経済・港湾委員会速記録第十三号

令和元年九月十二日(木曜日)
第八委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長中山ひろゆき君
副委員長小林 健二君
副委員長山崎 一輝君
理事奥澤 高広君
理事尾崎あや子君
理事小山くにひこ君
ひぐちたかあき君
うすい浩一君
あかねがくぼかよ子君
斉藤やすひろ君
白戸 太朗君
柴崎 幹男君
三宅 茂樹君
あぜ上三和子君

欠席委員 なし

出席説明員
産業労働局局長村松 明典君
次長十河 慎一君
総務部長坂本 雅彦君
産業企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長成長戦略担当部長兼務武田 康弘君
商工部長土村 武史君
金融部長加藤  仁君
金融支援担当部長井上  卓君
観光部長松本 明子君
観光振興担当部長鈴木 誠司君
農林水産部長上林山 隆君
安全安心・地産地消推進担当部長龍野  功君
雇用就業部長篠原 敏幸君
事業推進担当部長村西 紀章君

本日の会議に付した事件
産業労働局関係
付託議案の審査(質疑)
・第百六十七号議案 東京都産業労働局関係手数料条例の一部を改正する条例
報告事項(質疑)
・私債権の放棄について
・平成三十年度地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター業務実績評価について
・都民の就労を応援する条例(仮称)の基本的な考え方について

○中山委員長 ただいまから経済・港湾委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、産業労働局関係の付託議案の審査及び産業労働局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより産業労働局関係に入ります。
 初めに、付託議案の審査を行います。
 第百六十七号議案を議題といたします。
 本件につきましては、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○中山委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中山委員長 異議なしと認め、付託議案に対する質疑は終了いたしました。

○中山委員長 次に、報告事項、私債権の放棄について外二件に対する質疑を行います。
 本件につきましては、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○坂本総務部長 去る八月三十日の当委員会で要求のございました資料につきまして、ご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の経済・港湾委員会要求資料の表紙をおめくりください。
 目次でございます。資料は全部で四項目でございます。
 一ページをごらんください。地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターの収入及び支出の推移につきまして、それぞれの区分ごとに、上段に平成二十七年度から令和元年度までの年度計画における予算額、下段に平成二十七年度から三十年度までの決算額をお示ししてございます。
 二ページをお開きください。同センターの役職員数の推移につきまして、平成二十七年度から三十年度までの各年度末現在の人数と、令和元年八月一日現在の人数をお示ししてございます。
 三ページをごらんください。同センターにおける研究員の採用、応募状況の推移につきまして、平成二十七年度から令和元年度までの、一般型研究員及び任期つき研究員の応募者数を上段に、採用数を下段にお示ししてございます。
 四ページをお開きください。同センターの依頼試験、機器利用の区市町村別利用状況につきまして、平成三十年度の利用企業の所在地別に集計した件数をお示ししてございます。
 以上で要求資料の説明を終わらせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

○中山委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○あかねがくぼ委員 都民ファーストの会東京都議団を代表しまして、条例制定に関して三点ほど質問させていただきます。
 まず最初に、条例制定に向けた決意というところをお伺いしていきたいと思います。
 第三回定例会の都民ファーストの会代表質問において、知事は、今後制定を目指す都民の就労を応援する条例について、ソーシャルファームを大きな柱として位置づけることとあわせて、来年度中に、都が認証するソーシャルファームを誕生させたいと決意を力強く表明されました。
 私たちの会派が主張をしてきたソーシャルファームの実現に向け、大きな一歩を踏み出したことと高く評価したいと思いますが、これから条例を制定し、具体的な施策を展開していくことが重要であることはいうまでもありません。
 そこで、まず冒頭に、産業労働行政をつかさどる局長に、条例制定とソーシャルファームへの支援に向けた決意についてお伺いしたいと思います。

○村松産業労働局長 働く意欲がありながらも仕事につくことができない方々が依然として多数おりまして、こうした方々の就労を支援することは、都の雇用施策にとって重要な課題でございます。
 先月末に公表いたしました都民の就労を応援する条例、仮称ではございますが、この基本的な考え方におきましては、都と都民、事業者が認め合い支え合うソーシャルインクルージョンの考え方で就労支援を行うこととし、中でも就労に困難を抱える方への支援といたしまして、ソーシャルファームを活用することを施策の重要な柱に位置づけております。
 ソーシャルファームは、企業経営の観点から、障害のある方、ひきこもり、ひとり親の方などが生き生きと働くことのできる新たな仕組みでございます。就労に困難を抱えている方の社会参加を進めていく上で大きな意義があるものと考えております。
 さきの本会議では、知事からもお答えしたように、条例が成立した後には、ソーシャルファームの認証基準や、支援策を示した指針を早急に策定し、都内に都が認証するソーシャルファームを誕生させていきたいと考えております。
 今後、都議会での議論、有識者会議の報告や、都民の皆様の意見を踏まえ、第四回定例会での条例案の提案に向け、着実に準備を進めてまいります。
 ダイバーシティーを実現する新たな時代にふさわしい雇用就業施策の展開に向けまして、関係局とも連携のもと、局一丸となって取り組んでまいります。

○あかねがくぼ委員 ありがとうございます。
 続きまして、条例制定の目的、これについてお伺いしたいと思います。
 まず、条例制定に向けて、就労支援のあり方を考える有識者会議での議論を踏まえまして、四つの柱を中心に構成されている基本的な考え方が提示をされ、パブリックコメントに付されているところであります。
 そもそも、今回の取り組みは、従来の就労支援の枠組みでは拾い切れなかった就労に困難のある都民の就労を支援するための画期的な取り組みであると受けとめています。
 条例制定の目的について、改めてお伺いします。

○篠原雇用就業部長 働くことを希望しながらも、障害のある方や、ひきこもり、ひとり親の方など、さまざまな要因から就労に至っていない方も少なくない状況にございます。
 そうした方々を、都と都民、事業者などが相互に理解を深め、社会の一員としてともに活動しながら支え合うソーシャルインクルージョンの考え方に立って、就労の支援を行うことが必要でございます。
 この考え方を広げて、希望する全ての都民の就労を応援することによりまして、都民一人一人が、その個性と能力に応じて就労し、誇りと自信を持って活躍することにつなげていく、そうした理念を、都民の就労を応援する条例の基本的な考え方に掲げております。
 また、施策の面では、就労に困難を抱える方が生き生きと働ける場を生み出していくため、従来の支援策では位置づけられていなかったソーシャルファームという新たな枠組みを取り入れて展開していくことも重要でございます。
 以上のような考え方で、施策を強力に進めていくことを目的として、条例の制定を目指しているものでございます。

○あかねがくぼ委員 ありがとうございます。ソーシャルファームという新たな枠組みというところが、取り入れていっていただくということが重要かなと思います。
 続きまして、ソーシャルファームの認証と支援についてお伺いしたいと思います。今回の条例の中で重要なことは、先ほども申し上げましたソーシャルファームの創設や、活動の支援を規定して、都として認証を設けるということでありますが、これは我が会派が、ことしの予算特別委員会で求めた伴走型の制度を構築していくためにも重要なことでありますし、評価をしております。
 基本的な考え方の中では、ソーシャルファームの認証基準と支援策を盛り込む指針が策定されることが示されておりますが、ソーシャルファームへの支援の実効性と具体性を担保するためには、認証基準と支援策を規定する指針、この内容が重要であります。
 指針に盛り込む認証の考え方や、ソーシャルファームの支援策の方向性について、都の見解をお伺いします。

○篠原雇用就業部長 条例の基本的な考え方におきまして、ソーシャルファームは、事業活動からの収入を主たる財源として運営していること、就労に困難があると認められる者を相当数雇用していること、就労に困難があると認められる者が実情等に配慮した支援を受けながら、他の従業員とともに働いていること、この三点を全て満たす社会的企業としております。
 この要件を満たすソーシャルファームの創設を促進するための重要な取り組みとしまして、支援対象とするソーシャルファームを都が認証すること、さらに支援することとしておりまして、この二つを条例制定後に制定する指針に盛り込んでいくこととしております。
 新たに創設されるソーシャルファームを都が公的に認証し、さらに、創設に当たっての経営ノウハウや、資金的な面からの支援などを行うことによりまして、その事業活動を強力にサポートし、就労に困難を抱える方々が生き生きと働ける場所を着実に確保していきたいと考えております。
 また、認証基準や支援策を盛り込んだ指針を策定することは、ソーシャルファームを創設しようとする方のガイドラインといたしまして、その活動を後押しすることにもつながるものでございます。東京にソーシャルファームを広く普及させていくための中心的な施策になると考えております。
 条例制定後は、実効性ある具体的な指針を早期に策定し、ソーシャルファームへの取り組みを着実に進めたいと考えております。

○あかねがくぼ委員 ありがとうございます。認証基準や支援策を盛り込んだ指針によって、今後、ソーシャルファームを創設しようとする方のガイドラインになっていくという点、大いに期待をしていきたいと思います。
 最後に、意見として申し上げます。
 就労に困難のある方が誇りと自信を持って輝きながら働くためには、その方が就労困難になっている固有の課題、それを解決していく必要がございますが、中でも、多くの学者、ソーシャルワーカー等が指摘をしている点は、家族環境の問題であります。当事者だけの支援では、本質的な解決というものがなかなか難しい。家族との関係や、家族の抱える課題、これを総合的に解決していく中で、当事者の就労の継続が可能になるということであります。
 また、事業者に向けての支援も必要不可欠であると考えます。就労困難な方を数多く雇用している経営者の方にお話を伺ってくる機会がございましたが、そのような就労をされている方の中には、調子がよいときは問題なく就労ができていても、調子が悪くなるということも非常に多くて、お休みがちであるなど、雇用主としては悩みが尽きないというような様子でございました。
 当人だけでの問題で解決するというケースばかりではなくて、家族ごとの支援、これが必要だというケースや、場合によっては、精神科医や弁護士など専門家の支援が必要となってくる、そういったケースも多いということであります。
 就労困難な方を一定割合以上雇用をして、かつ、補助金に頼らずに、企業的な経営を継続していくということは、このように非常に労苦が多いことでありますので、一事業者の責任として課題を解決させていくというスタンスではなくて、ワンストップで相談できる窓口を設けて、伴走をしつつ具体的なケース、ヒアリングをしていく中で、どのような支援が必要とされているのか、これを把握していただく、そういったスタンスが必要と考えます。
 以上、今後、支援策を検討していただくに当たりまして、これらの視点を取り入れていただけるように要望いたしまして、私の質問を終わります。

○柴崎委員 私からは、都民の就労を応援する条例の基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。
 今回、公表されました条例の基本的な考え方では、都は、都民、事業者等が相互に理解を深め、社会の一員としてともに活動しながら支え合うソーシャルインクルージョンの考え方に基づき、就労を希望する全ての都民を支援するという大きな理念が示されております。
 就労に困難がある方を含め、全ての都民を支援するという理念には賛成するものでありますが、一方で、厳しい経営環境に置かれた事業者が、理念には共感するものの、その理念を具体的な行動に移すことはなかなか難しいというのも現実なのではないでしょうか。どんなに美しい理念も、現実、実態にどう反映していくのかが大切だと思います。
 現場の中小企業や零細企業の実情を踏まえて、都がどうサポートしていくのかといった観点も欠かせないのではないでしょうか。事業者、いいかえれば、経営者には雇用を生み出し、賃金を払うことで会社を支える従業員を初め、その家族の安定した生活を守る責任があります。だからこそ、厳しい経営環境の中でも、事業の継続はもちろん、事業の拡充につなげていくことが求められているわけであります。
 都は、条例の基本的な考え方で掲げた理念を実現できるよう、事業者の実態に配慮した支援をしていくべきと考えます。見解を伺いたいと思います。

○篠原雇用就業部長 都民の就労を応援する条例の基本的な考え方でお示ししました理念を実現していくためには、都民への支援とあわせまして、事業者の理解と協力が不可欠であると考えております。
 このため、この基本的な考え方におきまして、事業者への支援として、都は、事業者が実施する従業員の職業能力開発の支援などを支援策として実施することに加えまして、事業者が実施する就労に困難があると認められる者に対する、その実情等に配慮した雇用及びその継続を支援するとしております。
 条例制定後は、中小企業等の状況を踏まえながら、条例の基本的な考え方でお示しした施策の具体化を図ってまいります。

○柴崎委員 よろしくお願いしたいと思います。
 次に、関係機関との連携の観点から伺いたいと思います。実効性ある施策を行うに当たって欠かせない視点が、関係機関との連携であります。就労支援は都だけで担っているわけではなく、ハローワーク、区市町村の福祉部門や、さまざまな教育機関でも実施されています。
 基本的な考え方では、都の役割として、国や区市町村など、関係機関と連携し、就労支援施策を総合的に推進するとしておりますが、国や区市町村などとの適切な役割分担のもとで連携を強化していくことが効果的な支援につながると考えます。これについて、所見を伺いたいと思います。

○篠原雇用就業部長 都はこれまで、ハローワークや区市町村、障害者の就労支援機関、地域若者サポートステーション、学校などと連携し、さまざまな就労支援を実施してまいりました。今後、就労に困難のある方に対して、実情に応じたきめ細やかな支援を行っていくためには、これまで以上に多様な機関との密接な連携が欠かせないと考えております。
 引き続き、こうした関係機関との連携を図りながら、効果的な就労支援を実施してまいります。

○柴崎委員 我が党はかねがね、抽象論、観念論だけでは何も変わらないと申し上げてまいりました。社会経済情勢が大きく変化すればするほど、理念ではなく、刻々と変化する現実の経済、現場の実態、そして事業者の実情に合わせて、雇用就業施策を展開することが重要なのであります。それをせずして、理念ばかり唱えて、絵に描いた餅にすぎません。
 繰り返しになりますが、抽象論、観念論だけではなく、地に足のついた実情を踏まえた議論こそ重要であることを改めて申し上げまして、私からの質問を終わります。

○斉藤委員 私からは、東京都の産業技術研究センターの業務実績報告について質問をしたいと思います。
 今回、報告がございました平成三十年度の業務実績評価では、全体評価といたしまして冒頭に、地域計画の達成に向け業務全体がすぐれた進捗状況にあるとの高い評価が出ております。
 東京の稼ぐ力を高めるため、その根幹を支える中小企業の成長を支えることが不可欠でございまして、今回の産業技術研究センターへの高い評価は、その技術支援が、中小企業の製品化や事業化などの成果に着実につながってきたことが評価されたものと考えます。
 そこで、私からは、こうした高い評価を受けた、いわゆる産技研の技術支援が、中小企業の製品開発などに真に役立っているかを確認するため、研究活動を初めとして、何点か質問をさせていただきます。
 まず初めに、基盤研究についてですが、東京の重要な産業であるものづくりを支える中小企業が今後も成長を遂げていくためには、将来の社会状況やテクノロジーの動向を把握し、大変な、今、急速な変化もございますが、革新的なイノベーションにつながるような技術を獲得していくことが必要であります。
 しかしながら、この技術革新のスピードはとても速くて、海外との競争も激しくなる中で、中小零細企業におかれましては、こうした新しい、新たな技術獲得に向けた研究は、必ずしも十分に対応できているわけではありません。
 こうした中にありまして、産業技術研究センターが行っている基盤研究は、中小企業が行う新たな製品開発を見据えて、そうした中小企業に技術のシーズ、種を提供する苗床ともいえるような研究に注力することが重要と考えますが、平成三十年度の取り組みについて伺いたいと思います。

○土村商工部長 産業技術研究センターでは、将来に必要となります技術の開発や、中小企業の課題を解決するため、環境・エネルギー、生活技術・ヘルスケア、機能性材料、安全・安心の四つを重点四分野として基盤研究に取り組んでおります。
 平成三十年度は新たに、理事長のマネジメントのもと、分野横断的なイノベーションにつなげる協創的研究開発の制度を創設しまして、バイオ、3Dものづくり、機械、デザインの連携で市場の拡大が見込める分野への研究に取り組みました。
 また、各部署の前年度の製品化、特許許諾、論文執筆などの実績を翌年度の予算に反映させますインセンティブ制度を導入することで、基盤研究活動の活性化に取り組んでおります。
 こうした取り組みの結果、三十年度は、基盤研究をもとにした中小企業との共同研究が十四件から二十三件、製品化、事業化が三件から七件と、前年度より実績を伸ばしてございます。

○斉藤委員 センターの基盤研究の成果が活用されまして、中小企業の製品化や事業化などの実績にも結びついているというお話でございます。
 確かに、独法化されまして、三十年度は新たに、理事長のマネジメントのもとで、独創的研究開発、こういった制度を創設されたことで、3Dものづくり、大変、私もさまざまなところで拝見することがございますけれども、バイオリンの成果なども拝見をいたしましたけれども、そういったすばらしい成果も生まれているわけでございます。
 今後も、さらに研究の質の向上に取り組みまして、稼ぐ東京の実現、これに中小企業を置き去りにしないように、しっかりと中小企業の技術力向上につながるように、しっかりと取り組んでいただきたい、このように思います。
 続きまして、共同研究についてお話を続けたいと思いますが、中小企業が製品化、事業化を進めるに当たっては、すぐれた技術を有するだけでなく、開発環境を整備していくことも必要となります。
 しかしながら、体力、大変弱いものもございます。中小企業が単独で必要となる機材や人員を用意いたしまして、新たな製品開発に取り組んでいくことは、経営資源の限られた中小企業においては、大変大きな負担となるわけであります。
 より多くの中小企業が、東京発の付加価値の高い製品を市場に送り出していくためには、産業技術研究センターの持つ資源の活用が有効であります。
 そこで、この中小企業の開発における負担を軽減しつつ製品を開発する共同研究は大変に有意義であると考えますが、その取り組みや、具体的な成果について伺いたいと思います。

○土村商工部長 平成三十年度に産業技術研究センターが行った共同研究は、前年度の四十六テーマを上回る七十テーマでございました。
 具体的には、業務用カメラの振動制御装置や、歯科用インプラントの部品の開発などを実施いたしました。さらに、大学も加えました共同研究では、豪雨警戒センサーの開発や、胎児の外科治療用の内視鏡の開発などを実施いたしました。
 これまでの共同研究を通じまして、平成三十年度には、自動車衝突防止のレーダー信号解析ソフトウエアや、耐食性、耐摩耗性にすぐれた表面処理をした機械部品など、十件の製品化が実現したところでございます。
 平成二十八年度からの累計は三十五件となりまして、今期中期計画における目標の三十三件を上回ったところでございます。

○斉藤委員 さまざまな共同研究が実施されているということでございますが、それが製品化につながっている状況がわかりました。
 今後、成功事例などを積極的に発信するなど、周知をすることで、より多くの中小企業がこの事業を活用して、次の共同研究や製品化へつなげていくように、しっかりと取り組んでもらいたいと思います。
 詳細が、かなり細かい字で今回の報告書にも添付されておりますけれども、本当に、皆さんにそれを知っていただくことも非常に重要であるというふうに思うわけであります。
 続きまして、オーダーメード開発支援について触れておきたいと思います。
 このオーダーメード開発支援、これは中小企業が製品開発に取り組む場合に、企画からデザイン、試作品の作成など、多くの工程が必要になるわけですけれども、しかしながら、中小企業におけるものづくりの現場では、全ての企業がその製品開発の道筋を描けるわけではない。
 そこまでの人材とか、準備もなかなか用意できないわけでありますが、すぐれた技術やアイデアを持っていながらも、どのような工程でそれを開発していくのか、また、それぞれの工程で何をする必要があるのかといった悩みを抱えるものであります。こうした悩みを抱えている、実際には製品化に踏み切れない経営者も少なくないと聞いているところであります。
 こうした中小企業が持つ、成長へつながっていくアイデアの芽を摘むことなく育てていく、製品化へと開花できるように、それぞれの企業の状況に応じたきめ細かな開発支援に取り組んでいくことが重要であると考えますが、センターにおける取り組みについて伺っておきたいと思います。

○土村商工部長 産業技術研究センターでは、製品開発におきまして、コンセプト立案、設計、試作、評価など、開発の初期段階から、中小企業からの支援ニーズに対応するために、ハンズオンで支援を行っていくオーダーメード開発支援を実施しております。
 平成三十年度では、材料の分野や精密加工の分野などを中心に、五百四件の支援を行っているところでございます。
 これまでの支援の事例では、複数の回転を組み合わせて均質に攪拌するミキサーや、従来は測定が難しかったタイプの悪玉コレステロールの測定が可能な自動測定装置、江戸ガラスを用いたデザイン性豊かなしょうゆ差しなどの開発を支援してまいりました。
 今後とも、中小企業が持っているすぐれたアイデアの実現を支援し、製品化や事業化につなげてまいります。

○斉藤委員 中小企業が製品開発を進めていく上において抱える課題は、多種多様であるかと思います。
 こうしたさまざまな課題に、オーダーメード開発支援、これを通じて、個別の中小企業の状況をよく勘案して、きめ細かく対応することで、より多くの中小企業の成長を実現できるように、しっかりと支援して展開していきたいと思いますが、今回の報告書を見ますと、オーダーメード開発支援、平成二十八年度A、二十九年度A、そして、今回B。
 Bが決して悪いわけじゃありません。これは標準的な、計画どおり進んでいるということの評価であって、よりA、Sを目指していくということが重要であるわけでございますが、このオーダーメードというのは、まさに相談をされて初めて、その相談に応じて、できることをいろいろ提供できるということで、そうした相談する側の、相談しやすい環境というものを、常にやっぱり追求していく必要があると思うんですね。
 私どもも、小さな声を聞く力などといって政治活動をしていますけれども、そういった中小企業の小さな声を聞く力を不断に磨いていくことも、このオーダーメード開発支援の成果をBからA、AからSへ上げていく一つの鍵かなというふうに、ちょっと拝見をいたしました。
 続きまして、社会課題の解決につながる研究開発について触れておきたいと思います。
 売れる製品開発においては、社会的課題を解決するという視点、これもますます重要になってきております。少子高齢化や環境問題などの社会的な課題の解決は、国内のみならず、世界的にも解決すべき課題でありまして、これが逆にまた、大きなビジネスチャンスにもつながっているというふうに見られております。
 産業技術研究センターでは、廃プラスチックなどにも注目いたしまして、それに代替する素材などを開発するということも伺っておりますけれども、こうした取り組みは、今後、ますます重要になると考えるわけであります。
 そこで、社会的な課題解決に資する製品開発について、都産技研ではどのように支援を展開しているかを伺っておきたいと思います。

○土村商工部長 産業技術研究センターの基盤研究におけます重点四分野の一つであります環境、エネルギー分野では、環境に優しい製品や材料、省エネルギーにつながる技術の開発、また、生活技術、ヘルスケア分野では、医療、バイオ分野における技術開発や介護関連の機器開発など、社会課題解決を図る研究開発を幅広く実施してございます。
 平成三十年度におきましては、環境負荷を低減した黒色メッキの開発など、環境に関する研究開発や、ブルーライトによる網膜障害の測定方法など、ヘルスケアに関する研究開発などを行ってまいりました。
 また、社会課題の解決に関して関心が高い中小企業とともに、木質バイオマスと天然のりを用いた複合素材や、有害物を含まないガラス材料の開発などの共同研究を行っているところでございます。

○斉藤委員 こうした社会課題解決型の研究開発に対する支援、非常に重要だと思います。こうした取り組みは、まさに、先日、私が一般質問でもいたしましたが、国連が採択した二〇三〇年までの持続可能な開発目標、いわゆるSDGs、このSDGs的経営というものが非常に重要だと私は思っておりますけれども、このSDGsの実現にもつながる取り組みというふうに見えるわけでございます。
 今後、この中小企業がさらなる成長を遂げていくための成長戦略として、SDGs的な経営、SDGs経営といいますか、こういったものを展開していくことが極めて重要であるというふうに考えております。
 今後、このSDGsの視点に立った経営の促進などについて検討していくという前向きなお話がございますけれども、これからのものづくりでは、このSDGsの視点を取り入れていくことが社会からも求められ、同時に製品の価値を高めていく、そしてそれがビジネスチャンスの拡大にもつながっていくことが期待されるわけであります。
 そこで、最後の問いでございますけれども、この評価でも触れられていますように、都産技研の研究開発や技術支援など、全体を通じまして、SDGsの考え方を取り入れて、その実現に向けしっかりと取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺いたいと思います。

○土村商工部長 産業技術研究センターに対する業務実績評価におきましては、持続可能な開発目標、いわゆるSDGsへの幅広い取り組みがセンターにも求められることから、こうした動きに対応する柔軟な組織運営が期待されると意見が出されてございます。
 そのため、こうした意見を踏まえながら、今後、センターとして、SDGsの考え方を取り入れた研究や、技術支援のあり方について検討事項としていくこととしております。

○斉藤委員 ものづくりの中小企業の製品開発におきましては、これからはSDGsの視点に立つことが、私は求められていくんだと思います。それが成長につながっていくということであります。
 一方、中小企業の中には、自身の製品開発がSDGsに貢献することに気がついていない企業が大半であるというふうに思うわけであります。いろいろな報告書を読んでいますと、例えば、関東経済産業局の二〇一八年十二月の中小企業調査による記述を見ますと、このSDGsの認識、中小企業は残念ながら大変におくれているといわざるを得ない数字が出ているわけであります。
 聞いたことがない八四%、聞いたことはあるが内容は知らない八%と、多くの中小企業がみずから持っている技術が、そういった世界が、今、国内外を合わせてですけれども、求めているこのSDGs的な視点、これに対して自分たちの持っている技術が、つながっているんだけれども、そこにまだひもづけされていないとか、気づいていない企業がたくさんあろうかと思います。
 そうしたことをつなげていくことも、この中小企業、零細企業、個人的な経営をしている方、おられますけれども、ビジネスチャンスにつながっていくんだという結びつきを、ぜひ産技研のさまざまな事業を通じて行っていただくことも重要であろうと思います。
 そのためにも、このセンターにおきましても、積極的に社会課題の解決に取り組む中小企業を、技術面から支援するとともに、SDGsに資する製品開発として取り上げていただくことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

○尾崎委員 最初に、平成三十年度地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター業務評価について質問を行います。
 都立産技研は、中小企業支援に欠かせない大きな役割を持っています。特に東京では、製造業の減少が目立ち、小規模企業は経営者の高齢化や後継者問題が深刻であり、生産性向上や新製品づくりは必要だと思っていても、自助努力だけではなかなか進みません。そして、新しい機械を入れたいと思っても、すぐに購入できない中小企業、小規模企業もあるからです。
 二〇一八年度の業務評価で、年度計画を大幅に上回って実施しているS評価をいただいた先端材料開発セクターと、3Dものづくりセクターを先日見学させていただきました。
 そこで、幾つか質問していきたいと思います。
 まず最初に、先端材料開発セクターについてですが、先端材料開発セクターでは研究開発を推進し、特許出願件数が昨年度の約二倍になっていますが、取り組みについて伺います。

○土村商工部長 機能性材料などを取り扱う先端材料開発セクターでは、第三期中期計画の五年間に新たな製品化を実現できるよう、計画的に事業を行っているところでございます。
 目標としまして、一年目及び二年目の基盤研究を経て三年目となる平成三十年度までには、研究成果の特許出願を行い、その後の二年間で製品化を達成できるよう取り組んでまいりました。
 これらによりまして、平成三十年度の特許出願件数は、他の部署との共同開発の案件も含めまして、二十九年度の件数の二倍を超える十件となったところでございます。

○尾崎委員 業務評価書には先端材料開発セクターの体制の見直しにより、支援件数を大幅にふやしたことは高く評価するとありますが、どのような体制の見直しを行ったのか伺います。

○土村商工部長 先端材料開発セクターでは、物質の微細な構造の観察に用いる光学、電子、レーザーの各種顕微鏡を同じ部屋に集中的に配置し、ワンストップでサービスを提供することで、複数の顕微鏡を使用する中小企業の利用者の方の利便性の向上を図ったところでございます。
 あわせて、中小企業からのニーズが多い電子顕微鏡やエックス線分析装置につきまして、研修を強化し、これらの機器を扱うことができる研究員をふやし、支援体制を強化いたしました。
 これらによりまして、平成三十年度の同セクターでの機器等の利用実績は、前年度に比べ二千三百八十九件増加し、七千八百七十六件となりました。

○尾崎委員 ワンストップでサービスするように機械の配置を変えたり、研修を強化して機器を扱うことができる研究員をふやすことで、前年度よりも二千三百八十九件増加できたことは、大変教訓的なことだと思います。
 今、世界的に大きな問題になっているプラスチック製品については、世界各地で使い捨てプラスチックを大幅削減していく方向を明確にしています。私は、国や企業の責任が重大だと思っています。そして、プラスチックにかわるものを早急につくることが求められていると思っています。その際、都立産技研の支援が求められると考えます。
 昨年、私は、プラスチックにかわる素材の研究は、今後、必要な課題になると問題意識を持っていたので、紙やプラスチックにかわる新しい素材を開発したという支援事例に大変感動して、前回も取り上げました。
 今回、全体評価の総評の中でも、プラスチック代替材料の開発支援、実績を上げていることを高く評価しており、今後についても、より一層の取り組みを期待すると記載されています。
 プラスチック代替材料について、具体的にどのような支援を行ったのか伺います。

○土村商工部長 プラスチックの代替材料の開発では、中小企業から、材料の強度などの課題について技術相談がございました。
 これを受けまして、製品の強度を引き上げるため、材料の粒子のすき間を添加剤により充填するなどの技術的な助言を行ったほか、依頼試験によりまして、複数パターンの試作品の強度の確認と、データ分析などの支援を行いました。
 その結果、商品化に耐え得る強度を持った材料の実現につなげることができたものでございます。

○尾崎委員 試作品の強度の確認ができる機器は、中小企業が購入するには経済的に困難であり、都立産技研ならではの支援です。
 また、データの分析、専門家の助言が的確であることが、中小企業を大きく後押しをし、新製品づくりを諦めずに、完成するまでやり上げる力になっていると痛感しています。
 プラスチック代替材料による製品は、どのようなものがあるのですか。

○土村商工部長 今回、センターが支援いたしました中小企業が開発した材料を使った製品としましては、トレーやコップ、箸などの食器のほか、くしやクリップなどが既に販売されてございます。

○尾崎委員 既に販売されているということは重要です。ぜひ、いろんなところで広げてほしいと思います。
 欧州議会では、ことし三月、食器類などの使い捨てプラスチック製品を二〇二一年までに禁止することを決めました。レジ袋でも、既に四十カ国で配布自体を禁止しています。
 都立産技研のホームページを見ると、今年度、プラスチック代替素材を活用した開発・普及プロジェクト、地球にやさしい食器づくり公募型共同研究の実施説明会のご案内が掲載されていました。今後の取り組みに期待するものです。
 次に、先端材料開発セクターの機器利用の推移を伺います。

○土村商工部長 先端材料開発セクターの機器利用の件数は、平成二十八年度が二千三百三十六件、平成二十九年度が二千九百二十二件、平成三十年度が三千六百八十六件でございます。

○尾崎委員 ただいまご答弁ありましたように、先端材料開発セクターの機器利用が年々ふえていることは重要です。特に、二〇一八年度は、七百六十四件もふえており、中小企業のニーズもふえていることがよくわかります。
 先日、見学をさせていただいた際に、機器利用ライセンスを取得するための支援も行っていると聞きましたが、具体的にどのように支援していますか。
 二〇一八年度で、何件ライセンスを取得したのか伺います。

○土村商工部長 産業技術研究センターでは、エックス線回析装置などの高度な先端機器につきまして、中小企業の技術者が自社の機器のように、フレキシブルに利用できるようにすることで、利用企業の利便性向上と効率化を図るという目的で、機器利用のライセンス制度を設けてございます。
 ライセンスは、センター研究員がマンツーマンで一定期間、指導いたしまして、機器の操作方法を習得した方に発行してございます。先端材料開発セクターでの平成三十年度のライセンス発行数は六十九件でございます。

○尾崎委員 中小企業が持続的に経営ができるかどうかの鍵は、人材確保と人づくりだと思います。特に、人づくりはかなり努力が求められます。産技研でライセンスが取れるように支援することは、人づくりにとっての大きな貢献だと思います。年間六十九件のライセンス発行は大変重要な取り組みです。
 次に、透過電子顕微鏡はどのような機能があるのですか。また、いつから設置されているのか伺います。

○土村商工部長 透過電子顕微鏡は、平成二十三年度から設置しておりまして、厚さ百ナノメートル、これは一ミリメートルの一万分の一だそうでございますけれども、極めて薄くスライスした試料に電子線を当てて測定することで、物質の原子レベルでの微細な構造を観察できる機器でございます。こうした機能を生かしまして、金属の微細な構造の把握や、半導体材料の欠陥の発見などに利用しております。

○尾崎委員 透過電子顕微鏡は、中小企業、小規模企業では簡単に導入できる機械ではありませんし、技術も専門性が伴うものです。全国の中でも透過電子顕微鏡を持っている産技研は少ないと聞いていますので、東京の中小企業、小規模企業にとっては重要な取り組みだと思います。先端材料開発セクターの実績などについて、もっと知らせるべきだと要望するものです。
 次に、3Dものづくりセクターについて質問します。
 3Dプリンターは、試作品づくりに欠かせない状況になってきています。先日、3Dプリンターでつくったバイオリンなどを見せていただきました。音も本物と変わらないことに大変驚きました。
 3Dプリンターには樹脂と金属がありますが、違いについて伺います。また、それぞれの利用実績について伺います。

○土村商工部長 産業技術研究センターでは、平成二十八年度に3Dものづくりセクターを開設し、樹脂用三台、金属用一台の3Dプリンター等を活用し、製品開発を支援してございます。
 樹脂用のプリンターは、材料にナイロン等を用いることで、短期間で安価に試作品を製作できることが利点でございます。また、材料にステンレス等を用います金属用のプリンターでは、樹脂に比べ費用と時間がかかりますが、試作品によって耐久性や質感まで確認できるという特徴がございます。
 これらの機器の平成三十年度の利用実績は、樹脂用が一万六千九百七十二件、金属用が四百六十四件となってございます。

○尾崎委員 都立産技研では、金属の3Dプリンターは本部だけですが、今後はほかの都立産技研でもふやす計画はありますか。

○土村商工部長 金属用の3Dプリンターの設置につきましては、利用実績や企業ニーズを踏まえて、適切に対応してまいります。

○尾崎委員 3Dプリンターを使っての付加価値の高い製品化の事例はどんなものがありますか。

○土村商工部長 3Dプリンターの活用は、迅速な試作品の製作と検証が可能となり、早期の製品開発につながるものでございます。
 3Dプリンターを活用した事例としましては、海外のコインや紙幣をその場ですぐに電子マネーに交換できる機器や、蒸気ロスを最大二〇%削減した蒸気バルブなど、付加価値を有する製品の開発に利用されてございます。

○尾崎委員 以前、小規模企業の金型業者の方たちからは、元請企業から試作品をつくってほしいと頼まれると、時間や材料代などの負担が大変だという声がたくさん寄せられていました。
 私は、3Dプリンターが登場した当初、3Dプリンターが普及すると金型業者の仕事がなくなってしまうのではないかと心配していました。この間、事業主の高齢化や後継者がいないなどの理由から廃業してしまった業者の方もいて、大変残念な気持ちです。
 先日、専門家の方から、3Dプリンターで試作品をつくることで経費の削減になる、製品化が決まれば、一定の量を製造するには金型業者に依頼することになる、最後は人間のわざがないと完成しないということを聞き、改めて、中小企業のわざのすばらしさを再確認しました。
 新製品をつくる場合には、3Dプリンターの効果は大きく、中小企業への応援に欠かせない状況になってきています。小規模企業が気楽に都立産技研を活用できるようにすることが必要だと思います。そのためには、広報の問題もあると思います。
 全体評価の総評のところで、グローバルで複雑な社会課題の解決に向けて、持続可能な開発目標、SDGs、二〇三〇アジェンダへの幅広い取り組みが都産技研にも求められることから、こうした動きに対応する柔軟な組織運営を継続していくことが期待されると述べてありました。
 中小企業への支援、環境問題、エネルギー問題など、都立産技研の取り組みが大きな役割を持っていると改めて実感をしています。
 都立産技研の依頼試験、機器利用の区市町村別利用状況を資料要求しています。この資料を見ると、地域の産業分布の違いもありますが、大変重要な資料だと私は思っています。この資料からも、全都に都立産技研の取り組みを広く知らせることが重要だと思います。
 そこで、都立産技研がどのような取り組みをしているのか、中小企業にとってどのような支援を行い、貢献しているのかなど、区市町村の担当者や銀行、信用金庫、多くの中小企業に知らせることがますます重要だと思います。メールマガジンやニュース、都産技研活用事例集などの広報活動はどうなっているのか伺います。

○土村商工部長 産業技術研究センターでは、センターの保有する技術を集めた技術シーズ集を千五百部、センターを活用した中小企業の成果をまとめた活用事例集を四千部、海外展開事例集を千部発行しまして、中小企業等へ広く配布しているところでございます。
 また、登録中小企業やセンターと連携している大学、金融機関等、約一万四千八百件に対しまして、メールニュースを五十五回送信してございます。
 さらに、平成三十年度から、センターの最新の技術を紹介した広報誌、TIRI NEWSと申しますが、こちらをよりわかりやすくリニューアルして、月一回発行してございます。

○尾崎委員 ますます知らせるという活動が重要だと思います。
 次に、都の運営交付金について伺います。
 二〇一八年度と二〇一九年度の都の運営交付金はどうなっていますか。

○土村商工部長 平成三十年度に産業技術研究センターに交付した運営交付金の額は、約六十九億七千万円、令和元年度に交付決定した額は、約七十三億五千万円でございます。

○尾崎委員 それでは、運営交付金のうち、標準運営費はどうなっていますか。

○土村商工部長 運営交付金のうち、平成三十年度に交付した標準運営交付金の額は、約四十七億七千万円、令和元年度に交付決定した額は、約四十七億五千万円でございます。
 これまでも述べてまいりましたように、産業技術研究センターに対する中小企業の支援のニーズはますます高まっておりまして、効率的な運営に努めながら、必要な体制を確保してございます。

○尾崎委員 都立産技研では、効率化係数のもとに、毎年一%、標準運営費交付金が削減されています。中期目標期間の五年ごとに積算されますが、標準運営費交付金には人件費なども含まれています。
 事業の部分では、人が介することでサービスの質が左右されるものが多く、効率化係数という名で人件費が削減されることは、産技研の力を十分に発揮する上で障害になりかねません。
 都立産技研は、独立行政法人化を見直し、都として、運営費、研究費を増額するとともに、基礎的研究ができる人員をふやすこと、中小企業への支援体制を拡充するよう求めて、産技研の業務実績評価についての質問を終わります。
 続きまして、都民の就労を応援する条例、仮称ですが、基本的な考え方について質問したいと思います。
 小池都知事は、就労支援のあり方を考える有識者会議の第一回目の会議で、誰もが自分の個性、そして能力、やる気に応じて仕事を選択して、社会の担い手として誇りを持つ、人があってこそ東京の未来があると考えている、社会全体で支え合うような仕組みをもっと強化したい、全ての都民の皆さんの就労を応援する新たな条例を制定することを目指すと述べました。
 この間の有識者会議では、テーマごとに有識者の方から報告を受け、議論を行い、関係する団体からの聞き取りを行っていることは大変重要です。
 しかし、示された都民の就労を応援する条例(仮称)の基本的な考え方は、具体性に欠けているように感じます。条例をつくることで何が変わるのか、なかなか見えてきません。
 今回の条例の肝であるソーシャルファームについては、日本ではまだなじみがありません。
 そこで伺います。条例制定の趣旨の中で、就労に困難があると認められる方への支援という位置づけがされています。就労に困難があると認められる方の定義、具体的な対象者についてはどのように考えていますか。

○篠原雇用就業部長 都民の就労を応援する条例の基本的な考え方に記載のございます就労に困難があると認められる方についてでございます。
 障害のある方、ひきこもりの方、ひとり親の方などが該当すると考えられますが、就労を困難にしている要因というものはさまざまであると考えております。

○尾崎委員 ただいまご答弁あったように、就労を困難にしている要因はさまざまであると考えているということでした。
 しかし、有識者会議の中では、ひとり親家庭、ひきこもり、児童養護施設退所者や刑務所出所者等への就労支援、障害者への就労支援、生活困窮者への就労支援などについては議論されていますが、重度障害者、非正規雇用、就職氷河期世代、LGBTの当事者の方々の実態や就労支援をどうすべきかなどについて議論が不十分だと思います。今からでも当事者の意見を聞く場をつくる必要があると思いますが、いかがですか。

○篠原雇用就業部長 就労支援のあり方を考える有識者会議では、理事のお話にもありましたとおり、ひとり親家庭、ひきこもり、児童養護施設退所者や刑務所出所者等への就労支援、障害者への就労支援、生活困窮者への就労支援などにつきまして、支援機関などから会議の場でご報告をいただいたほか、関係団体等を訪問してヒアリングも行っておりまして、これらを踏まえて議論を行ってまいりました。
 さらに、現在、都民の就労を応援する条例の基本的な考え方を公表いたしまして、都民から広く意見を募集しているところでございます。
 今後、これらを踏まえまして、条例制定に向けました検討を行ってまいります。

○尾崎委員 ただいまのご答弁では、都民から広く意見を募集しているところであるとのことでしたが、当事者からの意見を聞くことなしに、いい条例をつくることはできないと思います。ぜひ今からでも当事者の声を聞くべきです。
 都民の就労を応援する条例をつくることで、東京都の就労支援をどう強化していくことになるのか。条例を生かして、就労困難者が就労できるようになるのか、条例制定によって今までと大きく変わる見通しが見えてくるのか、大事な点です。
 そこで、よりよい条例をつくるには、既存の雇用施策、福祉施策、障害者雇用施策などの総括や評価をした上で何が必要かという議論をすべきだと思います。少なくとも、福祉保健局との連携や議論が重要ですが、どのように考えていますか。

○篠原雇用就業部長 就労支援のあり方を考える有識者会議では、現在実施しております雇用や福祉分野の施策を都から説明した上で、これを踏まえて議論を行っております。
 これまでの都の内部での施策検討におきましても、福祉部門など関係局と連携しながら、必要な検証を行ってきております。

○尾崎委員 福祉部門など関係局と連携しながら、必要な検証を行ってきているとのご答弁でしたが、条例の基本的な考え方を見る限り、関係局と連携しているようには思いません。不十分だといわなければなりません。
 既存の雇用施策、福祉施策、障害者雇用施策、教育施策など、関係する施策の総括や課題をもっと明らかにすべきだと思います。今からでもきちんと検討会を開いて、議論を行うよう求めておきます。
 障害のある方たちへの就労支援は、現在、就労B型支援、就労A型支援があります。特に就労B型支援では、工賃が非常に低いという問題や施設職員の給料が安く、職員の定着が困難だという話がたくさんの施設から寄せられています。
 また、企業の社会的役割の発揮についても、日本の大企業は大変おくれており、いまだにブラックな働かせ方をしている企業があり、仕事が遅いなどの社員に対しては、上司や同僚からの暴言やいじめがあり、パワハラの相談も年々ふえています。
 小池知事は、九月三日の所信表明で、就労を希望する方が誰ひとり取り残されることなくと述べました。全ての人が生き生きと働くための支援というのであれば、重度障害者への支援を具体的に進めるべきだと思います。
 日本共産党は、代表質問でも取り上げましたが、重度障害があっても、働くことで社会に貢献できる、やりがいを感じられる環境をつくる必要があります。
 現在、重度の障害があり、食事や排せつ、外出などの日常生活に介護が不可欠な方は、通勤通学時や就労中は介護の支援の対象から外されます。当事者からは、自分の稼いだお金で欲しいものを買うのが夢だと語っているんです。
 また、障害者団体の役員さんに話を伺うと、就労困難な人への支援は、一番困難な重度障害者への支援を充実させることが、ほかの困難者への底上げになっていくから、とても大事なことだと話してくれました。
 都民の就労を応援する条例の目玉は、ソーシャルファームの認証と創設への支援になると思いますが、日本ではまだまだなじみがありません。
 有識者会議では、なぜソーシャルファームが必要なのかという説明もありました。障害者以外にも、難病患者、高齢者、母子家庭のお母さん、ひきこもりの若者、刑務所の出所者、ホームレスなどいろいろいらっしゃる、自分に合った適切な仕事につくことのできない人がたくさんいる、単に就労する場を提供するだけではない、働きがい、自尊心、地域社会の一員となることによって、ソーシャルインクルージョン、社会的包摂の実現の大きな力になると有識者会議の中で述べていらっしゃいます。
 東京都が考えるソーシャルファームの定義について伺います。

○篠原雇用就業部長 条例の基本的な考え方におきまして、都が創設や活動の促進を行うソーシャルファームは、事業からの収入を主たる財源として運営していること、就労に困難があると認められる者を相当数雇用していること、就労に困難があると認められる者が実情等に配慮した支援を受けながら、他の従業員とともに働いていることの三点を満たす社会的企業としております。

○尾崎委員 東京都が考える定義は、今、ご答弁にありましたが、条例の基本的な考え方に示しているものと同じで、なかなかイメージが湧きません。
 ソーシャルファームが進んでいるフィンランドでは、ソーシャルファーム法を制定しています。ソーシャルファームについて、国の議論はあるのでしょうか。また、国において、法の制定など検討されているのか伺います。

○篠原雇用就業部長 これまでに国が発表しました未来投資戦略二〇一八や、革新的事業活動に関する実行計画におきまして、ソーシャルファームに関する検討について記述があることは承知しております。

○尾崎委員 そうしますと、国において法の制定などは検討されていないということです。
 それで、現在、都内でソーシャルファームと呼ばれる社会的企業、東京都が目指している企業はあるのでしょうか。

○篠原雇用就業部長 有識者会議の中では、ソーシャルファームの知見を有する委員から、海外のソーシャルファームと同様の活動をしている団体として、全国に七団体あると紹介されておりまして、そのうち二団体が都内で活動をしております。
 なお、都が支援対象とするソーシャルファームの認証基準は、今後検討してまいります。

○尾崎委員 ソーシャルファームについて、創設及び事業活動を支援するため、支援対象となるものの認証を行うということが基本的な考え方でも示されていますけれども、創設の支援はどのように行うのですか。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームへの支援につきましては、創設に当たっての経営ノウハウや資金的な面からの支援策などが考えられておりますが、具体的な内容につきましては、今後検討してまいります。

○尾崎委員 ソーシャルファームについて、東京都が認証するとしていますが、認証する基準は、同指針等の中で定めるとなっています。認証のガイドラインのようなもの、現段階ではどのように考えているのですか。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームの認証基準につきましては、先ほど述べました三つの要件を踏まえて、今後検討してまいります。

○尾崎委員 今後検討していくということですので、ぜひ具体的に議論した上で決めていっていただきたいと思います。
 有識者会議の中で、大学を卒業した瞬間にぱたりと雇用で門が閉じられてしまうことがある、重度の肢体不自由があっても、二十四時間の介護が必要なんだけれども、大学を優秀な成績で卒業するという人もいます。例えば、そういった卒業生は、卒業後の雇用の機会が全然ない、二十四時間呼吸器をつけていても、寝たきりで指先が動く、それでも一つの職務が明確に定められると雇用することができるわけですとの発言がありました。
 ソーシャルファームができれば、重度の肢体不自由があっても、働けるようになるのでしょうか。どんな重度の障害や困難があっても、働ける環境をつくることが求められると思います。障害のある方への支援だけでも、まだまだ課題が山積しています。
 都民への支援のところには、職業能力の開発などが書かれています。東京都には、都立職業能力開発校があります。ところが、就労支援には職業訓練校の役割が大きいと思うのですが、基本的な考え方には、具体的には記載されていません。条例に位置づけるべきですが、いかがですか。

○篠原雇用就業部長 条例の基本的な考え方におきまして、都は、就労を希望する全ての都民に向けた支援として、職業能力の開発を実施するとしております。
 この中には、職業能力開発センターで実施する公共職業訓練が含まれているものでございます。

○尾崎委員 ただいまのご答弁で、職業能力の開発に職業能力開発センターも含まれるとのことですが、都立職業能力開発センターについては、条例の中で明確に拡充していく方向を示すことを求めます。特に、介護が必要な重度の肢体不自由がある方でも学ぶことができるようにすることを求めておきます。
 大阪府には、大阪府障害者等の雇用の促進等と就労の支援に関する条例があります。この中には、第八条として、職業訓練の充実があり、職業訓練校の充実を図ると明確に明記されています。
 また、第十三条には、府の職員の採用を明記し、府はみずから率先して障害者を採用するものとするとしています。他県の条例にも学ぶ必要があると思います。
 そこで、各主体の役割〔1〕に都の役割が示されています。都の役割の中に、都職員の採用についても考え方を示すべきだと思いますが、いかがですか。

○篠原雇用就業部長 今回お示ししました条例の基本的な考え方でございますが、都が都民や事業者などに向けて行う就労支援についてお示ししたものでございます。
 都職員の採用についての考え方を示すことは考えておりません。

○尾崎委員 今回の条例は、誰ひとり取り残さない、ダイバーシティーを実現すると知事は表明しています。そうであるならば、東京都の問題である都職員の採用についての考え方も条例に盛り込むべきだと要望しておきます。
 次に、今後のスケジュールでは、条例制定後に計画の策定、施策の検証を行っていくということですが、検証する会議体について、どのように考えているのか伺います。

○篠原雇用就業部長 条例の基本的な考え方におきまして、関係機関の意見を聞きながら、施策の実施状況を検証することを示してございます。
 具体的な検証の手法は、今後検討してまいります。

○尾崎委員 ただいまのご答弁ですと、具体的な検証の手法は今後検討ということです。検証も含めて、どのように進めるかは、全庁横断的にじっくり議論することを求めておきます。
 東京都には、雇用・就業対策審議会がありますが、この間、六年以上開催されていません。雇用・就業対策審議会を開催し、都民の就労を応援する条例(仮称)について議論することを求めますが、いかがですか。

○篠原雇用就業部長 今回、条例の制定を目指すに当たりましては、その内容が雇用就業分野以外に、福祉や教育などの分野にもかかわることを考慮いたしまして、有識者会議を設置して、就労支援のあり方を検討することとしたものでございます。
 有識者会議は、これまでに六回を開催しておりまして、さまざまなテーマでの議論を重ねてきたところでございます。

○尾崎委員 有識者会議の議論だけではなく、関係するあらゆるところでの議論が必要だと思います。その一つとして、条例で定められている雇用・就業対策審議会を開いて議論すべきだと思います。
 就労困難な方を応援するという条例は、都民にとって大変期待が高まるものだと思います。その期待に応えるためには、今ある審議会でしっかり議論することを求めるものです。
 幾つか質問してきましたが、やはり一番困難な人たち、重度障害者の就労状況や支援の拡充については不十分だといわなければなりません。障害者権利条約二十七条は、雇用に関し、障害に基づくあらゆる差別の禁止を定めています。この立場で条例をつくることを求めます。
 また、就労困難者への支援には、住宅支援が欠かせません。現在、就労したくてもできない困難を抱えている人に、東京都のつくる条例が、その方たちの未来に希望が持てるものになることが必要だと思います。そのためには、困難を抱えている人たちの状況と要望を真摯に受けとめることが重要です。条例制定は急がず、じっくりと議論することを要望するものです。
 今後、条例制定に向けては、全庁横断的に議論することを強く求めて、質問を終わります。

○奥澤委員 まず、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター、いわゆる産技研の業務実績評価書についてお伺いしたいと思います。
 まず、今回の全体評価を見ますと、中期計画の達成に向けて、業務全体がすぐれた進捗状況にあるということですけれども、東京の未来を考えたときには、国内外の都市間競争が激化する中で、産技研が果たすべき役割とは何かという視点を絶えず持たなければならないというふうに考えておりまして、ここで満足せずに、さらなる高みを目指していただきたいという視点から質問をさせていただきます。
 平成二十八年度から始まった第三期中期計画では、研究開発事業の体制を強化することを一つの柱にしておりますが、何より研究活動を行っているのは人であることを忘れてはなりません。研究員が働きやすい、研究活動に没頭できる環境づくりは非常に重要な要素であります。
 業務実績評価書四ページには、研究員のモチベーション向上に資する取り組みである研究活動へのインセンティブ制度がありますけれども、どのような制度であるのか、具体的にお伺いします。

○土村商工部長 産業技術研究センターにおきましては、各部署ごとの製品化、事業化や特許実施許諾、論文掲載数など、前年度の実績を翌年度の予算配分に反映させますインセンティブ制度を平成三十年度より新たに導入いたしました。
 各部署の努力が予算に反映されることによりまして、研究活動の活性化と製品化、事業化数の増加につながったものと考えております。

○奥澤委員 今の話を伺いますと、適度な競争環境のもとで研究活動に好影響を及ぼしているのではないかということがわかりました。
 一方で、インセンティブの付与というのは、ややもすると過剰な競争意識によって研究者間での対立、あるいは不正をしてでも成果を残そうという間違った方向づけがなされてしまうという可能性もあります。
 制度設計には十分留意しながら、モチベーション向上に資するよう、引き続き、よりよい制度として継続していただきたいというふうにお願いをしておきます。
 同じく研究員のモチベーション向上のことでお話をしますと、研究員のエネルギーを向けるべき研究開発も資金がなければ、当然これは続けることができません。
 日本は、諸外国に比べて研究開発分野への投資が少ない国として知られていて、継続的な研究開発が難しいというふうな指摘もあります。
 私、以前、実際、大学の研究者の方から伺ったお話では、資金獲得のために費やす時間を研究開発に振り向けることができたらどれだけ助かるかということでご相談を受けたことがあります。
 現状は、資金獲得のために資料作成をするようなスタッフを一名雇い入れたり、あるいはその研究者自身も資金獲得のための説明で全国を飛び回っているというような、そんなような話を伺いました。
 産技研では、外部資金調達の支援をしているということですけれども、私は大変有意義な取り組みであると考えます。
 平成二十九年度、三十年度、二年間の実績をお伺いしたいと思います。

○土村商工部長 産業技術研究センターでは、中小企業の技術開発の支援に役立つ研究を行うための財源を確保し、その多様化も図るために、外部資金による研究をふやす取り組みを積極的に進めてございます。
 このため、公的な機関の示すテーマに応募をして実施する提案公募型研究や、企業からの委託を受けて実施する受託研究の件数は増加傾向となってございます。
 平成二十九年度は五十五件で約八千万円、三十年度は五十八件で約一億一千万円の外部資金を調達いたしました。

○奥澤委員 わずかといいますか、三千万円ぐらいですかね。まだまだ足りないかなというふうにも思うところです。ふえてはいるものの、足りないかなと思うところです。
 昨年の経済・港湾委員会の議事録を振り返って見ますと、この外部資金の獲得について、都民ファーストの会の鈴木委員からも指摘がされていて、まだまだふやせるんじゃないかというようなお話で、ドイツのフラウンホーファー研究機構の事例が紹介されていました。
 その答弁においても、ドイツのインダストリー四・〇のプロジェクトにおいて、民間からの外部資金を活用しながら、大きな役割を担っているというようなお話がありました。
 くしくも、今、東京はソサエティー五・〇という、次の時代の技術を生かした社会へと船をこぎ出したところですので、ぜひこの流れに乗っていただいて、産技研も引き続き外部資金調達、これは特に民間の資金の調達も含めて、継続的な研究開発の環境を整えていただきますことを要望しておきます。
 次に、産技研の役割の一つである試験についてお伺いします。
 試験は、事業化や製品化を念頭に置いた場合は必須の工程であるとともに、安全性の証明は製品の武器にもなるものです。日本製品の安全性に対する世界の評価は依然として高く、いわゆる日本ブランドは、安全性の代名詞ともいわれます。
 産技研では、特色あるブランド試験を実施しているとのことですが、国内からどのような評価を得ているのか伺いたいと思います。

○土村商工部長 産業技術研究センターでは、他の公設試験研究機関では実施例が少なく、本センターの高い技術力を生かした特徴的な試験分野をブランド試験と位置づけまして、音響、照明、高電圧を初め、計十一分野を設定してございます。
 こうしたブランド試験につきましては、利用者アンケートの結果を見ますと、都内の中小企業に加えて、都外の中小企業からも高い評価をいただいておりまして、利用実績でも、過去三年間で依頼試験数が四万四千九百九十一件から四万九千九百十五件へと、約五千件増加しているところでございます。

○奥澤委員 国内から大変高評価をいただいているということであると思います。
 ただ、評価書の二二ページを見ますと、今後は産技研の試験方法を国際的な標準化にもつなげる取り組みを行うことを期待するというふうに記載されています。当然、一足飛びには実現できないとは思いますけれども、ぜひ世界基準といいますか、海外でも評価されるような試験を目指していっていただきたいということを私からも期待を込めて要望させていただきます。
 次に、産業技術の開発、これはそもそも何のために行われているのかという、特に税金を投入して、なぜ支援を行うのかということを考えていきたいと思います。
 それは産技研で生み出された技術が、社会課題を解決していくということにほかならないと私は考えています。
 社会課題の解決と経済活動の両立を果たしていく企業のことをゼブラ型企業というふうに呼ぶそうですけれども、産技研からゼブラ型企業が生まれていくことを期待しています。
 中でも、社会的ニーズの高いロボット技術の開発は、これからの東京に欠かせない分野であると考えます。最先端技術、とりわけロボット技術のショーケースを積極的に行うべきと考えますが、見解をお伺いしたいと思います。

○土村商工部長 産業技術研究センターでは、平成二十七年度より、ロボット産業活性化事業を開始しまして、開発したロボットの実証実験やPRのための展示会への出展を積極的に行ってまいりました。
 平成三十年度は、鉄道のターミナル駅で、中小企業と共同開発した警備監視ロボットの実証実験を行いました。
 また、東京ビッグサイトで十月に開催されました日本最大級の展示会でありますジャパン・ロボット・ウイーク二〇一八など、十件の展示会において、展示とともに実演デモも行ったところでございます。
 今後とも、こうした取り組みを通じまして、中小企業の先端技術を結集したロボットをユーザーや都民にPRし、製品化、事業化を支援してまいります。

○奥澤委員 先日、本部のところを視察した際に感じたことでもあるんですけれども、日本のロボットというのは、表情やフォルム、形状ですね、あるいは素材といった部分での工夫があって、人の温かみを表現しようとしているところ、これがほかの国と比べても特にすぐれている点なのではないかというふうに思います。
 これは一説によると、日本では、ロボットの入りというのが、ドラえもんとか鉄腕アトムといったアニメの影響で、人の困り事を解決してくれるロボットであるという見方から開発がスタートされているのがその要因なんじゃないかというふうにいわれています。
 諸外国なんかは、どちらかというと兵器開発とか、そちらから入ってしまっている分、人間味を余り感じないような方に行ってしまっているんじゃないかというような指摘もあって、ぜひ日本のこのよさというのは、もっともっと伸ばしていただきたいというふうに思うところです。
 先日、渋谷で開催されていた超福祉展というイベントでもさまざまロボットが展示されていて、体験できるようになっていたんですけれども、やわらかな素材を利用するというような取り組みもなされていたのが印象的です。
 そんなことかと思うかもしれないんですけれども、今後、ロボットを最も活用していくのは、多分高齢の方々になってくると思います。その方々がロボットに対して抵抗感なく触れられること、あるいは表情豊かに対応をロボットがするということで、それは受け入れられるかどうか、社会にとって受け入れられるかどうかという観点で大変重要だというふうに私は考えます。
 ぜひ、実証実験をこれからもしていく際には、人がどういうふうな感情を持ったかというところも、アンケートなどを通じて調査していただきたいというふうに思っています。
 つけ加えますと、ショーケースや展示会という、これはちょっと小難しい話かなというふうに思うんですけれども、産技研の施設内で当たり前のようにロボットがいる環境というのをつくっていく、これもロボット技術開発を加速させるのではないかなというふうに思います。
 例えば、分身ロボットのオリヒメというものがありますけれども、病気などによって外出が困難な方がロボットを遠隔操作して働くことのできる実験カフェといった取り組みがあります。
 これは私も実際に視察したこともありますけれども、例えば、ロボットの部署が入居しているビルの一階に喫茶店があったと思いますけれども、そういった場所を利用して実証実験ができたりしたら、たくさんの方々に足を運んでいただくようなきっかけにもなると思います。
 この実験カフェなんですけど、今、クラウドファンディングで資金調達しているんですけれども、今、六百万円を超える資金が集まっていて、入場チケットも完売しているということです。
 視察を前回の第一弾のときにさせていただいたんですけれども、会場は国内外の人であふれていました。海外の方々も取材に来ていて、私も驚いたんですけれども、障害のある方、ない方、同じようにお茶と会話を、そして働くことを楽しんでいるという姿が、未来の東京のイメージとすごく合致する、すばらしい取り組みだったなというふうに思っています。
 現在、施設内の実験、これはロボットのある、あちらのビルの中に立派な実験スペースがあるのは私も見させていただいているんですけれども、中で終わらせてしまうんじゃなくて、それを少しでも開かれた場所でやっていくということが、実はイノベーションをもっともっと進めていくというか、なるんじゃないかなというふうに思いますので、そういった点の工夫も要望しておきたいと思います。
 社会課題を解決していくという観点から、私、もう一つ大事だと思っているのが、区市町村との連携についてです。
 日本の中小企業の持つ技術力というのは、大変秀でているものの、よくも悪くも職人かたぎといいますか、視点を変えると、ほかの分野の課題解決に資するのになという技術が埋もれてしまっているということが多いというふうに思いますし、実際に伺うところです。
 イノベーションが生まれるための一つの考え方に、新しい切り口から物事を捉えるというものがあります。中小企業の持つ技術を別の角度から捉えるためにも、技術と社会課題を同じテーブルの上に置いて見ることが、解決策を生み出していくというふうに考える次第です。
 産技研では、区市町村との連携協定を締結しているとのことですが、その締結数とあわせて、産技研での研究開発が区市町村の社会課題解決に生かされた事例があれば、具体的に教えていただきたいと思います。

○土村商工部長 産業技術研究センターでは、産業振興及び中小企業振興を図るため、行政機関や産業支援機関と連携協定を締結してございます。
 平成三十年度末の締結数は六十一件でございますが、このうち、都内の自治体とは、十一の区と五つの市の合計十六区市と締結してございます。
 センターの技術を活用した区市との連携の例としましては、区からの依頼によりまして、工場排水に含まれる規制物質の濃度を環境基準以下に抑制する処理技術に係る研究を行い、実用化に結びつけたものがございます。
 このほか、区市が主催するイベントでの技術相談やIoTセミナーの実施を通じまして、区市の産業振興や中小企業振興に貢献してございます。

○奥澤委員 一定の成果を上げていると理解しましたが、これも新しい切り口から物事を捉え直す必要性を感じる課題でした。
 これまでの締結では、あくまでも産業振興や中小企業振興を目的とした連携であると思いますけれども、区市町村の抱える社会課題に目を向けて、どんな解決策が見えてくるのかと考えていただきたいと思います。
 例えば、先日視察した際に、崖の傾斜を計測して、角度変化を送信して、危険信号を出すという機械がありました。これは熊本で実証実験中とのことですが、避難指示のタイミングなどに苦慮する自治体にとっては、その機器の精度を高め、土砂崩れ危険地域における警報発出に生かせるはずです。
 今後、さらに協定締結自治体をふやすとともに、一つでも多くの社会課題と技術のマッチングを行うという視点を持っていただきたいと思います。
 ここで少し話を変えて、製品開発の成果に着目をしたいと思います。
 評価書の二八ページを見ると、製品開発ラボの入居者の売上高が約六倍を記録したとのことで、これはすばらしい成果だと思いますが、これを偶然で終わらせないように検証すべきであると考えます。この成果について、要因をどう分析しているのかお伺いします。

○土村商工部長 産業技術研究センターは、中小企業が効率的に技術開発や製品化に取り組めるよう、センター内に製品開発支援ラボを設置し、研究、実験スペースとして提供してございます。
 本部と多摩テクノプラザのそれぞれにラボマネジャーを一名ずつ配置いたしまして、入居企業の製品開発をハンズオンで支援してございます。
 ラボマネジャーによりますセンター活用提案、共同研究提案など、支援業務の強化もございまして、過去三年間で入居企業の依頼試験及び機器利用の件数は、三千八百二十六件から九千五百二十六件、入居企業とセンターとの共同研究も二件から六件と大幅に増加したところでございます。
 入居企業の売上高につきましては、製品化の事業化により変動があるものの、センターのこうした取り組みが入居企業の売り上げにもつながったところでありまして、引き続き、ラボマネジャーを活用しつつ、入居企業の製品開発を支援してまいります。

○奥澤委員 先ほどの話にもつながるのですが、中小企業の皆さん、意外とみずからの技術や製品の強みに気づいていなかったり、別の切り口から捉える機会が少なかったりということがあります。
 ラボマネジャーの方の助言によって、中小企業の持つさまざまな強みを顕在化させていく、そして、さらなる活用策を打ち出していくことは非常に重要であると考えますので、引き続きラボマネジャーの動きを活発にしていただきますようお願いします。
 最後に、東京イノベーションハブについて伺います。
 平たくいってしまえば、イベントスペースのような場所が施設内にあるわけですけれども、この余白のようなスペースがイノベーションの鍵になるといっても私は過言ではないと思っています。
 イノベーションは、物事の新しい結びつき、新しい捉え方から新しい活用策を生み出していくことでありますから、ある技術やアイデアを別の技術やアイデアと交流させる仕掛けが必要になるのであって、その交流を生み出す空間的余白、これは非常に重要であると思います。
 そこで、東京イノベーションハブがどのように利用されているのか、利用率をお伺いするとともに、今後さらなる交流が進むようにどのような工夫を凝らしていこうと考えているのか、見解を伺います。

○土村商工部長 産業技術研究センターでは、東京イノベーションハブとして、中小企業、大学、研究機関、金融機関など、産学公金連携を促進するため、約三百五十平方メートルのスペースを本部に設置してございます。
 東京イノベーションハブは、センター主体の技術セミナーや交流会のほか、大学や団体との共催による研究会やシンポジウム、センターが後援するイベント等に利用されておりますが、平成三十年度の利用率は二四・〇%となってございます。
 今後は、協定締結機関に働きかけまして、大学等のシーズ発表、支援機関や金融機関のマッチングイベントの充実とともに、センターの製品化事例や支援事例の展示などの自主イベントの取り組みも強化を図ってまいります。

○奥澤委員 利用率が二四・〇%というのは、率直にいってかなり寂しい数字だと思います。
 先ほど余白の話をしましたけれども、余白のままにしていては何も生まれません。利用条件の緩和、周知の強化によって、まずは多くの方にご利用いただけるようにしていただきたいと思います。
 この東京イノベーションハブでより多くのアイデアが行き交うほどに社会がよりよくなっていくと私は確信していますので、どうぞよろしくお願いします。
 さまざまな観点から質問してきましたけれども、産技研のポテンシャル、これはまだまだ大きいものがあると私は思います。今は法規制などで実用化できないことや資金不足で研究が進まないといったこともあるかもしれませんが、そういったイノベーションの種を蓄積していくこと、そして、広く社会に発信してほしいと思います。
 どうしたらできるかという前向きな発想で、あらゆる主体を巻き込みながら、イノベーションを生み出していく、そんな場所を目指していただきたいと要望して、こちらの質問を終えまして、次に、都民の就労を応援する条例の基本的な考え方に質問を移らせていただきます。
 まず、本条例の策定の趣旨から確認していきたいと思います。
 本条例の中で最も重要な考え方、それはソーシャルインクルージョンの考え方であると思います。
 きょうの議論を聞いていても、それぞれ異なるイメージを持ってきょうの議論が進んでいるなというふうに感じていまして、まず、その定義を確認しながら、議論の出発点を共有しておかないといけないなというふうに思います。
 ソーシャルインクルージョンという概念、これはヨーロッパで生まれたもので、日本語にすると社会的包摂となって、厚生労働省の定義によると、全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から擁護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合うこととされています。
 この概念が提唱された当時のヨーロッパというのは、移民の増加とか失業率の上昇によって、福祉の充実を図っても、社会的格差、経済的格差が拡大していく一方で、多くの人が社会的に排除されたその状態から抜け出せないことが問題になっていたということです。そこで、どんな人も社会の一員としてともに助け合うことを目指そうという概念で提唱されたものです。
 東京が目指している方向性の一つに、ダイバーシティーという概念がありますが、ダイバーシティーは多様性、つまり、人と人は違いがあることを認めようという概念であって、ソーシャルインクルージョンとは違います。
 ソーシャルインクルージョンは、一人一人異なる存在として尊重され、全体を構成する大切な一人として、その違いが生かされるべきという概念であります。
 福祉保健局では、東京D&Iプロジェクト、ダイバーシティー・アンド・インクルージョンというプロジェクトがあって、多様な人々が一緒に協力しながら暮らしていく社会を目指して、障害者雇用の好事例などを発信しています。
 少し長くなりましたが、ここで確認します。
 本条例の考え方の基本理念にソーシャルインクルージョンを取り入れた狙いについて見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 都民の就労を応援する条例の基本的な考え方にお示ししてございますように、働くことを希望しながらも、さまざまな要因から就労に困難を抱える方に向けましては、都と都民、事業者等が双方に理解を深めながら支え合うソーシャルインクルージョンの考え方に立って就労支援を行うことが必要と考えておりまして、この考え方を希望する全ての都民の就労を応援するに当たっても、取り入れることとしたものでございます。

○奥澤委員 今のご答弁を、少しこれを私なりに意訳させていただきますと、一人一人に違いがあるということを認めるだけではなくて、また、一方的に福祉の充実を図ろうというものではなくて、一人一人が社会にとって大切な存在であって、その個性を生かして、一緒によりよい社会をつくっていきましょうという考え方が根底に流れているのだろうということで受け取っています。
 ここで大事なのは、これまで何らかの理由で社会的に排除というか、阻害されていた方々も、必要な支援を受けることで、その力を発揮して、自立、あるいはよりよい社会に貢献しているということを、制度をつくる側が信じられるかどうかだと思っています。これまでの就労支援のあり方と比べると、価値観の転換をしなければなりません。これまでの常識にとらわれないようにご留意いただきたいと指摘をしておきます。
 特に、テレワークなどで外出せずとも働くことも可能になりましたし、視線だけで動かせる電動車椅子などもありますので、考え方や制度を変えていくとともに、テクノロジーの進歩に対してもアンテナを張っておいていただきたいというふうに思います。
 さて、考え方の中身、具体的な施策に入っていきたいと思っていたんですけれども、なかなかこれは、まだまだ伴っていない、これからなのかなというところで、きょうのところは指摘にとどめて質問をさせていただきたいと思います。
 まず、支援の対象についても、きょう、幾つかお話出ていましたけれども、この検討を進める前段階、あるいは国の議論においても、就労に困難があると認められるものをどこまで定義するのかというのが大変難しい問題であったはずです。
 有識者会議の資料を見てみると、あえてその定義をしないことで幅広く支援していこうとしている様子がうかがえますけれども、私は何でもかんでも含めていいものではないと思っています。あくまでも、個人の特性や時間、場所の制約、あるいは制度の不備などの理由があって就労に困難を抱えている方が対象なのであって、例えば、有識者会議の資料に急に出てきたんですけれども、就職氷河期世代などの特定の世代への支援というのは、この条例の考え方にはそぐわないと私は考えています。
 私も就職氷河期世代の一人ですけれども、確かに当時の就職活動は大変でした。しかし、当時の状況が今も続いているのかといえば、そこには疑問があります。
 実際、私の友人の中には、一時期、家から出ることができない状態になったものの、まずは非正規で就労して、その後の努力で正規雇用されている方もいらっしゃいます。機会に恵まれなかったといえばそうかもしれませんが、それは就職氷河期世代でなくても、同じように機会に恵まれなかった方はいらっしゃいます。むしろ大事なのは、どの世代だろうと、そこに就労を阻む障害があるのであれば、それを取り除こうとする姿勢だと私は考えます。
 一方で、これまでの有識者会議などでも取り上げられていない対象として、いわゆるLGBT、性的マイノリティーの方々がいらっしゃいます。当事者のお話を聞いていますと、そこには明らかに障害があるということがお伺いするところですので、ぜひ支援の対象に加えていただきますことを要望しておきます。
 支援の対象の議論はここまでにして、その支援の対象、つまり、都民の役割として、就労を希望する都民は、就労に向けてみずから進んで取り組むよう努めるとあります。
 一方で、その機会に恵まれなかったから、希望する就労に結びついていないという現実もあるわけで、例えば、障害のある方が特別支援学校の職業訓練を中心にしたコースに進もうとした場合にも、その倍率が高くて、希望どおりにいかないという話も伺います。
 先日、シンガポールで障害のある方の職業訓練施設を視察したんですけれども、企業の協力を得ながら、トレーニングの場と就労の場が一続きになっていて、シミュレーションを重ねた上で正式に就労していくようになっていました。加えて、その施設は、とてもオープンな施設になっていて、施設内のスーパーに近所の方々が買い物に訪れている、そういった施設でした。
 障害のある方々が立派に働いている姿、トレーニングしている姿を見てもらうことで相互理解が進んでいくわけです。職業訓練の場をこれから整備していくことにも多分なろうと思いますけれども、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
 さまざまな施策をこれから講じて、就労を希望する者自身の能力向上を図っていくことも重要であると思いますが、最も重要なのは、就労に困難を抱える方が誇りと自信を持って働いていくことだと考えます。これをディーセントワークといって、二〇〇九年に国際労働機関の総会において、二十一世紀の国際労働機関の目標として提案され、支持された概念です。つまり、就労できれば何でもいいというわけではないということです。
 特に、本条例の柱といえるソーシャルファームにおいては、誇りと自信を持って働き、自立していくことが理想だと思いますが、基本的考え方の中には盛り込まれているのでしょうか。見解をお伺いいたします。

○篠原雇用就業部長 条例の基本的な考え方におきまして、都は、事業者による自律的な経済活動のもと、就労に困難を抱える方の就労と自立を促進するため、ソーシャルファームの創設や活動の促進を通じて、就労支援を効果的に実施することとしております。

○奥澤委員 事業者の活動を通じて、雇用した者の誇りと自信ある働き方を実現していくというふうに私は理解いたしました。
 ソーシャルファームの認証に当たっては、その基準を含めて、指針の中で取り上げていくとのことですが、数値目標だけクリアすればいい、そんな基準にはならないようにご留意いただきたいと思います。例えば雇用された方の心理面での変化など、定性的な指標を設定することも有用なのではないかと提案しておきます。
 また、基準においては、就労に困難を抱える者について、規定がなされるものと考えますが、障害者手帳のように基準となるものがないので、その就労における困難さについては、その実態に応じた基準を示していただきたいと思います。
 特に就労に困難を抱えた者が就労するに当たっては、長期にわたり段階的に定着、自立していくという特徴があります。対象者が変化していくことを念頭に、一律ですぱっと切ってしまうような考え方はなじまないということも指摘をしておきます。
 また、ソーシャルインクルージョンの考え方と同様に、今も申し上げたディーセントワークの考え方についても、ぜひ指針の根底に流れる考え方として取り上げていただきたいと要望しておきます。
 さて、ソーシャルファームが機能するためには、事業者の役割が非常に大きいわけですけれども、これまで就労に困難があると思われていた方とともに働くことが有意義であると事業者に実感してもらわなければ、事業の継続は難しいと考えますが、都の見解はいかがでしょうか。

○篠原雇用就業部長 就労に困難を抱える方と他の従業員がともに働くことは、ソーシャルインクルージョンの考え方を実現していく上で重要でございまして、困難を抱える方のモチベーションや社会参画の意識の向上にもつながるものと考えております。
 事業者にこうした考え方や施策の方向性について理解と協力をいただけるように、普及啓発に取り組んでいくことが重要と考えております。

○奥澤委員 最後に意見を一つ付したいと思います。
 忘れないでいただきたいのは、ソーシャルインクルージョンの考え方は、社会全体に浸透していただきたい、されるべき考え方であって、ソーシャルファームの創設は、理想の社会への過渡期の制度であるということです。これを決してゴールにしてはいけないということです。
 ソーシャルファームを創設すること、これ自体はスタートであるということを皆さんぜひ心にとめておいてください。
 二〇四〇年の東京ということが、今、たびたび議論に上がっておりますけれども、どんな企業にあっても、誰もが自分らしく働いていくことができるような社会になっていることを願います。
 まずは、都庁自身もソーシャルインクルージョンの考え方を体現した、そういった就労環境を整えていただきますことを要望しまして、質問を終わります。

○小林委員 私からも、都民の就労を応援する条例の基本的な考え方について何点かお伺いをいたします。
 さきの都議会公明党の代表質問においても触れましたが、今後、条例化に向けて実効性を担保していくためにも、都庁一丸となって取り組むべきと申し上げたところですが、新たに庁内の推進体制を構築し、全庁一丸となって取り組んでいくとの前向きなご答弁をいただきましたので、改めて、この点についてはよろしくお願いしたいと思います。
 もう一点、就労に困っている方からのさまざまな分野にわたる相談が予想されることから、ワンストップの相談窓口を設置し、相談しやすい体制をつくるべきと提案をさせていただきました。
 この点については、現在設置されているしごとセンターの総合相談窓口をワンストップの相談窓口として充実を図っていくとのご答弁があったところであります。
 そこで、現在、東京しごとセンターに設置されている総合相談窓口における、今までの相談実績と取り組み状況についてお伺いいたします。

○篠原雇用就業部長 東京しごとセンターの相談窓口では、しごとセンターを初めて利用する都民が円滑にサービスを受けられますよう、利用方法の案内や適切な支援サービスを紹介いたしますほか、事業所からの相談や職業適性検査などを実施しております。
 平成二十九年度の利用実績としましては、初めて利用する方への案内やサービスの紹介が三万九百七件、事業所からの相談が九百六十三件でございます。

○小林委員 既に総合相談窓口として多くの取り組み実績がある中、今後、それをワンストップ相談窓口として、充実強化していくわけですが、ワンストップとは一カ所で用事が足りること、一カ所で何でもそろうことという意味で使われております。
 そのためには、さきにも申し上げましたが、多様な分野の相談に対応できる相談体制、これをぜひとも構築していただきたいと思いますが、見解をお伺いします。

○篠原雇用就業部長 これまでの東京しごとセンターの総合相談窓口は、主に求職者からの相談に応じまして、一人一人の状況を踏まえたきめ細かいサービスを提供するため、若年者や中高年、高齢者など、各年齢層別のセンターの支援策へ適切につなぐという役割を持っておりました。
 今後は、この役割に加えまして、まず、窓口に専門性を持つスタッフを配置し、就労に困難を抱える方の多様な相談を受けとめられるようにすること、さらに、しごとセンターの支援内容の充実や他の支援機関との連携によりまして、本人の状況や適性に合った支援策に着実につなげられるようにすることなど、機能の強化が図られるよう検討してまいります。

○小林委員 ぜひともよろしくお願いいたします。
 私も、日ごろより、さまざまな就労のご相談をいただきます。就労へと結びつけるお手伝いから、また、就労後の職場環境のご相談などもいただきます。
 特に、職場環境や労働問題に関するご相談は、産業労働局の出先機関である東京都労働相談情報センターをご紹介し、対応いただいたことも数々ございました。
 今後、設置予定であるワンストップの相談窓口では、相談から就労に結びつけていくことが大事な役割となりますが、ワンストップ相談窓口を利用し、就労に結びついた後、仮に、その後、職場での課題が生じた際の相談体制も必要になってまいります。
 労働情報相談センターを活用することもあるかと思いますが、ぜひ、このワンストップ相談窓口においても、就労後の案件にも対応できる体制をつくっていただきたいと思いますが、見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 就職した後の相談も含めまして、多様な就労相談を一元的に受け付けられる窓口として運用できるように検討してまいります。

○小林委員 次に、基本的な考え方にある各主体の役割における都民の項目において、都民は、都が実施する就労支援に関する施策に協力するよう努める、就労を希望する都民は基本理念にのっとり、就労に向けてみずから進んで取り組むよう努めるとありますが、この点の都民への普及啓発の取り組みについてお伺いいたします。

○篠原雇用就業部長 都民の就労を応援する条例の基本的な考え方におきましては、副委員長ご指摘のとおり、都民の役割として、都が実施する施策への協力に努めることとしております。
 今後、条例の基本的な考え方に沿って、就労支援を行っていく上では、都と都民、事業者が認め合い、支え合うソーシャルインクルージョンの考え方や、これに基づく支援のあり方を都民にお示しし、理解と協力を得ていくことが欠かせないと考えておりまして、条例制定後には、都民に向けて効果的な普及啓発に努めてまいります。

○小林委員 次に、区市町村の項目についてですが、区市町村は、地域の特性に応じた就労の支援に努めるとありますが、地域の特性とはどのようなものを想定しているのかお伺いします。

○篠原雇用就業部長 就労支援は、地域によりまして、人口構成などが異なっておりまして、そうした地域の特性に応じて支援することが重要でございます。
 例えば、学生などの若年層が多いなど、地域住民の状況のほか、地場産業の業種や企業の規模など、地域の産業の特徴に合わせた支援を行うことが必要と考えております。

○小林委員 次に、事業者についてでありますが、事業者は、従業員の雇用及びその継続のための職場環境の整備に努めるとあります。就労困難者と就労先となる事業者の適切なマッチングを図るためには、協力体制の構築が大切であります。
 今まで私もいただいた相談においては、就労への意欲があっても、事業者の門戸が開かれていないゆえに、就労が困難となるケースが多くありました。
 条例制定後は、事業者へこの点をよくよく周知し、理解を深めていただき、支援策を講ずるなど、協力体制を構築していくことが重要であると考えますが、見解をお伺いいたします。

○篠原雇用就業部長 今回お示ししました条例の基本的な考え方に沿いまして、就労支援を進めていくためには、都民に向けた支援、事業者に向けた支援の両面からのアプローチが重要でございまして、基本的な考え方でも、それぞれについて述べているところでございます。
 条例制定後は、都の考え方や施策の方向につきまして、都民だけではなく、事業者に対しても理解と協力を得ていくことが必要と考えております。
 効果的な普及啓発に努めてまいります。

○小林委員 今回の就労支援の条例制定に当たっては、相談を受けた後、実際に就労に結びつき、定着させていくところまで責任を持って取り組んでいくことが重要であると考えます。
 相談、採用、定着までを一連の流れとして進める支援に取り組んでいくべきであると考えます。見解をお伺いいたします。

○篠原雇用就業部長 相談から就職、定着まで、一連の支援策を一元的に行うことで、就労支援の効果を上げていくということも重要と考えております。
 例えば、現在、東京しごとセンターで行っている精神障害者への就労支援では、こうした手法でサービスを実施しておりまして、今後の就労支援に当たりましては、就労を希望する方の実情に応じた、きめ細やかで効果的な支援となるよう検討してまいります。

○小林委員 就労の意思があっても、さまざまな困難が壁となって、ご苦労されている方のお話を私も数々伺ってまいりました。
 条例制定後に具体的な施策展開のための計画を策定することになっておりますが、繰り返しになりますが、そうした就労に困難を抱えておられる方々が希望を見出せる実効性ある施策の充実をお願いいたしまして、質問を終わります。

○うすい委員 私からも、引き続き、若干角度を変えまして、都民の就労を応援する条例(仮称)の基本的な考え方について伺います。
 この基本的な考え方の中で、新たな取り組みとして大きく位置づけられているソーシャルファームについて、何点か質問させていただきます。
 初めに、日本において新しい形態の社会的企業であるソーシャルファームでありますが、法的な定義もされておらず、また、社会に普及しているわけでもありません。
 そこで、まず、なぜソーシャルファームという新しい形態の企業を、就労支援を行う上で活用していくことを位置づけたのか、その理由と意義について、見解をお伺いします。

○篠原雇用就業部長 ソーシャルファームは、一般企業と同様の経済活動を行いながら、その職場では、就労に困難を抱えるさまざまな方が、他の従業員とともに働いている、そういう特徴を持った社会的企業でございます。
 ソーシャルファームを活用することによりまして、障害のある方を初め、ひきこもりの方、ひとり親の方など、就労に困難を抱えるさまざまな方の就労が実現し、一般企業と同様の経済活動の中で、社会参画と経済的自立を図ることにつながると考えられます。
 このため、条例の基本的な考え方に示すソーシャルインクルージョンに基づく就労支援を進めていく上で、ソーシャルファームは効果的な手法であると考えております。

○うすい委員 ただいまの答弁で、ソーシャルインクルージョンに基づくものということでありますから、全ての人が社会で孤立をしたり、排除されることがなく、社会の一員として包み支え合うという理念ということになると思いますから、まさに、せんだって、我が党の斉藤委員が一般質問で発言しておりました、SDGsの誰ひとり置き去りにしないということと一致するものと思います。
 ソーシャルファームは、就労に困難のある方の社会参加に有効な手法であることも理解をさせていただきました。
 もともとこのソーシャルファームというのは、イタリアから始まったといわれております。今回のこの資料の条例の基本的な考え方の中では、都は、海外のソーシャルファームの好事例を取り入れながら施策を展開するとしております。
 そこで、海外では、ソーシャルファームがどれぐらい普及をしているのか、また、どういった業種のソーシャルファームがあるのか伺います。

○篠原雇用就業部長 就労支援のあり方を考える有識者会議における委員の報告によれば、ソーシャルファームは、一九七〇年代にイタリアで誕生し、現在では、ヨーロッパ各地で約一万社、そのほかにも韓国に約二千社存在するとしております。
 また、業種については、レストラン、ケータリングのほか、商店、農業、ホテルなど、多岐にわたっていると聞いております。

○うすい委員 海外で普及しているということは理解をさせていただきました。
 具体的な事例をお伺いします。

○篠原雇用就業部長 先般、都で調査したドイツの事例で申し上げますが、ケータリングサービスを運営するソーシャルファームの一つは、従業員数は七十名、その約半数が障害のある方など、就労に困難を抱える方でございまして、その方たちは、調理、ドライバー、事務などの業務を担当しております。
 このソーシャルファームの経営者からは、困難を抱える方がそれぞれの特性を見つけ、それに合う業務を担ってもらうことによりまして、職場定着率が高くなっているとの説明を受けております。

○うすい委員 紹介していただいたドイツの事例では、従業員の半数と、就労に困難を抱える方を極めて高い割合で雇用しております。
 ソーシャルファームの要件は各国で異なると思いますが、お話のドイツでは、就労に困難を抱える方をどの程度の割合で雇用することが要件となっているのかお伺いいたします。

○篠原雇用就業部長 ドイツの社会法典と呼ばれる法律の規定によりますと、障害のある方を三〇%から五〇%の範囲で雇用することとなっております。

○うすい委員 ドイツのソーシャルファームの状況について理解を深めることができました。今後、都がソーシャルファームの創設と活動の促進に当たっては、こうした海外の例も参考にすることを要望させていただきます。
 私が特に注目しているのは、ソーシャルファームが企業的手法で経営をされ、一般企業と同じマーケットでビジネスをするという点でございます。
 就労に困難のある方を相当数雇用しながらビジネスを行うというのは、例えば、経営者の目線で考えますと、とてもハードルが高いものだと思うわけでございます。このため、ソーシャルファームへの経営面からの支援も必要だと考えますが、都の見解を伺います。

○篠原雇用就業部長 都民の就労を応援する条例の基本的な考え方におきましては、事業者による自律的な経済活動のもと、就労に困難がある方の就労と自立を促進することをソーシャルファーム活用の目的としております。
 この目的に照らして、ソーシャルファーム創設に当たっての経営ノウハウや資金的な面からのサポートなど、具体的な支援策につきまして、今後、検討を進めてまいります。

○うすい委員 ソーシャルファームの理念はすばらしいと考えます、理念はね。
 就労に困難のある方々の雇用の実現は、本当にこれは誰もが望むところでございます。
 しかし、その理念に基づいて会社を経営することは、生易しいことではないと考えます。
 ソーシャルファームを東京に広めていくための効果的な支援策をぜひとも検討していただくことを強く要望しまして、質問を終わります。

○中山委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○中山委員長 異議なしと認め、報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で産業労働局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後三時二分散会

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