財政委員会速記録第十五号

平成十八年十一月二日(木曜日)
第二委員会室
   午後一時一分開議
 出席委員 十三名
委員長山田 忠昭君
副委員長尾崎 大介君
副委員長橘  正剛君
理事村上 英子君
理事桜井  武君
理事曽根はじめ君
鈴木 隆道君
山口  拓君
佐藤 広典君
高木 けい君
藤井  一君
酒井 大史君
高島なおき君

 欠席委員 一名

 出席説明員
財務局局長谷川 健次君
経理部長泉本 和秀君
参事竹本 節子君
主計部長安藤 立美君
財産運用部長塚本 直之君
特命担当部長三津山喜久雄君
建築保全部長南部 敏一君
参事松村  進君
参事岡沢  裕君
出納長室出納長幸田 昭一君
副出納長関  敏樹君
副出納長牛山 幸彦君
会計制度担当部長細野 友希君

本日の会議に付した事件
出納長室関係
 事務事業について(質疑)
財務局関係
 事務事業について(質疑)

○山田委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 初めに、今後の委員会日程について申し上げます。
 お手元配布の日程のとおり理事会において申し合わせましたので、ご了承を願います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、出納長室及び財務局関係の事務事業に対する質疑を行いたいと思います。
 これより出納長室関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取いたしております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○細野会計制度担当部長 先般の委員会におきまして要求のございました資料につきまして、ご説明申し上げます。
 お手元の財政委員会要求資料をごらんいただきたいと存じます。
 目次の後の一ページをお開きください。要求資料第1号、財務諸表により明らかになる決算情報の例でございます。
 来年度、決算参考資料として議会に提出いたします財務諸表のうち貸借対照表と行政コスト計算書につきまして、明らかになる主な決算情報の例をお示ししてございます。
 まず、貸借対照表でございますが、資産といたしまして、都営住宅や都立学校などの行政財産、会議場、展示場などの普通財産及び道路、橋梁などのインフラ資産等の資産額が明らかになります。
 また、負債といたしまして、都債の元金額や、在職する職員が自己都合により退職するとした場合の退職手当要支給額を示します退職給与引当金などが明らかになります。
 次に、行政コスト計算書ですが、行政費用といたしまして、減価償却費や退職給与引当金等の引当金の繰入額といった非現金情報なども明らかになります。
 また、金融費用といたしまして、都債の支払い利息額を示します公債費利子などが明らかになり、特別費用といたしまして、投資的経費のうち災害復旧にかかわる額を示します災害復旧費などが明らかになります。
 以上、簡単でございますが、資料の説明を終わらせていただきます。

○山田委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○村上委員 本年四月、都は新たな公会計制度を導入いたしました。これは単式簿記・現金主義会計である従来の官庁会計に、複式簿記・発生主義会計の考え方を加えた制度で、国及び全国の自治体を通じて我が国初めてのことであります。全国の自治体においても、かつての都と同様に官庁会計の決算数値を組み替える方式で財務諸表を作成するところがふえてきました。日々の会計処理から複式簿記・発生主義会計を導入した自治体は、まだないということです。都だけが複式簿記・発生主義会計を導入するということでいいのでしょうか。
 さきの第三回都議会定例会の代表質問において、我が党の宮崎幹事長の質問に対し、石原知事は、東京から日本を変えていくためにも、都は我が国の新しい合理的なスタンダードを目指して、全国へ先駆けて積極的にこれを発信していくと答弁されております。
 そこで、都の新たな公会計制度を全国に発信していく意義について、改めてお伺いいたします。

○細野会計制度担当部長 今年度に入り、地方自治体の公会計を取り巻く状況が大きく変化しております。地方債発行の許可制から協議制への移行、本年六月の北海道夕張市の財政再建団体への申請表明、そのことによる自治体再建法制の検討の加速化など、自治体財政の透明性、健全性の向上が一層求められています。
 説明責任の遂行や行政運営における経営の視点の確立の観点から、自治体に複式簿記・発生主義会計を導入する必要があると認識してきましたが、先ほど述べた、今年度に入ってからの新たな動きに有効に対応するためにも、全国の自治体でその導入が急務と考えております。
 都にとっても、自治体間や類似事業間で財務諸表を比較することにより、経営状況をより高度に分析することが可能となり、効率的、効果的な行政運営に結びつくと考えております。

○村上委員 公会計制度は、全国すべての自治体が取り組んでいかなければならない課題であるとともに、このことが都にとっても大変有益であると思っております。都は先駆者として、この新たな公会計制度を全国に普及していくことが重要であると考えますが、普及についての都の取り組みについてお伺いいたします。

○細野会計制度担当部長 都の取り組みについてのご質問でございますが、この七月に新たな公会計制度に関する説明会を開催し、四十一道府県を含む百二十九の団体、五百名を超える参加がありました。さらに、同制度をわかりやすく説明いたしました東京都の新たな公会計制度解説書という二百ページ近くに及ぶ冊子を作成いたしまして、全国への配布を行いました。
 また、依頼のありました北海道や山口県などの道府県、市川市や枚方市などの市町村、また総務省や財務省などの省庁に対して、随時、個別に説明を実施し、現在まで三十を超える団体に説明を行っております。
 一方、都内区市町村に対しては、特別区収入役会、特別区電子計算主管課長会、市長会、市助役会、市収入役会、町村収入役会などにおいて説明を実施しています。
 また、五月の八都県市首脳会議においても、複式簿記・発生主義会計の導入について提案を行ったところでございます。

○村上委員 都内あるいは区市町村を初めとした八都県市、それから地方の自治体へと、全国に展開していることは、今の説明でもわかりました。
 では、ここでお伺いしますけれども、逆に、都の説明を受けて、おひざ元である都内の区市町村、こういったものの動向はどうなっているのか、お伺いいたします。

○細野会計制度担当部長 都からの説明を受けまして、七月には港区が、九月には練馬区、葛飾区が、収入役室や財政課などから構成されます組織横断的な研究会や検討会を設置し、複式簿記・発生主義会計の導入について検討を進めておりますが、そのほかの多くの区でも検討を始めたと聞いております。
 また、多摩の市は、二十六市で構成する市長会において、公会計制度改革に関する研究会の設置を決定いたしました。その進め方や人選など詳細について役員会で調整を行い、十一月には初会合を開いて、実務担当者による研究会を開始する予定と聞いております。

○村上委員 都の働きかけによって都内の区市町村が動き出したことは大変喜ばしいことと思います。これらの区市町村に対して、都はこれからも積極的に支援をしていっていただきたい、このように思っております。
 また、五月の八都県市の首脳会議の場において提案をしたということですけれども、この都の提案に対して七県市ではどのような反応をしているのか、このことについてお伺いいたします。

○細野会計制度担当部長 五月の提案を契機といたしまして、八都県市の首都圏連合協議会に公会計制度改革研究会を設置し、計六回にわたりまして研究会を開催いたしました。そこで、都の会計基準や新財務会計システムの研究、総務省における取り組み状況の把握、そして、七県市で複式簿記・発生主義会計を導入するに当たっての課題等を検討してまいりました。
 その結果でございますが、七県市は引き続き複式簿記・発生主義会計の導入について検討することとなった次第でございます。

○村上委員 首都圏の七県市が今後も検討していくというような、今ご答弁をいただきました。これは逆に、即座に複式簿記・発生主義会計を導入しないという、その慎重な理由は何なのか、お伺いをしたいと思います。

○細野会計制度担当部長 各県市とも、団体間の比較など、財務諸表を有効に活用するためには、住民や自治体にとってわかりやすく使いやすい、全国標準的な会計基準の整備が必要と考えております。
 総務省は研究会を設置し、本年五月に二つの公会計モデルを示しましたが、現在検証中であり、いまだ作成には至っておりません。しかも、その研究会が示したモデルは、わかりやすく使いやすい公会計基準とはいいがたいものであります。
 以上のことなどから、七県市においては、積極的に取り組むことにちゅうちょせざるを得ない、このような状況となっております。

○村上委員 全国標準的な基準を整備することは、本来国の役割のはずだと思います。しかしながら、国がその役割を果たしていないとすれば、これは大きな問題だと思います。総務省のモデルが、なぜ自治体にとってわかりやすく使いやすいものではないのか、総務省が示したモデルについて、詳しくご説明していただきたいと思います。

○細野会計制度担当部長 民間企業は、共通ルールである民間の会計原則にのっとり、財務諸表を作成しております。民間と行政の違いはありますが、自治体の会計基準も、行政の特質を考慮しつつ、できる限り従来の民間会計原則等に準じたものとするのが望ましく、そのことによって、わかりやすく使いやすい財務諸表の作成につながる、このように考えております。
 しかし、総務省の研究会の示したモデルは、正味財産の期首と期末の変動要因をあらわす純資産変動計算書につきまして固定資産の変動分も含めるなど、民間の会計にはない大変独特な様式を提案しております。しかも、この独特な計算書を作成することで、財務諸表のかなめでございます貸借対照表や行政コスト計算書の構成が、企業会計とは大きく異なるものとなっております。
 このため、会計処理の複雑化を招き、実務上の対応を難しくしているとともに、民間との比較が困難となるなど、住民にとっても、自治体にとっても、わかりづらく使いにくい財務諸表となっていると考えております。

○村上委員 今のお話を聞いていても、私自身も大変わかりにくいなというのが本当のところで、そしてまた、総務省の研究会の基準モデルの対照表を拝見しましたけれども、東京都と比べてみても非常にわかりにくい。それから、先ほどお話の中で、東京都の解説書も二百ページにわたるということで、これもなかなかわかりにくい部分がまだ残っているのではないかというのが実態です。
 なお、総務省の研究会が出しているモデルについては、あくまでも机上の理論であって、なかなか現場にまだまだ目が向けられていない、現場の声が反映されていない、あるいは、現場がいかに使いやすく、わかりやすいものであるかという配慮がされていないように私は感じております。このような総務省の動きに対して、都としては今後どのように対応していくのか、お伺いをさせていただきます。

○細野会計制度担当部長 国に対してどのように対応していくかというお尋ねでございますが、八都県市の公会計制度改革研究会におきまして、行政の特質を考慮しつつ、民間の企業会計原則に準拠した、わかりやすく使いやすい、標準的な会計基準の整備を行うことという趣旨の国への要望を取りまとめたところでございます。
 都単独でも、春に引き続き、その重要性にかんがみ、秋の国提案要求としては異例ながら、制度要求として、総務省に対し同趣旨の要望を行ってまいります。

○村上委員 複式簿記・発生主義会計に対して全国の自治体が強い関心を寄せていることはわかります。実際に導入には慎重であるということも、あえてわかりました。複式簿記・発生主義会計の全国への普及については、まだ高いハードルがあり、そう簡単に進まないかもしれませんけれども、この辺を踏まえて、出納長の全国に向けてのお取り組みの決意を、ぜひお伺いしたいと思います。

○幸田出納長 自治体の公会計を取り巻く状況の変化、ただいま部長がご説明したとおりでございますけれども、この公会計に関しましては、一つはやはりこの六月に破綻をした夕張の状況がきっかけになりまして、各自治体の関心は大変高いものがあるというふうに認識しております。都は、この公会計制度の先駆けとして取り組んでまいったわけでございますので、当然のことながら、自治体の皆様方に対して大いなる支援をしていかなければならないと考えております。
 全国の自治体にこの複式簿記・発生主義会計が導入されることによりまして、自治体全体がといっていいと思いますが、より効果的な、あるいはまた効率的な行政運営を展開することができる、また、住民の皆様方に対しての説明責任も果たすことがより一層可能になるというふうに考えてございます。
 そういうことからしても、国に対しても、わかりやすく使いやすい、標準的な会計基準を早急に整備していくように要望していかなければならないと思っておりますし、また、この七月に大変盛況でございました説明会、これに引き続きまして、十二月に今予定をしているところでございますけれども、全国の自治体を対象といたしまして、この公会計制度改革に関するフォーラムを開催して、今回はシステムの展示とか、あるいは有識者のディスカッションなどを中心に、この新たな公会計制度について理解を深めていきたいというふうに考えてございます。
 知事の強いリーダーシップによりまして導入いたしましたこの新公会計制度が我が国のスタンダードとなるように、全国の自治体に今後も引き続き積極的に発信し、また、ご支援していきたいというふうに覚悟を決めているところでございます。

○村上委員 頑張ってください。
 終わります。

○藤井委員 私も、複式簿記・発生主義会計並びに財務諸表について伺いたいと思います。
 我が党の東村議員、今まで財政委員会の委員でございましたけれども、東村委員が早くから、地方自治体も複式簿記・発生主義会計を導入すべきであるということを議会で提案をしてまいりました。これを受けまして都は、石原知事のもと、出納長室の皆様の努力によって、本年度から、従来の官庁会計制度に複式簿記・発生主義会計を加えて、新たな公会計制度を導入したところであります。これは先ほども村上理事からもありましたように、全国で初めての試みであり、会計制度を大きく改革する画期的な内容であると考えておりまして、高く評価をしたいと考えております。
 そこで初めに、確認の意味ですが、この複式簿記・発生主義会計のメリット及びデメリットについてお伺いをいたします。

○細野会計制度担当部長 まず、メリットについてでございますが、複式簿記は、資産や負債などのストックの増減と現金収支を同時に記録していくものであります。そのため、現金収支と資産との関係が明確となり、ストック情報を的確に管理することができます。発生主義について見ますと、減価償却費や引当金などのコスト情報を把握することができます。これらは従来の官庁会計の現金主義では把握できなかったところでございます。
 次に、デメリットでございますが、複式簿記・発生主義会計は、仕分けという一つの取引について二つの側面から帳簿に記録する作業が必要なため、単式簿記・現金主義会計の会計処理と比べて、少し複雑となります。
 しかし、東京都のこの新たな財務会計システムの構築に当たって、仕分けを自動処理できる工夫を加えることなどにより、会計処理における職員負担を軽減しております。

○藤井委員 ただいま答弁にありましたように、都の新会計制度では、複式簿記・発生主義会計のデメリットを軽減するよう工夫をされているとのことでしたけれども、現在、都は、新たな財務会計システムによって複式簿記に基づく情報が蓄積をされていると思います。そして、来年度のこの時期には、毎日毎日の仕分けに基づく、自治体で初めての財務諸表が公表され、全国からの注目が集まってくるというふうに思われるわけです。
 そこで、新たな公会計制度で作成される財務諸表について、何点か伺います。
 ただいま資料でご説明をいただきましたけれども、この財務諸表、私も余り聞いたことなかったので、いろいろ辞典で調べたりしましたけれども、なかなかちょっと難しい内容でございますが、簡単にいえば、企業会計でいえば、経営成績あるいは会計情報を提供するために定期的に作成される会計報告書だというふうに載っておりました。これを都で当てはめてみれば、要は、都民に対して都の財政状態を知ってもらうための会計報告という位置づけだろうと思います。
 そこで、来年の決算特別委員会に初めての財務諸表が提出されるわけですが、この財務諸表の制度的な位置づけというものはどういうものか、伺います。

○細野会計制度担当部長 地方自治法等の法令に基づいて提出される決算書類は、単式簿記・現金主義会計でございます官庁会計の決算書類で、それが議会の認定に付されます。複式簿記・発生主義会計の導入に伴い作成されます財務諸表は、東京都会計事務規則に基づき議会に提出されるもので、現在、官庁会計決算を議会の認定に付す際、その参考資料として提出しております決算参考書に財務諸表を掲載することになります。

○藤井委員 ただいま、この決算参考書に財務諸表を掲載するという答弁がありましたけれども、その財務諸表には、貸借対照表、行政コスト計算書、それからキャッシュフロー計算書の三つがあるとのことでございます。
 そこで、まず貸借対照表の意義は何なのか、それによって何がわかるようになるのか、伺いたいと思います。

○細野会計制度担当部長 貸借対照表は、年度末時点における資産、負債及び正味財産の状況をあらわすもので、貸借対照表を作成することにより、官庁会計のもとではそれぞれ別々に管理されていた資産と負債を明確に対比して表示できるようになります。
 そして、それが資産全体の状況の把握が可能となるということになります。その結果、所有する財産のうち、どのくらいが借金によって賄われているのか、負債の返済能力がどのくらいあるのかなどを明らかにすることが可能となります。個人の家計に例えればですが、資産であるマイホームと負債である住宅ローン、これを一つの表の中で見ることができるというようなことになります。

○藤井委員 大変わかりやすい例でご説明いただきました。
 次に、この貸借対照表の内容についてなんですけれども、この資料をいただきまして、先ほどのご説明によりますと、固定資産を行政財産、普通財産、インフラ資産というふうに分類をしていますけれども、そのように分類する理由は何なのか、これについて伺います。

○細野会計制度担当部長 貸借対照表では、資産の価格を表示することにより、資産の価値が明確になります。地方自治法上の財産は、公有財産、物品、債権及び基金に分類され、さらにその公有財産は、自治体が公用または公共用に供する財産である行政財産と、それ以外の普通財産に区別されます。自治体では、地方自治法上のこれらの分類に応じて、財産の管理や処分方法が規定されております。
 新公会計制度による貸借対照表では、都民が資産の内容と、その価値、それだけではなく、その資産の管理や処分のあり方をあわせて知ることができるように、従来の地方自治法上の財産分類を固定資産の表示に採用したものでございます。
 さらに、行政財産のうち、道路、橋梁、港湾、漁港、空港及び鉄道につきましては、都民に広く供用され、都民生活や都市活動に密接で、かつ必要不可欠な社会資本でございますことから、特にインフラ資産として区分計上することといたしました。
 なお、従来の決算附属書類では、財産について面積などを表示していたわけでございますが、価格は表示しておりませんでした。

○藤井委員 次に、財務諸表の一つであります行政コスト計算書ということについて伺います。
 余り聞きなれない言葉でございますけれども、この行政コスト計算書とはどういうものであり、また、それによって何がわかるようになるのか、この点についてお伺いいたします。

○細野会計制度担当部長 貸借対照表が年度末時点における資産や負債などのストック情報をあらわすものであるのに対しまして、行政コスト計算書は、一年度間における行政活動に伴うすべてのコストと、当該活動から得られた収入及び税収等を表示したもので、企業会計における損益計算書に対応するものでございます。官庁会計決算で表示している現金コストのみならず、減価償却費や引当金などの非現金のコストも把握することが可能となります。
 行政が実施する事務事業には、税金により賄われるものから、一部を使用料などの特定収入により賄われるものまで、さまざまでございますが、当該年度におけるフルコストで事業の運営状況を示す行政コスト計算書は、これらの行政活動を効率的、効果的に展開していくための情報として必要不可欠なものと考えております。

○藤井委員 この行政コスト計算書というのは損益計算書と同じようなものだということでございますが、貸借対照表と並んで財務諸表の中で中心となるのが、この行政コスト計算書だと思いますけれども、先ほど説明をされました提出資料によりますと、行政コスト計算書の中の減価償却費や、あるいは引当金繰入額に非現金情報というふうに説明されておりますけれども、これは今のご答弁にありましたように、非現金のコストのことを指すのかどうか、この非現金情報についてお伺いしたいと思います。

○細野会計制度担当部長 ご指摘のとおりでございます。提出資料にあります非現金情報というのは、先ほど説明申し上げました非現金のコストを指しまして、複式簿記・発生主義会計特有の勘定科目でございます。発生主義では、現金収支にかかわらず、収益や費用の発生の事実をもって認識いたします。退職給与引当金や減価償却費などは、実際の現金の支出は伴いませんが、費用として発生する非現金のコストをあらわすものであります。

○藤井委員 今までのご説明で、貸借対照表が年度末の時点におけるストック情報をあらわしている、また、行政コスト計算書が一年度間におけるフルコストをあらわすということでございました。
 また、財務諸表にはキャッシュフロー計算書というのもあるというふうに聞いております。これは民間の企業会計において最近整備が進んだものだそうで、財務諸表の中では一番なじみが薄いものといわれておりますけれども、このキャッシュフロー計算書についても、その意義と、それにより何がわかるのか、この点についてご説明をお願いしたいと思います。

○細野会計制度担当部長 キャッシュフロー計算書でございますが、これは一年度間における現金収支の状況を示したものでございまして、貸借対照表や行政コスト計算書だけでは明らかにできない資金の流れを明らかにすることができます。資金を行政サービス活動、社会資本整備等投資活動、財務活動の三つの区分に分けることで、例えば、同じ資金の増加でも、税収増でふえたのか、借金をしてふえたのかの違いがわかるなど、資金の流れの実態が明らかになるものでございます。

○藤井委員 先ほど出納長からもありましたけれども、最近、全国の自治体が、公会計制度改革が必要だ、そういった事例が発生いたしました。それは先ほどありました、ことしの六月に北海道の夕張市で財政再建団体指定への申請がなされたということでございます。これは自治体にとっては大変大きなニュースといいますか、にぎわしたわけですが、夕張市では、いろんな事情で、いわゆる倒産に至ったというふうに聞いております。やはり何といってもその原因は、資産や負債、その全体像が見えにくいという官庁会計の欠点といいますか、限界が明らかになったというふうにいえると思います。
 そこで、この複式簿記・発生主義会計の導入により、夕張市のような債務や収益状況の悪化というものが明らかになるのかどうか、この点について伺います。

○細野会計制度担当部長 夕張市の事例は、多額の借金や赤字を隠すため、一時借入金を使い、決算を粉飾してきたようでございます。その仕組みですが、特別会計に資金不足が生じましたので、一般会計が民間金融機関から資金を一時的に借り入れ、それを特別会計に貸し付けます。特別会計では、翌年度になり、旧年度の出納整理期間中に、その特別会計の新年度予算をもって一般会計の旧年度予算に借金を返済いたします。そのようなことを繰り返した結果、雪だるま式に借金が膨らみ、発覚したものでございます。
 貸借対照表は、年度末時点の借入金を負債として計上いたします。一時借入金は、通常、年度内に返済し、年度をまたぐことがありませんので、貸借対照表に表示しませんが、都の新制度では、財務諸表の注記に明示いたします。

○藤井委員 いわゆる財務諸表があれば、夕張市のような多額の借入金も表示されるようになる。そこで財務状況の透明性が向上するということだと思います。これまで、それぞれの財務諸表の意義とか、それによって明らかになる情報について伺ってまいりましたけれども、この財務諸表が重要であるということを実感いたしました。
 しかし、この複式簿記・発生主義会計自体が、私もそうでございましたが、一般の都民の方々にはなかなかわかりにくい、また、遠い存在といいますか、なじみが薄いものでございまして、そのため、来年、初めての財務諸表を発表することになっておりますけれども、その際は、都民にわかりやすい決算情報を提供することが重要であると考えます。
 そこで最後に、このことに対する出納長のご決意を伺って、質問を終わります。

○幸田出納長 複式簿記・発生主義会計に基づく新たな公会計制度は、従来の官庁会計では見えなかった情報を明らかにするという意味では、住民に対する説明責任の一層の遂行に資するものと確信をしております。しかしながら、複式簿記・発生主義会計には、今、委員からのご質問にもございましたように、非現金情報というような都民にとってはなじみの薄い決算情報も存在するわけでございます。
 そういうことで、新会計制度に基づく財務諸表を公表するに当たりましては、単に数字を公表するというだけでは十分ではないだろうと考えてございます。このため、財務諸表から得られる決算情報を都民の皆様方にわかりやすく提供するかが大変重要なことだと承知をしております。
 これまでも決算委員会等々でご意見、ご指摘等々を幾多いただいてきたわけでございますが、それらを踏まえて、これまでも、決算の資料あるいはまた参考資料も含めまして、そういうご意見、ご指摘に努めてきたわけでございます。
 今後とも、よりわかりやすい決算情報を提供できるよう、全力を尽くしてまいりたいと考えてございます。

○曽根委員 今回、新しい会計制度を導入して、やっぱり注目されるのは、来年の春に出される新しい決算の財務諸表で、私たちも活用できるものならば、これを使って都の財政状況や、でき得るならば行政サービスの質も見えてくるのであれば活用することは大いにやりたいなというふうに思っているんですが、単純な発想で、前回の委員会で、この財務諸表の中で、今までの会計情報で出なかったどんなものが新しく明らかになるのかということについて資料をお願いしたところ、こういった資料が出されて、これは貸借対照表の中の特に新しい部分ですね。行政コスト計算書についても同じだと思うんですが、これを見ただけでは、全体的に何が新しく解明されるのかは、ちょっとわかりにくいなというのが、第一印象なんですね。前の委員の方も、個々の問題については解明されたので、私も勉強になりましたが。
 例えば、災害復旧費というのが、なぜ特別費用としてここだけ出てくるのかとか、ほかにもいろんな仕事をもちろん東京都はしているわけですが、そういった会計上の考え方に基づいて、東京都のやっている仕事をこのように整理するということの全体像について、どういう効果があるのかということについて、ちょっと素人ながらお聞きしたいわけなんです。
 財政分析をする上で、私、一番わかりやすいのは、一般企業と同じようなことを東京都がやっている場合については、この財務諸表は使えるだろうなというふうに前から思っておりました。
 企業会計になっているものは、既にこういう諸表を出しているわけですので、企業会計になっていない東京都の事業で企業的な仕事をしているものとしては、一般会計の中でやっている、これはもう特別会計になったんですね、第二種開発だとか、それから、多摩ニュータウン会計のように、特別会計だが企業会計になっていない、こういうものについては、財務諸表で出てくると、今まで隠れ借金とかいろいろないい方をされていたものが、隠れも何もなく出てくるのかなというふうに期待をしているわけですが、この間の説明では、局別の諸表を出していただけるというようなお話があったかと思いますが、この点で期待しているのは、例えば、多摩ニュータウン会計についての個別の、単独の諸表が出るというようなものがあれば、使えるのかなというふうに思うんですが、そういったところまで個別の財務諸表は出される予定はあるんでしょうか。

○細野会計制度担当部長 今回の新しい公会計制度でございますが、そこによる財務諸表は、会計別、局別の財務諸表を決算の参考資料として提出することになっております。多摩ニュータウン事業につきましても、会計単位で財務諸表を作成いたします。

○曽根委員 それでは、その部分については、かつてなかなか見えにくかった、特別に資料要求とかをしなければ分析できなかった開発関係の財政赤字などが、もっとはっきり見えるようになるという点では、私たちも活用していきたいと思います。
 問題は、そのほかの大部分の東京都の仕事、一般会計の中で行っている仕事について、この諸表がどう活用されるのかということなんです。それがなかなか私、ちょっとわかりにくいなと思っているんですよ。
 一般論でお聞きしますけれども、ここでいう貸借対照表や、ここでは行政コスト計算書といっていますが、一般企業でいえば損益計算書ですね、こういった諸表を一般企業としてはどういう使い方をしているのかというのを、最初に基本的なことなんですけれども、お聞きしておきたいと思います。

○細野会計制度担当部長 貸借対照表は、会社全体の財務諸表を把握するために使用しております。また、企業は事業ごとの収益状況を見るために、損益計算書、都でいう行政コスト計算書を活用しております。収入が費用と直接的な対価性があるため、損益計算書を用いて事業の評価やコスト分析、そして収益向上策の作成などを行いまして、今後の事業展開に活用していると聞いております。

○曽根委員 貸借対照表は企業全体の姿を見せると。損益計算書は、例えば、企業ですから商品を売っているわけですので、その商品の開発などに当たって、もしくは開発した商品が、今後も伸びていくのかどうか、その一つ一つの事業について見通しを立てていくのに使うという点はわかります。
 損益計算書を見れば、ここは行政コスト計算書ですが、収入、つまり商品の売り上げが出てきますよね。それから、それにかけた開発の費用だとか、いわば投資だとか人件費などが一方で出てきて、それとの見合いで、この商品が売れ筋である、売り上げがどんどん伸びている、これは需要があるということで、じゃあ一定のコストをかけても最終的には黒字が出てくるというのが、この表の中で見えてくると思うんですね。
 同じことが、例えば東京都が行っている福祉や教育事業についていえるのかというと、単純にはいえないと思うんですね。つまり、かけた費用というのは、行っている仕事に見合って税金収入を充てたり国庫補助その他をもらったりしてやっているわけで、そこが大きく膨らんでいることが、需要が伸びていることとも単純にはイコールではないし、かけたコストが大きいからといって、コストが大き過ぎて都民利益にかなっていないということにも逆にならなくて、むしろコストをかけてもやらなければならない仕事なのかもしれないというふうに、この行政コスト計算書でもって事業の評価をするというようなことは、私は難しいんじゃないかなというふうに思うんです。
 だとするならば、行政の中で財務諸表を活用していくというのは、どういう条件のもとで行われるのかということをお聞きします。

○細野会計制度担当部長 民間の活動がその利益と費用という形で対価性で結びついているということに比べまして、行政というのはまた違った観点から存立しているということが、まず基本的に違いがございます。そこにおきまして、貸借対照表は、資産の状況がまず明らかになります。また、行政コスト計算書においては、当該事業のフルコストを把握できることになりますので、経年による費用構成の把握など、コスト分析を行うことができます。
 また、収入と費用を一体として表示することから、事業に対する充当財源、財源の中身も把握できます。全体として事業とコストの関係がわかりやすく示されるもの、このように考えております。

○曽根委員 わかりました。かけた費用、コストの中身、そのあり方について事実を明らかにするという点では、一表で明らかになるという点で、非常にわかりやすいと。しかし、そのかけたコストが都民要望、都民の需要、ニーズとの関係で見合ったものかどうかという総合的な事業の評価という点では、もっとほかの指標、例えば、毎年行うアンケートとかありますよね。さまざまな世論調査がある。そういったものも含めた、総合的なその事業についての評価をあわせて見なければならないだろうということですね。
 来年春に、あらゆる事業についてこの決算書が出てくるわけですが、私たちは、それを使える部分では大いに使うということはありつつも、これが出てきたから、一般企業と同じように、コストと、それが売れるのかといいますか、そのサービスが社会に受け入れられるかどうかとの見合いを、この財務諸表だけで判断することは非常に危険であって、逆にコストが大きいものはコストをかけ過ぎじゃないかという議論がひとり歩きして使われてはならない、このことだけは、事前ですけれども、戒めておかなければならないと思いますが、いかがでしょうか。

○細野会計制度担当部長 今回、複式簿記・発生主義会計を導入することで、従来の官庁会計では表示されなかったコスト情報とかストック情報が、財務諸表の中で容易に示すことができるようになります。このことは、何回も申しますが、住民への説明責任の一層の遂行、あるいは経営の視点に立った行政運営に資するものとして確信しております。
 財務諸表の活用の問題でございますが、民間企業における分析の手法について、行政の分析に有効なもの、あるいはそうでないもの、そういった観点、あるいは行政特有の特質を踏まえた観点からの分析手法、そういったことを考えても、やはり財務諸表をさまざまな観点から分析、活用していくことが重要となってくる、このように私どもは考えております。

○曽根委員 今の答弁は、私、これからこの活用について考えていく上で非常に重要な問題だと思うので、まだこれから本格的には活用が始まるわけですけれども、前もって何なんですけれども、私たちとしては、ある意味でくぎを刺しておきたいということであります。
 それと、これは指摘だけにしておきますが、私、もう一つ、大きな意味で、この会計制度を今年度東京都が導入するに当たって、さまざまな障害が起きるのではないかというふうに危惧、懸念をしておりましたが、意外や意外、職場から、これが入ってきて大変だという声が聞こえてこない、極めてスムーズに導入されてきたという点で、かえって心配になることがあるんですね。
 というのは、例えば、東京都はいろんな仕事をしていて、どこかの現場でこの会計制度が突っかかるんじゃないかと思ったら、すべての事業についてこれがはまったということは、東京都の仕事が、これは非常に雑駁な話ですが、丸ごと民間企業にお任せしても会計上は大丈夫、会計上は矛盾が起きないと。あ、そういうものなのかと。その評価はいろいろありますよ、もちろん。我々はそんなことを認めていないわけですが、会計上のそごがないということは、ある意味で事実として非常に重いなということを私は考えさせられました。
 これがどうなっていくのかというのは、まだ今後の大きな課題の問題ですので、きょうはこの程度の指摘だけにしておきますけれども、公的な仕事、サービスを行っている自治体が、民間企業と個々の事業の評価についてこうした計算書だけで評価できないと同時に、民間企業がすっぽりと置きかわることは絶対にできないというふうに私たちは思っておりますので、この点もあわせて指摘だけをして、質問を終わりたいと思います。
 以上です。

○鈴木委員 私からは、出納長、収入役の廃止ということに関して、私は区議会の方も十八年、都議会で二年ですが、区議会の方をやっていて、出納長室または収入役室というのは、いろんな面で役割を非常に果たしているというふうな思いがありますので、その件に関して質問を随時させていただきたいというふうに思います。
 東京都では、本年七月に行財政改革実行プログラムを発表し、平成二十年度までの三カ年の間に、スリムで仕事ができる効率的な都庁を実現するとしております。行政においても、どれだけのコストをかけて、どれだけの成果を生み出せるかが厳しく問われている中、私は都民の期待にこたえる都政運営を実現する上で、このプログラムを着実に推進していくことが重要であると考えています。
 そこで、このプログラムの中において示されている出納長室の見直しについて、特に適正な会計事務の確保という観点から、順次質問をさせていただきます。
 一点目として、行財政改革実行プログラムの中で、検査、指導体制の強化が示されています。当然これは会計事務をより適正に実施していくための取り組みでありますが、適正な会計事務の確保について、出納長室はどのような役割を担っているのかを伺います。

○関副出納長 地方自治法では、地方公共団体の会計事務において、支出を命令する執行機関から、その内容を審査する私どもの会計機関を分離することにより、牽制機能を発揮し、会計事務の適正性を確保することとしております。
 こうした法の趣旨に基づき、出納長室は、一般会計及び特別会計について、独立した会計機関として個々の支出命令を厳正に審査しているところでございます。また、効率性の観点から、一件当たり百万円未満の支出命令については、各局に特別出納員を設置し、審査の委任を行っております。
 こうした審査に加えて、出納長室は、各局が行う個々の会計事務に関しまして定期や随時の検査を行うとともに、会計処理につきまして、研修や指導の実施などにより、適正な会計事務の確保に努めているところでございます。

○鈴木委員 ただいまご答弁がありましたように、出納長室の役割は適正な会計事務の確保にあるということは間違いありません。この適正な会計事務を確保し、都民の信頼にこたえるという観点から、私もこれまで注目をしてまいりました出納長から会計管理者への移行を中心とした組織の見直しについて、お伺いをしたいと思います。
 この内容を盛り込んだ今回の地方自治法改正は、平成十七年十二月九日、第二十八次地方制度調査会から内閣総理大臣に対して提出された、地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申の内容を受け、国会に提出されたものと聞いております。
 そこで、出納長及び収入役制度の見直しに関し、組織に対する影響について質問をいたしたいと思います。
 地方自治法の一部を改正する法律が平成十八年五月三十一日、参議院本会議において可決成立し、同年六月七日に公布されましたが、このうち出納長、収入役制度の見直しに関し、今回の出納長、収入役制度の改正の趣旨と、その具体的な内容についてお伺いいたします。

○関副出納長 今回の改正は、出納長、収入役を廃止するとともに、現行の副知事、助役の制度を見直すものであり、地方公共団体がみずからの判断で適切なトップマネジメント体制を構築できるようにしたものでございます。
 会計事務につきましては、特別職でございます出納長、収入役は廃止するわけでございますが、適正な会計事務の必要性には変わりがないことから、一般職の会計管理者をその責任者として設置することとなります。
 なお、この改正法は平成十九年四月一日から施行されますが、施行時に在職する出納長、収入役は、施行日以降も、その任期中に限り、在職するものとされております。

○鈴木委員 そういうことですよね。今、出納長、収入役を廃止し、各地方自治体がみずからの判断で副知事の増設や、知事から副知事への権限移譲などトップマネジメントを強化できるような改正である、そうはいっているわけでありますが、果たしてそういうことで本当にいけるのかどうかという疑問を、やっぱりここでは呈しておきたいというふうに思います。
 もう一方でいいますと、先ほど我が党の村上委員がいいましたように、公会計制度をある面で地方に発信し、都としてそれなりの地方自治の発展に寄与するための役割を担いたいといっている部分が、先ほど答弁になっているわけですね。そうなりますと、実際にそういうことも含めて、出納長室が今後どういうようになっていくのかという面もある。後ほどこれはちょっと伺いますが、その辺もここで一応私の方からは指摘しておきたいというふうに思います。
 その上で質問をさせていただきますが、現行の地方自治法では、会計事務の適正な執行を確保するため、収支に関する内部牽制制度として、職務上独立した権限を有する会計機関を設け、出納その他の会計事務を担わせています。今般の改正で、特別職たる出納長、収入役を廃止するとともに、一般職の会計管理者を置くとのことでありますが、そこで、一般職の会計管理者を設置することに関し、長の補助組織の一つとしてではなく、今後も独立した組織としての位置づけを考えているのかどうかを伺います。

○関副出納長 今般の地方自治法改正に関しまして、総務省は、会計事務に関し、引き続き独立の権限を有する会計管理者を置くことにより、適正な会計事務の執行を確保することとしております。また、会計管理者の独立性を確保するため、指揮系統を明確化するとの趣旨から、規則で、会計管理者の事務局を設けることができるものとされております。
 都においても、法の趣旨を踏まえ、適正な会計事務を確保する観点から、会計管理者の事務局を独立した組織として検討しているところでございます。

○鈴木委員 答弁にあるように、独立の権限を有する会計管理者につき、事務の執行においても独立性が保たれるよう規定をしていると。会計管理者が一般職と位置づけられたことから、他の局の一部として編入されることを、私としては不安視もしております。私は自治体行政とは、どのようなすぐれたトップが運営したとしても、独善的な結果に陥る可能性はあるというふうに考えます。これまで出納長や収入役は、長に対する牽制機能を果たすとともに、トップマネジメントの補佐役としても、会計事務にとどまらず、政策全般にわたる貴重なアドバイザーであったというふうに私は思います。
 今回の法改正は、その実態に対する理解がやや不足をしているのではないかとも私は考えており、残念な面もあります。今後は、新体制の中にあっても適正な会計事務を確保できるよう取り組むことが、何よりも重要であるというふうに考えます。
 そうした観点からお伺いいたしますが、新しい会計管理者は、他の部局の長が兼ねたり、他の局と統合することがあるのかどうかを伺います。

○関副出納長 総務省の見解におきましても、会計管理者の職を一般の部局の長が兼ねた場合、当該部局における事務について、執行機関と会計機関の分離が不明瞭となり、適正な会計事務の執行の確保に支障を来すおそれがあるため、兼職はできないとしております。
 また、他の局との統合についても、同様の考え方から、会計管理者は一般の部局とは別途に置くこととされております。
 私ども都においても、こうした地方自治法改正の趣旨を踏まえまして、具体的な組織について条例等の改正を現在検討しているところでございます。

○鈴木委員 答弁で、兼職はできない、会計管理者は一般の部局とは別途置くこととされているということでありますので、一般の部局からは独立した組織であるということはわかりました。一般職の会計管理者においても、これまでの特別職たる出納長、収入役と同様に、会計事務に関して内部牽制制度としての機能を果たし、会計事務の適正な執行を確保する必要と責任が求められます。
 そこで、特別職の出納長を廃止し、一般職の会計管理者を置くことに際し、新しい体制の中で、この重要かつ適正な会計事務の執行をどのように確保していくのかをお伺いいたします。

○関副出納長 会計事務の適正な執行の確保は、先生ご指摘のとおり、都民の信頼にこたえていく上で極めて重要でございます。今般の地方自治法改正においても、適正な会計事務の必要性に変わりがないということを前提としており、会計管理者と出納長の会計事務に関する職務権限自体に何ら変更もないとされているところでございます。
 出納長室としても、今後、会計事務の質的向上や審査のさらなる充実に加えまして、オーダーメード研修や確認検査など、柔軟で適正な検査指導体制を構築し、引き続き適正な会計事務の執行の確保に努めてまいります。

○鈴木委員 答弁でわかりました。会計事務の適正な執行の確保がいかに重要であるか、また、そのために出納長から会計管理者への移行が行われたとしても、これまで同様に独立した牽制機能が不可欠であることについて、多少は議論ができたのではないかというふうに思います。
 今後、出納長室は、都民から託された公金を適正に執行するとともに、今年度から導入された公会計制度改革を着実に実施するなど、適正な会計事務の確保に取り組んでいく必要があると考えます。
 そこで最後に、適正な会計事務の確保に向けて、出納長の決意を伺います。

○幸田出納長 個々の会計事務を適正に実施いたしますことは、会計の透明性を確保し、都民の皆様に対する説明責任を全うするために、基本でございます。また、当然のことでございますけれども、会計上の事故を未然に防止し、都が納税者である都民の皆様からの信頼をちょうだいする上でも、極めて重要であると考えております。
 今後とも、このような認識のもとに、会計事務を担う各局と協力しつつ、新たな公会計制度など時代の要請にこたえながら、これまで以上に会計事務の充実強化に取り組んでまいりたいと考えております。

○山田委員長 ほかにございませんね。--お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山田委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で出納長室関係を終わります。

○山田委員長 これより財務局関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○泉本経理部長 先日の委員会におきましてご要求をいただきました資料につきまして、ご説明申し上げます。
 お手元配布の財政委員会要求資料をごらんください。今回要求をいただきました資料は、目次に記載のとおり、二件でございます。
 まず、要求資料第1号をごらんください。財務局契約の年度別実績でございます。
 財務局所管の工事契約件数、平均落札率、最低制限価格を設けた件数、そのうち最低制限価格と同額で落札したものの件数について、平成十五年度から十七年度までの三年間の実績をまとめたものでございます。
 一枚おめくりいただきまして、要求資料第2号、本庁舎の清掃業務委託等の状況でございます。
 平成十三年度から十七年度までの各年度における本庁舎の清掃等に係る委託契約につきまして、庁舎建物清掃委託、外溝清掃委託、フィルター清掃等業務委託、外溝植え込み地管理委託の区分ごとに金額を記載したものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○山田委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○鈴木委員 それでは、私からは、公共工事における入札契約に関してお伺いしたいと思います。
 昨今、公共工事の入札契約を取り巻く状況には大きな変化が見られます。特に、品質確保の観点から十分な注意が必要となっているのではないかと考えられます。公共工事は社会資本の整備であり、工事が完成した後、何十年と都民が利用していく財産となるものであります。安くてよいものができればよいということでありますが、どうも最近は価格だけの競争で、安かろう、悪かろうの不安が払拭できないのではないか、私はそのように感じています。都民の財産を確かなものとするためにも、品質の確保が重要な課題だというふうに考えます。
 そこで、財務局における最近の入札契約の状況について、何点か質問をいたします。
 一点目といたしまして、先週二十六日に発表されました、平成十七年度の国土交通省直轄工事等の契約関係資料によりますと、低価格での入札がふえているということであります。港湾・航空関係を除く全国の地方整備局における低入札価格調査対象件数は九百十三件で、平成十六年度と比べると四百四十件の増加であります。二倍近い件数ということになります。すごいふえ方のようでありますが、改めて財務局の低入札価格調査対象件数はどのような状況にあるのか、平成十八年度の状況も含めてお伺いをいたします。

○竹本参事 財務局契約案件における低入札価格調査対象の件数でございます。平成十五年度は二十九件、十六年度は二十八件、十七年度が三十五件となっております。
 また、平成十八年度については、九月末時点で調査を経て契約したものは十九件でございました。十七年度の同時期と比べますと、四件の増加という状況でございます。

○鈴木委員 簡潔に伺いますが、財務局契約の低入札価格調査対象件数では、国のような急増は見られていないようでありますが、国と都では、低入札調査制度にどのような違いがあるのかをお伺いいたします。

○竹本参事 東京都の低入札価格調査制度は、予定価格が土木工事では四億円以上、建築工事では五億円以上、設備工事では一億二千万円以上の案件を対象工事としております。
 一方、国においては、原則として予定価格が一千万円以上の工事を低入札価格調査制度の対象としておりまして、東京都の対象工事よりも範囲が広いものとなっている点が大きな違いとなっております。

○鈴木委員 なるほど、契約の制度的な違いもあるということであり、国に比べて極端な低入札での入札の状況はないことは理解できました。それにしても、低入札価格の件数が増加傾向にあることは確かであると思います。
 最近の入札契約で問題なのは、前回の財政委員会でも大西議員が取り上げて質問したように、都でも特に大型工事において低価格での入札が増加しており、品質の点や下請企業へのしわ寄せなどの懸念が大きくなっているというふうに考えます。
 前回の委員会では、低入札価格の案件については、低入札価格調査制度において調査をし、契約の履行が可能と判断されたものについて契約を行っているという答弁でありました。
 この調査では、だれが、どのような調査、確認を行い、契約が可能と判断をしているのか、少し具体的な説明をお願いしたいと思います。

○竹本参事 東京都の低入札価格調査制度では調査マニュアルを制定しておりまして、その価格により入札した理由、入札価格の内訳書、配置予定技術者、資材の購入先及び購入先と入札者との関係、労働者の具体的供給見通し、過去に施工した公共工事の工事成績などの履行の状況、第一次下請の予定業者及び予定下請金額、経営状況及び信用状態など十七項目にわたる調査実施事項の資料提出を入札者に求めまして、契約担当者と工事主管課が内容を調査しております。
 さらに、これらの事項に関して契約担当者と工事主管課が合同で入札参加者から直接ヒアリングを行い、資料に記載された内容や実際に配置が予定されている技術者から施工上の考え方などの確認も行っております。
 財務局契約案件においては、調査結果について財務局長を委員長とする低入札価格審査委員会において契約履行の可否について審査し、適正な履行が可能と判断されたものについて契約を行うこととしております。

○鈴木委員 今、十七項目にわたる調査実施事項の資料提出、それから契約担当者と工事主管課が内容を調査するという答弁があったわけですが、その中に、第一次下請の予定業者及び予定下請金額というようなこともある程度確認をしているのかというふうに思いますが、実際には、この一次下請、二次下請の方々と元請の方との契約が、我々または一般の人が見て、きちっと正当なものとしての契約になっているのかというようなところに関して、民民の問題であるということで、そこは行政としても、そこまでの判断はできない、または、そこまでの確認を詳細にはできないということになるのかもしれませんが、そのことはさておいて、きょうは答弁要りませんが、そういう点もあるということも、そういう意味でまた考えていかなければならない点であるということも指摘はしておきたいというふうに思います。
 その上で、資料の提出を受けて、また、直接ヒアリングにより確認も行い、さまざまな面から丁寧な調査をしているという判断がなされていることに関しては、私も十分理解をいたします。
 低入札価格の背景には、公共事業の発注量が減少し、需給バランスが崩れたことにより、元請企業が受注量を確保するために低価格での入札を行っていることも、よく耳にするところであります。
 単に受注量を確保するためだけの低価格の入札では、実際に第一線で作業する下請企業へのしわ寄せの懸念が一番の問題であります。先ほども申し上げました。建設産業は、元請、一次下請、二次下請などのような重層構造になっており、元請が低価格で受注すれば、そのまま下請企業にも低価格で発注することは容易に想像がつきます。元請に多少の利益があっても、一次、二次というふうに従って、下請企業の利益がなくなるどころか、赤字になるのではないかというような懸念もされるところがあります。利益がない、赤字では、それ相応の工事しかしないのが実情だというふうに思われますが、本当にいい工事ができるのかどうか、私は疑問に感じます。
 そこで、低価格の入札に関して、都としてどのような問題意識を持っているのかを、改めてお伺いしたいと思います。

○竹本参事 低入札価格の工事では、必要な経費が不足し、工事の品質が確保できないのではないかということや、地元の中小企業である下請企業に対して元請企業が無理な金額での下請契約をするなど、いわゆるしわ寄せが行われ、適正な契約が履行されないのではないかという懸念がございます。
 これらの懸念に対しまして、最近の低入札価格の案件数の増加を踏まえまして、先ほど申し上げました調査の中でのヒアリングにおきまして、入札者に対し、二次下請の予定業者の確認や、不可視部分、見えなくなる部分のビデオ撮影を要請するなど、より確実な契約履行が確保できるよう、調査の厳格化に努めているところです。
 さらに、契約後におきましても、下請企業などを記載した施工体制台帳の確認や、中間検査の回数をふやすなど監督体制を強化しております。

○鈴木委員 答弁があった問題認識に対して、都は低価格入札に対する調査を強化していくということでありますので、今後の検討への取り組み状況がどうなっているのかを、もう一度お伺いいたします。

○竹本参事 前回の財政委員会では、低入札価格案件への対応策として、配置予定技術者の増員ですとか、下請契約の内容調査のご提案をいただいたところでございます。ご提案を含めまして、東京都契約事務協議会においてPTを設置し、具体的に対応策を検討してまいります。
 また、総合評価方式の拡充、推進にも努めるなど、多面的に対応を検討していくことが必要と考えております。
 東京都技術会議におきましても公共工事の品質確保部会が設置され、技術的な側面からも検討することとなっております。これらの検討につきましては、相互に連携し、全庁的に取り組んでいきたいと考えているところです。よろしくお願いします。

○鈴木委員 要望として一言いわせていただきますが、今お答えがあった点も含め、総合評価方式に関しては、我々も非常に興味を持っているところであります。非常に難しい対応もあると思いますし、また、かなり多岐にわたるような議論がなされなければ、逆に問題も出てくるような点もあるというふうに思いますが、しかし、東京都が決断をして、やはり都民から信頼される契約、また、多くの人が見ても、契約に関して東京都がきちっと真剣に取り組んでいるというふうなものをぜひ検討して、一つの文書として、また、図として見せられる、そういうような検討を早急にお願いしたいということを要望して、終わりたいと思います。

○山口委員 私からは、財産の利活用の現状等々について、計画等々、さまざま伺ってまいりたいと思います。
 まず、都は、平成十一年に発表した財政再建推進プランにおける財政不足の補てん財源を確保する取り組みとして、平成十二年十一月に、利用計画が具体化していない都の土地などの財産を精査し、不用な財産を売り払う、有効活用を図るとする財産利活用総合計画を打ち出しました。当時の局長も、今日の財政状況のもとでの財産、土地の売却をして財産収入を得ると述べるなど、赤字財政団体を回避するための決意がここでうかがえるわけではあります。
 平成十四年度までの計画期間の間で、都立大学深沢校舎跡地や旧公害研究所跡地などの売却によって、目標額一千億円を上回る一千四百億円の売却が行われました。続いて平成十五年十一月には、第二次都庁改革アクションプランとの整合を行い、第二次財政再建推進プランを歳入面で支える第二次財産利活用総合計画が策定されました。売却が困難な案件の貸し付けなどを行う、また、新資産アセスメントとして、さらなる土地の切り出しを積極的に行い、余剰財産を生み出していくなど、今年度まで四カ年の計画を立てられました。
 昨年の十七年度までの土地や建物の売却額は、都立明正高等学校や旧用賀技能開発学院など、五百三十五億円になると伺っております。一次計画での売却額の分析は、積極的な売却の推進と大型物件の売却があったということなんですが、今、この第二次計画、最終年度の途中ではありますが、現時点での計画の現状認識についてお伺いしたいと思います。

○塚本財産運用部長 平成十二年度に策定いたしました財産利活用総合計画では、財政危機に対応するため、土地建物の有効活用や、不用となった未利用地の売却を進めました結果、山口委員から今お話もありましたとおり、十四年度までの三年間で目標を上回る千四百億円の売却実績を上げました。
 平成十五年度に策定いたしました第二次財産利活用総合計画では、第一次計画に引き続き不用な財産を売却するとともに、貸し付けを行うことなどで歳入の確保を図ってまいりました。また、新たな事業に要する土地建物については、局や会計の壁を超えた利活用を推進し、極力既存の財産を転用することで支出を抑制する取り組みも実施してまいりました。
 この結果、平成十七年度末までの三年間で、売却では五百三十五億円、施設の統廃合に伴う転用などでは四十八件の実績を上げ、財政再建や施策の実現に貢献してきたと認識しております。

○山口委員 平成十一年にスタートしたころから比べれば、財政状況だとか、さまざま変わってきているわけではありますが、これは当然にやらなければいけない取り組みでありますので、まだ残っているわけですが、今後に向けてさらに推進をしていただきたいと思います。
 次に、東京都は、都有地の売却が地元区市町村のまちづくりに大きな影響を与えることから、計画を早い段階で地元自治体に周知をすることや、十分協議の上、売却を行うことが必要と示しているわけですが、実は、さきに挙げた都立大学深沢校舎跡地や、旧都立明正高等学校、旧用賀技能開発学院といった、第二次計画で売却順位が一位、二位の物件も、私の地元であります世田谷区にございまして、区議会議員当時も、この国公有地の民間売却をテーマに質問をさせていただいているところであります。
 これは、関係者の協議や開発者への指導においてトラブルを回避して、地元のまちづくりに合致した土地の有効活用を行うように、地元自治体は積極的に働きかけをするべきだというものでありました。
 そこでお伺いしたいんですが、都は、都有地の売却に当たって行った地元との調整はどのようなもので、特に配慮を行った点などあれば、またお聞かせいただきたいと思います。

○塚本財産運用部長 庁内において利活用の予定がなく、不用となった財産は、地元区市町村の施策実施にとっても非常に貴重な候補地となることから、早い段階で地元区市町村に情報提供を行い、公共目的などによる取得の意向について照会してきております。
 また、取得の意向がない場合でも、地元区市町村とは十分な協議を行った上で、民間に一般競争入札により売却を行っているところでございます。民間に売却するに当たりましても、地区計画など地元区市町村のまちづくりへの配慮を行って、実施をいたしております。

○山口委員 続いて、売却のほかにも、取り組みとして、都有地を民間事業者へ貸し付けているケースというのもあるわけなんですが、既に二十三区と多摩において、七カ所のグループホームの設置を今、公有地に進めている。場所は、新宿、文京、世田谷、荒川、練馬、府中、渋谷と伺っているわけなんですが、都民のためにも非常によい施設でもありますし、設置までは地元との調整など、時間もかかると思いますが、今後もぜひ広く展開をしていただきたいなと思うところであります。
 都は、利活用のためのさまざまなアイデアを打ち出してきているわけですが、それでもなお残る土地は、平成十七年十二月末現在、三百七十四件、まだ約百九十七ヘクタールにも上るわけです。これらの未利用地で活用されていない土地の管理としては、一般的に囲いで囲って、都有地の看板を出して、時折草を刈る、閉鎖管理を行っている程度と聞いています。未利用地は、地域にとって見ばえがよくないといった景観上の問題も生じさせているため、住民は何らかの活用を求めているところです。
 都は、現在、三百七十四件の未利用都有地のうち八十九件を、場所がいいということで、駐車場や、そのほか資材置き場として暫定利用しています。中には、旧調布飛行場用地等のように、子どもの遊び場として地元自治体に貸し付けているものもあると伺っております。
 また、ほかの自治体の例を見てみれば、地元住民との連携によって、未利用地への環境に配慮した取り組み、コミュニティガーデン化など緑化に取り組む例も伺っています。みどり率の低下や地球温暖化対策への緑化の推進を積極的に求められている現在、こういった生かし方も検討に値すると思います。
 未利用地よりは、地元自治体などから出た要望に考慮した地域の遊び場などの暫定利用や、未利用地の環境に配慮した取り組みをぜひ推進していくべきだと考えますが、都の見解を伺います。

○塚本財産運用部長 各局で行政用途を廃止した財産は、原則として財務局が引き継ぎ、将来の行政施策への転用や売却に備え、普通財産として管理しているところでございます。これらの財産については、有効活用の観点から、可能なものは貸し付けなど暫定活用を行っているところでございます。
 お話のありました地域の遊び場への活用につきましては、かねてより地元区市町村の要望を受け実施しておりまして、例えば、旧田無住宅敷地や、旧職員広尾寮敷地などについて、その例がございます。
 また、都では、事業残地などについて緑化を進め、周辺環境に配慮した取り組みなども行っておりまして、今後もさらに都の施策と連動した取り組みを進めていきたい、このように考えております。

○山口委員 財務局に引き継ぎをされてから、さまざまな活用方法をといわれても、皆さんの専門外でもありますから、なかなか難しいところだとは思いますが、ぜひ各局としっかりと連携を図って、有効活用というものにも着目をしていただきたいと思います。これは要望でございます。
 最後に、平成十六年の七月に知事が、土地や建物などの資産を都市政策にも積極的に利活用すべきと発言されて、それを受けてでしょう、同年の九月、都有財産利活用推進会議が設置されて、局の壁のみならず会計の壁を超えて、都の財産の利活用を図ることとなりました。現在、推進会議は四回開催されて、全会計が参加をした財産情報システムや、会計を超えた財産の転活用の推進などに取り組んできたと聞いています。
 最後に、この二次、七年にわたる都の財産利活用計画が最終年度を迎えているわけですが、計画の終了時には、達成度や課題への対応など精査を行っていくのではないかと考えるところです。また、この七月には、「今後の財政運営の指針」が策定され、行財政改革実行プログラムにおいても、都有財産の利活用の推進が掲げられています。
 そこで、今答えられる範囲で結構ですので、今後の取り組みの方向性について伺って、質問を終わります。

○塚本財産運用部長 第二次財産利活用総合計画は、計画策定から三年が経過し、都の財政状況は、財政再建に一つの区切りがついた時点でございます。また、今年度、七月一日時点の都基準地価格も、東京都全域の全用途の平均変動率が十六年ぶりに上昇に転じるなど、利活用総合計画策定時に前提としていた社会経済状況も大きく変化しております。
 また、新たな公会計制度が導入され、ストック情報も財務諸表に計上されることから、財産の持つ経済的な価値を十分に発揮する利活用が一層重要となっております。
 さらに、地方自治法の改正により、行政財産の貸付範囲が拡大するなど、法制度の変革も進んでおりまして、これまでの施設の統廃合などよる財産の有効活用に加えまして、行政財産についても市場性に着目した利活用の推進が求められているところでございます。
 今後、このような財産を取り巻く状況の変化も踏まえまして、都有財産の利活用の基本的な考え方について検討をしていきたいと思っております。

○山田委員長 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後二時三十一分休憩

   午後二時四十一分開議

○山田委員長 それでは、休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。

○橘委員 初めに、都有財産の有効活用について伺います。
 近年、国有地や国が出資した施設の売却、整理が活発になっております。この背景には二つの要素があろうかと私は思います。一つは、国の財政再建の一環としての政策判断。しかし、これは焼け石に水であることは、だれの目にも明らかであり、借金の穴埋め的に売却するようなことはしないで、将来の有効活用の可能性のために維持するという毅然たる判断があってもよかったのではないかと、個人的には考えております。
 二つ目は、国有財産の運用に対する国民の目が一段と厳しくなって、これを背景に、政治判断をしなければ国民の納得が得られないという追い詰められたような事情があろうかと思います。つまり、まず国がみずから身を削るべきだとの声が高まり、その矛先として、国民から見てむだと思われる施設や、利用頻度の低い施設、あるいは遊休地等に対する国民の関心が強く注がれ、結果的に、国民の目に直接見えるような形で処理せざるを得ない状況に追い込まれている、そういう事情です。
 こうした状況は、国有財産に対する計画的で明確な将来展望を持てなくなっている国の姿勢があらわになっているようにも見えます。
 一方、東京においては、国のような財政再建という視点で都有財産を処分しなければならないという状況にはありません。しかし、景気の回復基調の中で、特に区部では地価が上昇しておりますし、民間マンションの価格も上昇傾向にあります。一部ではミニバブルとの見方もされているようであります。
 こうした状況になりますと、都有地や都有施設が効果的に活用されているのか、より有効活用ができないのかという都民の見方はこれまで以上に強まると思われます。したがって、都においては、国とは事情が違うものの、現象面で国の二の舞いにならないように、都有財産の管理運用、有効活用が明確な基準に基づいて都民の理解と納得を得ながら活用されなければならないと思います。
 こうした状況を前提に想定した対応かどうかはちょっとわかりませんけれども、都は今年度から導入された複式簿記・発生主義による新たな公会計制度で、ストック情報が財務諸表に計上されることに伴って、都有財産の情報把握のために財産情報システムを稼働させておりますけれども、まず、このシステムの導入の目的、内容について確認しておきたいと思います。

○塚本財産運用部長 本年度から導入いたしました財産情報システムの目的でございますけれども、まず第一に、これまでの紙ベースの公有財産台帳を電子データ化いたしまして、個別財産の検索や財産統計の処理などの管理事務の効率化を図ることがございます。第二に、財務諸表の作成に必要な財産情報を新財務会計システムにスムーズに提供することによりまして、新たな公会計制度に寄与するということがございます。第三番目には、公営企業局も含めた各局の財産情報を共有化することによりまして、全庁的な財産の利活用を一層推進するということがございます。
 これらの目的に沿うよう情報の入力についても、財産の規模や価格などの従来の基本的な事項に加えまして、用途地域などの都市計画情報を新規項目として追加したところでございます。
 また、地図情報とリンクさせまして、財産の位置、付近の状況が一目でわかるようにするとともに、各局において都有財産全体の情報を閲覧できるようにいたしました。

○橘委員 財産運営で窮地に陥った自治体に共通することの一つは、公的財産の管理が甘く、活用に計画性がないということであるといわれております。そういう点では、今伺ったような都有財産の管理、資産情報としての活用、そして利活用の面を効率的に進めるシステムとして、財産情報システムは極めて有効であると思いますし、これからチェックしていく上で土台部分がしっかり築かれたのかなというふうに思います。
 しかし、大切なことは、導入された後にシステムが実際に各局の財産管理、それから利活用事務において積極的に利用されていくことが大事かと思います。
 そこで、システムの稼働後の具体的な利用状況、そして導入の効果について伺います。

○塚本財産運用部長 財産情報システムの導入に当たりましては、各局事務担当者に対する説明会や研修を実施いたしまして、システムの円滑な利用促進に努めてまいりました。この結果、各局担当者のシステムのアクセス件数は、公営企業を含めまして、九月末現在で約五万件に達しており、導入当初のこの時期としては順調に利用されているものと、このように思っております。
 各局では新たに行った使用許可の移動情報をその都度入力し、日々情報を更新していることから、リアルタイムで財産の現状を把握でき、よりきめ細かい個別財産の管理が実施されているところでございます。
 また、新たな機能として付加しました地図情報の活用によりまして、個別の財産だけでなく、一定の地域内における施設の集約化など複数の財産を視野に入れた利活用を検討する上でも効果がございます。

○橘委員 今の説明で感じたことは、システムが稼働して以来五万件というのは非常に多いなという感じであります。ということは、同時にいえることは、各局が都有財産について新たな政策展開に活用できるのか、そういった強い関心を持っているということがうかがえますし、同時に全庁的な注視による管理にもつながっているのかなというふうに思いました。
 ただ、システムというのは使い勝手や機能の面で絶えず改良していってこそ利用価値が増していくものであります。例えば、政策実現のための制度にしても、当初想定したほどの効果が出なくても、使い勝手がよくなるような修正を行い、制度の魅力に付加価値をつけていくことによって政策目的をさらに前進させ、達成することができるのと同じように、システムに付加価値を生み出していくことも今後の大きな課題ではないかと思います。
 その観点から、稼働から半年たったこの時点で、このシステムに関する分析、必要と思われる改良点など、そういった課題についてと、それからもう一つ、システムの今後の方向性、この点についてお伺いします。

○塚本財産運用部長 財産情報システムは、導入の準備段階で情報内容や操作面の検討を重ね、稼働を開始したところでございます。しかし、稼働後、実際に利用する中で、データの内容、閲覧操作や加工などに改善、改良すべき課題が明らかになってまいりました。
 今後は利用者である各局の意見も踏まえまして、例えば未利用地や空き床の有無、面積の情報などを新規に追加することで、利活用に有用な情報を充実したり、閲覧の操作手順の簡略化や検索機能の追加などによりまして、操作性の向上を図るというような改善、改良を必要に応じて行いまして、システムの完成度をより一層高めていきたいと思っております。

○橘委員 システムの今後の改良点でありますけれども、付加価値の方向性が見えてきたということによって都有財産の利活用を推進する基盤が、一つは整ったのかなと思います。このシステムを十分活用して、全庁的な都有財産の利活用を一層推進してもらいたいと思います。これは要望として、いっておきます。
 行政が住民の要望を踏まえて、制度、施策、そして事業を展開していくという発想は、既に時代おくれかなと私は思います。社会状況の変化、都民の行政に対する意識変化を敏感に酌み取りながら、先手先手と臨機応変に事務事業の見直しに取り組むことが、特に都政においては大事かなというふうに考えます。
 その観点から、今後の行政展開のあり方を展望していきますと、都有施設の移転に伴う跡地や都立高校の統廃合に伴う跡地活用などについては、その一つ一つの案件の判断が非常に重要になってくると思います。都有施設の跡地については、それまでの所管局が当然であるかのように引き続き抱え込んで利活用するという、そういう考え方ではなくて、全庁的な視点で利活用することが大事であると私も考えております。
 地域によっては、売却した方がその地域発展の種地となって活用できる、あるいは広範な事業展開が可能となって、地域全体の活性化につながって有効であると思われるようなケースも考えられると思います。
 施設の統廃合等による跡地の利活用のあり方について、基本的な考え方を伺います。

○塚本財産運用部長 各局におきます事務事業の見直しや、統廃合に伴いまして発生いたします跡地を有効に活用していくことは、引き続き私どもの重要な課題であると考えております。このため、都では、財産情報システムを積極的に活用するとともに、公営企業を含む局横断的な組織として設置いたしました都有財産利活用推進会議において情報交換に努めまして、副委員長もご指摘のとおり、全庁的な視点から他の施策への転用など、財産の効果的、効率的な利活用を進めていきたいと考えております。
 一方、庁内で行政用途のない財産につきましては、区市町村や民間に売却していくほか、一時貸し付けや事業用定期借地などによりまして、多様な活用を図ってまいりたいと考えております。
 今後も社会経済や財政状況の変化などを踏まえまして、財産の利活用のあり方、手法などについて積極的に検討していきたいと思っております。

○橘委員 都有財産の多様な手法で、有効活用する選択肢の一つとしてネーミングライツ、いわゆる命名権ビジネスといわれるものですけれども、この導入の可能性も考えられると思います。公的施設のネーミングライツが注目されている背景には、少しでも財源を確保するために公的財産を活用して収益を得る一つの有効な手段になり得るとの判断があります。
 国においても、国関連の公的施設等への導入の検討が行われていると聞いておりますし、特に注目されるのは、自治体における導入が活発化しているという点であります。最近では渋谷区立渋谷公会堂の施設名称がネーミングライツの導入によりまして、渋谷C  C  Lemonホールになったという事例もございます。
 以前は公的施設に企業名を冠して、企業宣伝に利用するということは考えられなかったのでありますが、これまでの実施例を見ますと、公的施設に付加価値をつけるということに住民の大きな抵抗はないように思われます。むしろ行政も工夫して努力をしているなと好意的に受けとめている反応の方が多いとも聞いております。
 そこで、自治体でも導入が活発化しているこの公的施設のネーミングライツに対する都の認識について伺います。

○塚本財産運用部長 地方公共団体や一般企業におけるネーミングライツの導入例を見ますと、財産の活用により収益を上げていく有力な手法の一つであると、このように認識しております。
 都においては、これまで監理団体である株式会社東京スタジアムが収益向上対策の一環といたしまして、平成十五年三月から味の素スタジアムとしてネーミングライツを導入している例などがございます。
 都有財産へのネーミングライツの導入を進めていくに当たりましては、契約の方法や事業としての性格、特に導入に適した施設がどのようなものがあるかにつきまして、整理すべき課題がございますので、今後、関係局と調整を図りながら検討してまいりたいと思っております。

○橘委員 これはいずれ時代の趨勢になるかと思いますので、研究を真剣にお願いしたいと要望しておきます。
 次に、これもやはり行政の効率化、税の節減の観点から、PFI事業について何問かお聞きしたいと思います。
 民間資金の活用によって社会資本などの整備や公共サービスの提供を行う事業手法でありますPFI事業ですが、この導入は自治体で活発化しております。都においても幾つかの事業を展開しておりますが、先日、その一つであります夢の島総合体育館敷地内にあります教育庁所管の文化スポーツ施設である区部ユース・プラザを視察してまいりました。
 施設の建設、維持管理、サービス提供などを担う民間企業から見たこのPFI事業のメリット、デメリット、行政サイドから見たメリット、デメリット、そういった視点を中心に、今後の展開の可能性を探ってまいりました。
 行政、企業とも、この事業手法をうまく生かせば双方の利益になると考えましたし、一方で、事業、サービスを担う民間企業が経営難に陥る可能性や、行政サービスの維持といった課題もあるようにも思いました。したがって、都のPFI導入にはきちんとした手続に基づいて明確な判断基準を持ち、導入後も厳格な検証体制が必要だと思います。
 当委員会におけるこれまでの議論でも、PFI事業に関するテーマを何人かの委員の方が取り上げておりますが、実験段階から実施結果を踏まえた上での有効活用の段階に来ている中で、今後もこのテーマは活発に議論されていくと思います。
 そこで、きょうは基本的な部分を確認させていただきたいと思います。
 まず、各局の提示する事業がPFIに至るまでの庁内手続と財務局が担う役割について伺います。

○泉本経理部長 PFI導入の庁内手続でございますが、事業を実施する局がまず、PFIの採用について発案し、その上で知事本局、総務局、財務局の関係部長と法律、金融に関する外部の専門家で構成されます民活手法検討委員会で協議することとなります。
 この協議は、事業実施局の作成する事業概略書、民活事業計画書、実施方針などごとに順次進められていくことになりますが、最終的にはこの民活手法検討委員会の審議結果を踏まえまして、事業実施局がPFIで事業を実施する旨を決定し、契約上の入札公告等の手続に入っていくものでございます。
 財務局は、各局の事業自体に対して、通常、予算調整、工事積算等の指導、相談業務を行っておりますが、PFIに関しては、これらに加えまして、民活手法検討委員会の委員として付議された案件の整備手法について検討、評価しているところでございます。

○橘委員 今の説明によりますと、事業の実施を希望する局がPFI採用について発案し、そして民活手法検討委員会の審議にかけると。今のお話に基づきますと、事業主体である局というのは、どちらかというと主観的にPFIの採用を提案し、それを実行に移していく。責任も局に帰するわけですけれども、これに対して、この委員会というのは客観的、長期的、総合的な視点から検討が求められると同時に、PFI導入に関する明確な判断基準を持っていなければ、公平な判断ができないと思います。
 この判断基準についてですが、これはその都度、事業の内容によってケース・バイ・ケースで判断基準を設けるのか、あるいは一定の判断基準があって、それに基づいて判断をしているのか、その辺について見解を伺います。

○泉本経理部長 PFI導入に当たりましては、民間事業者にゆだねることにより、公共サービスが同じ水準にある場合、事業期間全体を通じた公的財政負担の縮減を期待できることが必要であること、また、公的財政負担が同じ水準にあっても、公共サービスの向上を期待できる場合には導入が可能とされております。
 このような原則的な基準に合わせまして、PFI導入の妥当性を判断する際には、長期間にわたって都民が必要とする事業であるか、行政サービスの向上に資するノウハウを民間事業者が持っているか、民間事業者の長期的、安定的な経営を支えるだけの収益性があるか、さらには民間に代替可能な複数のサービス提供主体が存在するかなどの観点から、多角的検討を行っているところでございます。

○橘委員 民間活力の導入に当たっては、事業展開の事後検証も重要であろうと思います。私が視察した区部ユース・プラザでは、事業実施状況を報告し、実施した事業や行政サービスなどについてPFI事業評価委員会で細かく検証が行われ、厳格な評価が行われているとの説明がありました。
 このPFI導入後の検証の実施体制と、既に実施した評価で浮き彫りになっている課題について何かありましたら、お願いいたします。

○泉本経理部長 PFI導入後の検証の実施方法、体制でございますけれども、PFI事業が運営段階に入った後、事業実施局はPFI事業評価委員会を設置し、各年度の事業実施状況等の評価を行うこととしてございます。
 この評価におきましては、PFI事業者による公共サービスの履行に関して、適正かつ確実なサービスの提供がされているか、PFI事業者が安定的及び継続的に公共サービスが提供できる財務状況にあるかの二点についての確認を、契約に基づいて実施しております。
 事業実施局は、この評価の内容を毎年度、民活手法検討委員会に報告し、同委員会では必要に応じて調査を行うこととしてございます。
 現時点において契約締結が完了した四事業のうち、運営段階に入り評価を開始した事業は、区部ユース・プラザ、そして多摩地域ユース・プラザの二事業のみでございますが、今後、運営段階に入る事業がふえるに伴いまして、評価実績もふえていくと考えております。

○橘委員 それでは最後に、これまでのPFI導入実績を踏まえまして、現時点で財務局としてPFI導入に当たって課題として考えている事項があればお答えいただき、私の質問を終わりたいと思います。

○泉本経理部長 PFIの導入の目的でございます事業コスト削減と、より質の高い公共サービス提供の両立を実現するためには、競争性が十分確保される必要がございます。しかし、既にPFIを導入した四事業を見ますと、入札参加者数は最も多い事業で五事業者、少ない事業では一事業者にとどまっております。
 今後、事業パートナーとなる民間事業者の参入意欲を高めるため、より多くの民間事業者が参入しやすく、かつ創意工夫や経営ノウハウが発揮できるような事業スキームづくりが必要であると考えております。
 また、運営段階におきましても、公共サービス水準を適正に維持していくための評価を効果的に実施していくことも重要でございます。
 財務局は、これらの課題を念頭に、今後とも民間等からの情報収集や、事業効果の的確な検証などによりましてノウハウを蓄積し、事業実施局によるPFIの導入や事業運営を支援していく所存でございます。

○曽根委員 最初に、財政プランの最終年度ということで、先日は財政指針については質疑しましたけれども、昨年度の決算が確定いたしましたので、その内容も含めて若干聞いておきたいと思います。
 昨年度の決算の委員会でももしかしたら聞かれたかもしれませんが、財政プラン二年目の昨年度の都税収入について、これは第二次プランをつくったときの見込みに比べて、どれぐらい都税収入が伸びたという、最終結果になりますけれども、お願いします。

○安藤主計部長 平成十七年度でございますが、プランの見込み額では都税収入は三兆七千九百億を見込んでございましたが、決算では四兆五千九百九十六億ということで、その差額は八千九十六億円となってございます。

○曽根委員 たしか十六年度、おととしについてはプランの見込みから四千億円程度の伸びだったと思います。昨年度が八千九十六億円の伸び、今年度はもちろんまだ確定はしていないんですが、さらに伸びている。
 単年度で八千億円以上も見込みを上回っているということは、何を意味するかというと、今年度で最終年度を迎える財政プランは、都の側としては最悪の想定を持って、財源不足が生まれるということも見込んで、厳しく歳出を抑えるということはもちろんやってきた。そういうことで、私たちが求めてきた都民の直接サービスなどもかなり抑え込まれただけじゃなくて、かなり削られた部分もあります。
 にもかかわらず、単年度で、もう二年目で八千億円を上回る増収といいますか、都税収入があったということで見れば、確かに財源不足が三千億円以上出るだろう、これは埋めなければならない。減債基金など繰り延べてきた分もある。これも多少は穴埋めが必要だというのはわかりますが、それにしても数千億の財源が残るじゃないか。
 もともと財政プランをつくったときには、お金不足ということで、都民要望にこたえ切れないということで厳しく抑えてきたわけですから、この間の財政的な状況がある意味では一変したという状況を踏まえて、都民要望にこたえるのは当然だというふうに考えるわけです。
 しかし、昨年度に新たに大きなお金が使われたのは、例えば新銀行、この結果、私も先日、代表質問で取り上げましたが、目標に到達せず、場合によっては破綻の危機もというふうにいわれる事態です。長い目で見ろと知事はおっしゃっていますけれども、その後として一千億円が本当に丸々パアになるという危険さえあります。こういうことにやっぱり使われてきたということについて、私は厳しい反省が必要だろうというふうに思っております。
 それから、オリンピックの基金としての積み立てが、ことしから一千億円ずつ始まりました。これについても、私どもの試算では、毎年一千億円の基金積み立てでオリンピック関連投資が足りるとは思えない。今後何年にもわたるオリンピック関連需要を見越してということで、場合によっては単年度の積立額もふえていくのではないかという危惧を持っています。
 そこで、お聞きしておきたいのですが、オリンピックの積立基金について、今年度を含めて四年間一千億円ずつというフレームが示されていますけれども、これがどの程度コンクリートされたものなのか。この四年間については、単年度の積立額が一千億円を上回ることは絶対にないのかどうか、この点についていかがでしょうか。

○安藤主計部長 お話しのとおり、オリンピック基金につきましては、この夏に発表いたしました指針の中で、十八年度は一千億、その後一千億程度をフレームの中に盛り込んでおるわけでございますけれども、このオリンピックの基金の対象となります事業につきましても、これも以前から申し上げているところなんですけれども、今後、オリンピックの全体計画や二〇一六年の東京の都市像が明らかになる中で定まってくるというふうに考えてございます。
 そうした中で、基金の積立額につきましては、フレームでは一つの目安と考えてございますけれども、各年度の具体的な積立額、あるいはとりあえず当面二十年度までの千億ということになっておるわけですけれども、それ以降につきましては、やはりそのときの財政状況、あるいはトータルの事業費が前提になるわけでございますけれども、それを踏まえて、そのときの財政状況とか世代間の負担の公平など、やっぱり総合的に勘案しながら判断していくことになると思っておりまして、四千億というのはフレームにおける一つの目安であるということは変わりないと考えてございます。

○曽根委員 四年間がたった後のことについては、もちろんその先についてはわからない、総合的判断と。
 もう一回ちょっと確認しておきたいのですが、このフレームの期間、四年間についても必ずしもコンクリートされている--財務局としては一千億円は用意できますよと出したんでしょうけれども、それすら場合によっては変更もあり得ると思うんですが、いかがですか。

○安藤主計部長 私どもは、中期的な財政運営の考え方としてフレームをお出しいたしました。単年度につきましては、税収等もまだわかりませんので、一つの目安というふうに考えてございますけれども、各年度の具体的な積立額は、やはり毎年度の予算編成の中でその時々の財政状況とか、あるいは繰り返しになりますけれども、世代間の負担の公平などを総合的に勘案しながら、その時点でもって判断していくことになるというふうに考えてございます。

○曽根委員 そういうことで、話もコンクリートされていないと。どう考えても、かなりの財政負担が都に来るだろう。道路も急いでいるわけですよね。知事が急がせている。
 オリンピックのプレゼンテーションでは、東京プロパーの財政の責任で遂行する自信があるとまでおっしゃっている。プロパーということは、独自に金出しますよということですから。そういう意味でも、国がああいう財政状況のもとで、東京都が何が何でも東京にオリンピックをということで推し進めれば、じゃあお金の方はよろしくお願いしますよということになりかねないということは、だれが考えてもわかるわけで、これは非常に危険な方向に進もうとしているということを、まず指摘したい。
 その上で、私、最近本当にショックだったんですが、ある職員団体と都庁の労務担当の交渉の場面がありまして、出てきたのは課長級のちょっと下ぐらいの方です。現場に近いところの労務関係の職員団体との交渉、ここで相変わらずその担当者が東京都にはお金がないんですということで、要するに職員の雇用問題での、年間せいぜい百万円かかるか、かからないかぐらいのちょっとした就業問題の改善にも乗れません、お金がないんですといっている。知事の方は、財政再建に区切りがついたといっているんだけれども、現場の方の労務関係の職員は相変わらず頭の中には赤字、赤字でいっぱいになっているというのがあるということを知りまして、これは大変なことだ、七年間も連続赤字といっているうちに、もうこびりついちゃっている。
 そういう発想がやっぱり財政運営にも随所に見られるんじゃないかということで、これはちょっと財務局としてはどうなんだということをお聞きしておきたいのですが、例えば私どもは福祉関係を一生懸命いってきました。一つは、シルバーパスについては、非課税から課税になっていきなりはね上がってしまう人が出る、それについては暫定措置がことしは実りました。しかし、ことし限りですよと、前回、私が代表質問してもいわれています。来年度ははね上がってしまう。もう経過措置でもないわけですよね。激変緩和でもないわけです。ただ、一年送っただけということになるわけですね。前回、無料から二万円にはね上がる人が出たときは、五千円ずつ上がったんですよ。それで、今回は一年送っただけで、知事選挙が終わればはね上がりますよという話なんですよ、要するに。
 そういう問題とか、それから子どもの医療費についても、この間新しい制度が出ました。これは来年の予算にかかわることだから、余り詳しく聞きませんが、三割負担を二割負担にするという。しかし希望としては、だれもが考えても、乳幼児と同じようにやっぱり一割負担もないようにしてほしい、全額持つような方向でやってほしいというふうに願っているわけですよ、少子化対策としても。これらを来年度以降も維持したとしても、例えば一千億円の基金があったって、なおかつ財政的には余裕があって十分できるだけの力はあるわけです。
 こういった担当当局が、福祉局などがその負担の存在というものを認めて、暫定的には経過措置をとって、激変緩和というか、要するに負担の緩和をしようということがやられているものについてさえ、その先が続かないという事態について、財務局からお金がないということについての縛りがかかり過ぎている、この七年間で。やっぱり財務局を先頭に、こうした財政運営についての大転換をやらなければならないときだと思うんですが、いかがですか。

○安藤主計部長 本件については、曽根先生と何度も何度もいろんなところでお話しをさせていただいていますが、この間の都財政の状況を見たときに、やはり安定的な継続可能な財政をつくっていくことが非常に大切だということが私どもの教訓でございます。しかし、そういう中にあっても、伸ばすべきものは措置をしてきたと私どもも思っておりますし、そのことについていえば、都民のご理解はいただけていると思っております。
 職員のために使わないという一つの例がありましたが、これはまさに財政構造改革を進めていく中で、人件費を中心とした固定費をいかに抑えて、それを政策的なものに回していくかという努力のことを指しておるのであって、労務担当の職員もそのことを踏まえて物をいっているんだというふうに思います。それはそれで、むしろこれまでの努力が都民の中に浸透し、都として進むべき方向はよく職員にわかっているということではないかなと、私どもはそう思っております。
 また、福祉関係につきましても、ことしの予算特別委員会でさまざまな議論がございましたが、私どもは、その時々に応じた需要に対してはしっかりこたえているというふうに考えてございます。
 その上で今般、指針を出しましたが、その指針は、不安定な税収の中にあっても、安定的にサービスを続けていくための指針だというふうに思っております。サービスを充実しつつ、やはり財政体力をつけるための基金の積み立ても行いますということで、我々はこの間の反省を踏まえて、将来にわたって、指針では新しいステージと呼ばせていただいておりますけれども、財政再建に一定の区切りがついた上でさらに発展させるための一つの考え方を申し述べたということで、今、その視点に立って来年度の予算編成を進めているところでございますので、来年度予算でまた改めてご議論できればというふうに思っております。

○曽根委員 この問題については、来年度予算の審議でまさにやらなければなりませんし、一方で、都民のためにさまざまな行政サービスをするということが使命の東京都が、片方でオリンピックのために出さなくてもいい金まで出してやろうという浪費が、私たちから見れば、新たな浪費が出てきている一方で、実際には持続可能な制度とするためにということで、せっかくやりかけたいい制度までなくなってしまうようじゃ本末転倒ということだけはいわせていただきたい。
 もう少し財務局自身の仕事に立ち入って、都民や都内で働く中小零細企業の方々への影響について、具体の質問をしていきたいのですが、先ほどもちょっとありましたけれども、公共工事の入札について、私からも質問したいと思います。
 資料もいただきました。きょう私が取り上げたいのは事前公表制の問題なんです。これは私たちも要望した経緯があります。実施されて五年ぐらいになるかと思います、モデル的に実施されてからも含めて。成果と問題点を検証する時期だと思うんですね。東京都が公共工事の入札予定価格を事前公表に踏み出したその理由、これは基本的に変わっていないと思うんですが、どういう点があるでしょうか。

○竹本参事 東京都は平成十年度より予定価格の事前公表を試行的に開始しました。平成十四年度からは対象を二百五十万を超える工事に拡大したところですが、事前公表により入札契約手続の透明性が確保されること、情報漏えいなど不正な入札への抑止力となり得ることなどから、本格実施をしたものでございます。

○曽根委員 足かけ七年ということですか。透明性だとか、それから官製談合というような国で起きている事態を防ぐという点では、確かに効果があるのかなというふうに、これ以上の絶対的な方法はないと思うので、効果はあるかと思いますが、これにかかわる、例えば公正な競争の確保という点だとか、また、公共工事を担っている建設業界、なかんずく中小建設業者の経営の健全性を確保する。東京都だけでは公共工事はできないわけで、やっぱり事業者が担っていて、しかもちゃんとそこから正当な食いぶちが稼げるという点での弊害というものはないのか、それについての認識はいかがですか。

○竹本参事 ただいま委員もご指摘いただきましたが、その効果はあったとお認めいただいておりますが、私どもも透明性の確保、情報漏えいなど不正な入札への抑止力としての効果は十分あったと認識しております。
 この予定価格の事前公表に踏み切るに当たりましては、事前公表すると、例えば落札価格の高どまりになるのではないかというような懸念がございました。これにつきましては、財務局発注工事の落札率を見ましても、平成十五年度が九〇%、十六年度が九〇%、十七年度が八八%というもので、落札価格の高どまりは発生してございません。
 また、事前公表すると建設業者さんが見積もりしないのではないかというような懸念につきましても、入札時に積算内訳書を持参していただき、提出し、見せていただく。事前公表にかかわるそのような懸念に対しては、ただいま申し上げましたようなことで、適切に対応してございます。したがいまして、私どもといたしましては、弊害が生じているとは考えてございません。

○曽根委員 私はわざわざ、公共工事を担っているのは都の職員ではなくて、実際には事業者のわけで、食べていかなければならない、特に中小零細の業者にとっての経営健全の維持という点もお聞きしたんですが、ちょっとそれは触れられなかったんですけどね。
 具体的にいいますと、資料にあるように、三百九十二件の最低制限価格を設けた件数の中に--事前公表の中でも総体的には小さい方の工事ですよね、四割ぐらいですか、やっぱり最低制限価格と同額で落札、しかもこの多くは、何者も同額で入札してくじ引きになるという事態が、現実に四割ぐらいのところで発生している。
 先ほど見積もりをつくらなくなる危険があるといったけど、小さい工事ではまさにそういうことがあるんじゃないかとさえ私は思うわけです。細かい見積もりをとらない場合などは、特にね。そうすると、最低価格で入札しないととれない、ちょっとでも上回れば、そこに張りつくのが何者もいるんだから、とれないということがわかっている場合にはどうしてもここに、下にみんなが集まってしまうということが現実に今起きているわけです。
 もちろんこれでも競争なんだと。競争で一番下の額がどうしてか同じになった場合にはくじ引きになるというのは、規定上そうなっていますよね。競争なんだというふうに都は認識していると思うんですけれども、実際には本当に公正な競争といえるのかどうかという疑問があります。
 そこで、こうした問題を、やはり正当な競争を確保するということや、例えば一般的に使われている八〇%の最低制限価格の場合には、そのほとんどの落札企業はその仕事自体は赤字でやるというふうになりますので、場合によっては下請に行ったり、その会社がかぶったりするということで、こうした問題を解決する方法としては、いろいろと対策を打っているんじゃないかと思うんですが、その点について、中身とその効果についてお聞きします。

○竹本参事 くじ引きによる落札につきましては、現行法制上、落札となるべき同額の入札をした者が複数あるときはくじ引きで落札者を決めなければならないと規定されており、公正な入札の結果であると考えております。
 そのくじ引きについては、先ほど先生もそのようにご判断くださったのかなと受けとめておりますが、公正な競争であるのかというところにつきましては、そのような意味で、くじ引きにおきましての公正な競争であるというふうに考えております。
 また、最低制限価格の設定でございますが、予定価格と最低制限価格の範囲内で申し込みをした者のうち、最も低い価格をもって申し込みをした者を落札者とするということで、最低制限価格と同額ということをもって競争にならないというのは全く当たってないと思います。
 また、最低制限価格は、当該契約の内容に適合した履行を確保するために必要であると認めたときに、あらかじめ設定するものでございまして、何%ということで決まっているものではございません。当該工事ごとに予定価格算出の基礎となりました直接工事費、共通仮設費、現場管理費から算出してございます。案件ごとに、一件一件算出しているところでございます。したがいまして、契約内容に適合した履行を確保できる価格であると私どもは考えております。
 先ほど積算内訳書の持参提出を義務づけるですとか、内容に不備があった場合には失格とするというようなことを申し上げました。このことによりまして、仮に一律に何%と積算しないでくるような、そういう不良不適格な業者さんがいらっしゃるとすれば、積算内訳書不備のある場合には失格とするということによりまして、そういう不良不適格業者の参入を防いでいるところでございます。
 さらに、昨年度から試行しております施工能力審査型総合評価方式を始めました。この施工能力審査型総合評価方式におきましては、従前でしたらくじ引きとなっているような案件におきましても、価格以外の要素として、施工能力の評価点が高い者が落札する、そういった絞り込み効果が認められております。今年度はさらに制度を改善し、試行の拡大を図っております。

○曽根委員 確かに総合評価制度を導入して、前回の定例会のときに私も資料をいただいてわかったんですが、価格が高い方の企業であっても総合評価で点数が上であれば、その企業が落札するという例がありました。そういう意味ではやっぱり品質、その会社の実績や能力をきちんと正当に評価できれば、そういうことも可能になるということがあると思うんです。
 しかし、多くの同額入札というのがかなり小さい規模の工事で起きているというふうに私は聞いているんですね。そういうところは大体一律に八割という形での最低制限価格になっているために、もうわかってしまうということや、それから見積もり云々でもって、その会社の実績で争うといっても、総合評価といっても、規模からいって難しいということでたたき合いになっているんだというのが現実だという訴えを私たち聞いています。
 そこで、その方々の企業の多くの団体が今いっていることは、予定価格を事前公表するかわりの制度がさまざまな制度としてできてきているということから、公表しなくても談合を防ぐ、透明性を確保する方策も整ってきたのではないかということで、全体を見直していい時期ではないかという訴えを聞いています。この点についてはいかがでしょうか。

○竹本参事 先ほど来申し上げてきましたが、予定価格の事前公表につきましては、その透明性の確保、不正な入札への抑止力になり得ることから、引き続き事前公表を実施してまいります。
 事業者さん、団体からそういうことを聞いているかということでございますが、そのような要望も伺っておりますが、事前公表につきましては、東京都の考え方を説明し、理解を求めてきているところでございます。

○曽根委員 確かに談合防止と透明性という点では、これ以上の透明はないわけです、入札額を事前に発表するということは。都の側では、いってみれば、それで完全になりますよね。しかし、そのために、それを支えている実際の民間の事業者で、しかも大きな額の入札ではそういうことが起きないのですが、やっぱり小さな額では、その仕事をとらないとどうにもならないという零細の方々がかかわっているということで、どうしても赤字覚悟でとってしまうという問題が実際に起きています。
 そのことを含めて、ぜひ総合的に、事前公表制については、入札制度全体の見直しの中で再検討していただきたいということを要望しておきたいと思うんです。(「具体的にいって。わからないよ、何をいっているのか」と呼ぶ者あり)具体的には、また機会を見つけてやりましょう。
 それから、これはもう一つ、財務局の仕事として都庁の維持管理があるわけですが、都庁の維持管理の清掃について、ここにも私は入札の仕組み上の問題を感じているんですけれども、そのために資料もいただきました。庁舎の清掃の委託の状況を出していただいたんですが、この間でも大分下がってきていて、平成十六年度に極端に金額が下がっているわけですね、落札額が。これは何か入札の仕様が、内容が変わったのかどうか、それとも単純に落札額が低かったのか、この点についてはいかがでしょうか。

○岡沢参事 十六年度の清掃委託費についてでございます。ここで一度下がっております。清掃委託費につきましては、個々の委託費について見ますと、これは競争入札でやっておりますので、入札参加企業の価格競争の結果として理解するほかはないだろうというふうに考えてございます。

○曽根委員 それにしても、庁舎の建物清掃委託の予算をずっとさかのぼって調べてみたんですね。そうすると平成七年度には、同じ庁舎の清掃なんですが、十六億八百万円なんですよね、平成八年度は十四億五千五百万円、平成九年度は十一億円台になる。下がってきているんですけど、そのペースでずっと下がってきて、今は四億円台ですね。三億まで下がったことがある。
 同じ場所を清掃していてこれだけ下げられるというのは、確かに仕様の中身が違っているんだと思いますよ、週に一回ガラスをふくのか、月に一回ふくのかで違いますから。それにしても同じ場所を清掃しているのにかなり下がってきていて、しかも三億円台の入札額になっている。それで落札できるというのは、余りにも落札額が低くなり過ぎて、実際に受けている事業者の側では相当な矛盾を抱え込んでいるというふうな実態はないのでしょうか。この点については、下がり過ぎという問題はお感じになりませんか。

○岡沢参事 ただいまお話しの中でもございましたとおり、この間、かなりの仕様の見直し、事業の見直しをやってきております。例えば、窓ガラスについては、当時一カ月に一回だったものを四カ月に一回にしております。これだけで四分の一になります。こうしたことの結果が、一番大きな流れの要因だろうと私は判断しております。

○曽根委員 確かにそういうふうな、何も月に一回磨かなくてもというものはいろいろあると思いますし、額が下がること自体について、とやかくいうわけじゃないんですが、しかし、余りにも下がり過ぎているということと、財務局としては当然ながら、やはりこの建物をちゃんと維持していく必要最小限の清掃ということでやってきていると思うんです。そこは当然、節減努力されている。その積算の予定している入札額よりもさらに、半分かどうかわかりませんが、何割も下げて落札している事業者の側で、本当に清掃の品質を維持できているのかなという疑問がやっぱりわくわけです。
 そうしてみると、十七年度にまたその額が戻っているというか、上がっているという中に、入札の中身としては非常に不安定なものがあるのかなというふうに思えてならないのです。私が思うには、入札する事業者の側でどれだけの人の雇い方をしているのかということは、落札の上での判断の基準にはならないというふうに聞いていますので、そのことで、いわば低ければ低いだけいいと、実際上は物品を買うのと同じような扱いになっているんじゃないかなということが原因かと思うんですが、実際の事業者がどれぐらいの、例えば時給とか、そういう条件で作業する人たちを雇っているかというようなことは、把握されているんでしょうか。

○岡沢参事 働いてもらっている従業員の収入、賃金の把握についてでございますが、従業員の賃金でありますとか、給与の額をいかに設定するかということは、受託した会社が経営上の課題としてそれぞれ独自に判断する問題だろうというふうに考えております。したがって、発注者である都といたしましては、そうしたものを把握してはおりません。

○曽根委員 私、たまたま昨年の春に、ここの清掃をやっている作業員の方々が入っている労働組合があって、その新年会に呼ばれまして行ったんですよ。とにかくひどい労働条件だというわけなんですよ。とにかく下げて下げて、もうこれ以上ないぐらい下げた。それでも今度の春の入札で、うちの事業所がとれるかどうかわからないと。実はそこはとれなかったんですよ、去年の春、負けたんですね。だから、とった方はもっとたたいたんだと思うんです、金額をね。
 そのときに話に出たのは、もう完全に年収百万円は割っていますと。正規の労働者として雇うのはもうできないと。パートで雇って、しかも最低賃金価格を時給で割るわけにはいかないんでしょう、それは違法になりますからね。そうすると一人分の働く日数を減らして、結局、ほかの仕事はできないんだけれども、その仕事で食っていけなくなるということなんですよ、年収百万円を割り込んでいくとね、数十万円になっていくと。というところまで労働条件が落ちているんですという話を聞きました。
 私、都の職員の方と比べてはいけないんでしょうけれども、同じ都庁の中で仕事をしている労働者として、労働に格差というものはないんでしょうけれども、余りにも労働条件、賃金の格差があり過ぎるということについては何らかの是正策がとれないものか。
 例えば、少なくとも法に反するような、または年収百万円を切って自立できないような労働の雇用の実態について、やっぱりチェックするとか、何らかの評価制度を設けて正規の雇用者の方を優先するとか、そういった方法をとることはできないんでしょうか。(「みんな公務員にしろということか」と呼ぶ者あり)

○竹本参事 受託会社さんの給与等の労働条件につきましては、各社ごとにそれぞれの給与規定などを踏まえて定められているものと理解しております。会社には会社ごとの経営方針があり、経営の戦略に基づいて営業活動を行い、東京都との契約だけではなくて、さまざまな業務を受注しております。
 給与支払い額自体はこうした経営方針によるものであり、どのような雇用をするかは、会社がそれぞれのお考えのもとに決定していると受けとめております。したがいまして、一律に契約制度で対応するものではないと考えております。

○曽根委員 そういうふうにいい続けているんですけれども、こういう施策はとっているわけですね、例えば環境問題に対応した業者については、やっぱり東京都の仕事で、都庁に出入りする車の環境対策とかそういったことで、ある一定の今の時代に求められている基準でもって、事業者の選定の中に物差しを入れるということが、環境問題などではやられているわけです。
 私は今、雇用の格差ということがこれだけ社会問題になっているわけですから、少なくとも違法な雇用実態にあるようなものは、絶対に都庁でそういった委託に入れないような仕組みぐらいはまず必要じゃないかと思いますので、そこをいわば出発点として、適切な都庁内、または東京都関連の委託の事業者、私は全部公務員にしろなんていっていませんが、委託でやっているものについて、少なくともまともな労働者としての暮らしができるだけのものを保障できるような雇用の仕組みというものを、全体として保障していく何らかの制度が必要であるということを申し上げて、ちょうど時間ですので、質問を終わります。

○佐藤委員 先月の決算特別委員会で、以前よりわかりにくいと思っておりました鉄道関連工事を取り上げ、建設局からお答えをいただきました。今回の事務事業質疑では、四月からスタートしている新しい会計制度を踏まえ、財務局に二点確認したいと思います。
 都は、鉄道に係る道路や河川の工事に関して、鉄道事業者と協定を結び、工事の見積もり、業者選定などを鉄道事業者に委託しています。
 平成十三年から平成十七年までの過去五年間に、新規に結ばれた協定総額における都支出額だけで約九百二十八億円にも上ります。新規協定の締結に際しては、議会の議決事項にはなっておらず、各年度の支出分が予算項目として審議されているだけです。
 複数年に及ぶ協定は、年度ごとに協議を結び、事業執行を行っております。協定は複数年度にまたがる契約であり、鉄道関連工事という事業の性格上、事業途中の凍結は難しいといえます。複数年の協定を結ぶということは、つまり将来にわたって複数年の固定的な巨額の費用負担を生み出すことになるわけです。それが議会の議決を経ることなく、決まっているのが現状です。
 一般的には、複数年度にわたる工事については債務負担行為をとるのではないかと思います。ここで、債務負担行為とは何か伺います。

○安藤主計部長 債務負担行為は、複数年度にわたります工事契約を結ぶ必要がある場合などに、あらかじめ将来の支出予定額の限度を予算の中で定めておくものでございまして、いわゆる会計年度独立の原則の例外として地方自治法で認められているものでございます。

○佐藤委員 お答えを聞くと、協定は毎年度の予算によることとなっており、この事業スキームでは債務負担行為には当たらないようです。そうなると、各年次の予算審議で議論すべきかもしれませんが、新たな協定締結に伴う将来的な負担の審議がなされているとはいいがたい状況にあります。
 確かに、会計年度独立の原則が地方自治法に規定されておりますが、一方で、その限界を指摘する声も大きくなっております。毎年、年度協議の執行内容を確認することにとどまるのではなく、規律のある財政運営を行うためにも、現在の協定の残り総額を把握した上で、新規協定の締結を行うかどうかについて、議会で審議を注意深く行う必要があります。
 また、この事業のもう一つの問題点は、工事施行者が都ではなく、この事業でできた完成物が最終的に都の資産にならないことです。
 このように、負担金の支出のみで資産にならない事業は、事業の執行状況の検証がしにくいと思います。同じような事業スキームで、都の資産にならないものとして、国直轄事業負担金もあります。
 都では、このたび新たな公会計制度になり、都民にわかりやすく財務諸表を公表すると聞いています。そこで、新たな公会計で作成される財務諸表において、一般的には都の資産にならないものはどのようになるのか、お伺いします。

○安藤主計部長 複式簿記・発生主義会計のもとでは、都の資産を形成いたしません支出、例えば人件費や補助金などにつきましては、その年度の費用といたしまして、行政コスト計算書に計上されることとなっております。

○佐藤委員 事業コストの適切な把握をするために発生主義会計を導入するわけですが、都の資産ではないと貸借対照表には記載されないわけです。資産であれば貸借対照表で資産全体の数字が明らかになるものの、資産にならない場合には、行政コスト計算書で毎年度支出する額が計上されることになるわけです。
 このように負担金が長期間にわたる事業では、貸借対照表や債務負担行為で管理するのではなく、毎年度の執行額だけで管理するということになりますので、都民にとってもわかりづらく、進捗管理が心配になります。
 発生主義会計の実施とともに、当然、行政コスト計算書も作成されるわけでありますが、複式簿記・発生主義会計の導入を機会とし、アニュアルレポートも発行すると聞いております。これから少子高齢化社会が本格化する中、政策目標の実現と規律ある財政運営の両立を図るためにも、ぜひとも都民にわかりやすい都財政の分析と検証を行っていただきたいと思います。
 以上で私の質疑を終わります。

○藤井委員 私は、東京都の財政再建の取り組みについてお伺いをしたいと思います。
 本年七月に発表されました「今後の財政運営の指針」を読ませていただきました。これによりますと、東京都は平成十年度決算で過去最悪となる一千六十八億円という実質赤字を出して、その後も毎年巨額の財源不足が生じるなど未曾有の危機に直面いたしましたが、平成十七年度決算において五百四十三億円の黒字に転換することができたとあります。
 また、平成十一年度決算では経常収支比率が一〇四・一%となって、一〇〇を超えるという危機的な状況であったわけですが、平成十七年度には八五・八%と財政再建推進プランの目標水準であります九〇%以下の水準にまで改善をされたところであります。
 さらに、平成十一年度予算では巨額の財源不足が発生し、四千二百十六億円もの臨時的な財源対策を必要といたしましたが、これも平成十八年度までに財源不足を解消することができたわけでございます。
 このように、財政再建も一つの区切りをつけたということで、量的な再建はできたと考えるわけですが、この七年間の取り組みは過去に例を見ない厳しい取り組みであったと思います。財務局を初め関係者の皆様のご努力に対し、心から敬意を表したいと思います。
 さて、過去にも同じような財政危機がありました。昭和五十三年度決算は実質収支の赤字が千十一億円と一千億円を超え、経常収支比率が一〇六・一%というまさに危機的な状況でありました。その当時と今回の財政再建とでは置かれている状況も違っていると思います。そこで、この二つの財政危機からどのように脱却したのかを伺いながら、この間の都の取り組みについて確認をしたいと思います。
 そこで、まず初めに、美濃部都政末期であります昭和五十三年当時の東京都の財政状況についてお伺いをいたします。

○安藤主計部長 お尋ねの昭和五十三年度の決算でございますが、このときは実質収支が当時の赤字限度額ぎりきりの約一千億円にも達してございました。このときは投資的経費の執行を年度途中に一部を停止して、さらに年度末には減収補てん債を発行するなど考えられるあらゆる財源対策を講じることによりまして、何とか財政再建団体への転落を免れるというまさに危機的な状況でございました。
 しかも、その上に実質収支の赤字にとどまりませず、形式収支も二年続けて赤字となりまして、歳入の欠陥も生じまして、このため出納整理期間におきまして、翌年度の収入を前倒しで活用する、繰り上げ充用と呼んでいますけれども、これを非常手段として行うことによりまして、どうにか債務の不履行は免れておりました。資金繰りの面でも大変逼迫した状況にあったと思いまして、都財政におきまして、この繰り上げ充用を行ったのは後にも先にもこの二年だけでございます。
 こうした状況に陥った背景といたしましては、当時は第一次オイルショックと、それに続きますスタグフレーションの影響で都税収入が大変伸び悩みまして、当初予算を大幅に下回ってございました。また、歳出面でいいますと、執行能力とか、過去の実績から見て明らかに過大と思われる歳出予算を組んできたと思っております。加えて、人件費が都税収入の伸びを上回る増加を続けまして、さらに既存の事業の見直しもほとんど進みませんでしたので、その結果、経常収支比率について申し上げますと、都財政史上最悪の一〇六%に達したということで、極度に財政構造が硬直していたということだと思います。
 総論的なことも含めて申し上げますと、やはり税収の伸びに恵まれた高度成長期に、将来に対する備えというものもできていなかったのではないかということで、基金へ新たな積み立てを行うということについても、全く行ってまいりませんでした。こういったことが挙げられるというふうに思います。

○藤井委員 それでは次に、石原知事が就任した平成十一年当時の都財政の状況についてはどうだったか伺います。

○安藤主計部長 平成十年度の決算で申し上げますと、都財政史上最悪の千六十八億円の実質収支の赤字を記録して、また、ピーク時には一兆円を超えておりました基金残高も、十一年度末には実に八百六十九億円にまで減少いたしました。
 また、十一年度予算編成におきましても、四千二百十六億円という財源不足が生じまして、ほかの会計から借り入れるといった臨時的な財源対策を講じなければならないという状況にございましたので、昭和五十三年当時と同様、財政再建団体への転落が現実視される、やはり危機的な状況にあったわけでございます。
 この当時の背景を申し上げますと、バブルの崩壊とそれに続きます不況によりまして、都税収入が収入の大宗を占めているわけでございますけれども、これが実は平成三年度をピークにわずか三年で一兆円減少するなど、予測をはるかに超える変動をしたということがございます。
 また、税収の変動にもかかわらず、都債の活用や基金を取り崩しまして、歳出の水準をバブル期とほぼ同じ水準に維持するなど、今から思いますと、身の丈を超えた財政運営を続けたことによりまして、経常収支比率、弾力性をはかるこの比率も一〇四・一%となりまして、硬直化が深刻であったことなどがございます。

○藤井委員 今ご答弁ありましたように、どちらも財政の硬直化が進んで、新たな都民ニーズにこたえる財政的な余裕がなかった、そういう状況に陥っていたわけであります。あえてこの両者の違いをいうならば、昭和五十三年当時は職員の人件費の占める割合が大きく、まさに財政圧迫の要因となっていたわけであります。
 ご承知のとおり、美濃部都政を支えたのは、与党は共産党と社会党でありました。この美濃部都政のときに東京都の職員をどんどんふやしたわけでございます。すなわち、美濃部都政が誕生した昭和四十二年度の職員の数は十七万六千六百六十四名でございました。しかし、年々職員をふやした結果、美濃部都政の末期であります昭和五十三年度の都の職員の数は、何と二十二万二千七百八十九人に膨れ上がっていたわけであります。何と十二年間で四万六千百二十五人も職員をふやしたわけであります。
 また、都の管理職ポストもどんどんふやしました。さらには退職手当も、当時は九十カ月という支出が大変ふえたわけであります。当時は労働組合の発言力が大変大きかったというふうに書かれてありました。
 そこで、昭和五十三年の財政危機から脱却した要因は何だったのか、お伺いをいたします。

○安藤主計部長 昭和五十四年四月に鈴木知事が就任をされましたけれども、その後に、直ちにそれまでの財政運営の問題点を総括いたしまして、赤字の解消と経常収支比率の改善を目標といたしまして、堅実な財政運営の転換が図られたわけでございます。
 まず、歳出面で申し上げますと、投資的経費や外郭団体の支出などあらゆる経費を徹底的に見直しますとともに、ご指摘のございました人件費についても、重点的な圧縮が図られたところでございます。
 特筆すべきことといたしましては、昭和五十四年度から、いわゆる第一次行政改革に取り組みまして、昭和五十八年度までに職員定数を九千二百五十五人削減いたしました。また、各種の手当の見直しなど給与費全体の適正化を全国の自治体に先駆けて進めたことであると思います。
 これらの取り組みによりまして、税収の大幅な伸びという追い風もあったことはあったわけですけれども、昭和五十六年度には早くも実質収支の黒字化を達成いたしまして、翌年の五十七年では経常収支比率を八九・五%と九〇%以下の水準にまで引き下げまして、財政再建の目標を達成することができたという状況にございました。

○藤井委員 ちょっと余談になりますが、最近、美濃部前知事が書いた「都知事12年」という本を読みました。まさに今ご答弁にあったような美濃部知事時代の本当に生々しい実態が書かれていたわけでございます。その中でちょっと一部抜粋しながら、進めていきたいと思いますが、美濃部知事はこのように述べております。
 「一期目から二期目にかけ、私は『議会は地獄』とさえ感じたが、公明党が与党になってから本当に楽になった。共産党は与党とはいえ、十二年間通してみると、反対に回った議案数は自民党と変わりないほど多かった。」、当時、自民党さんは野党でしたから。こういった知事の回想録。
 さらには共産党について、「秘密主義で一枚岩的な党の体質は、息がつまる感じで好きになれない。」、これは美濃部知事がいっているんですよ。「ことに、何事によらず代々木の本部の考え方が都段階まで浸透している点で、あまりに硬直的に過ぎると思った。共産党が、与党としてよく助けてくれたことは事実である。しかし、知事に立候補するや、政策においては、社会党と共産党の間で協定したものを、そのまま忠実に実行すべきであると主張したり、京王閣の補償金が多すぎるといって私の提案に反対したり、同和問題でも共産党系の『正常化』の言い分だけを正しいとして私と対立したり、ややともすれば党の方針通りに行動するように、強制めいた言動をすることが多かった。私の提出した議案に対して同党が反対の態度をとったのは自民党より多いくらいであった。」と、こういうふうにあるんですね。与党になっても反対しているんですね、この党はね。
 だから、やっぱり美濃部都政、私は全部が悪いとはいいません。非常に都民のための都政ということを目指した知事であったと私は思います。そのためにも努力されたと思います。ただ、その知事を支える与党が本当に、やっぱり都民のためになる政策をやらなければ、これは逆にこういった財政破綻を招いたり、あるいは都民が苦しむような政策を推進してしまっては、これは何もならないと思うわけでございます。
 そういった意味で、この財政、先ほど危機を招いたこの美濃部都政から今日まで、都政は、まさに自民党と公明党とで一貫して都の財政再建を図ってまいりました。そのために徹底した行政改革を進めてきたわけでございます。具体的には、職員定数の見直し、あるいは監理団体の改革、退職手当などの見直しや施策のさまざまな見直しに取り組んでいく中で、私は当局とともに力を合わせて財政再建をしてきたものと確信するわけでございます。
 具体的な数字をちょっと述べさせていただきます。
 先ほどいいました、美濃部都政のときに四万六千百二十五人の職員をふやしたわけですが、これを鈴木都政、青島都政、石原都政で徹底した職員定数の見直しをしてまいりまして、鈴木都政から石原都政の間に合計五万一千三十四人の職員の定数を削減してまいりました。これは、もちろん生首を切らない退職不補充の形でやってきたわけでございます。
 また、管理職ポストについても、これは警視庁、消防庁、議会局、医師、医者を除く管理職ポストでございますが、美濃部都政のときに最大限の管理職ポストが設置されました。昭和五十四年度でいいますと、二千八百五十四の管理職ポストでございました。これが最高です。そして、これを鈴木都政、青島都政、石原都政で見直してまいりまして、結果的には鈴木都政から石原都政の間に千五十八の管理職ポストを削減してきたわけでございます。
 また、監理団体でいいますと、平成十一年度、石原都政のときに六十四団体あった監理団体を見直しいたしまして、平成十八年度には四十一団体と、二十三団体削減いたしました。また、監理団体の職員数につきましても、平成十一年度には九千五百五十二人だった職員を、十八年度では八千三百二十二人へと見直しをしてきたわけでございます。さらには、この外郭団体の、今は監理団体といいますが、退職金についても、平成十年十二月に団体の役員の退職金というものを全廃させたわけでございます。
 その結果、平成十二年度から平成十八年度の間におきます職員の給与関係費の削減額は一千十二億円、この一千十二億円の財源が確保されました。また、監理団体に対する財政支出の見直しを行った結果、平成十二年度から平成十八年度までに七百六十六億円の財源が確保されたわけでございます。
 こういった経過を通しまして取り組んできたわけですけれども、次に、昭和五十三年と平成十一年、この財政危機を脱却した要因について伺ってきたわけですけれども、その違いは何か、この点について伺います。

○安藤主計部長 今るるお話しがございましたような経緯の中で財政再建が図られてきたわけでございますけれども、昭和五十年代と今般の取り組みとの違いということでございますが、内容を振り返りますと、内部努力あるいは施策の見直し、そして歳入の確保、さらに税財政制度の改善などの財政再建の柱は、いずれにおいても共通するものだと思っております。
 その上で違いを挙げますと、昭和五十年代は毎年度都税収入が一〇%前後の伸びを続けておりまして、財政再建の中にありましても、人件費や投資的経費の規模は抑制基調ではあるものの、それなりに伸ばすことができたわけでございますが、一方で、現知事就任後は、かつてないことなんですけれども、都税収入が増減を繰り返すという厳しい状況の中で、人件費や投資的経費など歳出全般にわたりまして大幅な削減を進めてきたわけでございます。
 具体的な数字を挙げますと、昭和五十四年度から五十七年度までの三年間では税収が三割増加し、歳出も二割増加しております。一方、平成十二年度から十七年度までの五年間では、税収はわずか一割の増加にとどまりまして、歳出はマイナスとなっております。この点から見ましても、今回の財政再建の取り組みの道のりは厳しいものだったというふうに認識をしてございます。

○藤井委員 石原知事が厳しい状況の中で着実に財政再建に取り組んできたということでございまして、こうした削減モードの中にあっても、その中身を充実させてきているということも大変重要だというふうに考えます。
 例えば、目的別の歳出のうち、福祉と保健というものが歳出総額に占める割合を見ますと、昭和五十三年度は八・一%でありましたが、これが平成十八年度には一二・三%とふえております。これは、我が党もこういった福祉と保健の予算を拡大するよう要望してまいりましたが、歳出削減を進める中にあって、都民が必要とする行政サービスに限られた財源を重点的に配分をしてきたということであると思います。
 ところで、都と国の財政再建への取り組みについてでございますが、都と国の財政状況を比較しますとどのようになっているのか、この点について伺いたいと思います。

○安藤主計部長 十八年度の一般会計予算で比較をいたしますと、例えば将来世代の負担となります起債への依存度は、東京都が五・八%、国は三七・六%と国が圧倒的に高くなっておりまして、起債の残高を見ましても、税収と比較いたしますと、都は税収の一・五倍の六・九兆円でございます。これに対して国は十二倍の五百四十二兆円に達するなど、その健全性の差は歴然としているというふうに思っております。
 また、政策的な経費でございます一般歳出を比較いたしますと、昭和六十三年度の水準を一〇〇といたした場合、これは税収が今と近いという意味ですけれども、都が九九とほぼ同じ規模に抑制しているのに対しまして、国は一四一と大幅な増加を示してございます。
 このように都は早くから税収の動向を踏まえました歳出削減を進めまして、着実に成果を上げてきておりまして、私どもから見ますと、国が税収にふつり合いな歳出拡大路線を継続した結果、財政状況が悪化の一途をたどったのと好対照をなしているというふうに考えてございます。

○藤井委員 平成十八年度の東京都予算案の概要を見ますと、国は歳入の約四割を国債に頼っております。また、国の借金は税収の約十二倍まで増大をしているというふうにありました。そういった意味で都と国の財政状況を比べれば、いかに国の財政状況がひどいかということがわかるわけです。
 そこで、国の財政再建に向けた取り組みは進んでいませんが、都が国に先んじて財政再建をなし遂げたことについて所見を伺いたいと思います。

○安藤主計部長 東京都の場合、財政構造を見てみますと、法人二税の依存度が特に高いということで、景気変動の影響を受けやすくなっておりまして、やはり財政危機の状況というのはとりわけ深刻であったというふうに思います。
 また、ほかの団体と違って国から交付税をいただいて、それに頼るということもできませんから、結局は自力での再生を果たすしかないということでございます。
 そのためには、人件費の削減といった内部努力を進めるのはもちろんのことでございますが、投資的経費の大胆な抑制など歳出を徹底して絞り込むとともに、都税の徴収を強化するなど、あらゆる手だてを講じることが必要であったわけでありまして、この間の財政再建の取り組みは五十三年当時とはるかに厳しい道のりであったというのは、そういうことでございます。
 こうした取り組みを確実に実行することで、都は国よりはるかに先んじて財政再建に一つの区切りをつけることができたわけでございますけれども、これは都財政に対するこうした危機感を私ども執行機関だけではなく、都議会、そして都民の皆様と共有できて、その理解と協力をいただけたことが財政再建を短期間でなし得た最大の要因であったというふうに考えてございます。

○藤井委員 最後ですが、国と違って、都は財政再建に一つの区切りをつけました。都財政は新たなステージへと移ったところであります。ようやく手に入れた健全財政の恩恵を今度は都民に還元すべきであると考えます。
 一方、かつてバブルが崩壊した後、右肩上がりの成長という幻想にとらわれて、財政危機を招いたことも決して忘れてはならないと思います。
 今後の都財政を考えますと、団塊世代の職員が退職期を迎えます。退職手当が高い水準で推移することが予想されますし、少子高齢社会の進展によって介護保険や老人医療などの負担がふえることが見込まれます。そういった多くの課題を抱えているわけですが、今後増大する財政需要に確実に対応するためにも、過去の轍を踏まない財政運営に取り組むべきと考えますが、局長の決意をお伺いいたします。

○谷川財務局長 我が国の経済は、景気の回復が持続しておりまして、しばらくは都税収入の安定的な確保が見込まれている状況であるというふうに思っております。しかしながら、景気は必ず後退するものでありまして、先行きの税収の動向は予断を許さないものと考えております。
 一方で、人口減少社会が始まるなど中長期的に見れば、決して楽観できる状況ではないと私は認識しております。
 財政危機を二度と繰り返さないためには、歳出規模をむやみに拡大することなく、現在の税収増を追い風として、より一層財政基盤を強化していくことが重要であり、そのため内部努力や施策の見直しに今後とも着実に取り組んでいくことはもちろん、負の遺産のような懸案事項の解消にも先送りすることなく、積極的に取り組んでいく姿勢が不可欠であると考えております。
 ご指摘のように新たな財政需要に積極的に対応できる強固で弾力的な財政基盤を確立することが、財政構造改革の究極の目標でございまして、都財政の現状は通過点にすぎないと認識しております。
 中長期的視点を重視した財政運営を行うなど、過去二度にわたる財政危機の苦い経験も十分に生かしながら、今後の財政のかじ取りに臨んでまいりたいと思っております。

○山田委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山田委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後四時十三分散会

ページ先頭に戻る

ページ先頭に戻る