経済・港湾委員会速記録第四号

平成二十六年三月十八日(火曜日)
第八委員会室
午後一時開議
出席委員 十四名
委員長三宅 正彦君
副委員長栗林のり子君
副委員長田中たけし君
理事高橋 信博君
理事中村ひろし君
理事かち佳代子君
かんの弘一君
小松 大祐君
柴崎 幹男君
中山ひろゆき君
尾崎あや子君
谷村 孝彦君
木内 良明君
高島なおき君

欠席委員 なし

出席説明員
産業労働局局長塚田 祐次君
次長山本  隆君
総務部長澤   章君
特命担当部長松永 竜太君
商工部長十河 慎一君
金融部長寺崎 久明君
金融監理部長黒沼  靖君
金融支援担当部長片山  謙君
観光部長杉崎智恵子君
農林水産部長津国 保夫君
安全安心・地産地消推進担当部長武田 直克君
雇用就業部長矢田部裕文君
事業推進担当部長戸澤  互君

本日の会議に付した事件
産業労働局関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成二十六年度東京都一般会計予算中、歳出、繰越明許費、債務負担行為 産業労働局所管分
・第七号議案 平成二十六年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
・第八号議案 平成二十六年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
・第九号議案 平成二十六年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
・第百二十九号議案 平成二十六年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、歳出 産業労働局所管分
付託議案の審査(質疑)
・第八十四号議案 東京都産業労働局関係手数料条例の一部を改正する条例
・第八十五号議案 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターに係る地方独立行政法人法第四十四条第一項の条例で定める重要な財産を定める条例の一部を改正する条例
・第八十六号議案 東京都が東京信用保証協会に対し交付する補助金に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例の一部を改正する条例
・第八十八号議案 東京都立職業能力開発センター条例の一部を改正する条例
・第九十号議案 東京海区漁業調整委員会委員及び東京都内水面漁場管理委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
報告事項(質疑)
・森づくり推進プランについて
・水産業振興プランについて
・新銀行東京の「平成二十六年三月期第三・四半期決算」について

○三宅委員長 ただいまから経済・港湾委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、産業労働局関係の予算の調査、付託議案の審査及び報告事項に対する質疑を行います。
 これより産業労働局関係に入ります。
 予算の調査、付託議案の審査及び報告事項に対する質疑を行います。
 第一号議案、平成二十六年度東京都一般会計予算中、歳出、繰越明許費、債務負担行為、産業労働局所管分、第七号議案から第九号議案まで、第八十四号議案から第八十六号議案まで、第八十八号議案、第九十号議案及び第百二十九号議案、平成二十六年度東京都一般会計補正予算(第一号)中、歳出、産業労働局所管分並びに報告事項、森づくり推進プランについて外二件を一括して議題といたします。
 本案及び本件については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○澤総務部長 去る二月二十五日の当委員会で要求のございました資料につきましてご説明を申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の経済・港湾委員会要求資料の表紙をおめくりください。
 目次にございますとおり、資料は全部で十項目ございます。
 次のページをお開きください。過去十年間の予算額、決算額の推移につきまして、一ページに中小企業対策、二ページに農林水産対策、三ページに雇用就業対策をそれぞれお示ししてございます。
 なお、雇用就業対策につきましては、内訳としまして国基金事業関係費を別記してございます。
 四ページをごらんください。従業者規模別都内製造業の推移につきまして、直近の平成二十三年までのデータをお示ししてございます。
 五ページをお開きください。都内小規模小売店の推移につきまして、直近の平成二十四年までのデータをお示ししてございます。
 六ページをごらんください。新・元気を出せ商店街事業における平成十八年度以降の実績を内容別にお示ししてございます。
 七ページをお開きください。都立職業能力開発センターにおける能力開発訓練普通課程の授業料収入をお示ししてございます。
 八ページをごらんください。委託訓練における緊急就職支援事業の予算の推移をお示ししてございます。
 九ページをお開きください。都立職業能力開発センター校別の就職支援推進員の配置状況の推移をお示ししてございます。
 最後、一〇ページでございます。過去五年間の庁内多摩産材使用実績をお示ししてございます。
 以上で要求資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願いを申し上げます。

○三宅委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本案及び本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○田中委員 まず初めに、都が来年度から開始する中小企業の設備投資に対する新たな助成制度についてお伺いをいたします。
 この助成制度は、我が党がかねてより設備投資の活性化に向け踏み込んだ支援策を求めてきたことに応えるものであり、東京の中小企業の競争力を高めていく上で大変重要なものと認識をしております。
 そこで、本日は、ぜひともこの制度が中小企業にとって使いやすく、かつ、より高い効果を上げるものにしていただきたい、そのような観点から質問をさせていただきます。
 まず、この制度は、健康や環境といった成長産業分野に参入したり、より付加価値の高いものづくりを目指そうとする中小企業を対象として、設備の導入経費を助成するということでありますが、具体的な支援の対象としては、どのような設備を導入し、どんな事業に取り組む企業が想定されるのか、まずお伺いいたします。

○十河商工部長 都が来年度から開始する成長産業等設備投資特別支援事業では、成長産業分野での事業展開や付加価値の高いものづくりを目指すために必要となる機械設備の導入経費の一部を助成いたします。
 助成対象となる取り組みにはさまざまなものが考えられますが、成長産業分野での事業展開としては、例えば医療分野への参入を目指す中小企業が先端の加工設備を導入し、培ってきた技術を生かして人工関節などの医療機器を製造する事例などが考えられます。
 また、ものづくりの付加価値を高める取り組みといたしましては、例えば顧客ごとにカスタマイズした製品を、品質を保ちながら短期間で製造するために、高性能の3Dプリンターを導入し、試作プロセスの期間短縮や低コスト化を図る事例などが考えられます。

○田中委員 ただいま助成対象の事例として、先端の加工設備や高性能3Dプリンターをご紹介いただきました。まさに本制度は、成長を目指して意欲的に新しい事業に取り組む中小企業が支援の対象だろうと感じております。
 一方で、こうした設備を導入する場合には、設備の金額も相当の金額になることが十分想定されます。また、綿密な導入計画を立てたり、機械を自社に合った仕様にカスタマイズすることが必要で、実際に設置を終えるまでにはかなりの時間がかかることも想定されます。
 そこで、次に、ただいま申し上げました点について、この制度ではどのように対応していくのかお伺いをいたします。

○十河商工部長 ご指摘いただきましたように、先端的な機械設備の導入に当たりましては、投資規模が大きくなることや、設備の導入を決定してから設置が完了するまでの期間が長期化することも考えられます。
 こうしたことから、本制度におきましては、助成限度額を一億円に設定するとともに、二百億円の基金を造成することによりまして、助成金原資として十分な規模を確保の上、適切に事業を執行してまいります。
 また、助成対象期間を一年九カ月とし、設備投資の取り組みが二カ年にわたる場合にも助成金を交付できるよう対応してまいります。

○田中委員 思い切った設備投資を実行しようとする中小企業に対しても、配慮ある仕組みになっているものと受けとめさせていただきました。
 ところで、この制度により助成を受けて最新鋭の設備を導入しても、計画した事業の実現が伴わなければ、売り上げの拡大など目指す成果につながりません。そして、時には状況の変化に素早く対応して計画を軌道修正するといったことも必要ではないかと感じております。
 本制度が十分な効果を上げるようにしていくためには、単に助成金を交付するにとどまらず、その後の状況についてもしっかりとフォローアップを行っていくべきであると考えますが、具体的な対応をお伺いいたします。

○十河商工部長 中小企業が新たな事業を展開するに当たりましては、設備導入の計画に加え、これを活用した製品企画、製造、販売など事業全体の計画を策定し、事業環境の変化などにも適切に対応しながら、その着実な実行を図ることが重要であります。
 このため、本制度におきましては、こうした事業に関する計画を中小企業から提出していただき、その実現性などを審査するとともに、助成金の交付決定後も、事業の進捗状況に合わせまして、専門家などによる経営面、技術面からのアドバイスを行うほか、知的財産や販路開拓などの支援を実施いたします。
 また、事業の必要性や中小企業の意向に応じ、実施機関である中小企業振興公社のその他の支援策を組み合わせて、効果的なサポートを行います。
 こうした取り組みによりまして、中小企業の事業計画の着実な遂行を後押ししてまいります。

○田中委員 この制度に関しましては、さきの予算特別委員会におきまして、我が党の質問に対し、小規模事業者に対しては助成率を三分の二に引き上げるとの答弁がありましたが、ただいまの質疑を通じまして、小規模事業者への配慮はもちろんのこと、設備投資に意欲的に取り組む中小企業に対してもいろいろな配慮がされているということを改めて確認させていただきました。
 ぜひともこの助成制度を適切かつ効果的に運用していただき、小規模事業者だけではなく、中小企業の設備投資の活性化へとつなげていただくことを要望し、次の質問に移ります。
 次に、防災技術の普及促進についてお伺いをいたします。
 防災対策は、東京の喫緊の課題であります。国の報告では、マグニチュード七クラスの地震が首都圏を襲う可能性は、今後三十年間で七〇%の確率とされ、被害総額は九十五兆円と推計されております。
 人命損傷のみならず、経済の基盤である生産、物流の機能が失われることにより、首都機能が致命的な打撃を受ける可能性も指摘されております。こうした事態になることのないよう、官民の英知を結集し、災害への備えに万全を期さなければなりません。
 災害に強い東京を実現するためには、産業界の力が欠かせません。都内では、高い技術やノウハウを駆使して新たな防災機器や設備の開発に取り組む中小企業もふえております。その一方で、せっかく開発したすぐれた製品も、資金不足などで実用化に至らなかったり、PR不足から幅広く導入されるまでに至っていないものも多いのではないかと思っております。
 東京の防災力を高めるためには、中小企業の技術力が大いに活用されるような環境をつくることが必要であります。さきの本会議において、都は、防災技術の実用化に取り組む中小企業を支援する事業を開始するとのご答弁がありましたが、具体的な取り組みをお伺いいたします。

○十河商工部長 都は来年度、中小企業振興公社に十二億円の基金を創設し、都市の防災力を高める都内中小企業のすぐれた技術や製品の実用化と普及を支援する先進的防災技術実用化支援事業を実施いたします。
 本事業では、実用化前の段階にある新規性の高い防災技術を毎年度三十件程度選定し、実証実験や改良に要する経費について一千万円を限度に助成し、製品化を後押しいたします。
 また、製品化後は、展示会に出展する際の経費について百五十万円を限度に助成いたしますとともに、製品を導入しようとするユーザーへの販売を促進するため、二百万円を限度とした助成を行い、その普及を強力に進めてまいります。
 こうした取り組みによりまして、中小企業によるすぐれた防災技術の創出を促し、防災力の向上につなげてまいります。

○田中委員 阪神・淡路大震災、東日本大震災と大きな災害に見舞われている中、今なお東北地方においては復興事業が行われております。このような状況である今こそ、防災の意識が高まっている今こそ、都が先導役となって災害に対するすぐれた製品や技術の開発を加速させていくことで、防災関連産業が東京の代表産業として大きく育っていくことを期待しております。
 次に、東京の外国人旅行者誘致についてお伺いいたします。
 全世界の旅行者数は、二〇一三年には十億八千七百万人に達し、今後も増加傾向にあり、各国がしのぎを削って旅行者を誘致しております。こうした中で、日本を訪れる外国人旅行者数は世界で三十三位にとどまっております。
 世界で観光都市という地位を築いているパリやロンドンは、それぞれ花の都パリ、霧のロンドンなど、その都市を象徴するイメージを確立しており、東京もそうした世界の旅行者を引きつけるようなイメージを確立すべきではないでしょうか。
 オリンピック・パラリンピック開催決定という大きなチャンスを生かし、東京の魅力を海外に向けて力強く発信していくための来年度の都の取り組みについてお伺いいたします。

○杉崎観光部長 オリンピック・パラリンピックの開催決定により、東京への関心が一段と高まるこの機を捉えて、より効果的に旅行者を誘致していくためには、東京を強く印象づけるイメージを確立し、世界に向けて発信していくことが必要であります。
 このため都は、来年度、東京の観光面でのブランド確立に向けて、東京の都市としての強みや課題、また、ロンドンなど観光地として人気の高い海外諸都市のブランディング戦略や誘致戦略事例などの調査を実施いたします。
 また、学識経験者や民間事業者など、外部の有識者による検討会を設置し、この調査を活用するとともに、専門的な助言をいただきながらブランディング戦略の構築に取り組んでまいります。

○田中委員 昨年秋に、東京都議会を代表し、ロンドン、アテネなどを訪問し、オリンピック・パラリンピック開催等の施策の推進について海外調査を行ってまいりました。
 ロンドンは、二〇一二年のオリンピックの際に、海外旅行者の誘致や国際会議等の開催に力を入れた結果、オリンピック開催後も外国人旅行者数を伸ばしていると聞いてまいりました。
 多くの旅行者がオリンピック開催前だけでなく開催後も東京を訪れるよう、ぜひ東京の観光都市としてのブランディングを構築し、世界の旅行者や旅行事業者にもしっかりと発信していただきたいと思います。
 外国人旅行者誘致を進めるためには、ビジネスによる旅行者も積極的に誘致する必要があります。とりわけ国際会議などに代表されるMICEは、高い経済波及効果が見込まれるだけではなく、東京の魅力を広く海外に発信する絶好の機会でもあります。
 そこで、MICEの誘致に向けた来年度の都の取り組みについてお伺いをいたします。

○杉崎観光部長 MICE誘致を一層推進するためには、効果的な誘致活動について調査分析するとともに、開催都市としての魅力を高め、積極的に発信することが必要でございます。
 このため都は、現在、東京と誘致を競い合う都市の取り組みや市場動向等の調査を進めており、さらに来年度は、MICEに精通した専門家から成る会議体を設置し、その助言を受けながら、効果的なマーケティング戦略づくりに着手をいたします。
 また、開催都市としての魅力を高めるため、会議、宿泊、商業施設などのMICE関連施設が集積しているエリアから三カ所を公募、選定し、MICE開催拠点としての機能強化を支援いたします。
 さらに、東京の認知度を高めるとともに、主催者の開催意欲を喚起するため、海外のMICE専門誌への広告掲載や東京の魅力をPRする冊子の作成など、情報発信力の強化を進めてまいります。
 こうした取り組みを通じて、MICE誘致を積極的に展開してまいります。

○田中委員 先ほども申し上げましたが、昨年秋、ロンドン、アテネへの訪問とあわせまして、MICE誘致の視点からミラノも調査してまいりました。来年二〇一五年にミラノで万国博覧会が開催されるなど、ミラノも積極的にMICE誘致に取り組んでおりました。
 ポイントは、会議場の機能や規模を売り込むだけではなく、交通機関、宿泊施設、文化施設、歴史的建造物、治安状況など、町全体の利便性や魅力を織り込むことが必要だと伺ってまいりました。MICE誘致の視点から、産業労働局を初め、各局連携して全庁的に取り組んでいただきたいと思っております。
 都は、MICE誘致を通じて、ビジネス旅行者も含めた外国人旅行者の誘致に向けて積極的に取り組んでいるということですが、世界の旅行人口の増加が予測される中、さらに旅行者を獲得し続けるためには、訪れる旅行者の満足度を高め、リピーターにつなげていくことが重要であります。
 とりわけ、独自の文化、習慣を持つムスリムは、世界の人口の四分の一以上を占めているとされ、その対応を怠ることはできません。
 昨日も、若干港湾局の質疑で触れましたが、私の地元品川には、ムスリムの人口割合が高いとされているインドネシアやブルネイの大使館があり、先日もブルネイ大使館で話を伺う機会がありました。宿泊施設や飲食店等においてさまざまな対応がなされつつありますが、十分ではないとのことでありました。
 こうしたことを踏まえて、より多くのムスリム旅行者を誘致するための都の取り組みについてお伺いをいたします。

○杉崎観光部長 今後、増加する期待が高いムスリムの旅行者を東京に積極的に誘致するためには、都と民間とが連携した取り組みを行うことが重要でございます。
 都は今年度、都内の旅行業、宿泊業など民間事業者の方々とともに、世界最大のムスリム人口を擁するといわれているインドネシアで、初めて観光プロモーションを実施いたしました。
 現地では、商談会を開催してビジネスマッチングに取り組むと同時に、インドネシアの旅行事業者の方々を対象としたセミナーにおいては、ムスリムの習慣に配慮した東京の飲食店を紹介するパンフレットを配布するなど、旅行者誘致に向けたPRを行ってまいりました。
 来年度は、引き続きインドネシアで観光プロモーションを行うとともに、ムスリム旅行者に安心して滞在していただくために、必要な知識や対応集をまとめたリーフレットの作成、配布やセミナーの開催により、都内事業者の普及啓発に努めるなど、誘致に向けた取り組みを進めてまいります。

○田中委員 ぜひとも積極的なる取り組みをお願いしたいと存じます。
 次に、森づくり推進プランについてお伺いをいたします。
 東京の面積の四割を占める森林は、木材の供給を初め、水源の涵養や災害の防止、二酸化炭素の吸収など、さまざまな機能を持つ都民共有の財産であります。森林を健全に保っていくには、伐採、利用、植栽、保育という森林の循環の維持が必要であり、その一翼を担うのが林業であります。
 木材価格の低迷が続く中、適切な森林整備を行い、健全な森林として後世に伝えていくためには、コスト削減を図り、林業経営を効率的に行っていくことが不可欠であると考えます。
 先日の当委員会でも説明を伺いましたが、森づくり推進プランでは、効率的な林業経営の実現を戦略の一つとして掲げております。
 都は、林業経営の効率化に向け、どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。

○津国農林水産部長 木材価格の低迷などによる厳しい経営環境の中で、伐採、利用、植栽、保育という森林の循環を維持していくには、林業経営の効率化に向けて、植栽から木材の搬出に至るまでの森林施業コストを低減することが重要でございます。
 そこで都は、来年度、森林施業の中で大きな割合を占める伐採搬出経費の削減と、それを担う林業技術者の育成に重点的に取り組んでまいります。
 具体的には、まず、森林施業の機械化等を進める上で重要な林道等の基盤整備を着実に実施していくとともに、多摩の急峻な地形に適した、より効率的な伐採搬出システムの確立に向け、研究機関や大学等と連携して先進事例の収集や分析を行い、多摩地域でも導入可能なモデルを考案いたします。
 また、効率的な森林施業を行うには、林道を補完する森林作業道の整備が不可欠でございますが、高齢化等により技術者が不足しておりますことから、現場での実践を中心とした研修を実施し、必要な技術者を育成してまいります。
 こうした取り組みにより、林業のコスト削減や将来を担う人材の育成を進め、効率的な林業経営に結びつけてまいります。

○田中委員 林業コストの削減は、非常に重要な取り組みであります。効率的な林業施業を推進するための新たな技術開発に期待しておりますので、着実な取り組みをお願いしたいと思います。
 森づくり推進プランにあわせまして、次に、水産業振興プランについてお伺いいたします。
 日本の排他的経済水域の約四割を占める伊豆諸島から小笠原諸島までの島しょ地域において、水産業は基幹産業であります。しかし、漁獲の減少、漁業者の高齢化など、水産業を取り巻く経営環境は厳しさを増しております。
 こうした現状を踏まえ、都が今回のプランのポイントに上げた生産基盤の整備は、水産業の振興を図る上で重要な課題であると考えます。特に、昨年の台風二十六号により被災した大島の漁業生産力の回復は喫緊の課題であります。
 そこで、今後、水産業の生産基盤の整備にどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。

○津国農林水産部長 水産業を振興するには、共同利用施設や人工漁場といった生産基盤の整備を進め、漁業の収益性の向上を図ることが重要でございます。
 そのため都は、来年度も各島の要望を踏まえながら、安定した漁業経営に向けて生産基盤の整備を支援してまいります。
 まず、共同利用施設につきましては、水産物の鮮度保持のための製氷施設など、八町村で十三施設の整備を支援いたします。
 加えて、島しょ地域では地震や台風などが多いことから、老朽化した水産物販売施設の耐震化など、五町村の七施設について防災力の強化を図ってまいります。
 また、人工漁場につきましては、五町村で九カ所の整備を支援するほか、より生産性の高い漁場の整備に向けて、生息環境が水産生物に与える影響の調査研究を進めてまいります。
 さらに、大島では、先ほどの共同利用施設を整備するほか、優良な漁場が土砂で埋没したため、まずは代替の漁場を造成し、漁業生産力を確保いたします。あわせて、被災漁場につきましては、定期的な調査を行い、回復に向けて必要な措置を検討いたします。
 こうした生産基盤の整備を着実に実施し、水産業の振興を図ってまいります。

○田中委員 先日の委員会視察で大島に赴き、土砂や瓦れきにより漁場が荒らされている状況を、現地の町長を初め、お伺いをしてまいりました。大島を初め、各島の実情に応じたきめ細かな復興策を講じていただくように、これは強く求めておきます。よろしくお願いいたします。
 これまで林業、漁業と取り上げてまいりましたが、次に、農業関係についての、これは質問ではなく意見として述べさせていただきます。
 今回の、本年二月の大雪では、東京においても八百棟を超えるパイプハウスが倒壊するなど大きな被害が出ており、農業者からは、今後、農業を続けていけるかどうか心配する声が多数上がっています。
 農業団体からも、我が党に対し、被災した施設の復旧のために無利子の融資を実施することなどについて要望があり、我が党から都に対し、速やかな対応を行うよう要請を行いました。都では、我が党の要請を受け、国が公表した災害関連資金よりも有利な条件での無利子融資を速やかに立ち上げたところであります。
 今後、被害状況の全容の把握を進め、国の動向も見きわめながら、必要な支援策の検討を行うよう求めておきます。よろしくお願いいたします。
 次に、公共職業訓練についてお伺いをいたします。
 都は、都内各地の職業能力開発センターにおいて職業訓練を実施しております。私の地元品川区にある城南職業能力開発センターでも、さまざまな内容の訓練が行われ、修了生が地域の中小企業等で活躍をしておられます。職業訓練は、地域の人材育成に大きな役割を果たしております。
 ところで、職業能力開発センターでは、普通課程の訓練で授業料を徴収しておりますが、本定例会には授業料を改定する条例改正案が提出されております。
 そこでまず、普通課程の授業料徴収の経緯について、改めて確認をさせていただきます。

○戸澤事業推進担当部長 普通課程は、民間の教育訓練機関と対象者や訓練内容、訓練期間が重複しており、このため国は、受益者負担の観点から、授業料の徴収について検討するよう都道府県に対し通知を出しております。
 これを受け、都においては、民間教育訓練機関で技能を学ぶ都民の多くが、年平均百万円を超える額をみずから負担をしている状況に鑑み、受益者負担の適正化を図る観点から条例を改正し、平成十九年度より有料化しております。
 なお、有料化に当たっては、経済的理由がある方や障害者などについて減免し、全額無料とするなど、きめ細かい対応を行っております。

○田中委員 民間の教育機関で能力開発に取り組む都民の多くが、多額の授業料をみずから負担している現状がある中で、公共の職業訓練校で同様の技能を学ぶ訓練生は無料ということでは、納税者である都民の納得は得られないものと思っております。当時、受益者に応分の負担を求め、有料化に踏み切ったのは妥当であったと思っております。
 少し角度を変えて伺いますが、職業訓練は他県の方も受講でき、東京で訓練を受けて都内の中小企業に就職するケースもあるかと思います。
 そこでお伺いいたしますが、都及び関東近県の授業料はどうなっているのかお伺いいたします。

○戸澤事業推進担当部長 都は年額十一万五千二百円、栃木県は年額二十三万七千六百円、そのほかの関東五県は地方交付税の算定基準における公立高校授業料と同額の年額十一万八千八百円となっております。

○田中委員 ただいまご答弁いただきましたように、東京だけが授業料の金額が低く設定されているという現状を改めて確認させていただきました。
 ところで、職業訓練校は、高校と同様に中学卒業者の進路の一つとなっておりますが、高校では授業料の負担軽減措置があります。今般、国は公立の高校授業料無償化制度を見直し、ばらまきではなく、本当に支援が必要な家庭に対し手厚く支援するという観点から、所得制限の導入や支給範囲の拡大などが図られました。
 職業訓練においても、公平な負担、近県とのバランスを考慮し、本当に困ってる方へは手厚い支援が必要であります。特に中卒者や高校中退者については、高卒者や大卒者に比べて就職が厳しい状況にあり、支援が求められていると思います。
 中卒者や高校中退者に対してどのような対応をしていくのか、ご見解をお伺いいたします。

○戸澤事業推進担当部長 今般、高等学校等就学支援金制度が改正され、所得制限が導入されるとともに、一部の専修学校、各種学校の生徒などへ支給対象が拡大されました。
 この制度改正に伴い、公共職業訓練に関しても、中卒者や高校中退者を対象に十一万八千八百円を上限として授業料の負担を軽減する制度が設けられました。
 こうした状況に鑑みまして、都においては、新たに世帯所得が一定額未満で十八歳以下の中卒者及び高校中退者につきまして、平成二十六年度から授業料の全額を免除いたします。

○田中委員 平成二十六年度からということでありますが、授業料の免除により中卒者や高校中退者に手厚い支援が図られているということがわかりました。
 あわせて、民間の教育機関で都民が自己負担で学んでいる状況や、埼玉、千葉、神奈川など近隣の県との均衡などを総合的に勘案すると、今回の授業料改定は妥当であると思います。
 その上で、訓練生の立場に立てば、改定に伴ってサービスがより向上したと実感できるように職業訓練の質を高めることも必要だと思っております。都としてどのように取り組んでいくのか、ご見解をお伺いいたします。

○戸澤事業推進担当部長 都は、今般の授業料改定を踏まえ、訓練サービスの質をさらに高め、ひいては訓練生の満足度の向上につながるよう取り組んでまいります。
 具体的には、産業ニーズの変化にあわせてカリキュラムを見直し訓練内容を充実するとともに、最新のIT機器の整備など訓練設備の高度化を行います。
 さらに、特別講座の開設など就職支援体制の強化等を図ってまいります。
 こうした取り組みにより、訓練の質の向上を図り、訓練生を優秀な人材として育て上げ、都内中小企業等への就職に結びつけてまいります。

○田中委員 今後とも、訓練生がしっかりと技能を習得し、希望する分野に就職できるよう、職業訓練の質の向上にも取り組んでいただきたいと思います。
 次に、技能振興についてお伺いいたします。
 景気に明るさが見えてきておりますが、資源の乏しい我が国が将来的にも力強く成長していくためには、国際競争に勝ち抜く高い技術力が必要であります。東京のものづくりを支えていくためには、すぐれた技能者を育てることが重要であり、高度な技能を持つ人材の力を若い世代に着実に引き継いでいかなければなりません。
 しかし、ものづくりの現場では、技能者の高齢化の進行と若者のものづくり離れにより、長年培われた技能が失われつつあると伺っております。
 都は、技能継承に関するさまざまな事業を行っておりますが、将来のものづくり現場を担う若手職人の育成のため、どのようなことを行っているのかお伺いをいたします。

○戸澤事業推進担当部長 東京のものづくり産業の将来にわたる成長を図るためには、若者を技能者として育成することが必要であります。
 都では、体験塾や高校生向け実習講座等を実施し、若者をものづくりへ誘導するとともに、現場の若手職人に対して熟練技能者が直接指導する名工塾を実施し、育成に努めております。
 来年度からは、国が卓越した技能を有すると認めた現代の名工や、都が認定した東京マイスター等の熟練技能を動画に記録し伝えていく取り組みを開始いたします。
 具体的には、若者の利用が多いスマートフォンでも閲覧できるように、若者のものづくりへの興味を喚起いたします。
 また、よりハイレベルな技能についてDVD化し、中小企業等に配布して、若手従業員の育成を支援していきます。
 こうした取り組みにより、将来のものづくり現場を担う若手職人の育成を積極的に進めてまいります。

○田中委員 さらに、若手の育成のみならず、現場を支える熟練技能者のさらなる技能の向上も欠かせません。このためには、互いに競い合い、研さんして高めていくことが大切でありますが、その機会の一つとして、熟練技能者を対象とした技能グランプリがあります。都内の事業主団体等も技能の向上に向けて選手を送り出そうと努力をし、選手強化に取り組んでおりますが、財政的な負担が多いなど問題があるとも伺っております。
 すぐれた技能者を育てる観点から、都は、こうした事業主団体等の取り組みを積極的に後押しすべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○戸澤事業推進担当部長 技能グランプリは、トップクラスの技能士が競う国内唯一の大会であり、技能尊重機運の醸成と技能者の社会的地位の向上に資する重要な競技大会と認識しております。
 そのため都は、技能グランプリへの取り組みを促進すべく、入賞者に知事賞を贈呈し、その栄誉をたたえております。
 一方、事業主団体や技能士の団体は、中小企業従業員等を対象に選手強化のための技能実習を行っていますが、経費負担の問題から支障を来している例も見受けられます。
 このため来年度より、技能実習に要する材料費について経費助成することで、事業主団体等の取り組みを支援し、出場者の技能向上を図ってまいります。

○田中委員 熟練した技能者にとって、グランプリに出場し、その実力を認めてもらえるということは大変名誉なことだと思います。引き続き、ものづくり技能の振興と継承の支援にしっかりと取り組んでいただきたい、強く期待をしています。
 これまで、中小企業振興、観光、林業、水産業、雇用の各分野に関して質疑を行ってまいりましたが、改めて産業労働局の行政分野の幅広さについて実感をした次第であります。
 東京の活力は、地域経済の活性化や雇用の安定によってもたらされるものですから、産業労働局における施策を総合的に展開していくことこそが極めて重要であると考えます。
 ぜひ産業振興、雇用就業対策の両面においてしっかりと取り組んでいただきたいと思っておりますが、来年度に向けた局長のご決意をお伺いしたいと思います。

○塚田産業労働局長 都内には、すぐれた技術力を持つ中小企業や、意欲と能力のある人材が集積しており、その集積は産業の基盤として欠かせない存在でございます。経済に明るい兆しが見られる中、景気回復の流れを確実なものとするためには、こうした東京の持つ強みを生かし、成長を加速させていくことが何よりも重要でございます。
 東京都といたしましては、副委員長からお話のありましたとおり、設備投資の促進や製品開発の支援などを通じて、都内中小企業の成長産業分野への参入を強力に後押ししてまいります。同時に、技能者の育成に積極的に取り組むとともに、若者、女性、高齢者など全ての人が能力を発揮できるよう、多様な就業支援を展開してまいります。
 また、東京は最先端の都市機能、江戸以来の伝統文化に加え、多摩・島しょ地域の豊かな自然など、多様な地域資源に恵まれております。こうした特色を生かしながら、観光や農林水産業の振興にも力を入れ、東京の持つ幅広いポテンシャルを最大限引き出してまいります。
 今後とも、東京を活性化させることが日本全体に活力をもたらすという信念を持ち、現場のニーズをしっかりと踏まえながら、産業労働局一丸となって東京の産業振興と雇用就業対策に全力で取り組んでまいります。

○田中委員 昨年の都議選で、私ども都議会自民党は、東京を世界で一番の都市にという目標を掲げ選挙に臨み、また、選挙後、今それに向かって取り組んでおります。また、知事も世界一の都市東京の実現に向け選挙に臨み、また、先ほどの施政方針でもそのことが述べられております。
 いずれにいたしましても、この東京を世界一の都市にしていく上で、産業労働局の皆様の尽力なくしてそれを実現することはできませんので、ただいま局長から力強いご決意を伺いました。ぜひ、ともに世界一を目指して取り組んでいただきたい、強く要望し、質問を終わります。

○谷村委員 それでは、初めに、中小企業の設備投資への支援についてお伺いをいたします。
 東京の経済は、消費の回復や賃上げの動きなど、着実に上向いております。一方で、中小零細の経営者の方々から、経営はまだまだ厳しいというお話、お声をいただくのもまた事実であります。東京の経済を支えてくださっている中小企業の皆様にこそ、今の経済のよい流れを届けていき、成長と発展の道筋をつけなければならないと思います。
 都は、来年度から付加価値の高いものづくりや成長産業への参入に取り組む企業に対し、設備投資への助成を開始するとのことでありますが、中小企業の意欲ある取り組みを強力にバックアップするものとして大いに期待をいたしております。
 一方で、せっかくの支援策も、実際に使われないことでは全く意味がありません。特に本制度のような助成事業は、経営体力の弱い中小企業が資金負担を伴う新しい取り組みを始める際に力強い味方となるわけでありますから、しっかりと周知などに取り組むべきであると思います。
 そこで、本制度の利用促進に向けた取り組みについてお伺いをいたします。

○十河商工部長 来年度から開始する成長産業等設備投資特別支援事業の利用を促進し、制度の目的である中小企業の成長の実現を図っていくためには、本制度について幅広く周知を行い、都内中小企業に浸透させていくことが重要であります。
 このため、実施機関である中小企業振興公社のネットワークを活用いたしまして、ホームページや広報誌、メールマガジンなどの多様な媒体により、公社の支援対象企業などに対し周知を行うほか、新聞への広告掲出といった方法も取り入れることによりまして、都内中小企業に対してさらに幅広く広報を実施してまいります。
 また、中小企業向けのリーフレットを作成し、都や公社の窓口で配布するほか、日ごろから多くの中小企業と接している区市町村や中小企業支援機関、金融機関に対してもきめ細かく情報を提供し、施策の普及に協力していただきます。
 こうしたさまざまな機会を捉え、制度内容の周知に努めることによりまして、本制度の利用促進を図ってまいります。

○谷村委員 さまざまな手法を活用したきめ細かい周知にぜひとも努めていただき、中小企業の設備投資の活性化にしっかりと結びつけていただくよう、重ねてお願いを申し上げます。
 次に、アジア特別商談会についてお伺いします。
 成長を目指す企業にとっては、海外展開は一つの大きな選択肢となります。そこで、東京のものづくり企業に対する海外展開支援について、幾つかお伺いしたいと思います。
 拡大するアジアの需要を求めて海外市場に挑戦する企業は、今後ますますふえていくと思いますが、そこでまず、都内の中小製造業はどの程度海外への輸出を行っているのか、また、今後、海外展開への意欲をどのくらいの企業が持っているのか、お伺いいたします。

○十河商工部長 平成二十四年度に都が行った調査によりますと、中小製造業のうち、自社の製品、部品を直接または商社などを通して間接的に輸出している企業は、全体の一七・六%でございます。
 また、今年度、東京商工会議所が会員企業に対して行った調査によりますと、中小製造業の四四・三%が海外展開を視野に入れているという結果が出ております。

○谷村委員 ありがとうございます。輸出に携わっている企業が一七・六%、そして、これから海外展開を視野に入れている企業は四割を超えるというご答弁でございました。また、東京にはすぐれた技術力、開発力を持つ中小企業がたくさんあることを考えますと、海外市場を目指す企業がこれからもふえてきてもいいように思います。
 もちろん国内市場での成長がまず第一と考える企業も多いとは思いますが、海外市場に挑戦したいと思っていても、情報やノウハウ、人材などが不足をしていてなかなか踏み出せないということも要因になっていると思います。せっかく世界に通用する技術、製品を持ちながら、情報やノウハウなどの不足で海外展開をちゅうちょしたり挫折したりすることのないように、行政によるしっかりとしたサポートが必要であります。
 そこで、こうした経営資源の不足する中小企業の海外展開に対して、都はどのような支援に取り組んでいるのかお伺いをいたします。

○十河商工部長 都は、海外市場を目指す中小企業に対しまして、中小企業振興公社において、無料相談や海外展示会への出展支援、専門商社を通じた現地企業とのマッチングなどを行い、海外販路の開拓を支援しております。
 また、産業技術研究センターでは、海外規格に関する情報提供や評価試験サービスを行うなど、製品流通に関する海外の各種規制への対応につきまして、技術面から支援をしております。
 さらに、知的財産総合センターでは、各国の知的財産制度に精通した専門家による相談や海外特許出願費用等の助成を実施し、海外での知的財産の保護、活用を支援しております。
 今後、東京都、中小企業振興公社、産業技術研究センターによる相互の連携を一層密にし、中小企業のニーズに応じた多面的な支援を行ってまいります。

○谷村委員 中小企業振興公社、産業技術研究センター、そして知的財産総合センターで、この海外市場を目指す三つの角度、販路開拓、技術、知的財産という三つの側面から総合支援を提供しておられるということを改めて確認をさせていただきました。この三つの側面の中で、特に販路開拓に対する支援についてさらにお伺いをしていきたいと思います。
 多くの中小企業の海外販路開拓を牽引していくためには、まず、力のある中小企業を選んで海外展示会などに案内をし、そのすぐれた技術力や製品をアピールして、取引の先鞭をつけることが大切であると思います。
 都は来年度、アジアの展示会で都内中小企業のものづくりの力をアピールする取り組みを行うと伺いましたが、具体的な事業内容についてお伺いいたします。

○十河商工部長 都は来年度、集客力の高いベトナムの展示会において、都内中小企業のすぐれた技術や製品を一体的にアピールする取り組みを実施いたします。
 具体的には、商工団体や区市町村などとも協力し、高い技術力やすぐれた製品を持つ中小企業を広く公募した上で、都が選定した約二十社のものづくり企業が、みずから現地で技術力や製品をアピールする機会を設けます。
 また、商工会議所など現地のネットワークも活用いたしまして、効果的な商談機会を提供いたします。
 こうした取り組みによりまして、すぐれた技術、製品を有する中小企業の海外展開を積極的に支援してまいります。

○谷村委員 ありがとうございます。グローバル市場において、東京の中小企業が世界レベルの技術や製品を持っているという事実を認知させ、東京のものづくりはすばらしいという評価を確立することができれば、中小企業の海外販路開拓は、よりスムーズに進むものと思います。こうした都の取り組みに強く期待をいたしております。
 中小企業がこうした展示会等をきっかけに海外展開に踏み出し、取引の芽が出たとしても、その取引を継続し、さらに拡大していくためには、現地における追加の注文、あるいはメンテナンスに迅速に対応できる体制をつくる必要も出てくることと思います。
 都は、来年度、中小企業が現地で販売、メンテナンスの拠点を設ける取り組みなどを支援するアドバイザーを置くとのことですが、このアドバイザーはどのような役割を果たすのか、具体的にお伺いしたいと思います。

○十河商工部長 継続的な事業活動を展開するに当たりまして、海外に販売などの拠点を設けるためには、国ごとに異なる法制度や商習慣を正確に理解した上で、関係機関や現地企業との交渉を適切に行うことが必要であり、ノウハウを持たない中小企業がこれを単独で行うことは困難であります。
 そこで都は、来年度、都内中小企業の関心が高いアジアの一地域を選定いたしまして、現地のビジネス事情に精通した人材を現地拠点支援アドバイザーとして配置いたします。
 アドバイザーは、拠点設立に当たっての手続や留意点などにつきまして、現地の状況を的確に踏まえたアドバイスを行うとともに、中小企業が現地でメンテナンス業務などを委託する場合には、パートナーとなり得る企業の発掘や交渉を行うなど、中小企業のニーズに応じた柔軟な支援を実施いたします。
 こうした取り組みによりまして、都内中小企業の現地における販売活動を強力に後押ししてまいります。

○谷村委員 中小企業の海外展開を支援することは、企業の成長力を高め、都内経済の活性化につながることと思います。引き続き、都としての積極的な支援をお願いいたします。
 これまで成長を目指す中小企業の取り組みを伺ってきましたが、長く続いた景気低迷の影響により、経営を立て直す糸口がなかなか見出せず、一人悩みを抱える経営者も少なくありません。この業績の悪化からいまだに抜け出せずにいる中小企業に対する支援も大切であります。
 そうした企業に対して、経営に関する知識やノウハウの豊富な専門家が、経営のかかりつけ医として個々の会社の症状を親身になって聞き取り、的確な処方箋を示してあげる、そういった相談体制が何よりも必要であります。
 そこでまず、都における今後の経営相談の充実に向けた取り組みについてお伺いいたします。

○十河商工部長 中小企業が抱えるさまざまな経営課題に対し、都は中小企業振興公社にワンストップ総合相談窓口を設けまして、各分野の専門家による無料相談や、会社の現場に専門家を派遣し、きめ細かな支援を行っております。
 特に、中小企業金融円滑化法終了後の厳しい経営環境にある中小企業を支援するため、今年度は窓口の相談員を増員するとともに、専門家の派遣回数を六百回分拡大いたしました。このうち二百回分につきましては、資金繰りが逼迫した小規模な企業に無料による相談を実施いたしまして、経営改善計画の策定を集中的にサポートしております。
 来年度においても、経営改善が必要な中小企業のニーズに応えるため、引き続き今年度と同様の体制で臨みます。
 こうした取り組みによりまして、中小企業の経営課題の解決を着実に支援してまいります。

○谷村委員 東京都中小企業団体中央会の会長を初め、役員の皆さんとお会いして懇談させていただいたときに、中小企業に対する支援、東京都はさまざまなメニューで行っていただいているけれども、この専門家の派遣をしていただいている、これが本当に一番ありがたいというふうにおっしゃっておりました。
 こういうすごい高い評価をいただいたものですから、公明党、我が党といたしましても、この専門家派遣をしていただいて、その事業に、業者にしっかりとしたアドバイスをしていただくことが本当に企業再生、事業再生につながっていくんだということを都議会の場でも訴えさせていただいてきたところでございます。それに応えて、派遣回数、あるいはアドバイザーをふやして対応していただいていることに、本当に感謝を申し上げる次第でございます。
 こうした状況下で、四月からは消費税率が引き上げをいたします。経営者は価格への転嫁という問題にも直面をしております。特に取引上の立場が弱い中小零細の下請企業は、日ごろからコストダウンの要請等に対応しながら、何とか仕事を確保しているのが実態であります。今回の消費税の引き上げに当たって、円滑に転嫁できないとなると、会社の経営に深刻な影響を与えかねません。
 都は、これまでの下請企業支援のノウハウを生かしていただいて、価格転嫁を初めとした下請取引の適正化に向けて、より一層きめ細やかな対応を行っていただきたいと考えますが、今後の取り組みについてお伺いいたします。

○十河商工部長 都は、中小企業振興公社に下請センター東京を設置し、下請取引に係る相談対応や調停による紛争解決を行っております。
 また、講習会の開催により下請法などの普及啓発を図るとともに、年間一千社を超える企業を巡回訪問し、現場でのアドバイスなどを行っております。
 こうした中からも、消費税の転嫁拒否や値引きの強要、発注元とのトラブルなどを懸念する声があり、円滑な価格転嫁に向け、よりきめ細かな対応が重要であると考えております。
 そのため来年度は、昨年十月に下請センター東京で開始した転嫁拒否などの相談受け付けを継続いたします。また、弁護士相談の体制を週二日から週五日に拡充するとともに、企業巡回を行う相談員を区部、多摩でそれぞれ増員し、価格転嫁を含めた下請取引の一層の適正化に向けて取り組んでまいります。

○谷村委員 年間一千社を超える企業を巡回訪問していただいて、現場でのアドバイスを行っていただいている、また、消費税の転嫁拒否等の相談もしっかりと受けていただいて、弁護士相談の体制も拡充していただける、本当にありがたい体制強化をしていただいていると思います。
 この企業の立場に立ったきめ細やかな相談、アドバイスにより、下請企業をしっかりと守っていただきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 最後に、都が来年度から開始する動産・債権担保融資制度についてお伺いいたします。
 動産や債権を担保とする融資制度、いわゆるABL制度は、中小企業にとって資金調達の幅を広げる、選択肢を広げる有効な手法でありますが、その一方で、現状の我が国の企業向け融資は不動産担保や個人保証によるものが中心で、動産などの活用は二%にとどまっているとの調査もあり、これからまだまだ伸びていく可能性があると思います。
 さきの予算特別委員会における公明党の代表質問では、この都の新たなABL制度について、専門的機関の活用や積極的なPRなど、効果的な運用に向けた取り組みが明らかになり、私も大いに期待をしているところであります。
 本日は、端的に、このABL制度を利用することで事業者に具体的にどのようなメリットがあるのか、お伺いをいたします。

○寺崎金融部長 今回の新たな制度は、取引先に対する売掛債権や、倉庫に抱えている在庫品のほか、製造業であれば生産用機械や工作機械、運送業であればトラックやバス、建設業であれば、ブルドーザーやクレーンなど、都内中小企業が事業活動を行うために保有している幅広い資産を担保として有効活用することで、新たな資金調達を可能とするものであります。
 加えて、この制度では、金融機関と担保物件に精通した専門機関が連携し、定期的に在庫品や機械、設備などの実地調査を行うことで担保物件の適切な保全が図られるほか、事業者と金融機関とが事業の実情を共有できるようになります。
 これにより、事業者にとりましては、業況に応じた経営面での具体的なアドバイスや迅速な追加融資につながることなどが期待されるなどのメリットがございます。
 こうしたことから、動産・債権担保融資制度の利用促進を図ることによりまして、都内中小企業の資金繰り支援をより一層強化してまいります。

○谷村委員 新しい取り組みであると思いますけれども、事業用資産を活用した資金調達という面だけではなく、金融機関と事業者との関係をより一層強め、経営改善につながる効果もあるということですから、都内中小企業の新たな資金調達の選択肢として、また、経営を支援する取り組みとして、この新しいABL制度が多くの中小企業の皆様に利用されるように積極的に取り組んでいただくことを要望いたしまして、私からの質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○尾崎委員 最初に、二月の大雪による被害農家への対策について質問いたします。
 被害に遭った東大和市の農家の方たちから、状況や要望なども聞き取りをしてきました。Aさんは、農業ハウスの倒壊を防ぎたいと夜中の二時に雪おろしをしたそうです。昨年、東京都、パイプハウスをつくったので、新しいハウスは雪がスムーズに落ちたが、古いハウスは劣化が進み、夜中に雨に変わったせいもあり、重くなって倒壊してしまったということでした。
 ハウスでトマトの苗を植えようとしていたので、これからが大変。早くハウスをつくらないと作物ができない。そうなれば、今後一層、野菜などの価格高騰が続き、倒壊した農業ハウスの撤去にも十万円くらいかかるといわれている。ところが、資材、人材が不足しているとメーカーからいわれ、修繕などは六月過ぎになるのではないかといわれたということでした。
 都への要望として、早く被害状況の把握をしていただき、都としての支援策を打ち出してほしいと寄せられました。
 二月の大雪で農業ハウスが倒壊するなどの被害がありましたけれども、産業労働局のホームページで掲載されています最新の状況について教えてください。
 なお、被害状況がつかめていない地域はあるのでしょうか。

○津国農林水産部長 ホームページ上で公表しておりますとおり、三月三日現在の被害状況が最新でございまして、パイプハウス等の農業施設八百一棟が倒壊するなど、農業関係被害の総額は四億三千八百万円に上っております。
 なお、奥多摩町、檜原村の山間部につきまして、まだ被害状況が判明していない地域がございます。

○尾崎委員 山間部は雪が残っていて被害の状況調査も大変な状況だと思いますが、早く被害の全容を把握していただくようお願いするものです。
 都としての今後の対応について伺います。都独自の支援策はどうなっていますか。

○津国農林水産部長 都独自の取り組みといたしましては、被災した農業施設を復旧するための施設資金と農業経営の維持に必要な運転資金として、都が全額利子補給して無利子とする農業特別対策資金を三月十日に立ち上げたところでございます。
 今後につきましては、引き続き被害の把握に努めるとともに、国の支援策の動向を見きわめながら、都の支援を検討してまいります。

○尾崎委員 東京都は、融資の利子補給を行うということです。利子補給とあわせて、返済据え置きについても運転資金で一年、設備資金で三年となっているので助かる人もいると思います。
 しかし、認定農業者以外の農家は融資率八〇%となっており、いい方を変えれば、自己資金が二〇%必要となるわけです。せめて全ての申込者を融資率一〇〇%にすべきだと考えます。
 また、融資では返済しなければならず、使いたくても返済できるかどうか心配で使えないという人もいるのではないでしょうか。他県では、県が上乗せして、倒壊した農業ハウスの撤去は自己負担がないところもあります。
 鶏舎が損壊した農家は、保険に入っていなかったので改修に二千万円かかってしまうという声も聞いています。国に対して、早く要綱を明らかにするよう引き続き働きかけていただき、都としても自己負担をできるだけ軽減した具体的支援を決めていただくようお願いします。
 農家の方も話していましたが、今深刻なのは、鋼材、資材と人材不足です。農業ハウスを扱っている業者に連絡をとってみました。社長は、問い合わせの電話が殺到していて大変だということでした。材料が足りない、すぐに対応したいが厳しい状況、地元でお世話になっている人を優先に対応していきたいと努力しているところですと話してくれました。
 このように、鉄骨資材の不足、人手不足は深刻です。都として国やハウスメーカーにも協力を要請すべきですが、いかがですか。

○津国農林水産部長 二月下旬に、既に農林水産省から農業用ビニールハウスメーカー及びパイプメーカーに供給確保の要請が行われております。

○尾崎委員 国からメーカーに対し供給確保の要請をしているということですが、引き続き要請していただくよう、そして、都からも強く働きかけてください。都としても、都内業者、メーカーには独自に供給確保の要請を行ってください。倒壊し、使えなくなったハウスや畜舎などの撤去、再建費用については、農家負担をなくすよう重ねて要望します。
 今回の雪害は、地球温暖化に伴う異常気象という問題があります。夏には局地的豪雨、ひょう、異常高温など、農業は自然からの影響を直接受けるだけに、都としても、東京の基幹産業である都市農業を守る上でも、抜本的な対策に向けて検討するよう求めておきます。
 次に、専門家派遣事業について質問します。
 私はこれまで、中小企業の実態などを調査し、都内中小企業の落ち込みが全国の中でもとりわけ深刻な事態を目にしてきました。中小業者の現場を見て、それに合ったきめ細やかなアドバイスのできる専門家の必要性を痛感しています。
 中小企業対策で、東京都が専門家を派遣してアドバイスする支援策について伺います。
 都として、専門家を中小企業の要望に応じて無料で派遣する事業は、どこで、どのような内容で、どれだけ行っていますか。

○十河商工部長 都は、中小企業振興公社において専門家派遣事業を実施しており、今年度は、その中で中小企業金融円滑化法終了に伴い資金繰りが逼迫した小規模企業に対して、一社当たり最大四回まで、無料の専門家派遣を実施しております。

○尾崎委員 今のご回答で、今年度始めたばかりだということがわかりました。しかも、ごく限られた条件をつけたものです。都の事業として、本格的に専門家を中小業者の現場に無料で派遣する事業に踏み出すよう求めます。
 東京都中小企業振興公社のワンストップの総合窓口の相談件数、専門家派遣の実績、専門家登録人数について伺います。

○十河商工部長 平成二十四年度における中小企業振興公社の総合相談件数及び専門家派遣件数は、それぞれ一万七千百十九件、一千百七十七件、また、登録専門家の数は三百二十二名でございます。

○尾崎委員 中小業者の方に話を聞きましたが、現場をあけるのは無理だとのことです。しかも、公社の派遣事業は有料です。振興公社の総合相談窓口としてワンストップを建前にしていますが、知的財産、設備リース、国際化支援などは別の場所になっています。相談コーナーボックスもいつもいっぱいという状況です。
 今後、改善が必要と考えますが、都の認識を伺います。

○十河商工部長 中小企業振興公社の総合相談窓口においては、相談内容に応じて各種の専門家がアドバイスを行い、ワンストップで対応しております。
 また、具体的な手続や、さらに専門的な支援が必要な場合には、その場で対応できる範囲で課題を整理し、支援制度などについてアドバイスした上で、専門の部署を紹介し、取り次ぎを行うなど適切に対応しているところでございます。

○尾崎委員 ワンストップで対応といいますが、その専門家がいる場所が、知的財産、設備リース、国際化支援を行う場所が秋葉原の総合相談窓口にはありません。別の場所に行かなければいけないのです。ワンストップとは、一回、または一カ所で全ての相談に対応できるということです。また、秋葉原では、文字どおり総合相談窓口にしようとすると手狭で不可能です。だから改善が必要だということを、現場の実情を見てご理解していただきたいと思います。
 各地で、大企業の身勝手な撤退によって、自治体は内発的起業によって地域の産業振興を進める動きがあります。起業支援施設は、区市町村、民間などで取り組みが始まっていますが、都としてはこうした取り組みに対してどのような認識をお持ちですか。

○十河商工部長 都内における創業の活発化は、創業支援に取り組む区市町村や民間における活動も重要でございます。
 そのため都では、区市町村や民間のインキュベーション施設などが連携して、創業者への幅広いサポートを行う取り組みを支援しているところでございます。

○尾崎委員 起業を成功させ軌道に乗せるためには、困難なときに相談できる、適切なアドバイスが受けられることで困難を乗り越えられるということを聞きます。
 都として、各起業支援施設にさまざまなアドバイスに対応できる専任職員を配置する支援は重要だと思いますが、どうですか。

○十河商工部長 創業者の事業の発展を支援するためには、インキュベーション施設の支援機能を充実することが重要でございます。
 そのため都は、現在設置している七カ所のインキュベーション施設に専門人材を配置いたしまして、経営のサポートを実施しているところでございます。

○尾崎委員 私は、三鷹市の三鷹市SOHOパイロットオフィスや産業プラザなどを見学してきました。起業する場所の提供がされ、小さい部屋で、一坪から二坪の広さに机、電話、パソコンの設備と共同スペース、交流、会議室などがあり、二十一社が入居していました。
 中心になっているコーディネーターの方から、直接、取り組みの状況を聞きました。十二年間で約二百五十社のSOHOが巣立ち、初年度から黒字で、一社も潰れていない。初期費用がほとんど必要ないので、起業しやすい。失敗してもリスクが少ないこともあり、再挑戦できる。期限つきの入居ではないので、事業を維持しやすい。困ったときには相談できる、適切なアドバイスが受けられることで困難を乗り越えられるということでした。
 このコーディネーターの方は、大手商社勤務で培ったノウハウを高齢者、女性、若者の起業に生かしたいと情熱を注いでいます。三鷹市のSOHOを見学して一番重要だと思ったのは、適切なアドバイスができる人、専門家の役割です。区市町村などの、どこの起業支援施設にもアドバイスできる専門家を配置できるよう、都として支援するよう求めておきます。
 代表質問で、我が党が都内の福祉施設などさまざまな事業所に足を運んで御用聞きをし、大学や研究機関、デザイナーなどとつないで、中小企業のすぐれた技術を生かした新製品をつくるという取り組みを調整し、まとめることができる数多くの専門家を、経験豊かなOBを活用することも含め、区市町村などと協力して長期的に育成するよう求めたのに対して、都は、さまざまな主体と連携して専門家を派遣する取り組みを実施していると回答しました。
 具体的には、どこに、何人いて、どれだけの実績があるのですか。

○十河商工部長 都では、産業技術研究センターにおきまして、企業OBなど八名をコーディネーターとして配置し、大学などの研究機関と中小企業のマッチングを支援しております。平成二十四年度は、三十一件の共同開発につなげたところでございます。
 また、中小企業振興公社では、企業OB一名を起用し、中小企業と大学のデザイン学部との共同開発のマッチングを行い、平成二十四年度は八件の共同プロジェクトを立ち上げたところでございます。
 さらに、企業OBなどのコーディネーター九名を活用し、さまざまな主体と連携して共同開発の立ち上げから事業化までをサポートしているところでございます。

○尾崎委員 企業OBの活用は、産業技術研究センター、中小企業振興公社などで十八人ということですが、共同開発につなげた件数は一年で三十九件ということです。中小企業が大学の研究者や大学のデザイン学部などと連携することで、成果につながることがわかりました。専門家が果たす役割の大きさを示しています。
 しかし、都の専門家の派遣事業は、最初の答弁のように、都は、無料の専門家派遣事業は今年度始めたばかりで、しかも、金融円滑化法の利用者の中のごく限られた人たちです。都内の福祉施設など、さまざまな事業所に足を運んで御用聞きをする事業もありません。
 我が党が代表質問で取り上げたように、中小企業団体の方からは、中小企業のさまざまなものをつくる能力を引き出し、つなげることができれば、新しいものを創造する可能性は十分にあると話されています。
 都は、我が党が提案しているように、区市町村などと協力して企業や都の職員など経験豊かなOBを掘り起こし、病院にはどのような医療機器が、福祉施設ではどのような福祉機器が必要とされているのかなど、都内のさまざまな事業所に足を運んで御用聞きをし、大学や研究機関、デザイナーなどともつないで、中小企業のすぐれた技術を生かした新製品をつくることができるよう、長期的に育成していくよう、委員会の場でも求めておきます。
 次に、ブラックバイトについてです。
 ブラック企業の問題は、第三回定例会、第一回定例会の代表質問で取り上げてきました。今回は、高校生や大学生の中で広がっているブラックバイトの問題で質問します。
 この間、大学生に聞き取りを行ってきました。大学生のバイトで多いのが、学習塾の講師やファミレスなどの飲食店でのバイトだということも明らかになってきました。
 二人の事例を紹介します。
 まず、学習塾でバイトをしているAさんの事例です。賃金は一こま四十分で二千五百円です。教えるためには、十分な予習と資料づくりをしなければなりません。しかし、それだけではなく、プリントの印刷や、ほかの人の雑用も頼まれることが多く、断れる雰囲気ではなく、やるのが当たり前という状況で、長時間労働になっており、働いた時間を一こまの賃金で割ると五百円程度にしかならないということです。Aさんが働いていた塾の校舎は、正規社員は三人、派遣講師は二人、バイトは十人。学生であること、年齢、住まいは生徒から聞かれてもいわないことと指導されています。雇用契約書は見たが、控えをもらっていないということでした。
 二人目は、ファミレスでバイトをしているBさんです。時給は、二年前ですが八百五十円。Bさんは夜のシフトに入り、ラストオーダーが夜の十二時半で、一時に閉店なので、勤務は一時までの契約でした。しかし、片づけをすると一時では終わりません。一時にパソコンで退室を押して、その後一時間くらい片づけにかかり、その分はただ働きです。賄い食はなく、お店のメニューから定価の三八%で食べられることになっていますが、新メニューは食べるようにいわれ、いわば強制に近い状況です。オーダーミスなどをすると三八%で買い取りになるため、ミスは許されないという雰囲気。大勢の前でどなられ、精神的にダメージを受け、体調を崩し、バイトの勤務時間が深夜にわたるため、学業と両立できない状況になりました。Bさんは、バイトのために生きているような感じと悩み、バイトをやめたということでした。
 高校生や大学生のアルバイトで、契約した時間を超えて働かされ、その分の時給は支払われないなど、違法性があるブラックバイトがマスコミでも取り上げられるようになりました。都はこのようなブラックバイトについてどう認識していますか。

○矢田部雇用就業部長 雇用形態を問わず、労働者が安心して働けることは重要でございます。労働関係法令を遵守するのは企業の当然の責務であり、法令に違反する企業は、法に基づき、国が指導や取り締まりを実施しております。
 都は、学生アルバイトも含め、法令の普及啓発や職場でトラブルを抱えた方へのアドバイスなどの支援を実施しております。

○尾崎委員 労働行政を担う東京、多くの大学生が集中している東京都こそ、ブラックバイトは許されない行為であるということを明確に事業者、都民に宣言すべきだと思います。もっと本腰を入れて取り組んでいただきたいと思います。
 学生アルバイトに対しても、アドバイスを実施しているといいますが、私が聞いた人たちは誰も知りませんでした。私は、雇用のルールの規制緩和が進む中で、ブラック企業がふえてきたと思います。雇用契約書、就業規則はあるが、その中に業務の範囲、内容を明確にしているか、対等の契約になっているかが重要となります。
 ある大学では、キャリアデザインの授業で労働法を教えるところもあります。講師をしている弁護士から話を聞きました。工業高校や夜間部のあるところでも、労働法の講義をしてほしいという要望もあるといいます。学生やアルバイトをしている人は、労働者の権利を知らないために、権利意識がほとんどなく、上司から命令されると真面目に完遂しようとするのが特徴だということです。
 フランス、ドイツでは、中学生に労働法、労働者の権利と義務を教えるということです。高校や大学で、弁護士や社会保険労務士などの専門家を講師に労働法や年金の講義が行われていますが、まだ不十分です。産業労働局としても、啓発の大事なツールとして高校、大学の授業に位置づけるよう関係者に積極的に働きかけるべきですが、いかがですか。

○矢田部雇用就業部長 都は既に、労働関係法令のポイントなどをわかりやすくまとめた冊子を、毎年、大学生向けと高校生向けを合わせて十二万五千部作成して学校に配布し、講義や授業のツールとして活用してもらうなどにより、法令等の啓発を図っております。

○尾崎委員 私もその冊子を見せていただきました。わかりやすい冊子でも、高校生や大学生の手に届かなければ役に立ちません。アルバイトにかかわる問題も、工夫して盛り込んでいただけるよう求めます。
 十二万五千部のパンフも、全体の部数です。高校生だけでも十万人以上いるわけですから、足りないと思います。バイトをしていて、おかしいな、これはどうなのかと疑問や不安があっても、学校で相談できる場所がありません。高校や大学に対して、アルバイトに関する労働相談について労働相談情報センターを紹介することは、大学、学生にも役立つと思いますが、どうですか。

○矢田部雇用就業部長 既に、先ほどお答えした冊子で都内六カ所の労働相談の窓口と相談専用電話を紹介し、広く大学や高校、学生、生徒に対しまして労働相談情報センターをPRしております。

○尾崎委員 既にやっているといっても、知られていなければ意味がありません。大学の掲示板にポスターで紹介してもらうなどしていただくよう提案します。
 神奈川県では、知事が九月の議会で、ブラック企業は労働基準法違反という法的な問題があるだけでなく、多くの若者の将来を脅かす、見過ごすことができない存在であり、県としても早急に対応していく必要があると答えました。
 私は、十一月五日に神奈川県に行って取り組み状況を聞いてきました。既にリーフレットはでき上がり、十二月にセミナーも開催しました。神奈川県では、街頭相談を年間六十二日間開催し、相談者は二千八百件で、街頭相談を通じて、そのときは相談がなくても、困ったときに相談できるという認識が広がっているということです。
 都の労働相談は、年間五万件を超える大きな役割を果たしています。困ったときに気軽に相談できる場所があると知らせる効果が大きい街頭相談は、もっと回数をふやすべきだと考えますが、いかがですか。

○矢田部雇用就業部長 都では、都内六カ所の労働相談情報センター及び事務所で労働相談を実施しており、その利便性を高めるために、平日毎日実施する夜間相談や、土曜相談、さらに、相談を一元的に受け付ける専用電話の開設などに取り組んでいます。
 労働相談を知っていただくためには、多様な手法により、既に効果的なPRを行っております。
 具体的には、街頭労働相談につきましては、毎年五月と十月を労働相談強調月間として定め、集中的に各所が駅頭などで実施しております。
 また、特別相談会や、ホームページ、啓発資料の配布などもあわせて行うことで、広く紹介しております。

○尾崎委員 東京都の街頭相談は、今お話があったように、五月、六日間、十月は九日間で、合わせて十五日間です。相談件数は千百四十一件ですから、相談の日数をふやすことで相談者もふえ、困っている人を救うことにつながると思います。ぜひご検討いただくよう強く求めておきます。
 労働相談情報センターが行う労働関係の各種セミナーですが、毎回定員を超える応募があります。開催数をふやすよう求めます。
 また、対象を労働者向け、使用者向けと分けて、内容をより充実させてほしいとの要望にはどのように対応していますか、伺います。

○矢田部雇用就業部長 都は、労使双方が労働関係法令を学ぶためには、お話のセミナーだけではなく、インターネットを活用したeラーニングや各種冊子などのさまざまな手法により、適切に機会を提供しております。
 なお、セミナーの実施に当たりましては、従来から使用者向け、労働者向けなど対象を明確にしており、内容につきましても、終了後のアンケート結果等を踏まえ、適宜見直しを図っております。

○尾崎委員 開催数をふやす点についても、適切に対応すべきです。ぜひご検討ください。
 ブラック企業からどう自分を守るか、神奈川県のように専門家のセミナーを開催してはどうでしょうか。

○矢田部雇用就業部長 都では、専門家を講師として、労働関係法令やハラスメントなどをテーマとしたセミナーを開催し、職場でのトラブル防止に既に取り組んでおります。
 今年度も、既に労働相談情報センターのセミナーでケーススタディーを取り扱うとともに、しごとセンターの八月以降の若者向け講座の中でも企業を見る目を養う視点を取り入れるなど、若者向けの普及啓発を行っております。

○尾崎委員 ブラック企業から身を守る上で、ブラック企業が疑われる企業が増加する中、労働者としての権利知識を啓発する宣伝リーフの作成も有効です。独自の対策リーフを作成してはどうでしょうか。

○矢田部雇用就業部長 他県の事例を挙げて、都も同様の取り組みをというお話でございますけれども、東京都におきましても、既に若者向けに労働法のポイントや相談窓口の紹介等をまとめた啓発用リーフレットを作成しております。
 昨年九月中旬にマスコミ各社に案内した上で、十月の街頭労働相談で、企業向けとあわせて広く配布したところでございます。引き続き、労働法の普及啓発などに取り組むこととしております。

○尾崎委員 東京には企業が集中しています。都も、──(二十七字削除)──十月に、若年者の使い捨てが疑われる企業等が社会で大きな問題となっていますというリーフをつくりましたが、まだまだ部数は少なく、ぜひ枚数を増刷して活用を広げていただくことをお願いします。
 都も、若者の使い捨てが疑われる企業等が社会問題になっていることを認識しているようですので、各種セミナー、街頭労働相談などでも大いに取り組みを強めるよう求めておきます。
 労働省は、新卒者の定着状況、有給休暇の実績、残業時間の実績などの公表、労働関係法令違反を行っていないなど、中小企業の皆さんに若者応援企業宣言をして、これを国が積極的にPRする制度をつくっています。
 若者応援企業宣言事業に参加している企業は、都内で現在、何社になっていますか。また、若者応援企業の面接会には何社が参加し、求職者数は何人参加したか教えてください。

○矢田部雇用就業部長 今のご質問にお答えする前に、もう一回先ほどのご答弁に、繰り返しになりますけれども、東京都で十月に街頭労働相談、また、若者向けの普及啓発資料を配布いたしましたのは、九月に広くマスコミにプレス発表して始めたものでございます。
 今の質問にお答えいたします。東京労働局によりますと、ハローワークに求人を出した若者応援企業宣言を行っている企業は約千社であり、こうした企業を集めた面接会は、今年度は三回開催し、企業約二百四十社、求職者約二千六百人が参加しております。

○尾崎委員 今のご回答の中で、九月にプレス発表したものですということでしたが、九月の第三回定例都議会の代表質問で我が党が取り上げ、第一回も、我が党もブラック企業を取り上げましたが、そのときにこういうご答弁はなかったように思います。
 私は、この若者応援企業宣言事業に参加している企業に話を聞きました。C社は……
   〔塚田産業労働局長発言を求む〕

○三宅委員長 尾崎委員、いいですか。局長から発言を。

○尾崎委員 ちょっと終わってからに……。

○三宅委員長 ちょっとさっきの件ですから。

○塚田産業労働局長 議事録をご確認いただければわかると思いますけれども、再質問がございました。そのときに、私、十月にこういうことを予定しております、というふうにお答えいたしました。

○尾崎委員 それはどっちの……。

○塚田産業労働局長 相談会の話でございます。

○尾崎委員 相談会。

○塚田産業労働局長 はい。

○三宅委員長 では、尾崎委員、先ほどのあれから。

○尾崎委員 私は、この若者応援企業宣言事業に参加している企業に話を聞きました。C社は、若者応援企業宣言をして、十九歳と二十六歳の若者二人を採用することができたといいます。
 しかし、若い人に聞くと、ハローワークよりも、今はスマートフォンを活用していると聞いている。今後は、インターネットの活用が重要ではないかという要望も出てきました。若者を物扱いする企業ではなく、若者を応援するということは、企業が社会的役割を果たすことにつながります。都としても、このように若者を応援する企業を都民に知らせる事業をもっと拡充すること、PRの仕方を工夫することもあわせて求めます。
 世界では、日本の多国籍企業が、東南アジアの新興国などで児童労働、苛酷な労働条件のもとで生産されているということがわかり、国際人権団体は現代の奴隷労働と不買運動を始めたり、国連も改善する責任はグローバル企業側にあるとする指針を作成するなど、利益を追求するだけの企業のあり方が見直されてきています。
 企業の社会的責任、投資調査機関は、ある日本企業に対し、男女差別があることを理由に投資不適格企業に格付し、国際的信用が失墜したという例もあります。今では、こうしたことが単にその企業内だけの問題ではなく、委託生産先、材料、部品調達先なども含めて、その企業の社会的責任に属するものとして見られています。
 こういう中で、労働組合連合は、企業が真に社会的責任を果たし企業価値を高めていくには、国際的に認知された原則や基準によった行動が不可欠とされています。公正な賃金、休息、余暇、長時間労働時間の制限、有給休暇の保障、労働者の人権尊重、職場の差別禁止、環境への配慮、適正な価格での資材の調達など、国際的に認知されているルールとなっているILO宣言、国連グローバル・コンパクト、社会権規約、世界人権宣言に基づく条約で規定されているOECDの多国籍企業行動指針、ISO26000という社会的責任に関する国際規約の手引などを紹介しています。
 都としては、都内の事業所に対して、現行法の弱点をかいくぐって違法行為を隠蔽したり、脱法的な手法で苛酷な労働を強いる手口を封じて、ブラック企業を許さないという宣言を行い、都として都内企業の行動指針を労働者、事業主、学識経験者などの参加でつくり、その履行を進めることを求めて質問を終わります。

○中山委員 MICE誘致推進について質問させていただきます。
 経済・港湾委員会の事前説明の中で、観光産業の振興について、オリンピック・パラリンピックの東京開催を契機として観光振興プランに基づく施策を着実に実施する、また、外国人旅行者誘致を一層推進していくために、誘致戦略を強化するとともに、東京の魅力発信や受け入れ環境の充実、観光資源の開発にも取り組んでいくと説明がありました。
 今回、MICE誘致推進に係る予算は、昨年度予算額と比較して二億二千三百万円の増と、本気度を感じさせる予算額となっているわけでございます。
 舛添知事の所信表明でもあったように、史上最高、世界一のオリンピック・パラリンピックの実現に向けて、世界一の都市を実現していこうという方向性にも合致しているということであります。
 旅行者誘致を一層推進するためには、レジャー市場に加え、ビジネス市場にアプローチを強化することが必要であります。
 特に国際会議、企業系の会議などのMICEは、一度に多くの外国人旅行者が来訪し、一人当たりの支出額も多いことから、高い経済波及効果が見込まれると聞いております。
 国が公表している平成二十四年の訪日外国人の消費動向によると、訪日外国人の一人当たりの旅行中の支出額、これは大変驚きなんですが、観光、レジャーが九万六千五十六円となっているのに対して、例えば社内会議ということで、Mの方は十三万百十八円となっております。会議等の主催者側で負担する会場費や宿泊費などを含めると、支出額はさらに大きくなるだろうと予想がつくわけでございます。
 また、MICEでも、訪日外国人旅行者はビジネスの意思決定層、つまり、日本企業にとっては重要な取引相手であることが多く、支出額の大きさだけではなく、彼らに日本ファンになってもらって、企業の取引が円滑に進む等々の間接的な効果も期待できると思います。
 そこでまず、MICE誘致について、都の基本認識について伺いたいと思います。

○杉崎観光部長 MICEは、宿泊施設や会議施設に加え、飲食、ショッピング、レジャーなど幅広い観光関連分野で経済波及効果をもたらすものでございます。
 さらに、多くの外国人に対し、東京の魅力を集中的にPRできる絶好の機会であり、都市としての存在感を高め、東京の国際的な地位向上につながるなど、観光振興や地域経済活性化の観点から、MICEの誘致は極めて重要と認識しております。

○中山委員 今ご答弁をいただいたように、MICE誘致は経済波及効果だけではなくて、都市のプレゼンス向上を図る上でも必要であるということがわかったわけでございます。
 そして、誰にプレゼンスを示すということが大切であり、今後、ビジネスの意思決定層や学識者なども、東京のこの懐深い魅力をよく理解してもらうということが大切だというふうに思っております。
 その中で、昨年、都が策定した観光振興プランの中にも、MICE誘致を推進していくために、M、I、C、Eそれぞれのターゲットに応じた誘致戦略を構築して、それに基づく施策を展開していくとしております。
 そこで、戦略の構築に向けた進捗状況と今後の取り組みについてお示しください。

○杉崎観光部長 MICE誘致を効果的に推進するためには、会議等の形態に応じた戦略を構築することが重要であります。
 このため都は、今年度、企業が開催する大規模な会議や報奨旅行等について、競合する都市の取り組みや主催者ニーズなどを把握するための調査を進めており、また、来年度は国際会議を対象とした調査を実施いたします。
 今後、これらの結果を活用するとともに、MICEに精通した専門家の助言もいただきながら、効果的な戦略を構築してまいります。

○中山委員 私たちが考えるMICEというのは、一くくりでMICEというような感じで捉えがちなんですけれども、答弁いただいたように、段階的に戦略的な構築に向けて取り組まれているということ、また、競合する都市の取り組みを参考にしていくということでありますので、よろしくお願いします。
 また、今回、企業系の会議等の調査を行い、戦略を構築するとのことですが、すぐにでも取り組める課題もあるはずです。現在での調査状況を踏まえて、どのように取り組んでいくのかお答えください。

○杉崎観光部長 今年度の調査で把握をいたしました企業系の会議等の誘致に成果を上げている都市の取り組み事例を踏まえまして、都は来年度から、会議主催者に対する事前の視察旅行の実施や開催時のアトラクションの提供などを通じて、企業系の会議などの誘致、開催を支援いたします。
 さらに、会議開催時に行うアトラクションや文化体験プログラムの新たな開発を進めるなど、開催都市としての魅力向上に取り組んでまいります。

○中山委員 今ご答弁ありましたけれども、今後、東京オリンピック・パラリンピックの招致プレゼンテーションで幾つか東京の優位性について示され、IOCから高く評価を受けたという実績があります。特に、東京都のこの豊かな財政力に加えて、交通網の充実と時間の正確性、さらに犯罪率が極めて低く、治安がよいことなどが挙げられておりました。MICEを誘致する上でも、こうした東京の魅力を活用していくことが大切だと思います。
 さらに、会議の開催時にアトラクションや文化体験プログラムの新たな開発を進めるということでございます。多様な文化と伝統をしっかり把握するということは、やっぱり市区町村との連携もかなり重要になってくるだろうというふうに思いますので、これからの市区町村の連携にも強く要望をしてまいりたいと思います。
 次の質問に移ります。最後に、東京の魅力の発信について伺います。
 観光振興プランでも示されているように、東京には江戸期から伝わる伝統文化、歴史的な資源、美術館や博物館、コンサートホール、劇場などの文化施設が多数存在しているほか、祭りや四季折々の風物など、世界に誇れる独自の歴史文化が育まれていると認識しています。
 私は、江戸というキーワードで外国人に東京のアピールをしたいと常々思っているんですけれども、観光振興プランで示されている都民の意識調査によると、実際、外国人にアピールしたい東京の魅力の第一位は、やっぱり江戸東京の情緒を伝える町並みであり、都民の多くもこうした要素をアピールしたいと考えていることがわかるわけでございます。
 しかし、一方で、外国人が東京を訪問する目的は、プランで示されている実態調査によりますと、第一位は買い物だということであって、歴史や文化に関することは必ずしも上位とはいえないということであります。
 東京の魅力を発信するという言葉が頻繁に、よく使われているんですけれども、一言で魅力発信といっても、それを旅行者誘致につなげるためには、旅行者の特性などにより有効な発信手段は異なるのではないでしょうか。都はどのような考え方でその手段を選択し、情報を発信しているのか伺いたいと思います。

○杉崎観光部長 都は、東京を訪れる旅行者の旅行形態等の特性に応じて情報発信の方法や提供する内容を選択するなど、効果的な誘致活動に努めております。
 例えば、個人旅行者が多い国に対しては、現地でのイベント開催やインターネットの広告掲載などを通じて、伝統文化や食など、東京の魅力を直接一般市民に向けて幅広く情報発信するなど、東京への旅行機運を高める取り組みを行っております。
 また、団体旅行が主流の国に対しましては、現地旅行事業者を対象としたセミナーで、雷門や江戸東京博物館など観光スポットを紹介するなど、旅行商品の開発に必要な東京の観光情報を提供し、ツアーの造成を促進しております。

○中山委員 今のご答弁にもありましたように、個人の旅行者と団体旅行者では、この発信の仕方がまたいろいろと変わってくるということがわかりました。
 今後は、きのうも港湾局の案件だったんですけれども、クルーズ客船というような要素も出てまいりまして、それを誘致と同時に、やっぱり観光につなげていくという視点も大切でありますので、今後の着実な観光の推進をお願いしたいと思います。
 次の質問に移りたいと思います。産業振興について伺います。皮革産業に対しての質問です。
 東京都内には数多くの地場産業がありますが、中でも台東区を中心とした地域は全国でも有数の皮革製造業の集積地であります。東京を代表する地場産業として、地域経済の中核をなしております。
 近年、輸入品の増加や生産年齢人口の低下により、皮革製品そのものの需要低下の影響により厳しい環境にあると同時に、経営者や従業員の方も高齢化が進んでおります。
 ただ、一方で、あらゆる視点で地元の方々も頑張っておりまして、先日もちょうど東京台東区のアサヒ商店街というところで八百人余りが参加して、一斉に靴を磨く人数のギネス世界記録の更新に挑戦いたしまして、ちょうど八百人が一斉に靴磨きをして、それを認定されたといったようなこともありまして、かなり、NHKだとかあちこちの放送にも取り上げていただいたということもあります。
 また、地元の業界、経営者は、メード・イン・ジャパンならではの新たな価値観を確立し、イタリアとか上海にも積極的に展示会に出展しているんですね。海外のバイヤーさんだとか卸売業にも大変注目が集まっているということであります。地元の経営者には、一流といわれている本場のイタリアのものにも匹敵するという自信の声も聞こえているほどでございます。
 日本の靴は履き心地が大変よい靴というのが特徴でありますが、人によっては感覚が違う面もあります。値段なのか、買う頻度なのか、デザインなのか、どのような靴を求めているのか明確にする必要もあると思います。
 そこでまず、都内の地場産業、とりわけ台東区を中心といたしまして集積する靴やかばん等の皮革関連産業に対する都の認識について伺いたいと思います。

○十河商工部長 都内各地には、さまざまな地場産業が存在し、東京の経済を支えております。
 城東地域には、靴やかばんなどの皮革関連産業が集積しており、東京の代表的な地場産業の一つとして、都民生活にとって重要な産業であると考えております。

○中山委員 今、重要な産業であるという認識を示していただいたわけでございますが、まさに皮革産業はローテク産業でありまして、日本人の器用さというものを十分に生かして、付加価値を生み出せる一つの産業であるわけなんです。
 そういう意味では、ファッション産業という視点がこれからまさに大切になってくるだろうというふうにも思いますので、そのような視点の上で施策の展開を要望いたします。
 次の質問に移ります。
 アベノミクスでの円安の効果が出ている一方で、負の部分では、原材料費の高騰があることはいうまでもありません。実際、産業労働局が平成二十六年二月に公表した原材料の上昇に関する調査でも、原材料上昇分の販売価格への転嫁は全くできていないと答えたのが五〇・九%と、半数を占めているんですね。
 また、原材料価格の上昇対策では、経営への悪影響があるとした企業にどのような対策をしているかと聞いたところ、諸経費削減が四六・三%と最も多く、販売価格の売上交渉が三七・二%でありまして、価格転嫁を諦めているという感が見てとれるわけでございます。
 皮革製品は、皮革材料だけではなくて、靴底や、あるいは金物に加え、ローテク製品のために直接的に原材料価格の上昇の影響を抑える経費が余り残っていないというのが実際のところだというふうに思います。もちろんメーカーや卸売業も、資材関連があって我々があるということをいつも私たちに話してくれております。
 業界もその辺はすごく認識しているんですけれども、また、こうした声は経済産業省の担当セクションである紙業服飾品課や台東区なども、もちろんこれは認識しているというふうに思います。
 そこで、都における皮革産業の振興に向けた取り組みと、国や地元区との連携強化について伺いたいと思います。

○十河商工部長 都はこれまでも、国際競争の激化や原材料価格の上昇など、社会経済環境の変化に対応できるよう、皮革関連産業へのさまざまな支援を行っているところでございます。
 また、販路の拡大に向けて、経済産業省や区と連携しながら、国内外の展示会への出展支援などを行っているところでございます。
 引き続き、こうした支援策を着実に実施してまいります。

○中山委員 先ほどお話ししましたとおり、資材関連があってメーカーさんがあったり、卸売業の方がいるということを地元の方々はよく認識されております。
 また、毎年、台東区の貿易センタービルでレザーフェアなんかをやるんですけれども、多くのデザイナーさんだとか卸売業の方々も大変多く参加されているわけなんですね。そこで、東京都もかなりご支援をいただいているということでございまして、そういう面では、これからもぜひ後押しをお願いしたいというふうに思います。
 次の質問に移ります。皮革技術センター台東支所について質問いたします。
 台東支所では、靴及び靴材料に関する試験を行っております。私も館内を案内していただき、業界にとっても大変重要な施設として認識しているところでございます。
 近年では、消費者の情報量が大変高まっております。製造工程における品質管理の必要性も高まることも背景に、取引段階において材料、製品の性能に関するデータが要求されるケースが大変多くなってきたということであります。
 そこで、試験、検査設備を持たない中小企業、そして、業界の大きな力になっております皮革技術センター台東支所について、その事業内容と実績を伺いたいと思います。

○十河商工部長 靴、履物産業に係る中小企業の振興を図るため、皮革技術センター台東支所では、中小企業の技術上の課題解決に向けた各種相談に対応するとともに、技術力向上や品質向上に資する依頼試験や研究などを実施しております。
 平成二十四年度における技術相談、依頼試験の実績は、それぞれ五百七十二件、二千五百二十七件となっております。また、靴材料の経年変化に関する研究も実施したところでございます。
 今後とも、業界の動向や消費者ニーズを踏まえ、着実に支援を展開してまいります。

○中山委員 技術相談だとか依頼試験の実績、それぞれ五百七十二件だとか、あるいは依頼試験の件数なんかの実績を見ますと二千五百二十七件ということでありまして、実績を聞けば、本当に業界にとって大変重要ということがわかります。さらなる、ぜひ現場に即したこちらの体制づくりもひとつお願いしたいというふうに思います。
 最後に、城東職業能力開発センター台東分校について質問させていただきたいと思います。
 昭和四十七年七月一日に、台東区の橋場一丁目に東京都立足立高等職業訓練校台東分校として開設以来、台東分校は公立の職業訓練施設として、全国で唯一、製くつ科では紳士靴、婦人靴の紙型、製甲、底づけと各作業の技術と技能を学ぶとともに、量産技術の習得を目指しております。
 現在でも、台東分校で学んだ受講生が靴の製造の現場で多く活躍をしているわけでございまして、本当にメーカーの人たちも、学んでもらって、業界の方でしっかり受け入れたいというふうにいわれているわけでございます。
 皮革関連産業の人材確保にはなくてはならない施設でもあります。台東分校の応募倍率は高く、六倍程度と聞いております。
 そこで、台東分校について、その事業実績を伺います。あわせて、台東分校と業界との連携について伺いたいと思います。

○戸澤事業推進担当部長 職業能力開発センター台東分校では、求職者向けの職業訓練として、一年制の製くつ科を設置し、製靴業に携わる人材の育成に努めております。平成二十四年度は、二十一名が修了いたしました。
 また、中小企業等で働く方のキャリアアップを図る在職者訓練を実施しており、製靴関係の十五講座を開設しています。二十四年度は、延べ二百四十二名が修了いたしました。
 台東分校と業界との連携についてでありますが、訓練の一環として、業界団体の関連事業所でインターンシップを実施しております。また、業界団体主催の合同就職セミナーに訓練生が参加し、業界への就職に結びついております。
 引き続き業界と連携しながら、製靴の人材育成に努めてまいります。

○中山委員 今ご答弁いただいたように、インターンシップもやっているんですね。実際、ここを卒業された方々は、やっぱりファッション産業ですから、もっときれいな現場で働けるのかなと思うと、なかなかそうでもなくて、量的生産などをやる中で同じ作業をずっとやっておられるということで、やめてしまう方々もいると。ただ、その現実を最初からしっかり見させてあげるということも大切ですし、その上でファッション産業になっていくということもあると思います。
 応募倍率も六倍ということでありますから、本来であれば、募集人員をもっとふやしてほしいという要望もしたいところなんですけれども、やっぱり近くに民間の学校もあります。そういう意味では、民業圧迫ということにもなりますので控えさせていただきますが、業界の発展には、何といっても手に職がある、人が全てでありまして、今後も業界のニーズをぜひ聞いて、的確な支援策を展開していただきたいと要望させていただきまして、質問を終了させていただきます。

○三宅委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二分休憩

   午後三時二十一分開議

○三宅委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○柴崎委員 まず初めに、商店街における創業、起業の促進についてお伺いしたいと思います。
 最近では、若者が夢とアイデアを持ち、また、女性が豊かな感性を生かして地域に根差したビジネス、これを起業する動きが見られております。東京の地域産業に活力を生み出していくためにも、こうした動きを一層活発にしていくことが必要だと考えております。
 一方、都内各地の商店街では、後継者の確保や経営者の高齢化が大きな悩みとなっております。東京都は、平成二十二年度に実施した商店街実態調査においても、実に六割以上の商店街が後継者不足を問題点としているようであります。
 翻って考えれば、都内に約二千七百ある商店街、これは起業の場として大きなインフラとなる存在であります。商店街にとりましても、意欲を持った人材を呼び込むことは、後継者不足やそれに起因する店舗の減少に歯どめをかけ、そして、にぎわいを取り戻すことにつながるかと思われます。
 都は、セミナーやインキュベーション施設などさまざまな施策を通じて創業人材の育成をしております。
 そこでお伺いいたしたいと思いますが、そのような取り組みにより育成した人材のビジネスプランを実現する場として、商店街における起業を促進すべきと考えますが、今後の取り組みをお伺いいたします。

○十河商工部長 都はこれまで、商店街での起業を希望する者に対し、開業のための知識やノウハウを習得できるよう、講習や実地視察などのカリキュラムで構成されるセミナーを開催するなど、商店街を担う新たな人材の育成に取り組んでまいりました。
 来年度は、商店街における起業をさらに促進するため、商店街起業支援事業を開始し、セミナーの修了生などを対象に、商店街の協力のもと、開業から事業を軌道に乗せるまでの創業初期段階における継続的な支援を行います。
 具体的には、すぐれたビジネスプランを持つ人材を商店街とマッチングし、商店街の店舗において開業できる仕組みをつくります。最長三年間にわたり店舗の賃料の一部を助成するとともに、開業後の自立的な経営に向けて、専門家による継続的なアドバイスも行います。
 また、開業の際の内装工事や設備機器の調達などの経費について、百万円を限度として助成を行います。
 こうした取り組みに加え、起業を希望する者に対し、商店街の店舗を短期間無償で貸し出し、実際の店舗運営を経験してもらうことで、その後の円滑な開業を後押しする取り組みも実施いたします。
 これらによりまして、商店街の次代を担う店舗の開業を促進し、地域における産業の活性化を図ってまいります。

○柴崎委員 商店街は、いうまでもなく商いのプロが集まる場であります。また、子育て支援、あるいは高齢者対策、地域おこし、こうしたコミュニティの核として地域の課題に応えるさまざまな活動を展開しております。その意味で、商店街には新たな人材を育てる環境とビジネスチャンスがあふれているといえます。これらを生かして、商店街における起業が促進されることを期待しております。
 次に、買い物弱者対策に取り組む商店街への支援についてお伺いしたいと思います。
 近隣の商店がなくなり、商店街も離れた場所にあるため、高齢者などが日常の買い物に不便を来している、いわゆる買い物弱者の問題について、我が党はかねてより対策に取り組む商店街を支援するよう訴えてまいりました。
 その結果、都は、平成二十四年度より買物弱者支援モデル事業を開始いたしました。私の地元練馬区の商店街におきましても、都の支援を活用いたしまして、商店の空白地域にコミュニティショップを開設し、商品の販売ですとか、あるいは買い物代行、これらに取り組んでいるところであります。
 しかし、こうした取り組みが地域住民に広く知られ、事業が軌道に乗るまでには相当時間もかかるわけであります。そして、その間の商店街の負担もかなり大きいものがございます。私は、昨年の本会議におきましても、買い物弱者対策に取り組む商店街への支援の充実を提案し、都から検討する旨の答弁をいただきましたが、具体的な拡充内容についてお伺いいたします。

○十河商工部長 都は、昨年度より買物弱者支援モデル事業を実施し、日々の買い物が困難な方々に対するサービスに取り組む商店街を、区市町村と連携して支援しております。来年度は、取り組みの初期段階における商店街の負担をより軽減するため、支援内容の拡充を図ります。
 具体的には、商店の空白地域において商店街の商品を販売する店舗や、商品宅配サービスの集配所など、取り組みの拠点となる建物の賃料についても助成の対象とするほか、同一の商店街の取り組みに対し、複数回の採択ができるようにいたします。これにより、幅広い商店街の取り組みを促進してまいります。

○柴崎委員 この事業を通じまして、都内各地の商店街で買い物弱者対策の取り組みが進むよう、都はしっかりと支援をしていくことを要望いたしまして、次の質問に移らせていただきます。
 次に、中小企業支援についてお伺いいたします。
 都内経済に景気回復の動きが見え始めたところでありますが、中小企業がこの動きを業績の向上につなげるためには、みずからの経営資源を最大限に生かした新たな商品やサービスを開発するなど、経営の革新を図っていくことが重要であると思います。
 そのため都は、中小企業から提出された事業計画を承認して、その上でさまざまな支援を行うことで、新たな事業に挑戦する企業を後押ししております。企業の存続をかけた打開策として、新製品開発の計画を立てて、承認を受け、強い意志を持って実践し、成果を上げた企業もあるとお聞きしております。
 しかし、一方では、何とか計画を仕上げて承認は受けたものの、そこからの一歩が踏み出せない、あるいは、次の一手がわからない、こうして悩む企業もかなりあるように聞いております。
 都におきましても、計画の承認だけではなく、状況に応じてその後の取り組みを支援しているとお聞きしておりますが、よりきめ細やかな対応が重要であると考えます。都におけるこれまでの取り組みと、今後の展開についてお伺いいたします。

○十河商工部長 都では、中小企業の新製品や新サービスの事業化を促進するため、中小企業新事業活動促進法に基づき、経営革新計画の承認を行っております。
 平成十一年度の受け付け開始以来、承認件数は延べ六千件を超え、今年度は昨年度と比較して約二割の増となる見込みであります。
 承認を受けた企業の中には、新たな生産方式の導入により業績回復を果たした医療用マスクの会社や、太陽熱発電用の鏡の開発に成功したガラス加工の会社など、すぐれた実績を上げた事例も多く、こうした企業を表彰することにより、経営革新の取り組みの普及を図っております。
 また、これまでは計画承認後、一定期間が経過した企業を対象に専門家の派遣によるフォローアップの支援を実施してきたところでございますけれども、来年度からは、迅速かつ確実な計画の実行を促すため、承認直後から専門家の派遣ができるよう、対象期間を拡大いたします。
 こうした取り組みにより、経営革新の実現を目指す中小企業をよりきめ細かく支援してまいります。

○柴崎委員 今ご答弁いただきましたように、専門家によるフォローアップなど、経営支援に加えて、経営革新計画の実現に向けては、事業を実施するための資金調達への支援もまた重要だと思います。
 制度融資では、現在、商工会議所や商工会から経営指導を受けて経営改善に取り組む小規模企業に対しまして、金利を優遇しております。経営革新計画により新たな事業に取り組む企業を後押ししていくためにも、こうした金融支援策の充実も必要と考えますが、ご見解を伺いたいと思います。

○寺崎金融部長 中小企業が経営革新計画に基づき、新製品の開発などの新たな事業に積極的に取り組むことができるよう、来年度は制度融資による金融支援についても強化を図ってまいります。
 具体的には、多くの小規模企業に利用されている小口融資の中に、新たに特例制度を設け、経営革新計画の策定後、専門家によるフォローアップを受けた事業者を対象として、融資利率を〇・四%引き下げる優遇措置を講じてまいります。
 加えて、新製品の開発や事業の多角化などを支援する産業力強化融資の中のチャレンジ融資メニューにおいても、融資利率の優遇措置を講じ、小口融資とほぼ同水準の低利で事業資金を調達できるようにいたします。
 こうした手厚い支援策により中小企業の負担軽減を図ることで、成長に向けて前向きに取り組む都内中小企業を一層後押ししてまいります。

○柴崎委員 小規模企業向けの小口融資に加えまして、事業の多角化を支援する産業力強化融資にも特例措置を設けるなど、充実したきめ細かい金融支援策が講じられているということで、評価することができると思います。今後とも、経営面と資金面の両面から中小企業の成長に向けた積極的な事業展開を強力に後押ししていただくように要望いたします。
 続きまして、金融支援について、地域の金融機関と連携した新保証付融資制度についてお伺いいたします。
 この制度は、リーマンショックによって世界経済が悪化し、多くの中小企業の倒産が危ぶまれる中で、資金供給の一層の円滑化を図るべきとの我が党の提案を受けまして創設されたものであります。その後も、東日本大震災、そして歴史的な円高、こうした中で中小企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化をし、日々の資金繰りに苦労されている経営者の方々にとりましては、制度融資のほかにも借り入れの道があることは大きな支えになっていたのではないかと思います。
 そこで、この制度がどのような中小企業に利用されてきたのか、そして、制度の利用状況について確認をしたいと思います。

○寺崎金融部長 地域の金融機関と連携した新保証付融資制度は、主に商品や材料の仕入れなど、日々の事業活動に必要な小口の運転資金の確保に利用されております。
 全体の八割を超える事業者が制度融資を既に利用しており、金融機関へのヒアリングによりますれば、制度融資だけでは十分に必要な資金を確保できない企業も多く含まれておりますことから、制度融資を補完する資金調達手段として効果的に活用されていると考えております。
 今年度の保証承諾実績は、昨年十二月末時点で一千百五十四件、約八十八億円と、対前年同期比の約一・五倍で推移しており、利用は着実に増加しております。
 今後については、制度開始から四年半が経過し、月々の借入金の返済が一定程度進んできていることから、再度の借り入れや追加の運転資金を上乗せした借りかえの需要などが伸びてくるものと考えております。

○柴崎委員 経営者の方々がこの制度融資を補う有用な手段として、二つの制度をうまく組み合わせて使っていることがよくわかりました。この利用実績が着実にふえているとの説明がありましたが、中小企業の間には、制度を根づかせていくために、利用者の立場に立って使い勝手をよくしたり、取り扱いの窓口である金融機関をふやしていく努力をしなければならないと思います。
 今後も引き続き、利用促進に向けた取り組みを進めていくべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○寺崎金融部長 本制度では、これまで制度の周知を図りつつ、中小企業の多様な資金ニーズにきめ細かく対応できるよう利便性の向上を図ってまいりました。
 制度面では、借りかえ制度の導入や、借入金を毎月返済するのではなく最長一年後の一括返済を選択できる貸付方式を設けるなど、利用者目線に立った取り組みを進めてまいりました。
 また、中小企業金融円滑化法の終了時などにおいて、取扱金融機関と保証機関の協力のもと保証料率を引き下げる特別措置を実施し、利用者負担の軽減を図ってまいりました。
 今後は、先ほど申し上げた再度の借りかえなどでの利用促進等を図るため、本年四月から九月までの半年間、同様の特別措置を講じてまいります。
 さらに、多くの中小企業の利用機会を確保するため、取扱金融機関の拡大にも努めており、制度創設初年度に十三行であった金融機関は、本年度は新たに信用金庫三行が加わり、現在二十四の金融機関で本融資を取り扱っております。
 引き続き、都独自のセーフティーネットとして、厳しい経営環境にある中小企業の資金繰りを着実に支援してまいります。

○柴崎委員 さまざまな制度改善、そして中小企業の負担軽減に取り組んでいく中で、ことし一月からは業界大手の信用金庫が取り扱いを始めたと聞いており、都独自の制度を根づかせていこうという地道な努力が実を結びつつあると思います。
 この制度は、制度融資を補完し、資金調達の多様化を図るために大事な制度であります。これからもこの制度の充実を図り、そして制度融資との両輪で中小企業の資金繰りをしっかりと支えていただくように私の方からも強く要望いたしまして、次の質問に移りたいと思います。
 次に、都市農業の振興についてお伺いしたいと思います。
 近年、農産物価格の低迷等によりまして、収益性が悪化するなど、農業は厳しい経営環境に置かれております。
 しかし、こうした中におきましても、都内には高い技術力を生かして高品質な農産物を生産し、また、加工品にして付加価値を高めて販売するなど、生産や加工、販売において、創意工夫をしながら頑張っている農業者が数多くおります。
 例えば、私の地元練馬におきましても、農業者と、そしてJAが、かつて練馬で栽培をされておりましたビール麦、金子ゴールデンを復活させまして、地ビールをつくって、そして練馬ブランドの農産物となるように取り組んでおります。そしてまた、地域の方々からも大変好評を得ているようであります。
 このほかにも、経営力の向上に向けた意欲ある取り組みが数多くございまして、このような取り組みを一層推進していくことが、農業を振興していく上で大変重要なことであると考えております。
 そこで、こうした農業者の取り組みに対する都の支援策についてお伺いしたいと思います。

○津国農林水産部長 都は、意欲ある農業者の取り組みを支援するため、今年度、東京都農林水産振興財団内にチャレンジ農業支援センターを設置し、農業者の抱える専門的な課題に対して経営コンサルタント等の専門家を派遣し、解決に向けた助言を行っております。
 これまでの実績といたしましては、東京しゃもの新たな加工方法や農産物ネットショップの運営ノウハウのほか、農産物をモチーフとしたPRキャラクターの提案など、多岐にわたる助言を行っております。
 加えて、来年度からは新たに農業経営サポート事業を開始し、専門家の助言の実現に向けた農業者の取り組みをさらに後押しいたします。
 具体的には、加工品の製品化に向けた試作のほか、農産物ネットショップを立ち上げるためのシステム開発やキャラクターデザインを使用したPRグッズの作成など、商品開発や販売促進に要する経費の二分の一を補助いたします。
 こうした意欲ある農業者の取り組みを促進することで、農業経営力の向上を図ってまいります。

○柴崎委員 都市農業の振興には、今後も農業者の創意工夫を引き出すような支援を実施していただくように要望しておきます。
 続きまして、都市農地の保全についてお伺いしたいと思います。
 都市農地は、新鮮で安全・安心な農産物を生産するだけではなくて、我々、いわゆる交流の場として、そしてまた防災などさまざまな役割を果たしていることから、地域で守るべき貴重な財産といえます。
 しかしながら、東京の都市農地は、この十年間で約一千ヘクタールも減少しております。そして、私の地元練馬におきましても、やはり十年前に比べますと、約七十ヘクタールの農地が減少しているわけであります。
 したがって、練馬区におきましても、都市農地を守るために、都のモデル事業を活用して水田や果樹の農作業が体験できる農園などを整備したところ、区民からも、今、大変好評を得ているというように聞いております。
 こうした取り組みはもっと拡大していくべきと考えておりますが、都市農地保全に向けた今後の都の取り組みについて伺いたいと思います。

○津国農林水産部長 都はこれまで、練馬区を初め八区市におきまして、農業、農地の多面的機能を生かすモデル事業を実施しており、親子での収穫体験のほか、農地や農業用井戸を活用した防災訓練などは、都市農地への理解が深まり、農地保全につながる取り組みとして好評を得ております。
 そこで、こうした取り組みを今後十年間にわたって展開する都市農地保全支援プロジェクトを来年度から開始し、農地の多面的機能を生かす区市の取り組みに対して、ハード、ソフトの両面から支援してまいります。
 具体的には、まずハード面において、災害時に活用できる防災兼用農業用井戸の設置や農業用水を生かした散策路の整備などに対しまして、経費の四分の三を補助いたします。
 また、ソフト面では、地域が一体となって都市農地保全に取り組むためのシンポジウムの開催や農地防災マップの作成などに対しまして、経費の二分の一を補助いたします。
 今後とも、区市との連携を十分に図りながら、本プロジェクトを積極的に推進してまいります。

○柴崎委員 相続税とか、そういったような関係で農地が年々減少している、これは本当に大変な大きな問題であると思いますが、この都市の中で貴重な農地を守っていくためにも、ぜひとも区市の実情に即した支援をよろしくお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

○木内委員 一月の末に、東京五輪に向けての組織委員会が設立をされまして、いよいよ本格的な準備が始動しました。これを機に、それぞれの地域や分野においても、いわゆる観光振興の機運が高まりつつありまして、こうした機運の高まりを捉えて、さらなる観光振興というものを推進すべきであります。
 そこで、幾つかの点についてお尋ねをするわけでありますけれども、私は去年の秋、某日、くしくもある体験をいたしました。それは、観光地である日光の東武日光駅の前での出来事でありました。夕方、たたずんでおりまして、後援会の旅行会でございましたので、そうしたら、四十代とおぼしき背の高いロシアの女性が私のところに実は見えまして、お互いに片言の英語でありますけれども、窮状を訴えられたんです。
 それは何かというと、その女性いわく、きょう一日、日光観光を行って、浅草で夕方、友人と会う約束があるので、東武日光駅で切符を今買わなきゃいけない。ところが、現金をもう全部使っちゃった。自分はクレジットカードを持っているので、このカードで現金化をしたいんだけれども、できるところがわからないという、まず相談だったんです。
 駅で聞いたら、東武日光はクレジットカードでは買えない。それから地銀が、東武日光駅前の広場に面して銀行の看板があったので、そこのATMに行ってみた。ここでも海外発行のクレジットカードは使えない。よくコンビニエンスストアに行きますとATMコーナーがありますから、東武日光駅と少し離れたJRの日光駅の方まで行きまして、三カ所のコンビニのATMにも行った。いずれも使えませんでした。
 発車の予定の時刻はどんどん迫ってくる。友達の困る顔が見えるようだというので、もう泣きそうな顔になっている。私は、しようがないから、大変無礼だと思ったけれども、わずかだけれども電車賃だけでもどうぞお渡ししますから、これで切符を買ってくださいというので切符を買ってさしあげて、お茶か何か飲むんだろうから、わずかだけれどもそれに上乗せをして渡した。それで事なきを得たという、くしくもそういう体験をしたわけであります。
 よくおもてなしということを五輪に向けて標榜するんですけれども、口でいうのは簡単だけれども、世間の常識、国際社会でまかり通っていることが、この近代国家の日本の社会のメカニズムの中で、非常識で不可能であるということ自体がおかしい。何で日本の社会は海外発行のクレジットカードで換金できないんですかと、実はこういう問題を、そのとき、その女性の途方に暮れた顔に接して私は感じたわけであります。
 そうして、その後いろいろ調べてみたところ、平成二十三年に観光庁が行った訪日外国人旅行者が感じる不平不満の調査というのがありまして、これによると、第一位が無料公衆無線LANの環境が整っていない、Wi-Fiなんかがです。これは随分、今回、定例会で話題になり、議題になり、議論されてきていることであります。
 二番目の不平不満は、コミュニケーションであった。要するに、言葉が通じないから、なかなか意思が伝わらないんだと。そのために、いわゆる多言語による標識、あるいはWi-Fiの環境整備等が議論もされているわけでありますけれども、五番目にこれがあったんです。クレジットカードで両替ができないという不満が、インバウンドで来た外国人観光客の方の中では第五位でありました。
 五輪の開催に向けて、多くの外国人旅行者が訪れることが見込まれているわけでありまして、おもてなしという、何度口にしたって、ハード、ソフトの両面にわたってそういう環境整備をしなければ、血の通った、実はおもてなしなんかできるわけがない、こういうふうに思ったわけであります。
 東京が快適、安全・安心、便利な環境とするための取り組みの一つとして、海外発行のクレジットカードの問題についてお尋ねをするんですけれども、今、現状として、海外発行のクレジットカードに対応したATMの設置状況について、どうなっていますか。

○杉崎観光部長 現在、一部の外資系の金融機関などを除き、海外発行のクレジットカードに対応したATMを設置しているのは、ゆうちょ銀行と大手流通企業グループ傘下の銀行一行の、合わせて二行でございます。
 設置台数は、全国で、ゆうちょ銀行が約二万六千台、もう一行は約二万台と伺っております。

○木内委員 今の答弁では、日本では海外発行のクレジットカードによる現金引き出しへの対応は十分ではないと思います。
 特に、ゆうちょ銀行は、これは郵便局、全国で約二万七千から三万近いでしょうか、ここには全部ある。ところが、郵便局が観光の拠点であったり観光客が集中する地域に適材適所に配置されているとは限らない。
 それから、コンビニもあるけれども、聞くところによると全国で四万軒から五万軒存在するといわれているけれども、はっきり申し上げてセブンイレブンだけです。セブン銀行は特殊な形態とシステムの中で、このコンビニのATMは海外発行のクレジットカードが使えるというふうに理解をしています。それ以外は全部だめ、できない。
 これだけコンビニの看板があるのに、あとはどこもできない。ゆうちょ銀行、大手流通企業グループ傘下の銀行、セブン銀行の二行以外にも、例えばメガバンクや都市銀行、セブン銀行がATMを設置しているセブンイレブン以外のコンビニエンスストアなどでの利用が可能になれば、外国人旅行者にとっては非常に利便性の向上につながると思うんです。
 これは誰が考えてもそうです。セブンイレブンができて、こういう個別の企業名をいうのはどうかと思うけれども、ローソンができない、ファミリーマートができない。私は、こういう素人の発想は大事にすべきだと思う。玄人から見てそういう理由と背景があるからしようがないんだというんじゃなくて、素人が考えてもどうしてもこれはおかしい、こっちができて、こっちができないというわけがない。そういうふうに思うわけであります。
 なぜ、ほかの海外都市と比べて、日本では海外発行のクレジットカードに対応したATMの設置が進んでいないんでしょうか。その理由について伺います。

○杉崎観光部長 金融機関からの聞き取りによりますと、日本で設置されているATMは、国内のキャッシュカードやクレジットカードに合わせた仕様となっており、カードの表面に備えられている磁気ストライプから情報データを読み取る仕組みとなっております。一方、海外発行のクレジットカードはカードの裏面に磁気ストライプが備えられていることから、日本のATMでは読み取ることができません。
 さらに、カードから読み取った情報データは、セキュリティー対策のため暗号化されますが、そのシステムが日本とは異なり、海外発行のカードに対応した新たなシステム開発が必要であるとのことでございます。
 このようなことから、日本において海外発行クレジットカードの使用を可能とするためには、ATMのカード情報読み取り機の変更やシステムの再構築などが必要であり、多額の経費負担を伴うため設置が進んでいないと伺っております。

○木内委員 今、おおむね三つの理由が挙げられて、特に三つ目では、新たなシステム開発が必要で、これには大変な費用がかかるということです、いってみれば。だから、ATMを作動させる側の論理としては、お金がかかるし、いろんなセキュリティーの問題だとか、あるいは金融機関との連携だとか、いろんな課題があるんだと思うんですね。それはそっちの側の理由であって、ユーザーの側、観光客、国民から見たら、何とかしなきゃいけない課題である、こういうふうに思うんです。
 今の答弁で、海外発行クレジットカードに対応するATMの設置に向けては、多くの経費を伴うということですけれども、五輪の開催に向けて、何度もいうように、多くの外国人旅行者が東京を訪れることが見込まれている。
 こういう方々の利便性を向上させるためにも、例えば、日本を代表するメガバンク、このメガバンクには対応願いたい、こう思うんですね。例えば、メガバンク三行による、海外発行のクレジットカードに対応するATMの設置に向けた検討状況についてお伺いしたいんです。
 というのは、私は、メガバンクというのは大きな社会的存在です。したがって、こういうことをいうと、またいろんな方面からクレームがあるかもしれないけど、一定の社会的責務というのを感じてもらって、そうして公共的役割というものをこういう部分でしっかり担ってもらいたい、こういうことを申し上げているわけでありまして、メガバンク三行による今の状況についてご報告願います。

○杉崎観光部長 昨年十二月の観光庁の報道発表によりますと、いわゆるメガバンクと呼ばれている大手金融機関三行は、海外発行のクレジットカードに対応するATMの設置に向け取り組んでいくとしております。
 そのうち、二〇一五年度から設置を予定しているところもあるとのことでございます。

○木内委員 これは新聞報道もされておりますから申し上げていいと思いますけれども、みずほ、三菱東京UFJ、それから三井住友、こういった名前がたしか報道されていたんじゃないかと思うんです。
 現状においては、日本のATMは、海外発行のクレジットカードによる現金の引き出しの取り扱いが進んでいない状況にある。東京都は、町中で数多く見かける便利なコンビニエンスストアに、海外発行のクレジットカードに対応したATMを設置するよう積極的な働きもすべきだとも思うんです。
 海外発行のクレジットカードに対応したATMの設置に向けて、東京都は精力的な働きかけを行うことが必要だし、国に対しても強く訴えていくべきだと思うんですが、どうですか。

○杉崎観光部長 外国人旅行者が多額の現金を持ち歩かなくても旅行ができるよう、海外発行のクレジットカードで現金が引き出し可能なATMの普及を促進することは、利便性を高める上で重要であります。
 現在、主要なコンビニエンスストアに設置されているATMは、金融機関などが出資をする管理運営会社が、その設置も含めて管理運営などを担っております。
 大手金融機関やコンビニエンスストアのATMは、その設置が全国で展開されていることから、これまで都は、国に対して、海外発行のクレジットカードが使用できるATMの普及促進を業界団体等に強く働きかけるよう要望してまいりました。
 引き続き、国に対して要望するとともに、国や金融機関等の動向を踏まえて、外国人旅行者の利便性向上に向けた取り組みを検討してまいります。

○木内委員 きょうのこの質疑を一つの契機にして、さっき申し上げた、仄聞していると申し上げたメガバンク三行、それからコンビニなどの関係団体、一層積極的に働きかけを行って、一日も早い課題の解決が行われるよう強く要望したいと思うんです。
 国は、昨年の観光立国推進閣僚会議で決定した観光立国実現に向けたアクション・プログラムに、訪日外国人旅行者の受け入れ環境改善に向けて、海外発行のクレジットカードで現金が引き出せるATMの設置を促進する、こういう旨を盛り込みました。
 これをきっかけにメガバンク三行も協力に向けて動き出したというふうにも聞いていますし、東京都も、こうした関係団体の動きをにらみながら、外国人旅行者の利便性の向上に取り組んでいただきたい。このことを強く要望いたします。
 次に、東京都が進める地域のアイデアを生かした観光振興策、地域資源発掘型実証プログラム事業の今年度の取り組み状況をご報告願います。

○杉崎観光部長 地域における観光振興を進めるためには、地域のさまざまな主体がみずから特色ある資源を発掘し、その魅力を高めていくことが重要であります。
 都は今年度から、魅力ある資源を特産品や旅行商品に育てようとする観光協会等のアイデアと民間事業者が持つ商品化に向けたノウハウとを結びつけ、事業化を図る取り組みを実施しております。
 今年度は、各地域から応募のあった七十三件の企画提案の中から二十件を選定し、深川飯などの郷土料理や、近現代建築物をテーマとした旅行商品の開発を見据えた取り組みなどについて、具体的な事業化を進めております。

○木内委員 たしか、この委員会だったと思いますけれども、各地域の観光資源の開発、またこれによる地域の活性化、また東京都が行ってきた事業の今後のありようについて、提案もし、また質疑もかねて行ってきたところであります。
 地域のアイデアを具体化する地域資源発掘型実証プログラム事業は、観光まちづくりに取り組んでいる団体等の活動を後押しする新しい試みであります。本事業で選定された地域の活性化に向けた取り組みを、都内の観光まちづくりに取り組む団体等にも広く周知して、観光振興を推進すべきだと思います。
 したがって、きょうは、このプログラム事業の今後の展開、方針について明らかにされたいと思います。

○杉崎観光部長 都は、来年度も引き続き本事業を実施するとともに、この事業を通じて行った地域の活動を観光まちづくりに取り組む団体等へ幅広く紹介するため、取り組みや成果をまとめた事例集を作成するとともに、セミナーを開催いたします。
 また、旅行者の回遊性を高めるため、複数の地域が連携した広域的な取り組みについては、事業の上限額を一件につき五百万円から一千万円に倍増して支援を充実させてまいります。

○木内委員 今の最後の、事業の上限額を五百万から一千万に倍増して支援を充実していくということで、たしか今定例会で、自民党の秋田議員の提案か質疑に対して答弁が行われていると思いますが、大きな前進でありますので、高く評価をさせていただきたいと思います。
 オリンピック・パラリンピックの開催時には、多くの旅行者が国内外から東京を訪れます。こうした機会を捉えて、多くの旅行者が地域へ足を伸ばし、町歩きを楽しんでもらえるよう、地域の資源を発掘し、魅力を創出していくことが必要です。都は、こうした地域に対する支援に、今後も積極的に取り組んでもらいたいと思います。
 既に、この委員会で、品川区天王洲の、実は観光要素のコラボによる新しい観光資源の活用ということを訴えてもいるわけでありますけれども、こうしたことも含めて、今、強く要望を申し上げます。
 オリンピック・パラリンピック大会や昨年開催されたスポーツ祭東京二○一三のようなビッグイベントは、こうした地域ならではの観光スポットなどの情報も広く発信する絶好の機会です。こうした機会を活用すべきとの観点から申し上げます。
 江東区のビッグサイト、ここでは毎年、旅行事業者が主催するJATA旅博という旅の博覧会が開催されています。去年も九月に開催されて、何と十三万人という非常に多くの来場者がありまして、にぎわったというふうに聞いています。
 ことしは、このJATA旅博がもっと大規模に開催され、また新たな側面も付加されると聞いていますけれども、東京都が掌握している情報についてご報告を願います。

○杉崎観光部長 お話のJATA旅博は、旅行会社などが加盟する日本旅行業協会が主催者となり、海外旅行、国内旅行、訪日旅行の情報を来訪者に伝える、大規模な旅の博覧会でございます。
 ことしから、このJATA旅博と、自治体や観光協会など都も加盟する日本観光振興協会が主催をする、国内旅行の需要喚起を目的とした旅行博覧会、旅フェア日本が統合し、ツーリズムEXPOジャパンとして九月にビッグサイトで開催される予定でございます。

○木内委員 ツーリズムEXPOジャパンとして九月にビッグサイトで開催される。これは新しい情報として大事に受けとめていきたいと思います。
 こういう大規模なイベントで東京の魅力をPRしていくということは、非常に効果が高いと思うんですけれども、この認識についてはどうでしょうか。

○杉崎観光部長 主催者によりますと、この二つのイベントを統合することで日本を代表する旅の総合イベントとし、地域にとってはその魅力を発信する場を、観光業など関係者には情報交換や商談の機会を提供するとともに、消費者にアピールをしていくこととしております。
 都は、この機会を捉えて、本イベントにPRブースを確保し、各地域からの出展を支援いたします。これにより、東京の魅力を効果的かつ積極的に発信することで、さらなる旅行者誘致につなげてまいります。

○木内委員 これに東京都のPRブースを確保して、新しい試みとして効果的に発信をしていくということでありますので、期待をしたいと思います。
 次に、最後でありますけれども、ムスリムについてです。
 何人もの方がムスリムの受け入れ、環境整備を訴えておられますが、ちょっとだけ、角度を変えて、かぶらないようにしたいと思います。
 昨年の訪日外国人旅行者数は、初めて一千万人を超えました。ASEAN諸国との友好協力四十周年を機に、七月から東南アジア諸国へのビザ発給が緩和されたことにより、イスラム教徒であるムスリムの多いマレーシア、インドネシアから多くの旅行者が訪れている。今後、さらなる増加が予想されています。
 さきの定例会で、我が党の議員が、ムスリム旅行者が快適に滞在できるよう受け入れ環境の整備をすべきとしたのに対して、都は、提供する食材や礼拝などに対する配慮が必要で、飲食店や宿泊施設等に対してリーフやセミナーを通じて普及啓発する、こう答弁しております。
 ムスリムの旅行者に対して必要な配慮の内容と、飲食店など関係する事業者に対する普及啓発の具体的な方法について伺います。

○杉崎観光部長 ムスリムの方々は、イスラム教の戒律により、豚肉やアルコールなどを口にすることはタブーとされております。また、礼拝は原則として一日五回行い、このための施設設備が必要とされております。実際には、国やそれぞれの個人の考え方によって求められる水準はさまざまともいわれております。
 こうした食事や礼拝に関する基礎知識や対応策などを取りまとめたリーフレットを作成するとともに、この情報をインターネット上で提供して、飲食店や宿泊施設等、関係する事業者が情報を入手しやすいよう工夫をしてまいります。
 また、セミナーでは国内の先進的な取り組み事例を紹介するなど、ムスリムの方々の受け入れに必要な具体的知識、ノウハウを提供し、ムスリム旅行者が東京の観光を安心して快適に楽しめるよう普及啓発を進めてまいります。

○木内委員 情報をインターネット等で提供して、さらにリーフも作成していくということでありますから、国内的にはそういうご努力を重ねてもらいたいし、また、ムスリムの方々が居住する相手国のいわゆる国内世論にもこれをよく浸透させるように、どうかしっかり周知を行うということを要望したいと思います。
 日本とは文化の異なる面が多く、いろんな習慣をお持ちのムスリムの人々をきめ細かな心配りで迎え入れて、いい東京、日本の思い出を持ち帰ってもらうためにも、ぜひ、申し上げたことを踏まえて、積極的な環境整備に努めてもらいたい、このことを要望して、私の質問を終わります。

○かち委員 まず、今定例会に提案されております東京都立職業能力開発センター条例の一部を改正する条例、すなわち、都立職業訓練校普通課程の授業料の値上げをするというものです。
 そこで何点かお聞きします。
 職業訓練の普通課程の有料化の経緯と今回の授業料改定の理由について、改めてお聞きします。

○戸澤事業推進担当部長 普通課程は、民間の教育機関と対象者や訓練内容等が重複しております。このため国は、受益者負担の観点から、都道府県の実情に応じ、授業料の徴収について検討を求める通達を出しております。
 都では、民間機関で技能を学ぶ都民の多くが授業料を自己負担している状況を踏まえ、受益者負担の適正化の観点から、条例改正を行い、平成十九年度より有料化し、関東近県との均衡なども参考に、年額十一万五千二百円といたしました。
 その後、地方交付税算定基準における公立高校授業料額の見直しに伴い、関東近県が十一万八千八百円に改定したこと等を総合的に勘案し、今般、十一万八千八百円に改定することとしたものでございます。

○かち委員 今ご答弁いただきましたが、そうすることは、職業訓練校の授業料の法的根拠はないということですね。
 通達をきっかけに徴収の動きが出てきたことからやったんだということですけれども、その通達というのは、ここにありますけれども、授業料については、地域の実情に応じ、ご留意いただくようお願いをするという、お願いというものにすぎないものです。
 都が国の通達に拘束されるというなら、都は、国に通達を撤回するように求めることこそ、都民の生活を守るべき自治体の役割ではないでしょうか。

○戸澤事業推進担当部長 授業料を初め使用料については、地方自治法の規定により、条例で定めることとされておりまして、都では、東京都立職業能力開発センター条例で授業料について定めております。
 授業料徴収の根拠は条例であり、国の通達は受益者負担の観点から自治体に検討を求めるもので、撤回を求める性質のものではありません。

○かち委員 今ご答弁にありました地方自治法二百二十八条の規定によるということですけれど、これは使用料を徴収することとした場合は条例で定めることを規定した条文です。その使用料そのものを、地方自治法二百二十七条で規定しているように、徴収することができるという規定であり、義務づけではありません。しかも、二百二十八条の第一項の規定に定められている手数料のうち、全国一律に定めることが必要とされているものの一覧には、職業訓練校の授業料はありません。
 この規定は、自治体が使用料を徴収する場合には条例で定めることを義務づけるものであり、徴収しなければ使用料などを条例で定める必要はないということです。したがって、授業料を徴収するかどうかは自治体の判断でできるということになります。そもそも、さきのご答弁のように、都は、職業訓練校の授業料徴収について、法律を根拠にしているものではありません。
 私は、全国四十七都道府県の職業訓練校における授業料徴収の実態を調査しました。それによると、今年度も無料の県は十県、授業料を徴収しても六万円以下の県が四県もありました。この間の国の動きがある中でも、授業料徴収をしないという判断をしてきた自治体があるんです。その実態から見ても、授業料を徴収する必要はないと思います。
 高校卒業者などが普通課程の職業訓練を受ける優位性については、都はどのように認識しているでしょうか。

○戸澤事業推進担当部長 普通課程の訓練を受講することにより、新規学卒者等が将来多様な技能、知識を有する労働者となるために必要な基礎的な技能、知識を習得することができるものでございます。

○かち委員 そのとおりですね。都の普通課程の就職率は、短期コースに比べ、就職率は高くなっています。定着率もよく、中小企業からも歓迎されているものです。だからこそ、多くの若者を対象に受講できるようにすべきです。
 昨年の二定で、教育長は、都立高校中途退学者等追跡調査の結果、退学後の若者を支援する機関等の利用状況については、特に利用したところがないという回答が全体の六六・三%でありました、そこで、都教育委員会は、中途退学者の社会的自立に向け、都立高校と若者の自立を支援するNPO等が連携して、一人一人の状況に応じて必要な機関等につなげ、学び直しや就労などに結びつけていくきめ細かい支援を行ってまいりますと答弁しています。だからこそ、局間連携で打開していくことが必要なんです。
 高校中退者、卒業者のうち、毎年、その約一割、約一万人余が、就職、進学もしない状態が数年続いています。こうした人たちに対し、教育庁、区市町村などと連携して、普通課程の職業訓練によって就労支援をすることは、必要な支援だとは思いませんか。

○戸澤事業推進担当部長 普通課程では、既に高校中退者、卒業者を幅広く受け入れており、教育庁と連携して、高校卒業予定者の推薦入校などを行っております。
 なお、特に高校中退者等を主な対象とした訓練としては、社会人基礎もあわせて学ぶ、無料の一年訓練である若年者就業支援科を設置しております。

○かち委員 先ほどのご答弁のように、普通課程の職業訓練の優位性は明らかです。都も、無料の一年訓練を実施するようにしたではありませんか。
 特別区長会は、無業者に対して就労支援等が必要だとして、昨年二月に、問題提起するシンポジウムを開きました。無業者の増加は、地方自治体の税収や生活保護等にも影響を及ぼします。
 職業能力の開発及び向上について、その支援が求められているにもかかわらず、その支援の実績も高い普通課程の門を狭めているのは、住民の福祉の増進を目指すべき自治体の本旨にももとるものです。都は、区市町村や都民の要望に応えるべきです。
 今回の値上げ額が、都立高校の授業料の水準に合わせたとのことですが、都立高校の授業料は、一定の後退はありましたけれど、今、一定所得未満は無料です。より自立への困難を抱える人たちに、授業料値上げは許されません。そもそも、法的根拠のない都立職業能力開発センターの普通課程の授業料徴収はやめるべきです。したがって、今回の授業料を値上げする条例改定には反対であることを申し述べておきます。
 次に、介護離職問題についてお聞きします。
 都は、新年度予算案の中で、就労に当たってさまざまな困難を抱える若者、女性、高齢者の積極的支援を位置づけています。その中で、私は女性と高齢者の就労支援について伺います。
 女性が社会に進出、活躍できる条件整備が急がれています。子育て中の女性に対する施策の充実とともに、介護のために離職せざるを得ないという現実も大きな問題になっています。親の介護のために離職せざるを得ない世代は、中堅クラスや中間管理職世代であり、職場の中でも重要な役割を持つ世代です。そういう方々が職場を離れなければならない事態は、会社や社会にとっても大きな損失であります。
 産業労働局は、働いている都民の中で、介護のために離職せざるを得ない方々の人数を把握しているでしょうか。また、この実態をどのように認識しているのかお聞きします。

○矢田部雇用就業部長 介護、看護のために離職した方は、国の就業構造基本調査によれば、平成二十三年十月から二十四年九月までの一年間に、東京都内で九千二百人となっています。
 働く方が、仕事と、介護を含む家庭生活との両立を図り、離職することなく働き続けられることは重要でございます。

○かち委員 東京都の二〇一二年就業構造基本調査を見ますと、働いている都民百人のうち、働きながら介護をしている人は四人です。五十歳以上の方を見ると、八人を超えています。五十五歳以上の女性で見ると、十三人以上の方々が働きながら介護をしていることがわかります。
 しかし、一年間に約一万人の人が介護のために離職をしているんですね。また、二〇〇七年から二〇一二年までの五年間では、離職せざるを得なかった人は離職者全体の百人に二人の割合ですが、実数では四万四千人以上になっています。
 この介護離職問題は、今後、要介護出現率が七十五歳から九%を超え、高齢化するに従って上昇することが予想されます。団塊ジュニア以降の世代では、兄弟姉妹数が相対的に少ないこと、未婚化傾向の進行などで離職を余儀なくされる事態が増加しつつあります。
 しかし、離職後の再就職は難しく、老親、老いた親が亡くなると年金収入もなくなり、生活保護に頼らざるを得ないという悪循環に陥っている方々も少なくありません。
 介護離職問題は、今後も一層増加することが予想されます。こうした介護離職を予防するための対策が急がれていると思いますが、介護離職の抑制に向けて、仕事と介護を両立させる対策が急がれていると思いますが、どのように認識しているでしょうか。

○矢田部雇用就業部長 今後、高齢化が急速に進展し、仕事と介護の両立の問題は一層切実となると認識しております。

○かち委員 介護離職をした場合、介護中は求職活動の時間的余裕がないこと、一定時間仕事を離れていることが不利になることから、解雇、倒産で離職された方より、再就職のハードルが高く、困難だといわれています。
 こうした方々への再就職支援が必要であると思いますが、いかがでしょうか。

○矢田部雇用就業部長 都は、東京しごとセンターにおきまして、カウンセリングやセミナー、職業紹介等の就職支援サービスを、再就職を希望する方それぞれの状況を踏まえながら、きめ細かく実施しております。
 今後も、引き続きこうした支援に取り組んでまいります。

○かち委員 比較的中高年で長期離職後の再就職が難しい環境にあります。こうした方々がより早く社会に復帰できるよう、抜本的な支援体制の強化を求めておきます。
 働きながら介護されている方のうち、男性が四割を占め、雇用形態を見ると、正社員が半数以上です。介護離職された方で見ると、その四割は五十五歳から六十四歳です。人員の余裕がない中小企業などにとっては、中堅クラスの方々が介護離職することが、会社にとっても大きな影響を受けることになります。
 中小企業支援としても、介護離職を防ぐ仕組みづくりが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○矢田部雇用就業部長 都は、仕事と、介護を含む家庭生活との両立を推進するため、既に中小企業の取り組みに対する助成等を行っております。
 今後、高齢化の進展を踏まえ、本会議において知事も答弁したとおり、都内中小企業の仕事と介護の両立に関する実態を把握し、効果的な施策に結びつけていくこととしております。

○かち委員 まず、実態把握から取り組むということでした。
 介護離職を防止するためには、介護のための短時間勤務制度や、高齢者の在宅介護支援体制の充実や、特養ホームの増設など、福祉保健局や区市町村との連携を図りながら介護と仕事が両立できる社会環境を整えていくことが必要です。人員の余裕がない中小企業などにはコンサルタントの派遣等で積極的に支援するとともに、産労局が積極的にかかわり、労働行政、中小企業支援の立場からも力を発揮することが重要です。
 二〇二二年には団塊の世代が七十五歳に到達し始め、都内では、二〇一五年の百四十五万人から、二〇二五年には百九十万人になります。企業、労働者、行政が連携して離職を防ぎ、働きながら介護できる仕組みづくりを都としても検討することを求めておきます。
 次に、高齢者の雇用と社会参加の拡大について何点かお聞きします。
 人生百年時代を見据え、元気な高齢者が、退職後も地域で生きがいを持って社会参加できる仕組みづくりを今から構築していくことが重要です。
 厚生労働省は昨年六月、生涯現役社会の実現に向けた就労のあり方に関する検討会の報告を発表しました。これは、高齢社会を迎えるに当たって、高齢者が地域の個々の課題を解決し、地域社会の支えとなるとともに、高齢者が生きがいを持って社会参加する方策をまとめたものです。
 報告では、関係者、関係機関に対し、幾つかの提言を行っています。その中で、プラットホーム、コーディネーターの必要性を挙げています。地域ではさまざまな機関が高齢者の社会参加の促進に取り組んでいるものの、連携が不十分であるため、地域の課題やニーズ、就労、社会参加に意欲を持つ高齢者に対する情報をワンストップで収集し、効果的に情報を提供する場としてのプラットホームの整備と、課題解決のための、高齢者のマッチングを図るコーディネーターを設置することの必要性を掲げています。
 都として、この報告をどのように受けとめているでしょうか。

○矢田部雇用就業部長 報告書にもございますとおり、高齢者が希望や能力に応じ地域の担い手として活躍できるよう支援するため、情報共有の場を設けることや、地域のニーズと高齢者をマッチングさせていくことは重要でございます。
 このため、都として、関係機関と連携し、就業機会確保のためのさまざまな取り組みを行っており、報告書の中でも、地域と高齢者のニーズの掘り起こし、マッチングを進めている好事例として、都が支援し、高齢者の職業紹介などを行っているアクティブシニア就業支援センターが取り上げられております。

○かち委員 こういう提言が重要だという認識のもとで、既にやっているよというようなことですけれど、検討会の報告では、今さまざまな取り組みがやられているけれど、それぞれがばらばらであるから、もっと地域のニーズと高齢者の多様な要求を発掘し、情報交換し合う中で、元気な高齢者をもっと社会の中で活用し、力を発揮できる機会をつくることが重要だといっているわけです。
 アクティブシニア就業支援センターは、都がしごと財団を通して設置、運営の支援をし、区市の社会福祉協議会などが行っている高齢者の無料職業紹介所のことです。先進例もあるのですが、それらが共有されていない。だから、プラットホームの重要性が提起されているんだと思います。
 これ以外にも、さまざまな活動の場は掘り起こせばあるわけです。そして、これらの取り組みを行う主体は地域で活動している組織で、シルバー人材センターや社会福祉協議会のほかにも、地域包括支援センターやNPO、高齢者事業団などなど多様な組織があるわけですから、都としてこれらの組織を積極的にサポートし、プラットホームとして機能させることが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○矢田部雇用就業部長 都では、地域の高齢者の就業を促進するため、シルバー人材センターへの支援のほか、NPOや社会福祉協議会などが運営主体となっているアクティブシニア就業支援センターへの支援を行っております。
 当該支援センターの中には、地域のさまざまな機関とも連携し、就業相談や職業紹介、多様な働き方に関する情報提供など、プラットホームとしての機能を果たしているところもございます。
 引き続き、こうした取り組みを支援してまいります。

○かち委員 シルバー人材センターには支援していると、そしてアクティブシニア就業支援センターへの支援をやっているとのことですけれど、その多様な取り組みは、まだ本当に先進例は一部なんですね。それがもっと横の連携で波及していくことが求められています。アクティブシニア就業支援センターも、まだ八区五市プラスアルファぐらいで、数的にもまだまだ不十分です。
 そのほか、地域で活動している組織は、例えば江戸川区では、区内に二十四カ所ある地域包括支援センターが七つの地域の核となって、ひとり暮らしの方や認知症防止のためのきっかけづくりの会など取り組んでいます。こうしたさまざまな地域で活動している幅広い組織に働きかけ、支援して、取り組みを活性化していくことが必要だと思います。
 報告では、都道府県、区市町村の役割として、民間が主体となって行われている各事業を支援し、各実施主体を連携させるように促すなどサポートすること、また、プラットホームの運営やコーディネーターの設置について必要な資金を付与するなど、自治体の取り組みとして必要であるとしています。
 また、セミナーや会議などの活動場所として、都道府県や区市町村の保有する施設を無償または安価で提供することも、円滑な活動に効果的であるとしています。
 都として、これらの取り組みを積極的に取り組むべきであると思いますが、いかがでしょうか。

○矢田部雇用就業部長 都では、区市町村がアクティブシニア就業支援センターを設置、運営する場合に、求人開拓やマッチングなどコーディネートする者の人件費等を助成するとともに、都内のシルバー人材センターに対しても運営経費などを助成しております。
 また、来年度予算案では、シルバー人材センターの活動拠点となる施設整備の助成や高齢者就業のモデルの立ち上げに係る経費の助成などを盛り込んでおります。

○かち委員 来年度の新規の取り組みとしてはモデル事業があるということですけれども、ほとんどがシルバー人材センターとアクティブシニア就業支援センターの補助という範囲なんですね。
 報告書で述べているのは、今までの延長ではなく、運営主体間の連携、情報交換のサポート、そのほかにも、地域で活動している多様な組織への支援や場の提供なども必要だといっているんです。
 高齢者の中には、現役を退いても、社会のために役に立ちたい、今までとは全く違う環境でやってみたいとか、現役時代に身につけたノウハウを生かしたい、また、生活維持のために現役並みに働きたいなど多様です。
 また、地域のニーズを発掘、創造し、意欲ある高齢者を見出し、これらをマッチングさせていくコーディネーターを活用していくことが重要だということなどが示されているのですが、コーディネーターの活用についてはいかがでしょうか。

○矢田部雇用就業部長 先ほどお答えしましたさまざまな施策は、地域のプラットホームにおけるコーディネート機能に対する支援であると考えております。

○かち委員 アクティブシニア就業支援センターの中で職業のマッチングをやっている、シニアハローワークみたいなことだと思うんですけれど、そういうことはやっていても、それだけではなくて、アクティブそのものを連携させていく、また違う活動団体とも交流したり情報交換をしたりしていくことをつなげていくコーディネーターが必要だということを、この報告ではいっているんだと思うんですね。
 超高齢社会に向け、都としても、今後の高齢社会をどう構築していくかの観点に立って、企業における高齢者の活用のあり方、専門的な知識や技術、経験を他の企業で生かす仕組みづくりなど、積極的にこの分野を開拓、研究していく立場に立っていただきたいと思います。
 新年度予算案で、高齢者の職域開拓を進めるために創業する事業者やコミュニティカフェなどの施設整備を進めるとのことですが、その対象は、高齢者への仕事確保事業などを進めているNPO法人なども対象にすべきだと思いますが、いかがですか。

○矢田部雇用就業部長 来年度実施いたします高齢者の職域開拓モデル事業は、高齢者が地域等で働くモデルとなる企画について、事業主等から広く提案を募集し、立ち上げに必要な経費の助成を行い、その取り組み内容を広く発信するものでございます。
 この事業では、企業だけではなくNPO法人なども対象としており、応募のあったものの中からモデル事業を選定することとしております。

○かち委員 モデル事業にとどめることなく、多様な事業主体のさまざまな取り組みをサポートし、都として、幅広い視野に立って、高齢者の可能性と社会参加への仕組みづくりに積極的に取り組むことを求めておきます。
 最後に、中小企業対策について伺います。
 国の統計では、二〇〇九年と一二年の比較で、中小業者は八・三%減少し、三百八十五万社に、うち小規模事業者は同時期に八・八%、三十二万社も減っています。小規模事業者の減少が際立っており、日本経済の根幹を揺るがしています。
 先日、経済産業省の中小企業庁の担当者から話を聞きました。今、全国的にも中小企業の衰退と高齢化が深刻な事態となっている。国として、これまでの支援は、一九九九年に中小企業基本法を改定して、それまでの中小企業全体を底上げする考え方を変えて、三百八十五万社のうち二〇%程度の中堅クラスの中小企業だけに光を当ててきた。そのような成長産業だけを支援するやり方を改めて、すぐれた技術を有する中小企業全ての底上げと技術の継承が必要だと語っていました。
 東京都の中小企業の製造業の推移、資料を出していただきました。四ページにありますが、ここにもはっきりあらわれています。全体の事業所数は、この十年間で五六%に減少しています。中でも、全事業所数のうち一人から三人の企業が五割を占めているんですね。そして、四人から九人までを合わせると八割を占めている。これらの中小企業が、この十年間で半減をしています。そして、従業者も、製品出荷額も、いずれも半減という事態です。企業の九九%を占め、雇用の七〇%を占めるこの回復なくして、東京の経済の回復はあり得ないと考えるものです。
 そこで、お伺いします。東京の経済の底支えとなっている中小企業、中でも特に小規模企業の衰退と高齢化が進行しています。この実態を、都としてどのように認識しているでしょうか。

○十河商工部長 小規模事業者を含む都内中小企業の企業数の減少や高齢化の状況につきましては、都としても各種の統計調査などにより把握しており、国際競争の激化や後継者不足など、都内中小企業を取り巻く経営環境は依然として厳しい状況にあると認識しております。

○かち委員 各種統計調査で、都内の中小企業の衰退が、全国と比較して激しく衰退していることは、既に二〇〇六年の東京の中小企業の現状の中で顕著にあらわれていることです。
 東京の中小企業振興に向けて、すぐれた技術を有する中小企業全ての底上げと、持続、継続できる対策が必要であると考えますが、いかがですか。

○十河商工部長 都は、各分野の専門家によるアドバイスや販路開拓支援を初め、さまざまな施策により、都内中小企業の経営の改善と向上を支援しているところでございます。

○かち委員 いろいろ施策に取り組んでいるのに、それが反映していないのが実態です。
 中小零細企業が求めていることは、いかに受注をふやし、販路を切り開くことができるかでありますが、それぞれの零細企業ではなかなかできない。そういうときに、最近注目されているのが、大企業や海外とも取引がある中堅クラスの中小企業の存在です。コネクターハブともいわれています。大企業などからニーズを聞き取り、その仕事を中小零細企業に振り分ける役割を果たす存在です。地域の中の中小企業が連携して、強みの技術を結集して大企業からの受注に成功したり、航空機部品など新規の成長分野に参入するケースが注目されています。
 コネクターハブ企業に対する都の認識と、その実態は把握しているのでしょうか。

○十河商工部長 中小企業がグループを組み、販路開拓や技術開発に共同で取り組むことは重要でございます。
 都が支援した取り組みの中でも、こうしたコネクターハブ機能を持つグループというのはありまして、そうした事例としては、大手企業から新たな医療機器の受注を目指す比較的規模の大きい中小企業が、自社にない技術を持つ他の中小企業とグループを組み、開発工程の一部を委託して製品の完成に取り組むものなどでございます。

○かち委員 都としても、先進事例の取り組みがあるというわけですが、もっと広範にこうした役割を持つ企業を見つけ出し、現状を把握することが必要なのではないでしょうか。国においても、こうしたコネクターハブの役割を果たせる中小企業の実態調査をまず行うとしています。都としても、積極的に実態調査をすることを求めておきます。
 中小零細企業の大きな飛躍のためには、異なる技術を持った企業同士が強みや資源を持ち寄り、新たな製品を生み出す取り組みが重要です。
 大田区でも、異業種交流による製品開発は精力的に行われています。下町ボブスレーもその一つです。連携の取り組みを一層活発にするためには、こうした企業同士の交流の場を無料あるいは低廉で提供する必要があります。
 先ほど尾崎議員も紹介しましたが、私も三鷹市の起業支援施設に行きました。起業家の皆さんが無料で会議や交流ができる場所が設置されていました。そこでいつでも自由に情報交換ができ、アドバイスを受けることができる。中小企業を振興していく上で大きな役割を果たしていることがわかりました。
 都としても、都内の中小企業振興センターなどの会議室はもちろん、工業集積地に無料あるいは低廉で利用できる場所を提供することを求めておきます。
 さらに、地域のニーズをつかみ、受注、発注につながることができるコーディネーターが不可欠です。それは相談に来たら答えるというのではなく、町場の小零細工場に直接足を運び、いろいろ相談に乗りながら、新製品開発や受注につなげることのできる存在です。
 先ほどの高齢者の社会参加にもつながるものですが、例えば、現役を退いた、経験あるOBの方の中には、現役時代に金融関係や大企業、商社などで培ってきたノウハウや、大企業とのパイプを持っている方などもいるわけです。
 こうした方々の活用など、出前コーディネーターの活用の仕組みを都として支援、強化する必要があると思いますが、いかがですか。

○十河商工部長 産業技術研究センターにおいて、例えば異なる分野、業種の中小企業の交流を通じ、新製品の開発などにつなげるための異業種交流グループなども毎年立ち上げておりまして、そういうものには、グループの円滑な運営を支援するため、企業や研究機関のOBをコーディネーターとして配置しております。その他さまざまな施策を通じまして、コーディネーターを活用して、それらの取り組みを支援してございます。

○かち委員 もちろん産技研でやっている取り組みも重要ですが、一カ所で集中してやるというよりも、全体に波及していくことが重要だと思います。今必死で頑張っている小零細企業全体の底上げのためにも、都政に求められているのは、待ちの姿勢ではなく、現場に出向いて直接話を聞き、中小企業の要望をつぶさに受けとめて、その実現のために、現状把握と対策を敏速にとれる仕組みづくりです。知事も現場を重視するといっているわけですから、直ちに施策で具体化するよう求めておきます。
 また、新知事になったわけですから、十年間全く開かれてこなかった中小企業振興対策審議会を早急に招集し、中小企業の振興基本方針を諮問するよう知事に提言することを求めて、質問を終わります。

○中村委員 それでは、初めに消費税対策について伺います。
 四月から、消費税が五%から八%になります。東京商工会議所の調査によると、都内の中小企業の約四割が、消費増税に伴って円滑に価格転嫁ができるかどうか懸念を抱いているとの結果が出ました。
 また、経済産業省と公正取引委員会は、消費増税を控えて、増税分の価格転嫁を拒む事業者を、経産省は今月三日までに四百六十五件、公取委は二月末までに三百八十七件を指導しました。
 都においても、下請企業や小売企業が消費税を円滑に転嫁し、経営を継続していくことができるように監視すべきですが、見解を伺います。

○十河商工部長 消費税の転嫁拒否などの不適正な取引は、厳しい経営環境にある中小企業にとって切実な問題でございます。
 そのため都は、下請取引に係る相談対応や企業への巡回訪問を実施しており、昨年十月からは転嫁拒否などに関する相談受け付けも開始してございます。
 来年度は、弁護士相談の体制を強化するとともに、企業巡回を行う相談員を増員し、よりきめ細かく対応することにより、価格転嫁を含めた下請取引の一層の適正化を図ってまいります。

○中村委員 次に、ものづくり産業への支援について伺います。
 都内でも、長らく続いた円高などの影響により、大規模な事業所の撤退が多くなり、こうしたことを背景に、地域の産業集積が衰退をしていくのではないかとの懸念が強くなっています。私は、かねてよりこの問題を深刻なものと捉え、今般の本会議においても質問を行い、対応を求めてきました。
 都は、来年度から都内ものづくり企業立地継続支援事業を開始し、中小企業が都内で操業を継続する取り組みを後押しするとのことですが、こうした個別企業に対する支援と同時に、地域における面的な産業集積をしっかりと守り、発展させていく取り組みも重要です。中小製造業が地域的に集積することで、企業同士の連携が加速され、国際競争にもかち得るよう成長していくと考えます。
 産業空洞化がいわれる中、都は、地域での中小企業の集積を育て、成長に向けて継続的に支援していくべきと考えますが、見解を伺います。

○十河商工部長 東京では、すぐれた技術を有する中小製造業が、各地域で特色ある産業集積を形成しております。
 これら中小製造業が、成長を目指して新たな分野に事業を展開するなど、企業単独では対応の難しい課題に取り組むためには、こうした集積のネットワークを活用し、技術や情報を共有しながら、共同で製品開発や受注などに取り組むことが効果的でございます。
 このため都は、昨年度より、ものづくり産業集積強化支援事業を実施いたしまして、地域の産業集積の確保と発展に向け、企業誘致や工場の集約化、企業間の技術連携の促進などに取り組む区市町村を三カ年にわたり継続的に支援することとしており、来年度からは、新たに三鷹市など四区市を支援いたします。
 こうした取り組みにより、産業集積の維持発展を図り、成長に向けた中小製造業の競争力強化を促進してまいります。

○中村委員 来年度は、三鷹市を含む四市区への支援があるとのご答弁でした。
 どのような地域のまちづくりを行うかは市区町村の役割でも、企業活動は広域的に行われるため、産業政策は一自治体だけの範囲にとどまるものではありません。都も、広域自治体として積極的な支援をお願いします。
 次に、都が来年度から開始する動産・債権担保融資制度について伺います。
 動産や債権を担保にして融資を受ける手法は、まだ日本では余りなじみがないようにも思いますが、中小企業にも有効だということで、国でも金融機関に対して活用を促す流れが出てきているということです。私も、地元の中小零細企業が資金繰りに困っている様子をよく耳にするので、融資を受ける手段が少しでも多いことは望ましいことだと思います。
 今、一般的に行われている融資は、土地を担保にするか、そうでなければ経営者自身が債務を保証しています。この個人保証によって、仮に会社が倒産した場合、社長さんの生活までも奪ってしまったり再起の芽を潰してしまったりするということで、何とか個人保証を外す基準がガイドラインとしてまとめられましたが、対象はかなり優良企業に限られるというのが現実のようです。
 こうした現実を踏まえると、個人保証の慣行をなくしてしまうというところまでは一足飛びにいかないでしょうから、今回のような動産や債権を担保とする融資など、さまざまな選択肢をつくっていくことは大切だと思います。
 そこで、何点か質問します。
 まず、こうした取り組みは、民間ベースでは行われているのでしょうか。民間の金融機関における取り組み事例について伺います。

○寺崎金融部長 動産や債権を担保とする融資方法、いわゆるABLは、日々の事業活動で使用しているさまざまな資産を担保に活用できることから、融資の担保として活用できる不動産などの資産が少ない中小企業にとって、資金調達の多様化を図る上で有効な手段の一つであります。
 ABLは、民間金融機関における活用が図られ始めた段階ではありますが、全国的に見ますと、棚卸資産では、畜産業の牛や豚、酒造業のワインや日本酒など、また機械や設備では、印刷用の機械や業務用の大型冷蔵庫などを担保として融資を行っている事例がございます。

○中村委員 民間でも、数は多くないけれども、さまざまな取り組みが進められつつあるようですので、都が取り組む意義というのを改めて確認したいと思います。
 私は、先ほど述べたような、個人保証が外せない場合の代替措置としての意味があるのではないかと考えています。この点も含めて、今回、都が制度構築に乗り出す意義について伺います。

○寺崎金融部長 先ほどお答えしたような民間金融機関による独自の取り組みは、担保価値が高いものや一定のボリュームがあるものが対象となっており、中小企業、特に小規模企業を対象とした事例は多くないというのが現状であります。
 その要因といたしましては、担保物件の評価や管理が難しく、また、担保物件を評価するための費用など、中小企業にとっても負担が大きいことなどが挙げられます。
 このため、今回の制度は、専門機関の活用や中小企業の負担への補助、金融機関の損失への補助など手厚い支援を講じることにより、都内の小規模企業でも活用できる都独自のABL制度として構築したものであります。
 本制度は、不動産担保や個人保証が中心となっている企業向け融資の中で、資金調達の選択肢を広げる点で意義のあるものと考えております。

○中村委員 都内中小企業の資金調達の選択肢を広げていくために、さまざまな支援策を講じてこの制度をつくったという趣旨はよくわかりましたし、中小企業の立場に立った取り組みだとも思います。
 ただ一方で、もう一つ疑問に思うのが、動産や債権をどのように管理、保全していくかです。不動産は持って逃げることができませんが、動産ならそれができます。そういった意味で、この制度は、不動産担保に比べて貸す側にリスクがあるのではないでしょうか。担保をとって貸したのはいいけれども、担保がなくなってしまったのでは損失が大きくなってしまうのではないかと心配になります。
 こうしたことも含めて、都の損失補填が膨らまないよう、担保の評価や管理についてどのように取り組むのか伺います。

○寺崎金融部長 本制度では、まず、担保の種類ごとに専門的なノウハウや実績を有する機関を選定し、金融機関の融資をサポートすることで、担保物件に対して精度の高い評価を行う仕組みといたします。
 また、融資を行った後も、専門機関や金融機関が定期的にモニタリングを行い、担保物件の保全状況を確認することなどにより、適切な管理を行ってまいります。
 こうした専門機関を活用した取り組みによりまして、担保物件の評価や管理を適切に行うことで制度の円滑な運用を図ってまいります。

○中村委員 新しい制度について何点か伺いましたが、先ほどから申し述べているとおり、中小企業の資金繰り支援を充実させていくことは大切だと思いますので、この制度を活用して、多くの中小企業の役に立つようしっかり取り組んでいただきたい、このことをまず申し上げておきます。
 その上で、都の損失補填が過大とならないよう、ただいまの質疑で指摘した点も踏まえて、関係機関と連携して、制度の適切な運用を行っていただくよう要望いたします。
 次に、金融支援のもう一つの新規事業である女性・若者・シニア創業サポート事業について、一点お伺いします。
 少子高齢社会に突入した我が国において、子育て支援や高齢者の介護、買い物などの生活支援といった課題が顕在化をしています。こうした課題は、皆様の身近な地域社会の課題に事業として取り組むコミュニティビジネスが今注目を浴びており、私は、このコミュニティビジネスを飛躍的に伸ばしていくことが、社会の課題を解決するために今重要だと考えています。
 今回の事業は、地域に根差した創業を支援するということで、まさにこのコミュニティビジネスを支援するものではないかと考えられますが、本事業の趣旨を含め、都の見解を伺います。

○寺崎金融部長 来年度新たに開始する女性・若者・シニア創業サポート事業は、地域に根差した創業を目指す有望な女性、若者、シニアに対して、信用金庫や信用組合が創業資金を融資するとともに、地域創業アドバイザーが金融機関と連携して事業プランへの助言を行うなど、資金供給と経営サポートの両面からの支援を行うことで、地域のさまざまな事業を生み出し、都内における創業の促進を図るものであります。
 お話の、地域課題の解決に取り組む、いわゆるコミュニティビジネスについても、本事業の主要な支援対象と考えられ、事業を効果的に実施することで多くの創業を生み出していきたいと考えております。

○中村委員 私は、地域での創業をふやしていくことは、職住近接を進めることにつながり、通勤ラッシュの緩和だけでなく、仕事と子育てや介護の両立という面でも有効ですし、防災対策の面でも、震災時の帰宅困難者を生まないといった面で望ましいと考えています。ぜひ、この新しい事業を活用して、多くのコミュニティビジネスを生み出していただくよう要望して、次の質問に移ります。
 次に、雇用就業支援について伺います。
 多くの方が安定した仕事を得たいと思っていても、高齢者、若年層、女性、障害者などは厳しい状況にあります。とりわけ高齢者については、六十歳で定年になっても六十五歳までの年金支給までの暮らしが厳しいため、雇用延長も必要と考えます。
 高齢者雇用安定法が改正され、昨年四月から、六十五歳までの希望者全員の雇用確保措置が義務づけられましたが、企業の対応状況はどうなっているのでしょうか。
 また、法改正に対応して、都としてどのような取り組みを行っているのか伺います。

○矢田部雇用就業部長 東京労働局は、管内の企業約二万五千社について、改正法施行から二カ月が経過した平成二十五年六月一日時点での高齢者の雇用状況について集計いたしました。その集計結果では、高年齢者雇用確保措置を既に実施した企業の割合は約九二%となっております。
 都では、セミナーや啓発資料の配布などを通じ、労使双方に対し改正法の周知を図っております。

○中村委員 多くの企業で雇用延長に向けての対応をしているようですが、正社員として継続して働いてきた方などはその保護を受けられますが、非正規雇用であったりすると厳しい状況であり、介護などさまざまな事情で一度仕事をやめた方が再就職するのは難しい状況にあります。
 企業で継続雇用されなかった高齢者の中には、年金や貯金もなく、生活に困っている人たちもいます。また、六十五歳を超えても、経済的な理由から雇用されることを希望する人もいます。このため、高齢者の雇用の場をふやしていくことが重要と考えます。
 そのためにさまざまな取り組みが必要になりますが、都は来年度、新規に高齢者の職域開拓モデル事業を実施します。この事業の内容及び成果をどのように広めていくのか伺います。
 また、例えばどのようなものを想定しているのか、あわせて伺います。

○矢田部雇用就業部長 高齢者の職域開拓モデル事業は、高齢者が地域等で働くに当たって他のモデルとなるような企画について、事業主等から広く提案を募集し、その立ち上げに必要な経費の助成を行うとともに、その取り組み内容については、発表する場を設けるなどにより、広く発信してまいります。
 事業としては、既に事例のある高齢者によるコミュニティカフェなどが想定されますが、モデルとして、さらにふさわしい提案が出されることを期待しております。

○中村委員 高齢者の雇用拡大については、まずは企業に頑張ってもらうしかないのですが、大企業に比べて厳しい状況にある中小企業には、都も経営支援を通じて雇用の拡大と処遇の改善ができるよう取り組んでいただきたいと思います。
 一方、類を見ない急速な高齢社会を迎えるに当たり、お答えいただいた新規事業のような取り組みを行い、事業主を含めて社会全体に問題提起をして、新たな働き方が提案されることも大切だと思います。
 さて、来年度の新規事業では、従来から行っていたシルバー人材センターへの支援に新たな事業の予算が計上されています。シルバー人材センターは生きがい就労を行っていますが、最近では経済的理由で入会する人もふえていると聞きます。雇用を希望する人は雇用につなげ、シルバー人材センターは、本来の生きがい就労としての役割を果たしていくのが望ましいと思います。もちろん、シルバー人材センターには既に多くの会員がおり、会員拡大をすると同時に、会員の仕事をふやすことも大切です。
 そこで、雇用されることを希望する高齢者に対して、どのように支援していくのか伺います。
 また、シルバー人材センター会員の就業機会の拡大に向けてどのように取り組むのか、あわせて伺います。

○矢田部雇用就業部長 都では、雇用されることを希望する高齢者に対しては、東京しごとセンターにおきまして就業相談や職業紹介を行うほか、アクティブシニア就業支援センターにおいて身近な地域での雇用を希望する高齢者に対する就業相談や職業紹介を行っており、引き続き取り組んでまいります。
 また、シルバー人材センター会員の就業機会の拡大を図るため、都内のシルバー人材センターの事業活動を支援している東京しごと財団が、各センターと連携して、高齢者の見守りなど地域のニーズを踏まえた仕事の開拓を行えるよう支援することとしております。

○中村委員 シルバー人材センターの取り組みも重要ですが、その中で、雇用を望む方にはぜひとも希望に沿えるよう、取り組みを期待します。
 また、シルバー人材センターにおいても、地域にかかわることが少ない会社員からすれば、まだまだ知名度は高いとはいえませんが、高齢者全体が多いため、会員数は増加傾向にあるようです。せっかく会員になっても出番がないこともあるようですから、積極的な開拓を求めます。
 シルバー人材センターは、高齢者の居場所や出番をつくるといった点で、雇用と福祉の両方の機能を兼ね備えています。これまでとは社会が大きく異なっていく中で、高齢者の方がより積極的に活動するきっかけがつかめるよう、シルバー人材センターの多様な活動の展開を期待します。
 次に、仕事と介護の両立について伺います。
 ワークライフバランスがいわれて久しいのですが、最初のころは、保育園が足りない中で、子育てと仕事との両立が注目されましたが、昨今では、より深刻なのは介護と仕事との両立です。私もたびたびこの問題は質問として取り上げてきたのですが、これから高齢社会を迎えるに当たり、働き盛りの四十代、五十代の貴重な働き手が仕事をやめざるを得ないのは、本人の暮らしも厳しいのと同時に、生産年齢人口が減っていく中で、社会としても痛手になります。
 介護と仕事の両立は大変に重要な課題であると思いますが、都の取り組みについて伺います。

○矢田部雇用就業部長 労働者が、生き生きと働きながら介護など家庭における役割を果たすためには、仕事と家庭生活との両立が可能となる雇用環境を整備することが重要でございます。
 都は、仕事と、介護を含む家庭生活との両立について、すぐれた取り組みを進める中小企業を認定、公表し、社会的機運の醸成を図っております。
 また、両立支援を進める企業に対し、社内体制整備に必要な経費の助成などの支援を行っております。
 引き続き、こうした取り組みを進めるとともに、都内中小企業の仕事と介護との両立に関する実態を把握するなど、効果的な施策展開を図ってまいります。

○中村委員 ことし一月に、産業労働局が東京国際フォーラムで開催したワークライフバランスフェスタ東京二〇一四を見学しました。休暇取得や短時間労働を行うために業務を見直すことがかえって業績向上につながる事例もあり、先進的な企業に認定状が渡されました。仕事と介護の両立を個人だけの問題にしておいては決して解決しないので、社会全体で解決を図れるよう積極的な取り組みをお願いします。
 さて、最近、大手企業のベアが発表されましたが、中小企業への波及はまだこれからです。しかも非正規雇用への波及はまだまだという感じです。仮に非正規雇用の方の給料が上がったとしても、正規雇用の方に比べれば、その待遇は極めて不安定といえます。
 昨今、非正規雇用の割合が三割を超えていますが、この状況についての都の認識を伺います。
 また、非正規雇用の方を正規雇用へとすることや、非正規雇用にある者の雇用環境の改善に向けてどのように取り組んでいるのか、あわせて伺います。

○矢田部雇用就業部長 いわゆる非正規労働者が増加し、その雇用者に占める割合が三六・六%と過去最高を更新する中で、これら就業構造の変化などへの対応は重要な課題でございます。とりわけ、不安定雇用を余儀なくされている若者は数多く存在しており、このような若者に対する就業支援は重要でございます。
 都は、非正規雇用で働く若者の安定した雇用を実現するため、研修と派遣就労を組み合わせて正規雇用に結びつける取り組みを行うなど、さまざまな施策により就業を支援しております。
 また、非正規労働者の雇用環境改善に取り組む中小企業に専門家を派遣し、助言を行うなど、意欲的な企業を支援しております。

○中村委員 今定例会の民主党の代表質問で、知事も、働く人の三分の一が非正規雇用という現状は、尋常ではない、目指すべきは、希望に応じて正規雇用という働き方を選択し、実現できる社会と述べています。これは全く同感です。
 非正規雇用の割合が高い若い世代が安定した仕事と収入を得ることは少子化対策にもつながります。人が人らしく働き暮らすことができるよう、さらなる取り組みを求めて、質問を終わります。

○三宅委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時休憩

   午後五時十四分開議

○三宅委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○かんの委員 それでは、最初に、中小製造業グループによる取り組みに対する支援についてお伺いしたいと思います。
 先日の一般質問で、私は、都内で産業集積を確保することの重要性を訴えました。産業が集積するメリットの一つは、企業同士のネットワークが自然に形づくられ、お互いの発展のため、何か新しいことにチャレンジしようという取り組みが数多く生まれることにあります。
 中小企業が環境や医療などの成長分野への新規参入を図り、国内のみならず海外の需要も獲得できれば、飛躍的に発展することもできますが、ノウハウの蓄積に乏しい新たな事業分野で、中小企業がみずからの力だけでこれをなし遂げていくことは、並大抵のことではありません。
 それでも、個々の中小企業を見れば、都内には、超微細な加工技術やたくみのわざを引き継ぐへら絞りなど、世界に通用するすぐれた基盤技術を持つ企業が少なくありません。新たな製品開発に向けて、これらの企業がグループを組んで取り組めば、成長分野への参入を進める上で大変効果的であるといえます。
 都は来年度から、こうした取り組みを後押しするために、ものづくり企業グループ高度化支援事業を開始するとのことですが、この事業で具体的にどのような支援を実施していくのか、お伺いしたいと思います。

○十河商工部長 来年度から開始するものづくり企業グループ高度化支援事業では、中小企業がグループを組んで医療や環境、エネルギーなどの成長分野へ参入する取り組みを対象に、製品の開発や事業化、そのための生産設備の充実から海外への販路開拓に至るまで、継続的な支援を行ってまいります。
 具体的には、新製品の開発に要する試作品の材料費や量産化のための計測機器、工作機器の購入費、これら設備を設置する工場の賃借料などを助成いたします。
 また、国内外への販路開拓に向けた市場調査、展示会への出展や海外特許権出願費用等も対象とし、これらについて、最長三年間で五千万円を限度に必要経費の二分の一を助成いたします。
 あわせて、専門家による継続的なアドバイスを行い、グループによる取り組みの円滑な推進を支援してまいります。
 これらによりまして、中小企業グループによる成長分野への参入や海外展開への取り組みを促進し、都内製造業の競争力を着実に強化してまいります。

○かんの委員 今ご答弁にありましたように、ぜひ中小企業グループの取り組みの円滑な推進に効果的な支援をお願いいたします。
 それでは、次の質問に移ります。
 さて、都内産業の活性化に向けては、高い意欲と志を持つ人々の創業を促進する必要があり、日本再興戦略でも開業率の飛躍的な向上を目標に掲げています。
 都議会自民党は、その有効な方策として、女性や若者、そしてシニア層に注目し、それぞれが持ち味を生かして地域社会で起業を行う場合の資金確保を強力に後押しする、新たな創業支援制度を立ち上げるよう強く求めました。
 都が来年度開始する女性・若者・シニア創業サポート事業は、我が党の要望に応えた、資金供給を中心とした新たな支援の枠組みであり、その意欲的な取り組みについて高く評価するものであります。
 本日の委員会では、本会議と予算特別委員会での質疑を掘り下げ、支援の具体的な仕組みについて伺っていきたいと思います。
 まず、新事業の概要とその特徴についてお伺いしたいと思います。

○寺崎金融部長 本事業は、今後、創業の担い手として期待される女性や若者、シニア層を対象として、地域に根差した創業を数多く生み出すため、信用金庫や信用組合が、資金供給と経営サポートを組み合わせた新たな支援を行うものであります。
 都が、東京都信用金庫協会及び東京都信用組合協会に対して融資原資などを補助金として交付し、そのリスクを負担することで、信用金庫や信用組合が、有利な条件で創業資金を供給いたします。
 また、両協会が、創業支援の専門家による地域創業アドバイザーを新たに設置し、女性、若者、シニアの有する特性や、地域性、業態に応じた、きめ細やかな経営面からの支援を実施いたします。
 このように、本事業は、都からの補助金を活用し、協会が全体の調整役となりながら、信用金庫、信用組合、地域創業アドバイザーが相互に連携して、女性、若者、シニアの起業家を強力にサポートしていく点、資金供給と経営サポートを組み合わせて支援する点が特徴であり、今後十年間にわたって融資を実行するなど、長期的な視点から創業サポートを展開してまいります。

○かんの委員 創業者の多くは事業実績がなく、自己資金や担保も乏しいことから、金融機関からなかなか融資が受けにくいという現実があります。
 ご答弁にあったように、都が融資リスクを負担することで金融機関の背中を押してあげ、創業者への積極的な資金供給を促していくことは非常に大切だと考えますが、具体的にはどのような仕組みになるのでしょうか。新事業における資金供給の枠組みについてお伺いします。

○寺崎金融部長 本事業では、都が、東京都信用金庫協会、東京都信用組合協会に対して融資原資などの資金を交付し、両協会は、これを原資として創業サポートのための基金を設置いたします。この基金から、事業に参加する信用金庫、信用組合に資金を供給し、各金融機関は、それぞれの地域で新たな事業に取り組む有望な女性、若者、シニアの創業者に対して積極的な融資を行います。
 融資条件につきましては、固定金利で利率一%以内、返済期間十年以内、最長三年までの据え置きを可能とするなど、特に創業初期の返済負担を極力抑えた有利な内容とする予定でございます。
 融資実行後、借り受け者からの返済が予定どおり進めば、その資金は、新たな創業者に対する融資原資として活用いたします。一方、創業者の努力にもかかわらず事業が軌道に乗らず、返済ができない場合には、各協会の審査により、金融機関が適切な債権管理を行っていることを条件として、各金融機関の融資実行額の五割までは基金への資金の返済を免除できる仕組みとしております。
 こうした仕組みにより、金融機関が積極的な資金供給を行える環境を整えることで、女性、若者、シニア層による数多くの創業を支援することといたします。

○かんの委員 信用金庫や信用組合の各協会に基金をつくり、積極的にリスクマネーを供給していく、いわば小口ファンドのようなものと理解いたしました。これは思い切った施策と思います。一方で、金融機関がモラルハザードを起こさないよう、都の負担を五割までとしている点もよく工夫されていると思います。
 さて、この事業は、資金供給とともに経営面のサポートもあわせて提供するのが特徴とのことですが、特に起業間もない時期には、経営上の悩みや各種手続の知識不足などで足踏みする経営者が多いと聞いており、きめ細かなサポートが求められます。
 信用金庫、信用組合の中には、創業支援の実績が余りなく、自前の経営サポートだけでは不安だというところもあると思います。
 先ほどのご答弁にあったアドバイザーが鍵を握ると思いますが、新事業では、地域創業アドバイザーを具体的にどのように活用して創業者の経営をサポートしていくのか、お伺いしたいと思います。

○寺崎金融部長 創業者は、資金調達はもちろん、事業計画の策定や販路開拓、ネットワークづくりなど、さまざまな経営上の課題に直面しております。こうした課題を解決するため、金融機関と連携協力して効果的な支援を行う役割を担うのが地域創業アドバイザーでございます。
 地域創業アドバイザーは、創業者一人一人のニーズに応じた適切なサポートが行えるよう、都内各地域での創業支援に豊富な経験と実績を有する団体や、女性、若者、シニア層それぞれに特化した支援を行っている団体など、二十団体程度をめどに幅広く選定する予定でございます。
 金融機関は、支援する創業者のニーズに合った適切なアドバイザーを選択し、きめ細かな支援を実施いたします。
 こうした創業アドバイザーの手配や創業者とのマッチングなどを円滑に行うため、創業アドバイザーの統括団体を一団体選定し、協会や金融機関との調整を行うとともに、創業セミナーを実施するなど、多面的な経営サポートを行ってまいります。

○かんの委員 効果的な支援を行うためには、しっかりとしたアドバイザーが欠かせません。ぜひ、地域の創業の活性化に理解と意欲のある適切な団体を選んでいただくようお願いをいたします。
 新たな事業の具体的な内容について伺ってきましたが、地域に根差した創業を支援していくことは、地域社会が直面するさまざまな課題の解決や地域の活性化にもつながる重要な取り組みだと思います。
 今回、都が創設する制度は、地域の実情に最も精通した信用金庫、そして信用組合が創業アドバイザーと連携して、地域社会に潜在的に眠る人材やアイデアをうまく引き出し、その起業を後押ししていくという画期的な取り組みであり、私も、本事業が大きな成果を上げることを期待しています。
 来年度は約十億円の予算が計上されていますが、しっかりした支援を継続していくためには、今後も引き続き予算を確保し、各協会の基金を積み増すことも必要だと思います。
 都は、本事業を効果的に運用し、創業の促進に向けて積極的に取り組んでいただくよう要望して、次の質問に移ります。
 次に、女性の再就職支援について伺います。
 安倍政権では、女性の力を我が国最大の潜在力としております。女性の力を十分に発揮できるようにすることは、中小企業が人材を確保していく上で欠かせないものであり、社会全体の活力をもたらすことにもつながります。
 こうした認識のもと、我が党は、さきの代表質問で、子育てなどで離職した女性の活躍を促進するため、より踏み込んだ方策を打ち出すべきとの提案をいたしました。
 これに対し、都は、仕事と家庭を両立させながら働こうとする女性向けの専用相談窓口を、来年度、しごとセンターに開設することを明らかにしましたが、窓口の体制は具体的にどのようなものなのかをお伺いしたいと思います。

○矢田部雇用就業部長 出産等で退職した女性の再就職を支援するためには、育児をしながら就職活動ができるように十分配慮することが必要でございます。
 このため、都が来年度、東京しごとセンターに設置する専用相談窓口では、カウンセリングや家庭生活と両立しやすい仕事の紹介といった就職支援に加え、区市町村等の関係機関と連携し、子育て支援のサービスに関する情報についてもワンストップで提供いたします。
 また、しごとセンターで以前より提供しています託児サービスに加え、新たな窓口では子供が遊べるキッズコーナーを設けるなど、子供連れの女性が安心して来所し、相談等のサービスが受けられる環境を整備いたします。
 こうした対応により、子育て中の女性の就職活動を的確にサポートしてまいります。

○かんの委員 ぜひともしっかりとした窓口の体制をつくっていただいて、女性の再就職を積極的にサポートしてもらいたいと思っております。
 都は、しごとセンターにおける支援のほかにも、都内の各地域で女性向けの再就職支援セミナーを実施しています。再就職を希望している子育て中の女性が、気軽に、無理なく、身近な地域でもセミナーが受講できることは重要と考えます。
 さきの本会議において、都からは、こうした身近な地域における支援を充実するとの答弁がありましたが、来年度の具体的な取り組み内容をお伺いしたいと思います。

○矢田部雇用就業部長 子供がいるために活動できる範囲等に制約がある女性の再就職を促進するためには、身近な地域で就職支援のサービスを提供することが重要でございます。
 このため都は、都内各地域で地元の自治体と連携して、就職活動のノウハウを提供する女性再就職支援セミナーについて、今年度の九回、合計三百九十名規模から、来年度は十一回、合計五百五十名規模に拡大して実施いたします。
 また、女性の再就職に向け、講義と職場体験を組み合わせ、飯田橋と国分寺の二カ所で実施しています女性再就職サポートプログラムにつきましては、従来の取り組みに加え、利便性の高い主要駅周辺等において、六回、合計百五十名規模で開催する地域型再就職サポートプログラムを新たに行います。
 今後とも、子育て中の女性に向けて、身近な地域における支援メニューの充実を図り、女性の再就職を促進してまいります。

○かんの委員 女性の潜在力を引き出し、その活躍を促進することは重要であります。今後とも、働くことを希望している子育て中の女性に対して、個々のニーズに応じたきめ細かい支援を行い、就職につなげていただくことを要望しておきます。
 最後に、ロケーションツーリズムを活用した、地域の観光振興についてお伺いいたします。
 旅行者を呼び込む上で注目すべきは、映画やテレビドラマなどの映像の発信力だと思います。この映像の力を活用して、伝統、文化、食、サブカルチャー、そして多摩や島しょの自然など、東京のさまざまな地域の魅力をPRすることも、観光振興の一つの方法ではないでしょうか。
 東京には映画会社やテレビ局、ドラマの制作会社などが数多く集まっており、都内では盛んにロケが行われています。
 昨年公開されたハリウッド映画「ウルヴァリンSAMURAI」では、日本でロケが行われたことが話題になりました。私の地元、港区の増上寺でも大規模な撮影が行われ、世界の人々にその映像が届いたものと思います。
 こうしたロケ地を目当てに旅行を楽しむ人々も少なくないと聞いています。昨年ヒットしたNHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」のロケ地の観光客数は倍増となり、その経済効果は三十二億円もあったということです。
 そこで、映画やテレビドラマなどの映像をもっと活用して、地域に旅行者をもっと呼び込んでいくべきと考えますが、都の所見をお伺いしたいと思います。

○杉崎観光部長 映画やテレビドラマの舞台となるロケ地は、多くの旅行者が足を運ぶきっかけとなる重要な観光資源でございます。
 このため都は、ロケ撮影に必要な情報提供や関係機関との調整を行うなど、撮影が円滑に進むよう支援することにより、ロケ撮影の積極的な誘致に取り組んでおります。
 また、ロケ地めぐりの魅力を多くの旅行者に伝えるため、来年度は、都内のロケ地情報やその周辺の観光情報をスマートフォンなどの携帯情報端末によって手軽に入手できるアプリケーションを新たに開発することで、発信力を高めてまいります。
 こうした取り組みを通じて、ロケ地を拠点とした都内観光を振興し、地域への旅行者誘致を図ってまいります。

○かんの委員 ただいまのご答弁からも、都がこれまでもロケ撮影の積極的な誘致に取り組んできたことがわかりました。
 そこで、そうしたロケ地を重要な観光資産と位置づけて、さまざまな手法により、国内外に広くその情報を発信していただいて、映画や人気ドラマで見たあの場所に行ってみたい、また、あのすてきな店で主人公のようにおしゃれに過ごしたいなどと憧れている人たちをもっと集めるというか、もっとこの東京に訪れていただけるように取り組んでいただければと思います。
 昔、私が子供のころというか、小中学校のころは、フランス映画とかも結構盛んだったんですが、そのころの映画を見て、結構フランスとかパリの町に憧れたりしたこともありますし、昔でいうと「ローマの休日」なんていうのを見まして、ローマに旅行した人は、真実の口なんかに手を入れたり、スペイン広場でジェラートを買ったり、まねをしたような記憶もあるのかもしれませんが、何か東京を舞台にした、そういった名所をもっともっと主人公にしたような映画なんか、ドラマなんかももっとできるといいなというふうに感じている次第でありますが、これからもっと地域や商店街、企業やさまざまな団体とも連携して、どうぞこの取り組みを一層進めていただくことを要望して、私の質問といたします。

○栗林委員 初めに、女性の再就職支援事業について伺います。
 ただいま、かんの委員からもご質疑がありましたけれども、私の方から、ちょっと別の角度から伺わせていただきたいと思います。
 国の経済成長戦略の柱の一つに女性の活用強化が挙げられる中、なでしこ戦略ともいわれ、二〇一七年までに保育所待機児童解消や育休三年の導入など働く女性の環境を整えることや、また、企業などで女性役員の比率三割などの数値目標も示されるなど、積極的に取り組むことになりました。新聞各紙でも、女性を元気にといった新しいページの企画や、企業なども、なでしこ銘柄と銘打ち、取り組みも始まっています。そうした背景から、女性の仕事への復帰に向けたモチベーションも高まってきているかと思います。
 そのような背景からも、女性の再就職支援事業は重要であります。中でも、子育てをしながら就職活動へ一歩踏み出そうとする女性に対し、支援が必要であります。保育園は就労が決まってからでないと申し込みができないんですね。求職中はできません。そういうことから、子供を連れてでも準備ができる環境を支援する必要があると考えます。
 今までも、我が党は、高い能力を持ちながらも仕事につくことができない子育て中の女性の仕事探しを支援するよう求めてまいりました。このたび、都が、専用の相談窓口を東京しごとセンターに設置するなど女性の再就職支援を強化することは、高く評価したいと思います。
 都はこれまで、就職活動のノウハウを提供する女性再就職支援セミナーを実施してきましたが、一方で、働く意欲はありながらも、育児をしながらの就職活動に不安を抱き、具体的な行動への第一歩を踏み出せない女性も多いのではないでしょうか。こうした女性が、育児をしながら就職活動にスタートを切れるよう応援をすべきです。
 都は来年度、女性向けのセミナーを充実すると聞いています。育児中の女性が就職活動に踏み出しやすいよう工夫を凝らしていただきたいと思いますが、どのような内容になっていくのか伺います。

○矢田部雇用就業部長 働く意欲がありながらも就職活動に踏み出すことをちゅうちょする育児中の女性に対して、必要な情報を提供し、その背中を押すことは有効でございます。
 このため都は、これまで実施してきた女性再就職支援セミナーに加えて、来年度から、新たに子育て女性向けセミナーを年間六回、合計百二十名規模で開催いたします。
 このセミナーは、就職活動と保育施設への入所に関する情報をあわせて提供するもので、その内容は、就職に当たっての心構えのほか、保育施設の確保と就職活動の両立方法などを想定しています。
 また、子供と一緒に参加しながら、同じ立場の参加者同士が交流を図れる形とすることで、育児中の就職活動に向けた意識も高めていきます。
 こうした取り組みを通じて、働く意欲を持つ子育て中の女性に対して、具体的な就職活動をスタートするためのサポートを行ってまいります。

○栗林委員 大変心強いと思います。今までは就労と保育園の入園体制は別々でしたので、一人であっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら情報を集めてこなければいけない。今度はこういった体制を強化していただくことによって、保育施設の情報等も、基礎的、基本的な情報はここでも入手ができるということになりますので、大変、就職活動に大きな励みにもなり、支えにもなっていくのではないかと思います。
 再就職支援に対する女性の多様なニーズを捉え、さまざまなセミナーを展開することは非常に効果的であります。今後とも、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
 また、子育て女性向けセミナーはもとより、さらに一歩進んだ女性再就職支援セミナーを受講しても、それが実際の就職活動につながっていかなければ、これは意味がありません。セミナーを受講したら、次のステップとして、新たに設けるしごとセンターの相談窓口に誘導していただき、具体的な就職活動につなげていく必要があると考えますが、その辺のところの考え、都の所見を伺います。

○矢田部雇用就業部長 女性の再就職支援をより効果的に進める観点から、来年度は、女性再就職支援セミナーの受講者のうち希望する方に対して、同じ会場内で個別相談に応じることにより、その後の具体的な就職活動につなげていきます。
 この個別相談では、個々の女性に応じたきめ細かなカウンセリングを実施し、就職活動を進めていく上での課題整理や求人情報の探し方など、具体的な行動に向けたアドバイスを行います。あわせて、その場でしごとセンターの利用登録を受け付けることにより、継続的な支援につなげていきます。
 こうした取り組みにより、セミナーを受講した女性を具体的な就職活動につなげ、再就職を促進してまいります。

○栗林委員 今、部長からいただいたご答弁で、子供を持つ女性の再就職の推進に向けて、きめ細かく対応していくということがわかりました。今後も、個々のニーズに応じた支援を積極的に行っていくことにより、女性の活躍を応援していただきたいと思います。東京都は、女性の活躍応援都市東京をぜひ構築していただきたいと思います。
 続きまして、若者の就業支援について伺います。
 昨日の日本経済新聞に、二〇一五年春の採用計画調査のまとめが発表されていました。企業業績の回復を背景に、特に製造業の大卒採用が一四年春に比べて一三・四%増と、三年ぶりに二桁の伸びとなったということでございました。また、非製造業も小売や金融の伸び率が高く、大卒全体で一五・二%増と、リーマンショック前の水準に迫ってきているとのことでございました。少し期待ができる状況になってきております。
 しかしながら、リーマンショック後の、景気が悪化した時期に卒業を迎えた若者の中には、いまだアルバイトなど非正規雇用を余儀なくされている方も多いと思います。このまま年齢を重ねると正規雇用への転換がより一層困難になることから、早急な対応が求められます。
 我が党はこれまで、さまざまな場面で若者の不安定就労の問題を指摘し、支援の充実を求めてまいりました。既にしごとセンターにおける各種の就職支援事業などが実施されていますけれども、これに加えて、都が来年度から、卒業後も不安定な就労を続ける若者の正規雇用化に向け、若者就職応援基金事業により重点的な支援を行うことは大変意義のあるものと考えております。
 この事業では、実践的な職場実習により、正社員としての就職を促すということになっており、職場実習をいかに効果的に実施できるかが重要です。しかし、なれない環境における実習に不安を覚える若者も多いと思います。実習を効果的に行うには、若者に寄り添い、サポートする人が必要だと思いますが、都の見解を伺います。

○矢田部雇用就業部長 若者就職応援基金事業は、ビジネスマナー等を内容としたセミナーと二十日間程度の企業内実習を組み合わせたプログラムを提供することにより、正規雇用化に向けた支援を行うものでございます。
 実習期間中の若者を支援するため、ジョブリーダーという専門相談員を配置し、効果的な実習が行われるようフォローアップを行います。
 具体的には、実習先となる中小企業を定期的に訪問し、職場実習の進捗状況を確認するとともに、実習中に不安や悩みを抱える若者からの相談に対応いたします。
 こうした取り組みを通じて、若者の安定的な就業に向けた支援を行ってまいります。

○栗林委員 多少の困難があっても、支えていただくことが、支えてくれる人がいるということから、挫折をすることなく継続できる環境になるのではないかと思います。ただいまの答弁の若者の支援については、大変重要と思います。
 また一方で、採用したいという意欲があっても、若者の受け入れに対するノウハウが乏しく、育成体制が十分でない企業もあると思います。
 そこで、ジョブリーダーには、若者への支援と同時に、受け入れ体制づくりをサポートするなど中小企業に対してもきめ細かい対応が求められると考えますが、どうでしょうか。

○矢田部雇用就業部長 本事業を効果的に実施するためには、若者を受け入れる中小企業に対するきめ細かい支援も必要でございます。
 このため、十名程度を予定しているジョブリーダーには、若者の就職状況に詳しいキャリアカウンセラーに加え、企業の人事担当OB、社会保険労務士など人事労務管理に精通した専門家も配置いたします。
 また、ジョブリーダーが実習先を訪問した際には、実習計画の作成、人材育成の体制に関するアドバイスといった受け入れ企業の担当者に対する支援も行います。
 このように、若者と企業双方に積極的なアプローチを図ることにより、職場実習を効果的なものとし、就業に結びつけてまいります。

○栗林委員 まさに実習先から正規雇用につながるという、若者の安定した正規雇用につながるということと、受け入れした中小企業側も若手人材確保につながるという、まさに一石二鳥という体制ではないかと思います。
 今までのご答弁いただいた中で、この事業においてはジョブリーダーの役割が大変重要であり、ジョブリーダーが成功の鍵を握っていると思います。(「栗林さんがやったらいいんだよ」と呼ぶ者あり)そうですね、やりたいぐらいです。やりたいですね。
 戻ります。ジョブリーダーにはきめ細かい対応を行ってもらい、この事業を実効性あるものとなるよう、ぜひお願いしたいと思います。
 次に、高校生向けの、高校生に対する就労支援について伺います。
 高校生ももちろん大事ですが、私は、仕事というのは小さいころから意識を持つ、幼児期から仕事体験をする、木内委員の江東区の豊洲にもキッザニアという、幼児期から仕事体験ができる、こういう施設が注目をされたり、また、何年か前、七、八年前になりますでしょうか、「十三歳のハローワーク」っていう、村上龍さんが書かれた本も話題になりました。
 ちょうどこのときに、七、八年前かと思うんですが、私の地元、世田谷の中学校に、村上龍さんがゲストティーチャーとして出前授業でいらしてくださったんですね。中学校一、二年生が対象だったと思うんですけれども、仕事に対して熱く語られるその授業を聞いて、生徒たちがもう泣いちゃうんです、ぼろぼろと。ここでは、いい学校を出て、いい会社にいれば安心という時代は終わりました、人生は一度しかない、好きで好きでしようがないことを仕事にした方がいいと思いませんかというところから授業が始まったわけなんですけれども、やはりこのように働くことについて関心を持つことが重要だと思います。
 先ほど尾崎委員が、労働の知識とか権利知識とか、その法律を中学生から教えるべきだというお話がありましたが、私は、それよりもっと以前に、仕事に関心を持つ、つきたい仕事を見つける、その仕事につくためにどんな資格が必要なのか、そのためにはどういう勉強が必要なのか、そういった動機づけ、それがやはり必要なのではないかと思います。(発言する者あり)決してそれが必要じゃないというわけじゃございません。その先には、そういう知識も大事です。でも、まずはやりたいことを見つける、意欲を持つ、それが大事ではないかと思います。
 そういったことを背景にいたしまして、このたび、高校生に対する支援が始まると伺っています。若年者の就業支援という点では、学校卒業前の早い段階から仕事に対する意識を持ってもらうことも重要です。就職後三年間で会社をやめる若者が、大学卒業者で三割、高校卒業者に至っては四割という実態、働くことに対する理解が不十分なせいもあるのではないかと思います。
 都もこれまで、しごとセンターにおいて高校生を対象とした支援に取り組んできてくださいましたが、飯田橋まで来てもらうように高校生に働きかけるのは大変だと思います。支援を受けられる機会があるのに来ない生徒にこそ、就業に向けた意識啓発の機会をつくるべきと考えますが、都の取り組みについて伺います。

○矢田部雇用就業部長 高校生に対する就職支援については、学校現場がハローワークと連携して行うことが基本でございますが、東京しごとセンターにおきましても、高校生向け就職活動体験セミナーなどの支援を実施してきました。
 来年度は、都立高校の二年生を主な対象として、新たに就業意識啓発講座を実施いたします。この講座では、将来、就職した後、早期に離職してしまうことを防止する観点から、早い段階から、働くことの意義や職業選択について考えることで、その後の主体的な就職活動を促し、自分に合った就職先を選択できるよう意識の啓発を図ります。
 実施に当たりましては、希望する高校に講師を派遣し、授業の時間を活用して講座を開催いたします。規模は延べ五千六百人程度を予定しております。
 今後とも、学校現場と密接に連携を図りつつ、高校生に対する支援を適切に実施してまいります。

○栗林委員 高校生に対して、将来の就業に対する意識づけを行う取り組みは大変重要と考えます。今後ともしっかりと取り組んでいただくことを要望しておきます。
 また、近ごろの就活は、エントリーシートで何十社でも応募できるということから、試験、面接前で落ちてしまうという、一社に、百人ぐらい募集するところに一万、二万という応募が来て、そういったことを、三十社、五十社から断られてしまうと、自信を喪失したり、やる気を失うケースもあると聞いています。今後、こういうシステム改善に向けての動きもあるようですけれども、メンタル面もしっかりサポートをしていただくことも重要かと思いますので、あわせて要望させていただきます。
 それでは、最後に、仕事と介護の両立に関する調査について伺います。
 厚生労働省の平成二十五年調査によると、四十代、五十代で仕事と介護に不安と答えたのが、男性七二%、女性七七%とありました。毎年、全国では十万人が介護離職という報告もあり、対応が求められています。
 最近は、家族を介護する社員へのハラスメント--ケアハラスメントというそうです、ケアハラも起きてきており、制度が充実する一方で職場の風土が追いつかないという、制度と風土のギャップから生じているとも伺います。
 昨年十一月に我が党都議会公明党は高齢社会対策プロジェクトチームというものを立ち上げまして、私は、その一員として、介護と仕事の両立に関して先駆的な取り組みを行っている企業を視察いたしました。
 そのうちの一社である、リカちゃんとかプラレールなどの製造販売で知られているタカラトミーに行かせていただきました。ここでは、グループ社員にアンケートをとったところ、何と七割以上が今後介護にかかわる可能性があることが判明したそうです。そのため、役員、管理職、従業員のそれぞれを対象とした研修会の実施や、在宅勤務制度の導入も視野に入れて、そのトライアルにも取り組むなど、社員が介護に直面しても、仕事と両立し、安心して働ける職場づくりを進めていました。
 しかし、都内の中小企業では、こうしたすばらしい取り組みを実践している企業はまだまだ少ないのではないかと思います。多くの方が介護を抱えながら働き、また、介護を理由に退職する方も少なくない中、中小企業の現場で仕事と介護の両立を推進していくことが求められます。
 本会議の代表質問で、我が党の質問に対し、知事から、中小企業の仕事と介護との両立の実態を把握するための調査を実施するとの答弁がありました。
 改めて、この調査の狙いと内容について伺います。

○矢田部雇用就業部長 都はこれまでも、仕事と、介護を含む家庭生活との両立を推進するため、すぐれた取り組みを行う中小企業を認定、公表するとともに、中小企業の取り組みに対し助成を行ってまいりました。
 今後、高齢化が進展し、介護を必要とする方の増加が想定される中、仕事と介護の両立支援は一層重要な課題となってまいります。
 このため都は、都内中小企業の仕事と介護の両立に関する実態を調査し、より効果的な施策展開につなげてまいります。
 調査では、まず、都内の企業一万社とその従業員を対象としたアンケートを行い、その後、詳細なヒアリングを行います。企業へのアンケートでは、介護実態の把握状況や両立支援のための社内での取り組みなどを、また、従業員に対しては、介護の状況や企業の支援制度の利用状況などを調査する予定でございます。

○栗林委員 ぜひ、この実態調査を施策に反映していただけるようお願いしたいと思います。タカラトミーさんに伺ったときも、社員さんが本当に生き生きとされていて、不安感なく仕事に励んで、伸び伸びと仕事に励めるんですという、その環境が非常にあらわれていました。
 介護に直面して悩んでいる方は、本当に多くいらっしゃいます。今回実施する調査により、まずは中小企業の現場実態をしっかりと把握していただきまして、ぜひとも効果的な事業の構築に役立てていただきたいことを要望しておきます。
 東京都も、いきいき職場推進事業、また、東京ワークライフバランス認定企業等と、積極的に取り組んでいただいておりますけれども、文字どおり生き生きと仕事に取り組める環境整備に力を入れていただくことを要望し、質問を終わります。

○小松委員 私からも、若者の雇用対策について伺います。
 我が党はこれまで、若者が希望を持って働けるよう、中小企業に結びつける就業支援の重要性について繰り返し主張してまいりました。都もこれに応え、さまざまな施策を展開してきました。しかし、安定した職につくことを希望しつつもフリーターになっている若者というのは依然として多く、正規雇用化が引き続き課題となっております。
 このたび、都が新たに若者就職応援基金事業を立ち上げまして、セミナーや実践的な職場実習を通じて、不本意な働き方を続けている若者を重点的に支援することは、我が党がこれまで主張してきたものに沿ったものであり、その取り組みを評価したいと思っております。
 この事業を実施するに当たっては、やむを得なくアルバイトを続けている若者や、これまで余り若者を採用したことのない中小企業にもしっかりと活用されるよう、動機づけとなる仕組みを取り入れるべきだと考えますが、都の見解を伺います。

○矢田部雇用就業部長 若者就職応援基金事業では、卒業後三年を経過し、非正規雇用で働く二十代の若者を対象として、事前セミナーと二十日間程度の企業内実習を組み合わせたプログラムを提供することにより、正規雇用化に向けた支援を行います。
 企業内実習の期間中は、若者が実習に専念できるよう、日額五千円をキャリア習得奨励金として支給いたします。また、実習生を受け入れる企業に対しては、負担の軽減を図るため、日額六千円を受け入れ準備金として支給いたします。
 さらに、企業内実習の終了後に実習生を正社員として採用し、六カ月以上継続して雇用した企業に対しては、一人当たり十五万円を奨励金として支給し、採用のインセンティブといたします。
 こうした仕組みについて積極的にPRを図ることによりまして、若者と中小企業双方に本事業の活用を促し、若者の正規雇用化をさらに促進してまいります。

○小松委員 若者の未就業の課題というのは、現在職がなくて経済的に困窮するという一時的なことにとどまらないというふうに思っています。二十代、三十代のうちに習得しておくべき技術や体験しておくべき経験が積めないままに年齢が上がってしまいますと、四十代、五十代になって、さらにつける職種が限られていってしまうという負のスパイラルに陥るということこそが本質的な課題かと思っています。
 私たちの世代がちょうど就職活動をするころも、氷河期ということで、まだ職についていない同世代が数多くいますが、これから十年先、未就業のまま、例えば、先ほど栗林委員もいいましたが、介護というものが切実になってきたときに、親の介護すらもできないような状況になってしまう。例えば、親の介護を機にやめたとしても、技術があれば、また再就職も可能かもしれませんが、そうした問題も起こり得る長期的な課題だというふうに思っています。
 なので、一時的に手当てでしのぐということではなくて、ぜひ、この新たな支援事業の活用を促進していただいて、できるだけ多くの若者が安定した職につける、そして職業人として自立していけるよう、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 次に移ります。
 東京にはすぐれた中小企業が数多く存在し、若者の採用に積極的な会社も少なくありません。その一方で、こうした中小企業について十分に知らないまま就職活動を続けているという若者も多いのが現状です。
 都は今年度から、若者就活応援プロジェクトとして、民間就職情報サイトを活用した中小企業の求人情報等を発信する事業を実施しています。民間のノウハウを行政がうまく活用する有効な取り組みであり、私は、昨年十月の本委員会でも、このプロジェクトのさらなる拡充を要望いたしました。
 さきの本会議で、我が党の松田議員の方からも質問させていただきまして、局長からも、来年度は面接会の参加企業をふやしてマッチングの機会の拡大を図ると、そうした答弁をいただきました。その具体的な内容について、改めて伺います。

○矢田部雇用就業部長 若者就活応援プロジェクトでは、民間就職情報サイトにTOKYO JOB OREという愛称で都の特設ページを開設して、都内中小企業の情報を発信するとともに、サイト掲載企業が参加する合同就職面接会を開催しております。
 この面接会は、若者が直接企業と出会う場を設けることで、中小企業に対する理解を深め、就職につなげることを狙いとしております。今年度は八月と十月の二回開催し、合計百四十八社の中小企業が参加いたしました。来年度は参加規模を合計二百社にふやし、交流の機会を拡大いたします。
 また、若者が面接会をより効果的に利用できるよう、事前に、中小企業に対する理解や面接対策等を内容としたセミナーを動画で配信してまいります。
 こうした取り組みにより、若者と中小企業とのマッチングをさらに促進してまいります。

○小松委員 ただいま答弁いただいた取り組みにより、事業効果がより一層高まっていくことを期待したいと思います。
 ところで、若者就活応援プロジェクトは、民間の就職情報サイトを活用するということがポイントですが、サイトに掲載された中小企業の特徴や働く場としての魅力が、若者にきちんと伝わらなければ意味がありません。特に中小企業の場合は福利厚生や雇用条件面で非常に不利であります。仕事や会社のイメージも湧きにくいという課題もあろうかと思います。ゆえに若者が興味を抱かないということにつながって、なかなか就職が、採用がうまくいかないという現状もあります。
 そこで、最近の若者の就活ではスマートフォンがかなり浸透しておりまして、企業情報の収集や面接の予約などにも活用されています。今回のこの若者就活応援プロジェクトにおいても、スマートフォンで気軽に企業のさまざまな情報を見られるようにすることで、情報を的確に若者に届けていく必要があるかと思いますが、都の見解を伺います。

○矢田部雇用就業部長 若者就活応援プロジェクトに参加している中小企業について、若者の理解を深め、就職につなげていくためには、就職活動の実態に即した対応を図り、訴求力を高める必要がございます。
 このため都は、来年度、スマートフォン向けに、本プロジェクト用のアプリを新たに開発して提供いたします。このアプリにより、参加している中小企業の業務内容や実際に働いている社員の声、職場環境といった情報を容易に検索、閲覧できるようにいたします。
 こうした取り組みにより、働く場としての中小企業の魅力を若者に伝え、若者と中小企業とのマッチングを支援してまいります。

○小松委員 若者のこうした生活実態を踏まえることで、このプロジェクトへのアクセスがふえ、中小企業への理解も深まって、多くの若者の応募につながっていくことを期待したいと思います。
 先日、産経新聞の方に八王子市の取り組みが載っていまして、八王子は大学生が非常に多いんだけれども、地域で就職される方が一%しかいない。たくさんの中小企業が八王子にあるのに、なかなかうまくいかないということで、その場合は、メディアではなくて実際にライブで、いわゆる実際に中小企業の現場に足を運んでいくような取り組みをすることで、学生に中小企業の仕事の理解を高めてもらうというような取り組みが載っていました。
 実際、足を運ぶまでは中小企業で働くイメージが湧かなかったといっていた学生が、そうしたことを通じて、中小企業で働くことの魅力やおもしろさが伝わったということで、こうしたスマートフォンを活用していくということとあわせて、触れていけるような機会をつくることについても、少し、ぜひ積極的にご検討いただきたいなというふうに要望したいと思います。
 最後に、建設人材の育成について伺いたいと思います。
 さきの本会議の一般質問で、我が党の、かんの議員の方からも質問させていただきました。
 建設業は、人が生活し、経済活動が行われる大都市東京をハード面で支える重要な産業でございます。また、いうまでもなく我が国は災害大国であります。建設業の衰退というのは我が国の停滞につながりかねないわけでございます。行政がしっかりと支え、基幹産業として建設業をしっかりと育てていかなければならないというふうに私は考えております。
 しかし、老朽化したインフラの更新やマンションの建てかえ、大規模改修などの建設需要が今後急激に見込まれることから、これを担う人材の不足が問題となっております。
 先月の国会の方でも、福田昭夫衆議院議員の方が太田国交大臣にも質問されておりました。国も挙げて、こうした課題について今非常に危機感を持っているところでございます。ただ、おととしに比べますと、昨年のいわゆる工事の着工状況については悪くなっていないということはわかっているようなんですが、その実態を見ますと、どちらかというと、何とか建設業の業者の方々が、自分たちの利益を削りながら人の確保をしていることで何とか着工できているという状況が続いていて、これは長期的にできるわけではないだろうというふうな答弁があったようでございます。
 こうした状況を早く改善していかなければならないというふうに考えているところです。国も人材確保に向けて助成金制度などの対策をされているわけでございまして、こうしたこととあわせて、とりわけ建設工事の中核となる技能者の育成ということも必要かなというふうに考えています。
 熟練職人の高齢化と職人を目指す若者の減少ということが、現在の建設業界の人材不足の一因であるわけでございますが、これの理由の一つには、職人の方々の賃金というのが、やはり他の産業に比べて著しく低いということも現状であろうかと思います。
 厚生労働省の賃金構造基本統計調査等を見ますと、全産業に比べますと、建設業については七十万円、製造業から比べても平均の四十五万円ぐらい低いというような状況で、男性の平均年収で比較しておりますが、この建設業、長いデフレ下の中で、公共事業の削減の中でこうした状況に陥っているということでございます。
 こうやって若者がなかなか建設業につかないと、長期的に見ても非常に危機的な状況かなというふうに思っています。将来、建設業を支える人材が枯渇するということは、都市のインフラ整備にも多大な影響が出ると思います。
 こうした状況を踏まえて、都は建設人材の育成に積極的に取り組むべきと考えますが、見解を伺いたいと思います。

○戸澤事業推進担当部長 東京の産業を支える人材を育成するためには、地域産業のニーズに応えた職業訓練を実施することが重要であり、建設分野においては、職業能力開発センターに建築設備施工科や建築塗装科などを設置し、多くの即戦力となる人材を育成してまいりました。
 しかし、昨今、建設需要の急増を背景に、技能者が確保できず、建設工事に支障が出ている状況が見られます。
 このような実態を踏まえるとともに、今後のマンション建てかえや耐震化の動向を見据え、来年度より、大規模修繕工事やリフォーム工事の技能者、施工管理スタッフを育成するマンション改修施工科を開設いたします。
 また、建設現場での高いニーズに応えるため、型枠大工と鉄筋工の養成に向け、実践的な技能の習得を内容とする訓練コースを、業界団体と連携し、二百二十名規模で実施いたします。
 こうした取り組みにより、現場で求められる人材の育成に積極的に取り組んでまいります。

○小松委員 こうした建設業界の供給力不足をやはり補っていくためには、まずは今いった人材育成という長期的な投資と、さらには重機の購入という投資をしっかりと行っていけるような建設業の経営構造に改善していかなければいけないというふうに思っております。
 そうした環境をしっかりとつくっていくことを、あらゆる手段を講じていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

○三宅委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本案及び本件に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○三宅委員長 異議なしと認め、予算案、付託議案及び報告事項に対する質疑は終了いたしました。
 以上で産業労働局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後六時九分散会

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