経済・港湾委員会速記録第三号

平成三十年三月十九日(月曜日)
第八委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長伊藤 ゆう君
副委員長上野 和彦君
副委員長山崎 一輝君
理事尾崎あや子君
理事栗下 善行君
理事小山くにひこ君
鈴木 邦和君
細田いさむ君
柴崎 幹男君
森村 隆行君
ひぐちたかあき君
のがみ純子君
鈴木 章浩君
あぜ上三和子君

欠席委員 なし

出席説明員
産業労働局局長藤田 裕司君
次長十河 慎一君
総務部長寺崎 久明君
産業企画担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務清水 英彦君
商工部長坂本 雅彦君
金融部長加藤  仁君
金融支援担当部長川崎  卓君
観光部長小沼 博靖君
観光振興担当部長浦崎 秀行君
農林水産部長藤田  聡君
安全安心・地産地消推進担当部長武田 直克君
全国育樹祭担当部長村西 紀章君
雇用就業部長小金井 毅君
事業推進担当部長蓮沼 正史君
労働委員会事務局局長池田 俊明君

本日の会議に付した事件
意見書、決議について
労働委員会事務局関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成三十年度東京都一般会計予算中、歳出 労働委員会事務局所管分
産業労働局関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成三十年度東京都一般会計予算中、歳出、繰越明許費、債務負担行為
産業労働局所管分
・第八号議案 平成三十年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
・第九号議案 平成三十年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
・第十号議案 平成三十年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
報告事項(質疑)
・東京都が東京信用保証協会に対し交付する補助金に係る回収納付金を受け取る権利の放棄の報告について
・PRIME観光都市・東京-東京都観光産業振興実行プラン二〇一八-について

○伊藤委員長 ただいまから経済・港湾委員会を開会いたします。
 初めに、意見書、決議について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書三件、決議一件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件については、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○伊藤委員長 次に、予算の調査について申し上げます。
 平成三十年度予算については、予算特別委員会に付託されておりますが、本委員会所管分について、議長から調査依頼がありました。
 公文の写しはお手元に配布してあります。
 朗読は省略いたします。

平成三十年三月十五日
東京都議会議長 尾崎 大介
経済・港湾委員長 伊藤 ゆう殿
   予算特別委員会付託議案の調査について(依頼)
 このことについて、三月十五日付けで予算特別委員長から調査依頼があったので、左記により貴委員会所管分について調査のうえ報告願います。
     記
1 調査範囲 別紙1のとおり
2 報告様式 別紙2のとおり
3 提出期限 三月二十二日(木)午後五時

(別紙1)
経済・港湾委員会
 第一号議案 平成三十年度東京都一般会計予算中
歳出
繰越明許費
債務負担行為
経済・港湾委員会所管分
 第八号議案   平成三十年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
 第九号議案   平成三十年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
 第十号議案   平成三十年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
 第十一号議案  平成三十年度東京都と場会計予算
 第十九号議案  平成三十年度東京都中央卸売市場会計予算
 第二十一号議案 平成三十年度東京都臨海地域開発事業会計予算
 第二十二号議案 平成三十年度東京都港湾事業会計予算

(別紙2省略)

○伊藤委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、労働委員会事務局及び産業労働局関係の予算の調査並びに産業労働局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより労働委員会事務局関係に入ります。
 予算の調査を行います。
 第一号議案、平成三十年度東京都一般会計予算中、歳出、労働委員会事務局所管分を議題といたします。
 本案については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。--発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤委員長 異議なしと認め、予算案に対する質疑は終了いたしました。
 以上で労働委員会事務局関係を終わります。

○伊藤委員長 これより産業労働局関係に入ります。
 予算の調査及び報告事項に対する質疑を行います。
 第一号議案、平成三十年度東京都一般会計予算中、歳出、繰越明許費、債務負担行為、産業労働局所管分及び第八号議案から第十号議案まで並びに報告事項、東京都が東京信用保証協会に対し交付する補助金に係る回収納付金を受け取る権利の放棄の報告について外一件を一括して議題といたします。
 本案及び本件については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○寺崎総務部長 去る二月二十日の当委員会で要求のございました資料につきましてご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の経済・港湾委員会要求資料の表紙をおめくりください。
 目次でございます。資料は全部で十三項目ございます。
 次のページをごらんください。過去十年間の予算額、決算額の推移につきまして、一ページに中小企業対策、また次のページをお開きいただきまして、二ページに農林水産対策、三ページに雇用就業対策をそれぞれお示ししてございます。
 なお、雇用就業対策につきましては、内訳として国基金事業関係費を記載してございます。
 四ページをお開きください。平成十五年以降の従業者規模別都内製造業の推移をお示ししてございます。
 五ページをごらんください。新・元気を出せ商店街事業につきまして、過去八年間の実績を内容別にお示ししてございます。
 六ページをお開きください。過去十年間の都内労働者の賃金の推移をお示ししてございます。
 七ページをごらんください。過去五年間の派遣労働者数の推移につきまして、全国と東京都内それぞれについてお示ししてございます。
 八ページをお開きください。過去五年間の派遣元事業所数、派遣労働者数、派遣労働者の賃金の推移につきまして、全国と東京都内それぞれについてお示しをしてございます。
 九ページをごらんください。東京都正規雇用転換促進助成金及び東京都若者応援宣言企業等採用奨励金につきまして、平成三十年一月末現在の実績をお示ししてございます。
 一〇ページをお開きください。過去三年間の都立職業能力開発センターにおける能力開発訓練普通課程の授業料収入をお示ししてございます。
 一一ページをごらんください。過去五年間の都立職業能力開発センター校別の就職支援推進員の配置状況の推移をお示ししてございます。
 一二ページをお開きください。過去十年間の東京の農地面積の推移をお示ししてございます。
 一三ページをごらんください。平成二十年以降の区市町村別農地面積、市街化区域内農地、生産緑地面積の推移をお示ししてございます。一三ページが区市町村別農地面積の推移、また次のページをお開きいただきまして、一四ページが市街化区域内農地の推移、一五ページが生産緑地面積の推移でございます。
 以上で要求資料の説明を終わらせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

○伊藤委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案及び本件に対する質疑を一括して行います。
 発言を願います。

○栗下委員 私からは、初めに住宅宿泊事業、いわゆる民泊についてお伺いいたします。
 一般住宅に旅行者を有料で泊める民泊を条件つきで解禁する住宅宿泊事業法が、本年の六月十五日より施行されてまいります。二〇二〇年に訪日観光客を四千万人までふやすということが国としての目標であるわけでありますが、それだけの方々がこの日本を訪れたときに逼迫する宿泊施設を、新たな設備をどんどんとつくっていくのではなくて、弾力性を持った形でふやしていこうというのが、この法整備の第一の目的であるかと思います。
 都においては一部の特区において、区が条例を定め民泊を認めるということを既に進めてきておりますが、三カ月後にはいよいよそれが全国に広がってまいります。それに先駆けて、都はこのたび住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドラインを作成してまいりました。
 そこでまず、東京都がガイドラインを定めた経緯と目的についてお伺いをいたします。

○小沼観光部長 都では、昨年六月の住宅宿泊事業法の成立後、直ちに関係部署から成る全庁横断的な体制を構築し、住民生活に最も身近な区市町村と住環境の維持や旅行者の安全確保等について、地域の実情を踏まえた対応策を検討してまいりました。
 こうした検討も踏まえまして、国の法令等の規定に基づき、適切に制度を運営していくため、具体的な届け出手続や事業者にて措置すべき事項などを定めた都独自のガイドラインを策定したところでございます。

○栗下委員 ありがとうございます。今、ご説明いただいたこのガイドラインに沿って、先週三月十五日からは、実際に民泊事業者から都に対する届け出受付、そして相談窓口がスタートしたわけであります。
 二十三特別区、八王子市、町田市においては、各地域でそれぞれこれを整備していくというふうになりますが、この民泊事業においては、これまで旅館業法の定めを受けずに営業する、いわゆる闇民泊と呼ばれるものが昨今、社会問題として大きく扱われるようになってまいりました。サービスが劣悪でありますとか、あるいは、周辺の住宅に対して騒音、違法なごみ出しをするなどトラブルも起こっていることから、これが非常に憂慮されているわけでありますが、最近では、大阪の民泊で女性の遺体が発見をされるという痛ましい事故も起こることとなりまして、犯罪の温床になるということも大きな問題として捉えられるようになってきたんだと思います。
 法整備、そして都におけるガイドラインの策定も、そしてこれらの届け出を受け付けることも、闇民泊をなくしていくということが大きな目的であるというふうに思いますが、民泊専門のメディアがやっている二月末の意識調査によれば、今既に民泊を営んでいる事業者の五六%の方々が、この民泊新法の届け出を行うという意向を示しています。逆にいうと、残りの方々は届け出をしないかもしれないというようなことでありますが、ぜひこれを一〇〇%に近づけていくための努力をしていかなくてはならないというふうに思っております。
 いかにすぐれたガイドラインを定めても、事業者がそれに沿って運営を行っていかなければ、健全な民泊事業を普及させて観光客の受け皿になるという目的は達成できません。
 そこで、闇民泊撲滅、つまりはガイドラインを遵守していただくこととしっかりと届け出をしていただくこと、それらを推進するために都はどのような取り組みをしていくのか、お伺いをいたします。

○小沼観光部長 都は、住宅宿泊事業を行う方に対し、適切に届け出を行っていただき、ガイドラインを守った事業実施を推進するため、さまざまな取り組みを進めております。
 具体的には、事業者に対して、ガイドラインの説明会をこれまで四回開催するとともに、概要をわかりやすくまとめたハンドブックを作成し、窓口やウエブサイトで提供しております。
 加えて、届け出の事前相談制によりまして必要な準備などを案内することで、事業者の円滑な手続をサポートしております。
 来年度からは、周辺の生活環境に配慮した事業の実施や旅行者の利便性の向上といった、事業者に必要な知識を習得していただく事業者向けの研修会を実施するなど、適切な運営確保に向けた取り組みを進めてまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。今ご答弁いただいたような取り組みをしていくことで、適正に民泊を営もうと、法にのっとってやっていこうとする事業者の方々については、それらの方々の間で認知度が上がって、届け出も促進をされていくのだと思います。しかし、一方で、そもそも適正に民泊を営む気がないという事業者の方々については、なかなかすくいとることが難しくなるのかと思います。
 そういった違法事業者の方々を一つ一つ是正していくということも大切なんですけれども、そもそも適正な民泊でなければ、宿泊客が集まらずにビジネスとして成り立たないという、そういった素地をつくっていくことがもっと大切ではないかというふうに思っております。
 実際にこのたびの法整備で、多くの宿泊客が民泊利用の入り口としているインターネットサイト、こちらが、届け出を適正に行っている民泊事業者しか掲載しないようにしていこうという動きが広まっております。受け付けの始まった先週の十五日には、アメリカ最大手のエアビーアンドビーがこの申請をするとともに、闇民泊物件をもう自身のサイトからどんどん排除していくということを表明してまいりました。
 多くの宿泊客の方々はこういったサイトを入り口としているので、これには大きな効果が期待されるところでありますが、依然、問題であるのは、こういったところ以外から、何らかのきっかけで民泊を利用する顧客の方々に対する周知であります。そういった方々が違法民泊を誤って利用しないためには、泊まる宿が宿泊客から見ても適正な民泊なのか、あるいはこれがそうでないのかということを区別できる仕組み、取り組みが必要だというふうに思っております。
 利用者から見て、それらを明らかにするためにはどのような工夫を行っていくのか、お伺いをいたします。

○小沼観光部長 届け出を行っている適法な住宅であることを宿泊者や地域住民がわかるよう、事業者は、英語表記やピクトグラムが含まれた規定の標識を玄関ドアなどに掲示することが法で義務づけられております。
 しかしながら、分譲マンションなどで実施する場合は、玄関ドアにおける掲示では外部から認識することが難しい場合があることから、都独自の取り組みとしまして、供用エントランスや集合ポストに掲示できる簡素な標識を定めております。
 これらの標識は、届け出受理時に届け出者に配布することとしておりまして、住宅の状況に応じた適切な標識の掲示を指導してまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。ちゃんと申請を行った事業者に対しては、それが宿泊客から一見してもわかるという、そういった標識を配っていくということであります。また、都においては、集合住宅等が地方に比べて多いので、集合ポストにしっかりと掲示をできる簡素なものも独自にご用意いただくということであります。
 しかし、ご答弁の中にもありましたけれども、大切なのはやはり宿泊客の方々にそれらがしっかりと浸透することでありまして、それらが常識になるように、官民挙げて普及運動を進めていくことが大切だというふうに思います。
 また、宿泊客の多くは、海外から来るお客様であります。こういった方々にしっかり認識していただくためにも、これは一義的には国の取り組みであるかというふうに思いますが、例えば都でも、観光客のアクセスの多いサイトに積極的に掲出するであるとか、できる範囲で、そういった意識、取り組みをご共有いただければというふうに思っております。
 また、先ほど挙げましたとおり、民泊施設、特に闇民泊についてでありますが、周辺住民とのトラブルが大きな問題になっています。
 騒音やごみの廃棄を初めとする周辺住民との環境問題についてでありますが、宿泊施設周辺の環境悪化を防いでいくためにどういった工夫をしていくのか、次にお伺いをいたします。

○小沼観光部長 住宅宿泊事業は、住民生活の環境への影響も懸念されることから、適正な事業の実施を継続的に確保していく必要がございます。
 このため、今月より、都が所管いたします市町村の区域における苦情を一括して受け付ける窓口を設置しておりまして、衛生、消防、警察などの関係部署と連携して、事業者への指導監督を行ってまいります。
 さらに、事業の実施状況の確認のため、適宜、関係部署と連携しながら、定期的に届け出住宅の現地調査も行ってまいります。
 とりわけ、ごみ、騒音に関しましては、市町村の所管部署との連携も不可欠なことから、市町村と協議会を新たに設置し、相談、苦情事例の共有や連携した対応を行うなど、地域の生活環境に調和した事業実施を確保してまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。新たに相談窓口を都としてつくって、そして、そこで受けたクレームについて、地域と連携しながら指導監督などを行っていくということであったかと思いますが、これまでは周辺住民の方々が何かクレームがあっても、どこに知らせればよいのかわからなかったという問題があったと思いますが、そういった意味で、都民にとってはこれは大きな助けになっていくのではないかというふうに思います。
 ただ、事業者の方がちゃんとこういった対応をしていったとしても、実は既に行われている民泊事業の大半、六割以上は家主不在型、つまりそこに人が介在しない形で運営をされているといわれております。ということは、こういった宿泊施設においては、やはりその宿泊客の方々にしっかりとルールを理解してもらうことが大変大切になってくるのではないかと思うわけでありますが、とりわけ海外から来る観光客の方々にとっては、言語の壁、文化の壁がありますので、それらはなかなか難しいことが予想されるわけであります。
 そこで、海外からの宿泊客にこういったルールを理解してもらうためにどういった工夫をしていくのか、お伺いをいたします。

○小沼観光部長 住宅宿泊事業は、多くの外国人旅行者に利用されることが想定されますため、宿泊者の利便性向上や、地域でのトラブルなどを未然に防ぐ観点からも、施設案内や宿泊ルールを正しく理解してもらうことが必要でございます。
 このため、都のガイドラインにおきましては、事業者は、ごみや騒音などの生活環境への悪影響を防ぐためのルールや災害時の対応、設備の利用方法などを外国人旅行者に対しまして、多言語にて書面などを用いて説明することを求めております。
 今後は、都でさまざまな案内例などを多言語で示した文例集を作成しまして、ウエブサイト等で提供することにより、事業者の円滑な運営をサポートしてまいります。

○栗下委員 海外からのお客様は、国も恐らく多岐にわたるでしょうですし、言語対応も容易ではないというふうに思いますが、文例集や宿泊のマナーに関しての説明、そういったものは、ぜひ民泊事業者の方々がそのまま右から左に使えるような配慮がされたもの、なおかつルールがしっかりと伝わっていく実効性のあるものを作成いただきたいというふうに思っております。
 さて、このたび民泊の健全化に向けて幾つか質問させていただきましたけれども、区市や他県の自治体の動向を見ると、先ほど挙げた闇民泊といったような問題を非常に重く見て、民泊を進めていくんじゃなくて、むしろ厳しく制限をしていくというところが多いということが報道されております。
 しかし、最初に述べましたけれども、民泊新法制定のそもそもの目的というのは、ふえる海外からの観光客の需要に応え、また、新しいビジネスもそこで創出をするというところが大きいというふうに思います。
 都においては、とりわけ観光客もこれから爆発的にふえていくわけでありますので、ぜひとも民泊のリスクを低減して民泊事業を活性化させていく、正しい民泊の普及を進めていく、そういった取り組みについて力を入れていただきたい、そういった考えを持っていただきたいというふうに思っております。
 そこで、民泊に関して最後の質問として、民泊の正しい普及に向けた都の決意をお伺いいたします。

○小沼観光部長 訪日外国人旅行者が急増する中、住宅宿泊事業は、多様な宿泊需要に応えることが期待される一方で、ごみ出しや騒音等による住民生活への影響なども懸念されることから、一定のルールのもと、その健全な普及を図っていくことが必要でございます。
 このため、今般策定しました都独自のガイドラインに基づきまして、関係部署と密に連携し、適正な事業運営に向けたサポートや指導などを行ってまいります。
 また、苦情や相談など地域からの声にしっかりと応え、現場の状況に応じたきめ細かく対応をしてまいります。
 今後は、区市町村とも引き続き情報共有を図り、連携した対応を図るなど、健全な民泊の普及に向けた取り組みを着実に進めてまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。今、都内では、民泊施設が、わかっている範囲では約二万軒、そしてそのうちの大半、約九割を二十三区の施設が占めているという調査もあります。二十三区での対応が大変大切であるということでありますが、二十三区でも東京都のガイドライン及び動向を参考にしていくというところが大変多いというふうに聞いておりますので、ぜひとも今後、都内の民泊を牽引いただけるようお願いをして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 いよいよ、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックまで二年半と迫ってまいりました。
 開催時にメディアセンターとして活用するために、またそれに向けた準備の期間、東京ビッグサイトの一部が展示会場として活用できなくなる問題については、かねてから一般質問などを通じて触れてまいりました。
 二〇一九年、つまり来年の四月から、いよいよ床面積の約七割を占めるビッグサイトの東館展示棟が利用できなくなります。その代替措置として新たに青海に整備をされる仮設展示場のオープンも同じく来年の四月になっているわけでありまして、ことしの一月にはこういった新しい案内パンフレットもでき上がって、来年度は、まさに整備が行われていくという段階に入っております。
 このパンフレットの中に示されている施設配置図、こちらで仮設展示棟の間取りが外に対しても明らかになってきたわけでありますが、非常に限られた敷地の大半を、展示ホールは二つありますけれども、展示ホールとして使って、最大限の展示面積を確保しようというふうにしているのは非常にわかるんですけれども、本館と違い遊びが余りない。それは土地が限られているから仕方がないという部分もあると思うんですが、それによって、本館では余り問題にされてこなかった部分も注意をしていかなくてはいけないんだというふうに思っております。
 こういった問題意識から、この青海の新施設、新展示棟について、幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 展示会では、それぞれたくさんの方々が来場をされるわけでありますけれども、特に、開場をする前の時間に、今使っているビッグサイトでもそうなんですけれども、受付、エントランスといわれますけれども、その前にたくさんの方々が待機をするということが、通常ではよく見る光景なのかと思います。
 ビッグサイト本館では、ご承知のとおり、展示会場そのものに至るまで広大な通路がありますので、そういったところにたくさんの方々が待機をすることができたんですけれども、また、それに至るまで売店やレストランがあって、休憩をとることなんていうのもできたんですけれども、仮設展示場においては、非常に限られた面積の中で、すぐ敷地の中、入り口になるんですね。ですので、なかなかこういったスペースがとれないというふうな問題がありまして、会場を出るとすぐに、東京テレポート駅前広場に面しているというふうな形になっています。
 混乱を避けるためにも、人の誘導あるいは待機スペース、これらについてはしっかりとした対応が必要であるというふうに思いますが、都の見解をお伺いいたします。

○坂本商工部長 新しく整備をされる仮設展示場におきましては、商談やイベントが円滑に開催されるよう施設を運営していくことは重要でございます。
 このため、一部の展示会で仮設展示場への来場者による混雑が予想される場合においては、敷地内で建物の周囲にあるスペースを利用することなどを検討しております。
 また、施設を運営する株式会社東京ビッグサイトにおきましては、敷地内の周囲のエリアを活用することについて、その所有者等と調整を行っており、各展示会の主催者と協力して適切に対応をしてまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。建物の周囲にあるスペースを活用していくということでありますが、そのスペースというのは、設営をするときにトラックが移動するトラックヤードと呼ばれるスペースのことだというふうに思います。つまり、誘導、設営とそれが重なると人を待たせることというのが難しくなりますので、この設営との連携についても、ぜひ想定をシビアにお願いをしたいというふうに思っております。
 また、このトラックヤード、こちらのイメージ図にもあるんですけれども、屋根がありません。屋根がありませんので、ここにお客様を待機させるのであれば、夏は暑さ対策、冬は寒さ対策を早目に検討していく必要があるというふうに思っております。
 また、すぐ目の前は、先ほど申し上げましたとおりテレポート駅前の広場、そしてプロムナード公園なども隣接をしておりますので、人の誘導が問題でこういったところに悪影響を与えないよう、ぜひ配慮をいただけるよう、あわせてお願いをいたします。
 展示会の開催においては、主催者、出展者がトラックなどで資材、商品を運び込み、会場の設営を行ってまいります。展示スペースがたくさんある中で、これを限られた時間の中でセットをして、それが終わると速やかに撤収をすることが求められるわけでありますが、そのためには、スムーズな搬入、搬出が鍵になります。
 この仮設展示場の施設図では、敷地内の車路も、先ほどお伝えしたトラックヤードですね、とられてはいるんですが、本館のトラックヤードに比べると、その周辺の遊びスペースが少なくて、車両が余裕を持って行き来することが難しいイメージがあるといわれております。
 そこで、スムーズな搬出入の実施や車両スペースの確保などについて、どのような対策をお考えでいるのか伺います。

○坂本商工部長 仮設展示場の建物の周囲には、幅約七メートルで二車線分の通行スペースを確保する予定でございます。
 また、敷地内には、搬出や搬入を行う車両が約八十台駐車のできるスペースを設けることとしております。これを活用いたしまして、通行スペースをふさぐことのないよう誘導をいたします。
 さらに、株式会社東京ビッグサイトでは、周辺の駐車場を車両の待機のための場所として活用することも検討しており、各展示会の搬出入作業が円滑に行われるよう必要な対応に努めてまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。ご答弁にありました周辺の駐車場を車両の待機のために使うということでありますが、トラックはたくさん来るわけでありまして、そこから効率的にこの仮設展示場に搬入を行うためには、どういったタイミングでトラックが駐車場から出ていけばいいのか、そういったことを示せる仕組みも必要になってくるのかと思います。
 本館に比べて、展示会場に車でやってくる方々のための駐車場も少ないのではないかという声もあります。ぜひとも周辺にこの駐車場の確保を、先ほどのとあわせていただけるようお願いをいたします。
 また、大きな展示会においては、本館と仮設展示場の全てを利用して、一体として一つの展示会として開催するものもあります。例年でいうと、ビッグサイトの今ある施設の全てを使う展示会は年間二十件前後というふうに聞いておりますが、本館から仮設展示場へは一・五キロメートルほど距離としてあって、私も歩いたことありますが、歩くと大体二十分ぐらいかかるんですね。ですので、出展者、来場者にとって展示会の一体感を損なうのではないかということが大きな課題として寄せられております。
 来場者の方々は、この展示会を全て回ろうとすると、どうにかしてここを移動するという必要が出てくるんですが、そうすると、たくさんの方々が歩道にあふれるという事態も想定されます。
 離れた場所にあるこれらの会場をつなぐ交通についてはどのように対応するのか、お伺いをいたします。

○坂本商工部長 東京ビッグサイトの敷地と仮設展示場の間には一定の距離がございまして、「ゆりかもめ」などの交通機関により移動することを想定しております。
 展示会場がビッグサイトの既存施設と仮設展示場にまたがるような場合には、株式会社東京ビッグサイトにおいて、展示会の各主催者と協力して、来場者のスムーズな移動に向けて適切に対応を図ってまいります。

○栗下委員 その問題については、既にご認識いただいているんだと思います。
 展示会主催者や来場者からすると、実際そういった距離を歩くという立場になると、二〇二〇年の大会のせいでこういった利便性が低下しているんじゃないかと、そういった損をしている感覚になるんじゃないかというふうに思います。出展企業の方も、動員者の数が減ると、これは都の産業の勢いをそぐことにもつながりかねないわけでありまして、こういった負の影響をできる限り最小化、小さくしていくためにも、都として積極的にこういった混乱が起こらないようにするサポート、またシャトルバスの運行など、そういったところの利便性を向上させるための対応について、ぜひ検討をするようお願いして、次の質問に移ります。
 次に、アニメ資源を活用した観光振興について伺います。
 二〇二〇年東京大会に向け、またその後に向けて、都及び日本へのインバウンド増加は都政の重要課題であり、観光客の方々に日本のファンになってもらうと同時に、何度も日本を訪れてもらうために、都市としての魅力を高めていかなくてはならないということは、もはやいうまでもないというふうに思います。
 その手段の一つとして、日本が誇るコンテンツ文化、平たくいうとアニメや漫画といったコンテンツを活用して新しい観光需要を生み出そうというアニメツーリズムの考え方が、昨今、国や各自治体で生まれてきております。
 都でもアニメツーリズム推進事業を今年度から始め、そして来年度も行っていくこととしておりますが、まず、改めてアニメツーリズム推進事業の目的についてお伺いをいたします。

○小沼観光部長 アニメ関連産業が集積する東京には、国内外から注目されるアニメや漫画等におけるコンテンツの関連資源が数多くあり、作品ゆかりの地の観光を楽しむファンも多く存在してございます。
 こうした旅行者を引きつける海外からの評価の高いコンテンツを観光資源として活用し、それらに関連する場所をめぐるアニメツーリズムを推進することで、旅行者の誘致につなげていくことを目的としております。

○栗下委員 ありがとうございます。アニメ産業、また漫画などを出版している企業というのは東京に集まっているわけで、特にポテンシャルがあるというふうに私も思いますけれども、続けて、次に、今年度に行われましたTOKYOアニメツーリズム推進事業の内容についてお伺いをいたします。

○小沼観光部長 今年度は、近未来の東京を舞台にした国内外で人気のあるアニメ作品を活用しまして、スマートフォンなどでデジタルスタンプやキャラクターの収集などができるアプリを使い、都内十二カ所のアニメ関連スポットを楽しみながらめぐることでポイントを獲得し、景品を受け取ることができるスタンプラリーを実施しました。
 また、この取り組みをPRするキックオフイベントを開催し、国内外のアニメファンにスタンプラリーの楽しみ方などを紹介いたしました。
 加えて、外国人ブロガーやタレントなどが実際にスポットをめぐりましてまち歩きをする様子をブログや動画配信サイトで発信することで、アニメツーリズムの魅力を紹介いたしました。

○栗下委員 今、具体的な事業の概要についてご説明いただきましたアニメを題材にしたデジタルスタンプラリーでありますが、利用者の方々にアプリケーションをダウンロードしてもらい、そして、都内十二地点に設置されたところを回ると、そのアプリを通じてポイントが付与される。そして、それらのポイントに応じた景品をプレゼントするという事業であったと思いますが、それに加えて、そのキックオフイベントを開催したり、そのスタンプラリーをする様子を動画で配信するといった事業であったと、そういったことでありました。
 このアニメツーリズムという言葉でよく一緒に取り上げられるのが、アニメ、漫画の舞台になったり、あるいはそのゆかりのある、そういった土地で、それまで余り人が集まらなかったところにわっと、あることがきっかけで人が押し寄せていくという、いわゆる聖地巡礼ということで、私もよくニュースで目にしますけれども、それまで注目をされてなかったところに大きな観光需要を生み出す、生み出されているということが話題を呼んで、それが報道されて、さらにその波及効果が大きくなっていくということが、やはりこの聖地巡礼の大きなポイントであるわけでありますが、近年の例では、大ヒットしたことが記憶に新しい「君の名は。」というアニメがありまして、あの舞台になった岐阜県の飛騨市では、例年に比べて観光客が一二・四%ふえたそうであります。
 この飛騨市では、アニメの影響で七万四千人、観光客がふえたというふうにこれを分析しておりまして、なぜアニメの影響でふえたというふうにしているかといえば、このアニメ、映画の舞台になっている図書館があるんですけれども、その図書館の入館者数が七万四千人、爆発的にふえていたからということであります。
 こういったような例もあるんですけれども、波及効果を生み出すという意味では、やはり明確にそのアニメ、漫画の題材が人を呼び込んでいるという効果測定のしやすいものにしていくというのも、またアニメツーリズム、聖地巡礼とされているような効果を上げていく上ではポイントなのではないかというふうに思います。
 そういった点では、今回のスタンプラリーのスポット、つまり人を回遊させようとした場所は、私もその地点を拝見していますが、多くは六本木ヒルズや池袋のサンシャインなど、そもそも観光客が既にたくさん集まってきているところで、話題性といった意味では、つまり新しい観光需要を生み出すといった意味では少し保守的であったんではないかというふうに思っております。
 また、アプリケーションをスマートフォンなどにダウンロードして回るという、そのやり方についても、海外からの観光客の方々にとってはやや敷居が高かったんではないかなと思いますが、この事業はそもそも誰を呼び込んで、そして回遊させることを目的にしたものか、またその課題についてお伺いをいたします。

○小沼観光部長 この事業は、アニメに関心のある国内外の旅行者が、アニメゆかりの地をめぐり東京の観光を楽しむことを目的に行う事業でございます。
 そのため、さまざまなキャラクターを活用することによりまして、国内外のアニメファンに数多く参加してもらえるよう、アニメ関連団体の関係者などを委員とする実行委員会方式で運営してございます。
 一方、課題といたしましては、複数のキャラクターをイベントの中で同時に活用することは、作品の世界観を重視する作者やファンなどからさまざまな意見があるため、それらの合意形成や調整に時間が必要でございます。
 また、海外から多くの参加者を呼び込むためのPR方法など、さらなる工夫を図ることが重要と考えてございます。

○栗下委員 ありがとうございます。ご答弁の中で国内外の旅行者の方々が対象であるとありましたが、その対象はより明確にした方がいいんじゃないかなというふうに思うんですが、それはなぜかといいますと、国内の観光客、こういうコンテンツが好きな方々というのは、いわゆる聖地の情報などは、むしろ我々が発信するよりも自分たちで積極的に収集される方が多いんじゃないかなというふうに思います。そこでどういうふうな楽しみ方をするのかということも自分たちで考える傾向がある。
 また、そういった聖地も毎年毎年、自然発生的に生まれているわけでありますので、そういったところに向かう方々を、こういった施策も含めなんですが、人為的に制御すること自体が、なかなかままならないのではないかというふうに思います。むしろ、そもそもこの聖地巡礼という文化自体がこれまでなかった、しかし大きな潜在需要があると考えられる海外のお客さん、海外観光客に向けて狙いを傾けた方がいいんじゃないかなというふうに思います。
 そこで、次年度の事業においては、海外からのインバウンド増という目標をこれまで以上に重視していくべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。

○小沼観光部長 日本のアニメ、漫画等のコンテンツは、クールジャパンとして海外でも注目される観光資源であり、これらを活用しまして旅行者の誘致を促進することは重要でございます。
 今後は、今回実施しました事業結果の分析を通じ、アニメや漫画などのコンテンツの魅力を海外にまで波及できるような発信方法のほか、アニメの著作権者や幅広いファンの特性を考慮した上で、より多くの旅行者の参加が期待できる効果的なツーリズムの実施方法を検討してまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。ぜひとも、海外から観光客に向けた情報発信とご答弁にありましたが、力を入れて行って頑張ってほしいというふうに思っております。
 海外の顧客と一口にいっても、このアニメツーリズムという題材で喚起をできる需要がどういう構造になっているのか、そこにはかなり難しい方程式があるのだというふうに思います。しかし、これまで海外観光客が余りいなかったところに、アニメ、漫画を呼び水に、都が新たな観光スポットを生み出す。それぐらいの気持ちでぜひともこの挑戦に挑んでいただきたいというふうに思います。
 次に、ナイトライフ観光の推進について伺います。
 海外からのインバウンドをさらにふやしていくために、日本の持つ強みを生かした新たな取り組み、先ほどのアニメツーリズムもそうでありますが、そういった新しい取り組みを進めるとともに、今ある観光資源の魅力を増していくために、今の日本観光の課題についても、これは適宜見直していかなくてはいけないというふうに思います。
 そういった中では、主に欧米だと思いますが、日本の夜はつまらないという観光客の声が取り上げられることも少なくありません。それはなぜかといいますと、私も報道を幾つか目にしてまいりましたけれども、ロンドンやベルリンでは、地下鉄が夜、まちに出歩くために終夜運行を行っているところもあったりとか、また、朝まで開店する飲食店やライブハウスの数もやはりかなり多いんだそうでありまして、つまらないといわれてしまってはあんまりですので、そういった声をしっかりと払拭して、日本、東京旅行のリピーターになってもらうために、特に夜の時間の過ごし方に着目して観光の課題を深く分析していくことは大切であるというふうに思います。
 国でもこういった課題について着目して、観光庁では、昨年十月末の有識者会議で、ナイトタイムエコノミーについて、ナイトライフ観光と同じですけれども、課題を洗い出して、そしてそれに対する新たな取り組みを行っていくということを既に決めております。
 また、東京渋谷区では、もっと早い一六年の段階で、夜の観光大使、ナイトアンバサダーを任命して、昨年には夜の観光ルートもわかる渋谷ナイトマップを、外国人がたくさん集まっているバスが置いてありますハチ公前で配るなど、もう既に実行のフェーズに入っております。
 都も、来年度はナイトライフ観光の推進に向けて予算を計上しています。そして、その中では、こうしたほかの自治体の取り組みについてもしっかりと調査をすべきというふうに考えますが、都は来年度、ナイトライフ観光の推進に向けてどのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

○小沼観光部長 都は、ナイトライフ観光の満足度を高めて外国人旅行者の誘致を促進するため、観光協会等が、ライトアップを活用して新たな観光スポットをつくり出す取り組みを支援しております。
 また、夜の東京の魅力を体験できるモデルルートを六本作成しておりまして、外国人ブロガーやメディア記者等を招聘し、旅行記を海外に向けて発信しております。
 来年度は、こうした取り組みに加えまして、夜間に楽しむことができる観光情報を掲載したウエブサイトを構築して情報発信を強化いたします。
 また、外国人旅行者のニーズや交通面など夜間の観光の課題、海外都市の状況や都内自治体の先行事例などを調査いたしまして、今後のナイトライフ観光の振興に向けた検討につなげてまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。東京都としても、これまで人が集まるところに夜間のライトアップをつくるための支援をするなど、既にアクションを起こしてきているのだと思います。また、来年度からはウエブサイトを通じて情報発信を行っていくということでありますが、これは前段のアニメツーリズムもそうなんですが、これらの情報が海外の方から観光客の方にしっかりとリーチをするという点について、これはなかなか難しい点ではあると思うんですけれども、特にご配慮をいただきたいというふうに思っております。
 そして、来年度は、都内自治体の先行事例なども含め調査を行っていくと答弁にもありましたけれども、区市町村、自治体等が行っているそれぞれの取り組みと、東京都としてもシナジーを生み出していくために、将来的には連携も視野に入れて取り組んでいただけるようお願いをして、次の質問に移ります。
 次に、最先端技術を活用した農業振興についてお伺いをいたします。
 農業振興を進めていく上で、農作物の品質、そして生産効率をいかに向上させていくかというのは農業の永遠のテーマでありますが、昨今、建物の屋内で日光のかわりにLED照明の光で農作物の栽培をする、いわゆる植物工場の技術が注目を集めております。この技術自体はもうかなり前から知られていますけれども、ここ二、三年で目新しいのは、二、三年でLED照明のコストが大幅に下がって、そしてまた、その効率的な環境をつくり出す研究が大幅に進展したことによって生産効率が向上してまいりまして、改めて注目が集まっているところであります。
 アメリカのアマゾンが昨年、二〇一七年の六月に、植物工場ビジネスの大手でありますホールフーズという会社を、実に百三十七億ドルで買収をしました。そしてまた、国内でも、ソフトバンクグループが植物工場ビジネスに二億ドルを投資するなどの動きが、今まさに加速をしている状況であります。
 この植物工場の技術については、屋外での栽培に比べて面積当たりの生産量が極めて大きいということ、そして虫食いや細菌に侵されるリスクが少ないためにフードロスが少ないと。海外ではバーティカルアグリカルチャーと呼ばれておりますが、栽培する棚を上にどんどん何段も伸ばすことができますので、限られた敷地でも、これはもう何倍かの床面積を確保できるわけであります。
 そして、農作業の危険度も大幅に低減をされまして、屋外での農業では、特にお年寄りの農作業中の事故というのは例年、後を絶ちませんけれども、植物工場での農作業というのはお年寄りや非力な女性にも優しくて、実際に板橋区の福祉施設では、障害をお持ちの方々も植物工場の農作業に従事をしているということであります。
 特に土地の少ない東京二十三区など、こういったメリットを生かして十分に事業化できるレベルに昨今、達しようとしているのではないかというふうに思います。
 そこで、このように注目が集まっている植物工場の今後の可能性について、都の見解をお伺いいたします。

○藤田農林水産部長 植物工場は、施設内で光や温度、CO2などの栽培環境を制御することにより、野菜などの周年、計画生産が可能となる栽培施設でございます。
 中でも、建物内の閉鎖環境で太陽光を使わずに環境を制御し栽培を行う完全人工光型の植物工場は、天候に左右されることなく植物を最適な環境で栽培できるという利点がある一方、栽培設備等に係る初期費用が高額となるほか、都市においては、地代や人件費などのランニングコストが課題となると考えております。
 このため、都は、来年度実施する都市における農的活動に関する基礎調査の中で、植物工場等の先行事例の実情や課題などを把握し、都内における展開の可能性を検討してまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。ご答弁にありました計画生産が可能になるというのも、先ほど抜けましたけれども、大きなメリットでありまして、例年、青物野菜の価格が高騰するというニュースはよく目にしますが、この植物工場では、同じ環境のもとでは同じ生産量の野菜や果物ができてくるということも生産の安定に寄与すると、大きなメリットであるということであります。
 また、ご説明をいただきました中小の事業者が参入するためには、やはりその初期費用がネックになってくるということも確かかもしれませんけれども、今後、この技術が一般的になるに従って、こういったことについてもさらにコストが下がってくることが見込まれるわけであります。
 なぜこれまで強力に植物工場を推進するかといいますと、日本の植物工場に関する研究というのは、実は現在世界で最先端を走っているというふうに見られておりまして、ただし、このところ、中国やアメリカがAIと植物工場の技術を組み合わせることでまさに猛追をしている最中であるということであります。投資もどんどん進めておりますので、うっかりしていると大きく取り残されてしまうと。ぜひとも日本を支えるビジネスになり得るこれらの植物工場の事業について、都が後押しをしていくということは大変意義深いことだというふうに思っております。
 例えば、二〇二〇年東京大会において、アスリートが集まる選手村で東京の植物工場技術で栽培をされた安心・安全な野菜を提供するなど、日本の植物工場の先進性を世界にアピールしていく、そういった絶好の機会もあるんじゃないかというふうに思っております。
 来年はご答弁にありました調査を進めていただけるということでありますが、ぜひとも力を入れていただけるようお願いして、次の質問に移ります。
 次に、食育の推進について伺います。
 平成二十八年に国が公表した第三次食育推進基本計画では、子供のうちに健全な食生活を確立することは、生涯にわたり健全な心身を培い、豊かな人間性を育んでいく基礎であるとし、若い世代を中心とした食育の推進を第一の重点課題として挙げております。
 国は、食育推進を国民運動として取り組んでいくために、平成十七年六月に食育基本法を、また、食育の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、翌年三月には食育推進基本計画を策定しており、その後、二回の改正が行われているところであります。
 一方、都では、この食育推進基本計画の内容を踏まえながら、平成十八年九月に、東京の食環境にふさわしい食育の推進を図るための基本的な考え方と具体的な施策の展開を示した都独自の計画であります東京都食育推進計画を策定してまいりました。
 そして、食をめぐる新たな課題にも対応するために、平成二十八年三月に、平成二十八年から三十二年にかけての新たな羅針盤として、東京都食育推進計画を改正した。これが現在の状況であります。この計画に従って、食育の推進を行っていることと思います。
 そこで、現在、都は食育を推進するために具体的にどのような取り組みを行っているのかについてお伺いをいたします。

○武田安全安心・地産地消推進担当部長 都は、東京都食育推進計画に基づき、区市町村や民間団体が行う食育活動を支援するとともに、食育に関するイベントを開催し都民の健全な食生活の実現を図っております。
 具体的には、食育シンポジウムや、農作業体験、栄養を考えた料理教室などに係る経費を補助しており、平成二十九年度は三十四区市町村と二十一の民間団体の活動を支援しております。
 また、毎年秋には代々木公園で東京都食育フェアを開催しており、平成二十九年度は、食育に関するクイズやゲーム、農業機械の乗車体験、都内産農産物の紹介など多様な企画により、都民に楽しみながら食育への理解を深める機会を提供し、二日間で四万人を超える来場者がございました。
 今後もこうした取り組みを通じて、東京における食育を推進してまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。大きくは区市町村、民間団体が行う食育のイベントやサポート、そして都独自に毎年恒例の東京都食育フェアをやっているというご答弁をいただきました。特に食育フェアの方は二日間で四万人来場されるということで、これも大変立派な数字であるんじゃないかと思いますが、この事業も十年ほど続いている息の長い事業だというふうに聞いております。
 先ほどお話に上った、都の最新の羅針盤になっている基本計画の平成二十八年の改正の中に、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックに向けて、食材の魅力について理解を深める取り組みを推進するという文言が明記をされております。答弁にあった例年の取り組み、これはもうずっと続けられてきていることだと思いますが、それもいいんですけれども、二〇二〇年東京大会を前に、例えばアスリートを招聘して、子供たちにわかりやすく食の大切さを教えるなど、そういった機会をつくることも食育を浸透させていく上で大変有効なチャンスになっていくのではないかなというふうに思っております。
 加えて、昨今、ライフスタイルが劇的に変化をして、かつては子供が一人で食事をする孤食などが大きな問題になっておりますが、今はもうさらに進んでいまして、スマホの普及によってスマホ歩きということが大きな問題になっていますが、スマホを見ながら食事をとる方の割合も確実にふえてきているように感じます。これらも食育を進めていく上では決して軽視をできない課題ではないかというふうに思います。
 栄養についてなど、そういった基本的な部分に加えて、誰と食べるか、食事をどのようにとるか、そういった心にまつわる部分についてもぜひとも浸透を図っていただけるようお願いをして、次の質問に移らせていただきます。
 ものづくり企業支援についてお伺いをいたします。
 昨日、閉会をされました平昌パラリンピックで二大会ぶりに出場を果たしたアイスホッケーの日本代表のそりが、町工場の技術によって従来より大幅に軽量化をされたということが注目を集めました。中小ものづくり企業の技術は日本が世界に誇る貴重な財産でありまして、今後も発展を力強く後押ししていくべきだというふうに思っております。
 この東京にも、メッキや金属加工など、ものづくりを支える技術を持った企業が、これはすなわちサポートインダストリーという種類になると思いますが、昨今、海外企業との厳しい価格競争にさらされているという現実があります。こうした状況を乗り越えていくためには、生産性を向上させること、また、付加価値や競争力を高めていくということが非常に大きな鍵になるわけであるというふうに思います。
 そのために、新たな販路の開拓など経営面での課題に対処をしていくことが必要であるわけでありますが、技術を売り物にしているものづくり企業にとっては、製品の品質、精度の向上、そして、時には環境基準なども年々厳しくなりますので、こういったものをクリアしなければならない、次々にハイレベルな技術的課題が顕在化してくる、多数存在しているという状況でありまして、大手と比べて、大手なら体力があるからいいんですけれども、小さな町工場を初めとする中小零細企業が経営面や技術面の課題を克服して、東京のサポートインダストリーのさらなる発展に結びついていくために、行政からしっかりとサポートを行う必要があるかというふうに思います。
 そこでまず、こういった中小ものづくり企業、ないしは経営面での課題、技術面での課題を持っている企業に対する都の支援体制についてお伺いをいたします。

○坂本商工部長 都では、中小企業の経営の力を高めるため、会社の現場に専門家派遣を行い、事業の内容等を診断し、課題を明らかにした上で解決を図るサポートを実施しております。
 経営診断の後に中長期の計画をつくり、課題の解決に取り組む場合には、専門家は最大九回まで会社を訪れて助言などを行う仕組みとしております。
 この取り組みにおいて、今年度から、競争力の強化につながる設備の導入などに関し技術の面からアドバイスを行っているところでございます。
 これによりまして、中小企業の経営改善を後押ししてまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。外部の専門家にまずチェックをしてもらって、それを通じて会社の課題や取り組むべき方向性が示されることは、会社が新しい一歩を踏み出すためには足がかりとして非常に重要になるわけであります。
 とりわけ、技術面でのロードマップをしっかりと明らかにして、技術競争力の向上に向けて投資、人材育成を進めていくことは、一方で規模の小さな企業単独ではなかなか難しいんじゃないかというふうに思います。ぜひ、技術面の指導と、そして経営面のサポートを両面から進めるハイブリッド型の支援を着実に進めていただきたいと思います。
 一方で、中小企業が直面をするのは、その計画を実行する段階でのハードルであります。技術面の課題をクリアするためには、当然、ハード面の対応が必要になってきます。工場の生産設備、あるいは先ほど申し上げました環境規制への対応、例えばメッキ産業では、排水に重金属がまざることもあるために、その除去装置など、さまざまな設備の導入が必要になってくることもあります。
 こうした取り組みに伴う負担の重さやリスクの大きさから、計画の実行段階、実際にアクションに起こるフェーズになって企業がちゅうちょしてしまうということは、産業にとって、そして都にとっても損失であるというふうに思います。
 こういった企業を後押しするために資金面でのサポートも必要であると考えますが、都の見解をお伺いいたします。

○坂本商工部長 都では、大手の会社などからの受注によりまして基盤的な技術を用いてものづくりに取り組む中小企業につきまして、競争力の強化などを図ることができるようサポートを行っているところでございます。
 具体的には、経営を改善するため専門家の助言によりまして作成した計画の中で、競争力を高める設備の導入などが必要とされた場合、その購入費用等に対しまして、二千万円を上限に三分の二の補助率で助成を行っております。
 本制度の利用ニーズが高いことから、来年度は助成金の額を一億円余ふやし、約七億一千万円の予算規模での支援をすることとしております。
 これによりまして、受注型の中小製造業のサポートを適切に進めてまいります。

○栗下委員 ありがとうございます。先ほどご答弁がありました専門家が経営や技術面の課題を酌み上げる取り組みと今の取り組みと連携をして、必要な設備投資導入などの支援をぜひとも組み入れていっていただきたいというふうに思います。中小ものづくり企業の経営をサポートしていただきたいと思います。
 また、最後になりますが、昨年の第三回定例会一般質問で、中小ものづくり企業支援のために、マネジメント、マーケティングなど多岐にわたる分野に精通をして、それらを複合的に俯瞰をすることができるコア人材が必要であるというふうに述べさせていただきました。
 こうした経営トップを支える人材を育成するということは、そのときあわせて質疑で取り上げた中小ものづくり企業の海外進出はもちろんのこと、将来、事業を承継すべき次期経営者となり得る人材層を確保する観点から見ても重要であるというふうに考えますが、これについて、都として来年度からどのように取り組んでいくのかお伺いをして、私の質問を終わらせていただきます。

○坂本商工部長 都では、現在、製品開発から販路の確保や量産までの一貫した体制づくりを実務面で担当する人材の育成を支援するほか、新しいサービスを生み出すノウハウやスキルを社員が習得する機会の提供を行っております。
 また、これらのほかに、職場で生産効率を上げるリーダー役の育成なども後押しをしているところでございます。
 来年度からは、これらに加え、中小企業の事業と組織の拡大に応じ、経営者とともにマネジメントを担うことのできる人材の育成支援を開始いたします。
 具体的には、経営の中枢でマネジメントを行う人材の育成を図る重要性への理解を深めるセミナー、こちらを年二回、開催いたします。
 また、そうした人材の育成に意欲的に取り組む四十社を対象に、さまざまな知識やノウハウを提供して育成に向けた計画づくりに役立てるための五回にわたる連続講座を実施いたします。
 さらに、講座を受けて作成した計画の内容を着実に実行できるよう、経営や人事管理などの専門家を会社に派遣してサポートを行います。
 こうした取り組みによりまして、中小企業の人材面でのサポートを進めてまいります。

○鈴木(章)委員 私もこれまで中小企業の経営に携わってまいりましたけれども、本日は中小企業振興について何点か質問をさせていただきたいというふうに思います。
 現在の日本経済というのは、一見好調のように見えますけれども、それは主に日銀による、よくいわれる金融の異次元緩和や、そしてまた東京五輪の開催という二つの好材料によって過度の円高や株安が是正され、大企業中心としていわれておりますけれども、収益が好調を維持しているからであります。
 しかしながら、一見好調に見える日本経済も、実体経済では明るい材料ばかりではないということは、今申すまでもないわけでございます。過去最高の収益といわれておりますけれども、実際には、売り上げはここ数年横ばい、またGDP実質成長率もこの四年間では平均一・二%前後であり、金融緩和によって需要の不足分を創出するという目的がまだ果たされていないのも現状でございます。
 こうした状況において、企業は、金利が下がっても、生産設備がたとえ老朽化しても、また稼働率がいっぱいになっても積極的に設備投資をしようという状況ではまだないというのも現状ではないかなというふうに思います。企業の先行きが不安の中で、成長制約といわれる言葉が最近いわれておりますけれども、そうした状況をつくり出しているゆえんであるというふうにも思います。
 また、経済の六割を占める消費も、本当に今、社会保障や税金や物価上昇などに実質賃金が追いついていないという状況の中で、可処分所得が減少しながら、身の丈消費という状況の中で、この二つが日本型デフレの要因ではないかというふうにも指摘をされております。
 こうした状況において、極端にリスク回避、そして消極的になっている経営や企業、そして金融機関が将来に対して前向きな期待を持てるようにすることが、特に日本の経済政策において今一番求められていることではないかなというふうに思います。
 東京都が来年度から国際金融センターの構想という形で取り組みを始めるわけでございますけれども、実際に日本の金融資産の約半分が預金や現金という状況の中で、金融資産に占める株式の割合というのは、まだまだ一〇%という状況があります。
 こうした状況の中で、リスクマネーを生み出していく市場社会をしっかりとつくっていくことが前提だということで、本当にこれから、この国際金融センター構想というのはハードルも高いなというふうには思っております。
 しかしながら、東京の経済が二〇二〇年、さらにその先にわたって発展をしていくには、こうした厳しい状況にも負けずに、全体の九九・七%を占める、そして雇用の七割を受け入れている、そしてさらに付加価値の過半数、約五一・二%、金額ベースでいうと百四十六兆円、そしてまたイノベーションの担い手として四三%を占める中小企業の成長をしっかりと支えていくことが何よりも大事だというふうに思います。
 本格的な人口減少や技術の進歩など、社会、経済は大きく変化しており、企業の側も、今、生き残るために将来のやり方を変えていかなくてはなりません。
 都内中小企業の多くは、すぐれた技術、そしてアイデアを持っており、こうした変革の主要な担い手である。その事業展開を後押ししていくことは、私は東京の成長戦略のかなめであるというふうに思います。東京二〇二〇大会後の、十年後、二十年後の東京をさらに輝きのあるものにしていくためにも、今こそきめ細かい取り組みが求められるわけでございます。
 本日は、こうした観点から新年度の都の取り組みについて幾つか伺ってまいります。
 初めに、イノベーションの促進についてであります。
 市場競争の中で中小企業が生き残るには、新たなチャレンジ、すなわちイノベーションが不断に求められるのはいうまでもございません。
 企業の大きな成長につながるような、先進的な製品やサービスを生み出すには、時間も、そして資金も、そして人材、そして技術、ノウハウが必要です。
 特に、人口減少に伴い国内市場が小さくなる中で、新たな需要を呼び起こし、市場を活気づけるようなイノベーションが強く期待されます。
 例えば今、スマートフォンは、その普及に伴ってSNSやゲームだけでなく、タクシーやスペースのシェアリングビジネスや、そしてまた、今、飲食店やホテル、そしてまた観劇、映画館などの混雑状況や予約にも普及しているわけでございますけれども、そうした多くのビジネスが広がっている現状がございます。このような、自社だけでなく関連産業の成長をも牽引する波及力を持つ製品やサービス、中小企業にも十分生み出せるチャンスがまだまだあるというふうに私は思います。しかしながら、そこに大きな問題になるのは、今まで以上に多額の資金や販路網を要するということではないかなというふうに思います。
 都は、革新的な技術やアイデアを持つ中小企業に対し、豊富な経営資源を持つ大手企業などとの連携をしっかりと支援して、こうしたイノベーションの実現を促していくべきだと考えますけれども、新年度の都の取り組みについてお伺いいたします。

○坂本商工部長 これまで都は、中小企業が大学や研究機関のほか大企業と協力して技術や製品の開発に取り組むきっかけを提供する研究会や交流会の場を設けてまいりました。
 また、都が将来の成長の期待できる産業などで活用が見込める技術の開発テーマを示し、その内容に沿って中小企業が研究機関や大学等と連携する取り組みに対しまして、必要となる経費の三分の二を八千万円を上限に助成を行っているところでございます。
 来年度からは、すぐれた技術の力を生かして大きな伸びの期待できる市場を生み出すことを目指す中小企業が、大企業の持つ資金や人材のほか販路を活用して事業展開を進める取り組みへのサポートを開始いたします。
 具体的には、中小企業と大企業が連携して技術開発を進める複数のプロジェクトの立ち上げを支援いたします。
 また、これらを含め、中小企業と大企業の連携するプロジェクトを公募して、そのうちの二件に関しまして、中小企業が負担する経費の半分を対象として、約三年間で五億円を上限といたしまして助成を行います。
 これによりまして、中小企業が大企業の力を生かし、事業を展開する取り組みを後押ししてまいります。

○鈴木(章)委員 新たな市場創出に向けたオープンイノベーションの推進ですけれども、今ご答弁で、大手企業と共同開発プロジェクトに対する支援を開始するということでした。
 中小企業がパートナーとなる大手企業を見つけることというのは、実際は、いうは易しで行うはかたしの状況であるというわけでございますけれども、この新規事業の肝は、連携をいかに構築して、そして成功に向け後押しをするかということであるというふうにも思います。
 具体的に、東京都は共同開発プロジェクトをどのように支援していくおつもりなのかをお伺いいたします。

○坂本商工部長 都では、すぐれた技術力を持ち、大きな伸びの期待できる市場を生み出すことを目指す中小企業につきまして、さまざまな大学や研究機関の協力によりまして情報提供を受け発掘を行いまして、大企業と連携して製品開発のプロジェクトをつくることができるよう支援いたします。
 その連携に当たりましては、技術開発の動向に詳しく、大手企業のニーズを理解しているシンクタンクなど民間の支援機関がそれぞれの意向を踏まえながらマッチングを行い、プロジェクトの立ち上げをサポートいたします。
 また、公募により支援の対象となったプロジェクトにつきましては、中小企業の資金面での負担を軽くするため、都からの助成のほか、大企業が開発経費の四分の一以上を出資するルールといたします。
 そして、技術の専門家を含めた有識者による審査会を設けまして約三年にわたるプロジェクトの進行状況を評価するとともに、さまざまな課題に関して都が具体的な解決に向けた後押しをいたします。
 これらによりまして、プロジェクトによる技術開発を着実に支援いたします。

○鈴木(章)委員 本当に、三年間、技術の専門家を含めた有識者による審査会が、課題を通して次のプロジェクトの成功に結びついていくように支援していくことが何よりも大切であるというふうにも思います。
 次に、設備投資への支援の拡充ということで、働き手の減少に伴って、今、中小企業、人手不足の深刻化が懸念されておるわけでございますけれども、そのためにも、今、生産性の向上というものが喫緊の課題ではないかなというふうに思います。
 これまでも、中小企業に限らず日本の企業、経費節減、コストカットによって経営の効率化、筋肉的な経営の体質を図って利益を出してきたわけでございますけれども、しかしながら、新たに今、少子高齢社会の生産労働人口の減少という大きな問題に直面する中で、国際競争力を維持して強化していくことも喫緊の課題であるというふうにも思います。
 こうした点に関して都は、本会議における都議会自民党からの質疑に、来年度から生産性向上に向けた設備投資への支援を拡充するとご答弁いただきました。改めて、どのように拡充するのかをお伺いいたします。

○坂本商工部長 都は、今年度、中小企業が競争力の確保や成長分野での事業展開を目指すために行う設備導入に対する経費を助成するため、五十億円の規模で支援を行いました。
 来年度には、生産性向上のための設備投資に必要な経費を対象に加えまして、助成金を二十億円ふやし支援を行います。
 具体的には、生産効率を高める場合に役立つロボットやIoTのシステムなどの設備の導入費用について、新たに一億円を上限に三分の二の補助率で助成を行います。
 これによりまして、設備投資による生産性向上を適切に後押ししてまいります。

○鈴木(章)委員 先ほど中小企業の経営の話の中で、成長制約といわれる、将来に不安がある中で消極的な経営になっているというのが現状だというふうに指摘をさせていただきました。
 そうした中で、しかしながら、これからの社会を生き残っていくためには、やはり生産性の向上というものは喫緊の課題であり、避けて通れない話なわけでございますけれども、しっかりと中小企業の経営者の方々にこの必要性、そして意味を伝えていただき、そして、ともにこれからの生産性向上に結びついていけるような取り組みにしていただきたいというふうにも思います。
 生産性向上を図る上で、財政基盤の脆弱な中小企業に対して、今お話しさせていただいたように、設備投資の導入を後押しすることというのは何よりも大切です。
 ロボット、IoTシステムの設備を導入するために必要となる経費を新たな助成の対象とするとのことでありますが、中小企業の現場に導入される設備として、どのようなものを想定されているのか、具体的に明らかにしていただきたいと思います。

○坂本商工部長 設備投資への助成で対象となるロボットにつきましては、従来、人の行っていた作業工程を自動化いたしまして、効率的に商品の生産やサービスの提供を可能とする機械を想定しているところでございます。
 例えば、食品メーカーで、製品の箱詰めを作業員にかわり短時間で行う装置などが対象として見込まれているところでございます。
 また、サービス業では、ホテルのロビーなどで移動式で音声で案内のできる機器の導入などを後押しいたします。
 次のIoTのシステムに関しましては、複数の装置類をITのネットワークで結びつけて、さまざまな情報の収集分析を行った上で、個々の機械、装置に指示を出したり、コントロールを行うという、こうした事例を想定しているところでございます。
 具体的には、工場内でさまざまな工程を連続して行う場合に、それぞれの機械の状況をITツールを通じて監視して、円滑に製造が進むように管理をする事例などが対象になるものと考えているところでございます。

○鈴木(章)委員 生産工程の自動化とか効率化を実現する設備の導入は、中小企業の生産性引き上げに非常に効果的だというふうにも、やはり思います。しかし、ロボットやIoTを活用した設備は、ただいまの答弁にもありましたけれども、工程全体に導入したり、あるいはシステムを組んだりするものというふうに思います。
 したがって、いかなる設備を導入して、どう活用していくのがベストなのかということが何よりも求められるものであって、現場をしっかりと俯瞰して、理解した上でなければ取り組みというのは進まないというふうにも思います。
 そうした中で、専門的な知識が不足する中小企業において、この導入の取り組みをいかに進めるのか、その支援策についてお伺いいたします。

○坂本商工部長 都は来年度から、中小企業の生産性向上のため、IoTのシステムのほか、AIやロボットを対象に含めて、これらの活用が広がるようサポートの充実を図ります。
 具体的には、IoTやAIのほかロボットについて専門家が会社を巡回し、そのメリットを説明して導入を後押しするほか、年間十回のセミナーを通じまして活用の方法などをわかりやすく説明いたします。
 また、IoTのシステムやAIに関しまして、中小企業の実態に合った活用を支援するため、専門家が会社に出向いて課題の抽出やその解決の方法を明らかにするほか、導入する機器の提案などを行います。
 次に、ロボットに関しましては、その導入により成果を上げている工場などへの見学会を二回開催いたします。
 さらに、そのほかに、専門家派遣によりまして、活用に向けたアドバイスを実施いたします。
 さらに、IoTの導入などにより生産性の向上や業務の効率化を実現した事例を、ウエブサイトを立ち上げまして幅広く紹介いたします。
 こうした取り組みによりまして、中小企業の円滑な設備の導入を後押ししてまいります。

○鈴木(章)委員 先ほども話をさせていただきましたけれども、中小企業の生産性の向上というのは本当に大事な話であって、避けて通れない話なわけですけれども、しっかりと、まず現場の方々に本当に業務効率がこのように向上するんだということを伝えていく必要があるというふうにも思います。
 私も、この質問をつくらせていただいて、かつて工場がIT化を導入して、経営の効率化というものにいかに結びつけていくかということで頭を悩ませたときが本当にきのうのように感じるんですけれども、実際に本当に新しい技術を、そうしたシステムを導入する中で、これが本当に企業にとってどれだけ利益を生み出すのか、そしてどれだけ工程が効率化するのかというものをしっかりと理解するというのはできない、なかなかしにくい話があるわけですけれども、私は、法人会の仲間とか、さまざまな方々と一緒になって勉強会を開いて、前向きに導入していかなければこれからは立ち行かないという状況の中で後押しをされて取り組んで、今、あのときが本当に一つのターニングポイントだったなというふうにも思うわけでございますけれども、この部分というのは、これからもしっかりと、本当に中小企業の実情をしっかりと踏まえて対応していただきたいというふうにも思いますし、私たちも、引き続き現場の声も聞かせていただく中で、皆様に対して、また提言をさせていただきたいというふうにも思います。
 さて、次に、IoTやロボットなど、担い手不足への対応として効果的だというふうにも思いますけれども、一方で、今、緩やかな景気回復が続く中で、本当に今、中小企業の稼ぐ力を高めるチャンスにしていかなくてはならないというふうにも思います。
 特に下請中小企業は、これまで海外と熾烈な価格競争により厳しい経営環境に置かれてきていると考えますと、都は一層、中小企業もしっかりと強力に支援していくべきであるというふうにも思いますけれども、このことに対する見解をお伺いいたします。

○坂本商工部長 都では、大手の会社などからの受注によりまして基盤的な技術を用いてものづくりに取り組む中小企業につきまして、生産性の向上や新しい販路の確保を図ることができるようサポートを行っております。
 具体的には、中小企業が生産効率を高める設備を導入する場合や、展示会などに出展する際の経費を対象といたしまして、二千万円を上限に三分の二の補助率で助成を行っております。
 本助成の利用ニーズは高く、二十九年度では採択を予定していた五十八件、こちらを大幅に上回る二百件以上の申請を受け付けております。
 こうした状況を踏まえまして、来年度は助成金の額を一億円余ふやして、約七億一千万円の予算規模での支援をすることとしております。
 これによりまして、受注型の中小製造業のサポートを適切に進めてまいります。

○鈴木(章)委員 本当に稼ぐ力を高めていくためにも、この受注型の中小企業の設備投資、我が党の提言によって団体の方々と取り組みをさせていただいているわけですけれども、しっかりと結果が出るようにしていただきたいというふうに思います。
 特に中小企業というのは、こうした助成を活用するには、社内で十分に協議して、そしていろんな努力を重ねて申請されるんです。平成二十九年度で採択を予定していた五十八件を大幅に上回る二百件以上の申請があったということは、私は本当にすばらしいことだというふうに思いますし、すばらしい東京のポテンシャルだというふうにも思います。予算の割合で採択されなかった申請もあるというふうにも思いますけれども、今ご答弁いただきましたように、来年度、助成金を一億円増額するということは、本当に賢明な取り組みだというふうにも思います。
 ぜひ、この制度を最大限活用して、大手の会社などからの受注を、より基盤的な技術を用いてものづくりに取り組む中小零細企業の技術力の向上、新たな販路開拓につながるように取り組んでいただきたいというふうに重ねて要望いたします。
 次に、中小企業に対する金融支援について伺います。
 いうまでもなく、企業が安定的な経営を継続するとともに、さらなる事業展開を図っていく上で、資金調達というのは極めて重要な話です。アベノミクスの成果による景気回復に伴って、今、中小企業の資金繰りDI、景気動向指数は改善傾向にあるというデータも出ておりますが、私が日ごろから接しております大田区の中小零細企業の方々の生の声を聞くと、やはり人件費、そして社会保険料などの企業負担が増加していて、さらに、今後予定される消費税率の引き上げなど、とりわけ小規模企業の資金繰りというのは、今後ますます厳しさを増していくというような切実な声も多く耳にいたします。
 都として、こうした現場の中小企業の厳しい経営状況をしっかりと受けとめていただいて、中小企業の資金繰りの支援に積極的にこれからも取り組んでいただきたいというふうに思います。
 そこで、中小企業が、円滑に資金を調達する上で中心的な役割を果たす都の融資制度の来年度の取り組みについてお伺いをいたします。

○加藤金融部長 中小企業の金融支援につきましては、創業や事業承継、こういった中小企業のライフステージの各段階に応じたきめ細かな資金繰りへの支援が重要でございます。
 まず、創業期でございますけれども、創業期にある企業は、新商品の開発や設備の導入、経営が軌道に乗るまでの間の運転費用などに多くの資金を要しますことから、適切に資金繰りを支援していく必要がございます。
 そのため、都は、創業融資メニューにおいて、国の信用補完制度の見直しを踏まえ、例えば、現在、事業を営んでおらず、かつ、自己資金がない方が創業する場合の融資限度額を一千万円から二千万円にするなどの引き上げを行います。
 加えまして、都独自の取り組みといたしまして、融資利率を最大で〇・三%引き下げます。
 こうした支援の拡充により、多くの創業希望者が新たな事業に積極的にチャレンジできるよう後押ししてまいります。

○鈴木(章)委員 今、創業支援の融資の拡充のことでお話をいただいたわけですけれども、この話というのは前回、事務事業質疑において我が党の柴崎委員も触れたところでありますけれども、中小企業信用保険法等の改正に伴って、信用補完制度の見直しがいよいよ本年四月から施行されるわけです。
 この見直しというのは、今お話がありましたけれども、創業や事業承継などの中小企業のライフステージの各段階に応じたきめ細かな資金繰りを支援して、中小企業の経営改善等に一層つながる仕組みを構築する話なわけですけれども、その趣旨を踏まえて、的確に対応していくことが必要であるというふうにも思います。
 創業支援については、本当に手元資金や信用力が乏しい、必要な資金調達が困難であるから、今お話があったように、まさに行政の後押しというのが求められるわけでございます。創業期は、新商品の開発、そして設備導入以前に、特に経営が基盤に乗るまでの運転資金というのも本当に大事な話でありまして、これからも制度融資において、経済の活気を創出する創業支援にしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。
 次に、中小企業のライフステージにおいて重要な節目である事業承継への支援についてもお伺いいたします。
 中小企業のすぐれた技術、そしてノウハウを次の世代につなげる事業の承継というのが今まさに待ったなしの課題であり、本当に求められることであるというふうに思います。私の大田区の法人会の方々ともいろいろお話をさせていただきますけれども、今、私がご指導いただいた先輩の方から私たち世代に経営が変わっていく状況の中で、しっかりと事業承継をしていくことが本当に求められるというふうな話をよく聞きます。
 中小企業の事業承継時においては、後継者個人の株式取得資金や税金などの費用、また、金融機関から経営者の個人保証の提供を求められることなど、円滑な事業承継を妨げる要因と、これらのことがなっております。
 そこで、都は、制度融資において、事業承継を促進していくために、ことしどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○加藤金融部長 中小企業の円滑な事業承継を後押ししていくためには、金融支援策の柱である制度融資を活用した支援を行っていくことが有効でございます。
 これまで都は、事業承継融資メニューにより、最優遇金利で、かつ、信用保証料の二分の一を補助する取り組みを実施してまいりました。
 加えて来年度は、信用補完制度の見直しを踏まえ、後継者個人の株式取得資金、また、相続税や贈与税の納税資金などを融資の対象とするとともに、純資産額や自己資本比率などの一定の財務要件を満たした場合に、経営者の個人保証を不要とする特例メニューを創設いたします。
 こうした取り組みにより、中小企業の事業承継に係る資金ニーズに手厚い支援を実施してまいります。

○鈴木(章)委員 本当に創業や事業承継についての支援というのが大事なことであるわけですから、支援をしていただきたいというふうに思います。
 一方で、制度融資については、資金繰りが一層厳しいとされる小規模企業の下支えとか、中小企業のセーフティーネットとしての役割についても強化していくことが求められます。
 また、中小企業金融円滑化法の終了に伴って、我が党の要望によって、都が独自に導入した特別借換も中小企業のニーズが高くて、事業者の日常的な資金繰りに大変役立っているという声も聞いております。
 今回の信用補完制度の見直しにおいても、資金力に乏しい小規模事業者が持続的に成長発展していく段階や、リーマンショックのような経済危機などが発生した場合の資金需要に的確に対応していくこととされております。
 そこで、小規模事業者への支援や危機時への対応について、都は来年度、どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。

○加藤金融部長 都は来年度、信用補完制度の見直しを踏まえ、小口融資の融資限度額を一千二百五十万円から二千万円に引き上げ、小規模事業者の経営基盤の強化に努めてまいります。
 また、全国規模の経済危機や災害時等の国の動きに迅速に対応するため、危機関連融資メニューを創設し、危機時に増大する資金需要に適切に対応していくこととしております。
 さらに、委員ご指摘の、平成二十五年三月の中小企業金融円滑化法終了に伴う緊急的な措置として創設しました特別借換メニューにつきましては、借換メニューと一本化し、継続的な支援が行えるようにいたします。
 このように、多様な資金ニーズへの万全な備えを構築することにより、都内中小企業の経営の安定化を図ってまいります。

○鈴木(章)委員 本当に、中小企業、特に小規模事業者の金融支援というのは大事なことなわけでございますので、ぜひともこれからも的確な支援を期待したいというふうに思います。
 小規模企業の支援、経済危機等の対応について、充実が図られることがわかりました。
 一方で、これまでの経験からいえば、実際に経済危機等が起きてしまった場合、真っ先に影響を受けるのは信用力の弱い中小零細企業であります。国の対策と連携していくことはもちろんですけれども、現場を有する都が速やかに、かつ機動的に対応していくことが重要です。こうした都の取り組み姿勢が、中小企業の安心感につながっていくと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。
 これまでの質疑から、都は、信用補完制度の見直しを踏まえつつ、都独自の取り組みも展開し、中小企業のさまざまな資金需要に対応した制度融資の拡充を図っていくことがわかりました。
 一方で、このようなさまざまな取り組みを行っても、中小企業の実際の利用に結びつかないと意味がないため、都の金融施策に不案内な中小企業にとって、できるだけ理解しやすい仕組みにする努力も必要ではないかと思います。例えば、制度融資のメニューが多岐にわたり、どの制度を利用したらいいのかがわからない中小企業からの声も耳にします。
 そこで、制度融資を利用する中小企業にとってわかりやすい制度とするために、都は来年度、どのように取り組んでいくのかもお伺いいたします。

○加藤金融部長 委員ご指摘のとおり、制度融資を利用する中小企業が最適な融資メニューを活用できるよう、より一層わかりやすいものとしていくことは重要であり、都はこれまでも必要な見直しを行うとともに、都のホームページやパンフレット等による周知を行ってまいりました。
 来年度につきましては、利用者や金融機関の声を踏まえ、わかりやすさや利用しやすさの観点から、類似したメニューの整理統合等を行うとともに、一部のメニューについては支援内容の充実もあわせて実施いたします。
 具体的には、支援機関による支援を受け、経営改善を促進する二つのメニューを一本化するとともに、利用要件を緩和し、使いやすくするなどの改正を行います。
 このように、よりわかりやすい制度とする取り組みを不断に積み重ね、中小企業の資金ニーズに即した制度の活用を促進してまいります。

○鈴木(章)委員 中小企業が利用しやすいものに見直すとともに、制度の充実も図っていくことは本当に評価できます。今後とも継続的に改善に取り組んでいくことで、中小企業にとってより効果的な金融支援を進めていただきたいというふうに思います。
 制度融資の取り扱い金融機関でもある信用金庫や信用組合は、マイナス金利等の影響もあって、今本当に厳しい経営環境に置かれているとの報道も耳にするところでございますけれども、一方で、地域に根差した金融機関として中小企業の資金繰りの点で、欠かすことのできない極めて大きな役割を果たしております。
 私の地元大田区にも多くの信用金庫等が支店を置いておりますけれども、地域密着型のきめ細かい営業を行っており、企業にとってもよいアドバイザーとなっております。今後とも、都内中小企業の資金調達の円滑化に向けて、連携を強化していくことが重要だと思いますので、よろしくお願いいたします。
 これまで助成金や制度融資について、るる質疑を行ってきましたが、これらが中小企業の真の支えとなるかどうかは、多分に制度をどう運用するかにかかっております。
 例えば、資金繰りが厳しい企業は、財務面ではどうしても評価が低くなり審査で不利になってしまいます。しかし、こうした中に、再起をかけて申し込んでいる真剣な企業もたくさんおります。数字にはあらわれない経営者の思いといったものを酌み取る血の通った対応が必要ではないかというふうにも思います。
 また、助成金の募集の期間や回数なども、制度全体から見れば小さなパーツかもしれませんけれども、申し込む企業にとっては重大な関心事でございます。特に中小企業の目線に立って、使われる制度、真に役立つ制度にしていく努力を惜しまないでいただきたいというふうに強く要望しておきます。
 次に、障害者雇用について伺います。
 都内民間企業の障害者雇用率は一・八八%と過去最高を更新しましたが、中小企業では一・〇七%にとどまっております。四月には法定雇用率が二・二%に引き上げられ、精神障害者が雇用義務の対象となります。今後、中小企業において一層の取り組みが求められますが、ノウハウや経験不足から二の足を踏む企業も多いと聞きます。
 また、今回の改正により、障害者を雇用しなければならない企業の範囲が、従業員五十人以上から四十五・五人以上へと拡大されます。こうした小規模企業の多くは、専任の担当者を置くような余裕もないのが実情です。
 都内中小企業が、障害者雇用に向けて一歩を踏み出せるよう、都として、必要な情報提供や相談対応など、きめ細かな支援を行っていると考えますが、見解をお伺いいたします。

○蓮沼事業推進担当部長 都は、中小企業における障害者雇用を促進するため、障害者雇用に関する支援機関が一堂に会する障害者雇用支援フェアを開催し、支援制度や障害者の就業を助ける最新の機器などを紹介するとともに、先進的な取り組みを行う企業の事例の発表や表彰を行ってまいりました。
 来年度は、障害者を初めて雇用しようと考えている企業にも対応できるよう、精神障害者の雇用に関する相談窓口をフェアの中に設けるとともに、東京しごとセンターの障害者就業支援情報コーナーに、障害者雇用に精通した専門相談員を新たに配置し、企業からのさまざまな相談にきめ細かく応えてまいります。

○鈴木(章)委員 障害者を新たに雇い入れる際には、個々の障害の特性を十分理解して、職場で適切な配慮やサポートを行うことで、定着につなげていくことが重要であります。そのためにも、中小企業が必要な知識やノウハウを得て、積極的に障害者雇用に取り組めるよう、関係機関とも連携を図りながら、情報提供や相談支援をしっかりと進めていただきたいというふうに思います。
 四月から法定雇用率の引き上げなど今回の制度改正に伴って、今後新たな障害者を雇い入れる中小企業がふえてくると考えられます。こうした企業における取り組みの実態も踏まえながら、障害者の雇用促進と職場定着に向けて、一層の支援を行っていくようお願いいたします。
 これまで、東京二〇二〇年大会のその先、来るべき本格的な人口減少社会も見据えて、東京の経済活動を支える都内中小企業をいかに元気にし、百二十兆円の都内GDPをいかに稼ぎ出していくか、中小企業の現状に即した具体的な提案も行いつつ、伺ってまいりました。
 東京は、力強い経済で日本をリードするという使命を負っております。
 アベノミクスにより、マクロ経済全体でようやく景気が回復基調にある今こそ、国の施策とともに軌を一にして、東京の持続的な成長に向け、果敢に挑戦していくことが重要であります。
 産業労働局の平成三十年度の一般会計予算は、預託金等の金融支援を含め四千五百五十五億円もの金額が計上されておりますが、東京が日本の経済を牽引していただけるよう、ぜひともこの予算を生きたものにして、各地域で懸命に頑張っている事業者や都民の皆様にとって役立つものにしていただきたいと思います。そのために、現場を預かる産業労働局が、実際に現場を見て、現場の生の声に応えていくことが鍵となります。
 東京を世界で一番の都市にするために、藤田局長が先頭に立って、こうした現場の声に応えられるよう一丸となって、振興、そして雇用対策に、しっかり取り組んでいただきたいというふうにも思いますけれども、局長の力強い言葉を、決意を聞いて、私の質疑を終わらせていただきます。

○藤田産業労働局長 二〇二〇年に向けたさまざまな期待が高まります中、東京の経済は、さらなる発展を遂げる絶好の機会を迎えております。東京二〇二〇大会の成功はもちろんでございますけれども、さらにはその先の東京の明るい未来、こういったものを実現するためにも、本格的な人口減少、超高齢社会という、うねりの中で、大会後も見据え、産業振興、雇用就業対策に、今からしっかりと取り組んでいく必要があるというふうに考えてございます。
 こうした認識のもと、来年度、産業労働局では、都内経済を支える中小企業の生産性の向上に向け、IoTなど、最先端技術を活用した設備の導入への支援、これを強化いたしますとともに、新たな市場の創出に向け、中小企業等の革新的な技術を活用したイノベーションなど、事業者の新たな挑戦への支援を充実させてまいります。
 さらに、足元の経営基盤を固めることが同様に重要でございまして、資金繰り、あるいは創業の活性化、事業承継、これらを促すための金融支援など、中小企業が直面している課題に応じた効果的な支援策も講じてまいります。
 また、誰もが希望や活力を持って存分に活躍できる都市東京を実現すべく、障害をお持ちの方も、女性や若者、それから高齢者、難病患者やがん患者の方も、誰もがその意欲と能力を十分に発揮し、生き生きと職場で活躍できるよう、就労環境の整備や雇用就業の推進に向けた取り組みを着実に進めてまいります。
 本日、委員からご意見やご提案をいただきました中小企業対策、これはもとよりでございますが、現場を持つ産業労働局の強みを最大限に生かしながら、日本各地とも連携し、観光や農林水産を含めた東京の全ての産業振興、そして雇用就業対策に、局職員一丸となって、全力で取り組んでいく決意でございます。

○のがみ委員 中小企業支援についてお伺いいたします。
 初めに、事業承継についてでございます。
 我が国の中小企業は、三十万社以上の経営者が、二〇二〇年までに新たに七十歳に達し、大量引退期を迎えます。また、現在六十歳以上の経営者のうち、その約半分、五〇%は廃業する予定であるということでございます。その大きな要因は、適当な後継者がいないことや将来の経営への不安ということでございます。
 私が住んでいる高砂二丁目というのは、葛飾区なんですけれども、準工業地域で、百を超える工場がありましたけれども、この十五年の間に半減をいたしました。主な原因は、後継者がいないということです。息子さんがいても、別の大会社に就職しておりまして、たとえ会社をやめて継いでもらっても、経営が成り立つかどうか、生き残れるかどうか心配で、黒字経営ではあるけれども、体力があるうちに廃業しております。それが厳しい現実でございます。
 手をこまねいていては、東京の産業を支える都内中小企業の活力やすぐれた技術が失われて、ひいては経済が停滞するおそれさえあります。
 円滑に事業を承継するには、早い段階から相談対応が不可欠でございます。後継者を見つけて育てるにしても、また、スムーズな世代交代のために経営の不安要素を払拭しておくにしても、時間がかかります。
 都は昨年度から企業の現場を巡回して啓発活動を実施しておりますけれども、訪問先の企業の中からは事業承継の専門相談につながった事例が出てきていると伺っております。やはり、窓口で待っているだけではなく、出向いて声をかけることで、社長さんの背中をぐっと押すことができると思います。
 都は、こうしたアウトリーチ型の取り組みのさらなる強化等、事業承継の支援を一層手厚くしていく必要があると思いますけれども、新年度の取り組みについてお伺いいたします。

○坂本商工部長 これまで都は、ただいまお話にございましたように、巡回相談員がさまざまな会社を訪問し、経営の承継が必要な場合には、中小企業振興公社に設置をする専門の窓口につなぎまして、相談対応を行ってまいりました。
 来年度は、承継が必要な企業をビッグデータを用いて効率的に把握するとともに、企業の現場で専門的な相談や助言を行う仕組みを導入いたします。
 このため、巡回する相談員を三名から十名にふやし、対応のできる件数を延べ七百二十件から二千四百件に拡充いたします。
 これらによりまして、企業が着実に事業承継に向けた取り組みを進めることができるよう後押しをしてまいります。

○のがみ委員 巡回してくださる優秀な相談員をふやすことは大変ありがたいことだと思っております。
 人員の少ない企業では、経営者が一人で何役も仕事をこなさなければなりません。相談のための時間をつくって窓口に出向くことも、なかなか至難のわざと思います。窓口に行かずともさまざまなサポートを受けられるという点は、特に零細企業ほどメリットが大きいと思いますので、しっかり進めていただくようお願いいたします。
 アウトリーチ型の支援は非常に効果的ですが、これで全ての企業をカバーできるわけではありません。事業承継に向け一歩を踏み出す企業が一社でも多く出てくるよう、やはり普及啓発も一層強化させていかなければならないと考えますが、新年度の取り組みをお伺いいたします。

○坂本商工部長 これまで都は、中小企業の経営者や事業の後継者等を対象といたしまして、承継に必要となる法律や税務の知識などにつきまして、具体的な事例を交えてわかりやすく説明するセミナーを年四回開催してまいりました。
 また、今年度は、金融機関や業界団体の主催する研修会などに専門家を派遣して、中小企業向けに事業承継の専門的な知識を提供する出張セミナー、こちらを六回実施しております。
 来年度は、中小企業が事業承継に関する詳しい知識を学ぶ機会をふやすために、業界団体に協力を働きかけて出張セミナーを年八回にふやします。
 さらには、事業承継の内容を発信する専用のウエブサイトについて、掲載する事例をふやすなどの充実を図り、情報を幅広く提供してまいります。
 こうした取り組みにより、中小企業の事業承継を効果的に支援してまいります。

○のがみ委員 葛飾区でも二月八日、九日と、町工場見本市を東京国際フォーラムで開催いたしました。六十七社が参加し、技術性、創造性に富んだ製品を展示しておりまして、ビジネスのパートナーを探すきっかけにもなりますし、海外での商談もできるように、英語表記も努力してつけておりました。
 今後、多くの経営者が七十歳以上を迎えることになりますけれども、その六割は後継者が決まっておりません。時間的猶予は多く残されておりません。一社一社に寄り添った支援をしっかりと、かつ丁寧に進めていただくことを要望いたします。
 次に、伝統工芸品についてでございます。
 昨年十一月に、東京で伝統工芸品の初の全国大会が開催をされ、私も足を運ばせていただきました。
 丸の内という立地条件もよくて、若い世代や外国人、あるいは、お昼休み中の会社員など、本当に幅広い層の方々が、伝統工芸品を手にとっている姿や、職人さんの話を熱心に聞く様子などがうかがえました。
 この大会は、二十五万人を超す来場者を動員できたということでございます。ふだんは伝統工芸に縁のない多くの方々に、その魅力を伝えることができたことは意義があったと思います。
 今後も伝統工芸の世界に触れることのできる機会をつくり、ファンを着実にふやしていくことが重要です。それが長い目で見ると購買層を広げていくことにもつながると考えますが、見解を伺います。

○坂本商工部長 都は、伝統工芸品について、今年度に東京で初めて開催された伝統的工芸品月間国民会議の全国大会で国内外に向けてPRを行うほか、百貨店での展示販売やさまざまな見本市への出展を通じて工芸品に対する関心を高める工夫を行ってまいりました。
 来年度には、伝統工芸品をより幅広く紹介するため、鉄道の駅や空港など外国人も含め多くの人が通過し立ち寄る場所で、八月ごろをめどといたしまして、ショールームを設置いたします。
 こうした場を活用して、工芸品の展示販売のほか、職人による実演や制作を体験できるワークショップも行いまして、より効果の高いPRを目指してまいります。
 また、今年度に立ち上げた伝統工芸品のウエブサイトにつきましては、来年度は、制作のプロセスや職人へのインタビューを動画で掲載し、英語版も設けるなど発信の一層の強化を図ります。
 これらによりまして、伝統工芸品に対する関心を着実に高めてまいります。

○のがみ委員 伝統工芸品産業の将来を考えれば、未来を担う職人の育成も大変重要なことでございます。
 技術の伝承やレベルアップももちろん重要ですけれども、二〇二〇大会を二年後に控え海外からの注目もより一層集まることを踏まえると、海外市場をターゲットとしていくことは、欠かせない視点でございます。
 願わくば、多くの若い職人さんに、国際的な視野やビジネス感覚を身につけ、例えば海外バイヤーさんとのコミュニケーションや交渉にも臨めるまでスキルアップに励んでほしいと考えますが、実際には、そうしたノウハウを習得することは容易なことではございません。
 二〇二〇年、そしてその先を見据え、都として若手職人の育成支援を充実させていくべきと考えますが、見解を伺います。

○坂本商工部長 都では今年度、若手の職人による伝統工芸品の展示販売会を開催いたしまして、商品を効果的に宣伝し、売り上げに結びつけるノウハウを学ぶ場の提供を行ったところでございます。
 こうした職人の事業展開に役立てるため、海外での研修会を実施いたしまして、海外現地の市場に関する知識や商習慣などを習得できるよう支援を行っております。
 来年度は、こうした取り組みに加えまして、職人が海外での研修の中で実際に行った商談の内容を改めて整理いたしまして、その改善を図るためのアドバイスや指導を専門家が実施いたします。
 また、伝統工芸品の新しい取引先をふやすため、商品の魅力をSNSのシステムなどを用いて外国向けにも効果的に発信する手法を学ぶセミナーも実施いたします。
 こうした取り組みによりまして、海外でも活躍のできる若手の職人の育成を着実に後押ししてまいります。

○のがみ委員 伝統工芸を伝承しようと思うわざを若い時期から伝えていくことも大事だと思っております。技能を残せなければ、その伝統工芸は廃れてしまいます。内容にもよりますが、三年間はみっちり修業をして、わざを覚えることも大事です。しかし、伝統工芸職人を弟子につけても、数年間食べていけないわけで、若い人を雇用して育てる場合には、何らかの支援が必要だと思います。
 都の伝統工芸品ではございませんけれども、葛飾区では数年前に若手職人育成のための助成金を設置しておりまして、例えばこの箸職人さんですね、これ、この中が五角形になっているわけでございます。(実物を示す)これを一本の木から、こういうふうにきれいに五角形にするまでに、やっぱりみっちり修業しても三年間はかかるということで、これは大体四千円ぐらいで売っているんですけど、これが高いか、安いかはちょっと個人の感覚で違うと思うんですけど、ここまでわざを磨くまでにはかなり月日が必要だと思っております。
 伝統工芸は、東京が未来に引き継ぐべき宝であります。ご答弁いただいた取り組みを含め、頑張る職人さんたちをしっかりとサポートしていただくよう、要望いたします。
 次に、新しい観光資源の開発について伺います。
 うれしいことに、我がまち葛飾では、柴又が重要文化的景観に指定されました。重要文化的景観というのは平成十六年から始まった比較的新しい制度のようですが、東京都では初めてでございます。これにより、観光客もふえることが期待されます。
 また、昨日はキャプテン翼のモニュメントが、高橋陽一先生という原作者の母校であります東京都立南葛飾高等学校の敷地の中に完成をいたしまして、オープニングセレモニーがございました。キャラクターとしては世界的にも有名なキャプテン翼の像をつくって、区内を回るイベント等もあります。ゲゲゲの鬼太郎ロードのような形で、観光客を呼びたいということだと思っております。
 ほかにも、こち亀とかリカちゃんとかモンチッチとか、いろいろなグッズを発信しながら観光産業を頑張っていこうということでございます。
 東京を訪れる旅行者を今後もふやしていくためには、それぞれのニーズに対応した観光の楽しみを提供することが重要でございます。
 先日の我が党の代表質問で、外国人旅行者の声を踏まえた夜間の観光振興について質問いたしましたけれども、振興策の一つとして、ライトアップの活用は有効な取り組みだと思います。
 私も世界の国のライトアップを見てまいりましたけれども、オーストラリアのシドニーとか、反対側のバンフとか、シンガポール、パリ、上海、香港とか、夜景の美しい都市はたくさんございますけれども、日本のように安全で、夜の観光を楽しめる国はないと思っております。これを一つの戦略として取り組んでいくことが大事だと思っております。
 今後、ライトアップを東京の観光資源として育てていくためには、ライトアップを楽しむことができるスポットをふやすとともに、そのデザイン性を高めることも必要ではないかと思います。
 都は来年度、ライトアップを活用した地域の取り組みへの支援を充実するとのことでございますが、その具体的な内容についてお伺いいたします。

○小沼観光部長 都は今年度から、地域の観光協会等が、身近な自然である秋の紅葉や春の桜、特徴的な建造物等をライトアップして集客効果を高める取り組みへの支援を実施しております。
 来年度は、こうした地域の取り組みがさらに広がるよう助成制度の充実を図ってまいります。
 具体的には、身近な自然のライトアップにつきましては、デザインの向上を図るための専門家のさらなる活用や、より大きな規模での実施ができますよう、助成限度額を百万円増額いたしまして六百万円といたします。
 また、新たに、イベントにおける夜間の集客に向けまして、建造物等を一時的にライトアップする際の経費の二分の一につきまして、一千万円を上限として助成いたします。
 さらに、複数の建造物等を広域的にライトアップすることで美観を向上させ、その効果を高めるための計画を策定する際の調査等に係る経費、これの三分の二につきまして、二百万円を上限に助成いたします。

○のがみ委員 経費の二分の一の助成ということで、調査費用も三分の二助成をするということで、より一層ライトアップ事業が推進されますように期待しております。
 ライトアップと同時に、光の演出効果を活用した映像投影技術として、プロジェクションマッピングがあります。
 最近では、この映像を見るために多くの旅行者が開催地を訪れて、夜間における旅行者誘致につながっている事例もあると聞いております。
 例えば、ハウステンボスのライトアップ、プロジェクションマッピングを見る機会がありまして、大変美しくて感動いたしました。
 また、昨年十一月、私の地元葛飾区でも、金町駅周辺のイルミネーションイベントの際に、東京理科大学の校舎へプロジェクションマッピングを投影し、多くの人の目を楽しませておりました。
 こうした取り組みが都内各地でも広がるよう、さきの事務事業質疑でも要望したところでございます。
 都は来年度、プロジェクションマッピングを活用した集客の取り組みへの支援を開始するとのことですが、その内容についてお伺いいたします。

○小沼観光部長 駅舎やお城などの特徴的な建造物にプロジェクションマッピングを行い、夜間の新たな観光資源として活用する取り組みが各地で広がっており、集客に効果を上げてございます。
 都におきましても、昨年七月の東京二〇二〇大会の三年前カウントダウンイベントにおきまして、スポーツのすばらしさと東京の魅力を表現しましたプロジェクションマッピングを議会棟壁面に投影し、多くの観客に楽しんでいただきました。
 来年度は、プロジェクションマッピングを活用して新たな観光スポットをつくり出す地域の観光協会等の取り組みを支援するため、映像制作費や機器の借り入れ等に係る経費の二分の一につきまして、一千万円を上限に助成いたします。
 こうした取り組みによりまして、光の演出効果を活用して集客効果を高める地域の取り組みを推進してまいります。

○のがみ委員 夜間の時間帯は、まだまだ新たな楽しみを生み出す余地があると考えております。
 夜間の観光振興に向けた地域の取り組みをしっかりと後押ししていただきたいと思います。
 次に、都内産の農林水産物の地産地消についてお伺いいたします。
 東京では、多摩地域から区部や島しょ地域に至るまで、多種多様な農林水産物が生産されております。しかし、これらの多くは、生産された地域内で消費することが多く、農地がない、または、少ない区部では、見かけることも少なく、認知度という点ではまだ十分ではないと思います。
 東京二〇二〇大会に向けて、都民はもとより、国内外から東京を訪れる旅行者など多くの人々に知ってもらい、味わってもらうためにも、都内産の食材を都内で消費する地産地消の取り組みを一層推進し、都内産農林水産物の認知度を高めていくことが必要と考えます。
 そこで、地産地消の推進に向けた都の取り組みについてお伺いいたします。

○武田安全安心・地産地消推進担当部長 都では、地産地消を推進するため、都内産農林水産物の魅力を積極的にPRするとともに、販路開拓に取り組んでおります。
 都内産農林水産物をPRするため、都内産食材を積極的に使用している飲食店等を掲載したガイドブックを作成し配布するとともに、東京味わいフェスタや東京都食育フェアなど、実際に農産物を味わえるイベントを開催しております。
 また、販路開拓に向けましては、昨年四月、南新宿に開設されたJA東京アグリパークで行われる生産者と飲食店のマッチングや、生産者と消費者の体験交流会などを支援しております。
 さらに、今年度から、農地のない区部の学校給食に都内産農産物を供給する事業を開始するなど、地産地消の一層の拡大に取り組んでおります。

○のがみ委員 地産地消を進める上で、都内産食材を使用する飲食店ガイドブックの発行や、学校給食に都内産農産物を供給する取り組みは大変有効だと思います。今後もぜひ継続していただくようお願いいたします。
 地産地消を私たちの生活の中に定着させていくためには、次代を担う子供たちが都内産農作物を食べる機会をふやし、そのおいしさを知ってもらい、また食べたいと思ってもらえることも重要だと思っております。
 私は、昨年十一月の事務事業質疑において、農地のない区部の学校給食に都内産農作物を供給する事業の取り組み状況について質問し、その際、新宿区と江東区の二区をモデル地区として、学校給食への都内産農作物の供給を開始したと伺いましたが、これまでの実績と今後の展開についてお伺いいたします。

○武田安全安心・地産地消推進担当部長 本事業は、モデル地区ごとにJA東京中央会、栄養士、給食納品業者等で構成する地区協議会を設置して、出荷品目や配送方法などを決定し、多摩地域の農産物を供給するものでございます。
 新宿区では四月から事業を開始し、本年二月末までに、小中学校二十四校に対し、十八種類の農産物を計四・三トン供給し、十一月から供給を開始いたしました江東区では、二月末までに小中学校十一校に対し、九種類の農産物を計二・五トン供給いたしました。
 現在、両区では、都内産農産物を週一回、定期的に学校給食で使用しております。
 来年度は新たに中野区、台東区をモデル地区に指定し、今年度の実績を踏まえ、これらの区の実情に応じた供給体制を構築することで、さらなる地産地消の拡大を図ってまいります。

○のがみ委員 この制度、学校給食の円滑な供給に向けて、関係者間での協議など大変ご苦労をされると思います。ぜひ、そうした知見を積み重ねながら、農地のない区の学校給食に、さらに導入が進むことを期待しております。
 最後に、企業主導型保育施設の共同利用促進について質問をさせていただきます。
 子育てと仕事の両立を支援し、女性の活躍を推進していくためには、多様な保育サービスの提供が不可欠であります。行政だけでなく、企業も含め社会全体で取り組んでいく必要がございます。
 中でも、国が推進する企業主導型保育施設は、従業員の就業スタイルに応じた柔軟なサービスの利用ができます。複数の企業の従業員や地域に住む方も利用できる有意義な施設であることから、我が党も設置を促進してきました。
 一方で、企業主導型保育施設を運営する企業の立場からすれば、利用者が安心して預けられる施設として安定した運営を続けるためには、定員を満たす利用者の確保が前提となります。個別の中小企業が単独で利用者を確保することや、保育施設を共同利用する企業を探すことは非常に難しいと考えます。
 待機児童解消に向け、選択肢の一つである企業主導型保育施設の設置をより一層促進するとともに、企業による保育施設の共同利用を視野に入れた支援が必要であると考えますけれども、都の取り組みについてお伺いいたします。

○蓮沼事業推進担当部長 都は、企業主導型保育施設の設置促進を図るため、設置を検討する企業に対し、国の助成制度や設置基準等に関する相談窓口を昨年五月に開設し、ことし二月末現在、五百件を超える相談に応じております。
 また、保育施設の開設時に必要となる備品等の購入経費に対する助成制度に関しましては、既に予定していた百件を超える申請があることから、来年度は、助成規模を百六十件に拡大いたします。
 さらに、都内の受け入れ枠にあきのある企業主導型保育施設について、施設概要やあき状況などをウエブサイトで広く情報発信することで、保育を必要とする従業員を抱える他企業からの共同利用を募り、安定した施設運営を図るように後押ししてまいります。
 引き続き、企業の保育施設設置に対する不安を解消し、積極的な開設を促すとともに、都内保育施設の有効活用を図ってまいります。

○のがみ委員 保育サービスの選択肢の一つとして、企業主導型保育施設への期待が高まっております。子育て中の女性が安心して働けるよう、企業主導型の設置の促進と有効活用に向けた支援にしっかりと取り組んでいただけますよう要望して、終わります。
 以上でございます。

○伊藤委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十五分休憩

   午後三時三十二分開議

○伊藤委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○尾崎委員 最初に、中小企業支援についてです。
 私は二十三年間、中小業者の営業と暮らしを守る運動に携わってきました。ふだんは無口な職人肌の経営者ですが、自分の商売や技術について語るとき、別人のように輝いている姿を見てきました。自分の技術、商売に誇りを持っていますが、売り上げが減って商売が大変になり、将来の見通しが見えなくなると、商売は自分の代で終わりにする、子供たちに商売を継いでほしいとはいえないとの声が多数になってきました。
 商売を続けたくても続けられず、すばらしい技術を持っていてもやむなく廃業した人を見て、悔しい思いをしてきました。
 東京の経済を支えているのは、中小企業です。そして、その中小企業の中でも、ほとんどが小規模企業です。小規模企業白書でも明らかですが、経営者の高齢化と後継者がいないことが大きな課題になってきています。
 国や東京都も事業承継に力を入れてきたことは大変重要だと思います。地域の信用金庫なども、事業承継への支援を行っています。しかし、なかなか進まないということも聞いてきました。
 私は先日、事業承継を支援している東京都中小企業振興公社を訪問して、取り組み状況などを伺いました。
 そこで、改めて中小企業、とりわけ小規模企業では、経営者の高齢化や後継者がいないことによる廃業がふえています。事業承継への支援は大変重要なものですが、この間の取り組み状況、相談員の体制などについて伺います。

○坂本商工部長 これまで都は、巡回相談員が会社を訪問し、経営の承継が必要な場合に、専門の窓口につなぎ、相談対応を行ってまいりました。
 今年度は、巡回をする相談員三名でさまざまな会社に出向いてきたところでございます。

○尾崎委員 会社を訪問し、相談に乗ることは大変重要だと思います。決算の数字だけでなく、どんな地域で、どんな機械を使い、どんな従業員とともに仕事をしているのかを実際に見ながら、課題を明らかにし、共有する。そして、改善策を一緒に考え、事業承継の計画を持ち、実現のために支援をしていくことは、やはり時間がかかります。粘り強い支援が求められると思います。
 事業承継・再生支援事業の相談件数、セミナーの開催数、参加者、事業承継計画の実行などの実績について伺います。

○坂本商工部長 中小企業振興公社で実施をしている事業承継・再生支援事業におきましては、今年度は、二月末までに二百三十九社から相談を受けるほか、事業承継に向けた計画をつくり、その実行などに取り組む二十三社へのサポートを行ってまいりました。
 また、今年度の同事業におきましては、事業承継等の知識を提供するセミナーを十回開きまして、四百七十四名が参加をしております。

○尾崎委員 振興公社の担当者の方から、事業承継は事業の再生と混在していると聞きました。現在の経営をどう改善するか、課題を解消しながら事業承継をスムーズに進めることがいかに大事なのかを学びました。
 振興公社の方の話だと、一年間で事業承継が実現したのは六件であり、全てが親族によるものだということでした。
 私は、経営改善と同時に、小規模企業の経営者の経営理念を明確にすることだと思っています。
 私が出会った大正二年創業の豆腐屋さんの話が忘れられません。
 この方は、国産大豆にこだわり、お客さんの健康に貢献したいという経営理念を持っています。国産大豆へのこだわりは、日本の農業を守りたいから、将来は東京の農家の方々と連携し、東京産大豆の豆腐をつくりたいということを語っていました。
 従業員には宿舎をつくり、豆腐屋としての独立を支援し、同じ経営理念で頑張る仲間をつくってきました。
 商売のことは、子供が小さいときから家族でよく話し合うことを努力してきたそうです。その結果、息子さんがお店を継ぐことで、今、一緒に商売に励んでいます。
 私は、経営者としての経営理念や社会貢献などの目標をしっかり持って努力することが必要だと痛感しました。そのためにも経営環境の改善が強く求められています。
 この二十年間で、中小企業の経営者の平均年齢は四十七歳から六十六歳になってきたということです。そして、今後、七十歳以上の経営者が三十万人になるということを聞きました。まさに、事業承継問題は待ったなしの課題です。
 事業承継問題は今後、要望がふえてくると思います。誰に相談したらいいのかなど悩んでいる経営者に早く相談するよう促すためにも、事例の紹介が鍵になると思います。そのためにもPRに力を入れるべきだと考えます。
 都の取り組み状況について伺います。

○坂本商工部長 都では、事業承継に関するさまざまな知識を中小企業に提供するために講演会を開催するほか、金融機関の主催する研修会などに専門家を派遣する出張セミナーを行っております。
 こうした機会に事業承継の事例を紹介するとともに、専用のウエブサイトからも情報の発信を行っているところでございます。

○尾崎委員 事例の紹介はしているということでした。今後も事例紹介が重要になると思います。東京都のホームページで中小企業支援、事業承継の支援メニューをわかりやすく掲載するよう、工夫を求めるものです。
 国会では、事業承継を進めるために、相続税について改正を行うことになったようです。
 しかし、事業承継を考えている経営者は、税金だけではなく、融資の返済額や保証人の問題も大きな課題だと考えています。特に小規模企業の経営者は、借金まで引き継がせるわけにはいかない、自分が借りた借金は自分で責任を持たなければという強い思いがあります。
 会社として融資してもらうわけですから、会社の経営状況や取引状況など、会社そのものを信用して、融資を実行するのかどうかの判断をするわけです。制度融資で企業が借り入れる場合、今、会社経営者代表が個人保証をする仕組みになっています。事業承継しようと考えたときに、負債を引き継がせたくないと思うのは当然のことだと思います。
 国では、相続税の問題では改正が予定されています。制度融資での会社経営者代表の個人保証はなくすべきだと思いますが、いかがですか。国に改善を求める意見を上げるよう求めておきますが、いかがでしょうか。

○加藤金融部長 制度融資におきましては、円滑な資金調達の実現に向け、中小企業の信用力を補完するために、信用保証協会が保証承諾を行うに当たり、必要に応じ経営者からの保証を受けることとしております。
 一方、国の信用補完制度の見直しでは、過度に個人保証に依存しない融資を推進するために、担保による保全が見込まれるなど、一定の要件に該当する場合は、経営者保証を不要とする運用を行うこととされており、都はこれを受け、今後、制度融資全般において適用してまいります。
 また、喫緊の課題であります事業承継を後押ししていくため、都は来年度、事業承継融資において、純資産額や自己資本比率などの一定の財務要件を満たした場合、経営者の個人保証を不要とする特例メニューを新設いたします。
 引き続き、国の動向などを注視しつつ、適切に対応してまいります。

○尾崎委員 ただいまのご答弁で、来年度、事業承継融資において、一定の財務要件を満たした場合、経営者の個人保証を不要とする特例を新設することは大変重要です。国の動向などを注視しつつ適切に対応していくというご答弁でしたが、都として積極的に働きかけていただくよう強く要望するものです。
 東京の経済を支えるためには、中小企業が抱える問題を解決するための支援が必要です。これ以上、小規模企業を減少させないために、実態や要望などを直接聞き取りするなど、実態調査を行いながら、施策の充実を求めるものです。
 私は、大好きな商売が続けられるように支援することと同時に、新たに自分で商売を始める創業への支援が大きな柱になると考え、この間も一貫して起業、創業支援の問題を取り上げてきました。
 昨年十二月にスタートした自由が丘のチャレンジショップについて伺います。
 私は先日、チャレンジショップを見学し、三人の経営者の方々にもお話を伺いました。商店会にも加入し、新年会などで交流したことが勉強になったと話してくれました。
 自由が丘にチャレンジショップが開設されましたけれども、現在、三店舗で、専門家の派遣も行っているということです。専門家の訪問は何回行っているのか、また、どのような支援をしているのか伺います。

○坂本商工部長 チャレンジショップに入居している三つの店舗に対して、経営をサポートするため、専門家が現地に出向いて十回のアドバイスを行っております。
 これによりまして、集客に役立つ宣伝やイベント開催の方法のほか、売り上げの増加につながる店内のレイアウトなどに関し助言をしております。

○尾崎委員 チャレンジショップの三人の若い経営者の方々は、初めて店舗を借りて本格的に経営をしていく上で、専門家の助言は適切なもので勉強になっていると感想を語っていました。
 しかし、経理や税金の問題のように専門的なものは、理解が容易でないものもあるとのことでした。専門家派遣とあわせて、セミナーなどの研修への参加への支援も行うべきだと思います。
 チャレンジショップの出店期間は六カ月間です。希望があれば、さらに六カ月間継続が可能であり、最長で一年間ということです。
 私は、商売は、三年継続してやることで今後の方向を見きわめることができると思っています。六カ月では短く、一年でようやく商売の年のサイクルがわかるようになります。地域の様子がわかり、商店街の皆さんとも交流ができるようになるためにも、一定の時間が必要です。
 品川区では、入居期間は一年以内ですが、二回まで更新可能となっています。
 都のチャレンジショップの入居期間の見直しを求めますが、いかがですか。

○坂本商工部長 チャレンジショップは、女性や若者が企画力を生かし、商店街で販売や経営の経験を積むほか、地域などで将来のリーダーとして活躍する力を身につける上で適切な期間入居する機会を提供しているところでございます。
 これは、チャレンジショップで学んだノウハウを生かして、その入居者が、今後に向けて都内のさまざまな商店街で出店をして力を発揮することを目的としているものでございます。

○尾崎委員 出店している経営者の考えや業種によって、入居期間は短くてもいいと考えている人もいると思います。しかし、希望があれば、もう少し支援できる期間を延ばしてもいいのではないでしょうか。できれば品川区のように、入居期間は一年以内とし、二回まで更新可能となるよう検討することを求めるものです。
 チャレンジショップで商売を始めた人たちは、商売をやってみて、自由が丘の客層がわかり、新しい常連のお客さんができ始めた。一カ月の収入が固定してきて、必要経費も見えてきた。チャレンジショップを卒業して新しい店舗に独立したら、今の売り上げを倍に伸ばさないと維持できないことがわかった。しかし、売り上げを伸ばせるのかどうかなど不安の声も寄せられました。チャレンジショップを経験し自分の店を開業するときに、チャレンジショップのそばに店舗を持ちたいと思っても、家賃が高いために不安があるという声もありました。
 自分の店舗を構えるときこそ手厚い支援が必要だと思います。相談体制などの充実が求められると思いますが、いかがでしょうか。

○坂本商工部長 チャレンジショップで学んだノウハウを活用して、その入居者が具体的な出店を目指す場合には、開業場所に関する相談など、さまざまなサポートを行う仕組みとしているところでございます。
 また、チャレンジショップの入居実績のある事業者を含めまして、出店に必要となる経費の一部に助成を行う制度も実施しているところでございます。

○尾崎委員 ぜひ支援の拡充も検討していただきたいと思います。
 私は以前、群馬県や高知県のチャレンジショップの見学をしたことがあります。
 高知県は、商店街空き店舗活用のほかに、二〇一二年三月から三カ所でチャレンジショップをスタートしました。今では県内十カ所でチャレンジショップに取り組んでいます。
 この間、四十六組がチャレンジショップを卒業して、半数を超える二十六組が開業したといいます。県の担当者は、チャレンジショップに取り組み、個店の強さ、魅力を強めてほしいといっていました。
 私は、商店会の活性化に向けて、空き店舗対策と同時にチャレンジショップを都がスタートしたことは大変重要だと思います。チャレンジショップ、創の実は自由が丘だけですが、今後ふやしていくのでしょうか。少なくても多摩地域にも必要だと思いますが、いかがですか。

○坂本商工部長 来年度、若者や女性が企画力を生かし、商店街で販売や経営の経験を積むことのできるチャレンジショップを新たに多摩地域にも開設いたします。

○尾崎委員 ただいまのご答弁で、チャレンジショップを新たに多摩地域にも開設するということがわかりました。大変重要だと思いますので、支援の拡充を求めるものです。
 中小企業、とりわけ小規模企業への支援策で重要だと思うのは、商売を続けるための支援、廃業しないで済むようにする支援、そして新しく商売をしたいと思っている人への支援が私は重要だと思います。
 早稲田大学人間科学学術院教授橋本健二氏の本では、新・日本の階級社会というのがありますが、各階層の特徴について述べている本です。
 中小零細業者は、自分の仕事の内容やペースを自分で決めることができる、職場全体の仕事のやり方に自分の意見を反映させることができるの二つの項目で、労働のあり方を自分で決め、交渉に関する労働を担うことができるからこそ、自分の能力を発揮することができる。また、経験もほかの階層よりも生かすことができる。必ずしも事業に成功し豊かになれるという確信がないにもかかわらず、あえて被雇用者の職を捨て、独立開業の道を選ぶ人が少なくない理由がよくわかると述べています。
 私は、この本を読んで改めて中小企業、小規模企業のすばらしさを考えさせられ、商売を始めよう、起業しようと思っている人への支援を、都としてももっと多面的に支援すべきだと思いました。
 来年度予算案でも創業、起業家への支援は拡充されていますが、さらなる拡充を求めるものです。
 次に、来年度予算案に多摩地域雇用就業支援拠点、仮称ですが、これの整備が盛り込まれました。
 多摩地域には、かつて労働相談情報センターは立川市、三鷹市、町田市にもありましたが、次々と廃止され、現在は国分寺市と八王子市の二カ所です。住民の皆さんからは、まだ使える施設であり、なくてはならない役割を果たしている、国分寺、八王子の労政会館を引き続き残してほしいとの要望が出ています。
 立川市に新しくつくっても、多摩地域の労働者数から見て、立川の一カ所では不十分ではありませんか。国分寺、八王子の二つの事務所も残すべきですが、いかがですか。

○小金井雇用就業部長 労働相談情報センター国分寺事務所と八王子事務所は、いずれも建築から約四十年が経過し、施設の老朽化が著しいことから、交通利便性の高い立川に移転、統合することとしております。
 二つの事務所の統合により、職員のマンパワーを集約することで、夜間相談の拡充に加え、これまで多摩地域で実施していなかった土曜相談や、地元自治体の要望等を踏まえた出張労働相談についても実施を検討してまいります。スケールメリットを生かした労働相談等の事業展開を図るものでございます。

○尾崎委員 ただいまのご答弁で、土曜相談、出張相談などの実施が検討されていることは重要ですが、現在の八王子労政会館は、会議室のほかに、スポーツができるホールや食堂もあります。
 国分寺と八王子の労政会館は、労働相談はもちろんですが、地域の活動をしている人たちや団体からも、会議などでも利用者が多く、労働者の活動の拠点になっており、残してほしいという声がたくさんあります。
 もし国分寺や八王子事務所がなくなれば、多摩地域の人たちは立川まで行かなければ労働相談ができなくなります。今まで自転車や歩いて相談に行けた人たちが、電車やバスに乗って行かなければなりません。相談したいと思っても気軽に行けない距離になれば、泣き寝入りせざるを得ない労働者がふえてしまいます。
 住民の要望に耳を傾けていただき、ぜひ残していただけるようお願いをするものです。
 次に、ネットカフェ難民の実態調査にかかわって幾つか伺います。
 東京都の福祉保健局は、ネットカフェ難民の実態調査をまとめました。
 この中で重要だと思ったのは、住居を喪失するに至った理由として、仕事をやめて家賃などを払えなくなった、なりそうなためと答えたのが、全体で三二・九%です。不安定就労者では三三・七%と高く、正社員でも二六・七%と高いことでした。しかも、仕事をやめて寮や住み込み先を出た、出ることになりそうなためと答えたのは、不安定就労者の二一・六%となっています。仕事がなくなれば住居を失う可能性が大きいことを示しています。
 産労局として、ネットカフェ難民の実態調査を分析し、今後の施策に生かすべきです。この調査結果については、どのように受けとめているのか伺います。

○蓮沼事業推進担当部長 調査報告書の中では、住居喪失者が求職活動をする上の問題点として、履歴書に書く住所がないといったことが挙げられております。
 仕事と住居を失い、求職活動が困難になるという負のスパイラルに陥らないよう、都は、しごとセンターにおいて、きめ細やかなキャリアカウンセリングや短期の就職を目指すセミナーなどにより、離職後なるべく早期に再就職できるよう支援しているところでございます。

○尾崎委員 離職後なるべく早期に再就職できるよう支援していくとのご答弁でした。
 でも、今回の実態調査で、再就職したくてもできない人たちの実態が明らかになったわけです。支援事業の検証を行い、支援の拡充が求められるのではないでしょうか。
 ネットカフェ難民の実態調査から、非正規雇用者の貧困実態が明らかになりました。貧困をなくす上でも、非正規雇用をなくすことが必要だと思います。
 非正規雇用から正規雇用への転換が大変重要な施策となりますが、認識を伺います。

○蓮沼事業推進担当部長 不本意ながら非正規で雇用されている方を正規雇用に転換し、その意欲と能力を生かすことは、東京の産業の発展に向けても重要であります。
 このため、平成二十七年度からの三年間で一万五千人を目標に、非正規労働者の正規雇用化に取り組んできたところでございます。

○尾崎委員 ただいまのご答弁のように、東京都は、非正規労働者の正規化促進等に取り組んできました。三年間で一万五千人の目標で取り組み、目標を超過しました。目標を達成したことは重要ですが、まだまだ支援が必要です。
 しかし、三年間取り組んできた正規雇用等転換促進助成事業は終了になります。今回の調査の結果を正面から受けとめ、非正規労働者の正規化を進めるための支援は引き続き行うべきであり、強く要望するものです。
 ネットカフェ難民の実態調査で、悩み事などを相談できる人はいないと回答したのが四一・三%で、そのうち、正社員は一二・五%なのに不安定就労者は四二・八%と三・四倍以上になっています。今一番困っていることを自由に回答してもらうと、仕事に関することが非常に多く挙げられたということです。
 現在でも労働相談や街頭相談会などを開催していますが、街頭相談会などの開催場所や時間なども工夫して拡充することが求められているのだと思いますが、いかがですか。

○小金井雇用就業部長 都は、電話相談の窓口となります東京都ろうどう一一〇番を開設し、労働問題全般に関する相談に応じております。
 相談時間は、平日午前九時から午後八時まで、土曜日は午後五時までと、働いている方でも相談しやすい時間に設定しており、希望に応じて夜間や土曜日の来所相談も受け付けるなど、きめ細かく対応しているところでございます。
 また、都内六カ所に設置されました労働相談情報センターが実施する街頭労働相談は、気軽に相談していただけるよう、乗降客の多い駅構内や区市が開催するイベントなど、人が多く集まる場所において実施しているところでございます。

○尾崎委員 ただいまのご答弁のように、電話相談、夜間の相談、土曜日の相談、街頭相談などに取り組んでいることは重要です。
 しかし、実態調査でも明らかになったように、どこにも相談したことがないが全体で三七・七%です。不安定就労者の中では四二・一%もどこにも相談したことがないと答えているんです。労働相談情報センターのことや相談体制があることさえも知らない人が多いということです。
 ネットカフェ難民の実態調査の結果について、産業労働局としても十分な分析を行い、今後の施策に生かしていただきたいと思います。
 次に、働き方改革推進事業について伺います。
 企業が社内で取り組みを進め、働き方改革宣言を行い、就業規則を改正し、働き方や休み方の改善に取り組む企業への支援を行う事業ですが、このTOKYO働き方改革宣言企業の実績について伺います。

○小金井雇用就業部長 昨年度における働き方改革宣言企業数は千三社でございます。
 今年度も昨年度並みの申請がございまして、二月末日現在で三百三十二社の審査が終了しているところでございます。

○尾崎委員 働き方改革宣言企業に承認された企業の中には、三六協定で時間外労働の上限を一カ月八十時間と定めている企業もありました。過労死ラインの八十時間の残業時間を認めているような企業です。
 東京都が働き方改革宣言企業として承認していいのでしょうか、いかがですか。

○小金井雇用就業部長 宣言企業とは、従業員の長時間労働の削減及び年次有給休暇等の取得促進のため、二、三年後の目標及び取り組み内容を定め、宣言を行い、全社的に取り組む企業等であり、それを都が承認しているところでございます。
 本制度により、働き方改革を目指す企業が、将来に向けて、それぞれの状況に応じた働き方の見直しに踏み出すことができるよう後押ししているところでございます。

○尾崎委員 働き方の改革を目指す企業で、将来に向けて、それぞれの状況に応じた働き方の見直しに踏み出すことができるよう、東京都は後押しするんだということです。
 そうであるならば、都が承認する際に三六協定も含めて審査を行うべきだと思いますが、いかがですか。

○小金井雇用就業部長 本制度では、企業が社内の現状と課題の分析を踏まえて、みずから適切と考える目標と取り組み内容を設定し、それを都が審査、承認する仕組みになっております。
 審査に際しましては、過去五年間に重大な法令違反等がないことなど、宣言企業として最低限遵守するべき事項について誓約書を提出いただいているところでございます。三六協定の遵守も、この誓約書の項目の一つとなっているところでございます。
 あわせて、誓約した内容に虚偽や不正があった場合は申請を取り下げる仕組みにすることで、企業の信用を担保しております。

○尾崎委員 私は、昨年の経済・港湾委員会でも、この働き方改革推進事業について質問しました。
 今回も、働き方改革宣言書、事業計画書兼交付申請書、働き方改革宣言事業の取り組み状況を情報開示しました。宣言や目標、働き方改革、休み方の改善、取り組み内容などを記入することになっていますが、漠然とした内容ばかりで、具体的な目標が余り書かれていませんでした。そして、肝心なこれまでの実態も書かれていないんです。
 しかも、働き方改革宣言事業の取り組み状況について、働き方、休み方改善の指標により抽出した問題点と原因の分析内容及び対策の方法、設定した目標及び取り組み内容、取り組みの成果については黒塗りになっています。
 私は、昨年の経済・港湾委員会でも、働き方改革宣言企業は前事業年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得対象者数、男女別取得者数、役員、管理職の女性割合などを公表すべきだと質問しました。
 そのとき、働き方改革宣言企業制度は、長時間労働の削減や休暇の取得促進に向けて、より多くの企業の現状を改善するために、自発的な取り組みを促すことを目的とするものであり、宣言内容と今後の取り組み内容を公表すると答弁されました。
 そこで、取り組み内容を公表するということでしたけれども、何をどう公表しているのか伺います。

○小金井雇用就業部長 本制度は、企業が社内の現状と課題の分析を踏まえて、みずから適切と考える目標と取り組み内容を設定し、企業が自律的に取り組むものでございます。
 なお、本制度では、専用ポータルサイトにより、広く外部にも宣言内容を公表するなど、取り組みの実効性を高める仕組みとなっております。
 また、宣言後、社会保険労務士などの専門家が全社を訪問し、取り組み状況の確認や今後の進め方について助言を行い、その結果を都に報告することになっております。

○尾崎委員 取り組み内容を公表するということは、目標を掲げ、それがどういうふうに変化をつくり、目標達成に向けてどんな取り組みと成果があるのか、ここを明らかにすべきじゃないかと私は思っています。
 宣言企業として都の税金で奨励金や助成金が投入されているわけですから、せめてどのような取り組みで成果が生まれているのかは公開すべきだと思います。情報開示の際には黒塗りを取り除くべきだと厳しく指摘をしておきます。
 次に、農業支援について伺います。
 東京都は、昨年五月に東京農業振興プランを策定し、そのプランの具体的な実施のための施策が来年度予算案に盛り込まれているのだと思います。
 資料要求して出していただいた資料でも明らかですが、この十年間で千十ヘクタールも農地は減少しています。今後の大きな課題は、農地の保全と農業の担い手をふやすことだと思います。
 そこで、この間の担い手育成支援などの実績について伺います。

○藤田農林水産部長 農家の子弟を主な対象とした、フレッシュ&Uターン農業後継者セミナーの平成二十八年から二十九年にかけ実施しました第十二期の実績は、受講生が百十八名で、うち修了生が九十八名でございます。
 また、農外からの新規参入者を主な対象とした、指導農業士等による研修の平成二十九年度実績は、二月末現在で、農業体験研修五回、農業技術研修一回でございます。

○尾崎委員 ただいまのご答弁で、フレッシュ&Uターン農業後継者セミナーの受講生のうち、修了したのが九十八人ということでした。大変重要な取り組みだと思います。
 私は、二月に行われたJA東京青壮年組織協議会の六十年史発刊記念式典に参加をしました。六十年史の表紙を飾っているのは、青年農業者の皆さんでした。カッコイイでしょ東京の農家がスローガンです。生き生きとした表情が印象的でした。
 農業も商売と同じで、自分のやりがいとなるすばらしいものだと思います。農業の魅力を広く伝えることや、仲間とともに学び成長できる講座や体験が、農業者の育成に大きな役割を果たしていると思います。セミナーを修了しても交流できるように工夫していただきたいと思います。
 農地保全の点では、来年度予算案に、農地の買い取り申し出のあった生産緑地を活用し、シニア向けセミナー農園整備事業が盛り込まれたことは重要です。
 そこで、この来年度予算案の新規事業であるシニア向けセミナー農園整備事業がシニア向けと位置づけられた理由について伺います。

○藤田農林水産部長 超高齢社会が進展する中、元気な高齢者が農作業に親しむとともに、地域住民と交流するコミュニティの場として農地を新たに活用していくことは、その保全を図る上で効果的であると考えております。
 そこで、都は来年度、農地の保全と高齢者の活躍促進に向けた地域モデルを確立するため、シニア向けセミナー農園整備事業を開始することといたしました。

○尾崎委員 私の周りでも、定年後は農業をやってみたい、土いじりがしたいという人もたくさんいます。今、若い人や四十代でも、病気になって仕事をやめたりひきこもりになっている人がふえています。自分が育てた野菜を収穫し食べることで、生きる意欲が湧いてきます。生き方が変わるきっかけにもなります。シニアの人だけでなく、もっと広い人たちが参加できるように、ぜひ拡充していただきたいと思います。
 農家の皆さんからは、農業用施設や屋敷林などに関する固定資産税の軽減をしてほしいとの要望が強くなっています。
 日本共産党都議団は一貫して、都の判断でできる固定資産税の軽減について、早急に検討することを求めてきました。二十三区は一括して都が固定資産税を計算し、課税、徴収します。しかし、市町村はそれぞれの自治体が所管することになります。我が党は、固定資産税の軽減をした場合、市町村が減収になる分は都が市町村に支援を行うことを提案しています。
 今回、改めて議会局調査もお願いして、区市町村の農地にかかわる税額がどのくらいになるのかを調査しました。市街化区域農地を生産緑地並みの固定資産税にするために、都が支援する区市町村への支援は約三十一億円あれば実現できることがわかりました。
 ぜひ、都が決断できる固定資産税の軽減の実施に向けて、早急に関係局との協議、検討を進めていただくことを強く求めて、質問を終わります。

○鈴木(邦)委員 私からは、観光振興、商店街支援、そして農業振興の三点について質問いたします。
 初めに、観光振興について伺います。
 世界の観光産業は高い成長率を保ち続けており、今や世界のGDP総額の一〇%を突破しております。既に世界経済における観光産業は、エネルギー、化学製品に次ぐ第三の基幹産業という位置づけです。さらに、国連の世界観光機関の試算では、二〇三〇年までの観光産業の年間成長率を三・三%と見込んでおり、今後も着実に成長する産業として期待されます。
 ここ東京でも、外国人旅行者数がこの十年間で約二・七倍に増加し、二〇一六年には過去最高の約千三百十万人に達しました。
 都は、二〇二〇年までの二千五百万人、二〇二四年までに三千万人の訪都外国人の目標を掲げています。一方で、訪都外国人一人当たりの消費額を見てみると、近年は減少に転じており、二〇一三年と同水準にとどまっております。
 冒頭に申し上げました、観光産業の高い成長力を東京の経済全体の活力につなげるため、今後さらに注力すべきは、観光客一人当たりの消費額の向上です。訪都外国人一人当たりの消費額は二〇一六年で八・三万円となっており、世界の観光都市と比較すれば、まだまだ向上の余地があります。
 そこで、東京都観光産業振興実行プラン二〇一八では、訪都外国人旅行者数の目標値とともに消費額の目標も掲げていますが、この消費額を達成するために、都は今後どのように取り組んでいくのか伺います。

○小沼観光部長 訪都外国人消費額の目標達成には、観光消費拡大の観点から、さまざまな施策を展開することが重要でございます。
 このため、例えば欧米地域から富裕な旅行者を誘致するため、富裕層向け旅行商談会に出展するなど効果的なプロモーションを展開してまいります。
 また、外国人旅行者が買い物をしやすい環境を整備するため、免税店の拡大に向けた取り組みや外国人旅行者へのきめの細かいサービスを提供いたします。
 さらに、夜の時間帯の観光を充実させることでさらなる旅行者を呼び込むため、ナイトライフ観光を推進してまいります。
 こうした取り組みを複合的に展開し、さらなる消費拡大に向け、さまざまな施策を着実に進めてまいります。

○鈴木(邦)委員 観光客一人当たりの消費額を高めるための施策は幾つかありますけれども、その中でも、この富裕層へのアプローチが特に重要だと私は考えています。
 しかし、こちらが富裕層に来てもらいたいと考えても、富裕層にふさわしい宿泊施設がなければ、彼らは東京には来ません。富裕層の取り込みを考えるならば、高級な宿泊施設の整備は、プロモーションや観光資源の開発に先立つ前提といっても過言ではありません。
 現在、都内の客室稼働率は高水準で推移していますが、高級な宿泊施設はさらに不足しています。日本には、例えば五つ星ホテルが二〇一六年時点で二十八軒あるものの、これは主要観光立国の五分の一程度、アメリカと比較すれば実に二十七分の一程度です。
 五つ星ホテルの数とその国の観光収入との間には、九一・一%という高い相関係数が見られます。これは、観光客の消費額のうち、宿泊費が二五%もの割合を占めるからだと考えられます。
 繰り返しになりますが、消費額を上げるためには客単価を上げていく必要があります。そのためには富裕な旅行者を誘致していく必要がありますが、東京にはそうした旅行者が泊まれる宿泊施設が不足しています。
 こうした中、都は、富裕な旅行者の誘致に向け、今後どのように取り組んでいくのか伺います。

○小沼観光部長 海外から富裕な旅行者層が東京を訪れることは、滞在中に多くの消費が期待でき、都内経済が活性化するとともに、自国での強い発信力により、東京のイメージの向上にもつながります。
 そのため、都は、欧米地域で富裕層向け旅行雑誌に特集記事を掲載するほか、文化人や財界人を招待したイベントで旅行地としての東京の魅力をアピールするなど、富裕層の誘致に取り組んでおります。
 また、来年度は、富裕層向け旅行商品を開発する事業者等から成る国際的ネットワークを活用した誘致を行います。
 さらに、高級ホテルの都内への進出に必要な条件や国内外の他都市における取り組み事例等について調査をし、富裕な旅行者層の受け入れ環境の整備に向けた検討につなげてまいります。
 これらにより、さらなる訪都外国人旅行者の増加やインバウンド消費の拡大に結びつけてまいります。

○鈴木(邦)委員 ただいまご答弁いただきましたように、ぜひ今後は富裕な旅行者層の受け入れ環境の整備に向けて、多くの施策をご検討いただきたいと思います。
 観光消費額を高めるために、もう一つ重要な視点は、観光客の滞在日数の長期化です。そうした意味でも、自然を使った体験観光には高いポテンシャルがあります。自然体験では滞在時間の長いものが比較的簡単につくれるので、宿泊日数が延び、観光消費額がふえるのです。
 余談ですが、自然観光は、経済的恩恵だけではなく、社会課題の解決につながる可能性も秘めております。例えば、現在日本では獣害が非常に大きな問題になっています。鹿、猿、イノシシなどが山から麓におりてきて、農作物を食い荒らすことで農家の方々に莫大な被害が出ており、その額は年間二百億円にも上ります。こうした課題に対して、自然観光の一環としてハンティングツーリズムを振興することも検討の余地があります。
 滞在日数の長期化を目的とした自然観光の振興に話を戻します。
 都民と海外市民を対象に都が実施したウエブアンケート調査によると、外国人が東京で体験したいことの中で、都民が気づいていない分野に、やはり自然、まち歩き、ナイトライフ、そして夜景があります。
 そこで、都は、多摩・島しょの豊かな自然という観光資源をどう活用して観光振興を図っていくのか伺います。

○小沼観光部長 都は、多摩・島しょ地域の豊かな自然を観光面で生かすため、多摩の森林の散策ルートのPRや、ルートの途中に眺めのよい広場を設ける取り組みなどを進めております。
 また、今年度から新たに、自然公園エリアを活用し観光ルートを開発するため、渓谷や野鳥などの観察、島しょの火山をテーマにしたジオパークなどをガイドとめぐるモニターツアーを実施いたしました。参加者には好評だったものの、より地域の特色を生かしたルートの開発などが課題として挙げられました。
 来年度は、こうした課題に対応するよう、新たに地域に専門家を派遣して、観光資源の掘り起こしや磨き上げを支援するとともに、開発したルートをウエブサイトで紹介し、個人旅行者の訪問やツアー商品の造成を促してまいります。
 さらに、多摩・島しょ全域を対象に、豊かな自然と地元の食や文化体験等を堪能するグランピングなど、新たな体験、交流型の施設の整備に取り組む民間事業者等を支援してまいります。
 こうした取り組みにより、多摩・島しょ地域の豊かな自然を活用した観光振興を着実に進めてまいります。

○鈴木(邦)委員 東京都として全体の観光戦略を描き、政策投資にめり張りをつけていくことは大変重要です。
 一方で、各地域の観光資源の開発や設計は、地域のプレーヤーに多くを任されているのが現状であります。
 私は、今回の質疑に当たりまして、地元の観光協会や商工会議所の取り組みを伺い、実際に多くのイベントに足を運んでまいりました。地域の観光振興に向けて努力を重ねられているものの、定期的なイベントの運営にかなりのリソースを割かれているのが実情であります。特に、日本人旅行客ならばともかく、外国人旅行客の視点に立った観光資源の開発やまちづくりに地域の方々だけで取り組むのは、なかなか難しいように感じます。
 観光庁では、日本版DMOを推進しておりますが、地域の多様な関係者を巻き込み、地域の力を発揮して観光振興を進めていくためには、各地域の観光協会などの取り組みを支える専門人材が必要です。
 そこで、都は、地域の観光協会などに対してどのような支援を行うのか伺います。

○小沼観光部長 都は、観光協会等が地域の特性を生かした観光振興に取り組めるよう、人材育成のための研修会を実施するとともに、地域のすぐれた取り組み等の情報交換や、地域間の交流を促すフォーラムを実施しております。
 また、ガイドの育成などテーマに応じた専門家を派遣し、その助言を受けた計画に対して助成を行っております。
 来年度からは、地域のニーズに合った専門家の情報を観光協会がウエブサイト等で容易に検索できるよう、専門家の登録制度を整備いたします。
 また、観光資源の掘り起こしとPRの手法など、協会が抱えるさまざまな課題にきめ細かく対応できるよう、各分野の専門家をチームとして派遣いたします。
 さらに、さまざまな支援を調整するための総合窓口を設置し、地域の観光振興の活性化を図ってまいります。

○鈴木(邦)委員 私は、DMOという形に必ずしもこだわっているわけではありませんが、観光地経営の視点に立った観光地域づくりを進めていくことは重要だと考えています。
 特に、DMOが担うとされる各種データなどの継続的な収集、分析や戦略の策定、そして現場レベルでのKPIとPDCAサイクルの確立などについても、ぜひ今後はご検討いただきたいと思います。
 次に、商店街の支援について質問いたします。
 私の地元吉祥寺は、都内でも有数の商店街を持ちますが、今、吉祥寺の商店街事業者たちは大きな危機感を抱いております。吉祥寺は駅前の地価が高騰し、この数年間でチェーン店ばかりになってしまいました。
 私も毎日歩きながら痛感するのは、駅前のアトレに従来の商店街の顧客を多く奪われているということです。実際に、アトレの収益は前年に比べて大きく伸びる一方で、駅周辺の商店街は伸び悩んでおります。
 都はこれまで、商店街に対して多くの支援を行ってきました。
 私も、この年末年始で多くの商店街の方々と意見を交わしてきましたが、祭りの運営やさまざまな整備の補助など、都からの支援を頼りにしている声を多数聞いてきました。一方で、都のこうした支援が商店街事業者の助けになっていると感じるものの、商店街再生に向けた本質的な支援になっているのか、もう一度振り返る必要があるとも感じております。
 商店街の支援策を構築する上で、商店街の事業者のニーズを把握することは確かに重要です。しかし、真に考えるべきは利用者のニーズであると私は考えています。
 商店街の衰退の本質的な理由は、利用者のニーズの変化に対応できず、ほかのビジネスモデルとの競争に勝てなくなったことにあるのではないでしょうか。商店街の再生を考える上で、利用者のニーズを把握することこそが、より重要だと思うのです。
 そこで、都はこれまで、商店街が伸び悩む理由をどのように分析し、また、商店街の顧客のニーズをどのように把握してきたのか伺います。

○坂本商工部長 都内の商店街は、消費者の買い物のスタイルや商品へのニーズの変化などにより、売り上げが伸びず、商店の後継者不足による空き店舗の発生などにより、商業活動の拠点としての活力を確保する上での厳しさが増しているものと考えております。
 利用者のニーズにつきましては、三年ごとに実施をしております商店街の実態調査によりまして、商店街のさまざまな取り組みの状況を通じて買い物客の要望を把握するほか、専門家が現場に出向いて相談業務を行う中で、来訪者の意向に関する情報の収集を行っているところでございます。
 さらに、今年度からは、職員が商店街に巡回相談を行う仕組みを開始しておりまして、利用者のニーズを理解する取り組みも進めているところでございます。

○鈴木(邦)委員 商店街の競合は、大型店やコンビニだけではなく、今や急速に伸びる通販もあります。こうした中で、商店街が生き残っていくためには、各店舗がほかにはない付加価値を追求していかなければなりません。
 実際に吉祥寺の商店街を歩いておりますと、時たまそうした店に遭遇します。多くは、若い経営者が新しい発想とスタイルで商品を企画し、店舗をデザインしている店であり、人々を引きつけています。
 行政が多様な支援メニューを用意することは意義がある一方で、LEDやアーケードを整備したとして、商店街自体の魅力がなくなり、潰れてしまっては意味がありません。今後は、商店街の再生につながる本質的なアプローチに対して、集中的に政策投資をしていくことが、より重要であると考えています。
 そこで、さきの例のように、今後は若者や女性を初めとした新たな開業者をふやすと同時に、新しいコンセプトを持った店舗のデザインなどに政策投資をより厚くしていくべきだと考えますが、都の見解を伺います。

○坂本商工部長 都では、新しい発想を持ち、将来のリーダーとしての活躍を期待できる若者や女性が商店街に出店するための重点的な支援を行っております。
 来年度は、こうした若者などが開業する場合の店舗の賃借料に対する補助について、一年目の月額の上限額を現在の十二万円から十五万円へ、二年目は十万円から十二万円へと引き上げ、採択も七件ふやして十件といたします。
 また、若者や女性が商店街で販売や経営の経験を積むためのチャレンジショップを新たに多摩地域にも開設いたします。
 こうした取り組みによりまして、商店街での開業をふやしてまいります。

○鈴木(邦)委員 これまで地元の商店街を歩いていて気づくことは、今、人を引きつけている新しい店の経営者は、商店街の組織の中では発言力が弱いケースが多いということです。その中には、若い経営者だけではなく、ほかとは違ったコンセプトを打ち出して顧客には評価されているものの、商店街の仲間うちからは疎まれている年配の経営者もいます。
 個々の店舗には裁量があるものの、今の商店街の組織には、利用者のニーズに対応したイノベーティブな発想を許容するのは現実的に難しい構造があります。これは、商店街とのつき合い方を固定してきた私たち政治家の問題でもあると考えています。
 そこで、個々の店舗だけではなく、商店街全体にイノベーションを起こしていくために、商店街の組織内の発想を超えて、商店街のビジョンをつくっていくようなアプローチも必要と考えますが、都の今後の取り組みを伺います。

○坂本商工部長 都は来年度、商店街が周辺を含めた地域の中で重要な中心的エリアとして再生することを目指す取り組みへの支援を開始いたします。
 具体的には、外部の視点を取り入れて活性化を進める意向のある商店街を公募により選び、まちづくりに詳しい専門家を派遣し、地元自治体とも連携を図り、再生に向けた計画の策定を支援いたします。計画を実現するため、専門家が最長で三年にわたりサポートをしながら、店舗所有者の協力のもと、商店街を新たなまちへと再生してまいります。
 こうした取り組みを通じまして、商店街を中心とした地域全体の活性化を進めてまいります。

○鈴木(邦)委員 ただいまのご答弁にもありましたように、専門家が最長で三年も入って、地域の方々とともに商店街の再生に取り組んでいくというこの事業は、大変新しい試みだと思っております。
 先ほどの、女性、若者などの新しい商業者支援とあわせまして、今後は、商店街のイノベーションにつながる本質的な支援策に対して、より集中的に政策投資をいただくことを期待したいと思います。
 最後に、農業振興について質問いたします。
 私は、ことし一月に町田のシルクメロンの農場を視察してまいりました。これは町田商工会議所が、町田市内、市外の協力十企業と連携してスタートさせた新しい水耕栽培です。通常なら一株から一個から四個ほどの収穫しかできないメロンが、この町田方式の水耕栽培であれば、一株から何と六十個のメロンが実るという大変画期的な手法であります。
 従来の水耕栽培では、正方形の水槽を用いて、一カ所の角から水を供給し、対角線の角から水を排出してきました。しかし、この方法では、根が繁茂すると水が根を避けて流れるので、養分が根に届かず、根腐れや根の病気も生じやすいという問題がありました。
 町田式農法の一番の特徴は、正方形の水槽の中央から水を供給し、槽内の内壁にぶつかった後で、対流を伴いながら四隅から排液される構造にあります。根が放射状に理想的な方向で生育し、水流のよどみが生じないので、根の健康も保たれます。従来の方法では実現することが非常に難しいと考えられていたメロンの水耕栽培が、この独自の栽培法によって初めて実現したのです。
 そこで、この町田の例のように、東京農業の収益力向上を目指すためには、こうした先端先進技術を活用し、農業にイノベーションを起こすことが重要と考えますが、都の所見を伺います。

○藤田農林水産部長 都市の中の限られた農地で収益力の向上を図るためには、ICTなどの先進技術を活用し生産性を高めるなど、農業経営の効率化を進めていくことが必要でございます。
 このため、都は、ICTの活用により、栽培施設内の温度やCO2などの生育環境を自動制御し、小規模な農地でも農産物の増産と高品質化を実現する栽培システムを開発いたしました。
 来年度は、栽培施設を遠隔操作する技術の開発を進め、さらなる省力化を図るなど、システムの機能向上に取り組むとともに、これまでのトマトとキュウリに加え、新たな品目としてパプリカの栽培試験も開始してまいります。

○鈴木(邦)委員 ただいまのご答弁にもありましたように、東京都としても、新しい栽培システムを開発し、来年度は新たな品目の栽培試験も開始するということです。
 この技術について、私から少し補足をさせていただきますと、今回、都が開発した技術は、施設内での植物、環境、機器の状況をリアルタイムで収集、蓄積、可視化が可能で、外部のスマートフォンなどで遠隔監視制御ができる技術であります。小規模、低コスト、高収益、そして多品目栽培を特徴とする東京農業に親和性の高いシステムだといえます。
 次に、この新たな栽培システムでは、具体的にどの程度の増収や高品質化が見込めるのか伺います。

○藤田農林水産部長 システムの研究、開発を行っております東京都農林総合研究センターの実績では、通常のハウス栽培に比べ、トマトの年間収穫量が三倍程度となるとともに、形がよく、きれいな、いわゆる秀品の割合や、糖度などの品質も向上しております。

○鈴木(邦)委員 都が今回開発した栽培システムも、高い品質とともに三倍の年間収穫量が見込めるなど大きな期待が持てます。この技術をぜひとも都内の農家の方々にご活用いただきたいと思います。
 そこで、こうした新たな栽培システムを今後どのように東京の農業者に普及させていくのか伺います。

○藤田農林水産部長 都は、新技術導入に積極的な若手農業者の研究会と連携した説明会を開催するとともに、意欲ある農業者の農場で栽培システムの実証試験を行い、その導入メリット等を他の農業者に周知することにより、さらなる普及を図ってまいります。
 こうした取り組みを通じまして、東京の農業者に新たな栽培システムの普及を図り、農業経営のさらなる効率化を実現してまいります。

○鈴木(邦)委員 私は、農業分野において、このような新技術をもっと活用できないかと考えておりますが、開発の当初はコスト面などでの課題が多く、なかなか商業ベースに乗せるのは難しいようです。
 先ほどお話をいたしましたまちだシルクメロンの事業者の方も、私財を投じて、実に七年もの月日をかけて、何度も失敗を繰り返しながら新技術を開発しました。しかし、長年の努力を経て生まれた新技術でも、日の目を見ないケースは多くあります。苦労を重ねて生み出した新しい技術が実用化に至るまでは、さらに高いハードルがあるのです。
 都が今回開発した新しい栽培システムは、こうした一つ一つの挑戦を超えて生まれた大変貴重なイノベーションです。このイノベーションをどうか大切にしていただき、そして新しいシステムの普及を通じて都市農業のさらなる発展に努めていただくことを求めまして、私の質疑を終わります。

○山崎委員 私からも、中小企業支援などについて何点か質問させていただきます。
 先ほど来、我が党の鈴木委員からも質問させていただきましたが、我が党都議会自民党は、今までも、現場の声をしっかりと聞いたその強みを持ちながら、生かしながら、中小企業支援に対して何度も皆様にも提言をさせていただいたわけでございます。その観点から、また質問させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 我が国の経済は、過去最高の業績を上げた大企業がニュースなどで明るい話題を提供する一方、地域で懸命に汗をするまち場の中小企業の方々からは、いまだ厳しい声が聞こえてくるのが実感であります。
 全国の企業数の約一割以上を占める東京の中小零細企業が元気を取り戻さなければ、我が国の発展はあり得ません。なすべきことは、企業の置かれている実情を踏まえ、直面する課題に対応した支援策をきめ細かく実施をしていくことに尽きるのではないかと改めて感じております。
 そこでまず、小零細企業に対する支援について伺っていきます。
 小零細企業の多くは、売り上げの不振、人手不足、後継者の不在、課題は山積しております。これを自分たちで解決することは容易ではありません。
 これまでも都は、こうした会社が諸課題を解決できるよう、専門家などを活用して支援を行っておりますが、現下の状況を踏まえれば、一社でも多くの企業が足腰の強い経営体質を獲得できるよう、さらに支援のさらなる充実を図るべきであります。
 そこで、新年度の取り組みについてまず伺います。

○坂本商工部長 これまで都は、小規模企業に対し、経営の診断から課題解決までをサポートする専門家派遣を実施してまいりました。
 また、事業承継の後押しに向け、都内六カ所に拠点を設け、窓口での相談対応や企業訪問による助言などを行っております。
 来年度は、経営診断ニーズに対応するため、専門家派遣の対象を二百社ふやし、一千五百社といたします。
 また、事業承継の支援拠点を多摩地域に一カ所ふやし、これにより、百社の企業訪問を行うことといたします。
 さらに、商工会の連合組織と協力し、承継に向けた取り組みを早期に始める企業五社に対し、二百万円を上限といたしまして、三分の二の補助率でモデル的に支援を行ってまいります。

○山崎委員 今、答弁の中で、来年度は、経営診断ニーズに対応していくために、専門家の派遣を千三百から千五百、二百社ふやしていくということ、そして事業承継の拠点、多摩地域に一カ所ふやしていく、こういう答弁がございました。
 中小企業支援は、まずは厳しい状況に直面する企業を支えることが、今おっしゃったように基本でありますから、しっかりとやっていただきたいと思います。
 その上で、課題を乗り越え、発展の道筋をつけていくこと。とりわけ、先ほども鈴木委員から指摘もございました生産性の向上は、人口減少社会における重要なテーマであります。
 事東京においては、事業者の八割以上を占めるサービス産業について、どうやって生産性を引き上げていくのかがポイントであります。
 聞くところによると、小売店や個人向けのいろいろなサービスは、人が介在することが多く、商売が経験や勘に基づくことも多いといわれます。ゆえに中小サービス業を中心に、生産性を改善する余地はかなり大きいとのことであります。例えば、来店するお客様の動線を解析して陳列方法を見直した途端に商品の回転が何割もアップをしたという、このような事例、また、現実もあることをお聞きいたします。
 都は新年度から、中小のサービス事業者がこうした利用客に関するさまざまなデータを分析して改善に生かしていく取り組みを支援するということでありますが、その具体的な内容についてもお伺いをいたします。

○坂本商工部長 これまで都は、中小サービス業の経営の力を高めるため、事業の改善に関する知識や経験を持つ専門家を会社の現場に派遣し、助言をするサポートを行ってまいりました。
 来年度からは、中小サービス業の経営者が、IT技術で収集した大量のデータなどをみずから分析して課題を見きわめ、その解決を図る取り組みへの支援も開始いたします。
 具体的には、データを用いた経営改善に意欲的な企業を公募により二十社選定いたしまして、分析方法を学ぶ講座を開催するとともに、データ活用に詳しい専門家を各社に最大十回まで派遣し、現場の状況に応じた分析の方法を助言いたします。
 また、データ分析に必要なIT機器の導入などの費用の半分を、百万円を上限に助成いたしまして、経営改善を着実に後押ししてまいります。

○山崎委員 最近では、IoTやロボットといった新たな技術に加え、AIの本格的な活用も、はや現実のものとなりつつあります。中小企業によるこうした高度な技術の活用に向けて、支援のさらなる充実をお願いいたします。
 しかし、私が感じるところ、まだまだAIの活用が中小企業の皆さんに身近なものになっていない、こういったことも感じられます。ぜひ、そういった部分も含めての、皆さんの支援のさらなる充実をお願いさせていただきたいと思います。
 サービス業に限らず、中小企業の多くは、先ほどの顧客動線分析のようなお手本に学ぶだけでも生産性を大きくアップできる、いわゆる伸びしろが大きいのではないかと考えます。しかし、中小零細企業の経営者からすれば、こうした情報収集をしようにも、方法がなかなかわからない、調べる余裕もないというのが実感ではないでしょうか。
 したがって、中小企業が、他社の成功事例などのお手本を初め、生産性の向上に役立つ生きた情報に簡単にアクセスできるよう、都が橋渡しを行うことは非常に重要であります。
 そこで、新年度の取り組み内容について伺います。

○坂本商工部長 都は来年度から、中小企業の生産性向上に関する理解が一層進むよう後押しするほか、各社にとって事業効率を高める上で役立つ情報の提供を開始いたします。
 具体的には、IT機器の活用などさまざまな方法で生産の効率を高め、事業改善に成功した実例について、わかりやすく学ぶことのできるセミナーを年五回開催し、経営者に取り組みのきっかけを提供いたします。
 また、実際に現場で生産性の向上に取り組んでいる経営者や幅広い知識を持つ専門家等が、中小企業に対し、年間で延べ千件の規模で実践的なアドバイスを直接行う仕組みを開始いたします。
 そうした助言やさまざまな事例などをウエブサイトを通じて幅広く発信し、多くの中小企業の生産性向上を後押ししてまいります。

○山崎委員 今のこれは、新規事業であります。ぜひ、この新規事業をしっかりと、その後どうなされているのか、検証も含めて、比較をしていただきたいと思うわけであります。
 次に、中小企業の製品やサービスのPRや、またプロモーションについてであります。
 日本の企業は、製品、サービスの技術や品質の水準は高くても、それをうまくPRができないとよくいわれます。他社との差別化やブランディングができていなければ、待っているのは価格競争であります。逆に、こうした部分をしっかり対策すれば、製品に適正な付加価値がつき、生産性の向上にもつながるわけであります。
 私の地元城東エリア、これは墨田区や江東区に多くあるんですが、ニット産業が集積をしております。今まさに業界団体は、都の支援を受けながら、独自のブランドを立ち上げようと取り組んでいるところであります。
 こうした取り組みはぜひ広げていくべきでありまして、都はさらに幅広く支援策を展開すべきでありますが、見解を伺います。

○坂本商工部長 都では、中小企業の団体が製品の品質への信頼を確保し、それを効果的にPRするための支援を行っているところでございます。
 今年度に採択した衣料品の業界に対しまして、会社の技術力や商品がすぐれた水準にあることを認証する仕組みづくりのほか、海外市場での戦略的な広報に向け、ファッションビジネスの専門家を活用したサポートを進めているところでございます。
 来年度につきましては、個々の中小企業が自社のすぐれた面を的確に発信する力を高める取り組みも新たに支援いたします。
 具体的には、商談などにおいて会社の特色を際立たせる宣伝を行うことのできるよう、二千社を対象に専門家が助言を行うこととしております。
 また、効果の高いPR戦略の作成に取り組む二十社に二カ年の支援を開始し、一年目は、実践的な知識を学ぶ十回の研修や、会社の強みを的確に伝える方法を助言する六回の専門家派遣によりまして、中小企業の発信力の強化を後押ししてまいります。

○山崎委員 この件も、この効果の検証というものが必ず私は必要になると思いますので、ぜひそういった点もお願いをしておきたいと思います。
 続きまして、多様な創業に向けた金融支援について伺っていきたいと思います。
 先ほど、鈴木委員からは制度融資についてお伺いをさせていただきました。
 さて、東京の産業を活性化させるためには、既存の中小企業を支援していくことに加え、新たな担い手をふやすことが重要であります。
 平成二十八年度の開業率は六・〇%と、前年度の五・六%より増加しているとはいうものの、都の掲げる、米国や英国並みの一〇%台という目標には、まだ達しておりません。
 この達成に向けては、例えば、子育てが一段落した女性や、みずから創業したいという意欲を持った若者、豊富な経験を有するシニアなど、多様な層の創業をしっかり後押ししていくことが重要です。
 平成二十六年度から開始した女性・若者・シニア創業サポート事業は、こうしたさまざまな層による創業を、専門家による経営サポートから金融機関による資金調達まで一貫して支援をするものであり、まさに我が党の要望によりこの制度が創設されて以降も、継続して制度の充実を主張してきたところであります。
 今年度で四年目となる女性・若者・シニア創業サポート事業でありますが、まず初めに、これまでの実績について伺います。

○加藤金融部長 女性・若者・シニア創業サポート事業の融資実績でございますが、平成二十六年度は五十件、約二億三千万円、二十七年度は二百九件、約十二億九千万円、二十八年度は五百五十四件、約三十五億円と、過去三年間において順調に増加しております。
 四年目となる今年度におきましても、一月末現在で四百九十五件、約二十九億二千万円の融資を実行しており、前年の同時期と比べ、件数で約一七%、金額で約一〇%増となっております。
 また、事業創設以来の利用者の属性は、おおよそ女性が四割、若者が五割、シニアが一割となっております。
 これまでの具体的な創業事例といたしましては、四十代女性による、IT技術者としての経験を生かした、東京の魅力を外国人観光客に発信するアプリの開発や、企業の人事部門での豊富な経験を有する六十代シニアによる、働く意欲のある高齢者等の人材の派遣事業などがございます。

○山崎委員 今の答弁をお聞きしますと、やはり非常にニーズがあって、金額も年々年々増加をしているということがわかりました。また、こういったことは非常に喜ばしいことだとも思います。
 また、具体的な事例で見ても、それまでの職業経験を生かした創業や社会的な課題を解決する創業など、本事業が、多様な操業を生み出していく上で非常に大きな役割を果たしているということがわかりました。
 都はこれまでも、支援対象者の拡大や融資限度額の引き上げなどを行うなど、創業者の支援に取り組んでまいりましたが、開業率を一層引き上げていくためには、今後とも、さらなる目標の一〇%、事業の充実が必要だと思います。
 そこで、女性・若者・シニア創業サポート事業の平成三十年度の取り組みについて伺います。

○加藤金融部長 平成三十年度におきましては、これまでの融資実績が着実に積み上がっていることを踏まえまして、安定的な資金供給を継続するために必要となる融資原資、約十六億円を追加いたします。
 また、これまでの取り組みに加え、特に地域の社会的課題の解決に挑戦する創業者を後押しするため、ソーシャルビジネスに関するセミナーを新たに開催するとともに、地域創業アドバイザーによる無料相談回数を三回から五回に拡充するなど支援の充実を図り、女性、若者、シニアによる地域に根差した創業を一層促進してまいります。

○山崎委員 新たに支援の拡充を行うソーシャルビジネスを含め、本事業により、都内でのさまざまな層による創業が生み出されていくことが重要だと思います。
 今回、融資原資の追加も行われるとのことであり、今後とも、アドバイザーや地域金融機関としっかりと緊密に連携をし、これまで以上に積極的な支援に取り組んでいただくことを要望いたします。
 続いて、事業承継の推進に向けた金融支援について何点かお伺いします。
 中小企業の経営者は高齢化が進んでおります。昨今の報道でも、事業承継によって廃業を余儀なくされる企業の事例が報じられております。都内中小企業が有するすぐれた技術をどのように次世代に引き継いでいくかは、都政にとって待ったなしの極めて重要な課題であり、さまざまな手段を総動員して対応していくべきと考えます。
 本定例会における我が党の代表質問でも、我が国全体の持続可能性に関する問題として、中小企業の事業承継について取り上げましたが、その中で、都からは、新たにファンドの手法を活用していくとの答弁がありました。融資ではなく、資本面からの支援となるファンドは、事業承継を進めていく上で近年注目されてきていると聞いております。
 そこで、今回、都がファンドを活用して事業承継支援に取り組む狙いについて伺います。

○加藤金融部長 都はこれまでも、制度融資や、金融機関と連携した事業承継支援などにより、都内中小企業の事業承継を融資面から支援してまいりました。
 来年度からは、新たにファンドを活用した支援を開始いたします。このファンドにより、後継者の確保、育成や、企業のマネジメント体制の強化、幅広いネットワークを生かした販路開拓など、ファンド運営事業者の提供する手厚いハンズオン支援により、中小企業の円滑な承継を後押しするとともに、次なるステージへの成長へ導いてまいります。
 都としては、こうした取り組みを行うファンドがモデルケースとなり、事業承継におけるファンド手法の浸透や民間資金の呼び水となることを期待しております。

○山崎委員 今の答弁で、ファンドという新たな手法の活用は、中小企業の事業承継を円滑に進めるだけでなくて、企業の成長をも目的としているものということが、今の答弁で理解できました。
 次に、この事業承継支援ファンドについて、その規模などの具体的な内容についてもお伺いいたします。

○加藤金融部長 このファンドの規模は、都が出資する二十五億円に民間資金等を合わせて五十億円以上を目標としております。
 また、投資期間は五年程度とし、資金回収を含めて、ファンドの存続期間は十年程度と見込んでおります。
 ファンド運営事業者につきましては、企画提案方式による公募を行い、ことしの秋ごろまでに外部有識者等による審査を経て選定し、平成三十一年一月ごろの出資を予定しております。

○山崎委員 このファンドについて、喫緊の課題である事業承継を推進していく上で、非常に効果が高い手法だと思います。
 まだまだファンドという言葉の戸惑いを感じる、あるいはファンドを活用するメリットを知らないという中小企業も数多く存在するのではないかと思います。今回のファンドにより、事業承継をきっかけとして飛躍する中小企業を多く生み出し、そうした事例を都内に幅広く広げていただくことを期待いたしたいと思います。
 続いて、林業振興について伺います。
 昨年末、間伐や木材利用を進める区市町村の財源としての森林環境税の創設が閣議決定され、ことしの十一月には、健全な森林を次世代に引き継ぐことの大切さを伝える全国育樹祭が東京で開催されます。
 このように、森づくりや木材利用に対する都民の意識を高める絶好の機会が訪れており、我が党は、昨年の第四回定例会において、育樹祭のレガシーとして、東京の森林整備や森林循環の促進につながる新たな取り組みを行うよう東京都に提案をしてまいりました。
 都は、この全国育樹祭の開催を契機として、中長期的な視点から林業振興に取り組むべきと考えますが、都の見解を伺います。

○村西全国育樹祭担当部長 都は、全国育樹祭の東京開催を契機としまして、中長期の視点から、木材の生産、加工、需要の創出まで、一体的、戦略的に取り組む新たな事業を来年度から開始いたします。
 本事業では、木材生産の中心となる林業事業体を初め、加工を担う製材事業者が高性能林業機械や木材乾燥設備等を導入する際の経費の原則二分の一を補助し、生産性や製品の品質を向上させていくとともに、林業先進地域への派遣研修等に助成を行い、林業従事者の技術力の向上を図るなど、生産基盤の整備や人材育成を通じまして、事業者の経営力を計画的に強化してまいります。
 これに加えまして、区市町村に木材利用推進方針の策定を働きかけ、次世代を担う児童生徒が利用する公共施設の木造化や木質化、木製什器の導入など、多摩産材のモデル的な活用に対し補助を行うことによりまして、多摩産材の新たな需要を喚起してまいります。
 これらの総合的な取り組みを一体的に進め、東京における林業、木材産業の成長を促してまいります。

○山崎委員 今、答弁の中で、区市町村に木材利用推進方針の策定を働きかけという答弁がございました。
 たしか今、十三の区市町村でこのことをやられている、そのように聞いております。十三で本当にいいんでしょうか。もっともっとこれをしっかりと働きかけをして、伸ばしていくことが重要になってくると思いますので、ぜひ、今も答弁ありましたけれども、育樹祭に向けて、そういった観点もよろしくお願いしたいと思います。
 東京での全国育樹祭のレガシーを次世代にしっかりと残していく必要があります。こうした観点から、中長期的な視点に立って林業、木材産業の成長を促していくことは大変意義のあることであり、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、森林整備について伺います。
 この森林整備は、我が党もずっと要望をしている事項でもございます。健全で活力のある森林を次世代に引き継ぐためには、林業の振興とともに、その根幹となる森林を保全していくということが重要であります。
 都は、荒廃した森林の復旧や落石等に対する災害予防のため、治山ダムや落石防止柵の設置などの治山事業を戦前より実施し、東京都が設置をした治山施設は、森林の保全に大きな役割を果たしてまいりました。
 しかし、都内の治山施設は、設置から長期間経過をしている施設も多く、老朽化による機能低下が心配されますが、施設の更新には多額の費用がかかります。
 都は、重要な役割を果たしている治山施設の維持、保全にどのように取り組んでいくのか伺います。

○藤田農林水産部長 都は、森林の土砂災害を防ぐ治山ダムや落石防止柵などの治山施設につきまして、老朽部分の交換やコンクリートによる補強等の修繕を計画的に行うことにより、維持保全を図り、その長寿命化を進めてまいります。
 具体的には、来年度より、個々の治山施設の状況調査を実施し、老朽化等が判明した治山施設につきましては、修繕内容や事業実施の優先順位などを定めた個別施設計画を、平成三十二年度を目途に策定いたします。
 本計画に基づき、必要な対策を計画的に実施することにより、治山施設の機能の回復を図り、森林を保全してまいります。

○山崎委員 治山というのは、これは行政の重要な役割だと思います。都において、今、平成三十二年までに計画をというお話もございましたけれども、しっかりと計画的な取り組みをお願いしておきたいと思います。
 次に、林業を通じた森林整備についてですが、スギ等の人工林を健全に保つには、成熟した森林の伐採、更新や間伐などの保育作業が欠かせません。現在、森林組合等の事業体が森林整備を進めておりますが、作業箇所が点在化するなど、効率がなかなか上がらないと聞いております。
 森林整備を効率よく進めていくためには、隣接する所有者の合意形成を進め、作業規模を拡大した一体的な森林作業の実施が必要と考えますが、都の取り組みについて伺います。

○藤田農林水産部長 林業の低迷による所有者の森林への関心の低下や、森林から離れた地域に居住する所有者の増加などにより、林業事業体が作業規模をまとめて森林の整備を行う際に必要となる、森林資源の情報や森林の所有境界を把握することが困難になっております。
 そのため、都では、森林資源の情報の把握につきましては、今年度より、都内全域の森林を対象に、航空レーザー計測を活用して、詳細な地形や樹木の種類、本数などの森林資源情報の取得を進めております。
 森林の所有境界の把握につきましては、隣接する森林所有者の立ち会いなど、林業事業体が実施する境界明確化に必要な経費全額の補助と、森林所有者に対する説明会の開催経費の二分の一補助を来年度から実施いたします。
 これらの取り組みを通じ、林業事業体が一体的な森林作業を進める環境を整え、より効率的な森林整備を図ってまいります。

○山崎委員 森林所有者の高齢化により、森林の境界把握がますます難しくなりますので、できるだけ速やかに事業を推進していくことを期待しておきます。
 それと同時に、作業道、やはり森林を整備していくには作業道が必要になってくると思います。この作業道をいかに東京都の支援によって改善をしていくか。これに限ると私は思っておりますので、作業道に関しても、ぜひいろいろな支援、今までもやっておりますけれども、支援の充実という部分をよろしくお願いをしておきたいと思います。
 これまで、中小企業の生産性の向上や事業承継等の支援のほか、非常に重要な事業である全国育樹祭を契機としての林業振興など、来年度の産業労働局の施策展開について幅広く伺ってまいりました。
 平成三十年度予算に対する我が党からの重点要望でも主張をしましたが、東京の産業の持続的な発展には、人材確保や事業承継、生産性を高める取り組みなど、課題を抱えている都内の中小零細企業をしっかりと後押しをしていくことが不可欠であります。
 東京の産業の屋台骨を支えている多くの中小零細企業は、厳しい環境にあっても地域で日々懸命に頑張っております。小さくとも意欲のあるこうした企業が、将来への明るい展望を見出し、希望を持って事業を展開していけるよう、局の皆さんには、来年度、その支援に万全を期して取り組んでいただくよう要望して、質問を終わります。

○上野委員 私からは、まち歩きツアーについて質問をいたします。
 都内では、観光協会などによりまして、低廉な参加費で、ガイドとともにまちを歩きながら、由緒ある寺社や史跡のほか、水辺と桜などの景観を楽しんだり、最近では、スマートフォンなどを使って、現在のまち並みに昭和の景観を映し出して比較して歩くなど、工夫を凝らしたまち歩きツアーが行われていると伺っております。
 このようなツアーは、旅行者にとっては、東京の歴史や文化などを知る機会となるとともに、地元の住民にとりましても、自分たちが住む地域の魅力を改めて見直す、見詰め直すきっかけになると思います。
 こうしたまち歩きツアーの取り組みを都内各地に広げ、東京の魅力を多くの方々に知ってもらうことが重要であると思います。
 都の、来年度における、そうした取り組みの支援についてお尋ねします。

○小沼観光部長 地域を回遊するまち歩きツアーは、都内各地に観光客を呼び込むと同時に、来訪者や地元の住民が東京の魅力を再発見する機会となる、すぐれた取り組みでございます。
 都はこれまで、地域のアイデアと民間のノウハウを結びつけ、昔のまち並みの面影を残す商店街や、織物などの地場産業の歴史を紹介するガイドツアーの実現など、地域みずからの主体的な取り組みを後押ししてまいりました。
 来年度は、まち歩きツアーの実施を都内各地に広げるとともに、内容のさらなる充実を図るため、観光協会と地元の団体等が連携して新たな企画をつくり上げる取り組みに対し、ガイドの育成やまち歩きマップの作成などに必要となる経費の二分の一を助成します。
 また、都内のまち歩きツアーの情報を収集しまして、専用のサイトで一括して情報発信することで、ツアーの認知度を高めてまいります。
 こうした取り組みにより、都内各地の観光の活性化を図ってまいります。

○上野委員 外国人旅行者は、私たちが見なれている東京の風景や日常的な食事についても高い関心を持っていらっしゃいます。こうした旅行者の方々に、地元の歴史や食、そして文化についてしっかりと伝えることで旅の満足度は高まっていくと、このように思うわけでございます。ぜひ、各地域でまち歩きツアーが展開されるよう支援していただきたいと思います。
 次に、ムスリム旅行者への対応に向けた取り組みについて質問いたします。
 訪日旅行者の大変多いアジアの中でも、イスラム教徒が多い地域であるインドネシアやマレーシアの訪日旅行者数は年々増加していると聞いております。二〇一七年の訪日旅行者数は、それぞれ過去最高となっております。
 ムスリム旅行者がふえていることを踏まえ、私もこれまで、さまざまな質問をしてきたところでございます。
 都内を訪れるムスリム旅行者にとって、この日本での食事は大きな楽しみの一つになっていると、このように聞いております。しかし、ハラールと呼ばれる、いわゆるイスラム法上で食べることが許されている食材や料理でないと食事ができないという、メニューの内容にはかなり気を使うことになるということでございます。
 これまでの取り組みにより、ムスリム旅行者に対応できる飲食店は現在ふえてきていると、このように思ってはいますけれども、それらに対応できる飲食施設の充実など、さらに受け入れ環境の向上を図っていくことが必要でございます。
 そこで、飲食事業者がムスリムに対応した取り組みを強化していくために、都としてさらなる支援を行っていくべきと考えますが、その所見を求めます。

○浦崎観光振興担当部長 都はこれまで、観光関連の事業者によるムスリム旅行者の受け入れに向けた取り組みを支援するため、飲食店や宿泊施設などを対象に、食や習慣の基本的な知識や対応事例等を紹介するハンドブックの配布やセミナーなどを実施してまいりました。
 今年度は、アドバイザーの派遣に加えまして、飲食関連の事業者を対象に、食や習慣などの対応のポイントや飲食施設の先進事例等を紹介するセミナーを、昨年度の三回から五回に拡充して開催しているところでございます。
 来年度は、こうした支援に加えまして、新たに飲食店やムスリム向けの食品等を扱う事業者が参加して交流をするマッチング会を開催いたしまして、さまざまなムスリム向け食品の展示と紹介を行いますとともに、食品を選ぶ際の知識やポイントなど、実際の取引に役立つ情報を提供してまいります。
 これらによりまして、ムスリム旅行者にとって快適な受け入れ環境づくりを推進してまいります。

○上野委員 多くの事業者の皆様が、ムスリム旅行者をよく知り、できることから対応することで、さらなる旅行者の増加にも弾みがつくと思います。事業者の皆様へのしっかりとしたサポートの取り組みをこれからもさらに進めていただくよう期待いたしまして、次の質問に移ります。
 農地の保全についての質問です。
 私の地元の江戸川区では、年間を通して栽培される特産のコマツナを初めとする野菜の施設栽培を中心とした農業経営に熱心に取り組まれる農業者の方々がおられます。
 また、そうした親の背中を見て、しっかりと後を継いでいこうと決意する後継者の方々も大勢いらっしゃいます。しかし、親が亡くなり、いざ相続という際には、重い相続税の負担のため、やむなく農地を手放さざるを得ない状況になっている後継者の方もいらっしゃいます。
 このような中、都は、農業者の経営力強化や担い手の確保、育成など、農業の魅力と農業者の意欲を向上させるさまざまな農業振興施策によりまして、農業生産の基盤である農地保全に取り組んできましたけれども、農地の減少にいまだ歯どめがかかっておりません。
 今後、生産緑地の大幅な減少が懸念されます。いわゆる二〇二二年問題が騒がれる中、都政の課題であります高齢者の活躍促進という、こうした視点も踏まえた新たな農地保全の取り組みとして来年度、都では、先ほども話がありましたシニア向けセミナー農園整備事業を実施するとのことでございますが、まず、この本事業の狙いについてお尋ねいたします。

○藤田農林水産部長 本事業は、相続等により買い取り申し出のあった生産緑地の区市による買い取りが進まない中、都市農地の保全や高齢者の活躍支援など、都政の課題を踏まえた生産緑地の活用モデルを都が確立することで、都市農地の保全に向けた区市の取り組みを促すことを狙いとしております。
 加えて、セミナー農園において栽培技術を身につけた意欲あるシニア層の就農や援農ボランティア活動など、今後の東京農業の担い手や支え手としての活躍につながることも期待しております。

○上野委員 相続の発生により手放される生産緑地を農園として保全するとともに、農園利用者が東京農業の新たな担い手ともなり得る事業ということであり、ぜひ実現してもらいたいと思います。
 つきましては、本事業の仕組みについてお尋ねいたします。

○藤田農林水産部長 本事業では、まず、農業者から買い取り申し出のあった生産緑地一カ所を都が直接買い取り、必要な施設等を整備した上で、セミナー農園の運営主体を公募し、貸し付けをいたします。
 農園を借り受けた運営主体は、農園利用者から利用料を徴収し、土づくりから種まき、栽培管理、収穫まで一貫した農作物の生産技術の指導を行うとともに、地域住民も参加する防災訓練や収穫祭を開催するなど、地域との交流を図りながらセミナー農園を運営してまいります。

○上野委員 今のご答弁を聞きましたように、新たな視点での大変すばらしい取り組みであると思います。今後は、関係者としっかりと連携を図り、事業を推進していただきたいと思います。
 次に、インターンシップ受け入れについて質問いたします。
 ものづくり企業におきましては、深刻な人材不足に陥っております。技術継承や事業維持を図るためには、若手人材の確保が切実な課題となっております。
 企業の現場でものづくりの魅力を体感できる、いわゆるインターンシップは、若手人材の確保に大変有効であります。中でも、工業高校のデュアルシステム、これは企業で長期間訓練することから、相互理解が深まる重要なプログラムでございます。
 一方、中小企業が現場で生徒を受け入れる場合には、人手や費用もかかるため、都では、受け入れ企業に対し、受け入れ奨励金を支給している状況でございます。しかし、この支給上限が十日間となっております。長期訓練についてはカバーし切れておりません。
 私は、昨年の予算特別委員会など、これまで、平成三十年度のデュアルシステム科設置拡大を見据えて、デュアルシステム科の特徴である長期の就業訓練期間をカバーし、中小企業の皆さんが現場で生徒を受け入れやすいように、実態に合った支援制度の拡充を要望してきましたが、来年度の都の取り組みについてお尋ねいたします。

○蓮沼事業推進担当部長 都は、ものづくり中小企業の人材確保を支援するため、都立工業高校等の生徒のインターンシップ受け入れに関して、学校と企業双方の調整を行うとともに、受け入れ企業に対し、生徒一人につき一日当たり八千円の奨励金を支給しております。
 来年度は、インターンシップ受け入れをさらに促進するため、奨励金の支給規模を拡大するとともに、支給上限を二十日間に引き上げ、デュアルシステム科の実態に合った長期受け入れにも対応できるよう支援を拡充いたします。
 今後とも、こうした取り組みを進め、ものづくり中小企業の人材確保を後押ししてまいります。

○上野委員 長期間のインターンシップは、若者が自分に合った就職先をじっくりと見きわめるためにも非常によい機会です。
 生徒の選択肢を広げるためにも、企業の負担軽減により、インターンシップ受け入れをさらに促進し、今後とも、デュアルシステム科の実態に合った長期受け入れにも対応できる支援拡充を進めていただくよう要望いたしまして、次の質問に移らせていただきます。
 次に、中高年の非正規雇用対策について質問します。
 雇用情勢の改善が続く中、企業は採用活動を精力的に進めており、これまで非正規で働いてきた方であっても、専門的なスキルや職務経験を積んできた方にとっては、正社員を目指しやすい状況になっているわけであります。
 一方、仕事を通じてのスキルアップなどを図ることができないまま年齢を重ねた中高年者にとっては、正社員就職は依然としてハードルが高いものとなっています。
 長期にわたって非正規で働くことを余儀なくされている中高年の方々を安定した雇用へとつなげていくため、行政として積極的に支援し、正社員化を後押ししていく必要があると考えますが、来年度の都の取り組みについてお尋ねいたします。

○蓮沼事業推進担当部長 社会人としての一定のスキルを有しながらも非正規雇用が長期化している中高年者を対象に、都は来年度から、セミナーと企業内実習により実践的能力を身につけ、正社員就職に結びつけるプログラムを新たに開始いたします。
 具体的には、それぞれの業界で働く魅力を伝えるセミナーを実施し、就職先の視野を広げるとともに、合同企業説明会を開催し、実習先の企業とのマッチングを図ってまいります。
 企業内実習では、受け入れ企業において、二十日間にわたり、正社員として働くスキルや心構えを身につけることで、正規雇用化を後押しいたします。
 なお、企業実習の期間中、参加者が実習に専念できるよう、日額五千円の奨励金を支給するとともに、実習を行う企業に対して、負担の軽減を図るため、日額六千円の受け入れ準備金を支給いたします。
 さらに、実習終了後に参加者を正社員として採用し、六カ月以上継続して雇用した企業に対して、一人当たり十万円の奨励金を支給し、採用に向けたインセンティブといたします。

○上野委員 非正規雇用で働く方々への経済面にも配慮しながら、企業内での実習を通じて正社員化に向けた支援に取り組んでいくとのことでございます。今聞いていても大変意義のあるものであり、私は高く評価したいと思います。
 一方で、こうした取り組みに参加する方の中には、学校卒業時に就職活動がうまくいかなかった方や、一度は正社員になったものの短期間で退職してしまった方など、正社員として就職することへの不安や、自信を失っている方も多いのではないかと察します。
 そこで、効果的に事業を行っていくためには、そうした方々に対するサポートが必要であると考えますが、都の見解を求めます。

○蓮沼事業推進担当部長 中高年者向けの本プログラムでは、企業とのマッチングから実習、就職後の職場定着まで、参加者を一貫してサポートできるジョブリーダーを配置し、効果的に支援できるようフォローアップを行ってまいります。
 具体的には、職場実習の進捗状況を確認するとともに、実習中に不安や悩みを抱える参加者からの相談に応じてまいります。
 さらに、参加者が就職後、安心して働くことができるよう、六カ月の間、定期的に職場を訪問し、職場定着に向けたきめ細やかなサポートを行います。
 こうした取り組みを通じて、正社員就職に不安を抱えている中高年者への支援を強化してまいります。

○上野委員 非正規雇用が長くなっている中高年の方々の状況はさまざまでございます。
 一人一人に寄り添う支援により、実効性あるものとなるよう、中高年の非正規雇用対策に今後ともしっかりと取り組んでいただくよう期待いたしまして、私の質問を終わります。

○伊藤委員長 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時三十分休憩

   午後六時一分開議

○伊藤委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。

○あぜ上委員 それでは、まず、企業主導型の保育施設設置促進事業についてです。
 私自身、子供を産み育てながら仕事をずっと続けてまいりましたが、どのような形態の保育園であったとしても子供の安全と健やかな成長が保障される、そのための最善の努力が求められていると痛感しております。
 企業主導型保育施設は、児童育成協会の資料によりますと、二月末の時点で、都内で助成が決定している保育園が二百三十六施設でした。
 そのうち、開設時の備品購入費等を補助する、いわゆる都の事業をどのぐらいの施設が活用しているのか、交付決定数をまずお示しいただきたいと思います。

○蓮沼事業推進担当部長 開設時に必要となる備品等の購入経費を補助する企業主導型保育施設設置促進事業の交付決定数は、ことし二月末現在で九十九件でございます。

○あぜ上委員 備品補助は、来年度は百六十施設を想定されていますけれども、その考え方について伺います。

○蓮沼事業推進担当部長 国は来年度、保育定員二万人分、施設数に換算すると約八百七十施設分を目標に、企業主導型保育施設の新たな整備を目指しております。
 このうち、都内での整備件数は、企業による設置の動きが加速していることを踏まえ、約百四十施設と見込んでおります。
 加えて、既に国へ施設整備費助成金の申請を行っているが、開設予定時期が来年度のため、都への助成金申請が来年度と見込まれる施設が二十施設あり、全体で百六十施設の申請を見込んでおります。

○あぜ上委員 急速に伸びているということがわかりました。
 全国調査では、二〇一六年度助成決定の施設、この設置企業の規模というのが出ておりましたが、四割が大企業でありました。
 申請した企業の規模別の割合については、東京都としては把握されていないとのことなんですが、大企業の場合は、福利厚生で、みずからの力で安全柵や冷蔵庫などは購入できるというふうに思います。
 そういう点では、私は、この補助事業は中小企業などへの助成とすべきだと考えます。これは意見として申し上げておきたいと思います。
 また、急増している企業主導型の保育施設なんですが、児童福祉法で位置づけられている認可保育園とは大きく違い、大変心配に思っていることは、保育士の保育資格が半数以上でよいということと責任所在が大変曖昧なことです。子供の安全や保育に対する責任所在は設置企業にあるのか、委託された運営事業者にあるのかという点でも、非常に曖昧です。
 都内の事業所内保育園で亡くなったお子さんのご両親にもお会いしました。そしてお話を伺いましたが、会社は何も守ってくれなかったと。今も事業所内保育園に通わせたことを大変後悔し、苦しみ、そして深い悲しみを背負っていらっしゃいます。
 都の認可外保育園に対する指導は、企業主導型保育の増加、これを見込みまして、巡回指導も強化されているのは理解しておりますが、基本は一施設に対し年に一回のみの調査になっております。
 先日、児童育成協会が立入調査を行いましたけれども、その中で、都内でも調査した四十六の施設のうち二十六の施設で指導がなされ、必要な保育士が確保できていないといった保育園もありました。
 子供の成長発達にとって大切な時期の保育を、二十四時間預かりなど、保護者に柔軟で多様な働かせ方を強いるための道具とする、そんな保育にしてはならないというふうに思います。
 保育とは、子供の安全と発達を保障する、あくまでも子供を主役にしたものであります。東京都の企業主導型保育施設設置促進助成金支給要綱には、こうした企業主導型保育施設の保育の質を担保すると、子供のための保育施設といった基本が据えられておりません。
 私は、要綱でそのことを位置づけるべきではないかというふうに所管の方ともお話をしたんですが、やはりこれは福保の、保育については福保の所管なんだというお話がありました。
 それで、改めて認可外保育施設に対する福保の指導監督要綱で対応しているわけですが、三月一日現在、その福保の方の届け出がどのぐらいになっているのかを調べてみましたら、助成決定が二百三十六施設に対して、届け出は九十二施設にとどまっているんですね。
 やっぱり促進する以上は、縦割り行政で保育の責任は福保などというのではなくて、やはり行政のかかわりの基本に子供の安全と健やかな発達、成長を位置づけるべきだというふうに私は思います。
 そして、要綱でそのことをきちんと位置づけていただきたいと、そのことは要望しておきたいと思います。
 次に、労働契約法に基づく無期転換ルールの徹底についてです。
 この四月から、改正労働契約法によって、通算五年を超えて継続して雇用される有期契約労働者に無期転換申し込みの権利が付与されます。
 ところが、五年になる前に雇いどめをしたり、六カ月のクーリング期間を置いて権利を無効にするなどの、無期雇用逃れともいうべき違法、脱法行為が、自動車大手や、また大学、独立行政法人などで明らかになっています。
 私も調査などを行う中で、あるメディアの関連企業では、二〇〇七年から一年ごとの契約更新が、次回の更新で最後だと。次期更新すると無期転換になってしまうということで、無期転換逃れのための雇いどめが行われているという実態も知りました。
 そこで、私たち日本共産党都議団としては、国会議員団とともに、東京労働局に、厚生労働省が行った無期転換ルールに関する自動車メーカー調査の結果と、無期転換化を促進する取り組みに関する聞き取り調査を行ってまいりました。
 昨年十二月に行った労働基準局の調査によりますと、期間従業員の更新上限は調査した全ての自動車メーカーで設けていて、一定期間の無契約期間、いわゆるクーリング期間を設けているところは七割に及びました。また、その中には、労働契約法改定との関係で、わざわざ六カ月以上のクリーニング期間を設定したところもありました。
 こうした脱法的なやり方を是正させる指導と啓発は、本当に待ったなしの課題だなというふうに思いました。
 国にももちろん要請してまいりましたが、あわせて、都知事に対して、私たち都議団も二月二日に取り組みを要請したところであります。
 そこで、何点か伺いたいと思います。都として、都内の企業で有期契約労働者を対象に、無期転換ルールに関する実態調査を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。

○小金井雇用就業部長 都は、パートや契約社員といった契約形態ごとに労働実態調査を実施しております。
 平成二十四年に労働契約法が改正され、無期転換ルールが制度化されたことから、事業所とその従業員に対して、制度についての認知度や利用希望等について調査することといたしました。
 これまで、平成二十五年度にパートタイム労働者、平成二十六年度に派遣社員、平成二十七年度に契約社員を対象に調査しており、今年度はパートタイム労働者を対象に実施したところでございます。

○あぜ上委員 この実態調査報告書を読ませていただきましたが、本当にたくさんの項目の調査で、貴重なものだったと思います。例えば、平成二十七年度の契約社員対象の調査報告の中にあった無期転換について、これでは、四十代、五十代の方は七割も無期転換を希望されていたことがわかりました。
 事業所や従業員別に認知度や対応予定等を把握することは大変重要だと思うんですが、有期契約労働者を多く雇用をする業種別にやはりデータをとるということも必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

○小金井雇用就業部長 来年、平成三十年度においては、派遣社員を対象に労働実態調査を実施する予定としております。
 調査に当たっては、サービス業や卸、小売業といった業種別に把握できるよう工夫してまいります。

○あぜ上委員 大変重要なご答弁だと思います。ぜひ業種別のデータもとっていただきたいと思います。
 この無期転換ルールは、契約社員のみならず、有期労働契約が同一の会社で通算五年を超えている全ての方が対象であることなど、まだご存じでない方も多くいるのが現状です。パートタイマーやアルバイトでも対象になるということを周知する必要があると思います。
 都としても、直近では、都庁と新宿を結ぶ、動く歩道のところのデジタルサイネージ、あれでお知らせをされているんだなということもわかりましたが、ご努力されていることは承知しておりますけれども、さらなる周知の取り組みが必要だと思います。
 労働者に対する無期転換ルールの周知徹底の取り組みと、都のホームページのトップページなど、さまざまな媒体を活用することを提案いたしますが、いかがでしょうか。

○小金井雇用就業部長 都はこれまで、無期転換ルールの制度周知に向けて、労使向けリーフレットを二千部作成し、労働セミナー等で配布してきたほか、「広報東京都」への掲載や、毎月八千部を発行する雇用就業に関する情報誌へも掲載するなど、さまざまな場面で周知に努めてきました。
 また、二月にリニューアルしたウエブサイト、TOKYOはたらくネットのトップページにも無期転換ルール専用のバナーを配置し、制度の解説や労働相談の専用ダイヤルを案内するとともに、国の無期転換ポータルサイトを紹介するなど、普及啓発に努めているところでございます。

○あぜ上委員 無期転換ルールは、あくまでも本人の申し込み、これが前提になるわけです。引き続き周知徹底の取り組みを拡充することを含めて求めたいと思います。
 また、都の労働相談情報センターとして、無期転換ルールを周知することも含め、特別期間を設けて労働相談窓口を設置するなども大事だと思います。
 実際に、無期転換を前にした雇いどめ、それから就業規則でクーリング期間の変更などが行われているという、先ほどもちょっと紹介しましたが、そういう状況が都内にもあるわけですから、都として、無期転換を前にした雇いどめ、また就業規則でも、こうしたクーリング期間変更などが行われた場合の専門の緊急相談窓口、街頭労働相談を積極的に行うよう求めますが、いかがでしょうか。

○小金井雇用就業部長 都は、無期転換ルールの本格化を目前に控え、この三月には、国とも連携して、労使双方を対象に電話特別相談を実施しており、例えば、自分はいつからルールの適用となるのかといった相談者からの問い合わせに対し、助言を行うなどしております。
 また、労働団体とも連携して、都内四カ所で雇いどめや労働条件の不利益変更などの悩みに応じる労働相談会も開催しているところでございます。
 また、本年五月には都内六カ所にある労働相談情報センターにおいて、新宿駅西口広場や池袋駅構内など人が多く集まる場所で街頭労働相談を実施する予定でございます。
 無期転換への権利は、今後、順次発生することから、引き続き相談等を通じた支援を行ってまいります。

○あぜ上委員 東京都は、本当にそういう意味では非常に大事な取り組みを頑張っていらっしゃるなということは痛感しておりますが、それは大変重要だと思いますが、まだまだ知らない方が多いという実態があるわけですから、さらなる拡充を求めたいと思います。
 また、事業主に対する無期転換ルールの正しい理解の周知徹底も都として行うことを求めますが、いかがでしょうか。

○小金井雇用就業部長 都は、使用者に対し、無期転換ルールに対する留意点や円滑な制度導入の手法等について労働セミナーを開催するほか、街頭労働相談等でリーフレットを配布するなど、啓発に努めております。
 また、労働相談情報センターに配置している七名のアドバイザーが年間約三千四百カ所の事業所を巡回訪問し、事業主に直接、制度説明を行うなど、適正な雇用管理に取り組めるよう支援しております。

○あぜ上委員 確かにそういう取り組みが功を奏して、実は私の地元の江東区内でも、ある保険会社の営業所では、対象者をこの四月から全員正社員に切りかえるという効果も生まれております。ただ、繰り返しになりますが、雇いどめも出ている。二〇一八年、ことしの三月三十一日で雇いどめという不更新の条項の入った契約書を期間社員に渡したというところもあります。
 都が率先して行うことが、やはり全国に広がって、こうした労働者の権利を守る流れをつくることになっていくと私は思います。
 そういう点では、ぜひ、法改正の趣旨が、雇用主に対しても、それから労働者に対しても徹底されるよう、東京都としても一層のご努力を求めたいと思います。
 次に、住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法についてです。
 住宅宿泊事業法、略して民泊新法、これが六月から施行されることとなって、先週の十五日から届け出がスタートいたしました。二〇二〇年には東京オリンピック・パラリンピック大会もあるということで、東京に一時期は集中的にふえる、そういう可能性もあって、都民からは大変大きな不安の声が寄せられております。
 私の地元江東区では、既に民泊による苦情が江東区役所の方に昨年度で六十件に及びました。夜中まで大きな騒ぎ声で迷惑しているが、保健所に相談しても事業主がなかなかわからず、改善まで五カ月もかかってしまったなどのトラブルも残念ながら発生している、そういう状況があります。
 目黒区では、ワンルームマンションで、所有者は社員寮、こういうふうに説明していたんですが、実際には、一泊五千円で外国人観光客を泊めていたことが発覚し、今、訴訟になっていると聞いています。
 また、民泊を悪用した覚醒剤の密輸事件や、ワンルームマンションを使った民泊に宿泊した外国人の女性が性的暴行を受けたという事件も起きているなど、危険が現実的なものになっているのは大変重大なことだと思っています。
 この都庁のあります新宿区では、既に四千件を超える民泊があります。民泊に関する苦情などがこの間急増していて、今年度は既に半年間で二百六十件にもなったそうです。外国からの観光客に、日本のすぐれた景観や文化を知っていただくこと、これは大変重要なことなんですが、市民や住民の生活を損ねるようなことがあってはなりません。
 そうした中で、都内では、二十三区中十八区で、民泊営業の区域制限や期間制限を設けた独自の規制を行う方針を固めていると報道されておりました。
 江東区の所管に伺いました。そうしましたら、パブリックコメントを行ったら、大変不安だという声が出されて、江東区の場合は、居住専用地域が四%しかないんですね。ですから、全域を対象として平日は認めない、そういう規制を行ったということでありました。
 新宿区は、既に条例ができておりますが、区は、事業の届け出があったとき、事業者の名前と連絡先、近隣住民への周知を実施した日時などの公表を行うことや、居住専用地域では、金曜日の午後から月曜日の正午までに事業を限定するなど、六つの規制ルールを条例で定めております。
 東京都の場合はどうかといいますと、パブリックコメントを見ましたら、この結果を見たら、意見は十八人の方でありましたが、規制を求めるものと、事業者側として規制の緩和を求めるものと両方載っておりました。
 各自治体が、やはり市民、区民の不安の声などから条例で規制しているわけですが、都は、ガイドラインにおいて、区域や期間の制限も行っておりません。また、条例ではなくガイドラインとしているわけです。
 東京都は、なぜ条例にしないでガイドラインとしたのか、また、制限する区域や期間をなぜ設けないのでしょうか、その点について伺います。

○小沼観光部長 住宅宿泊事業法は、一定のルールのもと、その健全な普及を図るという目的で制定されたものでございます。
 都が所管いたします市町村区域におきましては、市町村や保健所などの関係部署に寄せられている苦情も少のうございます。
 こうした実態を踏まえまして、市町村とともに検討を重ねた結果、条例による実施の制限は行わないことといたしました。
 一方で、法の趣旨を踏まえまして、しっかりと届け出を促し、指導監督を行き届かせるため、国の法令等の規定を明確にした都独自のガイドラインを策定したものでございます。

○あぜ上委員 市町村と検討を重ねた結果ということなんですが、この民泊の一番の問題は、やはり民泊の運営代行業務を行う住宅宿泊管理業者に運営や管理を委託することができるとして、家主不在でも民泊事業を行うことを認めたことだと思います。だから、各自治体では、住環境を守るための規制を導入して、条例で規定しているんじゃないかというふうに思います。
 また、地震や火事、急病などで宿泊者の方が何かあったときに、その安全を確保する上で、二十四時間の管理が求められるわけですが、報道では、コンビニやホテルなどに運営管理を委託する、こういうことができるということのようなんですが、そうしたコンビニなどで、本当に国内外の観光客の方の身の安全を守れるのかも私は疑問を持っております。
 ガイドラインには、今後進めていく中で見直しもあるというふうに最後の条項のところに書いてありました。市町村と連携して、実態をよく把握していただいて、やはり必要なルールなどは設けていく、また、議会のチェックを受けられるように条例化することを検討していただきたいというふうに思います。これは意見として述べておきます。
 それで、東京都のガイドラインでは、国のガイドラインには規定されていない定期調査を入れたことは大変重要だというふうに思っております。先ほど、栗下理事の質問の答弁で、定期調査、これは、事業所ごとの状況に応じて関係部署と連携して行っていくというご答弁があったんですけれども、連携は非常に大事なことだと思いますが、その定期調査そのものは産労がやるということで、そういう理解でよろしいんでしょうか。ちょっと確認をしたいんです。それから、その報告データは公開するのでしょうか。その二点を教えてください。

○小沼観光部長 都では、独自の取り組みとして、事業の適正な実施の状況確認のため、定期的に届け出住宅等の現地調査を行います。
 具体的には、事業者の状況などに応じ、適宜、衛生、建築、消防などの関係部署と連携しつつ、私ども現地での立ち入り調査に入っていきます。そこで得た状況につきましては、関係部署と共有をさせていただきます。

○あぜ上委員 その共有した報告データは公開するのかという質問だったんですが、ぜひ、この報告データについては公開していただきたいなというふうに思います。これは意見として述べておきましょうか。
 そして、相談窓口、先ほどご答弁の中で、設置をするというご答弁がありましたが、その点も、相談窓口がどこにあるのかというのが一般の方はなかなかわからないと。そういう点では、ぜひ周知をしていただきたいと思います。
 そして、届け出住宅、これは全て公表して、都民からの苦情や通報があれば、都として迅速に対応することが求められていると思いますが、その点について伺います。

○小沼観光部長 届け出住宅の情報につきましては、近隣住民とのトラブル防止などのため、事業者の同意を受けまして、届け出住宅の所在地等をホームページに公開することとしております。
 また、今月より、都が所管いたします市町村区域における苦情を一括して受け付ける窓口を既に設置しておりまして、関係部署と連携して事業者への指導監督を行ってまいります。

○あぜ上委員 一つ確認なんですが、事業者の同意を受けということなんですが、事業者の同意がなかった場合は公表できないということなんでしょうか。ちょっとその一点だけ確認させてください。

○小沼観光部長 国の法令等におきましては、事業者の同意が得られない場合は公表はなじまないというふうにいわれておりまして、ただ一方で、住宅宿泊事業にかかっている住宅があるのは事実でございますので、公表の仕方については、今検討しているところでございます。

○あぜ上委員 先ほど新宿の例を紹介しましたけれども、新宿区でもいろいろ議論があったようなんですが、事業者の名前と連絡先は公表するということになっています。私は当然、公表すべきだというふうに思います。地域に公表し、お互いの信頼関係を土台にしてこそ、おもてなしの心も生まれてくるんじゃないでしょうか。
 ガイドラインでは、民泊の目的に、国民経済の発展に寄与するというふうになっているんですが、経済効果のためなら住民の住環境の保全がないがしろにされるようでは本末転倒であるといわざるを得ないと思います。そういう点をぜひ配慮していただきたいということを強く求めまして、私の質問を終わります。

○ひぐち委員 事業承継、テレワーク、ユニークベニューについて伺います。
 まず、事業承継・再生支援事業についてです。
 先ほど来の質疑でもありましたように、私の方はその二次対応について伺います。
 安藤久佳中小企業庁長官の年頭所感によれば、今後十年間に平均的な引退年齢である七十歳を超える中小企業、小規模事業者の経営者は全国で約二百四十五万人となります。そのうち約半数の百二十七万人、これは日本の企業全体の約三割でありますが、後継者が未定であり、現状を放置すれば廃業の急増で、二〇二五年までの十年間累計で約六百五十万人の雇用、約二十二兆円のGDPが失われる可能性があるとのことです。
 また、そうした廃業企業のうち、約半数は黒字にもかかわらず廃業を余儀なくされているともいわれています。
 団塊世代の引退時期が迫る中、日本の地域社会、産業にとって極めて深刻な事態を迎えております。
 そもそも、地域に密着し、独自の技術、サービスを誇る中小企業の担う役割は大変大きいのであります。例えば製造業でいえば、大手企業が製品の最終組み立てを担う一方で、中堅、中小企業が、部品の供給や工程の請負で支えるという社会的な分業を形成して、日本の製造業は成長してきました。
 中小の製造業の相次ぐ廃業で、日本のサプライチェーンを弱体化させる可能性もあり得ます。実際に、大企業が気づかないうちに重要な中小企業が廃業したり、外資に買収されていたりすることもあるそうです。
 製造業にとどまらず、廃業を余儀なくされているのは、歴史の長い老舗企業、工芸品を手がける伝統企業など数多く含まれています。こうした中小企業が持つすぐれた技術を次代に引き継ぎ、東京の産業活力を維持するために、着実な事業承継の取り組みが大変重要であります。
 そのような中、振り返ってみますと、都では既に平成十七年度から事業承継・再生支援事業に取り組んできています。当初の主な事業は再生支援であったわけですけれども、リーマンショックで傷んだ、あるいは超円高で疲弊した中小企業の再生とともに、この事業承継支援は継続して行われてきています。そして平成二十七年度からは三年間にわたってそれぞれの中小企業に入り込み、事業承継を支援する長期継続支援が進められています。
 そもそも、支援策の方針を策定するには、企業の経営内容の棚卸しを行い、有形、無形を問わず、資産の見える化が必要でありますが、例えば、国では知的資産の承継として、知的資産経営報告書の活用が勧められています。
 そこで、都は、中小企業の事業承継を三年間継続してサポートしていますが、こうした見える化も含めて計画を立てていくべきと考えますが、具体的な支援内容について伺います。

○坂本商工部長 都は、お話にございましたように、平成二十七年度より、中小企業が事業承継の計画をつくり、その内容を実現できるよう、中小企業振興公社において三年間の継続的なサポートを開始いたしました。
 具体的には、毎年度十社までを対象といたしまして本格的に事業の承継に取り組む企業を選び、公社のスタッフが財務諸表や組織のマネジメントの状況に関し分析をするとともに、経営者への信頼感や取引先の人脈、従業員のノウハウなどを含めた幅広い情報を整理し、承継の計画づくりをサポートしております。
 また、計画の実現に向け、専門家がアドバイスや進行管理を行いながら後継者の教育や事業内容の改善などを支援するほか、平成二十八年度からは、承継の手続に必要な経費の三分の二について、二百万円まで助成を行っているところでございます。

○ひぐち委員 ありがとうございます。財務諸表にとどまらず、知的資産ともいうべき信頼関係や人脈、ノウハウなど幅広い情報の整理を行い、また、後継者の教育、事業内容の改善まで支援しているということでございます。
 それから、やはり事業をそのまま引き継ぐだけで、展望の開けない場合も少なくないようです。受け継ぐ事業が一つ前の時代に応じた事業であるような場合には、周囲の同業者も同様の状況にあるため、次の時代に対応できるように変えていこうとする意欲を持つまでにはなかなか至らない。その一方で、年々仕事は減っていて、縮小に身を委ねているといった話も耳にします。
 つまり、事業をベースにしながら新たな要素をつけ加えていくなど、希望が持てる事業に変えていくこと。大変難しいことでありますが、時代状況を見据えながらの事業承継支援がまさに求められています。
 さて、本年度でちょうど平成二十七年度からの最初の長期継続支援の三年間が満了するわけでありますが、承継にとどまらず、こうした時代状況を見据えながらの支援、そうした継続的なサポートを行ったことによる成果の事例と今後の展開について伺います。

○坂本商工部長 都は、中小公社を通じ、現在まで二十四の中小企業の事業承継を複数年にわたり継続的に支援してまいりました。これによりまして、承継に向け、経営内容の改善を図り、売り上げや営業利益が増加した実例のほか、従業員の中から承継にふさわしい人材を選んで、経営の引き継ぎを実現した案件などの成果を生み出しているところでございます。
 こうした取り組みによる効果が高いことを踏まえまして、来年度から新たにサポートを始める企業の数を、これまでの倍の二十社に引き上げ、支援の拡充を図ってまいります。

○ひぐち委員 ありがとうございます。三年間で二十四の中小企業を支援し、経営改善、売り上げ、利益増、従業員への承継などの成果が上がっていると改めてわかりました。やはり都、そして公社にあって外回りを行う皆さんが、まず、中小企業の経営者との信頼関係を築いてこられたこと、そして地道で丹念な粘り強いサポート、最後までしっかり見届けるんだという強い思いによるものだと思います。
 相談員も、当初の二名から後に三名、そして今回の平成三十年度予算においては十名と格段にふえているわけでありますから、中小企業の経営者の皆さんのために、ひいては東京の産業、地域の活力を維持するために、ますます尽力していただきたいと思います。
 最後に、第三者承継について述べておきます。
 政府では、中小企業の事業承継税制改正、つまり、相続税や贈与税に関する抜本的な緩和に乗り出していますが、親族間の承継を優先しているようにも思えます。
 一方で、直近十年では法人経営者の親族内承継が急減し、従業員や社外の第三者といった親族外承継が六割を超えているというデータもございます。やはり親族外承継もあわせて促進していくべきと考えます。
 しかし、こうした第三者承継の最大の課題は、個人保証の問題と買い取り資金の大きさにあります。せっかく従業員に経営者教育を行っていても、業種や業態によっては設備や資産が大きく、普通の個人では手に負えない場合、あるいは家族の理解が得られず、承継ができない場合もあります。
 そこで、承継する先が家族、親族でもなく従業員でもない、会社合併により事業承継を進める、三十年度から新規で検討されている第三者承継支援事業、いわゆるM&Aの実行支援については前向きに評価したいと思います。
 ただし、M&Aであっても、通常、相手を見つけるのに平均で二年、実際に経営を受け渡すまでには少なくとも一年は必要になるといわれています。M&Aに限らずですが、事業承継が手おくれにならないよう、泣く泣く廃業してしまわぬよう、私は、さらに気づきを促進するような経営者の皆さんの心に響く文言を、ぜひ事業PRの際は検討されることも要望いたします。
 都の許認可が必要な業態、例えば建設業における経営業務管理責任者には五、六年の経営経験が必要となるなど、要件を満たすのが大変な場合もあるわけです。こうした場合、急な承継準備では間に合いません。あるいは、経営者の事故や病気なども当然考えられます。
 冒頭申し上げたとおり、二〇二五年までの十年間が勝負であります。日本の地域社会、産業にとって極めて深刻な事態を回避すべく、そして、さらに気づきを促進するような普及啓発、巡回相談を行っていただくよう強く要望いたしまして、次の質問に移ります。
 昨年、事務事業質疑にて、テレワークについて伺いました。米国では、既に約九割の企業でテレワークが導入されている一方で、日本のテレワーク導入企業率は、平成二十八年度、一三・三%です。
 そうした中で、都は今回、二〇二〇年度には、従業員三十人以上の企業におけるテレワーク導入率を三五%とする目標を出しています。こうした大変意欲的な数値制定を私は率直に評価したいと思います。
 しかし、昨年も述べましたが、一般的にテレワークは、営業など外回りが多い業種と、生産現場や接客サービスなどが中心の業種では、導入に向けた課題や手法が異なります。高い目標を達成するためには、業種ごとの実情を踏まえながら、製造業や建設業など導入が難しいと思われる業種にも効果的に支援していくべきであります。
 都は今年度、モデル実証事業を実施しており、今後、その効果や課題を把握するとしていますが、まず、今年度の取り組み状況を伺います。

○小金井雇用就業部長 今年度、製造業や卸売業など七業種十九社に対してモデル実証を行い、その効果や課題を検証する事業を実施しました。
 参加した企業は、従業員が十一人といった小規模企業から九百四十四人の中堅企業までと幅広くなっており、実際に在宅勤務やサテライトオフィスなどのテレワークを二、三カ月にわたり行いました。
 そのうち、終日在宅勤務については全ての業種において利用が多かった一方で、営業や販売などの職種ではサテライトオフィスやモバイルワークに取り組む例が多いなど、職種によっての特徴が見られました。
 また、従業員からは、テレワーク導入のためには、ペーパーレス化や社内手続の簡素化が課題であるとの意見が多くありました。
 本事業の結果については、現在、詳細な分析を行っているところであり、来年度早々に公表を行う予定としております。

○ひぐち委員 ありがとうございます。モデル実証事業を通して、現状わかっている特徴や課題について答弁いただきました。
 さて、テレワーク導入率三五%の達成には、そもそもテレワークの有効性の周知が必要であります。
 総務省の通信利用状況の調査によると、企業がテレワークを導入しない理由は、テレワークに適した業務がわからないが七四・二%でトップでありました。今後、詳細な分析をもとに、テレワーク導入によって課題解決できた事例を、同じ経営課題を抱えている同業種に周知することは効果的です。
 テレワークのさらなる拡大に向けて、その結果をどう具体的に生かしていくか、所見を伺います。

○小金井雇用就業部長 来年度は、製造業、卸小売業、建設業の三業種を対象に、業種ごとに特化したテレワークの導入事例や効果的な運用ポイントなど、具体的な企業現場での活用を想定した業種別ハンドブックを作成することとしており、自社でもテレワークができるということに気づいてもらい、企業の導入意欲を向上させていきます。
 また、都内各地で実施しているテレワーク体験セミナーの開催規模を拡充し、ハンドブックを活用したセミナーを業界団体とも連携して新たに開催することで、テレワークを普及させてまいります。

○ひぐち委員 モデル実証事業を踏まえ、三十年度は明確に三業種、一般的に導入が難しいと思われる製造業、建設業などのハンドブックを作成、また、業界団体とも連携したセミナーを開催する予定との答弁でありました。大変積極的な取り組みであると思います。
 では、導入時に抱えるさまざまな課題、不安を解決していく際に、まずはハンドブックやセミナーは入り口としてはよいかと思いますが、それだけで実際に導入まで至るのは難しそうです。
 実際によく挙がる課題としては、労務管理の難しさ、プライバシー侵害、知財、顧客情報などの情報漏えい、または導入コストなどがあります。
 そこで、来年度は、本年度設置されたテレワーク推進センターにとどまらず、都みずから、直接、企業のテレワーク導入支援に取り組んでいくとのことですが、まずは、テレワーク推進センターの例えば来場者数など、実績、成果を伺います。
 また、都は、企業に専門家を派遣する事業を実施するとしていますが、果たしてコンサルティングが有効なのか、テレワーク導入を加速していけるのか、その実効性を伺います。

○小金井雇用就業部長 東京テレワーク推進センターには、大企業の人事担当者から小規模企業の経営者まで幅広い層の方が来られており、二月末までの来場者数は三千二百五十五人でございました。
 来年度から開始するコンサルティング事業でございますが、テレワーク導入を目指す中小、中堅企業二百五十社を公募し、民間委託により実施するものでございます。
 派遣するコンサルタントは、人事、ICT、業務改革等の知識を有する専門家がチームを組み、テレワーク導入の前提として必要となる業務プロセスの見直しやペーパーレス化など具体的な改善策を提案いたします。
 テレワーク導入に当たっては、業種や職種によって課題がさまざまであることから、企業の実情に応じた専門家を派遣することで、その実効性を高めてまいります。

○ひぐち委員 企業の実情に応じて、それぞれの専門家がチームとなって、テレワークというツール、システム導入にとどまらず、業務プロセスの見直しまで含めた具体的な改善に取り組んでいくとのことです。
 そもそも、働き方改革での生産性とともに、テレワークは、参加率を上げて、育児や介護など制約のある方が安心して働けるようになることも大切な観点であります。また、移動、通勤時間の短縮など負担軽減、職場条件の改善が明確であります。
 私は、先日も申し上げましたが、今までの企業で働く人の、そして行政の常識を変えるべきだと考えています。過敏ともいえる日本らしいチームワーク意識、長く働くこと、何かと職場にいること、そういった常識を変えていかなければなりません。
 改めて申し上げますが、数値目標を掲げたことは大変すばらしいのですが、直接的な導入支援まで行っていくに当たり、数値目標の裏にある目的を再度ご認識いただきたいと思います。つまり、あくまで働き方改革やテレワークは、企業の生産性向上や働く人一人一人の幸せ、生きがいを実現するための手段であり、目的ではない点を、民間委託先とも認識を合わせながら鋭意取り組んでいただくことを求めまして、最後の質問に移ります。
 さて、昨年の事務事業質疑では、MICE、ユニークベニューについても伺いました。私は、中小企業のMICEというものに注目しております。例えば日本の伝統、精神文化が誇る、また、東京の文化資源でもある神田明神のレセプションなど、東京の特色を生かしたMICE誘致については、都からは、大規模なものから中小規模まで幅広くMICE誘致の取り組みを促進する、加えて、東京の文化資源となっている江戸時代から続く歴史と文化を有する伝統的なまち並みや建物などをユニークベニューとして活用する取り組みを進めるなど、東京ならではの中小規模のMICE誘致の取り組みを推進するとの答弁をいただいています。
 そこで、都は来年度、いよいよユニークベニューに関する相談窓口を開設し、相談や情報提供などのサービスをワンストップで提供するとのことですが、まず、具体的なサービス内容について伺います。

○小沼観光部長 来年度、都が設置いたしますユニークベニューのワンストップ窓口では、専任の職員を配置しまして、国内外のMICE主催者等が行うユニークベニューの選定作業や煩雑な手続等の負担を軽減するサポートを行います。
 具体的には、利用者のニーズに応じ、利用可能な施設を紹介するとともに、施設側と、実施日程やレセプション等の詳細を調整いたします。
 また、施設の利用に必要な関係行政庁との調整のサポートや、イベントプランの企画、提案、会場設営事業者やケータリング等の事業者紹介などを実施いたします。

○ひぐち委員 今までは事業者任せであったところを、ワンストップの相談窓口をつくることで、MICE誘致をさらに円滑に促進するとのことで理解いたしました。積極的な取り組みを評価したいと思います。
 一方で、そもそも現状のユニークベニューは、都立施設、民間施設ともに比較的規模が大きいものが多く、そもそも東京の持つポテンシャル、奥行きのある重層的な営み、まちの歴史、土地の風土、文化や伝統から考えても、まだまだ少ない状況であります。誘致だけにとらわれるのではなく、ユニークベニューの開放も積極的に進めていくべきとしたところ、先般、都からは、さらにユニークベニューの利用が可能な施設数の拡大に向け、都内での関連施設の状況を調査し、候補施設を洗い出し、開放されていない民間施設や区立施設の施設管理者などに対し、ユニークベニューとしての利用を積極的に働きかけるとの答弁もございました。
 そこで、このワンストップ窓口では、ユニークベニューの施設を紹介するという話ですが、そのまちの歴史や営みを体感できる上、小さなレセプションなどのイベントが開催できる文化資源もユニークベニューとして紹介するべきと考えますが、所見を伺います。

○小沼観光部長 ユニークベニューの利用は、開催するイベント等の規模、内容により活用方法や課題が異なっております。そのため、主催者等のさまざまなニーズに的確に対応していくには、利用可能な施設の数、規模、種類をふやしていくことが重要でございます。
 地域に根差し、まちの歴史や、その土地に暮らす人々の営みを体感できる施設は、小規模な施設であってもユニークベニューとして非常に魅力的でございます。
 今後、そのような施設も含めて状況を調査し、利用に向けた働きかけ、施設管理者の協力を得るとともに、協力が得られたものについては、MICEの主催者等に紹介してまいります。

○ひぐち委員 こちらも前向きなご答弁ありがとうございます。引き続き、地域に根差した小規模な施設も含めたユニークベニューの積極的な開発、開放を、ぜひともよろしくお願いいたします。
 地域で受け入れ可能な中小のMICEの誘致を進めるとともに、こうした旅行者を迎え入れる機運を醸成していくべきでありますが、先般、都では、都民や事業者に対して地域活性化の効果を周知し、旅行者を迎え入れるべく機運醸成を図っていくとの答弁がありましたが、やはり観光部と観光協会などとの連携が地域の文化施設をユニークベニューとして活用するには必要と考えますが、所見を伺います。

○小沼観光部長 地域の歴史的、文化的な施設をユニークベニューとして活用するには、都における取り組みに加えまして、その地域に根差した団体との連携が不可欠でございます。
 都は現在、新たなユニークベニュー施設の掘り起こしに向けて、地域の観光協会の協力も得ながら取り組んでおります。
 来年度、都が設置いたしますユニークベニューのワンストップ窓口においても、観光協会との連携を強化しながら、規模は小さくても地域に親しまれている魅力的な施設の掘り起こしを行うとともに、それらの施設の積極的な活用に向けた支援を実施してまいります。
 地域ならではのユニークベニューを活用することで、開催都市としてのプレゼンスの向上を図り、MICE誘致を推進してまいります。

○ひぐち委員 ありがとうございます。地域に根差した団体としては、観光協会はもとより、まちづくり系のNPO、商店街、あるいは近隣の大学の研究室などさまざまなところが挙げられるのではないでしょうか。ぜひこうしたところと連携し、魅力的な施設の掘り起こしをお願いいたします。
 再度申し上げますが、私はユニークベニューの活用によって、地域の歴史や文化を多くの外国の方々に知ってもらう、訪れてもらう、また、そこで飲食を行い、買い物もしてもらう、滞在してもらう、そういったことが、まさに地域の活力につながると考えております。つまり、地域に根差したユニークベニューで会議やレセプションを行い、夜はその地域の昔ながらの料亭、レストラン、定食屋でご飯を食べ、商店街で買い物し、お風呂は近くの銭湯に行ってもよし、そして、近くの旅館やホテルに泊まる。このように、中小規模のユニークベニューの活用をこうしたところにまで結びつけるモデルケースの作成をぜひとも検討いただき、海外の活力を取り込み、地域振興にまでつなげる取り組みを強く要望いたします。
   〔発言する者あり〕

○伊藤委員長 どうぞ続けてください。

○ひぐち委員 本日は、事業承継、テレワーク、ユニークベニューについて伺いました。それぞれ背景、課題は異なりますが、いずれのテーマも、やはりワンストップサービスと専門チームによる個別、出前型の支援がキーワードだと思います。
 今回取り上げた事業での積極的な姿勢を私は評価しております。ぜひとも都には、三十年度予算、これら事業に精力的に取り組んでいただき、目標値やそもそもの目的を達成するよう要望いたしまして、質疑を終えさせていただきます。

○柴崎委員 東京は、都心や多摩、さらには島しょなど地域ごとにそれぞれ特徴を持つわけでありまして、多様性に富んだ都市であります。産業の発展を考える上では、こうした地域の特色や強みを生かして、経済の活性化に取り組むというという視点が欠かせません。私からは、こうしたことを踏まえまして、商工、観光、農業など、地域の産業振興について幅広く伺っていきたいと思います。
 初めに、地域産業の活性化について伺います。
 現代の地域社会は、福祉、環境、防災、教育などさまざまな分野において課題を抱えているわけであります。したがいまして、地域の活性化には、こうした諸課題の解決が欠かせません。
 私の地元の練馬区におきましても、高齢者人口は既に十五万人を超えております。そして、老朽木造住宅の密集したエリアも抱えるなど、高齢化、そして防災への対応は大変大きな問題となっているわけであります。
 こうした中、近年発展が目覚ましいIoTやAI、ビッグデータといった技術に着目し、課題解決につなげていこうという動きがあります。例えば、IoTを用いてひとり暮らしの高齢者の見守りを行うサービスなど、最近は報道でこうした取り組みを目にすることもふえてきております。
 そこで、都内の自治体とこうした技術を持つ企業などを結びつけていくことで、地域課題の解決に資するだけでなくて、新たなビジネスの創出、こうした地域経済の活性化につなげることができるものと考えますが、見解を伺いたいと思います。

○坂本商工部長 これまで都は、中小企業の事業活動を後押しして産業の集積に結びつける区市町村の計画的な取り組みに対し、サポートを行ってまいりました。
 来年度は、中小企業が区市町村と連携して、最新のIT技術などを用いて、地域の抱えるさまざまな課題の解決に役立つ製品の開発や、その実証実験を行う取り組みを三件選定して支援を行います。
 具体的には、製品の開発と実証実験に必要となる経費を対象といたしまして、区市町村を通じ、単年度五千万円を上限といたしまして、二分の一の補助率で二カ年にわたり助成を行います。
 こうした取り組みによりまして、地域での中小企業の活動を効果的に支援をして、産業の活性化に結びつけてまいります。

○柴崎委員 地域課題の解決につながる中小企業の新たな製品開発や実証のための取り組みを支援していく、こうした今、部長からの答弁でありました。
 こうした事業を成功に導いていく鍵は、都や区市町村、そして事業者との緊密なる連携であります。都は助成金を交付するだけでなくて、プロジェクトの内容に応じ、それぞれの主体が役割を果たせるよう、踏み込んだサポートを行う必要があると考えます。その内容について伺いたいと思います。
 また、来年度採択予定の、今答弁にありましたが三団体、これをモデルとして、他の地域にも取り組みが伝播するような工夫が必要だと思います。こうした視点からの取り組みについてもあわせて伺います。

○坂本商工部長 中小企業が区市町村と連携して、製品の開発とその実証実験を行うに当たり、都は、資金助成のほか、進行管理や技術の面からもきめの細かいサポートを行うこととしております。
 具体的には、自治体と中小企業が協議や調整を行う場に専門家を派遣して、プロジェクトが円滑に進むように後押しをするほか、実証実験に関する技術的な助言も行います。
 こうして開発をした製品や実証実験の結果に関しまして、ウエブサイトなどにより幅広く発信をしてまいります。
 これらによりまして、区市町村を通じた中小企業への支援を着実に進めてまいります。

○柴崎委員 この事業につきましては、まずは成功事例を着実につくり出すことが重要であると思います。新年度からの取り組みに大いに期待をしていきたいと思っております。
 ただいまのような取り組みは、地域の発展に向けた一つの処方箋になると思いますが、これもそれぞれの企業が活動を継続できるという大前提があってこそであります。特に、ものづくりの企業にとりましては、近隣や周辺、こうした関係という問題を避けて通ることはできないわけであります。
 都内製造業の事業者数は、廃業や都外へ移転するなど、ここ五年の間に約二割も減少したわけであります。経営や取引関係の理由だけでなく、騒音や振動など周辺の生活環境への影響も要因としてあるようであります。
 近年では、工場跡地の宅地化がさらに進んでおります。したがって、以前にも増しまして、地域との相互理解が求められているわけであります。
 また、震災で工場が損壊し、周囲に危険が及ぶのではないかといった住民の不安解消も大きな課題となっております。
 都としては、地域との調和や共存を目指す企業のいろいろな取り組みを支援していくべきと考えますが、新年度の取り組みについて伺います。

○坂本商工部長 これまで都は、ものづくり企業が都内で工場を移転するための費用や周囲の住宅エリアに配慮した防音の設備などを導入する経費について、区市町村を通じ、助成を実施してまいりました。
 来年度からは、製造業の現場が、周囲の居住環境との調和や地域社会と良好な関係を生み出す取り組みも新たに支援の対象に加えることといたします。
 具体的には、工場の外壁を緑化する場合や近隣住民との交流スペースを敷地内に整備する取り組みなどを対象といたしまして、必要経費の二分の一を上限二百五十万円まで助成をいたします。
 また、震災時に工場の倒壊などで周囲に被害の及ぶことのないよう、耐震の診断を初め、その設計や工事に要する経費につきましても、合計で七百万円を上限に三分の一の助成を実施いたします。
 これらによりまして、中小製造業が地域の中で操業を継続できる環境整備の取り組みを後押ししてまいります。

○柴崎委員 ものづくりの重要性は、古今変わることはありません。すぐれた中小企業が地域の一員としていつまでもあり続けられるよう、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
 次に、観光振興について伺いたいと思います。
 昨年、海外から日本を訪れた旅行者は二千八百六十九万人を数え、過去最高を記録したわけであります。東京におきましても、二〇二〇年に訪都外国人旅行者数二千五百万人という目標達成に向けまして、旅行者の誘致にさらに力を入れていく必要があると思います。
 こうした中におきまして、先般公表いたしました観光産業振興実行プラン二〇一八において、新たに外国人旅行者数の市場別の数値目標を設定したわけであります。この目標を達成するためには、欧米豪地域や東アジア地域など、それぞれの市場の特性に応じた効果的なプロモーションを行っていくことが重要と考えます。
 来年度の都の取り組みについて伺いたいと思います。

○小沼観光部長 都はこれまで、アジアや欧米豪地域を対象に、現地旅行博への出展や旅行事業者向けセミナー、商談会など、さまざまなプロモーションを積極的に行ってまいりました。
 来年度、欧米豪地域では、現地の広告媒体等を活用しまして、富裕層の志向に応じたプロモーションの対象を、これまでの二都市から四都市に拡大して実施してまいります。また新たに、世界最大級の富裕層向け旅行商談会への出展を行います。
 訪都リピーターが多い東アジアにおきましては、現地に設置をしております東京観光レップを活用しまして、現地旅行事業者に対して観光セミナーを実施し、旅行者の再訪意欲を刺激するような東京の最新のトレンドや、まだ知られていない魅力等を積極的にPRいたします。
 今後、市場として成長が期待される東南アジアにおきましては、旅行地としての東京の認知度を高めるため、これまでの旅行博への出展に加えまして、同時期に交通広告や屋外広告等を展開いたします。
 こうした市場の特性に合わせた効果的なプロモーションによりまして、訪都外国人旅行者数の着実な増加につなげてまいります。

○柴崎委員 都として初めて市場別の目標を設定したわけでありますから、東京の持つ観光資源、これを最大限に活用しながら効果的なプロモーションを行い、そして目標の達成に向けてしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 次に、観光消費の拡大に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 人口減少と少子高齢化が進み、今後の内需の大幅な伸びが期待できなくなります。こうした中、昨年の訪日旅行者の消費額は初めて四兆円を超えるなど、観光は我が国の経済を支える有力な産業へと成長してきているわけであります。
 個人旅行者の増加により、多様化する外国人旅行者の消費ニーズを確実に捉え、そして、需要の取り込みを図ることがさらなる消費拡大に向けて不可欠であります。そのためには、観光事業者が外国人材を活用するなど、外国人の目線による商品の企画、そしてサービスの提供、こうしたことを進める取り組みを後押ししていくことは重要であります。
 あわせて、都内において旅行者が買い物をしやすい、そうした環境を広げていくことが必要であると思います。
 インバウンド消費の活性化に向けた来年度の都の取り組みについて伺います。

○小沼観光部長 都は、外国人旅行者の集客に取り組む事業者に対しまして、サービスの向上に役立つノウハウを提供する専門家の派遣や決済端末の導入等の助成を行っております。
 今後は、外国人旅行者のニーズに合ったサービスを提供できるよう、観光産業への就職を希望する外国人留学生等の採用に向けた支援を実施いたします。
 具体的には、事業者向けに採用ノウハウ等を助言する専門相談員を派遣するほか、留学生と事業者の双方に向けまして、コミュニケーションのとり方や文化の違いへの対応策等について解説するセミナーなどを実施いたします。
 また、旅行者のさらなる消費を喚起するため、免税店になる際の申請方法等に関する電話相談窓口を設置しますとともに、免税店の運営方法やインバウンド対応の好事例等の情報提供を行うサイトをつくることで、外国人旅行者が都内で買い物をしやすい環境の整備を進めます。
 こうした取り組みによりまして、事業者の対応力を高め、観光産業の成長につなげてまいります。

○柴崎委員 日本に来ている留学生が日本で就職したいという希望が多いということを聞きます。外国人の視点を取り入れることで、新たなサービス開発なども期待ができるわけであります。
 また、免税制度は改正も多く、こうした情報をわかりやすく発信することも極めて重要だと思います。事業者がインバウンド需要を継続的に取り込めるよう、情報提供、人材の確保、育成、そして資金面など、トータルでの支援の継続を要望して、次の質問に移ります。
 島しょ地域では、各島が観光客の誘致に向けてさまざまな努力を積み重ねております。また、この数年の間でポータルサイトによる情報発信など、島同士が力を合わせた観光のPR活動も進んできたと思いますが、さらなる誘客に向けて発信力を強化する必要があります。
 また、島しょ地域における旅行者の回遊性を高めるための仕組みづくりとして、旅行者が複数の島をめぐるスタンプラリー、東京島めぐりパスポートなどが行われております。
 この事業の効果を一層高めていくためには、民間事業者を巻き込むなど、さらに取り組みを進めることが重要であると思います。
 島しょ間が連携した観光振興について、今後、都としてどのように取り組んでいくのか所見を伺います。

○小沼観光部長 島しょ地域の観光振興を進めるため、都は、各島の自治体や観光関連団体とともに協議会を設立し、専用ポータルサイトの運営のほか、PRイベントの開催による情報提供や人材育成研修など、島同士が連携して来客を促し、その消費を喚起する仕組みづくりを支援しております。
 昨年十月からは、複数の島をめぐり、スタンプを集める、東京島めぐりパスポート、しまぽを都が電子化いたしまして、宿泊や店舗などで使用できるプレミアムつき宿泊旅行商品券、しまぽ通貨と組み合わせることで、誘客と消費を促す取り組みをさらに充実させたところでございます。
 来年度は、これらに加えまして、島外での観光イベントへの出展をふやすとともに、観光セミナーの開催など、旅行事業者向けに新たなPRを実施いたします。
 また、島内事業者との意見交換等を行いながら、複数の島をめぐるツアーの開発ですとか、島めぐりに役立つリーフレットの作成など、各島の回遊性を高めるためのさまざまな取り組みを通じて、島めぐりブランドとしてのしまぽの定着を図り、さらなる旅行者の誘客につなげてまいります。

○柴崎委員 都会から少し足を延ばすだけで、豊かな自然のもと、ダイビングやサイクリングなどを楽しんだり、温泉や新鮮な海の幸を堪能することができるわけであります。島は東京にとって貴重な観光資源の宝庫であります。これからも各島の魅力の発信を支援するとともに、島同士が連携した取り組みを後押しするように要望いたしまして、次の質問に移ります。
 MICEの誘致をめぐっては、世界の各都市も力を入れているため、競争が激しさを増していると聞いております。
 東京で開催されております国際会議の件数というのは、アジアの競合都市であるシンガポール、あるいはソウルと比較いたしましても大変おくれをとっている状況であります。
 そうした中で、既存の国際会議を呼び込むだけでなく、国内会議そのものを国際会議化するとの施策を打ち出したことは注目すべき部分であると考えております。こうした取り組みは、都における国際会議の開催件数が着実にふえるとともに、東京の新たなPR機会の創出や、誘致した場合と同様の経済波及効果が期待できるわけであります。
 国内会議の国際化について、具体的にどのように取り組みを行う考えであるのか伺います。

○小沼観光部長 都は、海外都市との間で誘致を競い合う国際会議等について、東京での開催の働きかけや会場の確保に必要な経費の助成を行っております。
 来年度は、東京で開催される国内会議に外国人を多数呼び込み、会議の国際化を図る取り組みの支援を新たに行います。
 具体的には、国内会議の主催者に対しまして、会議開催時の同時通訳、資料翻訳などに要する経費の二分の一を助成し、会議の多言語化を図ることで外国人の参加を促進いたします。
 また、会議開催前には、PR活動等に要する経費を助成しまして、海外で開催される同じ分野の国際会議、学会等においてブースを出展し、海外からより多くの参加者の獲得を目指します。
 さらに、会議等に参加する外国からの来訪者に、東京の魅力や日本文化を体験するプログラムを提供しまして、参加者の満足度の向上を図ることで、東京への再訪を促します。
 こうした取り組みを通じまして、MICE誘致を積極的に展開してまいります。

○柴崎委員 国内会議が国際化されるということは、新たなインバウンドを取り込むことにもなるわけでありますから、今後も都内での開催がふえるよう、効果的な支援に取り組んでいただくことを要望いたしまして、次の質問に移ります。
 次に、都市農業についてお伺いいたします。
 東京の農地は、安全・安心な農産物の生産に加え、防災や環境保全など多面的な機能を有しております。また、私たちの生活に潤いや安らぎを与えるなど、豊かな都民生活の形成に大きな役割を果たしております。
 しかし、宅地開発や相続などにより、都全体で毎年約百ヘクタールもの農地が減少しております。私の地元練馬区でも、キャベツを中心に野菜の生産が盛んに行われておりまして、約二百ヘクタールの農地が残っておりますが、毎年約六ヘクタール、この農地が失われ続けているわけであります。
 このような状況の中で、これまで都は、都市農業保全に向けてどのように取り組んできたのか所見を伺います。

○藤田農林水産部長 これまで都は、農産物の生産基盤であり、都市の中の貴重な緑地空間である農地の保全を図るため、都市農地保全支援プロジェクトにより、都市農地が持つ多面的な機能のさらなる発揮に向けた施設整備等に対し支援をしております。
 具体的には、農地の防災機能を高めるための防災兼用農業用井戸や、地域環境に配慮した農薬飛散防止施設、畑からの土砂流失防止施設の整備など、区市町が行う取り組みに対し支援を行っております。
 なお、今年度は十五区市の取り組みに対し支援を行っております。

○柴崎委員 ただいまの答弁にありましたように、防災など、農地が持つさまざまな機能を効果的に発揮させることで、都市農地の保全に取り組んでいくことが重要であります。
 先ほど述べましたように、農地の減少が続いており、二〇二二年問題で農地の宅地化が進むことも懸念されているわけであります。
 そこで、これまでにない新たな発想で農地を保全していくことも必要と考えますが、見解を伺いたいと思います。

○藤田農林水産部長 都は来年度から、農地の創出・再生支援事業を開始し、宅地を農地に転換し、新たに農地を創出する取り組みと、遊休化している農地を再生する取り組みに対し支援をしてまいります。
 具体的には、市街化区域において、意欲ある農業者が経営規模を拡大するため、所有しているアパートや駐車場などを再び農地に戻す際のコンクリートなどの基礎部分や駐車場の舗装盤の撤去、栽培に適した土の搬入など、農地の創出に係る経費の補助を新たに開始いたします。
 また、市街化調整区域や島しょ地域において、遊休農地を再生するために行う樹木の伐採、抜根といった障害物の除去や、整地に要する経費の補助につきましても引き続き行ってまいります。
 こうした取り組みを実施することにより、農地の有効利用を図ってまいります。

○柴崎委員 農地の減少に対し、これまでの農地保全策に加え、宅地を農地に転換し、積極的に農地を創出するといった観点から取り組みを始めることに対しまして大きな期待を持っております。
 今後、区市町村との十分な連携のもとで新事業を円滑に実施するとともに、さまざまな視点から農地の保全に全力で取り組んでいただきたいと思います。
 これまで、それぞれの地域の強みを生かした産業振興について、商工、観光、そして農業を中心に幅広く伺ってまいりました。東京の経済を本当の意味で元気に、そして持続的に成長できるものとするためには、さまざまな特色や強みを持つそれぞれの地域の産業を元気にしていくことが欠かせません。
 商工業、観光業、農業などそれぞれの地域産業を活性化していくためには、産業労働局の皆さんには、区市町村、そして地域の事業者とも緊密に連携をしていただいて、来年度のさまざまな魅力的な取り組みをしっかりと進めていただくように要望いたしまして、質問を終わります。

○細田委員 私からは、大綱三点にわたって質問させていただきます。
 まず、中小企業の円滑な資金繰りを支援するための動産や債権を担保にする融資、いわゆるABL制度について伺います。
 中小企業の皆様が保有している機械や設備、車両、建設機械、工作機械や、また売り掛けの債権などの資産を担保として、金融機関から不動産担保に頼らないで事業資金を借りることができる都の独自の画期的な制度であります、いわゆるこのABL制度、さきの事務事業質疑におきましても、我が党の質問に対しまして、ABL制度の融資の実績が、制度創設当初の約三十億円から年々大幅に増加して、今年度は二百億円を超える見込みとの答弁がございましたが、改めて、現時点においての実績と見込みはどうなのか、その利用動向についてお尋ねします。

○加藤金融部長 動産・債権担保融資制度、いわゆるABL制度でございますが、ただいま委員からご指摘のとおり、不動産などの資産の少ない中小企業にとって、保有する機械、設備、売掛債権、在庫といったさまざまな事業資産を担保として事業資金を調達できる都独自の資金調達手法の一つでございます。
 今年度の融資実績でございますが、平成二十八年度の約百七十二億円に対し、一月末現在で既に百六十六億円を超えており、例年三月に大きな資金需要が発生いたしますことから、年度末には二百億円を上回る見込みでございます。
 次に、利用動向といたしましては、商品の仕入れから販売代金の回収までに相当程度の期間を要する卸売業者の利用が全体の約六割を占めております。また、平成二十八年度に本制度を利用した企業のうち、今年度も再び利用した割合が八割を超えており、リピーター率が高くなっております。
 加えまして、本制度の利用により、中小企業の事業実態に関する金融機関の理解が深まることで、積極的な事業展開に向けた新たなプロパー融資につながり、業績が向上したというような事例などもございます。

○細田委員 一度利用した企業が再度利用する率が高い、さらには、企業の成長につながるような事例も生み出されているということで、まさに今、答弁であった使い勝手がいいという、そういうことだと思います。我が党がこれまで主張してきた資金調達の多様化の視点からも、ABL制度、これが大変に有意義に、そして有効的に機能していることがわかりました。
 金融機関の中小企業に対する再評価にもつながっているということ、また、都の独自の融資によりまして、金融機関に、まさに安心感を与えて、事業の内容、そして価値、可能性等について新たに芽を開かせているということもわかりました。どちらにもよい循環をもたらしている、こういう制度として、今発展しているんだというふうに理解しております。
 そこで、今後もこの取り組みを強化して、三十億円から始まったこの制度が二百億を超えて発展しているんですが、これをさらに発展させていくべきと思いますけれども、平成三十年度の取り組みについてお伺いします。

○加藤金融部長 平成三十年度におきましては、この四月から二つの金融機関が新規に取り扱いを開始し、制度創設時に十九であったものが、来年度は三十二となる予定であり、既存の取扱金融機関による実績増も合わせ、融資規模は二百五十億円に拡大するものと見込んでおります。
 また、保証機関や担保評価機関と連携して、利用実績の少ない金融機関や新規の金融機関に対し、利用企業の属性や具体的な活用事例などの情報提供を行い、本制度に対する理解の促進を図ってまいります。
 こうした取り組みにより、積極的に取り組む金融機関をふやし、利用企業の一層の増加につなげ、都内中小企業の多様な資金調達を支援してまいります。

○細田委員 制度開始当初は十九であったこの取扱金融機関が三十二まで拡大している、こういうことであります。このABL制度の活用を一層促進するためにも、窓口となる取り扱いの金融機関、これをふやしていくということがやはり重要ではないでしょうか。
 認識や理解が進んでいない機関には、よく、都の方から説明をしていただいて、また啓蒙していただいて、保証機関、金融機関としっかり連携しながら、制度の普及に努めていくということで、さらなる利用の拡大につなげていただくことを要望いたします。
 続いて、クラウドファンディングを活用した資金調達支援、このことについてお尋ねします。
 都内の中小企業には、すばらしい技術力やアイデアを持っているところが多くございます。それらを製品化して、そして売り上げ向上に結びつけられるように、各企業の取り組みを支援していくことは大変に大切なことであります。
 また、意欲のある人が創業への一歩を踏み出せるような後押しをしていく、このことも重要です。
 そこで、クラウドファンディングというものがある。インターネットを通じて不特定多数の人から資金を募るという資金調達の方法であります。融資や補助金以外の手段で資金を調達できるというメリットや、事業開始前にファンや見込み客を集めるということのPRをすることができたり、そして支援者、この資金を提供してくれる方々の意見を聞いて、自分のところのサービス、また、商品、製品、これにニーズがあるのかということの確認ができるという、テストマーケティングというすごく意味のある資金調達の支援であるということですけれども、そのようなチラシをつくってPRしていると思うんですが、このクラウドファンディングを実際に利用した人の声として、資金調達に加えて新製品の販売前のPR、テストマーケティング、これは非常に効果がある、このようにいわれており、そして創業や新製品開発を行う上で大変に有効な、有用な新しい手法ではないか、このように考えております。
 都は、昨年の十月に、クラウドファンディングの利用者が取扱事業者に支払う手数料の半額を補助する、クラウドファンディングを活用した資金調達支援をスタートいたしました。
 そこでまず、もう半年近くになりますけど、本事業の事業開始からこれまでの実績についてはどうなのか、これについて伺います。

○川崎金融支援担当部長 昨年十月のこの事業の開始以来、これまでに十二件の案件で資金の募集を実施し、募集中のものも含め、そのうち九件については既に目標額を達成してございます。
 具体的な事例といたしましては、女性による一時預かり専門の託児所の創業、あるいは洋服感覚で簡単に着られるTシャツ素材の着物の製作、販売、また、東京の食の伝統を守る老舗料理店による良質な馬肉の開発及び提供などといった多岐にわたる案件でこの事業は利用されているところでございます。
 また、クラウドファンディングに関心のある方に向けたセミナーを毎月開催し、利用者の掘り起こしを行っておりますけれども、いずれの回も定員を超える申し込みをいただいておりまして、二月までで合計約百二十名が参加したところでございます。

○細田委員 数々の実績が上がっているということで、事業開始半年で、募集実施した十二件のうちの九件、七五%が既に目標を達成するという成果をおさめていると理解しました。
 また、今の具体的な例のように、産学官の連携、この枠組み、これがクラウドファンディングというもので花が開いている、こういう例もふえているんだと思います。
 既に、今おっしゃっていたような実績が出ていることなので、非常によい制度なんだというふうに私も理解しております。
 ただ一方で、クラウドファンディング自体は、いまだ国内でのなじみが薄いゆえに、都の事業もスタートしてからまだ日が浅いということがあって、まだまだ事業に対する認知度は十分ではないのではないか、また、この事業を活用することで、もっと大きく成長していける企業、これは、さらにたくさんあるのではないか、このように感じます。
 そこで、本事業の周知に向けた来年度の取り組み、これはどのように行っていくのか、この点についてお尋ねします。

○川崎金融支援担当部長 都はこれまで、東京都中小企業振興公社や東京信用保証協会などを通じまして、その利用者への本事業の周知を行いますとともに、活用事例を紹介する動画を作成し、SNS広告へ配信するなど、さまざまな取り組みを実施してまいりました。
 来年度につきましては、先ほど述べました利用者の掘り起こしに大変有用なセミナー、この開催回数の増加に加えまして、新たに本事業の専用ウエブサイト上におきまして事例を紹介するページを作成いたします。あわせまして、新たな事例紹介動画を制作、配信いたしますとともに、その動画を各種勉強会やイベントなどさまざまな場面で活用していくことで、成功事例を広くPRしてまいります。
 また、本事業の対象者となる創業希望者や中小企業者は、金融機関からの紹介をきっかけに、このクラウドファンディングを知るケースも多いというふうに聞いておりますことから、金融機関との連携をさらに推進していきますことで、本事業の周知及び活用の促進に努めてまいります。
 さらに、日本政策金融公庫と連携いたしまして、創業希望者等の事業計画のブラッシュアップや融資相談等といったメニューを新たに加えることで、支援内容の充実も図ってまいります。
 こうした周知活動や新たな取り組みを積極的に展開することで、本事業の一層の利用拡大につなげていきたいと考えております。

○細田委員 本事業については、まさに認知度の向上に向けた取り組みに努めていただいて、さらに利用を促進して、今後のすぐれた成功事例が多数生み出されていくことを期待しております。
 さて、次に、中小企業における障害者の雇用の促進についてお伺いします。
 障害者の働く場を広げていくためには、企業において、障害者雇用についてしっかりと理解をした上で障害者を受け入れていくことが重要であります。特に中小企業では、障害者を雇い入れた経験がないという会社も多く、具体的なイメージが持てない、このような声も耳にします。
 こうした企業で障害者の雇用を進めるためには、受け入れに必要なノウハウを習得することに加えて、先行して障害者雇用に取り組む企業の事例を実際に目で見ること、これが大変に効果的である、このように考えます。
 こうした観点から、来年度、障害者雇用に関する中小企業の理解を深めるために、都はどのように考えて、どのように取り組んでいくのか、この点についてお伺いします。

○蓮沼事業推進担当部長 都は、これから障害者雇用に取り組もうとする中小企業の経営者等を対象に障害者雇用支援フェアを開催し、支援制度や支援機関を紹介するとともに、障害者雇用のキーポイントを学ぶセミナーを行うなど、参加者の理解促進を行ってまいりました。
 来年度は、中小企業の実務担当者を対象に、必要な知識やノウハウの習得と、自社での取り組み案の策定、発表などを行う実務講座において、規模を八十名から百二十名に拡大して実施いたします。
 さらに、中小企業の経営者や実務担当者などが障害者雇用に積極的なさまざまな業種の企業を随時見学できるよう、受け入れ可能な企業の登録制度を新たに構築いたします。
 また、見学を受け入れる企業には、事前準備等の負担が発生することから、経費の一部を補助いたします。
 こうした取り組みにより、中小企業の障害者雇用の促進を図ってまいります。

○細田委員 企業のまさにベースとなる理解があってこそ、障害者雇用が円滑に進んで、また、障害者にとっても安心して働き続ける職場になっていくと思います。受け入れが可能なところの新たな登録制度、また経費の一部補助、これによって、さらに前に進んでいくことを期待します。
 中小企業における障害者雇用の促進に向けて、引き続きしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 続きまして、東京障害者職業能力開発校に関する関係で伺いたいと思うんですけれども、障害者雇用を進めるためには、企業側の理解の促進とともに、求職者に対する就業の支援、この取り組みも大変重要であり、中でも、就業が困難な障害者に対して、職業訓練が果たす役割は大きいと考えます。
 我が党はこれまでも、本委員会において、障害者の職業訓練について、新たに整備される東京障害者職業能力開発校を拠点として拡充するよう求めてきたところであります。まさにもう、まもなく四月から新しい校舎での訓練が始まるとのことでありますけれども、今回の整備に至る経緯と新しい校舎の特色について改めて伺います。

○小金井雇用就業部長 東京障害者職業能力開発校は、国が設置し、東京都が運営を受託しており、東京都における障害者訓練の拠点と位置づけております。
 現校舎は昭和五十五年三月に竣工し、約四十年が経過して、老朽化が著しいことから、国において建てかえが行われてきました。
 このたび整備された新しい校舎には、都の提案も取り入れ、喫茶店を模した実習場を設置し、接客サービスや商品陳列、清掃などについて、より実践的な訓練ができる環境を整えました。
 また、精神障害者の方が気持ちを落ちつけることができるように、十二室の実習室それぞれに個室のリフレッシュメントルームを新たに設置しております。
 さらに、全国から入校する訓練生のための寮について、これまで相部屋であったものを、プライバシーに配慮して個室化したところでございます。

○細田委員 わかりました。気持ちに波がある精神障害者の方も気持ちを落ちつけられるような、そんなリフレッシュルームも設置されるということで大変評価いたします。
 新しい校舎での訓練が始まる四月には、精神障害者が雇用の義務の対象に加わり、民間企業の法定の雇用率、これも引き上げられていくことになります。精神障害者については、ハローワークの新規求職数と就職件数が増加をしておりますが、一方で、企業に就職して、働く意欲や体力などが整っていない、こういうことで就業に至らない方も多くいらっしゃいます。
 こうした状況を踏まえて、新たな校舎での訓練開始に合わせて、都は精神障害者向けの職業訓練を強化していくとしておりますけれども、どのように取り組んでいくのか、この点について伺います。

○小金井雇用就業部長 東京障害者職業能力開発校では、これまで精神障害者の方などが三カ月の短い期間で基礎的な産業やビジネスマナーなどを習得した後、希望に応じて事務系の訓練を連続して受講できる科目を実施してきました。
 来年度は、企業の求人ニーズの多様化に合わせ、連続受講できる科目として、介護、福祉なども含めた幅広い産業でのニーズに対応できるよう、調理・清掃サービス科を新たに設置いたします。
 また、精神障害者の方の入校の増加に合わせ、これまで身体障害者向けにカリキュラムを組んでいた科目に精神障害者の方などを受け入れることができるように、社会生活スキルを高めるグループワークなどを新たに導入してまいります。

○細田委員 精神障害者につきましては、訓練の内容を見直すことも確かに重要でございます。けれども、半年以上にわたる訓練を継続することができるように、きめ細やかな支援体制を整えていく、こういう必要もあります。また、訓練を受講している期間だけではなくて、就職してからも、職場になじんでいくまでの間、継続した支援というものが必要になってまいります。
 新たな校舎での訓練の開始に合わせて、この点について、都はどのようにサポートをしていくのか、この体制を充実させていくのか、この点について伺います。

○小金井雇用就業部長 精神障害者の方々などにつきましては、体調の波がありまして、長期間の訓練の継続が難しい場合もありますことから、精神保健福祉士による健康管理に関する相談などに加え、精神科医師による医療相談も定期的に行っております。
 加えまして、訓練生活に関する相談や指導を担う生活指導相談員や、訓練から就職、職場定着までを一貫して支援する職場定着支援員を設置しております。
 四月からは、精神障害者の方々への訓練内容の充実とあわせ、生活指導相談員や職場定着支援員についても増員していくこととしております。
 今後とも、精神障害者の方々を初めとする障害者に対して、きめ細かな支援を行ってまいります。

○細田委員 着実によろしくお願いします。
 障害者雇用を取り巻く状況は大きく変化しつつありまして、この障害者雇用の促進に向けた就労支援の必要性はますます高まっております。このような状況を踏まえて、就職に必要な知識、技能の習得を支援するとともに、就職を希望する障害者と企業等をつなぎ、職場への定着も含めて支援する取り組みを今後も着実に展開していただきたい、このように思います。
 さて、多摩産材の民間利用の拡大について最後に伺います。
 多摩産材については、先日の予算特別委員会において、小池知事から、全国育樹祭を契機とした公共、民間でのさらなる利用拡大についてご答弁をいただいておりますが、本日は、民間部門、民間の利用拡大について具体的な取り組みはどうなのか、この点について質問をいたします。
 都政のモニターアンケート、平成二十四年のインターネット都政モニターアンケートを見ますと、当時は認知度が一一・一%、約一割であった。多摩産材を使用したことがあり、知っていたという人が〇・八%、多摩産材を見たことがあり、知っていたという人が二・九%、多摩産材という名称のみを知っていたという人が七・四%、これを足しますと一割で、知らなかった人が八八・九%、こういう状況だと。
 これが昨年九月の都政モニターアンケート、これによりますと、倍の二割になった。一八・七%。知らなかったという人が八一・三%であって、五年間で二倍にふえた。これは大変に喜ばしいことではあるんですけれども、二割程度にとどまっているという、こういう見方もありまして、まだまだ認知度全体としては、八割の方が知らないという、こういうふうな状況もあります。
 それなので、木材の大消費地である東京では、まだまだ潜在的な需要があるわけですから、さらにPRをしていく、こういう必要がございます。
 都は、この多摩産材の民間の需要を喚起して、その利用の拡大に向けまして、さらに積極的に取り組んでいくべきと考えますが、東京都の、この平成三十年度の取り組みについてお伺いします。

○藤田農林水産部長 都はこれまで、都営住宅や美術館などの都関連施設で多摩産材の公共利用を進めるとともに、民間における多摩産材の利用を進めるため、商業施設などのにぎわい施設での多摩産材の活用や、木と暮らしのふれあい展などのイベント、農林水産ウエブサイトなどを通じて多摩産材のPRを行ってまいりました。
 また、この四月には、多くの都民が訪れる民間住宅展示場に多摩産材を活用したモデルハウスをオープンし、多くの木材を使用する住宅建設の分野での多摩産材の新たな需要を開拓してまいります。
 こうした取り組みに加え、来年度は、新宿駅西口のイベント広場において、家具や玩具など、さまざまな魅力ある多摩産材製品を取りそろえた消費者向けの製品展示会を新たに開催し、多摩産材製品のPRを強化するなど、民間における多摩産材の利用を一層推進してまいります。

○細田委員 四月からのモデルハウス、住宅展示場、大いに期待します。しっかりPRしていただいて。
 また、新宿西口のイベント広場、天井は低いですけど、さまざまなイベントをやっている人気のところだと聞いていますから、また、人がいっぱい集まっていますので、ぜひそういう新しい取り組みは大変にいいと思います。ぜひ積極的にPRを、多摩産材の利用の推進に向けてやっていっていただきたい、このように思います。
 多摩産材の利用の拡大は、森林循環を促していく上でも大変に重要な取り組みであります。公共部門での利用とあわせて、民間部門へのさまざまな働きかけを通じて、引き続き多摩産材の利用拡大を図っていただくようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。

○森村委員 三月になり暖かい日が続いています。各地で梅の花が満開となり、梅祭りが開催されています。私も先日、地元青梅で観梅祭りへの招待を受け、多くの市民と一緒に梅の香を楽しませていただいたところであります。
 聞くところによれば、全国で唯一、市の名前に梅の字がついた青梅市では、この時期、梅を目当てとした観光客が毎年数十万人訪れておりました。しかし、数年前、市内のほとんどの梅を伐採せざるを得ない事態が起こりました。プラムポックスウイルスの感染です。
 平成二十一年の四月、我が国ではそれまで発見報告のなかったプラムポックスウイルスが全国で初めて青梅で確認され、その後、八王子市、あきる野市、日の出町、奥多摩町などでも相次いで発見されました。
 プラムポックスウイルスは、核果類、つまり、梅や桃などの病気であり、感染すると、葉がまだら模様に変色したり、成熟前に果実が落ちてしまったりする症状を見せます。人には無害なものの、海外での発生事例を見ると、果樹生産において深刻な被害をもたらしており、既に、神奈川などの近隣県のみならず、大阪や兵庫などの関西まで広がっています。さらなる感染拡大を防ぐためにも、伐採、伐根が余儀なくされ、そのためにも多額の費用が必要となりました。
 国の緊急防除対策のもと、例えば青梅市では三万八千本を超える梅の木が伐採されるに至ったわけですが、まず、プラムポックスウイルスの防除対策に関する都の取り組みはどのようなものか伺います。

○武田安全安心・地産地消推進担当部長 都は、植物防疫法に基づく農林水産省の協力指示により、平成二十一年度からプラムポックスウイルスの緊急防除を関係区市町、農業団体と連携して実施しております。
 具体的には、平成二十八年度末まで約三十五万本の梅の木などを調査するとともに、感染が確認された地域及びその周辺地域を防除区域に指定し、約五万本の感染植物等の伐採、廃棄とその所有者に対する補償を行ってまいりました。
 この調査の中で、三年間連続して感染が確認されなかった八王子市など七市町の一部地域については防除区域から除外されております。
 また、青梅市では、平成二十七年度からプラムポックスウイルスの根絶の早期化と梅の再植栽に向けて強化対策地区を設定し、発生調査や薬剤散布などを集中的に実施しており、都は、感染植物等の損失補償契約や伐採、廃棄事務などを行うなど、青梅市の取り組みを支援しております。

○森村委員 梅の木が伐採されたことによって、多くの梅農家が打撃を受け、また、この時期の観光客も、例えば青梅では数十万人規模で大幅に減少しました。
 梅の防除に加え、再生への支援についても、都への期待は大きなものがあります。都はこれまで、資金援助や技術の提供による支援を継続して行ってきたわけですが、プラムポックスウイルス被害に対する来年度以降の農業復興対策について伺います。

○武田安全安心・地産地消推進担当部長 これまで都は、プラムポックスウイルス被害に対する農業復興対策として、梅の木などが伐採、抜根された農地を再生する基盤整備に対する支援と、再植栽した梅の木から早期に実を収穫できるようにするための技術確立に取り組んでおります。
 具体的には、農地の遊休化や営農意欲の低下、離農を防ぐため、伐採、抜根後に野菜などの栽培に適した農地への整備を支援するとともに、防除区域の解除後、早期に梅の収穫を開始できるよう、梅の苗木同士を連結して、複数の根から養分を吸収させるジョイント仕立てといった新しい栽培技術の実証試験を行っております。
 今後は、実証試験で得られた成果を農業者の畑で検証し、梅畑の早期復活を目指してまいります。
 これらの取り組みにより、プラムポックスウイルスの被害に遭った農家経営の安定化と農地保全を図り、地域農業を復興してまいります。

○森村委員 ありがとうございます。新しい栽培技術など心強いものがあります。来年度以降も引き続き、ぜひ国や市町村との連携を行いながら、プラムポックスウイルスの防除と農業の再生に対して、都がこれまで以上にリーダーシップを果たしていただきたいことを要望いたします。
 次に、林業振興についてお伺いいたします。
 本年の十一月、全国育樹祭が東京都で初めて開催されます。都では、平成八年に行われた植樹祭を受けまして、二十二年経過した本年、皇族殿下によるお手入れ行事が海の森公園予定地にて行われることになっております。
 そこでまず、来年度に開催する全国育樹祭の各行事の概要と、あわせて育樹祭を具体的にどのような大会にしていくのかを伺います。

○村西全国育樹祭担当部長 全国育樹祭の主な行事としましては、平成八年に開催された全国植樹祭の際に、天皇皇后両陛下がお手植えされた樹木に対して皇族殿下が枝打ちや施肥などをされるお手入れ行事と、全国から林業、木材産業の関係者など約五千人の参加者が出席し、緑化功労者等の表彰が行われる式典行事がございます。
 また、森林、林業が直面する課題や木材の新たな活用などを討論する育林交流集会、全国から緑の少年団が集まり、交流を深める全国緑の少年団活動発表大会、さらには、林業の機械化に関する情報提供を目的とした森林・林業・環境機械展示実演会など、多くの関連行事を都内各地で開催いたします。
 都は、育樹祭のテーマである、育樹から木のある暮らしつないでくの理念を、木材にまつわる伝統芸能や合唱等の歌唱、創作ダンスなど豊富なアトラクションを交えて都民にわかりやすく伝えることで、森を育て、木を使うことによる持続可能な暮らしを未来へつなぎ、森林や緑を次世代に継承する重要性を参加者が共有できる大会としてまいります。

○森村委員 都の面積のうち四割は森林であり、ここでは、戦後の復興需要に応える形で杉やヒノキが植栽されてきました。今や、杉やヒノキは五十年、六十年生に育ち、ちょうど利用しやすい切りごろを迎えているわけですが、我が国の林業は、輸入木材との価格競争により長らく低迷しており、伐採しても経済性が合わず、森は現在、スギ花粉の発生源として都民を苦しめる原因の一つにすらなっております。
 本来、森林が持つ環境を守る機能を生かすためには、間伐や枝打ちなど丁寧に手入れを行い、健全な森林循環を促すことや、木材のよさをアピールすることで需要が喚起されることも必要です。伐採後の植林には広葉樹を植えたり、あるいは花粉の飛散を抑えることができる無花粉杉を植栽することなどで花粉飛散の抑制に努めることもできます。
 そこで、東京における森林整備の促進や木材利用の拡大につなげていくためにも、育樹祭の開催を契機としていくことが重要と考えますが、都の取り組みを伺います。

○村西全国育樹祭担当部長 都はこれまで、杉やヒノキ林を伐採し、花粉の少ない杉等を植栽する森林循環促進事業を実施してきており、全国育樹祭の開催を契機としまして、新たに、川上から川下まで一貫して取り組む包括的な林業の振興対策を来年度から開始いたします。
 まず、川上の対策としましては、経営改善計画を策定した森林整備を担う林業事業体に対し、林業用の重機機械等の導入とともに、その操作資格の取得など人材育成を図る取り組みに対する支援を実施し、そのレベルアップを図ってまいります。
 また、川中の対策としましては、製材事業者の製材能力の向上に向けまして、自動かんな盤や、木材をさまざまな部材に加工できるモルダー等の製材設備の導入に対し支援を行ってまいります。
 さらに、川下の対策としまして、区市町村の公共施設での多摩産材の利用拡大のほか、今年度、三十三都道府県が一堂に会して開催された木材製品に特化した展示商談会、ウッドコレクション、モクコレを来年度も来場者の増加に向けて工夫を凝らして開催するなど、多摩産材を初めとした木材利用を拡大する取り組みを強化してまいります。

○森村委員 川上から川下に至る一連の施策、森林・林業次世代継承プロジェクト事業のうち、特に川下に位置する施策として位置づけられる多摩産材の利用拡大に私も注目しております。
 都はこれまでも、保育園や図書館など公共施設での利用を促進するなどしてきました。これらは啓発的な効果が大きく、一定の評価ができるものですが、一方で、最大のマーケットは、細田委員もご指摘のとおりですが、民間需要であります。戸建て住宅での多摩産材の利用が進むことが、都における林業振興と健全な森林循環の扉を開く最大の鍵になるのではないかと考えております。
 そのためには、まず、家づくりに携わる事業者に多摩産材への理解を促すことが重要だと考えますが、多摩産材の利用に理解のある建築士をふやしていくためにとっていく都の取り組みを伺います。

○村西全国育樹祭担当部長 これまで都は、建築士を対象に、多摩の林業現場への見学ツアーを開催するとともに、木造住宅の設計や木材利用等に関する講習会を建築士が受講する際の経費に対し、十五万円を上限として二分の一の補助を実施するなど、東京の地域材である多摩産材の認知度の向上を図っております。
 来年度からは、大学等と連携しまして、建築系の学生を対象にした多摩の森林での林業体験と、製材事業者からの多摩産材利用に関する説明をセットにしたセミナーを新たに開催いたします。
 建築士や建築士を目指す学生に多摩産材の魅力を直接体験していただくことで、東京の地域材である多摩産材を活用する建築士をふやし、その利用拡大につなげてまいります。

○森村委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 次に、中小企業における働き方改革について伺います。
 我が国では、緩やかな景気の回復基調が続いており、失業率は低下しています。一月の都内の有効求人倍率は二・〇八倍、労働市場は、今や完全な売り手市場です。幅広い業種において従業員の確保に苦労しており、特に中小企業における人手不足には深刻なものがあります。
 人手不足は、従業員一人当たりの業務量の増加や責任の増加をもたらし、有給休暇の積極的な取得あるいは残業時間の削減などについても進めづらいという声もあります。労働力的にも資金的にも余裕のない中小企業において、働き方改革といっても具体的なインセンティブ、あるいはメリットが見えなければ、進めにくい現状があるのではないでしょうか。
 一方で、社長の鶴の一声で経営方針を決定することができ、組織規模的にも小回りのきく中小企業においては、一度意思決定すれば導入しやすいのは事実です。大企業と比べれば、導入後、短期間にて成果を出すことも可能かもしれません。
 働き方改革によって生産性を向上せしめ、もって残業時間を削減することにより人件費の圧縮が可能となり、また、ワークライフバランスがとれ、子育てとの両立が可能な職場環境を整備することによって若者や女性の職場環境へのニーズを満たし、人手不足の中にあっても人材の確保や定着に成果を上げている企業もあります。
 こうした切り口がしっかりと提示され、中小企業が働き方改革を行うメリットを明らかにしつつ、経営者の意識を変えていくことがイの一番に重要なことではないかと考えますが、経営者の意識改革についての都のこれまでの取り組みと来年度に向けた取り組みについてお伺いします。

○小金井雇用就業部長 働き方改革は、生産性の向上や人材確保など、企業の経営課題の解決に資するものであり、経営者にそのメリットについて理解を深めていただくため、都は、働き方改革の意義をアピールする動画を作成し、トレインチャンネルや多くの人が行き交う交差点の大型ビジョン等を通じて発信しているところでございます。
 また、働き方を見直すことで成果を上げている企業の取り組みを新聞やビジネス雑誌、ウエブサイトなどを通じて紹介し、働き方改革に向けた取り組みを促しているところでございます。
 これまで働き方改革やテレワークについては、個別に広報を行ってまいりましたが、来年度は、共通したイラストやキャッチコピー等を用いて、一体的かつ効果的な広報活動を年間を通じて展開することとしており、今後とも、経営者に働き方改革のメリットをわかりやすく伝えてまいります。

○森村委員 ありがとうございます。さまざまな取り組みによって、現在、働き方改革に関する社会的な認知が徐々に拡大しております。大企業においては、CSRの枠組みでの推進やコンプライアンス意識の浸透とともに、生産性向上等とあわせながら着実に進んできているものと理解していますが、それでもいまだ十分とはいえません。
 また、中小企業においては、経営上の優先順位の問題や、従業員数が少なく、業務の分散が図れずに壁に突き当たり、進んでいない状況もあります。
 都では、TOKYO働き方改革宣言企業の登録を進め、奨励金の支給などを行っておりますが、まず、今年度の成果について伺います。
 また、中小企業における働き方改革の推進に向けて、今後、どのような支援を行っていくのか、あわせてお伺いします。

○小金井雇用就業部長 都は、働き方改革宣言企業制度により、長時間労働の削減や有給休暇の取得促進など、働き方、休み方の見直しにみずから取り組む企業を支援しており、今年度も宣言する企業は千社に達する見込みであります。
 本制度を利用した企業からは、取り組みを通じて、社員だけでなく、経営者自身の働き方を見直す機会につながった、また、宣言企業であることをアピールしたことで応募者がふえ、欲しい人材が確保できたなどの声もいただいているところでございます。
 来年度は新たに、既に宣言を行っている企業を通じて、関連する系列会社にも働きかけを行うとともに、商工団体や業界団体等がみずからの会員企業等に対して宣言企業となることを促す仕組みを新たに開始することで、働き方改革の裾野を広げてまいります。

○森村委員 次に、観光振興についてお伺いします。
 二〇二〇年のパラリンピックの開催を見据え、都は、高齢者や障害を持った人に優しいまちづくりを推進していますが、観光振興の観点では、アクセシブル・ツーリズムの促進という形で各種取り組みが進んでいます。
 東京都観光産業振興実行プラン二〇一八の策定においても、東京都観光事業審議会の委員として、バリアフリーカンパニーの中澤氏を選任するなど、障害を持った当事者の目線を取り入れた取り組みを行ってきました。交通機関、観光施設、宿泊施設などハード面でのバリアフリーを進めることの重要性は指摘するまでもなく、障害者や高齢者が快適に観光を行うために必要な情報提供や、受け入れ側が配慮や思いやりの気持ちと適切に対応するための正しい情報を持ってお迎えする体制の構築などが必要だと考えますが、アクセシブル・ツーリズムの促進にかかわる都の取り組みをお伺いします。

○浦崎観光振興担当部長 都は、障害者や高齢者等が安心して都内観光を楽しめるアクセシブル・ツーリズムの推進に向けまして、ハードとソフトの両面から観光事業者を支援しております。
 具体的には、宿泊施設のバリアフリー化の改修工事等に対して助成するとともに、障害者等の受け入れ対応に必要な施設の改善点や、障害等の状況に応じたサポートの仕方などにつきまして助言する相談員の派遣等を行っているところでございます。
 来年度は、宿泊施設のバリアフリー化の助成制度につきまして、補助の対象や補助率等を拡充しまして、さらなる取り組みを後押ししてまいります。
 また、観光事業者の受け入れ環境整備の参考となりますように、簡単な施設改修や施設等を使いやすくする工夫、あるいはシャワーチェアや筆談器といった簡易補助具の活用などにつきまして、バリアフリー化の取り組みを掲載した事例集を新たに作成いたします。

○森村委員 ハード面、ソフト面、両面からということで、ぜひよろしくお願いします。
 ソフト面では、心のバリアフリーの促進が重要であると考えます。意識が変われば行動が変わります。これはシンプルな事実です。
 例えば、先日出席したとあるイベントで、障害を持った方の座る席が最前列の一番見通しのよい場所に設けられておりました。さりげなく明確に優先的な配慮がなされておりました。障害者それぞれが持つさまざまなニーズに適した環境をイベント等の主催者が意識することで、恐らくイベントのあり方そのものが一変するんじゃないか、そのように、ひそかに感じ入った次第ですが、一方で、長年培われてきた意識を変えるのはそう簡単なことではなく、無意識な行動がアクセシブル・ツーリズムの促進を阻む壁になります。この壁を取り払うためにも、二〇二〇パラリンピックの開催が契機となり、社会全体の意識が変わることが大会のレガシーとして強く期待されているわけです。
 そこで、都としても、観光地や観光産業のあり方そのものが変わるように、心のバリアフリーの促進について、強いリーダーシップを持って実行していただきたいと考えますが、アクセシブル・ツーリズムにおける心のバリアフリーに関する都の所見と具体的な取り組みについて伺います。

○浦崎観光振興担当部長 障害者や高齢者等が快適に観光を楽しむためには、事業者の受け入れノウハウの向上とともに、都民一人一人が思いやりの心を持って行動することが重要でございます。
 このため、都は、昨年十月に、観光事業者や都民を対象としたシンポジウムを開催いたしました。シンポジウムでは、障害者等への配慮や、積極的に声をかけるコミュニケーションの重要性等につきまして、基調講演やパネルディスカッションなどを行いまして、アクセシブル・ツーリズムの普及啓発を図ったところでございます。
 また、旅行業者に対し、高齢者、障害者向けのツアーの実施の方法に加えまして、障害者差別解消法への対応、あるいは心のバリアフリーなどにつきまして研修を実施しております。さらに、来年度からは、障害者等に対する簡単な介助方法等を掲載したポケットガイドを配布いたしまして、啓発を図ってまいります。
 こうした取り組みを通じまして、東京を訪れるさまざまな旅行者に、より快適な観光の機会を提供してまいります。

○森村委員 次に、外国人観光客の多摩地域への回遊性向上に関する都の戦略についてお伺いします。
 二〇二〇年の訪都外国人観光客の数値目標、二千五百万人ですが、いまだ多摩地域への誘客についての目標数の提示などはありません。
 都が行った調査によれば、現在はまだ二十三区には訪れていても、多摩地域に足を運ぶ外国人観光客は少なく、例えば、都の面積の四分の一を占める西多摩地域に至ってはほんの数%にとどまっている状況です。
 都としては、多摩・島プロジェクトなどを進めることで、二十三区のみならず、多摩や島しょ地域への回遊を推進していますが、目に見える大きな成果にはまだ至っていないように見えます。
 外国人観光客が多摩地域を周遊するよう、戦略性を持って取り組んでいくべきと考えますが、都の取り組みを伺います。

○小沼観光部長 都は、海外での認知度や関心を高めるため、ウエブサイト等さまざまな広報媒体を活用して多摩の魅力を発信しております。
 また、バスなどの公共交通機関や自転車などの活用によります交通手段の確保や、外国人に関心の高い観光スポットをめぐる旅行商品の造成を支援し、送客につなげる取り組みを行っております。
 来年度は、三百六十度VRを使った臨場感のある動画を制作しまして、ウエブサイトやSNSで活用するなど発信面を強化するとともに、複数の交通手段を組み合わせたモニターツアーを実施し、効率的に観光地をめぐる方法を自治体や交通事業者等と検討いたします。
 また、地域に専門家を派遣しまして、外国人目線で体験型の観光資源の掘り起こしや磨き上げなどの助言を行い、これを活用した旅行商品の造成を促してまいります。
 こうした複合的な取り組みによりまして、多摩への誘客を一層進め、多摩地域の観光の活性化を図ってまいります。

○森村委員 都は、昨年の六月、多摩地域を訪れる外国人に観光情報を提供するため、立川駅の商業施設に多言語対応可能な東京観光情報センター多摩をオープンいたしました。都の説明によれば、二月末までの累積で、外国人来場者は千九名ということで、残念ながら、これは決して大きな数字ではありません。
 二〇二〇年に向けてのインバウンド誘致の戦略的拠点となる期待を負った同施設ですが、二〇二〇年まであと二年しかないため、オープンしてまだ八カ月程度しかたっていませんが、一定の分析と仮説検証を行いつつ、必要に応じて追加的な施策を展開するなど、早いタイミングで効果的な対策を打つ必要があると考えますが、都の所見を伺います。

○浦崎観光振興担当部長 東京観光情報センター多摩では、多くの外国人旅行者に利用していただくため、認知度の向上に努めてまいりましたけれども、さらなる誘客に向けた取り組みを図る必要がございます。
 このため、具体的には、センター多摩を多言語で案内するためのカードを作成しまして、外国人が宿泊するホテル等の施設で配布するなどの取り組みを行っております。
 また、JR立川駅の自由通路や、センター多摩が立地する施設内に多言語の案内看板等を設置するとともに、センターのスタッフが原則として毎日、立川駅の改札口付近で、外国人へこのカードを直接手渡しで配布をするなど、継続的な周知を実施しているところでございます。
 これらに加えまして、来年度は、例えば外国人旅行者にも関心を持っていただけるイベントの開催などを通じまして、センター多摩のさらなるPRを行ってまいります。
 今後とも、利用状況等を踏まえながら、工夫を図り、より多くの外国人旅行者に利用していただけるよう取り組んでまいります。

○森村委員 ぜひ効果的なPRをお願いいたします。
 人口が減少していくことが確実視されている社会において、交流人口を増加させ、裾野の広い経済効果をもたらすことができる観光産業の振興は大きな成果を生み出すことができる可能性が高く、都が取り組んでいくべき産業振興の中でも、最も大きなポテンシャルを持った領域の一つです。
 都は、訪都外国人観光客数二千五百万人の目標達成に向けて力を尽くしておりますが、多摩地域における外国人観光客をふやすためには、都を訪れる観光客をふやす一方で、訪れた人々に対して提供する優良な観光資源の磨き上げと、その広報、発信を、多摩地域の自治体や民間事業者が行うことが必要不可欠です。
 訪都外国人観光客数の目標を達成するに当たり、都はどのような観点から自治体や民間事業者等への取り組みを行っているのか伺います。

○小沼観光部長 訪都外国人旅行者数の目標の実現のためには、都における取り組みに加えまして、区市町村や地域の観光関連団体、民間事業者等の各主体との連携が不可欠でございます。
 都は、旅行地としての東京全体の魅力をより印象的に海外へ発信するため、欧米豪や東アジアなど、市場ごとの特性をマーケティング調査により十分に把握するとともに、さまざまな媒体を活用したプロモーションによりまして、東京の観光情報をきめ細かく発信しております。
 また、国内外の旅行者の多様なニーズを踏まえた観光資源の開発を進めるため、地域ならではの新しい視点に立った区市町村や観光協会などの取り組みを後押ししているところでございます。
 さらに、民間事業者のインバウンド対応力を高めるため、多言語表記の充実を初め、きめ細かなサービスを提供する人材の育成などを支援しております。
 こうした取り組みを戦略的に展開し、さらなる旅行者誘致を進めてまいります。

○森村委員 多摩地域の自治体や民間事業者等への都の支援メニューは多彩であり、今後も継続して必要なものであると期待いたします。
 とはいえ、これまで多くの支援を行ってきましたが、成果を出すためには、これまでどおりのやり方を変えなければならない点もあるかと思います。自治体や事業者への支援というスタンスのみならず、都としての強力なリーダーシップを持った現場への働きかけが必要な局面ではないかと考えますが、そのためには、現地に足を運び、地域が持つさまざまな観光資源や価値に光を当てつつ、人材の育成などを根気強く行う必要があり、大きな予算や人員が必要なものと考えます。
 そこで、東京二〇二〇大会の招致が決まってからこれまで、観光の振興に当たって、予算や組織別の人数をどのように充実させてきたのかお伺いします。

○小沼観光部長 都ではこれまで、東京の観光振興のため、着実に予算や体制の充実を図ってまいりました。
 とりわけ、東京二〇二〇大会の決定を契機に、平成二十五年度には二十五億円であった予算を、平成三十年度は約七倍の百六十六億円にまで拡充をいたします。
 観光部の体制も、三十一名から五十四名へと充実させ、観光産業振興の実行プラン策定を初め、海外向けの観光プロモーション、地域の観光資源開発、外国人旅行者の受け入れ環境整備に向けた施策の企画立案などを行っております。
 また、広く東京全体の観光を支える公益法人であります東京観光財団におきましても、三十九名から三倍強となる百二十七名にまで体制を強化いたします。
 今後も引き続き、観光を取り巻く環境の変化に適切に対応しながら、東京の観光産業の振興を進めてまいります。

○森村委員 我が国ではこの十年、インバウンドに軸足を置いた観光振興策が官邸主導で力強く進んできた経緯があります。二〇〇八年には国土交通省の一部局が観光庁として新たに発足し、人員と予算を拡充させながら、省庁横断的に多くの取り組みを行うことで成果をおさめてきました。
 東京都としても、これまで観光振興のための予算と人員が年々拡充されてきたことを高く評価する一方で、二〇二〇年まであと二年、これまで以上のスピード感を持って、意欲的な目標を達成するために、知事のリーダーシップのもと、全庁横断的に取り組みを行う必要があると思いますが、今後の展望について伺います。

○小沼観光部長 観光は、関連する産業の裾野が広く、都市としての総合力が求められるため、各局が実施する観光関連施策との緊密な連携が不可欠でございます。
 そのため、知事が出席する東京の観光振興を考える有識者会議を設置しまして、全庁的な議論を展開しております。
 また、多様化する新たな課題に対しましても、プロジェクトチーム等を設置し、機動的に対応してございます。
 具体的には、ユニークベニューに美術館や都立公園等を積極的に活用する取り組みですとか、住宅宿泊事業の適正な実施を確保する指導監督などの取り組みを実施しております。
 引き続き、各局と連携し、東京の観光産業の振興を進めてまいります。

○森村委員 今後、必ずや訪都外国人観光客数二千五百万人の達成を行うべく、全庁横断的に都庁を挙げた取り組みを行っていただくことを期待いたします。その上で、繰り返しになりますが、多摩地域や島しょ部に、二千五百万人のうちどのくらいの割合の人が回遊してもらえるのか、そこについての数値目標を、市町村とも連携しながらぜひとも設定していただき、その達成に向けて、さらに効果的な施策を積み重ねていただくことを要望し、私の質問を終えさせていただきます。

○伊藤委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案及び本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤委員長 異議なしと認め、予算案及び報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で産業労働局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後八時十七分散会

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