文教委員会速記録第五号

平成二十一年三月十八日(水曜日)
第三委員会室
   午後一時一分開議
 出席委員 十四名
委員長大山とも子君
副委員長服部ゆくお君
副委員長大西さとる君
理事伊藤 興一君
理事吉原  修君
理事今村 るか君
遠藤  守君
米沢 正和君
早坂 義弘君
野上ゆきえ君
谷村 孝彦君
古館 和憲君
古賀 俊昭君
初鹿 明博君

 欠席委員 なし

 出席説明員
教育庁教育長大原 正行君
次長影山 竹夫君
総務部長松田 芳和君
都立学校教育部長森口  純君
地域教育支援部長皆川 重次君
指導部長高野 敬三君
人事部長直原  裕君
福利厚生部長秦  正博君
教育政策担当部長石原 清志君
参事高畑 崇久君
参事中島  毅君

本日の会議に付した事件
 教育庁関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成二十一年度東京都一般会計予算中、歳出、債務負担行為 教育庁所管分
付託議案の審査(質疑)
・第四十五号議案 東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
・第四十六号議案 学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
・第四十七号議案 教育職員免許法関係手数料条例の一部を改正する条例
・第四十八号議案 学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
・第四十九号議案 学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
・第五十号議案 東京都立学校設置条例の一部を改正する条例

○大山委員長 ただいまから文教委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、教育庁関係の予算の調査及び付託議案の審査を行います。
 これより教育庁関係に入ります。
 初めに、理事者の欠席について申し上げます。
 岩佐理事は、所用のため、本日の委員会に出席できない旨の申し出がありました。ご了承願います。
 次に、予算の調査及び付託議案の審査を行います。
 第一号議案、平成二十一年度東京都一般会計予算中、歳出、債務負担行為、教育庁所管分及び第四十五号議案から第五十号議案までを一括して議題といたします。
 予算案及び付託議案につきましては、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○松田総務部長 去る二月十六日の当委員会において要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元の文教委員会要求資料目次をお開き願います。
 ごらんいただきますように、今回要求のございました資料は十五件でございます。
 一ページをお開き願います。1、教員の都単独加配の状況でございます。
 僻地教育や児童自立支援施設内の教育等の充実のために、都単独で加配をしている区市町村立小中学校教員の人数について、校種別、項目別にお示ししてございます。
 二ページをお開き願います。2、男女混合名簿の実施率の推移でございます。
 都内公立学校における男女混合名簿の実施率について調査を実施した年度の結果を校種別にお示ししてございます。
 三ページをごらん願います。3、就学援助の認定基準及び援助費目でございます。
 生活保護世帯に準じる準要保護者を認定するための基準とその援助費目について、区市町村における状況をお示ししてございます。
 四ページをお開き願います。4、特別支援学級の設置状況の推移でございます。
 区市町村立小中学校における特別支援学級の設置状況の推移について、区市町村別、校種別にお示ししてございます。
 五ページをごらん願います。5、都立特別支援学校スクールバス予算の推移でございます。
 特別支援学校において運行しているスクールバスに係る予算額等についてお示ししてございます。
 六ページをお開き願います。6、都道府県別中学校卒業者の全日制高校・高専進学率の推移でございます。
 中学校卒業者の全日制高校及び高等専門学校への進学率の推移について都道府県別にお示ししてございます。
 七ページをごらん願います。7、都立高校の授業料減免状況でございます。
 都立高校における事由別の授業料減免者数と免除率について全日制、定時制の別にお示ししてございます。
 八ページをお開き願います。8、都立高校の募集人数と応募者数、合格者数でございます。
 都立高校の入学選抜における募集人数と応募者数、合格者数について、全日制、定時制の別にお示ししてございます。
 九ページをごらん願います。9、学校教職員定数の推移でございます。
 平成十二年度以降の学校教職員定数について校種別にお示ししてございます。
 一〇ページをお開き願います。10、教員の休職者数の推移でございます。
 当該年度に新規に病気休職となった教員数について、精神神経系疾患を理由とするものとそれ以外に分けて校種別にお示ししてございます。
 一一ページをごらん願います。11、小・中学校における養護教諭定数の状況でございます。
 養護教諭の定数配当における都基準と国基準との差について校種別にお示ししてございます。
 一二ページをお開き願います。12、特別支援教育支援員活用状況でございます。
 平成二十年五月一日時点の特別支援教育支援員の活用人数について、区市町村別にお示ししてございます。
 一三ページをごらん願います。13、都立高校の中途退学者数及び中途退学率の推移でございます。
 都立高校における年度別の中途退学者数と中途退学率について、全日制、定時制の別にお示ししてございます。
 一四ページをお開き願います。14、都立高校授業料の滞納額の推移でございます。
 都立高校授業料の滞納額について年度別にお示ししてございます。
 一五ページをごらん願います。15、都立学校数と入学者数の推移でございます。
 年度別の都立学校数と入学者数について、各校種別にお示ししてございます。
 以上簡単ではございますが、要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○大山委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 ご発言を願います。

○早坂委員 まず、中学校での武道必修化について伺います。
 このたびの学習指導要領の改訂により、中学校で武道が必修化されました。その背景について伺います。

○高野指導部長 平成十八年十二月、六十年ぶりに教育基本法が改正されまして、教育の目標に、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことが位置づけられまして、学校教育法も改正されました。
 こうしたことを受けまして、平成二十年一月の中央教育審議会答申において、保健体育科における武道の指導を充実し、我が国固有の伝統や文化により一層触れることができるようにすることが重要であると示されまして、平成二十年三月、中学校学習指導要領の改訂により、武道が必修化されることとなりました。

○早坂委員 武道の必修化について、その具体的な内容について伺います。

○高野指導部長 現行の学習指導要領では、中学校第一学年で武道またはダンス、いずれかを実施いたしまして、第二学年、第三学年では、球技、武道、ダンスのうちから二領域を選択し、実施することとなっております。したがいまして、必ずしもすべての生徒が武道を学習することとはなっておりません。
 今回の改訂によりまして、平成二十四年度からは、第三学年になるまでにすべての生徒が武道を学習するものとされまして、その種目といたしましては、柔道、剣道、相撲の中から一つを選択して学習することとなりました。

○早坂委員 武道の必修化により指導者の問題、土俵や道場の問題、あるいは竹刀や防具の問題など、幾つかの条件整備が必要となります。国においては、中学校での武道の必修化に向け、国庫による条件整備を開始したと承知していますが、これまでは選択履修であったため、準備のない区市町村においては、今後、施設、用具の面での条件整備を進めることが求められます。
 こうした区市町村独自の取り組みに加え、東京都教育委員会においても支援すべきと考えます。武道の必修化に向け、東京都教育委員会としての今後の取り組みについて伺います。

○高野指導部長 武道の必修化によりまして、平成二十四年度からはすべての中学校保健体育科教員が武道の指導に当たることとなります。特に武道は専門的な指導力が必要とされる領域でございまして、安全確保に留意しつつ指導力を向上させる必要がありまして、十分な研修を行うことが求められております。
 このため、都教育委員会は、平成二十一年度以降、保健体育科教員を対象に、柔道を初めとする武道の指導者講習会を順次開催いたします。また、平成二十二年度には武道に関する指導事例集を配布するなどいたしまして指導力の向上に努めてまいります。

○早坂委員 これから武道の講習会を開催して教員の指導力向上を図るということですが、例えば各地の柔道連盟、剣道連盟の皆さんや各警察署にいる柔道、剣道の先生に応援を求めるのも一つのアイデアだと思います。現に東京都柔道接骨師会の先生方からは、武道の必修化の際にはぜひ協力しますよとのお話もいただいております。教職員の研修だけではなく、外部人材の活用も有効と考えます。ご見解を伺います。

○高野指導部長 学校におきましては、教員が指導することが基本ではございますが、地域の有段者など外部の専門家の力を活用することは、武道指導を充実する上で効果があると考えられます。こうしたことから、都教育委員会では、平成二十四年度の完全実施に向けまして、東京都武道協議会と外部人材の活用について協議を始めたところでございます。
 今後とも区市町村教育委員会やお話の地域の関係団体などとの連携を深め、外部人材活用のあり方などについて検討を進めてまいります。

○早坂委員 次に、安全教育について伺います。
 子どもたちは毎日の生活の中で、犯罪、交通事故、自然災害、さらにはインターネットや携帯電話などによる被害などさまざまな危険にさらされています。我が党はこれまで、これらの危険から子どもたちを守るため、防犯カメラの設置や防犯パトロールの実施など、子どもを守る環境づくりの観点からさまざまな施策を実現してきました。
 しかし、子どもたちの被害を防ぎ、安全な社会をつくるためには、守ってもらうだけの立場から、自分の身を守ること、さらには家族や友人、地域を守る立場にまで意識を高めていくことが重要です。そのためには、学校での安全教育の充実が必要だと考えます。
 私は、平成十九年第四回定例会の一般質問において、学校での安全教育を充実させるため、各学校で指導する内容を具体的に定めたいわゆる東京版安全指導基準を定めることを提案しました。これに対し教育長から、基本的指導事項を体系的に示した安全教育のプログラムの開発を進め、安全教育が体系的に行われるよう、各学校を支援するという力強い答弁をいただきました。その後、この取り組みが継続的に研究開発され、この三月に安全教育プログラムが完成したと承知をしております。
 そこで、この安全教育プログラムの具体的な内容について伺います。

○高野指導部長 安全教育プログラムは、子どもたちに危険を予測し、回避する能力と他者や社会の安全に貢献できる資質や能力を育てるため、生活安全、交通安全、災害安全の三つの領域を関連づけまして総合的に扱った全国で初となる安全教育に関する指導資料集でございます。
 この安全教育プログラムは、理論編と実践編で構成されておりまして、理論編では、学校における安全教育の基本的な考え方や、これからの安全教育で子どもたちが身につけるべき能力などについて示しております。実践編では、幼稚園から高等学校までの発達段階に応じた指導内容、指導方法を示してございます。具体的には、生活安全として登下校の際の危険予測や危険回避の方法、交通安全として自転車の乗り方や加害者の責任、さらには災害安全といたしまして、地震から身を守る方法や災害時の避難所開設方法などの事例を掲載してございます。

○早坂委員 全国で初めて防犯、防災、交通安全に関する内容を発達段階に応じて総合的に扱ったこの安全教育プログラムは、どのような特色があるのか伺います。

○高野指導部長 安全教育プログラムの特色についてでございますけれども、三点ございまして、第一点は、安全指導の基準となる必ず指導する基本的事項を明確に示したことでございます。第二点は、その基本的事項を系統的、体系的な年間指導計画の例として示しているところでございます。また、三点目といたしまして、避難訓練などの定期的に行う安全指導と、日ごろ教員が子どもたちに一声をかける日常的な安全指導等を相互に関連させるなど、指導方法の改善を示しているところにございます。

○早坂委員 幼稚園から高等学校までの成長に応じ、最低限これだけは教えるという基本的事項を定め、系統的に指導を続けていくことは大変すばらしいことだと思います。このたび開発されたこの安全教育プログラムが実際に各学校で有効に活用され、安全教育が充実していくことが重要です。
 そこで、今後、この安全教育プログラムを活用し、どのように安全教育を推進していくのか伺います。

○高野指導部長 都内公立学校全校で安全教育が効果的に実施されるようにするために、安全教育プログラムを全教員に配布するとともに、学校の管理職、教員、区市町村教育委員会の指導主事を対象といたしまして説明会を開催して、内容の周知徹底を図る予定でございます。
 また、平成二十一年度、モデル校といたしまして、都内公立学校十二校を安全教育推進校に指定いたしまして、安全教育プログラムに基づく先進的な実践を行う予定でございます。
 さらに、これらの安全教育推進校での公開授業や安全教育に関するフォーラムを実施いたしまして、都内公立学校における安全教育を学校関係者はもとより、広く都民にもご理解いただき、都民と一体となった取り組みに広げてまいる所存でございます。

○早坂委員 子どもたちが生きる社会は、安全で安心できる環境であることが我々すべての願いであり、その実現に向け、学校関係者、保護者、地域社会全体が一体となって取り組んでいくことが大切です。各学校が今回作成した安全教育プログラムに基づいた指導を実践することで安全教育を充実させ、かつ地域や関係機関との連携をより一層深めていただきたいと思います。
 子どもたちが安全に対する意識を高め、そしてその子どもたちが地域の安全に貢献できる大人になっていくことで、東京の安全に関する総合力が向上します。学校教育が安全な社会づくりの一端を担うべく、私も東京都議会議員として努力してまいります。

○大西委員 実は先日、三月の初めに、都内の足立区にある公立高校の卒業式に呼ばれて行ってまいりまして、何校か複数の卒業式を見てまいりました。参列された保護者や地域の皆様と一緒になって卒業式を祝って、なかなか心に残るいい卒業式だなという感じも持ったんですが、一方、非常に印象深い卒業生の答辞を伺いました。
 その答辞にはどういう話があったかというと、当然一年生のときに四十人いるわけです。四十人いて、日々友達が減っていくと。日がたつにつれ、どんどん減っていってしまい、そして自分の仲いい友達がみんないなくなった。そしてやっと二年生になりましたと。二年生になったときに、友達がいなくなって本当につらかったんですが、また新しい友達ができた。ところが、その方もどんどんどんどんいなくなったと。その学校は、実は卒業式のときのクラス編制がみんな二十二人から二十三人ということでございました。要するにほぼ半分近くがやめていってしまっている。そしてまた、ほかの学校も二十人台、二十人台後半のところもございました。このように都立高校の中退率がちょっと気になったので、一つ質問させていただきます。
 都立高校の今の中退率の推移について、どのような状況なのかお伺いいたします。

○高野指導部長 都立高校全日制における中途退学率につきましては、平成十年度が三・六%でございまして、その後徐々に減少いたしまして、平成十九年度が二・二%でございます。

○大西委員 徐々に中退率の改善が進んでいるということでございますが、中退防止に向けた都教育委員会の取り組みについてお伺いいたします。

○高野指導部長 中退防止の取り組みについてでございますが、都教育委員会では、中途退学者の多い学校に対しまして、中途退学対応のための少人数指導を認めるとともに、学校が作成いたしました中途退学防止改善計画書をもとに、個別に指導、助言を行ったり、スクールカウンセラーの配置や臨床心理の専門知識を有するアドバイザリースタッフなどを派遣いたしまして、教育相談機能の充実に努め、中途退学防止の取り組みを推進してきております。

○大西委員 私の地元である足立区に関して、都立高校の中退率というのが自分でも見て気になりましたので、ちょっと個別に調べてみました。区にある都立高校の中退率の平均は四%ということで、都内平均が二・二%でございますので、それより約倍近くあるわけでございます。
 先ほど私がお話しした学校は、特にその中退率が多いという感じではございますが、この足立区においては改善すべき点がまだまだ多いという気がしておりますが、足立区内の都立高校の中でも頑張っている学校もございます。例えばエンカレッジスクールというのが足立区にもございますが、このエンカレッジスクールというのはどういうふうな学校かお伺いいたします。

○森口都立学校教育部長 エンカレッジスクールでございますが、小学校や中学校で十分に力を発揮できなかった生徒のやる気を育て、頑張りを励まし、応援する学校でございまして、エンカレッジの言葉は英語で励ます、力づける、勇気づけるといったことを意味してございます。
 都教育委員会は、生徒が社会生活を送る上で必要な基礎的、基本的学力を身につけ、自己に対する理解を深めるとともに、将来を見通し、卒業後は自立して社会に貢献できるように育成することを目的といたしまして、基礎学力を中心に体験学習や選択授業を大幅に取り入れた学校をエンカレッジスクールとして指定してございます。
 平成十五年度から、足立東高校及び秋留台高校において実施しておりまして、現在、全日制課程の四校をエンカレッジスクールとして指定してございます。

○大西委員 足立区のエンカレッジスクールである、今お話がありました足立東高校では、中退率が十三年度は二四%、一年間に二四%ですから、三年たったらほとんどいなくなっていたわけですよね。それが十九年度末には六%に劇的に改善されているということで、先日行われました入試でも、最終応募倍率が二倍を超えているということでございます。これは教職員の生徒指導の努力にもよるところも大きいと思いますが、何より地域と連携した農業体験学習など特色ある教育活動を行い、地域になくてはならない学校としてその地位を高めているとともに、全国から視察が絶えないほど注目や期待が集まっているということが理由ではないかと考えます。
 そこで伺いますが、都立高校改革計画の進捗状況というのはどのようになっているのでしょうか。

○森口都立学校教育部長 都教育委員会は、都民にとって魅力ある学校づくりを進めるため、平成九年度に策定いたしました都立高校改革推進計画と三次にわたる実施計画に基づき都立高校改革を着実に推進してまいりました。
 現在、新しいタイプの学校は計画の約八割となる四十校が開校しておりまして、平成二十一年度には進学型専門高校一校、平成二十二年度には中高一貫教育校四校など七校、平成二十三年度には総合学科高校一校の開校を予定しております。また、進学指導重点校や重点支援校などの指定を初め、既存校における個性化や特色化を推進するなど、生徒の多様な希望にこたえる学校づくりを進めております。
 都教育委員会は、今後とも、多様化する生徒の実態や都立高校に対するニーズ等を適切に踏まえ、都立高校改革に積極的に取り組んでまいります。

○大西委員 都民にとって魅力ある学校づくりを進めていく中で、進学ということへの期待もやはり高まるものだと思います。やはり多くの高校生は進学を考えるわけでございます。今も、大学入学がほぼ一〇〇%入れるということになりますと、そこに視野を置いている子どもたちは多いと思いますが、そこで、都立高校における進学対策の取り組みをお伺いいたします。

○森口都立学校教育部長 都教育委員会は、都立高校の進学対策といたしまして、生徒の進学希望の実現を図る進学重視型の単位制高校を設置するなど、都立高校改革を行ってまいりました。また、進学指導研究協議会を開催するなど、進学指導に積極的に取り組む学校を支援しております。
 全都立高校におきましては、補習や補講を実施するとともに、習熟度別授業や少人数制授業や土曜講習等により、進学に対応してございます。さらに、進学指導重点校と進学指導特別推進校などにおきましては、放課後や長期休業期間などに進学のための補習、補講の充実を図り、国公立大学や難関私立大学への進学を可能にするための一貫した進学指導の取り組みを行ってございます。

○大西委員 都は生徒の大学進学希望を実現するために、進学指導重点校や進学指導特別推進校という制度を設け、都内に日比谷高校など進学指導重点校七校や国分寺高校など進学指導特別推進校五校を指定しているということでございます。
 ちなみになんですが、この進学指導重点校や進学指導特別推進校の中退率というのを見てみました。入試で偏差値が高いと思われる学校の中退率というのは、学校によって異なるものの、おおむねやっぱり低かったということです。
 きのうなんですが、朝日新聞に高校中退の話が特集で出ております。(資料を示す)やはりこの中で中退される子どもたちというのは、希望や目標を持たない、持てないという方が相当います。その中で進学というところは、やはり僕はこの学校に入りたいんだ、この大学に行ってこれを勉強するんだ、そしてこういう会社に入るという目標や希望を持っているわけでございますね。だから、そこで中退率もおのずと少なくなってくるというところが読み取れるかと思います。
 そこで、現在この指定を受けている進学指導重点校や進学指導特別推進校というのは、進学対策のために具体的にどのような取り組みを行っているのかお伺いをいたします。

○森口都立学校教育部長 指定を受けております学校それぞれが、生徒の実態や進路希望に応じ進学を目指した教育活動に継続的、計画的に取り組んでおります。例えば進学指導重点校であります日比谷高校におきましては、国公立大学現役合格者百名を目指し、入試、定期考査、年三回の外部模試等の成績による定点観測の実施、土曜、夏期講習の実施、進学個別相談、出願指導の実施などの取り組みを実践しております。
 また、進学指導特別推進校の新宿高校におきましては、国公立大学現役合格者二十七名を目指し、発展科目等の特別講座の実施、自習室の夜八時までの開放、一、二年次での勉強合宿の実施などさまざまな取り組みを行っております。

○大西委員 今のお話はやっぱりすごいですね、勉強をさせているという学校なんですけれども。この進学指導重点校や進学指導特別推進校は、では、どのようにして指定されているんでしょうか。

○森口都立学校教育部長 進学指導重点校や進学指導特別推進校につきましては、平成十四年十月に策定いたしました都立高校改革推進計画、新たな実施計画に基づきまして、進学対策を充実させるため、過去三カ年の国公立や難関私立大学等の進学実績、進学指導に対する学校の取り組み状況や組織体制などを総合的に判断の上、指定しております。

○大西委員 今ご答弁、進学実績によって指定をされているという、非常に私はほうと思った答弁でありましたが、実は私どもの足立区を含めまして、足立区や葛飾区とか、この辺の城北地域にこの進学指導特別推進校、重点校というのはございません。この地域にもそういう設置が必要であると考えますが、ご見解をお願いいたします。

○森口都立学校教育部長 先ほどご答弁申し上げたとおり、過去の進学実績、進学指導に対する学校の取り組み状況等を総合的に判断の上、指定しております。
 実績の例で申しますと、例えば進学指導特別推進校の新宿高校におきましては、指定直前の平成十八年度では、国公立大学で二十七名、早稲田大学、慶應大学、上智大学の難関私立大学で二十七名の合格者を出しております。足立区内には、現在都立高校は七校ございますが、進学実績等から判断し、指定するまでには至っておりません。

○大西委員 実績がないから進学指導特別推進校の指定はできません、そうすると、指定校と指定されていない学校との間にどんどん大きな開きができて、格差のマイナスの負の連鎖というのが起こるのは明らかだと思います。当然足立区にもそういうトップ校を目指す勉強のできる頑張り屋さんもいっぱいいるわけです。
 そこで、やはりそういうところに、有利な学校に行ってしまう。そこで、当然合格すれば向こうの実績になってしまう。いつまでたっても足立区には進学指定校ができないという結果になると思うんですけれども、これはいかがでしょうか。

○森口都立学校教育部長 例えば進学指導重点校や進学指導特別推進校に指定されていない都立城東高校におきましては、一年次には幅広い基礎学力の定着を重視し、三年次には志望進路に合った科目を選択可能といたしまして習熟度別授業を、それから、放課後、長期休業中の補習、補講、夏休みの自主勉強などに力を入れております。こうした取り組みによりまして着実に進学実績が伸びておりまして、この五年間で四年制大学への合格者が、現役、浪人を合わせ約百八十名増加してございます。
 こうしたことから、進学実績が指定校と指定されていない学校との間に必ずしも開きが生じるとは一概にいえないのではないかなと考えております。

○大西委員 確かに一概にはいえないかもしれません。
 そこで、私は区内の塾をちょっと何軒か回っておもしろい資料をいただいてきました。学校を序列化するために偏差値、このようなものを使うことはよくないとは思いますが、進学塾ではどの学校がどのレベルにあるかというのをやはり数値化しておりました。ここで何個かそういう資料をもらって、大体結果はどれも似たり寄ったりなわけでございますが、これが新教育研究協会というのが出しているところの偏差値表なんですが、旧第五学区、これは中央区、台東区、荒川区、足立区が入っていますが、その中で、台東区の学校、白鴎とここには上野があるんですけれども、この二つを抜いて考えますと、足立区で一番高いところの学校が江北という学校で、これが女子なんですが、これが偏差値でいうと五十点、男子でいきますと五十一点、要するに偏差値五十というのは全くの平均値になるわけですね。そうすると、足立区にあるのはこの赤いマーカーでしてあるように、真ん中以下ばかり。そして、お隣の葛飾区も同じように、足立区よりも低い都立高校しかないわけです。(「江戸川区は」と呼ぶ者あり)江戸川ですか。江戸川は後で渡すから見てください。
 今城東の話を出されました。城東はやはりもう結構高い、上野高校よりも上にランクされているわけです。今部長の方が必ずしも開きはないとおっしゃいましたが、やはり個々の例を出されても、今ちょっとそれはどうなのかなという思いがいたします。
 それで、皆様のお手元に配りましたこういう地図がございます。これは何かといいますと、平成十八年に東京都の教育委員会のホームページから出しております。これは平成十八年一月に実施した東京都一斉学力調査の結果です。それで、平均以上のところをこのピンクに塗っています。平均以上がこのピンクです。こちらにその数値の方があるんですが、ボーダーがここで引かれています。ボーダーが引かれている次、要するにこのピンクにぎりぎり乗らなかったところはどこかといいますと、次が中野区、そしてその次が港区です。この地図からそこに港区と中野区をピンクで塗ってしまうと、すごくおもしろい地図ができるわけです。わかりますか。この二つが、中野区と港区がピンクで塗られますと、要するに大田区とかこちら側が全くなしに、真ん中から西ばかりにこのピンクがある。要するにこちらの方が勉強ができるということなんですね。
 勉強ができるというのと、またそこに合わせておもしろい結果が出ているのが、今いわれた進学重点校です。日比谷高校が千代田区、青山高校が渋谷区、戸山高校と新宿高校が新宿区、西高校が杉並区、特別支援校ですか、これが小山台、品川区、駒場が目黒区、すべてこのピンクの中に入っています。一校もこのピンク以外のところにはないわけです。先ほどお伝えしたみたいに、足立区または荒川区、葛飾区といったこの辺の下町と呼ばれる東部地域のところには真ん中が一校あるだけで、それ以下しかないわけです。そうすると、ここで勉強したいという子どもたち、進学をしたいという子どもたちは一体どこへ行けばいいのか。都立へ行こうと思えば、どうしてもこっちのピンクのところにある学校まで行かざるを得ない。
 こういう地域的なバランスを欠いたというか、余りにも地域格差があると私は思います。これに関してどのような見解をお持ちでしょうか。

○森口都立学校教育部長 今お話のあった件ですが、東京都教育委員会としましては、その所得と学力の関係につきましては、プライバシー等の関係で調査をいたしておりませんが、この都立高校につきましては、各居住地にこだわらず、いわゆる全都どこでも、どちらでも進学を希望することができるということで、必ずしも居住地から通っているということではございません。
 それと、例えば中学生であれば、私立に進学する、他の国立に進学するといったことで、これだけでは私どもとしてはちょっとはっきり関係があるというふうには申し上げられない状況でございます。

○大西委員 では、そこでもう一点。私はこの教育格差ははっきりと如実に出ていると思うんですが、ここで経済格差と教育格差、ここにちょっと着目すると、またまたおもしろい結果が出るんですね。(資料を示す)これは東京都の税務統計年報という十八年度の税金をどれくらい払ったかである程度の所得がわかるわけですけれども、その中で東京都内で最も所得が低いというふうに数字があらわれているのが、やはり足立区なんですね。その次が葛飾区、そして荒川区、江戸川区と続いています。これが下から四番になるわけですね。それがくしくもこのように……(「共産党的な話になってきた」と呼ぶ者あり)ちょっと違うので、そこはそういうふうに思わないでくださいね。この辺の人というのは、やはり経済的には若干少ないところはあります。そうなればなるほど、私立にはやはり行くことができないという方もおられます。
 私立にも行けない、そしてまたこの都内まで行く電車賃がやっぱりかかりますよね。それも節約しなければいけない。そうなったときに、どうしてもこの学校にしか行けないという選択肢が狭まってくるのもまた事実ですし、僕は思うんですけれども、電車の込みぐあいもやっぱり異常ですからね。そこに高校一年生、やっぱり電車に乗せて一時間もかけて都内まで行くのはやはり疲れる。当然近所にいい学校があればそこに行くべきであるし、そういう都立高校をつくるのが、私は都立高校の一つの役目だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○森口都立学校教育部長 都教育委員会におきましては、経済的に厳しい状況にある家庭の就学機会の確保を図るため、従来から授業料を減額または免除する制度を設けておりまして、合格発表時には個々に説明し、入学の保護者会等でも説明を行ってございます。また、年度途中におきましても同様に受け付け等を行ってございます。
 生徒の多様化が一層進む中で、いわゆる普通高校におきまして、先ほど申し上げました補習、補講であるとか、夏期講習、基礎基本の定着のための習熟度であるとか、それから少人数指導などに取り組んでおりますが、それとともに進学指導重点校の指定などを行いまして、指定した学校における指導方法の改善などの成果については、他の都立高校に広く提供しております。
 さらに、専門高校におきましても、科学技術高校やこの春に開校する大田桜台高校、これはビジネスコミュニケーション科でございますが、こういった進学型専門高校の設置や進学に向けました教育課程の編成、工業高校から都立高専、いわゆる産業技術高等専門学校への接続プログラム、それから工業高校の大学の推薦枠の拡大、こういった大学進学に向けた取り組みを行ってございます。
 今後も都立高校において生徒の多様な進学希望にこたえられるよう、進学対策の充実に努めてまいります。

○大西委員 今多様なニーズと生徒の希望ということでございますが、残念ながら、今の話では、どうしてもこの東側にいる子どもたちの進学に対する意欲を東京都立高校としては十分にとれていないというふうに私は思います。それが先ほど冒頭申し上げました中退率、これにもある程度かかってくるのかなと。
 これはきのうの新聞ですけれども、やはり経済格差が学力の格差、さらに意欲や希望への格差につながっていくと、こういうふうに新聞では論じられております。それはまさにそうかなというふうには思います。できれば、私はぜひ切にこちらの方に(資料を示す)進学校一つや二つ、みんながすぐに通えるようなところにそういうのを指定して、無理やりでもそういうことをしていくことが、一つのこれからの施策になるのかなというふうに思います。
 なぜこういうふうな状況になったかに関しましては、これから私の後に初鹿委員が関連質問としてその辺をもう一度伺わせていただきます。
 何しろこの進学校にならなくても、指定しなくても結構ですが、少なくともその指定校で培ったノウハウ、進学に対するノウハウというのはあるわけですから、それを日比谷高校だけで、西高だけで持つんじゃなしに、やっぱり足立の学校にも教える、葛飾の学校にも教えるという共有化をしていただいて、進学を希望する都立学校の子どもたちにも、ほかの学校にも、難関校にも合格するようにも指導していただきたい。そしてまた、進学だけに限らず、先ほど触れた足立東高校などの特色ある取り組みは、足立区に限ったことではなく、他の地域にも生かせることができるわけですから、普通科だけではなく、さまざまなタイプの都立学校で特色のある取り組みを全都立高校で教育して、全体のレベルアップを図っていただき、都民にとって都立高校というのがやはり魅力のあるものにしていただきたいと思います。
 塾の先生で、ちなみに一言だけすごいことをやはりいわれました。私が指導する上では、同じ学力で経済的に問題がなければ、私立に行かせますと。公立は何でだめなんですかというふうに聞いたら、やはり進学に対するノウハウもあると思いますが、私立と比べればまだまだ少ない、そういうふうにもいわれております。
 この後は初鹿委員にバトンタッチいたしますが、その前に、あと二つだけ聞かせてください。
 この学校教育で、これは高校のみならず、中学校や小学校でも関係するわけですが、免許を持って教員をやられていた方がいました。ところが、何かの理由で一たん学校をやめました。そして、社会でいろいろ勉強していろんな経験を積んで、やっぱり今の世の中、おれの力がその学校に必要だなと、中学生をもっと伸ばしてやりたい、小学生を伸ばしてやりたい、高校生を伸ばしてやりたいという熱い強い志を持った人があらわれた場合、今東京都としては、そういう方々を教職として私は復職させて、もう一度指導に当たっていただくということがすごくプラスにはなると思うんですが、ご見解をお願いいたします。

○直原人事部長 現在ベテラン教員の大量退職に伴う教員の大量採用時にありまして、採用する教員の質の確保等が重要な課題であるというふうに認識しております。こうした中にありまして、例えば結婚や育児などを機に退職した教職経験者で、意欲や実践的指導力に富んだ者を再び教職に迎えることは、採用する教員の質の確保の点で有効な方策であるというふうに考えております。
 このため、教員採用選考におきまして、従来から教職経験者を対象とした選考を実施し、積極的に採用してきたところではございますけれども、来年度実施する選考におきましては、これまでその年齢要件を四十四歳までとしていたものを五十九歳まで引き上げ、要件を緩和したところでございます。これによりまして、一層幅広い層から教員として優秀な人材を確保できるものと考えております。

○大西委員 途中で一度社会に出られて社会経験をされた方というのは、また新たな視点で教育というのを見ておられるという場面に私はよく遭遇いたします。ぜひともこういう方々をどんどん教職に入れていただいて、学校のレベルをどんどん上げていく方向にしていただきたいと思います。
 ただ、今免許を一たん持っておられた方の話をしましたが、もし免許を持たなくて、そういう社会経験が豊富な方が、そういう学校とか、教育にすごい気持ちを持たれてやりたいということになったら、どうなるのかなと私は常々思います。例えば、あり得ない話ですけれども、もしバッターの野球のイチローが学校で体育を教えたいといえば、これは組織としては物すごい、ずば抜けたありがたい話ですよね。だれもそれを断るはずはないわけですけれども、そういう方がもしおられた場合、どのような道が開かれているのかお伺いいたします。

○直原人事部長 教育職員免許法によりまして、教職につくには、校種、教科ごとの普通免許状を有することが基本でございますが、この普通免許状所有者以外の教職採用方法として、例外的に三つの仕組みがございます。まず一つは、社会において専門的な知識、経験あるいは技能等を有する社会人を学校現場で活用するため、都道府県教育委員会が特別免許状を授与するというものでございます。都内におきましては、これまで私立高校の教科「看護」で三件の採用実績がございます。
 次に、特定の分野で普通免許状を有する者が数少なく、採用することができない場合、臨時免許状を授与し教職に採用する方法がございます。こちらは、都内におきまして過去五年間で、都立、私立の高校におきまして水産あるいは韓国語などの外国語、計十一件の実績がございます。
 さらに、正規教員では対応が難しい内容、例えば伝統文化、あるいはネーティブスピーカーによる英語など、特に必要がある場合は、特別非常勤講師として採用することができます。都内におけるこれまでの実績としまして、私立中学、都立、私立高校を中心に過去五年間でこちらは約五千二百件の実績がございます。
 ただ、いずれの制度も採用される者に専門的な知識、経験、技能等があり、学校現場の必要性に合致することが要件でございまして、教員免許のない社会人を広範に採用することは困難といわざるを得ませんけれども、今後とも学校現場からの要望も聞きながら、専門的な知識等を活用する観点から適切に対応してまいります。

○大西委員 ありがとうございます。ぜひ門戸をどんどん広げていただいて、多種多様な教育を行っていただきたいということをお伝えいたしまして、先ほどの地域格差に関しましては、これから初鹿委員にさせていただいて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

○初鹿委員 大西委員に続きまして、引き続いて関連した質問をさせていただきます。
 先ほど大西委員が配った資料を見ますと、私の地元の江戸川区も周辺なんですね。ご存じだと思いますが、江戸川区は中学生の学力テストで平均点、二十三区で足立区よりも低い二十三番目であります。そういう地域に住みまして、私も感じるのは、やはり地域格差とか、経済的な格差が教育の格差につながっていくようなことはあってはならないし、そうならないような対策をやはり行政はできる限り、可能な限りとっていくことが必要なのかなというふうに思います。そういう観点で幾つか質問させていただきます。
 ちょうど今出ている「サンデー毎日」に、東大、京大合格者ランキングというのが出ています。ことしは見出しは開成が激減というような、そういう見出しでしたが、激減したといっても、去年百八十八人から百三十人になってまだトップなんですね。では、都立高校、日比谷、戸山、西、その他はどうなっているかといいますと、これを見ますと、日比谷高校は十六名、西高十四名、国立十二名、八王子東七名。西高が去年から比べると半分ぐらいにはなっているんですが、過去の傾向を見てみますと、西高は十八年から見ますと、十九年十六名で、去年二十八名でことし十四名ですから、去年がちょっと多かっただけで、大体維持しているのかなというふうに感じます。
 過去、この学区制をなくす前から考えると、やはり日比谷、戸山、西、どこも飛躍的に進学率が上がっています。これは私立においても同様で、早稲田大学ですと、ことし西高は上から五番目で百五十三人も受かっているんですね。日比谷高校百十一名で、国立が百九名、戸山が九十七名、やはり着実に進学指導重点校や進学指導特別推進校に指定された学校は結果を出しているなというふうに感じます。その点については、東京都として努力をされているし、都立の復権ということにはかなり貢献をしているなというのは感じています。
 ところが、先ほども大西副委員長からの質問でありましたが、そうやって指定された学校はどんどん結果を出していくけれども、そうじゃないところは取り残されるようなことになってはならないんだと思います。先ほど城東高校の例を挙げておりましたが、城東高校を見ますと、ことし早稲田大学に十二名入れているので、確かに城東高校は頑張っているなと思います。ただ、私は地元なので感じるのは、城東高校が人気がある理由の一つは、進学実績もありますけれども、やはり野球で甲子園に出たというのは非常に大きいと思うんですよ。江戸川区は、ご存じの方もいるかもしれませんが、川に囲まれているので、河川敷が非常に充実しておりまして、少年野球が盛んなんですね。松坂大輔選手も江戸川区のリトルリーグの出身というように、非常に少年野球をやっている人口が多いんです。野球をやりながら、そこそこ学力もあるという子たちが選択をする学校に今なっているから人気があるんだと思います。
 では、ほかの旧六学区の学校はどうなっているかというと、例えば、私は両国高校の出身ですけれども、両国高校ですと、十五年からの大学、まず東大の実績をいいますと、五人、八人、四人、六人、一人、二人です。ことしは何人かといいますと、ことしは三人と、明らかに学区制がなくなった以降減ってきているなという印象があります。早稲田大学の進学率を見ると両国高校は、これも平成十五年からいきますと、五十六、六十二、五十四、四十五、四十六、三十九で、ことしは十七です。この結果を見ても両国高校は明らかに下がっていますよね。
 では、小松川高校はどうかということになりますが、早稲田大学でいいますね。十七、十二、十、五、七、去年十八でちょっと戻したかなと思ったら、ことしは何人だと思います。四人なんですよ。こういう傾向を見ると、やはり指定されていない学校が進学実績では苦戦をしているなというのは、結果を見て明らかかなと思うんですね。このままでいくと、この傾向が続いてしまうと、進学を希望する生徒はやはり実績のある学校に集中をしていって、今まで我々の下町の地域で進学の名門校だというところからそちらにとられてしまう可能性があるんじゃないか、そうなるんじゃないかという懸念があるわけです。
 先ほどちょっといろいろホームページで見ていたら、ある塾のホームページで、難関大学に行くなら、日比谷、西、戸山、青山に行け、私立に行くなというようなのが載っていたんです。それは何をいっているかというと、ある私立の高校数校を挙げて、東大の実績が二十人ぐらい合格している学校を名指しで挙げていて、その学校は東大に二十人行っているけれども、高校から入って東大に行った生徒は二人だと。それ以外はみんな中学から上がった生徒だと。それに比べて、都立の進学重点校になっているところは現役率が高いと、だから、そこを選べみたいなことが書かれているんですね。それは都立の復権ということでは非常にありがたいなと思うんですが、そうやって一部の選ばれた学校だけがどんどん人気が上がるようなことになってしまうと、やはり指定されなかった学校の人気が落ちていく可能性があると思いますが、その点についてはどのように考えているのかお聞かせください。

○森口都立学校教育部長 生徒が都立高校を選択するに当たっては、生徒の適性、能力や興味関心を踏まえ、各学校の伝統、特色、校風、教育活動などに応じ適切な学校選択を行っているところでございます。中学校の進路指導もありまして、指定する学校とそれ以外の学校で過去の入学選抜倍率を見ても、特に低下傾向というものは見られておりません。
 今後とも生徒が適切に進路選択ができるよう、各都立高校の生徒の活動や学力指導、それから進路指導、生活指導等の取り組みや特色を中学生に対し一層積極的にPRしてまいります。

○初鹿委員 今指定する学校とそれ以外の学校で過去の入学選抜の倍率を見ても、特に低下傾向は見られないというご答弁をいただきましたが、確かに低下傾向は今のところないんですが、その可能性はあるんじゃないかということを今ご指摘させていただいているんですね。では、実際にどうなのかというと、低下傾向はないんですけれども、逆に人気が集中する傾向は確かにあるんだと思います。
 例えば、周辺の我々の区は除いて、指定されているところと指定されていないところでちょっと比較をしますが、駒場高校と富士高校、目黒区と中野区になるのかな、第二学区で二番目から三番目ぐらいだった学校が多分駒場高校、富士高校は第三学区で二、三番目だった学校です。駒場高校は、十三年、十四年は応募倍率一・七七、一・七一倍なんですよ。ところが、十五年になって二・二八になって、それからずっと大体二倍台で、十九年は二・一一、二十年は二・一六、二十一年は二・一〇と、この数年間二倍を超えています。これは明らかに私は、指定がされていってという宣伝効果があるのかなと思います。
 一方、富士高校は、合格実績でいくと富士高校も結構いいんですよ。早稲田大学は大体四十何人行っていて、駒場高校とこの二、三年前は余り変わらないんですね。富士高校の場合は十三、十四年は一・四二、一・四六なんです。この三年間で見ると、一・六七、一・七九、一・七八、多少学区がなくなったことも影響しているので上がっていますけれども、やはり駒場高校と比べると差があるなというのは感じるんですね。
 このことを考えると、やはり指定をされているか、されていないかは今後必ず影響が及ぶと思います。その上で、さらに倍率がどんどん二倍、三倍となっていくことが、果たして本当にいいのかどうかということをちょっと考えていかなきゃいけないと思うんですね。
 というのは、日比谷、西、戸山、青山、この四校はずっとこの数年間二倍、場合によっては三倍を超える倍率で人気が非常に高くなっています。ところが、まだ学区制が残っていた時代はどれぐらいだったかというと、やっぱり二倍にほとんどいっていないんですね。例えば日比谷高校でいきますと、十一年は一・四七倍、十二年は一・五倍、十三年は一・七四倍。ところが、ここ四年間で見ましょうか。十八年は三・四三、十九年は二・九一、二十年は三・三〇、そしてことしは二・八六、非常に高いですね。人気の高い西高では、西高は学区制のあるときも割と高いんですが、十一年が一・九八、十二年二・〇五、十三年が一・五四なんですけれども、学区制がなくなった以降はさらに高くて、十八年二・五四、十九年二・一八、二十年二・二八、二十一年が二・六一、戸山もここ三年で見ると二・三一、二・三〇、二・四四、青山は二・一九、一・九四、二・二四と、ほぼ二倍以上いっていますね。
 では、私の地元の学校を見ていきますね。旧六学区で見ると、両国高校は十一年は一・六六、十二年は一・三〇、十三年一・一四です。この直近三年間は一・六六、一・三三、一・六五、余り変わっていないんですよ。余り変わっていないんですね。小松川高校は十一年から三年間は一・五六、一・二七、一・一三、逆に直近三年間は一・四四、一・七三、一・四三とここも余り変わっていません。城東高校も、先ほど例を出された、人気があるといっておりますが、十一年からの三年間は一・五三、一・五〇、一・四三で、十九年からは一・四六、一・六九、一・六三なんですね。
 私は何がいいたいかというと、二倍、三倍を超えるような高倍率の学校は、ある意味不合格になったときに、私立に行ける経済力がないとちょっとリスクが高くて受けられないんじゃないかなと思うんです。学区制があるときは、今いったようにほとんどの学校が二倍以内におさまっておりました。そして、実際に受検倍率を見ると、やはり日比谷、西、戸山というのは、私立に受かって、私立に行って実際受検をしないという生徒が多いので、〇・五%ぐらい実倍率が下がるんですね。そのことを考えると、学区制があるときはかなりの率で合格の可能性が予想できたわけです。
 ところが、やはり今三倍とか二倍、実倍率で二倍になると、こう座っていて、この中の半分落ちるわけですよ。半分落ちるんですよ。そうなると、うちは経済的に余裕がないから私立には通わせられないなという家庭のうちは、やはり敬遠するようになるんじゃないのかなと思うんですけれども、なかなか生徒さんの家庭の経済状況を調べることは難しいと思いますから、実際はわかりません。しかし、私は、そういう傾向は確実にあると思います。
 このように考えると、やはり経済的な格差が教育的な格差に、先ほど大西副委員長からもお話がありましたが、そういうことにつながってしまいかねない状況に今なってきているんじゃないかなというふうに感じるんですね。この点についてはどのようにお考えでしょうか。

○森口都立学校教育部長 学力検査におきましては、受検生がより確実な進路選択を行うという傾向がございますので、出願、いわゆる応募状況を見て、取り下げ、そして再提出することにより、別の都立高校に志望校を変更している例はございます。しかし、その場合でございますが、変更の理由につきましては、経済的事情によるものか否かは、プライバシーの問題があり、把握してございません。

○初鹿委員 今、進路選択を行うために応募状況を見て取り下げ、再提出して別の都立校に応募しているというお答えでしたけれども、別の都立校で同じぐらいの進学実績のあるところがあれば、それはいいんだろうと思うんですけれども、先ほどの大西副委員長の質問でも指摘をさせていただきましたが、進学重点校で人気のあるところ、人気の高いところと、そこから外れたところとの進学実績の差が広がっていったときに、やはり経済的な理由で日比谷、西、戸山を受けるのはちょっと厳しいなと判断した優秀な生徒さんの受けるところが、若干レベルの低いところにならざるを得ないんじゃないのかなと思うんです。それが果たして東京都が目指している都立の復権なのかなと思うんです。今の状態でいくと、やはりこのトップ校の日比谷、西、戸山に行けるような、受検できるような生徒さんというのは、かなり中学のときも塾に行ったりして教育費をかけている家庭だと思います。それに加えてやはり私立にも行ける家庭です。
 実際に応募倍率と受検した倍率を見ると、日比谷高校ですと、大体例年一倍ぐらい減っているんですよ。ということは、丸々定数分ぐらいの人が受検しないんですよ。第一志望じゃないわけですよ。ところが、小松川高校や両国高校というのは、応募倍率と実受検数とそんなに変わらないんですよ。つまり都立第一志望なわけですよ。いわゆる都立じゃないと行けないという家庭が受けているんですよ。例えば二十一年の例でいうと、日比谷高校は応募倍率二・八六ですけれども、受検二・〇六ですよ。西は二・六一で一・九〇、戸山は二・九九で一・九七、ところが、両国は一・六五で一・四六なんですよ。小松川高校は一・四三で一・三七、〇・〇六の割合なんです。それを考えると、やはりお金を持っている人がよりよい教育を受けられて、そうじゃない人はそこになかなか加わることができないというのは、明らかに私は問題なのかなというのを感じます。
 先ほど授業料の免除とかをするというお話がありましたけれども、やはり受ける選択をする上で、それ以前の問題なんだと思うんです。そこはやはり今後考えていかなければいけない課題ではないかなと思います。
 少なくとも学区制があったときは、受検をする方々の倍率は大体一・五倍に行かないぐらいだったと思うんですね。となると、やはり明らかに学区制があったころに比べると、不合格になる生徒の数がふえていると思うんです。その点についてはどういうふうにお考えになっているんでしょうか。

○森口都立学校教育部長 これまで都教育委員会は、受検生の進路選択にこたえられるよう、都立高校の入学選抜において、前期、後期の分割募集、それから推薦選抜、特別選考などを実施してまいりまして、受検機会の複数化、それから選抜尺度の多元化を図ってまいりました。
 今後は、受検生のニーズにこたえるため、新たに設置いたしました入学者選抜制度検討委員会におきまして、入学者選抜制度についての検証、検討を行い、制度の改善、充実に一層努めてまいります。

○初鹿委員 ぜひその検討する中で、現状だと、日比谷高校とか、西高とかを落ちた生徒が、そこと同レベルとはいわないけれども、同等に近いぐらいの学校を二次募集とかで--もう二次募集ってないわけですよね。それがたまたま一次試験ではそういう学校に受からなかったけれども、二次募集で再挑戦できるような機会というのはぜひつくっていただきたいなと思います。それがやはり経済的にも厳しい人たちもそういう学力の、進学率の高い学校に入れる可能性をできる限り広げることになるのだと思います。
 また、この地図にいきますけれども、(資料を示す)旧六学区の学校が、やはり学区制がなくなって、どうも都心の方に優秀な生徒が行ってしまっているような傾向が感じられるんですね。私の両隣のお宅のお子さんが、もう大学に行ったんですが、ちょうど都立高校改革が進んでいるときに受検をされたんです。どちらの家庭も優秀で、二歳違いだったんですが、左隣のお子さんは日比谷高校に行ったんですね。二年後ぐらいに右隣のお子さんもまた日比谷高校に行ったんです。学区制が残っていたら二人とも多分両国に行っていたと思うんですが、やっぱり日比谷を選んでしまうんですね。
 何がいいたいかというと、都心の学校に行きたいというのはあるのかなと思うんですが、やはり六学区の学校が他学区から余り選ばれないんですね。これはかなり顕著にあらわれているんですけれども、最近三年間は、もう学区制がなくなったということで調査していないということなので、三年前のデータになるんですけれども、これは平成十八年ですけれども、他学区からの応募人員の割合というデータがあって、男子でいきますが、旧一学区は三八・三%が他学区から応募されているんです。第二学区は五四・一%、三学区は三八・三%、四学区が三五・三%、五学区は三三・九%、三割ぐらいが他学区から来るんですよ。ところが、六学区は一一・九%なんですよ。これは女子も大体同じです。女子の方が六学区以外で他学区から選ばれる傾向はもうちょっと強いですね。
 これは実は、学区制がなくなる前からこのようになるというのは予想できたんですよ。十一年、十二年、十三年も部分的に他学区からの受け入れをしていたと思うんですが、例えば十一年は、日比谷高校は他学区からの募集枠が七十五人のところに百三十一人応募しているんですよ。西高は七十五人のところに百二十三人応募しているんです。戸山は七十五人のところに百五十七人応募しているんです。ところが、両国高校は五十二人のところに三十二人、城東高校は五十二人のところに九人、小松川高校は二十五人のところに二人、この傾向がずっとで、十四年のときでは、日比谷高校は百二十九人の募集のところに三百八十三人応募しているんですね。西高は百一人のところに百七十九人応募しているんですよ。ところが、両国高校は七十六人のところに五十六人、人気があるという城東でも七十六人のところに三十三人、小松川は三十八人のところに六人なんですよ。予想が多分できていたのに、あえて学区制をなくしたんだなというのを感じるんですね。
 それで、こういう六学区からどんどんほかの学区を受ける学生が多い一方で、六学区に他学区からの希望者が少ない傾向があるんですけれども、その点についてはどういうふうに考えているんですか。

○森口都立学校教育部長 他学区からの受検希望者が少ない傾向につきましては、旧六学区だけではなく、他の一部地区にも同様の傾向が見られます。このことは、交通網が整備される中で、旧他学区受検機会の拡大とその後の学区制度の撤廃により、都内受検生が自分の進学したい高校を全都の幅広い選択肢の中で自由に選ぶことができるようになったため、結果としてそのような状況になったものと考えております。

○初鹿委員 旧六学区だけじゃないという傾向はわかるんですけれども、大体人気のないところは周辺区なんですね。やはり交通網の影響というのもあるんでしょうけれども、少しこの点も考えていった方がいいんではないかなと思います。やはり進学指導重点校だけが人気が上がるような政策ではなくて、それ以外の学校も底上げを図るということが必要だと思うんです。
 そこで、進学指導重点校では、先生を公募で採用するということを始めていると思うんですが、そういう公募で選ばれた優秀な先生を指定校以外の高校に対しても、進学指導のリーダー的な教員という位置づけで異動させて、底上げを図るために、ノウハウなどをほかの学校に引き継いでいくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○直原人事部長 進学指導重点校で進学指導の実績を上げた教員が他の高校に異動する場合には、進学指導のリーダー的な役割を担い、進学指導のノウハウの普及に貢献すべきものと考えておりまして、その教員の能力が生かせる高校に配置するよう努めているところです。

○初鹿委員 ぜひ指定をされていない学校と指定された学校の格差が、実績が広がっていかないように、指定されていない学校の底上げを図っていただきたいと思うんです。
 最後に、そういう指定されていない学校を含めて、都立高校全体の底上げをどのように行っていくのかをお伺いします。

○森口都立学校教育部長 既に指定された進学指導重点校や進学指導特別推進校の各学校の取り組みや得られた成果、課題につきましては、進学指導研究協議会などを通じまして、他の都立高校に広く発信し、情報、いわゆるノウハウを共有することによりまして、都立高校全体の進学指導のレベルアップを図り、生徒の進学希望にこたえていきたいと考えております。

○初鹿委員 ぜひ全体的な底上げを図って、我々下町地域にも進学実績のある学校がまた復活するようにしていただきたいなと思います。やはり経済的な問題で希望する学校をあきらめざるを得ない中学生が十五歳のときにそういう経験をするということは、やはりちょっと切ないじゃないですか。私も両国高校で、姉は小松川高校なんですけれども、私も姉も都立だけで私立を受けませんでした。理由は、経済的に私立に通わせられないという理由です。だから、そういう家庭に生まれたからいうんですけれども、そういう子どもたちが、自分は力も能力もあって勉強もできるんだけれども、一ランク学校を落として受けざるを得なかった、そういう経験をさせないようにしていくのも、やはり行政としての役割だと思いますので、ぜひその点も留意をしていただきたいとお願いをして、質問を終わりにいたします。

○遠藤委員 私は今大西副委員長並びに初鹿委員ご指摘の、いわゆる有名進学都立学校の出身ではございません。しかしながら、私も都立高校の出身でございまして、高校時代は本当に体育祭の実行委員長もやらせていただき、なおかつ、それ終了後は、学校の先生のさまざまなご指導の結果、大学にも行かせていただき、このような形で都議会議員として活動させていただいている、その基盤もこの都立高校時代に養わせていただいたものだと思っておりますので、改めて教育庁の皆さんの日ごろの活動に対して敬意を申し上げたいと思います。その上で質問に入らせていただきたいと思います。
 私の方からは、学校における安全の確保について、一点に絞ってお伺いさせていただきたいと思います。
 配布をいただきました予算説明書の四二ページには、学校における安全教育の推進、こうした項目がございます。学校の安全は、安全教育、そして安全管理、この二つの活動から構成をされ、それぞれを密接に関連させて進めていくことが必要だといわれておるわけでございます。安全な環境づくりを進めるとともに、児童生徒みずからが安全に注意した行動実践ができること、この二つが相まって学校の安全が担保、確保されるというわけであります。
 ところで、本定例会には、平成二十年行政監査報告書が提出をされております。この行政監査報告書の目的は、今回については庁舎の管理事務について、現在関心が高まっている安全対策、そして環境対策、この二つを中心に各局横断的に検証したと、これが今回平成二十年の行政監査の目的であったということでございます。その中で、学校の安全管理について指摘がございました。改めてその指摘内容についてご説明いただきたいと思います。

○高野指導部長 都立学校三校において、理科の実験で使用する薬品類のうち、毒物及び劇物取締法に定められた毒物、劇物の保管管理が適正になされていなかったものでございます。具体的には、危害防止規定が作成されていない、あるいは保管庫や容器に毒物、劇物の表示がない、あるいは管理簿に在庫量が記入されていない、保管庫に転倒防止の措置や施錠がなされていないなどの事例が認められたものでございます。
 こうしたことを受けまして、毒物、劇物の保管管理につきましては、一般的な注意事項を示すにとどまらず、取扱方法等を具体的に指導すべきであるといった指摘が教育庁にございました。

○遠藤委員 監査の指摘は毒物、劇物の保管管理について適正でない学校があった、このことはもちろんですけれども、その原因である学校に対する教育庁の指導が十分適切になされていなかったこと、ここに重点が置かれていると私は思います。
 そこで、これまで教育庁は学校における毒物、劇物の保管管理についてどう学校側を指導してきたのか、お答えいただきたいと思います。

○高野指導部長 理科の実験で使用する薬品類につきましては、管理体制の整備、薬品類の保管管理、あるいは実験時の安全確保等に万全を期すよう各学校に通知を発出いたしまして、指導してまいりました。
 また、毒物、劇物の保管管理につきましては、平成十八年三月に各学校に配布いたしました「安全教育の手引き」の中で、薬品類の購入から廃棄までのそれぞれの段階における注意事項、保管庫の転倒防止や施錠の措置などを示しまして、事故防止の観点から注意喚起してまいりました。さらに、管理状況につきましては、業務に関する検査で不適切な事例に関しましては改善するよう指摘を行ってまいりました。

○遠藤委員 今回の監査で指摘をされました、保管庫に転倒防止の措置やまたは施錠がなされていなかった、こんなことは論外でありますけれども、管理簿に在庫量を記入するなど、毒物、劇物を保管管理する限り、細心の注意を払っていくことは極めて重要、必要だと思います。毒物、劇物の医薬品類が盗難に遭ったり、または紛失したりして犯罪や事故につながったなどといったことがあっては決してならないわけであります。
 昨年六月、杉並区の小学校で屋上の天窓が破れ転落をした痛ましい事故が、多くの方の記憶に残っておると思います。冒頭申し上げたとおり、児童生徒にとって、学校での安全の確保というのは最優先の課題であると思うわけであります。
 また、学校ではありませんけれども、最近の事例では、つい先日の十三日、栃木県の建設工事現場で放射性物質の含まれる測定機器がなくなるという事件がございました。この事件は、作業員が作業の準備のため、この測定器を駐車場に置いて、三十分ほど目を離したすきになくなっていたと、こういう事故でございまして、安全管理の意識が欠けていたといわれても仕方がないと、こういう指摘をされているわけでございます。
 こうした例を紹介するまでもなく、安全管理についてはなすべきことを行わない、不作為や怠慢が大きな事故につながり、重大な管理責任を負うことになるということを学校の管理職は十分に自覚しなければなりません。しかし、それ以上に今回の監査指摘にあるように、学校を指導する立場にある教育庁こそが強く肝に銘じ、行動する必要があると思うわけでございます。
 そこで、今後、薬物、劇物の管理については一層厳格、かつ実効性ある取り組みが必要と考えますが、所見をお伺いいたします。

○高野指導部長 今回、毒物、劇物の保管管理が適正になされていない学校があったことから、改めて指導の徹底を図る必要があると考えております。今後、「安全教育の手引き」の活用を促すとともに、各学校に通知を発出いたしまして、危害防止規定の作成並びに管理簿等の様式及びその取り扱いを具体的に示してまいりたいと思います。
 さらには、その管理状況につきまして、業務に関する検査等の点検を充実強化いたしますとともに、不適切な事例があった場合には、単なる指摘にとどまらず、改善状況の確認を行うなどいたしまして、委員ご指摘のとおり、各学校における毒物、劇物の適正な保管管理を徹底してまいります。

○遠藤委員 今ご答弁ありましたとおり、決してこの都立学校等を舞台にした薬物、または劇物を因とする事故や事件が起こらないようにしっかりと取り組んでいただきたいとお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。

○大山委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時三十二分休憩

   午後二時四十六分開議

○大山委員長 それでは、休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 ご発言を願います。

○古館委員 それでは、最初に、不況と貧困問題、これが子どもたちの生活、また教育にも深刻な影響をもたらしています。朝が親はとても早いということで、必死で働いているんですね。朝食もつくることができず、朝食抜きで来る子どもも多くなっていると。なかなかこういう子どもたちは、顔色も悪くて落ちつかないというのが最近の状況であります。給食費だとか、教材費が払えない家庭もふえておりまして、中には就学援助の申し込みを忘れて未納になった給食費、これを今一生懸命分割で払っている家庭もあるんですね。この貧困問題というのが、とても深刻になっているんです。こうした中で、就学援助の果たす役割というのはますます大切になっております。
 そこで伺いますけれども、都の公立小中学校の児童生徒の就学援助受給者、これは要保護、準要保護についてですが、この十年間ではどのように推移しているのでしょうか。

○皆川地域教育支援部長 平成十年度のデータがないため、九年前との比較になりますけれども、平成十一年度は就学援助受給者数は十四万四百十三人、受給率一八・一%でありましたが、平成十九年度には受給者数十八万九百九十五人、受給率二三・三%となっておりまして、いずれも増加しております。

○古館委員 今ご答弁いただきましたように、平成十一年度から十九年度までで受給者にして四万五百八十二人ふえている。率でも全生徒数に対して一八・一%が二三・三%に、このように伺っています。要するにこの間五・二%もふえているんですね。経済的に困難な家庭がふえているということはもうはっきりしていると思います。
 そこでお尋ねですが、平成十七年度以降から就学援助制度の改正があったと思うんです。この改正で準要保護者の援助についての国の対応はどうだったのでしょうか。

○皆川地域教育支援部長 平成十七年度の改正は、準要保護者に対する就学援助につきまして、地域の実情に応じた取り組みにゆだねていることが適切であるという国の判断がございまして、国庫補助が廃止され、国から市町村への税源移譲により一般財源化されたものでございます。

○古館委員 今の答弁にもありましたけれども、結局この就学援助に対して国がやったことは、いわゆるこの就学援助の準要保護者ですね、この保護の一般財源化してしまった。ですから、一般財源化というのは、それぞれの区市町村で自由に使えるということになったんですよね。そうすると、なかなかこのいわゆる要保護の、準要保護の人たちが、今までは自治体が、この補助がありますから、きちんとやられていたと、こういうものがバランスが崩れていくということにならざるを得ないんですね。つまり準要保護者を切り捨てて、要保護者の援助だけに補助対象を狭めると、これが具体的な形で、いわゆる一般財源化としてなったんですね。これは改正ではなくて、大変な改悪なんです。結局は準要保護者について自治体の判断に任せると、こういう実際には準要保護者が減る要因になっている、こういうこともいえるんですね。実際に就学援助における準要保護者は、平成十六年度での十七万五千六百六十二人をピークにどんどん減り続けているんです。平成十九年度では準要保護者が実は七千七百六十三人も減りました。
 そこでお尋ねしますが、この減少について、その要因はどのようなものだと考えているんでしょうか。

○皆川地域教育支援部長 要因につきましては、推測にならざるを得ませんので、答弁は差し控えさせていただきます。

○古館委員 そういうような要因についてはさまざまな要因という形で、今答弁はしなかったんですけれども、ですから、これは問題については、一般財源化の問題だって影響があるし、同時にそれぞれの自治体の姿勢そのものが問われているんだということを指摘しておきたいと思います。
 それで、就学援助についてですけれども、もとに戻して準要保護者にも適用するように、国に強く働きかけていただきたいと思いますが、この点はいかがですか。

○皆川地域教育支援部長 準要保護者に対する就学援助の実施主体である区市町村の権限と責任を一体化し、地域の実情に応じた施策の実現を可能とするため、制度改正が行われたものでありまして、このことについて、国に対してもとに戻すというような要望をする考えはございません。

○古館委員 それで、同時に都としての役割というのも大変大事になっていると思うんですね。この問題については、やはりこれだけ受給者が減り続けているという現実は東京都もお認めになっているわけですから、区市町村への財政支援、これをぜひ強めてもらいたいと思いますが、いかがですか。

○皆川地域教育支援部長 学校教育法によりまして、就学援助の実施義務は区市町村に課せられており、その経費の一部は税源移譲や国庫補助により措置されております。
 繰り返しとなりますけれども、平成十七年度の改正は、国が地方の実情に応じた取り組みにゆだねることが適切であるという判断により行ったものであり、準要保護に対する就学援助につきましては、各区市町村がその権限と責任において適切に実施すべきものであると考えております。

○古館委員 そういう意味では、都民の大きな声として声が上がっているというのは、やっぱり就学援助の問題を一つきちんと据えておかなければいけないし、東京都としてのさらなる努力を求めておきたいと思います。
 この都立高校の授業料の問題でも一言述べさせてもらいたいと思いますが、今授業料が十二万二千四百円、こういう都立高校の授業料を初めとして、年間の在学費用が、授業料、通学費、教科書代などで四十八万円平均と、このようにいわれています。それに塾の月謝とか、おけいこごとの費用などで七十万円を超えるというのが実は国民生活金融公庫の総合研究所、平成十九年度でこのように出されております。これは非常に、七十万超えるということは大きな負担増ということも意味しているわけで、高校生を持つ親たちの約三割を超えて年収五百万未満、このように考えられておりまして、今日の雇用、景気悪化の中では、さらに家計の厳しさが一層増大しているということでありますので、経済的困難でやはり高校生が学びから遠ざけられることがあってはならないと考えています。
 都教委として、学校も含めて授業料の未納により卒業証書がもらえないとか、退学や除籍などの状況をつくらないよう、都としてあらゆる努力を尽くしていくことを改めて求めておきます。
 続いて、スクールソーシャルワーカーについてお尋ねをさせていただきます。
 この間、配置が進んできておりますが、このスクールカウンセラー、これは心理職ですね。いじめや不登校、児童虐待などに関しては、教育分野に関する知識に加えて社会福祉等の専門的な知識や技術を有するスクールソーシャルワーカーの役割、これが改めて認識されてきています。
 そこでお尋ねですけれども、今年度、文部科学省の調査研究委託事業としてスクールソーシャルワーカー活用事業が始まり、都内でも五区十一市で実施しているとのことですけれども、どのような活動を行い、どのような成果が上がっておられるか、お答えいただきたいと思います。

○高野指導部長 スクールソーシャルワーカーについてでございますけれども、現在、本事業実施の委託を受けている区市に対しまして、事業実施報告の提出を求めておりまして、成果を現在取りまとめているところでございます。

○古館委員 今の答弁は現在取りまとめているということですけれども、実はこの事業は昨年の六月時点でようやく実施区市が内定して準備しているということでした。実質的に始まったのは、ですから七月ごろからなんですね。したがいまして、来年度は本事業をどのように推進していくのかということが大事になっています。
 来年度は本事業をどのように推進しようとしているんでしょうか。

○高野指導部長 平成二十年度文部科学省の委託事業として実施してまいりました本事業については、平成二十一年度から補助事業化されることになりましたため、現在国の動向を踏まえ、事業の実施内容や方法について検討をしているところでございます。

○古館委員 今ご答弁がありましたように、来年度から補助事業化ということですけれども、今年度は国が十分の十を出している事業なんですね。始まってまだ一年もたたないのに、もう国は補助率を入れようというのです。だから、国の要綱を待って、実施内容だとか、方法について検討している、こういう話なんですね。
 今年度の実施区市は、実質的に実施したのが昨年の七月ですから、始めてからまだ一年もたっておりません。調査研究委託事業など一年も実施していないということでは、それこそ調査研究も不十分だといわざるを得ないわけです。したがいまして、引き続き事業継続することが求められていると思いますけれども、都教委はスクールソーシャルワーカー活用事業、これを継続していく意思はあるわけですよね。いかがですか。

○高野指導部長 本事業につきましては、今年度から開始した調査研究事業でございまして、平成二十一年度の実施については平成二十年度の研究成果を十分に踏まえ、検討してまいります。

○古館委員 先ほどもいいましたけれども、まだ年度途中から始まったものですから、ぜひ、今ご答弁にありましたけれども、継続をして引き続きやっていただきたい、このよううに要望したいと思います。
 昨年の六月の文教委員会で高野指導部長が、都教育委員会は活用事業を実施する区市町村教育委員会が行う調査研究を踏まえて、協議会を開催するなどして、その成果を全都に普及していく予定、このように答弁されております。今年度実施している自治体だけではなくて、都教委には他の自治体からも問い合わせがあると聞いております。雇用の破壊が進んで、経済的な困難が広がり、子どもたちの暮らしがますます大変になっているときだからこそ、子どもを中心に家族や学校、福祉の分野を専門職としてつなげていく、そういうスクールソーシャルワーカーの果たす役割、これはいよいよ重要になっていると考えております。来年度も実施するとともに、さらに希望する自治体が実施できるように、都としても拡充に踏み出すことを強く要望しておきます。
 続きまして、OJTについてお伺いいたします。
 これは都の人材育成の問題なんですね。東京都は昨年十月に、東京都人材育成基本方針についてという文書を発表しました。二月には、東京都公立学校教員研修体系の再編・整備に係る基本方針、これを発表したんですね。いずれも、校長、副校長、主幹、主任、教諭という階層ごとの役割をどう果たせるか、このような形が主眼に置いた内容となっています。子どもたちに対して直接に同じ責任を持つ教員を給料にも差をつけて階層化する。上下関係をつくっていくということが果たしてふさわしいのかどうかということ、これについてはこれまでも我が会派は取り上げてまいりました。
 この中で、きょうは直接学校の中で日常的に行われる人材育成、いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニングについて伺います。
 まず、OJTを実施する目的について、これはどういう目的でしょうか。

○直原人事部長 学力の向上、健全育成、地域との連携など、学校における課題は複雑化、多様化しておりまして、こうした課題に対応できるよう、教員の人材育成は極めて重要です。特に大量採用により増大している若手教員の育成が喫緊の課題となっておりまして、教員の人材育成をこれまで以上に意図的、計画的に推進していく必要がございます。
 人材育成は職場外での研修、OJT、自己啓発の三つが基本となりますが、特に日々の職務遂行の過程を通じて行うOJTが重要であるため、都教育委員会は、昨年十月にOJTガイドラインを作成し、すべての学校においてOJTに組織的に取り組むこととしたものでございます。

○古館委員 これは本当に人材育成としては大変な事業だと思います。したがって、OJTは具体的に学校ではどのように行われるものなのか、校長、副校長、主幹、主任、一般教諭、これはそれぞれどのような役割を果たすんでしょうか。

○直原人事部長 人材育成は、校長、副校長の最も重要な職務の一つであり、校長の責任のもと、学校が一体となって人材育成に取り組む必要がございます。OJTを効果的に行うためには、育成責任者を決めるなど、組織的な体制を整え、役割を明確にすることが重要です。このため、OJTガイドラインでは、教員一人一人に対してOJT責任者を定めることとしております。OJT責任者は、基本的にはOJTを受ける教員の一つ上の職層である者、具体的には教諭に対しては来年度から任用開始する主任教諭が、主任教諭に対しては主幹教諭が当たることとし、担当する教員の具体的なOJTの計画を立て、他の教員の協力も得ながらOJTを実行いたします。
 また、個々の教員もみずからのOJTの目標を立て、職務遂行を通じて積極的に能力開発を行っていくこととしております。

○古館委員 今ご説明がありましたけれども、校長や副校長が教育者としてすぐれた人物であることというのは当然のように求められているわけですけれども、管理職として教員の育成に力を注がなければならない、こういう立場にあるのも当然であります。学校の中で、先輩が後輩に教え、率直に相談し合う、このような力量を高め合っていくことも当然であります。しかし、今答弁をいただいたように、OJTのガイドラインの特徴というのは、教員全体が上下の関係、縦の指導、被指導の関係に置かれていくことであります。教員は主任に指導される、主任は教員を指導し、主幹に指導される、このことは、OJTのガイドラインの文書表現にも如実にあらわれているんですね。何かをさせるという表現が物すごく多いんですよ、させますという。この中で理由を理解させようとか、意義を自覚させよう、こういう何か提案させる、こういう上からの目線というのは非常に表現的に多いんですね。教員が何かをさせる、させられる、こういう関係になっているんですね。
 こうした上のいうことを、いわゆる命令に従うことを第一に求めている。すべての教員が教育をつかさどり、国民全体に対して直接に責任を負うことと、これは矛盾しているんですね。それで、上下関係の最後には校長、さらに上には教育委員会があるというわけですから、このようなやり方があらかじめ定めた特定の教師のあるべき姿、あるいはまた教育の内容に収れんしていくことになれば、大変重要な問題であります。
 都教委は職の分化をどんどん推し進めてきておりますけれども、その中で学校運営がうまくいかないで、校長、副校長のなり手がいない、主幹の希望者がいないということが今大問題になっているんですね。教職員組合の調査では、例えば主幹制度の導入によって、一般教員の声が反映されづらくなっており、組織としての実践力が弱くなってきたんです。また、校長のいう組織としての学校は、教員それぞれの思いや力を引き出すものじゃなくて、上のいうとおりに協力しようというものであります。こういう声が今たくさん上がっているんです。
 子どもたちへの適切な対応や教員の成長には、教員同士の協力、協働、突き当たっている問題について率直に同僚に対して相談ができ、力を合わせることができる同僚制が重要なこと、これは多くの学者、研究者が指摘をしているところであります。
 こうした現場の声、研究者の指摘を謙虚に受けとめることなく、教員に上下の関係を持ち込むことをさらに強めるような教育の成果、これを子どもの成長に照らして図るのではなくて、上を向いて、上の命令にまず従うということを促していくような、こういう人材育成制度を導入していくことに疑問を呈して、この問題に対する質疑を終わりにさせていただきます。(発言する者あり)
 続きまして--ちょっと委員長、静かにさせてくれませんか。

○大山委員長 せっかく傍聴者もいらっしゃいますので、聞こえなくなるようなやじはやめてください。

○古館委員 それでは、教員免許更新制度の問題についてお尋ねをいたします。
 二〇〇七年六月に国会で教育関連三法案が可決成立をしました。それで教員免許更新制がことしの四月から実施されることになりました。この制度の導入について教職員の声は、こうした制度について圧倒的に反対の声を上げ、その廃止を求めているのが実態であります。教職員は子どもの心身ともの発達を保障すべく、教育現場の中で日夜多忙さをきわめているんです。その上、十年ごとに更新講習を三十時間受けなければならない。受講して認定されないと免許は失効し、失職するという制度でありまして、新たな教職員への過剰な負担……(「我々は四年ごとに選挙してるんだよ」と呼ぶ者あり)議員は当たり前。受講し、認定されないと失職するおそれへの不安と圧迫感を抱えながら、日常の教育活動を担っていくこととならざるを得なくなる、そういうプレッシャーのもとで教育活動を行っているんですね。
 それで質問いたしますけれども、まず免許更新について、これは申請主義なんでしょうか。また、自動車免許更新のように、事前の通知、お知らせはあるのでしょうか。

○直原人事部長 免許の更新は申請主義であり、免許の所有者がみずから管理すべきものとされておりますが、毎年の更新対象者は当面原則として年齢により定められており、免許の所有者がみずから把握することが十分可能でございます。
 しかしながら、任命権者として、制度の円滑な実施には周知が重要というふうに考えておりまして、更新該当年齢者のリストを都立学校、区市町村教育委員会へ送付し、対象者に対して受講を促す予定でございます。

○古館委員 いわゆる周知が重要だと、このように今ご回答がありました。免許更新について、これは今私も指摘しましたが、事前通知などを行うことを求めておきます。
 昨年の夏以降ですが、各大学で実施された免許更新制の予備講習があったんですね。いわゆる大学も開講しているのが少ない、講座も限られている。それでいて希望者が殺到してくじ引きで決められた。あるいは夏休み中の部活動、この指導や補習授業、合宿への参加ができない例など、公務への支障や生徒指導への影響など、無視できない問題が明らかになり、これはマスコミでも取り上げられたところであります。
 そこでお尋ねしますけれども、学校現場への影響や受講者本人が時間的に制約されることなどについて、十分に検討されているとは考えられません。都教委はこうした問題についてどのような認識をお持ちでしょうか。

○直原人事部長 免許更新講習は来年度から本格実施するものでございまして、来年度以降の都内の講習受講者の見込みは、公立、私立及び近県からの流入を見込んで、毎年約七千五百から七千七百人前後で推移するというふうに予想しております。これに対して、文部科学省の調査によりますと、来年度の都内の大学等の更新講習は一万二千人分以上が開設される見込みであり、必要な講座講習数は確保できております。
 また、更新講習の受講時期についてですが、都教育委員会の調査では、授業のない長期休業期間中が受講しやすいと多くの教員が回答しておりますが、そのほかにも、週末、あるいはインターネットや通信の方式など、受講者のニーズにこたえられるよう、さまざまな形態の講習が開設されます。講習受講期間は二年間となっておりまして、教員はその期間内でそれぞれの都合に合わせて講習を受講することが可能です。都教育委員会としては、制度の適正かつ円滑な運営に努めるとともに、更新講習が東京都の教員のニーズに合ったものとなるよう、大学等との連携を図ってまいります。

○古館委員 これは実際に、先ほどいった予備講習ですけれども、この中で対象なんかも、小学校、中学校、高校、講師の違いだとか幅広い年齢層、こういうのもあってなかなか絞り切れなかったと、そういうような事例もあるんですね。現場で役に立つ内容というにはほど遠かったというのが参加した人の話なんですね。ですから問題点は多く上っているわけで、私たちは改めてこうしたことを指摘しておきたいと思っています。
 さらに、島しょ地域からの予備講習受講で、実は往復の交通費も自己負担なんですね。三十時間ですから、かなり旅費もかかるわけですよね。何度か講習に行かざるを得ず、経済的負担も大きいなどの声も上がっているんです。また、希望の講習内容を求めて他県での受講の例もあるわけで、交通費だとか宿泊費の本人負担が大きい。こういう課題もたくさん生まれているんですね。
 私ども日本共産党は、この教員免許更新制については、以上述べてきたように賛成はできません。しかし、実行に移すというのであれば、教職員を初め関係者との十分な合意形成に努める必要がある。都教委として、こうした問題点について調査検討し、国に対していうべきことはきちんといって、経済負担などについては、国に対してはもちろんですけれども、都教委としても検討することを求めておきます。
 続きまして、職員会議での挙手禁止についてお尋ねをいたします。
 都教委は、二〇〇六年四月十三日付で、都立学校に向けて、学校経営の適正化についてという通知を出しましたね。その通知の中で都教委は、職員会議において挙手や採決で教職員の意向を諮ることを禁止しました。この通知は社会に大きな驚きを与え、新聞の社説でも否定的に取り上げられるなど、批判の声が多いものでありました。教職員組合や市民団体からは抗議と通知の撤回を求める要請が都教委にも寄せられたと思います。
 日本共産党都議団は、昨年の二月に記者会見を行って、開示資料と、現場の教職員からの聞き取りも行いました。そうして都教委が出したこの通知、これが都立学校を上意下達の管理統制された場にして、職員会議を形骸化させて、子どもたちの教育にも悪い影響を及ぼしていることを明らかにいたしました。通知では、都の規則によって、職員会議の機能は、教職員に対する報告、意見聴取及び連絡に限定している。だから、職員会議で議論し、教職員の意向を挙手等で確認するような学校運営は許されないという驚くべき文言が記載されているのです。
 そこで改めて確認いたしますけれども、校長が教員の意向確認だとか、みずからの判断の参考に挙手を求めた場合にも問題はあるんですか。はっきりお答えいただきたいと思います。

○森口都立学校教育部長 そもそも職員会議は、学校教育法により、議決機関ではなく、校長が必要と認めるときに校長の補助機関として設置できるものである。職員会議は、教職員に対する報告、意見聴取及び連絡を行う場であり、校長が校務に関する決定等を行うに当たって、職員会議において所属職員等の意見を聞くことが必要な場合においても、挙手、採決等の方法を用いて職員の意向を諮ることは、企画調整会議の機能を否定することになりかねないばかりでなく、校長がみずからの責任で決すべき意思決定に少なからず影響を与え、同会議が実質的な議決機関となりかねない。このため、挙手、採決等の方法を用いて職員の意向を確認することは、校長が参考として行う場合においても不適切であるということでございます。

○古館委員 今の答弁は、いわゆる不適切だと。つまり校長が教員の意向確認だとかみずからの判断の参考に挙手を求めることについてもいけないと、このように今答弁されたと確認してよろしいですね。不適切、つまり確認事項そのものも求めてはいけないと。
 大体、挙手が校長の意思決定に影響を与えるからだめ、こういう理由がむしろびっくりなんですね。校長の出す方針が教職員に支持されているかどうかというのは、教育の場では非常に重要なことじゃないですか。
 そこでお尋ねをしますけれども、職員会議での挙手、採決を禁止している自治体は、東京都のほかにどこかあるんでしょうか。

○森口都立学校教育部長 職員会議の運営方法につきましては、学校を所管する各教育委員会が、地域の実情に応じ、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十三条に基づき管理運営規則に定めて決定する事項であり、したがいまして、他の自治体の職員会議の方法の詳細については把握する立場にございません。

○古館委員 そういうことはぜひ、ほかの自治体もどういうふうにしているかということは学んでもらいたいと思うんですね。教員の意思がどうか、どう考えているか。こういうことまで拒否する、これを拒否することを禁止する、こんなのはどこもないということなんです、我々の調べでも。
 埼玉県の教育委員会の委員長を昨年十二月二十六日に退任した高橋史朗氏、実は昨年の十二月二十四日、産経新聞でこのようにいっているんですね。職員会議の挙手の問題点と題して、都教委の職員会議での挙手禁止について、この方は取り上げているんです。これは全体を読めば都教委を助ける立場で書かれたものであることははっきりしているんですけれども、ところが、その中で高橋氏は、都教委の通知によって教師がやる気を失い、言論の自由が侵害されたというが、それは校長の職員へのかかわり方次第だと。意思決定のための挙手ではなく、意思表示のための挙手は問題ないと私は考えると、このように産経新聞紙上で述べているんですね。この新聞記事についてどのようにお考えですか。

○森口都立学校教育部長 先ほど答弁申し上げたとおり、各学校を所管する教育委員会が地域の実情に応じて適切に判断するといったことになりますので、東京と他の自治体は違うというふうに思いますが、元埼玉県の教育委員長、高橋史朗氏につきましては、退任後に産経新聞に職員会議の挙手の問題点という記事を書かれてあります。職員会議に関する見解が、これは明星大学の教授の立場で書かれているといったことで、東京都として特にコメントする立場にはございません。

○古館委員 ちょっと確認ですけれども、今三年前といいましたか。ちょっと今、何年前ですか。

○森口都立学校教育部長 退任後にということです。

○古館委員 それで、高橋史朗氏といいますと、いわゆるつくる会教科書に深くかかわっている方でありまして、思想的には私たちとは対極の立場にある人なんですけれども、この人ですら、校長が意思決定をするに当たって、より多くの職員から意見を聞くことが望ましく、校長の意思決定を下す際に必要と認める場合には、職員の意向を確認するための一つの方法として挙手させること自体に問題はない、このように発言をしているんですね。都教委の行っていることが余りにも、現代民主主義、日本のこの感覚とはかけ離れ過ぎていると、異常なものであるということを、私どもは認識してもらいたいと思っています。
 ところで昨年、都立高校の現職校長が、この職員会議の挙手禁止について異議を唱える勇気ある声を上げました。校長先生は、この通知は教員たちの言論の自由を奪うがゆえに、民主主義を教える学校現場になじまず、学校の活力を奪ってしまうからこのような声を上げたと、このように述べています。
 その校長先生は、民主的に事を運ぼうと、何度も都教委と話し合いの機会を持ってきましたけれども、とうとう都教委に対して異議申し立てをするに至った。昨年の七月には、お互いに意見を出し合って、討論を行って、どちらが正しいか公の場で判断してもらいたいからと、公開討論を都教委に要望した。この要求に対して、都教委はどのように対応したんでしょうか。

○森口都立学校教育部長 都立三鷹高校土肥校長が提出した要請書の内容とその対応でございますが、職員会議において職員の意向を確認する挙手、採決の禁止の撤回の教育問題と、それから教育委員会との公開討論を求める内容でございましたが、都教育委員会といたしまして土肥校長に対し、通知に係る内容は組織内部の問題であり、組織内部の職務に関する意見等は公開の場で討論することではないと回答いたしました。

○古館委員 都としてはそういう状況ではないということでいっていますけれども、公開討論ということは、要するに、東京都の教育のあり方について、都民参加で、都民みんなで議論していこうということなんですよね。当然のことじゃないかと我々は思っています。
 校長だって子どもたちに直接責任を持つ教育者として、教育や教育を行う場である学校の運営方法についてそれぞれ堂々と意見を述べて、どうするのが子どもたちの教育にとって一番ベターなのか、公開の場でみんなで議論すればいいじゃないですかと。組織内部のことだからというけれども、その組織は教育委員会と公立学校という公の組織でありますから、しかも子どもたちの教育のあり方にかかわるところなんですね。そこでたとえどんなに主張や考え方が違っても、さまざまな考え方があることを認め合い、話し合っていくことが大切なんじゃありませんか、いかがですか。

○森口都立学校教育部長 学校におきましては、教職員がそれぞれの分掌や学年等職務上の立場から建設的な意見を出し合い、中枢機関である企画調整会議において議論を深め、校長が最終決定するという適正な校内運営手続のもとで活発な議論が行われ、校長の学校運営に寄与することが必要でございます。あくまで職員会議は、校務をつかさどり、所属職員を管理監督するという校長の任意設置の補助機関でございます。議決機関ではないため、人事権などの管理運営事項について職員会議で議論するなどの運営は許されることではございません。

○古館委員 全く、本当に今のをいうと閉鎖的といいますか、いろいろいろいろいうんだけれども、結局都教委は堂々と話し合うことはしない。しかし、自分の都合のよい回答は何とか導き出して、聞き取り調査結果を発表して幕引きを図ってきたということが今までの状況だというふうに我々は認識をしています。
 聞き取り調査については、十一月の事務事業質疑でも取り上げました。四・一三の通知でも言論の自由に影響を与える。このことについて、校長、副校長に対して面談で調査を行いましたね。規則改正や適正化通知、これが学校現場の言論の自由を奪っているものではないと考える、こういう結論を都教委は出しました。調査は一般教員に対しては行われないで、調査したのは専ら校長、副校長に対してであります。人事評価を行う立場にある学校経営支援センターが、しかもヒアリングを行う。これはとても公正な調査だということはできません。
 実際この調査への都民の不信は大きく、都教委が現場の一般教員の意見を聞かないのならと、保護者、そして市民の会が独自に都立高校の教員にアンケート調査を行いました。百二十一の高校、千七百三十五人の教員から回答を得て、これがことしの一月に発表されました。
 私は、この都立高校生の保護者や都民の皆さんが、これだけのエネルギーと時間を使ってアンケートを実施したということが、まず都民の都教委に対する憤りの大きさを示すものだと考えました。そして、都立高校の先生は、校長、副校長も含めて全体で九千八百人だそうですけれども、その二割近くに当たる先生方がアンケートに回答して、しかも自由記入欄には、職場の実態、ご自身の思いをびっしりと書き込んでいたんですね。それだけでも、今の都立高校は自由に意見をいうことができない、ふだんいえないからこそアンケートに思いのたけを述べていらっしゃる、こういう状況にあるということを強く感じました。
 そこでお尋ねしますが、保護者と市民の会は、このアンケート結果の報告とあわせて、四月十三日の通知の撤回と、会からの質問への回答を求める要請を教育委員長あてに提出をしておりますけれども、この報告と要請、これについては木村教育委員長に渡しているんでしょうか。

○森口都立学校教育部長 同会が行ったアンケートの結果の報告と要請に対しましては、事案決定規程に基づき、所管課である都立学校教育部において回答いたしました。

○古館委員 結局は渡していないということなんですよね。これは、先ほどもいいましたが教育委員長あてに提出をしているわけで、そうしたところに対してもぜひ声を聞いてもらいたいという思いが入っているわけですから、今後ぜひそうした対応も考えてもらうということを求めておきたいと思います。
 事案決定に基づき所管課で回答したというお話ですけれども、都教委で方針を決定していることですから一々渡さないで事務方で処理した、こういう意味合いなんですね。これはとんでもない話であります。今の方針に意見があるから質問したり、要請や請願をするのではありませんか。それを方針で決めているからというのは、要するに都民の声を聞かないということであります。都教委の意見と違う都民の声には聞く耳持たずということではないんですか。とても教育をつかさどる所管とは思えません。
 しかも、この問題は、三鷹高校の校長先生の報道があったときに、昨年六月十二日の教育委員会で竹花委員が取り上げてもいるんですね。どういうふうにいっているかというと、校長先生、一緒に教育にかかわっておられる教職員の皆さん方がこの問題についてどう考えているのかについて、都教育委員会としてしっかり実情を把握し云々、それ以外の管理者の立場もあれば、教職員の先生方の立場もあるでしょうから、やはり活発な学校運営がなされるような形で、この問題は、平成十年以降いろいろと検討されてきているようですけれども、学校現場の日常をよく把握することに努めていただいて対処していただければと存じますと、このようにも発言をしているんですね。
 これだけ大きな問題なんですから、やっぱり教育委員長に届けるというのは当然だと、改めて指摘をしておきたいと思いますけれども、それで、この質問、これには何と回答したんでしょうか。

○森口都立学校教育部長 回答でございますが、都教育委員会において状況把握を行った結果、通知を撤回する必要がないこと及び一部の教職員に一般教員の声が企画調整会議に反映されないなどの具体的実態があれば学校運営上の問題であり、通知に起因する問題ではない。以上の趣旨で二月二十日に回答いたしました。

○古館委員 保護者と市民の会のアンケートの結果では、九一%の教員が、通知以降、職員会議等での教員の発言回数は減ったと、このように答えています。九八%の教員が、これらの通知は有害だと、教育的でないというふうにも答えているんですね。都教委の校長調査とは全く正反対の結果が出ました。
 調査結果の特徴は、第一に、何をいってもむだ、このような感じで、百人以上の教員が職員会議等での発言にむなしさを感じている、こういうことであります。
 二番目に、意思疎通を欠いて実務的に支障を来している。
 第三に、業績評価が行われている中で、発言することが現実に不利益になっているということです。評価を下げられたとか異動させられたといった人が何人も出ているという報告もあります。
 第四に、生徒への悪影響です。生徒のことを一番よく知っている教員が発言しないことで不利益を受けるのは生徒じゃないでしょうか。
 そこで伺いますが、都教委の調査と正反対の結果となった現実について、どのように認識されておりますか。

○森口都立学校教育部長 同会がアンケート調査を行いましたけれども、回答が千七百三十五名ということで、都立高校のみの対象ということになっておりまして、職員会議につきましては特別支援学校にも設置できることになっておりまして、その数が入ってございません。対象数一万四千名に対し千七百三十五名ということですから、回収率が二割ではなく、約一二%ということだと思います。
 それから回収アンケートは、これは学校でまとめて、その意見の集約等を含めているんですが、その集約方法については書いてございませんでした。
 それからアンケートですが、これは私どもが実施した調査の後に実施しておりまして、その設問が我々の設問と全くリンクしていない。それから調査時期もずれがあって、非常に疑問があるということで、特にコメントはございませんが、都教委が行った全都立学校に対する調査では、規則改正や適正化の通知により、意見をいっても仕方がないという雰囲気になり発言しなくなった、言論の自由に影響を及ぼしたなどの実態はございませんでした。それは前回答弁のとおりでございます。

○古館委員 今そうやっていわれているんだったらばなおさら、こういういわゆる公開討論をやってくれというふうに求めていることに対してこたえていくということが、私は大事なことだというふうに思っています。そのことを強く指摘をしておきたいと思います。
 この四・一三通知というのが、実は教員たちの士気とか意思疎通の低下を招いている。こういう事実についてはどう認識していますか。

○森口都立学校教育部長 職員会議での挙手、採決等を不適切としている理由は、校長の判断に影響を及ぼすような決議を行うことは許されないということでございます。また、職員会議は教職員に対する報告、意見聴取及び連絡を行う場であり、職員会議を自由な議論の場としていないのは、校長が責任を持って意思決定をするためには、校長が必要に応じて意見聴取を行うことが大切だからでございます。しかし、各分掌の中で教職員が意見をいい、教育課題や生徒のために議論をすることは禁止しておりません。むしろ教職員がそれぞれの分掌や学年など職務上の立場から建設的な意見を出し合い、企画調整会議において議論を深め、校長の最終決定に結びつけていくようなルールを確立することは、教職員の意欲も高まり、児童生徒のための学校づくりが進んでいくものだと考えております。

○古館委員 校長への調査結果、これが余りにも実態とかけ離れているんですね。さっき市民団体の方々の調査についてもいいましたけれども、そういう声があるんだということについてもきちっと、それこそ学校の教育に責任を負うんだったらば、そういう声に対しても真摯に耳を傾けるということ、このことは極めて重要な内容を持っているというふうに指摘をしておきたいと思います。
 何より民主主義を教える学校教育の場で、教員たちが自由に物もいえないという事態、こういうような状況になっているわけですね。これをどのように考えますか。
   〔発言する者あり〕

○大山委員長 お静かに。

○森口都立学校教育部長 民主主義というのはどういう場面で使うのかはちょっとわかりませんけれども、恐らく多数決のことではないかなと思うんですが、多数決は、まさに民主主義の理念のもと、対等な権利を有する者が自分たちの権利義務等に関して多数者の賛成で決定するものでございまして、学校のように権限ある責任者が存在する組織では、こうしたことは責任を不明確にするものでございまして、適さないということでございます。
 また、先ほどの調査におきましても、全都立学校で言論の自由に影響があるとしたのはゼロでございまして、校長は、職員会議だけではなく、日ごろの校務運営や自己申告、文書、そういった指導などを通じて、多くの場面や多くの手法で職員と意見交換や意思疎通を図っているといった実態もこの調査の中で明らかにされております。

○古館委員 今の答弁は本当に驚いた答弁で、なぜかというと、アンケートでは、こういう状況になってきて発言しにくくなったという回答が八一%に上っているんです。発言が減ったという回答は九二%です。
 先ほど民主主義の問題で多数決だけおっしゃいましたけれども、しかし、そういう声を十分に聞くということも民主主義の大事な要素なんですからね。そのことについては、私ども、指摘をしておきたいと思います。少なくとも都教委として、きちんと管理職以外の教員からも、匿名で自由に意見がいえる形にしてアンケートを行うべきじゃありませんか。いかがですか。

○森口都立学校教育部長 繰り返しますが、職員会議は校長の任意の補助機関でございまして、学校の最高の責任者、権限者である校長が日ごろから教職員の意見や考え方を把握しており、また、今回の調査においても、そういった実態がないといったことでございましたので、改めてアンケート等によって調査をする必要はないと考えております。

○古館委員 答弁を聞くとますます、私は、きちんと都教委が多くの教員にお話を聞くと。だからそういう点でいえば、今のお答えでいえば、堂々と調査すればいいんですよ。結局一般の先生の意見を聞くということはやらない。これでは本当の意味でのよりよい教育ということにはならない。
 国際基督教大学の藤田英典教授は、学校教育はばらばらな教員個人の力量によって支えられているんじゃなくて、教職員の連携、協力、協働によって支えられていること。そして欧米先進諸国の教育学界では、日本の学校は非常にすぐれた組織構成とカルチャーと実践をしているとして世界的に注目されてきたにもかかわらず、近年の教育改革がすぐれた基盤を壊している、こういうものが多い。東京都の教育行政、施策には、それを先導するものが多いと危惧を表明しているんですよ。
 四・一三通知を撤回して、自由濶達な職員会議、都立学校を取り戻すことが求められていると思いますけれども、改めてご答弁いただきたいと思います。

○森口都立学校教育部長 平成十年以前、職員会議が実質的に最高議決機関化し、教員の挙手、採決により校内の人事や教育目標など学校運営の重要事項に関する校長の意思決定が影響を受け、円滑な校務運営に支障を来していた時代がございました。こうした状況を踏まえまして、学校経営の適正化を図るべく、平成十年七月には都立学校の管理運営に関する規則を改正し、職員会議を校長の補助機関として位置づけるとともに、十八年四月の通知では企画調整会議を学校運営の中枢機関として明記し、企画調整会議を中心にした学校経営を推進してきたところでございます。
 今回、各学校長への聞き取りにより実態を把握したところ、都立学校の学校経営が適正に行われ、学校が組織的に機能していることの確証が改めて得られました。具体的には、過去のような職員会議での挙手、採決は行われず、教職員には組織的理解が浸透している。一方、企画調整会議の議論は活発に行われ、出された建設的な意見が校長の学校運営に大きく寄与している。こうした学校の変容は、都教育委員会が行ってきた規則改正や通知などの適正化への取り組みと、多くの校長の理解と努力の成果であるといえます。
 また、多くの校長は、これまで築き上げてきた学校経営の体制が揺るぐことなく維持することを望んでおります。仮に体制が崩れた場合、旧来の挙手、採決による多数決の理論が復活し学校経営が混乱することを危惧している校長もおります。
 なお、ごく一部の管理職や教員には、依然としてこうした都教委の取り組みを否定的にとらえ、挙手、採決を望む声もございますが、これは学校の現状を考えると、組織的に進みつつある学校経営に逆行した意見であり、かつ具体的に裏打ちされたものではなく、伝聞や個人的思いが主でございます。都教育委員会は、こうした声に惑わされることなく、校長の健全な学校経営を支援し、全教職員の協力のもと、都立学校の保護者、都民、生徒から信頼し期待される都立学校の着実な前進に全力を傾けていくことから、通知を撤回する考えはございません。

○古館委員 聞けば聞くほど民主主義国家における行政組織とは思えませんよ。教育の現場に最も必要なことは民主主義であって、自由濶達な雰囲気、子どもたちの成長発達を保障するために、教職員がそれぞれの立場で対等、平等に議論できる、こういうことを保障することだと思うんですね。民主主義を教える学校で先生たちに民主主義が保障されていない。きちんと自分の意見をどんな相手にもいえる、また、相手の意見にたとえ自分の意見と違っていても耳を傾ける、これを学校で教えているのではないんですか。この教えている先生たちに自由も民主主義もない、都教委が奪っているということは、これは異常なことであります。
 教育は人間の内面的な価値に関する文化的な営みであって、子どもの成長と発達のために自由で自主的な空間で営まなければなりません。校長や教員に都教委の顔色をうかがわせるようなことでは、やっぱり子ども本位の教育はできないと思っています。都教委は憲法に依拠して、教育の条理に立って、子どもたちの豊かな成長を目指す教育の実現に全力を尽くすことこそ求められているということを強く指摘して、発言を終わります。
 以上です。

○古賀委員 都立学校における生活指導の改善と充実を求めて質問をいたします。
 卒業式の季節を迎えて、私も毎年、都立高校の卒業式、周年行事、入学式等に出席をいたします。いろいろ感ずるところもありますし、そういうことも踏まえながら、お聞きをいたします。
 すべての都立高校で「奉仕」の授業が行われるようになりました。私の地元の都立日野高校では、市内の中央を流れる浅川という川がございますけれども、その地域に日野高校はあるために、その浅川の清掃活動に取り組んでいるわけです。ほかにも、都立高校で生徒が地域の人々と連携をしながら、環境保全の活動や防災防犯の取り組み、そういったことを行って都民に感謝をされている、評価されているということも承知をしております。
 しかし一方で、インターネット上の掲示板に、他人への誹謗中傷や、自分たちの飲酒、喫煙、これを何ら悪びれることなく自慢げに書き込んでいる高校生もいるようであります。また、この若者の中には、インターネットを通じて大麻などの薬物を安易な気持ちで手に入れようとする者もいることも報道されております。
 インターネットへの都立高校生の書き込み等を監視し、これが不適切であるとすれば削除させていくというふうに聞いております。そもそも飲酒や喫煙というのは法律で禁止された違法な行為であります。こういった違法な行為や不適切な行為をしたり、それを自慢したりするというのは、我々の感覚からすれば信じがたいことであり、論外であるわけです。
 また、高校生の登下校時、都立学校に卒業式や入学式、周年行事等で伺ったときに、やはり気になるのが、服装、それから頭髪、そういったことがどうしても気になってまいります。こういった問題の背景に、戦後のいろんな教育の結果でありますけれども、若者の善悪の判断基準がずれてきている。何が美しいのか、何を慎まなければならないか、何を誇りとすべきであるか、そういった基準というものが、私はずれてきているような気がいたします。これを正していかなければならないわけでありますけれども、そのために、都立学校を初めとする学校教育における日常の生活指導の積み重ねというのが、家庭とともに学校においても非常に重要であります。
 そこで伺いますけれども、都立高校において、生活指導の取り組みと、教育委員会はどのような取り組みを行っているのか、お答えください。

○高野指導部長 これまで都立高校では、各学校において、全校集会やホームルームで学校や社会のルール等について指導するとともに、登下校にあいさつや頭髪、服装、遅刻などの指導を行うなど、生活指導部と各学年の教員が連携してそれぞれの生活指導上の課題に対応した取り組みを行ってきております。
 また、セーフティー教室などで、今お話がございましたが、情報モラルに関する指導や、薬物乱用防止、飲酒・喫煙防止等の指導に努めてまいっております。
 都教育委員会は、生活指導上の諸課題に対応するために、指導の留意点を示した通知の発出や指導資料の提供を行うとともに、生活指導主任等の資質向上を図るための教員研修を実施しておるところでございます。また、生活指導には関係機関との連携が重要であることから、警視庁との連携による繁華街での合同補導、あるいは各警察署や少年センターの担当者と都立高校の校長等が地区別に協議を行う学校警察連絡協議会などを実施しているところでございます。

○古賀委員 ここで思い出しますのは、これはかなり話題になりましたけれども、神奈川県立神田高等学校において、入学試験において公表している入学試験基準のほかに、学校独自に、服装であるとか頭髪、それから態度など非公表の判定項目というものを設定していたことがございました。また、これは都立高校なんですけれども、日本橋高等学校で入試での点数操作ということを行った。こういったことも、あえてそれをやらざるを得なかった背景というものがあるのではないか。校長等に学校の秩序を維持するための思いというものがあったということも想像にかたくないわけです。
 この神田高校の場合には、PTAや在校生が、校長を処分しないでくれという署名を出したということも新聞に大きく報じられておりました。校長の思いというのは悪意でなかったわけでありますけれども、確かに一定の法令に照らせば処分の対象となるということも理解できるわけです。しかし、その背景にあるものが、やはり学校の、今の生活上の規範意識の後退であるとか、生活態度の乱れとか、そういったことをいかに正していくかということに取り組まなければ、このような事件はまた起きてくることも否定できないというふうに私は思うわけです。
 先ほどのご答弁で、都立高校が生活指導に地道に取り組んでいる、それから東京都教育委員会もそれを指導しながらさまざまな取り組みを行っているということをお聞きしました。しかし、私が見ましたところ、生活指導上の課題のある学校はまだまだ多くあると思います。学校を訪れますと、やはり道路の歩道から大きくはみ出して駅まで歩いているとか、それから女子生徒のスカートが非常に短い。それからこの間、卒業式のときも、毎年そうなんですけれども、これほどお化粧するのかなと思うくらい非常にけばい化粧を堂々とやっている女子高生もいる。やっぱりそれを指導することが、私は、学校においても家庭においても同じように必要であろうというふうに思うわけです。やはりある程度我慢をする。自分を美しく見せる、そういう欲望というのは本能的にだれしもあるわけでありますけれども、教育という場で、そのことはやはり指導の対象になるというふうに私は思うわけです。
 そこで、先ほど校長の話がいろいろ出ておりましたけれども、学校で校長の指導のもとで教職員が一丸となって取り組んでいかなければならないというのはもう当然であります。先ほど武道の話もありました。武道教育は、昔は格技といっていたんですけれども、おくればせながらこれが武道というふうにやっといい改められて、マッカーサーが使うなといった言葉がやっと堂々と使えるようになるわけであります。
 武道をやれば、おじぎの仕方もわかるんですね。卒業証書を受け取るときの子供たちのおじぎの仕方、手が前にある人、横にある人、頭だけぽこんと下げる人、きちんと腰を折る人、その角度もばらばら。そういったことも、やはり先生もわからない。一つの礼儀作法ということに関しても、先生自体も戦後教育を受けているわけでありますから、いわゆる公式の場でのそういう儀礼的な行為ということも苦手である。苦手であれば当然子供たちにそれを伝えることができない、自信を持って伝えることができないということになるわけです。
 そういったことを踏まえて、生活上の改善をしていくため、また充実させるために、今までの取り組みはわかりましたけれども、今後、東京都教育委員会として一層のさらなる取り組みというものが私は必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○高野指導部長 都教育委員会では、生活指導に課題のある都立高校に対応するため、今年三月に新たに都立高校生活指導改善検討委員会を設置したところでございます。現在検討しているところでございますが、先ほどの委員のご指摘を踏まえまして、この委員会では、都立高校における生活指導上の課題について分析いたしまして、効果的な指導事例を整理するとともに、生活指導の校内体制、規範意識や遵法精神などを育成するための具体的な指導方法、関係機関との連携強化等について検討してまいります。
 今後は、こうした検討内容に基づく今日的な課題への対応を含めまして、組織的な生活指導を推進するための指導資料集を作成いたしまして、全都立高校に提供するなどいたして、各学校における生活指導の一層の改善、充実を図ってまいります。

○古賀委員 生活指導というのはやはりしつけなんですよね。今、親も戦後の個人主義教育を受けていますから、ナンバーワンにならなくてもいい、オンリーワンの生き方でいいと、そういう歌まで、やたらはやった歌がありましたけれども、何か努力をして自分を向上させる、挫折を経験しながらもさらに挑戦を続けてある高みに達する、そこに初めて生きがいであるとか人生の喜びというのは見出せるわけで、それを竹の節のように重ねることによって人間は成長していくわけですから、やっぱりきちんとした指導基準というものを設けてしつけを行っていく。これは封建的でも何でもないんですよね。ですから、ぜひ学校のさまざまな場面で地道にこれを行っていくことが非常に大切だというふうに思います。
 「躾」という字は和製の漢語なんです。中国にはないんですね。身を美しくする。日本人がつくった漢字なんです。私は、これは非常に重みがある言葉だというふうに思います。このしつけということをひとつ--基準がみんなあいまいになってきたわけですよ。何が善か、何が悪か。何でもあり、オンリーワンでいいわけですから。ですから、これから指導資料をおつくりになると今ご答弁がありましたけれども、やはり蓄積されてきた伝統的な文化的な価値というものを踏まえてつくっていただくということが非常に大事だというふうに思います。
 そういうことも認めるとか、これもある、あれもあるでは、価値観の多様化とよくいわれますけれども、自信がないから価値観の多様化なんていう言葉が出てくるのであって、しっかりとした価値の基準というものを示して、校長のもとで全職員が一丸となって成果が上がるような取り組みというものを行っていただければ、東京から日本の将来を担う若者が育っていくというふうに思います。子供たちと、高校の生徒といろいろ話をすると、やはりまだまだ日本は再生の可能性があると希望を持てる子供たちがたくさんいるわけです。
 どういう人を目指したらいいかというお手本が今なかなかないんですよね。私は、イチロー選手というのは、どういう人になったらいいかというときのヒントを与えてくれる、今の代表的な日本人の一人だというふうに思うんですね。非常に冷めた頭脳と燃えるような闘志を持っている。そして確実に実績を残している。
 イチロー選手は、八年連続二百本安打を打ったときに、自分はオンリーワンを目指すやつは大嫌いだ、自分はナンバーワンを目指すということをはっきりいいました。これだけの自信を持ってこういった発言ができる日本人がまだまだいるわけですから、何か具体的に、ああいう人になりたい、こういう人を目指したいというふうな、別に芸能人だけじゃなくて、政治家の中にも余りそういう人は最近--ああいう人になりたいというふうな人がいないような気がするんですけれども、ぜひ東京からそういう人物を育てるというような意気込みを持って臨んでもらうことをお願いして、質問を終わります。

○野上委員 私からは、都教委と連携する教職大学院修了者に対する採用選考について伺います。
 現在、都内の公立学校では教員の大量退職があり、今後とも十年以上同様の状況になると伺っております。これに伴って教員の大量採用時を迎えておりますけれども、数の確保と同時に実践力のある教員の確保が求められています。これまでも都教委は、教員の採用選考において年齢制限を緩和するとともに、民間企業経験者、他県現職教員、臨時的任用教員等、社会経験や実践的指導力に富んだ方々を積極的に採用するように努めてきたというふうに理解しております。そこでまず、来年度の教員採用に向けどのような取り組みをしていくのか伺います。

○直原人事部長 社会全体から幅広く優秀な人材を確保する観点から、民間企業経験者、他県現職教員、臨時的任用教員、非常勤講師経験者などに対する採用選考の年齢制限を、これまでの上限四十四歳から定年前年の五十九歳まで引き上げることといたします。
 また、実践的指導力にすぐれた人材を確保する観点から、都教育委員会と連携する教職大学院修了予定者を対象とした選考を実施いたします。
 さらに、多数の受験者確保の観点から、全国各地で説明会を開催するとともに、選考会場についても、都内会場に加え、教員採用倍率の高い東北地方でも新たに実施いたします。これらの取り組みを通じまして、優秀な教員の確保に万全を期してまいります。

○野上委員 今お答えいただいた中に、都教委と連携する教職大学院修了者に対する選考というのがありましたけれども、実践的に指導力に富んだ方々を採用するという観点で、どのような工夫を考えているのか伺います。

○直原人事部長 教職大学院修了者に対する採用選考につきましては、学長推薦書、成績証明書、小論文により書類審査を行い、書類審査をパスした者については、二次選考として個人面接、集団面接及び実技試験を実施するものでございます。
 加えて、都教育委員会と連携する教職大学院では、都内の公立学校での実習をカリキュラムに大幅に取り入れておりますので、採用選考に当たりましては、その実習実績を合否の判定に加味することによりまして、実践的指導力に着目した選考を行ってまいります。

○野上委員 この教職大学院の修了者をどのように都教委が採用していくか、あるいはこれからどのように活用していくかというのは、東京都内のみならず、他府県からも非常に注目されているところだと思います。
 今ご答弁いただいたところの基本的な考え方は私も同意するところでありますけれども、一部において、この教職大学院修了者は全員合格、あるいは優先枠で採用されるのではないか、質の面で非常に問題があるのではないかという声も聞こえてくるのも正直なところです。また、教職大学院自体の実績を上げるために推薦を安易に出してしまう。もちろん採用時に審査というものがきちんとありますけれども、例えばそこら辺のところは、教員採用の公平性、公正性の観点から、一部の方々を優遇することはあってはならないというふうに思っていますけれども、都教委の見解を伺います。

○直原人事部長 教職大学院修了者に対する採用選考につきましては、教職大学院が推薦した者に対し書類審査を実施するものでありまして、全員が二次選考に進むとは限りません。また、その二次選考におきましては、他の一般選考受験者と同様の面接選考を行うこととしておりまして、教職大学院修了者に対する合格予定者の人数枠を設けることはしておりません。さらに、都内の公立学校での実習実績を選考に加味するわけですが、実習実績によっては、必ずしも選考上有利になるとは限りません。
 このように、教職大学院修了者に対する選考は、教職大学院での学習や経験に適した選考方法をとることにより、実践的指導力にすぐれた人材を確保しようとするものでありまして、教職大学院修了者を優遇するものではございません。

○野上委員 今のお答えが当然の答弁であり、今後とも採用選考の公平実施に取り組んでいただけるようにお願いいたします。
 ところで、都教委と連携する教職大学院では、都内公立学校における実習を大幅にカリキュラムに取り入れているということではありますが、教職大学院修了者が採用選考に合格した場合には、その実習経験を一層生かす観点から、ある一定期間でもということですけれども、引き続き実習校に配置することが望ましいというふうに考えますが、都の見解を伺います。

○直原人事部長 実習校における実績が評価され採用選考に合格した教職大学院修了者につきましては、児童生徒を継続的に指導できることや、また、新規採用教員の育成の観点からも継続的な指導を図ることができるということから、実習校の教員の欠員状況に応じまして、その実習校への配置を検討してまいります。

○野上委員 もちろん教科ごとでありますから、その学校が例えば本当に国語の先生の採用枠があるかどうかとか、教科ごとの人の欠員によって受け入れ体制ができる、あるいは配置ができるということももちろん問われるところだとは思いますけれども、せっかくの経験を生かすような人事配置もこれから恐らく課題になってくると思いますので、できるだけ教職大学院に行った方の経験と能力を活用できるような配置をしていただければと思います。
 私自身もかねてより、都議会議員として皆様と仕事をさせていただくときに、この議会の質問を通じて、教員の大量採用時において優秀な人材を確保するためには、年齢にとらわれることなく、多様な層から幅広く人材を確保していくことが重要であるというふうに主張してきました。特に豊かな経験を持った社会人の積極的採用と受験しやすい環境整備としての年齢制限の緩和については、三年前、四年前から主張してきたところであります。本日はその点では極めて前向きな答弁をいただきました。
 加えて、教育現場での実習経験を積んだ教職大学院生に関し、実践的指導力にすぐれた者を採用するという観点からも、その実習実績を踏まえた選考を行い、採用された際には引き続き当該校に勤務するということについても前向きな答弁をいただきました。今後とも、優秀な教員の確保のために、さまざまな工夫を講じていただきたいというふうに要望いたしまして、私の質問を終わります。

○伊藤委員 多くの子どもたちが、小学校におきましては放課後子どもプランが進む中で、例えば私の地元の品川区ではすまいるスクールというのがありまして、小学校の空き教室を利用して、学校と、また地域と、品川区と連携をして放課後の子ども教室ということで、すべての児童を対象とした健全育成事業が行われております。また、学童クラブにおいても、この東京都においても拡充をされているところでございますけれども、安全で、また健全なこうした放課後の居場所が進められている中、中学生、高校生においても、放課後にはもう元気いっぱいに部活動をするとか、あるいは自由に行き来をして友達を拡大する、またいろんな経験を重ねていく、こうしたことが行われているわけでありますけれども、昨日の委員会でも申し上げました。私は前職、品川区立の児童センターの指導員をしておりました。障害のない元気いっぱいの子どもたちと放課後一緒に過ごしながら、その横を養護学校のスクールバスが通る。そうした光景を見ながら、こうした当時の養護学校に通う子どもたちは放課後どういうふうに過ごしているんだろうか。そのことがずっと、私は議員になってからも気になっておりました。この特別支援学校に通う障害のある子どもたちの放課後、この居場所について質問させていただきたいというふうに思います。
 平成十九年の第三回定例会代表質問において、都議会公明党は、初めてこの特別支援学校における放課後の居場所づくりについて取り上げさせていただきました。また私も、平成十九年の第四回の定例会の一般質問で改めて特別支援学校における子どもたちの居場所づくりを求め、教育長からは、特別支援教育推進計画第二次実施計画の外部の教育資源を活用した特別支援学校を支援する仕組みづくりの中で実施するというご答弁をいただきました。
 また、昨年の当文教委員会におきましても、私はこの特別支援学校における居場所づくりについて質問させていただきまして、平成二十年度の、つまり今年度の新規事業のモデル事業として、順調にこのモデル事業がスタートしているということを確認させていただきました。
 特別支援学校の児童生徒にとって、放課後の居場所を含めた学校外教育活動の選択肢が広がるということは、自立と社会参加の機会がふえるということでありまして、この事業に対して、子どもたちはもとより、保護者の多くの方から期待の声が来ているところでございます。
 障害のある子どもたちにとっては、一律的な支援活動ではなく、児童生徒、また保護者、学校、地域など、さまざまなニーズに応じた活動が大切であると思います。そこでまず、これまでのモデル事業の中で、障害種別ごとにさまざまな取り組みが行われてきたと思いますけれども、特徴的な取り組みがあれば、ぜひ具体的に教えていただければと思います。

○皆川地域教育支援部長 ろう学校では、放課後や土日に太鼓などを使った体で感じる音楽活動や、手話やパソコンなどを活用した算数などの学習活動が行われております。
 肢体不自由校では、放課後に地域の人々の支援により、障害特性に対応した遊具遊びや、学校周辺、公園での歩行訓練などが行われております。
 知的障害校においては、放課後に近隣の大学生や地域のサークルなどの支援によりまして、サッカー、フットサル、卓球等のスポーツ活動、あるいは太鼓、器楽演奏などの音楽活動等を集団で行う多様な活動が行われております。
 土日には多くの人々の支援が可能になるということで、例えば近隣の小学生や中学生が特別支援学校を訪れて、ダンスを教えるなどの交流活動が行われてございます。

○伊藤委員 今ご答弁いただきまして、各障害種別ごとに、各学校においてモデル的にさまざまな活動を、学校の授業以外にこうして放課後や土曜日、日曜日に行われているということを伺いまして、子どもたちの輝く笑顔や、また真心で支えてくださるスタッフの笑顔が目に浮かんでくるようでございます。健常者に比べてまだまだ体験や交流活動が少ない障害のある子どもたちにとって、貴重な場や機会となっているというふうに改めて思いました。
 そこで、成果はすぐには見えないと思いますけれども、参加している子どもたちの様子や子どもたちの変化について、また、実施校や保護者から出ている声などがあったら伺いたいと思います。
 またあわせて、こうした活動を支えている保護者や地域の人々にとっても、このような活動に参加することは大変に意義があるというふうに思いますけれども、所見を伺いたいと思います。

○皆川地域教育支援部長 子どもたちの様子や変化でございますけれども、日ごろ接することのないスポーツ指導者や大学生など外部の人々と触れ合うことが新鮮な刺激となりまして、児童生徒が楽しみながら積極的に活動に参加するなど生き生きとしてきた。また、学校や家庭では体験できない多様な活動に参加できるため、興味関心の幅が広がったなどの声があると伺っております。
 また、保護者や地域の人々にとっての意義についてでございますけれども、保護者にとっては、支援活動に参加し、自分の子どもの障害や子育ての悩みなどを共有することによって相互のつながりが生まれ、相談し合ったり、支え合ったりする関係づくりのきっかけになっているということや、地域の人々にとっては、自分の特技や知識などを生かした支援を行うことで、社会貢献を通じた自己実現の場となっているということが挙げられるというふうに考えられます。

○伊藤委員 今年度から開始されたモデル事業ということでございましたけれども、今部長から伺った内容のとおり、本当にすばらしい成果を上げておられるなと。今後、この事業の継続に対する保護者の期待はさらに高まっていくものというふうに思います。
 しかし、障害のある子どもたちの活動を支えるためには、小学校で行われている放課後子ども教室と違って多くのスタッフが、またあるいは、時には専門的なスタッフが必要になるというふうに思います。今後検討しなければならない課題もたくさんあるわけでございます。そこで、二十一年度は、この二十年度モデル事業として実施した実績を踏まえて、さらに推進をしていくべきというふうに考えますけれども、所見を伺いたいと思います。

○皆川地域教育支援部長 障害のある子どもたちの活動を支えるために、ご指摘の障害のある児童生徒の特性を理解した人材の確保と育成のほか、障害種別に応じました支援組織のあり方や、活動中や帰宅時の安全の確保などの課題がございます。
 そこで、引き続き二十一年度もモデル事業を実施いたしまして成果を検証するとともに、モデル校の校長などで構成される検討委員会において、例えば放課後活動等を支援する人材を各学校で養成するなど、それぞれの課題について対応策を検討してまいります。

○伊藤委員 二十一年度もモデル事業を継続するということでございました。学校、あるいは保護者、児童生徒からの要望なども聞いて、ぜひこの事業の拡大をお願いしたいと思います。
 また、新たに新設する特別支援学校では、このような事業が可能となるような検討も必要と考えます。ぜひ準備をしていただきたいというふうに要望させていただきます。
 放課後子どもプランなど、昨今、区市町村において児童の放課後対策が積極的に進められておりますけれども、障害のある児童生徒にとって、まだまだ活動場所の整備や多様な活動内容の提供は不十分な状況であると思います。この事業は、障害のある児童生徒の放課後、土曜、日曜、あるいは長期休業、こうした時間帯で安全で安心な活動場所を確保して、さまざまな体験や交流活動を通じて心豊かで健やかにはぐくまれる環境づくりを推進する事業であると思います。事業継続のためにはさまざまな課題があるということは承知しておりますけれども、障害のある児童生徒の自立と社会参加の促進には欠かせない事業であると思いますので、検討委員会等において課題の解決策等を検討していただきまして、今後、定着、拡充を図っていただきたいと要望いたしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 先日、私のもとに、ある特別支援学校に通う子どもの保護者から相談の電話がありました。それは、特別支援学校中等部から高等部に移るとスクールバスに乗れなくなってしまうという連絡を学校からもらって、非常に困っていると、そういう相談でございました。早速そのご事情を聞きに行きましたところ、全盲の障害を持っているお母さんでございまして、六人の子どもを産み育てられていまして、非常に立派な六人の子どもを育てていらっしゃいます。ただ、一番末っ子のお子さんが、身体の方の障害と、また知的の障害と重複障害を持っているということで、もしスクールバスに乗れないということになってしまうと、当然お母さんは通学に一緒に行けない、また、そういう子どもさんたちを抱えているご世帯ですので、お父さんも仕事を休んで行くわけにもいかない。こうした状況の中で、本当に困ってしまった、どのように考えたらいいのかと、こういう相談でございました。
 そこで、まず初めに伺いたいことは、知的障害者の特別支援学校の高等部においては、スクールバスに乗車しないで一人通学をすることが原則だというふうに、そのお母さんもいっておりました。また私もそう聞いておりますけれども、その辺の事実を伺いたいと思います。

○高畑参事 知的障害特別支援学校高等部の生徒の通学につきましては、卒業後の自立と社会参加の観点から、都教育委員会では一人通学を原則としております。

○伊藤委員 卒業後の自立と社会参加の観点からということで、確かに自立のために一人通学を訓練、また指導していくこと、これは大事なことであるというふうに思いますけれども、それでは知的障害者の特別支援学校高等部で一人通学ができるようにするためにどのような指導を行っているのか、ここで伺いたいと思います。

○高野指導部長 高等部の生徒が学校卒業後に社会や作業所等に一人で通勤できる力を身につけるためには、学校において日ごろから計画的に一人通学の指導を行うことが重要であると考えております。
 一人通学の指導に当たりましては、まず保護者や教員などが付き添って登下校することから始めまして、少しずつ付き添いの距離を短くするなど、生徒の実態に応じて段階的に指導を行っているところでございます。また、保護者や警察などの協力のもと、交通ルールや公共交通機関の利用の仕方を身につけさせるなどいたしまして、スクールバスを利用せずに一人通学ができるよう、指導の充実に努めているところでございます。

○伊藤委員 高等部の生徒に関しましては、卒業後の自立に向けての指導を行っているということ、また、さまざまな支援が行われているということは理解できるわけでございますけれども、それでもなお、先ほど例を出して申し上げたとおり、障害が重複、あるいは重度、こうしたお子さんについては、一人通学が困難な生徒もいるわけでございます。このような生徒に対して、一律的ではなくて、実情に合わせた対応をしていくべきというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○高畑参事 知的障害特別支援学校高等部の生徒につきましては、卒業後の自立と社会参加の観点から一人通学を原則としておりますが、重度重複学級に在籍するなど一人通学が困難な場合につきましては、個別の事例ごとに、障害の状態や学校のスクールバスの配車状況等を踏まえまして対応してまいります。

○伊藤委員 ぜひとも、障害の程度や、またご家庭の事情など、柔軟な対応をしていただくことを要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。

○吉原委員 それでは私の方から、都立の肢体不自由特別支援学校における新たな指導体制についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 昨年の十一月十一日、ちなみに私の誕生日なんですけれども、ちょうどこの文教委員会の我が会派の皆さんと一緒に府中の特別支援学校に視察に行ってまいりました。そのきっかけといたしましては、父兄の皆さんから、朝日との統合についてなかなか心配だ、いろいろ課題があるのではないだろうか、こんな疑問をいただいて、府中支援学校の方に視察に行ったわけであります。行ったときは、短時間でありましたけれども、食事をする場面、あるいは子どもたちが体操をしている場面、あるいは授業を受けている場面、幾つか学校の中とそうした授業風景も、若干ではありますけれども、視察をさせていただきました。
 今回の定例会の中で、我が党の幹事長も、外部人材の活用について教育長に質問をさせていただきました。その中で大原教育長の方も、肢体不自由の特別支援学校についても外部人材を登用していく、そういう旨のご答弁をいただいたというふうに理解をしているわけでありますけれども、その中で、現在、肢体不自由特別支援学校ではどのような指導が行われているのか、そしてまた、現状の中でどのような課題があるのか、お尋ねをいたします。

○高野指導部長 都立肢体不自由特別支援学校におきましては、約九割の児童生徒が肢体不自由と知的障害などの障害をあわせ有している現状でございます。こうした児童生徒に対応するために、肢体不自由特別支援学校の教員は、体の動きなどの自立活動の指導を行うとともに、知的障害の程度に合わせた教科指導なども行っているところでございます。
 また、移動、排せつ、食事などの介護が必要であったり、たんの吸引や経管栄養、導尿などの医療的ケアが必要であったりする児童生徒も少なくなく、教員は、介護や医療的ケアなど、多岐にわたる業務にも従事しなければいけない状況となってございます。
 こうした現状に加えまして、今後漸次増加してまいりますベテラン教員の退職に伴いまして、肢体不自由特別支援学校の教員の自立活動や教科指導における専門性の低下が危惧されているところでございます。

○吉原委員 確かにベテランの教員もだんだん少なくなっていくわけでございますし、新しい教員、まだ経験の少ない教員が、本当に教育の場面と介護の場面が一緒にできるかどうか、このことも大変心配になるわけであります。そうはいっても、そこに通ってくる子どもたちがどういう気持ちで来ているのか。そしてまた、送り出している保護者の皆さんがどういう感情を持って送り出しているのか。そういった意味でいうと、保護者の皆さんがこの現状についてどのように思っているのか、お尋ねをしたいというふうに思います。

○高畑参事 保護者の方々からは、障害の重い児童生徒の増加に伴い、学習指導に加え、移動や排せつなどの場面において教員が介助に当たることが多くなっているので、教育効果を高めるためにも、介助員を導入してほしい。医療的ケアの必要な児童生徒が、保護者の待機や付き添いなしで安心して教育を受けられるようにしてほしいといった要望がございます。また、一人一人が集中できるような授業の工夫をしてほしい。子どもによってできることやペースに差があるため、課題待ちの時間が多い。もう少し指導の工夫をしてほしいなど、現在の指導の改善を求める意見がございました。

○吉原委員 確かに教育でありますから、肢体不自由の皆さんといえども、やっぱり学校教育を主にしたものでなければならないというふうに私自身も思っているわけであります。さりとて体が不自由なだけに、そのことのフォローはどうやっていくのかということがやっぱり大きな問題にもなるんだろうというふうに思うわけでございまして、新たに専門家を導入する指導体制、具体的にはどういうことなのか、お尋ねをいたします。

○高畑参事 来年度の新規事業でございます肢体不自由特別支援学校へ介助の専門家を導入する指導体制とは、これまで教員が担っていた介助や介護、医療的ケアの業務に、ホームヘルパーや介護福祉士、看護師等の専門家を活用いたしますとともに、介護や看護面から児童生徒一人一人の課題を把握し、教員などに対して助言を行うことにより、これまで以上に児童生徒の安全性を確保していくものでございます。
 また、都教育委員会は、平成十六年度から、理学療法士や作業療法士などの外部の専門家を計画的に導入しておりまして、これらの職種と、来年度から導入いたします介護等の専門家、さらには教職員や指導員など多様な職種の専門家が、それぞれの専門性を発揮し、互いに連携することによりまして、児童生徒の個に応じた指導をより一層充実してまいります。平成二十一年度は、永福学園及び青峰学園で実施し、実施校での課題や成果を検証いたしまして、以後、順次拡大してまいります。

○吉原委員 二十一年度は永福学園、そしてまた青峰学園に導入する、こういうお話でございます。今現在でも十四の学校があるわけでございまして、トータル十六になる、こういうことの認識でよろしいのだろうと思いますけれども、この介助の専門家、あるいはヘルパー、看護師等の専門家、こういう皆さんを、支援学校に対して新しい体制を導入することによって、学校の教育というのはどのように変わっていくのか、お尋ねいたします。

○高畑参事 現在教員が教科指導や生活指導をしながら行っている介護等の業務を専門家が担うことによりまして、児童生徒の健康及び安全をこれまで以上に確保することができますし、教員は教科指導等に集中して取り組むことができるようになります。
 また、介護等の専門家が把握した指導上の課題を、教員が教科指導等に生かすことによりまして、これまで以上に児童生徒の一人一人に応じた指導計画を作成することができますので、教科等の指導内容、方法の充実が図られ、肢体不自由特別支援学校全体の教育水準が向上することになると考えております。

○吉原委員 肢体不自由特別支援学校の全体の教育水準が向上する、こういうことでございますので、こういう新体制を導入することに対しては大変評価をしているわけであります。まして他の道府県にはこういった体制がまだ組み込まれていないということでございますから、当然東京都がいち早く、こういった学校に対しての手厚い教育環境を整えていくということに対しては、大変すばらしいことだなというふうに思っているわけでございます。
 最後に、この都立肢体不自由特別支援学校に新たな指導体制を導入することにつきまして、大原教育長のかたいかたい決意をお聞きいたしまして、終了とさせていただきます。

○大原教育長 特別支援学校におきましては、児童生徒の個々のニーズに柔軟に対応して、適切な指導及び必要な支援を行うことが重要でございます。しかしながら、都立肢体不自由特別支援学校におきましては、児童生徒の障害の重度重複化、さらに多様化が著しく、児童生徒や保護者のニーズに適切にこたえるためには、教職員の有する知識、技能に加えまして、介護や医療の専門家との連携を図っていく必要がございます。このため都教育委員会は、教職員と多様な外部の専門家が連携をいたしまして、児童生徒にチームでアプローチをする新たな指導体制を構築し、安全で安心のできる教育環境の中で、一人一人の児童生徒の能力を最大限に伸長する教育を推進してまいります。

○吉原委員 いろいろお尋ねをさせていただいて、前向きなご答弁をいただいたわけでありますけれども、とにかく子どもたちに対してきめ細かな教育体制といいましょうか、そういうものをこれからもしっかりと構築していっていただきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○谷村委員 それでは、四項目についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 初めに、小中一貫教育でありますけれども、義務教育九年間を見通した系統的かつ継続的な指導を進めようとする小中一貫教育が全国で始まっております。横浜市では、二〇一二年度にはすべての市立小中学校で小中一貫教育を実施する方針を固めたという報道もありました。
 東京都には、義務教育九年間を通して一貫したカリキュラムで、児童生徒の個に応じた指導を行っている自治体もあります。私の地元でもあります武蔵村山市におきましても、平成二十二年四月の小中一貫教育校開校に向けて準備をしているところでございますが、まず初めに、この小中一貫教育の現状についてお尋ねをさせていただきます。

○高野指導部長 小中一貫教育に関しましては、中高一貫教育と異なりまして、法的に定められたものはございません。中学校に入学したばかりの生徒の中には、小学校と比べて授業の進め方が異なり、なれるまでに時間が必要であるとか、複数の小学校から初めて顔を合わせる生徒が集まるために、人間関係をうまく構築できないといった、中学校入学時の環境の変化に適応できずに、学習につまずいたり不登校になったりする生徒がいます。
 こうした実態に対応するために、各自治体では、小中学校での指導の連携を進めるなどいたしまして、さまざまな取り組みを行っております。小中一貫教育はそうした取り組みの一つでございまして、小中一体型の校舎を建築したり、連続した学習ができるよう、小中学校の教育課程に工夫をしたりしている自治体がございます。

○谷村委員 中一ギャップという言葉がありますけれども、私も小学校を卒業したのはかれこれ三十四年前になりますが、小学校の先生は黒板にきれいな大きな字で清書して丁寧に書いてくれるわけですけれども、中学校に行くと先生はなかなかそういう状況にならなくて、科目別に教員がかわっていったり、黒板の字も乱暴になったり、やたら自分の話に陶酔する科目の先生もいたり、それからやたらテストをする先生もいらっしゃったりして、またクラブ活動も中学校に上がると本格的になったりします。そのクラブ活動の中では先輩後輩の上下関係も小学校時代とは異なるような状況で、言葉遣いも変わってきたりしているという意味では、この中一ギャップというのは潜在的に存在をしてきたものであろうと思うわけでありますが、この中一ギャップのためだけに小中一貫教育を進めるわけではございませんが、こうした小中一貫教育の取り組みについては大変高く評価をさせていただいているわけでございます。
 この小中一貫教育を実施している自治体の中には、特別な教育課程の編成も行っていると伺っておりますけれども、なぜできるのか、また具体的にどういうふうな工夫が行われているのか、お伺いいたします。

○高野指導部長 小中一貫教育を実施する学校も、原則といたしましては通常の学校と同様に、それぞれ小学校、中学校の学習指導要領に基づいてカリキュラムを編成しなければなりません。しかしながら、教育基本法や学校教育法の規定等に照らしまして、適切な範囲で、地域の特色を生かすために、学習指導要領によらない特別の教育課程を編成することができる制度、いわゆる教育課程特例校制度によりまして文部科学大臣の認定を受け、創意工夫のある教育課程を編成することができるとしております。
 この制度を利用いたしまして、小中一貫教育を実施している自治体の中には、小学校六年、中学校三年の義務教育九年間を、児童生徒の発達段階の特性を考慮いたしまして、四年・三年・二年のまとまりとしてとらえ、柔軟なカリキュラムでそれぞれの期間の指導の充実を図っているところがございます。さらには、市民科や国際コミュニケーション科といった、自治体が求める人間像の実現を目指した新たな科目を設置している例がございます。

○谷村委員 既に、実際に小中一貫教育に取り組んで成果を大きく上げていくためにさまざまな工夫がなされているわけでございますけれども、小中一貫教育を先進的に行っている学校からは、教育効果としてどういうふうに報告が上がっているのか、お伺いをいたします。

○高野指導部長 小中一貫教育の取り組みはまだ始まったばかりでございますけれども、先進的に実施している学校からは、一つとして、小中学校の教員が児童生徒の特性を共通理解するとともに、互いの指導内容や指導方法について、九年間の見通しを持つことを通して、授業の改善が図られている。二つとして、小学生が身近な目標として中学生にあこがれを抱き、将来への見通しを持つようになってきている。また中学生は、小学生の模範となるようみずから律しまして、相手への思いやりの心をはぐくむようになっているといった教育効果が報告されているところでございます。

○谷村委員 そうした効果、そしてこれからさらに具体的に成果も上がってくるかと思いますが、小中一貫教育を推進しようとしている自治体に対しまして、こうした先行事例等の情報提供をぜひ積極的に行っていただきますように、都教育委員会に改めて要望させていただきたいと思います。
 次に、アレルギー対策についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 これは昨年の第四回定例会の一般質問でも取り上げさせていただきましたけれども、厚生労働省の調査では、十四歳までの子どもたちの約四割に何らかのアレルギー症状が認められるとしております。特にぜんそく、アトピー性皮膚炎は増加傾向にある。こうした中で昨年四月、財団法人日本学校保健会が、これは文部科学省の監修において、学校生活管理指導表、そして学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドラインというのがまとめられ、全国の教育委員会、学校に配布されたのが、五月くらいには完了したのでしょうか。こういう状況につきまして、アレルギー疾患を持つ児童生徒や保護者の方々には大変大きな朗報になったわけでございます。
 特に、食物アレルギーなどで急激に重いアレルギー症状、いわゆるアナフィラキシーが起きたときに、アドレナリンの自己注射製剤、通称エピペン--これは商品名だから余りあれなんでしょうけれども--を使用しているお子さんたち、これは児童生徒本人とその保護者にしか認められていなかった。アドレナリン注射を打つのは本人か保護者にしか認められていなかったわけですけれども、これが学校の先生、あるいは教職員がやってもいいよ、大丈夫だということになったというのがこのガイドラインの趣旨であろうかと思います。
 このアナフィラキシーショックが起こりますと、本人は血圧が急激に下がり、意識障害が出るということで、自分では注射が打てなくなって、学校にはかわりに注射を打ってくれる保護者もいない。命が助かるかどうかというのは、三十分以内にこのアドレナリン注射を打てるかどうかにかかっている。特に食物と運動の両方によってアナフィラキシーショックが起こる可能性が高くなるといわれておりますので、午後、給食を食べた後の体育の時間を休んだり、あるいは運動系の部活動を避けたりする傾向性もあるわけであります。
 しかし、アレルギーの専門医の適切なアドバイスによって、運動系の部活動でそのチームのキャプテンを務めたり、あるいは大きな大会に出場したりという児童生徒もだんだんふえているわけであります。こういう中で、学校の教職員の方々が、学校現場で、この児童生徒や保護者にかわってアドレナリン注射を打ってもいいよというガイドラインが昨年四月に作成され、五月までには配布された。こうした児童生徒の活躍の可能性だけでなく、彼らの人生を大きく開いていく可能性にもつながると、大変期待をされ、喜ばれたわけであります。
 が、しかし、学校での対応が全く変わらないじゃないか、教職員の対応も全く変わらないというお声が昨年春に大きく寄せられてまいりました。このガイドラインでは、法的な問題が整理をされ、アドレナリン注射は基本的には医療行為であり、反復継続する意図を持って行えば、これは医師法に抵触をする。しかし、アドレナリン注射がみずからできない状況にある児童生徒にかわって教職員が注射をする場合は医師法や刑法等には触れないと、画期的な見解が示されたわけであります。しかし、学校現場では、本当にそうなのか、法解釈上の課題が完全に解消されていないと不安視をされ続けてきました。
 そこで東京都としては、国に対して、教職員が緊急避難的にアドレナリン注射をすることに対する法的な位置づけも明確にするよう提案要求をされ、関係法令が未整備な状況において、人命救助の観点から、緊急避難として教職員がアドレナリン注射をした場合は、医師法等の責任は問われない。これは東京都が直接国に確認をしていただいたというところまで昨年の第四回定例会の一般質問でお答えをいただきました。
 そしてさらに、昨年末には、このガイドラインがしっかり活用されるように活用策をまとめて、年明けには都立学校や区市町村、市町村区教育委員会にも配布をされたわけであります。
 そこで、このガイドラインの活用策の配布後の取り組み状況についてお伺いをいたします。

○皆川地域教育支援部長 本年一月八日には、区市町村に対しまして、国とも調整の上、作成いたしましたガイドライン活用のための質疑応答集を配布いたしました。その後、区市町村学校保健担当者会議や、校長、学校医等で構成する区市学校保健会代表者会議や、小学校、中学校の養護教諭研究総会等の場でガイドライン活用策の趣旨説明を行い、文部科学省監修のガイドラインの円滑な定着が進むよう、周知徹底を図ってまいりました。
 またあわせて、東京都医師会や学校保健会の協力のもと、地区医師会や学校医、校長、養護教諭等を対象としたアレルギー疾患対策に係る研修を実施してまいりました。

○谷村委員 この東京都の独自の活用策が取りまとめられて、そういう徹底がなされたわけですけれども、私が伺う限り、学校の教員、職員の方に、具体的なアレルギー対策、特にエピペン等の活用について、まだ話が来ていませんよという声が寄せられているわけでございます。
 まず、都立学校での取り組みはどうなっているのか、またどうなっていくのか、一点お伺いをしたいと思います。

○森口都立学校教育部長 現在、都立学校におきましては、校長、養護教諭、栄養職員などを含め、検討会で検討を重ねているところでございます。ことし四月以降には、検討会の結果を踏まえ学校に周知し、エピペン注射の適切な使用を含め、アレルギー対策を進めてまいります。

○谷村委員 それでは、現在の市町村と区のガイドライン活用に向けた取り組み状況についてお伺いいたします。

○皆川地域教育支援部長 この四月から、医師の指示による学校生活の留意点を示した学校生活管理指導表の活用により、ガイドラインに基づいた取り組みができる自治体は四区市であります。自治体名、学校数ですけれども、港区が二十九校、多摩市が二十九校、清瀬市が十四校、青梅市が二十六校であり、いずれも学校数はその自治体のすべての学校でございます。
 それでまた、現在、大多数の区市町村では、学校現場におけるガイドラインの円滑な定着を図るため、学校医や地区医師会と文書料等に係る調整を行うとともに、校長や養護教諭、栄養職員等から成る連絡会を設置するなどいたしまして、ガイドラインで示されました対象となる児童生徒の把握から取り組み実践までのモデル例をもとに、学校での具体的な取り組みのための手順書の作成を進めているところでございます。

○谷村委員 都立学校でもしっかりと進めていただきたいと思いますし、区市町村立学校におきましても一日も早く対応していただくように、このアレルギー疾患の児童生徒を抱える保護者の方たちも一日も早くというふうに希望されております。
 市町村と区において取り組みが進まない原因がどこにあるのか。取り組みが進まないというのは、昨年の四月、五月にガイドラインが出されていて、昨年末までに活用策が出て、学校の先生、あるいは教職員がかわりにアドレナリン注射を打ってもいいんだと、そのことについて法的に責任は問われないと東京都が直接確認しても、まだなお学校現場では対応できていない原因はどこにあるのか。そして改めてお伺いしますけれども、今後どのように対応されていくのか。そして、いつまでにはこの体制が整えられるのかということを、ぜひ明快にお答えをいただきたいと思います。

○皆川地域教育支援部長 ガイドラインの円滑な定着を確実に進めていくためには、都のガイドライン活用策で示しました、実際に学校で配慮、管理が必要になる児童生徒の把握基準の決定方法や、文書料、いわゆる診断書の料金というものですけれども、そうしたものの確定など、学校、保護者、学校医や地区医師会の連携協力体制を確立することが前提となりまして、そのために時間がかかっている状況がございます。
 ただ、全国的に見てみますと、都教育委員会としての取り組みは、全国の教育委員会に先駆けまして都独自にガイドライン活用策を取りまとめ、また、国よりも先に質疑応答集を作成し、ガイドラインの定着に努めてきておりまして、こうした都の取り組みに対し、他県から参考にしたい旨の照会もあり、国からも一定の評価をいただいているところでございます。
 いずれにいたしましても、早く準備を整えて、その対応をすることが必要でございますので、今後も引き続き都医師会等とも連携を図りながら、区市町村からの質問や疑問、要望等にきめ細かく対応し、この秋の小学校就学前に行われる就学時健康診断までには区市町村の取り組み体制が整うよう働きかけてまいります。

○谷村委員 東京都の教育委員会としてしっかりと、全国的には先駆的に取り組んでいただいているのは、今のご答弁でもよく認識いたしておりますので、ぜひ都内公立小中学校、また都立学校は当然のこと、今、秋口の就学時健康診断までには全体制が整うように取り組んでいただくというお答えであったかと思いますので、ぜひ着実なる体制整備をお願いしたいと思います。
 次に、外部人材の活用につきましてお尋ねをさせていただきます。
 現在、学校では、学習指導要領の改訂に伴う新たな教科への対応や、放課後子ども教室の運営など、さまざまな分野で外部人材の活用が進みつつあるようであります。そこでまず、学校における外部人材活用の現状はどうなっているのか。都教育委員会は二十一年度どのような取り組みを行うのか。教育現場における外部人材の活用は、平成二十年度十五億円、二十一年度予算では十八億円計上されているかと思いますが、まずこの点についてお伺いをいたしたいと思います。

○石原教育政策担当部長 現在、学校現場におきましては、部活動指導、外国語指導、奉仕体験活動など、さまざまな教育活動に数多くの外部人材を導入しているところでございます。都教育委員会は、さらに外部人材を積極的に活用していくために、二十一年度に、肢体不自由特別支援学校への介護等の専門家導入、中学校部活動の外部指導員導入促進事業などの新規事業を開始いたします。あわせて、外部人材の円滑な確保に向けた仕組みといたしまして、退職教職員のボランティア活用事業の実施や、人材バンク設置に向けた検討を進めてまいります。

○谷村委員 それでは、この外部人材の活用を進めていくことにつきまして、教育上どういう効果があるととらえておられるのか、お尋ねをいたします。

○石原教育政策担当部長 専門性を有する人材や豊富な経験を持つ人材を活用することによりまして、例えば今まで教員のみでは実現困難であった多様な教育課程の編成が可能となることや、教員が児童生徒と向き合ってよりきめ細かく指導を行うことが可能となることなど、学校の教育力を向上させる効果があると考えております。

○谷村委員 そこで、さきの予算特別委員会で我が党の伊藤興一委員の方から--本委員会では理事ですね--ある中学校において、社会保険労務士の資格を持つ地域の方が労働や年金に関する講演を行い、大変に好評であったということを紹介されておりました。この社会保険労務士の方々は、労働、社会保障に関する法律、年金等の専門家の方たちでございます。将来実社会に出る生徒の皆さんがこうした方々の話を聞くのも、大変に有意義であると考えます。まず、中学校において社会保険労務士の方々を活用して教育活動を行うことにつきまして、大変に有効だと思いますが、お考えをお伺いしたいと思います。

○高野指導部長 中学校におきましては、社会科の公民的分野において、国民生活と福祉の向上を図るため、社会保障の充実等について学習しているところでございます。お話のように、都内中学校の中には、さらに探求的な学習活動を行うため、総合的な学習の時間などにおいて、社会保険労務士から年金制度の現状と課題について具体的な事例をもとにわかりやすい話を聞くなどの教育活動を実施している例もございます。こうした例のように、学習内容によっては、専門性の高い外部人材を活用することが有効であることから、区市町村教育委員会と連携を図りながら、こうした取り組みを進めてまいりたいと考えております。

○谷村委員 では都立高校では、この社会保険労務士の方の活用状況についてどのようになっておりますか、お尋ねをさせていただきます。

○高野指導部長 都立高校においては、公民科で雇用と労働問題、社会保障などについて学習しているところでございますが、都立高校生が将来社会人となった際に役立つよう、雇用保険や労災保険、年金などにつきまして専門家からより具体的に話を聞くことは、とても有意義なものと考えてございます。
 都立高校では、平成十九年度は一校、平成二十年度は二校において、労働基準法などの労働法規などについて、社会保険労務士を活用した三年生対象の講習会を実施しているところもございます。生徒からは、社会に出たときに役に立つ内容であり、有意義であったなどの感想が寄せられているところでございます。

○谷村委員 現在、雇用の問題が大変クローズアップをされております。特に全体の三分の一を占める非正規雇用の方々の課題がクローズアップをされております。こうした方々に対する社会保障制度を適用できるようにしていくのは政治の課題でありますけれども、現在、国民の三大義務、憲法に規定されている義務でありますけれども、教育、それから納税、勤労とあるわけですけれども、この勤労の部分について、学校現場できちんと教えられていないのではないかというようなことをおっしゃる方もいらっしゃいます。
 例えば有効求人倍率が二十年、昨年三月一・四三倍あったものが、十カ月連続低下して、ことしの一月には一・〇〇倍になっているという状況ではあるのですけれども、これを職業別に見ますと、一般事務や会計事務などの事務的職業は〇・三五倍と低くなっているわけですけれども、警備等の保安の職業では五・〇七倍、介護などの社会福祉専門の職業は三・五〇倍、IT系の情報処理技術者は二・七七倍と、雇用情勢が悪化する中でも人材が不足をしているわけであります。これは予算特別委員会の我が党の代表総括質疑に対する産業労働局長答弁での数字であります。
 こういう視点からも雇用のミスマッチということが起こっているわけですが、学校現場における勤労についてのきちんとした認識というもの、あるいは働く態様、あり方についても、社会保険労務士の方々の貢献度というのは、これから大変大きくなっていくのではないかというふうに思います。
 そこで、都立高校における社会保険労務士の方々の活用をさらに推進していただきたいと思うわけでございますが、平成二十一年度以降の取り組みについてどのような状況になるか、お伺いをいたしたいと思います。

○高野指導部長 都教育委員会は、平成十九年度から、都立高校における社会保険労務士の活用につきまして、通知を発出したり、校長連絡会などで紹介したりいたしまして、周知を図ってきたところでございます。来年度につきましては、現在、都立高校六校から申し込みがございました。今後ともこうした取り組みに加えまして、進路指導主任研修会においてこうした活用事例を紹介するなどいたしまして、社会保険労務士の活用を一層推進してまいります。

○谷村委員 ぜひお願いをしたいと思います。今六校、都立高校から申し込みがある状況だというふうにお答えをいただきましたけれども、多摩地域でもこの社会保険労務士の方々の活用、貢献の場をつくっていただきまして、ぜひ多摩地域の都立高校でもこうした外部人材としてのご活用ができるようにお願いをしたいと思います。伺ったところによると、六校のうち三校ぐらいは多摩地域だというふうに伺っておりますので、ぜひ多摩地域での実施が実現できるように、強く期待をいたしておきます。
 最後に、多文化共生社会の推進、構築につきまして、お尋ねをさせていただきます。
 少子高齢社会の行き着く先に、人口減少化社会を迎えるというのはもう自明の理であります。この人口減少化社会を迎えるのは予測よりも早く、我が国では二〇〇五年に人口減少化が始まっております。この人口減少を迎えるに当たって、我が国は今後、少数民族国家を選ぶのか、あるいは移民受け入れ国家を選ぶのかという大変大きな岐路に実は立たされているわけでありますが、政治はなかなかそれに対する答えを出しておりません。が、経済分野では明らかに外国人を受け入れて、その不足分を補っている状況で、移民受け入れ国家へ経済界は進んでいるようであります。
 国連や経済産業省の試算では、これから毎年毎年三十八万人から五十万人外国人を受け入れていかないと、二〇〇五年の人口規模、あるいは一九九五年の労働人口を維持することはできないといわれております。この外国人を受け入れるのはホワイトカラーという意味での数でありまして、昨年末、米国国家情報会議、いわゆるNICが公表しました世界潮流二〇二五では、これから二十年後、中国とインドが経済大国として台頭し、日本は労働力人口の不足により世界第二位から第四位に転落するという大変残念な予測も出ております。
 東京は、「十年後の東京」で、埼玉、千葉、神奈川を含めた首都圏は、二〇一五年までは人口減少はしないという見込みを出しておりますので、この人口減少化時代の到来に対する危機感は大変に希薄でありますけれども、二〇一六年オリンピックの招致を目指しているそのときには、今の予測でも人口減少社会を迎えることは間違いないわけでございまして、その二〇一六年オリンピック招致に向けても、この東京が多文化共生社会に大きく転換をしていくのだということを世界に強くアピールするチャンスでもあるわけですし、するべきだと思っております。
 この多文化共生社会の推進のためには、我が国で生活する外国人の方々の生活向上と同時に、日本人の意識変革も大変重要になってくるわけでありますが、この外国人の方々の教育、住宅、労働、医療、防災、地域連携等々さまざまな課題があるわけですけれども、とりわけ日本語や日本文化の習得など、教育がかぎを握っているわけであります。都教育委員会では、日本語指導が必要な児童生徒が五人以上いれば日本語学級を編制するなど、さまざまな取り組みをされております。この日本語学級に在籍する期間を二年間と限定をしておりますけれども、この根拠は不明であると私は思っております。この二年間で十分な日本語習得をできない児童生徒については、積極的に弾力的な運用を進めるべきだと思いますけれども、改めて見解をお伺いしたいと思います。

○皆川地域教育支援部長 日本語学級の在籍期間は原則二年間としておりますけれども、通常の教科についての学習理解や生活習慣を習得する上で日本語能力の習得が十分でないなど特別な事情がある場合には、期間を延長するなど弾力的な運用を行っているところでございます。
 なお、運用に当たっては、日本語学級に在籍する児童生徒が通級の機会を十分に活用していないケースも見受けられるというふうな状況もあり、個々の児童生徒の状況に応じた適切な指導が行われるよう、区市町村教育委員会に働きかけているところでもございます。

○谷村委員 ぜひとも徹底をお願いしたいと思います。この日本語学級に在籍する児童生徒数によって教員の配置数がふえたりして、それが財政の問題になって云々というようなことで、二年間以上は認めないというがちがちな地区教育委員会もあると伺っておりますので、弾力的な運用ができるように、都教育委員会からもぜひ徹底をお願いしたいと思います。
 最後に、多文化共生社会の構築は、この首都東京での取り組みが、ひいては我が国全体にとっても大変に重要な方向性を決していくものであるというのは先ほど述べたとおりでございますが、多文化共生のためには教育分野における取り組みが、日本語学級や日本語習得にとどまるものではなく、日本の児童生徒についてもこの多文化共生の大切さを理解させていく取り組みも大変重要であり、必要だと考えますが、大原教育長のご認識をお伺いして、私の質問を終わります。

○大原教育長 外国人児童生徒に我が国の社会の構成員として生活していくために必要となる日本語や知識、技能を習得させることは、外国人児童生徒が我が国において幸福な生活を実現するために不可欠な条件でございます。また、日本人児童生徒が外国人児童生徒とともに学ぶことにより、異なる文化を持つ人々とともに生きていこうとする国際社会を生きる人間として望ましい能力や態度をはぐくむものと考えております。このように、外国人児童生徒の教育は、外国人児童生徒の健全な育成と我が国の社会への適応を図る上で重要でありますとともに、同じ学校で学ぶ日本人児童生徒の国際性の涵養や、学校そのものの教育活動の向上にも資する大変重要な意義を持つものと認識をしております。

○大山委員長 ほかにご発言ありますか。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○大山委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大山委員長 異議なしと認め、予算案及び付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で教育庁関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時十四分散会