財政委員会速記録第十四号

平成十九年十一月八日(木曜日)
第二委員会室
   午後一時一分開議
 出席委員 十三名
委員長鈴木あきまさ君
副委員長高倉 良生君
副委員長柿沢 未途君
理事西岡真一郎君
理事秋田 一郎君
理事曽根はじめ君
原田  大君
高木 けい君
宇田川聡史君
野上ゆきえ君
遠藤  衛君
東野 秀平君
桜井  武君

 欠席委員 一名

 出席説明員
財務局局長村山 寛司君
経理部長新田 洋平君
主計部長真田 正義君
財産運用部長塚本 直之君
建築保全部長戸田 敬里君
参事岡沢  裕君
参事山本 康友君
会計管理局局長三枝 修一君
管理部長細野 友希君
警察・消防出納部長堀切喜久男君
参事安藤 弘志君

本日の会議に付した事件
 会計管理局関係
事務事業について(質疑)
 財務局関係
報告事項(説明・質疑)
・「都市と地方の共倒れを招く『法人二税の格差是正策』に反論する」について
事務事業について(質疑)

○鈴木委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、会計管理局関係の事務事業に対する質疑並びに財務局関係の報告事項の聴取及び事務事業に対する質疑を行いたいと思います。
 これより会計管理局関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○細野管理部長 先般の委員会におきまして要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元の財政委員会要求資料をお開きいただきたいと存じます。恐縮ですが、資料は横向きに作成しております。
 新公会計制度に係る国及び地方自治体の検討状況でございます。
 資料の左側が地方自治体の状況でございます。
 全国知事会では、今後の地方自治体における公会計制度のあり方について、ワーキンググループを設置して検討を行っております。また、総務省に対し、全国標準的な会計基準の整備を要望しているところでございます。
 次に、全国の自治体の状況でございますが、財務諸表のうち、貸借対照表については約六割の自治体が作成しております。しかし、これは官庁会計の決算を手作業で組みかえて作成する、いわゆる総務省方式などによって作成しているもので、複式簿記・発生主義会計による本格的な財務諸表の作成となりますと、ほとんどの自治体が着手していないという状況でございます。
 次に、都内の自治体ですが、多数の区で検討が行われており、市においても市長会が研究会を設置して検討を行っております。
 資料の右側が国の状況でございます。
 総務省は、昨年五月、基準モデルと総務省方式改訂モデルという二つの公会計モデルを提案し、本年十月十七日、二つのモデルの具体的な作成要領を公表いたしました。
 最後に、財務省ですが、財務省の所管である国の会計制度につきまして、複式簿記のシステム化を検討中とのことでございます。
 以上、簡単ではございますが、資料の説明を終わらせていただきます。

○鈴木委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○宇田川委員 公会計制度改革について質問させていただきます。
 さきの決算特別委員会第一分科会において、新たな公会計制度における税の取り扱いについて質疑が行われ、私も何点かにわたってお伺いをさせていただいたところですが、さらに理解を深めるために改めてお尋ねをいたします。
 税を都の財務諸表ではどのようにとらえているのか、都民の皆さんからお預かりしている税金であるわけですから、都民に向けてわかりやすいように、より丁寧にお答えをいただきたいと思います。

○安藤参事 都では、税をさまざまな行政サービスに要する費用の財源としてとらえまして、キャッシュ・フロー計算書の行政サービス活動収入及び行政コスト計算書の行政収入に計上してございます。
 民間企業では、商品の売り上げとそれにかかるコストとの間に直接的な対価性があるのに対しまして、行政では、住民からいただきました貴重な財源である税と個々の行政サービスとの間に直接的な対価性を持たないことに特徴がございます。
 都では、税を収入するのは主税局のみでございますのに対しまして、行政サービスは各局から都民に提供されております。そこで、財務諸表におきまして、主税局で収入した税を一般財源として一たん留保しまして、各局におけるキャッシュ・フローの差額分に充当するという会計処理を行っております。
 したがいまして、各局の行政コスト計算書では、その局の特定財源のみの収入と費用との差額を当期収支差額として示した後に、行政コスト計算書の最下段の欄に、一般財源を充当した後の収入と費用の差額を表示してございます。

○宇田川委員 今のお話で、税をどうとらえているのか、会計処理についてはわかりました。
 それでは、先ほど説明があった要求資料についてなんですが、複式簿記・発生主義会計による本格的な財務諸表の作成にほとんどの自治体では着手してない、こういう状況にあるとのことであります。特に、昨年は地方債発行が自由化をされまして、北海道夕張市が財政再建団体に転落してしまったなど、地方自治体の財務状況の一層の透明化が求められる状況にあります。
 そうした状況のもとで、全国の自治体は、都の新公会計制度に対し高い関心を抱いている、そんな話も耳に入ってまいります。にもかかわらず、何ゆえ地方自治体における公会計制度改革が進んでいかないのか、どんな理由が考えられるのか、ご所見をお伺いいたします。

○安藤参事 主な理由は三点あると考えてございます。
 第一点でございますが、本格的な財務諸表を作成するには、すべての財産について価格を把握する必要がありますけれども、多くの自治体において財産価格の把握が不十分な状況にございます。個々の資産評価作業に膨大な時間と労力が必要であることだと考えております。
 第二点として、複式機能を備えた財務会計システムを再構築する必要がございます。そのシステム開発に新たなコスト負担が発生することなどが挙げられると思います。
 さらに三点目として、総務省研究会の二つの公会計モデルの位置づけやその詳細な内容がなかなか定まりませんで、自治体がその事態を注視していたことが挙げられると思っております。

○宇田川委員 今お話があった総務省研究会の動きについてですが、先ほどの資料にあったように、総務省が二つの公会計モデルによる財務諸表の作成要領を発表した、こういうとであります。
 この総務省研究会の二つの公会計モデルについて、都としてはどのように評価しているのか、ご見解を伺います。

○安藤参事 総務省の提示している総務省方式改訂モデルでございますけれども、それは官庁会計決算を手作業で再計算して組みかえるものでございまして、本格的な複式簿記の導入とはいいがたいものでございます。そのため、財務諸表の正確性が不十分でございますし、事業別の財務諸表の作成も困難です。
 一方、もう一つの基準モデルというものについてですが、こちらにつきましては、国際公会計基準とも大きく異なる非常に独特な考えに基づいておりまして、難解で実務的にも対応が困難なものとなっております。
 また、二つの公会計モデルとも地方自治体の意見を反映したものではございません。そのため、両者とも今後、全国標準的な会計基準になり得ないものと考えております。

○宇田川委員 民間企業などにおいて複式簿記・発生主義会計、この処理を行っているんですが、こうした処理については、企業会計原則など統一的な会計基準がありまして、どの企業であっても同じ会計処理になっている、このことによって財務諸表を作成しているということになるわけですけれども、地方自治体にとって今お話のあった二つの公会計モデルはどんな意味を持つのか、お尋ねをしたいと思います。

○安藤参事 この間の十月二十五日になりますが、総務省が二つの公会計モデルについて自治体に対する説明会を行いました。
 その際、この二つの公会計モデルによる財務諸表の作成は、地方自治法等の法律による義務づけがあるものではない、総務省としては協力をお願いするものであるとおっしゃっております。地方自治体には二つのどちらかを活用して財務諸表を作成してほしい、さらに基準の統一化はまだ先の課題であるとの説明を受けております。

○宇田川委員 今のご答弁ですと、総務省はモデルをあくまでも推奨しているだけで、自治体は必ずしもそのモデルに従わなければならないというものでもないということであります。そうした総務省の対応にも少々疑問が浮かんでくる、私はそんな気がしております。
 既に、都は、全国に先駆けて会計基準を策定しておりまして、本格的な財務諸表の作成という成果を上げてきているところであります。今後、全国の標準的な会計基準の整備について、先駆者である東京都の立場としてどのように取り組んでいくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○安藤参事 現在都は、全国知事会公会計ワーキンググループというのがございますが、その座長を務めておりまして、この七月には全国知事会として総務省に対し要望活動を行いました。
 その内容は、第一に、自治体間や民間の類似事業と比較分析し、経営改善に活用するために全国標準的な会計基準が整備されるべきであること、第二に、行政の特質を考慮した上で、住民にわかりやすく、民間とも比較容易な基準とすることということでございます。
 また、現在、このワーキンググループにおきまして、今後の地方公会計制度のあり方について継続して検討を行っておりまして、都は座長として的確に先導していきたいと、そういうふうに考えております。

○宇田川委員 お話のあったワーキンググループにおいて、まさにおっしゃるとおり、座長として先導役を務めていただきたいと思います。
 いずれにしても、こんな状況では、各地方自治体における本格的な公会計制度改革が進展していかないと思います。これまでも都は、大規模な説明会の開催ですとか、個別の依頼があった中で説明を行っているなど、多くの自治体に対して都の新公会計制度について紹介をしてきた、そういうお話を伺っております。
 第三回定例会で、我が党の秋田議員--いらっしゃいますけれども、一般質問をされた中で、公会計制度改革について、都の知見とノウハウの積極的な提供に関する前向きな答弁があったところであります。その後、具体的にどういった動きを目指しているのか、どういった取り組みを考えているのかをお伺いいたします。

○安藤参事 都の新公会計制度の導入を積極的に検討している自治体に対し、団体の希望に応じまして、都職員が定期的に出張して、実務的、技術的助言等を行う、いわば新公会計支援コンサルともいうべきコンサルティング活動を検討しているところでございます。

○宇田川委員 公会計制度改革について、今、都がコンサルティング活動を展開するというお話ですが、そういうふうになれば、公会計を整備しようとしている自治体にとっても大いに助かるものなのかなと思いますし、ぜひ他の自治体にとっても有効なコンサルをしてほしいなと願っております。その活動によって、都にとっても、都が今後展開していく上で役に立てればいいな、そういう思いも私の中にはございます。今後も先駆けとして、そしてリーダーとして、全国の自治体行政をもサポートする取り組みをぜひとも進めていただければ幸いでございます。
 今までの質疑の内容を踏まえた上で、今後の全国展開に向けた局長の意気込みといいますか、目標といった点をぜひお聞かせいただきたいと思います。

○三枝会計管理局長 我が国の現状を見ますと、地方行財政全般にわたる改革を進めていく上で、複式簿記・発生主義会計を導入することはもう避けて通れないものであろうというふうに考えております。
 しかしながら、先ほど来答弁申し上げておりますとおり、総務省の二つのモデル、これが今後全国標準にはなり得ない、極めて不十分なものであるということでございます。しかしながら、ここで手をこまねいておりますと、公会計改革が今後進むことは余り期待できなくなってしまうのではなかろうかというふうに考えております。そうした中で、フロントランナーである都が果たすべき役割が重要であるということは、委員ご指摘のとおりかと思います。
 私どもといたしましては、全国初の本格的な財務諸表を作成した実績を踏まえまして、これまで重ねてきましたさまざまな取り組みに加えまして、さらに新たにコンサルティング活動を構えるなどを行いまして、各自治体の要望に応じまして、またそれぞれのニーズに沿って、多様な支援、協力を行ってまいる所存でございます。

○野上委員 私からも、公会計制度の改革について伺います。
 要求資料のご説明にもありましたように、去る十月十七日に、総務省は、新地方公会計制度実務研究会において検討された、基準モデルと総務省方式改訂モデルという二つの公会計モデルによる財務諸表の作成要領を公開いたしました。
 このうち、総務省方式改訂モデルは、官庁会計の決算を組みかえる方式で財務諸表を作成するので複式簿記の導入とはいえませんが、基準モデルは、都と同様に複式簿記の導入といえます。
 基準モデルでは、財務諸表として貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支変動計算書の四つを作成します。これは、都の作成する貸借対照表、行政コスト計算書、正味財産変動計算書、キャッシュ・フロー計算書に対応するもので、名称は一つ一つ異なりますが、基本的な位置づけは同じだと考えます。
 しかしながら、都が導入した新たな公会計制度は会計処理等で異なる点も見られます。そこで、基準モデル、両者の違いを中心に質問をさせていただきます。
 まず、両者で異なっているのが税収の取り扱いについてですが、基準モデルと都の新公会計制度では、税収の位置づけやその会計処理がどのように異なっているのか伺います。

○安藤参事 基準モデルでは、税収を純資産の増加と位置づける考え方に立ってございます。納税者である住民を企業における株主と同様にみなしまして、民間企業における株主が出資を行うのと同様に、住民の納税という行為を住民がその自治体に対して出資を行うものと解釈しているものでございます。したがって、税収を純資産変動計算書に計上してございます。
 都では、税を行政サービスの提供に要した費用に対する財源として位置づけまして、行政コスト計算書の行政収入に計上しております。国際的な基準でございます国際公会計基準においても、税収の取り扱いについては都と同じ考え方に基づいております。

○野上委員 都民から見たときに、自分が納めている税金が出資というのはちょっとわかりにくいと思います。税収を出資と位置づけると、行政コスト計算書に計上せずに貸借対照表の純資産に直入するということになると思いますが、この処理ではコスト情報が見えにくくなるというふうに私も考えます。
 本来、行政コスト計算書は発生主義ベースで、自治体の経営状況とか経営成績とか、収支状況を明らかにするというのが目的ですから、自治体の財源の大部分を占める税収を示さなければ支出の財源を示すことができない、行政コストの計算書を作成する意義がなくなってしまうんではないかなという疑問は私にもあります。
 その一方で、確かに、福祉や教育などの個々の行政サービスに対する直接的な対価として税金を納めているわけではありませんので、ここでは受益と負担の関係が非常に不明確です。全体としては、行政サービスに対する対価として納めているとの考えが大体は順当なのではないかとは考えております。
 次に、基準モデルでは、建物や工作物などの一般的な固定資産については減価償却を行い、費用として行政コスト計算書に計上していますが、例えば、道路とか橋とか港湾施設などのインフラ資産については、直接資本減耗という会計処理を行っています。
 今さまざまな議論の上で設定されている独立行政法人の会計基準なんかを見てみますと、インフラ資産の直接資本減耗については、原則として、独立行政法人会計基準の仕訳というか動向に準拠しようというふうになっているようです。これは独立行政法人が所有する原価資産のうち、その原価に対応すべき収益の獲得が予定されないものとして、特定された資産については該当資産の減価償却相当額は損益計算書の費用には計算せず、資本余剰金を減額するものとするという場合と同様の会計の処理だと思います。直接資本減耗という会計処理は、減価償却相当額について行政コスト計算書の減価償却費に計上せず、純資産を直接マイナスしていくものであります。
 これについて、都の新たな会計制度では、インフラ資産について減価償却費を計上しておりますが、なぜこのような相違があるのか伺います。

○安藤参事 基準モデルでは、お話にございましたけれども、インフラ資産については減価償却費という費用に対応すべき収益が得られないという理由から、インフラ資産について直接資本減耗という会計処理を行うこととしております。
 都では、複式簿記・発生主義会計の考え方に基づきまして、インフラ資産についても行政財産などと同様に、過去に行った支出のうち、当該年度に負担すべきコストを明らかにするということで、真のコストを把握するため、減価償却費を計上することとしております。

○野上委員 せっかく発生主義会計による会計処理というのを取り入れたんですから、計上すべき費用はきちんと計上することが当然であると私も考えます。
 次に、資産評価についてでありますが、基準モデルについては、資産評価について公正価値の考え方を採用しています。公正価値とは、公正な評価額という意味で、取得原価も時価も含めた広い概念として理論上用いられています。開始貸借対照表を固定資産台帳等に基づいて作成して、ストック・フロー情報を網羅的に公正価値で把握した上で、個々の取引状況を発生主義によって複式記帳して作成するということが前提ですので、やっぱり実務処理の負担というのは非常に高いということを聞いておりますし、実際この方式を研究されている中でも、ここの実務処理の負荷についてのハードルを超えないと、なかなか難しいのではないかというふうに伺っている次第です。
 そこで、基準モデルが資産評価について公正価値を採用しているのに対して、都の新たな会計制度では取得原価主義を採用していますが、その理由を伺います。

○安藤参事 取得原価主義では、実際にかかった経費に基づき資産の額を計上しておりますので、評価の客観性、確定性にすぐれているといわれております。また、住民からいただいた税金などの財源がどのように資産形成に使われたかをあらわすことができます。さらに、民間企業においても、固定資産の評価は取得原価によるのが一般的となっております。
 これらの理由により、都では取得原価主義を採用したところでございます。

○野上委員 これまで伺ったところによると、基準モデルの考え方というのは、企業会計、実務をもとに資産とか税収とか移転収支とか、地方公共団体の特殊性というのが非常に加味されている、そして資産、負債管理や予算編成などの活用等も見込んで公会計に期待される機能を果たすことを目的としているので、国際公会計基準や民間の会計基準にも準拠しない独特な考え方に基づいているんだなということがわかります。
 純資産変動計算書についても同様でありますし、民間企業では、文字どおり、貸借対照表の資産と負債の差額である純資産について一年間の変動状況を明らかにした表でありますが、基準モデルでは、純資産変動計算書に純資産だけではなく固定資産も加えてその変動状況を示している独特な表となっています。
 これも含め、基準モデルと都の新たな公会計制度はそれぞれどのような特色があるのか伺います。

○安藤参事 基準モデルは、国際公会計基準とも大きく異なる非常に独特な考えに基づいておりまして、難解で実務的にも対応が困難なものとなっております。
 都の新公会計制度は、民間の企業会計基準に準拠しつつも、行政の特質を十分に踏まえたものとなっておると思っております。そのため、基準モデルによる財務諸表と比べますと、住民にもわかりやすく、民間との比較も容易で、作成に当たっても職員が対応しやすいものと認識しております。
 このような方式を採用しましたのは、住民の皆様への説明責任の遂行や効率的、効果的な行政運営をより展開しやすいと考えたからでございます。

○野上委員 都が先駆的に新公会計制度を導入し、各自治体が都の方式について検討している中で、総務省が別な考えに基づいた、特殊なというか、違う目的というか、何というんでしょうか、基準モデルと改訂モデルを提案し、そのいずれかを選択して財務諸表を作成するよう自治体に要請し始めたという状況にあります。三つの方式はそれぞれ財務諸表の様式などが異なっているため、自治体間の比較が非常に難しいと思われます。
 そこで、地方自治体における会計基準の統一化が望ましいと考えますが、見解を伺います。

○安藤参事 ご指摘のとおり、全国の自治体が三つの方式をそれぞれ導入していった場合、自治体間の比較が難しくなるため、会計基準の統一が望ましいと考えております。
 都は現在、総務省が提案している二つの公会計モデルは、全国標準的な会計基準とはなり得ないと評価しておりまして、国への提案要求において、総務省に対し、東京都会計基準を踏まえ、地方自治体にとってわかりやすく使いやすい全国標準的な会計基準の整備に早急に着手することを要求してございます。
 先ほどの要求資料に対する管理部長からの説明にもありましたが、全国知事会においても、この七月に、総務省に対し、都と同様の要望を行ったところでございます。

○野上委員 国もしっかりとした対応をしていただきたいと私からも思います。
 都はパイオニアとして、東京都会計基準に基づいた正確な財務諸表を作成するという実績を積み重ねていくことが重要だと考えます。従来、都が作成してきた機能するバランスシートと比べれば、格段に財務諸表の精度が向上したといえますが、本格的な財務諸表の作成は今回が初めての取り組みであり、いかに正確な財務諸表を作成するか、さまざまな取り組みが行われてきたと思います。
 今回の財務諸表の作成に当たって、その正確性をどのように確保したのか伺います。

○安藤参事 今回の財務諸表の作成に当たっては、各局において仕訳処理の点検や財産データの照合作業などを繰り返し実施して、数値を正確に計上するように努めました。
 また、公認会計士から成る東京都会計基準委員会委員のご指導を受けまして、精度のさらなる向上を図ったところでございます。
 さらに、東京都監査委員による定例監査を受けた上で財務諸表を公表しております。

○野上委員 都も複式簿記・発生主義会計を導入し、本格的な財務諸表を作成するからには、やはり民間企業並みの財務諸表の精度というものが求められると思います。
 一定規模以上の民間企業では、財務諸表の公表に当たっては、外部の公認会計士による監査を受けることが義務づけられており、そのために多額な経費と労力をかけております。都も同様の監査を受けるべきだとも考えられますが、一方で、上場企業などにおいては財務諸表について株主総会の承認を受けなければならない。財務諸表は投資家にとって非常に判断材料であることなど、行政とは財務諸表の位置づけが異なることから、都において多額の経費と労力をかけて外部の監査を受けるのは、無理があるのかなということも承知しています。
 資産とか、どこのところで比べたらいいのか、都の資本というと、道路とか橋とかになりますから、それが企業と同じように、財政状況が悪化したらすぐ売れるというようなものではないので、一概に企業との資産あるいは資本と比べられるとは思いませんけれども、連結決算でのトヨタ自動車の監査法人へ出している金額というのは、監査報酬で出しているのは大体八億六千万ぐらいは監査法人に出しているといわれています。そうなると、やっぱり東京都の予算規模になると、想像するだけでもかなりの額、精度を上げるためには費用がかかるということもすぐ想像できることです。なかなか難しいなというふうには私自身も考えます。
 とはいえ、財務諸表の数値の信頼性を一層向上させることは、行政にとっても重要な課題だと思いますので、都として引き続き精度向上に取り組まれることを要請して、私の質問を終わります。

○高倉委員 東京都の新しい公会計制度について、民間企業で使用している会計との違いといった観点から質問をさせていただきたいと思います。
 今回、本格的な複式簿記・発生主義会計による財務諸表が公開をされました。これは、我が国初めてとなる取り組みでありまして、かねてから導入を提唱してまいりました私たち都議会公明党としても、大変誇らしく思っているところでございます。
 こうした財務諸表を今後財政改革に有効に活用していくためには、都の財務諸表の指し示すそれぞれの数字の意義を正確に認識をしまして、また職員の一人一人がコスト意識を持って職務に取り組んでいくことが非常に大事だと思います。
 そこで、都の財務諸表の内容に関してお聞きをいたしますけれども、まず、この新たな公会計制度により作成された財務諸表によってどのようなことが新たに明らかになったのか、この点についてお伺いいたします。

○安藤参事 従来の官庁会計では、ストック情報についての把握が不十分でございまして、ただ、今回の貸借対照表を作成しましたことによりまして、都が保有している資産と負債の金額が一目でわかるようになりました。
 次に、行政コスト計算書により、これまで把握できなかった減価償却費など、フルコストが民間企業並みに明らかになりました。
 さらに、キャッシュ・フロー計算書により、支出について、費用として当期に費消されるものか、資産形成としてストック化されるものかなど、現金支出の内容とコスト情報、ストック情報との関係が明らかになったところでございます。

○高倉委員 財務諸表を作成することで、これまで把握できなかった多くの財務情報を明らかにできたというわけでありますけれども、今後、説明責任の一層の遂行と、そして効率的、効果的な行政運営の展開にこれを役立てていかなければならないと思います。
 そのためにもまず、都の財務諸表がどのような考え方に基づいて作成をされているのかについて、確認をさせていただきたいと思います。
 都の財務諸表は、東京都会計基準に基づいておりますけれども、これは、平成十四年五月に石原知事が複式簿記・発生主義会計の導入を表明されてからさまざまな検討を重ねた上に、一昨年八月に策定をされたものでございます。
 この基準は、民間企業で使用している会計基準に準拠しながら行政の特質を考慮したものというふうにお聞きをしておりますけれども、どのような点を考慮されたのかお伺いしたいと思います。

○安藤参事 まず、行政と民間とでは本質的な存立目的が異なる点でございます。民間企業では利益を獲得することが主な目的でございますけれども、行政では住民福祉の向上が目的となっております。
 次に、将来的に収入が発生しない資産の存在でございます。一般的に民間企業では、活用や売却などにより利益を上げることを見込んで資産を保有いたしますけれども、行政では、道路、橋梁等の住民生活や都市活動に必要不可欠で売却不可能なインフラ資産を大量に保有してございます。
 さらに、民間企業では複式簿記・発生主義会計が徹底されているわけでございますが、行政では行政運営は従来の官庁会計で行われているという点がございます。
 こうした基本認識のもとに、東京都の会計制度に関する検討会を設けまして、そこで公認会計士の皆様などの有識者による検討を行いまして、東京都会計基準を策定したものでございます。

○高倉委員 複式簿記・発生主義会計という民間と同じ会計手法を取り入れるとしても、さまざまな行政の特質を考慮しなければならないということについて理解いたしました。
 答弁のあった民間と行政の違いといった点では、民間企業では利益が幾らあるのか、これを明らかにするということが大変重要なわけでありますけれども、これに対して、行政では利益の獲得を目指して事業を行っているわけではない、こういう違いがあると思っております。
 そこで、行政コスト計算書の数字の意義ということでありますけれども、民間企業の損益計算書では、収益と費用の差額である当期利益は、文字どおり企業の利益をあらわすことになるわけであります。今回、十八年度決算における都の行政コスト計算書では、当期収支差額が約一兆一千億円となっておりますけれども、この当期収支差額といったものは何をあらわしているのかについて、ご説明を伺いたいと思います。

○安藤参事 先生ご指摘のとおり、民間企業と異なり、行政には利益という概念はございません。このため、当期収支差額は単純に収入と費用の差額を表示しているものでございます。
 十八年度決算の行政コスト計算書における当期収支差額分につきましては、都市施設の整備や都債の償還などに充てられているところでございます。

○高倉委員 行政は、民間企業とは目的も事業も性質も異なるわけでありますから、民間企業の手法を取り入れながらも、行政の特質を考慮するということは大変に重要であると思います。
 質問の最後に、今後の大きな課題としまして、都の職員一人一人がこの複式簿記・発生主義会計という新たな視点を常に意識をしまして、それぞれの事業を見つめ直していく、こういったことを通して都庁全体の経営改革につなげていく、こういうことが非常に大事であると思います。
 そこで、職員の意識改革も含めた公会計制度改革について、最後に局長のご決意をお伺いしたいと思います。

○三枝会計管理局長 私どもが導入いたしました新公会計制度でございますけれども、これは、資産や負債などのストック情報、そして金利や減価償却費を含む真のコスト情報を明らかにするものでございます。そのことによって財政の透明化あるいは効率的、効果的な行財政運営、こういったものの強力な牽引車となることが期待をされているわけでございます。
 しかしながら、この牽引車であることを実現する上で、職員の意識改革は極めて重要である、これは副委員長のご指摘のとおりでございます。今回、本格的な財務諸表の作成、この作業に直接携わりました経理あるいは会計を担当している職員、こういった者に対しては、意識改革を促せる大変大きなインパクトがあったのではないかということを実感しているところであります。
 今後でございますけれども、事業に直接携わる職員たちが自分たちの事業の分析であるとか、あるいは組み立て、そういったものを通じて、新しい視点、意識を持てるように、関係局とも連携して取り組み、都庁全体の意識改革を進めてまいります。

○曽根委員 私からも、今回初めて決算参考書の中に財務諸表が複式簿記・発生主義会計によって出されましたので、これの活用という問題について幾つか質問したいと思いますが、先ほどの質疑を聞いていて、国の総務省の基準モデルと東京都の考え方に大きな違いがあると。
 改めて確認をしたいんですが、一つは、税金収入について、何でも総務省のモデルでは出資の中に入ってくるというふうに聞いたんですが、それが確かかどうかということと、それから先ほども土地の評価について、事業用地については公正価値ですか、いわば一定の期間の間に変動する地価評価なども含めたものと思いますけれども、そういう変動するものを取り込む、これは企業会計でもやっているのかどうかわかりませんが、そういう考え方が国の方にあると。これが大変な実務負担になるという話がありましたが、この二点について改めて確認をしたいんですけれども。

○安藤参事 まず一点目の出資かどうかというお話でございますけれども、出資という項目になるというよりも、住民の皆様からいただきました税金につきまして、それは株主に対する普通の会社の出資と同じような考え方で貸借対照表の純資産の方に入れていくということでございます。一点目はそういったことになります。
 それから二点目の公正価値というのは、学問的な用語でございますけれども、ここで申し上げているのは、いわゆる公正価値といういい方をして時価評価をした方がいいというのが基準での考え方、基本になっていると思います。

○曽根委員 私自身、昨年でしたか、この会計がスタートするという際に、その時点での認識として、東京都のほとんどの会計、つまり一般会計などの各事業については、複式簿記の公会計制度はふさわしくないという認識を示しましたが、ただ一つ、東京都が行っている事業の中で企業的な部分、とりわけ再開発事業ですね、第二種。東京都が直接土地を買収し販売するというこの事業についてはこの公会計制度が使えるかもしれない。というのは、ご存じのとおり、第二種再開発事業は、一千五百億円という莫大な赤字が明らかになるのは十年以上たってからだったんですね。その時点ではもう取り返しがつかない赤字ができちゃっている、そういうことがあったものですから、毎年出されるこの会計の中に、そのときの土地の評価額が動いていくというものをしっかりつかめるような仕組みができるんであれば、それは一定の意味があるんじゃないかということを申し上げました。
 今のお話ですと、土地の評価について変動の指標を取り込むという考え方や、都民の税金を、これは一般の事業では考えにくいんですけど、再開発事業の場合には土地を買うために使うわけですから、一種の出資と考えると。そして土地を売却すれば再開発事業では収入になりますよね。これと一緒にしないと、税金の存在をね。という点では、再開発事業に関しては、国の総務省モデルの方が実態に--これに限ってですよ、合っているのかなという印象を受けたんですね。
 実際には、総務省モデルを使った場合にはどういう点で問題があるのか、もしくはメリットがあるのか、お伺いします。

○安藤参事 おっしゃったのは総務省の基準モデルだと思いますが、総務省の基準モデルにつきましては、我々は、国際公会計基準とも大きく異なる非常に独特な考えに基づいて、難解で実務的には対応が困難なものと考えてございます。それから、いろんなものの評価につきまして、非常に難解な上に、細部のきめ細かな、いわゆる実務に落とせるような内容がまだ示されてなくて、それについては我々は採用できないと考えております。

○曽根委員 比較するにも、まだ総務省のモデル自体も細かい点はあいまいな状態だということはわかりました。
 それじゃ、東京都のつくったこの複式簿記の会計制度に基づく財務諸表で、再開発事業についてどういうことが新たに明らかにできたのか、今後それがされていくのかということをお聞きします。

○安藤参事 開発事業に関しまして、貸借対照表の資産の部において、区画整理事業における保留地や再開発事業における保留床などの資産額が明らかになるとともに、負債の部において、都債や他会計借入金などの額が明らかになったと思っております。

○曽根委員 そうすると、例えば、ある年度に開発事業で一たん買収した土地を事業者に保留床を売却するといった場合、買ったときの値段よりも低い価格で売らざるを得なかった、そこから赤字が出てくるわけですが、その赤字というのはどういう部分に出てくるんですか。

○安藤参事 いわゆる行政コスト計算書上でございますが、その他行政収入、その他行政費用という項目がございまして、そこのところで、いわゆる損、益両方出てございます。

○曽根委員 確かに毎年決算の形で、前年度に行った土地の売却もしくは買い入れ、その結果として損害になったのか収益になったのかが毎年出てくれば、もしこれが債務超過状態などに陥れば、それが結果として出てくるでしょうから、そこは一歩前進なのかもしれませんが、これは結果論であって、じゃ残っている資産、抱えている土地、これが簿価で載っているわけですよね。買い入れ価格の状態で載っていると。しかしそれがあのバブルの当時、買ったものが日々下がっていくという状態だったときに、一体どれぐらいの残り資産の価値があるのか、今幾らで売れるのかというようなことを知りたいときには、変動的な数値が取り入れられるということは有効じゃないかというふうな印象を受けるんですが、どうですか。

○安藤参事 民間企業においては、土地や建物について取得原価主義による資産評価を採用していると思います。都の会計基準でも、資産の評価について取得原価を基本として算定するということをしております。したがって、貸借対照表においては、土地の取得に要した金額を計上しまして、土地の価格の変動については表示いたしません。
 実際に土地の売却を行った場合には、売却額と資産額との差額である売却損益について、行政コスト計算書において表示するということにしております。

○曽根委員 なるほどと思いました。つまり、私、この企業会計を新たに取り入れる際に一定の期待もあったんですね。確かに年度ごとには、結果としては、売却益が出たのか売却損になったのかは出るでしょう。しかし、企業があの時期に不良債権をたくさん抱えながら、なかなかその実態が世間に出なかったというのは、やっぱり企業会計のこういう点での限界があるんだと思うんです。東京都の再開発事業についても、この複式簿記会計を取り入れても、こうした企業会計の限界は、やはりそれも含めてあるだろうというふうなことで、幻想を持つことはできないと思います。
 こういう点を強調するのは、実は、私の地元の北区の赤羽北再開発事業というのは、面積でいえばわずか三・八ヘクタールで、第二種再開発の中で面積的にはごくごく、百分の一以下の面積だったんですが、一千五百億のうちの二百五十億の赤字がここから出ているわけで、一平方メートル当たり七十万から八十万円の赤字になりました。
 これはひとえに八五年に計画された後に、バブルに乗って、買い入れのときには物すごい金額が上がったわけです、土地が。売るときにはばあっと下がったと。この時期に開発をかけることがいかに誤ったかということが後にならなきゃ出てこなかった。こういう実態をリアルにとらえるという点では、この会計でもやはり限界があるということをいわざるを得ないと思います。
 この開発に巻き込まれて、地権者の方、またはそこで借家で営業していた方、数十軒の商店街も二、三軒しか残らない、あとはみんなもう出て行かざるを得なかったんですが、その住民をまとめていた方も、結局最後は追い詰められて自分で命を絶つというようなこともありました。こういう悲劇を生まないためにも、公共が行う開発事業については、企業会計以上に厳しい目で見なきゃならないということを私、特に痛感してきたんです。
 ですから、この点での行政コスト計算書や、この問題でいえば貸借対照表でしょうか、そういうものだけに寄りかかっていたのではこうした問題は見えないということで、もしこれを本当に分析するのであれば、再開発事業などは、もっと土地評価の動きなども含めた新たな分析が要るということを強調しておきたいと思います。
 以上で質問を終わります。

○鈴木委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○鈴木委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で会計管理局関係を終わります。

○鈴木委員長 これより財務局関係に入ります。
 初めに、理事者の欠席について申し上げます。
 竹本契約調整担当参事は、所用のため、本日の委員会に出席できない旨の申し出がありました。ご了承願います。
 次に、理事者から報告の申し出がありますので、これを聴取いたします。

○真田主計部長 それでは、お手元の資料第1号によりまして、「都市と地方の共倒れを招く『法人二税の格差是正策』に反論する」と題する冊子の内容についてご説明いたします。
 国においては、現在、ご案内のとおり、法人二税を地方に分配する動きが機運となっております。今後、年末の与党税制改正大綱の策定に向けまして、こうした議論がますます盛んになることが予想されます。
 そうした中にありまして、都などの大都市の財源を奪おうとするこうした動きに対する反論の書として、東京都の考え方を実証的に取りまとめたものが本冊子でございます。今後は、この冊子によりまして、都議会や国会の先生方を初め、関係方面と力を合わせて国に対抗してまいります。
 それでは恐縮ですが、冊子の目次をごらんいただきたいと思います。
 表紙をおめくりください。本書は四部構成になっておりまして、第一章では、現在の地方財政の困窮を招いた責任は国にあること。また第二章では、現在議論されている小手先の手法は国が地方全体の財源を召し上げるものであって、都市と地方にとってメリットがないこと。それから第三章では、こうしたことが行われれば、日本を牽引している都市の衰退を招くことになりますが、これは国全体の衰退につながること。そして最後に、全体の総括としまして、地域を活性化し、地方が自立することこそが今後の目指すべき方向であるということを都からの提案という形でまとめております。
 内容は詳細にわたりますので、お手元にその概要版、参考資料ということで添付させていただいていますので、それに基づきましてご説明させていただきます。
 それでは、資料の一枚目をごらんいただきたいと思います。
 まず、第一章の、現在の地方財政の困窮に対する国の責任についてでございます。
 資料の上段、左側にありますように、バブル経済崩壊後の公共事業の増加が地方の借金を増大させておりまして、これが地方財政を圧迫する要因となっております。さらに、右側にありますように、国は三位一体改革の名をかりまして、地方から財源を奪っておりまして、右のグラフのとおり、三年間で地方交付税が約五兆一千億円削減されただけでなく、国庫補助金につきましても、スリム化の名のもとに約一兆円の財源が削られております。これらは、いずれも国の経済財政政策のツケを地方に押しつけるものでございます。
 このように、第一章では、現在の地方財政困窮を招いた責任は国にあることを述べてございます。
 次に、第二章の、現在議論されているような税を再配分する小手先の手法は、いずれも都市、地方にとってメリットがないことについてでございます。
 まず、現在検討の動きがある法人二税の制度見直し案につきましては、左側にありますとおり、大きく二つのものがございます。
 一つ目は、国が法人二税を一括徴収し、法人の事業活動にかかわらず、人口や事業所数などに応じて配分するものでございまして、いわゆる財務省案といわれているものでございます。これが行われた場合、東京都は一兆円超の減収と試算されております。
 二つ目は、国税である消費税と地方税である法人二税を同額交換するものでございまして、いわゆる総務省案といわれているものでございます。これが行われた場合、現在国、地方で四対一の消費税を二・五対二・五とするとすれば、東京都は約五千億円の減収と試算されております。
 いずれの案も、下に記載のとおり問題点がございます。
 まず第一は、税制の基本を崩し、地方の活性化にもマイナスとなるということです。受益に応じた負担という地方税の大原則に反するほか、地方が自立し、独自の地域活性化に挑もうとする意欲を減退させることは問題です。
 また第二は、国が徴収して地方に分配するような手法は、法人二税の実質国税化でございまして、地方の財政自主権を将来にわたり切り崩すものになるということでございます。
 それから第三は、現行の地方交付税制度を前提としますと、大都市から奪われた財源の多くは地方交付税の減という形で国が召し上げることになり、地方団体にとってもメリットがないということでございます。
 次に、右側の箱をごらんください。法人二税の見直しが行われれば、東京都は数年以内には財政再建団体に転落し、大規模な歳出削減が迫られることになります。この場合、例に記載してございますとおり、ハード、ソフトを問わず、多くの都単独事業などが実施できなくなりまして、都民サービスの大幅な低下が避けられなくなります。
 このように、第二章では、現在議論されている案はいずれも問題があり、都市、地方ともに何らメリットがない愚策であるということを述べております。
 引き続き、資料の二ページ目をごらんいただきたいと思います。
 第三章の、日本を牽引している都市の衰退は、国全体の衰退をもたらすという点についてでございます。
 東京は日本全体を牽引する役割を期待されておりまして、また現実そうした役割を果たしております。また、道路、空港、港湾の例でお示ししていますように、東京への投資は、日本全体の活力を向上させていく上におきまして重要な役割を果たしております。さらに、羽田空港の例にありますとおり、都は、国が進めないインフラ整備を国にかわりみずからの負担で推進しております。また、東京が抱える膨大な財政需要を放置しますと、東京の活力が失われ、ひいては国全体が疲弊することとなります。
 膨大な財政需要の例としまして、橋を例にグラフでお示しさせていただいておりますけれども、都の橋は整備時期が早かったため老朽化が進んでおりまして、今後十年間で、約半分の六百もの橋が架設後五十年を迎えることになります。このためのかけかえ費用だけでも約一兆五千億円と試算されております。
 また、都は、これまでの十年間で七兆三千億円もの都市基盤整備のための投資を行っております。さらに、先般の年次財務報告書でもご説明したとおり、都のインフラ資産の減価償却累計額は二兆円を超えておりまして、これらは今後の財政需要として顕在化してまいります。
 さらに、昼間流入人口に伴う財政需要が二千億円以上あること、また都の用地取得単価は、全国の平均の十倍以上であるということなどを例に、都が抱える大都市特有の財政需要を説明しております。
 このように、第三章では、主に需要面から分析しておりますけれども、日本を牽引しているのは都市でありまして、そうした役割を担っている都市の衰退を招くことは、国全体の衰退につながり、ひいては、都市、地方が共倒れになりかねないということを述べております。
 最後に、資料の右側をごらんください。全体のまとめとしまして、東京都からの提案についてご説明しております。
 記載のとおり、地域を活性化し、地方が自立することこそが今後の目指すべき方向であると考えますけれども、本冊子では、そのために必要な五つの点について提案しております。
 第一は、まずは国が責任を持って、地方を自立、活性化するための総合的な地域振興策を立案、検討すべきだという点でございます。
 第二は、分権改革を先延ばしすることなく、早急に実現すべきであるということです。
 第三は、今議論されているような小手先の対策ではなく、地方税の税率引き上げや必要な交付税原資の確保などによりまして、真に地方が財政的に自立できるようにする必要があるということです。
 そして第四に、そうした抜本的な対策が講じられるまでの間の緊急的、臨時的な措置としまして、三位一体改革で削減した地方交付税五兆一千億円を、国の責任と財源で最大限復元すべきということです。
 さらに第五としまして、都としても、志と意欲を持って努力している自治体と手を携えまして、地域の活性化のためにともに知恵と努力を傾けていくということでございます。
 説明は以上でございます。よろしくお願いします。

○鈴木委員長 報告は終わりました。
 本件につきましては、次に行います事務事業の質疑の際にあわせて質疑を行いますので、ご了承願います。
 次に、事務事業に対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○新田経理部長 先日の委員会におきましてご要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の財政委員会要求資料をごらんください。
 まず、表紙をおめくりいただきたいと存じます。今回ご要求のございました資料は、目次に記載してございますとおり二件でございます。
 一枚おめくりいただきまして、要求資料第1号は、第二次財政再建推進プランに基づく財源確保額、平成十六から十八年度でございます。プラン期間中の三年間におきまして、内部努力や施策の見直し等の区分ごとに、プランの目標額と財源確保額を比較したものでございます。
 なお、財源確保額の数値は、当初予算ベースの数値となっております。
 一枚おめくりいただきまして、要求資料第2号でございます。都立施設の取得価格、減価償却額、残存簿価の例でございます。
 都立の学校と事業所を対象にそれぞれ二施設ずつ例にとりまして、取得年、規模数量、取得価格、耐用年数、減価償却費、減価償却累計額、残存簿価等を比較したものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○鈴木委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより事務事業及び報告事項、「都市と地方の共倒れを招く『法人二税の格差是正策』に反論する」についてに対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○高木委員 まず、「都市と地方の共倒れを招く『法人二税の格差是正策』に反論する」、こちらの方から入りたいと思います。
 これは、東京都の財源を奪う動きに対して、東京都が説明をというか反論を非常に詳しくされた冊子だと思います。
 最近、地方の財源をめぐる議論がますますかまびすしくなってきております。テレビ、ニュースや新聞においては、都市と地方の格差をテーマに、主観的、感情的に過ぎるとも思えるような内容が報道されるケースも大変多く目にするようになりました。
 税や財源などという話は、一般の人々の日常生活にとってなじみが深い分野とはいえないだけに、その説明においてはわかりやすさが大切になってくるわけですが、その場合でも、客観的な事実は、当たり前のことですが、正確かつ冷静に伝えなければならないと思います。
 先ほどご説明のあった「都市と地方の共倒れを招く『法人二税の格差是正策』に反論する」という冊子を先月都は発表されたわけでありますが、実はことしの春にも、「大都市狙い撃ちの財政力格差是正論への反論」という反論の書を東京都が発表しておりまして、東京の財源を奪おうとする動きに対する反論という意味では、両方とも同じ目的に沿ってつくられたものであると解釈をいたしております。
 そこで、今回作成された新たな反論の書の位置づけと、まず、作成の意図はどのようなものなのかを一度確認をしたいと思います。

○真田主計部長 二十年度税制改正の動きが年末に向けまして大詰めを迎えるのを前といたしまして、国が税収格差是正の名目で大都市の法人二税を奪い取ろうとする動きを強めておりますけれども、これが実施されますと、都市と地方の共倒れを招くことになると強く懸念しております。このため、法人二税の格差是正策に改めて反論し、この問題に対する都の基本的な見解を明らかにするものとして、今回の反論の書を作成いたしました。
 また、このところ、主に財務省でございますけれども、国の財源には一切手をつけさせまいと躍起になる余り、事実を歪曲した情報を意図的に流布するなど、目に余る動きを見せておりますけれども、こうした動きに対しましても、客観的な事実に基づく正確な分析あるいは主張を発信することで、くさびを打ち込んでおく必要があるというふうにも考えております。
 こうした観点に立ちまして、今回の反論の書では、地方が困窮した原因は国にあるんだと、検討されている法人二税の制度見直しは都市と地方双方にとってメリットがないんだと、それから都市の衰退は国全体の衰退につながることなどを、春に発表した反論の書と比較しまして、実証的、分析的に明らかにさせていただきました。
 この反論の書を武器に、地域が活性化し、地方が真に自立するために目指すべき方向性を提起しまして、各方面へ働きかけを一段と強化するとともに、地方全体を巻き込みながら、都市と地方を対立させようとする国の企てに対抗していくことをねらいとしております。

○高木委員 そういう国の企てに対抗していくという、非常に私はいい表現だなというふうに思いますね。まさに今国がやろうとしていることはそういうことですから、これから議論を深めていきたいと思いますけれども、一層決意を持ってやっていただきたいと思うんですね。
 今回の反論の書では、国で検討中の法人二税の見直し策の不合理性や大都市特有の財政需要など、春の反論書で取り上げられたテーマについて、より詳しく掘り下げた分析がなされています。それと同時に、幾つかの新しい事実についても分析がなされておりまして、大変興味深い内容も見受けられるわけであります。
 中でも、インパクトがあると私が思いましたのは、国が検討しているといわれている格差是正策について、都市にとってメリットがないのはもちろんなんですが、実は地方にとってもメリットがない、こういう指摘であります。国は、格差是正と称して、都市から奪った財源を地方に再配分することを意図しているのかな、こう思っておりましたら、こうした格差是正は、少なくとも地方にとってはメリットのある話なのかなと思っていたんですけれども、どうもそうではない。
 そこで、現在検討の動きのある法人二税の見直しが、都市だけではなくて地方にもメリットがないものなんだということは、具体的にどういうことなのか、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。

○真田主計部長 都市から取り上げました税を地方に配ったといたしましても、現行の地方交付税制度を前提とすれば、地方交付税の算定におきまして、ふえた税収の四分の三は基準財政収入額に算定されてしまいます。このため、基準財政需要額に増加要因がなければ、交付団体の財源不足額が圧縮されまして、その分の地方交付税が減らされてしまうという関係にございます。
 さらにいえば、地方の収入を税ではなくて地方譲与税という形でふやした場合には、ふえた分の全額が基準財政収入額に算入されることになりまして、同額の交付税が減らされるということになりまして、この場合には地方の増収はゼロとなってしまいます。
 このように、都市から奪った財源の多くは、結果として国のものとなってしまいまして、地方にとってメリットがないということでございます。
 こうした収支面に加えまして、制度面でも幾つか問題がございます。
 まず、法人二税の制度見直しは、税は行政サービスの対価であるという税制の基本を崩すばかりでなく、地方が国から自立して独自の産業振興などに取り組もうとする意欲を減退させるものでありまして、地域の活性化にもマイナスの影響を与えます。
 また、法人二税を国が一括して徴収して配るような手法がとられれば、これは事実上の国税化でありまして、将来にわたって地方の財政自主権を切り崩すことになってしまいます。
 このように、法人二税の制度見直しは、あらゆる意味で地方にとってメリットがない手法であるということを述べております。

○高木委員 大変よくわかる説明でした。
 とにかく、国は、いずれのやり方をしても、地方交付税を減らそう減らそうというところに話が集約をされていって、まさに一般の国民にはなかなかわかりにくいんですが、財源とか税制の問題を語る上で、地方財政の基準財政収入額がどう満たされていって、それに対して基準財政需要額をどう積み上げていって、その差額を地方交付税で、簡単にいえば算入をしていくという仕組みを、いかに地方交付税のところを薄くしていくかというところに腐心をしているような気がしてならないんですね。ですから、こういう非常にわかりやすい説明を私はどんどんしていただきたいと思うんですね。
 ですから、当の地方の知事からも、毒まんじゅう拒否とかそういう宣言が出されているぐらいですから、地方にもメリットがないという今の東京都の主張は、私は極めて的を得たものだというふうに思うんです。
 反論の書の結びに、東京都からの提案として五つの項目が掲げられているんですが、項目のうち、地方分権改革の早期実現については、これはだれしも異論のないところだと思います。そして消費税について、税率や国と地方の配分にまで踏み込んだ抜本的な検討を行うことという項目についても、地方財政が極めて厳しい状況にある中で、地方全体の財源のパイをふやすことの必要性という観点から、主張の意図は理解ができる。
 ただし、消費税の税率について、上げるんだというようなことも含めた想定であるとすれば、これはまたちょっと違った議論があるんだと思いますから、税率云々の問題については、これはもう石原知事がよく発言を--時々記者会見なんかでもされているようでありますけれども、ここは私は慎重にすべきだというふうに思っているんです。
 ですから、消費税の税率というところまで、いたずらにどんどんどんどん踏み込んでいって、上げてもいいんだという議論は、これはちょっともう少し議会も含めて考えていくべきだろうなと実は思っています。ただ、全体の流れの中で、そういうことも一つの検討項目のうちに値はするんだよということは、これは理解ができる話なんで、私は東京都の主張はなるほどなと思わせていただきました。
 一方、それ以外の三つの提案項目については、やや意外な感もなくはなかったわけで、例えば、真の地方活性化のための総合的な地域振興策の立案、実行ですとか、三位一体改革で削減された地方交付税の復元、志と意欲を持って努力している自治体を都が支援となっておりますが、いずれもそれらを実現したからといって、都自身が直接的な恩恵を受けるわけではないというような事柄なわけですね。
 このように、都があえて地域振興策や地方交付税の復元などを提案していること、つまり、東京都が直接影響を受けたり、あるいは利益を受けたりということでないことまで今回お書きになられたということについて、どういう意図があるのかお伺いしたいと思います。

○真田主計部長 現在の地方の困窮は、バブル経済崩壊後の国の経済対策として行われました公共事業のために発行された地方債の償還が地方財政を圧迫していたところに、三位一体改革の名をかりまして、国が三年間で五兆円以上もの地方交付税を削減したことに大きな原因がある、いわば、国が地方にバブル崩壊のツケを押しつけた結果であるというふうに考えております。
 それにもかかわらず、国はこの問題を地域間の税収格差の問題にすりかえておりまして、根本的な問題解決の道筋を示すことすらしておりません。このままでは都市と地方の共倒れを招きまして、結局は国全体の衰退につながりかねないと危惧しているところでございます。
 都としては、このような国の小手先の手法に反論するにとどまらず、全国の自治体、さらには日本全体のことを考えまして、都市と地方が共存共栄して、地方全体あるいは国が発展するためにはどうすべきかという大局的な視点に立った提案を行うことで、現在の問題の根本的な解決に向けた方向を明示していくことが必要だというふうに考えました。
 提案に際しましては、都自身の特質だけではなくて、地方の真の自立という本質的な課題の解決を最優先に考えまして、都として実施できる地域の振興策ですとか、あるいは、都にとって直接のメリットはございませんけれども、地方交付税の復元ですとか、そういった主張にも力点を置かせていただいたところでございます。

○高木委員 真の意味で日本全体のために、我が国のためにというその視点はやっぱり非常に大事なところだと思うんです。知事が常々いわれているように、東京から日本を変えるというその主張も同じ視点だろうと思いますし、我が国をどうするのかという視点で書かれているところに、この冊子の秀逸な、光る部分が私はあるんだろうというふうに思います。
 ですから、東京都がそういう観点から、地方全体、とにかくもう全国的に、日本全体をよくするんだという積極的なこの提案は、私は地方の皆さんにも共感を得られる内容だろうと思いますし、議員個人としてもすばらしい内容だなというふうに、本当の意味でこれは思っております。大変頼もしく思いました。
 これから国との戦いという意味では、十二月にかけて行われる来年度税制改正の議論が本当の意味での正念場になるんだろうと思います。税の制度設計の詳細を詰める過程では、具体的な数字の飛び交う駆け引きがますます本格化してくることと思いますが、そうした中にあっても、今回この冊子に示されたような正論は正論として筋をきちんと通して、主張すべきことは主張していくということが私は大切だろうと思っています。
 今、国は、私たちが危惧をしているのは、税がどうあるべきかという税理論も何も考えずに、とにかく財源を、足りないものをどうやって取っていくのかということにのみ血道を上げているという状況であると私は思います。ですから、先日も、私たち都議会自民党の勉強会でも税理論の勉強というのをさせていただきましたが、なるほど税理論というのはやっぱりきちんとしたものがあるわけでして、そんなことを財務省の方々も当然ご理解をされているにもかかわらず、税理論を無視したような課税が行われたりというケースを、ここのところ時々というかよく見る話であります。
 例えば、何年か前に中小企業の留保金課税に対して、これを強化したという事例がありましたけれども、この留保金課税は、ある意味で、税理論としては別に問題はないと思いますが、そのことに対して批判が集中したことによって今度は留保金課税を緩めた。留保金課税を緩めたことによって、じゃ、どこから取ったかといったら、例の中小企業、特殊支配同族会社の役員給与に対する損金不算入というあの制度をつくったわけです。つまり、法人にかける税金を個人の税金に振りかえたというか、めちゃめちゃにごっちゃにしてそういうことをやり始めたわけです。
 これはもう税の専門家からいったって、今まで国は法人税と個人所得に対する税金というのはきちんと分けていたのに、それが今回こんな制度になって、これは何なんだという批判がかなりあって、それで初めて八百万円という最低限から千六百万かな、千五百万だかに上げられたというようなこともあるんですけれども、そういう税理論を無視した議論というのは、私はやっぱりきちっと正すべきだと思います。
 ですから、こういう反論の書を東京都が出してくれたということは、これは一東京都の問題じゃなくて、日本全体のために私は画期的なことだというふうに思うんです。だから、正論をきちんと主張してほしい、そういうふうに申し上げておきたいと思います。
 ですから、そういう意味では、地方同士が連携を深めて、一枚岩となって国に対峙をしなければならないと思いますし、世論の共感をとにかく得ることが大事だと思います。東京都としては、守るものは守って、地方全体の発展のために尽くすところは尽くす、そういう覚悟を持って来るべき十二月の山場に臨んでいただきたいと思います。
 そこで、最後に、来年度税制改正の動きが本格化する十二月に向けて、今後の取り組みに対する局長の決意をお伺いしたいと思います。

○村山財務局長 お答えいたします。
 今、るるいろいろご指摘をいただきました。私どもの今回の反論ペーパー、第二弾ということになるわけですけれども、今の財務省というふうに象徴的にいわれている地方に対する攻撃というのが、基本的には、国と地方の間の縦の矛盾によって生じたさまざまな深刻な問題というのを、いわば地方同士の横の対立にすりかえていく。そのことによって矛盾を隠ぺいすると同時に、何となく財源が少し地方の方に豊かになるんじゃないかという幻想を持たせながら、実は、結局、最後に財源が吸い上げられるのは国の方に吸い上げられてしまって、地方全体もよくならないというような今の状況に対する対応の仕方というのは、絶対に、中長期的に見ても、あるいは短期的に見ても、日本の国全体のためにとってよくないという基本的な、ご指摘いただいたような立場に私どもも立って作成をさせていただいたつもりでございます。
 やはり今の、東京都もそこは認識を共有しているわけでございますけれども、日本の地域社会といいましょうか、地方が非常に厳しい状況に置かれているという認識については、東京都としてもしっかりと共有をした上でそれを根本的に改めていく、改善していく道というのは、しっかりした現状の分析と、それに対応する税理論を含めたしっかりとした制度論に基づいて改革を抜本的に行っていくという中にあるわけでございまして、小手先の形で行う場合には、矛盾をさらに別の方にゆがめて、堕していくにすぎないということになろうかというふうに思っております。
 そういう意味では、私ども、今回の反論ペーパーを出させていただいたのをもう一つのばねといたしまして、さらに今後、十二月中旬に至るであろうその間のあと一月余りの中で最大限頑張って、東京都としての、地方と対立するロジックではなくて、地方と連携、連帯する論理の中で頑張っていきたいというふうに考えております。
 同時に、この問題というのは、ある面では、国全体の政治的な合意形成の問題という側面も強くあるわけでございますので、そういう点では、ぜひとも、都議会の各会派の皆様のお力添えをいただきながら、他の道府県とも連携してこの難局を乗り切ってまいりたい、かように決意している次第でございます。

○高木委員 ただいまの局長の答弁、大変心強く思いました。これは主税局にも関係があるんだと思いますが、東京都全体で、財務局が主導的な役割を果たしながらぜひ頑張っていただきたいというふうに思っています。
 私たち都議会自民党も、都選出の国会議員と連携しながら国にしっかり物を申していきたいと思っておりますし、財務局としても、総力を集中してこの難局を乗り切っていただきたいということをぜひお願い申し上げたいと思っています。
 これは蛇足ですが、今国がやろうとしていることは、私は、国家としての責任放棄につながっていくとさえいえるものだと思います。特に、局長がおっしゃられたように、本当は縦で調整しなきゃいけない、いわゆる垂直調整の部分を水平調整で賄おうとしているというだけのすりかえの議論ですから、そんなことがまかり通っちゃいけないと思います。ですから、今、世界的な傾向というのは、財源保障、つまり、ナショナルミニマムの部分はきちんと国が保障するというのは世界の流れなわけですから、それだけはきちっと守っていかなきゃいけないんじゃないですかということをやっぱりいってもらいたいと思いますし、国もその責任を持ってやらなきゃいけないというふうに思います。
 先ほどから申し上げているように、これは一東京都の問題じゃないですから、要するに日本国全体の問題ですから、そういう自負を持ってぜひ頑張っていただきたいと思います。
 次の質問に移ります。
 これは契約事務の関係なんですけれども、六月二十日に建築基準法が改正をされまして、この改正によって審査が非常に厳格化をされております。それで、民間の建築工事は、国土交通省が発表した資料を見ても、かなり件数が落ち込んでおりまして、確認がとれている件数も落ち込んでいるし、当然、そうなれば、工事が着工している件数もどんどん落ち込んでくるということになっておりまして、せっかく我が国の景気が上向きつつあるといわれる中で、このことによって景気が減退をしてくるのではないかという指摘すら聞こえるようになりました。
 これは財務局の所管の部分ではないと思いますので、このことはこのこととして、それぞれのセクションで、ぜひ国にこういうことがないようにということを働きかけていかなきゃいけないんだと思いますが、実は、私が申し上げたいのは、東京都が発注する建築工事においても同様のことがもしかしたら起こっているのではないかという懸念があるので、今回、この財政委員会で、事務事業の質疑ということでさせていただきたいと思っています。
 これはどういうことかというと、今までの様式と都が発注するいわゆる公共工事、例えば都営住宅であるとか、また学校もそうでしょうし、そういう建物の工事も同じような、同じようなというか、全く同じ建築確認をとらなきゃいけないという制度に変わったわけですから、そういう意味では、確認がとれるのかとれないのか、また、とるまでにどのぐらいの時間がかかるのかというところに非常に懸念をする材料があるわけでございます。
 これから申し上げることは、六月二十日に建築基準法が改正をされる前の話ですけれども、以前に東京都の工事で、契約をしたのにもかかわらず、すぐに工事に着手できなくて、半年待たされたという事例があったというふうに聞いています。つまり、二月に契約をして、工事にかかれたのが八月だった。その間何をしていたかというと、事情はいろいろあったんでしょうけれども、契約をした工事業者は、仮囲いをして、安全パトロールの人間もつけて、半年間待たされていたわけです。ですから、そこには当然費用もかかっているし、いろんな意味で、待たされるということ自体が問題があるんだろうなというふうに思っているんです。
 まず最初にご質問したいのは、建築基準法が改正をされました。今後、財務局が発注をする工事は、契約をしてゴーサインが出たということが行われたときに、既に建築基準法による確認済み証が取得をされているというのが私は当然だと思いますけれども、それがとれないということが考えられるのかどうか、それがとれているのかどうか、そのことをまずお伺いしたいと思います。

○戸田建築保全部長 基準法の改正に伴う諸所の混乱につきましては、ご指摘のとおりかと思っておりますものですから、そのあたりにかかわる情報につきましては、私ども、日ごろからできるだけアンテナを高く広く掲げておりまして、私どもの業務に支障のないように努めているところでございます。
 そこで、今ご指摘をされました工事の契約と建築確認、私ども、基準法では、東京都ですとか区役所が建築主事を持っている官公庁で建築確認をすることを計画通知というふうにいっておりますものですから、建築確認という言葉のかわりに計画通知ということでご説明させていただきたいと思いますけれども、私どもが発注する工事は、この計画通知の審査の日程を勘案して、計画通知の提出予定をあらかじめ定めて設計等の作業を進めるなど、工事の契約日までに計画通知の確認証が得られるよう努めているところでございます。また、設計から工事発注までに時間的な余裕のある案件は、確認済み証の交付を得た後、工事の起工を行っているというふうにやっているところでございます。

○高木委員 今、民間の、建築基準法改正によって影響を受けている例えば設計それから建築工事、また構造設計というのもあるのかな、一つ、カテゴリーとしては。そういう方々のお話を聞くと、とにかく建築確認をとるまでに物すごい時間がかかっているわけです。それで、いろんな問題点が指摘をされておりますが、これは端的にいえば、改正された建築基準法が、姉歯事件によって、構造の問題から、改正されなくてもいいところまで改正をされていたり、一カ所直そうと思うと全部出し直しになってしまうとか、とにかく時間がかかるシステムになっちゃったというわけです。いたずらに時間がかかるシステムになっちゃった。
 私が先ほどもいっているように懸念をしているのは、もちろん都が発注する工事はそういうことがないように、時間的な余裕も見て、契約をしたらすぐにゴーサインが出せるようにしていただけるんだとは思いますが、しかし、ピアチェックも含めて、構造の部分なんかかなりいろんな修正が入ったり、それから、気がつかなかったところでチェックをされたりというようなことがどうもあるようでございまして、本当に予想以上に時間がかかっている。ですから、予想以上に時間がかかって、もし仮に、東京都が発注する工事で契約時に建築確認が取得をできていないというような場合になったときに、東京都はどういう対応をするんですか。

○戸田建築保全部長 計画通知に伴います確認済み証の取得がなされていないような場合に、発注者である東京都の事由により工事の一般的な準備期間を過ぎても工事着手ができない場合は、請負業者と協議の上、工事の中止等の措置をとるといった判断をいたします。
 工事の施工を一時中止させた場合は、必要があると認められるときには、工事の延長や工事の続行に備えた工事現場維持のための費用を負担することとなります。なお、負担する工事費の算出につきましては、公表されております公共建築工事積算基準に基づいて処理をするということにしております。

○高木委員 今の部長の答弁の中で工事の延長というお話がありましたが、工期の延長だよね。工期が延長されるということですね。つまり、契約のときに、いついつまでにやってくださいという工期が決まっているわけですから、待たされた分は要するに工期は延長していただくということにぜひしていただかないと困るんだと思います。
 ですから、そういう必要があると認められる場合、あるいは、東京都と契約者との協議の上という話がありましたけれども、ぜひこれは考えていただきたいんですが、通常の準備期間というのは当然あってしかるべきで、その準備期間を過ぎても確認がとれない、ゴーサインがおりなかったというところについては、発注者としての責任としてやっぱりきちんと処理をしていく。工期を延長する、あるいは違約金を払う、そういう仕組みをつくらなきゃいけないんだと私は思います。そうでなかったら発注者としての責任を果たせない。ましてやそのことが、発注者として責任を果たしていただけるとすれば、それは請負の方だって、それはもうきちんと請け負った方の責任として工期はもちろん守る、それからきちんとした工事をする。安全性も含めて、要するに、どこから検査をされても大丈夫なものをつくっていく、そういういい循環になっていくんだと私は思います。
 ですから、今回の改正建築基準法にはいろんな問題があると思いますし、私たちは、これはやっぱり究極的には法改正を求めていかなきゃいけないんだろうと思っていますが、これを一つの奇貨として、私は、発注者としての責任をきちんと、一番最初に、冒頭に申し上げた事例が聞こえてきているわけですから、そういうことが今後、このことによってまた改めてないようにぜひ努力をしていただきたいなと思っております。どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 以上で終わります。

○東野委員 私からは、反論の書について何点かお伺いしたいと思います。
 一部重複する部分がありますけれども、ご容赦いただきたいと思います。
 最近の新聞報道を見ていましても、都市と地方の格差是正などを理由として、東京を初めとする都市の財源を奪おうとするという動きが本格化しているわけでございます。東京都では去る六月に「大都市狙い撃ちの財政力格差是正論への反論」、これを公表されて、その後の経済財政諮問会議の議論などに対しまして一定の効果があったのではないかな、このように評価しているわけでございます。しかしながら、その後の参院選の結果を受けまして、特に地方の国会議員からは、都市の財源、特に法人二税を地方に横流ししよう、そういった動きが活発化してきておりまして、先ほど来お話があります総務省や財務省も検討しているようでございます。
 この際、まず初めに、確認も含めて、法人二税について、総務省、財務省両省が検討している案の内容と、できましたら問題点についてお伺いしたいと思います。

○真田主計部長 新聞報道等によりますと、都市と地方の税収格差を是正するという名のもと、財務省は、法人二税を国が一括徴収した上、法人の事業活動に関係なく、単に人口あるいは事業所数、従業員数などに応じて自治体に分配するといった手法を検討しております。これは、受益と負担という地方税の大原則に反する上、地方税を事実上国税化するものでありまして、地方分権にも逆行することになります。極めて問題が多いものでございます。
 一方、総務省は、地方税である法人二税と国税である消費税の同額を交換することを検討しております。
 いずれの案も、地方にとりまして基幹税である法人二税を減らすことにかわりはございませんで、自治体の産業振興等に対する動機づけを弱めることになりますし、また、地方交付税の算定上、現行制度を前提としますと、交付団体の税がふえても地方交付税が減るということになりまして、結局その分を国が召し上げるだけということになりますので、地方にとってはメリットがないということになります。

○東野委員 今お聞きしましたように、総務省案はもとより、財務省案に至ってはもはや地方税とは呼べないもので、地方自治をある意味では侵害するようなものである、このように思うわけでございます。
 東京都は、一次、二次にわたる財政再建プランを通じまして、ようやく財政再建を達成したところであるわけでございます。この間には、各種の施策の見直しはもとより、都民にも我慢をしていただいた部分もありますし、また都職員の給与カット等も、また大幅な人員削減、こういったことを行って、文字どおり血のにじむような努力を国や他の自治体に先駆けて行ってきた、こういったことがあるわけでございます。そのようにして生み出した都民のいってみれば果実を、都は富裕だからという理由で地方に配分するということを看過することはできない、このように思います。
 そういった動きに対しまして、先月、この反論の書を作成したわけでございますが、この中で、最後の方の結論にございます、地方が困窮から脱却するためには、「まず何よりも」という言葉を使われていますけれども、国による総合的な地域振興策を挙げているわけでございますけれども、地方が現状から脱却するのに真っ先に地域振興策の必要性を取り上げている、この理由と説明をお願いしたいと思います。

○真田主計部長 現在地方が困窮しております最大の原因は、国が三位一体改革の名をかりて地方交付税を大幅に削減したことでございますけれども、さかのぼって考えますと、これまで国が補助金あるいは交付税で地方を誘導する一方で、地方も国からの補助金あるいは公共事業に頼るという、国と地方がいわばもたれ合う構図から抜け出すことができなかったことにも原因があるというふうに考えております。
 過去、国が経済対策として行った公共事業の積み増しは、一瞬のカンフル剤にはなることがございましたけれども、抜本的な意味では、地方の自立に必ずしもつながっていないという側面もあったかと認識しております。
 こうした視点に立ったとき、地方が現在の困窮から脱却するためには、真の意味で地方が自立し、活性化することが重要でありまして、それには地方の自主財源の充実を図ることはもとより、地方が地域の特性を生かした地域振興に積極的に取り組める仕組みとその方策を国が責任を持って示すことが何よりも必要であるというふうに考えました。そういうことで、反論の書でも、一番初めにそういった観点からの振興策の必要性をまとめたものでございます。

○東野委員 非常に大事な点だと思いますし、また、私もそのように当然のことながら思うわけでございます。
 今回の反論の書の中で、東京が日本を牽引しており、そしてまた、東京への投資が滞れば日本全体に影響があること、こういったことが力説されているわけでございます。これまで、六月の反論の冊子などでも東京への投資の重要性が示されているわけでございますが、今回の反論の書では、世界における東京の地位や東京における施設の更新需要などが数字で記載されており、実感がわくものとなっているわけでございます。
 ただ、その中で気になりますのは、そういった例示に挙げられているのがいわゆるハード事業が多いこと。別のいい方をすれば、財源が奪われた場合、大きな影響が出るのはハード事業というようにも受け取られる部分がある。各種のソフト事業が重要なのは、これはあえていうまでもないことでございますけれども、ソフト事業に対しても、財源が奪われた場合、影響は大変に大きい、これは当然のことだというふうに思います。
 この反論の書の中で、繰り返しになりますけれども、ハード事業偏重ともとれる部分がありますけれども、実際のところ、どう局としては考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

○真田主計部長 今回の反論の書では、東京の需要の重要性を示す例といたしまして、日本を牽引する東京への投資が日本経済全体に大きな効果をもたらすことなどを示しておりまして、それをわかりやすくイメージしていただくために、道路ですとか橋梁ですとか空港ですとか、生活に身近でかつ規模の大きないわゆるハード事業を例示として掲げてございます。
 加えて、都が所有するインフラ資産につきまして、今後生じる膨大な更新需要、あるいは東京での旺盛な経済活動を支える都市基盤整備への対応がなされなければ、都民生活に大きな影響が出ることはもちろん、国全体にも影響を及ぼすということから、ハード事業の必要性を打ち出しております。
 一方で、先生からご指摘いただきましたとおり、都におけるいわゆるソフト事業につきましても、まさに都民生活に直結している重要な施策でございまして、今回の反論の書の中でも、都民の安全・安心を守る警察、消防業務についても例示させていただいているところでございます。
 このように、特段、ハード事業だ、ソフト事業だということではなくて、都民生活に影響を及ぼすことのないよう、都の財源を奪う動きに対抗していくという観点から、できるだけわかりやすい需要を例示として掲げながら、適切に反論していくことが必要であるというふうに考えております。

○東野委員 わかりました。できるだけわかりやすいように例示した、そのように理解いたしましょう。
 翻って、財源が奪われた場合ということで、今回初めて、財政再建団体への転落への危機ということが書かれているわけでございますけれども、その場合には、認証保育所や商店街振興など、影響を受ける事業の例として挙げられているわけでございます。仮にこれが本当だとすれば、都民生活に大変に大きな影響を与えるゆゆしき事態になるわけでございます。
 東京が財政再建団体に転落するとすれば、その影響は夕張市の比ではもちろんないと思います。この点に関する局の見解をお伺いしたいと思います。

○真田主計部長 万一、都から一兆円もの財源が奪われますと、当面は基金の取り崩しなどの財源対策によりしのいでいくこととなりますけれども、それにも限界がありますし、私どもの試算によりますと、都は数年以内に財政再建団体に転落してしまうことになります。
 財政再建団体に転落しますと、冊子でもご説明させていただいておりますし、また夕張市の報道にもございますように、提供するサービスは必要最低限のレベルまで引き下げられる一方で、住民負担も高額なものとなってまいります。また、国の指導監督のもとで財政再建計画に従わざるを得なくなりますので、地方団体としての主体性が著しく制限されることになります。
 そのような事態に陥りますと、先生からお話がございました認証保育を初めとしまして、都がこれまで力を入れてきた数々の先進的な取り組みができなくなりまして、都民生活に重大な影響が出るのはもちろんのことでございますし、また区市町村への財政支援も行えなくなりまして、区市町村の行政にも影響を与えることになります。さらには、首都高あるいは羽田空港への出資、貸し付けなどもできなくなるため、日本全体への影響も避けられないものでございます。
 このような事態は何が何でも阻止しなければならないというふうに考えております。

○東野委員 先ほどの部分にちょっと戻りますけれども、ハード事業が事例として多く挙げられているということは、こちらが別に弁護するわけでもないんですけれども、認識論からすれば、やはり目に見えたもの、そういったものを多くの方は認識していく、この観点からすればやむを得ないかなというふうに思いますし、また、そういうアプローチの仕方というか表現の仕方というのも、一つのテクニックとしても、また一つの表現方法としても大事な部分だというふうに思いますので、あえて私はそれにこだわらないということをつけ加えさせていただきたいと思います。
 最後になりますけれども、先ほども申し上げました、都は血のにじむような努力をして財政再建をなし遂げたところであるわけでございますけれども、今話がありました、財源を奪われたことで財政再建団体に転落するということは絶対にあってはならないわけでございます。日本の首都が財政再建団体になるということは、地方自治制度そのものの崩壊を意味するだけではなくて、これまで築き上げてきた都民生活に大変に大きな影響を及ぼす、とんでもないことだというふうに思います。
 今回の反論の書では、都が見解を主張するという点で大変重要なものであります。しかしながら、本来の目的は、この反論の書を出すことではなく、都の財源を守り、ひいては都民の生活を守っていくということで当然あるわけでございます。ともすれば国と地方の財源の奪い合いや権限争いに見られがちなこういった問題は、都民の生活を守る戦いであるということが、行政もまた議会も含めて、東京都の総力を挙げた戦いのためのキーワードというふうに考えるわけでございます。
 都民の生活を守るという今申し上げました戦いに向き合っておられる財務局長の決意を最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。

○村山財務局長 今、財源問題という形でお金の問題としてあらわれている現在我々が直面している問題でありますけれども、それは、お話しいただきましたように、日本全体のそれぞれの地方地方で暮らされているそれぞれの国民の生活をどうしていくのか、経済的な暮らしをどうしていくのかというような問題であるわけでございますし、それが、東京というところについていえば、東京で暮らされている、あるいは働いていらっしゃる都民、住民の方々の暮らしをどうしていくのかというところにかかわる問題でありまして、まさしく生活の問題というふうに認識をしなければいけないというふうに考えてございます。
 思い起こせば、都財政という観点から立ちますと、この間、私も結構長い役人人生をやっておりますけれども、ほとんどの期間は、苦し紛れのいろんな手練手管を使って財政をとにかく何とかしのいでいこうという期間でございました。それは、今やっている必要不可欠な事業をしっかり守るために、じゃ、どの部分をやめるなり減らすなりしてもいいだろうか、あるいは、ちょっと後におくらせてもいいものがあれば、おくらすことができないだろうかというようなことをやりながら、経済変動、景気変動の中でいろんなことが変化する中にあって、絶対に実施しなければならない都民サービス、事業をしっかり行いながら、必要な事業をまた新しく始めていくにはどうしたらいいかということに、微力ながら一生懸命やってきたものでありまして、そういう意味では、東京都の行政全体が、そういうふうにしていろいろご批判をいただきながら努力してきたというふうに思います。
 そうした中で、ここに来て、過去のさまざまな負債といいましょうか、隠れ借金というようなものも含めて、何とか前の方を向いて努力をしていく余地が少しできたかなというのが現時点の、有史以来初めてというとやや大げさかもしれませんが、そういうような時期に今到達しているということでございまして、その時期に我々は、今ご議論いただいているような問題に直面をいたしているわけでございますけれども、そういう中で、ご指摘いただきましたような財政再建団体に転落をする、あるいは転落の危機が招来するであろう状況に直面するならば、やはりその中でまた、じゃ、施策そのものについてどういうふうに改めて取捨選択を、優先順位を定めながら考えていかなければならないということになるわけでございまして、そうなってくると、勢い、前向きの施策を考えるよりも、どうしてもやらなければならないものは残して、ほかのものはどうにか縮小したりできないかなというふうに目が向くことになっていくというのは、「十年後の東京」をこれから目指していこうという今日においては、東京の都民の暮らしにとって非常に大きな障害になるでありましょうし、日本全体を牽引していく東京の役割という点でも、ソフト、ハード両面にわたってさまざまな問題が生じるものというふうに私は懸念をいたしておりまして、そういう意味でも、単なるお金の問題ということではなくて、首都東京のありようの問題、そこに暮らし働く都民の生活の問題として、この問題にしっかり取り組んでいきたいというふうに改めて決意をいたしている次第でございます。

○鈴木委員長 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後二時五十四分休憩

   午後三時十分開議

○鈴木委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○曽根委員 それでは、私から、大きく二点、お聞きしたいと思います。
 一つは、前定例会で私は新たな会計制度による財務諸表の活用について質問させていただきましたが、その続きというわけじゃないんですけれども、コスト計算書などの活用について何点かお聞きしておきたいと思います。
 前回申し上げましたように、障害児教育の現場である養護学校のホームページにまで生徒一人当たりの行政コストを載せているというふうな問題については、余りにも無神経である、コスト計算のひとり歩きを戒めて、活用を慎重かつ適切な範囲に抑える何らかのルールや規制が必要だということを申し上げたわけです。
 今回、これとの関連で、行政コスト計算の仕組み上、同じ行政サービスであってもコストが違ってくる問題について、確認のため資料をお願いいたしました。出していただいた資料で、都立の学校施設でA校とB校、事業所ということで、都税事務所だということですけれども、XとYということで、平成の時期に新設もしくは建てかえたものと昭和三十年代ごろの古い建物を比べれば、当然のことながら残存簿価でも大きな違いがありますし、減価償却費も数倍もしくは十倍ぐらいの違いが出てくるということがわかります。
 この違いが、この間、私、問題にしました行政コストとしての計算上の額の違いに出てくることになるんだと思いますが、いかがでしょうか。

○真田主計部長 ただいま先生お話しいただきましたとおり、施設の建設時期あるいは規模などによりまして減価償却費の多寡に違いが生じて、コスト全体の水準に影響を及ぼすということは事実でございます。
 しかし、そうした施設ごとの状況も含めまして、さまざまな判断材料を踏まえて、事業運営のより効率的、効果的なあり方を検討することは重要だというふうに考えておりまして、状況が違うからコストを比較すべきでないというのは、私どもとしては容認できない考え方です。

○曽根委員 私、コストを比較すべきじゃないなんていっていないわけで、一定の限界があるということを踏まえた上での活用が必要だと申し上げているわけです。
 ここで出てくるのは、恐らく減価償却費が毎年違っているわけですよね。例えば、A校、B校でいうと三千万円ぐらいですか、違いがあるわけで、これが生徒一人当たりのというふうな計算をこの間のようにやれば数万円の違いになるのかな。ということで違ってくるわけで、しかし、これからコスト主義が余りにも徹底されると、数%程度のコストの違いにきゅうきゅうとすることになりかねないから申し上げているわけです。そんなことがあってはならないし、大体、都のほとんどの事業の場合、その事業を行っている建物の築年数の違いで、行政サービス、教育なり福祉なり都税事務所の仕事なりにサービスの違いが出てはならないし、実際ないわけです、そんなことは。
 ということでありますので、こういう点でも行政コスト計算には限界があるということを踏まえて、したがって、それぞれの行政分野の本来の使命を十分に果たしていくという観点に立てば、財務諸表を使って、例えば学校などの施設ごとのコストを比較して事業のあり方を利用者に問うというやり方は慎むべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○真田主計部長 ただいま申し上げましたとおり、個別事情に応じて減価償却の状況が違うというのは事実でございますけれども、なぜそういう違いが出るのかというのは当然説明した上で、そのコストが妥当なのかどうか、それをご判断いただくためにそういった情報を提供することは意義あることだというふうに考えております。

○曽根委員 相変わらず意義あることだとおっしゃるので、そういう説明がされないまま、本当にだれでも見られるような養護学校や都立の個々の施設のホームページにまで載っちゃっているから私は申し上げているわけで、そういう点は改めて強く申し上げておきたいと思うんです。
 それで、私、都政全体にわたって、減価償却費も含む資産情報によるこういう財務諸表が作成されたことで、むしろだれしもが期待をするといいますか、求めたいと考えるのは、今急務とされている膨大な都有施設の今後の更新費用を割り出していく上で大きな根拠となるデータが出てくるんじゃないかということじゃないかと思うんです。膨大な都有施設がある、その資産価値はどの程度なのかということがいろんなメジャーでこの間出されましたよね。
 現在、財務局は、大規模施設の更新を図るための改築や改修の方針をつくっているというふうに聞いていますけれども、この財務諸表が出たことでこうした作業が促進されたのではないかと思うんですが、現状についてお聞かせいただきたいと思います。

○真田主計部長 前回の財政委員会でも桜井委員の方からのご質問にお答えしたとおりでございまして、今年度、大規模施設等の改築、改修計画について各局に調査を実施しまして、現在、この調査を踏まえまして、大規模施設等の改築、改修に関する実施方針の策定に向けた検討を行っているところでございます。
 財務諸表におきまして得られたデータ、それらも当然参考にしながら、今現在作業を進めているところでございます。

○曽根委員 九月にいただいた決算の参考書の財務諸表では、都有資産の減価償却額について、全会計を合わせると当期償却額が一千四百九十三億円余り、当期末減価償却累計額が二兆三千六百億を超える額というふうになっています。全会計といえば公営企業会計も入りますから、都民からの料金でもって施設を賄うのは除いたとしても、一般会計でも、当期償却額は一千八十五億余り、当期末減価償却累計額は一兆七千億を超えるという状況ですよね。
 この数字から見ますと、これはもちろん簿価であって、減価償却方式によっても違いが出るのは承知の上で、また、現有施設をすべて維持更新していくのかどうかとは限らないということも承知しているわけですが、都有施設を更新していけば、平均してこれから年間で一千億円規模の金額がかかってくるんだというふうに推定してよろしいんでしょうか。

○真田主計部長 ただいま先生の方からお話ございましたとおり、施設が建設された年次とか仕様とかによりまして、もともとの減価償却のもととなる建設コストも大きく異なってまいりますし、また、そもそも建設コストと改修コストが同額になるということもございませんし、また、すべての施設を更新するわけでもございませんので、改修経費と減価償却累計額が同額になるということはない、これは当然そうなるかと考えておりますけれども、ただ、今後の更新需要を把握するための一定の目安ということにはなるというふうに考えております。

○曽根委員 目安ということですけれども、いずれにせよ、今後、都有施設の維持更新だけでも巨額の費用が必要となることは、この財務諸表の一つの数字からも容易に予想され、当然ながら計画的な改築、改修が必要になると思います。
 私、その際、大変危惧しているのは、今都が大規模施設についての更新を検討しているということで、まかり間違っても、大規模なものが優先されて、小規模なもの、特に都民生活に密着した都営住宅だとか学校その他、都民の身近なものが、相対的に小規模なものですね、後回しや、場合によっては、更新費用を軽減するためということで施設の統廃合が進められていくことがあっては、これは全く本末転倒であって、これは絶対あってはならないと考えますが、いかがでしょうか。

○真田主計部長 都民から預かりました貴重な税金を使って私ども行政サービスを行っているわけでございますので、その税金を使うに当たりましては、費用対効果を最大限発揮する、それはもう当然のことだというふうに考えております。
 そういった観点から、都有施設の改築、改修につきましても同様の考え方でございまして、すべての施設を機械的に改築、改修するということではなくて、やっぱり時代状況の変化あるいは都民ニーズの変化に対応して、その時々に合った費用対効果を求めて必要な施設を精査することが必要だというふうに考えております。
 それは単に費用だけで判断するのではなくて、費用と行政効果を比較して、それで更新すべきかどうかということを判断すべきだというふうに考えておりまして、費用が多額であっても効果が大きければ当然実施することになりますし、また、費用に対して効果が少なければ、当然見直すということにもなろうかというふうに思います。
 必要な施設を精査する取り組みというのは、単に費用面だけでの効率性だけではなくて、行政目的ですとか効果ですとか、そういったさまざまな要因を総合的に判断して行っていくものでございまして、これは行政として当然そういうふうにしなければならないというふうに考えておりますので、先生ご懸念のそういった点はないというふうに考えております。

○曽根委員 その答弁、非常に大事ですので、よく押さえておいていただきたいんですが、しかし、実際には、都営住宅など小規模なものは、区市町村が受け取らない場合、今、次々と住民はほかの団地に立ち退かせて、移転させて、除却が進んでいるわけなんです。北区でも、田端とか滝野川の地域の住宅で、これから三カ月ぐらいでほかの団地に移ってくれということが都からの通知が来て、みんな混乱しているという現状が実際あるわけです。
 ですから、私が危惧している点は、一部先取りが、これは局の方針とかいろいろあるんでしょうけれども、先取りされてきている実態が見かけられるものですから、くれぐれも財務局がそうしたことの、都民にとってどう大事なのかということの観点を抜きにした、いわば企業的な効率化のみで旗を振るようなことがないように、くれぐれもこれは申し上げておきたいと思います。今都民が求めているのは、都心の大規模施設優先ではなくて、より身近な、生活に欠かせない都有施設の耐震化だとか更新だということも改めて強調しておきたいと思います。
 次に、財政再建推進プランについても資料をいただきました。第一次、第二次の財政再建推進プランが終了して初めての決算が先日出されたわけです。一次、二次を通じて、いつもお聞きしてはいますが、プランの見込みと実際の税収の違いは、最終的に確定された数字では幾らの金額の違いが出たんでしょうか。

○真田主計部長 平成十一年度に策定しましたいわゆる第一次の財政再建推進プラン期間中、平成十二年度から十五年度までの四カ年でございますけれども、そのときの都税の決算額は十六兆五千五百七十四億円でございまして、収入見通し十五兆八千四百億円に対しまして七千百七十四億円の増でございます。
 また、第二次財政再建推進プラン、これは十六年から十八年度までの三カ年でございますけれども、同様に、決算額が十三兆七千七百六十一億円でございまして、収入見通し十一兆三千七百億円に対しまして二兆四千六十一億円の増となっております。
 これらを合算しますと、都税決算額が合計で三十兆三千三百三十五億円、収入見通しが二十七兆二千百億円でございますので、結果として三兆一千二百三十五億円の増という形になってございます。

○曽根委員 三兆一千二百三十五億円の、それぞれのプランの見込んだ時期は違いますが、トータルすると見込みから増額があった。これと、それぞれのプランの中でさまざまな見直しが計画されて実行されたわけですが、例えば都民施策の見直しという点でいえば、第一次プランで二千四百億円、これは一〇〇%以上達成しています。第二次プランでは一千二百億円、これは九四・五%達成していることになっているんですが、合計した額よりもはるかに大きい金額が、約四千五百億円ですよね、七年間でならしても。これがいわばプランの見通しよりも増額されていたということは、これは本当に都民要望をここまで削るどころか、むしろ増額、拡充さえ可能だったことが決算としては明らかになったと思うんです。
 都民施策の見直し問題は、先日、決算委員会で植木議員が質問したので、ここでは繰り返しませんが、私、もう一つ、見直しの中で大きな位置を占めていた内部努力について、きょう、ちょっと何点か聞きたいと思うんです。
 資料の内部努力項目、財政プラン、財源確保のですね、目標額一千億円、その中の第一に給与関係費の削減というのが出てきます。これは、正規職員の給与の引き下げとか定数削減はもちろんですが、非正規の都職員にも及んでいるわけです。
 それで、ちょっと具体にお聞きしたいんですが、都の臨時職員、つまり一般的にいえばアルバイト、これの大部分の給与は時給八百円を切っていると思うんですけれども、現在幾らで、どこが決めているのかお聞きします。

○真田主計部長 現在の臨時職員の時給というか賃金の額でありますけれども、この十月十九日が直近でございますが、一日八時間としまして六千三百五十円でございます。
 この賃金の決定に当たりましては、基本的には、予算の範囲内におきまして各局が職務内容に応じて決定しているところでございます。

○曽根委員 各局が決めているといいながら、実際にはほとんどの方が日給六千三百五十円、時給にすれば七百八十九円で働かされているというのは、どこにもとの数字があるんでしょうか。

○真田主計部長 ちょっと先ほど答弁でご説明が漏れて恐縮ですけれども、この六千三百五十円の根拠となっていますのは、基本的には、私ども、各局が予算を見積もるに当たりまして参考単価というのを示しておりまして、そちらで、賃金の参考単価ということでお示しした数字がその数字でございます。それに基づきまして、最終的にはそれを参考にしながら各局が決める形になりますけれども、結果として各局がそれを適用してやっているというところでございます。

○曽根委員 失礼しました。さっき六千三百五十円というお話でしたね。これは、実際の実施は来年度の予定の金額じゃなかったかと思うんですが--いや、いいです。そうしますと七百九十四円ですよね、時給がね。
 どちらにしても八百円を切っているわけですが、今、民間の動向などを参考にしているというお話、それで参考単価をつくったものが、実際には各局がそれを使っているというお話がありましたが、八年前、平成十一年までは、日給六千五百六十円、時給八百二十円だったんではないでしょうか。

○真田主計部長 八年前、平成十一年度は六千五百六十円でございます。

○曽根委員 六千五百六十円、時給八百二十円だったわけですね。民間の企業は、この間、八百円台ではなかなかアルバイトも雇えないということで、大体九百円前後まで上がってきているんですが、実際には、東京都の方は逆にこの八年間で下がってきて、いろいろでこぼこはありますよ、去年よりはことしはちょっと上がったんでしょうけれども、それにしても八百円を切っている。
 ほかをちょっと調べてみたんですが、都内の区市町村で平均が八百五十円ぐらい。東京都よりも臨時職員の賃金が低いのは奥多摩町と日の出町のみです。財政力豊かな東京都が何でこんなに低いのかということなんです。
 臨時職員といえども労働者ですから、その労働者の賃金を決めるのに、財務局が数字を出すと、それが全部ひとり歩きで、全部ほかの局がその金額を使って予算を計上するからそのとおりになっていく。結局、働く人を一人前に暮らせるような金額で雇うという形で検討されていないじゃないかというのが、私、率直な実感なんですけれども、少なくとも、今いわれている千円とはいかないまでも、都内の自治体の平均八百五十円などを参考にして大幅な引き上げが必要だとは思いませんか。

○真田主計部長 私どもの参考単価でございますけれども、これにつきましては、国、他団体の賃金状況も参考としておりますし、また都の人事委員会の勧告内容なども参考にしながら、最終的にはそういったものと職務内容とをあわせまして、予算編成上の参考単価という形で各局にお示ししているところでございます。
 ちなみに、平成十一年からの数字を先生おっしゃられていますので、平成十一年から十九年度まで参考単価がどうだったかというのをちょっと私も見てみましたけれども、この間、参考単価自体は、三・八%、平成十九年は下がっておりますけれども、例えばその間のベア率を見ますと、七・五%下がっておりますので、そういう意味からすると、ベア率の下げ幅よりも今回の賃金単価の下げ幅の方が少ないということでございまして、そういう意味からすると、それなりの、職務内容等々、あるいは、他団体、民間の賃金状況なんかも加味した妥当な水準になっているというふうに考えております。

○曽根委員 少し下がり方が人勧よりも少ないから、それよりはましというお話はちょっといただけないんですけれども、もともとベースが低い上にまた下がっているわけですから。民間と本当にまともに比較した上でも、それから他の自治体と比較しても余りに低過ぎる。この金額は、私どもは、どんな職業であっても時給最低千円はということを政策で掲げておりますが、少なくとももっと大幅な現状からの引き上げが必要だというふうに申し上げたいと思うんです。
 まさにこれは、さっき血のにじむ努力とありましたけれども、実際は血をにじませているわけで、血がにじんでいるのは働いている方だ、都民ももちろんですけれども、ということは申し上げなきゃならないと思うんです。
 それから、都の雇用している職員もなんですけれども、もう一つあるのは、コスト管理の徹底ということは、委託で出している事業などについてコストを見直していくということだと思うんですけれども、その一例として、私たちが仕事をしております議会棟、この議会棟の清掃委託の費用が相当下がっていると思うんですが、この五年間の推移についてお知らせいただきたい。

○岡沢参事 議会棟に関します建物の清掃委託費でございますが、平成十四年度は九千七十二万円、十五年度は八千六百七十三万円、十六年度は四千四百十万円、十七年度は約四千六十四万円、昨年十八年度は約二千九百九十四万円となってございます。

○曽根委員 平成十四年、二〇〇二年度に九千万円以上だったものが、平成十八年度、二〇〇六年度、昨年ですね、二千九百九十万円と三千万円を切っているわけです。三分の一以下に下がっているわけですが、正規の雇用ではとても落札できない金額になっていると思うんです。実際、今働いている方々は全部アルバイト雇用だそうで、そういう会社でなければ入札では落とせないという実態です。
 都は、一般的にいえば、都内企業の雇用については、雇用の安定とか正規雇用を呼びかけていると思うんですけれども、実際は、自分のところで契約して仕事を任せている会社には、結果として非正規雇用の企業しか残れない仕組みに現になってきているという点で、先ほどのアルバイトの安過ぎるという問題も含めて、これこそ本当に官製ワーキングプアを東京都が率先してつくり出してきているということにはなりませんか。いかがでしょうか。

○岡沢参事 ただいまお尋ねの契約金額が落ちている理由等でございますけれども、清掃業務委託経費につきましては、都民からお預かりしております貴重な税を効率的に用いるために、これまでも、清掃回数の見直しといった工夫を重ねてコストの縮減を図ってきたところでございます。
 契約金額が低下してきた原因につきましては、これは入札でございますので、入札に参加した企業が、清掃方法でございますとか機材の選定等につきましてそれぞれ工夫に努めたということに加えて、入札に当たって、企業の経営戦略上の思惑など、さまざまな要素があったものと考えております。
 非正規雇用を生み出していないかというお尋ねでございますが、業務委託契約でございますので、これは、委託者が求めるサービスを受託者が契約に沿いまして提供するということを目的とするものでございます。そのサービスをどのように提供するかということは、受託者の判断にゆだねられているものでございます。したがいまして、サービスの提供の際に従業員の雇用形態をどのようなものにするかといったことは、受託者側の経営上の問題に属するものと考えているところでございます。

○曽根委員 公共の契約で、そういうことだけで、きれいごとで済まされる実態じゃないということなんです。
 例えばこの議事堂の清掃についてなぜ取り上げたかというと、平成十五年度までは、東京都弘済会、財団法人ですよね、ここが受けていたわけです。それでも、その間に半分ぐらいに額が落ちたんだけれども、弘済会は頑張って引き下げて入札で勝ち残ったんですが、その後さらに入札額が落ちて、現在三千万円を切っていまして、ついに負けたわけです。
 東京都弘済会というのは、財団法人であることもあるんでしょうが、前はこの都庁舎の清掃で障害者も雇っていたんですが、それが維持できなくなったわけです、半分ぐらいに下がっちゃったから。さらに下がったので、結局、都庁関係の清掃、ほとんど仕事を失った。下水やそれから水道局の仕事もなくなって、ついにもう清掃事業から全面撤退するということで、ことし、全員解雇、百五十人の清掃部門、整理解雇を労働組合に提案したということで、総務部長にもお話を伺ったんですが、本当に身を切る思いだけれどもしようがないんだと。ほかの民間企業は全部アルバイトだから、とても正規雇用では太刀打ちできない、そういう実態になってきているんです。組合としても、労働者がほかの企業で生き残るためにはアルバイトにならなきゃならない。正規雇用で雇ってくれる清掃会社なんかもうどこにもない、そういう状態にまでなっているわけです。
 こうした事態をやっぱり東京都が率先して進めていいのかという問題として、改めて、契約条件に正規雇用を行っている会社などの条件を入れるような方向で検討できないものでしょうか、これは。

○新田経理部長 今お話ございました清掃委託など、都が発注します業務委託契約におきましては、あくまでも、業務内容を仕様書、図面等に明示いたしまして、受託者におきましては、明示された業務内容を契約書に基づきまして適切に履行していただくというものでございまして、最終的には検査に合格することで履行が完了し、委託の目的が達成されるということになっております。
 入札契約の条件、これはなかなか厳しいものがございます。雇用形態など、企業内のマターに属します労働条件等につきまして、発注者として契約条件とするということで関与すること、これはなかなか適当でないというふうに考えております。

○曽根委員 今まで例が余りないのは事実です。しかし、清掃委託だということで、清掃のできぐあいはいろいろ検査するでしょう。だから、余り安く落とし過ぎたところは一回だめになった場合もあるというふうに聞いていますが、でも、ちゃんとやるように検査していけば、その面ではレベルは落ちないでしょう。しかし、最後は、そういう場合には労働者の賃金にしわ寄せがいっちゃうわけです。会社としての保険もない、国民健康保険と国民年金だけで雇われているという方が一生懸命仕事をしていますよ。だけれども、時給八百五十円だというんだから。そういう実態を都庁みずからつくり出しちゃいけない。同じ都庁で働いているのに、我々議員だとか都の職員の方々と十倍以上も賃金が違う、こんなことでいいのか。
 貴賤の差別はないといったって、現に差別が物すごくあるという実態があるわけで、そこは私、改めて、難しいことはいろいろあると思いますよ、隘路があるということはわかりますが、しかし、これからはやっぱり、きちんとした雇用を行っている会社がちゃんと正当な仕事をし、負託にこたえる仕事をするんだというルールをつくっていく必要があるということを強調したいと思います。
 きょうは内部努力問題についてちょっと質問したんですが、東京都の第一次、第二次プラン、さっきもいいましたけれども、血のにじむ努力というのはやっぱり都民や職員の犠牲の血だと思うんです。そういうことでもって財源をつくり出して、そして今、財源に余裕ができた。また、景気もよくなったので、大手を中心にして法人税もふえてきた。その財源がまた、ほかの自治体との関係で摩擦が問題にされているということだと思います。
 それで、反論ペーパーについても一問だけちょっとやっておきたいんですが、私、今回の「都市と地方の共倒れを招く『法人二税の格差是正策』に反論する」というこの文書で、中身で私たちがもっともだなと思う点ももちろんあります。それから、前回、私が指摘した東京の昼間流入人口の問題も新たに入れていただきました。
 ただ、結論が--その前に、私たちの基本的な立場としては、一つは、やはり国の責任として考えるべきは、先ほどどなたかいいましたけれども、ナショナルミニマムとして最低限国が責任を持たなきゃならない義務教育費とか、それから福祉の補助金などについて大幅に削り込んだというこの間の財源調整、交付金の引き上げなどについてはもとに戻すべきだということと、同時に、それでもなおかつ、東京都の昼間人口など、その他の大都市需要を考えてもなお東京都が財政的にはやはり差がある、地方との間に。ここは、国の関与ではなく、自治体間の自主的な努力で調整をする方法をやはり協議していかなきゃならないということは、都税調を初めとして申し上げてきたので、それをまず申し上げておきたい。
 それに対して、東京都の結論なんですけれども、一七ページに、地方の自立を確立するために、小手先の対策ではなく、財政的に自立できるよう、消費税の税率の引き上げ、国と地方との配分についての抜本的検討に直ちに入ることというふうにあるんですが、少なくとも、東京都の自分の財源は手をつけられたくない、自分の懐は痛めたくない、そのために国民に対して新たな増税を求める。それも、かねてから申し上げているように、庶民の重い逆累進の消費税を第一に掲げるというのは全くの本末転倒で、こういう考え方が都民に受け入れられるというふうに考えているんでしょうか。

○真田主計部長 消費税の問題ですから、税制度ですとか、あるいは税率とか、そういう問題に関することにつきましては、私ども、お答えする立場ではございませんので、私どもの立場とすれば、財政運営の観点からお答えしたいというふうに考えておりますけれども、今回の国の議論では、限られた地方税のパイの中で大都市の税を地方に回そうとしているけれども、そもそも地方税と地方交付税を合わせた一般財源ベースで見れば、既に偏在は交付税によって十分均衡されている。それにもかかわらず今地方が困っているというのは、その最大の原因は、国が三位一体改革の名のもとに交付税を大幅に削ったことにあるんだというふうに考えておりますので、まずはこれを国の責任で復元するというのが重要だというふうに考えております。
 ただ、本質的な問題である地方の自立に向けた検討をするに当たりましては、地方税財源の充実を真剣に考えるということをするならば、今の限られた地方税の中だけで議論していては、問題の本質的な解決にはならないんじゃないかというふうに考えておりまして、本質的な解決を検討するのであれば、地方税財源全体のパイをふやすことも視野に入れた検討が必要じゃないかというふうに考えていまして、そのための方策の一つとして、今回、消費税率の引き上げですとか、国と地方の配分の見直しとかいった方策を提言したものでございまして、そういう観点からこのくだりが出ておりますので、決して大都市の税源を守るためにそのことを提言したということではございませんので、ご理解いただきたいと思います。

○曽根委員 そうはいっても、前の方は全部、大都市財源をしっかり守るという話があって、最後に確かに交付税の問題もいっていますが、具体的な財源対策として、将来に向けて消費税、これは到底受け入れられませんよ。
 最近、新聞の方で世論調査をやって消費税の論議が出てきたものですから、社会保障財源に充てるといったって消費税増税に納得できないというのが五四%。増税で社会保障に対する反発だというふうに新聞にも書かれているぐらいで、ましてや、東京都の税財源を守るために、国民の皆さん、都民の皆さん、消費税で泣いてくださいなんて、どこが、おこがましくていえるかという問題だと思うんです。
 まして、今、原油の高騰で大変なわけです。私も今ちょっと原油高騰問題もいろいろ調べているんですけれども、とにかく商店街の中で、少ないところでも五%、多いところは二〇%から三〇%の資材値上げで転嫁は困難、商売をもうやめなきゃならないというところが続出しているわけです。こういうときにこういう消費税の話を持ち出すというのは、本当に都民のことを考えていないというふうに、この結論については全くいただけないということを申し上げておかなきゃなりません。
 以上で質問を終わります。

○鈴木委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○鈴木委員長 異議なしと認め、事務事業及び報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後三時四十七分散会