経済・港湾委員会速記録第十五号

平成二十三年十一月十日(木曜日)
第八委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十四名
委員長伊藤まさき君
副委員長山崎 一輝君
副委員長興津 秀憲君
理事高倉 良生君
理事伊藤 ゆう君
理事鈴木あきまさ君
三宅 正彦君
きたしろ勝彦君
神野 吉弘君
岡田眞理子君
佐藤 広典君
小磯 善彦君
清水ひで子君
木内 良明君

 欠席委員 なし

 出席説明員
産業労働局局長前田 信弘君
次長三枝 健二君
総務部長保坂 政彦君
産業企画担当部長矢田部裕文君
商工部長河内  豊君
金融部長寺崎 久明君
金融監理部長斎藤 真人君
金融支援担当部長十河 慎一君
観光部長横山 英樹君
農林水産部長津国 保夫君
安全安心・地産地消推進担当部長岩田  哲君
雇用就業部長穂岐山晴彦君
事業推進担当部長戸澤  互君
労働委員会事務局局長加藤 英夫君

本日の会議に付した事件
 労働委員会事務局関係
事務事業について(質疑)
 産業労働局関係
事務事業について(質疑)

○伊藤(ま)委員長 ただいまから経済・港湾委員会を開会いたします。
 初めに、今後の委員会日程について申し上げます。
 お手元配布の日程のとおり、理事会において申し合わせをしましたので、ご了承願います。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、労働委員会事務局及び産業労働局関係の事務事業に対する質疑を行います。
 これより労働委員会事務局関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。

○木内委員 私は、平成十九年の経済・港湾委員会で、その二年前の十七年の一月から施行されました労働組合法の改正、これに関連して質疑を行いました。その際、不当労働行為の申し立て件数が全国的に当時減少傾向にあって、また、地域的に非常に大都市部に偏っていて、県によっては取扱事件のゼロという、ないところもあるというふうに仄聞していたわけであります。
 その後、数年が経過しました。雇用あるいは就労状況の変化、あるいは労働組合の組織率の低下など、労働委員会をめぐる環境にも変化がさらに見られてきているところであります。
 そこで、まず、取扱件数そのものについて、全国的な状況、そして東京の状況についてご報告を願います。

○加藤労働委員会事務局長 不当労働行為の最近の取扱件数についてでございますけれども、委員に前回ご質問いただきました平成十九年当時と比較いたしますと、平成二十年のリーマンショックの影響などにより、東京、全国ともに取扱件数はふえている状況にございます。
 暦年の統計になりますが、平成二十二年に東京都労働委員会に新規に申し立てられた件数は百二十五件で、平成十九年の百件と比べますと二五%増、全国における総数は、平成二十二年は三百八十一件で、平成十九年の三百三十件と比べるとやはり一五%増となってございます。
 一方、都労委が扱います件数の全国に占める割合は、平成二十二年で三三%となっておりまして、東京に次いで件数の多い大阪府労働委員会への申し立て件数八十九件を合わせますと、全国の過半数の事件を処理するに至っておりまして、大都市部に偏っている傾向は、前回ご質問いただいた当時と変わっていない状況でございます。

○木内委員 今報告があったように、例えば新規申し立て件数で百二十五件、全国総数三百一件のうちの三三%。先ほど申し上げたように、地域的に大都市部に偏っているということでありますが、大阪を含めると、この二都市でもって過半数を占めている。逆にいえば、全くないという府県といいますか、県もあるということだと思うんです。
 いろいろ考えてみますと、企業の本社機能でありますとか、労働組合の本部が所在する東京という特性があるために、大変多くの、そして困難な事件を処理されているわけでありまして、他方では、こうした状況もあって、短期間に紛争を解決に導くことが、今、労使双方から期待されているところでありまして、その意味からも、労働委員会の困難な作業というものがうかがい知れるわけであります。
 私は、平成十九年の質問のときに、労働組合法に新たに規定が設けられた、非常に重要なキーワードでありましたけれども、審査期間の目標ということについて、できるだけ速やかに紛争を解決すべきだという趣旨から、当時、当面二年としていた期間をさらに短縮する取り組みが必要なのではないか、こう提案、主張したのであります。
 これに対して、二十年一月から原則として一年六カ月に短縮をするという明快な答弁を当時得たわけであります。厳しい状況のもとでこういう提案をしたわけですが、労働委員会はこれをしっかりと受けとめていただいているということでありまして、精力的に審査期間の短縮に取り組んでいくとの答弁を、当時、私は了といたしました。
 そこで、その後、この目標の達成状況はどう推移してきたか。まず、目標期間を二年としていた時期の処理状況を伺います。

○加藤労働委員会事務局長 これも暦年での統計になりますが、改正労働組合法が施行された後、審査期間の目標が二年間であった平成十七年一月から十九年十二月末までに申し立てられた事件三百四件のうち、本年の六月末までに処理の終わった事件は二百六十六件でございます。このうち、申し立てから一年六カ月以内に処理できた事件は百七十三件で、全体の六五%となってございます。

○木内委員 それでは、一方、この審査期間の目標を原則一年六カ月に短縮した、実施スタート二十年一月以降の処理状況はどうなりましたか。

○加藤労働委員会事務局長 平成二十年一月以降に申し立てられた事件四百四件のうち、先ほどと同じく本年六月末時点で処理の終わった事件は二百九件でございます。このうち、申し立てから一年六カ月以内に処理できた事件は百七十三件で、全体の八三%となってございます。

○木内委員 明快な答弁と数字が出たわけでありまして、目標期間内に処理できた事件の割合は確実に上昇してきている、こういうことがよくわかるわけであります。私が提案した審査の目標期間短縮の効果が出ているということがいえると思います。
 その数字の背後には、委員や、あるいは事務局の立場での大きな努力があったものと思いますし、こうした労苦に対して、私は高い評価をさせていただきたいと思います。
 だけど、ただ漫然と決意をして取り組むだけでは、こういう成果は得られないわけでありまして、では、実際に審査の迅速化に向けて、今後も引き続き取り組まれていくと思うんですが、これまでこういう成果を出すために、具体的に重ねてきた努力の内容というものがあると思うんですが、これを明らかにしてください。

○加藤労働委員会事務局長 都労委に持ち込まれる労使紛争においては、労使双方の感情的な対立も高まっておりまして、さまざまな点で主張が対立してございます。こうしたことから、以前は、労使双方の意向を最も重視して主張を展開させるようにしてきた結果、裁判に準じた手続である審問手続が長期間にわたったり、審査手続を見合わせざるを得ないような事例もかなりございました。
 しかし、審査の迅速化のためには、双方の主張を早く整理して、不当労働行為の成否を判断するのに必要にして十分な証拠調べを行うことが重要でございます。このため、主張が不明な点について明確にするよう早い段階から促すことや、審問手続について何回かの日程を一括で指定する、あるいはみずから申請した証人に対する尋問である主尋問と、相手方からの尋問である反対尋問を一回の審問の中で行うなどし、効率的な審査に努めてまいりました。

○木内委員 確かに一年六カ月への短縮化に向けてはこういう努力があったわけでありまして、今ご答弁いただいたのは、委員におけるさまざまな努力の成果だと思う。双方の主張を早く整理して、十分な証拠調べを行うというこの準備、あるいは主尋問と反対尋問を一回の審問の中で行うなどして、効率的な審査に努力をされてきた。これは申し上げたように、効率的な審査のために委員の方々が努力をされているという、結果として形にあらわれたものだと思うんですが、実は、こういう委員の迅速な対応を可能にするための事務局としての努力もあったと思うんです。その点についても報告願えますか。

○加藤労働委員会事務局長 事務局の取り組みとしましては、入り組んだ紛争の事実関係を時系列で見やすく整理したり、双方の主張の対立点、これは争点というわけでございますが、込み入った争点をわかりやすく対比させた資料をつくる工夫をするなど、非常勤であり、大変多忙な委員に、随時、審査の進め方や紛争の全体像の把握に役立つ情報を伝え、迅速、的確な審査に向け、補佐したものでございます。

○木内委員 確かに委員の方が円滑に動けるように、事前の準備や整理をされていたり、的確な情報をやはり事前に伝えるなど、かつてとは異なる事務局としてのご努力の跡がよくわかるわけであります。委員と、委員を補佐する事務局が一体となって努力をしていることも大きな成果だと思うんです。
 労使関係の将来を考えると、円満に紛争を解決することが望ましいわけでありまして、そこに向けた委員会の努力というものも相当なものと推察されるのであります。
 そこで、双方のいい分を整理し、場合によっては説得してうまく円満解決につなげた事例なんかは、象徴的な事例もあると思うんですけれども、委員会としてどのように対応、活動をしてきたのか、その事例に基づいて報告願います。

○加藤労働委員会事務局長 一例を挙げさせていただきますと、これは、昨年六月から本年五月にかけての事例でございますが、ある老人福祉施設で介護職の労働者が調理の職場に配置転換させられたことを契機に労使紛争となり、申し立てられた事件がございました。
 この事件では、委員が審査手続のある日に都庁に登庁して、担当する事件の調査を進めるだけではなく、それ以外の日にも、労使各側の委員が労働組合や使用者のもとに直接出向いていき、親身になって話を聞き、本音では和解を望んでいることを引き出し、これを受けて調査手続の中で、熱心かつ粘り強く調整や説得に当たるなどいたしました。委員のこうした活動によって、審問に入ることなく、一年に満たない早期の期間で、和解で円満に解決に至りました。

○木内委員 そうした今の報告のように、審問に入る前に解決できるケースというのが実は多いというふうにも聞いているわけでありまして、この和解で解決できない場合には、だめなときには、まず呼びかけを行うけれども、結局、命令ということになってしまう。やっぱり望ましいのは和解ということだと思います。
 それで、今いわれたように、委員の方が現場主義に基づくといいますか、使用者や、あるいは関係のところに直接出向いて、しっかり意思の疎通といいますか、話し合いを行って、実は和解を望んでいるんだということを確認することで、審問でなく、和解による円満な解決に至るという今の経過だと思うんです。
 これは、さっきからもご報告いただいていますけれども、数字にはあらわれない正式な審査の期日だけでなく、さまざまな表面化しない動きをされているということがよく理解できるのであります。
 労働委員会は、労使紛争のセーフティーネットとしての役割を担う、いわば労使紛争の最前線に立っているともいえるわけでありますけれども、私はよく処理日数を短期化ということをいうんですが、では、ただ単純に処理日数を短くすればよいというのでもないとは思います。
 労使紛争の背景にある雇用情勢、あるいは労働市場の変化などを的確に踏まえて、将来のあるべき労使関係を見据えて、積極的に、できれば和解による解決が望ましいと私も思いますし、また、委員会としてもそれを目指していること、これがよく理解できるわけであります。
 そこで、次に、近年の社会経済状況が、労働委員会が取り扱う事件の内容に反映して、特徴的な傾向というのが出てきているのではないか。現時点の実態的な報告を願い、今後への展望をともどもに開いていきたいと、こう思うんですが、どうでしょうか。

○加藤労働委員会事務局長 近年の取扱事件の傾向としましては、労働組合のない中小零細企業に働く労働者や、企業の正社員でない、いわゆる非正規労働者が、雇用契約の打ち切りや賃金の不払いなどをめぐる争いを解決するため、いわゆる合同労組に加入して解決を図ろうとする動きが見られます。
 今申し上げましたこの合同労組というのは、一定の地域で企業の枠を超えて、中小企業の労働者などを主に組織し、個人加入できる労働組合のことでございまして、合同労組と称するほか、一般労組、地域ユニオンなどと称しているものでございます。こうした従来からの企業別に組織された労働組合とは異なるいわゆる合同労組が、個別労働者の問題解決を目指した交渉型の活動を活発化させているという状況がございます。

○木内委員 合同労組という実態に加えて、労働組合とは異なるこうしたケースというもの、これが特徴であろうというふうに思うわけでありまして、いわゆる交渉型の活動が活発化してきているということがいえるわけであります。
 期間雇用の労働者、あるいはアルバイトといった不安定な雇用環境にある労働者にとって、労働委員会の典型的な事件といえる、いわゆる労働組合からの申し立ての形をかりて解決を求める一つの選択肢といえるわけであります。こうした事件の解決にも労働委員会が幅広く取り組んでいることはよく理解できるのであります。実際、都労委で、この種の事件、実態はどのくらいになっていますか。

○加藤労働委員会事務局長 都労委におけます取扱事件件数全体に占める、いわゆる合同労組関連の事件数は、平成二十二年度は、調整部門については、新規受け付け件数百五十四件のうち百三十七件で、率にして八九%、審査部門については、新規受け付け件数百二十七件のうち八十八件で、率にして六九%を占めてございます。

○木内委員 答弁を聞きますと、かなりの割合を占めているわけでありまして、こうした事件を審査する上で留意されている点は何ですか。

○加藤労働委員会事務局長 労働委員会への申し立て自体には費用はかからないわけでございますけれども、多くの場合、裁判と同様、労使ともに弁護士を代理人に選任して、みずからの主張を展開しております。いわゆる合同労組の場合には、いろいろな事情から代理人弁護士をつけずに臨むことも多いため、都労委の方から積極的に主張の整理を促したり、主張の裏づけとなる証拠の提出を求めるなど、代理人がいないことを補うように、きめ細かな対応を心がけているところでございます。

○木内委員 その意味では、大変血の通った対応だと思うんですね。代理人のいないケースに対して、相談に乗るといいますか、非常に大事な点だと思います。制度はあるけれども、心がこもってなかったり、血が通っていない運用をするとこうはいかない、そんなふうにも思うのであります。
 裁判所における労働審判制度や、あるいは知事部局の労働行政組織の相談窓口を含めると、こうした労使紛争の解決のルートというのは複数あって選択肢もあるわけでありますが、やはりしにせは労働委員会だと、こういうふうに思います。
 あっせんなどの紛争調整機能を含め、労使紛争を迅速、効果的に解決する総合的な労使紛争解決機関として、労働、経済情勢の変化に即応し、かつ働く人々や企業に気軽に利用できる身近な機関で今後もあってほしい、こういうふうに強く要望しておきます。特に、後段お尋ねをした点について、代理人のいないケースなどへの対応など、さらに精力的にこの活動を求めてまいりたいと思います。
 公労使の三者委員とその補佐に当たる事務局が一体となって、都民のニーズにこたえるべく、一層の工夫と努力を重ねていただきたいと思いますし、きょうは大分、この委員会での質疑時間が深夜にわたるというふうに聞いておりますので、円滑な審議に協力をする意味から、ポイントだけに絞ってお尋ねをいたしました。申し上げたことを強く期待し、また、要望して、私の質疑を終わります。

○伊藤(ま)委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤(ま)委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で労働委員会事務局関係を終わります。

○伊藤(ま)委員長 これより産業労働局関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○保坂総務部長 去る十月二十五日の当委員会でご要求いただきました資料につきまして、ご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の経済・港湾委員会要求資料の表紙をおめくりください。
 目次でございます。資料は全部で十五項目ございます。
 一ページをお開きください。このページから三ページにかけまして、中小企業対策、農林水産対策、雇用就業対策の過去十年間の予算額、決算額の推移をそれぞれお示ししてございます。
 四ページをお開きください。統計データで、直近の平成十九年まで過去十年間の都内小規模小売店の推移をお示ししてございます。
 五ページをお開きください。新・元気を出せ商店街事業における平成十七年度以降の実績をお示ししてございます。
 六ページをお開きください。特定施策推進型商店街事業申請状況について、平成十八年度以降の実績を内容別にお示ししてございます。
 続いて、七ページから八ページにかけまして、過去十年間の中小企業制度融資の目標と実績の推移をお示ししてございます。
 八ページをお開きいただきまして、右下の合計欄にございますとおり、平成二十二年度の実績は十三万四千六百九十三件、二兆二千百九十六億円でございます。
 九ページをお開きください。景気対応緊急保証制度に係る区市町村の認定件数及び都制度融資(経営緊急)の実績をお示ししてございます。
 平成二十二年度までの景気対応緊急保証制度に係る区市町村長の認定件数は二十八万二千九百九十件となっております。また、経営支援融資(経営緊急)の実績は、保証承諾件数が十二万七千二百七十六件、保証承諾金額が二兆六千六百五十三億五千七百万円でございます。
 一〇ページをお開きください。統計データで、直近の平成二十一年まで、過去二十年間の都内民営事業所数の推移を規模別にお示ししてございます。
 一一ページをお開きください。親会社が海外にある都内企業数の推移及び全国比をお示ししてございます。
 一二ページをお開きください。統計データで、直近の平成二十年までの都内製造品出荷額の推移をお示ししてございます。
 一三ページをお開きください。統計データで、直近平成十九年までの雇用形態別都内就業者数の推移でございます。
 一四ページをお開きください。委託訓練の科目委託先の定員、就職率の推移をお示ししてございます。
 続いて、一五ページから一六ページにかけまして、過去十年間の労働相談件数及び相談内容別の推移をお示ししてございます。
 一五ページが労働相談件数と職員数、あっせん件数、解決数及び出張労働相談件数の推移、一六ページが労働相談項目数の推移でございます。
 一七ページをお開きください。過去十年間の東京の農地面積の推移をお示ししてございます。
 以上で要求資料の説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。

○伊藤(ま)委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含め、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○伊藤(ゆ)委員 それでは、私の方から何点か質問をさせていただきたいと思います。私もきょうのスムーズな審議に協力をしたいと思いますので、通告していた質問を提案の形にかえさせていただくこともありますので、そごがないようによく聞いていただければと思います。
 昨年、私は数カ月間かけまして、東京都のホームページの契約状況について詳細な調査をさせていただきました。東京都のホームページは各局がそれぞれに契約を結んでおり、その契約数は膨大でありました。契約方式、金額、契約継続年数を調べたところ、各局のホームページの五年間に投じられた税金は十六億円を超えることが判明をし、その額の大きさに驚くとともに、特に産労局の観光部が契約をしておりました東京の観光というサイトの契約金額の大きさに驚かされたわけです。
 東京の観光という一つのサイトで、過去数年の平均委託額が年間六千万円、契約先は東京都の監理団体である東京観光財団だったことは、既に報道されたとおりです。都と財団の契約においてさらに驚かされましたのは、六千万円もの契約にもかかわらず、東京都が財団から詳細な内訳書もとらずに総額だけ示されて契約していた点でありました。
 こうした契約については、文書質問に対する答弁の中で、改善を約束していただいておりましたが、その結果として、契約金額が幾らに減ることができたのか、内訳の詳細は確認するようになったのか、あわせて、財団から再委託先への契約金額についてもお伺いしたいと思います。

○横山観光部長 契約に際しまして観光財団から提出されます見積価格をより効果的に検証するという観点から、都の予定価格積算時に複数の参考見積もりを徴収しまして積算を行うよう改善を図りました。
 また、契約に際しましては、財団が作成をしました見積もり内訳を確認することで、価格の妥当性の検証を行っております。この結果、都から財団への委託契約金額は、二十二年度が七千五百五十万円に対しまして、二十三年度は五千八百二十五万円となっております。
 また、財団から再委託先への委託契約金額は、二十二年度、六千八百十九万円に対しまして、二十三年度が四千七百九十七万円となったと聞いております。

○伊藤(ゆ)委員 去年、指摘をさせていただきまして、早速この春に契約が変更をされて、委託金額は、東京都から財団に対して、また、財団から委託先に対しまして、それぞれ、いずれもおおむね二千万円程度削減できたということは評価をしたいというふうに思います。
 また、都から委託を受けた財団が、さらにその仕事を発注していたホームページ業者は、このところ九年連続で随意契約を受けていましたが、この委託を受けていた契約先、事業者は変わったのかも確認しておきたいと思います。

○横山観光部長 観光財団におきまして企画コンペによる業者選定を行いまして、二十三年度の契約相手は新しい業者となったと聞いております。

○伊藤(ゆ)委員 新しい業者となり、そして、複数の会社から見積もりの参考をとったことによって、契約額が大幅に減ったと、小さくなったということは、よかったことだというふうに思っております。
 そして、観光のサイトについては、もう一つ指摘をさせていただきました。都の観光サイトのほかに、実は東京観光財団にもホームページがあり、内容が非常に酷似をしておりました。双子のサイトを外国人に周知するよりも、オンリーワンの観光サイトの質を高めて周知する方が効率的で効果的であると、さきに指摘をさせていただいたわけであります。
 このホームページの統合については、どのような結論に達したのかお伺いしたいと思います。

○横山観光部長 都のウエブサイトであります東京の観光と、観光財団の観光情報サイトにつきましては、利用者の視点からよりよい情報の発信が可能となるように、来年度統合することといたしまして、現在、準備を進めているところでございます。

○伊藤(ゆ)委員 契約額についても、また、二つのサイトが統合されたことについても、都民から見ても、また、外国人から見ても一石二鳥のことであり、これは高く評価したいというふうに思います。今後も、こうした契約の改善に努めていただきたいと思います。
 また、海外から見た観光サイトについてもお伺いをしたいと思います。
 東京の観光サイトの内容についてでありますけれども、最近改めてサイトを拝見させていただきました。トップページには、直近の祭り情報や東京国際映画祭、都からのお知らせなど、東京都が周知したい情報が目立つデザインになっています。
 一方で、宿泊情報はといえば、エリアから選択できる仕組みにはなっているものの、まずホテルの写真がついていません。ですから、ホテルの名前と、そして連絡先が書いてあるというような事案にすぎないわけであります。
 また、よく情報サイトにあるような、ホテルの特徴を紹介する記述も一切ありません。東京生まれの私でさえ、ここに出てくるホテルが一体どのようなホテルなのか、なかなか記憶としてわいてくるホームページではないわけです。
 一方で、私などがソウルに行くときに必ずのぞくサイトがソウルナビというものであります。このサイトでは、ホテルのボタンをクリックするだけで、一押しホテル情報やユーザーの体験報告などが記載をされていて、見ているだけでまたソウルに行きたくなるようなサイトであります。ぜひ、東京都のサイトと比べていただきたいと思います。
 比べれば、都のホームページが、真剣に宿泊施設を探している外国人観光客に役立つサイトになっているのかということについては疑問に思います。こういう話をしますと、役所のサイトではなかなかホテルのランキングをつけたり、踏み込んだ情報を流すことはできないという声が上がりますけれども、それならば、まさに半官半民の財団のサイトを公式サイトにすれば解決するのではないかと思います。まずは、できるところから始めるという意味で、本当に外国人にとって使い勝手のいいホームページになるよう、民間と協議を重ねて検討するべきと思いますが、所見をお伺いしたいと思います。

○横山観光部長 都及び財団のサイトの統合後は、同サイトの運営も含めて財団に移管することとしております。これによりまして、今後は個店情報等も含めた情報発信など、魅力的なコンテンツの作成が可能になると考えます。
 今後も、利用者のニーズや利便性に考慮しながら、財団において魅力的なコンテンツの作成に努めてまいります。

○伊藤(ゆ)委員 内容もさることながらなんですけれども、もう一つ重要なのは、海外の観光客が自分のパソコンを使って検索するときに、このホームページがひっかかるのかどうかということであります。検索エンジンでヒットしやすいキーワードをあらかじめ設定してホームページをつくり込むのは、今や常識です。都の観光サイトにおいても、海外のPCからだとどのようなキーワードにヒットするのかということを検証していただいて、これから特に改善を図るべきところは図っていただきたいと思っております。
 次いで、観光情報センターの契約先変更についてであります。
 これもまた、ちょうど一年前の事務事業質疑で指摘をしましたが、観光情報センターの来場者水増し問題というものがありました。来場者の水増し問題に加えて私が問題視したのが財団の契約先でありました。この観光情報センターは、この東京都庁の中や上野、あるいは羽田空港に入っていますが、上野と都庁舎の中に入っている事業者の契約について疑問視をしたわけであります。
 この事業者は、九年連続で約一億円の事業を受注しておりました。しかしながら、適正に行われているはずの相見積もりも不正を強く疑わせるものでありました。その結果、ことしの春に改めて入札が行われたと聞きます。
 私は昨年の質疑で、見積もりを提出した各社の見積もりの書式が不自然なほど酷似をしていた点や、見積もりを提出した会社の多くが受注企業の知り合いだった点など、契約の問題点について指摘をいたしましたが、一年たって、こうした契約の反省点をどのように受けとめ、また、どのように改善をされたのか伺いたいと思います。

○横山観光部長 昨年、事業者から観光財団に提出されました見積書について、形式等が類似した箇所があると、そういった報告を受けましたので、財団に調査を指示いたしました。財団が事業者に聞き取り調査を行った結果では、各社はそれぞれの判断で見積書を提出しており、問題はなかったということで報告を受けております。
 一方では、委託業者の選定経緯が残っていなかったということが確認されました。
 今年度の契約に際しましては、改めて透明性を高めるという観点から、財団において事業者を公募し、外部委員も含めた企画コンペによりまして業者の選定を行いました。その結果、新たな業者に委託することとなっております。
 業者の独自提案による、デジタルカメラを活用したスタンプラリーの実施など、新たな取り組みによるサービスの向上にもつながっております。

○伊藤(ゆ)委員 こちらの契約についても、ホームページ同様、契約を改めていただいて、新しい業者が選定をされました。この新しい業者によって、今後、来場者の水増しなどが起きないよう、適切な観光情報センターの運営に努めていただきたいというふうに思います。
 私は、問題点は問題点として去年指摘しましたけれども、観光情報センターの役割は年々増しているというふうに思っております。そういう意味では、今の設置箇所数が本当に十分なのかどうか、むしろ拡充をしていかなければならないのではないかというふうにも思っています。そういう意味で、適切な運営をしていただくことで、今後の発展に期待をしたいというふうに思っています。
 次いで、観光部職員の海外研修制度の検討について伺いたいと思います。
 アジアの諸都市は、市場が急拡大するアジアの観光客の獲得合戦にしのぎを削っております。私も近年、台湾、韓国、中国、ベトナムなどの諸都市を回り、その急成長ぶりと、年々飛躍的に向上する観光客へのサービスに目を見張っています。
 こうした世界の情勢は行ってみないとわからないということが多く、東京都を代表して観光行政をつかさどる観光部の職員については、だれよりも海外での知見を広げてもらいたいと願います。しかし、観光部独自の海外研修プログラムなどはなく、シティーセールスで行く海外出張の寸暇ほどしか海外のまちを歩く時間はないということを聞いております。これで本当にシティーセールス戦略を描けるのかということについて、私は疑問を持ちます。
 私は、積極的に人と時間と予算を割いて観光部の職員を海外に出張させ、アジア諸都市の取り組みを学ぶべきだと思いますけれども、所見をお伺いしたいと思います。

○横山観光部長 海外の観光に関する先進事例を見ることを通じて知見を広めていくことは重要でございます。そうした観点から、観光部では、北米、欧州、豪州については、観光プロモーションの際、また、アジアについては、アジア観光促進協議会などの際に職員が海外出張をする、こういった機会をとらえまして、現地で学ぶべき内容等についても、出張前にあらかじめ明確にしておくなど、効率的、効果的に知見を広げられる方策を実践しているところでございます。

○伊藤(ゆ)委員 JALでも、あるいはJTBでも、観光客を相手にする仕事をされている企業においては当然のことながら、頻繁に営業マンを海外に派遣をさせて、その時々の動向を探り、人脈をつくっています。ぜひ批判に負けずに、海外出張は堂々と、特に観光部の職員においては行っていただかないと、東京の観光の未来はないというふうに思っております。
 既にロンドンでは、オリンピックに向けて、各国の都市がシティーセールスを行うための用地の確保等を行っております。残念ながら、北京オリンピックのときには、実は招致本部の職員は当然、開催期間中に現地を訪れていますが、観光部職員が現地に視察に訪れたことはなかったというふうに伺っております。
 来年のロンドン・オリンピックでは、各都市がどのようにシティーセールスを展開しているのかについて研究をする必要もあると思いますし、同時に、東京を強烈にアピールする絶好の機会だというふうに私は思います。そういう意味で、今度のロンドン・オリンピックにおいては、観光部の職員も積極的にこの期間中にロンドンを訪れ、招致本部の職員とともに東京のシティーセールスに努めるべきだと思いますけれども、所見を伺いたいと思います。

○横山観光部長 オリンピックは、開催都市にとりまして観光振興の面からも重要な機会であると認識しております。お話の件につきましては、今後の状況も踏まえつつ、適切に判断をしてまいります。

○伊藤(ゆ)委員 これは産労局だけの問題ではないと思いますので、本当に全庁的に観光行政を応援するような体制づくりというものを私どもも提案していきたいというふうに思っております。
 次いで、自家発電設備の導入助成事業についてお伺いをしたいと思います。
 震災に伴う原発事故や計画停電の影響によりまして、都内中小企業に電力への不安が高まっていた時期に、緊急対策として、東京都が百億円の基金を設けて自家発電設備の導入助成事業を開始したということを記憶しております。これは素早い対応だったというふうに評価をしておりますが、第二回定例会の委員会でも私が指摘したとおり、都内の中小企業が自家発電設備を導入するに当たっては、設置場所の確保や燃料の管理など、なかなか難しい面があるのではないかと申し上げてまいりました。
 火事場の対策として打ち出した当時に比べて、企業や家庭の節電努力などもあり、心配された計画停電が回避されたことを受けまして、企業経営者の停電に対する危機感も相当和らいだという感じがいたします。
 こうした中で、八月から開始した自家発電設備の導入助成事業の執行状況がどのようになっているのかお伺いしたいと思います。

○河内商工部長 都では、中小企業が節電対応を行う際に専門家を派遣したり、自家発電設備の整備に経費助成を実施する事業を開始し、これまでに二百件近い問い合わせを受けて、具体的な申し込みがありました十二社に対して、各社二回ずつ、専門家を派遣してアドバイスを行ってまいりました。
 そのうち十社からは、自家発電設備導入に向けた経費の助成について申請を受け付けており、その合計額は約九千四百万円となっております。

○伊藤(ゆ)委員 百億円の基金を設けた一方で、助成予定額は九千四百万円ということなので、執行率が一%ということです。これは火事場につくった、本当に東京都が中小企業のためを思ってこしらえた制度設計ですので、このことをもって何か批判をしようという思いはありません。そもそも中小企業にとって自家発電の設備は、工作機械とは異なり、加工、生産に直接に使用するものではないため、どうしても導入には慎重になるものと思われます。
 しかし一方で、今回の震災により、電力供給の不足が生産活動の継続に大きな影響を及ぼすことはだれもが実感をし、危機に備える必要性を認識しました。とはいえ、自家発電機の導入は、注文から設置まで短時間では済まず、設置には計画性が求められるものであります。中には、発注から納品までに半年以上かかるケースもあったというふうに伺っております。危機感を抱いて応募しても、導入されるのが来年になるということでは、導入に踏み切る企業がふえることは考えにくいというふうに思います。
 こうした状況の中で、この助成制度の今後の事業執行に際しましては、二つの重要なスタンスがあるというふうに私はとらえています。
 まず一つは、当たり前のことですけれども、都内の中小企業にとってより使いやすい制度としていくことではないかと思います。企業の方からの声をきちんと把握、分析し、ニーズに合わせた工夫を行っていくべきであります。企業の話を聞きますと、最近は自家発電機だけではなくて、むしろ省エネ設備というものを会社内に設置をしていきたい、そういうところにおいては、特に蓄電池などを充実させていきたいんだけれども、今回の自家発電設備導入助成において、蓄電池が本当に使えるのかどうかというような声もあるやに伺っております。
 そして、もう一つの大事なスタンスは、執行率が低いからといって、やみくもに実績をつくるような取り組みは避けるということです。自家発電の設備は高額であり、過剰な設備導入は将来の企業経営に影響を与えかねません。こうした観点から、本当に自家発電設備を必要とする企業に対して、どのようにその導入を促進していくのか見解を伺いたいと思います。

○河内商工部長 ことしの夏は乗り切ったものの、ことしの冬や来年の夏に向けて必要な電力が確実に保証されるとはいいがたい状況にありますことから、中小企業の電力確保は依然として重要な課題でありまして、自家発電設備の導入に対する都の助成の仕組みについて十分にPRするとともに、より効果的な事業執行が必要と考えております。
 そのために、同事業のPR活動にさまざまな工夫を行うとともに、中小企業のこれまでの要望内容を調べて事業に反映させていくことが必要でございます。
 具体的な要望といたしましては、都外の施設での自家発電設備の導入を対象とすることや、現在は発電装置に付属する場合に限っている蓄電池への助成をより幅広いものにすることなどというものが出ております。
 今後は、こうした要望につきまして、対象拡大により生じるさまざまな課題を検討しながら、中小企業にとっての必要性を踏まえて、効果の高い事業成果を出すことを念頭に置いて取り組みを進めてまいります。

○伊藤(ゆ)委員 今、答弁の中にも蓄電池の話が出てきましたが、省エネ設備に対する助成という意味では、産労局ではなくて、どちらかというと環境局に多くのメニューが用意をされており、そのメニューを使うに当たっては、必ず省エネ診断士に会社に一回入ってもらって見てもらうということが義務づけられております。
 そうしますと、省エネ診断士を使うことも含めて、企業からすると、この省エネ設備ということになれば、環境局との連携というものが主になってまいりますので、私は、この蓄電池のこともあわせて考えるならば、ぜひ今回の助成事業の中で、かなりの部分、まだ余っている予算がありますので、これは環境局とも連携をとっていただいて、最も効率的な制度運用になるように工夫をしていただきたいというふうに要望しておきます。
 それから、東京ビッグサイトの拡張についても伺っておきたいと思います。
 東京ビッグサイトは、我が国を代表する国際的な見本市会場であります。七月の上旬に私も実際にビッグサイトに出かけて、その盛況ぶりというものを肌で感じてまいりました。
 見本市の会場は、国際的に見ても大規模化が進んでいるようで、世界的にはドイツのハノーバーの四十六万平米を超えるスペースを持つ見本市会場を筆頭に、十万平米を超えるものが既に四十五施設もあり、八万平米のビッグサイトの面積というのは世界で六十番台という水準であります。経済大国日本としては、いささか情けない広さしかないというふうにいえるのではないかと思います。
 経済面での成長が著しいアジアでも見本市会場の整備は進んでおり、中国の上海に大規模な展示場がオープンして、高い集客力を示しています。こうした中で、我が国の中心である東京においても、将来に向けた産業振興の拠点として、より規模の大きな見本市会場が必要なのではないかというふうに考えております。
 都として、世界の見本市会場の整備にかかわる現状をしっかりと調べて、経済波及効果の大きさも把握しつつ、これからの東京ビッグサイトのあり方について検証していくべきだと、こう思いますけれども、所見を伺いたいと思います。

○河内商工部長 まず、展示会等の経済波及効果につきましては、東京ビッグサイトでの展示会開催では、年間、都内で約四千六百億円、全国で約七千五百億円になるものと推計されております。
 また、国際的な展示場の傾向として、大規模な施設の建設やスペースの大幅な拡張が進んでいることは承知しております。しかしながら、ビッグサイトの拡張につきましては、隣接する地域に広大な敷地を確保しなければならないこと、また、来場者の増加に対応可能な輸送能力の増強をしなければならないこと、それから、建設費や修繕費など莫大な費用負担が見込まれることなど、数多くの解決すべき課題が存在いたします。
 こうしたことを踏まえますと、今後の東京ビッグサイトのあり方については、慎重な検討が必要と考えておるところでございます。

○伊藤(ゆ)委員 本当に経済波及効果の大きなものでありますので、慎重というよりも果敢な検討をぜひお願いして、検討まではしておいていただいて、本当に予算執行するかどうかは次の段階の議論として、全庁的に議論をいただけたらありがたいなと思っています。
 次に、未就職卒業者緊急就職サポート事業について伺いたいと思います。
 今年度、都は、就職先が決まらないまま学校を卒業した方を対象に、研修と企業での就業体験を組み合わせた未就職卒業者緊急就職サポート事業を新たに実施いたしました。これは、一カ月間の研修を経た未就職の若者を、今度は希望する企業にインターンというか体験就職というか、三カ月間仕事をしてもらって、そこで相思相愛になれば正社員として採用をされる。それまでの間は、東京都がお給料と研修費を出す、こういう事業であるというふうに理解をしております。
 未就職者の卒業生が急増する中、こうした取り組みは未就職者から期待を寄せられているはずであります。今回の対象者数は七百五十人であります。未就職者の数からすればほんの一握りにすぎませんが、より多くの方に周知されるように、都の媒体での掲載だけではなくて、大学の就職課などを通じて卒業生に情報が行き渡るように工夫をしていただきたいということをさきの委員会で私は求めました。
 過日、第一期目として、三百人を対象にこの事業が実施されたと聞いていますが、応募者数や正社員に決定した人数などをお示しいただきたいと思います。

○穂岐山雇用就業部長 未就職卒業者緊急就職サポート事業の第一期目の実績につきましては、定員三百人に対し、応募数は合計で九百二十七人でございます。このうち第一期目のプログラムに参加した方が合計で二百八十八人、このうち企業での派遣就労を体験したのが二百三十五人で、派遣先の企業で正規雇用に結びついた方は百二十八人でございます。

○伊藤(ゆ)委員 三百人の定員に対して九百二十七人の応募があったということで、やはり、都内において未就職者の若者が本当に多くいらっしゃるということがわかりましたし、また、この事業に対する期待の大きさも、この応募者数の多さから見てとることができます。
 一方で、百二十八人の正規雇用に結びつけることができたことは、私は都の努力として大きなものがあったというふうに評価をいたしたいというふうに思います。また、敬意を表します。
 もともとこの事業は、七百五十人を対象に十五億円の予算がついておりまして、一人当たりの予算は二百万円でした。さきの質疑でも私は、これは高過ぎるんではないかと指摘をしてまいりました。特に三カ月間の就業体験期間に都が出す給料は、一カ月当たり約二十万円を予定しており、これでは、正社員化した後に会社から受け取る給料の方が安くなるのではないかという指摘もさせていただいたわけです。
 その後、都ではどのような対応を行ったのか、また、実際に一期目のプログラムに参加した方の一人当たりにかかった経費とその内訳について伺いたいと思います。

○穂岐山雇用就業部長 まず、本事業に参加した方の賃金設定についてでございますが、本事業に参加する方の賃金は、プログラム期間中の雇用主である民間受託事業者が決定することとなってございます。このため都は、契約に際し、市場実勢や法令等を踏まえた賃金設定となるように仕様書で定めてございます。
 民間受託事業者におきましては、就労体験中の賃金より就職後の初任給の方が低くなりますと、参加者の就職しようとする意欲が損なわれることを避けるため、平均的な大卒初任給水準より低い月額約十五万円で賃金を設定しております。
 また、第一期目のプログラムに参加した方の一人当たりにかかった経費につきましては、第一期目の経費総額でございます約三億一千四百万円を、一期目のプログラム参加数である二百八十八人で割りますと、一人当たり約百十万円となります。
 その内訳を試算しますと、プログラム期間中の参加者の賃金が約六十二万円、研修経費が約二十五万円、企業開拓や企業と参加者とのマッチングに係る相談等の業務に関する経費などが約二十三万円でございます。

○伊藤(ゆ)委員 当初予算では、先ほど申し上げたように、七百五十人を対象に十五億円の予算ということで、一人当たりの予算は二百万円規模でありました。
 一方で、実際の運用に当たっては、私の指摘も踏まえていただいたようで、一人当たりの予算が百十万円になったということはよかったというふうに思っております。といいますのも、本当に多くの方々がこのプログラムに参加をしたいと思っておりますので、そういう意味では、一人当たりのコストをできるだけ下げていく努力がやはり必要なのではないかというふうに思います。
 都の努力は本当に認めつつも、三百人の定員に対して九百人以上の応募があったことは、未就職の卒業者がいかに多いかの証左であります。そういう意味では、七百五十人の定員は、未就職者のほんの一握りの方々にすぎず、対象人数の拡大が求められています。その点、私は今申し上げたように、コストを下げて、より多くの方が正社員化できる仕組みをつくるべきではないかと思いますが、所見をお伺いしたいと思います。

○穂岐山雇用就業部長 現在の若者、特に既卒者を取り巻く雇用情勢は大変に厳しいと認識してございます。こうした中で、未就職で卒業した方を正規雇用に結びつけるためには、一人一人の状況に合わせてきめ細かくマッチングやフォローアップを行うことが必要でございます。
 また、就職後の定着ということまで考えますと、若者にとっても、企業にとっても、正規雇用か否かを見きわめるためには、三カ月程度の就労体験も必要でございます。今後とも、本事業では、未就職卒業者の方に対し、きめ細かく支援を行うことで正規雇用化を実現してまいります。
 なお、本事業では、ただいま申し上げましたように、きめ細かい支援を行うことが何よりも重要であると考えてございまして、大幅に規模を拡大することにつきましては、現状では、受託事業者側の支援体制など制約があることもご理解いただきたいと考えます。

○伊藤(ゆ)委員 就職できる人を支援しているのではなくて、就職できなかった人の支援なので、きめ細かい支援が必要であるということは本当に理解をしております。また、その分だけコストがかかる面も、これはいたし方ないところがあるというふうに理解をいたしておりますが、今後とも、過剰な経費にならないように目を配っていただきたいと思います。
 ちなみに、今回三百人の定員に対して九百人の応募があり、六百人の方々はこの事業に参加できなかったというわけであります。人数的な制約があることはいたし方ないとしても、この六百人に対するフォローも少し考えていただきたいなと。
 例えば、応募をするということですから、少なくとも住所がわかる、連絡先がわかる、一番わかるのは、メールアドレスがわかると思います。ぜひメールアドレスは把握をしていただいて--例えば東京都が主催をしている企業との合同就職面接会など、さまざまなマッチング事業があると思います。こういう事業をリアルタイムに、応募してきて事業に参加できなかった方々にメール等で配信するというのは、お金のかからない事業ではないかと思いますので、そうしたアフターフォローをぜひお願いを申し上げて、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

○山崎委員 それでは、早速でございますが、質問に入りたいと思います。
 東日本の大震災により、都内の中小企業もこれまでに経験したことのない試練にさらされたものと感じております。
 特に、ことしのこの未曾有の事態として、震災直後には計画停電が実施をされ、夏場には電力使用の制限がかかり、電力供給が揺らぐ危機的な状況も生じたわけでございます。
 都では、我が党の要望も踏まえ、第二回定例会で、自家発電を都内の事業所に整備する際の経費に助成を行う事業を開始しております。先ほど、伊藤ゆう理事の方からもご質問がありましたが、とにかくことしの夏場は何とか電力不足の問題を乗り越えたわけでございますが、これから、冬や来年の夏に十分な電力の確保ができるという保証は依然としてない状態は続いております。こうした中、都として、経費助成の仕組みがより効果的なものとなるように、今の段階で事業内容などについて、中小企業の皆さんの意見をしっかりと踏まえながら不断の見直しに取り組んでおくことが重要になるかとも考えております。
 都内の中小企業による自家発電の導入支援のこれまでの状況と、今後の取り組みに向けた考え方についてお伺いいたします。

○河内商工部長 今回の震災により、電力の供給能力が落ち込み、電力不足が懸念される中、都内の中小企業の節電への取り組みや自家発電などにより、電力をみずからの力で確保して事業継続を図る電力自給型の経営を確立することは重要でございます。
 そのため、都では、自家発電設備の整備に必要な経費に対する助成等を開始いたしまして、これまでに二百件近い問い合わせがございました。具体的な申し込みのあった十二社について、各社二回ずつ、二十四回の専門家派遣を行った上で、そのうちの十社から自家発電設備導入の申請を受け付け、その合計額は約九千四百万円となっており、うち九件が年度内の執行を予定しておるところでございます。
 ことしの夏は、電力供給が極端に危機的な状況になるまでには至らず、事業の実績は見込みよりかは低くなっておりますけれども、ことしの冬や来年の夏に向けて、中小企業の電力確保は依然として重要な課題でございまして、事業のPRに加え、より効果的な事業執行が必要となってございます。
 このため、電気を大量に使うメッキ工業の業界団体にPR活動を行うなどの取り組みに加えまして、中小企業のこれまでの要望内容を検証いたしまして、今後の事業展開に反映していく考えでございます。
 具体的要望といたしましては、都外にある施設での自家発電設備の導入を対象とすることや、現在は発電装置に付属する場合にのみ助成対象としている蓄電池を単独でも助成対象とすることなどが出ております。
 今後は、これらの要望につきまして、対象拡大により生じるさまざまな課題を検討しながら、より効果的な制度となるよう見直しを進めてまいります。
 こうした取り組みによりまして、中小企業における電力自給型経営の実現を着実に支援してまいります。

○山崎委員 都外、そして、先ほど答弁にもあったように、都外にある施設での自家発電設備の導入を対象にする、これは本当にすばらしいことだと思います。ぜひ実現へ向けて着実に支援をしていただきたいと思います。
 次に、東日本大震災により、被災地の取引先が失われることにより、受注の大幅かつ急激な減少という形で都内の中小企業の経営に大きなダメージを与える例も数多く生じております。
 さらに、昨年の夏から続く円高は、史上最高値を更新するなど、会社経営の上で採算の悪化に拍車をかける重大な要因にもなっております。
 このように、震災や円高が会社の収益やこれまでの取引のあり方に影響を及ぼしていることを考えると、中小企業は当面する課題だけでなく、中長期的に経営のあり方を見直すような対応が不可欠になるものと考えております。
 都では、中小企業の経営相談に当たっては、円高や震災の影響を乗り切ることができるよう体制の充実を図っているわけですが、今年度における取り組みの状況についてお伺いいたします。

○河内商工部長 都内の中小企業が未曾有の厳しい経営環境に直面する中で、短期のみならず中長期にわたる課題を的確に解決できるよう、経営相談の充実を図ることが重要であると考えております。
 都は、本年度、円高対応・企業変革アシストプログラム事業により、中小企業診断士等の経営の専門家を十回まで無料で派遣し、厳しい環境下においても経営力の向上を目指す中小企業を支援しております。
 この事業では、企業の抱える課題を明らかにし、その解決に向けた方向性を示した企業変革プランと、その実現のための実行プログラムを策定した上で、専門家による助言等を実施する仕組みとしております。
 既に九十七社に対して支援を開始しまして、二十五社の企業変革プランと、十二社の実行プログラムを策定するなどの支援を行っております。
 また、第二回定例会の補正予算により追加いたしました震災対応緊急エキスパート派遣では、震災によって生じた経営課題の速やかな解決を目指す中小企業に対しまして、一社当たり三回まで無料で専門家を派遣する仕組みとしております。これまで七十二社に対し、延べ百九回にわたり経営の専門家を派遣して、経営課題の解決に向けたアドバイスを実施しております。
 今後も、これらの事業により、円高や震災の影響を乗り越えようとする中小企業の経営改革を着実に支援してまいります。

○山崎委員 次に、震災後の中小企業金融支援について伺います。
 東日本大震災の発生後、既に八カ月が経過をいたしましたが、被災地には未曾有の大災害のつめ跡が依然として残り、原発事故についても収束が見通せないなど、多くの被災中小企業の苦難が続いております。
 私の地元の江東区においても、工場の損壊など、直接被災した企業も多く、今なお業況の回復に苦しんでいるとの声も聞いております。
 都は、震災により直接被害を受けた中小企業に対して、震災後、速やかに災害復旧資金融資を立ち上げ、金融面での支援を行ってまいりましたが、これまでの実績についてお伺いをいたします。

○寺崎金融部長 震災による直接被害を受けた中小企業を支援するための融資メニューである災害復旧資金融資は、都の制度融資の中でも最も低い、一・五%の金利を適用し、信用保証料について都が全額補助を行っております。本年九月末までの利用実績は二百六十八件で、約五十四億円となっております。
 また、この融資につきまして、都が独自に融資実行から一年間に限り行うことといたしました〇・五%の利子補給につきましては、本年九月十一日融資実行分までとしておりましたが、震災への影響が依然として深刻であることを踏まえまして、その取り扱いを今年度末までに延長いたしました。

○山崎委員 直接被害を受けた中小企業への対応についてお聞きいたしましたが、一方で、原発による風評被害やイベントの中止による売り上げの減少など、間接被害によっても多くの中小企業が影響を受けているわけであります。
 そのような中小企業を支援するため、都は、五月には災害緊急を創設して対応しておりますが、これまでの実績について伺います。

○寺崎金融部長 災害緊急は、国の東日本大震災復興緊急保証制度に対応した融資メニューであり、震災の影響や被災地の事業者との取引関係により業況が悪化している企業や、風評被害による契約解除等の影響で売上高が減少している企業など、震災により間接被害を受けた中小企業も対象としております。都制度の中で最優遇金利を適用しますとともに、利用したすべての企業に対しまして、都が信用保証料の二分の一を補助することとしております。
 本年五月の取扱開始以降、九月末までの実績が約一万件、二千四百六十三億円となっておりまして、高水準での利用が続いております。
 また、全国的に見ますと、東日本大震災復興緊急保証のうち、都の利用が約二割を占めておりまして、多くの都内中小企業に利用されております。

○山崎委員 まだまだ震災の影響を直接、または間接に受けた中小企業への資金繰り支援が必要であることがわかりました。
 引き続き、こうした企業の復旧、復興に向けた金融支援をしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 震災の影響に加え、急激な円高により景気の下振れリスクが高まるなど、中小企業を取り巻く経営環境は予断を許さない状況となっております。東京外国為替市場における円相場は、十月には最高値を更新し、中小企業に与える影響が深刻化をしておりますが、為替介入の効果も限定的となっております。
 こうした状況の中、資金繰りに苦しむ中小企業に対しては、都はどのような支援を行っていくのかお聞きします。

○寺崎金融部長 現在の円高水準が継続することによりまして、多くのメリットを得る企業がある一方で、製造業など輸出関連企業を中心に影響を受ける中小企業も多くございます。
 こうした中小企業の資金繰りを支援するため、都は制度融資の中に円高セーフ、円高一般の融資メニューを設け、最優遇金利を適用するほか、本融資を利用した全事業者に対しまして信用保証料の二分の一を補助するなどの支援を行っております。
 今後も引き続き、取扱金融機関や関係団体等に対しまして円高メニューの周知を図っていきますとともに、円高対応特別相談窓口におきまして、中小企業の相談にきめ細かく対応するなど、資金繰りに苦しむ中小企業を全力で支えてまいります。

○山崎委員 円高については、報道で超円高といわれるほどの水準となっており、この水準が継続すると、中小企業に対して極めて深刻な影響が及ぶことから、今後とも中小企業の資金ニーズ等を的確に把握し、引き続きしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 次に、急速な円高の進行により、製造業が生産拠点を海外に移す動きに拍車がかかるなど、産業空洞化が強く懸念される状況になってきております。
 産業空洞化を食いとめ、東京の産業の活力を維持するためには、円高の影響を受け、経営環境が悪化している都内中小企業に対する支援も大切ですが、これから創業する企業、将来的に成長が見込まれる企業を積極的に支援していくことが重要であります。
 そうした観点から、ベンチャー企業への支援について何点かお伺いをいたします。
 まず、資金面での支援ですが、都はこれまで、平成十二年度からベンチャー企業に対してファンドによる支援を行ってきたと思いますが、どのような成果と課題があったのかお伺いをいたします。

○寺崎金融部長 創業して間もない、成長過程にあるベンチャー企業は、信用力や物的担保が不足しておりますため、制度融資のような間接金融の手法だけでは資金調達に限界がございます。
 このため都は、平成十二年度以降、すぐれた技術力や独創的な発想を持ち、成長が期待されるベンチャー企業に対しまして資金を供給するベンチャーファンドを立ち上げ、直接金融の手法による支援に取り組んでまいりました。
 ベンチャーファンドでは、これまでに、ものづくりやライフサイエンス分野を初めとする三百社を超える企業を支援してまいりました。こうした取り組みにより、ベンチャー技術大賞の受賞企業や株式市場に上場を果たした企業も出ておりまして、企業の成長に役立っております。
 一方で、リーマンショック後の景気低迷により、投資先企業は厳しい環境に置かれておりますことから、ファンドの運営にも影響がございまして、販路拡大等の成長支援や株式公開等の出口支援に課題が生じております。今後は、これまでの取り組みを踏まえ、さらに効果的な支援が求められております。
 ファンドを通じた企業の支援は、資金供給だけでなく、経営支援もあわせて行うものであり、今後とも、ベンチャー企業を成長軌道に乗せるための総合的な支援を継続してまいります。

○山崎委員 答弁の中でありましたように、ベンチャー企業が金融機関から融資を受けるのは大変厳しいというのが現実であります。事業拡大に必要な資金調達ができなければ、企業の成長はとまってしまう。やはり、融資のような間接金融手法だけでなく、ファンドによる資金支援もあわせて行っていくことが重要であります。
 今後とも、ベンチャーファンドの運営を通じて、将来性のある企業の成長支援にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 次に、都内の経済活動を活性化するためには、ベンチャー企業を初め、起業を志す将来の産業の担い手をしっかり支援していくことはますます重要になると考えます。特に、東京では開業よりも廃業する会社の数が多い状況も続いているため、創業支援にはきめ細かい行政としてのサポートが不可欠であります。
 都は、これまで、創業間もない企業に低廉な家賃でオフィスを提供するインキュベーション施設を整備してまいりましたが、会社経営には経営戦略やマーケティングなど、幅広い知識やノウハウが必要で、そうした部分の提供を図るソフト面でのサポートも重要であります。
 このため、インキュベーション施設の整備に合わせ、経験豊富な専門家による人的支援が欠かせないと考えますが、都としての取り組み状況について伺います。

○河内商工部長 東京の産業の活性化や雇用創出を図るため、創業への取り組みに支援を行うことは重要でございます。特に、創業後の事業の発展を確実なものとするためには、低廉な家賃で事業スペースを貸し出すインキュベーション施設の整備に加えて、経営ノウハウの提供など、ソフト面での支援を充実させていくことが不可欠でございます。
 都では、現在、八カ所のインキュベーション施設を設置、運営しておりますが、販路開拓や資金調達など、会社の成長に必要なさまざまなサポートを行うインキュベーションマネジャーを、これまで、東京コンテンツインキュベーションセンターなど三施設に配置してまいりました。
 施設ごとの特性に応じた豊富な経験を持つ専門家のサポートにより、入居している企業の多くで売り上げが伸びるなど、高い成果が上がっていることから、今年度から他の施設にもマネジャーの配置を広げることといたしました。
 これにより、ソーシャルビジネスに熟知した専門家を配置するソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDAや、新製品の開発手法に精通した大手メーカーのOBが支援を行うインキュベーションオフィス・TAMAなど、現在、六カ所でインキュベーションマネジャーを配置しているところでございます。
 今後とも、入居者に対するソフト面のサポートのレベルを高め、創業の支援を着実に進めてまいります。

○山崎委員 次に、商店街振興について伺います。
 改めていうまでもなく、商店街は地域の商業活動の拠点であるとともに、コミュニティの中心として、住民の便利で快適な生活を支える重要な役割を担っており、我が党としても、これまで商店街を最重要課題とし、その応援として繰り返し主張をしてまいりました。
 特に、商店街が、都政の重要課題でもある環境問題の解決に向けて、街路灯などのLED化を図る取り組みを、都としてさまざまなメニューによりサポートしたことについては、地域社会の住民からも高く評価をされていると考えます。
 そこでお伺いしますが、商店街のLED化の支援について、我が党の主張により実現した環境対応型商店街活性化事業を含め、どのような取り組み状況になっているのかお伺いをいたします。

○河内商工部長 都は、今年度より環境対応型商店街活性化事業を開始し、LEDや太陽光を活用した街路灯などを整備することにより、環境対策の必要性を地域社会にPRする取り組みを支援しております。今年度の申請状況は、LED街路灯の設置は二十三件、ドライミストの導入は一件となっております。
 そのほか、特定施策推進型商店街事業で、街路灯などのランプをLEDに交換するための申請を二百十七件受け付けております。
 また、国の補助制度に合わせて実施する中小商業活力向上施設整備費補助事業も、照明をLED化するアーケードの建てかえ等を対象として、現在、二件の申請を受け付けております。
 なお、これまでの二年間では、特定施策推進型商店街事業によるLED化につきましては、二十一年度は六十二件で十億四千七百万円、二十二年度は七十七件で八億四千万円の支援実績がございます。

○山崎委員 次に、いわゆる買い物弱者の問題について伺いますが、第二回定例会における我が党の質問に対し、都は必要な調査を行い、商店街の活用方策を検討するとの方針を示したところであります。
 また、先日の第三回定例会では、商店街が買い物弱者に対応する工夫や努力を行っている事例を検証し、今後に向けたモデルとなる事業を支援するべきとの我が党の提案に対し、都としては、実態調査の結果を踏まえて、区市町村と協力をして支援するモデル事業を検討するとの考えを明らかにいたしました。
 商店街が買い物弱者の問題にどう対応することが効果的か、さらに、そうした商店街に対する支援策をどのようなものとするかについて十分な検討が必要であります。そのため、都が現在行っている実態調査の結果を、まず正確に理解していくことが重要であります。
 都の実態調査の具体的な内容と進行状況について伺います。

○河内商工部長 都では、買い物弱者の実態を把握するため、高齢者の日常の買い物行動やその改善に向けた考え方などに関する調査を実施しているところでございます。
 具体的には、九月から十月にかけて、都内に居住する六十五歳以上の男女を対象に、住民基本台帳から無作為に三千名を抽出し、利用の度合いが最も高い店舗や、そこまでの移動手段、商店街に望むサービスなどを郵送による調査票で質問し、回収を行っております。
 現在、この調査票の分析を行っておりまして、年内を目途に結果を取りまとめ、区市町村と協力しながらモデル事業の立ち上げを検討してまいります。

○山崎委員 次に、MICEの誘致とその活用について伺います。
 国際会議を中心としたMICEは、大きな経済波及効果が期待できるばかりでなく、東京の魅力を国内外にPRする機会でもあり、観光振興を図る上で極めて重要であります。このようなことから、都は、これまで積極的にMICEの誘致に取り組んでまいりました。
 そこで、これまでのMICE誘致に向けた取り組みと、近年の都内における国際会議の開催実績について伺います。

○横山観光部長 都は、これまで、国際会議の誘致に対する支援といたしまして、誘致活動経費の一部を助成する誘致資金助成と、加えて、外国人参加者の招聘経費及び会場借り上げ費の一部を助成する開催資金助成、この二つの助成事業を実施しております。
 さらに加えまして、MICE業務従事者に対しまして、誘致のノウハウを中心とした知識とスキルの向上を図るため、MICE人材育成講座を実施いたしまして、都内でのMICE開催を促進しております。
 国際団体連合、UIAが発表いたしました国際会議統計における国際団体主催の会議件数におきましても、東京は二〇〇九年では百三十四件、二〇一〇年では百九十件となっておりまして、ここ数年間、開催件数は増加傾向にございます。

○山崎委員 都内での国際会議の開催件数が増加傾向にあるということで、都のこれまでの取り組みを高く評価いたしたいと思います。引き続き、MICE誘致に積極的に取り組んでほしいと重ねてお願いをしたいと思います。
 一方、今年度は東日本大震災の影響で、海外では旅行目的地としての東京のイメージが損なわれており、東京を訪ねる外国人旅行者は大幅に減少をしております。
 かつて経験したことのないこの厳しい状況の中で、都は、第二回定例会における我が党の代表質問を受け、補正予算を計上し、観光プロモーション強化のほか、MICEを通じた日本復興・東京安全PR事業により、外国人旅行者の回復に向けた取り組みを推進していくこととしました。
 そこで、この事業の目的と具体的な取り組み内容について伺います。

○横山観光部長 MICEを通じた日本復興・東京安全PR事業の目的は、東京で開催される国際会議の機会を活用しまして、外国人旅行者の早期回復に向け、集中的に東京の魅力や安全性をPRしていくものでございます。
 具体的には、九月に国内外から五千人以上が参加し、都内で開催されました第二十四回世界建築会議では、海外からの会議参加者向けに都内観光ツアーを実施し、東京の魅力や安全性を確認してもらうほか、MICE関連メディアを招聘し、今の東京を記事にして発信してもらう取り組みを推進しました。
 また、成田空港や会場でもある東京国際フォーラムにスタッフを配置しまして、会議参加者に対する観光相談などへの対応を行うとともに、会場周辺等にバナーフラッグを掲出し、東京のおもてなしのアピールと親近感の醸成に努めました。
 来年二〇一二年には、一万人以上の参加者が見込まれるIMFと世界銀行の総会が東京で開催される予定でございまして、今後も、MICEの機会を効果的に活用し、東京の魅力や安全性を積極的に世界に発信するとともに、競合する世界都市に負けないMICE施策を推進してまいります。

○山崎委員 積極的な姿勢がよく確認できました。
 東京でのMICE開催は、東京の都市としての国際的な存在感を高めていく絶好の機会であります。東京が持つ多様な魅力を世界じゅうの方々に知ってもらい、東京の国際競争力のさらなる強化を図ってほしいと思います。
 それでは、最後の質問に移りたいと思います。
 東京都立産業技術研究センターは、東京電力福島第一原子力発電所事故の直後から放射性物質の測定を行い、その結果を公表してまいりました。
 先日、三月十五日時点での東京都内の大気浮遊じんから放射性物質のストロンチウム90が六月に検出をされていたとの報道がありましたが、極めて微量であり、健康に影響を与える可能性が低いとのことで、私も安心をいたしました。
 しかし、このことについて、一部公表をおくらせていたとの見方があるのは大変残念なことでもあります。
 さまざまな種類の放射性物質の特定には専門的な分析が必要であると聞いておりますが、こうしたことを含めて、情報をできるだけ整理して提供していくことが必要であると考えます。所見を伺い、私の質問を終わります。

○保坂総務部長 放射性物質に関する件につきましては、複数部にまたがることから、私の方から答弁いたします。
 都における放射性物質の測定については、福祉保健局と当局が主に分担して行っておりまして、当局所管の都立産業技術研究センターにおいては、大気浮遊じんや農林水産物などの放射性物質の測定を行ってまいりました。
 大気浮遊じんにつきましては、過去のチェルノブイリ原子力発電所事故や北朝鮮の核実験のときの測定、分析ノウハウを生かし、専門的な見地から、放射性物質のうち、ウエートが高いと考えられる沃素131、沃素132、セシウム134、セシウム137の測定値について、東京都のホームページを通じて継続的に公表しているところでございます。
 放射性物質の測定値は、四月以降減少し、七月以降はおおむね検出限界値を下回った状況が続いておりまして、センターも事故後の多忙な状況からやや落ちつきを取り戻しつつございます。
 こうしたことを踏まえて、都立産業技術研究センターでは、大気浮遊じんの測定に係るさまざまなデータについて、分析、整理をした上で取りまとめを行うこととしており、都は、その報告を受けて公表する考えでございます。

○木内委員 産業交流展についてお聞きします。
 これは、さまざまな業種、業態が一堂に会し、多様な交流を通じて販路の拡大や技術の交流を行う展示会として、平成十年に始まりました。十二年には、当時の厳しい財政状況の中で、この産業交流展の継続が危ぶまれたこともあったわけでありますけれども、私は、この産業交流展は、財政的にいかなる困難な状況であっても、絶対にそのともしびは消してはならない、展示会を継続して行って、東京の産業の活性化に資するべきだと都議会で訴えました。その前後にわたって、再三、この産業交流展の発展、活性化に向けての発言を繰り返し行ってきたところでありまして、こうした主張が継続開催の実現を後押ししたものと私は確信し、また、自負しているところでありますけれども、この交流展が、去る十月二十六日、第十四回目の歴史を刻んだことに大変感慨を深くしているところであります。
 今回も、私は例年のように足を運び、そのにぎわいと、また、活力のみなぎる現場の状況を目にいたしました。東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県に事業所を有する個性あふれる中小企業に加えて、全国から危機管理や安全・安心分野の製品をつくる企業、また、ことし三月の東日本大震災により甚大な被害に遭われた被災地の企業を招くなど、全部で約九百近い企業が出展をしておりました。
 出展者と来場者との間で、また、出展者同士で交流や情報交換が行われるとともに、販路の拡大や企業間連携も具体化するなど、今回もまた大きく、さらに着実な成果を上げたのではないかと実感をしております。
 毎年、交流展に出かけて、この状況をつぶさに見ておりますけれども、今回も企業の経営者や一般職など、職種も営業、経営、設計など多岐にわたる来場者を迎えて、大変盛況のうちに終えることができました。
 そこでまず、産業交流展のこれまでの集客の実績と推移について報告を願います。

○河内商工部長 産業交流展は、中小企業の販路開拓と情報交流などを目的として、東京ビッグサイトで、平成十年からこれまで十四回開催しております。
 第一回目の開催時には、三日間の会期で五百十四の企業と団体が出展し、来場者数は約三万六千人でございました。
 会期が二日間となった平成十二年以降、来場者数は二、三万人台で推移しておりましたが、知名度が高まることで来場者数もふえ、開催日数を三日間に戻しました平成二十一年には、六万人を超える来場者数を記録しております。
 今回も八百九十六の企業と団体が出展し、来場者数が五万二千人となり、大変盛況な展示会となってございます。

○木内委員 実績と推移について報告をいただきましたけれども、聞くにつけ、私のかつての主張は間違いではなかったと。議会というのは、必要な議論を行い、必要な主張を行い、必要な予算措置を講じるように懸命に努力をすべきであって、これが今、十四回目を迎えているということに、何回もいいますけれども、やはり議会における議論の重要性というものを痛感するわけであります。
 産業交流展の初日には、石原知事が出席をして、ベンチャー技術大賞の表彰式が盛大にとり行われ、ベンチャー技術大賞は、中小企業が開発した革新的で将来性のある製品、技術を表彰しているわけですが、この受賞企業には、従業員数が三名とか四、五名程度という小さな規模のものもあるわけでありまして、こうしたベンチャー企業が受賞を契機としてぜひとも大きく成長してほしい、こう考えるわけであります。平成十二年度にスタートしたベンチャー大賞でありますけれども、これまでの具体的な企業数と状況について報告を願いたいと思います。

○河内商工部長 平成十二年度に開始しましたベンチャー技術大賞の受賞企業は、これまで百社となっておりまして、このうち五社が株式上場を実現してございます。
 また、受賞後、売り上げが増加している企業は五十九社でございまして、全体の六四%を占めているところでございます。

○木内委員 さっき山崎委員から話がありました廃業率と開業率、おとといの質疑のときにも申し上げたんですけれども、やっぱり景気の動向を占うとき、あるいは先行きの見通しを見るとき、廃業率と開業率というのは非常に重要であります。
 景気のいいときというのは、開業率が廃業率の上を行っているんですね。悪いときは逆転してるわけでありまして、一つには、この閉鎖するもの、あるいは開業する企業の数を単純に比べることも重要でありますけれども、今ご報告をいただいたように、例えば株式上場を果たしている企業の存在、あるいは三年を経過して売り上げが増加している企業の実態、これも非常に、私は重要な意味があると思うんです。その意味で、私はこの産業交流展の側面的な成果というものを、やっぱりこういう数字に注目をして見るべきだというふうに思うのであります。
 産業交流展は、幅広い業種、業態の企業が一つの会場に集まって、商談などを具体的に行って販路の拡大に結びつけていく貴重な場であると考えています。
 私の知り合いの出展者からは、ふだん交流が難しい業種、異業種の方、あるいは同業他社もあるわけでありますけれども、知り合うことができて商談のきっかけをつかむことができた、こういう率直な感謝の心情の吐露にも触れたことがありますし、改めて、産業交流展が販路拡大に役立っているものと意を強くしたわけであります。
 さまざまな異業種間の交流を手がかりに、商談、そして成約という具体的な成果が生み出されていくことが大切だと考えるわけでありますが、最近の商談件数、取引成立件数について報告ができるならば願いたいと思うんです。
 というのは、幹部職員の皆さんご存じのように、これは当初段階では、実は取引の成約件数であるとか、あるいは商談の件数はとってなかったんですね。ところが、都民の前に産業交流展の大きな意義を理解してもらう上で、これはとるべきだ、数字としてはっきりさせるべきだということを私は執拗にいってまいりまして、ある時期からそのご努力が実を結んで、数字も発表できるようになったんじゃないかと思っているんですが、この点について明らかにできますでしょうか。

○河内商工部長 産業交流展の成果につきましては、出展者すべてを対象に、開催から約一カ月後にアンケート調査を実施いたしまして、その結果を三カ月後に公表するとともに、商談件数や取引成立件数などについて分析して、翌年度の開催に向け、内容の向上に結びつける仕組みとしておるところでございます。
 最新のデータが公表されている昨年の産業交流展では、商談件数が一万一千七百一件、取引成立件数が二百八十六件となってございます。
 また、平成十八年から二十二年までの五年間の累計では、商談件数が三万九千八百八十二件、取引成立件数が九百三十九件でございます。

○木内委員 恐らく議会という公の場で報告されるのは初めてではないかと思いますけれども、極めて成果が上がってきている。当初は何百というブースが軒を並べていても、ただ展示しているだけという、スタート時点での状況もあったと思いますけれども、実質的にこういう商談が行われたり、あるいは取引の成約が数字としてあらわれてきているということは多とすべきであると、こういうふうに思います。
 今回、ベンチャー技術大賞を受賞した会社は、ねじの開発に取り組んでおりまして、これまでの発想を超えた斬新なアイデアで、ねじどめの効果を高めることに成功しております。
 私も、この企業のブースを訪問して、社長から詳しく説明を聞きました。緩まないねじの技術に、実は大変感動した。
 この企業の従業員は三名でありますが、こうした小規模の会社に対して、その社長さんいわく、ドイツとアメリカのねじ専門の会社から、実は引き合いもあったようでありまして、ドイツのねじ会社というのは、年商にして日本円で一兆円を超える物すごい巨大企業であります。いわば横綱と赤ん坊みたいな対比ができるわけでありますけれども、大変ねじの会社は驚いていた。
 商談成立しましたかといったら、いや、説明だけ聞いて、それっきりになって、恐らく本国へ戻って類似した製品をつくるんじゃないかと心配してますと、こういうふうにいっておりました。
 そこで、私は思うんですけれども、こういうアイデアがあって、見事な製品化を行っていながら、例えば知的財産を保持、担保できなかったり、あるいは外国にそのアイデアをとられてしまったり、あるいは、そのままアイデアだけ完成して、結局、売り上げに結びつかないようなケースもあると思うんですね。
 たしか、去年かおととしだったと思うんですけれども、糖尿病などで足が壊疽になって腐ってくる、悪い部分だけをバクテリアか細菌に全部食べさせて治療をする、これはベンチャー技術大賞だったと思うんですね。
 その後、その会社が、その開発をしたために大成長を遂げたという話は聞いていないわけで、物すごく残念なことです。知事もこういうベンチャー技術大賞にはいつもいつも大きな関心を持っていて、代理をよこさずに知事本人が来て、技術大賞を受けた企業や事業者に対して、大変称賛と、また、高い関心を示すようなことが多いわけであります。
 申し上げたように、中小企業の多くは、知的財産を管理する専門の部門を持っていない。海外企業に模倣品を大量につくられてしまうなど、大変な状況に陥っているケースがある。こうしたことから、欧米などの海外企業との連携に対しては、中小企業の持つ知的財産をしっかりと保護していくことが重要なんですね。会社を上場させたり、規模を充実させたり、販路を拡大したり、売り上げを伸ばさせたり、知的財産、あるいは財政的に融資をどうするかといういろんな分野の工夫と知恵があって会社は伸びていくんですけれども、実は、一番現場で困っているのは、さっきも話が出てましたけれども、あらゆる分野に精通したコーディネーターなり、あるいは助言者、アドバイザーというものがいないとだめなんですが、これがなかなか難しいんです。
 学問的に学際にまたがって優秀な能力を持っている人、あるいは販売経験があったり、販路開拓、海外駐在なんかして、どんどん事業を伸ばしてきたような商社の人であるとか、あるいは経理面であるとか、あるいは金融の分野におけるエキスパートであるとか、これを一体的に理解して指導できるような、こういう人が必要なんですね。
 これは、私がいっているのは非常に重要なことです。その人にアドバイスを受ければ、ワンストップで何でも教えてくれる。その人に知識の集積がなければ、自分の関係の人脈をどんどん、あるいは組織的システムを使ってこれをアドバイスできる。こういう人材というものを豊富に、実は東京都は用意していく必要があるんです。
 部分的にありますよ。中小企業振興公社にあっても、どこにあってもあるけれども、今申し上げたように、ベテランで豊かな経験と知識を持った、そういうアドバイザーというのをさらに、これまで以上に、実は用意をしていく必要があると思うんです。
 中小企業の知的財産の活用支援について、こうした専門的で難しい側面があることを考えると、私は、来年度からと今いわないけれども、しかし、中長期的に人員体制を充実していくことを検討すべきだと、これを提案いたします。
 きょうは短時間の質疑だけど、このポイントだけいい答弁が出ればいいと思うぐらいでありまして、これまでの取り組みと今後の、私の申し上げた提案に対して見解を求めます。

○河内商工部長 経済のグローバル化が進み、海外での事業展開を図る中小企業がふえる中で、すぐれた技術を持つ企業の知的財産を守り、その戦略的な活用に向けた支援を充実することが重要でございます。
 都は、知的財産総合センターで、中小企業の知的財産に関する啓発、相談、助成事業などを総合的に実施しております。
 例えば、外国特許取得に要する費用の助成につきましては、今年度の一回目の募集では五十三件の申請がございまして、そのうち四十件に助成を行っております。二回目の募集につきましても、六十七件の申請が来ているというような状況でございます。
 中長期的に見ました場合には、新興国での事業活動を対象とした知財戦略の策定など、相談内容につきまして質と量の両面からレベルの向上が必要になることが予想されますため、相談体制の充実を図るなど、知的財産活用に係る支援を着実に展開してまいりたいと考えております。

○木内委員 二十四年度予算に向けて局要求が出ました。一般会計六兆二千三百八十九億、産労関係のもしっかり拝見をしました。
 ぜひとも具体的に、今の答弁のとおりに進めてもらいたいと思いますし、特にこういうソフトにかかわる部分というのは局内執行でもできることであるし、例えば大きな、何十億、何百億という箱物をつくるとか、道路を建設するとかという話ではないわけで、いわば実態に即した、血の通った、配慮の行き届いた施策の展開が、これまでも産業労働局の得意とするところでありますし、特に私は、お世辞をいうわけじゃないけど、前田産業労働局長とは長いご縁がありまして、本当にじっこんに願っているわけでありますが、この前田局長は後世の都政の歴史にその名を残すといわれております局長でありますので、後で答弁を求めますが、その中でも、もし触れることができれば、ぜひとも今の部長答弁を踏まえて補足していただければ--今、答弁がにわかに難しければ結構です。
 今回の産業交流展の来場者数は、三日間で五万人を超えたということでありますけれども、出展企業の販路の開拓に結びつけていくためにも、さらに多くの来場者を期待し、活発な情報公開や商談が行われることが極めて重要であります。
 例えば、今回は隣接する同フロアのスペースで、航空宇宙展でしたか、開かれていまして、地続きですぐ歩いて行けるものですから、私も行きました。例の感動的な地球帰還を果たした「はやぶさ」の二分の一の模型が展示されておりましたけれども、産業交流展と隣接しているために、いんしん、にぎわいの中にも両会場の交流があったように思われます。
 恐らく、セパレートされた団体が、異なる趣旨に基づいて、幾ら同じフロアでも同時に計画して開催するというのは難しいことかもしれませんけれども、可能であれば、そういったことも検討していくべきであると思うんですが、これは答弁は要りません。実際問題、いうはやすく行うはかたしでありますから、いわゆる集客力をつけるために、そういう発想もあるいはあっていいのではないかということを、一つこれは提案として申し上げておきます。答弁は結構。
 それからもう一つは、この産業交流展のスペースの中で、ベンチャー技術大賞の表彰式のような集客力のあるイベントを、会場内で同時に開催していく。あそこはしつらえが非常にいいですから、メーンステージを設けられたり、あるいは観客席なんかも相当入るようにできるわけでありますから、こういったことも一つのかぎになってくるのではないかと。
 いろいろ提案するわけでありますけれども、前段の部分は答弁結構でありますが、産業交流展の集客力を高めていくための具体的な取り組みを申し上げたわけですが、見解を求めます。

○河内商工部長 産業交流展の集客力を高める上で、来場者にとって魅力のあるイベントなどを開くことが効果的であると考えておるところでございます。
 このため、産業交流展では、平成十二年から東京都ベンチャー技術大賞表彰式を会場内のメーンステージで行って、受賞企業のPRにあわせて、来場者の関心を高める工夫を行っておるところでございます。
 また、会場内におきまして、著名な経済学者などによる基調講演や、その時々のテーマに即した各種のセミナーを実施し、会場を訪れる会社経営者などの興味を引く催しも行っております。今回は、震災復興や知的財産、経営革新、さらには国際化対応としてアジアビジネスなどのタイムリーなテーマで実施いたしましたものでございます。
 さらに、平成二十一年には八都県市の合同商談会を同時に開催したり、平成二十二年からはすぐれた経営革新の取り組みを表彰する東京都経営革新優秀賞表彰式や、また、学生が出展企業を訪問いたしまして、中小企業の魅力を知っていただく中小企業魅力発見ツアーなど、多様な取り組みも行っているところでございます。

○木内委員 産業交流展について質疑を行ってきました。
 都は、東京の産業、雇用を支える中小企業に対して、その時代の状況を踏まえてさまざまな支援をしていくことが重要であります。こうした意味から、産業交流展が大変重要な役割を果たしていることは、きょうの質疑で、また、今後への課題も含めて明らかになったところであります。この行事、イベントの一層の充実に向けて、前田局長の見解を伺って、私の質問を終えます。さっきの点についても、もしできれば触れてもらいたい。

○前田産業労働局長 東京の産業を支えております中小企業が、展示会を通じて商談の機会を確保し、販路の開拓に結びつけることは、経営力を高めるための基礎となる重要な取り組みであると考えております。
 このため都では、商談成立のきっかけとなります中小企業同士の交流の機会を大規模な形で提供して、展示会としての実を一層高めるため、平成十年度からこの産業交流展を開始し、その後、回数を重ねて、今年度十月に開催いたしましたが、十四回を数えるに至っております。ただいまお話をちょうだいいたしましたが、この間の都議会のご指導、ご支援に感謝申し上げます。
 去る十月の産業交流展では、約九百もの企業、団体が出展するとともに、来場者が五万人を超えるなど、中小企業のための国内最大級のトレードショーとして広く定着しております。
 こうした産業交流展が、将来に向けて、中小企業の販路開拓に役立つ重要な機会としてさらなる発展を続けるためには、その時々の経済社会の状況に的確に対応して、一定のコンセプトを持ち、企画に工夫を行って、来訪者にその魅力を力強く発信することが重要になると考えております。
 そうした考え方に立って、中小企業のすぐれた技術を紹介するベンチャー技術大賞の表彰式、知的財産分野のセミナーなどを、産業交流展では継続して行っておりますけれども、今年度は、東日本大震災からの復興に向けて、被災された地域の中小企業をお招きして商談ブースを設けるとともに、全国から危機管理や安全・安心分野といった震災復興にかかわりの深い製品、技術を展示して、来訪者や出展者の交流などに役立てたところでございます。
 今後も集客に効果的な特別企画の実施などに積極的に取り組んで、この産業交流展の一層の充実を図ることはもとより、東京の中小企業の一層の活性化に向けまして、ただいまお話のありました知的財産の分野も含め、当局も全力を挙げて、中長期的視点を持ちつつ支援を強化してまいります。

○清水委員 経済悪化が長期にわたって続く中で、都民の個人消費も低迷を続け、東京の中小企業の経営や雇用にも深刻な影を落とし続けています。
 企業倒産の中でも、小規模企業が占める割合は、東京は八二%、全国の六一%よりも高く、さらに倒産に占める不況型倒産の割合は、東京が八八%と増加しており、この点でも全国より高い状況となっています。
 また、昨年の東京の完全失業率は、年平均で五・五%と全国を上回っていました。企業倒産のうち八割は破産の形態をとっており、債務を弁済できないことから、関係企業への影響が連鎖するおそれもあります。
 ところが金融機関は、政府、金融庁による弱肉強食の金融政策に沿って実施しているために、例えばある地域金融機関では、二〇一一年の三月の預金量は前年と比べて一・五%増加しているにもかかわらず、融資量は前年と比べ減少しています。しかも、五年前の二〇〇六年三月と比較しても、預金量は七%の増加でありながら、融資量は大幅な減少となっているというのが実態です。
 こういう中ですから、東京都の果たす役割というのは、非常に重要な役割を持っていると思います。実際、先ほどいただきました資料の中でも明らかになっていますけれども、東京都の融資実績は減少し続けています。融資を受けられないと相談を受ける業者もふえています。金融機関がリスクを伴った貸し出しを渋っているとも聞いています。したがって、これまでの融資制度だけでなく、業者の実態や要望にさらにこたえるものにする必要があると思います。
 そこで伺いますが、まず都として、小規模企業が強く求めている三年据え置き、十年返済、保証料本人負担なしの融資を創設し、既存借り入れの返済凍結や返済月額の減額、借りかえなど、返済条件の大幅緩和措置を実施するべきだと思いますけれども、見解を伺います。

○寺崎金融部長 都制度融資の中心的なメニューであります経営支援融資では、返済期間を十年とし、据え置き期間を、その後の返済負担を考慮して二年としております。金利につきましては最優遇金利を適用するとともに、都が独自に小規模企業者に対して保証料の二分の一を補助するなど、他の道府県と比べましても手厚い措置を既に講じております。
 また、返済条件の緩和につきましては、一定の条件のもと、月々の返済負担の軽減を図るため、企業債務の借りかえや返済期間の延長を実施するなど、中小企業のニーズにきめ細かく対応をしております。

○清水委員 そうではありますけれども、やはりこれに当てはまらない業者の皆さんの条件というものがあるわけです。
 また、家族経営の小企業では、家族の生活を守ることは重要課題であり、こうした小企業を支えるために、無担保・無保証人かつ業種、年齢、性別などによる取り扱いの差や納税要件をなくした融資制度の創設についても、かねてから業者が求めてまいりましたが、必要であると思いますけれども、どうですか。

○寺崎金融部長 都の制度融資では、小規模企業者に対しまして、小口零細企業保証制度を利用した小口融資やセーフティーネット保証を利用した経営セーフを設けるなど、中小企業者のさまざまなニーズに対応をしております。
 小口資金融資や経営セーフでは、信用保証協会の一〇〇%保証に加えまして、都が独自に信用保証料の二分の一を補助するなど、既に手厚い措置を講じております。
 したがいまして、お話しのような新たな融資制度の創設は考えてございません。

○清水委員 先ほども議論がありましたけれども、今回の震災を受け、五月に創設した災害緊急では、風評被害による契約解除などの影響で売り上げが減少している中小企業については、震災後の三カ月の売上高が前年同期比一五%以上減少しているということを要件としていました。この売上高などを、要件を引き下げることを求めているのですけれども、私は必要があると思いますけれども、見解をお伺いいたします。

○寺崎金融部長 災害緊急は、国の東日本大震災復興緊急保証に対応したメニューでございます。その利用要件につきましては、国の制度で定められております。
 なお、都の制度融資では、災害緊急とは別に、経営セーフや経営一般などの融資メニューを設けておりまして、災害の影響に限らず、業績の悪化により売上高が五%以上減少している企業に対しましても支援を行っております。

○清水委員 国がそういう定めをしているのでしたら、国に対してきちんといってもらいたいですね。
 中小企業の経営環境が依然として厳しい中、東京都は国に対し、来年度についても中小企業金融円滑化法の継続を求めるとともに、責任共有制度を廃止し、信用保証協会による全部保証の復活をするよう要望すべきと考えますが、どうですか。
 また、当面は、責任共有制度における金融機関負担分の二〇%について都が保証する制度を創設するべきだと考えますが、あわせてお伺いいたします。

○寺崎金融部長 今年度におきましては、国は、中小企業金融円滑化法の延長とともに、全業種を対象とした一〇〇%保証であるセーフティーネット保証を継続しております。
 都といたしましては、経済動向や中小企業の業況を的確に踏まえ、中小企業が資金調達を円滑に行えますよう万全の措置を講じますことを既に国に求めているところでございます。
 また、制度融資の責任共有制度は、信用保証協会と金融機関が、それぞれに責任を持って中小企業の融資と経営支援などを行うことを目指し、平成十九年度に創設されたものでございます。
 この間、経済動向や資金需要を踏まえ、小規模企業者へ配慮した小口やセーフティーネット保証など責任共有対象外である一〇〇%保証につきましても、必要に応じて実施されております。都が、独自にご指摘のような制度を創設することは考えてございません。

○清水委員 最初に、私が地域金融の状況をご紹介しましたけれども、そこであらわれているのは、やはり預金量がふえて融資実績が減っているという状況だったわけなんですけれども、やっぱりこれは責任共有、二〇%の問題というのがいつもひっかかっているわけですよ。それでブレーキがかかっているという点では、私は、ここの問題を解決しないと、融資の拡大というのも進んでいかないんではないかなというふうに、業者の方々からいろいろ相談を受けて感じるところです。
 今、幾つか金融問題について求めてまいりましたけれども、この点につきましては、今後、年末に向けても、また、既存の融資制度に向けての、一層の充実を求めておきたいというふうに思います。
 長引く景気の低迷に加え、今回の東日本大震災の影響により仕事の量が大幅に減って、都内では、まち工場の多くは、これまで経験したことのない厳しい状況に直面をしています。自分の敷地で工場を経営している中小企業の中には、これ以上仕事が続けられずに、工場をマンションにかえてしまう人もいますし、このままでは都内から製造業が消えていくというようなことに対して、どなたも非常に強い危機感を持っているわけです。
 その一方で、借地や工場アパートなどのたな子として工場を経営している中小企業にとっては、工場をやめるということは生活の糧を失ってしまうことにも直結しております。
 都内で、工場アパートに住みながら、少ない受注を集めて何とか操業を続ける中小企業に対して、これまでも繰り返し求めておりますけれども、家賃の一部について助成を行うという施策は、今こそ不可欠だというふうに考えるわけです。
 そして、工場の運営に必要な光熱水費などの固定的なコストの負担を和らげるだけでも、中小企業の経営にとっては大きな支援になるものです。中小企業は、もはや融資利率以上の利益率を上げられるような状況ではなく、融資の充実というのももちろんですけれども、融資だけでも限界に達しているというのも実態です。
 こうした企業に対し、国に補助制度の実施を求めていただきたい。そして、都としても、借り工場の家賃などの固定費補助、機械のリース代への助成を初めとした直接支援、直接助成に踏み出すことが必要だと考えますが、どうですか。見解を伺います。

○河内商工部長 都は既に、経営困難な中小企業に対しまして、事業承継・再生支援事業で相談や経営支援を行いますとともに、資金面でも制度融資により対応しております。
 したがいまして、お話しの家賃補助などにつきましては、行う考えはございません。

○清水委員 冷たい答弁ですね、本当に。今必要としている支援を本当に実施するということが大事なんですよ。私は、引き続き強く求めておきたいと思います。
 こうした厳しい経営環境の中で、中小企業にさらに追い打ちをかけるのが、アジアヘッドクオーター特区です。知事本局は、外国企業と東京が誇る高い技術力を有する中小企業が刺激し合うことで、新技術、新サービスを創造する魅力的な市場を形成し、東京をアジアのヘッドクオーターへと進化させるとしています。
 しかし、東京都に求められる産業政策というのは、国際競争偏重の大企業を応援する政策ではなくて、低炭素・国民生活重視型経済、内需主導に切りかえることが今こそ必要であるということを指摘しておきたいと思います。
 そういう中で、私は先日、再生エネルギーの分野に導入を試みている中小企業の皆さんの学習会に参加し、自分も一人の参加者として皆さんと議論をしてまいりました。この分野というのは、今、地方では太陽光発電とか小水力発電への地元企業の参入など、十分ではないんですけれども、私も幾つか、群馬県太田市とか長野県飯田市とか、それから山梨県の都留市とか、そういう太陽光発電とか小水力発電とかをやっているところを、再生エネルギー分野ということで見学に行ってまいりました。成功例が多少あるわけですね。
 しかし、東京では、いっている割にまだまだこれからの分野なわけです。ですから中小企業は、積極的に参加し拡大しようという大きな企業なんかはあるわけですけれど、中小企業がこの分野でどうかかわっていくのか、仕事として成り立つのか、思案しているわけです。
 再生エネルギーと中小企業の仕事づくりというような分科会に参加させていただいたんですけれども、こういうことを皆さん口々に話されていました。私は本当にだれもが思っていると思います。この再生エネルギー分野に中小企業が出ていけたらどれだけいいだろうなというふうに皆さん思っていると思います。思い切って踏み出せるよう後押しが重要だということです。
 再生エネルギーについては、太陽光や水力など幅広い種類がありましたけれども、こうしたものが実際に生活や産業活動の中で使われるようになるためには、都内の中小企業の持つ技術力を生かした、さまざまな製品やシステムを生み出していくことが効果的だと思います。都内中小企業の技術で対応可能なものも多く存在していると思います。
 また、そうしたエネルギーを蓄電し、有効に活用するシステムの開発が、都内では進んでいます。私たちは、都内で行われた、これは大企業の学習会ですけれども、蓄電施設をどうやって拡大しているのかという、ちょっと高い勉強会だったんですけれども、そうした勉強会にも参加させていただいて、これがどうやったら中小企業に役立てるかなということを研究してまいりました。
 そうした中小企業の製品の技術レベルを高め、市場の中できちんと受けとめられるように、普及するようサポートを行う視点が重要です。第三回定例会では、我が党が、再生可能エネルギーを産業振興の柱と位置づけて、企業のさらなる技術開発や市場化への強力な後押しをすべきだと求めたのに対し、東京都は、既に環境分野を対象とした産業を重点的に育成するとの方針のもとで、さまざまな施策などを展開している、また、都政運営の新たな戦略の中で対応していくという答弁でした。
 であるならば、再生エネルギーを活用した技術開発や製品化に取り組む中小企業に対する支援を、より具体的に、積極的に進めるよう求めるものですけれども、どうですか。お伺いいたします。

○河内商工部長 都は既に、先ほど先生もおっしゃいましたけれども、環境分野というのは、産業を重点的に育成する分野の一つとしてもう既に決定しておりまして、さまざまな施策を展開しております。
 一例を挙げますれば、ベンチャー技術大賞や、新製品、新技術開発等におきましても、流水式の小水力発電ですとか、また、小型の風力発電、こういったものを推進する施策対象として取り上げ、既に支援を実施しているところでございます。
 また、今後も再生可能エネルギーにつきましては、さきに公表いたしました都政運営の新たな戦略の中で、エネルギー源の多様化を図るということとしておりまして、これに沿って対応してまいる所存でございます。

○清水委員 東京都がそういうことをやっているということは承知しているわけです。しかし、実際に中小企業の皆さんの現場に行くと、そういう思いをしてますよということで、都の取り組みがさらに強く求められるということで、今お伺いしたわけです。
 都内の中小企業の製品が、その性能を高く評価されて、国内外の市場を、販売先をしっかり確保していくことは重要です。
 放射能についてお伺いいたしているわけですけれども、東京都は、原発事故の放射能漏れによって、海外市場での日本製品に対する見方が大変厳しくなってきていることから、日本製品というだけで、かつて、何カ月か前なんかは大変多かったわけですけれども、発注者からの受け取りを拒否されるような事例が急増した時期もあったというふうに報告を受けているわけです。
 こうした事態を受けて、都は産業技術研究センターで放射能測定を行って、次第に拒否は少なくなっているというふうに聞いています。
 こうした中で、放射能関連の研究や測定で長年蓄積があった産技研の駒沢支所が、先月三日の臨海副都心青海での新本部開設に伴い、同本部に統合されてしまいました。
 これについては、前回、納得できないことを表明したところですけれども、やはり工業製品に関する検査体制の拡充に取り組んでほしいと考えています。
 そこで、産業技術研究センターは、産業サポートスクエア・TAMAにも拠点を持っているわけです。また、十月に発表された文部科学省の航空機測定放射線量結果では、区部だけでなく、奥多摩など西多摩地域でも高線量が出ていることが報道されました。
 そういう中で、多摩地域での、もちろん農地とか生活の場での不安もあるわけですけれども、工業製品の不安の声も出されています。また、市長会での要望も出ているかと思います。こうした施設を通じて、工業製品の放射能検査を充実していくべきだというふうに考えますが、どうですか。

○河内商工部長 都立産業技術研究センターでは、既に四月から、都内の中小企業を対象に、工業製品に対する放射線量測定を無料で実施しているところでございます。また、七月からは出張試験も行うなど、放射能に関する検査体制の充実も図っておるところでございます。企業の検査ニーズに対応しているというふうに考えております。

○清水委員 出張試験、出張検査というのは、それは持ち運びできる検査機器だけでしょう。

○河内商工部長 これは出張していくわけでございますので、シンチレーション式またはGM式等の持ち運びの検査機器によって測定するわけでございます。

○清水委員 皆さん、見たわけですけれども、ゲルマニウム測定器、そういうものもやはり要求しているというふうに思います。充実を求めておきたいと思います。
 次に、先日、我が党の申し入れによって、三月十五日に産業技術研究センター駒沢で捕捉した大気浮遊じんについて、ストロンチウム90が立米中〇・〇一一一一ベクレル検出されていたことがわかりました。
 産業労働局としては、他の核種と比べて健康面に影響を及ぼす可能性が低いことなどから、特段問題になる値ではないと判断し、公表しなかったということですけれども、都内で放射性ストロンチウムが検出されたことは非常に重要だというふうに考えます。
 放射能問題については、まず何よりも事実をきちんと測定し、どんなに低いとか高いとかということを自分たちで判断しないで、都民に直ちに速やかに公表することが最も重要です。しかも、この数値は、都内でも放射線量が比較的低い地域での測定結果であることから、都内でも放射線量が比較的高い都内東部地域、西多摩地域などの農地には、より多くの放射性ストロンチウムが降下した可能性が高いことを裏づけるものだと思いますけれども、どうですか。伺います。

○岩田安全安心・地産地消推進担当部長 農林水産省は、西多摩地域を含め都内四十三地域の農地土壌の放射性セシウムの検査を実施することとしております。
 また、文部科学省は、福島第一原子力発電所からおおむね百キロ圏内の土壌を採取し、放射性セシウム134、137、放射性沃素131、放射性ストロンチウム89、90について核種分析を実施しております。
 この報告によりますと、放射性セシウム134、137の五十年間積算実効線量に比べて、放射性ストロンチウム89、90の五十年間積算実効線量は非常に小さいことから、今後の被曝線量評価や除染対策においては、放射性セシウム134、137の沈着量に着目していくことが適切であるとされております。

○清水委員 セシウムの検出のときも、一番初めは一カ所でいいんだというような話から始まって、今日まで数カ月たって、今や本当にいろんなところで測定が始まり、区市多くの場所を測定し、高いところが出ているわけです。
 そういう中で、やはり横浜などでストロンチウムが出たことにかんがみて、出ないという前提ではなくて、これだけやっているからいいんだという前提ではなくて、都民の健康を考えれば、まだまだ長い、これから月日が、不安がよぎるわけで、やはりこれからも都内各地の農地についても、放射性ストロンチウムの核種分析を継続的に行うべきだというふうに考えますが、どうですか。

○岩田安全安心・地産地消推進担当部長 先ほどお答えしたとおり、国は都内四十三地域の農地土壌の放射性セシウムの検査を実施することとしております。都もその調査に協力してまいります。

○清水委員 セシウムはもちろんなんですけれども、やはりストロンチウムの調査を行っていただきたいことを要望しておきます。
 次に、買い物困難者、弱者対策についてお伺いいたします。
 商店街の周辺地域で暮らしている住民の中で、日常の買い物行動に不便を感じている方がふえ、そうした状況について、商店街としても何らかの対応が必要になっていると考えておりましたが、我が党は、昨年二定の本会議質問で、その対策についていち早く提案したり、ことし一定の文書質問でも、本委員会でも取り上げてまいりましたが、国では、地域生活インフラを支える流通のあり方研究会を立ち上げ、五月に報告書をまとめ、商店街の衰退や大型店の撤退で買い物に不便を来している高齢者が全国で六百万人に上るというふうにまとめました。昨年五月のことですね。
 都市の近郊の団地などでも、私が幾つかの区市の議員に調査したところ、本委員会でも紹介しましたけれども、立川市だとか、昭島市だとか、小金井市だとか、青梅市だとか、福生市、日の出町、区部の中でも、その当時、その時点では文京区ですとか新宿区などで起きていることがわかりました。先日のニュースの中でも、地方でも、それから都市の中でも、やはり同じような困難な状況があるということが放映されておりました。
 昨年の事務事業の際に、私は、実態を早急に把握することが優先課題であるというふうに指摘をしましたが、都は、その後ことしの一定で、ひとり暮らしの高齢者への生活支援として重要だというふうに答弁し、二定では、正確な実態の把握について必要な調査を実施するという答弁をし、三定でも、調査を行ってモデル事業を検討するという答弁をいたしました。
 そこでお伺いいたしますが、買い物困難者、弱者に関する調査について、現在の状況についてお伺いしたいと思います。

○河内商工部長 都では、いわゆる買い物弱者の実態を把握するために、六十五歳以上の高齢者の方を対象に、日常の買い物行動やその改善に向けた考え方に関する調査を実施しているところでございます。無作為に三千名を抽出いたしまして、アンケート形式の調査票を配布、回収し、その内容を分析しているところでございます。

○清水委員 その取りまとめの時期ですとか、そういう、調査についてもう少し詳しくご答弁ください。

○河内商工部長 いわゆる買い物弱者に対する調査につきましては、現在回収が終わりまして、分析等を行っておりまして、年内をめどに取りまとめを行う予定でございます。

○清水委員 年内に取りまとめを行うということですけれども、この分析調査結果をもとに、さらに都として、この間答弁されてきたことを具体化し、買い物困難者、弱者支援事業を創設することを求めるものですが、いかがですか。

○河内商工部長 既に、ことしの第三回定例会におきまして、鈴木あきまさ議員の代表質問でも局長よりご答弁をさせていただいておりますが、調査の結果を踏まえ、地元の区市町村と協力して買い物弱者を支援する事業について、モデルとして行うことを検討しておるところでございます。

○清水委員 そのモデル事業の検討についてというのは、どのように進んでいるのかお伺いいたします。

○河内商工部長 先ほども答弁しましたが、ことしの第三回定例会で局長より答弁した調査の結果を分析してから、モデルとして行う事業について検討することとしております。

○清水委員 ぜひ来年度予算で何か具体的な事業をお願いしたいというふうに思います。要望しておきます。
 次に、商店街の省エネ化は、三月十一日の大震災後、より一層重要な課題になってきています。中でも、それを容易にすることができる、商店街の街路灯のLED化は、商店街の大きな要望にもなっており、電気代が軽減できたと、長期不況で苦しむ商店街の負担軽減にも役立っています。
 お伺いいたしますが、二〇〇九年の、街路灯の電柱の交換も含むLED化に対応してきた特定施策推進型商店街事業ですが、先ほど実績を--ここに資料でありますけれども、件数と金額をお示しいただきたいというふうに思います。

○河内商工部長 都政の重要課題であります地球温暖化対策に寄与する取り組みを支援するため、平成二十一年度の特定施策推進型商店街事業などにおきまして、柱を含めた街路灯のLED化では三十四件、柱を含まずLEDランプへの交換のみを行ったものにつきましては二十八件で、合計いたしますと六十二の商店街に対しまして支援を行い、合計十億四千七百万円の執行実績となっております。

○清水委員 この事業は、都が五分の四を負担することから、商店街にも区市からも大変喜ばれていました。
 ところが、東京都は二〇一〇年度から、LED化予算を十分確保してほしいと私たちは要望したわけですけれども、それまで老朽化、耐震化上問題になる街路灯の電柱の交換を含むLED化に対応してきた特定施策推進型商店街事業を中止してしまいました。
 そこでお伺いいたしますが、二〇一〇年度の電柱の交換ないし電柱の交換を含むLED化の実績についてお伺いいたします。

○河内商工部長 特定施策推進型の商店街事業は、都政の重要課題である地球温暖化対策に寄与する商店街の取り組みに対して支援を行っておりまして、省エネ効果のない単なる柱、電柱の交換については助成対象としておりません。
 また、同事業は、平成二十二年度からはCO2削減につながるLEDランプへの交換を支援対象として重点化を行っておりまして、同年度の支援実績は、七十七件で八億四千万円となっております。
 また、同事業は、平成十八年度から街路灯ランプのLEDランプへの交換を継続して実施してきていたところでございますけれども、平成二十年度から柱を含む街路灯自体の設置も対象といたしました。
 ところが、こうした仕組みで事業を実施する中で、柱を含むLED街路灯自体の設置に当たりまして、装飾つきの支柱など、にぎわい創出のための経費が全体経費の約七割を占めるようなケースがふえてきた状況を踏まえまして、平成二十二年度に支援対象をLEDランプへの交換のみに重点化したものでございます。

○清水委員 私が聞いているのは、実績といったんですよ。そうしたら、今いろいろな理由をいわれましたけれども、先ほど助成対象としていないというところの、電柱の交換、電柱の交換を含むLED化の実績数についてお示しください。

○河内商工部長 ただいま答弁いたしましたとおり、平成二十二年度につきましてはLEDランプへの交換を支援対象として重点化しておるところでございますので、LEDランプへの交換の支援実績は、七十七件で八億四千万円でございます。

○清水委員 違います。それはLEDランプの交換のあれでしょう。電柱の交換を含むLED化の実績についてお伺いしたんです。

○河内商工部長 先ほどもお答えしましたとおり、省エネ効果のない単なる電柱の交換については助成対象としておりません。

○清水委員 助成対象としていないということは、実績がないということですよね。
 こうした突然の事業変更で、商店街も区市も、老朽化した電柱の交換と同時にLED化を進めようとした商店街は困惑しました。都は、老朽化した電柱の交換を含めたLED化については、二〇一〇年度からは新・元気出せ商店街事業の活性化事業で対応するとしました。しかし、商店街の負担は重くなります。だからこそ実績が急減したわけです。
 また、国の事業による六分の五の補助事業では、法人商店街に限定されます。特定施策推進型商店街事業は、対象となる電球をかえるだけ、灯具の交換程度に限定してしまいました。
 お伺いいたしますが、電柱の老朽化に伴いLED化を進めるというようなこれまでの取り組みというのは、極めて合理的な取り組みだと思いますが、都の事業変更で、こうした事業についてブレーキがかかったことについて、どのような認識でしょうか。お伺いいたします。

○河内商工部長 特定施策推進型の商店街事業は、平成二十二年度からCO2削減につながるLEDランプへの交換を支援対象として重点化したと先ほども申し上げましたけれども、都の重要施策である環境問題への対応を、より多くの商店街とともに実施するなど、事業効果の向上を図ったところでございます。
 こうした仕組みによりまして、老朽化していない街路灯のランプのLED化も進んでおりまして、補助対象の見直しがLED化のブレーキになっているとは考えておりません。

○清水委員 産業労働局が行った、二〇一〇年度の商店街実態調査というものがあります。
 今後取り組んでいきたい事業として二番目に多いのが、このLED化の問題です。そして、共同施設の設置状況と今後の整備意向という、商店街の共同施設の中で、今後設置する意向という問題では、街路灯のLED化が最も多くなっています。
 一方で、補助事業については、自己負担分の財源確保ができず、利用ができないというところが三分の一というのが、この商店街の実態調査の中であらわれておりますので、私は、こういうところから見ても、やはり補助率の問題、それから電柱を含むLED化の要求というのは強いというふうに思います。
 今、多くの商店街が、大型店の出店攻勢、人口減少、高齢化、消費不況で大変な苦労をしています。街路灯の電気代の負担さえできないという商店街も出てきてしまっています。こうした商店街では街路灯のメンテナンスも大変で、街路灯の老朽化に拍車がかかっています。
 街路灯の老朽化対策は災害対策の上からも重要でもあり、商店街振興とともに大きな支援が求められています。都自身が、商店、商店街が地域に欠かせない公共財産、商店街振興はまちづくりのかなめとの認識も持って、系統的、継続的に商店街事業を拡充することを求めておくものです。
 続きまして、TPP、環太平洋連携協定への参加についてお伺いいたします。
 TPPへの参加は、関税の撤廃により日本の農林水産業が大打撃を与えられる、生産額が四・五兆円減少し、食料自給率を一三%に下げ、三百五十万人の雇用が失われることが明らかになってきました。
 さらに、非関税障壁撤廃の名目で、食の安全、医療、金融、保険、自主共済、労働法制、官公需など二十四分野で、国民の安全や生活を守るルール、中小企業を支援する制度が崩される、壊されるおそれが出てきました。
 産業労働局関係の事業である、TPP交渉分野の一つである官公需、政府調達では、政府や自治体の物品購入や公共事業で国際入札の分野が広がり、中小企業、中小建設業の仕事確保が大きな危機にさらされます。
 また、木材市場では、二七%まで落ち込んでいる国産木材自給率が、TPP参加によってベニヤなどの関税もゼロになり、国産材に打撃を与え、森林が荒れ果て、林業再生が阻まれてしまいます。
 雇用労働にも大きな変化が予想されます。貿易保護主義的な目的のために、法規制、政策と労働慣行を定めるのは不適当としており、労働者保護のルール破壊が予想されます。
 アメリカは、日本への企業参入のために、労働時間規制を自国並みにすることを日本に要求、それが、八時間を超えたら割り増しの残業手当を支給するとした労働基準法の対象から事務系の労働者を除外する、そういうホワイトカラーエグゼンプションという導入です。
 これは、二〇〇七年に大きな問題になって、政府が強行できなかった残業代ゼロ法案というものが再浮上する、そういう事態でもあるというものです。
 そこでお伺いいたしますが、TPPが都内の産業に与える影響をどのように考えているのか、お伺いいたします。

○矢田部産業企画担当部長 TPPが産業に与える影響としては、まずプラス面につきましては、自動車などの工業製品の国際競争力を後押しし、輸出の拡大が期待されると指摘されております。
 一方でマイナス面については、例えば農業分野において、我が国の関税が撤廃されれば輸入が増加し、国内の農業に影響を与えると指摘されております。
 しかし、具体的な協定の内容は、今後の議論、交渉によって決められるものであることから、現時点で影響を把握することは困難でございます。
 なお、経済産業省、農林水産省、内閣府がそれぞれ影響額を試算しておりますが、その前提条件の妥当性についても、さまざまな意見があると聞いております。

○清水委員 プラス面とかマイナス面とかいわれましたけれども、東京の農業振興とか中小企業振興をやっている立場とは思えない発言だと私は思います。
 皆さん、知事は十月二十八日の記者会見で、自分は反対だ、あんなものはアメリカの策略で、みんなもうちょっと頭冷やして考えた方がいいよ、日本の経済界は、物が売れない、もっと売りたいといっているけれど、いろいろな弊害が出てくる、だから、そういうものをみんな熟知して議論したらいいんですよなどなどと記者会見でいっています。
 また、副知事も、先日の東京都の農業祭に参加されて、あいさつをしたと、反対だというふうにいわれたというふうに聞いています。
 私たちが知事と一致できる数少ない問題なんですけれども、なぜ一番影響がある産業労働局で今のような答えしかできないんですか。知事と立場が違うんですか。TPPに賛成なのか、反対なのか、はっきり答えていただきたいんです。

○前田産業労働局長 今、大きな話題になっておりますので、私から何点かお答えさせていただきます。
 まず、国家間の通商交渉は、これは政府の専権事項でございます。仮に政府が参加ということになったとしても、ただいま産業企画担当部長がお答えしましたように、事は交渉事であると思います。
 これについてはさまざまな意見がありまして、東京都の知事も、今、委員がお話しされたように、意向は既に示しているところでございます。
 影響につきましては、委員はマイナスの影響の方をご紹介されましたが、メリット、デメリット、それぞれの試算が政府によってございますが、私が見ますところ、メリットを強調する方は、交渉が日本にとって有利に運んだ場合を想定しているように考えられ、デメリットを主張する試算は、日本にとって交渉が不利に働いた場合というものを試算しているように思います。
 こういう中で影響を算出するというのはなかなか難しいと思います。今、政府から出されている試算を単純に横引きしてということになれば、東京の産業構造の特性上、結果としてはプラスになるだろうと考えます。委員はそれをお望みですか。
 今後の交渉と政府の動向を注視し、都内産業への影響の把握、あるいは対応等について的確に対応してまいります。

○清水委員 JA東京の副会長の方は、先日開かれた農業祭で、TPPは消費者や国民の安全・安心な暮らしの確保や食料自給率の向上につながらないことはもちろん、国民生活の基本となっている重要な制度や仕組みの変更につながる、断固反対だというふうにあいさつをされました。
 また、受注連建設事業協同組合の代表者は、アメリカの技術とアジアからの安い労働力を使った事業者が参入すれば、中小建設業は仕事を失い、今でも低い公共工事の受注価格は、低価格競争がさらに激しくなるでしょう、自分たちは、共同受注などの努力もしながら官公需を広げてきました、その制度そのものが否定されかねません、地域経済や中小企業にとっても重大問題ですと主張するなど、各界から反対の声が出されています。
 私も、地元の八王子のJAの役員にお伺いしたところ、影響は米とか乳製品だけではなくて、もう自分たちは野菜もつくれなくなるんじゃないかというふうに語っていました。
 東京の農業にとっても、中小企業にとっても本当に重大なことではないかと思います。
 産業労働局が、問題ありという態度をとらずに、こういう態度をとるのは問題だと思います。そういうことを指摘して質問を終わります。

○伊藤(ま)委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時四十六分休憩

   午後四時六分開議

○伊藤(ま)委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○佐藤委員 産業労働局では、現在、総額で百四十六億円の投資をさまざまなファンドに対して行っております。その内容について確認をさせていただきます。
 まず、金融部に伺います。金融部の管理しているファンドについて、ファンドをつくった年と、そのファンド総額と投資総額、そして投資期間と回収期間、運用会社をお答えください。

○寺崎金融部長 都が出資しているファンドのうち、金融部で所管しているものは六つございます。
 まず、ジャイク・バイオ壱号投資事業有限責任組合は、設立は平成十二年、存続期間は平成二十三年十二月までで、ファンド総額は十五億円、本年九月末時点の投資総額は約十四億円で、運用者は日本アジア投資株式会社でございます。
 次に、東京中小企業投資事業有限責任組合は、設立は平成十二年、存続期間は平成二十三年十二月までで、ファンド総額は三十七億五千万円、九月末時点の投資総額は約五十五億円で、運用者は東京中小企業投資育成株式会社でございます。
 次に、東京チャレンジファンド投資事業有限責任組合は、設立は平成十六年、存続期間は平成二十三年十月までで、ファンド総額は七十五億円、九月末時点の投資総額は約四十三億円で、運用者は大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ株式会社でございます。
 次に、東京スピリット投資法人は、設立は平成十六年、存続期間は平成三十二年二月までで、ファンド総額は六十四億円、九月末時点の投資総額は約三十七億円で、運用者は日興アセットマネジメント株式会社でございます。
 次に、東京フロンティア投資法人は、設立は平成十六年、存続期間は平成三十二年二月までで、ファンド総額は五十二億五千万円、九月末時点での投資総額は約三十六億円で、運用者は三井住友アセットマネジメント株式会社でございます。
 最後に、動画革命東京匿名組合は、設立は平成十八年、存続期間は平成二十三年三月までで、ファンド総額は三億二千万円、投資総額は二億五千万円で、運用者は有限会社アニメイノベーション東京でございます。

○佐藤委員 続いて伺いますが、ファンドの設立、運用、清算についてはどんな経費がかかり、ファンド総額の何%くらいに当たるのでしょうか。お答えください。

○寺崎金融部長 ファンドの運営にかかる経費は、組合財産の中から支出されます。その内容といたしましては、組合契約作成などの組合の設立に関する費用、投資先企業の選定に要する費用、組合財産の運用、管理及び処分に関する費用等がございます。
 ファンドは、ベンチャー企業支援や再生支援など、その設立目的によりまして投資先企業の選定やハンズオン支援等の運営体制が異なりますことから、具体的な費用につきましてもそれぞれ異なります。

○佐藤委員 次に伺いますが、運用会社に支払った管理報酬は幾らになるでしょうか。

○寺崎金融部長 管理報酬につきましては、ファンドの清算期間が終了するまでは確定いたしません。また、第三者への開示につきましては、法令や組合契約等により公表が制限をされております。
 なお、管理報酬は、一般的に純資産等のおおむね三%以内で設定されているケースが多いと聞いております。

○佐藤委員 三%以内とのことではありますが、例えば、投資法人二つに対して百億円という出資をいたしておりまして、これは十六年の運用ということを考えると、管理報酬も大きな金額になるのではないでしょうか。
 次に伺いますが、投資の方針についても伺いたいと思いますが、一社当たりの投資上限は定めているものでしょうか。また、投資を受ける対象企業の要件として、都内企業に限定されているものでしょうか。

○寺崎金融部長 再生ファンドは、株式や債券の買い取りなど、投資金額が多額になる案件が想定されましたことから、より多くの企業の再生を支援するため、一社当たりの投資上限を定めておりますが、その他のファンドにつきましては上限を定めておりません。
 また、再生ファンドは都内企業を対象としておりますが、ベンチャーファンドにつきましては、投資を契機に都内に進出し、成長する可能性も視野に入れまして、投資先を都内企業に限定してはございません。

○佐藤委員 先ほどお答えいただきました中にあります日興アセットマネジメント株式会社のホームページに掲載されております東京スピリット投資法人の投資方針を見ると、組合の持ち分権への投資を通じ、都内の未公開企業の発行する株式等に運用資産の五〇%程度以上を投資することを基本としますと記載されております。つまり、都内企業以外にも投資をする方針ということがわかるわけです。
 次に伺いますが、一つのファンドに一つの投資事業組合というものもありますが、一つの投資法人に幾つもの投資事業組合が含まれるものもあります。これはどういった理由があるのでしょうか。

○寺崎金融部長 東京フロンティア投資法人及び東京スピリット投資法人につきましては、傘下に八つの投資事業有限責任組合を設けることで、それぞれの強みを生かし、多様な企業に資金面及び経営面の支援を実施できるような仕組みといたしました。

○佐藤委員 都は、東京スピリット投資法人と東京フロンティア投資法人に百億円を出資しております。これらの投資法人の存続期間は平成十六年から平成三十二年とのことでありますが、運用期間としては平成三十二年二月末日まで、ただし投資主総会の決議でこの期間を延長できますと日興アセットマネジメント株式会社ホームページに記載されております。
 投資法人の存続期間が平成十六年から平成三十二年ということは、投資法人の清算が終わって議会に報告されるのが平成三十二年以降ということになってしまいます。現在、八つの投資事業組合に投資しているとのことでありますが、それぞれの投資事業組合が清算されたとしても、平成三十二年までの間は、新しい投資事業組合に投資することができてしまうわけです。投資事業組合の清算ごとに情報を公表し、議会に対しても説明をすることが必要なのではないでしょうか。
 ファンドの中には、投資期間が終わりに近づいているものもあるわけですが、ファンドを清算した後、東京都の出資結果を、ファンドとその事業組合のそれぞれについて議会でご報告いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○寺崎金融部長 ファンドの清算結果の公表は、各ファンドの組合契約に基づいて判断をされます。なお、ファンドの関係法令では、清算結果の議会への報告は求められていないと認識しております。

○佐藤委員 投資については、長期間にわたるためチェックが難しく、ファンドの清算後に検証するしかありません。議会への報告義務はないとしても、総額で百四十六億円もの金額が投資をされているわけでありますから、都の投資分についても公開する努力をお願いします。
 次に、存続期間が平成十八年二月から平成二十三年三月までであった動画革命東京匿名組合について伺います。
 都が一億円の出資を行っておりますこの動画革命東京匿名組合でございますが、有限会社アニメイノベーション東京が運用するファンド、この動画革命東京匿名組合に対して、新銀行東京が平成十九年十二月末時点で七千万円の投資を行っておりました。この有限会社アニメイノベーション東京が運用するアニメファンドに投資を集める働きかけを金融部として行ったのかどうか、新銀行に対して何らかの働きかけを行ったものかどうか、お答えください。

○寺崎金融部長 ファンドの設立に当たり、運用者は出資先を開拓する役割を担っております。アニメファンドにつきましても、運用者が公的な中小企業支援機関や金融機関に出資を広く働きかけたところでございます。都としても、このファンドの意義にかんがみて、円滑な立ち上げに向け、各金融機関に必要な働きかけを行ったと聞いております。

○佐藤委員 都がファンドの立ち上げに当たり、円滑な立ち上げに向け、各金融機関に必要な働きかけを行ったということですが、結果として、新銀行が七千万円の投資をするに至っているわけです。このファンドの清算結果がもうすぐ出ると思いますので、結果の検証が必要だと思います。
 それでは引き続き、商工部が所管している中小企業事業化支援ファンドについて伺います。ファンドをつくった年と、そのファンド総額、投資総額、そして投資期間と回収期間、運用会社をお答えください。

○河内商工部長 中小企業事業化支援ファンドは、平成十八年に創設し、ファンド総額十二億四千万円、本年九月末時点での投資総額は約八・九億円、存続期間は平成二十六年十二月まで、運用者は公益財団法人東京都中小企業振興公社であります。

○佐藤委員 運用会社に支払った管理報酬は幾らになるのでしょうか。

○河内商工部長 管理報酬につきましては、ファンドの清算期間が終了するまでは確定しておりません。また、第三者への開示につきましては、法令、組合契約等により公表が制限されておるところでございます。

○佐藤委員 産業労働局が本委員会に提出した事業概要によれば、中小企業事業化支援ファンドの投資期間は、当初、平成十八年十二月から平成二十一年十二月まででありましたが、二年間延長したとの記載があり、さらには上場を志向しない非上場志向企業に投資すると書かれておりますが、収益を考えると非常に厳しいのではないかと思います。ある程度のリスクを負って支援をしようという姿勢は理解できますが、どうやって収益を得ることを想定しているのでしょうか。

○河内商工部長 中小企業事業化支援ファンドは、通常のファンドでは投資対象となりにくい株式公開を希望しない企業、いわゆる非上場志向企業のすぐれた事業化プロジェクトに対して、的確に資金を供給することを目的として創設したものでございます。株式を公開して売却することで得られるキャピタルゲインで収入の確保を図ることを目的としてはおりません。
 本ファンドによる投資対象企業につきましては、東京都中小企業振興公社が実施している経営技術支援を継続的に行い、着実な育成を図った結果、企業価値が高まると、投資期間終了後において、株式を投資対象企業等に売り渡す際に収益が得られる仕組みとなっております。

○佐藤委員 このファンドを清算した後、東京都の出資結果を、ファンドとその事業組合のそれぞれについて議会でご報告いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○河内商工部長 ファンドの清算結果の公表は、各ファンドの組合契約において判断されます。なお、ファンドの関係法令では、清算結果の議会への報告は求められていないと認識しております。

○佐藤委員 報告事項ではありませんが、非常に大きな投資でもあるため、都の出資結果についてはぜひ積極的な情報公開に努めていただくようお願いいたします。
 商工部が所管しているもう一つの東京都地域中小企業応援ファンドについては、ファンドという文言が入ってはおりますが、投資とは若干意味合いが違う制度になっております。この制度についての説明をお願いします。

○河内商工部長 東京都地域中小企業応援ファンド事業は、都と独立行政法人中小企業基盤整備機構が二百億円の基金を造成し、その運用益である年間約三億円を活用いたしまして、都市課題の解決や地域資源の活用などの地域の活性化を目指す新たなビジネスを支援するものでございます。

○佐藤委員 それで伺いますが、融資ではなく補助の理由、そしてNPOだけでなく、企業に対しても補助をしている理由についてお答えください。

○河内商工部長 環境や少子高齢化、安全・安心の確保など、東京が抱えるさまざまな都市課題や、農林水産物や観光資源などの地域資源の活用は、地域の活性化につながっております。
 しかし、都市課題の解決などに関する新しいビジネスの開始は、金融機関から融資を受けながら事業展開を行うような通常の企業活動の前段階に当たる取り組みでありまして、行政が事業に対して助成を行い、資金面から支援する仕組みとしております。
 また、こうした取り組みの担い手として、NPOや中小企業は、ともにふさわしいことから、補助対象とすることといたしました。

○佐藤委員 二百億円の運用益である年間三億円の助成金を出しているとのことでありますが、過去、補助を受けた企業がホームページに出ておりましたので見てみましたところ、二回補助を受けている企業もあるようですが、応募に関しては制限はあるのでしょうか。補助を決める審査会がどのように実施をされているのか、お答えください。

○河内商工部長 現在、これまでに助成を受けた者であっても、助成期間が既に終了しており、新たな事業内容となっている場合は、地域の活性化を目指すものとして申請を受け付けております。
 審査会につきましては、申請対象者としての要件等の事前審査、企画内容等を審査する書類審査、それからプレゼンテーションによる面接審査、最終的に助成を決定する総合審査について、学識経験者や公認会計士などの外部の有識者を交えて実施しております。

○佐藤委員 過去、補助を受けた企業数がホームページに公表されておりましたので、私も見てみましたが、助成限度額が八百万円ですから、年間三億円の運用益ということを考えると、残った運用益が出てくる場合もあるのではないかと思います。その扱いについても、今後チェックさせていただきたいと思います。
 今伺いました東京都地域中小企業応援ファンドは、投資をするファンドとは若干意味合いが違うものではありますが、ファンドという文言が入っておりましたので内容を確認させていただきました。助成をする以上、しっかりとした審査に努めていただくようお願いをいたします。
 金融部、商工部が管理しているファンドは、投資に関しては出資総額百四十六億円余りであり、ファンドや投資事業組合によって投資条件がさまざま異なっております。また、来年度の予算について、局から出された予算要望には、ベンチャー企業成長支援事業として、ベンチャーファンドを設立するために二十億円が計上されております。中小企業の支援は必要ですが、十分な情報開示が不可欠です。
 新たな投資契約のもとで都が投資をするわけですが、ファンドや投資事業組合等の情報公開に関しては、局として、都の投資収益の結果の数字を明らかにするといった最低限の横断的なルールをつくるべきなのではないかと考えますが、見解を伺います。

○寺崎金融部長 ファンドに関する情報公開につきましては、関係法令や組合契約等に従いまして、個別に対応してまいります。

○佐藤委員 先ほども申し上げましたように、長期間にわたる投資についてはチェックが難しく、ファンドの清算後に検証するしかありません。議会への報告義務はないにしても、総額で百四十六億円もの金額が投資されているわけですし、来年度の予算要望でも二十億円が計上されているわけですから、やはり都の投資結果がどうだったのか、積極的に公開する努力が必要なのではないでしょうか。
 次に、新銀行のファンド投資について伺います。
 先ほどから金融部、商工部に伺ってきましたように、都は運用会社にファンドの運用を任せており、新銀行も同じく運用会社にファンドの運用を任せているわけです。つまり、都がわざわざ新銀行を経由しなくてもファンド投資は可能であって、あえて新銀行がファンド投資を行う意義があるのか疑問です。
 そこで伺いますが、現在の新銀行東京が投資しているファンドについて、ファンドをつくった年と、そのファンド総額と投資総額、そして投資期間と回収期間、運用会社についてお答えください。

○斎藤金融監理部長 新銀行東京は経営の一環としてファンド投資を行っているわけでございますが、その個別の内容につきましては個別案件に当たりますため、銀行は明らかにしておりません。
 なお、ファンドへの出資額は、組合出資金として、その都度、決算書に記載されておりまして、平成二十三年三月末の残高は三十六億七千二百万円となっております。

○佐藤委員 ただいまのご答弁によると、平成二十三年三月末の投資残高が三十六億七千万円ということでありますが、過去の資料を見てまいりますと、平成十九年十二月時点では五十三億七千万円という金額が出資をされていたかと思います。つまり、投資をしたファンドが清算をした事例も幾つもあるんだろうと思うわけです。
 先ほど来から、金融部、商工部の投資したファンドについて伺ってきましたが、少なくとも都が投資をしたファンドの内容については情報を公開しているわけです。新銀行が投資しているファンドについては、平成二十年の予算特別委員会の際には、ファンドの一覧と投資金額も資料として出てきたわけでございますが、そのときと比較をして情報公開が後退していることには納得ができません。
 また、平成二十年の予算特別委員会で、当時の佐藤広局長は、ファンドによりさまざまでありますけれども、三年から五年程度の運用期間のものが多く、その後、必要に応じて延長できる契約になっていると聞いておりますと答弁しております。そのとき資料要求した資料に、投資をしているファンドの一覧があったわけですが、もう運用期間が終わっているものも幾つもあるのではないかと思うわけです。
 そこで伺いますが、過去清算したファンドについて、新銀行の投資結果の情報開示を行うべきではないかと考えますが、見解を伺います。

○斎藤金融監理部長 どのようなファンドに出資するか、これは新銀行東京の経営戦略に属することと考えております。個別のファンドの収益につきましても、個別案件に当たりますため、新銀行東京は明らかにしないとしております。

○佐藤委員 情報は開示できないとのお答えではありますが、四百億円の追加出資の際示した再建案では、ファンド投資が大きな割合を占めていたわけでありますし、我々都議会民主党は、組合出資金は元本保証でないことから、大きく毀損する可能性があることも指摘をしてまいりました。投資中のものは収益の開示ができないとしても、組合出資金の出資内容について検証するためにも、清算したファンドや投資事業組合について、議会に適切な資料を出すべきではないでしょうか。
 今後、再建計画後の経営計画が出てくるわけでありますが、現在投資をしているものと、過去清算したファンド投資についての情報開示を進めていただくとともに、経営の中でのファンド投資割合について慎重に検討いただくよう、都として新銀行に指導いただくことをお願いいたしまして、私の質疑を終わります。

○きたしろ委員 千客万来の東京を目指している東京にとって、三・一一の東日本大震災、そして原発事故による影響は、この観光に対してはかり知れないものがあると思います。とはいえ、これからの観光振興については、都と観光財団の役割は非常に大きなものがあると思います。そこで、視点を変えまして、東京観光財団についてお伺いをいたしたいと思います。
 東京観光財団は、ことし四月より公益財団法人に移行し、運営体制面でも強化されたと聞いております。これにより、財団の担う役割は今後ますます大きくなっていくものと思います。そこで、財団における取り組みなどについてお伺いをいたします。
 まず、東京の観光振興を図る上で、東京観光財団が担う役割についてお伺いをいたします。

○横山観光部長 すそ野が広く、他産業への経済波及効果が大きい観光産業の振興を図っていくには、官民が一体となった取り組みが不可欠でございます。
 こうした中、東京観光財団は、都の監理団体として、専門性の高い業務を機動的に展開することによりまして、都の行政補完機能を担うことに加え、都内唯一の広域観光団体として、都と民間のかけ橋となり、東京の観光振興に大きく寄与してございます。
 具体的な事業といたしましては、都と協力して実施をするアジアの観光プロモーションにおきまして、財団が民間事業者と連携し、現地での訪問営業などを実施しており、都内向け旅行商品の造成につながっております。

○きたしろ委員 東京観光財団は、都内観光振興を図る上で重要な団体であり、諸施策の推進になくてはならないパートナーだと思います。今後のさらなる事業展開を期待するところでございます。
 それでは、財団が、期待される役割を果たすために、どのような努力をされているのか、お伺いをいたします。

○横山観光部長 東京観光財団は、観光振興に関する専門性を高めるために、旅行関連業界で活躍していた人材を中核的ポストに積極的に登用するとともに、外部講師の招聘による専門研修の実施により内部職員のスキルアップを図るなど、専門人材の採用育成に努めております。
 また、公益財団法人への移行に伴いまして、公共性を確保しつつ、自主財源も活用した機動的な事業運営が今まで以上に可能となりました。こうしたことから、本年、財団は、観光業界とのネットワークを生かし、旅行事業者と地域の観光協会に対して商談の場を提供するトラベルマートを開始いたしました。
 このように、財団は観光に関する専門的ノウハウの蓄積や継承に努めるとともに、今後もその特徴を十分に生かしつつ、観光をめぐる環境変化やニーズに的確に対応していくこととしてございます。

○きたしろ委員 東京観光財団がその役割を十二分に果たすために努力を続けていることも理解できました。今後、財団に期待される役割が大きくなるに伴い、体制面での強化も必要になると思います。これからも、この方向で前向きに取り組んでいっていただきたいというふうに思います。
 それでは最後に、都は、財団とともにどのような観光施策を進めていくのかお伺いをいたします。

○横山観光部長 東京の観光振興のためには、民間事業者、観光関連団体、行政の三者が、それぞれの役割を果たしつつ、緊密な連携を図っていくことが重要でございます。こうした考え方のもとに、今後、都は、財団との連携をこれまで以上に強化し、財団の専門性、機動性及び民間とのネットワークをより積極的に活用することで、効果的な観光施策の展開に努めてまいります。

○きたしろ委員 観光振興ということは、東京都の大きな一つの目玉の施策だと思っております。今後、都と財団がどのように観光施策を進めていこうとしているのかわかりましたけれども、財団がその強みを積極的に活用した取り組みを推進し、これからも一層推進していくとともに、官民一体となった観光振興が図られ、東京の経済の発展にも大きく貢献していくことを期待しております。
 次に、若者の就職対策についてお伺いをいたします。
 新卒者を初めとする若者の就職状況は大変厳しい状況が続いております。今春の大学卒業者の就職率は九一・〇%と過去最低となり、多くの若者が就職できないまま大学を卒業し、来春での就職を目指し、就職活動を続けていると聞いております。しかし、来春の雇用環境は、東日本大震災からの景気回復のおくれなどもあり、大幅な改善は期待できない状況だと思います。一方、都内には、優秀な若者を求めるすぐれた中小企業が数多く存在しておりますが、人材確保に苦労しているという声もよく聞きます。
 このような状況を解決するための施策の一つとして、未内定の学生と中小企業とのマッチングの場を提供する合同就職面接会があります。これは、参加する若者にとっても、企業にとっても、一度に数多くの相手と面接する機会が与えられるというメリットがあり、マッチングには大きな効果が期待できるものと考えられます。
 今年度からは合同就職面接会の回数をふやすなど支援を強化しているとのことでありますが、より多くの若者に参加を促すとともに、マッチングの精度も高める工夫をするなど、内容の充実に努めていくべきと考えますが、取り組みについてお伺いをいたします。

○穂岐山雇用就業部長 若者を取り巻く雇用環境は大変厳しく、採用意欲のある中小企業と若者とのマッチングを図ることは大変重要であると認識しております。
 このため、都は、未内定の新規学卒者等と人材を求める企業とのマッチングの機会を提供する合同就職面接会を平成二十一年度から開始しております。今年度は七月と十一月、来年二月の合計三回実施することとしております。十一月に東京ビッグサイトを会場として開催した第二回目の面接会では、二千人を超える若者と百八十一社の企業が参加いたしました。これら面接会の実施に当たりましては、民間の就職情報サイトを活用したPRにも新たに取り組み、学生等の参加を一層促しました。
 また、マッチングの効果を高めるため、十一月の面接会実施に先立ち、参加予定の若者向けの直前対策といたしまして、従前の模擬面接に加え、新たに企業の選び方など、面接当日に役立つセミナーを東京しごとセンターで開催いたしました。
 今後も合同就職面接会の事業効果をより一層高めるため、さまざまな工夫を凝らしながら、一人でも多くの若者と中小企業とのマッチングを図ってまいります。

○きたしろ委員 こうした面接会は、若者にとっても、企業にとっても、数多くの相手と出会い、就職に結びつくチャンスでもあります。今後も、引き続きしっかりと取り組んでいっていただきたいと思います。
 先ほども述べましたけれども、都内には優秀な中小企業が数多く存在をしております。しかし、若者の安定志向から、大企業志向は根強く、こうした中小企業に目が向いておらず、中小企業と若者とのいわゆるミスマッチの問題があると思います。我が党では、これまでも中小企業と若者とのミスマッチの問題を一貫して指摘し、解消に向けた取り組みの強化を提言してきたところでございます。
 ミスマッチを解消するためには、まずは若者にこうした企業を正しく知ってもらうことが大事であると思いますけれども、同時に、若者が、育ってきた環境の中で、温室といいますか、大事に育てられてきて、すべてがセットされているようなところにというような思いがあるのではないのかなというふうにも思います。
 そういったことで、若者に仕事に対する知識をしっかりと持ってもらうことが必要だと思います。社会に出てお金を稼ぐ以上、厳しさが伴うことを、若者にはきちんと理解してもらいたいと思っております。
 こうしたことを踏まえ、若者と中小企業のミスマッチを解消するための取り組みを進めるべきと考えますけれども、その見解をお伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 お話のとおり、若者と中小企業とのミスマッチを解消するためには、若者に中小企業の正確な情報を提供し、その実態の理解を促すとともに、若者自身の職業意識を高めることが重要でございます。
 このため、まず若者が中小企業の実態を正しく理解できるよう、東京しごとセンターでは、従前からインターンシップや企業と若者との交流会を実施し、若者と企業が直接接する機会を提供しております。
 また、しごとセンター内に、企業の求人情報や経営方針、業界の動向などの情報を若者にわかりやすく提供する企業情報コーナーを今年度新たに設置いたしました。
 さらに、産業交流展二〇一一の開催にあわせまして、新卒向け合同企業説明会を十月に実施し、採用意欲のある二十社の企業担当者と直接話す機会を設けるとともに、出展企業ブースの見学ツアーも同時に行うことで、中小企業と接する機会を数多く提供し、企業理解の一層の促進を図りました。
 次に、若者の職業意識を高めるため、今年度は、しごとセンターの若者向けセミナーの中で、キャリア形成や業界研究を通じた仕事の厳しさなどを習得する内容を追加するなど、見直しを図りました。
 今後は、しごとセンター内の企業情報コーナーにおいても、専用のカウンセラーが仕事の厳しさややりがいなどについても若者に伝えていくことで、職業観の形成を一層促してまいります。
 引き続き、こうしたさまざまな取り組みを通じまして、若者と中小企業とのミスマッチの解消に努めてまいります。

○きたしろ委員 先ほども未就職者のお話も質問がありましたけれども、その中で、三百人のうちの二百八十八人が参加をされて、そこから百二十八人が就職、正規職員になったという、正規に採用されたという話がありました。そういうことも非常に大切なことですので--ただ、そういう仕事があるにもかかわらず就職しないというのと、仕事がやりたいんだけど仕事がないんだというのと、やっぱり区別はあると思うんです。そういったところを、やはり我々自身も、こういう都の公務員として、子どもたちに対して、若者に対して、物を教えていく必要があるのかなというふうに私は思っているんです。やはりこういう中でも、教育の問題も一つ出てくるのかなというふうに思います。
 ただ、若者の就職状況が厳しい中で、意欲あふれる若者の職業的自立を促進するためにも、また、中小企業が有用な人材を確保して発展することを促すためにも、ミスマッチの解消は大変に重要な問題であると考えます。少子高齢化の中で、働く若者たちが、働けない、働かないということは非常に大きなこれからの社会問題になると思うので、ぜひその辺のところも取り組みを進めていっていただくよう要望して、運営に協力をしたいと思います。以上です。

○小磯委員 本日の質疑の中で同じテーマの質問もございました。重複を避けながら質問したいと思いますけれども、今本当に若者を取り巻く雇用状況というのは大変に厳しいわけでございます。一人でも多くの若者に就職をしてもらうためには、積極的な支援が必要であります。特に、今春の大学卒業者の就職率は過去最低ということでございまして、既卒者対策は喫緊の課題でございます。
 こうした若者の就職を支援するために、東京都では未就職卒業者緊急就職サポート事業を今年度から実施をし、この事業については、この委員会でも以前、我が党の伊藤興一議員が質疑を行ってきたところでございます。改めて現時点での事業の進捗状況をお伺いしたいと思います。

○穂岐山雇用就業部長 今年度から開始いたしました未就職卒業者緊急就職サポート事業では、就職先が決まらないまま大学等を卒業した方などを対象に、四カ月間で社会人としての基礎力を身につける研修と、企業での就労を組み合わせ、就労体験先企業での正規雇用に結びつける取り組みを実施しております。本事業では年間を三期に分け、合計七百五十人の若者の就職を支援することとしています。
 九月には一期目のプログラムが終了し、現在二期目のプログラムを実施中でございます。一期目のプログラムの実績でございますが、三百人の定員に対し、九百二十七人と三倍を超える応募がございました。このうち、二百八十八人の既卒者に対しまして一期目のプログラムを開始し、そのうち二百三十五人が企業での派遣就労を体験いたしました。最終的に就職に結びついた方は、みずから就職先を見つけられた方も合わせまして、合計で百三十五人となっております。
 現在実施しております二期目のプログラムでは、三百人の定員に対しまして、六百三十七人の応募がございました。このうち、二百七十四人の若者が正規雇用を目指して、現在プログラムに参加中でございます。

○小磯委員 ただいまの答弁で、やはり本事業が非常に人気が高く、まさに時宜に合った事業であることがわかったわけでございます。しかし、定員の関係で、応募したものの参加できなかった若者が、一期目で六百人、一期目と二期目を合わせて千人いらっしゃるということでございます。また、プログラムに参加して企業での就労体験もできたけれども、残念ながら就職に至らなかったと、こういった方が百人いらっしゃるということでございます。
 こうした方に対しては、都として、就職に向けた支援をやはり継続して行うべきと思うわけでございますが、見解をお伺いしたいと思います。

○穂岐山雇用就業部長 都では、本プログラムに応募したものの参加できなかった既卒者の方々に対しましては、本事業の受託事業者を通じまして東京しごとセンターを紹介することにより、就職に向けたきめ細かい支援を行うこととしております。
 また、本プログラムに参加したものの就職に至らなかった若者に対しましても、本人の希望に応じまして、受託事業者が正規雇用に向け継続して支援を行うとともに、しごとセンターでの就業支援も行うこととしております。

○小磯委員 参加できなかった若者や、参加したけれども就職できなかった若者に対しては、手厚い支援が必要でございます。ぜひともしっかりと支援していくことを強く要望するものでございます。
 さて、本事業で就労体験ができた方で就職できた方の割合は、先ほどの答弁から計算いたしますと約六割でございます。厳しい雇用状況をかんがみれば、健闘している数字とは思いますが、一層の就職率の向上を目指してどのような工夫を行っているのか、見解を伺います。

○穂岐山雇用就業部長 本事業で就労体験に参加したものの就職できなかった事例を分析いたしますと、まず、参加者が、中小企業での就労体験中にモチベーションが低下して就労体験を中断するに至り、結果、就職に結びつかなかったケースが散見されました。
 このため、第二期のプログラム以降は、就労体験前の研修におきまして、参加者が働くことの意義について一層理解を深めることができる内容となるよう、研修カリキュラムなどを見直しました。
 また、企業での就労体験中の参加者がモチベーションを維持できるよう、就労時の悩みや不安などにつきまして、受託事業者のカウンセラーが一層きめ細かく相談に応じるなど、フォローアップを充実いたしました。
 さらに、就労派遣先の企業が参加者への指導方法等に悩むケースもあったことから、受託事業者が、企業に対し指導方法等についてきめ細かくアドバイスを実施するなど、派遣先企業に対する支援も充実いたしました。
 加えまして、参加者と派遣先企業とのミスマッチが大きいと判断できる場合は、速やかに派遣を終了し、別の派遣先とのマッチングを行うなど、柔軟な対応を実施しております。
 こうした取り組みによりまして、就職率の一層の向上に努めてまいります。

○小磯委員 ただいま、就職率の向上に向けてさまざまな工夫を行うとの答弁がございました。ぜひともしっかりとした取り組みをお願いしたいと思います。
 さて、本事業は、今の時代のニーズに即した非常に有意義な事業であると思っております。まだ年度の途中であり、結果について評価する段階ではございませんが、現時点での結果は、厳しい雇用情勢の中、一定の成果を上げていると思います。現在の雇用情勢を考えれば、未就職で卒業した方を正規雇用に導くのは決して簡単なことではありません。正規雇用を実現するためには、やはり一人一人の状況にあわせてきめ細かくマッチングやフォローアップをすることが必要不可欠でありますし、研修、そして就労体験も一定の期間が必要であると思います。今後とも、できる限り、一人一人に手厚くしっかりとした支援を行い、一人でも多くの方の正規雇用を実現していただきたい、このように思いますので、よろしくお願いいたします。
 次に、先ほどから、商店街のLED照明への切りかえの質問が出ておりましたが、私は、この都庁、都有施設のLEDへの切りかえということについて質問をしたいと思います。
 東日本大震災後、電力供給不足に対応するため、都民が一丸となって首都東京の電力使用抑制に努力をしております。その結果、幸いにも今夏の電力不足については、どうにか乗り切ることができたわけであります。しかし、今度は冬場の電力不足対策をしなければならないなど、しばらくは生活や経済活動のあらゆる面で、これまで以上に節電を意識せざるを得ません。
 都議会公明党は、技術力の進展を防災対策など都政の現場に積極的に生かしていくべきであるという考え方から、先端技術を有する企業や、それと連携する大学での研究などを視察し、都政での活用などを検討してまいりました。第三回定例会の代表質問では、ユビキタス技術を災害対策に応用することも提案し、前向きなご答弁もいただいております。
 都においても、既にことし五月に策定した東京都電力対策緊急プログラムにおいて、節電対策の一つとして、照明のLED化を推進することを表明し、電力に過度に依存しない社会を目指していく取り組みを進めております。LED照明への切りかえは、投資効果にすぐれ、確実な電力削減効果が得られるといわれております。
 例えば、四十ワット型の従来型蛍光灯百本をLED化した場合、年間の電力使用量、電気料金、CO2削減量を、約五〇%削減可能であります。その理由としては、半導体である発光ダイオードはエネルギーをそのまま光に変えるため、効率がよい点であること、加えて、水銀を使用していないために、破棄の際にも環境負荷が軽減されるなど、すぐれた特徴を有しております。
 産業労働局においては、東京国際フォーラム、東京ビッグサイトなど大規模施設から、職業訓練校や労政事務所など日々の産業活動や職業生活に必要な施設など、数多くの種類の施設を有しております。
 まず、これらの施設のLED化の導入状況についてお伺いをいたします。

○保坂総務部長 現在、当局におきましては、産業貿易センター浜松町館及び台東館、東京ビッグサイト、農林水産振興財団立川庁舎並びに労働相談情報センター八王子事務所においてLED照明を部分的に導入しているほか、東京しごとセンターにおいても、今年度、部分的導入を予定しております。
 全庁的な方針につきましては、本年四月、東京都電気設備工事標準仕様書が改正されまして、LED照明の基準が盛り込まれたところでもございまして、今後、ダウンライト及び誘導灯につきまして、LED照明の使用を推進することとしております。

○小磯委員 今、答弁がございましたように、LEDについては、ダウンライト、それと誘導灯、これについてはLED照明の、いわゆる仕様書ができている、基準ができているということでございます。いわゆる一般の建物の部屋のこういう直管型の蛍光灯については、まだその基準がないわけでございます。
 LED照明は単なる電球の代替品ではなく、すぐれた節電効果など、そのメリットを生かすには、LEDを半導体として理解し、導入、維持管理していくことが不可欠であります。このLEDの性質を誤って理解していると、例えば札幌市役所のように、LED照明によるちらつきで職員の気分が悪くなったり、体調に悪影響を及ぼしたため、せっかく導入したのに交換しなければならなくなったケースとか、また、横浜市営地下鉄のように、LED照明を導入したにもかかわらず、一年もたたないうちに照明が切れ出すようなケースも出てくるわけでございます。
 四万時間、約十年間もつLED照明の性能を発揮させるためには、安全で安心なLED照明の基準づくりに都が率先して取り組むべきであるというのが都議会公明党の考え方でございます。今後、局所管施設にLED照明を導入するに際しての考え方をお伺いいたします。

○保坂総務部長 東京都電気設備工事標準仕様書が改正されましたことから、これに沿ってLED照明の導入を図ってまいります。

○小磯委員 極めて簡潔明瞭、短い答弁でございました。今、私、申し上げましたように、ダウンライト、誘導灯は基準がありますが、直管型はまだ基準ができていないわけでございまして、さらなる具体的なLED照明の基準づくりのために、LED照明を試行的に導入し、企業の協力、また、専門のアドバイザーも活用して、実証実験を行うなどの取り組みを都に要望したいと思っております。
 行政が新しい技術や取り組みに慎重にならざるを得ないことは十分理解できることでございます。先ほどの札幌市や横浜市営地下鉄の例のような事態は避けなければなりません。しかし、だからといって、技術の進展に行政がおくれをとり、都民サービス向上の機会を逸するのも、また、悔やまれることでございます。産業労働局での取り組みは、多くの企業や研究者が注目しているところでありますので、それだけに影響力も大きいと思います。このことを、事業を進める上で常に認識していってほしいと思うわけでございます。
 以上で、私の質疑を終わります。

○興津委員 それでは質問させていただきますが、重複している点がございましたので、できるだけ重複の分を避けさせていただきまして、質問させていただこうかと思います。
 いうまでもなく、産業、雇用は都民生活の基礎となるものであり、都民が豊かで文化的な生活を送るために、産業や雇用の安定を図ることは、都としても大変重要な課題であります。この意味で、産業労働局の事業は都民生活に密着したものであると考えております。
 しかし、長引くデフレ、欧州の経済危機、円高や震災など、今まさに産業や雇用の安定を揺るがす事象が起こっています。都民生活を預かる都といたしましては、こうした事象によって引き起こされる産業、雇用の課題に迅速に対応していくとともに、それぞれの産業の発展に必要な施策を着実に実施していくことが重要であると考えています。
 私はこうした観点から質問させていただきます。
 まず、当委員会の事前説明の中で、局長から、都内経済は景気の持ち直しが続いているものの、最近では持ち直しのテンポが緩やかになっているとの説明を受けました。具体的な都の経済・雇用情勢と産業・雇用政策上の課題について伺います。

○矢田部産業企画担当部長 内閣府の月例経済報告によりますと、我が国の足元の景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にある中で、引き続き持ち直しているものの、そのテンポは緩やかになっております。
 こうした中、都内中小企業の業況DI、これは、業況がよいとした企業の割合から、悪いとした企業の割合を差し引いた指標でございますが、九月はマイナス四一となっており、震災直後のマイナス五七から回復基調にあるものの、依然として低い水準にございます。
 また、七月から九月期の資金繰りDIも、マイナス三三・四と厳しさがうかがえる状況でございまして、事業所数で九九%を占める中小企業の経営支援や金融支援が引き続き重要となっております。
 また、雇用関係につきましても、九月の全国の失業率は四・一%、都内の有効求人倍率は〇・八五倍と、いずれも緩やかな持ち直しの動きが見られるものの、厳しい雇用環境が続いております。特に、若者を取り巻く雇用情勢は、ことし三月の大学卒業者の就職率が過去最低の九一%となるなど厳しい状況でございまして、若年者を中心とした雇用就業の促進が大きな課題の一つとなっております。

○興津委員 その認識をまずは踏まえまして、現在の雇用情勢と、それに対応した大きな課題認識についてはわかりました。こうした課題に対応した事業を含め、順次、具体的な事業について質問させていただこうかと思います。
 中小企業振興ということでありますが、先ほど来ご質問のありました産業交流展、ありましたけれども、この販売先を、中小企業が何としても拡大していくということは、本当に重要であろうというふうに思っております。
 先ほど質問がありましたので、ここは私の観点だけを開陳させていただこうかと思いますが、産業交流展の参加者及び来場者、ここが、来場者の方が参加者に対して売り込みをかけるということがあってもいいと思うんです。と同時に、参加者同士が取引を拡大していくということもあってもいいと思っております。そのような方向性から考えたときに、出展者同士の交流を行うための具体的なノウハウを提供されているということも伺いましたし、また、技術を容易に検索できるIT機器も配置されていると、あるいは懇親会等を開催されまして、出展者同士の交流もしているということがあると思います。
 このように来場者、出展者の数の増加ということは、展示会の魅力に、当然ですけれどもつながります。それが、ひいては出展者である中小企業発展につながるものと思います。ぜひとも、今後とも販路拡大に向けて大きく取り組んでいただきたいと思います。
 また、先ほどもありましたけれども、東京ビッグサイト、これは国際空港になりました羽田空港から本当に近い場所なんですが、例えばパリの展示会場は、シャルル・ド・ゴール空港からたった一駅というところにありまして、世界じゅうから、やっぱり出展者やら来場者が押し寄せているということもありますので、そういったこともありますから、その会場の方もできるだけ大きくしていくのがいいのかなというふうに思っております。
 次に、金融支援につきましてお伺いをさせていただきます。
 これも、私も伺わせていただきました今年度の産業交流展、ここでもって東京都ベンチャー技術大賞で表彰された、このような優秀な技術があります。これを世界じゅうに売り込むときに、先ほどもちょっと質問がありましたけれども、特許あるいは実用新案、商標登録、こういったものを先にかけておかないと、ホームページ等々でもって開示すると、すぐそれがまねられるということが非常に多くあるというふうにも伺っているところであります。
 したがいまして、このような状況に置かれた場合に、特許申請にかかわる費用、これをできるだけ低金利といいましょうか、その原資を融資するということは、融資をして、その特許の技術を守っていくと、そして産業を大きくしていくということは非常に重要であろうというふうに私は思っています。この原資を融資ができないか、この点に関しましてお伺いいたします。

○寺崎金融部長 東京の産業の活力を維持向上させていくためには、すぐれた技術力や事業戦略を持つ中小企業のさまざまなチャレンジを支援していくことが重要でございます。先生お話のございました外国特許の取得にかかわる支援は意義あるものと考えております。都では、外国特許の出願費用に対する助成を行っておりますほか、制度融資の融資メニューである産業力強化融資によりまして、ベンチャー技術大賞を受賞した企業など、すぐれた技術力、事業戦略を持つ中小企業に対しまして、特許出願費用を含めた事業化のための金融支援を実施しております。今後におきましても、中小企業のニーズに応じた適時適切な金融支援を実施してまいります。

○興津委員 ありがとうございます。この特許申請なんですが、二けたの国に対して申請をしていかなきゃいけないということになりますと、一件で、例えば百万円かかったとすれば、すぐ一千万、二千万という大きな費用がかかってくる。しかも、前にということになるわけですから、信用保証協会の保証つきの低利融資に頼っても、この借り入れを国際特許申請に向けた資金として使ってしまいますと、保証枠がすぐいっぱいになっちゃうかもしれません。肝心の製品製造に向けた運転資金がすぐに底を打つということも十分想定されます。
 このような先進技術、あるいは産業交流展などで表彰を受けるような製品についての国際特許申請費用の融資等は、将来大きなリターンも想定ができるわけでありますし、そして雇用の拡充、納税へと大きく寄与するであろうというふうに思っております。適時適切というふうにおっしゃいましたけれども、一つの案としてですけれども、この特許を担保として、無利子融資とか、そういった思い切った政策もあってもいいのかなと私は思っております。これに関しましては答弁は求めません。
 次に、空き店舗対策に関しましてお伺いをさせていただきます。
 中小企業振興に当たっては、それぞれの中小企業が新たな販路を拡大する、開拓することのできるよう行政として着実にサポートを行うことが重要です。さらには、新たに会社を立ち上げて事業に乗り出す創業の動きについてもしっかりと下支えをしていくべきものと考えております。
 創業やベンチャーという単語からは、ともすると新製品の開発に取り組む製造業種の会社や、インターネットなどを活用したIT関連企業というイメージが先行することも多いような気もいたしますが、産業分野といたしましては、小売業における創業も重要であろうというふうに考えております。実際に、都内の各地では、商店街に小売業の店舗が集まっているわけでありますが、そうした商店街に店を出して事業を大きくしていきたいというふうに考えていらっしゃる方も多くいらっしゃいます。
 そうした形での起業を考える場合に共通した悩みというふうになっているのが、店舗を立ち上げる初期投資の資金であるということです。商店街で店を構えるためには、内装や設備を整えるための経費など、さまざまな初期費用がかかります。このようなコスト負担を低く抑えるような支援を効果的に行うことを通じて、小売業での創業を活性化して、ひいては商店街の空き店舗対策、空き店舗を減らしていくことも可能になると考えています。
 商店街の空き店舗を小売流通業での創業拠点、いわゆる商業として、小売業としてのインキュベーションの拠点としてとらえて支援するというような発想がいいのではなかろうかと思っておりますが、東京都として、商店街での空き店舗を活用する等、いわゆる商業のインキュベーションとして、商業創業支援の取り組みについてお伺いいたします。

○河内商工部長 都では、都内産品販売活動支援事業におきまして、商店街の空き店舗などを活用して、都内の農林水産物や商品などを販売する中小企業やNPOの取り組みを支援しているところでございます。
 同事業では、営業の開始に当たり必要となる店舗の改装費用や設備等の購入経費などを一定の割合で補助しております。
 今後も、同事業によりまして、商店街の空き店舗などを活用した取り組みを着実に支援してまいります。

○興津委員 空き店舗対策というところは、もう既に一定程度進捗している部分もあろうかと思うんですね。ですが、私が今回申し上げているのは、少し商店街から離れたとしても、商業棟、ビルを建てるというか、そういったところがあれば利活用をして、そこに商業を集積させていくということも、昔のスーパーマーケットが、多少商店街から離れたところであったとしても、集客を高めて、それでもって商業の活性化に結びつけていけばいいのかなというふうにも思っております。これは私の意見として申し述べさせていただきたいと思います。(発言する者あり)商店街も含めてですね。
 次です。島しょ観光の振興につきましてお伺いさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 東京都には、小笠原諸島を含め、島しょの観光資源があります。今まで東京都は、産業支援として、港湾設備、道路設備など、島しょ振興を図ってきたところでありますが、伊豆諸島における基幹産業といっても過言ではないと思う観光産業は、以前とは異なり、決して興隆している状態ではないのではないかというふうにも認識しております。
 過去には、夏場になりますと、多くの若者がこぞって伊豆諸島に出かけていたわけでありますが、現在ではその人数も減少していると伺っております。この観光産業を興隆することこそが、継続的な地域産業の活性化につながるのではないかと考えています。
 そこで質問ですが、都の島しょ観光振興に関する取り組みについてお伺いをいたします。

○横山観光部長 かつて、離島ブームといいますか、島しょ観光がブームという時代がございましたが、今日では価値観が多様化して、旅行目的地の選択肢も広がっております。これに伴い、観光地間の競争も厳しさを増していると認識しております。
 こうした中で、島しょ観光の振興のためには、それぞれの地域が、特色ある観光資源を生かした取り組みを主体的に展開していくことが重要であります。都では、こうした取り組みを支援するとの考え方から、町村が行う観光案内板、遊歩道、展望台等の観光施設整備、観光パンフレット及びホームページの作成等への補助やアドバイザーの派遣などを実施しております。また、車いす対応や手すりの設置などバリアフリー化を行う宿泊事業者に対しまして、工事費の助成を実施しているところでございます。

○興津委員 島しょの、やはり産業復興といいますか、振興については、この観光産業を活性化すること、このことが継続的で発展的な島しょ振興のかなめであるというふうに私は思っております。観光並びに経済振興には、人、物、金の移動が直接的な振興策であるとも考えます。また、このために、今回の東日本大震災の復興支援策として、被災地に向かう人々に対して助成金の支給がありましたが、例えば伊豆諸島に出かける方々へ何らかの助成支援をするのもいい方法ではないかと私は思っております。
 もし、この助成を受け取り、伊豆諸島に出かける方々の地元の経済効果を図っていただいて、地元の観光協会、あるいは商工会を通じて東日本大震災の被災者の方々へ義援金の送金などを促せば、お出かけになられる方々へのモチベーションのアップ、地元産業支援、そして被災者の方々の支援と一石二鳥ならぬ一石三鳥ということも考えられるのではないかと思っております。
 島しょの方々みずからが発展的に努力し、観光産業の発展に結びつけられるような、観光客の動員に結びつけ得る呼び水の政策として、観光客の増加に向けた取り組みを期待して、要望させていただきます。
 次に、インフォメーション機能の拡充についてお伺いいたします。
 海外に出かけますと、インフォメーションコーナーのiマークというものを簡単に発見することができます。ここに行けば、観光情報が一元化されているので、観光客にとっては非常に重宝する存在でもあります。現地でしか得ることのできない情報、アップ・ツー・デートの情報の宝庫であります。
 現在、記録的な円高、放射能事故等の影響等が相まって、日本の、東京の観光客は減少しております。それに伴いまして、非常な苦境に立たされてもいます。先ほどから申し上げていますが、島しょばかりではなく、人、物、金が動く観光産業は、これからの日本にとって有望な産業の一つであると考えていますが、そこで質問です。現在まで都の観光案内所における取り組みについて、お伺いをいたします。

○横山観光部長 都では、都庁の第一本庁舎など三カ所に東京観光情報センターを設置いたしまして、国内外から東京を訪れる旅行者に対して多言語の観光情報を提供しております。また、区市町村、宿泊施設、交通機関等が設置をする、既存の案内窓口を活用した観光案内窓口を、都内約百五十カ所で指定をさせていただいておりまして、地域における観光案内機能の充実を図っているところでございます。

○興津委員 ありがとうございます。現在までの取り組みについて、今お伺いしたところでありますが、観光都市東京を標榜するということであるならば、残念ながら都内の観光案内所は数が少ないというふうな現状もあります。この設置場所についても、疑問に思わざるを得ない点が一点あります。例えば、新宿であれば、都庁に設置がありますけれども、これを、例えば新宿駅西口広場に設置すればどうかというふうに思ったりもするわけであります。
 確かに、都の単費として、単独施策として行う必要もないとは思いますけれども、観光組合、商業組合などと連携して費用分担を図るなど、駅そば、観光地そばにインフォメーションを設置して日本人のおもてなしの心を提供すれば、観光客の皆さんも困ったときに駆け込める場所として、大変ありがたい場所になると思います。また、地域観光案内の拠点となり、地域産業への大きなバックアップになると思いますが、ぜひご検討をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○横山観光部長 東京観光情報センターを始めまして、先ほど申し上げましたように、観光情報センター、三カ所、百五十カ所を超える観光案内窓口、こうしたものがございますので、これらを十分に活用いたしまして、観光情報の提供の充実に努めてまいります。また、東京を訪れる旅行者が求める観光情報の内容ですとか、その入手方法、こうしたものは時代とともに変化をしていくものと認識しておりまして、観光情報の提供のあり方については、今後、IT技術の進化の状況等を見通しつつ、検討すべきものというふうに考えてございます。

○興津委員 わかりました。この観光につきましては、総合的にやはりIT技術も含めて観光振興をぜひとも図っていただきたいということを最後に重ねてお願いさせていただきます。
 次に、雇用就労対策についてお伺いさせていただきます。
 今般の連合東京からの政策・制度要求の冒頭には、国と東京都、さらに都内自治体が、雇用対策、雇用創出に連携を強化して取り組むこと、東京に良質な雇用創出をつくること、質の高い雇用による完全失業率三%台前半社会を実現することなどの雇用対策が打ち出されています。
 さらには、若年、女性、高齢者、障害者等への就労支援を強化することともあります。そこで、今回は特に若者の就労支援についてお伺いをさせていただきます。ここも重複する点がありますので、少しずつ整理をさせていただきながら進めさせていただきます。
 今、日本では、長引く景気の低迷を反映して、雇用情勢は厳しい状況が続いております。とりわけ若年層の失業率は、他の年齢層と比較しても高い水準にあることや、非正規雇用で働く人の割合が高いなど、若者の雇用には大きな課題があると認識ができます。さらには、かつて就職氷河期といわれる時期に大学を卒業し、安定した職につけないままフリーターを続けている方は、ますます正規雇用が難しくなっているという問題もあります。
 次代を担うべき意欲ある若者が安定した職業機会に恵まれないままでは、職業能力形成の機会が失われることになり、本人にとって大きなマイナスともなりますし、社会的に大きな損失であると思います。都といたしまして、若者の雇用対策は積極的に取り組むべき課題と考えますが、どのような認識で若年層の就業支援の取り組みを進めているのか、お伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 若年者を取り巻く雇用環境は、他の年齢層と比べまして高い水準にある失業率、非正規労働者の増加、年長フリーター問題の顕在化など、厳しい状況にあり、こうした状況が長引けば大きな問題となります。雇用問題を本質的に解決するためには、国が実効性のある経済対策を進め、雇用を創出することが不可欠と考えますが、都はこうした状況の中、フリーターや就業経験の少ない意欲ある若者の正規雇用化を図るため、職業意識の醸成や職業適性、志望の明確化につながるきめ細かい相談、カウンセリング、セミナーなどを実施し、若年者の就職を支援しております。また、就職氷河期世代の三十歳代の非正規雇用経験の長い方を対象に、個別カウンセリングからグループワーク、職業紹介、職場定着まで一貫して支援する対策を実施しております。

○興津委員 国の経済対策の実効性を求めるというところもあるとは思いますが、やはり東京都として、それこそ国を動かすような雇用対策というものを力強く推進していただきたいと私は思っております。お願いさせていただきたいと思います。
 具体的に、案件に関しまして質問を準備させていただきましたけれども、若年者に対して、キャリアカウンセリングやグループワークセミナー等々、交流会を実施されているということもありました。そして、未就職卒業者緊急就職サポート事業もあるということも伺いました。また、合同面接会ということもふやしていくんだというところもあったと思います。
 その中におきましても、この現下の厳しい雇用情勢の中、その政策・制度要求の中にも、若者の就労対策として、各部局が連携して実効ある雇用対策を講じる、また、民間企業等に働きかけ、雇用創出の働きかけを行い、求人対策を積極的に行う、合同面接会の機会を広範囲に周知し充実すること、公共の職業訓練、就職支援施設の充実に取り組む、卒業後三年以内を新卒扱いとすることを決定すること等が取り上げられています。
 これらの要求のほかにも、都の直接的な施策ではないものの、また、局も異なる施策といたしまして、中学生、高校生の就職が一段と厳しい状況下、就職を希望する生徒の進路確保に向け雇用確保に努める、高卒、大卒就職ジョブサポーターをさらに増員し、教育現場と連携強化し、中小企業も含めた採用を発掘する等も要求として上がってきています。
 円高、株安等で全体として景気後退の局面の中、若者の雇用情勢が非常に厳しい状況は東京都もご認識されていますけれども、多様な方法を駆使していただき、あるいは民間の労使さんともども協働していただいて、有効な、実効性の高い政策を速やかに実行していただきたい。そして、雇用不安の解消に努めていただきたいと重ねてお願いさせていただきます。
 最後の質問を準備させていただきましたけれども、先ほども質疑がありました工業製品の放射能の測定でありますが、先ほど答弁をいただいているところで重複いたしますので割愛させていただきますが、昨日の牛肉の放射能の測定と同時に、工業製品の方の風評被害に対応するために、今後とも力強く施策を実行していただきたいということを要望させていただきまして終わります。

○三宅委員 それでは、まず島しょ地域の農林水産業の振興についてお尋ねします。
 東京の島しょ地域は、北は伊豆大島から南は小笠原諸島まで、南北千キロにもわたる広大なエリアにわたっており、九つの町村を抱えております。この地域では、東京の島ならではの特産物を生産している農業、島の面積の約七割を占める森林、日本の海の約四割を抱える海域で行われている漁業と、農林水産業が島民の生活を支える産業となっており、それぞれの島で特色ある生産活動が行われております。
 私は、島しょ地域を活性化していく上で、農林水産業をしっかりと支え振興していくことが大変重要であると考えています。一方、島の厳しい環境の中で営まれる農林水産業には、克服していかなければならない多くの課題があると考えています。そこで、まず農業振興について伺います。
 島しょ地域では、伊豆諸島特産のアシタバや、温暖な気候を生かした切り花、観葉植物の生産が、また、小笠原諸島では亜熱帯地域特有のパッションフルーツなどの果樹の生産が盛んで、これらの農産物は各地に出荷されるほか、島内では観光客に提供され、大変好評を得ています。しかしながら、島しょ地域は傾斜地が多く、狭小な農地が点在しており、また、農業用水の確保が難しい地域もあるなど、必ずしも生産環境に恵まれているとはいえません。
 一生懸命に農業に取り組んでいる農業者の方々にとっては、少しでも生産環境を改善し、効率的な農業を可能とすることが何よりの願いとなっています。まずは、農地や農道などの農業生産基盤を計画的に整備していくことが重要です。また、各島で過去に整備した農業用水施設は老朽化が進み、その対応も喫緊の課題となっています。
 そこで、島しょ地域における農業生産基盤の整備について、都はどのように取り組んでいるのか伺います。

○津国農林水産部長 農地や農道、農業用水などの農業生産基盤は、効率的で生産性の高い農業を実現する上で重要な役割を担っております。このため都は、これまで各島からの要望にこたえ、集落と農地を効率的に結ぶための農道整備、農業生産に欠かせない水を確保するための農業用貯水池やパイプラインの整備などについて町村を支援してまいりました。
 また、災害が発生した際には、一刻も早い農業の再開を目指し、被災した農業生産基盤の復旧に取り組んでまいりました。さらに、今年度からは、新たに農業水利施設ストックマネジメント事業をスタートさせ、大島、新島、三宅島、八丈島において、老朽化の著しい農業用水施設の改修に対する支援を行っております。
 今後とも、厳しい環境の中で行われている島しょ地域の農業を支えていくため、各島の実情に応じた農業生産基盤の整備を推進してまいります。

○三宅委員 農業生産基盤の整備は、今年度から新規事業も開始され、大いに期待しています。今後とも各島の農業生産に必要な基盤整備を着実に推進していただくよう、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、農産物の生産振興についてであります。
 島しょ地域の農業は、農業者の高齢化が進展しており、また、年に数回、台風や強い季節風などによる被害を受け、多くの農業者が対応に悩まされています。さらに、農産物を出荷するに当たっては、離島であることから輸送時間が余分にかかったり、天候の影響で船便が安定しなかったりという島ならではの課題もあります。島しょ地域の農業を活性化していくためには、生産性をさらに向上して、農産物の安定生産、安定出荷に向けた支援が必要と考えます。
 そこで、こうした環境のもとで生産が行われている島しょ地域の農産物の生産振興について、都はどのような取り組みを行っているのか伺います。

○津国農林水産部長 島しょ地域の農業を振興していくためには、島の自然環境に対応しながら、農産物の生産性の向上や安定出荷に向けた取り組みを進めていくことが重要でございます。このため都は、大島や八丈島、小笠原など多くの島で、温暖な気候を一層生かし、強風から農作物を守ることにより品質と生産性を向上させるための鉄骨ハウスやパイプハウスの整備を、また、利島では、急峻な斜面での農産物の運搬作業を軽減するための農業用モノレールの整備を支援しております。
 さらに、新島や青ヶ島などで、農業者が共同で農産物を出荷するための冷蔵施設を備えた集出荷施設の整備のほか、三宅島や神津島などでは、鮮度を保持したまま出荷できるよう、保冷コンテナの導入に対する支援も行っております。
 今後とも、各島の農業が抱える課題にきめ細かく対応した生産、出荷への支援を行い、島しょ地域の農業振興を図ってまいります。

○三宅委員 次に、水産業振興について伺います。
 本年三月に発生した東日本大震災では、東北地方の水産業に甚大な被害が生じました。幸い、東京の島々の水産業に大きな被害はありませんでしたが、これまで伊豆諸島では、過去に地震などによる被害が多く起きていることから、今回の震災を機に、改めて島しょ地域でも漁業関連施設の災害への備えが必要であると感じました。
 特に島しょ地域にとっては、漁港は重要なライフラインであることから、災害発生時に漁業関連施設が倒壊して付近の道路を寸断したり、港内に瓦れきが流出し、漁港自体の機能が麻痺する事態に陥れば、物資の搬出入ができなくなり、二次的な被害が拡大するおそれがあります。
 そこで都は、機を逃すことなく、本年度、緊急対策事業として、漁村地域防災力強化事業を立ち上げ、漁村地域の防災力強化に取り組まれていることは大いに評価するところです。そこで、本事業の具体的な内容と取り組み予定についてお伺いします。

○津国農林水産部長 都ではこれまで、漁村地域の防災力強化を図るため、老朽化した漁業関連施設の更新等に対し、支援を行ってまいりました。しかし、このたびの東日本大震災では、東北地方の水産関連施設に想定を超える甚大な被害が発生したことを目の当たりにしました。港湾施設に対する津波対策は港湾局の所管するところでございますけれども、産業労働局といたしましては、漁港機能確保の観点から、漁業共同利用施設の耐震化等のさらなる対策が急務であると考えております。
 このため、震災後直ちに漁村地域防災力強化事業を立ち上げ、漁業共同利用施設の耐震化を支援し、漁村地域の防災力強化を進めております。具体的には、今年度、大島、八丈島、小笠原父島において倒壊の危険性が高い施設の撤去と、大島、神津島、三宅島、小笠原父島、母島での耐震診断に対し、支援を行う予定でございます。
 こうした取り組みにより、漁村地域の防災力強化を着実に進めてまいります。

○三宅委員 私は、平成二十二年第二回定例会において、水産物の消費拡大について質問し、都が、主婦層や子どもたちなどを対象に、東京産水産物の魅力を直接伝える、ぎょしょく普及事業に積極的に取り組んでいることを伺いました。このうち、主婦層を対象に島の魚を使った料理教室を行う、東京の魚の食べ方プロデュース、小中学生を対象に漁業協同組合の女性部が講師となり、島の魚や漁村の暮らしなどを伝える、浜のかあさんと語ろう会は人気であることから、事業の拡充を図るとの答弁をいただきました。
 本事業は、東京産水産物の魅力発信や、消費拡大効果も期待できるため、より積極的な取り組みが必要と思いますが、事業の進捗状況と今後の取り組み予定についてお伺いいたします。

○津国農林水産部長 都民に東京産水産物の魅力を実際に体験していただき、将来の消費拡大につなげていくことは、水産業振興にとって重要な課題であるため、都では平成二十一年度から、ぎょしょく普及事業を展開しているところでございます。特に、お話のございました主婦層を主な対象といたしました東京の魚の食べ方プロデュースでは、参加者の多くが東京産水産物の魅力を実感し、関心が高まったとの反響を得ております。
 また、学校を対象とした、浜のかあさんと語ろう会や、都職員が講師となり、東京の水産業や水産物の魅力を伝える出前講座でも、子どもたちから東京の魚を身近に感じるようになったという感想が多く寄せられております。私も先週、この出前講座に行ってまいりましたけれども、東京でとれる魚種の多さですとか、漁の方法などに興味津々でございまして、終了後にも多くの質問がございました。
 このように、いずれの取り組みも好評であり、昨年度の参加者は三千名を超えたほか、本事業の開始以降、学校給食での東京産水産物の利用は毎年増加しており、昨年度は、およそ三十一万食分に当たる約十二トンが学校給食で利用されるまでになってございます。さらに、今年度はこれらの取り組みに加え、学校給食での東京産水産物の利用を一層拡大するため、新たに栄養士を対象とした魚料理の講習会や、都の水産業や水産物を紹介する小学生用の映像教材づくりを行っております。
 今後とも、こうした取り組みを通じ、東京産水産物の魅力発信と消費拡大を図ってまいります。

○三宅委員 ぜひ、よろしくお願いいたしたいと思います。
 次に移ります。
 島しょ地域は、人がそこに住み、産業活動を営むことで、国土の保全を果たし、多くの都民に憩いと潤いをもたらしています。しかし一方で、地理的、自然的な条件は極めて厳しく、これまで幾多の自然災害に脅かされてきた各島にとって、防災施設の整備は必要不可欠です。
 三宅島の噴火では、いまだ高濃度ガスの噴出が継続し、全島を覆った大量の降灰により樹木は枯れ、森林の保水機能は著しく低下して、降雨のたびに集落に泥流被害が発生し、アカコッコの住む緑豊かな島は、枯損した立木が白色化し、惨たんたる風景となってしまいました。
 さらに、新島・神津島近海地震では、新島、神津島でそれぞれ震度六弱を記録し、山肌がはげ落ちて無残な姿となったほか、神津島では死者も数え、新島若郷地区では直径九メートルもの巨石が崩落して、集落住民が避難する事態となりました。こうした噴火や地震などは毎年起こるものではありませんが、島しょ地域は台風の通り道ともなっており、これまでも数々の土砂災害などにさらされ、農地や海洋への土砂流入なども引き起こし、住民の生活に大きな影響を与えています。
 このような自然現象による災害は、落石防護工事や土砂流出防止工事、防風林造成などの治山事業によって、予防対策、復旧対策が講じられているところですが、なお一層の取り組みが必要です。
 そこで、島しょ住民の生活を守るための治山事業に対する取り組みについて伺います。

○津国農林水産部長 災害を予防、復旧する治山事業は、森林の維持、造成等を通じて、住民の生命や財産を守るとともに、生活環境の保全を図り、安全で住みよい定住条件を整備するもので、社会的な役割は大きいものでございます。平成二十三年度におきましては、新島や青ヶ島で、急峻ながけからの落石が住宅や道路などに与える被害を未然に防ぐため、防護施設等を設置する予防治山事業を実施しております。
 また、三宅島や神津島などでは、土砂崩れにより崩壊した斜面を安定させる緑化を行うとともに、堆積した土砂が下流に流れ出すことを防止する治山ダムを整備するなど、復旧治山事業に取り組んでおります。さらに、八丈島、大島などでは、台風等による強風や塩害から住宅や農業施設等を守るため、防風林等を整備しております。
 今後とも、島しょ地域の生活環境や農業基盤の確保に向け、災害の予防、復旧を行う治山事業を実施してまいります。

○三宅委員 ぜひ引き続き積極的に治山事業に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、若干、先ほどの興津委員の質問に重なるんですが、島しょ地域の観光振興について伺います。
 ことしは、三月の東日本大震災の影響により、島しょにおける観光客数は大きく減少しており、ゴールデンウイーク中の利用者数は、対前年度比で八一%と約二割の減少となっております。その後の状況ですが、先般、東海汽船から七、八月期の伊豆七島航路利用者数が発表されました。それによりますと、この夏は天候もよく、伊豆諸島への定期船運航も安定していたにもかかわらず、航路利用者数は約十八万人となっており、対前年度比で見ますと、依然約一割の減少となっております。
 この状況は、観光が主要な産業の一つである島しょ地域においては大変厳しいものです。こうした中、例えば三宅島では、映画「ロックわんこの島」のパネル展など独自の集客イベントを開催するなど、各島において集客に努めておりますが、島だけの取り組みでは限界があります。それぞれの島の取り組みは重要ですが、それに加えて、観光振興に向けた都の支援が不可欠と考えております。
 そこで、今年度の島しょ観光振興に向けた支援の内容について、具体例を挙げて、ぜひ答えていただきたいと思います。

○横山観光部長 島しょの観光を振興するためには、それぞれの島が特徴ある観光資源を生かした個性的な取り組みを一層展開していくことが重要であります。都では、こうした各島の取り組みを支援するとの考え方に基づき、ハード事業として、町村が行う観光施設整備への補助を行うとともに、ソフト事業として、誘客の拡大を図るための情報提供等に対する補助を実施しております。
 今年度、ハード事業といたしましては、神津島での海岸デッキ整備や、八丈島でのダイバー向けシャワー室の整備、三宅島でのジオスポットでの観光看板整備等に補助をしております。ソフト事業といたしましては、観光パンフレット制作等に補助をしております。

○三宅委員 今後も一層の支援を、ぜひともお願いいたしたいと思います。
 次に、ことしは小笠原諸島が世界自然遺産にめでたく登録されました。私も、十月十四日に小笠原村で開催された記念式典に参加してまいりました。式典の折に、南島を初めとする小笠原諸島の自然を見てきましたが、改めてその美しさに感動してまいりました。小笠原諸島の自然は都民全体の貴重な財産だと思いますし、自然遺産登録を契機として、小笠原諸島の自然の美しさをもっともっと都民に伝えるべきと考えます。
 都では、緊急対策において、東京のPRなど、島しょを含めた観光再生への取り組みを行うこととしております。
 そこで、小笠原諸島の世界自然遺産登録を踏まえ、小笠原をどのようにPRしていくのか伺います。

○横山観光部長 小笠原の世界自然遺産は、ご指摘のように、見る人に感動を与える貴重な観光資源であります。東京の誇るべき財産でございます。未来永劫に保全をし、将来の世代に確実に引き継ぐ必要がございます。そこで、小笠原の自然を多くの方々に知っていただくため、都庁の観光情報センターやホームページでの紹介を行うとともに、鉄道車内での広告掲示等の訴求力のある媒体によりまして広報を展開し、東京の世界自然遺産、小笠原の価値及び魅力を広く伝えてまいります。
 また、小笠原の貴重な自然を保全する観点からは、旅行者の方々に注意していただきたい点というのもございますので、そうした内容を含めた観光用のDVDを制作いたしまして、竹芝桟橋の待合エリアや、「おがさわら丸」の船内等、旅行者が必ず目にする箇所での周知を図ってまいります。
 今後も、自然環境の保全と観光利用を両立させながら、地元と連携を図り、小笠原諸島の観光振興を推進してまいります。

○三宅委員 ただいまお答えいただきました答弁を通じて、各島の観光資源を生かした主体的な取り組みに対して、都が積極的に支援していることを改めて確認いたしました。
 世界自然遺産登録を契機に、小笠原諸島を訪れる旅行者は今後も増加すると見られます。引き続き各島と都が連携し、島が持つ魅力にさらに磨きをかけることで、その盛り上がりが一過性なものにとどまらず、島しょ地域全体にまで広がることを期待しまして、質問を終わります。

○高倉委員 東日本大震災の影響につきまして、都では、これまでも中小企業への相談対応の事業を行ってきているわけでありますが、景気の状況に応じて定番の対応方法を紹介するようなやり方では、今回の震災の影響を乗り越えるのは難しいかと考えます。震災後の諸状況にきめ細かく対応できる相談体制をつくり上げることが重要であります。
 都は、第二回定例会の補正予算で、震災で影響を受けた企業への相談体制の充実を図りました。まず、その具体的な支援の内容とこれまでの取り組み状況について答弁を願います。

○河内商工部長 都は、第二回定例会の補正予算により、震災によって生じた経営課題について速やかな解決を目指す中小企業に対し、一社当たり三回まで無料で専門家を派遣することができる、震災対応緊急エキスパート派遣を実施することといたしました。これまでに、七十二社に対し経営の専門家を延べ百九回派遣して相談を実施し、工場における節電対策やサプライチェーンの復旧、再構築に向けた助言など、さまざまな経営課題の解決に向けた支援を行っております。今後も本事業を実施することによりまして、震災の影響を乗り越えようとする中小企業を速やかに支援してまいりたいと考えております。

○高倉委員 今、答弁で、震災の影響を克服するために、経営内容の向上を図っていくという観点からのご答弁がありましたけれども、しかし、その一方で、工場などが被災して操業そのものがとまってしまい、経営のあり方を見直しているどころではないという、そうした中小企業が多いということも確かだと思います。
 特に、中小企業が協力して事業協同組合をつくり、倉庫などを共有しながら商品の出荷や保管などをしている場合に、倉庫が被災をしますと、その影響は組合に参加している数多くの会社の経営に瞬く間に広がってしまうわけであります。
 国では、被災した協同組合の施設復旧に向けて、決して十分ではないものの、補助を行う仕組みを一次補正予算などを通して創設いたしました。
 東京都でも、国の制度と連携しながら助成を行う制度について、補正予算での経費の計上を行っております。被災した協同組合の施設等の復旧を支援するための都の事業の仕組みや、これまでの実績について、明らかにしていただきたいと思います。

○河内商工部長 事業協同組合等の倉庫や設備につきまして、地震による被災から早期の復旧を図ることは、組合に加入している多数の企業の生産活動を安定させる上で重要でございます。
 国では、今回の震災により、中小企業の協同組合の施設などが被災した場合に助成を行う仕組みを立ち上げておりまして、都は国と協力して、施設の復旧経費の四分の三を助成して組合の負担軽減を図ることといたしました。こうした都の助成事業につきましては、八月から募集を開始いたしまして、これまでに九件の申請があり、現在、国の定める要件に該当する四件につきまして、都による助成の前提となる国からの補助金交付決定に向けて申請の手続をしているところでございます。
 こうした取り組みによりまして、震災の影響から速やかな復旧を目指す中小企業を、着実かつ効果的に支援してまいります。

○高倉委員 次に、金融の支援で災害緊急についてお聞きをするつもりでおりましたが、この件は、先ほど山崎副委員長が質疑をされましたので、割愛をいたしたいと思います。
 続いて、タイの洪水被害に関する都内中小企業への影響について質問をいたします。
 タイの国内では、七月以降の豪雨で五十年ぶりともいわれる洪水によりまして、十月初めから、タイ中部を中心に大規模な冠水の被害が広がっております。冠水の被害は、住民の生活のみならず、産業施設にも大きな影響を与えておりまして、首都バンコクの郊外に位置すするアユタヤ県を中心とした工業団地では、多くの工場が操業停止に追い込まれております。
 また、直接の洪水被害を受けていない工場におきましても、供給網の寸断によって部品の調達などがままならず、減産や生産停止、さらには工場の閉鎖を考えざるを得ない状況にあるともお聞きをしております。
 タイでのこうした洪水被害は決して対岸の火事ではないと思います。ASEAN諸国の中で製造拠点として目覚ましい発展を遂げたタイは、千社を超える日系企業を有する重要なサプライチェーンの拠点でありまして、洪水被害の影響を無視することはできないと思います。
 そこで、タイの洪水被害による都内の中小企業への影響や状況を把握することが重要であると考えますけれども、見解を求めます。

○河内商工部長 タイにおいて発生した洪水被害によりまして、現地の生産拠点が直接的な被害を受けるばかりでなく、サプライチェーンの寸断による減産や生産停止などの間接的な影響が生じつつあることは認識しております。実際に、タイに生産拠点を有する都内の中小企業から、仕入れ先や納入先が被害を受けまして、部品が手に入らず生産が滞ったり、製品を納品することができないなどの情報も確認しております。
 こうした状況を踏まえまして、タイの洪水被害による都内中小企業の生産活動への影響につきまして、都としても、中小企業支援機関に寄せられる情報を含めまして、適切に情報の収集、把握に努めてまいります。なお、けさの日本経済新聞によりますれば、トヨタ自動車が二十一日から生産を再開するなど、復旧に向かっていると報じられていることを申し添えさせていただきます。

○高倉委員 今、適切に情報の収集、把握に努めていくという答弁がありましたけれども、ぜひ、至急取り組みを行っていただきたいと思います。そして、必要な支援があれば早急に具体化をするように強く要望をいたしておきます。
 次に、観光施策について質問をいたします。
 東日本大震災以降、被災地を初め国内の観光は大きな影響を受けているわけでありますけれども、外国人の旅行者数につきまして、これまでの状況について説明をいただきたいと思います。

○横山観光部長 JNTO、日本政府観光局によりますと、震災以降、訪日外客数の前年同月比でございますが、三月が五〇・三%の減、四月は大きく落ち込みまして六二・五%の減、このような大幅な減少でございます。その後、回復しつつありますけれども、直近の九月でも二四・九%の減でございまして、依然前年を大きく下回っております。

○高倉委員 まだまだ大きな影響があるんだと思います。特に大きな打撃を受けました被災地の地域経済を復興していくためには、即効性のある観光の面からの支援が重要であると思います。
 ことしの第二回定例会において、私ども都議会公明党は、被災地支援の具体的な取り組みとしまして、東京に招聘した海外旅行事業者に対しまして、その希望によって岩手、宮城、福島の被災三県の観光地視察を選択肢として提供すべきというふうな提案をいたしました。さらに、一般の外国人旅行者に対しても、羽田空港において被災三県の観光情報を提供するなど、都として被災地の観光復興を支援していくべきと対応を求めたところであります。それに対して都はどう対応してきたのか、答弁を求めたいと思います。

○横山観光部長 都は、東京への旅行者回復に向けまして、夏以降、韓国、中国、台湾、タイのアジア諸国及び欧米豪州、合わせまして八十五社の海外旅行事業者の招聘を行い、実際の東京を体験してもらう事業を実施しております。この中で、福島県、宮城県、岩手県の被災三県の観光プレゼンテーションを行うとともに、パンフレットなどを配布し、各県の旅行情報を海外旅行事業者に提供いたしております。
 あわせて、海外旅行事業者が訪問を希望する場合には、被災三県が招聘の機会を提供できるよう、都として支援、協力をいたしております。その結果、八月に台湾の旅行事業者が宮城県への視察を実施しまして、県からも感謝をされているところでございます。
 また、一般の旅行者に対しましては、羽田空港の東京観光情報センターや都庁第一本庁舎の二階の全国観光PRコーナーにおきまして、被災三県の観光地に係る外国語のパンフレットを配布するなど、被災地の観光復興支援を実施しております。

○高倉委員 ところで、私は都議会公明党の被災地派遣チームの一員として、ことしの五月、福島に参りました。福島は地震、津波に加えまして、原発事故、そして風評被害と、何重もの甚大な被害を受けております。さまざまな方々からたくさんのご要望を、この際お聞きをいたしました。その中で、福島の主要な商工団体の代表の方々と懇談をしまして、じっくりと要望をお聞きする機会を得ました。
 その中で、甚大な打撃を受けた地域経済の復興に向けて、ぜひ東京からたくさんの都民に被災地に来ていただき、宿泊をし、食事をし、地域の特産物を購入してほしいと、こうした要望を受けたわけであります。東京に戻りまして、早速、木内団長を先頭としまして、私ども都議会公明党として、知事に具体的な取り組みを強く要請いたしました。その結果として実現した支援策が被災地応援ツアーでございます。岩手、宮城、福島などへの旅行に、都が利用者に対して、一泊三千円を旅行代金から割引する取り組みでありまして、五万泊分が今回用意をされました。
 この被災地応援ツアーは、多くの都民の方々から大きな反響がございます。また、先般、福島観光のPRのために、福島特産の桃を持って都庁を訪れました福島の旅館のおかみさんたちと、私ども、懇談をさせていただきましたけれども、その際に、この東京の応援ツアーの実施を大変に喜び、大きな期待を寄せていたわけであります。
 そこでまず、この都内旅行事業者が九月から開始をした被災地応援ツアーについて、現在の実施状況を明らかにしていただきたいと思います。

○横山観光部長 八月に、本事業の企画、実施に参加を希望する都内旅行事業者を募集いたしました。その結果、約百三十社の旅行事業者から応募がございました。この百三十社の旅行業者が、九月から順次ツアーを催行しております。
 現在のところ、本ツアーは、おおむね順調に販売されていると承知しておりまして、引き続き都民の方にご利用いただきたいと考えております。

○高倉委員 この被災地応援ツアーの実施に当たっては、どういった工夫があったんでしょうか。また、このツアーを受け入れる被災県の反応はどういったものがあったのか、所見を求めたいと思います。

○横山観光部長 本事業の取扱旅行業者が販売する被災地応援ツアーには、個人旅行、そして募集型の団体旅行、さらには町内会旅行や社員旅行のような手配型団体旅行、大きく分けてこの三つの形態がございます。
 被災県までの交通手段につきましても、鉄道、バスのほか、自家用車による旅行も可能となっております。
 また、利用者にとりましては、旅行会社の窓口で都内在住、在勤、在学であることを証明すれば、旅行代金から一泊につき三千円が割り引かれる簡便な手続となっております。本事業は、さまざまな形態で幅広く都民の方々にご利用いただけるものと考えております。
 また、被災県の観光事業者の声でございますが、このツアーの実施に対して感謝の声が上がっていると聞いてございます。

○高倉委員 さまざまな形態の旅行があって、非常に使いやすいというんでしょうか、そのような工夫はされていると思います。こうした被災地応援ツアーのような取り組みを通じまして、ぜひ被災地を応援していこうというふうに考える都民の方々は大変多いのではないかと私は思います。
 このツアーについて、都民への周知、どういった形でやっているのか、この周知をどう行ってきたのかについて答弁を求めたいと思います。

○横山観光部長 被災地応援ツアーにつきましては、まず、「広報東京都」に掲載をいたしまして広く都民の方々へ周知を図るとともに、東京都や東京観光財団のホームページに掲載をいたしまして、事業の詳細ですとか取扱旅行事業者の一覧を紹介しております。
 加えて、本事業用のポスター、チラシなどを作成しまして、JRや都営地下鉄などの都内交通機関への掲示を行うとともに、観光情報センターや旅行業者などでの配布や掲示によりまして、積極的な周知を図っております。
 なお、取扱旅行事業者の中には、独自のチラシやポスターを作成し、販売広報を行っているところもございます。
 また、さまざまな機会を通じてメディアへの働きかけも行いまして、新聞、テレビなどで、本事業に関して数多くの報道がなされているところでございます。

○高倉委員 いろいろとお聞きをするところによりますと、この被災地応援ツアーについては、登録をした百三十の旅行事業者の中で、大手も含めて、割り当ての枠を既に販売してしまったというようなところも幾つかあるようにお聞きをしておりまして、本当に大きな反響があるのではないかと思います。
 被災地の復旧、そして復興、また、地域経済の復興には、まだまだ大変長い時間が必要であります。こういった、本当に都民の方々も積極的にかかわっていただけるような、まさに東京ならではの被災地支援策というものを、単発で終わらせるのではなくて、ぜひ継続をしていくべきだと、このように私は思うんですね。そのことを十分に検討していただくように、強く強くお願いをしておきたいなと思います。
 さて、東京の観光地について、もう一点だけ別なことを質問させていただきます。
 私は、この六月、都内で開催された被災地応援フォーラムという行事に参加をする機会がありました。福島県出身の田部井淳子さんが、福島の山に登ろうと呼びかけるイベントでありました。田部井さんは、ご存じのとおり、女性として世界で初めてエベレストの頂に立ちまして、また、女性で世界で初めて七大陸の最高峰に登頂した登山家であります。
 田部井さんらが語る福島の山々というのは、大変魅力にあふれておりました。このイベントに参加した人は、だれもが福島の山に登ってみたいというふうに思ったに違いないと私は思っております。山を通した被災地支援、あるいは被災地の観光の応援というような形もあるのかなというふうに、私も大変感心をした次第であります。
 ところで、被災地の支援ということではありませんけれども、東京には観光資源がたくさんあるわけであります。人がたくさん集まる大都市特有の観光資源もある一方で、海もあれば山もあるわけであります。
 山につきましては、高尾山のように国内有数の観光客が訪れている名勝があるほか、自然の魅力あふれる山々がいろいろあるわけであります。最近は、山ガールといった言葉に象徴されるような、静かなブームというのがあるわけでありまして、私は、東京の山もそうしたブームにこたえる魅力があるのではないかというふうに思っております。
 また、日本に来る外国人の中には、東京からも比較的近い富士山にぜひ登ってみたいと、富士山は東京の山ではありませんが、そういった外国人もたくさんおりまして、そうした方々に対して、東京に滞在をして登る方も多いわけですから、東京において十分な情報提供をしていくこともさらに必要になってくるのではないかと思います。
 今後、東京近郊の山へ登っていく、そうした登山ニーズは高まる可能性があると私は考えておりますけれども、都は、貴重な観光資源である東京の山に対してどのような取り組みを行ってきたのか、お伺いしたいと思います。

○横山観光部長 東京には、ご指摘のように、高尾山のほかにも三頭山や御岳山、日の出山など、豊かな自然を満喫できる多くの山が存在いたします。
 昨今、若い女性の中にも山を訪れる方がふえているということも聞いてございまして、これらの山々は、東京の重要な観光資源であると認識をしております。
 そこで、東京の山の魅力を高めるために、市町村が取り組む遊歩道整備や看板整備への支援を行うとともに、観光ガイドでの登山ルートの紹介などによりPRを図ってきております。
 今後とも、市町村が取り組む活動への支援等を通じて、東京の山の魅力向上に努めてまいります。

○高倉委員 最後に、若者の就職支援について質問させていただきますけれども、先ほど来、各委員の皆さんから質疑がありましたので、重ならない範囲で簡潔に三問だけ質問させていただきたいと思います。
 まず最初に、東京しごとセンターで新卒特別応援窓口を設置されまして、新卒者の就職に向けて、きめ細かい支援を行っていらっしゃると思いますが、この新卒特別応援窓口の取り組み内容、そして実績をお伺いしたいと思います。

○穂岐山雇用就業部長 都は、新規学卒者や既卒者を取り巻く厳しい雇用情勢を踏まえまして、平成二十二年から、飯田橋と多摩のしごとセンターに新卒応援窓口を設置し、キャリアカウンセリングやセミナーなどを通じたきめ細かい就業支援を実施するとともに、その充実を図っております。
 ことしから、窓口の設置時期を従前の三月から一月に前倒しするとともに、これまで支援の対象としていなかった既卒三年以内の若者なども新たな対象といたしました。
 さらに、国とも連携しまして、学生専門のジョブサポーターを配置することにより、新卒向け求人紹介の体制も充実いたしました。
 こうした取り組みによりまして、ことしの一月から六月までの延べ利用者数は、昨年の利用者数の約三倍となる千三百二十五人となっております。この内訳といたしましては、今春の新卒者の方は六百八十七人、それ以外の既卒者の方の利用は六百三十八人となっております。

○高倉委員 若い皆さんの就労を実現するためには、さまざまな団体とも連携をしていくということは非常に大事だというふうに思っております。
 東京都は、若者の就労を後押しするために、さまざまな団体とも連携をしまして、今月、この十一月を、若者しごと応援月間と、そういうふうに銘打って、取り組みをずっと続けておりますけれども、この取り組みの主な内容について明らかにしていただきたいと思います。

○穂岐山雇用就業部長 若者の就職を実現するには、国、大学、経済団体など、関係するさまざまな団体と連携して事業を実施することも効果的でございます。
 このため都では、若者の就職に関係する行政、教育界、産業界などの各団体と連携しまして、平成十九年度から十一月を東京都若者しごと応援月間と定め、若者を支援する取り組みを実施してまいりました。
 具体的な内容は、応援月間中に各団体が行う事業につきまして、共同で広報を行うことにより事業の普及啓発の促進を図るとともに、合同企業面接会やセミナーなどの事業を共同で実施し、事業効果の向上に努めております。
 また、今年度、新たな取り組みといたしまして、十一月二日に開催しました新規大卒者等合同就職面接会におきまして、首都圏百二十二の私立大学が構成する大学職業指導研究会と共催で実施することによりまして、多数の大学を通じまして学生等の参加を一層促したところでございます。

○高倉委員 最後にお聞きをします。
 今の答弁の中でも、若者しごと応援月間中、いろいろな団体が広報の協力をしているというようなお話がありました。こうした従来の手法に加えて、より一層、若い方々に訴求力の高い方法というものも考えていくべきではないかと思います。
 最近、若い皆さんは、例えばアイフォンといったようなスマートフォンを使っている方がたくさんいらっしゃるわけであります。
 そのスマートフォンは、いろんな、自分で好きなアプリ、ソフトをダウンロードしてきて使えるわけですけれども、東京都でいいますと、交通局が都営ナビというアプリを独自に開発しておりまして、無料で配布をしているんですね。これが、かなりダウンロードしている方がいらっしゃると。
 せんだって交通局にお聞きをしましたら、私はかなり費用もかかるのかなと思ったんですけれども、ソフトの作成から年間の維持経費も含めて九十万円台でできてしまうというようなことでありました。
 それで、一日千件ぐらいのアクセスがあるんだそうですけれども、先般、台風があったときは、七千件ぐらい一気にアクセスがふえたと。これは都営ナビ、都営交通のナビですから、運行状況を知りたいということで、一斉にアクセスをしてきたんだと思います。
 こうしたことを参考にして、ぜひ若い皆さんがふだん使っているそういう通信機器を使って、いわゆる就職にかかわるようなさまざまな情報をより気軽に受け取ることができるように、こうした広報の方法についても検討をすべきだと私は思いますけれども、最後にご見解を伺って、質問を終わります。

○穂岐山雇用就業部長 若者の就職支援に関するさまざまな事業につきましては、都は、事業内容に応じた効果的な手法によりまして周知を図ることとし、これまでもホームページやパンフレット、また、多くの人の目に触れる新聞広告や電車の中づり広告など、さまざまな方法により広報を実施しております。
 さらに、今年度からは、しごとセンターにおいて、若者向けにツイッターを活用した情報提供を開始いたしました。
 今後は、お話しのような新たなツールの活用も含めまして、若者への効果的な広報のあり方について検討してまいります。

○伊藤(ま)委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後六時六分休憩

   午後六時二十一分時開議

○伊藤(ま)委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○神野委員 私からは、中小企業支援についての質問をさせていただきますけれども、これまでの質疑の中に、木内委員、また、興津副委員長からも、中小企業の技術の特許の部分がございまして、ご答弁ございましたので、その部分は意見にかえて進めていきたいと思います。
 都内企業の大半は、中小企業でございます。中小企業の持つ独自の技術によって供給されるさまざまな部品が、日本製品の高品質を支えております。まさに日本経済の根幹を占めているのが日本の中小企業の技術力といっても過言ではございません。
 都では、中小企業支援に力を入れることで、都の経済活性化を図っています。売れる技術をつくり出すため、開発、生産、営業体制の強化に共同で取り組む中小企業グループを選定し、選定された中小企業に助成金を交付する、ものづくり産業基盤強化グループ支援事業を行っていらっしゃいます。
 そこで伺いますが、この事業について、どのような考え方で支援をされて、そして、その実績はどうなっているのか、よろしくお願いします。

○河内商工部長 大手メーカー各社では、生産拠点を海外に移し、研究開発機能を国内に集約する動きが進む中、中小企業にとりまして、技術力の高度化に力を入れることが必要となっております。
 このため都は、本年度より、ものづくり産業基盤強化グループ支援事業を開始いたしまして、高度な技術力をつくり出すため、開発や営業などに共同で取り組む中小企業グループを、最大五千万円までの助成金と専門家の派遣により支援しております。
 本年度は五グループへの助成を決定しており、今後とも、中小企業グループの結成を支援し、東京のものづくり産業の活性化を図ってまいります。

○神野委員 私、新聞記事で知ったんですけれども、東大医学研究所の中村祐輔教授がつくり出した、がんの一種である肉腫の新しい抗体薬の臨床試験が、これはフランスで行われるそうであります。その理由は何かというと、その開発計画の妥当性、そして実用化の可能性がないと、政府に申請をしていた助成金が却下をされたからとのことで、そのかわりにフランスが補助をすると。また、愛媛大学の環境緑化工学の研究グループが発見、開発をした、エチゼンクラゲを使った環境緑化技術に資金援助しているのは、日本ではなくて韓国の研究機関だそうであります。こうして見ると、これまで我が国の歴代政府の、さまざまな技術に対しての理解度の低さや戦略性のなさというものに驚かされます。新しい技術開発に対しては実用化の可能性というものを過度に求めて、補助金や助成金がつかないという、そういった事例をよく耳にするわけであります。
 そこで伺いますが、東京都では新製品・新技術開発助成事業を行っていらっしゃいますが、選定対象となる企業の技術評価は、どういった体制で行われているのか伺います。

○河内商工部長 都は、都内産業の活性化を図るため、新製品・新技術開発助成事業により、すぐれた技術を持ち、その実用化の見込みのある中小企業の製品開発や技術開発を支援しております。
 支援対象事業者を選定する際には、事業者の技術開発のレベルや新規性を専門的見地から十分に評価する必要があることから、各技術分野に豊富な知識や経験を持つ外部専門家が、書類審査及び面接審査を行うこととしております。
 こうした体制により、中小企業のすぐれた製品や技術開発の取り組みを適切に選定して、効果的な支援に結びつけております。

○神野委員 面接審査まで行っていらっしゃるということでございますから、その企業者のやる気ですとか、そういった先見性等も含めて審査をされていらっしゃると思いますが、ただ、なかなか技術の評価というのは非常に難しくて、本当に海千山千、さまざまな話が来るかと思います。ただ、この技術というのは、まさに東京の産業の根幹でありますから、より先見性といいますか、都の方も、そういった可能性まで見ていただいて、審査を行っていただきたいと思います。
 先ほども申し上げましたが、東京都の中小企業の技術を、やはりしっかりと保護していかなければいけない。そういった意味で、特許に対しての東京都の取り組み--知的財産総合センターで、知的財産に関する普及啓発、相談業務に加えて、外国特許出願の助成まで行っていらっしゃるということで、非常に私も心強く思っているんですが、ただ一点だけ、意見をいわせていただきたいと思います。
 特許といいますと、これは発明者としての個人や、そして企業、学会、そして国家などを巻き込んで、模倣や盗用や確執や葛藤が渦巻く極めてリアリズムの世界なんです。
 タカジアスターゼを発明した高峰譲吉、アドレナリンを発見したんですけれども、これは国際的にはいまだ認知をされず、米国の科学者であるエイベルがつくったエピネフリンという名前に取ってかわられてしまっています。たしか平成十八年ごろ、ようやくアドレナリンという名前を使うことができるようになったんですが、いまだ国際学会ではアドレナリンという名前が使われていないそうです。
 また、音響機器の磁気ヘッドに使われるフェライト、これも、日本人の武井武の発明によるものであるのに、当時サンプルを注文したオランダの企業が、戦後の日本の占領下をいいことに特許申請を出して、そして、今では日本の特許庁も、このオランダ企業の特許を認めてしまっている。
 こういった、経営資源の乏しい日本の中小企業が残っていくためには、この知財戦争ともいえるような、知財をめぐる激しい競争を生き抜いていかなければいけない。
 ですから、そういった意味で、この知的財産総合センターで行っていらっしゃる相談業務や普及啓発事業というものに対して、まさに国家の技術を守るという意識を持って取り組んでいただきたいということを要望させていただきたいと思います。
 そして、続けて、この知的財産については、保護するだけでなく活用する視点も大切です。例えば、自社の特許技術を他社にライセンス供与することでライセンス収入を確保したり、逆に他社からライセンス供与を受けて自社の製品開発のスピードアップを図るなど、戦略性を持って積極的に知的財産を活用する発想も必要です。
 こうした取り組みが自在にできて初めて、中小企業は持てる力を十分に発揮することが可能となると考えるんでありますが、これは知的財産を保護する以上に高度な取り組みになろうかと考えます。具体的に契約上の知識がないまま、中小企業が安易にライセンス契約を締結するのはリスクが非常に高く、やはり専門家による適切なサポートが重要となります。
 そこで、知的財産の戦略的活用に向けた都の支援の取り組みについて伺います。

○河内商工部長 中小企業が市場での厳しい競争を乗り切るためには、自社に不足している技術を他社の特許技術で補いながら製品開発を行うなど、知的財産を戦略的に活用していくことが必要でございます。
 知的財産総合センターでは、知的財産の戦略的活用に向けて、各種のマニュアルの作成や配布を行うとともに、中小企業の経営者などを対象としたセミナーを開催いたしまして、普及啓発の活動に取り組んでおります。
 また、各企業が知的財産戦略に会社を挙げて対応できるように、平成二十年度からは、中小企業に対して、社内体制の整備や知的財産戦略の策定について、複数年にわたり、継続的にアドバイスを行う支援事業を実施しているところでございます。

○神野委員 都の知的財産に関する手厚い取り組み、よく理解をいたしました。
 以前、NHKで放送されていたんですが、韓国のサムスンの急成長の陰には、東芝を初めとする日本企業の技術者のヘッドハンティングがあったそうです。私、思うんでありますが、技術というのは、今を生きる我々世代だけのものではありません。過去の歴史の中で先人たちが積み上げてきた、まさに国家の財産だと思うんです。
 今、日本の企業が海外に出ていって、そして、国内の空洞化が叫ばれております。ですから、今後、国内企業の海外への進出という視点ではなくて、できる限り日本の中で生産をしていっていただくような取り組みに重点が振り向けられていくんだと思うんでありますが、そうはいっても、これまで大手企業に伴われて、海外、特に中国にですね、進出する中小企業がたくさんあって、そして、その進出をした企業は、さまざまな問題を抱えていると聞いております。
 例えば、進出の許可の条件として、中国の行政当局から技術の全面開示を求められる、そういった話も聞くわけであります。先方が行政ぐるみでかかってくるならば、日本も、我が国の技術を守るために、行政によるサポートが非常に重要じゃないかと思うんです。
 企業の海外進出のお手伝いだけじゃなくて、進出後も日本の企業を守るために、東京都として、諸問題に対してどのように対応されていらっしゃるのか、見解を伺います。

○河内商工部長 既に海外進出した都内の中小企業の中には、現地の税制度への対応や、ビジネスの展開に必要な進出先企業の情報の入手など、さまざまな課題を抱えている場合もあり、適切なフォローが必要な事例も出ております。
 こうした企業に対しましては、中小企業振興公社の総合相談窓口において相談に応じるなどの対応を行っているところでございます。

○神野委員 今申し上げたように、日本の強みというのは、やはり技術だと思うんですね。そして、今までお話を伺ってきたように、特許、そして、今申し上げたような海外に進出をした日本の企業の技術を守る。どうも、例えば、この技術というものを安易に他国に売るという、そういった問題もありますし、また、企業の大切な技術者を何の憂いもなくリストラする、そういった企業の姿勢にも、私は大きな問題があると思うんです。
 そういった意味で、今後は、東京都の中小企業の施策の中に、ぜひ大事な日本の企業の技術と、そして人材を守るという、いってみれば安全保障の視点を取り入れて、中小企業支援を今後とも続けて行っていっていただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終わります。

○鈴木委員 委員会が始まりまして、もう間もなく六時間ということでお疲れだと思いますが、よろしくお願いをしたいと思います。
 私からは、産業振興について十点質問をさせていただきます。
 ここ数年、我が国の産業を取り巻く状況は、世界的な原油、原材料高やリーマンショック、ことしの三月の東日本の大震災、急激な円高など、大きく変化をしてまいりました。こうした中、足元の政策はもちろん重要ですが、将来を見据えての東京の産業振興について、今こそしっかりと議論をしておくことが重要だと考えております。
 歴史を振り返れば、我が国が、物資不足の戦後から高度成長を実現し、さらには安定、成熟へと都市の発展段階を進んでいく中で、東京は他に類を見ない多様な産業、優秀な技術や人材が集積する都市となり、日本経済を牽引してまいりました。今や競争相手は国内ではなくて、アジアなど海外の都市となっております。
 東京が、将来にわたって存在感のある都市であり続けるためには、中長期的な視点で産業の力を継続的に強化していかなければならない、そのように考えております。
 産業労働局では、中長期的な視点に立って、策定に当たっては都議会自民党のものづくり議連との意見交換や要望を受けて、産業振興基本戦略を策定したわけですが、まず、この戦略の基本的な考え方についてお伺いをしたいと思っております。

○矢田部産業企画担当部長 東京都産業振興基本戦略は、「十年後の東京」が目指す二〇一六年の都市像の実現を産業振興の面から推進するため、施策の方向性を示すものとして、平成十九年三月に策定したものでございます。
 この戦略は、東京の産業全体の振興を目的とし、国際競争の激化や労働力人口の減少といった構造的な変化に対応するため、イノベーションにより国際競争力を強化し、東京の産業を新たなステージに飛躍させるという基本的な考え方に基づいて策定しております。
 これまで都は、この戦略に基づきまして、さまざまな施策を展開してきたところでございます。

○鈴木委員 先ほど公明党の木内先生から、産業交流展の実績等、質問がございましたが、中小企業支援に成果を上げている産業交流展支援事業の今後の展開という視点から質問をさせていただきたい、このように考えております。
 中小企業の売り上げが伸び悩む中で、販路開拓の必要性はますます高くなってきております。東京都の産業労働局は、この基本戦略に基づき諸施策を実施して、東京の中小企業を、現下の厳しい経済状況のもと、しっかり支えていただいているわけなんですけれども、なかなか中小企業の現状というのは厳しいものがございます。
 先日の産業交流展にも数多くの来場者がありまして、出展企業が、商談コーナーで真剣に製品の説明をしながら取引条件のやりとりなどをしている様子を私も見てまいりました。
 都内でも非常に数多くの展示会が開催をされておりますが、産業交流展のような大規模のものは限られておりまして、極めて意義深い取り組みであるため、その内容のレベルアップに不断に、絶え間なくというんですか、取り組んでいただきたいと、そのように感じております。
 このような展示会や見本市への出展は、新たな仕事の獲得につながることから大変重要ではありますが、会場のスペースを確保するための代金やカタログなどを印刷する費用の負担は重く、そうしたコストを軽減できれば販路開拓もやりやすくなるとの話もよく耳にしております。
 東京都は、展示会への出展を希望する中小企業に、これまでも経費面での負担軽減を図る取り組みをしておりますが、展示会出展支援のこれまでの成果と今後の進め方についてお伺いをしておきたいと思います。

○河内商工部長 受注の低迷などの経営課題を抱える中小企業に対しまして、都は、平成二十一年度から販路開拓支援を行っております。
 本年九月までに、都内中小企業に対しまして、約三千七百件の経営診断を実施いたしまして、販路開拓が必要とされた八百九十五社に対して、展示会出展やカタログ作成などの助成を行ってまいりました。
 こうした支援を受けた企業からは、経営の問題やその解決策が明らかになるとともに、より訴求性の高い展示ブースを設けることで出展の効果が高まった、例年では出展できない展示会に出展することができて、新たな顧客開拓につながったなどという報告が寄せられております。
 今後とも、展示会出展支援を的確に行い、中小企業の販路開拓の支援を的確に進めてまいります。

○鈴木委員 今、答弁をいただいたように、中小企業にとって、海外販路開拓の重要度は増しております。しかし、言葉の問題や現地の情報が十分に入手できないなどの課題を乗り越えることは容易ではない面も多く、貿易実務などに精通をした専門家がフォローを行うような仕組みを、行政としてしっかりと用意しておくことが大切です。
 また、中小企業が、海外との取引に先立ち、知的財産の侵害などのリスクを理解した上で、海外での特許出願などの知的財産の保護や活用についても、事前に念入りな準備をしておくことも必要であります。
 こうした中で、都は、中小企業の海外販路開拓の支援や知的財産の保護、活用の分野でどのような実績を上げているのか、さらに今後に向け、事業をどのように進めていくのかお伺いをいたします。

○河内商工部長 お話のとおり、中小企業が海外で販路開拓を進める上で、現地の情報収集を単独で行ったり、さまざまなリスクをみずからの力のみで回避することは困難な場合が多いため、行政による着実な支援が重要と考えております。
 都は、今年度から、中小企業に現地の商習慣や市場の動向などに関するアドバイスを行う海外販路ナビゲーターを倍増し、より幅広い分野について情報提供や相談対応が可能な体制を整え、支援に当たっております。事業開始以来、本年九月末までに六百五十二件の相談が寄せられております。
 また、相談案件のうち、販路拡大が見込まれる製品につきましては、ナビゲーターが海外展示会に同行して商談の成立に向けたサポートを行っておりまして、今年度は規模を八小間から三十二小間に拡充を図っております。
 これまでに、北京、上海、バンコク、台北において、環境、エレクトロニクス等の展示会に出展しており、二十五小間を活用し、四十四企業の支援を行っておるところでございます。
 さらに、海外展開に伴う知的財産の保護、活用につきましては、知的財産総合センターにおきまして、海外の知財戦略に関するセミナーを四回開催し、合計百六十八人の参加があるなど、広く普及啓発を行うとともに、海外の知財戦略に関する相談業務にも取り組んでおります。
 最近では、知的財産に関する相談内容について、アジア諸国を中心に多様な国を対象とするものに広がりを見せていることから、今年度より、中国やベトナムなどの制度に精通した専門家を新たに四人、相談員として配置することにより、きめ細かい相談体制を導入しております。
 今後とも、海外販路の開拓に取り組む企業を支援するため、的確な事業展開を行ってまいります。

○鈴木委員 今、非常に詳しく答弁をいただきましたが、海外販路ナビゲーター事業が着実に成果を上げている、このように確認をさせていただきました。
 海外市場で事業の展開を考える中小企業にとって、知的財産の保護や活用はますます重要になっていると思っております。都としても中長期のスパンで相談体制の充実に取り組んでいただくよう、私からもお願いをしておきたいと思います。
 さて、私の地元大田区の城南島や京浜島など、まち工場が多く集まっている工業集積エリアでは、中小企業を取り巻く環境が大きく変化いたしております。
 私も、地元の工業連合会の会合で、企業の経営者の方からよく話をお伺いしているんですけれども、国内にある大手メーカーの拠点は、研究開発に取り組む部門とそうしたセクションの高い技術力を結集してハイレベルの製品を生産する工場ばかりになってしまうのではないかというような話をされているんですね。まさに、その基盤技術を製品化するまち工場が衰退をしてしまうのではないか、そのように私自身は危惧をいたしております。
 こうした中にあって、都内の中小企業が大手メーカーのニーズに対応していくためには、自社の技術力のレベルアップだけでは十分ではなく、複数の会社が協力してグループをつくり、お互いが得意とする技術を持ち寄って、より高い技術水準に達していく努力が必要との意見も聞いてまいりました。
 このような状況を踏まえて、都は、中小企業のグループ化の取り組みについて、私は、ものづくり産業基盤強化グループ支援事業の立ち上げの必要性について、本会議でかつて質問をさせていただきましたけれども、より積極的に強化、支援すべきものであると考えますが、所見を伺います。

○河内商工部長 大手メーカーが生産拠点を海外に移転しまして、国内では高度な研究開発機能を集約する動きが進む中で、都内の中小企業にとって、大手メーカーが求める高度な技術上の要求にこたえられる力や、取引先をみずから開拓する技術提案の能力の向上を図ることが重要となっております。
 そうした高度な課題について、中小企業が単独で対応するのではなく、企業がグループをつくり、おのおのが得意とする技術力を持ち寄ってその総合力を高める取り組みについて、行政として積極的に支援していくことが重要でございます。
 このため都では、今年度、ものづくり産業基盤強化グループ支援事業を立ち上げまして、都内のものづくりの集積を生かして、技術力の向上を図るなど、開発、生産、営業体制の強化に共同で取り組む中小企業のグループを支援することといたしました。
 具体的には、グループの共同事業に必要となる経費につきまして、その二分の一以内で最大五千万円を上限に助成するほか、事業のアドバイスや進行管理を行うプロジェクトマネジャーや販路開拓ナビゲーターから構成される専門家チームを派遣いたしまして、グループ化の立ち上げから営業体制の強化に至る一連の活動をきめ細かくサポートしていきます。
 これにより、九月には五グループへの助成を決定しており、今後とも、発注者からの高度化するニーズに対応できる技術力を持つ中小企業グループの結成を着実にサポートして、東京のものづくり産業の活性化につなげてまいります。

○鈴木委員 今、答弁をいただきましたように、このグループ化の立ち上げから営業体制の強化まで、一体的できめ細かい支援がまさに必要なんですね。引き続いて、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思っております。
 さて、私からも、中小企業に対する金融面の支援についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 都では、平成二十一年度に都独自の制度として、地域の金融機関と連携した新保証つきの融資を創設して、制度融資でも資金調達することが難しい中小企業の資金繰り支援に取り組んでまいりました。
 このことは高く評価をしておりますが、平成二十二年度の保証承諾実績は見込みを下回ったというふうにも聞いております。その理由はどこにあるのかと。
 そこでまず、本制度の創設以来の利用実績と、平成二十二年度の利用状況についてお伺いをさせていただきます。

○寺崎金融部長 地域の金融機関と連携した新保証つき融資は、制度融資をもってしても資金調達が困難な中小企業がある中で、高い技術力やすぐれたビジネスプラン等を持ち、現在の厳しい経営環境を乗り切れれば将来に展望が開ける中小企業の資金繰りを支援するために創設した制度でございます。
 平成二十一年十月の制度創設から本年九月末までの保証承諾実績は約一千七百件で、百五十億円となっておりまして、中小企業の資金調達の多様化に貢献をしているところでございます。
 なお、平成二十二年度は、中小企業金融円滑化法によります貸付条件の変更や、緊急保証制度が全業種を対象に継続いたしましたことから、より多くの中小企業がこれにより当面の資金を確保できるようになりました。
 こうした中で、保証承諾実績は約四百件で、三十四億円となりました。

○鈴木委員 私は、まち工場の厳しい状況を目の当たりにして、中小企業を取り巻く経営環境が一段と厳しさを増していることを実感いたしております。
 こうした中小企業を支える金融は、まさに生き物であり、その時々の経済状況に合わせて役割を果たすことが求められております。
 ただいま説明がありましたように、中小企業金融円滑化法や緊急保証制度などが十分機能したことで、昨年度はこの制度の出番が余りなかったと、このようにいえると思いますが、制度融資のほかにも資金調達の手段があることは中小企業にとり重要なことであり、私は、本制度がより利用しやすい制度となるよう、不断に改善を求めてまいりました。
 そこで都は、この間、どのような取り組みを行ってきたのかお伺いをいたします。

○寺崎金融部長 都では、これまで、より多くの中小企業が本制度を利用することができますよう、取扱金融機関の拡大に努めてまいりました。
 さらに、本年八月には、借りかえ制度を新たに導入し、本制度を利用した中小企業の月々の返済額の軽減などを図ることといたしましたほか、融資申し込みのための要件を緩和いたしました。
 こうした取り組みによりまして、制度改正以降、保証承諾実績は着実に増加をしております。特に、借りかえ制度は、第二・四半期に本制度を利用した中小企業の約二割が利用しております。

○鈴木委員 ただいまの説明で、制度創設後、利用者の立場に立った制度改善がなされてきたことは評価をいたしております。今後も、この制度が、制度融資を補完するセーフティーネットとして、その機能を十分発揮できるよう、また、より利用しやすい制度となるよう、経済動向をしっかりと見据えつつ尽力をしていただきたい、このように考えております。
 次に、グローバル化、円高、空洞化への対応について、幾つかお伺いをしたいと思いますが、まず、TPP、環太平洋パートナーシップ協定についてでございます。
 野田首相は、十日午後の政府・民主三役会議で、TPP交渉への参加表明を明日十一日に持ち越すことを決めたということでございます。ということではあっても、今週末の十二日からハワイで開催されるA.P.ECの首脳会議においては、日本を含めてTPPについて議論が行われる予定となっておるわけでございます。
 しかし、そもそもTPPは、我が国の産業経済、国民生活のあらゆる分野に大きな影響を及ぼすものであることから、国民に対する十分な情報提供を行うとともに、農林水産業者、商工業者、医療関係者、消費者などさまざまな立場の方の意見をしっかりと聞いた上で、国民的議論を行うことが重要であります。
 また、TPP交渉に入る前に、農林水産業など、TPPによって大きな影響を受けると予想されている産業が今後とも持続的に維持発展していけるよう、国の責任において、安定した財源の確保を含めて、具体的かつ体系的な対策を明らかにし、講ずることも不可欠であります。
 政府の動きは拙速であると考えますが、都内産業の振興を所管する立場からの所見をお伺いいたします。

○矢田部産業企画担当部長 ご指摘のとおり、TPPにつきましては、国民的議論を行った上で、国の責任において判断すべき問題であると承知しております。
 こうした中で、工業製品、また、農林水産物など、さまざまなメリット、デメリットが指摘されておりますが、いまだその全貌が明らかになっておらず、都内産業に与える影響については慎重に見きわめる必要があると考えております。
 なお、知事は、先月二十八日の定例記者会見におきまして、反対と述べ、慎重に議論すべき問題であると発言しております。
 都内産業の振興を所管する当局といたしましては、今後とも、TPP交渉の動向を把握しつつ、都内産業への影響を見きわめてまいります。

○鈴木委員 将来の我が国の産業経済や国民生活に禍根を残さないためにも、メリット、デメリットを慎重かつ総合的に議論し、判断することが重要であり、十分な国民的議論もないまま、また、はっきりとした具体的な対策が見えないまま、アメリカに引きずられるように交渉に入っていくのは非常に危険であると私は考えております。
 産労局としても、都内産業、とりわけ中小企業への影響について十分意見を聴取するよう、要望をしておきます。
 次に、円高、空洞化への対応についてお伺いをいたします。
 去る第三回定例会の代表質問で私が述べましたように、円高対策は、本来は国が責任を持って、しっかりしたものを打ち出していくべきですが、政府の無策の前に円高は一向に是正されず、日本や東京のものづくり産業は大きなダメージを受けております。
 円高の影響により、中小企業が廃業に至ったり、海外に出ていくようになれば、これまでの東京のものづくりを支えてきたさまざまな基盤技術も失われることになってしまいます。基盤技術は、メッキ加工や研削、熱処理など、挙げれば切りがないほどさまざまな種類があるわけですが、空洞化が無秩序に進んでいくと、基盤技術の工程に支障が出て、ものづくりそのものが崩れていくことにもなりかねません。
 第三回定例会では、都として製造業の空洞化への対応を進めていくとの考えが示されましたが、改めて、この円高、空洞化の動きに対して、都内のものづくり中小企業の集積を確保していくための取り組みについて、都の所見をお伺いいたします。

○河内商工部長 東京の強みである多種多様な産業と、これを支える高度な基盤技術を確保していくためには、東京のものづくり産業の集積を将来にわたって維持していくことが重要となっております。
 都はこれまでも、創造的都市型産業集積創出事業を実施いたしまして、東京の将来を支える新しい産業の育成と集積に向けた区市町村の取り組みを支援してまいりました。
 しかし、現下の急速に進む円高を背景に、企業が生産拠点を海外に移転する動きが加速しており、こうした中では、空洞化が無秩序に進むことを避けなければなりません。
 このため都は、すぐれた基盤技術を持つ中小企業が多く集まる地域を対象として、その集積の維持や発展に向けた取り組みに対して支援の方策を真剣に検討していくこととしております。
 具体的には、地域の産業集積は、その前提となる土地利用のあり方に深く関連していることから、土地利用計画を策定し地域の特性や強みを十分に理解している区市町村との間で情報交換を図りつつ、現在操業している企業の転出防止や新たに立地を促進するインセンティブの導入の両面からの支援策を充実させるなど、空洞化への効果的な対応について検討してまいります。

○鈴木委員 私の地元の大田区の城南島や京浜島の工業集積では、ものづくりのまち工場、あるいは産廃業、スーパーエコタウンや運輸業、こういった業態が混在をしております。地元区と連携をとりつつ、例えば、羽田の二十四時間化を生かした地域の産業集積の効果的な再編などが必要ではないかというふうに私は思っております。地元区の産業経済部やまちづくり推進部とも、今後十分な連携をとっていただきたい、このようにお願いをしておきます。
 さて、東京の産業動向に影響を及ぼす可能性について一言申し上げておきたいと思っております。
 タイの洪水被害については、新聞報道等でさまざまな内容が伝わってきておりますが、その深刻さは日を追うごとに増しているようにも感じております。
 先日も、ある新聞が、タイの洪水が都内の中小企業にも打撃を与えているとの内容で、私の地元の大田区の会社も、これは精密部品メーカーなどなんですが、二社の例が紹介をされておりました。また、私の後援者も、十一月の初旬にバンコクでラーメン店を開店する運びだったんですけれども、来春に延期をしたと、こんなようなこともございます。
 既に政府系の金融機関などでは相談窓口を開設するような動きもあるわけですが、やはり現地の洪水の影響が都内の中小企業にどのような影響を及ぼしているのか、実態に関する情報を十分に収集して、必要に応じて対応策というんですか、これを打ち出していくことも必要になっていくのではないかと私は考えております。
 都として、速やかにタイの洪水による都内中小企業への実態をまず把握することを、ぜひお願いをしておきたいと思います。
 東京の産業振興に向けては、中小企業の役割が極めて重要なことはいうまでもありません。中小企業の状況をしっかりととらえて、大きな方向性を打ち出していく必要があります。
 前回の戦略策定から約五年がたった現在、産業を取り巻く環境はさらに大きく変化をしております。また、今般の東日本大震災を受けて、その教訓としていかに企業の防災力を強化していくかが問われております。
 歴史的な円高に対し、民主党政権は何も手を打っておらず、首相がかわるたびにものづくり現場を見学に行って、かえって迷惑になっているんじゃないかと思うんですが、期待だけを持たせて、その都度裏切っているのが現状でございます。
 一部の基幹産業や大手企業の本社機能、研究開発施設等の海外移転の事例が増加するなど、現下の日本経済は瀕死の抜け殻の危機にさらされております。三・一一の東日本の大震災もあって、瀕死の重症といった方がいいかもしれません。これは東京の産業の将来にも影響を与えかねない大きな問題であります。
 こうした東京の産業が直面する課題をしっかりととらえ、今後の産業振興の方向性について、昨今の厳しい経済状況なども新たな視点として取り入れていく必要があると考えますが、ご所見を伺います。

○矢田部産業企画担当部長 未曾有の震災の発生や、また、急速なグローバル化といった変化は、日本経済の構造に大きな変化を与える可能性がございます。都の産業振興の方向性につきましても、現在起きているこうした動きを直視して構築し直す必要があると考えております。
 また、都政運営全般におきましても、現行の「十年後の東京」を充実強化し、二〇二〇年までを計画期間とする新たな長期ビジョン「二〇二〇年の東京」の策定が進められております。
 そこで、この機をとらえまして、現行の産業振興基本戦略について、今年度中に改定することとし、新たな視点を盛り込み、中長期にわたる東京の産業振興の方向性を示してまいります。

○鈴木委員 経済のグローバル化に伴う新興国市場の拡大などは、国内の中小企業にとってチャンスと見ることもできます。また、産業、中小企業を支える人材育成の問題も、引き続き大変重要な課題です。
 こうした大きな課題を含め、ぜひ中長期視点に立った今後の産業振興の方向性を明らかにしていただきたいと思います。
 最後に、戦略を改定するという答弁もありましたが、今後の産業振興の基本的な方向性に対する所見と産業振興に向けた決意を、ぜひ局長にお伺いさせていただきたいと思います。

○前田産業労働局長 日本経済は、グローバル化が進展する中で、去る三月の東日本大震災の発生や、この夏以降の急激な円高など、先行きに予断を許さない厳しい情勢のもとにございます。
 一方で、この東京を中心とした首都圏における三千六百万人を超える人口の集積、これは世界でも類を見ないものでありますが、これは向こう十年間、不動のものといわれておりまして、このことは、経済活動を行う上で活用可能な、多くのポテンシャルを有することを意味しております。
 世界的な競争が激化する中で、東京の持つ強みを生かして、この東京の産業を発展させるためには、今後成長が期待される産業を見つけて、しっかりと育成していくことが重要であります。あわせて、現実に進行しております企業の海外進出や国内の産業空洞化の懸念についても、直視をして向き合う時期に来ておりまして、産業集積の維持についても、着実な対応が必要であると考えております。
 こうしたことから、先ほど産業企画担当部長からお答えいたしましたとおり、産業振興基本戦略を改定し、新たな視点を盛り込んで、中長期にわたる産業振興の方向性を打ち出してまいります。
 東京の産業を活性化させることが、日本全体にも活力を与え、ひいては我が国の国際的地位を高めることにつながる、こういう信念を持って、今後とも東京の産業政策を推進してまいります。

○鈴木委員 今、局長から、東京の産業を時代の変化に合わせて活性化させるという力強い決意をお伺いいたしました。
 私ども都議会自民党のものづくり議連といたしましても、産業振興基本戦略の改定に当たりましては、ぜひまた提案等々させていただきたいというふうに考えております。
 首都東京は日本を動かすダイナモであり、しっかりとした戦略を持って、今後とも東京の振興と、それを支える人材の育成等にしっかりと取り組んでいただきたい、そのように申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

○岡田委員 お疲れのところですが、最後ですので、よろしくお願いいたします。
 まず、中小企業の障害者雇用に対する支援についてお伺いいたします。
 近年の不況に加えまして、東日本大震災の影響もあり、リストラされたり倒産が危ぶまれたりといったさまざまな雇用情勢の悪化を耳にしています。そのような中で、一番最初に影響を免れないのは弱者であるところの障害者であると思われます。働いて自立を希望する障害者のためにも、就労の場の拡大が急務といえます。
 都は、オーダーメード型障害者雇用サポート事業という新たな取り組みを開始したと聞いておりますが、この事業を開始した背景及び概要についてお伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 都内民間企業の障害者雇用の状況につきましては、大企業に比べ、中小企業において障害者雇用率が低迷しております。
 また、昨年七月に施行されました改正障害者雇用促進法により、障害者雇用納付金の対象が中小企業に拡大することとなったことからも、早期に都内中小企業に対しまして障害者雇用の促進を働きかけることが必要でございます。
 このため、今年度から、初めて障害者雇用に取り組もうとする意欲ある中小企業をモデル企業として、採用前の準備段階から採用後の定着まで一貫して支援する、オーダーメード型障害者雇用サポート事業を開始いたしました。

○岡田委員 意欲ある中小企業ということですが、先日、近所にある従業員が五、六名ほどの小さな印刷会社の社長さんと話をしてまいりました。そのとき、障害者雇用に関しては、興味、関心もあるけれども、長い間仕事をしてこられた、そのことへの社会への恩返しもしたいところではあるけれども、資金面では苦しく、東京都が中小企業への支援をタイアップしてやってくれたら、協力するのはやぶさかではないのだがというようなことを話されていました。
 この事業者さんのように、中小企業の中には、障害者雇用に取り組もうという気持ちはあっても、どのように進めてよいのかわからないといった実態があるのではないかと思われます。
 このオーダーメード型障害者雇用サポート事業は、そうした企業の期待にこたえるものになっているのかどうかお伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 本事業においては、採用前の準備段階から採用後の定着までの一連の過程を支援するため、都が、障害者雇用の知識や経験を有する支援員をモデル企業に派遣することとしております。
 モデル企業に対しましては、都内の各種の就労支援機関が提供するさまざまな施策を組み合わせて、各企業の実情に応じた障害者雇用のノウハウが蓄積できるよう、支援員がモデル企業に赴き、個別的な助言、指導を行うこととしております。

○岡田委員 障害のある方たちにとっても、また、中小企業にとってもメリットのある事業の推進に、これからも力を入れていただきたいと、よろしくお願い申し上げます。
 次に、女性への再就職支援についてお伺いいたします。
 内閣府によりますと、世界的に見ても、日本の女性の労働力率は、二十代半ばと五十代前後という二つのピークを持つ、いわゆるM字カーブを描くことが知られています。
 働く女性の約四割が出産を機に離職、非労働力化し、その後、育児が終わってから再び働き出す女性が多いことを反映しているM字カーブであり、女性の継続就業の難しさをあらわしています。
 そうした中、近年では二十五歳から三十四歳におけるM字のくぼみが傾向的に浅くなり、子育てが一段落したら仕事に復帰したいという女性の割合は高くなっているということです。特に最近では、厳しい経済状況などから、家計を支えるため、できるだけ早く就職したいという女性がふえているといわれています。
 しかしながら、厳しい雇用情勢が続いている中、子育て中の女性の再就職は一層厳しさを増しているのが現状であります。こうした働く意欲のある女性に対し、行政として、きめ細かく支援を行うことが必要と考えますが、女性の再就職に向けた都の支援について伺います。

○穂岐山雇用就業部長 都では、出産や育児などで離職した女性の再就職を支援するため、平成十九年度から女性再就職支援事業を開始しております。
 具体的には、東京しごとセンター内に女性向けのキャリアカウンセリング窓口を設置し、専任のアドバイザーが、勤務時間など雇用条件に配慮した就業相談や職業紹介を実施しております。
 また、キャリアカウンセリングだけでは就職が困難な方を主な対象に、講義と職場体験を組み合わせ、継続的に細かく再就職を支援する、女性再就職サポートプログラムを実施しております。
 さらに、飯田橋のしごとセンターに託児施設を設置し、子育て中の方を対象に無料の託児サービスを提供しております。また、同センター内に情報コーナーを設けまして、女性の再就職支援窓口の情報などを提供しているところでございます。

○岡田委員 こうした女性の中には、離職のブランクが長い女性は、特に再就職に当たり、意欲を持ちながらも、新しい職場にうまく適応できるかなど不安を抱えている方も多いと聞いております。こうした不安を払拭するためには、きめの細かい支援が必要だと思います。
 ただいまのご答弁で、女性再就職サポートプログラムを実施しているとのことでありますけれども、このプログラムの具体的な内容と実績についてお伺いいたします。

○穂岐山雇用就業部長 女性再就職サポートプログラムは、再就職への意欲が高く、早期に就職を希望する方などを対象に、平成十九年度に開始しております。
 具体的な支援内容は、就職活動のノウハウを提供するセミナー、求職者のスキルアップをするための経理事務や営業事務などの講習、企業での職場体験などを、全十日間のカリキュラムで実施しております。
 さらに、プログラム終了後も、就職支援アドバイザーがキャリアカウンセリングなど継続的な支援を実施しております。
 平成二十二年度の実績は、募集定員三百人に対し、プログラム修了者は二百八十六人、平成二十三年九月末現在での就職者は百九十人となっており、効果の高いプログラムとなっております。

○岡田委員 いただいた実績の資料によりますと、プログラムの効果が上がっていることは喜ばしいことだと思っております。
 先月の朝日新聞の記事の中で、今や働く意欲の高い主婦に熱い視線が向けられているとありました。家事や育児との二足のわらじで勤務時間は限られますが、かつての就業経験で培ったスキルは生かしたいということで、短時間でも十分な戦力として企業が採用をふやしているという記事でありました。
 その中で、みずほ総合研究所の主任研究員の言葉に、働く意欲が旺盛な主婦は、人口減で働き手が減る将来の大きな労働力になる、活躍の場をふやすことが、経済と社会の成長力につながるとありました。
 東京都も、女性の再就職に力を入れた事業の実現に、さらに率先して取り組んでいただくことを要望して、終わります。

○伊藤(ま)委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○伊藤(ま)委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で産業労働局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後七時十七分散会

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