文教委員会速記録第十二号

平成十七年九月三十日(金曜日)
第三委員会室
   午後一時三分開議
 出席委員 十四名
委員長村松みえ子君
副委員長山田 忠昭君
副委員長馬場 裕子君
理事服部ゆくお君
理事野上ゆきえ君
理事野上 純子君
伊藤 ゆう君
坂本たけし君
上野 和彦君
泉谷つよし君
秋田 一郎君
木内 良明君
古賀 俊昭君
大山とも子君

 欠席委員 なし

 出席説明員
教育庁教育長中村 正彦君
次長比留間英人君
理事近藤 精一君
総務部長志賀 敏和君
学務部長齊藤 一男君
人事部長松田 芳和君
福利厚生部長橋本 直紀君
指導部長井出 隆安君
生涯学習スポーツ部長山川信一郎君
参事三田村みどり君
参事新井 清博君
参事沼沢 秀雄君
参事伊藤 一博君
参事川澄 俊文君
国体準備・事業推進担当部長関口 修一君
参事直原  裕君

本日の会議に付した事件
 教育庁関係
契約議案の調査
・第百八十号議案 都立八王子地区産業高等学校(仮称)(H十七)改築及び改修工事請負契約
付託議案の審査(質疑)
・第百六十七号議案 学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
・第百六十八号議案 学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
・第百六十九号議案 学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
・第百七十号議案  都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例
・第百七十一号議案 義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例の一部を改正する条例
・第百七十二号議案 東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
・第百七十三号議案 東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例
陳情の審査
(1)一七第五一号 東京都立目黒地区中等教育学校に関する陳情
報告事項(質疑)
・第二次都立図書館あり方検討委員会報告について
・都立大島南高等学校学科改編及び都立大島セミナーハウスの運用に係る実施方針について

○村松委員長 ただいまから文教委員会を開会いたします。
 傍聴人の数についてお諮りいたします。
 本委員会室の定員は二十名でありますが、傍聴希望者が定員以上ございますので、さらに二十名を追加したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○村松委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○村松委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、教育庁関係の契約議案の調査、付託議案の審査、陳情審査及び報告事項に対する質疑を行います。
 契約議案について申し上げます。
 契約議案は、財政委員会に付託されておりますが、本委員会所管分について議長から調査依頼がありました。
 本件については、調査結果を財政委員長に報告することになっております。
 公文の写しはお手元に配布してあります。
 朗読は省略いたします。

平成十七年九月二十八日
東京都議会議長 川島 忠一
文教委員長 村松みえ子殿
契約議案の調査について(依頼)
 左記の議案について調査し、財政委員長にご報告願います。
     記
1 調査議案
第百八十号議案 都立八王子地区産業高等学校(仮称)(H十七)改築及び改修工事請負契約
2 提出期限 平成十七年十月三日(月)

○村松委員長 これより教育庁関係に入ります。
 初めに、契約議案の調査を行います。
 第百八十号議案を議題といたします。
 本案につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○村松委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○村松委員長 異議なしと認め、契約議案に対する質疑は終了いたしました。
 この際、本案に対して意見のある方は発言を願います。

○大山委員 この契約は、都立高校改革推進計画に基づく高校統廃合の一環で、都立第二商業高校と都立八王子工業高校を廃止し、八王子地区産業高校を建設するものです。この二つの学校は、地域産業の担い手を育てる貴重な学校として大きな役割を果たしてきた学校で、生徒、同窓生、関係者から存続させてほしいという要望が大きくあったものです。よって、契約議案には反対です。

○村松委員長 発言は終わりました。
 お諮りいたします。
 本案につきましては、ただいまの意見を含め、委員長において取りまとめの上、財政委員長に報告したいと思いますが、これに異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○村松委員長 異議となしと認め、そのように決定いたしました。
 以上で契約議案の調査を終わります。

○村松委員長 次に、付託議案の審査及び陳情審査を行います。
 第百六十七号議案から第百七十三号議案まで及び陳情一七第五一号を一括して議題といたします。
 付託議案については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について、理事者の説明を求めます。

○志賀総務部長 去る九月十四日の当委員会において、条例案に関連しまして要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 お手元の文教委員会資料(条例)の目次をお開き願います。ごらんいただきますように、今回要求のございました資料は三件でございます。
 一ページをお開き願います。都立高校改革推進計画の進捗状況でございます。このページから四ページにかけまして、計画に基づく都立高校の統廃合の進捗状況等についてお示ししてございます。
 五ページをお開き願います。上段が都立高校の授業料減免状況でございます。全日制、定時制別に、過去五年間における授業料の減免、免除の状況をお示ししてございます。
 このページの下段が、都道府県立高校の授業料の状況でございます。十六年度と十七年度における各都道府県立高校の授業料の額を月額でお示ししてございます。
 以上、簡単ではございますが、要求のありました資料の説明を終わらせていただきます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○村松委員長 説明は終わりました。
 次に、陳情一七第五一号について理事者の説明を求めます。

○新井参事 一七第五一号、東京都立目黒地区中等教育学校に関する陳情についてご説明申し上げます。
 本陳情は、目黒区中村正子様から提出されたものでございます。
 陳情趣旨の1でございますが、平成十七年七月二十八日の都教育委員会において、都立目黒地区中等教育学校の前期課程用教科書として採択した扶桑社の歴史教科書の採択を取り消し、再考していただきたいというものでございます。
 これに関する現在の状況でございますが、公立学校で使用される教科書の採択につきましては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条第六号により、学校を設置する教育委員会が行うことになっております。
 また、都道府県立の義務教育諸学校において使用する教科書の採択に当たっては、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律第十三条第二項により、あらかじめ学校関係者、教育委員会関係者及び学識経験者で構成されます教科用図書選定審議会の意見を聞いて行うことになっております。
 東京都教育委員会は、教科書の採択に当たりまして、東京都教科用図書選定審議会の答申を受けて、東京都教育委員会の教育方針、学習指導要領、中高一貫教育の特色及び学校の特色等を踏まえまして、より専門的な教科書の調査研究を行いました。そして、すべての教科書の見本とともに、これらの調査研究資料及び教科書採択資料等を踏まえて慎重に検討いたしまして、平成十七年七月二十八日開催の教育委員会におきまして、都立目黒地区中等教育学校の前期課程で使用する教科書として最も適切な教科書を適正かつ公正に採択したものでございます。
 また、義務教育諸学校において使用する教科書の採択は、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令第十三条第一項によりまして、当該教科用図書を使用する年度の前年度の八月三十一日までに行わなければならないことになっております。
 したがいまして、都立目黒地区中等教育学校の前期課程用教科書として採択した扶桑社版歴史教科書の採択を取り消す考えはございません。
 次に、陳情趣旨2でございますが、都議会におきまして目黒地区中等教育学校の名称を桜修館とする条例の一部改正に反対していただきたいというものでございます。
 これに関します現在の状況でございますが、都立高校改革推進計画における新たな設置校の校名の選定につきましては、まず、母体校の同窓会、学校長及び地元の町会、区市町村などからの意見聴取を行った上で、複数の候補名を選定いたします。その後、おおむね三つ程度に校名案を絞り込んだ上で教育委員会に諮り、最適と思われる校名を選定しているところでございます。
 本陳情の目黒地区中等教育学校につきましては、平成十七年四月に公立大学法人首都大学東京が設置されまして、それに伴い、都立大学が廃止されることになりましたので、母体校の校名を継承することができなくなりました。
 新たな校名、桜修館は、校歌、校章から桜を引用するとともに、六年間の一貫教育を修める学校を表現いたしました。
 府立高等学校からの七十有余年の歴史を引き継ぐとともに、国際社会のリーダーを育成する都立初の中等教育学校の理念を踏まえまして選定したところでございます。
 説明は以上でございます。よろしくご審議のほどお願いいたします。

○村松委員長 説明は終わりました。
 先ほどの資料も含めまして、これより付託議案及び陳情一七第五一号に対する質疑を一括して行います。
 発言をお願いします。

○山田委員 それでは、私は、平成十八年四月開校予定の都立産業技術高等専門学校についてお尋ねをいたしたいと思います。
 昨今、都内の製造業を初めといたしまして、企業の求める人材というのが、これまでの少品種多量生産を支えた中堅技術者から、付加価値の高い製品をつくることができる、企画力、開発力を備えたより専門性の高い技術者に移行してきたといわれております。
 我が党といたしましても、首都東京が将来にわたって発展していくためには、人材の育成こそが不可欠であり、とりわけ産業の活性化に寄与し得る人材を育てていくことが、今こそ求められているということでございまして、このことを強く主張してきたところでございます。
 こうした中にありまして、東京都教育委員会が平成十八年四月に都立の二つの高等専門学校、都立工業高等専門学校、都立航空工業高等専門学校を発展的に統合、再編いたしまして、公立大学法人首都大学東京が設置予定の産業技術大学院大学への進学を視野に入れながら、高度実践的技術者の育成に向けました新たな高等専門学校として、都立産業技術高等専門学校を設置するということにつきましては、まことに時宜を得た構想として、私は非常に関心を持つと同時に、期待をいたしているところでもございます。
 本年四月には、新たな高等専門学校の設置につきまして文部科学大臣に認可申請を行ったと聞いておりますけれども、この新しい都立産業技術高等専門学校の概要についてご説明いただければと思います。

○齊藤学務部長 産業技術高等専門学校は、本年四月二十八日に設置認可申請を行いまして、七月二十七日に認可されております。
 この新高専でございますけれども、ものづくり工学科、この一学科に、機械システム工学コース等八つの教育コースを設けまして、これまでの縦割り的な学科制とは異なりまして、学生にコース選択の幅と自由度を与えますとともに、コース間での連携した柔軟な教育指導ができるようにいたしまして、幅広い科学技術分野におけるものづくり人材教育を行うものでございます。
 一年生では、全学年を対象に、機械、電気電子、ITなど、ものづくりの基礎教育を行いまして、二年生からは、学生が選択した教育コースごとに、それぞれ専門的な技術教育を行うものでございます。
 校舎と敷地は、現在の工業高専と航空高専をそのまま活用いたしまして、それぞれ品川キャンパス、荒川キャンパスとして設置するものでございます。

○山田委員 七月には既に文部科学大臣から認可を受けているということだと思いますけれども、本都議会定例会における都立学校設置条例の改正を待って、平成十八年四月に新しく都立産業技術高等専門学校が設置されるということになりまして、新たなものづくり人材を育成をする新しい高等専門学校としての教育がスタートするわけでありますけれども、この都立産業技術高等専門学校の教育理念についてご説明いただければと思います。

○齊藤学務部長 新高専でございますけれども、首都東京の産業振興、それから課題解決に貢献するものづくりスペシャリストの育成、これを新高専の使命といたしまして、次の理念で組み立ててございます。
 まず第一に、科学技術の高度化、複合化、グローバル化に迅速に対応できる応用力、創造力を育てる。二つ目が、一つの分野で他人に負けない専門性を持ち、他の関連する分野でも多角的視野と柔軟性により対応可能な能力を育てる、一専多能型の人材づくり。三点目といたしまして、東京の産業再生や課題解決に果敢に挑戦する意欲と能力を育てる。四点目といたしまして、社会的倫理観を持ち、技術者として多面的に判断して行動できる素養と基礎能力を育てる。この四つの教育理念に基づきまして、教育実験実習の時間を十分にとったカリキュラム編成とするなど、体験的、実践的技術者教育を行い、即戦力となる人材を育成していくものでございます。

○山田委員 ただいま、教育理念を実現するために、新しい高等専門学校では、本科の上にさらに専攻科を設置して、公立大学法人首都大学東京の産業技術大学院大学への進学を視野に入れながら、十六歳から九年間の一貫した高等実践的な技術者教育を行っていくということでございます。こちらのパンフレットにもその内容が書いてありますけれども、その一貫教育において重要な役割を担うことになるのが専攻科の今後の問題だと思いますけれども、今後の設置日程はどうなっているのか、ご説明いただきたいと思います。

○齊藤学務部長 本都議会定例会で都立学校設置条例が改正されまして、産業技術高専が設置され次第、速やかに文部科学大臣に専攻科設置の届け出を行います。
 また、独立行政法人大学評価・学位授与機構には、昨日、二十九日でございますけれども、認定申し出を行ったところでございます。
 専攻科は、創造工学専攻四コース、定員は一学年三十二名を予定してございます。
 この専攻科の設置によりまして、十六歳という若い世代から、産業技術大学院への進学を視野に入れました体系的な実践的技術者教育を行いまして、企業が求める応用力、それから創造力を兼ね備えました高度専門技術者を育成していくものでございます。

○山田委員 ただいまの答弁のとおり、専攻科の設置によりまして、高専から産業技術大学院大学に至る九年間一貫の実践的技術者教育体系が構築されることになります。これは全国初となります画期的な構想でありまして、東京の将来の産業発展に大きく貢献するものと期待をいたしております。ぜひとも本構想を成功させまして、新たな技術者教育のあり方を東京から全国に発信できるよう要望いたしまして、私の質問を終わります。

○野上(純)委員 今回は陳情も出ておりますので、中等教育学校について幾つか質問させていただきます。
 中高一貫教育校は、平成十八年度に目黒地区中等教育学校も含めて三校開校いたします。目黒地区中等教育学校の校名に桜修館が制定されたことについては、先ほどの理事者からの説明で、選定経緯等大変よくわかりました。
 そこでお聞きいたしますが、来年四月に開校するこの三校では、新しい中高一貫教育校ということで、学校説明会も精力的に開催されていると思います。目黒地区中等教育学校の場合、説明会にはどれくらいの人が参加されているのでしょうか。

○新井参事 目黒地区中等教育学校の学校説明会参加者人数でございますが、ことしに入って五月から七月までに説明会を五日開催いたしまして、それぞれ三回に分けて実施をいたしました。合計十五回で七千二百人の参加がございました。

○野上(純)委員 七千二百人というのはすごい人数だと思います。しかも、都で初めての中等教育学校ということもあり、関心の高さがうかがえると思います。来年四月の開校時には、全日課程の一年生だけしか在籍していませんけれども、この中高一貫教育校に配置される教員は、全都の中学校、また都立高校から意欲のある教員を公募で募集し、中高一貫教育の研修を受講し、配置していくと伺っております。中等教育学校としては、六年後に第一期生が卒業しますが、ある意味、息の長い事業です。都民の期待どおりの国際社会で活躍できるリーダーを育成していただきたいと思います。
 次に、この中高一貫教育校の中学校部分についての安全対策についてお尋ねいたします。
 我が党は、予算特別委員会やさきの代表質問でも、学校における学校安全対策について質問いたしました。
 まず、目黒地区中等教育学校の地元の目黒区内の中学校の防犯体制ですが、調べましたら、区が民間委託、警備員を雇って、学校などを中心に巡回しております。また、地域によっては、町会や自治会などで自主的に防犯パトロールを行っています。目黒区内には中学校が十二校ありますが、各学校で通用門や玄関にカメラつきインターホンを設置しております。
 そこで伺います。都立中学校の場合ですが、今年度開校した白鴎高校の附属中学校はどのような体制になっていますか。また、地元の台東区の中学校の状況はどうなっていますでしょうか。

○新井参事 白鴎高校並びに附属中学校では、授業時間中は、生徒昇降口、来客昇降口ともに施錠をしてございます。来校者はインターホンで職員室に連絡することになります。
 地元の台東区立中学校、七校ございますけれども、各学校の出入り口を一つに指定いたしまして、授業中は施錠をしてございます。

○野上(純)委員 都立中学校は、全都から生徒募集ということもあり、区市の中学校に比べ、地元の意識が薄いかもしれません。しかし、中高一貫教育校は、それぞれの地域で信頼のある伝統校を母体校として設置されていく学校ですし、これまでの母体校が築いてきた地域との関係を新たな都立中学校に拡大していけば、また新たな連携の形が構築されるのではないでしょうか。都立、区立といっても、生徒は同じ都内の中学校ですので、中高一貫校の中学校部分においても、地域と連携しながら安全対策を講じていくべきと考えますが、いかがでしょうか。

○新井参事 都立中高一貫教育校は、地域のバランスを考慮して配置していくことから、学校を取り巻く環境もさまざまでございます。今後、各学校の地域環境を勘案しつつ、各都立中学校における安全対策につきましては、庁内の関係部署及び学校、地域とも連携をとりながら、具体的な対策を検討してまいりたいと考えております。

○大山委員 都立高校改革推進計画に基づく中高一貫校などを設置する条例案について、関連して陳情も出されておりますので、質問をいたします。
 この条例案では、中高一貫校を、本年度の白鴎高校に続いて、小石川中等教育学校と桜修館中等教育学校、現在の都立大附属ですね、それから併設型で両国高校と附属中学、新たに三校設置するということになっています。
 既に私たち、申し上げてきたことですけれども、私たちは、中高一貫教育に取り組むなら、すべての中学生、中学校卒業生が安心して高校進学ができるよう、入試をなくして全員入学を保障する形で実現させるのが一番いいと考えています。
 また、全国の自治体では、東京でも結構、割と緩やかな形での併設型などがふえていますけれども、三宅村などでも試みられています。子どもたちに分け隔てなくよりよい教育環境を整えようという立場からの中高一貫校の取り組みがなされているわけですけれども、それらは尊重されるべきですし、否定するものではありません。しかし、都教委の計画している中高一貫校は、旧制中学を中心に選定して、その教育目標には、日本人のアイデンティティー--意図するところは、国家のいいなりになる愛国心を身につけ、リーダーとなる人間を育成していくことが掲げられています。
 また、適性検査という名前で入学考査があり、実際、これに勝ち抜くためのさまざまな受験の準備、中高一貫校に合格するための塾通いが行われています。こうしたリーダー養成、一部のエリート教育のための学校をつくり、小学生のうちから選別し、競争を激化させるやり方には、疑問を投げかけずにはおられません。
 さらに、中高一貫校四校ですべてに、ことしの教科書選択では、侵略戦争を美化する扶桑社の歴史教科書が採択されました。非常にゆがんだ教育を行うための学校がつくられているといわざるを得ません。
 陳情も、扶桑社の歴史教科書の採択の決定を取り消し、再考するということを求めているわけですけれども、まず、教科書採択について伺います。
 東京都教育委員会は、七月二十八日、来年度使用する都立学校の教科書の採択を行いました。そこで、都立中高一貫校四校、それからろう学校、肢体不自由養護学校、病弱養護学校、青鳥養護学校梅ヶ丘分校という、性格も違う、生徒の状況もさまざまな学校について、すべて扶桑社の歴史教科書、公民教科書を全員一致で採択しました。中高一貫校は三年生がいないので、歴史教科書のみですけれども。これは、他の教科の教科書が学校の種類によってさまざまなものが選ばれていることや、各委員の意見が分かれて多数決で選ばれているということに比べて、極めて、ちょっと異様な感じがいたしました。
 この採択結果には、多くの都民、それから教育関係者、中国や韓国など海外からも批判の声が上がっています。そこでいわれているのは、なぜ扶桑社の教科書を選ぶのか、教育委員会の中で一切議論がなかったということです。
 そこで伺いますけれども、都教委がなぜ扶桑社の教科書を選ぶのか、議論しなかったのはどうしてなんでしょうか、なぜすべての学校に扶桑社の歴史教科書、公民教科書を選んだのでしょうか、まず伺いたいというふうに思います。

○井出指導部長 教科書採択につきましては、教科用図書選定審議会の答申に基づきまして、教科書調査研究資料を作成し、また採択に関する資料を作成し、また、当該の教科書を直接検討することによって教育委員会において審議し、採択しております。すべての学校において社会科が扶桑社の教科書であったということは、結果的にそうなったということでありまして、各学校ごと、各種目ごとに検討して適切な教科書を採択したものでございます。

○大山委員 いろいろおっしゃっていましたけれども、ほかの教科書でなくて、すべての歴史、そして公民が扶桑社だったという理由は、ちょっと伺えなかったようですね。
 今、お話にもありましたように、教科書を選ぶ参考となる調査研究資料が完成したのはいつでしょうか。それで、保護者など都民に公開されたのはいつでしょうか。

○井出指導部長 完成したのは平成十七年七月十二日でございます。

○大山委員 完成したのは七月十二日ということですが、保護者や都民に公開されたのはいつでしょうか。

○井出指導部長 九月一日でございます。

○大山委員 七月十二日に完成をして、採択は七月二十八日、都民に公開されたのは九月一日ということなんですけれども、都民に公開されたのはまさに採択の後なわけですね。この間、例えば、文科省の教科用図書検定調査審議会が、教科書制度の改善について(検討のまとめ)というのを二〇〇二年の七月三十一日付で出していますけれども、この全体の内容はともかくとして、この文科省の文書ですら開かれた採択ということを強調して、保護者等の意見を踏まえた調査研究の充実とか、採択理由の公表をするようにといっているはずなんですね。ですから、文科省のこうした方向ですら都教委は無視をしている、採択した後に公表するというような状況です。
 しかも、教育委員会には、扶桑社の教科書を採択しないことを求める請願が四百十三件、それから要請や意見が七百一件も来たと。そのことは教育委員会の場で紹介されているわけですね。それほどまでに意見が来ているにもかかわらず、きちんと議論もしない。それから都民に説明する、これも当然じゃないかというふうに思っています。
 この採択のやり方一つとっても、教育委員会の権限を不当にゆがめて一方的な採択を行ったというふうにいうしかいいようがないと思っています。都民から批判が出るのは、それは当然だと思います。
 都教委が扶桑社の教科書を選ぶのは、二〇〇一年、それから昨年に続いて三回目です。そのたびに苦しいやり方を繰り返してきました。二〇〇一年には、学校や保護者の意見を反映しにくくするために、教育委員会の権限と責任を強調するやり方に切りかえましたね。ほかの教科は、選定委員会が出した評価順位の高い教科書を選んでいるにもかかわらず、中学校の歴史と公民だけ、あえて低い順位の扶桑社を選びました。それは不自然だということで、昨年は総合ランクをつけるのをやめましたけれども、日本の文化、伝統を扱った箇所数などの指標に従って、数にして比較して、それでも個々に扶桑社の教科書は下位の方にしかならなかったわけですけれども、強引に選びました。そして、ことしも、今やりとりがあったように、強引なやり方だ、筋の通らないやり方だといわざるを得ません。こうしたやり方はやめて、実際に子どもを教える教師の意見を尊重して、開かれたやり方で、子どもが学びやすく、成長できる教科書を選ぶべきだと思います。
 中学の教科書は、こうやって都教委が一律に採択したわけですけれども、改革推進計画で、都教委は、その第二章で、生徒の多様な希望にこたえる学校づくりとして、一番に中高一貫校の設置を掲げています。改革の方向として、中高一貫校の全体を通しての方向は、日本人としてのアイデンティティーとリーダーだというふうに書いてありますけれども、各学校においての方向というのはどう位置づけているんですか。

○新井参事 中高一貫校におきましては、各学校において特色を持たせてございます。目黒地区中等教育学校では、論理的な思考力の育成を掲げております。また、本年度開校しました白鴎高校附属中学校では、日本文化理解のための指導や英語力強化のための指導を行うこととしております。

○大山委員 例えばということでご紹介がありましたけれども、それぞれの学校で特色を持たせるということが強調されているわけですね。ですから、そうやってそれぞれの学校で特色を持たせるというふうにいいながら、授業の主要な教材である教科書というのは一律に押しつけているわけですね。これは、特色化とはほど遠いといわざるを得ません。
 中高一貫教育というわけですから、普通に考えれば、教科書も一貫してその学校の特色が出るように各学校で選定するということが本来だと思うんですけれども、違いますか。

○井出指導部長 公立学校で使用される教科書の採択につきましては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条第六号によりまして、教育委員会が行うこととなっております。都道府県立の義務教育諸学校において使用する教科書の採択に当たりましては、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律第十三条第二項により、あらかじめ学校関係者、教育委員会関係者及び学識経験者で構成される教科用図書選定審議会の意見を聞いて行うこととなっており、この選定審議会には、当該中高一貫教育校の校長、教諭等も委員となって参加しております。
 都教育委員会は、その教科用図書選定審議会の答申を受けまして、教育委員会の教育方針、学習指導要領のほか、中高一貫教育の特色及び各学校の特色等を踏まえて教科書の専門的な調査研究を行い、各学校ごとに最も適切な教科書を採択したものでございます。

○大山委員 各学校の特色等も踏まえ、選定したんだということですけれども、四校ともそれぞれ違う特色がありながら同じ教科書で、どうして特色を踏まえたということがいえるのかというのは、私は全く理解ができません。例えば、国際化を目指している中高一貫校では、中国語だとかハングルなど五つの第二外国語を置いているし、日中韓の研究者、教員が三カ国語による共通の歴史教材をつくっているなど、それこそ特色のある積極的な取り組みがされていると聞いています。その特色を生かせる教科書を当該の学校の意見を最大限生かして選ぶというのがごく自然なことだと思うんですね。
 ところで、中高一貫校の高校のところは、教科書はどういうふうに選定していますか。

○井出指導部長 中高一貫教育の高等学校用教科書の採択方法につきましては、まだ生徒がおりませんので、どのような採択方法をとるかは、現在は未定でございます。

○大山委員 じゃ、参考のために、現在の都立高校ではどういう選定の仕方をしていますか。

○井出指導部長 先ほど答弁いたしましたとおり、公立学校である都立高等学校で使用する教科書の採択につきましては、都教育委員会が行うこととなっております。
 高等学校用教科書の採択に当たりましては、各都立高等学校は、校長の責任と権限のもとに教科書選定委員会を設置し、生徒の実態等を踏まえた適切な教科書を選定してございます。
 都教育委員会は、教科書、教科書調査研究資料及び都立高等学校の選定結果等を総合的に判断いたしまして、教科書の採択を行っております。

○大山委員 公立学校では東京都教育委員会が行うことになっているということが前提ですけれども、今、ご答弁ありましたように、各学校で選定委員会をつくって、生徒の実態等を踏まえた適切な教科書を選定しているということなんですね。その方がずっと特色が生かせるということは、ほとんどの方が思うんではないでしょうか。もちろん、不十分ではありますけれども、実質的に現場の意見が尊重される、よりよい方法だというふうには思います。少なくとも一律に選ばれて押しつけられるよりは、各学校の特色も出るわけですね。私たちは、教科書は各学校で選べばいいと考えていますけれども、せめて中高一貫校、各学校で特色というのを非常に強調しているわけですから、都立高校と同じように各学校で選定委員会をつくって選定するようにすべきだと思いますが、どうでしょうか。

○井出指導部長 都道府県立の義務教育諸学校において使用する教科書の採択に当たりましては、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律第十三条第二項により、あらかじめ選定審議会を作成し、そこの答申に基づいて都教育委員会が選定するということになっております。

○大山委員 特色だ、それから一貫校だ、そして統一したものだというふうにおっしゃるんですから、さっき、今回の教科書選定も、都民の声、それから保護者の意見も、採択した後に調査研究資料を公開するほどに、全く閉じられた教科書選定をしてきたわけですよね。しかも、都立高校の場合は、少なくてもその学校の独自のものが生かせるような、現場の先生たちがきちんと子どもたちの様子を見て、それから自分たちの学校の状況、ねらい、それを勘案して、きちんと現場の意見も反映できるような、よりましなといいますか、やり方をやっているわけですね。ですから、せめて中高一貫校の、一貫しているんだというんだったら、その中学の部分についてもきちんと、現場の先生たちの意見、それから保護者の意見、もっと生きるような、公開された、開かれた選定にするべきだし、中高一貫校の中学の部分も、学校の意見を最大限生かせるような選定の仕方というのは当然だと思っています。
 今回一緒に付託された陳情もそうですけれども、扶桑社の歴史教科書を採択しないでほしいという、同窓生や保護者から要望がたくさん出ていて、都教委に示されたものでも、請願が四百十三件、要請や意見が七百一件あったわけですね。これらについてどういうふうに受けとめているんですか。こんなに意見があったのに扶桑社のに決めたということですけれども。

○井出指導部長 今回の教科書採択に当たりまして、都教育委員会に対し、同窓生や保護者を含む都民やさまざまな団体から意見、要請等が寄せられております。それらの意見につきましては、採択の審議を行う教育委員会の場において報告を行い、各教育委員の判断により教科書を採択いたしました。

○大山委員 本当に他人事のようないい方ですけれども、父母も卒業生も多くの都民も望んでいないということなんですよ。それを強行した。議論もなく、それから、どうして選定したのかという説明もなく決められて、実施されようとしているわけですね。全国の採択状況を見たって、どうですか、歴史の扶桑社の教科書は〇・三八%ですよ。公民にしてみたら〇・一八%ですから、全国的にも支持されていない。その教科書を使おう、しかも説明もしないで使おうということなんです。
 扶桑社の歴史の教科書ですけれども、例えば日中戦争の全局面について、つくる会教科書というのは、侵略という言葉を一切使っていませんね。それどころか、満州事変では、中国人による排日運動も激しくとか、日本人への迫害などが頻発したなどと記述して、他国の地で、日本の利益だけが正当で、抵抗したから武力で制圧したという侵略者の責任転嫁の論理で貫かれているんですね。朝鮮にしても、朝鮮半島は日本の安全保障にとって重要という見方で、韓国の併合時に抵抗を武力で押さえつけたことだとか、韓国民衆の苦しみなどには触れていません。自国の都合で植民地支配を正当化しようとしています。太平洋戦争については、大東亜戦争という戦争中の名称にこだわって、当時の日本政府がそうであったように、米、英、中、蘭の四国のABCD包囲網で日本が追い詰められたとして戦争を正当化しています。侵略戦争がアジアで歓迎されたことを示す材料として、インドネシアに他国から独立を助ける勢力が来るという伝説を紹介したり、戦争観はかつての日本政府の宣伝そのままに、侵略戦争はアジア解放のため、東南アジア諸国に独立への夢と勇気をはぐくんだと主張しています。アメリカ占領軍の宣伝や東京裁判で日本人の自国の戦争に対する罪悪感がつくられた、そういうふうに、アジア侵略と太平洋戦争にかかわる部分だけでも、大ざっぱにいっても、こういう状況なわけですね。これは、憲法九条を改悪しようという靖国神社の戦争観とそっくりだということは、もう証明されていることです。
 我が党は、どの教科書を使うかというのは、何より、それを使って実際に教える教師などの自由な討論で判断することを基本にするべきだと考えていますし、政治が教育内容に介入することは厳に戒めなければならないことです。しかし、つくる会教科書は、単に国内の教育の問題で終わらせられるものではありません。日本はかつてアジアを侵略した国です。そのことをアジアの若者は知っています。そのときに、日本の若者がかなりの事実を知らないだけでなくて、日本の戦争は自存自衛、アジア解放のためだったというふうにいえば、世界の人々から相手にされなくなってしまいます。子どもたちに誤った歴史観を教えることは、国際社会から孤立する道です。歴史をねじ曲げる教科書を教育現場に押しつける動きは許すことはできませんし、少なくても侵略と植民地支配の誤りへの反省という政府の公式見解を教育と教科書に反映させるべきだと考えますので、この歴史教科書の採択については誤りだといわざるを得ません。という意見を述べて終わりにします。

○古賀委員 私は、ことしの三月十六日の文教委員会で、都教組など組合活動が、行政側が使っている交換便等を利用しながら行われているということを、具体的な例をもって指摘をいたしました。具体的には、私が申し上げたのは、国旗・国歌の実施についての実施指針の撤回を求める署名であるとか、また、それに伴う処分を撤回せよ、こういった署名活動が、あるいはまた要請書というものが交換便を使って行われている、これを是正するように求めたわけであります。これに対して都教委は、地教委と連携をして適切に対処するという答弁が行われたわけでありますけれども、その後どのように、この件については取り組んでいるのか,お聞かせください。

○松田人事部長 まず、都立学校においてでございますが、校務以外の目的で交換便や学校のメールボックスを利用することがないように、平成十六年の十二月に都立学校長あて通知を出しております。さらに、校長連絡会などを通じまして学校を指導するとともに、関係職員団体に対しましては、厳にそういうことをしないように申し渡しをしております。
 また、区市町村に対してでございますが、都立学校の例を示しまして、適切な対応を図るよう、指導室課長会において周知をするなど、各地教委に対しまして適切な対応をとるよう指導しているところでございます。

○古賀委員 その指導している最中に、その指導に反することがまだその後も行われているわけです。一つは、これは(実物を示す)交換便を使って配られた文書の現物なんですけれども、八王子では、現にある小学校にあてて、ちゃんと固有番号も入って、受け取る先生の番号もついて、都教組八王子支部が交換便を使って組合の文書を配布しています。
 それから、これは教科書のことにも関係するわけでありますけれども、ことしの五月には、共産党を支持する都教組の江戸川支部が、区役所の交換便、つまり公文書を運ぶための公用車、これを使って、区立の小中学校職員に対してパンフレット、選んじゃいけない「つくる会」教科書、これは子どもと教科書全国ネット21というところが発行したものです、これを交換便で配布しています。
 つまり、公正な選択を期すべき教育委員会がこういった事態を黙認しているというのは大変問題であるというふうに私は断言をいたします。ぜひ、具体的なことはもう質問いたしませんけれども、都教委の指導等が行われているさなか、実際にはこういった実態があるということを指摘しておきますので、引き続き適正化に向けて取り組んでもらいたいというふうに思います。
 それから、同じようにことしの三月十六日に、勤務時間中に署名活動が教職員組合の団体によって行われているということを指摘をいたしました。全員署名ということで、バインダーに挟んで、署名しない先生の机の上には署名するまで置いておくわけです。そういったやり方で、仕事中に、勤務時間中に組合の署名活動が行われていることについても指摘をして、その是正を求めました。しかし、同様に、これもまた一向に改善されてないといわれても仕方ないんじゃないかと思いますけれども。
 これは足立区なんですが、新しい歴史教科書をつくる会がつくった教科書、扶桑社版を採択しないことを区教育委員会委員長及び東京都教育委員会委員長に求める要請書への署名活動を勤務時間中に現に行っています。これもやはりバインダーに挟んであるわけです。全員署名ということで行っている。極めてこれは問題が大きいというふうに思いますけれども、教科書採択事務がこういった実態、現場で実際に行われているということを都教委はどのように考えますか。

○松田人事部長 勤務時間内に署名など職員団体の活動を行うことは、地方公務員法に規定されております職務専念義務に違反をいたします。職員団体の活動と公務とは明確に峻別されるべきであると考えております。私どもといたしましては、ご指摘のような事例がないよう、今後とも地教委と連携をいたしまして、適切に対処してまいりたいと考えております。

○古賀委員 ことしの三月も同じような答弁があって、このていたらくというか、実態はこうなんですね。引き続き都教委としても、答弁の内容を踏まえてしっかり指導等を徹底してもらいたい。お願いをしておきます。
 それから、今の教科書採択のことを聞いていまして、よくそれだけ一方的な見解が述べられるなと思って私も聞いていましたけれども、扶桑社版の教科書、私も全部読みました。読んでいます。実際どの程度の人が読んで判断をしているのかというのは、私、非常に疑問に感ずるわけです。
 内容を見ますと、例えば木造建築の世界的に我が国が誇っていい法隆寺の様式の美しさであるとか特徴、そういうものもほかの教科書よりもすぐれて記述がなされていると思いますし、我が国の最古の歌集である万葉集、こういったものについての説明というのはしっかりしてあります。それから、我々が世界に誇る浮世絵などについても、扶桑社版の場合には、外国の有名な画家、ゴッホとかモネとかセザンヌ、こういった人たちに大きな影響を与えたというようなことが大変興味深く、中学生も聞けば非常に興味を持って学ぶことができるような内容になっているわけです。総合的に判断をして、何か今、一方的にいわれているようなことは全くないというふうに私は思います。
 それから、採択率が少ないということは、現実の数字は確かにそういうことでありますけれども、徐々にこの教科書のよさというのはわかってきているというふうに思います。私は、扶桑社がすべて完璧だというふうにはちっとも思いませんけれども、比較をすれば、学習指導要領等により沿った形での記述、内容になっているというふうに私は思いますし、実際に、今までの採択反対運動は、今いろいろお話があったように、例えば中国や韓国の外圧を利用するとか、それから、衰えてはきましたけれども、日教組とか都教組、こういった国内外にいる反日勢力というものが、死に物狂いで、今、自己防衛のために反撃をしているわけです。こういったことも一つあると思いますし、それからもう一つは、やはり教科書会社が、今までかなりの占有率を誇っていた会社というのが、こういう新しい視点を持った歴史教科書の登場によって、死に物狂いの営業活動をやっているわけです。そういうさまざまな理由があって、現在のところ、今までの流れに乗った方が無難だという教育委員等もいて、採択の実はそれほど上がっていないということはありますけれども、実際は、多くの自治体において、採択において非常に建設的な議論もなされるようになってきた。また、この教科書についての視点、それから、記述内容等について見直す動きも出てきているということは、非常に私は喜ばしいことだというふうに思います。
 いずれにしろ、現代史の記述まで含めて総合的に見て、何かいわれているような内容では全くないというふうに私は思いますので、教科書の採択のことについて、ちょっと確認の意味で触れておきたいというふうに思います。
 先ほどの共産党の主張では、現場の先生に任せろと、教師の意見を尊重して選べとか、各学校で選べという。これは法律を変えなければできないことで、今の採択の仕組みを全く知らないわけじゃない、しかし、新たなこういう潮流ができたことに対して、これを何とか食いとめようという、そういう動機からの発言だというふうに思いますけれども、今の仕組みというものをきちんと踏まえて、法律を逸脱して教育委員会が教科書の採択をやることはできないわけでありますから、そこをもう一度私は確認をしておきたいというふうに思うわけです。
 教科書の採択権というのはどこにあるのかということを、まずしっかり、これは決まっているわけですから、踏まえて、この議論はしなければいけない。ある一方的な考えに基づいて何か決めろなどということはあってはならないことでありますので、教科書はどこに採択権があるのか、今までのやりとりで少しは触れられておりますけれども、もう一度答弁してください。

○井出指導部長 公立学校で使用する教科書の採択につきましては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第二十三条第六号によりまして、教育委員会が行うこととなってございます。

○古賀委員 そのとおりなんです。それを学校の先生に決めろとか、現場でいったことは、発言されていることは尊重されなければいけないということで、もちろん検討する段階ではいろいろな意見を聞きますけれども、そこで決めろというのは乱暴ですし、法律に書かれていることを踏みにじることになってしまうわけでありますので、各学校で選ぶなどということはできないわけです。そのことを一つ、今、確認をさせてもらいました。
 それから、いろいろな今まで反対運動とか、かなり露骨な妨害活動--静ひつな環境の中で選ぶということが、実際にはなかなか保たれていないわけですよ。ということは、まだまだ教育委員の権限と、そして見識にのっとって教科書を選ぶという作業が行われているというふうには到底思えないわけで、これからも健全化を図っていかなければなりませんけれども、一つは、法律や文部科学省が禁じている、今までの議論にありましたように、学校現場の意見を優先しろということがいわれるわけです。これは、具体的には学校票ということで、これも本会議やこの委員会でも私も何回か指摘をしてまいりましたけれども、教育委員会が決定するに先立って行われている、こういった下部組織で、選定委員会とか審議会とかいろいろあるわけですけれども、そこで一種類あるいは数種類に限定する、絞り込むということが実際には行われているわけです。これはやっちゃいけないよということになっているんですけれども、例えば、具体的には、私、町田市のことをちょっと挙げておきたいと思いますけれども、町田市はことし七月二十二日に、町田市立中学校教科用図書調査協議会というのを開いて、教科書の採択の一つの手続を行っていたわけでありますけれども、ここで既に絞り込みをやるんですね。ABCというランクをつけさせる。これは、もちろん文部科学省が、先ほどいいましたように、やってはいけないし、都教委も再三指導しているわけでありますけれども、こういった実態があるわけです。だめだといってもまだやるのがいる。都教委としては、こういった区や市の教育委員会に対して、私はもっと、これからもさらに厳しく指導すべきだというふうに考えますけれども、いかがですか。

○井出指導部長 教科書採択につきましては、平成二年及び平成十三年に、文部科学省から、教科書採択のあり方の改善について、「採択は、採択権者が自らの権限と責任において、適正かつ公正に行う必要がある。」、「教職員の投票によって採択教科書が決定される等採択権者の責任が不明確になることのないよう、採択手続の適正化を図ること」との指導がございました。そのため、都教育委員会は、平成十三年二月八日付都教育長名の通知により、各区市町村教育委員会に対し、教科書採択事務の改善について指導を行いました。しかしながら、一部の区市において誤解を招きかねないような点が見受けられたために、本年四月二十七日付、都教育長名により、改めて通知を発し、各区市町村教育委員会に対し、教科書採択事務の改善について指導を行ったところでございます。
 都教育委員会としましては、今後とも各教育委員会の権限と責任において教科書が適正かつ公正に採択されるよう、区市町村教育委員会を適切に指導してまいります。

○古賀委員 ではありますけれども、今、私が指摘しましたように、馬耳東風、何をいわれてもわからないというところが現に東京都下にだってあるわけですので、引き続き厳正に対処してもらいたいというふうに思います。
 それから、さきの大東亜戦争の件について、いろいろ今、ありましたけれども、細かく触れると時間がなくなってくるんですけれども、マッカーサーは大東亜戦争についてアメリカの議会で証言をしています。日本が行った戦争はセキュリティーのために行った戦争だ。東京裁判所を設置してキーナン主席検事、ウエッブ裁判長のもとで行われたあの裁判は、裁判長も間違っていたといっているし、主席検事も誤りだったといっているし、設置をしたマッカーサーも、日本が行った戦争はセキュリティーのため、安全保障上必要に迫られて行った戦争だというふうにいっているわけです。相手が皆、そういっているわけです。一方的に何かこれを侵略だといって断罪するという歴史観は、これこそ偏り過ぎている。
 それから、インドネシアの話がありましたけれども、インドネシアは独立をいたしましたけれども、戦後ですね、インドネシアは日本に敬意を表して、独立宣言は日本の年号で書いているわけです。そのほか、アジアの指導者で同様の発言をした人はたくさんいます。そのことも踏まえて歴史というのは学ぶべきであって、余りにも一方的な、階級史観に基づいた歴史観で教科書を書くことが唯一正しいんだという主張は、これこそ排除されなければならない。あってもいいけれども、それを優先して公立学校の教科書に取り入れろというのは、これこそ暴論だということを、私ははっきり指摘をしておきます。
 次に、陳情の件なんですけれども、まず最初の扶桑社歴史教科書の採択の決定を取り消すということは、もう正規の手続を踏んで行われたことでありますから、これはもうこれで決着がついた。また、その内容についても、遜色のない、学習指導要領を踏まえた扶桑社の、より学習指導要領の内容に沿ったものになっているということがいえるというふうに思いますし、その決定を取り消せということ自体、手続上も非常におかしな陳情ということになりますので、これはもう既に決定済みのこと、決着がついたことだというふうに判断できます。
 それから、桜修館という名前がだめだという内容が私にはよくわからないんですけれども、新聞にも出ていました。東京新聞に、直感的に古過ぎるとか、視覚的にも音感的にも合わないとか、よほど桜が嫌いな方だというふうに思うんですけれども、新聞を試しによく読んでみましたら、この学校は昭和三年に設立されて、校歌がその後つくられ、そのときに江戸時代の国学者本居宣長の和歌、「敷島の大和心を人問わば朝日ににおう山桜花」という有名な桜を歌った歌を題材にして歌詞がつくられたというようなことの指摘といいますか、内容の記事がありました。これが何か戦争をイメージするから云々というふうに関連づけて考えられ、そして、多分反対だということにつながっているのではないかというふうに思うわけですけれども、日本の四大国学者の一人である本居宣長は、賀茂真淵に出会って国学の研究にいそしんで、三十数年かかって「古事記」に書かれている言葉を、その言葉の意義というものを明らかにしながら、三十年以上の歳月をかけて「古事記伝」を完成させるわけです。この人が、六十一歳でしたか、その年に自画像をかいたときに、その自画像に添えた歌がこの本居宣長の有名な歌です。
 私、いろいろ調べてみましたけれども、この歌がなぜ戦争と結びつくのかというのが、私、わからないんですけど、桜と日本人の国民性を関連づけて考えれば非常にわかりやすいというふうに思うわけです。いろいろ解説した本もちょっと見てみましたけれども、これも著名な方が書いておられるんですが、本居宣長が理解した桜の花の美しさというのは、決して散り際の美という、そういう狭いものとしてとらえちゃいけないというふうに書いてあります。我が国の風土に最も適応しているというのが桜であるし、全国を通じて普遍的に、豊富に、日本じゅうどこに行っても見ることができる、そういう存在である、花である。それから、陽気な春の季節に咲く趣が日本人の心をとらえている。さらに、花の姿あるいは香りというものが清楚で、日本人の美観というものに一致をしている。また、花の咲き際、散り際も潔い、華やかでいささかの未練も感じない。こういったことを総合的に国民性として、これは日本精神といってもいいかもわかりませんけれども、歌ったのがこの歌であって、この歌が何かすぐに、新聞によりますと、これは陳情には書いてないと思いますが、特攻隊の名前に使われたとかいうようなことが新聞に書いてありました。これも大変こじつけだなというふうに思います。
 桜から何か戦争をイメージするから嫌だというんだったら、日本もそうなんですよ。日本という言葉を聞くと日本軍を連想して嫌だ、国の名前も変えてくれ、そういうことをいう人もいるんですよね。しかし、そこまでいうと有権者が支持してくれないから、そこまではいわないけれども、実際はそういう人たちも現に存在するわけで、こじつけていけば切りがない。しかも「敷島の大和心を人問わば朝日ににおう山桜花」という朝日という言葉がもし嫌だということになれば、反日マスコミの牙城である、双璧をなすNHKと朝日新聞、朝日だって、これだけ今、反日一辺倒で記事を書いていますけれども、本来、そんなにこじつけるのが好きだったら、朝日新聞でも社名変更をやはり申し出ることだって、やらなきゃいけなくなってくるわけですよ。素直に桜と日本人の持つそういう美的な、日本人特有の感性というものを桜にはだれしも持っているというふうに思いますので、この歌に基づく学校名を変えてくださいというのは、だれか北朝鮮のような独裁者がひとりで、これが気に入ったからこの名前でいくというふうに決めたわけじゃないんですから、これはこれなりに重みがあるし、私は、きちんと正規の手続を踏んで決められたものでありますので、この陳情者のいっておられる指摘は的外れだというふうに思います。
 さらに、昭和三年につくられた学校がもとになっているわけでして、今の生きている人間だけが物を判断するというのは、非常に私は、今の風潮としてよくないというふうに思うんですね。歴史というのは縦の時間の流れですから、亡くなった人、つまり民族や個人の記憶の堆積したものが歴史ですから、今いる人間だけですべてのことを判断して過去を否定するということは、それは今生きている人間の非常に傲慢さのあらわれだというふうに思うわけです。常に我々は死者とともに生きているわけです。その積み重ねの中で、時間の蓄積の中で今を生きているという、ある面では謙虚さ、当時生きた人、これをつくった人、また、そこで汗を流し、また涙を流した人たちがどういう思いで歴史をさかのぼる、過去にいたかということを否定して、物を今、我々が判断するというのは、非常に物事を誤るし、次の歴史にもつながっていかない視点だというふうに思うわけです。
 この陳情は、長くいろいろ書いてありますけれども、私の立場からすれば採択に値しないということを申し上げて、質問を終わります。

○村松委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、ご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○村松委員長 異議なしと認め、付託議案及び陳情に対する質疑は終了いたしました。

○村松委員長 次に、報告事項に対する質疑を行います。
 第二次都立図書館あり方検討委員会報告について、都立大島南高等学校学科改編及び都立大島セミナーハウスの運用に係る実施方針についてを一括して議題といたします。
 報告事項につきましては既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○志賀総務部長 去る九月十四日の当委員会におきまして、報告事項に関連しまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元の文教委員会資料(報告事項)の目次をお開き願います。
 ごらんいただきますように、今回要求のございました資料は四件でございます。
 一ページをお開き願います。都立図書館の蔵書数、入館者数、貸出数の推移でございます。三館の過去十五年間にわたる状況をお示ししてございます。
 二ページをお開き願います。都立図書館除籍資料の分野別冊数でございます。過去四年間における三館の状況を、一般図書、児童図書の別にお示ししてございます。
 三ページをお開き願います。都立図書館除籍資料の再活用実施状況でございます。過去四年間における除籍資料の再活用の状況についてお示ししてございます。
 四ページをお開き願います。都立図書館の資料購入予算、購入図書冊数、購入図書タイトル数、購入雑誌タイトル数でございます。三館の過去四年間における状況についてお示ししてございます。
 以上、簡単ではございますが、要求のありました資料の説明を終わらせていただきます。ご審議のほどよろしくお願いいたします。

○村松委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより報告事項に対する質疑を一括して行います。
 発言をお願いいたします。

○秋田委員 私からは、第二次都立図書館あり方検討委員会報告について質問させていただきたいと思います。十六点ございますので、なるべく簡潔に質問させていただきたいと思います。
 まず最初に、この第二次報告は、平成十四年の第一次報告とどのように違うのか教えてください。

○直原参事 平成十四年一月の第一次報告では、都立図書館の提供するサービスや区市町村立図書館への支援の内容を見直すとともに、都立図書館三館の運営を効率化するための業務分担として、再編について提言を行いました。中央図書館を三館の中心館とし、予算、資料収集などを一元化するとともに、中央図書館と多摩図書館との分担を従来の地域分担から機能分担に変更する、このような内容でございます。
 第一次報告に基づきまして都立図書館の運営を効率化し、都民サービスの向上を図ってまいりましたが、今回は、再編した都立図書館が社会経済状況の変化を踏まえ、今後どのような役割を果たしていくべきか、その発展の方向性と道筋を明らかにする必要から、第二次あり方検討委員会を設置いたしました。その検討結果をまとめたものが今回の報告でございます。

○秋田委員 今、お話の中に、今後の発展の方向性というお話がございましたが、それでは、今後の発展の方向性はどのように考えているんでしょう。

○直原参事 報告書に記しましたとおり、近年のインターネットの普及によりまして、都民の情報収集の仕方が劇的に変化いたしました。しかしながら、ネット上の情報は膨大であり、また未整備のものも含まれております。こうした中で、インターネットも活用しつつ、豊富な資料とノウハウを活用して、的確で信頼性が高く、かつ都民の課題解決に実際に役立つ情報を提供していくこと、また、住民に身近な区市町村立図書館が充実した状況を踏まえて、その支援と連携を行うことが都立図書館のこれからの使命であると考えております。このため、サービスの内容と水準、都の行政施策との連携のあり方、区市町村との役割分担、組織や人材育成のあり方などを総合的に見直し、改革を進め、充実発展に取り組んでまいります。

○秋田委員 社会状況の変化に応じて図書館を改革して、今後、発展させていくといった方向性については、基本的には評価をさせていただきたいと思うんですが、この第二次報告には日比谷図書館の地元区移管の方針が出ているので、この点についてお尋ねしたいと思います。
 まず、日比谷図書館の移管と都立図書館の今後の発展の方向性とはどのような関係にあるんでしょうか。

○直原参事 日比谷図書館につきましては、第一次報告におきまして、区市町村との役割分担からそのあり方を抜本的に見直していくといたしましたが、未着手のままであり、積み残しの課題でございました。今回、都立図書館の今後の発展の方向性を明確化するに当たり、都立図書館の役割を果たしているとはいえない日比谷図書館につきまして、今後どうするかを示すことは避けて通れない課題である、このように考えまして、地元区移管の方針を出すことにしたものでございます。

○秋田委員 今、お話の中で、移管の理由として、都と区市町村との役割分担の観点からというお話がございましたが、そうしましたら、役割分担の考え方とは何なんでしょうか。

○直原参事 役割分担の考え方とは、都立図書館の基本的な役割は、区市町村立図書館では対応が難しい高度専門的な資料や情報の提供を行う、いわゆるレファレンスなどの情報サービスを行うことと、区市町村立図書館に対して専門書等を貸し出したり職員研修を実施して支援することであり、これに対しまして、図書の個人貸し出しなど住民への第一線サービスは区市町村立図書館の役割である、このようにする考え方でございます。

○秋田委員 都教委はそのような役割分担の考え方を--ここが重要なんですが、今回まとめたのか、それとも従前からそういった考え方を持っていたんでしょうか。

○直原参事 都教育委員会は、古くなりますが、昭和四十八年に都立中央図書館を設置するに当たりまして、都と区市町村とのこうした役割分担の考え方を整理し、以後、広域的自治体の図書館としては個人貸し出しは行わないこととして業務運営を進めてまいりました。
 平成十三年には、国からもこれと基本的に同様な考え方が、公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準の告示により示されたところでございます。

○秋田委員 都教委は、昭和四十八年ということですから、三十年以上前からそのような役割分担の考え方を持っていたということで、そういった考え方を整理したにもかかわらず、当時、個人貸し出しを行っていた日比谷図書館をそのままの形で残したというのは、何か理由があるんでしょうか。

○直原参事 昭和四十八年当時は区市町村立図書館が整備途上であったため、日比谷図書館は個人貸し出しを行う都立図書館として残すことといたしました。ほかにも、当時、多摩地域に都立の八王子、立川、青梅の三つの図書館がございまして、これらも図書の個人貸し出しと図書館未整備地域への移動図書館サービスを行っておりました。同じように、この多摩地域の三館についても、そのときは同様に残してございます。

○秋田委員 その後、多摩地域の都立の三つの図書館はなくなったわけですから、個人貸し出しを行う都立の図書館としては日比谷図書館だけが残ったわけですが、それならば、今日まで残った理由は何なんでしょうか。

○直原参事 昭和四十年代の半ば以降、区市町村立図書館の整備が急速に進み、図書の個人貸し出しサービスは区市町村立図書館によっておおむね提供されるようになってまいりました。そうした中で、昭和六十二年に都立多摩図書館を新設した際に、多摩地域における市町村立図書館の整備が進んだことを踏まえまして、多摩地域の従前の都立三館は、廃止あるいは地元市への移管を行っております。
 日比谷図書館につきましては、都心の昼間人口密集地域にあり、利用者が多いことから、都立図書館の役割を果たしているとはいえませんが、残すこととし、今日に至ったものでございます。

○秋田委員 今、いみじくも担当参事がおっしゃったように、日比谷図書館のある地域というのは、都心の中でも特に昼間人口密集地域にあるわけですから、地元の方に限らず、通勤、通学、いろいろな方が利用することを考えますと、その運営を広域自治体である東京都の業務としてやるという考え方もあり得るんじゃないでしょうか。

○直原参事 日比谷図書館の主なサービスの内容が個人への図書の貸し出しである以上、きめ細かな直接サービスの提供をその役割とする基礎的自治体がこれを担うことが適当である、このように考えております。

○秋田委員 個人貸し出しを行う都立図書館として日比谷だけが残った経緯というのはわかったんですが、それでは逆に、それならば、なぜ今、移管しようとするのか教えてください。

○直原参事 先ほど申し上げましたように、平成十三年に、国からも都道府県立図書館と市町村立図書館の役割分担の考え方が示され、また、本年二月の都の行政監査報告におきましても、日比谷図書館は広域的自治体の図書館としての機能が十分に果たされていない、今後のあり方を抜本的に検討されたい、このように求められたところでございます。このため、早急にこの問題について対応方針を出すことが必要になっておりました。
 他方、移管の相手方の状況でございますが、千代田区は、平成十四年三月に発表した第三次長期総合計画におきまして、在住者はもちろんのこと、百万人の昼間区民や企業を対象とした行財政の運営を行う、このことを区の基本方針として示してございます。
 また、本年七月の新千代田図書館基本構想におきまして、日比谷、丸の内のビジネス地区に図書館サービスの拠点を求める意向を示しました。
 このようなことから移管を進める環境も整ったと判断し、今回、移管方針を打ち出すことにしたものでございます。

○秋田委員 参考までに聞かせてほしいんですが、都立の図書館というのは日比谷を含めて三館ですが、他県の状況は、県立図書館というのは大体何件ぐらいあるんでしょう。

○直原参事 他県の状況でございますが、県立図書館を都と同じ三館設置しているのが埼玉、千葉、沖縄の三県ございます。二館設置しているのが大阪、神奈川など八府県ございます。残りの三十五道県は一館のみでございます。

○秋田委員 県立図書館というのはおおむね大体一館なり二館なりしかないということがよくわかったんですけれども、他県では、現在も県立図書館では個人貸し出しを引き続き行っていると聞いております。とするならば、東京都が日比谷図書館の運営を継続するということもあり得るんでしょうか。

○直原参事 他県では市町村立図書館の整備がまだ必ずしも十分とはいえないところも多く、県立図書館でも個人貸し出しを行っております。他県に比較しまして、区市町村立図書館の設置数及び蔵書数が充実している東京においては、都立図書館は広域的自治体の図書館としての本来の役割に集中して、その充実に努めていきたいと考えております。

○秋田委員 日比谷図書館については、かつて改築する構想があったと聞いておりますけれども、構想の内容と、改築を取りやめた理由というのがあれば教えてください。

○直原参事 平成二年の第三次東京都長期計画に日比谷図書館の改築が盛り込まれた経緯がございます。改築後は個人貸し出しを廃止し、情報化、国際化に対応した新しい図書館として整備する構想を当時持っておりました。バブル経済崩壊後、平成十年になりまして、日比谷図書館は改築せず、中央と多摩の二館で情報化、国際化対応を含めて都立図書館の役割を果たしていくことといたしました。

○秋田委員 今までの参事の話をまとめさせていただきますと、区市町村立図書館の整備が進み、図書の個人貸し出しは区市町村立図書館が担うようになってきたというのが一点。二点目として、個人貸し出しを行っている日比谷図書館は都立図書館の役割外ではあるけれども、利用者が多いため単純に廃止するわけにはいかない。三点目として、改築もできない、このため日比谷図書館の今後の道筋として地元区移管の方針が出てきたと、こういうことだと思うんです。
 ただ、ご存じの方も多いと思うんですが、日比谷図書館というのは明治四十一年に開館した、すごく伝統のある図書館であるわけでございます。移管によって都民サービスが低下するようなことがあってはならない、それは間違いないと思いますが、移管した場合に、千代田区はどのように運営する方針なのか、教えてください。

○直原参事 都教育委員会といたしましても、現行の図書館サービスを継続することは移管の前提条件と考えております。
 移管について千代田区教育委員会に打診したところ、千代田区は、移管を受けた場合には、日本の公共図書館を象徴してきた日比谷図書館の歴史と伝統を尊重するとともに、二十一世紀の新しい公共図書館像を示したい、このようにおっしゃっておりまして、日比谷図書館をより充実させていこうという意欲を示しております。具体的には、千代田区民に限らず、だれにでも現行の図書館サービスを継続し、さらに時代のニーズに合った新しいサービスとして、立地条件なども考慮し、ビジネス支援及び芸術活動支援に係る高度な図書館サービスを提供する方針とのことでございました。

○秋田委員 図書館サービスの質を維持、そして向上させるには、何よりも運営体制というのが一番重要だと思うんですが、中でも職員の資質、能力が一番重要だと思います。千代田区立になっても、専門的知識やノウハウがある、そういった職員は配置する予定になっているんでしょうか。

○直原参事 千代田区では、サービス水準の維持向上に柔軟に対応するため、指定管理者制度の導入も含め、図書館運営のあり方を検討していると聞いております。
 専門職員の配置についてでございますが、図書館サービスの質を確保する上で必須であることから、司書あるいは学芸員の確保など、サービスの水準の維持に必要な人員配置を行うとのことでございます。

○秋田委員 そうしましたら、移管の今後のスケジュールを教えてください。

○直原参事 今議会での審議などを踏まえまして、移管に関して都教育委員会としての方針決定を行った上で千代田区と正式協議を開始し、年内を目途に移管の基本合意を得たいと考えております。その後、移管に向けた準備作業を行いまして、平成二十年四月の移管を目指してまいります。

○秋田委員 日比谷図書館を移管すると、今後、三つだったものが二つになるわけですね、中央と多摩と。そうしましたら、これまで日比谷図書館に投じていた少なくない財源をこの二館に振り向けて、その分、残りの二館を都立の図書館ならではのサービスというか、質というか、そういったものを向上させる必要があると思うんですが、どうでしょう。

○直原参事 都立図書館を二館に集約しまして、限られた財源をより有効に使い、そのレベルアップを図ってまいりたいと考えております。このため、報告書にも示しましたけれども、タイムリーな企画展の実施や都政の重要課題に即した重点的な情報サービス、あるいは子ども読書活動の推進など、具体的な本報告書に記しました取り組み内容を具体化する行政計画を本年度内に策定し、都立図書館の改革を着実に進めてまいりたいと考えております。

○秋田委員 最後に要望を述べさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。
 日比谷図書館のあり方は、都教委にとって長年の懸案でございましたが、今回、千代田区に移管することによって区との役割分担を整理することについて、都議会自民党として賛同するところでございます。
 千代田区との協議に当たっては、日比谷図書館がその歴史と伝統を踏まえ、さらに都民サービスを充実させることができるよう十分に話し合うことを要望しておきます。
 また、日比谷図書館を移管した上で、中央と多摩の都立図書館が広域的自治体の図書館として都民の問題解決のための情報サービスや区市町村支援など、本報告書に示されたこれからの役割をしっかりと果たすため、充実策の一層の推進に努力するよう求めさせていただきたいと思います。

○村松委員長 この際、議事の都合により、暫時、十五分間の休憩をいたします。
   午後二時四十一分休憩

   午後二時五十八分開議

○村松委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 発言を願います。

○馬場委員 私は、報告事項二の都立大島南高等学校学科改編及び都立大島セミナーハウスの運用に係る実施方針について、について何点か質問させていただきます。
 都立大島南高等学校の学科改編、このことにつきましては、今回出されている内容、策定のねらい、国際感覚豊かなたくましい人間を育成する学校、また、その実施内容の海洋国際科への改編、こうした方針については了とするところでございます。しかし、同時に出されております都立大島セミナーハウスの件につきましては、何点か、今後も含めて課題があるというふうに認識しておりますので、この点について伺いたいというふうに思います。
 今回の大島南高等学校の学科改編に伴い、大島セミナーハウスの施設の一部を新しい寄宿舎として活用するとしていらっしゃいますが、この大島セミナーハウスの現在の利用状況、利用実態、どうなんでしょうか、そこからお伺いいたします。

○齊藤学務部長 大島セミナーハウスでございますけれども、昭和五十年八月に都立高校の校外施設として開設しておりまして、昭和五十三年のピーク時、このときに四万人ありました利用者が、現在は一万六千人程度となっております。そのうち相当数が、本来の目的でございます都立高校の生徒ではなくて、社会教育団体の利用となっていることから、行政評価等で抜本的見直しを指摘されてまいりました。
 このため、セミナーハウスのあり方について検討を重ねてまいりましたけれども、設置目的に合った利用が果たせない現状を踏まえまして、平成十八年度末で廃止いたしまして、その後、宿泊棟を大島南高等学校の新しい寄宿舎として活用する予定にしてございます。

○馬場委員 二つ、ありまして、一方では南高校の学科改編、そして一方の大島セミナーハウスについては、行政評価等で見直しをしなければいけない状況の中で、今回、ある意味、お互いに両方が成り立つようにというようなこともあったでしょうか、この両者の提案がなされました。それは大島南高等学校の学科改編と、それから大島セミナーハウスは廃止ということの方針が出たわけですが、このことについて既に教育委員会で議論をされているというふうに伺っておりますが、いつ、どのような協議がなされたのでしょうか。

○齊藤学務部長 大島南高等学校の学科改編、それから、大島セミナーハウスの廃止につきましては、本年の六月十六日、教育委員が大島町を訪れまして、大島南高等学校の生徒の状況、それから大島セミナーハウスの利用状況などについて、現地で意見交換を行ってございます。
 また、先日、九月八日でございますけれども、施策の具体化を図るための都立大島南高等学校学科改編及び都立大島セミナーハウスの運用に係る実施方針の策定について、これを教育委員会にお諮りしましてご承認いただいたところでございます。
 教育委員会の中では、大島南高等学校の学科改編につきましては、特に寄宿舎を活用した教育指導、それから、進路、進学指導を重視した教育の特色などについてご指示をいただいております。

○馬場委員 教育委員会でご協議をいただいたと。まず、大島南高等学校の学科改編、これは、もう来年、十八年度から、四月からということで、もう募集もいよいよ始められるというような説明がなされているという状況だというふうに思います。大島セミナーハウスが寄宿舎ということで、これが廃止を伴うということになってしまうわけですが、この学科改編と、それから、大島セミナーハウスの廃止との関連をもう一度ご説明いただきたいと思います。

○齊藤学務部長 大島南高等学校は、平成十八年四月から、仮称名でございますけれども、全寮制の海洋国際科として学科改編を予定してございます。現在の大島南高等学校の敷地内にある寄宿舎がございますけれども、現在、島外から入学しました海洋科の生徒の生活の場として設置されておりまして、現在の収容定員は百四十人でございます。寄宿舎への入寮者、これは学科改編に伴い増加が見込まれまして、平成二十年度の学科改編完成年次には、三学年で二百四十人となります。現在の寄宿舎での収容は不可能でありまして、新しい寄宿舎を整備する必要がございます。このため、平成十八年度末で廃止を予定しております大島セミナーハウスの宿泊棟、これを大島南高等学校の新しい寄宿舎として整備する予定としてございます。

○馬場委員 同時というより、お話を伺っていると、学科改編をする、そして、今まで島の高校生を受け入れていた部分を全部寄宿舎にして、新しい海洋国際科をつくっていくということですね。セミナーハウスが廃止されるからというより、どちらかというと、この学校の寄宿舎にするから廃止をするというふうに受け取れなくはないんですが、ちょうど、言葉がいいか悪いかはあれですが、渡りに船というような感じに受けとめられるわけです。
 この都立の大島セミナーハウスのパンフレットを今回いただきました。(実物を示す)まだ私、現地を見ていないので、このパンフレットで見させていただくしかないんですが、セミナーハウスのちょうど真ん中のところにある宿泊棟を今回の寄宿舎にしていく。この大きな部分のグラウンド、それから野球場等があって、一番寄宿舎の奥にはテニスコートと体育館というのがあるわけですが、この中で、それでは、大島セミナーハウス、これは大変広いんですね。十一万平米という広い敷地があり、そして、敷地の中に今回の寄宿舎として活用する宿泊棟のほかに、今お話ししたように体育館、テニスコート、また野球場、グラウンドというふうにあるわけですが、これらの施設は、それでは寄宿舎以外の部分はどんなふうになるんでしょうか。

○齊藤学務部長 今、お話のございましたように、四棟の宿泊棟につきましては、学科改編後の大島南高等学校の寄宿舎として活用してまいります。その他の施設については、今後、町との協議に入ってまいりますけれども、現在の私どもの考えでは、その中にございます野球場、第一、第二グラウンド、それからキャンプ場等については、必要な整備を行った上で大島町に移管しまして、引き続き島民の皆様への開放事業を行っていければというふうに考えております。

○馬場委員 都の今後のセミナーハウスの運用についてのお考えは伺いましたが、今回の南高等学校の学科改編と、それから大島セミナーハウスの廃止については、それでは、地元大島町への説明はどのように行ってこられたのでしょうか。また、今後、地元の意見をどんなふうに聞いていくおつもりでしょうか。

○齊藤学務部長 大島南高等学校の学科改編につきましては、大島町の教育委員会の教育長に学科改編検討委員会委員として議論にかかわっていただきまして、それ以外に、検討の状況を大島町に個別に説明しているほか、大島南高等学校からも地元中学校等への説明を行っております。
 また、大島セミナーハウスの廃止につきましては、地元懇談会を開催いたしまして個別に説明を行ってまいりましたけれども、引き続き一部施設の大島町への移管に向けまして、地元、それから関係機関との協議を図ってまいります。

○馬場委員 南高等学校の学科改編につきましては、先ほど、地元の今までの生徒は、学校がなくなってしまうわけですが、今回の新しい学校へも希望すれば入れるということで確認させていただいてよろしいですね。そういう意味では、地元も、この南高校が新しくなるということについては、喜んでいらっしゃっているというふうに思いますが、この大島セミナーハウスの件ですよね。
 この移管ということなんですが、移管と、そして都民の皆様への開放事業を引き続きというお話なんですが、移管をされたとして、セミナーハウスの施設、維持管理をするということでは、大変、島の方の負担が大きいのではないかなというふうに考えられますが、この辺のことについてはどんなふうにご認識を持たれていますか。

○齊藤学務部長 大島町に移管した後でございますけれども、施設の維持管理のためには、一定の経費負担は当然生じることになります。ただし、グラウンド等が中心になりますので、建物と異なりまして負担は少ないというふうに考えてございます。
 いずれにしましても、移管後の町の負担が少なくなるような方法、どういう形がいいか、今後、町の方と引き続き協議を図って、その辺の負担が少ないような形をとっていければというふうに考えております。

○馬場委員 最後に、今回のご提案というか、セミナーハウスの廃止、また、以後のこれからのことについて、この件は、大島町にとっては大きな財政負担になるのではないかなというふうに私は思っています。グラウンド等で建物と違い負担は少ないというふうにご答弁がありましたけれど、今でも年間、グラウンドで五百万程度かかっているという、そんなことも伺っております。こうした野球場、そしてグラウンド、さらには、まだ決まっていないというテニスコートや体育館の今後の使用--都民の皆様に今までのように来ていただいて使っていただくためには、施設の整備をし、運営をしていかなければならないけれど、それをだれがいつ、どんな形でするかということで、どんな規模でするかということも含めて、これから大島町にとっては大変な事業になるかなというふうに私は考えております。
 その意味では、ただし、これはもう十八年度末で移管ということでありますので、十八年度末までの期間に移管をする条件、また新しい運営形態、どんなふうにやっていくかということを含めて町と協議を進めていかなければならないのではないかというふうに思っていますが、ご答弁の中でも、個別な説明、それから、今後は地元の関係機関というふうにご答弁がありましたけれど、今、島を挙げて、そういう意味では総力を挙げて、これからの事業になるかわかりませんが、広大な土地を移管されたところを大島町として利用していくためには、ノウハウ、そして人材がどうなるのかとか、もちろん財政も含めて、課題が大きいというふうに思います。
 私は、今後、十八年度までに何らかのこうした協議機関、つまり一部で話をするのではなくて、島全体でこの流れがきちんとわかって、島全体でこれからの利用ができるような、そんなきちんとした協議機関を設置して、これからの話を進めていくということが必要ではないかというふうに考えておりますので、これから廃止等、条例のお話とか、まだ何度かあるというふうに思いますが、この点ぜひご検討いただきたいということを申し述べて、質問を終わります。

○野上(純)委員 私の方からは、第二次都立図書館あり方検討委員会報告について質疑をしたいと思います。日比谷図書館の移管については、さきに秋田委員からも質疑がありましたので、重ならない範囲で、私からも確認の意味で質問いたします。
 先日の説明では、報告内容について広く都民から意見を募り、それを踏まえて行政計画を策定するということでございましたけれども、日比谷移管について、これまで寄せられた意見について伺いたいと思います。どんな意見が寄せられたのか。

○直原参事 日比谷図書館の移管につきましては、賛成、反対、さまざまな意見が寄せられております。現在、取りまとめの途中でございますので、その中の主な意見をご紹介させていただきますと、賛成意見としましては、都立図書館全体の構想として、多摩図書館を第二中央館とし、日比谷図書館は地域図書館として地元区に移管すべきであるという意見がございます。反対意見としましては、日比谷図書館は専門職の司書による先駆的なサービスが行われてきた、区に移管することによってこれまでのサービスが失われるのではないかと懸念する、あるいはビジネス支援サービスや観光文化情報拠点としてのサービスなど、都立ならではのサービスを展開して、都立図書館として再生させるべきである、このような意見が出されております。
 その他の意見としては、引き続き他の区民も貸し出しが受けられるようにしてほしい、このような意見が来てございます。

○野上(純)委員 都立図書館には図書館協議会という諮問機関がありますけれども、その諮問機関に意見はお聞きになったんでしょうか。日比谷移管については、その中でどんな意見があるのでしょうか。

○直原参事 都立図書館協議会に対しましては、八月の二十六日に本報告を説明し、ご意見を伺ってございます。その中で、日比谷図書館の移管については幾つかの意見が出てございまして、日比谷図書館の移管及び業務委託の推進により経費が浮くのだから、それを残る図書館の充実に生かしてほしい、あるいは、日比谷図書館は都民だけでなく他の県民も利用していると考えられる、区に移管した後もそれらの人々が利用できるのかどうか、その見通しについてきちんと説明責任を果たしてほしい、また、移管後しばらくは都としてもサポートを行ってほしい。そのほか、自治体財政が厳しい中、日比谷図書館と同等の職員体制を区が引き継げるのかはやや疑問である、このような意見が出されております。

○野上(純)委員 日比谷移管についての先ほどの経費の問題とか、他の区民の利用の問題とか、職員体制など、いろいろな意見が出ているわけですが、都教委としてはどのようにこれを考えているのでしょうか。

○直原参事 千代田区に移管することによるサービス低下の懸念を多くいただいているところでございますが、千代田区教育委員会に打診したところによりますと、千代田区としましては、移管を受けた場合には、区民に限らずだれにでも現行サービスを継続した上で、ビジネス支援サービスや、あるいは利用者との交流事業など新たなサービスを展開したいとしております。また、サービスの水準維持に必要な専門職員の配置も行う、このように聞いているところでございます。
 一方、都立図書館につきましては、中央と多摩の二館において、この報告に記しました取り組みを実行し、サービスの一層の充実を図っていくこととしてございます。
 こうしたことから、移管を通じて都民サービスの向上に寄与できるものと考えております。

○野上(純)委員 こうした寄せられた意見に対しては、都教委の見解を今後広く公表し、理解を得る努力をするように求めておきます。
 次に、日比谷以外のことについて、まず、報告書の第一部の都立図書館の今後のあり方の中に、区市町村立図書館の支援や連携について、三ページですけど、述べられているところがありますので、関連して伺います。
 これまで区市町村の支援として、都立図書館から図書の貸し出しが行われておりますけれども、現在の実績と推移はどのようになっているのでしょうか。

○直原参事 都立図書館から区市町村立図書館への貸し出し、これは協力貸し出しというふうに呼んでおりますが、この協力貸し出しの実績は、平成十六年度で約十四万冊となっております。
 推移につきましては、中央図書館は平成十五年度から、また多摩図書館は平成十四年度から貸し出し冊数が減少しております。

○野上(純)委員 これは、出していただいた資料の中の一ページを合計した数で、中央図書館が六万七千九百四十九冊で、多摩図書館が六万八千七百二十五冊、これを合計すると十三万六千六百七十四冊、協力貸し出しをしている、それが約十四万冊ということと、それから、だんだんと減少をしてきているということで、引き算をしますと、中央図書館で一万四千五百冊ぐらい、それから多摩図書館で一万三千冊ぐらいがどんどんと減少してきているということなんですけれども、区市町村立支援が都立図書館の役割の一つであるとすれば、これがだんだん減少しているというのは気になる傾向でございます。この減少の理由としてどのようなことが考えられるんでしょうか。把握していらっしゃるんでしょうか。

○直原参事 都内の区市町村立図書館の蔵書をインターネットにより検索できる横断検索システム、このように呼んでいるシステムがあるんですが、この横断検索システムを都立図書館が区市町村立図書館の協力を得て構築しまして、平成十四年度に導入してございます。その活用によりまして、区市町村立図書館相互の協力貸し出しの動きが出てきたことが大きいのではないかと、このように考えております。東京都全体としても、公立図書館の相互連携によりまして図書の有効活用が一層図られてきている、このように考えております。

○野上(純)委員 そういうことであれば、現在行われている市町村への協力貸し出しも大切な事業ではありますけれども、都内全体の図書の有効活用の観点からすると、区市町村立図書館相互の貸し出しもより一層拡充をしていくべきです。これまで働きかけた事実はあるんでしょうか。

○直原参事 横断検索システム稼働後の平成十六年二月に、都立図書館の呼びかけによりまして、公立図書館同士の資料の相互貸借を円滑に行うための共通ルールを定めております。

○野上(純)委員 支援、連携を進めていくためには、支援の対象である図書館の事業運営を掌握していなければならないと考えますが、現在、区市町村立図書館は、新しいサービスとしてどんなことに取り組んでいるんでしょうか。

○直原参事 地域によりさまざまではございますが、例えば、地域経済の振興を図ることを目的に、地域の産業情報を中心にした図書、新聞、雑誌等を集めたビジネス支援コーナーを設置しているケース、あるいは小中学校の児童生徒の読書指導への支援、子どもが読書に親しむきっかけづくりの読み聞かせ等に取り組んでいるところがございます。

○野上(純)委員 そのような動きに対して、都立図書館として具体的な支援策は考えているんでしょうか。

○直原参事 これまでも都立図書館は、区立の、先ほど申しましたビジネス支援図書館の開設に際し、本の選定や研修の実施など、具体的な支援を行ってきたところでございます。
 今後も、新しい取り組みに必要な情報やノウハウなどを、区市町村立図書館の職員に対して研修を通して提供することや、区市町村立図書館の事業運営をきめ細かく支援するために司書を派遣して助言するなど、一層の支援を行っていきたいと考えております。

○野上(純)委員 区市町村立図書館にも司書がいらっしゃいますし、都立図書館にも司書がいらっしゃるわけですけれども、この役割の違いはどのようなことなんでしょうか。

○直原参事 区市町村立図書館の司書は、地域の実情に即した直接的なサービスを主な役割としております。他方、都立図書館の司書は、高度で専門的なレファレンスなど、広域的、総合的な住民のニーズにこたえるサービスを主な役割としております。

○野上(純)委員 今、お答えがあったように、市町村立図書館における職員で、司書資格を取得していても、長い間図書館に勤務しないで全く未経験の職員が新たに配置されることがあると聞いております。新たな職員でそこで何週間かの研修を受けて司書資格を取得するとかということも聞いております。また、都立図書館の司書は、先ほどありましたように、非常に高度で専門的なレファレンスなど、広域的、総合的な住民ニーズにこたえる力を持っているんですね。高度な技術を有した専門職としての司書が配置されているということで、この都立図書館の司書が区市町村立図書館の職員に対してどのような研修を実施しているんでしょうか。

○直原参事 都立図書館は、区市町村立図書館の職員を対象に、レファレンスサービスについて、初級、中級あるいは講師養成の研修、それから、児童サービスに関する研修、製本の研修など、都立図書館の司書職員によるさまざまな専門研修を実施しております。
 規模でいいますと、平成十六年度について見ますと、二十七回の研修を実施しまして、合計で約千名の参加者がございました。

○野上(純)委員 今後ともそういった研修を継続していただきたいということと、もう一つは、東京都教育委員会が作成した子ども読書活動推進計画は、ことしで三年目を迎えております。東京都教育委員会と都立図書館が取り組んできたこれまでの実績と今後の取り組み計画についてお伺いいたします。

○直原参事 これまでの実績としましては、平成十五年度に小学校入学一年生全員を対象に、それから、十六年度にはゼロ歳児の子どもを持つ保護者全員を対象に、物語や絵本の読み聞かせを進める読書活動推進資料、リーフレットでございますが、これを配布してございます。
 このほか、小中高等学校に勤務する司書教諭に対する研修、あるいは都立図書館のホームページに子どもページを開設するなどを行っております。
 今後の取り組みでございますが、都立図書館と学校図書館との連携協力、読書活動を推進するボランティアグループのリーダー育成、あるいは家庭の読書活動にかかわりの深い区市町村立図書館の職員研修など、子ども読書活動をより一層推進していくためのさまざまな取り組みを進めてまいります。

○野上(純)委員 小学校段階での読書活動の推進は、比較的取り組む方法はあると思うんですが、読書離れがいわれている中高生に対して、都立図書館の司書の専門性を生かして何か取り組むことはできないでしょうか。

○直原参事 児童生徒の読解力の低下が指摘されている状況もあり、これは大きな課題であるというふうに考えております。既に、一部の都立高校に対してではございますが、教員の授業のカリキュラムづくりにおける資料の調査、幅広い資料収集のノウハウを生かした教科のテーマ別のブックリストの作成など、支援を始めたところでございます。
 今後は、都立図書館の司書が都立高校に出向きまして、生徒に対して図書館の利用法や本の調べ方、あるいは古文書に関する講座などを開催していきたい、このようなことも検討していきたいと考えております。

○野上(純)委員 かねてから都立図書館の司書の専門性は高く評価しておりましたけれども、今の話を聞くと、またさらに、もっとその専門性を広く活用していく方途も考えていかなければならないと感じております。
 そこで、今後、学校からの要望により、都立図書館の司書が積極的に学校に出向いていくような事業の実施をぜひ検討してくださいますよう要望しておきます。
 また、この七月には文字・活字文化振興法が制定され、十月二十七日が文字・活字文化の日というふうに定められました。都教委として、この文字・活字文化振興法ができたわけでございますが、今後どのような取り組みをなさるのか、お伺いいたします。

○直原参事 文字・活字文化振興法が制定され、十月二十七日が文字・活字文化の日と定められました。これにちなみまして、都立図書館として都民の方々に広く文字・活字文化についての関心を深めていただくとともに、子どもの読書活動が広がっていくことを目指しまして、十月三十日に都庁で文字・活字文化フォーラムを開催することにしております。このフォーラムでは、子どもと読書についての講演や、地域で子どもの読書活動に取り組んでいるボランティアグループの活動報告などを行う予定にしております。
 都教委としましては、法律の趣旨を踏まえまして、今後とも、特に子どもの読書活動の推進に関する施策を充実させていきたいと考えております。

○野上(純)委員 ぜひこの十月三十日が大成功で終わりますように応援をいたします。
 平成十三年に子どもの読書活動推進に関する法律が制定され、この七月に文字・活字文化振興法が制定されました。この流れの中で、今回の都立図書館改革の基本的な方向がまとめられたことになります。ぜひ子どもの読書活動を推進していくことを初めとして、報告書にある具体的な取り組みを実現して、都立図書館の改革を進めていただくことを私からも要望しておきたいと思います。
 また、日比谷図書館の地元の区への移管の方針については、都と区の役割を整理するものであると認められるので、了解をいたしますが、今後の千代田区との協議に当たっては、現行のサービスの継続と一層の充実が確実に図られますよう強く求めて質問を終わります。

○大山委員 まず最初に、都立図書館のあり方検討会のことについて質問します。
 今回の報告が第二次なわけですけれども、二〇〇二年に第一次の都立図書館あり方検討会の報告が出されて、都立図書館の蔵書の大量廃棄方針を決めて、都民、関係者から批判の声が上がりました。そのときのこの乱暴な大量廃棄方針そのものもさることながら、検討会の内容が図書館の根本にかかわる事柄についての検討であったにもかかわらず、検討会のメンバーは庁内の課長級までの幹部だけ、都立図書館の司書や区市町村立図書館関係者、利用者の意見を聞かずに、図書館協議会への諮問もなかったことが大問題になりました。協力貸し出しなどに大きな影響が出てくるにもかかわらず、都立図書館と連携を図ってきた区市町村立図書館ですら、意見を聞かれることもなく、寝耳に水だったというわけなんですね。
 今回、第二次の検討会の報告となりますけれども、こうした関係者、都民の声を排除して、都庁の一部の幹部だけで決めてしまうやり方というのは変わっていません。どうしてきちんと意見を聞かないのか。前回あれほど批判があったにもかかわらず、聞かないのでしょうか。

○直原参事 今回の第二次あり方検討委員会報告は、東京都教育庁内に設置しました検討委員会の検討結果を取りまとめたものでございます。この検討結果を広く都民の方々あるいは区市町村、あるいは先ほどお話し申し上げました図書館協議会等にご説明しまして、現在広く意見を伺っているところでございます。それらの意見を踏まえまして、本報告に記しました取り組み内容を具体化する行政計画をこれから策定していきたいと、このように考えているところでございます。

○大山委員 今、広く都民にパブリックコメントも募集しているということなんでしょうけれども、現在聞いているんだということなんですね。しかし、教育庁内のこのあり方検討会だということなんです。結局、前回のあれだけの批判、それから、都民の声を聞かないでつくってしまうということの姿勢は継続しているわけですね。それどころか、最近、東京都教育委員会は、図書館協会の委員を、公募委員をなくして、かわりに日産自動車など財界関係者を複数委員に加えました。図書館法に基づく公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準、これは二〇〇一年の文部科学大臣の告示ですけれども、ここでは、図書館協議会について、地域の状況を踏まえ、利用者の声を十分に反映した図書館の運営がなされるために、委員には、地域の実情に応じ多彩な人材の参画を図ることを求めています。これは住民の意思を十分取り入れるためのものであり、そうした流れにも逆行して都民参加を排除するやり方は、到底納得できるものではありません。今回の報告も、やはり関係者、都民の意見をしっかり聞いてやり直すべきだと考えています。
 しかも、前回の蔵書の大量廃棄の方針でどうなったのかということなんですね。結局、蔵書収容の容量はそのときよりもふやさないという方針のもとに、三十五万冊を除籍すること、それを再活用だといって、都内の図書館を対象に引き取りを募集しましたね。初年度の〇一年度は、再活用冊数は除籍の七四%になりました。しかし、翌年度は二二%、〇三年度は二%に激減、その後の計画では、再活用の募集自体が打ち切られました。出していただいた資料3にもありますように、十六年度はゼロになっています。日本図書館協会が出している公立図書館の任務と目標というのがありますけれども、都道府県立図書館について、その六十八番で、県立図書館は資料保存の責任を果たすため、市町村立図書館の求めに応じて、それらの館の蔵書の一部を譲り受けて保存し、提供する、こうなっています。東京都は全く反対のことをやってきたということではないでしょうか。
 しかも、資料費の減額、これは二〇〇〇年度以降減額が続いて、〇四年度予算では、この資料でもありますけれども、一億七千百万円、石原都政になる以前の九八年度と比べますと四割台に激減しています。政令指定都市の平均が二億三千二百万円ですから、東京都が大方の政令市よりも少ない資料費なんだということなんですね。見るに見かねた日本書籍出版協会だとか、日本雑誌協会だとか、日本図書館協会とか、全国学校図書館協議会など二十八団体が、都立図書館のあり方が危機に瀕するということで、財政状況の厳しさは理解できるが、だからこそ将来のために文化の充実をと要請しました。その後も多摩地域の図書館を結び育てる会がつくられ、東京の図書館を考える会が集会をしたり、都議会の請願なども活発に取り組まれてきたというのがこの間の経過ですね。
 まず最初に、今回の検討委員会報告で特徴的なことは、日比谷図書館の千代田区への移管ですけれども、先ほどもお話ありましたように、日比谷図書館といえば百年の歴史を持っていて、日本の公共図書館のシンボル的な存在でもあるわけです。日比谷公会堂の隣に立地していて、その上環境もいい図書館だというのが日比谷図書館ですね。
 先ほどのやりとりの中で、日比谷図書館を地元区に移管する理由は、一つには、広域サービスは中央、多摩で行っているから、日比谷は広域的サービスをしていないということ、それから、個人への貸し出しは区市町村図書館と重複するということと、区市町村図書館がふえて、充実して、役割分担から見て都が運営を継続する必要性が薄いというのが先ほどのご答弁にあったことです。
 この答弁というのは、まさに東京都自身が一次のあり方検討会を実施することによってつくってきたことだというふうにいわざるを得ません。例えば日比谷図書館の児童資料室は、その豊かな資料とサービスで評判の高い、まさに全国レベルの広域的なサービスを展開してきました。ところが、第一次あり方検討会で二〇〇二年の一月、児童室を多摩図書館に移転、二〇〇二年度に視聴覚ライブラリーを東京都映画協会に委託、移転しました。資料費は、先ほどもいいましたけれども、全体としても政令市よりも低い。それから、各館ごとには出ていませんけれども、購入冊数でごく単純に割り返してみますと、十六年度は、日比谷図書館、千八百万円程度かなというふうに計算できるんですが、私、地元、新宿ですけれども、区立の図書館の資料費を聞いてみましたら、区立図書館全体で一億二千万円程度、大体二十九万の人口です。一千二百万都民ですね。区立図書館全体でも一億二千万円、そのうち中央図書館という一つの図書館で約四千五百万円程度です。ですから、それでも区立図書館の中では真ん中ぐらいだと思いますというふうにおっしゃっていましたので、区が図書館に使っている予算ほどもないという大幅削減になってきたと。これではもう資料も本当に買えないという状況ですね。
 日比谷図書館は、千代田区に移管するのではなくて、都立日比谷図書館としてより積極的に活用することこそ、今、求められていると思っているんです。先ほども出ましたけれども、都心立地であるということ、それから、昼間都民が非常に多いというのが特徴ですけれども、資料要求のときに、このあり方検討会が出されるに当たっての専門部会だとかワーキンググループなどの議事録を全部下さいというふうに要求しましたら、余りに大量だったので、手持ちの資料でいただきました。その中に、十月十三日、第一回あり方検討会及び同専門部会合同会の要旨、資料9というのには、日比谷図書館については、部会として昼間都民に対するサービスをどのように評価するのか、立地のよさを都の資源と考えているのかどうかを整理すべきであるという発言記録がありますけれども、その後どのように整理したんでしょうか。

○直原参事 まず、昼間都民に対するサービスをどう評価するのかということでございますが、日比谷図書館は都心の昼間人口密集地域にあり、利用者が多いことから、都立図書館の役割とは必ずしもいえませんが、当面の間、サービスを継続してきたところです。その行っている図書の個人貸し出しサービスについては、本来、きめ細かなサービスを担う基礎的自治体が担うことが適当であると考えております。
 立地のよさを都の資源と考えるのかということでございますが、今申し上げましたとおり、昼間人口密集地域にあるというこのような立地条件から、個人貸し出しサービスに対するニーズが高い状況にございます。したがいまして、この個人貸し出しサービスを担う地元区に移管することが適当である、このように考えたところでございます。

○大山委員 私はどのように整理したのかというふうに質問したわけですけれども、整理されていないわけですよね。今のご答弁にもありましたように、結局、区民以外の利用者が多いから、図書館、都立として提供してきたということなんですよね。それであるにもかかわらず、個人貸し出しサービスを担うから地元区に移管するんだというふうにいうわけですけれども、さっきも出ました新日比谷図書館構想、ここでは、日比谷図書館はどのような位置づけになっていたんでしょうか。そして、その構想はどうなっていましたか。

○直原参事 日比谷図書館の改築について、平成二年の第三次東京都長期計画に盛り込まれました。それを受けまして、平成九年三月に新日比谷図書館基本構想というものを出してございます。その中では、新しい改築後の日比谷図書館を、情報メディアセンターを核とし、新聞、雑誌、外国語資料、児童・青少年資料等の図書館サービスを行う、その拠点とするという考え方が示されております。
 この構想につきましては、バブル経済崩壊後の平成十年になりまして、日比谷図書館は改築しないこととし、中央と多摩におきまして、今申し上げました新日比谷図書館基本構想で想定していた機能も中央図書館と多摩図書館において果たすことにしたところでございます。

○大山委員 その新日比谷図書館構想という、本当にこの立地を生かして、積極的に都立図書館として役割を果たそうという構想が立派にあったわけですね。同じように、例えば大阪では、都心立地ということでは府立中之島図書館というのがあるわけですけれども、大阪で中央図書館が開館したということを受けて、その立地を生かして、ここではビジネス支援サービスをしていますね。これは(資料を示す)ホームページからとったものですけれども、このビジネス支援サービス、こういうふうに、やはりそれぞれの自治体でどう生かすのかということを含めてきちんと位置づけているところもあるということなんです。ですから、新日比谷図書館構想があったのにもかかわらず、それはうやむやになったような状況です。それがあったにもかかわらず、いつの間にか際限のない縮小路線を歩むことになったわけですが、その変更というのは、何か検討会などがあって正式に決まったものなんでしょうか。

○直原参事 先ほども申しましたが、平成十年度に、予算編成のプロセスにおきまして、東京都として判断したものでございます。

○大山委員 財政上の問題ということですよね。検討会などあったわけではないわけです。結局、千代田区に、圧倒的に多い、区民よりも何倍も多い昼間都民に対する貸出サービスを移管するということなわけですけれども、やはり廃止、移管を目的化するのではなくて、新日比谷図書館構想の基本に立ち戻った視点から都民の財産である日比谷図書館を論議するべきであるというふうに思います。
 しかし、先ほども話が出ていましたけれども、千代田区では受け取った後どうするのかということで、これは(資料を示す)千代田区議会に出た資料ですけれども、さっきご答弁にありましたように、指定管理者制度の導入を含めた組織運営を行うというふうに書いてあるんですね。結局、千代田区で受け取るといっても、みずから運営するのではなくて、指定管理者にゆだねてしまうということなんですね。今、公立図書館のあり方として、指定管理者導入をめぐっては本当に大議論になっているわけですよね。そんな状況の中で、指定管理者なんだということがわかっていながら移管して、後は野となれ山となれということではないかというふうにいわざるを得ません。
 次に、利用者による費用負担ということがあるわけですけれども、利用者の費用負担というのは、図書館のあり方、それから、都民がだれもが知る権利を保障するという根本にかかわることです。検討会報告のⅢの5の(5)では、利用者による費用負担というのがあって、民間の有料データベースを活用して行う情報サービスや云々といって、受益者負担の観点から利用者に一定の費用負担を求めることを検討するとなっていますけれども、図書館法では、公立図書館では利用料を取ってはならないことになっていると思うんですけれども、どうなんですか。

○直原参事 民間のデータベースの情報につきましては、図書館資料ではない、このような解釈になってございまして、図書館法による無料原則の対象外というふうに考えてございます。

○大山委員 図書館資料ではない、外部情報だからということですけれども、図書館法の第十七条には、公立図書館は入館料その他、図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならないというふうに書いてあるわけですね。今、ご答弁されていましたけれども、国立国会図書館は、欧米の雑誌、新聞、五千タイトル以上の全文有料データベースを無料で提供していますし、都内でも九区十一市の図書館が、和文新聞、雑誌等の全文有料データベースを無料提供していると聞いています。無料提供しているんですね。知る権利を保障する公立図書館の役割からいっても、公立図書館の無料原則、これを貫くべきではないんですか。

○直原参事 利用者間の費用負担につきましては、今後の検討ということでございますが、今のお話でございますけれども、国におきましても、これは生涯学習審議会の専門委員会の報告の中でございますけれども、外部情報の入手に関する対価徴収のあり方については、図書館の設置者の裁量により行うものと、このようにされているところでございます。

○大山委員 これ、あり方研究会のワーキンググループの拡大部会というんですか、ワーキンググループ、商用オンラインデータベース検討報告というのがありますけれども、その中のまとめには、公立図書館では有料提供環境が未整備であることが判明したので、無料提供という観点に立って提供する商用データベースの再選択を行うというふうに、無料提供でということで決着していることなんじゃないんですか、これ。

○直原参事 お話しの件は、今回の第二次あり方検討委員会報告のまとめの途中で、作業グループでの議論の内容の一部と思われますけれども、この費用負担の問題につきましては、今後の実施計画の策定の中で検討していくこととしております。

○大山委員 いろいろいいますけれども、例えば図書館でのインターネットでの提供などが非常に進んでいるアメリカ、例えば、これは「未来をつくる図書館-ニューヨークからの報告-」ということですけれども、ニューヨークの図書館で、極めて高い講読料が必要なデータベースが無料で利用できるメリットははかり知れない、企業家、中小企業の経営者、ビジネスマン、個人投資家や学生を初め、データベースが実にさまざまに活用されている、だれもがインターネットでデータベースを駆使できるんだというふうになっているわけですね。ここでもアメリカンドリームが生まれているわけなんです。
 このインターネットとその図書館での提供が他国に先駆けて進められていたアメリカでは、インターネット情報は蔵書ではないから、図書館の無料原則から除外されるという、今おっしゃったような議論は既に克服されているんです。既に一九九七年の合衆国の最高裁判所では、インターネットは放送メディアより活字メディアに近く、活字が享受するのと同じ水準の合衆国憲法の保護に値するんだということが九七年にもう判決として出ていますし、世界図書館連盟では、図書館、情報サービス機関では、他の中核的なサービスと同様、インターネットへのアクセスは無料とすべきである、これももう二〇〇二年八月二十三日の総会で採択されています。インターネットのデータベースは、本来の役割として無料だというのは、もう世界の趨勢だということなんですね。世界規模での電子図書館ともいうべきインターネットですから、一九五〇年の図書館法が予想できたものではないわけですね。ですから、字句の解釈ではなくて、知る自由の保障を図書館の目的とするその図書館法の趣旨に即せば、図書館法十七条は、インターネットについても適用されるということだということを述べておきます。
 次に、公立図書館の基本的な役割なんですけれども、日本図書館協会が出している公立図書館の任務と目標というのがありますが、都道府県立図書館については、その八十番目で、県立図書館は所蔵資料の充実に努め、除籍は最小限にとどめるというふうになっています。収蔵対策というのは、多くの都民や区市町村の図書館関係者も心配しています。あり方検討会では、Ⅲの3の(5)、蔵書の充実、収蔵対策及び管理の効率化のイ、収蔵対策で、都立図書館は資料の長期保存という役割も担っているとして、現状のままでは、都立図書館の書庫は数年後には満杯になる見込みであり、今後の収蔵対策を早急に策定する必要があると述べて、新たな書庫の確保を含め、資料を長期に収蔵するための基本的な対策を検討していくというふうに書いてありました。
 東京都市町村立図書館長協議会では、資料の共同保存プロジェクトを行っているというふうに聞いていますし、多摩地域の図書館を結び育てる会からは、基本構想として図書百万冊を保存する敷地面積四百九十平米の自動図書出納書庫から始めて、段階的に拡張するという案も公表されています。
 都立図書館では、都立図書館が一冊しか所蔵しない資料は除籍しないということは、二〇〇二年の二月十九日の文教委員会で確認されていますけれども、この方針をまず確認したいんですけれども、どうですか。

○直原参事 今回の報告書にも述べたところでございますが、都立図書館は資料の長期保存という役割を担っておりまして、限られた書庫容量の中で、毎年の新規の受け入れに対応していくことが必要となっております。
 第一次あり方検討委員会の報告後、資料の収集と保存について原則一点とする、このようにして書庫スペースの効率的な活用に努めてきたところでございますが、それでも、現状のペースでいきますと、今後数年後には書庫スペースが満杯になる、このような状況の中で改めて収蔵対策を検討すべきである、このように今回の報告では述べたところでございます。

○大山委員 一冊しか所蔵しない資料は除籍しないということなわけですね。今おっしゃったように、やはり早急に新たな書庫の確保計画を実施することが必要だと考えています。その計画には、区市町村立図書館が所蔵し切れない資料のクリアランス機能も含めた保存機能を持つものとすることだとか、それから、書庫の確保計画には、区市町村立図書館と協議して行うことが求められると考えますけれども、どうでしょう。

○直原参事 図書の収集と保存についての東京都と区市町村との役割分担のあり方についても、今回の報告書に記しましたように、今後の検討課題であり、これは区市町村と議論をしていきたいと、このように考えております。

○大山委員 ぜひ区市町村立図書館ときちっと協議をしていただきたい。それから、都民の声もきちんと聞いてほしいということを要望しておきます。
 あと、都立図書館改革推進会議、これを作業しているというふうに聞いていますけれども、今、どうなっているんでしょうか。

○直原参事 今回の第二次あり方検討委員会報告、これが八月の二十五日にまとめられました。これを受けまして、図書館改革の実施計画--行政計画でございますが、この実施計画を策定するために、教育庁と都立図書館の職員を構成員としまして、都立図書館改革推進会議をこの九月に設置したところでございます。
 現在、サービス、それから、連携協力及び管理運営の三つの分科会を設けまして、具体的な検討に着手したところでございます。

○大山委員 庁内につくったということですけれども、都立図書館の基本が問われることですから、都民の前にきちんと議論が見えるようにすることが、やはり第一回のあり方検討会の反省でも、実践してもらわなきゃいけないと思っています。
 そして、都民がその議論に参加できることが重要だと思います。パブリックコメントが募集されていますけれども、それは公開されていません。各意見の内容がわかるように、それからまた、それらの全文もホームページで公開することを求めますが、どうですか。

○直原参事 都民からの意見を募集しまして、現在取りまとめに当たっているところでございます。今後もまた随時ご意見をいただけるものと考えております。
 いただいたご意見とそれに対する教育庁としての考え方については、まとめた形で随時公表していきたいと考えております。

○大山委員 ぜひまとめた形で公表するということと、同時に、全文もきちんと公開することを求めておきます。
 図書館というのは、やはり都民にとってなくてはならないものですし、本当に知る権利--膨大な資料の中から、都民が行って本当にレファレンスしてくれる、これはもうなくてはならない機能ですし、本当に活用できるような図書館にしていかなきゃいけないわけですから、都民の意見をきちんと反映できるように、今後は進めていっていただきたいということを申し上げておきます。
 もう一つ、大島のセミナーハウスなんですけれども、さっき廃止の理由というのが、ピーク時に比べて四万人から一万六千人に利用者が減ってしまった、それから、設置目的と合わなくなってきたんだということがいわれましたけれども、この大島セミナーハウス、利用者が少ないとはいっても、高校の野球部だとかソフトボール部だとかバレー部だとか、それからチアリーダーだとか、さまざまな部活だとか、それから合宿、学習会などに利用されているし、それから、社会教育団体も、子どもだとか大学生だとかも多いわけですね。そこに行けば安い宿泊費で活動する場所もあるということですから、非常に便利な、よい施設なんですね。それで、行ったところでは、大体アンケートなんかすると、来年もまた来たいんですということが多いというんですね。甲子園に行った城東高校だとか雪谷高校も、ここの大島セミナーハウスで野球部が合宿していたとかといってましたけれども、そんなことで、やはり、少なくなったとはいえ、なくてはならない施設なんですね。
 同時に、教育庁のさっきの議案の方の資料で出してもらった五ページですけれども、都立高校の授業料の減免状況というのを出してもらいましたが、平成十二年から着実にといいますか、経済状況を反映して、例えば全日制の都立高校生の免除の人数は一万三千二百八十三人で一〇・四八%、一割を超えている数字なんですね。減額も一・二七%、定時制では一八・一二%が免除で、〇・八九%が減額だという状況です。
 ことしになってからも、ある高校のクラブで利用したんです。経済的にも厳しい子どもたちがいたけれども、あのセミナーハウスだったから全員が参加できて、担当の先生は本当によかったというふうに話していたわけなんですね。ですから、こういうなくてはならない、経済的な理由で参加できないようなことがない、それから、安い料金で宿泊できる、それから施設も整っている、そういう大きな役割をどういうふうに認識しているのかなというふうに思っているんですけれども、どうでしょうか。

○齊藤学務部長 教育委員会といたしましては、大島セミナーハウスは、先ほどちょっと申し上げましたように、都立高校、それから都立高等専門学校、これに在籍する生徒、学生の宿泊学習、これの活動場所として設立した校外教育施設の一部でございます。
 この校外施設の位置づけでございますけれども、実は、先ほど申し上げました、平成十六年現在で約一万六千人程度の利用者になってございますけれども、本来の校外施設としての利用者としては四千六百人しかございません。この観点から行政評価で抜本的な見直しを求められておりまして、これについての対応を図ったところでございますけれども、本来の目的に沿った利用がなかなかされない状況から、先ほど申し上げましたように、新たな形での寄宿舎の活用を図っているものでございます。
 なお、従来ございました野球場、それからグラウンドにつきましては、引き続いて都民の利用施設として活用していく形で、大島町の方と協議を行っているところでございます。

○大山委員 高校生は、この宿泊料は免除されるわけですよね。だからこそ、さっきいったみたいに、経済的に厳しい子どもたちがいたけど、全員行けたんです。船で行けば、一番安い船賃で行けばいいわけですし、食費の一日二千五百円あればいいわけなんですね。それを、行政評価ですから非常に効率を求めるわけですが、結局、そうやって経済的に弱い部分を切り捨てちゃうことになるんじゃないんですか。ということを私はいっているわけなんです。その認識をきちんととらなきゃいけないと思うんですよ。
 と同時に、島にとっても、セミナーハウスで、例えば大島のよさを知って、その後リピーターになるケースがあったりするわけですね。ですから、都民に引き続きグラウンドだとかは開放するんだというふうにおっしゃっているわけですから、なるべく子どもたちを切り捨てないためにも、規模が縮小してきているんだという話がありましたから、その宿泊の部分を縮小してでも--抜本的に見直すんだというんだったら、都として縮小してでも存続するということを検討するべきじゃないんでしょうか。

○齊藤学務部長 当初の、五十三年度でございますけれども、四万人ありました校外施設としての利用者が、約十分の一近くに減ってきている状況から、行政評価で評価された抜本的見直し、これについての私どもとしての、現在の利用形態からして回復が見込めないというということで、こういうような検討結果になったものでございます。

○大山委員 行政評価でやれば、人数が少なくなれば、それは抜本的な見直し対象になりますよ。しかし、それは切り捨てるということじゃないですか、子どもたちを。ここがなかったら、例えばさっきの高校の部活の子どもたちは、行けない子たちが出るんですよ。それを見て見ぬふりする、行政評価だからといって、そうやって抜本的に見直すんだといってなくしてしまう。そういう、きちんと子どもたちの姿も見てやるべきだと思いますよ。
 と同時に、あと町への説明、町の議会にも、今回の議会で初めて報告されたというんですね。ですから、きちんと議論をするということをやらなきゃいけないと思いますし、それから、行政評価だから抜本的に全部なくすんだということではなくて、ぜひとも子どもたちの、少ない人数であっても、やはり自治体としてどこをきちんと見なきゃいけないのかということを把握してもらいたいと思います。

○服部委員 共産党は相変わらずの議論でしてね。私はこの都立大島南高等学校と、それから学科の改編、また全寮制の導入、それと都立大島セミナーハウスの運用に係る実施方針について、これを余り矮小化しないで、これはいい提案ですから、ひとつ積極的に答弁の方もお願いしたいと思うんですが、答弁いただく前に、この学校の沿革というか、そういったものも皆さんにわかっていただいた方がいいと思うんですよ。そうしませんと、ただ何となく急に出てきて、急にこのセミナーハウスがこうなってなんていう、そういう非常に短絡的な考え方になっていただいても困るので、あえて、そちらの方で今まで説明いただいてないので、このことについて、私の方から、報告書に基づいて、さわりの方だけちょっと意見を述べさせていただきたいと思うんですけれども。
 東京都における水産海洋教育という立場でこの報告書がこの六月に出されましたね。これは海洋国日本の中で、日本の海里水域、これが四百五十万平方キロメートル、日本の国土の十二倍あるんですね。世界でこれは六番目の広さということです。そうして、この日本の海の約三八%が東京都に属しているんですよ。
 そういった中での今度の学科の改編だと思うんですけれども、この沿革については、昭和二十一年に、まず大島の農林学校水産科として設立をされましたね。その後、昭和二十五年に大島高等学校水産科に改称されて、昭和四十六年に今の都立大島南高等学校として独立をしたと、こういうことなんですが、その後、学校を取り巻く環境が大きく変化もしているわけです。
 昭和四十七年ですが、水産業という狭い対象から、海洋全体を教育の対象とする、そういう目的で教育課程の改革を行うとされまして、平成四年、海洋科に類型を導入した。また、平成十五年には国立の、今は国立学校法人ですが、東京海洋大学と、全国で初めて高校と大学の連携を行う、そういったような長い歴史があるわけですね、この学校については。
 その中で、現在、例えばマグロの遠洋航海実習、こういった後継者の育成のための実習、大体この辺の役割はまあ終えたんではないかということで、さらに一方では、水産資源とか海洋環境に関する航海調査実習、こういったものがますます重要性を増してくる、そういった中で、海洋教育を通して人格的な陶冶という教育的効果の極めて大きい、そういうものに改編をしていこう。これは、教育の関係ですが、都内の普通科の生徒さんよりも、この学校では六倍のコストをかけてでも、夢のある生徒を大いに育てていこう、そういった気持ちがあるわけですけれども、こういった卒業後の生徒の進路など、都民の期待にいかにこたえていくかが、今、求められている。そういった中で、今回これが出されたんだと思いますね。
 この学校の教育理念にありますように、海を通して世界を学ぶんだ、そういったことがこれからの国際社会に生きる人材を育成していくことで大変効果的である。私もそのように思います。自国の、あるいは地域の文化とか歴史とか、そういった伝統、それに対する深い理解、そういったものも教育目標にも掲げられておりますし、もちろんこの中にも、他国の歴史や文化、伝統も理解しようということも盛り込まれているわけですし、そのことが、この六月に報告書として出されて、この九月八日に改編及び都立大島セミナーハウスの運用に係る実施方針が出された、そういう経緯です。
 そういった経緯の中で、先般、知事の所信表明演説にも触れられましたように、来年の四月から都立大島南高校の学科が改編をされて、都立高校として初めて海洋国際科が設置されます。海を通じて広く世界を知る体験型の国際教育の実践など、特色ある教育活動を実施しようとしているわけですね。
 そこで、最初に、なぜこの時期に海洋国際科へ改編する必要があるのか、まず、この点を伺います。

○齊藤学務部長 大島南高校の水産科の今後のあり方につきましては、都立高校改革推進計画におきまして、既に問題提起をされてきたところでございます。これに対応いたしまして、平成十六年十一月に、庁内に大島南高等学校学科改編検討委員会を立ち上げまして検討を進め、本年六月に検討委員会報告を取りまとめたところでございます。
 報告書の中では、三点ほど現状についての問題提起をしてございますけれども、まず第一に、漁獲高の減少、遠洋漁業からの撤退など、水産業を取り巻く産業界の動向の変化、二点目といたしまして、生徒の進路目標が難しい問題、三点目に、普通科の大幅な定員割れといった現状を踏まえまして、現在の海洋科を充実発展させまして、海洋国際科に改編することを提言いたしております。この報告書の提言を踏まえまして、十八年四月に学科改編を行うものとしたものでございます。

○服部委員 今、お話しのように、水産業を取り巻く環境の変化、時代の要求、そういったものが変わる中で海洋国際科に学科改編していく、そういう背景についてはわかりましたが、この大島南高校は、高速船で行きますと都心から二時間足らずでしょうか、その距離にあるんですが、大変豊かな自然に恵まれた、大島というすばらしい場所に立地をしているわけです。
 新しく生まれ変わる大島南高校では、雄大な海、そしてまた豊かな自然という大島のすばらしい環境あるいは資源を生かした教育活動を行うべきだと、そのように考えますが、いかがでしょうか。

○齊藤学務部長 新しく設置を考えております海洋国際科でございますけれども、教育の特色のところにも掲げてございますように、海を通して世界を知るという観点のもとに、国際感覚豊かなたくましい人間を育成することを目指す学科でございます。この理念を実現するために、新しい学科では、海洋科としての現在の大島南高等学校の現有資産、それから、先ほど理事の方からございましたように、島を取り巻く豊かな環境、これを最大限に活用しながら教育活動を展開してまいりたいというふうに思っております。

○服部委員 今、学科改編後の特色ある教育活動、具体的にどういうものがあるんでしょうか。

○齊藤学務部長 海を通して世界を知るという体験型国際教育、それから、先ほどからいろいろ出ておりますように、寄宿舎を活用した教育指導の充実、それから国際交流の実施など、海に囲まれた島という立地、それから、全寮制の学校という特性を踏まえました特色ある教育活動の展開を考えております。来春の学科改編に向けまして、具体的な活動内容について、現在検討されているところでございます。

○服部委員 この学科の改編によって、時代の流れに即して教育活動が充実される、そういったことは理解できるんですけれども、一方、都立唯一の水産科である海洋科がなくなることにもなるんです。水産科の伝統は継承されるのか、あるいは継承される場合はどのように継承されていくのか、伺います。

○齊藤学務部長 海洋国際科は、現在の海洋科を充実発展させたものでございまして、海洋科の科目を一部継承していくことになります。新しい学科では、航海学習、それから、カッター操船を通したシーマンシップ精神の育成を教育の基盤といたしまして、理系、海洋系大学へ進学を目指す国際海洋類型におきましては、操船実習等の科目も履修していく予定としてございます。

○服部委員 今のお話のように、とにかくわくわくするような高等学校にこれからならなきゃいけないし、これは来年度の募集のリーフレットでしょうか、ここにもありますが、世界に羽ばたく夢の実現へ。このパンフレットも、今はいいですよ、ひとつこういう表題になるような、もう少し夢のあるようなパンフレットで、世界に雄飛をするんですから、もう少し堂々と、ひとつパンフレットもおつくりいただくように。そういういい学校をこれからつくるんですから、答弁も、これからまだ伺いますけれども、堂々と答弁いただきたいと思います、胸張ってね。
 それでは、次に、全寮制のことで幾つか質問させていただきたいんですけれども、知事の所信表明でも、全寮制を導入して自立の精神とか規範意識を養い、たくましい人材を育成するということをいっていますね。そこで、改めて全寮制を導入する意義について、教育委員会としてどのようにお考えか、伺います。

○齊藤学務部長 寄宿舎における集団生活でございますけれども、生活規範としての誠実、礼節、協力、それから自律と自立の実践的態度を身につける格好の場というふうに考えております。生徒の大半が寄宿舎に入居するという環境の中で教育が行われますので、現在の青少年に不足しがちなこらえ性、それから規範意識、これを学校全体で十分にはぐくんでいけるというふうに考えております。

○服部委員 それで、最近の多くの高校生の実態を考えたときに、全寮制の導入による全人教育に対しては大変大きな期待を寄せておりますが、寮生活を通して忍耐力あるいは自立心、あるいは他人に対する思いやり、ほかとの協調性など、こういったものが養われて、豊かな人間味あふれる生徒が育っていくんだということを私は願っています。
 この全寮制である学科改編後の海洋国際科へは、生徒の多数が島外から入学をし、寄宿舎に入ることと思いますが、一方で、全寮制が導入され、また、学科改編に伴って普通科がなくなりますね。大島在住の生徒への影響があるのかどうか、この点についてどのように考えているのか伺います。

○齊藤学務部長 海洋国際科に、当然、島内からも入学してくる生徒が考えられますけれども、いろいろ事情によりましては、自宅からの通学を希望する生徒につきましては、認める方向で、現在検討中でございます。
 なお、南高校には普通科も設置されてございますけれども、普通科の教育を希望する生徒につきましては、同じく大島島内に大島高校がございますので、ここで受け入れることが可能でございますので、島内の生徒への大きな影響はないものというふうに考えております。

○服部委員 大島の子どもたちにとってマイナスの影響がないような、そういった格段のご配慮をよろしくお願いをしたいと思います。
 あと、全寮制の学校になることによって、生徒を全都的に集めることになりますけれども、募集対策、これに不安がないのかどうか、現時点での見通しですか、それを伺います。

○齊藤学務部長 従来の大島南高校の入試の倍率、それから、今回大きな目標としております進学ということを重視しておりますので、従来の進学指導重点校の応募倍率、それから、生徒の志望動機等々、これについても、海洋教育、それから寮生活を通じた教育、進学重視といったコンセプトに対する生徒、それから保護者の期待は高いというふうに考えております。
 現在、学科改編の構想について、各学校--中学校でございますけれども、学校の方から説明を進めてきておりまして、同時に、私ども、学校説明会等でも、この辺も含めて説明を進めてきているところでございますけれども、引き続き精力的に募集活動を進めていきたいというふうに思っております。

○服部委員 この学科の改編に伴って全寮制が導入をされると。そうすると、入寮生がふえて、三学年で二百四十名の入寮が見込まれますよね。現在の寄宿舎での収容、これはもう不可能ですから、新しい寄宿舎を整備する必要があります。都教委では、その対応として、大島セミナーハウス、この宿泊棟を活用して、セミナーハウス自体は平成十八年度末で廃止する、そのようになっているわけですけれども。
 これからセミナーハウスについても何点か質疑をいたしますが、大島セミナーハウスの沿革というか、これもやはり触れておいた方がいいのかもしれませんけれども、これは昭和五十年に利用が開始されたわけですね。この設置目的は、都立の中高あるいは高等専門学校に在学をする生徒、学生に対して校外の教育活動を推進し、校外教育施設として設立されたということなんですが、昭和五十五年から都内あるいは都外の学校とか社会教育団体なども利用できるようになって、利用者の拡大を図ろうとしたんですが、実態は、さっき答弁もありましたけれども、昭和五十三年当時、さっきは約四万人といっておられましたが、それをピークにしてだんだんだんだん下がって、平成十六年度では約一万六千八百人、半分以下、四四%まで落ち込んでいるというのも実態としてありますね。その実際の稼働率が二〇%程度。さっき、これを渡りに船というご発言もありましたけれども、渡りに船というか、いろいろ知恵を出し合って、いい成果を出していこうというふうに私はこれを考えるわけですが、しかもそれがまた大島町の活性化につながっていくような、そんなことも考えていかなければならないと思うんですけれども、このセミナーハウスは、単なる廃止ではなくて、地域の振興、まちの振興、そういったものに何らかの形で私は寄与するものでなければならない、そのように思うんです。今回のセミナーハウスの廃止方針は、大島南高校の学科改編と関係する中で、地域にとって、私はプラス面があるのではないかと考えています。
 そこで、セミナーハウスの宿泊棟は寄宿舎へ転用するわけですけれども、これはもちろん寮生がふえるわけですが、都教委として、学科の改編により寮生がふえることが与える影響、どのようにとらえているのか伺います。

○齊藤学務部長 実は、大島南高等学校の位置は、大島町の南部でございまして、島の中でも特に高齢化が進んでいるところでございます。この地域に全寮制の新しい学科が導入されることによりまして、島外から入学してくる生徒ですけれども、現在の二倍程度になると想定してございます。寮生の増加によりまして島の定住者がふえることは、当然、食材等の調達も含めて地域での消費の増加等々、多くの面で島の活性化につながるものというふうに考えております。
 また、生徒の保護者の来島者数の増加などのプラス効果も、当然考えられるのではないかというふうに思っております。

○服部委員 このセミナーハウス自体も、先ほども質問ありましたけれども、単に廃止されるわけではなくて、その一部施設は大島町に移管され、移管後は一般都民に開放されるということですが、確認の意味で、移管する施設、これがどのように利用されるのか、この点について伺います。

○齊藤学務部長 現在のセミナーハウスの施設のうち、現在、町の方と協議中でございますけれども、移管を予定してございますのは、野球場、それから第一、第二グラウンド、キャンプ場等を、必要な整備を行った上で大島町に移管することを考えてございます。
 現在のところ、町との協議では、移管された施設につきましては、社会教育施設として広く都民に開放していく、そういう方向で協議中でございます。

○服部委員 町の運営等についてはこの後質問いたしますけれども、いずれにしても、こういったことが大島町にとってもプラスにならなければならないんで、この点についてもう一度都教委の見解を伺いたいと思います。

○齊藤学務部長 社会教育施設としての利用が継続され、都民への開放が引き継がれることによりまして、一定の来島者数が確保されれば、島の活性化には寄与できるものというふうに考えております。当然、宿泊施設は廃止されますけれども、野球場等の施設利用者が周辺の民宿、これに宿泊することなどよりまして、より大きな地元への経済的な波及効果がもたらされることを私どもとしては期待しております。

○服部委員 大島町として、移管後の施設が町民を含めてより有効に活用されるよう、また、これに関連して要望を上げてくることもあると思います。また、移管後の維持管理費も含め、対応すべき課題は多く残っています。さっきも話ありましたが、例えば移管後といいますか、現時点で、例えば管理費は、グラウンドだとか野球場がありますね、どのぐらい費用がかかっていたんですか。それとあと、大島町の予算はどうなんですか。その点もしお答えできれば答えていただきたいんですが。

○齊藤学務部長 今、大島町の方からいろいろ要望をいただきまして、それについて協議中でございますけれども、今のところまだ具体的な金額は申し上げることはできませんけれども、極力、地元との協議の中では、移管後の維持管理費等々についても、低廉な費用で維持できるような形で整備するように協議中でございます。

○服部委員 これはいわなくても、要するにどのぐらいの維持管理費がかかるか、町の予算と、あるいは今まで管理をしていた東京都の予算、あるいは都の教育庁の予算とすれば、それはやっぱり金額的にも、町にとっては大変な負担になってくる心配があるわけですよ。さっき馬場副委員長からもその点のご指摘もありました。したがって、こういった町の負担が少なく済むように、これからもぜひ町の要望にこたえながら、移管が円滑に行われるように、大島町との協議を継続するべきだと私は考えますが、その点いかがでしょうか。

○齊藤学務部長 セミナーハウスの一部施設、先ほど申し上げました施設でございますけれども、これが町に移管されまして、社会教育施設として適切に運営されていくことが、都民にとっても町にとっても重要であるというふうに私ども考えております。
 東京都教育委員会といたしまして、今まで出されております要望を含めまして真摯に受けとめ、引き続き協議を続けることによりまして、施設の移管が円滑に実現できるよう、今後も町の方と協議を進めてまいります。

○服部委員 最後にいたしますけれども、ぜひこれからも、都教委は大島町と十分な協議を行ってほしいと思います。
 それと、これは教育庁関係ではもちろんありませんけれども、大島も今、観光のまちとして、大いにこれからアピールをしていこう、それから、島しょのよさ、島のよさを生かして大いに観光客を誘致しようということで、いろいろ一生懸命頑張っていますよ。したがって、これは教育庁と町との関係もあれば、また教育庁と、例えば産労局の観光部だとか、あるいは総務局の多摩島しょの振興担当だとか、そういった連携も、ぜひ、町から直接というのはなかなか大変でしょうから、連携を図っていく一つの思いやりといいますか、そういったことも私は大事だと思うんですよ。
 こういった島民に長く親しまれてきた大島のセミナーハウス、これが廃止されるのは大変残念ですけれども、新しい要望に対応して、先ほど申し上げてきた大島南高校が生まれ変わるということは、大島町にとっても、非常に私は意義深いものだと思いますし、また、そういうものにしていかなければならないと思うんです。町と学校が協力し合って地域の新しい学校づくりに取り組んでいくよう期待するとともに、今回の学科の改編、それからセミナーの一部施設の町への移管、こういったことが今後の大島町の振興にとって大いにプラスになっていくように、そういったことを願いながら、質問を終わります。

○村松委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 報告事項に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○村松委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で教育庁関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後四時四十二分散会

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