経済・港湾委員会速記録第二十号

令和元年十二月十二日(木曜日)
第八委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長両角みのる君
副委員長山崎 一輝君
副委員長中山 信行君
理事森澤 恭子君
理事尾崎あや子君
理事小山くにひこ君
白戸 太朗君
栗下 善行君
高橋 信博君
まつば多美子君
藤井  一君
おじま紘平君
三宅 茂樹君
あぜ上三和子君

欠席委員 なし

出席説明員
産業労働局局長村松 明典君
次長十河 慎一君
総務部長坂本 雅彦君
産業企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長成長戦略担当部長兼務武田 康弘君
商工部長土村 武史君
金融部長加藤  仁君
金融支援担当部長井上  卓君
観光部長松本 明子君
観光振興担当部長鈴木 誠司君
農林水産部長上林山 隆君
安全安心・地産地消推進担当部長龍野  功君
雇用就業部長篠原 敏幸君
事業推進担当部長村西 紀章君
中央卸売市場市場長黒沼  靖君
管理部長豊洲市場活性化担当部長兼務福崎 宏志君
事業部長長嶺 浩子君
企画担当部長猪倉 雅生君
渉外調整担当部長豊洲にぎわい担当部長兼務石井 浩二君
豊洲市場総合調整担当部長豊洲市場活性化担当部長兼務西坂 啓之君
豊洲市場連絡調整担当部長堀   真君
市場政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務松田 健次君
財政調整担当部長猪口 太一君
移転支援担当部長赤木 宏行君
施設担当部長渡辺 正信君
環境改善担当部長佐々木宏章君
港湾局局長古谷ひろみ君
技監原   浩君
総務部長梅村 拓洋君
企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長調整担当部長兼務深井  稔君
港湾経営部長相田 佳子君
港湾振興担当部長戸谷 泰之君
臨海開発部長中村 昌明君
開発調整担当部長オリンピック・パラリンピック施設整備担当部長兼務鈴木  理君
臨海副都心まちづくり推進担当部長矢部 信栄君
臨海副都心開発調整担当部長高角 和道君
港湾整備部長山岡 達也君
計画調整担当部長和田 匡央君
離島港湾部長片寄 光彦君
島しょ・小笠原空港整備担当部長松本 達也君

本日の会議に付した事件
意見書について
港湾局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百八十四号議案 令和元年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、歳出、繰越明許費 港湾局所管分
・第二百三十号議案 東京都立若洲海浜公園の指定管理者の指定について
中央卸売市場関係
付託議案の審査(質疑)
・第二百十六号議案 東京都中央卸売市場条例の一部を改正する条例
・第二百十七号議案 東京都地方卸売市場条例の一部を改正する条例
報告事項(質疑)
・千客万来施設事業等について
陳情の審査
(1)一第四七号 東京都中央卸売市場条例の改正に関する陳情
産業労働局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百八十四号議案 令和元年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、歳出、債務負担行為 産業労働局所管分
・第二百十五号議案 都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例

○両角委員長 ただいまから経済・港湾委員会を開会いたします。
 初めに、意見書について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書一件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件につきましては、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○両角委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○両角委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、港湾局、中央卸売市場及び産業労働局関係の付託議案の審査並びに中央卸売市場関係の報告事項に対する質疑及び陳情の審査を行います。
 これより港湾局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百八十四号議案、令和元年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、歳出、繰越明許費、港湾局所管分及び第二百三十号議案を一括して議題といたします。
 本案については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、要求委員と理事者との調整の結果、取り下げられておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○中山委員 私からは、今回ご提案のありました若洲海浜公園の指定管理について質問させていただきたいと思います。
 同公園につきましては、東京二〇二〇大会のトライアスロン、バイクの公式練習会場等に利用されることになっておりまして、都と連携した柔軟かつ確実な施設運営が求められているところでございます。現在の指定管理者が引き続き指定管理者候補となっております。
 そこでまず、現在の指定管理者が行っている同公園の管理運営状況について、お伺いをいたします。

○中村臨海開発部長 若洲海浜公園の主要施設のゴルフリンクスについては、グリーンの改良やセルフプレー日の増設などの取り組みにより、利用者数が増加し、一年を通じ、非常に高い稼働率になっております。
 指定管理者が実施した利用者満足度アンケートにおける総合満足度は高く、ゴルフ場予約サイトにおける口コミ総合評価においても高い評価となっております。
 また、同公園の海釣り施設やサイクリングロードについても、さまざまなアウトドアレジャーを楽しめる空間として、ツイッター等を活用した積極的なPRにより、利用者数は年々増加しているところでございます。

○中山委員 現在の指定管理者が、これまで良好な施設管理運営を行ってきたことが今のご答弁でわかりました。アンケートでも満足度は高い、口コミ総合評価でも高い評価を得ている、また、利用者が年々増加しているということでございまして、引き続き同公園の管理運営を行うに当たりましては、さらにサービス向上を心がけていただいて、よりよい管理運営を行っていくことが必要と考えております。
 そこで、次期の指定管理におけます施設運営の具体的な内容について、確認をしておきたいと思います。
 現在のゴルフリンクスの予約方法は主に電話での受け付けとなっておりますけれども、仕事をされている方々にとっては、時間を気にせずに予約できるように改善してもらえると、より便利になっていくと思います。
 私自身は全くゴルフをやったことはなくて、よく企業の経営者の方からやりませんかといわれるんですけれども、やりませんというと話が終わっちゃうので、ちょっとその時間は都合がつきませんという--ここだけの話ですけれどもね。(笑声)
 実際には、事前に申し込んで、後から抽せんするというようなことになれば、時間を気にせずに申し込みができるようになると思います。次期の指定管理におきましては、ウエブ予約を基本とするべきと考えますけれども、具体的にどのように対応していくのか、お伺いいたします。

○中村臨海開発部長 ゴルフリンクスの予約受け付けについては、従前は電話による申し込みのみでしたが、昨年七月から、電話の予約が埋まらなかった場合やキャンセルがあった場合の補充予約について、ウエブ予約を導入したところでございます。
 この取り組みの結果、ことしに入ってから、ウエブ予約が電話予約の受け付け件数を上回っております。こうした利用者のニーズを踏まえ、次期の指定管理においては、プレー後のパーティーなどの相談が必要なコンペ予約を除いて、ウエブ予約を全面的に導入いたします。
 あわせて、パソコンやスマートフォンにふなれな利用者にも配慮し、引き続き、電話での予約についても受け付けてまいります。

○中山委員 次期からはウエブ予約を全面的に導入するということで、喜ばしいことだと思います。また、そうした操作が苦手な方向けに電話での予約も受け付けていくということでございまして、それも喜ばしいと思います。今回は除外されておりますけれども、コンペ予約についても、いろいろ課題があるかと思いますが、ご検討いただいて、ぜひ早期に対応していただくようにお願いを申し上げておきます。ウエブ予約が全面的に導入されることによりまして、利用者の利便性は非常に高くなるのでしっかり進めていただきたいと思います。
 ゴルフというと、キャディーつきで一日かけて回るイメージが私もございましたけれども、現在は、もっと気軽にプレーしたいとか、あるいはランチは食べずに半日でプレーを終えて、そういう楽しみ方をしたいというお客さんも、利用者もふえているというふうに聞いております。ゴルフの楽しみ方が多様化しております。
 そういう意味では、接待でのゴルフということではなくて、例えば、年配のご夫妻が、お仕事を終えた後に、退職後、お二人で楽しむとか、後から始めた奥さんの方が上手になっちゃうということもあるようですけれども、そうした楽しみ方など、利用者のニーズの多様化に対しても的確に対応していくべきと考えます。
 次期の指定管理におきます取り組みについて、その点、お伺いしたいと思います。

○中村臨海開発部長 利用者のニーズの多様化に対しては、利用者の声や他のゴルフ場の動きなどを十分把握した上で、必要とされるサービスを的確に提供していくことが重要であると考えております。
 指定管理者が実施した利用者へのアンケート調査において、気軽にゴルフを楽しみたいという声も多いことから、通常の半分のホールを回るナインホールプレーを新たに導入することといたしました。また、セルフプレー枠を拡大するなど、多様なプレースタイルへの要望にも応えてまいります。

○中山委員 利用者のニーズの方を把握して、さまざまな工夫を凝らしながら進めていこうとされていることがわかりました。特に九ホールプレーの導入は、これからゴルフをやってみたいと思う方にも利用しやすいサービスでありまして、新たな利用者の裾野拡大につながるものと考えております。
 ゴルフに行く皆さんはメンバーを集めてから予約をすることになります。そのため、グループ全員の都合のよい日取りを決めようとすると、どうしても幅広に候補日を押さえてしまう、そういう傾向があるかと思います。
 現在のゴルフリンクスの予約につきましては、ゴルフコンペはプレー希望月の二カ月前の一日から、一般予約はプレー希望日の一カ月前の同日からとお伺いしております。
 人気のある施設だけに、早く予約したい方も大勢いると思われますため、受け付け開始時間も含め、今後も利用者の声に耳を傾けながら、さらなるサービスの向上に努めていただきたいと思います。
 コンペにつきましては、どうしても二カ月前ですとだめだったという場合に、次の会場を探すというのは相当大変みたいで、これはいろいろ工夫する必要があるでしょうけれども、抽せんということになってもいいですから、できれば半年前とかそういったところで予約できるような、そして結果がわかって、次の会場どりもできるようなことに努めていただければ、よりいいのではないかと思います。
 そうした要望をさせていただいて、私の質問を終えたいと思います。
 以上でございます。

○両角委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○両角委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で港湾局関係を終わります。

○両角委員長 これより中央卸売市場関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査及び陳情の審査を行います。
 第二百十六号議案、第二百十七号議案及び陳情一第四七号を一括して議題といたします。
 陳情について理事者の説明を求めます。

○長嶺事業部長 私の方からは、お手元の請願・陳情審査説明表に従いましてご説明させていただきます。
 表紙をおめくりいただきまして、請願・陳情件名表をごらんください。陳情一第四七号、東京都中央卸売市場条例の改正に関する陳情でございます。
 資料を一枚おめくりいただきまして、二ページをごらんください。陳情者は、杉並区の水谷和子さん外四百二十七名でございます。
 陳情の要旨でございますが、私たちの暮らしの場、地域経済を守るために、東京都中央卸売市場条例は決して改正せず、現行どおり存続していただきたいというものでございます。
 次に、現在の状況でございますが、東京の卸売市場は、生鮮食料品等を都民に円滑かつ安定的に供給する基幹的なインフラであり、公正な取引の場として重要な役割を果たしております。
 少子高齢化の進行、加工需要の増大、流通の多様化等の外部環境の変化が進む中、引き続きこうした役割を果たしていくためには、集荷、分荷、価格形成、代金決済などの重要な機能を今後とも十分に発揮するとともに、時代の変化に即した新たなニーズに、迅速かつ柔軟に対応していくことが必要です。
 昨年六月の卸売市場法改正においては、卸売市場を取り巻く環境の変化を踏まえ、生鮮食料品等の合理化と公正な取引環境の確保を促進することにより、生産者の所得向上と消費者ニーズへの的確な対応を図ることとなりました。
 このため、東京の卸売市場の現状や卸売市場法の改正の趣旨を踏まえまして、取引の活性化を図るため基本的に規制は緩和し、事前申請の見直し等により業務の効率化を図る一方、取引の実績報告を義務づけ、開設者が取引の実態を把握して適切に指導監督するなど、公正な取引環境や食の安全・安心を守るための規制は維持することとし、本条例案を上程いたしました。
 本件に関する説明は以上でございます。よろしくご審査のほどお願い申し上げます。

○両角委員長 説明は終わりました。
 これより本案及び本件に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○白戸委員 我が党は、さきの代表質問において、食品流通を含めた物流全体が大きく変化している状況を踏まえまして、時代の変化に即した新しい市場をつくり上げていくことが重要だという視点に立った質疑を行ったところでもあります。
 卸売市場が果たしてきたこの公共的な役割とその重要性を踏まえれば、市場の果たしてきた機能をしっかりと確保していくことが重要です。
 一方で、市場を取り巻く環境が大きく変化しているのも事実であり、これまでの延長線で市場運営を続けていたのでは、先行きも見通せません。だからこそ、中央卸売市場は、次のステージを見据えた取り組みを進めていく必要があると考えており、さきの代表質問も、こうした未来志向に立ったものでありました。
 本日のこの質疑におきましても、同様の観点から論議を進めさせていただきます。
 まず初めに、この市場の未来像について確認させていただきます。
 改めて申し上げるまでもなく、今回の中央卸売市場条例と地方卸売市場条例の改正案は、卸売市場法の改正を受けて提案されたものです。そもそも、国による法改正は、流通の多様化や加工品の需要の増大などを背景として、消費者ニーズへの的確な対応を図るために行われたと認識しております。
 卸売市場を取り巻く状況の変化のスピードは極めて速く、東京の卸売市場は、こうしたニーズの変化に先んじて対応し、豊かな都民生活を支えるインフラとして、公共的な役割を果たしていかなければなりません。
 条例改正の審議に当たり、まず、東京の中央卸売市場の目指すべき姿について認識を伺います。

○長嶺事業部長 東京の中央卸売市場は、大消費地に立地し、圧倒的な物量と多種多様な品ぞろえの生鮮食料品等を円滑かつ安定的に供給する基幹的なインフラとしての役割を果たしております。また、こうした市場の機能は、さまざまな業態、規模の多くの市場関係者により発揮されております。
 一方、少子高齢化の進展等を背景に、物流や商取引の多様化が進むなど、卸売市場を取り巻く環境の変化に伴い、これまでの機能に加え、加工需要への対応、物流の効率化、品質、衛生管理の向上など、新たなニーズへの対応が求められており、東京の卸売市場も例外ではありません。
 東京の卸売市場が今後とも基幹的なインフラとしての役割を果たしていくためには、こうした環境の変化に的確に対応していくことが重要であり、将来にわたり産地や実需者に支持される市場を実現し、都民の多様で豊かな消費生活を支えてまいります。

○白戸委員 今のご答弁にあったとおり、国内最大の消費地である東京において、多くの市場関係者による豊富な品ぞろえでこれを支え、食文化の礎となっているのが東京の中央卸売市場の特徴であります。
 多種多様な品物をそろえるためには、産地や実需者といった卸売市場の利用者に必要とされる市場でなければならず、そうでなければ、都民の食を支えるという重要な役割は果たせません。
 今回の条例改正は、こうした東京の市場の役割を踏まえて、産地を初めとした取引関係者の期待に応える制度改正であることが必要と考えますが、改めまして、この条例改正の基本的な考え方について、都の考え方を、都の見解を伺います。

○長嶺事業部長 今般の卸売市場法改正においては、卸売市場を取り巻く環境の変化を踏まえ、生鮮食料品等流通の合理化と、公正な取引環境の確保を促進することにより、消費者ニーズ等への的確な対応を図ることとしております。
 今回の条例改正は、こうした法改正の趣旨を踏まえるとともに、卸売市場を取り巻く環境が変化する中、東京の卸売市場がこれまで果たしてきた大消費地における豊かな消費生活を支える役割を今後とも着実に果たしていく観点から行うものであります。
 このため、多くの市場業者、産地や実需者がより活発に取引を行えるよう、これまでの規制は緩和することにより、集荷、分荷、価格形成、代金決済などの機能を確保しつつ、時代の変化に伴う新たなニーズに的確に対応してまいります。また、卸売市場の公共的役割を引き続き果たしていくため、公正な取引環境や食の安全・安心を確保するための規定を設けております。
 これらにより、産地や実需者の多様なニーズに的確に対応できる環境を整え、市場の活性化を図ってまいります。

○白戸委員 多様なニーズに的確に対応し、活性化を図るというご答弁でした。
 食品流通においては、産地と消費者を結ぶ中間点に位置するのが卸売市場であり、その双方から必要とされるために、それぞれのニーズに応えていくことが大切になる。これは当然のことであります。
 ただ、変化の激しいこの現代においては、物流や商取引、食に対する消費者ニーズは、これからもますます速いスピードで変化していくものと思われます。こうした変化の速さを勘案すると、迅速かつ柔軟に取引できる環境が重要だと考えます。
 そこで、今回のこの条例改正における規制緩和は、どのような効果が期待できると考えられているのか、第三者販売、そして商物分離、そして仲卸の直取引、具体的なこのイメージが都民にわかるようにお答えいただきたいと思います。

○長嶺事業部長 第三者販売などにつきましては、現行制度におきまして例外的な取引として認められているものもございますが、事前に手続が必要であるなど、新たなニーズに機動的に対応しづらい状況にございます。規制を緩和することにより、より柔軟かつ迅速にニーズに対応することが可能となり、取引の活性化に資すると認識をしております。
 それぞれの取引の具体的なイメージとしては、第三者販売の自由化により、例えば加工業者や輸出向けのニーズに柔軟に対応できるようになり、また、商物分離取引により、市場の集荷力や決済機能は活用しつつ、物流コストの低減やリードタイムの短縮を図ることが可能となります。
 さらに、仲卸業者の直荷引きについては、例えば場内の卸売業者では手に入らない地場商材を調達するなど、品ぞろえの充実による販売力の強化につながると考えられます。

○白戸委員 例示を交えて、わかりやすくお答えいただいて、今のご答弁にあったとおり、規制緩和によって、この環境の変化やさまざまなニーズに臨機応変に対応しやすくなるということについては評価できると考えます。
 一方、都では、規制を緩和する以上、これまではどちらかというと例外とされていた取引が、今後は例外でなくなるということにもなります。こうした改正により、これまでの取引環境が一変し、みずからの取引にどんな影響が出るのかと不安に思っていらっしゃる市場関係者の方もいらっしゃると思います。
 さきの代表質問でも申し上げたとおり、市場における取引の主役はあくまでも市場業者であります。彼らの不安を解消し、市場の将来を見据えた取り組みを促していかなければ、制度改正の目的である市場の活性化を実現することは難しいと考えます。
 この観点から幾つか質問をさせていただきたいのですが、代表質問でも質問させていただいたところではありますが、改めて、この市場業者への対応について、都の基本的な姿勢を確認させていただきます。
 制度改正に当たって、規制緩和での取引にどのような影響が出るのか、そして、不安に思う市場関係者に寄り添って丁寧に対応していくべきだと考えますが、見解を伺います。

○長嶺事業部長 今回の条例改正を契機に取引の活性化を図るためには、新たな制度を市場業者に正確に理解をしていただく必要がございます。
 これまで、条例改正準備会議における検討、都内十一市場における説明会、業界団体の会合での説明などに加え、ホームページによる取引参加者の意見募集、各市場での個別の説明などさまざまな機会を設け、市場関係者と意見交換も重ねてまいりました。
 今後も、改正後の制度内容を全市場で周知するほか、卸、仲卸などの業態ごとの説明会を行うとともに、各市場の取引委員会の活用に係る協議を始めるなど、新たな制度への円滑な移行を見据えた準備を丁寧に進めてまいります。

○白戸委員 お聞きするところによると、かなりの数の説明会を重ねてきたというところではありますが、ぜひ業界に向かい合って丁寧に対応いただきたいと思います。
 さて、そのためには、まず業界の意見に耳を傾けていただくという必要があると思いますが、取引ルールの運用に関して、業界からはどのような意見が出ているのか、寄せられているのか、また、それに対してどのように対応していくのか、見解を伺います。

○長嶺事業部長 条例改正の検討過程では、今後の制度運用に関し、都と市場関係者とが具体的に協議することの重要性や取引の可視化などを求める意見がございました。そこで、改正案では、都と市場関係者の協議の場として、各市場の取引委員会などを存置し、具体的な課題などについて協議できる場を確保しております。
 また、今回規制を緩和する第三者販売、商物分離取引、仲卸の直荷引きの取引の状況に関しては、取引委員会において、取引全体に占める割合について情報共有を図ってまいります。こうした情報共有を定期的に行うことで、継続的に取引の状況を確認し、見える化を図ってまいります。
 さらに、個々の市場関係者が利用できる取引に関する相談窓口を新たに設置するなど、きめ細かく対応してまいります。

○白戸委員 業界からは、公平な取引環境をしっかりと確保してほしいといった意見もあったと聞いております。時代の変化に即して、規制の意義が薄れていくものについて見直ししていくというのは至極当然なことだとも考えます。
 一方で、条例で個々の規制がなくなったとしても、中央卸売市場が公正な取引の場であるということが求められるのはいうまでもありません。
 高い公共性が求められる中央卸売市場において、公正な取引環境をどのように確保していくのか、見解を伺います。

○長嶺事業部長 公正な取引環境の確保については、取引の数量や価格を日々公表するほか、卸売業者に対し、取引条件の公表を新たに義務づけ、透明性を高めております。また、都は、検査や実績報告などを通じて、取引の状況を詳細に把握し、必要に応じて指導監督を行うこととしております。取引に関する相談窓口も活用し、疑義のある行為などは調査をいたします。
 さらに、取引委員会において、競り取引の運用や個別の課題について協議するほか、問題となる行為の事例を作成し、市場関係者に周知することなどにより、不公正な行為の明確化やこれらの事前抑止を図り、公正な取引環境を確保してまいります。

○白戸委員 この公正な取引環境の確保というのは、中央卸売市場が高い公共性を発揮するためのベースとなる取り組みだと考えます。卸や仲卸の関係性から、さまざまな懸念が出ているようですが、双方が健全な関係に立って取引していくことが大切だと思います。取引に参加する人たちがそれぞれの立場で生き生きと仕事ができるよう、都としてしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 さて、この条例改正により、多くの取引参加者が安心して、また新しい取引にも迅速に対応しやすい環境をつくることは、新しい時代の市場に向けたスタートラインに立つということにほかなりません。新しい環境を活用し、新たな時代にふさわしい市場としていくためには、取引の現場を担う市場業者の取り組みを引き出さなければいけません。
 活力ある市場の実現に向けて、市場業者による取り組みをどのように促進していくのか、都の見解を伺います。

○赤木移転支援担当部長 活力ある新たな市場を実現するためには、市場取引を担う市場業者が、新たな制度を正確に理解した上で、卸売市場を取り巻く環境の変化に的確に対応した、創意工夫ある取り組みを積極的に実施していく必要がございます。
 このため、都は、条例改正後の制度の運用に当たり、業界に寄り添って丁寧に準備を進めることに加えまして、中央卸売市場活性化支援事業を活用し、国内外の販路拡大、産地からの集荷力の向上、実需者への販売力の強化などを目指す市場業者の先駆的な取り組みに対する支援を、さらなる運用改善を図りつつ、積極的に行ってまいります。

○白戸委員 ぜひしっかりと業界の後押しをしていただきたいと考えます。
 次に、地方卸売市場条例の改正について伺います。
 地方卸売市場は、中央卸売市場と同様に、食品流通において大切な役割を担っていますが、その存在がクローズアップされることは必ずしも多くはありません。しかし、都内においては、特に多摩地域を中心に、生鮮食品や花きの安定供給に欠かせない存在ともなっています。
 そこで、初めに、この地方卸売市場の現状について、確認させてください。

○長嶺事業部長 都内に十二ある地方卸売市場は、全て民間事業者が開設、運営しており、このうち十一市場が多摩地域に位置しております。
 取扱品目ごとの内訳は、青果五市場、水産物三市場、花き四市場となっております。
 市場の規模については、施設規模の小さい市場が多いですが、中央卸売市場に匹敵する取扱量のある市場もあり、それぞれの特性に応じて運営をされております。

○白戸委員 今回の法改正によって、地方卸売市場については必ずしも条例を定める必要がなくなり、他の道府県では、条例そのものを廃止する自治体も多いと聞いております。
 一方、都の場合は、地方卸売市場の重要性に鑑み、条例を残すこととしていますが、東京の地方卸売市場の役割について、改めて認識を伺います。

○長嶺事業部長 東京の地方卸売市場は、都内中央卸売市場とネットワークを形成し、特に多摩地域においては、都民へ生鮮食料品等を円滑かつ安定的に供給する重要な役割を果たしております。
 また、各市場が立地する地域のニーズに対応している市場が多く、それぞれの市場の特性を生かしながら、都民の豊かな消費生活を支えております。

○白戸委員 都において地方市場の果たしている役割を考えれば、この条例の残置は当然の判断だと考えます。
 改正案では、法律で直接規定される地方卸売市場の認定等については規定を廃止はするが、指導や助成については規定を残すとされています。こうした改正内容について、地方市場の開設者にも理解をいただきながら改正への準備を進める必要があると考えます。
 そこで、確認させていただきますが、都は、地方卸売市場に対し、これまでどのような支援を行ってきたのか、また、今回の改正内容について、地方卸売市場の開設者に対してどのような説明を行ってきたのか、取り組みについて伺います。

○長嶺事業部長 地方卸売市場に対しては、先ほど答弁した役割を踏まえまして、業務の適正かつ健全な運営が確保されるよう、巡回指導を行って適宜助言しているほか、施設整備や廃棄物の処理経費などを助成しております。また、卸売市場法の改正の内容や今回の条例改正案については、全市場に赴いて説明をしております。
 開設者からは、条例改正後の都への認定申請に関する支援などについて意見をいただいており、引き続き丁寧に対応してまいります。

○白戸委員 地方市場におきましては、多摩地域を中心とした生鮮品の流通拠点であり、そして、地場産品の受け入れという機能も果たしています。こうした役割の重要性を踏まえて、引き続き、各市場に指導するとともに、その運営を支えていただきたいと思います。
 冒頭に申し上げたとおり、都の中央卸売市場の未来をいかにして切り開いていくのか。このことが、市場にとって本当に重要なことだと考えます。
 市場を取り巻く環境は厳しいですが、生鮮食品の流通の中核である市場が活性化することは、産地や買い出し人、小売業者といった取引関係者にも活力を与えることにもなります。今回の条例改正の目的を達成できるのかどうか、これから都の取り組みが非常に重要であると思います。
 最後に、今回の条例改正を契機とした中央卸売市場のさらなる活性化の実現に向けた市場長の決意を伺います。

○黒沼中央卸売市場長 卸売市場を取り巻く環境の変化は著しく、いわば変革の時代にありまして、中央卸売市場がこれに的確に対応する手だてを講じ、引き続き都民の豊かで魅力ある消費生活を支える基幹的なインフラとしての役割を果たしていくことは、極めて重要でございます。
 今回の条例改正は、時代の変化に伴う多様なニーズに機動的に対応できる取引環境を整えるものでございまして、中央卸売市場を新たなステージに引き上げるための、いわばスタート台でございます。
 本改正を契機といたしまして、より活気にあふれた市場を実現するために、ICTを活用した業務改革や輸出による販路の拡大など、意欲ある市場関係者の先駆的な取り組みを積極的に後押しをしてまいります。
 さらに、開設者としまして、取引の実態を把握し、適正に指導監督を行うとともに、取引委員会を活用しました情報共有や課題への対応など、不安を抱く市場業者の方々にも丁寧に寄り添い、公正な取引環境をしっかりと確保してまいります。
 今後とも、都内十一市場がそれぞれの特性を生かして集荷力、販売力を高めまして、さらなる活性化を図ることで、産地や実需者に支持され、ひいては都民に信頼される中央卸売市場を実現してまいります。

○白戸委員 非常に決意に満ちたコメントをありがとうございます。
 食べることは生きることです。人間は食べなければ生きていけません。そして、生きるためにも食べています。これはどんな時代になっても変わりません。さらに、美しい花をめでることにより、生活に潤いを持たせ、豊かになる。これも、時代が変わり、趣味嗜好に変化があっても変わることはないでしょう。
 だからこそ、食べ物や花きを安定的に供給していくことが重要で、世の中が変わり、流通が変わっても同じことだと考えます。
 ぜひこれからも、都民が安心して食べられ、めでて、心豊かな生活が送り続けられるよう、市場の整備をお願いして、質問を終えます。

○中山委員 条例改正について質問させていただきます。
 我が党のこの改正に関する関心事は代表質問でも取り上げたとおりでございまして、一つは、取引量、取引高がいかに拡大されていくかということ、これが改正の目的ですから、それが果たされないと改正をした意味がなくなりますので、その点をよろしくお願いしたい。それから、やはり市場を支えている中小業者、特に仲卸の方々の経営をいかに支えていくかということでございます。
 本日もその点に触れる形になりますけれども、その前に、まずは、都民生活に対して中央卸売市場が果たしている役割、それが、改正がどういうふうに影響を与えていくのかということについてから入りたいと思います。
 流通の中間点に位置する施設であるという特性上、どうしても都民が直接市場にかかわる場面というのは、お祭りですとか、限定的な場面になってまいります。そのため、市場がどのように都民生活に寄与しているのか、わかりづらい面があります。
 今回の条例改正の審議に当たりまして、改めて、中央卸売市場と都民生活の関係に光を当てながら、改正の意義について確認をしていきたいと思います。ぜひ、都民の皆様にわかりやすく答弁をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、基本的なこととして、都民生活にとって卸売市場はどのような役割を果たしているのか、この点の確認から入りたいと思います。

○長嶺事業部長 東京の卸売市場は、大消費地の大量かつ多種多様なニーズに対応するため、国内外の産地からさまざまな生鮮食料品等を集荷し、需給や品質に応じた適正な価格評価を行い、年間を通じて安定的に供給をしております。また、小売店等を通じて得た消費者のニーズを産地へ伝え、消費者が求める商品開発に役立てるなど、情報の受発信の機能も有しております。
 さらに、生鮮食料品の品質、衛生管理の徹底を図ることにより、食の安全・安心を確保しており、これらの機能を発揮することで、都民の豊かな消費生活を支えております。

○中山委員 多様な品ぞろえと安定供給、そして品質、衛生管理などによって都民生活を支えているのが基本的な役割ということでございました。こうした役割を果たす上で、特に多様な品ぞろえと安定供給という役割を果たす上では、大切なことは、先ほども触れましたけれども、引き続き取扱量を確保していく、さらには、改正するわけですから、その改善、より上昇、増加を目指すということではないかと思います。
 卸売市場の取扱量は全国的にも減少傾向にありまして、都の中央卸売市場も、取扱量の確保に苦戦しているというのは現実でございます。市場が置かれている状況は非常に厳しい状況にあります。
 そうした中にあって取扱量を確保するという点において、今回の条例改正はどのような意義を、また効果を果たすことになるのか、確認をしたいと思います。

○長嶺事業部長 物流や商取引の多様化に伴い、卸売市場を取り巻く環境が厳しさを増している中、都内の中央卸売市場が引き続き都民の消費生活を支えるという役割を果たしていく観点から、市場の活性化を図ることが重要でございます。
 今回の条例改正に当たっては、こうした認識のもと、公正な取引環境は確保する一方で、産地や実需者の多様なニーズに柔軟かつ迅速に対応できるよう、規制を緩和することとしております。
 市場業者、産地や実需者がより活力を持って取引に参加できる環境を整えることで、販路拡大や物流の効率化、品ぞろえ機能の強化など、市場関係者の意欲的な取り組みが可能となります。
 今回の条例改正を契機として取引の拡大を図り、市場の活性化を実現してまいります。

○中山委員 今お話がありました、そうした取り組みというものが、具体的に令和二年度予算となるとどう実現していくのか、また三年度、四年度と、どう続いて充実していくのか、その点をしっかりと見守っていきたいと思います。
 改正します、制度を変えます、あるいはいろんな支援制度を整えますということが局の役割で、あとは皆さん頑張ってくださいというのではなくて、今回の条例改正をきっかけにしていただいて、さらに市場関係の事業者と一体となって、その取扱量、取扱高の拡大に向けて、事業者の方々がより積極的に、元気になっていただかないとその目的が果たせませんので、その一丸となった取り組みをよろしくお願いしたいというふうに思います。
 先ほどは品ぞろえの確保ですとか安定供給という点で取扱量ってことを申し上げましたけれども、続いて、都民にとって非常に大事な、品質管理、食の安全ということについて触れたいと思います。
 品質管理や食の安全・安心の確保も、都民にとりましては大事な市場の役割で、機能でございまして、こうした機能をしっかりと確保していく仕組みを整えていかなければなりません。この点につきましての都の見解をお伺いしたいと思います。

○長嶺事業部長 卸売市場は、食品流通の核としての役割を担っており、市場における品質管理は都民の食の安全・安心を裏打ちするもので、その信頼を損ねるようなことはあってはなりません。
 このため、改正案では、こうした市場の公共的役割を今後とも着実に果たしていけるよう、食の安全・安心を確保するための規定は維持しており、品質管理について、市場関係者にその実現を求めることを明記しております。
 また、人の健康を損なうおそれのある食品等の情報連絡や調査を行う体制として、安全・品質管理者制度、いわゆるSQM制度といっていますが、こちらを設け、都は、市場関係者と連携して物品の安全を確保し、衛生管理の向上を図ることを引き続き定めております。
 今後とも、都民の食の安全・安心を守る体制を、市場関係者とともに着実に確保してまいります。

○中山委員 今回の条例改正をきっかけにしまして、例えば加工場みたいなものがしっかりさらに充実していくというようになれば、それはやはり施設の一部でございますので、今おっしゃったような品質管理と安全の点検というものの対象として、衛生管理をしっかりやっていただきたいというふうに思います。
 また、食品ロスという点に関しての取り組みも、加工場とか、そういった機能と関連してくるかもしれませんけれども、その食品ロスの対策として行われるいろいろな加工につきましても、SQMの対象として、衛生管理をしっかりと心がけていただきたいというふうに思います。
 中央卸売市場はさまざまな機能を有しておりますけれども、都民生活に直接的に影響するのが、価格形成機能であります。
 特に東京の場合は、水産物、青果物、花き、取扱量が日本一でございまして、豊洲市場や大田市場も有しております。これらの市場においてつけられた価格は、全国の多岐の市場においては参考とされているところであります。東京の中央卸売市場の価格形成機能は非常に重要な役割を果たしておりますが、今後もしっかりと守っていくべきであります。
 今回の条例改正では、この点がどのように確保されていくのか、都の見解をお伺いしたいと思います。

○長嶺事業部長 価格形成機能は、生鮮食料品等の安定供給と並んで、卸売市場の果たす公共的役割の一つであり、こうした機能を引き続き着実に果たしていく必要がございます。
 卸売市場では、大量の物品が多数の事業者により継続的に取引されており、その中で、需給や品質に応じた妥当な相場が形成されるものでございます。多くの取引参加者が利用しやすい環境を整備することにより、活発な取引につなげることで、価格形成機能を維持しております。
 豊洲市場や大田市場などにおいては一定のボリュームのある取引が行われており、その取引価格が、全国の取引の参考、いわゆる建て値として利用されております。条例改正により取引の活性化を図ることは、建て値市場としての機能維持にも資すると考えます。
 また、価格形成機能を支えるものとして、公正な取引の場としての卸売市場の役割がございます。改正案では、取引結果の公表、都への実績報告等、取引の公正性を守るための仕組みを設けており、これらを通じて卸売市場の価格形成機能を確保してまいります。

○中山委員 価格形成機能ということで、庶民にとっては、結局のところ、今後は生鮮品の価格が条例改正を通じて高くなっていくのか、安くなっていくのか、これが非常に関心があるところであります。
 この条例改正によって、水産物や青果物などの価格に直接的な影響が及ぶものであるのかどうか、この点も改めて確認しておきたいと思います。

○長嶺事業部長 卸売市場は、本来、公正な取引の場でございまして、特定の買い受け人が不当に有利、また不利になるようなことがない、公正な取引により、水産物や青果物のその日その日の需給のバランスや品質に応じて価格が形成されていくものでございます。
 今回の条例改正においては、こうした公正な取引環境は確保するとしており、引き続き適正な価格形成機能が発揮されることに変わるところはございません。

○中山委員 ある面で、需給のバランスに応じて高くなったり安くなったりする。そのバランスの応じ方が、不正なものであったり、特定の方の利益につながったりということではないように監視していく、管理していくということが、公正な価格形成機能の役割ということだと思います。
 これから、そういう面では、仲卸の方が直接産地から買いつけたり、あるいは卸の方が仲卸以外の方に販売したりするというようなことが出てくるわけですけれども、そうした際におきましても、どういうふうな価格形成機能をきちっと維持していくのか、取り扱いについての報告を受けるということですよね。そうした報告を受けた際に、ただ報告を受けっ放しなのか、それに対して適切に局として対応して、反応して、指導監督する、指導する場合は指導しているんですよということがよくわかるように工夫をしていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
 そうした改正の目的は、先ほど申し上げましたように、市場の活性化を図ることでありまして、その実現は急務でありますけれども、何といっても、市場を支えていらっしゃるのは、何回も繰り返すようですけれども、中小の事業者の方々でいらっしゃいます。その事業者の方々にとりましては、今回の改正で、規制緩和が進んで競争が激化していくと、それが自分たちの経営に深刻な影響を与えるのではないかという不安を抱いている方々も大勢いらっしゃるところであります。
 この点、我が党の代表質問でも触れたところでありますけれども、改めて、今回の改正が中小事業者の取引や経営に与える影響についての認識と、都はどう対応していくのか、その点についてお伺いしたいと思います。

○長嶺事業部長 卸売市場を取り巻く環境が厳しい中、引き続き、市場がその公共的役割を果たしていくためには、多くの取引参加者が利用しやすい環境を整え、市場の活性化を図ることが重要でございます。
 活発な取引が行われることは、市場の集荷力の向上、充実した品ぞろえにもつながると認識をしておりまして、中小事業者の多い仲卸業者の仕入れ機会の向上、販売力の強化にも寄与すると考えております。
 経営に不安を感じている仲卸業者に対しましては、定期的に経営状況を把握し、助言するとともに、販路開拓など、経営全般に対して専門家の知見を活用した相談事業を実施することで、より適切な事業展開が図られるよう支援してまいります。
 また、仲卸業者も含めて、意欲的な市場業者の創意工夫ある先駆的な取り組みを後押しすることで、卸売市場を取り巻く環境の変化に即した対応を促してまいります。
 こうした取り組みについて、さらなる運用改善を図りつつ、積極的に行ってまいります。

○中山委員 今、答弁でお示しいただいた経営相談や活性化に向けた取り組みの支援、これは非常に大事なことでございまして、こうした事柄において丁寧に対応していただいて、先ほど申し上げました一体感、これを醸成していただきたいというふうに思います。
 せっかく経済・港湾委員会ということで、産労局とも委員会が同じということなんですけれども、産業労働局の支援事業ともしっかり連携しながら、業者の方々のお困り事、悩み、相談というものに対応していただくように、さらなる制度の充実を図っていただくようにお願いしたいと思います。
 冒頭に述べましたとおり、中央卸売市場は都民のための市場でございますので、条例改正もまた、都民の生活の向上に資するものとして、都民から支持されるものでなければならないと思っております。
 消費者である都民にとって、より望ましい卸売市場の実現に向けた市場長の決意を、改めてお伺いしたいと思います。

○黒沼中央卸売市場長 東京の中央卸売市場は、水産物、青果物、食肉、花きといった生鮮食料品等につきまして、豊富な品ぞろえを安定的に供給しており、東京の多彩な食文化や潤いにあふれた豊かな都民生活を下支えしております。
 今回の条例改正では、市場を取り巻く環境の変化を踏まえまして、産地や実需者の多様なニーズに的確に応えられるよう規制を緩和する一方で、公正な取引環境や食の安全・安心を確保するための仕組みを設けることとしております。これにより、多くの取引参加者が利用しやすい環境を整え、市場業者の取り組みをサポートしていく、このことで、さらなる市場の活性化を図ってまいります。
 多種多様な生鮮食料品の安定供給、適正な価格形成や食の安全・安心など、消費者、都民が求める市場としての役割を将来にわたりしっかりと果たし、そして、お話にもございましたとおり、その取り組みをわかりやすく明らかにしていくことで、都民の豊かな消費生活の実現を図ってまいります。

○中山委員 ぜひ今、黒沼市場長からお話がありました決意のままお取り組みいただいて、いろんな疑念、不安があると思いますけど、それを払拭する取り組みを実現していただきたいことをお願い申し上げて、質問を終わりにさせていただきます。

○山崎委員 私からも、今回提案されている卸売市場条例改正案の件で何点か質疑をさせていただきたいと思います。
 この改正案が目指すところは、活気あふれる市場の実現だと私は認識をしております。他律的なルールから、市場関係者間の自律的なルールへの変更だと理解もしております。
 平たくいえば、何でもできるではなくて、自分たちで活気あふれる卸売市場を実現するためにはどうしていけばいいのかということを自分たちで決定し、実践をしていく、そういうスタイルに変わっていく形だと思います。それが今回の改正の肝だと理解をしております。規制緩和されたので民営化だという短絡思考に陥るべきではありません。
 今回の条例改正は、卸売市場法の改正を踏まえたもので、改正法の施行により、全国的にも規制が緩和され、今後は新たな制度のもとで、各都市が設置する中央卸売市場と競っていくこととなります。これまで以上に、各市場の特色を発揮していくことが求められるわけであります。
 そこで、都は業界と連携をして、市場ごとの特色を生かした市場運営を進める必要があると考えますが、まず見解をお伺いいたします。

○松田市場政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 市場の活性化をより効果的に進め、魅力ある市場運営を行っていくためには、各市場の立地や商圏、規模や機能などに応じまして、それぞれの市場の特色を生かし、ハード、ソフト両面から戦略的に取り組んでいくことが重要でございます。
 このため、都ではこれまで、東京都卸売市場整備計画に基づき、各市場の強み等を分析した上で、業界団体と連携して、市場ごとに経営戦略の策定を進めてございます。
 経営戦略に基づき、施設整備を着実に進め、品質、衛生管理の高度化や物流の効率化など、機能強化を図ってきてございます。
 こうした取り組みを推進することに加えまして、今後、条例改正を踏まえた経営戦略の策定や見直しを図り、中央卸売市場全体のより一層の活性化を図ってまいります。

○山崎委員 市場ごとの特色を生かした市場運営は、今後、一層重要になります。
 例えば、豊洲では、市場協会の伊藤会長が開場一周年の式典において、地元に愛される、そして都民に信頼される、そして世界に羽ばたいていく市場という三つのビジョンを掲げています。これは特色ある市場を目指す例だと、私は思います。
 この三つのビジョンを掲げておられる伊藤会長、こういったことも踏まえて、市場長はこれをどう考えるのか、見解を伺います。

○黒沼中央卸売市場長 今、副委員長からお話がございました市場協会会長、伊藤会長の三つのテーゼでございますが、代表質問で知事からもご答弁ございましたけれども、開設者の、都といたしましても、まさに共感できるものと受けとめてございます。地元にまず愛される、そして都民に信頼をされる、さらには、新たな取り組みとして、国内外に向けて広くそのネットワークを形成する、世界に羽ばたいていく、この理念は、都としても真摯に受けとめ、同じベクトルで方向性を持って市場の今後の姿を歩んでまいりたいと思います。

○山崎委員 豊洲はもちろんのこと、ほかの市場も含めて条例改正を機に高まる市場関係者の意欲を、開設者である市場当局は力強く後押しをしてもらいたいと思います。そして、条例改正を機に、ルールだけ変わるのではなく、市場関係者ももっと変わらなければなりません。新しいルールを守ることはもちろんのこと、取引慣行も変えなければなりません。さもなければ、あっという間に都民の信頼を失います。
 改めて卸売市場の使命を胸に刻み、おのおのしっかりと取り組むよう要望をしておきたいと思います。
 さて、今回の条例改正では、取引ルールが大幅に見直されております。
 卸売市場が果たしてきた役割の重要性や、現在の市場を取り巻く環境の厳しさを踏まえれば、時代にそぐわないルールを見直して活発な取引を促していくことが必要であるという考え方もあるでしょう。
 ただ、活気あふれる市場というものは、条例を改正すればそれだけで実現できる性質のものではありません。市場において現に取引を行っている市場業者であって、彼らと市場開設者である市場当局が一体とならなければ、制度改正しても市場の活気を守り立てていくことは難しいと私は思います。今回の条例改正の理念を絵に描いた餅にしないためにも、都が業界と危機意識を共有して、正面から向き合っていくことが何よりも重要であります。
 そこで、都としてこれから十一市場の業界とどう向き合っていくつもりなのか、その基本的な認識を市場長にお伺いいたします。

○黒沼中央卸売市場長 中央卸売市場が都民の豊かな消費生活を支える基幹的なインフラとしての役割を今後とも着実に果たしていくためには、市場取引の担い手である市場業者の皆様と一体となって、その自律的な取り組みを促しながら取り組んでいくことが不可欠でございます。
 卸売市場を取り巻く環境はまさに厳しさを増しておりますが、今回の条例改正を契機といたしまして、市場業者の皆様と手を携えて市場の活性化を図り、卸売市場に求められている役割を果たしていくことが極めて重要でございます。そのため、まずは、条例改正後の新たな制度への移行を見据えまして、各市場の取引委員会などを通じて、業界との準備を着実に進めてまいります。
 また、今年度から新たに開始いたしました活性化支援事業を活用しまして、意欲のある市場業者の積極的な取り組みを後押しするなど、各市場それぞれの特色を生かしまして、市場全体のさらなる活性化を図っていく必要がございます。
 引き続き市場業者の方々と真摯に向き合いながら、取引関係者に支持され、都民に信頼される中央卸売市場を実現してまいります。

○山崎委員 新しい制度は来年の六月に施行を予定しており、円滑に新制度に移行するためには、業界とともに実のある準備を進めていかなければなりません。
 制度移行に際して最も重要となるのが、取引機能をしっかりと機能させることです。そのための鍵となるのが、まさに先ほど市場長が答弁をいたしました取引委員会の仕組みであります。条例改正後の取引を混乱なく実施するためには、各市場に設置されるこの委員会が、その機能をいかんなく発揮していく必要があると考えます。
 そこで、この取引委員会の重要性や設置の意義について、都はどう考えているのか、その基本的な認識を伺います。

○長嶺事業部長 取引委員会は、日々の取引の現場である各市場において、適正かつ健全な市場運営を確保するため、都と市場関係者が協議する場として活用をしてまいります。
 取引委員会では、情報共有や個別の課題への対応など、さまざまな協議を行うこととしており、都と業界が連携して、公正かつ活発な取引環境を確保していく上で重要な役割を担っていくものと考えております。

○山崎委員 都としても取引委員会の重要性について認識をしているとの長嶺部長の今の答弁だったと思います。であるならば、取引委員会の活用に向けた具体的な協議を、業界と一緒になってしっかり進めていく必要があると思います。
 そこで、今後の取引委員会の活用に向けて、業界との協議をどのようなステップで進めていくつもりなのか、都の見解を伺います。

○長嶺事業部長 取引委員会の活用に向けて、まずは条例改正の内容について各市場において説明会を行うとともに、卸売業者、仲卸業者といった業態ごとに説明の機会を設けることを想定しております。
 次に、各市場において、それぞれの取引の実情を踏まえ、取引委員会の構成、協議事項等についての話し合いを開始いたします。また、競りの対象とする物品など競り取引の運用に係る事項は、改正法施行期日前までに取引委員会を開催し決定するなど、新たな制度への円滑な移行に向け、都と業界が密に連携して準備を進めてまいります。

○山崎委員 今回の法や条例の改正を契機に、みずから考え、行動を起こして前に進もうとする意欲を、私は、多くの市場関係者から感じております。こうした市場関係者の意気込みに、開設者として、市場当局はしっかりと応えていただきたいと思います。そうした積み重ねが信頼を紡ぎ、都民の食生活をより豊かで彩りあるものにし、安定させていくことにつながると、私は確信をしております。
 きょうの質疑を踏まえた対応をしっかりとお願いをして、私の要望とし、また、質問を終わります。

○あぜ上委員 それでは、私からも、条例改正及び陳情について質疑をしたいと思います。
 先ほど、今回の条例改正については、法改正の趣旨を踏まえたことによるものだというご説明がありました。その卸売市場法が昨年の六月に改定されたわけですが、八十三条あった条文が十九条になったわけです。
 改正内容のポイントは、一つは、国の関与は必要最小限にするという考え方に基づいて、卸売市場に対する国の関与が大幅に後退したということです。卸売市場の国や都の許可制から認定制に変わった。そして、二つには、農水大臣による開設区域の指定と、公設制に関する規定の廃止がある。これで中央卸売市場の民営化に道を開きました。そして、三つ目は、取引に関する大幅な規制緩和があるということです。
 日本農業新聞という新聞があるんですが、この日本農業新聞は、この法改正で、中央卸売市場の開設自治体、日本農業新聞によると三十八と書いてあったんですけれど、この三十八の全ての自治体にアンケートをとったという報道が十月八日付で公表されておりました。それによりますと、開設者の民間参入も認められるようになったけれど、今後、中央卸売市場にどのようにかかわっていくのかという問いに対して、開設自治体が引き続き整備や運営を指導してまいりますというところが八九%、九割近くあったということでありました。
 東京都も引き続き公設としたことは重要だと思っておりますが、どういう検討経過で公設にしたのか、まず伺います。

○長嶺事業部長 今回の条例改正は、来年六月の改正卸売市場法の施行に合わせ、都が開設する都内十一の中央卸売市場について、その活性化を図ることを目指して検討を進めてきたものでございます。

○あぜ上委員 来年六月の施行に合わせてということなんですが、そうすると、今後、民営化はあり得るということなんでしょうか。その点について伺います。

○長嶺事業部長 繰り返しになりますが、今回の条例改正は、来年六月の改正法の施行に合わせまして、都が開設者として、都内中央卸売市場の活性化を図ることを目指して検討を進めてきたものでございます。

○あぜ上委員 はっきりしないと。公設を続けるということではありませんでしたが、これでは、やはり業者の皆さんも不安になるのではないかというふうに思います。
 先ほど申し上げた日本農業新聞では、開設自治体が引き続き整備や運営を主導するというところが約九割だったわけですが、その主な意見というのが書いてあったんですが、その最も大きな意見が、公正な取引や安定供給を確保し、高い公共性を保つためには、自治体が開設者となり、指導監督する必要がある、こうしておりました。また、この法改正が農産物流通や市場運営に与える影響に関する問いがあったんですが、それについては、メリットが非常に多く期待が高いと、ほぼ全面的に肯定する意見はわずか一一%にとどまっておりました。
 市場を開設している、こういう自治体から見ても、やはり不安が大きいことがわかります。これまでの、資本の大きさに左右されない、そういう中で取引を公正に行う努力が積み重ねられてきた、その中で地域経済の支えをしてきたこの卸売市場を、やはり民間任せにするわけにはいかないということを申し上げておきたいと思います。
 東京魚市場卸組合連合会からも、この条例改正に当たって、公設維持などを要望する申し入れが、ことし出されたと伺っております。都としても公設で中央卸売市場を維持するよう、重ねて求めておきたいと思います。
 さて、都は、市場を取り巻く環境が厳しいという認識を先ほども示されておりました。市場の社会的役割を発揮するためには規制緩和が必要だというふうにおっしゃいましたが、規制緩和することによって、何を守ることができると考えていらっしゃるんでしょうか。

○長嶺事業部長 東京の卸売市場は、都民に生鮮食料品等を安定供給する基幹的なインフラとして、都民の豊かな消費生活を支えております。
 この役割を着実に果たしていくとともに、時代の変化に伴う産地や実需者の多様なニーズに的確に対応できる取引環境を整えるため、規制を緩和するものでございます。

○あぜ上委員 十月二十八日の市場運営協議会、私も出席をしておりましたが、この中で、先ほど申し上げた東京魚市場卸組合連合会の代表者の方が、売り手と買い受けが対等に向き合いながら社会への貢献に結びついていく、市場の活性化は、単に市場の通過量や取引高が上がることだけが活性化ではないんだ、地域社会への貢献、食文化などなどにその大きな力が発揮されることが大事なんだというご発言をされていましたが、私は全くそのとおりだというふうに思いました。食文化を育んでこられた、中小業者の多い仲卸業者さんを初め市場業者の皆さんが、やはり健全に営むことができる市場にしていくことが重要なんだというふうに思うわけです。
 ある専門家の方は、日本で卸売市場があることが、欧米諸国に比べても大手資本のスーパーの小売業界の寡占化を緩やかにしている、そして、私たち消費者が食料品の購買先の選択肢を持つことができる、そういう力になっているのが卸売市場だと、また、栄養バランスのとれた日本型の食生活、これは大変今、国際的にも高い評価を得ていますが、そうした食生活を支えてきた社会の仕組みとして、生鮮食料品の全国的な需給調整機能を発揮してきた卸売市場の存在がやはり大きいのだというふうに指摘をされていました。
 食の安全・安心の保障、そして自然災害など非常事態への準備ができて、長期的視野で消費者の、国民の生活の安定に寄与する、そういう価格形成機能の役割を果たす卸売市場をしっかりと守り、維持できるのかどうかということが、本当に今、鋭く問われているのではないかというふうに私は考えております。
 これまで、卸売市場の公正、公平な取引は何によって守られてきたと考えていらっしゃるでしょうか。

○長嶺事業部長 中央卸売市場では、受託拒否の禁止や差別的取り扱いの禁止等により公平、公正な取引が義務づけられ、また、取引結果の公表義務により取引の透明性が確保されており、開設者が指導監督をしております。
 これらにより、卸売市場は公正な取引の場としてその役割を果たしてきており、今回の改正案においても、こうした仕組みは維持しております。

○あぜ上委員 その受託拒否の禁止とか差別的取り扱いの禁止などの原則を取引ルール化したのが、第三者販売の禁止や直荷引きの禁止などの取引ルールなわけです。
 つい先日、青森市が、現行の第三者販売の禁止や直荷引きの禁止などの取引ルール、これは全部残すという判断をされたという報道がありました。それを受けて、私も青森市の所管担当の方に電話でお話を伺いました。基本、規制ルールは残すべきだという判断に至った理由はどういうことですかというふうに伺ったら、卸売市場の公共性を確保する上では、やはり必要であるというふうに判断に至ったというお話でありました。
 この条例改正で取引ルールはどうするのかについては、自治体が判断できるということでありますから、やはり、国が規制緩和を打ち出したとしても、この取引ルールは、私は、東京都としても残すべきだというふうに思うわけです。
 先ほど公正な取引を確保するために努めるというお話があったんですが、知事に報告するということで公正な取引を確保するというふうにおっしゃっていたんですが、どのような仕組みによって公正な取引を担保するのか伺います。

○長嶺事業部長 今回の条例改正では、公正な取引環境を確保するために必要な仕組みを整えております。取引の数量や価格を日々公表するほか、卸売業者に対し、取引条件の公表を新たに義務づけ、透明性を高めております。また、都は、検査や実績報告等を通じて取引の状況を詳細に把握し、必要に応じて指導監督を行うこととし、取引に関する相談窓口も活用いたします。
 さらに、取引委員会において、競り取引の運用や個別の課題についての協議、不公正な行為の明確化を図るために事例を作成するなど、公正な取引環境を確保してまいります。

○あぜ上委員 取引の透明化と、必要に応じて指導監督していくということなんですが、それでは、不公平な取引かどうか、これを東京都はどのような調査をして、何を基準に判断するのか伺います。

○長嶺事業部長 改正案では、都は、取引の実態を把握するため、卸売業者等に実績報告を求めるとともに、検査等を行うこととしております。
 具体的には、日常的な現場確認のほか、定期または予告せずの検査により、卸売業者等に対して関係書類の提出を求め、ヒアリングするなど取引の状況を調査いたします。また、相談窓口に寄せられた情報についても、必要に応じ調査を実施いたします。
 これらの調査を通じ、個々の事案の詳細な状況に基づき、都民の需要を無視するような行為や、特定の買い受け人を極端に優遇するような差別的取り扱いに該当する行為などがあった場合は、是正に向けて指導監督を行ってまいります。

○あぜ上委員 差別的な取り扱いというふうに判断する基準というのが非常に曖昧だなというふうに思ったんですが、例えば、ふだん取引しているところで第三者販売をふやしていくということになったときに、やはり立場の弱い仲卸の業者の方が声を上げるということが果たしてできるのかと、現実問題として。今後の仕事の影響とかを考えれば、なかなか声を上げるというのは難しいことではないでしょうかね。
 先ほど現行も第三者販売があるというお話がありましたが、その実績はどうなっているんでしょうか。

○長嶺事業部長 条例改正準備会議においてお示ししたものでございますが、平成二十九年度の実績によると、条例に基づき許可を受けた第三者販売の実績は、水産物部は約八百八億円で、取引量全体に占める割合は約一八%、青果部は約三百五億円で、割合は約五%、食肉部は約十七億円で、割合は約一%、花き部は約七億円で、割合は約一%となってございます。

○あぜ上委員 水産は若干多いですが、一八%ということですが、今は第三者販売は原則禁止されている、例外的な取り扱いということだと、だからこそこれで抑えられているんだと思うんですね。
 これが、第三者販売のルールが廃止されたらどうなるでしょうか。第三者販売がふえていくというのは当然の流れだというふうに思うわけですが、そうしますと、第三者販売の限度設定というのはあるのかどうか伺います。

○長嶺事業部長 今回の条例改正では、第三者販売を含めまして、より柔軟かつ迅速にニーズに対応するため、規制を緩和するとしております。
 第三者販売の取引の状況につきましては、取引委員会で情報を共有してまいります。

○あぜ上委員 正面からは答えていただけませんでしたけれども、限度設定はないということだと思います。
 卸売市場は、卸と仲卸の存在が公平、公正な価格を形成する機能を発揮して、なるべく高く売りたいという生産者と、なるべく安くいいものを買いたいという消費者の相互のバランスが品質重視で保たれてきたわけです。だから、今回の法改正による取引の原則の廃止に対しては、一般の小売の人たちや、また仲卸の業界の団体、農業、農民団体、消費者団体等からも多くの反対の声が、法改正のときですね、意見が出されたわけですね。
 そのために、改定卸売市場法でも、卸売市場の認定条件として、開設者は、差別的取り扱いの禁止、受託拒否の禁止--受託拒否の禁止は、これは中央卸売市場のみですけれども、それができたり、決済の確保、卸売数量や価格など売買取引結果の公表などの事項を業務規程に掲載することとしたわけです。今回の条例改正にもそれが載っているわけですね。
 しかし、卸売業者の第三者販売の自由化によって、卸売業者は、大手スーパーや外食産業への直接販売が拡大し、しかも開設区域が廃止されたことによって、全国的な事業展開も可能となったわけです。仲卸業者の直荷引きでスーパーや外食産業の仕入れ代行機能を担っている大規模な仲卸業者の産地からの直接集荷の可能性も拡大します。
 そして、商物一致原則、この廃止によって、商取引は市場を通すけれども、大型産地や輸入業者、冷凍業者から大手スーパーや外食産業への物品の直接出荷も拡大するのではないでしょうか。
 そういう意味では、こうした大事な第三者販売、直荷引き、商物分離、こういった拡大によって、改定条例文にも書いてある差別的取り扱いの禁止などの規定も形骸化するおそれがあるのではないかと、そういう不安の声が上がるのは、私は当然のことだというふうに思うわけです。
 今、仲卸業者の皆さんや小規模な売買参加者の方はどうなっているでしょうか。中央卸売市場における仲卸業者数及び売買参加者数の推移について伺いたいと思います。

○長嶺事業部長 仲卸業者数の推移でございますが、各年度とも四月一日現在で、平成二十七年度は千百五十四者、平成二十八年度は千百十四者、二十九年度は一千五十二者、三十年度は一千三十二者、平成三十一年度は九百七十六者となっております。
 次に、売買参加者数の推移でございますが、同じく四月一日現在で、平成二十七年度は九千百八十三者、二十八年度は八千七百十六者、二十九年度は八千六百十九者、三十年度は八千四百九十九者、平成三十一年度は八千三百七十五者となっております。
 事業者数の減少につきましては、事業者の高齢化、後継者問題などが背景にあるものと認識をしております。

○あぜ上委員 ご答弁を伺って、かなり仲卸業者も売買参加者も減っていることがわかります。特に一割以上も減っているのが仲卸の業者の方々ですが、高齢化というご説明がありましたけれども、それも確かにあると思います。しかし、同時に、経営は今、厳しくなって、売買不振や後継者不足によって、この五年間でも統合や廃業が進んでいるというふうに伺っているわけです。
 その上、さまざまな規制が緩和されてしまったらどうなるか。小規模の事業者が多い東京の市場が、市場の活性化の名のもとに、大手スーパーや外食産業への直接売買が拡大されるなんてことをしたら、立ち行かなくなるのは火を見るよりも明らかではないでしょうか。
 そういう中で、東京の中央卸売市場の中には建て値市場としての役割を発揮しているものもあるわけですが、その役割を維持できるということがいえるのでしょうか。

○長嶺事業部長 卸売市場では、大量の物品が多数の事業者により継続的に取引をされております。その中で、需給や品質に応じた妥当な相場が形成をされる、そういったものでございます。
 建て値市場においては一定のボリュームのある取引が行われており、その取引価格が、全国の取引の参考として利用されております。条例改正により取引の活性化を図ることは、建て値市場としての機能維持にも資すると考えております。

○あぜ上委員 大量の取引量があるというお話ですが、それだけでは建て値市場の役割は果たせないわけです。
 大田市場は青果や花き、また豊洲市場は鮮魚の建て値市場の役割を担っていますが、二〇一七年十月に発表されました大田市場の青果部経営戦略、これを改めて読み直してみましたが、日本の建て値市場としての機能強化として、大田市場の決定価格は、日本全国の指標として参照され、ほかの卸売市場では価格形成が困難な商品であっても、その蓄積されたノウハウで価格をつけることが可能になっていると述べています。
 つまり、競りによる価格形成が生鮮品の取引の価格として重要な役割を担っているということを明らかにしているわけです。その競り人は、試験を受けて合格者を登録する制度になっていますけれども、この条例改正では、講習を受ければいいという届け出制に、これも規制緩和されています。
 今回の条例改正は、東京の食文化を育んできたこの目ききの力も弱めるのではないかという、そういう心配もあるということも指摘せざるを得ません。
 都の中央卸売市場が果たしている商店や消費者を守る役割とは何なのか、都の認識を伺いたいと思います。

○長嶺事業部長 卸売市場は、小売店等の仕入れ機会の確保、都民の多様で豊かな消費生活を支える役割を担っており、今回の条例改正では、こうした役割を引き続き果たしていくため、時代の変化に伴う産地や実需者の多様なニーズに的確に対応できる取引環境を整え、市場の活性化を図ることとしております。

○あぜ上委員 鮮度と多様性と旬を大事にする日本の食文化は、商店や小売店を生み、育ててきたわけです。本来、市場の活性化というのは、こういう小売店や商店との市場取引が本当に盛んに行われて、そして市場の農水産物が国民の食卓に上がる量、これがふえることだというふうに思うわけです。
 しかし、現状は、国民所得は下がって、そして小売店、商店の激減によって、市場の売上量も、先ほどもお話があったように減ることになりました。
 今、本当に東京都が真剣にやるべきことは、市場の活性化を理由に規制緩和を進めることではなくて、やっぱりこういう小規模な生産地や商店、小売店を元気にして、日本の食文化を守ることだと、そして、卸売市場の価格形成という大事な役割をしっかりと恒久的に維持させることだというふうに思うわけです。
 この条例改正の提案に至る経過についても、一言伺っておきたいと思います。
 条例改正については条例改正準備会議で審議をしてまいりましたが、改正案に至る経過、議論の経過について伺います。

○長嶺事業部長 条例改正の検討に当たりましては、条例改正準備会議における検討を経て、全市場における説明会、業界団体の会合での説明や個別の話し合い、ホームページによる取引参加者の意見募集などさまざまな機会を設け、意見交換を重ねた上で、東京都中央卸売市場取引業務運営協議会において了承いただくなどの手順を踏んでまいりました。また、各市場での取り組みとして、随時情報を提供し、質問にも対応しているところでございます。
 今後、改正後の制度内容を全市場で周知するほか、卸、仲卸などの業態ごとの説明を行うこととしております。

○あぜ上委員 私は市場運営取引委員会でも申し上げたんですが、北海道の札幌市は、条例改正においても現行法の規定はほぼ存置するという答申を出しました。
 札幌市に市議団を通じて伺ったら、公設市場としての信頼を得るためには、原則規制緩和はしないんだ、とはいえ、今のままでは間尺に合わない部分については、例外規定を設けて緩和するということにしたというお話を伺いました。東京都の市場運営協議会のような協議、これは四十回を超えた。さらに、さまざまな意見交換の場を設け、計百回近い話し合いの中で決めたということを伺いました。
 都の場合は、先ほど業界などの説明なども行ってきたというお話がありましたけれども、去年の十二月からことしの七月まで、東京都の中央卸売市場条例改正準備会議、ここは四回、それも非公開で開催でした。その後、議事録は公開されましたけれども、概要というものでありました。しかし、その概要も、私は読みましたけれども、かなりさまざまな、賛否両論ありました。
 公開の場で議論したというのは、方向性で、七月に取引委員会で一回報告があって議論し、十月二十八日の市場取引業務運営協議会で行われたということでありますが、この卸売市場の条例改正は、各委員もお話があったけれども、やっぱり都民の暮らしや食生活にとって、本当に根幹の問題なわけですね。だから、本当に十分な議論が私は必要だというふうに思うわけですが、私自身が参加した市場運営協議会においても、やはり徹底的に議論を尽くしたというふうには、私自身は感じることはできませんでした。
 国は、農政改革の一環として、市場を自由化して物流センター化しようと、規制改革の推進会議、未来投資会議で、市場関係者不在のまま、この卸売市場法改正を進めました。そして、今、冷凍、加工食品など、輸出入をふやす方向も打ち出しております。それと同様にこの卸売市場の規制緩和を進めてしまったら、本当に大手の取引拡大にかじを切ることになりかねないわけです。
 今、国連では、SDGsが掲げる持続可能な生産消費形態を呼びかけて、ことしから、家族農業の十年、これを決めました。農民と生産を大事にして、小規模農家と農民、そして生産を大事にして、地域経済を守り、持続可能な社会をつくっていく、こういう流れに切りかえていこうという国際的な流れが今、始まっているわけですね。それと、日本で先ほどいったような規制緩和を進めようという、そういう流れとの、まさに今せめぎ合いの中に、この卸売市場があるというふうに思うわけです。
 そういう意味では、これまでの卸売市場が果たしてきた、本当に資本の大小にかかわらず、生産者と小売店、消費者を守る役割が、私は一層重要になってくるというふうに思うわけです。
 そういう立場から、今回提案されました条例改正については、賛成することはできません。そして、陳情については、趣旨採択を求めたいと思います。
 そのことを申し上げまして、私の質疑を終わります。

○両角委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案及び本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○両角委員長 異議なしと認め、付託議案及び陳情に対する質疑は終了いたしました。

○両角委員長 次に、報告事項、千客万来施設事業等についてに対する質疑を行います。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○山崎委員 十一月二十八日に報告を受けました千客万来施設事業について、何点かお伺いをしたいと思います。
 私どもも、この豊洲の市場の中の、例えば買い出し人の駐車場の件、また観光バス等の乗り入れの件、こういったことを、とにかく皆さんが使い勝手がいいというものをしっかりと対応していただきたいということを再三繰り返し、皆様に提案もしてきたわけでございます。
 その中で、先日の報告事項の中で、六街区の観光バス乗降場、そして買い出し人の待機車両スペース、こういったものが記載をされております。
 この報告事項を見ますと、この十二月から来年の五月の中旬ぐらいなんですかね、六街区の観光バス乗降場と買い出し人の待機車両スペースという、二つのこういったものがあるんですが、どのくらいの、例えば観光バスなら何台とめられますよと、そして、買い出し人の待機車両スペースはどのくらいあるか、具体的に教えてください。

○石井渉外調整担当部長豊洲にぎわい担当部長兼務 お話しの六街区の千客万来施設事業用地に設けます観光バス乗降場でございますけれども、こちらは、五台を受け付けるという形で運用しております。
 また、買い出し人の待機車両スペースについては、百台となってございます。

○山崎委員 観光バス五台と、買い出し人の待機車両スペース百台という、今、答弁がありました。
 この後、このスペース、当初の計画だと、たしか二〇二〇年のオリンピックまで、この六街区のにぎわいのところは使える形だったと思います。オリンピックが終わった後、六街区のそのスペースは、万葉倶楽部さんが事業を展開して着工していく、そういうスケジュールだったんですけれど、この報告事項を見ますと、五月の中旬で切れているわけですよね。
 要するに、五月の中旬から、本来はオリンピックまで、この期間、一体何で縮まってしまったのか、この期間をどのようにこの六街区は活用していくのか、教えてください。

○松田市場政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 六街区の用地でございますけれども、事業者であります万葉倶楽部が、東京二〇二〇大会後に速やかな着工をするということが大前提となってございまして、それに至るまでの間、東京都は、用地を引き渡すまでの準備工事をする必要がございます。
 この工事につきましては、東京二〇二〇大会の実施に伴う交通規制などといった新たに生じた要素を考慮して、詳細に検討し、きちんと万葉倶楽部に引き渡しをして、二〇二〇大会後にしっかりと工事に着工していただけるように、都としてもしっかりとした工期をとらせていただき、工事をさせていただくというものでございます。

○山崎委員 今の松田部長の答弁でありますと、しっかりと万葉倶楽部さんにオリンピックが終わった後、着工ができるような形の体制づくりをしていく、多分、要は原状回復のことだと思います。レベルを合わせたり、そういうことだと思います。
 であるならば、なぜ初めからこういうスケジュールをしっかりと組まなかったのか。本来であれば、オリンピックまで、この六街区をにぎわいで使いますよというスケジュールだったと思います。
 今、この報告事項の中では、報告があったように五月の中旬で準備工事に入っていきますよと。やはり、そういう計画性の、こういったところのなさが露呈してしまっていると私は思います。そういうふうにいわざるを得ません。しっかりとこの点は、まず万葉倶楽部さんがこの後、やっていく形をしっかりと対応していただきたいと思います。それがまず一点。
 それと、先ほどいった観光バスの乗降場と買い出し人の待機車両スペース、これも五月の中旬で、この五台や百台がなくなるわけですよね。準備工事に入るわけですから。
 じゃ、この観光バスと買い出し人の待機車両の場所、五月の中旬以降、どこに行くのか、教えてください。

○西坂豊洲市場総合調整担当部長豊洲市場活性化担当部長兼務 ただいま副委員長からご指摘ございました六街区の千客万来施設活用の、スタートしております観光バス乗降場、買い出し人待機車両スペースの五月以降の件でございます。
 まず、買い出し人待機車両スペースにつきましては、従来より答弁申し上げておりますとおり、豊洲市場開場に当たりましては、築地市場でそろえていた駐車台数を上回る五千百台を設置してございます。基本的に、買い出し人の方は現在、六街区の三階、四階のスペースを活用してございまして、そういうやりくりをしています。
 ただ、なかなか業界ではやりくりがつかない分もございましたので、今回、緊急避難的に千客万来施設を、本来にぎわいの施設を、活用を図りました。
 現在、業界の方でも、運営協議会等を通じて、さらに工夫を重ねて、買い出し人の方のスペースを、業界の中でうまく使えるように検討しておりますので、五月以降、その検討が実るというふうに考えてございます。
 それから、観光バスの乗降場につきましては、これまでの時点でなかなか場所がなかったので、今回もにぎわい用地を活用するということでやりましたが、今後、五月に向けまして、地元江東区ともいろいろ協議を進めながら、市場内外の場所で何か工夫を考えているところで、現在検討中でございます。

○山崎委員 これは再三、買い出し人のことや観光バスのことは私たちもいってきました。しっかりと、この五月以降どうするんだという計画をしっかり立てていただいて、やはり皆さんが使い勝手がいいものをつくっていただきたいと強く要望しておきたいと思います。
 それじゃ、最後に一点、五街区の万葉倶楽部さんの駐車場、これは報告事項を見ますと、四月だか五月に、竣工なのか、開場なのか、完成なのか、ちょっとよくわからないんですけれど、本来の計画はたしか十二月、今月完成の予定だったと思います。
 なぜこれはおくれているのか、どういう形で万葉倶楽部と折衝してきたのか、教えてください。

○松田市場政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 ただいま副委員長ご指摘のありましたとおり、本来は今月中に立体駐車場が竣工するという予定だったところでございますけれども、その一方で、これは全国的に影響を及ぼしているというふうにいわれております建設資材、こちらの納期が著しく長期化しているということでございます。こちらにつきましては、やはり万葉倶楽部が工事を行っております五街区の駐車場におきましても例外ではないということでございまして、鉄骨でありますとか高力ボルトでありますとか、そういったものの需給が逼迫して納期がおくれているということに影響を受けたものであるということでございます。
 ただ、その一方で、私ども都といたしましても、実際の工程、こういったものの見直しでございます、そういったものをしっかりと行うように働きかけを行いまして、こちら、打ち合わせを何度もやらせていただきまして、例えば動線の見直しであるとか、あるいはできる範囲で夜間の工事を行うとか、そういったものをしっかり行って、できる限りの努力をした結果、ご報告させていただきました四月末の供用開始を目指すというスケジュールにさせていただいたというところでございます。

○山崎委員 やはり、これも万葉倶楽部さん--例えば一カ月ぐらい駐車場の完成がおくれるというなら、まだ私も理解できますよ。でも、これは五カ月おくれるって、やっぱりこの計画性のなさというか、いわざるを得ないですよ。資材が云々とか、そういうふうにいいますけれど、それはもう駐車場をつくる段階で、もちろんわかっている話であって、しっかりそういった対応も厳しくしていただきたいと思いますよ。
 この五街区にでき上がる駐車場、これを、例えば市場関係者にもしっかりと使ってもらえるような、そういう体制づくりというものを万葉倶楽部さんにもしっかりとお伝えをしていただいて、やはり五階建ての大きなものができるわけですから、この駐車場、四百台ぐらいですか、あるわけですから、しっかりそこも市場関係業者の皆さんが使い勝手がいいような、そういう駐車場として使えるような、万葉倶楽部にも働きかけをしていただきたいことを要望して、私の質問を終わります。

○両角委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○両角委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で中央卸売市場関係を終わります。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時四十九分休憩

   午後三時五分開議

○両角委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 これより産業労働局関係に入ります。
 付託議案の審査を行います。
 第百八十四号議案、令和元年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、歳出、債務負担行為、産業労働局所管分及び第二百十五号議案を一括して議題といたします。
 本案については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求をいたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○坂本総務部長 去る十一月二十八日の当委員会で要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の経済・港湾委員会要求資料の表紙をおめくりください。
 目次でございます。資料は一項目でございます。
 一ページをごらんください。一ページから二ページにかけて、ソーシャルファームに係る調査、検討の経過を日付順にお示ししてございます。
 以上で要求資料の説明を終わらせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○両角委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○白戸委員 私からは、まず先般の相次ぐ台風による農業への被害と、その復旧に関する補正予算について伺います。
 今回の台風十五号は風台風、十九号は雨台風などといわれていたようですが、まず、それぞれの被害状況について伺います。

○上林山農林水産部長 台風十五号は、伊豆諸島を縦断する経路をとり、その強風のため島しょ地域の特産品であるレザーファンやルスカスなどの切り葉を生産するパイプハウスが倒壊するなどの被害が発生いたしました。
 台風十九号は、多摩地域などを中心とした大雨により、用水路や堰の損壊に加え、八王子市などでは河川の氾濫等による畑の冠水や土砂流入が見られ、また、奥多摩町ではワサビ田の石垣が流出するなどの大きな被害が発生いたしました。

○白戸委員 いずれの台風においても、甚大な農業被害が発生しているようです。
 こうした被害への対応として、今回の補正予算案に農地及び農業用施設災害復旧の経費約五億円が計上されていますが、その内容について伺います。

○上林山農林水産部長 今回の台風被害を受け、区市町村への要望調査を実施し、復旧に必要な経費を補正予算案として計上いたしました。
 具体的には、ワサビ田の石垣の積み直しや損壊したモノレールの修繕、畑へ流入した土砂の撤去と栽培のための土の搬入、取水堰の損壊に対する補修などの復旧費用として約三億一千万円、また、損傷したパイプハウスの撤去やその後の営農のための施設の再建など農業用施設等の復旧費用として約二億円を計上いたしております。

○白戸委員 被害を受けました農地やパイプハウスの復旧に必要な経費が、今回の補正予算に計上されているということがわかりました。聞くところによりますと、八王子では数億円規模の被害があったようですが、地元自治体に加え都の補助があるということで、非常にありがたいという声も聞いております。
 その一方で、丹精込めて栽培している農作物に被害を受けた農業者は、営農の継続を諦めてしまうということも心配されております。
 東京の農業を一刻も早く復旧させるためには、農業基盤の復旧や生産施設の再建などとあわせ、被災した農業者へ寄り添ったきめ細かなフォローが大切だと思いますが、都の取り組みについて伺います。

○上林山農林水産部長 被災後の応急復旧に向けて、都の普及指導員が個々の農家を訪問し、冠水した畑の排水や損傷したパイプハウスの修繕方法などを助言するとともに、台風通過後には、農作物の傷みなどにより病害虫が発生しやすいことから、農薬の散布方法などについて指導を行っております。加えて、生産の再開に向けて、大雨により流出した畑の養分を補うための追加の肥料散布や被災後の新たな作付に適した品目などについて、指導や助言を実施しております。
 被災された農業者の方々のニーズを踏まえ、それぞれの状況に応じたきめ細かな支援を行うことで、災害からの早期復旧を図ってまいります。

○白戸委員 施設の復旧などのハード面の支援だけではなく、現場へ赴いて丁寧な指導の実施など、いわゆるソフト面の支援もしているということが理解できました。
 今般の台風による被害を受け、途方に暮れている農業者も多いと思います。引き続き、区市町村などと連携し、補正予算を活用したスピーディーかつ的確な対応を進めるとともに、現場の農業者に寄り添った支援により、早期の経営再建を後押ししていただくよう要望しておきます。
 続きまして、就労支援策について伺います。
 このたび、都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例が提出されました。
 ソーシャルファームについては、小池知事が衆議院時代に超党派の議連を立ち上げてこられたこと、また、都知事就任直後の所信表明演説の中でも触れられたことなど、大きな思い入れを持って取り組まれてきた政策の一つと理解しております。
 都民ファーストとしましても、昨年の第二回の定例会、第三回定例会と、代表質問を通じて質疑をしてきましたが、ことしの一月には、会派内に、弁護士や精神科医、元企業経営者、元個人事業主、研究者、基礎自治体議員時代に地域密着で就労支援に取り組んできた議員などによるプロジェクトチームを立ち上げまして、伴走型の制度構築を行うべきことなどを主張してきましたが、私たちも今回の条例の提案を歓迎しているところです。
 ソーシャルファームについては、ダイバーシティー、ソーシャルインクルージョンを実現するためにも極めて重要なものと受けとめてきました。
 国においても、人口減少と少子高齢化が急速に進展する今後の社会において、一億総活躍時代の旗を上げ、意欲や能力を生かして生き生きと社会で活躍できる国の姿を描こうとしています。
 重要なことは、こうした中で、国に先駆け、都がソーシャルファームを柱に捉えた取り組みを始めることです。意欲的で新規性が高く、チャレンジングな取り組みだとは思いますが、これにより、福祉から経済領域へ働き方をシフトできる社会環境をつくることができます。
 人口減少社会、少子高齢化の進む社会において、ソリューションを提示することは決して簡単なことではありませんが、PDCAサイクルを回し、試行錯誤を繰り返しながら知恵を集め、工夫し、あるべき姿について模索していかなければならない取り組みがソーシャルファームです。
 都がこの取り組みを進めていくことを評価するものです。質疑を通して、今後どのように取り組みを進めていくべきか、また、どのような課題があるのかを明らかにしていきたいと思います。
 まず、今回提案されている条例案やソーシャルファームについて検討してきた経緯を伺います。

○篠原雇用就業部長 昨年九月の都議会第三回定例会におきまして、知事が、ソーシャルインクルージョンの考え方に基づき、都民の就労を応援する新たな条例の検討を表明したことを受けまして、都は十一月に就労支援のあり方を考える有識者会議を設置いたしました。この有識者会議では、ほぼ一年をかけまして、障害のある方、生活困窮者、ひとり親、児童養護施設の退所者、刑務所出所者、ひきこもりの方などへの就労支援のあり方やソーシャルファームについて議論をしてまいりました。
 会議の各回では、テーマごとに、知見を持つ専門家や現場で就労支援を行っている方などにプレゼンテーションをしていただいておりまして、ソーシャルファームについては、第二回の会議で、知見を持つ委員からプレゼンテーションをしていただいた上で、議論を行ってきたところです。
 この会議での議論とあわせまして、障害のある方の家族の団体やひきこもりの方への支援を行っているNPO法人など、さまざまな関係団体を訪問し、現状や行政の支援について意見を伺ってまいりました。さらに、多くのソーシャルファームが活動しているドイツと韓国を訪問し、調査を行いました。
 また、本年八月には、有識者会議での議論や聴取した意見を踏まえて条例の基本的な考え方を取りまとめて、パブリックコメントを実施しております。本年十一月には、有識者会議から、最終的な報告書が提出されたところでございます。

○白戸委員 就労支援のあり方やソーシャルファームについて、一年をかけて有識者会議での議論やさまざまな団体を訪問しての調査など、しっかりと検討を行った上で条例案を策定したことが確認できました。一部では議論が不十分なのではないかという意見もありますが、これだけの時間をかけて丁寧に検証し、それを踏まえて提出された条例案であると受けとめさせていただきます。
 次に、ただいま、パブリックコメントを実施したという答弁がありましたが、ソーシャルファームに関して、パブリックコメントでどのような意見があったのか伺います。

○篠原雇用就業部長 八月に開始しましたパブリックコメントにおきましては、ソーシャルファームは、支援策として大きな一歩であり、全国に広がることを期待する、今の日本が抱える問題のかなりの部分への有力な対応策である、経済と福祉の課題を統合的に解決する効果的な施策であるなどソーシャルファームに期待する意見が多数寄せられております。

○白戸委員 ソーシャルファームは就労に困難を抱えるさまざまな方々の活躍の場となる新たな枠組みであり、その創設や活動への支援は、全国で初の取り組みとなります。パブリックコメントの結果を見ても、都民からの期待は大きく、この取り組みが注目されていることがわかりました。ぜひともこの東京にソーシャルファームを誕生させ、根づかせていくためにも、局一丸となって取り組むことはもとより、各局とも連携して、都庁一丸となって全力で取り組んでいただき、一つでも多くのソーシャルファームが誕生するようにお願いいたします。
 では、今回提出された条例案について伺っていきます。ここで、改めて、今回のこの条例案提出の意義について伺います。

○篠原雇用就業部長 この条例案は、ダイバーシティーの実現に向けまして、ソーシャルインクルージョンの考え方に立って、希望する全ての都民の就労を支援するということを目的としております。また、施策の面では、これまでも行ってきた都民に対する支援、そして事業者に対する支援の強化を図りますとともに、就労に困難を抱える方に向けてソーシャルファームという新たな枠組みで就労を支援することとしております。
 こうした都の就労支援の考え方や施策展開の基本的な方向を明確にお示しすることが、今回、条例案を提出する意義と考えております。

○白戸委員 ソーシャルインクルージョンの考え方に立って都民の就労を支援する。これが今回の条例において重要なポイントだと思います。条例制定後には、この考え方が広く都民の皆様に広まるよう、普及にも努めていただきたいと考えております。
 次に、就労に困難を抱える方について確認します。
 この条例案では、第二条で就労困難者の定義がありますが、どのような方が対象になるのか具体的に示されていません。有識者会議でも、就労に困難を抱える方の対象は幅広く、その定義については議論になっていました。
 有識者会議の議論を踏まえ、就労困難者をどのような方と考えているのか伺います。

○篠原雇用就業部長 有識者会議の報告書では、就労に困難を抱える方の例は数多くあり、範囲を定めることは容易ではない、条例では具体的に列挙するのではなく、概括的な表現にとどめ、今後実施するそれぞれの支援事業において、各事業に適した対象者を具体的に定めていけばよいと提言をいただいております。
 これを踏まえまして、条例案では就労困難者につきまして、就労を希望しながら、さまざまな事由により就労することが困難である者であって、その者の配慮すべき実情等に応じた支援が必要な者と定義しております。
 今後実施するそれぞれの施策におきまして、具体的な対象を定めてまいります。

○白戸委員 有識者会議の報告書のとおり、私も、就労に困難を抱える方を一つ一つ具体的に列挙するのは非常に困難であると思います。また、就労に困難を抱える方はさまざまな方が想定されますが、条例で具体的に列挙することで、かえって制限されてしまうことも考えられます。
 条例は包括的にとどめ、個々の施策ごとに対象となる方を定めていくことで、施策の実効性も高まり、その施策を必要とする方に届けることができるのではないかとも思います。
 次に、第一条で規定している目的についてお聞きします。
 第一条の中では、就労を希望する全ての都民への就労の支援が示されています。この規定で、あえて就労を希望するとした意図について見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 就労の支援は、求職者本人の働きたいという意欲が前提でございまして、本人の意向に反して就労を押しつけるということがあってはならないと考えております。このため、この条例案では就労を希望する全ての都民に対する就労の支援について規定したものでございます。
 なお、さまざまな事由から、就労の意欲を失っている方などに対しまして就労に向けた意欲喚起を図るなどの後押しを行うことも重要な取り組みと考えております。

○白戸委員 就労支援は、就労に意欲のある方に対する環境整備のための施策だと理解しております。そして、ケースによっては、福祉政策とも連携した支援が必要になってくるでしょう。
 例えば、ひきこもりの方の場合、無理に外に出して働かせようとすべきではありませんが、一方で、いざ本人が外に出て働きたいとなったときに、いきなり本格的に働き始めることに困難があるケースもあります。また、障害者については、就労継続支援A型、B型等の事業所があり、そこで生き生きと働いている方もいらっしゃいます。本人の意向を第一に考え、本人の意向に沿わない就労支援とならないようにする意図であることがわかりました。
 次に、条例第三条の基本理念について確認します。
 SDGsの目標の一つに、ディーセントワークの促進があります。その人らしく、やりがいを持った働き方です。小池都政においては、三つのシティーの一つであるダイバーシティーの実現を目指してさまざまな政策が行われてきました。
 例えば、女性活躍に向けた待機児童対策や子育て支援政策、受動喫煙防止、障害者差別解消条例、東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例、児童虐待防止条例、犯罪被害者支援についても条例化が検討されています。
 本条例についても、雇用就業の分野における重要な社会政策であると受けとめています。
 そこで、この条例の制定によって、ダイバーシティーの実現にどのように寄与していくのか、見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 条例案では、ソーシャルインクルージョンの考え方に基づき、就労を希望する全ての都民の就労を支援することとしております。
 中でも、就労に困難を抱える方に対しては、その実情に配慮した支援を行うとともに、就労の新たな枠組みであるソーシャルファームの創設と活動を促進することを規定しております。
 今後、こうした就労支援施策の充実強化によりまして、多くの方の個性と能力に応じた就労を実現し、多様な方々が生き生きと働き、活躍できるダイバーシティーの実現に寄与していきたいと考えております。

○白戸委員 ぜひともこの条例によってダイバーシティーが実現することを期待したいと思います。
 次に、第八条二項の就労に困難を抱える方への支援についてお聞きします。
 条例案では、就労に困難を抱える方に対しては、その者の配慮するべき実情に応じた支援を行うと規定されていますが、具体的には、どのような支援を行うのか伺います。

○篠原雇用就業部長 就労に困難を抱えている方に向けましては、それぞれの事情を的確に受けとめて、それに合った支援を行うということが重要でございます。
 今後、しごとセンターにおきまして、こうした方々のさまざまな就労の相談に専門スタッフが対応し、適切な支援につないでいけるよう、ワンストップの相談体制の整備について検討してまいります。

○白戸委員 就労に困難のある方への支援というのは、一人一人抱える状況は異なると思いますので、今ご答弁いただいたように、まず的確に受けとめる、そしてその人に合った支援へとつなぐことが重要だと考えますので、ぜひ就労に困難のある方に向けた相談体制の整備について取り組みの強化をお願いしておきます。
 さらに、就労を希望しながらも職につけていない方の中には、ご家族の事情が理由となっているケースもあります。そうした方への家族を含めた支援についてもあわせて検討をお願いしておきます。
 次に、第九条の事業者への支援について確認します。
 条例案では、事業者が実施する働きやすい職場環境の整備などについては、就労に困難を抱える方の配慮すべき事情に応じて行われるよう、都が支援すると規定されております。
 例えば、障害者を雇用する事業者の皆様には、この配慮すべき事情について丁寧に対処いただき、職場環境の整備などを行う必要がありますが、それに対する都や専門家からの支援も必要です。
 条例で規定した就労に困難のある方の雇用に関して、都が事業者へ行う支援とは、どのようなものか伺います。

○篠原雇用就業部長 就労に困難を抱える方を雇用する事業者に対しましては、困難を抱える方が働きやすい職場環境づくりが進むように適切に支援していくことが必要でございます。
 都はこれまでも、中小企業などに対しまして、障害者を雇用するに当たっての留意点や、障害者に向けた仕事の切り出しなどのノウハウを提供していくため、セミナーの実施や専門家の派遣などを行ってまいりました。
 今後、就労に困難を抱える多様な方々を対象として、こうした取り組みの拡充を図ってまいります。

○白戸委員 事業者にソーシャルインクルージョンの理念や就労に困難のある方の雇用について理解していただくためには、都によるきめ細かな支援が必要だと思いますので、しっかりと支援に取り組んでいただけるよう要望しておきます。
 次に、今回の条例案で施策の大きな柱として位置づけられているソーシャルファームについて確認していきます。
 ソーシャルファームとは、海外では就労に困難のある方を雇用する場として普及しています。国内では、ソーシャルファームについて法的根拠がありませんが、都が本条例で施策の柱としてソーシャルファームを位置づけたことは、大きな一歩として評価すべきと考えます。
 そこで、なぜ、このソーシャルファームという新しい枠組みを取り入れ推進していこうとしているのか、改めて伺います。

○篠原雇用就業部長 条例案におきましては、事業からの収入を主たる財源として運営しながら、就労困難者と認められる者を相当数雇用し、その職場において、就労困難者と認められる者が他の従業員とともに働いている社会的企業をソーシャルファームとしております。
 ソーシャルファームという新しい枠組みを創設することによりまして、これまではさまざまな事由によって就労が困難であった方々においても雇用の場が広がり、就労の可能性が拡大していくものと考えております。

○白戸委員 ソーシャルファームを新しい枠組みとして、この条例に取り入れられた理由というのがわかりました。また、どういった企業がソーシャルファームなのか、条例の中で示されていることも確認できました。
 次に、我が会派が一貫して求めてきたソーシャルファームの認証についてお聞きします。
 さきに提出した会派からの要望書の中でも、ソーシャルファームの活動を公的に後押しするために、承認を行うことを条例に規定するとともに、具体的な制度化を急ぐよう求めたところです。
 提出された条例案では、第十一条にソーシャルファームを認証することがしっかりと盛り込まれています。そこで、ソーシャルファームを認証する意義、目的を伺います。

○篠原雇用就業部長 都が、ソーシャルファームを認証することによりまして、認証を受けたソーシャルファームは社会的な信用が高まり、その事業活動がより進めやすくなるものと考えております。
 また、一定の基準を満たしているソーシャルファームを認証することは、ソーシャルファームの事業活動などを質的に保証することでございまして、これが質の高いソーシャルファームの普及にもつながると考えております。

○白戸委員 ソーシャルファームの認証は、東京にソーシャルファームを根づかせていくための重要な取り組みであります。これがキーポイントとなるといっても過言ではないと思いますので、着実な取り組みをよろしくお願いします。
 次に、ソーシャルファームへの支援についてお聞きします。
 今年度の予算特別委員会において、我が会派のソーシャルファームPTの座長を務める伊藤都議が質問の中で、単に補助金を出す手当て型の制度ではなく、認証保育所制度を引き合いに出しながら、官民で一緒に走って、一緒に仕組みをつくっていく、民間と一緒にやっていく伴走型の制度設計を念頭に条例づくりを進めるように求めたところ、知事から、そのような意見も参考にしながら検討を進めていく旨の答弁がありました。
 そこで、今後のソーシャルファームへの支援について伺います。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームの普及に向けましては、ソーシャルファームの立ち上げから一定の期間、都として支援していくことが必要と考えております。
 創設されたソーシャルファームの事業や経営の状況を踏まえながら、自律的な経済活動に向けまして、適切に財政支援を行うことや、経営上のアドバイスをきめ細かに行うなど、ソーシャルファームの事業が円滑に軌道に乗るように効果的な支援策を検討してまいります。

○白戸委員 伴走型での支援でソーシャルファームの普及を進めていくことは、今後も求めていきたいと思いますので、引き続き取り組みをよろしくお願いします。
 次に、条例案の第十一条で規定されました、ソーシャルファームに関する指針についてお伺いします。条例案によりますと、ソーシャルファームの認証基準や支援策は、指針などを策定して定めるとしています。
 今後、指針の策定に向け、どのように検討を進めていくのか伺います。

○篠原雇用就業部長 条例でもお示ししましたとおり、ソーシャルファームは自律的な経済活動を行う社会的企業でございまして、認証基準や支援策の策定に当たっては経営の視点が欠かせないものと考えております。
 このため、指針策定に向けましては、今後、企業経営等の専門家などによる検討会を新たに設置いたしまして、ソーシャルファームの具体的な認証基準や、支援策の詳細について検討を進めてまいります。
 こうした検討を経て、指針等を定めこれに基づき着実に支援を行うことによりまして、ソーシャルファームの創設と活動を促進してまいります。

○白戸委員 ソーシャルファームの認証基準づくりは、創設や普及を図る上で非常に重要なものとなりますので、策定まである程度の時間はかかると思いますが、検討を着実に進めていただくようお願いします。
 最後に、ソーシャルファームを東京に誕生させ根づかせていくための施策の展開について局長の決意を伺います。

○村松産業労働局長 今回、提案しております条例案では、誰もが生き生きと活躍できるダイバーシティーの実現に向けまして、ソーシャルインクルージョンの考え方に立って、希望する全ての都民の就労を支援していくこととしております。
 この条例を踏まえ、就業相談や職業訓練など、これまで実施してきた就労支援施策のさらなる充実を図るとともに、日本では新しい枠組みとなりますソーシャルファームの創設や活動の促進を通じて、就労に困難を抱える方々の雇用の場の拡大に向けた取り組みを進めていきたいと考えております。
 ソーシャルファームにつきましては、パブリックコメントにおきましても、都民から期待する意見が多数寄せられており、都といたしましては、実効性のある支援策を早急に構築しまして、その創設や活動を後押ししてまいりたいと考えております。
 このため今後、具体的な認証基準や支援策を盛り込んだ指針を策定し、東京においてソーシャルファームを誕生させ根づかせることができるよう、全力を挙げて取り組んでまいります。

○白戸委員 ありがとうございます。
 これまで、さまざまな角度から確認させていただき、非常に重要で、そして、国内においては先進的な施策であることが確認できました。ぜひ十分な予算を確保し、都民や、そして事業者の期待を喚起して東京に根づかせていただけるよう要望し、質問を終わります。

○中山委員 私から、まず初めに補正予算につきまして質疑をさせていただきたいと思います。
 このたびの一連の台風によりまして、農業関係におきましては全国で約三千億円を超える大きな被害が発生いたしました。被害状況等を鑑み、国は今回の災害を激甚災害に指定して、新たな支援制度などを立ち上げたと聞いております。
 都は、今回の補正予算で農業被害の復旧に五億円を計上しておりますけれども、こうした国の制度などをどのように活用していくのか、まず基本的なことからお伺いしたいと思います。

○上林山農林水産部長 国は、今般の災害を受け、被災農業者向けに補助上限等を拡充した強い農業・担い手づくり総合支援交付金を創設しております。
 パイプハウスなど農業生産施設の再建につきましては、この新たな交付金を活用することとし、約二億円を計上しております。また、農地など農業基盤の復旧については、国が従前より実施している農地・農業用施設災害復旧事業を活用することとし、約三億一千万円を計上しております。

○中山委員 一般的に、被害の復旧に国の事業を活用する場合、一日も早い復旧に取り組みたいわけですけれども、交付決定がなされてからというのが原則的なものだと思います。この点、代表質問でも取り上げさせていただきましたけれども、柔軟な対応をして、幅広く救える対象を広げていくということが大事だと思います。一日も早い復旧工事の実施を求める農業者も多いと思います。
 速やかな経営、農業の再開のためには、事業の決定を待つことなく工事に取り組めるということが大事な点だと思いますけれども、こうした要望を受けとめて柔軟な対応を図るべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○上林山農林水産部長 一般的に国の補助事業は、交付決定後に事業着手することが原則となっております。
 しかし、災害復旧におきましては、二次災害の防止や公共性の高い農道の復旧など、緊急的な対応が必要な場合には、決定を受ける前でも、被害状況の写真など審査に必要な書類を残すことで、応急工事に着手することが可能とされております。
 さらに、国におきまして新たに創設された交付金では、パイプハウスなどの生産施設について、速やかな経営再建が必要であることから、被害状況の写真など審査に必要な書類を残すことで、工事に着手することが可能となりました。
 区市町村と連携してこうした柔軟な運用制度を農業者の方々にきめ細かく周知し、活用を促すことで、災害からの早期復旧を図ってまいります。

○中山委員 ぜひ、そうした柔軟な対応をしていただく上で、前向きなご配慮をお願いしたいと思います。中には、ケアレスミス等で書類等に不備が生じる場合もあると思いますけれども、意図的な改ざんとか、そういうものでない限りは、柔軟に対応していただいて、事業目的がきちっと果たされるようにお願いをしたいと思います。
 続いて、就労支援に関する条例の制定についてお伺いしたいというふうに思います。
 代表質問におきましても、都が創設や活動の促進を図ろうとしているソーシャルファームについて、都内の経済活動に合った認証基準を作成することや、経営の自立を見届けるまでの支援を行うことなど、幾つかの提言をさせていただきました。また、ソーシャルファーム以外のこれまでの就労支援策につきましても拡充すべきということを述べさせていただきました。
 本日の経済・港湾委員会でも、この二つの観点に加え、さらに、この条例の具体的な事項についても確認をしていきたいと思います。
 まず、条例案全体の構成について確認いたします。
 全体としては四章構成になっていまして、中でも、第二章がこれまでも取り組んできた雇用就業施策について規定した章、第三章は今後取り組んでいく新しい施策であるソーシャルファームについて規定した章立てとなっております。
 第二章も第三章も、都が実施する施策という面では共通しているため、同一の章にするという選択肢もあったはずでありますけれども、今回、章を分けた理由についてお伺いをしたいと思います。

○篠原雇用就業部長 条例案に規定したソーシャルファームは、就労に困難を抱える方の雇用を創出する新たな枠組みでございまして、その創設及び活動を促進する施策は、従来から実施してきた求職者や事業者への支援施策と区分する必要がございます。
 このため、従来からの施策を規定している第二章とは別の章として整理いたしまして、ソーシャルファームの支援の目的、認証制度、指針の策定などを規定したところでございます。

○中山委員 新しい施策として、都がソーシャルファームを重視していることはよくわかりました。
 また、独立した章立てをとったことで、都民にとってわかりやすいものとなることを考えたという産業労働局のお考えは、説明として理解したわけでございます。
 しかし、章立てを分けること自体は、是非は分かれるんだろうと思います。既存の事業を担ってきた方々からは、まだ実態がないソーシャルファームを特別視しているのではないかというお声もあるかもしれませんし、いろいろあると思います。
 ただ、これはやはり結果で勝負していくしかない。ソーシャルファームがきちっと運営されて創設されていくということ、それから既存の施策の充実もしっかり図られるということが両方できて初めてご納得いただけるものだろうと思います。新しい取り組みを規定する以上、それなりの配慮をしなければいけないということは、当然、理解した上で申し上げておきたいというふうに思います。その上で、第二章では、これまで実施してきた雇用就業施策の基本となる事項が規定されております。この条例の制定を契機に充実が図られていくものと考えます。
 そこで、今後この条例によってどのような分野の施策の充実を図ろうとしているのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。

○篠原雇用就業部長 現在の雇用就業行政におきましては、出産等で離職した女性の再就職支援の強化や、就職氷河期世代の方など非正規雇用や無業者などで経験やスキルを持たない方への支援、また、障害者雇用についてノウハウを持たない中小企業での雇用促進など対応すべき課題がさまざまございます。
 こうした女性、就職氷河期世代、障害者などの分野におきまして、今回提案した条例の考え方を踏まえまして、きめ細やかな就労支援を進めていくことが重要と考えております。

○中山委員 ソーシャルファームの取り組みだけでなく、これまでの雇用就業施策につきましてもしっかりと取り組んでいただいて、充実を図っていただくよう要望させていただきます。今後、第一回定例会の本会議質疑、予算特別委員会の質疑等で具体的に充実の内容について議論を深めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 今、障害者雇用のお話がございましたけれども、就労に困難のある方への支援の中でも、特に障害のある方の雇用につきましては、近く法定雇用率の引き上げが予定されていることもありまして、条例案に規定されたとおり、事業者が行う雇用や働きやすい環境整備に対して、都の積極的な支援が必要かと考えております。
 本条例を契機とした障害者雇用の促進に関する施策の強化の仕方について見解をお伺いしたいと思います。

○篠原雇用就業部長 先ほど述べましたとおり、障害者を雇用するノウハウを持たない中小企業への支援が課題の一つでございまして、さらに、今お話しいただいたように、法定雇用率が二・二%から二・三%となることで、雇用義務が発生する企業がさらに増加するという状況もございます。
 このため、障害者を初めて雇用する企業に対しまして、アドバイザーによる助言のもとで障害者の採用から定着まで一貫した伴走型の支援を行うことについて検討してまいります。

○中山委員 都は、企業に障害者雇用の専門家であるアドバイザーを派遣して、仕事の切り出しなど、企業のニーズに応じた支援をしております。前にも申し上げたかもしれませんけれども、このアドバイザーが私は鍵になるというふうに思っております。ぜひともアドバイザーの確保やその育成について、具体的に取り組みを強化していただきたい。この点を要望しておきます。
 特に、このアドバイザーにつきましては、処遇をしっかりと整えないといけないと思います。前も申し上げたかもしれませんが、ある面では、AIの時代にはなくなっていくような職務内容というのはどんどんあると思います。ただ、こうしたアドバイザーの仕事というのは、AIの時代でこそ、AIにはとってかわれない仕事ですから、そうしたものをきちっとやれるという人の働きぐあいというものを評価する仕組みをつくらないと、この分野に有望な人材は集まってきません。また、育っていかない。
 そういう面で、私は、ある面では出来高払いとか、基本的なことは保障した上ででしょうけれども、それぐらいのもので評価していかないと、優秀な人材がこういった分野で活躍するということは望めないと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 また、障害者を雇用し、仕事を請け負いたいと考える企業、これは福祉作業所なども含めてですけれども、それと、仕事を切り出して発注したいと考える企業との間の仲介、コーディネート、マッチング、これを行うことも必要だと考えております。これにより、給料、工賃のアップが図られますし、またソーシャルファームの創出も図られていくと。社会貢献したいと考える企業の思いにも応えられます。
 そういう面では、単なる計算をするとか、右のものを左に持っていくとか、そういった単純な仕事ではなくて、コーディネートの仕事ですから、この点もよく福祉保健局と連携して検討課題としていただいて、特に中小零細企業にとっては、障害者を雇用したい、仕事を発注したいといっても、なかなか単体では見合った取り組みというのはできにくい。そうした事柄を都がどういうふうに公的に関与してまとめ上げていくか、そうしたことがとても大事だと思いますので、検討課題としていただくことを要望させていただきます。
 次に、ソーシャルファームについて伺っておきます。
 ソーシャルファームは、ヨーロッパや韓国などで現実に普及しており、障害のある方や長期失業者、刑務所などの出所者などの就労が困難な方々に対して、他の従業員と一緒に仕事をする場を提供する組織として発展してまいりました。
 都においては、ドイツと韓国を訪問調査して条例案の作成などに生かしたと伺っております。
 そこでまず、ドイツや韓国ではソーシャルファームがどのような会社で、どのような状況にあるのか、お伺いしたいと思います。

○篠原雇用就業部長 ドイツのソーシャルファームでございますが、障害者を全従業員のうち三〇%から五〇%雇用する社会的企業でございまして、障害者の雇用とあわせて職業訓練や一般企業への就職支援を実施しているソーシャルファームもございます。ドイツ全体では約九百社ございまして、約二万八千人の障害者が働いております。
 次に、韓国のソーシャルファームでございますが、障害者、高齢者、低所得者、ひとり親など、就労に困難を抱える方を全従業員のうち五〇%以上雇用する社会的企業でございます。韓国全体では約二千三百社ございまして、約三万人の就労に困難を抱える方が働いている状況と聞いております。

○中山委員 今、ご報告ございました。見てきたことはとてもすばらしいことだと思いますし、今後も生かしていただきたいと思います。
 ドイツや韓国では、国が法律をつくってソーシャルファームの普及を進めているということかと思います。まさに国による支援があってこその取り組みであるという見方も成り立ちます。
 ドイツと韓国では、ソーシャルファームに対してどのような施策を講じて、その創設や運営をサポートしているのか、この点を把握しているのか、この内容についてお伺いしたいと思います。

○篠原雇用就業部長 ドイツにおきましては、ソーシャルファームを創設する段階におきまして、設備導入費の補助や専門家のコンサルティングなどが行われております。また、運営への支援といたしまして、障害者等の人件費への補助や経営コンサルティングなどが行われております。
 韓国におきましては、国としての認証制度が整備されておりまして、ソーシャルファームを創設する段階において、マーケティングや技術開発などへの補助がございます。また、就労に困難を抱える方の人件費への補助や経営コンサルティングなどが行われております。さらに、公共機関によるソーシャルファームの製品、サービス等の優先購入が行われているとのことでございます。

○中山委員 今お話があったように、当然、優先的な発注とか、そうした点は東京都でもすぐ取り組めるようなところはたくさんあるわけですけれども、ドイツや韓国等でも、障害者の方への人件費の補助というのがありまして、なかなか純粋な経済活動だけで、健常者と一緒に障害者の方々を半分雇って、最低賃金もクリアしてというのは非常に高いハードルというところが現実なんだろうと思います。そうした点も踏まえて、今後の支援のあり方というのを具体的に検討していかなければいけない、また、国にも協力を求めていかなければいけないと思います。
 その上で、ドイツと韓国では、国が法律を定めて支援することによってソーシャルファームの普及を進めてきたのに対し、都は、都だけの条例によって独自にソーシャルファームの創設を進めていこうとしております。
 ソーシャルファームによって障害のある方などの働く場が広がることは歓迎すべきでありますが、現在の日本では、多くの福祉作業所などで最低賃金に満たない工賃でしか仕事を請け負えない状況があるということは代表質問でも指摘させていただきました。
 ソーシャルファームの普及を進めることは容易なことではありません。創設されたソーシャルファームの経営が軌道に乗るように、しっかりとした支援が不可欠と考えます。
 加えまして、ソーシャルファームは日本で初めての試みであります。支援の期限や内容は、それぞれの状況を踏まえてフレキシブルに対応することも必要なのではないでしょうか。
 都のソーシャルファームの普及に向けた支援について、基本的な考え方、見解をお伺いしたいと思います。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームへの支援といたしましては、創設に向けた設備導入への支援や、事業を軌道に乗せるための一定期間の運営費の助成、事業の発展を後押しする経営上のアドバイスの実施などについて検討をしております。
 それぞれのソーシャルファームの経営の状況などを踏まえました効果的な支援となるように検討してまいります。

○中山委員 ソーシャルファームは新しい取り組みでありますし、試行錯誤で進めていく部分もあるかと思いますが、ぜひ責任のある支援を行っていただくようお願いします。責任のあるということは、代表質問でも申し上げましたが、しっかりひとり立ちをさせるということが目的で、何年と区切って支援するということは、ある面では、既にノウハウが確立した取り組みの中では十分あり得ると思いますけれども、これから新しくソーシャルファームを生み出すわけですので、何年間しか支援しませんよ、あとは自分でやってくださいということで、果たして経営が成り立つのかということは大変な問題です。
 かといって、いつまでもだらだらというわけにはいかないというのは当然わかりますけれども、だからこそ、目標値は定めながらも、その中で自立した経営が成り立つように、取り組む側でやれることをやっているんだから、あとはあなたの責任ですよということじゃなくて、責任を持って自立させるということがとても大事なことだと思います。
 そうした面でも、先ほどのアドバイザーと一緒で、そうした取り組みに当たる方々の処遇、働きぐあいというのをきちっと評価してあげないと、私はソーシャルファームの推進というのはなかなか難しいのではないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、社会情勢の変化に対応した施策の見直しを絶えず行うという点、この点も代表質問で指摘させていただきました。事業の実施状況をきめ細かく検証して、次の新しい取り組みへと生かしていくことが大切です。
 条例案には施策の実施状況等についての検証が盛り込まれておりますけれども、これはどのような考え方によるものなのか、お伺いをいたします。

○篠原雇用就業部長 就業支援の実効性を高めていくためには、社会情勢や就業ニーズの変化を踏まえながら、施策の見直しを不断に行うことが必要でございます。
 このため、条例案では、就労支援に関する施策の検証に当たっては、関係機関等の意見を聞き、施策に反映するよう努めることを規定しておりまして、今後、こうしたPDCAサイクルによりまして、施策のブラッシュアップを進めてまいります。

○中山委員 PDCAは、ソーシャルファームだけでなく、今回の条例で対象としている既存施策も含めた就労に困難を抱える方々の就労支援策全体に対して適用していただきたいというふうに思います。
 既存の福祉作業所からソーシャルファームに障害者の方々がどんどん移転していくと、これはまだソーシャルファームが一個もできていないですから、先の話ですけれども、軽度の知的障害者の方とかの取り合いになっては、何のためのものなのかということになるんではないかと思います。
 就労困難者の方の定義をつけることは難しいということは私もよく理解します。能開センターに通っている人に対して、あなたは就労困難者ですよと外形的にいうのはいかがなものかと思いますし、また、何回も就職、退職を繰り返す方々に対して、あなたは五回目ですから、これから就労困難者ですと外形的に定めるのもいかがなものかとは思います。したがって、本人の自覚といいますか、そういうものも大事だと思います。
 ただ、その上で、ソーシャルファーム自体が、公的な支援を傾けるわけですから、何をもってソーシャルファームとするのかということに関しては、やはり外形的に決めていかざるを得ないので、やはりこの点、障害者の方々ももちろんそうですけれども、先ほど来話が出ていました刑務所などの出所者の方であるとか、あるいはさまざまな理由で、履歴書の中で前歴というところで充実したものを書けないいろんな状況があって就労に困難を抱える方々といったものに対しても、ソーシャルファームがきちっと対応していくように見届けていただきたいというふうに思います。
 冒頭の質問でも取り上げましたけれども、今回の条例案では、ソーシャルファームという新たな枠組みについての規定があり、そこに目が行きがちでありますが、それとあわせて、これまで取り組んできた雇用就業施策についても規定されております。
 これまで取り組んできた施策全体の底上げが重要でありまして、充実強化を図るべきと考えますが、条例を踏まえた今後の施策の展開につきまして、局長の決意をお伺いしたいと思います。

○村松産業労働局長 経済雇用情勢が好調な中にありましても、非正規での不安定な就労を余儀なくされている就職氷河期世代の方や、出産等で離職し再就職を目指す女性などに対する支援、また、質疑の中でもお話がありましたけれども、法定雇用率の引き上げを見据えた障害者雇用の促進など、都内の雇用就業対策をめぐりましては多くの課題が存在しております。
 今回提案しております条例は、就労を希望する全ての方が、その個性や能力に応じて働けるようにすることを目標としておりまして、そのためには、都がこれまで取り組んできた施策をさらに強化し、こうした方々の実情に配慮したきめ細かな就労支援を展開していく必要があると考えております。
 今後、都といたしましては、この条例を踏まえ、社会経済状況の変化や多様な雇用就業ニーズに的確に対応していくため、これまで実施してきた施策のレベルアップを図ることに加えまして、ソーシャルファームを普及させ、就労に困難を抱える方の雇用機会の拡大を図るなど、新たな取り組みもあわせて展開し、国や区市町村とも連携しながら、雇用就業施策に一丸となって取り組んでまいります。

○中山委員 今、局長からもすばらしい決意を聞かせていただきましたので、ぜひそれを実現していただくよう、団結して取り組んでいただきたいと思います。
 先ほど申し上げました福祉作業所などのお仕事の安定と工賃アップ、そうした事柄も、ソーシャルファームの取り組み全体を通じて、産業労働局としてもいろんなさまざまな業界団体と連携しながら、公的に関与していくということを申し上げましたけれども、条例に規定しているソーシャルファームは一つ一つの企業のことですけれども、ある面では社会全体がソーシャルファームみたいなものになっていって、福祉作業所の工賃のアップとか、仕事の安定とか、さらにはソーシャルファームという形で社会的な貢献を果たしながら企業経営をする方々の取り組みが応援されていく、そうしたものが大事だと思いますので、これからぜひよろしくお願いをしたいと思います。
 以上でございます。

○山崎委員 私からも、就労支援に関する条例と補正予算関係について伺っていきたいと思います。
 初めに、まず、就労支援に関する条例について伺います。
 本条例案は、就労支援に関する基本理念や関係者の役割、施策の基本となる事項など、全十四条で構成をされております。第三条の基本理念においては、就労の支援は、都、都民、事業者などが相互に理解を深め、社会の一員としてともに活動しながら支え合うソーシャルインクルージョンの考え方に立って、推進されなければならないとあります。
 相互に理解を深め、ともに活動しながら支え合うという理念は否定をいたしません。大切なことであると思います。しかし、幾ら理念をうたっても、真に求められる実効性のある施策がなければ、それは無力であります。条例ありきの理念ありきで就労支援が行われることがあってはならないのであります。
 さまざまな困難を抱えながらも働きたいとの強い思いを持つ障害者や、がん患者や難病患者の方々などへの実情に合った支援が不可欠であると思います。また、厳しい経営環境の中で雇用を生み出し、賃金を支払う経営者の協力を得るための実情を踏まえた支援も当然求められます。こうした経営者と働く意欲を持つ求職者、双方への実効性ある支援が求められるのであります。
 そこでまず、お聞きをしていきます。
 就労支援の対象となる方々、例えば障害者、がん、難病患者、ひとり親、児童養護施設退所者、刑務所出所者などの方々は、一人一人抱える事情が異なり、一くくりにした支援はできません。条例案では、都の責務という項目の条文の中で、国、区市町村、事業者その他関係機関と連携をして、就労支援策を総合的に実施することが規定されております。
 都は、この責務を果たすべく、庁内はもとより、さまざまな主体と連携をし、就労に困難のある方の実情に配慮した支援に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 就労に困難のある方に対しまして、一人一人の実情を踏まえたきめ細かい支援を行っていくためには、庁内各局との連携に加えまして、これまで以上に多様な機関との連携を図ることが必要でございます。
 このため、都は、住宅、福祉、医療など、都が実施するさまざまな施策と雇用就業施策を関連づけ一体的に展開し、就労支援を効果的に行っていくため庁内の推進体制を構築し、関係局と緊密に連携して取り組んでまいります。
 また、多様なニーズを適切な支援策へとつなげていけるように、ハローワークや区市町村とも連携した効果的な仕組みについて検討してまいります。

○山崎委員 次に、事業者への支援について伺います。
 第三回定例会のこの経済・港湾委員会において我が党が指摘をしたように、厳しい経営環境にある中小企業は、条例案で掲げられた理念には賛同しても、その理念を具体的な行動へと移すことは難しい、これが現実であると指摘をさせていただきました。
 条例案では、事業者に対する支援等という項目の条文が盛り込まれ、都が実施する支援策が規定されております。
 都は、現場の中小企業の実態に配慮した支援を実施すべきと考えますが、見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 中小企業は大企業と比べまして、障害者を初めとする就労に困難のある方を雇用した経験やノウハウが少なく、資金や人材にも制約を抱えておりますことから、実情を踏まえた支援が必要と考えております。
 これまで都は、中小企業などを対象に、障害者の雇用に向けまして、職場体験実習を通じたマッチングの機会を提供してまいりました。また、病気治療と仕事の両立を図るために、社内制度の整備などに取り組む企業に対して専門家を派遣するなど、企業の取り組みを支援してまいりました。
 今後もこうした取り組みを通じまして、中小企業の実態に配慮したきめ細かな支援を実施してまいります。

○山崎委員 続いて、ソーシャルファームについてもお伺いをしていきたいと思います。
 まず、ソーシャルファームと障害者就労継続支援事業のA型、この違いは何か、教えていただきたいと思います。

○篠原雇用就業部長 障害者就労継続支援事業A型の対象が原則として障害者であることに対しまして、ソーシャルファームでは、多様な就労困難な方が対象になるということがまずございます。また、A型事業所が経常的に国庫補助などを受けていることに対しまして、ソーシャルファームでは、事業からの収入を主たる財源として自律的に経営するというような特徴がございます。
 このほか、ソーシャルファームでは、就労が困難と認められるような方が他の一般従業員とともに働いているというような特色を持っております。

○山崎委員 東京都のしごと財団で既に実施している障害者就業支援事業の内容と、現在の執行状況も教えていただきたいと思います。

○篠原雇用就業部長 東京しごと財団では、障害者雇用の促進のため、職場体験実習を通じましたマッチングや、東京ジョブコーチ支援事業などを実施しているところでございます。
 職場体験実習、マッチング事業の平成三十年度の実績になりますが、一千三百十八件でございます。東京ジョブコーチ支援事業の平成三十年度の支援件数は八百件でございます。

○山崎委員 一方、政府の障害者の法定雇用率を平成三十年四月から民間企業は二・二%、国や地方公共団体は二・五%、都道府県等の教育委員会は二・四%と定め、障害者の雇用促進に取り組んでおられます。まだまだ課題はありますが、民間企業において障害者を労働力として雇用する流れが社会に根づき始めていると考えます。
 障害者雇用をめぐるこうした状況を踏まえた上で、東京都は、東京都内においてソーシャルファームを事業化しなければならない必要性と意義をどのように考えているのか、お伺いします。

○篠原雇用就業部長 新たな枠組みでございますソーシャルファームの創設、活動を促進することで、障害のある方以外も含めた就労に困難を抱えるさまざまな方の雇用機会の拡大を図りまして、効果的な就労支援を展開していくことが可能になると考えております。

○山崎委員 有識者会議でもさまざまな意見があったようでありますが、都は、ソーシャルファームのメリット、デメリットをどのように認識しているのか、お答えください。

○篠原雇用就業部長 有識者会議では、委員からさまざまな意見が述べられておりますが、全ての委員が了承した上で取りまとめられた報告書では、日本でもソーシャルファームが創設され普及していくことが望まれるとの提言をいただいております。
 また、メリットなどにつきましてですが、繰り返しになるんですけれども、新たな枠組みであるソーシャルファームの創設、活動を促進することで、さまざまな就労に困難を抱える方の雇用機会の拡大を図り、効果的な就労支援を展開していくことが可能になると考えております。

○山崎委員 東京都のそうした考え方や認識は都民に浸透をしていると考えられるか、お答えください。

○篠原雇用就業部長 条例の検討に当たりまして設置した有識者会議では、公開で議論を行いまして、ソーシャルファームの創設や普及に向けた提言をいただいてまいりました。また、パブリックコメントにおきましては、ソーシャルファームに期待する意見が多数寄せられたところでございます。
 こうした議論や意見を踏まえまして、今回、条例を提出したものでございます。

○山崎委員 新規事業は、行政サイドだけの検討では不十分、また、都民の理解や協力が不可欠だと思います。現時点でのこのソーシャルファーム事業に関して、そうした下地というか条件が整っているかどうなのか、考えておられるのか、その点もお答えをいただければと思います。

○篠原雇用就業部長 この条例案では、都の考え方や施策の骨格、基本的な事項などをお示ししておりまして、今後、都民の一層の理解と協力を得ながら、具体的な施策を展開してまいりたいと考えております。

○山崎委員 都内の区市町村と調整をされたと思います。どのような調整を進めてきたのか、その中でどのような意見があったのか、お答えください。

○篠原雇用就業部長 都内区市町村とは条例案の検討の段階から情報提供を行ってきておりまして、九月には特別区長会総会、十月には市長会全体会、十一月の町村長会議の場で説明を行っております。
 それぞれの場において特段のご意見はございませんでしたが、区市町村とは今後も密接に情報を交換し、協力を進めてまいります。

○山崎委員 有識者会議とは別に、都内の関係団体とは意見交換を行ってきたのか、また、その規模と意見交換で示された主な意見を教えてください。

○篠原雇用就業部長 本日の委員会提出資料のとおり、多様な団体や施設を訪問し、調査やヒアリングを行ってまいりました。
 それぞれの方に合わせたきめ細やかなサポートが必要である、職場定着のための支援の充実を求めるなどのご意見をいただいております。

○山崎委員 都が支援対象となるソーシャルファームを認証する際の指針や基準はこれから策定するとしておりますが、いつごろまでにつくるか、完成させるか、お答えください。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームに関する指針等につきましては、来年度早期に策定したいと考えております。

○山崎委員 では、現時点でどのような指針や基準を考えているのか、その概要もお答えいただきたいと思います。

○篠原雇用就業部長 先ほどお答えした指針等には、都が支援するソーシャルファームの認証基準と支援策について盛り込むこととしております。詳細は今後検討してまいります。

○山崎委員 それでは、予算額は二十二億円を見積もっているようでありますが、積算と内訳と年間事業スケジュールはどのようになっているのか、お答えいただきたいと思います。

○篠原雇用就業部長 新たな枠組みであるソーシャルファームの創設を促進し、普及を図っていくためには、行政による適切な支援が必要でございますので、この支援に要する予算を要求したものでございます。
 具体的には、立ち上げの時期の財政的な支援、経営面の相談などを行う拠点の整備、普及啓発などの経費でございます。

○山崎委員 条文の中で、ソーシャルファームの条件として、就労困難と認める者を相当数雇用すること、そして、ほかの従業員とともに働くという条件が示されております。
 この条件における就労困難者の定義はどうなっているのか、また、相当数というのはどの程度の規模なのか、それはその企業全体の規模によって異なるのか、また、ほかの従業員とともに働くとしているが具体的にはどのような形で労働に従事することを考えているのか、あわせてお伺いします。

○篠原雇用就業部長 条例案におきましては、就労を希望しながらさまざまな事由により就労することが困難である者であって、その者の配慮すべき実情等に応じた支援が必要な者を就労困難者と定義しております。
 相当数雇用するということに関する要件や具体的な雇用の形態につきましては、今後策定する認証基準の中で具体的に定めてまいります。

○山崎委員 それでは、最後に、一般の雇用契約とは別に障害者就労継続支援事業A型といった福祉的な契約形態もある中で、その中間というか、両方に係る仕組みがソーシャルファームということだと思いますが、正直、制度の内容、実際の運用など、具体的なイメージがいま一つ判然としないわけであります。
 そして、一番重要な点ですが、障害者の皆さんにとってどれだけ意味があるものなのかということが、私も含め都民の皆さんにもまだまだ納得いただけていないのではないかと思います。障害者の雇用就労支援を前に進める一つの有効な手段という総論だけでは、実効性に貧しく、効果も限定的で、投入した予算が有効活用されないおそれもあると思います。
 前向きな新しい取り組みであればあるほど、丁寧な現状分析、周到な準備、関係団体や区市町村との十分な事前調整、そして何より、なぜ今このタイミングでこうした事業に取り組まなければならないのか、そのことを都民の皆さんにわかりやすく説明をすることが重要であると思います。
 この一つでも欠けると、せっかくの事業がかけ声倒れに終わり、人と時間と税金を浪費し、場合によっては都の障害者雇用就労支援事業が混乱することにもなりかねません。理念だけで先走ることがないよう、強く指摘をしておきたいと思います。
 そして、中小企業の皆さんに対して、まさに現場の実態を踏まえ、実効性ある施策をスピーディーに実行に移し、機動的な展開をすることこそが都政の責務であり、政治の責任なのであります。
 一昨日の我が党の代表質問でも指摘をさせていただきましたが、実効性こそが大切なのであります。知事は、所信表明において、本条例をてこに、区市町村との連携のもと、都民の皆様の就労を力強く後押しするといわれておられました。これは大変重い言葉であると受けとめています。
 ぜひとも産労局の皆さんが現場の一つ一つに足を運び、中小企業の皆さんの声にしっかりと耳を傾けながら、現場目線に立った具体的な施策を実現していくことを要望もしておきたいと思います。
 続いて、ここからは補正予算関係について伺っていきたいと思います。
 この秋の台風では、島しょや多摩地域、そして区部においても多くの方が被害を受けられました。改めてお見舞いを申し上げたいと思います。
 さて、今回の被害復旧を支援するための補正予算について何点か伺います。
 今回の台風での大規模な被害の発生を受け、国では安倍政権のもとで、被害者の生活となりわいの再建に向け、迅速な対応が展開されてきました。
 都においても、こうした国の取り組みと歩調を合わせ、速やかに取り組みを進められ、今回の補正予算の措置に至ったと思いますが、特に厳しい経営環境の中、地域で懸命に事業を営んでいる小規模零細企業の方々の復旧を支援することは大変重要であります。
 そこで、今回の補正予算として提案されている中小企業組合等の支援について、具体的な内容を伺います。

○土村商工部長 都内に甚大な被害をもたらしました台風十九号によりまして、小規模な事業者などで構成されます事業協同組合や協業組合、商工組合等が共同で事業を行う作業場の屋根の一部が破損するなど、事業継続に支障が生じる被害が生じております。
 こうした被害を受けた事業協同組合等の早期復旧を支援するため、都は、倉庫や共同作業場といった組合の所有する共同施設及びそれに付随する設備につきまして、復旧経費が三十万円以上かかった場合に、補助率四分の三で支援を行っていくこととしております。
 今後、速やかに公募を開始できるよう準備を進めまして、国とも十分な連携を図りながら組合施設等の復旧を後押ししてまいります。

○山崎委員 被害を受けられた組合の方々にとって、その施設の復旧は待ったなしであります。一日でも早く施設を復旧し、引き続き事業を展開していけるよう、国ともしっかりと連携をして速やかに支援を進めてほしいと思います。
 台風が中小企業の経営に与える影響は、所有の建物や設備などへの直接被害に加え、受注の減少や仕入れのおくれなどにも伴う資金繰り悪化など、多岐にわたります。とりわけ、小零細企業にとって日々の売り上げ減少は事業存続の危機に直結するため、一刻も早く事業を立て直して、もとどおりに商売を続けていかなければなりません。そのためには、損壊した建物や設備の復旧に必要な資金や、日々の支払いに充てる資金などを円滑に調達することが重要であります。
 都は、今回の台風被害を受け、事業の立て直しに取り組む中小企業に対する緊急の金融支援を行っていますが、その内容について伺います。

○加藤金融部長 都は、中小企業制度融資において、台風十五号、十九号及び二十一号による被害を受けた都内の中小企業者等が事業の再建に必要な資金を円滑に調達できるよう、災害復旧資金融資の取り扱いを開始しております。
 具体的な融資条件としましては、融資限度額を二億八千万円、融資利率を一・五%とし、融資期間については、制度融資で最長の十五年としております。また、都は、融資額一億円までの利子について、一%相当を補助するとともに、信用保証料も全額補助するなど、中小企業者等の負担軽減を図る措置を講じております。
 都としましては、こうした金融支援策により、台風の被害を受けた都内の中小企業者等が早急に事業を再建できるよう、強力に後押ししてまいります。

○山崎委員 今回の金融支援では、利子や信用保証料の補助など、中小企業の返済負担に配慮した内容が盛り込まれていることがよくわかりました。せっかく立ち上げた優遇制度ですから、事業の立て直しに取り組む多くの経営者の皆さんに実際に利用していただかなければ意味はありません。
 都がみずから積極的に周知を行うことはもとより、地域のさまざまなネットワークも活用しながら、甚大な被害を受けた島しょ地域を初め、都内の各地域にしっかり伝えていく必要があります。
 そこで、今回の金融支援について、周知の徹底や相談体制の構築が不可欠と考えますが、その取り組み状況についても伺います。

○加藤金融部長 都では、都庁の窓口や電話による融資相談に対応するとともに、ホームページにより本融資の周知を図っております。また、制度融資の申し込み窓口である各地域の商工会議所、商工会などの支援機関や都内の各金融機関において案内を行うとともに、都内の全区市町村にも情報提供を行い、各地域の中小企業者等への周知について協力を依頼したところです。
 これらに加えまして、大島、新島及び式根島では、十月から十一月にかけまして計四日間、地元の金融機関や商工会が融資相談会を開催しており、都も職員を派遣しまして融資内容の説明を行うなど、現地においてもきめ細かい相談対応に努めております。
 引き続き、地域の支援機関や金融機関等と密接に連携し、都の金融支援策が事業再建に取り組む中小企業者等に適切に活用されるよう取り組んでまいります。

○山崎委員 台風などの大規模な自然災害では、一度に多数の企業が被害を受けるため、企業の経済活動がままならない状況が長引けば、地域経済にとってはかり知れない損失となります。
 地域の活力を担う中小企業が一日でも早く台風被害を克服できるよう、個々の中小企業に寄り添ったきめ細やかなサポートに取り組んでいただくよう要望し、私の質問を終わります。

○尾崎委員 私の方からは、最初、補正予算について幾つか伺いたいと思います。
 この秋の台風では、甚大な被害が広がり、島しょ地域や奥多摩地域を初め、農業者や住民の中に不安が広がっています。
 東京都が補正予算を組んで支援するということは大変重要です。パイプハウス、生産施設の台風被害の状況はどうなっているのか伺います。

○上林山農林水産部長 今般の一連の台風により、農業用の生産施設であるパイプハウス百四十三棟に、全壊や半壊、あるいはビニールなどの被覆資材の損傷等の被害を確認しております。

○尾崎委員 それでは、農地、農業用水の被害状況はどうなっているのか伺います。

○上林山農林水産部長 農地及び農業用水におきましては、大雨によるワサビ田の流失や農地への土砂流入、河川の氾濫による取水堰の損壊、畑の冠水などの被害がございました。

○尾崎委員 補正予算は、農林災害復旧に五億一千二百七十万五千円を計上されています。農地及び農業用施設災害復旧事業となっていますが、内訳について伺います。

○上林山農林水産部長 補正予算案には、農地などの復旧費用として約三億一千万円、パイプハウスなど農業用施設等の復旧費用として約二億円を計上しております。

○尾崎委員 台風十九号による奥多摩地域のワサビ田流失は百四十五カ所、被害額は十七億一千七百万円となっています。また、農地への土砂流入、堰の損壊、畑の冠水などの被害額は七億九千二百万円となっていますが、今回の補正予算の中で、復旧への支援はどこまで行うのか伺います。

○上林山農林水産部長 区市町村からの要望をもとに、ワサビ田の石垣の積み直しや農地への流入土砂の撤去、取水堰の復旧等について、今回の補正予算により対応することといたしております。

○尾崎委員 奥多摩地域のワサビ田が流失されれば出荷もできず、ことしの収入も当てにならないわけです。しかも、ワサビ田は、山中など遠距離にあるものもあり、林道が土砂崩れで埋まったり、水でえぐれたりして車が通れないところもあります。復旧には数年単位でかかるのではないかとの地元の声も出ています。今回の補正予算だけでなく、来年度予算の中にも長期的な支援を盛り込む必要があると思いますので、要望をしておきます。
 今回の補正予算では、中小企業、小規模企業への支援はありません。今回の台風では、中小企業、小規模企業にも被害があり、一階の店舗、工場に浸水した事例も出ています。台風被害によって、製造業の方は機械が水につかり使い物にならない状況になってしまいました。
 緊急の融資制度ができましたが、商売が軌道に乗るまでかなり時間が必要です。据置期間は延長すべきですが、いかがですか。

○加藤金融部長 都の災害復旧資金融資では、事業再建に取り組む事業者の負担軽減に十分配慮しており、融資期間を制度融資では最長の十五年とするほか、都が利子の一%相当を補助するとともに、信用保証料も全額を補助するなど、手厚い支援内容としております。

○尾崎委員 台風被害の復旧、商売がもとに戻り軌道に乗るには一定の期間が必要です。それまで返済の猶予をすべきだと思います。例えば、農業、林業、漁業の特別対策資金は無利子融資で、施設資金の据置期間は三年となっています。
 中小企業向けの金融制度も、ただいまご説明があったように、利子の補助があって、信用保証料は全部東京都が補助するという手厚い支援内容にはなっていますけれども、無利子として、据置期間は少なくとも三年とすべきだと思いますが、このことを要望するものです。
 台風被害により機械などが使えなくなった場合、リースで機械を使う場合には、リース料の補助が必要だと思いますが、いかがですか。

○加藤金融部長 機械の購入やリースなどの事業再建に必要な資金につきましては、災害復旧資金融資により支援を行っており、先ほどもお答えしましたとおり、都が利子補給や信用保証料補助などの措置も講じております。

○尾崎委員 国は、被災小規模事業再建事業を補正予算に盛り込みました。東京都も中小企業、小規模企業の再建のための支援を行うべきだと思います。
 台風被害の原因には温暖化問題があります。今後も大きな被害が予想されています。東京都として、災害対策、復興支援の抜本的見直しを行うよう強く求めるものです。
 台風被害では、島しょ地域の農業被害は深刻です。利島のツバキの大量倒木、海水による塩害なども甚大です。営業再建支援が必要ですが、検討を要望するものですが、いかがですか。

○上林山農林水産部長 島しょ地域の農林被害の復旧に向け、既存事業を活用したツバキなどの再植栽に係る経費への支援や、経営安定に必要な資金を無利子で融資する特別対策などを実施しております。

○尾崎委員 利島のツバキの大量倒木、塩害によって、予定していた収入が激減し、暮らしの見通しが立たない状況にもなっています。今回の台風を教訓に、対策の見直しを行うよう要望するものです。
 次に、今回東京都は、都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例案を本定例会に提案しました。日本共産党都議団は、就労を希望しながら、さまざまな理由から就労に困難を抱え、職につけていない方や就労の困難な方を支援していくという条例の理念や目標は重要であり、賛成です。
 私は、就労支援のあり方を考える有識者会議の報告書がまとまり、九月十二日の経済・港湾委員会で報告があったときにも質疑しました。そのときも、障害者の皆さんの要望なども示して、報告された都民の就労を応援する条例(仮称)の基本的な考え方は具体性に欠けていること、条例をつくることで何が変わるのか、なかなか見えないことなどを指摘し、条例の肝であるソーシャルファームについては、日本ではまだなじみがないため、条例は急いでつくるのではなく、議論をじっくり行うよう求めました。
 今回の条例案のタイトルに、ソーシャルファームの創設の促進に関すると入りました。そこで、疑問点や事実確認のために幾つか質問していきたいと思います。
 産業労働局では、ソーシャルファームについて、いつから検討を始めているのか伺います。

○篠原雇用就業部長 産業労働局におきましては、昨年十一月に就労支援のあり方を考える有識者会議を設置して以降、ソーシャルファームについて検討を行っております。

○尾崎委員 産労局としては、ソーシャルファームについて検討を始めたのは有識者会議を設置してからということです。そうなると、知事が昨年の九月の所信表明をしてからということになります。知事のトップダウンで始まったということになります。
 有識者会議を設置した理由について伺います。

○篠原雇用就業部長 昨年九月の都議会第三回定例会におきまして、知事がソーシャルインクルージョンの考え方に基づき、全ての都民の就労を応援する新たな条例の検討を表明したことを受けまして、都は、就労支援のあり方について専門的見地から議論するため、同年十一月に就労支援のあり方を考える有識者会議を設置したものでございます。

○尾崎委員 それでは、有識者会議のメンバーは、誰がどのように決めたのか伺います。

○篠原雇用就業部長 有識者会議のメンバーにつきましては、産業労働局において候補者を選定し、知事にご了解をいただいて決定いたしました。

○尾崎委員 日本共産党都議団は代表質問でも取り上げましたが、有識者会議のメンバーに小池知事と二十年来の友人である炭谷茂氏が入っています。炭谷氏は、社会福祉法人恩賜財団済生会理事長ですが、もう一つの肩書は、ソーシャルファームジャパンという団体の理事長であり、ソーシャルファームの普及を目指して活動しています。これらのことを踏まえると、最初から小池知事は、東京都でソーシャルファームの条例をつくろうという目的があったのではないかといわざるを得ません。
 有識者会議のメンバーには、障害のある方など、就労に困難を抱えている当事者の方が入っていません。当事者の声はどのように聞いているのか伺います。

○篠原雇用就業部長 有識者会議では、就労に困難を抱える方の支援を現場で実施されている方などからプレゼンテーションをいただいております。また、障害のある方のご家族の団体や、ひきこもりの方の直接の支援を行っているNPO法人など、さまざまな関係団体を訪問し、現状や意見を伺っております。
 さらに、本年八月にはパブリックコメントを実施し、都民の方から広く意見等を募集いたしました。

○尾崎委員 関係団体を訪問して意見を聞いたとのことですが、支援している団体の人からであり、困難を抱えている当事者ではありません。障害者団体の合い言葉は、私たちを抜きに私たちのことを決めないでということです。まずは、就労に困難を抱えている人たちの声をじっくり聞くべきです。
 私は、就労困難者への支援というのなら、困難を抱えている人たちの東京都への要望は何なのか、なぜ就労困難な状況になっているのかという当事者の思いに寄り添うことがなければ、当事者の方々に役に立つ条例にはならないと思います。
 今、就労に一番困難を抱えているのは重度の障害のある方です。就労が実現すると、重度訪問介護は職場で使えません。障害者への支援団体の方は、一番困難な重度の障害者への支援を充実することは全ての支援の底上げにつながると話していたことは、九月の経済・港湾委員会でも紹介しました。私はこの視点こそ必要だと思います。
 重度の障害がある方でも、ソーシャルファームが創設されたら、その企業で雇用されるのでしょうか。今回の条例で目指すソーシャルファームは、日本に、そして東京にないために、なかなかイメージが湧きません。
 条例の第二条に定義があります。ここでは事業者と就労困難者の定義が記述されていますが、ソーシャルファームの定義はありません。海外ではソーシャルファームが実在しても、日本にはまだありません。新しいものなら、条例の中の定義で示すべきではありませんか。
 第十条に、事業者による自律的な経済活動のもと、就労困難者と認められる者の就労と自立を進めるため、事業からの収入を主たる財源として運営しながら、就労困難者と認められる者を相当数雇用し、その職場において、就労困難者と認められる者が他の従業員とともに働いている社会的企業と書かれています。これは定義ではないということです。
 条例案の中にソーシャルファームの定義がないのはなぜでしょうか伺います。

○篠原雇用就業部長 条例案では、お話にもありましたように、事業からの収入を主たる財源として運営しながら、就労困難者と認められる者を相当数雇用し、その職場において、就労困難者と認められる者が他の従業員とともに働いている社会的企業をソーシャルファームとしているところでございます。

○尾崎委員 私が今聞いたのは、定義がないのはなぜですかと聞いたのです。それには答えていただけないようです。新しい枠組みだからこそ、定義を明確にすべきだと思います。
 大事なことなので、再度伺います。第二条に定義がないのはなぜでしょうか。

○篠原雇用就業部長 繰り返しになりますが、条例案では、事業からの収入を主たる財源として運営しながら、就労困難者と認められる者を相当数雇用し、その職場において、就労困難者と認められる者が他の従業員とともに働いている社会的企業をソーシャルファームとしております。
 今後策定する指針等におきまして、都の支援対象となるソーシャルファームの具体的な認証基準を定め、これに基づいて支援を行っていく考えでございます。

○尾崎委員 私は、定義がなぜないのか、そこが一番知りたいんです。でも、二回聞きましたが、これにはお答えがないようです。とても残念だと思います。
 それでは、パネルをごらんください。ちょっと見えにくいと思いますが、これは第五回有識者会議の資料で配布されたものです。条例の目的にソーシャルファームという文言はありません。定義のところには、社会的企業の定義として、一番下ですけれども、社会的課題の解決を目的として事業活動を行う業者と書かれています。七月の段階では、社会的企業という定義は有識者会議に示されているんです。
 そこで伺いますが、社会的企業とソーシャルファームとはどこがどう違うのか伺います。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームというのは、就労に困難を抱える方を雇用するという特定の社会的目的を持った企業でございますが、一般的には社会的企業というのは、さまざまな幅広い社会的目的を持っているものと考えております。

○尾崎委員 それでは、今おっしゃったようなソーシャルファームの説明を定義として書くべきではないんでしょうか。
 産労局として、海外のソーシャルファームの視察も行っていますが、具体的にどこで何を学んできたのか伺います。

○篠原雇用就業部長 本年六月にはドイツを訪問し、六社の調査を行っております。また、十月には韓国を訪問し、三社の調査を行いました。
 これらの調査によりまして、ソーシャルファームの仕組みや法制度、財政支援などの状況につきまして情報を得ることができました。

○尾崎委員 有識者会議のメンバーである炭谷茂氏は、有識者会議の中で、十二年から十三年、ソーシャルファームづくりに自分のお金を投入してやってまいりましたけれども、なかなか進まないとの発言もありました。日本でソーシャルファームがない、定着しないのはなぜだと分析しているのか伺います。

○篠原雇用就業部長 条例案にお示ししたソーシャルファームは新しい枠組みでございまして、今後、都において認証基準や支援の仕組みを整備し、普及を図っていくものと考えております。

○尾崎委員 炭谷氏は、十二年、十三年、ソーシャルファームづくりに自分のお金を投入してやってきても進まない。何で進まないのか分析は産労局としてはしていないということですよね、ただいまご答弁ありませんから。新しい枠組みだからということだけの答弁です。ソーシャルファーム的なものは幾つかあると九月の経済・港湾委員会で答弁もありました。
 なぜ日本でソーシャルファームが定着できないのかを分析しないままでソーシャルファームの条例をつくることは、余りにもむちゃくちゃだといわなければなりません。新しい枠組みだからこそ、ソーシャルファームの定義を明記すべきです。法令の一部をなす条例に明確な定義が必要です。定義を定められないようなものは、条例の体をなしていないといわなければなりません。
 海外のソーシャルファームもさまざまです。しかし、共通しているのは、ソーシャルファームについての法律があるということです。日本にはまだ法律がありません。
 法律よりも先に東京都として条例をつくり、ソーシャルファームの創設に都が財政的支援を行う理由は何ですか。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームという新たな枠組みを普及させることによりまして、就労に困難を抱える方の雇用の拡大が図られるものと考えておりまして、このため、今回、条例を提案しているものでございます。
 今後、策定する指針等におきまして、都の支援対象となるソーシャルファームの具体的な認証基準を定め、これに基づき支援を行ってまいります。

○尾崎委員 ソーシャルファームは新しい枠組みで、この普及によって雇用の拡大が図られるとのことですが、現在ソーシャルファームに対し、都民の共通認識が広がっていない中で、条例をつくって認証したからといって、雇用の拡大につながるとは私は到底思えないんです。
 有識者会議では、障害者を支援する団体、ひきこもりの人たちを支援する団体、生活困窮者を支援する団体、ひとり親家庭を支援する団体、経営者支援団体などさまざまな団体からヒアリングを行うなどの努力をされています。今、頑張って支援している団体の取り組みなどを条例に生かすべきだと思います。
 私も団体の役員さんから話を伺いました。働く場所の支援も大事だが働ける環境をつくるための支援が必要、例えば、ひとり親家庭の場合、家事支援が拡充されなければ働くことができない、家事支援を拡充してほしいということです、そして、働く場所よりも、働いている人をきちんと評価してくれることが働く意欲につながるんだということもおっしゃっていました。何よりも、一人一人の人権が尊重されるようにならなければならないということです。
 また、福祉作業所のA型、B型就労に取り組んでいる方からは、障害の状況によって毎日働くことは困難な人もいる、休みながら体調を見て働く必要もある人もいる、一人一人の状況から一律に働くことは難しいということでした。
 都がつくろうとしているソーシャルファームは、障害者手帳はとれない状況だが、正社員として企業で働くことが困難だという人を対象にしているのではないかという意見もありました。
 大事なことなので伺いたいと思いますが、ソーシャルファームで受け入れる就労困難者とは、障害手帳はとれないが一般企業では働くことが困難だという状況の方たちでしょうか。重度の障害のある方も働くことができるのか伺います。

○篠原雇用就業部長 都の支援するソーシャルファームの具体的な認証基準につきましては、今後検討してまいります。

○尾崎委員 これからということですから、都民が納得できるような状況をぜひつくってほしいと思います。
 私は東京都がこれまで取り組んできた障害者就労支援や福祉保健局が取り組んでいる就労A型、B型への支援、ひきこもり支援、ひとり親への支援などの検証を行って、課題を明らかにして、新たな課題解決に進むべきだと考えます。
 産労局としてこの間取り組んできた障害者就労支援の内容について伺います。

○篠原雇用就業部長 都は、障害者雇用の促進に向けまして、障害者と企業、双方への支援を行っております。
 障害者に向けては、職業訓練や職場体験機会の提供などを行っておりまして、企業に対しては、セミナーなどにより障害者雇用のノウハウを提供しますほか、障害者の受け入れ環境の整備に向けた支援などを行っているところでございます。

○尾崎委員 それでは、現在の就労継続支援事業A型、B型などがありますが、今の施策とソーシャルファームの関係はどうなるのか伺います。

○篠原雇用就業部長 条例案では、ソーシャルファームを先ほど述べたとおり規定しておりまして、就労継続支援事業A型、B型事業所とは異なるものと考えております。

○尾崎委員 現在の障害者雇用促進法の法定雇用率に関する規定については、ソーシャルファームにも適用されるのでしょうか。

○篠原雇用就業部長 障害者雇用促進法に基づきます障害者の雇用義務等につきましては、労働者を雇用する事業主に適用されるものでございまして、ソーシャルファームにも適用されるものと考えております。

○尾崎委員 就労支援の条例をつくることに踏み出してから、産労局はこれまで取り組んできたことに対して、検証したのかどうか伺います。

○篠原雇用就業部長 東京都は、雇用就業施策に限らずさまざまな施策について絶えず検証を行い、改善に努めております。

○尾崎委員 今回の条例はソーシャルファームが突出しています。当初、仮称ではありましたが、都民の就労を応援する条例とされていました。第七回の有識者会議では、応援という言葉はとてもいい言葉であると共感しておりますとの発言もありましたが、最終段階で、都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例に名前が決まりました。
 なぜでしょうか。理由について伺います。

○篠原雇用就業部長 条例案の名称につきましては、条例の内容を端的に示すものとして検討し、今回の名称としたものでございます。

○尾崎委員 十月三十一日に開催された第七回有識者会議では、事務局から東京都における就労支援のあり方について報告案が説明されると、ソーシャルファームの支援事業等についても意見を交わしたの記述がありますが、この委員会では必ずしも具体的な議論までは踏み込んでいない気がしますと、ある委員からの発言があり、ちょっと書き過ぎているような気がいたしますと述べています。有識者会議に参加している委員全員が同じ認識になっていないことを示す内容です。こういった状況の中で条例の名称が変わってきたのはなぜなのか、私は納得ができません。
 日本共産党都議団は、小池知事のブリーフィングについて情報開示しました。十月十六日の知事のブリーフィングには、都民の就労に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例の条例案文が出されています。
 十月三十一日に開催された第七回有識者会議には、この条例案文は、資料として出して報告し、議論されているのか伺います。

○篠原雇用就業部長 手元に資料がないので正確なことはいえませんけれども、条例文そのものを出してはいなかったと記憶しております。骨子について資料を出したと記憶しております。

○尾崎委員 先ほど、有識者会議を設置した理由について質問しました。新たな条例の検討を知事が表明し、有識者会議が設置されたとご答弁がありました。そうであるならば、条例の案文全てを有識者会議に報告して議論するのは当たり前ではないでしょうか。
 大事なことなので伺いますが、なぜ有識者会議に条例案文全文を報告しなかったのか伺います。

○篠原雇用就業部長 有識者会議で検討いただくのは、条例案文そのものだとは考えておりません。あくまでも条例案を策定していく前の段階としての就労支援のあり方でございます。そのため、資料については骨子を提出したものでございます。

○尾崎委員 有識者会議で、それぞれの知見を活発に議論していただく。そして、さまざまな方たちから取り組んでいる状況を報告していただく。そして、有識者会議のメンバーも、さまざまな団体に聞き取りをしていく。こういう努力をしてつくられる条文の案文そのものが、有識者会議に出して議論されていないということは、私は腑に落ちない感じがします。有識者会議でもきちんと議論すべきだったのではないでしょうか。
 有識者会議の中でも、ソーシャルファームについて、日本で取り組みが進んでいない、現在の日本ではソーシャルファームの認知度が極めて低い、個人的には、まだソーシャルファームというものがすとんと落ち切れなくてなどの疑問や意見が出されていることについて、どのように受けとめたのか伺います。

○篠原雇用就業部長 有識者会議の各回の議論では、各委員からさまざまな意見が述べられております。委員全員が了承した上でまとめられた報告書では、日本でもソーシャルファームが創設され、普及していくことが望まれると提言をいただいております。
 都としては、この報告書を踏まえて、条例案にソーシャルファームに関する規定を置くこととしたものでございます。

○尾崎委員 どうして私の質問にきちんと答えていただけないんでしょうか。有識者会議のこれらの疑問、東京都はどういうふうに受けとめたのか、はっきり答えていただきたいと思います。
 委員からさまざまな意見が述べられているというご答弁でしたけれども、ソーシャルファームの認知度が極めて低いという意見が出ているわけです。これらの意見を正面から受けとめれば、もっと議論があって当然だったのではないでしょうか。
 十月十六日、小池知事のブリーフィングには、知事は直接出席していませんが、知事への説明依頼ということで、知事補佐担当部長への説明となっています。この場には条例案文も出されているわけです。
 パネルをごらんください。これは十月十六日に知事に報告した条例案文です。知事に報告した条例案文の全文がこれです。
 ここにはマーカーが引いてありますが、諸外国に多数存在するソーシャルファームと呼ばれている社会的企業では、一般企業と同様の経済活動を行いながらと説明がされています。ところが、今回出された条例案になって、この部分が削除されているんです。
 また、知事に報告した条例案文第一条、目的には、就労に支援をする施策の基本的な事項を定めることによりとなっていたのが、今回の条例案には、ソーシャルファームという言葉が入っています。そして、条例案には、ソーシャルファームの創設及び活動の促進、以下、就労の支援に係る施策等と文言が変わっています。
 それでは、もう一つのパネルをごらんください。これも知事に報告した条例案文です。第四条です。
 第四条の都の責務には、一項で、就労の支援に関する施策を総合的に推進するものとあり、二項で、必要な体制を整備するものとなっていました。ところが、今回の条例案には、就労の支援に係る施策等を総合的に実施するものとするとなり、この二項は削除されています。最初の知事に報告した条例案文から、かなり重要なことが変更されています。
 今回、都議会に提案された条例案文になるまで、どのような議論があったのか伺います。

○篠原雇用就業部長 条例の案文そのものにつきましては、法制執務を担当する総務局とも相談しながら、局内において何度も練り直した結果として、今回のような、今ご説明いただいたような過程をたどったものでございます。

○尾崎委員 何度も練り直したということですけれども、私から見れば、本当に大事なことが削除されていたり、文言が変わっていたりするわけです。
 今回提案されている条例案の中で、就労の支援という記述と就労の支援に係る施策等の記述がありますが、この違いについて伺います。

○篠原雇用就業部長 条例案の第一条におきまして、就労を希望する全ての都民に対する就労の支援を就労の支援としております。そして、就労の支援に係る施策並びにソーシャルファームの創設及び活動の促進を就労の支援に係る施策等としているところでございます。

○尾崎委員 先ほどパネルで示しましたが、第四条、ここでは、就労の支援に係る施策を総合的に推進するとなっています。ところが、今回提案されている条例案では、就労の支援に関する施策等を総合的に実施するとあります。
 この違いはどこにあるんでしょうか。等が入るのと入らないのでは何が違うのか伺います。

○篠原雇用就業部長 先ほどご説明したとおりで、就労の支援に係る施策並びにソーシャルファームの創設及び活動の促進を指しております。

○尾崎委員 ということは、等が入ればそれはソーシャルファームが入っているんだということですよね。
 それでは、条例の第三章に、ソーシャルファームの創設及び活動の促進等と特出しをしているのはなぜですか。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームは、就労に困難を抱える方の就労の場を生み出す新たな枠組みでございまして、従来から実施してきた求職者への支援や事業者を支援する施策と区分するため、条例の第三章として整理したものでございます。

○尾崎委員 条例の十条で、ソーシャルファームの位置づけを書かれています。事業からの収入を主たる財源として運営と記述されています。
 第五回の有識者会議で炭谷氏は、十二年、十三年、ソーシャルファームづくりに自分のお金を投入してやってまいりましたけれども、なかなか進まない、やはり公的な支援というものは、意思が明確に具体的に出ていることが重要ではないかと述べています。
 これはソーシャルファームの位置づけと相反するのではないでしょうか伺います。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームが事業の収益を主たる財源として運営するということと、立ち上げ期などに公的な支援を行うということとが相反するものとは考えておりません。

○尾崎委員 有識者会議では、さまざまな支援団体からプレゼンテーションを行っていますが、条例にはどのように反映されているのでしょうか。また、協力していただいた団体には、条例案を届け、意見などを聞いているのか伺います。

○篠原雇用就業部長 有識者会議において、プレゼンテーションを受けますほか、多数の関係団体等を訪問し、意見を伺ってまいりました。こうしたことをもとに、有識者会議の報告書がまとまって、これを踏まえまして都としては条例案を策定したものでございます。
 また、本年八月からパブリックコメントを実施し、広く意見を伺ったところでございます。

○尾崎委員 私が質問したのは、条例案を届け、意見を聞いたのですかということです。
 届けていないから答えられないということだと思いますが、提案された条例案の前文にあるソーシャルインクルージョンについても、有識者会議の中でソーシャルインクルージョンという言葉には違和感をずっと持っていますとか、ソーシャルインクルージョンという言葉のみが単独で書くには時期尚早かなと思いますなどの意見も出ていました。
 これらの意見を都はどのように受けとめたのか伺います。

○篠原雇用就業部長 有識者会議の各回の議論では、委員からさまざまな意見が述べられております。委員全員が了承してまとめられた報告書では、就労についてさまざまな要因から困難を抱える方々を、社会の一員としてともに活動しながら支え合うソーシャルインクルージョンの理念に基づき支援していく意義は大きいと提言されております。
 都としては、この報告書を踏まえまして、条例案の第三条の基本理念におきまして、ソーシャルインクルージョンの考え方に立って就労の支援が推進されなければならない旨を規定したところでございます。

○尾崎委員 有識者会議でさまざまな意見が出たということしか答えていただけないのはとても残念です。
 有識者会議で、先ほども紹介しましたが、ソーシャルインクルージョンという言葉のみが単独で書くには時期尚早かなと思いますという発言は、私は大変な重大な発言だと思って受けとめたわけです。有識者会議の議事録を読むと、委員の皆さんの合意がとれているとは到底受け取れません。
 ソーシャルファームの創設及び促進などを進める条例ということですが、創設に向けて認証基準については、条例制定後につくるとなっています。日本にまだ存在しないソーシャルファームの認証基準について、明確にした上で条例をつくるべきだと思いますが、いかがですか。

○篠原雇用就業部長 今回の条例案は、施策の骨格や基本となる事項を規定したものでございます。
 条例の制定後に、詳細な基準や具体的な手続などを、指針等において定めていきたいと考えております。

○尾崎委員 日本共産党都議団の代表質問に、ソーシャルファームの認証基準等は、今後、企業経営等の専門家などによる会議を設置し、具体的に検討を進めていくこととしていると答弁がありました。
 認証基準などは誰がつくるのでしょうか伺います。

○篠原雇用就業部長 今後、知見を持つ専門家などの意見を聞きながら、都において策定することとしております。

○尾崎委員 第七回有識者会議では、やっている事業所なり、創設するのはワンストップの窓口をつくるというならば、いろいろなことを知っている人でないとつなげない、いろいろなノウハウやいろいろな情報、いろいろな支援者を知っていないとできないのでという意見がありました。
 ソーシャルファームの創設に向けた専用の相談窓口をつくっていくと聞いていますけれども、誰が相談員になるのか、またはどこかに委託する事業となるのか伺います。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームに関しましては、経営などの相談にワンストップで対応する支援拠点の設置について検討を行っております。
 今後の具体化に当たりましては、適正な手続のもとで、相談スタッフの確保や契約などを進めていきたいと考えております。

○尾崎委員 何人かの議員の皆さんからも質問がありましたけれども、条例十三条の施策の検証について、具体的にどのように行うのか、有識者会議で検証をしていくということなのかどうなのか伺います。

○篠原雇用就業部長 条例案の第十三条では、ソーシャルファームを含めた就労支援に係る施策全般についての検証を規定したものでございまして、検証に当たっては、関係機関等の意見を聞き、施策に反映するよう努めるものとしております。検証の具体的手法につきましては、今後検討してまいります。

○尾崎委員 日本共産党都議団は、代表質問でも、知事と炭谷氏とは二十年来の友人であることを明らかにしました。知事と炭谷氏は国会で議連をつくり、法律づくりに取り組んでいたことが頓挫していることは障害者団体の方たちもよく知っていることです。国での法令策定の見通しがなくなったので、東京都で条例をつくり、ソーシャルファームを広げていこうというのは明らかです。
 条例案について、日本共産党都議団にも障害者団体や都民から意見が寄せられています。幾つか紹介したいと思います。
 ソーシャルファームについては、全国に先進事例と見られる取り組みはあるものの、そのあり方はさまざまであり、いまだ確かな定義や共有できるイメージがあるわけではない、東京都においても、ソーシャルファームの具体的なイメージについての議論が尽くされていない中で、条例で規定するのは時期尚早ではないかなどです。
 就労に困難を抱えている当事者や障害者支援団体、ひきこもり支援団体、ひとり親支援団体、経営支援団体など関係する団体、中小企業団体、区市町村の担当者などとの意見交換や議会での十分な議論が必要だと思います。
 就労困難者の皆さんが、希望の持てる条例にすることを求めて、質問を終わります。

○森澤委員 私からも、都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例について伺います。
 きのうの一般質問で会派の斉藤れいな都議からもお伝えしましたが、本条例において最も重要なことは、都も事業者も就労を希望する者も、誰もが相互に理解を深め、社会の一員としてともに活動しながら支え合うソーシャルインクルージョンの考え方を基本理念としている点です。これまでの福祉的な就労支援の枠を超え、誰もが支え合いながら経済面のみならず、さまざまな価値を創出する社会へとパラダイムシフトを起こすきっかけになることを期待するところです。
 本条例には、就労支援のあり方を考える有識者会議における議論が大きく影響を与えていると思いますが、その報告書には、今後の就労支援の方向性として、現在実施しているさまざまな既存事業について、改善や拡充を検討していくことも重要との記載があります。
 実際、現状もさまざまな支援を行っている中で、条例の制定を機に、どういった拡充を図っていくのか、見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 今回提案した条例案では、就労を希望する全ての方が、その個性や能力に応じて働けるようにしていくことを目標としております。
 その実現のためには、就労に困難があると認められる方に対して、よりきめ細かな就労支援を行っていくなど、施策の充実を図っていくことが必要と考えております。

○森澤委員 新しいことを始めることも重要ではありますが、まずこれまで実施してきた施策がしっかりと都民の皆様に届いているのか、効果的な支援となっているのか効果検証をした上で、ブラッシュアップしていただきたいと思います。その際、改めてソーシャルインクルージョンの理念に照らして、その支援のあり方から見直していただきますよう要望します。
 さて、ソーシャルインクルージョンの理念といっても、余り日本では浸透していない言葉なのですが、その概念は一九八〇年ごろのヨーロッパで生まれたもので、日本語にすると社会的包摂となります。
 当時のヨーロッパでは、移民の増加や失業率の上昇により、福祉の充実を図っても社会的格差、経済的格差が拡大していく一方で、多くの人が社会的に排除された状態から抜け出せないことが社会問題化していたそうです。そこで、どんな人も社会の一員としてともに助け合うことを目指そうということで生まれたのがソーシャルインクルージョンという考え方です。
 日本においては、企業における障害者雇用として一般就労と特例子会社が存在し、また、福祉的な就労として就労継続支援A型、B型とがあり、一定の就労環境は整備されてきていると考えます。
 一方で、その職務内容や賃金には大きな差があり、例えば都内B型事業所の平均工賃は約一万五千円であり、自立して健康で文化的な暮らしができるかといえば疑問符がついてしまいます。こうした就労環境を変えていくには、福祉的な考えと稼ぐことを両立できる事業者が多数生まれてくる仕組みが必要になるのだと思います。
 本条例では、その仕組みについて、ソーシャルファームという新しい仕組みの創設を提言しています。
 では、ソーシャルファームが創設され、ソーシャルインクルージョンの理念が普及すると、社会にはどのような変化が起きるのか。具体的には、今、申し述べました福祉的就労と特例子会社、一般就労等にどのような影響が及ぶと考えているのか、見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 条例案でお示ししたソーシャルファームへの就労は、お話の福祉的就労、特例子会社への就労、一般就労と共存していくものと考えております。
 このため、ソーシャルファームの普及が進んだ場合には、障害のある方などの雇用の場が拡大し、こうした方の就労の選択肢がふえることにつながると考えております。

○森澤委員 新たな選択肢がふえるという答弁をいただきました。これは非常に重要です。
 B型からA型、A型からソーシャルファームへ、ソーシャルファームから一般就労へというような雇用の流動性が生まれ、また、B型の裾野が広がっていくことも期待されます。こうした社会全体の変化も注視しながら進めていただきたいと思います。
 一方で、ソーシャルファームは、日本では法的な位置づけがなく、また本条例においても具体的なイメージをまだ抱きにくいのも確かです。
 実際に海外の事例などを見てみると、事業者が市場における優位性やその社会貢献性の高さを感じることが普及の一番の近道であると考えますが、ソーシャルファーム設立に関して、事業者側のインセンティブをどう働かせていくのか、見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームは、就労に困難を抱える方を多数雇用する社会的企業でございます。
 ソーシャルファームの創設は、こうした社会的目的のために事業を推進しようとする事業者等を支援することにより促進してまいります。

○森澤委員 社会的目的のために事業を推進しようとする方を支援するとのことですが、本条例にもあるとおり、ソーシャルファームは自律的な経営をしていくことが重要であり、補助金などで支え続けることはその考え方にそぐわないものと考えます。
 もちろん、立ち上げ期には資金面でのサポートをしていく必要性があることは認識しており、社会に定着するまでの間、行政が支援することは重要です。
 しかし、長期的に見れば、市場原理に基づき、事業者、投資家、そこで働く人たち全員がメリットを享受できる好循環を生み出していくべきだと考えますが、見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 繰り返しになりますが、ソーシャルファームは、就労に困難を抱える方を多数雇用する社会的企業でございます。
 ソーシャルファームの活動が促進されることによりまして、事業者においては、社会貢献などの目的が、労働者においては、社会参加、経済的自立などの目的が達成されていくものと考えております。

○森澤委員 今のご答弁で、事業者においては社会的貢献が強調されているように少し感じましたけれども、社会に定着させていこうと考えれば、経済合理性、つまり稼ぐことができるかという視点も持たせなければいけません。
 あるIT企業の人事担当者によりますと、会社の業績がよいときにはCSR、社会貢献の考えのもと、多数の障害者雇用を行ったのだけれども、業績が落ち込んできたときに、社内で真っ先に目が向いてしまったのは障害者雇用であったとのことです。
 経営陣からは、障害者雇用とはいえ、少しでも稼ぐことのできる組織にならないと継続して雇用できないという話になってしまったそうです。
 お金がある誰かが、暮らしに困難を抱える誰かを社会貢献の気持ちだけで支えていくというのは、これから先もずっと続けられることではないという示唆がなされている事例であり、経済的な持続可能性が重要な観点であるということです。
 改めて、これまでにない新しい仕組みをつくるという観点から、今後、どのように取り組んでいこうと考えているのか、見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 条例案の第十一条によりまして、今後、都が支援するソーシャルファームの認証基準を定め、これに基づき支援を行っていくこととしております。
 支援策といたしましては、立ち上げ期の財政的支援や経営面からの相談支援などにつきまして、今後検討してまいります。

○森澤委員 立ち上げ期の財政支援と経営面の相談を行っていくということでした。
 まだ日本で定着しない考え方を仕組みとして実装していこうとする中では、最初に枠組みを決めてしまうのではなく、その事業者とともに走りながら仕組みを仕上げていくという観点が必要だと考えますが、見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームの事業や経営の状況を踏まえながら、適切に財政支援を行うことや、経営上のアドバイスをきめ細かに行うなど、実効性のある支援策を検討してまいります。

○森澤委員 柔軟な実効性のある支援策を期待したいと思います。
 以前、就労継続支援A型事業所に視察に行ってきましたときに、そこの施設の障害のある方々が生き生きと働かれていて、その事業所内では経済的な循環もしっかりなされていることから、すばらしかったのでほかの場所ではやらないのですかというような話を聞いたところ、用地や建物など場所を探すところから始まり、会社設立に当たっては、行政を初めとした方々からなかなか理解を得られず非常に苦労しまして、もう二度と同じことはできないというふうにおっしゃっていたのが印象的でした。ソーシャルファームは、まだまだ区市町村を初め、社会的な理解度が低いのも事実であると思います。
 ぜひ、都が率先してその周知に努めるとともに、調整役、橋渡し役になっていただきたいと思います。
 先般の事務事業質疑で、事業を民間に丸投げするような形ではなく、行政が積極的にフォローし、顔が見える関係になっている福岡市の官民協働型スタートアップ施設のお話をしましたが、今回のソーシャルファーム創設推進に当たっては、都も事業者とともに課題を把握し、行政ならではの解決策の提案をしていけるようなかかわり方をしていただきたいと強く要望しておきます。
 また、都の役割として、都有地や都有施設などの活用も視野に検討していただきたいと思います。先ほどご紹介したA型事業所も、場所の取得に大変な困難があったという話がありました。都のリソースを最大限に生かしていただきたいと思います。
 さて、本条例では、就労の支援は都民一人一人の個性がひとしく尊重され、その個性と能力に応じた就労を実現し、もって社会を構成する一員として、誇りと自信を持って活躍することを旨として推進されなければならないとしており、誰もが自分らしく働いていける社会を目指そうとするというものです。
 では、なぜ今、自分らしく働いていくことができない方々が多いのでしょうか。それはやはり、これまでの画一的な日本の働き方に問題があると考えます。
 週五、残業前提のフルタイム、業務も何でもできる人がよしとされる働き方から、時間や場所によらず、また短時間でも複数で取り組めば仕事ができるように仕事を切り出すなど、何らかの制約があっても個々の能力を生かすことができる働き方へと転換していくことが求められています。
 短時間就労や在宅勤務など、多様な働き方が普及すれば、多くの困難を抱える人の就労につながると考えます。そういった意味で、誰もが自分らしく働いていくためには、多様で柔軟な働き方の推進が特に重要であると考えます。
 都は、これまでも取り組んでいることは認識していますが、今後、条例制定を機にどう取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○篠原雇用就業部長 企業における多様で柔軟な働き方を推進するため、都はこれまでも、テレワークの導入促進などの施策を実施してまいりました。
 条例案の第九条でも、事業者に対する都の支援として、従業員が働きやすい職場環境の整備の支援を規定しておりまして、今後も引き続き企業の職場環境づくりを支援してまいります。

○森澤委員 引き続き強力に多様で柔軟な働き方の推進をお願いしたいと思います。そして、本条例の目指す先にある東京の姿をしっかりと描いて、総合的に施策を推進していただきたいと思います。
 さて、話は変わりますけれども、川崎市では、市内で開催されるイベントにおける運営スタッフの一定割合を、身体、精神、知的障害の方々や、ニートやひきこもり、ホームレスと呼ばれる方々など、さまざまな理由から社会参画が難しい方々にその門戸を開いています。二〇一六年度においては、四十八企画において、四百八十六名が就労体験に参加し、うち五十九名が正規就労につながっているということです。
 やはり一緒の時間を過ごすことで、どうしたら一緒に働いていけるのか、どのようなサポートが必要なのかといった考えを深めることになります。こうした取り組みを参考に、都の主催するイベント等においても就労困難者が積極的に運営に参加できるようにしていくことも検討いただきたいと思います。
 就労における困難の根底には、人権課題が横たわっているケースもあり、総務局人権部との連携が重要です。また、就労支援の前に、生活基盤を整えなければならないケースでは、福祉保健局や住宅政策本部との連携も重要になります。さらに、いざ働く段階になって、突然ソーシャルインクルージョンを求められても、体現するのはなかなか難しいのではないかと思うのが正直なところです。
 教育の現場では、特別支援学級、特別支援学校と分かれて教育を受けているのも現状で、先日、ダイバーシティーに関する勉強会を開始したところ、障害のある子との接し方がわからないという子供に対して、何と教えていいのかわからないという保護者の声も聞かれました。
 有識者会議の報告書にも、教育の場等での工夫や支援の必要性が示されています。真のソーシャルインクルージョンを実現するためには、インクルーシブ教育、つまり、同じ場所でともに過ごす中で理解を深め、お互いの能力を生かし合う関係性の構築も大事になってくると考えます。
 そういった意味から、条例制定後は組織横断的な取り組みが必要だと考えますが、今後、都庁内ではどのような体制で推進していくのか見解を伺い、私の質問を終わります。

○篠原雇用就業部長 就労に困難を抱える方のさまざまな事情に配慮しながら、就労支援の効果を高めていくには、福祉、住宅、教育など、さまざまな施策と雇用就業施策を連携させて、適切な対応を図っていくことが重要でございます。
 このためには、条例案にお示しした国、区市町村等との連携を進めるだけではなく、都庁内においても密接な連携と協力のもとで施策を推進してまいりたいと考えております。

○藤井委員 では、最後の質問をさせていただきます。
 私は、島しょ地域の観光施設の台風被害についてをお聞きしたいと思います。
 ご承知のとおり、台風十五号が九月八日の夜半から九日にかけまして、伊豆諸島を直撃いたしました。大島では、最大瞬間風速が四十七・一メートルという最高記録が出されまして、新島とともに激甚災害に指定されたところであります。また、この大島においては、九月八日、十六時四十分、避難勧告が発令されまして、九カ所の避難所が開設をされたところでございます。
 そういった中で、この台風十五号、十九号と、これまで経験したことがない大変激しい台風が相次いで東京を直撃いたしました。先ほどもありましたように、多摩地域では都道が崩落をいたしまして、奥多摩の日原地区などが孤立化したり、あるいは二十三区の区部でも、大田区、世田谷区の一部が浸水被害に遭いまして、大きな被害をもたらしたところであります。
 とりわけこの島しょ地域では、観光が農業、漁業と並ぶ重要な生活を支える基盤になっているわけですけれども、島しょ地域へのお客を誘客する取り組みについて、私はこの委員会で質問をしたところであります。
 今回の台風では、島しょ地域の観光施設も大きな被害を受けたというふうに聞いておりますが、まずこの被害状況について確認をしたいと思います。

○松本観光部長 台風十五号及び十九号によりまして、島しょ地域では、大島町の観光施設である旧港屋旅館の屋根、また、三宅村の火山体験遊歩道の木柵の破損など、町村が整備する観光施設の被害額は、五町村で合わせて約一億四千万円との報告を受けてございます。

○藤井委員 大きな被害があったわけですけれども、この台風十五号によります住宅の被害も大変大きな被害がありました。
 例えば大島では、全壊の住宅街が四世帯、半壊の住宅が八十世帯、一部損壊が六百二十四世帯、それ以外、住宅以外の損害でも四百五十七件の被害がありました。
 私たち公明党は、この台風十五号の後、九月十四日ですけれども、竹谷参議院議員、そして細田都議会議員、そして私と三人で台風被害調査団を結成いたしまして、十四日に大島に実態調査に行ったところでございます。特に台風の被害が大きかった差木地、あるいは波浮港、野増等々を見てまいりました。
 まず驚いたのは、やはり大きな強風によって木がどんどん倒れまして、大島では電線のそばに木がいっぱい生えていますから、倒れた木が電線にひっかかり、あちこちで停電となったわけであります。また、民家の屋根が飛ばされまして、私どもが見に行った民家の屋根は全くなくなって、骨組みだけというようなところ、あるいは屋根の一部が飛んで、応急処置としてブルーシートがかぶさった家があちこちで見られたところであります。
 さらには、大島海洋国際高校というのが大島にありますが、ここも海に面しておりまして、大変被害がありまして、ここも現地を見てまいりました。まず、学校の教室の窓ガラスが約百九十枚割れて、ベニヤで応急処置がされておりましたし、また、教室のパソコンが、八十二台ある教室のパソコンに水と砂がかかって、全部使えなくなっている、さらには、体育館の屋根が飛んで、民家の方に飛んでいた、雨漏りがして体育館も使えなくなった、このような大変厳しい状況をつぶさに見てきたところでございます。
 また、大島の波浮港にも行ってきました。
 この波浮港も大変大きな被害があったんですけれども、今のご答弁でありましたように、大島の波浮港の近くの旧港屋旅館、これは非常に歴史がある旅館ですけれども、被害に遭ったということで、この波浮港は昔、漁業者であるいは観光客でにぎわった港でございます。あの有名な都はるみのアンコ椿は恋の花の歌碑があるところでございますが、そこも行ってまいりました。
 この旧港屋旅館の当時のにぎわいを伝えます観光施設の被害状況はどうだったのか伺います。

○松本観光部長 大島町の旧港屋旅館は、明治時代に建てられた旅館でございまして、現在は踊り子の里資料館として建物を保存し、当時のにぎわいや歴史を伝える観光施設となっております。
 今回の台風十五号によりまして、玄関などの窓ガラスや、約百枚の屋根瓦が損壊するなど被害が報告されており、施設は当面の間、休館となっております。

○藤井委員 大変な被害があったわけですけれども、一日も早い復興を望みたいと思います。
 また、大島以外でも、先ほど答弁にありました三宅島の火山体験遊歩道というのがあります。これの木柵、木の柵も損壊したということでございました。
 ここは昭和五十八年の三宅島の噴火によりまして、雄山から流れ出した溶岩が阿古小学校、中学校、併設されていた敷地に入りまして、いっぺんに学校をのみ込んだところでございまして、今もその溶岩流がそのまま残っているという、ある意味では火山の生々しい記録が実感できる施設でございます。
 この溶岩の上に火山体験遊歩道というのができて、私どもも、まつば委員とも見てきましたけれども、立派な遊歩道ができていたんですが、ここが壊れたということでございます。
 まさにこういった火山が生み出した三宅島の魅力を伝えます重要な観光資源がこういった被害に遭っているわけですけれども、今回、都は、台風によって被害を受けた観光施設の修繕に対する費用について補正予算を組んだことに対して、大変敬意を表しますけれども、その具体的な取り組み内容についてお伺いいたします。

○松本観光部長 今回の台風で被害を受けた観光施設は、いずれも年間を通じて地域の自然や歴史、文化を楽しめる主要な観光スポットでございます。
 このため、都は、地元の自治体が整備する観光施設の修繕に要する経費について、対象経費の二分の一、二千万円を上限に助成し、これらの施設の着実な復旧を図ってまいります。

○藤井委員 ぜひ復旧に向けて、しっかり支援を着実に取り組んでいただきたいと要望したいと思います。
 さて、来年の一月になりますと、大島では椿まつりが開催されます。
 一番大きなイベントですけれども、この地域の観光を盛り上げていくために、施設の整備を支援するだけではなくて、島しょ地域の観光の魅力を積極的に、内外に、特に外に発信していくことが重要だと考えます。
 そこで、都は今回の補正予算において、島しょ地域への外からのお客を呼ぶ、こういった観光PRを強化する、その具体的な取り組み内容はどんな内容ですか伺います。

○松本観光部長 都は、島しょ地域の観光の魅力を国内外に伝えるため、SNSやウエブサイトの記事や動画などにより、年間を通じて島しょ地域の観光情報を効果的に発信しておるところです。
 これに加えまして、新たに島しょ地域の早春の魅力を表現するPRポスターを作成し、交通機関などに掲出するほか、都庁内でPRイベントを実施するなど、島しょ地域の観光情報の発信を強化してまいります。
 こうした取り組みにより、島しょ地域へのさらなる誘客を図ってまいります。

○藤井委員 今後も、観光PRを強化するということでございましたので、ぜひ多くの方々に島しょ地域を訪れて、そして、各島の観光が盛んになりますように、今後とも積極的に取り組まれるよう要望して終わります。

○両角委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○両角委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で産業労働局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時五十分散会

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