財政委員会速記録第七号

平成十九年六月二十一日(木曜日)
第二委員会室
   午後一時一分開議
 出席委員 十四名
委員長山田 忠昭君
副委員長尾崎 大介君
副委員長橘  正剛君
理事村上 英子君
理事酒井 大史君
理事曽根はじめ君
伊沢けい子君
山口  拓君
鈴木 隆道君
佐藤 広典君
高木 けい君
藤井  一君
桜井  武君
高島なおき君

 欠席委員 なし

 出席説明員
財務局局長村山 寛司君
経理部長新田 洋平君
参事竹本 節子君
主計部長真田 正義君
財産運用部長塚本 直之君
建築保全部長戸田 敬里君
参事岡沢  裕君
参事山本 康友君
主税局局長熊野 順祥君
総務部長加島 保路君
税制部長松田 曉史君
調整担当部長堀内 宣好君
参事宗田 友子君
課税部長安田 準一君
資産税部長吉田 裕計君
徴収部長宮下  茂君
特別滞納整理担当部長松原 恒美君
会計管理局局長三枝 修一君
管理部長細野 友希君
警察・消防出納部長堀切喜久男君
参事安藤 弘志君

本日の会議に付した事件
 会計管理局関係
報告事項(質疑)
・平成十八年度資金管理実績(年間及び第四・四半期)について
・平成十九年度資金管理計画の策定について
 主税局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百三十七号議案 東京都都税条例の一部を改正する条例
・第百三十八号議案 東京都納税貯蓄組合補助金交付条例の一部を改正する条例
・地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例の報告及び承認について
報告事項(質疑)
・宿泊税五年間の実績と今後のあり方について
 財務局関係
報告事項(説明・質疑)
・議案の撤回について
付託議案の審査(質疑)
・第百五十三号議案 平成十九年度若洲橋鋼けた製作・架設工事請負契約
報告事項(質疑)
・大都市狙い撃ちの「財政力格差是正論」への反論について
・「今後の財産利活用の指針」について

○山田委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、財務局関係の報告事項の聴取、主税局、財務局関係の付託議案の審査並びに会計管理局、主税局、財務局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 なお、付託議案中、契約議案につきましては、議長から事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございますので、ご了承をお願いいたしたいと思います。
 これより会計管理局関係に入ります。
 報告事項、平成十八年度資金管理実績(年間及び第四・四半期)について外一件の質疑を行います。
 本件については既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 ご発言をお願いいたしたいと思います。

○鈴木委員 それでは、質問に入ります。
 さきの第二回定例会開会日の所信表明で、知事は、昨年四月からは複式簿記・発生主義に基づく全く新しい公会計制度を導入し、行政のあり方そのものを根底から変革する試みを進めるなど、質的な行革にも先駆的に取り組んでおりますと述べられました。
 さらに、一昨日の我が党の代表質問においても申し上げましたように、都で取り組まれたこの公会計制度改革は、まさに本質的な改革であり、地方自治体のあり方をも変えていく画期的なものであると確信をしています。その意味においては、都が全国で初めて複式簿記・発生主義会計を導入した意義は大きいものと考えます。
 ただ、職員の皆さんにとっては、なれ親しんだ官庁会計方式から、頭を切りかえ、複式簿記の会計処理に的確に対応するのは、決して容易なことではなく、いろいろとご苦労も多かったのではないかというふうに推察するところであります。
 これから新公会計制度による初の財務諸表が作成、公表されることになりますが、すべてがシステムにより自動出力されるわけではなく、人の手で照合、入力する作業が必ず必要となるはずです。そこで、財務諸表の作成状況や今後その中で示される内容について、順次質問したいというふうに思います。
 まず最初に、全国初となる財務諸表の作成に向け、庁内各局は現在どのような状況なのかを伺いたいと思います。

○安藤参事 これまで、会計管理局では、職員向けの説明会やTAIMS掲示板での情報提供、複式検査の実施など、複式簿記による会計処理が適切に行われるよう取り組みを行ってまいりました。
 制度導入当初は、各局からの問い合わせも多くございまして、事務処理に時間を要することなどがありました。特に、財産につきましては、財産情報システムで管理している膨大なデータとの照合が不可欠でございまして、これまで財務会計システムとのデータ照合作業を繰り返し実施してきました。また、建設中の資産が完成した際に、本資産への振替業務を行いますけれども、それを迅速かつ正確に行うのに手間取る面もございまして、これまで的確な処理を行えるよう努力を重ねてまいりました。
 導入から一年以上が経過しまして、ようやく各局職員も複式簿記に関する基礎的な知識を習得して、財産についてもデータの精度が向上してきたところでございます。
 今度、五月末に出納整理期間が終了いたしまして、本格的な決算作業を始めるに当たり、六月上旬に各局実務担当者向けの財務諸表作成説明会を開催したところでございまして、複式の仕訳が正しく行われているかの点検や、公有財産などとのデータの照合、引当金など非現金項目の算定など、現在、正確な財務諸表の作成に向けて、鋭意取り組んでおるところでございます。

○鈴木委員 財務諸表の作成については、全国でも前例のない初めてのことで、職員の皆さんも大変ご苦労されていると思いますが、他の自治体に範を垂れる意味でも、ぜひ頑張って取り組んでいただきたいというふうに思います。
 ところで、一昨日の会計管理局長の答弁では、今回の決算において、一般会計及びすべての特別会計について、会計ごと及び局ごとに財務諸表を作成し、さらには、事業別の情報についてもわかりやすく示していくため、各局と検討を進めると答弁をされています。
 しかしながら、都では、各局においてさまざまな事業が展開されているところであり、網羅的に対象とすることには無理もあると考えますが、事業別の情報についてはどのような視点から事業を選ぶのかを伺います。

○安藤参事 先生お話しのとおり、都においてはさまざまな事業が展開されております。それらをすべて示していくのは困難でございます。そのため、数多くある事業の中でも、複式簿記・発生主義会計の視点で効果的な分析が期待できる各局の主要な事業を対象に示していきたいと考えております。
 今後、財務局を初め、関係各局と具体的な事業の選定について調整を図ってまいります。

○鈴木委員 今、最後に答弁されたように、関係各局との具体的な事業の選定というのは、相当緻密にしていかないと、漏れがあるとまた、諸表に対してもいろいろな疑問が出たり、計数の整理とか、そういったことで難しさが出ると思いますので、その辺は本当に慎重にお願いしたいとも要望しておきたいと思います。
 そうした中、事業別の情報も、ただ数字が並んでいるだけでは、その事業がどういう状況なのか、今後どうすべきなのか、実際のところがよくわからないように感じられます。都においては、官庁会計では明らかにされなかった数々の情報を分析し、評価し、都民や議会にわかりやすく提示されるよう検討されるということでありますが、もう一度、事業別の情報がどのようにわかりやすく提示されるかをお伺いいたします。

○安藤参事 事業別の情報では、減価償却費や金利など、従来明らかではなかった行政コストに係る情報を示すとともに、資産、負債などのストックに係る情報もあわせて明らかにしていきます。
 さらに、事業の状況をわかりやすく示すため、一規模当たりどの程度コストがかかるのかを示すことも視野に入れまして、今後、財務局を初め、各局との調整を十全に図ってまいります。

○鈴木委員 他の自治体においても、かつての都と同様に、官庁会計の決算数値を組み替える方式で財務諸表を作成するところがふえてきましたが、日々の会計処理から、複式簿記・発生主義会計を導入し、事業別の財務諸表まで作成している自治体はまだありません。住民の利益となる真の行政運営の実現のためには、都も、この新公会計制度を他の自治体に発信していくべきと考えます。特に、都内二十三区との連携が重要であり、都から積極的に普及させていく必要があると考えます。
 そこで、新公会計制度についての特別区における検討状況についてお伺いをいたします。

○安藤参事 都ではこれまで、特別区に対し、特別区収入役会や電子計算主管課長会を初めとした会議等で、新公会計制度について説明するとともに、個別の区からの相談にも応じてまいりました。
 都からの説明を受けて、特別区の中には、数区において、組織横断的な研究会を設置して、複式簿記・発生主義会計の導入について検討を行っておりまして、そのほかの多くの区でも検討を始めていると聞いております。
 ただ、システムの導入に係る経費負担や総務省研究会における会計基準の検討の動向など、複式簿記・発生主義会計の導入に慎重にならざるを得ない状況もございまして、都としては、さらに導入に向けた取り組みを進めなければならないと考えております。

○鈴木委員 今、答弁の中にあった、システムの導入に関して、特に総務省の研究会における会計基準の検討の動向というのは、都が実際に進めていこうとする制度とは、もしかしたらかなり隔たりのあるものになる可能性というのはあるわけですよね。ですから、その辺も踏まえて、都が確固たるものをつくっていくということを明らかにしていくためには、例えば東京都と今いった二十三区が、本当に連携をとれるような形での新しい公会計制度というようなものが、やはり連携をとれてできていくということが非常に都民、区民にとってわかりやすいものになると思いますので、その辺の努力というのはぜひお願いしたいと思います。
 今年度は、財務諸表分析の初年度ということで、まだ単年度の情報しかありませんが、今後は、民間の例にもあるように、財務諸表から得られるようなさまざまなデータについて、経年変化の把握を行う、また相対比較の中で事業分析をしていくというようなことが大変必要であると思います。まさに、知事もいわれたと思いますが、質的な行革への取り組みが本来のものになって始まっていくというように思うんですね。ですから、ある程度、その取り組みというのは、都民、議会のみならず、全国の自治体が大いに注目もし、また期待もするところでありますので、その辺のところを踏まえていくべきだというふうには思います。
 その点を踏まえて、この決算を迎えるに当たっての局長の決意を伺いたいと思います。

○三枝会計管理局長 ただいま、初の決算を迎えるに当たりまして、大きく三つの点についてお話があったというふうに思います。
 まず最初に、事業別の情報など財務諸表から得られる決算情報を、都民や議会の皆様にわかりやすく提供するということでございます。
 第二点といたしましては、特別区を初め、これは都の連携を深めて、都の新公会計制度を、総務省とも対峙をしながら情報発信していくということであったかと思います。
 この二点、私どもも非常に重要な課題であるというふうに考えておりまして、それぞれにつきまして、具体的な手法について工夫を凝らしてまいりたいというふうに考えております。
 それから、三点目といたしまして、いわば質的行革との関係でございます。この公会計制度改革を実のあるものとしていくためには、明治以来百年以上にわたりまして官庁会計になじんできた職員一人一人が、金利感覚であるとか、コスト意識であるとか、民間企業では当然の経営感覚を根づかせる、これがまず不可欠だろうというふうに考えております。
 しかしながら、現状を見ますと、なかなかこの意識改革を進めるのは難しい面もございます。このために、今後とも継続的な取り組みを一層強化していく必要があるというふうに考えております。
 さらに、今回の決算でございますけれども、これは財務諸表分析による新しい質的行革といいますか、これのスタートを切ろうとしている、そういった段階であろうかというふうに思います。したがいまして、決して今回の決算は到達点ではなくて、出発点であると考えております。
 今申し上げましたようなこと全体を含めまして、今回の決算は、知事がいっております行政の本質的な改革、この長い道のりに向けての最初の一里塚を築く、そういった仕事であるというふうに認識しておるところでございます。
 そうした認識のもとに、この秋に向けまして、正確でわかりやすい財務諸表を提出できるよう、財務局を初め庁内各局と十分に連携を図りながら、万全を期してまいりたいと思います。

○橘委員 今回、会計管理局から報告がありました、資金管理についての平成十八年度実績及び十九年度計画の報告について質問いたします。
 昨年、日本銀行のゼロ金利政策が解除されて以来、長期金利は上昇に転じ、今後も金利は穏やかに上昇していくことが見込まれております。私は、資金の運用に当たっては、安全性の確保を前提とした上で、この金利上昇局面を積極的に活用し、約一兆六千億円にも上る都の基金について、当然のことながら、可能な限り運用益を上げるべきであると考えております。
 本日は、こうした観点から、昨年度の実績や今年度の計画のポイントなどについて伺いたいと思います。
 まず、昨年度の運用実績についてでありますけれども、十八年度の運用収益は五十九億円であります。十七年度の約六倍にも達しております。数字をざっと見たときに、金利が上昇しているし、また都税収入も大きくなっているので、これは当然かなという、そんな第一印象を受けました。しかし、過去においては、他の道府県でありますが、運用益がかえって逆に減ったというケースもございました。そうした観点から見ますと、金利上昇とか都税収入、こうしたことだけが主たる要因であるとすれば、だれがやっても、どこがやっても同じだというふうになってしまいます。
 そこで伺いたいんですが、会計管理局として、運用収益の増益にどのような工夫をしているのか、伺います。

○細野管理部長 会計管理局におきましては、運用収入を向上させるため、定期性預金については、複数の金融機関を競争させて金利を提示させる引き合いというものを実施しております。また、債券運用につきましては、国債だけではなく、財投機関債など、安全性を確保しつつ、可能な限り利回りの高い商品に投資しております。
 仮に、定期性預金について、引き合いを行わず、大口定期の店頭金利で運用し、債券についてはすべて国債で運用したといたしますと、十八年度の運用収入は約半分程度の水準にとどまったという試算もございます。

○橘委員 特に工夫をしなかったとすると運用収益が半分にとどまったという見方も今ございましたけれども、会計管理局の努力は、さまざまな工夫によってこの収益を上げているということで、高く評価するものであります。
 ところで、ただいま国債以外の債券を活用したといった内容の話がございましたけれども、運用利回りを決める要素は、どんな運用商品を採用するのか、運用期間をどの程度に設定するのか、この二つの要素があると思います。
 まず最初に、運用商品について伺いますけれども、公金を運用する以上、安全性の確保が第一であり、その枠組みの中で、より利回りの高い商品に投資していくことが重要であることはいうまでもありません。そのためには、運用商品の幅を広げていくことが必要だと思います。
 そこで、今年度の資金管理計画で初めて実施することとした運用有価証券信託について、これを選択した経緯、あわせて、今後、運用商品の拡大についての局の考えを伺います。

○細野管理部長 本年度から追加いたしました運用有価証券信託は、都が保有する国債等の債券を信託銀行に信託し、信託銀行が証券会社に貸し付けることにより、都が運用収入を得る方法でございます。
 この手法は、従来は地方自治法では認められていなかったわけですが、平成十六年度から都が国に要求してきた法改正が昨年実現いたしましたことから、今回取り組むことにしたものでございます。
 ご指摘のとおり、より効率的な運用を目指していくためには、まず安全性を確認した上で、運用商品の選択肢を広げることが重要と認識しております。
 これまでも、会計管理局においては、商品の構造や発行主体のリスク分析を行い、安全性を確認できるかどうか毎年検討を重ね、その結果、資産担保証券、財投機関債、ユーロ円債など、運用対象を拡大してまいりました。
 今後も、金融商品の多様化の動向を的確に把握し、安全かつ効率的な運用商品の拡大に努力してまいりたいと思います。

○橘委員 今の答弁で、安全性を見きわめるという前提を持ちながら、効率性の高い商品を追求するという運用商品の拡大に向けた考え方はよくわかりました。
 次に、資金の運用方法について質問いたします。
 計画では、ラダー型ポートフォリオと一括運用を組み合わせるとしておりますけれども、この組み合わせの具体的な方法についてお聞きしたいと思います。

○細野管理部長 ラダー型ポートフォリオでは、運用する資金を八つに分割し、三カ月ずつずらしながら、それぞれを二年単位で運用しております。このことにより、金利変動に合わせて、その影響を少しずつ反映させる安定した運用が可能となります。
 一方、一括運用は、資金をまとめて、できる限り長期間運用するものでございまして、この場合はあらかじめ高い利回りに固定して運用することが可能となります。
 この両者を五対五の割合で組み合わせることにより、安定的かつ効率的な運用を実現することができます。
 本年度は、減債基金において新たに運用を開始する三千二百億円のうち千六百億円をラダー型ポートフォリオとし、一括運用に充てる残りの千六百億円につきましては、八百億円ずつ二年と五年の運用といたしました。
 なお、今まで一括運用は原則として二年までとしており、五年の運用は今回が初めてでございます。

○橘委員 次に、運用期間についてですけれども、ただいまの答弁にもありましたように、計画では、本年度から新たに五年の運用を実施するとしております。確かに、金利水準が変わらなければ、運用期間が長いほど利回りはよくなるのは当然であります。しかし、一方で、金利が上昇すると見込まれている中で、五年の運用は長過ぎるのではないかという考え方もあります。つまり、金利を五年間固定させることによって、その間に金利が上昇した場合、そのメリットを生かせなくなるという見方であります。まさに金利動向の見きわめと運用期間の組み合わせがポイントになると思います。
 従来、運用期間は原則として二年までであったということでありますけれども、今回の計画では、どのような判断のもとに運用期間を定めたのか、この点について伺います。

○細野管理部長 減債基金につきましては、従来は二年までしか運用できませんでしたが、今回の計画策定に当たりましては、五年にわたって運用可能な資金を確保することができました。
 今後、金利は上昇すると見込まれておるということでありますが、向こう数年間の利上げの幅や時期は不透明でございまして、完全に予測するということは困難でございます。そこで、金利が急激に上昇した場合は、一括運用ではそのメリットを直ちに反映できないことから、先ほどのラダー型ポートフォリオにより、金利上昇の効果を生かして、運用収入を高めることとしております。
 一方、金利上昇が穏やかになるに従いまして、ラダー型ポートフォリオよりも、運用期間に応じて高い固定金利を確保できる一括運用の方が有利になります。この点を考慮し、金利上昇の緩やかさの度合いに合わせて対応できますよう、二年と五年の二種類の一括運用を行うことといたしました。
 このように、金利の上昇が急な場合や穏やかな場合、さまざまなことを想定いたしまして、その中で、結果的にどのような金利になったといたしましても、一定以上の収入が確実に得られるよう、運用期間を定めたものでございます。

○橘委員 五年というこれまでにない期間を運用するに当たって、金利上昇の幅もさまざまに想定しながら、あらゆるケースにも高い収益力を発揮できる組み合わせを考えた中での結論だということが、今の答弁でわかりました。
 ところで、公金の効率的な運用を行うためには、何よりもまず、運用する元となる資金の確保が大事であります。この点については、きめ細かな工夫を行っていく必要があると考えます。
 こうした観点から、会計管理局としての今後の工夫について、考えをお伺いします。

○細野管理部長 会計管理局は、都の国庫支出金の受け入れ窓口の役割を担っておりますが、国庫支出金は、平成十九年度歳入予算の五・三%、三千四百八十九億円に上っております。これを適切な時期に受け入れ、効率的に運用していくことが重要であると認識しております。
 しかし、各局の受け入れ状況を調査しましたところ、概算払い請求や事業の進捗に応じた請求を行っておらず、年度末に集中的に受け入れていることがわかりました。
 そこで、概算払い制度等を活用するよう各局を指導した結果、昨年度、約百億円を早期に受け入れたところでございます。今年度は、約六百億円を早期に受け入れ、五千万円の運用益を見込んでおります。
 今後とも、各局に対し、国庫支出金の受け入れを適切に行うよう指導してまいりたいと考えております。

○橘委員 今お話がありました国庫支出金の効率的な運用、これは多分、作業的には大変煩雑で、手間がかかるんだろうなというふうに思いますけれども、このような地道な努力を積み重ねていくことによって、運用益というのは積み重なっていくんだなというふうに思います。
 最後に、公金管理に関する局長の認識を伺いたいと思いますけれども、会計管理局の初めての局長として、今後の公金管理に関する決意も含めて、お伺いしたいと思います。

○三枝会計管理局長 本年の四月に、トップマネジメントの補佐も担っておりました出納長制度が廃止をされまして、新たに一般職としての会計管理者が設置されたわけでございますが、会計事務等につきまして、知事から独立した職として果たすべき基本的な役割あるいは責任といったものは、従来どおりでございます。
 初代の会計管理局長といたしましては、特別職固有の役割はなくなった、そういった分について、会計事務の指導や検査あるいは決算の調製など、所管部門の一つ一つについて、これまで以上にきめ細かく目を配り、また公会計制度改革を推し進める中で、一般職である会計管理者としての新しいスタイル、そういったものをつくるべく努力を重ねていきたい、かように考えております。
 また、ただいまご質問のありました公金管理でございますけれども、都民の貴重な税金を原資とするものでございますので、安全確実を最優先とした上で、景気回復が続くという現在のような環境を積極的に活用した上で、運用収益の拡大を追求し、成果を上げることが使命であるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、公金の管理については、経済情勢の変化を鋭敏にキャッチしながら、資金管理全般に対する十分な目配りを行いまして、着実に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○山田委員長 ほかに発言がなければ、お諮りをいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山田委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で会計管理局関係を終わります。

○山田委員長 これより主税局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百三十七号議案及び第百三十八号議案並びに地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例の報告及び承認についてを一括して議題といたします。
 本案につきましては、既に説明を聴取してあります。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○松田税制部長 先般の委員会におきまして要求のございました主税局関係の資料につきまして、ご説明を申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の財政委員会要求資料の一ページをごらんいただきたいと存じます。
 要求資料第1号、東京都都税条例の改正による個人都民税の影響額でございます。
 この表は、平成十九年度税制改正により、上場株式等の配当及び譲渡益に対する個人都民税配当割、株式等譲渡所得割に係る軽減税率の適用期限が一年延長されたことによる影響額をお示ししたものでございます。
 要求のございました資料に関する説明は以上でございます。よろしくご審議のほどをお願い申し上げます。

○山田委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 ご発言を願います。

○藤井委員 私は、今話題になっております税源移譲に伴う住民税の改正の関係で、何点かお伺いをしたいと思います。
 ご承知のとおり、六月の初めごろから個人住民税の納税通知書が都民の方々に届いているわけでございますが、今年度の住民税の負担額が急にふえたということに驚きまして、地元の区市町村に問い合わせをされている方が多いというふうに聞いております。実際、私も自分の給与表を見ましたら、大変ふえておりました。
 今回の税源移譲の実施に伴いまして、この税源移譲で住民税の負担はどのように変化をしたのか、また所得税の負担の変化とあわせて、具体的な例を示していただきたいと思います。

○松田税制部長 税源移譲によります住民税と所得税の負担の変化を具体例で申し上げますと、夫婦子ども二人の合計四人で、給与収入が五百万円の世帯をモデル例として申し上げますが、住民税は、平成十八年度分が七万六千円、平成十九年度分が十三万五千五百円でございまして、差し引き五万九千五百円の負担増となります。これに対しまして、所得税の方は、平成十八年分が十一万九千円、平成十九年分が五万九千五百円でございまして、差し引き五万九千五百円の負担減となります。
 このように、税源移譲では、個々の納税者の住民税と所得税を合わせました個人所得課税の全体の負担額は変わらないように制度設計がされております。

○藤井委員 ただいまご答弁がありましたように、税源移譲では、住民税と所得税を合わせた負担の変化は基本的にないというふうに説明をされてきたわけでございます。しかし実際には、所得税の減税の効果を考慮しても、なお、多くの、ほとんどの都民にとっては、今年度の住民税の負担は実質的にふえることになるというふうにいわれておりますが、それはどのような理由によるものなのか。また、その影響額について幾つかの具体的な例を示していただきたいと思います。

○松田税制部長 ただいま申し上げましたように、住民税と所得税を合わせました税負担は、税源移譲前後で変わらないように制度設計されておりますが、同時期に定率減税が廃止されるために、結果として実際の税負担額がふえることになります。
 夫婦子ども二人で給与収入が五百万円の世帯を例にとりますと、住民税と所得税を合わせた負担額は、平成十八年分は十七万七千四百円、平成十九年分は十九万五千円となりまして、影響額は一万七千六百円の増でございます。
 また、夫婦子ども二人で給与収入が七百万円の世帯を例にとりますと、住民税と所得税を合わせた税負担額は、平成十八年分が四十一万八千円、平成十九年分が四十五万九千円でございまして、影響額は四万一千円となります。

○藤井委員 今回、実質的に税負担がふえるということになるのは、定率減税の廃止による影響だというご説明ですけれども、実際、ご答弁ありましたように、五百万円の給与収入の場合だと影響額が一万七千六百円、給与収入が七百万の場合だと影響額が四万一千円という負担がふえるわけでございます。
 それでは、確認の意味でお聞きしますが、国はなぜ定率減税を廃止することにしたのか、お聞きいたします。

○松田税制部長 定率減税は、平成十一年度に導入されたものでございますが、その当時の著しく停滞した経済状況に対応して、緊急避難的な特例措置として設けられたものでございます。
 その導入当時と比べまして経済状況に改善が見られること等から、平成十七年度の税制改正において、その規模が二分の一に縮減され、平成十八年度税制改正において、残り二分の一部分についても廃止をされたものでございます。

○藤井委員 景気が回復したから、景気対策である定率減税は廃止をしたというご説明でございましたけれども、我々現場を歩いていますと、本当に景気回復したのかなという疑問も若干あります。それでも本当に足もとの景気が回復したといえるのか、いろいろな指標があると思いますが、代表的な景気関連指標の現在の状況を、定率減税が導入されたころと対比して示していただきたいと思います。

○松田税制部長 代表的な景気関連指標の定率減税導入時と現在との対比でございますが、国内総生産の名目成長率は、定率減税導入時の平成十一年度がマイナス〇・七%であったのに対しまして、平成十八年度は一・五%でございまして、二・二ポイント改善しております。
 また、失業率は、定率減税導入時の平成十一年度は四・七%であったのに対しまして、平成十八年度は四・一%となっておりまして、〇・六ポイント低下をしております。
 また、その他の景気関連指標につきましても、ほとんどのものが改善傾向を示しているところでございます。

○藤井委員 本当に、汗をかいて働いて税金を納めている庶民の心情からすれば、景気が回復したから定率減税を廃止しますといわれても、なかなか納得しがたいというのが人情だと思います。
 しかし、ただいまご答弁ありましたように、景気関連指標のこういった動向からも、景気が回復しているということは明らかであり、税制のあり方として、定率減税の廃止はやむを得ないのかなというふうに思います。
 また、定率減税の廃止によって得た財源は、年金の基礎部分に充当するというふうな政府の意向もありまして、今後、そういったきちっとしたものに生かされるということを期待したいと思っております。
 ところで、住民税の関係では、十九年度税制改正を受けまして、配当割及び株式等の譲渡所得割の軽減税率の適用期限の一年延長を内容とします条例改正案が、今定例会に提出をされておりますが、これも景気と関連する話だと思います。そこで、十九年度税制改正で個人住民税の配当割及び株式等譲渡所得割の特例税率について、適用期限を一年延長するとされたのはなぜか、伺いたいと思います。

○松田税制部長 上場株式等の配当や譲渡益に対します配当割及び株式等譲渡所得割は、平成十五年度税制改正により創設されまして、その税率は五%、国税と合わせますと二〇%とされましたが、同時に、個人投資家の積極的な市場参加を促す観点から、五年間の時限措置として三%、国税と合わせますと一〇%の軽減税率が設けられたものでございます。
 平成十九年度の政府税制調査会答申では、これらの特例措置の見直しに当たっては、貯蓄から投資への流れを確かなものにするべく、資金の流れに引き続き十分注意を払い続ける必要があること。また、この措置の廃止が株式市場に無用の変動要因とならないよう工夫する必要があることなどを指摘しております。
 このような観点を踏まえ、特例税率については適用期限を一年延長されたものと認識をしております。

○藤井委員 そもそも、軽減税率については、導入当時の低迷する株式市況などを考慮して導入されたものと聞いております。株式市場の回復などから、軽減税率は廃止される方向なわけですが、廃止に当たっては、市場への無用な変動要因とならないよう配慮することが当然だというふうに思います。
 税源移譲について、今回、主税局が税源移譲に関する周知のために作成したパンフレットなどを読ませていただきました。こういった主税局が発行したものとか、あるいは「あなたと都税」という中に、六月から個人住民税が変わりますと、具体的にわかりやすく書かれておりました。
 税源移譲に関する広報について、大変努力しているというふうに感じましたが、まだまだ一般都民の方々に定率減税の廃止の理由などが浸透し切っていない面もあるので、今後とも引き続き努力をお願いしたいと思います。
 さらに、納税者の税に対する理解の基本になるのは、取られ損などということを許さない公平公正な税金の徴収であります。それがあってこそ公平な制度ということで、主税局はこれまでも、知事から四番バッターと評価されるほど頑張ってきたわけでございますので、今後もその評価にこたえていっていただきたい、このように要望したいと思います。
 そこで、この税金の公平公正な徴収に向けた新しい局長のご決意をお伺いして、質問を終わります。

○熊野主税局長 ただいま先生からご指摘のとおり、公正公平な税の徴収は、円滑な税務行政を執行していく上で、まさに基本、原点となるものでございまして、都政におけるすべての行政サービスを支える土台であるというふうに考えております。
 仮に税金逃れといったような事態を見逃すようなことがあれば、他の住民の納税者意識に大きな影響を与えまして、全員がお金を出し合って共通した課題を解決するという現在の社会のシステム、これも揺るがしかねない問題になろうかというふうに思っております。
 また、今後、物議を醸しております格差是正に関する問題でも、国や多方面にいろいろ強く反論していかなければなりませんし、長期的に見れば、地方分権を進める中で、私どもは、財政自主権、とりわけ課税自主権を獲得して真の地方自治を確立していかなければならない状況にあります。
 そうした際に、私どもは、税の徴収についてやるべきことはやっている、税務行政について責任能力があるということを示すことは、まさに最低限の条件であろうかと思っております。
 いずれにいたしましても、公平公正な徴収は税務行政の命でありますので、そうした認識のもとで、日々の着実な努力と新たな挑戦を重ねまして、個々の納税者の事情にも配慮した、親切できめ細やかな対応を行うとともに、悪質な滞納者には毅然として対応することによりまして、公平公正な税の徴収の実現に全力を尽くす所存でございます。

○曽根委員 きょうは、私、株式の配当及び譲渡益に対する課税の特別措置の一年延長の問題、議案が出ておりますので、質問を用意してきたんですが、前の方もお話しになったように、都税に関しては、さまざまな議論や、それにふさわしい時代の変化も起きておりますので、都民税にかかわる議案が出たときには、大いにこういった幅広い議論も必要かなと思っておりますので、このような機会にはぜひやらせていただきたいと思います。
 今ちょっとお話があったので、住民税と所得税の差し引き個人への課税額は変わらないということに関連して、一つだけ確認しておきたいんですが、昨年からことしにかけて所得が落ちた方については差が出てきてしまうわけですよね、そのままの課税だと。それは国会でも私どもの議員から質問しまして、最大でいうと九万円ぐらいの課税、住民税が多くなってしまう場合がある、住民税は昨年の所得に課税されますので。そういう方については、申告すれば税が還付されるという制度がとられるそうなんですけれども、そのことについては、区市町村が窓口ですけれども、東京都の方でも、そういう権利があるんだよということをぜひ都民の方に徹底していただきたいということだけ、最初に一つだけ確認しておきたいんです。

○松田税制部長 先ほども申しましたように、所得税と住民税を合わせました税負担は、基本的に変わらないように設計されておりますが、これは基本的には去年もことしも所得が同じという方のケースでございますので、当然、所得が変わってくれば、それによって税額が変わってくるわけでございます。
 そういった中で、ご指摘のような、去年に比べてことしは所得が減ったというような方については、所得税の方の減でカバーされないケースが出てまいります。その中の一定の方につきましては、二十年七月一日から三十一日までの間に申告をすれば、そのうちの一部が還付されるような仕組みが設けられております。
 これにつきましては、手続的には来年でございますので、またその辺、権利を見落とさないように十分PR等に努めていきたいというふうに思います。

○曽根委員 それでは、予定していた株式の配当及び譲渡益に関する課税について質問します。
 株の取引や配当への課税というのは、以前は国税、地方税合わせて二六%ぐらいだったんですかね。それが二〇%に減税された上に、この五年ほど、さらに一〇%への減税が特別措置として行われており、私は、これが今、株価がつり上がっている一つの要因にもなっていることは間違いないと思っております。下手をすればバブルの再来になりかねないというふうに懸念しております。
 この減税措置を一年延長するということですが、都税での減税が始まってからの株式関係の二つの税収は、年度ごとに幾らだったのか、累計では幾ら税収があったのかを教えてください。

○松田税制部長 配当割及び株式等譲渡所得割の収入額の推移でございますが、二つの合計で申し上げまして、初年度の平成十五年度が決算額で四億円、平成十六年度は同じく百六十五億円、平成十七年度が同じく三百四十二億円でございます。平成十八年度は補正後予算額でございますが、三百七十一億円、平成十九年度は当初予算額で四百十一億円を見込んでおります。
 また、平成十五年度から平成十九年度までの累計額は千二百九十三億円となります。

○曽根委員 年々、ある意味では急激にふえているというふうにいっていいかと思います。
 減税額の方は、同じ平成十五年から、今年度、十九年度までで累計幾らになるのでしょうか。

○松田税制部長 軽減税率適用によります配当割及び株式等譲渡所得割の影響額の合計でございますが、五年間で累計八百六十二億円となっております。

○曽根委員 国の方が一五%、地方が五%の課税ですので、そのうち二%分が減税されるということですから、千二百九十三億円。本来の税率であれば二千億円以上の税収が見込まれたものが、八百六十二億円の減税になっている。極めて大きな額だと思います。
 減税を延長する理由は先ほどお聞きしましたが、さっきちょっとお話のあったように、景気は回復していると、しかし庶民の暮らしにとってはその実感はないというその庶民の暮らし、給与所得なんかもずっと下がっていますからね、国全体の景気は上がっているんでしょうけれど。そういう方々には、減税措置は停止になって、定率減税は廃止された。しかし、これだけの高額所得がさらにふえているわけですよね。恐らく、所得がふえていっているから、その課税も大きくなっているわけで、景気回復の恩恵をまさにもろに受けている方々にとっては、減税は延長。
 どう考えても、理屈に、理に合わないというふうに思うんですが、主税局としては、八百六十二億円、私は惜しむべきだと思いますが、主税局の減税の延長についての考え方をお聞きしたい。

○松田税制部長 特例措置の延長につきましての理由は、先ほど申し上げたとおりでございますが、簡単に申し上げますと、廃止が株式市場に与える影響等を考慮して適用期限を一年延長されたものというふうに認識しております。
 今後、国において、金融所得課税等のあり方が検討されることとなっておりますので、この動向を注視していきたいというふうに思っています。

○曽根委員 私は、都民の実情を考えれば、片や、都民税の、国の連動で増税になった分が五百億か六百億ぐらいですから、その半分程度が、片や、株式の所得の課税で減税になっちゃっているということに対して、東京都は、やはり国に対して--確かに、公平な税金の徴収は必要ですよ。しかし、税金の仕組みそのものが不公平だったらば、それに対しては物をいうべきだということは申し上げておきたいと思うのです。幾ら公平に税金を集めたって、仕組みが不公平じゃしようがないと思うんですよ。
 しかも、ちょっと都としての認識をお伺いしたいんですが、株式の譲渡や配当所得の減税の恩恵は、私の調査では、非常に一握りの人に集中的に恩恵が来ているというふうに思うんですが、その点については都としては押さえていますか、税金を納めている人の人数や金額について。

○松田税制部長 配当割、株式等譲渡所得割につきましては、証券会社等がそれぞれ住所地の都道府県ごとにまとめまして、それぞれの都道府県に納入するという形をとっております。そういったことで、その中に占めております個人個人のデータは、私どもとしては全く持ち合わせておりません。

○曽根委員 私も、何度聞いても、主税局の方からは、それはわからないというふうにおっしゃるので、そういうものかなというふうに思っていました。ところが、国税庁の方はデータを発表しているんですよね。どういう仕組みで国の税金の方はわかるのかわかりませんが、それによると--これは恐らく、株取引をやっている方が、自分で申告をした方が、国税の方に申告した分が出ているので、それでわかるんだと思うんです。じゃ、自動的に課税される仕組み、都税はそうだそうですから、どうして違うのかなと思ったら、株取引で損した場合には所得税がかからないんですか、申告すれば。そういうことがあるんで、大抵の場合株式の取引では損得がありますから、したがって、特に大口の方はほとんどすべて申告していると、国の税金は。それでわかるらしいんですね。
 それによると、これは、決算でわかっているのが、二〇〇五年度、平成十七年度なんですが、二千六百五十二億円の国と地方を合わせての減税があった。そのうち、一億円を超える株式譲渡の所得があった方の減税額が千五百億円余り。それ以下、一億円以下の所得の方の減税額が千百五十一億円だそうです。つまり、半分以上が一億円を超える所得があった方の減税だと。そのうち、百億円を超える所得があった方は全国で七人しかいないそうです。
 この七人でどれぐらい減税になっているかというと、約二百億円。二千六百五十二億円のうち二百億円が七人の方で減税されている。一億円以上の方が五千人ぐらいですね。その方で千五百億円の減税で、残り約三十一万人の一億円以下の所得の方で千百五十一億円の減税となっている。
 極めて株式譲渡に関する高額所得者に減税効果が出ているというもので、東京都がもしこのことを知らないでいるとするならば、私は、深く認識して、これはやっぱりやめるべきだと、減税の特別措置なんていうのは。大体、もともと二〇%に減税しているわけですから、十年ぐらい近く前ですか、ということは改めて国に求めるべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○松田税制部長 現在延長されました特例措置につきましては、今のは制度的にはあと一年で時限措置、時限を迎えるということになっております。その後につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、国において金融所得課税等のあり方につきましての検討が行われるということでございますので、その動向を見てまいりたいというふうに思っております。

○曽根委員 国は一年限りだといっているそうですけれども、これで株式の平均株価が下落でもすれば、そんな国の約束は当てにならないと思うんですよ、はっきりいって。株取引が活発になるように減税しているんですから。
 そういう点でも、私は、都税にも大きな影響があるだけではなくて、明らかに不公平な税制が、しかもそれで減税措置が特別にまだ続いているというような事態はやめるべきだし、今回の議案についても反対の態度を表明して、終わります。

○山田委員長 ほかに発言がなければ、お諮りをいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山田委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
                  

○山田委員長 次に、報告事項、宿泊税五年間の実績と今後のあり方についてに対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 ご発言を願います。

○鈴木委員 それでは、私からは宿泊税に関して質問をさせていただきます。
 宿泊税に関して、今回、条例の五年ごとの見直し規定を踏まえ、宿泊税の今後のあり方について検討したということであります。諸外国のホテル税の状況についても調査をしたと聞いております。しかしながら、報告書は、諸外国の類似制度にも著しい変化はないとしているだけで、具体的状況については明らかにされていないのが現状だというふうに思います。宿泊税の導入当時の議論の中では、海外でも類似の制度が広く導入されていることも、導入の正当性の根拠とされていたので、これは重要なポイントだと私は思います。
 そこで、海外の観光先進都市のホテル税の状況、特にニューヨークやパリ等のホテル税の負担の程度はどのようになっているのか、また、宿泊税の導入当時と負担額に大きな変化はあるのかをお伺いいたします。

○松田税制部長 ニューヨークのホテル客室占有税の負担額は、宿泊料金の五%に加えまして、宿泊料金のランクに応じまして〇・五ドルから二ドルを加算した額でございます。一室四百ドルのツインルームに二名で一泊した場合を例にとりますと、一人当たりの税額は十一ドルとなります。一ドル百二十四円のレートで換算をいたしますと、千三百六十四円となります。
 また、パリの滞在税の負担額は、ホテルのランクに応じまして、〇・二ユーロから一・五ユーロとなっております。これも最高ランクでございます五つ星ホテルのツインルームに二名で一泊した場合を例にとりますと、一人当たりの税額は〇・七五ユーロとなりまして、一ユーロ百六十六円のレートで換算いたしますと、約百二十五円となります。
 いずれの税の負担額の程度も、宿泊税導入当時から大きな変化はない状況でございます。

○鈴木委員 次に、宿泊税の税収の推移についてお伺いをいたします。
 宿泊税は、国際都市東京の魅力を高め、観光振興施策の財源を確保するための目的税であります。財源確保が目的であれば、導入によってどれだけの税収が確保されてきたかが重要だと考えます。宿泊税の税収はどのように推移してきたのかをお伺いいたします。

○松田税制部長 ただいまのご質問でございますが、宿泊税の税収は、平成十四年度は、年度途中からの導入でございますので、五カ月分でございまして、約五億円でございます。平成十五年度は約十一億五千万円、平成十六年度は約十一億六千万円、平成十七年度は約十一億九千万円でございまして、平成十八年度の補正後予算では、約十二億九千万円を見込んでおります。
 このように、宿泊税の税収につきましては、平年度ベースでは、おおむね十二億円程度で安定的に推移してきておりますが、最近の景気回復や新たなホテル開業等によりまして、税収は増加傾向にありまして、十九年度当初予算額では十三億二千万円を見込んでおるところでございます。

○鈴木委員 端的に伺います。安定的な税収を確保してきたということでありますが、税収の金額以上に大切なのは、納められた宿泊税がどのように使われてきたかということだと思いますので、宿泊税の税収はどのように使われてきたのかをお伺いいたします。

○松田税制部長 宿泊税の税収は、その全額を観光振興のための施策の費用に充当しております。
 具体的に申し上げますと、七言語八種類に及ぶウエルカムカードの作成、このウエルカムカードには、都内三十七カ所の割引入場券がついております。また、都内三カ所の観光案内所の設置運営、さらには案内標識の整備、宿泊施設のバリアフリー化の推進、外国語メニュー等の普及、観光ボランティアの活用、海外青少年の教育旅行受け入れ促進事業などの費用に充当しているところでございます。

○鈴木委員 これまで伺ってきたように、税収の実績あるいは税収が財源的な裏づけとなって実施されてきた施策の状況などを踏まえれば、宿泊税の課税の意義は、導入当初に比べ、増しこそすれ、少しも減っていないということは明白だというふうに思います。恐らく主税局の考え方も違わないと思いますが、主税局として宿泊税をどのように評価しているのか、今後の課税のあり方についてどのように判断しているのかも含めて、局長の見解を伺います。

○熊野主税局長 宿泊税は、導入以来、安定的な財源として、都が観光振興を行っていく上で重要な役割を果たしてきてまいりました。また、都税として十分に浸透しまして、円滑に実施されている状況にございます。
 加えまして、今後、都は、さらに積極的に観光振興施策を展開いたしまして、「十年後の東京」では、年間一千万人の外国人旅行者が訪れる世界有数の観光都市とする方針でございます。宿泊税が果たすべき役割はますます重要になると予想しております。
 こうした状況を踏まえまして、宿泊税につきましては、現在の課税方式を維持しつつ、課税を継続していくことが適当であると判断してございます。

○鈴木委員 これに関して、一言申し上げたいと思います。
 今の、宿泊税は今後も必要であり、課税を継続するということに関しては、私も局長の考え方と全く同感であります。ただ、局長の答弁にあったように、課税方式を維持しつつ、要するに、課税を継続していくということになった、この維持というところが、どういうふうに考えたらいいかというのがちょっとあるので、私はちょっと提案をしたいと思っております。
 特に、ニューヨークでは、税率が五%、プラス部屋のランクに応じた額ということで、宿泊税百円、二百円の定額課税、率に置きかえれば最大でも一%を上回る程度だと。今まで海外で私が調べたり、また資料等を見ても、税率はもう少し高いものがほとんどであったと思うんですね。そうすると、東京に、今、外資系などの高級ホテルが非常にふえて、一泊五万円とか十万円というような宿泊も珍しくなくなってきているという状況を考慮すれば、私は、税率の上の方のランクをふやすなどというような検討も行っていいような気がしています。
 ですから、高額な宿泊に対しては、少し税負担をお願いするというようなことを東京都も検討してもいいのではないかと思います。
 そうやって税源がふえれば、今、まさに局長がいわれたように、東京の魅力を高めるための施策の幅が非常に広がっておりますし、豊かになった宿泊税収を効果的な観光振興施策に重点的に投入できるということになれば、東京の観光振興を財政的に支援していくということがより一層可能になる。そういった戦略も、実は今後の選択などの一つに十分なれるのではないかと思います。
 十年後の東京を世界の人々があこがれ訪れる東京という、今いわれたようなことを実現していくということになれば、そういう見直しに向けては、ある程度課税で考えて、また主税局で相当議論していただいて、少し幅も広げた考え方を持たれて検討を行っていただきたいということを要望して、最後の質問を終わります。

○曽根委員 意見のみにしようかと思ったんですが、前回、委員会で資料をお願いしたわけですね。関係のホテル、旅館などからの意見、要望が出ていないかと。これは五年間たっていますので、それをつかむ努力もされてきたのかと思いますが、それでも特に意見はないということでよろしいんでしょうか、それとも特につかむことはやっていないということですか。

○松田税制部長 宿泊税につきましては、現場で申告を受け付け、これは基本的に毎月一回ございます。そのほか、今回の報告書でも紹介しておりますけれども、旅行者への案内リーフレット等をつくりまして、ホテル等に配布をしております。そういった形で、日常的に特別徴収義務者と接触する機会がございますが、この税のあり方について特にご意見が出たというふうには聞いておりません。円滑に実施されていることからも、宿泊税が特別徴収義務者であるホテル等の皆様によく理解されているものというふうに考えております。

○曽根委員 私どもは、これを導入するときに反対いたしました。その最大の理由は、一律課税であるということと、一万円の宿泊料のところで線引きをしている、これは低いんじゃないかということも含めて、こういう形で観光振興のための財源を得ることが有効とは思えないということを申し上げたと思います、当時。その認識に基本的に今も変わりないし、はっきりいって、東京の観光客が爆発的にふえたという状況でもないと思うので、この効果はそんなにまだ証明されていないんじゃないかというふうに思うんですね。
 少なくとも、私の方に聞こえている範囲でいいますと、二段階の料金、数段階の料金を設けている旅館やホテルなどからは、一万円以下には絶対しないでくれと。やめてもらえば一番いいんだけれども、それは難しいとしても、一万円以下の宿泊料に課税するようなことは絶対しないでほしいという意見が出ていますので、これだけは意見として、当面の問題としては申し上げておきたい。
 以上です。

○山田委員長 ほかにございますか。--発言がなければ、お諮りをいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山田委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で主税局関係を終わります。

○山田委員長 これより財務局関係に入ります。
 初めに、理事者から報告の申し出がありますので、これを聴取いたします。

○村山財務局長 本定例会に提出いたしました契約議案二件のうち、第百五十二号議案の中央環状品川線シールドトンネル工事請負契約につきまして、ご報告申し上げます。
 仮契約の相手方である大成・東急・大豊・錢高・みらい建設共同企業体の代表構成員である大成建設株式会社ほかは、防衛施設庁発注工事をめぐる談合事件に関連して、公正取引委員会から、本日、排除措置命令及び課徴金納付命令を受けました。
 本件の仮契約に当たり、指名停止等取扱要綱別表各号に掲げる取扱要件の一に該当する場合、仮契約を解除するとしております。
 今回のケースはこれに該当するため、仮契約を解除し、本議案を撤回させていただくことといたします。よろしくお願い申し上げます。

○山田委員長 報告は終わりました。
 ただいまの報告に対して何かご質問がありましたら、ご発言願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○山田委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山田委員長 異議なしと認め、本件に対する質疑は終了しました。
                  

○山田委員長 次に、付託議案の審査を行います。
 第百五十三号議案を議題といたします。
 本案につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○新田経理部長 先日の委員会において要求のございました資料について、ご説明申し上げます。
 今回、要求資料のうち、付託議案に関するものは一件でございます。
 お手元に配布してございます財政委員会要求資料の表紙と目次をおめくりいただきまして、要求資料第1号をごらんいただきたいと存じます。平成十九年第二回定例会工事請負契約議案(低入札案件)積算比較でございます。
 平成十九年度若洲橋鋼けた製作・架設工事における東京都の積算金額と、落札者の見積もり金額の内訳について比較したものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○山田委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 ご発言を願います。--発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異義ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山田委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
                  

○山田委員長 次に、報告事項、「大都市狙い撃ちの財政力格差是正論への反論」について外一件に対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布しております。
 資料について理事者の説明を求めます。

○新田経理部長 先般、委員会において要求のございました報告事項に関する資料は、三件でございます。
 お手元に配布してございます財政委員会要求資料第2号をごらんいただきたいと存じます。要求資料第2号は、税財政をめぐる動向でございます。
 税財政をめぐる動きにつきまして、本年のタイムスケジュールをお示ししたものでございます。
 次のページをごらんください。要求資料第3号は、過去の発表資料における大都市需要の例示についてでございます。
 これは平成十八年五月発表の「東京狙い撃ちへの反論」、平成十六年七月発表の「今後の地方財政を考える」の二点の冊子の中におきまして、大都市需要の例示として挙げたものでございます。
 次のページをごらんいただきたいと存じます。要求資料第4号は、都有財産利活用推進会議についてでございます。
 会議の概要、活動の主な内容、これまでの成果についてまとめたものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○山田委員長 説明は終わりました。
 ただいまの説明を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○鈴木委員 私からは、「大都市狙い撃ちの財政力格差是正論への反論」と今後の財産利活用の指針に関して、順次質問を行っていきたいと思います。
 まず最初に、反論のパンフレットについてお伺いをいたします。
 都は、昨年の春にも「東京狙い撃ちへの反論」と題するパンフレットを公表しています。困ったことに毎年の恒例行事にならざるを得なくなっていますが、今回公表されたパンフレットと昨年のパンフレットを比べてみますと、幾つかの点で違いがあることがわかります。
 まず最初に気がつくのは、昨年の東京富裕論への反論と異なり、本年の反論の書では、東京はそれほど前面に出ていないということであります。昨年は、危機感をあおるとともに、東京富裕論という誤解に対する反論が中心でありました。これはこれでインパクトを重視した戦略であったというふうに思います。ことしは、冷静なトーンの中に、地方分権改革をまじめに議論しようという姿勢がにじみ出ているというふうに私は感じて、好感を持っているところであります。
 そこでお伺いいたしますが、このように昨年からの書きぶりが変わった理由をまず最初にお伺いいたします。

○真田主計部長 お答えいたします。
 昨年度は、骨太方針二〇〇六の策定に向けまして、国の歳出削減の議論が高まる中で、地方交付税を中心としました地方財政の圧縮が大きな焦点となりました。その中で、東京は富裕であるといったことを殊さら強調しまして、東京の財源をねらい撃ちにする動きが急速に高まりましたため、東京富裕論に対する反論を前面に出した緊急アピールを発表したところでございます。
 それに対しまして、今年度は、ご案内のとおり、地方分権改革の議論が新たな段階に入る中、本来、当然になされるべき国と地方の根本的な分権改革の議論が、意図的に都市対地方の税源配分の問題にすりかえられ、その結果、地方分権改革の本質からかえって遠ざかるという不幸な事態を招きかねないということに強い危機感を抱きまして、反論をまとめました。
 このため、今回の書では、地方同士を対立させようとする国の姿勢を批判しまして、地方が連携して国に対峙するスタンスをより明確に打ち出しました。また、東京を中心とした議論を避けまして、地方自治体共通の要求であります地方分権改革の実現を強く主張することによりまして、国と地方のあるべき姿を目指す大局的議論の必要性を訴えまして、広く地方自治体の共感が得られるような内容としたところでございます。

○鈴木委員 今、答弁がありましたように、先ほどもいいましたが、今の方向での論陣の張り方というのは、私は非常に的を射ているなと思っています。
 また、昨年と特に大きく異なっているのは、大都市需要に関する記述であります。昨年のパンフレットでは、混雑時の旅行速度や刑法犯認知件数などにおいて、東京の実情を象徴する各種の指標を示すことで、東京が抱える潜在的な財政需要を暗示するにとどめていましたが、ことしは、大都市需要にこたえる取り組みの例として、都の具体的な事業を例示しています。
 そこで、改めて、大都市需要についてどのような考えで例示をしているのか、お伺いをいたします。

○真田主計部長 国などにおきましては、歳入のうちの一部でございます税収の多寡ばかりに着目した、いわゆる財政力格差の議論が行われておりますが、本来、地方自治体の財政力の比較を行うに当たりましては、行政努力とともに、歳入と歳出のバランスを勘案することが重要であります。したがいまして、東京におきましては、みずからの税収で賄うべき膨大な財政需要が存在するということを明確に打ち出すことが必要不可欠であると考えております。
 東京の抱えます財政需要には、ハード、ソフト、さまざまなものがございますけれども、今回の反論ペーパーでは、道路整備ですとか鉄道の連立事業などの、特に大規模なハード系の事業を具体的な事例として取り上げまして、東京が抱えている大都市特有の財政需要にこたえるために多額の費用がかかっていることを、都民、国、他の自治体にわかりやすく明示させていただいたところでございます。
 東京の現状をあらわす指標とあわせまして、そうした現状の解決に向けた都の取り組みを、事業費を含めまして具体的に示すことにより、東京に存在しております需要の大きさを端的にアピールしたものでございます。

○鈴木委員 十九日の経済財政諮問会議で、骨太の方針二〇〇七が決定されました。ことしの骨太では、地方間の税源の偏在是正が論点となっていますが、地方分権改革の章と税制改革の章を見比べますと、その書きぶりが異なっていることに気がつきます。
 地方分権改革の章では、国庫補助負担金、地方交付税、税源配分の一体的な改革を行い、あわせて、地方間の税源の偏在を是正する方策について検討することとしています。これはまさに都また我々が主張してきたことであり、我々の正論を受けとめざるを得なくなったということなのかもしれません。
 しかし、一方で、税制改革の章では、一体的な改革についての文章とは別項で、地方公共団体間で財政力に格差があることに触れ、地方間の税源の偏在を是正する方策について、十九年度を目途に検討することとしています。
 地方分権のあるべき姿を考えれば、国から地方への権限移譲と税源移譲、地方交付税の改革は一体的に行われるべきものであり、そのために地方分権改革推進委員会が設置されているはずであります。それにもかかわらず、税収の偏在の見直しが先行して検討されようとしていることには、非常に強い危惧を禁じ得ません。
 都はこれまで、反論の書を公表し、四都府県知事の緊急アピールも行ってきました。その結果がこのような形となったわけでありますが、この骨太の方針二〇〇七の文章を財務局としてどう評価するのかを改めて伺います。

○真田主計部長 先日発表されました国の骨太方針では、地方間の税源偏在を是正する方策の検討については残念ながら触れられてしまいましたが、その具体策にまで踏み込んだ内容は盛り込まれてございません。また、お話のように、地方分権の部分では一体改革という考え方が述べられております。その意味では、都議会の皆様あるいは私どものこれまでの一連の活動が、一定の成果を上げたものというふうに考えてございます。
 一方で、この方針の中に、国と地方の根本的な分権改革の議論よりも、税制の見直しによる地方間の税源偏在の是正を先行させたいという国の意向が本音として見受けられますのは、極めて遺憾でございます。
 こうしたことから、秋以降、税制改正の議論が本格化する中におきまして、税源偏在の是正に向けた具体策が先行して検討される可能性が高いのではないかと危惧してございます。
 引き続き、国の動きを注視しながら、反論の準備を整えていかなければならないというふうに考えております。

○鈴木委員 今、答弁がありましたとおり、税制改正に向けた動きが秋以降本格化してまいります。ますます厳しい議論をまた国と闘わせていくわけでありますが、その中で、これまで以上に論理的な反論を多角的に展開していくと同時に、特にそのことに対するPRに力を入れ、そうした反論を幅広く都民や国民の皆さんに理解をしてもらう必要があるというふうに思います。この点は特に重要だと思いますので、しっかり受けとめてもらいたいと思います。
 そこで、本会議でも局長から答弁がありましたが、今後どのように臨んでいくのか、具体的にお伺いをいたします。

○真田主計部長 秋以降の本格的な議論に向けまして、大事なことは、都として問題の論点とそれに対する都の立場をより一層明確にしていくことであるというふうに考えます。このため、今回公表しました反論ペーパーの内容をさらに充実させた冊子を、この秋を目途に取りまとめたいというふうに考えております。
 作成に当たりましては、現在の地方財政の厳しい状況が、地方交付税の大幅削減を断行した国の責任によるものであることを実証的に分析するとともに、東京に存在します膨大な大都市需要につきましても、さらに検討を進め、明示していきたいと考えております。
 また、先生からお話しいただきましたとおり、この主張を都民あるいは国民の方々に広くご理解いただくことが重要であると考えております。このためにはPRが重要でございまして、この冊子あるいはホームページの活用はもとよりのこと、今回の四都府県の知事会談のような取り組みなども通じまして、パブリシティーに重点を置いた広報活動を展開しまして、広報媒体も効果的に用いながら、国への反対機運を高めていきたいというふうに考えております。

○鈴木委員 骨太の方針が決定したことで、地方税財政をめぐる国、都の攻防はひとまず小休止ということになりました。都においても、春の陣を終えて一段落しているかもしれませんが、よく戦いはやいばを交える前の仕込みが大事だともいいます。秋に向けての戦略を練り直して、今回発表した反論の書、次に発表するバージョンアップしたものを武器として、国と戦っていくわけでありますので、よい武器をつくるために引き続き努力をしていただきたいということをお願いしたいと思います。
 最後に、本番となる秋の陣に向けた局長の決意を伺います。

○村山財務局長 骨太の方針決定までの取り組みにおいては、都議会の皆様のお力添え、あるいは三府県を初めとする他の自治体との連携などによりまして、税収の偏在是正に向けての具体的な動きという点では、一定程度抑え込むことができたわけでございます。しかしながら、秋以降始まる税制改正の議論の中では、国との摩擦というのは一層ヒートアップするものというふうに私どもも覚悟をいたしております。
 秋に向けた主張におきましては、地方が疲弊しているという現実にも配慮いたしまして、そうした状況をつくり出した国の責任というものをつまびらかにしていくとともに、地方分権と地方税財政改革を一体的に進めることが地方全体の利益になるんだということを訴えていきたいと思います。
 同時に都としては、東京が東京として持続的に成り立っていくためには、是が非でも対応しなければならない大都市需要というものがあるわけでございますので、この点についても的確に把握し、それに着実に取り組むんだということについても真摯に示していくことが肝要であろうというふうに思っております。そのために、これから夏の時期、いささかも手を抜くことなく、今お話のありました仕込みのために、我々としても頑張っていきたいと考えております。
 いずれにいたしましても、この取り組みというのは、都民、国民の皆様のご理解を得ながら、他の自治体とも共同の歩調をとるということができてこそ事態の進展が得られるものでございますので、特にということでご指摘のございましたPRに力を入れるとともに、神奈川県、愛知県、大阪府はもとより、他の道府県や自治体、都内の区市町村との連携をこれまでより以上に重視いたしまして、都議会の皆様のお力添えをいただきながら、東京の財源を奪おうという、そうした国の理不尽な動きに対して、しっかり対抗してまいりたいと考えております。

○鈴木委員 それでは、今後の財産利活用の指針に関連して質問をいたします。
 都は、一次、二次の財政再建プランにより財政再建を達成したところでありますが、この間、同じく二次にわたる財産利活用総合計画で都有財産の売却や統廃合を進め、歳入確保と経費削減により、財政再建を財産面から支えてまいりました。国が庁舎や宿舎の売却などによる資産・債務改革にようやく着手しようとしていることに比べ、都の行財政改革がいかに迅速かつ最大限の努力をしてきたかを物語るものであります。この点も含め、国の財政力格差是正論に反論すべきだと私は考えます。
 石原都政も三期目を迎え、東京都の都市戦略である「十年後の東京」を実現するための施策をどう推進していくかが課題となっています。そして、そのために都有財産の利活用はどうあるべきかということは、一つの大きな重要なかぎとなるというふうに考えます。
 そこでまず、今回新たに作成した指針は、今までの二次にわたる財産利活用総合計画の考え方とどこがどう違うのか、その特徴や意義、目指すべき目的について改めて伺います。

○塚本財産運用部長 これまでの二次にわたる財産利活用総合計画は、財政再建に寄与することを基本としてまいりましたが、今回の指針は、次の点において新たな方針を明確にしたところでございます。
 まず、緑地の創出など「十年後の東京」の実現に向けて、未利用財産を民間の活力も取り入れながら積極的に活用してまいります。
 また、新しい公会計制度の導入や地方自治法の改正により、行政財産の貸付範囲が拡大されたことなどを踏まえまして、余裕スペースの民間への貸し付けなどにより、行政財産の有効活用を一層促進してまいります。
 さらに、庁舎の合同化の推進や余剰容積率の有効活用など、財産活用の観点を踏まえて、施設の計画的な改築、改修を進めてまいります。

○鈴木委員 今後の都市戦略が明確に示された中、これからは、都の貴重な財産を知恵を絞って有効に活用していくべきと私も考えます。例えば、「十年後の東京」でも重点的な取り組みとされている都市の緑化は、都市生活に潤いをもたらすとともに、温暖化対策、防災など重要な機能を持ちます。さらに、オリンピックを招致するためにも、風格ある都市としての東京を国際的にアピールする重要な要素でもあります。
 この都市の緑化については、私は、かねてより民設公営制度の普及を主張してきましたが、民設公営は一ヘクタール以上であることを要するなど制度上の基準があり、幅広く緑化を推進するためには、なお課題も抱えています。その意味では、指針に示されているように、財産の利活用を通じて民間の力を生かしながら緑地を創出していくことは、都の緑化施策を推進する上で有効な手法として期待をされています。
 そこで、民間の力を取り入れた財産の利活用の意義はどのようなものなのか、また、今後具体化に向けてどのように取り組んでいくのかを伺います。

○塚本財産運用部長 現在、環境や緑化、まちづくりなど、従来主に行政が受け持っていた分野について、民間企業やNPOなどが公共的役割を担うケースがふえてきており、CO2削減などへの取り組み一つをとってみても、企業を含めた幅広い都民の参加が不可欠でございます。都有財産の利活用に当たっても、こうした民間の力を積極的に取り入れ、都が抱える課題に対応していく必要がございます。
 こうしたことを踏まえまして、例えば都の保有する未利用地について、敷地の一定面積を緑地にすることや、低CO2仕様の建物にすることなどを公募条件といたしまして、定期借地契約による貸し付けを行うなど、民間のノウハウや創意工夫を取り入れ、一定の収益を確保しながらも施策の実現を図ってまいりたいと考えております。

○鈴木委員 東京が首都として高い成熟を遂げ、その魅力を世界にアピールするためには、潤いに満ちた快適で安全な都市へとさらに発展させていくことが何よりも大切であるというふうに思います。
 今、目黒駅前で、中目黒、代官山地域では、都が先行まちづくりプロジェクトを進めていますが、これは都有地を活用して民間活力によるまちづくりを行う取り組みでもあります。きょう、村上先生もおいでですが、実は中目黒、代官山を含めたかなり広範な範囲で、要するに昔からの代官山の緑を創出して、地元の方々と両方の区、そういう方々が入って、今いった都有地を含めて、良好な緑といい住宅街、それから、若者たちが本当に来れるような、そういう新しいまちを創出していこうということでの非常に大きな努力が進められているわけです。
 ただ、都区間でなかなか話がまだ進んでないという情報も入っていますが、私は、今東京都が考えているように、やはり緑を創出して、これからは、余り既存のものを建てるとかそういうのではなくして、今ある緑をどのようにして大事に守っていくのか。そして、これから将来に向けて、そこに住んでいる方々が誇りを持てるような、そして住み続けたいといえるようなまちを都市の中でも、代官山、中目黒、恵比寿とか、渋谷を含んで、やはりともに、目黒区、渋谷区、中野にしても、皆さんそういうところと連携をとって、今お互いに議論をしながらすばらしいものをつくろうとしていますので、そういうようなことを踏まえて、都有地の利活用に関してもきちっとした方向性を持ってもらいたいということも、あえてここでは申し上げさせていただきたいと思います。
 今後、こういう取り組みを進めて、緑化はもとより地域特性や街並みに適した施設の配置、にぎわいや快適性の向上など、都有地の利活用に都市づくりの観点を取り入れていくべきであるということを、改めて私も申し上げておきたいと思います。
 そうした一方、指針では、各局の施設や庁舎などの行政財産をさらに有効に活用していくための取り組みがもう一つの柱となっています。お金の使い方については、直接数字にあらわれ、目に見えやすいということもあって、役所は非常にきめ細かく管理をしています。しかし、財産の使い方については、目が行き届かない面もあるように感じられます。事業予定地として何年も更地のまま管理されている土地や、ほとんど車のとまっていない事業所の駐車場などは、都民の目線や経営の観点から見ればもったいない話であり、新たな公会計制度が導入されたこれからは、こうした点をシビアに評価し、改善していく努力が必要であり、重要と考えます。
 そこで、行政財産について今後どのように利活用していくのか、お伺いをいたします。

○塚本財産運用部長 行政財産には、事業に着手できず閉鎖管理されたままになっているものなどがあり、草刈りなどの管理経費のかかることから、ご指摘のように経営の観点からも、その効率的活用を図ることが重要だと考えております。
 これまでは、未利用の行政財産であっても行政ごとに使うことが原則であったため、十分な活用ができなかったところですが、今般、地方自治法の改正により、行政財産を民間へ貸し付けることが可能となりました。
 そこで、今後は活用可能な財産を把握し、事業実施に影響のない範囲で民間事業者への貸し付けなど、暫定活用を進めてまいりたいと思っております。具体的には、都営住宅の建設残地を資材置き場として貸し付けたり、庁舎の駐車場をコインパーキング化するなど、収益性を発揮しながら都民の便益にも供する取り組みを促進してまいります。
 また、東京都が抱える課題への対応として、自動二輪駐車場の整備や緑化などを条件にした貸し付けなども実施してまいりたいと思っております。

○鈴木委員 さて、東京のまちを眺めれば、延々と続くビル群や高速道路、橋梁など、まさに大都市としての発展を目の当たりにしますが、その実、これら都市インフラは、老朽化や耐震対策のおくれなど大きな問題を抱えているのも事実であります。我が党は、第一回定例会で都市機能の向上に重要な役割を持つ公共インフラの整備、改修について取り上げ、知事から、新しい公会計制度を武器にして公共インフラの刷新に計画的に取り組むとの決意を伺っています。
 また、都有施設や庁舎の更新も今後の大きな課題でありますが、財務局からは、大規模施設の改築、改修計画をこの夏までにつくり、基金を活用して、財源確保を図りながら施設の更新を進めていくとの答弁をいただいています。改築、改修の対象施設の全体数や予算規模、どの時点でどのような施設を改築、改修するのかといったスケジュールなどを今後明らかにして、ぜひ着実に取り組んでもらいたいと思います。
 ところで、都有施設、庁舎の改築、改修に当たっては、単に老朽化したから改修する、建てかえるということではなく、建設時とは社会経済状況や都民ニーズが変わっていないかなどの観点も十分に踏まえるべきであります。施設や庁舎のむだを排し、都民サービスの観点からも、その効率性を高めていく必要があると考えます。
 そこで、今後都有施設の改築、改修を進めるに当たって、財産の効率的活用という観点からどのような取り組みを進めていくのかをお伺いいたします。

○塚本財産運用部長 施設や庁舎の改築、改修を進めるに当たっては、建物の耐震性や設備の更新など保全の観点はもとより、施設の必要性の検証や利用効率の向上など、財産利活用の観点を踏まえた多面的な取り組みが重要であると考えております。
 このため、今年度策定する大規模施設等の改築、改修計画ともあわせまして、施設の統廃合や庁舎の合同化、余剰容積率の有効活用、国や地元自治体の施設との合築などの取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 さらに、将来にわたっても効率的な利活用が図れるよう、用途変更や貸し付けなどにも対応できる汎用性の高い建物仕様の採用などの取り組みも行ってまいります。

○鈴木委員 緑化や省エネを初め、都有財産を都の施策展開に積極的に生かしていくために、財務局が各局と十分に連携して進めていくことが必要であると思います。
 また、行政財産の利活用を各局が主体的に進めていくといっても、各局は日々の事業を実施していくのが精いっぱいで、余剰スペースの民間貸付を含め敷地や施設をむだなく使うことまで考える余裕はないというのが実情ではないのでしょうか。
 このため、指針に示された基本的考え方や取り組みは、今後、具体的な対象や手法、タイムスケジュールなどを全庁的に検討し、着実に進めていくことが肝要であると思います。
 そこで、今後、どのようにして指針に示された都有財産の利活用を全庁的な取り組みとして進めていくのかを伺います。

○塚本財産運用部長 ご指摘のように、未利用財産を施策に積極的に活用していくためには、全庁的な連携を強化していく必要がございます。
 そのため、都有財産利活用推進会議や環境都市づくり戦略合同会議などの全庁横断的な会議を活用しまして、各局と情報の共有化をしてまいります。その中で、個々の財産の特徴を踏まえまして、都の推進する施策を反映させた具体的な活用方法を検討し、提案してまいりたいと思っております。
 また、各局がみずから財産の管理や利活用の状況を点検する制度を導入することによりまして、行政財産の主体的利活用を促進してまいります。
 さらに財務局としましても、財産利活用のノウハウの提供やプランの共同作成などを行いまして、各局の取り組みを積極的に支援してまいります。

○鈴木委員 最後になりますが、指針で示された取り組みについて、具体化を着実に推進していただきたいと思います。
 最後に、今後の財産利活用を推進していくに当たっての局長の基本的な考え方と決意を伺います。

○村山財務局長 財務局は、都財政が非常に厳しい状況の中で、どういうふうにしてお金の面あるいは物の面で都財政が破綻をしないように頑張っていくかということに、非常に長い間腐心を続けてきたというのが率直なところでございます。
 その中では、お金についていえば、一生懸命節減をして、削減をして、何とかむだなことはなくそうと。財産についても、しっかり管理するのはもとよりですけれども、もしお金になるような土地があれば、売り払いをして、それで財源として充てていこうと。こういうようなことをいろいろ苦労、工夫しながら、相当長い間やってきたなというふうに考えておりまして、そうした努力の結果、ここに来てようやく、財政健全化という点では一つ区切りをつける段階に来たというのが現在の状況でございます。
 そういう段階で、私ども財務局の仕事というのも、一つ大きな転換点を迎えているというふうに考えてございます。これまでの、長いそうした中でやってきたノウハウというのはもちろん大事なわけですけれども、これからは、お金とかあるいは物、財務局が所管をしているその二つの要素についてでございますけれども、中長期的に--どう大事に守るかということも必要ですけれども、どう生かすかというところにウエートをしっかり、片一方から完全に離れてしまうわけではないんですけれども、軸足を置いて、中長期的な視野に立ってやっていくというのが、これから私どもに対して求められている課題だというふうに受けとめてございます。
 そういう中で、財産の面について今回出させていただいた、今後の財産利活用についての指針というのは、まさにそういう問題意識の中で提起をさせていただいたというものでございます。
 その際、私どもがこれからやっていく上で大事なことは、一つは、都庁全体を所管しているものとしての責任として、都としてのそういう財産利活用についての方針をしっかり持つということ、それを各局に対してしっかり、率直にいうということがまず前提でございますけれども、その上で、先ほど来いろいろご指摘のございました、各局にもいろいろ事情というものがあるわけで、体力的な問題もいろいろあるわけでございましょうけれども、そうした中で、よくそうしたものに耳を傾けて情報の共有を行って、本当に局にとっても、あるいは東京都全体にとっても、一番いい財産の使い方というのはどこにあるんだろうかということを、本当に率直に真摯に認識を共有しながら、そこで明らかになった問題点をともに協力しながら打開していく、こういう姿勢が極めて重要だというふうに認識をいたしております。
 そういう観点に立って、今後、財政運営、財産運用、建築保全という三つの機能を緊密に連携いたしまして、財務局一丸となって、各局からもより頼られる、あるいは信頼される、そういう存在によりなっていきたいというふうに考えておりますし、議会の皆様ともその辺よくご相談しながら、ぜひとも東京都の財政が都民生活あるいは「十年後の東京」の実現に向けて、財務局というのは役に立つなと、そういうふうにいっていただけるような存在になっていくべく頑張っていきたい、かように考えております。

○尾崎委員 私からは、報告のあった今後の財産利活用の指針に関連をして、何点かお伺いをしたいと思います。
 都有財産の利活用は、いつの時代でも大切なことであり、そのあり方は重要でありますけれども、その中でも私は、都民が注目する大規模な未利用地の活用についてお伺いをしたいと思います。
 まず、これまで大規模な未利用地の活用をどのように行ってきたのか、一つお伺いをしたいと思います。

○塚本財産運用部長 これまで二次にわたる財産利活用総合計画では、歳入確保策として、未利用財産を売却することなどによる取り組みを大きな柱としてまいりました。
 このため、大規模な未利用地につきましても、都や地元自治体での利用見込みがない場合には、売却を進めてきたところでございます。具体的には、芝浦アイランドや都立大学跡地などを初めとしまして土地の売却を行ってまいりました結果、約二千百億円の収入を得るなど、財産面から財政構造改革を支えてきたところでございます。

○尾崎委員 大規模な未利用地は、東京都での利用見込みがない場合、売却をしてきたとのお話でありますけれども、今後、事務事業の見直しなどが進んで、新たに大規模な都有地が未利用となることも予想をされるわけであります。このような土地は、規模が大きい分、財産の活用がどのようになるかによって、都の施策展開にとっても、地域にとっても大きな影響があります。
 このため、大規模な未利用地は民間に売却をするだけではなく、先ほどもちょっとご質問ありましたけれども、さまざまな利活用を図っていく必要があると考えます。
 そこで、今回の指針では、大規模な未利用地の活用をどのように進めていこうとしているのか、お伺いをいたします。

○塚本財産運用部長 今後の財産運用の指針では、財政再建を達成した都財政の状況などを踏まえまして、大規模な未利用地は、今後売却するだけではなく、十年後の東京を展望した取り組みなど、都の施策を実現するために積極的に利活用していくことを基本としております。
 その際、都がみずから使用するばかりでなく、民間の知恵や活力を取り入れた多様な手法の展開を図ってまいります。具体的には、環境負荷の低減など都が推進する施策と連動した条件を付した上で貸し付けを行うなど、取り組みを実施してまいりたいと思っております。

○尾崎委員 そこで、大規模な未利用地でいいますと、私の地元の調布市なんですけれども、調布市を初めとして隣の三鷹市と府中市にまたがる広大な調布基地跡地というものがあるんですけれども、ここの利活用も非常に地域でも注目をされております。今後この調布基地跡地は、調布基地跡地関連事業推進協議会などで積み重ねてきた協議を踏まえ、引き続き関連事業を円滑に推進していっていただきたいと思っております。
 と同時に、ここでは二〇一三年の東京国体の開催に当たりまして、味の素スタジアムで開会式などを実施するという案が、東京都の方から先ごろ発表をされております。東京国体は、都で開催をする三回目の大会であり、都民の健康増進やスポーツ振興などに大きく寄与をするもので、都の施策として重要なものであるということはいうまでもないと思います。
 そこで、指針にいう都の施策を実現する都有地の利活用として、この調布基地跡地を東京国体の成功のために有効に活用をしていくべきであると考えておりますけれども、所見を伺いたいと思います。

○塚本財産運用部長 尾崎副委員長お話しのとおり、東京都は、東京国体開催に当たりまして、調布基地跡地に平成十三年三月にオープンいたしました味の素スタジアムにおいて、開会式や閉会式、陸上競技、サッカー競技を実施する案を発表したところでございます。
 調布基地跡地は、返還後長期にわたり地元市と協議を重ね、利用計画の策定や関連事業の推進などを行ってきた経緯がございます。今後も、調布基地跡地の未利用な土地の利活用に当たりましては、庁内関係局と連携し、地元の市とも十分に協議しながら、あるいは今までの経緯も十分踏まえながら進めてまいりたい、このように思っております。

○尾崎委員 ぜひ今後も、この指針を具体的な取り組みとして、都民の貴重な財産であるこの土地、その他の都有財産を一層有効に活用していくことを要望いたします。
 特に、調布基地の味の素スタジアムの周りは非常に広大な都有地が残っているんですけれども、これは財務局だけではなくて、都市整備局であったり、あるいは建設局であったり、いろいろな局が所有をしているところがあるんですけれども、これは都民の目から見れば、東京都が持っている都有地という意識しかないわけです。
 それで、東京都が持っているこの土地がこれだけあいているんだから、二〇一三年に東京国体が行われるということで、ぜひこれを有効的に活用していただきたいというのは地域の住民の要望でもありますし、また、地元市でもいろいろと協議をされておりますので、先ほどご質問ありましたけれども、全庁的な連携をぜひしていただいて、都有財産の利活用を進めていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

○山田委員長 この際、議事の都合により、十分間程度休憩をいたしたいと思います。暫時休憩をいたします。
   午後二時五十三分休憩

   午後三時六分開議

○山田委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言願います。

○橘委員 財務局がまとめました今後の財産利活用の指針について伺います。
 平成十二年十一月策定の財産利活用総合計画、次いで平成十五年十一月策定の第二次財産利活用総合計画での取り組み、それを踏まえた今回の指針は、財産利活用を取り巻く環境変化、すなわち「十年後の東京」構想の策定や新たな公会計制度導入、都内の地価上昇や法改正による行政財産の貸付範囲の拡大などに対応し、全庁的な視点から有効活用していくといった観点になっております。私なりの表現を使えば、これまでの戦術的利用から戦略的利用への発展的展開に本格的に乗り出したとの感を抱いております。そういった点では大いに期待をしております。
 さて、この指針では、都有財産の新たな利活用の基本的な視点として、一点目に、民間の力を生かした施策連動型の財産利活用の推進、二点目に、コスト感覚を持った各局の主体的な財産利活用の推進などを挙げております。
 まず、一点目の施策連動型の財産利活用について伺いますが、利活用に施策を連動させるために、都有財産利活用推進会議に新たな部会を設置するとの方針を打ち出しております。つまり、施策連動の成果を得るために、この部会が極めて重要な役割を担うという位置づけが見えてまいります。
 そこで、この施策連動型の利活用の成否を握ると思われる部会の構成について、また具体的な役割について伺います。

○塚本財産運用部長 都の施策実現に資する利活用を進めていく際には、施策の展開手法に応じて活用可能な財産を的確に提供していくことが重要であり、今までにも増して全庁的な連携が不可欠でございます。
 このため、全庁横断的な都有財産利活用推進会議のもとに、財産所管局や連動する施策の関係局などで構成する部会を設置いたしまして、具体的な対象財産や盛り込むべき施策の内容などについて実務的な検討を進め、指針を具体化してまいりたいと考えております。例えば、指針で具体的な取り組み例とした、環境負荷の低減を条件とした都有地の貸し付けであれば、緑の配置や緑化の面積、省エネ、CO2削減効果の高い建物の仕様など、公募の基準を関係局で検討してまいりたい、このように考えております。

○橘委員 確認でございますけれども、今説明で、施策に関係する関係各局、それから、貸し付けなどについて公募の基準を関係局で検討すると。両方とも関係局、関係局という言葉で表現しておりますけれども、関係局というのは全く同じですか、同一のものですか。

○塚本財産運用部長 ちょっと同じような言葉を繰り返して申しわけございませんでした。関係局と申しますのは、いろんな施策がございますので、その施策に応じた、例えば環境局ですとか、あるいは都市整備局ですとか、そのような関係する局が一つございます。それからもう一つ、財産を持っている、主には私ども財務局が中心になろうかと思いますけれども、財産を保有して、その財産を活用していこうということを考えている局。その両方で構成をいたしまして、施策の実現を図るような形をとっていきたい、このように考えております。

○橘委員 わかりました。
 次に、視点の二点目に掲げている、コスト感覚を持った各局の主体的な財産利活用の推進について伺います。
 この視点の具体的な取り組みとして、管理者である各局による自己点検制度の本格的な導入、財務局による実地調査制度の導入などが盛り込まれており、その成果を期待したいと思います。
 さらに、各局に対する財務局の支援として、利活用ノウハウの提供やプラン作成の助力を挙げておりますけれども、この各局の行政財産にあえて財務局が関与する、また、せざるを得ないというのかわかりませんけれども、あえて関与する理由と、実際に関与する場合、どのような形で支援をしていくのか、この辺を具体的に示していただきたいと思います。

○塚本財産運用部長 行政財産の余裕部分の利活用につきましては、行政財産を所管する各局が主体的に取り組むことが大切であろうと考えております。しかし、所管しています各局は、財産をどのように使うのかといった利用方法ですとか必要な手続などに関するノウハウが不足している現状にございます。
 そのため財務局は、必要な制度を整備するとともに、このような利用のノウハウの提供ですとか、あるいは利活用のプランをともに作成していくことなどによりまして、各局が主体的かつ継続的な利活用を実現できるようにしてまいりたい、このように考えております。

○橘委員 次に、一般論としてお聞きしますけれども、都営住宅の建てかえに伴って発生する創出用地、それから、古くからある都の施設の中には、広い敷地の中に建物がぽつんぽつんと建っているような、周りから見れば少し余裕があるのではないかという、そういった行政財産もございます。そうした都有地については、今回の新たな財産利活用の基本的な視点をもとにすれば、今後の都の施策を実現するために、そういった土地を活用していく可能性もある。それから、民間の知恵や力を取り入れるということであります。つまり、施策実現をするというために使う、それから活用する。一方で、収益性も重視をするといったことがいえるかと思います。
 しかし、そうした土地については、地元自治体、地域住民にとっても大きな関心事でもあります。公園、スポーツ施設、高齢者、障害者施設などへ活用したい、そうしたまちづくりの観点からそれを使わせていただけないかといった要望も多々ございます。
 そこで、こうした創出用地とか余裕のある都有地、そうしたものの活用に当たっては、まちづくりの観点からの地元要望も強まっていることも考慮して、そういったものも配慮しながら利活用の方法を考えていただきたいと考えております。
 そこで、これらの土地の利活用に当たって、地元の要望があった場合、これはあくまでもあった場合というときでございますけれども、具体的にどのような形で対応していくのか、これについてお聞きしたいと思います。

○塚本財産運用部長 都の有します財産で余裕のあるような場合についての対応でございますけれども、一つは、余裕のある場合に、各局が自分で抱え込んでそのままにしておくことだけではなくて、各局の用途から外しまして普通財産として私どもの方に引き継いでいただいて、広く庁内で、他の局で都の施策として使えないかということをまず--両方考えていくのが大事だろうと、このように考えております。もちろん、その際においても、都の施設をつくるときでも、当然のことながら、地元の皆さん方のご要望も聞きながら施策を展開していくということになろうと思います。
 それからまた、都の庁内での利用が特にない場合には、私どもとしましては、地元自治体に照会いたしまして、地域での活用というご要望がないかというものもお聞きしております。もしご要望があれば、地元自治体に対しまして貸し付けや売却などを行っているところでございます。
 今回の指針では、庁内利用も、あるいは地元自治体からの特にご要望もないような場合において、このような都有地を売却するだけではなく、民間の力も取り入れながら、東京都の目指す施策を少しでも展開していくようにしたい、このようにしたものでございます。
 いずれの過程におきましても、あるいは民間活力を利用した都有地の利用におきましても、個々の土地の特徴や地域のニーズなどを踏まえまして、地元自治体などとも調整しながら利活用を進めていきたいと考えております。

○橘委員 局で活用する場合、庁内利用する場合、それから地元で活用する、その可能性もいろいろあるわけですから、それも十分配慮していただかないと、都に対する風当たりというのは強くなろうかと思いますので、その辺の配慮を十分これから活用に当たってはしていただきたいということを要望しておきます。
 次に、端切れ地、小規模な都有地、そういった利活用については、民間への貸与、売却を柔軟に考えるべきであると考えております。都は、民間への貸与、売却を行っていると聞いておりますけれども、積極的に推進し、こうした端切れ地でこそ収益性を重視した取り組みを推進すべきだと思います。今後の積極的な工夫について、見解を伺います。

○塚本財産運用部長 端切れ地など小規模な都有地につきましては、これまでも隣接者の申し出などに基づきまして、売却や貸し付けなどを行うという取り組みをやってまいりました。また、ある一定規模以上の土地につきましては、一般競争入札などにより売却をしてきたところでございます。
 今後は、さらに環状八号線などの事業残地につきまして、今まで以上に積極的に隣地の方に売却を働きかけたり、あるいは事業用代替地として活用するなど、取り組みを現在のところ行っているところでございます。
 また、このような利活用に加えまして、今後は指針に基づきまして、小規模な都有地についても、幅広い都民の参加によって施策に生かし、都が抱える課題の解決に少しでも役に立てればというふうに考えているところでございます。

○橘委員 最後に、昭和二十年の前後の混乱期、このときに都有地の上に民間の住宅や建物が建てられて、長い年月を経る中で既得権益になっているような、そういったケースも少なからず存在すると聞いております。こうした都有地への対応について財務局の基本的な見解を伺って、質問を終わります。

○塚本財産運用部長 財務局では、所管いたします普通財産のうち、不法に占有されているような状態の財産を管理不適正財産という形で区分しております。こうした財産は、長い年月を経過しておりますため、解決が非常に困難なものも多いのが現状でございます。財務局では、個別案件の事情に応じまして占有者と交渉を行い、管理の適正化に現在努めているところでございます。
 このような財産は、各局から財務局が引き継いだ時点で既に不法占有されているというようなケースも多々ございます。財産の管理不適正化を防ぐためには、できるだけ早い段階での対応が非常に有効でございまして、私どもとしましては、各局がそれぞれ所管する財産を適正に管理できるよう、今後一層専門的な立場から支援をしてまいります。具体的には、各局が財産管理者として財産の管理状況などの点検を行う自己点検制度、及びそれをフォローアップいたします財務局による実地調査制度を今年度からスタートさせたところでございます。

○曽根委員 最初に、「大都市狙い撃ちの財政力格差是正論への反論」、この文書についての質疑をさせていただきたいと思います。
 国の法人課税分割基準の見直しだとか、また、最近出てきたふるさと納税などが、確かにこの文書でもいわれているように、国の地方財政難に対する責任を棚上げして地方間の分断を図るものだというのは、全くそのとおりだと思います。この点は同感するんですが、しかしこの中で、文書に出てきている幾つかの議論については、私も異論を持っております。行革論もありますけれども、これはまた別の機会にしまして、きょうは、特に大都市需要の議論について取り上げてみたいと思うんです。
 資料でもいただきましたが、これまで東京都は、いろんな形で大都市需要の存在ということを国などに対して主張してきたわけです。過去には、この資料でも出ているように、都民サービス、直接サービスに係るもの、福祉、暮らしにかかわるものがかなり取り上げられていたように思うんですが、今回は、数も少ないということもあるでしょうけれども、大都市需要の問題が、どっちかというとハードの面に偏っているのかなと。過去に出してきた上下水道、暮らし、医療、子育ての少子化対策など、こうした都民サービスでの大都市需要についての認識というのは、現段階ではどうとらえておられるのか聞きたいと思います。

○真田主計部長 先ほどの鈴木委員のご質問でもお答えさせていただきましたけれども、今回、このペーパーで大都市需要を掲げさせていただきました意味は、この間、税収の多寡ばかりに着目した財政力の格差の議論が行われておりますけれども、本来、地方の財政力の比較を行うには、歳入だけではなくて、歳出、行革努力、トータルで考えるべきだろうと。都においては、多額の税収がある一方で、みずからの税収で賄うべき膨大な財政需要も存在しているんだと、そういうことを明確に主張する必要があるだろうというふうに考えております。
 そうした中で、今回反論ペーパーで取り上げました大都市需要は、東京都におきましては、ソフト、ハードに関係なく行うべき需要はたくさんありますけれども、特にそういった膨大な財政需要を抱えているということ、また、これを解決するためには多額の費用がかかるんですよということをわかりやすく例示するために、今回、幾つかの事例を取り上げさせていただいたところであります。
 また、昨年のように、単に指標のみをお示しするにとどまらず、事業費も含めて具体的にお示ししておりますので、東京に存在する財政需要の大きさをイメージしやすいものということで選択し、アピールしたものでございます。そういうことでございますので、ソフト面の需要が全くなくなったというふうに考えているわけではございません。

○曽根委員 それを聞いて、一つは安心したんですけど、大都市需要論を主張した根拠としては、以前は、中心は、不交付団体にされているということに対して、実は東京は、例えば住民サービスにしても、昼間人口というものに対するサービスを余儀なくされているんだ、しかし、昼間人口ですから住民税はその方々は払っていない、そのことについて特に主張していたと思うんですね。約三百万人ぐらいですか、千葉都民とか埼玉都民とかいわれている人たちの日中の生活の場が、事実上東京にあると。そのために必要な、企業活動ももちろんですが、事実上、生活を東京で半日以上しているということによる上下水道やごみ処理その他のコストがかかっているということを強調したと思うんです。だから不交付団体はおかしいということをいってきたと思います。
 こういう観点は、今日でも大都市需要をきちっと押さえていく上では重要だと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

○真田主計部長 大都市需要につきましては、何をもって大都市需要とするかにつきましてはいろんな議論があるところでございますけれども、少なくとも先生にご指摘いただきました昼間流入人口につきましては、一つの大きな要因であろうかと考えておりますし、また、東京に人口が集積していること、あるいは、大都市なるがゆえに他の都市には見られないようないろんな需要がある、そういったことに伴う東京独自の財政需要も生じているわけでございます。
 また、東京は首都としての機能も担っておりまして、そういった観点で生じている財政需要もございます。そういったものがもろもろ重なりまして大都市需要を構成しているのかなというふうに考えております。どんな需要がどのぐらいあるかというのは、今、鋭意精査しているところでございます。

○曽根委員 私が、なぜこの昼間人口問題を大都市需要としてきちっと押さえる必要があるというふうに強調するかといいますと、これを主張していた当時は、東京都は、要するに千葉都民、埼玉都民といわれているように、大変な遠距離通勤をして東京に来て働く、また大変な遠距離通勤で戻っていくという問題を解決していく必要があるということで、ハードの都市づくりの上でも多極分散型の都市づくりというのを、実態はかなり建前論というのがあったと思いますが、一応掲げていた。都心を中心に余りにも集積し過ぎている、一極集中が過度に進んでいるということに対する是正を都市計画の上で掲げていたからこそ、昼間人口の問題を今抱えているんだと、我々も解決に取り組んでいるんだけれども、国の方もこの負担を認めてほしいというふうにいえたと思うんですよ。
 ところが、今、都市政策は事実上変わっていて、むしろ東京に企業を初めとする集積をもっと進めることによって、国際都市間競争などに勝ち抜いていくという基本的な流れになってきていますよね。今回出されている大都市需要論というのは、いってみれば、その都市政策の変更をさらに進めていくといいますか、例えば大きな自動車道路をつくる、立体交差などで交通渋滞を緩和していくということは、一層企業が進出しやすい東京をつくっていくという方向での必要なコストがかかっているんだということを強調するという形に私はなっているのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○真田主計部長 先生ご指摘のとおり、都はいろんなインフラ整備を行っておりますけれども、これは何も企業活動を支えることだけを目的に行っているものではございません。渋滞解消ですとか、あるいは都市型の水害対策、今回例示で挙げさせていただきましたけれども、そういったものは企業活動を支える効果があることはもちろんですけれども、むしろ都民生活の利便性の向上、あるいは安全の確保などにも大きく寄与しているものでございます。また、そういったことが、その効果が日本全国にも及んで、経済の好循環も生み出しているというふうに考えております。
 こういうことで、インフラが整備されることで経済の効率性も高まっておりますし、そうした効果がまた企業の集積をもたらして、我が国経済全体を活性化させるということにもつながっている。これは、当然都として目指すべき都市経営のあり方だというふうに考えております。

○曽根委員 私、東京都がそういうふうにいいわけしても、他の県はそう見てないと思うんですよ。知事を先頭に、東京に企業が集まってほしいということを声高にいってきましたし、それに資するために高速道路なんかもつくっていこうとしている。そのためにコストもかかるということを強調すればするほど、それは、はっきりいえば、そういうコストがかかるのは当然じゃないのと、そのおかげで法人税が東京都にどんどんふえているのじゃないかと、そのコストがかかるということをもって地方にお金が出せませんというような理由にはならないよというのが、私は思いとして、はっきりいうかどうかは別ですけど、他の県の方からの東京に対するまなざしの中にはあるのではないかと思うんですが、こういうことを強調すればするほど、そのまなざしが一層きつくなっていくというふうにはお考えにはなりませんか。

○真田主計部長 都市には、都市それぞれの置かれた状況に基づきまして、また、各首長さんたちがそういった状況を踏まえて、いろんな政治的な判断も含めまして、その都市経営をしているところでございます。それぞれがそれぞれの努力で都市経営を行って、その結果、都市間の競争が生まれ、税収が集まる、集まらないという、結果としてそういうことにはなっているかもしれませんけれども、都市がそれぞれの生き残りをかけてそういった競争をするというのは当然のことだと思いますし、その結果、それぞれの都市で例えば税収のアンバランスが生じてしまうというのも、これは結果としてはしようがないのかなと。
 ただ、それを一方で放置しておきますと、例えばナショナルミニマムの問題ですとかそういったことも出てまいりますので、それをならすための仕組みとして、現在、地方交付税でそういった財源調整措置が講じられ、この反論ペーパーでも記載してございますけれども、地方税としては、今申し上げましたとおり、いろんな格差が生じている事実はございますけれども、地方交付税でその格差はならされているという状況だというふうに認識しております。

○曽根委員 私どもはずっとこういうことを強調しているんですが、最近私が非常に注目したのは、知事自身も最近の、これはFMラジオですかね、J-WAVEという番組のインタビューの中で、昼間人口による財政需要の問題を強調しているんですよ。これ、ちょっとニュアンスは違うなというふうに受けとめました。しかも、東京みたいに集中、集積が進み過ぎたのは問題がある、私はこれ以上集中集積する必要はないと思うし、というふうなこともおっしゃっているんですね。
 ちょっと注目しているんですけど、やっぱりだれもが聞いてわかる議論というのは、東京には明らかに企業の集積がどんどん進んでいる。それで、法人税も集まってくる。それが現実に東京ひとり勝ち論になっているじゃないかというわかりやすい受けとめがあるからこそ、知事もやっぱりラジオの番組なんかではこういうふうな点をいわざるを得ないんだと思うんです。
 そこに、ほかの自治体との間でも合意をしながら、先ほどお話も出たように、東京の都合だけを強調するのでなくて、自治体間が本当の意味で調整していく。財政のいわば格差といわれるものがあるならば、それを調整していくという努力が必要だろうということで、そういう点では、私はこの大都市需要の出し方については、今指摘した点を申し上げておきたいと思うんです。
 最後に、やっぱりこの間いわれているように、東京都が全国の自治体の財政的にも政治的にも大きな力を持っているという点では、自治体間で、国のいうさまざまな干渉をされる前に、財政的な格差を是正していくための何らかの調整の力を、仕組みや力を持っていくということが本来的な解決の道だと思うんですが、この点についての見解を伺いたいと思います。

○真田主計部長 今回、国で行われております議論につきましては、反論の書で分析しましたとおり、基本的には、本来国と地方の間で進めるべき地方分権の議論を、あたかも東京に税収が集中していくことが悪いかのように地方と都市の問題にすりかえている、そこが基本的には問題だというふうに考えております。また、そういった議論に乗ってしまいますと、本来目指すべき地方分権改革がとんざしてしまうという危機感も持っております。
 そういったことで、この間そういった反論書もまとめましたし、また、志を同じくする四都府県の知事さんにも集まっていただいて、そういった共通認識を持って緊急アピールなどもまとめたところでございます。
 今回、私どもがそういうことでいろいろ主張しておりますけれども、これはあくまでも地方自治全体の観点から行っているものでございまして、ひとり勝ち論のあれからどうだこうだということではございません。私どもが行っていることが、ひいては地方自治全体のこれからの地方分権の改革に役立つもの、そういうことで地方全体の理解が得られるんだというふうに考えております。

○曽根委員 私は東京都税制調査会にも参加しているんですが、昨年の第二回、十一月二十七日の都税調のときに、神野会長が最後におっしゃったことは非常に重みがあるなと思ったんですが、要するに、東京都の日本の地方団体における位置は大変重い、事実上、日本の中心ではないか、東京都は、これからの地方自治体のあり方、ひいては日本の国のあり方を引っ張っていくという使命がある、そういう覚悟で臨んでほしいと。これは主税局が所管していますけど。その中で、中央政府の方で、地域間でこれだけ格差が広がると、もはや地方自治体、地方公共団体はまとまることができないだろうというふうにいわれておりますと。中央政府の方がなぜ分断を図っていくのかといえば、実際に格差があるからだ、そこをまとまらないようにさらに格差を広げると。
 これに対して、格差を超えて日本の国民の幸福、それはひいては東京都民のことで考えようとすれば、東京都がリーダーシップをとって、少なくとも交響楽団を演奏する指揮者のように、不協和音が出ないような形で地方公共団体のリーダーシップをとっていくということが一層望まれる時期に来ているのではないか、こういうふうに問題提起をされて、はっきりとはおっしゃらないんですけれども、東京都がやはり地方自治体間の何らかの調整の、ここでいえば指揮者のような役割を果たしてほしいということを率直に求めていまして、私たちも、そういう形で受けとめていろいろな物をいっていきたいというふうに思います。
 次に、都有財産の今後の利活用の指針について何点かお聞きしたいと思うんですが、今度出された指針は--これまで第一次、第二次の利活用の計画もありました、基本的には売却を中心にやってきたと。二千百億円ですか、売却益も得たと。同時に、私が振り返ると、第二次の利活用の計画などは単に売却だけではなくて、例えば研修所などを中心にした各局の持っている施設を統廃合しながら、必要のないところは売りに出していくというような、統廃合含みのそういう計画も進んできたかと思います。
 売却についていえば、その中にはかなり多くの都営住宅用地が含まれていまして、例えば都営住宅を建てかえる際に、半分ぐらいに集約して戸数も減らして、残りの土地は売却して、今、結構民間マンションなんかが建っているという状態になっていますし、また他県の施設、例えば千葉県の成東町にあった児童養護施設、これは医療機能がついた全国で二つしかない施設で、非常に重要な役割を果たしたんですが、四ヘクタールの土地、成東町ですから約三千万円で売られちゃいまして、二千百億円のうちの三千万円、大したあれにはならなかったんですが、今、児童養護施設はどこも満杯状態ですよね。本当に三千万円で売って、その分のメリットが東京都にあったのか。三千万円ではあがない切れないものを失ったのではないかというふうに私は思っているんです。
 そういう意味では、今度の指針によって、はっきりいえば、本当の意味で売却益を上げるためにとか、もしくは必要のない研修所などというようなことで統廃合を進めるとかいいながら、実際には非常に便利な場所で研修ができたのが、職員が遠くに行かなきゃならないようになってしまうとか、教育庁のように、研修所を水道橋のそばに移したために、それまでそこでやっていた高校生の最新のパソコンを使った実習ができなくなるとか、実際にやっている仕事の上で実は支障が出ているような統廃合や売却が行われてはならないと思うんですね。
 そういう点の考え方として、今度の指針には、そういう意味での是正が盛り込まれているのかなということをお聞きしたいと思うんですが。

○塚本財産運用部長 これまでの二次にわたります財産利活用総合計画では、未利用財産の売却による歳入確保ですとか、施設の統廃合による歳出の削減などによりまして財政再建を支え、大きな成果を上げてきたと思っております。
 また、未利用財産の売却に当たりましては、まず庁内利用を十分検討し、次に地元区市町村の取得要望をお聞きしまして、これらの利用予定や要望がないものについて売却を行ってきたところでございます。
 指針におきましても、財産の効率的な利用のため、施設の統廃合ですとか将来にわたって利用見込みのない財産の売却については、引き続き進めてまいります。
 一方で、都民利用予定がない財産でも、民間の力を取り入れることによって施策実現などが図れるようなものについては、多様な手法による利活用を進めていきたいというふうに思っているところでございます。

○曽根委員 ちょっと具体のことでお聞きしたいんですけど、今回の四月からですか、自治法の改正でできるようになったという、その法的な改正を利用した第一号ということで私のところで教えていただいたのが、主税局の都税事務所の駐車場の一部。要するに、主税局としてのまだ仕事はしながら、駐車場の一部を民間に貸し出せるようになったということで、それを使ってコインパーキングをこれから始めるということで、主税局を利用するお客さんは無料のままで、あいているところを、ふだんちょっとほかの買い物に使われちゃっているので、そこはコインパーキングでしっかりお金をもらいましょうということだと思うんですね。
 そういうふうな意味では、若干の財政は稼げるのかもしれませんが、この指針で本当の意味で、地元の要望にこたえられるようにというお話も先ほどありましたが、大丈夫なのかということで、ちょっと具体的な私の地元の話を聞きたいと思うんです。
 お聞きしたいのは、滝野川にあります都立池袋商業高校の跡地なんですね。約二万平方メートル以上あります。ここは、もう廃校になってから二年ぐらいたつんでしょうかね。最近、地元から、この場所に、一つは地域の避難場所としての確保、老人福祉施設としての利用、それから、子育て支援の核となる保育所に利用させてほしいということで区議会に請願が出まして、一応趣旨採択されたんだと思うんですね。
 当然ながら、都の方にもこの要望は来ているのではないかと思うんですが、来ているかどうかということと、それから、こういう地元要望がはっきり出ているわけですが、尊重される、要するに実現される見通しがあるのかどうか。

○塚本財産運用部長 今、曽根理事がお話のありました区に請願が出されたということにつきましては、北区の方からお聞きしております。ただ、もう一方では、今お話のあった内容につきましては、いずれも地元の自治体が対応すべき行政課題ということになりますので、その地元の北区の方で私どもの方へ、そのような形での利用をしたいというご要望は、今のところございません。

○曽根委員 結局、そういうところは多いと思うんですね。地元の区市町村が手を挙げない。なぜ手を挙げないか。それは、お金がかかるからですよね。土地が高い。二万平米。それで、滝野川--北区も周辺区の一つですけど、それにしても、二万平米ですから数百億かかるんでしょうかね。だから、たとえ都と区の間であっても市場価格でという今の原則からいえば、手を出せませんということになるんですが、滝野川地区というのは、この地図でもわかるように、本当に住宅密集地域なんですよ。商店街、住宅が密集しているんですよね。細かい道路が多い。
 この中で二万平米といったら、やっぱり避難場所としては重要な場所なんですね。そういう場所を民間のマンションに売られちゃうのではなくて、何とか防災の地域、広場としながら、中にそういう施設を、地元に足りない老人福祉施設をつくれないかという要望を実現するという、都民的には非常に意味のある目的のために、何らかの財政的な優遇措置なりができないものだろうかと。そういうことが今度の指針の中で何か可能性があれば、ぜひ教えていただきたいんですけど。

○塚本財産運用部長 未利用となりました都有地の地元の利用につきましては、今までも、地元自治体に公共的な用途で売り払いを行う場合につきましては、時価ではなく、時価から減額をして売り払いを行っているところでございまして、それなりの財政的な支援を行っているところでございます。

○曽根委員 その額とか財政支援はどの程度かというのは、余りここでは立ち入ってお聞きするのはやめておきますので、今後の拡大に--こういう公共的な利用の場合、特に今介護などが、営利企業が入ってきて食い荒らされているときに、公共がしっかり頑張らなきゃならない分野はやっぱりあると思うんですね、保育にしても。そういう点について、ぜひ財政支援の配慮をお願いしたい。
 それから、この文書の中に、NPOなどと、要するに住民のさまざまな組織と連携しながら活用を図っていく道があるというふうに書かれているんですが、例えばこういうところに緑を植えたいと、処分が決まるまで、廃校になってもう二年たっていますから、土ぼこりが立っているわけですよ。そういうときに、地元の方々が中に植栽をして緑をふやす、その分のいろんな手だては地元の方でも負担しましょう、しかし、その分、無料で菜園その他に使わせてくださいと。例えばそういうことがあった場合は、これは可能なんでしょうか。

○塚本財産運用部長 都有地の活用に当たりましては、どなたに利用していただくか、特に随意契約のような形でご利用いただく場合につきましては、特定の方に偏ったり、あるいは特定の方の便宜供与になるようなことは、なかなかできないのが現状でございます。
 そのため、今回の指針で、NPOなどの団体の方に使っていただこうというふうに書いておりますのは、例えば緑地で、環境局でこれから行います、すき間緑化というような仕組みを使いまして、環境局あるいは地元自治体と連携しながら、地域の方々に都有地を使って緑化をしていただく、そういうような仕組みを今後構築していこうというふうに考えております。

○曽根委員 これが本当に貸付制度になっちゃうと、入札みたいな格好になって、地元の住民の方々は企業には勝てないわけなんですよね、はっきりいいますと。ですから、やはりその地域に住んでいる方々が、何らかの優遇措置でもって、地元の緑をふやすために活用できるという道が開かれる必要がある。これは環境の点でも重要ですから、ぜひその点を追求していただきたいということを申し上げて、質問終わります。

○高木委員 先ほど我が党の鈴木委員の質疑で、今後の財産利活用の方針をめぐる議論がございました。この指針の中で、公会計制度の活用について言及している部分があるため、何点か関連して質問をしておきたいと思います。
 指針において、公会計制度により財産の利活用状況を検証して、見直しや改善に結びつけ、次の計画につなげていくマネジメントサイクルの確立を目指すとの考え方が示してあります。公会計制度をマネジメントサイクルの中に組み込んで活用するという視点は、都の個別の事業についての分析に当たっても非常に重要になるものと考えています。
 そもそも平成十一年、都財政が危機的状況にある中、石原知事が強力なリーダーシップを発揮して、負の遺産が幾らあるのかを知りたい、複式簿記の発想を行政に導入し、事業別の財務諸表を示す機能するバランスシートの作成を通じて、さまざまな負の遺産に切り込んできました。
 特に私が印象的だったのは、財務諸表を作成して、多摩ニュータウン事業の数百億円に上る債務超過の状況と、さらにその負債が拡大しつつある方向性までもあぶり出し、事業の縮小及び所管組織の廃止、統合という思い切った成果を生み出したことであります。その内容については、実はこの本に大変詳しく書かれておりまして、後でまた紹介しますけれども、これはなかなかすばらしい内容のことが書かれてありました。こうした事例を見るにつけ、今回の新しい制度を用いた個別事業の分析は、機能するバランスシートにも増して注目していかなければならないと考えております。
 先ほど我が党の鈴木委員の質問に対し会計管理局からは、具体的な事業を選定し、その財務情報を示していくため、財務局など関係局と調整を図るとの答弁がございました。どのような事業について財務情報を明らかにされ、分析されることになるかは、私としても非常に強い関心を持っているところであります。都政の事業分野は幅広いだけに、公会計制度に基づく決算が初めて出ることしから、いきなり数多くの事業を取り上げて分析するのは難しく、試行錯誤の時期が続くようにも感じています。
 そこで、都の事務事業の中で公会計制度を用いての議論は、当面どのようなものを対象に行うことが必要であると考えていらっしゃるか、お答えください。

○真田主計部長 個別の事業につきまして、できるだけ数多く分析を行うことは必要でありますけれども、先生に今お話しいただきましたとおり、今回初めての取り組みでもございまして、試行錯誤の中での取り組みということで進めなければならない状況にあることも確かでございます。
 そのため、当面は複式簿記・発生主義会計の視点から論点を明確にしまして、効果的な分析あるいは議論が期待できる都の主要な事業を対象とすることを考えております。具体的には、法律に基づいてこれまで議会に決算資料として提出させていただきました主要施策の成果、これは都の主要な事業の決算状況あるいは事業実績等の成果を説明するために作成したものでございますけれども、当面、これに掲載してある事業を対象としていきたいと考えております。
 これによりまして最初の一歩を踏み出させていただきたいと考えておりますけれども、今後、さらに事業ごとの成果をよりわかりやすく伝えられるような努力、工夫を加えるとともに、分析対象事業の拡大についても検討を開始したいと考えております。

○高木委員 公会計制度を用いて、ぜひとも有意義な議論が展開できるように期待をいたしたいと思います。そうした中においても、個別事業の財務情報については、どのような部分が議論のポイントになるのかをわかりやすく示す工夫が必要であると思います。
 そこで伺いますが、個別事業の財務情報についてはどのように示していくお考えでしょうか。

○真田主計部長 事業の費用対効果が明確になるように、行政コスト計算書の中から減価償却費あるいは金利など、これまでの官庁会計方式の決算ではなかなか明らかにできなかったコスト情報を示していきたいというふうに考えております。
 また、事業に係る経費をよりわかりやすくするために、例えば利用者一人当たりのコストがどの程度かかっているかなど、一規模当たりの行政コストの数値も示すよう、工夫を行っていきたいと考えております。
 さらに、資産に対しましてどの程度の負債があるかをわかりやすく示すため、必要に応じまして貸借対照表のストック情報も提示してまいりたいと考えております。
 こうした数表によります財務情報に加えまして、事業に係る費用あるいは収入差額等のポイントを簡潔に表現しまして、この議論のポイントがどこにあるのかということがわかりやすく示せるような工夫もしてまいりたいというふうに考えております。

○高木委員 専門性が高く複雑な財務情報について、さまざまな工夫を通じてわかりやすく、論点を明確にしながら議論のできる工夫をぜひともお願いをしたいと思います。
 これらの個別事業の財務情報が大切であるということは、もうみんなはわかっていることなんですが、その一方で、都民の大きな関心というのは、都全体の財務状況がどうなっているかという点にも実はあるんだろうと思います。新しく作成される都全体の財務諸表についても、個々の数字を正確に公表するだけでなく、その数字の持つ意味そのものを多くの都民にきちんと理解していただくことが不可欠だろうと思います。個別の事業の財務情報とともに、東京都のような規模の大きな自治体の全体像を都民にしっかりと示し、個別事業の財務情報と全体像の両面から都政全体がより明確に見えるよう、財務情報を示していくことが必要かと考えます。
 そこで伺いますが、個別事業とともに東京都全体の財務情報を都民にもわかりやすく伝えていくべきと思うんですが、どんな方法でやられるか、いかがでございましょうか。

○真田主計部長 個別の事業に係る財務情報だけでなく、都全体に係るものもわかりやすく開示して、より質の高い議論を展開していく必要があるということは、ご指摘のとおりでございます。
 そのため、複式簿記・発生主義会計を用いまして、都全体の財政運営の効率性等についてのマクロ的な視点の分析を行ったり、あるいは公営企業や監理団体等の財務情報も含めた東京都全体の財政状況も的確に把握できることを目的としますアニュアルレポートを、この秋に作成する予定でございます。このアニュアルレポートの作成に当たりましては、都の財政状況等のポイントや、あるいはその数字の意味するところがどこにあるのかということを都民にわかりやすく解説するなどの工夫も図りまして、都民に対する説明責任の充実に取り組んでいきたいと考えております。

○高木委員 そういう取り組みを財務局だけにとどめることなく、各局においても、財務情報をホームページなどを活用して積極的に公開していくような工夫も大切と考えます。ぜひとも都庁全体で、積極的にこういった動きを進めていってほしいと思います。
 機能するバランスシートの作成から新たな公会計制度の導入に至るまで、その道のりは、官庁会計になれ親しんだ都の職員にとっては手探りの繰り返しであり、決して平たんなものではなかったと思います。職員の皆さんのこれまでのご労苦は、はかり知れないものがあったと感じています。
 現在、初めての公会計制度による財務諸表の作成に向けて、各局とも数多くの複雑な作業に取り組んでいる最中かと思います。こうした努力が実を結んで、秋の決算報告では、これまでにも増して、財務情報を活用した今までと違う側面からの検証と分析が的確に行われるよう願っております。
 そういう意味合いにおいて、最後に、新たな公会計制度の効果的な活用に向けた局長の決意をぜひお伺いをしたいと思います。

○村山財務局長 今回、新たな公会計制度をいよいよ始めたわけでございますけれども、日々の会計処理の段階から複式簿記の処理を行って、多様な財務情報を迅速かつ正確に作成するという、全国初の本格的な仕組みでございます。
 これをまとめること自体、今お話のございましたように、随分苦労のあることでございまして、これまでの仕組み自体をつくる苦労もさることながら、それを実際の事業の中に当てはめてやっていくという意味では、これからもなおいろいろ課題のある、まとめていくこと自体においても課題のある分野だというふうには思っておりますが、同時にこれからの新しい課題としては、このツールというものを、都財政の運営あるいは事業の実施の中で実際にどうやって生かしていくのか、活用していくのか、使っていくのかという点にあると。それでこそ、この制度を導入した意味もまたあるわけでございます。
 先ほど鈴木先生のご質問に対する答弁の中で、都財政は一つ転換期を迎えているというふうに申し上げたところでございますけれども、これから中長期的な視野に立って、「十年後の東京」の実現に向けた政策課題に取り組む弾力的で強靱な財務体質というものをつくっていく上においても、この新たな公会計制度というものが、どういうふうにそこで使い得るかというのが一つの試金石となるのではないかというふうに思っております。
 といいますのは、いろいろこれまでの苦しい時代を乗り越えて、一つ危機的な状況を超えて、新しい課題を積極的にやっていくんだという段階になったからといって、では、いわば甘々の事業展開でいいのかというと、そうではなくて、逆に本当に都民の負託にこたえられるような事業展開をやれているのかいないのかということについて、全体的かつ個別具体的にしっかりと都民の前に示すというアカウンタビリティーの点が一つ。
 もう一つは、我々の中で、いわば都庁の中、もちろん議会も含めた都庁の中での事業実績に対する厳しい検証ということもまたあってこその新しい政策課題への取り組みということになるわけでございまして、その点をこれからますます、まさにマネジメントの仕組みとして強化していかなければならないというふうに私ども考えているわけでございますが、その際に、この公会計制度をどうやって活用していくのかというのが、これからの私どもにとっての責務であるというふうに思っております。
 何分導入したばかりの制度でございまして、それについてどういうふうにしていくのかということについて、なかなか課題が多いわけでございますが、その第一回目のアウトプットである、この秋に出すであろうアニュアルレポート等の指標については、現段階における我々の最大限の力を込めて作成をしていきたいというふうに思っておりますし、それでまたいろいろご議論をいただきながら、ステップアップをさせていければというふうに思っております。
 それにつけても、ご指摘いただきましたように、この活用ということについては各局との連携というのが非常に大事でございますので、活用分野について財務局が中心となって、決算部局である会計管理局や事業を担う各局と十分な連携をとりながら、新しい公会計制度がぜひとも効果的に活用できるように、都庁全体挙げて取り組んでいくべく、全力を尽くしてまいりたいと考えております。

○高木委員 ただいまの局長のご答弁、大変心強く思っています。実は私たち議員も、ある意味で官庁会計になれ親しんできたわけでして、公会計制度を提示されて、それを分析していくためには、やっぱりそれ相応の学習や勉強ももちろん必要ですし、研究も必要だと思っているんです。ですから、ことしの決算で出されるものについては大変期待もし、またそれに基づいて、いろんな角度から我々自身も検証しながら勉強しなきゃいかんなと、こう思っております。
 それで、石原知事の英断で新たな公会計制度が導入をされるようになったわけなんですが、全国の自治体をリードしていく制度であるという自負で、私もそう思っておりますけれども、スタートしていると思います。自治体会計に企業会計の公会計制度を導入していくというのは、今から十年か十五年ぐらい前からいわれ始めたんだろうと思うんですけれども、それを受けて国の方の総務省が、総務省方式という会計制度の一つのスタイルというか制度を出したんですが、それと今回のこの東京都がつくり上げた新しい公会計制度というのは、雲泥の差があると私は思っているんですよ。
 つまり、どれだけ物事がわかっているかということと、どれだけ真剣に取り組んでいるかという意味では、東京都のこの取り組みというのは本当に全国のモデルだと思いますし、私は、都庁の皆さんは、これをつくり上げたということで、自信を持って全国に発信をしていただきたいというふうに思っているんです。それぐらいこれは価値のあることで、この本にもいろいろなことが書かれておりますけれども、ある意味で、私は会計の本当に革命だというふうに思うんです。
 ですから、それだけのことをこの数年間をかけて--この本を読ませていただいて、私、大変感銘も受けたし感動もしたんですが、物語としても非常に読みごたえがあったし、皆さんのご苦労を、手にとるようにというか、わからせていただきました。そういう意味で、この秋に出される決算については大変期待をしておりますので、どうぞ期待を裏切らないようにお願いをしたいと思っております。
 この公会計制度を最大限に生かして、ぜひ財務局が広い視点と幅広い分析能力を持って、都政全体の運営を従来にも増して効果的に行うことを期待しております。終わります。

○山田委員長 ほかに発言がなければ、お諮りをいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山田委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後四時二分散会

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