業で働く労働者の労働条件は、企業の経営方針、あるいは財務状況を踏まえて労使間によって定められるものでございまして、発注者であっても、それに関与することは適切ではございません。
 また、元請企業が下請企業と締結する契約は、都と元請企業との契約とは法律上別の契約でございまして、そこで働く労働者の労働条件はもとより、その契約内容につきまして、発注者として直接関与することはできないと思っております。

○たぞえ委員 関与は適切でないという答えでありますが、公共事業によって完成した施設の品質や安全性は、その地域の経済、また産業、その周辺の都民の営業や生活に直接深くかかわるんです。税金を使った工事で業者や都民生活が潤う、そういう状況に本当になったのかどうか、このことの検証が必要ではないでしょうか。
 元請だけでなく下請でも、発注価格が適正に確保されていなかったり、労働者の賃金や労働条件が確保できないということがあれば問題です。税金を支払う公共事業である以上、検証して、下の隅々まで、その適正な使われ方、条件が満たされているかどうか、これを担保するべきだと思いますが、見解を伺います。

○奥田契約調整担当部長 繰り返して恐縮でございますけれども、法令上、公共契約であっても民間契約であっても、発注者が契約相手方の労働条件に関与することは適切ではございません。労使交渉で定めた労働条件は、法令に違反しない限り尊重されるべきものと認識しております。
 仮に、契約相手方で働く労働者の賃金や労働条件が法令違反であることが明らかになった場合には、都は、発注者として、指名停止により入札から一定期間排除するなどの措置を講じているところでございます。
 なお、都民の負担による公共工事の適正な執行についてでございますが、工事契約の目的である竣工した構築物の品質がきちんと確保されているかどうか、工事監督、中間検査、竣工検査などさまざまな段階を通じまして厳正に確認を行い、必要に応じて手直し工事を指示しているところでございまして、十分に担保できていると考えております。

○たぞえ委員 今、各地の下請業者から、やっと仕事が来ても賃金が安くて生活できない、こういう悲惨な叫びが届きます。私のところにも、先日、都の公共事業を請け負った下請の社長さんから相談がありました。
 水道局の施設の外装工事で、吹きつけを行うために足場を組んだ仕事です。契約のときに、下請代金の単価が際限なく切り下げられていた。ところが、二次下請の親会社が失踪して代金の支払いが全くなくなって、社長さんの給料はもちろん、足場のリース代も従業員の給料も払えない、そういう事態に追い込まれて工事もできない。足場は、支払い代金が来ないですから、撤去もすることができない。都はどうしてくれるんだと、そのように問いただしたところ、それは下請の問題だと、都は元請との関係であって、それは民民の問題だ、こういって対応ができなかったというわけです。
 生活できないような低い賃金が蔓延しているだけでなくて、その低い賃金すら、倒産や失踪で満足に支払われない。発注者や元請企業に聞いても、当事者の問題だと、こういうケースが私のところにも年間数件来ます。
 こういうことが公共的な事業だといえるのかどうか。こういったケースも含めて、都はどういう対策をとっているんでしょうか。

○奥田契約調整担当部長 公共契約あるいは民間契約にかかわらず、元請や下請間で生じた不払いなどの契約トラブルにつきましては、建設業法がございまして、それに定めます建築工事紛争審査会による中立的な第三者を交えて、当事者間で解決していくことが基本であると考えております。
 これは、都の工事請負契約に関する標準契約書だけではなく、国が勧告して、民間で一般的に使用されております民間建設工事標準請負契約約款でも、紛争解決に関する事項として定めているところでございます。
 なお、企業倒産などによって債権回収に大きな影響を受けた中小企業に対する支援策といたしましては、国や都において各種融資制度が整備されているところでございます。

○たぞえ委員 審査会がありますとか、融資制度がありますからそれ使ってくださいといったって、元請には契約金額でちゃんと払っているわけでしょう。そこから先に流れていかないんだから、やっぱり私は、蛇口をひねってあけたら、ちゃんと閉まるまで、その使った水量が適切に使われているかどうか、他人事のように融資制度があります、審査会がありますということじゃないんじゃないでしょうか。だから、下請から都に直接、代金未払いだと声を出しても対応もしてもらえない、これでは都政の信用すら失われかねない、こうした事態の無法はなくなっていかないんじゃないでしょうか。受け身じゃなくて、発注者の責任で下まできちんと対応するべきなんです。契約で決められた内容で公正に支出されたかどうか、公共事業の大前提ではないでしょうか。
 労働者から、未払いや賃金の引き下げについて、違法命令や義務違反の申し出があったときに、受注者に対して報告を求めたり、立入検査を行う、命令に従わないときは公契約を解除する、そういう毅然とした立場が大変必要です。そういうふうに思いますが、いかがですか。

○奥田契約調整担当部長 私ども、賃金などの労働条件に関する法令違反についての申し出があれば、速やかに労働行政を所管いたします官公署に通報することになります。その後、当該官公署の法令に基づく調査、指導、勧告などが行われまして、改善が図られない場合には行政処分などが行われることになります。
 都といたしましては、権限ある官公署により法令違反が確定し、行政処分が行われた場合には、契約制度上も指名停止措置により入札から一定期間排除するなどの対応を行っております。
 労働条件に関する法令違反については、このように法令等に基づく仕組みが既に整備されていると認識しております。

○たぞえ委員 工事を行う受注者が法令等を厳守するのは当然のことなんですよ。公的契約を受注した責任を自覚して業務につく、労働者の適正な労働条件を確保することが、まさに元請の最低限の役割です。
 公契約に人間らしい労働条件を保障する点については、国際労働機関での公契約における労働条件に関する条例で既に勧告がされております。公的な資金、つまり住民の税金を使って行う事業に係る契約については、東京で関係ある産業、そして職業で同じ労働している人の賃金を保障して、公契約で働く労働者に均等待遇を保障して、また通常の労働時間、割り増し賃金、休日などについても十分な対策を講ずる、こうした契約にかかわる自治体としての公な条例制定である公契約条例の制定が必要だと、私は緊急に思いますが、見解を伺います。

○奥田契約調整担当部長 労働者賃金あるいは労働条件を適正化することにつきましては、労働政策として重要なことであると認識しております。
 しかし、繰り返して恐縮でございますが、契約制度の中で労働条件や賃金水準を条件として定めることにつきましては、各企業が労使交渉の中で労働条件を定めるという現行法令の趣旨になじまないものと考えております。
 都といたしましては、労働政策を所管する国の立法措置上の問題だと考えております。

○たぞえ委員 国の立法措置だという話なんですが、しかし、国が発注するわけじゃなくて、都が都民の税金を使って仕事をお願いするわけだから、その契約内容、もちろん工期、材料、労賃費、すべてを網羅して相手を決めるわけだから、そこに当然存在するのは人間という労働者なんです。その人々が、その公共事業で潤い、その地域に確かな都民の施設ができ上がるかどうか、そこを見届けるのが東京都の私は役割だと思います。
 今いわれた、国の立法措置を含めて対応を検討するということでありますが、では、国がそういう方向で調整、検討されていく流れになったとき、都としては検討するということがあり得るんでしょうか。

○奥田契約調整担当部長 繰り返して恐縮でございます。都といたしましては、国の立法措置上の問題であるというお答えでございます。

○たぞえ委員 国が立法を定めれば都はどうするんですか。

○奥田契約調整担当部長 立法を定めるということは法ができるということでございます。そういったことの前提として、契約制度もまたその現行法ということになると思います。

○たぞえ委員 国会では、国が発注する建設工事の施工に当たって、労働者と一人親方の双方を対象にして適正な報酬を確立しようということで、公共工事報酬確保法案の提出の準備がされてきました。建設労働者の全建総連などが努力をされ、結実しようとしていた今の状況です。
 昨年の十二月の参議院本会議では、公共事業における賃金等確保法の制定を求める請願が採択されたのは記憶に新しいことです。全国的にも、千葉県の野田市が全国で初めて公契約条例の制定に踏み出し、東京でも、国分寺市が公共調達条例の素案を作成して、二〇一一年度から条例の提案を行う予定だと聞いています。
 国の立法措置というお話がさっきからありましたけれども、東京都が、東京で働く、公共事業にかかわる労働者の最低賃金を千円以上に定める、また待遇改善だとか労働条件だとか、こういう公的契約条例に、私は真剣にこれから検討をしていく時期に来ていると思います。
 この意味で、私どもの党日本共産党は、今度の予算議会に下請業者の育成と支援を求め、東京都が公契約条例の制定に向けた検討会を設置するよう予算の組み替え動議を提出をする予定であります。東京で働く産業の皆さんが、腕と、そして技術を発揮して生活と仕事に希望を持てるように、大いに今、自治体が応援をするときだと私は強く思っております。
 そういう意味で、ぜひ、国の動向次第ではなく、地方自治体が率先して、働く労働者を本当の宝のように大事にしていく、そういう東京を私は求めていきたいということを主張して終わります。

○福士委員 それでは、自治市民’93として、まず、施設のあり方について伺います。
 まず、都立建築物のユニバーサルデザイン導入ガイドラインについてですが、都が平成十九年に発表したガイドラインでは、高齢者や障害者等の特別な配慮を必要とされる方のための施設整備であるバリアフリーから、すべての人に対して配慮するユニバーサルデザインで、より広範に利用者の視点を重視した、質の高い都立建築物の整備を目指すとしています。設立準備委員会や学識経験者の意見を受けるなどをされているのは承知しておりますけれども、実際に利用される方の意見や現場の状況については考えられましたでしょうか。まず、それを伺っておきたいと思います。
 例えば、私の知っている例では、だれでもトイレにオストメート洗浄器はあるけれどもウオッシュレットがない、こういうことはありました。手の麻痺のある方には、使いにくいというようなことを聞いております。このガイドラインは、各局でどのように使われるのかということも含めて、現場を持つ各局との連携はどうなっているのか、お伺いします。

○末菅施設改修担当部長 財務局は、平成十九年三月に都立建築物のユニバーサルデザイン導入ガイドラインを策定いたしました。すべての利用者の視点に立った、使いやすい都立建築物の整備に取り組んでいます。
 ガイドラインの策定に当たりましては、学識経験者を含めた委員会を設置いたしまして検討を行うとともに、具体的なモデルケースとなります施設改修の現場におきまして、現地調査を行い、その結果を内容に反映いたしました。
 施設整備に当たりましては、このガイドラインに基づきまして、トイレやエレベーターなど、ユニバーサルデザインの項目別に導入について検討を行いまして、利用者にとって快適な環境の確保に努めているところでございます。
 また、このガイドラインが全庁的なユニバーサルデザインの推進に資するよう、各局が構成員となっております東京都建築協議会を通じまして情報提供を行っております。
 なお、温水洗浄便座つきトイレにつきましては、施設の用途や特性に応じ施設管理者と協議の上、設置をしています。例えば、都立施設では、病院や福祉施設などにおきまして、温水洗浄便座つきトイレにするなどの対応を進めてきております。

○福士委員 むしろ、今、一般的に建築物には温水洗浄便座がほとんどついている状況になっています。しかし、駅など通りすがりに市民が使用するものは、都のガイドラインに従っていくと、新設でも気をきかせて先行的に取り組む形になりにくいのが実情になってくるのではないでしょうか。
 さきに申し上げた、だれでもトイレではオストメートはなくても、これはほかに代用できるんですが、ウオッシャブルになっていないために、手に麻痺のある方はお困りになっている、そういう方は大勢いらっしゃるようです。今、一人で外出される障害のある方もふえました。利用者の声をぜひ聞いていただきたいということを再度申し述べておきます。
 次に、主要施設十カ年維持更新計画について伺います。
 東京都は、大規模施設等の改築・改修に関する実施方針、これに基づいて今後十年間における都有施設の維持更新を計画的に実施していくための主要施設十カ年維持更新計画を平成二十一年二月に策定しています。
 この計画に沿ってお伺いをいたしますが、この中に建物の周辺環境との調和ということがいわれております。計画では歴史的、文化的環境、その他の調和を踏まえ、地域特性と融合した良好な都市景観の形成に寄与していくとありますが、これら言葉だけにとどまらない具体的政策としてはどういうふうにしていかれるのか、お伺いします。

○山本技術管理担当部長 財務局では平成二十年六月に、景観に精通しました学識経験者から、景観に配慮した都立建築物の整備のあり方について意見聴取をいたしまして、施設整備の方向性について取りまとめを行いました。
 この結果、景観に配慮した施設整備につきましては、設計段階が特に重要であることがわかりました。基本設計の委託につきましてはプロポーザル方式を原則とし、景観や周辺環境との調和を課題として技術提案書の提出を求めております。平成二十年度は四件、平成二十一年度は八件と、景観づくりにすぐれた設計者の選定を着実に進めているところであります。
 さらに、実際の設計の発注においては、委託仕様書の中で、景観に関する報告書の提出を義務づけるなど、景観に配慮した設計を行っております。主要十カ年維持更新計画の実施におきましては、このような取り組みを含めまして、建物の周辺環境との調和を前提とした施設整備を行ってまいります。

○福士委員 景観に配慮した施設整備というのは大変重要なことだとは思いますが、まちづくり一つをとっても、市民の思っている景観に配慮した整備というのと、行政と、受けとめ方に開きがある場合があります。地域の方々とも、ぜひ足並みをそろえて進めていただきたいというふうに思います。
 次に、保全データベースによる計画的な保全の基盤づくりですが、二〇〇八年から保全履歴のデータベース化が始まったようですが、どのくらい進んでいるのでしょうか。
 量的にはかなりの量となると思います。先般、エレベーター修繕の一括管理をという趣旨の陳情がありました。そのときに私は、量的に無理だろうという観点、それ以外のことももちろんありますけれども、そういう意味も含めて反対をいたしました。これは、だから今一括管理をしてはいけないという意味ではなくて、もちろんそれは必要ですけれども、実際の運用状況はどうなるのかお伺いをいたします。

○金子建築保全部長 都有施設は数多くございまして、それらの維持管理を適切に行うことが必要でございます。都におきましては、各施設を所管する局が維持管理を行っておりますけれども、財務局が各局を支援する立場から、これまで帳票型式だった保全に関する台帳を電子データ化いたしまして、より適切な維持管理を進めていくよう、保全データベースシステムを構築いたしました。
 データベースの入力に当たりましては、建物の概要、修繕、改修工事や維持管理業務の履歴、エネルギーの使用状況など、入力項目は多岐にわたっており、また、対象となる都有施設も多数あるため、平成二十年七月より、主要な大規模施設から逐次取り組んでいるところでございます。
 今後も各局との連携を強化するとともに、各局の行うデータ入力に対して適切な支援を行い、データベースのさらなる充実を図ってまいります。

○福士委員 主要施設十カ年維持更新計画は、コストの縮減などが主になっているように見受けられるんですけれども、ことし二月に国から提出を要請されている社会資本の維持管理及び更新に関する行政評価・監視でいうアセットマネジメントに近い気がいたします。一方で、民間では、アセットマネジメントと並んでファシリティーマネジメントという考え方があります。行政に即していえば、政策目標に沿って適切な施設が配備されているかを評価していく手法です。神戸市や浜松市で導入されています。
 ここでポイントとなると思われるのは、維持コストの縮減と財産価値の最大発揮とのバランスです。単につぶして民間に売却するということは、金銭面で助かっても、市民にとってサービスが低下し、政策目標としては後退するという場合もあると思います。
 また、逆にずるずると目的もなしに維持し続けて、市民のニーズが下がった施設を維持し続けることも、また問題となります。
 先ほど来もそのような趣旨のお話もございましたけれども、両者のバランスをとりながら透明性のある評価や判断をしていくこと、また、適切な時期に修繕をして建物寿命を延ばしていくような仕組みに、データベース活用を考えていくべきだと思いますが、見解をお伺いいたします。

○金子建築保全部長 都有施設は、都民から負託を受けた貴重な財産であり、また、都民サービスを適切に提供する役割を担っていることから、ライフサイクルコストの最小化を図るとともに、常に施設の機能が最大限に発揮される状態に維持する必要がございます。
 今後は、保全データベースの対象施設の拡大やデータの蓄積を進めるとともに、これらをもとに必要な分析を行い、結果を個々の施設の適切な維持管理や主要施設十カ年維持更新計画の推進のための基礎資料として活用することによりまして、建物長寿命化など、費用対効果も踏まえた都有施設の維持更新に取り組んでまいります。

○福士委員 この計画は、先ほど来お返事いただいているように、これから期待をしつつ見守りたいと思いますし、施設建設のとき、都有施設の維持更新というだけではなく、また維持管理だけではなく、施設建設、そういうときにこそ維持を含めて考える材料としていただきたいことを申し述べておきたいと思います。
 次に移ります。事業評価の一元化ですけども、厳しい財政状況の中で、事業の選択肢を明確にするために事業評価を拡大して実施したという報告をいただきました。
 事業評価をより適切に行うために、複数年、きちんと予算、決算、事務事業報告、事業評価、これは長期計画、東京都では長期計画とは余りいいませんけれども、長期計画と比べて進行管理、こういうチェックをすることが容易なシステムを導入することが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 例えば国分寺市では、予算書の説明欄を活用した事業別予算書を作成して、通し番号で管理しています。備考欄のところに数字がずっとついております。決算、事務事業報告、事業評価、進行管理は、すべてこの同じ事業番号で行っています。そのために、一般市民がすべてを見通して複数年でもチェックしやすい形になっています。
 東京都と国分寺市では、規模的にも余りにも違いがあるという意味で、これをそのまま全部にやってほしいといってどうなるのかなという思いがなきにしもあらずですけれども、都のすべての事業に行うかどうかは別にいたしまして、事業評価対象とすると決めた事業だけでも対象にしていくとか、あるいは事務事業報告との連動、それから進行管理との連動がわかりやすい仕組み、特に番号による管理はできないものかどうかお考えを伺います。

○長谷川主計部長 事務事業評価によるマネジメントサイクルをより効果的に機能させるというためには、評価結果やそれに至る考え方などにつきまして、都民に対して、いかにわかりやすく整理して公表するかということが、説明責任の上からも、あるいは施策を見直す上からも必要であると考えておりまして、委員お話の通し番号の活用というのも、そういった観点からのご提案ではないかというふうに思います。
 現在、東京都におきましては、都民の皆さんの理解を深めていただくということも含めまして、評価対象の対象事業ごとに作成して公表しております事務事業評価票というペーパーですね、この中で、複数年の予算、決算の状況を初めといたしまして、事業開始の経緯、取り組みや成果の内容、課題や問題点、今後の方向性、次年度予算への対応状況、これは見積もりがどうで、結果としてどうかということも含めまして、これを整理して、評価結果とあわせて一つの評価表の中に記載してございます。これらの情報を一覧性のある形で、できる限り都民にわかりやすい形で公表しようというふうに努めております。
 この事務事業評価票につきましても、今後ともさまざまな工夫によりましてブラシアップできるように検討してまいりたいと思います。

○福士委員 今の事務事業評価票は、読めばすごくわかりやすいというのは、わかりますが、もう一工夫していただきたいかなという気がいたします。ぜひ検討していただきたいと思います。
 次に、国の事業仕分けでもよくいわれたことですけれども、そもそも事業評価の対象となる事業はどういうふうに選んだのかというのが問題になると思われます。東京都全体では五千程度の事業が存在する中から今回の事業を選んだということですけれども、評価事業の選定も含めて、根本的に市民の視点を入れることが必要ではないかと思います。
 例えば、千葉市では、事業評価に当たり全事業の資料を読んでもらった有識者の九人の委員が、一人ずつ、二十件ずつの候補を持ち寄って、それをまた絞り込んで四十四事業の評価としています。また、パブリックコメントを実施して市民も参加して発言もできる公開の場で評価するといったように、徹底的な公開と市民参加を貫いています。
 東京都は規模も違いますし、大き過ぎるために、区市町村レベルのようなわけにはいかないというふうには私も思いますけれども、各局でそれぞれ検討するために、こうした事例に学ぶべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○長谷川主計部長 東京都は、石原知事就任後の財政再建に取り組む過程におきまして、二次にわたりまして、全面的かつ集中的な事業の見直しを実施してきたということが、まず前提としてございます。その上で都財政を立て直してまいりまして、事務事業評価をこの事業見直しの到達点を踏まえまして、この見直しの努力を、財政再建の達成の後も組織として継続して実施していく制度といたしまして、都庁の組織の中に内在化させて、行政自身の体質を変革していこうとする取り組みというふうに考えております。
 したがいまして、都が実施する事業をみずから厳しく評価していくということに意味があるというふうに考えておりまして、このプロセスに外部の人材を活用するということは、制度の性質上、なじまないというふうに考えます。
 もとより事務事業評価の結果やそれに至る考え方などは公表しておりまして、都民の目にさらされております。また、評価結果のみならず、各事業自体、都議会のご審議の過程で毎年度厳しく評価されております。
 さらに包括外部監査のチェックの仕組みもあるなど、事業のあり方を都の行政組織以外の視点から見直しする仕組みというのは、存在しているところでございます。

○福士委員 確かにそうではありますけれども、先ほども申し上げたように、市民目線と行政目線と違うというところがある場合があります。そういう意味で、ぜひぜひ市民の意見を聞くチャンスみたいなもの、それから市民の意見を取り入れるチャンスみたいなものも、お考えいただきたいというふうに申し上げておきます。
 それでは、契約のあり方についてお聞きします。
 今や価格だけではなくて労働といった多様な価値観が必要です。安かろう、悪かろうというふうにはなっていないことは確かですけれども--と思いますが、公共が発注する限りは、地域の経済や雇用に一定の責任があるという観点が必要といえます。東京都の契約を総合的に管理し制度設計する財政課には、契約制度の設定に関して責任があるのではないでしょうか。公共が発注する限りは、発注先で働く労働者の雇用状況にも一定の責任を持とうというのが、公契約条例です。
 先ほども出ておりましたけど、野田市では市長のリーダーシップのもと、公契約条例を制定いたしました。東京都内でも同様の動きが見られます。先ほどは国分寺のお話が出ておりましたけれども、江戸川区でも公共システム委員会で審議を重ね、公共調達条例というのを制定しています。当面は小中学校の建てかえに適用という限定的なものになりそうですけれども、幾つか参考になりそうな表現があります。実践に向かっている江戸川区以外にも、他の自治体でも議論が始まっているようです。
 このように基礎自治体単位での意欲的な取り組みに比べて、以前お聞きしたときからも、東京都の動きは少し鈍いのかなという感じがいたします。
 確かに、価格以外の要素を入れた場合の公平性の問題など、課題がたくさんあるというふうに私も思います。しかし、例えば江戸川区の条例においては、行政とは別の第三者委員会を設けて基準を決めるなど、競争性での公平性、透明性も保障しながら、別の価値観も重視したさまざまな制度的工夫を凝らしています。山形県の公共調達基本条例でも同様の仕組みを先行的に実施しています。
 さきに申しました野田市の市長のお話も、私も伺ったことがあるのですが、問題がないとはおっしゃいませんでしたけれども、それでも弁護士の方々と相談しながら、この公契約条例というのは制定されたようでございます。
 ダンピング防止のために導入された特別重点項目でも、同様の安定した雇用確保の項目などが調査項目で上がっています。これは今や価格だけではなく、さまざまな要素を考慮して決めていくという方向性に、都としても共有できているのではないかと思いますけれども、国に先駆けてさまざまな事例をつくってきている都としては、先行事例を研究し議論し、形にしていく場を設けることが大事ではないでしょうか。
 また、現場を抱えている各局と契約を担当する財務局が連携を深めて、せめて国への申し入れをすべきではないかと思います。先ほどもこのような趣旨のご質問もあったと思いますが、再度お伺いをしておきます。

○奥田契約調整担当部長 まず、昨年導入いたしました特別重点調査は、工事の品質確保を図る取り組みの一つといたしまして、著しい低価格入札があった場合に、賃金については現行の労働関係法令に違反していないかどうか、法令遵守の観点から調査を強化することとしたものでございます。
 お話は、最近議論になってまいりました、ただいま議論のございました公契約制度でございますけれども、それは特別重点調査のように、現行法令を守っているかどうかということを調査するものではなくて、現行法令の定めを超えまして賃金や労働条件のことを契約上定めようとするものでございまして、これは国の立法措置の問題でありまして、国に要望することは考えておりません。
 なお、他団体でさまざまな議論、検討が行われていることは承知しておりまして、特に国の動向は注視して情報収集はしております。
 当契約部門といたしましては、とにかく現行法体系のもとで昨年秋に発表いたしました実施方針に基づきまして、入札契約制度改革を着実に実施していき、そういったところできちっと責任を果たしていきたいと考えております。

○福士委員 終わります。

○西沢委員 お疲れのところ済みません。引き続き質問させていただきたいと思います。
 私の方からは、先ほど上野理事からもお話がありました都庁舎の設備更新についてお伺いをしていきたいと思います。
 昨年二月に、都庁舎の設備更新等に関する方針が策定されて、そして、昨年の第一回の定例会でも関連の質問がなされたところ、十カ年にわたる設備更新の取り組みがスタートしたわけであります。方針案が策定された当時の、昨年三月六日の朝日新聞の報道でございますけれども、都庁舎七百八十億円の大改修というような見出しが出ました。
 この報道によれば、石原知事も、建ってそんなにたたないのに膨大な金をかけて修復の必要があるのかというような発言をされているように、当時バブルの塔とまでいわれた都庁舎が、開庁から十八年で多額の税金を投入して改修しなければならないというように聞きますと、大変びっくりする都民の方々もいらっしゃるのではないかと思います。
 大改修という、イメージ的には建物そのものを何か壊してつくり直すような、そういった印象がありますけども、実際お話をお伺いしておりますけれども、建物自体を改修していくということではなくて、空調などの設備の更新ということ、そして環境対策にも節約にもつながっていくということだと認識をしております。
 そこで、まず、今年度は計画の初年度ということですが、設計が始められていると聞いております。どのような進捗状況なのか伺います。

○山藤参事 本年度の設備更新の進捗状況でございますが、都庁舎の設備更新等に関する方針に掲げてございますスケジュールに基づきまして、計画の中心となる空調設備等の更新に係る基本設計に着手したところでございます。
 議会棟につきましては、平成二十四年度の工事着手に向けまして、議会局を初め関係局と調整し、工事の手順や諸室の移転方法の検討などを行いまして、今年度中に基本設計を取りまとめる予定でございます。
 第一、第二本庁舎につきましては、これ、いずれも超高層の建物でございまして、その延べ床面積の合計は約三十四万平方メートルに及ぶ大規模なものでございます。このことから、平成二十三年度まで基本設計を行うこととしておりまして、今年度は現況調査など、設計に当たっての与条件の整理などを行っております。
 また、今回の設備更新は、その計画期間が十年にもわたりまして、これだけの規模の超高層のビルの改修は、過去にも経験がなく、行政機能や都民サービスの低下を招くことがないよう、万全を尽くす必要がございます。
 このため、副知事を委員長とします都庁舎の設備更新等推進会議を昨年六月に設置いたしまして、全庁一丸となって設備更新の円滑な推進に取り組むということにいたしました。

○西沢委員 一年が経過しまして、計画は順調にスタートしているとのことでございますけども、来年度はどのような予定なのか伺います。

○山藤参事 議会議事堂につきましては、今年度の基本設計を踏まえまして、より詳細に工事の手順や設備の仕様などを定めていく実施設計を行う予定でございます。
 第一、第二本庁舎につきましては、今年度実施しました現況調査等を踏まえまして、工事の手順や諸室の移転方法の検討など、引き続き基本設計を進めていくとともに、執務室の移転等を伴わず、単独で実施が可能なエレベーターや非常用発電機などについて、設計や工事を行う予定としております。

○西沢委員 ありがとうございます。
 都庁舎の設備更新は、まだ取り組みが始まったばかりということですけども、一歩ずつ着実に進捗しているというようなことであると認識をしました。この問題は、報道でも、当時大きく報道されたほど、都民の関心も高いということでございますけれども、この更新が進んでいけば、都民の皆様にご不便をおかけするようなところが出てくるんではないのかと思います。進捗の状況が都民の皆様にもわかりやすい形でご報告できるように、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 そして方針では、今回の設備更新に概算として約七百八十億円という経費が見込まれていると聞いております。昨年の議会で、設計段階等においてさらに一層圧縮に努める、毎年度の予算編成の中でも改めて精査をして、都民の負担を少しでも減らせるよう努力していくと、局長もご答弁をされております。来年度予算の中では、これはどのように精査を行っていったのかをお伺いをいたします。
 また、財源についてですけれども、毎年度の財産収入が平均約百八十億円あるので無理なく財源確保ができると聞いておりますが、来年の予算の中ではこれもどのようになっているのかをお伺いいたします。

○山藤参事 来年度予算につきましては、設計業務のほか、エレベーターや非常用発電設備など約四十一億円の経費を計上しております。
 予算の見積もりに当たりましては、例えばエレベーターにつきましては、設備全体を撤去、新設するのではなく、耐用年数や劣化の状況を勘案しまして、巻き上げ機や制御盤を交換する一方、安全性の確保などには問題がなく引き続き使用が可能な部材等につきましては、再利用するなどの精査を行ってございます。
 また、今回の設備更新の中心となる空調設備等につきましては、基本設計を進めているところでございまして、工事に係る経費を具体的に積算できる段階ではございませんが、標準品や省エネルギー機器の導入、工事の効率化などとともに、その後の維持管理や次回の更新の容易性などにつきましても、総合的に検討いたしましてトータルコストの縮減を図ってまいります。
 予算の財源につきましては、都庁舎の財産利活用収入や未利用地の売り払いによる財産収入を充当いたしまして、確保を図っているところでございます。

○西沢委員 ありがとうございます。
 経費について少しずつ、エレベーター関係など精査している部分があるということですが、もう少し具体的に精査をしていくということは、設計の段階ですので、そういう時期ではないというようなことであると思います。
 そうなると、このスケジュールでいいますと、この設計が終わるというのは平成二十五年で設計が終わるという段階であります。つまり、十カ年計画のうちの五年間がその設計の部分、もちろん議会棟の部分は先に終わりますけれども、全部の設計が終わるのが、五年間かける、十カ年計画のうちの半分がそういう段階にあるというようなことでございますから、半分が終わってから、そして具体的な精査をしたら、そしたら七百八十億円という概算費用が実は大幅に上回るというようなことがないようにしていかなければ、都民の皆様にも納得いくようにはならないのではないかと思いますので、その部分については、ぜひしっかりとご精査いただきますように要望させていただきたいと思います。
 そして、財源についてですけれども、これまでと同様に、都庁舎のテナント料とか財務局所管の用地の売却などというようなことでございますけれども、これについても、これがふえると、結局は収入に影響が出るということの懸念がありますので、この辺もしっかりと精査をしていただきたい。都有財産というのは、都庁舎の改修のためだけの費用ではありませんので、この辺もしっかりとしていただきたいと思います。
 それから、日々の節税など、こうした努力で光熱水費の圧縮の効果といったものもあるのではないかと認識をしております。都庁舎のランニング費用でございますけども、この費用について四十一億円とあります。この部分について--済みません、その前に質問をもう一問先にさせていただく予定でした。
 その前に、来年度の設備の改修の四十一億円というご答弁をいただいたところで、日々の光熱水費や保守点検などの経費のほかに、改修の経費を含めて、直近五年間でどのような推移になっているのかを先にお伺いいたします。

○山藤参事 平成十六年度から平成二十年度の直近五カ年間の光熱水費や保守点検などの経費と、設備の改修経費の実績額についてでございますけれども、光熱水費や保守点検などの経費は、これまでの電力供給に係る見直しや省エネへの取り組みなど、削減努力の結果、約三十四億円から約三十二億円と漸減傾向になってございます。
 また、主な設備改修の経費につきましては、平成十六年度は約九千万円でございましたが、平成十七年度は約二億円、平成十八年度は約七億円、平成十九年度は約九億円、そして、平成二十年度は約三十六億円となっておりまして、設備等の経年劣化の進行に伴いまして改修経費が増加してございます。

○西沢委員 ありがとうございます。
 光熱水費の圧縮の効果があるということ、そして、ランニング費用については三十五億円から三十二億円で推移をしているということでございますが、この設備の改修の方についてはかなり幅があるようでございまして、増加傾向であると考えます。このまま経費の増加を招くということではなくて、計画を定めてきちんと対応していくことが必要であると認識をしております。
 そして、この財政状況が厳しい中で、都庁舎の設備更新を計画どおり進めていくことについて、コスト面や機能面について相当の効果があるものではないかと考えますが、見解を伺います。

○山藤参事 都庁舎は行政活動や議会活動の中枢でございまして、都民サービスを提供する拠点でもございます。また、大地震や風水害など、災害発生時の防災拠点という機能もあわせ持っております。このため、都庁舎を引き続き適切に維持管理するとともに、さらに機能を向上させ、将来にわたって利用続けられるよう良好に保全していく必要がございます。
 仮に、設備更新を計画的に行わずに故障が発生した都度、事後に対応していくこととした場合は、機能の維持や安全確保に支障を来すばかりでなく、経費面から見ましても余計な支出が必要となることも考えあわせますと、予防保全の視点に立ちまして、計画的に更新を行うということとしたものでございます。
 今回の設備更新の中心となる空調設備等の更新では、空調機が執務室の天井裏などに配置されておりますことから、工事に際しましては、執務室を閉鎖しまして天井を撤去する必要がございます。手戻りや二重投資を避けるため、あわせてそのフロアの照明だとか、防災設備などを一括して施工することなどに工事の合理化、効率化を図ってまいります。
 また、設備更新に当たりましては、建物の機能の維持向上のみならず、地球温暖化対策といった環境負荷の提言や、安全・安心の視点などを基本に据えまして、都政の重要課題にも対応するよう取り組んでまいります。
 このように都庁舎の機能を良好に維持保全し、ライフサイクルコストを縮減するともに、都の施策の実現にも寄与することができるものと考えております。

○西沢委員 計画的に保全を進めていくということでございました。保守期間が過ぎたものを使い続けることで、確かに逆にコストが高くなってしまうということがありますから、こうしたことがないような計画を練っていただいているんであると認識をいたしました。この設備の更新にお金をかけて、更新が終わったときにはランニング費用などが圧縮できる、それによって、お金を投じてもそれだけ都民の皆様にご負担かけないというようなことが説明できるということが大事ではないかと考えます。
 そして、地球温暖化対策としての取り組みという一面も重要であると認識をしております。いよいよ来年度から温室効果ガス排出総量削減義務が始まりますが、第一削減期間について都庁舎は六%の削減義務が課せられているとお聞きいたします。来年度はどのような取り組みを行い、そしてどの程度の達成が見込まれるのか。また、民間事業者に対する先導的な役割を果たしていくということも必要ですが、今後の課題点は何かをお伺いいたします。

○山藤参事 都庁舎では平成三年の開庁以来、これまでにさまざまな省エネ、省資源対策に率先的に取り組みまして、CO2年間排出量を約三〇%削減するなど、大きな成果を上げております。
 今般、都庁舎が温室効果ガス排出の総量削減義務の対象となりまして、都の率先行動における象徴的な役割を担うことになりましたことから、昨年三月に都庁舎省エネ推進チームを設置し、都庁舎における削減義務達成に向けた取り組み方針が策定されたところでございます。
 これに基づきまして、機器やシステムの運用方法の改善による省エネを行う省エネチューニングなど、都庁舎の温暖化対策の推進に取り組んでございます。
 来年度につきましては、現在実施しております省エネチューニングの試行を踏まえまして、例えば空調用ポンプにインバーターを設置し、冷温水の流量を細かく制御しまして、電力消費量の削減を図るなどの取り組みを進めてまいります。このような取り組みによりまして、来年度から平成二十六年度までの第一削減計画期間に、基準排出量の六%の削減義務を達成してまいります。
 こうした、これらの取り組みを通じて得られました省エネ対策のノウハウをどのように発信して、そして民間事業者向けの削減達成に寄与し、カーボンマイナス東京の実現に貢献していくかということが、今後の課題と考えておりまして、引き続き検討していきたいと思っております。

○西沢委員 ありがとうございます。
 都庁舎の設備更新は、都民の関心も高いこともありまして、計画の進捗に応じて広く、わかりやすく説明していただくことが必要であると感じます。また、温室効果ガス排出総量削減義務の達成に向けて取り組むことについても、民間事業者などに対して先導的役割を発揮する、東京から低炭素社会を実現していくことに貢献できる、しっかりと取り組んでいただきたいと考えております。
 ただ、私は、以前よりこの事業仕分けを導入して事業検証の見直しを図っていくべきであると主張してまいりました。今回は、このことについてお伺いはいたしませんけれども、この事業仕分けは、先ほどもお話ございましたが、最初は自民党、そして公明党が提唱して導入し始めたというような経緯があります。国での導入は自民党が主導して、都議会では、最初は公明党の方が主導したわけでございます。
 厳しい財政状況に向けて事業をしっかり検証して、むだを削減して、よりよいものにしていかなければいけないという理念については、党派を超えて認識は一致しているものと考えます。
 先日の一般質問では、村山局長は、事務事業評価制度が持つ事業を検証する機能をさらに高め、継続した努力を続けていくというように答弁をされました。今回取り上げた都庁の設備更新というのは、一見、地味な事業かもしれませんけども、都庁舎は、東京の象徴でもあって、また多くの都民が訪れる場でもありまして、都庁舎の改修への関心は非常に高いものであるというように私は考えております。そういった意味では、事務事業評価制度を所管する財務局の事業でもあり、他局の模範になるといったらおこがましいかもしれませんけども、今後も引き続きしっかりと検証して、都民、関係者にきっちりとお示しできるように行っていただきたいと要望いたしまして、私の質問を終わります。

○中屋委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後四時休憩

   午後四時十五分開議

○中屋委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 ご発言願います。

○三宅委員 私からは、都有施設の維持更新に係る主要な財源について伺っていきたいと思います。
 平成二十二年度予算の特筆すべき点として、税収が大幅に減少する中にあっても、投資的経費を増額したことが挙げられます。中でも中小企業の受注機会の拡大や、雇用創出といった副次的効果をあわせ持つ教育や、医療施設などの計画的な改修や耐震化など施設の維持更新にしっかりと取り組んでいることは、とりわけ高く評価されるものです。
 一方、今後増大していくであろうこれら施設の維持更新需要に対し、いかにして安定的に財源を確保していくかは、財政運営上の大きな課題ではないかと考えます。
 今回の予算では、投資的経費の財源として都債と社会資本等整備基金を活用しており、施設の維持更新にも積極的に充当されているようです。中でも、社会資本等整備基金については、同じ基金でありながら、財政調整基金の活用を最小限にとどめているのとは対照的に取り崩しをふやしており、その背景や意図について、さらに掘り下げておく必要があると考えます。
 まずは、都有施設の維持更新をどのように見込んでいるのか伺います。

○長谷川主計部長 都立施設の維持更新につきましては、平成二十一年二月に策定いたしました主要施設十カ年維持更新計画におきまして、平成二十一年度から三十年度までの十年間で維持更新に係る経費として八千三百億円程度を見込んでおります。現在、都有施設の多くが、施設そのものの経年劣化が進行しているほか、設備を中心とした更新時期を迎えておりまして、このままの状況が続けば、施設の機能不全や安全性の低下により、都民サービスにも大きな影響を与えかねない状況にございます。
 こうしたことから本計画を策定し、質の高い行政サービスの提供に向けて、計画的な施設の維持更新を行うこととしております。この計画が対象としておりますのは、警察、消防署や都立学校、福祉、医療施設など、都民の安全・安心を守るための拠点となる施設や産業関連施設、体育競技施設など、都民サービスを提供していく上で必要な施設でございます。
 計画を進めるに当たりましては、改築や改修にかかるコストの縮減はもとより、建物そのものの長寿命化やエネルギー消費効率にすぐれた設備の導入など、施設のライフサイクルコストの縮減を図る観点も十分に踏まえて取り組むこととしております。この計画を着実に進めていくために必要な財源につきましては、社会資本等整備基金や都債などを適切に活用し、世代間負担のバランスと財政負担の平準化を図ることとしております。

○三宅委員 都有施設の維持更新については、昨年策定した主要施設十カ年維持更新計画で、十年間で八千三百億円程度と膨大な需要を見込んでいるとのことですが、対象施設は都民の安全・安心を守るものや、都民サービスを提供するものといった、都民にとって必要不可欠な施設であります。
 また、計画をつくってしっかりやっていこうとした背景には、施設が古くなると必要な都民サービスに影響が出ることはもちろんですが、修繕費などのコストがかかって、先送りすればするほど、結局はトータルコストでは余計にかかってしまうという基本的認識があるものと理解しました。
 さて、今回のように大幅な税収減の中にあっても必要な施設の改築、改修を継続的、安定的に行っていくためには、やはり何といっても財源が重要なポイントになると思います。
 この計画では、社会資本等整備基金や都債などの財源を適切に活用し、世代間負担のバランスと財政負担の平準化を図ることとしているとのことでしたが、このうち都債については、前回の財政委員会で我が党の菅委員が既に取り上げましたので、今回は、冒頭で触れましたように社会資本等整備基金に焦点を当ててまいりたいと思います。
 この基金は道路の整備や鉄道の連続立体交差化事業など、都市インフラの整備から学校や医療施設、社会福祉施設などの維持更新まで、幅広い社会資本等の整備事業に対応しています。この基金の平成二十一年度末残高見込みは四千五十七億円と承知していますが、こうした幅広い対象事業のうち、都有施設の維持更新需要に備えるため、これまでどのように対応してきたのか、基金の積み立て状況についてお伺いします。

○長谷川主計部長 主要施設十カ年維持更新計画に基づいて、八千億円を超える需要を見込んだこの改築、改修費用につきましては、将来世代との負担のバランスにも十分に配慮しながら都債を活用するとともに、中長期にわたり着実に対応していくために基金の活用も不可欠と考えまして、平成二十年度の当初予算で、大規模施設等の改築、改修に備えて二千五百億円を社会資本等整備基金に積み立てることといたしました。
 同年の決算におきましては、米国発の金融危機が実体経済にも波及した影響によりまして、税が前年度よりも二千億円を超える減収となりましたが、都民施策への影響を及ぼすことなく、可能な限り歳出の洗い直しの努力を行うといったようなことをいたしました結果といたしまして、当初予算どおり二千五百億円を基金に積み立てたところでございます。

○三宅委員 ただいま答弁ありましたとおり、平成二十年度は都税が前年度より二千億円を超える大幅な減収となったにもかかわらず、さまざまな努力により当初予算どおりの積み立てを行うことができたとのことです。
 それでは、主要施設十カ年維持更新計画の平成二十二年度予算における事業費と、財源である都債や基金はどうなっているのかお伺いいたします。

○長谷川主計部長 この計画に関する平成二十二年度予算の事業費としては、百八十八の施設を対象として、前年度予算より二百三十七億円増の八百三十六億円を計上してございます。
 これに対する財源といたしましては、まず、都債について、これまで培った発行余力を活用いたしまして、起債対象となる事業を徹底的に洗い出した結果、前年度より二百七十二億円増の五百十二億円を計上しております。また基金につきましては、社会資本等整備基金を活用いたしまして、前年度はゼロでございましたけれども、今回は二百五十八億円を計上しております。

○三宅委員 ただいまの答弁によると、この計画の平成二十二年度予算における財源は、これまで培ってきた発行余力を活用して都債を積極的に発行し、加えて、事業費の前年度からの増加見合い分に応じて社会資本等整備基金を取り崩すこととしたとも見えます。すなわち、税収が大幅に減少する中にあっても、財政負担を平準化させつつ、計画に沿って事業費を前年度より増加させて、必要な維持更新事業を確実に実施することができており、まさに平成二十年度に突然の税収減の中でも、歯を食いしばって二千五百億円を積み立てた、いわば果実が、今回生きているのではないかと思います。
 基金への積み立てについては、平成二十年当時の予算特別委員会や財政委員会において我が党は、ロングスパンで積極的な施策展開を進めようというとき、それを持続的に支え得る財政面の体力を十分に蓄えておくことが極めて重要との見解を示しております。
 一方で、ため込む一方ではなくて、やはり都民施策を新たに始める、そういうものに今こそ使うべきだという主張も見られたようですが、金があるなら都民施策を充実せよとの主張は、都民を考えた発言のようでもあり、また都民にとっては非常に耳ざわりのよい主張でもあります。しかし、今後の先行きのこと、将来の都民のこと、そうしたこともしっかりと考え抜いた責任ある立場からすれば、そうしたその場のことだけを考えた無責任な発言はとてもできません。なぜなら、それは、あればあるだけ使えってしまえと、そういうことと同じ意味をなしているからと思います。
 そこで、確認のために伺いますが、こうした議論に関して、当時の財政当局の見解はどのようなことだったのでしょうかお伺いいたします。

○長谷川主計部長 先ほどご答弁いたしました、二千五百億円の社会資本等整備基金への積み立てをご審議いただきました平成二十年度の第一回定例会の予算特別委員会におきましては、持続的に支える財政面の体力を十分に蓄えていくことが極めて重要との考えのもとで、基金の現状についての認識と今後の方針についてのご質問がございました。これに対しまして財務局長からは、次のようにお答えをしております。
 地方交付税の不交付団体である都が、だれにも頼ることなく、中長期的な視点から積極的な施策展開を行うとともに、大幅な税収減により財源が不足した場合においても、必要な行政水準を確保していく上では、基金は大変重要な役割を果たすものであり、こうした考え方から、平成二十年度の予算では可能な限り基金の充実を図っているというものでございました。
 また、一方、社会資本等整備基金について、同じ定例会の財政委員会において、二十年度予算は増収がありながら都民が求めている施策の充実ではなく、専ら基金に積んでいるのが特徴だと。都民の求めている直接の都民サービスの水準を維持するという要望に、この基金を積んでいくことはこたえられるのかという趣旨のご質問がございました。これに対しては、当時の主計部長が以下のようにご答弁を申し上げております。
 一つは、社会資本等整備基金については、今後膨大な財政需要が見込まれる中にありまして、現在それに向けて備えをしている最中であり、近い将来、それが今度は基金の取り崩しということで活用されることになるということでございます。
 またもう一つは、社会資本のインフラ整備や建物の更新等に使うということは、都民にお役に立てるということと考えているし、そういったことで財源を有効活用することで、他の一般財源が浮いて、それが都民施策に還元できるということなので、基金についてはトータルで判断していただきたいという答弁でございました。

○三宅委員 今回の平成二十二年度予算を見ると、局長がその当時答弁されていたとおり、大幅な税収減により財源が不足した場合においても、必要な行政水準を確保していく上では、基金は大変重要な役割を果たすものであり、また、当時の主計部長がいっていたとおり、近い将来、それが今度は基金の取り崩しということで活用されることになるということが現実になったわけであります。
 今回、社会資本等整備基金を取り崩して、都有施設の維持更新を財政負担を平準化させつつ、計画的にしっかりやっていくことができるのは、まさに将来の更新を見据えて、積み立てるべきときに積み立てたからこそであります。これは我が党が、真の意味で都民のことを真剣に考え、堅実な財政運営をせよと主張してきたことの正当性を証明するものであり、また、我が党の声にしっかり答えていただいた財政当局の先見の明のたまものであったと思います。大いに評価したいと思います。
 これまでの質疑から、都有施設の維持更新という将来世代に向けた我々の責任を果たしていく上で、都債とともに社会資本等整備基金の果たす役割が非常に大きなものであることがよくわかりました。今後も厳しい財政環境が続くことが想定される中、都民にとって必要な施策を着実に実行していくためには、これまで培ってきた基金を大事に使っていくなど、継続的、安定的に都政の役割を果たし得る財政運営を、引き続き行っていくことが重要です。
 最後に、こうした堅実な財政運営について財務局長に所見を伺い、質問を終わります。

○村山財務局長 都有施設の維持更新という分野といいましょうか、課題というのは、もちろんすごく重要なんですけれども、過去の経験から申し上げますと、大体あおりを一番食いやすい分野でございまして、長い目で見れば、確かに今回十年計画で対象になっている五百余りの施設のうちの七割以上が、学校と警察と消防署なわけでありまして、そういう災害のときの拠点にもなるしというようなことから考えると、ちゃんとしておかなければいけないということには、もちろん長い目で見ればなるんですけれども、今すぐやらなくても、すぐにぶっ壊れるわけでもないですし、だれかがすごく困って路頭に迷うというわけではないということがあるので、東京みたいに非常に税収の増減が激しくて財政環境も変わるときに、ちょっと厳しくなると、とりあえずどこか減らしておこうというときに、まず減らされるのは、都有施設の維持更新という分野が減らされて、事実きました。
 ただ、四十年代に建てられたものが改築期を迎え、平成の一けたのころにつくられたものについても、内部が大分更新期を迎えているというこの時期に、これまで困ったときにはどうしてもしわを寄せてきたそういう部分を、今回もう一回それでしわを寄せてしまうと、非常に禍根を残すと。耐震の問題もありますし、さっき申し上げた災害時の拠点ということもありますし、省エネということも、CO2も含めてですけれども、あるという中では、今回はいろいろ、これからも、これからというのはもうちょっと前の時期ですけれども、いろいろ変動があるだろうけれども、やはりこの都有施設の維持更新というところを、今回またそこでしわ寄せをしちゃうのは、やっぱり致命的にまずいだろうということで、今るるご説明の中でご答弁申し上げたような、非常に変動の激しい中で税収が減少する局面であっても、基金を一定規模確保しようということで、この間の社会資本等整備基金の充実ということをさせていただいたものでございまして、そういう意味合いということで、ぜひご理解を賜りたいというふうに思っております。
 もちろん、その分をしかるべく蓄積をしたので、今後どんなことがあっても大丈夫だというふうに申し上げるつもりはございませんので、そういった課題を、いろんな状況の変化の中でもしっかりやるべきことは、場合によっては若干スピードダウンすることはあったとしても、着実にやっていけるようにするためには、引き続き、従来にも増して堅実な財政運営をこれからもやっていくということが必要だということについて、改めて決意をいたしているところでございます。

○斉藤委員 公明党の斉藤でございます。
 平成二十二年度の予算は、急激な景気変化の影響を受けまして、歳入の中心である都税は、二年間で約一兆一千億円もの過去最大の大幅な減収となりました。景気の低迷が長引くことも想定されるわけですけれども、今までにも増して厳しい財政運営を強いられる環境にあると思います。
 加えて、平成二十年度税制改正により、国による不合理きわまりない、都の課税権の侵害である地方法人特別税が導入されました。財政再建の達成を宣言した平成十八年度には想定されなかった、外部環境の変化がございます。
 最近、国においては厳しい財政状況の中、新しい政権では事業仕分けという形で、不要事業の切り出しを進め財源確保を図ろうとしております。それに対し、都においては、国の事業仕分けに先立ち、過去十年間にわたり、二度の財政再建推進プランの実行により、財政再建に成功してまいりました。
 平成十八年度には、国に先駆けて新たな公会計制度を導入したことで、財務諸表という事業の分析に重要なツールを、武器を手に入れたわけでございます。
 さきの予算特別委員会で、総括質疑におきまして我が党の東村議員も述べていましたように、また、さきの上野理事のお話にもありましたが、土地の利活用につきましても、売却した方がよいのか、定期借地にした方がよいのか、こういう判断につきましても、財務諸表の分析を通じて事務事業評価は進めていくべきではないかと、このように考えるわけでございます。厳しい財政状況の中、施策の実現を図っていくためにも、都はこうした取り組みを、財産の利活用という観点からも積極的に進めていくべきであると考えます。
 まさに先ほど上野理事の質疑で明らかになった、事務事業評価における新たな公会計手法を活用して、都の財産の有効活用、これをしっかりしていくべきであると思います。そこで、都の財産の有効活用という観点で伺いたいと思います。
 初めに、都では、平成十二年の財政危機以来、財産の利活用を積極的に進め、資産アセスメントを行って不用資産の切り出しと売却を行ってきましたが、平成十二年以降、財政構造改革を支援するために売却した資産はどれくらいあるのか。また、売却以外にどういった取り組みを行ってきたかをお伺いします。

○松本財産運用部長 平成十二年十一月に財産利活用総合計画を、さらに、平成十五年十一月に第二次財産利活用総合計画を策定しておりますが、平成十二年度から計画期間が満了する平成十八年度までで見ますと、約二千百億円に上る不用資産を売却し、財産面から財政再建に貢献いたしました。
 また、売却以外では、庁内における施設の転活用、空き床等を使った庁舎の効率的な利活用、民間からの借り床の解消、あるいは一般会計の庁舎に企業会計の施設を移転させるといった、会計の壁を超えた財産利活用等を進めることによりまして、約八十件の施設の統廃合等を実施したところでございます。

○斉藤委員 厳しい財政状況の中で資産の効率的な活用のために、不用な資産を切り出すことは非常に重要なことであり、今後も引き続き積極的に行うべきであります。
 また、将来的な土地活用を考えた場合、不用となった土地を単に売却するだけでなく、施策実現の条件を付して民間に貸し付けるなどの活用の方法もあると思いますが、その実績などがあれば伺いたいと思います。

○松本財産運用部長 都では「十年後の東京」に示されました施策の実現に向けて、民間の知恵や活力を生かしつつ未利用財産の利活用を進めてきております。そうした中で、都の施策実施を条件として民間に貸し付けるといったようなお話の実績でございますけれども、具体的には、緑化推進のため緑の東京十年プロジェクトの一環として、法令等で定められている緑化基準を上回る条件をつけまして、都有地を民間事業者に貸し付け、通常の一・五倍の緑地を創出しているといった事例、また、環境負荷の低減を進め、同時に良質な住宅ストックと良好な住環境を形成するため、環境配慮型の住宅を展示する住宅展示場に用途を限定いたしまして、都有地を民間事業者に貸し付けているという事業も実施しております。
 さらに、福祉分野では、地域の福祉インフラの整備促進という条件のもとで、都の土地や建物を認知症高齢者のグループホーム等を営む民間法人に、貸付料を減額した上で、定期借地契約等により貸し付けているということもございます。
 また、産業政策では、中小企業の開業率の向上等を図るため、成長性の高い事業計画を持つ創業間もない企業に対しまして、都の建物を事務所として整備した上で、低廉な賃料で提供している、こういった事例もございます。

○斉藤委員 施策と連動したさまざまな、その活用の仕方をお伺いしましたが、このように施策の実現のために、それと連動した活用ということですけれども、これは三月十七日に発表でしたが、竹芝において、都誘致をまちづくりに活用していく都市再生ステップアッププロジェクトというものを今後実施していくと報道もされましたし、また伺っております。これはまさに、財産活用を施策の実現に結びつけていくという、一つの事例として考えておりますけれども、その内容についてお伺いしたいと思います。

○松本財産運用部長 都市再生ステップアッププロジェクトは、全庁的な財産活用を前提にいたしまして、民間のノウハウや資金力を活用しながら、都有施設の移転更新等を契機に、当該施設の効率的配置や複数の都有地の有効活用を行うとともに、周辺開発の誘発を図るといった事業でございます。
 竹芝地区では、改築等によって移転が予定されております東京都計量検定所や東京都公文書館など、約一・七ヘクタールの都有地がございます。この都有地に民間プロジェクトを誘導し、周辺を含めまちづくりを進めてまいります。
 今後の予定といたしましては、まちづくりということでございますので、主管は都市整備局ということもございますけれども、財務局といたしましても、都市整備局と連携をいたしまして関係局や地元区との調整や有識者のヒアリングなどを行いながら、都有地の活用条件等を記載した事業実施方針及び適切に周辺開発を誘導するためのガイドラインを策定、公表してまいります。

○斉藤委員 この竹芝の例も含めまして、これまでの財産の利活用の取り組みを伺いましたけれども、厳しい財政状況を突破するためにも、いかにこの財産活用を進めてきたか、また、そこから一歩進めて都の施策と連動した都有財産の有効活用に向けた取り組みなどへ、この新たな展開についても理解できました。
 土地などは非常に限られた財産、資源でございます。単に売却や貸し付けを行うだけでなく、いかに保有したまま都の施策実現に資するために活用していくかという、そういう観点が重要であると考えます。
 その点で今回の都市再生ステップアッププロジェクトは、まさに都としてのこれまでの取り組みが結実したものであり、私も高く評価しております。民間の力も使って、都の土地を施策に生かしていく取り組みとして、今後も大いに進めていくべきであると考えます。
 第一弾としての発表でございましたが、竹芝というベイエリアですが、第二弾、第三弾の実施を期待したいと思います。
 都の平成二十二年度の予算は、東京の現在と将来に対して、今日都がなすべき役割を積極的に果たす予算であります。大幅な税収減の中にありましても、都がなすべき予算を編成できたのは、過去の財政再建の果実を今得ているわけでございます。さまざまな諸先輩、先導していただきましたその果実を、今、私たちは得ているわけでございますが、未来において、継続的、安定的に都政の役割を果たし得る強固な財政力を確保するために、今の取り組みが極めて重要であると考えます。
 財産利活用という観点に立って絞ってみれば、都は適正な管理、それから、有効活用へという、このような大きなステップがありました。そして、売却から貸し付けへと進化させてきたわけでございます。私は、平成十九年六月に発表された、今後の財産利活用の指針をさらに強化し、都民サービスの向上のための収益確保から施策連動へと、市区町村との連携はもとより、民間の力もかりながら都の施策実現に向けた新たなステージへ展開していく時を迎えていると考えます。
 今後に向け、より強力に施策を実現していくための財産利活用の考えをお示しいただきたい、その時期が今到来していると考えるわけでございます。都の財政運営の総指揮をとられておられます財務局長の今後の展望とご決意を伺い、質問を終わりたいと思います。

○村山財務局長 財政再建を達成する後と前では、やはり都有財産に対する政策方針というのは大きく転換をいたしまして、お話いただきましたように、達成後は、それまでの都有財産について、売却も含めて多額の財源を何とか確保できないかというところに軸足が多くあったわけでございますけれども、その後はそういうことではなくて、むしろ、お話のございましたように、保持したままでどういうふうにしてそれを生かしていくのかと。それはもちろん収益性も大事なところではございますけれども、同時に、福祉であるとか、中小企業であるとか、さらにはまちづくりであるとか、そういう東京都の施策への貢献というものをどういうふうに有機的に進めていく上での、いわばベースとしての財産というような形が追求できるだろうかというふうに、軸足を移して、この間きておりまして、そのうちの一つが、お話のございました都市再生ステップアッププロジェクトでございまして、ようやく竹芝地区についての事業公表というところにこぎつけたというのが現段階でございます。
 しかしながら、やはりそれで十分かといいますと、まだまだこれからというところが相当残されておりまして、お話のございました新しい公会計というふうなストックの観点から、もう少し資産というものの活用の可能性などについても、広い目で見ていかなければならないというふうに考えておりますので、今後、さらに私どものこれまでやってきたことについて、改めてみずから評価をし直すことによりまして、今後のより一層の土地の有効活用を目指して、全庁的な、その分野における総合調整を担っている私どもとしての役割をさらに発揮して頑張っていきたいと思っております。

○関口委員 さて、来年度予算では過去最大規模の減収となり、ここ二年では一・一兆円もの税収減となりました。そのため、来年度予算案においては、基金の取り崩しと、そして都債発行額をふやすということで予算編成を行ったわけでありますが、本日はその穴埋め財源の一つとなりました都債についてお伺いしたいと思います。
 来年度予算案では、今年度と比較して都債発行額が一千四十三億円の増加となっておりますが、まず冒頭に、都債の計上の考え方と、都債の役割についてお伺いします。

○長谷川主計部長 過去に例を見ない大幅な税収減の中にありまして、二十二年度予算における都債は、必要な施策の財源を確保するために、将来の負担にも配慮しながら、起債対象となる事業を徹底的に洗い出すなど、いわゆる通常債の範囲内で最大限計上しております。その結果、都債は二十一年度当初予算に比べて一千四十三億円増の四千七百八十六億円、起債依存度は七・六%となってございますけれども、東京都はこれまでの間、都債の発行の抑制に努めてまいりましたことから、これまで培った発行余力の中での活用でございまして、国や地方財政と比較いたしましても低い水準を維持するなど、財政の健全性は確保されております。
 都債の役割についてということでございますけれども、都債は社会資本ストックの形成や更新などの重要な財源でありまして、将来、社会資本ストックを利用する世代が公債費として負担するという、世代間の負担の公平を図る役割と、元利償還として経費を平準化するという年度間の財源調整を図る役割等をあわせ持っております。これで、計画的な財政運営を確保する上で重要な役割を担っております。
 景気の低迷が長引くことも想定される中にありまして、都民のためになすべき施策を今後とも着実に執行していくためには、事務事業評価などみずからを律する取り組みはもとより、都債の持つこの二つの役割を計画的に活用して、将来にわたって強固な財政力を確保していく必要があるものと考えております。

○関口委員 都債の役割等々が今述べられたわけでありますが、都債を発行していく際に、何よりもまず考えなくてはならないのは、いうまでもなく将来の金利負担であります。昨今は日銀の低金利政策等によって、金利は低利で推移しておりますが、政府の国債大量発行、そしてこの間、財政を国債に頼り続けたことで、積み上げられた名目GDP比一八〇%を超える政府の債務残高、さらには、世界経済の低迷を受けた経常収支の悪化など、今後、国債の長期金利が上昇していく要因が明確に存在していると考えます。局は、今後の長期金利の動きについてどういう認識を持っているのか、お尋ねします。

○長谷川主計部長 長期金利は、通常であれば経済成長率とほぼ同じような推移をたどることが知られておりまして、景気の動向に左右されます。国内景気は、国の経済対策の効果や設備投資の持ち直しなどによりまして、生産活動が急激に腰折れする懸念は少なくなりつつある一方で、デフレの進行や円高の継続など、景気を下押しするリスク要因があり、日本経済が自律的に回復していく力は依然として乏しいと見られております。
 こうした中で、長期金利は、景気の回復のおくれや日銀による低金利政策の継続などを背景といたしまして、景気の面からは、金利の大幅な上昇は起こりにくい状況にあるといわれております。
 しかしながら、ギリシャやポルトガルなどにおきまして、財政赤字問題に起因した国債への信用不安の影響が注目されておりまして、日本国債もスタンダードアンドプアズが将来見通しを、安定的からネガティブへと変更したところでございます。
 こうしたことは、財政の健全化の見通しのないままに財政を拡大し、あるいは国債を増発するというようなことがあれば、景気に関係なく国債の危険性が高まることによる金利の上昇の可能性もあるということを示しておりまして、こうした点にも十分に注視することが必要であると考えております。

○関口委員 今、ギリシャの例が示されましたが、ギリシャにおいては、財政の悪化が顕著となりギリシャ国債の金利ははね上がったようです。こうしたように、国債金利の上昇要因の一つとして、国の財政状況の悪化が存在しているわけですが、東京都の財政は、これまで財政規律をしっかりと保ち予算編成を行ってきたおかげで、その健全性は国と比べて極めて高い状況です。
 今後、財政悪化が契機となり国債金利が上昇していくリスクが想定される中で、財政の健全性を保っている東京都の都債金利は、この国債金利との関係でどう影響を受けるのか、見解をお尋ねします。

○長谷川主計部長 都債におきましては、金利を決定する際に、基準となる国債金利に対する上乗せ幅でございますスプレッドを投資家に提示をいたしまして、発行条件を決定するというスプレッドプライシング方式を採用してございます。このスプレッドプライシング方式は、国債金利を基準として、投資家の需要調査から条件決定までの間の金利変動に対応しやすく、また、市場実勢を踏まえた発行条件とすることができるため、地方債を初め、財投機関債や多くの社債発行において一般的に行われている方式でございます。
 このため、都債の発行条件の決定にあっては、国債金融の水準によって左右される部分が大きく、国債金利が上昇していけば通常都債の金利も上昇していくという影響がございます。

○関口委員 今、国債金利が上昇すれば都債の金利も上昇するという関係性と仕組みが述べられました。財政の健全性でいえば、都は国を圧倒しているわけですから、都債という商品力は国債よりも強いと考えられますが、国の中の一地方公共団体ということで、国債より金利は高いというようです。よって、都債の発行計画においては、常に国債の金利動向を意識しなくてはなりません。
 さて、長期金利の上昇についてはいろいろと見方があると思いますが、経済成長率が伸びることによる長期金利の上昇は、その背景に、企業や家計の所得の増加、そして税収入の増加が存在するため、それほど大きな問題はありません。
 他方、今後我々が考えなくてはならないのは、先ほど申し上げたような財政赤字の拡大や、経常収支の悪化による、いわゆる悪い金利上昇であります。このような悪い金利上昇のもとでは、金利は上昇するが、税収はふえないおそれがあることを留意しなくてはなりません。つまりは、都債利払いの税収に占める割合が高くなり、財政運営の自由度が狭まることとなります。
 そこで、今後の財政運営に大きな影響を及ぼしかねない都債の利払いに焦点を当てていきたいと思いますが、東京都はこの間、都債発行を抑制してきたおかげで、毎年度の利払いに関してはピーク時の半分ほどの規模、一千億円前後となっています。とはいえ一千億円ですから、簡単に見過ごせる数字ではありません。平成二十一年度においては、補正後には五千二百二十五億円の都債発行、さらには、来年度予算では、今年度予算に比べて一千四十三億円増となるなど、平成十二年度以来続けてきた発行抑制傾向から、発行拡大傾向へと路線変更となりつつあるのが現状です。
 こうした都債発行額の増加に伴う利払いが、長期金利の上昇によって増加していく可能性、特に税収が増加しない中の、悪い金利上昇による利払い増加リスクを想定しなくてはなりません。このような利払いの増加リスクについて、都はどう考えているのかお尋ねします。また、あわせて、そうしたリスクを軽減するために都はどのような工夫をするのか、お尋ねします。

○長谷川主計部長 今、二十一年度補正で五千億を超える起債ということがございました。冒頭にも申し上げたとおり、二十二年度予算の都債の増発も含めまして、これまでの発行抑制を踏まえた発行余力というものを活用しているということですので、その点に関しては、私も十分堅実な範囲でやっているというふうに思っております。
 今お尋ねのありました国家財政の悪化による国債金利の上昇についてでございますけれども、この国債金利の上昇によりまして都債の金利の上昇の要因となるということで、都の税収などの動向に関係なく、将来にわたる利払いが増大するというために、財政の硬直化につながるという面で影響が大きいというふうに考えております。
 これらの金利上昇リスクの軽減に当たりましては、不安定な金利動向にあっても投資家の皆様が安心して購入できるとするように、都債の商品性をさらに向上させて、市場の信頼性を高め、発行条件の安定化を図るとともに、都債残高を圧縮して公債費負担全体の軽減を図るということが重要であると考えます。
 市場の信頼が重要だと申しますのは、かつて夕張市の財政破綻でありますとか、あるいはリーマンショックなどの場合に、地方債の金利が上昇した局面においては、財政が悪化して市場の信頼が比較的低い団体ほど金利の上昇幅が大きかったということからも明らかでございまして、例えば、夕張市の財政破綻の際には、北海道債の流通スプレッドが広がりまして、都債との流通スプレッドの格差は約一・九倍から約二・九倍へと拡大しております。
 こうしたことも念頭に置きまして、市場の信頼を高め、発行条件の安定化を図るということが重要で、そのためには、幅広い投資家層に支持されるということが必要でありますので、投資家のニーズに合わせた都債の年限設定や、発行方式の改善を進めるとともに、お話のありましたような、IR活動を通じて都の堅実な財政運営というのも、今後とも積極的に情報発信をしていく必要があると考えます。
 同時に、都債残高を圧縮する取り組みということでは、定時償還方式の採用や市場に流通している都債を買い取る仕組みの活用なども有効でございまして、厳しい財政環境の中にあっても、手が打てるものについては積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

○関口委員 都債の利払い増加リスクを軽減するためには、いろいろと工夫策が今述べられたわけでありますが、何よりも都財政の健全性を保つことが、いかに重要で、いかに必要であるのかということが、ここで見えてくるわけであります。国債金利の上昇に都債金利も引っ張られるという、ある意味、不可抗力の側面や、また、リーマンショックなどの突発的な地方債の金利急上昇の局面があったとしても、都財政の健全性を保ち続けることができれば、都債の金利上昇幅は極力抑えられるということです。
 今後、国債金利の上昇リスクが明解に存在する中、都債利払い増加のリスクを軽減するためには、都債発行には慎重を期し、財政の健全性を保ち続けることが必要不可欠であると改めて感じます。
 先ほど、都債は社会資本ストックを形成するための経費に充当していると伺いましたが、他の多くの自治体では、赤字債である臨時財政対策債に手をつけ、地方債への依存度を高めているのが現状です。実に、地方全体では、起債額のうち臨時財政対策債を含む赤字債が約半分を占めるほどの状況に陥っております。こうした赤字債は、次の世代に社会資本ストックは残りませんが、借金だけが残されるという事態が発生いたします。よって、東京都としては、次の世代に資産として残る事業を裏づける都債ならまだしも、投資の裏づけのない、まさに赤字債の発行は、次の世代への責任として何が何でも避けなくてはならないと考えます。都が、これまでこうした赤字債としての臨時財政対策債を発行してこなかった点は評価するものでありますが、臨時財政対策債を発行していない都の考え方をここで再度お尋ねいたします。

○長谷川主計部長 お尋ねの臨時財政対策債でございますけれども、平成十三年度から地方一般財源の不足に対処するために、地方財政法第五条の特例として、通常の起債対象である投資的経費以外の経費にも充てられるという地方債でございます。これは、本来は地方交付税で措置すべき財源不足を地方債に振りかえているという性質のものでございまして、その元利償還金相当額は、他の一般的な地方債と異なり、全額が後年度の地方交付税の基準財政需要額に算入されるということになっております。
 このため、地方交付税の交付団体であれば、後年度の交付税措置を見込んで、可能な限り臨時財政対策債を発行して将来に向けての基金を確保するといったような財政運営が可能となっております。
 都では、この臨時財政対策債はあくまでも臨時的な財源対策というふうに考えておりまして、また、地方交付税の不交付団体であるという都にとっては、臨時財政対策債を発行する、先ほど申しましたようなメリットはないということもありますので、将来の財政負担等を考慮して、これまで発行していないということでございます。

○関口委員 いわゆる赤字債、臨時財政対策債は、都は交付税の不交付団体でありますから、メリットもないし、それがそっくりそのまま将来の財政負担にかかわってくるというようなことで、これまで発行をせずにやってきた。そのことは私も大変評価をいたしますし、今後もその方針は絶対に変えてはならない、そういう認識を持つわけでありますが、都債発行による利払い、そして後年度の償還費も含めた公債費は、まさに経常経費ともいえます。つまり、都債発行の増加、さらには金利上昇による利払いの増加は、経常経費の増大に直結することとなります。しかも、経済成長が見えずに、都税収入の大幅増が容易には見込めないことを想定すれば、都税収入が経常経費を下回ることすら考えなくてはなりません。そうした状況に仮に陥れば、まさに赤字債である臨時財政対策債の発行が現実の問題として眼前に発生することとなります。だからこそ、都債発行についてはより慎重に、そして短期的な視点だけではなくて、中長期的な視点を常に持ちつつ議論しなくてはならないと考えます。
 中期的な視点として重要なのは、これまで述べた長期金利上昇リスクであります。そして、長期的な視点として重要なのは、先ほど世代間負担の公平という話がありましたが、まさに次の世代の負担をどう考えるのかという点だと思います。
 将来世代への負担は、九百兆円に上る国債発行残高の負担はもとより、福祉経費などの負担の増大もかなりの規模となることが想定されます。事実、人口バランスで見れば、二〇〇〇年においては、勤労者世代四人で一人の高齢者を支える状況だったのが、二十五年後の二〇二五年には、二人に一人、五十五年後の二〇五五年においては、一・三人で一人の高齢者を支えなくてはならない時代になると予測されております。
 つまり、将来世代の税負担は、我々の想像を超えたものになり得るということです。こうしたことを勘案すれば、次の世代の負担を少しでも和らげていくために、今の我々が何をなすべきかという視点を、つまりは長期的な視点を財政運営においては常に持つべきだと私は考えるわけです。よって、都債発行に関しては、悪い金利上昇による利払い増加を見越した中期的な視点はもとより、長期的な視点、つまりは次の世代の子どもたちが大人になったときの状況もしっかりと念頭に置いた都債発行と、都債の管理が必要不可欠であると考えますが、都の見解をお尋ねします。

○長谷川主計部長 社会資本ストックの適切な形成、更新のため、今後、多額の財源の確保が必要となる一方で、少子高齢化の進行により、生産年齢人口の減少が予測されております。税負担に関する議論は、国できちんとやっていただく必要があると思いますけれども、こうした中では、将来世代へ過大な負担を残さないというためにも、今日発行する都債が将来に及ぼす影響をしっかりと見きわめた上で、都債を適切に発行し管理していくことが一層重要となっております。
 都は、財政再建期を通じて、投資的経費の水準の適正化を図り、都債の発行を大幅に減らすとともに、税収が好調なときには都債の発行を抑制して、残高のさらなる圧縮に努めてきておりまして、こうして培った都債の発行余力を、税収が落ち込んだときなどに将来負担にも配慮しながら積極的に活用し、都財政を下支えしてきております。
 こうした取り組みは、社会資本ストックの整備など、将来に向けて今必要なことは確実に行いながらも、将来世代に過大な負担を残さないという点からも極めて有効なものでございますので、今後も現在から将来までを見通した都債の発行に努めてまいります。
 同時に、発行に当たっては、都債の商品性をさらに高めるような発行条件の安定化を図るというような努力をするとともに、定時償還方式の採用など、都債残高の圧縮や公債費負担の軽減につながるような適切な都債管理にも意を用いていかなければならないと思います。
 今後とも都債の発行と管理の両面で、中長期の視点に立った的確な都債運営を行いまして、またあわせて、歳入歳出両面からの努力を引き続き行いまして、将来にわたって都民サービスを適切に提供し得る健全で弾力的な財政基盤の維持に努めてまいります。

○関口委員 この財政運営というのは、極めて今後難しいかじ取りを迫られるのだろうなと、私は感じておりまして、来年度予算案も約三千億円の基金を取り崩した、残る基金は、使える基金は約一兆円ということですから、来年度予算編成と同じような形であれば、基金は、わずか三年で底を尽きるということにもなりかねません。
 経常経費の話も先ほど申し上げましたが、次の世代の負担等々を考慮すれば、今の我々大人がやるべきことは全部やると、その中で経常経費という、これまであった経費も含めて洗いざらい見直して、一円たりともむだを排していくという強い気持ちが財政当局には求められていると私は感じておりますから、先ほど来、各局に対し鬼になれとか、いろいろと議論がありましたが、私どももそういう姿勢を後ろから、前から、両面から支えていきたいと思っておりますので、来年度予算案を含めて、次の世代の予算を含めて、しっかりと今後も議論をしてまいりたいと思います。
 以上で質問を終わらせていただきます。

○中屋委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中屋委員長 異議なしと認め、予算案及び付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時十分散会

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