文教委員会速記録第十八号

平成二十七年十二月十一日(金曜日)
第三委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長植木こうじ君
副委員長里吉 ゆみ君
副委員長高木 けい君
理事栗山よしじ君
理事ほっち易隆君
理事野上 純子君
小松 久子君
山崎 一輝君
野上ゆきえ君
今村 るか君
鈴木貫太郎君
鈴木あきまさ君
古賀 俊昭君
斉藤あつし君

欠席委員 なし

出席説明員
生活文化局局長多羅尾光睦君
次長桃原慎一郎君
総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務武市 玲子君
広報広聴部長樋渡 幸生君
都民生活部長山中 康正君
消費生活部長山本  明君
私学部長加藤  仁君
文化振興部長鳥田 浩平君
都政情報担当部長濱田 良廣君
男女平等参画担当部長斎田ゆう子君
文化施設改革担当部長越  秀幸君
オリンピック・パラリンピック準備局局長中嶋 正宏君
次長理事兼務岡崎 義隆君
理事小山 哲司君
総務部長鈴木  勝君
調整担当部長雲田 孝司君
総合調整部長児玉英一郎君
連絡調整担当部長岡安 雅人君
準備会議担当部長丸山 雅代君
自治体調整担当部長井上  卓君
計画調整担当部長鈴木 一幸君
大会準備部長延與  桂君
運営担当部長田中  彰君
競技担当部長根本 浩志君
パラリンピック担当部長障害者スポーツ担当部長兼務萱場 明子君
施設輸送担当部長花井 徹夫君
施設調整担当部長小室 明子君
施設整備担当部長小野寺弘樹君
選手村担当部長安部 文洋君
スポーツ推進部長早崎 道晴君
国際大会準備担当部長土屋 太郎君
スポーツ施設担当部長田中 慎一君
教育庁教育長中井 敬三君
次長松山 英幸君
教育監金子 一彦君
総務部長堤  雅史君
都立学校教育部長早川 剛生君
地域教育支援部長粉川 貴司君
指導部長伊東  哲君
人事部長江藤  巧君
福利厚生部長太田 誠一君
教育政策担当部長
オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
安部 典子君
教育改革推進担当部長出張 吉訓君
特別支援教育推進担当部長松川 桂子君
指導推進担当部長鯨岡 廣隆君
人事企画担当部長鈴木 正一君

本日の会議に付した事件
意見書について
オリンピック・パラリンピック準備局関係
付託議案の審査(質疑)
・第二百三十二号議案 東京体育館の指定管理者の指定について
・第二百三十三号議案 東京武道館の指定管理者の指定について
・第二百三十四号議案 東京辰巳国際水泳場の指定管理者の指定について
・第二百三十五号議案 有明テニスの森公園テニス施設の指定管理者の指定について
・第二百三十六号議案 東京都障害者総合スポーツセンター外一施設の指定管理者の指定について
教育庁関係
契約議案の調査
・第二百十六号議案 都立南花畑学園特別支援学校(仮称)(二十七)改築工事請負契約
・第二百十七号議案 都立小金井特別支援学校(二十七)改築工事請負契約
付託議案の審査(質疑)
・第二百号議案 学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
・第二百一号議案 都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
・第二百二号議案 東京都立多摩社会教育会館条例を廃止する条例
・第二百三十七号議案 東京都立埋蔵文化財調査センターの指定管理者の指定について
・諮問第四号 地方自治法第二百六条の規定に基づく審査請求に関する諮問について
報告事項
・再雇用職員等の採用選考不合格等を理由とする損害賠償請求控訴事件に係る上告受理の申立てについて(説明・質疑)
・東京都教育施策大綱について(質疑)
・都立高校改革推進計画・新実施計画(案)の骨子について(質疑)
・東京都発達障害教育推進計画(案)の骨子について(質疑)
生活文化局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百九十七号議案 東京都情報公開条例の一部を改正する条例
・第百九十八号議案 東京都個人情報の保護に関する条例の一部を改正する条例
・第百九十九号議案 東京都特定個人情報の保護に関する条例

○植木委員長 ただいまから文教委員会を開会いたします。
 初めに、傍聴人の数についてお諮りいたします。
 本委員会室の定員は二十名でありますが、傍聴希望者が定員以上でございますので、さらに二十名を追加したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○植木委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○植木委員長 次に、意見書について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書二件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件につきましては、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○植木委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○植木委員長 次に、契約議案について申し上げます。
 契約議案は財政委員会に付託されておりますが、本委員会所管分について議長から調査依頼がありました。
 本件については、調査結果を財政委員長に報告することになっております。
 公文の写しはお手元に配布してあります。
 朗読は省略いたします。

平成二十七年十二月九日
東京都議会議長 川井しげお
文教委員長 植木こうじ殿
   契約議案の調査について(依頼)
 左記の議案について調査し、財政委員長にご報告願います。
     記
1 調査議案
 第二百十六号議案 都立南花畑学園特別支援学校(仮称)(二十七)改築工事請負契約
 第二百十七号議案 都立小金井特別支援学校(二十七)改築工事請負契約
2 提出期限 平成二十七年十二月十一日(金)

○植木委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、オリンピック・パラリンピック準備局、教育庁及び生活文化局関係の付託議案の審査並びに教育庁関係の契約議案の調査及び報告事項に対する聴取を行います。
 これよりオリンピック・パラリンピック準備局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第二百三十二号議案から第二百三十六号議案までを一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○鈴木総務部長 去る十一月二十七日の当委員会において要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元にお配りしてございます文教委員会要求資料をごらんください。
 表紙をおめくりください。資料1、指定管理者となる予定の事業者とその構成団体でございます。施設ごとの指定管理候補者と、その構成団体を記載してございます。
 一枚おめくりください。資料2、都立スポーツ施設の指定管理料の推移でございます。施設ごとの指定管理料につきまして、平成二十三年度から二十七年度までの五年間の推移を記載しております。なお、平成二十三年度から二十六年度までは決算額、二十七年度は当初予算額となっております。
 以上、簡単ではございますが、要求資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○植木委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○ほっち委員 私からは、指定管理者の指定についてお伺いいたします。
 指定管理者制度は、公の施設の、より効果的、効率的な管理を行うため、その管理に民間の能力を活用するとともに、その適正な管理を確保する仕組みを整備し、住民サービスの向上や経費の削減等を図ることを目的として、平成十五年の地方自治法改正により創設されました。
 都では、十八年度に本格的に導入し、今年度で十年目を迎えます。今回の提案で各施設とも三度目の選定となりますが、いずれの施設もこれまで公募で指定管理者を選定してきました。
 そこで、今回の選定に当たって、公募ではなく特命とした理由について改めてお伺いいたします。

○田中スポーツ施設担当部長 東京体育館、東京武道館、東京辰巳国際水泳場及び有明テニスの森公園テニス施設の四施設につきましては、次期指定管理期間中に開催される東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会の競技会場または練習会場の候補施設となってございます。
 これらの施設は、本大会やテストイベント期間中、施設の活用ができないことに加え、仮設物の設置及び撤去のほか、必要な改修工事を行うなど、相当の期間において施設の活用が見込まれないものとなっております。
 このことから、今回は例外として公募しないこととし、各施設の管理運営の実績と蓄積されたノウハウを有する現在の指定管理者を引き続き特命することといたしました。
 また、東京都障害者総合スポーツセンター及び東京都多摩障害者スポーツセンターにつきましては、利用者の障害の状況に応じたきめ細やかなサポートが利用者の継続的なスポーツ活動の支えになっております。
 また、次期指定管理期間中に両施設とも大規模改修工事を予定しており、都と利用者との綿密な調整が必要となります。
 このことから、今回は例外として公募しないこととし、各施設の管理運営の実績と蓄積されたノウハウを有し、都内唯一の障害者スポーツの統括団体である現在の指定管理者の公益社団法人東京都障害者スポーツ協会を引き続き特命することといたしました。

○ほっち委員 次期指定管理期間中に二〇二〇年大会や障害者スポーツセンターの大規模改修工事など、特殊な管理運営の期間が含まれることから特命とすることが必要であるということは理解ができました。
 競技会場等として大会を万全な体制で準備、運営する、あるいは、我が党が拡充を要望しております障害者スポーツを着実に推進するという観点からも、現在の指定管理者がこれまで培ってきた実績と蓄積されたノウハウの活用は不可欠であり、今回特命としたことは適切な判断だったというふうに認識しております。
 ところで、現在の指定管理者を特命するということでしたけれども、東京辰巳国際水泳場の構成員に今回新たに東京都スポーツ文化事業団が加わっていますが、その理由についてお伺いいたします。

○田中スポーツ施設担当部長 今回、選定に当たり、東京辰巳国際水泳場の指定管理者候補者の構成員に公益財団法人東京都スポーツ文化事業団が加わっております。
 これは二〇二〇年大会に向けて、都や組織委員会とも緊密に連携しながら、複雑かつ多岐にわたる調整を行うことが求められている中で、事業団は、都の監理団体として都のスポーツ行政において最も実務に精通し、都立体育施設の管理運営の実績やノウハウも豊富であることから、主に二〇二〇年大会に向けた調整の役割を担うに適した団体として加えたものでございます。
 指定管理者の選定に当たっては、外部有識者等で構成される東京都体育施設等指定管理者選定委員会において事業計画書の審査及びヒアリングを行った結果、構成員の変更に伴う問題点はなく、指定管理者として適切な団体であると認められたものでございます。

○ほっち委員 二〇二〇年大会成功に向けて、指定管理者は都や組織委員会と一体的に準備や調整に当たっていかなければならないと。そのためにも構成員に都の監理団体を加えたということでありますけれども、今後発生する複雑多岐にわたる調整も、ぜひ都と監理団体が力を合わせて精力的に取り組んでいただき、二〇二〇年大会の成功に向けて力を合わせていっていただきたいと思っております。
 次に、指定管理の期間についてですが、いずれの施設もこれまでは五年間という形になっておりましたが、今回の指定期間を七年または十年とした理由について改めてお伺いいたします。

○田中スポーツ施設担当部長 二〇二〇年大会の競技会場または練習会場の候補施設となっている東京体育館外三施設につきましては、大会開催に向けたさまざまな取り組みの成果を大会後もレガシーとして確実に定着させるため、指定期間を七年間としたものでございます。
 東京都障害者総合スポーツセンター及び東京都多摩障害者スポーツセンターにつきましては、利用者との信頼関係や障害者の状況に応じたきめ細やかなサポートを構築するため一定期間を要することから、指定期間を十年間としたものでございます。
 これにより、一層の都民サービスの安定的な提供及び向上を図ってまいります。

○ほっち委員 指定期間は通常五年となっていますが、二〇二〇年大会のレガシーや障害者スポーツセンターの安定したサービスの提供はいずれも都において重要な施策であります。
 七年または十年という期間は、施設の状況に応じた最適な期間であるということは理解できました。
 また一方で、指定期間を長期にわたって設定することにより、例えばその期間中に施設を取り巻く環境などが変化し、新たな役割や取り組みが求められた場合でも、当初の事業計画を見直さずに膠着的な運営をするようなことがあっては困ります。
 また、長期間指定管理者となることを約束することで、指定管理者に緊張感がなくなり、サービスの低下等々につながるということも懸念しております。
 そこで、指定期間を長期化した場合の環境変化への対応や、緊張関係を確保する方法についてお伺いいたします。

○田中スポーツ施設担当部長 五年間を超える指定期間を設定した場合は、選定が行われた時点での前提に変化が生じ得ること、また指定期間が長期化することで、都と指定管理者の適切な緊張関係が薄れる可能性があることから、総務局が策定した東京都指定管理者選定等に関する指針に基づき、指定期間の中間年を目安に事業計画の見直しを行うこととしております。
 その際に、選定の基礎となった社会経済状況に変化が生じた場合や、管理運営状況が極めて不良であった場合には、都が指定の取り消しを行うことができることとし、協定等に明記することとしております。
 このような対応により、指定管理者が常に緊張感を持って指定管理業務を実施するとともに、都民サービスの低下を招かないよう引き続き指導監督してまいります。

○ほっち委員 今お答えいただきましたけれども、ぜひ中間年での見直しというものもしっかり行って、適切な管理運営が実現するように、都として指導監督していただきたいというふうに思います。
 最後に、今回提案の施設はいずれも二〇二〇年大会に向けた都のスポーツ振興の一端を担う重要な施設であります。その取り組みも期待するところでありますが、そこで、二〇二〇年大会に向け、各指定管理候補者からどのような提案があったのかお伺いいたします。

○田中スポーツ施設担当部長 指定管理候補者から提出された事業計画書では、二〇二〇年大会に向けた提案として、案内板の多言語表記など外国人利用者への配慮や、大会会場として行われる競技種目に関する事業の実施、パラリンピアン公園など、機運醸成事業、パラリンピックへの出場を目指すジュニア選手強化教室の開催など、競技力強化事業などがございました。
 また、改修工事への協力や、都や組織委員会との調整のための体制整備などについても提案がございました。
 今後は二〇二〇年大会に向け、より一層都民のスポーツへの関心が高まり、大会への盛り上がりも増していくことから、各施設の運営について民間の能力を有効に活用するとともに、効率を図っていくなど、都民の多様なスポーツニーズに応えてまいります。

○ほっち委員 二〇二〇年大会を契機に、都のスポーツ施設というのは、これまで以上に世界中から注目を浴び、各施設が担う役割というものは極めて大きいものだと思います。
 都と各指定管理者とが連携を密にして、日本を代表する施設として誇ることができる事業運営がなされることを期待して、私の質問を終わります。

○里吉委員 私からも指定管理者の問題についてお伺いしていきます。
 資料を用意していただきありがとうございました。東京辰巳国際水泳場は、今までのオーエンス、セントラルと都水協のグループだったものが、東京都スポーツ文化事業団を加えた理由についてお伺いしようと思いましたが、先ほどご回答がありましたので、オリンピック・パラリンピックに向けて調整を担うに適した団体として構成員に加えたということで理解いたしました。
 それと、同じこの東京辰巳国際水泳場に先ほど申し上げた都水協が入っていること、それから、有明テニスの森公園テニス施設の指定管理者にはテニス協会が入っていると、それぞれ競技関係団体が入っていると思いますが、その経緯についてまずお伺いいたします。

○田中スポーツ施設担当部長 東京辰巳国際水泳場及び有明テニスの森公園テニス施設の両施設は、それぞれ水泳及びテニスの国際大会の開催が可能な国内で最大級の施設でございます。
 そのため、国際大会や全国大会などの大規模大会の誘致や運営能力が求められております。
 また、両施設には、施設管理業務の一つである自主事業やスポーツ振興事業として、魅力あるイベントや教室の開催なども求められております。
 競技関係団体は、こうした競技大会やイベント等について専門的かつ豊富な知識や経験を有していることから、指定管理者の構成員となったものでございます。

○里吉委員 その一方で、東京体育館と東京武道館については、当初からティップネスという民間の企業が入っていますが、この理由について伺いたいと思います。

○田中スポーツ施設担当部長 東京体育館及び東京武道館の両施設については、平成十八年度から指定管理者による施設運営を行っており、株式会社ティップネスは、構成団体の一団体として主にトレーニングルーム運営業務を担っております。
 トレーニングルームの運営に当たっては、当初の指定管理者選定時より、株式会社ティップネスからフィットネスクラブ運営の実績とノウハウを生かし、豊富なプログラムやトレーナーの設置、健康、体力相談などの提案がございました。
 指定管理者の構成団体は、指定管理者に応募しようとする者が必要に応じて任意に結成するものであり、東京体育館及び東京武道館につきましては、株式会社ティップネスの提案が、他の構成団体との間で相乗効果を生み出し高い計画内容となったことから、同社を含む指定管理者が選定されたものでございます。
 指定管理者制度の導入により施設利用の活性化が図られ、例えば東京体育館では、平成十八年度に利用時間の延長をするなど、個人利用者のニーズに応じた創意工夫が図られてきました。

○里吉委員 我が党はこれまで、導入したときと五年前と二度にわたって、この質疑のときに、最初、ティップネスの自主事業のために、施設の大幅な改修、修繕を都の負担で行って優遇してきた経緯について、また、施設は一番収益の上がるところを担わせるなど、自主事業という名目で民間事業者のために公の施設を提供するというものではないかと指摘してまいりました。
 今回、しかも、エステサロンやリラクゼーションなど、本来の趣旨と異なることまで計画して、これらも含めて自主事業の利用料や費用、利益率は明らかにしないまま行わせようとしていることは問題ではないかと指摘したいと思います。
 それでお伺いしたいんですけれども、今回の指定管理者、今までと同様、スポーツ文化事業団とグループを組んでおりますが、先ほど指摘しました利益率、どれくらいティップネスがこの施設で利益を上げているのかなどについて、東京都はつかんでいるのか、つかむ仕組みはあるのか伺いたいと思います。

○田中スポーツ施設担当部長 指定管理者制度は、住民の福祉の増進を図るため、民間事業者の活力や費用対効果の向上などを目的に創設されたものでございます。
 このような制度の趣旨に基づき、各施設の指定管理業務については、指定管理者を構成する各団体別の収支等を管理するのではなく、指定管理者全体としてその収支や管理運営状況等について把握することによって、適正に管理を行うものとされております。
 なお、指定管理候補者から提出された収支計画につきましては、公認会計士を含む外部有識者等で構成される選定委員会において審査しており、適切な水準となっております。

○里吉委員 結局、表には出てこないわけですね。
 それから、前回の指定管理の指定のときの質疑でも、当時、いわゆる官製ワーキングプアが問題になっていて、職員の人員体制、ローテーション、非常勤の問題なども問いただしましたけれども、わかりませんでした。
 今回、事業計画書を私も見せていただきましたけれども、やはり白紙で何も書かれていない状態なので、改善されたかも一切わからないわけです。指定管理制度そのものが、こうした問題点を関係者から指摘されてきただけに、その改善が行われたかどうかということで、私たちは個別に判断していきたいと考えております。
 この問題では共通して、こうした課題を抱えている東京体育館と東京武道館については認められないということを申し上げて質問を終わります。

○斉藤委員 私の方からは、東京都多摩障害者スポーツセンターについて何点か伺います。
 少し前になりますけれども、都議会民主党で、福祉保健局がセンターの中で所管しています補装具の更新で、手続なんかに関して視察したのとあわせて、オリンピック・パラリンピック準備局が所管いたしますスポーツセンターの方も視察させていただきました。
 印象としては、午後の早い時間だったということもあって、ちょっとご高齢の障害者の方が大変多いなという、それでも非常に活気があるというふうな活動を見ることができたわけです。
 そこで伺うんですけれども、その中にはプールとか体育館とか、比較的人気が集まりそうな施設もあるわけなんですが、恐らくサークル活動の予約などについてはキャンセル待ちもあるんじゃないかなというふうに推測するんですが、実際に現在の障害者スポーツセンターの混雑のぐあい、こちらの方は今どのようになっているんでしょうか。

○田中スポーツ施設担当部長 都内に二カ所ある障害者スポーツセンターは、開設以来、利用者は常に増加傾向にあり、平成二十六年度には、合わせて延べ約三十八万人が利用しております。
 団体利用が可能な体育館などの施設につきましては、先着順で予約を受け付け、団体が希望する時間で施設を利用できるようにしております。
 個人利用を原則としているプールやトレーニングルーム、卓球室などの施設につきましては、曜日や時間帯等によっては混雑する時間もありますが、利用時間に関するルールを定めるなど、より多くの利用者が満足するように工夫しております。

○斉藤委員 これまでも委員会の中で話題になりましたように、パラリンピックが今度、東京大会が予定されておりまして、非常に障害者スポーツ、注目を集めてもらおうと、集まりつつあるというふうなことで、恐らく障害者スポーツ全体について関心が高まるかと思います。
 そういった中で、今までスポーツにまでなかなか手が出なかった、スポーツの方もチャレンジしようという気にならなかった障害者の方も、これを機会にスポーツを始めたいというふうなことになってくる方も多いんじゃないかと思います。
 そうしますと、施設面や指導スタッフの人材面で非常に需要が高まってくる可能性があります。既にこちらのセンターの方はこの後またリニューアルということで、ハードウエアについては大きくなる可能性も多分にあるわけなんですが、そういった場合にも、さらにそれを上回る、恐らく需要というか申し込み、利用したいという希望者が、特に個人の場合は予約ではなくても、こちらにやってくるということが当然ありますので、やはりその需要は高まるだろうというふうに思われます。
 特に都内二カ所しかございませんので、地元の自治体で障害者のスポーツを始めるよりも、非常に詳しく相談できる指導者がいるスポーツセンターで、まず行ってみてからというふうな方も多いんじゃないでしょうかというふうに思います。
 いわゆる希望者の掘り起こしが当然今後進んでいくということであります。指定管理者を指定する東京都の立場として、今後の障害者スポーツセンターの需要をどう考え、どう応えていくのか、そこを伺いたいと思います。

○田中スポーツ施設担当部長 今回の指定管理者の選定に当たっては、現在の障害者スポーツセンターの利用状況等に基づき事業規模等を見込んでいるところでございますが、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を契機に、センターの利用者はさらに増加するものと考えられます。
 両センターは、今後予定している大規模改修工事により、利用者数の増加も踏まえ、施設の機能や利便性の向上を図るとともに、施設の拡充についても可能な範囲で実施してまいります。
 また、初めてスポーツを行う利用者への対応として、健康スポーツ相談事業や初心者指導など、きめ細やかなサポートを行うとともに、スポーツの入門教室など初心者向けの事業も実施しております。
 今後、利用者数の推移も注視しながら、障害者スポーツセンターにおけるサービスの拡充に努めてまいります。

○斉藤委員 じゃ、最後に要望をいわせていただきます。
 この国立のセンターの場合は、最寄りの国立駅からバスも出ていて、ちょっと駅から離れている部分も、何とか障害者の方も十分利用できるようにということで配慮されております。そういった配慮は非常にいいことだと思いますし、バスも障害者向けの専用のバスになっております。
 こういった中で、どうしても障害者の方の利用がふえると、安全面に関してはスポーツ施設全般に注意しなければいけないところですが、建物の死角などがあって、安全面について指導員が限られた人数で目が届きにくいということにならないように、より一層努めていただきたいと思いますし、また、需要に応じた指導員の、指導員も得手不得手のジャンルがスポーツの中ではあるようですから、そういった部分もうまく網羅ができるように逐次工夫を重ねていただきたいというふうに要望を最後に申し上げておきます。
 よろしくお願いします。

○植木委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○植木委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上でオリンピック・パラリンピック準備局関係を終わります。

○植木委員長 これより教育庁関係に入ります。
 初めに、契約議案の調査を行います。
 第二百十六号議案及び第二百十七号議案を一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。--発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○植木委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。
 この際、本案に対して意見のある方は発言を願います。

○里吉委員 第二百十六号議案、都立南花畑学園特別支援学校(仮称)改築工事請負契約について意見を申し上げます。
 この学校は、現在隣接している城北特別支援学校と南花畑特別支援学校を一体のものとして大規模併置校として改築するものです。
 我が党はこれまで、大規模併置校で管理職や栄養職員などが削減されること、二つの学校の交流であれば、別々であっても隣接する学校同士で行えることなどから、大規模併置校にする必要はないと、特別支援学校の大規模併置校の設置に反対してまいりました。
 今回改築によって教室数がふえることなどは当然のことですし、評価いたしますが、一つ一つ別々の学校として改築すべきであり、この工事を進める契約案件には反対いたします。
 以上、意見といたします。

○植木委員長 発言は終わりました。
 お諮りいたします。
 本案につきましては、ただいまの意見を含め、委員長において取りまとめの上、財政委員長に報告いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○植木委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。
 以上で契約議案の調査を終わります。

○植木委員長 次に、付託議案の審査を行います。
 第二百号議案から第二百二号議案まで、第二百三十七号議案及び諮問第四号、地方自治法第二百六条の規定に基づく審査請求に関する諮問についてを一括して議題といたします。
 本案及び本件につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○堤総務部長 去る十一月二十七日の当委員会において要求のございました資料のうち、付託議案関係についてご説明を申し上げます。
 お手元の文教委員会要求資料の目次をお開き願います。
 目次にございますように、付託議案関係は二件でございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開き願います。1、公益財団法人東京都スポーツ文化事業団の人員体制(平成二十七年度)でございます。
 公益財団法人東京都スポーツ文化事業団の埋蔵文化財事業部門の職員数について、平成二十七年度の事業概要に基づき、常勤職員、非常勤職員をそれぞれ部署別に記載してございます。
 2、東京都立埋蔵文化財調査センター指定管理料の推移(平成十八年度から平成二十七年度まで)でございます。
 東京都立埋蔵文化財調査センターの指定管理料について、平成十八年度から平成二十七年度まで記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、付託議案関係で要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○植木委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案及び本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○野上(純)委員 第二百三十七号議案の東京都立埋蔵文化財調査センターの指定管理者の指定について質疑させていただきます。
 五年前の二〇一〇年十二月十日に、この指定の際、私から埋蔵文化財調査センターの指定管理者を東京都スポーツ文化事業団へ特命で選定した理由等について質問させていただきました。
 その中の答弁では、スポーツ文化事業団が考古学の知識を持つ多数の学芸研究員を有し、都の埋蔵文化財調査研究を担ってきたことにより、蓄積した研究成果や最新の発掘情報を保有していること、また、収蔵品に関する出土時の情報や考古学的分類、評価に精通していることから、出土品や遺跡庭園の管理等、専門性を必要とする埋蔵文化財調査センターの指定管理を適正に行うことのできる唯一の団体であるとの説明がございました。
 つまり、スポーツ文化事業団は、長年都の埋蔵文化財の調査研究を担っている学芸研究員のノウハウが強みであり、そのことが指定管理業務を適正に行える理由となったということでございました。
 しかしながら、この学芸研究員の平均年齢は五十歳以上と高くて、ベテラン学芸研究員が定年退職を迎える時期に来ているという状況であったために、私からは、学芸研究員の業務内容の継承、つまり人材育成が今後課題であることを意見として述べさせていただきました。
 そこで質問ですが、まず、スポーツ文化事業団における過去五年間の新規採用学芸研究員の状況についてお伺いいたします。

○粉川地域教育支援部長 公益財団法人東京都スポーツ文化事業団では、平成二十四年度から学芸研究員の新規採用を始め、現在までに十一人を採用しております。

○野上(純)委員 新規の学芸研究員を五年間で十一名ということは、毎年二人ないし三人を採用しているということだと思います。
 それでは、新規採用の学芸研究員の人材育成、このことが一番大事だと思っております。ノウハウを持っている人が選ばれているとは思いますけれども、指定管理や発掘調査等の業務内容の継承をどのように行っているのかについてお伺いいたします。

○粉川地域教育支援部長 スポーツ文化事業団では、発掘調査手続などの基礎的研修を実施した上で、最新の発掘情報や出土品の取り扱いを含む総合的な研修を実施するなど、新規採用時から計画的に人材を育成しております。
 また、指定管理業務や発掘調査等において、若手職員とベテラン職員を同じ職場に配置して、OJTを行いながら実務を進めることなどにより業務内容の継承を図っております。

○野上(純)委員 現場で、OJTでやっているということがわかりました。東京で発掘された埋蔵文化財は次代に引き継ぐべき都民全体の宝だと思っております。
 埋蔵文化財調査センターでは、本物の出土品に触れて火おこしや土器づくりなどの活動を体験できるため、子供たちの歴史への興味、関心が高まっていくことも期待できます。
 今後も、都民が埋蔵文化財に接する機会をつくり出し、身近なものとして親しんでいけるように努めていただきたいことを要望して終わります。

○植木委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案及び本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○植木委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○植木委員長 次に、理事者から再雇用職員等の採用選考不合格等を理由とする損害賠償請求控訴事件に係る上告受理の申し立てについて報告の申し出がありますので、これを聴取いたします。

○堤総務部長 それでは、お手元に配布してございます文教委員会資料、報告事項によりご説明を申し上げます。
 恐れ入りますが、一ページをお開き願います。まず、訴訟の概要でございます。
 本件は、平成十八年度から平成二十年度における再雇用職員または日勤講師の採用選考において、不合格または採用決定を取り消された都立高等学校の元教諭らが、懲戒処分があったことのみを理由に東京都教育委員会が再雇用職員等の採用選考について不合格とし、または採用決定を取り消したことは違法であると主張して、合計で二億七千万円余の賠償を請求して提起した訴訟でございまして、当該懲戒処分は、平成十五年十月二十三日に都教育委員会教育長が発出した入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施についてに基づく都立高等学校各校長の職務命令に従わなかったために行ったものでございます。
 次に、この訴訟のこれまでの経過でございますが、東京地方裁判所は、平成二十七年五月二十五日に、都教育委員会の判断が客観的合理性及び社会的相当性を欠くものであり、裁量権の逸脱、濫用に当たるとして、都の賠償責任を認め、原告らに対し合計五千三百万円余の支払いを命ずる判決をいい渡しました。
 都教育委員会といたしましては、原告らが校長の職務命令に違反したことは影響力の大きい非違行為であり、都教育委員会に裁量権の逸脱、濫用はなく、原告らが抱く採用への期待が法的保護を受ける権利であるとは解されないと考えていることから、都敗訴部分について、その取り消しの判決を求めて、平成二十七年六月一日付で控訴を提起したものでございます。
 また、この控訴の提起に当たりましては、控訴期間が判決書の送達を受けた日より二週間以内と定められているため、議会を招集する時間的余裕がなかったことから、平成二十七年五月二十八日付で専決処分を行い、平成二十七年第二回定例会において報告、承認を得たものでございます。
 次に、今回の控訴審の判決の概要でございますが、平成二十七年十二月十日、東京高等裁判所は、都教育委員会の判断が客観的合理性及び社会的相当性を欠くものであり、裁量権の範囲の逸脱、濫用に当たるとして、都の控訴を棄却し、その賠償責任を認める判決をいい渡しました。
 次に、上告受理を申し立てる理由についてでございますが、都教育委員会といたしましては、被控訴人らが校長の職務命令に違反したことは影響力の大きい重大な非違行為であり、都教育委員会に裁量権の逸脱、濫用はなく、被控訴人らが抱く採用への期待が法的保護を受ける権利であるとは解されないと考えていることから、都敗訴部分について上告受理を申し立てるものでございます。
 最後に、今後の予定でございますが、上告受理を申し立てる場合は、地方自治法第九十六条第一項第十二号の規定に基づき、議会の議決が必要であることから、議案を提出させていただきたいと存じます。
 以上、簡単ではございますが、損害賠償請求控訴事件に係る上告受理の申し立てについてのご説明を終わらせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

○植木委員長 報告は終わりました。
 次に、報告事項、東京都教育施策大綱について外二件の報告事項につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○堤総務部長 去る十一月二十七日の当委員会において要求のございました資料のうち、報告事項関係につきましてご説明を申し上げます。
 お手元の文教委員会要求資料の目次にございますように、報告事項関係は、中ほどから下に記載のございます3から5までの三件でございます。
 恐れ入りますが、二ページをお開き願います。3、都立高校改革推進計画新実施計画(案)骨子における夜間定時制課程を閉課程等する予定の高校の学級数と定員及びⅢ部(夜間)の学級増等する予定の高校の増加する学級数と定員(一学年)でございます。
 都立高校改革推進計画新実施計画案の骨子において、(1)及び(2)では、閉課程を予定している学校、閉校を予定している学校の学校名、学級数、定員を記載してございます。
 (3)及び(4)では、学級増を予定している学校、新設を予定している学校の学校名、増加予定学級数等及び増加予定定員等を記載してございます。
 恐れ入りますが、三ページをお開き願います。4、都立通信制高校に在籍する生徒数(一年次)及び公立中学校卒業後すぐ入学した者の数の推移(平成十八年度から平成二十七年度まで)でございます。
 五月一日現在、一年次に在籍している生徒数及び公立中学校卒業後にすぐ入学した者について、平成十八年度から平成二十七年度までを記載してございます。
 四ページをごらんください。5、センター的機能エリアネットワーク校一覧及びセンター的機能発揮のための教員配置校でございます。
 センター的機能エリアネットワークにおける地域の拠点となる学校名及び担当地域並びにセンター的機能発揮のための教員配置校について記載してございます。
 以上、簡単ではございますが、報告事項関係で要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○植木委員長 説明は終わりました。
 これより、先ほど説明を聴取いたしました報告事項を含め、報告事項四件に対する質疑を、ただいまの資料を含めまして一括して行います。
 発言を願います。

○栗山委員 大きく二点についてお伺いいたします。
 まず一点目は、教育施策大綱についてお伺いいたします。
 十一月二十七日の文教委員会において、東京都教育施策大綱について報告を受けました。
 これは本年四月の法改正に伴い、新たに策定することになったものですが、今回の改正は、総合教育会議を設置し、首長がかかわる地方教育行政制度の戦後最大の改正といわれ、都がどのように取り組んでいくのか注目していたところでございます。
 平成二十七年第一回都議会定例会の一般質問において、我が党の柴崎幹男議員が、舛添知事の教育行政に臨む姿勢について質問しましたが、知事は、世界一の都市東京を実現するための人材育成の必要性を指摘し、そのために新たに設けられる総合教育会議を活用し、課題の解決に向け、さまざまな観点から活発な意見交換を行い、教育施策の大綱を策定していく旨、答弁しております。
 初めての大綱策定に向けて知事の姿勢が示されたわけですが、では、都においてどのようなプロセスで大綱が策定されたのかお伺いいたします。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 本年四月の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正により、知事と教育委員会を構成員とする総合教育会議が設置されました。
 この総合教育会議は、知事と教育委員会の双方が十分な意思疎通を図ることを目的としており、今年度は大綱の策定に関する協議を行ったところです。
 具体的には、六月、九月、十一月の三回にわたり知事が総合教育会議を招集し、平成二十九年度までの三年間で特に重要で優先的に取り組むべき事項を大綱に示すべく、知事と教育委員会との間で議論が行われてきました。
 例えば、グローバル人材の育成には、英語だけではなく、幅広い教養が必要であるといった意見が、知事、教育委員から出されております。
 十一月十二日に開催されました第三回総合教育会議において、知事から大綱案が示され、それまでの三回の議論を踏まえ、知事が大綱を策定し、十一月二十四日に公表したものでございます。

○栗山委員 総合教育会議の設置や大綱の策定は今回の制度改正で新たに規定されたものであり、知事と教育委員会との連携の強化が期待されるものと認識しております。
 都においては、ホームページで公開されている総合教育会議の議事録や資料を見ても、ただいまの答弁のとおり、知事と教育委員会が活発に議論を重ねて大綱を策定していることがうかがえ、両者が緊密に連携していることがよくわかりました。
 また、その結果として、策定された大綱は今日的な課題に的確に応えるものとなっており、私も評価いたします。
 しかし、大綱の策定に関し調べたところ、近隣県では茨城県と群馬県で議会への中途報告とパブリックコメントを、神奈川県と栃木県で議会への中途報告を、静岡県でパブリックコメントをそれぞれ行っている、または行う予定でございます。
 東京都では、議会への中途報告やパブリックコメントを行いませんでしたが、他県の大綱の内容や策定の過程について、東京都の認識をお伺いいたします。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 大綱は、教育に関する施策について、その目標や根本方針を定めるものであり、総合教育会議における論議を経て、各地域の実情に応じて定められるべきものであるとされております。
 他県の大綱は、教育振興基本計画をもって当てる場合や、教育理念を一つ、二つ大まかに示すなど、その内容はさまざまでございます。
 なお、都においては、知事が策定した長期ビジョンの実現に向け、知事と教育委員会で協議し、今後の施策の方向性を定めたものとなっております。
 このように、大綱の内容は自治体によって異なっているため、大綱策定に向けた議会への報告、総合教育会議の開催回数、議論の進め方などの詳細もさまざまであると認識しております。

○栗山委員 議論の進め方などの詳細はさまざまであるということでございますが、教育施策大綱は、今後三年間の都の教育の根本方針を示すものであり、都においても大綱の素案を出して、議会への報告やパブリックコメントなどを行い、より多くの都民の方の意見や要望を聞くことにより議論を深め、さらによりよい大綱ができたのではないかと考えます。
 こうした工夫を行っている自治体がある中、世界一の都市を目指す東京都において、幅広く意見を聞き、よりよい大綱をつくっていくさらなる努力が必要であると思います。
 今回策定された大綱は平成二十九年度までを期間としており、まだ先の話でありますが、三年後には見直しの時期を迎えます。
 都は、次の大綱の見直しの際、ぜひともこのような意見を聞いて、策定プロセスについて検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 三年後の見直しについては、社会情勢の変化、その時点での状況等を踏まえ、総合教育会議における議論をもとに適切に判断していくものと考えております。
 今後とも、都議会審議における議論や各種調査における都民の意見などを十分に踏まえ、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

○栗山委員 いうまでもなく、これからの東京、そして日本を支える人材を育成していくことは私たちの責務であります。今後、東京の教育にかかわる全ての人々がお互いに知恵を出し合って、子供たちのことを考え、東京の教育を日本に誇れるものにできればよいと思います。
 三年後の取り扱いについては十分に検討するとのことでございますが、我々都議会自民党も汗をかく用意がございます。今後の教育委員会の取り組みに大いに期待して、次の質問にしたいと思います。
 続きまして、再雇用職員等の採用選考不合格等を理由とする損害賠償請求控訴事件にかかわる上告受理の申し立てについてお伺いいたします。
 先ほどの報告によれば、今回の判決は、退職後の再雇用などの採用選考の合否判断に当たって、都側の裁量権の逸脱または濫用があったという第一審判決と同様の理由で損害賠償の支払い命令が出されたとのことでございます。
 そこでお伺いいたしますが、過去の裁判で勝訴した事案や、または一部敗訴の後、控訴審で逆転勝訴した事案と今回の事案とでは、原告の主張や裁判での争点などに違いがあるのかお伺いいたします。

○江藤人事部長 いずれの裁判におきましても、校長の発した職務命令に違反したことを重大な非違行為と捉え、こうした現職での職務実績を含む選考結果を総合的に判断し、原告らを不合格とした都教育委員会の判断が裁量権の逸脱及び濫用に当たるかどうかが争点となった点では違いはございません。

○栗山委員 過去の都側勝訴の事案と内容や争点に違いがなく、さらには上級審で都側の主張が認められたにもかかわらず、今回一部敗訴の審判となったのはなぜでしょうか。判決の理由はどのようなものだったのでしょうか。

○江藤人事部長 都教育委員会は、採用権を持ち、合否の判定には広い範囲での裁量権を有しております。
 今回の裁判では、その合否判定に際し、他の具体的な事情を考慮することなく、職務命令違反のみをもって不合格とするのは裁量権の逸脱だとし、退職後の再雇用の期待権を侵害したと判断いたしました。

○栗山委員 それでは、同様の内容であった過去の裁判で、都教育委員会側の裁量権についての判断や期待権についてはどのように判断されたのかお伺いいたします。

○江藤人事部長 いずれの裁判におきましても、校長から発せられた職務命令に従わないことは重大な非違行為であり、その事実を踏まえて再雇用を不合格とするのは裁量権の範囲であり、逸脱や濫用は認められないという判断でございました。
 また、再雇用は、決して雇用を保障するものではなく、原告が主張する期待権を侵害したものではないとの判断でございました。

○栗山委員 今確認したとおり、これまでの高裁、高等裁判所における裁判結果、内容からも、過去の判例を完全に覆す理解しがたい判決であり、それに対して都側が一貫した主張に基づき上告の受理申し立ての手続を進めることは当然の判断でございます。
 都教育委員会が平成十五年十月二十三日に発出した入学式、卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施についての通達後、卒業式や入学式などの場で職務命令に違反する教員の数はどのように変化しているのかお伺いいたします。

○江藤人事部長 平成十五年度の卒業式では、職務命令違反による処分者は百九十三名でございましたが、その数は年々減少し、平成二十六年度の卒業式及び二十七年度の入学式では一名でございました。

○栗山委員 まだ完全とはいえませんが、この通達の発出を契機に国旗・国歌の適正な取り扱いの意義が浸透しているものと評価いたします。
 そこで、国旗・国歌を児童生徒へ指導する意義について改めてお伺いいたします。

○伊東指導部長 入学式や卒業式は、学習指導要領に基づいて儀式的行事として行われるものであり、学校生活に有意義な変化や折り目をつけ、厳粛かつ清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機づけを行い、学校、社会、国家など集団への所属感を深める上で、よい機会となるものでございます。
 このような意義を踏まえ、学習指導要領には、入学式や卒業式においては国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとすると示されております。
 国旗掲揚及び国歌斉唱の指導を学習指導要領に基づき適正に実施することは、児童生徒の模範となるべき教員の責務でございます。

○栗山委員 今後、教育活動として行われる入学式、卒業式において職務命令違反を繰り返す者についてはどのように対処するのかお伺いいたします。

○江藤人事部長 今後とも、職務命令違反を繰り返す者や式典の進行を妨害する者に対しては、個々の状況に応じて厳正に対処してまいります。

○栗山委員 六月十九日の本委員会において、我が党の島崎議員も発言いたしましたが、公教育の場で、自国の国旗・国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てる指導をすることは極めて当然のことでございます。これはいずれの国でも行われる教育であり、国際的な儀礼として定着しております。
 ましてや、それを指導する教員が、校長の発する職務命令に違反し当然行うべき正当な教育活動を拒否するなど、もってのほかでございます。
 今回の上告の決断によって、都教育委員会の指導や職務命令に違反した教員の再雇用拒否の判断が正当なものであることを明確にし、全ての学校で学習指導要領にのっとった正しい教育が当たり前に行われ、国旗・国歌の意義を正しく理解した子供たちが入学式や卒業式で父母や教職員とともに国旗、日章旗を仰ぎ、国歌、君が代を声高らかに歌う、こうしたごく普通な光景がこれからも続くことを願って、私の質問を終わります。

○野上(純)委員 東京都教育施策大綱について最初に質問いたします。
 十一月二十七日の文教委員会に報告いただきました東京都教育施策大綱について、本年四月の制度改正、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正により、知事が新たに教育、学術、文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めること、大綱の策定に当たっては、教育委員会と、新たに設置する総合教育会議において協議することとされ、今回、舛添知事が教育委員会との協議を経て、この東京都教育施策大綱を策定したものと理解しております。
 今回策定された都の大綱の構成を見ますと、個々の子供に応じたきめ細かい教育の充実とか、社会的自立を促す教育の推進とか、世界で活躍できる人材の育成、私がかねてより主張してまいりました不登校、中途退学対策など、七つの重点項目が設置されております。
 そこで、大綱にこれら七つの重点事項が設置された経緯について、まず最初にお伺いいたします。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 東京都教育施策大綱は、知事が昨年十二月に策定した東京都長期ビジョンに掲げる十年後の東京で活躍する子供たち、さらにはその先の二〇四〇年代を支える子供たちを着実に育成するため、平成二十九年度までの三年間で取り組むべき教育の根本方針を示したものでございます。
 大綱の七つの重点事項は、東京都長期ビジョンの施策のうちから特に重要で優先的に取り組むべき事項であるとして、三回にわたり知事が招集した東京都総合教育会議での議論を踏まえて決定したものでございます。

○野上(純)委員 この大綱の七つの重点項目のうちで、英語教育の推進などが取り組みの方針として盛り込まれております。
 重点項目Ⅲ、世界で活躍できる人材の育成、これが重点項目の一つとして設定された背景についてお伺いいたします。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 社会のグローバル化が進展する中で、日本の若者は他国と比較して英語力に弱点があり、また留学への関心が低いなど、いわゆる内向き志向であることが指摘されております。
 このような状況を踏まえて、大綱では、重点事項Ⅲとして、世界で活躍できる人材の育成を設定し、世界で通用する、使える英語力を身につけ、臆せず積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や、豊かな国際感覚を醸成するとともに、多様性を受け入れる力などを育成する取り組みの方針を示したところです。

○野上(純)委員 経済、文化など、さまざまな分野でグローバル化が進展しております。さらに、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を機に、多くの外国人と交流する機会も一層ふえてくる中、この重点項目Ⅲに記載されている取り組みの具体化は大変重要なものになってくると認識しております。
 次に、都立高校改革推進計画新実施計画について質問させていただきます。
 初めに、都立高校が生徒を真に社会人として自立した人間に育成することを目的とした都立高校改革推進計画新実施計画の案の骨子が十一月二十六日に公表されたところです。
 多様な取り組みが計画されておりまして、現在、広く都民の意見を伺っている、パブリックコメントを募集しているというところだと聞いております。その中で絞って質疑をさせていただきます。
 まず最初に、現在、中央教育審議会や高大接続システム改革会議において、今後の高等学校教育が目指すべき方向性の一つの審議が行われておりますが、その審議事項の一つに主体的、協働的な学習、いわゆるアクティブラーニングの充実に向けた教育改善が挙げられております。
 そこで、高等学校の授業における主体的、協働的な学習の必要性についてお伺いいたします。

○伊東指導部長 グローバル化や情報化が急速に進展する現代社会を生き抜くためには、習得した知識を活用して、さまざまな課題を発見し、解決するために必要な思考力、判断力、表現力等を身につけることが求められております。
 こうした力を育成するためには、ペアワークやディベート等の討議などにより、生徒が主体的に考える活動を展開するとともに、他者の多様な考えを理解し、協働して課題を解決していく学習が有効でございます。
 このような学習方法、いわゆるアクティブラーニングを今後高等学校の授業において積極的に取り入れていく必要がございます。

○野上(純)委員 都立高校においても、こうした形態の授業を取り入れて、課題設定力、解決力を高めていくことが重要であります。授業においてアクティブラーニングを積極的に活用すべきであります。
 そこで、このアクティブラーニングを活用した授業の導入について、都教育委員会の今後の取り組みについてお伺いいたします。

○伊東指導部長 高等学校におきましては、近年、思考力、判断力、表現力等を培うために、討論、発表、レポート作成等、いわゆる言語活動の充実に取り組む実践が行われるようになってまいりました。
 今後、都教育委員会は、こうした言語活動の取り組みを一層推進いたしますとともに、アクティブラーニングなど新たな学びを先進的に研究する学校を指定し、その研究成果や、すぐれた実践事例を資料にまとめ、研究発表会等を通して全ての都立高校に周知したりするなどいたしまして、一層の授業改善に努めてまいります。

○野上(純)委員 私も何校かでアクティブラーニングについての授業を見させていただく機会がございました。
 自分の目で見て、自分で調べて、自分の頭で考えて、自分が獲得した知識とかスキルを使って討論したり、友達の考え方を自分の中に取り入れたりする手法というのは大変にすばらしいことだなと思っておりますが、やはり基本的な知識の習得が前提条件にあった上でのアクティブラーニングだと考えておりますので、そうした意味からも、この大事な、これからアクティブラーニングを活用した授業をぜひ導入していただきたいと思っております。
 次に、この前も十年後にはなくなっているであろう職業というのを発表されました。今ある職業のうち大体三五%ぐらいしか残らないということもよくいわれておりますけれども、人間の仕事がロボットにとってかわられたりする時代がやってくるわけですけれども、その中にあって、やはり人間としての特徴というのは、他者と共有して、さまざまな想像をして生きる力とか感性とか、そういったものが人間の基本的なものとしては残っていくんではないかと思っております。
 次に、医学部等を進学希望する生徒によるチームの結成について一つ質問させていただきます。
 新実施計画案の骨子の中に、医学部進学を希望する生徒の進路実現を図る取り組みとして、医学部等を進学希望する生徒によるチームを結成するとあります。この取り組みの目的と、期待する効果についてお伺いいたします。

○出張教育改革推進担当部長 進学指導重点校では、国公立大学医学部への進学希望者が一定程度存在しているものの、合格実績は横ばいで推移しております。
 そこで、医師を目指す生徒がその志を最後まで諦めることなく貫徹できるよう、医学部進学に向けた取り組みを行ってまいります。
 具体的には、戸山高校において医学部進学を希望する生徒同士で互いに切磋琢磨し、支え合うチームを結成し、病院の職場見学や医療関係者との交流、医学部の大学教授による模擬授業など医療への理解を深め、医師になる志を育む三年間の一貫したプログラムを実施してまいります。
 このことにより、生命を預かる医師としての倫理観や使命感を身につけさせ、医学部卒業後に医療分野で活躍する人材を輩出できることを期待しているところでございます。

○野上(純)委員 医療への道を志す生徒の進路実現を応援するよい取り組みだと思っております。将来は、東京都の医療に貢献する人材も出てくることを期待したいと思っております。
 次に、自立支援チームの具体的内容について質問させていただきます。
 都教育委員会はこれまで、平成二十五年度から三年間にわたり、都立高校計十校において、中途退学者や進路未決定卒業者の支援のためのモデル事業に取り組んできたとのことでございますが、その取り組みの内容と成果についてお伺いいたします。

○粉川地域教育支援部長 モデル事業であります都立高校中途退学未然防止と中途退学者等への進路支援事業におきましては、若者の自立支援に実績のあるNPOと連携し、都立高校十校における中途退学の未然防止と中途退学者への支援、さらに進路が決まらない生徒や進路未決定のまま卒業した者への支援に取り組んでまいりました。
 具体的には、NPOスタッフが教員の求めに応じ、個別面談等を通して生徒の意向や適性を把握し、多様な進路の選択肢を提案するなど、個に応じた支援を実施しております。
 こうした取り組みを通して、生徒の社会的、職業的自立に向けた意欲が高まり、進路決定に結びつくなど、本事業は一定の成果を上げております。

○野上(純)委員 都立高校改革推進計画新実施計画の骨子によると、都立高校生進路支援連絡協議会を拡充するとのことでございますが、その内容についてお伺いいたします。

○粉川地域教育支援部長 モデル事業におきましては、都立高校、ハローワーク、区市の就労支援担当部署、若者支援NPO等で構成する都立高校生進路支援連絡協議会を二つの地区に設置し、効果的な連携方策のあり方を検討してまいりました。
 中途退学の要因、背景は多様かつ複合的であることから、今後、連絡協議会に福祉、医療関係等も加えて体制を充実した上で、二地区以外へも拡充してまいります。

○野上(純)委員 今、多様で複合的になっている要因を考えると、やはり福祉、医療機関等との連携というのはすごく大事だと思っておりますので、今まで行ってきた二地区以外にも拡充していただきたいと思っております。
 次に、ユネスコスクール、ESDについて質問させていただきます。
 ESD教育というのは、日本語に直すと持続可能な開発のための教育というふうに訳されております。環境とか貧困、地域紛争など、地球的規模で起こっている課題について、教科の垣根を超えて横断的に学ぶことをいいます。
 国連の方で、これは二〇〇五年から持続可能な開発のための教育の十年と位置づけて、十年一生懸命やってきたわけですけれども、東京都においてもESD教育、ユネスコスクールに指定してこの教育を行っていくことが必要と考えております。
 現在、ユネスコスクールに指定されている都立高校の数と学校名をお伺いいたします。

○伊東指導部長 現在、持続可能な開発のための教育、いわゆるESDの推進拠点であるユネスコスクールに指定されている都立高校は二校でございまして、都立三田高等学校と都立杉並総合高等学校でございます。

○野上(純)委員 現在二校で指定されておりますけれども、今後このESDの普及啓発について、都の教育委員会の取り組みについてお伺いいたします。

○伊東指導部長 これまで都教育委員会は、ESDの普及啓発を図るため、その意義である環境、防災等の地球規模の課題をみずから考え、主体的に行動する児童生徒の育成について校長連絡会等を通して周知してまいりました。
 また、理科や家庭科を担当する教員を対象として、生物と環境との関係や、資源、環境に配慮した食生活等、持続可能な社会の実現に向けた内容に関する研修を行い、教員がESDへの理解を深め、授業に生かすことができるようにしております。
 さらに、ESDの推進拠点であるユネスコスクール等のすぐれた実践事例を掲載したリーフレットを今年度中に全公立学校に配布するなどいたしまして、ESDの一層の普及啓発を図ってまいります。

○野上(純)委員 実践事例を掲載したリーフレットを今年度中に全公立学校に配布するという答弁がございました。ESDを一層普及啓発できるように努力をしていただきたいと思っております。
 次に、多言語学習の機会の充実について質問させていただきます。
 日本政府観光局の統計によれば、二〇〇四年から二〇一四年までの十年間で訪日外国人の数は六百十四万人から千三百四十一万人へと二倍以上に増加しており、ことしは千九百五十万人に達するとも報じられ、国別では、韓国から二百七十六万人、中国から二百四十一万人、台湾から二百八十三万人が訪れている状況にあります。
 そして、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催を機に、こうしたグローバル化進展の流れは一層加速することが見込まれております。
 このように、英語圏に限らず、他の言語圏からも多くの外国人の来日が予想されておりまして、英語以外のさまざまな言語で積極的にコミュニケーションをとる力を高めたり、異文化に対する理解を深めたりすることが重要となります。
 こうした認識のもと、本年第一回定例都議会予算特別委員会で我が党の中山信行議員がより多くの都立高校生が英語以外の外国語を学べる機会の拡大について質問いたしました。
 そこで、多言語学習の機会充実の取り組みの現状についてお伺いいたします。

○鯨岡指導推進担当部長 都教育委員会では、今年度から、都立高校の生徒が外国語の言語や文化に触れ諸外国への関心を高める機会を設けるため、異文化交流や外国語の学習を行っている部活動などに希望する外国語指導の講師を派遣する事業を実施しております。
 現在、中国語、フランス語、ドイツ語、韓国・朝鮮語、スペイン語、イタリア語、ロシア語の中から希望する言語を学ぶ部活動への講師派遣を二十一校で行っております。
 また、都立高校生を対象として、これらの言語の外国語体験講座を開設しており、現在、約三百名が受講中でございます。
 今後、こうした取り組みを通して生徒が多様な言語を学べる環境を一層充実してまいります。

○野上(純)委員 ぜひこうした多様な言語の講座を進めて、生徒が学べる機会を、学べる環境を充実していただきたいと思っております。
 次に、アグリマイスター顕彰制度について質問させていただきます。
 いろいろ農業に関する高校はたくさんありますけれども、農業科の高校での生徒の専門性の向上についてお聞きさせていただきます。
 農業というのは大変な意義があると思っております。農業を産業として発展させるとか、地域社会の経済や文化を守る、あるいは地域創生という意味があると思っております。
 地域創生の観点では、農業の専門家として体系的に学んできた人材を輩出していかなければなりません。東京都にも多摩産材などの林業もありまして、ことしの三月には文科省と農水省が連名で農林水産業を学ぶ高校生の就農・就業に向けた人材育成の方策の方向という通知文を全国に出しています。これは、地域創生には農業系の高校や、その訓練を経てきた卒業生の働きが重要であるということだと思っております。
 農業科の高校では、農業についての知識、技術の水準を客観的に評価し、教育の効果を高めることを目的とした日本農業技術検定や、農業に携わる上で有益な資格である危険物取扱者の国家資格など、生徒の検定合格や資格取得を推進していると聞いております。
 農業科の高校で学ぶ生徒がこれまで以上に専門性を向上していくため、在学中に農業に関する知識、技術、技能を習得した生徒に対して、その取り組みを積極的に評価して、称号を授与するアグリマイスター顕彰制度の導入が新実施計画案の骨子に示されました。
 このことは大変すばらしいと考えておりますが、改めてこの制度の目的と仕組みについてお伺いいたします。

○出張教育改革推進担当部長 アグリマイスター顕彰制度は、農業科の生徒が日ごろの農業学習を、資格の取得、技術検定の合格を通して農業に関する知識、技術、技能を習得し、自信と誇りを持って産業界で活躍できるよう励ますことを目的としております。
 顕彰に当たっては、生徒が在学中に合格した検定や取得した国家資格などを点数化し、その得点の合計により、生徒にアグリマイスタープラチナやゴールドなどの称号を授与するものでございます。
 この制度の充実により、都立の農業科の生徒が目的意識を持って一層意欲的に学習に取り組み、進路実現を図れるよう支援してまいります。

○野上(純)委員 シルバーが三十点、ゴールドが四十五点、プラチナが六十点、このかち得た得点で努力の成果を評価するアグリマイスター顕彰制度は、生徒のモチベーションを上げて、就労にも結びつくものだと思っております。
 生徒の努力の成果を積極的に評価する取り組みの推進により、今後も農業科の生徒の知識、技能、技術の伸長が図られることを期待しております。
 次に、都立高校における学校サポートチームについて質問させていただきます。
 小学校、中学校に加えて都立高校にも学校サポートチームが設置された目的と経緯についてお伺いいたします。

○伊東指導部長 学校サポートチームは、学校と家庭、地域、関係機関が連携協力して、児童生徒の問題行動の未然防止や早期解決を図ることを目的として、平成二十一年度までに都内全公立中学校に、平成二十二年度までに全公立小学校に設置されました。
 高校におきましては、こうした目的に加え、いじめ防止対策推進法に基づき校内に設置されることになった学校いじめ対策委員会を外部の関係機関から支援するため、平成二十六年度、全校に設置したところでございます。

○野上(純)委員 この学校サポートチームの具体的な構成員と、その取り組みについてお伺いいたします。

○伊東指導部長 学校サポートチームは、校長、副校長、主幹教諭等の教職員に加えて、民生児童委員、保護司、子供家庭支援センターの職員、警察職員など、校長が指定する外部人材によって構成しております。
 この学校サポートチームでは、いじめや不登校など、生徒の健全育成上の課題への対応について定期的に協議を行っております。
 また、生徒の問題行動を解決するための具体的な方策について検討し、専門的な立場から必要な支援を行っております。

○野上(純)委員 一人でも多くの生徒が課題解決を図っていけるように、この学校サポートチームの取り組みを応援したいと思っております。
 最後に、東京都発達障害教育推進計画について質問いたします。
 小学校から高等学校まで、発達障害の児童生徒にとって、対人関係の改善など、社会性の向上を図る指導が重要だと考えますが、発達障害教育推進計画での取り組みについてお伺いいたします。

○伊東指導部長 発達障害の児童生徒の社会性を育成するためには、発達段階に応じ、例えば休日に友達を誘う場面を想定して、相手の予定を確認したり、お互いに行きたい場所を話し合ったりするロールプレーイングなど、人間関係を形成する体験を中心とした学習が有効でございます。
 このため都教育委員会は、小中学校の通常の学級において、相手の気持ちを考えた表現や場面を意識した言動等を指導するためのソーシャルスキルトレーニングの事例集を作成いたします。
 また、高等学校において、進学や就職等に向け、社会で必要な対人関係に関する具体的なルールやマナー等を指導するための東京都独自の教科を新たに開発いたします。

○野上(純)委員 ソーシャルスキルトレーニングの事例集、あるいは東京都独自の教科を新たに開発というのは非常に期待するところでございます。
 それから、外部専門家として臨床発達心理士等が特別支援教室設置校に巡回することになっていますけれども、現在の準備状況についてお伺いいたします。

○松川特別支援教育推進担当部長 特別支援教室における指導を充実させていくためには、専門的見地から助言を行う臨床発達心理士などの外部専門家の活用が不可欠でございます。
 都教育委員会は、外部専門家が所属する団体等に特別支援教室事業への協力を依頼するとともに、団体が主催する研修会等において、特別支援教室の仕組みや外部専門家に期待する役割等への理解を深めていくなどして、次年度から臨床発達心理士等の円滑な導入に向けた準備を進めてまいります。

○野上(純)委員 臨床発達心理士等をいかに円滑に導入し、その能力を各教室の中に反映していくかというのが発達障害教育の肝になる部分だと私は思っておりますので、応援いたしますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 これで終わります。

○里吉委員 それでは私からは、まず、本日報告のありました再雇用職員等の採用選考不合格等を理由とする損害賠償請求控訴事件に係る上告受理の申し立てについて質疑を行いたいと思います。
 ことし六月十九日の文教委員会で、この裁判の高裁への控訴について、その承認について審議を行いました。
 我が党は、都が控訴する前の五月十九日に都知事と教育長宛てに、日の丸・君が代にかかわる再雇用拒否裁判等の控訴、上告をしないことを求める申し入れを行い、この委員会でも、この専決処分は承認できない、都は直ちに控訴を取り下げ、原告に謝罪、賠償金を支払うべきと主張いたしました。
 まずお伺いいたしますが、この裁判にかかった費用は幾らでしょうか。また、六月に控訴して以降、昨日までにかかった費用は幾らか、あわせて伺います。

○江藤人事部長 この訴訟は総務局が対応しております。
 訴訟の費用といたしましては、弁護士三名に訴訟を委任しておりますので、一審でその費用三百万円、控訴審では、現時点で百五十万円を支出しているとのことでございます。

○里吉委員 これまでこの裁判だけで弁護士費用で四百五十万円かかっているということです。
 それでは、損害賠償額については五千三百七十万円と聞いておりますが、年五%の利息がついているなど、支払わなければならないのは損害賠償額だけではありません。
 今支払った場合、総額幾らになるのか、また、その金額は一年ごとに幾らふえるのか、お答えください。

○江藤人事部長 損害賠償額につきましては、原告一人一人の損害賠償額の計算の式や金額が異なること、また、現在訴訟中でもあることから、概算となりますが、十二月十一日時点で約七千四百万円でございます。また、一年間の利息につきましては、概算で約二百六十万円となります。

○里吉委員 お答えいただきましたように利子がついておりますので、長引かせて敗訴したら、さらに都民の税金を余計に使うことになります。
 また、同じような日の丸・君が代関連の裁判で、つい先日、十二月四日に判決があった裁判は、ことし一月十六日に地裁判決で二十六人の減給、停職処分が取り消されたうち、五名のみを都教育委員会が控訴したものでした。なぜ五名のみを控訴したのか、その理由を伺います。

○江藤人事部長 卒業式等での不起立に関する懲戒処分につきましては、平成二十四年一月の最高裁判決におきまして、過去の処分歴等に鑑み、当該処分を選択することの相当性を基礎づける具体的な事情が認められる場合には、減給処分等も許されるとの判断が示されました。
 ことし一月十六日に減給処分を取り消した東京地裁判決につきまして、都教育委員会では、国旗掲揚等に反対する旨を表示したブラウスを着用して入学式に臨む、生徒に対して卒業式での不起立は個人の判断の問題であるといった趣旨の発言をするなどした五名の教員に関して、最高裁判決の示す具体的な事情が認められると判断し、控訴したものでございます。

○里吉委員 具体的な事情が認められるとして、二十六人のうち五人について控訴したわけですが、今のご答弁によれば、この五人の方は、卒業式などの国歌斉唱時にただ黙って座っていたというよりも、もう少し積極的に自分の考えを表明したという方々だと受け取れます。そうした方々であっても、減給や停職などの、より大きい処分はしてはいけないというのが十二月四日の判決です。
 ましてや今回、報告事項となっている裁判の原告の皆さんは、国歌斉唱時に座っていただけで、再雇用拒否という面で大変大きな不利益をこうむっているのです。これが最高裁でも違法と判断されたのは当然だと思いますし、控訴しても原告の皆さんをいたずらに苦しめ、時間と都民の税金を無駄に使うだけだと思います。
 それでは伺いますが、六月の控訴から今回の判決まで、口頭弁論は何回行われたのでしょうか。新たな証拠調べは行われたのでしょうか。伺います。

○江藤人事部長 口頭弁論は一回でございます。証拠調べは行われておりません。

○里吉委員 それでは、今回の判決で前回と裁判所の評価や見解が変わった部分はどこか伺います。

○江藤人事部長 判決の判断理由につきましては、一部、原判決を修正、付加した上で、原判決の判断を引用しております。

○里吉委員 私も昨日急いでこれを取り寄せていただきまして読みましたけれども、新たな証拠調べも行われず、地裁と高裁とでは評価や見解が変わった部分もほとんどなかった、特になかったということです。
 判決を読みましたが、都教委の主張が約十ページ分にまとめられていました。しかし、それについて、その結果が控訴棄却です。判決は、再雇用拒否の都教委の判断は、定年退職者の生活保障と、知識、経験等の活用という再雇用制度の趣旨に反し、また国旗掲揚、国歌斉唱に関する一〇・二三通達が発出される以前の再雇用制度等の運用実態とも大きく異なっていることから、法的保護の対象となる原告らの合理的な期待を大きく侵害しており、裁量権の逸脱、濫用に当たり、違法であるとしています。
 また、学習指導要領における国旗・国歌の扱いが、他の内容に比べ特段区別した位置づけが与えられているとは認められず、また君が代斉唱の職務命令が思想及び良心の自由についての間接的な制約となることは否定できず、その思想、信条等に従ってされた行為を理由に大きな不利益を課すことは、とりわけ慎重な考慮を要するべきと述べています。
 都と都教育委員会は判決を謙虚に受け入れ、原告に誠意を持って謝罪し、賠償金を支払うべきです。一〇・二三通達を撤回し、日の丸・君が代を強制する一連のやり方を抜本的に改めることを強く求め、次の質問に移ります。
 次に、都立高校改革計画新実施計画案について伺います。
 ここでは、夜間定時制高校の廃止が示されましたが、立川高校定時制の廃止に反対する会が早速結成され、都議会に陳情が出され、一昨日の本会議でも文書表が配られました。
 そこでまず伺いますが、今回の廃止計画の対象が小山台高校、雪谷高校など四校となっている理由について伺います。

○出張教育改革推進担当部長 閉課程を行う予定の四校の夜間定時制課程は、東京都全体として夜間の定時制時間帯に必要な応募定員を確保することを前提に、交通機関の状況などを配慮して、全日制課程と定時制課程の併置を解消することを目的に選定いたしました。

○里吉委員 交通機関の状況を考慮して選定したということですが、例えば小山台高校、武蔵小山駅のすぐ駅前、立川高校も多摩地域の交通の要衝である立川駅から徒歩数分のところにあるなど、とても通学の便のよい学校なんですね。
 もし仮に夜間定時制を減らすことが是とされた場合であっても、より広範囲から通うことのできるこういう学校は残した方がいいという立地の学校だと思うんですね。
 交通機関の状況に配慮して四校が選ばれたということがちょっと理解できないんですけれども、交通機関の状況を配慮してとはどういうことなのか改めてご説明いただきたいと思います。

○出張教育改革推進担当部長 ただいま申し上げましたように、四校の夜間定時制課程について、東京都全体としての夜間の時間帯に必要な応募定員を確保することを前提といたしまして、交通機関の状況を配慮しまして、全日制課程、定時制課程の併置校を解消するということでしております。

○里吉委員 併置校の夜間定時制をなくすというのが前提にあるということなんですけれども、何でこの四校の場所が選ばれたのかということについては、ちょっと今のでは合理的な説明ではないと私は思いますよ。こういうよくわからない理由でこの四校が名指しされて、廃止だけ決められるということではとても都民は納得できないと思います。
 次に、夜間定時制をなくすかわりに学級増を行う昼夜間定時制、チャレンジスクールがあります。本日資料も出していただきましたが、どの学校で何人ずつふやすのか示されました。
 この学校についても、七つがどうして選ばれたのか。また、それぞれの、四つの夜間定時制高校と学級増を行う昼夜間定時制、チャレンジスクール、どこがどの学校に対応するのか、お答えいただきたいと思います。

○出張教育改革推進担当部長 学級増を行う予定のチャレンジスクールと昼夜間定時制高校は、夜間部の学校数が午前部、午後部よりも少なく、設置量や学校運営の改善、工夫により学級数を拡大できる高校の中から、施設規模や学校規模等を考慮して選定いたしました。
 夜間の時間帯の規模を拡大する予定のチャレンジスクールや昼夜間定時制高校と、閉課程する予定の夜間定時制課程は、同じ年度ごとに全体として必要な応募人員を確保し、適正に配置できるよう、学級数と募集停止を行う時期について検討し、決定してまいります。

○里吉委員 廃校予定の学校に来る生徒たちは、多分ここの昼夜間定時制なりチャレンジスクールなら通えるだろうから、ここに学級増しようという考え方ではないということでしょうか。もう一度お答えください。

○出張教育改革推進担当部長 ただいま申し上げましたように、東京都全体の学校の状況を見まして適正に配置していくということでございますので、チャレンジスクールと昼夜間定時制の学級数を拡大できる学校を選びまして、その施設、学校規模を考慮してつくりまして、その分につきまして夜間定時制課程を閉課程して、全体を通して必要な応募人員を確保し、適正に配置するということでしているところでございます。

○里吉委員 今繰り返しお答えいただきましたけれども、まず、夜間部の学級数が午前部、午後部よりも少ない。だから、夜間にもう一つ学級数をふやせる学校を選んだということですよね。
 その上で、東京全体で夜間定時制高校の廃止と、それから学級増の時期を合わせて、人数は合わせるというふうにしか聞こえませんでした。私は、この計画が出たときに、少なくとも都教委はクラスをふやす学校名も明らかにしていたので、主にこの夜間定時制高校に通っていた子が多い地域は、こちらの昼夜間と対応する学校を考えているのではないかと思ったんですが、そうではなかったということが明らかになりました。
 三部制の学校で、午前部と午後部が三クラス、夜間部は今二クラス、あとここには工夫すればもう一クラスふやせる。こういうところを選んで夜間の時間帯に必要な募集人数を確保するというだけではありませんか。夜間定時制に通おうとする子供のことなど全く、考えているとは到底思えません。
 目黒区の方からは、既に目黒区には夜間定時制がない、小山台高校は品川区と目黒区の境にあるので通っている子が大変多い、これがなくなったら本当に困る、こういう声が既に出されています。
 しかも、学級増をするという昼夜間定時制やチャレンジスクール、午前、午後、夜間の三部制の高校は、二〇一一年の都立高校白書で、午後の部の生徒の欠席が多くなりがちな問題とともに、三部制であることで生活指導や学校行事、部活動など、統一して実施しにくいなどの問題も存在していますと、課題も指摘されているわけですね。こういうところにさらにクラスをふやすということだと思うんです。
 それでは伺いますが、新設するチャレンジスクールは二〇二二年、二〇二三年と開設年度がここには示されていますけれども、廃止する学校の募集停止は示されていません。それぞれ四校、募集停止は何年度を予定しているのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 都立高校改革推進計画新実施計画案の骨子では、チャレンジスクールの新設及び既存のチャレンジスクールと昼夜間定時制の規模の拡大と並行して、夜間定時制課程の閉課程を行うこととしております。
 規模の拡大によりふえる学級数と、募集停止により減る学級数との均衡を図る必要があるため、夜間定時制高校の募集停止の時期は、規模を拡大する時期とともに、今後検討してまいります。
 また決定後は、例年の募集人員の公表に合わせまして周知いたしまして、中学生の進路決定に支障のないよう配慮してまいります。

○里吉委員 今のご答弁ですと、特にいつ募集停止かは決まっていないということですが、基本的には募集停止の二年前に予告することになっています。最も早い場合は、来年の募集人員の公表に合わせて周知ということもあり得るということだと思います。
 先ほどのご答弁で、募集停止のこの学校のかわりはこの学校で学級増ということは決めていないというお話でしたが、そうはいっても、立川高校の定時制の場合は、通えそうな範囲で学級増を予定している学校は、お示ししていただいた表を見る限り、砂川と新しくつくる多摩地域のチャレンジスクールしかありません。
 もともと多摩地域は交通の便も余りよくありませんし、チャレンジスクールも、昼夜間定時制も、夜間定時制も少ないのですから、立川は考慮してしかるべきだと思いますが、二〇二三年に新しく多摩地域のチャレンジスクールの開校が示されています。
 少なくとも立川定時制高校は二〇二三年までは募集停止しないということでよろしいでしょうか。この一点だけ確認します。

○出張教育改革推進担当部長 先ほどお答えいたしましたように、規模の拡大によるふえる学級数と、募集停止による減る学級数の均衡を図るため、夜間定時制高校の募集停止の時期は、規模を拡大する時期とともに今後検討してまいりたいと考えております。

○里吉委員 多摩地域のチャレンジスクールは誰が見ても、ここと立川定時制高校がリンクしていると思うんですが、ここについても、多摩地域のチャレンジスクールが開校するまで立川の夜間定時制は廃校にしないと約束できないというのは、本当に、都民の立場に全く立っていないといわざるを得ません。
 それで私、ちょっといいたいんですけれども、そもそもこの地域は、以前の高校改革のとき百校以上あった夜間定時制が今三十九校までに減らされて、多くの都民の方がもうこれ以上は減らされないだろうと信じていたわけです。まさに寝耳に水です。
 八王子にあった富士森、南多摩、八王子工業、第二商業の四つの夜間定時制高校が廃止されて、八王子市から夜間定時制に通おうと思えば、もう立川高校しか残っていないのに、その立川高校まで廃止の対象というのは本当に信じられません。
 中学生の進路決定に支障のないように配慮するというご答弁でしたが、通学できるところに夜間定時制高校がなくなってしまうということをぜひ考えていただきたいと思います。
 それでは、立川高校にどういう地域の子が通っているのか、立川定時制高校の生徒の居住地別の人数を伺いたいと思います。

○出張教育改革推進担当部長 立川高校定時制課程在籍生徒の居住地は、平成二十七年五月一日現在、全生徒三百一人のうち、立川市四十九人、八王子市四十七人、東大和市二十九人、武蔵村山市二十四人、昭島市二十人などとなっております。

○里吉委員 地元の立川と同じくらい八王子からも通ってきているということですよね。私も八王子生まれ八王子育ちですので、よくわかるんですが、八王子は広いですから、八王子、駅まで出るのに三十分、四十分かかる地域もたくさんあるわけです。
 それで、ことしの初めに、文教委員会には八王子地区の定時制を再開してほしい、こんな請願まで出されたわけですよ。それなのに、ここをなくしてしまうというんですから、本当に理解できません。
 そして私は入試状況を調べてみましたけれども、立川高校定時制の場合、一次募集でこそ定員より応募者が少なくなっていますけれども、二次募集では、ことしは三十五人の募集に対して四十六人が応募で、応募倍率一・三一倍です。昨年は二十五人募集のところ三十七人で一・四八倍、一昨年は三十人募集で六十二人の応募、二・〇七倍、二〇一二年に至っては応募がたった一人、要するに一次で定員が埋まってしまったと。あと一人しか二次募では募集できなかったということです。応募が六人で六倍の倍率になったということでした。
 三月末にある夜間定時制の二次募集といえば、中学三年生にとっては本当に最後のとりでです。
 そこで応募倍率が一倍を超えて不合格者を出さざるを得ないのです。本当であれば、立川高校で学級増をして全員を受け入れるべきです。そういう学校だということなんです。どうしてこんなに人気のある立川高校が廃止の対象になるのかお答えください。

○出張教育改革推進担当部長 平成二十六年度実施の入学選抜では、夜間定時制高校を第一希望とする生徒は募集人員の半数にも満たない状況にあり、当初夜間定時制を希望する生徒については、募集枠は十分に確保されていることから、中学校段階で適切な進路指導を行うことにより現行の募集枠で受けられることが可能でございます。
 また、他校を不合格となった生徒については、夜間定時制高校はセーフティーネットとしての役割を果たしており、総体として募集枠は第二次募集以降も含めて十分に確保されております。
 都立高校改革推進計画新実施計画案の骨子では、チャレンジスクールの新設及び既存のチャレンジスクールと昼夜間定時制高校の規模の拡大と並行いたしまして夜間定時制の閉課程を行うこととしておりまして、引き続き夜間の時間帯の学習ニーズに応えることのできる募集枠を確保していく予定でございます。

○里吉委員 一次では半分ぐらいだったけれども、最後のセーフティーネットとして役割を果たせているというご答弁でしたけれども、全体としてはそういう状態かもしれないけれども、立川高校ではそうではないというお話を今させていただきました。
 立川高校が廃校になった場合、例えば現実的に考えれば、やっぱり砂川高校に行く子供たちが多いんじゃないかと思うんです。ここは三十人定員をふやすということになっています。
 立川高校三クラス九十人の一クラス分なんですが、ところが、ことしの砂川高校の入試倍率を見ますと、一次試験と同じ日の前期試験で、午前、午後、夜を合わせて定員百二十人に対して二百六人応募がある。一・七二倍の応募だったんです。三月初旬の後期試験で三十一人の定員に九十人の応募がありました。これでは定員を三十人ふやしても、とても立川定時制をなくした子がこっちに移ってくるということはできないわけですよ。
 ですから、なぜこの立川という立地のいい場所、三多摩でここしか残っていないといわれている場所をなくすのかという説明を聞きたかったんですが、ご答弁はありませんでしたので、次に行きたいと思います。
 次は、チャレンジスクールのことについてお伺いしたいと思います。
 チャレンジスクールについてお伺いしますけれども……
   〔「委員長、傍聴者の私語が多いよ」と呼ぶ者あり〕

○植木委員長 ご静粛に願います。

○里吉委員 先ほど私、紹介しましたけれども、都立高校白書では三部制についての課題が示されていました。これについて、解決はどのようになっているのか伺いたいと思います。

○出張教育改革推進担当部長 都立高校白書では、三部制の定時制高校では午後の部の生徒の生活リズムが乱れやすい問題や、三部制であることで生活指導を統一して実施しにくいなどの問題を指摘しております。
 このため、都立高校改革推進計画新実施計画案骨子では、ショートホームルームの設置及びその活用や、在籍する授業時間帯以外の科目のより柔軟な受講、教育相談体制の強化など、多様な生徒の個々の状況に合わせた教育環境の提供を行い、三部制の定時制高校の課題を解決することとしております。

○里吉委員 今のご説明の中に在籍する授業時間帯以外の科目の、より柔軟な受講で問題解決というお話でしたけれども、具体的にどのように問題解決できているのかお答えください。

○出張教育改革推進担当部長 午後部に在籍する生徒が、午前部の、より早い時間帯の科目を選択できるようにすることで、朝型の生活リズムになるなどの効果がございます。

○里吉委員 今お答えいただいたことも含めていろいろ努力されているということなんですけれども、三部制であることで生活指導を統一して指導することが実施しにくいという課題は、ショートホームルームの設定、活用、教育相談などで解決を図っていくということですよね。
 現に今、ショートホームルームや授業の一こまを使ってロングホームルームも行っていますが、実際に単位制の高校ですので、生徒が三部に分かれている選択科目もあるので、なかなかまとまらないということがあります。
 教員は、午前部、午後部に対応する時間勤務の先生と、午後部、夜間部に対応する先生がいます。三部で一体の学校ですけれども、生徒全体、教員全体が集まることが難しいわけです。職員会議も午前と夜間の間の時間しかないので、教員同士の情報共有も大変苦労していると思います。
 いろいろな課題解決のために取り組んでいることは大切だと思いますが、一つの施設に三部の子供たちが通っている、詰め込んでいるわけですから、矛盾は全定の二部の学校よりも多いし、今おっしゃったような対応では、結局、行事や部活がやりにくい、先生同士の情報の共有が難しいなどの問題は解決できていないわけです。そこに生徒をさらに詰め込むということは、私は認められません。
 夜間定時制高校についても課題があるというのなら、解決のために努力をしたらいいのではないでしょうか。これまで繰り返し都教委は生徒の施設利用や学習活動の時間的制約などの課題といってきましたけれども、全定併置校のこれまでの長い歴史の中で、施設の共有という制約は相互の努力で解決してきており、定時制を廃止する理由にはなりません。
 立川高校の卒業生や学校関係者からは、立川高校は最も全日制と定時制の施設利用や時間制約の問題が解消されている学校であり、廃止は許せないという声が上がっているわけです。
 そこで、改めて伺いますけれども、立川高校も含め、今名前が挙がっている四校、そして、今後、全定併置校の夜間定時制高校は全て廃止にしていくつもりなのかお答えください。

○出張教育改革推進担当部長 全定併置の形態を解消することについては、社会情勢や生徒の状況などを見きわめながら検討してまいります。

○里吉委員 昼夜間の三部制は問題解決のために取り組むけれども、夜間定時制の廃止は社会状況を見ながら検討するということで、そちらは改善のために努力をするというふうにはお答えにならない。廃止するということでもないということなんですけれども、答えが曖昧でした。
 夜間定時制高校は、それだけで定時制高校という一つの学校なんですね。クラスもあって、少人数できめ細かい教育ができるという特徴があります。さまざまな課題を抱えた子供たち、夜間中学校の卒業生や外国人や社会人など、多様な人たちがともに学ぶのが定時制高校です。三部制の高校の夜間と夜間定時制は全く異なる学校であり、三部制やチャレンジをふやしても、夜間定時制の受け皿にはならないわけです。
 先日、立川駅前で行われた立川高校定時制を潰さないでとの宣伝、署名行動は、五十年前に卒業したOBの方から現役の高校生まで三十人で行ったそうです。一時間で百二十筆の署名が集まったと伺いましたが、その後も続々と運動が広がっております。
 改めて、さまざまな困難を抱えた子供たちの学びの場である夜間定時制高校の廃止の撤回を強く求めて、次の質問に移ります。
 それでは次に、東京都教育施策大綱について伺っていきたいと思います。
 これまで都教委が作成してきた東京都教育ビジョンまたは知事の長期ビジョンや今回の東京都教育施策大綱は、共通して教育の人材育成の側面が前面に押し出されています。子供たち一人一人の人間としての成長を保障するという側面が弱いように感じ、それが私は大変気になっております。
 私はこの間、勉強する機会がありまして、非常に大切だと思ったことがあります。教育基本法は、一条の教育の目的に、人格の完成と平和で民主的な国家及び社会の形成者となる国民の育成を掲げています。人格の完成とは、その人一人一人のパーソナリティーをどう育てるか、個人の尊厳をどう確立するかということです。
 国家及び社会の形成者となるということは、人間は社会的な存在なので、ある意味当然ですし、大切なことです。両方がとても大切で、もし個人の尊厳が十分に保たれない状態で国家や社会の一員としての役割が強調された場合、それは人間として生きていくのが大変苦しいことになってしまうというお話でした。
 そういう意味で、私は人材育成などを全て否定するわけではありませんが、ある特定の方向性に合わせた人材となることが子供たちへの教育として突出して強調されるということに危惧を覚えます。
 やはり常に人格の完成、その子供一人一人が人間として個人の尊厳をどう確立するか。もちろんそれは他者や社会と切り離された存在ではなく、密接に関係した中で確立されていくわけですが、それを子供一人一人がつかみ取っていくことを教育の第一に位置づけてほしいというふうに願わずにはおられません。まず、そのことを強調しておきます。
 そして、国家や社会が、教育基本法にあるとおり、十分に平和で民主的で、個人の尊厳の保持と国家及び社会の形成者として頑張ることが矛盾しないときはよいが、そこにずれが生じたときに国家や社会を変えることができる、それが民主主義であるし、それをきちんと教えることが主権者教育ではないかと考えます。
 六月に公職選挙法が改正され、選挙権の年齢が十八歳からになりました。教育施策大綱では重点事項のⅡの方針2で、十八歳選挙権、主権者教育が挙げられています。
 そこでまず、教育施策大綱で教育的、政治的教養を育む主権者教育を充実するということが述べられておりますが、どのように取り組むのか伺います。

○伊東指導部長 都教育委員会は、これまで全ての都立高校を対象に主権者教育にかかわる国や都の生徒用資料や教員用資料を配布するとともに、管理職や公民科等の教員を対象とした説明会を開催しております。また、都選挙管理委員会と連携し、学校が模擬選挙等の体験学習を取り入れられるよう支援しております。
 こうした取り組みを通して、都立高校における主権者教育を充実してまいります。

○里吉委員 模擬選挙なども一つの方法だと思いますが、よく考えて行わないと、議会制民主主義や公職選挙法の制度解説にとどまってしまう可能性があると心配する声を聞きました。
 というのは、そもそも教える先生はもちろん、大人全体が主権者教育をほとんど受けずに大人になり有権者になっているので、何をどう教えたらよいか難しいというのです。
 確かに今の日本では、社会全体として政治的教養を育む土壌がありません。むしろ自分の政治的な意見を自由にいうのをはばかられる雰囲気すらあり、大人の社会も変えていかなければなりません。
 高校ではさまざまなやり方があると思いますが、例えば、政治や社会のリアルタイムな現実をきちんと知り、考えること、例えば生徒会が平和や人権について討論したり、生徒自身が興味を持っている社会的な問題について、部活や文化祭などで学習して発表したりすることも政治的教養を身につける上で重要だと思います。
 また私は、高校生が国家や社会の形成者として主体的に政治にかかわっていけるようにするためには、高校生を初めとする子供たちが、子供のころから自分たちの頭で考え、議論し、自分たちの力で学校などをよりよい方向に変えていくことができたという経験を積み重ねることが大切だと思います。
 その一つとして、例えば生徒会活動において、生徒の自主的な活動を保障することが生徒の政治的教養を育む上で重要なことの一つであると考えますが、見解を伺います。

○伊東指導部長 生徒会活動は、選挙の具体的な方法や民主主義の基本的なあり方を学ぶことができ、主権者教育の一環として活用することが可能でありますが、あくまで学校の教育活動でございます。
 国の通知では、生徒が本来の目的を逸脱し、教育活動の場を利用して選挙運動や政治的活動を行うことについては、学校の政治的中立性を確保するため禁止することが必要であるとされております。

○里吉委員 生徒会は民主主義の基本的なあり方を学ぶことができるとのご答弁でした。ぜひ生徒の自主性に基づく生徒会活動の活性化に取り組んでいただきたいと思います。
 生徒会が特定の政党への投票を呼びかける選挙活動などを行っていけないのは当然ですが、例えば生徒会で取り組むにふさわしくない問題であったとしても、ただ禁止してやめさせるだけでは、せっかくの高校生の主権者としての気持ちを抑えつけることになってしまいます。
 高校生には政治活動の自由があることをきちんと伝え、どうすれば生徒の取り組みたい気持ちを形にできるか助言などすることは重要な主権者教育なのではないかと考えます。
 また、学校の教育活動は政治的に中立なのは当然であり、教員が高校生に対し、みずからの政治的主張を押しつけることなく、生徒が広い視野を持ち、自分の頭で考えられるようにすることが大切です。
 しかしそれは、教員が自分の政治的意見を一切述べてはならないということではありません。この点で、都教委は学校や教員を萎縮させるようなことがあってはならないと思います。
 教員が自分の政治的意見はいうことができない、いったら問題になるという立場に立てば、生徒はやはり政治にはかかわらない方がよい、政治のことを話すのはやばいというメッセージを受け取ってしまうと思います。それは本来の主権者教育、政治的教養を身につけるということと相反すると考えます。
 十八歳選挙権と主権者教育はこれからの課題です。高校生の知的好奇心や柔軟な思考力、純粋な正義感がよりよい日本の未来を切り開いていくことを期待して、次の問題に移ります。
 次は、都立小中高一貫校について伺ってまいります。
 東京都では、猪瀬前知事が二〇一二年十二月の就任直後の記者会見で都立小中高一貫校の設置について触れ、都教育委員会は二〇一三年四月に都立小中高一貫教育校基本構想検討委員会を設置、同検討委員会は同年八月に中間のまとめを発表、二〇一四年十月の第十四回会議を最後に休止状態になっていましたが、その後、先月の十三日に会議が開催され、二十六日に同検討委員会から都立小中高一貫教育校の設置に関する検討結果が発表されました。
 私は驚いたんですが、中間のまとめでは、科学技術分野において次代を担うすぐれた人材を育成することが科学技術立国である我が国の喫緊の課題だとして、理数系の小中高一貫校を設置するとしていました。教育課程を小学校一年生から四年生、五年生から中学校二年生、中学三年生から高校三年生の四、四、四の区切りで編成することも目玉になっていました。
 ところが、今回の検討結果では、経済や文化などで諸外国との間で熾烈な競争がある一方、日本経済が伸び悩み、世界における存在感が低下しているので、その状況を打開する人材を育成することが必要だとして、英語力の育成に重点を置いた学校にするとしています。中間のまとめと今回の検討結果では、重点を置く教育が理数教育から語学力と国際感覚に大きく変わったわけですが、その理由は何なのかお伺いいたします。

○出張教育改革推進担当部長 本検討委員会の中間まとめでは、理数教育を重視するとともに、世界の人々との意思疎通を図る能力を育てる観点から、特に英語教育も重視することとしております。
 今回の検討結果は、こうした中間まとめやグローバル人材の育成を重視する東京都長期ビジョンを踏まえ、英語教育をより重視した基本構想として報告したものでございます。

○里吉委員 中間のまとめでも英語を重視していたということですが、科学技術立国として理数系教育が必要だと、中心は理数系教育でした。それがたった二年で、経済や文化での国際競争を勝ち抜くために語学教育だということで、世界の中で日本の立ち位置や目指すべき方向の分析、重点を置く教育も全く変わってしまっていると、一体どうなっているんだろうというふうに思うわけです。
 そもそも子供たちへの教育は、小中高等学校だけで十二年間、大学やその先も考えればもっと長期にわたります。子供たち一人一人を一人の人間として育て、社会の一員として主体性を持って生きていけるようにするために何が必要か、長期的で広い視野を持って考えるべきです。
 それが、わずか二年で全く違うものを出してくるということ自体、非常に目先のことにとらわれた短絡的なものだったのではないかなと思わざるを得ません。教育理念という根本がこんなにあっさり変わるというのは、何でもいいから(発言する者あり)小中高一貫校をつくりたいだけなのではないかといわれても仕方ないのではないでしょうか。

○植木委員長 お静かに願います。

○里吉委員 しかも、この検討結果は手続的にも疑問があるんですね。もともとこの都立小中高一貫教育校基本構想検討委員会には、学識経験者、保護者、学校長、区市町村教育委員会十五名、教育庁関係者六名で構成された委員会で、中間のまとめもそのメンバーで出されていましたけれども、教育庁職員以外の委員の任期は昨年十二月で切れて、今回の検討結果は先月十三日に都庁の五人の方だけで会議を開いて、そこで決めてしまっています。
 中間のまとめと教育理念などが異なる最終報告を教育庁の職員五人の委員だけで決めて、委員会の討論結果とするのはちょっとおかしいのではないかと思いますが、見解を伺います。

○出張教育改革推進担当部長 都立小中高一貫教育校基本構想検討委員会では、平成二十五年八月の中間まとめの発表以降、引き続き外部委員を交えて九回にわたり議論を重ねてまいりました。
 本検討結果は、こうした議論を十分踏まえて作成したものでございます。

○里吉委員 中間のまとめ以降の議事録は出ていなかったので、討論骨子が公開されていたので読ませていただきましたけれども、ちょっとそれを読んでもよくわからないんですね。どんな検討会や審議会の最終報告でも、中間のまとめをやった人数がちゃんといて、それが大幅に変わったのに、たった五人の、しかも行政の職員だけで成立させるというやり方はちょっと見当たらないんじゃないかなというふうに思うんです。
 報告書そのものに対して一人一人の委員が責任を持って判断して、了承してから出すべきだと思うんですね。今回の場合は内容が本当に大きく異なっておりますから、なおさら慎重に各委員の意見を聞くことが求められたはずだと思います。
 二十一人いた者が任期切れで、教育庁の職員五人だけ残っていること自体も、既に委員会の体をなしていないのではないかと思ってしまいます。議事録も、議事録というか、骨子ですね。理数教育重視はやめるという議論は見当たらなかったんですね。
 また、中間まとめではパブリックコメントを行っていましたけれども、そこにどんな意見があったのか都民に知らされていませんし、議事録を見るなり、委員会でも報告された様子もうかがい知ることができませんでした。学識経験者や保護者や都民の意見を聞いたように見せながら、結局、実はそうなっていないものが報告されているのではないかといわざるを得ず、とても認められるものではありません。
 また、中間のまとめで示されていた四、四、四の区切りについては、これも見直されたということですけれども、その一方で、特に小学校高学年の成長につながらないなどの指摘が--済みません、ごめんなさい、間違えました。
 中間のまとめでは四、四、四をすることが強調されていましたが、今回はそうはならなかったわけですが、この報告書の中に、現行の学校制度を導入した当時と比べ、児童生徒の身体的発達の早期化が見られて、学校制度の区切りと現実の児童生徒の発達の状態に差異が生じているとあるんです。
 具体的にどのような点が早期化していて、どのような点に差異が生じているのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 国の中央教育審議会の答申におきまして、児童生徒の身長や体重の伸びの大きい時期は、昭和二十三年当時と比べ、また、女子の平均初潮年齢は、昭和の初めと比べて二年程度早まっていることなどが挙げられております。
 また、小学校四、五年生ころの児童に見られる体や心の大きな変化と、現行の学校制度の区切りとは、ずれが生じているとも指摘されております。

○里吉委員 二年のずれというのが昭和の初めと比べということなんですが、今の学校制度ができたのは第二次世界大戦が終わった後ですから、そのころと比べるとほとんど変わっていないんじゃないかと思います。
 私もグラフを見ましたけれども、私が子供のころの四十年ほど前とは〇・三歳程度しか変わっておりませんでした。
 それから、身体的発達を理由にしていろいろおっしゃっていますけれども、教育で大きく問われるのは身体の発達よりも、むしろ思考力や、自分と他人や社会との関係の捉え方など、頭や心の発達だと思うんですね。
 そういう点では、大学の先生などの中には、小学校高学年の発達段階は、自分はできる、やればできるといった自己有用感が育つ時期で、中学生と一緒の固まり、四、四、四でいけば、小学校五年生から中学校二年生までの固まりの真ん中の低学年として扱われることが、育ちにくいと、現行の小学校の高学年としてそれが十分に獲得されることが中学校入学後の成長に大きくかかわっているということをおっしゃっておりました。
 例えば飯ごう炊さん一つとっても、中学生と一緒のくくりでは、小学生の感想は中学生がつくってくれておいしかったと受け身になってしまうというようなことでした。
 また、中学校のような教科担任制、ある意味小学校よりも厳しい生徒指導が五年生から導入されることが適切でなく、荒れなど子供たちに影響が出ているとも指摘されております。
 そういう意味では、こうした根拠薄弱な、また専門家からも否定されているようなことを論拠に、何か問題が発生しているかのようにいうのはふさわしくないのではないかと思うんです。
 そして、私、これを一番心配しているんですが、小学校から選抜を行う都立の小中高一貫校を一校だけつくるということについて、小学校段階から競争をあおるのではないか、一部のエリート養成校になるのではないかという懸念の声が上がっております。都教育委員会の会議の中でもそのような意見が出たと聞きました。どのように考えているのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 本検討委員会の検討結果によれば、入学者の決定は学力を問うものとはせず、幼稚園教育要領等を踏まえて行うことが望ましいとされております。
 今後、都教育委員会は、こうした検討結果等を踏まえて、さらに検討してまいります。

○里吉委員 小学校の選抜ですから、国語や算数などの学力を問わないのは当然だと思うんですね。
 中高一貫校についても一九九八年の法改正のときに、受験エリート校化や受験競争の低年齢化が心配されて、学力検査を行わず、適性検査で選抜するとされました。
 しかし、現在では、都立中高一貫校も中学受験塾の偏差値表の中にしっかりランクづけされて、しかも受検生は適性検査で点数がとれるよう、専門の受験塾に通うということが当たり前になっています。やはりそういう受験競争の低年齢化を招くのは避けられないと懸念いたします。
 しかもこの学校は、グローバル人材育成を重視し、日本経済が伸び悩む中で、いわば日本を背負って世界を舞台に活躍できる人間を育てるということなので、まさにエリート養成教育そのものなわけですね。
 地方自治体が小学校から一部の子供たちにエリート教育を行うことは、教育を小学校段階から複線化して、全ての子供たちへの平等な公教育制度が解体されてしまうのではないかとの心配の声も上がっています。そもそも学校教育法では、小中学校及び義務教育学校は普通教育を目的とすることになっています。
 中間のまとめの保護者意識調査では、将来、社会で活躍していくために必要だと思う資質や能力ということを質問しておりまして、二つまで回答できるんですけれども、自分の考えや気持ちなどうまく表現できる力と答えたのが七二・二%、社会人として必要となる一般的な知識や教養と答えた方が六〇・七%と、他の選択肢に比べ段違いに高くなっております。
 こうしたことからも、小中高等学校教育、小学校教育では目指すべきは特定のエリート教育ではなく、まず主体的に生きることのできる一人一人の人間としての全面的な成長、発達を保障することだと思います。
 これらのことから私は、今回の都立小中高一貫校の設置には大いに問題があり、設置は見送るべきだと考えます。
 このことを申し上げて、最後の質問に移ります。
 最後は、東京都発達障害教育推進計画の骨子について伺います。
 私はこれまで、特に小学校の発達障害児の通う通級の取り組みについて文教委員会で取り上げてまいりました。今回は、小学校から高校まで通じて発達障害教育を網羅したものです。
 発達障害は、早期に発見し早期に支援していくことが大切といわれておりますが、都教育委員会としての取り組みを伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 発達障害の児童生徒を円滑な就学や社会適応につなげるためには、障害を早期に発見し、継続的に適切な指導、支援を行うことが重要でございます。
 都教育委員会は、保護者の理解を得やすい早期発見の仕組みなどについて、先駆的な取り組みを行う区市町村の事例を各区市町村に周知いたします。
 また、教育のみならず、保健、医療、福祉など、さまざまな関係機関と相互の連携を図るとともに、早期支援に向けた幼稚園、保育園等と小学校との連携についてもさらに推進してまいります。

○植木委員長 速記をとめてください。
   〔速記中止〕

○植木委員長 速記を始めてください。

○里吉委員 早期発見のための取り組み、ぜひ広げていただきたいと思います。
 そしてあわせて、発達障害の児童生徒には途切れのない支援が重要で、就学前から高等学校までの支援をつないでいくことが大切です。
 都教育委員会として、どう実効性ある取り組みとしていくのか、どう推進していくのか伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 都教育委員会は、これまで、幼稚園や保育所における指導、保育の様子などを小学校に引き継ぐ就学支援シート、学校間や学年間における指導、支援の情報を引き継ぐ学校生活支援シート及び学齢期と進学、就労先をつなぐための個別移行支援計画の活用を通して、児童生徒一人一人に対して一貫性のある継続した支援の充実を図ってまいりました。
 今後は、こうした学校間や関係機関との連携を一層強化するため、これまでの研究成果に基づき、個別の教育支援計画に基づく連携ガイドラインを作成し、乳幼児期から学校卒業まで一貫性のある継続した支援を充実してまいります。

○里吉委員 発達障害といっても、その特性は本当にさまざまで、一人一人特徴が違うため、どのような特性を持っているのか、苦手なこと得意なことなど、それまでかかわった関係者がきちんと記録し引き継ぐことができれば、一貫性のある継続した支援に役立つと思いますので、この連携ガイドライン、大いに期待をしたいと思います。
 次に、高等学校での支援について伺います。
 高等学校における発達障害の生徒の中には、友人とのコミュニケーションがうまくいかず不登校になって、ひきこもりになってしまう生徒が一定数存在すると聞いております。そうならないための支援について、都教育委員会の考えを伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 発達障害の生徒は、その障害特性から周囲の理解が得られず疎外感を感じやすい傾向があり、不登校などのさまざまな学校、学級不適応を起こす場合がございます。
 こうした発達障害の生徒一人一人の障害の状態に応じた指導、支援や進路指導の充実を図るため、組織的な対応のあり方をまとめた教員向けの手引とDVDを作成し、学校、学級不適応の予防、改善を図るとともに、障害のない生徒の理解も促進してまいります。

○里吉委員 子供たちへも理解を促進していくということでお答えいただきましたが、これは高校だけでなく、小学校から高校まで、ともに学ぶ子供たちの理解促進をすることが本当に重要だと考えます。
 そして、そのためにも、教職員全体がさまざまな発達障害を理解することが大切だと考えます。教職員の研修についてはどのように取り組んでいくのか伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 来年度から区市町村において小学校へ特別支援教室が順次導入されますことから、全ての教員が発達障害の基礎的な知識及び対応力を身につけることが必要でございます。
 このため、都教育委員会は、各学校において発達障害教育を適切に実施できるよう、校長、副校長を対象とした悉皆研修を実施しております。
 また現在、初任者研修、十年経験者研修等の経験や職層に応じた研修の中で実施している発達障害に関する知識や、通常の学級における発達障害の児童生徒とのかかわり方などに関する内容を充実し、教員の資質、能力を向上してまいります。

○里吉委員 教職員の悉皆研修を初め、取り組んでいるということでした。ぜひ充実させていただきたいと思います。実際に都教委の調査でも全てのクラスに発達障害の子供がいるという結果が出ているわけですから、研修は本当に重要なわけです。
 それから、当然のことですが、研修だけでは発達障害児の指導力は向上しません。小学校の通級では、教員が集団で指導できたために、その中で教員のスキルアップができたと、今回学校を回ることになると今までのようにはいかないわけで、二人以上で教員が各学校を巡回するなど対策がとられていますが、教員が専門性を磨けるような引き続いての対応をお願いしたいと思います。
 さらに今回、都教委が示した推進計画の骨子で、小中学校においてソーシャルスキルトレーニングの事例集を作成するということでしたが、どのようなものなのか、作成の目的について伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 発達障害の児童生徒は、その障害特性から対人関係やコミュニケーションに課題があることが多く、通常の学級の中で集団に参加できなかったり、友人とのトラブルを生じやすい傾向がございます。
 このため、都教育委員会は、大学等の研究機関と連携して、ソーシャルスキルトレーニングの事例集を作成し、学校での活用を通して、発達障害の児童生徒の社会性の向上を図ってまいります。

○里吉委員 これは非常に大切なトレーニングだと思います。現在小学校の特別支援学級の通級で行っている集団指導のメニューも、このソーシャルスキルトレーニングの一つだと思います。
 私が気になるのは、この事例集を研究機関と連携して作成した後、どうやって活用するのかということです。今の小学校一、二年生が三十五人学級、三年生以上が四十人学級では対応が難しいのではないかと思います。
 この推進計画を作成するに当たって、既に二年前に、専門家の方も含めた東京都発達障害教育推進会議というのが行われておりまして、議事録を読ませていただきましたが、ここでも、ある委員は、クラス単位は二十五人ぐらいになるとかなり手をかけられると発言しておりました。
 来年以降始まる小学校の特別支援教室も、対象となる子供がどんどんふえても、教員はふやさない計画です。これでは今までのような集団指導ができるか心配する声が保護者から出ております。特別支援学校のセンター的機能のための教員加配もセンター校全校には行われておりません。
 やはり、しっかり教員を配置してこそ、一人一人にきめ細かな対応ができるわけで、教員をふやすことも改めて強く要望いたしまして、私の質問を終わります。

○植木委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時三十一分休憩

   午後三時五十一分開議

○植木委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○斉藤委員 それでは、私の方からは、主に都立高校改革の関係で伺います。
 先日の本会議の一般質問でも、私ども会派の島田幸成議員が、都立の小中高一貫校について質問をしておりました。先月の十一月に、この設置に関する検討結果も出まして、少しニュースでも着目をされたというところであります。
 小学校、中学校、高校を一貫して教育するというところについては、予算もあれば課題もあると思います。また、今回、多摩地域に設置というふうな話も聞いておりますので、先ほどの一般質問でも、その部分について大半興味を持って見ているというふうなことで質問がございました。
 当然のことながら、こういった新しい試みについては、いろいろ課題があるのは承知をしておりますし、また、今回の検討結果の中でも、なるほどなと思うさまざまな懸案事項、もしくは課題というものについて幾つか挙げられておりました。
 課題認識と解決に向けてどのように考えているか伺いたいと思いますけれども、この小中高一貫校の必要性の背景として、小学校、中学校の情報の把握が十分に引き継がれていないというのが挙がっておりました。小中高一貫校をつくるか否か以前に、児童生徒の情報に関して、小学校と中学校といった校種間での引き継ぎの仕方について、そして、この引き継ぎが不十分であった場合どういった影響があるのか、そこを確認したいと思います。

○出張教育改革推進担当部長 児童生徒が小学校から中学校、中学校から高校へ進学する際には、学習や行動の記録などを一定の様式に記載し、進学先に送付することとなっております。
 また、区市町村の小学校と中学校の間では、各校種の教員同士が、面談等により直接情報を引き継ぐことも多く行われております。一方、中学校と高校の間では、進学先が多岐で広域にわたることから、行われることは少ない状況になっております。
 情報の引き継ぎが十分でない場合、人間関係や学力等さまざまな観点に配慮した学級編制など、児童生徒が新しい学校環境へ適応するための支援に影響することが考えられます。

○斉藤委員 逆に、地域の市区町村立の小学校、中学校の間では、情報が人間関係まで、また学力まで配慮して情報交換できているとしたら、それは非常に喜ばしいことでありますし、そういった地域性というもののメリットが生かされているということです。今、東京都の方で進めております中高の一貫などについては、そのよさが削られてしまうというのは確かにそれは残念な話でありますから、そこを何とかしたいというのは、なるほど合点がいく部分であります。
 それでは、今後のこういった校種間、学校間で児童生徒の情報を十分に伝達ということは、恐らくその後の指導の方にも役に立っていくんじゃないかと思いますし、このあたりの部分についてはなかなか文面にあらわれないところですけれども、現場の方でかなりそういった連携ができているというのは、プラスの雰囲気になっていくというのが現実にはあるんじゃないかなと思います。
 それに加えて、この検討の結果を見ると、小学校入学時の試験方法など、入学及び進学にかかわる課題について述べられておりました。小中高一貫教育校を設置するに当たり、入学試験をするときはまだ未就学児なわけですし、また非常に長い期間ですので、途中でいろいろ進学に関してほかの道を考えてしまうとか、さまざまなことが想定されるわけなんですが、そういった入学、進学に関する課題解決に向けてどのように取り組んでいくのか、教育庁の考え方を伺いたいと思います。

○出張教育改革推進担当部長 本年十一月に報告された都立小中高一貫教育校基本構想検討委員会の検討結果によれば、入学者決定のあり方やその具体的な方法、他の学校への進学を希望する児童生徒への丁寧な進路指導などが課題として挙げられております。
 今後、都教育委員会は、こうした課題の解決に向け、基本構想検討委員会の検討結果やさまざまな意見を踏まえ、一つ一つ丁寧に検討してまいりたいと思っております。

○斉藤委員 まだ少し先の話ですので、質問の方も少し雑駁に伺わせていただきました。ただ、実際には、さまざまな部分で工夫をする点はあるでしょうし、そういったものがなければ、なかなかうまくいかないんじゃないかなというふうに思います。こういったところで入学、進学に関して、ぜひ細かい部分まで検討して、児童生徒に不利益が生じない、不公平が生じないようにする必要があるというのは当然かと思います。
 それでは、次に、在学中の児童生徒にかかわる課題についてですが、今、少し私も述べさせていただきますが、人間関係が固定化するという、いる生徒はみんな十二年間上にそのまま上がっていくというふうなことが想定されるわけですから、人間関係が固定化すること、そしてまたそれ以外にも課題が指摘をされております。確かに、その部分については、新しい試みにおいて私も非常に懸念をしております。
 小中高一貫教育校の十二年間で起こり得るさまざまなこういった課題に対して、少し大枠でありますが、今後どのように教育庁は取り組んでいくのか、そこを伺いたいと思います。

○出張教育改革推進担当部長 基本構想検討委員会の検討結果によれば、小中高一貫教育の主な課題として、人間関係の固定化のほか、学力差の拡大、学習意欲の低下などが挙げられております。このような課題に対し、例えば人間関係の固定化については、異なる学年同士の交流をふやすことや、他の学校との交流を活発に行うことなどにより対応していくことが可能としております。
 今後、都教育委員会は、小中一貫教育校や中高一貫教育校のこれまでの取り組み等を参考にしながら、十二年間の一貫教育校で起こり得るさまざまな課題への対応について十分に検討してまいります。

○斉藤委員 まだ七年ほどありますので、一応、大枠でのお答えをいただいたところですが、島田議員が質問の中でも申しましたように、いろいろチャレンジもできる試みではあります。ただ、今申しましたように、さまざまな課題に関しては、恐らくほかの中高一貫や、もしくは一般の都立校などでは、ちょっと想定しないようなさまざまな工夫や配慮というものが必要になってくることは当然かと思いますので、ぜひそのところについては丁寧に課題解決策を提示していただきたいと思いますし、また取り組める体制で臨んでいただきたいと思います。
 それでは、順次、今度は都立高校の改革の方のもうちょっと細かい部分に入っていきたいと思います。
 大綱的な部分で、大きな捉え方を教育の部分でしていくということは大事なんですが、一方で、そういう狙いをどうやって具体的なものに落としていくかというのは、今回いただいています都立高校改革推進計画の新実施計画案なんかを見ると、大変細かく書いてあるんで、こういった現場への実際の実務的な落とし込みやアイデアの具現化というものは非常に大事だなというふうに思いますし、また私どもも興味を持って見ております。
 それで、いじめの防止について改革案の一〇ページに書いてあるものですが、都立高校におけるいじめ防止等の対策についてが、社会的自立に必要となる徳のところに載っております。この中で、いじめを防止するための組織的な取り組みをさらに徹底するとありますが、この組織的な取り組みの組織的というところを踏まえて、具体的にどのような取り組みを行うのか伺っていきたいと思います。

○伊東指導部長 各都立高校では、いじめ防止対策推進法に基づき、学校いじめ対策委員会を設置し、この組織が中心となって、いじめに関する情報の収集や対応策の検討など、いじめ防止等の取り組みを推進してまいりました。
 今後、都教育委員会は、学校いじめ対策委員会の適切な対応により、いじめが解決した事例を用いて教員研修を実施するなどいたしまして、全ての学校におけるいじめ防止のための組織的な取り組みをさらに徹底させてまいります。

○斉藤委員 ぜひ、さらに徹底していただく、大変心強い限りでありますが、この東京都教育委員会には、各学校がいじめ防止のために工夫している取り組みというものがあると思います。恐らく、先ほど答弁にもありましたように、大変組織的に、そしてまた、かなり調査とか、そういったものも踏まえて活動されているというふうなことであります。
 実際には、各校がいじめ防止のために工夫している取り組みをどのような方法で検証して、そして改善を図っていくのか、ここが実際には大事なところでありますので、この部分について詳しく伺いたいと思います。

○伊東指導部長 都教育委員会は、毎年度、いじめの認知件数、いじめ発見のきっかけ、学校いじめ対策委員会が対応した事例など、学校におけるいじめ防止対策の推進状況や取り組みの工夫等について把握するための調査を実施しております。
 また、都教育委員会の附属機関であるいじめ問題対策委員会では、こうした調査結果について検証を行うとともに、学校における取り組みの改善策を示しております。

○斉藤委員 そういう意味では、かなり調査を含めたデータ的なものを踏まえてやっているということで、最近の親御さんからしてみれば、私もそうなんですけれども、保護者間のいろんなうわさの中でだんだん話が大きくなっていったり、悪い話ばかりが伝わったりというふうなことが、どうしても人間関係の中で起こってきてしまいます。
 そうすると、それが学校に対する評判に移ったり、教師に対する評判に変わっていったりというふうなことも当然ありますので、そういう意味では、データに基づく調査、そしてまたそれに取り組むロジカルな取り組みというものができるのであれば、恐らくそういった不確定な情報によって関係者が惑わされるということは少なくなっていくのかなというふうに思います。ぜひその部分については、こういった取り組みを工夫を重ねながら進めていっていただきたいと思います。
 そして、いじめの次に、インターネットというか、かつて、いわゆる学校の裏サイトと呼ばれた学校非公式サイトなどの問題についても、都教委の方は早くから取り組んで、私どももそれをチェックする外部委託の会社なども実際に視察をさせていただき、インターネットを人間の目でチェックする、そういった活動を視察してまいりました。
 そしてまた、この同じページのところでは、いわゆるスマートフォンの利用状況などについてもかなり課題があるというのは、ニュースでも皆さんご存じのことだと思います。
 ただ、そういった中で、この案の対策事例として挙げられております中に高校生ネット出前講座の実施というのが出ております。大変興味深いんですが、なかなか限られた文面ではわかりづらいところなので、特に、まずは出前講座の狙いについて伺いたいと思います。

○伊東指導部長 都教育委員会は、児童生徒がインターネットを利用する上でのルールやマナーなどを身につけ、適切に活用できるようにすることを狙いといたしまして、ICT活用推進校に指定している都立高校の生徒が近隣の小中学校を訪問し、児童生徒と学び合う取り組みを出前講座として今年度から実施しております。

○斉藤委員 この出前講座、都立高校生が小中学生に指導をするという、ちょっと簡単に書いてありますけれども、そういう機会をよくつくれるなというのと、よくそういうところまで展開できるなというふうに思うような文章でございます。
 この都立高校生の出前講座、恐らくそんなに簡単にできることではないんじゃないかなと思いましたので、相当それなりの準備というものがあったんじゃないかなと思います。恐らく全部の学校ですぐできるなんて話ではないような、非常に丁寧な事前準備があったと思いますので、ぜひその辺について細かく教えていただきたいと思います。

○伊東指導部長 出前講座に取り組んだ高校では、事前に高校生がインターネットの特徴や危険性にかかわる内容を整理するとともに、小中学生の実態を踏まえたわかりやすい教え方について生徒同士で話し合い、工夫、改善を行ってまいりました。

○斉藤委員 ありがとうございます。
 それでは、この都立高校生による出前講座を実際にやった学校があるというふうなことでありますので、具体的な取り組みと、何より聞きたいその成果について伺いたいと思います。

○伊東指導部長 出前講座の具体的な取り組みといたしましては、例えば、高校生と小学生がグループとなり、インターネットを利用する上で留意する点について話し合ったり、陥りやすいトラブルの事例を高校生が劇として発表したりするなど、創意工夫した活動を行ってまいりました。
 これらの取り組みにより、指導に当たった都立高校の教員だけではなく、小中学校の教員からも、インターネットの適正な利用について、双方の児童生徒の理解が深まるとともに、情報モラルについての意識が高まったとの評価を得ております。

○斉藤委員 ありがとうございます。
 ちょっと調べてみると、全体で三校やったところがありまして、多摩では町田市の町田高校なんかが取り組んだらしいんですけれども、恐らくこれ、小中学生に教えようと思うと、逆に教える側の方がどんどん詳しくなる。想定される質問なんかを考えたら、恐らく自分たちが想定している資料よりもさらにもっと、その背景なんかを調べないと説明できないと思って、非常に緊張感を持って勉強するということがあると思います。僕らもよく、都政報告なんかをやるときにやたらと調べて、そのとき知らなかったことを初めて知るなんていうことはよくありますけれども、恐らくこのときの高校生なんかも同じだったんじゃないかと思います。
 小中学校と高校の方で日程を合わせるだけでも相当苦労があると思うので、そんなにたくさんできる話ではないと思いますが、大変おもしろい試みだと思いますし、それこそまさにアクティブなラーニングだというふうに思いますので、こういった事例については、今回たまたま、ここについては徳の部分のページに出ておりましたが、こういった試みをいろんな形で応用できるんじゃないかなというふうに思います。そういった試みを汎用性が高いものに変えていく工夫もぜひしていただきたいと思います。
 それでは、ちょっと次の質問ですが、これも少し似ている話であります。形にとらわれない事業ということで、いわゆる都立高校への専門医の派遣に関してです。
 これについては一二ページの社会的自立に必要となる知、徳、体の育成の体の方に出てくるんですが、十代、二十代でも人生を大きく変えてしまうような一大事となる産科や精神科に関するさまざまな課題というものがありまして、医師会の方でも精神科の先生なんかから、本当はもっと若い人たちに教えたいんだよねということは、私も、随分以前からいわれておりました。
 私自身も、最初の一般質問ですから、もう十年も前になりますが、この精神科については、統合失調症など、十代から発症するというふうに一般的にいわれている病気などありますので、ぜひ学校現場で教える機会を持つといいですと、ぜひそういうのをやってみませんかということを質問した経緯がございます。
 ところが今、実際にそれをやっている学校、専門医の派遣事業というものが大分進んできたというふうなことで書いてあります。こういった教育支援が行われているというふうに聞くわけなんですが、この事業の目的と現状について伺いたいと思います。

○早川都立学校教育部長 都教育委員会では、都立学校の生徒が抱える心の健康に関する課題や性に関する不安や悩みに対応するため、学校からの要望に応じて精神科医と産婦人科医を派遣しております。
 派遣された専門医は、教員からの生徒の健康についての個別相談への対応や、生徒、教職員への講演等を実施することによりまして、学校が行う健康相談や保健指導等を専門的な視点から支援しております。
 派遣の実施状況でございますが、平成二十六年度は、精神科医については三十六校、産婦人科医については十五校でございます。

○斉藤委員 ありがとうございます。
 精神科医については三十六校にふえているということでよかったんですが、これについては、この事業の効果と今後の展望についてぜひ伺いたいと思うんですけれども、答弁をお願いいたします。

○早川都立学校教育部長 専門医派遣事業は、生徒の心の健康に関する課題や性に関する不安や悩みについて、教職員、生徒が、専門性の高い医師から直接話を聞くなど、学校保健の充実を図る貴重な機会となっております。
 今後とも、専門医講演会や学校関係者との連絡会などを通じて事業の周知を行い、学校からの要望に応じて専門医を派遣してまいります。

○斉藤委員 これについては、なかなかやることができるお医者さんの方も限られておりますし、その地域にちょうどこういったことに熱意のある先生がいるかどうかというのも、かなり左右されるとは思いますけれども、ぜひさらに進めて広げていただきたいと思います。
 それでは、次は、質問としては最後のテーマですが、先ほど野上議員さんからも話がありましたが、ESDが実施計画案の一四ページにグローバル人材の育成として出ております。
 グローバル人材というと、こちらの方でも割と海外との交流が前提になるようなテーマでくくられて、海外との交流が前提となるようなアイデアが大体こういったときにグローバル人材の育成でくくられていくんですけれども、ESDについては、先ほど若干話がありましたように、どちらかといえば海外と交流があるから何とかということではなくて、海外の人たちと、つまり異文化の人たちと交流をするという点で物の考え方が醸成されるという部分で、むしろ海外に接するというよりも、接する前の準備段階でこの効果を発揮するんじゃないかなというふうに思います。
 改めてESD、そういった視点からもどのような教育であるのか伺います。

○伊東指導部長 ESDは、環境、平和、防災等、現代社会が直面するさまざまな地球規模の課題を身近な地域の課題と結びつけて考え、持続可能な社会の実現に向けて取り組むことができる人材を育成するための教育でございます。

○斉藤委員 このESDを使ったユネスコスクールについては、先ほど、都教委としての取り組みについて質問があったわけなんですが、私の方からは、それぞれの都立高校の具体的な取り組みについて教えていただきたいと思います。

○伊東指導部長 ESDの推進拠点でございますユネスコスクールに指定されている都立高校では、姉妹校との交流や留学生とのシンポジウム等、海外の高校生との意見交換を行うことを通して生徒が異なる文化や多様な価値観を学び、国際的な視野で解決策を考え、身近なところから取り組む意欲や態度、能力を養っております。

○斉藤委員 今、るる幾つかの施策、事業を伺わせていただきました。もう既に始めている部分もあれば、これからという部分もあります。どれもすごい予算が必要かといわれれば、決して事業そのものに予算がたくさんかかるというものばかりではありません。また、それ以外にも新しい案の中では、小さいところで、これはちょっとおもしろいなとか、これはもっとたくさんの学校でできないのかなと思うようなアイデアがたくさん出ております。
 ただ、これだけのことをやろうと思うと、その事業に対する予算自体は少額かもしれませんけれども、これだけの時間を先生方がつくっていくということについては、なかなか大変なんじゃないかなと思います。ぜひ要望として、これを実行する上で--事前にやりとりをしたときに、もうちょっと予算について聞いてみたかったんですが、これはあくまで案なので、それについては今後の予算案そのものにかかわってくるものですから質問は控えたんですが、ただ、実際に予算がないとできないものもたくさんございます。当然、人がいないとできないものもたくさんございます。その部分については、頑張って、人と予算をふんだくっていただきたいと思うようなものが幾つもございますので、頑張っていただきたいと思います。
 これに加えて、都立高校改革と並行して今回、東京都発達障害教育推進計画案の骨子も十一月に出されております。これなんかにつきましても、全体を見て、私も幾つかのプログラムなど非常に興味を持って見ているものがございます。正直いって、これについてもぜひ優秀な人材を確保する、もしくは人を確保する、もちろん事業に伴う予算を確保するという部分が最後の課題になっていくのかなと思うんですが、内容については、ぜひチャレンジしてほしいものがたくさんございます。
 特に、発達障害教育の案の一番最後のところに、発達障害教育に係る理解の促進というところがありまして、この中では、小中学校及び高等学校に在籍する児童生徒やその保護者を初め広く都民に対し発達障害教育に関する説明会を実施しますという、パンフレットをつくったりという具体的なアイデアがあるんですが、発達障害について私、一言要望させていただきたいんですけれども、今まで私もいろいろな精神疾患の方にかかわる中で、同時に発達障害の方にもかかわるときがあって、私と同じような四十代という方もいらっしゃいます。発達障害をベースに持っていて、精神のことを併発していて、生活保護という方だったりします。そういった方なんかだと、私も過去いろんな発達障害の方と接する中で、もうちょっとうまくやればよかったなという反省がございます。そういったときに、こういった社会的に教育がなされていくだけで相当違ったんじゃないかなという反省があります。
 そういったときに、案ではありますけれども、社会に対して進めていただきたいものがこの中には入っておりますので、ぜひ頑張っていただきたいと思いますし、もちろん、これをやっていく中で福祉保健局が詳しいところでありますので、タッグを組んでやっていく部分が多いと思うんですが、恐らくそれだけでもまだ足りないんじゃないかと思います。
 こういった思いやアイデアをぜひ他局ともしっかり手を組んで進めていただきたいと思いますし、また、そういうことで東京都の教育委員会が、教育庁がリードできるとしたら、それはすばらしいことだと思いますので、ぜひ私の方からもこういった取り組みを進めていただきたいと最後に要望いたしまして、質問を終わります。

○野上(ゆ)委員 私からは、都立高校改革推進計画新実施計画案の骨子にある専門高校等の改善、専門教育の充実に関して何点か質問をさせていただきます。
 専門高校の生徒にとっては、資格の取得は大変意義があるというふうに考えております。実社会において、企業が採用する人材に求める能力は、年々高度化、専門化してきており、人材育成を担う専門高校においては、企業が求める能力の高い人材を育てていく必要があると考えます。学校での教育によって到達した能力を証明するものとして、生徒に資格を取得させることには一定の意義があるというふうに考えます。
 とはいえ、求められている資格は、真に企業が求める能力を実証できる高度なものである必要があるというふうに考えます。そのため、専門高校においては、企業が求めている資格がどのようなものかを聞き取るなどして継続的に把握するとともに、それらの高度な資格の取得に向けて、技能もそうですけれども、生徒の指導ができるような教員や人材を配置していくことが必要であります。
 現在の専門高校において、年々高度化する技能に応える専門性の高い教育を行うためには、施設設備の古さや、高度化に対応する技能を持ち合わせる教員の指導力の向上が課題というふうに考えております。
 そこで、まず初めに、高度化する技能に応える現職教員の高度技能習得のための研修をどのように今後進めていくのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 将来、世界をリードする日本のさまざまな産業に従事していく子供たちを育てるためには、教員がみずからの指導力を向上させるための自己研さんが必要不可欠でございます。
 東京都教育委員会は、国の教員研修センターの産業技術にかかわる研修への派遣や、専門性の向上に寄与している研究推進団体への支援を行うとともに、教員が専門性のスキルアップを図るための資格取得に対して助成を行っております。

○野上(ゆ)委員 日進月歩の技術革新に対応するため、教員が企業や事業所で研修や研究する取り組みを充実させることも必要であると考えております。一つ提案をさせていただきたいと思います。
 また、一概には比較できませんけれども、公立の職業訓練校の訓練指導員の養成は、職業能力開発総合大学校で行われています。職業能力開発総合大学校で実施されている現職の職業訓練指導員の研修は体系化されているものです。一方、工業科、専門高校の教員の養成環境及び研修制度というのは、まだまだ貧弱であるといえます。ぜひ研修の充実を図っていただきたいと思います。
 また、専門高校の施設整備についてですが、現代の産業界に対応するべく、どのように整備を進めていくのか、その方針について伺います。

○出張教育改革推進担当部長 都教育委員会は、産業界の動向を踏まえて教育課程を編成している各専門高校のニーズを把握し、予算の範囲内で優先順位を定めて、例えば3Dプリンターや工作機器などの施設設備を整備しております。
 今後とも、生徒の自己実現のため、専門分野に関する技術、技能の向上を図ることができるよう、専門高校における施設設備の整備を計画的に進め、実習環境の充実に努めてまいります。

○野上(ゆ)委員 次に、専門高校の学習指導を充実させるための取り組みについて伺います。
 専門高校においても、学習指導において年間授業計画、いわゆるシラバスの作成は重要であると考えております。シラバス作成は、今、コマシラバスという取り組みもありますけれども、教員ごとのばらつきを避けることができ、教育内容を一定水準に保つ効果があります。また、人材養成の目的を明確化し、成績評価基準等をシラバスに明示することによって、学習や学習の習得状況の評価、検証を行うことが有効です。シラバス作成をきちんと推進していくべきと考えております。
 専門高校におけるシラバス作成の現状と課題について伺います。

○出張教育改革推進担当部長 各専門高校では、生徒や地域の実態を踏まえ、学校の設置目的を達成するための特色ある教育課程を編成しております。その上で各専門教科の教員は、学習指導要領に基づき、教室における講義と実習とを関連させた年間授業計画を作成しております。
 今後、産業界の急速な進展に対応し、年間授業計画の改善充実を図り、適切な指導を行っていく必要がございます。

○野上(ゆ)委員 今後の課題克服のためにどのような取り組みを考えているのか、改めて伺います。

○出張教育改革推進担当部長 これまでも各専門高校では、専門学科ごとに学科主任が中心となって、指導計画の改善等について定期的に学科の打ち合わせ会を開催しています。
 今後とも、都教育委員会では、この会において年間授業計画や授業の進度、指導内容について打ち合わせを行い、必要に応じて改善を行うなど、教科内の組織的な指導体制を強化できるよう支援してまいります。

○野上(ゆ)委員 ぜひ効果的なシラバスを作成していただきまして、その後の評価、検証をきちんと行って、また次年度へと取り組みを進めていただきたいと思います。
 さらに、骨子にもある工業高校のデュアルシステム科のように、学校外での学習を教育課程に大幅に取り入れる取り組みがありますが、このような専門高校では、学校内での学習内容と学校外での実習の関連性が十分にとれていないと、そごが生じてしまうおそれがあります。これは都立の工業高校のみならず、全国的に専門高校が抱えている課題でもあります。
 この工業高校におけるデュアルシステム科などでは、学校内での学習と学校外での実習の相互の関連性や整合性をどのように確保していくのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 校内での学習では、ものづくり企業において重視される基本事項について、専門科目の中で徹底して指導しております。また、校内での学習の成果を長期就業訓練に生かせるよう、次年時に派遣予定先企業でのインターンシップや企業経営者による講話を受講させております。

○野上(ゆ)委員 デュアルシステム科などでは、単発ではない学校外での取り組みがあるかと思いますが、えてして単発的なインターンシップや体験型の学習ですと、どうしても成果が図れなかったり、現状行っている学習の内容と関連性がなかったり、あるいはその検証が難しかったりすることが多いというふうに聞いておりますので、ぜひ学校内での取り組み、学校外での取り組み、あるいは教員以外の外部人材を活用しての校内での取り組みについては、きちんとした評価、検証が行えるように取り組みを行っていただきたいと思います。
 また、専門性を高めるために専門教育科目の充実はもちろんですが、一方で専門高校においても、普通科目と専門科目のそれぞれについて基礎学力をしっかりと身につけることが重要なのはいうまでもありません。
 特に専門高校においても、例えば大学等の上級学校に進学したいというような、生徒、保護者の進路に対する多様なニーズがあるというふうに考えております。専門性が向上すればするほど、また上級の学校に行って学びを続けたいという意欲も湧きますので、そういったニーズにもしっかりと対応することが必要であると思います。
 専門性の向上のための専門教育科目一辺倒のメニューしか用意されていないと、それらのニーズには相反することになってしまいます。専門高校においても、大学進学等の希望がある生徒の進路希望にも応えるために、普通科目の指導の充実もやはり必要と考えます。このような進路希望に応える柔軟な対応をどのように図っていくのか見解を伺います。

○出張教育改革推進担当部長 大学や専門学校への進学を希望する専門高校の生徒の多くは、日ごろの学習成果や高度な資格、課外活動の実績などを生かし、推薦入試を活用して進学しております。
 また、大学センター試験を受験するなど、一般受験で大学進学を目指す生徒には、各学校の教員が放課後や長期休業期間を利用して、補習や補講を行っております。

○野上(ゆ)委員 平成二十一年に行われた国のキャリア教育・職業教育特別部会の中で、大学教授である委員が以下のようにいっております。技術が高度化する中、高校三年間では十分な知識、技能を身につけることが難しいことを考えると、一つの選択肢として、就職を前提として専攻科のあり方を考えることができるのではないか。高等専門学校卒業者の評価が高いことから考えても、専門高校卒業者の中にも、さらに専門教育を受けるという選択肢があってもよいのではないか。
 さらに、先ほど質問いたしました普通科目についてですが、普通教育の中で、「産業社会と人間」はキャリア教育にはなるが職業教育にはならない。個人的には、数学や物理を勉強することの意味を理解させることが、普通教育としての職業教育と考えるというふうに、商科大学の教授が委員として発言をしております。
 ですから、専門高校といえども、きちんと基礎的な科目を学ぶことが、より専門性の高い技術を身につけたり、能力を身につけることにつながるということになりますので、ぜひ専門高校においても、ある一定の学力が身につけられるように取り組んでいただきたいと思います。
 次に、専門高校における産学連携の取り組みについて伺います。
 骨子においても、専門高校と産業界との連携の推進が取り上げられております。専門高校と地域の産業、企業、あるいは大学とがパートナーシップを確立し、地域の産業が求める人材を育てていくことが重要であると考えております。そのためには、専門高校と産業界の両者が育成すべき人材像を明確にして、そして、学校における教育内容の不断の見直しを行っていくことが必要であるというふうに考えます。
 しかし、それぞれの専門高校が、あるいは教員の皆さんが、それぞれの学校で連携のパートナーを独自に開拓したり、あるいは調整をしたりするということは、なかなか時間的にも難しいのではないかというふうに考えます。このため、調整期間などを設けることで、産学連携教育をより円滑に推進できるというふうに私は考えております。これらの連携は、専門高校の進路指導面だけではなくて、技術や専門分野の継続性としての教育が確立しやすい、教育課程のカリキュラムレベルでの連携も有効であるというふうに考えます。
 そこで、専門高校と大学との連携、いわゆる高大連携ですが、大変重要であると考えますが、その推進のために都はどのように取り組んでいるのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 専門高校では、専門的な知識や技術を有する大学教授を年間を通して招聘し、授業等で活用することで生徒の学習意欲や専門性の向上を図っております。
 今後とも、都教育委員会は、専門教育の質を高めるために、専門高校が大学との連携を積極的に活用するよう指導してまいります。

○野上(ゆ)委員 専門高校と産業界の連携についてですが、やはり仕事の内容を知って、生徒が自分の適正に合わせた職種を発見したり、あるいは進路選択につなげたり生き方につなげていくということを期待して、産業界とのパートナーシップは非常に有効であるというふうに考えます。
 また、人材育成のニーズは常に変化しております。生徒の企業での実践は、教員と現場の貴重な接点となり、実習計画、あるいは目標、指導方法に関する意見交換から、指導に関するフィードバックを着実に行えるというふうに考えております。
 そこで、専門高校と産業界とのパートナーシップについて、今後どのように都は進めていくのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 都教育委員会は、都立高校の生徒に望ましい職業観、勤労観を身につけさせ、進路選択の能力、態度を育成することを支援するため、平成十八年度に国際ロータリーと基本協定を締結し、各都立高校でのインターンシップの取り組みを支援してきております。
 また、生徒の職業観、勤労観を醸成し、積極的な進路決定を促すため、企業での実践的な長期就業訓練を行う東京版デュアルシステムについて、産業界からの協力を得て実施してきております。
 今後、都教育委員会は、これらの取り組みを通して、より一層積極的に産業界に働きかけなどをして、学校と産業界の連携を推進してまいります。

○野上(ゆ)委員 特に国際ロータリーの会員の皆さんは、地域での活動もしていらっしゃる方が多いというふうに伺っております。現地レベルでの高校と企業の意識のすり合わせの機会になっているというふうに考えます。
 今後、企業や大学、あるいは先ほど申し上げましたけれども、職業訓練機関やその他の機関と信頼関係をさらに強めていただいて、連携していただいて、やはり人材育成のプラットホームになり得る専門高校であるというふうに私は思っておりますので、専門高校の大きな役割を期待しているところでございます。
 次に、専門高校のうちの商業教育の振興について、最後に伺いたいと思います。
 平成十四年に策定された都立高校改革推進計画新たな実施計画において、都教育委員会は、リーディングコマーシャルハイスクール構想を打ち出し、実施しておりました。これは、中央大学商学部と都立商業高校との連携による高大接続会計教育の取り組みなどを含み、一定の成果を得ていたというふうに記憶をいたしております。
 しかしながら、ことし六月に出された都立専門高校改編基本計画検討委員会報告書においては、商業高校に関する検討として、商業科の規模の見直しが示されています。今回の骨子において、商業高校の改編案が示されております。
 確かに、商業高校において、入学時に期待していなかった教育に、より学習意欲をなくす事例は全国的にもありますし、都立商業高校においても、もともと商業教育を希望していない不本意な入学や、卒業後に専門教育と異なる進路をとる生徒が一定数存在するとの調査結果があります。しかしながら、商業高校における情報処理、基礎英語、簿記や財務会計などの体系的な知識の習得は、大学等におけるさらに専門的な学習へとつながるものでありますし、単なる実務演習ではないというふうに私は考えております。
 例えば簿記は、存在の諸表を二元論的に表示する哲学であるというふうに私自身は教わりました。二元論である、哲学である、簿記は哲学なんですよというふうに。私自身は高校を卒業してから簿記を学習したんですけれども、非常に奥の深い学問だなというふうに、これを高校時代に学んでいたら、また生き方の選択が変わったんではないかなと思うほど、非常に学問的にもすばらしいものであるというふうに感じました。二進法ですから、コンピューターや易学の世界観で最も重要な考え方でもありますし、商業高校は哲学を学ぶ重要な高校といってもいい存在として私は捉えております。全国には成果を出している商業高校が幾つもありますし、あらゆる職種に対応可能な学問である商業を学べる商業高校の規模縮小には反対であるといわざるを得ません。
 都立の商業高校では、多様化した東京にある、数多くの職種の仕事内容を知り、生徒が自己の適性に合った職種を発見するなどして適切な進路選択に結びつけられなかった、あるいは学校での指導や教員配置に課題があったのではないかというふうに考えております。
 そこで、かつてのリーディングコマーシャルハイスクール構想の成果が持続できなかった課題をどのように捉えているのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 都教育委員会は、平成十五年一月に商業高校の自律的改革の支援の一環として、芝商業高校と第一商業高校をリーディングコマーシャルハイスクールとして五年間指定いたしました。
 この間、これらの学校では、中央大学と連携して生徒に高度な資格を取得させたり、校内に模擬株式会社を設置するなど、先進的な取り組みを行ってきました。大学との高大接続は、要件となる資格の取得が困難なことから現在は実施しておりませんが、高度な資格を取得させる指導や模擬株式会社での商品販売などの成果は、簿記などの資格取得の促進や地域と連携した商品開発など、他の商業高校にも広く普及しております。

○野上(ゆ)委員 今後、商業高校の改善を進める上で、どのような評価項目を考えているのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 商業高校を改善するための評価項目としては、企業及び大学等と連携した授業の実施や、その成果発表などの取り組み状況のほか、募集倍率や中途退学率など、商業高校が抱える課題に関する指標などが考えられます。

○野上(ゆ)委員 この改革の骨子の中にも何度も出てきますけれども、やはり中途退学者を減らしていくということは非常に重要な取り組みだと思います。
 今の答弁にもありましたけれども、中途退学率を下げて、あるいは応募倍率を上げるために今後どのような改善充実を図っていくのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 商業高校の魅力などを高めるためには、今後はビジネス活動について調査研究する科目や企業等と連携した授業などを実施することで、商業教育の改善充実を図ってまいります。

○野上(ゆ)委員 商業教育においては、生徒が検定資格や、あるいは学校での授業を通して、自分の夢や憧れなど、将来の進路を視野に入れた学びの高揚や、生涯にわたり学ぶことの重要性や、自分自身への、誇りと自信を認識させるよう取り組んでいただきたいと思います。そのためには、やはり学校内での授業の計画、学習の計画、実行、評価、改善できるいわゆるPDCAサイクルを意識した商業教育の充実が求められていると思います。
 今回の骨子では、工業高校におけるデュアルシステム科の増設が挙げられておりますが、他県では、商業高校においてもデュアルシステムを導入している高校があります。そこでは理論学習と実習の内容を関連させ、就職や上級の学びにつなげているなど、成果も上がっていると聞いています。
 そこで、都立商業高校にもデュアルシステムが有効であるというふうに考えますが、導入への見解を伺います。

○出張教育改革推進担当部長 これまで都立商業高校では、実社会で役に立つ知識や技能を学習し、多様なビジネス資格を取得するなどにより、生徒の専門性の向上を図ってまいりました。
 今後、都立商業高校では、企業等と連携して、産業界の求める人材としての能力を育成することで卒業後の生徒の進路実現につなげてまいります。

○野上(ゆ)委員 専門高校についての質問をさせていただきましたが、やはり専門高校の教育は、経済社会の仕組みを全体的に学ぶ内容です。特に商業高校はそうですけれども、この学習を通して働くことや実学を中心に備えた社会全体への脈絡をたどらせるということが可能であるというふうに考えます。個人の学習から社会への展望を与えるということができる、私は非常に大きな可能性を持った高校であるというふうに考えております。
 専門高校のさらなる充実発展を望み、また、ぜひとも生徒には、将来の職業生活、あるいは進路実現、自己実現、具体的な目標の中で主体性を確立しながら、みずからの人生を切り開いていくという力をつけていただきたい。そうした教育を継続的に行っていただけるよう要望いたしまして、私からの質問を終わります。

○小松委員 それでは、まず、東京都教育施策大綱から伺っていきたいと思います。
 このたび策定された教育施策大綱ですが、これは私学も対象なんでしょうか。まず確認させてください。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づき、大綱は地方公共団体の長が教育の振興に関して策定するものでございます。
 十一月に知事が策定した東京都教育施策大綱は、教育委員会が所管する公立学校についての教育の根本方針を示すものとなっております。

○小松委員 私学にはそれぞれ建学の理念がありますし、独自の教育方針があるので、都知事が押しつける筋合いのものでもないと思います。私立学校を対象としたものではないという今の答弁を伺って、むしろ安心しています。
 この大綱策定に当たって、外部の有識者や専門家などの意見聴取は行われたのでしょうか。また、三年後の見直しに向けて、そのような機会を設けることは検討されているのかお伺いします。

○安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 東京都教育施策大綱は、昨年十二月に知事が策定しました東京都長期ビジョンの施策のうちから特に重要で優先的に取り組むべき事項を教育の根本方針として示したものでございます。
 このため、大綱策定に当たっては、東京都総合教育会議において三回にわたり教育委員との意見交換を重ねてきており、外部の有識者等から意見聴取を行う必要性はなかったものと考えております。
 今後とも、各種調査における都民の意見などを踏まえながら適切に対応してまいります。

○小松委員 東京都総合教育会議運営要綱の第五条には、会議は、協議を行うに当たって必要があると認めるときは、関係者または学識経験を有する者から当該協議すべき事項に関して意見を聞くため、関係者等を会議に出席させることができるとあります。大綱という、いわば教育施策の最高法規に当たるかと思いますが、を策定するための協議であれば、当然、外部の有識者からの意見聴取を行ったものと思っていました。
 まして、この間に教育委員会では委員の交代がありました。二十人もいるような会議体ならともかく、若干驚いているところですが、今後は現場の声も拾い上げて、地に足のついた議論を行っていただきたいと思います。また、今後の見直しに当たっては、パブリックコメントの実施も検討すべきと申し添えておきます。
 それでは、続いて、発達障害教育の推進についてお伺いしたいと思います。
 このほど都教委が公表された発達障害教育推進計画案の骨子ですが、計画の基本理念として、発達障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が、ともに学び合うことができるよう、通常の学級における教育的支援を初め、障害の状態に応じた多様な教育の場を拡充するというふうにあります。
 学校で普通の子と違うことをさせられるのは嫌だという子も実はいるわけですが、小中学校における通常の学級での指導や支援を望む児童生徒への対応として、どのような施策を行っていかれるのかお伺いします。

○松川特別支援教育推進担当部長 小中学校の通常の学級に在籍している発達障害の児童生徒の中で、特別な指導が必要な児童生徒については、特別支援教室などで障害の状態に応じた適切な指導を受けることで、将来の自立と社会参加につながると考えております。
 しかし、特別支援教室などでの指導については、保護者や本人の理解と合意が得られない場合には、通常の学級での指導、支援を中心に行うこととなります。通常の学級における指導、支援の充実を図るため、個別指導の充実とともに障害のあるなしにかかわらず、わかりやすい授業の実施等、ユニバーサルデザインの考え方に基づく指導などを行ってまいります。

○小松委員 来年四月一日から障害者差別解消法が施行されることになりますので、そうしますと合理的配慮が義務づけられる、こんなようなことからお伺いしたわけですが、東京都市長会が来年度の東京都予算編成に係る重点事項の中で要望を出しています。そこでは、合理的配慮に関する合意形成に一層の時間が必要になることを踏まえとして、職員の配置、あるいは財政支援などについて、また国がこのたび創設した制度を活用して、市町村への補助などを要望しています。都教委として、これらをしんしゃくして前向きに取り組んでいただきたいと求めておきます。
 それでは、続きまして、都立高校改革推進計画についてです。新実施計画案骨子です。夜間定時制課程の閉課程の問題に絞って伺いたいと思います。
 まず、改めて確認したいのですが、都立高校の夜間定時制課程の設置目的とは何か。また、都立高校改革推進計画新たな実施計画を策定した二〇〇二年度と直近の二〇一五年度、今年度ですが、それぞれの夜間定時制課程の学校数と第一学年の募集定数、そして在籍生徒数、以上、伺いたいと思います。

○出張教育改革推進担当部長 夜間定時制高校は、従来、昼間に学校に通うことができない勤労青少年の学びの場でありました。しかし、在籍する勤労青少年は減少の一途をたどり、近年、学習習慣や生活習慣等に課題がある生徒など、多様な生徒が在籍することから、夜間定時制高校の役割は大きく変化しております。
 都立高校の学年制の夜間定時制課程の学校数は、平成十四年度においては九十六校一分校、募集定員四千六百五十人、第一学年の在籍生徒数三千六百三十九人でございます。平成二十七年度においては三十九校、募集定員二千二百五十人、第一学年の在籍生徒数は千五百十五人でございます。

○小松委員 ただいま、平成十四年、二〇〇二年、そして二〇一五年を対比させて伺いましたが、この二〇〇二年は、石原知事のもとで改革推進計画新たな実施計画が策定された年です。一九九七年から始まった都立高校改革の延長線上ではありましたが、夜間定時制課程に注目すると、今に続く大幅な統廃合がこの計画によってさらに促進されています。
 今のご答弁では、当時と比べて学校数、募集定員、一学年の在籍、全て半数以下になっています。しかし、九七年当時の定時制の学校数は百三校であって、二〇〇二年は九十六校プラス分校一でしたから、それ以降で半減以下というふうになっています。二〇〇二年改革の方が削減の度合いが非常に大きいということです。
 そして、さらにそれを減らしていこうとしているわけですが、では、都立高校等の新配置計画において閉課程の対象となっている小山台高校、雪谷、江北高校及び立川高校の定時制課程について、二〇一四年度に実施した入学者選抜の第一次募集の応募倍率と、ここ数年の変化の状況についてお伺いいたします。

○出張教育改革推進担当部長 平成二十六年に実施した入学者選抜の第一次募集における各高校の定時制課程の応募倍率は、小山台高校〇・二七倍、雪谷高校〇・一〇倍、江北高校〇・二六倍、立川高校〇・六四倍でありました。
 また、これら四校の過去三年間の応募倍率は、選抜年度により多少の増減はあるものの、いずれも減少傾向になっております。

○小松委員 それでは、小山台、雪谷、江北、立川、この四高校の交通アクセスはどのような状況でしょうか。また、この四校が閉課程されると通学できなくなる生徒が生じるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○出張教育改革推進担当部長 小山台高校は東急目黒線武蔵小山駅から徒歩一分、雪谷高校は東急池上線御嶽山駅から徒歩八分、江北高校はつくばエクスプレス青井駅から徒歩七分、立川高校は多摩都市モノレール柴崎体育館駅から徒歩五分でございます。
 また、四校の閉課程後も都立高校全体として必要な募集人員を確保し、適正に配置してまいりたいと考えております。
 さらに、交通機関の状況を見ますと、例えば立川高校夜間定時制課程については、現在も生徒は広域から通学しており、閉課程後は、既存の農業高校、町田高校、神代高校などの夜間定時制高校や砂川高校に通学できることなどを踏まえまして、新実施計画案を定めたところでございます。

○小松委員 これらの四校は、いずれも駅から徒歩圏内にあり、先ほども指摘がありましたが、交通アクセスが大変よい。夜間定時制は帰りが遅くなりますから、閉課程となることで通学に不都合が生じることが懸念されるところです。通学に便利であることは重要な要素です。まして定時制課程の学校を減らしてきている中で、学校から遠い、通学距離が長い生徒は多くなってきています。
 この夜間定時制課程を閉課程にしますと、全日制、定時制の併置校が抱えるさまざまな制約は解消されるというふうに説明されています。しかし、この併置校が抱える課題とは何でしょうか。また、夜間定時制課程の閉課程により、それらの課題が解消されるのでしょうか、伺います。

○出張教育改革推進担当部長 全日制、定時制併置校では、両課程とも一定のルールを設けて、生徒の学習活動や生活指導、学校運営上の工夫などを行っておりますが、各課程の補習や部活動、個別指導などの施設利用や指導時間帯に制約が生じているという課題がございます。
 夜間定時制課程の閉課程及びチャレンジスクール等の昼夜間定時制の夜間部の規模拡大を行うことにより、両課程におけるこのような制約が解消されます。

○小松委員 制約が解消されるとのお話でしたが、例えば、立川高校定時制は一九三七年に設立され、七十八年の歴史があります。一定のルールを設けて工夫してきたというふうなお話でしたけれども、併置することによる制約はたとえあったにせよ、夜間課程をなくしてまで解消しなければならないものなのか大いに疑問があるところです。
 それでは、夜間定時制課程とチャレンジスクール、そして昼夜間定時制高校、この違いはどんなところでしょうか。夜間定時制を閉課程するかわりにチャレンジスクール等の規模を拡大することは、生徒にとってはどのようなメリットがあるのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 夜間定時制課程は学年制であり、全日制課程と同じ施設を兼用しているのに対し、チャレンジスクール及び昼夜間定時制高校は単位制、三部制の定時制単独校でございます。
 夜間定時制課程の閉課程と並行して新設するチャレンジスクールまたは規模を拡大する既存のチャレンジスクールや、昼夜間定時制高校への入学を希望する生徒にとっては、在籍する授業時間帯以外の科目履修による選択幅の拡大、三修制による三年間での卒業、専用施設による授業時間外の学習活動や部活動の充実等を図ることが可能となります。

○小松委員 チャレンジスクールや昼夜間定時制高校の受け入れ規模を拡大するに当たって、夜間課程を置く高校では給食の実施が義務づけられているわけですが、給食の提供量がふえることになるので、そのことへの体制は可能なのだろうか、施設整備が必要なのではないだろうかというふうに考えましたが、これは対応が可能というふうに伺いました。
 しかし、二〇一四年度における都立高校中途退学者の全体に占める割合を見ますと、全日制普通科〇・七%、全日制専門学科二・二%、全日制総合学科〇・五%であるのに対し、定時制は一一・三%となっています。二〇〇六年には定時制の中退率一六・四%だったことから見ると、一六・四から一一・三と減ってはきていますが、全日制と比べると相当高い状況です。
 その理由について、文科省の調査によれば、学校生活、学業不適応が最も多く、二番目は進路変更となっています。この二項目が飛び抜けて多いという状況は、全日制も変わらない、同じとなっています。中退する生徒の理由がどの学校もほぼ同じであるということは意外だったんですが、これは押さえておく必要があると思います。
 ところで、二〇〇二年の都立高校改革推進計画新たな実施計画が出された後、この中で夜間定時制高校を大幅に閉鎖していこうという方針に対し、国連の人権機関が懸念を示しました。国連子どもの権利委員会の二〇〇四年の総括所見は、政府に、東京都に対して夜間定時制高校の閉鎖を再検討するよう奨励し、かつ代替的形態の教育を拡大することと勧告しています。このときから十一年たったわけですが、勧告に従うどころか逆の方向に進もうとしているように見えるわけですが、都教委の見解を伺います。

○出張教育改革推進担当部長 平成十六年国連子ども権利委員会総括所見に対する平成二十年の日本政府報告では、都立高校定時制課程の再編について、東京都教育委員会において、多様化する生徒の実態に対応するため、従来の夜間定時制課程を統合して、新たに午前、午後、夜間の三部制をとる昼夜間定時制単独校を設置する方向で整備している。この整備計画では、課程廃止となる夜間定時制課程に通う生徒に対応した定員を確保することとしており、地域の特性や交通の利便性に配慮しながら、適正な規模と配置が確保されるよう取り組みが進められており、適切であると考えることから、国から東京都に対し本勧告に基づく指導等は行っていないとされております。
 こうしたことから、当時の定時制課程の適正な規模と配置の考え方は適切であると考えております。今回の新配置計画についても同様の考え方に基づいていることから、適切であると認識しております。

○小松委員 適切であるということを繰り返しおっしゃっているわけですが、子供の貧困が社会問題となっている今、定時制課程に入ってくる生徒は、さまざまな問題を抱え、支援をしている子供も多い。そして、学校がセーフティーネットになっていると考えるべきです。単純にその分の人数の受け入れ先があるからといって定時制を廃止するのではなく、成人の学び直しも含めて、あらゆる人々の学習の場を確保できるようにすべきだと考えます。
 ことしのノーベル賞受賞者の大村智博士は、都立の定時制高校の教諭をしておられました。都立墨田工業高校の先生として定時制に五年間勤務し、物理や科学を教えていましたが、学業に熱心に励む高校生に心打たれて、もう一度勉強し直したいと考えたというふうにおっしゃって、一九六〇年、東京教育大学の大学院で研究生になったといいます。
 五〇年代から六〇年代にかけての当時は、今から半世紀前のことですから一概に比較はできないわけですけれども、本来の意味での勤労青少年のための定時制高校だったろうと思いますし、また、大村博士も学業と就労を両立させて、それができていた状況でした。当時それが可能だったのは、昼間自由な時間があったからではないかと思います。しかし、これから夜間課程をなくしていくのだとすると、三部制では朝から夕方、あるいは昼から夜という働き方になると聞いていまして、それはできなくなることになります。大村博士は、さぞ残念に思っていることだろうなというふうに考えるところです。
 それでは、再雇用職員等の採用選考不合格等を理由とする損害賠償請求控訴事件にかかわる上告受理の申し立てについて若干お伺いいたします。
 東京高裁の十二月十日判決について、都教委としてはどのようにお考えになるのか見解を伺います。また、何を不服として上告を考えるのかお答えください。

○江藤人事部長 第一審に続き、都教育委員会の主張が認められず、まことに遺憾であります。
 都教育委員会は、再雇用等の採用選考に当たって広範な裁量権を有しております。原告らが校長の職務命令に違反し、不起立という国旗・国歌の指導を妨げる行為を、生徒、保護者、その他の学校関係者の面前で公然と行ったことは重大な非違行為であり、在職時における勤務成績が良好であるとの要件を大きく欠くものでございます。その採否につきまして、総合的な判断のもとに原告らを不合格としたことは、裁量権の範囲内での公平な判断と考えております。
 今回の判決は、このことが裁量権の逸脱または濫用に当たるとしており、これを不服として上告受理の申し立てを行うものでございます。

○小松委員 いわゆる一〇・二三通達に対する違反があったからとして、都教委が再雇用を拒否した二〇〇九年にこの訴訟が提起されています。
 この通達違反を重大な非違行為とされていますが、東京地裁がこれをどのように見ているかといえば、判決の一部を引用いたしますと、少なくとも学習指導要領上は、本件職務命令が学習指導要領に従って編成された他の教育課程に関する職務命令と対比して特別の位置づけを有しているものではなく、本件職務命令違反だけで従前の勤務成績の良否という判断を可能とする位置づけが与えられているものと評価することはできないこと。本件不起立等の態様が他の教職員や生徒らに不起立を促すものでも、卒業式等の進行を阻害し、または混乱させるようなものでもなく、厳粛な雰囲気の中で行われるべき卒業式等の狙いを大きく阻害するなどの影響を与えたとまでは認められないことというふうに明確に述べられています。
 最初の提訴から六年も経過し、この間には当初の原告のうち三人が亡くなられたと聞いています。このような係争を続けることが子供に及ぼす影響は決して好ましいものではないと思います。最大の被害者は子供です。
 質問ですが、今回と同様、再雇用職員や非常勤職員の採用選考における職務命令違反による不合格などにかかわる訴訟事件は、どのくらいあるのでしょうか。

○江藤人事部長 本件とは別に、既に終了している事件が五件、東京地方裁判所において係属中の案件が一件ございます。

○小松委員 ことし五月二十五日の第一審判決に対する東京都の控訴が既に常識の範囲を超えたものでしたが、今回、第二審においても全く同じ理由で棄却されたことを認めず、再び同じ轍を踏もうとしていることについて、なぜここまでかたくなな態度、姿勢をとり続けるのか全く理解に苦しみます。
 ことし八月に改定された東京都人権施策推進指針には、人権施策の基本理念の第一に、人間としての存在や尊厳が尊重され、思いやりに満ちた東京が掲げられていますが、都教委の行為はこれとは真逆であり、本質的に人の良心と思想を踏みにじる人権侵害であると指摘しなければなりません。
 また、先月策定された東京都教育施策大綱では、子供たちの将来像として、これからの次代を担う知、徳、体の調和のとれた人間を目指すとしていますが、であるなら、都みずから子供たちに徳を語るにふさわしい範を示さなければなりません。上告を繰り返すことは税金の無駄遣いというしかなく、議会の会期中において、昨日の判決からきょうまでわずか一日しかないという短時間で委員会会議事件を追加し、本会議に持ち込まれることになりますが、本来であれば十分な議論の時間が確保されるべきであったろうと思うところです。
 この上告受理の申し立てには反対であることを申し上げ、質問を終わります。

○今村委員 それでは、私からも質疑をさせていただきたいと思います。
 来年度から本格導入する小学校の特別支援教室について、整備の整った市区町村から順次導入していくということであります。現時点におきまして、来年度に導入するとしている市区町村の学校数はどの程度あるのでしょうか。また、今後の見通しについて伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 現時点におきまして、平成二十八年度には四十の区市町村が全小学校の約五割に当たります六百三校に特別支援教室を設置することとしております。
 また、全ての区市町村が平成三十年度までに特別支援教室を導入する計画としております。

○今村委員 小学校への特別支援教室の導入を三年かけて行われるという予定になっているようでありますけれども、どのような理由で三カ年としたのか、また、今後予定をされております中学校ではいかがなのか伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 特別支援教室の設置主体である区市町村ごとに小学校数や準備状況などが異なり、モデル事業の結果を踏まえますと、全ての小学校に特別支援教室の設置を完了するには三カ年必要であると判断いたしました。
 また、中学校におきましては、来年度からモデル事業に着手し、特別支援教室の導入に向けた準備を着実に進めてまいります。

○今村委員 私もたびたびこの委員会でも特別支援教室のことを取り上げてまいりました。多くの保護者等も期待をしているというふうに思います。初年度で約五割というお話がありましたけれども、多くの学校ができるだけ早く設置できるように、都教育委員会の市区町村に対する支援を改めて求めておきたいと思います。
 小中高等学校の指導内容の充実事業と組織的な対応において、指導の充実のために事例集だったりガイドライン及び手引などを作成するということを書かれております。こうしたものは使用していく中で現場の声などを反映し改定が必要になると考えますが、そうしたことはどのようになっているのか伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 指導等に関する事例集、ガイドライン及び手引等につきましては、作成後に各学校で活用し、実際に指導が行われる中で必要に応じて改定を検討してまいります。

○今村委員 発達障害教育を担う教員だったり、また教育管理職の発達障害に関する理解や対応力の向上も大切な問題であります。都教育委員会として、この研修に取り組むと書かれておりますけれども、どのように取り組んでいくのか伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 来年度から、区市町村において小学校へ特別支援教室が順次導入されますことから、全ての教員が発達障害の基礎的な知識及び対応力を身につけることが必要でございます。このため、都教育委員会は、各学校において発達障害教育を適切に実施できるよう、校長、副校長を対象とした悉皆研修を実施しております。
 また、現在、初任者研修、十年経験者研修等の経験や職層に応じた研修の中で実施している発達障害に関する知識や、通常の学級における発達障害の児童生徒とのかかわり方などに関する内容を充実し、教員の資質、能力を向上してまいります。

○今村委員 先ほどの事例集、ガイドライン、手引などとあわせまして、こうした研修の充実をもって、よりよい教育がなされるように期待をしたいというふうに思います。
 ところで、市区町村が配置をしている特別支援教育支援員や産休代替教員も含め、さまざまな教員などがこの発達障害の児童生徒の指導にかかわっております。これらの人材が発達障害に関する知識を身につける必要があると考えます。また、教員などが困った際に、実際に的確なアドバイスが受けられる、こういった相談できる体制が必要だと考えますが、どのように考えられているか伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 都教育委員会は、区市町村が配置している特別支援教育支援員の発達障害に関する理解を促進するための研修用DVDを作成し、全ての区市町村の小中学校に配布いたします。
 また、都立特別支援学校のセンター的機能の活用により、小中学校等からの要請に応じて特別支援学校の教員が指導に立ち会い、教員等に助言を行います。さらに、小学校につきましては、特別支援学校設置校に臨床発達心理士等が巡回し、教員等に助言をしてまいります。

○今村委員 次に、乳幼児から学校卒業までの一貫性のある継続した支援を充実するために、個別の教育支援計画に基づく連携ガイドラインを作成するとしておりますが、この作成の目的を改めて確認させていただきます。

○松川特別支援教育推進担当部長 発達障害の児童生徒の指導、支援に当たりましては、指導方針、指導内容、方法等を進学先等に引き継いでいくことが重要でございますが、さまざまな事情により必要な引き継ぎが十分に行われていない事例もございます。
 このため、都教育委員会は、円滑な引き継ぎ方法や引き継いだ情報の活用方法等に関して、教員の理解を深めることを目的とした個別の教育支援計画に基づく連携ガイドラインを作成し、着実な引き継ぎを推進してまいります。

○今村委員 学校における発達障害教育の推進は教員の努力だけではなくて、外部の専門家の力も導入すべきと考えます。そうしたことが今回の計画にも書かれておりますけれども、教育委員会の見解、取り組みを伺います。

○松川特別支援教育推進担当部長 発達障害の児童生徒の教育を充実するためには、教員が専門家の協力を得ながら児童生徒の課題を的確に分析した上で、一人一人の障害の状態に応じた指導、支援を行うことが必要でございます。このため、平成二十八年度から順次設置してまいります小学校の特別支援教室を臨床発達心理士等が巡回し、専門的な見地から教員に対して指導助言等を行う体制を整えてまいります。

○今村委員 ありがとうございました。
 ぜひ今回の発達障害の教育のあり方については、学校現場での指導の問題でありますので、実効性を担保していく上でも、私もこの議会で障害者差別解消法に基づく質問をさせていただきましたけれども、この対応要領をどのようにつくるのかということが教員の指導や教育のあり方に大きくかかわってくると思いますので、そうしたものもしっかりつくりながら、改めて実効性の担保をお願いし、次の質問に移りたいと思います。
 都立高校改革推進計画新実施計画についてであります。
 この計画を策定するに当たりまして、計画に盛り込まれた事業に予算的な焦点を当てるという意味もあると思います。今回の計画に関する予算の確保については、どのようにお考えで作成されたのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 今回の新実施計画の策定に当たっては、必要な施策や事業、経費等に関する今後の方向性について、関係局と協議しながら進めております。
 予算については、長期的な見通しを持って毎年度必要な額を見積もり、都議会でご審議いただいた上で事業を実施していくことになります。
 今後とも、計画の実施に必要な予算の確保について、関係局と連携しながら取り組んでまいります。

○今村委員 次に、骨子にあります専門高校等の改善について、同じく予算の視点からお聞きをしたいと思います。
 答弁をいただいたように、予算については長期的な見通しを持って、この計画に必要な予算の確保が欠かせません。一方で、限られた予算を効果的かつ効率的に活用し、都立高校生一人一人の能力を最大に伸ばしていく必要があります。
 特にこの専門高校は、普通科高校と比べ、施設設備を整備していくためには相応の予算が必要になります。産業界から求められる人材を育成していくためには、技術の進歩に合わせ設備を更新していくことが望ましいものの、全ての専門高校の設備を毎年など、こうして更新していくことは、実際には困難なこともあるかと思います。
 そこで、外部機関も活用しながら効率的かつ効果的に施設設備を活用し、生徒に産業界で有益な技術、技能を習得させていく必要があると思います。こうした取り組みをどのように行っていくのか伺います。

○出張教育改革推進担当部長 都教育委員会は、産業界の動向を踏まえて、教育課程を編成している各専門高校のニーズを把握し、予算の範囲内で優先順位を定め、施設設備を整備しております。各専門高校では、新規に導入した施設設備を使った実習を通して、専門分野に関する最新の知識と技術を習得させています。また、企業見学やインターンシップなどを通して、最先端の技術、技能に触れる機会なども設定しております。
 今後も、学校の実習設備に加え、産業界の施設設備も活用しながら、生徒の専門性向上に向け、産業界が求める技術、技能を習得できるようにしてまいります。

○今村委員 ありがとうございました。
 次に、島しょ高校の改善について伺いたいと思います。
 今回の新実施計画にあるとおり、大島海洋国際高校を除く島しょの高校は、在籍生徒数が定員を下回る状況が続いております。生徒同士が切磋琢磨する環境が生まれにくいなど課題が生じております。
 そこで、これまでも私もこの問題について取り上げてまいりましたが、島しょの高校に島外の中学生を受け入れて生徒数をふやし、また島内の生徒と一緒に学校生活を送ることで、生徒間でいい意味での競争意識が芽生え、学校も活性化すると主張してまいりました。都教育委員会は、その実現に向けて町村との積極的な協議を行ってまいりました。
 その結果、この九月に、都立神津高校で神津島村でのホームステイ方式により島外生徒の受け入れを決定し、来年度から一名受け入れることとなり、うれしく思っています。
 聞くところによりますと、島の高校の多くは定員の充足率が四〇%台から五〇%台でありまして、今後の各島の人口推計を見ても、児童生徒の数は一定の増減はあるものの、各学校の定員が充足される可能性は、残念ながら少ないといわざるを得ません。
 そこで、二〇一六年度の受け入れは、島しょ地域全体でこの神津島の一名ということでありますけれども、各校にあります高校の充足率を少しでも高めていくために、今後の受け入れの拡大が必要かというふうに思います。
 そこで、改めてこうした取り組みにどのように取り組んでいくのか伺います。

○早川都立学校教育部長 島外の生徒の受け入れは、学校の活性化はもとより、島しょ地域の振興にもつながるものと考えております。
 生徒の受け入れに当たりましては、都教育委員会は、島の高校の魅力向上や情報発信、入学者選抜制度における応募資格要件の見直し等の役割を担い、島の町村は、主にホストファミリーの確保など、生徒の居住環境を整備する役割を担っております。
 今後、都教育委員会は、島外の生徒の受け入れ拡大に向け、島の町村との協議をより一層積極的に進めてまいります。あわせて、ホームステイにかかる保護者負担の軽減など、町村と連携して必要な支援策を検討してまいります。

○今村委員 今回の神津島でのホストファミリーは一世帯でありまして、結果としては受け入れる募集人数も一名ということであります。聞くところによると、複数の希望があるようであります。今回この受け入れの拡大に向けて計画するということでありますので、島しょの高校のさまざまな教育資源を最大限活用するという視点も持ち、充足率を高めていく努力を改めてお願いしておきます。
 次に、大島海洋国際高校の実習船「大島丸」について伺いたいと思います。
 今回の計画の中にも、現状と課題の2に、この大島海洋国際高校では実習船「大島丸」を活用した海洋実習などの海洋国際教育を行っており、同校の今後の取り組みの方向では、その海洋国際教育のさらなる充実を図るため、新たな海洋教育を取り入れた教育課程や効果的な海洋実習を検討するとしております。
 現在の「大島丸」は、大島海洋国際高校の前身であります旧大島南高校の水産科の時代に使用し始めてから一定の年数が経過しており、そろそろ更新も含めた今後の方向性を定める時期に入っていると思います。
 そこで今回、この新実施計画案に大島海洋国際高校の海洋教育の充実を位置づけるに当たり、実習船の更新や、それに伴う船員の体制について、どのような展望を持って行っていくのか伺います

○早川都立学校教育部長 現在の実習船「大島丸」は、平成八年三月に竣工いたしました。その設備につきましては、毎年定期検査を行い、必要な整備を行って運航を確保しておりますが、いずれ更新時期を迎えることとなります。
 都教育委員会は、近年の海洋教育をめぐる状況の変化などを受け、専門の調査機関を活用して、他の道府県の高校が実施する海洋教育の実態等の調査を行ってきました。また、外部有識者から成る検討委員会を設置し、大島海洋国際高校における海洋国際教育の充実策について整理をしてまいりました。この検討委員会での議論も踏まえ、今後、実習船のあり方や具体的な教育内容等を検討してまいります。

○今村委員 これまで本委員会において取り上げてきましたけれども、同校の大きな特色である海洋実習が、船員体制の問題などから二年続けて予定どおり実施できていない状況になっております。前年度、一年目のときには、ぜひ次の学年の児童生徒にはそういったことのないようにということを私は申し上げましたが、それは当初、前年度一年目に実習できないときに、今の、その受けられない生徒の皆さんが、ぜひ後輩の皆さんには、現在の二年生にはそうした思いをさせないでくださいと説明会で話をしていたことに心を強く打たれたからであります。ぜひ、改めて都の取り組みの強化をお願いしておきたいというふうに思います。
 一方で、こうした海洋教育をめぐる状況も変化している中で、より充実した海洋教育を実施していくためには、実習船の活用はやはり必要不可欠であります。有識者も交えて議論をするということでありますので、安定的、計画的な海洋実習の確保という視点も忘れずに取り組んでいただきたいと思います。
 次に、この大島海洋国際高校の寄宿舎について伺いたいと思います。
 本校の大きな特色といたしまして、実習船を活用した海洋教育と並びまして寄宿舎生活、いわゆる寮での教育生活があります。同校では、島外から入学する生徒が親元から離れ、この寄宿舎で三年間の高校生活を送るわけであります。規律正しい生活の中で熱心に学習に取り組むとともに、集団行動によって規律性も身につけてまいります。私も同校の生徒の様子を見たり聞いたりすることがありますが、同校の生徒は自分の意見を明確に述べることができたり、また礼儀も正しく、たくましい人材に育っているという印象を持っております。そうした人材の育成には、この寄宿舎での生活も大きく影響していると思います。
 そこで、今回の新実施計画でも寄宿舎の取り組みを盛り込み、充実を図るとしておりますが、今後どのように進めていくのか伺います。

○早川都立学校教育部長 大島海洋国際高校の寄宿舎は、規律性のある集団生活を通して生徒の忍耐力や規範意識を学校全体で育むという基本方針により運営しております。
 寄宿舎生活では、生徒の進路希望をかなえられる学力を身につけるため、自学自習の時間を夕食後から就寝前までの時間帯に設けるなど、特色ある取り組みを実施しております。
 今後は、先ほど申し上げました検討委員会での議論も踏まえ、さらに具体的な教育内容等を検討していく中で、寄宿舎における学習方法などについても整理をしてまいります。

○今村委員 寄宿舎についても実習船同様、今後、議論を進めていただけるということでありますので、積極的な議論を期待しておきたいというふうに思います。
 さて、先ほど、島外の中学生の受け入れのやりとりでもありましたけれども、こうしたホームステイ方式では、ホストファミリーの確保に向けて調整や労力、時間などを要して、受け入れ拡大には時間がかかることも考えられます。一方で、この大島海洋国際高校の寄宿舎には、例えば他の高校への転校などで、あきの部屋ができるということも想定されます。また、この委員会でもお話をしてありますけれども、小笠原村の話になりますけれども、父島には母島出身の生徒が小笠原高校に進学する際に入ることができる寮があります。その寮についてもずっと定員割れ、あきがあるということをこれまでも申してまいりました。
 私も高校時代に三年間寮生活を行ってまいりましたし、今回の東京都が進めるこうした教育の改革に当たりまして、寄宿舎の生活、または親元を離れて三年間生活を送るということは、こうした生徒にとっては大変意義があるかというふうに思います。そうしたいろいろな設備、今あるものを有効に活用していただくようにぜひ島の皆様とも協議をしていただきながら、ますますこうした取り組みが広がるようお願いをし、私の質疑といたします。

○植木委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○植木委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で教育庁関係を終わります。

○植木委員長 これより生活文化局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百九十七号議案から第百九十九号議案までを一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○ほっち委員 私からは、第百九十九号議案、東京都特定個人情報の保護に関する条例についてお伺いをしていきたいと思います。
 この条例は、マイナンバー制度の導入に伴い、東京都における個人情報などの適切な保護を図るため必要な事項を定めるものとして上程されたものというふうに聞いております。
 いよいよマイナンバーの利用開始が来月に迫っている一方で、不正利用や漏えいなどに不安を抱えている都民も多く、私の地元足立区でも、マイナンバー制度によって自分の情報がさまざまなところに広まってしまうのではないかというような不安の声も耳にしております。私もマイナンバー制度には強い関心を持っており、これまでも文教委員会等々で質問をさせていただきました。マイナンバー制度の円滑な導入には、個人情報の保護が極めて重要であります。
 都はこれまでも、個人情報の保護に関する条例により、個人情報の保護を適切に図ってきたというふうに思いますが、まずはマイナンバー制度の導入に伴い、都として新たな条例を制定することとした経緯についてお伺いをいたします。

○濱田都政情報担当部長 マイナンバー制度の導入に伴い、個人番号や個人番号をその内容に含む個人情報である特定個人情報については、法律に定める場合以外の利用、提供を原則として認めないといった点で、これまでの個人情報と取り扱いが大きく異なっています。マイナンバー制度の根拠法である、いわゆる番号法では、特定個人情報について一般的な個人情報より厳格な取り扱いを定めており、地方自治体に対しては、法律の趣旨を踏まえて個人情報保護に係る条例の改正等を義務づけています。
 そこで、都は、特定個人情報の適切な保護を図っていくため、東京都情報公開・個人情報保護審議会に条例整備のあり方について諮問を行いました。審議会からは、一つの条例の中に取り扱いが大きく異なる制度を盛り込むと、都民にとって非常にわかりにくくなるため、現行の個人情報保護条例の改正ではなく、新たな条例を制定すべきであるとの答申を受けました。
 都は、都民等からの意見募集を行うとともに、都内の区市町村との意見交換を行うなどの検討を重ねつつ、この答申を踏まえて、今定例会に特定個人情報の保護に関する条例の新設を提案するに至ったものでございます。

○ほっち委員 都民などの個人情報を守るために議論を重ね、新たな条例の制定に至ったということは今のお答えでわかりました。
 都政の適正な運営と都民の権利、利益の保護をより一層図るために制定されるものと思いますが、新たな条例とはどのような内容となっているかお伺いをいたします。

○濱田都政情報担当部長 新たな条例では、特定個人情報の利用、提供などについて、番号法の趣旨に基づき厳格な制限を設け、特定個人情報の取り扱いに係る厳重な安全管理措置を講じる義務や特定個人情報保護評価の実施などについて規定しています。
 都では、これまでの個人情報保護条例を遵守していくとともに新たな条例を適切に運用することで、都における個人番号や特定個人情報の安全かつ適正な取り扱いを確保してまいります。

○ほっち委員 新たな条例では、個人情報や特定個人情報について厳格な取り扱いを定めており、この条例を適切に運用し、安全に取り扱っていくということです。ぜひそうした取り扱いの徹底をお願いしたいと思います。
 そこで、具体的には、既存の個人情報と特定個人情報との取り扱いについて、どのような違いがあるのかお伺いをいたします。

○濱田都政情報担当部長 マイナンバー制度では、社会保障、税及び災害対策分野であって、番号法及び地方自治体が独自に定める個人番号の利用に関する条例で規定している事務についてのみ個人番号が利用できることとされております。
 そこで、都としても、新たな条例では、一般の個人情報と異なり、これらの事務以外では個人番号や特定個人情報の利用、提供を認めないこととしております。また、本人の同意があったとしても、法令に定める個々の事務の利用目的を超えて当該事務で収集した個人番号や特定個人情報の利用はできないものとしております。

○ほっち委員 都においては、新たな条例の中で個人番号などの取り扱いを明確に規定しており、しっかりとしたルールになるものと思われます。一方で、昨今の個人情報の保護の状況を見ると、漏えい事故といった事案がたびたびマスコミ等々でも報道されています。個人情報の明確な保護のためには、条例整備といったルールの策定に加え、適切な情報管理や漏えいリスクに対する対策が肝要であると考えます。
 そこで、都においては、今後どのような対策を実施していくのかお伺いをいたします。

○濱田都政情報担当部長 特定個人情報の安全管理措置については、国のガイドラインや都の新たな条例に基づき、特定個人情報等取扱事務要綱を初めとした庁内における統一的な基準を定め、対策を講じてまいります。
 例えば、データを保存するサーバーは入退室管理がなされた安全な環境に設置することや、ID、パスワードによって情報システムへのアクセス制限を行うといった措置に加え、取扱担当者を限定し、教育、研修の実施を徹底していくといった人的な安全管理措置も講じてまいります。このような厳重な措置を徹底することで情報漏えい等の事故を防止し、特定個人情報等の適切な保護に取り組んでまいります。

○ほっち委員 マイナンバーの利用に当たっては、個人情報を保護するさまざまな仕組みが講じられていることがわかりました。
 日本の番号制度は、利用できる範囲を法令で厳しく制限するなど、諸外国の同種の制度よりセキュリティーが高い仕組みと聞いていますが、一方で、まだまだ制度の周知不足もあって、都民、国民の中には不安や心配があるのも事実であります。私も条例案に目を通させていただきましたが、専門家でなければなかなか全容を理解するのが難しい制度だというふうに感じております。
 今後とも都民への制度周知に尽力するとともに、個人情報の保護をしっかり確保され、都民が安心してさまざまなサービスを享受できるよう、より一層、個人番号及び特定個人情報の安全な取り扱いの確保に取り組んでいただきたい旨を要望いたしまして、私の質問を終わります。

○野上(純)委員 特定個人情報に関するマイナンバー制度について質問させていただきます。行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用並びに特定個人情報の利用及び提供に関する条例についてでございます。
 今回のマイナンバー制度の成立の背景には、二〇〇七年に発覚した消えた年金があると私は思っております。誰の納付かわからない記録が五千万件もあり、もらえるはずの年金がもらえないケースもあったと。国民の情報を管理する制度として、二〇一三年に成立をいたしました。二〇一六年からは、メタボ健診にも使用すると。二〇一八年からは、同意があれば銀行口座にもひもづけられると。二〇一五年五月のIT総合戦略本部マイナンバー等分科会では、マイナンバー制度利活用推進ロードマップが公表されました。マイナンバーを保険証、免許証、クレジットカードや診察券としても使用し、買い物の内容や病歴、薬の管理等にもひもづける可能性が論議されております。
 社会保障番号を生活のさまざまな場面で活用している国、特にアメリカでは、突然、身に覚えのない請求書が届き、誰かが自分の番号でクレジットカードを発行し買い物をしていることが後からわかる、そんなケースも多発していると聞いております。いわゆる成り済まし詐欺です。膨大な情報がインターネットに蓄積されると、カードを落としていなくても情報漏えいの可能性があります。
 日本も年金機構のコンピューターがウイルスに感染して、百二十五万件の情報が漏れる事件もございました。アメリカや韓国の個人番号制度である社会保障番号や住民登録番号については、成り済ましによる被害が多発しております。さきにも述べたように、マイナンバーにさまざまな機能が追加される可能性もあります。便利なカードになることは、裏返せば、その分情報を把握され、漏えいのリスクも増してきます。
 そこで、我が国では、マイナンバー制度の導入に伴い、個人番号の本人確認をどう正確に行うのかお伺いいたします。

○濱田都政情報担当部長 マイナンバー制度における本人の確認については、いわゆる番号法の施行令によりまして、個人番号の確認だけでなく、本人自身であることの確認もあわせて行うことが定められております。
 個人番号の確認は通知カード等により行いますが、本人自身であることの確認については、顔写真があり、氏名、生年月日または住所が記載されている個人番号カードや運転免許証、旅券等により行うことを原則としております。また、電子申請などのオンラインで利用する場合につきましては、個人番号カードのICチップに組み込まれている本人認証の機能とパスワードとの組み合わせにより、確実に本人であることの確認を行うものとしております。

○野上(純)委員 さまざまな仕組みを通じて、本人の確認は顔写真、あと氏名、生年月日、個人番号カードや免許証、旅券、パスポート、あとは電子申請はパスワード、これが成り済ましへの対策ということでございました。
 一方で、ことし九月に内閣府が公表した世論調査によると、マイナンバー制度を知らないと答えた人が半分以上に上ったと。二月の発表では七割が知らない状況だといっていたので、現在、既にほとんどの家庭には配布済みで、今は申請手続をしている段階なので、マイナンバーを知らないという人は少ないと思いますけれども、中には二人暮らしの高齢者世帯とか障害者世帯、多忙でじっくりと書類等に目を通すことができない人々とか、私の葛飾区の一部の区域のように書類が遅配しているところもあります。
 我が党の提案で実現をした国のコールセンターの無料化により、マイナンバー制度の普及が進んでいると思われますけれども、まだまだ都民の中には情報漏えいなどへの不安があると思います。それぞれの区市でも相談電話を設置しておりますけれども、なかなかつながらない。つながっても、それは有料であったりするわけでございます。
 情報漏えいなどの不安解消を含め円滑な運用に向け、都も個人番号や個人情報の保護など、マイナンバー制度の周知に努めるべきであると考えますが、広報、啓発活動についてお伺いいたします。

○濱田都政情報担当部長 都はこれまでも、都民や事業者がマイナンバー制度を正しく理解し、個人番号や個人情報が適切に保護されるよう「広報東京都」や都のホームページへの掲載により、制度の周知を行ってまいりました。
 また、区市町村や中小企業振興公社を初めとする関係団体と連携して、都民や事業者などを対象とした、マイナンバー制度における個人番号や個人情報の安全な取り扱いに関する説明会や講座等を開催し、普及啓発を進めてまいりました。
 さらに、来年一月の利用開始を目前に控え、今月二十一日にもマイナンバーに深い見識を持つ講師を招き、都庁大会議場において説明会を開催する予定であり、引き続き制度の周知と都民の不安の払拭に努めてまいります。

○野上(純)委員 マイナンバー制度は、社会的公正の実現、つまり漏らさず税金を集める、税金を徴収する。所得や税金の情報は国税庁や自治体で管理をしておりました。しかし、正確な実態をつかむのはなかなか難しいものがございます。税の申告漏れや社会保障の不正受給の原因にもなっております。
 一九六八年に国民総背番号制度として浮上した構想は、一九八〇年のグリーンカード制度として試みました。そして、二〇〇二年には住民基本台帳ネットワークシステムが実施されましたが、どの制度もプライバシーの問題とか所得を知られるのが嫌な人々の反発で頓挫をいたしております。とはいうものの、マイナンバー制度は正しく安全に使うことができれば国民の利便性に大きく寄与するものであり、きめ細かな社会保障が的確に行われる社会を実現するものであります。
 この制度の信頼性を保ち、円滑な運用のためには、個人情報の漏えいや不正利用の防止が不可欠です。マイナンバーの利活用と個人情報の保護は車の両輪の関係であり、しっかりした個人番号の保護を図り、円滑な制度運用に尽力していただきたいと思っております。十二月二十一日の説明会には、参加する人で会場がいっぱいになるように広報に努めていただきたいことを要望して、質疑を終わります。

○里吉委員 私からも第百九十九号議案、東京都特定個人情報の保護に関する条例について質疑を行いたいと思います。
 今回の条例は、個人番号、いわゆるマイナンバーを含む特定個人情報を保護するために新しい条例をつくるというものです。特定個人情報保護に関する条例を既存の個人情報保護条例と分けて新設するのはなぜかと伺いたかったのですが、先ほどご答弁がございました。マイナンバー制度では、個人番号や特定個人情報については法律に定める場合以外の利用、提供を原則として認めないなど、一般の個人情報とは取り扱いが大きく異なること。また、一つの条例の中で取り扱いが異なる制度を定める場合、都民にとってわかりにくい内容となることから、現行条例の改正ではなく、新たな条例を制定するとのことでした。
 そこで、まずお伺いしますが、いわゆる個人情報と、個人番号を含む特定個人情報では取り扱いが大きく異なるということで条例を分けたということですが、この取り扱いがどのように違うのか教えてください。

○濱田都政情報担当部長 個人番号は一般の個人情報と異なり、番号法によって利用範囲を社会保障、税及び災害対策の三分野に限定しております。さらに、番号法では、同法及び地方自治体が独自に定める個人番号の利用に関する条例で具体的に規定している事務のみにおいて個人番号の利用が認められております。
 新たな条例では、同法の規定に従い、これらの事務以外での個人番号の収集や保管、利用や提供を認めないことを明記しております。また、一般の個人情報と異なり、本人同意があったとしても、特定個人情報は法令に定める利用目的を超えた利用はできないものとなっております。

○里吉委員 本人同意があっても、特定個人情報は法令に定める利用目的を超えての利用は不可ということで、本当にこれまでの個人情報とは質の違うものだということがよくわかりました。
 十月中旬から、ちょうど各家庭に通知カードが届けられており、マスコミなどでも改めてマイナンバーの問題点などについて特集が組まれております。マイナンバー法は、正式名称は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律といいますが、その名のとおり個人に割り振られる十二桁の番号で、さまざまな個人情報、住民票コードや基礎年金番号、健康保険証の記号、番号など、簡単に名寄せできるというものだと思います。
 これは個人情報を活用する側にとっては便利ですが、プライバシーの侵害、国家による管理統制の強化、成り済まし詐欺などの犯罪の危険の増大と表裏一体です。十二桁の個人番号からさまざまな個人情報が引き出せることになるわけで、この個人番号の保護は、他の個人情報とは扱いが大きく違って当然のことと思います。
 昨年の第四回定例会においても、特定個人情報保護評価について伺いました。これは、個人番号を扱うシステムの整備に先立って、個人番号を保有するリスクと回避策について行政機関みずからが評価し、第三者機関による点検を受けた上で国の特定個人情報保護委員会に提出して、かつ公表する制度と伺いましたが、東京では五十程度のシステムがその対象とご答弁がありました。
 その後の特定個人情報保護評価の実施状況について伺います。

○濱田都政情報担当部長 都におきましては、本年一月から特定個人情報保護評価を開始し、主税局の税務総合支援システムや福祉保健局の医療費助成事務システムなど、現時点で評価が必要な事務のうち、既に約八割に当たる二十事務について評価を完了し、個人番号の利用開始に向けた準備が進んでおります。

○里吉委員 順次準備を進めているというご答弁でした。
 私、この条例案を見て、もう一つ心配になったのが、特定個人情報の保護に関する条例案で再委託--委託も可能ですけれども、さらに再委託も可能となっていることなんですね。再委託先での安全管理の担保について、どうなっているのかお伺いしたいと思います。

○濱田都政情報担当部長 番号法では、マイナンバーを取り扱う事務について、委託者の許諾がある場合には、委託を受けた者がさらにその全部または一部を再委託できるとしており、都の新たな条例におきましても、番号法の趣旨に沿って同様の規定を設けております。
 新たな条例では、実施機関と同等の個人番号等に関する安全管理措置が委託先においても図られるよう、実施機関が必要かつ適切な監督を行わなければならない責務を明確に規定するとともに、再委託先につきましても、委託先への監督責任と同様の責務を実施機関に課しております。

○里吉委員 再委託先であっても、実施機関と同様の安全管理措置が図られるよう監督しなければならないということでした。それ自体は当然というか、誰が扱うにしても、個人番号は他の個人情報とは質の違う情報ですから、厳格な管理が必要ですし、できたら、できるだけ多くの人の手に情報が渡らない、つまり委託や再委託などしない方法も考えていただきたいと要望しておきます。
 都でしっかり個人番号を保護するための仕組みをつくることは大変重要ですが、国では、今後、マイナンバーを経済成長戦略の観点からも重視し、官民での利用を広げていくとしています。そうなれば、ますます情報漏えいの危険は高まります。いろいろ対策を講じても、個人番号の漏えいや成り済まし詐欺などの犯罪の危険の増大は避けられません。
 我が党は、マイナンバー制度に一貫して反対してきましたし、今も制度の凍結、中止を求めています。今回の条例は、個人情報とは格段に危険な特定個人情報を保護するための条例ですので、厳格に運用されるよう、今後どのように特定個人情報が扱われるのかしっかり監視していきたいということを申し上げて、質問を終わります。

○斉藤委員 それでは、私が最後でございます。
 マイナンバー制度、来年一月から段階的に開始ということでありますが、今まで、少し前には年金情報の大量流出や、また厚生労働省の担当者による汚職事件、これは流出ではないですが、関係事業者に対して不適切な関係を持ったというふうなことになりますが、そういったことがありますと、どうしてもいろんな不安が国民に降りかかってくるというふうにいえます。
 東京都の方も、万が一、都の職員が漏えいなど、不正行為を行った場合に、東京都自身が監督責任を問われるということで、漏えいに対する対策というのは非常にしっかりやらなければいけないというところであります。
 そこで伺いますが、個人番号や特定個人情報の取扱規定を整備し、取扱担当者以外が情報を扱わないようにしなければならないところなんですけれども、また、担当者以外の職員にも特定個人情報の適正管理の重要性について教育することが重要だと思いますが、東京都の教育に対する対応を伺います。

○濱田都政情報担当部長 特定個人情報の安全管理措置については、国のガイドラインや都の新たな条例に基づき、庁内における統一的な取扱規定を定め、取扱担当者を限定するとともに、担当者以外の職員も含め教育、研修を実施してまいります。
 このような安全管理措置を徹底することで情報漏えい等の事故を防止し、特定個人情報等の適切な保護に取り組んでまいります。

○斉藤委員 職員によっては非常に神経質に取り組んでいる方もいらっしゃれば、ふだんの業務の中で自然にこういったものがすぐ意識できないという方も、恐らく人によってさまざまいらっしゃると思いますので、その分、教育についてはしっかりやっていただきたいと思います。
 それで、重ねて、今回三つの条例が出ておりますけれども、その中で東京都特定個人情報の保護に関する条例、いわゆる新設する条例の方について伺います。
 先ほど、里吉副委員長の方から再委託に関することが質問で出ましたので、私も再委託について質問しようかなと思ったんですが、ここで一問飛ばしまして、それ以降について聞きたいと思います。
 再委託先に対して安全管理を徹底されるようにという、先ほどその話がございましたが、ぜひこの辺については、私の方からも東京都にしっかり監督をお願いをしたいところであります。
 さて、この新しい条例の中で規定されている特定個人情報保護評価について、もう少し詳しく教えていただきたいと思います。
 この評価制度については、個人番号を利用する事務の対象者が一定数以上の場合は、評価書について第三者機関の意見を聞くこととされておりますというふうに、資料における用語解説についてもそうなんですけれども、この一定数というのは、どの程度の数なんでしょうか。また、こういった評価は、どの程度の頻度で行うことになるというふうに想定されているのか、そこを伺いたいと思います。

○濱田都政情報担当部長 特定個人情報保護評価は、個人番号を利用する上でのリスクとその対策について行政機関みずからが評価し、その結果である評価書について第三者機関の意見を聞き、公表するものでございます。
 評価書の作成に当たり、国の規則では、個人番号を利用する事務の対象者が三十万人以上の場合に第三者機関の意見を聞くこととしていますが、都においては、より厳しく、対象者が十万人以上である場合に第三者機関である東京都情報公開・個人情報保護審議会の意見を聞くこととしております。
 利用開始前に行う評価の後も、状況の変化も踏まえた年一回の評価書の見直し、五年に一回の全面的な再評価をそれぞれ定期的に実施し、計画的に評価を進めていくこととしております。

○斉藤委員 東京都の場合は、国の規則の三倍の制度で、第三者機関の審議会に対して意見を聞くようにするということで、念を入れてやるということで、その部分については私の方もしっかり応援をしていきたいというふうに思います。
 さて、今回出てきた条例案、そしてまた、それの説明についても、なかなか細かい部分まで見ていくとわからないところが多うございます。そして、特に先ほどの新設の部分については丁寧に見させていただいたんですけれども、ちょっとその説明の中でわかりづらいところがもう一つありますので、そこもしっかり伺いたいと思いますが、これらの条例改正及び新設に関しては、マイナンバー制度への対応と、そしてまた昨年、行政不服審査法が全面的に改正されたことに伴う規定整備を行うものというふうに聞いております。
 マイナンバー制度関係の規定の施行日は、平成二十八年一月一日とされておりますけれども、私がちょっと確認をしましたら、改正行政不服審査法の施行日が政令で同年の四月一日というふうになっておりまして、施行日に三カ月間の差が生じているということであります。これについては、説明の中にも若干触れられているんですけれども、各条例案においては、これら施行期日について経過措置が規定されているということでありますけれども、このずれがある三カ月間の間に不服申し立てが行われた場合に、具体的にどのような取り扱いになるのか伺いたいと思います。

○濱田都政情報担当部長 開示請求に対する開示決定等に不服申し立てをする場合、三月三十一日までに行った開示決定等に関しては、経過措置として従前の各条例の規定により処理することとし、四月一日以降の開示決定等に係るものについては、改正後の各条例によって処理することとなります。

○斉藤委員 今、行政不服審査法が改正されて、内容はおよそ半世紀ぶりという大変大きな改正でありましたし、また、この異議申し立てなどの不服申し立ての手続は審査請求に一本化すると同時に、審査請求が可能な期間というものを今の六十日から三カ月に延長するなど、国民の権利、利益の保護、そしてまた国民の不安や疑念というものの払拭という部分については、かなり前進した改正でありましたので、ここについては本当に喜ばしい部分であります。
 特に今回、個人情報保護、マイナンバーというものが新たに出てきましたから、それに伴うさまざまな行政側の判断については、国民の方も非常に複雑になったり、もしくは情報が一本化されたことでそれを心配する方もこれから出てくるかと思います。そういった方の不安に適切に応えるためにも、改正された新たな行政不服審査法とともに、この個人情報保護制度を適切に運用していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 以上で私の質問を終わります。

○植木委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○植木委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で生活文化局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後六時十五分散会

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