財政委員会速記録第二十号

平成十六年十二月十日(金曜日)
第二委員会室
   午後一時四分開議
 出席委員 十二名
委員長倉林 辰雄君
副委員長秋田 一郎君
副委員長森田 安孝君
理事酒井 大史君
理事鈴木 一光君
理事松村 友昭君
東村 邦浩君
鳩山 太郎君
山下 太郎君
執印真智子君
新藤 義彦君
桜井  武君

 欠席委員 なし

 出席説明員
財務局局長松澤 敏夫君
経理部長臼井  勇君
契約調整担当部長山本 憲一君
主計部長熊野 順祥君
財産運用部長宮川 雄司君
調整担当部長平田  章君
参事三津山喜久雄君
建築保全部長福島 七郎君
コスト・調整担当部長松村 光庸君
参事南部 敏一君
主税局局長山口 一久君
総務部長菅原 秀夫君
税制部長川村 栄一君
参事関口 修一君
参事橋本 隆之君
課税部長松田 曉史君
資産税部長安田 準一君
徴収部長吉田 裕計君
参事齊藤 吉民君
出納長室出納長櫻井  巖君
副出納長島田幸太郎君
副出納長宇藤 雅隆君
会計制度担当部長岳野 尚代君
収用委員会事務局局長嶋津 隆文君
審理担当部長井戸 秀寿君

本日の会議に付した事件
意見書、決議について
出納長室関係
報告事項(質疑)
・平成十六年度資金管理実績報告(第二・四半期)について
主税局関係
報告事項(質疑)
・平成十六年度東京都税制調査会答申について
収用委員会事務局関係
報告事項(質疑)
・「収用制度活用プラン」について
財務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第二百四十六号議案 都立青梅地区総合学科高等学校(仮称)(H十六)改修工事請負契約
・第二百四十七号議案 都立東久留米地区総合学科高等学校(仮称)(H十六)増築及び改修工事請負契約
・第二百四十八号議案 日暮里・舎人線舎人公園駅(仮称)建築工事請負契約
・第二百四十九号議案 当せん金付証票の発売について
報告事項(質疑)
・「神宮前一丁目民活再生プロジェクト」(PFI事業)の実施方針等について

○倉林委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 初めに、意見書、決議について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書、決議を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件につきましては、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○倉林委員長 異議なしと認め、そのように決定をいたします。

○倉林委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、出納長室関係の報告事項に対する質疑、主税局関係の報告事項に対する質疑、収用委員会事務局関係の報告事項に対する質疑並びに財務局関係の付託議案の審査及び報告事項に対する質疑を行います。
 なお、付託議案のうち契約議案については、議長から、事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございます。
 これより出納長室関係に入ります。
 報告事項、平成十六年度資金管理実績報告(第二・四半期)に対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 ご発言願います。

○執印委員 それでは、質問させていただきます。
 近ごろ、さまざま事件が起こりまして、三井物産のディーゼル車の規制のデータ捏造事件などもそうですが、UFJが検査妨害事件ということで、元頭取も参考人聴取をされたということが新聞等で報道されております。これについては、検査忌避という銀行法違反容疑で、この元副頭取が逮捕されて、元頭取も調査を受けているということだと思いますが、昨年の八月から十月に経営が悪化した大口融資先の財務資料などが入った段ボール箱を別室に隠すというようなことをして、金融庁の検査を妨害した疑いが持たれているということで、私もテレビで、たくさんの段ボールが資料として運ばれているところを見ました。
 この件については、UFJの不良債権処理がおくれていたということがあって、大口融資先を厳しく査定した場合には、二〇〇四年の三月期決算で大幅赤字となって、経営責任が問われかねないということが事の発端のようでございますが、こういったことについて、資金管理に関して、取引先の不祥事に対する対応のガイドラインというのはどのようになっているのか、伺います。

○島田副出納長 出納長室では、取引先に不祥事がございました場合、不祥事の内容や都の公金への影響度、さらには反社会性などを勘案しまして、預金の取り扱い等について原則的な対応を定めましたガイドラインを持っております。
 その中身でございますけれども、不祥事というのが個人の責任なのか、あるいは組織的な行為なのか、あるいは公金取扱業務とのかかわり、さらには信用失墜度合いの程度、それから監督官庁でございます金融庁による行政処分の状況などの不祥事のさまざまな要件を考慮したものが、その内容でございます。
 金融機関の不祥事に対する実際の東京都、出納長室の対応につきましては、このガイドラインに基づきまして個別に勘案して実施しておるところでございます。

○執印委員 今いろいろご説明をいただきまして、その状況に応じての対応がされているということですが、行政の透明性という点からも、このガイドラインの公表というものが求められている時代かと思いますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

○島田副出納長 実際、出納長室が対応する中身でございますが、先ほど申し上げましたガイドラインにつきまして、それをマトリックス的に組み合わせたもので意思決定をしているわけでございますけれども、このガイドラインを具体的に公表いたしますと、各金融機関に対します都の対応を推測することができるというふうに考えております。
 都の影響力を考慮いたしますと、個別の金融機関の経営に対する影響や風評などを誘発する可能性がございますので、これについては差し控えさせていただきたい、ぜひご理解いただきたいというふうに思っております。

○執印委員 いろいろご説明の中で、風評被害というようなお話も出てきまして、そのことについては全く理解できないわけではないんですけれども、私は、不正についてはきちんとした対応をしていかなければならないというふうに思っております。
 ちょっと聞き方を変えさせていただきますが、今、CSR、これはコーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティーということで、企業の社会的責任ということが求められるようになっておりますが、企業が企業市民としてコンプライアンス、これは法令遵守など、それから環境保全、消費者保護、公正な労働環境、人権、安全衛生、地域社会への貢献というような分野について一定の責任を果たしていかないと、企業活動が社会に受け入れられないという、そういったものを持った視点でございますけれども、こういった視点がそのガイドラインにどのように反映されているのか。法令遵守ということになりますと、当然今回、厳しい対応がされてしかるべきだというふうに思いますが、その点もあわせてお答えください。

○島田副出納長 銀行業務の重要なものの一つといたしまして、いわゆる決済機能がございます。この決済機能は、私どもの社会の基本を支えるような業務でございまして、それゆえ、社会成立のための銀行の社会的責任というのは極めて大きいというふうに考えております。
 私どもとしましては、このように社会的影響が極めて大きい銀行における不祥事は、決して起きてはならないということを考えておりまして、先ほど申し上げましたように、社会性、反社会性等につきましては十分に考慮して対応していきたいというふうに思っております。

○執印委員 社会性についてしっかり見ていきたいということですから、そのお答えとして受けとめておきたいと思います。
 私は子どもの権利の問題をずっとやっているものですから、今どうしても何かあると、子どもに責任だ、義務だということになっていきますけれども、さまざま問題が起きたときに、大人社会が不正に対してどういうふうに判断をしていくのか、その後ろ姿を子どもたちは見ているものだというふうに思いますので、影響もあって明らかにできない部分があるというのが今のお答えですけれども、毅然とした対応をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 最後に、来年の四月からペイオフが導入されるわけですが、この財政委員会でも以前、収納金の件についていろいろ質疑もされ、都議会でも平成十四年の第二回定例会で、地方公共団体の収納金の保護扱い等に関する意見書というのが国に対して出されているわけですが、その後これがどのようになっているのか。また、あわせて、ペイオフに東京都がどのように対応されていくのかを伺いまして、質問を終わらせていただきます。

○島田副出納長 都民や企業から支払われます都税、それから各種の使用料、手数料、こういったいわゆる収納金でございますけれども、これは、百八十三ございます収納代理金融機関から、みずほでございます指定金融機関の口座に到達するまでの数日間、振込資金等の一時的な管理を行うための預金でございます別段預金に滞留しているわけでございます。金融機関が破綻したとしましても、この収納金が滞留する別段預金というものは、現時点では流動性預金といたしまして、来年、十七年四月以降のペイオフの全面解禁以降も、決済用預金といたしまして預金保険法により全額保証されまして、安全は確保されるということになっているわけでございます。
 なお、今回ご報告した歳計現金及び基金の管理運用に当たりましては、安全性、流動性を確保しつつ効率性を確保することを基本方針といたしております。私どもとしましては、公金を絶対に棄損させないという前提に立って効率的な運用を行っていきたいというふうに思っております。
 先ほど申し上げましたように、この決済用資金としましてペイオフ以降につきましても保護されるということは、先生、先ほどお話しになりましたように、都議会からもご議決いただきまして、お話をしていただいたところでございまして、それはそのように対応させていただきました。
 先ほど申し上げましたように、公金を安全で、かつ効率的に保管、運用していくためには、預金に当たりまして、経営破綻のおそれのない安全な金融機関を選択していくことが重要であるというふうに考えております。このため、格付ですとか自己資本比率、それから預金量の推移、こういったものを組み合わせました基準によりまして、金融機関の経営状況の評価を行いまして、さらに、私どもだけではなくて、金融分野の専門家で構成いたします公金管理委員会で審議していただいた上で、一定水準を上回り、破綻の懸念のない金融機関を預金先として選定しているところでございます。
 私どもとしましては、公金を絶対に棄損させないということで、都民の負託に今後もさらにこたえていきたいというふうに思っております。

○倉林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、ご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○倉林委員長 ご異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で出納長室関係を終わります。

○倉林委員長 これより主税局関係に入ります。
 報告事項、平成十六年度東京都税制調査会答申に対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 ご発言を願います。

○秋田委員 固定資産税についての質問をさせていただきたいと思っております。
 固定資産税について、我が党はさきの代表質問において、現行の不均衡を是正し、過大な二十三区商業地などの負担を緩和するため、平成十六年度税制改正で創設された、いわゆる条例減額制度を活用し、負担水準の上限を引き下げるよう、新たな提案を行わせていただきました。これに対し、知事からは、検討するといった旨の答弁をいただきました。
 そこで、私から、この課題に関して幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、現行の固定資産税で同じ評価額の土地でも、土地ごとに税負担額が異なる負担水準の不均衡が生じているということでございますが、なぜそのような不均衡が生じたのか、また、どの程度の不均衡が生じているのか、わかりやすく説明をしていただければと思います。

○川村税制部長 現行の固定資産税におきましては、ご指摘のとおり、例えば評価額が同じ百万円でありましても、課税標準額は、ある土地は七十万円、また、ある土地は五十万円と、土地によって異なるという負担水準の不均衡が生じております。
 このような不均衡が生じた理由でございますが、大都市の地価はバブル期に急騰し、その後急落いたしましたが、こうした環境変化に対し、国の制度改正が追いつかず、また内容も当座の調整措置の繰り返しに終始してまいりました。結果といたしまして、大都市を中心に、地価の上昇、下落が著しかった地域において、負担水準の高い土地が多くなっております。
 また、不均衡の実態でございますが、商業地等の負担水準の上限は現在七〇%とされておりまして、この上限に達しております土地は、全国で約二割、二十三区で約四割でございます。一方、負担水準が六〇%に満たない土地は、全国で約六割、二十三区で一割強でございます。
 なお、平均負担水準は、全国、二十三区で約六五%、最も低い県で約四二%となってございます。

○秋田委員 今の部長の話を聞きますと、商業地などでは場所によって四〇%から七〇%の幅もあって、さらに、負担水準が六〇%に満たない土地は、全国で約六割、二十三区では一方、一割しかないという話を聞くと、果たしてこれは公平な税制度なのかなといった大いなる疑問を抱くわけです。
 そうした不均衡を抱える中、国はようやく平成十六年度の税制改正で、負担水準の上限を自治体の裁量で引き下げることができる条例減額制度を創設したわけでございますが、そこで、この条例減額制度の創設趣旨と概要を改めて教えてください。

○川村税制部長 平成十六年度の税制改正で、いわゆる条例減額制度が創設された趣旨でございますが、商業地等の固定資産税につきましては、納税者から、負担水準の上限を引き下げることにより、課題となっております負担の軽減を図るよう強い要望がなされておりました。しかしながら、負担水準の引き下げは、自治体の税収に大きな影響を及ぼしますことから、全国一律に行うことは困難でございまして、住民の税負担の実情を最も知り得る立場にあります自治体の判断により、上限を引き下げることができる制度が設けられたものでございます。
 その概要を申し上げますと、負担水準が六〇%を超える商業地等につきましては、六〇%の水準までの範囲内で一律に税額を減額できるというものでございます。

○秋田委員 ご案内のとおり、東京都においては、我が党の強い要請もあり、平成十四年度から小規模非住宅用地の減免措置を実施しているわけですが、大変好評を博しております。この負担水準の上限引き下げと都の減免措置等の違いというか、対象とか効果においての違いを教えてください。

○川村税制部長 都の小規模非住宅用地に対する減免は、税負担の緩和とともに、中小企業支援の観点から実施しているものでございます。
 負担水準の上限引き下げとの相違点を申し上げますと、都の減免が面積四百平方メートルまでの土地で、かつ中小企業または個人が所有するものを対象としておりますのに対し、負担水準の上限引き下げは、負担水準が一定水準を超える土地すべてが対象となるものでございます。また、都の減免が対象土地の税額を一律に二割軽減いたしますのに対し、負担水準の上限引き下げは、対象土地の負担水準に応じまして、上限を超える部分に相当する税額を軽減するものでございます。

○秋田委員 税制の基本というのは何といっても公平感だと思うんですが、そういった意味からも固定資産税に対する納税者の信頼を回復するためにも、現行の不均衡は早急に解消する必要があるんだと思います。
 そこで、負担水準引き下げの具体的な効果ですが、仮に上限を法律が定める下限いっぱいの六〇%まで引き下げた場合、引き下げの対象となる土地はどのくらいあるのか、これが一点。
 二番目として、先ほどお話があった都の平均負担水準である六五%まで引き下げた場合の対象となる土地はどれくらいあるのか。
 この二点、具体的な例としてお聞かせください。

○川村税制部長 商業地等の宅地は現在、約三十四万件ございますが、仮に負担水準の上限を法律が定める下限いっぱいの六〇%まで引き下げるとした場合、このうちの対象となる土地は約二十九万件、商業地等全体の約八五%でございます。
 また、全国及び都の平均負担水準であります六五%まで引き下げるとした場合、対象となる土地は約二十一万件、商業地等全体の約六〇%でございます。

○秋田委員 今は対象となる土地の件数をお尋ねしたんですが、一方で、都や特別区に対する財政的な影響もやっぱり勘案しなくちゃいけないと思うんですが、負担水準引き下げによる影響額はどのくらいあるんでしょうか。六〇%まで引き下げた場合と六五%まで引き下げた場合についての財政的な影響について教えてください。

○川村税制部長 仮に負担水準を六〇%に引き下げた場合でございますが、都税収入への影響額は約四百億円でございまして、このうち、都区財政調整制度への影響額は約百七十億円でございます。また、負担水準を仮に六五%に引き下げた場合でございますが、都税収入への影響額は約百六十億円でございまして、このうち、都区財政調整制度への影響額は約七十億円でございます。

○秋田委員 東京都は、小規模非住宅用地のほか、小規模住宅用地、新築住宅に対する独自の軽減措置も行っております。これによる都への影響額は約七百億円、このうち、都区財政調整への影響額は約百八十億円と伺っております。これに負担水準の引き下げが加わるとなると、都や都区財政調整への影響は決して小さくないんだろうと思っております。
 しかし、一方で、先ほどから申し上げておりますとおり、税に対する公平感を都民の皆様に抱いていただくということは、すごく重要なことでありまして、制度のゆがみによって負担が過大になっている土地については、早急に負担軽減措置を図っていく必要があるんだろうと思います。
 ただ、これは第三回定例会の一般質問で私、申し上げさせていただきましたが、一つだけ懸念されるのは、いわゆる東京富裕論というものでございます。この前も概略が発表されましたが、国の三位一体改革では、ご案内のとおり、分権改革の本質的な議論がなされないまま、金額だけが先行するといった感じで、地方に比べて東京だけが過度に潤っているというか、豊かというか、何か東京だけがひとり勝ちしているみたいな話を随分とされて、それが結局、今もやっているようですが、法人事業税等の分割基準見直しなど、東京に対するさらなる財源調整強化が図られようとしております。
 仮に都が現行の軽減措置を継続し、商業地などの負担水準上限の引き下げを行った場合、そうした国の動きを助長することがすごく危惧されるんだろうなと思います。やっぱり東京は豊かなんじゃないかと。この点についてはどう考えているんでしょう。

○川村税制部長 現行の固定資産税は、バブルの生々崩壊に伴う土地の急騰急落という、二十三区を初めといたします大都市の実情に全国一律の税制が対応できておりませんで、結果といたしまして、その税負担が過大になっております。現行の都の軽減措置も、こうした実情を踏まえまして、負担の公平を図ること等を目的として実施しているものでございます。
 一方、いわゆる東京富裕団体論は、東京の役割や膨大な財政需要を無視いたしまして、東京から税財源を吸い上げようとする、ためにする議論でございます。今後、仮に固定資産税に係る軽減措置などを理由といたしまして、都に対する財源調整をさらに強化しようとするようなことがあれば、それは全く筋違いの議論であると考えてございます。

○秋田委員 最後に、今年度の都税調の答申でも、固定資産税についてはさまざまな問題が指摘されていることはよくご存じのことと思いますが、現行の固定資産税に対する基本的認識を含め、商業地などの負担水準の負担引き下げについて、局長の見解を伺わせていただければと思います。

○山口主税局長 ただいま税制部長の方からご答弁申し上げましたように、この話は、大都市特有の状況が、今、全国一律の税制によってゆがみが生じているという問題でございまして、その一つがこの負担水準の不均衡でございます。土地の評価額が同じでも土地により税額が違う。それから住宅用地と商業地等の負担の格差が大きい。例えば、バブル前の昭和五十八年度の税額を一〇〇とした場合ですけれども、現在の税額の水準で見ると、住宅用地が一二一・五であるのに対しまして、商業地等は二四二・七、約二・五倍になっています。こういう格差が広がっているのは大きな問題だと思います。
 こうした中で、都はこれまでも、都議会のご協力をいただきまして、都民負担の実情を踏まえた独自の減免措置を平成十四年度に実施して取り組んでまいりまして、また国に対しても、その制度の抜本的な対応を求めてまいりました。
 先ほどお話もありましたように、固定資産税は都及び特別区の貴重な財源であるわけですが、それだけに税負担の公平など、税制に対する納税者の信頼を確保していくことが最も大切だというふうに考えております。
 お話の商業地の負担水準の上限の引き下げにつきましては、こういった税負担の公平の視点に立ちまして、引き下げによる効果、都の財政状況、特別区や市町村への影響等を勘案しながら早急に検討を進め、都側としての結論を出したいというふうに思っております。

○秋田委員 ぜひとも前向きな検討をお願いしたいと思います。
 最後に、あわせて、分割基準の見直しなど、東京に対する財源調整強化の動きについて一言申し上げさせていただきたいと思います。
 国では、平成十七年度税制改正について、今月中旬の取りまとめに向けて、最終的な詰めを現在も行っているようでございますが、分割基準の見直しも検討課題の俎上に上げられているようでございます。しかしながら、こうした国の動きというのは、先ほどの答弁にもありましたし、私も述べさせていただきましたけれども、東京の抱える膨大な財政需要や、あるいは重大な役割に目をつぶって、意図的に東京は豊かだ、東京から金をふんだくってやろう、そういったものであって、断じてこれを容認できるものではないと思います。
 このような不合理な見直しが具体化することのないよう、国に強く働きかけなければならないですし、都議会自民党としても全力で闘っていく決意であることを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

○東村委員 それでは、私は、東京都税制調査会の答申に基づいて何点かご質問したいと思います。
 最初に、これは基本的な質問で大変恐縮なんですが、この東京都税制調査会と東京都との関係、これはどのような関係にあるのか、まず、これについてお伺いしたいと思います。

○川村税制部長 東京都税制調査会は都知事の諮問機関でございまして、知事の諮問に基づきまして、国と地方の将来を見据えながら、国、地方を通じた税制全体のあり方等について幅広く検討を行い、それを知事に答申するものでございます。
 都は、その答申を受けて、必要に応じて国に対し制度改正を要求し、あるいはみずから実施するものにつきましては、都議会にお諮りをいたしながら、その実現を目指してきたところでございます。

○東村委員 今、最後の部分で、必要に応じて国に対して制度改正を要求する、また、みずから実施できる施策については都議会に諮りながら実現をする、こういった言葉がありました。そういったことをしっかりと踏まえながら、何点か質問させていただきたいと思います。
 最初に、個人住民税の問題なんですが、これは東京都税制調査会もそうですし、政府の税制調査会も同じように、個人住民税の税率を一〇%の比例税率化する、こういった答申を出しております。現在は五%、一〇%、一三%という三段階になっているんですけれども、一〇%比例税率化されたとき、この中で、五%で課税されている所得階層の納税者にとっては、これは増税になるわけです。答申では、所得税の税率を調整する、これによって税源移譲前後の税負担が、前と後の税負担が変わらないようにする、このようにしているんです。しかしながら、所得税と、これも後でちょっと触れたいんですけれども、個人住民税とでは、課税最低限が異なるわけでございまして、個人住民税のみが課税されている納税者、こういう方もいるわけなんですね。こういう人にとっては単純な増税のみになる、このようになるんではないかと私は危惧をしております。
 そこで、都は、この問題についてどのように、この単純増税になるような人たちのケアを含めた考えをお持ちなのか、これについてお伺いしたいと思います。

○川村税制部長 所得税から個人住民税への税源移譲に伴いまして、所得が所得税の課税最低限以下で、個人住民税だけを課税されている方につきましては、増税になるのではないかということでございますが、税源移譲は納税者の理解のもとに円滑に進めていく必要がございまして、そうした方々ができる限り負担増にならないような配慮が必要であると考えております。
 ご指摘の点につきましては、単純に増税になる部分は、五%相当の税額控除で対応すべきものであると考えております。

○東村委員 ぜひともそういったご配慮をお願いしたいと思います。
 それで、今、個人住民税の、所得税と異なる課税最低限という話をしました。もう一つ大きく違うのが、個人住民税というのは当然前年の所得に対して課税をされるものであって、所得税は現年課税、こういったことが行われているわけでございます。仮に、所得の状況によって所得税の減税額の方が個人住民税の増税額よりも小さくなって、結果として増税になってしまう、こういうことがあるんではないかと思います。答申もこのことに触れて、激変緩和のために、かつて講じられた措置に準じた措置をとる必要がある、こういった答申をしているわけですけれども、ここで具体的に、かつて講じられた措置、これはどのような措置が講じられてきたのか、これについて伺いたいと思います。

○川村税制部長 昭和三十七年度でございますが、所得税から個人住民税への税源移譲が行われた際に、所得税の税率改定で調整し切れない納税者の負担増を調整するため、個人住民税において税額控除の措置が講じられたところでございます。
 具体的に申し上げますと、所得税と個人住民税の人的控除額の差、例えば現在では基礎的な人的控除額の差は五万円でございますが、この差額に個人住民税の税率を乗じて得た額に、適用のある家族の人数を乗じたものを税額控除するというものでございます。
 今回の税源移譲に際しても、そうした措置によりまして、個々の納税者の負担増の調整を図るべきであると考えてございます。

○東村委員 こういった事態というは、そんなに起こることではないと思うんですけれども、こういった大きな税制改正が行われるときには、こういった事態も起きる可能性もなきにしもあらずだと思います。そういう意味で、かつてそういった措置を講じたわけですから、ぜひともそれに準じた措置も講じていただきたいと思います。
 次に、先ほど、課税最低限という話をいたしました。この課税最低限が大きく変わってくる一つの要因として、所得税と個人住民税の基礎的な人的控除の額や保険料の額、これが所得税と個人税では違うわけなんですね。こういったことがあるから、所得税については一般的にかなり理解はされてきているんですけれども、中には個人住民税と所得税が同じだと思っている人もまだいるわけでございまして、実際はこれは違うわけなんですね。
 このように基礎的人的控除、さらに保険料の控除なんかが個人住民税と所得税では違う。私は、こういったことは余り理屈的に変える問題ではないんじゃないかなと思うんですね。共通化しても別に不自然ではないし、理屈も成り立つんじゃないかと思うんですけれども、どうも非常にわかりにくい。この点もぜひとも、今回の答申でも若干触れられていましたけれども、私は都としても変えていただきたいと思うし、共通化していただくと非常にわかりやすいんじゃないかと。
 税の仕組みというのは非常にわかりにくいということで、いろんな方からいわれるわけでございます。ただ、それがゆえに専門家というのがいるのかもしれないんですけれども、やはり負担するのは国民だということを考えれば、わかりやすい仕組みというのをつくるべきではないかと私は思うわけです。この点についていかがでしょうか。

○川村税制部長 税制は、できる限り簡素で、納税者にとってわかりやすいものであることが望ましいとされております。一方、個人住民税は、広く負担を分かち合うという負担分任の性格を有しておりまして、政府税制調査会答申によりますと、個人住民税の人的控除の見直しに当たっては、控除の水準が所得税より低くなるように見直すべきであるとしております。
 個人住民税の控除のあり方につきましては、都税調答申にもありますように、負担分任という個人住民税の性格に留意しつつ、基礎的な人的控除の額を所得税と合わせていくことも将来的な課題であると考えております。
 都といたしましても、今後、研究を深めてまいりたいと存じます。

○東村委員 負担分任という性格がある、これはよくわかるんですね。であるならば、私は今、個人住民税の話をしたんですけれども、こういった負担分任という考え方が税制全般に、特にいわゆる地方税にきちっと浸透しなきゃいけないと思うんです。これも後で触れたいと思うんですけれども、現行は中にはそうなっていないのも多々あるようでございます。だから、ある意味で都合のいいときだけ負担分任という考え方を持ってくるというのは、私は正直なところ、いかがなものなのかと。やるならば、これはもっと簡素化してもいいんじゃないかと思うんですね。
 仮に、基礎的控除でも、所得税三十八万、個人住民税三十三万、扶養控除なんかは、特定扶養親族がある場合は所得税は六十三万で、個人住民税は四十五万と大きな差があるんです。先ほども公平感という話がありましたけれども、理論的に首尾一貫するんであれば、最後までそういった首尾一貫性をいろんなところにも貫いてもらいたいなと思うわけでございます。
 そういう意味で、私は、ある意味で税制というのは理論というより政策税制なんだろうなと常日ごろ思っているわけなんですけれども、これに続いて、この答申でも非常にいいことが書いてありました。少子化の問題と税の問題について議論がされていたわけなんで、私は、これは非常に大事なことだろうなと思いました。
 ここでもいっていましたけど、税の所得控除という考え方は、高額所得者ほど減税効果が大きいわけですね。したがって、本来、少子化ということをターゲットに考えたときに、これは知事もおっしゃっていたんですけれども、価値観の問題だという話があるんですが、ただ、政策的に助けてあげなきゃいけない層というのは、やはり所得が低い層なんです。このような人たちは産みたくても産めないという現実がある。高い所得の人たちは、産めば育てていくことができるわけなんです。ただ、その中で今度は価値観という問題があって、産まないという人が出てきているわけなんですね。むしろ、産みたいんだけど、助けてもらわなければ産めない、こういった人たちを本当に少子化の観点から行政が手助けをしていく必要があるんではないかと、私はこれは前々から思っているわけなんです。何でもかんでもすべての層まで行政がそういった手助けをして何とかするというのは、これは違うんじゃないかと思うわけです。
 そこで、税額控除をすれば減税効果が満遍なくいくんだという答申があったんですけれども、ただ、課税最低限以下の人、こういう人たちがいるわけなんですね。こういう人たち、本当にまさに産みたいけれども、ここで産んだら、果たして自分たちが生活していけるのかどうかという人たちがいるわけでございます。答申でも、これは非常によく踏み込んでくれたなと私は思ったんですけれども、税額控除でも無理な、いわゆる課税最低限以下の人たち、このような人たちにとっては現金給付ということもあり得るんじゃないか、代替すべきなんじゃないか。
 そういう意味で、今、国は児童手当というのをやっているわけなんですけれども、こういったことについて、都はなかなか現金給付をしないという話になっていますけれども、ただ、やっぱり少子化という一点に絞っていえば、こういった児童手当のような現金給付で代替することも必要なんじゃないか、私はこのように思うんですけれども、いかがでしょうか。

○川村税制部長 答申における新たな税額控除の仕組みは、所得の多寡にかかわらず、算出した税額から一定額を控除するというものでございまして、ご指摘のように、高所得者で高い税率が適用されている方ほど有利な所得控除と比べまして、低所得者も同じ額の減税効果を受けるという、より公平な制度であると考えられます。
 一方、新たに税額控除を導入するといたしますと、所得控除と税額控除が併存することとなりまして、制度の複雑化につながる側面があることは否めないものと存じます。
 答申は、より公平な税制度等として、低所得者層も等しく少子化対策の効果を享受することができるように、新たな提案をしたものと受けとめておりまして、今後、税額控除やご指摘の手当による現金給付を含めまして、どのような手法の組み合わせが効果的であるかどうか等について研究を深めてまいりたいと存じます。

○東村委員 税制調査会というのは、私は、ここは非常にすごいなと思ったんですけれども、税の問題だけで終わるんではなくて、かなり一歩踏み込んだ部分まで答申を出してくれているわけでございます。都もその辺をしっかり受けて、冒頭の答弁にありました、必要に応じて国に要請し、みずから実施できる施策については議会に諮っていくとありました、この辺のことをお願いしたいと思うわけでございます。
 話は変わりまして、この答申の中でも新たに盛り込まれました新自動車税制、これについて何点か伺いたいと思います。
 今回、自動車の取得と新規登録、保有そして継続検査、走行といった大きな段階に分けながら、取得の段階では自動車取得税、これは登録、県税だと。新規登録の場合は自動車重量税がかかる、これは国だと。保有の場合は、自動車税として都道府県、軽の場合は市町村だ。継続検査において、これは車検ですけれども、また自動車重量税がかかる。こういった車に関する税の今の流れと構造、それぞれ何がダブっているのかということを見きわめながら、今回この新自動車税制、特に、道路損傷負担金としての性格を自動車税と自動車重量税というのが重複している、こういったことを挙げられて、この新自動車税として一本化するというんですかね、こういう新たな提案をされております。
 この中にも若干触れられていましたけれども、私は、これプラス、これから--東京都はDPFの問題もかなり真剣に取り組んできたわけなんですけれども、環境に配慮した視点をぜひともこの自動車税の中で積極的に、新しい自動車税をつくるんであれば、ただ従来の中のやつを統合するというだけではなくて、もっともっと先を見た、今後起こるであろうさまざまな事態に対処した、将来を見据えた、環境に配慮した視点での新自動車税というのをつくっていくべきなんじゃないかと。
 私ごとで申しわけないんですけれども、二千ccの車と二千五百ccの車、正直な話、私は何も知らないで、二千五百ccの車の方が自動車税が高いと思っていたんですけれども、グリーン税制というのがあって、二千ccの方が二千五百ccの車より八千円以上高いんですね。これは非常にいい観点だな、これは買ってよかったなと非常に思ったんですけれども、単年度だけの措置だという話で、単なる誘発効果にしかならないんですけれども、こういったことは、もっともっと環境に配慮すれば、税制の部分で安くなる。
 それはまた、かつ将来、環境に対していろんな、今回のDPFの問題もそうです、助成金を出したりしなきゃいけない、利子補給したりしなきゃいけないということを考えれば、後々お金をかけて対策を考えるんであれば、先に環境に配慮した基準をきちっと設けて、それに対する環境的な税制考慮をするということの方が、今は確かに当面は損かもしれないけれども、将来的にこの東京都のことを考えれば、私はむだなお金を出す必要もないんじゃないかと思いますし、いろんな意味で環境にもプラスになるんじゃないか、このように思うわけでございます。
 単年度だから悔しいということをいっているわけじゃなくて、これが本当に継続すればいいんでしょうけれども、恐らく排気量が高くなれば高くなるほど基準という問題も出てくるでしょうから、単純にはいかないんだろうとは思うんですけれども、ぜひともこの新自動車税制においては積極的に都としても、環境に対応する側面を考慮した新自動車税制にすべきだということを国に働きかけていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○川村税制部長 東京都では、平成十二年度に国に先駆けまして、自動車税制にグリーン税制を導入し、ハイブリッド車等のクリーンエネルギー車に対しまして自動車税を軽課する一方で、新規登録から一定年数を超える環境負荷の大きな自動車に対しては重課してきたところでございます。地球温暖化対策など、今後ますます環境への対応が重要となる中で、都といたしましても、グリーン税制の再構築など、環境の視点を重視した自動車税制のあり方についてさらに検討を深めてまいりたいと存じます。
 また、新自動車税の創設につきましても、国から地方への税源移譲の有力な手段となることも含めまして、今後さらに検討を重ねた上で、機会をとらえて国に働きかけてまいりたいと存じます。

○東村委員 ぜひとも環境の側面を、これは先取りした方が絶対、後々、行政にとってもプラスになると私は思いますし、これから日本としても必要なことだと思いますので、積極的に要請をお願いしたいと思います。
 この新自動車税という中で、先ほど、取得、そして新規登録、保有、継続検査ということを考えて、確かに自動車はいろんな税金があるなと思ったんですけれども、これはよく考えたら、自動車だけじゃないんですね。私、不動産、土地や建物、これはどんな税金がかかっているのかなということを改めて、この段階に当てはめて見てみたんですね。取得という段階では不動産取得税、都道府県税がかかるわけです。それから新規登録といったら登録免許税がかかります。これは国ですね。それから保有という段階では、先ほどから議論がありました固定資産税がかかる。本来、固定資産税はいわゆる市町村の税なんですけれども、東京都だけ、都区財調制度があるがゆえに、二十三区のみ固定資産税は東京都で収納している。東京都のこれが本来の姿ではなくて、非常に異例な措置なんです。それから継続検査ということを考えたときに、自動車重量税というのが自動車の場合かかります。じゃ、継続って、土地や建物は何かというと、これはまさに相続なんですね。相続のときは相続税、国へかかる。ちょうど段階ごとに、都道府県に行っている税、国に行っている税、また都道府県に行っている税、国に行っている税と、非常に類似しているわけなんです。
 私は、自動車というこの問題を考えたときに、ぜひとも今後やらなきゃいけないのは土地と建物の不動産の問題、ここもやはり税の抜本的な改革の部分として取り組んでいかなきゃいけない。やり過ぎだと私は思うんですね。
 ただでさえ今、流通をしない土地や建物に、ようやくああいう地価税ですか、皆さん、もう忘れているかもしれませんが、地価税というのがなくなりましたけれども、ああいった税金もかけようとしている。中には特別土地保有税もある場合もある。土地や建物も余りにも税金が多い。こういったことを考えたときに、先ほどいいました自動車重量税と自動車税が一本化されたんであれば、私は、この固定資産税と--固定資産税というのは、持つ限りずっとお金がかかるわけです。継続をすることによって、新たに引き継ぐことによって税金をかけるというのは、これは相続税だけであって、相続税というのはそういう意味でなじまないんだろうなと、今後は。
 相続税ができた淵源はどこかというと、これは百年さかのぼる日露戦争のときの戦費調達で、日本の国が相続税っていうのをつくったわけなんですね。戦後これを何でやめなかったかというと、要するに土地をたくさん持っている人からどんどんどんどん分配させていくんだという、一種の財閥解体にも利用されたわけなんですけれども、ただ、今の日本の現状を見たときに、そんなに莫大な土地を持っている人といったら余りいないわけですよ。農家の人は持っているかもしれないけど、農家の人はそれを農家として業としてやらなきゃいけないから土地を持っているだけであって、農家の人が持っているじゃないかという議論は、私はもう成り立たないんだろうなと。そういったことを考えたときに、今後、この不動産に関する税の仕組みというのも、やはり答申の中で入れていただいて、ぜひとも国に要望していただきたい。
 その最大のポイントは、私は、この相続税をやめるべきなんじゃないかと。固定資産税という、保有することによって--保有というのはずっと保有するわけですから、継続しようが何しようが保有をするわけですから、人がかわっても保有するわけですから、保有する固定資産税だけに絞っていくべきなんじゃないか、このように考えるわけですけど、いかがでしょうか。

○川村税制部長 相続税につきましては、我が国社会経済の活力を維持する観点から、富の再分配という役割や、そのあり方を抜本的に見直す必要があると考えております。
 ご提案の件に関連いたしましては、都税調答申では、平成十五年度の答申で、道路、下水道などの地域の行政サービスが地価の形成に大きく寄与していることから、土地や家屋に対する相続税は中長期的には自治体の財源とすることも検討すべきであるとしております。

○東村委員 確かに負担という考え方からすれば、道路、下水道などはやっぱり影響してきているということなんでしょうけれども、私は、地方税にするというのをさらに先に通り越して、相続税自体をやめるという方向を考えなければ、日本というのはもう活性化しないし、下手したら、日本から農業というのはなくなっていく可能性だってあると思いますよ、本当に。自給率を引き上げるといいながら、今はこんな低い自給率で、何かあったときに果たして日本は食糧を確保できるのかというと、これはなかなか厳しい。かなり飛躍した議論かもしれませんけれども、そういったことも踏まえて、この相続税ということをやはり検討していただきたいと思います。
 次に、先ほどから、負担分任という、いわゆる応益的な性格を地方税は持っているという話がありました。そこで、法人事業税の外形標準の話について何点か伺いたいと思います。
 この答申の中で、私、確かにお気持ちはよくわかるんですけれども、理解できなかった部分が一つありまして、この外形標準課税について答申では、金融業や不動産貸付業の付加価値のとらえ方がおかしいという指摘をされているんですけれども、この外形標準の付加価値というのは、報酬額と純支払い賃借料と純支払い利息、それから単年度損益なんですね。これが付加価値という考え方をしているんですけれども、確かに銀行なんかは支払い利子よりも受取利子の方が多いから、これは単純に支払い利子マイナス受取利子にしたら、ゼロになってけしからぬと。不動産業なんかも、受取利子の方が支払い利子よりも多くなければ業として成り立たないでしょうから、これがマイナスになったらゼロになる、これもけしからぬと。こういうことはよくわかるんですけれども、ただ、銀行の場合も、受取利子というのは売り上げに上がるわけでありまして、支払い利子というのは一種の原価を構成するわけですね。不動産業も受取利子というのは売り上げに上がりまして、支払い利子というのは原価を構成するわけです。この売上原価ということでやっていけば、確かに純支払い賃料、純利子だけ見れば、マイナスになってゼロになるかもしれないんですけれども、それは結果的に単年度損益にあらわれますから、これを合算すれば、この付加価値という全体では変わらないんじゃないか、こういった議論はむしろ成り立たないんじゃないかと。都は銀行に痛い目に遭っていますから、気持ちもわからないでもないんですけれども、ちょっとこの辺は違うんじゃないかと私は思うんですけど、いかがでしょうか。

○川村税制部長 加算型付加価値の計算におきまして、金融業の純支払い利子や不動産貸付業の純支払い賃借料の計算に通常の計算方法を用いることは、これらの事業の特性にかんがみ適当ではないということが、かつて政府税制調査会の地方法人課税小委員会報告でも指摘されてございます。
 また、イタリアの州生産活動税でございますが、金融業の純支払い利子は通常の計算方法とは逆に、受取利子マイナス支払い利子とされております。
 こういったこととは別に、ご指摘のように、金融業や不動産貸付業における粗利益に相当する部分の純支払い利子や純支払い賃借料が単年度損益に反映されていると仮にいたしましても、例えば銀行が借入金で固定資産を取得して利子を支払うということもあり得ますし、また、不動産貸付業者が事業用不動産を賃借することもあり得ることから、これらを無視した結果となるような純支払い利子や純支払い賃借料の計算方法は明らかに不合理であると考えております。

○東村委員 外形標準ということを考えれば、付加価値はそのようにとらえるんだ、こういうのはよくわかるんですけれども、金融業はいいとしても、不動産貸付業はこれをやると二重にやられる可能性があるので、ちょっとその辺のことは、私としてはいかがなものなのかなと思うわけでございます。
 その上で、先ほどもいいました外形標準課税の問題なんですけれども、今、何かこの外形標準課税が改めて出てきて、応益課税だ、応益課税だと騒いでいるわけなんですけれども、もともと戦後のシャウプ勧告では、要するに地方税というのは応益課税なんだ、こういった議論があって、そういう勧告がされて、そういう方向で進もうとしたんですよね。ところが、要するに日本経済が右肩上がりでどんどん上がっていくから、せっかく上がっているのに取らないのはおかしいということで、無理無理応能課税にしたという、これも本当に理屈に合わない政策的な議論で、不景気になったらやっぱり応益だと。これは本当に税の考え方に首尾一貫性が全くないなと、これは多くの人も指摘をしておりますけれども、ただ、やっぱり原点に戻るんならば、恐らく応益課税なんだろうと私も思います。やるんだったら、これはきちっと今後、理論構築をしていかないと、また景気がよくなってきたら応能に戻るというんだったら、これはやめた方がいいと思います。その辺のきちっとした先を見据えた、やはり将来を見据えた議論をしなきゃいけないんだろうなと思います。
 ようやくここに来て四分の一、特に資本金が基準として一億円以上の企業にこの外形標準を課税して負担をしてもらう、こういう話になっています。これは一億と区切ってくれたことに関して、私はよかったなと思っているんです。というのは、資本金一千万だとか二千万の中小企業にこれをやられると、中小企業はかなり打撃をこうむるわけでありまして、ここは一つの線としてありがたいなと思ったんですけれども、資本金の基準というのがあるんですね。これ、一億円で一つのラインを引きました。これを読んでいて、明らかに資本金で区切っているなって。これは基準としてはいいことなんですけれども、大企業は別にして、ちょうど一億円ぐらいの資本金がある企業というのは、今かなり伸びてきている企業で、賢い人はどういうことをするかというと、--資本の調達の仕方に、ご存じのように二通りあると思います。資本金で出資をしてもらう、それから借り入れをするという方法。普通は銀行から借り入れをするんですけれども、個人で今どんどん伸びている会社というのは財産を持っていまして、本来、出資をするわけなんですけれども、出資をすることによって一億円を超えてしまう。ちょうどこの一億円というのはいろんな税の境目になっている基準でありまして、一億円を超えてしまうのでどうしているかというと、賢いところはみんな社長の個人からの借入金にしているんですね。借入金にすることによって、調達する源泉は同じです。負債にいくか資本にいくか。要するに貸方にいく項目は同じですので、調達源泉は同じですから、賢いところはみんな社長からの借入金にしているんです。一億円にいかないようにしているんです。
 ここに、金融庁の中小企業の金融マニュアルというのがあるんですけれども、ここを読みますと、社長や代表者からの個人等の借入金については、原則としてこれを当該企業の自己資本相当額に加味することができるものとするということで、金融検査のチェックの段階では自己資本に入れてくれているわけです。逆にいえば、助けてくれているわけなんですね。そういう実態を金融庁はよく知っていますから、中小企業の場合は社長個人からの借入金は、これはいわゆる会社の体力としてみなしてあげましょうよと、資本金に入れましょうよと、こういったことを金融庁は中小企業の金融マニュアルではわざわざやってくれているんです。
 税という部分でわかりやすいように、資本金でやっているんですけれども、一億の資本金になって、一生懸命この外形標準を払っている人、こういう人たちもいるわけなんです。中にはそうやって知恵を使って、社長個人の借入金でとどめておいて、調達源泉は同じですが、それだったらひっかからないということで、下がっている人もいるんですね。
 公益法人の寄附金課税の場合なんかは、要するにみなし資本金というのを算定するわけなんですけれども、そういったように外形標準においても、やはりまじめに努力をしている人がお金を払って、中にはそうやって知恵を絞ってやる。これを世の中には節税という人もいるかもしれないんですけれども、私はいかがなものなのかなと。こういう算定の段階において、外形標準でも、片や救って、片や知恵を絞っていれば何とかなる、一生懸命努力している人もいる。さっき、不公平感といいましたが、こういうことをなくすためにも、やはりみなし資本金という概念をとらないと、本当の意味での外形標準というのはきちっと算定できないんじゃないか、手落ちになるんじゃないか、このように思うわけですけれども、いかがでしょうか。

○川村税制部長 外形標準課税の適用対象の区分につきましては、資本の金額または出資金額が一億円を超えるかどうかとされておりまして、この資本金または出資金の定義は税法上なされておりませんで、例えば会社の資本は、商法の定めるところによりまして、発行済み株式の発行価格の総額とされております。したがいまして、発行済み株式以外のものを資本金とすることは、税法上も商法上も想定されておらないというふうに考えざるを得ませんで、みなし資本金の概念を地方税法に持ち込むことは現状では困難ではないかと考えております。
 しかしながら、委員ご指摘のような例が数多く存在するとすれば、税負担の公平の観点から問題なしとすることはできませんので、今後の研究課題とさせていただきたいと存じます。

○東村委員 最後に地方交付税の問題について二点ほどお伺いして、終わりたいと思います。
 この地方交付税を受けなければ財政が成り立たない、こういう自治体が全体の九五%ある、これは明らかに異常な事態であります。これが何か今までの日本はよしとされてきたんですけれども、これは明らかに異常な事態であると私は思います。少しでも多くの自治体が、地方交付税を受けずに経営できるよう自立すべきであると考えます。
 特に財源の乏しい零細な自治体は、非効率なことが多いんですね。このままほっといて地方交付税の改革をするといっても、これは絶対改革できません。ある意味で、これはどんどんどんどん市町村合併を進めていかなければ、本当の意味で地方交付税を、いわゆる受けない、自立した自治体をつくるということは無理なんだろうなと思っておりますし、もっともっと国は、この三位一体の議論とともに市町村合併の問題、もっといえば、都道府県だけでなくて、道州制の議論の問題も含めて一緒になってやらなければ、この地方交付税の問題というのは解決しないんだろうなと思っております。
 そういう中で、私はぜひとも一定の財政的な規模を市町村は、東京もそうです、維持すべきじゃないかと。これによって行革も進むわけなんですね。首長も減り、議員も減り、申しわけないですけど、行政の役人さんも減る。まさにこれが一番行革にもなるし、地方交付税の、本当に自立する財政自治体をつくるという流れにもなるんじゃないかと思うんですけれども、この点について都としてはいかがなんでしょうか。

○川村税制部長 市町村合併につきましては、市町村の行政サービスの維持向上、行政規模の拡大、効率化の観点から、自主的な合併を推進し、もって市町村の行政基盤を強化することとされております。この市町村合併の推進の結果、平成十二年四月現在で三千二百五十二あった市町村の数は、既に現在三千を下回りまして、合併特例法の期限の切れる平成十七年四月には二千八百五十台になるとされております。委員ご指摘の市町村合併は、この五年間で約四百の市町村の数を減らす合併が進んでいるところでございます。

○東村委員 私たちの住んでいる三多摩も、市によって規模が本当にまちまちなんですね。これは東京都においても、今、若干進められているところもありますけれども、まだまだやらなきゃいけないところがたくさんあると思います。その辺のことも踏まえて議論をしていただきたいと思います。
 そして、最後に、この地方交付税が第二補助金化されている、こういわれております。これはもう明らかに、恐らく補助金よりも最初にここに手をつけていかなきゃいけない問題だったにもかかわらず、今回、三位一体改革では全く手をつけられませんでした。地方税財政改革を進めるに当たっては、この地方交付税の見直しが最重要課題だと私は考えます。
 そこで、最後に局長の意見を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。

○山口主税局長 地方交付税ですけれども、これは、地方税のみによっては標準的な行政水準を維持することが困難な自治体にとって、地方財政を支える重要な財源であります。しかしながら、今、委員ご指摘のように、実態は答申に書いてあるとおりでございます。
 まして、地方交付税が、答申にも指摘されていますように、近年その本来の機能を超えまして、国の経済政策や景気対策のために導入されたという側面があり、その結果、既に破綻状態にあることは否めない事実でございます。
 このため、国の政策誘導などで累積した過去の債務の償還につきましては、国が責任を持って解消策を図るべきだというふうに考えております。その上に立ちまして、政策誘導を排除した簡素で透明性の高い制度としなければならないというふうに考えてございます。
 委員ご指摘のように、地方交付税につきましては、三位一体改革の中で税源移譲とあわせて抜本的な改革を行うことが不可欠でございまして、そうした改革を行うことによって自治体の財政力を高め、ひいてはそれが真の地方分権の実現に、可能につながるものと認識してございます。
 今後とも都議会の皆様のご協力をいただきながら、地方分権の実現に、着実に進めてまいりたいと思います。

○松村委員 この都税調答申について、我が党の委員もこの税制調査会委員に入っておりまして、今度の答申についても基本的な見解はそこで述べておりますので、ここで新たに繰り返すことはいたしませんけれども、若干一、二伺って、意見も述べたいというふうに思うんです。
 まず最初に伺いたいことは、国の三位一体改革の現状は、知事もるる発言しておりますけれども、補助金削減先にありきの数字合わせに終始し、肝心の税源移譲が見えてこない、こういうことですけれども、この都税調答申でも、今後の動向をどういうふうにとらえて--ここでは今までるる検討してきたわけですけれども、今日ここで答申ということで、そういう三位一体改革にあわせて税源移譲をどうとらえて提言しているのかを、ちょっとここでまた改めて伺いたいと思います。

○川村税制部長 都税調答申におきます三位一体改革に関連しての税源移譲についてでございますが、この答申は、地方税財政制度の改革、特に地方財政の自由度を高めるという観点から税源移譲を進めるべきだとしておりまして、個人住民税と地方消費税への税源移譲により、税源の配分を国と地方が一対一程度になるように、こういった観点から提言されているところでございます。

○松村委員 それが今の国のやろうとしている方向ということで、要するに合致した--適切な提案がどうかということ、我が会派なんかはすごい疑問というか、問題意識があるわけですけれども、例えば、今も住民税のフラット化がありました。結局、五%から一〇%、低いところが上に合わせられる。または一三%が一〇%と、今まで高いところの方がそれだけ減税になるという不公平税制。
 そういう中で、今回の答申は、今も議論がありましたけれども、低所得者への税負担、それが増にならないように極力回避する意味で、今、答弁がありましたような、かつての税額控除を行うべきだとか、この答申の中にもそのことに触れていることはわかりますけれども、しかし、いずれも、緩和措置を講ずるべきといっても、これは国ですよね、やることは、国というか。ところが、今、国における税制の動向はといったら、これまでにも配偶者特別控除ですね、全部じゃありませんけれども、大部分のあの上乗せ部分、これも廃止するとか、それから老齢年金とか、年金の二つだとか、そういうことが既に決められて、大きな影響がこれから出てくる。今度いよいよ定率減税ですよね。恒久減税といわれたものも二年間で廃止、縮小というふうに、どんどんそういう意味では負担をかけてくる。
 同時に行われた法人税、特に大企業、私たちからいえば、大所得を上げているというか、大金持ちですか、そういうところには、今度の同時見直しというか、それは打ち出されていない。これだけ大きな企業が収益を上げていながらも、どこに負担増を求めるかといったら、やはり国民というか、庶民というか、より弱いところに重い税制がくるという動向を見れば、うかつに乗れないというか、こういう住民税のフラット化というようなことで、そうすべきだといっても、今の国の動向からいって、果たしてこういう提言がふさわしいものなのかということが、その一点。これは極力見守らなきゃいけませんけれども、果たしてそこに求めることが正しいのかどうか。
 もう一つは、地方消費税ですよ。五%だから、この増税はいっていないと。一対一だから、二・五%、二・五%で、確かにこれによって三兆七千億円ですか。しかし、これも国の動向は、いよいよ政府税制調査会も定率減税を一つの、露払いという言葉をたしか会長がいっていたと思うんですけれども、それで次にはもう小泉首相がやらないといっていたこの期限、二〇〇七年度、ここには大体二けた増税という既定路線をどんどん進めている中で、しかも首都の東京が、その唯一の地方のというか、唯一の税源移譲の財源は地方消費税だと、その負担割合をもっともっと高めろといって、いや、都税調は増税はいいませんよ、いってませんよというけれど、しかし、明らかにそこに、補助金とか地方交付税を削減した、その分を都民においても持ってこい--持ってこいというか、よこすんだということになってきたならば、やはりそういう今の消費税の引き上げに逆に手をかすというか、そういう流れを大きくつくっていくんではないかということから見れば、そういう方向に果たして--税源移譲ということではすべて一致しているわけですよ。恒久的なね、地方のやっている仕事の割合に対する、きちっと財源をよこせという、そこでは一致しているんですけれども、その中身をどういうところに求めていくかということにおいては、やはり都税調答申については私たちは大いに意見があるというか、違う見解だということも、既にこの都税調の中では我が党委員からも指摘しているので、この点もちょっと私の方からもいっておきたいと思うんです。
 そこで、一つ、例えば、法人税の超過課税ですよね。先日、私、大阪にも調査に行ってきたんですけれども、大阪でもやっぱり法人税、目いっぱいかけているかどうか、ちょっと私そこまであれしなかったんですけれども、やっぱり超過課税をかけているし、これだけ法人の企業収益が上がってきているわけだから、そういう検討は都税調でも行われなかったんでしょうか。今ここでちょっといきなりだけど、それがどのぐらい、もし超過課税の目いっぱいかけたら、新たに東京都の税収になるのかということ、今、直接ちょっと数字を聞くわけですけれども、お答えできるんだったら、どのぐらいの東京都への増税になるのかもあわせて、そういう検討が都税調で行われていたのかどうかということと、もしそういう超過課税をした場合にはどうなのか。

○川村税制部長 まず、法人二税の超過課税でございますが、法人都民税、法人道府県民税でございますが、一・二倍まで超過課税は可能でございます。東京都はその一・二倍まで課税しておりまして、八百五十億円程度の超過課税の税収がございます。それから法人事業税でございますが、制度上一・二倍まで超過課税が可能でございますが、東京都は今、一・〇五倍で課税してございます。この一・二倍までの数字につきましては、今ちょっと手元にございませんので、ご容赦いただきたいと、後ほどお伝えさせていただきたいと思います。
 それから都税調の検討の中では、この超過課税について特段の検討は、本年度につきましてはやってございません。

○松村委員 決して特別のことでもないし、そのことが、大企業だとかそういうところをいじめるとかいうことじゃなくて、やっぱり体力があるわけですから。ないときは、そういう経過でまた検討するとかいうこともやぶさかじゃないんですけれども、今日の事態でこれだけ財源不足で苦しんでいるときには、法的にも認められている、しかもほかの自治体でもやっている、そういう方向もぜひ検討するべきだし、決して少なくない財源ですよね。そういうのもやはり一つは検討すべきじゃないかということ。
 それからもう一つは、例えばガソリン税や揮発税の道路特定財源、これは残念ながら、我が党は反対したけれども、都議会からも一般財源化について反対だというけど、私は、大多数の国民の求める方向は道路特定財源の一般財源化で、年金も含めて、そういう使い方が今大きく問われている。そういう点では、その一般財源化による東京への税というようなことも、私はやはり検討して求めるべきではないかと。
 環境税、炭素税もいろいろ私たちも見解があるところですけれども、それもやはり、例えば今のCO2や地球温暖化だとか、東京でもヒートアイランド現象を起こす、こういう中で、そういう環境に対する新たな取り組みというのが必要ですけれども、大きなその原因をつくり出しているのはどこなのかということでは、削減目標を義務化ということが検討されても努力目標になる。そういう肝心なところを押さえないで--何か今いった国民というんですか、自動車は今みんな持っていますからね、そういうところの方々に、決して自動車とか、そのほか、今、ぜいたくだとかそういうことじゃない面がある中で、そういう点でのあり方についてはもっと慎重にというか、十分検討し、やっぱり一番の大もとというか、そういうところへ適切な負担を求めるような検討、取り組みが必要なんじゃないかというふうな意見も申し上げたいと思います。
 最後に、そして今、議論があった地方交付税というか、義務教育の問題もありましたけど、今の三位一体改革の中で、やっぱり同じ日本の国民として、どこに住んでいようがというか、等しいそういう生活や暮らしができるようなものを維持できるというか、それは、それぞれの自治体が何を、そういう財源を使ってやるかはあれとしても、やっぱり一定の国民の暮らしや生活やさまざまな町の住環境などにとって、地方交付税というのは大きな役割を果たしている。これがいろいろゆがめられて、莫大な借金になっていったりとかいうのも、やはりこの運用の仕方じゃありませんけれども、国に従った一定の開発だとか何かをやれば、そういうところに地方交付税をより重くやるというような、そういう今までの国の姿勢というか、取り組みが、さんざん地方交付税を弊害化させたり、ゆがめたり、破綻の方向へ来たという、そのことが問題であって、地方交付税制度全体をなくせばいいということは、今の補助金、国が当然責任を負うべきナショナルミニマムですか、もっと拡充しなければならない国の補助金ですら放棄するという立場から、この補助金問題と地方交付税については、私たちは一概にそれをなくして税源さえという三位一体改革の方向は問題があると。
 ましてや今、市町村合併、これもいろいろな考え方があると思いますけれども、もちろんそこに住む住民の主体的な選択にかかっているということは、私たちが申すまでもないと思うんです。その方々が望めば、今さまざまな住民投票なんかが行われていますけれども、そういう選択もあると思います。しかし、今、国が押しつけて市町村合併をやらせる。それは、国の財源負担を軽くするのと、そういう自治体を合併させて、やっぱり広域的な大きなねらいは開発ですよ。そういう小さいところが寄り集まってやるという、そういう流れの中での上からの押しつけ的な市町村合併についても、私たちは厳しく指摘しておきたいというふうに思っております。
 以上でございます。

○執印委員 それでは、私は、この東京都の税制調査会、平成十二年度から始まりましたが、五年たったということです。これは副題というんでしょうか、平成十二年度には二十一世紀の地方主権を支える税財政制度、平成十三年には地方における新しい環境税制の構築、平成十四年度には都市再生のための税制のあり方、平成十五年には課税自主権の確立に向けて、それからことし、十六年が税源移譲を中心とした地方税制改革ということで、それぞれ答申が出されているわけです。
 東京都というところが、こういった調査会を持っているということについては、分権の時代に、すばらしいことだというふうには考えておりますが、この都税調がこの五年間、国にどのような影響を与えたというふうに総括していらっしゃるか、まず、この点を伺いたいと思います。

○関口参事 東京都税制調査会は、地方主権の時代にふさわしい地方税制及び国、地方を通じました税制全体のあり方につきまして、都合五回の答申を提出してまいりました。平成十二年度には、所得税と消費税の地方税への移譲によりまして、国税と地方税の税源配分をおおむね一対一とすることについて、公的な機関といたしましては全国で初めて提言を行いました。その後、国の骨太の方針等で、都税調答申とほぼ同様の税源移譲が提言されるなど、今日の地方税制改正論議の突破口を切り開いてきたと考えております。
 このほか、全国自治体の法定外税創設に影響を与えた宿泊税や、現在、税制上の重要課題となっております環境税制に係る提言など、国や他の自治体の施策の先駆けとなる提言を行ってまいりました。

○執印委員 今お話にありましたように、東京都という大きな自治体ならではの役割も果たしてきたというふうに考えておりますし、地方みずからが課税していくという、そういったことも実際に行ってきたということだと思います。その点については評価もするわけです。
 その中でも特に、少子高齢化社会について今回新しく触れられているということだと思います。少子高齢化社会は大きな課題ですが、あるところで伺いましたところ、ある学者さんが計算したところ、今の出生率で進むと、二三〇〇年には日本人は七人になるという計算がされているそうでございまして、もう絶滅してしまうさまざまな動物などが頭をよぎりまして、そういう状況なのかなというふうに思いましたが、それも国のつくり方、社会のありようで、一つの選択ですから、それも仕方がないかなというふうに私は思っております。
 今回、高齢者の対策、それから少子化について、NPOについては、これまでも何度かこの都税調でも、税制についても言及されていたと思いますが、今回どのような形で問題解決のアプローチを出されたのかを伺います。

○関口参事 我が国は、現在の他の先進国に例を見ない速さで少子高齢化が進んでおります。これに伴いまして、社会保障のあり方など諸制度の再設計が求められておりまして、税制におきましても、少子高齢化対策を組み込んでいくことも必要であると考えております。
 そのような中で、本年度の答申では、少子高齢化対策といたしまして、二点の新たな提言がなされております。一つは、今後高齢化が進展し、ますます重要性が増していく地域福祉の充実に向け、その担い手である個人や団体に対し地域の住民からの寄附が促進されるよう、地方税独自の寄附金控除の創設が提言されております。
 また、少子化対策といたしまして、新たな税額控除制度の創設とともに、税額控除の適用を受けることのできない者に対します個人所得課税のあり方が検討されるべきとされております。

○執印委員 少子化対策については、いろんなところでいろんな議論がされていますが、私どもとしても、その精神論だけの議論では、とても若い人たちが子どもを持とうというふうに思えないだろうと思っておりますので、地球環境の整備、それから安心・安全、そして子育てしやすい税制度や手当というものが必要だというふうに思います。
 また、私はずっと子どもの権利の問題をやっておりますので、子どもといってもいろいろな家に生まれる子どもがおりますし、子どもは生まれてくる環境を選べないわけですので、生まれてきた子どもそのものに生きていける保障を社会全体がしていくという視点からも、ここで述べているのとは少し違うのかもしれませんけれども、子ども自身への手当というものもこれからは必要になってくるのではないかというふうに思っております。
 また、高齢化の対策ということで、ここでNPOが語られておりますが、高齢化対策などというふうになっておりますので、決して高齢化対策だけにNPOが必要とされているというふうには受けとめられていないというふうに思いますし、さまざまな観点でこれからNPOとの協働というのが求められていくと思いますので、こういった寄附金控除というものについてはぜひ積極的に進めていただきたいというふうに思っているわけなんです。
 そういう思いも含めまして、今後、都税調の見解をどのように国に働きかけていくのかということとともに、この間さまざまな視点から議論はしてきて、国にもいってきたわけですが、この国が本当に大きく変わることができるのだろうかというような、そういった気持ちもあるわけでございまして、この都税調、五年たちましたが、今後どのように展開していくのか、その点について伺います。

○関口参事 都税調の答申内容につきましては、これまでも国への提案要求に生かしてきたところでございまして、このたびの答申につきましても、税源移譲や法人事業税の分割基準などにつきまして、国に提案要求したところでございます。また、それ以外の提言につきましても、今後、都の政策等を踏まえつつ、地方税、税制見直しの動向などに対応して、適時適切に国に働きかけられるよう検討していく予定でございます。
 都税調の五年間にわたります答申が、都はもちろんのこと、国や地方自治体の地方税制に与えた影響は大きいものと考えてございます。今後、いまだ実現していない税源移譲や固定資産税のあり方など、税制における課題は山積みしておりまして、都税調におきましても、今後とも、これらを含めたあるべき地方税制度について検討し、提言していくという、その役割を果たしていくものと考えております。

○執印委員 意志のあるお答えをいただいたわけですが、三位一体改革についても、この首都圏で考えても、それぞれの立場があってなかなか難しいということは、この間の流れで承知しているわけですが、知事も先日、本会議でも道州制についても触れていたというようなこともありまして、この税制改革についても、この間もやっていらっしゃるとは思いますが、東京都だけで国に要請するんではなくて、首都圏の他の自治体と共同して、全国を視野に入れながら提案していく必要があるというふうに考えておりますが、その点についてはどのようにお考えかをお尋ねいたしまして、質問を終わります。

○関口参事 地方税制改革に向けました首都自治体間の連携についてでございますけれども、平成十四年度には七都県市におきまして、道路の利用実態を反映した地方道路譲与税の配分基準の見直しについて国に要望を行いました。本年度は八都県市で、所得税、消費税など基幹税を基本とした税源移譲を国に提言いたしましたところでございます。
 ご指摘のとおり、税制改革の実現には、地方自治体間の強力な連携も必要であると考えております。今後も、八都県市首脳会議の場などを通じまして、首都圏の自治体間で適切な連携協力を図り、地方税制改革に努めてまいります。

○倉林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○倉林委員長 ご異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で主税局関係を終わります。
 この際、議事の都合により、十分間休憩いたします。
   午後二時三十四分休憩

   午後二時五十分開議

○倉林委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 これより収用委員会事務局関係に入ります。
 報告事項、収用制度活用プランに対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○秋田委員 私は、十月に行われました事務事業に関する質疑において、収用制度の意義や収用委員会の役割、必要性についてたださせていただきました。この質疑の中でも、収用制度のさらなる活用を強調させていただいたつもりでございますが、そういったことを踏まえて、今般、収用委員会事務局において収用制度活用プランを作成したことは、まさに大いに時宜を得たものであると、そう考えております。収用制度の活用が進んで、東京のまちづくりにさらに貢献していただくことを期待してやまないところでございます。
 この点につきましては、昨日の一般質問におきまして、我が党の倉林委員長が質問させていただきましたが、収用制度活用プランと今後の取り組みについてお伺いさせていただきたいと思っております。
 まず最初に、制度活用の実態についてお尋ねさせていただきたいと思います。
 事務事業で説明もありましたけれども、法改正や指名委員の導入などによって手続が迅速に、また効率的に行われるようになったことは、皆様方はご存じのとおりだと思いますが、一方で、制度のメリットや趣旨が一般都民の皆様方にはなかなか理解されず、その結果として区市町村もなかなか活用しないといったところがあるのかなと思っております。
 特に、区市町村からの申請は毎年度一割にも満たないとも聞いております。そこで、活用されない理由は何なのか、また、収用制度に対する都民や権利者の意識についてお尋ねさせていただきます。

○井戸審理担当部長 収用制度の活用されない理由について、収用制度につきましての都民とか、あるいは権利者の意識でございますけれども、収用委員会事務局では本年九月に、都内で公共事業を実施しております区市町村、あるいは鉄道事業者等を含みます六十八団体を対象にしまして実態調査を行いました。この調査によりますれば、制度が活用されない主な原因としましては、区市町からは、権力的イメージが強い、首長等の方針、あるいは制度や手続に関するノウハウが不足しているなどの理由が挙げられてございます。
 また、権利者や都民の意識でございますけれども、東京都収用委員会がこれまで取り扱ってきました事件等で出された意見などを見ますと、制度自体になじみが薄いことに加えまして、収用手続が複雑であることや、手続に時間を要するということが、制度が理解されない理由として考えてございます。

○秋田委員 ただいまご答弁もありましたけれども、区市町村や、あるいは都民の方々の方で、収用制度や収用委員会についての理解の不足があるのかなという思いがよくわかりました。今回のプランは、このような状況を踏まえて策定されたんだなということも、またよくわかりましたが、そこで、プランの内容について今度はお尋ねさせていただきたいと思います。
 このプランは、「収用制度のあゆみ」から始まって大変簡潔にまとまっていて、複雑な収用制度を理解する上では大変よくできたものだなというふうに思っております。
 そこで、制度の活用に向けて、三つの柱から成る具体的な行動計画が示されていますね。その中の第一番目の柱、区市町村への支援の働きかけについて、具体的な内容と実施の時期について伺います。

○井戸審理担当部長 まず、キャラバン隊によるPR活動でございます。これにつきましては、収用制度につきましての理解を深めていただくとともに、制度活用の促進を図るために、区市町の首長さんを訪問し、制度の趣旨ですとか、あるいはメリットなどについてPR活動を行うものでございます。既に数区市町をご訪問させていただきまして、地域の実情ですとか課題を伺うなど、お話しさせていただいております。
 次には、区市町の担当実務者のスキルアップを図ってまいります。収用制度の経験の少ない区市町の担当者がスムーズに収用手続を進められるよう、制度の仕組みですとか、あるいは申請の手続等に関します専門研修や出前講座などを実施し、知識、技術の涵養を図ってまいります。
 また、さらに事務局内に相談支援センターを設置しまして、収用制度に関します相談ですとか支援を行ってまいります。窓口では、区市町等の起業者によります裁決申請手続が円滑に行えますよう、きめ細かい支援を実施するとともに、制度に対します権利者からの相談ですとか、一般や都民からの問い合わせに対しても十分に対応してまいります。
 なお、いずれの取り組みにつきましても、原則として十六年度中に実施する予定でございます。

○秋田委員 今ご答弁の中で最後に、いずれの計画も十六年度中に行うというお話がございましたが、そういった待ちの姿勢じゃなくて、積極的に打って出るという姿勢は大変高く評価させていただきたいと思いますし、また、計画的におやりになることを強く望みたいと思います。
 また、一方で都民や権利者の方もいるわけで、収用という言葉を聞くだけで、何か強権的なイメージがあるせいか、アレルギーを起こす方もいらっしゃるわけでございますが、そういったイメージを払拭するためにも、都民や権利者の方々にさらなる理解を得ることが必要だと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。(「名前が悪いよな、収用というのは」と呼ぶ者あり)

○井戸審理担当部長 制度の周知を図ることによりまして、広く収用制度に対します都民の理解を深めることにつきましては、副委員長ご指摘のとおり、大変重要であると考えております。
 特に、従来、収用に対するマイナスイメージが強く持たれていたことから、この活用プランはそういったことを改善する意味でも作成したものでございます。
 具体的には、事務局に設置いたします相談支援センターでは、区市町村への支援を行うとともに、一般の都民や権利者の方々からの相談や問い合わせに対してもきめ細かく対応してまいります。また、わかりやすいパンフレットを作成することや、収用委員会のホームページ内に新たに意見箱を設置することなどによりまして、収用制度が都民や権利者にとりまして、まちづくりと関連した身近なものであることが理解されるように努めてまいります。

○秋田委員 今、桜井大先輩から、収用という名前が悪いよな、なんていう声も聞かれましたが、確かに収用というと、何か強制収用のイメージがあるせいか、今ご答弁いただいたとおり、しっかりPRをしていただければと思います。
 最後に、実際に自分の土地や家が公共事業や収用の対象となると、やっぱりだれでも戸惑ったり、不安を覚えたりするというのは普通のことだと思うんですね。ですから、なおさらしっかり制度の内容や仕組みといったものを懇切丁寧に説明することが、イメージを払拭する意味でも重要なのかなと思っております。
 次に、第二の柱についてなんですが、ここでは、国や都、公団等への働きかけとして、主要な事業における調整などをうたっておりますが、具体的な調整などの内容について教えてください。

○井戸審理担当部長 具体的な調整内容につきましてでございますけれども、広域的な幹線道路ですとか、あるいは再開発事業の都市改造など、東京のインフラ整備を担う大規模事業につきましては、都内の各所で展開されておりますけれども、複雑な問題が少なからず生じてございます。特に、例えば再開発事業ですとか、鉄道の連続立体交差事業など、異なる事業が同一事業区域内で競合するような場合には、事業のスケジュールや損失補償の取り扱いなどの問題がございます。これにつきましては、単に事業を施行する側の問題ばかりでなく、事業の契約にかかわり実際に移転を余儀なくされる権利者にとっても極めて重要な問題だというふうに考えてございます。
 このため、これらの事業につきまして、任意の用地買収から収用手続に移行する場合、後日の収用委員会によります裁決手続に混乱が生じることのないよう、裁決申請までの諸手続につきまして、実務的、専門的な観点から事前の相談や調整を行うものでございます。

○秋田委員 東京というのは大きな都市ですから、さまざまな事業が行われているのが実際だと思います。しっかりと情報収集に努めて、そして必要な相談と調整を行っていただきたいと思っております。
 最後に、三つ目の柱について質問させていただければと思います。
 この柱の三つ目ですが、事件処理の適正化、効率化を掲げております。この中で、事件処理の短縮化を図るべく、十カ月程度の処理期間を目標として設定をしておりますが、このプランによって区市町村の活用が図られて申請件数が伸びても、肝心の事件処理に時間がかかったんでは、なかなか効果といった観点からは薄れてしまうのかなと思っております。ですから、この十カ月程度といった目標を掲げる、そして達成するということは極めて重要なことだと思うんです。
 そこで、最後に、この目標も含めて、活用プランの取り組みの決意を局長に伺わせていただきます。

○嶋津収用委員会事務局長 収用制度活用プランは、私ども東京都収用委員会におけるこれまでの取り組みの実績を踏まえまして、今後、起業者と権利者に対する公正な手続の確保を基本として、幅広い収用制度の周知と適切なその活用に向けて策定したものでございます。
 その中で、ご指摘のように、時間というのは大変大事だというぐあいに考えてございまして、特に、役所というか、起業者側にとりましても、時間がたてば事業費はどんどん膨らみますし、その分、それはとりもなおさず税金を食ってしまうということになります。また権利者にとりましても、例えば時間がたてば土地の価格が下がるといったようなこともございまして、そのため、権利者みずからが早期解決を求めて裁決の申請請求を行うという場合も、全体の事件数の約半数を占めてございます。そんなことの中から、収用手続への権利者、住民の期待も大変強いものがあるというぐあいに考えてございます。
 いずれにしましても、時間短縮の目標はきちっと達成するということを私どもお約束申し上げるとともに、プランで示しました他の政策につきましても早急に実施し、収用制度の活用促進によって、都民、権利者の適正な権利保護を一方で進めるとともに、首都東京のまちづくりに貢献できるよう、事務局一丸となって頑張ってまいりたいと思ってございます。よろしくお願いいたします。

○森田委員 私もこのプランについて何点か伺いたいんですが、もう一般質問、それから今の質問等で随分中身が出てきましたので、できるだけダブらないように質問したいと思います。
 収用委員会がまず、こういう報告書、プランをつくったということは非常に画期的なことで、私も議員になって十六年近くなりますけど、過去になかったんではないかなと。そういう意味で、敬意を表して質問したいと思います。
 ちょっとさっきの話にダブるかもしれませんけれども、このプランの「はじめに」というところに、こういうふうに出ているんですね。「収用制度の果たすべき役割は益々重要になってきている」ところが「一方的、強権的というイメージがつきまとい、収用制度に対する正しい理解や認識の妨げになっている」。これが現状抱えている収用委員会の課題かと思うんですが、この辺について収用委員会としてはどんな見解を持っていらっしゃるんでしょうか。まず、そこをお伺いしたいと思います。

○井戸審理担当部長 強権的なイメージについてでございますけれども、まず、公共事業の用地の取得につきましては、ご承知のように、起業者と権利者の話し合いによる交渉に基づきまして取得をされるのが原則でございます。しかし、起業者と権利者の交渉が行き詰まりまして長期化したような場合には、速やかに第三者機関でございます収用委員会に解決の場を移しまして、収用制度を活用することによりまして紛争の解決を図ることが重要であるというふうに認識してございます。
 収用手続を進めるに当たりまして、特に損失補償など裁決にかかわる事項につきましては、起業者と権利者の双方から、審理や意見書を通しまして意見を十分に聞くなど、公正な手続となるよう取り組んでございます。
 このような収用手続を用いまして紛争を早期に解決しますことは、起業者だけでなく権利者にとっても大きなメリットがあるというふうに認識してございます。

○森田委員 この収用委員会の役割の重要さ、確かにこれから、圏央道等の問題でも収用委員会がいろいろ仕事をされる場面がふえてくるんではないかなというふうに思うんですが、この二ツ塚処分場の事件のときに、トラスト運動によって権利者が数千名になった。聞くところによると、対象地域が四百六十平米のところに土地共有者というのが二千八百名。これは簡単に計算しただけで、私、計算したら、千六百平方センチ、四十センチ四方を平均して一人が持っている。こういうことがあったりして、そのために、本来この買収に支払うべき金額というのが五千七百万だったのに対し、ここなんですけど、事件処理に十億円を超えるお金がかかった。これはちょっと異常なことじゃないかなというふうに思うんです。
 これを受けて、平成十三年に法改正が行われたというふうに聞いているんですが、この法改正によって--さっきいったように、これから圏央道等の問題が出てくると思うんですが、法改正によってこういう問題がなくなるのか、どういうふうに変わってくるのか、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

○井戸審理担当部長 平成十三年の土地収用法の改正につきましては、二十数年ぶりの改正ということで、大きな改正でございました。
 改正の主な内容でございますけれども、事業についての意見につきましては、収用手続の前に行われます事業認定の手続で十分述べることが保証されました。
 また一方、収用手続では、そのような主張内容を制限する規定が明文化されました。
 また、多数の権利者がいる場合に、代表の当事者を選定勧告できるような制度が創設されました。
 今述べましたのは、主張内容の制限につきましては、より具体的には、事業内容に対する不服に関することですとか、そういった収用委員会の審理と関係がない事項につきましては、意見書に記載すること、または口頭で意見を述べることができなくなったということでございます。
 本年に裁決に至りました圏央道の八王子ジャンクション事件では、この改正法にのっとりまして収用手続が進められましたけれども、その結果、権利者数が約二千名を数えたにもかかわりませず、二ツ塚事件の約半分でございます一年四カ月で裁決を出すことができました。
 今後とも引き続き、事件につきましては迅速な処理を進めてまいりたいというふうに思っております。

○森田委員 いろいろお話しいただいたんですが、ちょっと理解できないところがあるんですが、改正によって何ができなくなり、相変わらず何ができるのか。例えばトラスト運動は多分できると思いますけれども、それに対してどういう形での解決方法ができて、時間が早くなったのか、その辺をちょっと説明してください。

○井戸審理担当部長 収用法につきましては二段階の手続が行われてございます。
 一段階につきましては、道路ですとか河川等につきまして、その事業が収用法の対象になるかどうかにつきまして事前に認定をいたします。これは国土交通大臣または都道府県知事が認定します。それによりまして、その事業についての公共性ですとか必要性が認定されます。それは、国とか東京都知事の行政庁がそういった事業認定を行います。
 また一方、行政委員会でございます収用委員会は、それを踏まえまして出されました収用裁決の申請に基づきまして、損失の補償、補償額についてとか、あるいは土地の範囲ですとか、あるいは権利取得の時期、あるいは明け渡しの時期等について、収用委員会として審理を行い、裁決いたします。
 その二つの点につきまして従来混同されておりまして、収用裁決手続においても、事業の中身ですとか、事業独自の、やることにつきまして反対をする方もおりまして、そういったことで手続が混乱した例もございます。そうしたことを踏まえまして、平成十三年の土地収用法の改正に基づきまして、従来から行われておりましたけれども、そういったような区分をより明確にして、それに基づきまして審理を行って、結果として一年四カ月という短期間において審理が終わったということでございます。

○森田委員 多分、本来の裁定の審理ができると。今まではそうじゃなくて、裁定に入る前に、いろいろな反対運動等の意見が開陳されたりして時間をとられたということですよね。

○井戸審理担当部長 収用委員会が審理の中身で議論すべき内容以外のものが多々出されましたので、それで時間を食ったということでございます。

○森田委員 よくわかりました。ぜひ、そういうように。本来、それは権利者の権利もあるから、頭から、先ほどから出ているように強権的にやる必要はないですが、そういう反対のための反対、これはやはり収用委員会の場でやるべきではないなというふうに思います。
 それからもう一つ、キャラバン隊については先ほどの質問で出たので、もうダブって聞きませんけれども、キャラバン隊で、局長を先頭に幹部職員が行かれると。既にもう数区、もしくは数市伺ったということなんですが、その反応だけ聞かせていただけますか。区市の方がこのキャラバン隊に対して受け入れて、そして結果として何か効果があったのかどうか、この辺も含めて聞かせてください。

○井戸審理担当部長 個々の具体的な区市名については申し上げられませんけれども、数区市参りまして、基本的には収用委員会は常に、いわゆる申請が出てきてから動いておりますので、事務局が初めて出向いていって、話を伺って、区市の首長さんの方と直接お話をさせていただきまして、そういったようなことに関して少し驚かれているというようなことがございました。
 なおかつ、直接行きましたので、その区とか市の実態、例えばこういうような地域にこういったような問題があるというようなことを直接話を伺うことができました。そういった点では非常にメリットがあったというふうに思っております。

○森田委員 このプランが発表になっただけで、私も改めて収用委員会の仕事というか、それがわかったので、これは区市の方に説明することは十分に必要なことだなというふうに思います。
 ただ一つだけ、これはちょっと事前に話していなかったので……。
 先ほど、お昼休みにちょっと見てみたら、これは私の見方が間違っていないと思うんですが、東京都のホームページを見ると、まず、これは表紙ですけれども、細かいけれども、収用委員会を引っ張るところがないんですね。ほかのところ、例えば似たような第三者の行政組織ですか、監査委員というのは出ているんです。しかし、この収用委員会というのは出てこない。どこから探すのかなと。ホームページにあることは間違いないので、探すのにどうしたかというと、上の方にちょこっと「都庁のご案内」というのがあるんです。「都庁のご案内」というところをクリックすると各組織が出てきて、そこを引っ張ると、行政委員会として教育委員会とか選挙管理委員会とか出てくるんですね。ところが、行政委員会のホームページをそこで探して引っ張り出してみたら、残念ながら、行政委員会のホームページの表紙ですけれども、平成十五年六月五日にホームページ全面リニューアルしましたということが出ているだけで、これが出てないんですよね、どこにも。ほかの局だと、報告書等はすぐインターネット上にアップするので、これはちょっと収用委員会というのはおくれているなという感じがしたわけです。これは早急に、先ほどから話が出ているようにPRをしなくちゃいけない、キャラバン隊も派遣している、そういう中で、ホームページはもっと見やすくて、しかもホームページを充実させないといけないのではないか、そういうふうに思いましたので、これは意見として申し上げておきます。
 こういうことも含めて、先ほども局長、決意を表明していただきましたけれども、収用委員会というのは強権的な介入ではなくて、収用委員会そのものは第三者機関として公平性を持ったものであるというふうに思っています。そういう公平性を持った上での公共事業の円滑な推進、こういうことをやっていく役割だと思いますが、今後の取り組みについて局長のご決意を伺いたいというふうに思っています。

○嶋津収用委員会事務局長 最初に、先ほどのホームページでございますけれども、今回出しましたプランにつきましては、東京都全体のお知らせの中に当日発表してございまして、ただ、そのことと、私どものホームページの中には、先生のご指摘のとおり、まだ不十分、なっておりませんものですから、そのことをおわびしながら、今後の活躍にご期待いただければというぐあいに思ってございますが、それはともあれ、私ども収用委員会は、公共事業に関しまして偶発的に発生する事件への対応に追われ、どちらかというと、これまで待ちの姿勢のようなところがあったかと思います。しかし、迅速な紛争の解決が必要だということがございまして、事務局といたしましては、これまでの殻を少しでも破って新しい取り組みをしていく必要があるのじゃないかということで、今回このようなアクションプランをつくらせていただきました。
 先般、個別の話で恐縮でございますけれども、武蔵小山の駅前広場づくりの事件が早急に決着したことがございました。そもそもは武蔵小山の前の広場を確保するに当たって、そこにあるビルを、どういう形で理解して動いてもらうかということで、調整を地元の区がしてきたんですが、大変もめまして、もうほとんど顔も見たくないというほどもめまして、収用委員会の場にその話が持ち込まれました。そうしますと、同じ場所でお互いに意見をいい合って、ある意味では冷静に意見を交換すると、ああ、そういうことだったのかという話になりまして、一挙に和解が成立いたしまして、双方から喜ばれた。そういう風景を私なんぞ拝見いたしまして、こういう形で使えるツールとして収用制度というのがあるんだ、だったら、これは都民の皆さんに十分理解してもらって、これを活用しない手はないということで、今回のようなプランをつくろうということになったつもりでございます。
 いずれにしましても、副委員長ご指摘のとおり、今後とも、起業者と権利者の双方に対しまして公正かつ適正な手続の確保を基本として、土地収用制度の適切な活用と積極的な運用に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

○松村委員 まず、私は、財産権の保障というのは、本当に今の法治国家というか、大事な国民の侵してはならない権利の一つだというふうに思うんですよね。正当な手段によって築かれた財産というのは、それが公共の福祉とか、そういうために協力するというか、提供してもらうとかいうふうになるのは、その目的とか、多数のそういうことになるとか、公共の福祉が十分理解されて初めて、そういう協力とか、そういうのが進むというのが、私は本来の姿じゃないかというふうに思うんですよね。それで今までもずっと来ている。
 だれだって自分の個人に振り返ってみれば、自分が正当に築いてきた、しかもそれが公共の目的であっても、それに協力したりするというのは大変なことですよね。そこで住むことを変えなければならないとか、自分の一生にとっても大変なことであるから、それだけ、ある意味そういう公の手段による介入というのはなるたけ少ない方がいい。住民がそういうことでの納得や合意や、そういうもとで協力するというあり方。しかし、そういう点でもどうしても必要なものについては、最後の手段としてそういう土地の強制収用というのが、やはりそれは私も否定しないし、あり得るものだというふうに思うんですよ。
 確かにいろいろな事例はありますよ。例えばこの二〇〇一年ですか、平成十三年度の大改正が起きたのも、あの成田空港ですか、ああいうときの状況などが改正の動機というか、提案ということも聞いていますけれども、あれもその後の経過をたどれば、本当に当時の話し合いだとか手続だとか、いろいろなあれにおいてはいろいろな問題があったと、後で大臣も謝罪した。しかし、当時そういう混乱があったときに、いろいろな極左暴力集団じゃありませんけれども、介入したりして、いろいろな混乱が起きた。だから、そういうことを考えてみれば、第一義的にはそういう国民の一人一人の持っている財産権、これを尊重して、何のための公のあれかということを十分協議を尽くす。
 ところが、今でも往々にして、公共事業という名のもとで行われているさまざまな取り組みを見たら、裁判に持ち込まれたときの判例があるとか、いろいろなあれがあったり、途中でそれが見直されたりだとか、大体その公共事業、認可というか、そういう判断をするのも、今の例えば国だとか東京だとかそういう提案者、または民間の起業者がありますけれども、そういう、どちらかといったら裁量によって認可されていく。
 こういうことを考えてみた場合、私が第一に聞きたいのは、公共性とか公共事業の正当性といいますか、必要性というか、そういうのが妥当というか、担保されたものとして、例えば収用委員会というか、そちらの方に持ち込まれるというか、そういう判断ですか。ちょっと意味がよくわからないかもしれませんけれども……。

○井戸審理担当部長 先ほど発言させていただきましたけれども、私有財産権につきましては、ご承知のように、いわゆる近代国家が成立しまして私有財産権が認められますと、必ずどこの国においても土地収用制度が設けられてございます。基本的に憲法におきましても、私有財産につきましては、「正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」というふうに決められてございます。
 また、土地収用法につきましても、そういった仕組みで設けられたものでございます。
 ただ、やはり私有財産権につきましては重要なものでございますので、基本的に公正に、かつ適切に対応して手続を進めることが大事だというふうに思っております。
 理事ご指摘のように、事業認定につきましても、土地収用法の改正におきましてきめ細かく権利者からの意見を聞くような制度が設けられたところでございます。

○松村委員 決して皆さん方、東京都の収用委員会事務局に対して云々じゃなくて、これはそもそも法改正したときに、公共事業があって、それに対して、財産権をいろいろ侵すというか、財産権にかかわるいろんな権利を……(「侵しているんじゃないだろう」と呼ぶ者あり)そうですよ。抑制するものが伴うから、一体としていたものを、今度、事業認可というか認定と、収用手続というか裁決、どんどん強制的にというか、それが決まったらできるというものを切り離したけれども、本来一体のものであって、それでやるものを、そうならなかったところだから、皆さん方は、その切り離された部分で受け付けるというけれども、では、こちらのもとの事業認可というか、進めるその手続が、公共性といったら、全部それが正当性があるというか、必要性ということが判断されているものを、あなた方は受け付けるのかというふうになれば、そうはいえないわけでしょう。
 だから、さっきの喜ばれたという事例もあるかもしれませんけれども、どちらかといったら、収用手続をかけるというか、申請するのは起業者ですよね。(「起業者しかできないんだよ」と呼ぶ者あり)そうなんですよ。だから、そうしたら、まだ住民の合意がとれないとか、いろんなことのあれがある中で持ち込まれたら、皆さん方はそれを、いや、まだ話し合いが不十分だ、事業認定において正当性や必要性が十分なされてないから、もう少し時間かけてやりなさいなんということはできないでしょう。そういう権限もないわけですよ。だから、受けとめたら、それをもう短期間に手続にのっとって、今までの期間を半分にしてしまうというようなことが一体どういう事態をもたらすのか。それを皆さん方はよしとして、それをさらに今度は区市町村まで大いに促進して、しかも、何がその中かといったら、今、個人のいろんな方々のあれじゃないんですよ。やろうとしていることは道路でしょう。区部とか多摩の、これからそういう都市計画道路がたくさん出てくる。だから、区市町村がそのことをやり切れないから、どんどん促進させてやりましょうなんという、そんなところにまで収用委員会の事務局がこういうプランをつくって踏み込むことが一体できるのかということで、改めて、どういう立場からこの活用プランをつくったのかということをお答えいただきたいと思います。

○井戸審理担当部長 ただいま松村理事のご質問がございましたけれども、収用委員会の方に持ち込まれる裁決申請は、基本的には手続上は起業者の方からの申請になってございます。ただ、実態を見てみますと、申請の半分ぐらいは権利者、土地所有者ですとか借地権者からの請求になってございます。ということは、いわゆる地域の方々につきましても、その事業認定を踏まえまして、収用手続になった段階では、早く事業が進んだり、あるいは早く生活の補償を受けるために、そういったような審理が進むことを望んでいるというような状況もございます。
 また、そういった裁決を出す前に、必要があれば、起業者の見積もりに応じて事前に損失補償の部分をお渡しするという制度もございます。

○松村委員 だから、今の区市町村の自治体--そういう法律、私たちは反対しましたけれども、残念ながらそういう改定が行われて、この間どうなったかというと、やはり公共事業への住民の反対運動というか、そういういろいろな意見を押さえ込む、そういう役割にもなっているし、強権的に公共事業を推進する制度的な担保になるんじゃないかという指摘はそのときもしましたけれども、実際、私はその後のいろんな公共事業のあり方を見ても、そうなっていると。
 しかし、それは皆さん方の判断とかいろいろあるんですけれども、それでは区市町村は区市町村で自治体として、幾らあれでも、そういう判断があると思うんですよ。より身近だから、これはやはり時間をかけて、もっと合意と納得でいこうと。だから、土地収用というのは最終的な判断の手段にしようということでもちろんちゅうちょしている面もあれば、そういう点の取り組みもあるわけですよ。それは自治体が基礎的自治体としての権限ですから、それをこういう形で侵すものになってはならないというふうに思うんですけれども、そういう点ではどうでしょうか。
   〔発言する者あり〕

○嶋津収用委員会事務局長 私有財産の補償ということはもちろん自由主義社会の大前提でございますけれども、その補償については、この前の法改正で、あくまでも事業者レベルの方でやると。そのために説明会を行うとか、そういった幾つかの仕組みが義務づけられまして、そこで徹底的に議論する。それを受けて収用委員会は、お金の算定をベースとした手続に入る。そういう区分けをしたものでございまして、財産権そのものを侵すというお話には必ずしもなじまないのではないかというぐあいに思ってございます。
 それからもう一つは、収用委員会が区市町村の自治を侵すのではないか、あるいはどういう権限かというお話でございますけれども、私どもの今回のプランの作成も、それからキャラバン隊を出すことも、挙げて、東京都収用委員会の中に広報活動をきちっとしろという規定がございまして、それに基づいて私どもは、理解をしていただくという水準において行動を行っていることで、決めるのはあくまでも、首長さんたちがそれぞれの地域の実情に応じて決めていただくのが筋でございまして、その辺の分は十分わきまえて私どもとしては動いているつもりでございます。
 重ねて申し上げれば、先ほどのご質問にもございましたように、先般五つの首長さんにお会いしましたけれども、どの首長さんも、率直にいってもうそろそろ動きたい、そうでないと最初に協力してくれた住民の人たちが噴いちゃっている、あるいはお金が本当のところ大変になっちゃう、何とかしたいという生の声をいっぱい聞かされてまいりました。やはりその辺のことを踏まえまして私どもとしてはお手伝いするというスタンスで、これからも、このアクションプランに基づいて行動してまいりたいというふうに考えてございます。

○松村委員 今まで公共事業というのは、私も、都市計画審議会ありますけれども、多くの地元の自治体ぐるみの反対、いろんな取り組みがあっても、東京都が例えば都市計画決定の手続に入って、それで事業認可とか、ずっと進んでいるわけですよね。だから、そういう一つのいろんなことの流れがある中でも、逆に、時間をかけたりいろいろ話し合ったりとかいう中で、公共事業が見直されたりとか、もとに戻ったりとか、いろいろやはりそれはあるわけですよ、当初計画したのが全部正しいと思っているわけではない、新たな事態だとかいうことを踏まえて。そういうときに、ただ、それを迅速化ということでの収用手続を、これによって区市町村までも促してやるということ自体は、やはり私はやり過ぎだと。
 もともとそれは、だから法改正がそうなったときに、切り離して、皆さん方の部分は、そういうあとは手続上だというから、なかなか質問というか、本来一体のものなのを改悪したんだから、そういう点での皆さん方の答弁があるかもしれません。しかし、あくまでもそれは、今のいろんな圏央道にしたって、二ツ塚にしたって、なぜ収用委員会まで、そういう法改正が行われながらも、意見を求めるとか、審査会の場の中にあったかといったら、その前段の正当性や必要性だとか、公共事業として自分の財産権まで侵されると……(「侵してないじゃないか」と呼ぶ者あり)いやいや、それは中には、さっきいいました成田のこととか、いろいろやはりあります。でも、自分たちの立場に返って、自分のところに道路やあれが来た場合には、私はそれは立場の違いを越えて--それは、意図的にやっている部分もあったりして、私たちは何も全部賛成だとか、そういう意味ではないわけですよ。しかし、今のような公共事業の公共性ということで、安易なやり方というか、こういう形での方向というのは絶対、私は声を大にしていいます、間違っている。やはり今のような強権的な公共事業のやり方ではなく、計画段階から住民参加による民主的な手続を通し、事業の公共性を検証させる立場からのあり方を、私たちは国の法改正も含めてもう一度求める立場からも、こんな進め方は絶対認められないということを強く申し上げて、終わりたいと思います。

○執印委員 いろいろ議論もありましたので、省けるところは省いていきたいというふうに思いますが、私の視点から何点か質問させていただきたいというふうに思います。
 まず、この収用制度活用プランの目的ですが、この「はじめに」のところに書いてある、公共事業に関する紛争の早期解決を通し、東京のまちづくりに寄与するよう、収用制度の現状や課題を明らかにし、幅広く収用制度の周知を図るために作成したということで、これまでのいろいろなやりとりの中に出てきたと思いますので、これはこれで結構ですが、ここの中にあります区市町へのアンケートの時期と目的というのがこの中からは探せませんでしたので、どういった時期にどのような目的でされたのか、端的にお答えいただきたいと思います。

○井戸審理担当部長 区市町へのアンケートでございますけれども、時期につきましては、本年八月三十一日に調査書を発送しまして、九月十三日を提出期限として行いました。
 目的としましては、収用制度活用プランの策定に当たりまして、区市町における収用制度活用の実態を把握すること、及び東京都地区の用地の対策協議会がございますので、その研修でございます司法手続に当たっての留意点の講義に先立ちまして、区市町における現状把握を行うために行ってございます。
 調査対象につきましては、先ほどもいいましたけれども、都内で事業を施行します区市町と電鉄会社等の六十八起業者でございます。

○執印委員 今お答えいただいたわけですけれども、八月三十一日に調査書を発送して、九月十三日提出期限というのは、通常のアンケートに比べて随分期間が短いというふうに私は思うわけですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

○井戸審理担当部長 一般の都民の方を相手にするアンケートならばそうでしょうけれども、基本的には行政機関同士でございますし、大企業でございますので、なおかつ過去の実績でございますので、部署につきましてもその担当の部署でございますので、十分にわかるであろうということで、この期間を設定いたしました。

○執印委員 それでは、少しこの中身にも触れながらお答えをいただきたいと思うんですが、先ほどもちょっと質疑がございましたが、この「はじめに」の中に、「『収用』という言葉には、どうしても一方的、強権的というイメージがつきまとい、収用制度に対する正しい理解や認識の妨げになっている」というふうに書かれております。私的にも、収用制度というのは一方的、強権的だというふうに思っているわけですが、正しい理解や認識というものを、収用委員会は、土地所有者の立場から考えたときにどのようにお考えなのか、この点を説明していただきたいと思います。

○井戸審理担当部長 先ほどと繰り返しになる部分もあるかと思いますけれども、権利者や土地所有者から見た収用制度のイメージでございますけれども、一般的には、公共の利益となる特定の事業のために土地が必要になった場合には、話し合いによる交渉に基づきます売買契約等によりまして収用するのが原則でございます。収用制度は、その話し合いが行き詰まりまして、長期化してどうしようもなくなったときに、収用委員会という第三者機関に解決の場を移すものというふうに考えてございます。そこでは、権利者と起業者の双方から審理での意見陳述ですとか意見書提出などの手続を経た上で、裁決がされますので、決して一方的、強権的に手続が進められるわけではございません。
 また一方、先ほども申し上げましたけれども、土地収用法におきましては、早期の解決を求める権利者みずからが収用裁決を申請する制度がございまして、事件数全体の約半分に上ってございます。
 また、権利者が起業者に対しまして、代替地ですとか代替住宅、職業訓練のあっせん等の生活再建を求めるような制度もございます。
 また、先ほどいいましたように、裁決を待たずに、見積もられた補償金を事前に請求できる規定もありますし、現実にかなりの方が利用していらっしゃいます。
 一般的には、そうした迅速な事件処理を行いまして処理することが、何よりも権利者に対する早期の救済にもつながるというように考えてございます。そのような収用制度の仕組みにつきまして、正しい理解や認識を深めてまいりたいという観点から活用プランを作成いたしました。

○執印委員 今、権利者の側からも使い勝手があるんだというようなことでございましたが、そういう件に関しては、もともと、あとは補償の中身というようなところの問題だと思いますので、もともとの公共事業などに対してどうなのかというところの、その前提の問題というものにまでは触れられていないのではないかなというような印象を持って、私は今お答えをお聞きしたわけですが、もう一つ、私これを読ませていただいて、何をいいたいのかよくわからなかったところがありましたので、確認をさせていただきたいんです。
 土地収用法が平成十三年に改正されたことがいろいろ説明されているわけですね。その点については読んだ上でもわかりましたし、今までのご質疑の中でもわかったわけですが、この六ページにありますコラム、「事業認定に『重大かつ明白なかし』がある場合は、その事業認定は無効であり、この点については、収用委員会は判断すべきである」とあり、そういうことが書かれていて、二つの例が示されているんですね。圏央道あきる野事件と圏央道八王子ジャンクション事件というふうになっておりまして、ここで説明されていることと、この二つの例に対して収用委員会がどのような取り組みをしたのか。事業認定をしたんだけれども、重大かつ明白な瑕疵があるという、その改正した法律との矛盾というのがここに出てきているんだと思いますけれども、どのように解消することができるのか示していただきたい。この二つの件についてどのような判断をしたかということだと思いますけれども、ちょっとここだけ読むと、一体何がいいたいのか、だから何をしたのかというのが見えませんものですから、お答えいただきたいと思います。

○井戸審理担当部長 執印委員お尋ねの件につきましては、圏央道のあきる野事件と八王子ジャンクション事件におきまして、収用委員会が裁決を行ったときに、事業認定のことに触れまして、事業認定については重大かつ明白な瑕疵はないというふうに判断しました。その判断しましたのは、いわゆるそうした権利者の方から、事業認定が無効であるというふうな話がございましたので、それに対応して、この場合に判断したということでございます。
 基本的には、前から議論になっておりますけれども、法律につきましては、従来から事業認定に関する判断は事業の認定庁が、個別具体の補償にかかわることは収用委員会の権限に属するというふうに区分されております。先ほどもいいました十三年の土地収用法の改正によりまして、事業の必要性、公益性を判断する事業認定庁と、さらに収用委員会の役割分担がより明確になったということでございます。収用委員会が手続を進めるに当たりましては、事業認定庁の行う事業認定につきましては、別の行政庁が行う行政処分でございますので、これにつきましては適法性の推定を受けることから、収用委員会としては当然、当該事業認定を前提として手続を進めるものでございます。
 ただし、事業認定につきまして重大かつ外観上も明白な瑕疵がある場合、法律上よくいわれますけれども、そうした場合は当該事業認定は無効となります。このため、当事者から、権利者の方から無効の主張がある場合につきましては、無効原因である瑕疵があるのかないのかに限って収用委員会は判断いたします。
 コラムにあります圏央道あきる野事件と八王子ジャンクション事件につきましては、権利者から事業認定が無効であるとの主張がなされたために、収用委員会はその判断を行いまして、いずれの事業認定につきましても重大かつ明白な瑕疵はないというふうに裁決いたしました。そういったことでございますので、平成十三年法改正の趣旨と当委員会の考え方は矛盾するものではございません。

○執印委員 つまり、法律で事業認定に重大かつ明白な瑕疵がある場合には収用委員会が判断をするということなんだけれども、この二つの事件については、それが重大かつ明白な瑕疵がないというふうに判断したので、事業認定のとおりに進めたということだと思うんですが、それでは、重大かつ明白な瑕疵というのはどういう場合が考えられるのか。実際に平成十三年から、もしくはそれ以前でもいいですけれども、実際に適用されたことがあるのか、またはケースとしてはどのようなものが考えられているというふうに収用委員会は考えていらっしゃるのか、その点を伺いたいと思います。

○井戸審理担当部長 今まで具体的に重大かつ明白な瑕疵があるということで裁決の以前に却下された事例に関しては、多分ないというふうに思っております。
 具体的な事情に即して、この問題については決定されるべき問題でございますけれども、例えば認定庁を明らかに間違えているような場合ですとか、あるいは手続上、縦覧手続が必要なのにもかかわらずそれをしていないというような場合ですとか、あるいは事業の名称が異なっている場合ですとか、そういったような重大かつ外観上も明白にわかるようなものがある場合には、そうした観点から却下するというふうに考えてございます。

○執印委員 今のお答えですと、要するに事業の名前を間違っていたとか、必要な手続をしなかったということで、これは当然そういうことだと思うんですけれども、こんなことが、今のお答えのようなことがあっては困るわけですから、ほとんどそういうことがあったらどうかしているとしか思えないわけですけれども、この重大かつ明白な瑕疵というふうには、今のお答えの中では認定されないにしても--だから、収用委員会が重大かつ明白な瑕疵があるというふうに判断しないケースというのが、今までいろいろなところで、お互いの価値観とか判断とか地球に対する思いとかいうものが違っていて、問題が出てきているんだというふうに思うんですが、事業そのものに納得できない土地所有者の権利というのはどのように守られるんでしょうか。
 ちょっと前に強制収用が、関西の方だったか、あったと思いますけれども、親代々引き継いできた土地だとか、それから、大変な思いをして開拓をした土地だとか、そういう思いというものはお金にかえられないということは、当然、人間社会の中ではあるわけですから、事業そのものに納得できない権利はどのように守られるというふうにお考えでしょうか。

○井戸審理担当部長 事業そのものに納得できない土地所有者につきましてのお話でございますけれども、基本的に収用委員会の範疇ではないというふうに考えてございますけれども、ただ、先ほど申し上げましたように、平成十三年の法改正によりまして、事業認定の手続におきましても、情報公開と住民参加を保障する観点から公聴会が義務づけされました。また、第三者機関からの意見聴取も行うというふうな規定もございます。また、そうした事業認定理由を公表するというような制度も設けられてございます。さらに、起業者による事前の説明会が義務づけられました。そういったことで、事業についての公益性、必要性について権利者の方々と話し合う機会が十分に設定されているというふうに考えてございます。
 収用委員会につきましては、そのような手続を経まして、適法に認定された事業を前提としまして、収用委員会独自の判断あるいは裁決を行ってまいるというふうに考えてございます。

○執印委員 要するに収用委員会が仕事しやすいように平成十三年に法改正がされた、そういうふうにしか私には思えないわけですけれども、事業に反対する土地所有者も、事業認定の手続の中で意見を述べる機会が保障されたというふうにはいいましても、一般的にはやはり公の権力に有利なさまざまな仕組みがつくられているというのは事実だというふうに思うんですね。だから、収用委員会も、それはもう法改正になって、ややこしい部分はうちでやることじゃないから、うちはとっとと収用委員会で収用するというようなことなのかもしれませんが、今までいろいろ見ますと、公が物を決めやすいような仕組みになっているわけですから、その結果として公共事業が自然破壊を進めてきたという例は幾つもあるわけなんですね。そういうものに対して反対をする方たちは反対をしている。または、先ほどいいましたように、お金にかえられないものがあってどうしてもここにいたいという、そういう思いで反対をされているわけです。
 先ほど来ありました、いろいろなこれまでの例で、時間がかかればお金がかかるというのも、私はそのとおりだというふうに思いますけれども、それだけで判断できないものがこの時代にあるのではないかというふうに思います。
 法令の中でなさっていることですから、収用委員会のおっしゃりたいこともわからないわけではないわけですが、特に区市町の場合には、このアンケートでもわかるように、なぜ強権発動しなかったかということについては、恐らく収用する側もされる側も、その後同じ地域の中で生活し続けるということだと思うんですね。だから強権発動しない、首長さんもその道を選ばなかったというようなことではないかなというふうに私は判断しましたので、今回この活用プランをつくられたわけですけれども、慎重にその辺については対応していただきたい。もう少しいえば、余り積極的にやっていただかなくてもよろしいのではないかというふうに考えていることを申し上げまして、質問を終わります。

○倉林委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、ご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○倉林委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で収用委員会事務局関係を終わります。

○倉林委員長 これより財務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第二百四十六号議案から第二百四十九号議案までを一括して議題といたします。
 本案につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○鈴木委員 神宮前一丁目の民活再生プロジェクトについてお伺いさせていただきます。
 去る十一月十九日に、本プロジェクトにおける施設内容や事業の手法に関する基本となる計画として実施方針及び業務要求水準書案がまとまり、公表されたわけでございます。このプロジェクトについては従来からさまざまな議論がなされてきています。昨年十二月には、神宮前都有地の有効活用基本構想が出され……

○倉林委員長 ちょっと速記とめて。
   〔速記中止〕

○倉林委員長 それでは、速記再開します。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○倉林委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○倉林委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○倉林委員長 次に、報告事項、神宮前一丁目民活再生プロジェクトの実施方針等に対する質疑を行います。
 本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○鈴木委員 ということでございまして、昨年十二月には神宮前都有地の有効活用基本構想が出され、神宮前都有地の利用計画を具体的に作成していく上での都の基本的な計画が、考え方が示されました。それからおよそ一年、この間、地元住民の方々と真剣に話し合いを続けてきて今日に至ったとの経過の説明がありました。
 そこで、まず、地元とはどのように話し合いを進めてきたのか、また、今回の公表について地元はどのように理解をし、了解をしているのか、お伺いしたいと思います。

○平田調整担当部長 平成十五年十二月の基本構想公表以来、地元住民代表、渋谷区長、助役、渋谷区議会議長、副議長及び渋谷区選出の都議で構成されます四者協議会との間で数回にわたり話し合いを重ねてまいりました。その中では、警察施設の留置場規模のみならず、神宮前都有地の整備、警察署の運営などさまざまな要望が寄せられ、都としての考え方をお示ししてまいりました。
 その後、平成十六年七月十二日に、渋谷区長から、今までの協議経過を踏まえ、本件地の利用計画につきまして要請文が提出され、それに対して都といたしまして、留置場の定員はぜひとも三百人を確保する必要があるとするとともに、緑地の保全など、地元からのさまざまな要請については最大限の配慮をする内容の回答を行ってまいりました。
 この回答につきましては、十月八日に四者協議会に対して説明するとともに、十一月十一日に、反対区民の会主催による区民報告会の場におきましても、広く区民に説明を行ってまいりました。
 また、十一月十九日に、実施方針等の公表に先立ちまして、四者協議会に対してその概要を説明し、公表についてご了解をいただいてきたところでございます。

○鈴木委員 今のご答弁で、いろんな手順を踏んでこられたということ、なかなか地元には理解をいただけない非常に難しいテーマだというふうに思いますけれども、そのご努力に敬意を表する次第でございます。
 ところで、ことしの都民生活に関する世論調査では、治安対策が都政への要望第一位に挙げられています。治安の回復は都民の日常生活にとって切実な問題であり、都民の不安は一日も早く解消されなければならないことはいうまでもありません。そのためにも、現在大幅に不足している留置場の整備を行うことは焦眉の課題であります。今回の公表に当たって、知事は、原宿警察署に設置する留置場については、現下の都政の重要かつ緊急な課題である治安対策を推進する上から、都全体の留置場規模等の状況を幅広く検討した結果、三百人規模で整備することとしたと述べています。
 そこで伺いますが、当初は六百人という数も報道されていた留置場の人数について、これまで地元とはどのような話し合いを続けてこられたのか、お伺いいたします。

○平田調整担当部長 留置場の定員数につきましては、平成十四年から、四者協議会を通じて地元との話し合いを続けてまいりました。都としては、治安対策の必要性や都内の留置場不足が深刻であり、平成二十年度においては約一千人規模の収容人員不足が見込まれることなどを説明してまいりました。そして昨年九月には、ぎりぎりの判断として、原宿警察署においては三百人規模の定員が必要であるとの説明を地元に対して行っております。その後も地元との話し合いを続け、本年七月に行った都の回答の中でも、先ほども触れましたけれども、都全体の留置場規模、都の使える用地、財政等の状況等を幅広く検討した結果、ぜひとも三百人を確保する必要があるといたしました。

○鈴木委員 平成二十年度においては千人規模の収容人員不足が見込まれるという状況の中で、この六百という数字がどういう数字だったのかわかりませんが、三百というのはちょっと随分弱気なような気がいたしますけれども、この数については、現在、地元は大筋どのような形で受けとめていらっしゃるのでしょうか。

○平田調整担当部長 地元といたしましても、三百人という数につきましては、現在の留置場不足、治安対策の緊急性から、都としてのぎりぎりの判断ということで受けとめていると思います。去る十一月十一日に反対区民の会主催で開かれました第六回区民報告会で、代表のまとめといたしまして、緑の確保の問題、留置場ができた後の安全面の問題、避難道路の問題、まちのにぎわいの問題など、東京都との間で多岐にわたった質疑が行われてきた、今後は連絡調整会議の方にいろいろな問題解決に向けての調整をゆだねたいといたしまして、具体的なまちづくりの問題解決に向け、次のステージに移り、都と話し合いを続けていこうという結論になりました。
 地元も、これまでの話し合いや都の回答の説明を受けて、当初の絶対反対の立場から、積極的にまちづくりについて話し合っていこうという、そういう姿勢に変わってきていると認識しております。

○鈴木委員 原宿警察署の留置場定員をどれぐらいにするかということについては、地元がこれなら賛成しましょうという数字、地元がまとまるということは大変に難しいことであると思いますし、私としてはあり得ないだろうとは思います。とはいえ、地元としても都のぎりぎりの判断として受けとめて、加えて、絶対反対の立場から、積極的にまちづくりについて話し合おうとする建設的な姿勢に変わっているということは、大変ありがたいことでございます。昨今の治安の悪化を考えると、三百人という数はぜひとも実現していただきたいというふうに願っております。
 さて、これから、まちづくりの具体的な話し合いのために、連絡調整会議という次のステージに移るということでありますが、それはどのようになるのか、お伺いいたします。

○平田調整担当部長 地元からは、今後具体的な計画の策定に当たりまして、渋谷区及び住民代表と連絡調整を行う場の設置を求められております。都といたしましても、仮称でございますけれども、神宮前都有地に関する連絡調整会議を早期に立ち上げることに協力する考えでございまして、現在、その構成メンバーや会議の進め方について関係者と調整を進めているところでございます。

○鈴木委員 今回、実施方針が公表されたわけでありますけれども、これからの事業展開はどのようになっていくのでしょうか。

○平田調整担当部長 今回公表いたしました実施方針等は、昨年十二月に策定、公表いたしました基本構想と、この間の地元との話し合いを踏まえた都の回答をベースにしております。これは、本プロジェクトをPFI事業として実施する場合に、民間事業者の参入促進を図るとともに、創意工夫の提案等を引き出すために、事業の大枠について情報を提供するものでございます。
 今後は、来年の二月中旬ごろに、PFIという事業手法の有効性に関する判断を行い、三月下旬ごろに入札公告を行う予定でございます。
 なお、この入札公告に至るまでの間、地元とも話し合いを続け、例えば地元において関心の高い緩衝緑地の樹木をどう選ぶか、あるいは植え方などの要望につきましても、できる限り取り入れていく考えでございます。

○鈴木委員 このプロジェクトは、都の喫緊の課題であります治安対策の推進、あるいは東京の再生と地域の活性化を図ることを目的としているわけでありますが、警察施設の整備に加えて、大商業地でもありますから、商業、居住等の機能を有する民間施設も整備して、安全で安心して地域に調和したまちづくりを推進しようとする都にとって大変重要な事業であるというふうに考えます。
 先ほど、二十年には千名不足するというふうなお話がありましたが、とすると、これ三百というと、平成二十年ですから、もう四年後には七百人また足りなくなる、統計上そういうことが予測されるわけであります。ここには渋谷区選出の議員はだれもいませんが、いつ、あなたのところに次の施設ができるかわかりません。新宿なんか危ないんじゃないかなと思いますね。ということを考えますと、こういう問題は総論賛成各論反対、これはやむを得ないことだというふうに思います。
 そういう中で、例えば私どもの葛飾区には、東京拘置所、小菅の拘置所がありますが、これは今、改築をほとんど終わっているんですけれども、かつては改築以前の人員は二千百六十三人。今、一部完成というより大部分完成しているんですが、二千九百八十四人。全部完成が平成十八年で、三千十人になるということになっております。これは本当に現場を見たことがある方々はおわかりになると思いますが、だれか有名人が入るときには、門の前でカメラがたくさんいて、テレビなどで報道されていますけれども、あの辺はまだともかくとして、裏を見ると、本当にまちにとっては、高い塀があって、やはり非常に暗い印象のある施設であります。そういう中で、十八年に完成しますと、見えないでしょうけれども、塀のない拘置所ができるんです。鉄格子もなくて、要は強化ガラスで壁面を覆うというふうなそういった施設で、周りには緑が植えられて、広いオープンスペースもあって、今までとはかなり違ったイメージになるだろうというふうに思います。そういう点では、これは昭和四十六年から小菅刑務所から東京拘置所になって、いえば、渋谷区の三百人というのは、うちの方の三千人と比べると微々たるものではないかなというふうな感じがいたしますし、同じように府中刑務所が収用二千八百四十二人ということであります。
 そういう点では、先ほど申し上げましたように、たった四年後に千人不足するという中で、三百人の施設、六百人から三百人減らしてしまったというのは、私先ほどいったように、非常に弱気だなというふうに思うんですね。その点も含めて、私はぜひ地元住民に、運悪くという言葉が当てはまるかもしれませんが、原宿にそういう土地があって、そういう施設として計画が出てきたわけでありますから、その点はご苦労があるでしょうけれども、地元住民の方々にぜひ、こういった府中や葛飾区の例もあるんですよというふうなことも含めてご説明いただいて、総論賛成各論反対は理解できますが、でもご協力をお願いしたいというふうなご努力をしていただきたいと思いますし、そのような努力をされていると思いますが、前段はそれといたしまして、最後に、このプロジェクト推進に当たって局長の強い決意表明をお伺いしたいと思います。

○松澤財務局長 この神宮前一丁目のプロジェクトにつきましては、ただいま先生からいろいろとお話しいただきましたけれども、都心に残された広大な都有地ということで、やはり都民のため、もちろん地元のため、あわせて全体的に活用していかなきゃいけないということも含めまして、治安対策の推進と、それから東京の再生と地域の活性化を図る、そういうことで行うプロジェクトでございます。
 その意味で、老朽化した原宿警察署を移転改築することにあわせまして、今お話がございましたように、ここに三百人規模の、最終的に三百人になりましたが、こういう留置場を整備するということ。これは、原宿のところに、今、先生がいわれた不足数を全部しわ寄せするということでなくて、いろんな都内の警察署の中でもふやせるところはふやして、そして、この原宿という立地の中で、三百人という規模をぜひ地元の方にも理解していただきながら、東京都のため、治安のため、また都民全体のためということで留置場を整備する、こういうことでございまして、これにあわせて、商業、居住等の機能を有する民間施設を整備することによって、安心・安全で地域に調和したまちづくりを推進しようとする、都にとって非常に重要といいますか、大切な事業でございます。
 この実現に当たりましては、今、部長の方からも話がございましたように、この間三年間にわたって、地元の住民の代表の方あるいは地元の渋谷区、それから渋谷区議会、また地元の都議会議員の先生も入りまして構成される四者協議会、それからまた、住民説明会などを重ねながら、私も就任してから何回もそういう席に出席しておりますが、そういう中で話し合いを続けながら、今回、地元の要望も可能な限りというか、精いっぱい取り入れまして、一定のご理解を賜って、実施方針という形で具体化されたわけでございます。そういう意味で、やっと実施に向けて具体的な扉が開かれた、こういうことでございます。
 これから、来年三月に入札公告を行いまして、十二月に契約を行って、平成二十一年三月には竣工するということで、これはもう必ず守っていかなければいけない時期でございます。これがおくれれば、それだけ、今、先生からいわれたいろんな問題にも影響してまいりますので、こういう目標に向かってこれから取り組んでいかなければいけないわけでございまして、またその間には、これまでと同様に地元とさらに十分な協議を行いながら、事業の推進に全力を挙げて取り組んでいく考えでございます。

○鈴木委員 去年の予算委員会でしたか、一昨年でしたか、石原知事が写真を掲げて、ニューヨークでは、一階に非常に人気のあるすばらしいレストランがあって、その同じ建物の上に刑務所があるといったような答弁をされていましたけれども、多分それは、まちの中に溶け込んだ成功した例だろうというふうに私は思います。ぜひそういうことも検討していただいて、地域住民に喜ばれるというふうな表現が当てはまるかどうかわかりませんが、違和感のない、まちの環境を重視した形での留置場を設置されますように希望いたしまして、質問を終わります。

○松村委員 私からも、地元との話し合いの経過と合意についてまず伺おうと思いましたけれども、今、既にお答えがありましたので、そこら辺のところは省きながら伺いますけれども、社会事業大学跡地を都が取得する経過からして、合意は欠かせないことだというふうに思うんですよね。この間、それで時間をかけてきたということですけれども、今答弁がありました中で、特に当初から地元が反対する大きな理由は、大規模留置場と。それについて、三百人確保する必要があるということで、東京都としてそういう考え方を示して、地元の受けとめ方としては、都としてのぎりぎりの判断として受けとめていただいている、そういう結論になったというんですけれども、ちょっと確認の意味でも伺いたいんです。
 いろいろ話し合っていこうと、留置場以外のまちづくりということでも。ただ、留置場の人数三百人というのは、私も直接、議会というか、聞きましたけれども、つい先日の渋谷区議会での質問に対して、渋谷区長も、多数の区民は反対している、そういう認識を私もしていると。私自身もそういう立場だというか、ちょっと私、正式な議事録を取り寄せていませんけれども、そういう答弁をしているということと、今ご答弁があったこととは、ちょっと食い違っていると思うんですね。全体の話し合いは進めていこうということで、今まで確かにご苦労、ご努力して、四者協とか反対の会とかやってきたことは私も承知していますけれども、ちょっと基本的な点について、本当に、そういう三百人の留置場、それに対して区民とか区長からのそういう回答が来ているんでしょうか。

○平田調整担当部長 今、区議会のお話がございましたけれども、地元でも確かにいろいろなご意見がございます。ただ、先ほどもお話し申し上げましたけれども、十一月十一日に反対区民の会の集会、住民報告会がございまして、その中でも、いつまでも反対、反対ということをしていてはエンドレスできりがない、そういう中で、これまでの話し合いを踏まえまして、積極的なまちづくりの方に行こう、そういう方向になったわけでございます。
 人数の問題も、そのときの報告集会の中でいろいろな議論がございました。その中で私どもも、これはもう都としてのぎりぎりの判断ですよ、そういうことをお答えしたわけでございますけれども、ただいまのお話にもございましたように、住民の皆様としても、三百人という数については都のぎりぎりの判断だということで受けとめているというふうに私ども思っております。

○松村委員 それは、受けとめている、受けとめ方はいろいろあると思いますけれども、しかし、この跡地の取得の経過からいって、その後もそのことが、留置場計画が発表されて大きな問題となり、その後、知事も含めて、地元の理解と合意が大前提だということは、繰り返しこの議会にも述べられたというふうに思うんですよね。
 それで、まだ、今いった地元の区民を代表する区議会とか区長がそういう立場で、必ずしも三百人賛成したというんじゃないと、話し合いは今後進めていくということでしたら、では、その三百人、都はぎりぎり示したということですけれども、その後の話し合いによってこれは動く可能性があるんですか。
 しかも、だから都議会にいよいよそういう実施方針を出したということは、もうそのことが前提となった、その上で全体のPFIをかけるというか、そういう事業者を募り、今後、計画の具体化がされるということで、その三百人、しかも、この中にはいろいろ具体的な平米数まで挙げて、各施設も詳細に出ていますよね。ですから、私は、いよいよそれがもう動かない事実として進むと思うんですよ。
 一方、地元に対しては、まだ地元はその三百を認めたわけじゃないんだ、今後話し合っていくんだというふうになったら、私は、この都議会にこの実施方針、プロジェクトを、きちっと地元合意をとってから出していただきたいというふうにいわざるを得ないと思うんです、私たちの立場からすればね。後でまたいろいろ違うとか、いろいろなことだと、やはり問題だし、今までの知事の答弁からいっても、きちっとそういうふうに、どうなっているのかということは責任を持って、そういう区長からの、基本的にはそれでいくということのきちっとした回答なら回答をもらった上で進めるというんだったら話はわかるんですけれども、ちょっとまだ時期尚早というか、手順が違うんじゃないでしょうかというふうに思います。

○平田調整担当部長 先ほども申し上げましたけれども、十一月十九日に、実施方針の公表に先立ちまして、四者協議会に対しましてはその概要を説明し、公表について了解をいただいているところでございます。
 それから、今回公表いたしました実施方針あるいは要求水準でございますけれども、これも過去三年余にわたります話し合いの成果、あるいは地元から七月に要請を受けまして、それに対して、それを最大限踏まえた都の回答を行ってございます。それから、基本方針を昨年策定いたしましたけれども、これらをベースにしております。それで、地元も、先ほどの繰り返しになりますけれども、数で反対、反対ということだけではなくて、全体のまちづくりそのものをみんなで建設的に話し合っていこうと。これは、先ほど申し上げました十一月十一日の反対区民の会の主催の報告会の結論でございます。ですから、私どもも、そういう区民の皆さんの方向と一致しまして、新しいまちづくりを一緒に考えていこう、そういう方向にともに進んでいこうというふうに考えてございます。

○松村委員 この点ではいろいろなニュアンスの差があると思うんですけれども、きちっと留置場三百人定数というんですか、やはり地元の合意をとった上で事業は進めるべきだということを--進めるんだったらですよ、そういうことを指摘しておきたいというふうに思います。
 その上に立って、私は、なぜというか、三百人の根拠ですよね、留置場の。先ほどもちょっと答弁あって、千人がまだ不足する、そういうことがありました。もう少しその点の、三百人がぎりぎりだということの根拠ですね。それは皆さん方専門じゃなくて、これは警視庁とかほかのところとの質疑をやらなきゃ、なかなか私ども理解が及ばないかもしれませんけれども、少なくとも皆さん方も参加した中での、今なぜここが三百人なのかということを示していただきたい。

○平田調整担当部長 近年の犯罪の急増に伴いまして、昨年中の留置場の一日の平均収容人員は約三千人でございまして、十年前の平成五年と比較いたしますと、約二・七倍に増加してございます。それで、平成十六年十一月現在の都内の留置場の収容基準人員でございますけれども、約三千百名でございます。これに対しまして、平成二十年度における一日の最高収容人員が約四千百人と推測されておりますので、ただいま先生の方からもございましたように、約千人の不足が見込まれてございます。
 それでは、この千人をどうしようかということでございますけれども、先ほど局長からのお話もございましたけれども、このような留置場の不足に対応するためには、都では、警察施設の建てかえに合わせて留置場の拡充整備に当たっているわけでございます。それに当たりましては、犯罪の発生状況、都心という、原宿ですと場所がございますけれども、警察として使える土地、あるいは財政等の状況、こういったものを勘案しまして、原宿におきましては、都心部にありますし、また交通の利便性も高く、相当規模の施設面積を有する、こういう本件地でございますので、原宿警察署の移転改築に合わせまして三百人規模の留置場を整備するものとしたものでございます。

○松村委員 この十月十五日に、東京弁護士会、それから第一東京弁護士会、第二東京弁護士会が石原慎太郎知事にあてて、東京都の大規模留置場計画に関する意見書というのを出しておりますけれども、これはご存じですよね、財務局としても。より専門家、私もよくわかりませんので、この意見書についても改めて読ませていただきましたし、意見も伺いましたけれども、今いいました千人不足するということにおいても、そのもと、これは弁護士会だけじゃなくて、かつて、例えば渋谷区選出の矢部委員のこの財政委員会当時のやりとりも私聞いていまして、明らかに今の平均留置日数が倍になっていると。前からそれはいわれているんですよね。決して留置場の数というよりも、現在の全体のそういう留置状況とか、そういうことによるものだということを、非常に説得力あるものとして伺っているんです。それがだから、例えば今質問というか、他の議員からもあった東京拘置所、それが完成した暁には相当規模、拘置所に三千人ですか。これはもう、矢部委員が引き続き予算特別委員会でも警視総監に対した質疑の中で、今の留置施設が不足する、留置場が過剰収容になっている理由として、本来拘置所に移監されるべきものが移監されないことだということで、そういう答弁があるわけですよね。その点が一つ。
 それから、もう一つ、東京弁護士会がこの中で挙げているのは、現在建築中、設計中のものと、先ほど、現在の収容定員が答弁がありましたけれども、平成十六年度で武蔵野警察署、この収容定員が六十一名、北沢警察署が三十一名、町田警察署は増築で四十二名と。平成十七年度には三鷹警察署、改築で五十一名とか、西が丘庁舎、新設で百名とか、平成十八年度にも続くんですよね。三田警察署だとか小岩警察署が百名、四十名。それから臨海副都心のところの臨港警察署も、私は都市計画審議会の委員ですけれども、この前、都市計画決定というか、そういう提案が臨港警察だというふうにありました。ここでも、これは平成十九年度ですけれども、収容定員二百名という計画で予定していると。
 そうなってきますと、果たして今不足するとかいう三百名というのが、本当に根拠ある数字なのかどうか。こういう点で弁護士会からも、ここの原宿警察署の老朽化の建てかえに伴うあれとしては過剰だというか、そういうことをする必要はないということが専門家の立場からもいわれている。これに対してはどのように考えていらっしゃるでしょうか。
   〔委員長退席、秋田副委員長着席〕

○平田調整担当部長 二点ございました。初めに、代用監獄のことについてご答弁いたします。
 代用監獄に関する議論につきましては、さまざまな意見があることは承知してございます。したがいまして、都といたしましても、本来は国が刑務所や拘置所などの拘禁施設を十分に設置していくべきものであると考えておりますことから、本年も七月と十一月に、国の施策及び予算に対する東京都の提案要求、この中でも、拘置所等拘禁施設の拡充整備を提案要求として提出したところでございます。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、近年の犯罪件数の増加は著しいものがございますので、現実の問題として都民生活の安全を確保するためには、国の対応を待つばかりでなく、都としてできる対応を行う必要があるというふうに考えてございます。
 それから、二つ目に数のことがございました。
 先ほどの千人という数につきましては、ただいま申し上げました東京拘置所の数を踏まえたものでございます。それで、平成二十年度末におきましての不足が千名になるということでございますけれども、これもそれは考慮済みということでございます。そして、先ほど先生お話がございましたように、これは原宿だけじゃなくて、先ほども申し上げましたように、いろいろできるところでできる限りの留置場をふやしていこうということでございます。
 では、その数がどれだけかといいますと、原宿では三百でございますけれども、その他のところでの整備を純増というふうに考えますと、約三百八十ぐらいしかございません。したがいまして、それを足しても、まだ平成二十年度末の現在では一千名の不足が満たされるという状況ではなく、逆にまだ約三百人足りない、そういう数字でございますので、これはまだまだ留置場は整備していかなくちゃいけないというのが数字的な事実でもございます。

○松村委員 私も専門家ではありませんし、皆さん方も直接、警視庁とかいう担当じゃないから、それほど質疑を納得のいくように深めることはできませんけれども、ただ、今いった留置日数が長くなっている、それが前よりも倍ぐらいになっている、そういうのはもう専門家からも指摘されているんですね。今、裁判の迅速化だとか、そういうことに伴う迅速化だとか、それから、もともとは、拘置所だとか刑務所とか、そういうところに回せないというか、不足があって、代用監獄という今お言葉がありましたけれども、そのかわりに警察の留置所が使われている。それが今、大分改善というか、そういう見通しが立ってきたもので、しかも、各警察署にもそれぞれふやしていく計画があるという中で、それはきちっと精査して、しかるべき都民の理解やこの都議会の理解--私もこの所管委員会に今後なるかもしれませんけれども、そういうのが示されて、そういう全体の見通しがないと思いますし、だから、そういう見通しについては、財務局が所管するんでしたら、例えば拘置所をもっときちっとふやすだとか、裁判の迅速化で留置日数がどのぐらい短縮できるのかとか、それからまた、留置場というのは警察の付随施設といっても、どちらかといったら、その責任は国にもあるわけですから、国と今後のいわゆるそういう見通しというんですか、これは法務省ですか、きちっと協議をして、必要ならば必要だということをもっと根拠を持って示すべきだと思います。一つは、やはりこれは国のというか、警察署は東京都ですけれども、留置場というのは直接東京都の付随施設となっておりますけれども、どういう形になるんでしょうか。私は知識がないのでお聞きしますけれども、東京都の警察署と同じように、国庫だとか、そういうあれがなくて、全部東京都が責任を持ってやるべき事業なんでしょうか。たとえそういえても、さっきいった代用監獄になっているとかいうふうになれば、やはりこれは形が違ってくると思いますけれども、そういう国に対する話し合いというか、要請とか、では国は何をやってもらえるのかとか、そういう点での協議というのはなされているんでしょうか、財務局としても警視庁任せではなくて。その点も伺いたい。

○平田調整担当部長 先ほども申し上げましたけれども、国に対しましては、拘置所等拘禁施設の整備拡充ということでお話ししております。また、警視庁としても国の方にそういった要求をしているというふうに聞いております。

○松村委員 そうすると、聞いておりますということでは、やっていないということですけれども、この三弁護士会の意見書の中にも、いずれにしても東京都は速やかに法務省に強く要請し、同省と協議の上、留置場、拘置所及び刑務所の過剰収容問題について、国のレベルでの全体的視野を持った解決を目指すべきだというふうになっていて、私も本当にこれは妥当だというふうに思うんですよね。東京都がその責任、国全体のそういういろんな取り組みのおくれとか矛盾とか、そういうものを東京都が一手に引き受けて、莫大な財政負担を伴うそういう支出をしなければならない。そのためには、相当根拠を持って都議会に示したり、また、都民の理解を得るべきだと思いますけれども、そういうことにはまだ到底至っていないんじゃないか。それが不十分なまま、どんどんというか、進めていくのはどうかというふうに思います。少なくとも今、東京弁護士会が、いずれにしても東京都は速やかに法務省に強く要請し、また協議を行うということにおいては、そういう意見があったということで、それは財務局が窓口になるかどうかわかりませんけれども、やるべきじゃないでしょうか。

○平田調整担当部長 先ほど、東京都の提案要求ということを申し上げましたので、参考までに、その内容をちょっと読ませていただきます。
 十七年度の国の予算要求に対する東京都の提案要求でございます。被留置者の急激な増加に伴い、留置場が不足する状況が続いている、これは本来国において対処すべき、被留置者の拘置所等への移管が滞っているためであり、都はその分の人的、財政的負担を強いられている、ついては、拘置所等拘置施設の拡充整備を図り、移監待ち被留置者の移監を促進すること、こういう内容で国に要求しているところでございます。

○松村委員 それから、先ほど、もっと治安が悪化して、また警察の留置場のさらに不足というか、多大な収容が見込まれるというけれども、これについては私、もう多くをいいませんけれども、やはり専門家から、治安が悪化してふえるというけれども、どういう問題かということで、そうではない、東京都はそういうふうに挙げているけれども、ということがありますので、そういうことも、もっときちっとした都民の納得のいく根拠を示すべきだというふうに思います。(「警察・消防でやってくれ」と呼ぶ者あり)
 そこで、財政なんですよ。これはだって東京都が警察、そしてしかも本来、警察に伴う附属施設としての留置場の規模というのは、従来、三百人なんてないですよね。少なくとも二十人とか三十人とか、そういう規模かもしれません、普通の警察署でいくんでしたら。それを三百人ということで、今までの警察署の建てかえとは相当違う財政負担が東京都の財政そのものにかかると思うんですけれども、今まで、原宿警察署の建てかえに伴う留置場を含めた予算というか、どういう形で予算が出されたのでしょうか。また、その執行状況はどうなのか。
 それから、今後、これは大体この規模で、三百人規模で事業化する場合、どのぐらいの事業費というか、東京都の財政を使うんでしょうか。

○平田調整担当部長 留置場の整備と申しますか、今までは、私どもの方のPFI導入に係る経費として使用しております。昨年度までには約一千万円の支出でございます。それから、平成十六年度でございますけれども、委託経費、調査等で約六千万円を見込んでございます。

○松村委員 これからPFIで事業を一応実施するということなんですけれども、どのぐらいの事業費が見込まれるのでしょうか。全体計画というよりも、特にこの三百人の留置場と原宿警察署の建てかえに伴うものはどうなんでしょうか。

○平田調整担当部長 これはPFIでこれから入札公告等をかけますので、予定価格等の問題もございますので、これからの事業費というのはちょっとお答えしかねますので、ご容赦ください。

○松村委員 実際、この再生プロジェクトの実施方針の報告を受けて、これがこの財政委員会でも了となれば、実際に動き出すわけですよね。それがどのぐらいの都財政の事業負担かということが見えなくて、私はこれ、結構ですとか進めるべきだとかいう判断には到底立てないような気もするんです。しかも、今、財政が大変だといって、財政再建推進プランも立てて、都民に相当の犠牲や我慢をといっている中で--先ほど、平田部長は、私が三弁護士会の--現在建築中、それから設計中、将来の警察の建てかえ、それに伴う留置定員数を今積み上げたらというから、恐らくそれは実行するんでしょう。
 でも、今は消防署だって、この大震災があるかしれないというときに、私聞いたら、今、都内の消防署の半分近くが、直下型を受けたら恐らく倒壊するんじゃないかと。しかし、新規建設は一切だめだといって認められていないというので、私にもそういう訴えがあった中、この警察の新築、増築、しかも、これに今いった、本来国が解決すべき留置場の付随施設まで多くふやしていく。しかも、この原宿署の場合、三百人という異常な規模。そういう中で、私たち、しっかり財政見通しを持って、いろいろなこれからの事業計画を審議するというか、審査すべきじゃないでしょうか。予算に一括くるめて、その予算を全体で--ある党はよく、私たちが個々の点について、予算というのは知事の政治姿勢全体の予算だから、予算のその中にいろいろ含まれていたら、反対すれば、何でも反対したとか、反対の党だなんてよくいう党がありますけれども、とんでもないというふうに思うんですよ。予算はそういう形で出るんですから、予算で示したときに、その予算書丸ごとを賛成するか、賛成しないかということじゃなくて、こういう個々の事業についても、今からそういう事業費だとかいうものをしっかり示して、私たち議会の意見や審議を受けるべきじゃないでしょうか。実際、これはもうこういう形で出したら、三百人規模はこういう建物というので具体的に決まっていくわけですから、それをPFIで、あとはそれをどう承認するか、認めるかという形になってくるわけでしょう。それ以前に、そういう計画でいいのかどうかをやはり十分意見を聞くべきだと。
 これ、先ほど皆さん、警察・消防だというけれども、だって、実際これ、今出されたPFIという事業は、財政委員会が責任を持って今後とも結論を出していくわけでしょう。当然そういう責任が私たちにはあると思うんです。これからの事業費の見積もりがどのぐらいかかるかもわからないという中で、もう既にそういう形で公表して、事業者を受け付けるということは、余りにも時期尚早じゃないかと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

○平田調整担当部長 今回行いました実施方針、それから要求水準案でございますけれども、これはPFIにこれからやろうとすることに対しまして、民間の企業がそれに応募できるかどうかという、そういう情報を与えるものでございます。それで、私どもが提出した資料にも出てございますけれども、来年の二月に、PFIの事業として行うかどうかというそういう特定事業の選定、それから来年の三月に入札公告を行います。したがいまして、その時点でまた数字というのは具体的な数字として検討していくということでございます。今回はあくまでも方針、それから要求水準案という、そういう一つの大枠としての提案だということでご理解いただきたいと思います。

○松村委員 最後に意見だけ申しますけれども、特にこの三弁護士会の意見書にもあるように、三百人定数の留置場の設置の必要性はない、見直すべきだということを強く申し上げて、終わります。

○執印委員 それでは、私からも質問させていただきます。
 いろいろやりとりはありましたが、最初に、ここの実施方針の中に、大まかにこの基本構想策定後の経緯というのが書かれているわけですが、七月十二日に渋谷区長から要請文の提出があったということで、これについての回答を知事が最終的に出されている。この資料も読ませていただいたわけなんですけれども、受けとめとしては、警察の留置場の規模だとか、それからこれまでの要請事項に関しての、警察署の整備、運用について、また緑地の保全とオープンスペースの確保についてなどなど、あとは区の関係の施設などについての要望も出ているわけですけれども、こういったものが出てきていて、今までのやりとりの中で、東京都が回答したとしても、区長並びに区の皆さんが納得されていないんじゃないかというようなご意見もあるわけです。そういったような見方も一部示されたんだというふうに思いますが、これについては、先ほど、この回答というものをもとにしながら、連絡調整の会もつくるということでしたが、どのような進め方をされようとしているのか、まず最初に伺っておきたいというふうに思います。
 いろいろ、多分地元の方にとっては衝撃的な施設というふうにいうことができるかと思いますので、反対があるのはそれも理解できますが、さまざまな視点からの話し合いがされてきて、回答書が知事から区長に出された。そして、これをもとにまた話し合いがされながら、地元住民の意見反映も行われていくんだというふうに思いますけれども、その点を東京都としてどのように考えていくのか、どのように今調整を進めようとしているのかということをまず最初に伺わせていただきたいと思います。

○平田調整担当部長 今、先生からもお話がございましたように、本場所は警察のほかにもいろいろなまちづくり、緑の関係とか、地元のいろんな要求がございまして、そういったものを含めました新しい、地域にふさわしい、にぎわいのある、安全・安心のというフレーズを使ってございますが、そういったまちづくりをしようとしておるわけでございます。
 それで、今回、要求水準書案として提示をいたしましたけれども、それにつきましても、先ほどもちょっと触れましたけれども、これまでの地元の重立った方たちで構成する四者協議会、そういったものとの協議を踏まえて、そして今お話のありました回答の内容ですね、こういった内容を踏まえたものをここに盛り込んでおるわけでございます。そして、この後は、これも何回か出ましたけれども、連絡調整会議というものを立ち上げまして、その中で、地元の要請に対する都の回答に基づきます具体的な内容について、区及び住民代表の方と連絡調整を行いまして、その結果につきましても、できる限り業務要求水準書の方に反映させていきたいというふうに考えてございます。

○執印委員 そうしますと、これは案という形で出ているわけですが、今後、話し合いを進めながら、業務要求水準書にするときには、地元の方々のご意向を反映させていくというふうなとらえでいいでしょうかということと、目途としている時間はあると思いますけれども、その時間のために話し合いが不十分になるというようなことはないのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

○平田調整担当部長 三月に入札公告というのを行います。そこで、要求水準書案の案が取れる形になりますので、その間できる限りの意見を取り入れていこうと思っております。
 ただ、これは先ほど申し上げました連絡調整会議という場を考えておりますので、また、地元区の協力がなければできないことでございますので、東京都としては一刻も早くこれを立ち上げるようにということで、関係者と今調整をしているところでございます。

○執印委員 私は十分な調整をしていただきたいということで、していただけるんですかね、という確認をとらせていただいてから次の質問に入りたいと思っているものですから、今のお答えだと、一刻も早く立ち上げたいということが最後にあったんですが、東京都の判断ばかりではいかないと思います。区の方には区の判断もあり、それから区長さんにとっては、やはり区民の方に対してどのように説明をしていくか、また、それが納得が得られるのかというような最終判断も必要ですから、東京都の時間軸だけに合わせて進めないでいただけるんですよね、ということをちょっと確認させていただいてからと思っているんですけれども……。

○松澤財務局長 ちょっと今の部長の答弁を補足させていただきますが、若干前提のところをはっきりさせていただきたいと思うんです。
 私どもは、七月十二日に区の方から、今までずっと三年やってきた中でのいろんな要望の内容を、区長という名前で要望を集約していただいて、それを七月二十日に知事の方から回答させていただいた、そういう事実がございます。この七月二十日の回答の中で、留置場の規模については三百人程度、こういっているわけでございます。
 それに対して、それ以降、四者協なり地元説明会を通じていろんな形で、この七月二十日の回答に対して話し合いをしてまいりました。その結果として、十一月十九日の四者協、実施方針を説明する段階の前では、地元の方からは、この実施方針、それから業務要求水準書の内容を説明してくれという形に変わってきて、それを説明するという段階に来ましたので、私どもの受けとめ方としましては、七月二十日に回答したことを前提にして、それから今回出させていただいた実施方針を前提にして、業務要求水準書というのも案になっておりますが、今申し上げたものを前提にして、これから具体的に地元の方と個別の話でできるものはやっていく、こういう段階に入ったというふうに理解しておりますので、一から前提がまた始まるということではない、そういうことでございます。
 したがいまして、地元の方も、七月二十日の回答に対して反対の方もいらっしゃるかもしれませんが、おおむねご了解いただいたというふうに受けとめておりますので、これからは、そういう前提の中でいろいろな個別の条件ですね、例えば極端なことをいうと、木はどんな木を植えるかとか、フェンスはどういうふうにしてつくっていくかとか、そういうような具体的な話にこれから入っていくことを前提に、四者協というものよりも、連絡協議会という今度は別の形を立ち上げて、具体的に話をして、来年春の入札の公告に向かっていく、こういう段階に入った、こういうふうにご理解いただきたいと思います。
   〔秋田副委員長退席、委員長着席〕

○執印委員 それでは、少し話を整理させていただかないと次の質問に行けないということもありまして、地元が反対しているというようなことではなくて、スタートラインについているという理解をさせていただいてよろしいのかと思うのですが、話し合いのというか、この話を進めるスタートラインにきちんとみんなついているというふうに……。
   〔「みんなはどうか……」と呼ぶ者あり〕

○松澤財務局長 何回もいいますように、この問題については、もちろん過去の経緯の中で、最初は反対の方が、留置場を中心に多かったわけですが、いろんな話し合いの形を通じてきた中で、おおむね基本的にはご理解を、さっきいいました七月二十日の回答を前提にした内容についてご理解をいただいている、こういうふうに受けとめております。もちろん一部反対の方はおられるかもしれません。しかし、全部が賛成するということは、これはなかなかあり得ないことですので、我々としてはそういう前提条件が整ったということを前提に、もう一つ前の段階に進んでいく、こういうような考え方でございます。

○執印委員 わかりました。私がさっきいったみんなというのは、重立った方々という意味だったんですけれども、まだ反対の方がいらっしゃるということはあるかもしれませんので、そういうことも含めて十分に議論をしていただきたいというふうに思う視点も含めて、これまでの議論からしますと、この先の質問は少し踏み込み過ぎるかなというふうな気もしますけれども、私どもも今後の判断の基準にしたいというふうにも思いますので、何点か伺いたいと思います。
 これをいろいろ読ませていただきまして、今回は都有地の有効活用という観点から、公共施設の整備において民間事業者の持つノウハウを積極的に取り入れて、PFI手法で実施するということになっているわけですね。それで、これまでのいろいろな施設のつくり方からしますと、留置場を含めた警察をPFIでという、そういうことになかなか頭がなじまないというようなところがあるというふうに思うんです。しかも、この方式が、PFIにはBTO方式とBOT方式というのがあるそうですけれども、ここではBTO方式を採用するということをおっしゃっているわけですが、その理由を、BOT方式--これはビルド・オペレーション・トランスファーとビルド・トランスファー・オペレーションの違いがあるということですが、その違い、BOTとの違いと、メリット、デメリットというのをあわせて説明していただきたいと思います。

○平田調整担当部長 まず、BTO方式とBOT方式の違いでございますけれども、BTO方式、BOT方式ともに、民間事業者が施設を建設した後、事業期間にわたりその施設の管理運営を行う方式である、これは共通してございます。そして、BTO方式は施設の竣工直後に、都ですと都に施設の所有権を移管するのに対しまして、BOT方式は事業期間終了後に移管する点が異なるものでございます。
 それぞれのメリット、デメリットでございますけれども、今回の警察施設の場合には、BTO方式では施設整備費に都債を充てることが可能であること、あるいは国庫補助金の対象となる等、財政的なメリットがある一方、施設を所有することに伴うリスクは都が負うことになります。
 BOT方式は、民間事業者が施設を所有することになりますので、事業者の自主性が高まり、ノウハウや創意工夫が発揮される余地が広がるというメリットがある一方で、民間事業者が施設を所有することに伴い税負担が発生するというところがございます。
 本事業では、これらのメリット、デメリットの検討をするとともに、民間事業者に委託する管理運営業務の範囲等を総合的に勘案しまして、BTO方式により実施することとしております。

○執印委員 その点についての判断というのはわかりました。
 次に、これはかなりいろいろ読ませていただいたものですから、少し具体的に質問させていただきたいんですけれども、この業務要求水準書案ですね、これは警察施設で留置場がある、そういう施設だというふうに思うわけですが、片一方で--私はずっとドメスチックバイオレンス、配偶者からの暴力の問題などについてもかかわってまいりまして、暴力が夫がいる時間に起こるものですから、昼間会社に行っているときは起こりませんで、会社から帰ってきて、その時間から暴力が始まるというものですので、大体逃げるときには夜というような、そういうことが多いということなんですね。それで、ドメスチックバイオレンス法はこの五月に改正されまして、都道府県が自立支援のための基本計画をつくるということにもなっているわけですが、警察というところは、一番先に逃げ込む可能性もあるというふうに思うんですけれども、こういったものについて、この業務要求水準書案ではどのような対応がされているのか。また、駆け込みとか相談とかいろいろなケースがあると思いますが、どのような方針を持たれているのか、この点について伺います。

○平田調整担当部長 お尋ねのようなドメスチックバイオレンスなどの人権侵害に対応するため、警視庁では相談窓口として生活安全相談センターで電話相談を受け付けているほか、専門機関の窓口紹介あるいは事件相談を行っております。
 それから、警視庁によりますと、ドメスチックバイオレンスや児童虐待などの人権侵害にかかわる相談等の専用の部屋は設置しておりませんけれども、各課の事務室内に相談コーナー、応接室を設置するほか、特にプライバシーに十分配慮した被害者支援用応接室を設置することとしておりまして、これらの部屋を使用して対応することとなっております。
 今回、この業務要求水準書案でございますけれども、この中では、原宿警察署の所要室の項目の中に、相談コーナー、応接室、それからその他の所要室というところに被害者支援用応接室、それぞれが含まれております。

○執印委員 国が一番最初に調査したのが平成十一、二年ぐらいだったと思いますけれども、ドメスチックバイオレンスで一年に亡くなる女性が百人ぐらいで、三日に一人は夫の暴力によって死んでいるという、そういう現実も見えてきております状況ですので、いろいろ地域の方からすれば、不安、心配があるだろうということも片方で思うわけですけれども、つくるのであれば、女性の助けになる施設としてほしいというふうにも思っているわけです。
 さらに細かく見させていただきました結果、こういったドメスチックバイオレンスの対応などをしますと、今我慢している人も駆け込むことがふえてくるということが予想されるわけですが、そのときには女性の警察官の増員というものも必要になってくるというふうに思うわけです。この業務要求水準書案によれば、女性の当直室とか女性の更衣室、これは警官の職員の方の分ですけれども、これが男性の職員の方の約半分のスペースというふうになっているわけですが、将来的に対応できる施設として考えているのかどうか、この点を伺います。

○平田調整担当部長 これは警視庁によりますと、女性用の当直室や女性用更衣室のスペースは、職員の男女比率によって所要の面積を算出しております。それから、DV等の相談につきましては、将来のそういった増加を見越しまして、相談コーナー、応接室や被害者支援用応接室を設置することとしておるということでございます。

○倉林委員長 報告の範囲からずれないように、ひとつお願いしますよ。

○執印委員 私はずれていないと思っているんですけれども、こういったものも含めて、この事業をどう考えていくのかというさまざまな観点からの質疑が必要だと思います、これがまたベースになっていくわけですから。この件だけで賛成、反対なんということももちろんなく、大きな視点で見ていきますけれども、大事なことであるというふうに思いますので、この範囲の中で私は聞かせていただいているというふうに思います。
 時間も時間ですから、簡単に質問させていただきたいというふうに思いますが、これについては総合評価制度というものを導入するというふうになっておりますが、PFI事業を実施する意義として、コスト削減に加えて行政サービスの質の向上の実現をも可能にする、それから、入札参加者がその技術力、ノウハウを駆使して建物の設計、建設、運営及び維持管理について包括的に提案を行っていくということだと思いますが、ここの点で、総合評価一般入札によるメリットを最大限に引き出すために、具体的に価格以外にどのような条件で評価をしていくのかという点について伺っておきたいと思います。

○平田調整担当部長 この事業の民間事業者の選定に当たりましては、お話のように、予定価格の範囲内で、価格だけでなく、その他の条件をあわせ評価し、都にとって最も有利な企画を提示して入札に参加した者を落札者とする方法、総合評価一般競争入札を導入する予定でございます。具体的には、民間事業者の事業運営能力、設計、建設、維持管理、運営あるいは業務遂行能力などの各方面から事業提案を審査するものでございます。
 なお、選定基準及び審査に当たりましては、今後、学識経験者等の外部委員と都職員とにより構成されます審査委員会におきまして、本件事業目的を勘案した事業者選定基準の策定についてご審議いただくとともに、この選定基準に基づきまして事業者選定の審査を行うこととしております。

○執印委員 今後もそういった意味では民間事業者の意見を取り入れて、メリットがある事業となるように地域とも話し合っていっていただきたいというふうに思うわけですが、あわせまして、この総合評価一般入札制度は、今回、その留置場をつくるという視点から評価というものをつくっていくと思いますが、私どもの主張であります環境、福祉、男女共同参画、公正労働条件などの社会的価値を有する企業を評価できる仕組みづくりに今後も積極的に取り組んでいただきたいことを述べておきます。
 最後の質問になりますが、この神宮前一丁目民活再生プロジェクトは、原宿警察署の移転改築を中心として、その周囲の再開発事業を行うものですから、地域住民の生活に与える影響は極めて大きいというふうに考えられます。そのために、このプロジェクトに参加する企業の社会的責任は極めて重要な要素となるというふうに思いますが、入札参加に当たっては、その企業が責任を果たし得る条件が付されるべきであるというふうに思います。
 今、CSRについて、企業が企業市民としてコンプライアンス、法令等の遵守や環境保全、消費者保護、公正な労働環境、人権、安全衛生、地域社会への貢献などが一般的にいわれておりまして、東京都においても、この十月二十九日に、生活文化局が東京都消費者月間の取り組みで講演会を開催しているところです。一方、三井物産などの偽造問題も明るみに出まして、社会的な信頼を裏切ってはいけないということも、都民みんなが感じるところになっているというふうに思います。
 したがって、地域住民の生活に大きな影響を与える今回のようなPFI事業については、入札の参加条件に、法令や社会的規範の遵守などを初めとする、企業の社会的責任と呼ばれるCSRの考え方を取り入れて、この責任を損なった企業については排除すべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか、伺いまして、質問を終わらせていただきます。

○平田調整担当部長 今回のPFI事業を初めといたしまして、都の発注する事業は、都民の財産となる社会資本整備や事業の運営を行うものであり、これを請け負う企業が、利潤の追求だけでなく、社会的存在として、ご指摘のように法令や社会的規範を遵守することは当然の責務であり、社会的責任は極めて重要であると認識しております。そのため、都はPFI事業の入札公告において、東京都競争入札参加有資格者指名停止措置要綱に定める契約に関連する違法行為等を行い、社会的信用を失墜したと認められる企業につきましては入札に参加できなくなることとしており、このPFI事業においても同様に排除されるものでございます。
 今後とも、企業の法令や社会的規範の遵守に十分留意し、PFI事業の適正な推進に努めてまいります。

○倉林委員長 ほかにございませんね。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○倉林委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、ご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○倉林委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時三分散会

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