文教委員会速記録第十一号

平成十六年六月十一日(金曜日)
第三委員会室
午後一時四分開議
 出席委員 十四名
委員長東ひろたか君
副委員長臼井  孝君
副委員長大塚 隆朗君
理事野上じゅん子君
理事山口 文江君
理事松原 忠義君
村上 英子君
福士 敬子君
山下 太郎君
石川 芳昭君
遠藤  衛君
山本賢太郎君
曽根はじめ君
樺山たかし君

 欠席委員 なし

 出席説明員
大学管理本部本部長山口 一久君
管理部長三橋  昇君
参事大村 雅一君
参事宮下  茂君
教育庁教育長横山 洋吉君
次長鮎澤 光治君
総務部長比留間英人君
学務部長山際 成一君
人事部長臼井  勇君
福利厚生部長幡本  裕君
指導部長近藤 精一君
生涯学習スポーツ部長鈴木 雅久君
参事松田 芳和君
都立学校改革推進担当部長山川信一郎君
参事齊藤 一男君
人事企画担当部長井出 隆安君
参事沼沢 秀雄君

本日の会議に付した事件
 意見書について
 大学管理本部関係
付託議案の審査(質疑)
・第百六十三号議案 東京都公立大学法人評価委員会条例
・第百六十四号議案 東京都が設立する公立大学法人が設置する大学に係る入学考査料及び入学料に関する条例
 教育庁関係
報告事項(質疑)
・「東京都教育ビジョン」の策定について

○東委員長 ただいまから文教委員会を開会いたします。
 まず、傍聴人の数についてお諮りいたします。
 本委員会室の定員は二十名でありますが、傍聴希望者が定員以上ございますので、さらに二十名を追加したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○東委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○東委員長 次に、意見書について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件については取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これに異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○東委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○東委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、大学管理本部関係の付託議案の審査並びに教育庁関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより大学管理本部関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百六十三号議案及び第百六十四号議案を一括して議題といたします。
 本案については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○三橋管理部長 去る五月二十八日の当委員会におきまして要求のございました資料につきまして、ご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の文教委員会資料の一ページをごらんいただきたいと存じます。1、評価委員会の評価の仕組みについてでございます。
 この表は、評価委員会に関して、評価の仕組み、委員の任期等、評価結果の扱い等につきまして、都の公立大学法人評価委員会と国立大学法人評価委員会とを比較したものでございます。なお、国立大学法人評価委員会の委員一覧を二ページに記載しております。
 続きまして、三ページをごらんいただきたいと存じます。2、他の自治体の評価委員会との比較でございます。
 都の設置する評価委員会の設置時期、委員の人数等につきまして、他の自治体と比較したものでございます。
 恐れ入りますが、四ページをごらんいただきたいと存じます。
 3、首都大学東京の学生募集等に関する主な予定でございます。設置認可後に予定しております学生募集等に関しまして、主なものを記載しております。
 以上、簡単ではございますけれども、要求のございました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○東委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○遠藤委員 今回の定例会に二つの条例案が提出されておりますけれども、まず評価委員会条例についてお伺いいたします。
 地方独立行政法人制度は、法人の自主的な運営に配慮しつつ、厳格な事後評価を行い、その結果を法人経営に反映させることにより、効率的効果的な経営を促していくところに制度の主眼があると理解しております。その仕組みの基軸をなすのが目標評価制度であり、その評価を実際に担うのが評価委員会であります。したがって、その役割は極めて重要であると思うのであります。そうした観点に立って、今回の評価委員会条例について幾つかお尋ねいたします。
 今回の条例案では、公立大学法人評価委員会として、首都大学東京のみ評価を目的とした評価委員会を設置するということになっております。一方、昨年十二月の第二次都庁改革アクションプランにあるように、今後、都の試験研究機関についても、地方独立行政法人化が検討されるとされております。とすれば、本来は、都の行政組織等に責任を持つ総務局が、すべての地方独立行政法人を対象とする評価委員会を設置すべきとの考えもあると思いますが、今回どうして公立大学法人のみを対象とする評価委員会を設置するのか、まずお伺いいたします。

○宮下参事 現在のところ、東京都におきまして地方独立行政法人法に基づく法人の設立を実際に予定してございますのは、都立の大学のみでございまして、公立大学法人に関する評価委員会として設置することといたしたものでございます。
 なお、今後、都におきまして、アクションプランに沿って新たに地方独立行政法人を設立する場合には、総務局を中心に、改めまして評価委員会の運営方法などについて検討することになります。

○遠藤委員 大学についての評価委員会ということでございますが、評価委員会の委員は七名以内という条例の規定になっております。委員構成についてはどのような考えをされているのか、見解をお伺いします。

○宮下参事 委員構成につきましては、経営分野、教育研究分野、会計分野など、各分野からの選任を考えているところでございます。

○遠藤委員 条例によれば、委員は、経営または教育研究に関し学識経験を有する者から選ぶということでございますが、分野として、教育研究はわかりますが、経営も明記した意図は何か、お尋ねします。

○宮下参事 委員構成七人ということでございまして、教育研究分野の評価が、そうした委員構成でできるか否かということでございますが、大学評価・学位授与機構、大学基準協会など第三者評価機関がございます。こうした評価機関の認証を今後文部科学省が行いまして、認証評価機関とする予定でございますが、その認証評価機関の結果を踏まえまして評価委員会が評価をするということになっております。
 それから、経営分野でございますけれども、これまで大学経営の視点が希薄ということもございましたので、こうした部分についての評価も行う必要があるということで、委員の中に経営分野を入れまして評価委員会として評価をしていきたい、このように考えております。

○遠藤委員 都立の大学に限らず、これまでの大学は、大学の自治の名のもとに、外部の目を入れ、自己改善をしていこうという努力がほとんどなかったように私は思うのであります。しかし、今後、大学間競争が激しくなってくる中で、大学運営の中に民間の経営感覚など大胆に取り込んでいくことも不可欠な状況となっていると思います。そうした観点も踏まえて、具体的な人選に努めてもらいたいと思います。
 大学の教育研究分野となりますと、文系から理系までさまざまな専門分野がありますが、その大学を評価しようとする委員の構成が七名以内というのは果たして十分な体制といえるのかどうか、お聞きいたします。

○宮下参事 先ほどの答弁で若干触れましたが、今後、経営分野は別として、教育研究につきましては、文部科学省が認証する認証評価機関で評価を受けまして、その評価を踏まえて評価委員会で全般的な評価をするということになっております。したがいまして、教育研究分野は各専門分野にわたりますが、それを一から詳細に評価を行うということではなくて、認証評価機関の一応の評価を踏まえた上で、経営事項も含めた全般的観点からの評価ということを評価委員会において行うということになります。
 そうした意味で、七人以内ということではございますが、そうした評価にたえ得る能力のある方に委員になっていただきまして適正な評価をしていただくことになる、このように考えています。

○遠藤委員 教育研究分野の評価を行うという認証評価機関ですが、それはいつごろ決めるのか、お尋ねします。

○宮下参事 認証評価機関につきましては、文部科学省が第三者評価機関のうちから認証するということになっておりまして、現在のところ、そのための準備作業を文部科学省においてしているというふうに聞いているところでございます。近々、認証が行われると聞いてございます。
 認証を受けた評価機関が決まれば、その中から公立大学法人がどこの認証機関に評価を受けるかということを選定することになるというふうに考えてございます。

○遠藤委員 今回の首都大学東京の取り組みは、今後設置される地方独立行政法人の目標評価制度の先行事例となることはもちろんのことでありますが、成果重視の行政運営の流れの中で、新しい行政経営のモデルとなり得るものと考えますけれども、実効性のある仕組みの構築に努めていただくようお願いいたしまして、入学考査料及び入学料等に関する条例の質問に移ります。
 首都大学東京は、今後設立する公立大学法人が設置する大学となるわけですが、なぜこの大学に関する入学考査料等を都の条例で定める必要があるのか、まずお伺いいたします。

○宮下参事 公立大学法人につきましては、十七年の四月に設立という予定でございますので、設立前の首都大学東京の入学者選抜に係ります業務は、今年度、東京都が行うということになります。そのために、入学考査料等を都が徴収するために決める条例でございます。

○遠藤委員 この条例に基づく入学料は、入学予定者が首都大学東京に入学するために支払われるものですから、法人設立後は東京都から法人に引き継がれるのでしょうか、お伺いします。

○宮下参事 東京都が徴収いたしました入学料を法人に引き継ぎますためには、平成十七年度予算において予算化する必要がございます。今後、法人の財政フレームを検討する中で、財務局とも調整を図ってまいりたいと考えているところでございます。

○遠藤委員 入学考査料や入学料もさることながら、受験生にとって授業料がどの程度の額になるのかが一番気がかりになることではないかと思っております。法人設立後の授業料については今どのように考えているのか、お伺いします。

○宮下参事 法人設立後の授業料等の水準につきましては、法人が上限額について都の認可を求めまして、都は議会の審議を踏まえた上で認可を行うという仕組みになってございます。したがいまして、法人が全く自由に授業料を決められるというわけでもございません。
 国立大学法人の場合でございますが、授業料の上限額は、法人化前の水準に一〇%程度付加した程度となってございます。都の場合も、授業料の上限額を現行水準より極端に高く設定することは適当でないと考えているところでございます。

○遠藤委員 授業料の考え方につきましてはわかりました。首都大学東京の認可が七月末と聞いておりますけれども、具体的な授業料の額はいつ明らかになるのか、遅くとも学生募集の際には明らかにする必要があると思いますが、見解をお伺いします。

○宮下参事 首都大学東京の具体的な授業料の額でございますが、これまでは、学部一般選抜の場合、例年十月ごろ募集要領を発表いたしまして、その中で予定額を記載してございます。その際には、予定額と併記いたしまして、今後授業料の改定が行われた場合は、改定後の授業料の額が適用される旨、記載しているところでございます。
 十七年度の首都大学東京の授業料につきましては、法律上認可された上限額の範囲内で法人が定めることになりますけれども、受験生等への周知は、法人設立前に行うことになります。このため、経営準備室が、準備行為といたしまして予定額を定めていく必要があると考えてございます。
 学生募集要領については、おおむね例年どおり十月に発表することを考えてございまして、この中で授業料の予定額を明らかにしてまいりたいと考えております。

○遠藤委員 平成十七年四月の公立大学法人の設立、首都大学東京の開校に向けて、今回の条例案の提案に見るように、粛々と準備が進められているように思います。残された時間は限られておりますので、首都大学東京の着実な開校準備をお願いいたしまして、質問を終わります。

○曽根委員 私からも条例案について何点か質問させていただきたいと思います。
 新大学問題を考える場合、今回は、定款条例ではなく、評価をする機関の方の条例を先に定めるという、私から見ますと、単純に見て、なぜ一緒に出さないのかということは不可解ですし、授業料等を決めるとすれば、法人を早く設立して正式に決めれば受験生にも間に合うわけで、予定額を決めて、じゃ議会の議決はいつどういうふうに予定額についてやるのかなと。我々議会が何の意見も出せないうちに予定額が発表され、正式に決めるころにはもう実質決まっているということになりかねないという、さまざまな疑問があります。
 そういう点では、実態的には定款の条例、つまり、大学法人本体の設立が、管理本部がもともと予定していた今回の二定に出したいという話を私も聞いたことがありますので、それから見て半年ぐらいおくれる、少なくとも半年はおくれるという中で事態が進んでいるということだと思うんです。
 最初に、こういう事態を、そのまま進んでいくということが私はやっぱり誤りで、もう一回踏みとどまって考え直すべきであるということを、基本的な立場をまず表明しておきたいと思います。
 評価委員会について考える場合、私は、評価委員会がもし大学の改革に役に立つとすれば、最大の問題は、大学改革に当たっての国会の決議をきちんと守れる保障を評価委員会としてきちんと打ち出せるのかどうかということだと思うんです。というのは、評価委員会の機能にかかわる決議が国会で行われているわけです。
 例えば、地方独立行政法人化に当たっては、雇用問題、労働条件について配慮して対応するとともに、関係職員団体または関係労働組合と十分な意思疎通を行うこととか、独立行政法人の業務の実績の評定に当たっては、財政面の評価のみならず、社会的評価の観点を加味して行うこと、また、最も重要な問題としては、大学法人の定款の作成、総務大臣及び文部科学大臣等の認可に際しては、憲法が保障する学問の自由と大学自治を侵すことのないよう、大学の自主性、自律性を最大限保障し得る仕組みとすることなどが書かれております。
 これらは衆参で決議されているわけですが、これらを保障する、いわば第三者的な役割を果たせるのかどうかということが最大の課題だと思うんです。私は、見る限り、そうなる保障がどう見ても見えないなというのが率直な感想です。
 そこで、まず第一に、この七人の委員会の中に、都民の代表、それも公募などで客観的に意見のいえる代表者、または大学の学生や教員などの意見を反映する人たち、それから我々議会などの意見、それらが反映される、そういったメンバーの選び方が行われることが可能なのかどうか、この点からお聞きしたいと思います。

○宮下参事 まず評価委員会の評価というものは、第三者評価でございますので、評価を受ける当事者がその評価委員会のメンバーに入るということはございません。それから、評価委員会の審議内容の専門性にかんがみまして、それにふさわしい委員を選任する必要があろうかと考えておるところでございます。
 他の例でございますが、国立大学法人、それから秋田県の公立大学法人の場合につきましては、評価委員会の委員といたしまして、他の大学の教員、それから企業経営者、公認会計士などの学識経験者が入っているところでございます。

○曽根委員 大学改革に、確かに第三者、大学の外の人の意見は必要だと思うんです。しかし、最も肝心な大学の自治や学問の自由という問題については、これは評価委員会とは限りませんが、学内の当事者である学生や教員などの声を反映させなければ、絶対に保障はできません。実際には今そういうことを反映できる機関がないのというのが実態です。
 ですから、私は、第三者評価委員会を、第三者的な評価委員会をつくる前に、現都立大学でも既に問題になっている大学の自治が事実上守られない事態を解決することをまず考えるべきだと思うんです。
 例えば先日も、学生の意見をちゃんと聞き、説明してほしいという長谷川さんという学生の方の陳情が不採択になってしまいましたが、あのときに大村参事が発言した、来る者は拒まずだというのも、実態には全く合っていないんだという意見がその後私たちのところに届きました。二月ごろに、例えば院生の方々がちゃんと連絡をとって、アポイントをとって大学管理本部を訪ねようとしても、絶対に会わない、意見は聞かない、大学事務局を通しなさいと。文書で質問状を送っても、それにはまともな回答をしないというような事態がやっぱり繰り返されているそうです。ですから、今、大学側から意見が来ていないというようなお話もありましたが、とんでもない話で、要望しようにも全くルートが遮断されているという事態があることがわかりました。結局、ルール違反でというか、何といいますか、とにかく押しかけてこない限りは話も聞かないという態度が現に行われていることを、この評価委員会などで解決できるとは思いません。
 それから、教員からも相変わらず厳しい批判が出ていますし、とりわけ助手の方ですね、私も助手の問題についてはあんまり取り上げたことがないんですけれども、最近、理事長予定者の高橋さんが、助手の仕事というのは、毎日毎日ずっと試験管を洗い続けているんだというふうに都の職員から聞いたという発言を、「財界」という雑誌でやっています。実際にどうかと聞いたところ、そんなことは全くないそうです。大体、試験管というのを理学の研究室で使っているところは、今ほとんどないそうです。実態は全くないことを、都の職員から説明をされたといっているわけです。高橋さんにどうやって客観的な事実として助手が今果たしている大学での役割を知ってもらって、その助手の今の職責や身分や、それから学問的な、非常に専門的な高さ、こういうものに見合った報酬や職業としての地位を保障するか。これはまさに評価委員会の評価にかかわる問題ですが、こういったものが、今、大学管理本部を通して保障されていないというのが実態だと思うんです。当然、大学の方々からの声も上がっていると思いますが、こうした問題を客観的に評価するという保障が、もしつくるのであれば、まず最低限必要だということを申し上げておきたい。
 中でも、評価委員会が評価するものの中には教育研究があります。この評価について、先ほどほかの委員の方からその評価の根拠を、認証機関を選んで決めるというようなことがありました。実際に、それでは、大学の中で教育研究予算というのはどのように決められ、評価委員会はどのような形でこの教育研究予算について評価するという仕組みになっているんでしょうか。簡潔にお答えいただきたい。

○宮下参事 大学の予算の話でございますけれども、予算につきましては、法人の経営方針に基づきまして経営審議会において審議し、理事長が決定するということになります。
 それから、予算執行に関して評価委員会がどうかかわるかということでございますが、予算執行そのものについて評価するというよりは、予算執行を通じてその法人経営あるいは教育研究活動がどのようになり、中期目標がどのように達成されたかという観点から評価委員会は評価することになる、このように考えております。

○曽根委員 大学の生命ともいえる教育研究の質、そういう問題については、大枠としてまず大学の中で経営審議会で決められてしまう。その評価についても、評価委員会は、認証機関のアドバイスといいますか、そういう意見を踏まえて意見をいうんだけれども、それはあくまで中期目標や中期計画の枠の中であるという意味では、今、大学の研究予算が配分されている決定の仕方に比べても、はるかに、いわば経営的な観点からの配分が行われる危険性が高いと思います。
 現実に今都立大学で、先日私も指摘したように、極めて一方的、独断的な傾斜配分が研究費の分野で行われていて、私のところに届いている話でも、本当に理不尽な話が聞こえてきています。特に人文学部がまさにやり玉に上がっているわけですけれども、ある学科では、学術定期刊行物が、三百五十八冊昨年度まで購入していたものが、ことしは傾斜配分でかなり減らされてしまったために、百三十二冊購入が不可能になって、三七%削減せざるを得なくなった。ほかの学科でも、七十五種類の日本の中での雑誌が二十二種類購入を中止せざるを得ない。洋書といいますか、海外で出版されているものは、ほかの一般書店では入手が困難なのでそちらを優先せざるを得ないけれども、これも来年度は四十二種類ぐらいの、いわゆる海外での雑誌もほとんど買えなくなってしまうだろうというふうにいわれているそうです。これでは、特に院生などの研究はほとんど不可能になります。したがって、研究を本当にまともにやろうと思ったら、都立大学の図書館に行ってもないわけですから、東大に行くとか、そういうところに行って研究をせざるを得ないということにもう追いやられてきます。
 こういう事態が今からもう起こっているわけですが、こういった傾斜配分が、私から見れば非常に独断的、極めて、いわば新大学構想に反対している人たちが多い学部にしわ寄せする形で行われる。学問的な価値だとか質だとか問題にならないです、これは事実上。そういうような事態がこれからもずっと行われていく危険性が高いと思うんですが、この点について、評価委員会は、本当の意味で、客観的な根拠でこの学問研究の予算配分について物をいうことができるんでしょうか、改めてお聞きします。

○宮下参事 評価委員会は東京都に設置する附属機関でございます。それから、大学は、来年度、法人として東京都から離れて独立するということになります。法人の予算執行等について、評価委員会がこうすべきである、ああすべきである--評価はいたしますけれども、こうしなさいということは、まさに大学の自主的な運営を外から阻害するということになりますので、あくまでも評価委員会は、大学運営について客観的に評価をして、事後的な評価をいたしまして、法人が評価委員会の意見を踏まえてみずからそれを変えていくということが必要であろうと思います。したがって、評価委員会が予算についてあれこれ物を申す、予算執行について直接的にこうしなさい、ああしなさいということは適当ではなかろうと思います。
 それから、研究費についてのご発言がありましたけれども、研究費につきましては、前の委員会でも申し述べましたが、今四つある大学の中で研究費の予算の単価がそれぞれ異なる、あるいは執行方法が、都立大については講座ごとに配分してこれを執行するとか、そういう形で執行の仕方が異なるということがございまして、来年度一つの大学になるわけですから、単価をひとつ統一しなければいけない、それから執行方法についても統一しなければいけないということで、今年度からトライアルとして実施しているところでございます。
 既に基礎的な研究費については、同一の単価で各大学に配分してございます。競争的な研究を促す必要があるということで、傾斜配分研究費はまだ配分してございません。これは、今、申請を出していただいているところでございます。その申請に基づいて審査をいたしまして配分する予定でございますので、今配分しているのは、研究費の全体の中の一部ということで、昨年と比較して足らないという話がありますが、これは、後々、傾斜的配分研究費が、七月ごろを目途にしておりますが、配分するということになっておりますので、そういう意味で研究環境が非常に劣悪になるというようなことはなかろうと思ってございます。そういう点でご理解をいただきたいと思います。

○曽根委員 今年度の予算配分について、基礎的配分と傾斜部分、傾斜部分は競争的な研究費と。競争的研究費というのは、知事が新大学でも構想しているように、実業界に貢献できるということが中心ですよね。また、外からの研究費をとってこられるような研究ということになりますから、ますます文科系、人文学部などは、もとから学問の性格上、他と競争して研究をとってくるというような性格の学問じゃないという点でも、はなから、ある意味では競争させれば結果は見えているという分野です。そういうものを両立させて都立大学は総合大学としてやってきたんですが、それ自体が私は困難になっていくと思います。
 ですから、今回、経済学部のCOEグループの先生方が新大学に移行を拒否して、今回ある雑誌に自分たちの考え方も載せているようですけれども、やっぱり、先端的な研究で国際的にも評価される研究を行っている人たちでも、こういうふうに、いわゆる実学重視で徹底してやられれば、自分たちの居場所はないということで、拒否せざるを得ないという事態が広範にこれから起こってくると思います。
 こうした評価委員会の機能が、私から見ますと非常に偏った形でしか機能しないだろう、むしろ評価委員会自体のいわば活動について物をいわなければならない局面もあるだろうと思います。それから、私たち議会として、大学運営や、また評価委員会に対して、どのようにチェックをし、都民の声を代表して物をいうことができるのか、都議会とのかかわりで大学運営や評価委員会についてはどういう審議の場面があるか、教えてください。

○宮下参事 まず評価委員会に対するチェックというお話がございましたけれども、評価委員会そのものが第三者評価機関でございまして、したがいまして、法律上、評価委員会に対してさらに第三者評価をするというようなことは想定されてございません。
 それから議会のかかわりでございますが、評価委員会による法人の各事業年度、それから中期目標期間、それぞれにおける業務実績に関する評価の結果と業務運営の改善勧告につきましては、議会に報告することとされてございます。

○曽根委員 議会のかかわりは、評価委員会に対してはまず物がいえません。それから、大学運営についても、現在は東京都の予算そのものが執行されておりますので、基本的にはどんな細かい問題でも、東京都の予算執行の問題として予算議会で審議することができます。また、事務事業質疑もあります。しかし、今後は、事業報告は出されるでしょうが、基本的には外郭団体と同じように、私たちは、その事業報告を承認するかしないかという程度でしか審議できないということになります。極めて間接的で大くくりの話になってしまうんです。
 そういう点でも、私は、東京都の大学が首都大学東京というふうになった場合、我々議会も、都民の代表として物をいうチャンスが非常に限られてしまうだろうなということを危惧せざるを得ないわけです。こういうふうに流れていった場合、中期目標や中期計画は知事の構想によって提案されるでしょうし、それに対して評価委員会は物をいうということになっていますけれども、知事が選ぶ評価委員会のメンバーですから、基本的には実業重視、産業界に貢献できるというコンセプトを中心に進んでいくと思います。
 例えば評価委員会の評価として、都が現在出している大学の運営費の大半の百七十億円ぐらいですかね、百五十億円ぐらいですか、かなりの部分を東京都の予算で大学に出しているわけですが、こういう都の補助といいますか、負担額が基本的に削減されて独立的な経営を高めていくということは、知事の構想や、今、大学改革で進めている方向と一致していくわけですから、財政的には非常に評価委員会で評価されていくものになると思いますが、財政的な見通しといいますか、そういう方向についての評価委員会での評価はどういうふうになるのか、教えてください。

○宮下参事 大学が法人化されました後も、その財源というのは、運営費交付金が主たるものになるということで、これは変わりがないわけでございます。ただし、その予算執行について法人の自主性がより高められるということで、運営がこれまでより、より一層弾力的になるということがございます。
 その予算執行等について評価委員会がどうかかわるかということにつきましては、先ほども申しましたが、中期目標を定めますので、その中期目標がどのように達成されているかということで、予算執行そのもの、直接それについて評価委員会が評価するということはございませんが、その中期目標等を通じて、予算執行の結果、大学が目標に対して達成がこうなってきたということを間接的に評価するということになろうかと思います。

○曽根委員 ちょっとわかりにくい質問をして申しわけなかったんですけれども、私が大変心配しているのは、同じ「財界」という雑誌の中で、高橋理事長予定者が、百五十億円の現在都が穴埋めしている不足分をどうしていくのかというふうに質問を受けて、今後、不必要なコスト、特に人件費を削らなければなりませんといいながら、四、五年で収支をとんとんに持っていきたいというふうに明確に答えているんですね。つまり、四、五年で都の出している百五十億円を、基本的にはもらわなくてもやっていける大学にしていきたいということを、理事長予定者としての構想としてもう打ち出しているわけです。
 これは恐らく中期目標の中にも、当然、理事長予定者ですから、それに近いものが打ち出されていくでしょうし、それが承認されれば、評価委員会は、要するに、先ほどいわれた東京都からの運営費交付金をもらわなくても済むように、中期目標ですからたぶん六年間ですか、六年ぐらいで交付金ゼロにしていけるような大学ということで着々と進めば、これは評価されるものだと思うんです。
 これ自体が、私、本当に東京都の大学として、あえていえば都立の大学足り得るのかということが大変心配です。最終的に、もし、都の交付金は要りません、とんとんでやっていけますというふうに本当になっていった場合、これは果たして都立の大学というふうにいえるものになるんでしょうか。その点、どうお考えですか。

○宮下参事 東京都からの運営費交付金をゼロにするというようなことは考えてございません。地方独立行政法人法におきましても、設立団体は、その法人に対して必要な財源措置をするということになっておりますので、そのような形で今後運営をしていくことになろうかと思います。

○曽根委員 管理本部はそうは考えていないかもしれませんが、理事長予定者自身は、収支とんとんというふうにいっています。これがどういうことを意味するか、私もこの雑誌の範囲の中でしかわかりません。しかし、もしこれが、交付金がなくても大学は独立経営でやっていけると--恐らくそういうことじゃないかと思うんですね。だとすれば、お金の点でも東京都に依存しないで済むということになって、一般論でいえば、独立行政法人ですから、より独立してひとり立ちしていくということは、もしそれが中期目標の中へ盛り込まれていけば、これは極めて手放しで喜ぶ話になってしまう。しかし、東京都がもうお金も出さなくてもいい大学というのは、果たして都の財産、建物、人、物を使って--それを結局、独立化させ、お金の点でも縛られない、全く本当に独立の大学になってしまうという危険はないのかということを私は大変危惧するわけです。
 例えば、私立大学でも今ほとんど経営は独立でやっていますが、大体四、五%ぐらいの国の助成金が、私学助成が出ています。しかし、私立大学の中には、帝京大学のように五%程度の国の補助をもらうために、学生から寄附を集めちゃいけないとか、いろいろ制限が加わる。それから、学生のために体育館とかいろんな施設を用意しなきゃならないという基準がいろいろある。国のわずかな助成金をもらうためにそういうことを苦労するよりは、もう助成金を減らされてもいいから、そっちの方で財源を稼ごうというふうに踏み切っていると思うんですけれども、ほかの大学に比べて帝京は本当に補助金は少ないそうです。それだって全体の数%にすぎないわけで、そういう大学が出てくると思います。
 私は、首都大学東京ができた場合、高橋さんのいうことが本当に文字どおりやられるとすれば、東京都からお金をもらいません、しかし口も出さないでという方向にどんどん突き進んでいく危険性があると思うんです。
 そういう点で、当然ながら今百五十億円東京都が出しているお金を肩がわりするのは、経済界でしょう。大体、今、企業からの積極的な資金をもらって受託研究を広げていこうということの方向ですから。そうすると、事実上、東京都の大学から産業界お抱えの大学になっていくんじゃないか、実態がそうなってくるということが大いに考えられると思うんです。また、石原さんの大学構想を応援する財界人のグループもできているようですから、そのことは財界の方からも大いに歓迎されると思うんです。
 こういった方向を本当に認めてよいのかというふうに、やっぱり都民が求めているのかということを、改めて私は厳しく検討する必要がある。都民の声が反映されない評価委員会をつくったって、第三者評価にもならなければ、大学の中の自治や学問の自由を守ることもできません。そういう点で、評価委員会は、形としても独立行政法人法に伴うものですから私たちは反対ですが、実態としても、まともな機能を、大学改革に役立つまともな機能を果たすことにならないということを申し上げておきたいと思います。
 最後に一つだけ、単位バンクについて。私ちょっと今まで質問する機会がなかったんですが、評価委員会では直接はこの単位バンク問題は評価はしないそうですけれども、単位バンクの登録科目として、どういう大学や、またはいろんな学生の活動を認定するのかというのは、だれがどういうふうに決めるのかを聞いておきたいと思います。

○大村参事 単位バンクで他大学の授業その他についても評価して、大学の授業として認定するということを考えてございますが、現在のところ、まだ具体的にどういう大学のどういう科目ということは決めてございません。これから単位バンクの検討部会で検討し、また個々の具体的な科目を、ほかの大学の科目なんかの設定を見まして、それを評価して単位バンクの登録にしていくというものでございます。

○曽根委員 基本的には大学の中で決めていくことになると思うんですが、この同じ雑誌に西澤さんという学長予定者が単位バンクのことについて発言をしていて、例えば今、人文学部でやっているような学問、こういうのをやりたい学生は、東大などに単位バンクで行ってそちらの単位を取ればいいじゃないかというようなことを発言しています。私、そういうことを考えられるのであれば、これからできる--これは予定ですが、新首都大学東京には旧都立大学が同居しているわけですよね。同じ校舎、場合によっては同じ教室を使って旧都立大学の授業が行われているわけですよ、同時並行で。ですから、当然、単位バンクの単位として、旧都立大学の先生の授業、講義は、新大学、首都大学東京に入った学生にも、同じ校舎の中でやっているんですから、極めて合理的な話として、同時進行している旧都立大学の講義を取れば、それは首都大学東京の単位として認めるということがあってしかるべきだと思いますが、いかがですか。

○大村参事 新しい大学と現在の大学の科目に関してでございますけれども、一つの科目を両方の大学が二面から正式の授業として認める場合と、それから現在の大学の単位を単位バンクを使って新大学の学生が受けられるようにするというものと、それぞれ出てくるというふうなことになると思います。
 基本的な部分につきましては、それぞれの新大学、現大学で設定する科目を設けますけれども、特に最初の年度は一年生しかいない新大学、そして二年生以上のいる現大学というふうな中では、いろんな科目について柔軟に対応して、両方の大学の学生がそれぞれ受けられるようにしたいというふうに考えてございます。

○曽根委員 これは当然の話といえば当然の話なんですけれども、私は、こういうことをきちんとやっぱり認めていくべきだと思います。そして、首都大学東京に入った学生にも、都立大学の先生が、もし首都大学の方には行かないで旧都立大学に残って学生を教育するというような人があらわれた場合、その先生の授業を取りたいと思えば、それは単位バンクとして授業を受けて認めるということは当然あり得ると思うんです。
 そういう中で、私は、現都立大学で行われている教育研究の中身と、首都大学東京で新しく行われる予定の教育研究の中身、これが学生によって選ばれていくと思います。首都大学東京がスタートしたとしても、その先、学生自身にとってどちらが本当に学び研究にいそしむことができる大学になるのかということが、その後にも選択があるということです。私は、はっきりいって首都大学東京の行く末というのは、そういう学生たちの選択によって、このまま突き進めば本当に見捨てられていく。そうなる前に、現大学の存在価値、都民の中で培われてきた蓄積というものを改めて評価して、それを全面的に取り入れた大学づくりというものを考えないと、本当に学生に選ばれない大学になってしまうということを最後に申し上げて、質問を終わります。

○山口委員 私も、今回の東京都公立大学法人評価委員会の条例に関しまして、既に今までの質疑などで出てきて明らかになった部分については割愛をしながら質問をさせていただきます。
 最初に、地方独立行政法人化後の設立団体と法人の関係がどのようになるのか、伺います。

○宮下参事 法人の設立団体は東京都でございまして、その代表が知事ということになります。それから、都議会も、知事の意思決定に関しまして、議決等を通じて一定の関与を行うことになります。
 法人は、東京都の組織とは全く別個の独立法人となりまして、東京都から運営費交付金等の財源措置を受けながら、東京都の定めた中期目標に基づき運営を行う一方、中期目標の達成など具体的な成果の達成を求められる、こういうふうになります。

○山口委員 その中で、今回の目的は、法人の業務の実績等の評価をしていくということで、目的のことについては先ほどのやりとりでわかりましたので、じゃ、その評価委員会の権限はどういうものがあるのか、伺っていきます。

○宮下参事 評価委員会の権限につきましては法律にさまざま定められてございますが、知事が中期目標を作成、変更する際の意見、それから、法人が作成、変更した中期計画を知事が認可する際の意見、それから、各事業年度及び中期目標期間における法人の業務実績の評価などが挙げられます。

○山口委員 では、中期目標及び中期計画の作成は、だれがどのような経過でつくられるのでしょうか。また、現在、教学準備委員会や経営準備室が設置されているわけですけれども、そのかかわりはどのようになるのか伺います。

○宮下参事 中期目標につきましては、公立大学法人の意見を聞いた上で、評価委員会からの意見聴取、それから議会の議決を経まして知事が作成することになります。
 また中期計画につきましては、中期目標に基づき公立大学法人が作成し、知事が評価委員会からの意見を踏まえて認可する、こういう仕組みになります。
 今回、来年十七年四月に法人を立ち上げるわけですけれども、その前にもろもろの準備行為をしなければなりません。初めての中期目標、中期計画につきましては、法人の円滑なスタートに向けまして、それらの案を法人設立前に作成しておく必要がございます。したがいまして、経営準備室を中心に教学準備委員会などの意見も踏まえまして、中期目標に対する意見、それから中期計画の案について、準備行為として検討を進めていく予定でございます。

○山口委員 ぜひその際には、批判的な声もあるかもわかりませんけれども、ほんとに民主的な方法で、現在の準備--今は教学準備会議と変わっていると聞いておりますが、準備会議や経営準備室へのかかわりも十分に深めていただきたいと思います。
 それから、評価の期間ですとか評価方法はどのように行われるのか伺います。

○宮下参事 評価の期間でございますが、毎年度の評価、それから中期目標期間、これは六年間でございますが、この六年を通じた評価という二つございます。
 それから、評価は、中期計画の実施状況や中期目標の達成状況等について行うことになるわけですが、具体的にどのような評価方法を定めるかは、評価委員会がこれを決めるということになります。
 なお、評価が具体的かつ客観的になりますように、中期目標や中期計画の作成に当たりましては、具体的な数値目標を含めるなど、具体的かつ明確な記述を行いまして、達成状況等の評価をしやすくできるように努めてまいりたいと考えております。

○山口委員 大切なのは、第三者性をきちんととるということですが、その評価結果の公表と評価プロセスの情報公開はどのように行われるのでしょうか。

○宮下参事 評価結果につきましては、一般に公表されるとともに、都議会に報告することになります。
 それから、評価のプロセスについての情報公開というお尋ねでございますが、それをどうするかということにつきましては、評価委員会の判断によるというふうに考えてございます。

○山口委員 この評価委員会が、例えば傍聴を可能にするとか、そういった評価のプロセスがきちんと一般都民にもわかるような形で、公開を進めるような形での評価委員会の設置について、ぜひ検討していただきたいと思います。
 それから、知事の附属機関という位置づけになるので、委員については知事が任命することになるということですけれども、やはり中立性とか公平性を担保するためには、先ほども曽根委員の方から出ましたけれど、私も、一般的に都民公募というのは非常に難しいかとは思いますが、一定の条件をつけたとしても、一部の委員を公募した上で任命することを考える必要があると思うのですが、お答えの方は先ほどもあれですが、再度確認という意味で答弁をお願いいたします。

○宮下参事 委員の人選につきましては、適正な評価を行うため、経営や教育研究等に関しまして特に高い見識を有している方に就任をお願いしたい、このように考えているところでございます。

○山口委員 先ほど来出ている、やっぱり第三者性を担保するためには、たとえ一部であっても一定の公募をするべきだということを私は強く要望しておきたいと思います。
 それから、福祉サービスの第三者評価などでは、当然、事業者への評価調査とともに、利用者へも満足度を含めた調査をきちんと行っているわけですね。東京都なんかは特にその点を重視しているわけです。ですから、今回も、この大学のことに関しても、目標や計画執行に対して、当然、教職員であるとか、学生がそれをどのように評価するかということも考慮するべきではないかということは指摘をさせていただきたいと思います。
 以上、終わります。

○福士委員 私も重なっておりますので、大分削りながら、確認も含めて、ちょっと一部は重複するかもしれませんが、お答えをいただきたいと思います。
 それから、質問に入る前にちょっとお願いがあるのですけど、五月二十八日の、先ほども出ておりましたけれども、曽根議員の学生たちへの説明についての質問ですが、ご答弁としては、来庁者にはきちんと回答していますと。それは正しいことになりますよね。でも、来庁される前に、来庁そのものが拒まれている、そこは見えないご答弁でしたよね。そうなりますと、私たちも判断が違ってきますので、状況としては、正しい、正確なご答弁じゃなかったように思いますので、なるべくきちんと私たちが理解できるような、それから実態をみんなで共有できるような形のご答弁をお願いいたします。
 まず、先ほど来さんざん出ておりますけれども、大学の評価については、経済面もそうですけれども、教育と研究面というのはすごく大事だと思うんですね。特に、教育研究面においては、公正な評価を行うために、今の形の中では大変心配な面もたくさんありますし、大学からも東京都からも独立性を保つことが大変重要だと私も考えております。第三者性を確保するために制度的あるいは実施上担保するようなものを考える必要はないということで、先ほど来のご答弁なんでしょうか。もう一度確認させていただきます。

○宮下参事 そもそも評価委員会というものは、設立団体の長が地方独立行政法人の業務実績等について判断を下すに当たり、専門的、客観的、中立的な立場からの意見聴取を義務づけて、その公正性の確保等を図ることを目的として設置するものでございます。ですから、そのような趣旨での評価委員会であるということをご理解いただきたいと思います。
 それから、評価委員会の委員は、みずからの判断のもとに意見を述べ、その自由意思に基づきまして過半数の議決で議事を決するものでございまして、東京都から独立した立場で評価を下していただくことを当然期待しているところでございます。

○福士委員 言葉としてはそうだというふうに私も思いますよ。こんな議論になっているのは、それがどこまで担保されるかということが--人の任命の形ですかね、自分の好きな人たちだけを入れてしまうとか、自分の思いどおりの人たちだけを入れてしまうとか、それは知事の意向だけではなくて逆の場合もあるでしょうから、そういうことも含めて、どこかで担保しておかなければいけない部分はあるんじゃないのかなというふうに思います。
 そこが考えられていなければ、どんな形にしろ、偏った人選で選べば、それぞれの人がそれぞれの意見をいう。それは、今の形のことだけじゃなくて、逆の形も含めて、どっちかに意見が偏る可能性はあるわけですから、そこの担保というのはある程度考えておかなければいけないんじゃないかなというふうに思いますが、どうですか。

○宮下参事 先生ご心配の点は、一般論としていろいろなあれはあるんですけれども、要するに仕組みとしてそれなりの高い見識の方々を、七人以内ですけれども、複数選んで、その方々の自由な意見のもとに評価委員会を運営していくという過程の中で、おのずから客観性とか公正性は担保されるのではないかというふうに考えております。

○福士委員 ちょっと私もうかつな話で、確認をさせていただきたいんですが、現在の都立の四大学は、新設される首都大学東京とともに地方独立行政法人を構成するということになるんですよね。東京都公立大学法人評価委員会では、平成二十二年度まで存続する既存の四大学も評価するということになるんですよね。ちょっとそれだけお伺いします。

○宮下参事 来年四月から現在の既存の四大学も含めて法人化されるということになりますので、当然にその既存四大学も評価委員会の評価の対象になるということになります。

○福士委員 そうしますと、ちょっと関連して確認したいんですが、新法人の理事長とか新大学の学長は決まっていますけれども、既存四大学の総長とか学長はいつどういうふうにして決められるんでしょうか。

○宮下参事 法人化後の既存の四大学の総長、学長につきましては、定款の定めるところにより理事長が任命することになります。定款の内容につきましては、現在検討中でございますけれども、定款を定めるに当たりましては、都議会のご審議をいただくことになります。

○福士委員 そうすると、学長選考会議は経ないまま選ばれるというふうに考えてよろしいんでしょうか。それは今後もずっと続くのかどうか、その辺あたりももうちょっとご説明ください。

○宮下参事 最初の、既存四大学の総長、学長につきましては、定款の定めるところにより理事長が任命するということになります。

○福士委員 そうすると、そのままの形ですか。

○宮下参事 地方独立行政法人法に規定がございまして、学長選考会議で学長を決めるということになっておりますが、初代の学長につきましては、定款の定めるところによって理事長が任命するということになってございます。

○福士委員 もういいです。そうなりますと、既存大学について、先ほどからも出ておりましたけど、現在在学している学生、院生に対しては、平成二十二年度までは今までの教育環境、研究環境を保障するというふうにおっしゃってこられましたけれども、先ほど来、お金が出ないのでとか、刊行物の中止なんという話もありましたけれども、どんな財源配分で、各校への予算配分はどういうふうになっているのか、また、どうやって研究費がなくて研究環境を保障するのか、ちょっとその辺のところもお答えいただきたいと思います。

○宮下参事 研究費がないというお話がございましたけれども、きちんと予算化されておりまして、総額は十億一千万円という形で予算化をされてございます。
 この配分につきまして、先ほど申し上げましたけれども、各大学で、単価であるとか、それからある大学では講座ごとに配分しているとかいうことで、実態が異なっておりますので、これを統一する必要があるということで、今年度からトライアルで実施しているところでございます。
 十億一千万円のうち、五四%に相当する部分を基礎的配分研究費といたしまして、同一の単価でもちまして各大学にとりあえず配分したところでございます。残りの四六%につきましては、傾斜的配分研究費といたしまして現在審査中でございまして、七月を目途に配分する予定でございます。
 それから、図書が買えないとかいうような声が聞こえてございますけれども、書籍の購入等については、より一層、同じような本をいろんなところで買っているというような実態がありましてむだがございますので、こういった点は今後改善しつつ、研究費の効率的な活用を図っていきたい、このように考えております。

○福士委員 単価を統一しましたということでした。その統一の仕方が、今まで都立大が一番高くて短大が一番低くてというようなことだったですよね。単価の統一そのものはどこかで考えなきゃいけない問題なのかどうか、それもちょっと私、疑問に思うんですけれども、今まで大学間の格差があったのは、それなりの社会的な評価があって、それで単価の差というのも認められてきたんじゃないのかなというふうに私なんか思っておりましたので、そこへ、中間に合わせて単価の統一というのは行われたみたいですから、一番下に合わせたということではなさそうではありますけれども、それにしても一挙に単価統一という形じゃなくても、段階的な保障を踏まえてやっていってもよかったんじゃないのかなというふうに思うんですね。
 というのは、未来永劫これずっと続くわけじゃないですよね。もうおしりは決まっているわけですから、旧大学の場合は。それに向けては段階的にやっていって、その中でやりくりをしていただくというのはやむを得ないかなというふうにも思いますけど、余り急にというのもどうかなというふうに思いますし、都立大の場合、人文なんかの場合は、少なくとも図書が命じゃないですかね。そういう部分もありますので、都立大の学位取得者を少なくさせて、旧都立大はだめだったんだよと世間にまさかいいたいとは私も思いませんけど、そういう状況にもならないとは限らないので、そこはそこで問題かなというふうなことは申し上げておきたいというふうに思います。
 むしろ、旧大学の卒業生をきっちり卒業させ、学位もしっかり皆さんがお取りになれるように、方向性を見定めて、それが都立大の現学生の保障ということだったんじゃないかと思うんですね。これも、学生の保障に関しても、当初案から変わっていますよね。当初案はもっと、二十二年以降も残った学生に対しても保障しますと、個別具体的に保障して対応していきますというような話だったのが、今回は、もう二十三年度以降は新大学で従前の教育課程を履修してくださいというような話に少しずつ変わってきている部分も含めて、学生の保障ということがかなりあいまいになってきているかなという気がしますので、質問をさせていただきます。
 学生の教育研究保障に関しては、予算以外も、教員とか講座の確保というのが必要だと思うんですね。旧大学の退職教員の補充が行われていない部分もあるみたいですが、こんな状況で教育とか研究環境の量的あるいは質的な保障というんですか、そういうものは可能なんでしょうか。

○大村参事 今のご質問の前に、学生の教育保障について、先ほどのお話の中に何か後退したような表現がございましたが、実は去年の秋の段階では二十二年までの保障をしたところでございますが、今年、年が明けましてから、逆に二十三年度以降、現行の大学が終わりになった後は、新大学の中で今度は受け入れて引き続き教育保障するということで、逆に一歩前進をしている部分だというふうに私ども考えておりますので、ご理解いただきたいと思います。
 なお、新大学の教員も、併存します現大学の教員を兼ねるという形をとりますので、その形で新大学に所属する教員が現大学の学生に対しても教育課程を保障していくことになります。また、必要があれば、非常勤講師の活用などさまざまな手段を講じまして、きちっと量的、質的な保障をしていきたいというふうに考えております。

○福士委員 今のお話の中でちょっと私もひっかかるんですけど、新大学に移行した場合にはない経済学部なんていうのは、なかったりすれば、そういうこともどうなるのかなというふうに心配をいたします。必ずしもそんな、充実したというふうにいっていいのかどうか、これは考え方の相違ですからわかりませんけれども、ちょっとそんなことがいえるような状況にはないような気がいたしますけどね。
 今在学している学生の教育研究の保障がきちんとここまでできるのかどうか心配なんですが、これからできない場合、今後入学を希望する人たちは不安を持つだけで、新大学にとっても決してプラスにはならないだろうというふうに思うんですね。しっかり保障しますよということが担保されていれば、皆さん、ああ、いい大学が新しくなってできるんだなというふうに考えられると思うんですが、老婆心ながらその辺のところも気になりますので、どうなるのか、お答えいただきたい。

○大村参事 現在の大学に在学している大学生に対しましても、現大学の教育課程が履修できるように取り込んでいきまして、ご懸念のないようにしたいと思います。ましてや、これから入学する、新大学に入る学生さんに対して不安がないようにというふうにしたいと考えてございます。 
 また、先ほどお話のあった経済学につきましても、経済学のコースはございませんけれども、経済学の先生がまるっきりいないわけではございませんので、そういう中でいろいろな工夫をすることが可能になっているということで、ご懸念のないようにしたいというふうに考えてございます。

○福士委員 先生も、ご専門が違えばちょっと違うということもありますので、ちょっと心配をしたんですが、懸念のないようにするというお話ですから、ぜひぜひそれは頑張っていただきたいというふうに思います。
 それにしても、教育研究のあり方について心配している学生も院生も依然多いんですね。前回の委員会でも、彼らに向けての説明は大学というふうなお話がさんざん出ておりました。その方向はどうも変わる気配がない。来庁した学生に説明しているというのも、来庁そのものを断った状況のままであることもあるのであれば、やっぱり大学に任せて答えられる部分、それから大学管理本部としてきちんと答えなければいけない、直接答えなければならない部分というか、大学だけでは答えられない部分も出てくると思うんですけど、そういうことに対しては、相変わらず大学管理本部として直接返事をすることがないまま行くんでしょうかね。
 どうしてそこまでかたくなにそういう形態をおとりになるのか、私はよくわからないし、先ほど高橋理事長のお話も出ておりましたけれども、高橋理事長も、大学側だけのお話を聞いて、それでもう判断して、あんな雑誌にまで載せられる。助手の形態がどうなのかというのは、私も多分あの部分はゼロとは思いませんよ、助手の方たちがご苦労なさっている部分もあるとは思いますけれども、今回の大学改革に関しては、海外からもメールが届いています。それから、日本の各地からも私のところに心配して、ほかの方のところにもいっていると思いますけれども、メールが届いています。それぞれ皆さん助手を経られて、その研究が認められてほかの大学にいらした方も中にはいらっしゃるということであれば、必ずしも試験管洗いだけをしている--しかも、試験管はないというお話もありましたけれども、そんな状況がすべてではない。であるにもかかわらず、理事長がきちんと、現場ですか、それから学生たちの意見も聞かずに判断なさるという状況が今でもあって、私はやはり皆さんの側のお考え方だけではなくて、現場の中の話し合い、そしてそれは都立大がどうのこうのという、お気持ち的にはわかりますけれども、どっちのいい分も冷静に聞きながら判断するということが始まっていかなければ、いい大学もできないし、いい教育もできないというふうに思いますので、その辺のところはちょっと切りかえというのをなさってもいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○大村参事 まさに先生が今おっしゃった現場を大事にするという考え方から申しますと、今の学生が一番心配しているのは、ご自分のみずからの今後の教育がどうなるかということでございまして、これについては実際の学生の状況を把握しておりまして、かつ、学生の教育に責任を持った各大学が行うべきだというふうに考えております。
 なお、あえて申しますと、大学管理本部というのは、都庁にあります管理部だけではなくて、四大学の教員も含めて大学管理本部でございますので、大学管理本部の中での具体的な中の役割分担というふうにお考えいただければと思います。

○福士委員 役割分担というのは、それはあると思いますよ。あるからこそ、大学は大学の中で説明できることはやると。都立大もそれはやったんじゃないですか。だけれども、都立大の学生に対する都立大としての説明の部分と、それから経済的な部分も含めて、それからまだ未確定な部分がいっぱいあって、未確定なら未確定ということも含めて、大学管理本部としても説明してはいけないという理由は私は何にもないというふうに思いますので、その辺のところはお考え直しいただきたいというのは、大学管理本部としても大学現場を知っては悪くないんじゃないかという意味ですよ。
 大学が学生に対応する現場のことを知っているというのは、それは当然の話ですからいいんですけれども、大学管理本部としても、これから運営をし、それから経済的なことだけではなく、経営面にも、少なくとも無知のままでいいとは思いませんので、そういうことも含めて、どこまでどうしたらいいか、お金がない中でやり過ぎることはあり得ないでしょうけれども、どこに過不足があるかということを知るためにも、学生に説明をし、あるいは大学管理本部としての知識をふやすということは決して悪くはないんじゃないかということを私は申し上げているわけです。
 こういう状況が続いているからこそ、この第三者評価も含めて、大学法人評価委員会できちんと第三者的な立場が確保できるんだろうかという心配が出てくるわけですから、そこは、感情的な面はなるべく抑えて、きちんと論理的にやっていただきたいなということを申し上げて、質問を終わります。

○東委員長 この問題でほかにないですか。--ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○東委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で大学管理本部関係を終わります。
 この際、議事の都合により、十分間休憩いたします。
午後二時二十九分休憩

午後二時三十九分開議

○東委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 これより教育庁関係に入ります。
 報告事項、東京都教育ビジョンの策定についてに対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○比留間総務部長 去る五月二十七日の当委員会におきまして要求のございました資料についてご説明申し上げます。
 お手元の文教委員会資料要求(報告事項)の目次をまずお開き願いたいと思います。
 ごらんいただきますように、今回要求のございました資料は三件でございます。
 一ページをお開き願います。1、東京都教育ビジョンにおける提言の具体化に関連する主な法律・条例でございます。
 関連する主な法律といたしまして、上段に学校教育法を初めとする教育関係の法律を、中段に児童福祉法など福祉関係等の法律を、下段は主な条例をそれぞれお示ししてございます。
 二ページをお開き願います。2、東京都教育ビジョン策定にかかわる検討組織及び検討経過でございます。
 (1)、組織横断的検討では、東京都教育ビジョン策定に当たり、関係各局で構成した東京都教育ビジョン検討委員会の委員の構成とその検討経過を、(2)、教育委員会での検討では、教育委員会定例会等におきまして審議いたしました経過について記載してございます。
 三ページをごらんいただきたいと思います。3、東京都教育ビジョン策定に当たっての意見聴取等の状況でございます。
 東京都教育ビジョンの策定に当たりましては、専門的見地などからご意見や提言をいただくため、有識者との懇談会を三回開催したほか、都民から幅広く意見をいただくための意見募集、さらには教育モニターに対するアンケートなども実施いたしました。こうした意見聴取の状況について取りまとめ、一覧にしてお示ししてございます。
 以上、簡単ではございますが、要求のありました資料の説明を終わらせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

○東委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○臼井委員 東京都教育ビジョンについて質問をさせていただきます。
 先日、佐世保においてまことに痛ましい事件が発生いたしました。戦後から現在に至る日本の教育について、最もマイナスの面が端的にあらわれた事件と思います。
 都教委では、事件の翌日に早速、人間尊重を基盤とした生活指導の充実についてという通知を出したと聞いております。迅速な対応ですが、これも、都教委がきめ細かな生活指導を丁寧に行っているあらわれであると評価するものであります。
 私は、この事件がごく例外的なものであってほしいと願っています。しかし、この事件の背景には、現代の子どもたちが抱えている大きな問題の一つである耐性の欠如が考えられます。すなわち、我慢ができない子どもたちのことであります。もしそうだとすれば、必ずしも例外的な事件であるとはいえないのではないでしょうか。今改めて一人一人の大人がこうした不幸な事件が起こった事実について真剣にとらえ、子どもたちの姿は大人社会の反映であるとの思いで、日本人としてのあり方を見失った我が身を振り返って見る必要があると考えるものであります。
 ところで、今日の子どもたちの心の荒廃を目にするとき、公共の場等における子どもたちの醜態を見るとき、改めて、戦後教育は、日本民族の個性や伝統・文化をないがしろにし、長い歴史を重ねた祖先の努力が凝結した民族の精神をなきものにしてきたという思いがしてならないのであります。
 残念ながら国民の道徳教育をしっかりやってこなかったこのところに、今日のこの悲しむべき事態があると私は思うのであります。これからの日本を支える子どもたちの教育のあり方について、改めて考えなければならないと思うのであります。
 そこで、従来の枠組みにとらわれることなく、教育行政はもとより、国民全体で勇気を持って心豊かな子どもたちの育成のために必要な取り組みを行っていかなければならないと思うのであります。そうした点で、戦後教育の反省に立ち、今日の教育をめぐる課題を改めてとらえ直して、二十一世紀の東京、ひいては日本の創造的発展を担う人間の育成を目指して、東京都教育委員会がこのたび東京都教育ビジョンを策定したことは、非常に意義あることであると考えております。
 そこで質問をいたします。私は、日本の将来を担う人間として教育ビジョンが示す人間像に強い共感を抱くものであります。そこでは、思いやりや規範意識、社会に貢献しようとする心などが挙げられております。翻って、社会のルールを守れない子どもたちの現状に対して、非常に憂慮しております。しかし、教育ビジョンに関連して東京都が行ったアンケートでは、子どもたちの規範意識や社会性についてどのような結果があらわれているのか、心するものであります。
 また、東京都教委はその結果をどのように認識しているのか、そのアンケートにあらわれた結果と東京都の認識についてお聞きしたいと思います。

○松田参事 教育ビジョン策定に先立ちまして、東京の教育に関する都民意識調査を行いました。その中で、正しいことをしようとしている子どもが多いと感じているかという質問に対しましては、半分以上の大人が否定的な回答を示しております。また、周りの人に役立とうとしている子どもが多いと感じているかという質問に対しましては、六五%以上の大人が否定的な回答をしております。さらに、生活文化局が行いました首都圏と東京に関する世論調査におきましては、社会のルールやマナーを守れない人が多い世代として、八〇%の大人が、十代後半の子どもたちを挙げております。
 こういった状況の背景といたしまして、社会の激しい変化の中で、子どもたちの教育の担い手である家庭、学校、地域などの教育力が低下し、子どもたちの課題に十分に対応し切れていないことなどがあると考えております。

○臼井委員 戦後は経済的に豊かな社会を獲得したのでありますが、物質的な価値を優先する中で、親や大人たちは倫理観や正義感など、人間として大切な精神を子どもたちに十分教えてこなかったと思います。そこで、私は、都は心の東京革命を提唱し、子どもたちの健全育成に向けた取り組みを行ってきたのか、都教委としては、子どもたちの規範意識や社会性の育成、または心の教育として、今までどのような取り組みを行ってきたのか、お聞きしたいと思います。

○近藤指導部長 東京都教育委員会は、親や大人が責任を持って正義感や倫理観や思いやりの心をはぐくみ、人が生きていく上での当然の心得を子どもたちに伝える取り組みといたしまして、「心の東京革命」教育推進プランを推進しておりまして、トライ&チャレンジふれあい月間や、とうきょう親子ふれあいキャンペーンなどの取り組みを行ってきているところでございます。また、都内すべての公立小中学校においては、道徳授業地区公開講座などを開催し、心の教育の推進に努めてきたところでございます。

○臼井委員 さまざまな取り組みが進められておりますが、現在、コミュニティの崩壊、核家族化等の中で、子どもたちの体験活動が非常に不足していることは大きな問題と私は思っております。人生には困難や苦難がつきまとうのでございます。それをみずからの力で乗り越えていく力をつけてやるのが親の責務であります。甘やかしや過保護をすることは、子どもたちの貴重な人生の体験を取り上げるということになりはしないかと思うのであります。嫌なことから逃げずに努力することで人間性が深まり、強くなることを教えるべきであります。
 私の経験から申し上げても、子どもたちは、本来、地域の先輩や大人たちと作業や労働、祭りなどの伝統的な行事を一緒に体験することにより、さまざまな生き方あるいは知識を学びます。それらの知識やわざを教えてくれた人を尊敬し、慕うようになってきます。また、これらの体験を通して培われた人間関係が基礎となり、地域への愛着を生みます。郷土への誇りを自然と育ち上げていくものであります。そして、社会の一員としての意識が生まれ、自分も、自分に続く後輩たちに豊かなものを教えてあげられるような人間になりたいと思うようになると、私は思うのであります。その流れが地域の文化や伝統を支えていくことになりますし、私は、これが人間が生きるための教育の本来的な姿ではないのかと考えております。
 そう考えたとき、体験的な活動の意義は非常に大きなものがあります。都は、トライ&チャレンジふれあい月間を設定し、子どもたちの体験活動を進めているという話でありますが、その活動の成果はどうなっておるか、お聞かせください。

○近藤指導部長 トライ&チャレンジふれあい月間の活動は、地域の清掃活動や高齢者福祉施設訪問など、さまざまな体験的な活動を行っております。活動後、学校の取り組み等に関する調査によりますと、子どもたちに規範意識の醸成が見られたかという質問に対しまして、好ましい成果が見られた、好ましい成果が一部に見られたと回答している学校は、小中学校とも八八%を超えております。また、体験発表会に参加した大人たちからは、自分が社会の役に立っていることが子どもの自信につながるなどの感想が寄せられており、子どもたちの望ましい変化が見られているところでございます。

○臼井委員 答弁によれば、トライ&チャレンジの活動については保護者なども高く評価しているわけでありますが、これらの体験は、まだ希望している一部の子どもたちに限られております。すべての子どもたちに発達段階に応じた施策が必要ではないかと考えますが、今後さらに子どもたちの規範意識や社会性を育成するための取り組みとして、教育ビジョンはどのようなことを提言しているのか、お聞きいたします。

○松田参事 教育ビジョンにおきましては、家庭がしつけや基本的生活習慣を教えなければ、学校や地域が教えても日常生活の中にはなかなか根づかないといたしまして、家庭の役割を重視しております。
 その上で、子どもの発達段階に応じまして、それぞれの段階に応じて適切な指導が必要であると考えておりまして、乳幼児期では、家庭教育への支援や、幼稚園、保育所における集団生活のマナーやルールを教える心の教育を提言してございます。また、学童期におきましては、学校と地域が連携して行う交流体験活動などを、思春期では、奉仕体験、勤労体験の必修化などを提言しているところでございます。

○臼井委員 昨日の毎日新聞の投書欄にこういう記事が載っています。「日本の教育、真剣に考える時」ということで、元中学校教員ですね。小学校に今、小一問題が存在するそうです。小一問題って何でしょう。小学校一年生の担任のなり手がいないということであります。若い親は子どもをどうして育てていいかわからず、しつけ方もわからない。だから、自分の子どもなのに、半ばほったらかしにした状態にしてしまう。そういう子どもがたくさん入ってくる一年生の担任にはなりたくないという教員が多いということなんですね。
 戦後の日本の経済は発展はしたけれども、家庭が壊れているんですね。こんな状態ですから、もうほんとにどうしたらいいんでしょう。ほんとに。
 本来、規範意識や社会性の育成は家庭の役割が大きいけれども、教育庁としても、家庭教育力向上の支援については、ぜひとも今後も取り組んでほしいと思います。
 そこで、これを補完する意味においても、学校教育においては、規範意識や社会性の育成、極めて重要でありますので、教育ビジョンの中で提言している奉仕体験や勤労体験の必修化、これを全員が行うという点で意義が深いと私は考えますが、教育ビジョンでもそれをいっておりますので、改めて都の考え方を伺いたいと思います。

○松田参事 子どもたちは、勤労活動や奉仕活動を通じまして他人の存在を意識し、他人に共感したり社会の一員であることを実感するものでございまして、また、互いが支え合う社会の仕組みを実際に学び、人との信頼関係を築き、ともに物事を進めていく喜びや勤労の大切さなどを体験的に学んでいくものと考えております。
 このように、言葉による知識ではなくて、みずからの体験を通して得た社会性は、子どもたちが自立していく上で不可欠なものでございまして、すべての子どもたちに実施していく必要があると考えております。
 今後、計画的な取り組みが重要でございまして、鋭意検討してまいりたいと考えております。

○臼井委員 今後、鋭意検討していくということでありますが、武蔵野市が長野県で一週間ほど実施している体験活動などは、大きな成果を上げていると聞いております。私の友人である土屋市長は、森や田畑での活動という貴重な自然体験の中で、子どもたちは目を輝かせて帰ってくる、大きく成長していると話しておりました。ぜひとも必修化に向けて取り組んでほしいと、お願いをしたいと思います。いかがですか。もう一度答えてください。大切なことだから。

○松田参事 今、委員ご指摘のように、奉仕活動、勤労活動については、子どもたちの教育にとって大変重要なことと考えております。必修化に際しましては、すべての子どもたちがそれに取り組むということでございまして、幾つかの克服すべき問題がございますけれども、先ほども申し上げましたように、計画的に取り組みを進めてまいりまして、必修化に向けた努力をしてまいりたいと考えております。

○臼井委員 現場の市町村でもこうした取り組みをしているところもあるわけですから、ぜひとも大いにこれをバックアップしながら、都全体に広めていただくような取り組みをお願いしたいと思っているわけであります。
 ところで、この教育ビジョンには、ほかにも幼保の一体化や心身障害教育の改善、コミュニケーション能力の育成など早期に施策化が可能な提言や、国や関係機関等に要望していく提言など多様であります。今後、実現に向けては整理することが必要と考えますが、この教育ビジョンの提言の具体化をどのように考えているのか、お聞かせください。

○松田参事 教育ビジョンでは三十三の提言を行っておりますが、具体化に向けましては、都庁内の関係各局より成ります連絡調整組織を立ち上げまして、ビジョンの実現に向けて検討を始めたところでございます。
 ご指摘のように、提言の中には、その内容によりまして、現在取り組んでいる施策の一層の充実を図っていくもの、新たな具体化に向けまして早期に施策化を図っていくもの、国や関係機関等に提言していくものなどがございます。それらについて一定の整理を行った上で、来年度予算への反映、あるいは国への提案など、具体化に向けまして検討してまいります。

○臼井委員 期待をしております。
 それでは、二期目を迎えるに当たって、教育ビジョンも定めて新たに教育改革に取り組んでいこうとする横山教育長の決意について、改めてお伺いしたいと思います。

○横山教育長 私が教育長に任命されましたのは、ちょうど平成十二年の七月でございました。その年の十二月に国の教育改革国民会議の最終報告が出されまして、その冒頭にこういう言葉がございました。教育の問題は、社会や国の将来を左右するものであり、教育こそ人間社会の存立基盤である、こういう教育の崇高な理念が述べられておりました。以来、この言葉を胸に教育行政に取り組んでまいりました。
 そうした中で、私どもは、子どもたちの人格形成に影響を与える家庭、学校、地域社会という各場面での教育力が、いずれの場面においても低下してきている。この各場面における教育力をいかにして高めていくか、こういうことを教育改革の核心と位置づけまして教育行政を進めてまいりましたが、現段階でまだまだ道半ばという思いでございます。
 今回、教育ビジョンとしまして、現行施策を含め、今後の都の教育行政の方向性をお示しいたしましたが、教育問題を体系的にご理解いただくため、国による法制度の改正を要する問題についても提言をいたしております。
 今後、このビジョンに盛り込みました各提言をいかに具体的な行政課題として計画して実現をしていくかが私ども都教委に課せられた使命であると自覚しまして、今後とも全力をもって取り組んでまいります。

○臼井委員 頑張ってください。以上です。

○山下委員 私からも東京都教育ビジョンについてお伺いしていこうと思います。
 まず、この教育ビジョンが示す方向性、例えば人間像、お互いの人格を尊重し、思いやりと規範意識のある人間であるとか、社会の一員として社会に貢献しようとする人間であるとか、みずから学び考え行動する個性と想像力豊かな人間でありますとか、また、その実現のために行われた提言などについて、多くの点において大いに賛同できるものがあります。ぜひ着実に進めていただきたいと私は考えております。また、私どもでバックアップできる部分があれば、積極的に行っていこうとも思っております。
 では、具体的にどう掲げたビジョンを実現していくかについて、何点かにわたり質問をさせていただきます。
 まず初めに、メディアリテラシーについてお伺いいたします。
 ご承知のとおり、先日、佐世保市において大変痛ましい児童の殺害事件が起こりました。もちろん、殺害に至るさまざまな原因はあったにせよ、一つの大きな要因としてインターネット上でのやりとりがあったといわれております。こういったことからも、今日、生徒を取り巻くさまざまな情報が、どれが自分にとって非常に有益な情報であるか、あるいは悪影響を及ぼす情報なのかということを主体的に判断できるようにするために、メディアリテラシーの育成の必要性は待ったなしのところまで来ていると考えています。
 このメディアリテラシーの育成に関しては、私どもの代表質問においても、また私自身の一般質問や、この委員会での質問においても触れてきましたので、本日は具体的な形で質問させていただこうと思います。
 では、実際にどこで生徒全員に対し、これは都立高校の話になるんですが、メディアリテラシーを教科として教えているかといえば、「情報」という教科だということです。私は、この教科「情報」においてメディアリテラシーの育成を積極的に図っていくべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○近藤指導部長 教科「情報」において、生徒に情報化の進展に主体的に対応できる能力とその態度を育てることは極めて重要でございます。このことから、現在、高等学校においては、情報化の進展が生活に及ぼす影響や、情報の収集、発信と個人の責任などを取り扱いまして、情報通信ネットワークを活用する上での基本的なマナーや心構えなどの指導を行っております。
 今後とも東京都教育委員会は、「東京の教育21」研究開発委員会で新たな指導事例の開発を行うとともに、授業研究ネットワーク「まなび」等の教員研修の場におきまして授業研究を行うなど、メディアリテラシーの育成に一層努めてまいります。

○山下委員 ぜひ力を入れていただきたいと思います。これは、私、以前にも質問させていただいたんですが、この教科「情報」というものの中で、メディアリテラシーの比重というものは、私から見たら、これは到底十分とはいえないというふうに認識を持っております。今後、教え方、時間の割り振りは別にしましても、積極的に今ご答弁いただいたような形で進めていただきたいと要望させていただきます。
 続いて、佐世保の事件であらわれたもう一つの大きな問題点の一つに、先ほどもお話が出ましたけれども、コミュニケーション能力の低下ということも指摘されております。私はこのことについても以前から発言してまいりましたけれども、今回の教育ビジョンの中でも、解決方法として国語力の育成というものが大きく打ち出されていますが、では、ほかに何があるのかというところがなかなか見えてこないと私は考えております。もちろん国語力の育成も大切であります。これは認識しておりますが、国語力の育成だけで問題は解決しないはずであります。佐世保の事件の例を見ても、ホームページ上での加害児童の表現の中では、小学校五、六年生にしては大変大人びたものもあったように私は思っております。そういった意味においては、国語力の育成だけではないというふうにも考えています。
 そこで、ほかにもパネルディスカッションでありますとかディベートでありますとか、人の話や気持ちを理解して自分の気持ちを正確に相手に伝えることができるように、さまざまな方法を検討すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○近藤指導部長 学校におきましては、すべての教育活動を通して児童生徒が言語活動を適正に行い、好ましい人間関係を築くことは極めて大切でございます。現在、国語科の指導では、互いの立場や考えを尊重して、言葉で伝え合う能力を育成することを重視しておりまして、また、特別活動や総合的な学習の時間におきましても、ディスカッションやディベートなどの活動を取り入れ、論理的に自分の意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力などを育てているところでございます。
 今後とも、児童生徒のコミュニケーション能力を高めるため、お話にありましたような活動を取り上げた指導資料を作成いたしまして、すべての教員の意識を高め、意欲的な指導に役立てることができるよう、普及啓発に努めてまいります。

○山下委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 さて、少し視点は変わるのですが、今日の生徒を取り巻く、生徒自身の考えといってもいいんでしょうか、指摘されている問題点は、例えば学ぶ意欲の低下でありますとか忍耐力の不足であるとか、あるいはお子さんによっては、大人になりたくないというふうな考えを持っている方もいらっしゃるそうであります。特に学ぶ意欲の低下についてでありますが、私が考えるところでは、結局、なぜ学ぶ意欲の低下が起きているかといえば、今自分が勉強している意味が理解できないからではないかなというふうに思います。
 昔はそれでも、いい悪いは別にしましても、勉強していい大学に入れば、高収入で安定したいい人生が送れるよという価値観があったようにも思いますが、それも今日のリストラなどの現実、大人たちの厳しい現実を見ていると、子どもたちにとっては非常に意味なく思える場合もあると思うんです。ですから、今の勉強と、自分が今勉強しているものが将来どう結びつくかがわからないんだというふうな要因もあるんだと思います。そういう意味では、みずからの夢の具体化に向けて自覚的に取り組ませるキャリア教育というものを学校全体で組織的、計画的に取り組むという、このキャリア教育自体に私、大賛成であります。
 そこで、お伺いいたします。子どもたちが、次代を担うすばらしい社会人となっていくために、キャリア教育の推進を積極的に行っていくことが大切だと考えますが、具体的にどのように進められていくおつもりなのか、お伺いいたします。

○近藤指導部長 児童生徒に職業に関する知識や技能を身につけさせるとともに、自己の個性や適性を理解し、主体的に進路を選択する能力、態度を育てるキャリア教育を推進していくことは極めて重要であることから、各学校では、これまでも、職場体験やインターンシップ、ものづくり教育など、教育活動全般を通して、児童生徒に望ましい勤労観や職業観を育てる教育を進めているところでございます。
 今後は、本年三月に作成いたしました啓発資料の活用などを通して、キャリア教育の視点に立った進路指導を、小中高の発達段階に応じて、学校全体で組織的、計画的に取り組むよう推進してまいります。

○山下委員 ただいまご答弁にありました、キャリア教育の視点に立った進路指導の充実を目指してというもの、私、冊子をちょうだいしておりますが、中を見ますと、例えば人間関係形成能力であるとか、情報活用能力であるとか、将来設計能力であるとか意思決定能力、こういったものを積極的に育てていこうというお考えのもとに今後進められていくということでございましょうから、ぜひこういった部分でも力を入れていただきたいというふうに思っております。
 先ほど来私自身の口からもお話しさせていただいていますように、生徒を取り巻く環境は、大きく申し上げれば、社会全体の中で価値観の喪失があるのかなと。その中の、これから将来を、社会に出ていくであろう生徒さんたちが迷っているのではないかなと私個人は考えております。学ぶ意欲の低下やほかのさまざまな要因によって、自分が描いているようになかなか進路をそのとおり進めないという生徒さんも多くいると思います。そういった意味では、提言25でも触れられております複線型の進路選択でありますとか、やり直しが可能な柔軟な学校制度というものが必要不可欠だと考えております。
 そこで、お伺いいたします。提言25では、多様な生き方を包容する社会の実現を目指し、中学校から高校、そして大学への進学という単線型の進路だけではなく、さまざまな段階、年齢で自由に学校が選択できる複線型の進路選択が可能となる制度や、当初の選択を変更する必要があれば、高校間あるいは高校と専修学校とのやりとりの中でも転入学が可能となるように、入学資格、編入資格を緩和し、やり直しのきく柔軟な制度の必要性を提言されております。私は、この提言に全く同感でございます。
 そこで、都教育委員会として、今後、やり直しのきく柔軟な制度に向けて具体的にどのように取り組むのか、お伺いいたします。

○松田参事 興味、関心、適性などの理由から、他の高校への転学や編入学を希望する生徒等もいることから、都教育委員会は、本人希望による進路変更も含めまして、都立高校間での転学、編入学の機会を設けているところでございます。
 高校や専修学校等への進学後に、公私間も含めまして進路変更する場合には、これは法制度上、各学校種別ごとに入学、編入などにさまざまな資格要件が定められております。これらの資格の緩和につきましては、中長期的な課題といたしまして国において検討されるべきものと考えておりますけれども、都教育委員会といたしましても、今後、意欲のある生徒のやり直しを支援する方策として何ができるのかも含めまして、多様な選択を可能にする学校教育のあり方を検討してまいりたいと考えております。

○山下委員 ぜひ都の教育委員会としても、そういった意欲のある生徒さんがやり直すことができるように、一日も早く検討を進めていただきたいというふうに思っております。
 私は、今回の児童の殺害事件という大変痛ましい事件を契機として、またこういった部分に関して質問をさせていただきましたが、トータル、大きい面で申し上げれば、今までの単に知識重視型の授業から、問題解決能力であるとか論理的思考や表現力、独創的な発想を重視する等、総合的な学力の向上を図る授業へと転換していくと提言27でもおっしゃられているわけですから、こういった点をぜひ進めていただきたいと強く要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○石川委員 私からも、報告事項の東京都教育ビジョンについて若干質問させていただきたいと思います。
 ご承知のとおり、教育を何とかしなければならないと、こう叫ばれて時間は経過し続けているわけであります。その間、都教委にありましては、都立高校の改革、そしてまた心の東京革命の中での教育分野でのさまざまな施策の展開、そしてこの秋には心身障害教育への行政計画を策定する、今そういう流れであります。そうしたさなかに、今回、十二の方向、三十三の提言としてこのビジョンをまとめたわけでございます。私は、この方向性と提言には大いに期待する、また大いに評価しているところでございます。
 そこで、まず、これまでの東京都の教育の改革の取り組みとあわせて、今ここで新たに教育ビジョンを発表して、都民の皆さんにどんなメッセージを送ろうとしているのか、教育長のお考えをまずお聞かせいただけますか。

○横山教育長 先ほども申し上げましたけれども、教育行政、教育の方向性の改革に対する都民の期待というのは非常に大きいわけです。そうした中で、これまで私どもは各種の改革を行ってまいりましたが、ともすればそれが体系的に余り理解されていない、そういう一面がございまして、非常に誤解をされている。あるいは将来展望を踏まえたある種の政策的な見方が非常に乏しい、こういうご批判もございました。そういう点から、将来展望を踏まえて、教育の抱える現状を、仮にこれは国の施策であっても、子どもたちを主役に考えれば教育政策に間違いないわけで、そういったものを含めて、教育の全体、課題を抱えている全体像をまず都民に明らかにし、具体的な施策というよりも、改革の方向性を明らかにすることが必要であろうということから、今回ビジョンの策定をいたしたわけでございます。

○石川委員 そこで、ビジョンの策定に当たりましては、昨年三月、ビジョンの検討に先立って、五千名規模の都民意識調査を実施し、その結果も参考にしながら検討委員会での検討を行ったと伺っております。調査結果からどのような課題が明らかになったんでしょうか。

○松田参事 今お話がございました都民のアンケートにつきましては、小中高校生や保護者、企業なども含めまして、都民約五千人を対象に実施いたしまして、家庭、学校、地域など子どもたちを取り巻く社会の状況及び将来展望や行政への期待、要望などを調査いたしたものでございます。
 調査の結果、都民意識の面からも、家庭、学校、地域の教育力が低下をしている現状がうかがえました。また、多くの都民が、家庭、学校、地域相互の連携が不足をしていると感じていることなどが明らかとなりました。
 また、このアンケートでは、今後の教育の目指すべき方向や家庭、学校、地域、社会の役割についても調査をしておりまして、あわせて教育ビジョン検討の参考としたところでございます。

○石川委員 今ご答弁いただきましたけれども、都民はこれからの教育にどのような期待をしておられるのか、また、ビジョンにはどのように反映されたのか、具体的に伺います。

○松田参事 これからの教育に関しまして、家庭、学校、地域それぞれの取り組みの充実について、多岐にわたりまして都民から要望が出されました。代表的なものは、父親の積極的な家庭教育への関与、子どもの興味、関心を引き出す授業ができる先生、地域における自然体験や社会体験の場の提供などでございました。
 教育ビジョンにおきましては、親としての責任を果たすための教育への積極的なかかわり、教員の努力や成果を重視する制度の構築など、都民の要望を踏まえまして提言としてまとめたところでございます。

○石川委員 要求資料の3にもありますとおり、教育ビジョン検討の中間段階で中間のまとめを行いました。さきの都議会にも報告されたところでありますが、あわせて、有識者からの意見聴取、都民意見の募集や教育モニターアンケートなども行ったと聞いております。それらの結果などを受けて、最終報告に織り込まれた事項はどんなものがあるんでしょうか。

○松田参事 お話のとおり、昨年十二月に中間のまとめを公表いたしまして、都民意見の募集や教育モニターへのアンケート、有識者からの意見聴取などを実施いたしまして、それらを参考にして最終の取りまとめを行いました。いずれにおきましても、中間まとめの内容につきましては大多数の支持を得たものと考えております。
 なお、最終まとめにおきましては、人間関係の基礎となるコミュニケーション能力の確かな育成、国際社会に生きる日本人としてのアイデンティティーをはぐくむ教育や、学校種別間連携の充実などを新たに明記したところでございます。

○石川委員 教育モニターアンケートの結果を見ますと、目指すべき人間像、家庭、学校、地域、社会に期待される役割などについて非常に高い支持を得ておりまして、多くの都民の教育ビジョンへの期待が感じられたところでもあります。今後は、教育ビジョンが示した十二の方向と三十三の提言を具体化していくことがまさに重要であります。
 ところで、教育ビジョンの三十三の提言は、現行の取り組みから長期的な展望に立ったものまで多岐にわたりますが、今後どのような体制で、どのように具体化に向けた検討を進めていくのか、明らかにしてください。

○松田参事 教育ビジョンの実現に向けまして、先月、都庁内の関係各局で構成する連絡調整組織を設置いたしまして、具体化に向けた検討を始めたところでございます。検討に当たりましては、教育ビジョンの三十三の提言を、現在の取り組みを充実する提言、早期に施策化すべき提言、中長期的な課題として国等へ提案していく提言などに分類、整理をいたしまして、早期に施策化すべきものにつきましては、来年度の予算に反映できるよう検討を進めてまいります。
 また、国の制度改正にかかわる中長期的な事項につきましても、都としての要望内容を検討、整理いたしまして、国への提案要求や中教審への意見反映を図るべくまとめていく予定でございます。

○石川委員 このビジョンは、中長期的な展望に立った方向性を示すものであるとはいえ、教育改革にはやはり時間軸の視点を持って取り組むことが重要だと考えますが、最後に所見を伺います。

○松田参事 教育改革は、社会の変化という時間的な流れを前提としておりまして、委員ご指摘のように、スピード感覚や適時性など時間軸の視点を持って取り組んでいく必要があると考えております。そのことを前提といたしまして、教育ビジョンの施策化の検討につきましても、それぞれの提言ごとに具体的な検討を進めまして、全体の進捗状況につきましては、年度内を目途に取りまとめる予定でございます。

○曽根委員 教育ビジョンについて何点かお聞きしておきたいと思います。
 先ほどもどなたかおっしゃいましたが、社会全体の混迷を反映して、それがまた子どもたちにはね返っているという深刻な社会問題が次々起こっています。長崎での事件は、ある意味ではその象徴であると思いますが、恐らくそこに至らない広大なすそ野があるということは間違いないと思うんです。それだけ、もちろん学校だけではありませんが、日本と東京の教育は大きな困難を抱えて進んでいるということは、だれもが認めざるを得ない問題だと思います。
 私、振り返ってみて、八〇年代には校内暴力だとか学校の荒れが問題になりました。それが解決しないままに、今度はいじめや不登校が広がってきました。さらにそれがどんどん今陰湿になって、大人の見えないところで原因が生み出され、深刻化してくるようになったんじゃないかと思うんです。今回の事件も、なぜこの事件が起きたのかという原因が非常につかみにくくなっています。いじめなどが統計上は減ったような資料が出ていますが、決して楽観はできない。大人がつかまえることのできない世界が子どもの中にたくさん生まれている。事件に至る原因や動機、そのすそ野にどういう子どもたちの心理状態があるのか、こういうことを考えますと、事件が起きるたびに、なぜあの普通の子どもがということに、事態が繰り返される可能性があります。
 東京の教育ビジョンをつくる場合、この教育の抱えている困難と正面から向き合って東京の教育行政の課題を明らかにすることが、まず第一の役割だと思います。しかし、代表質問でも指摘しましたが、石原知事並びに現在の都教育委員会によって、教育改革の名で学校や子どもや教員に対する大きな圧力や管理、統制が行われて、大きくゆがめられてきたというふうに私たちは思っております。その中でのビジョン策定ということでは大きな危惧を持たざるを得ないというのが、率直な印象です。
 そこで、幾つか基本的な点と、当面の課題にビジョンはどうこたえているのか、具体的に質問したいと思います。
 まず、現在の教育の困難、子どもたちの学ぶ意欲の低下とか、不登校など学校離れ、いじめの問題などさまざまな問題が、私は、教育の基本を定めた教育基本法にある、教育は、個人の尊厳を重んじ、人格の完成を目指すという、平たくいえば、子どもを一人の人間として尊重すること、この理念が極めておろそかになって、むしろ今日否定されてきていることが一つの大きな要因ではないかと思いますが、一方では、憲法や教育基本法は、国民の権利ばかりで義務を教えることが足りないとか、家庭教育や日本人の誇りの教育が足りないとか、我慢を教えていないとかいう意見もあります。ビジョンはどちらの立場に立っているのかという点では、ビジョン全体を読んでも、教育基本法とか憲法という言葉も出てきません。もはや無視されて、それを前提としない議論が展開されているかのように見えます。私は根拠法についての資料をいただきましたが、そこにも憲法も教育基本法も出てまいりません。
 そこで、お聞きしますけれども、この教育ビジョンの中で憲法と教育基本法はどういう位置づけとなっているのか、このビジョンは、もはやそれが改定された後の時代を想定しているのか、お聞きします。

○松田参事 現在、教育基本法につきましては、改正に向けた議論がなされているところでございます。教育ビジョンは、現行法の枠組みにとらわれることなく、中長期的な展望に立って検討したものでございます。
 教育ビジョンの具体化につきましては、教育基本法の改正を前提としているものではございませんけれども、教育基本法の動向につきましては、今後とも注視していきたいと考えております。

○曽根委員 改正前提ではないが、その動向を見ながら先のことも考えてつくったということになりますよね。
 実際、随所に出てくる提言の根拠などを見ますと、教育基本法の中で定められている、国民の総意に基づく憲法やこの法律の理念が本当にないがしろにされているなということを実感します。具体的に幾つかお聞きしていきます。
 まず、このビジョンが、だれのどういう声をもとにつくられているのかということで、随所に提言が出てきますが、その根拠についてお聞きしたいと思うんです。後ろの方に統計資料がありまして、細かくいえば四十五ぐらいの図表が出てくるわけですね。この統計や調査はどのような出所で、どういう機関や団体をもとに拾ったものか、また、そういうものを選んだ観点は何か、お聞きします。

○松田参事 東京都教育ビジョンの策定に当たりましては、検討のための基礎資料を得ることを目的といたしまして、平成十五年三月に、五千人規模の、東京の教育に関する都民意識調査を実施いたしまして、その調査結果をビジョンの策定に活用したところでございます。
 例えば、東京都教育ビジョンの巻末には、資料編といたしまして、ビジョン策定に使用した統計や調査結果などのうち、代表的なものを四十五項目掲載しております。そのうち、教育庁初め東京都各局の資料は二十七項目、都以外の資料は十八項目でございます。また、東京都各局資料のうち、教育庁関係の資料は二十項目、うち、先ほどの都民意識調査から得られた資料は十一項目を活用しております。資料全体のうち約四分の一、東京都関係の資料のうちの四割、教育庁関係の資料のうちでは五割以上が、この都民意識調査が占めているということでございます。

○曽根委員 四十五のうち、このビジョン策定に向けてつくられた調査が十一で、四分の一含まれていると。しかし、よく見ると、ほぼ同じぐらいの数の経済団体の声が載っているんですね。しかも、それをよくまた見ると、人材育成、どういう人間を教育で育てるのかという部分に集中して財界の声が載せられているわけです。それが根拠となってビジョンの中にいろいろ出てくるわけです。
 とりわけ、最も大事な、教育はどういう人間を育てるべきか、この東京の教育目標について、これは私、三年前に改定された問題については、先日の委員会で申し上げたとおり、憲法と教育基本法を削除して、かわりに日本人の誇りや伝統を重んじるということが入ったわけですね。それが都民の声を反映しているんだという根拠づけとして出てくる資料が、このビジョンの後ろの方にあります、21の2、教育のあり方について、日本・東京商工会議所の平成十四年十月の教育の提言なんです。私、最初はてっきり、これは東京商工会議所が都民に何かアンケートした結果を載せたものかなと思ったら、そうじゃなくて、これは、資料を取り寄せてみたら、教育のあり方についての東商自身の、東商みずからの提言なんですね。だから、都民の声を反映しているというのは、東京商工会議所の声を反映しているということなんですよ。
 しかも、ここにしか日本人としての伝統や誇りというようなニュアンスのことは、こちらの方には出てきているんですが、上の方の、21の1の方の資料には出ていないんですね。ですから、私、率直にいって、都民の声が--新しく加えた日本人の誇りや伝統・文化を尊重すると、これ自体は別に悪いことじゃないですよ。ただ、これを東京の教育目標に入れたことが都民の声に支持されているという根拠は、財界の声しかないじゃないかと思うんですが、いかがですか。

○松田参事 教育ビジョンにおきましては、企業等がこれからの教育の担い手または教育の支援者として、これまで以上に期待されると考えております。ご指摘の三九ページの資料は、こうした観点から、日本・東京商工会議所の提言を参考の事例として挙げたものでございます。

○曽根委員 しかも、教育庁自身が行った資料の調査を、私、ちょっとないがしろにしていると思うんですよ。
 というのは、ついさっき気がついたので、事前に指摘をするいとまがなかったんですけれども、21の1の資料ですね、これ。こちらにもとのグラフがあるんですね。これが全く違っているんですよね。というのは、ここに「思いやりのある豊かな心をもった人」というのが七九%というようなことで出ていますよね。これは、こちらの資料でも確かに七九・一。子どものデータを抜かしたというのは問題があると思いますけれども、まあ、大人も企業も七九%ぐらいありますよ。ところが、その次に、「社会に貢献しようとする人」が、五七とか四七・五という数字がここには出ているんですけれども、こちらでは、「社会に貢献しようとする人」は一三・五と一九・五しかないんですよ。次に、「自ら進んで学び考えて行動する人」というのが、ここでは二九・七、三一・四になっていますが、こちらでは、上の数字にある五七と四七・五が、みずから考え行動する人なんですね。ですから、ここのグラフの項目を取り違えてここに入っているんじゃないかと思うんですよ。しかも、その下の数字は、全くこっちに出てこない数字も出てくるんです。
 これはついさっき気がついたばかりなので、事前にもっといっておけばよかったと思うんですが、こちらは間違いなくバックデータが書いてありますから、こちらの方が正しいんだと思うんです。それをきちんと、これは都民向けに発表する東京都教育ビジョンに正確に反映することが必要ですから、この部分は調べていただいて、間違いがあれば直ちに訂正をお願いしたいと思いますが、いかがですか。

○松田参事 ただいまご指摘がございました資料についてでございますけれども、改めて調査をいたしまして、もしそこに誤りがあったとすれば、それについては訂正をさせていただきたいと思います。

○曽根委員 私は、せっかく五千人も調査しているわけですから、そこで出た結果が、東京の教育目標である日本人の誇りとかがどうも出てこないというので、こういういいかげんな扱いをしちゃいけないと思うんですよ。それが原因ではないというでしょうけれども。私、これだけのことを調査をやりながら、このビジョンに四分の一しか使っていないというのも本当に大きな弱点になってしまうと思いますので、指摘をしておきたいと思います。
 それから、もう一つ重要なのは、このビジョンの中で、さすがに世論の影響があると思うんですが、新学習指導要領の実施で、学力不足などが学校現場からも、立場の右左を問わず、各方面から指摘されていることに触れざるを得ませんでした。一〇ページにそのことが指摘されていて、統計資料でも、やはり学力の不足は、新学習指導要領実施後に不安があるという答えが六割を占めているんです。ところが、これにきちんとした論評もないまま、ビジョンでは学習指導要領に従っていくというふうに書かれているわけです。
 東京都は、指導要領による学力不足やその懸念を現実の問題と見ているのか。見ているのであれば、現在の法令にとらわれずに、長期のビジョンとしてそれをどう打開する気なのか、その点についてお伺いします。

○近藤指導部長 新学習指導要領は、完全学校週五日制のもと、一人一人の児童生徒の生きる力を育成することをねらいとして改訂されたものでございます。この基本的な考え方に立ちまして、児童生徒に学ぶことの意義を理解させるとともに、みずから学び、みずから考える力などの確かな学力の向上を図ることが大切であると認識しております。

○曽根委員 的確にお答えいただきたいんです。学力不足という指摘があるというふうにここでもはっきり書いてあるんですが、その指摘は当たっている、現実問題であるということを認めるのかどうかについてお聞きしているんです。いかがですか。

○近藤指導部長 曽根委員が学力をどのようにとらえられてお話しされているかははっきりいたしませんけれども、都教委は、学力を、知識、技能だけではなく、学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力なども含めて学力ととらえておりまして、こうした学力を身につけさせるためには、現行の学習指導要領に基づいて指導することによって身につくものと考えております。

○曽根委員 これ、文科省よりもちょっといただけませんよ。文科大臣の遠山さんだって、そういういろんな指摘があって、学習指導要領そのものは大きな見直しはしませんでしたけれども、しかし、「学びのすすめ」を出さなきゃならなかったわけでしょう。家庭学習も必要だと。それから、学習指導要領を超える教科内容をやってもいいというふうにいっているわけですよね。それを文科省の何か官僚答弁みたいな--官僚答弁なのか。そういうことをオウム返しに繰り返したら、ちょっとこれは……。だって、私が知っている限り、自民党系のといっては何だけれども、そういう評論家の方だってみんないっていますよ、これ。このままじゃだめになると、日本の学力は、子どもの学力は。こっちもいっているけどね。そういう問題を、余りにも文科省の追随がひど過ぎると思います。
 文科省が、学習指導要領を超える中身も教えてよいということを最近明らかにしたし、一部改訂もありましたよね。こういったものも、今の近藤部長の、運用の中でやれる範囲のものというふうにとらえていて、基本的には学習指導要領路線は変える必要はないということですね。

○近藤指導部長 今回、学習指導要領の一部改訂があったわけでございますが、これにつきましては、いわゆる発展的な学習等につきましては、一部改訂の前の学習指導要領から既に書かれていることでございまして、今回、一部改訂といいますのは、その内容をより詳しく示したということでございますので、先ほど私がお話し申し上げましたように、現在の学習指導要領におきまして、ちまたでいわれております学力不足等、学力低下等については解決できるものと考えているところでございます。

○曽根委員 私は、学校教育に責任を持つ立場として極めて無責任だと思うんです。現実に都民の六割、この統計でも六割が現実に今進行している学力問題について不安があると。それを国に任せていれば大丈夫だというのでは、全くお話にならないと思うんです。
 せっかくビジョンを出しているんですから、東京都として、自治体としてできることがあるはずだというふうに思うし、また全国の経験に学べば--自治体は、その基本である学校の教育条件の改善という立場からいろんな問題に取り組んでいるわけです。具体例としては、私たちは前からいっていますが、学級定数の改善というのが、今、全国四十二道府県に広がっています。特に低学年で、この学力問題を含めた子どもたちの学校生活を順調に進める上で大きな効果を上げているというふうにいわれているわけです。
 そこで、ビジョンにも、小学校での小一プロブレムという現象が指摘されています。さっき小一問題というお話もありましたが、ここでは小一プロブレムというふうに表現されていて、これは、私たちも実はこの春の第一回定例会の代表質問で、四十人にちょうどなってしまった小学校一年生の学級が、ちょっと言葉は悪いですが、動物園状態のようになっているということを指摘して、まさに小学校低学年での深刻な事態を指摘しましたが、これはまさにこの問題に当たると思うんです。都はどういう問題としてこの小一プロブレムを認識しているのか、また、都内での具体例はどれぐらい報告されているのかを教えていただきたい。

○近藤指導部長 平成十三年度の小学校における学級経営にかかわる調査によりますと、教室内で勝手な行動をして教師の指導に従わず、授業が成り立たないなど、集団教育の機能が成立しない状況が一定期間継続し、学級担任による通常の手段では問題解決ができなかった学校は、小学校一年生では全都二千九百四十九学級のうち四十三学級、一・五%に当たっております。こうした結果も受けまして、幼児期からの心の教育の重要性や、幼稚園、保育所と小学校教育との接続の必要性を認識しているところでございます。

○曽根委員 三千近い学級の中の一・五%と。これは、当然ながら学校段階から区市町村を通じて報告されたものだと思います。小学校一年生のクラスの問題ですよね。したがって、つかみ切れていない、これに近い状態も含めると、私は、少なくとも数%、こういう事態が都内に起こっているというふうに思うし、これは二年前のデータになるんですか、したがって、今日ではさらに広がっている可能性があると思うんです。私たちもたくさんそういうことを聞いているんです。
 今、幼児教育との連携も必要だというふうな話があって、これは当然ですけれども、学校としての改善は、何よりも学級定数の改善が必要、またこれが決め手というのが全国の道府県の経験です。東京都では、この学級定数改善、少なくとも小学校低学年については、これはもう待ったなしだということは、検討の俎上にも上っていないんでしょうか。

○山際学務部長 学級編制基準とすべき生活集団である学級につきましては、その規模に定説的な見解はなく、都教育委員会では、児童生徒の社会性を養う観点から、学年を問わず、現行の国の標準でございます四十人としているところでございます。
 一方、児童生徒の確かな学力を育成するために、限りある人材を有効活用して、低学年におきましても、教科等の特性に応じた少人数による指導の拡充を行っているところでございます。

○曽根委員 私、社会性を養うといいながら、実態は、社会性云々の前に、生活集団としてももう崩壊状態か、それに近い状態にあるという現実からどう打開していくのかという、まさに都の教育委員会自身の教育条件、諸条件の改善という、これは教育基本法に定められた基本任務、基本使命を忘れているんじゃないかと思うんです。
 確かに少人数指導というのが今行われていて、この中でも、少人数指導については、提言8ですか、「こうした課題を解決するため、算数など、理解に差の生じやすい教科については、一定の学年から、習熟度別の少人数指導を今以上に推進する。」というふうに、少人数指導についてはこういう提言がされています。
 これは少人数指導の問題としてお聞きしたいんですけれども、今、文科省がずっと進めてきた、習熟度別を中心にした少人数指導、今後も進めるというふうになっているんですが、一定の学年からというふうに今回新たな記述が入りました。これは、学習で差が見えにくい小学校の低学年では、とりわけ小一プロブレムのような、生活集団としてさえ崩壊しかねない状態では、習熟度別の少人数指導は導入は難しいということが、これは全国的にもいわれているんですが、そのことを反映しているんですか。

○近藤指導部長 教育ビジョンでは、理解の程度や習熟度にばらつきが生じることへの解決策として、これに応じた習熟度別少人数指導の推進について述べているわけでございます。
 一般に、学年進行に伴いまして理解の程度や習熟度の差は大きくなると考えられているため、一定の学年からとしているわけでございますが、教科や学習内容、児童生徒の実態によって異なるものでありまして、学年を特定化するものではございません。

○曽根委員 私たちはやはり、小学校の入学時点での大きな学校の困難というのを問題にしています。ほかの学年や中学校でも、もちろん学級定数の改善は、それぞれの意味で必要です。しかし、習熟度別の少人数指導が、それを推進する立場に立ったとしても、小学校の低学年のように学力の差がまだついていない、まだ生活集団として確立していないという段階でなかなか導入できないということを事実上認めたものとして、私はやっぱり新しい指摘だと思うんです。改めて、低学年はもちろん、教員の目が少しでも行き届くように定数改善に取り組むことが、あらゆる面から見て総合的に改善する教育条件の最大の保障として、私は、先ほどもいいましたが、基本法に基づく都の教育委員会の使命であることを指摘しておきたいと思います。
 もう一つ、先日、指導部長は、とんでもないところで教育の機会均等という発言をしました。日の丸・君が代が徹底されていないのは機会均等にもとるというような発言だったと思いますが、現実に今、都の教育で教育の機会均等ということが厳しく問われているのは何かといえば、私は、夜間の教育など、勤労や障害などでさまざまなハンディを抱える人々への教育の場を確保するものであると思うんです。それが、東京の教育全体を見れば、都立大の夜間が廃止され、さらに夜間定時制高校は縮小され、今後廃止もありとされている。夜間中学の教員は削減をされているなど、次々後退しているように受けとめられています。
 具体的に、夜間高校、それから夜間中学の縮小、これは私、率直にいえば、憲法、教育基本法の機会均等の精神からの後退だというふうに考えますが、それぞれお答えをいただきたい。

○山際学務部長 中学校夜間学級につきましては、学齢を超過した義務教育未終了者に対する教育の場として設置をしているところでございます。都におきましては、さらに、夜間学級の生徒のうちに中国からの引揚者あるいは外国籍の生徒等、日本語能力が不十分な生徒を対象にいたしまして日本語学級を設置し、日本社会への定着と自立を促進する上で大きな役割を果たしているところでございます。
 夜間中学校に関しましては、必要な関係法令等の整備等につきまして、第一回の定例会で質疑があり、また答弁をしたところでございますが、国に対して要望していきたい、このように考えております。

○曽根委員 夜間定時制高校については、私も取り上げましたが、国連からも是正勧告が出ています。中学の方は、はっきりいえば東京は確かに全国の先陣を切って、日本語学級も含めてつくってきたわけです。国に制度の創設を求めていくのは当然です。しかし、その東京が模範を示しているのではなくて、実質的に教員削減という形で後退させるというのは、やはり断じて認められない話です。こうしたさまざまなハンディを抱えた人への教育の場の保障、この問題は、このビジョンの中には全く出てこないわけですけれども、大きな課題としてやはり私は位置づけていくべきだということを指摘しておきたいと思います。
 幾つかの問題を見てきましたが、この東京の教育ビジョンには、例えば都の教育委員会の権限以外にも、国がこうすべきだとか、福祉や保育などとのかかわりまで展開している一方で、肝心の都の教育委員会の最大の使命である、子どもの深刻な現状を打開するために、学校教育を中心に都として教育条件の改善にどう取り組むのか、この点についてほとんど手をつけようとしていないばかりか、例えば中高とか小中の一貫校など、義務教育まで複線化を推進すると。この複線化を--どっちに子どもをやるかでさらに子どもたちの中に競争が強いられるという、そういう方向での改革、括弧つき改革になっているという点は大きな問題だと思います。
 そこで、改めて教育長にお聞きしたいんですけれども、教育基本法の改定の方向を、前回の委員会で教育長は支持するとおっしゃいました。それは、現行基本法に新しい要素を加えるものだから、それを支持するんだというお話でしたが、率直にいって、ビジョンの中身も、それから都の教育委員会がやっている改革も、個人の尊重という教育基本法の理念ではなくて、むしろ国家の一員としての日本人の誇りを強調するとか、教育の機会均等の精神の後退とか、教育条件の最大の課題である学級定数の改善問題が全く出てこないとか、実質的には教育基本法を否定するという方向を打ち出して進んでいるというふうにいわざるを得ないと思うんですが、私は、このことをまず率直に現実として、事実として認めるべきだと思いますが、教育長、いかがでしょうか。

○横山教育長 先般も申し上げましたけれども、教育法規を考える場合に、教育基本法だけを取り出して議論しても、私自身は余り意味がないと考えております。現在の教育基本法をめぐるいろんな議論の中で主として行われているのは、教育基本法に新たな要素を加えようという方向での議論をされているわけです。しかも、加えるという個々の要素は常に法規性を有すると、これは判例でも確定している、学習指導要領の中には既に明記されている事項なんです。国を愛する心にしろ、国の伝統・文化を尊重する態度にしろ、既に書いてあるわけです。そういったものを加味すれば、今回の教育ビジョンが教育基本法を否定するとか、そういう議論にはならないと私は考えているわけです。
 今回の教育ビジョン、少なくとも東京都の教育行政を批判する立場から見ると、そういう見方もできるのかというのが私の率直な感想ですが、今後都教委が進めようとする、あるいは東京都が進めようとする教育の方向性を示したこの教育ビジョンといいますのは、大方の、圧倒的多数の都民の信頼を、支持を得られるものと私は考えております。

○曽根委員 ご自分のやっていることが、そういった教育の法体系というふうにいろいろおっしゃいましたが、指導要領も含めて、限度を超えているのに、なぜそういうふうなはぐらかしの答弁をするのかというふうに私も思うんです。とりわけ、教育基本法の最大の眼目である、教育は、不当な支配に服することなく、直接国民に責任を負うとされている、このことに、今、教育長自身が、日の丸・君が代問題で生徒に起立を事実上強要するという形で真っ向から基本法に反することをやろうとしているし、またやってきているという問題ですよ。(「もうそれは解決済みだよ」と呼ぶ者あり)いや、これは全然解決していません。
 生徒が、思想信条、思想、良心の自由の権利、これは憲法上の権利ですけれども、として君が代の起立斉唱を拒否しても、それはそれで結構とはならない。教育指導上の課題としては不十分だというふうに、認めないわけですよね。まずこの点を確認しておきたいんですけれども、生徒が不起立をしても、都教委の側はこれを是認することはないわけですよね。それは不十分であるということで責任を問うているわけですね。

○近藤指導部長 ここで従来から申し上げておりますように、学校の教員は教育公務員としての身分を有しておりまして、教員は、学習指導要領に基づいて子どもたちに指導する責務があるわけでございます。あくまでも子どもたちに対しては繰り返し繰り返し指導していく、それが教職の務めであると考えているところでございます。

○曽根委員 繰り返し指導するといっても、卒業式は年に一回しかないわけです。その生徒にとってはただの一回の機会なんですよ。その前に先生が仮にどんな指導をしたとしても、生徒自身の自分の意思で起立斉唱を拒否して、しかし、それに対して生徒に責任は問わない。しかし、担任の教員には結果責任は問われるということですよね。そうすると、それを知った生徒は、先生を処分されたり問責されたりしたくなければ立たざるを得ないということになる。これは教育ですか。私は、これはもうまさに教育ではなくて、生徒に対する内心を圧迫する行為であって、教育的な指導ではないと思いますが、いかがですか。

○近藤指導部長 卒業式、入学式におけます国旗・国歌の指導は、小学校の一年生から繰り返し繰り返しなされてきているものでございます。したがいまして、高校においても、ぜひ先生方は、小中高の教育の継続、連続性から考えてみまして、ぜひ教職として最後の最後まで指導していただきたいと考えております。

○曽根委員 そういうことを先生に求め続けることが、結局それで求め続けるだけでは済まなくなって、指導、厳重注意が始まった。今度は、先日の本会議の答弁では、児童生徒を通達に基づいて指導することを盛り込んだ職務命令を出し、厳正に対処すべきという答弁が教育長からありました。すると今度は、指導や厳重注意ではなくて、職務命令に基づいて、卒業式だけではなく、ふだんの授業における教育の中身まで職務命令で行わせ、従わなければ、つまり、その指導が貫徹されないで子どもが不起立になれば、それは教員の処分の対象、まさしく処分ですね、今度は、となるということですよね。教育長の答弁ですから、教育長自身にお答えいただきたい。

○横山教育長 これはもう見解の相違というしかないと私は思っております。少なくとも学習指導要領、これは高校生でもあるわけで、今、指導部長がいったように、小学校から継続して国旗・国歌の問題については指導しているわけで、私の感覚からいった、例えば四十人いる学級の生徒が国旗・国歌の段階ですべて立たないというのは、私は不自然だと思いますよ。一人二人の生徒が内心の自由で云々という話とは違いますので。これが不自然だとすれば、そこに何らかの要因があるんだろう。それについて私どもは言及しているわけでございますので、まさに見解の相違というしかございません。

○曽根委員 見解の相違で処分が出ようとしているんですよ。これは単なる見解の相違で、見方が違うだけですというのでは済まされないんです。つまり、今は教員には、どんな指導をしたかではなくて、担任している生徒が立ったか立たないかだけで結果責任を問われているんですよ。(「そんなことはないでしょう」と呼ぶ者あり)いや、結果責任ですよ。みんな結果責任でしょう。だって、まとまって立たなかったところは、全部厳重注意がされているじゃないですか。
 ですから、その原因が教員の側の指導にあるというふうにこじつけたって、同じことですよ。授業の中身について立ち入って調査し、しかも、授業の中身についての職務命令をかけるんですよ。戦後、教育の中であったことないんです、今までそんなことは。いろいろ教育上の争議がありましたよ。裁判もありました。しかし、授業の中身に職務命令をかけて、教員に日の丸・君が代を国旗・国歌として指導させる。その結果、結局子どもが立たなかったとなれば、今度は本当の処分だということで、しかも、それによって生徒がもう立たざるを得ない、本当に追い詰められて。憲法の思想、良心の自由を侵すだけではなく、学校現場にもろに不当な圧力を加えるという、まさに教育基本法第十条違反そのものだと思いますが、教育長はこの答弁は撤回すべきだと思いますが、いかがですか。
〔発言する者あり〕

○横山教育長 先ほど申し上げたとおりでございます。撤回するつもりはございません。

○曽根委員 私、今の教育長答弁も、そこに行くまでに何段階かあるかのような、ちょっと不規則発言もありましたけれども、本質的には、職務命令を教育の中身、しかも、日常的な授業の中身にまでかけるんだということをいっているのは、これは前代未聞の見解なんです。ですから、これは、それまでにどんな経過があるかという問題ではなくて、教育の行政が行ってはならない、教育のまさに学校の中身、授業の中身に対する支配、介入なんですよ。このことを本当に自覚しなければなりません。こんなことがもし東京から始まって全国に広がったら、日本の学校はどうなるかと。このことを思うと本当に、このビジョンもそうですけれども、都の教育改革の、今やられていること自体が大変な学校教育の破壊をもたらすということをいわなきゃなりません。
 教育ビジョンについても、私、こういう問題を、確かに憲法も教育基本法も一言も書いてないわけですけれども、無視した先でこれがもう完全にほごになっている時代を想定したやり方をやっていく、そういう中身になってきているなということを率直に申し上げなければならないと思います。
 東京の教育行政があるべき姿は何かといえば、私は、子どもを中心にして、子どもたちが伸び伸び学べる学校をつくるために、しかも、授業の中身を云々するんじゃなくて、その前に、子どもたちが学べるための諸条件があるわけですから、そこの改善に全力を尽くすというのが本来の教育行政の役割であって、都の教育委員会が、そういう正常といいますか、当たり前というか、そういう姿に立ち戻ることを強く求めておきたいと思います。
 以上です。

○山口委員 まず初めに、第1章の「教育ビジョンとは」の中に、このビジョンの目指す人間像について三点ぐらい書かれていたと思います。それはある意味では十分当たり前のことではあるんですけれども、それをトータルすると、非常に優等生的な、型にはまった人間像がかいま見え、本来多様な人間というものに一定の枠がはめられていくような危機感を感じています。教育というものに対して国や行政が必要以上に介入するべきではないと私は思っています。
 この中に、家族愛、それから教育の責任は家庭にあるという、これはごく当たり前のことですが、私は、これを行政がここまで口にすることは介入のし過ぎではないかというふうに感じています。そして、家庭や親の役割が果たされていないという指摘は、現象としてはそう見えることはあっても、それを直ちに親の自覚が希薄になったとか責任感が欠けているというふうに結びつけることは、現実的ではないと思っています。
 私は、以前、一時NPOの活動で子育て支援をしていたときがありますけれども、多くの親というのは、特に母親は、むしろ子育ての責任感に押しつぶされそうになって、都会という人間関係の孤立化と相まって、さらに深刻な状況に至っているのではないかと考えています。家庭は最終責任者であり、親としての自覚を持ちとか、責任ある行動とはなどといった指導は、ますます子育てを息苦しいものにしてしまうのではないでしょうか。
 そこで、必要なことは、子育てを評価したり批判したりしないで、子育ての不安や悩みを抱える親の気持ちに寄り添いつつ、子育てが楽しいと実感できるようにサポートしていくことが行政の役割と考えますが、いかがでしょうか。

○松田参事 教育ビジョンの検討に先立ちまして実施した東京の教育に関する都民意識調査の結果を見ますと、子どもをきちんとしつけている家庭が多いと感じているかという質問に対しまして、否定的な回答が、保護者で六八%、一般都民で八一・六%と非常に高く、多くの都民が家庭の教育力の低下を感じていることが明らかとなっております。こういった現状を踏まえまして、教育ビジョンにおいては、家庭の役割、親が果たすべき責任についての都教育委員会の基本認識を明らかにしたものでございます。
 行政の役割といたしましては、家庭の教育力が低下している現状を踏まえまして、家庭教育を支援するための諸施策の充実を図ることや、関係各局が連携し、子育て支援施策を通じて、子どもを産み、育てやすい社会環境づくりを進めていくことで、家庭の教育力や養育力を高めていくことが重要であると考えております。

○山口委員 今の子育ての現状を十分に把握するためには、専門機関だけではなくて、当事者はもとより、今、保育や子どもの居場所づくりなど子育て支援の市民活動団体などもたくさんあるわけですから、ぜひそういったところとも連携を図り、進めていただくことを要望しておきます。
 次に、仕事と家庭生活の両立支援としては、男女ともに働き方の改善を初め、父親の育児休業を義務づけるパパクオーター制度の導入など環境整備が不可欠です。教育行政としては、国など関係機関への働きかけや局間との連携なくして今後の施策化に限界があると思いますが、見解を伺います。

○松田参事 職業人でもある親は、子どもの教育を家族任せ、学校任せにすることなく、仕事と家庭生活の両立を図り、子どもの教育にかかわっていくことが望まれます。一方、企業におきましても、親である従業員が子どもと地域の行事に参加したり、PTA活動に参加したりする環境づくりなどの努力が期待されます。
 いずれにいたしましても、仕事と家庭生活を両立するために必要な条件整備につきましては、今年度、各自治体や企業が策定することとされております次世代育成支援推進行動計画における指針の一つでもございまして、今後、関係各局による検討を深めた上で、都として必要な取り組みを行っていくこととなると考えております。

○山口委員 今答弁にありました次世代育成支援推進行動計画は、東京都としても事業者としてつくらなければならないわけですから、十分にこういった環境整備に東京都からも率先して取り組んでいただくとともに、制度上必要なことは国へも提言をしていただきたいと思います。
 それから、思春期の取り組みと課題の方向という中で、子どもたちが犯罪に巻き込まれないための取り組みとして、警察と学校、地域の連携による非行や犯罪の防止教育が挙げられています。この五月一日から実施されている、児童・生徒の健全育成に関する警察と学校の相互連絡制度もこういった方針の一環かと思いますので、この点について何点か伺います。
 子どもの問題における警察と学校の連携は、それまではどのようになっていたのか、伺います。

○近藤指導部長 学校と警察との連絡につきましては、これまで、双方の担当者が児童生徒の問題行動等の情報交換が行われてきたわけでございますが、その内容の管理の方法については必ずしも明確な取り決めがございませんでした。本制度を導入することによりまして、より適正な情報の交換が行われるようになると考えております。

○山口委員 明確な取り決めをしたことによって、裁量で行われていた情報交換にむしろ歯どめをかけて、より慎重に行われるように強く要望しておきます。
 では、どのような経緯や理由で連絡制度設置に至ったのか。また、PTAなどでこの制度のあり方について話し合いや周知は行われたのでしょうか。

○近藤指導部長 少年非行が深刻化する中で、昨年十月に、子どもを犯罪に巻き込まないための方策に関する緊急提言が示されました。都教育委員会は、これを受けまして、警視庁、生活文化局、私立学校の関係者とともに本制度の設置について検討いたしまして、本年五月より導入したわけでございます。
 また、本制度を円滑に運用するためにガイドラインを作成し、それを各学校に配り、周知したところでございます。そして、このガイドラインに基づきまして、各学校において保護者等にも周知するよう指導しているところでございます。

○山口委員 子どもももとよりですけれども、人間は悩みながら、失敗を繰り返しながらみずから成長していく力を持っているのだと思います。こうした制度の取り組みが、子どもたちに対して威圧感を与えることのないよう十分に配慮していただきたいと思います。
 また、今回、制度の実施を決める前に、保護者や子どもたちはもとより、地域住民とも話し合う場が設けられなかったことは残念です。運営協議会、PTA、児童会、生徒会をもっと機能させていただきたいと思います。
 あと、警察署長と校長がそれぞれ連絡すべき事柄を判断するとありますが、独断にならないための手だてはあるのでしょうか。

○近藤指導部長 この制度は、問題行動等の再発防止や児童生徒を犯罪から守るために行うものでございまして、先ほど申し上げましたガイドラインの中にも、学校が警察に連絡する内容等を詳しく示し、各学校に周知したところでございます。今後とも、校長連絡協議会等におきまして本制度の趣旨の徹底を図ってまいりたいと考えております。

○山口委員 連絡する場合に、本人、それから保護者への周知はどのようになるのでしょうか。

○近藤指導部長 先ほどもお話ししているところでございますが、本制度のガイドラインに、警察からの連絡及び警察への連絡の内容につきましては、当該児童生徒及び保護者に知らせ、事実確認を行うことということは明示しているところでございます。

○山口委員 情報の扱いなどプライバシーが保護されなかったり、偏見につながるようなことが危惧されますが、いかがでしょうか。

○近藤指導部長 ただいまお話しの件につきましても、ガイドラインには、警察から得た情報の取り扱いや管理について明確に示しているところでございまして、児童生徒のプライバシーを保護し、進学や就職等の不利にならないよう十分に配慮することについて、各学校に対して指導しているところでございます。

○山口委員 子どもの最善の利益が損なわれることのないよう慎重に取り組まれること等制度の検証を要望するとともに、こうした取り組みは根本的な問題解決にはなり得ず、あくまで対症療法でしかないということを指摘させていただきます。
 最後に、本年一月、国連子ども委員会において、日本からの報告についての勧告が外務省の方から発表されています。児童に関する施策決定への児童の参加と意見反映について懸念する、また、政治活動や社会活動への参加に親の同意を必要とする点について懸念する、あるいは子どものプライバシー権について十分ではないなど、数々の勧告が出されています。
 このビジョンも、先ほど来--実際的には施策化になっていくんですけれども、その施策化に当たり、本来当事者である児童の参加や市民参加を試みてはいかがでしょうか。

○松田参事 教育ビジョンの策定に先立ちまして、子どもや都民などを対象に、東京の教育に関する都民意識調査を実施いたしました。また、中間まとめ発表後、都民からの意見募集などを実施し、教育ビジョン策定の参考にしてまいりました。
 今後、教育ビジョンの具体化に向けましても、これまで聴取した意見を引き続き参考にしていきたいと考えております。さらに、個々の提言のそれぞれにつきまして施策化を検討するに際しましては、必要に応じ、さまざまな手法によりまして都民の意見を募り、反映させる工夫を図ってまいります。

○山口委員 教育の場でも社会の変化をとらえ切れず、日の丸・君が代の通知に見られるような管理に走りがちな、徳育といった精神論的な考え方が息を吹き返しつつあります。しかし、こういった考え方は表層的になりがちであり、子どもたちの心の深層を解明できないものではないでしょうか。子どもといえども別の人格を持った存在であること、さらに、社会でともに生きるパートナーとしてとらえることが欠けているのではないでしょうか。
 子どもの自立を支えるビジョンであるならば、自己肯定感をはぐくむ性教育などへの提言もされるべきであり、何より、当事者である子どもの意見反映の機会が確保されなければならないということを申し上げて、質問を終わります。

○東委員長 ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕

○東委員長 それでは、速記の再開をお願いいたします。

○福士委員 教育ビジョンの使い方についてはさんざんご質問が出ておりましたので、一点だけ伺っておきます。
 これを拝見しまして、私、すごくわからないことだらけでした。一々聞いていたら何時間あっても足りない感じですね。一つには、中間まとめのときにも申し上げましたけれども、原因と現状の問題点の解析というのが結びつかないんですよね、どう読んでも。内容が理解できないものですから、どう読んでいけばいいのか理解するために質問をいたします。
 まず、このいい方なんですけれども、読んでいると、するするするっと読み飛ばしてしまういい方なんですけれども、現実問題としてそうかなというところが幾らでもあるんですよ。これは質問じゃないんですけれども、例えば二ページの「振り返って見ると」のところなんかでも、「自由や権利を重視するあまり、責任や義務を軽視する傾向が見られた。」と。そうねというふうに読んでいたんですけれども、自由や権利がどこまできちんと重視されて教育されてきたのかなと考えたときに、個人の自由とか権利をきちんと重視して主張していけば、だれか他人の権利と自由を阻害するというような事態にどこかでぶつかっているはずなんですね。そういうときに、自分の自己主張をどこまでいって、どこでおさめるかということがきちんと訓練されていれば、責任も義務もきちんとついてきて、そしてこんなぎすぎすした社会じゃなくて、きちんと穏やかな社会になっていくんだろうというふうに思いますので、これ一つとっても、本当に現実を考えて書かれているのかなというふうに思うんですよね。
 ほかにも、「戦後教育の反省に立ち、」と、すらっと書いてありますけれども、これは中教審の答申がくるくる変わるので問題なのか、それともさまざまなほかの要因があるのか、その辺のところも私は理解できませんでした。
 そんな中で、小一プロブレムについても私はちょっとよくできなくて、これはいいとか悪いとかじゃなくて、本当に単純な例なので、挙げて質問をさせていただくんですが、資料23で、今や幼稚園に六五・六%、保育園に三三・一%、合計で九八・七%の子どもたちが就学前に集団生活を体験していることが挙げられています。しかも、今や、保育園に関していえば、ゼロ歳児からだんだん、全部とはいいませんが、そういう例も増加していますね。こういうふうに集団生活が進んできたにもかかわらず、小一プロブレム、まあ、この言葉もちょっと問題だと思いますけれども、小一プロブレムが長引く結果をどう見るのかというところはあると思うんですね。
 問題点がどこにあるのか、原因を明らかにしないで、幼児教育から小学校教育への連続性を重視といわれても、対応がとれないんじゃないのかなというふうに思うんですよ。こういう問題点については、きちんとした解析と冷静な判断と、そこについての問題点が明らかにされて初めて、だからここのところをこういうふうに改善しましょうと。気分的な言葉の連続でこういうものをつくっていったら、どこかで間違えることがいっぱい出てくると思うんですね。行政の文章というのは、私、そういうところが結構あるんじゃないのかなと思って。でも、この会は、有識者との懇談会と幹事会と合同開催の会と交互にやってこられて、素案も皆さんで決定されているんだから、きっと立派なものなんだろうな、私の頭が悪いのかなというふうに思いますので、そこの辺のありようだけ教えてください。

○松田参事 東京都教育ビジョンにおきましては、小一プロブレムなどの子どもたちの教育をめぐる課題を明らかにいたしまして、その解決に向けた今後の取り組みの方向を示しております。
 小一プロブレムと呼ばれる状況が起こっておりますのは、家庭や地域の教育力の低下、幼稚園、保育所における指導、保育内容上の課題など、さまざまな要因によるものと考えております。幼稚園、保育所と小学校の三者の連携強化等によります、就学前から小学校への連続性を重視した教育を実施することにつきましては、対応すべき施策の一つであると考えているものでございます。

○福士委員 こういうご答弁になっちゃうんですよね。そうすると、これだけ集団教育をしてきたけれども、集団教育になじみのない子がまだ多いよという話なのか、集団教育をしてきたけれども、家庭の中では子どもをきちんと、何ていうんですかね、小さいときは本当に愛情いっぱいで抱き締める、そういうところが薄らいでいるから問題が起きてきて、子どもたちが精神的にきちんとなかなか自立しにくいのか、そこら辺はきちんとやらないと、私、だめだろうというふうに思うんですね。お言葉としては、ああ、ああ、ああと聞き逃してしまいますよ。だけど、一つ一つ、ほかのところもそうですけれども、現実の対応というのは、どこに問題があるかということをきちんと把握して、そして先ほど来何回もいっているように、やらなければだめなんじゃないかというふうに思いました。
 今の教育庁に必要なのは、私は、冷静な判断と論理的な考え方、かつ正確的な判断だというふうに思っています。ここのところずっといろんな問題を聞いていても、何かわからないことが随分多いし、自分は自分のいい方をずっと推し進めていくだけで、話し合いになっていかないところがすごく問題かなというふうに思うんですね。最初の読みを間違えれば、次の判断と今後の対応も間違える可能性があると思いますので、いろんな状況についても余り恣意的な使い方をしないでいただきたいということだけ申し上げて、私の質問は終わります。

○野上委員 今までいろいろな資料を見させていただくと、大体、学校、家庭、地域社会という三分野のくくりで語られることが多かった教育行政に、この教育ビジョンが、一番最初に家庭、そして学校、地域、それから社会という四つのくくりになっているのは、さすが教育庁だなというふうに私は思いました。感心いたしました。
 それから、今回、東京都の教育が目指す十二の方向と三十三の提言のうちの何点かにわたって質問をさせていただきます。
 まず最初は、九ページにあります提言5です。小学校への円滑な移行を可能とする就学前教育を目指すということです。
 今、小学校就学前の子どもたちの状況を見ていますと、未就学の子はほとんどいないというのか、一・三%ということで、九八・七%の子が幼稚園か保育所に通っているという状況です。今、幼保一元化の動きもありますけれども、国の方では縦割り行政で、幼稚園は文科省で、保育所は厚労省の管轄。また、幼稚園は幼稚園教諭、それから保育所は保育士の資格。それから、都でも、幼稚園は教育庁、保育園は福祉局というふうに全然所管が違ったりして、なかなか難しい面があると思います。
 私も今まで小学校一年生を三回だけ担任させていただきました。それで、よく保育所から来たお母さんは、ずっと遊んでばっかりで、きちっとした、人の話を聞くとかそういうことをやっていないから大丈夫ですかとすごく心配されるんですけれども、結構それも大体一カ月もたてば、幼稚園から来た子も保育所から来た子も全然関係なくきちんとしつけられるというのかしら、それがもう当たり前で、しかも私なんか、四十五人学級でやっていましたので、大丈夫なんです。やっていけたわけなんです。
 ただ、小学校に入学すると、いきなり四十五分授業が始まりますので、四十分なり四十五分授業になりますので、今まで人の話をじっと聞くことが全くなかった子どもが四十五分間座り続けているということは、苦痛以外の何物でもないと思うんですね。よほど教育現場が工夫をして、楽しく、子どもたちの興味、関心を引き出すように、集中力を出すような、本当に魅力ある授業をしていけば、結構子どもたちは四十分か四十五分集中してやっていくものなんですね。
 そういうこともあるんですけれども、就学前の子どもたちに対して、今、心の教育はどのように行われているんでしょうか。

○近藤指導部長 幼稚園と保育所は、それぞれ教育機関や福祉施設という位置づけのもとで、公立、私立の設置者がそれぞれの教育、保育の実践の中で、遊びなどを通しまして、人の話を聞くとか、自分のことは自分でする、こうした基本的な生活習慣を身につけさせる取り組みを通して心の教育を推進してございます。

○野上委員 教育ビジョンの中では、幼稚園と保育所と小学校が連携し、小学校への円滑な移行を提言していらっしゃいます。今、現実を見ますと、幼稚園からは幼稚園の指導要録というのが小学校に送られてきて、それで子どもたちが幼稚園でどういうことをやっていたかということを参考にすることが多いんですが、保育所との連携というのは余り私の経験からはなかったような気がするんです。
 就学前健診のときに、最低限しつけなくちゃいけないことは、自分の名前が読めて書ける、それから、人の話をしっかり目を見て聞ける子、それぐらい最低限しつけておいてくださいというような話でやっていたんですけれども、この提言は大変大事なものであります。これはぜひ具体化していっていただきたいと思うんですけれども、この連携に向けて今後どのように取り組んでいくのでしょうか。

○近藤指導部長 幼児期からの心の教育や連続性を重視した教育を推進するためには、幼稚園、保育所、小学校がそれぞれの保育や教育の内容を正しく理解し合いまして、連携を強化していくことが極めて重要でございます。こうしたことから、都教育委員会では、これまでも、幼稚園、保育所の職員との合同研修など、幼保が連携した取り組みを行ってきているところでございますが、今後とも、関係者がこれまで以上に連携を深め、幼児期における心の教育の具体化や、幼稚園、保育所、小学校の連続性を重視した教育の具体化を図るため、その仕組みづくりに向けた具体的な検討を進め、早期に施策化を図ってまいります。

○野上委員 ぜひこの連携を深めた体制づくりをやっていっていただきたいと思います。
 次に、一一ページにあります提言8、習熟度別少人数指導についてお伺いしたいと思います。
 よくシチゴサンという言葉がありまして、小学校で七割、中学校で五割、高校で三割の児童生徒しか学習内容を理解していないという現実がよくいわれております。学級の担任からすると、例えば四十人の子どもを見ているのと二十人の子どもを見ているのでは、テストの採点なんかでも半分の時間で済んで、仕事の量が違うので、教師としては非常に楽にはなります。何としても三十人学級を実現していってほしいというふうに声高に叫んでいる人たちもいますけれども、例えば三十人学級を実施した場合、三十一人になると、十五人と十六人というすごい小集団になってしまうんですね。サッカーの試合もできない、ドッジボールの試合もできないというふうに、何か活気に乏しいクラスになってしまう。
 今、現実に小学校一年生が一けたしか入ってこない学校がございます。私もこの前、運動会を見せていただきました。非常に少ない人数で、一年、二年と合同にして十数名でやっておりましたけれども、一生懸命先生方も頑張っているんですけれども、昔の運動会のイメージからするとどうしても迫力に欠けるなと。確かにそうですよね。八十人ぐらいでやっていた運動会に比べて、十二人でやるというのは、結構つらいものがあるなというふうなことも感じました。ある程度の一定の集団で訓練されることが大事なのではないかと思います。(「大事」と呼ぶ者あり)大事ですよね。
 もう一つは、国立研究所が少人数の指導を--いろいろな授業のタイプと、どういう授業をすればどういう効果があったかという調査結果が読売とか朝日とかに出ておりました。その中で、小学校四年生の算数の授業をしたときに、新しい単元の授業を始める前に、習熟度を診断してグループ分けにして授業をするというタイプが最も効果的だったとか、あるいはクラス全員で授業を受けた後、内容をよく理解した子、それから理解できていない子、普通の子みたいな感じでタイプ別に分けて指導すると効果が高かったというようなことが挙げられておりました。そういった意味では、私は、習熟度別少人数指導は大変効果的なのではないかと考えております。
 現在、東京都では少人数指導に力を入れていると伺っておりますが、実施状況はどうなっているんでしょうか。また、習熟度別少人数指導によってどのような効果が見られたんでしょうか。

○近藤指導部長 まず、平成十六年度における定数加配による少人数指導などの実施校数についてでございますが、小学校では千二百六校で九〇%、中学校では五百五十九校で八六%でございます。
 次に、その効果についてでございますが、東京都が指定いたしました少人数学習集団による指導法の研究推進校の調査によりますと、児童生徒が学習について理解を深め、意欲を高めるなどの効果が見られたという報告がございます。また、教員同士が共同体制を組むことにより組織的な指導の対応ができ、学習面だけではなく、不登校傾向の児童生徒の改善など、生活面においても効果が見られたと報告がございます。
 なお、先生お話しになられました、本年六月四日に発表されました、国立教育政策研究所の、指導方法の工夫改善による教育効果に関する比較調査においても、習熟度別少人数指導が学力の形成に最も有効であるとの報告がなされているところでございます。

○野上委員 特に私は、教員同士が共同体制を組むということがすごく大事だと思うんです。下手な授業をする人が少人数でやるよりも、先生と組んで、いろいろ組んで共同してやっていく方がかなり授業面でも改善されると思います。人に見られる授業というのが多ければ多いほど、指導技術も向上すると思いますので、ぜひこういった習熟度別少人数指導の充実を図っていっていただきたいと思っております。
 次に、一四ページの提言14の努力や成果を重視する制度の構築というところについて質問させていただきます。
 提言13の初めに、「教育の成否は、学校教育の直接の担い手である教員の資質・能力に負うところが極めて大きい。」と書いてあります。結構教育の相談が多いんですね。その中で保護者の方々の訴えを丁寧に聞く先生と、もう全然聞いてくれないという先生との評価が分かれるものですから、やはり教師の資質とか能力とか、これがすごく大事ではないかなというふうに考えております。
 学力の問題を初め、この教育ビジョンで触れられている多くの問題を解決していく上で、教員の資質、能力を向上させていくことが必要であり、そのためには、意欲的に教育活動に取り組んでいる教員をきちんと処遇する、めり張りのきいた給与制度とし、教員のモラールアップを図っていくことが必要ではないかと思っております。
 都としては、めり張りのある給与制度の実施に向け、どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○井出人事企画担当部長 都教育委員会は、昨年、庁内に教員の給与制度等検討委員会を設置いたしまして、現行の給与制度が年功や経験年数と結びついた体系となっていること、義務教育等教員特別手当など教員固有の手当が、勤務実績にかかわらず一律に支給されていることなど、課題の整理を行ったところでございます。
 今後は、平成十八年度実施ともいわれております国の公務員制度改革の動向を見据えつつ、職責、能力、業績を適切に反映できる教員の給与制度とするために、近々、第二次の教員の給与制度検討委員会を設置いたしまして検討を進めてまいります。

○野上委員 頑張っている先生が本当に評価してもらえるような給与体系にしていただいて、教師全体の底上げになるような、資質、能力の向上が図れるような、そういった給与体系を考えていただければ、またやる気が一段と出てくるのではないかなというふうに思っております。
 それから、一七ページの提言20、子どもたちが犯罪に巻き込まれないための取り組みということで、今、子どもたちも携帯を持っている子が多くて、携帯サイトによる犯罪に巻き込まれたり、あるいは今相談で多いのは、多額の料金の請求が来て、保護者の方も子どもたちもあたふたとして困っているという、そういったご相談が結構多いんです。何かサイトをどんどん開いていってしまって、すごい多額な請求が来て、それが二、三十万とかだったら、ううんとか思うんだけれども、一万ぐらいだったら親はもう払っちゃうというんですね。面倒くさいから払っちゃうとかいっておりましたので、そういった犯罪に巻き込まれないための教育というのが大事ではないかと思います。
 有害情報から子どもたちを守るために、情報リテラシー教育の充実が大事だと思うんですけれども、このことについてどういうふうに考えていらっしゃいますでしょうか。

○近藤指導部長 児童生徒が、はんらんする情報の中から必要な情報を主体的に選択、活用できる能力を身につけることは極めて重要なことでございます。このため、都教育委員会は、平成十六年度末を目途に、インターネットを適切に活用するための指導資料を作成し、配布いたします。
 なお、この指導資料には、児童生徒が情報の信頼性や信憑性を意識して情報の収集、発信を行うための指導事例などを掲載いたしまして、各学校を指導、支援してまいります。

○野上委員 有害情報の防止ということで、平成十四年の第三回定例会で質問させていただきました。この中で、学校では、インターネットの有害情報をフィルタリングをかけて子どもたちを守っているということをおっしゃっておりました。でも、今それぞれの家庭にPCがある時代に入ってきて、子どもたちが家庭の中で、家庭にはフィルタリングをかけておりませんので、自由にそういった有害情報に接しているわけなんですけれども、そのときにやはり、さまざまな情報を自分が開いても、そういったものに毒されないような、自分自身のしっかりとした判断能力を持った子どもたちに育てていく意味でも、指導資料をしっかりと活用して現場の中で生かしていっていただきたいと思っております。
 それから、二〇ページの提言26、公私が協調して担う東京都の公教育ということで、今、公私連絡協議会で、公立、私立ということで協議をして、合意をして就学計画を策定していらっしゃるということですけれども、これはどのような考え方で策定されているのか、お伺いいたしたいと思います。

○山際学務部長 就学計画、これは都内の公立中学校卒業予定者の高校への受け入れ計画というものでございますが、これについては、主に計画進学率と公私分担比率から成るものでございます。このうち計画進学率につきましては、学ぶ意欲と熱意のある生徒を一人でも多く受け入れるために、公立中学校卒業予定者のうち、都内全日制高校進学希望者の率を上回る率として設定をしているところでございます。また、公私分担比率につきましては、過去の実績を踏まえ、公立中学校卒業生の受け入れについて公私が責任を分担していくという観点から決定をしているところでございます。
 こうした考え方に基づきまして、平成十一年度の公私連絡協議会におきまして、平成十二年度から十六年度までの五カ年間の就学計画、これは中期計画と称しているところでございますが、この計画におきまして、公立中学校卒業予定者の計画進学率を九六%、公私分担比率を都立五九・六対私立四〇・四としているところでございます。

○野上委員 では、十七年度以降の就学計画はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

○山際学務部長 少子高齢化が進展する中で、次代を担う人間を育成していく観点から、これまで以上に公私の緊密な連携によりましてさまざまな教育課題に適切に対応し、その解決に向けた取り組みを協調して行っていくことが求められている、このように考えております。このため、東京都の高等学校就学対策につきましては、一人でも多くの学ぶ意欲と熱意のある生徒を高等学校に受け入れ、都民の期待にこたえていくという観点から就学計画を策定していく必要がある、このように考えております。
 こうした認識に基づきまして、平成十七年度以降の就学計画の策定につきましては、現行の五カ年の中期計画の基本的な考え方を踏襲する方向で、現在、公私連絡協議会で協議を行っているところでございます。

○野上委員 公私の分担比率が私立で四〇・四、しかし、実績進学率が一〇〇%にはなっていなくて、八六・六八%ということなんですけれども、私立の先生方にお話をお聞きしたんですけれども、やっぱり私立も生き残りをかけて努力をしていると。一人でも多くの優秀な生徒が欲しい。だけれども、学校の経営方針もあり、ある程度の学力のある子をとりたいということなんですね。それで、入れる枠をすべて入れてもいいんだけれども、定数割れをしても目標とする学力を有した子をとりたいと、ある私学の先生はおっしゃっていました。あと、また別の私学の先生、経営者の方は、要するに入学選択に関してはある程度余分に合格者を出しているんだけれども、大体子どもたちは併用入試ですよね、A校、B校、C校受験をしているので、いい方に子どもたちが流れていってしまう。ふたをあけたら定数割れになったりすることもあるというようなこともおっしゃっていました。要するに、私学において一〇〇%実績進学率にしていただければ本当はいいんでしょうけれども、なかなかそういう個々の学校の状況もあり、難しいのかなというふうに思っております。
 十七年度以降の就学計画を達成していくためには、例えば公私合同で学校説明会を開催することや、私学の入試情報を公立中学へ積極的に提供していくことなど、公私間で連携を強化して、実績進学率の向上に向けた取り組みを行っていくべきだと考えておりますけれども、いかがでしょうか。

○山際学務部長 就学計画は、都民に対しまして、生徒の受け入れの基本的な考え方あるいは公私それぞれの受け入れ数を示すものでございまして、その達成につきましては、公私、そしてそれぞれの学校が最大限の努力をして受け入れていく必要があるというふうに考えております。
 確かに、現在、計画進学率と実績進学率に乖離があるわけでございますが、これについては、各私立高校の積極的な対応を求めるとともに、公私間の連携を強化いたしまして、就学計画達成のため、より一層の公私による工夫あるいは努力が必要であるというふうに考えております。このため、公私協調による就学計画を達成していく観点から、今後、公私連絡協議会におきまして、ご指摘のような実績進学率向上に向けた具体的な取り組みについても実施する方向で検討、協議をしてまいります。

○野上委員 最後に、教育ビジョンの目指す人間像ということで、お互いの人格を尊重し、思いやりと規範意識のある人間、これは大変すばらしいことだと思っております。少年犯罪とかも多い昨今ですが、規範意識のある人間に育てていくこと、これは最低限大事な要素ではないかと思っております。
 教育ビジョンの目指す人間像は、今の、現代社会が望んでいる子ども像ではないかというふうに考えます。子どもが健全に育つ社会こそ、未来に希望の持てる社会であると思い、ぜひこの教育ビジョンの推進を図っていただければと思います。
 以上でございます。

○東委員長 ほかにありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○東委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○東委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時二分散会

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