財政委員会速記録第九号

平成十六年六月十日(木曜日)
第二委員会室
   午後一時四分開議
 出席委員 十二名
委員長近藤やよい君
副委員長森田 安孝君
副委員長小美濃安弘君
理事松村 友昭君
理事川井しげお君
理事中村 明彦君
秋田 一郎君
鳩山 太郎君
執印真智子君
桜井良之助君
藤川 隆則君
桜井  武君

 欠席委員 なし

 出席説明員
財務局局長櫻井  巖君
経理部長佐藤  広君
契約調整担当部長小山 利夫君
主計部長熊野 順祥君
財産運用部長小野田 有君
調整担当部長江連 成雄君
参事三津山喜久雄君
建築保全部長福島 七郎君
コスト・調整担当部長松村 光庸君
参事南部 敏一君
主税局局長川崎 裕康君
総務部長菅原 秀夫君
税制部長川村 栄一君
参事関口 修一君
参事後関 治久君
課税部長吉田 勝武君
資産税部長安田 準一君
徴収部長小林 宣光君
参事齊藤 吉民君

本日の会議に付した事件
 主税局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百六十二号議案 東京都都税条例の一部を改正する条例
・地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例の報告及び承認について
 財務局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百六十一号議案 東京都有特許権及び実用新案権の管理条例を廃止する条例
・第百七十六号議案 環二地下トンネル(仮称)築造工事(十六 二-環二東新橋)請負契約
・第百七十七号議案 相生陸橋(仮称)鋼けた及び鋼支柱製作・架設工事(十六 四-環八若木)請負契約
・第百七十八号議案 日暮里・舎人線鋼けた及び鋼支柱製作・架設工事(その二十一)請負契約
・第百七十九号議案 日暮里・舎人線鋼けた及び鋼支柱製作・架設工事(その二十二)請負契約
・第百八十号議案  日暮里・舎人線鋼けた及び鋼支柱製作・架設工事(その二十四)請負契約
・第百八十一号議案 日暮里・舎人線鋼けた及び鋼支柱製作・架設工事(その二十五)請負契約
・第百八十二号議案 日暮里・舎人線鋼けた製作・架設工事(その二十六)請負契約
・第百八十三号議案 東京消防庁本部庁舎(H十六)受変電設備改修工事請負契約
報告事項(質疑)
・地方分権改革に関する東京都の基本的見解について

○近藤委員長 ただいまから財政委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、主税局関係の付託議案の審査並びに財務局関係の付託議案の審査及び報告事項に対する質疑を行います。
 なお、付託議案のうち、第百七十六号議案から第百八十三号議案までの契約議案につきましては、議長から事業所管の常任委員会に調査依頼を行っているとのことでございます。ご了承願います。
 これより主税局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百六十二号議案及び地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例の報告及び承認についてを一括して議題といたします。
 本案につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○執印委員 それでは、都税条例の一部改正の条例について質問させていただきます。
 今回のものは法律の一部改正によるものですけれども、夫と生計を一にする妻に対する均等割の非課税措置の廃止に伴い、平成十七年度分の税率を五百円--本則千円--に軽減する経過措置を設けるということですが、まず、同居の妻に対する均等割の非課税措置が、今いったように今回廃止となるわけですが、非課税措置を行ってきた理由と、今回の改正の理由を伺います。

○川村税制部長 均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻に対して、これまで均等割の非課税措置が講じられてきた理由についてでございますが、夫婦は社会生活上一つの単位として生活を営んでおりますことから、均等割の課税に当たりましては、いわゆる戸数割の考え方に基づき、夫に課税した場合には、妻には二重課税をしないというものでございます。
 また、この妻に対する均等割の非課税措置が廃止されましたのは、均等割は、個人が地域社会の費用の一部を等しく分担するという性格を有しておりますこと、また、担税力がありながら均等割が課されないのは不公平でありますことから、今回その見直しを行うこととされたところでございます。

○執印委員 つまりベースになる部分、例えばタクシー料金なんかでいうと基本の部分を払わないで所得割で払ってきたという現状があったんだというふうに思います。
 それで、今、夫婦は社会生活上一つの単位として生活を営んできたことから、均等割の課税に当たってはいわゆる戸数割の考え方に基づいてきたということでしたけれども、ここだけ聞くと、税が世帯単位なのか、個人単位なのか、わかりにくくなってくると思いますが、税というのは基本的にどういう考え方なんでしょうか。

○川村税制部長 現行の我が国の税制におきましては、課税単位は、ご指摘のように個人単位の課税が原則となってございます。

○執印委員 それを確認させていただきまして、今回の改正による都税収と区市町村税収への影響というのは幾らぐらいになるのか。
 また、対象となる人数がわかりましたら、一緒に教えてください。

○川村税制部長 均等割の非課税措置の廃止に伴う都税収入への影響額についてでございますが、新たに課税対象となる妻は約七十七万人でございまして、税率を二分の一といたします経過措置が講じられます平成十七年度においては約三億七千万円、平成十八年度以降の平年度におきましては約七億五千万円の増収をそれぞれ見込んでいるところでございます。
 また、東京都内の区市町村民税への影響額につきましては、平成十七年度において約十一億円、平成十八年度以降の平年度において約二十二億円の増収となるものと推計しております。

○執印委員 税収額についてはわかりました。
 先ほど、税は個人単位であるということで伺ったわけですけれども、その中でも、世帯単位というふうに見えるし、また、世帯単位で考えざるを得ない制度というのが残っていると思いますが、それが配偶者控除などですね。それで、昨年度の税制の改正では、配偶者特別控除の上乗せ部分が廃止をされておりますが、これはどういう理由だったのでしょうか。

○川村税制部長 配偶者特別控除は、専業主婦世帯を中心に税負担を軽減することを目的として、昭和六十二年度の税制改正において創設されたものでございます。しかし、その後の共働き世帯の増加や女性の就業状況等が変化している中にありまして、配偶者控除に上乗せした配偶者特別控除は、納税者本人や他の扶養親族に比較して過度の配慮になっておりましたことから、平成十五年度の税制改正において、この配偶者特別控除の上乗せ部分が廃止されたものでございます。

○執印委員 過度の配慮となっていることから上乗せ部分を廃止されたということですが、しかし、まだ配偶者控除は残っているというふうに思います。これがいろいろ問題でして、例えば女性がもう少し働きたいとか、会社との関係で働いてほしいとかいうふうにいわれたとしても、税がふえてしまう、一家としては収入が減ってしまうというようなことがあって、ブレーキをかけているというふうに思います。この配偶者控除については、政府税調ではどのような検討がされているでしょうか。

○川村税制部長 配偶者控除のあり方につきましては、平成十五年六月の政府税制調査会の中期答申におきまして、家事や子育て等の負担はどのような世帯形態でも生じる上、今後共稼ぎの増加が見込まれるため、税制面で片稼ぎを一方的に優遇する措置を講じることは適当でないとされております。
 また、配偶者控除を含めた人的控除のあり方につきましては、そもそも少子高齢社会においては、社会的費用をできる限り多くの者が分かち合う必要があるといたしまして、老若男女を問わず、働く能力と意思のある者が積極的に活躍できる社会を構築するよう、今後、家族の就業に対して中立的な仕組みとしていくことが重要であるとされているところでございます。

○執印委員 今、政府税調での考え方が示されたわけですが、この見直しがいつになるのかちょっとわかりませんが、今のままの制度では、このままでは、きのうの発表で出生率もさらに下がっているという中で、労働力をどういうふうにするかという問題もあると思うんです。東京都としては、こういった配偶者控除とか、それから政府税調についてとか、税の面からも検討が必要だというふうに思いますが、どのようにお考えでしょうか。

○川村税制部長 個人所得課税におきましては、納税者の税負担能力を考慮いたしまして、扶養控除、医療費控除等のさまざまな所得控除が設けられております。これらの所得控除につきましては、これまで、その時々の社会経済情勢を踏まえて見直しが図られておりまして、先ほど申し上げましたような配偶者特別控除のように既に見直されたものもございます。
 お尋ねの配偶者控除につきましては、配偶者控除が扶養控除と独立して創設された経緯や、扶養控除との均衡、政府税制調査会でも指摘されております女性の社会進出、配偶者控除等の人的控除が既に定着しております状況などを踏まえまして、今後、国民的議論の中で総合的に検討されていくべき課題であると考えております。

○執印委員 わかりました。
 それでは、やりとりをさせていただきましたので、最後に簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。
 いろいろ社会状況の変化もあって、さまざまな議論がさまざまなところでされているわけですが、私どもとしましては、例えば年金に関しても、今一元化の議論もありますけれども、女性の年金に関しては、特に配偶者の職業によって第一号被保険者と第三号被保険者というふうに分類され、片方は払わなければいけないけれども、片方は同じ国民年金でも払わないというようなことにもなっておりまして、まことに中立ではない制度だというふうに思っています。
 で、今やりとりさせていただきまして、税に関しては、百万円以上の収入があって、所得割分は納税していても、均等割は世帯単位と見えるような形で非課税だったということが変更となるわけですから、片方で見れば増税ということができると思いますけれども、この見直しそのものは評価できるものだというふうに考えております。
 しかし、片方で、働く女性の置かれている状況というものを考えると、出産後の職場復帰のことですとか、同じ労働をしながら同じ賃金ではない、男女の賃金格差などへの取り組みが社会全体としては非常におくれているというふうに思いますので、東京都としても制度の整備というものをしていただきたいというふうに思います。
 先ほども確認させていただきましたように、税は個人単位ですから、配偶者控除のように、税によって女性の就労調整がされることのないように、東京都としても国に提案すべきだというふうに考えますので、お願いをしておきます。
 また、税に関する都の各種発行物についても、特に「ガイドブック都税二〇〇四」というものなどを初めとしまして、納税者という立場から男女を取り上げていただきたいというふうに思います。個人単位の税の制度でありながら、性別役割分業がしっかり入っているなという感じがいたしましたので、そういった点にも注意をしていただいて、納税者という立場できちんと男女を扱っていただきたいということ、それから、こういう発行物が性別役割分業を助長しないように十分にこれから注意をしていただきたい、来年度に向けて見直しをしていただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わります。

○近藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、ご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○近藤委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で主税局関係を終わります。

○近藤委員長 これより財務局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第百六十一号議案及び第百七十六号議案から第百八十三号議案までを一括して議題といたします。
 本案につきましては既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○小美濃委員 それでは、質問をさせていただきたいと思っております。
 まず、櫻井財務局長におかれましては、昨日の本会議で新出納長に選出されることが決定しまして、心よりお喜びを申し上げたいと存じます。後ほど、多少、出納長室にもかかわる質疑になろうかと思いますけれども、ひとつご了承願いたいなと、そんなふうに思っております。
 まず、今回、東京都有の特許権及び実用新案権の管理条例の廃止案が提案されているわけでありますが、特許権や実用新案権など、近年注目されているいわゆる知的財産権に含まれているものと存じております。都としても、財産管理面だけではなくて、都の進める施策にもこれらは大きく関連、関係してくるものだろうと考えております。
 そこで、今回廃止が提案されている条例はどんな内容を定めた条例なのか、また、条例の何が問題なのかということを改めてお伺いさせていただきたいと思います。

○小野田財産運用部長 このたび廃止を提案させていただいている条例は、昭和二十六年に制定されたものでございます。民間企業等に都が所有する特許権や実用新案権の使用を承認する場合の手続や、あるいは使用許諾料の算定方法を定めているものであります。
 現在の条例の問題点といたしましては、都が保有する特許権や実用新案権を中小企業やベンチャー企業の育成に柔軟に生かしていく上で問題が生じていることがございます。
 具体的には、特許の使用許諾料が原則として販売価格の二ないし四%とされているため、それより低廉な金額で中小企業に使わせる必要が生じた場合に、積極的かつ柔軟な対応ができません。
 また、中小企業が都と共同で特許を取得いたしましても、実用化のためにその企業だけに都の共同特許を使わせる、特許法でいうところの専用実施権を認めていないために、商品化が進まない要因の一つとなっております。

○小美濃委員 問題があるということは理解できたわけでありますが、問題がある条例などは、一部を改正する条例等々で対応する場合がよくあるわけですが、今回の条例はなぜ廃止をする必要があったのか、この点についてお伺いしたいなと思っております。

○小野田財産運用部長 廃止の必要性でございますけれども、一つには、現在の条例が定めております特許の使用許諾契約の考え方や、あるいは特許料の算定方法について毎年新しい考え方が生まれるなど、変化が極めて激しくて、条例で規定する対象としては非常になじみにくい分野となっております。
 また、権利の範囲など、それより上位の考え方につきましても、特許法などの個々の法律の規定が充実してきているとともに、必要な法改正も頻繁に行われているために、それらについてもあえて条例で規定すべきものは特にないのが現状となっております。
 こうしたことから、国は法令ではなくてガイドラインで、ほとんどの府県も規則と要綱により対応しております。
 一方、地方自治法上におきましても、特許権を初めとする知的財産の管理処分は、土地や建物などの財産と同様に、昭和三十九年の改正により知事の財産管理権に含まれるようになりました。このことから今回廃止を提案させていただいております。

○小美濃委員 今ご説明のありましたさまざまな理由によって廃止するということは理解したわけでありますが、しかし、それにつきましても、五十年以上もそういったことが、原因がわかっていたにもかかわらず見直しをしなかったということは一体どうしてなんだろうか、このことについてご説明をよろしくお願いします。

○小野田財産運用部長 本来でございますれば、知事に特許権を初めとする知的財産の管理処分権がゆだねられました昭和三十九年の地方自治法の法改正時に、まず議会にご相談すべきものであったと考えております。それが今日まで見直しが大幅におくれましたことにつきましては、まことに申しわけなく思っております。

○小美濃委員 そういうことで、条例を廃止するということは、五十年以上もそのままにしておきながら、また、今ある意味おわびの言葉というか、そういうこともあったわけで、大事なのはこれからどうするかということだろうと思うんですね。この条例を廃止した後はどのように対応されるのか、お伺いいたします。

○小野田財産運用部長 今後の対応でございますが、条例の廃止日に合わせまして、同日付で規則と要綱を改正いたしまして、これまで以上に、都が持つ知的財産の有効活用を図ってまいりたいと考えております。
 今後は、財務局において活用に当たっての全庁的な指針を定めた上で、現在財務局が持っております処分を含めた活用権限を、知的財産の内容を熟知しています所管局に移譲してまいります。そこでは、特許料などの算定方法につきましても、全体としての公平性に配慮しつつ、さまざまな方法の中から所管局が選べるようにしてまいります。また、現在の条例では認められておりません専用実施権につきましても、所管する局の判断で共同特許権者との使用許諾契約などができるようにしてまいります。

○小美濃委員 ただいまのご答弁にありましたとおり、ぜひ公平性というものに対しては重視をしていただきたいと思っております。と申しますのも、今回の条例廃止の大きな理由の一つが、都民や中小企業などに対して、都が持つ知的財産を有効に活用していただくことによって、都民や中小企業がより活性化するということがあるのではないかと思っております。今後は規則と要綱で対応するということでありますが、各局がおのおのの価値判断で特許料の算定を行うということになりますと、縦割り行政の弊害というんでしょうか、こういったものが場合によっては不公平な算定になることも予想されるわけであります。それでも、例えば今回が条例のままならば、そのたびに議会のチェックが働くわけですね、変更があるわけですから。しかし、今度これら条例が廃止されて、要綱や規則となると、よほど注意深く議会側も見守っていかない限り、なかなか目が届きづらいということがあるわけであります。条例を廃止するということの一面には、先ほど来説明がありましたとおり、より知的財産が中小企業や都民の方々に使いやすいことになるということで、これに対しては賛成なんですけれども、重ねて、公平性についてはより以上に重視をしていただきたい。要望しておきたいと思います。
 さて、今申し上げたとおり、条例ではなくて、今後は規則や要綱で定めていく、所管局に、処分も含めた活用権限もどんどん移譲していく、こういったことは理解をしているわけでありますけれども、今後も東京都が持つ知的財産を我々議会や都民にもきちんと報告していくこと、これは引き続き必要ではないかと思っているわけであります。
 その方法の一つといたしまして、今後導入が予定されている東京都のバランスシートに、都が持っている知的財産をわかりやすくのせていくべきではないかと考えているわけであります。
 そこでお伺いいたしますけれども、例えば民間企業では知的財産をどんな形でバランスシートに計上しているのか、お伺いいたします。

○小野田財産運用部長 国や会計の専門家に聞きましたところ、現在、我が国の企業でバランスシートへ知的財産を計上しておりますケースは、主として特許権などを第三者から購入した場合のみでございまして、その場合は取得金額を資産として計上しているようでございます。しかし、同じ特許権でありましても、自社開発の場合は、仮に研究開発が成功した場合でありましても、それをバランスシートに資産としては計上していないケースが多いようでございます。これは、会計基準の問題だけに限らず、競争相手の企業に自社が保有する知的財産を知られたくないといった企業の姿勢も関係しているのではないかと聞いております。

○小美濃委員 今ご説明のあったとおり、企業では他社との競争上、必ずしも知的財産の公開に積極的ではないというお話でありました。しかし、行政は民間企業とは違って、これは逆ではないかと考えているわけであります。都が持つ知的財産を都民や都内の中小企業に幅広く利用してもらうためには、その内容を積極的にPRしていくべきだと思います。
 また、財産としての価値をどう見ていくかということも大切であります。今後導入が予定されている東京都のバランスシートに知的財産を計上するためには、その知的財産がどれぐらいの財産価値があるのかということを把握しておくのも大変重要なことではないかと考えております。
 民間でも、知的財産の財産価値の把握方法はいまだ確立されていないということでありますけれども、平成十八年度から導入が予定されております東京都のバランスシートの計上に当たってはどのように考えているのか。これは所管局じゃないかもしれませんけれども、ぜひわかる範囲でお答え願いたいと思います。

○小野田財産運用部長 都におきましては、平成十八年度決算からバランスシートを作成することとしております。現在、準備作業を進めておるところでございますが、知的財産など個別事項の具体的な計上方法等については、今後その詳細を詰めていく予定でございます。
 知的財産の資産価値の評価方法につきましては、民間でもまだ明確な基準がなく、難しい課題と認識しておりますが、今回の先生のご指摘を踏まえまして、都民に対し、都が持っている知的財産をどのようにわかりやすく伝えていくかという点にも配慮しながら、具体的な方法につきまして協議を進めてまいります。

○小美濃委員 東京都が進めている試験研究の成果を都民に報告する、こういった意味からも、バランスシートへ計上するということ、内容もよりわかりやすい形で都民に知らせるということは大変重要であると思っております。先ほど来、バランスシートに知的財産を計上していくということは明確な基準がないということでありましたけれども、明確な基準がないなら、東京都が率先して行政としての基準案をつくって、国や他の自治体に積極的に提案していくことも、これは今後必要になってくるのかな、そんなふうに思っております。
 先ほど来、産業界の実情に合わない条例を長期にわたってそのままにしてきたことは大変問題ではあるということもありましたけれども、大事なのは、これからどういうふうにしてこれらを使っていくかということであります。最後に、今回の条例廃止とそれに伴う規則や要綱の整備を行うことによって、今後、知的財産を都庁全体でどのように生かしていくのかということについて、櫻井財務局長、ぜひお考えをお伺いしたいと思います。

○櫻井財務局長 ご存じのとおり、国におきましては、特許権や実用新案権、それにあわせまして著作権や商標権など、他の知的な権利も含めたものを知的財産権と呼びまして、その創出と活用を産業政策の大きな柱にしてございます。
 また、都におきましても、平成十五年四月に東京都知的財産活用本部を設けまして、その積極的な活用を進めていくことといたしました。
 今回の条例廃止のご承認がいただければ、あわせて行います規則、要綱の整備によりまして、今後は、都政のさまざまな分野で都の知的財産を柔軟な形で活用していけると考えております。
 中でも重点を置いて考えていますのは、中小企業育成の分野でございます。低廉な価格での特許権の使用や、都と共同で特許を取得した企業に対して、実用化段階での独占的な使用権を認めることなどによりまして、都の持つ知的財産を中小企業育成に積極的に活用してまいりたいと考えております。また、その他の分野でも、都が持つ知的財産の中で都民のために活用できるものがあれば、各局の判断で柔軟に活用してまいりたい、このように考えております。
 活用に当たりましては、各局での活用事例やノウハウなどを財務局が他の局にも伝え、局の壁を越えて、都庁全体でより有効に、公平公正に活用していけるように努力してまいりたいと考えております。
 都が持っている知的財産を、都議会の方や、あるいは都民への情報提供も重要でございますので、先生からお話のありましたバランスシートへの計上、こういうものも含めまして、インターネットの活用の拡大など、よりわかりやすい形での方策に取り組んでまいります。

○小美濃委員 力強いご決意をお伺いしました。
 最後に意見を述べさせていただきたいと思います。
 先ほどご答弁にもありましたけれども、現在の我が国の、もしくは米国の会計基準では、知的財産は、第三者から購入した場合は資産計上いたしておりますけれども、自社開発をした場合は資産計上しないというのが原則になっているようであります。このため、知的財産はほとんどバランスシートに計上されていないというのが現状だと思うんですけれども、しかし、地方自治法上においても、知的財産の管理処分は、土地建物と同様、知事の財産管理権に含まれている。これは先ほどの答弁にもありましたけれども、知事の財産管理権の中にあるわけですね、知的財産は。いいかえれば、知的財産も、他の土地や建物といった有形資産同様、都民の大切な財産であるといえるわけでありまして、この考えに基づくならば、知的財産権も当然、今後、バランスシートに計上していかなくてはならない、また、そういうことになるであろうと考えているわけであります。
 知的財産などの無形資産は客観的評価がなかなか難しいというのが先ほど来議論されてきたわけでありますけれども、しかし、ロンドン証券取引所に上場しております某食品会社は、自社ブランドをバランスシートに計上する際、六億七千八百万ポンドの評価をいたしまして、監査人もこれを認めている、こういったことで話題を呼んでいるところでもありますし、また、二〇〇一年四月に始動いたしております国際会計基準理事会は、無形資産に関する会計基準を三年以内に設定すると公表しているわけであります。また日本公認会計士協会も、知的財産の評価、中間報告ですけれども、これを平成十三年七月に発表したところであります。
 知的財産を適正に評価して、それを自治体の住民に公表していくことが必要不可欠になっていくということは、これは時間の問題であると考えておりますし、また、都が率先してそのことに取り組むことによって、他の自治体にも大きく影響してくるでしょうし、他の自治体が影響されてそういうことに取り組むことによって、全国民が共通認識として、知的財産は我々の財産なんだ、こういう認識に立ってくると思うんですね。そうすると、今まである意味では民間企業もちょっと隠しがちだった知的財産が、これは出さなきゃまずいだろう、そういったことでオープンになってくると、やっと民間のバランスシートと行政のバランスシートに共通認識が出てきて、民官の比較ができてくることによって、民でできること、公でできること、こういったことにもつながってくるのではないかと考えております。
 バランスシートはそれこそ出納長のこれからのまた大きな仕事でもありますし、新出納長にご選出されました櫻井財務局長におかれましては、お互いの橋渡しとなっていただきまして、今回の条例廃止によりまして、知的財産がより注目され、有効活用されることを心からご祈念申し上げて、質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。

○松村委員 ちょっと一点、今の質疑を聞いていて、確認しておきたいと思っております。
 それは、特許や実用新案権を、時代の流れに沿って、特許を取って守れること、権利を確保した上で広く利用させる方向に。今回の廃止して新たに規則をつくるということは、そういう方向なのかというふうに思うんですけれども、その点。
 それから、中小企業が取ったものが大企業に利用されたり、それから外国に利用されてしまう等ありますよね。そういう特許侵害を防ぐということにも、今回の条例廃止の意義があるというふうに考えていいのかどうか、その点。
 それからちょっとお聞きしたいのは、私は一番大事な点としては、東京都としてこれから、各局の局長がそれぞれ判断して、いろいろ認可したりとか、特許を取得するとかいうことがあると思うんですけれども、その際にも、東京都全体として特許をどう考えるのか、その観点やスタンスなどの姿勢をまずはっきりさせることが大事だというふうに思うんです。それで、今もお話があったとおり、財務局として全庁的な指針を定めるということですが、その財務局指針、今度の規則上どういう位置づけになるのか、その点だけをちょっとお聞きしたいというふうに思います。

○小野田財産運用部長 まず、お答えいたしますと、中小企業が取ったものが大企業あるいは外国企業にどういうふうに利用され--盗用と申しますか、されないように、そういう上で、今回の廃止等どういう意義があるのかというご質問でございますけれども、本来的に、特許権というものを幅広く各中小企業が取るような努力というものがまず必要だというのが基本でございます。と申しますのは、ともすれば各企業においては、特許権に相当するような発明をいたしましても、特許を取るような煩瑣な手続をとるとか、あるいは、それの侵害が起きたときにいろいろな訴訟手続とかいうものをあえて避けるという働きが一方では起こりまして、それを、いってみれば企業ノウハウという形で中へ畳み込んでおこうというドライブがかかりがちでございます。
 これに対しまして、今回のいろいろな条例の改廃を含めまして、一連の規定整備によりまして、東京都有の特許権が、例えば専用実施権を相手に取らせる、共同研究者との間で取らせることによりまして、それで特許というものが、そういったとかく閉じこもりがちなところから表に出て、一方では当然その企業の財産として保護するということになりますけれども、反面、それが活用されて、一定の特許の許諾料さえ払えば、あまねく広い意味で各企業がそれを活用できるということになりまして、これの権利の保護が図れるわけでございます。
 そういう意味で、今回条例の廃止をするということは、中小企業が取ったものが、むしろ大企業や外国でそれを、特許がない場合に乱用されたり盗用されたり、そういうことを防ぐという意味でも非常に意義があることであるというふうに我々は認識しております。
 それから、各局に権限が移管されることによりまして、財務局が全庁的指針を考えるというふうに申し上げておりますけれども、これを全体的にどのように考えるのかというご質問でございます。これが今回の指針とどういうふうに関係があるのかということでございますけれども、一つは、この指針というものは、ガイドラインと俗に申し上げておりますが、実は国におきましても特許庁がガイドラインというものをつくって、各省庁の長、すなわち大臣が各省庁一致した特許権等の取り扱いができるようなガイドライン、指針をいわば設けておるわけでございます。都庁におきましてもこれと同様なことを考えておりまして、このガイドラインによりまして、各局が局の実情によりまして柔軟にいろいろな中小企業支援等を含む特許権等の活用、知的財産の活用を工夫していくことになるんですけれども、一方、先生がおっしゃっているような全庁的なバランスというものもございますので、これにつきましては、財務局がそのガイドラインにおいて、例えば特許の実施料等の算定方法についても幾つかの現実的な事例をそこで示しまして、その中から選んでいただく、このような方法を考えております。これによりまして、全庁的なバランスと、先ほど小美濃副委員長からもございました公正性、公平性ですね、そういうものも含めまして、全庁的なバランスと、各局におけるみずからの政策的な必要度、こういったものがバランスよく織りなされるような配慮をいたしておるところでございます。

○松村委員 ありがとうございます。

○近藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○近藤委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○近藤委員長 次に、報告事項、地方分権改革に関する東京都の基本的見解についてに対する質疑を行います。
 本件については既に説明を聴取しております。
 これより質疑を行います。
 発言を願います。

○桜井(武)委員 まず冒頭に、財務局長、このたびは出納長になられまして、おめでとうございます。これからも頑張ってください。
 今回の、きのう、おとといの本会議でもう繰り返し質疑がありましたので、重なる部分もあるかもしれませんが、非常に重要な課題ということでございますので、触れさせていただきます。
 きのう、おとといの本会議の質疑を聞いておりまして、議事録を取り寄せないと正確なことはわからないんですが、正確ではないかもしれませんが、私の記憶だけで、この問題に対する知事の、何というのかな、思い入れというか、決意というんですかね、並々ならぬものがあるんじゃないかなという感じがいたしました。ある意味では今が最も危機的な状況に自分は置かれていると。自分は置かれている、そういうような表現もたしかされておったように思います。また、国政を見て、荒涼たる砂漠を見ているようだというように、半ば絶望感みたいなものをいっておりますが、反面において、あした地球が滅びようとも君はきょうリンゴの木を植えるべきだというような、絶望しちゃいけないよという意味合いのこともいって、みずから勇気を奮い立たしているような感じもいたして、相当並々ならぬ決意でこの問題に取り組んでいらっしゃるんだなと。
 また、東京都議会ばかりでなく、地方議会は全部そうでございますが、地方分権についてはもう十年も二十年もずっと続けてやってきたことでございますが、なかなか潮が満ちてこなかったんですけれども、今回はその潮がようやく満ちてきたんじゃないかというふうな感じもするところで、皆様方がこの地方分権改革に関する東京都の基本的見解というものを出されたわけでございます。これについてどう質疑したらいいのか、相手は国みたいなものでございますから、非常に質疑の仕方が難しいのでございますが、知事の気持ちを十分に--十分に酌めないかもしれませんが、そういった感じでもって何点か質問いたします。
 まず、国と地方の財政状況について確認をしておきたいと思います。
 近年の経済低迷を受けて、国も地方も税収減に苦しんでおりますし、しかし、一方では、税収減だろうとなかろうと、やらなきゃならない仕事は山ほどあるし、歳出は膨張しております。東京都も財源不足に悩んで、必死の思いで再建に努力しておるんですが、歳出と税収のギャップがなかなか埋まらないのが実情ですよね。都はこのような状況であります。都ばかりではないのでございますが、こういう状況でありますが、こういったことを国と地方を合わせた全体で見ると、どのような状況になっているのかということをまず確認したいと思います。
 まず一点は、国と地方の税収総額は幾らになるのか、また、これに対して国と地方を合わせた歳出総額は幾らになるのか、これをまず答弁してください。

○熊野主計部長 先生ご指摘のとおり、現在、国家財政も地方財政もともに税収と歳出のバランスが大幅に崩れておりまして、危機的な状況にございます。具体的な数字で申し上げますと、平成十四年度決算で申し上げますと、国と地方の税収総額は七十九兆、国税が四十六兆、地方税が三十三兆でございますが、これに対しまして歳出純計額は百五十一兆ということで、実に二倍近くまで膨れ上がっております。このすき間の多くの部分を借金、国債あるいは地方債で埋めているというのが現状でございます。

○桜井(武)委員 今お話しのとおり、現状では、国と地方の税収ベースと歳出ベースは逆転しているわけですよね。歳出が膨張し、税収とのアンバランスが極めて大きくなっているわけであります。本当にこのままで大丈夫なのかという危機感でいっぱいになるわけでありますが、言葉をかえるならば、民間会社なら間違いなく破産でしょうし、また、幾ら国や自治体だからといっても、会社と違うからといっても、ひど過ぎるといわざるを得ないわけであります。
 知事が、国の形を変えたいといっているのは、多分この構図を変えたい、この構図を変革したいということなんじゃないかと思うんですね。ここまでおかしくなってしまったのは、制度的な問題が大きいわけだと思います。先ほどの基本的見解でも示されておりますように、国が政策誘導とか景気対策等々の理由づけで地方につき合わせて、交付税制度をいわば破綻させてしまったといってもいいと思うのでございますが、その罪は非常に重いんじゃないかと思うんです。
 ところで、質問しますけれども、国も地方もともに共通の問題意識で、現在、今こそ改革に乗り出さなければならないというふうに思われるわけであります。他の道府県の議会まで傍聴に行っているわけじゃありませんからわかりませんが、東京都は、先ほど来申しましたように、相当の決意を持って臨んでいると思うのでありますが、国は問題意識というものを果たして持っているのかどうかということですね。これまで新聞報道等でしかわからないのでありますけれども、総務大臣、財務大臣、それぞれが案を発表しておりますが、この発表されている案から見て、国の姿勢を読み取るとすればどういうことになるのか、ちょっとお答えください。

○熊野主計部長 ただいま答弁申し上げましたように、国、地方を通じて、税収と歳出のギャップが大幅に拡大しておりまして、膨大な長期債務が積み上がっている。こういった現状を本気で改革していくためには、基本的見解で申し上げているし、知事も再三議会等で申し上げておりますが、これまでの仕組みそのものを根本的に変える必要があるというふうに考えております。
 しかしながら、先般示されました総務大臣案、ここでは税源移譲の先行決定に言及はしているわけですけれども、一方で、地方交付税につきましては小手先の対応のみで温存しようとしている。あるいは、地方財政の借金依存体質脱却に対して何ら方策を打ち出していない。また、税源の逆移譲あるいは不合理な財源調整措置の強化、こういったことについても言及しておりまして、これはまさしく東京都を初め大都市をねらい撃ちとした、分権改革に逆行した措置でありまして、決して我々としては容認できるものではないというふうに考えております。総じて、総務大臣案は現状の延長線上の対応にとどまっておりまして、地方税財政制度の改革に本格的に取り組もうという意欲は見えないというふうに感じておりまして、非常に残念でございます。
 一方、財務大臣意見書に至りましては、生活保護等の補助率の引き下げ等々、いわば国の責任を放棄して、理念なき国の歳出削減のツケを地方にしわ寄せしているだけというふうな印象が非常に強くて、とても改革とは呼べないものというふうに理解しております。

○桜井(武)委員 確かに省庁の姿勢は、今の説明のように、言葉をかえるならば、目先の利害、省益を守る、そういったことを最優先にしているように思われます。交付税を温存しよう、理念のない歳出削減をやろう、そんなようなところが最たるものだと思いますが、地方分権改革を実現して、疲弊し切った現在の税財政制度を改革することが最も国益にかなうはずであるということが、東京都の現在の--昔からそうだったのでございますが、今の本当に心底からの願いというか、考えだと思いますが、今の答弁のような考えが、省庁がそうである以上、東京都から問題提起をして主張していかなければ、日本はこのままでは、石原知事の言葉を使うならば、だめになっちゃうと。だめになっちゃうよということは、国がつぶれちゃうよということなのかもしれませんけれども、そういったことだと思うんですね。
 そこでまた質問させていただきますが、今回の緊急提言が重要な意味を持つのでありますけれども、この提言では、国の形を変えるという知事の考え方をどのように具体化して盛り込んであるのか、この点について答弁をお願いします。

○熊野主計部長 基本的見解の第Ⅳ章で述べております緊急提言は、三位一体の改革を骨抜きにしようとする省庁の動きに反論していくために、地方財政基盤の強化に向けて当面必要な最低限の事項について、具体的な数値を挙げて都の見解をお示ししたものでございます。第Ⅰ章、第Ⅲ章に述べてございます、本来あるべき地方分権改革を実現する、最初の第一歩となるような改革を国に迫ろうという趣旨でございます。
 具体的には、まず税源移譲につきましては、事務の比率に応じた適切な税源配分を実現するという観点から、まず十八年度までに国税と地方税の比率が一対一となるよう、税目、税率をお示ししたところでございます。
 また、国庫補助負担金の見直しにつきましては、国が示しているような単なる数字合わせではなく、国と地方の役割分担などに即したものとして行うことを求めまして、同時に、基礎的行政サービスにおける国の責任を明確にする観点から、義務教育費の国庫負担金の存続、あるいは十五年度、十六年度に一般財源化された義教の国庫分の復元を求めたところでございます。
 また、さらに地方交付税制度につきましても、現在の借金依存体質の解消に向けまして、税源移譲あるいは国庫補助負担金の見直し効果を反映した具体的な削減額をお示しして、制度の抜本的な見直しに着手するよう求めてございます。

○桜井(武)委員 さまざまなことを申し上げたいのでございますが、結論的に一つ申し上げます--結論って、まだ終わりじゃありませんけれども。
 東京には大都市特有の需要があるということを盛んにいわれておりますけれども、具体的にどういうものがあるのか、大きいものだけで結構ですので、幾つか例示していただきたいと思います。

○熊野主計部長 一口に大都市需要と申しますと、なかなかご説明するのは難しいんですが、大都市需要を生み出している要因というのは大きくは二つ、一つは人口集積、それからもう一つは、昼間流入人口がもたらす行政需要等でございます。基本的には、福祉、医療、環境といったソフト部門から、あるいは交通インフラとか上下水道みたいな生活インフラの部分、この行政全般にわたって大都市需要は発生しているというふうに理解してございます。
 ただ、特にわかりやすい例という先生のご質問に対してお答えするとすれば、特に都市再生関係の、例えば三環状を初めとする首都圏の交通インフラの道路、あるいは鉄道の連続立体交差、それから、ようやく着手されますけれども羽田空港の再拡張、こういったものが挙げられるというふうに思っております。
 また、もう一つ申し上げなきゃいけないのは、東京都は首都でありますので、大都市需要とは若干ニュアンスは異なりますが、首都需要という観点からは、警察業務、例えば国会、総理官邸、外国公館の警戒、あるいはVIPの警護、そういったものも東京特有の財政需要であるというふうに理解しております。

○桜井(武)委員 今質問しました理由は、申すまでもありませんけれども、何といっても東京が頑張らないことには日本全体だめになる、東京から日本を変えていこう、そういう東京都が抱えている特殊な要因を大勢の方々に理解していただきたい、こういう意味で伺ったわけであります。
 それでは次に、今度は、これから決めていくんだと思うのでございますが、秋に向けて具体策を策定していくということでありますけれども、大いに期待をしております。しかし、大変失礼ないい方になっちゃうんですけれども、自己満足みたいじゃだめなわけですよね。何たってかんたって、東京都だけでなく、大勢の地方自治体をまとめていくんですから、実現可能性のある具体策、そういったものを提案してこそ初めて意義あるわけでありまして、申すまでもないことでありますけれども、その点を主張しておきます。
 ところで、その点に関するのでありますけれども、これは本会議場で知事が何回も何回も何回もいっておりましたが、地方の理解を得るためのかぎですね、どういったことなのか。これは難しいかもしれませんが、ちょっと答弁を願います。

○熊野主計部長 確かに大変難しいご質問でございますが、端的に申し上げれば、今後、秋に向けて具体策を検討する中で、地方と大都市が共存共栄できる新たな仕組み、これを現実的に具体的に示せるかどうかというところが非常に大きなポイントになってくると思います。
 現行システムの破綻は明らかでございますけれども、現実を見ますと、地方の側にはいわゆる東京ひとり勝ち論に代表されるような不信感、あるいは交付税、補助金によって一定の財源が保障されている今の仕組みを大きく変更することへの拒否反応あるいは不安というものがあることは紛れもない事実であろうと思います。特に交付税につきましては、交付団体と、私どものような不交付団体の溝というものはかなり深いものがあるというふうに理解しております。
 今回の緊急提言におきましても、私ども、全国バランスに非常に配慮した税源移譲を提案してございますし、また、地方の理解を得られる工夫はしたつもりでございますが、今後とも地方の理解を得る上でのキーポイントは、もはや今の仕組みは維持できないんだという問題意識、現状認識、そういったものを地方の方々にまずは理解していただくということが肝要だろうと思います。
 いずれにしましても、大都市対地方といった誤った対立の図式を解消いたしまして、真の分権改革に向けた動きを加速させてまいりたいと思っております。

○桜井(武)委員 最後にいたしますが、ぜひすばらしい案をつくって頑張ってくださるようにお願いします、大変な作業だと思うのでありますが。
 最後に局長に質問しますけれども、今後、特別職として知事をしっかりサポートして頑張っていただきたい、このように期待しますが、今まで財政当局をつかさどってこられた方として、また、今後、特別職として知事の右腕になられる者として、地方分権改革に対する意気込みですかね、それをぜひ伺いたいと思います。お願いします。

○櫻井財務局長 日本を再生するためには、国の全国画一的あるいは一律の規制によるむだを除きまして、地方の自主性、自立性を確保し、地域特性を有する地方がそれぞれの特色を生かしまして、みずからの権限と責任でその地域を繁栄させていくということが大変重要であるというふうに考えております。
 地方分権改革は、将来の構想をきちんと持ちまして、改革の全体像をしっかりと踏まえて取り組まなければならない、このように考えております。それには、これまで述べてきましたように、国と地方の役割分担、こういうものを明確にしまして、その役割に応じた権限と責任、それを国、地方がそれぞれ持つという真の地方主権を確立しまして、その基盤となる地方税財政制度を構築していくことが必要であります。
 しかし、これまで行われております地方税財政制度改革の議論を見ておりますと、改革の理念が骨抜きにされ、つじつま合わせに収束してしまうんじゃないかということを心配しております。今こそ地方自治体が声を上げる必要がありまして、とりわけ日本の首都である東京は、地方自治体の先頭に立って進むべき道を切り開いていく責任がある、このように感じております。
 真の地方主権確立のため、都議会を初め、日本の将来を憂える多くの皆様方のご支援を賜りながら、引き続き全力を尽くしていく決意であります。

○桜井(良)委員 私も、桜井委員と同じように、地方分権改革に関する東京都の基本的見解についてお尋ねをしたいと思います。
 いろいろなところからいわれておりますが、戦後六十年過ぎまして、世紀も変わりまして、いろいろな意味で日本の国を支えている制度疲労が目立っています。そういうものを克服して、日本の国が再び、あるいは社会が再び活力を取り戻すためには、こういう時代にふさわしい一つの流れをつくり出していくことが大事だと思うわけで、そういう意味で、官から民へとか、経済優先から人間本位にしろとか、いろんな意味で転換のルールがいわれておりますが、大事な中で一つ、中央から地方へという流れがあると思うんですね。
 そういう中で、ちょうど骨太の改革というものが議論され、三位一体が論議の的になっていますが、その中で行われる改革というものは、この地方分権の流れをより強固なものにしていくために極めて重要なことだ、こう思うわけなんですね。そういう観点から、国が骨太の改革を発表するよ--中身は残念ながらまた引き延ばしにされましたけれども、それに対して都が基本的な見解を発表するというようなことがありましたので、今回の定例会の大きなテーマの一つに、この地方分権改革、三位一体改革があるのではないかと、私はこうとらえているわけなんですね。
 それで、代表質問での議論でも、この問題を皆さんが取り上げて、さまざまな角度から質疑が行われました。その中で知事がいろいろと答弁をしておりましたが、答弁を見ますと、知事の答弁は二つの形に類型化されるのじゃないか。一つは、国に対して徹底的に闘う姿勢を示したということだと思いますね。これは非常に大事なことだと思います。もう一つは、地方に対して東京都がリーダーシップをとりながら、協力、協調していく、こういう決意表明もなされたと思います。この二つに分かれると思うんです。これから秋に具体策をしていくということなんですが、本当に地方分権をする際に、このリーダーシップをとるということが--地方との話し合い、これは非常に難しいと思います。
 所得税の住民税化や、消費税をさらに地方へ還元させるという問題は、さほど地方とは、同じ土俵に立てるとは思うんですけれども、問題は、今回も掲げた交付税の改革。この交付税の問題について、しっかりと地方と議論を真からしていかないと、東京と地方が同じ認識を持って地方分権をやるんだということは非常に難しい状況じゃないかと思うんですね。今、熊野部長からもいろいろ答弁がありました。
 三位一体の改革というのは、この秋からいよいよ本番に入るといわれているんですが、この地方交付税をめぐる問題について、都は地方としっかりとこれを議論しておかないと、肝心なときにまた深い溝ができて、とても地方と共存共栄していくということは難しいんじゃないか。待ったなしといわれていながら、非常に難しい状況を目の前にとらえていると思うんですね。
 そういう中で、共存共栄をしていくということで、都が基本的見解を出しました。私は、この基本的見解はすばらしいと思うんですよね。今までは、にしきの御旗で税制改革をやるといっていましたが、何をもってやるかということははっきりしていませんでしたから、都税調の発表やいろんな目標は数値が出ましたが、都としてしっかりと打ち出したのは初めてなので、これはある意味ではすばらしい運動論だと思います。
 しかし、運動論だけではなかなかいかないので、現実には、それらを実現するための努力も必要になってくるわけだと思うんですね。先ほど部長から話がありました、分権改革による東京ひとり勝ち論に対しても、改革は、東京都と地方の勝ち負け論ではなくて、目指すのは本当に地方が豊かになることであり、大都市と地方が共存共栄を図ることだ、こういうふうにしております。これはそのとおりだと思います。しかし、今実際にそうした制度や仕組みが可能なのかどうか、また、具体的に提案できるかどうかなどの議論を具体的に積み上げていかないと、また空理空論に終わっちゃうんじゃないかなと私は心配しているわけであります。
 そういうことで、本会議での都側の答弁を聞いていても--決して財務局とはいいません、この件については知事本局がありましたが、何か地方の頭をなぜながら答弁しているなというニュアンスを受けたんですが、都が本当に地方分権を論ずるのであるならば、地方のことをもっと真剣に考えなきゃならないと思います。ひとり勝ち論を打ち破る一つの手だては、地方のことを地方以上に考えていかなきゃならないと思うわけなんですね。それにはやはり地方に対しても苦言を呈す。あるいは、それはおかしいじゃないか、そこのところを変えないとだめだよ、そのかわり東京も皆さんのことを考えるからというものがないと、お互いに納得した上で一つの改革に取り組むのは難しいんじゃないかな、こう私は思っているわけなんであります。
 そこで、今回の緊急提言にはこうした趣旨、地方にはいうべきことはいう、東京も地方のことをしっかり考えていくよという、そういう趣旨があるかどうか。これはこの運動全体を貫く大きな問題だと私は思いますので、質問はさらに続けていきますが、まず本日の最初に、出納長に栄進されました--本当におめでとうございます--局長に、その辺のことを確認しておきたいと思います。

○櫻井財務局長 先生お話しのように、今回の地方分権改革あるいは三位一体改革につきまして、大都市と地方、あるいは交付団体と不交付団体、あるいは先生からもお話がありました東京ひとり勝ち論など、さまざまな見方、考え方が出ておりまして、またいわれております。そういう中で何よりも重要なことは、今回の地方分権改革は国の形を変える抜本的なものでなければならない。そのためには、地方が担うべき役割と責任についても抜本的に見直していくということが必要になります。分権改革によりまして、都を初めとする大都市と地方とが新たな役割と責任を果たしつつ共存共栄していく仕組みを構築すること、これが主眼でございまして、お話のように、都も地方のあり方を真摯に考え、忌憚のない議論を通じて真の相互理解を深めていくことが前提になる、このように考えてございます。
 したがって、緊急提言では、国に対し抜本的な改革を迫りながら、地方財政を借金依存体質から脱却させるため、交付税改革に速やかに着手するよう求めるなど、地方にとっても厳しい提案の部分もございますけれども、全体としては、地方が自主自立できる税財政制度の仕組みづくりに向けた提言となっておりまして、これは、ただいま申し上げた考え方に基づいて取り組んでいるものでございます。

○桜井(良)委員 私は、地方分権を本当に実現する最大のネックは交付税だと思うんですね。東京都は不交付団体ですから、そこまで口を出さなくていいじゃないかという議論がありますが、本当に地方分権をやるためには、この地方交付税の現状を都が看過するわけにはいかない、そこを積極的に物をいっていくことが大事であるというふうに私は認識しているわけであります。
 基本的見解では、来るべき地方主権の時代の主体者として積極的に地方分権改革に取り組むんだ、このように宣言をしているわけですから、問題を絞って、この交付税について、いうべきことはきちんと地方にもいっていかないと、私は、この緊急提言も基本的見解も、単なる絵にかいたもちに終わってしまうんじゃないかと思います。
 そこで、この六月四日に決定されました骨太の方針二〇〇四の中で、地方交付税の改革についてはどのように記されているのか、それに対して都はどのような評価をお持ちなのか、お答えいただきたいと思います。

○熊野主計部長 東京都が出しました基本的見解の中では、交付税改革につきまして、税源移譲あるいは国庫補助負担金の削減などを地方交付税の圧縮につなげて、四・六兆円という具体的な削減額をお示しいたしております。
 これとは非常に対照的に、ご質問のありました骨太の方針二〇〇四の地方交付税改革についての記述は、具体策のない総論を述べるにとどまってございまして、しかも、財務省、総務省、双方の主張を取り入れた結果、一貫性のない内容となっていると思っております。
 具体的にこれを申し上げますと、骨太の方針二〇〇四では、まず地方交付税については、地方団体の改革意欲をそがないよう、国の歳出の見直しと歩調を合わせて地方の歳出を見直し抑制するという財務省寄りの方針を示しつつ、一方、地方において必要な行政課題については適切に財源措置を行う、これらにより、地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保するということで、麻生試案での総務省の主張にも配慮した記述となっております。さらに、地方団体の効率的な行財政運営を促進するよう、地方交付税の算定の見直しを検討すると述べている点から察しますと、交付税を抜本的に改革するのではなくて、当面は現行の仕組みを維持しながら、その枠組みの中での算定方式の見直しでお茶を濁そうという、改革には消極的な姿勢が透けて見えるというふうにいわざるを得ないんじゃないかと考えております。

○桜井(良)委員 私もいわれるとおりだと思っております。総論的に交付税の改革について、歳出を見直し抑制を図るというだけでは、具体的な改革案ではない、こういうふうに思うわけなんですね。
 ちょっと細かい数字を聞いて申しわけないんですが、三位一体改革の交付税の見直しで、一体どのぐらい金額が減っているのか、骨太の方針ということが、改革が始まったといわれる十三年度と十六年度の交付税額をちょっと比較していただきたいなと。交付税は、最近は原資不足を、交付税特別会計の借り入れではなくして赤字債で埋め合わせておりますよね。赤字債を加えた実質の額も比べていただきたいと思います。
 あわせて、十三年度と十六年度の国と都の一般会計の増減率も示していただきたいと思います。

○熊野主計部長 まず、地方交付税の総額でございますが、平成十三年度二十兆三千億、それから平成十六年度十六兆九千億となっておりまして、十三年度と十六年度を比較いたしますと、約三兆五千億、率にいたしまして一七%の減となっております。しかしながら、これは先生ご指摘のとおり、本来一般財源に充てるべき基準財政需要額の一部を、十三年度以降、臨時財政対策債、いわゆる赤字債に起債振りかえすることによりまして減少したものでございまして、この赤字債を交付税総額に合算した場合、これがいわゆる実質的な交付税額になろうかと思いますけれども、その数字を申し上げますと、平成十三年度二十一兆八千億、平成十六年度二十一兆一千億ということで、その削減額はわずか七千億円、率にすると三・三%の減少にとどまっております。
 次に、国の一般会計の予算額でございますが、平成十三年度と十六年度の増減を比較いたしますと、額にして五千億、率にして〇・七%の減でございます。
 これに対しまして、都の一般会計予算は、財政再建推進プラン、それに引き続く第二次財政再建推進プランに基づきまして、内部努力あるいは施策の見直しに積極的に取り組みましたので、平成十三年度六兆二千六十億だった予算額が、平成十六年度は五兆七千八十億まで縮減してございまして、額にして五千億、率にして八%の減となっております。

○桜井(良)委員 交付税は大きく削減したように見えますけれども、実質は三%前後の削減にすぎない、こういうことですね。
 また、一般会計の比較をしても、これは中身を議論すればいろいろな問題点があるんですが、総体として、都の努力に比べて国の方は余り減っていない。ということは、交付税改革は何もしていないということもいえるんじゃないかと思います。
 そこで、もう一つ、十三年度と十六年度を比べて、交付税特別会計の借入金の残高がどうなっているのか、これも示していただきたいと思います。

○熊野主計部長 交付税特別会計の借入金残高は、平成十三年度末で四十二兆六千億でございます。これに対して十六年度末は五十兆二千億でございまして、率にして一七・九%の増となっております。
 また、地方財政の借入金残高は、ご案内のとおり二百四兆というふうな巨額の額になっておりますが、このうち、あくまでも都の試算ではございますけれども、基本的見解の中に記述しましたとおり、今後交付税で償還を措置するものの借入残高は約七十兆というふうに推計をしてございます。

○桜井(良)委員 借入金の残高が五十兆二千億ということでありますが、交付税額を変えずに、その一方で借入金残高をふやしているということですよね。交付税を借金でしのいでいるということだと思います。しかも、将来また交付税でこの償還費を負担することを約束しているわけですから、これは大変な話になっているわけですよね。地方自治体に赤字債などで多額の借金をさせておきながら、交付税改革には何も手をつけていない。これは、私も再三、交付税はもう危機に瀕しているよということはいってきたわけですけれども、この実態を見て、放置しておきますと、交付税会計はもうパンクしちゃって、地方はもう仕事できなくなっちゃう、今の仕組みの中では、そういうことを如実にあらわしていると思います。
 この交付税に全然手をつけてこなかった国が、このままほうっておくと大変だということはわかっていても、手をつけてこれなかった、この原因はどこにあるんだということなんですが、財務局としては何か分析していますか。

○熊野主計部長 分析といえるほどのものかどうかわかりませんが、まず第一に、バブル経済が崩壊した後、国が景気対策などのために、地方交付税を政策誘導の道具に使って、地方の歳出を実力以上に拡大させてきたということが挙げられると思います。この結果、地方交付税も本来の役割を超えて膨張するということになりましたし、本来の原資では不足する分を借り入れ等で補ったために、交付税特別会計に、先ほど申しました五十兆にも上る借入金が積み上がってしまっているというふうに理解しております。
 このように国の責任が重いことも明らかでございますけれども、一方で、地方の側が国による過度の財源保障になれ、将来の負担を認識しないまま、安易に事業を拡大してきたこと、これも否めない事実だと思っております。この両者が相まって今日の状況をつくり出したといえるのではないかと考えております。

○桜井(良)委員 非常に大事な分析だと私は思います。だからこそ、はっきり物をいわなきゃならない、こういうふうにいっているわけでございまして、このままいけば制度は破綻してしまう。本当に交付税改革は待ったなしだと思うんですね、地方自治体にとりましては。
 今お答えにもあったように、破綻しかねない状況に来ちゃったのは何よりも国の責任が大きいわけでありますが、私は地方の側にも、今、主計部長がおっしゃったように、原因の一端があると思います。みずから一生懸命汗をかいて、税金を徴収して行う努力、こういうことも必要なわけでありますし、あるいは、限られた財源の中でいかにむだを省いていくかということも大事なことであります。効率的に最大の財政効果を発揮できるよう一生懸命努力するということも、財政運営としては必要なわけでありますが、交付税に限っては、そういう努力をしなくても、基準財政需要額をふやすという努力をすれば黙って支給される、極端にいうとそういう話でありますから、これは、そういう行政運営をしてきた甘えの体質が、交付税をここまでにしてしまった、地方にもあるんじゃないか、今もそれが抜け切れないんじゃないか、こういうふうな指摘も強くあるわけでありますが、私もそのとおりと思うわけなんですね。
 そこで、もう一回しつこく聞きますが、こういう破綻状況に交付税制度があるのは、地方の側にも行財政運営に、私が今いったように甘えがあった、それが原因の一つだと思うんですけれども、その辺はどうでしょうか。

○熊野主計部長 現在、全国三千余りの自治体がございますけれども、交付税の不交付団体は、都道府県ではご案内のとおり都のみ、それから市町村では百余りにすぎないわけでございます。しかも、市町村の不交付団体を見てみますと、例えば原子力発電等の国家的なプロジェクトを実施している地域とか、あるいは有名な観光地であるとか、世界的な大企業の所在地であるとか、そういった特別な理由があるものが多うございます。つまり、要は、そういった特別な理由を持つ都市以外のその他の普通の自治体にとりましては、地方交付税はもらうのが当たり前というふうな状況になっているというふうに思います。
 加えまして、先ほど答弁申し上げましたように、将来の償還を国が交付税で担保するというふうなことによりまして、いたずらに財政規模を膨らましたということもございます。これらは国が意図的に制度設計した帰結でございますけれども、そういった中で、地方公共団体自体がコスト意識を失って、毅然とした財政規律を保つことが難しくなっている。一部の新聞報道では、地方財政のモラルハザードというふうな言葉が使われておりましたけれども、そういった側面も否めない事実であろうかと思っております。

○桜井(良)委員 もう少しはっきりいっていただきたかったんですが、私と同じ感想を持っているな、このように理解させていただきたいと思います。
 何回もいうようですけど、三位一体は真に地方主権を確立するものですよね。この改革はぜひ実現しなきゃならないんですが、そのある部分は国も思い切った判断をしなければなりません。と同時に、地方も痛みをこらえて改革を受けとめて、推進していく必要が私はあると思います。そういう意味で、地方に痛みが出るという点では、やはりこの交付税の改革が一番肝心だと思うわけでありまして、国は交付税改革にふたをしたまま三位一体改革の議論をしているとしか私は思えないわけでありまして、地方でもできるだけ目をそむけて議論してきたというのが実態ではないかと思うんですよね。
 骨太の方針でも、今回の地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保するというふうに、何か地方に望みを持たせるような、悪くいうと甘やかすような決定をしているわけでありますが、今後の議論も、これまでと同じように、極力この制度を温存させながらしていこうという方向で進む危険性が十分にあるのではないかと思います。もちろん一挙に交付税改革はできません。ソフトランディングで、徐々に徐々にやっていかなきゃなりませんが、その方向性をはっきり示すことが、方向性というか、具体策をはっきり示すことが非常に大事だと思うんですね。
 今、東京都に望まれていることは、地方自治体のリーダーシップを都が発揮するのであるならば、この地方交付税に対してもっとはっきりと都は物をいうべきだと思うわけですね。そういう観点から、東京都は交付税制度をどう見直していけばいいかというふうに考えていらっしゃるか、お答えがあれば答えていただきたいと思います。

○熊野主計部長 私どもといたしましては、地方交付税制度がこれまで地方自治の発展に果たしてきた本来の役割、これを否定するものではございませんし、戦後、国土の均衡ある発展には大きな寄与をしてきたというふうに考えております。
 また、今後、抜本的な税制改正が行われたとしても、全国的に見れば、なお財政的に自立が困難な自治体が相当数残るというふうに予測してございますので、これを調整する仕組み自体は必ず必要であるというふうに思います。
 ただ、一方、現行の地方税財政制度が制度疲労を来しているということはもう明らかでございますので、その問題の本質的な解消こそ、お尋ねの見直しの方向性であるだろうというふうに思います。
 具体的に申し上げますと、国、地方を通じた財政規模が租税収入を大幅に上回っている現状はまず改め、国、地方ともに歳出の削減に取り組む中で、国と地方の役割分担を改めて整理いたしまして、そこから明確となる、地方にとって本当に必要な財政需要を賄う財源を保障する、最低限の機能とする、これが一つの方向性だろうと思っております。
 次に、ぜひとも制度は簡素で、透明性が高くて、だれにもわかりやすい仕組みに改めて、現行の交付税制度の、ゆがめた国による恣意的な算定、あるいは政策誘導的な役割、こういったものを徹底的に排除することが必要であろうと思っております。
 それから三つ目といたしまして、地方の財源を機械的に保障するだけではなくて、自治体の自助努力を反映する仕組みを組み込んで、健全な地方財政運営を促す、助長する、そういった仕組みにすることが必要であろうかと思います。
 こういった方向性のもとで、税源移譲、それから国庫補助負担金の改革と一体として抜本的な改革に取り組むことが必要であろうと考えておりますが、具体的な制度設計については、今後、秋に向けて検討してまいりたいと思っております。

○桜井(良)委員 今おっしゃったようなことをさらに具体化していくことが大事だと私は思うんですが、よく東京が物を申すと地方が反発するという空気がありますよね。しかし、私は、それにめげず、いろんな意味で交付税改革につながるいわゆる財政再建を地方に都は発信していく必要があるな、こう思います。私は、その手本はやっぱり都にあるんじゃないかと思うんですね。これは私なりの考えなんですけど、バブル経済が崩壊した直後から、東京都は財政の健全化に着手しまして、二次にわたる財政再建推進プランに取り組んできましたよね。中身の評価はいろいろあると思うんですが、プランには、内部努力あるいは施策の見直し、歳入確保の観点からいろいろと努力しました。全国有数の厳しい給与の削減とか定数の削減を断行してきました。事務や建設等のコストをぎりぎりまで圧縮する施策の見直しも行ってきました。この努力の中で、細かい部分にわたりますといろいろ議論があることはもちろん承知なんですけれども、しかし、そういう努力は都がやってまいりましたし、また、新しい税の確保、税の徴収率のアップなどにもしっかりと努力してきたわけでありまして、そういう努力は高く評価をしているところであります。
 そこで、私は、都がこういうふうにやってきた努力を、リーダーシップを発揮していくならば、このノウハウも自治体に提供していくような努力をすることで、東京対地方の不毛な対立を避けられる。また、いわゆる地方分権や交付税改革に対してより一層説得力を持った改革を進めていく可能性、こういうものが、都のこれからのいわゆる地方に対する発信によって起きるんじゃないかな、こういうふうに思うんですね。
 例えば人件費について見ますと、平成十四年度の決算額で、都と区、都内市町村を合わせた決算額が平成六年度の水準にまで抑制されていますよね、人件費も。これはこれなりに一つ東京全体の努力があったと思うわけでありまして、これを試算しますと、この同じ努力を地方全体でやったとすると、一兆円人件費が抑制されるのではないかなというふうに私は計算をしたわけなんですね。同じように、十四年度と六年度までを比較したものを、地方単独の公共事業に当てはめますと、これは九兆円ぐらい事業費の削減が見込まれるわけなんですよね。
 こういう地方の自立を促すような、また、地方の自立が図られるというような努力を都から発信することが必要だと思うんですね。今、私がそういうふうにした計算、試算、意味わかりますね、六年度と十四年度、それが成り立つかどうか、ちょっとお考えがあれば……。

○熊野主計部長 地方公共団体はさまざまな状況でございますので、一くくりで論ずるのはなかなか難しゅうございますが、ただ、例えば普通会計決算で申し上げますと、都の歳出規模がピークでありましたのは平成五年度でございます。それ以降減少を続けてございます。一方、地方財政全体で申し上げますと平成十一年度がピークでございまして、いいかえると、私どもは、地方全体、総じてでございますが、スリム化に向けてのスタートがおくれたのだろうというふうに理解してございます。
 こうした状況を踏まえまして、都と同様の取り組みを反映させたとすれば、先生のご指摘のような試算結果も期待できるというふうに理解しております。

○桜井(良)委員 単純な計算なんですが、やっぱり東京がやっていることを手本にすれば、今いったように、合計すると、人件費と公共事業費で十兆円の歳出削減が期待できるわけなんですね。それは即交付税の縮減にも可能性をもたらすものだと思うわけなので、あわせて税源移譲による自主的財源が確保できれば、交付税改革は大きく進むと思うんですよ。
 そういう一つの道筋をつけながら、一遍にはできませんから、何年か、こういうふうにしながら交付税改革を進める道筋を地方と同じ土俵の上でしっかりつくっていくというのが大事なわけでありまして、そういう意味で、地方の自立を促すという意味から、東京都がやってきた行財政改革の取り組みを、これは都がやったんだ、都だからできたんだというんじゃなくて、こういうことをやりましたよ、どうでしょうかというように、地方にも積極的に発信していくことが、リーダーシップを発揮することにつながるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○熊野主計部長 今回の三位一体改革の目的は、地方の特性に応じた自主自立的な行財政運営を実現するということでございまして、その自主自立という権利の裏側には当然、先生ご指摘のように、みずから厳しく律して歳出削減に向けた取り組みが不可欠であるという、いわば責任と義務、こういったものがあろうかと思います。それぞれの自治体固有の事情を抱えまして、行財政運営の状況も都と異なっておりますけれども、例えば、これまで都が実践して成果を上げてきた内部努力等々につきましては、多くの自治体と共通する部分があるのではないかと考えております。
 したがいまして、ご指摘のように、機会をとらえて都の取り組み内容を広く発信することが、都がリーダーシップを持つということにつながるというふうに考えております。

○桜井(良)委員 もう時間が経過しておりますが、いずれにいたしましても、この三位一体改革を絶対やり遂げなきゃならない。地方分権も、口だけじゃなくて、具体的なものとしてしっかりと確立していかなきゃならない。そういう中で、やはり東京都がリーダーシップをとらなきゃいけないんですね。だから、今、部長がおっしゃったようなことも、今までは、ほかの部局、財務局以外の都を代表する局へ聞きますと、そういうと地方が怒っちゃうとか、そういうと地方とけんかになっちゃうとかって。何となくお互いに形だけ仲良くしながら、本当のことをいえないでずっと来ていることが、逆に改革をおくらせている。この際はっきりと物をいっていくことが真のリーダーシップにつながっていくのではないかなと私は思うわけでございます。
 したがって、これから都も具体策を練っていく。秋といわれていますが、私は、都の具体策は、秋から始まる前に、夏の終わるころまでには、都のものはしっかりとでき上がっていくことが大事だと思っているわけなんです。私は、ことしの下半期に行われます三位一体改革の議論では交付税改革が本当に大事な分水嶺だ、こういうふうに思っているわけであります。したがって、何回もいいますが、都は不交付団体だからといって遠慮するのではなくて、やはりこの機を逃さずにリーダーシップを発揮していく、このことが必ず地方のためになるんだというふうな決意で、この三位一体の改革に取り組んでいただきたいな、こう思うわけでございます。
 ちょっとまだ質問は残っていますが、最後にこのことを局長に聞いて、私の質疑を終わらせたいと思います。

○櫻井財務局長 地方交付税制度は、戦後の地方の発展あるいは国土の発展に一定の役割を果たして、日本の戦災復興あるいは高度成長を支えてきたものと理解しております。しかし、現在直面する国際環境や社会環境の大きな変化の中にあっては、これまでの社会システム自体が機能不全を起こし、有効性を失いかけております。日本社会がいま一度再生し、活力を発揮するためには、中央集権から地方分権によりまして、地方の自主自立の総和が国を支えるという新しい社会の仕組みをつくり出していかなければならないと考えております。
 地方交付税制度もまた社会システムと一体で、極めて重篤な制度疲労を起こしており、全国に財源を再配分し、均質的な社会の実現を支えた仕組みは、もはや地方が自主的、自立的な行財政運営を行う上でのいわば手かせ足かせとなっているという側面もございます。この点を地方も自覚して、分権社会を実現する改革の中では、国のみならず地方もみずからに厳しく律を課し、時に痛みを受けとめていかなければならないと考えております。
 そうした中、地方にとって地方交付税制度の改革は、自主自立のために避けて通れない課題であるということを強く認識していただきたいというふうに考えております。そして、この困難な課題への取り組みができるのは、この地方交付税制度発足以来一貫して不交付団体でありました、自主的な財政運営を実践してきました東京都のみであります。今後、地方のあり方を真剣に考えまして、地方の痛みも理解し、共存共栄できるような説得力のある、あるいは具体的な提案を行い、改革をリードしていきたいと思っております。それこそが地方分権改革にかかわる私どもの責任だと考えております。大変難しい課題ではございますけれども、強い決意を持って地方交付税制度改革に取り組んでまいります。

○桜井(良)委員 難しい課題だということは私も認識しております。しかし、やみが深ければ深いほど暁は早い、こういわれておりますから、これをしっかりと調整していく決意で、今後ともリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

○近藤委員長 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後二時四十六分休憩

   午後三時三分開議

○近藤委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。

○松村委員 国の骨太方針二〇〇四が出されました。それに先立って、全国知事会も、平成十七年度における三位一体改革に関する提言を出しました。そして東京都も、地方分権改革に関する東京都の基本的見解についてを発表いたしました。
 三位一体に関する我が党の立場、見解の基本については、既に我が党から提出した、地方分権の推進を求める意見書でも明らかにしたところであります。
 これについては後で触れますが、まず初めに、都の地方分権改革に関する東京都の基本的見解では、三位一体改革の補助金、地方交付税、税源移譲についてどういう主張になっているのか、そのポイントを、都民にわかりやすく簡潔に説明していただきたいと思います。

○熊野主計部長 私どもが十八年度に向けての緊急提言ということでお示しした三位一体の改革案は、まず税源移譲につきまして、今、仕事の量と税源配分が逆転しておりますが、当面、これが一対一となるような税源移譲を行ってほしいということで、所得税から個人住民税三兆円、それから地方消費税の地方税分を一%から二・五%で三・七兆円、合わせて六・七兆円の税源移譲を求めることによって、ほぼ国税と地方税が一対一になるというふうに提言をしてございます。
 それから国庫補助負担金につきましては、国あるいはその他の団体が、数字ありきということで、三兆円なり四兆円なりという数字がひとり歩きするのではなくて、国庫補助負担金の国と地方の役割分担に即して改革を行うということで、ナショナルミニマムを確保するための国が特に責任を持つべきもの、こういったものを除いては、原則、国庫補助負担金については廃止するという基本的な考え方に基づきまして、三・五兆円の削減を提言してございます。
 それから地方交付税につきまして、これまで具体的な数字を挙げて改革を提言したところはございませんでしたが、私どもは、今申し上げた税源移譲あるいは国庫補助負担金の削減等を反映して、地方交付税等の改革につきましても、四・六兆円の削減を具体的数字として提言してございます。
 これらを行うことによりまして、私どもの自主自立的な行財政運営が可能になるということと同時に、住民の方々にとっては、より住民の方々に近いところでの政策判断等々が可能になる、受益と負担の関係が明確になるというふうに考えてございます。

○松村委員 まず、補助負担金についてですけれども、この基本的見解の中でも、生活保護や義務教育は国が全額負担し、それ以外の負担金及び補助金については全廃すべきであるというふうに記述しております。
 今、主計部長は、役割分担に基づいて国が行うべきものは全額負担してもらうということですけれども、ここでは義務教育や生活保護--これは例示でしょうかね、これのみにとどめるんですか--などということですけれども、都民にとって、どういう補助金が国が責任を持つべきものなのか、非常に不安というか、問題になる部分もあると思いますよね。その考え方について、どのようなことなのでしょうか。

○熊野主計部長 私どもも、国庫補助負担金について、全部について精査したわけではございませんが、基本的には、国庫負担金につきましては、先ほど申しましたように、国がナショナルミニマム等の確保のために特に責任を持つべきもの、具体的には義務教育費の国庫負担金、生活保護費の負担金、老人医療費の給付費の負担金、それから例えば災害復旧、こういったものについては、将来的には全額国が負担すべきであろうというふうなことで、今回、廃止からは除外してございますし、国庫補助金の方につきましては、例えば特定の税を財源としているもの、地方道路の整備の臨時交付金、それから地域が特定されてくるもの、基地に対する交付金、国有資産所在市町村交付金、こういったものを除いて全部廃止するということで、総額三・五兆円という数字を掲げさせていただいております。

○松村委員 例えば東京都にとっても、国庫負担金とか支出金とか補助金でも、義務的なものが含まれるものも、いろいろその差が明確になくて、負担金はこれこれだ、補助金についてはこれは廃止していいとかいうふうに、なかなかこの壁も、私も長年財政委員をやっているけれども、難しいあれがあると思うんですね。ましてや、都民にとっても非常にわかりにくいと思うんです。
 今、義務教育それから生活保護費、老人医療費、ちょっと挙げられましたけれども、国に対していうのならば、もう少し具体的に、どういう点が国が責任を持つべきナショナルミニマムなのかということをはっきりさせるべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
 といいますのは、今度の知事の所信表明の中でも、国庫補助負担金については、国が地方の手足を縛る道具として利用されているというふうにいって、その国庫補助負担金も含めて、義務教育費だとか生活保護だとか、そういう言葉は具体的ですけど、それ以外の施策については、あたかも国が地方の手足を縛る道具のような、このくくりで、それ以外はすべて全廃という形をとっているということは、非常に問題がある発言で、それが本当に都民が求める立場なのか。
 また、国もこれまで、例えば二〇〇三年度には義務教育国庫負担金、こういうものを縮減しましたし、さらに二〇〇四年度分の縮減においては義務教育の退職手当、三年度は共済長期負担などでしたけれども、さらに踏み込んで退職手当とか児童手当、それから保育所運営費、介護保険事務費の交付金とか軽費老人ホームの事務費補助金だとか、いずれも地方にとって、東京都にとっても大事な守るべき制度であり、それはどちらかというと、国がやはりナショナルミニマムとしてきちっと責任を持ってやるべきものだというふうに思います。
 そのほかには、障害者福祉費だとかいろいろあるというふうに思いますよ。保育所については、もう既にそれが国の責任、ナショナルミニマムじゃないような態度もとられているようですけれども、そういう点では、今、老人医療費は主計部長、挙げられましたけれども、国民にとって何が国が責任を持つナショナルミニマムなのか。
 同時に、今までも、国がいうナショナルミニマムは非常に低過ぎて、それに対して東京都も、歴史的にも、加算して、現実、実態に合ったものに引き上げてきた。本来でしたら国が責任を持つべきものであるならば、もっと国庫負担金や補助の増額を求めてしかるべきではないかというふうに思うんですけれども、その点はいかがなんでしょうか。

○熊野主計部長 先ほど申しましたように、全部の補助金について精査したわけではございませんが、百五十億以上の補助金について精査したところ、今申し上げた三つが少なくともナショナルミニマムを確保する点で国が責任を持つべき事項であろうというふうに考えたということでございます。
 それ以外の補助金については、税源移譲されるわけですから、それを地方公共団体が、みずからの地域特性を踏まえ、みずからの判断で施策を展開していけばいいわけでありますし、それを住民はより身近なところで、今までは国庫補助金という形で国の施策として判断していたのを、地方のより身近なところで判断できるという点、それから、保育所に典型されるような全国画一的な補助金で配られるよりは、税源移譲を受けて、自分のところの自主財源で、地域特性に合った、住民の要望に近いところで施策を展開していけば、その方がいいことは自明のことだと思っております。

○松村委員 私はそれは違うと思いますよ、今のは。主計部長は少なくともというので、義務教と生活保護と老人医療費助成ですか、今、これが少なくとも国が責任を持つべき国庫負担なんだと。そうしたら、あとは国は大喜びだと私は思いますよね。それ以外の今までの各種の負担金、補助金については、これはもう切れるんだという立場に、東京都がいうならば、そうなるんじゃないでしょうか。
 私はそうじゃないと思いますよ。憲法で保障された国民の生存権や基本的人権にかかわる最低基準であるナショナルミニマムは、国が財政的に保障する責任があるわけですよ。そこをやはり明確にする立場が、私は今の地方分権というか、改革にとってもまず大事だというふうに思うんです。
 それで、もちろん補助金についても、おっしゃるようないろいろな国からの関与、手足を縛るものがありまして、この弊害は、やはりなくしていかなければならない問題だということはあります。しかし、知事がいうように、国が地方の手足を縛る道具として利用されていたというのは、あくまでも運用上の問題といいますか、そういう問題と、今、憲法などで保障されている国民にとって必要な生きる権利や、本当に安心して暮らせるというか、国みずからの責任でもってやるべきだということを混同しているというふうにいわざるを得ないと思うんですよ。あくまでも、今の地方を国庫補助金だとかいろいろなことが縛る、義務的なものでも、いろいろな国独自の基準で監査に入ったりして統制するとか縛る、我々にとってもそれは間違いだということで、そういう国の関与はやめるべきだという点では、立場は一致すると思うんですよね。しかし、それはあくまでも、国庫補助金という制度があるから、そういうふうになるんじゃないんですよ。国の間違ったやり方というか、運用上の支配、これについては全国一致して、こういう改革に当たってはやめさせるという立場が正しいのではないでしょうか。
 それで、この問題だけやるわけにいきませんけれども、事実、矛盾しているんですよ。毎年、国に対しての予算要望を行っている中でも、一つの事例を挙げますと、公園整備などについては、毎年、国庫補助を引き上げろ、増額しろということを東京都みずからが要求しているではありませんか。だから、国庫補助というものが、今いった義務教とか生活保護、老人福祉費以外は全部ひもつきや、国が地方の手足を縛る道具として利用されていたから、もう時代の流れからいって、それを全廃するのが正しいなんという、それは明らかに自己矛盾していることではないんですか。実際、東京都がやっている公園などについての補助金の引き上げ、それから、用地を今までの二分の一から三分の二にするとか具体的に提案をしている。違うんですか。

○熊野主計部長 現在、国庫補助金の増額等を国への提案要求等で申し上げているのは事実でございますが、それは、要は、国庫補助金に頼らなければ我々がやりたい事業もやれないという現実を如実に物語っているわけでございますので、そういうものを廃止して、そのかわり税源を移譲してください、私どもの判断で必要なものをやるんです、そういう姿勢を示して、そういう改革をしようというのが、今回の三位一体の改革でございます。

○松村委員 私は、考え方の基本的な違い、今、主計部長が、これは知事とも一致しているんでしょうか、少なくとも三つ挙げた、義務教、生活保護、老人医療費助成、それ以外は全廃して、国から税財源が来るんだから、それで地方は独自に、それ以外のもろもろの、本当に国民、都民の生存権にかかわるものもやればいいんだというような考え方がわかりました。
 でも、それは絶対私は、税源移譲はこれからのあれですけれども、国は大歓迎するというふうに思いますよ。国のそういう本来果たすべき責務を、東京都みずからが全廃していいというようなことは、これは私たちの立場からは相入れないということをまず指摘しておかなければならないというふうに思います。
 それから、第二の地方交付税についても、財政調整機能という点では、新たなものをつくる必要性はうたいながらも、結局は地方交付税も廃止の方向ですよね。しかし、これも今、地方交付税というのが国と地方の関係でどうなっているかといえば、やはり住民、国民がナショナルミニマムを最大限享受していくための重要な財源として地方交付税が役立っているといいますか、使われていることは間違いないというふうに思うんですよね。だから、それを東京都がもう廃止していいんだということは、私はいかがなものかと。やはり地方交付税の持っている今の財政調整というか、そういう機能を維持しながら、同時に地方交付税が持っている問題点、これはありますよ。ここの中でも、基本的見解でも指摘しているように、例えば国は地方単独公共事業などを受け入れる、そういうものに対しては交付税の算定を引き上げて、それを実際にはふやして、それが文字どおりこの間の、地方をまさに支配するといいますか、統制する、そういうものとして使われてきた点は確かにありますから、そういう地方交付税の問題点、これは地方も一致して、そういうことはやめろという立場ですから、一致すると思うんです。ただ、それが、今の住民、国民のナショナルミニマムをさらに地方でも保障していこうという点においては、やはり重要な役割を果たしているというふうに、私は思いますよ。
 それは今度の税財源移譲をもってしても、まだ地方でいろいろなアンバランスが生まれるから、財政調整機能は何らかの形でつくらなければいけないということをみずからいっているところでも、税財源移譲で完全に地方は地方として独自の財源でやり切れるということにはなっていないわけですから、そうしたら、やはり地方交付税の持つ今までの役割というものも--東京都も不交付団体だからという立場からのみこれに対して接近していたら、いつまでたっても地方と一体となった改革は迫れないというふうに思いますけれども、この点についていかがでしょうか。

○熊野主計部長 私ども、交付税を廃止しろといった覚えは全くございませんで、当然のことながら、再三申し上げておりますけれども、税源移譲を行った上でも、なおかつやはり財源が不足する団体は生じるわけでございますので、そういった団体に対する財政調整は必要であろうし、それから、どうしてもナショナルミニマムを確保する観点から財源が不足する団体については、財源保障機能についても、ちゃんと果たすべきものは果たしていかなきゃいけない。
 しかしながら、今の交付税制度はもはや機能しなくなっているので、抜本的な改革を行わなければいけないというのが基本的なスタンスでございまして、じゃあ具体的にどうするかということについては、今後の新たな財政調整制度をどう構築していくかというのは、秋に向けての議論かと思っております。

○松村委員 その点ですよね、もはや機能しなくなっているという点を、もう少し具体的に検証して、地方とも一体となった--ただ今後新たな財政調整制度が必要だというだけでは、それこそ東京都がよくいうように、課題の先送りというか、これではやはり一致してこないのではないでしょうか。
 私、地方交付税制度はどういう仕組みで、やり方かといえば、例えば東京都でも、今二十三区とは財政調整というのがありますよね。これだって、そこにおける税の配分によって、二十三区の同じ都民としての共通の生活や暮らし、教育とか、そういうものを与えようということで、これは引き続き東京都も--東京都は今、財調なくせ、これはもう時代の足かせやあれで機能しなくなっているというようなことの立場じゃないでしょう。
 それと同じような仕組みや制度ですし、その役割というのも、東京都は不交付団体だからという立場ではなく、やはり地方の実態、実情も含めた役割というものをきちっと見ながら改革を迫るということは、これはこれで必要であるということを、これは繰り返しても、財調制度も含めて、じゃあどうなのか。

○熊野主計部長 交付税制度の問題点は、これまで繰り返し申し上げてきたのですが、例えば五十兆の借入残高とか、先生ご指摘の政策的な誘導に使われてきたとか、さらに加えて申し上げれば、人口百七十万の県を基準に一千二百万の東京都の需要を算出しているとか、内容に踏み込んでいろいろ問題点が指摘されております。
 一方、財調については、少なくともそういうことは今のところないわけで、似たような制度でありますから、交付税制度が問題があるのであれば財調にも問題があろうかということにはならないと思いますし、交付税については、そういったもろもろの問題点を抜本的に解決していかなければいけないというのが私どもの問題意識でございます。

○松村委員 それがだから重要なポイントなんですよね、地方と東京が一致してこれに取り組めるかという点では。だから、今いった地方交付税の持つ、地方も抱えている矛盾や問題点、そういうものはきちっと洗い出しながら、なおかつこれが、今いったみたいに、本来国が当然果たすべき役割のナショナルミニマムすら果たしてない中で、同じ国民として、住民として、一定これが--この中でも歴史的役割は認めていますけれども、大事なものとして発展してきたんですよ。
 ただ、その使い方、地方交付税は色がつきませんから、じゃあ、そういうふうになって配分された財源をどう使うのか。それはだから、むだな橋をつくったりとか、橋というか、いろいろなことに使ったりとか、それはその地方、自治体の考え方で、住民の理解が得られるのか。
 私はだから、本当は地方交付税、ナショナルミニマムをもっと引き上げていく、そういう財源としていながら、そこに使わないで、県民、住民の願いと違った方向に使ってきた、そういう県政自身というか、そこの住民を含めたその問題であって、それを制度の問題にすりかえるというか、それはさっきの補助金でも運用の問題をいいましたけれども、やはりそれは違いますよ。
 そういう点では、だからこそ地方はこの点では譲れないといいますか、こういう点での考え方があるということも、よく踏まえなければならない問題点だというふうに指摘したいと思います。
 それから、もう一つ問題なのは、本当に国が税財源を移譲しない。この間、今も論議がありました、実際住民に即した仕事は、地方が六、国が四。しかし、税の構造は逆に四対六となっている。このアンバランスをやはり是正しなきゃならないというのは、だれしも、地方も含めて、一致した考え方だというふうに私は思いますよね。
 そういう点では、きちっとした、地方分権にふさわしい、東京や地方がやっている仕事に応じた財源を直ちに、早急に移譲するということにおいては、一致すると思うんです。
 ただ、その中身も、東京都のこの見解を見ますと、消費税ですよね。それからもう一つは個人住民税のフラット化などがありますけれども、そういう点では、今、地方消費税も五%に対して一%、これを半々、二・五といったら、必ず全体的には消費税増税の動きになってきて、地方の分は必ず増税でカバーしようという、その国の意図はありありだと思うんですよ。
 そういう意味では、地方消費税を税源移譲に要求する、求めるということは、私たちとは一致しないというか、大増税を国に要求するようなことにもつながりかねないと思いますけれども、いや、消費税の増税は絶対だめだ、しかし今の五%は国の取り分として多過ぎる、半々にしろというような立場なんでしょうか。

○熊野主計部長 別に今回の税源移譲で我々が増税を考えているわけではなくて、今の限られたパイを国と地方でどう分けるかということについて提言をしたわけでございます。
 具体的に、今はマクロの議論でございますので、先ほどの補助金と同じように、じゃあ何がナショナルミニマムかというふうな議論も同様でございますけれども、所得税から地方住民税に移譲したときに、どういうふうな税率でどういうふうに所得税を減らして住民税に振り向けるかという技術的な問題も含めては、やはりこれからの議論だとは思いますけれども、いずれにしろ、今は総論としてのトータルの議論をしているというふうにご理解いただきたいと思います。

○松村委員 しかし、何を移譲させる税源とするかという点では、具体的に地方消費税一%を二・五%というふうに提案する以上は、その考え方も都民にしっかり示さなければいけないのじゃないでしょうか。
 私、その点では、知事、ここにいませんけれども、石原知事、この前の記者会見で、皆さんご存じですか、なぜ日本人が消費税を毛嫌いするか私はわかりませんと、そういうブランド品など買わなくて、ふろしき包みでいいじゃないかと、こういう発言をされたんですよ。で、消費税を払いたくなければ、買わなければいいんだと。
 今、食料品や暮らしにかかわる隅々まで、それこそお産からお葬式代まで消費税がかけられて、消費税が嫌なら買わなきゃいいっていうような、そういうことで今、生活できるんでしょうか。私は、これはジョークでいったんじゃないというふうに思いますよ。
 それからもう一つは、外国の労働運動のリーダーは、こんな公平でいい税制はないというふうにいっているという話もされておりました。しかし、公平で、こんな税はないといいましたけれども、ヨーロッパ諸国などでは、食料品だとかそういうのはゼロ税率とか低減税率だとか、そういうのはもう常識ですよね。それからまた消費税、大型というか間接税ですか、そういうものに対する国民への還元率も全然違うと思うんですね。
 そういうのを抜きにして、消費税、しかもそれが税率が低い、上げて--私はだから直感的に思いましたよ。地方消費税一%から二・五%、これは当然だと。もし国が足りなければ、消費税の増税と。東京都の都政の、知事みずからがそういう感覚でいられるなら、私もそうですけれども、都民も大変心配すると思うんですよね。そういう点では、そういう方向での税源移譲でないことをぜひ求めなければならないと思います。
 もう一つ、ここは主税局じゃないんで、住民税のフラット化というのも、本当だったら、どこの階層にどのくらいの影響があるのか、出していただきたいと思うんですよ。高いところを下げて、低いところは上げて、一〇%に比例化するというんだから、当然低いところが上に上げられて、高いところがあれだというから、これはやはりいかがなものか。それで、トータルではふえるんだから、地方の財源に回すというのは、よく厳密に見ていかなければ、これは明らかに大衆課税というか、大衆増税につながるというふうに思いますし、これについて、都民が納得する税源移譲の提案の方向なのかということもいわなければならないというふうに私は思いますけれども、この点についてはどうなんですか。都民の心配を軽減するようにきちっと……。

○熊野主計部長 消費税の税率アップということについては、税制、制度の中で直間比率の問題とかいろいろ関係してくる問題ですが、少なくとも私どもが申し上げたいのは、今回の税源移譲は、先ほど申しましたように、国と地方でどう消費税を分けるかということですので、増税を前提とした考えはないということは明確に申し上げておきたいと思います。
 それから、住民税の比例税率化については、ご指摘のような話があることは承知しておりますが、今後制度設計をする中で、所得税を減らすわけですから、その分、所得税が減るわけですから、課税最低限との関係で細かい議論はあるかと思いますが、今後、十分議論を深めていく必要があるとは認識しております。

○松村委員 所得税が減るんだから、一方は住民税が上がってもいいといっても、住民税が上がる部分の階層とか中身をよく見なければ、そんなこと軽々にいえないというふうに思うんですよ。ある層は助かった、よかったとなるかもしれませんが、ある層はもう大変だ、これじゃやっていけないという層が出てくるわけですから、そういう点もきちっと見ながらの提案でなきゃいけないというふうに思います。
 それでもう一つ、この改革を実現していくには、やはり全国と一致してやっていかなきゃならないということは、これはもう論をまたないというふうに思うんですよね。その点では、全国知事会が三位一体の改革に関する提言を出しましたけれども、東京都との主張の相違点はどこにあるのでしょうか。

○熊野主計部長 全国知事会の提言も、改革の必要性の認識については、私どもと全く同じでございますが、細かい数字の違いがあるということを除いても、行財政制度のより抜本的な改革を目指す視点が、やはり全国知事会の提言には欠けているというふうに認識しております。
 具体的に申し上げれば、やはり交付税の面で、結局は現状維持につながる財源保障、あるいは財源調整機能の担保を前提としてございますので、税源移譲に当たって交付税制度を見直すどころか、逆に強化するというふうなニュアンスも伝わってくるところでございます。
 それから、特に容認できないのは、課税客体が共通する国税、地方税相互間での税源配分の調整措置、あるいは地方譲与税の配分調整、法人事業税、法人住民税の分割基準の見直し、こういったことを強化することで財源均てん化を図ろうとしていることについて言及していることについては、我々は到底容認するところではございません。

○松村委員 地方交付税についてはもう述べましたので、再度言及しませんけれども、法人事業税や法人住民税の分割基準、この問題についても、地方自治体間の財源調整機能を現に果たしているんですよね。
 これも卑近な例ですけれども、東京には法人の本社が集まっているから、当然集中しますよね。それに対して、地方からのいろいろな--今までの国との調整も含めて、分割基準が行われて、これ以上それをどうするかは、私たちはここではとやかくいえませんけれども、少なくとも現状の法人税の分割基準がけしからぬという立場には立ちません。やはりそれはれっきとした、今の国と地方の税財政の問題がある以上は、その調整機能は認められた上で、さらにどうすべきかという立場に立たなければ、これまたやはり地方との一致がないというふうに思うのです。
 もう一つ、私、大きな問題だと思ったのは、全国の知事会の調査報告書を見て、国直轄事業負担金については、全国知事会は早急に廃止すべきであるとの立場を明確にしていますよね。これ、東京都はなぜ足並みをそろえてその立場に立たないのか。
 私、びっくりしたのは、今度の二定の代表質問の、我が党のこの質問に対して、今までの予特で表明した知事の立場とも全く逆のように、そんなこといっていないと、かつてのみずからの言動すら投げ捨てている。私は大問題だというふうに思うんですよ。
 これは全国の知事会ですよ。同じ足並みで--ここでもはっきりいっていますよね、この国直轄事業負担金については早急に廃止すべきだと。なぜ東京都はこの立場に立たないんですか。

○熊野主計部長 お答えする前に、分割基準についてちょっと反論させていただきますが、先生もご案内のとおり、法人事業税の分割基準は、この間、何回も改正されて、非常にご都合主義的に私どもの税源を取られているということで、そこに理念があるのかということがまず一点。
 それから、東京都から税源を吸い上げる理由が、まずは、再三議論になっておりますが、東京都の大都市需要を考えてくれていないという側面があることを否定できないわけでして、そこがやはり基本的にはおかしいと。私どもが抱えている大都市需要を正確に把握していただければ、決して東京都が富裕団体ではないというのはご理解いただけると。それを、分割基準の改正によって、どんどんどんどん財源調整をしてきたということについては、私どもは到底容認できるものではないということを申し上げておきたいと思います。
 それから、国直轄につきましては、私どもは過去一切、一度も国直轄事業自体が間違いであって廃止すべきであるということを申し上げたことはありません。それは、国直轄事業には、先生もご案内のとおり、いろいろ問題はございます。箇所づけとか金額とか、一方的に国から来て、一方的に負担させられたとか、そういう事務手続の問題、それから事務費の比率が高いとか、それから、今回私どもも特に期待しておりますけれども、維持管理費について地方が負担しているという、財政秩序を壊すような問題があるということを再三申し上げてきて、国直轄事業負担金については見直しをしてくれと。
 原則廃止といういい方は、過去してございます。ただ、やはり国直轄事業は必要なケースも生じるわけでございまして、例えば都県にまたがるような事業とか、そういったものについてはやはり必要な場合も出てくるわけでございますので、国直轄事業を全廃しろといういい方をしたことは、私どもは一度もございません。

○松村委員 今の分割基準も、それを際限なく繰り返してということを、我々も主張するつもりはありませんよ。しかし、東京都のように、分割基準がけしからぬと、そのもの、今の財政配分機能ですか、調整機能まで、地方に対してけしからぬという立場は、これは違うのじゃないか。
 私なんかもよく感じますよ。私、練馬ですけれども、いろんな大型店、スーパーなんか出てきても、本社機能は全部違うから、そこでどんなに交通が混雑して大変で、地元負担やあれがあっても、残念ながら税は全部そちらの方に行ってしまうという、身近なところでもそういう例があります。
 それはどういう基準で、地方に工場があったり、その従業員をどう見るかとか、いろいろ細かいことがあることは重々知っていますよ。しかし、だからといって、そこに集まったのが東京都の税だということだけの主張で、本当に正しいのでしょうかということを申し上げておきたいと思います。
 それから、今いった全国知事会、ここでは東京都は今の立場を聞きましたよ。でも知事は、いろいろなニュアンスがあります、原則とかいう言葉を使っていたとかいいますけれども、やはりこれは問題だと、求めていくといったんですよ、廃止のようなニュアンスで。今度、全国の知事会は、極めて不合理であり、早急にこれを廃止すべきだという立場ですよね。で、はっきり確認したいのは、東京都はそうじゃない、全国の知事会とは一致しないということなんですね。そのことだけを確認しておきたい。あとは長々とはいいですよ。

○熊野主計部長 これまでも再三、全国知事会で国直轄事業負担金について意見を取りまとめているときに、東京都としては、廃止を提言する場合に、原則を入れてくれということを毎度要求してございます。
 今回、私どもが基本的な見解の中に国直轄事業について触れてないのは、やはり若干、今回の三位一体改革と国直轄事業負担金の見直しについては区別すべきだろうと。知事会の強い思いで、今回、知事会の提案の中には入ってございますが、私どもはそういう考え方で、今回の基本的見解の中には国直轄事業については付言しておりません。
 それから、分割基準については、私どもも、東京で集めた税を地方に交付税なり補助金で配分すること自体をよくないとはいってないわけです。しかしながら、一〇〇納めた税が三〇しか返っていない東京都と、納めた税の三倍も還元されている地方と、やはり程度問題として--それは税の配分の問題ですから、国がどういう制度をとるかということに、政策的な問題としてかかってくるわけですけれども、それはしかし程度問題としてひどいだろう、余りにも落差があり過ぎるだろうと。
 そこで、先ほど申しましたように、私どもの大都市が抱えている需要について正確に理解してくれてないんじゃないかということを申し上げているだけでございます。

○松村委員 大都市が抱える需要ということについては、例えば特に顕著なのは警察なんかですよね。首都であり、さまざまな機能。大体東京都の予算の一割強ですよね、警察予算というのは。こういうのに対しては即刻、国の責任でね、地方が東京のそういう警察費を賄うというのじゃなくて、国の負担でそういうのは実現させなければならない。だから、それが東京都の固有の問題点で、解決しなければならない課題だということは、私はそれは同じ認識でありますよ。
 もう一つは、何ぺージでしたっけ、今、主計部長がおっしゃった国と地方の税の配分のゆがみ。私も表を見て、もう時間がないから、いうのをやめようと思いましたけれども、主計部長があえて--六ぺージの下にこの表が載っております。東京都域では、納税額が百八十万で実質配分額が六十万円と。
 ただ、部長、この問題も私、気になったんで、全国都道府県の歳入における住民一人当たりの歳入額、これは公平を期すために地方債を除いて計算してみたら、都民一人当たりの歳入額に占める割合は四十二万四千円なんですよね。それで、これ、東京は十六位なんですよ。だから、今どれほどアンバランスになっているかというのは、そうでもないんですよ、それを見れば。
 ただ、都民が払う国税や都税に関して、その割合をもってどのくらい還元されてないかといったら、それこそむちゃというかね。だって、税の配分方式というのは、それは高額納税者もいるし、いろいろあるでしょう。そういう集まったところが、全部じゃあ、おれはいっぱい税金払っているからいっぱい還元しろとか、そういう議論にはならないでしょうというか、逆に東京都のこういう考え方では、そうなっちゃうんですよ。
 私は、一番公平だったら、今、それぞれの地域の、苦労してやっている、歳入における、都民一人当たりどのくらいの還元かと見れば、この数字の方が、東京都が全国で十六位、平均を上回っている。だから、今、東京都民はとんでもない事態だということでは決してないということを、私もちょっと反論的にお伝えしたいというふうに思います。
 税の還元というのは、決して、払ったものが全部その割合に応じて自分のところに来るというのが公平だという点ではないということです。
 最後にもう一点だけ。
 問題は、東京ひとり勝ちでないとしながら、この見解の前文にも「経済のグローバル化などによって東京をはじめとする大都市圏の集積が経済発展をリードするという、二十一世紀都市文明の歴史的必然に直面するとともに、東アジアの発展などにより、熾烈な国際的経済競争に巻き込まれている」と。その国際的な競争に打ち勝つために、もっと東京に税を配分して持ってこい、そうすれば東京の発展につながるという、つまり、この基調に貫かれているところに、地方とも協調できないし、重要な問題点が含まれているというふうに私は思います。
 どうしてそういう発想に立つかという点では、もう繰り返しませんけれども、今度の定例会に、我々あえて分析してみました。本当にびっくりしたのが、経済同友会などの提言、いろいろこれまで出されていたけれども、本当にそのままなんですよね。
 例えば、余り時間がないからいいますと、自立国家における再配分の原則は、政府の役割を、すべての国民に対して日本の尺度ではかった最低限の生活水準、ナショナルミニマムを保障することのみに限定することであり、国民はそれ以上の所得再配分を求めず、自助努力による生活水準の向上を目指すことであると。国民にとってはそうなんですよ。これは国のね。
 そして、例えば国際空港、高速道路などの大規模公共事業は、国家プロジェクトではなく、広域プロジェクトとして位置づけ、費用は関係地方政府が共同で分担し、受益と負担を明確にし、中央政府、国は総合的な企画調整機能のみを担うことになるという、この財界の提言。
 そして、国と地方の重複がなくなることから、それで補えない地方は市町村合併やれとまでいっている。(「江戸時代の藩は自主財源でやってたぞ」と呼ぶ者あり)これが今、東京都政の中に流れている方向で、こういう立場からの国に対する改革の提言というのは、都民が本当に支持する方向なのか。
 そこで、我が党は、そういう立場ではなく、地方分権推進を求める立場からの意見書で明らかにした第一の点は、地方が六割、国が四割という実際の仕事の割合からいった、この逆立ちを正して、そのための税財源の抜本的な維持を図り、しかもそれは所得や資産にかかる税を中心とし、地方消費税の拡充や低所得者の個人住民税の引き上げなど、大衆課税の拡大にはよらないこと。それから福祉、教育などの補助負担金制度の基本を堅持するとともに、国のいわゆるひもつき補助金ではなく、地方自治体の裁量の範囲に拡充すること。そして、最後三番目は、国民の権利と暮らしを守るための仕事を、税財政力の乏しい自治体でも行えるようにするため、地方交付税の財源保障機能を堅持すること。また、地方交付税制度による地方単独公共事業の押しつけをやめることという立場からの意見書を既に出したところで、この立場こそ、四十七都道府県も一致して支持でき、住民も納得できる方向だと考えております。
 この立場で、今後、まだいろいろな意見を聞きながら、秋に具体的な提言をまとめるということですから、しっかり我々の見解も踏まえていただきたいということを申し述べて、終わります。

○熊野主計部長 東京都が、東京ひとり勝ちじゃないといいながら、日本の再生のために東京の再生をというふうにいっている、これは矛盾するんじゃないかというふうなご指摘がございましたが、これは全く矛盾するものではございませんで、先ほど先生がお認めになったように、東京で納めた税が地方にばらまかれて地方が豊かになっているというのは、これは厳然たる事実でございます。
 それで、東京ひとり勝ち論は、今ある富をどう使うか、そのときに東京がひとり勝ちで使っちゃだめよという議論です。ところが、知事がいっている、日本の再生のために東京の再生というのは、富をどう使うかということじゃなくて、富をどうやって生み出すかという次元の話でございますので、東京が再生しなければ富はふえないわけです。それをまた地方に持っていって、地方がまた豊かになるという、我々はそこをいっているわけでございます。
 それから、財界のいい分を聞いているじゃないかといいますが、やはり国民の大多数は小さな政府を望んでいると思いますし、今回の三位一体で、税源移譲が地方公共団体になされて、住民の身近なところで受益と負担の判断ができるということ、これがまさに地方自治だと思います。それの確立に向けて、私どもは、財界のいうことを聞いているのじゃなくて、そういう地方自治の理念に沿った形の地方制度を確立するためにこれを申し上げている、ということを申し上げたいと思います。

○松村委員 今まで、そういいながらも、本当に財政が厳しい中で実際やってきて、本当に都政の現状はどうなったでしょうか。都民の福祉や社会保障分野が本当にずたずたに切り裂かれて、そして、専ら富を生み出す都市再生だとか、そういう社会基盤が重要だといいながら、今、東京が、自治体が自治体でなくなるような形になってきているのじゃないでしょうか。
 今、富をどうやって生み出すかといったけれども、その富をだれが享受するんですか。ここには全く、都民の視点の立場からの住民の福祉の増進という、地方自治体の責務などはどこにも書かれてないじゃありませんか。そのことは、重大な今までの、この間のバブルがはじけて以来の都政運営の実態を見ても明らかだというふうに思います。
 猛省を促して、私の質問を終わります。

○執印委員 それでは、私からも質問させていただきます。
 この地方分権改革に関する東京都の基本的見解ですけれども、私ども、ずっと分権と自治ということをいってまいりましたので、その立場からすると評価できるということで、このことは本会議でも申し上げました。
 しかしながら、苦言を呈するところがあるとすれば、今も議論があったわけですけれども、大都市の役割を余りにも優越的に論じているというふうに思うわけなんですね。
 例えば「大都市は、世界を相手に国際競争の最前線で勝ち抜くことで、日本経済を牽引していく使命を負った存在である。」とか、「仮に大都市が『負けた』ときには国家の存立すら揺らぐ」あるいは「熾烈な国際競争を勝ち抜くために、大都市圏が先頭に立って我が国の発展を促進するシステム」をつくり出すという、いわば勇ましい、どなたかがお好きなような勇ましい表現が続いているわけですが、勝つということが余りにも強調されて、首都としての品格というのが感じられないというふうに思うわけなんです。
 先ほど、それに対して部長からご答弁もありましたけれども、大都市がお金を生み出して分配するという、そういうご説明でもなかったのかもしれませんが、そういう今までの発想だけでいくのであるとすれば、分権のもともとの根っこのところが議論されないまま、お金の話になってしまうのではないかなという印象を、今、受けました。
 大都市がお金を生み出して地方が追随するというような形ではなくて、日本の国の中のそれぞれの自治体が、それぞれの地域で、それぞれの主張をしながら、国をともにつくっていく、そういうことが分権の根っこにもともとあるものなのではないかということで、うなずいて聞いていただいているので、理解はいただけるのかと思うんです。
 先ほどもずっと、共存共栄という言葉も何度も出されておりますから、基本的見解の最初に書かれていることが、東京はこうあるべきすばらしいところなんだ、だから対極にある地方はしようがないんだという議論ではないというふうに思いますけれども、先ほど来ご説明がありましたように、東京都としても地方とともに頑張っていくということをおっしゃっていますので、大都市あっての日本論というのを展開されますと、地方をいたずらに刺激するのではないかというふうに思いますし、東京都の真意というのが伝わりにくくなるのではないかというような心配もありますものですから、ぜひ今後、予定されている提案の中では、心配りもしていただきたいし、分権のもともとにある、今までの国のあり方の発想の根底に迫るような部分が見えるような形で出していただきたいというふうに思うわけです。
 私の質問は、これまでも国庫補助負担金のやりとりがありましたので、今さら基本に戻るような質問で恐縮なんですが、これから先いろいろなものが出されていく中で、お互い冷静に議論をしていく必要があるだろうというふうにも思いますので、その点から一つずつ確認をさせていただきたいというふうに思います。
 閣議決定されました骨太の方針二〇〇四というのは、東京都の提言にもかかわらずに、交付税制度の改革については明確な方針が盛り込まれなかったということで議論もあったところですけれども、その結果、税源移譲の規模が三兆円にとどまって、引きかえに国庫補助負担金が削減されることになるということで、その全体の税金の額をこれ以上ふやさないということが根底にあれば、どこかで譲り合わなければならないのは当然のことだと思いますが、質が落ちるというのでは全く意味がありませんので、補助負担金が地方税にかわるということで、地方の創意工夫の余地がどれだけ広がるのかということが、見直しの内容にかかわっているというふうに思います。
 それで、ちょっと誤解されると困りますけれども、税金も、ふえるのが安易に悪いというのじゃなくて、その内容がどうかというところを国民がどう判断できるかというところがあれば、その納得度が高ければいいのじゃないかというふうに思うわけですが、今の状況ではそれすら見えないということが大きな問題だというふうに思っているわけなんです。
 その立場で少し質問させていただきますが、昨年十二月、混迷の中で各省庁が駆け引きといいますか、いろいろあったわけですけれども、おさらいの意味で、十六年度予算における国庫補助負担金の見直しと、それに伴う税源移譲の内容について、まずご説明ください。

○熊野主計部長 国の十六年度予算におきましては、目標といたしておりました一兆円の国庫補助負担金の削減が、総理のリーダーシップのもとで行われたわけですけれども、ただその内容を見ますと、義務教育費の国庫負担金、あるいは公立保育所の運営費の負担金等、それらの一般財源化ということで、国と地方の役割分担などの議論が十分にされることなく、地方の裁量の余地のない、いわゆる義務的な経費に係る削減に終始したということが大きな問題点だろうと思っております。
 また、これに伴う財源措置といたしまして、所得譲与税あるいは税源移譲予定特例交付金などが新設されましたけれども、これも依然として国が配分権を握ったままのものでございまして、いかに過渡的であるとはいえ、非常に不十分な、本来の税源移譲の姿とはほど遠いというふうに理解してございます。
 また、このほか補助金関係で公営住宅建設費等の補助でありますとか、産廃の施設整備費補助でございますとか、公共事業関係の補助金につきましては、なかなかどこまでが三位一体絡みの削減かというのはわからない部分もあるんですけれども、いずれにしても、税源移譲のないまま削減されたというのが実態でございます。

○執印委員 今ご答弁にあったように、昨年の国庫補助負担金の見直しは大変問題があるというふうな内容でした。
 そういうふうになってしまうのも、やはり冒頭に申し上げたように、国がどういう形で国をつくっていくかという議論が不足しているということだと思います。議論が十分になかったということは、ご答弁にもありましたけれども、早急に見直しの考え方とかルールというのを、暮らしている側の視点でつくるべきだというふうに思っております。
 そこで伺いますが、冷静な議論をしていく必要があるというふうにも先ほど申し上げましたけれども、基本的な確認になりますけれども、国は国庫補助負担金というふうに一まとめにいいますし、議論の中でもそういういい方がされるわけですが、本来、国庫負担金と国庫補助金というのは意味合いが違うものだというふうに思います。
 私も、都議会に入って実は一番驚いたのが、これは公営企業法によるものですけれども、都立病院への東京都からのお金の出し方が補助金一本でされていたのに非常に驚きました。本来負担するべきものと補助するべきものというのは、きちんと見きわめた上で出すべきものであって、東京都内には今四つ市立病院がありますけれども、それは、きちんとやらないと東京都からの補助も出ないということで、厳しくされているということもありまして、補助金と負担金というものは、きちんと把握をしていく必要があるだろうというふうに思いますので、これを改めてご説明いただきたいと思います。

○熊野主計部長 まず国庫負担金でございますが、これは、地方公共団体の行う事務のうち、国が地方公共団体と共同責任あるいは共通の利害関係がある事務に対しまして、経費の負担区分を定めて国が義務的に支出する経費、つまり国と地方の役割分担をもととして国が応分の負担をしているものでございます。
 これに対しまして国庫補助金と申しますのは、国が特定の事務事業の実施を奨励するため、あるいは特定の地方公共団体の財政上の特別の必要があると認めるときに支出されるお金でございまして、一般に奨励的補助金あるいは財政援助的補助金と呼ばれているものでございます。したがいまして、補助金を支出するかしないかというのは国の裁量にゆだねられているということでございます。

○執印委員 現状で、国が地方に配分している負担金、補助金、今の考え方に基づいているということだと思いますが、どのようなものがあるのか、代表的なものを示していただきたいと思います。

○熊野主計部長 地方公共団体向けの国庫補助負担金は、総額で約二十兆円に上ってございます。このうち地方財政計画、いわゆる普通会計関係では約十二兆円になっております。
 負担金、補助金につきまして、予算額の大きなものを申し上げますと、国庫負担金では、老人医療費の給付費負担金二・五兆円、それから義務教育国庫負担金が二・四兆円、療養給付費等負担金が二兆円、生活保護費負担金が一・七兆円、介護保険給付費等負担金が一・一兆円となってございます。
 また補助金の方で大きいのを申し上げますと、水道施設整備費補助千二百億円、それから廃棄物処理施設整備費補助千二百億円、在宅福祉事業補助千百億円、社会福祉施設等整備補助千百億円などとなってございます。

○執印委員 さまざまな負担金とか補助金があるということだと思いますが、今回の緊急提言では、国と地方の役割分担や、国の責任に踏み込んで補助負担金を分けたということだと思いますが、こういった考え方を示すこと自体は、補助金改革のルールづくりのために意義があるというふうに思います。
 そこで、都がいう国と地方の役割分担や国の責任というものはどういうものなのか、具体的に、残すもの、削減し税源移譲するものについて、これまでもありましたけれども、それぞれ代表的な例をもう一度お示しいただきたいと思います。

○熊野主計部長 まず、役割分担の考え方でございますけれども、国が責任を持つべき分野といたしまして、大きく分けまして、一つには外交、防衛、司法といった国家存立のためになすべき分野、それから二つ目が、国家戦略に基づいた投資、それから三つ目が、生活保護あるいは義務教育など、いわゆるナショナルミニマムを確保するための基礎的な行政サービスがございまして、これらについては、国が直接執行するか否かを問わず、経費は国が全額を負担すべきものと考えてございます。
 一方、地方は、国が責任を持つべき分野以外のすべてについて、財政面を含め、国から自立して自己責任を負うことになろうかと思います。
 こうした考え方をもとに、国庫負担金について申し上げれば、例えば義務教育費の国庫負担金、それから老人医療給付費の負担金、河川等の災害復旧事業費の補助などは、これは全額国庫負担といたしまして、一方、例えば施設の建設など事業効果が一定地域に限られるもの、さらには地方に創意工夫の余地があるもの、こういったものは廃止して税源移譲すべきものといたしました。
 後者には、例えば公営住宅の家賃対策費補助であるとか、児童保護費等の負担金であるとか、公立学校施設整備費負担金であるとか、公営住宅建設費の補助などが該当いたします。
 また、補助金につきましては、税の振りかわりでございます国有資産所在市町村交付金とか、あるいは基地に対する補償などの交付金、そういった特別なものを除いては、税源移譲を前提にすべて廃止すべきというふうに提言をいたしました。

○執印委員 それぞれのものについては、これからまた議論していくことが必要だというふうに思いますが、特に義務教育費国庫負担金については、今後も負担金として存続すべきだということと、十五年度、十六年度の一般財源化を復元するように求めているんだと思います。こういう主張をしているのは東京都だけだと思いますけれども、その意図をご説明ください。

○熊野主計部長 国の国庫補助負担金の削減は、いわば単なる数字合わせでございますが、私どもは、今申し上げたように、地方との役割分担に即したものでございます。そうした観点から、地方が実施する事業の中には、その性格から、引き続き国が一定の財源保障をすべきものがあると考えてございます。
 特に、義務教育につきましては、国民として最低限必要な知識あるいは技能を習得いたします、日本の将来を支える人を育てていくための基礎課程でございまして、国が責任を持ってその水準を確保すべき性格のものであるというふうに考えてございます。
 したがいまして、教職員の給与費に関する経費につきましては、単に将来の話をするだけでなくて、過去にさかのぼって、既に一般財源化されたものも含め、その全額を国が責任を持って国庫負担金として財源措置すべきものとしたものでございます。
 将来、国が全額持つべきだということを主張してございますが、なかなかこれも、具体的な制度設計になると、じゃあ教員の身分は国家公務員にするのか地方公務員にするのかとか、いろいろ問題はございますけれども、基本的には、こういう考え方に基づいて今後検討してまいりたいと思っております。

○執印委員 義務教育というのはナショナルミニマムの最たるものだと思いますから、国が責任を持ってという都の主張は理解できます。財源負担をそういった形で求めていくということは、重要なことだというふうに思います。
 そして、教育については、私ども二〇〇二年に実はニュージーランドに視察に行ってまいりました。ニュージーランドも大変な財政難の中で、どういうふうに国の形を変えていくかということでいろいろ議論されたということですが、分権ということをしているわけですね。
 ニュージーランドの教育の例でいいますと、運営資金は、財務省から四期に分けて直接学校に来る、それから先生の給与は、教育省から直接先生の口座に振り込まれるというふうになっているそうでございまして、学校は、そのエリアの経済状況に応じて十段階に分けられていて、そこに、今お話ししたように直接国からお金が来る。
 それで、学校は、ボード・オブ・トラスティーという、日本でいえば学校運営連絡協議会のようなものがありまして、それは選挙によって選ばれるということなんですね。だから、日本の今の学校運営連絡協議会のように校長先生が指名するというものとは大きく違って、その権限も違うわけなんですけれども、そのボード・オブ・トラスティーというのが、運営費の使い方から、校長先生を選ぶということまでやっているわけですね。それで、校長先生が先生を選ぶということになっておりますので、今、片方でこういった分権をいいながら、校長を都の教育委員会が選ぶというふうに考えている東京都とまた大きく違うわけなんですけれどもね。
 そういった形で、分権というものは、つまり自治、市民がどういうふうに判断して、納めた税金を使っていくかというところまできちっと深まっていかないと、国から都道府県に権限が移譲されて、都道府県から基礎自治体に権限が移譲されて、そこで全部決めますよということじゃ意味がないというふうに思っているわけなんですが、そんなところから、このニュージーランドの例も紹介をさせていただいたわけなんです。
 だから、そういった意味では、東京都が義務教育に関しては特に国が責任を持つべきだというところとは変わらないわけですが、さまざまな内容については、いつになったら、住民が自治する、市民が自治する本来の改革ができるのかというふうにも思うわけですし、自分で選んで、東京を選ばなくても、どこの自治体を選んでも、それなりのよさがあって、税も、その地域に合わせた課税もできてというような形が一番いいんじゃないかというふうに思っているわけです。
 時間はかかると思いますが、そういった視点から見たときに、今回の東京都の頑張りというものは、その第一歩をつくるものだというふうに理解させていただきますので、ぜひ頑張っていただきまして、分権を進めるということと、国庫補助負担金に関する議論を詰めていただくということと、主張すべきところと反論すべきところをきちんとしていただくということで、いつも頭の中には、自治体から自治体への分権ではなくて、市民への分権だということをしっかり頭に入れていただきながら、このことを進めていただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わります。

○秋田委員 私からは、先般報告されました東京都の基本的見解と、国が行っております三位一体改革、先般発表されました骨抜きの方針二〇〇四--骨抜きの方針といっていいと思うんですが、二〇〇四、その違いを中心に議論を進めさせていただきたいと思うんですが、本論に入る前に、これまでの経緯を、まず、おさらいさせていただきたいと思います。
 三位一体改革は、長年の議論を経て、昨年度ようやく改革の道筋がついたというわけでございますが、国の方の平成十六年度予算編成における三位一体改革の内容と、それに対する我が財政当局の評価を聞かせていただきたいと思います。

○熊野主計部長 国の十六年度予算編成において行われました三位一体の改革は、まず税源移譲関係で所得譲与税が創設されまして、基幹税である所得税の税源移譲に道筋がついたという点では、私ども評価できるというふうに思っておりますが、ただ、それ以外については、真の地方税財政制度の改革からはほど遠い不十分なものであると考えてございます。
 具体的に申し上げれば、まず国庫補助負担金については、国と地方の役割分担などの議論が十分なされることなく、義教の国庫に代表されていますように、地方に裁量の余地のない国庫負担金が数合わせ的に削減され、地方の自主性の拡大にはつながっていないということ。それから、先ほど申し上げた所得譲与税あるいは税源移譲予定特例交付金などの財源措置につきましても、依然として配分権は国が持っておって、本来あるべき税源移譲の姿ではないということ。さらには、地方交付税制度については、総額が抑制されただけで、制度的な見直しは先送りされた。こういった点で、私どもは大いに不満が残る、残念な結果であると考えております。

○秋田委員 私も全く同じ思いで、一言でいえば大いに不満であるというのが正直なところでございます。
 三位一体改革といって、三つの改革のうち、おっしゃったように税源移譲に関しましては、所得譲与税といういわば基幹税が移譲されたものの、補助金改革は数字合わせ、それでもって地方交付税は、大幅な削減措置により、地方にとってはむしろ混乱を招いた結果にしかすぎなかった。
 三位一体改革の理念というのは本当にすばらしいものだと思うんですが、国というのはいつもながら総論におきましては大変きれいな、すばらしいことをおっしゃっても、その進め方、あるいは各論に入っちゃうと、何かどこに改革の理念は行っちゃったのかなと、いつもながらそんなふうに思うわけです。
 そういった中で、先週、骨太というよりも骨抜きの方針二〇〇四が決まったわけです。私は、この骨太の方針に少しは期待していた方なんですが、残念ながら、最後にちょっと小泉さんが決断をしていただいて、三兆円の移譲財源をまあ、という、ちょっと抽象論というのですかね、に終始してしまったということなんですが、この骨太というか骨抜きといいますか、この骨太の方針二〇〇四を、財政当局はどのように評価しているんでしょうか。

○熊野主計部長 お話のとおり、骨太の方針二〇〇四では、税源移譲はおおむね三兆円規模を目指すということと、地方公共団体が補助金改革の具体案をつくるということが記述されております。しかしながら、それ以外につきましては抽象論に終始しておりまして、全体像は秋以降に決定するということになっております。
 この補助金の削減項目の取りまとめを地方団体にゆだねているということにつきまして、私どもとしては非常に危惧を抱いておりまして、さまざまな立場の、異なる状況の自治体が多数ある中で、当事者同士の意見のすり合わせは非常に困難ではないかというふうに思っておりますし、ある意味、国の責任回避ともとれますし、ちょっといい過ぎかもしれませんけれども、まとめられるものならまとめてみろという財務省の戦略というのか、悪意というのか、そういうものすら感じるのが正直なところでございます。
 いずれにいたしましても、ある程度予想はしておりましたけれども、地方にとって重要なポイントは今後の議論にゆだねられておりまして、結論を先送りしただけというのが全体の印象でございます。

○秋田委員 今、主計部長おっしゃったとおり、今回も基本的な方針を示すのみで、期待していた羅針盤となるような具体的な策は述べられずに、具体的な話はこれからということなんだと思います。財務省お得意の焼け太りをねらっているのかなとすら、うがった見方もせざるを得ない。
 特に、今おっしゃったように、補助金改革については細目について地方にゆだねるというのは、本当に財務省が責任を放棄している、国としての責任をまさに放棄しているあらわれにほかならないというふうに僕は感じております。おっしゃったとおり、財務省は、やるならやってみろということを腹に持ちながらやって、今回の方針を固めたことはかなり間違いないんじゃないかと私は思っております。
 そうした中で、逆に東京都が今回、緊急提言におきまして具体策を提示していただいたことは、私は非常に価値ある、意味のあるものだと思っております。
 そこで改めて、今回、緊急提言を出したねらい、目的を説明してください。

○熊野主計部長 知事が再三、本会議等で申し上げているように、本来、地方分権改革は国の形を変える抜本的なものでなければいけないというふうに私どもも考えてございます。
 ただ、現在進められておりますいわゆる三位一体改革は、国の省庁が省益を墨守する姿勢を続けてございまして、基本的見解で申し上げております、Ⅰ章からⅢ章までの根本的な制度改革という議論に至らずに、つじつま合わせで収束してしまうおそれが非常に強いというふうに思っています。
 そこで、今回は、第Ⅳ章で金額を織り込んだ具体的な案を示すことで、東京都が目指す改革の第一歩となるような改革を国に迫っていく。さらには、地方財政、現在、借金依存体質からの脱却が急務となっておりますので、そういったことについて一刻も早く道筋をつける、そういったことをねらいといたしまして、緊急提言を行ったところでございます。

○秋田委員 政府の発表した骨太の方針二〇〇四と東京都の緊急提言というのは、よくよくお話を伺いますと、ちょっと目指しているベクトルの方向が違うのかなという感じがいたします。
 そこで、具体的な点についてお尋ねしたいんですが、骨太の方針が税源移譲三兆円、国庫補助負担金の改革が三兆円と想定しているのに対して、緊急提言では税源移譲が六・七兆円、国庫補助負担金改革が三・五兆円となっておりますけれども、この違いはどういうことなんでしょうか。

○熊野主計部長 国が申しております税源移譲額の三兆円という数字は、私どもとしても、はっきりとした根拠が示されておりませんので、何とも申し上げようがないということ、それから、交付税を温存しようとする中で、国庫補助負担金の削減に見合う額として出てきたものだというふうに思っております。
 一方、都の緊急提言では、税源配分の比率を国税と地方税一対一とするための所要額として六・七兆円を主張したところでございます。
 また、国庫補助負担金につきましても、国の三兆円は、昨年の骨太の方針で、平成十八年度までにおおむね四兆円程度の廃止、縮減を決めたということから、このうちの残りの三兆円ということで出てきたものであるというふうに思っておりますけれども、いずれにしろ、理念のない単なる数字合わせであると。
 ただ、私どもの三・五兆円という数字は、国と地方の役割分担に即して国庫補助負担金を峻別したものでございまして、数合わせだけの国、私どもは中身に踏み込んでいるという自負がございまして、そういう違いがあるものと考えております。

○秋田委員 今、国の税源移譲三兆円の根拠ははっきりと根拠が示されていない、国庫補助負担金額の削減に見合うだけだと。それじゃ、仕事を財務省はしてないのと一緒じゃないか。普通は積み上げて根拠を示すのが、小さな自治体から大きな自治体まで当たり前なことなのに、それすらせず、単なる数字合わせというのでは、それこそ財務省、給料要らないんじゃないかというくらい思うわけです。
 一方、手前みそになっちゃいますけど、やはり東京都はちゃんとした裏づけを持って、積み上げて、いわば当たり前の仕事なのかもしれないけれども、ちゃんと裏づけがあるといったところに安心感を覚えるわけです。
 一方で、今度、交付税に目を向けて見ますと、骨太の方針では明確な方向性が伝わってこないというか、示されていない。うそかまことかは知りませんが、国の方は、十六年度の交付税の削減に対する地方の反発が余りにも強かったがゆえに、もっといえば、国というよりも地方選出の国会議員なんだと思うんですけれども、及び腰になっているという。
 改革を実行すればさまざまな反発があるわけで、共産党さんみたいに批判するだけでいいわけではなくて、何かを変えようと思えば反発が起こってくるのは当然で、その反発を乗り越えてこそ初めて改革がなし遂げられるんだと思いますが、そういった意味でも、何が何でも改革をしようという気が国の方にはないのかなとさえ思うわけです。
 これに対して東京都は、緊急提言において明確に地方交付税の削減を打ち出しましたが、この四・六兆円の削減はどういった内容になっているでしょうか。

○熊野主計部長 現在、国、地方を通じて長期債務が七百兆円を上回る状況でございまして、こうした状況を改革するためにも地方交付税の圧縮が必要である。そこで、私どもは、税源移譲並びに国庫補助負担金の見直しを反映して、四・六兆円という数字を提言してございます。
 特に、国庫補助負担金の見直しに関連いたしまして、三・五兆円の削減を提言しているわけですが、これはあらあらの試算ではございますが、事業費ベースに直すとおおむね二倍の七兆円、そのうち、その二割の一・四兆円は地方の努力による歳出削減努力ということで、これを交付税に反映させていただいています。決して難しい、無理な話ではなかろうかと思っております。
 こうした反映、途中複雑な計算がございますので、結論だけ申し上げますが、地方交付税等の圧縮額四・六兆円が可能となりまして、その内訳を申し上げますと、まず地方交付税の原資である国税の所得税あるいは消費税の一部が税源移譲で地方税になるということで、当然地方交付税の原資が減りますので、その影響等が三・一兆円。それから、今回の税源移譲に伴いまして、私ども、十一年度の恒久減税に係る地方特例交付金--十一年度の恒久減税の際に、不交付団体については地方特例交付金ということでそれを補てんしております。全国で九千億円ございます。これを削減する。東京都もこの影響は大きくて、十六年度予算ベースで一千四百億もらっていますので、これの廃止を提言した。それから、新たな借金の抑制ということで、臨時財政対策債、これ、〇・六兆円削減できるというふうに見込んでおりまして、合計四・六兆円というふうに試算してございます。

○秋田委員 都の緊急提言は、税源移譲や補助金改革の結果をきちんと交付税に反映しているということだと思います。
 三位一体改革という以上、税源移譲、補助金削減、交付税の見直しという、この三位の三つすべてにきちんと手を加えなくては意味がないという点で、緊急提言は、私は素直に評価をさせていただきたいと思います。
 そこで、今回、この緊急提言のとおり実行すると、地方財政改革にどのような効果が出るのかを教えてください。

○熊野主計部長 今回の緊急提言は、私ども国家財政にも配慮しながら、地方の財政基盤の強化を図る道筋をつけるものというふうに考えてございます。先ほど申しましたように、地方財政を借入金の依存体質から脱却させる第一歩になるものと考えてございます。
 まず、税源配分につきまして、地方対国を一対一とすることで、地方の自主財源をふやし、財政力を強化するということと、国庫補助負担金の改革によりまして、国と地方の役割分担に応じた財源配分、事務配分の見直しが進むというふうに考えてございます。
 さらに、税源移譲と国庫補助負担金改革の効果を交付税に確実に反映させることで、地方財政の借金依存体質にもブレーキがかけられるというふうに考えてございます。
 これらの見直しができれば、国で約一千億円、地方で一・三兆円の財政負担が削減できると試算してございますし、地方の努力次第ではさらなるスリム化も可能であるというふうに考えてございます。

○秋田委員 今、部長からお話がありましたとおり、きちんと三つの改革、三位一緒に改革を行えば、地方の自主性、自立性を高めつつ、国、地方のとどまるところを知らない歳出の膨張にも歯どめをかけることができることを、緊急提言は示しているんだなということがわかると思います。
 先ほどもちょっと申し上げさせていただきましたが、そもそも江戸時代には、各藩というのは自主財源でちゃんとしっかりと創意工夫してやってきたわけですから、私は決して無理な話ではないのだと思います。
 ところで、緊急提言によって都財政にはどのような影響があるでしょうか。

○熊野主計部長 今回、税源移譲などで住民税への振りかえというふうなことを提言しておりますが、都道府県と市町村の配分率なんかがどうなるかということにもよりますので、正確な影響額を申し上げることはできませんけれども、現行制度を前提として試算をいたしますと、まず都税につきましては、所得税から個人住民税への移譲によりまして約八百億円、それから国の消費税から地方消費税への移譲によりまして約二千五百億円、合わせまして、税源移譲として約三千三百億円の増収という試算がございます。
 それから、一方、減るものとしまして、国庫補助負担金の改革で、これもなかなか難しい試算ではございますが、約一千三百億円の減収が見込まれます。それで、先ほど申しましたように、十一年度の恒久減税に伴う地方特例交付金の廃止を私どもみずから提言してございますので、これで約一千四百億円の減収となる。
 以上を総合しますと、プラスマイナス約六百億円程度の増収になるのではないかと見込んでおります。こういった数字をどう受け取るかというのは非常に難しゅうございますが、私どもとしては、東京都も我慢しているというふうに理解しております。

○秋田委員 今の主計部長のお話だと、六百億円の増収ということで、その六百億円の増収というのが多いか少ないかというのは判断が分かれるところなんだと思いますけれども、私も、部長のおっしゃったとおり、東京ひとり勝ち論という話は、決して今回の緊急提言から出た数字においてはいえないのではないかなと思います。
 また一方で、先ほどちょっと松村理事の方からご批判があった数字を並べながら、私はちょっとお話をさせていただきたいんですが、東京都民は国税を一人当たり百三十万円負担しているのに、国から戻ってくるのは十一万円。一方、島根県民の方は、一人当たりで計算すると二十一万円の負担に対して七十五万円戻ってくる。東京都民の方は大体一人頭百三十万円払っていて、島根県民は二十一万円。
 今の話をもう少しわかりやすくいいますと、都民は負担した国税のわずか八・五%しか還元されないのに対し、島根県民は負担した国税の三五七%、つまり三・六倍もの国税が還元されている。都民と島根県民との格差は実に四十二倍にもなっているという数字もある。
 確かに、国土の均衡のある発展、発達というのは必要だと思いますけれども、どうも私が先ほどの松村理事のお話を聞いていますと、むしろ我が党の大先輩であった田中角栄さんの日本列島改造論に逆に毒されているのではないかなと思わざるを得ないわけですね。確かに国土の均衡のある発達は必要だけれども、先ほど来部長がおっしゃっているように、再配分の配分の仕方が今は余りにも不公平じゃないかという点を、私は繰り返し述べさせていただきたいわけでございます。
 それで、私が特に重要だと思うのは、こういった事実を、東京都民ももちろんそうですけれども、今、例えば島根県民の方々が果たしてご存じかという点なんですね。もし島根県民が今掲げたような数字を知っていたとしたら、今までは、一つ公民館つくるのでも、まあ、つくってくれるんだったらありがたいからいいやといっていたのが、それが東京都民の税金から出ているって、もし知ったら、ちょっと遠慮をしようかなくらいは多分思うと思うんですよ。島根県民の人だって、ほかの地方の方だってばかじゃないんだから、そこら辺の遠慮は、私は当然あると思うんですね。
 いいたいことが、ちょっと自分の感情的な部分があるものですから、ずれてしまいましたが、いずれにせよ、全体でどういった財源配分がいいのかという議論ができるようになったらいいんだと思います。お互いが事情をよく知らないまま、現在のように批判するのはぜひとも避けるべきだと思います。
 さて、今後、具体的な議論が進むと、さまざまな主張が入り乱れて、改革の行方はますます混迷を深めていくことなんだと思います。知事じゃございませんが、国の方が改革の信念も国家経営の戦略も持ち合わせていない以上、省益や既得権益と折り合いをつけるということは、非常に難しい作業がこれから始まる可能性があるんだろうなと思います。
 そういった中、東京都として国の動きにおいて警戒している点、特に議論を挑もうとしている点は何か、教えてください。

○熊野主計部長 これは何と申しましても、国の各省庁が省益を優先して、分権改革の本旨を骨抜きにしようという動き、これに留意する必要があるというふうに思っております。
 例えば総務省につきましては、破綻に直面した交付税をなお温存しようという思いが強いというふうに思っておりますし、また、総務省みずから東京問題というふうに呼んでいるように、法人事業税の分割基準の改悪であるとか、あるいは地方譲与税の譲与制限の強化であるとか、そういった大都市東京をねらい撃ちするような不合理な財源調整措置をさらに強化しようとする動きがあるということで、これについては非常に注意を払っていかなきゃいけないと思っています。
 さらに、仮に地方公共団体が国庫補助負担金の削減案をまとめたという事態になっても、各省庁の抵抗は相当強いものが予想されますので、仮に国庫補助負担金の削減額が税源移譲額の三兆円に満たないというふうな事態になったときには、総務省は、麻生プランでいっているように、税の逆移譲、要は地方が納めた税を国に吸い上げるという、こういった税の逆移譲というふうなことも、また復活しかねないというふうに警戒をしてございます。
 さらに、今回、骨太の方針といいながら、結局、省庁の対立で何も決められなかったというふうに、結論がどんどんどんどん先送りされていくという危険性がございます。
 来年度の予算編成に向けて、時間切れで中途半端な改革にならないように、国の動向を厳しく監視する必要があると考えております。

○秋田委員 今、部長がおっしゃったように、逆移譲なんというのは、まさに改革に名をかりた焼け太りを財務省はねらっているとしか思いようがございませんから、不合理な財源調整措置は絶対に容認できませんし、断固反対してほしいと思います。
 いずれにせよ、地方税財政改革は始まったばかりであり、今後、改革の嵐が吹いていくのだろうと思います。東京都は、石原慎太郎という強烈な個性を持った船長のもとに、しっかりと羅針盤を抱いて、全国の地方自治体の先頭に立っていただきたいと思います。
 それで、最後の質問に移らせていただきたいと思うのですが、今回の東京都の緊急提言は、地方税財政改革を進めるための国に対する地方の第一声だと思います。しかし、多くの国民を初め、他の道府県に理解を得るのは至難のわざだとは思いますが、この提言を理解していただくためには、新たな財政調整制度の中身が重要だと思います。他の道府県の理解を得られる新たな制度を十分に検討の上、一日も早く発表していただくことを要求しておきたいと思います。
 そして、その前提として、先ほどの繰り返しになりますが、地方財政の現実を全国の人々に知らしめ、地方財政改革についての世論を喚起するとともに、全国の地方自治体を先導し、国との議論を行うに当たっての局長の決意を伺って、質問を終わらせていただきたいと思います。

○櫻井財務局長 国、地方を通じまして約七百兆円ともいわれております借金、まさに破綻寸前、あるいは破綻しているといえるかもしれませんけれども、そういう国、地方の財政を立て直すとともに、ナショナルミニマムがほぼ達成された今日にあって、今後は、地方がその地域の特性に応じて知恵と力を発揮できるような行政の仕組み、こういうものをつくり出すためには、地方への税源移譲、国庫補助負担金改革、地方交付税制度の改革などの改革を、文字どおり三位一体として実施することが必要であると考えております。
 しかし、国の十六年度予算編成の過程あるいは最近の経済財政諮問会議における議論、また現在、国において進められている三位一体改革は、先生のお話にもありましたように、省庁がみずからの省益に固執する姿勢を続けておりまして、このままでは改革の理念が骨抜きにされ、つじつま合わせに終始してしまう、こういうおそれがございます。
 今必要なのは、地方が自立し、みずからの責任で政策を立案、実施することのできる仕組みを構築することでありまして、大都市と地方が共存共栄できるシステムをつくり出すことであります。
 こうした観点から、都は今回、具体的な緊急提言を明らかにしましたけれども、先生のご指摘にありましたように、国との議論はこれからでありまして、そのためには、地方財政の現状を都民だけにとどまらず広く国民に伝え、地方税財政制度改革の必要性を、世論を喚起するとともに、今後も庁内の関係部署とも連携を密にとりながら、東京が先頭に立って、国に対して積極的に具体的な改革の提言、働きかけを行ってまいります。

○近藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、ご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○近藤委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で財務局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後四時四十四分散会

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