財政委員会速記録第十一号

平成十八年九月二十九日(金曜日)
第二委員会室
   午後一時一分開議
 出席委員 十四名
委員長山加 朱美君
副委員長東村 邦浩君
副委員長大沢  昇君
理事鈴木 隆道君
理事村上 英子君
理事曽根はじめ君
伊沢けい子君
高倉 良生君
神林  茂君
佐藤 広典君
吉田康一郎君
門脇ふみよし君
桜井  武君
大西 英男君

 欠席委員 なし

 出席説明員
財務局局長谷川 健次君
経理部長泉本 和秀君
参事竹本 節子君
主計部長安藤 立美君
財産運用部長塚本 直之君
特命担当部長三津山喜久雄君
建築保全部長南部 敏一君
参事松村  進君
参事岡沢  裕君
主税局局長菅原 秀夫君
総務部長三橋  昇君
税制部長松田 曉史君
参事目黒 克昭君
参事堀内 宣好君
課税部長安田 準一君
資産税部長吉田 裕計君
徴収部長齊藤 吉民君
特別滞納整理担当部長宮下  茂君
出納長室出納長幸田 昭一君
副出納長関  敏樹君
副出納長牛山 幸彦君
会計制度担当部長細野 友希君

本日の会議に付した事件
 出納長室関係
報告事項(質疑)
・平成十八年度資金管理実績(第一・四半期)について
 主税局関係
付託議案の審査(質疑)
・地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した都税還付加算金還付請求事件の控訴提起に関する報告及び承認について
 財務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百九十九号議案 たつみ橋交差点立体化工事(十七 五-放十四東新小岩)請負契約
・第二百号議案  警視庁西新井警察署庁舎(H十八)改築工事請負契約
・第二百一号議案 警視庁多摩西警察署(仮称)庁舎(H十八)新築工事請負契約
・第二百二号議案 晴豊二号橋(仮称)鋼けた製作・架設工事(十八 五-環二)請負契約
・第二百三号議案 是政橋二期鋼けた製作・架設工事(その一)請負契約
・第二百四号議案 中央環状品川線大井北発進立坑設置工事請負契約
報告事項(質疑)
・「今後の財政運営の指針」について

○山加委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、主税局及び財務局関係の付託議案の審査、出納長室及び財務局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 なお、付託議案中、第百九十九号議案から第二百四号議案までの契約議案につきましては、議長から、事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございます。ご了承願います。
 これより出納長室関係に入ります。
 報告事項、平成十八年度資金管理実績(第一・四半期)についてに対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 ご発言願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○山加委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山加委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で出納長室関係を終わります。

○山加委員長 これより主税局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した都税還付加算金還付請求事件の控訴提起に関する報告及び承認についてを議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○東村委員 それでは、専決処分されました都税還付加算金還付請求事件の控訴提起に関して何点か質問したいと思います。
 今回、この事例は、判決で、四億八千万円、それに伴う年五分の利子を付して払えという、非常に大きな額を東京都に要求しているわけでございまして、私は、ずっとこの判例を読んでいて、この判決が今後認められるようになった場合に、東京都にとっても非常に大きな損失になるんだろうし、逆に、納税者から見ればこんなありがたいことはないという、ここまで通用するのかと、こういうことを感じたものですから、非常にわかりづらい事例なんですけれども、大事な事例だと思いまして、何点か質問をさせていただきたい、このように思いまして今回質問いたします。
 今回の争点は、平成十五年九月十六日に、処分庁であります麹町税務署が法人税を減額更正した際の都民税、事業税、いわゆる法人二税の減額更正に伴う還付加算金の計算期間の起算日、どこを基準にして計算するのか、これが一つの争点でございます。
 これだけだったら単なる還付加算金の事例で終わるんですけれども、今回、ミュンヘン再保険会社は、地方税法第十七条の四第一項第一号を適用して、納付日の翌日を起算日、非常にこれは納付者にとって有利な考え方なんですね。東京都は、第十七条の四第一項第四号を適用して、減額更正があった日の翌日から起算して一カ月を経過する日の翌日を起算日とする、このように主張しているんです。
 単なる還付の事例であれば、ミュンヘン再保険会社の主張は妥当なんでしょうけれども、この事例はこれだけじゃなくて、ここに至るまでのさまざまな経緯と背景があるわけでありまして、この辺がわかってないと、何でそうなんだということで、おかしいのではないかと逆に裁判所の側に立った論調を展開する人が多いわけなんです。
 そこで、ここに至るまでの経緯、どのような経緯と背景でこのような争点が出てきたのか、この辺について、まず伺いたいと思います。

○安田課税部長 外国法人である原告は、当初、法人税及び法人事業税・都民税につきまして納税義務がないものと考えまして、全く申告をしておりませんでした。しかし、国税当局による法人税の決定処分を受けた後、まず、平成四年度分から平成六年度分までの法人事業税・都民税につきまして平成十年七月に東京都に申告を行いました。
 その後、再度国税当局による法人税の決定処分を受け、平成八年度及び平成九年度分の法人事業税・都民税について、平成十三年七月に東京都に申告を行いました。
 さらにその後、原告の申し立てに基づく日独租税条約協議の結果、法人税が一部減額されたため、東京都も平成十六年一月に法人事業税・都民税の減額更正処分を行ったものでございます。

○東村委員 そもそも外国法人が日本に来る場合、特に租税条約というのは、普通はきちっと調べて、協議した上でさまざまな手続をする。申告をしないのであれば、本当にそれがしなくてもいいのかということをきちっと調査した上でやらなきゃいけない。そういう中で、まさに、明確にはおっしゃっていませんでしたけれども、特に法人都民税、法人事業税については期限後申告である、こういうのが一つのポイントなのかなと私は聞いていて思いました。
 ミュンヘン再保険会社が平成十年七月に提出した都民税及び事業税の確定申告、これはまさに期限後に出されたわけなんですけれども、これが義務修正申告なのか、それともそうでないのか、これが大きく起算日の考え方を変えてくるんじゃないかと思うわけであります。
 東京都の主張は、ミュンヘン再保険会社が十年七月に提出した都民税及び事業税の確定申告書が義務修正申告と同様でない、こういう考え方に起因しているからあのような主張になるんだろうと私は思うわけでありまして、そこで、なぜ東京都がこの当該確定申告書を義務修正申告と同様でないと考えたのか、この辺について見解を伺いたいと思います。

○安田課税部長 まず、義務修正申告というものでございますが、法人事業税・都民税につきまして、既に申告等をしている法人が、法人税において修正申告を提出した場合、または更正決定を受けた場合においては、法人事業税は法人税の所得を、そして法人住民税については法人税額をそれぞれ税額算定の基礎としている、そういったことから、この変更に基づき増額となる法人事業税・都民税については一定期間内に地方団体に対して申告納付すべきものということにされてございます。通常、このことを義務修正申告といってございます。
 そもそも本件につきましては、先生もご指摘のとおり、期限後の確定申告でございます。修正申告には該当しないものでございます。これを、法人税を税額算定の基礎とするといったことを理由に義務修正申告と同視するということは、申告制度の意義を根底から否定することにつながるものであり、到底認めることはできないものでございます。

○東村委員 期限後申告という話があったんですけれども、そもそも申告をしようとしてなかったわけですから無申告。都民税の方でも、無申告加算金の支払いも事業税については起きているようでありまして、まさにそういう流れから来ているんだということをよく勘案すれば、私は今回のような裁判所の決定は起きなかったんじゃないかと思うんですけれども、今回の判決で一つだけ、判例の中でかなり強調している部分が、法人事業税については、実は東京都が勝訴したんですね、そういった意味で。法人都民税については敗訴した。
 判決文では、地方税法は都民税について申告納税制度を採用して、第一次的な税額確定の責任を課税標準の実情をよく知る納税者にゆだねたものである、だから、期限後の申告であるとはいえ、法人税の決定処分の内容に従って自主的に申告納税した者については、申告をしなかった納税者よりも不利益に扱うのは妥当でないと。ほうっておけばもともと申告しなかったんですから、これはちょっと私は違うんじゃないかと思うんですけれども、これについて東京都はどのような見解をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。

○齊藤徴収部長 地方税法では、還付の原因が納税者側の行為による場合と、行政庁の措置による場合とに大きく分けて還付加算金の起算日を定めておりまして、この規定に基づいて還付加算金を算定しております。
 しかしながら、本判決は、この規定によらずに、いわば類推解釈を行うべきとするもので、法の規定に基づいて税務事務を執行している立場の我々東京都としては承服できるものではない、このように考えております。

○東村委員 皆さんは、まさに法に基づいて、条例に基づいて仕事をしないと、都民の財産を負託されている方たちですから、これはやっぱりいろいろな批判を浴びると思うんですね。
 そういう意味で、いろいろな意味で最近の裁判の、特に地裁の判例なんか見ていたら、類推解釈というのがやたらと多くて、この辺のところを、今の法というのはどうなのかなと、今回の事件だけじゃないんですけれども、私は考えるわけなんですね。
 そういう中で、仮に今回、このミュンヘン再保険会社が期限内に申告をしていれば、起算日は当然納付の翌日となったのか、これについて伺いたいと思います。

○齊藤徴収部長 一般論として、当初期限内に申告されたものであり、その後、義務修正申告を行い、東京都による減額更正があった場合の起算日は納付の翌日、まさにそういうことになります。

○東村委員 今一般論として、きちっと期限内に納付されていれば、今回の事例は通常どおり明らかに納付の翌日が起算日となったということなので、全く問題なかったんですね。
 ただ、これから、裁判の世界ですから、今いろいろな判例の事例を見ていますけれども、この前の国旗・国歌の問題もそうかもしれませんけれども、どこでどうなるかわからない、これが私、まさに今の社会なのかなとは思っているんです。
 そういう中で、これはないとは思うんですけれども、仮に都が敗訴を、控訴していってどの段階で確定するのかわかりませんけれども、都が敗訴した場合、この判決が他の事例にも、同様な事例にも今後すべて適用されるのかどうか、この辺について都の見解を伺いたいと思います。

○齊藤徴収部長 東京都としては、もちろん敗訴はないとかたく信じているところでございますけれども、一般論として申し上げるならば、敗訴の場合、当該事案に対する個別の効力にとどまり、直ちに他の事案に適用になるということはないと考えられます。いずれにしても、その場合には立法的な解決が望ましい、そのように考えております。

○東村委員 今おっしゃったように、個別の事例、今回の問題にとどまると。恐らく、判例が出ても、それを積み重ねなければ法を変えていくということにもならないんだろうと思いますし、その他の事例をもう一度よく検討していただいて、さまざまこの問題については検討していかなきゃいけないと思うんです。
 そこで、まさに今回の事件が、今いったように、個別事例だということを明確におっしゃってくださったんですけれども、今後、個別事例であっても、万が一のことがあれば、これが波及する効果はやっぱり大きいと思うんですね。主税局にとっても大きいでしょうし、地方税法そのものをどうするのかという、変えていかなきゃいけないのかどうかとか、こういう問題にも波及していくのではないかと思います。
 そこで私は、主税局が今回控訴したのは、明らかに不合理であると判断したからだと思いますし、主税局の控訴は妥当だと思います。そこで、今後の裁判にかける主税局長の決意を最後にお伺いしたいと思います。

○菅原主税局長 主税局は唯一の歳入の所管局といたしまして、税務行政の適正、そして公平性の確保という観点から、当然のことでありますけれども、法に従うとともに、局を挙げまして創意工夫を凝らした取り組みを展開して、そして税収確保に努めて、さらに一定の成果を上げているところであります。
 したがいまして、本件の訴訟にも必ず勝訴するものと確信しているところでありますけれども、東村副委員長の貴重なアドバイスも踏まえまして、万全の備えで臨んでいきたい、かように決意しているところでございます。

○山加委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山加委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で主税局関係を終わります。

○山加委員長 これより財務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第百九十九号議案から第二百四号議案までを議題といたします。
 本案につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○泉本経理部長 先日の委員会におきまして要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 今回要求をいただきました資料のうち、付託議案に関するものは一件でございます。
 お手元配布の要求資料第1号をごらんください。
 たつみ橋交差点立体化工事(十七 五-放十四東新小岩)請負契約の入札経過調書でございます。
 技術提案型総合評価方式で行われたこの請負契約について、入札や開札の日時、入札者氏名、入札金額、技術点も含めた評価値などの入札経過を表にまとめたものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○山加委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○大西委員 契約案件の入札経過について伺っていきたいと思うんですけれども、第二回定例会のときにも、やはり付議案件で低入札があって、私も質問をさせていただいたわけで、ちょうどあたかもシンドラーのエレベーター問題とか耐震偽装事件等があって、こういった激烈な競争によって品質管理が十分なされていないのではないか、そういう指摘をさせていただいたわけですけれども、今回もこういう低入札が行われているわけでして、品質確保の観点から伺っていきたいと思うんですけれども、まず、過去三年間の低入札の実態についてお聞きをしたいと思うんです。

○竹本参事 ただいま過去三年間の状況のお尋ねがございました。
 平成十五年度は二十九件、低入札が発生しております。十六年度におきましては二十八件、十七年度は三十五件となっております。このうち議会付議案件につきましては、十五年度は一件、十六年度は一件、十七年度におきましても一件という状況でございました。
 低入札は、鋼けたですとか電気ですとか河川工事の業種において多く発生しておりまして、これらの業界として非常に厳しい競争の結果と受けとめております。

○大西委員 このような入札に対しては、低入札価格調査制度によって、積算の根拠、資材の購入先あるいは労働者の供給見通しなどを調査して、問題がないと判断して契約を結んだと聞いていますね。だけれども、四〇%を切っているとか五〇%を切っているような入札金額で落札をしているわけですね。そしたら、ある意味では、きょうはこれには触れないけれども、財務当局の積算というのは一体どうなっているんだという疑問も感じざるを得ませんね。そして、調査の結果、工事に支障がない、しっかりとした品質が確保されるというふうに判断したからこそ契約を履行しているんだと思うんですね。そうしたら、何だ、今までの、四〇%も五〇%も業者たちは利益を上げていたということを素人目には考えちゃうよね。
 そういった意味では、この問題についてはまた触れていかなければいけないと思うんですけれども、常識的にいけば、企業の利益なんかはもちろんだけれども、人件費の、技術者の確保だって、危ういと私たちは思うんですよ。
 こういった低入案件の落札率や工事成績も後でチェックしていると思うんですね。それらの平均はどうなっているのか、聞かせてほしいと思います。

○竹本参事 先生、四〇%を切っているものはございません。五〇%を切っているものは過去に一、二件あったかと承知しておりますが……

○大西委員 ああ、そうかそうか。三〇%……。

○竹本参事 いえいえ、四〇%を切るようなものは発生してございませんので、どうぞご理解ください。

○大西委員 ああ、そうかそうか、はい。

○竹本参事 ただいまのご質問は、落札率の平均についてということでございました。十五年度には落札率の平均が六八・八%、十六年度には六九・五%、また十七年度、昨年度におきましては六六・七%という状況でございます。
 さらに、工事成績の平均についてのお尋ねでございます。工事が完了して成績評定が終了したものの状況でございますけれども、それらの平均につきましては、十五年度におきましては七十一・八点、十六年度におきましては六十九・五点、十七年度におきましては七十・八点という結果が出ておりまして、工事全体の、一般の工事含めた全体の平均よりも高い、そういうような状況があらわれております。

○大西委員 竹本参事がマリア様のように優しくいわれちゃうと、いいたいことも十分いえなくなっちゃうんですけれども、いずれにしても工事成績は、合格しているとはいっても七〇%だよね。以下ということでしょう。いかにも低い。落札率の平均が七〇%以下というのはいかにも低いわけですよね。
 ですから、現在の低入札価格制度の対象となる発注金額というのは、土木は四億円、建築は五億円以上、設備では一億二千万円以上、こうなっているんでしょう。これは後で申し上げますけれども、いずれにしても、これはいつから、どのようにして決められてきたのか、まずお伺いをしたいと思います。

○竹本参事 低入札価格調査制度の対象の範囲でございますが、平成八年にWTO対象案件以上の工事ということで、二十五億円以上の工事から導入いたしました。また、民間の技術力を積極的に活用し、コスト縮減を図るといった観点から、平成十二年には七億円以上としたところでございます。さらに平成十四年度からは、大型工事である建設共同企業体発注案件の現在の金額の対象範囲まで拡大したものでございます。

○大西委員 今の民間の技術力を活用してコスト縮減を図っていくというのは結構なことで、中には、当初予算に比べて、こういった低入札によってこれだけ財源が確保できた、これは財務当局としては大きな成果であるぐらいの声が風の便りに聞こえてくるけれども、それじゃ、財務当局は一方では積算をやっているわけで、それとの関係はどうなってくるのかという疑問も感じざるを得ないし、さらに一番心配なのは、そうやって調査の結果、品質については大丈夫だ、そうおっしゃっているけれども、コンクリートにしたって鉄にしたって、割ってみなきゃわからない部分がたくさんあるわけでしょう。仮に今後、これは五十年、何十年という耐用年数を持っている公共物で、きのうの建設委員会では、関係の議員から、こんな何十%も切ったような橋の場合に、手抜き工事が明らかだなんといっている人もいて、心配だから車じゃ走れない、これからは自転車か徒歩でその橋を渡ろうなんて冗談めかしていっていた人たちもいるくらい、品質の確保については我々も心配でならないわけですよね。
 そういう意味では、むしろ低入札価格調査制度で対応するだけでなくて、むしろ最低制限価格の対象範囲を広げていって、必要なコストはしっかりと確保できるような制度に改めていく必要があるんじゃないかなと思うんですけれども、それについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○竹本参事 ただいま先生から、低入札では非常に工事の品質や安全性が懸念されるというお話がございました。もっともだと思います。低入札で懸念される工事の品質や安全性、適正な履行の確保でありますので、金額の多寡にかかわらず、これらを確実に確保していかなければならないと私どもも考えております。
 そのためには、最低制限価格の対象範囲の拡大ということもあるかと存じますが、低入札に対しましては、まず十分な調査や検査の強化を進め、安易な低入札を防止していく方策を講じていくことが必要と考えております。

○大西委員 最低制限価格の対象範囲を拡大することもあるが、それよりも今の制度をしっかりと充実していきたいというお話なんでしょうけれども、今の制度を充実していく中でもこういう問題があるんだから、私としては、この際は論戦は避けますけれども、最低制限価格の対象範囲の拡大について、もうそろそろ東京都が他の自治体や国に先駆けて先鞭をつけていくべきじゃないかということで要望をさせていただきたいと思います。
 そして、これは下請の中小企業の問題や何かにも関係しているんですね。実態としては、私たちは中小企業の経済圏の中で生きているわけですね。そういった中で、中小企業、下請者の悲鳴というのが、切実な声が、こういった工事の低入札で落札をした下請たちから、常に常に聞こえてくるんですよ。おい、今回はこんな低入札で落札したけれども、ここは損してくれよ、あと次のいい工事、もうかる工事があったらそれを回すから、そういわれ続けて、もう五年ももうかる仕事が来ていない、そういう人たちもたくさんいるわけです。
 そういう人たちは、技術力を持ち、経営意欲を持ち、そして地域に対するさまざまな責任を果たし、しっかりと頑張っているにもかかわらず、まじめな人ほど消えていかざるを得ないような実情というのが地域にあるわけですよね。ですから、ぜひ今後ご検討をいただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
 次に、低入札が減らない状況ですね、いろいろな角度から努力をしていても。品質確保のために改善策として、例えば工事現場に配置しなければいけない技術者を増員させるとか、あるいは下請との契約関係、それも実際の下請金額を下請契約書で厳密に取り交わさせて、それを調査する、そういうような取り組みを検討していってもらわなければいけないのではないかと思うんですけれども、お考えはいかがでしょうか。

○竹本参事 現在、低入札に対しましては、積算根拠や経済状況などの書面審査に加えまして、配置予定技術者から直接ヒアリングを行うとともに、施工体制の確認や中間検査を強化するなどのさまざまな面から調査、検査の強化を図ってきておるところでございます。また、契約時には、通常は免除される企業でありましても契約保証金を免除しない、契約保証金を納めていただくというような措置も行っているところでございます。
 しかし、現実にこうした低入札が減少しないという状況をかんがみますと、ご提案のありましたような配置すべき技術者の増員の義務づけ、それから下請企業との契約の調査確認などと、さらなる対応策も今後至急に検討してまいりたいと考えております。

○大西委員 今ご答弁にあったような、全体的なチェックだとか適正履行の確保、これはもとより必要ですけれども、一方で、低入札がふえるのは、価格のみの競争というのが先行してしまって、入札・契約制度の根本的な問題もあると思うんですね。
 問題は、もちろん税金でつくられるさまざまな公共物、社会資本の充実ですから、低価格であることは、効率的であることは大切なことだけれども、もう一つは、五十年、百年と、社会資本として、都市基盤として都民の利便に供していくこういった施設が、万が一安易な工事によって問題があるということは、これは大変な問題になるわけで、ただ価格が縮減されればいいというだけの問題ではもちろんないと思うんですね。
 そういった中から、我が党の代表質問での答弁でもあったように、今後は総合評価方式をぜひ推進していくべきである。こういったたつみ橋の施行において大きな成果が上がっているということは、我々は率直に認めていきたいと思うんです。
 そしてもう一つは、いい工事をしていく、そして地域に貢献している企業、これが公共工事を担っていくシステムというのを大きくつくり上げていくような仕組みが必要だと思うんですな。一番わかりやすくいえば、正直者がばかを見ないようなしっかりとした仕組みを我々は守っていかなきゃいけないと思うんですよね。
 こういった場合に、低価格で取得をした大手から下請に投げられる、そういったときに、良心的で技術力があって、あるいは地域に対して貢献はしていても、これでは採算性が合わない、できるはずがない、こんな良心に背くような工事は自分たちはできない、そういう人たちもたくさんいるんだ。そうすると、今度は仕事の内容なんかどうでもいい、あるいは品質なんかはどうでもいい、銭になればいいんだ、とりあえず受けようなんというような、悪貨が良貨を駆逐するような現実も、今地域の中で起きていることも事実なんですよね。事実なんですよ。
 ですから、これから公共工事の品質確保について、その観点から、またさらに十分な検討をしていただきたい。そして、総合評価方式についても、今後さらに創意工夫を凝らして推進をしていっていただきたいと思いますけれども、どのようなお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

○竹本参事 これまでのところ、東京都では総合評価方式として二つの方式を推進しております。一つは高度な工事に適用する技術提案型、もう一つは中小規模の工事を対象とする施工能力審査型という二つのものでございます。いずれにいたしましても、この総合評価方式で価格と品質が総合的にすぐれた内容の契約がなされるよう取り組んでいるところでございます。
 今後は、この二つの方式の中間的な区分の総合評価方式といたしまして、中規模以上の工事を対象とする新たな類型の整備も必要と考えております。あわせまして、災害協定等による地域貢献の実績の評価についても検討いたしまして、東京都の公共工事の実情に合った総合評価方式の推進を図ってまいります。

○大西委員 これから、東京都だけでなくて国の方針もあるでしょう。そして、今まさに公取が時の氏神様みたいに、正義の味方、月光仮面ではないけれども、我々は、余りにも公正取引委員会というところが権限を持ち過ぎることによって、もっと国家的な社会資本の整備だとか公共工事の効率的なあり方について、何か局面的な動きばかりが進んでいるんじゃないかと思って心配をすることも多いんですね。
 公正取引委員会というのは、あくまで目的のための手段についてチェックをする機関ですから、目的はあくまで社会資本の充実であり、国土の発展なんですから、そういった意味で品質の確保ということは大事な問題だと思うんですね。
 そういった観点で、ぜひ今後とも財務当局としても、全国自治体のオピニオンリーダーというか政策リーダーとしても、こういった問題について、国でも行き過ぎの点があれば、それを緩和させるようなしっかりとした具体的な施策を、私は財務局が、あるいは東京都が勇気を持って進めていくべきだと思うんですね。
 参事のお話はよくわかりましたので、ここで局長の決意のほどをお聞かせいただいて、私は質問を終わりたいと思います。

○谷川財務局長 公共工事につきましては、委員ご指摘のとおり、都民の財産を築いていくという観点から、品質の確保が非常に大切であるということは認識しております。
 また一方、都は都民の税金を地域社会に還元していくという大きな目的も当然有しているわけでございまして、契約においても、そういう観点にどういうふうに取り組んでいくかというのは、今後、契約制度を考えていく上で一つの大きな要素として考えていかなければならないというふうに考えております。
 今後とも契約制度の充実に向け努力してまいりたい、このように思っております。

○山加委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 付託議案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山加委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○山加委員長 次に、報告事項、「今後の財政運営の指針」についてに対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布しております。
 資料について理事者の説明を求めます。

○泉本経理部長 先日の委員会において要求のございました報告事項に関する資料は二件でございます。
 お手元配布の要求資料第2号をごらんください。基金残高の推移でございます。
 基金の積立額、取り崩し額、年度末残高について、平成十一年度以降の推移を年度別にまとめたものでございます。
 次に、要求資料第3号をごらんください。負の遺産と隠れ借金の概要でございます。
 負の遺産と隠れ借金について、それぞれの定義と具体例をお示ししたものでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○山加委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○神林委員 それでは、「今後の財政運営の指針」について、トップバッターでございますが、質疑をさせていただきたいと思います。
 東京都はこれまで、職員定数削減や施策の抜本的見直しなど、財政再建に向けた取り組みを国や他の自治体に先駆けて実施してまいりました。このような真摯な取り組みは着実に成果を上げております。そして、近年における景気回復の本格化、経済環境の好転も相まって、都財政はようやく財政再建という意味においては一つの区切りをつけたといえる段階に到達したとのことであり、私ども大変、大いに喜ばしいことだと感じております。
 これまで大変重要な役割を果たしてきました財政再建推進プランも、今年度をもって終了いたします。このたび財務局は、このプランにかわる新たな、ここにある冊子の「今後の財政運営の指針」を策定し、公表したわけでございます。この点について、何点かこれから質問をさせていただきたいと思います。
 今回のこの冊子、従前の財政再建プランと大分違いが読み取れるわけでございますけれども、まず、この指針の特徴についてお伺いしたいと思います。

○安藤主計部長 このたびの指針は、先生ご指摘のとおりに、財政再建に一つの区切りがつきまして、新たなステージに移っていきます都財政が将来にわたりまして健全性を維持するため、その質的転換を図ることを目指したものでございまして、財政再建推進プランにかわります財政運営の方向性を示したものでございます。
 これまでのプランとは異なりまして、取り組み期間、数値目標などについては触れてはございませんけれども、その一方で、中長期をにらみました財政運営の基本的な考え方を示しますとともに、予算編成手法などにつきまして、庁内分権の視点に立って新たな取り組みも試みも盛り込むなど、私どもとしては思い切った改革を進める内容になっているというふうに思っております。
 また、今後三年間の中期財政フレームにつきましても、単純に収支を明らかにするだけではなくて、今後の財政運営の方針とリンクをさせた形で示した点も大きな特徴であるというふうに考えてございます。

○神林委員 今ご答弁いただいたわけでございますけれども、この中で今までにない新たな試みとして、財政フレームと財政運営の方針とをリンクさせた形で示したとのことでございますけれども、この点について若干掘り下げてみたいと存じます。
 今回、明らかにされた財政フレームを見ると、オリンピック基金として毎年度一千億円を積んだ上で、さらにその他の支出として、三カ年で二千六百億円に及ぶ額を計上しております。このその他の歳出の計上額は、一見すると余剰財源を抱えているようにも思われますが、その使い道についてお伺いいたします。

○安藤主計部長 このたびお示ししましたフレームでは、歳入歳出を試算した結果としてのプラスの収支差額が生じておりまして、それをその他の歳出として計上してございますが、この歳出は、負の遺産への対応、大規模施設の計画的な改築、改修、さらには減債基金の積立不足の解消、約四千億ほどございますが、こういったものなどに活用していくことを想定しておりますので、これらすべてに対応しようとすれば、とても二千六百億円、三カ年で二千六百億でございますけれども、足りるものではございません。
 こうした点を踏まえますと、今回、その他の歳出として計上いたしました額は決して余剰な財源ではないと思っております。今後とも、引き続きゼロシーリングのもとで既存の施策のスクラップ・アンド・ビルドなどを行いまして、新規事業や懸案課題に対応するための財源を捻出していく必要がある、こういう状況には変わりはないというふうに思っております。

○神林委員 決して余剰な財源ではないというお話もございましたけれども、そういうものがしっかりこれから担保されていかなければならないのかなというふうにも思います。
 ここの要求資料第3にも概要が載せられておりますけれども、こうした財源を活用して負の遺産への対応などを図っていくとの今答弁があったわけでございます。この負の遺産という言葉でございますけれども、これまでの都財政に関する議論では余り聞きなれない言葉であり、今回が初めてだという気がしております。
 これまでの巨額の隠れ借金というものがあって、その解消に全力を挙げて取り組んできたのではないかと思いますが、また新たに、実は負の遺産とも呼ぶべき課題がありますといわれても、どういったものなのかなということで、ちょっとにわかに理解に苦しむところがございます。
 要求資料にも書いてございますが、そこで、なぜこの時期に負の遺産という存在を取り上げ始めたのか、簡単にご説明をお願いいたします。

○安藤主計部長 今般指針をお示しし、その中で私ども、負の遺産という概念を出したわけでございますけれども、この指針におきまして負の遺産といたしました課題は、その問題点は従来から認識はしていたわけでございますけれども、抜本的な解決には相応の財政負担が必要となるために、これまでは毎年の財源不足の解消という財政再建を優先せざるを得ないという状況下でございましたので、その処理を先送りするしかなかったものでございます。
 しかし、こうした先送りの対応を続けていけば、やがて事態はさらに悪化するということになりますので、この際、都財政が体力を回復しつつある現在、この積み残してきました課題の処理に取り組んで、将来にわたって都財政の健全性を確保していくことが重要であるというふうに考えたものでございます。
 こうした考え方に立ちまして、今般の指針におきまして負の遺産という問題の所在を明らかにし、その上で抜本的な対策を講じていくことといたしたものでございます。

○神林委員 これは一般的にいえば、企業でいえばそれこそ不良債権みたいなものでございまして、大きな問題なわけでございますね。行政改革をこれからもなお一層推進し、こうしたむだを生まない都政運営を行われるように、ここでまず強く要望しておきます。
 とはいえ、このままこれを放置しておりましたら、さらに傷口が大きくなってしまうことが懸念されます。安定的な財政運営が望める今後数年間のうちに、できるだけ早くこうした負の遺産などの課題に対して抜本的な対策を講じていくという都の姿勢は、我が党としても支持できるところでございます。
 いかに回復を見せている都財政とはいえ、こうした負の遺産や、こちらにも説明がございます大規模施設の改築、改修などの課題に対応していくためには、決して財源が余っているわけではなく、むしろ逆に足りなくなるぐらいだという状況も理解ができる気持ちがいたします。
 ところで、行財政改革を推進する真の目的は、財政再建の達成ではなく、その成果を都民にいかに還元していくかということでございまして、財源となるのは都民の血税なのでありますから、常に最少の経費で最大の効果を上げるため、最大限の行革の努力を傾けていくのは当然の責務でありますので、ぜひこれからもお願いいたします。
 今回の指針では、従来の財政再建推進プランと異なり、取り組み期間や数値目標には触れず、財政フレームに基づいて、今後三年間はゼロシーリングとする基本方針を明らかにし、その上で庁内各局の主体的取り組みに多くをゆだねることとしています。これはかなり思い切った処置だと思いますが、一方では、財政規律に緩みが生じ、歳出に抑制がきかなくなるのではないかという懸念も生じるところであります。
 内部努力を初めとする行財政改革の推進がいっときたりとも停滞するようなことがあれば、せっかくのこれまでの努力がむだになってしまうわけでございます。そうした事態を招かないよう、しっかりとした対応を図っていくことが欠かせないことでございます。
 そこで、三年間のゼロシーリング、そして庁内分権の導入というのが今回の指針の大きなポイントでございますが、その趣旨を誤ることのないよう各局に周知徹底していくことが重要なかぎを握っていると考えております。三年間のゼロシーリングとした背景と、そのねらいについてお伺いいたします。

○安藤主計部長 これまでの七年間は、毎年、財政状況に応じてマイナスシーリングを設定して、歳出削減に一定の効果を上げてきたというふうに思っておりますが、その反面、各局においてはどうしても単年度のやりくりに追われてしまうという限界があったと考えております。
 そこで、このたび財政再建にも一つの区切りがつきまして、税収も今後三年間は堅調に推移する、こう見込んでよろしいかという状況にありますので、初めての試みといたしまして、三年間にわたりましてゼロシーリングを維持することによって、各局が、単年度だけではなくて、より複数年度を視野に入れて安定的に事業運営を行うための環境を整備したものでございます。
 もちろん、ゼロシーリングは漫然と従来の施策を継続することが許容されたものではございませんので、これを踏まえ、各局におかれては、今後三カ年間を最大限に活用していただいて、じっくりと腰を据えて、より積極的に施策の見直し、抜本的な見直しに取り組みが求められているというふうに考えておりますし、財務局としてもそのことを求めてまいりたいというふうに思っております。

○神林委員 今までの厳しいマイナスシーリングから、ゼロシーリングの継続へと大きく財政運営のかじを切ってきたわけでございますから、その点、当然ですけれども、ソフトランディングできるように、決して努力を怠らないでいただきたいと思います。
 これだけの変化の激しい時代に、行政に対して迅速な対応を図っていくためには、これまでにも増して事業主体である各局の責任をもって主体的に取り組むことが大切だということは、私ども自民党も常々感じているところでございますので、統制が緩和されるということに不安を感じるというのは事実でございまして、ぜひそれだけは、たびたび繰り返すようですが、お願いをしたいと存じます。
 財務局も、各局の主体的な取り組みを進めるべく、新たに庁内分権的な考え方を打ち出しております。その基本的な考え方について伺います。

○安藤主計部長 これからの財政運営に当たって求められるということでございますが、社会状況や経済状況の変化、さらには都民ニーズの動向を敏感に把握いたして施策を適切に展開していくということが大変重要だというふうに思います。
 事業を所管する各局が、そのためにも主体的にスクラップ・アンド・ビルドなどに取り組んでいく姿勢が今まで以上に必要というふうに思っておりますが、そのため今般は、定型的、経常的な経費は各局の裁量にゆだねて財務局の関与を最小限にとどめ、それぞれ各局の創意工夫をお願いするなど、財政運営に当たっての役割分担と各局の責任を明確化する、こういうことによりまして庁内分権を推進して、より都民生活に密着した行政サービスの実現につなげていく、こういうことをねらって行ったものでございます。

○神林委員 簡単にいえば、たくさん自由も与えられたけれども、その分、逆に責任もついてくる、こういうことだと思いますのでね。
 そのほかにも、指針では、基金を積極的に活用して年度間の財源調整を強化することを基本方針として掲げております。各年度の収支に過不足が生じた場合、基金の積み立てや取り崩しを行うことによって財源を安定的に確保していこうという考え方でございます。つまりは、都財政の調整弁として基金を最大限に活用しようとの趣旨であり、残高の確保に力点を置いていることがうかがえます。
 そこで質問でございますが、ところで、財政フレームの想定以上に税収が増加した場合、基金に積み立てるよりも施策の充実に振り向けるべきではないかとの考え方もございますが、この点についての所見を伺います。

○安藤主計部長 今般のフレームでは、歳出のところに東京オリンピック開催準備基金積立ということで、今年度分と合わせて約四千億という基金の積み立てをしているところでございますけれども、都税収入が当面堅調に推移する見込みであったといたしましても、過去の都財政の経験や、さらには、昨今声高にいわれている部分もございますけれども、国によります不合理な税財政制度の見直しの動きという、こういうものがリスクとしてあるというふうに思っておりまして、これに対して十全の備えを講じておく必要があるというふうに考えてございます。
 かつて、バブル崩壊後、引き続き高い歳出水準を維持した結果、基金について申し上げますと、最高時には一兆円を超えていましたんですが、瞬く間に底をつきまして財政危機を招いてしまった経験がございますので、こういったことも踏まえて、一時的な税収増をもって直ちに歳出を拡大することは過去と同じ轍を踏みかねないというふうに思っております。
 加えて、都はご存じのとおり交付税の不交付団体でございますので、財源の年度間調整の方法としては、唯一の手段は基金による対応であるというふうに思っております。このことからも、このフレームで想定している以上の増収があった場合には、将来の財政需要や、必ずやってくるでありましょう今後の税収減といった事態に混乱なく対応できるように、都の財政規模に見合うような基金を蓄えておくということが現時点ではより重要であるというふうに考えてございます。

○神林委員 アリとキリギリスの話じゃございませんけれども、アリみたいにせっせと蓄えた方がいいにだれでも決まっているわけでございますけれども、ある程度、公金である限りは、基金には明確な使い道、支出目的等があった方がいいわけでございますよね。それから、今ちょっとお話にもありましたとおり、どんどん基金残高がふえてくれば、当然東京都の富裕論というものが威勢を増して、またどんどん持ち上がってくるわけですね。
 そこで、一つの手法として当然考えられることですけれども、年内には策定されます二〇一六年の東京の将来の都市像、こういうものを十分視野に入れますと、そこには多分、都市像ができてくれば、教育ですとか環境ですとか、あるいは産業とか福祉とか、こういう長期的な施策というものが見えてくると思いますので、そういうものに有効的にそれを実現するための財源として少し当てはめていくということも必要なことなのかなという気も実はしておりますので、ここで指摘をさせていただきたいと思います。
 これまでの質疑で明らかになったとおり、今回の指針は、都財政が置かれた現状を十分踏まえ、新たな取り組み手法を具体的に示した点で高く評価できます。我が党としても財政当局の英断を支持したいと思います。
 今後の課題は、いかにしてこうした取り組みを実現し、財政構造改革を実効性あるものにしていくかということであろうと思います。ぜひとも、じっくりと腰を据えて一歩一歩着実に取り組みを進めていただきたいと思います。
 そこで、最後でございますけれども、今後の財政運営に臨む局長の決意を伺って、私の質問を終わります。

○谷川財務局長 都財政はようやく本来の健全性を取り戻しつつあると考えております。ただ、この先、人口減少社会への対応あるいは東京の将来を展望する新たな取り組みなど、財政負担の増加要因を多々抱えておりまして、決して安心、満足する状況ではないと考えております。
 都財政が最終的に目指すべきところは、社会状況が大きく変化する中にあっても、直面する課題あるいはそういうものに着実に対応できる強固で弾力的な財政体質をどう確立していくかということだと考えております。そのために、税収が比較的堅調に推移すると見込まれているここ数年間、この数年間のかじ取りが都財政の将来にとって決定的に重要な時期だというふうに認識しております。
 今後も引き続き施策の見直しを進め、いまだ手つかずの負の遺産についても抜本的な対策を講じるなど、財政構造改革のアクセルあるいはブレーキになるものを取り除きながら、都財政の質的転換に積極的に取り組んでいきたい、このように考えております。

○吉田委員 まず冒頭に、都財政の再建に果敢に取り組んでこられて、財源不足の解消を初めとして大きな成果を達成してこられました都庁の皆様のご努力に心より敬意を表しまして質問に入ります。
 我が国は既に人口減少社会に突入をいたしました。昨年十一月に都の研究会が出された「人口減少社会における都財政運営のあり方」でも提言されておりますとおり、人口減少社会における財政運営は、これまでの右肩上がりの経済を期待する発想から脱却して、財政のスリム化、施策の重点化をより一層進めることを基調としなければならないと私は考えております。
 そこでまず、人口減少社会に対する基本的な認識についてお伺いをいたします。

○安藤主計部長 ご指摘のように、既に我が国は人口減少社会に入ったといわれておりますけれども、こうした社会の到来は、単なる人口構成の変化というものを意味するだけではございませんで、長い目で見れば、労働力の減少でありますとか消費需要の停滞など、経済にとってマイナスの負荷がかかってくるという影響があり、これがより深刻な問題であるというふうに受けとめてございます。
 私どもが担っております財政運営におきましても、納税者の減少など、長期的なトレンドとして税収の大幅な伸びを期待することが困難という状況の中で、社会保障関係費がふえていく、さらには、都市の活力を維持向上させるための施策にも取り組まなければならないといった、いわばお金がない中で施策がふえていくという二重に厳しい時代に直面しつつあるというふうに思っておりまして、そういう意味では、財政構造改革は待ったなしであるというふうに思っております。

○吉田委員 都のご認識のとおりだと思います。
 しかし、都が七月に今回示しました「今後の財政運営の指針」を見ますと、例えば、今後三年間の中期財政フレームにおいて、都税等が平成十九年度から二十一年度まで毎年度二%ふえることを想定しております。私はこれは少し楽観的な見通しではないのかなと思うわけであります。
 五、六社の主要シンクタンクの経済見通し等も私は見ておりますけれども、十九年度についてはおおむね妥当かなと思いますけれども、二十年度以降についてはちょっとわからない点がございます。都税収入が毎年二%増加するということを見込むこととされた根拠をお示しいただければと思います。

○安藤主計部長 今般は、財政再建推進プランにかわります新しい指針をつくるに当たりまして、中長期的な視点を出すことが大切だという観点から、これまでにはない三カ年間のフレームを示すというふうに決めたわけですが、収入の根幹は都税でございますので、その都税をどう見込むかというのは、私どもも一つのポイントであろうというふうに思っております。
 経済状況の予測というのは、民間のシンクタンク等でも、単年度で翌年度を見込むというのが大方でございまして、二年、三年というのはそうないわけでございますが、そういう中で私どもは、都税収入の見込み、いわゆる自然増につきましては、今後三年間の名目経済成長率を二%と見込んで、それ見合いの伸び率があるというふうにしたわけでございますが、三年間見込むに当たってのよすがとしたものは二%という成長率でございますけれども、これは、ことしの一月に閣議決定されましたいわゆる国の中期展望の中の、二〇〇六年度以降、名目成長率は二%程度あるいはそれ以上の成長経路をたどるという記述に基づき設定をしたところでございます。
 なお、この七月に決定したいわゆる骨太の方針では、前提となります今後の名目経済成長率につきましては三%と見込んでおりまして、二%という設定はこれと比べても手がたいものであって、私どもといたしましては楽観的というふうには認識をしてございませんが、いずれにしても、経済は生き物でございますので、その動向については十分注視をしていく必要があるというふうに思っております。

○吉田委員 わかりました。
 人口が減少していく中での経済運営というものはもちろん未曾有のことでございます。人口の減少に伴う経済の下押し圧力というのは、年を追って強まりこそすれ、弱まることはないわけでありまして、あるシンクタンクは、二〇一五年くらいまでは年率二から、だんだん下がっても一%台の成長ができると推計しているところもございますけれども、短期的にはともかく、中長期的には、際限なく外需依存度を高めていけるということでもない限りは、いずれかの時点で経済も縮小に転じて税収も減っていくという可能性を考える必要がございます。
 先ほどの神林先生との質疑で安藤主計部長おっしゃっていたとおり、いずれ税収減という時代がやってくることを想定しなければいけないということでございまして、短期的にもそうした将来の、これまでにない予見に基づいてのいろいろ経済、市場の動き、これまで我々が想定していなかったようなメカニズムで経済が変調を来す可能性もなしとはしない。人口増加時代と同様に経済成長を維持し続けるというのは、実は容易な目標ではないのかもしれないということを懸念いたします。
 また、景気変動的な側面だけを考えましても、平成に入って以降、都税収入は三年連続して伸び続けたことはございません。二年で腰折れをしてきております。法人二税に限って見れば、平成以降でも、直近の平成十五年度から十七年度の三年間は例外的に伸び続けておりますけれども、今回の中期財政フレームの想定は、都税収入が、平成十五年度を起点として平成十六年度から二十一年度まで、国による税制改正の影響がなかったとしたらば六年間連続して増加し続けるというものでございます。
 具体的にいえば、十七年度決算四兆六千億円、十八年度当初予算四兆五千億円で、これは三位一体改革と同時期に、いわばセットで行われた法人事業税の分割基準の見直し一千三百億円、こういうものの減収、こういうものを考えればこれは腰折れしている、しかし、そういう国による税制改正の影響がなければ増加し続けるんだという想定でありまして、若干の、こういう一本調子の増収というのを本当に期待していいのかどうか、多少の懸念を感じるわけであります。
 また、先ほどもございましたとおり、法人二税の分割基準の人口基準による配分への見直しとか、国が都から財源を奪う動きも見えます。こんなことが行われたら、都は一兆二千億円もの減収になってしまう、このような歳入減のリスク要因が存在しており、先ほど申し上げた平成十八年度の法人事業税の分割基準の見直しというのは、国が都から財源を奪うリスクが現実のものとなって、税収増が実現できなかった一つの例だという見方もできるわけであります。
 こういうことを考えますと、政府の見通しよりも手がたい見通しだというご説明ではありましたけれども、今後三年間、都税収入が伸び続けるということを想定して財政運営を行うというのは、ちょっと意地悪くいえば、依然として右肩上がりを期待した財政運営ではないのか、あるいはリスクや見通しの不確実性について、これをどのように認識しておられるのか、認識と財政運営の姿勢についてお伺いいたします。

○安藤主計部長 経済を考える場合、長期的な動向変化と、そして短期の経済回復というようなもの、経済の変動というようなものも双方にらみながらということになろうかと思いますけれども、今般のフレームは、あくまでも回復基調にございます景気の動向などを踏まえた上で試算したものでございまして、お話のような都税収入が抱えております構造的な減収リスクについては十分承知をしているつもりでございますし、過去を振り返れば、先生ご指摘のとおり、三年間連続して都税が伸びたことは実際ございません。そういうリスクについても、私ども十分承知をしているつもりでございます。
 その上で、当面三年間の財政運営に当たりましては、神林先生にお答え申し上げたとおり、負の遺産の抜本的処理を進めるなど、むしろ財政構造改革をさらに加速させるということを基調としたつもりでございまして、右肩上がりを期待して歳出を拡大していくものではないということについては、ぜひご理解をいただきたいというふうに思います。
 また、基金等によります財源の年度間調整も活用しながら、どのような社会構造の変化にも対応できる、理想でございますが、強固で弾力的な財政基盤の確立を目指したものであるというふうなことで、ぜひともご理解を賜りたいというふうに思います。

○吉田委員 よくわかりました。
 国は、緊縮財政とはいいながらも、ばらまきを復活させる気配が少し感じられるのでございますが、都は引き続き緊縮的な財政構造改革路線を継続する姿勢であるということが確認できまして、頼もしく思います。
 その中で、しかし、各局すべてが同じ認識であるのか若干の不安を覚えるわけでございまして、実はこの後、引き続き各局を引き締めて、施策を見直して優先度の相対的に低い事業を思い切ってやめていくことが、社会状況の変化に対応した真に必要な新しい施策を実施する財政余力をつくり出すために必要だということで、ゼロシーリングでは財政が緩んでしまうおそれがないか伺おうと思っていたんですが、神林先生との部長のやりとり、大変わかりやすいやりとりを拝聴したものですから、この質問は省略をさせていただきまして、そういう各局の創意工夫、これを大いに生かしていただきながら、スクラップ・アンド・ビルドというのを機能させていただきたい。
 しかし、その中で、財務局としても施策の見直しを働きかけることが引き続き重要だろうと思うわけであります。都が事業を行う際には、後年度負担を推計するなど、人口減少社会を踏まえた十分な事前の検証が必要でございます。特に大規模プロジェクトは、財政負担も大きく、慎重に検討すべきでございまして、その点では、今回、いわば遅まきながら大規模プロジェクトの計画公表を始められるということは率直に評価をさせていただくものでありまして、ぜひ速やかに取り組んでいただきたいと思います。
 右肩上がりに伸びていくという前提でないということではございますが、大規模な事業を次々と始めるということは、本当に二度と繰り返してはならないと思うわけであります。こうした観点から、財務局として施策を見直すためにどのような取り組みや工夫を行っていくのか、お伺いをいたします。

○安藤主計部長 財政再建に一つの区切りをつけたというふうに申し上げてきておりますけれども、社会経済状況が大きく変化する中にあっては、財政の健全性を中長期にわたって維持していくためには、これまでの財政再建推進プランで掲げてきました視点に基づいて、聖域を設けることなく施策の見直しというのはやっていかなければいけないというふうに思っております。
 そのために今般は、これまで以上に各局の自主的、自発的な取り組みが必要であるという観点に立ちまして、指針の中では、予算編成におきます権限の一部を各局に移譲いたしますとともに、あわせて事務事業評価制度を財務局が担うというようなことになりまして、これの再構築、さらには、今ご指摘ございましたけれども、大規模プロジェクト等の全体計画の公表、検証という、各局が施策を見直すきっかけとなるような仕組みを新たに設けてございます。
 これに加えまして、事業別バランスシート、公会計改革の一環として導入することができましたこの事業別バランスシートなどの新しいツールを活用していくことで、効果的、効率的な施策の見直しが実施できるというふうに考えております。
 ツールは用意されましたけれども、しっかり運営していくのが我々の役目でございますので、各局とも連携をとりながら、効率的、効果的な都政を運営できるような見直しをぜひとも進めていきたいというふうに思っております。

○吉田委員 期待をいたしたいと思います。
 人口減少下における厳しい見通しの中で、今後の財政運営に当たっては、局という枠にとらわれずに、限られた財源を必要な分野へ思い切って重点的に配分していただきたいと思います。
 東京都全体として優先度の低い事業についてはしっかり見直しをしていただいて、しかし、それは削減ありきということではなくて、局ごとのバランスとか既得権益というようなものにとらわれずに、ある局については大変申しわけないけれども大なたを振るって減らすけれども、別の局のふやすべき事業についてはしっかりと予算をつけていくという柔軟な財政運営を目指すべきであることはもちろんであります。
 ここは意見でございますが、その重要な一分野が少子化対策でございます。子どもや子どもを持つ親への支援はまさしく人づくりへの投資でありまして、冒頭、人口減少社会についてのご認識のときにご答弁ありましたとおり、育った子どもが将来都税の納税者となり、労働者、消費者となって社会経済の担い手となっていくわけでありまして、いわば最も乗数効果の高い投資の対象である、このような観点も含めて、長期的、大局的な視点を重視した財政運営の実施をぜひお願いいたしまして、質問を終わります。

○山加委員長 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後二時十七分休憩

   午後二時三十分開議

○山加委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○東村委員 それでは、報告事項について何点かお伺いします。
 「今後の財政運営の指針」では、先ほどから話題に出ております、都財政が抱える課題として負の遺産の存在を挙げております。今回、特にこの負の遺産について掘り下げて質問したいと思います。
 これまで都は、隠れ借金、十五年度末で一兆円を上回っておりました。この隠れ借金を平成十八年度末には約五千八百億円と、ほぼ半減させるまでに解消に努めてこられました。これは大変にすばらしいことだと思いますし、皆さんの努力、そして議会の大きなさまざまな提言、こういうことを私は評価するわけでございます。
 今回、負の遺産という言葉が出てきて、先ほどから話があったんですけれども、両者の違いがどこにあるのか、隠れ借金と負の遺産というのはそもそもどう違うのか。隠れ借金ではありませんよというんですけれども、違いはそもそもどこにあるのかということがなかなか聞いていてわかりづらい。
 そういった中で、今回、この負の遺産ということに大きな焦点を当てているわけなので、ぜひとも隠れ借金と負の遺産の違い、だれでも聞いてわかるように明確に答えていただきたいと思います。

○安藤主計部長 隠れ借金と負の遺産というのは、一般名詞としてあるわけではございませんで、私どもの命名でございますので、わかりづらいという点についていうと、いささか反省せざるを得ないかもしれませんけれども、改めて提出資料にまとめました二つについてご説明申し上げますと、隠れ借金とは、減債基金の積立不足など過去に行いました財源対策の残余、さらには多摩ニュータウン事業の欠損金など、つまり、既に事業の見直しを行った結果、やむを得ず生じた将来的な財政負担というものを整理したものでございます。
 それに対しまして負の遺産というのは、私どもの定義で申し上げますと、当初計画と実績とが大きく乖離をいたしまして、いずれ事業の見直し、再構築が避けられないにもかかわらず、いまだ抜本的な対策が講じられていない懸案課題というふうに私どもは位置づけて総称しているところでございます。
 すなわち、この負の遺産は、これまで実質的に先送りされてきました課題でございまして、今までにしかるべき対応方針が確定しないことから、その財政負担も明確に把握することができないでいるものでございまして、この点が隠れ借金との根本的な違いであるというふうに私どもは考えてございます。
   〔発言する者あり〕

○東村委員 今やじで、単なる解釈の違いという言葉が出ておりましたけれども、私はそうではないと思うんです。今説明あったように、既に事業の見直しをしたけれどもなかなか負担がとまらない、つまり、やむを得ず将来的な財政負担を残している、これが隠れ借金。
 私も確かにこのネーミングは悪いと思います、負の遺産という。これはまさに、今言葉上使いますけれども、負の遺産は実質的に先送りされてきた課題なんだ、これに対して今までしかるべき対応をとってこなかった。まさに国が今、プライマリーバランスをゼロにするということをここに来てようやく真剣に取り組み始めましたけれども、今までこういったさまざまな課題があったんだけれども、これを先送りしてきた、このツケが、いろいろな意味で負担増という形で国民にさらにツケが回ってきている。こうならないためにも、私は前から本当にこういうさまざまな問題は早く手を打つべきだということを一貫していってまいりまして、今回、負の遺産ということで、東京都もこの問題について真正面から取り組もうとすることについては大きく評価をいたします。
 そこで、今回、資料に負の遺産とは何かということが具体的に提示されております。皆さんの手元にある資料にも書かれています。これはよくわかるんですけれども、なぜそれらが負の遺産といわれる--先ほど、実質的に先送りされてきた課題であり、しかるべき対応方針がとられなかった、こういう話がありました。そこで、なぜ、挙げられている、例えばひよどり山有料道路や多摩都市モノレールや障害者扶養年金制度や稲城大橋有料道路、この四つが挙げられていますけれども、これらが負の遺産なのか、この辺について明確に答えていただかなければ、なかなか具体例を通してでないと理解できないと思うので、ぜひともその辺について答えていただきたいと思います。

○安藤主計部長 要求資料第3号にもその概要をお示ししてございますが、ここで示してございますものについて説明を申し上げますと、現時点で負の遺産として認識してございますのは、心身障害者扶養年金制度、有料道路事業、多摩都市モノレールでございまして、いずれも、当初計画と実績とが大きく乖離をいたしまして、単なる経営努力だけでは事業の立て直しが困難なものでございます。
 まず、心身障害者扶養年金制度につきましては、本会議でも議論がございましたけれども、給付額が増加する中で、国の制度創設等によりまして新規に加入する方が減少するとともに、運用金利も大幅に低下をいたしましたことによりまして財政状況が悪化したものでございまして、現状のままでは平成二十三年度での破綻が見込まれてございます。
 また、有料道路事業といたしまして、例えば、収支均衡事業でございますひよどり山有料道路事業は、これは八王子にございますが、十七年度実績でいえば、一日平均通行台数は三千三百五十九台と、実は計画の三八%しか達成しておりませんで、当初予定いたしました収入を大きく下回ってございます。その結果、十七年度末の負債残高は七十億円もございまして、近いうちに資金ショートが見込まれるなど、抜本的な見直しなしには改善の見通しが立たない状況にございます。
 また、多摩都市モノレールにつきましては、建設費が当初計画のほぼ二倍になる一方で、乗客数は計画を大きく下回っていることなどによりまして、既に大幅な債務超過に陥っておりまして、これも抜本的な経営改善策が必要となっている、こういう状況でございます。

○東村委員 今わざわざ固有名詞を挙げていただきまして、八王子にありますひよどり山有料道路という名前が出てまいりました。確かに私の地元にありまして、私もそういう意味で一生懸命貢献して、回数券まで買って頑張っていまして、窓口の人にもっとほかの人にも回数券買ってもらってくださいということで、いろんな人に回数券を買うように私も一生懸命努力をしてきていました。
 ただ、どうしても負の遺産といわれるとイメージが悪いんですね。何となくイメージが悪い。そういう意味で、私は、これは将来の世代に負担を引き継がないという観点から、あえてこういう名前をつけたんじゃないかとは理解しておりますけれども、民間でいえば、簡単にいえば損切りですよね。損切りって何かイメージは悪いんですけれども、大なたを振るって損切りすることによって、それがよみがえるということは結構民間ではあるわけなんですね。そういう意味で、私は決してマイナスイメージだけじゃなくて、ある意味、ここで損切りやることによって大きく事業が変わってくる、こういうこともあるんじゃないかと思います。
 民間では、この損切りをどのタイミングでやるかというのが非常に大事な部分で、ここが経営者の質が問われるところなんですけれども、今回、臨海なんかも、ある意味で銀行が民間の不良債権をほぼ処理し終わった、後は第三セクターの不良債権だけだということで、体力もついたからここでやろうということで、臨海は思い切った民事再生ということを銀行も今同意しようとしているんだと思うんですけれども、そういう中で十七年度決算は、まさに十六年ぶりに黒字になりました。五百二十九億の黒字。これをもっともっと、ふえたんだから、ふえた分だけ新しいものに使えばいいじゃないかという発想もあることはわかるんですけれども、今まで日本の国がやってきたのは、みんなこれなんです。
 本当に体力があるときに、今までの損切りしなきゃいけない部分、抱えてきたさまざまな問題を処理しておけば、今日こういう大きな問題にはならなかった。それを後回しにして、いろんなところからもっと前向きに使えよ使えよって使ってきたから、結局そのときに処理できなかったもの、その後悪化した場合、また負債がふえてきて、最初は建設国債だけだったのが、今度は赤字国債まで出すようになった。これが日本の国の今を迎えているんじゃないかと私は思うわけなんです。
 そこで、まさに今こそ、こういったときだからこそ、計画的にこの負の遺産を私は処理すべきだ、そう思うんですけれども、今後の都の対応策、どうするのか、これについてお伺いしたいと思います。

○安藤主計部長 負の遺産につきましては、毎年のように、臨時的な財源対策を行って、その場をしのぐということをやってきたわけですけれども、抜本的な処理を先送りせざるを得ない状況があったわけで、客観的に申し上げますとそういう状況にありますけれども、一応、今般、財政再建に一つの区切りをつけまして、都税収入も数年は景気の回復に伴って堅調に推移する、こういう見込まれる機会をとらえまして、たとえ一時的に財政負担の増加を伴うものであったとしても、ご指摘のとおり、先送りすることなく、各局と調整を進めて、できれば、早いものは十九年度予算の中で課題の抜本的かつ計画的な解決を講じていきたいというふうに考えておりまして、ただいま話題になりましたひよどり山について申し上げますと、行革の実行プログラムの中で、有料道路事業について、今後の動向を踏まえ、そのあり方を検討というふうになっておりますので、ひよどりについても、事業継続するか、あるいは無料化するか、現在検討を進めているというふうに聞いてございますので、そういうものを見きわめながら、やるべきものはこの機会をとらえてきちっとやるべきだというふうに思っておりまして、その覚悟で臨んでまいりたいというふうに思っております。

○東村委員 今、十九年度予算の中で、早いものについては抜本的かつ計画的な解決を講じていくとおっしゃいました。
 特に、先ほど話が出ました二十三年で破綻するだろうといわれております心身障害者扶養年金制度、これはまさに親亡き後の、障害者の皆さんにとっては大変大事な制度でありまして、今回、審議会で非常に前向きに中間まとめを取り上げてくれたなと私は思っているんです。
 つまり、東京都もこの問題、ある意味でお金を投入しようということを決意してくれているということで、既にもらっている人については、継続して従来どおり三万円、毎月毎月支給される、これはありがたいなと思いましたし、各団体の皆さんも本当にありがたいとおっしゃっていましたし、それから、まだご自身が亡くなられていないけれども、今加入している人で、今後そういう事態に遭遇する人も、いわゆる他の国制度と同じレベルの毎月の支給をしてもらえるような、そういう枠組みを、この負の遺産の処理の中でやろうとしている。
 そういう意味で、決してマイナスではなくて、むしろ、今あるものを守って、さらにさまざまな解決策をしていくという非常に思い切った施策に東京都は取り組んでくれているなと思いますし、この心身障害者扶養年金制度の審議会のまとめは非常にありがたいと思います。ぜひともこれを受けて、所管の福祉保健局だけじゃなくて、財務局もこれをしっかりと取り上げて、このようになるように取り組んでもらいたいと思います。
 先ほどから、ひよどり、ひよどりといわれているんですけれども、実は私なりにも努力しまして、一回、百円キャンペーンやったらふえるんじゃないかと素人なりに単純にそう思いまして、あのマクドナルド方式で、今二百円ですから、二百円で三千台であれば、百円だったら六千台になるんじゃないか、そうすればいいんじゃないかといったんですけれども、だめでしたね。二回やってもらいました、二周年、三周年と。(発言する者あり)一・五倍にしかならなかった。必要ないんじゃないかと、今声が横から出ていたんですけれども、ところが、無料キャンペーンやったら、びっくりしました、一万台を超えたんですね。当初の計画の七千台をはるかに超えまして一万台になっちゃったんですよ。だから、ニーズはあるんですけれども、お金を払うということに、二百円というのは大した額じゃないと思う人もいるけれども、この二百円がちりも積もればで厳しいということでなかなか通らなかった人がいる。
 私は、前から、あそこに人件費だとか維持メンテナンス費用がかかる、当初計画にいかない維持メンテナンス費用がかかるんだったら、かえってある意味で累積の赤字を生んでくるんじゃないか、借金を返すどころじゃないんじゃないかと。それだったら、百円とかそういうことじゃなくて、むしろいっそのことただにすれば、人件費要らないし、維持メンテナンス費用もかからないですね、料金所の。そういう中で、これをもうただにして市に移管した方がいいんじゃないかということをずうっといってきました。
 そこで今回、ある意味で損切り、無料にするのか、そのまま継続するのかということを検討し始めてくれているということは大変ありがたいことで、ぜひともここで、思い切って無料化するということを決断していただければと思うんですね。
 実は、八王子市はもう先走っちゃって、市長が何か先走っちゃって、損切りの七十億のうち、六億円を市も出すからということを議会の皆さんに報告して、何か承認も得たそうなんですね。ある意味で先に環境は整えてくれているんで、ぜひともこれはもう思い切った損切りをしていく、それが本当に大きな地域の活性化になると思うんです。
 あの先に、実は、東京都が商業の業務核都市としてこれから中心になっていかなきゃいけないという都有地もありますからね。これからのまちの活性化を考えたときに大事な視点でもあると思います。
 過去の問題は過去として反省しなきゃいけないんですけれども、そういう中で、今後、新たな負の遺産を生まないということも考えていかなきゃいけないと思うんですね。処理するだけじゃなくて、今後新たな負の遺産も生まない、そのために東京都はさまざまな努力と施策の展開をしていかなきゃいけないと思うんですけれども、これについては、主計部長、いかがでしょうか。

○安藤主計部長 負の遺産は、語感の問題でマイナスイメージがあるということでございますけれども、その意図するところは、当初計画におきます需要予測などが過大で、実績が大きく乖離したこと、さらにはそうした事業の見直し、再構築に早急に着手できなかったことにより生じたものでございますので、今後は、大規模プロジェクトのような複数年度にわたり大きな財政負担を伴う事業を新たに実施する際には、目標や後年度の財政負担などの全体計画だけではなくて、進捗状況などその実績についても、毎年度公表していくような仕組みを取り入れることが必要だというふうに思っております。
 そうすることによりまして、計画そのものに対します各局の説明責任を強化するとともに、今年度から私どもで所管することになりました事務事業評価にもつなげることで、適宜適切な見直し、再構築を行うことができますので、こういった手法を使いながら、新たな負の遺産を生まないようにぜひとも取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○東村委員 今大事な点を二点いってくれましたね。一つは、進捗状況などのその実績についても毎年度公表していくと。これ大事な視点なんですけれども、大変なことだと思いますよ。その上で、財務局が今度事務事業評価を所管するという、これはかなり財務局にとっても勇気の要る決断だと思いました。
 その上でもう一ついっておきたいのは、この四月から複式簿記と発生主義会計が導入されました。これの最大のメリットは、余り多く語られないんですけれども、事業別の財務諸表がつくれるようになったということなんです。
 今までは、大きいマクロの財務諸表はつくれて、これをつくってさあ見ろといったって、多分みんな決算書を見ても中までわからないと思うんですね。それが個々の事業について財務諸表がつくれるということは、借金どれだけあって資産どれだけあるのか、そしていわゆる損益、経営状況がどうなのかということがわかるようになる。
 そうすると、この事業別の財務諸表を有効に活用することによって、今いった年度年度の進捗状況というのもきちっと評価することができるし、決断することができるし、被害を大きくしないことができるということを一言いっておきたいと思いますので、ぜひとも活用していただきたいと思います。
 この新たな負産を生まないようにしていくことによって、さらに次の段階として、今度は前向きな東京の将来に向けたさまざまな投資を積極的にできる、これが最大の最後はねらいじゃないのかと私は思います。
 中長期的視点に立って考えると、この負の遺産の処理を行っていく中にあっても、おくれている東京の社会資本整備は積極的に行っていく必要があると思うんです。地方に行けば本当に一目瞭然だと思います。何でこんなところにこんな道路があるのかというのがいっぱいあります。公共工事が批判されているのはそういうところなんです。東京はこれだけの人がいて、これだけのニーズがありながら、まだまだ社会資本の整備はおくれているわけなんですね。こういうところをしっかりやっていく。
 その一つのきっかけに二〇一六年のオリンピック。五十年前のオリンピックのときにも東京は変わりました。まさにこのオリンピックに向けたさまざまな準備、これは着実に行っていかなければならないと思います。そのためには、やはりきちっとした社会資本を整えていくことが必要であると思います。
 そういった意味で、基金を設けるというのは、私は当然だと思うんです。もっといえば、先ほど、基金というのは余り積み過ぎると批判を浴びるといいますけれども、これはもう民間じゃ、減価償却に見合う分はきちっと資金留保していくというのは当たり前の話であって、基金というこの発想もどうか理解してもらえるように、これからどんどん説明していかなきゃいけないと思うんですね。
 そういう意味で、基金が税金のむだ遣いであるといった考え方を払拭するためにも、なぜここで毎年オリンピックに一千億、基金を積み立てていくのか、この考え方についてお聞かせ願いたいと思います。

○安藤主計部長 東京都では、十年後を見据えまして、二〇一六年の東京の都市像を明らかにし、都市インフラの整備だけではなくて、環境でありますとか、福祉、さらには生活、産業など、さまざまな分野で東京をさらに魅力的かつ機能的な都市にするための取り組みを進めていく予定になってございます。
 お尋ねの東京オリンピック開催準備基金は、その設置条例におきまして、競技場や選手村の整備だけではなくて、都が実施をいたします社会資本整備のうち、オリンピック関連として位置づけられる事業を広く対象としておりますが、こうした東京の将来を展望する取り組みの中には、当然オリンピックに関連が深いものも含まれておりまして、それらは基金の対象となるわけでございます。
 基金に毎年一千億円を積み立てるといたしましたのは、オリンピックを契機といたしましたこのような取り組みに対しまして、責任のある財源の裏づけを行うために、あらかじめ計画的にその財源を確保していこう、それが必要であると考えたからでございますので、よろしくご理解をお願いいたします。

○東村委員 今答弁の中で明確に、二〇一六年の東京の都市像を明らかにしていく中で、環境、福祉、生活、産業といった問題にもオリンピックに関連してくるものが出てくる。そういったものにどんどんどんどんこの基金を積み立てる中で取り組んでいく。
 例えば、我が党が、公明党が一生懸命国において取り組んできた交通バリアフリー法というのがあるんです。この交通バリアフリー法ができて、今五〇%を超える主要な駅でのバリアフリーができるようになりました。
 ただ、そうはいってもまだまだ不十分です。まちを歩けばまだまだ段差がありますし、これからパラリンピックも一緒にやろうとした場合、いろんな障害を持った方たちも日本にいらっしゃいます。そういった中で、そういう人たちも、ああ東京のまちはここまでできているのかということを世界に発信できるようにしたいし、そうしなければ、この十年後そうなっていなければ私はだめだと思っているんですね。そういう意味で、環境、福祉の分野、こういったところにもこの基金をきちっと担保していくという今お話がありましたので、これをぜひとも責任を持ってやっていきたいと思います。
 その上で、今回、この中長期的な視点から財政運営を行うという中に、中期財政フレームを作成し、三年間の都財政の状況を見通した上で、当該期間における財政運営の基本方針を明示するとしていて、各局はこの方針に基づいて、複数年度を視野に入れた事業運営を行うと書いてあるんです。複数年度を視野に入れた事業運営。
 先ほどもいいましたけれども、まさに今年度から東京都は複式簿記・発生主義会計を導入して、単式簿記でかつ現金主義であったためにできなかった予算の余剰金の繰り越し、こういったところを受ける受け皿がバランスシート、貸借対照表としてできたわけですから、受け皿もようやくできたんだから、ぜひとも中長期的なフレームで、そして複数年度の事業も視野に入れると、ここまでいっているんですから、私は、この際思い切って、東京都はこの財政改革の一環として、複数年度予算を導入するということを検討してもいいんじゃないかと思うんですけれども、主計部長、いかがでしょうか。

○安藤主計部長 今般新たに作成をいたしました三年間の中期財政フレームは、複数年度予算という形で後年度を拘束するものではございませんけれども、三年間のゼロシーリングをお約束し、そして負の遺産の処理など、この間の財政運営の方針を同時に明らかにしておりますので、これによりまして、予算の単年度主義の短所を克服して、各局がより中長期的な視点から施策の見直しを行うという仕組みであるという点では、先生ご提案の複数年度予算とその趣旨は同じであるというふうに思っております。
 ただ、その複数年度予算の導入というのは、地方自治法上の制約等もあって困難であるというのが実態でございますけれども、今後ぜひとも、このフレームだけではなくて、新しくできました公会計によります事業別バランスシートなど、こういった改革によります新しいツールも活用しながら、より複数年度的な視点を取り入れる仕組みというのは、私ども自主的な取り組みとして可能でございますので、そういうものに向けて多々検討していきたい、こう思っております。

○東村委員 今、地方自治法上の制約等もあってという言葉を聞くと思い出すんですよね。ちょうど私、五年前に予算委員会で、東京都の会計制度を変えるために、複式簿記と発生主義会計を導入すべきだといったら、国の法律が変わらなければできないということを財務局長いわれたんです。ただ、知事が英断を下していただいて、今回、複式簿記と発生主義会計が導入されるようになりました。
 皆さんがこれを導入するためにいろんなことをやられていて、優秀だなと思ったんです。物の見事に二度手間にならないようなシステムまでつくられて、やっぱり皆さん本気になったらできるんだなということを実感したわけなんですけれども、こういった問題も、確かに国の制度がある、だからなかなかできないということを避けて通らないで、やろうと思えば、工夫すれば幾らでもやり方があると思います。そういった意味で、モデル的でもいいですから、こういうことをぜひとも取り組んでいただきたいと思います。
 驚いたんですけれども、失礼ないい方なのかもしれませんけれども、自民党さんが国で憲法草案をつくられました。あれは、九条だけみんなクローズアップされるんですけれども、私、ばあっと読んでいったら、あの中に実は複数年度予算ということが書かれていたんですね。すごいなと思いまして、大したもんだなとやっぱり思いました。国も何とかその辺の流れを変えようとしている。国から変えようとするんであれば、ぜひとも都も取り組んでいただきたいと思います。
 そういった中で、中長期的な視点から財政運営を強固なものにしていく。強固なものにしていくためには、やはり負の遺産をほうっておかず、先送りするんではなく、オリンピックに向けた施設整備やさまざまな施策にこういった考え方を導入して、改革をしていただきたいと思うわけでございます。
 そういった中で大事なことが一点だけあるんです。これをやる中で都民サービスの低下だけは絶対にあってはならない。そういうような改革は我々もノーだといわせていただきたいと思いますので、都民サービスの低下にならないような、そういう中長期的な取り組みをぜひともやっていただきたいということで、最後に局長の決意を伺いたいと思います。

○谷川財務局長 お話しの都財政における負の遺産の処理や、いまだ不十分な都市基盤の整備、少子高齢化対策など、先送りできない多くの課題に直面しているのも事実でございます。
 これらの課題に適切に対処していくためには、短期的な収支に左右されることなく、より中長期を視野に入れた腰を据えた取り組みが必要であると認識しております。この点は今回の指針の大きな柱の一つとして位置づけておると考えております。
 また、そうしたことから、複数年度の予算編成を提案された副委員長の考え方については、我々と考え方が共通するものがあると認識してございます。
 財務局といたしましても、既に本年四月から、例えば、長期継続契約の対象を拡大するなど進めてきておりますが、これも中長期の取り組みの一つであると私は考えております。今後とも、今回の指針で示した一連の取り組みを着実に具体化していくことによりまして、我々の最終的な目的である持続可能な財政の実現に向けて最大限の努力をしていきたい、このように考えております。

○曽根委員 私からも、「今後の財政運営の指針」について、何点か質問をさせていただきます。
 まず、この間、財政に関するプランが幾つか出されてきたものを読み返してみたんですが、その中で気がつくのは、都の財務当局における都財政の現状認識がどう変わってきたかということです。
 第二次財政再建推進プランの中には、都財政の現状というところに、五年連続となる実質赤字を記録し、経常収支比率も高い、隠れ借金もたくさん残っているというような認識が示されています。
 直近のところというと、「都財政が直面する課題」、昨年七月に出された文書でも、多額の隠れ借金を抱えていることと、七年連続で実質収支の赤字が続いているというようなことが書かれている。
 ところが、今回、指針になりますと、赤字が解消されたと。これは予算のときからそうお話しになっているわけですが、それを支える都税収入については、今までは一時的な増収はあっても都税収入は不安定なんだというふうに強調していたのが、今回、財源の根幹をなす都税収入は、当面は堅調に推移すると見込まれるというふうに変わってきています。いわば、ことしの予算から急に認識が変化をしているというふうに受け取らざるを得ないんですけれども、あたかもオリンピック招致の話とタイミングを合わせるようにこういう表現がされるようになっている。一体実態はどうだったのかということになるわけです。
 まず、財務局としての都財政の現状認識に、なぜこれだけ大きな変化がわずか一年足らずの間で起こっているのか、その点についてのご説明をお願いします。

○安藤主計部長 昨年度、ご指摘のとおり二つの冊子を出しているわけでございまして、今回新たに指針を出しましたけれども、都財政を取り巻く基本的な状況認識については、何ら変わらないというふうに私ども考えております。
 今回の指針を含めまして、いずれの冊子におきましても、都税収入の動向については、景気変動に左右されやすい、中長期的には大幅な伸びは期待できないという視点に基づいて、引き続き財政構造改革を進めるという基調のもとに、そういった必要性を強調しているわけでございます。
 今般の指針では、短期的に景気が上昇局面にあることから、十九年度からの直近三年間について税が堅調に推移すると見込んだものでございまして、お話しのように、オリンピックと関連づけてどうこうするという意図は全くございませんし、たまたま景気回復とオリンピックが符合したということでございますので、ご理解のほどをお願いいたします。

○曽根委員 そうはいっても、昨年七月に出されたパンフレットの直後に、九月になってオリンピックの話が出て、ことし春先に、たしか東京都の検討会議の報告の中でも、都財政が再建されたからこそオリンピックを招致できるんだと、都の財政力を誇るような表現も見られました。
 先日のプレゼンテーションでも、知事はそのことを盛んに強調し、場合によっては東京プロパーの資金でオリンピックを賄ってもいいんだということまでおっしゃっているんで、大変なことになるぞと思ったんですが、そういうふうに都民向け、またオリンピック招致に勝つためとはいえ、そこまで財政力を強調するという根拠は何なのかということで、ちょっとお聞きしておきたいと思うんです。
 この中で盛んに強調されてきたのは、実質赤字の連続という問題なんですが、私たちは、これは、実質赤字といいながらも、財政的にはこの間、財政プラン二回、一次、二次ありましたが、通算七年を通じても、このプランの中で掲げていた財政見通し、税収見通しから見ても、財務局長が答弁されたように、二兆六千六百億円ですか、収入見込みを上回る税収があったじゃないかと。でこぼこはありますけれども、七年で割っても四千億円近い増収。一体この間、赤字で苦しいといいながら、いろんな都民サービスを切ってきたのは何なのかということを問うてきたわけです。
 そこで、連続の実質赤字ということについてお聞きしたいんですが、私、非常に素朴に考えて、昨年度の末に補正予算の中で、公営企業会計支出金支払い繰り延べの解消というのが行われました、四百億円。今まではこれができないために、実質赤字がここで生まれていたわけですよね、大体。ほとんどこれですよね。四百億円。ほうっておけば昨年度末も四百億円の赤字が残るわけだったんだけれども、これを補正予算で解消したと。解消したのは補正予算の財源があるからなんですよね。
 そうしてみると、それまでの年度どうだったのかなと。基金の積み立てについて、いただいた資料を見ますと、平成十一年度を除けば、その年度に積み立てた、もしくは年度末の基金残額とその年に発生したといわれる、出したといわれる赤字額を見ると、大体二倍かそれ以上ですよ、積立額の方が。つまり本気になって赤字を解消しようと思えば、少なくとも財調基金の積み立てだけだって、その年度の赤字は解消できたじゃないか、その七年間のほとんどの期間というふうに単純に思うんですが、なぜこれが行われなかったのかなと。その点についてご説明ください。

○安藤主計部長 十七年度決算で五百億余りの黒字になったわけでございますけれども、私ども地方交付税の不交付団体でございまして、しかも、繰り返し申し上げておりますが、税収構造が大変不安定なものでございます。
 そういう中で、都民サービスを安定的に提供していくためには、財源の年度間調整の手段として、活用可能な基金残高というのはどうしても一定程度確保していくことが必要で、これは、ご指摘のように、赤字であるとか黒字であるとかとは別の次元の問題でございまして、必要不可欠なことと思っております。
 平成十六年度決算についてご指摘がありましたので、それについて申し上げますと、それが赤字となったのは、赤字の大きな要因であります公営企業に対する支払い繰り延べの解消とするよりも、やはり不測の事態に備えて、財政調整基金に積み立てておくことが優先度が高いというふうに判断した結果でございます。

○曽根委員 私、十五年度決算と特定して聞いてないんですけれども、今聞こうと思っていたんですけど、先に答えられちゃった。(笑声)十五年度決算なんか、見え見えだと思っているんですよ、確かに。しかし例えば、この年度は都税収入の増収額だけでも、この補正の時点で三千億近い増収が見込まれていた。その後、最終的に決算ではまたふえるわけですけどね。そのときに、なぜ--今年度末は二百五十億ぐらいですかね、赤字が埋められないのか。そんなばかな話はないわけですよね。したがって、赤字解消を重要だと考えるならば、よほど大きなマイナス要因がない限り、基金を取り崩して充当したり、もしくは補正財源を使うことで解消はできたはずだと思うんです。
 確かに、年度間調整は私たち否定しません。基金を一定程度積んでおくことも必要です。しかし、都民に対しては、七年連続の赤字を散々強調して、徳俵に足がかかっているという状態を強調しておきながら、実際には施策的な優位性は持っていないというようなお話が先ほどありましたが、それはなぜなんですか。

○安藤主計部長 十六年度で二百五十五億の実質収支の赤字でございました。このときの決算について申し上げますと、それが赤字となりましたのは、繰り返しますけれども、その要因は、公営企業に対する支払い繰り延べ四百億円によるものでございますが、その解消をすることよりも、基金の重要性にかんがみて、不測の事態に備えてそこに積み立てておくことが、優先度として高いという判断をした結果でございます。
 なお、この十六年度におきます特別の事情をちょっと付言させていただきますと、その年の十二月時点で、旧興銀訴訟判決というもので都税の還付が生じてきまして、これは前に当財政委員会でも申し上げたことがございますけれども、急遽財調基金六百四十億円を取り崩しました結果、実は残高が百五十億円まで減少してしまって、私どもから見ますと、もう米びつの底に米は二、三粒しかないというような状況になってしまったわけでございまして、ここで何かが起これば完全に都財政がパンクしてしまう状態にあったわけでございまして、私どもの、この基金に積むという方向については、大方の方々にはご理解をいただけるものというふうに思っております。
 いわば、黒字にしたはいいけれども倒産してしまう。黒字倒産みたいな構造、そう一概にいえるかどうかはわかりませんけれども、仮に黒字を優先したとしても、その当時、私どもは一兆円以上の隠れ借金を抱えて、経常収支比率も九七・九%ということで、黒字になったから都財政は大丈夫ですとはとてもいえる状況にはないということでございまして、私どもとしましては、黒字倒産よりも、しっかりと財政運営ができる基盤を基金としてつくっておくことが必要だ、こういう財政運営の判断のもとに行ったものでございます。

○曽根委員 銀行課税のことが出ましたけれども、銀行課税の問題は、裁判としては平成十五年にたしか和解していますよね。したがって、今お話のあった時点では完全に予想が見えているわけで、しかし一方では、物すごい規模で当時都税収入は伸びていました。
 したがって、百五十億しかなくなってしまうという一方で、年度末に三千億近い積み立てができるというような事態、可能性もあったわけで、ですから、そういう差し引きを見れば、当然、私が申し上げているように、赤字解消ということを本当に大事だと思うんだったら、都民に対してそういうことはできないはずだ、そういういい方はできないはずだということを申し上げておきたいと思うんです。
 それから、負の遺産について先ほど質問がありましたので、負の遺産については、これは質問の予定がなかったんですが、私たちの考え方について申し上げておきたいんですけれども、基本的には、隠れ借金といわれていたものと大きな違いはないというふうに考えております。
 隠れ借金の方も、確かに赤字額の確定度は高いとはいうものの、負の遺産で挙げられたような有料道路にしても、モノレールにしても、それからここには入っていませんが、臨海の第三セクターについても、最終的な赤字額が決まっているわけではないし、現状では本格的な対策がとられているかどうかの判断も、これは現時点ではだれにもいえないことだと思うんです。
 第三セクターがもう一度破綻しないとはいえませんので、そういう点では、都財政として先を見て、これは赤字が膨らむかどうかという判断をしなければならないし、手を打たなきゃならないということは、私たち口を酸っぱくしていってきたことであり、それは単に借金を返すということだけではなく、その原因になっている三セクのあり方、外郭団体のあり方なども含めて、都の第二種市街地開発事業のあり方なども含めて、検討しなければならない問題だというふうにいってまいりました。
 もちろん、障害者の年金については別の問題です。これはむしろ、きちんと財政的なバックアップをして維持しなければならない責任があります。その点については申し上げておきたいと思います。
 それで、このように財政的にも二兆六千億を超える、いわば見込みを超える税収があり、しかも赤字といっても、本当の企業の赤字で法人税も納められないような赤字とは違う財政状況のもとで、今後どういうふうに財政運営を行っていくのかということが問われているんですが、この中で、今出されているように、オリンピック基金というのが予定されています。このオリンピック基金が、先ほど何か、いわゆる減価償却的なものというふうなお話がありました。私は全然違うと思うんですが、オリンピック基金は、四年分で四千億円となっていますけれども、これにとどまるという何らのあれはないと思うんですね。
 今後、その四千億円まではフレームに出されていますけれども、その後どうなるのかということについては何らかの考えがあるのか、それとも決まっていないのか、どうでしょうか。

○安藤主計部長 今回の財政フレームは、あくまでも十八年度予算をベースとしまして、現時点で見込まれる歳入歳出を加味した上で試算したものでありまして、これ自体、将来にわたって拘束するものではないということでございますので、そういう意味においては、オリンピック基金の積立額について変更することもあり得ないわけではございませんけれども、現時点では、あくまでも毎年度一千億円を前提としての財政運営を私どもは考えてございます。

○曽根委員 今のところ、もう少し詳しくお聞きしたいんですが、つまり、四年間で四千億円という、毎年度一千億円の積立額についても変更がないとはいえないということと、そのフレームの後の年度についてもまだ定かではないという両方の意味が入っているということで、よろしいでしょうか。

○安藤主計部長 フレームというものの性格上から、私どもは、この一千億円を前提としての財政運営を考えているということを今回示したものでございまして、それ以上でもありませんし、その先の、それを五千にするのかということについて、何ら申し上げているものではございませんので、そういう意味では決まっていないというのがお答えになろうかというふうに思います。

○曽根委員 フレームとはそういう性格のものですよね。だからこれからは三年間の間に、東京オリンピック招致のためにもっと資金が必要だ、その年度の基金の積み立ての千億円テンポでは足りないということが出てきた場合には、変更もあり得るという性格のものだろうと思います。またそういう可能性がないのかといえば、私はないとはいえないと思っているんですね。
 この間の代表質問でもちょっと紹介しましたけれども、これは全部都が負担するとは限りませんが、例えば、関連がないといっている外環、その他の道路、これだけでも七兆円近い財政支出になっていくわけですよ。これは国も入ってくるでしょうけどね。しかし、直接的な経費であるオリンピック関連の競技施設だけでも膨らんでいくんですよ。これは間違いなく膨らむと思います。
 私たちは競技団体に全部取材したんですけれども、まあ知事が、何しろ任せてください、いかようにもしますというふうに、競技団体に直接電話もされたそうですね。それもお聞きしましたよ、ある団体から、知事から直接電話が来たと。何とでもしますというんですよ。いわれちゃったというんですよ。例えば、テニスなんかは有明コロシアムを使う予定ですが、隣のオープンになっているテニスコートでは足りない、屋根かけてほしいと、屋根つけましょうという話があると。
 トライアスロンの話はこの間代表でしたのでもう繰り返しませんが、夢の島のユース・プラザですね。まだ発足して三年ぐらいですか。今度取り壊して、PFIの契約どうなるかわかりませんが、横にある夢の島公園の半分ぐらいつぶして、大きなアリーナを二つ、それと洋弓の、アーチェリーの施設をつくると。大変な規模でつくるそうなんですけれども、一つ一つ見てみると、メーンスタジアムを国が二つ目つくってくれるかどうかもわからないということになって、莫大な資金。それを全部足し合わせると、先日申し上げましたように、八兆五千億円になろうかというような規模になるんですよ。ですから、本当にオリンピック基金がどんどんエスカレートしていく危険を私はあえて指摘しておきたいと思うんです。
 それで、今後の財政見通しとして、こういった問題を抱えながら、都民の方のサービスは削ってはならない、下げてはならないというお話、私もそのとおりだと思いますが、現実には、構造改革ということで、国が進めている医療、保険、年金、その他、税金についても見直しがやられていて、負担増は現実に都民に来ている。それが着々と今進んでいるわけですよね。したがって、その関係の出費は、高齢社会が進んでいくにもかかわらず伸びない、にもかかわらず税収は伸びているという事態が今進行しています。
 これはどういうことかというと、昨年十一月に、先ほどほかの委員も取り上げましたが、「人口減少社会における都財政運営のあり方」という冊子が出ていて、私これちょっとおもしろいなと思ったんですが、今後の長期収支の見通しパターンというのが三つ示されているんですね。
 パターンのⅠ-1というのが、歳出も伸ばさないようにするけれども、歳入も落ち込んで、そのために財源不足が生まれてくるというパターンです。これは最悪のパターンだと。
 第二のパターンというのは、パターンⅠ-2というもので、歳出は伸びていっちゃうんだけれども、その一方で歳入も伸びていく。だからこれで大丈夫、バランスがとれているというのが、これは楽観的過ぎるパターンだといって紹介されています。
 第三のパターンが、これが理想とすべきだというふうに研究会の方は報告しているんですが、歳出は構造改革でしっかり抑えていく、歳入の方も今後余り伸びは期待できない、両方が堅調に推移してバランスをとっていく、これが今後の都財政の方向だというふうに研究会の報告では出ているんですが、財務局としても、この方向で基本的に今後の都財政は進むべきだというふうにお考えになるでしょうか、その点ちょっとお聞きしておきたいんですが。

○安藤主計部長 ご指摘のとおり、昨年、研究会の方から答申がございまして、パターンⅠ-1、パターンⅠ-2、パターンⅡで、パターンⅡは、都税収入増減せず、財政構造改革に取り組むというようなことを方向として出しておりまして、私どもも、長期的な観点に立てばこういう姿勢で臨むべきだ、こう考えております。

○曽根委員 長期的にはという言葉はつきましたが、基本的には、財務局もこの研究会報告でいわれている、歳出の方も構造改革その他で抑え込む、同時に歳入もそんなに期待できないという形で、堅調にバランスをとっていく方向だということですよね。実際に、構造改革はきちっとやられてきているんですよ。もうびしびしと都民税、社会保険負担、のってきているわけです。
 その一方で、歳入の方は伸びているんですよね。ですから、歳出の方はパターンⅡ、しかし歳入の方はパターンⅠ-2の方でいっているわけですね。ここに乖離が生じているわけですよ、現実に今。そこのすき間を縫ってオリンピック基金が入ってきているという、雑駁ですけれども、そういう構造ですよ、今。少なくとも、ここ数年は堅調に都税収入は伸びていくというふうに財務局も見ていらっしゃる。
 私、これは危険な方向だと思いますよ。長い目で見たら大変なことになっていくと思うんですが、少なくとも、ここ数年都税収入の伸びと、一方で都民の方は税金もふえ、社会保険負担もふえ、介護その他の負担もふえていく中で、なかなか厳しいという実態になるという、そこの乖離が広がっている。そういうときにオリンピック基金が、幾ら膨らむかわからないけれども入ってきている。私は、こういう今の都財政運営の構造というのは、都民から見て非常に納得のいかないものだというふうに思うんですよ。
 これは、オリンピックがいいとか悪いとかいう前に、やっぱり都民の暮らしに対してもっとサービスを維持する--維持するといったって、今下がってきているわけですから、拡大するような、また都税収入の伸び、この間五百億円近く伸びてきているというものを都民に還元するような、そういった施策が考えられなければならない。つまり、歳出の中の社会福祉関係をこの際伸ばしていくようなことも考えていかなければ、都財政の都民から見たバランスがとれてないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○安藤主計部長 オリンピックと関連して多々ご指摘をいただきましたが、私どもも、都税の増収は都民サービスの維持向上に必要となる施策の充実に活用していくことであるというふうに思っております。
 さらには、社会状況が大きく変化する中にあっても、やはり我々の財政構造の、どうしても持っている弱点であります税の変動等があるわけですので、長期的、安定的にサービスが提供できるような財政基盤を確立していくというこの二つの観点を踏まえて、適切に対応していくべきだというふうに思いますし、現に十八年度予算におきましても、都市整備等と福祉と保健等とのバランスについては十分配慮しておりますし、その点については、都民の皆様方のご理解も得ているというふうに思っております。
 また、オリンピックが税の伸びた分のすき間に入り込んでいるというような趣旨でございますけれども、オリンピックは、先ほどのやりとりもございましたけれども、社会資本の整備等とともに、環境でありますとか、福祉でありますとか、そういうものも当然伴うものでございまして、知事からは、東京五輪を成功させるには、交通渋滞の解消や先駆的な環境対策だけではなく、生活、文化、産業などのさまざまな分野で東京の将来像を国内外に明らかにして、成熟した都市の新しい可能性を世界に示すんだと、こういう姿勢でございまして、オリンピックに向けて施策を行っていくということは、都民の方々にとってもサービスの充実になるし、福祉の向上にも必ずや役立つものだというふうに考えてございまして、それに対して必要な財源を用意するのは、財務局の当然の責務であるというふうに思っております。
 また、八兆円等の数字が出ておりますけれども、これまでの経験を踏まえて、財政運営に節度を持って臨むというのは、私ども理事者ばかりではなく、都議会の先生方についても当然お考えのことだというふうに思っておりますので、そういうバランスの中で、オリンピックを後世に残せるような、バランスのとれた成果が上がるものにしていくというもののためにも、財務局はその責任の一端を担っていきたい、こう考えております。

○曽根委員 今、オリンピック関連の投資についてのお話があって、確かにオリンピック関連といいますか、都政全体が何でも絡んでくるわけですよ。もちろん直接のスポーツ施設だけではないわけですよね。
 その中には、先ほど話があったように、バリアフリーもあれば、環境もあるでしょうし、道路もあると。私たちがいろんなもの、要素を見てみると、道路が大きいわけですよ。八兆五千億のうち、私たちの試算ですけれども、七兆円が道路なんですよ。そういう意味では、バランスのとれた財政運営はそのとおりだと思います。必要です。
 だれから見てどうバランスがとれているのかということについては、これからの議論にしたいと思うんですが、今後の財政運営について、私、興味あるデータがあるので紹介しておきたいんですけれども、これは主税局からもらったんですが、平成十一年度のときには、都税収入の中で、個人都民税が三千五百七十億程度でして、構成比八・九%なんですね。それに対して、法人事業税が八千七十億程度で、二〇・一%だったんです。これは平成十一年度です。
 今日どうかということなんですよね。今日、個人都民税は、決算が確定している十六年度で見ると三千六百六十一億で、八十億ぐらい伸びているんですかね。構成比八・六%で少し落ちています。それに対して、法人事業税は一兆六百六十七億ということで、構成比二五・一%。昨年度の予算で見ると、個人都民税が八・八%に対して、法人事業税は二六・〇%と、都税の中で占める割合がどんどんどんどん法人事業税の方が大きくなって、金額の伸びも三千億円を超えようという勢いです。つまり、この七年間に、個人都民税の規模を伸ばしているぐらいの、個人都民税の額がすっぽり入ってしまうぐらいの法人事業税の伸びがあるわけですよ。
 したがって、これが続いていくと、私は、都民一人一人の税金が納められないという事態が厳しくなってきて、個人都民税が細っていく一方で、法人税がどんどん伸びていくという事態がしばらく続くんじゃないかと。これは余りいい傾向じゃないと思うんですよ。
 一つは、バブルの崩壊が心配なんですね。大体今までは、消費税が導入された直後の九〇年に株価の暴落でもってバブル崩壊が始まっていますし、九七年の税率アップの直後にまた経済が悪くなっている。今消費税の話がまた出ているんで、バブル崩壊--今までのような規模かどうかはともかくとしても、また経済の大きな墜落というか、そういうことが起きかねないなということと、そうならないにしても二極化は進むと思うんです。
 今、「東洋経済」なんかで盛んに追っかけていますけれども、シャープの工場で正社員は年収七百三十六万円、その一方で、いわゆる非正社員、派遣社員ですね、三百十二万円ですよ。正社員の方は上がっていくでしょうけれども、三百十二万円の非正社員の賃金は絶対に上がらないというのが特徴ですよ。開いていくわけです。人数は非正社員の方がどんどんどんどん多くなってきている。
 こういう事態がもちろん都内でも起こっているわけで、私は、こういう中での二極化で、例えば、労働難民、介護難民、医療難民などが大量に生まれてくるアメリカ型社会のような方向をたどってはならない、そのツケは、国の政府は負わないわけですよね。大体自治体の方に来ますよ、これは。そのための大変な対策を打たなければならなくなってくる。
 そうなる前に、先ほどもお話がありましたが、早めに都民に対するさまざまなサービス拡充によって、少子化や高齢者、その他の負担増を克服する課題に取り組むことを強く求めまして、質問はこれで終わりたいと思います。

○高倉委員 二次にわたる財政再建推進プランに全力で取り組んできた結果、都財政は一つの区切りがついたわけでございます。また、景気の回復基調を受けて税収も着実に伸びてきているわけであります。
 しかしながら、本格的な人口減少社会の到来など、都財政を取り巻く環境は依然厳しい状況にございます。将来にわたって必要な都民サービスの需要に対し、積極的にこたえていくためには、引き続き改革に取り組み、揺るぎない財政基盤を確立していくことが極めて重要であります。そうした観点から、「今後の財政運営の指針」について質問をいたします。
 かつて、都財政は破綻の危機に頻したわけでありますが、同じ轍を二度と踏まないためには、過去の経験を十分踏まえておくことが必要であります。まず、バブルの崩壊後、都財政が危機的な状況に陥った要因について、財務局の所見を伺います。

○安藤主計部長 バブル経済の崩壊後、都税収入は、平成三年度をピークに大きく落ち込みまして、その後も減少傾向が続くなど、大変厳しい状況に直面をいたしました。
 その一方で、都債の活用や基金の取り崩し等を続けることによりまして、歳出水準はバブル期とほぼ同じ水準に維持をしたわけでございますが、その結果、平成十一年度には基金が底をつきまして、都債の残高も七兆円を超えるなどといった危機的な状況に陥ったわけでございまして、危機の要因としてまとめますと、一つには、都税収入が予測をはるかに超えた変動をしたこと、もう一つが税収の減少にもかかわりませず、貯金の取り崩しと借金の拡大ということによりまして、身の丈を超えた財政規模を続けたことだというふうに思います。
 さらにつけ加えるならば、バブル経済崩壊とともに、戦後から長く続いてきた右肩上がりという経済成長が終えんを迎えるという、我が国の社会経済環境の大きな構造変化というものに対して、十分な認識ができなかった点がその背景にあるというふうに考えてございます。

○高倉委員 今説明がありましたような要因について、反省を踏まえていくならば、今後は、税収増に踊らされることなく、将来の財政需要に対する的確な判断を持ち、身の丈を忘れずに財政運営に取り組んでいかなければならないと思います。
 今回の指針の中では、より中長期的な視点を重視した財政運営を行っていくことが重要な基本的視点とされていますけれども、それに沿った一般会計の中期財政フレームを見る限りにおいては、身の丈に合った予算になっていると思われます。
 ここに至るまでには、七年間で一万一千人余りの職員定数削減などを柱とした内部努力や、施策の見直しによる経費の削減に取り組んでこられたわけでございますが、しかしながら、特に投資的経費の削減については、それなりの限界があると思います。
 この投資的経費のこれまでの推移と今後の削減の可能性について、所見をお伺いいたします。

○安藤主計部長 投資的経費でございますけれども、これにつきましては、道路や鉄道など投資効果の高い事業、あるいは災害への備えなど緊急性の高い事業に重点的に対応しながら、そうしながらも、総額につきましては、これまでの財政再建の過程で厳しく抑制をしてまいりました。
 その結果、当初予算ベースで申し上げますと、平成四年度には約二兆円、平成十一年度でも九千七十億円ほどありました投資的経費は、ことしの平成十八年度予算では六千四百七十億円と、実にこの七年間で二千六百億円、約三割、十四年間では三分の一以下までに削減を進めてまいりました。
 しかしながら、高度経済成長期やバブル期に建設しました社会資本ストックが、これから更新期を続々と迎えてまいります。さらにいまだ十分ではございません環状方向の道路を初めとします都市基盤などを考慮しますと、これ以上投資的経費を削減していくことは困難ではないかというふうに私ども考えてございます。

○高倉委員 これまでの財政再建の過程においては、まだ体力のあった投資的経費を削減することによって対応してきたということがわかりました。さらにいえば、こうした削減を進めるために、これまでマイナスシーリングをフルに活用した財政運営を行ってきたものと私は理解をしております。
 このマイナスシーリングにつきましては、とにかく経費を削減しなければならない状況においては有効な手段とはいえ、歳出の削減という量的な改善を優先した手法であり、シーリングを長く続けることによる弊害もあるのではないかと思っております。
 このマイナスシーリングを長く続けてきたことによる弊害についての所見を伺います。

○安藤主計部長 今年度の予算からゼロシーリングとなりましたけれども、それまでは、お話しのように、毎年のようにマイナスシーリングを設定してきました。
 これによります歳出規模の抑制という点では大きな効果があったわけですけれども、やはり長年にわたり取り入れてきたわけですけれども、その一方で、委員ご指摘のとおり、どうしても量的に削減額を稼ぎ出すために、数字合わせといいますか、目標値に合わせるというようなことが中心になりまして、経費を薄切りにするといいますか、例えば、部でいうと、どの部も一律に削減する、事業によればどの事業も一律に削減するというような傾向になりやすいということがありました。
 したがいまして、事業の根本までさかのぼった見直しを行うインセンティブには乏しかった面もあるということは、やはり否定できないというふうに思っております。

○高倉委員 これまでの、いわば量的な財政再建の取り組みの中では、経費を削っての支出の圧縮に対応することは可能だったと思われますけれども、今後は、そうした対応だけでは難しい段階に入っていくのではないかと考えます。
 税収の動向に大きな影響を受ける都財政の不安定性ということを考えるならば、今後、都民に必要なサービスを責任を持って提供していくためには、安定的に都財政を運営していくことが何よりも重要でありまして、そのためには基金の活用が大きな意味を持ってくると考えるものであります。
 指針の中で、安定的に行政サービスを提供していくため、基金の積極的な活用を図るとしているのは、これまでになかったいい方だと思いますけれども、この積極的に活用するという取り組みについて、具体的に説明をお願いしたいと思います。

○安藤主計部長 今回初めて、各局に対しまして三年間の財政フレームを示すとともに、あわせまして、この間のゼロシーリングを約束するなど、毎年の税収動向に左右されることなく事業が安定的に行えるという仕組みをつくったつもりでおります。
 一方で、歳入の大宗を占める都税収入は不安定なものがございます。こうした不安定な歳入の中で、その中で安定的な歳出を可能とするためには、その緩衝材として基金が必要であるし、財政当局としては、例えば、財政フレームの一つの目安として、フレームでは想定していなかった都税の減収が生じた際には、ここは思い切って基金を取り崩して財源を確保する。逆に、フレームの想定以上に都税が増加した場合は基金に積み立てるといったような、基金の積み立て、それから取り崩しを行うことで財政運営を安定化させていきたい、こう考えております。
 これは、今までこういう三年間というフレームの中で示すのは初めてでございますが、こうしたことを示して、私たちは、わかりづらいかもしれませんけれども、基金の積極的活用というふうに呼んでいるところでございます。

○高倉委員 中期財政フレームをもとにしまして、都税の一時的な増収があったときには基金の積み立てを行う、それから都税の減収があった際には基金の取り崩しをする、そうした対応については必要な取り組みであろうと思います。
 そうした一方で、基金の積立額に関しまして、かつては一兆円あった基金が底をつきそうになったということも考えますと、まだまだ積み立てておくことが必要であろうと思います。指針ではさらなる積み立てが必要としておりますけれども、都財政を将来にわたって安定的に運営していくために、どのくらいの積み立てが必要と考えているのか、この点につきましてご所見を伺いたいと思います。

○安藤主計部長 法人二税が多くを占めます都税収入というのは、景気の変動による影響を非常に強く受けやすくて、この場でもお答え申し上げましたけれども、過去の例を挙げますと、平成元年度から平成六年度までのわずか五年間で一兆円近くも減少するなど、短期間で大幅な減収となったこともございます。
 これを支えたのが実は基金でございまして、そのかわり、元年度末に有していた一兆円を超える基金は、十一年度にはほぼ取り崩すということになってしまったわけですけれども、何とか財源を確保してきたわけですけれども、もしもこうした基金の備えがなかったならば、財政再建団体転落が現実のものとなって、都民生活のサービスに大変大きな影響を与えたのではないかというふうに考えてございます。
 そういう意味では、お尋ねの基金の残高でございますが、これについては、統一的な答えがあるわけではございませんけれども、交付税の不交付団体であって、なおかつ国に財源確保を頼ることができないということ、それから都の特質でございますが、冒頭申し上げたとおり、税収の激しいことなどを踏まえて、何よりもこれまでの経験を踏まえると、少なくとも一兆円の残高は必要でありまして、税収が好調なこの時期に、できるだけ早い段階で一兆円を超える額を積み立てておきたいと考えてございます。

○高倉委員 基金への積み立ては、財源の年度間調整を図り、将来見込まれる財政需要に対応していくためにも、大変重要な取り組みであります。
 あわせて、現在必要な財政需要にどう財源を振り向けていけば都民の要望に的確にこたえていけるのかも、判断していかなければならないと思います。大事なのは、積み立てと活用のバランスであると思っております。都民に還元すべきところは還元しつつ、堅実な財政運営を図っていかれることを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

○山加委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山加委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後三時四十二分散会