経済・港湾委員会速記録第三号

平成二十四年三月十六日(金曜日)
第八委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十四名
委員長伊藤まさき君
副委員長山崎 一輝君
副委員長興津 秀憲君
理事高倉 良生君
理事伊藤 ゆう君
理事鈴木あきまさ君
三宅 正彦君
きたしろ勝彦君
神野 吉弘君
岡田眞理子君
佐藤 広典君
小磯 善彦君
清水ひで子君
木内 良明君

 欠席委員 なし

 出席説明員
産業労働局局長前田 信弘君
次長三枝 健二君
総務部長保坂 政彦君
産業企画担当部長矢田部裕文君
商工部長河内  豊君
金融部長寺崎 久明君
金融監理部長斎藤 真人君
金融支援担当部長十河 慎一君
観光部長横山 英樹君
農林水産部長津国 保夫君
安全安心・地産地消推進担当部長岩田  哲君
雇用就業部長穂岐山晴彦君
事業推進担当部長戸澤  互君
労働委員会事務局局長加藤 英夫君

本日の会議に付した事件
 意見書、決議について
 労働委員会事務局関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成二十四年度東京都一般会計予算中、歳出 労働委員会事務局所管分
付託議案の審査(質疑)
・第百三号議案 東京都労働委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
 産業労働局関係
予算の調査(質疑)
・第一号議案 平成二十四年度東京都一般会計予算中、歳出、繰越明許費、債務負担行為 産業労働局所管分
・第七号議案 平成二十四年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
・第八号議案 平成二十四年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
・第九号議案 平成二十四年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
付託議案の審査(質疑)
・第九十七号議案 東京都工場立地法地域準則条例の一部を改正する条例
・第九十八号議案 東京都森林整備加速化・林業再生基金条例の一部を改正する条例
・第九十九号議案 東京都森林整備地域活動支援基金条例の一部を改正する条例
・第百一号議案  東京海区漁業調整委員会委員及び東京都内水面漁場管理委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
報告事項(質疑)
・東京都産業振興基本戦略について
・東京農業振興プランについて
・第九次東京都職業能力開発計画について
・新銀行東京の「平成二十四年三月期第三・四半期決算」について
・新銀行東京の「中期経営計画(平成二十四年度~平成二十六年度)」について

○伊藤(ま)委員長 ただいまから経済・港湾委員会を開会いたします。
 初めに、意見書、決議について申し上げます。
 委員から、お手元配布のとおり、意見書一件、決議一件を提出したい旨の申し出がありました。
 お諮りいたします。
 本件については、取り扱いを理事会にご一任いただきたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤(ま)委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。

○伊藤(ま)委員長 次に、予算の調査について申し上げます。
 平成二十四年度予算は予算特別委員会に付託されておりますが、本委員会所管分について議長から調査依頼がありました。
 公文の写しはお手元に配布してあります。
 朗読は省略いたします。

平成二十四年三月十五日
東京都議会議長 中村 明彦
経済・港湾委員長 伊藤まさき殿
予算特別委員会付託議案の調査について(依頼)
 このことについて、三月十五日付けで予算特別委員長から調査依頼があったので、左記により貴委員会所管分について調査のうえ報告願います。
     記
1 調査範囲 別紙1のとおり
2 報告様式 別紙2のとおり
3 提出期限 三月二十二日(木)午後五時

(別紙1)
経済・港湾委員会
第一号議案 平成二十四年度東京都一般会計予算中
歳出
繰越明許費
債務負担行為 経済・港湾委員会所管分
第七号議案   平成二十四年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八号議案   平成二十四年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第九号議案   平成二十四年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十号議案   平成二十四年度東京都と場会計予算
第十八号議案  平成二十四年度東京都中央卸売市場会計予算
第二十号議案  平成二十四年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十一号議案 平成二十四年度東京都港湾事業会計予算

(別紙2省略)

○伊藤(ま)委員長 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、労働委員会事務局及び産業労働局関係の予算の調査及び付託議案の審査並びに産業労働局関係の報告事項に対する質疑を行います。
 これより労働委員会事務局関係に入ります。
 予算の調査及び付託議案の審査を行います。
 第一号議案、平成二十四年度東京都一般会計予算中、歳出、労働委員会事務局所管分及び第百三号議案を一括して議題といたします。
 本案については、いずれも既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤(ま)委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案に対する質疑は、いずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤(ま)委員長 異議なしと認め、本案に対する質疑はいずれも終了いたしました。
 以上で労働委員会事務局関係を終わります。

○伊藤(ま)委員長 これより産業労働局関係に入ります。
 予算の調査、付託議案の審査及び報告事項に対する質疑を行います。
 第一号議案、平成二十四年度東京都一般会計予算中、歳出、繰越明許費、債務負担行為、産業労働局所管分、第七号議案から第九号議案まで、第九十七号議案から第九十九号議案まで及び第百一号議案並びに報告事項、東京都産業振興基本戦略について外四件を一括して議題といたします。
 本案及び本件については、いずれも既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○保坂総務部長 去る二月二十一日及び三月五日の当委員会でご要求いただきました資料につきましてご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の経済・港湾委員会要求資料の表紙をおめくりください。
 目次でございます。資料は全部で三十二項目でございます。このうち、1から24までが付託議案に対する要求資料、25から32までが報告事項に対する要求資料でございます。
 一ページをお開きください。このページから三ページにかけまして、中小企業対策、農林水産対策、雇用就業対策の過去十年間の予算額、決算額の推移をそれぞれお示ししてございます。
 続いて、四ページから五ページにかけまして、統計データ、直近の平成十九年までの全国と東京の小規模小売店の推移をお示ししてございます。
 四ページが全国の推移、五ページが東京の推移でございます。
 六ページをお開きください。新・元気を出せ商店街事業における平成十六年度以降の実績を内容別にお示ししてございます。
 七ページをお開きください。特定施策推進型商店街事業申請状況について、平成十八年度以降の実績を内容別にお示ししてございます。
 八ページをお開きください。平成二十一年度から二十三年度までの商店街振興施策の利用状況を事業別にお示ししてございます。
 続いて、九ページから一〇ページにかけまして、過去十年間の中小企業制度融資の目標と実績の推移をお示ししてございます。
 一一ページをお開きください。景気対応緊急保証制度に係る区市町村の認定件数及び都制度融資(経営緊急)の実績をお示ししてございます。
 一二ページをお開きください。東京都が出資していたファンドの状況でございます。
 今年度中に清算が結了する三つの投資事業有限責任組合と一つの匿名組合についてお示ししてございます。
 続いて、一三ページから一七ページにかけまして、統計データ、直近の平成二十年までの製造業事業所数、従業者数、製造品出荷額及び付加価値額の推移をお示ししてございます。
 一三ページが全国と東京、一四ページから一七ページが区市町村別でございます。
 一八ページをお開きください。平成二十四年二月末時点の中小企業向け電力自給型経営促進支援事業の企業規模別実績をお示ししてございます。
 一九ページをお開きください。親会社が海外にある都内企業数の推移及び全国比をお示ししてございます。
 続いて、二〇ページから二一ページにかけまして、過去五年間の都立職業能力開発校の応募状況と職業紹介実績、就職率をお示ししてございます。
 二〇ページが応募状況、二一ページが職業紹介の実績及び就職率でございます。
 二二ページをお開きください。委託訓練の科目委託先の定員、応募状況、就職率の推移をお示ししてございます。
 二三ページをお開きください。統計データで、直近の平成十九年までの雇用形態別都内就業者数の推移をお示ししてございます。
 二四ページをお開きください。就労支援事業の「十年後の東京」の目標値と実績の推移をお示ししてございます。
 二五ページをお開きください。労働相談件数とあっせん件数の労働相談情報センターごとの推移及び労政会館ごとの利用者数をお示ししてございます。
 続いて、二六ページから二七ページにかけまして、過去十年間の区市町村別農地面積、農業産出額の年次別推移をお示ししてございます。
 二六ページが農地面積、二七ページが農業産出額でございます。
 二八ページをお開きください。過去十年間の新規就農相談実績と新規就農者数の推移をお示ししてございます。
 二九ページをお開きください。過去十年間の林産物生産額の推移をお示ししてございます。
 三〇ページをお開きください。過去十年間の援農ボランティア受講者数、認定数の推移をお示ししてございます。
 三一ページをお開きください。平成二十三年三月現在の市民農園の設置状況をお示ししてございます。
 続いて、三二ページから三三ページにかけまして、新銀行東京開業以降の月別融資件数・残高・返済額・不良債権額につきまして、平成十七年四月から平成二十三年十二月までの実績をお示ししてございます。
 続いて、三四ページから三五ページにかけまして、新銀行東京の開業以降の融資・保証実績で月別・メニュー別件数・金額につきまして、平成十七年四月から平成二十三年十二月までの実績をお示ししてございます。
 三六ページをお開きください。新銀行東京の開業以降の融資・保証実績で事業規模別の件数・金額(残高ベース)をお示ししてございます。
 続いて、三七ページから三八ページにかけまして、新銀行東京の開業以降の融資・保証実績で事業規模別の件数・金額(実行ベース)をお示ししてございます。
 三九ページをお開きください。新銀行東京の開業以降の債務超過企業・赤字企業への融資・保証実績をお示ししてございます。
 四〇ページをお開きください。新銀行東京の融資実行先における無担保・無保証融資の実績の推移でございます。
 平成十七年度から二十二年度までの各年度及び二十三年度の第三・四半期末までにおける無担保・無保証による融資の実行件数、実行金額をお示ししてございます。
 続いて、四一ページをお開きください。新銀行東京の有価証券残高とその内訳の推移でございます。
 平成十七年度から平成二十三年度第二・四半期までの有価証券残高とその内訳の推移をお示ししてございます。
 四二ページをお開きください。新銀行東京の中期経営計画におけるPLの内訳(詳細)をお示ししてございます。
 以上で要求資料の説明を終わらせていただきます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○伊藤(ま)委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本案及び本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○伊藤(ゆ)委員 それでは私の方から、未就職卒業者緊急就職サポート事業と、それから緊急雇用対策についてお伺いしたいと思います。
 連日、予算委員会で長時間の質疑にかかわられていると思います。大変お疲れのところかと思いますけれども、おつき合いをいただきたいと、できるだけコンパクトにきょうはまとめてまいりたいと思っていますので、お願いしたいと思います。
 まず、未就職卒業者緊急サポート事業ということで、卒業をしてもなお就職の決まっていない卒業生に対して手厚いマッチング事業をしていこうということで、東京都がこの事業を始められたことを私は高く評価をしていますし、非常に時代にかなったものだと思います。もちろん、こうした事業がなくても就職できるような産業振興もまた重要だと思いますけれども、今の時代においては、こうした取り組みが非常に必要不可欠となっていると思います。
 この事業は四カ月間のスキームで、まず一カ月目に、学生、卒業生の子たちを集めて、基本的なビジネスマナーを身につけてもらうというものであります。二カ月目から三カ月間、希望する中小企業を中心とした企業にインターンのような形で、週五回ぐらいということですからインターンという以上に勤務をしてもらって、それに対するお給料も東京都が支払うというような仕組みになっているというふうに伺っていますので、都合四カ月の間にマナーを身につけ企業とのマッチングを図るという意味では、企業にとっても学生にとっても非常に使い勝手のいい仕組みではないかというふうに私は高く評価をしているところでございます。
 それで、もう第一期、第二期、第三期と期を分けてやられているようですけれども、既に受け入れた企業からのこの事業に対する評価、評判というものはどんなものなのか、まずお伺いしたいと思います。

○穂岐山雇用就業部長 本事業では、年間を三期に分けまして、合計二百八十九社の企業が参加者を受け入れてございます。
 各期ごとに実施いたしました受け入れ企業からのアンケートでは、人材を見きわめて採用を決められるのは大変によかった、採用活動にお金と時間をかけられない中小企業にとっては魅力的、勤務する上で最低限の基礎知識を持っていて即戦力になったなどの本事業を評価する意見が多い一方、研修で就職したい企業の専門分野についての内容を取り入れるなど研修内容には検討の余地がある、参加者に働くことの意識づけが不足しているなどの意見も寄せられたところでございます。

○伊藤(ゆ)委員 今お話にあったように、大変評判のいい事業である一方で、課題も見えてきたというところだと思います。
 私は、知り合いにメッキ工場を大田区で経営をしている中小企業の経営者がおりまして、こういう不景気のときこそ、大企業に流れていた優秀な人材を取り込むチャンスだというふうに位置づけて、彼も、ふだんは採らない新卒者を去年は十人とか二十人の単位で採ったというふうにいっていました。
 そういう意味では、業績を伸ばしている中小企業にとっては、本当に優秀な卒業生、しかし向こうからすれば、なかなか中小企業の実態が見えなくて、就職できないというような状況がある中で、こういうミスマッチを解消することは非常に重要だというふうに思います。
 知事のきのう、おとといの答弁の中にも、中小企業は玉石混交で、本当に宝のような企業に対しては手厚く支援をしていくべきだというような旨の答弁もございましたので、私は、二百八十九社の企業が参加してくれたことは大変すばらしいことだと思いますけれども、同時に、待ちの姿勢じゃなくて本当に積極的に、東京都の側も、伸ばしていきたい企業にこの事業に参加してもらって、やはりいい中小企業に研修を行ってもらえるような働きかけをぜひ積極的にしていただきたいと思います。
 この事業では、当初の予算においては七百五十人の卒業生を対象に十五億円の予算が割かれていまして、先般のこの委員会でも、一人当たりにすると二百万円という経費がかかりますので、これはちょっと高過ぎるんじゃないかということを指摘させていただきました。
 予算執行段階においては大幅に圧縮をするように求めてまいりましたが、局にお伺いしましたところ、これまでの執行状況からいきますと一人当たり百五万円になったということで、予算額に対して半分近くまで経費を落とすことができたということも、私、評価をしたいというふうに思います。
 もっとも、七百五十人をこれで一気に千四百人に対象を拡大するには、局のマンパワーとしてまだまだ十分じゃない部分があるということを伺っていますので、予算を圧縮したからといって事業規模を倍にはできないかもしれません。しかし、卒業して就職できない学生の数が七百五十人ということは到底あり得ませんで、本当に数万人の規模で、今こうした就職できない学生の子たちがいますので、経費を切り詰めながらも、ぜひ卒業生の対象人員というものを拡大していただきたい、こう思っています。
 同時に、これは工事などと違いまして、いわゆる積算単価の見積もりというのが東京都にとっても非常に難しいところはあるというふうに思います。工事であれば資材費の標準単価表みたいなものが国からも示されて、それに基づいて積算をすることができるかと思いますけれども、こうした委託事業におきましては、有名ないわゆる人材派遣会社などが中心となって業務を引き受けております。
 実際に、どれぐらいのお金がどういうことにかかったのかということを、先日、局の方に見せていただきました。例えば、一人当たりということですけれども、百五万円かかっている中で、まず一カ月目の研修を中心とした教員に対する費用というのが、一人当たりにすると十七万円程度と。
 これは二カ月目、三カ月目も時々そういう教員の方に見てもらわなきゃいけないということもあって、そういうことになっていると思いますが、一人十七万円ですから、十人分にすると百七十万円と。一カ月目の研修というのはかなり手厚いものだと聞いていますけれども、一人十七万円、研修費の教員に対する費用がかかっているというのは、まだちょっと高いんじゃないかなと、私は、自分の感覚的にはそう思います。
 また、教材も見せていただきました。教習所のような手厚い教材になっておりまして、中にはエクセルの使い方とかワードの使い方というようなもので、五、六冊組のものとかDVDがセットになっているものでありまして、定価を見ますと、裏に、市販されているものだと思うんですが、千円とか二千円ということで、足し上げると大体一万円。
 ところが、教材費ということで、いわゆる委託業者が報告をしてきている金額というのは二万円ということです。すなわち一万円の差が生じている。これは開発費とか、あるいは独自に作成した教材費というような説明はいただきましたけれども、細かいことなんですが、本当にこうしたマッチング事業を拡大していくためには、厳正な積算というものが都に求められているというふうに私は思います。
 そういう意味で、なかなか比較対象にできる事業というものがこれまで都の中にもなかったと思いますので、今回の経験を踏まえて、より一層厳正な目を向け、積算を行う必要があるというふうに思います。厳正な積算への決意というものをお伺いしたいと思います。

○穂岐山雇用就業部長 本事業の経費につきましては、入札予定価格の見積もりに際しまして、東京都契約事務規則に基づきまして、他自治体の類似事業や市場の動向等を十分に調査した上で積算したものでございます。
 また、契約に当たりましては指名競争入札を実施し、複数事業者の中から、教材費も含めた入札金額の総額が最も低い価格を提示した者を受託事業者として決定いたしました。
 今後とも東京都契約事務規則等に基づきまして、積算も含め、適正な契約手続や事業運営を行ってまいります。

○伊藤(ゆ)委員 ぜひ努めて、そのようにお願いをしたいと思います。
 入札があるので、市場原理に照らせば妥当価格というものが当然見えてくるというのが本来でありますけれども、しかし、応札できる企業の数というのが、これだけの規模の事業になってくるとそう多くもございません。
 そういう意味では、東京都のつける予定価格というものが、ある意味では市場価格に物すごく大きな影響を与えますので、厳正な積算というものをぜひお願いをしたいと思います。
 次に、緊急雇用対策についてお伺いしたいと思います。
 昨今の景気悪化を受けまして、政府は緊急雇用創出事業を打ち出しております。平成二十三年度においても第三次補正予算で二千億円規模の予算をつけるなど、その事業規模は拡大の一途をたどっているわけでありまして、多くの雇用を同時に創出してきました。
 そこで、現在までに都が国から受けた交付金額というのは、年度ごとに幾らになっているのか、お伺いしたいと思います。

○戸澤事業推進担当部長 これまで都に交付された各年度の緊急雇用創出事業臨時特例交付金の額は、平成二十年度に七十七億三千万円、平成二十一年度に百九十六億六千万円、平成二十二年度に九十四億一千万円がそれぞれ交付されておりまして、平成二十三年度の交付額は、内示額を含めまして八十六億八千万円となる予定でございます。

○伊藤(ゆ)委員 今、答弁にあったとおり、年間百億円から大体二百億円ぐらいの規模で雇用創出のための交付金というものが国から東京都におりてまいります。
 その振り分けを先日教えていただきましたけれども、東京都が直轄で雇用創出をする事業と、それから、それをさらに都から市区町村におろして、市区町村に雇用創出してもらう事業と二つあるということで、都の直轄事業は約三十六億二千三百万円、市区町村の事業が昨年度ベースだと七十四億六千四百万円と、こういうことであるというふうに理解をしております。
 その中で、都の直轄事業としてどういう事業に割り当てられているのかお伺いをしたところ、例えば都が実施した事業の中には、事務作業とか清掃、データ入力、調査業務などというのが挙げられていて、具体的には、所蔵資料の撮影やスキャニングなんかを行ったり、所蔵資料にICタグをつけるなど、また不法投棄物などの清掃とか草刈りとか、そういうことをやると、こういうことでございました。ということで、比較的単純な作業が多いわけでございます。
 雇用情勢の動向に応じて実施される緊急雇用創出事業の性格からすれば、短期に単発で発注されるために、こうした単純な作業が発注されることはうなずけます。しかしながら、こうした緊急雇用創出事業というものが長期的な雇用に結びつかない限り、本当に安定した労働環境というものは、私は生まれないものというふうに思います。
 多くの労働者も、日雇い的な労働から、できることなら正規社員としての労働を望んでいるということは疑うまでもなく、そうした労働環境をつくらなければならないと私も確信しているんですが、平成二十二年度までのこの緊急雇用創出事業において、正社員化された事例というのは果たしてあるんでしょうか、お伺いしたいと思います。

○戸澤事業推進担当部長 緊急雇用創出事業に従事した後に、受託先の企業に正社員として雇用された事例でございますけれども、保育士の資格を有する者が保育施設運営の受託企業に正社員として雇用されたケースや、警備員が不法投棄防止のパトロールの受託企業に正社員として雇用されたケースがございます。

○伊藤(ゆ)委員 私が説明として伺った中でいえば、この二つなんですよね。つまり、これは代表的なケースではなくて、この二つのケースだけが確認をされておりまして、基本的には単発の事業ということで、長期雇用として、それが正社員として認められた例というのは、これ以外に、少なくとも東京都は把握していないと、こういうことでよろしいですね。
 ということで、平成二十二年度までにおよそ四百億円以上の雇用創出のための交付金を受け、またこれを支出しながら、残念ながら、正社員化された例というのは認められる範囲で二例だけということであります。
 これは、同時に市区町村にとっても重たい課題だというふうに思っていまして、例えば、去年のベースでいえば七十四億円もの交付金というものを市区町村は受けとめ、それを事業に転換して、事業の二分の一が新規雇用者に対する人件費でなければいけないと、こういう定めになっておりますので、そうした事業を創出しなければなりません。しかし、毎年来る予算でもありませんので、いってみれば急ごしらえでこうした事業を創出することは、市区町村にとっても大変な作業だというふうに思います。
 私はどうしても、そうなれば単純作業、役所にとって、いつかやりたいと思っていた調査事業とか、あるいは清掃事業というものにやはり回りやすくて、本当はもっと経済効果の生まれるような事業に割り当てられればいいものというのはたくさんあるにもかかわらず、残念ながら、それらが日の目を見ないというようなことになっているのではないかというふうに私は思っています。
 ちなみに、一昨年だったと思いますけれども、私は、この緊急雇用対策事業の中で特に目をつけさせていただいた、アニメーションをつくって東京都の観光をPRするという、予算規模で六千万円ぐらいのものがございまして、それを問題提起というか、この場で披露させていただきました。これは非常にいい試みだと思っていまして、単純作業というだけではなくて、今、特に正社員化されないアニメのクリエーターの人たちに、お給料の形でお金を振り向けていこうと、こういう試みで始められたんだというふうに思います。
 ただし、そうしたアニメーションの制作会社、私の知り合いに聞いたところ、五千万円ものアニメ制作の仕事というのは、この時代、なかなかないので、大変おいしい仕事としてこれは大注目をされた一方で、たしか、そのアニメにかかわる四分の三の人たちについては新規雇用をしなきゃいけないという条件づけになっておりました。
 その四分の三の新規雇用、いきなりその辺のクリエーターを集めてきて五千万円もの大事な仕事をいきなりやらせるわけにいかないので、極端なことをいえば、お茶くみとか肩もみとか、それで人だけ集めておいて、自分の会社の正社員だけ使っちゃうと。こういうことがあり得るかもしれないなという指摘を受けまして、そのことも、先般ここでお話しさせていただきました。
 その後どうなったんですかということをお伺いしましたところ、五千万円で受注した企業が八十一人のクリエーターというものを新規採用しましてこの事業に当たられたということで、現にアニメをつくる仕事にも従事をされたというふうに伺っています。そのことは高く評価をしたいというふうに思っております。
 すなわち、単純作業だけではなくて、産業育成につながるような緊急雇用創出事業というものを、知恵を絞って考えていく必要があると私は思います。ただし、そのときにも、実はそのアニメ会社の方からいわれたんですが、何十人も雇うのであれば、例えばその委託事業が終わった後、半年とか一年間ぐらい、一人でも二人でも正社員化するとか、あるいは継続雇用するということが条件にもしなっていれば、いきなり四十人とか五十人とかをそのアニメ会社も採用するわけですから、ただ単にお茶くみということで採用するのではなくて、本当に半年間雇わなきゃいけない人というものを厳選するための面接をするんじゃないかと、そういうお話もいただいて、なるほどというふうに思ったわけです。
 そこで、例えばなんですけれども、こうした委託事業が終了した後に半年は雇用を継続するように事業者に求めるなどの条件づけというのは、一人でも二人でもいいと思うんですが、できないものかと思うんですけれども、見解をお伺いしたいと思います。

○戸澤事業推進担当部長 緊急雇用創出事業は、国の要領によりますと、離職を余儀なくされた失業者に対して、次の雇用までの短期の雇用就業機会を創出、提供することを目的に実施するものでございます。
 結果として継続雇用につながることは望ましいことではございますけれども、本事業においては、国が定めた要件に加えまして、委託事業終了後にも継続して雇用することを義務づける、こういった条件を受託企業に課すことは、かえって事業実施の規模を縮小させ、短期の臨時的な雇用就業機会の減少を招くこととなるため、困難であるというふうに考えております。

○伊藤(ゆ)委員 全国で見れば、先ほどお話があったように、二千億円ものお金がこの緊急雇用創出事業に振り向けられています。全部を全部、正規雇用化することの条件づけをすることは困難だと思いますが、二千億あって、せめて、二人といわずに百人、二百人、あるいは千人と、正規雇用に結びつくような仕組みづくりというものをやっぱり考えるべきじゃないかと思いますし、これは国に対しても強く働きかける必要が私はあると思います。
 予特だったら、ここで局長の答弁をもらいたいところですけれども、ぜひ、局長、これ、国に働きかけをしていただいて、長期雇用に少しでもつながるような仕組みづくりというのを考えていただきますようにお願いをしたいというふうに思っています。
 そうした委託契約で条件がつけられないのであれば、安定的な仕事につくために都が支援していくことが重要だと思いますけれども、そうした都の取り組みについても伺っておきたいと思います。

○戸澤事業推進担当部長 都は、安定的な雇用を希望する方に対し、各職業能力開発センターにおける職業訓練を通じた能力の開発、向上や、東京しごとセンターにおけるキャリアカウンセリング等を通じたきめ細かい就業支援を実施しております。
 また、緊急雇用創出事業で雇用された方に対しては、これらの支援策をまとめたパンフレットに加えまして、就職面接会や就職活動に資するセミナー等の案内を区市町村や受託企業を通じて適宜配布するなど、きめ細かい情報提供を行うことにより、これらの積極的な活用を勧めているところでございます。
 こうした取り組みを通じ、緊急雇用創出事業に従事された方が安定的な雇用につながるよう、支援を行ってまいります。

○伊藤(ゆ)委員 お話のとおり、それはそれとしてやっていただきながら、ぜひ緊急雇用創出事業における知恵も出していただきたいと思います。
 それと最後に、これは要望として申し上げたいんですけれども、自家発電機の補助のための基金というものが、去年、震災を受けて緊急に創出されました。去年の事務事業質疑だったと思いますけれども、その執行率がわずか一%程度で、九十九億円も余ってしまっているということを指摘させていただきましたけれども、その中で、これだけ電力が、ある意味では火力で賄えるようになってきたというふうに理解をされている中で、なかなか自家発電機を導入する中小企業がふえていかないというのは仕方のないところかなと思います。
 実際に、今は燃料費が高いので、自家発電機を入れても、今の火力発電で賄われている電気代よりもさらに高くなるということでありまして、これは経済効果的にも、なかなか自家発電というものが思うに任せず、浸透していかないというふうに思っています。
 そういう中で、もうちょっと幅広く使えるようにしたらどうかということを提案させていただいて、その提案を受けとめていただきまして、先般、蓄電池も助成対象としていただきました。また、設置できる地域を拡大するというような見直しも実施されたということは、私は高く評価したいというふうに思っています。
 ただ、その助成対象の拡大を受けて、私の仲間から話を聞きましたら、実際に蓄電池を入れようと思って、今、研究しているそうです。ただ、やっぱり蓄電池を見ていきますと、彼が今買おうとしているのは、一個八百万円の蓄電池を三個ぐらい買って、補助の上限額が二千万円なので、その三分の二適用を受けようということで、今、研究しているみたいですけれども、八百万円の蓄電池というのは、聞いてみたら、パソコンのリチウムイオン電池をとにかく束ねたような代物でして、残念ながら、業務用のエアコンでいえば一時間でその電力を全部使い切ってしまうということですので、仮に二千万円かけて、要するに二千四百万で三つ買ったとしても、彼の工場を回すだけの電力は到底供給できないというようなことをいって、なるほど、そういうもんかというふうに思いました。
 ただ、私、どちらかというと、もうこれは自家発電を促進するとか賄う、あるいは工場の経営のための電力を賄うということよりも、ある意味では、日本が今一生懸命力を入れている蓄電池の開発を後押しするような基金の使われ方になってもいいのかなというふうに思っています。
 そうだとすると、これはあと九十何億円という金額があるわけですから、これが蓄電池であったり、あるいはそれらのものに使われるときに、投資的に使われるように工夫をしていったらいいというふうに思う、つまり、例えば日本のある大手企業の蓄電池においては、太陽光パネルとセットになっているというような蓄電池もございます。この制度に合わせて企業は商品を開発しているわけではないので、どちらかといえば蓄電池の商品に合わせてこの制度というものを柔軟に運用していただければ、日本の今開発をしている企業にとっても後押しになるというふうに思いますので、そうした研究というものもぜひ局の中で進めていただければというふうに思っております。
 そうしたことを要望いたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○鈴木委員 三日間の予算委員会の質疑、前田局長を初め産業労働局の皆さん、本当にお疲れさまでございました。東京の産業力を強化して中小企業を支援する、私ども都議会自民党、さまざまな質疑をさせていただきました。私どもの自民党はもちろんですけれども、公明党さんも民主党さんも、質問の中で、この東京の産業力を強化していく、随所にいい答弁があったというふうに思っております。
 しかしながら、質疑を聞いている中で、もう少し掘り下げて聞いてみたいと、ぜひいい答弁をいただいて、それをしっかりと施策実現してもらいたいと、そういうふうに思いまして、きょう何点か質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、今この日本経済を覆っている閉塞感、これを何とかしなきゃいけない。その原動力を東京が担わなければいけない。それは、やはり産業労働局にかかっているんじゃないかなというふうに、私は常々感じております。
 都民に対してさまざまなサービスを展開していく上でも、やはり東京からその力を発信していかなければいけない、つくっていかなければいけない、そんなふうに感じております。
 こういうような悲観論を、私どもが、何というんですか、肯定しているばかりでは、本当に日本は変わっていかないんだというふうに思っております。その裏づけとしても、日本は五百六十兆円もの対外資産や一千四百兆円の個人貯蓄を持って、また、高い技術力を持つ中小企業が多数立地する世界屈指の経済大国、産業立国であり、このまま低迷していくはずがないわけであります。
 日本が再び元気を取り戻すために、まず国がしっかりとこの長期戦略を示すべきなんですけれども、こういった悲観論がある今こそ、首都東京の産業を預かる、今も申し上げましたけれども、産業労働局、中長期を見据えた産業振興の基本的な考え方を示していくことは意義のあることでございます。「二〇二〇年の東京」というものをどういうふうにつくっていくのか。そこを目指して、東京都はこの東京都産業振興基本戦略、こういうものを示しているわけでございます。
 私も、昨年のこの委員会で、この基本戦略を改定するという答弁をもらいまして、素案が今完成をしてきたということは、この東京が成長戦略を示していくんだという意欲のあらわれだというふうに評価をしております。
 現在、日本経済を取り巻く環境は変化が激しく、先を見通すことがなかなか難しくなっておりますが、過去の変化だけではなくて、今後十年間の変化を可能な限り見通して、産業振興の方向性を示すことが重要であります。東京の成長戦略を示す、こうした視点を中心に、何点かこの基本戦略について質問をさせていただきます。
 まず、今後十年間を見通したとき、東京を取り巻く重要な変化として、グローバル化というのはあると思うんですけれども、高齢化とエネルギーの問題というのは避けては通れない。この問題はしっかりとらえて基本戦略をつくっていかなければいけないと思うんですね。
 そこで、この高齢化という我が国の大きな人口構造の変化への対応についてです。高齢化が進展し、我が国の六十五歳以上の人口の割合は、昭和六十年には約一割でしたけれども、平成十七年には二割を超えて、さらに平成三十二年には三割に近づいてまいります。
 また、東京においても急速に高齢化が進んで、平成三十二年の六十五歳以上の人口は、今よりも百万人も増加して三百三十四万人になるとも予想されておりまして、これほどの高齢人口を抱える都市は、ほかにはないわけであります。
 高齢化の進展は、生産年齢人口の減少と相まって、将来の経済を支える労働力をどのように確保していくかという問題にも密接に関連してまいります。
 改定後の基本戦略では、高齢化の進展に対し、産業振興の方向性をどのように示していくのか、まずお伺いをしたいと思います。

○矢田部産業企画担当部長 お話のとおり、高齢化の進展は、都内産業にも大きな影響を与える構造変化の一つでございます。
 今回の産業振興基本戦略の改定では、市場の拡大と人材の確保という観点から、高齢化の進展を見据えた産業振興の方向を打ち出しております。
 まず、高齢者市場の拡大というチャンスを生かすことでございます。この点につきましては、高齢者のニーズにきめ細かく対応した新製品、新サービス開発や実証実験の支援などによりまして、高齢者市場への中小企業の参入を促進していきます。
 次に、高齢者の就業推進による産業人材の確保でございます。産業を支えるためには、高齢者を含めた多様な人材の活用がますます重要となることから、就業意欲の高い高齢者のニーズに応じた支援を強化していく考えでございます。

○鈴木委員 今答弁がありましたように、超高齢化ととらえるのか長寿社会をつくっていくというふうにとらえるのか、この辺の考え方がやっぱり大事だと思うんですね。
 我が国は世界有数の長寿大国であり、高齢社会を創造するフロントランナーとしての役割も果たすことができると思っております。この点に着目して、今答弁にあった方向に加えて、例えば東京で生まれた先進的な高齢者向けの製品やサービスを、今後高齢化が進むアジア諸国に将来的に販売をしていくといった方向もあるのではないかと考えております。
 この戦略に基づき、さまざまな議論と検証を重ねながら施策を打ち出していくことを要望しておきたいと思います。
 次に、エネルギーの問題も、今後の産業を左右する大きな要素であります。
 昨年夏の電力制約、ことし四月以降の電力料金の値上げ等が予想されておりますけれども、世界的なエネルギー需要の増大に伴う原油の価格上昇などがある一方で、太陽光や風力を初めとした自然エネルギーの利用は広がりを見せております。また、そういった方向にしっかりと力を入れていかなければいけないというふうにも思います。
 改定後の基本戦略では、こうしたエネルギーの問題をどのようにとらえ、また、産業振興の方向性をどのように描いているのか、お伺いをいたします。

○矢田部産業企画担当部長 改定後の産業振興基本戦略では、エネルギーに関する問題につきましては、電力料金の値上げ、電力供給の制約など、電力にかかわる問題を都内産業にとっての脅威ととらえる一方、省エネルギー、また新エネルギー分野のさらなる市場の拡大を産業振興上での大きなチャンスととらえております。
 このため本戦略では、中小企業における省エネの促進等によりまして、電力供給の制約に対応した経営を推進するとともに、十年後の市場規模が全国で百二十兆円ともいわれる環境・エネルギー分野への中小企業の参入の促進を図っていくという方向を打ち出しております。

○鈴木委員 今答弁がありましたように、エネルギーの問題については、その制約というマイナス面だけではなく、ビジネスチャンスも広がっているというプラスの面も同時に考えていくということが重要だというふうに思います。
 将来的には、産業労働局の中に、こういった環境・エネルギー分野をしっかり支援していくというような担当部課というものも、きちっとつくっていくようなことも必要になってくるのではないかなというふうにも考えております。
 次に、戦略の五つの柱についてです。
 現行戦略と改定後の戦略を比べると、特に、戦略3、産業集積や戦略の4、地域産業などを新たな柱として位置づけていることが特徴的だと思います。
 これらを柱として掲げたねらいは何なのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

○矢田部産業企画担当部長 改定後の産業振興基本戦略では、成長機会、経営基盤、産業集積、地域産業、産業人材という五つを戦略の柱として位置づけております。
 お話の戦略3、産業集積は、円高の長期化や震災の影響等、産業集積を脅かす環境変化がある中、多様な産業が集積し、それが新しいビジネスの苗床となっているという東京の強みを将来にわたって維持していくことが重要との認識から、戦略の柱の一つとしたものでございます。
 また、戦略4、地域産業は、グローバル化への対応の一方、世界一の人口を擁する大都市圏であり続ける東京圏のさまざまなニーズに的確に対応することも重要であるとの認識のもと、商店街への支援、観光産業や農林水産業の振興など、地域に根差した産業の活性化を打ち出したものでございます。

○鈴木委員 この二つの柱を加えたことで、地域で頑張っている事業者にさらに目が向けられている形となっており、その点、大いに評価をしております。
 戦略を策定することが最終的な目的ではないわけですから、これに沿った事業の具体化を図ることが重要です。今後、具体的な事業を各年度の予算にしっかりと反映をさせて、着実に進めていただきたいと思います。
 さて、次に移ります。次に、具体的な中小企業対策について、順次お伺いをしてまいります。
 まず、ものづくり産業についてです。
 私の地元の大田区は、ものづくりの担い手である中小のまち工場が数多く操業をしておりますが、生産活動を続けるための環境は厳しさを増す一方でございます。特に、周囲にマンションや住宅が立て込んで、騒音などをめぐり住民とのトラブルが生じるなど、操業の制約になるさまざまな問題が生じております。こういったことが多々起きております。
 中小の製造業が周囲の地域と折り合いをつけながら操業を続けるためには、建物に防音などの工事をするか、そうした対応を既に行った施設を借り受けるようなことが必要になってくるわけですけれども、いずれにせよ、経費の負担はかなりな額に上るわけです。
 こういうようなまち工場の直面する課題を解決するため、東京都は、来年度から開始するものづくり産業集積強化支援事業、これを活用して、工業の集積を守る施策を着実に進めてほしいと考えております。
 また、この事業は区市町村の取り組みを支援する取り組みであるため、地元の自治体の理解と協力をきちんと取りつけていく努力も重要になってくるかと思います。まずは、区市町村に事業の趣旨をしっかりと理解してもらうための取り組みにぜひ力を注いでほしいと考えております。
 これらの課題について、都は、ものづくり産業集積強化支援事業によりどのような取り組みを展開するお考えであるのか、見解をできるだけ具体的にお伺いをしたいというふうに思っております。

○河内商工部長 東京のものづくりを支える中小製造業の集積を確保するため、さまざまな取り組みを幅広く行うことが必要であり、その中で工場と周囲との調和を保ち、操業のできる環境を整えることは、重要性の高いものと考えております。また、集積確保に向けた地元自治体の理解を深めることも必要でございます。
 都は来年度から、ものづくり産業集積強化支援事業により、中小企業が低廉な賃料で入居でき、周辺環境にも配慮した工場アパートや貸し工場の建設や、防音等に係る設備の導入など、立地環境の整備等に取り組む区市町村に対し支援を行ってまいります。
 また、区市町村の産業振興担当者を対象にセミナーを開催いたしまして、企業誘致や設備の増設、更新を後押しする優遇制度に加えまして、操業環境の改善の実例などについて理解を深める場を設けて、産業の集積の確保に向けた効果的な企画や立案につながるよう、きめ細かい対応を行っていくこととしております。
 こうした取り組みによりまして、効果的な事業の展開とそれを支える区市町村の対応の力を高め、中小製造業の集積の維持と発展を重点的にサポートしてまいる所存です。

○鈴木委員 今答弁がありましたように、まち工場を続けていくような場合に、いろんな問題が起きていく。そういうような状況の中でも、今回、こういった工場アパートや貸し工場の建設等々にも都として支援をしていく。これは非常に大事なことだと思っております。
 特に、区市町村の担当者としっかりと連携をとりながらセミナーなどを開催していただけるということですから、何というんでしょうか、現状をしっかりと都も一緒になって把握していただいて、都のしっかりとしたサポートをしていただきたいというふうに思っております。
 このものづくり産業集積強化支援事業が、ものづくりの現場の諸課題にこたえて、ものづくりの工場、中小企業の集積が維持発展をしていけるように期待をいたしております。
 次に、都内には、ものづくりの基盤となるメッキや金型などの技術分野で高い能力を持つまち工場があります。これら中小製造業は、大手の企業から仕事をもらい受けて、部品の生産や加工の工程を受け持っていますが、やはり円高などにより経営環境は厳しさを増すばかりでございます。
 基盤技術の担い手である中小企業の競争力を高める上で、技術開発をしっかりとサポートすることが重要なことはいうまでもありません。
 先日の我が党の予算特別委員会の総括質疑でも取り上げた受注型中小製造業競争力強化支援事業は、まさしくこの技術開発の支援で着々と成果を上げておりまして、事業内容のさらなる充実を期待したいというふうに考えております。
 特に、今後は、開発した技術が取引先に評価されて、中小企業の受注の増加に確実に結びつくような仕組みも事業の中に取り込んでいくことが必要であると考えております。
 そうした取り組みについて、同事業ではどのような対応を進めていく考えであるのか、お伺いします。

○河内商工部長 東京のものづくりを支える基盤技術を担う中小製造業が、技術開発力を高め、新たな受注の確保につなげていくことは重要でございます。
 都は、今年度より、東京都中小企業団体中央会と協力いたしまして、受注型中小製造業競争力強化支援事業を立ち上げ、中小製造業が取り組む基盤技術のレベルの向上や高品質の部品生産につながる研究開発への支援を開始いたしました。
 来年度は、事業費の総額を二億円から三億一千万円に引き上げて、開発に必要な設備の導入経費等の二分の一を対象に、最大千五百万円の助成を行います。
 こうした助成経費について、開発した技術をPRするための広報費や展示会出展の経費についても対象に加えることで、中小企業による販路開拓の取り組みも新たに支援いたします。
 こうした取り組みにより、中小製造業の競争力の維持と発展を的確に進めてまいる所存です。

○鈴木委員 今答弁がありましたように、来年度の事業費の総額を二億円から三億一千万円に引き上げて、開発に必要な設備の導入経費の二分の一を対象に、最大一千五百万円の助成を行う。非常に、これは私どもも自民党として要望を強く受けておりまして、これは生きた施策になるというふうに考えております。
 開発した技術をPRするための広告費や展示会出展の経費についても対象に加えるとの答弁がありましたが、販路開拓まで支援を広げて、受注型の中小製造業が化けるというか、その力をしっかり応援をしていくべきと考えております。
 次に、中小企業の金融支援についてお伺いをしていきたいんですが、東京のものづくりを支える中小製造業の維持発展には、集積へのサポートや受注確保への支援はもちろん、経済の血液である資金繰りを円滑にするために、都内中小業の資金繰りをしっかりと支えていくことが重要であります。
 取引先がある被災県の復興のおくれや、円相場についても、ここ最近は円安の傾向が見られるものの依然として高い水準にあるなど、予断を許さない状況が続いております。先行き不透明感が漂う中で、私の地元でも多くの事業者が経営に不安を抱えており、一部には借り控えをしているのではないかという、そういった声も聞かれております。
 こうした中で、都の制度融資においては、来年度の融資目標額を過去最高と同規模の二兆二千億円に設定したことは評価をできますが、激動する経済環境のもとにあって、融資メニューに大きな変化がないというふうにも今回感じております。
 そこで、中小企業の資金繰りの動向や経済金融情勢をどうとらえ、来年度の金融支援をどのように行っていくのか、その点をぜひお伺いしておきたいと思っております。

○寺崎金融部長 景気は緩やかに回復を続けておりますものの、依然として高い水準にある円高や海外経済、震災などの影響などにより、下振れするリスクが存在しております。
 中小企業の資金繰りにつきましては、この間、中小企業金融円滑化法による融資条件変更への対応がなされてきたものの、引き続き厳しい状況にございます。今年度の制度融資は、上半期は震災の影響による資金需要が大幅に伸びたこともございまして、売り上げ減少等が生じている中小企業を対象とした経営支援融資の利用が年間を通じて進みました。
 こうした状況を踏まえまして、平成二十四年度の制度融資では、引き続き震災や円高などに対応したセーフティーネット融資を重点的に推進するとともに、今後本格化が見込まれます震災の復興需要や緊急保証制度の借りかえ需要など、新たな資金ニーズにも十分こたえていくことを基本といたしまして、融資目標額を過去最高と同規模の二兆二千億円に設定をいたしたところでございます。
 その実施に当たりましては、国もセーフティーネット保証や東日本大震災復興緊急保証などの特例保証を継続する方向でありますことから、これらを活用して、引き続き、経営セーフ、災害緊急の融資メニューを設定し、都独自の保証料補助につきましても継続をいたします。また、震災復興の進展による新たな設備投資や既往債務の借りかえに伴う資金需要にも柔軟に対応してまいります。
 さらに、東京電力の電気料金の値上げにつきましては、中小企業への影響を緩和するため、今夏の節電への対応もあわせ割引メニューが適用されますよう、基金を使った対応が検討されておりますことから、事業者の自己負担分につきまして、資金面での支援を検討いたしてまいります。
 今後とも、これらの取り組みにより、引き続き都内中小企業の資金繰りに万全を期してまいります。

○鈴木委員 過去最高と同規模の二兆二千億円を設定していただいたわけでございまして、都内中小企業の資金繰りに万全を期すという答弁もいただきました。
 特に、電力問題、電力の制約など、電気料金の値上げ、こういった問題が、この秋には家庭にも出てくる。そういったことが予想される中で、近々、東京の中小企業を直撃されるようなこういった諸課題に、この融資の面からもしっかりと対策を立てて、準備をしておいていただきたいというふうに思っております。
 中小企業を取り巻く環境は先行きの予断を許さない。金融支援は、都内中小企業のセーフティーネットとして欠かすことのできないものであり、今後も制度融資を中心にしっかりと中小企業の資金繰りを支えていただきたい。このように要望しておきたいと思います。
 さて、次に観光振興についてお伺いをいたします。
 まず、外国人旅行者の誘致についてです。
 昨年の四月、私の地元、大田区の蒲田が、観光庁の訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備に係る、外国人の旅行客の受け入れ戦略拠点の一つに選定をされたところです。
 大田区では、外国人が安心して飲食、宿泊できる店舗、施設を募集し、大田区ウエルカムショップとして認定する制度を創設するなど、引き続き外国人旅行者の受け入れ体制づくりを進めているところであります。
 一方、観光振興を図っていくためには、こうした受け入れ体制の強化に加えて、海外に向けて積極的に観光プロモーションを実施して、外国人旅行者の誘致を進めていくことも重要です。
 都はこれまで、海外のメディアや旅行事業者に対し、官民一体となった積極的な観光プロモーションを行ってまいりました。特に、東日本大震災により外国人旅行者が大幅に減少したことを受けて、その回復にも大きく力を注いできたところであります。
 世界が時間的にも空間的にも狭くなってきた現在、世界観光機関によれば、世界全体の旅行者数は、二〇三〇年に現在の二倍の約十八億人になると見込まれております。とりわけ、人口が多く、急速な経済成長を続けるアジア地域の旅行者の活発な動きは目覚ましいものがあります。
 こうした中、旅行目的地としての東京に対する旅行者のニーズも多様化しており、従来のパッケージ型ツアーに加え、旅行者個人が観光情報を入手して宿泊施設等を直接予約するなど、個人による旅行が増加しております。
 都は、こうした旅行者の動向も踏まえ、個人旅行者に対してもきめ細かく観光プロモーションを展開するなど、より積極的な取り組みを進め、外国人旅行者のさらなる誘致につなげていく必要があるのではないかと考えているのですが、その点について見解をお伺いします。

○横山観光部長 都はこれまで、商談会の開催など旅行事業者向けの観光プロモーションのほか、個人旅行者向けに広く東京の魅力を発信し、旅行意欲の喚起を図るため、海外の旅行メディアの取材支援などの取り組みを進めてまいりました。
 来年度は、これまでの取り組みに加えまして、近年、旅行者が増加し、個人旅行が普及してきているアジア地域の韓国、香港、シンガポールを対象に、個人旅行者向けの観光プロモーションを強化いたします。
 具体的には、現地市民が東京を観光する様子を雑誌記事広告として掲載し、旅行者個人の視点で魅力的な旅行スタイルの提案を行うなど、東京への旅行意欲を高めてまいります。
 今後も、国や地域の特性を勘案して、きめ細かな観光プロモーションを展開し、外国人旅行者の誘致をさらに進めてまいります。

○鈴木委員 今後、外国人旅行者を誘致していくに当たっては、こうした個人旅行者を対象にした取り組みも重要であり、都がこれに的確に対応しているというようなことが、今確認ができました。こういった新しい取り組みということに、ぜひ、私ども期待をしているところです。
 観光は、人々が動くことによって消費が喚起され、それが人々の訪れた地域の産業や事業者の活性化につながっていくものであることから、これからの東京にとっては非常に重要な分野であると考えております。
 現在、都では、東京都観光事業審議会に対して、今後の東京の観光振興の方向について諮問しており、審議会における検討が進められていると聞いております。三・一一がありましたのでおくれましたけれども、本来であれば、ことしの三月から実施する予定だったというふうにも記憶しておりますが、東京の観光を振興させるためには、社会経済状況の変化などを踏まえるとともに、こうした有識者の意見などをしっかりと受けとめて、計画的に取り組みを進めていくことが重要と考えますが、都の所見をお伺いいたします。

○横山観光部長 ご指摘のように、観光は、人々の動きを生み出すことによりまして経済の活性化に資するというものでございます。このことから、時代の変化をとらえるとともに、将来を見据えて着実に取り組みを進めていくことが重要であると認識をしております。
 こうした観点から、都は平成二十二年の十月に、東京都観光事業審議会に対し、東京の活力向上を図る観光振興の戦略的な取り組みについてと題しまして、諮問をさせていただいたところでございます。
 その審議が進められておりました昨年三月、まさに東日本大震災が発生をいたしました。外国人旅行者の大幅な減少など、東京の観光も大きな影響を受けたわけでございます。こうしたことから、昨年八月、審議会として、東京の観光の回復を目指す特別提言というものを出していただきました。
 都は、これを受けまして、緊急的に旅行者数を回復させるための施策を現在も強力に進めているところでございます。
 一方、審議会では、当初諮問させていただいた事項に沿って、引き続き審議を進めていただいておりまして、二十四年の夏に答申をいただく予定となってございます。
 都といたしましては、今後も積極的な施策展開を図りつつ、審議会の答申を受ける来年度において新たな観光産業振興プランを策定いたしまして、中長期的な視点に立った取り組みを進めてまいります。

○鈴木委員 都が、来年度、さらなる旅行者誘致を図りつつ、東京都観光事業審議会の答申を踏まえた新たな観光産業振興プランを策定して、観光の振興を積極的に進めていこうという姿勢、今お伺いをさせていただきました。
 今後、外国人旅行者の誘致、とりわけ個人旅行者を視野に入れた誘致を図るためには、都内の幅広い地域において、旅行者を引きつける魅力ある観光資源を開発していくとともに、ひとり歩きを楽しむことができるような旅行者の利便性向上に資する、多言語による受け入れ体制の充実を一層進めていくなど、これまでの取り組みを深化させていくことが重要であると考えております。
 今後のこうした観光振興に向けた都の取り組みに大きく期待をさせていただきたいと思います。
 さて、一部の新聞報道で、トウキョウXがなくなるというような記事がありました。
 本当にそうなんだろうかというようなことですが、八王子市が、八王子食肉処理場を今年度末をもって閉鎖することになりまして、これからは近県の処理場へ運ぶことから、ブランド豚のトウキョウXが危機だというふうに、その新聞報道、書かれておりました。
 処理場が移るということについては、既に東京都は、二十四年度に畜産農家に対する支援策を行うというふうに聞いているところでございます。
 今後も、農家が安心して経営に取り組めるよう、万全の対策を講じていただくよう要望しておきたいと思います。
 以上、産業振興基本戦略、中小企業振興、観光振興について質問をしてまいりました。
 都内産業を取り巻く環境は依然として厳しいものがありますが、その中にも希望の光が見えるよう、産業振興に全力を挙げていただきたいと考えております。
 最後に、今後の産業振興に向けた局長の決意をお伺いさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

○前田産業労働局長 昨年の夏以降の歴史的な円高、今月に入りやや落ちつきを見せておりますが、欧州の一つの国の財政状況が都内の産業に大きな影響を与えるという事象は、都内の事業者にも、また多くの都民の方にも、私どもにも、いや応なしにグローバル経済の中にあるということを強く実感させたものだと思います。
 また、委員お話しいただきました高齢化の進展、産業空洞化の危機、さらには昨日までの予算特別委員会で議論となりました電力を初めとするエネルギー問題も、この東京の産業に大きな影響を与え得る、いわば構造的な変化であり、こうした変化を見据えた対策が必要であると、このように考えております。
 一方で、人口が集積することなどによる巨大な市場、多様な産業の存在など、この東京の持っている強みは、二〇二〇年までの今後十年間を見通しても、これは揺るぎのないものだろうと確信しております。今、こうした強みを生かして、変化を脅威としてだけとらえて対応に追われるだけではなくて、むしろチャンスとしてとらえて産業振興を図っていくことが重要であると考えます。
 こうした認識のもと、中小企業振興や観光振興、さらに農林水産業振興、雇用就業対策など、局の事業全般について必要な施策を、今ご審議いただいております来年度予算案に盛り込んだところでございます。まずは、来年度、これらの事業の執行に全力を挙げてまいります。
 あわせて、今後十年間、そういう長いスパンで産業振興の方向性を示させていただきました産業振興基本戦略を道しるべとして、これまで以上に現場感覚を研ぎ澄まし、局を挙げて新たな産業振興策の具体化に懸命に取り組んでまいります。

○小磯委員 私からは、雇用の問題と、それから都市農業についてお伺いをいたします。
 まず雇用でございますが、非正規労働者の正規雇用化についてでございます。
 非正規労働者といいますと、パート、それからアルバイト、それから労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員、嘱託などがこうした非正規労働者ということになります。国の総務省の調査によりますと、この非正規雇用者というのが本当に右肩上がりでふえ続けておりまして、千七百五十五万人に達していると。その一方、かつては三千五百万人を超えていた正規雇用者が、着実にこちらの方は減っているということでありまして、今や働く人の三人に一人が非正規雇用者であります。
 正規と非正規のいわゆる年収を比べますと、正規雇用者の八六・九%が年収二百万円以上であるのに対し、非正規雇用者の七七・七%が年収二百万円未満ということでありまして、格差を生じておるわけであります。しかも、こうした非正規雇用者における若年層の割合が大きくなっているといわれております。
 駒沢大学の飯田先生という方がこうおっしゃっております。雇用に関して、生涯を安定して働き続けることが困難な時代になっている、一般的な学生だと、大学や高校の新卒時に正社員になれないと、かなり不利な状況に陥ってしまうのが現実だ、新卒時に人生のほとんどが決まってしまう、日本は、標準世帯や正社員といった典型から外れてしまうと、とても生きづらい社会である、人々の暮らしが大きく変化する中で、従来の昭和型の社会保障制度や雇用は見直すべきときを迎えていると、こんなふうに述べておられまして、本当に私もそのとおりだなと思います。高校を出て、また大学を出て、就職するところがない。これほど若者にとって、ある意味、希望がないというか、そういう状況は打破していかなきゃいけないんじゃないかな、こんなふうに思っております。
 我が党は、これまでも再三この問題を取り上げてきたところであり、都においても、非正規労働者の方を支援するさまざまな取り組みをしてきたと伺っております。しかし、現下の厳しい雇用情勢が続く状況の中でこそ、特に正規雇用化を望む若者に対し手厚い支援が重要ではないかと考えます。
 そこでまず、非正規労働者の現状についての都の認識をお伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 近年進んだ働き方の多様化によりまして、労働者が柔軟な働き方を選択できるようになりましたが、こうした状況の中で、正規雇用を望みながらも、やむなく非正規で雇用された方は、十分なスキルを習得できず、不安定な就労を続けております。
 最新の就業構造基本調査によりますと、都内でも、雇用者のうち三四・七%の方が非正規で就業しているのが現状でございます。
 平成二十三年版の労働経済白書におきましても、非正規雇用についた若者は職業能力開発の機会も乏しく、技能、賃金水準は低位のままであり、また収入や雇用の安定の面で将来への見通しが立ちにくいなどと指摘されておりまして、正規雇用化を望む方が安定的な雇用につくための支援は大変重要と認識してございます。

○小磯委員 バブル崩壊以降、大学を卒業したいわゆる就職氷河期世代といわれる方々が、卒業時の雇用情勢が大変に厳しくて、正規雇用としての就職口が見つからず、やむを得ず派遣社員またアルバイトとして社会人のスタートを切った方も大変多いと伺っております。こうした方々の中には、希望してもなかなか正社員になれず、四十代に差しかかった現在でも非正規労働者のままである方もいると聞いております。
 都として、こうした方に対し正規雇用化に向けてきめ細かく支援することが必要であると思いますが、これまでの取り組みについてお伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 非正規雇用の経験が長い、いわゆる就職氷河期世代の層につきましては、職業的自立やキャリア形成の面で不利な立場に置かれておりまして、希望しても安定的な就業につくことが難しい状況にございます。また、将来的な労働力人口の減少が見込まれる中でこうした層を放置しておくことは、産業や社会の活力低下につながりかねない重大な問題であると認識しております。
 都は、東京しごとセンターにおきまして、カウンセリングやセミナー等を通じまして、一人一人の状況に応じ、きめ細かく正規雇用化を支援してまいりました。
 加えて、平成二十年十一月に、三十歳代の非正規労働者を対象に、カウンセリングから職場定着まで一貫して支援するネクストジョブ事業を東京しごとセンターにおいて開始いたしました。本事業におきましては、累計で四千五百二十二人を支援し、このうち一千五百八十九人が正社員としての就職を実現いたしました。
 さらに、しごとセンターにおきましては、昨年八月から支援対象者を拡大し、四十歳代前半の層の正社員化につきましても取り組みを開始したところでございます。

○小磯委員 ただいま、しごとセンターにおいて、正規雇用化に向けてきめ細かく支援しているということはよくわかりました。
 さて、若年者雇用の問題は、雇用対策の中でも重要な課題の一つでございまして、直近のデータでも、今春の大学卒業予定者の十二月一日現在の内定率、過去最低といわれた昨年よりは改善したものの、七一・九%と低い水準にとどまっております。
 このままでは、社会に出ようとする意欲にあふれた若者の多くが門戸を閉ざされ、あるいは不安定な就労を余儀なくされ、十分なキャリアアップも図れず、まさに第二の就職氷河期世代を生み出すことが懸念されているわけであります。
 都は、二十四年度から新たに若年者正規雇用化プログラムにより支援を開始すると伺っておりますが、こうした世代を再び生み出さないために、社会に出ようとする若者を強力に後押しするとともに、現在不安定な雇用状況に置かれた若者に対し、安定した雇用に向け早目に手だてを講じることが必要と考えます。この事業の意義についてお伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 近年、フリーター数の増加や若年層の非正規率が高水準で推移するなどの状況にございまして、正規雇用化を望む意欲ある若年層に対する支援の拡充も重要でございます。
 このため、都は来年度、紹介予定派遣制度を活用いたしまして、二十代の非正規雇用歴のある若者を対象に、研修と中小企業での就労体験を組み合わせた若年者正規雇用化プログラムを新たに開始し、正規雇用化を支援いたします。
 なお、本事業により、年間で三百人の正規雇用を希望する若者を支援してまいります。

○小磯委員 この事業で年間三百人の正規雇用を支援していくということでございました。
 さて、実際に非正規雇用の方を正規雇用に結びつけることは簡単なことではなく、正規雇用化という目的を達成するためには、きめ細かく支援を行う必要があると思います。
 都では今年度から、本事業と同様の仕組みにより、既卒三年以内の若者の正規雇用化を支援する未就職卒業者緊急就職サポートを開始しております。この事業では、中小企業がじっくりと人材を見きわめてから採用できることから、その後の定着も期待できると思いますが、来年度新たに実施する若年者正規雇用化プログラム事業で工夫をした点についてお伺いをいたします。

○穂岐山雇用就業部長 若者を取り巻く雇用状況が厳しい中、卒業後間もない新卒者に比べまして、より正規雇用化が厳しい若年非正規雇用者に対しましては、一層丁寧に支援を行うことで企業とのマッチングの可能性を高めることが重要でございます。
 このため、現行の未就職卒業者緊急就職サポート事業では一カ月間で実施していた参加者に対する研修とマッチングの期間につきまして、本事業は二カ月間とし、参加者に対し、業界研究などを通じまして実際に企業で正規雇用として働くために必要となる知識を研修により付与した後、適性や希望等に応じまして、きめ細かく企業とのマッチングを実施し、企業へ派遣いたします。
 また、派遣先企業での就労体験期間も、現行の事業から一カ月延長した四カ月間とすることで、就業体験中、参加者と企業双方がじっくりと適性等を見きわめるとともに、参加者は就労体験を通じて能力向上を図ることで就労体験後の正規雇用化につなげてまいります。
 さらに、派遣期間中は、本事業の受託事業者が参加者に対しカウンセリングなどのフォローアップをきめ細かく行うとともに、企業に対しましてもOJTに関する相談に対してアドバイスを行うなどの支援を実施し、参加者の派遣先企業への正規雇用を支援してまいります。

○小磯委員 ただいまございましたように、この研修とマッチングで二カ月、そしてまた就労体験期間ということで四カ月ということで、半年間のいわゆる支援ということで正規雇用につなげていくということでございました。ぜひとも、この正規雇用化の実現を強力に推し進めていただきたいというふうに思っております。
 続きまして、東京の農業の振興についてお伺いいたします。
 私の地元、町田市では、都市化が進む中、農業生産活動が活発に行われており、JAが運営する農産物直売所には、ホウレンソウ、ネギなどの新鮮な地元の農産物が並んでおります。
 町田市の北部には町田市北部丘陵が広がっておりまして、三百軒余りの農家が営農に取り組んでおります。ここには、丘陵の谷合いにわき出した水を利用した水田など、今なお里山の原風景が残っており、さまざまな生き物が生息し、都民が自然と触れ合え、憩いの場ともなっており、東京に残された貴重な空間となっております。
 しかし、この地域は農地が狭小で、形状もさまざまであったり、農道が狭いなどの課題を抱えておりますが、農業振興地域に指定されていないことから国の事業も導入できない状況にございます。
 そこで、都は、この町田市北部丘陵の営農環境を改善するための取り組みについて、どのような取り組みをされているのかお伺いをいたします。

○津国農林水産部長 町田市北部丘陵は、現状では農業を行うには厳しい環境にありますものの、農業生産基盤を整備することによりまして、既存農地の生産性の向上と農地の利活用を促進できる貴重な地域でございます。
 そこで、都は、独自事業である小規模土地改良事業を活用して、市が行う営農環境の改善のための取り組みを支援しております。
 具体的には、今年度と来年度の二カ年で、町田市北部丘陵入り口から中心部の農地へのアクセスを改善していくこととしており、幅員の狭さから農産物や農業資材の運搬に支障を来している農道の拡幅工事を行います。
 都は、今後とも、市の意向を踏まえながら、必要な農業生産基盤の整備の支援に努めてまいります。

○小磯委員 この町田市北部丘陵という地域については、私も数年前からずっと、何といいますか、農業が振興するようにいろいろと相談をしてきて、なかなか動かないで、本当にどうしようかなと悩んでいたわけでございますが、ようやくここに来て、こうした小規模土地改良事業ですか、こういったことを利用して、そういう農道なんかの拡幅工事をやっていただけるということで、大変うれしく思っております。町田市の取り組みを今後も支援していただくよう、お願いをしていきたいと思います。
 次に、遊休農地についてでありますが、町田市でも、農業者の高齢化などにより十分に利活用されていない農地が散見されるようになっておりますが、周囲には意欲的な農業者がいるほか、新たに農業をしたいという都民の声も聞かれるわけでございます。
 このため、町田市では今年度、多摩地域で初めて、市みずからが農地の貸し借りの仲立ちをする農地利用集積円滑化団体となって、農地の有効利用に取り組んでおり、こうした取り組みは他の市町村にも広げていく必要があると考えます。
 一方、東京都は、従来から農地の利活用の促進に取り組んでいると聞いておりますが、その状況と今後の取り組みについてお伺いいたします。

○津国農林水産部長 意欲的な農業者や新規就農者が、活用されていない農地を借り受け有効活用を図っていくことは、都の農業振興にとって非常に重要でございます。
 このため、都は、従来より、農業参画に意欲的な都民や規模拡大を目指す農業者と遊休農地等の情報を蓄積し、コーディネーターによりこれらを結びつける、農地と担い手マッチング推進事業を実施してまいりました。
 昨年度は、規模拡大を目指す農業者五名、農家以外からの新規就農者三名への農地の貸し借りが成立しております。
 今後、都は、お話のあった農地利用集積円滑化団体について、他の市町村での設立を促していくとともに、市町村や農業委員会と連携して農地の貸し借りを促進し、農地の有効活用が一層進むよう取り組んでまいります。

○小磯委員 これは本当に大事な取り組みだと思いますので、何とぞ、この農地の有効活用が一層進むようお願いをしたいと思います。
 次に、町田市では、酪農家が農事組合法人を組織し、アイスクリームの製造販売に取り組んだり、あきる野市では、農産物直売所秋川ファーマーズセンターの販売品目拡大や端境期をなくす取り組みが活発化するなど、都内各地域で農業者が奮闘しております。
 都は、このような各地域の特性を生かした積極的な取り組みを一層支援していく必要があると考えますが、所見をお伺いします。

○津国農林水産部長 農業者による創意工夫を凝らした取り組みを支援していくことは、東京農業を活性化する上で重要でございます。
 このため、都は、高い意欲を持つ農業者グループなどを対象として、新たな経営展開に向けた取り組みを支援する都市農業経営パワーアップ事業を実施しております。
 具体的には、これまで、共同直売所への農産物の出荷を拡大するためのパイプハウスの整備やブルーベリーの観光農園の開設に向けた施設の整備などへの支援を行ってまいりました。
 来年度は、野菜や果実などの加工施設や酪農経営の省力化を図るための自動給餌機の整備など、農業者のさまざまな経営改善に向けた取り組みを支援していく予定でございます。
 今後とも、市町村と連携しながら各地域における農業者の積極的な取り組みを支援し、東京農業の振興を図ってまいります。

○小磯委員 今後とも農業者の取り組みを積極的に支援していただくようお願いをいたします。
 先ほども話がありましたが、都内の畜産農家が長年にわたり家畜を出荷し、処理してきた八王子食肉処理場が、今年度末をもって閉鎖されることになりました。東京には、都が開発したブランド豚のトウキョウXがあり、これまで農家は本処理場に出荷してきたと聞いておりますが、閉鎖後、近隣県の食肉処理場に持ち込むことになってもトウキョウXのブランドは保てるのか、お願いいたします。

○津国農林水産部長 トウキョウXは、生産から流通、小売まで独自のルートが確立されておりまして、それぞれの段階でブランドを維持する取り組みがなされております。
 今後出荷を予定している処理場につきましても、現在、既にそのルートの中でトウキョウXを取り扱っていることから、問題なくトウキョウXのブランドを維持することができると考えております。

○小磯委員 都は、これまで八王子食肉処理場を利用してきた農家に対して、二十四年度から支援策を講じると聞いております。
 東京には、トウキョウXのほかにも東京牛乳などのおいしい畜産物があるので、ぜひしっかりと畜産農家の支援に努めていただくことを要望いたしまして、私の質問といたします。

○清水委員 まず、国分寺、八王子労働相談情報センターの移転統合についてお伺いいたします。
 労働相談情報センター国分寺事務所と八王子事務所を統合して、立川市に移転する計画が明らかにされています。今もお話がありましたように、都内の雇用情勢は大変厳しくなっています。今や労働者の三人に一人が非正規労働者となっており、労働条件も悪化をしています。
 こうした厳しい情勢を背景に、労働相談件数が五万件を超えていると、先ほどご説明がありました資料にも出されています。労働相談への対応や紛争の未然防止に、労働相談情報センターの果たす役割は非常に重要になってきていると思いますが、改めて、どのような役割を果たしてきたのかについて、お伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 労働相談情報センターは、さまざまな労働問題に的確に対応し、労使関係の安定を図るとともに、雇用環境の整備に向けたさまざまな支援や労働法令の普及啓発の取り組みなど、重要な役割を果たしてまいりました。

○清水委員 そういう重要な役割を果たしてきたといわれますが、労政事務所時代から再三再編整備を繰り返してきています。
 近年の多摩地域での例を挙げれば、二〇〇二年に三鷹市と立川市の労政事務所が統合され、国分寺事務所となりまして、多摩地域の労政事務所は三カ所から二カ所となっています。
 これ以降、労働相談情報センター及び各事務所の数はどのように変化してきたのか、お伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 平成十四年に三鷹と立川の労政事務所を統合し、国分寺事務所を設置し、七事務所となりました。
 平成十六年に労政事務所を労働相談情報センターに改組するとともに、新宿労政事務所を廃止し、六事務所となりました。
 平成十七年に王子事務所を廃止し、池袋事務所を設置いたしました。
 以降、労働相談情報センターは都内六所体制となってございます。

○清水委員 重要な組織だといいながら、次々と統合、廃止を繰り返しているといわざるを得ません。
 移転統合後の労働相談情報センターは、多摩地域全域を管轄する事務所となります。所管エリアが広過ぎるというふうに考えませんか。区部と比べれば交通の利便性が高いとはいえない多摩地域の事務所を一カ所に統合することは、理解しがたい。
 労働相談というのは、いわば駆け込み寺であり、近くに足が運べて--そこまではなかなか難しいことですけれども、しかし、それに匹敵するような距離というものがあると思います。相談に乗ってもらえる場所があるということが重要だというふうに思います。
 移転統合する理由について、どのように考えているのか、お伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 事業スペースが狭隘で建物も老朽化している国分寺のしごとセンター多摩の立川への移転整備の機会をとらえまして、労働相談情報センター国分寺事務所と、同様に施設の老朽化が著しい八王子事務所を統合し、交通利便性の高いしごとセンター多摩と同一施設内に移転整備いたします。
 これによりスケールメリットを生かした労働相談事業などを拡充、展開し、多摩地域における雇用就業施策の強化を図るものでございます。

○清水委員 その移転統合する理由というのには、私はなっていないと思います。
 八王子事務所をとってみれば、そこをほかの場所に一時仮移転して、同じ場所に建てればいいことであって、八王子事務所の相談件数というのは非常に多くなっています。
 過去五年間の相談件数、先ほどの資料の中にもありますけれども、年間、時によっては四千件を超えています。どの地域から相談に来ているかということも聞きましたが、二〇一〇年、八王子市内からは千二百四十七件、府中市内からは二百二件、調布市内からは二百六十件、町田市内からは二百十九件、日野市内からは百五十八件、狛江市内からは十四件、多摩地域から百十三件、稲城市内から五十七件、その他が千五百十六件となっています。
 八王子だけでもこれ、国分寺はまた後からいわれるかもしれないですけれども、多摩地域の広域さからいえば、身近な相談窓口が立川に統合されれば、市民の利便性を損なうことになるのではないですか。八王子市は、現在地で建てかえるべきではないですか。お伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 八王子市は多摩地域最大の市であり、労働相談窓口機能は重視する事柄ではございますが、サービスの低下とならないよう、八王子市と調整し、意見をお聞きしてまいります。
 しかし、移転する立川は駅前でございまして、中央線や青梅線、多摩モノレールが乗り入れており、利便性が低下するとは考えてございません。

○清水委員 中央線と青梅線とモノレールがあれば利便性は確保できるというのは、多摩地域の事情を知らない人がいうことです。行政の効率との視点だけで評価するというのは問題です。
 実績減ということもいわれていますけれども、私たちに実際寄せられている相談や労働環境を考えれば、相談を必要とする人が減少したということは到底いえない状況にあります。
 ある労働者は、経営者の気分で一方的に解雇されたという方がいましたが、その方は、たまたま近くに一人でも加入できる組合があり、相談し、争っておりました。しかし、それは氷山の一角です。身近なきめ細かな相談体制が整ってこそ、多発する労働紛争への十分な対応ができるわけです。労働行政の後退といわざるを得ません。整備するなら、八王子、国分寺を現地で建てかえて、立川にも整備するくらいの計画ができないんですか。再検討を求めます。
 国分寺、八王子事務所に付設されている労政会館についてお伺いいたします。
 まず、労政会館の現在の利用状況について、利用者数は資料で出ております。利用団体数はどうなっていますか。

○穂岐山雇用就業部長 利用団体数につきましては、国分寺が百六十八団体、八王子が百五十三団体となってございます。

○清水委員 多くの団体がここを利用されています。本当に、新年の新年会から総会から、もう一年じゅう、労働組合中心ですけれども、本当に多く利用されています。ほかに余りないんですよね、八王子市の場合は公共施設が。
 労政会館は、勤労者の文化、教養、福祉の向上、増進を図るために設置した施設であります。各区にありましたけれども、いわゆる勤労者福祉施設は区市町村に移管され、また、廃止されるなどしてきている中で、東京都の労政会館は勤労者福祉のために重要な役割を果たしてきていると思いますが、どのように認識をしておられますか、お伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 労政会館は、勤労者の文化、教養及び福祉の向上、増進を図るため、労働相談情報センターの附属施設として設置してございます。
 勤労者の福利厚生施設につきましては、基本的に住民に身近な区市町村が担うべきとの考え方のもと、これまで区市町村へ移管または廃止の方向で進めてまいりました。労働相談情報センター国分寺事務所及び八王子事務所に併設されております労政会館につきましても、勤労者の福利厚生という設置目的は広域行政としての今日的意義が失われており、都の担う役割は終了したと考えております。
 また、労働相談情報センター事業と密接な関連を有する施設であることから、労使関係の安定に資するため、労働組合に優先利用を認める必要はあると考えますが、労働組合活動の利用は少なく、都として労政会館という形態により施設を提供する必要性は低くなっておると考えてございます。

○清水委員 区移管が進んできたからといって、多摩地域でも、地域の実情を考慮せず、都は役割を終える、区市の役割だといって勤労者の福利厚生施設をやめてしまうのは、余りにも乱暴だというふうに思います。
 本当に多くの団体が利用しているのです。利用団体の声を聞いたんですか。周辺の公共施設というのはどこをいうんですか。なぜみんなが利用するのか、聞いているんですか。仮にそういうことを提案するのならば、そういう人たちの話を聞いてからしなさい。再検討を求めます。いかがですか。

○穂岐山雇用就業部長 繰り返しになりますが、都として、労政会館という施設を維持、運営する必要性は低いと考えており、国分寺、八王子の労政会館は、労働相談情報センターの立川への移転統合にあわせまして廃止する方針でございます。

○清水委員 改めて再検討を求めておきます。
 続きまして、新銀行東京の中期経営計画の問題です。
 中期経営計画の作成、内容に、金融庁はどのようなかかわりを持ったのか、お伺いいたします。

○斎藤金融監理部長 新銀行東京は、銀行法に基づき、監督官庁である金融庁の監督を受けるものでございまして、今回の計画につきましても、金融庁に提出したと聞いております。

○清水委員 新銀行東京は、二〇〇八年三月期の決算で一千億近い累積赤字を抱え、事実上の破綻、多くの都民が反対するも四百億円を追加出資しました。二〇〇八年十二月には、金融庁から、融資審査体制の不備から業務改善命令を受けています。
 今ご答弁ありましたが、私は、東京都としても、新銀行東京の中期経営計画の内容など問題ないのか、監督官庁の見解を把握する必要があると思いますが、東京都としては、独自に金融庁に対して今回の中期経営計画に対する見解を聞くようなことはしなかったんでしょうか。

○斎藤金融監理部長 金融庁は、金融庁の監督権限に基づいて新銀行東京を指導監督していると、このように理解しております。

○清水委員 それはわかりますけど、私は東京都の責任を聞いたんです。
 中期経営計画の作成に当たって、東京都は、銀行との打ち合わせには、どなたが、何回、どのような会議に出席して、その作成にかかわりを持ったんでしょうか、お伺いいたします。

○斎藤金融監理部長 中期経営計画は、株式会社新銀行東京がみずからの計画として策定したものでございます。
 新銀行東京は、株主である都に対して、銀行法の趣旨に従い、組織の決定を経た上で情報提供を行っております。
 都は、中期経営計画について、昨年十二月以降、株主連絡会等において、数度にわたり説明を受けております。

○清水委員 それでは伺いますが、昨年十二月以降、株主連絡会の開催状況、出席者というのはどのようになっているんでしょうか。

○斎藤金融監理部長 株主連絡会は、通常、月二回をめどに開催をされております。株主連絡会に出席する者は、私ども金融監理部の職員でございます。

○清水委員 先ほど、説明を受けているということですけれども、都としては、見解を述べるということはなかったんでしょうか、その場所で。

○斎藤金融監理部長 計画策定過程の事柄につきましては、これは守秘義務に属する事項もございますし、また、銀行の経営戦略にかかわることでございますから、お答えは差し控えさせていただきます。

○清水委員 具体的な指標について、幾つかお聞きします。
 日銀借り入れ約一千億円が減少しない要因について、認識をお伺いいたします。

○斎藤金融監理部長 日銀借り入れは、現下の厳しい金融環境下で行われております金融政策の一環であり、日銀は金融機関にこの利用を促しております。今後三年間の日本経済の見通しや金融政策上の課題などから、引き続き相当な規模で実施されるものと思われます。
 新銀行東京は、多くの金融機関と同様に、これを資金調達の一つとして活用しているものでございます。
 資金調達と運用を適切に管理し、収益を上げていくことは、金融機関として当然のことであり、新銀行東京は、今後も必要に応じて日銀借り入れを活用することとしております。
 また、先日の予算特別委員会でお答えをいたしましたけれども、新銀行東京は、有価証券運用益が貸出金利息を上回っていることなどについては課題として認識をしており、今回の中期経営計画において、こうした課題の克服を目指し、安定した黒字体質を継続すること、また確固たるビジネスモデルの構築を目指すということを計画にもうたっております。

○清水委員 これまで私たちが繰り返し指摘してまいりましたが、ようやく今回、有価証券運用益が貸出金利益を上回っていることを課題だという認識を示しました、課題はこれだけではありませんが。
 先ほどの答弁で、借用金は多くの金融機関も活用しているとのことでした。全国にある銀行を調べてみましたが、全国銀行、都市銀行、地方銀行の財務諸表を見ましたが、借用金の預金に対する比率は一〇%以下です。一方、新銀行東京は六〇%以上です。
 今の答弁にはありましたが、多くの金融機関も、新銀行東京のように預金だけでは貸出金の原資を調達できずに日銀からの借用金を活用しているというような、受け取れるようなご答弁がされました。多くの金融機関も同様に活用という答弁をされましたが、その根拠というのは何ですか。

○斎藤金融監理部長 日銀借り入れが、金融政策上、日銀が行っているという事実がございまして、新銀行東京もこれを借り入れをしていると。他の銀行においても、広く借り入れがされているということを申し上げたわけでございます。

○清水委員 日銀がそういう政策をとっているかもしれないですけど、私が見ましたら、そういう銀行を見つけることはできませんでした。今のご答弁は、具体的なご回答ではありません。多くの金融機関と同様に活用しているというのは、いかがかなというふうに私は思いますが、新銀行東京の経営実態について、都として正確に把握するように努めていただきたいということを厳しく指摘しておきます。
 新銀行東京の融資の九〇%以上は、売上高五億円以上の中小企業向けです。中期経営計画で、中小企業向け融資はどのようになりますか。

○斎藤金融監理部長 中期経営計画におきましては、中小企業向け与信残高を、平成二十六年度末で、二十三年度末の八百三十三億円から約三五%増の一千百二十二億円まで積み上げることとしております。

○清水委員 新銀行東京は、二〇一一年三月期決算では、中小企業への融資比率は五〇%になりません。また、実際に借りている企業を見ても、売上高五億円以上の中小企業が九〇%以上を占めます。
 都は、新銀行東京の経営監視などについて、新銀行東京が中小企業への継続的な支援を図りつつ経営再建を達成するため、都として適切な監視と支援を行っていくとしています。であるならば、この点についても、少なくとも正確にその実態を把握するように努力するのが都の責任だというふうに思います。
 再度お聞きしますが、中期経営計画が中小企業への継続的支援になっているかどうか、都としてどのような把握の仕方をした上で、今のご答弁をされたのでしょうか。

○斎藤金融監理部長 ただいま申しましたとおり、中小企業向けの与信残高を今後三年間で伸ばしていくという計画に表記のとおりの数字を挙げておりますし、また、経営理念として、中小企業者を初めとする地域における幅広いお客様に資金供給を行うということを計画にも明記されております。

○清水委員 きちんと答えられておりません。
 中期経営計画では、都の政策支援を軸としたビジネスモデルを確固たるものとするとの目標と、民間の銀行である新銀行東京の経営のあり方として、株主である都の認識についてお伺いいたします。

○斎藤金融監理部長 お話の政策支援でございますけれども、これは従来から新銀行東京が経営理念の一つとして掲げてきたものでございます。
 新銀行東京の寺井社長は、この方は平成二十一年に就任しておりますけれども、根っからのバンカーでございまして、就任以来、銀行として社会に貢献していくことが重要であるということを強く意識してこれまで務めてこられました。経営再建を進める中で、その点は十分な取り組みが行えなかったという思いを常に抱いていたと、これは私どもも聞いているところでございます。
 再建が着実に進捗し、黒字の継続が見通せる段階に至ったことから、今回の中期経営計画を機に、東京都の政策支援による社会貢献を方針として掲げたものと、このように認識しております。

○清水委員 昨年の第四回定例会で、私は、新銀行東京の運営方針で示している、都との連携を生かしたビジネス強化について、都として、これまでの支援に加えて、何かこれまでの事業を拡充する予定があるのかとお聞きしましたが、都として予定がないともいえませんでした。
 そして、今度の中期経営計画では、都の政策支援を軸としたビジネスモデルを確固たるものとするとの目標が掲げられています。都も認められましたけれども、新銀行東京には経営課題があるわけです。その経営実態についての正確な把握も不十分です。
 私たちは、これまでも繰り返し指摘してまいりましたが、預金者保護、中小企業への支援の継続をし、清算するよう提案します。金融専門家などを交えた第三者による経営分析と処理方針を検討する場を設けることを求めて、質問を終わります。

○神野委員 私からも、新銀行東京の中期経営計画についてお伺いをしたいと思います。
 まず、平成二十三年十二月期の損益計算書には、延滞債権売却損が一千二百万円載っております。かつて平成二十年の予算特別委員会で、不良債権に関しては、新銀行はいわゆるバルクでサービサーに売っている、こういった答弁があったんですが、この延滞債権の売却についても、そのように理解してもよろしいんでしょうか。

○十河金融支援担当部長 一般に、銀行では、貸出債権のうちで法的手続に入っているものや回収努力を行ってもその見込みがない長期の延滞債権についてバルクセールを行っており、新銀行東京も同様であります。
 なお、延滞債権等売却損は、そうした債権を売却した際の損失を計上したものでございます。

○神野委員 そうですね、新銀行は、今ご報告で回復基調にあるということでありますけれども、例えば、昨年度というんですか、平成二十三年の三月末の決算書を見ても、破綻先の債権は約二十一億、延滞債権も約十一億ということで、これからもこういう形で、バルクで売ってサービサーに債権を売っていくという、そういう処理が続いていくと思います。
 サービサーに債権を売られちゃうと、本当にとことん、これ、回収をされるわけでありますから、債務者としても大変なことになってしまうんですが、ただ、不良債権が出れば、血も涙もなく早期に回収をする。びた一文逃さないで回収をする。そして、返してもらえそうもない顧客には金貸さない。これは利益を追求する銀行ならば当然のことであります。
 しかし、中期経営計画を見ると、相も変わらずお客様への支援、中小企業の支援ということが強調されているんです。中小企業支援というと、都の政策的スローガンに流されて、これまで新銀行東京は、貸せもしないお客に貸し付けをして、失敗をしてきました。
 この今回の中期経営計画に書いてあるお客様への支援というのは、一体どういう意味なんでしょうか。本来、利を徹底して追求すべき民間企業である新銀行の現状を見れば、支援などという、いわゆる情が入るような余地なんかないと思うんですが、その辺、あわせて見解を伺いたいと思います。

○十河金融支援担当部長 ただいま委員のお話を伺いまして、確かに、営利企業としての銀行には、お話のような側面もあるのではないかと思います。
 しかし、そのようにいい切ってしまいますと、これは身もふたもない話でございまして、銀行の持つそうした枠組みの中で、各行はどのように特色を出して経営を行っていくか、それぞれ真剣に考えているところだと思います。
 新銀行東京は、株式会社である以上、黒字を維持しなければならないのはいうまでもありませんけれども、中小企業支援を行うために設立した銀行ということでありまして、利益を上げることのみを目的としているものではございません。
 こうした考え方で、新銀行東京は、中小事業者を初めとする地域における幅広い顧客の資金ニーズにこたえ、適時適切に資金供給を行うということとしております。
 なお、中期経営計画では、平成二十六年度までに中小企業向け与信残高を一千億円を超える水準にまで積み上げるとともに、収支は一貫して黒字を計上するということとしておりまして、中小企業支援と黒字経営を両立させる目標を掲げているところでございます。

○神野委員 ありがとうございます。ただ、伺っても、この新銀行が行おうとしている支援の意味というのが、どうも私、わからないんですね。
 きのうの予算特別委員会で、我が党の佐藤議員が中小企業支援のファンドに関する質問をされました。それに答えて局長が、中小企業の支援を行うには、当然、これ、リスクを負わなければならない部分があるんだ、このようにご答弁をされていらっしゃった。
 私も、それは理解できる。まさに、中小企業支援をしようと思えば、だれかがリスクを負わなきゃいけないんですね。それが、先ほどのファンドのような行政の施策ならば、当然、これ、中小企業を助けるというのは大きな目的に立った議論ですから、公費を投入してでも支援をしなければならない。議会でさまざまな議論を経て、そういう場面が出てくるということは、これは承知するんですけれども、果たして、利を追求する民間企業である新銀行に、それが当てはまるんでしょうか。
 新銀行は、これまでの経緯を見ても、例えばお金を借りることができない大変かわいそうな中小企業の支援、こういったことを目的としてきたために、当然企業としてやらなければいけないリスク判断というものを緩めて、大きな失敗をしたわけですよね。
 そして、その原因は何かというと、繰り返しになるんですが、東京都の銀行として、いわゆる情が求められる支援と、そして営利企業として追求しなければならない利とのバランスを誤ったんだと思うんです。
 資本金に、公金、東京都のお金が投入されている銀行でありますから、私もいろんな方から伺って、銀行の担当の方、大変なんです。要するに、融資を都民が申し込みに来ると、東京都の銀行なんだから金貸せよといういわれ方、必ずされちゃうんですよね。常に、こういう銀行は情けを求められてしまう、そういう宿命がある。でも、この宿命こそ、全国でいわゆる第三セクターの事業が惨たんたる結果に陥った原因なんです。企業として再生を目指す新銀行が、再生を本当に目指すのであるならば、冷徹に利の追求をしっかりとしていただきたい。
 今は再建中でありますから、新銀行の経営目標に中小企業への支援というスローガンを入れていたとしても、バランス感覚を保って、今後、経営は行われていくと思うんです。しかし、時の経過や知事の交代によって、いつ、そのバランスが狂って同じ過ちを犯さないとだれが保証できるでしょうか。
 私は、要望ですけれども、経営理念から、この支援、これを取り除いていただきたい。利に徹するということがどうしてもできないならば、今後の早期撤退を含めて、この銀行のあり方というものを真剣に検討していただきたい。このように思います。
 この新銀行のいわゆる中小企業支援なんですけど、ちょっと以前の議事録を見て、平成二十年に木内先生がこの経済・港湾で取り上げていらっしゃるんですが、平成十年に国立府中インターのすぐそばのホテルで、三人の中小企業の社長が首をつるという大変悲惨な事件があったんですね。非常にセンセーショナルだったので、覚えている方も多くいらっしゃるかと思うんですけれども、実は私、あの中心の会社の、当時、顧問税理士だったんですよ。
 それで、あの当時は、都市銀行が貸し渋り、貸しはがし、確かに本当に悲惨な状況で、私も社長と一緒になって銀行を回って、資金繰り、苦労しました。ただ、結局お助けをすることができなかったのは、これまでの私の人生の中でまさに痛恨の出来事だったんですが、あと何が悔しかったかというと、ちょうど平成十年の二月に社長たちは亡くなったんですが、その月の月末の資金繰りがパンクだということでああいう事態になったんですけれども、ふたをあけたら、資金繰り回ったんですよね。倒産をしたのはなぜかというと、ああいう事件が起きて、取引先が、カーショップでしたから店舗から商品を全部引き揚げて、それが引き金になって会社が倒産してしまった。
 そういう経験がありますので、中小企業の資金繰りというのは、本当に経営者の皆さんは命かけているんですよ。ですから、一番最善で本当に効果のある、中小企業に対する本当の意味での支援というもののあり方をぜひ考えていただきたい。そのことを要望させていただいて、次の質問に行きます。
 続きまして、以前の経済・港湾でも質問しましたが、中小企業にとっての技術についてお伺いいたします。
 中小企業にとっての技術というのは、これ、かけがえない宝であります。しかし、その知的財産を保護することに関して、まだまだ意識が足りないというのも事実であります。そうした中小企業を支援する知的財産総合センターの取り組みに関してお伺いをしたいと思います。
 私、前回の質問の後、この知財センター、訪問させていただいて、もろもろお話を伺ってまいりました。本当にすばらしい取り組みをされていらっしゃる。そしてまた、国もこの都の取り組みを参考にして、知財の保護に関しての政策を立てている。そういった実態がよくわかってまいりました。
 相談件数が、約五千件とのことです。ただ、いろいろいただいた資料を見ると、かかわった企業は、何回も何十回も相談に訪れていらっしゃる。相談件数に比べて相談企業数は、これ、実はもっと少ないんじゃないかと思うんですね。
 中小企業は、知的財産保護に関しての意識がまだまだ低い企業がたくさんあると思います。中小企業にとってのこの知的財産の保護というのは、海外において利用するというのももちろんなんですけれども、例えば国内において、大企業対策でもあるわけです。ですから、海外進出を考えていないような企業にとっても非常に大事なことだと思います。
 もっと多くの中小企業が知的財産についての関心を持つように、周知方法というものを考えていただきたいと思うんですが、現在の取り組みについて伺いたいと思います。

○河内商工部長 中小企業の技術を知的財産として保護し、活用していくことは重要でございます。
 東京都知的財産総合センターでは、中小企業向けに知的財産に関するセミナーを開催し、広く普及啓発に取り組んでおります。事業のPRにつきましては、東京都及び東京都知的財産総合センターのホームページに掲載するとともに、都内中小企業支援機関や区市町村に事業のパンフレットを配布しております。
 また、中小企業振興公社が経営支援等を行っている中小企業に対しまして、個別訪問をした際に知的財産総合センターのPRを実施しています。

○神野委員 すばらしい技術を持っていらっしゃっても、それを保護することも知らない、そういった中小企業がたくさんあります。
 特許というと、何かすごくハードルが高いんですけれども、いろいろお話を伺う中で、例えば自分の会社の技術ですとかアイデアとか、そういったものをメモ書きして、それを公証役場に行って認証してもらう。その程度でも、大企業との技術契約のときには対抗要件となる。これも知財センター、それの取り組みをされていらっしゃいますけれども、非常にハードルが低い取り組みもやっていらっしゃるということでありますから、今後もできる限り努力していただいて、少しでも多くの中小企業が自社の技術に対して関心を持てるような、そういった環境をぜひとっていただきたいと思います。
 続きまして、知的財産への意識啓発は、中小企業にとって非常に大切です。
 特許、実用新案、意匠権、さまざまな権利の取得によって経営というものが守られていくんですが、この知的財産への意識を高めるということは、さらに技術の流出の防止にも効果があると考える。技術流出対策についての都としての支援、これは行っていらっしゃるのか、質問をいたします。

○河内商工部長 中小企業の中には、技術力はすぐれているものの、秘密保持などに関する対応が必ずしも的確にできていない企業も存在しております。
 知的財産総合センターでは、相談の内容に応じまして、特許権等の知的財産権による保護方法、秘密保持のための契約書の書き方や社内規程のつくり方など、きめ細かいアドバイスを実施しております。あわせて中小企業の秘密保持管理に関するセミナーも開催しております。
 こうした取り組みを通じまして、中小企業の知的財産の保護を総合的に支援しております。

○神野委員 営業マンの方へのセミナー等を通じて、技術流出に関する意識を高める取り組みもされていらっしゃるということも理解をしております。
 我が国は、法制度でこの技術流出というものを防ぐすべを持っていないんですね。仮に法整備を整えたとしても、自分の意思で合法的に技術を流出させるという動きをとめることができないんです。
 さきの委員会でも申し上げて、テレビで見た、大手電機メーカーの社員が、週末、大挙して韓国に渡って技術指導をする。こういった動き、これは、その当該の会社が社員のパスポートを預かるような、そんなことをしなければ、なかなか防ぐことができない。
 また、これも先日ちょっと見たんですけれども、韓国のサムスングループが、愛知県の大学と共同で、薄くて折り曲げられる大型ディスプレー材料を開発したとの記事がありました。その大学教授は、ナノテクの権威でノーベル賞候補、つまり日本メーカーと競争しているそういったサムスンが、日本の先端技術を利用して日本のメーカーを脅かす。こういう構図が、もうでき上がっているわけです。
 酷ないい方をすると、研究者、技術者に愛国心というのを要求するのは、これ、無理かもしれません。でも、自身の行為が子孫の首を絞めている現実というものは、ぜひ知ってもらいたい。また、これは企業側にもいえるんです。安易なリストラを繰り返すことで、大切な技術者がやはり同じように中国、韓国に渡って、そして、結果として技術は流出をしていくということであります。
 目先の利益にこだわることで起きる、こういった合法的な技術流出というものをとめる。そのためにも、これ当然国がやることなんですが、都としても、これまで以上の啓発の取り組みを要望させていただいて、次の質問に移りたいと思います。
 あと、海外での販路拡大、それに伴って、海外での特許権、意匠権等の申請についての相談が増加しているというお話を伺ってまいりました。
 海外においては、それぞれ事情も異なり、国ごとの事情を踏まえた上でのアドバイスが必要だと考えます。最前線で中小企業の相談に乗っていらっしゃる相談員の方々は、約二十名と伺っています。こうした方々は、大企業の知財部門の経験をお持ちの方々を公募されて、こういった相談員になっていただいている。
 これ、本当にすばらしい取り組みなんですけれども、一口に海外といっても、国ごとの事情は当然異なります。国別にきめ細かいアドバイスが必要と考えるんですが、見解を伺いたいと思います。

○河内商工部長 知的財産総合センターでは、中小企業の海外の知的財産の保護などに関する相談を行っており、近年、対象となる国が新興国を初めとしまして多様な広がりを見せる中、国ごとの制度の差異を踏まえた、きめ細かい対応に取り組んでおるところでございます。
 来年度は、海外における知的財産の保護や活用に関する高度な相談内容に対応できるアドバイザーを増員し、体制の充実を図ります。
 こうした取り組みによりまして、海外における中小企業の知的財産の保護を着実に支援してまいります。

○神野委員 ありがとうございます。
 海外と一言にいうと、何となく、海外、すべての国々が含まれるんですが、ただ、国ごとに、例えば日本に対して極めて親日的な感情を持っている国もあれば、日本に対して反日的な心情を持っている国もある。当然、歴史も違うし、宗教も違う。そういった意味で、やはり国ごとにきめ細かいアドバイスを行って、日本の企業が進出をする、販路拡大をする、そういったときにおいても、そういう一つの見識というものを踏まえた上でのアドバイスというものができる体制ができれば、非常に理想的だなというふうに思います。
 次に、これ最後ですけれども、特許や意匠権を取っていても、海外に頼んで物をつくると、製品が届く前にその国で同じ物が売られていた。そんな話も聞きます。外国での権利保護というのは、とかく大変難しいものなのでありますが、実際に、海外でそういったトラブルが起きたときの都としてのサポート体制、どのようなことを考えていらっしゃるか、伺いたいと思います。

○河内商工部長 海外取引を行う企業の技術などを知的財産として保護し、活用する必要性が高まる中、その対応を独自の力で行うことの難しい中小企業を支援することが重要となっております。
 知的財産総合センターでは、外国企業による知的財産権の侵害に対する相談を受け付けるとともに、平成十六年度から中小企業が知的財産権の侵害の状況を調査する経費の助成を実施しております。
 今後とも、海外における中小企業の知的財産に関する支援を着実に進めてまいります。

○神野委員 中国は、日本から手に入れた新幹線技術、これを自国の技術、独自技術と宣伝をしてアメリカに売り込んで、我々もあいた口がふさがらなかった。これは記憶に新しいところであります。
 よく、日本も過去に他国から文化や技術を取り入れてきた。だから、今さらいうのはおかしいじゃないかということをいう人もいるんですけれども、でも、我が国は、世界を舞台に知的財産権を無視したり、それから他国の技術なのに自国の技術と偽るようなまねは、これまで一切してきませんでした。日本は、本当に人がいいといわれるほど、まさに道義大国であるわけであります。
 今、盛んにグローバリズムということがいわれていますよね。グローバリズム、国と国との闘いですよ。そうなると、これまでみたいに友好だとか親善だとか、そういったいわゆる生易しい、そういう概念で外国とのこういった企業間競争を考えるのではなくて、しっかりと日本の技術を守る。いってみれば技術の安全保障のような観点を持って、中小企業の技術と、そして利益を守っていただきたい。
 そのことをお願いして、質問を終わります。

○前田産業労働局長 先ほど委員から、新銀行東京のことに関連して、かなり奥の深いご意見があって、ずっと考えていたんですが、ようやく考えがまとまりましたので、述べさせていただきたいと思います。
 中小企業を我々支援しておりますけれども、そもそも考えてみれば、中小企業の経営というのはやっぱり経営者がリスクをとって行っているわけです。そういう中小企業を我々は支援しているわけですから、リスクと無縁ではないと思います。その支援のためには、もちろん全体のバランスの中でですけれども、必要なリスクは当然向き合わなければいけない。このような考え方でやっております。
 それから、東京における中小企業の重みというのは、今さら私がいうまでもないと思いますが、中小企業に対する支援はさまざまなものを総合的に展開する必要があるんだと思います。ぐるっと円周を囲むようにできれば一番いいのですけれども、そういう中で、具体的にどういう支援を、どういうことをやるのかといえば、やはりそのメニューというのも多様にそろえる必要がある。
 先ほどお話しのように、新銀行を設立する契機となったのは、やはり当時の銀行界における貸し渋り、貸しはがしだったと思います。東京都という行政がそういうところに直面して、新銀行を設立するようになりましたけれども、東京都が出資して設立する、しかも銀行法に基づく銀行という器の中でそれを行うというのは、やはりそう簡単な話ではなくて、当時の設立段階のときも、かなり議論があったと思います。新銀行と銀行の前に新という名前がついているのも、恐らくそういうような検討のあらわれではないかと思います。
 確かに、委員お話しのように、旧経営陣のときに貸し出しと運営の、経営のバランスを誤って経営危機に陥って、都民の方に大変ご迷惑をかけたのは、それはご指摘のとおりでございます。しかし、先ほどもお話がありましたが、銀行界の本質がそうだということで仮にあれば、もうこの前のときに懲りて二度と貸しはがし、貸し渋りは起きないかというと、それもまた、そうもいえないのではないかといろいろ考えます。
 現在の新銀行は、まだまだ課題はございますが、一店舗とはいえ二百人の従業員を抱え、多数のお客様がいて、再建も着実に進んできていると。そういう意味では、社会的資源の一つであるだろうと思います。赤か青か、白か黒かと両極端ではなくて、その中間の色に何か可能性があるのではないかと。現寺井社長は銀行界ご出身の方で、そういう課題のある新銀行を率いて、これまでそれなりの、我々からすれば想像以上の実績を上げていると思います。
 そういう形で、今回、中期経営計画を策定して、これからの三年間取り組んでまいりますので、我々も今のお話を胸に置きながら都内の中小企業のために頑張りますけれども、また各四半期ごとに決算を報告し、ここの経済・港湾委員会でご議論いただきますので、それをごらんになられて、また必要なご意見なりアドバイス、あるいはご声援をいただければと思います。

○神野委員 ありがとうございます。
 物事というのは常に、今おっしゃるように葛藤でございまして、すべて一面から物事を切り取るということはなかなか難しいんだと思います。そのバランスがどちらに振れるかによって、当然、先ほどからいっているように、利にすべて振れるのであるならば、このいわゆる東京都の銀行という存在価値は多分なかなか難しい、必要性もなかなか難しいんだと思うし、そうかといって情に振れ過ぎても経営を誤るという、そのバランスをやっぱりしっかりと持っていただきたいと思います。
 ただ、あと一点だけいいますと、本当に中小企業にとっての、いわゆる短期の資金繰り、例えば手形のジャンプだとか、今月の売り上げが下がって、でも、二カ月先ならばお金が入るとか、そういう資金繰りを銀行もしっかりと一緒に追っていただけることによって、無担保・無保証でも短期の資金繰りを賄うための融資という分野もあると思いますので、どうか中小企業のためという銀行であるならば、親身になって一緒に経営を考える、そういった環境をつくっていただきたいと思います。
 以上です。

○伊藤(ま)委員長 この際、議事の都合によりおおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時三十分休憩

   午後三時四十五分開議

○伊藤(ま)委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○山崎委員 私から五問程度でございますが、早速質問に入りたいと思います。
 この困難な時代を切り開いていくのは、やはり中小企業の前向きな力が絶対に必要だと私は思います。そのようなところから、ベンチャー企業の成長、そして、中小企業の販路開拓、そして、中小企業を後押ししていく支援策がいっぱいあると思いますので、その点について何点かお聞きをしたいと思います。
 初めに、中小企業に対する金融支援について伺います。
 産業空洞化の危機に対処するためには、創業の促進が非常に重要な課題となっております。我が党は、さきの予算特別委員会でも取り上げさせていただきましたが、厳しい経済環境が続く中、信用力、そして、担保がないために銀行などからの融資による資金調達が困難な状況にあるベンチャー企業に対して、ファンドを通じて資金を供給し、新たな産業の担い手をしっかりと育成していくことは大変重要だと思います。
 都では、これまでもファンドによるベンチャー企業支援を行っておりますが、まず、その取り組みの成果について伺います。

○寺崎金融部長 副委員長ご指摘のとおり、創業間もないベンチャー企業は信用力や物的担保がないため、制度融資のような間接金融の手法による支援には限界がございます。
 このため、都は、平成十二年度に、将来性のあるベンチャー企業に資金を供給する二つのファンドを立ち上げ、成長過程にあるベンチャー企業を直接金融の手法で支援をしてまいりました。
 これまでのファンドでは、創業間もない、いわゆるアーリーステージにある企業を中心に、二つのファンド合計で、百十五社に対し資金と経営の両面から支援を継続した結果、十六社が株式市場に上場を果たし、八社がベンチャー技術大賞を受賞いたしました。
 また、ファンドの支援先企業一社当たりの平均売上高は、支援前に比べ約四倍に増加しており、平均従業員数でも約二倍に増加するなど、支援先企業の着実な成長が確認をされております。
 さらに、支援を受けた企業からは、売上規模や利益額が小さい段階で、研究開発に必要な資金を確保でき、基幹製品の開発に注力ができた、製品化に向けた設備投資ができ、売上増加につながったなどの声が寄せられておりまして、ベンチャー企業の成長促進に成果があったものと考えております。
 なお、今年度中に存続期間が終了いたしました二つのベンチャーファンドの清算結果でございますが、一つが結果として分配金等が出資額を大きく上回り、もう一つが若干下回りました。
 この二つのファンドにつきましては、ファンドの運営期間中の経済動向や市場環境に恵まれた側面がございますものの、政策目的達成とリスクとのバランスが十分に満足された結果となったというふうに考えております。

○山崎委員 今の答弁で、成果が具体的にあったことがよくわかりました。やはりベンチャー企業を支援するには、しっかりとしたそういうファンドを使って支援をしていかなければならない。リスク等、そういったものはあるかもしれませんが、やはりバランスよくそういった支援をしていただきたいことを強く要望させていただきたいと思います。
 いろいろなところから、お話の中で、支援を受けた企業からは、都が出資しているファンドは公的支援の側面があり、安心できるとの声も多いとのことであり、そういったことで、都がファンドによる支援を行う意義がやはり大きいものと私も感じています。
 今年度、既存のファンドが終了を迎える中、引き続きファンドを通じてベンチャー企業の成長、そして、育成に取り組むことは重要であり、都が来年度、改めて新たなベンチャーファンドの立ち上げを予定していることは、まさに時宜を得たものと思います。
 そこで、新ファンドについて伺います。
 まず、都が来年度立ち上げを予定している新たなベンチャーファンドの概要とその特徴はどのようなものなのかお伺いをし、あわせて、設立のスケジュールについてもお伺いをします。

○寺崎金融部長 新たなファンドは、都が二十億円を出資する一方で、ベンチャー企業の成長支援という都の政策目的に賛同する民間事業者や公的中小企業支援機関等からの出資を得まして、全体で六十億円規模で設立をしたいと考えております。
 支援対象を、これまでのアーリーステージの企業のみならず、事業拡大期に多額の資金が必要となる企業にも広げるとともに、経営支援に当たりましては、民間出資者との事業連携を促進する仕組みなどを新たに取り入れることを検討いたします。
 さらに、存続期間中には適切なファンド運営に努めまして、都の出資金に対する分配金がございました場合、新たなファンドでは、これを有効活用いたしまして、新たな企業に再投資を行うことで支援対象をさらに拡大することも考えております。これは、これまでのファンドにはなかったものでございます。
 あわせて、現下の投資環境を考慮いたしまして、都は、ファンドの運営者から運営状況等について定期的に確認を行い、政策目的に沿った適正な運営が行われているかという視点から、適正な監視を行ってまいります。
 今後のスケジュールでございますが、ファンドの運用者を企画提案方式により選定いたしまして、都の政策目的に賛同する民間出資者等とともに、年内を目途にファンドを設立したいと考えております。

○山崎委員 今までの取り組みを踏まえて、これから新ファンドではさらに効果的な支援を検討をしている、そういう話がございますが、今、答弁の中に、民間出資者との事業連携という答弁がございました。これを、具体的にはどういったものなのかお伺いをします。

○寺崎金融部長 創業間もない企業は、自社の努力だけでは技術のさらなる展開やビジネス機会の拡大等に必要なネットワークを築くことが困難でありまして、こうした課題に対応した効果的な経営支援が必要でございます。
 このため、都は、民間のリソースを活用した共同研究開発や、ビジネスマッチングによる販路拡大につながる支援の仕組みをスキームに盛り込みまして、ファンドの運用者及び出資者である民間事業者による効果的な支援を実現したいと考えております。
 加えて、ファンド支援の終了に当たりましては、従来目指してまいりました株式市場での上場だけでなく、民間事業者との効果的な資本提携なども視野に入れるなど、出口支援の多様化を図っていきたいと考えております。

○山崎委員 民間の出資者、やはりこれを多く取り込んでいかなければいけないと思います。ですから、やはりいろんな方法で、民間の人たちに、事業者の人たちにも参画をしてもらわなきゃいけないわけですから、しっかりとその広報をぜひお願いをしたいと思います。
 ファンドによる支援内容は、今後具体化されていくと思いますが、これまでの取り組みも踏まえて、さらに支援内容を充実させ、将来性のある中小企業の成長支援にしっかりと取り組んでいただくように要望したいと思います。
 次に、中小企業の販路開拓支援について伺います。
 東京都では、中小企業の技術力を伸ばすためのさまざまなサポートを行って、これまでも着実な成果を上げているものと考えています。新製品や新技術の開発助成のように資金負担を減らす仕組みもあれば、ベンチャー技術大賞による表彰などを通じ技術開発を奨励し、会社の信用度も高めるような施策などは、中小企業にとって非常に心強いものとなっていると感じています。
 都から助成金の決定や表彰を受けることに加え、さまざまな技術開発支援の対象となることは、中小企業の持つ技術への信用力を高める上で効果のあるものと考えますが、さらにこうした先進的な技術や製品については、都として販路開拓までも積極的にフォローをしていくことが重要です。
 そのために、都から支援を受けた技術開発などを対象として、中小企業が販路開拓を行う場合に支援を行う仕組みを充実をさせていくべきと考えますが、所見を伺います。

○河内商工部長 すぐれた製品や技術を開発した中小企業の販路開拓を支援していくことは重要でございます。
 そのため、都は、技術や経営の能力についてすぐれた水準にあるとの評価を行った企業に対しまして、中小企業振興公社に設けた基金を活用して、国内外の展示会出展などに要する経費を対象に、市場開拓支援事業として資金助成を行っているところでございます。
 本事業に対する中小企業の利用ニーズは非常に強く、申請が予定を上回る状況が続いており、事業効果も高いことから、平成二十四年度は助成額をこれまでの五千万円から一億二千万円にふやして、支援の充実を図ることといたしました。
 今後とも、すぐれた技術を生かして開発した製品の販路開拓を目指す企業を的確に後押ししてまいります。

○山崎委員 ぜひ、予算も拡大をさせていただいておりますから、しっかりと支援の充実、また、さらに加速を続けていただきたいと思います。
 中小企業が自社で開発した製品などの販売先を確保していくためには、企業や製品に対する信用力を高めることが何よりも重要であります。
 私の知り合いの経営者の話でございますが、会社の製品の商談をスムーズに進めるためには、東京都のような公的な機関が実際に導入している例があることが非常に決め手になる場合が多いという話も聞きます。やはり東京都が使っている、都が使っている、いわゆるそういうお墨つきというものは非常に大きな部分を示すものだと思いますから、そういった部分でしっかりと支援をしていただきたい、私はそう思います。
 実際に、都では中小企業のすぐれた製品を買い上げてさまざまなセクションで使用することを通じ、会社の信用力や知名度の向上に結びつけるトライアル発注認定制度を実施しています。こうした施策は、中小企業の要望をしっかりと受けとめたものであるだけに、その内容の充実にはとにかく力を入れてほしいと感じております。
 中小企業はさまざまな業種で幅広く活躍しているわけですから、トライアル発注認定制度の対象を広げるような工夫を行って、事業の成果を高めていく取り組みが必要になると考えますが、所見を伺います。

○河内商工部長 中小企業が信用力や知名度を高め、販路開拓を円滑に進めていくための支援を行うことは重要でございます。
 このため、都は、平成二十一年度より開始した東京都トライアル発注認定制度により、中小企業の新規性の高いすぐれた商品を認定し、都みずからがその一部を購入し、各局で試験的に導入を行っております。
 これまでに百十五の商品を認定いたしまして、試験的購入は五十三商品に上る見込みとなっております。
 また、事業成果に関するアンケートによれば、認定を受けた事業者の八割以上が商品の信用力が向上したとするなど、本制度により販路開拓が着実に進むとの成果を上げております。
 お話のとおり、都内の中小企業の販路拡大の機会をふやしていくため、来年度は認定の対象を商品だけではなく、インターネットを通じてビジネスソフトウエアの利用を可能とする新規性の高い仕組みなど、サービスの提供も含めることといたしまして、支援の充実を図ってまいります。
 こうした取り組みによりまして、中小企業の販路開拓をより効果的に支援してまいる所存です。

○山崎委員 東京都も、やはりこれだけの大きな企業といえば企業、いろんな各部門がありますから、ぜひそういった意味で、東京都がお客という立場もあるわけですから、中小企業のそういう商品をぜひ有効に利用していただいて、活用していただいて、それがまたさらに、その中小企業に対しての箔がつくというか、そういった部分にも必ずつながってきますから、そういった意味も含めて、ぜひ中小企業の支援をこれからも充実し、さらにスピード感を持ってやっていただきたいと思います。
 質問を終わります。

○高倉委員 観光施策と、それから、新銀行東京について二点質問をさせていただきたいと思います。
 さきの予算特別委員会では、我が党の東村政調会長が、特に福島を対象とした被災地の応援ツアーということについて質問させていただきました。来年度、継続して実施をするということで、大変福島の皆様も大きな期待を寄せているわけでございますけれども、これは何といっても、昨年の大震災で、やはりあの原発事故、そして、それに伴う風評被害というのは大変深刻であって、なおかつ、まだ尾を引いていると、こういった状況があった中での現地からの強い要望に都はこたえたものであると、こんなようなことであります。
 あわせて、予算特別委員会では、東京の教員の方々を福島に、これは防災教育の一環として派遣をすべきであると、こういった質問も、これは教育長に対してしたわけですけれども、実はこれも、福島に従来行っていた学校の教育旅行というのが、特に東京が非常にキャンセルが多い。そういった面から、私たちも現地を調査してまいりまして質問をしたわけでありますが、防災教育の面だけではなくて、やはり観光の面からの取り組みという側面もあって質問させていただいたわけであります。
 目を転じまして、海外から日本に来る旅行者、こういうところに目を転じたときに、やはりこの原発事故に伴う、いってみれば風評被害というんでしょうか、こういったものがやはりいまだに大きく影響している状況もあるのではないかなというふうに思っております。
 震災以降、観光の面で大きな影響を受けまして、外国人の観光客の来日が大幅に減少しているわけであります。東京を訪れる外国人観光客への具体的な影響、また、経済的な影響、どんなぐあいになっているのかというのは大変気になるところでありますが、私、昨年の本委員会の質疑で、外国人の観光客について確認をさせていただきましたけれども、去年の九月の時点で、前年同月比で二四・九%減であるといったようなお話がありました。
 これは国全体のことでありまして、本当に、できればいずれ、東京としての、外国人の東京に来る実情というのをちゃんとわかるような取り組みも私は必要ではないかと思いますけれども、まず、その後の外国人旅行者の回復状況についてご説明をいただきたいと思います。

○横山観光部長 JNTO、日本政府観光局によりますと、訪日外客数は、平成二十三年九月、ご指摘ございましたように、対前年同月比で二四・九%の減となってございます。
 それが、十二月には一一・七%の減、そして、二十四年一月は四・一%の減となっておりまして、国、地域によって差はあるものの、全体として回復傾向にございます。
 なお、東京都のデータでございますが、これは年間のデータをまとめて年一度公表してございまして、現在のところ、月別のデータについてはとってございません。

○高倉委員 震災の直後、特に昨年ですけれども、外国人の観光客が大幅に減少していたわけですが、今のご説明で、それから一年が経過をする中で、ようやく一けた台にまで回復を見せてきていると、こういう状況だというふうに思います。
 そうした中で、東京都は昨年の補正予算の編成以後、緊急的な取り組みを含めてさまざまな取り組みをしてきているわけであります。この間の外国人の観光客の回復に向けた都の具体的な取り組みについて、改めてご説明をいただきたいと思います。

○横山観光部長 都は、外国人旅行者の回復に向けまして、震災発生後、まずは正確な情報発信を行うべきといたしまして、ウエブサイト等によりまして、東京の日常風景等の最新情報をわかりやすく発信するとともに、知事から世界各国の旅行事業者等に向けましてレターを発出してまいりました。これが震災から三カ月程度の間の取り組みでございます。
 そして、夏以降、世界各国の旅行事業者等に直接働きかける取り組みを積極的に実施しております。
 具体的には、民間事業者とも連携をいたしまして、アジア、そして欧米豪州から旅行事業者等を東京に招聘いたしまして、実際の東京を体験してもらう機会を設けております。
 加えて、東京で開催される国際会議を活用してPRを行うなど、東京の安全性や魅力を集中的に発信してまいりました。
 さらに、本年一月から二月にかけまして、外国人旅行者の回復が特におくれている欧州においては、有望市場の一つでありますスペインにおいて、また、アジア地域では、緊急対策といたしましてタイ、マレーシア、シンガポールで観光プロモーションを実施いたしました。

○高倉委員 今、アジア地域において、タイ、マレーシア、シンガポール、こういったところで観光プロモーションを実施したという答弁がありました。私は、アジアからの観光旅行者というんでしょうか、東京の観光振興を進める上で極めて大事ではないかというふうに思っているわけであります。
 このところ、報道などを見ますと、中国や台湾といったところからの旅行客、これがかなり大きく回復をしてきているといったような状況なわけですけれども、そうした中で、すぐお隣の国の韓国からの旅行者、この回復がちょっとおくれているというようなことがあります。
 この都庁にも、展望台にかなり外国人の方が来ていまして、随分、韓国の方々も来ていると思います。また、来ていたというんでしょうか、特に被災前。私なんかも、この議会棟の地下の駐車場に行きましたら、あそこでうろうろしている韓国人がいまして、都庁の展望台はどちらですかというようなことで、本当に……。
 そんなこともあって、普通にこの近辺でもお見かけをしたわけですけれども、そうした状況の中で、今まさに韓国からの旅行者の回復がおくれていると。そういう中で、東京の外国人旅行者の本格的な回復には、韓国からの誘致というのは不可欠ではないかなと思っております。
 このおくれている韓国からの旅行者回復に向けた都の取り組みについて、ご見解を伺いたいと思います。

○横山観光部長 JNTO、日本政府観光局によりますと、韓国からの訪日外客数は、対前年同月比で、平成二十四年一月のデータでは三五・四%の減となっております。昨年四月の六六・四%の減を底に減少幅は縮小しておりますが、九月以降、五カ月連続で三〇%台の減少が続いております。
 韓国からの旅行者は、震災発生前の平成二十二年におきまして、訪日外客数の約三割を占めているということで、極めて重要な市場であると考えております。
 そのため、都はこれまで、緊急対策として、韓国の旅行事業者やメディアを招聘し、商談会を実施するとともに、取材を支援するなど、積極的に旅行者の回復に努めてまいりました。
 さらに、こうした状況を踏まえまして、都は、来る三月十八日から三月二十日まで、韓国においてプロモーション活動を実施し、現地旅行事業者等に対しまして、旅行目的地としての東京の安全性や魅力を直接PRし、旅行者の回復につなげてまいります。

○高倉委員 今、三月十八日といいますともうあさってだと思いますが、韓国においてプロモーションを実施するというようなことで、私も期待をしたいと思います。
 その具体的な成果、あるいは効果といったようなものも、いずれまた機会があれば質疑もしていきたいなと思っておりますけれども、今後、東京の観光振興に向けた外国人旅行者の誘致には、韓国を含めまして、経済的にも結びつきが深く、成長が著しいアジア地域を私は重要視する必要があるのではないかというふうに思っております。
 今、質疑をしてきたのは、いわば緊急対策としての東京の取り組みというところが中心だったと思いますけれども、今後といいますか、来年度、平成二十四年度の、特にアジア地域に対する観光プロモーションへの具体的な取り組みについてご答弁をいただきたいと思います。

○横山観光部長 都は、欧米、豪州のほか、訪日外国人旅行者の多くを占めるアジア地域を対象に、東京観光財団と協力をいたしまして、現地の旅行事業者に対して民間事業者とともに訪問営業を行うなど、観光プロモーションをこれまでも積極的に展開をしてまいりました。
 来年度は、今年度に引き続きまして、集客の可能性が高いアジア地域からの旅行事業者や旅行メディア等を東京に招聘するなど、東京の安全性や魅力を強力にアピールしてまいります。
 また、市場規模が大きく成長の著しい中国におきまして、旅行博覧会に出展をし、旅行事業者等に向けた東京のPRを集中的に行うとともに、市場規模の拡大が見込まれる都市を選定いたしまして、現地旅行事業者と連携した販売促進キャンペーンを行ってまいります。
 こうした取り組みを通じまして、アジアからのさらなる旅行者誘致を図ってまいります。

○高倉委員 次に、新銀行東京についてお伺いいたします。
 新銀行東京が再建計画に続く中期経営計画をこのほど発表いたしました。去る二月に発表されました平成二十四年三月期の第三・四半期決算においては、実質業務純益、そして当期純利益、いずれにおいても黒字を計上しまして、二十四年三月期の決算も黒字を計上する見込みであるなど、再建計画はその役割を果たしてきたものと認識をしております。
 次のステージである中期経営計画に移るに当たりまして、質問をいたしますけれども、まず、都は、新銀行東京のこれまでの取り組みをどのように評価をしているのか、ご答弁いただきたいと思います。

○斎藤金融監理部長 新銀行東京は、四百億円の追加出資を受けて再建に着手して以来、再建計画に沿って、規模を縮小し、リストラを断行するなど、大幅なコスト削減を行うとともに、収益の拡大に努めながら、リスク管理を徹底し、デフォルトや延滞、新たな不良債権の発生の抑制に努めてまいりました。
 その結果、再建計画二年目の平成二十一年度に当期純利益が黒字化し、三年目の平成二十二年度には実質業務純益が収支均衡し、この時点で半期ベースでは黒字になるなど、計画を前倒しして黒字化を達成いたしました。
 再建計画最終年度に当たる今年度は、実質業務純益十億円、当期純利益八億円の黒字を計上する見込みとなっております。
 また、純資産は五百億円を超える水準を確保しておりまして、再建計画を大幅に上回っております。
 これまでの四年間で、再建は着実に進捗してきたと評価をしております。

○高倉委員 再建は着実に進捗をしているということであります。我が党の予算特別委員会の代表質問においては、なお課題も残されており、第二次再建計画ともいうべき性格を今回の中期経営計画は有していると、そういった答弁もあったわけであります。
 この第二次再建計画の意味と、残された課題といったものはどういうものなのか、これについて見解をお伺いしたいと思います。

○斎藤金融監理部長 新銀行東京は、再建計画の取り組みにより黒字化を達成いたしましたものの、収益の内訳で有価証券運用益が貸出金利息を上回っていることや、不良債権比率が一〇%を上回り、他行に比べ高い水準にあること、また、総資金利ざやがマイナスであることなど、なお課題が残されていると認識をしております。
 新銀行東京は、本計画期間を通じてこうした課題を克服し、安定した黒字体質を継続しつつ、ビジネスモデルを確固たるものとすることを目指すとしております。そうした意味で、第二次再建計画ともいうべき性格をも有していると考えます。
 計画の達成のためには、リスク管理の徹底やさらなる経費の削減などの内部管理とともに、他行との競争の中で顧客開拓を図るという一層の営業努力が求められますが、新銀行東京は、こうした取り組みを確実に実施し、経営基盤の一層の強化を目指す段階に来ているものと考えます。

○高倉委員 新銀行東京の設立目的である中小企業の支援についてでありますけれども、中期経営計画においては、中小企業を初めとする地域支援を二大看板の一つとしているわけでありますけれども、この中小企業支援ということについて見解をお伺いしたいと思います。

○斎藤金融監理部長 中期経営計画における中小企業向け与信残高は、今年度、平成二十三年度の決算見込みの八百三十三億円から、平成二十六年度は一千百二十二億円と約三百億円増加することとしております。
 新銀行東京では、営業活動に取り組んできた中で、既存の金融機関との取引に不安を感じている中小企業が多数存在していると認識をしております。
 例えば、新銀行東京が都立産業技術センターとともに二月二日にセンターで開催したセミナーがございますが、ここで寺井社長が講演をしております。そのときの言葉をかりますと、本業のビジネスモデルはよいものを持っているが、過去に不動産事業に手を出して失敗したために、既存の取引銀行から貸し渋り等に遭ったというお客様がおりまして、こういう方々に新銀行東京が融資を行った事例があるというようなお話がございました。
 このような新銀行東京を必要とする顧客のニーズにこたえ、中小企業向け与信残高を着実に積み上げていくこととしております。

○高倉委員 今回の計画では、中小企業を初めとする地域支援と並んで、政策支援というのを二大看板の一つとして打ち出しているわけであります。この政策支援を打ち出した意図についてご説明をいただきたいと思います。

○斎藤金融監理部長 都が出資した銀行といたしまして、新銀行東京は、従来から金融、産業、行政などの機能を融合した新たな金融サービスを創造、提供することを経営理念の一つとして掲げてまいりました。しかし、深刻な経営危機からの脱却を優先する必要があったため、これまで十分に取り組むことができなかったとしております。
 再建が着実に進んできたことを背景に、今回の計画では、安定的な黒字体質を継続しつつ、これまで培った顧客とのリレーション等を活用し、東京都の政策支援に歩み出すとの方針を掲げたものでございます。
 他の金融機関との競争の中で、新銀行東京の特色を発揮し、これまでの取り組みと相まって、より強固な経営基盤をつくり上げていくことを意図しております。

○高倉委員 さきの予算特別委員会では、我が党の質問として、業務提携先を探して四百億円を保全回収をするステージに進むべきであると、こういった質問をしたわけでありますが、それに対して、知事は、健全な相手先との提携もその有力な考え方の一つであるというふうに答弁をしているわけであります。
 そのためには、中期経営計画を着実に達成をして、より強固な経営基盤を築くことが必要であります。この中期経営計画の実現の可能性というのはどうなっているのか、所見をお伺いしたいと思います。

○斎藤金融監理部長 お話のとおりでございまして、今回の中期経営計画は、その目標を達成することが極めて重要でございます。このため、新銀行東京では、これまでの実績の上に立って、堅実かつ着実に取り組みを行うとしております。
 例えば、貸し出しについてでございますが、新銀行東京は、これまで顧客とのリレーションを重視しながら貸し出しなどの資産を積み上げてきており、その内訳を見ると、設備資金への貸し出しが増加するなど、徐々に安定的な顧客層をふやしてきております。
 中期経営計画は、こうした実績を踏まえて策定されており、貸し出しなどの資産を平成二十六年度末までの三年間で約四百四十億円増加させることとしておりますが、これは、これまでと比べてこの増加ペースは無理のないものとなっております。
 また、信用コストや貸倒引当金の見込みなど他の項目も含め、バランスを図ったものとなっており、現実的な計画であると考えております。
 都は、引き続き監視と支援に努めてまいります。

○高倉委員 中期経営計画の着実な実施によりまして、安定的な黒字体質を実現し、足元を固めることがまずは重要であるというふうに思います。
 新銀行東京が世の中の信認を得て、企業価値を高めていくように、引き続き努力を重ねていただきたいというふうに思っております。
 そして、これまで我が党が主張してきたとおり、事業譲渡、あるいは業務提携を行って、追加出資を保全もしくは回収することを改めて要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。

○岡田委員 昨年の三・一一の東日本大震災以来、地震が非常にふえているといわれております。おとといの予算特別委員会のときにも、二度もぐらりと大きなのが来まして、本当に驚きましたけれども、やはり防災対策というのを日ごろからきちんとしておかなくてはならないのだなということをつくづく感じております。
 そこで、私からは、中小企業の防災対策についてお伺いをいたします。
 私の地元の中央区は、商業の中心地というイメージが非常に強いのですけれども、東京の経済と文化を支えてきた印刷業発祥の地であります。それゆえに、印刷業の会社がまだ数多く残っております。印刷業は、印刷物を仕上げるまで、多様な機械を駆使して一連の工程で印刷物を完成するものであり、機械の一台でも故障すると印刷物ができなくなってしまいます。
 こうした中、昨年の東日本大震災では、中小の印刷会社は、建物が損壊して一部の印刷機が稼働できなくなり、全工程がストップしてしまい完成品ができなくなるなど、大きな影響を受けたと聞いております。
 これらの会社経営者によりますと、今回の震災を教訓として、災害が起きても事業活動がとまることがないよう準備をしていきたいが、その方策がわからず、また、実行するための資金を確保することも困難であるとのことです。
 都は、災害時の事業継続の計画、いわゆるBCPの策定を支援していますけれども、そうしたサポートに合わせて、計画そのものが震災のときにきちんと実行されるよう、工場や事務所などの建物の耐震性向上のための支援を進めるべきだと考えますけれども、見解を伺います。

○河内商工部長 中小企業が、震災が生じても迅速に事業を再開するため、BCPをつくるとともに、事業所等の耐震性を高めておくことは必要でございます。
 都は、これまで中小企業のBCP策定を支援しており、その内容をPRしてまいりました。こうした中、BCPの実効性を高めるため、建物の耐震化の事例について紹介することが重要と考えておるところでございます。
 このため、来年度、都の支援によりBCPを策定した企業のうち、耐震診断や補強を行う企業を選び、モデル的に支援してまいります。

○岡田委員 地震のたびにひやり、どきっとして、これからの仕事ができなくなるのではないかといった、そういった心配、そして不安を取り除くことができるように支援をよろしくお願いいたします。
 次に、地域商業の活性化で買い物弱者支援モデル事業というのが今回、新規に出されております。その買い物弱者への支援について伺います。
 買い物に不便を来す、いわゆる買い物弱者という言葉が昨今ニュースなどで取り上げられておりますけれども、過疎地とか、そして山間部などで高齢者の方々が買い物に困っている様子はテレビで見ております。しかし、都心でも、私の住んでいる地元中央区、本当に都心でありますけれども、買い物弱者の姿が見られます。大型マンションが次々と建設される中、私の地元ですと入船町とか、そして湊町というところがあるんですけれども、まだまだ江戸の面影を残すような町名のまちです。木造の戸建て住宅が並び、昔ながらのまちの人々が声をかけ合って買い物をしてきた、そうした商店街が今は姿を消しております。
 高齢者の方々は、すぐそこにこの間まであった魚屋さんや八百屋さんがなくなってしまって、バスに乗って遠くまで行かなくてはならないとか、デパートが近くにはありますから、バスに乗ってデパートに買い物に行くなどといっております。
 また、バスに乗っていかなくても、少し歩いていけばその距離にコンビニエンスストアがありますけれども、昔のような親近感のある会話はできないし、野菜なども新鮮ではないといったことが、生活への不満の声が聞かれております。
 こうした状況などは、買い物弱者の一例を象徴しているようにも感じます。そして、中央区に限らず、千代田区や港区といったところもそうだと思いますけれども、都心地域における、これは谷間の課題でもあると考えます。
 都は、来年度から買い物弱者支援モデル事業を開始するとのことですけれども、まさに都内での買い物弱者への支援としては時宜を得た取り組みだと思っております。このモデル事業を具体的にどう展開されていくのか伺います。

○河内商工部長 買い物弱者につきましては、一昨年、経済産業省において報告書がまとめられましたが、これは過疎地などを含めた全国調査でございまして、大都市部である東京とは状況が異なることから、都内での日常の買い物行動に関する調査を実施いたしました。
 来年度は、この調査を踏まえまして、買い物弱者支援モデル事業を立ち上げ、買い物に不便を感じる住民を商店街が効果的にサポートする方法について検証してまいります。
 すぐれた成果を期待できる商店街の取り組みをモデル事業として選び、その支援を行う地元自治体の経費の半分について、一千万円を上限として補助いたします。
 事業の例といたしましては、購入した商品が重い場合などに、買い物客のために配達をする業務などを想定しているところでございます。

○岡田委員 ありがとうございます。こうした買い物弱者向けにスーパーなどが電話一本で配達してくれるような、そういったチラシもこのごろ、最近入ってきてはおりますけれども、やはり地元の商店の活性化と、買い物弱者支援との相乗効果を生む、そうした取り組みが大事だと思われます。さらなる促進をお願いいたします。
 次に、障害者に対する支援の推進で、今回、第九次東京都職業能力開発計画案が示されました。その中で、障害者に対する支援の推進ということで、東京障害者職業能力開発校において、発達障害者及び精神障害者を対象とした職業訓練科目の新たな設置を検討するとのことです。
 近年、目に見えない、また、はたからはなかなか理解されにくい障害である発達障害に大きく目が向けられるようになってまいりました。さきの一般質問でも、私は、就職のたびに数カ月で解雇されることを幾度も体験し、現在では自立して起業した発達障害のある成人女性の例を出しましたが、やはり就職面では非常に困難を伴っているのが現状だと思います。そうした状況をつかんでの今回の第九次東京都職業能力開発計画案は、大いに評価しているところでございます。
 さて、現在、東京都立職業能力開発センターでは、軽度な知的障害者への職業訓練を、足立校、板橋校、城南職業能力開発センター、そして、東京障害者職業能力開発校でも行っています。
 全校の定員に照らして、応募者数が二、三倍近くになっていますけれども、定員をもっとふやして拡充させる方向にはならないのでしょうか。
 また、就職率はほぼ八割近いのですが、この就職した人たちは継続して働けているのでしょうか、あわせて伺います。

○戸澤事業推進担当部長 軽度な知的障害者を対象とした訓練を実施している実務作業科では、入校選考時において、医療検査、適性検査、適応検査及び面接を実施し、これらの結果を総合的に判断して合否を決定しております。
 平成二十三年度の全校定員九十名に対し、二倍弱の応募がありましたが、専門的見地から、心身の状況により訓練の継続が困難であると判断される方も多いという実態がありまして、実質的な応募倍率はほぼ一倍前後となってございます。また、過年度についても同様の傾向にございます。
 今後とも、訓練の実施状況を踏まえつつ、必要な訓練定員を確保してまいります。
 次に、就労後の定着支援についてでございますけれども、おおむね就職後一年間は、地域の就労支援機関や企業と連携し、巡回訪問等を通じて、修了生の職場適応や職場環境の整備、障害に対する従業員の理解の促進などの支援を行っております。
 その後は、職業生活に密着した指導に豊富なノウハウを持つ地域の就労支援機関が中心となりまして、就労の継続に必要な人間関係や生活面などにおけるきめ細かい支援を行っております。
 こうした取り組みを通じ、平成十九年度以降の修了生につきましては、現時点ではほぼ全員が就労を継続してございます。
 今後とも、就労継続のため、企業、地域の支援機関との連携強化を図ってまいります。

○岡田委員 ありがとうございました。ぜひとも障害者、そうした弱者のための支援をこれからも引き続きお願い申し上げます。
 次に、外国人労働相談について伺います。
 二〇〇八年秋のリーマンショックによる経済危機以降、世界同時不況によって、全国的に外国人による就労相談や生活相談が増加し、生活保護申請も増加していると伺っております。
 世界的にも、外国人労働者に対しては受け入れ対策がとられ、ドイツでは拡大EU出身者の移民の流入制限を継続していますし、フランスでは、新たな移民に対して選択的受け入れを徹底し、社会統合をより一層強化しているとのことです。
 私たちの日本でも、中国人を筆頭に多くの外国人労働者がいますが、特に東京や大阪など大都市に集中しているとのことで、都は、外国人労働者の適正な労働環境の確保として、外国人労働相談を東京都労働相談情報センターで行っておりますけれども、ここ五年間の相談状況の経年変化について伺います。

○穂岐山雇用就業部長 都の労働相談情報センターで実施しております外国人労働相談の実績は、平成十八年度は二千百五十七件、平成十九年度は二千六百二十四件、平成二十年度は二千百七十二件、平成二十一年度は二千二百五件、平成二十二年度は一千二百八十九件となってございます。
 相談者の国籍別では、各年度とも中国が最も多く、韓国、アメリカが上位を占めてございます。

○岡田委員 この外国人労働相談は、英語による相談ができるところが飯田橋、大崎、国分寺の各センター、事務所ですけれども、中国語による相談ができるのは飯田橋のセンター一カ所だけです。
 今、伺っていましても、やはり相談は中国人が一番多いということです。相談者の四分の一と伺っておりますので、相当数だと思いますけれども、この多摩地域に住む中国人労働者は、飯田橋まで出てこなくてはなりません。
 相対的に区部に住む中国人の方が多いのかもしれませんけれども、多摩地域に在住する方々が多摩地域で中国語で相談ができるような配慮もすべきと考えますが、所見を伺います。

○穂岐山雇用就業部長 労働相談情報センターでは、毎週三日間、電話相談も含めまして、中国語の通訳を介しました外国人労働相談を実施してございます。
 平成二十二年度の中国籍外国人の相談は三百六十一件であり、そのうち中国語の通訳を介しました相談は百三十九件で、四割弱の割合であることや、外国人労働相談の約六割は電話による相談であることなどを踏まえますと、現時点で多摩地域に中国語通訳を配置した労働相談の実施は困難であると考えてございます。
 なお、多摩地域の十三の市におきましては、中国語に対応した一般的な相談窓口を開設していることから、これらの相談窓口と連携することにより、多摩地域における中国語による相談ニーズに適切に対応してまいります。

○岡田委員 これからの相談の推移を見ながら、また検討していただきたいと要望しておきます。
 外国人の雇用や生活問題にかかわる法律的な面での通訳をやっている知人から聞いた話なんですけれども、最近では、雇いどめや解雇、未払いなどから日々の生活困難に見舞われ、健康問題や子どもの教育にかかわる相談、また、犯罪に巻き込まれた相談などが増加し、仕事にとても忙しく、忙殺されているということを聞いております。
 外国人の方たちがもっと気軽に相談に行ける場所、安心して相談できるところがあればよいのだけれどというような話も聞いております。
 三年前の日本労働研究雑誌に、外国人労働者の雇用をめぐる相談事例が掲載してありました。東京都の労働相談について、これを読んで知ることができました。その中で、外国人労働者にとって、相談窓口等の情報がわかりやすく提供され、かつ相談しやすい体制が整備されることが望まれると書いてありました。
 また、外国人の労働相談は、潜在的にはさらに多くのニーズがあるものと思われることや、今後も外国人労働者の増加が見込まれることから、外国人労働相談通訳を配置した労働相談の役割もますます重要になるとも書かれていました。
 さて、労働センターが出しています外国人労働相談のリーフレット、これをいただきましたけれども、これでは、少し味気ない形式的なものなのにちょっと驚いてしまいました。ほかにも、もしかしたらパンフレットはあるのかもしれませんけれども、先ほどの雑誌に書かれていました、相談窓口等の情報がわかりやすく提供され、かつ相談しやすい体制が整備されることからは、ほど遠いものであります。
 もう少し温かみのあるものとか、そして、相談に足が運びやすいものにするとか、積極的にPRをするための、さきの東京都の労働相談に関する記事にある提言を反映した、利用者側の立場に立ってのいま一つの工夫が必要と思われますが、見解を伺いまして質問を終わります。

○穂岐山雇用就業部長 都はこれまでも、英語版、中国語版に加えまして、ハングルやスペイン語など、五言語にも対応いたしました相談案内のパンフレットを作成し、区市町村窓口や街頭労働相談等におきまして配布するほか、都庁各局、市町村に対しましても周知を行っております。
 また、労働相談情報センターのホームページにおいて、英語、中国語によるPRも行ってございます。
 なお、ご指摘のパンフレットにつきましては、相談窓口の紹介が目的であることから、必要な情報を簡潔に記載したものとなってございます。
 今後とも、外国人労働者の多く居住する区市町村などとも連携しながら、重点的に周知を行うなど、引き続き相談窓口の効果的なPRに努めてまいります。

○きたしろ委員 平成二十年のいわゆるリーマンショック以降の急激な景気の悪化に伴い、我が国は失業者が急増し、雇用情勢は深刻な状況に陥りました。
 国は、緊急経済対策等の施策を講じてきましたけれども、その後の対応のおくれなどにより、現在に至っても状況の変化、大きな改善は見られません。
 こうした状況を踏まえ、我が党はこれまでも行政が牽引して行う雇用創出の取り組みをしっかりと実施していく必要があると主張してまいりました。
 離職を余儀なくされた方々に対し、一時的な雇用機会を創出するための緊急雇用創出事業は、引き続き重要な役割を担っていると考えております。
 緊急雇用創出事業については、本定例会において、その財源となる基金の拡充を含む平成二十三年度最終補正予算が、先日の中途議決により可決、成立したところであります。
 そこで、まず初めに、現在の基金の状況と、緊急雇用創出事業における都のこれまでの実績についてお伺いをいたします。

○戸澤事業推進担当部長 緊急雇用創出事業臨時特例基金は、急激な雇用情勢の悪化による失業者の増加に対しまして、臨時的なつなぎの雇用の場を創出することを目的といたしまして、国の交付金を原資として創設したもので、都及び区市町村において、各種の雇用創出事業を実施するものでございます。
 平成二十年度の基金創設以降、これまでに数次にわたり基金の積み増しを行ってきておりまして、さらに今回、国の平成二十三年度第三次補正予算により、都へ八十五億二千万円の追加交付の内示がなされ、基金の総額は四百五十四億八千万円となる予定でございます。
 都は、この基金を活用いたしまして、基金創設から現在までで、当初計画を上回る約五万一千人の雇用創出を図ってまいりました。

○きたしろ委員 この基金を有効に活用して、積極的に雇用の創出を図ってきたことがわかりました。
 東日本大震災から一年がたった今も、都内にはいまだ多くの被災者の方々が避難を余儀なくされていることに加え、震災の影響を受けた都内企業も少なくありません。
 また、円高に関しても、都内にはその影響を強く受ける輸出関連企業が集積しており、雇用情勢の悪化も懸念されるところであります。
 こうした状況の中、平成二十三年度最終補正予算の議決を踏まえ、都は来年度、緊急雇用創出事業にどのように取り組むのかお伺いをいたします。

○戸澤事業推進担当部長 国は、昨年十一月の平成二十三年度第三次補正予算におきまして、被災者を対象とした従来の震災対応事業を拡充し、震災等緊急雇用対応事業を創設いたしました。
 この事業は、従来の東日本大震災による被災者に加え、震災や円高による失業者も広く対象者とするものであり、事業の対象も大幅に拡大されました。
 このように、対象者や対象分野が大幅に拡充され、従来より一層効果的かつ柔軟な事業展開が可能となったことから、都は、このメリットを最大限活用するとともに、庁内各局や区市町村とも連携を密にして、既存の緊急雇用創出事業とあわせ、一人でも多くの失業者につなぎの雇用の場を提供してまいります。

○きたしろ委員 やっぱり失業者にとっては、仕事があるかないかというのは非常に大切なことなんですけれども、ただ、生活のつなぎとなる臨時的な雇用の場は大事だけれども、これから先、しっかりと緊急雇用創出事業に取り組んでいただくように要望をしておきたいと思います。
 さて、臨時的な雇用を確保すること、もちろん重要なことであります。これは、あくまでもつなぎであり、本格雇用への移行もまた重要なことでございます。
 しかし、多くの方の本格的な雇用を実現するためには、環境やエネルギーなど、今後の市場規模の拡大が見込まれる成長分野でしっかりと産業振興を図り、経済を活性化させて、雇用を創出することが不可欠だと思います。
 そういう中で、経済の活性化は一義的には国の責任において行うべきものではありますけれども、国の対応がおくれている現状においては、都としてもしっかりと取り組むべき課題だと考えます。
 成長分野での産業振興のかぎとなるのは、人材不足に悩むこうした分野の中小企業の人材の確保を支援することです。
 一方、昨今の若者の雇用情勢が厳しい中、意欲はあるものの就職先が決まらない若者は数多く存在します。こうした若者と成長分野の企業とのマッチングを促すことは、雇用対策のみならず、企業の人材確保、ひいては産業振興にも大いに寄与するものと思います。
 若者と企業とのマッチングを促すことは、大変重要なことです。都では、平成二十四年度に成長分野への若者の就業を促す取り組みを新たに開始するとのことでありますけれども、その内容についてお聞かせをいただきたいと思います。

○穂岐山雇用就業部長 若者を取り巻く雇用環境が依然として厳しい中、環境・エネルギーや健康など、今後成長が期待できる産業分野への就業を促すことは、ご指摘のとおり、雇用対策のみならず、企業の人材確保にもつながり、産業振興の面からも重要であると認識しております。
 このため、都は、来年度、紹介予定派遣制度を活用し、二十代の若者の成長分野への就業を促す重点産業分野就業支援プログラムを新たに開始いたします。本事業は、パイロット事業として、複数の産業分野で百人規模で実施いたします。
 具体的内容は、六カ月以内で、成長分野での就業に必要な知識等を習得するための実践的な研修と、企業での就労体験を実施いたします。
 また、就労体験中は、受託事業者が参加者に対してカウンセリングを実施するとともに、受け入れ企業に対しましてOJTに関する相談に対応するなど、きめ細かくフォローし、正規雇用化を促してまいります。

○きたしろ委員 今後成長が期待される分野において、新たな人材を確保することも必要ですが、現在、今、企業で働いている従業員の育成もまた非常に重要であると考えます。
 都は、職業能力開発センターにおいて、在職者向けの能力向上訓練を実施していますが、中小企業が、今後成長が見込まれる分野に進出していく上でも、核となる人材を育成することが重要です。
 都は、こうした企業の取り組みを支援していくべきであると考えますが、都の取り組みをお伺いいたします。

○戸澤事業推進担当部長 都は、中小企業の人材育成を支援するため、年間約七百コース、約一万九千人の規模で在職者訓練を実施しております。
 訓練科目の設定に当たっては、産業界の動向も踏まえ、毎年見直しを行ってきましたが、今般、成長分野という観点も加え、訓練科目を再構成いたしました。
 平成二十四年度は、新たに、環境分野では屋上・壁面緑化システム、IT分野ではスマートフォンの普及に対応したアンドロイド開発の基礎、安全・安心分野では建築物の耐震診断などの科目を設定いたしました。
 また、企業の要望に応じて、こうした分野の訓練についてもオーダーメード訓練や企業現場に指導者を派遣する現場訓練支援事業を実施することとしております。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、産業界のニーズに即応した在職者訓練を機動的、弾力的に実施してまいります。

○きたしろ委員 今後とも、一人でも多くの失業者や企業で働いている方々に対し効果的な事業が実施されるように要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。

○興津委員 それでは、私からも、中小企業に対する金融支援策についてお伺いをさせていただきたいと存じます。
 先ほど神野委員の方から質問がありましたとおり、最後に要望もありましたが、新銀行東京の件、大体銀行さんは、短期、あるいは少額の融資ということになりますと、割と嫌う傾向に実はありまして、ですので、例えば一つの事業の受注をする、それのための種銭が必要だというときに、それをまた販売することによって収益を上げる、それの清算をするまでの間の短い期間の、短期融資というんですかね、そういったようなつなぎ的な、そういったところをぜひとも力強く推進をしていただきたいなということを私の方からも重ねてお願いさせていただきます。
 さて、そして、ベンチャー企業の成長支援事業、ベンチャーファンドに関しまして質問させていただきたいと思います。
 先ほども質問がありましたので、重複しているところは削除させていただきますが、今回の、信用力や担保がないために、銀行等からの間接金融による資金調達が困難であるベンチャー企業に資金供給を行うということと同時に、このベンチャー企業の成長支援をしていくんだというご答弁があったと思います。
 さて、この今回の予算におけるファンドへの出資ですけれども、都が直接、有限責任組合員となり、というふうに伺いました。今回のファンドの出資、運営をどのような事業スキームとして考え、運用されるのか、あるいはその法的根拠も含めまして、ご答弁をまずいただきたいと思います。

○寺崎金融部長 ファンドの設立は、投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づいて行われます。
 都は、ファンドの運用者を公募により選定いたしまして、都の政策目的に賛同する民間出資者等とともに、みずからもファンドに出資し、設立を行います。
 ファンドの運営は、公募により選定された運用者が企業の将来性や成長性などを判断して投資先を選定し、資金と経営の両面から支援を行います。
 都は、出資目的に沿って運営がなされているかどうかといった観点から適切に監視を行います。

○興津委員 ありがとうございます。東京都は、この出資目的に沿って運営されているかどうか適切に監視をするということでありましたけれども、このファンドというのが、特定の業種、業界等の深い専門性が必要になるということも一方でありますし、大変複雑なこの経済状況における現代におきまして、多少の視点が私もありますので、次の質問に移りますけれども、過去のファンドの事例におきまして、東京都の出資金が棄損しているという事例も、本日のいただきました資料、あるいは昨日の予算委員会においても報告されています。
 地方自治法によると、その第二条十四において、「地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」とあります。
 また、反面、第二百三十五条の四には、「普通地方公共団体の歳入歳出に属する現金(以下「歳計現金」という。)は、政令の定めるところにより、最も確実かつ有利な方法によりこれを保管しなければならない。」とあります。
 ということであれば、今回、元本を毀損してしまっているファンドという手法で出資するということは、この地方自治法の記載にある、最も確実かつ有利な方法によるという地方自治法の精神にかんがみたとき、貴重な都民の財産を毀損してしまっているという事例から考えると、確実な方法といえないのではないかと私は判断します。
 中小企業支援という本来の目的から考えたとき、この支援をするという目的には全面的に賛成します。ですが、このファンド事業の場合、配当利益も生むこともあります。しかし、原資元本を毀損することも現実化したところでもあります。このファンドの本来の目的は、その原資が税金でありますので、キャピタルゲインを目的としているとは思いませんし、また、そうあってはいけないのではないかとも思っています。
 地方自治法の精神からとらえたとき、都民の皆さんにお納めいただいた貴重な税金を毀損することのないように図るべきだというふうに私は考えますけれども、お考えをお聞かせください。

○寺崎金融部長 ファンド投資は、リスクマネーの活用によるものでございまして、地方自治体とリスクマネーの関係について、やや長くなりますがご答弁させていただきます。
 まず、地方自治法の規定についてお話がございましたが、歳計現金に係る規定は、会計管理局が管理する現金に適用されるものでございます。
 副委員長ご指摘の、最少の経費で最大の効果を上げるという自治法の考え方は、ファンドの投資を含めて適用されるものと考えております。
 国も地方自治体も同じでございますが、公益実現のために、リスクはあっても積極的に事業を展開しなければならないという場合がございます。例えば、海底探査や宇宙開発のように、リスクはあってもこれを上回る公益を見込めることから実施している事業も多うございます。
 都におきましても、中小企業の金融支援の根幹でございます制度融資におきまして、結果的に生じたデフォルトに対して、国と都が損失を負担することでリスクをとる、またはリスクを分散するということが行われております。
 そうした上で、都における産業振興の観点から、ベンチャー企業の支援は非常に重要でありまして、そうした政策目的の達成は、先ほども申し上げましたとおり、大きな意義があり、リスクをとってでも実施すべき支援であると考えてございます。
 しかしながら、これらの事業の推進に当たりましては、リスクを放置せず、適正に管理することは当然のことであります。このため、運用に当たりましては慎重を期すことが重要ですが、投資環境は日々変化をいたしまして、経済情勢にも影響されますことから、投資元本のみに着目するのではなく、得られた政策効果とのバランスで判断すべきものと考えております。
 今年度終了した四つのファンドでは、うち一つが結果として分配金等が出資額を大きく上回り、三つが、それぞれ程度の差は異なりますが、下回ることとなりましたが、得られた政策効果とリスクとのバランスがとれたものと考えております。
 今後におきましても、ファンドの運営に当たりましては、リスクとバランスを確保しながら、さらに適切な運営に努め、事業目的の達成に全力を挙げてまいります。

○興津委員 この公益実現のためには、リスクをとってでも積極的に展開をしていくんだというご答弁でありました。
 この中小企業の金融支援の根幹である制度融資、これとこの出資というのと、またちょっと考え方が私は違うんだろうというふうに実は思っていますが、例えば、今回、私が思うには、東京都が直接有限責任組合員になるということではなくて、例えば東京都の関連する適切な団体、機構などに補助金等として出資し、そして、そことの間で貸借関係を完結する。そうすればその出資金が毀損することがないということを担保し、そして、その財団、機構等が有限責任組合員として東京都の所期目的に沿うファンド運営をしていただくという方法も考えられるのではないかというふうに私は思っています。
 つまり、今回は、このキャピタルゲインは望めないかもしれませんけれども、元本の毀損の危険はない、その上、都の目的は達成される。さらに、一言つけ加えるのであるならば、このキャピタルゲイン等が発生した場合には、事後において、東京都の財団ないしその機構に対しての補助金を減額するなどの方法も、今後とも考えられるのではないかと思いますけれども、お考えがあったらお聞かせください。

○寺崎金融部長 副委員長のお話にありました、都が団体に何らかの形で資金を出してファンドの運営等により中小企業の支援を行うという手法は、既に都においても実施しております。
 こうした取り組みに加え、都が主導してみずからファンドを設立する手法をとりましたのは、都の政策目的にかなったスキームの構築が可能となり、効果的な支援を実施することができるほか、これに即した適切な運営がなされているか直接監視することができるなどのメリットがあることからでございます。また、支援先の中小企業の信用力が向上するなどのメリットも大きいものがございます。
 こうしたことから、先ほどもご答弁いたしましたとおり、都は、リスクと政策効果のバランスをとりながら、ファンドを通じたベンチャー企業支援を継続することとしており、今後も事業目的の達成に向けて全力を挙げてまいります。
 なお、ご指摘につきましては、今後とも事業内容に応じて両者のやり方を効果的に使ってまいりたいというふうに考えております。

○興津委員 ご答弁ありがとうございました。
 私も、都内のこの中小企業を支援するということが非常に大切であるということは、考え方は一緒であります。この東京都の政策目的に沿ったスキームであるとか、直接監視をするメリット、あるいはそれを受ける側とすれば、やはり東京都が出資をしているということは信用力のアップという、これは非常に重要だというふうに私も感じますが、また、一方では、やはり地方自治法上の精神である最も確実という部分も踏まえまして、今後としてご検討いただきたいというふうにも思います。
 また、この制度融資と出捐金、出資金というのは、やはり同じお金ではありますけれども、性格が違うというふうに私は思っていますし、その中でもって毀損することのないように、ぜひとも今後とも運営の方をよろしくお願いいたします。
 次の質問に移ります。先ほどもご質問がありましたので、重複する部分は避けさせていただきますが、国分寺と八王子の労働相談情報センターの移転統合についてお伺いいたします。
 先ほどのご答弁をお伺いさせていただきまして、私も出身、国分寺でありまして、非常に残念に思っています。労働相談場所が多摩の真ん中に一カ所のみということになるということでありますし、多摩都民が四百万人弱いますので、東京都民の三分の一、その労働相談が一カ所だけになるということで、本当に労働行政の進捗があるのかというふうに強く私は疑念を持ちます。場所的にもですね。
 労働相談は、困ったときに身近に相談できることが大変重要であります。電話相談等でもって済む比較的簡易な事例もあるかもしれませんが、複雑な労働問題の解決のためには、労使双方の十分な意思疎通を図ることが必要不可欠であると思っています。
 都の面積の約半分に当たる多摩地域全域を一つの事務所で管轄することを踏まえれば、統合を進めるに当たっては、相談機能が後退することはあってはならない、さらなる機能の拡充が当然に求められると思っています。
 この点につきましては、本議会の我が党の代表質問に対して、産業労働局長から、スケールメリットを生かして、相談事業などを拡充、展開していくと答弁をいただいておりますが、具体的にどのように相談事業を拡充し、サービスの向上を図るのか、お伺いさせていただきます。

○穂岐山雇用就業部長 二つの事務所の統合によりまして、職員のマンパワーを集約できることから、相談体制の強化が図れるものと考えております。
 例えば、職員の勤務ローテーションが柔軟に組めることから、夜間相談や土曜相談等の拡充が可能になります。
 また、相談状況や地元自治体等の要望を踏まえ、出張労働相談についても実施を検討してまいります。
 加えて、しごとセンター多摩や多摩職業能力開発センターとの連携により、多摩地域の雇用就業に関する各種事業との相乗効果を高めることができるものと考えております。

○興津委員 身近なところがなくなるというのはやはり寂しいものなんですよ、基本的にね。でありますから、それと同時に、寂しいばかりじゃなくて、やっぱりその地域地域でもってありますので、この場所が、二カ所が一カ所に統合されるということに関しましては、まだまだ私は、ご答弁いただきましたけれども、納得のいかないところでもありますが、予定では平成三十年度の開設を目指すということなので、具体的にどのような労働相談事業を拡充していくかについて、これから十分に検討する時間はあると思います。
 あわせて二つの労働相談情報センターが所在する国分寺市、八王子市等、地元自治体や施設を利用している労働者団体等の意見も聞きながら調整し、適切に進めていくべきであろうというふうにも思います。
 今後とも、複雑化、多様化する労働問題に的確に対応し、多摩地域の都民のニーズにしっかりとこたえられるようなものになるように、さまざまな工夫を凝らし、統合による都民サービスの低下があってはなりませんから、ご答弁いただきましたように、夜間、土曜相談、出張相談等、スケールメリットを最大限生かしたとおっしゃっていましたので、その相談体制を構築することにより、多摩地区の労働相談の強化をよろしくお願いいたします。
 引き続きまして、さて、現在の国分寺の労働相談情報センターは、施設が老朽化しているとはいえ、JR国分寺駅から至近の場所にあります。また、国分寺崖線の上にあり、地理的には非常に優位性のある場所にあります。
 労働相談情報センター及びしごとセンター多摩が立川に移転した場合、施設あるいは跡地をどのように活用していくお考えなのか、お考えがありましたならばお聞かせください。

○穂岐山雇用就業部長 立川の建築工事が順調に進んだ場合でも、平成三十年度の移転時には既に築四十七年が経過することとなりまして、継続しての使用には耐えられないと考えられることから、原則として、移転後、建物の解体工事に着手し、更地にした後に財務局に跡地を移管することとなります。
 なお、移管後は、財務局において東京都として土地の利活用を検討することにはなりますが、地元自治体の希望があれば財務局に伝えるなど、産業労働局としても尽力したいと考えてございます。

○興津委員 ご答弁ありがとうございました。
 それでは、まとめますが、地元自治体とも協議を進めるというようなお話もありましたけれども、特にこの国分寺の施設は、地元国分寺にある数少ない東京都の施設であります。地元の関係諸団体の皆様の施設利用が非常に活発な場所でもあります。施設を取り壊し、財務局移管ということでありますが、民間売却でということになれば、マンションになるということはもう容易に想像が実はできる場所なんですね。
 ぜひ地元自治体と協議を早期に始め、いずれかの東京都の施設の存続を、私といたしましては強く要望いたしますし、先ほどご答弁いただきましたとおり、財務局に伝えるなどということもありましたが、地元要望があれば担当局にも連絡をしていただいて、今後とも協議の方を進めていただきたいと思います。
 以上で終わります。

○三宅委員 私からは、島しょ農林水産業について何点か質問させていただきます。
 まず初めに、水産業の振興について伺います。
 島しょ地域の海域は、水産資源を初めとするさまざまな資源を有する豊穣の海として高い潜在力を秘めています。
 しかしながら、この豊かな東京の海においても、近年、水産資源の減少などにより、漁獲量は減少傾向にあり、平成二十二年の東京都の漁業生産量は四千百十トン、漁業生産額は三十三億円で、平成十二年に比べ、生産量で約三〇%、生産額で約二二%の減少となっています。
 都では、これまでも、魚介類の放流などによる水産資源の増殖や、魚礁などによる漁場造成などに取り組んでいることは評価しますが、全国的にも漁獲量の減少傾向が続く中で、将来にわたり水産資源の持続的活用を可能とする取り組みが強く求められています。
 近年、島しょ地域では魚価の高いカツオ、タカベ、アカイカなどの水揚げが大幅に減少しているほか、いそ焼け現象の進行により、テングサなどの海藻類やトコブシなどの貝類の水揚げも大きく落ち込んでいます。
 こうした状況で、各島の漁業者は、資源量が安定し、魚価も高いキンメダイの漁に転換することで、漁業経営を何とか維持しているのが現状です。今やキンメダイは、まさに島の、島しょ漁業の生命線ともいえる重要な魚種であります。
 そこで、キンメダイの資源管理について伺います。
 キンメダイは、現在、島しょ地域で最も多く漁獲され、生産額も約二六%を占めるまでになっており、また、キンメダイの代替となる魚種も直ちに見つからないことから、資源の安定している今のうちからしっかりと資源管理を行っていくことが重要です。
 都がこれまで取り組んできたキンメダイの資源管理の成果と、今後の取り組み予定について伺います。

○津国農林水産部長 都は、これまで、伊豆諸島の主要魚種であるキンメダイの生態調査を行い、伊豆諸島海域がその産卵や幼魚の生育に重要な場所であることが明らかとなりました。
 この結果を受けて、伊豆諸島海域で操業する東京、静岡、神奈川、千葉の漁業者を主体とする一都三県キンメダイ資源管理実践推進漁業者協議会におきまして、資源管理のための具体策を検討し、現在、禁漁期や禁漁区の設定、小型魚の再放流、漁業手法の制限などの取り組みを実践しております。
 今後は、キンメダイの生活史の全体像把握や、夜間操業の影響調査等について、都が引き続き先導的な役割を果たすことで、伊豆諸島におけるキンメダイ資源の持続的活用の実現に向け取り組んでまいります。

○三宅委員 ぜひこれからもキンメダイの資源管理につながる調査をしっかりと行って、資源の持続的活用の実現を図ってほしいと思います。
 ちなみに、キンメダイは、刺身とかしゃぶしゃぶとかがはやっているようですけど、一番おいしいのは煮つけだと思っておりますので、ぜひ一度、伊豆諸島産のキンメダイを皆さんに試していただきたいと、皆さんにお願いいたしまして、次の質問に行きたいと思います。
 次に、私も伊藤委員長を初めとする本委員会の皆様とともに竣工式に出席した漁業調査指導船「みやこ」について伺います。
 「みやこ」は、四隻存在する都の漁業調査指導船の中で唯一の広域調査船として、漁業調査や監視活動に重要な役割を果たしてきましたが、水産業を取り巻く情勢が厳しさを増す中で、このたび、三代目となる「みやこ」が最先端の装備を持つ新鋭船として生まれ変わったことを大変心強く思います。
 式典の際には、新しい船が船体の大型化や最新鋭の機器の搭載などにより、これまで以上に調査などが可能になったことを伺い、今後、都の水産業振興に大いに貢献していくものと期待しています。
 そこで、都では今後、新たな「みやこ」をどのように活用していくのか伺います。

○津国農林水産部長 まずは、三月八日の「みやこ」竣工式には、伊藤委員長、三宅委員を初め、本委員会の皆様方にご臨席を賜り、まことにありがとうございました。この場をかりてお礼を申し上げます。
 新しい「みやこ」は、魚の資源量を推定できる科学計量魚群探知機や、海底地形を三次元で表示できるマルチビーム海底探査装置、水温等の海洋観測情報を船上から即時に漁船に提供できる海洋データ処理システムなど、最新鋭の機器類を装備し、調査、観測の充実が図られるようになりました。
 また、船体の大型化等によりまして、より長距離かつ悪天候下での航行も可能となったことで、これまで以上に広範囲かつ機動的な調査、監視活動ができるようにもなりました。
 今後は、これらの機能を生かし、沖ノ鳥島や南鳥島を含む都の広大な排他的経済水域を中心といたしまして、魚類等の生態調査や新たな漁場の開拓、海洋環境モニタリング等の調査研究のほか、漁場の秩序を維持するための監視活動の強化に取り組み、都の水産業振興を図ってまいります。

○三宅委員 新しいこの「みやこ」が島しょ漁業のために活躍することを期待いたしまして、次の質問に移ります。
 東日本大震災の発生から一年を迎えましたが、震災を振り返る報道に接する中で、改めて、三千人以上の島民が四年五カ月に及ぶ長期間の避難生活を強いられた平成十二年の三宅島の噴火災害が思い出されました。
 噴火前の三宅島は、バードアイランドといわれていたほど野鳥の種類が多く、スダジイ、タブノキなどの照葉樹に覆われた美しい島でしたが、噴火と火山ガスの影響、さらには山に堆積した火山灰が降雨のたびに泥流となることで、渓流や山腹が荒廃しました。
 都が、噴火後、水や電気の確保もままならない困難な状況の中で、素早く泥流対策に着手し、渓流や山腹の復旧を進めてきたことには感謝しています。
 しかしながら、高濃度の火山ガスの影響で植生の回復がおくれている箇所などでは、いまだに土砂流出のおそれがあり、対策が必要であります。
 そこで、これまでの三宅島の災害復旧事業のうち、産業労働局所管の治山事業の取り組みと今後の予定について伺います。

○津国農林水産部長 三宅島雄山の噴火直後には、まず泥流からライフラインや住宅を守るために、荒廃した渓流の復旧対策を行いました。
 その後、噴火による灰によって樹木が枯れ、山腹の荒廃が拡大するおそれがあったことから、山腹を安定化するための対策を実施してまいりました。
 さらに、降雨による表土の流出を防ぐには植生の回復が重要であることから、緑化を試みましたが、高濃度ガスの影響がある地域では期待どおりの成果が得られませんでした。
 そこで、表土の移動を抑える工法により、緑化に向けた基盤整備を進めているところでございます。
 平成二十四年度は、引き続き、土砂崩壊のおそれがある斜面や荒廃が進行しつつある渓流を中心に治山事業を実施し、森林の復旧に取り組んでまいります。
 島全体の森林を復活させるまでには、まだ長い道のりではございますが、今後とも、治山事業を着実に実施し、森林の維持、造成に努めてまいります。

○三宅委員 実は先日も、大雨で若干渓流が崩落しましたので、所管は違うと思うんですが、ぜひそちらの方もよろしくお願いしたいと思います。
 治山事業の取り組みについてはよくわかりましたが、まだまだガスが噴出していることから、時間がかかりますが、ぜひかつての自然豊かな三宅島の姿に戻していただけるようお願いいたします。
 次に、農業振興について伺います。
 島しょ地域の農業を振興していく上で、農地や農道を整備することは、農作業の効率化につながることから重要でありますが、とりわけ農業用パイプハウスの導入が進む島しょ地域にとっては、農業用水を安定的に確保するための施設整備は欠かせません。
 このため、各島では、これまで農業用水施設の整備を進めてきましたが、これらの施設が老朽化し、その維持管理が喫緊の課題となっていることについては、さきの経済・港湾委員会でも述べさせていただきました。
 都は、老朽化の著しい施設の改修に対して、新たな事業を実施するとのことでありましたが、ぜひとも各島の実情や要望をよく聞いた上で、着実に進めていただきたいと思います。
 そこで、島しょ地域の農業用水施設の現状と今後の支援について伺います。

○津国農林水産部長 各島の農業を支えている農業用水施設は、平成二十三年三月現在、農業用貯水池や井戸等が二十施設、パイプラインは総延長百三十四キロにも及んでおります。
 これらの施設は、老朽化に加えて、島特有の塩害の影響によって傷みやすいこともありまして、修理や更新等の必要が高まっているものも多くございます。
 このため、都は、今年度から農業水利施設ストックマネジメント事業を実施し、老朽化の著しい八丈町の貯水槽の整備のほか、大島町、新島村、三宅村のパイプライン更新の設計を支援しております。
 また、来年度は、今年度の設計に基づく整備を実施するなど、各施設の計画的な更新を支援してまいります。
 一方、こうした施設を、今後、長期にわたり利用していくためには、定期的な点検と適時適切な補修を行うことが重要でございます。
 そこで、都は、町村などの担当職員の管理技術力向上を図るため、来年度から施設機能診断等の技術を習得させる研修会を開催いたします。
 今後とも、各島の状況に応じて農業用水施設の整備と保全を支援してまいります。

○三宅委員 農業用水は、島にとって非常に大切なものですので、しっかりと支援をお願いいたします。
 次に、農地について伺います。
 島しょ地域では、これまで農地として管理していたものが、農業者の高齢化や後継者不足などにより耕作されないままとなっているものがあります。
 島では、放置するとすぐに草木が生い茂り、農地としてすぐには使えない状態になってしまいますが、農業に適した土地が限られていることから、こうした農地を利活用していくことは、島の農業振興にとって極めて重要であります。
 都では、こうした状況に対処するため、農地リフレッシュ再生事業を実施し、耕作放棄地の解消に向け支援していただいておりますが、この事業については、町村や農業委員会などからは評価する声が聞かれております。
 そこで、この事業の実施状況について伺います。

○津国農林水産部長 都は、平成二十二年度から農地リフレッシュ再生事業を実施し、規模拡大を目指す農業者や新規就農者が耕作放棄地を有効に活用できるよう、農地の再整備を支援してまいります。
 毎年約四ヘクタールが整備されており、例えば八丈町では、農家ではない島の若者が耕作放棄地を借り受け、木の生い茂っていた農地を再生し、観葉植物の生産を開始するなど、島にとって明るい話題となっております。
 また、三宅島でも、経営規模の拡大を目指す農業者が、約一ヘクタールに及ぶ耕作放棄地を再生し、サトイモやサツマイモを生産しております。
 今後とも、町村と連携して、規模拡大を目指す農業者等のニーズをとらえ、農地の再生活用を促進し、島しょ地域の農業の振興に努めてまいります。

○三宅委員 都では、島しょ地域の農林水産業の振興に向けて、さまざまな施策を実施していただき、大変感謝しております。
 今後とも、引き続き、島の基幹産業である農林水産業の支援に努めていただくようお願いいたしまして、質問を終わります。

○伊藤(ま)委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本案及び本件に対する質疑はいずれもこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤(ま)委員長 異議なしと認め、本案及び本件に対する質疑はいずれも終了いたしました。
 以上で産業労働局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後五時二十一分散会

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