文教委員会速記録第十六号

平成二十一年十一月二十六日(木曜日)
第三委員会室
   午後一時三分開議
 出席委員 十四名
委員長大西さとる君
副委員長星 ひろ子君
副委員長村上 英子君
理事岡田眞理子君
理事谷村 孝彦君
理事馬場 裕子君
畔上三和子君
遠藤  守君
島田 幸成君
滝沢 景一君
遠藤  衛君
古賀 俊昭君
大津 浩子君
服部ゆくお君

 欠席委員 なし

 出席説明員
生活文化スポーツ局局長秋山 俊行君
総務部長小林  清君
広報広聴部長石原 清次君
都民生活部長平林 宣広君
消費生活部長清宮眞知子君
私学部長小笠原広樹君
文化振興部長桃原慎一郎君
スポーツ振興部長安藤 英二君
東京マラソン事業担当部長岸本 良一君
参事高橋  博君
参事萩原まき子君
参事藤井 秀之君
参事板垣 一典君
教育庁教育長大原 正行君
次長総務部長事務取扱松田 芳和君
理事岩佐 哲男君
都立学校教育部長森口  純君
地域教育支援部長松山 英幸君
指導部長高野 敬三君
人事部長直原  裕君
福利厚生部長谷島 明彦君
教職員服務・特命担当部長岡崎 義隆君
参事中島  毅君
参事前田  哲君
参事高畑 崇久君

本日の会議に付した事件
 陳情の取り下げについて
 生活文化スポーツ局関係
第四回定例会提出予定案件について(説明)
・平成二十一年度東京都一般会計補正予算(第三号)中、歳出 生活文化スポーツ局所管分
・東京都高等学校等生徒修学支援基金条例
・東京都収入証紙条例を廃止する条例の施行に伴う旅券の申請受理及び交付等に係る事務委託の変更及び規約の一部の変更について
請願の審査
(1)二一第一三号 社団法人共同通信社の解散と業務改善に関する請願
(2)二一第三八号 教育の私費負担を軽減し、すべての子どもに学ぶ権利を保障することに関する請願
 教育庁関係
第四回定例会提出予定案件について(説明)
・学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
・学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
・都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例
・都立小金井地区科学技術高等学校(仮称)(二十一)改築工事請負契約
・都立江戸川特別支援学校(二十一)校舎改修工事請負契約
請願陳情の審査
(1)二一第三八号 教育の私費負担を軽減し、すべての子どもに学ぶ権利を保障することに関する請願
(2)二一第一八号 都立高等学校におけるCO2削減に関する陳情
(3)二一第一九号 都立高等学校の校庭緑地化に関する陳情
(4)二一第二〇号 都立高等学校の学校設備・備品に関する予算の確保と適切な実施に関する陳情
(5)二一第二一号 都立高等学校のスクールカウンセラー配置に関する陳情
(6)二一第三八号 都立大塚ろう学校城南分教室の二十二年度以降の小学部募集停止をしないことに関する陳情

○大西委員長 ただいまから文教委員会を開会いたします。
 初めに、陳情の取り下げについて申し上げます。
 お手元配布のとおり、陳情二一第一七号及び陳情二一第二二号につきましては、議長から取り下げを許可した旨通知がありました。ご了承願います。

○大西委員長 次に、会期中の委員会日程について申し上げます。
 お手元配布の日程のとおり、理事会において申し合わせましたので、ご了承願います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、生活文化スポーツ局及び教育庁関係の第四回定例会に提出を予定されております案件の説明聴取及び請願陳情の審査を行います。
 なお、提出予定案件につきましては、本日は説明を聴取し資料要求をすることにとどめ、質疑は会期中の委員会で行いますので、ご了承願います。
 これより生活文化スポーツ局関係に入ります。
 初めに、第四回定例会に提出を予定されております案件について、理事者の説明を求めます。

○秋山生活文化スポーツ局長 平成二十一年第四回東京都議会定例会に提出を予定しております生活文化スポーツ局関係の議案につきましてご説明を申し上げます。
 今回提出を予定しております議案は、補正予算案一件、条例案一件、事件案一件の計三件でございます。私から概要をご説明申し上げます。
 まず、補正予算案についてご説明申し上げます。
 お手元の資料第1号、平成二十一年度生活文化スポーツ局所管補正予算説明書をごらんいただきます。
 今回の補正予算は、本年五月に成立した国の補正予算により拡充、創設されます基金の積み立てを行い、事業実施に向けた財源を整理するとともに、この基金を活用して本年度に実施する事業の所要額について計上したものでございます。
 一ページをお開き願います。補正予算総括表でございます。補正予算額の欄をごらんいただきたいと存じます。
 歳入予算の総額は六十三億八百万余円で、その内訳は、国庫支出金が五十五億円、繰入金が八億八百万余円でございます。
 歳出予算の総額は五十九億三千六百万余円で、その内訳は、消費生活対策費が五億二千三百万余円、学務費の管理費が五十億円、助成費が四億一千二百万余円でございます。
 対象となる基金及び事業は、後ほど総務部長から詳細をご説明いたしますが、消費者行政活性化基金事業、高等学校等生徒修学支援基金事業、安心こども基金事業の三つの基金事業でございます。
 次に、条例案についてご説明を申し上げます。お手元の資料第2号、平成二十一年第四回東京都議会定例会議案の概要をごらんいただきたいと存じます。
 表紙を一枚おめくり願います。目次に、今定例会に提出を予定しております議案を示しております。
 東京都高等学校等生徒修学支援基金条例でございます。本条例は、補正予算案でご説明いたしました国の交付金を活用した基金の設置について定めるものでございます。
 続きまして、事件案についてご説明申し上げます。東京都収入証紙条例を廃止する条例の施行に伴う旅券の申請受理及び交付等に係る事務委託の変更及び規約の一部の変更についてでございます。
 本件は、東京都収入証紙条例を廃止する条例の施行に伴い、大島町ほか島しょ八町村との間における旅券の事務委託の一部を変更するものでございます。
 詳細につきましては、引き続き総務部長からご説明を申し上げます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○小林総務部長 局長からの概要説明に引き続きまして、私から今定例会に提出を予定しております議案の詳細についてご説明申し上げます。
 初めに、補正予算案についてご説明申し上げます。お手元に配布の参考資料、A3のペーパーでございますが、平成二十一年度生活文化スポーツ局所管補正予算案の内容をごらんいただきたいと思います。
 今回の補正予算は、先ほど局長から説明させていただきましたとおり、三つの基金に係るものでございますので、基金ごとにその内容をご説明申し上げます。
 なお、本資料に記載しております数値は一万円未満を切り捨てております。また、資料右側の図表において、今回の補正内容を網かけで示させていただいております。
 まず、1、消費者行政活性化基金事業でございます。
 消費者行政活性化基金につきましては、本年第一回都議会定例会におきまして、消費生活相談窓口の機能強化等を図るため、国の交付金を受けまして七億円の基金の積み立てを行い、また第二回の定例会におきまして、区市町村及び都における具体的な取り組みを行うため、この基金を財源としては一億六千万円の歳出予算の補正を行ったところでございます。
 今回の補正予算は、本年五月に成立いたしました国の補正予算に基づきまして、国からの交付金が追加されることを受けて、五億円の基金の積み立てを行うとともに、区市町村におけます追加の取り組みに対応するため、基金を財源とした二千三百万余円の歳出予算の補正を行うものでございます。
 次に、2、高等学校等生徒修学支援基金事業でございます。
 高等学校等生徒修学支援基金は、本年五月に成立した国の補正予算に基づきまして、経済的理由により修学困難な高等学校等生徒の教育機会の確保に資することを目的に設置するものでございます。
 今回の補正予算は、まず国の交付金を受けまして、基金に積み立てるため、歳入予算、歳出予算でそれぞれ五十億円を計上しております。なお、国の交付金額がまだ決定していないために、この五十億円は見込み額でございます。
 次に、基金を活用して実施する本年度の事業の所要額について計上しております。基金の対象となりますのは、私立高等学校等に通う生徒の保護者に対して、所得に応じて授業料の一部を助成する私立高等学校等特別奨学金補助及び経済的理由により修学困難な方々に育英資金の貸し付けを行います育英資金事業費補助のうち、二十年度実績に比べてふえている部分でございます。
 これら二事業の本年度分の対象額七億二百万余円につきまして、基金繰り入れの歳入予算を計上しております。
 私立高等学校等特別奨学金補助につきましては、補助対象者数が当初見込みよりふえたために、本年度の当初予算では不足が生じることから、その不足額三億四千四百万余円につきまして、この基金を財源とした歳出予算の補正を行っております。
 なお、繰り入れた基金の残額につきましては、特別奨学金及び育英資金事業の財源として充当してまいります。
 次に、3、安心こども基金事業でございます。安心こども基金につきましては、本年五月に成立した国の補正予算に基づきまして、国からの交付金が追加されることを受けて、基金を所管いたします福祉保健局におきまして、基金の積み立てに係る補正予算案を計上しているところですが、基金の対象につきまして新たな事業が追加されたことから、当局の所管分につきまして、本年度から事業を実施するための所要額を計上するものでございます。
 対象となります事業は、私立幼稚園等における遊具等の整備費について新たに補助いたします私立幼稚園等環境整備費補助、それから認定こども園運営費等補助の中に新たに追加されます認定こども園等における研修支援補助、それから私立幼稚園等におけます地上デジタル放送視聴に必要な経費を補助いたします私立学校地上デジタルテレビ整備費補助でございます。
 今回の補正予算は、本年度に実施する事業に基金を充当するため、対象事業の本年度所要額八千百万余円につきまして、基金繰り入れの歳入予算を計上しております。
 新規事業であります私立幼稚園等環境整備費補助及び認定こども園等における研修支援補助に関しましては、本年度所要額六千八百万余円について、基金を財源とした歳出予算の補正を行っております。
 私立学校地上デジタルテレビ整備費補助に関しましては、その財源といたしまして、繰り入れた基金から充当を行ってまいります。
 以上が補正予算案の内容でございます。
 なお、詳細につきましては、お手元の資料第1号、平成二十一年度生活文化スポーツ局所管補正予算説明書の二ページを後ほどご参照いただきたいと思います。
 続きまして、条例案の詳細につきましてご説明申し上げます。
 お手元の配布資料の資料第2号、平成二十一年第四回東京都議会定例会議案の概要の一ページをお開きいただきたいと思います。東京都高等学校等生徒修学支援基金条例でございます。
 (1)、目的及び内容をごらんいただきたいと思います。本条例は、経済的理由により修学困難な高等学校等生徒の教育機会の確保に資することを目的に、平成二十一年度補正予算案でただいまご説明いたしました国の交付金を活用した基金の設置について定めるものでございます。
 なお、本条例は、平成二十四年三月三十一日限り、その効力を失うものといたしまして、基金に残高があるときは、東京都一般会計歳入歳出予算に計上して、国庫に納付するものでございます。
 (2)、施行期日につきましては、本条例は公布の日から施行することとしております。
 続きまして、事件案の詳細についてご説明申し上げます。
 二ページをお開きいただきたいと思います。東京都収入証紙条例を廃止する条例の施行に伴う旅券の申請受理及び交付等に係る事務委託の変更及び規約の一部の変更についてでございます。
 (1)、提案理由及び変更箇所をごらんいただきたいと思います。本件は、東京都収入証紙条例を廃止する条例の施行に伴いまして収入証紙が廃止されますが、これにより、大島町ほか島しょ八町村との間におけます旅券の申請受け付け及び交付等に係る事務の委託に関して、旅券手数料のうち、都の収入証紙分が現金徴収となるため、当該事務の一部を変更し、これに伴い、規約の一部を変更するものでございます。
 (2)、施行期日は、平成二十二年四月一日でございます。
 なお、お手元の配布資料の資料第3号、平成二十一年第四回東京都議会定例会議案につきましては、後ほどごらんいただきたいと存じます。
 以上、今定例会に提出を予定しております議案についてご説明をさせていただきました。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○大西委員長 説明は終わりました。
 この際、資料要求のある方は発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○大西委員長 なければ、資料要求はなしと確認させていただきます。

○大西委員長 次に、請願の審査を行います。
 請願二一第一三号を議題といたします。
 理事者の説明を求めます。

○平林都民生活部長 請願二一第一三号の社団法人共同通信社の解散と業務改善に関する請願についてご説明申し上げます。
 本請願は、神奈川県横浜市の木村賢治さんから提出されたものでございます。
 請願の要旨でございますが、一、東京都は、直ちに社団法人共同通信社の解散を命ずること、二、共同通信社は、麻生首相の祝辞の誤報に対し、謝罪と説明責任を果たし、共同通信社の業務が継続される場合は、誤報を繰り返さないための業務改善を東京都議会に報告することでございます。
 これに対する現在の状況でございますが、東京都は、特例民法法人に対して、その定款または寄附行為に定める目的及び事業に則した事業の執行及び適切な管理運営を行うよう、法令等に基づいて、必要に応じて指導及び検査を行っております。
 以上、簡単ではございますが、説明とさせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○大西委員長 説明は終わりました。
 本件について発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○大西委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件は、不採択とすることにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大西委員長 異議なしと認めます。よって、請願二一第一三号は不採択と決定いたしました。

○大西委員長 次に、請願二一第三八号を議題といたします。
 理事者の説明を求めます。

○小笠原私学部長 請願審査説明表の二ページをお開きください。請願番号二一第三八号、教育の私費負担を軽減し、すべての子どもに学ぶ権利を保障することに関する請願についてご説明申し上げます。
 請願者は、千代田区、子どもを貧困と格差から救う連絡会議代表、三上満さんでございます。
 請願の要旨は、二つの項目について都に実現を求めるということでございます。
 一項目めが、私立学校等への助成金を増額すること。特に、生活保護世帯への助成額は年間授業料相当額に引き上げること。二項目めが、給付制の高校奨学金制度を創設することでございます。
 現在の状況でございますが、私立学校助成につきましては、教育条件の充実と保護者負担の軽減等を目的に、その充実に努めております。また、生活保護世帯に対しては、私立高等学校等特別奨学金補助事業において、公立と私立の授業料の差の三分の二に相当する年間十九万七千円を助成しております。
 私立高等学校等特別奨学金補助事業におきましては、財団法人東京都私学財団を通じて、平均的な所得以下の保護者を対象に、所得状況に応じて授業料の一部を助成しております。
 以上、請願に関するご説明を終わらせていただきます。よろしくご審査のほどお願い申し上げます。

○大西委員長 説明は終わりました。
 本件について発言を願います。

○村上委員 先月の当委員会における事務事業質疑で、私立学校の耐震化と私学助成の重要性について質問し、局長からもご答弁をいただいたところですが、今回は教育の私費負担の軽減に関する請願ということですので、私立高校生の負担軽減についてお伺いいたします。
 さて、経済状況が厳しい昨今、私立高校に通う生徒、保護者にとって、授業料を初めとする教育費の負担は大きく、その軽減策は極めて重大な関心事となっております。
 私立高校生の負担軽減策としては、私立高校への基幹的補助である経常費補助を通して授業料の抑制を図るほか、特別奨学金、授業料減免補助、育英資金などの制度があり、都ではこれらを総合的に活用し、修学支援を行っております。
 まず、特別奨学金に関してお伺いさせていただきます。
 これは、平均所得以下の保護者を対象に、先ほどの私学部長からの説明にもあったように、生活保護世帯を初めとして、所得状況に応じて授業料の一部を助成する、いわば給付型の奨学金の制度であります。具体的には、所得階層別にどのように支給されているのか、また、昨今の経済状況の中、対象者は増加していると思いますけれども、その増加している人たちに対してしっかりと対応できているのかどうか、質問させていただきます。

○小笠原私学部長 特別奨学金につきましては、平均的な所得以下の保護者を対象に、所得に応じて公立と私立の授業料の差の一部を補助するものでございまして、生活保護世帯には公私格差の三分の二、住民税非課税、または均等割のみの世帯には二分の一、所得が一定基準以下の世帯には三分の一に相当する額を支給しております。
 平成二十年度は、二万九千四百七十七人に対して、総額で約三十二億一千二百万円を補助いたしましたが、今年度は、九月末現在で三万二千七百二十九人に対して補助することとなっており、今後の増加分も含めて対象者全員に補助すべく、今定例会の補正予算案に不足分を計上しているところでございます。

○村上委員 所得に応じた給付であり、生活保護であるかどうかや、収入に応じて一定割合を補助し、また、対象者の増加にも対応することとしているなど、生徒、保護者の負担軽減策として有効に機能しているということが今の説明でわかりました。
 次に、授業料減免制度でありますが、この制度は本年五月の私立学校助成審議会で、家計急変による授業料減免の場合に、都から学校への補助率を従来の三分の二から四分の三に引き上げる案が当初、都側から提案されておりました。
 我が党の鈴木委員などの提案を受けて、この四分の三を五分の四にまで引き上げることが望ましいとの答申となり、充実されたものでありますが、助成の仕組みと実績についてお伺いさせていただきます。

○小笠原私学部長 授業料減免制度は、私立学校が家計状況の急変等により生徒の授業料を減免した場合に、その減免額の一定割合を学校に対して経常費補助の中で補助する制度でございます。
 学校への補助率は、家計状況により減免した場合は三分の二、家計急変の場合は、今年度から副委員長お話しのような経緯によりまして五分の四となっております。
 平成二十一年度の実績は、実際は平成二十年度に減免が行われた額に対する補助となっておりますが、これは千八人の生徒に対して、学校が行った減免総額が約一億九千九百万円、都から学校への補助額が約一億三千五百万円となっておりまして、これは対前年度で人数で六%の増、補助額で七%の増となっております。

○村上委員 私立学校が授業料減免をした場合にも、都はその一部、とりわけ家計急変の事情による場合は五分の四の補助をしているというものであり、生徒の修学支援の側面から有効な仕組みと考えます。
 それでは次に、育英資金についてでありますが、育英資金は我が党の要望を受け、私立高校生の貸付額を月額三万円から三万五千円と増額されたところでありますが、今年度の募集状況を伺います。
 また、申請した有資格者全員に貸与できているのかどうか、あわせてお伺いいたします。

○小笠原私学部長 今年度の一般募集の申込者は千九百九十五人であり、前年度に比べて約三割増加しておりますが、そのうち有資格者には全員に貸与しております。

○村上委員 申請者は増加しているけれども、有資格者全員に貸与できているというご答弁でありました。昨今の都民の経済状況をかんがみれば、貸付額のアップは有効と考えられ、的を射た政策であったと評価できます。
 現在、国においては公立高校の授業料無償化とあわせて、私立高校生に関しても一律十二万円を補助するなどの考えが示されています。現時点に至っても、いまだ制度の概要が判然としない部分もありますが、公立と違って私立高校の場合は、授業料全額が無償になるわけではありません。
 また、高校生には授業料のほかに、教科書や学用品を初めさまざまな費用が生じます。このような状況では、育英資金は引き続き不可欠なものと考えますが、改めて確認しておきたいと思います。

○小笠原私学部長 育英資金は、修学上必要な学資金の一部を貸し付けることにより、教育を受ける機会の拡充に寄与することを目的としておりまして、授業料のほか、施設費などの学校納入経費や教科書代、学用品購入費などの学校教育費にも充当することができます。
 国の新たな施策により、授業料の負担が軽減したとしても、副委員長ご指摘のとおり、すべての私立高校生に授業料全額が無償になるわけではもとよりなく、また、授業料以外の教育費もかかることから、育英資金の必要性はいささかも減ずるものではないというふうに考えております。

○村上委員 これまでの質問により、昨今の経済状況で、特別奨学金や育英資金などの実績が増加傾向にある中で、必要な予算の確保、補助率や貸付額のアップなどにより、都が現在行っているさまざまな施策が有効に機能し、多くの生徒、保護者が救われているということが明らかになりました。
 今回出されている請願は、給付型の高校奨学金制度を創設すべきとするものでありますが、都においては、既に所得に応じた特別奨学金の制度があり、対象者の増加にも対応しています。
 したがって、保護者の負担軽減を論ずる上では、冒頭申し上げたように、経常費補助を初めとして各種の施策を総合的に整備し、実施していくことが重要であり、給付型奨学金にのみ焦点を当てている本請願の趣旨には、基本的に賛同できません。
 また、国の制度自体が固まらない状況が続いている中で、現時点において給付型奨学金を創設することに議論をすることは適当ではないと考えます。
 今後、国の動向等を注視しながら、経常費補助の堅持など、私学経営の観点も視野に入れ、現行の制度をしっかりと評価した上で、適切な負担軽減策を検討していっていただきたいということで、私の質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

○畔上委員 請願の第三項の私立学校等への助成の増額、これは、今、不可欠な課題だと思います。国の新たな授業料補助で、都立と私立の格差はむしろ広がるんではないか、そういう不安の声が私学の現場からも寄せられております。
 学費の負担を軽減して公私の格差をなくすこと、そして学校に対しても経常費補助の拡充を行い、私立も公立も公教育としてその役割を担えるようにする。そのことが私は重要であると考えております。
 請願では、特に生活保護世帯の授業料補助を年間授業料相当額に引き上げてほしいという中身であります。
 そこで、まず伺いたいと思いますが、私学に通う生活保護世帯の保護者負担軽減策、これはどうなっているでしょうか。

○小笠原私学部長 生活保護世帯に対する補助制度といたしましては、私立高等学校等特別奨学金補助事業を実施しており、具体的には、都内私立高校の平均授業料と都立高校の授業料との差額、約三十万円の三分の二に相当する年額十九万七千円を財団法人東京都私学財団を通じて補助しております。
 また、このほか勉学意欲のある高校生に対して、修学上必要な資金を貸し付ける育英資金制度があり、財団法人東京都私学財団を通して、私立高校生の場合、今年度から月額五千円増額いたしまして、月額三万五千円、年額四十二万円を無利子で貸し付けております。

○畔上委員 今、補助と貸し付けの両方のお話があったわけですが、給付補助でいえば、いわゆる公私格差の三分の二を補助しているということです。
 都内の私学の場合、平均年間授業料が約四十二万円、この特別奨学金補助は十九万七千円と。生活保護で授業料として支給されている金額が十二万二千四百円ということを合わせましても三十一万九千四百円ということで、約三十二万円にしかならないわけですね。そうしますと、まだ授業料だけでも十万円自己負担しなければいけないという状況になるわけです。
 生活保護世帯は、今、それでなくても非常に大変な中で、この差額の十万円を一体どうやって捻出しているんでしょうか。

○小笠原私学部長 先ほど答弁いたしましたように、生活保護世帯に対しましては、財団法人東京都私学財団を通じまして、私立高等学校等特別奨学金補助事業により、都内私立高校の平均授業料と都立高校の授業料との差額の三分の二に相当する額を補助しているほか、繰り返しになりますが、勉学意欲のある高校生に対して、修学上必要な資金を貸し付けています育英資金制度によりまして、私立高校生の場合、今年度から月額三万五千円、年額四十二万円を無利子で貸し付けております。

○畔上委員 今、育英資金の貸付制度のご説明をまた繰り返していただいたんですけれども、結局、育英資金の貸付制度は返済をしなければならないということであります。育英資金で借りる額を少しでも減らしたいということで、アルバイトをしている高校生も少なくないわけです。
 私は、そもそも現在の都立と私立の平均授業料の差額の三分の二を補助するという、この考え方自体をやっぱり変えていかなきゃいけないんだというふうに思っております。文科省が、高校の授業料を実質無償化するんだということで、私立に通う生徒の授業料につきましても、年収五百万円以下の場合は二十四万補助を概算要求しております。さらに、低所得者には無償化となるように補助を増額する方向で動いていると。これは新聞報道なんですが、報道されています。
 国の制度を生かして、請願されている生活保護世帯はもちろんですけれども、少なくとも低所得者世帯は完全な授業料の無償化、私はこれを進めていくこと、そして、同時にほかの所得階層も、都内の私立高校の授業料平均額というのは、授業料は全国よりも高くなっていることも踏まえて、公私格差をなくす方向で拡充する、これを強く求めたいと思います。
 次に、給付型の奨学金についてですが、これにつきましてはこれまでも繰り返し求めてまいりましたが、私学でいえば授業料以外の施設費、それから入学料などの負担も非常に大きいというのが実態です。
 都内の私立高校の初年度の納付金、東京都の調査では平均額で八十六万円から八十七万円と。授業料が四十二万円ですから、授業料以外で四十四万から四十五万かかるということであります。これらについての補助制度はあるでしょうか。

○小笠原私学部長 給付型奨学金に関連するご質問でございますけれども、先ほど答弁申し上げました特別奨学金のほかには、これも先ほど答弁いたしました育英資金がございます。
 そのほかに、財団法人東京都私学財団で実施している制度でございますが、入学支度金を無利子で二十万円を貸し付ける制度がございまして、これも財団法人東京都私学財団で実施をしております。

○畔上委員 今、入学支度金の貸付制度もご説明いただいたんですが、要するに両方とも借金になるわけです。貸付制度なんですね。借金になってしまうと。しかも、入学支度金は、在学中の三年間で返さなければいけないということであります。
 育英資金の返済方法と返済の状況、これはどうなっているでしょうか。返済の猶予、免除はどういう場合に適用されていますか。

○小笠原私学部長 まず育英資金の返還方法でございますけれども、育英資金の貸し付け終了後、六カ月の据置期間経過後に返済開始となり、口座振替の方法により年賦または半年賦、すなわち年一回払い、または二回払いのいずれかの方法で返還していただくことになります。
 返還期間につきましては、育英資金の貸付総額に応じて最長返還期間を設定しており、例えば私立高校生が月額三万五千円を三年間借り入れた場合、最長十三年で返還をしていただくことになります。
 次に、返還の猶予、あるいは減免される場合についてでございますが、まず、大学等に進学したときや傷病や経済上の事由などにより一時的に返還が困難になったときには、本人からの申し出により返還を猶予することができることとなっております。
 また、減免につきましては、本人が死亡または心身障害となり返還が困難になった場合や、引き続き五年以上返還猶予した場合において、なお将来にわたって返還の見込みがない場合は、申し出により返還金の全部または一部を免除することができることとなっております。

○畔上委員 今のご説明だと、免除はあくまでもご本人が死亡した場合か心身障害になった場合で、就職の内定取り消しなんかも今、大きな問題になっていますけれども、高校生でもそういう問題が起こっていますが、経済的な理由とか、内定取り消し、こういった猶予制度はあるわけですね。しかし、基本的には返還しなければならないというふうになっているわけです。
 私、だからこそ給付型の奨学金が大事なんだというふうに思うんですね。既に高校から借金を抱えざるを得なくなって、大学をあきらめる、また就職も自分の希望だっていうよりも、むしろお金で選ばざるを得ないという状況が現に生まれているわけです。
 私に最近相談のあった私立高校の高校生の場合は、自営業のお父さんだったんですが、そのお父さんの仕事が激変したということで、兄弟二人が私立高校に行っていたんだけれども、どちらかが中退しなければならないというふうに苦しんで悩んでいたわけです。結局、生まれてきた環境で高校を選ばざるを得ないと、貧困の連鎖だというふうにその子は話していたんですけれども、まさにそういった事態が現に起こっています。
 私は、彼のように自分で選んだ高校を経済的な理由で途中退学せざるを得ないということが絶対あってはならないというふうに思うんです。国が来年度の予算要求で概算要求している給付型奨学金制度、これは対象品目が入学金と教科書代のみと。そして、初年度の支援額が十九万七千円となっています。都内の私立高校の初年度の納付金の授業料以外の負担分、先ほどもいいましたけれども、四十四万から四十五万。これと比較しても、結局、二十五万不足することになるわけですね。
 ほかにも、通学費、それから制服、教科書、学用品、修学旅行費など、いろいろお金がかかるということで、私立高校生にも、やっぱり都立高校生にも、都として必要な、やっぱりきちんと上乗せをして、実効ある給付型の奨学金制度をつくるべきだというふうに考えます。
 そうした立場から、私は請願の第三項、四項の採択を主張して、質問を終わりたいと思います。

○星委員 教育の私費負担を軽減し、すべての子どもに学ぶ権利を保障することに関する請願に対して、一点意見を申し述べます。
 新しい政権では、公立高校の実質無償化とし、私立高校の学費負担の軽減も挙げており、家庭の状況にかかわらず、すべての子どもたちが安心して学べる社会をつくるとしています。この政策の目的は、党派を超えて納得するものと考えます。
 しかし、手法においてはさまざま検討されていく中で、直ちに制度が整備されるかどうか、まだ不透明です。しかしながら、この不況の中、私学に通う子どもたちの状況は大変厳しくなっておりまして、現行の軽減助成事業も、育英資金の貸付状況も、軽減事業で二十一年度九月で三万二千七百二十九人、一一%アップ、育英資金もプラス千四百六十二人、これは三〇%アップの増加の状況にあるとお聞きしています。
 生活者ネットワークは、現行の貸付制度ではなく、奨学金を給付制にすべきとかねがね主張してきました。高校の無償化は多くの国で実施されています。請願の理由についてるる述べられている現状は、実は私の周囲でも大変多く起こっておりまして、この経済不況の状況で子どもの生活全体にさまざまな影響が起こっていることは容易に想像できますが、東京都としては、まずはどの子も経済的な心配なく、高校までは学ぶことができる仕組みをつくるべきと考え、この請願の趣旨に賛成の意見といたします。

○大西委員長 ほかに発言ございますでしょうか。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○大西委員長 発言がなければ、請願二一第三八号につきましては、教育庁所管分もございますので、決定は教育庁関係の審査の際に行い、現在のところは継続審査といたしたいと思いますが、これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大西委員長 異議なしと認めます。よって、請願二一第三八号は継続審査といたします。
 請願の審査を終わります。
 以上で生活文化スポーツ局関係を終わります。

○大西委員長 これより教育庁関係に入ります。
 初めに、第四回定例会に提出を予定されております案件について、理事者の説明を求めます。

○大原教育長 平成二十一年第四回都議会定例会に提案を予定しております議案の概要につきましてご説明申し上げます。
 ご審議いただきます教育庁関係の案件は、条例案三件、契約案二件でございます。
 初めに、条例案でございますが、学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例外二件でございまして、学校職員の勤務時間の見直し及び平成二十一年度東京都人事委員会勧告などに基づき、所要の改正を行うものでございます。
 続きまして、契約案でございますが、都立小金井地区科学技術高等学校(仮称)(二十一)改築工事請負契約外一件でございまして、都立高校改革推進計画に基づき、都立小金井地区科学技術高等学校(仮称)を設置するため、必要な施設整備を行うほか、都立江戸川特別支援学校の老朽化した施設の改修工事を行うものでございます。
 詳細につきましては、総務部長事務取扱次長からご説明申し上げます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○松田次長 議案の詳細につきましてご説明申し上げます。
 まず、お手元の資料、平成二十一年第四回東京都議会定例会議案(条例)に基づきまして、条例案のご説明をさせていただきます。
 目次をお開き願います。
 今回提案を予定しております条例案は三件でございます。
 一ページをお開き願います。学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例でございます。
 昨年度の都人事委員会勧告の意見などに基づきまして、学校職員の正規の勤務時間を見直すことに伴い、規定を改正するものでございます。
 内容については、職員の正規の勤務時間について、一週当たり四十時間を三十八時間四十五分、一日当たり八時間を七時間四十五分とすることに伴い、規定を整備するものでございます。
 施行日は、平成二十二年四月一日としております。
 九ページをお開き願います。学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例でございます。
 平成二十一年十月の都人事委員会勧告などに基づきまして、今年度の公民較差に基づく学校職員の給料及び諸手当等の規定ほかを改正するものでございます。
 主な改正内容は、給料表を平均して一・二%引き下げ、地域手当を一ポイント引き上げるものでございます。
 また、特別給についても年間支給月数を〇・三五月分引き下げるものでございます。
 施行日は、公布の日の属する月の翌月の初日としております。
 さらに、平成二十二年度以降、三月期の期末手当を廃止するとともに、国における教員給与の見直しに伴い、義務教育費国庫負担金が段階的に縮減されていることを踏まえ、義務教育等教員特別手当の上限額を改正するものでございます。
 このことについての規定の施行日は平成二十二年四月一日からとしております。
 以上の改正については、一八ページ以降に新旧対照表をお示ししてございますので、後ほどごらんいただきたいと思います。
 次に、三一ページをお開き願います。都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例でございます。
 都職員全体の旅費制度の見直しに伴い、日当が廃止されること及び勤務時間の短縮に伴う規定整備を行うものでございます。
 施行日は、平成二十二年四月一日としております。
 次に、お手元の資料、平成二十一年第四回東京都議会定例会議案(契約)に基づきまして、契約案のご説明をさせていただきます。
 目次をお開き願います。
 今回提案を予定しております契約案は二件でございます。
 一ページをお開き願います。都立小金井地区科学技術高等学校(仮称)(二十一)改築工事請負契約でございます。
 契約の方法は一般競争入札、契約金額は二十三億三千百万円、契約の相手方は東京都渋谷区千駄ケ谷四丁目二十五番二号、フジタ・中山・トヨダ建設共同企業体でございます。
 工期は、契約確定の日から平成二十三年七月八日まででございます。
 都立高校改革推進計画に基づき、小金井地区科学技術高等学校(仮称)を小金井工業高校敷地に設置するため、校舎の改築工事を施行する必要があるものでございまして、四ページから八ページにかけまして各階の平面図を、それから九ページに契約案の概要をそれぞれお示ししてございます。
 一一ページをお開き願います。都立江戸川特別支援学校(二十一)校舎改修工事請負契約でございます。
 契約の方法は一般競争入札、契約金額は十一億二千六百六十五万円、契約の相手方は東京都港区浜松町一丁目二十五番十三号浜松町NHビルディング、松尾・湯建建設共同企業体でございます。
 工期は、契約確定の日から平成二十三年十一月三十日まででございます。
 校舎の老朽化のため、改修工事を施行する必要があるものでございます。
 一四ページから一六ページにかけまして各階の平面図を、一七ページに契約案の概要をそれぞれお示ししてございます。
 以上で説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願いいたします。

○大西委員長 説明は終わりました。
 この際、資料要求のある方は発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○大西委員長 なければ、資料要求はなしと確認させていただきます。

○大西委員長 次に、請願陳情の審査を行います。
 初めに、請願二一第三八号を議題といたします。
 理事者の説明を求めます。

○松山地域教育支援部長 請願二一第三八号、教育の私費負担を軽減し、すべての子どもに学ぶ権利を保障することに関する請願についてご説明申し上げます。
 本請願は、千代田区、子どもを貧困と格差から救う連絡会議代表、三上満さんから提出されたものでございます。
 請願の趣旨は、都において次の二点のことを実現していただきたいというものでございます。
 一点目は、区市町村立学校の就学援助の基準を緩和し拡充できるよう、都として区市町村への財政援助を行うことでございます。
 これに関する現在の状況でございますが、学校教育法第十九条は、経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童または学齢生徒の保護者に対しては、区市町村は、必要な援助を与えなければならないと定めており、就学援助は各区市町村がその権限と責任において適切に実施しているところです。
 平成十七年度に準要保護者に対する就学援助については、地域の実情に応じた取り組みにゆだねることが適切であるという国の判断から、就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律が改正され、国から区市町村への税源移譲により、一般財源化されております。
 二点目は、都立高校の授業料を無償化することでございます。
 これに関する現在の状況でございますが、都立高校においては、受益者負担の観点から授業料を徴収しております。また、経済的に厳しい状況の家庭等について就学の機会を確保するため、従来から授業料減免制度を設けているところです。
 なお、国において授業料の無償化が検討されておりますが、その制度がいまだ明らかになっていないことから、今後とも国の動向を注視しつつ、適切に対応してまいります。
 説明は以上でございます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○大西委員長 説明は終わりました。
 本件について発言を願います。

○畔上委員 請願でも指摘がありますように、学校現場でも貧困と格差が子どもたちの進路を閉ざして、豊かな学びや成長から阻害して、将来への希望をも奪ってしまっているという現実があって、今、大きな社会問題ともなっております。
 ある三人のお子さんを育てているお母さんなんですけれども、この方はフルタイムでパートの仕事をされていたんですが、生活がままならないということで、結局、夜も子どもを寝かせてからまた仕事に入るということで、ダブルワークしなければ食べていけないという相談がありました。
 また、ある母子家庭の中学生の男の子だったんですが、みんなに臭いといわれて、お母さんにかわいそうでいえないし、学校も行けないという悩みを私に打ち明けてくれました。夫の収入が大幅に減って二人の息子の私立高校の学費が払えないとか、こんな相談もよく飛び込んできます。
 そういう点では、今日の不況の被害というのは、まさに家庭と子どもを直撃しているというのが私自身の実感であります。
 こうした背景には、非正規労働者を初めとした年収二百万以下の世帯が一千万世帯に達してしまったと。そして、子育て世代を中心にした貧困が広がっているということが私はあると思うんです。
 政府が先日、十月に発表した日本の貧困率は一五・七%で、子どもの貧困率は一四・二%ということで、先進国では最悪の水準になっていると。
 そこで、私はまず伺いたいと思いますが、子どもの貧困がこれだけ深刻な社会問題になっていますけれども、都教委はこの問題をどう認識されているんでしょうか。

○松山地域教育支援部長 厳しい社会経済状況の中、東京都においては、生活保護を受けている要保護、またそれに準ずる準要保護を合わせ、全体の二二・七%の児童生徒に対して就学援助が実施されておりまして、経済的に困窮している家庭の児童生徒に対しましては必要な支援が行われているものと考えております。

○畔上委員 今のご答弁で、必要な支援はしているというんですけれども、必要な支援がなされずに、子どもたちがこんなに深刻な事態に追い込まれているからこそ、大きな社会問題になっているんだと私は思うんですね。都の教育委員会の認識というのは余りにも、今、ご答弁を伺っていて現状を無視しているといわざるを得ないと思いました。
 憲法の二十六条では、すべての国民はひとしく教育を受ける権利を有すると。そして、義務教育はすべてこれを無償にするとしているわけです。このように、親の収入に左右されないで、すべての子どもたちに教育を受ける権利が保障されなければいけないということであります。その目的でつくられた制度が、今お話があった就学援助でございます。
 ところが、就学援助制度は各自治体によってかなりの格差があることも明らかになってきています。その一つが、先ほどご説明のあった準要保護の問題なんです。その準要保護は、都内でも生活保護基準の一・〇倍から一・八倍という差があります。また、借家かどうか、それを基準の中にも入れているという自治体もあります。
 さらには申請の仕方も、学校で配布して、それで生徒全員に用紙を配布しているところもあれば、役所に申請に行かなきゃいけないという自治体もあるわけです。
 こうした制度のアンバラ、格差を都教委はどういうふうに受けとめていらっしゃるんでしょうか。

○松山地域教育支援部長 学校教育法第十九条により、就学援助の実施義務は区市町村に課せられております。
 平成十七年度に就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律が改正され、準要保護者に対する就学援助につきましては、地方の実情に応じた取り組みにゆだねることが適切であるという国の判断から国庫補助が廃止され、国から区市町村へ税源移譲されたところでございます。
 各区市町村は法改正の趣旨を踏まえ、就学援助を実施しているものと考えております。

○畔上委員 区市町村の判断で行われるのは知っております。しかし、同じ東京の子どもたちでありながら、ここの自治体、ここの区にいたときは受けられたのに、この市に引っ越したら受けられなくなったというのは、私は問題だというふうに思うんですね。
 しかも、就学援助の対象品目も非常にいろいろさまざまで、眼鏡や運動着などを対象品目にしているところもあるし、生活保護の扶助の対象のところもあるわけです。こうしたアンバラを都が補助して改善すべきではありませんか。

○松山地域教育支援部長 就学援助につきましては、各区市町村議会の予算審議を経て実施されているものでございまして、各区市町村がその権限と責任において行っているものと考えております。

○畔上委員 今、権限と責任は区市町村にあるという説明なんですけれども、各自治体の差が余りにもあり過ぎると、また自治体の財政力で差が生じてはいけないというふうに思うんです。
 やはり都として財政支援を行って、東京都内のどこにいても同じように就学援助がきちんと受けられるように支援していくこと、これは非常に大事だというふうに思いますので、強く求めていきたいというふうに思います。
 前回の委員会でいただいた資料によりますと、十年前に比べると、就学援助の受給者はふえているんですけれども、二〇〇五年度から徐々に減少の傾向を示しております。この数年、貧困化が非常に厳しくなっているというにもかかわらず就学援助の受給率が下がっているというのはなぜだと都教委はお考えでしょうか。

○松山地域教育支援部長 受給率でございますが、平成十一年度と比較いたしますと、受給率は四・六ポイント増加しております。また、平成十六年度と比較いたしますと、受給率は二・一ポイント減少しております。
 この数年の受給率低下の要因につきましてはさまざまなものが考えられるところでございまして、推測での答弁は差し控えたいと思います。

○畔上委員 推測ではなく実態をちゃんと調べればいいと思うんですね。江東区のある学校では、一年生のときに就学援助を受けていた子どもで、親の収入が全く上がっていないのに二年生になって就学援助が打ち切られた。そういう子どもが一学級に六人もいたんですね。つまり、この場合は就学援助の積算基礎となる生活保護基準が下がったために起こった問題です。
 また、一般財源化されて、自治体の財政負担が重くなったということで、補助対象を狭めてしまった自治体も生まれております。さらにはこれまで学校、先ほど用紙を配っていたといいましたが、配っていた自治体でも、配らなくなってしまったと。こういうケースも出てきています。
 こういう実態を私はきちんと調査もしないで放置することは許されないというふうに思うんですね。(発言する者あり)都の責任で調査すべきなんですよ。当然都として就学援助の受給率などは把握しているんですから、受給率がなぜ下がったのか、学校生活でどんな支障が起こっているのか、自治体の要望は何なのか、私は実態や要望をきちんと把握すべきだというふうに思うんです。都として実態調査を行うように強く求めたいと思います。
 次に、請願の第二項の都立高校の授業料の無償化について伺いたいと思います。
 国は、公立高校の無償化を来年度の予算から実施するということをいっておりますが、これは非常に大事なことと考えておりますが、そのことに対する都教委の認識を伺いたいと思います。

○森口都立学校教育部長 都立高校におきましては、受益者負担の観点から授業料を徴収しておりますが、経済的に厳しい状況の家庭等について就学の機会を確保するため、従来から授業料減免制度を設けております。
 現在、国において授業料の無償化を検討しているところですが、その制度がいまだ明らかになっていないことから、今後とも国の動向を注視しつつ、適切に対応してまいります。

○畔上委員 今のご答弁では、あくまでも受益者負担が原則だとおっしゃったんですが、私は、それはこの間の高校授業料に関する前向きの変化を全く受けとめていない姿勢だといわざるを得ないんです。
 なぜかというと、なぜ国がこの間無償化をいい始めたのか。これは国際的な水準から見れば余りにも遅過ぎると思いますけれども、一つは、OECD諸国で高校の無償化が進んでいないのは、日本を含めて四カ国だけになったと。そしてまた、給付型の奨学金に至ってはやってないのは日本だけだと。こういう中で、高校の授業料も無償化すべきだという世論が広がったわけですよね。
 また、この高校教育費の無償化について、二〇〇四年度の最高裁の裁判所での学資保険の裁判の判決と、その判決を受けた二〇〇五年からの生活保護の高校費用の支給、これは、私は高校授業料の考え方を大きく転換させたきっかけになっているというふうに思うんです。
 これは、福岡県の生活保護を受けていた親子が高校進学のために学資保険が満期になって、そのお金を収入認定されたということで、これを取り上げるのは違法だという裁判を起こしたわけですね。この裁判で最高裁の判決が高校進学は生活の一部だと。その主張を認めて、それでその判決を受けて、二〇〇五年から生活保護の生業扶助の中で高校等就学費が支給されるようになったわけです。
 国民の最低生活保障である生活保護で高校の費用を支給したということは、高校の教育無償化の土台を私は築いたものだと思います。こうした社会の発展を認めないで受益者負担などといっているのは、私は非常に恥ずかしいと。ぜひその認識を発展させていただきたいと思います。
 先ほどお話がありましたが、国は高校授業料の無償化を来年度予算から始めるということで、概算要求を見ますと、国の支給額は十一万八千八百円と。都立高校の授業料は十二万二千四百円ですから差額が生じるわけです。三千六百円ですね。国の無償化で、当然東京都のこれまでやってきた減免分の財源が浮くわけですから、この財源を活用するなどして、私はこの差額を支給して、授業料の無償化を行うべきだというふうに思います。
 その実施を強く求めまして、この請願の第一項、第二項の採択を主張して、発言を終わりたいと思います。

○大西委員長 ほかに発言はありますでしょうか。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○大西委員長 発言がなければ、これより採決を行います。
 本件は、起立により採決いたします。
 本件は、趣旨採択とすることに賛成の方はご起立願います。
   〔賛成者起立〕

○大西委員長 起立少数と認めます。よって、請願二一第三八号は不採択と決定いたしました。

○大西委員長 次に、陳情二一第一八号、陳情二一第一九号、陳情二一第二〇号及び陳情二一第二一号は内容に関連がありますので、一括して議題といたします
 理事者の説明を求めます。

○森口都立学校教育部長 陳情二一第一八号、都立高等学校におけるCO2削減に関する陳情、陳情二一第一九号、都立高等学校の校庭緑地化に関する陳情、陳情二一第二〇号、都立高等学校の学校設備・備品に関する予算の確保と適切な実施に関する陳情、陳情二一第二一号、都立高等学校のスクールカウンセラー配置に関する陳情の四件についてご説明申し上げます。
 まず、陳情二一第一八号、都立高等学校におけるCO2削減に関する陳情についてご説明申し上げます。
 本陳情は、東京都公立高等学校PTA連合会会長、高橋多佳子さんから提出されたものでございます。
 本陳情の趣旨は、都立高等学校において、環境整備の一環として、校舎の屋上緑地化の実施または太陽光発電設備の導入を実施していただきたいという内容でございます。
 これに関する現在の状況でございますが、都教育委員会は、これまでも都立高等学校施設における環境負荷の低減に向けて、省エネ型照明器具の設置や雨水の再利用などさまざまな取り組みを行ってまいりました。
 さらに、平成十八年度に東京都が策定した「十年後の東京」の実現を目指し、カーボンマイナス東京十年プロジェクトや緑の東京十年プロジェクトにおいて具体的に施策化し、校庭芝生化、屋上緑化、壁面緑化、太陽光発電設備の設置等の事業に積極的に取り組んでおります。
 都立高等学校では、平成二十年度末において、屋上緑化、壁面緑化は二十校で、太陽光発電設備は十五校で実施しており、今後、躯体強度など建物への影響を考慮しながら平成二十九年度末までに屋上緑化、壁面緑化は二十三区内のすべての都立学校に、また、太陽光発電設備の設置は、都立学校六十校に計画的に実施してまいります。
 次に、陳情二一第一九号、都立高等学校の校庭緑地化に関する陳情についてご説明申し上げます。
 本陳情につきましても、東京都公立高等学校PTA連合会会長、高橋多佳子さんから提出されたものでございます。
 本陳情の趣旨は、都立高等学校において、地球温暖化対策の一環として、校庭の芝生化やグリーンカーテンの設置などを実施していただきたいという内容でございます。
 これに関する現在の状況でございますが、都教育委員会は、これまでも都立高等学校施設における環境負荷の低減に向けて、省エネ型照明器具の設置や雨水の再利用などさまざまな取り組みを行ってまいりました。
 さらに、平成十八年度に東京都が策定した「十年後の東京」の実現を目指し、カーボンマイナス東京十年プロジェクトや緑の東京十年プロジェクトにおいて具体的に施策化し、太陽光発電設備の設置、校庭芝生化、屋上緑化、壁面緑化等の事業に積極的に取り組んでおります。
 都立高等学校では、平成二十年度末において、校庭芝生化は十四校で約五・五ヘクタール、屋上緑化、壁面緑化は二十校で実施しており、今後、平成二十九年度末までに、校庭芝生化は都立学校全体で約二十三ヘクタール、また、屋上緑化、壁面緑化は二十三区内のすべての都立学校で計画的に実施してまいります。
 次に、陳情二一第二〇号、都立高等学校の学校設備・備品に関する予算の確保と適切な実施に関する陳情についてご説明申し上げます。
 本陳情につきましても、東京都公立高等学校PTA連合会会長、高橋多佳子さんから提出されたものでございます。
 本陳情の趣旨は、都立高等学校の設備、備品に関する予算において、パソコン関連など最新の教育機器が求められる分野については、必要な予算の確保とリースや買い取りなども含めた適正かつ最良の予算執行をしていただきたいという内容でございます。
 これに関する現在の状況でございますが、都立学校における情報教育機器の整備は、既存設備の更新を六年をめどに計画的に実施しており、機器やソフトを学校の教育活動に基づいて整備できるよう必要な予算措置をしているところでございます。
 次に、陳情二一第二一号、都立高等学校のスクールカウンセラー配置に関する陳情についてご説明申し上げます。
 本陳情につきましても、東京都公立高等学校PTA連合会会長、高橋多佳子さんから提出されたものでございます。
 本陳情の趣旨は、都立高等学校におけるスクールカウンセラーを全校に配置していただきたいという内容でございます。
 これに関する現在の状況でございますが、都立高等学校へのスクールカウンセラーの配置は、学校におけるカウンセリング等の機能の充実や問題行動などの未然防止のために、平成七年度から平成十二年度までは国の委託事業として、また、平成十三年度からは国の補助事業として実施しているところであります。
 平成二十一年度は、中途退学率が高いなどの課題を抱える都立高等学校六十校にスクールカウンセラーを配置し、生徒へのカウンセリング、保護者からの相談、教員の研修での専門的な助言などを行っており、今後も同様の考え方により配置してまいります。
 なお、国のスクールカウンセラー等活用実施要領では、公立高等学校への配置については、全配置校数の一〇%以内を目安とされております。
 説明は以上でございます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○大西委員長 説明は終わりました。
 本件について発言を願います。

○畔上委員 陳情されております都立高校の太陽光発電設備の導入などの環境対策とカウンセラーの全校配置など教育条件の整備は大切な課題だと認識しております。その立場から何点か伺いたいと思います。
 まず、太陽光発電は何校の学校でしているんでしょうか。また、効果について伺いたいと思います。
 さらに、計画数を先ほど六十校とおっしゃっていましたが、その限定している理由はなぜなのでしょうか。伺います。

○森口都立学校教育部長 まず、都立高等学校における太陽光発電設備の設置校でございますが、平成二十年度末で十五校でございまして、平成二十一年度はさらに六校に設置する予定でございます。
 次に、太陽光発電の設置効果についてでございますが、二十キロワットの太陽光発電設備を設置している都立高校では、年間電力総使用量の約四・四%の電力を賄い、その結果、電気料金は約五十万円の節減となり、CO2は約七トンの削減という効果が出ております。
 また、生徒の昇降口など、日常的に見える場所にモニターを設置し、発電量やCO2削減などを確認できるようにすることで、生徒の環境への意識を高めるという効果もございます。
 次に、六十校でございますが、都教育委員会では、カーボンマイナス東京十年プロジェクトや「十年後の東京」への実行プログラムに基づきまして、太陽光発電設備を高等学校五校、特別支援学校一校に、毎年度計画的に整備し、平成二十九年度末までに六十校に設置していくという内容でございます。

○畔上委員 太陽光発電の設備を導入した学校に私も視察したことがあるんですけれども、発電量やその使い道が表示されていまして、環境教育としても非常に有効だなというふうに感じました。それは、さらなる拡充の方向を求めたいと思います。
 次に、校庭の芝生化と緑のカーテンの件ですが、私は、とりわけ校庭の芝生化は、実施をしている学校などに伺いますと、芝の管理が大変だという声も伺っております。先ほど十四校の実施校というお話でしたが、だれがどういう形で管理をしているのか、伺いたいと思います。また、効果についての評価も伺いたいと思います。

○森口都立学校教育部長 まず、芝生の管理についてでございますが、校庭の芝生の管理につきましては、日常的な散水などは各学校で実施しておりますが、学校の負担軽減を図るため、年間を通じて、季節ごとに除草、芝刈り、目土かけ、施肥、補植を実施するための管理委託経費を予算措置しております。
 次に、校庭芝生化の効果についてでございますが、財団法人東京都環境科学研究所によりますと、ダスト舗装と比較して、芝生化された校庭は地表面の温度差が八・三度あり、ヒートアイランド対策や緑の空間創出のほか、近隣への砂じん飛散防止効果がございます。

○畔上委員 先ほど管理の問題をいったんですが、管理の問題と、それから、やっぱりクラブ活動との関連などもあるというふうに伺っていました。そういう点では、そういった学校の状況もよく踏まえて、学校とよく相談しながら、前向きに実施していただきたいと思います。
 次に、スクールカウンセラーについてですが、陳情にもありますように、スクールカウンセラーの果たしている役割というのは、生徒たちにとっても、それから保護者にとっても大変心強い、そういった存在として大きな役割を果たしているわけです。
 現在のカウンセラーの配置校は六十校ということですが、このカウンセラーを配置する基準は何なんでしょうか。もう少し説明を願いたいと思います。

○高野指導部長 スクールカウンセラーの配置に関する基準というお尋ねでございますけれども、スクールカウンセラーはチャレンジスクール、エンカレッジスクール、昼夜間定時制高校に配置するとともに、中途退学率が高かったり、問題行動等が多く発生したりするなど、心理的なケアを必要とする生徒が多く在籍する高等学校に重点的に配置しているものでございまして、こうした都立高校の数は六十校でございます。

○畔上委員 スクールカウンセラーの設置をしてほしいという学校要望も多いと思うんですけれども、要望は何校からあったのでしょうか。

○高野指導部長 平成二十一年度向けにスクールカウンセラーの配置を希望した都立高等学校数は百五十校となってございます。

○畔上委員 要望のあるところには、まず率先して配置すべきだと考えます。そして、全日制と定時制の併置校、これはそれぞれの配置を行って、生徒の心と発達の支えになる、そういった役割を果たせるようしていただきたいと思うんですが、全日制と定時制の併置校のカウンセラーの配置は何校になっているんでしょうか。

○高野指導部長 平成二十一年度、全定併置の都立高校へスクールカウンセラーを配置した校数は二十四校でございます。

○畔上委員 スクールカウンセラーにつきましては、文科省が一昨年、配置校の校長先生と教育委員会にアンケート調査を行っております。その結果では、学校の相談体制をどのように充実すべきかという問いに対して、高等学校ではスクールカウンセラーの配置や充実を求める声が八割を超えたというふうに書かれていました。
 また、スクールカウンセラーが相談に当たる児童生徒の相談内容はどういう内容かという問いに対しては、不登校にかかわる相談が最も多いが、いじめ、友人関係、親子関係、学習など、多岐にわたっていると。そして、最近は、発達障害、精神疾患、リストカットなどの自傷など、ますます多様な相談に対応する、そういう必要が生じているというふうにありました。
 私は、全日制で不登校になって定時制に行く、そういう生徒も多くいることを考えますと、全定の併置校には、やっぱりそれぞれにきちんと配置をして、相談のタイミングを逸しない体制をきちんと整備すべきだと考えます。
 最後に、都教委にカウンセラーの効果、そして、その評価を伺いたいと思います。そして、今後どのように充実させていきたいと考えていらっしゃるのか、伺います。

○高野指導部長 スクールカウンセラーの配置によりまして、校内の教育相談体制が構築され、配慮の必要な生徒への対応ができるようになった、あるいはまた、スクールカウンセラーからの助言等によりまして、教員の教育相談技術が向上した、あるいはまた、保護者への対応が充実し、学校に対する安心感が生まれた、あるいは、外部関係機関との連携が図れたなどの報告から、学校内の教育相談体制等の充実に効果を上げていると評価してございます。
 今後とも、スクールカウンセラーの有効活用を図るとともに、配置されていない学校へは、アドバイザリースタッフなどの心理の専門家、教育や心理学を学ぶ学生を派遣いたしまして、学校教育相談機能を充実させていく所存でございます。

○畔上委員 今、効果を上げているということでは、大変重要な答弁をいただいたと思っています。
 教育の専門性を持っている教員とは異なる臨床心理の専門性を生かすことのできるスクールカウンセラーが教職員と連携して、児童生徒の発達、成長を支えていく、そういう体制を整備することは、私はとりわけ近年大事になっているというふうに思います。
 せっかく効果を上げているという評価をされているわけですから、六十名のカウンセラーの有効活用とか、今おっしゃった教育相談センターにいるアドバイザリースタッフの派遣とか、配置の充実とか、そういうことだけでなくて、ぜひスクールカウンセラーを増員して、そして全校に配置していく、そのことを強く求めたいと思います。
 そして、この陳情は、それぞれ採択を主張したいと思います。

○大西委員長 ほかに発言はございますでしょうか。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○大西委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件は、いずれも趣旨採択とすることにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大西委員長 異議なしと認めます。よって、陳情二一第一八号、陳情二一第一九号、陳情二一第二〇号及び陳情二一第二一号は、いずれも趣旨採択と決定いたしました。

○大西委員長 次に、陳情二一第三八号を議題といたします。
 理事者の説明を求めます。

○前田参事 陳情二一第三八号、都立大塚ろう学校城南分教室の二十二年度以降の小学部募集停止をしないことに関する陳情についてご説明申し上げます。
 本陳情は、都立大塚ろう学校城南分教室保護者有志代表の町田尚美さん外一万二千二百七十八人から提出されたものでございます。
 本陳情の趣旨は、東京都特別支援教育推進計画による再編整備により、都内のろう学校幼稚部、小学部が大塚、葛飾、立川の三校のみとなった場合、通学困難な幼児、児童がふえることが確実であるため、都立大塚ろう学校城南分教室の平成二十二年度以降の小学部の募集停止はせず、継続して入学できるようにしていただきたいというものでございます。
 これに関する現在の状況でございますが、都教育委員会は、東京都特別支援教育推進計画の第一次実施計画において、ろう学校の在籍者の減少に対応し、教育活動の活性化や聴覚障害教育に関する専門性の維持向上を図るために、ろう学校を再編したところでございます。
 この際、品川、杉並、江東の各ろう学校の幼稚部及び小学部は、当面の間、大塚ろう学校の分教室として設置し、地域の乳幼児の相談、指導や幼児、児童のろう教育を行う場として確保したものでございます。
 なお、分教室については、東京都特別支援教育推進計画で、分教室として設置している間は、幼児、児童の新入生の受け入れを継続していくが、集団による教育活動の確保は重要であることから、新入生が二年続けて三名に満たないような場合には、それ以降は募集を停止していく予定であるとしているところでございます。
 城南分教室小学部においては、五月一日現在の新入生が平成二十年度は二名、平成二十一年度は一名となり、当該条件に該当しており、平成二十二年度から小学部の募集を停止する予定でございます。
 募集停止に当たっては、他のろう学校への通学が可能となるよう、通学支援などについても検討を行ってまいります。
 また、聴覚障害の乳幼児が専門的な教育相談を継続して受けられるよう、分教室幼稚部のあり方について、来年度予定している東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画策定の中で検討してまいります。
 説明は以上でございます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○大西委員長 説明は終わりました。
 本件について発言を願います。

○岡田委員 質問させていただきます。
 ただいまの説明の中には、来年度予定している東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画の中で、城南教室の幼稚部については検討していくということであり、この点に関しては一定の評価はできると思います。
 さて、聴覚障害のある子どもには早期発見、早期教育が重要であり、ろう学校での乳幼児教育相談や幼稚部の教育に対する保護者の期待は大きなものがあります。
 近年、眠っている赤ちゃんに小さな音を聞かせ、その刺激に反応して起こる変化をコンピューターが判断し、音に対して正常な反応があるかないかを調べる検査、いわゆる新生児聴覚スクリーニング検査が普及し、生まれてすぐの赤ちゃんでも聴覚障害を発見することが可能になりました。
 この検査によって、聴覚障害がある、または疑いがあると医師から告げられた赤ちゃんの保護者の方は大きな衝撃を受け、子育てに自信をなくす方もいらっしゃると聞いております。
 聴覚障害あり、または疑いがありと診断された乳幼児と保護者の多くの方は、病院や保健所、または保健センターからの紹介で、わらをもつかむ思いで、ろう学校の乳幼児教育相談に訪れているということです。
 そこで、まず、ろう学校の乳幼児教育相談とはどのようなものかお話しくださいませ。

○前田参事 ろう学校の乳幼児教育相談は、乳幼児の聞こえと言葉の発達について心配されていたり、不安や疑問を抱えている保護者の相談に応じ、乳幼児の発達を支援するところでございます。
 乳幼児教育相談には、聴覚障害のある乳幼児と保護者が障害などの状況に応じて、週一回、あるいは月一回と、頻度には差がございますけれども、定期的に通いながら個別相談や聴力測定を受けるとともに、グループ活動や保護者教室にも参加し、子育てやコミュニケーション、言葉の育て方などについてのアドバイスを受けているところでございます。

○岡田委員 大塚ろう学校城南分教室においても、城南地域の聴覚障害のある子どもと保護者の方のために乳幼児教育相談を行っているとのことですけれども、この相談人数と体制についてお伺いいたします。

○前田参事 本年十月一日現在、大塚ろう学校城南分教室の乳幼児教育相談に通ってきている乳幼児は十二名。内訳としては、一歳児六名、二歳児四名、三歳児一名、四歳児一名でございます。
 相談体制については、聴覚障害乳幼児の教育経験のある外部の専門家を非常勤講師として配置しているところでございます。

○岡田委員 ろう学校はかなり以前からこの乳幼児教育相談を行っていると聞いておりますけれども、この乳幼児教育相談をろう学校で行わなければならない法的な根拠というのはあるのでしょうか。

○前田参事 聴覚障害の発見と支援の時期は、子どもの言語発達や人格形成などに大きく影響いたします。そのため、都立ろう学校においては、聴覚障害のある乳幼児と保護者のために、昭和四十年代から乳幼児教育相談を行ってきました。
 平成十九年四月に一部改正された学校教育法が施行され、特別支援学校は地域の特別支援教育のセンター的機能を果たすことが法令化されました。この法改正によりまして、乳幼児教育相談もろう学校のセンター機能の一環として位置づけられるようになったところでございます。

○岡田委員 幼稚部が特別支援学校としてセンター的機能を果たす役割を担っているということはわかりました。
 幼稚部が聴覚障害のゼロ歳から教育相談にかかわっていることを考えますと、分教室の幼稚部について第三次実施計画の中で検討することは、幼い子どもを抱える保護者の方にとっては、地域でろう教育を受けることができる施設が残るという安心につながるものであり、評価できるものではあります。
 そして、聴覚障害は早期発見、早期教育が本当に何より重要であります。その効果によっては、地域の小学校への就学の可能性も広がり、子どもたちの進学の選択肢もふえることになると考えられます。
 今後、乳幼児教育相談をより充実させるためにも、幼稚部の存続は必要であると考えます。今回、幼稚部のあり方を検討されるということですが、どのような視点から検討しようとしているのかお伺いいたします。

○前田参事 ろう学校の幼稚部における教育相談は、保護者と乳幼児との好ましい関係を育て、その安定した関係をもとに乳幼児のコミュニケーション意欲の向上を図り、保有する聴力を活用し、手話、絵などの視覚的なコミュニケーション手段を用いて言語の発達を促すことなどを目的として行っているところでございます。
 こうした幼稚部における教育の目的を踏まえ、幼稚部のあり方について、第三次実施計画を策定する中で検討してまいります。

○岡田委員 幼稚部について検討していくということですけれども、この幼稚部は特別支援学校のセンター的機能として乳幼児教育相談機能も担っています。
 こうしたことを考え合わせますと、地域の幼稚部を拠点とする乳幼児教育相談事業を充実させていくことも可能ではないかと考えられます。幼稚部の検討に当たっては、聴覚障害のある乳幼児のための拠点としても整備していくべきであると考えますが、いかがでしょうか。

○前田参事 聴覚障害児にとって重要な聴覚機能や言語能力の発達を促す教育は、乳幼児期から行うことが効果的でございます。
 幼稚部の検討に当たっては、乳幼児が専門的な教育相談を受けられるような地域拠点としてのあり方も含め検討してまいりたいと思っております。

○岡田委員 分教室の幼稚部については、聴覚に障害のある乳幼児には障害の早期発見、早期教育が重要であるとの観点からもあり方を検討していくとのことですけれども、小学部は募集停止をするということになりますと、今後、幼稚部の在籍の子どもは地域の小学校に通うか、あるいはろう学校に通うか、そういった選択をすることになってしまいます。
 地域の小学校への進学を選択する場合には、難聴の通級指導学級の教育の充実が重要となってくると思われますが、その件に関してはいかがでしょうか。

○前田参事 乳幼児教育相談や幼稚部における指導によって障害の状態が改善され、地域の小学校への就学が可能となる場合もあることから、難聴の通級指導学級における指導の充実を図っていくことが必要でございます。
 このため、通級指導学級の教員の研修の充実を図るとともに、都立ろう学校のセンター的機能を発揮して、専門的助言や指導を行うなど、難聴の通級指導学級の充実に努めてまいります。

○岡田委員 難聴学級では現在、一応おおむね六十デシベル程度の子どもたちが対象となっておりますけれども、実際の状況はさまざまでありまして、スケールアウトのお子さんもいれば、人工内耳のお子さん、さまざまおります。そういった実態に応じた支援をしっかりとしていっていただきたいと思います。
 一方で、ろう学校への入学を選択する方は、今後、大塚ろう学校本校へ入学することになるのでしょうけれども、この通学負担は非常に大きくなると思われます。長時間の通学となれば、早い時間に出て、また帰りも遅くなるといった毎日になってしまい、保護者の方々のご心配は本当に非常に理解できるところであります。
 そうしたことを考えますと、子どもたちへの通学の支援について、特に配慮が本当に必要であると考えられます。そういった場合、例えば小型のバスなどで小回りのきくように運行するとか、自宅近くでピックアップをするなど、そういった工夫が必要であると考えられますけれども、その点に関してはどうお考えでしょうか。

○前田参事 小学部の募集停止に当たっては、児童の通学時間が現在より長くなることにより生じる通学上の負担への対応が何より必要であると考えております。このため、小学部低学年を対象としたスクールバスによる通学支援などにより通学負担の軽減を図ってまいります。
 スクールバスでの通学支援に当たりましては、一人一人の保護者のご意見を聞きながら、居住地の最寄りの場所にバス停を設けるなど、可能な限りの配慮を行ってまいります。

○岡田委員 ただいま可能な限りの支援を行っていただくということで、この点に関してはしっかりと要望させていただきたいと思っております。
 聴覚障害を持つお子さん、そういったお子さんと、私はかつて、難聴、言語障害学級、そしてそれから軽度発達障害を持っている子どもたちとの生活を大分してまいりましたけれども、やはり教育の現場というのは、ともに学び、ともに育つといったインクルージングされた社会の構築が今必要であると思われます。障害による区別ではなく、その障害に関して上乗せの共助や支援が本当に必要だと思われます。
 社会は一人ではなく、大勢のいろいろな人間によって構成されているということで、私はその社会の縮図が学校という現場であると思います。子どもたちにとっては、初めての社会という現場に就学とともに遭遇するわけでありますから、その場での子どもたちの世界が子どもたちによって、お互いに子どもたちの可能性が引き出され、伸ばしていける場所であることが必要であると思われます。
 東京都の教育が、これからも障害がある子どもも、そうでない子どもも、ともに互いを認め合いながら、ともに助け合ってやっていけるような、そういった社会的自立が促進されるような教育を行っていただきたいと思っております。
 そして、このろう学校のことに関しましては、立川、そして葛飾、大塚と、非常に東京都の中でアンバランスな配置ではないかと思っております。これに関しましては会派の中でも非常に議論が高まりました。やはり子どもたちの教育を考えた場合、東京都の教育という中で、しっかりとしたろう教育を行っていく、そういった意味ではこのアンバランスを再考していただきたいと強く要望させていただきます。
 また、本当に遠距離による通学の困難さや親御さんのご苦労のことをしっかりと考えながら、今後の対策を練っていただきたいと思っております。
 私たち民主党の会派としては、今回は非常にこのろう学校の問題に関してはさまざまな議論を行ってまいりました。親御さんの気持ちも考えながら、また教育的見地に立ちながらも、この問題を考えていかなくてはならないということで、非常に苦渋の選択を迫られることになったことを最後申し述べておきます。
 以上です。

○村上委員 今、岡田理事の質問の中と私の質問が幾つかダブるところもありますけれども、冒頭申し上げておきたいのは、我が自民党会派でも、大変この問題については、陳情者の皆さんの面会をさせていただいて、親御さんの気持ち、そして子どもさんにとっての教育環境に何が必要なのか、こういったことで十分議論をしてきた上で、今日の委員会に臨ませていただきました。
 ですから、私の質問の中では、この再編に至るまでの経緯や目的、こういったものも改めて質問をさせていただき、そして最終的な判断を下したい。こんな思いで質問をさせていただきます。
 障害のある子どもたちへの教育は、子どもたちが将来、自立し社会参加できるように、一人一人の能力を最大限に引き出していけるような教育が行われるべきだと考えます。それが保護者の願いであり、また特別支援教育の基本的な考えであると考えます。
 現在、都教育委員会では、東京都特別支援教育推進計画の中で、特別支援学校の教育の充実のため、さまざまな取り組みを展開しています。ろう学校についても、第一次実施計画の中でろう学校の再編整備を行っています。
 これは都立のろう学校の在籍者数が大きく減少してきたことを受けてのものだと思いますが、この再編を行ってきた経緯や目的をまず確認させていただきます。

○前田参事 都立ろう学校の在籍者数は、昭和三十四年度の千五百二十一人をピークに減少を続け、平成十六年度は五百九十一人となるなど、当時八校設置されていたろう学校の多くが、在籍者の減少から適切な学級、学校規模を確保することが難しくなり、教育活動の活性化や、児童生徒等の社会性の育成、教育の専門性の維持向上に支障を来す状況が生じていました。
 こうした状況を受けて、平成十六年度に策定した東京都特別支援教育推進計画第一次実施計画において、ろう学校を四校に再編整備することとしました。
 その際、四校には、児童生徒など保護者の多様なニーズにこたえるため、それぞれ特色を持たせ、幼稚部、小学部を設置するろう学校は、地域バランスに考慮して大塚、立川、葛飾の三校とし、中等部、高等部普通科、専攻科も設置する立川と葛飾の両校は職業教育に重点を置く学校、新しく開校する中央ろう学校には中学部、高等部を設置して、大学進学などを目指した中高一貫教育を行う学校としたものでございます。

○村上委員 再編・統合時には、杉並、江東、品川のろう学校については、大塚ろう学校の分教室という位置づけになりました。分教室の設置に当たっては、その当時の保護者から請願書が提出をされ、分教室でも新入生を受け入れてほしい、こういった内容だったと記憶しております。
 そうした請願を受けて、都議会としても議論を行い、新入生の受け入れを行うこととなりました。その際、新入生が二年続けて三名に満たない場合には、分教室としての募集を停止していくという条件が設けられました。
 そこで、この募集停止の条件についてお伺いいたします。なぜ二年続けて三名未満なのか、その理由をお伺いいたします。

○前田参事 再編時に江東、品川、杉並のろう学校を大塚ろう学校の分教室として当面の間設置するとした際に、新入生が二年続けて三名に満たないような場合は募集を停止するという条件を設けました。
 この募集停止の条件は、幼児、児童の減少によってコミュニケーションに必要な基礎的な能力を育成することが難しくなること、また、集団が固定化することにより幼児、児童の中に序列意識が生まれ、向上心が失われるなどの課題が生じてくることなど、教育上の観点から定めたものでございます。
 なお、二年続けて三名に満たないという条件については、少人数化が進み教育条件がさらに悪化する場合を想定して設けたものでございます。

○村上委員 現在の城南分教室の幼稚部では、来年一年生になる年長の幼児が一名、年中の幼児が三名、年少の幼児が三名と伺っております。来年度、二十二年度の新一年生は一名であり、仮にこのまま入学を認めたとなると、三年続けて三名に満たない状況となります。
 次の年の二十三年度には三人の入学者が予定されています。今後、子どもがふえるという可能性も否定はできません。そうであっても募集停止を続けるのかどうか、お伺いさせていただきます。

○前田参事 ろう学校は、聴覚障害のある子どもが同じ聴覚障害のある子どもの集団の中で切磋琢磨しながら、日本語、手話などによるコミュニケーション能力や学力、社会性を身につける場所でございます。
 そうした力を身につけるためには、言葉によるコミュニケーションが活発に行われる一定規模の集団を確保した教育環境の整備が必要でございます。少人数化が進むと、コミュニケーションに必要な基礎的な能力を育成することが難しくなることから、募集停止を行うものでございます。

○村上委員 ろう学校再編は教育条件の確保、聴覚障害の専門性の向上を目的としたもので、小さな集団における教育が子どもたちの教育環境にとってよくないという話でありました。
 ろう学校では、聴覚障害のある子どもたちが将来大人になって社会に出れば、当然聴覚障害のない人ともかかわっていくことになります。社会に出た際に、人とコミュニケーションをとる手段を身につけられるよう、教育がよりよい環境の中で行われることが重要であると考えます。
 コミュニケーションの指導は少人数で丁寧に行った方がよいとの意見もあるようですけれども、今回、教育条件の整備のために分教室の小学部を募集停止しようとしているわけですが、子どもたちへのコミュニケーション指導は集団が確保されることでどのようなメリットがあるのか、お伺いさせていただきます。

○前田参事 言葉は、みずからの意思を相手に伝える手段であるとともに、思考し論理を組み立てる手段でもございます。この言葉を使用したコミュニケーションの力を身につけるために、ろう学校小学部の児童は保有する聴力を最大限に活用しながら、手話や口語、口話、指文字、文字などを学び、言葉と言葉があらわす概念を一致させ日本語を身につけております。
 日本語を使ったコミュニケーション能力の育成は教育の全活動の中で行われていますが、その中でも、同じ障害のある子ども同士が友達の意見を聞き、理解し、深く考え、自分の意見を友達に伝えられるような活動の機会を多く設けていくことが重要でございます。
 ろう学校では、授業において子ども同士が話し合う活動を積極的に取り入れていますが、同じ学年の人数が多くいる場合、例えば二つのグループに分かれてディベートをすることができ、一つのテーマについて深く考える力、発表する力、相手の話を理解する力を養うことができます。
 しかし、学年の人数が一人、二人では、コミュニケーション能力の伸長を促す活発な話し合い活動を設定することが難しい状況になります。また、複数の学年の児童で編制した福祉学級では児童の言語能力の差が大きく、活動の効果が得にくいという状況になります。

○村上委員 これまで、ろう学校の城南分教室の保護者の方からお話を何回か伺ってまいりました。教育の重要性や、友達が少ないよりは多い方がよい、こんなことも異論がございませんでした。
 しかしながら、保護者にも仕事があり、幼い兄弟、姉妹もいるという人もいらっしゃいました。毎日の生活がある中で、遠くの学校まで通えないというのもよくわかりますし、ましてや障害のある子の通学負担は大変大きいものがあると考えます。
 こうした状況の中で、分教室という小集団であっても、指導方法を工夫する中で勉強していく方法もあるのではないかと思いますが、再度ご見解を伺わせていただきます。

○前田参事 聴覚障害のある子どもにとって集団の少人数化が進むと、教員がどのように指導方法を工夫しても、子ども同士のかかわり合いの中でコミュニケーションしようとする意欲を促したり、学習しようとする意欲を伸長したりすることが難しくなり、教育活動も活性化しなくなります。

○村上委員 随分簡単なご答弁でございまして、大変残念に思っております。分教室での教育条件が十分でないということならば、やはり何らかの通学支援を行う必要があるんではないかと思っております。
 その一つがスクールバスということになるのでしょうが、スクールバスを出したとしても、一定の時間がかかるのも事実であります。実は、私もこの資料をちょうだいして、通学時間のアンケートというものをちょうだいしたときに、これを見て大変驚きました。
 これは永福分教室のスクールバス、あるいはご自分での通学という時間帯なんですが、現在、自宅からご自分で通学をしているときには約一時間かかっていらっしゃる子どもさんが、今度は永福分教室ではなくて大塚本校の方に移動するときには、このアンケートを見ますと二時間、あるいは二時間五分、二時間三十五分というような時間帯が記入されておりました。
 そして、そんな中には、小さな弟さんや妹さんがいらっしゃるので、この時間で登校することはできない、そういったようなご意見もいただきました。中には三時間十分かかるというようなアンケートを見て大変驚きました。
 先ほど岡田理事からの質問の中にもあったように、このスクールバス、バス停をもっとふやす、あるいはバスの大きさをワゴン車程度にしていろんなところを回りながら少しでもその時間を短縮していく、こういった方法もあるのではないかと思います。通学負担を少しでも軽減するために、保護者に対し幾つかの選択肢を用意することが必要ではないでしょうか。
 例えば、大塚ろう学校本校だけではなく、葛飾ろう学校など、ほかのろう学校にもスクールバスを出すというような方策もあると考えますが、ご見解を伺います。

○前田参事 児童の通学負担の軽減を図ることは最も大事なことと考えておりまして、小学部の募集停止後、一年生から三年生までの低学年を対象としてスクールバスでの通学支援を行ってまいります。
 通学ルートの設定に当たりましては、可能な限り自宅から最寄りの場所にバス停を設けるなどの工夫を行ってまいります。
 また、保護者からの希望があれば、他の都立ろう学校への通学や、近隣自治体のろう学校への区域外就学についても調整を行ってまいります。

○村上委員 ぜひ個別に丁寧な対応をお願いしたいと思います。保護者にとっては、やはり子どもが小さいうちは地域の中で育てていきたいという思いはあって当然であります。
 しかし、必要とする教育を求めると遠くへ通わなければならないという現実もあります。障害の程度にもよるとは思いますが、地域の小学校に通えるような環境づくりも必要であると考えます。
 地域の小学校には難聴の子どものために通級の特別支援学級があると伺います。そうした学級の充実も必要でありますし、地域の学校の中で、聞こえにくい子どもたちが就学していくための支援策を充実させていくことも必要だと考えます。そうした環境が整備されれば、聴覚障害の子どもを持つ保護者の選択肢の一つとなるだろうし、教育環境の充実にもなると考えます。
 そうした地域での教育体制の整備についてはどのように考えるのかお伺いいたします。

○前田参事 お話のありましたように、地域の小学校で教育を受けることができるような環境を充実することは、非常に重要であるというふうに考えてございます。そのためには難聴通級指導学級の指導の充実や、難聴の子どもが多くの時間を過ごす通常の学級において、担任などの教員が聴覚障害の特性に配慮した指導を行うことが大切であると思っております。
 このため、教員の障害理解や指導に関する専門的な研修を一層充実するとともに、東京都特別支援教育推進室からの特別支援教育に関する情報提供を積極的に行ってまいります。
 また、大塚ろう学校本校が聴覚障害教育のセンター的機能を発揮し、小中学校の教員に対する相談や情報提供を行うとともに、専門的な助言や支援を行ってまいります。

○村上委員 陳情の代表者にお会いした際、将来、品川区や大田区に住んでいる聴覚障害のある子どもたちのため、必要な支援や教育を受ける場を残しておかなければならないという強い思いを話されていらっしゃいました。
 自分の子どもに聴覚障害があるという事実が突きつけられたときの親の気持ち、これからどうすればいいのか、この子はどうなってしまうのかといった不安はいかばかりかと思います。
 特に乳幼児期の子どもを抱える保護者は、分教室がなくなることに非常に大きな不安を抱えていらっしゃいます。先ほどの説明の中で、分教室幼稚部については、今後、第三次実施計画の中であり方を検討するとのお話でありました。これは、分教室幼稚部を地域のろう教育の拠点として整備していく話につながるものであり、一定の評価ができるものであると考えます。
 ここで確認しておきますが、幼稚部を地域の拠点として残す方法で検討を行う理由は何なのかお伺いします。

○前田参事 ろう学校の幼稚部では、ゼロ歳から二歳までの早期からの教育を基礎として、幼児と保護者との安定した人間関係をもとに、コミュニケーション意欲の向上を図ることを重点の一つとしており、そのために保護者にも日々の教育活動に参加してもらい、子どもとのコミュニケーションの方法などについて学んでいただいているところでございます。
 幼児の生活は、家庭を基盤として地域社会を通じた広がりを持つものであり、安定した親子関係やよりよい家庭環境を保つためにも、家庭や居住地域との連携が重要でございます。
 こうした聴覚障害のある幼児を取り巻く状況を勘案し、第三次実施計画策定の中で幼稚部の地域における、ろう教育の拠点としてのあり方について検討することとしたものでございます。

○村上委員 今、最後のところで、幼稚部を地域の拠点として残す方法で検討を行う理由は何か、これは先ほどの岡田理事も同じような質問をされていました。あえて重ねて質問をさせていただいたのは、ぜひ保護者の皆さん方の選択肢を一つでもふやしていただきたい、こんな思いから、地域の幼稚部、あるいは小学部、こういったものの検討を進めていただきたいということのお願いの気持ちも入っておりました。
 そしてまた、最後になりますけれども、選択肢がふえるということについては評価をいたします。また、今後もぜひ建設的な検討を重ねていっていただきたい。
 そして、先ほど来何回か触れておりますけれども、地域の幼稚部、小学部、あるいはスクールバスの通学支援、ここにおいては、バス停の設置やバスの小型化、そしてまた、ろう教室、あるいはろう学校のアンバランスについてもぜひもう一度考えてみていただきたい。
 そして何よりも、子どもたちの遠距離通学の困難さ、こういったものについても、しっかり目を向けて検討していっていただきたい、このことをお願いして質問を終わります。

○遠藤(守)委員 それでは、私からは公明党を代表いたしまして、質問をさせていただきます。
 民主党の先生、また自民党の先生からも、今回、両会派の皆さんとも苦渋の選択であると、このようなお話がございました。私たち公明党もこのテーマに当たりましては、きょうお越しになられている父兄の皆様のご意見、ご要望等をお聞きいたしたことはもちろんのこと、現場であります分教室にもお邪魔をして、職員の皆さん、そして保護者の皆さんからもさまざまなヒアリングを行った上で、この議論に臨ませていただいたわけであります。
 その意味では、他のお二人の方の質問とダブる可能性もありますけれども、都議会全体として、本当に熱心に、そして丁寧に議論が行われたということをしっかり後世にも残すという意味で、質問を何点かさせていただきたい、このように思います。
 この質問の前提として、私は誤解を恐れずにいえば、今回の陳情の審議の論点というのは二つあろうと思います。
 先ほど来議論がありますとおり、教育論として、少人数学級等一定の規模、集団で行う教育、この指導のあり方の是非、これは純粋に教育論上の話としてあります。
 二点目の論点としては、さはさりながら、一方、いわゆる聴覚障害のあるお子さん、低学年の児童に遠距離通学を強いるという、いわゆる通学負担の問題、またはそれにかかわる家族の環境ですとか、または愛情ですとか、そうしたいわゆる心、ハートの部分をどう折り合いをつけるか、この問題だろうと思います。
 教育庁がこの特別支援教育にかかわらず、さまざまな行政計画を進める場合、教育論だけではなくて、小さなお子さんや、または保護者、家庭環境、いわんや、こうした障害をお持ちになっている特別なケースというものを十分に配慮していく必要というものがあるとまず思うわけであります。
 その上で、現在、城南分室の小学部では十名の児童が一生懸命学んでいるわけであります。先ほど来出ておりましたけれども、この十名で学校を営んでいる教育上のメリット、そしてデメリットを改めてもう一度、答弁いただきたいと思います。

○前田参事 メリット、デメリットでございますが、算数と国語につきましては学年別授業、一年生は自立活動の担当教員がマン・ツー・マンで授業を行っております。生活科は一、二年生同士で合同で行い、音楽と図工は一年生から三年生までのグループと四年生から六年生までのグループに分けて授業を行ってございます。体育は集団での活動が必要になるため、小学部全員で授業を行っており、運動会や移動教室などの大きな行事は本校と三つの分教室合同で行ってございます。
 メリットとしては、児童一人一人と教員とのかかわりが親密になるといったことが挙げられます。
 一方、個別指導では、教科学習の中で児童同士のコミュニケーション場面がつくれないといった面や、集団での活動が必要な教科では、複数の学年で授業を行うことになるため、児童の発達段階に応じた計画的、系統的な指導が難しいなどのデメリットがございます。

○遠藤(守)委員 聴覚障害は社会性の障害ともいわれているということで聞いております。この社会性についての育成については、コミュニケーションの指導や、国語、算数といった学力だけでは決して十分ではないと思います。いかに心を育て、協調性など、人とのかかわり合いをはぐくんでいくか、これもまた大切な教育であると思っております。
 ところで、そうしたものについては、どのように育成をされているのか。そして、それが少人数で行われた場合、教育上の観点からいかなる課題が生じているのか、ご答弁いただきたい。

○前田参事 子どもが将来的に社会で自立していくには、学力や日本語能力だけでなく、人とのかかわり合い方などの社会性も同時に育てることが重要でございます。
 学校教育においては、社会性は教員と子どもの関係だけで育てられるものではなくて、一定規模の集団の中で考え方や性格が異なる子ども同士が互いの特性を認め合い、また一方では、集団の中でのみずからの役割を自覚し、その責任を果たしていくといった経験を重ねることによって育てられるものでございます。集団の小規模化が進むと、こうした社会性の育成が困難になるところでございます。

○遠藤(守)委員 学校教育においては、ある程度の集団規模があって教育活動を行う方がよいというのはまさにそのとおりだと思います。友達は当然、少ないより多い方がいいに決まっていますし、また、子ども同士が相互に切磋琢磨し合える環境にいる方がよいというのも当然であるわけであります。
 ところで、先ほど来申し上げているとおり、現在、この城南分教室の小学部には十名のお子さんたちが通っているわけであります。そして、現在では、一年生と二年生が人数の関係から一緒、すなわち複式学級となっておりますけれども、今回の募集停止をめぐりまして、複式学級でも学べる環境があれば、それでもいいではないかと、このような意見もございますけれども、この複式学級となった場合、子どもたちの教育環境はどのようになるのか、お答えいただきたいと思います。

○前田参事 連続する二つの学年が少人数化し、複式学級となった場合には、異なる学年の児童が一緒に授業を受けたり、個別指導を受けたりすることになります。一緒に教科の授業を受ける場合には、特に低学年の児童は発達段階でのコミュニケーション能力の差や学力差が大きいため、限られた授業時間の中で十分な指導を受けることには限界がございます。

○遠藤(守)委員 教育庁さんが考える少人数化や、または複式学級の教育上のデメリットがあるという説明でありましたけれども、城南分教室の小学部が募集停止となって、本校やその他のろう学校に通うということになると、先ほど来質疑でありますとおり、子どもたちの通学負担というものは相当なものになるわけであります。特に小学部の低学年のお子さん--幼稚園出たばかりですね--が本校に通うとなれば、体力的な負担は大きいと思います。
 私ごとで恐縮ですけれども、私の息子も自宅から約二時間近いところの学校に通って、今、小学校五年生でありますけれども、やはり幼稚園を卒園して、一年生から片道二時間送り出すというのは、本人にとっても大変な負担でありましたし、また、それを送り出す我々親にとっても大変な負担でありました。
 大人だったらば、家を出て真っすぐ行きますけれども、途中でおしっこしたくなったとか、おなかが痛くなった、出ていって、もう行ったんだろうなと思ったら、知らない間に帰ってきているとか、いろんな、大人では全く理解ができないような、こうした中で長距離通学を強いるということになるわけであります。
 そこで、こうしたことから、小学部の低学年に限って分教室で教育を行うなどの柔軟な対応はできないものだろうか、このように思いますけれども、いかがでしょうか。

○前田参事 趣旨については、繰り返しのご答弁になりますけれども、小学部でも発達段階に即したコミュニケーション指導はいうに及ばず、充実した各教科の指導が何よりも大切であり、特に読む力や書く力、話し合う力の伸長を図ることを目的とした指導を重視しなければいけません。
 小学部低学年においても、一定の集団を確保するとともに、同じ年齢の児童が切磋琢磨し、互いに高め合っていくことのできる教育環境とすることが重要であるというふうに考えております。

○遠藤(守)委員 ところで、先日も私は現地を視察させていただきましたけれども、この分教室の幼稚部では、保護者の方々が本当に時間が大変な中、付き添って、学習を見ておられるわけであります。
 障害のない子どもが通う幼稚園では、保護者の付き添いを求めるということは、よほどのことがない限り、そのようなことは行われないと思いますけれども、ろう学校の幼稚部で保護者の付き添いを求めている理由について、答弁いただきたいと思います。

○前田参事 聴覚障害のある子どもたちの言葉の発達だけではなく、情緒面や社会性などの発達を促すためにも、保護者が聴覚障害について正しく理解して、我が子の障害を受容し、適切な養育を行っていくことが重要でございます。
 そのため、ろう学校の幼稚部では、保護者に教員の指導方法を見てもらいながら、聴覚障害のある子どもとの接し方や手話などの多様なコミュニケーション手段の活用、補聴器の管理の仕方などを身につけてもらうことを目的として、保護者の付き添いをお願いしているところでございます。
 なお、大塚ろう学校の本校や分教室の幼稚部では、三歳児が在籍する幼稚部一年生については保護者の付き添いを原則とし、幼稚部二年生と三年生については、家庭の事情が許すのであれば、来校して指導の様子を見てもらうようお願いしているところでございます。

○遠藤(守)委員 幼稚部では指導の効果を上げるためにも保護者の付き添いを求めていると、このような答弁でありました。
 仮に今後、幼稚部も募集停止になるようなことがあれば、裏を返せば、スクールバスに保護者の方も同乗して、本校に通うようになるということが十分に推察をされるわけであります。そうなれば、保護者や幼い兄弟姉妹の生活環境もまさに激変をするわけでございます。
 私も一連の保護者の皆さんからお話を聞いたときに、生活が激変したことによって、長年住みなれた地域をわざわざ引っ越しされたというケースもお伺いしましたし、または、そうした過程で子の心身の乱れ、病が生じてしまった、そのようなこともあったということもお伺いしたわけであります。
 その意味から、先ほど来あるとおり、幼稚部を残していくという都教委の方向性については、私は適切であると思います。
 そこで、幼稚部を残していくという方向性に関連してですけれども、これまで二年続けて三名に満たない場合は募集を停止すると、このような考え方があったわけでありますけれども、幼稚部を残すことになると、この考え方、すなわち二年続けて三名に満たない場合は募集を停止するという考え方は当てはまらないと、当てはめるべきではないと、このように思いますけれども、教育庁の見解を伺います。

○前田参事 幼稚部につきましては、委員のご指摘にもございますように、通学に際して、子どもに体力的な負担をかけることや、幼い弟や妹がいた場合には、保護者にも大きな負担を求めるといったようなことが課題であり、こういったことも踏まえまして、そのあり方については三次計画の中で検討していくということでございます。
 お話のありましたように、仮に幼稚部を存続させる場合には、現在の募集停止条件については見直しをするといったようなことになると思います。

○遠藤(守)委員 最後になります。先に質問された二つの会派の皆さんからも、同様の趣旨の発言ともなりますけれども、今後、第三次実施計画の策定に当たりましては、今、答弁ありました幼稚部のあり方を検討していくと、こういう話でありましたけれども、これについても、まずしっかりと担保をしてもらいたい。このような要望が一つ。
 そして、特別支援教育の大きな考え方については、都内全域を見て、どこに居住しても、決して不公平、またはマイナスにならないという形で、地理的に見てさまざまな検討をしていくという、こうした大きい考え方があるわけであります。
 ぜひともこうした点も踏まえて第三次実施計画、早急に策定し、保護者の皆さんの安心につながるこうした取り組みを進めるべきであることを訴え申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。ありがとうございました。

○畔上委員 今、皆さんのいろいろ議論を伺っていて、さまざまな問題が出されていて、負担については第三次計画で検討するというお話もありましたが、私は第三次計画で検討するのであれば、今この時点で城南分教室の募集停止を行う必要はない。むしろ存続させて、それで検討を進めるべきだというふうに思いました。その立場で幾つか伺いたいと思います。
 十月二十七日に行われました文教委員会において、ろう学校に対する私の質問に都教委は、都立のろう学校の在籍者数の減少傾向を受けて、再編計画をつくったんだと説明されました。
 しかし、統計資料を見ますと、推進計画スタート時の二〇〇四年時で、小学部は百九十七人、昨年は二百八人、ことしは二百二十一人と減るどころかふえていると。前回、そのことを私が指摘したら、都教委は小学部については、児童生徒数はほぼ並行の推移だと認めました。
 今回の陳情の城南分教室でも、この二年続けて、小学校一年生が二人、一人となっただけで、その後は、先ほどもお話がありました三人入学の見込みがあると伺っています。それは、都の推計と私は合致する傾向だというふうに思っています。
 今後も二〇〇四年と同程度、またはそれ以上の入学が見込まれる。こういう中で、たまたまこの二年間に入学者が少なかったということで募集停止するというのは、私は乱暴なやり方だというふうに思います。
 しかも、なぜ一時的に、この間、入学希望が減少したのか。それは五年前、ちょうど今の小学校入学前後の子どもたちが早期の相談や幼稚部にちょうど入るころ、そのときに、推進計画のスタートがあって、この統廃合計画のあおりがあって、結局そのことによって減少した、私はそういうふうにも伺っています。分教室を存続しますと、こういう立場で、この立場を鮮明にすれば、私は希望は減るどころか、むしろふえると思うんです。
 先ほど来、皆さんもおっしゃっていましたが、できるだけ近いところで教育を受けたいというのは、私は当然の願いだからだと思うのです。今回も募集停止になったら、では、どうなるのか。来年一年生になるお子さん、これまでずっと仲よく過ごしてきた幼稚部、それから小学部のお友達とお別れをして、自分だけ、一人だけ大塚の本校に行かなければならない、そういうふうになるわけです。
 自分が希望したわけでもない、教育委員会の考え方を一方的に押しつけられて本校通学になるわけです。だから、保護者の皆さんは、自分の子どもがその一人になったらどうなるか、自分がその立場だったらどうなるのか、これから先、分教室がなくなったら聴覚障害の子どもたちはどうなるのか。本当にそのことを真剣に悩んで、子どもたちの最善の教育を守りたい、その一心でこの陳情を出されたんだと私は思うんです。
 先ほど村上委員から特別支援計画の経緯も話されました。そして、以来、この五年間、分教室でろう教育を子どもたちは受けてきたわけです。しかし、その中で我が子の成長や元気に伸び伸びと過ごす様子を見て、やっぱり今の分教室で教育を受けたいんだというふうに保護者の皆さんはいっているわけです。私も、各委員の皆さんもおっしゃっていましたが、直接保護者の方々にもいろいろご意見を伺いました。皆さんそろって分教室で教育を続けてほしいというふうに切々とお話をされていました。
 そこで、私はまず伺いたいんですが、前回の委員会の中で、保護者の意見や要望、それから個々の事情については把握しているところだというふうにご答弁されていましたが、保護者の皆さんの意見や要望はどんな内容だったのでしょうか。

○前田参事 保護者の方々の意見、要望、個々の事情については、保護者会や個別の面談を通じてお話を伺っているところでございます。
 保護者のご意見としては、大塚ろう学校本校に通うことになると、通学時間が現在よりふえることになり、通学に対する不安があることや、兄弟姉妹がいる場合には生活上の負担が増すといった内容のご意見でございました。

○畔上委員 そうした保護者の皆さんのご意見をどう受けとめたのか伺いたいと思います。そしてまた、保護者の意見を尊重すべきと私は考えますが、いかがでしょうか。

○前田参事 募集停止の条件については、少人数化することで十分なコミュニケーション能力の育成が図れなくなるなどの教育上の観点から設けたものでございます。
 保護者の方々の意見は真摯に受けとめており、通学支援などについては、一人一人のご事情を聞きながら必要な対応をしていきたいと思います。またあわせて、こうして教育環境の改善を図るために募集停止をするといった都教委の考え方についても、引き続き保護者の方々へ誠意に説明を行いながら、ご理解を得るように努めてまいりたいと思っております。

○畔上委員 今、教育の問題で誠意を持って説明するんだというふうにおっしゃったんですけれども、この間、どんなに説明を受けても、やっぱり子どもにとって、また家族にとって最善の方法だと納得できないからこそ、私は保護者の皆さんが不安の声を上げていらっしゃるんだというふうに思うんです。
 盛んに都教委は先ほど来、少人数化で教育上の課題が生じているというふうにおっしゃっていましたが、今、分教室で学んでいる子どもたちの保護者の皆さんからは、だれも今の分教室に不安はないと。むしろ遠くに通うことへの不安の方が大きいんだという声が寄せられています。
 それは、城南だけじゃなくて、永福の保護者の方も共通していました。都教委の考え方の根底には、子どもの集団として切磋琢磨できる大きい集団が必要なんだというふうにこの間も繰り返しおっしゃられていました。
 また、聴覚障害の子どもたちには、手話でコミュニケーションできる集団が求められているんだというふうにもおっしゃっていました。手話でコミュニケーションが必要だということはわかります。しかし、集団というのは、必ずしも同年代で、同年齢で三人である必要があるのか。今の分教室で、じゃ少ないから切磋琢磨できていないのかという問題だと思うんです。私はそんなことはないというふうに思います。
 私も城南と永福の二つの分教室の様子を拝見させていただきましたが、子どもたちもとても生き生きと異年齢の友達とも仲よく勉強し、また遊んだりもしておりました。
 例えば小学校六年生のお子さんでしたけれども、この子は学年が今一人になってしまいましたが、五年生と一緒に複式で勉強しているというお子さんでした。決してその子も勉強がおくれているわけではないと。しかも、心のキャッチボールもしっかりして毎日楽しいと、伸び伸びと成長しているということであります。
 保護者も入学時には、自分の子どもの成長にとって本当に分教室がいいのか、大規模な学校に行った方がいいのか、本当にいろいろ悩んで、そして、やっぱり分教室を判断して本当によかったということが保護者の皆さんからの共通の声だったんです。
 私はこうした子どもたちを、あえて大きな集団が必要だからと、集団でなければだめなんだということをいって、一時間、二時間以上もかけてスクールバスで、しかも、四年生以上は電車やバスを乗り継いで毎日通学する、くたくたに疲れ切る環境をつくる。それがよいことといえるんでしょうか。
 私は自分でも体験してみなきゃいけないなというふうに本当に思って、先日、城南の分教室に行って、そこから電車で大塚のろう学校の本校にも行ってみました。城南の子が利用する電車は京急電車で、これは結構時間の間隔があいていたんですけれども、雑色駅は急行がとまらないので、私は各駅で品川まで行って、それから山手線の外回りに乗りかえて、渋谷、新宿、池袋という副都心のターミナル駅を経由して大塚駅まで行って、歩いてきました。大人の私の足でちょうど一時間半かかりました。
 私が行ったのはラッシュ時間帯ではありませんでしたが、かなり山手線も込んでいて座れませんでした。大塚ろう学校に行ったら、もう私自身がくたくたになりました。都営三田線を使う経路もありますが、かかる時間は変わらない。しかも、大手町や水道橋を経由して行くわけなんです。
 そうすると、やっぱりそういったターミナル駅を通る電車というのは、朝の混雑は相当なものなんです。こんな距離をたった十歳の子どもが毎日電車通学するのは、私は絶対これはやってはならないことだというふうに思いました。遠くに通う子どもたちのストレスはどう考えているんですか。

○前田参事 先ほど来申し上げておりますけれども、子どもたちの通学負担の軽減は非常に大切な問題だと思っておりまして、大塚ろう学校へのスクールバスの配車や近隣自治体へのろう学校への区域外就学の調整など、通学の負担が軽減できるよう適切に対応してまいります。

○畔上委員 今、スクールバスを盛んにおっしゃっているんですが、スクールバスは先ほども申しましたように三年生までなわけですね。四年生以降は電車通学だと。それにスクールバスだって一時間以上かけて朝の渋滞の中を都心を縦断していくわけですから、最小といっても、それは大変な負担だといわざるを得ないと思います。
 また、子どもたちは、一人で通学できる子どもばかりではないというふうに思うんです。例えば重複障害の子どもたち、保護者が毎日本当に大変な思いをしながら、一緒に通学されています。
 実は私も知的障害を持つ子どもの学童クラブのお迎えをやったことがあるんですけれども、普通一時間の道のりが、先ほど遠藤委員もおっしゃいましたけれども、本当にちょっとしたことで、急におなかが痛くなったとか何かいろいろな変化があって、その変化に、とりわけ重複障害の子どもたちは対応するのが大変ということであります。
 私がお迎えをしていたお子さんは聴覚障害ではありませんでしたけれども、知的障害のお子さんでしたが、急激な変化に対応できなくてパニックを起こして、本来一時間で行けるようなところを二時間かかったということはしょっちゅうでした。
 たかが通学じゃないんですね。どれだけ神経を使ってお母さんたち、また保護者の皆さんが頑張って、我が子を思いながら通学しているか。それははかり知れないというふうに思います。だから、通学時間一時間だからといわれても、本当にこれ以上遠くなったらと思うと、ろう学校のろう教育自体をあきらめざるを得ない、そういうふうになってしまうわけですね。
 また、あるお母さんはこうおっしゃっていました。母親はこの子一人だけを見てあげられるわけじゃないんだと。家族で生きているんですと。兄弟にも目配りしながら何とか付き添って学校に来ているのに、これ以上遠くなったらついていってあげられない。そうなったら近所の一般の小学校に入れるしかありません。しかし、いつも聞こえないために、一テンポおくれての行動となったりして、いじめに遭わないだろうか、学校嫌いになるんじゃないかと。本当に不安でいっぱいだと。こんな不安を親や子どもも持ちながら学校に行くことがいいはずはありませんと、そういうふうにおっしゃっていました。
 私は地域の小学校に行ったら、それこそ保護者や本人の望む、そういったろう教育がまさに受けられなくなってしまうというふうに思うんです。そういった通い切れない子どもをつくり出す、現につくり出そうとしている、このことについてはどうお考えなのか、もう一度伺いたいと思います。

○前田参事 繰り返しのご答弁になりますけれども、通学負担の軽減の問題は最大の課題の一つと考えておりまして、大塚ろう学校の本校の小学部に入学する児童の通学支援につきましては、保護者一人一人の方々に事情をお聞きしながら、実情に応じた通学支援を行っていきたいと考えてございます。

○畔上委員 私は通える配慮じゃなくて、通える距離につくる配慮だというふうに思うんです。通学時間が長くなると、地域で過ごす時間がなくなってしまう。こういう問題もあります。
 分教室では、もう既に近隣小学校と交流を図ったり、それから保護者も近所のスイミングやサッカークラブに連れていったりして、子どもたちの社会性を身につける。こういういわゆるなかなか小さな集団の中で育ちにくい社会性をどうやったらつくれるだろうかという努力をされているわけです。放課後には兄弟の友達や、また近所の友達とも遊んだり、それから自然に地域に溶け込んでいく。そういうことをやってきているわけです。
 片道に一時間、二時間かけるようになったら、そういった交流も私はできなくなってしまうと思うんですね。ノーマライゼーションの精神ともそれは逆行するんじゃないでしょうか。
 学校が遠くなることによって、むしろ地域の子どもたちと大事な交流をする、その場が欠落する、そのことについてはどうお考えなんでしょうか。

○前田参事 今回の募集停止につきましては、聴覚に障害のある児童に必要なコミュニケーションの力や学力を伸ばしていくための教育条件の改善のために行うものでございまして、こうした考え方につきまして、保護者の方のご理解が得られるよう引き続き努めていきたいと考えております。

○畔上委員 先ほど来、教育条件の改善ということを繰り返されているわけですけれども、私は、小学生の体力と発達から見れば、できるだけ近くで通うようにする、これは教育条件として大変重要な要素だというふうに考えるんです。
 それで、そのことは実は都教委も認めていらっしゃったんですね。二〇〇三年の十二月に出した東京都の特別支援教育のあり方についての最終報告、私はこれをまた改めて読ませていただきました。
 この最終報告では、ろう学校の適正配置についてただし書きをつけているんです。そのただし書きにはこう書いてあるんです。ただし、その際、幼稚部及び小学部については、幼児、児童の通学負担を十分に考慮することが大切であると。まさにその考慮が分教室だと私は思うんですね。
 その大切な考慮を抜きにして、とにかく大規模で切磋琢磨しなきゃいけないんだと。そういうことをいって本校に通学させると。そういうやり方が果たして教育的といえるんでしょうか。ましてや、保護者の皆さんが反対しているものを強行するようなことがあったら、私は保護者と子どもと学校という教育の土台となる本来の信頼関係を崩すことになると思うんですね。教育委員会として、信頼関係をみずから崩すこんなやり方は絶対やるべきではないというふうに指摘せざるを得ません。
 九四年にサラマンカ宣言が行われましたけれども、この宣言の中でもこういっています。障害を持つすべての人たちは、彼らの教育に関する願望を表明する権利を持っているんだと。そして両親は、両親というのは親御さんですね。保護者の皆さんのことです。両親は、熱望に最適の教育形態についての相談を受ける固有の権利を持っているんだというふうに明確にうたっているんです。どういう教育形態がその子にとって最適なのか、それをちゃんと親と相談して、それを尊重しなさいよというのがサラマンカ宣言なわけですよね。
 私は、教育委員会というのはその立場にしっかりと立って、保護者の皆さんときちんと話し合いをすべきだと。まず統廃合ありき、それで分教室を廃止ありきで話を進めていく、こういうやり方は絶対やってはならないというふうに思います。
 そういう立場で、私は陳情を採択すべきだということを最後に申し上げて、発言を終わりたいと思います。

○星委員 私の方も、都立大塚ろう学校城南分教室の二十二年度以降の小学部募集停止をしないことに関する陳情について、意見を申し上げます。
 今、すべての会派の真摯な質疑を聞かせていただきまして、私といたしましても、いろいろ経過がある中での今のこの状況というところの中で非常に悩みました。
 しかし、現地視察調査、保護者、関係者の方々のご意見も伺ってくる中で、まず物理的な地の利の問題、そもそも久我山、大塚の位置からいえば、当然城南の位置にろう教育の環境は必要であると考えます。また、幼稚部を残すとなっておりますけれども、幼稚部が残せるなら初等教育、低学年への配慮もあわせて行うべきだと思います。
 私もみずからの子育て経験から申し上げましても、小学校の一年生、二年生が、私の場合は、実は徒歩で通える地域の学校に行って帰ってくるだけですけれども、やはり親の心情は落ちつかないものです。
 それなのに、これまで以上に長い時間をかけて通学せざるを得ない状況は、たまたま障害を持った子どもと、そうでない子の教育機関へのアクセスの不平等といわざるを得ません。日本における障害を持つ子どもの学びの保障について、この教育環境へのアクセスの問題は、既に国連の機関からも是正するように指摘されている大きな課題です。
 さらに、学校を視察してみて、隣接した六郷工科高校との防災訓練などの連携、交流の姿、子どもたちと高校生が芝生の校庭でじゃれ合う姿などを拝見し、この教育環境はきのうやきょうできたものではなく、城南特別支援学校があの地域に理解され、見守られているという事実の重さ、これは、特別支援教育にとっては一番のかけがえのない財産だと感じております。その地域教育資源を活用して、今後も幼児、初等ろう教育にも場を提供していくことは極めて有意義と考えるものです。
 一番懸念をされるディベートできる人数の確保に関しましては、少ない学年のときはカリキュラムの中で本校との交流事業など工夫をされることを望みます。
 なくなることをのんだ上で、その後のサポート体制を充実していくのか、それとも、これまで都も教師も地域も保護者も、つくり上げてきたよい環境をどう残し、今後生かしていくかという視点で考えるべきだと思い、私はこの陳情はぜひ採択すべきであるという意見を申し上げておきます。

○大西委員長 ほかに発言はございますか。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○大西委員長 発言がなければ、これより採決を行います。
 本件は、起立により採決いたします。
 本件は、採択とすることに賛成の方はご起立願います。
   〔賛成者起立〕

○大西委員長 起立少数と認めます。よって、陳情二一第三八号は不採択と決定いたしました。
 請願陳情の審査を終わります。
 以上で教育庁関係を終わります。
 請願陳情について申し上げます。
 本日審査いたしました請願陳情中、採択と決定いたしました分につきましては、執行機関に送付し、その処理の経過及び結果について報告を請求することにいたしますので、ご了承願います。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後三時三十九分散会