文教委員会速記録第九号

平成二十六年六月二十三日(月曜日)
第十四委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長小竹ひろ子君
副委員長小松 久子君
副委員長きたしろ勝彦君
理事大松あきら君
理事大場やすのぶ君
理事川松真一朗君
松田やすまさ君
神野 次郎君
やながせ裕文君
里吉 ゆみ君
あさの克彦君
新井ともはる君
上野 和彦君
古賀 俊昭君

欠席委員 なし

出席説明員
生活文化局局長小林  清君
総務部長桃原慎一郎君
オリンピック・パラリンピック準備局局長中嶋 正宏君
次長理事兼務岸本 良一君
総務部長鈴木  勝君
教育庁教育長比留間英人君
総務部長松山 英幸君

本日の会議に付した事件
意見書について
付託議案の審査(決定)
・第百三十七号議案 東京都いじめ防止対策推進条例
・第百五十号議案 旅券法の一部を改正する法律の施行に伴う旅券の申請受理及び交付等に係る事務委託の変更及び規約の一部の変更について
陳情の審査
1 二五第一〇三号 東京都いじめ防止条例の制定に関する陳情
請願陳情の継続審査について
特定事件の継続調査について

○小竹委員長 ただいまから文教委員会を開会いたします。
 初めに、意見書について申し上げます。
 過日の委員会で理事会にご一任いただきました意見書中、意見書一件につきましては、お手元配布の案文のとおり調整いたしました。
 案文の朗読は省略いたします。

   私立幼稚園における子ども・子育て支援新制度の施行に関する意見書(案)
 東京の私立幼稚園は、それぞれの建学の精神や教育理念に基づき、個性的で特色ある幼児教育を積極的に展開しており、東京都ひいては我が国における幼児教育の進展に寄与している。現在、都内の三歳から五歳までの就学前児童の約六割が幼稚園に就園し、幼稚園児のうち、私立幼稚園に在園する園児の割合は約九割を占めるなど、私立幼稚園が東京の幼児教育に果たす役割は極めて大きい。
 子ども・子育て支援新制度は、幼稚園、保育所、認定こども園を通じた共通の給付を創設し、実施主体が区市町村になるなど、新しい大きな仕組みを作るものであり、新制度への移行は私立幼稚園にとって重大な判断を伴うものである。
 国は、平成二十七年四月から施行する方針を明確にしたものの、私立幼稚園設置者が新制度への移行を判断する上で必要な情報をいまだ十分に提供しておらず、私立幼稚園の現場では混乱が生じている。とりわけ、新制度への移行が施行時にのみ可能とされている個人立幼稚園は、より強い危機感を抱いている。
 新制度施行後も、未来を担う子供達の健やかな育ちを保障し、発達段階に応じた質の高い幼児教育を提供するためには、実態を踏まえた現場の検討と準備が必要であるが、国は、私立幼稚園が必要としている情報を十分に提供しないまま、新制度の施行に向けた作業を進めており、その動きは容認できるものではない。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、幼児教育の一層の充実のため、国の責任において必要な財源を確保するとともに、全ての関係者が、十分な検討の下に適切に判断し、混乱なく準備を行うため、私立幼稚園に対する支援の全体像及びその具体的な内容を直ちに示すよう強く要請する。
 以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
  平成二十六年六月 日
東京都議会議長 吉野 利明
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
文部科学大臣
女性活力・子育て支援担当大臣
宛て

○小竹委員長 本件は、議長宛て提出の手続をとりたいと思いますので、ご了承願います。
 なお、その他の意見書につきましては、いずれも調整がつかなかった旨、議長に報告すべきであるとの結論になりましたので、ご了承願います。

○小竹委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、付託議案及び陳情の審査並びに請願陳情及び特定事件の閉会中の継続審査及び調査の申し出の決定を行います。
 これより付託議案の審査を行います。
 第百三十七号議案及び第百五十号議案を一括して議題といたします。
 本案につきましては、いずれも既に質疑を終了しております。
 この際、本案に対し発言の申し出がありますので、これを許します。

○きたしろ委員 学校におけるいじめをめぐっては、昭和六十一年の中野区立中野富士見中学校での事件や平成六年の愛知県西尾市立中学校での事件、平成二十三年の滋賀県大津市立中学校での事件など、大変悲しい事件が繰り返されて発生しています。昨年国会で可決、成立したいじめ防止対策推進法は、こうした事件の根絶といじめ撲滅に向けた総合的な対策を実施するために、我が国で初めてのいじめ対策に特化した法律です。この法律の制定により、いじめを絶対に許さないという決意を国民全体が共有できるようになったと考えています。
 そして、東京都も、この法律の趣旨を正面から受けとめて、いじめ防止対策推進条例を提案し、社会全体の力を結集し、いじめ問題の解決に向けて取り組む意思を明らかにしたところです。
 しかし、この法律や都の条例案には、学校及び学校教職員の責務やいじめに対する措置などは規定されているものの、教職員がいじめを助長した場合などの処罰規定が定められていないため、実効性があるかとの指摘もありました。この指摘を聞き、私も心配になってきました。
 過去のいじめ事件を振り返ってみると、中野富士見中学校事件では、教員がいじめを助長していた事実がありました。大津市の事件では、担任の対応は職務上の義務を怠ったものといわざるを得ません。こうしたことを考えると、教職員に対する何らかの処罰規定が必要との主張にも一理があるものといわざるを得ません。
 先日、指導部長から説明があったとおり、学校の教職員がいじめを助長したり隠蔽したりした場合などの罰則規定について、都教育委員会では、教職員の主な非行に対する標準的な処分量定が定められており、厳正に対処していることが明確になりました。そのため、教職員の主な非行に対する標準的な処分量定を条例化する必要はないと考えますが、今後、教員が子供同士のいじめを助長することなどのないよう、条例が成立した暁には、ぜひとも、この規定について、改めて学校や区市町村教育委員会への周知徹底を図るとともに、適切な運用に努めていただくことを強くお願いするところです。
 昨年度、東京都内の公立学校と私立学校でのいじめの認知件数は約一万二千件にも上ります。平均すると一校当たり年間四、五件のいじめが認知されていることになります。こうしたことを考えると、何よりも、まずは本定例会で条例を成立させるとともに、条例を踏まえた、都としてのいじめ防止対策基本方針及び都教育委員会としてのいじめ総合対策を速やかに策定し、区市町村教育委員会や私立学校も含めた各学校の取り組みを推進することが重要と考えます。
 都で条例が制定されれば、区市町村もその条例を参酌し、条例を制定するところがふえてくることを期待しています。また、各学校におけるいじめ防止基本方針の策定も進むことと考えます。
 東京都の全ての子供たちが安心して学校に通い学ぶことができるよう、社会全体でいじめ問題に対応していくことを目指し、都として全力で取り組んでいただくことを要望いたしまして、私の意見とさせていただきます。

○里吉委員 まず、東京都いじめ防止対策推進条例案について申し上げます。
 今日の子供のいじめ問題は、生命にかかわる深刻な事態も生じており、多くの人が心を痛めています。いじめをなくし、子供たちが安心して人間らしく生きられる学校、社会をつくることは急務です。
 今回の東京都いじめ防止対策推進条例案は、国会で昨年、いじめ防止対策推進法が成立、施行されたことを受け提案されたものです。
 法律は、教育関係者や日本弁護士連合会、いじめ問題に取り組む団体などから多くの問題点が指摘されたにもかかわらず、重要法案なら当然行われるべき関係者からの意見聴取もなされず、衆参合わせてたった四時間の審議で採択されました。いじめ防止法は、子供にいじめを行ってはならないと行動を命令していることや、既に学校教育法で規定されている懲戒や出席停止を強調する厳罰主義、いじめ自殺の起きた大津市の第三者機関からも限界があると指摘された道徳教育中心主義の立場をとっていることなどから、いじめ問題の取り組みを進める上で障害になりかねないと懸念されています。
 東京都が条例をつくるのであれば、子供を上から抑えつけるのではなく、大人が子供をいじめから守るという姿勢を示すことが求められます。重要なのは、いじめは人権侵害であり、学校や行政は子供を守る責務があることを明確にすることです。
 日本国憲法や子どもの権利条約の立場から、全ての子供たちが人間として尊重され、対等な人間関係の中で、安心して生活し、成長する権利があることをわかりやすく示すことが必要です。同時に、教師が一人一人の子供たちと一緒になってさまざまな問題を解決し、成長させていけるような学校の条件整備に取り組む立場を明らかにするなど、いじめ克服を願う都民と子供たち、教師の支えになる条例をつくるべきです。
 ところが、今回提出された条例案は、目的、定義、基本理念、いじめの禁止、都や学校、保護者などの責務について、国のいじめ防止法をほぼ準用するものとなっています。しかも、法には曲がりなりにも明記されている、いじめが、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を侵害することや、児童等の尊厳保持の文言、保護者の責務の規定の、家庭教育の自主性が尊重されるべきことに変更を加えるものと解してはならないなどの文言が一切省かれたものになっています。したがって、今回提案された条例案は、東京都が定めるべきいじめ防止条例にふさわしくないと考えます。
 また、いじめの隠蔽をなくすことは、法の制定で期待された点でした。しかし、いじめ防止法は、情報を適切に提供するとして、どこまで提供するかは学校等が判断することを容認しており、いじめを受けた子供や我が子に一体何があったのかを知りたい保護者の願いに応えているとはいえません。条例では、重大事態の事実関係の調査結果は、被害者やその保護者に原則として全て情報公開することを明確にするべきです。
 条例案では、いじめ防止法を受け、一つ、いじめ防止等について協議し連携を図るため、知事部局に設置するいじめ問題対策連絡協議会、二つ目に、公立学校のいじめ対策について意見を述べ、公立学校で重大ないじめが起きた場合に調査を行う東京都教育委員会いじめ問題対策委員会、三つ目に、その調査が不十分だと判断したときに再調査を行う知事の附属機関である東京都いじめ問題調査委員会、この三つを設置することを定めています。
 いじめ問題対策連絡協議会は、条例案では、協議会の構成員は具体的に示されていません。国会の附帯決議で、専門的な知識及び経験を有する第三者等の参加を図り、公平性、中立性が確保されるように努めることとされ、国の基本方針でも、構成員として弁護士、医師、心理や福祉の専門家等に係る職能団体や民間団体が挙げられています。これらのメンバーや、さらにいじめ問題に取り組んでいるNPO、私立学校協会などを構成員に含めることを提案します。
 東京都教育委員会いじめ問題対策委員会に関しては、国はこの委員会の機能の一つとして、いじめに関する通報や相談を受け、第三者機関として当事者間の関係を調整するなどとして、問題の解決を図ることを示していますが、都の条例案ではこうした機能は規定されていません。相談や調停機能を持つ第三者機関として設置するとともに、私立学校の多い東京の特性を考えれば、知事部局に相談調停機能を持つ第三者機関の設置が必要と考えます。
 最後に、都教委は条例案を都民に公表せず、条例に基づいて策定される基本方針案、総合対策案のみパブリックコメントを募集しました。その理由について都教委は、都民の代表である都議会の十分な審議を経て制定されるものであり、議会に条例案が上程される前に都民からの意見を募集することは適切でないと考えた旨を答弁いたしました。
 しかし、条例案へのパブコメの募集は、住民意識を反映させるために多くの自治体で広く行われており、議会の権限を侵すものでも何でもありません。いじめ防止条例に関しても、最近では北海道で行われています。いじめの克服という都民的課題に対して、その根幹となる条例こそ都民参加で議論し、よりよいものをつくり上げることが必要と考えます。
 以上のことから、今定例会に提案された東京都いじめ防止対策推進条例案には反対いたします。
 日本共産党東京都議団は、今月初めに、いじめ防止条例案、基本方針案、総合対策案に対し七項目にわたる提案も行っています。学校への支援という点では、いじめを発見したときの機敏で迅速な対応を初め、解決に全教職員の総意と努力を結集できるようにすることを求めます。
 また、成長過程の子供たちの中でいじめを解決するためには、子供たちの自主性を育て、いじめをとめる人間関係をつくることも大切です。教育環境の整備という点で、小中全学年で三十五人学級とすることを求めます。
 そして、いじめの根本にある、子供たちの置かれている今の社会のさまざまな問題、過度な競争教育や子供の貧困などを解決していくことが求められています。学校やいじめ問題に取り組む団体、子供を含めた広い都民の声を聞いて、よりよい条例及び方針と対策をつくり上げることを求めます。
 次に、東京都いじめ防止条例の制定に関する陳情について申し上げます。
 第一に、いじめ防止条例の制定についてですが、いじめは人権侵害であることを条例で明確にし、いじめは絶対に許されないことを教育を通じて子供たちに教えることは大切だと考えます。しかし、陳情者が求めるようにいじめは極めて悪質な人権侵害であることなどを条例の内容とすることには、疑問があります。
 いじめは人権侵害であると同時に、子供は未熟であるがゆえに、自分の知らない価値観への反発、人をうらやむ気持ちやストレスなどへの対処方法がわからず、いじめという形で表現してしまう場合もあるなど、成長過程の中で誰でも行い得る行為です。したがって、その対応は教育的に行うことを第一にすることが必要であり、全てを極めて悪質との考えに基づく条例を制定することはふさわしくないと考えます。
 第二に、教員の処罰について、陳情者は、いじめ防止法で、いじめを行った児童等への懲戒や出席停止などが定められているのに、教職員への処罰規定がないことは不公平だと主張しています。しかし、これまで指摘したとおり、そもそも、いじめ防止法で子供への懲罰が強調されている点は問題があり、多くの関係者からも批判されています。教職員についても、既に教職員の主な非行に対する標準的な処分量定の中で、いじめへの加担、助長、隠蔽などについて、行為の程度に応じて戒告から免職まで規定されており、改めていじめ防止条例の中に規定する必要はないと考えます。
 以上のことから、この陳情は不採択を主張いたします。

○小竹委員長 発言は終わりました。
 これより採決を行います。
 初めに、第百三十七号議案を採決いたします。
 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、原案のとおり決定することに賛成の方はご起立願います。
   〔賛成者起立〕

○小竹委員長 起立多数と認めます。よって、第百三十七号議案は原案のとおり決定いたしました。
 次に、第百五十号議案を採決いたします。
 お諮りいたします。
 本案は、原案のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○小竹委員長 異議なしと認め、よって、第百五十号議案は原案のとおり決定いたしました。
 以上で付託議案の審査を終わります。

○小竹委員長 次に、陳情の審査を行います。
 陳情二五第一〇三号を議題といたします。
 陳情につきましては、既に質疑を終了しております。
 これより採決を行います。
 お諮りいたします。
 本件は、不採択とすることにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○小竹委員長 異議なしと認めます。よって、陳情二五第一〇三号は不採択と決定いたしました。
 以上で陳情の審査を終わります。

○小竹委員長 次に、請願陳情及び特定事件についてお諮りいたします。
 本日まで決定を見ていない請願陳情並びにお手元配布の特定事件調査事項につきましては、それぞれ閉会中の継続審査及び調査の申し出をいたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○小竹委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○小竹委員長 この際、所管三局を代表いたしまして、比留間教育長から発言を求められておりますので、これを許します。

○比留間教育長 所管三局を代表いたしまして、ご挨拶を申し上げます。
 ただいま本定例会でご提案申し上げておりました議案につきましてご決定を賜り、まことにありがとうございました。
 また、私ども三局の事務事業につきまして、さまざまな視点からご審議をいただきまして、厚く御礼申し上げます。
 ご審議、調査の過程で賜りました貴重なご意見、ご要望等につきましては、今後の事務事業の執行に当たりまして十分反映し、万全を期してまいる所存でございます。
 今後ともご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

○小竹委員長 発言は終わりました。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後一時十八分散会

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