委員長 | 古館 和憲君 |
副委員長 | 早坂 義弘君 |
副委員長 | 門脇ふみよし君 |
理事 | 吉原 修君 |
理事 | 斉藤あつし君 |
理事 | 石川 芳昭君 |
伊藤 ゆう君 | |
松葉多美子君 | |
中山 信行君 | |
伊藤まさき君 | |
鈴木 一光君 | |
古賀 俊昭君 | |
大山とも子君 | |
服部ゆくお君 |
欠席委員 なし
出席説明員教育庁 | 教育長 | 中村 正彦君 |
次長 | 松田 二郎君 | |
総務部長 | 志賀 敏和君 | |
学務部長 | 新井 清博君 | |
人事部長 | 松田 芳和君 | |
福利厚生部長 | 秦 正博君 | |
指導部長 | 岩佐 哲男君 | |
生涯学習部長 | 三田村みどり君 | |
特別支援教育推進担当部長 | 荒屋 文人君 | |
人事企画担当部長 | 直原 裕君 | |
参事 | 石原 清志君 | |
参事 | 森口 純君 |
本日の会議に付した事件
教育庁関係
事務事業について(質疑)
○古館委員長 ただいまから文教委員会を開会いたします。
初めに、今後の委員会日程について申し上げます。
お手元配布の日程のとおり、理事会において申し合わせしましたのでご了承願います。
本日は、お手元配布の会議日程のとおり、教育庁関係の事務事業に対する質疑を行いたいと思います。
これより教育庁関係に入ります。
事務事業に対する質疑を行います。
本件につきましては、既に説明を聴取しております。
その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
資料について理事者の説明を求めます。
○志賀総務部長 去る十月十八日の当委員会において要求のございました資料につきまして、ご説明申し上げます。
お手元の文教委員会要求資料の目次をお開き願います。次のページにかけてお示ししてありますように、今回要求のございました資料は二十二件でございます。
それでは一ページをごらん願います。区市町村別の都民の日における学校授業の実施状況及び区市町村教育委員会の指示内容でございます。
公立小中学校における都民の日の授業の実施状況について、区市町村別に過去三年間をお示ししてございます。また、管理運営に関する規則における都民の日を休業日とする規定の有無や、区市町村教育委員会の指示内容について、区市町村別にお示ししてございます。
二ページをお開き願います。平成十八年度公立小中学校退職校長の再任用・再雇用への任用状況でございます。
小中学校を退職した校長の再任用及び再雇用への任用状況について、校種別にお示ししてございます。
三ページをごらん願います。非常勤講師あっせん任用支援システムの区市別利用実態でございます。
非常勤講師あっせん任用支援システムの利用状況及び検索者について、区市別にお示ししてございます。
四ページをお開き願います。特別支援学校(高等部)卒業者の進路状況及び今後の卒業予定者数でございます。
平成十四年度から平成十八年度までの特別支援学校(高等部)卒業者の進路状況と、平成十九年度から平成二十一年度までの卒業予定者数について、知的障害と肢体不自由の障害種別ごとにお示ししてございます。
五ページをごらん願います。都立高校のタイプ別教員定数及び現員等についてでございます。
進学指導重点校及びエンカレッジスクールの教員定数及び現員等について、学校別、課程別にお示ししてございます。
六ページをお開き願います。部活動振興予算の重点配付についてでございます。
平成十九年度部活動振興予算の重点配付について(通知)で、平成十九年五月十日付、都立高等学校長あての通知文でございます。
七ページをごらん願います。平成十九年度都立高校部活動振興予算の重点配付額一覧でございます。
平成十九年度の部活動振興予算の重点配付について、学校別、配付額別にお示ししてございます。
八ページをお開き願います。東京都公立学校教員採用者数の推移でございます。
平成十五年度から平成十九年度までの五年間における東京都公立学校教員の採用者数についてお示ししてございます。
九ページをごらん願います。東京都特別支援教育推進計画第二次実施計画骨子(案)に対する意見募集の集計結果についてでございます。
このページから一〇ページにかけまして、平成十九年七月十七日に公表した東京都特別支援教育推進計画第二次実施計画骨子案に対する意見について、内容別の件数、主な意見、主な提出者の属性をお示ししてございます。
一一ページをごらん願います。平成十九年度放課後子ども教室の実施状況でございます。
平成十九年度に放課後子ども教室を実施している区市町村数と箇所数、運営主体と運営方法別の実施箇所数をお示ししてございます。
一二ページをお開き願います。日本語学校の所在地、児童生徒数、教員数及び児童生徒の主な使用言語でございます。
このページから一三ページにかけまして、日本語学級を設置している学校、在籍している児童生徒数、教員数及び児童生徒の主な使用言語の種類についてお示ししてございます。
一四ページをお開き願います。都立高校における日本語教育が必要な生徒の受け入れ状況及び教員配置状況でございます。
海外帰国生徒や在京外国人生徒など、日本語教育が必要な生徒の都立高校における受け入れ状況と、配置している教員数についてお示ししてございます。
一五ページをごらん願います。教育庁所管の廃止、終了及び見直し事業でございます。
平成十四年度から平成十八年度までの過去五年間において、廃止、終了または見直しをいたしました事業について、年度別に事業名とその内容をお示ししてございます。
一六ページをお開き願います。平成十九年度において学級編制の弾力化を実施する道府県の状況でございます。
このページから一七ページにかけまして、学級編制の弾力化について、各道府県における実施状況の概要をお示ししてございます。
一八ページをお開き願います。区市町村立小中学校の学級規模別学級数でございます。
平成十五年度から平成十九年度までの五年間における区市町村立小中学校の一学級当たりの人数別の学級数について、校種別にお示ししてございます。
一九ページをごらん願います。東京都公立小中学校児童生徒の就学援助受給者の推移でございます。
就学援助は、区市町村が経済的理由によって就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対し、学用品等購入のために行う扶助制度でございまして、平成十四年度から十八年度までの五年間における就学援助を受けた児童生徒数及び受給率の推移を、要保護、準要保護の別にお示ししてございます。
二〇ページをお開き願います。公立学校教員の年代別退職者数でございます。
平成十四年度から平成十八年度までの五年間における退職者数について、年齢別、校種別にお示ししてございます。
二一ページをごらん願います。学校経営支援センターによる学校訪問の実績でございます。
このページから二二ページにかけまして、学校経営支援センター三所、三支所の計六所が、平成十八年十月から平成十九年三月までと平成十九年四月から九月までに訪問した学校数とその回数について、訪問事由ごとにお示ししてございます。
二三ページをごらん願います。学校訪問時に提示を求めている書類でございます。
学校経営支援センターが学校を訪問する際に、学校側に提示を求めている書類について、月別にお示ししてございます。
二四ページをお開き願います。学校経営支援センターの事務室業務と学校事務室との関係でございます。
学校経営支援センターの事務室と学校事務室の関係について、実例を挙げてお示ししてございます。
二五ページをごらん願います。特別支援学級の設置状況でございます。
各区市町村における特別支援学級の設置状況について、校種別にお示ししてございます。
二六ページをお開き願います。都内公立小中学校及び都立高校における図書購入費の推移でございます。
平成八年度から平成十七年度までの十年間における図書購入費について、校種別にお示ししてございます。
二七ページをごらん願います。都内公立図書館資料購入費の推移でございます。
平成十年度から平成十九年度までの十年間にわたる公立図書館における資料購入費の当初予算額について、設置者別にお示ししてございます。
以上、簡単ではございますが、要求のありました資料の説明を終わらせていただきます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○古館委員長 説明は終わりました。
ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
発言を願います。
○服部委員 土曜日の正規授業実施について、三点お伺いをさせていただきたいと思います。
最初に、学力低下についてですが、学校週五日制の完全実施が決まって六年が経過をいたしました。文部科学省が進めたゆとり教育とともに、家庭、学校及び地域の三者が互いに連携して役割分担をしながら社会全体で子どもを育てるという理念のもとに出発をしたこの制度ですが、果たしてその理念どおりに進展をしているのでしょうか。
例えば、学力面については、平成十六年の十二月に、OECDの学習到達度調査結果が公表されました。四十一の国、地域の十五歳を対象とした調査で、日本の高校一年生の学力は数学的応用力が、三年前の調査の一位から六位、読解力が八位から十四位に今落ちました。このことについて、その原因を考えると、昭和五十年代以降のゆとり教育への方向転換が関係していると思われます。
昭和五十二年、文部省は、ゆとりある充実した学校生活の実現を目指して、児童生徒の学習負担を適正化するためにゆとりの時間を新設、二割を超える授業時間を削減する学習指導要領の改定を行いました。
当時は、確かに受験戦争の過熱あるいは知識偏重による詰め込み主義など、学校教育についての課題が社会問題となっていたわけですけれども、十分な検証なしで思いつきのようにゆとり教育が進められたことが、考える力を奪い、日本の衰退を招く結果になっているとしたら、問題であります。
そこで、都教育委員会として、最近の児童生徒の学力低下についてどのような認識をしているのか、まず見解をお伺いいたします。
○岩佐指導部長 ご指摘の国際的な学力調査を初め、国及び東京都の学力調査結果を総括いたしますと、基礎的、基本的な知識、技能の習得の状況につきましては、おおむね良好と認められますが、思考力、判断力、表現力等を問う読解力や記述式の問題に課題があると考えております。
○服部委員 大変課題があると思います。
今、この土曜授業の実施状況についてお伺いいたしますけれども、児童生徒の学力については、おおむね良好といいながらも今の答弁のように課題があるわけで、学力向上のために国や都同様、各区や市町村も独自の取り組みを真剣に行っています。地方の時代といわれ、そして分権化も進んでいる昨今、平成十七年十月に公表された中央教育審議会の答申には、学校や区市町村がそれぞれの地域の状況を踏まえた最適な教育を行えるよう可能な限りその権限と責任を拡大する改革を進める、このことが明記されています。
また、本年六月に出された教育再生会議第二次報告にも、学校週五日制を基本としつつ、教育委員会、学校の裁量で、必要に応じ土曜日に授業を行われるようにするといった提言がされています。
これに先立って、台東区を例に申し上げますと、学校週五日制が始まった平成十四年度から、授業時間が減ることに相当危機感を抱いて、区内全部の小中学校で土曜スクールを開始されました。土曜休業日における児童生徒の指導は、当時、正規の教員の服務の問題があって、地域のボランティアの方あるいは教員のOBにその協力をいただきました。しかし、学習がつまらなくなると子どもが来なくなる。結局、教員が教えるのが一番、こう区の教育委員会の担当者がいうように、日ごろから子どもの状況を把握している教員ならば、習熟の程度に応じて指導ができるはずです。
そこで、正規職員が土曜スクールに参加できるよう、台東区からはその実現に向けて条例改正を含めた要望が私のところにも当時寄せられました。こうした地域の実情を踏まえて、都議会自民党としても教員の勤務時間の弾力的な運用を都教育委員会に要望して、平成十七年度の予算特別委員会、翌平成十八年三月の文教委員会での質疑を経て、学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の改正に至りました。この改正では、教員について、半日単位での勤務時間の割り振り変更が可能となり、このことによって、これまで難しかった土曜日における教員の勤務ができるようになったわけです。
その結果、台東区では、年々土曜スクールに参加する児童生徒の数がふえて、保護者からも大変好評を得ていると、そのように聞いております。
私としては、ここまでの都教育委員会の取り組みに対し、高く評価をしております。都内の各区市でも、台東区のように土曜日を活用して学習の機会を設定していると思いますけれども、都内の土曜スクールの実施状況がどうなっているのか伺います。
○岩佐指導部長 現在、教員や外部講師が学習指導を行う、いわゆる土曜スクールを開催しているのは十五区市でございます。
○服部委員 十五区市ということですが、その内容についても把握がされていると思いますけれども、台東区だけではなくて、他の区市においても努力しているということがわかります。
先ほど触れましたように、ことしの六月、教育再生会議は社会総がかりで教育再生をと題して第二次報告がされ、必要に応じて土曜日の授業も可能にする、そのことを提言いたしました。また、十一月の中央教育審議会の教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめでも、学校週五日制のもとでの土曜の活用について示されたわけです。
私は、これまでゆとり教育の名のもとに、週五日制という労働条件改善の視点を、そのまま教育の現場に当てはめることは、子どもたちにとって無理があると同時に、日本で長い間培われてきた教育の伝統あるいは文化、そういったものを壊すものだと、そのように指摘してまいりました。今回の中央教育審議会の審議のまとめは、私にとってはまだまだ納得のいく内容ではありません。
台東区の土曜スクールは、学校週五日制の趣旨から、児童生徒の任意参加という形をとっているため、参加しない児童生徒も少なからずいます。台東区で調査をしたところ、参加しない児童生徒の約六割が、土曜日に何もせず過ごしています。この事実は、土曜日の休日は、結果的に学ぶ機会を減らしているということになるのではないでしょうか。このままでは、学校で学ぶ子どもと、何もせず過ごす子どもとの二極化が起こるのではないかと、関係者あるいは保護者からは不安の声が上がっています。このように土曜日の活用の仕方は、児童生徒の学力向上や健全育成にとって重要な意味を持つと思うのであります。
そこで、児童生徒の学力向上や生活習慣について、今までいろいろな施策を講じている東京都としては、児童生徒の土曜日の過ごし方について、その実態を調査する必要があると思いますが、見解を伺います。
○岩佐指導部長 ご指摘のように、教育再生会議の第二次報告、中央教育審議会の審議のまとめの中で、学校週五日制のもとでの土曜日の活用について示されております。
都教育委員会としましては、今後の学習指導要領の改訂に向けまして、児童生徒の土曜日の過ごし方についてアンケート調査を行うなど、実態を把握する必要があると考えているところでございます。
○斉藤委員 まずは都立高校に関して幾つか伺います。
現在、各都立高校では、数年前より地域の関係者や有識者を委員とする学校運営連絡協議会を数カ月に一度開催して、そして委員への学校の近況報告などの後、意見交換をする中で、さまざまな第三者的な立場からの学校運営に関する意見をいただいているというふうになっております。
では、この学校運営連絡協議会について、多分これはさまざま学校によって雰囲気、色合いというものが違うと思うんですが、総論としてどのような役割を果たしているというふうに考えているんでしょうか、そこを伺います。
○森口参事 学校運営連絡協議会は、学校運営に保護者、地域住民の意見や希望を反映するための意見交換を行う場を設けるとともに、学校評価を行うなどして学校経営の改善や地域に開かれた学校づくりを推進する役割を果たしております。
同協議会の所掌事項は、学校運営、教育活動及び家庭、地域社会との連携について、校長に学校の実態に応じた助言等を行うことでございます。
○斉藤委員 私も出身が都立高校なんですが、私の母校の高校の話をちょっと伺うと、近隣に幾つかの大学がたまたまありますので、大学関係者の方に委員として何人か参加していただいて、その議論を行っていただいております。
大学の関係者の方が多くなりますと、たまたまちょっと私の方の学校は今、現役での大学進学が大変調子がいいために、おのずと進学指導の話題が多くなるんですが、恐らくこういった話題の進め方というものについては、委員の構成によって、どういう方が委員になっているかということによって大分違ってくるんではないかと思います。
協議委員が学校に対して効果的な支援をしているという具体的な例を、またその委員の構成なども含めて、特徴あるものについて教えていただきたいと思います。
○森口参事 学校運営連絡協議会委員の特徴的な支援としては、行政機関等委員の紹介による高校生の地域行事参加や地域清掃への協力、地元中学校との部活動交流の促進、先ほど大学の関係者ということがございましたが、学校関係者と委員の協力によりまして、授業や学校経営に関する講演会、それから研修会を実施しております。
さらに、商店会役員等委員の紹介によりまして、生徒の就業体験先職場の開拓であるとか拡大、そういった例がございます。
○斉藤委員 この学校運営連絡協議会、確かにその高校の場所によっても、なかなかお願いする委員の方、こういうのが何か決まってくると思います。
今のように具体的に、いらした方が、例えばその商店街の方だとかいうことで就業体験につなげるとかという、非常に特徴のある活動ができれば、結果的にはそこの会議の場だけではなくて、その次の段階に進んでいくという大変広がりのある効果が出せると思うんです。
ただ一方で、大変私、気にしているのは、逆になかなか学校の方で一般の方にお話をしてすぐにわかるような、いい効果や、いい数字が出せている学校ばかりではないと思います。こういったところでは、なかなか上手に委員の方のやる気とか興味というものを引くというのは難しいです。
また一方で、委員の方の選定というものがちょっとお仕着せになったり、もしくは余りにも一般的に、要するに選定に対してきめ細やかにしていないがためについ肩書がある人だけにお願いをして、どうしてもそういった方は忙しい方が多いですから、そういったことによって出席が非常に難しい、現実的には引き受けたけれども出席が難しいということになって、結果的に何となくこの会議そのものが鎮静化してしまうようなことがあってはならないと考えております。
ですから、たまたま私はちょっと知っている学校の中身については、比較的活発な活動をされているようでありましたし、今伺った例も、いい議論と、いい活動ができているようですけれども、やはりなかなかそういったところに結びつけられない環境にある学校については、もしくはそういう状況にある学校については、東京都の方である程度、余り形にとらわれずに、肩書的に決して目立つ人ではないけれども近所でよく学校を知っている、もしくは本当にその学校のことをよく考えているというような方にきちんとお願いをして、余りこうでなければならないというような感じにならないように、促していっていただきたいというふうに思います。
では、次の質問です。
ことし十月、先月ですね、平成十九年度の学校経営診断の実施結果というものが出されました。私もここ数日で読んでみて、分厚い内容ですけれども、なかなかよく書かれていて、読みごたえがあってよかったです。なかなかいい報告だなと思いました。
この中では、企業経営者などを中心に学校経営支援センターの経営支援顧問という方が、この学校経営支援センター発足後の成果について、おおむねよい評価を出しております。またその一方で、大変客観的な、そしてまた経営者、経営陣という立場の中で、大変新鮮な意見も出しております。
この学校経営支援センターについて、これも多分学校や地域によって差があると思いますが、具体的に現在、学校経営支援センターはどのように各学校をサポートしているのか、お聞かせ願います。
○森口参事 学校経営支援センターは、各チームが事業、学校行事、校内研修など月一回の学校訪問を通して、学校の実態に応じた機動的できめ細かい支援を行うこととしております。
このため、各学校に対しては、経営情報の把握と相談、授業や生活指導の改善、校長の人事構想を踏まえた人事異動の実現など、学校経営面、教育活動面、人事管理面で、校長が自立的経営を行えるよう、日常的に必要な支援を行っております。
また、教職員の服務事故の対応や生徒の事件、事故などの緊急時においても、学校経営支援センターが学校現場への危機管理支援を行っているところでございます。
○斉藤委員 それでは、学校経営支援センターがかなり直接的にサポートすることになります各校の経営企画室について伺います。
この経営企画室というのは、昔は学校事務室という見たままの名前であったわけですが、ちょっと生徒から見てどういう中身かなというふうに、わからないような、なじみのないような経営企画室という名前になりました。
この学校経営支援センターが設置されて、契約事務や旅費事務など、センターで集約して行うようになって、学校事務室から経営企画室に変わると同時に、こういうセンターでの支援が入ることによって、この学校経営企画室そのものがどのように変わっていったのか、そこを教えてください。
○森口参事 学校経営支援センターの設置に伴い、事務室で行っていた契約などの業務を集中化し、業務を軽減する一方、従来の事務室を企画、予算調整、広報活動、渉外などの機能を充実し、校長の学校経営を支えるため、経営企画室と改めたところでございます。
学校説明会の開催に当たって、企画の段階から経営企画室も参加し、学校説明会の開催がよりスムーズにできた、経営企画室が学校のホームページの作成や更新に教員と連携し、定期的に最新情報の訂正、追加などを行った、また特別支援学校の経営企画室が企業への学校の教育活動を積極的にPRし、生徒の進路先開拓のサポートを行ったなどの例がございます。
○斉藤委員 今、学校経営支援センター、そしてまた経営企画室について伺ったんですが、先ほどの学校経営診断の実施結果などを見たときに、ある経営支援センターの経営支援顧問の方の意見を見ますと、例えば分掌業務という中について、業務の振り分けですけれども、多くの教員の業務時間の半分を割かざるを得ない状況にあるという大変厳しい意見もございました。その中で、教員は一般的には教科指導業務をより充実させる必要がありとの認識のようであるが、分掌業務も重要な役割であるために常時多忙感に悩まされている実情にある、それを改善した方がいいんじゃないかという意見もいただいています。
また、この経営企画室などの部分でも、大体もともといた事務のスタッフを二人ぐらい削っているような話を聞いております。そうすると、この学校経営支援センターが入ることで、その事務員二人分の活動ができるか、活躍ができるかという話になっていると思います。おおむね学校そのもの全体に対しては、先ほどの教職員の服務事故などの対応などができますし、あと校長先生そのものからしてみれば、なかなか学校の中で全部解決しようと思うと外部の第三者的な方に相談するというチャンスがない。そういったところが、経営支援センターという少し距離を置いた客観的な立場の、しかも学校のことについて知識のある人に相談ができるという点では、非常にメリットが大きいというのも評価として伺っておりますし、また事実だと思います。
一方で、先ほど申しましたように、二人減ったという部分をカバーするには、この支援センターそのものが、かなり広域の幾つかの学校をサポートする立場にありますので、なかなかその一カ所をじっと見ているわけにいかないですから、そういったデメリットも現実にあると思います。この辺を今後の課題として、また特に今回報告を見ても、大変報告の評価などもいい面、悪い面、両方きちんと書かれておりますので、ぜひこういう報告の中身を受けて、今後の課題として、すぐに直る、何かを変えていくというふうなわけにいきませんから、年単位で少しずつ今の部分で課題が残っている部分については対応していただきたいというふうに要望いたします。
続きまして、これは都立高校に限らない小中高等学校について伺います。
特に小学校、中学校ですけれども、現在、地域の拠点としてさまざまな活動の場となっています。少し最近落ちついた感じがしますが、何年か前は、それこそ地域の拠点としていろんなイベント--イベントといっていいですかどうかわかりませんが、その地域の方を対象にするような、いろんな行事の場として学校が使われた経緯がございます。そういったときには学校の職員、本当に忙しそうでありました。またその上、最近は児童等が被害者になる事件が大変多発しております。安全管理に過去にないほど注意をしなければならないという状況になっております。
それに加えて、マスコミでも話題になっておりますモンスターペアレントと呼ばれている、いわゆる非常識な要求をする保護者の存在は、教職員をかなり精神的に追い詰めているんじゃないかというふうにいわれています。
私のところも子どもがまだ一年生なんですけれども、学校の先生が、ちょっと私の感覚からするとそんなに気を使わなくてもいいのになと思うようなことで、かなりまめに電話をしてくれるんですね。ありがたい反面、いやいやこれは大変だなというふうに思うことも多々ございます。多くの教職員が多忙である上に過剰なストレスを受けていて、本来の業務である学習授業に集中できない状況になってしまうんではないかなという懸念を抱いております。
各市区町村の人員配置のこういった教育委員会の判断となると思うんですけれども、教育のプロであり、職人である教員には、もっと授業に集中させてあげられる工夫がやはり必要ではないかなというふうに考えます。従来の学校事務員だけではなくて、もっと教員に踏み込んでサポートをしていくような、教材の準備や授業のための研究の補助や、また、事務的な家庭の連絡や防犯などを含めた安全管理など、プロの、いわゆる議員の世界ではないですけれども、まさに秘書のような、学習を支えて、そしてまた学校の運営を支えていくような存在が学校にいてもよいのではないかなというふうに考えます。
人件費等もありますので、余り軽々な提案はできませんけれども、例えば、現在、病院経営本部などでは、過剰労働ぎみの医師など専門職を助けるために、医療に専念できるようにするための医療クラブの試験的な導入を今予定をしているというふうに、先般の予算要望のヒアリングの中でもいっておりました。なかなか、こういったいい人材がいるかどうかというのは難しいところらしいんですが、同様の発想で学校の教職員とかを助ける存在というものが今後あってもいいんではないかということを検討していただければと思っております。
さて、質問なんですが、こういった実際に過剰なストレスで心の病、いわゆる精神性疾患で休職する教員というのは、何年も前から大変、徐々にふえているということで話題になっております。
そこで、現状、精神性疾患で休職する教員を減らすためにどのような予防対策をとっているのか、そしてまた休職した教員をサポートして円滑な職場復帰ができるように、どのような施策を講じているのか教えてください。
○秦福利厚生部長 都教育委員会は、心の病の予防を図る観点から、管理職を含めた全教員に対しましてメンタルヘルス、心の健康づくりに関するハンドブックやリーフレットを配布するとともに、精神科医師の健康相談員や心理職員による精神保健相談、管理職や教員を対象としました精神保健講習会などを実施しております。
さらに、昨年度からは、心理職員と学校校長等教育経験者がペアとなりまして、学校に出向く訪問相談を実施し、管理職等に対しまして助言、支援を行ってございます。
また、教員が心の病で休職した場合につきましては、休職教員の円滑な職場復帰や再発予防を目的としまして、家族や主治医、精神科医師の健康相談員と連携しまして、医療機関や所属学校での職場復帰に向けた訓練を実施しております。
都教育委員会は、今後とも教員に対するメンタルヘルスの取り組みを推進しまして、良好な職場環境づくりに努めてまいります。
○斉藤委員 最後に要望だけですが、このメンタルヘルスに関して伺うと、恐らく東京都の一般的な行政事務職員に比べてはるかに早い段階から手厚い、いわゆる職場復帰のプログラムというのを組み始めたような印象があります。内容的にも大変細かくて、ある意味、ほかの局の職員の同様な疾患に対しても、ある程度応用がきくような流れじゃないかなと思います。
ただ、現実問題として、こういった状態で休職をしている方に対する風当たりというのは、大変厳しいものがあると思います。これは教職員に限らないと思います。ぜひともこういった教育庁の前向きな対応をより多くに広めていって、ほかの同様なことで悩む職員、一般の労働者のこともそうかもしれませんが、そういった方に、ここまでしていくべきなんだよということをリードしていただきたいというのが正直なところです。
そしてその一方で、本当にこういった職員が自然に戻れる、そしてまたケース・バイ・ケースで対応できるような体制づくりの研究に今後とも邁進していただきたいと思います。
以上で、要望を最後につけまして質問を終わります。
○松葉委員 放課後の子どもの居場所づくりにつきまして、三点お伺いいたします。
まず初めに、放課後子ども教室について伺います。
平成十八年第三回定例会におきまして、私は、本年度実施の放課後子ども教室の都教育委員会としての取り組みについて質問いたしました。中村教育長より、子どもたちに文化やスポーツなどの多様な活動を提供することなどにより、地域の教育力が向上することが期待できる事業であるというようなご答弁をいただきました。
本日の委員会資料の中に、先ほどご説明がありましたけれども、この平成十九年度放課後子ども教室の実施状況は、三十七区市町村、四百六十四カ所となっておりますけれども、これは全小学校数の何%に当たるのか、まず最初にお伺いいたします。
○三田村生涯学習部長 この四百六十四カ所は、都内の全小学校数の三五・一%でございます。
○松葉委員 三五・一%というご答弁でございましたが、本年度スタートして三五・一%ということですので、着実に進んでいると理解いたしました。
この第三回定例会の一般質問で、具体的な都教育委員会の取り組みについて伺いましたところ、ご答弁といたしまして、行政関係者や学校教育関係者など関係機関との連携を図るための推進委員会の設置、人材の確保を中心的に担いますコーディネーターの資質向上のための研修、都教育委員会のホームページを活用した活動事例や安全管理に関する情報提供など、放課後子ども教室推進事業の実施に向けた効果的な支援策を検討していく、そういうご答弁がありましたけれども、現在、どのような具体的な取り組みが進んできたのか伺います。
○三田村生涯学習部長 まず、情報提供についてでございますが、学童クラブとの連携の先進事例や、新たに教室を設置する際に参考となる事例など、事業推進に資する情報を随時提供するとともに、安全管理のための手引きを区市町村教育委員会を通じて全教室に配布するなど、円滑な事業実施に向けた情報提供を行ってきたところでございます。今後も、適宜情報提供に努めてまいります。
また、研修につきましては、教室運営の中核を担うコーディネーターを初め運営にかかわるスタッフ等を対象に、子どもの発達理解や遊びの指導方法、教室運営などをテーマとした全五回の研修を企画実施し、人材の育成に努めております。
次に、都の推進委員会についてでございますが、教室の現状や課題を的確に把握するために、都及び区市の教育、福祉それぞれの関係職員のほか、現場からの意見を反映できる委員として、放課後子ども教室のコーディネーターや学童クラブ職員、小学校長、PTA役員等の方々をメンバーとした東京都放課後子ども教室推進委員会を設置しております。今後は、本推進委員会におきまして、放課後子ども教室事業の検証、指導者研修の企画、学童クラブとの連携方策等、放課後対策の総合的なあり方を検討し、放課後子ども教室の推進が一層図られるよう区市町村教育委員会を支援してまいります。
○松葉委員 今、さまざまな取り組みが行われてきたということがわかりました。
現在、推進委員会で具体的な検討がされているということですので、ぜひとも全小学校区での実施へ向けて、効果的な支援策を講じていただくように強く要望いたしておきます。
次に、特別支援学校における放課後の居場所づくりについて伺います。
公明党は、第三回定例会におきまして、代表質問で特別支援学校における障害児の放課後の居場所づくりについて提案をいたしました。中村教育長から、今後、実現可能な仕組みを具体的に検討していくとのご答弁がありました。大変な反響がございまして、ご父母の方々から早期の実施に向けての期待の声が数多く寄せられております。
十月の文教委員会で、我が党の大松議員も質問をいたしましたが、私からも改めてお伺いいたします。
第二次実施計画が十一月中、間もなく発表になりますけれども、この計画は大変に重要なものになると認識しております。そこで、特別支援学校における障害児の放課後の居場所づくりの推進という項目を盛り込んでいただきまして、二次計画の最初の年度となる平成二十年に具体的な検討に入っていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
○荒屋特別支援教育推進担当部長 都立特別支援学校における放課後の居場所づくりについてでありますが、平成二十年度から課題の整理を含めた検討に着手してまいります。
○松葉委員 今、簡潔にご答弁いただきましたけれども、中村教育長が本会議で具体的な検討に入っていただくと、そのようなご答弁もいただいておりますので、この二十年度からの二次計画の中できちっと位置づけていただきまして、検討に入っていただき、順次できるところから実施に移していただきたいことを強く要望して質問を終わります。
○大山委員 私からは、学校経営支援センターについて、それから教員の任用について、それから高校改革についてと、学力テストと三十人学級ということで質疑していきたいと思っています。
まず、学校経営支援センターについてです。
学校経営支援センターの一つの側面であります事務室関係のことですが、事務室業務の集約化がいかに非効率であるかということは、学校経営支援センターは二年ですけれども、ますます明らかになってきました。
折り紙やチョークやマグネット、張るラミネート、それからボウル、またたわしなどの雑貨、MDプレーヤーなどの備品を含めて、学校から学校経営支援センターに申請するわけですが、申請してから学校に届くまで二カ月は見てほしいと。最近はそれが何とか平均五十日程度にはなったということなんですけれども、どうしてそのような時間がかかるんでしょう。
○森口参事 学校経営支援センターでは、各校の年間計画を踏まえ、学校からの契約締結請求を毎月二回集約しており、使用内容、発注物件の確認、調整、仕分けに十日程度、東京都の契約諸規定により事業者の見積もり期間で一週間程度、競争入札案件は公示期間一週間程度、事業決定からすべての物品が納品されるまで三十日程度の期間が必要となります。
なお、学校から短期間での納品要望がある場合は、学校経営支援センターで個別に対応しており、また急を要する少額、少量の消耗品については、学校でも即日購入できることになっております。
○大山委員 急ぐときは学校でもできるんですということですね。しかし、今、集約化のために十日プラス七日プラス三十日ですから、合計四十七日ですね。基本的にも四十七日かかっちゃうわけですね。
中部学校経営支援センターで伺ったときには、入札する場合はさらに十一日から十二日かかるといっていました。つまり、各学校から出されたものの整理と分類でまず時間がかかる。しかも集約するから、入札することになります。学校経営支援センターで集中購買するから時間がかかるし、月に二回しか申請の受け付けをしませんから、その締め切りの例えば、その翌日に、あ、これがということで先生から申し込まれても、申し込み自体が半月後、もしくはセンターによっては申し込みできるもの、月の前半は例えば理科と音楽、後半は家庭科とか、こう種類があるところもありますから、半月どころか申し込み自体が一カ月後になってしまうという状況もあるわけです。
学校経営支援センターで集約することの矛盾、そしてむだというのは、これはもう明らかなんです。今の時代、注文して五十日も二カ月も待つ、これは異常な事態だと思われないでしょうか。
教育委員会で議事録を見ていましたら、教育委員の一人の方が何でそんなにかかるんですか、きょう頼んだらあした来る業者もありますね、また他の委員も、二カ月たって初めて納品されるということなら今のこのスピード時代に失格とまで発言をしています。
各学校で購入していたときには、学校の近所の業者さんですから、よく学校のことを知っているわけですね。年間で必要なもの、その重立ったものはちゃんと見込んでいてくれましたから早いわけです。特別支援学校なんかだったら、教材にしてもその子に合ったものが必要ですから、種類は多いけど一種類の数は少ないわけですね。それらを集約すること自体、本当にむだだということなんです。学校によってはというか業者によっては、ちゃんと各クラスごとに仕分けまでしてくれていたところもあるわけです。
学校ごとにやった方がどれだけ効率的なのかということが明らかではないでしょうか。そう思われませんか。
○森口参事 経営支援センターで集約するものについては、年間で一定数を見込み、使う時期、使う量を見込んで、それらを集約してそのスケールメリットを得るというのが目的でございますので、例えば、物品、消耗品が必要であるということであれば、即近所の商店なりお店で買うことは十分可能です。
ただ、支援センターで集約して契約し、物品を納品するということの非常に大きなスケールメリットとしては、契約件数が各学校でやっていたものについては集約するわけですから、当然減ります。約六割程度になっていると思います。
それから落札率ですが、従来、学校ですと七割、八割程度でございましたが、それよりさらに一割、二割、物品によっては四〇%から五〇%低下するといったメリットがございますので、学校予算の節減、有効活用を図ることができて、学校契約に比べてやはり効率的であるというふうに考えております。
○大山委員 今、スケールメリットがあるからやるんだということなんですけれども、今、物によっては一割、二割安かったんだ、五割も安いところもあるんだとおっしゃいましたけど、実際、昨年度のスケールメリットというのは幾らだったんですか。
○森口参事 物品ごとによって違いますので集約はしてございませんが、おおむねその程度の割合だというふうに思っております。
○大山委員 数はいえないわけですよね。結局どうなったのかというのは、わからないわけですよ。
例えば、昨年の委員会で明確になっちゃいましたけれども、毎年同じガラスが割れる、その割れるガラスを学校で入れていたときの値段よりも、学校経営支援センターを通して入れたら高くなった、これはもう教育長も認めたことですね。修繕などは、住宅供給公社を間に入れているわけですからその経費は高くなる、これは当然ですね。
学校職員を約二百人削減したということでは、財務との関係では、そんなに削減できたからいいんでしょうけれども、学校の現場ではどうかといったら、人が少なくなって連日の残業、それから病欠まで出ています。とても子育てしながら学校事務室勤務はできないという状況になっているわけですね。
教員以外の大人が少なくなっていますけれども、学校の安全上も非常に心配だという声が出ているわけですね。教育委員会の議事録を見ましたら、委員が、旅費の計算などの事務については軽減されたけど、仕事の量が大変ふえて多忙であるということをここにつけ加えていただきたい、こう発言しているじゃないですか。
学校経営支援センターで事務の集中化をすることは考え直すことが必要だと思いますけど、どうですか。
○森口参事 学校経営支援センターで集約しているのは、旅費、それから手当の認定、契約事務でございます。
先ほどありました事務量が減らないというのは、たしかアンケートでもありましたが、契約事務については確実に減っていると思いますし、庶務事務手当についても、それに伴う監査の対応とか書類の作成、業者への対応は確実に減っていると思います。
先ほど申し上げましたように、センターで契約するスケールメリットがあるということで、なお急を要する個別のものについても、センターで個別に対応できる。そして学校でも即日、ですからその日のうちに購入できるといった契約方法をとっておりますので、集中化の見直しについては考えておりません。
○大山委員 スケールメリットについても明確ではないし、緊急のものを学校経営支援センターで対応するとか、それから学校でもできるんだということだったら、結局基本的に学校でやればいいことなんですよね。集中化すれば、それだけ余計な時間がかかるというのは明確なんですから、事務職員の人数は元に戻して、学校単位でできるようにすることが学校の安全ということから考えても必要なことです。学校事務を集約化してほしいなどということは、学校現場から出てきたものでないということも明らかですね。
もう一つは、学校経営支援センターを中心に行っている、いわゆる学校経営の適正化といって進められてきた学校への介入で、職員会議での挙手採決の禁止についてです。
挙手採決の禁止については、昨年の四月十三日に学校経営の適正化についてという通知で、校長の意思を拘束することはだめだとしました。この通知で、職員会議で挙手や採決することも禁止するということで、マスコミもびっくりしたわけですね。五月には、各校長先生あてに意思決定行為としての議決でなくても採決等を職員会議で行うことはできない、こういう文書まで出して、さらに締めつけてきたわけですね。
そんな中で、ことし七月十二日の教育委員会で、職員会議の運営状況についてということで、九校の校長、副校長から聞き取りを行い、結果的には四校の校長に対して教育長から厳重注意を行うという報告がされました。どういう経過で九校を調査し、どのような理由で厳重注意をしたんでしょうか。
○森口参事 六月二十八日の東京都教育委員会において、職員会議の運営状況に関し再調査する必要があり、都立学校九校の挙手採決等の状況について、校長及び副校長に対してヒアリングを行いました。
職員会議は、校長の任意の補助機関であり、その機能は教職員に対する報告、意見聴取及び連絡に限定しており、学校における意思決定は組織の責任者である校長の最終判断で決定されなければなりません。
職員会議において挙手採決等の方法を用いて教職員の意見を確認することは、校長みずから決すべき意思決定に少なからず影響を与え、同会議が実質的な議決機関となりかねず、こうした運営は不適切でございます。
今回の調査で、四校の職員会議において挙手採決等が行われていたことが明らかになったため、職員会議の運営を適正に管理すべき立場にある校長に対し、教育長から厳重注意を行ったものでございます。
○大山委員 本当にがんじがらめという感じですよね。これは七月十二日の教育委員会に出された職員会議の運営状況についてという資料ですけれども、六月二十八日の教育委員会を受けて九校の調査をした報告です。十八年度の職員会議の運営状況で、厳重注意を行う四校の状況が書かれています。
どういう状況で厳重注意を行ったのかということなんですけれども、例えば、判断を覆すつもりはなかったので最終決定は校長が判断するからと説明した上で挙手による採決をしたわけですね。これが一つです。それから二つ目の学校は、校長が判断に迷ったため校長が挙手を求めた。三つ目の学校は、特別指導案件や年間行事計画などにおいて教員の意見を聞く必要があり校長が挙手を求めた。もう一つは、卒業判定案件において、教員から意向の確認を求められ校長の判断に資するため挙手を認めた。
もう本当にごく当たり前のことをやっているにもかかわらず、厳重注意なんですね。校長が判断に迷っても、それから最終決定は校長がするからといっても、校長が教員の意見を聞く必要があっても、最終判定で校長の判断に資すると考えても、挙手や採決はしてはいけない、こういうことなんですよ。
校長が例えば判断に迷ったときに、教職員の意見を聞くのは当然のことじゃないんでしょうか。どうしてそれがいけないんですか。
○森口参事 学校においては、教職員がそれぞれの分掌や学年など職務上の立場から建設的な意見を出し合い、企画調整会議において議論を深め、校長が最終決定するという適正な校内運営手続のもとで活発な議論を行うことは望ましいことでございます。
こうした意思決定方で教職員の意見を把握できる機会を多く設けているにもかかわらず、職員会議でしか職員の意見を聞く場がないということ自体、学校経営上、問題があるといわざるを得ません。
職員会議は、教職員に対する報告、意見聴取及び連絡を行う場であり、校長の判断により職員会議で教職員の意見を聞く場合においても、挙手採決等の方法は、校長の決定権を制約することになり、学校経営上、不適切でございます。
○大山委員 そうやって挙手もだめ、採決もだめ、それから校長先生が教員はどういう意見を持っているのかなということを確認することもだめ。例えば、そんなことで、今、高校の現場はどうなっているのかといったら、生徒指導というのはかなり複雑な状況になっているわけですね。生徒にとって何が一番いいかを考えて対応することが求められているわけですよ。
これまでは、特別指導と卒業認定というのは大激論が交わされてきました。子どもをめぐって議論するかいがあったんですよね。きちんと職員会議の場で議論する場があって、かいがあって、かいがなければ議論できないんですよ。子どもを把握しているのは、さっきおっしゃっていた企画調整会議や学年でやればいいっていいますけれども、その子どもを把握しているのは主任というわけでないわけですね。例えば担任の先生であったり、保健の先生であったり、それから生徒指導の先生であったり、さまざまな教職員がその生徒にかかわりを持っているわけですよね。
職員会議で全員がいるわけですから、自分はこの生徒のことを、あ、どうしてあの先生が知っているんだろうと思うような方も含めて、いろんなかかわりを持っている。だから職員会議で議論する必要があるわけです。そう思いませんか。
○森口参事 学校も一応組織でございますので、それぞれの分掌や学年等での十分な意見交換を行い、それらは適宜、校長、副校長に報告することになっております。それらをもとに学校の中枢機関である企画調整会議で十分議論を深めて、その上で校長が判断するといったのが組織のルールであるというふうに思っております。
繰り返しますが、挙手採決等については、それらのルール、権限を制約するものであるというふうに考えております。
○大山委員 企画調整会議でやればいいというわけですよね。しかし、学校というのは、子どもをめぐっては教職員が対等な立場で、別に企業だとか行政の組織じゃないわけですから、担当の人が担当のことだけをやっていればいいということじゃないわけですよね。例えば、たばこを吸っている子どもがあれば、自分はたばこ係じゃないから、じゃあたばこ係の先生を呼んでこようかと、そういう社会じゃないわけですよね。
都教委の学校経営の適正化で校長先生、副校長先生、主幹、主任などの人たちが参加対象の企画調整会議を学校運営の中心にして、本来、自由な議論を深めて学び合って、より質の高い合意形成を図っていく場であります職員会議は、今どうなっちゃっているかというと、各学校でも、校長先生が提案するとき、質問はあっても意見はないんですよね。だから校長先生自身も正しいのか、支持されているかもわからない。こういうことになるわけですよ。だから、だんだんだんだん職員会議は形骸化してしまってきているんです。
教員集団は上からいわれたことをやっていればいいのかということになるわけですよね。今のこのがんじがらめの、自由も、それから自由な議論も保障されないようなところでは、自主的、民主的に学校をどうしようということにはならない。都教委が学校をこういう状況に追いやっているということなんです。職員会議で意見をぶつかり合わせて教育議論ができる、それから校長も教員の意向がわかる、職員が何を考えているか知りたい、そういうわけですよね。
七月十二日の教育委員会の報告資料の今後の対応に、学校経営支援センターと本庁各部が十分連携し、課題解決に向けた具体的な相談や助言を行うなど必要な支援を行っていく、こうなっていますけれども、七月以降、三カ月しかたっていませんけれども、具体的にどのような対応をしてきたんですか。
○森口参事 七月以降の対応ということでございますが、今回の調査結果を踏まえまして、校長がリーダーシップを発揮し、学校内の旧来の慣例や慣行にとらわれずに一層適正な学校運営を行うため、企画調整会議、職員会議、委員会の運営について、改めて校内で点検や見直しを行うよう、七月に各学校に都教育委員会として通知いたしました。
また、八月の学校経営支援センター連絡会、九月の校長連絡会及び副校長連絡会等において適正な学校運営の継続について、改めて周知徹底を図ったところでございます。
また、今回の調査結果で相当な課題が出てまいりましたので、企画調整会議や職員会議を初めとし、学校経営上の諸課題の解決に当たっては、校長が問題を一人で抱えることがないよう学校経営支援センターが本庁と十分連絡し、従来にも増して学校との意思疎通を図りながら、適正な学校運営のため積極的に相談に応じ、具体的かつ実効性のある助言等を行っているところでございます。
○大山委員 まさに七月には各学校に通知、八月には学校経営支援センター連絡会、それから九月、校長連絡会及び副校長連絡会、毎月毎月、さらに都教委のいうことを、どんな理由があろうともとにかく押しつけるということにほかならないじゃないですか。自主的、民主的、そして校長先生と教員の集団が対立しているようなところでは、いい教育なんかできないわけですよね。それを、都教委がそれを促進させる。そして自主的な、民主的な話し合いさえも--議論ができるというのは、やっぱり自分の意見が出せたり、取り入れられたり、それからほかの人の意見が聞けたり、そういう相乗効果があって議論するかいがあるわけですよね。そういう状況をつぶしているということなんですよ。
ですから都教委は学校への介入をやめて、本来の仕事である教育条件の整備にこそ力を入れるべきです。そして、その介入の仕組みとしてある、システムとしてある学校経営支援センターは廃止するということを改めて申し述べておきます。
次に、子どもたちの教育にとっては重要な役割を果たす先生たちの任用についてです。
これまで東京都の教員採用というのは、採用選考の結果を名簿搭載者と補欠者に分けて、名簿搭載者は原則四月一日付採用、補欠者は、名簿搭載者で不足する分の四月採用、または年度途中の欠員や病気休職教員の補充として必要が生じた時点から正規教員として採用してきたわけですね。
都教委は、今年度から補欠者制度をやめて、任期が一年までの、いわゆる臨時採用の期限つき任用教員としての採用にしてしまいました。
都教委が昨年三月に出しました、「これからの教員選考・任用制度について」というのによれば、合格者に確実に都に来てもらうということで、補欠者は不安定だから他の道府県や民間企業に流出してしまう、だから臨時的期限つき任用にするんだということが書いてあります。
補欠者は、採用されれば、四月当初でも年度途中でも正規採用となっていました。しかし、期限つき任用はその年度のみの採用ですから、期限つきの方が私は不安定で、教員を目指す人にとっても魅力に欠けると思いますけれども、どうして期限つき任用の方が不安定でないといえるんでしょうか。
○松田人事部長 期限つき任用教員は、任用期間に定めがある以外は基本的に正規教員と同様の身分でございます。
任用期間に関しましてでございますが、期限つき任用教員は、翌年度の採用選考において特例区分で受験することができます。その際、一次の択一試験は免除されまして、二次の面接のみの受験となります。さらに、選考におきましては、任用期間中の職務の遂行に関しまして、校長、教育委員会の評価を適切に反映する仕組みを講じております。
これらの措置によりまして、本人のモチベーションのアップにつながるとともに、児童生徒、保護者にとりましても、より質の高い教員を確保できるものと考えております。
○大山委員 補欠者は、補欠者であっても採用されれば、その時点からほかの先生たちと同じ正規の採用になったわけですね。
採用方法を変えて、今年度はどうなったでしょう。四月当初から名簿搭載者からの採用では、教員が足りなくなりましたね。大量に期限つき任用教員を今年度は採用しました。
さらに驚いたことに、期限つき任用の名簿も足りなくなって二〇〇七年度採用のための教員採用試験を受けていない人からも採用しましたね。今年度の名簿搭載者は何人だったんでしょうか。
それと一緒に、四月段階での名簿搭載者からの採用は何人で、期限つき任用の採用は何人でしょう。この期限つき任用のうち期限つき名簿搭載者と、採用試験を経ずに任用した教員は、それぞれ何人ずつでしょうか。
○松田人事部長 十九年度正規採用名簿に搭載した人数は、二千二百六十五人でございます。
期限つき任用名簿からの採用は、四月十七日までで三百十七名でございます。
それから特別に認める者を名簿に追加し任用できる特認制度というものがございますが、この制度により任用した期限つき任用教員は、十月二日現在、二百八十一人でございます。
○大山委員 期限つき任用の人が、四月当初から三百十七名採用された。だれが考えても、ちょっと異常なんじゃないでしょうか。そのために年度初めあるいは入学式に先生がそろっていなかったとか、担任の先生が正規でなくて一年間の臨時採用の先生だったという保護者の驚きの声もありました。
子どもたちに責任を持つ担任の先生が、正規採用でないのか、一年後にどうなるかわからないという不安定な立場で、やりがいを持って子どもたちの教育に専念してもらえるんだろうか、学校の中で立場が弱くて大変なのではないかと保護者も心配していました。
また、校長先生という学校をまとめる立場である人からしても、四月当初に正規採用の先生がそろっていないのは、学校の運営に大きな支障を来すといいます。担任として、子どもたちに同じ責任を持つのに、正規と期限つきでは、受けられる研修の内容も違います。身分が不安定である上に、次年度に正規採用されるよう推薦してもらうためには、校長先生の顔色をうかがわなければならないなど問題だらけです。なぜ四月当初から名簿搭載者が不足するような事態になったんですか。
○松田人事部長 各年度の採用予定者数は、教員採用選考の合格者を決定する十月ごろに必要数を予測いたしまして、名簿搭載者数を決定しております。
今回不足が生じましたのは、学級増、勧奨退職者の増等、予想が困難な欠員が生じたこと、それから当初の予想より辞退者が多かったことによるものでございます。
○大山委員 しかし、いろいろいいますけれども、「これからの教員採用・任用制度」によれば、二〇〇七年度の採用見込み数は二千六百人程度になっているんですね。さっき、名簿搭載者が二千二百六十五人ですね。これ自体、もう既に少ないわけです。しかも名簿搭載者の一割程度は辞退するということも、この中には書いてあるんですね。それは見込み済みなわけですよ。見込まなきゃいけないわけですね。
定年前の退職者も資料で出してもらいましたけれども、相変わらず多いのは、別の問題ありますけれども、突然ふえたわけではないわけですね。学級数の予想も、予想がつかないというか、予想外というようなことをおっしゃいましたけれども、何百も変わるわけじゃないわけですよね。もちろん不確定な要素というのはありますけれども、必要な先生の数が見込みよりふえたとはいえません。少なくとも、この予想でやっている二千六百人程度を名簿搭載することが当然ではないんでしょうか。
二千二百六十五人しか名簿搭載者にしなかったということが不自然といわざるを得ません。少なくとも年度当初は正規教員のみによる配置となるような採用を行うべきと考えますが、どうですか。
○松田人事部長 正規の名簿搭載者は、辞退者や次年度の教員定数、それから退職教員数を精査した上で算定しておりますけれども、それでもなお学級増や勧奨退職者、病気休職者等の不確定要素による欠員が発生した場合に備えて、期限つき任用教員制度を導入しておりまして、正規の名簿搭載者が不足すれば、四月当初から期限つき教員を任用することも当然あり得ると考えております。
○大山委員 さっきいったように、何百も学級数がふえるわけはないわけですよね。退職者だって、急激にふえるわけじゃないんですよ。しかも、この教員候補者選考結果についてという、ことしの十月二十六日の紙には、十九年度から年度途中の欠員に対応するため期限つき任用教員制度を導入したと、こう書いてあるわけですね。年度途中の欠員に対応するためなんですよ。ですから、年度当初は正規の教員が原則であるということは確認できますよね。
○松田人事部長 当然、正規の名簿搭載者数は、年度搭載者、年度当初の必要数を算定しております。
しかしながら、先ほど申し上げましたように、不確定要素による欠員が生ずる場合がございますので、そういう場合には期限つきの教員を任用する場合が生じるかと考えております。
○大山委員 年度当初は、原則は正規教員なんだということですね。
ところで、来年度に向けた名簿搭載者数はどうなっていますか。
○松田人事部長 来年度につきましては、二千九百八十一人を採用予定者として名簿搭載をしたところでございます。
○大山委員 来年度の教員採用の見込み数というのは三千百人程度となっていますので、ことしよりは差が少ないわけですね。これによると三千百、今おっしゃったご答弁では二千九百八十一ですから、ことしよりは差が少ないようですけれども、それでも百二十人程度少な目なわけです。名簿搭載者を採用しないわけにいかないから、どうしても見込みより少な目に搭載せざるを得ないということだと思うんですね。
辞退者がいることを考えれば、やはり来年度も三百人から四百人の期限つきの先生が年度当初から生じざるを得ないと思うんですけれども、どうですか。
○松田人事部長 たびたび申し上げておりますけれども、辞退者数、それから勧奨退職者数等はこれから数字が出てまいりますので、現時点で来年の四月の状況を正確に予測することは困難だと考えております。
なお、補欠者制度というのは、正規採用への期待があるわけですけれども、逆に一年間待たせた上で経過期間、名簿搭載期間が過ぎて、これは他県にもない都独自の制度でございましたけれども、受験生からは戸惑いや不安の声が寄せられていたことも事実でございます。
○大山委員 今年度のことを見れば、採用されないどころか、採用試験を受けなかった人さえもかき集めなきゃならなかったという事態なわけですよね。それで、その補欠者が不安定だなんていうことはいえないと思います。
そもそも四月一日に何人教員を採用できるかというのは、もちろん不確定な要素がどうしてもあります。以前は、採用試験合格者全員が同じ名簿で、上から順番に採用していったために、本人からしてみれば、これは自分が採用される可能性が高いか、それほどでもないのかにかかわらず、確実に内定を出してくれる企業に流れたりしていたわけですね。それを防ぐために名簿に線を引いて、ほぼ確実に採用される人にはそれがわかるようにして、採用されない可能性がある人を補欠者にしたのが去年までの補欠者制度ですね。人材の確保という点では、この制度の方がよほど合理的ではないかと思います。
期限つき任用教員の制度を見直して、これまでどおり正規教員名簿搭載者のみによる、四月当初、年度当初なるような採用を行うべきと考えるが、どうですか。
○松田人事部長 正規の名簿搭載者につきましては、たびたび申し上げておりますけれども、さまざまな要因で不確定な要素がございます。
したがって、そういった欠員が発生した場合に備えて期限つき任用教員制度を導入したものでございまして、かつ、この制度につきまして先生の方から、先ほどから不安定だというお話もございますけれども、大事なことは、期限つき教員が正規教員かどうかではなくて、教員としての実力や姿勢があるかどうかだというふうに考えております。
そういった意味で、期限つきの教員につきましては、従来の補欠に相当する成績の者を任用いたしておりまして、そういった意味では実力としては同等でございます。
かつ、先ほど申し上げましたように、本人のモチベーションについても、これを維持するような仕組みをつくっておりまして、にもかかわらず翌年度の採用選考に不合格になった場合には、それはやはり教員としての適性に欠けると、不十分だということでございますので、優秀な教員を確保するという観点におきましても、期限つき任用教員制度については有効な方策だと、このように考えております。
○大山委員 せめて年度当初は、さっき原則ですということですから、きちんと見通しを--四月当初は、せめてその学校に四月一日にいないというようなことがないように、採用を行うべきだと思います。
クラス担任を受け持って、子どもたちと学校運営に責任持って、先の見通しを持って、伸び伸びと充実した教育活動を行うためには、やはりきちんと正規で身分が保証された先生が配置されることが重要なんですよ。これまでどおり教員採用は正規採用で行うことを強く求めて、次の質問に移ります。
高校なんですけれども、都教委は、都立高校改革だといって平成九年九月に、長期計画である都立高校改革推進計画を策定して、それに基づく第一次実施計画、第二次実施計画、そして新たな実施計画と進めてきました。これに基づいて、都民が存続を要求している、その要求を踏みにじって都立高校の統廃合も進めてきました。
この計画も、この統廃合と同時に、もう一つの側面は、新しいタイプの学校だといって中高一貫校や総合学科高校、単位制の高校や進学重視型の高校やチャレンジスクール、新たなタイプの昼夜間定時制高校だとかエンカレッジスクールなど設置して、都立高校の差別化、序列化を進めてきたことです。普通の普通科というのは、見つけるのがもう大変になるほどに多様化しました。
ことし四月に新しいタイプの高校における成果検証検討委員会の報告が出ました。この報告書には、新しいタイプの設置状況がまず出ていて、その次に都立高校の状況がさまざまな数字であらわされています。中途退学率だとか、原級留置率、なぜそうなるのかということを分析なく数は出されていました。その後、進路状況の推移が出されています。
その後に、進学指導重点校で、いかに現役で東大だとか京大などに入学しているかとか、または私立難関校に合格しているか、東大、東工大、一橋に都立高校出身者がいかにふえたかというようなことが載っています。
さらに、進学重視の学校は、進学指導重点校、それから進学指導特別推進校、進学指導推進校、中高一貫校と、四段階に分けられているわけですね。都立高校を差別化して進学重点校もつくったわけですね。その対極に、チャレンジスクールだとかエンカレッジスクールをつくったわけです。
差別化自体の問題は、きょうはやりませんけれども、エンカレッジスクールに関して幾つか質問していきたいと思っています。
先日、エンカレッジスクールである足立東高校を訪問して、生徒の様子も見せていただくとともに、校長先生や副校長先生の話も伺いました。エンカレッジに指定されて現在五年目になるということで、中退者の数が百人、八十人、七十人、三十人、三十人と減少してきているんですということをお話しされました。
都教委がエンカレッジスクールをつくった動機は何ですか。
○森口参事 エンカレッジスクールにつきましては、小学校、中学校で力を発揮し切れずにいた生徒が、社会生活を送る上で必要な基礎的、基本的学力や社会人としての規範意識を身につけ、自己に対する理解を深めるとともに、将来を見通し、卒業後は自立して社会に貢献できるように育成することが目的でございます。
個性化、特色化を進める都立高校改革推進計画に基づき、基礎学力を中心にした体験学習や選択授業を大幅に取り入れる全日制課程の高校をエンカレッジスクールとして四校指定してございます。
○大山委員 学び直したいという生徒にとって必要な学校で、わかる授業で子どもたちが変わっていくというんですね。総合的な活動をすることによって心身ともに力をつける、自主性、主体性をつけることが重要だということで、本当に一人一人にしっかりと力をつけたいということが、校長先生だとか副校長先生の話から伝わってきました。
私は、この学校で一番印象的だったのは、小中学校でお客さんだった子が高校で初めてわかる授業を受けたということなんですね。生徒がわかるということは、生徒が変わるということで、自分をコントロールできるようになると校長先生は話していました。これはもう、教育の原点というか、基本だと思います。
こうやって、きちんと一人一人に力をつけようという学校をつくったわけですから、徹底してこのエンカレッジという名のとおり、都教委が生徒の学びを応援する、教育条件を整備することが求められていると思います。
足立東高校は、現在三十三人で一学級、一学年六学級で成り立っています。二つのクラス、一組と二組をさらに合わせて四つのクラスに分けて、数学や国語、英語などの授業を行っていました。実態に合わせて三十三人なり三十人で一学級にする方が、合理的なんじゃないでしょうか。
○森口参事 エンカレッジスクールは、既存の全日制課程の高校をエンカレッジスクールとして指定しておりますが、足立東高校の場合には、学級規模は他の普通科高校と同様一学級四十人規模でございます。エンカレッジスクールにおいては、小学校、中学校で力を発揮できなかった生徒に対応したきめ細かな指導をすることが重要であることから、都立高校改革推進計画に基づく学級の弾力的な展開によるホームルームの少人数化によって、五学級、六展開としているところでございます。
○大山委員 きめ細かな指導をするために五学級、六展開としているんだということですね。
既存の学校を指定しているから四十人学級が基本で、少人数展開なんだということなんでしょうけれども、ホームルームも三十三人にしているというのは、生活集団も少人数にすることが必要だということですよね。
○森口参事 小学校、中学校で力を発揮できなかった生徒が自立して社会に貢献していくためには、高校段階で基礎から勉強をやり直すことが重要と考えております。
こうした生徒たちが社会生活を送る上で必要な基礎的、基本的学力を身につけることができるよう、エンカレッジスクールでは学級の弾力的な展開によるホームルームの少人数化による多展開や、習熟度別少人数授業など多様な指導形態で、きめ細かく、個に応じた学習指導を実施しているところでございます。
○大山委員 学習指導というのに非常に力を入れられたわけですけれども、ホームルームを三十三人に少人数多展開にするというのは、生活面でもきめ細かく指導することが必要だということが認識されているからですよね。どうですか。
○森口参事 生活面が全くないということではございませんが、学習指導が中心でございます。
○大山委員 学習指導だけだというんだったら、ホームルームをわざわざ多展開にする必要はないわけですね。二クラスを四クラスに分けて、さらに学習集団は小さくしているわけですから、四十人学級じゃなくて、ホームルームを三十三人にする、少人数多展開にするということは、生活面でもきめ細かく指導するためには、集団の規模を小さくすることが必要なんですよね。それなのに、四十人が基本で、ホームルーム、生活の基礎集団も少人数展開にする。どうして、そういう中途半端なことをするのかと思うわけですよね。
新しいタイプの学校なんだというふうにおっしゃるんだったら、新しい考えでやればいいと思うわけですね。
現在は、学級認可が一学級四十人、一学年五学級なので、三学年で十五学級ですから、教員は三十三人配置されています。しかし、実際は三学年で十八学級ですから、複数担任で、それだけでも三十六人必要なんです。三十三人ですから、既に三人足りません。実態に合わせて学級をつくることが、どうしてできないんでしょうか。一学級を三十三人なり三十人にすれば、それだけで教員は三人増員になります。英、数、国、理、社は四展開にしたいし、英、数、国は三年生までやっています。一年生も五十分授業をしているんですよ。三十分授業をしたいけれども五十分授業をしているのは、教員の人数と教室が足りないからということなんですね。
だから、きちんと実態に合わせて生活面もあるけれどもというふうに、生活面での指導もきちんと、規模を小さくすることが必要なんだったら、ちゃんと基礎集団を三十三人なり三十人にすればいいわけですよね。
現在、高校の教員の持ち時数というのは何時間になっていますか。
○松田人事部長 教員の週当たりの持ち時数は、各学校の状況によって異なっておりますけれども、都教育委員会では標準的な教科持ち時数につきまして、高等学校の全日制課程では週十八時間、定時制課程では週五時間といたしまして、講師時数算定上の基準としております。
○大山委員 例えば、足立東高校では加配がありますけれども、そうやって四十人学級が一学級なんだということに固執しているもんだから、基本のところで三人既に足りないわけですよね。ですから、どういうふうに解消するかといったら、先生たちの持ち時数を多くするしかないわけですよ。週二十時間、二十一時間が普通になっちゃっているんだと。結局、先生たちが頑張って実践しているということなんですね。やはり教員を実態に見合ってきちんと配置することが求められています。
足立東高校では、教員を増員することはもちろん、多展開するには教室を増築することが必要なんだということなんですが、非常にいいことに学校には教室をつくるスペースはあるんだということなんですね。ですから学校と相談して増築していくことが求められていますけれども、どうですか。
○森口参事 エンカレッジスクールでは、個に応じた指導とわかる授業確立のため、一年次の一、二時間目に到達度に差がつきやすい国語、数学、英語の各教科を中心に、三十分、三コマの授業を習熟度別で実施しております。到達度に応じた習熟度別の指導は授業に集中できることから、生徒の基礎、基本の習得に対し効果を上げております。
しかしながら、一方では、生徒の卒業後の社会人としての育成には、在学中に集中して五十分の通常授業を受講できるようにすることが必要でございます。このためエンカレッジスクールでは入学後、一年でわかる授業を徹底して、わかる、理解することの喜びを実感した上で、二年次以降は通常授業により学力の充実や進路意識を高める指導を行ってまいります。
こうしたことから、教室の増築については考えてございません。
○大山委員 せっかく学び直そう、それから力をつけよう、そういう学校をつくったのに、どうしてそういう中途半端なことをやるのかということですよ。
一年生のときは三十分、そして二年生になったらもう五十分、そうやって、それは都教委が想定していたことなんですよね。それこそ机上で考えていたことが、現実に生徒たちが入学してきて、五年間の実践を通じて課題が明らかになって、教員も教室ももっと必要なんだ、少人数、多展開の拡充が必要なんだ、これが明らかになってきたわけですから、この現実を見なくちゃいけないと思います。だから都教委の枠に生徒たちをはめ込むんじゃなくて、子どもの実態にきちんとどう対応していくのか。どうしたら力をきちんとつけられるのか。卒業までに力をつけるということを目標にしているわけですから、そのためには、どこまでどう丁寧にするのか。それから、必要なときにちゃんと必要な教育だとか対応だとかをすることこそ求められているわけですよね。
だって、ここに入ってくる子どもたちというのは、小学校や中学校のときにきちんと力をつけてもらってなかった子どもたちなんですから、ちゃんとその高校の三年間で力をつけるんだという学校をつくったんだから、徹底してきちんと教育条件を整備しなきゃいけない、そう思いますよ。
もう一つは、スクールカウンセラーです。例えば、足立東高校の保健室には一日五十人ぐらい来るわけですね。リストカットする子もいるし、多動の生徒もいるし、親からの暴力を受ける子どももいるということでは、児相との連携もとっています。だからこそ養護教諭の二人はなくてはならない。
そしてスクールカウンセラーは、週一回では生徒の要望にほとんど対応できないというんですね。毎日来ても十分に仕事があります、そうおっしゃっていました。小中の時代に、まじめに、わからないけれども教室にじっと座っていた、そういう子どもたちというのはストレスを抱えているというんですよね。解決しなければならない課題がある生徒が、おとなしいけれども多くいるんです。だから心理の専門職であるスクールカウンセラーが大きな役割を果たしてきました。
スクールカウンセラーの配置は、現在週一回のみですけれども、これでは不十分です。本当は毎日必要だということですけれども、少しでも回数をふやすことが必要ですが、どうですか。
○岩佐指導部長 都教育委員会は、スクールカウンセラーを国の基準に基づき週一回、エンカレッジスクール等心理的なケアを必要とする生徒が多く在籍している学校に配置しております。
さらに、学校の要請を受けまして、都教育相談センターがアドバイザリースタッフ等を派遣いたしまして、生徒の心理的なケアの充実に努めております。今後とも、こうした対応を継続し学校を支援してまいりたいと思います。
○大山委員 そんなことをいいますけれども、新しいタイプの高校における成果検討委員会報告書では、成果の中でスクールカウンセラーは生徒からのさまざまな相談に対応し、生徒指導のかなめとして重要な役割を果たしていると評価をして、この課題の中でスクールカウンセラーの配置には予算上の限界があり週一回の配置となっている、そのことが課題だというふうに述べているわけですよね。
課題を明確にしたら、その課題を解決するにはどうするのかを考えて対応すること、それで教育条件を整備することが教育庁の役割ではないでしょうか。課題を明確にしたのに対応しないというのは、まさに怠慢だといわざるを得ません。
これはおしまいですが、そこで、学力テストの問題です。
競争教育ですけれども、その一つ、一斉学力テストの実施と公表ですね。競争をあおることがいかに教育を荒廃させるのかということは、足立区で起こった事件が象徴しています。昨年とことしの一月に行われた都の学力テストと、昨年四月の区の学力テストで、教員が間違いを指さしで知らせるということが明らかになりました。この件について、区の教育長は、区議会で、行き過ぎた部分もあろうかと思うし、上位校から下位校まで含めて競争をあおるような部分がなかったとはいい切れない、こう答弁しています。
この答弁の背景には、学力テストの成績が下から十番目までの校長は呼びつけられて区教委からしかられる。区教委がテストに出るような国語、算数、数学、英語の問題集をつくって各学校にデータで送付することなど、点数を上げるために区教委が先頭に立ってきた事実があります。それらは都の学力テストで足立区が最下位になったことがきっかけであり、学校選択制のもとで学力テストの成績が学校選択の物差しになっている。都教委が自治体ごとの成績を発表して、区市町村が各学校の成績を発表する。それは都教委がテストの成績で自治体を競争させている。このことが教育の荒廃を招いているといわざるを得ませんが、どう認識していますか。
○岩佐指導部長 都教育委員会が実施しております学力調査の目的は、児童生徒の学力の実態を明らかにすることによって、それぞれの教師が授業を改善し児童生徒の学力の向上を図ることにございます。今後とも学力調査を実施し、児童生徒の学力の実態を明らかにして、区市町村や学校の学力向上の取り組みを支援してまいります。
○大山委員 ちっとも支援にはなっていないわけですね。
一斉学力テストを実施して、その成績を公表したら、トップはどこかな、びりはどこかな、例えば国のだったら東京はどのあたりかな、こういうような意識が動くのは、ごく当然なんです、自然なんですね。校長先生だったら、今度はどうしよう。それから区市町村教育委員会だって、今度はどうしようと、こう考えるのは自然の成り行きだと。
一斉学力テストの実施と公表は、学校教育を一つの基準で評価をする、序列をつけるということですね。国の一斉学力テストを実施していない犬山市の教育委員を務める中嶋哲彦、名古屋大の大学院教授は、テストの結果で子どもを序列化する現在の教育施策自体が現場を追い詰め、不正を生み出すもとになっている、こう指摘しています。
足立区では、学力テストの成績を上げるために、朝は早く子どもを集め、休み時間や給食、掃除の時間は少しずつ短縮して、朝読書は昼にして、計算、漢字の書き取り、過去に出された問題などを反復して練習できるものを行う。夏休みは短縮して八月二十七日から授業の学校が多くなりました。夏休み中も、学習教室には四日間で、九十五人の学年のうち、延べ二百五十人参加しました。十五日間実施した学校もあります。ドリルの学習は宿題になります。しかし、同じような状況は足立区だけではなくて、多くの他の自治体でも起こっています。
ある市では、市内で前年度の点数が一番低かったという学校は、〇七年一月の都の学力テストに向けた異常な準備が始まりました。小数点の割り算の十日間連続二十五問宿題。担任は、算数で必要なのは、早く、確実に、正確に、どんなときでもと生徒を叱咤激励して、集中できる教室環境ということで、子どもたち、普通絵なんか飾ってありますけれども、そういうものを全部外して、何が正面に掲げられているかといったら、特訓月間、びっくりマーク二つ。毎日のミニテストは自分の点数を毎日折れ線グラフにして、冬休みは二十六枚裏表プリントの宿題、児童発案の宿題点検係には勉強ができる子がなって、居残り通知表を係が渡します。お母さんが、帰ってきた子どもがいつになくふさぎ込んでいるのでわけを聞くと、子どもはなかなかいわないんですね。やっと、その係から居残り通知表をもらってしまったということがわかりました。子どもは本当に傷ついていたようですとお母さんは語っています。
こういう教育、同じことを反復してやったりなんて、教育がゆがんでいる、こう思わないですか。
○岩佐指導部長 先ほど答弁申し上げましたように、都が実施しております学力調査の目的は、児童生徒の学力の実態を明らかにしまして、その結果に基づきまして教師が授業を改善し、児童生徒の学力の向上を図ることが目的でございます。
○大山委員 都教委から区市町村教育委員会が、それから区市町村の教育委員会から学校が強い競争圧力にさらされている中で、本来の授業もやめてテストの点数を高めるだけの対応が必死で行われているということなんですよ。
教育というのは、直ちに点数化できないような人間の力量の形成も課題としていますね。みんなが毎日クラスで一緒にいろんなことに取り組む、そのために楽しく共同して生活していける力を子どもの中にどうつくり出すかというような課題も、教育実践の上では欠かせません。しかし、テストの点数を速効的に高める教育に一面化すると、そういう課題が切り捨てられてきてしまいます。実際、そのクラスで取り組むことが重要な行事がなくされてしまったりということも起こっています。
保護者が心配しているのは、例えば、小学校六年生の息子さんを持つお母さんは、知的な関心が一気に広がる時期なのに、普通のテストなども何点だったという点数だけを気にする子どもたち、保護者は本当に心配して、テストと習熟度で学力評価が固定化して、自分はどの程度と子どもが判断するんですよね。本当にこれが学力なんでしょうか、テストのための勉強でいいんでしょうか、学力向上につながっているんでしょうか、疑問を持っています。
六年生が家庭科の宿題で、一週間の夕食づくりが宿題になったんですって。そのお母さんは、そうめんだけだったとか大変だったけど、その一週間やり抜いて、子どもが一生生きていく自信がついたと、そういったというんですよね。近くの高校の公開授業で夏休みに科学教室に参加して、あんな授業をしてくれる高校に行きたい、こういったんです。本当に学びたい、そういう気持ちですよね。
東京芸術劇場でオーケストラ鑑賞して、すごい体験したよってお母さんにいったんですって。子どもは、楽しい授業だとか感動に対して、吸収して輝く力を持っている、お母さんは話してくれました。本当の学力とは何なのかということが、保護者の中からもわいてきているということなんですね。
過去に出た問題の訓練だとか計算などの練習を盛んに子どもにやらせていた学校が、都の学力テストでは一位になったけれども、試験のやり方を記述式に変えた区のテストでは五十九位だった。そういうことからも、テストの点数だけを上げようとするやり方がいかに不毛なことかということなんですよ。
ただ競争を強めれば学力が上がるという方策は、既に破綻しているといわざるを得ませんけれども、どうですか。
○岩佐指導部長 先ほど申し上げましたように、この学力調査の目的は、結果に基づいて教師が授業を改善する、そして学力が向上するということでございまして、授業を改善する中で、今先生がおっしゃいました感動する授業とか楽しい授業というものをつくり出していくことが、この学力調査のねらいの一つでもございます。
○大山委員 そんなこといいますけれどもね、そうやって行事などを削って反復練習したり、過去問をやったりしているわけですよ。
今、児童生徒の学力の実態を明らかにすることによって、それぞれの教師が授業を改善し、児童生徒の学力の向上を図ることにある。各学校は調査結果に基づき、学習指導上の課題を明らかにし、その改善策を授業改善推進プランに明示して継続的に学力向上に取り組んでいくといいますけれども、子どもたちにとって、生きるテストというのは、自分がどこがわかって、どこがつまずいちゃったのか、わからなかったのかということが、きちんとすぐに把握できること。テストしたらすぐ戻ってこないと役に立たないと思いませんか。
○岩佐指導部長 本調査は、通常学校で行われているテストとは異なりまして、全都の児童生徒の学力の実態を明らかにすることによって、それぞれの教師が授業を改善し、児童生徒の学力の向上を図るものでございます。
本調査は、全都の公立小学校第五学年、公立中学校第二学年の児童生徒約十六万人を対象とした悉皆調査をしているものでございます。
○大山委員 どのくらいのことなのか、それからどういう状況にあるのかというのは、悉皆調査なんかしなくたって自明のことですよね。
足立区では、学力テストの点数を公表したり予算に差をつけることはおかしいと、多くの保護者が考え始めました。テストは必要だと考えている保護者は多いんですけれども、一斉学力テストは保護者が望んでいるようなテストではありません。保護者は、回答用紙を返してほしい、どこが間違っていたのかそれを知りたいからと話しています。私も、そのとおりだと思います。
都教委は、ことしから問題解決能力等に関する調査を実施しました。このテストの問題自体、例えば、気球の図が間違っていたとか、表現する力を見るのに二、三十字で書けるのかとか、まるでクイズのような問題で問題解決能力が図れるのか、そもそも問題解決能力とはどんな能力なのか、さまざまな指摘があったわけですね。
問題解決能力という力をはかる、どのような科学的な根拠を持って問題を作成したんですか。
○岩佐指導部長 都教育委員会は、問題解決を図るために必要な諸能力であります問題を発見する力、見通す力、意思決定する力、適応、応用する力、表現する力の五つの観点として、問題解決能力等に関する調査を検討し作成したものでございます。
○大山委員 科学的根拠と聞いたんですけれども、明らかにはできないわけですよね。
例えばOECDの文書では、学力は知識を身につけ、その知識、わざをこなす力、それからコミュニケートしながら参加し、共同する力、目的を把握し、見通し計画する力の三つの基本能力で人間の能力をとらえようとしています。
つまり、人間は主体的に目的を持って社会に参加して、コミュニケーションで他者とつながって社会をつくり出していくのであり、それを推進していくために知識を使いこなすということです。そうした、人間として生きる営みを土台として、その上に知識、わざを使いこなす力が組み込まれている。
さらに重要なことは、これらの基本能力のうち、テストで学力としてはかれるのは知識、わざを使いこなす力だけだということなんですね。都教委は、競争をあおることは直ちにやめて、学校が地域と深く結びついて、また、子どもの困難に深く共感して子どもたちを支えていく拠点として、学校が働く必要があります。そのためには、教員の数をふやしてクラスの生徒数を二十人、三十人と縮小し、学習がおくれてしまった児童生徒にも丁寧な援助ができる教育条件の飛躍的な向上が緊急な課題です。
学校と教室を子どもたちが人間としての誇りを持って学べる空間、生徒が互いに人間的な成長を支え合える空間につくり変えていくことです。ですから一斉学力テスト、実施と公表はやめるべきだということを申し述べて、次の質問に移ります。
それでは、少人数学級についてです。
子どもたちの教育条件の問題ということで、少人数学級のことです。全国の道府県が三十人学級を初めとした少人数学級に踏み出して、学習面でも生活面でも効果を上げている一方で、東京都だけが四十人の大規模学級に固執していることが、いかに子どもたちにとってひどいことで、矛盾に満ちたことなのか、ますます明らかになったということなんです。
第二回定例会で、中村教育長は、我が党の村松みえ子議員が、東京の小中学校で子どもたちが四十人学級でどういう状況になっているのか見に行ったことがあるのですか、また全国の少人数学級での実践を一度でも見に行ったことはあるんですか、もし行ったこともないんだったら見に行くべきですと質問したことに対して、中村教育長は、先日も知事と一緒に学校訪問をしたところでございますと答えています。知事は、正直に、議員のときには行ったんだ、こういって、知事になってからは行ってないと答弁したんですけれども、中村教育長は学校訪問したところでございますと答えていますけれども、この先日訪問した学校というのはどこですか。
○中村教育長 あのときご答弁する直前だったと思いますけれども、知事とご一緒しましたのは、不登校対策に取り組んでおります八王子市立の高尾山学園という学校を知事と訪問しました。
○大山委員 高尾山学園だということですね。知事は、高尾山学園を第二回定例会で、参考にしたい、こう評価した学校ですね。私たちも高尾山学園には調査に行きました。この公立小中学校の学級認可は四十人ですけれども、運営上のクラスの人数は一学級四人から二十人です。
知事が答弁しているように、固定化したパターンに当てはめずに一人一人に応じたやり方、これが必要だからですね。これは、どの子にも当てはまることではないでしょうか。
○新井学務部長 高尾山学園でございますが、都教育委員会といたしましては、四十人学級として同意しているところでございます。お話のように、学級として固定化するのではなく、必要に応じて少人数のグループを構成して学習等を行っていくということは、少人数による指導の一形態だろうと考えております。
都教育委員会といたしましては、児童生徒の一人一人の能力を伸ばすためには、少人数指導によるきめ細かな指導を進めることが重要であると考えております。
○大山委員 今答弁されたように、きめ細かく進めていくこと、生活面でも学習面でもそれが必要だから高尾山学園も基礎的なクラスを四人から二十人にしているということですよね。全国の道府県でも少人数学級を、それこそきめ細かく丁寧に一人一人ということで、進めているわけです。ここは不登校だということですけれども、児童生徒が不登校になる前にやらなければならないのは、やはり全国で明らかになった一人一人、個に応じたきめ細かい対応、今答弁されたことを東京の子どもたちにもちゃんと保障することだと思います。
私たち、全国の道府県の調査をしました。少人数学級を実施してどういう効果があらわれていますかという調査で、不登校の生徒が減っていると、こう回答している山形県と秋田県、そして東京の不登校の状況を比べてみました。
中学校では、不登校生徒の割合が山形県や秋田県に比べて一%以上の高どまりとなっています。少人数学級を導入した十四年度、山形県、秋田県ですね、その両県とも全生徒に対する不登校生徒の割合はピークになっています。しかし、翌年度から、わずかずつですけれども減少に転じています。
一方、東京都はというと、十三年度がピークで、その後は横ばいです。しかし他県と違うのは、東京の不登校生徒の割合が中学の場合、他の二県よりも一%以上高いということなんですね。東京で一%といえば、二千人になります。このような子どもたちの状況、学校に行きたくても行けない状況の子どもたちを、十七年の数字ですけれども、中学校で六千七百六十五人、小学校で千七百七十一人も生み出していることに、痛みは感じないんでしょうか。
○岩佐指導部長 不登校の解消は、学校教育における重要な課題の一つでございます。一人一人の児童生徒の状況に応じた対策を講ずることが重要であると考えております。
都教育委員会は、全国に先駆けてスクールカウンセラーを公立中学校全校へ配置するとともに、教育相談に関する研修を実施するなど、区市町村教育委員会とも連携し、不登校の未然防止ときめ細かな対応に努めているところでございます。
今後とも、これまでの取り組みを一層充実させるとともに、区市町村における不登校児童生徒が通う適応指導教室や教育相談室、児童相談所等の関係機関による連携の強化を図るなど、児童生徒の実態に応じた不登校対策を推進してまいります。
○大山委員 さまざまな機関との連携ももちろん重要です。同時に、さっきご答弁されたように、重要な課題の一つで、一人一人の児童生徒の状況に応じた対策を講ずることが重要なんだということですよね。
現場では、一人一人の状況に丁寧に対応したくてもできない。それが四十人学級の悩みなんですよ。現場では、校長先生たちも少人数学級を求めています。中学校校長会は、来年度の予算要望で、初めて三十八人学級と数字を挙げて要望しました。どうして三十八人なんですかと伺いましたら、あえて三十八人にしたのは、三十人ではだめだといわれ、三十五人でもだめだといわれ続けて、とにかく子どもたちのためには一歩でも進めたい、そういう切実な気持ちからなんです、そうおっしゃっていましたよ。
小学校長会は、とりわけ小学校一、二年生で少人数学級を要望して、子どもたちに直接責任を持つ学校で判断できるようにしてほしいということを強調しています。子どもたちと日々過ごして、実質的に少人数の学級になったときのよさがわかって、そしてその一方で、四十人に近い人数での子どもたちの様子がわかっているからこそ切実なんですよね。
市長会も、東京都を除くすべての道府県において四十人未満学級編制の取り組みが行われているということを述べながら、四十人未満学級編制の計画的実施を要望しています。
教員は、四十人ぎりぎりの学級だと一人一人の気持ちにとどまっていられない、一人一人の話を聞く余裕がない、そういうことに心を痛めています。保護者も、四十人ぎりぎりのクラスと二十人台などの実質的に少人数学級になるときを経験していますから、少人数学級を切望しているんですね。保護者を初め直接子どもたちの教育に責任を負っている教職員、自治体の切実な声にどうこたえるつもりなんですか。
○新井学務部長 都教育委員会といたしましては、基礎学力の向上に配慮し、きめ細やかな指導を行う上では、多様な集団を編成できる少人数指導が有効であると考えておりまして、そのための教職員定数の改善を行ってきたところでございます。
学級には一定規模が必要であると考えておりまして、今後とも各区市町村教育委員会等に対してその趣旨について周知を図ってまいります。
○大山委員 周知を図っていくことなんか必要ないです。一定の規模が四十人だなんていっているのは、都教委だけですよ。実際、先ほど質疑しましたけれども、都立高校でエンカレッジ高校を設置した目的は、小中学校で力を発揮し切れずにいた生徒が、基礎的、基本的な学力や社会人としての規範意識を身につけることなどを目的とすると答弁されました。だから、足立東高校だったら一学級三十三人に、ホームルームの人数、学級を少人数学級にしているんじゃないですか。
私、足立東高校に伺って、東京都の役割は、小中学校の九年間をお客さんで過ごさせてしまった東京都の責任は大きいということなんです。だからこそ、小中学校の貴重な時代にどの子にも力をつけさせることを保障することが東京都の責任であることです。そのために、都教委はみずから高校生に少人数学級を保障しているわけです。だから、高校生で学び直すというよりはというか、今の存在はきちんとやりつつ、小中学校できちんと丁寧に対応できるようにしていく方がいいわけですね。
その方向をきちんと認めている、三十三人を認めている、それから、少人数多展開を三十三人を基礎にしているということは、みずから少人数学級が必要だということを認めているということじゃないんでしょうか。
○新井学務部長 学級には一定規模が必要と考えておりまして、児童生徒が集団の中で互いに切磋琢磨し、社会的な適応能力をはぐくむために、今後とも学級には一定の集団が必要であるという考え方で進めてまいります。
○大山委員 いつまでも四十人いないと切磋琢磨できないなんていうことをいっていること自体、本当に時代おくれといわれちゃうんですよ。全国の調査をしてどうですか、切磋琢磨できるのは、一定のきちんとした人数、少人数がいるからこそ切磋琢磨できるんですということが、もう実践で明らかになっているわけですよ。都教委だけじゃないわけですね。
足立区では、低学力、生活環境の悪さを克服して、どの子にも本当の学力をつけるために少人数学級を切望しています。小一プロブレムが発生しているし、この段階で学習にしっかりと意欲を持って学級の中で勉強していくという姿勢をとるには、すんなり学びに入っていくことができるように、それから落ちつけるように生活集団は少人数も必要ではないか、こう教育長は区の議会で答弁をして、区の教育委員会も合意しています。
少人数学級にするには正規教員増が必要で、給与を区が負担してでも正規教員の増員を求めているんですね。区市町村が自治体の予算で雇用をして教員を増員する場合、区市町村からの申し出があれば都教委はその分を合わせて採用することを求めますが、どうですか。
○松田人事部長 県費負担教職員の定数につきましては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十一条の規定によりまして都の条例で定めることになりますが、各区市町村の独自の施策を都の条例で決定することは適切ではないと考えております。
また、市町村立学校職員給与負担法におきまして、県費負担教職員の給与は都道府県が負担することと定められておりまして、区市町村が負担することを可能とする規定はございません。
○大山委員 今は制度上の問題があるからできないんだということですね。やはり東京都がきちんと三十人学級を実施することが、こういう足立区などの悩みを解決する上でも早道だということですね。
また、区市町村が雇用する教員での少人数学級の開始については、自治体の自主的な判断を尊重することを求めますが、どうですか。
○新井学務部長 区市町村が独自に任用した教員を活用して学級を編制することにつきましては、具体的な申請が出ておりませんので、都教育委員会として判断する段階ではございません。
都教育委員会といたしましては、基礎学力の向上に配慮をし、きめ細やかな指導を行うために多様な集団を編制できる少人数指導等が有効であると考えておりまして、そのため、教員定数の改善等を図ってきたところでございます。
○大山委員 申請があれば検討するということですよね。
それで、少人数学級にかかわって、現在、小学校一年生のとき、例えば二十一人と二十人の二クラスだったけれども、二年生に進級するときに一人転居してしまって四十人の学級一学級になってしまうとき、学級維持制度として二学級のまま二年生に進級することができるわけですね。同様に、六年生の進級と中学校三年生の進級は学級維持制度はあるけれども、ほかの学年ではありません。
しかし、このような状況になるのはどの学年でも同じわけです。そして、学級数が減ってしまう可能性があるとき、保護者は心配して、毎年どこかで維持してほしいという要望が出ていますね。つまり、少人数での学級を維持してほしいということなんですね。ですから、学級維持制度を全学年に広げることを求めますが、どうですか。
○新井学務部長 学級維持制度でございますが、卒業や進学を控えた小中学校の最終学年への進級時と、集団生活への適応に問題が生じやすい小学校二年生への進級時に、区市町村教育委員会が特に必要と判断した場合に前年度の学級を維持できるというものでございまして、これを全学年に適用することは考えておりません。
○大山委員 都教委の意図はそうだったのかもしれませんけれども、現実には少人数学級を維持してほしいということが保護者の願いなんですね。結局、現場は少人数学級を望んでいるということなんです。かたくなに四十人学級にしがみついていないで、東京の子どもたちにも三十人学級を実現して、一人一人の子どもたちが、どの子も力がつくように、小中学校で力が発揮できなかった、力がつかなかったということがないようにするために教育条件を整備すること、そして、一日も早く三十人学級などの少人数学級に踏み出すことです。
先ほど、最初に教育長に伺いましたけれども、村松議員が質問したのは、四十人学級で授業を受けている学級を見に行ったことがありますか、それから、他県で少人数学級を実践しているのを見に行ったことがありますか、そう聞いたんです。知事は正直に、知事になってからは行っていないということを表明したわけですけれども、教育長は高尾山学園--四十人学級ぎりぎりでやっている、教室で学んでいるようなところは見に行っていないにもかかわらず、高尾山学園でごまかしてしまったというわけですけれども、まずは、教育長自身が知事と一緒に四十人ぎりぎりの人数がいる学級を見に行くところから、都内の子どもたちがどういう状況になっているのかということを見に行くことから出発しなきゃいけないと思います。どうぞ四十人で授業をやっているところはいっぱいありますから、見に行ってくださいということを要望し、そして、一刻も早く三十人学級に踏み出すことを要望して、質問を終わります。
○中村教育長 今、ごまかしたというお言葉があったものですから、ちょっとこだわりますけれども、あのときの質問は学校を見に行ったことがあるかという命題ととらえまして、ああいうお答えを申し上げました。知事も私も五十人学級の時代ですので、四十人学級も重々承知しておりますし、四十人学級のところも見に行っております。よろしくお願いします。
○大山委員 見に行ったのかということですけれども、真意は、今の四十人学級の、何十年前のお話ではなくて、今の状況をぜひ見に行っていただきたいということですので、よろしくお願いします。
○古館委員長 大山委員の質疑が終わりました。
暫時休憩します。
午後三時十九分休憩
午後三時三十六分開議
○古館委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
質疑を続行いたします。
ご発言を願います。
○吉原委員 それでは、私の方から、東京都の教育の日について若干お伺いをさせていただきたいと思います。
これまで我が党は、区市町村との連携を図りながら、家庭あるいは学校や地域におけるさまざまな取り組みを拡充して心の東京革命を着実に推進するとともに、東京都教育の日を中心に、保護者や都民が子どもたちの教育をともに考える契機となる事業をしっかりと実施されるように、こういうふうに意見を述べてまいりました。先日の事務事業でも説明がありましたけれども、心の東京革命教育推進プランを引き続き推進して、東京都教育の日に関する事業などを実施していく、こういう説明をいただいたところでもございます。
そこでまず、確認の意味で、東京都教育の日が制定された経緯と目的についてお尋ねをいたします。
○三田村生涯学習部長 平成十二年に策定されました心の東京革命行動プランにおきまして、教育の日を設定し、心の東京革命に関する各事業の集中的な実施や、学校から家庭、地域への働きかけを行うことにより、子どもたちの健全育成を社会全体での取り組みへと展開していくことが示されました。
その後、平成十五年に改定した心の東京革命教育推進プランにおきましても、都教育委員会としての教育の日を設定することを明らかにいたしましたが、これを受けまして、平成十六年二月に、都民の教育に関する関心を高め、次代を担う子どもたちの教育に関する取り組みを都民全体で推進し、都における教育の充実と発展を図ることを目的といたしまして、十一月の第一土曜日を東京都教育の日に制定したものでございます。
○吉原委員 ことしの都の教育の日に当たりまして、今年度のポスターとリーフレットを拝見させていただきました。いずれも食育をテーマとした児童や生徒、子どもたちによる標語の部門、あるいはレシピの部門の優秀作品が載せてあったわけであります。このポスターやリーフレットを私も拝見して、本当に教育の日という事業が、行政、学校あるいは地域や保護者と一緒に取り組む事業として行われている様子が都民に理解をしていただいているんだろうかというふうな疑問を持ったところでもございます。
これまでの教育の日に関する取り組みの内容と実績をお教えいただきたいと思います。
○三田村生涯学習部長 都教育委員会は、毎年、東京の教育にかかわる重要な事項の中から当該年度における教育の日のテーマを定めており、今年度は、子どもの生活習慣確立、生活リズムと食育をテーマとしております。テーマに沿って標語などを都内の児童生徒を対象に募集し、優秀作品を表彰するとともに、ポスターやリーフレットで広く紹介しております。
今年度は、国立、私立も含めました都内の幼稚園や小中学校、高等学校のほか、都の施設などで教育の日の趣旨や今年度のテーマに沿った合計で約六千八百の事業を実施する予定であり、多くの学校では保護者や地域の人々の参加が可能な事業を実施しております。
また、今年度より、公立学校でのすぐれた事業実践や特色ある教育活動を都内の公立学校に普及啓発し、また、広く都民にも紹介することにより教育の充実に生かそうと東京都教育実践発表会を開催するなど、教育の日事業の充実に努めているところでございます。
○吉原委員 毎年テーマを設定して、事業の数も年々ふえている、こういうことでありますけれども、もう既に制定から三年経過している現在でありますから、制定当初の強い思いというものがだんだん薄れてきているのかなという感じがちょっとしているわけであります。今後、教育の日の趣旨がますます都民の皆さんに浸透されるように、学校、保護者、地域などが一体となって教育に取り組むことが当然必要でありますから、そのためにも、教育委員会がこの教育の日というものに重点を置いていただいて、取り組みにもっと工夫を加えていく必要があるんではないかというふうに思っているところでもございます。
教育のテーマを見ても、十七年度については学校と地域、家庭の連携、こういうことでありました。そして、十八年度は子どもの生活習慣確立、今年度は生活リズムと食育、こういうことでありますけれども、何かこのタイトル、テーマといいましょうか、その対象が限定されているような感じがするわけであります。東京都の教育の日というからには、もっと広くわかりやすい大きなテーマを選定していただいて、地域全体を巻き込んだような事業にしていただきたいなというふうに感じているわけであります。
それにしても、私の周りではこの教育の日というのがあるということ自体を知らない方々はまだまだたくさんいるわけでございまして、それはなぜかなというふうに考えたところ、ある程度学校の中にもそれぞれ教育委員会を通じて事業をお願いしている部分があるんだろうと思いますけれども、肝心かなめのこの十一月の第一土曜日、教育の日として制定をしているわけでありますけれども、この日に何か事業を全くやっていないからではないかなというふうに思わざるを得ないわけであります。
ですから、この十一月の第一土曜日の教育の日というふうに制定をされているわけでありますから、当然のことながら、教育の日としてとらえて、その日に何かしら事業を行うべきではないかなというふうに思います。先ほども答弁にありました教育の日に係る標語やポスターなどの表彰式は若干その前後にやられているようでありますけれども、そうはいっても、服部委員からもかつてから意見もいわれているわけでありますけれども、教師に対しても励ますという意味で何らかのことをやっていく必要が当然あるんだろうと思いますし、あるいは学校を取り巻くPTAの皆さんや、学校にボランティアとして部活なんかにお手伝いをいただいている人たち、そういった方々にも対象を広げていただいて表彰する機会をとるべきではないかと考えますけれども、見解を伺います。
○三田村生涯学習部長 教育の日の広報につきましては、「広報東京都」や都教委のホームページに掲載するとともに、十月下旬から十一月上旬にかけて、すべての都バス車内及び東京メトロ全駅でのポスター掲示などの広報には努めてまいりました。また、平成十九年度には、すべての都立学校と九七%の公立小中学校で教育の日事業に取り組んでおり、これらの事業の実施を通じて、教育の日の趣旨が都民にあまねくとはいえませんが、一定の進展をしてきているものと考えております。
今後は、今年度までの実施状況などから課題の整理や検証を行うことによりまして実効ある広報活動の充実を図るとともに、より適切なテーマ設定を行うなど、教育の日の趣旨をさらに浸透させるとともに、区市町村立のすべての小中学校において保護者や地域を巻き込むような事業を実施することを目指してまいります。また、十一月の第一土曜日に都教委として表彰式を初めとする教育の日にかかわる象徴的な行事を実施することにつきましても、検討を進めてまいりたいと考えております。
○吉原委員 都民の皆さんに教育の日だということを浸透させていく手段というのはなかなか難しいし、大変なことだろうというふうに思いますけれども、それにしても、東京メトロ、地下鉄だとか都バスの範疇の中だけというのは何か寂しいような気がいたしますので、もう少しPRの方法を考えていただければありがたいというふうに思います。
また、今、ご答弁いただきましたけれども、公立小中学校で、九七%の学校で取り組み、実績があり、着実に事業が浸透している、こういうようなお話もいただいているわけでありますけれども、逆に考えて、大変失礼ですけれども、都内の中の公立学校は二千以上あるわけでありますから、その残りの三%といってもそこそこの数の学校がまだこれに対応、参加をされていないということでございます。そういった意味では、ぜひ全都的に、公立学校、少なくとも公立学校の皆さんにはこの教育の日ということをしっかりと周知していただくためにも、都教委としても危機感を持っていただいて、次代を担う子どもたちの教育を都民全体で進めていく、そういう意味での充実を今後図っていただきたいというふうに思っているところでもございます。
最後で恐縮ですけれども、先ほど教育の日において、教育に携わるPTAの皆さんや地域のボランティアの皆さんも含めて、こういうふうな対象を広げてくださいというお話をさせていただきましたけれども、今、都内のすべての小中高の学校が対象となりますと、都教委による表彰というだけでは、全都的な表彰だけではごく限られてしまうわけでございまして、そんなことを考えると、各学校にも周知をしていただく、あるいはPTAや地域の皆さんにも理解をしていただくという意味においては、学校単位で学校長が責任を持って表彰するということも当然可能なわけでございますから、そういったことも教育の日に、各学校で熱意を持ってしっかりと教育に当たっている教師の皆さん、あるいはPTAの皆さんや地域のボランティアの人たちに対して、そういった基本的なといいましょうか、何か条件整備をきっちりと都教委の方でもそろえていただくと、さらに教育の日というのが都民の中にも浸透していくんではないかなというふうに思いますので、そのこともあわせてこれからもご検討をお願いさせていただきたいと思います。
以上で質問を終わります。
○伊藤(ま)委員 私からは、東京都がPFIの手法を用いて都内二カ所、多摩と区部で展開をしていますユース・プラザ事業について、まずお聞きしたいと思います。
まず、PFIを用いて事業をやっている、非常に先進的な取り組みで、精力的にこうした事業を行うということに対しては高く評価をさせていただきたいと思います。
内閣府によりますと、PFIの導入に当たっては三つの成果を期待するというふうに発表しておりますけれども、第一は、国民に対して低廉かつ良質な公共サービスが提供されるということ、二つ目には、公共サービスの提供における行政のかかわり方が改革をされるということ、三つ目には、民間の事業機会を創出することを通じて経済の活性化に資する、この三つの条件を挙げているわけでありますが、きょうは、第一と第二の国が挙げているこの成果がどのように上がっているのかということについて、三問お聞かせいただきたいと思います。
まず、このユース・プラザ事業の実績とその評価について所見を伺います。
○三田村生涯学習部長 事業の実績と評価についてでございますが、例えば区部ユース・プラザの年間の宿泊延べ人数は、平成十六年度が約三万一千人、平成十七年度が約三万七千人、平成十八年度が約四万一千人と推移しております。また、多摩地域ユース・プラザにつきましては、同じように宿泊延べ人数、十七年度は約二万七千人、平成十八年度は約三万五百人と年々増加しております。平成十九年度におきましても、両施設とも引き続き順調に利用者数を伸ばしており、平成十八年度を上回るものと期待しております。
宿泊利用以外の体育施設やレストラン、売店などの利用者数も順調に推移しており、利用料金収入や売り上げ収入も当初の計画を大幅に上回っていることから、両施設とも順調に運営されていると評価しております。
また、経営状況につきましても、両施設の事業収支の実績は当初の計画を上回って好調を維持しており、長期借入金の返済も計画通り進んでいることなどから健全であると評価しております。
○伊藤(ま)委員 当初の目標よりも大分いい実績を上げているということで、まことに結構なことでありますが、特に、この多摩のユース・プラザにおいては社会教育事業を行うということが目的とされております。本来、社会教育事業というのは民間でもやり得る分野でもありますけれども、東京都が本来やらなければいけないことだと思いますが、事業を任せ切りにしてしまい、本来の目的がおろそかになるという危険性があると思いますけれども、所見を伺います。
○三田村生涯学習部長 PFI事業におきましては、事業期間中のサービスの質を維持することが重要であり、PFI事業者が提供する公共サービスの水準を監視する行為、いわゆるモニタリングが行政側の重要な業務となります。
都教育委員会では、本事業について、毎月行う書類による業務確認及び四半期ごとに実施している現地確認におきまして、事業計画どおり適正に管理運営されていることを確認するとともに、財務状況等についても毎年度財務諸表に基づいた報告を受けております。社会教育事業につきましても、都の施策と連動する必要があることから、事業の企画段階から都教育委員会の職員がかかわり、指導助言を行いつつ実施しております。
都教育委員会としては、今後もPFI事業者との良好なパートナーシップを維持しながら、ユース・プラザが適切に運営されるよう努めてまいります。
○伊藤(ま)委員 PFI導入の重要な目的の一つに、低廉かつ良質な公共サービスの提供があり、導入に当たってVFMを評価することは不可欠であります。このユース・プラザ事業についても当然ながら財政支出の削減効果があることを確認し、PFIを導入されたと思います。実際、五%の削減効果があったというふうに聞いておりますが、今、PFIの専門家にいわせますと、事業の導入の成果ということを考えるに当たっては、行政全体としてのVFMを考えていかなければいけないという問題提起がなされております。
どういうことかといいますと、もともと直営でやっていたものをPFIで民間にお願いすると、その直営部隊はそのままになってしまうわけでありますから、そうなってしまいますと、かえって行政が肥大化をしてしまうという問題があるわけであります。しかし、現状ではこの部門のサービスを提供する必要がなくなったからといって人員を削減することができないシステムになっておりますから、次善の策として、定量的な効果、メリットだけではなくて、民間事業者のノウハウや創意工夫など数値化できないメリットをいかにたくさん引き出すかということだと思いますけれども、その数値化できないメリットはどのようなものがあるのか、ご所見を伺います。
○三田村生涯学習部長 今お話がございましたとおり、財政支出と削減効果として数値で示される定量的な評価とともに、限られた財政支出の範囲で事業者の創意工夫により、より質の高いサービスの提供が得られるという定性的なメリットを評価することも重要であると考えております。
ユース・プラザ事業におきましても、例えば区部ユース・プラザでは、民間提案事業としてのフットサル施設の導入やスポーツ教室の開催、レストランメニューの工夫など、多摩地域ユース・プラザにおきましては、立地を生かしたテントサイトやビオトープなどの野外施設の設置を初め、陶芸や料理などさまざまな利用プログラムの開発、親会社の特性を生かした広報、宣伝活動など、従来型の手法により事業を実施した場合、行政側からはなかなか出てこないアイデアも含めまして、PFI事業ならではの効果を得られたと評価しております。
今後も、このような民間事業者の経営上のノウハウや創意工夫のメリットを最大限活用するとともに、利用者サービスの一層の向上を目指して事業者と緊密に連携しながらユース・プラザ事業を進めてまいります。
○伊藤(ま)委員 導入されて三年、かなり実績を上げられているということでございますので、どうぞ行政の全体VFMということも考えながら、この事業が適正に執行されるように都としても努力をしていただきたいということを要望しまして、次の質問に移ります。
次は、区市町村立小中学校の適正規模、適正配置についてお伺いをいたします。
少子化の影響で、区市の多くはその規模を適正化していこうということでさまざまな努力をされているというふうに聞いております。実際は、地元への説明がなかなかできなくて、総論賛成、各論反対という中で大変な苦労をされているということであります。私の地元の葛飾区でも学校の校舎が十数年先には建てかえのピークの時期に当たることから、今、区でもさまざまな検討に入っているというふうに聞いております。
本来、設置者は市区町村でありますから、市区町村独自の判断において自由に選択がされるべきだというふうには思いますけれども、都としてもしっかりと方針を明示して、区市町村の支援を強化するべきだという観点から、以下質問したいと思います。
まず、市区町村立小中学校の児童生徒数の推移と学校数の推移を伺います。
○新井学務部長 まず、小学校の児童数でございますが、最大規模でありました昭和五十四年度と比較いたしまして本年度は五四%、中学校の生徒数は同じく六十年度と比較いたしまして四七%となってございます。
一方、小学校の学校数でございますが、最大規模でありました昭和六十三年度と比較して本年度は九三%、中学校は同じく平成八年度との比較で約九五%でありまして、児童生徒数は約半数となっているのに対しまして学校数はそれほど減少していないという状況でございます。
○伊藤(ま)委員 児童生徒数が約半分に減っている中で学校数はそんなに減っていないというご答弁でありました。先ほどは財政上の面からこの適正化ということについて導入部分でお話をしましたが、子どもの教育環境を整えるという観点からも適正化は必要だというふうに思います。
それでは、適正化、適正化といいますけれども、小中学校の適正規模について、都教育委員会が望ましいとする学級数についてお伺いいたします。
○新井学務部長 国におきましては、小中学校ともに十二学級以上を標準としておりまして、都教育委員会といたしましてもこれと同規模以上を確保していくことが望ましいというふうに考えております。
○伊藤(ま)委員 一学年一学級じゃなくて複数の規模が適正なんだと、国の方針ということもありまして、東京都もこの方針に従ってやっていきたいということの答弁だと思いますが、それでは、なぜ小規模学校がいけないのかと申しましょうか、小規模学校における教育上の課題としてはどのようなものがあるんでしょうか。
○岩佐指導部長 小規模校におきましては、児童生徒同士が協力し合ったり、競い合ったりすることにより切磋琢磨することなど、多様な集団活動を行うことが困難でございまして、活気が低下する傾向があります。小学校では学級数が十二学級を下回りますと一学級の学年ができ、クラスがえができず人間関係が固定化しがちであり、人間関係を構築したり修復したりするなどの調整が難しい傾向がございます。また、中学校におきましては、多様な選択教科や部活動の開設が制限されがちであるといった課題がございます。
○伊藤(ま)委員 さまざまな問題があるということはわかりました。
それでは、小中学校の適正規模化についての取り組みに対する都教委の対応をお伺いいたします。
○新井学務部長 都教育委員会といたしましては、小規模校における教育上の課題にかんがみまして、区市町村が行う小中学校の適正規模化の取り組みを支援する必要があるというふうに考えてございます。このため、平成十八年度に区市町村教育委員会と意見交換を行いまして、その結果を踏まえて、平成十九年度より新しい学校づくり重点支援事業といたしまして、必要な備品、小規模な改修経費、また通学上の安全確保等のための通学指導員等の経費への補助及び児童生徒に対する適応支援相談員の配置などの支援策を提示いたしまして、小中学校の適正規模化に取り組む区市町村が選択できる方式を導入したところでございます。
○伊藤(ま)委員 学校を適正規模化しなければいけないという総論は恐らくほとんどの人が同意をしていただけると思いますが、いざ自分の住んでいる地域の学校がなくなる、また自分が卒業した学校がなくなるといったことについては、やはりいろいろと議論が出てくるんだというふうに思います。
先ほどもいったように、あくまでもこれは市区町村で判断をする問題ではありますが、東京都としてもぜひとも、市区町村が選択をできる方式を導入したというご答弁でありましたけれども、今後とも市区町村の取り組みに対して支援をしていただきたいということを要望しまして、私の質問を終わります。
○中山委員 私の方からは、再任用校長の活用の問題と非常勤講師あっせん任用支援システムのこと、それからものづくり教育について質問させていただきます。
再任用校長の活用につきましては、団塊世代の教育管理職が大量退職期を迎える中、優秀な人材を確保するため、平成十八年第三回定例会の代表質問で我が党が取り上げ、中村教育長は、新たに十九年度以降、区市町村教育委員会と連携して、大量退職のピークを迎えている小学校を中心に、再任用フルタイム勤務の校長、副校長の登用を図っていくとご答弁くださり、都教委の積極的なご努力の結果、実現したものであります。
定年退職する教育管理職の中から再任用フルタイム勤務の校長を任用する制度について、資料もご提出いただいておりますが、導入後の活用はどのような状況になっているのかお伺いいたします。
○松田人事部長 教育管理職の大量退職が続く当分の間、優秀な教育管理職を退職後も活用するために、平成十九年度より再任用制度を教育管理職にも適用いたしまして、大量退職のピークを迎える小学校を中心に、小学校二十四名、中学校二名、合わせて二十六名を再任用校長として任用したところでございます。
制度適用後七カ月が経過したところでございますけれども、区市町村教育委員会からは、豊富な経験を持つ再任用校長の活用によりまして、学校が抱えている教育課題の解決や地域との連携、推進に向けて安定的、継続的な学校経営が行われていると報告を受けております。来年度におきましても教育管理職の大量退職が続くことから、教育管理職の退職者数や年齢構成等を勘案いたしまして、区市町村の教育委員会とも連携を一層図りまして、さらに活用を拡大していきたいと考えております。
○中山委員 退職校長の再任用につきましては、再任用された校長先生個人単位にさまざまな評価があることは承知しております。しかし、大量退職によって経験豊かな教育管理職が急激に不足する現状にあっては、退職校長の再任用は大まかな方向性として大変に有効であり、私どももさらに任用拡大に取り組むべきであると考えております。
しかし、退職校長の再任用は、だれでもよいというわけにはいきません。むしろ今後の再任用人数の拡大のかぎは、都教委も区市教委も、そして現場の父母のだれもが再任用を望むようなすぐれた校長に再任用への意欲をかき立ててもらえるかどうかということにかかっております。したがって、退職校長の再任用制度自体の魅力を高める必要があると思います。とはいえ、給与面などでは全体のバランスもあり、改善にも一定の限界があると思います。そこで、大事なことは、配置計画などにおいて再任用を希望したくなるような配慮を講じることであります。
私がご意見を承った範囲では、退職時に赴任している学校は既に四、五年の間も校長を務めており、そこで再任用を引き受けると、さらに三、四年の間、同じ学校で校長を務めることになる、モチベーションを維持する上でいかがなものかというものがございました。また、かといって再任用後に新たな学校に赴任してしまうのでは、赴任する側も受け入れる側としてもいろいろ不都合が伴うので、できれば退職の一年ほど前に新たな学校に赴任して、周囲の気心が分かり合える中で再任用校長としての職をスタートすることが望ましいというものでありました。
もちろん、今、例として挙げた要望を実現するにはさまざまな困難が伴うと思いますし、工夫してほしい要望の内容は人それぞれに異なるかもしれません。しかし、運用や工夫次第ですぐれた校長が再任用に意欲を抱いてもらえるのなら、費用対効果は高いものと考えます。そこで、今後の再任用校長の配置についてどのように考えているのかお伺いいたします。
○松田人事部長 再任用の任期は制度上、一年ごとの更新となっておりますので、安定的、継続的な学校経営の観点から、再任用校長の配置に当たりましては、原則として退職時の学校に配置をいたしております。
今後につきましては、この原則を維持しつつも、区市町村教育委員会とも綿密に協議を行いながら、本人の資質、能力を十分に考慮するとともに、これまでの経験を生かして学校経営に取り組めるよう運用についてさらに工夫や柔軟な対応についての検討をしてまいりたいと考えております。
○中山委員 ぜひよろしくお願いいたします。
それでは、次の質問に移ります。非常勤講師あっせん任用支援システムの活用についてであります。
公立学校では、教員の産休や長期の病休などが発生した場合に、原則として現場の教員の中で補完し合い、それが困難な場合には副校長が授業の代替を担う制度になっております。当然、休業が長期にわたる場合には学校内での代替の継続が困難になり、教員資格を有する非常勤講師を雇い入れ、授業を担わせることになります。この非常勤講師の選定作業が実は多くの学校にとって大変な負担になっており、副校長が一手に引き受けて対応しているのが実情と聞いております。
副校長は学校長を支え、ただでさえ忙しい中、非常勤講師として雇い入れることが可能な者のリストを参照して一人一人に電話を入れ、交渉し、候補者として決定していかなければなりません。紙ベースで提供されているリストには直近の就労状況が反映されているわけではありませんので、勤務時間内に電話を入れても通じず、また、日中は副校長自身も多忙であるため、非常勤講師探しは勤務時間以外に対応せざるを得ない現状であります。
非常勤講師も教壇に立ち、授業を受け持つ以上、その人選は重要であります。したがって、非常勤講師としての過去の勤務状況において評判の高い人に各学校からの問い合わせが集中します。評判のよい非常勤講師の中にはかなり先までの予約が入っている例もあると聞いております。さらに、最近では、教員不足の影響から、そうした評判のよい非常勤講師のうちのかなりの数が既に正規の教員として採用され始めており、評判のよい非常勤講師を求めての競争は一層熾烈化していると聞いております。質のよい非常勤講師が適宜適切に雇用できないと、空き授業を穴埋めする教員や副校長の負担が重くなり過ぎたり、副校長自身の事務負担も過重になったりして、ひいては他の授業や学校運営にも影響が出始めかねません。
そうした現状を踏まえ、中村教育長は平成十七年の第四回定例会の我が党の代表質問に答え、候補者名簿をデータベース化しまして、都立学校はもとより、区市町村教育委員会においても活用が可能となるよう、インターネットによる検索システムを来年度早期に稼働できるよう取り組んでまいりますと積極的なご答弁をいただき、まことにありがとうございました。区市の教員の喜びの声は我が党にも聞こえてまいりました。
しかしながら、本日ご提示いただきました資料によりますと、区市の小中学校におきましては、都教委が苦労して作成した非常勤講師あっせん任用支援システムの活用が余り進んでいないようであります。都立学校では一〇〇%活用が進んでいるとのことでございますが、区市においては非常勤講師あっせん任用支援システムの利用が進んでいない主な理由はどういう点にあるとお考えでしょうか、お伺いいたします。
○松田人事部長 非常勤講師あっせん任用支援システムは、都立学校及び区市教育委員会が都の講師登録制度に基づいて登録された講師に関する情報を閲覧、検索いたしまして、任用を具申する事務を効率的に処理するため、平成十八年度に導入されたものでございます。
現在、約半数の区市がこのシステムを利用していませんけれども、その主な理由は、区市教育委員会が東京都教育委員会に任用具申する際に、講師の氏名、勤務校等の個人情報をインターネット回線で都教委に送信をすることになりまして、そのことが各区市の個人情報保護条例により制限されるということが挙げられております。
○中山委員 資料を見ますと、区市の半分が利用しているといいましても区市教育委員会レベルの利用であり、副校長が学校内で活用している実績はゼロであります。さらに、今のご答弁によりますと、そもそも都立学校では学校単位の本支援システムの活用を前提としているのに対し、小中学校の副校長の利用はそもそも前提としていないということであります。
この支援システムの活用方法において、そのような立て分け方はどのような考え方から生まれているのかお伺いいたします。
○松田人事部長 このシステムは、非常勤講師情報の閲覧、検索から任用具申の処理までを一体的に処理するものでございまして、任用具申を担当する都立学校の副校長及び区市町村教育委員会の担当職員の事務を支援することを目的としております。
小中学校の副校長は、区市教育委員会が作成した講師候補者リストをもとに講師との折衝を行っておりますけれども、このシステムの稼働によりまして、候補者リストを作成する際に講師の空き時間数などがリアルタイムで確認できるようになっておりまして、副校長にとってもそういう意味ではメリットのあるシステムと考えております。
○中山委員 今のご答弁を私なりにまとめてみますと、この支援システムが講師情報を検索するだけでなく、任用具申、決定までのプロセスを網羅したシステムであることから、区市では学校単位で活用できないという制約が生まれているというふうに思います。ご答弁のありましたとおり、現時点でも副校長が区市の教育委員会まで出向き、検索を行えば利用できるかもしれないんですけれども、実際の便益性を考え合わせますと、せっかくのシステムがほとんど利用しにくい現状となっていると思います。
小中学校の副校長は、講師の折衝事務に大変苦労していると聞いております。講師との折衝において、このシステムにより講師情報を閲覧、検索することが学校内でできるようになれば、それだけでも有用であります。小中学校の副校長が当システムの講師情報の閲覧、検索を利用できるようにすべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
○松田人事部長 当システムは、先ほども申し上げましたように、講師情報の閲覧、検索と任用具申をあわせた事務の支援システムとなっております。講師情報の閲覧、検索に限りまして小中学校の副校長が利用できるようにするためには、システムの改修とセキュリティーの確保のためのIDナンバー付与が必要でございます。
小中学校の副校長が、講師との折衝において、現在、相当の労力を要するものとなっているというのはご指摘のとおりでございまして、その事務の効率化を支援するシステムとしても活用できるよう、今後、学校や区市教育委員会の意見も踏まえまして、このシステムの改善について検討してまいります。
○中山委員 現時点で、システムの改善の検討にまで踏み込んでご答弁くださったことの意義は大変大きいと思います。セキュリティーの確保等システム改善のためにいろいろな課題があるかと思いますが、ぜひお取り組みをお願いいたします。
なお、これは要望になりますが、その検討の際には、ご答弁にありました学校や区市町村教育委員会の意見を踏まえとの言葉のとおり、次の二点を検討項目に加えていただきたいと思います。
一つは、閲覧、検索できる講師情報の項目をどう組み立てるかということであります。現場の小中学校の副校長の意見をよく吸い上げていただきたいと思います。副校長さんたちが知りたい情報をできる限り網羅できるシステムにしていただきたいと思います。
二点目は、最初の質問に対するご答弁で、区市の個人情報保護条例による制限の影響との指摘がございました。この点につきましても、個々の区市ごとに具体的にどのような条例上の規定が壁になっているのか聞き取り調査を実施していただいて、セキュリティー確保上の専門的なアドバイスや他区市の工夫例などを紹介するなど、この支援システムの活用ができる限り進むよう丁寧な後押しをお願いしたいと思います。中には、個人情報保護審議会や電算情報審議会などへの諮問手続などの事務負担に区市教委が二の足を踏んでいるだけの可能性もあると思いますので、よろしくご対応いただくことをお願いして、次の質問に移ります。
最後に、ものづくり教育について質問をさせていただきます。
私は、足立区の選出の都議会議員でございます。足立区は職人のまちでございまして、いろいろ最近、世間をにぎわせていることもございますけれども、子どもたちの幸せを願う、教育上、一生懸命頑張っている努力の結果であります。その子どもたちの幸せを願う意味から、ものづくりということに力を入れていただいて、人材育成に応援をいただきたいという意味から質問させていただきます。
去る十月六日、「働くって素晴らしい!~子供たちへのメッセージ~」と題した昨年度に引き続く第二回目のキャリア教育推進フォーラムに参加をさせていただきました。私の地元足立区の都立高校生も、会場内の整理役員をはきはき、きびきびとした立ち居振る舞いで務めており、大変に感動いたしました。内容的にも小中高の各児童生徒さんがみずからの職業体験を工夫して報告をしてくださるなど、子どもたち主体でキャリア教育の重要性と効果をアピールする絶好の機会となったと思います。
余談になるかもしれませんが、役員を務めてくださった高校生の晴れがましい笑顔を見ておりますと、大人たちから評価されるようなことを子どもたちの力でなし遂げることの喜びと自信は大変な教育効果があるんだなということを実感いたしました。最近の子どもたちはとか、あるいは親たちはと嘆く前に、東京マラソンの運営に協力をしてくださった都立高校生の活躍の例などを含め、大人と子どもたちが何か社会的に意義のあることに一緒に力を合わせて取り組む機会をふやしていけば、健全に成長していこうとする子どもたち本来の特性は確実に開花していくと私は思います。
ところで、そのキャリア教育フォーラムにおける発表の中でもいみじくも発言があったわけなのですが、どうしても高校生段階になりますと現実的な職業選択の問題と絡み、キャリア教育の対象となり得る職業の幅が狭まってくるという難点があります。確かに小学校レベルでは、どの職業も子どもたちにとって純粋な発見や喜びの対象となり得る状況にあります。しかし、高校生ともなりますと、職業は就職という現実的な問題と重なってきます。その結果、身の回りに存在する大人たちの職種であるホワイトカラーやサービス業といった職業にキャリア教育の対象が偏っていくことになります。
つまり、現にものづくりに取り組んでいる大人の数が少ないことがものづくり人材のさらなる不足を招くという悪循環を生んでおります。そうした負のスパイラルを断ち切るためには、ものづくりを具体的に選択肢にとらえ始めた都立工業高校や都立高専の生徒だけを対象にものづくり教育を進めていては効果が薄いということになります。就職を考え始める高校段階の指導だけではなく、もっと早い小中学校段階からの取り組みが重要であります。
もちろん、本来的にはどの職種も大事な職業であります。しかし、天然資源の少ない我が国においてものづくりという産業界の根幹が揺らぐことは、それを取り巻く販売業も、流通業も、金融業も、サービス業もやがては衰退し、結果的には子どもたち全体の就労の可能性を狭めることになってしまいます。
先日、ある識者から、ロンドンは金融、ニューヨークとパリは観光、そして東京はものづくりで生き残りの世界戦略を構築するべきであるとの意見を拝聴しました。私も、この国の将来を真剣に考えるならば、多かれ少なかれ似たような結論に至るのではないかと考えております。
例えば、小中学生のうちから地域にある町工場や工芸品をつくる職人のいる職場へ行って体験したり、人と触れ合ったりする機会をつくり、ものづくりに関心を抱く人材のすそ野を広げる工夫が大切であります。社会構造の変化に対応した巨視的な視点から人材育成のあり方に一定の方向性を持って臨んでいくことは公立学校教育の大事な役割であると私は考えます。
現実に、最近の我が国の経済動向を見ますと、景気は徐々に回復し、製品の受注などがふえてきている状況にありながら、就職の希望者がいないとか、後継者がいないといった人材不足が特にものづくり産業において深刻な課題となっております。そこで、都内の小中学校において工場やものづくりの職人と触れ合う機会についての状況はどのようになっているのか、お伺いをいたします。
○岩佐指導部長 小学校では三年生の社会科の授業で地域の実態に応じ、地域にある工場や伝統工芸品などをつくる工房の見学や調査を行うなどの学習を行っております。五年生になりますと、我が国の工業生産についての学習の一環といたしまして、多くの学校で自動車工場など大きな工場への見学を実施しております。また、中学校では、職場体験学習の一環といたしまして、地域にある工場や伝統工芸品などをつくる工房で実際の仕事を体験する生徒もおります。
○中山委員 見ること、体験すること、これは、子どもたちにものづくりに興味、関心を抱かせていく取り組みの手始めとして一番大事な視点であると思います。
ところで、小学生の場合は見学が主で、中学生が体験ということのようでございますが、そのすみ分けはどのような考え方から導かれるものなのかお伺いいたします。
○岩佐指導部長 望ましい勤労観、職業観を身につけ、自立した人格を形成するためには、子どもの発達の状況に応じた計画的、系統的な指導を行うことが必要でございます。そのため、体力や判断力が十分発達しているとはいえない小学校段階では見ることや調べること、また、中学校段階では実際に働く体験を中心とした学習を行うことが大切になっております。
○中山委員 今、ご答弁いただきましたように、発達段階に応じた取り組みが重要ということでございます。しかし、ものづくり分野の人材不足は他の分野に比べ深刻な状況にあります。ものづくりという地道な世界よりも華やかでおもしろおかしい世界に目を奪われがちであるのは人の常であり、現代はそうした刺激が子どもたちの周りを埋め尽くしております。よほど意識して積極的にものづくりへの関心を高める教育指導を効果的に積み重ねていきませんと、はっきりとした成果には結びつかないのではと考えております。
そこで、ものづくりに関する分野の人材不足を解決するために、都は、子どもの発達段階に応じた計画的、系統的なキャリア教育をどのように進めていくのかお伺いいたします。
○岩佐指導部長 都教育委員会では、児童生徒の将来の目的意識や学ぶ意欲を育てるねらいから、小学校からの発達段階に応じた系統的なキャリア教育の展開を図っております。小学校では身近な職業への関心意欲を向上させることに、中学校では興味、関心に基づく勤労観や職業観の形成に、さらに高等学校では勤労観、職業観の確立にそれぞれ重点を置いているところでございます。
具体的な取り組みといたしましては、工業高校等において小中学生を対象として開催するものづくり教室、中学二年生が五日間程度職場体験を行うわくわくウイーク東京事業、そして高校生がものづくり企業等において就業体験を行いますインターンシップなどを実施しているところでございます。
○中山委員 現在の取り組みにつきましてはよく理解できました。ぜひそうした区市の小中学校における取り組みにつきまして、実態の把握と取り組みの拡大、内容の充実に向けて、都も区市相互間の情報交換や先進事例の紹介に努めるなど積極的なイニシアチブをおとり願いたいと思います。
しかし、ものづくり人材の育成、獲得という面では、現状の取り組みに加え、これを重視する都教委の確固たる考え方をさらに強く鮮明に打ち出す新機軸ともいうべき取り組みが必要であると思います。今後、さらにどのような取り組みを重ねていくのか見解をお伺いいたします。
○岩佐指導部長 ものづくり人材の育成は、小学校段階から行うことが大切でございます。現在実施しておりますものづくり教室では、喜々としてものづくりに励み、ものづくりに強い関心を持つたくさんの小中学生の姿が報告されております。今後も、ものづくり教室の内容のより一層の充実を図ってまいります。
このほか、工業高校、高専の教員が小中学生を相手に理科、技術科の授業を行ったり、小中学校教員を対象とした研修会の講師になったりする授業などを通して、小中学生のものづくりに対する関心を高めてまいります。
○中山委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。私どもも、都教委のものづくり教育に対する新機軸、積極的な取り組みをしっかりと応援してまいりたいと思っております。
公教育の関係者が国の将来的課題を冷静に分析し、明確な方向づけと不退転の決意を持って現場の教育に臨んでいるかどうかは、優秀なIT技術者を大量に育成しているインドの数学教育や、一人っ子政策が進む中にあっても極めて優秀でたくましいエリート集団を生み出している中国の例などを見ても極めて重要であることがわかります。子どもたちの職業選択の自由は、我が国の長所としてどこまでも尊重していくべきでありますが、それだけにより一層、我が国の教育関係者は、広範な情報収集と綿密な検討に裏づけられた子どもたちの自発的な関心を引く、より高い効果の教育プログラムを整えて、ものづくり教育を進めていく必要があります。
ものづくり教育を進めて、ものづくり人材のすそ野を広げることは、より優秀な人材をものづくりの世界に獲得していくことにつながります。本来、ものづくりは、国を挙げて優秀な人材を投入していってこそ価値があると思います。東京の中小企業が誇る世界的なものづくりの技術も、学歴だけではなく、極めて優秀な人材が精進と研究を積み重ねてつかんだ技術ばかりであります。
先ほどのご答弁にもありました勤労観、職業観という言葉を私なりに理解してお話しさせていただきますと、小中学校においては見る、聞く、体験するといった五感を通じてものづくりに触れて、あこがれを生み出させる、そして、その後は五感に刻まれたものづくりの記憶を具体的な職業選択に結びつけるような沈潜化、血肉化という段階を特に中高生レベルで行う必要があると思います。すなわち、すぐれた技術を身につけたり、すぐれた製品を生み出せるようになったりすることが人生設計上どれだけのメリットに結びつくのかということを子どもたちに実感させていく必要があります。
最近、職業格差の拡大が広がっているという指摘の新聞記事を読みました。単なる正規職と非正規職の違いといった単純な問題ではありません。その指摘によれば、機械やコンピューターに使われる仕事しかできない人と創造的な何かを生み出す仕事に従事できる人との相違であり、どうしても前者は低い賃金に抑えられ、後者はより高収入を得ていく傾向にあるとのことであります。すぐれた製品を生み出す技術を持つ人は、その人自身の存在を職場に必要とする創造的な仕事に従事する人に含まれると思います。
反面、日本においては接客サービスの質に応じて対価を支払うという意識が薄く、サービス業で年数を重ねてもなかなか収入のアップにつながらないというつらい現実もあります。無垢な夢を抱く子どもたちに突きつけるにはあまりにも酷な姿かもしれませんけれども、学校という優しい世界を卒業すれば弱肉強食の世の中にさらされるのは子どもたちであります。私たち大人は、こうした世の中の現実そのものの変革に取り組みつつも、同時に、日本の豊かな将来のために、子どもたちの幸せな人生設計を切り開くために、より多くの小中学生が、高校生になったときにはものづくりをキャリア教育の対象に選んでいけるような、そういう人生の職業選択というものをしっかりと見詰める機会というものを都教委のリードによって構築していただきたいと思います。
以上の要望をさせていただきまして、私の質問を終わります。
○早坂委員 指導力不足教員と期限つき任用教員についてお伺いをいたします。
まず、一般に、地方公務員の採用試験は人事委員会が行いますが、公立学校の教員の採用は教育委員会が行っています。その理由も含めて、教員の採用方法及び受験資格についてお伺いいたします。
○松田人事部長 教育公務員特例法第十一条は、教員の採用は選考によるものとし、その選考は、教員の任命権者である教育委員会の教育長が行うと規定をしております。都におきましても、教員の採用選考は教員免許状を既に取得している者または任用までに取得見込みのある者の中からその資質や適性、専門性を見きわめ、よりふさわしい人材を確保することが重要でありまして、教員の任命権を持つ教育委員会の教育長が行っております。都教育委員会におきましては、筆記試験や面接等により能力実証をし、教員としての熱意や使命感並びに実践的な指導力を重視した選考を行っております。
なお、受験資格といたしましては、先ほど申し上げた免許要件のほか、一般選考四十歳未満、教職経験者、社会人経験者等を対象とした特例選考は四十五歳未満としております。
○早坂委員 地方公務員として採用されても、条件つき採用期間、いわゆる試用期間が一般の地方公務員より教員の方が長いようであります。このあたりの事情について伺います。
○松田人事部長 地方公務員法第二十二条第一項によりまして、一般職の地方公務員には六カ月間の条件つき採用期間が設けられております。教諭等につきましては、新任教員に対しまして実践的指導力と使命感を深めるとともに、幅広い知見を得させることを目的といたしまして、採用後一年間の初任者研修制度が設けられております。この初任者研修制度の実施に伴いまして、教育公務員特例法によりまして教諭等の条件つき採用期間を一年間とする特例が定められております。
○早坂委員 ただいまの二つのご答弁を私なりに解釈すると、教職免許という高度な資格を持った人であるから一般公務員とは別の採用方法で採り、また、より高度な水準に達するべく長い試用期間が定められている、それゆえに一般公務員より給料は高い、こんなことだろうと思います。
今日、教員の人件費は、義務教育費国庫負担制度により国が三分の一、都道府県が三分の二の割合で負担しています。しかし、教員は区市町村立の学校に所属しておりますから、採用教員の給料の支払いは、都道府県でなく区市町村が行うべきものと考えます。ご見解を伺います。
○松田人事部長 現行制度におきましては、区市町村立小中学校の教職員の給与は義務的経費であり、かつ多額であるため、区市町村より財政力が安定している都道府県の負担とされ、あわせて広く区市町村を超えて人事を行うことにより教職員の適正配置と人事の交流を図るため、その任命権は都道府県が有することとされております。
しかし、東京都教育委員会といたしましては、本来、区市町村立小中学校の教育につきましてはその実施主体である区市町村が責任を負うべきであり、教職員の人事権の行使と給与の負担についても区市町村が行うべきと考えております。
○早坂委員 新たに採用された教員はどのような研修を受けるのでしょうか。あわせて、中堅、ベテラン教員の研修制度についてもお伺いいたします。
○岩佐指導部長 新規に採用されました教員は、一年間にわたりまして教職員研修センターにおいて教員としての使命感や授業力向上等に関する研修を受講するとともに、勤務校において授業研究等を中心とした年間三百時間以上の実践的な研修を受講いたします。初任者研修を修了した後、都立学校におきましては授業力の向上を図る二、三年次授業研究、四年次授業観察を受講いたしまして、小中学校につきましても、ほとんどの区市町村で同様の研修を受講するようになっているところでございます。さらに、在職期間が十年に達した後に十年経験者研修を受講いたします。
都教育委員会は、これらの必修研修のほかに、校長、副校長、主幹などの職層に応じた研修や、教科や教育課題等についての研修などを実施し、教員のライフステージに応じた資質向上を図っております。
○早坂委員 教員の日常の勤務評定とそれに対する処遇への反映はどのようになっているか伺います。
○松田人事部長 教育職員の資質能力の向上と学校組織の活性化を図ることを目的といたしまして、平成十二年度から自己申告と業績評価の二つの柱で構成する人事考課制度を導入しております。このうち、業績評価は校長が授業観察などにより教員の職務遂行状況について把握をし、評価を実施するものでございまして、その結果を処遇へ反映させることで能力と業績に基づいた人事管理を推進しております。
具体的には、勤務成績が上位の者については昇給幅を大きくし、下位の者については小さくする昇給制度を実施しております。
○早坂委員 教員の中には、学習指導や学級経営などを適切に行えない、いわゆる指導力不足教員がいることが問題になっています。この指導力不足教員の定義と判断基準などについて伺います。
○松田人事部長 指導力不足教員につきましては、教育委員会規則において要件が定められておりまして、教科に関する専門的知識等の不足、指導方法が不適切あるいは児童生徒を理解する能力等が欠けているなどにより、学習指導、学級経営、生活指導などを適切に行うことができない者で、東京都教育委員会教育長が校長等の申請に基づき指導力不足であると認定した教員をいいます。
指導力不足教員の認定に当たりましては、申請書類だけではなく、実際に学校に出向きまして授業観察を行い、要件に合致しているかどうか判断をしております。
○早坂委員 では、指導力不足教員はどのくらいいるのでしょうか。また、制度発足以来の実績はどのようになっていますか。あわせて、指導力不足教員と認定された場合、どのような措置がなされるのか伺います。
○松田人事部長 今年度、指導力ステップアップ研修を受講している指導力不足教員の人数は十三名でございます。平成十三年度から十八年度におきまして、指導力ステップアップ研修を受講した教員は五十六名でございまして、そのうち、指導力が改善され現場に復帰した者が十七名、研修途中に自主退職した者が二十名、教員として不適切と判定された者が十四名、その他休職者等が五名でございます。
次に、指導力不足教員に対する措置についてでございますが、指導力不足教員と認定された教員は、指導力改善のため、指導力ステップアップ研修が命ぜられ、必ず受講しなければなりません。指導力ステップアップ研修では、長期、通所、短期の三つのコースが設定されておりまして、個々の教員の状況に応じてコースを決定し、教職員研修センター及び当該教員の所属校において研修を実施することとしています。
なお、指導力不足等により日常の指導に著しく困難を来している教員は、教壇から外しまして、年間を通して主な研修場所を教職員研修センターとする長期講習を受講させることとしております。
○早坂委員 東京都内の公立学校には六万人の教員が勤務しています。マスコミで報じられる学級崩壊などの事例数に比べると、指導力不足と認定すべき教員が今年度はわずか十三人とは驚きで、実際にはそれ以上たくさんいるのではないかという印象を率直に持ちます。
指導力不足教員の認定に当たって提出する申請書類は膨大なもので、それが校長に申請をちゅうちょさせる遠因だとも聞きます。あるいは、指導力不足教員が認定されると、それを埋め合わせるためにその学校の教員全体の負担が重くなり過ぎるので、それゆえに申請しないという見方もあるようです。そのほかにも、現行の指導力不足教員の認定の仕組みには幾つか課題があるように思います。ご見解を伺います。
○松田人事部長 指導力不足教員に係る課題についてでございますが、お話の指導力不足教員に係る申請手続に関しましては、制度導入時、申請に際して相当数の提出資料が必要とされたことから、校長、副校長にも負担感がございました。また、昇任直後の教育管理職の一部には制度の理解不足があることなども申請者数に影響を与えている可能性がございます。そこで、今年度は申請書類の簡素、簡略化などによりまして負担軽減を図るとともに、区市町村教育委員会を通じ、機会あるごとに制度趣旨の周知徹底に務めてまいりました。
次に、指導力不足教員が教壇を外れた後の後任の補充についての問題でございますが、指導力不足教員の所属校では、指導力不足教員が指導していた児童生徒に対しまして学校全体でサポートをしているところでございますけれども、後任の補充については指導力のある教員を配置することが大事だと考えております。今年度、所属校支援の観点から、指導力不足教員に係る後任教員の配置について、従来より繰り上げて決定することといたしまして、一般異動の中で教員を配置できるよう改善したところでございます。
今後とも、申請手続や後任の補充等の課題につきまして、区市町村教育委員会や現場の校長の声も聞きながら適切に対応してまいりたいと考えております。
○早坂委員 教員が、年度途中、短期あるいは長期に欠ける場合の対応について伺います。
○松田人事部長 教員が短期的に休暇を取得する場合の児童生徒への指導につきましては、時間割の変更や他の学年、他の学級担当の教員による指導の実施など各学校におきまして指導体制を整えて対応をしております。また、教員が妊娠出産休暇や育児休業を取得した場合には、その代替となる臨時的任用教員を配置しております。病気や死亡等の事由によりまして長期にわたり欠員となる場合には、その時期や期間などに応じまして期限つき任用教員や非常勤講師の配置を行っております。
○早坂委員 非常勤講師とはどういうものでしょうか、お伺いをいたします。
○松田人事部長 非常勤講師とは、地方公務員法の適用を受けない特別職の非常勤職員でございます。非常勤講師の勤務内容は教科指導の授業のみに限られておりまして、学級担任や校務分掌を担当することはできません。任期は、欠員となる期間に応じ、最長一年間でございます。
○早坂委員 従来の補欠制度にかわって期限つき任用教員という新しい制度が導入されました。これにより何が変わったのか伺います。なお、特別認定による任用もできると聞きますが、これはどういうものか伺います。
○松田人事部長 いわゆる団塊の世代の大量退職に伴います採用数の増への対応を、単に大量の新規採用者で補充すれば教員のいびつな年齢構成を是正することができないばかりでなく、質の低下を免れないと考えております。そこで、教員採用候補者名簿に登載する数をこれまで以上に精査をいたしまして、確実に必要な数を新規採用することとし、その上でなお、学級増や勧奨退職、病気休職等、予測困難な欠員がある場合に備えて、地方公務員法に基づいて期限つき任用教員制度を導入することといたしました。
期限つき任用教員の勤務内容は正規教員と同様でございまして、授業を行うだけでなく、学級担任や校務分掌も担当でき、任用期間は最長一年間でございます。期間に定めがあること以外は基本的に正規教員と同様で、地方公務員法の適用を受けます。
任用に当たりましては、教員採用選考において採用枠の関係で合格に至らないものの、それに準ずる成績上位者から任用をしております。
なお、特別認定とは、名簿登載者がいない場合に、要項を定めまして都教育委員会が特別に認める者を名簿に追加し、任用することができるという制度でございます。
○早坂委員 期限つき任用教員は、能力的には十分合格レベルに達しているが定員の関係でたまたま不合格になってしまっただけという見方があるかもしれません。しかし、期限つき任用教員は、合格者のうちで成績が最も下位の者であります。だからこそ正規の合格者と違って任用が継続されないのが原則です。それならば、期限つき任用教員にこそ研修をしっかり受けてもらうべきでありますが、年度途中の採用であったならば正規合格者が受けた研修すら受けられない可能性が出てきます。
さらに、その期限つき任用教員にすら入れなかった者に対し、教員不足状態を解消するために広げた枠をさらに広げたのが特別認定です。すばらしい青年が期限つき任用教員としての活躍ぶりを高く評価され、翌年四月、晴れて正規教員として採用されるという事例が頻発されることを願います。
しかし、可能性の話であるならば、もし仮に指導力不足教員が年度途中に教壇から去り、その後がまに入った教員が期限つき教員であるならば、またしても指導力に劣るという前提で状況に対応すべきであります。指導力不足教員だと認定されて教員が欠けた場合の後任補充には最大限の手厚い指導体制で臨み、これまでのおくれを挽回する必要があると思います。
来年度の期限つき任用教員の採用想定数や今後のあり方について伺います。
○松田人事部長 平成二十年四月一日付の採用候補者として二千九百八十一人の採用選考合格者を確保いたしましたが、学級増や勧奨退職、病気休職等予測が困難な欠員に備え、期限つき任用教員採用候補者名簿の登載者は千百九十七名といたしました。期限つき任用教員として任用した場合には、教育公務員としての基礎的要素、学習指導、特別活動、生活指導、進路指導などの専門的な知識を身につけさせるため、新規採用者向けの初任者研修の一部を受講させ、年間を通じて体系的な指導を行っているところでございます。
今後の育成のあり方について、区市町村教育委員会や学校長の意見を聞きながら、さらに検討を進めてまいります。
○早坂委員 これまで期限つき任用教員について、るる伺ってまいりました。学校現場で校長の指導を受けながら教員としての資質を高め、一方で、優秀な者には正規教員になる道をつくり、他方で資質が不十分な者は教員を去っていくというこの制度は、教員の大量採用を控え、かつ教員の質を見きわめるには有効な制度であると思います。
しかしながら、期限つき任用教員は、任用が期限つきではあっても正規教員であり、新規採用教員として教壇に立ち、児童生徒の教育に当たるわけでありますから、そこに学校や教育委員会の支援は欠かせません。また、将来の優秀な教員となるために育てていくということの必要性は、むしろ正規任用の教員より大きいかもしれません。今の答弁では、初任者研修の一部を受講させるということでありましたが、彼らには、初任者研修の全部プラスアルファの研修が必要ではないでしょうか。
制度が導入されてまだ一年足らずです。研修の拡大を初め、ぜひよりよい制度となるよう、改革を続けていただくようお願いいたします。
○伊藤(ゆ)委員 ラストバッターでございますので、テンポよく質疑をしていきたいと思います。
まずは、間もなく改訂をされます学習指導要領の改訂による総合学習の時間の削減についてお尋ねをしてまいりたいというふうに思います。
一九九八年に新しい学習指導要領が改訂をされて、教科の授業時間を減らして総合学習を本格導入する試みがスタートいたしました。以来、学力低下の懸念が渦巻きながらも、各学校では総合学習の時間の研究開発を行ってきたところでございます。ところが、二〇〇三年のOECDの学力調査で、先ほども質疑にありましたけれども、読解力が〇〇年の八位から十四位に下落をすると、日本の子どもの学力低下が叫ばれ、総合学習の見直しの大合唱が始まったように思います。
教育現場では、せっかく総合学習の指導方法が確立をし始めてきているのに、学力調査の結果に振り回されて改訂されるのではたまらないという声も聞かれます。私も、今回の改訂で国や都が何を見直し、何を目指すつもりなのか、判然といたしません。教員からは総合学習がなくなってしまう方向にあるんではないかという不安の声も聞いたりいたします。この質疑ではまず、国や都の目指す公教育のあり方についてお伺いをしていきたいと思います。
まず、都は、今回の指導要領の改訂の契機となったのは何だというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。
○岩佐指導部長 学習指導要領は、社会の変化や子どもたちの現状を踏まえ、それぞれの時代において一人一人の人格の完成と国家社会の形成者の育成という教育の目的の実現を図るべく、おおむね十年ごとに改訂をされてまいりました。今回の改訂に当たりましても、社会の変化や子どもたちの現状を見据え、いかに教育の普遍的な目的の実現を図るかという観点から検討されております。
○伊藤(ゆ)委員 十年ごとに改訂をされるというふうに今、ご答弁がありましたけれども、この改訂のきっかけになった一つはOECDの調査も影響しているんではないかというふうに思います。事実、今回の学習指導要領の改訂で三十年ぶりの授業時間増になりそうだということでありますし、小学校の低学年で週九十分ほど、高学年だと四十五分、中学校では五十分ほどふえることになっています。
今回の見直しは学力向上のためのいわゆるゆとり教育の見直しと見ていいのかどうか、ご所見を伺いたいと思います。
○岩佐指導部長 文部科学省では、授業時数の増加につきまして、現行の学習指導要領の基本的理念は変わるものではなく、子どもたちがつまずきやすい内容の確実な習得を図るための繰り返し学習や、知識、技能を活用する学習を行う時間を充実するためとしているところでございます。
○伊藤(ゆ)委員 ここが非常にわかりにくくさせているというふうに思うんですけれども、今、答弁の中でゆとりの見直しではないというふうにいわれましたけれども、事実、主要教科の授業時間はふえ、総合学習の時間が削減されたことで、報道各紙ではゆとりの見直しだと一斉に書いております。
そのため、総合学習がゆとりの代表選手のように伝わっており、あたかも学力低下の悪玉のようにとらえられているわけでありますけれども、都は、総合学習の時間が学力を下げているというふうに考えていらっしゃるかどうかお伺いしたいと思います。
○岩佐指導部長 総合的な学習の時間は、学び方や物の考え方、よりよく問題を解決する能力等をはぐくむとともに、各教科における基礎的、基本的な知識、技能の習得にも資するものであり、確かな学力を育成する上で重要であると考えております。
○伊藤(ゆ)委員 ここで大事なことは、学力の定義だというふうに思います。今、総合的な学習の時間は大事だという答弁がありましたけれども、学力をどう定義するかによって、恐らくとらえ方は違ってくるんではないかというふうに思います。
学力向上を目指して学習指導要領の見直しが行われますが、保護者の多くは、学力といえば受験に強い学習成果を想像しがちであります。国のいう学力とは何を指しているというふうに都は考えておりますでしょうか。
○岩佐指導部長 学校教育法の改正の過程におきまして、学力の重要な要素として、基礎的、基本的な知識、技能の習得、知識、技能を活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等そして学習意欲が示されております。
○伊藤(ゆ)委員 今、国の学力の定義をお伺いしましたけれども、都の考える公立学校が担う同じく学力とはどのようにお考えでしょうか。
○岩佐指導部長 都教育委員会が考える学力は、単に知識の量ではなくて、みずから学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力などを含めたものであり、国の考え方と変わるものではございません。
○伊藤(ゆ)委員 ということは、国も、都も、基礎的な知識と並んで思考力や学習意欲の向上が学力だというふうに定義されているわけでございます。ここで、今後の議論をわかりやすくするために、国や都の目指す学力をまさに真の学力とするならば、塾が目指す学力を受験の学力と定義しておきたいというふうに思います。
そこで、伺いますが、学習意欲の向上などまさに真の学力向上に総合学習は有効と考えますでしょうか。
○岩佐指導部長 総合的な学習の時間では、地域や学校の特色に応じた課題や児童生徒の興味関心に基づいた課題などについて学習活動を展開することから、意欲的に活動することが期待できるものと考えております。
○伊藤(ゆ)委員 今、学習意欲の事実上、向上につながるという趣旨の答弁であったと思いますけれども、ところが今回、総合学習は削減される方向となっていて、主要教科の授業時間数が拡充をされます。矛盾するこの背景には、文部行政関係者の間に総合学習の授業内容に薄いものがあるとの認識があったのではないかと思います。事実、伊吹前文部科学大臣は、この改訂に当たって、ゆとり教育は間違っていないが運用面で効果が出ていないところをほかに振りかえるというふうに発言をされました。このような指摘というのは当たっているというふうにお考えでしょうか。
○岩佐指導部長 現行の学習指導要領は、各学校がゆとりの中で特色ある教育を展開し、生きる力をはぐくむことを基本的なねらいとして改訂され、その趣旨を生かした教育活動を進める観点から総合的な学習の時間が創設されました。
総合的な学習の時間については、大きな成果を上げている学校がある一方で、当初の趣旨、理念が必ずしも十分に達成されていない授業も見られることから、成果を上げている実践事例を広めるとともに、実践上の課題とその改善について研修会や指導資料などを通して学校を指導してきたところでございます。
○伊藤(ゆ)委員 私も伊吹前大臣の指摘の側面があったんではないかというふうに思います。学校によって非常に内容の差が激しい総合学習の時間であります。導入も唐突感があったとか、あるいは導入に当たってさまざまな支援が十分でなく、教育現場の中で総合学習の研究が十分にされてこなかったという声も聞くわけでありますけれども、同時に、非常に評価の高い総合学習の時間もございます。
これは、今、藤原校長先生で有名ですが、杉並区の和田中の「よのなか科」の授業メニューがありますけれども、私も何度か見に行ってまいりました。非常に深い議論を中学校の子どもたちにさせています。教室を一つの議論の場にして、賛成、反対をまずは分けてそれぞれディベートをさせるという形で解決策を探っていく授業であります。例えば、これまでのメニューの中には、放置自転車問題を考えるだとか、あるいはどこまでいじくる人の体ということで、技術と倫理の相克問題のディベートなども行われておりますし、自殺の問題やまちづくりの問題などさまざまな観点で子どもたちに議論をさせることで深い思考能力をはぐくんでいるわけでございます。
そこで、お伺いしたいんですけれども、逆に、薄い授業という指摘を先ほどさせていただきましたが、総合学習が授業の補講時間や、あるいは修学旅行の準備といった、総合学習の精神に沿っているとはいえないような授業内容を聞いたことがあります。こうしたあり方についての都の所見をお伺いします。
○岩佐指導部長 総合的な学習の時間については、各教科、道徳及び特別活動と関連づけて実施することとなりますが、その際、最も重要なことは総合的な学習の時間のねらいを明確にした計画を立て、実施することでございます。今後とも、研修会の実施や指導資料の配布を通しまして、学校や教員への指導を徹底してまいります。
○伊藤(ゆ)委員 必ずしも十分に今回のこの総合学習の時間というものが達成されていないという側面が明らかになったわけでありますけれども、つまるところ、今回の学習指導要領の改訂は、ゆとり教育の見直しということではなくて、総合的な学習の時間の運用の見直しだということになるんだろうと、今の答弁から思います。
今回の見直しで文科省は、薄かった総合学習の授業内容が時間縮減で濃い授業になると期待しているのではないかと思いますが、むしろ私は、今回の見直しを契機に、ゆとり教育に疑念を持っていた保護者がますます受験に強い学力を求めることが予想されるというふうに思います。これまで、都の目指す学力と保護者の目指す学力の板挟みになっていた教師が総合学習を補講時間に充てる傾向がますます強まる可能性があると思いますので、この質疑で都が総合学習の重要性を認めているということを明らかにしていきたいというふうに思っていたわけでございます。
私はとりわけ、小学校までは実は基礎知識をしっかり身につけることが何よりも大事だというふうに思っております。杉並区では土寺と呼ばれていますけれども、土曜寺子屋、先ほど土曜日の授業の質疑もありましたけれども、私も大変効果的なものだというふうに思います。しかし、土曜日の授業をやったり、基礎知識をしっかり身につける、拡充をしていくことと、総合学習が不要であるということは何も相反するものではありません。
そこで、こんなデータが今、出ております。ちょっと前には考えられないことでしたが、国が行った学力調査の結果、塾に通う生徒の割合が今や小学校で全国四五%、中学校だともう六〇%にもなっていて、都市ではもっと高いんではないかともいわれています。通塾者の学力の高さも実は証明をされております。保護者の受験の学力志向が証明をされた形になりました。グーのリサーチの結果ですと、親が考える子どもの学力低下の防止策のトップは、学習塾に通わせるのが圧倒的でありました。
このままでは受験主義の教育要求が高まっていって、国や都の目指す学力がないがしろにされかねません。学習意欲の低下が進めば受験の学力も低下するというふうに私は思います。公立小中学校の役割に基礎的な知識の習得があるのはもう当然でありますけれども、受験勉強における塾の存在が大きくなっている現実の中で、公教育は受験でははかれない能力や学習意欲を高める教育にますます力を入れるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○岩佐指導部長 都教育委員会は問題解決的な学習や体験的な学習を重視し、単に知識の量だけではなく、みずから学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力などの向上を目指しているところでございます。
○伊藤(ゆ)委員 大変心強い答弁でありました。
同時に、財団法人の日本青少年研究所というところの調査結果もございます。勉強のできる子になりたいかという問いかけに対する北京とソウルと東京の子どもたちの回答がございます。勉強ができる子になりたいかという問いかけですから、これは一種の学習意欲と見ることができるわけですけれども、そう思うと答えた小学生は、北京の子どもで七八・二%、ソウルでは七八・一%、ところが東京の子どもは、四三・一%という低い数字があらわれております。学習意欲を上げることが学力を上げることとなると思います。
また、都の学習に関する意識調査というのがありますけれども、これの過去四年分の中学生の動向を見ますと、授業は楽しいかという問いに対する答えは年々上昇をしているという傾向がありますのは、総合学習の導入の成果とも受け取れるかもわかりません。
学力には記憶による詰め込み型の情報処理力と、こちらは受験ではかれる能力ですけれども、情報を収集して分析し、納得できる答えを導く情報編集力があるというふうに思います。もっとも、九九のような情報処理力なくして情報編集力は育ちません。特に小学校では、再三申し上げますが、情報処理力を鍛える記憶系の学習がしっかり行われるべきですけれども、この反復型の教育は総合学習型の教育と対立する概念ではないことを先ほども申し上げたところでございます。
中学生には、特にこの情報編集能力の育成が必要だというふうに思います。発光ダイオードを発明した中村修二さんでありますけれども、今までにない発想を、蓄積した情報を組み合わせることで世界を驚かす発明をし、成功をかち得ました。まさに情報編集能力のあらわれだというふうに思います。
後者は受験ではかれる能力でないだけに、特に公教育が担うテーマではないかというふうに思いますけれども、都の所見をお伺いします。
○岩佐指導部長 都教育委員会は、児童生徒が各教科等で身につけた知識や技能、思考力や判断力等を相互に関連づけ、生きて働く力として身につけることが重要であると考えており、小学校段階から発達段階に応じた取り組みが充実するよう指導助言しているところでございます。
○伊藤(ゆ)委員 そこで、お伺いしたいと思いますけれども、総合学習の時間の授業内容の向上には何が必要であるというふうにお考えでしょうか。
○岩佐指導部長 各学校では、児童生徒や地域の実態に応じまして総合的な学習の時間の充実のためにさまざまな工夫を行っております。中にはすぐれた実践を行っている学校や、力量のある教員もおります。これらの実践から学ぶことも総合的な学習の時間の充実につながることと考え、研修会や指導資料を通しまして各学校にそれらの実践を周知しているところでございます。
○伊藤(ゆ)委員 今、指導資料を通じて各学校にそれらの実践を周知しているというお話がありました。私も、ホームページやら研究報告書なども見せていただいているところでありますけれども、例えば研究指定校の紹介という一覧表、これがそうですけれども、学校名と研究主題等というテーマが書いてあったりいたします。それから、研究報告書というのもあって、総合的な学習の時間の研究報告書が特集でまとめられているわけでございますが、もちろんこれらも有効な研修の資料になるというふうに受けとめられますけれども、私自身もさまざまな総合学習で効果を上げている学校を見てまいりまして、何よりも、文字よりも見ることが教師の行う授業でありますので、百聞は一見にしかずという実感をこれまでにも得てまいりました。
そこで、ちょっとお伺いしたいんですけれども、平成十七年度の東京都教育委員会の職員表彰に総合学習のすぐれた実践で受賞をされた方がいるかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○岩佐指導部長 東京都教育委員会職員表彰におきまして、平成十七年度、総合的な学習の時間の実践にすぐれた業績を上げた教員が表彰されております。
○伊藤(ゆ)委員 こうしたすぐれた実践を上げた教職員の方でありますけれども、この教員が勤務する学校など総合学習で成果を上げている学校へ他の教員が視察している状況というのはいかがでしょうか。
○岩佐指導部長 都教育委員会は、総合的な学習の時間の研修会におきまして、職員表彰を受けた教員等の授業を見たり、実践発表を聞いたりするプログラムを実施いたしまして、十八年度、十九年度の二年間で百六十名以上の教員が受講をしております。
○伊藤(ゆ)委員 二年間で百六十人程度というのは、大変多くの教員の方々がこの表彰を受けた先生の授業を見に行ったり、研修を受けに行ったりしているということですので、大変評価するべきことだというふうに思いますけれども、まさにこうしたいい授業を紹介し、見てもらうということが総合学習の向上に直結をするというふうに思います。
ただし、教員がほかの学校への視察など研修時間を十分にとれるのかどうかというのが大きな問題になってくると思いますけれども、研修時間を十分にとることは可能なんでしょうか。
○岩佐指導部長 教員が他校の授業を参観する場合、自分が担当する授業と重なる時間帯であることが多いことなどから、校長は校務に支障がない範囲で研修を認めているところでございます。
○伊藤(ゆ)委員 ここが大事なところで、自分の授業を持っている先生たちがほかの授業を見に行こうとしますと、当然自分の授業を休むか、あるいはほかの先生にかわってもらうかということをしなければならないということで、現場の先生に聞きますと、この時間をとるのが極めて難しいということでございました。当然、総合学習の場合ですと、一時間だけ一こまでやる授業よりも、例えば朝からお昼過ぎまでこまをためて一日で行う総合学習なども結構多くございます。そうなると、ますます他校への研修というのは非常に難しい環境にあるのではないかというふうに思います。ぜひ行きやすい時間帯の公開授業を、例えば都で調整をするとか、あるいは都内の職員に紹介するなどしていただければというふうにも思います。
総合学習の内容向上のためには、都は、先進的な取り組み事例をそうした形で積極的に紹介してはどうかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○岩佐指導部長 総合的な学習の時間の充実に向けまして、これまでも指導資料を作成、配布し、先進的な取り組み事例を紹介してまいりました。教職員研修センターのホームページには総合的な学習の時間の実践事例を掲載し、いつでも参考にできるようにしているところでございます。総合的な学習の時間を含めまして、教育研究校や特色ある実践をしている学校などの一覧を都教育委員会ホームページで公開し、各学校が必要に応じて問い合わせができるようしているところでございます。
○伊藤(ゆ)委員 私もホームページをさまざまに拝見させていただきましたので、そのご努力には頭の下がる思いでありますけれども、しかし、いかんせん情報が一覧表で出ているというような形で、どこが本当にすぐれた総合学習の授業をやっているのかというのが極めてわかりづらいものであります。例えていうなら、おいしいラーメン屋さんのリストを出してくれといったら電話帳が出てきたような印象も私としては受けました。
ですから、東京都の主事さんを初めとして、都内各地で行われている総合学習のいいところというのをより選別していただいて、そして、積極的に情報提供を行っていただけたらというふうに思うわけでありますけれども、それを要望申し上げたいと思います。
真の学力向上には総合学習の授業が欠かせないことをこれまでもいってまいりました。問題は、薄い授業の時間数を減らすことではなくて、薄い授業を濃い授業に変えることだというふうに思います。総合学習の内容充実に向けた教育長のご決意を伺いたいと思います。
○中村教育長 伊藤ゆう委員がご心配されるように、私も中教審の委員で、中教審でいろんな議論がございました。特に問題になりましたのは、総合的な学習の時間を学校によって、場合によっては教員個々人によってやり方が全く違う、先生のお言葉をかりれば薄い方もいらっしゃるし、厚い、濃い方もいらっしゃるということで、いかんせん教科書もございません。
ということで、いろんな議論がありましたけれども、子どもたちに学び方、考え方あるいは課題の発見の仕方、解決の仕方、これを教科横断的にやるには、やっぱり総合的な学習の時間は絶対必要なんだということで、今、教育課程部会でパブリックコメントをやっておりますけれども、やはり残そうというふうになっております。
私も同じ考えでございまして、やはり小学生、中学生、高校生を含めまして、ただ単に算数ができる、書き取りができるということでなくて、この字は三日月という理科の授業にも関係するわけですし、特に今、災害がいつ来るかわからない、総合的学習の時間で災害を命題にしてやれば、自分の住んでいる地形を調べざるを得ない。どこに水がつくのか、どこが割れやすいのか、どこにお年寄りが住んでいて助けなければならないのか、そういう社会に生きる子どもたちとしての立場も子どもたちにわからせる、あるいは社会貢献もしなければいかぬ、こういう観点で総合的な学習の時間はぜひ必要だろうというふうに考えております。
指導部長から、るるお答え申し上げましたけれども、やっぱり研修だとか事例紹介をして、全国に先駆けてリーダーになり得るべく総合的な学習の時間に力を入れてまいりたいというふうに思っております。
○伊藤(ゆ)委員 教育長から本当に心強い、そして感動を覚えるような、今、答弁でございました。ありがとうございます。
私も、現場の先生に聞きますと、急遽導入した総合学習でありますので、急ごしらえのままもう数年間運用してしまっているという率直なお話も伺ったことがあります。一度つくってしまいますと、こんな分厚い授業計画書でありますので、なかなかそれを変えるというのも今の教育現場ではおっくうだという話も伺うわけでございますので、ぜひ、東京都としても、今、教育長にいっていただいたような支援を強化していただければというふうに思います。
それでは、続いて別の質問をさせていただきたいというふうに思います。
最近、とみに学校の校長先生、副校長の事務量というのが非常にふえているというふうに伺っております。小中学校の現場からは、副校長の勤務実態は長時間労働になっているというふうにも伺っております。特に事務的な仕事に多くの時間を費やしているという声があります。
こうした副校長の勤務実態を含め、教員の勤務実態について文部科学省が調査を行ったというふうに聞いておりますけれども、どのような結果が出ているでしょうか。
○直原人事企画担当部長 平成十八年度に文部科学省が行いました教員勤務実態調査によりますと、小中学校の副校長は一日当たり十二時間程度勤務しており、校長や教諭等と比較しても勤務時間が長い、このような調査結果になっております。また、その業務の内容を見ますと、報告書や資料の作成など事務的な仕事に、これは時期にもよりますが、一日三時間から四時間と多くの時間を費やしている実態がございます。
○伊藤(ゆ)委員 今、お話にもありましたが、残業時間などを含めると一日当たり十二時間程度の勤務というのがあると。また、副校長は校長先生や教諭と比べても大変長い勤務時間数だということが今、わかりました。こうした副校長の勤務実態について改善していくべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○直原人事企画担当部長 副校長の勤務時間が長くなっており、また、その業務の中には副校長がみずから処理しなくても可能なものもある、このように考えております。
都教育委員会として副校長の職務内容を明確化し、作業的な仕事は適切に分掌組織に割り振ることなどにより業務量の負担軽減を図り、副校長が学校経営上の職責をさらに担うことができるよう、学校全体の校務分掌のあり方などについて検討しているところでございます。
○伊藤(ゆ)委員 実は、私が回っている何校かの副校長先生に聞いたところ、特に事務量で一番負担になっているのは各種のアンケート調査がやっぱり頻繁に回ってくるということでありまして、小中学校の副校長先生のところへ年間で二百件とか、あるいは多いところだと四百件ぐらいの各種のアンケート調査が回ってくる、この一件のアンケート調査を行うだけでも一日が終わってしまうという話を聞いたことがあります。私も、あるいは役所の方もさまざまな形で調査を回すということがあると思いますけれども、こうした調査のとり方、方法などもこれから改善をしていく必要があるんだろうと思います。
同時に、こうした業務には学校の事務職員が処理をしても差し支えない事務もあるんではないかというふうに思うわけでございます。学校には校長先生、副校長先生、教員、そしてまた事務職員の方がいらっしゃいます。この学校事務職員の主な職務内容というのはどのように決まっているんでしょうか。
○直原人事企画担当部長 学校教育法におきまして、事務職員は、事務に従事するとされており、ここで事務とは、一般には校長、教員の職務遂行を円滑ならしめるために必要なもろもろの仕事であり、人事事務、会計事務、施設管理などと解されております。
○伊藤(ゆ)委員 今、答弁がありましたけれども、会計事務や施設管理、人事事務というのは非常にわかりやすいというふうに思います。しかし、その中には一般的な事務というのも含まれていて、この事務の定義がさまざまにあるんだろうというふうに思います。
私は、副校長に限らず、教員が担っている事務作業の中にも学校事務職員が処理しても差し支えない事務があるというふうに思います。例えば今、学校を地域で支えようという運動が各地でありますけれども、こういうボランティア団体の例えば名簿の管理なども、あるいはまた修学旅行のときのしおりの印刷業務や、また先ほどの各種アンケート調査、これも、いわゆる教育にかかわるところではなくて、施設とか設備とかあるいは学校給食などそういったアンケート調査の集計については、学校の事務職員の職務として含まれてもおかしくないんではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○直原人事企画担当部長 事務作業の分担のあり方につきましては、各学校の実態によりさまざまでございますが、お話のように、現に教員が担っている事務作業につきましても、学校長が各学校の実情を勘案した上で校務の円滑な遂行のために事務職員が担当することが適当であるというふうに考えるならば、事務職員の分掌事務と位置づけることにより事務職員に担わせることも可能でございます。
○伊藤(ゆ)委員 おっしゃっていただいたとおりだと思うんですけれども、学校事務職員の中には学校教育の充実のために積極的に事務的な仕事に取り組んでいる職員もいらっしゃるというふうに伺っております。しかし、中には、校長先生がこうした仕事を割り振ろうとしても積極的に取り組もうとしない職員もいるというふうに聞いております。その理由の一つには、人事権が東京都にあるため市区町村に対する帰属意識が薄く、積極的な職務への取り組みが不十分であるということも挙げられています。
そこで、学校事務職員の地域への帰属意識を高め、より積極的に小中学校の職務に取り組むようにするために、都にある事務職員の人事権を市区町村に移譲すべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○直原人事企画担当部長 都費事務職員の人事権を区市町村へ移譲することで区市町村への帰属意識が高まり、地域に応じた学校づくりに事務職員が意欲を持って取り組むことが期待できると考えております。また、小中学校と区市町村教育委員会事務局や区市町村の長の部局との間で事務職員が交流することにより、学校と区市町村の一般行政との連携が図りやすくなるというふうに考えております。
都教育委員会としましては、区市町村の実情に応じた教育行政を展開するため、都費事務職員の人事権の移譲について国へ法改正を要望しているところであり、今後とも働きかけを行ってまいります。
○伊藤(ゆ)委員 ぜひ今の答弁に基づいて、さらに積極的な働きかけをお願い申し上げたいというふうに思います。教職員の事務量を減らせば減らすほど教職員は授業に専念することができるというふうに思いますので、その観点をぜひ持っていただければというふうに思います。
それでは次に、今、よく聞くキーワードとして、モンスターペアレントというんでしょうか、理不尽な要求を学校側に突きつける親が多くなってきているという話を伺います。保護者と学校とのこうしたトラブルもあると思いますが、あるいはまた理不尽な要求かどうかはともかくとして、地域の住民と学校とのトラブルというのもあるというふうに思います。
実は、うちの選挙区の目黒区でも、私自身が区議会議員時代に経験をし、見たわけですけれども、ある学校の放課後に、放置してあったサッカーボールか何かだと思いますけれども、ボールがあって、放課後に残っていた子どもが蹴ったか投げたかいたしまして、塀の向こう側にとまっていた高級車に当たってしまった、ボンネットがへこんだという事故がありました。非常にお怒りで学校に乗り込んでいらっしゃったその所有者の方であります。
この場合、投げた子どもが悪いのか、あるいは学校が悪いのか、そんな議論も出てくるわけでありますけれども、学校の教育現場ではまさにこういうトラブルに対応するだけで極めて大きな時間というものをとられてしまうということにもなります。教育委員会への報告であったり、あるいはその所有者に対する対応であったりということになりますので、こうしたトラブルの解決というのもこれから支援が必要なのではないかなというふうに思います。
そこで、こうした保護者やあるいは近隣住民の方と学校とのトラブル解決に向けて、ADR法に基づき法務大臣の認証を得て調停業務を行う専門家を活用できないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○新井学務部長 小中学校に対して理不尽な要求をする保護者や近隣の住民とのさまざまなトラブルの対応に教職員が苦慮している実態がありまして、一部の区市町村教育委員会におきましては、こうしたトラブル解決のために弁護士など専門家の活用を開始しているというふうに聞いております。
学校に関するトラブルにつきましては、学校を含めまして教育委員会も連携して組織的に対応することが重要であると考えておりますが、本年四月に施行されましたいわゆるADR法に基づきまして法務大臣の認証を受けた認証紛争解決事業者を活用することは、将来、トラブルの種類によっては有効な手段の一つとなり得るものというふうに考えております。同制度については発足したばかりでございますので、今後、制度の成熟等を踏まえてその動向を注視してまいります。
○伊藤(ゆ)委員 ぜひ、このADR法の研究と活用方法をご検討いただければと思います。
最後に、今、二十三区のうちの四区の教育委員会で活用がされているフリーペーパーがございます。具体的にいうと「エコリ」という雑誌でありますけれども、民間の会社と教育委員会が共同で内容の開発をされて、そして学校の教育現場で今、無料配布をされている雑誌がございます。この「エコリ」に限らず、今後、フリーペーパーを学校現場で配りたいという要望が出てくる可能性があると思うわけでありますけれども、都立学校でのこういうフリーペーパーのいわゆる活用というのと、それから、活用するに当たっては同業他社への公平性の担保というのが必要だろうと思うんですけれども、どのようにお考えかお伺いしたいと思います。
○岩佐指導部長 都立学校に外部団体等からの配布依頼があった資料の取り扱いにつきましては、校長の権限と責任において適切に判断することになっております。校長は、教育効果や業者間の公平性等を十分考慮し、配布の可否や方法等の対応を決定することになります。
○伊藤(ゆ)委員 私は、かねてから民間の発想とか民間の力を教育現場で取り入れることは賛成でありまして、こういう民間の力をかりて教育委員会が共同開発していくことには全く反対ではありません。しかし、フリーペーパーというのは、どれだけ多くの方に手にとっていただけるかということがまさにそのフリーペーパーの存続にかかわることでありますし、市場の独占ができればできるほどフリーペーパーとしての影響力、そして価値が高まるものというふうに思います。
きょう、「エコリ」を持ってきましたけれども、この中には実は某旅行代理店が情報提供などもされていて、中には学校の教育で非常に役立ちそうな算数の教え方だとか書いてあるんですけれども、例えばそのうちの一つとして、お父さんとお母さんと子どもと一緒に体験の旅行に行こうというような企画が入っています。その体験企画をよく見ていくと、旅行代理店のお知らせがあって、このプランは幾らです、そして有名な旅行代理店の名前が書いてある、こういうことでございます。そういうものが学校の教育現場で配られている。
それぞれの各区の教育委員会では、かなりいろんな議論を経て導入しようということになったようであります。今、公平性の担保を都立校の場合は学校長が行うというふうにいわれましたけれども、教育委員会の議事録やあるいは教育議案の議論というのは外に出てくると思います。しかし、学校長に任せるということで今、答弁がありましたが、学校長一人に任せて公平性がどう担保されるのか教えてください。
○岩佐指導部長 配布資料につきましては、さまざまなものが考えられますので、一律の基準で判断するのは難しい部分がございます。学校教育の管理者は、法に基づきますと校長でございますので、校長が責任を持って適切性について判断をするものというものでございます。
○伊藤(ゆ)委員 ですから、公平性を担保するということは、同業他社が出てきたときに、うちも入れてくれといわれたときの議論をどうするかということになるんだと思います。この議論を校長先生一人にお任せするという今の答弁なんでしょうか。
○岩佐指導部長 学校運営上、校長の方から相談があることもございます。判断について相談がある場合には教育委員会の方で相談を受けまして、適切に状況を把握して判断したいと思っております。
○伊藤(ゆ)委員 まさに議論をしていただいて、その議論がどういう過程でどの業者に決まったのか、あるいはほかの業者から申し出があったときにどういうふうに結論をつけたのかということ、これが公開をされていて、そして、だれもが読めるものになっているから初めて公平性の確保になるんだというふうに思うわけでありまして、当然、学校長は、こういう新しい試みでありますから、こういうものが提案されてきたときには東京都教育委員会に相談があるんじゃないか。
ですから、教育委員会としての基本的な姿勢をお伺いしたいということを申し上げているので、今、答弁にもあったように、教育委員会と相談するケースがあるということですから、その場合にはどうされるんですかということを伺っているんです。
○岩佐指導部長 配布資料等につきましてはさまざまなものがございますので、一律の基準で判断するのではなく、個別の状況に応じて判断し、対応していきたいと考えております。
○伊藤(ゆ)委員 あくまで一人の方が、例えば校長先生のところに業者さんが来て、校長先生だけが決めて他社を排除したと。同じような提案があっても、もううちはこれをやっているんだと他社を排除したということになれば、これは一種の市場の独占じゃないかという批判が生まれることも想定をされますし、一種の特定の業者に対する便宜供与にも当たる可能性が出てくるわけですから、私としては、ぜひこれは教育委員会として、方向性、対応というものを常に検討、検証していただくということが望ましいというふうに思いますけれども、改めて最後にどうですか。
○岩佐指導部長 先ほどの「エコリ」の件につきましては、これは区の教育委員会と学校、それから「エコリ」の方のタイアップのかかわりだと思いますので、それはあくまでその線の問題だろうと思います。
都立高等学校におきましてそのようなフリーペーパー等が配布された場合につきましては、先ほどから申し上げておりますように、教育委員会の方でそういう相談を受けました折には、個別の事情についてきちっと確認をした上で判断していきたいと考えております。
○伊藤(ゆ)委員 もう皆様お疲れだと思いますので、これはこれ以上申し上げませんが、しかし、学校の教育現場に任されるといっても校長先生も困るわけでありますから、ぜひこういうものが出てきたときには教育委員会の中でしっかり議論していただきたいということを要望申し上げまして、私からの質疑を終わらせていただきたいと思います。
○古館委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○古館委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
以上で教育庁関係を終わります。
これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
午後五時四十分散会
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