経済・港湾委員会速記録第十七号

平成二十二年十月二十八日(木曜日)
第八委員会室
   午後一時開議
 出席委員 十四名
委員長西岡真一郎君
副委員長しのづか元君
副委員長鈴木あきまさ君
理事伊藤 ゆう君
理事伊藤 興一君
理事川井しげお君
山崎 一輝君
大松あきら君
田の上いくこ君
佐藤 広典君
山口  拓君
清水ひで子君
藤井  一君
三宅 茂樹君

 欠席委員 なし

 出席説明員
産業労働局局長前田 信弘君
次長真田 正義君
総務部長三枝 健二君
産業企画担当部長澤   章君
商工部長山手  斉君
金融部長櫻井  務君
金融監理部長斎藤 真人君
金融支援担当部長十河 慎一君
観光部長横山 英樹君
農林水産部長保坂 政彦君
安心安全・地産地消推進担当部長岩田  哲君
雇用就業部長日請 哲男君
事業推進担当部長穂岐山晴彦君
労働委員会事務局局長山本 洋一君

本日の会議に付した事件
 労働委員会事務局関係
事務事業について(質疑)
 産業労働局関係
事務事業について(質疑)

○西岡委員長 ただいまから経済・港湾委員会を開会いたします。
 本日は、お手元配布の会議日程のとおり、労働委員会事務局及び産業労働局関係の事務事業に対する質疑を行います。
 これより労働委員会事務局関係に入ります。
 事務事業に対する質疑を行います。
 本件については、既に説明を聴取しておりますので、直ちに質疑を行います。
 発言を願います。
   〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○西岡委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○西岡委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で労働委員会事務局関係を終わります。

○西岡委員長 これより産業労働局関係に入ります。
 初めに、過日の委員会で紹介できませんでした幹部職員について、産業労働局長より紹介があります。

○前田産業労働局長 過日の委員会で欠席しておりました当局の幹部職員を紹介申し上げます。
 次長の真田正義でございます。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。
   〔理事者あいさつ〕

○西岡委員長 紹介は終わりました。

○西岡委員長 次に、事務事業に対する質疑を行います。
 本件については既に説明を聴取しております。
 その際要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 資料について理事者の説明を求めます。

○三枝総務部長 去る十月十四日の当委員会でご要求いただきました資料につきまして、ご説明申し上げます。
 恐れ入りますが、お手元の経済・港湾委員会要求資料の表紙をおめくりいただきたいと存じます。
 まず、目次でございます。資料は全部で十三項目ございます。
 恐れ入りますが、一ページをお開きください。このページから三ページにかけまして、順に中小企業対策、観光産業の振興、農林水産対策の過去十年間の予算額、決算額の推移をそれぞれお示ししてございます。
 次に、四ページをお開きください。統計データになりますが、平成十九年を直近とする過去十年間の都内小規模小売店の推移をお示ししてございます。
 恐れ入りますが、五ページをお開きください。平成二十年度から平成二十二年度までの都の商店街振興施策の利用状況を事業別にお示ししてございます。
 六ページをお開きください。平成十六年度以降の新・元気を出せ商店街事業の実績をお示ししてございます。
 恐れ入りますが、七ページをお開きください。新・元気を出せ商店街事業のうちの特定施策推進型商店街事業申請状況について、平成十八年度以降の実績を内容別にお示ししてございます。
 続いて、八ページから九ページにかけまして、過去十年間の中小企業制度融資の目標と実績の推移をお示ししてございます。
 九ページの右下、合計欄にございますとおり、平成二十一年度の実績は、件数で十六万二千二百九十七件、金額で二兆五千三百四十八億円となってございます。
 次に、一〇ページをお開きください。緊急保証制度に係る区市町村の認定件数及び都制度融資(経営緊急)の実績をお示ししてございます。
 平成二十二年第二・四半期末までの緊急保証制度に係る区市町村長の認定件数は、二十三万二千五百七十二件となってございます。
 また、その下にお示しした経営支援融資(経営緊急)の実績は、保証承諾件数が十万五千八十九件、保証承諾金額は二兆二千六十億八千百万円と相なってございます。
 一一ページをお開きください。東京都新保証付融資制度の承諾件数及び金額をお示ししてございます。
 表の一番下にございますとおり、制度開始以降の累計で、承諾件数は千二百五十六件、承諾金額は百十二億円となってございます。
 一二ページをお開きください。飯田橋及び多摩の東京都しごとセンターの利用状況をお示ししてございます。
 開設以来の累計実績は、下段の3、開設以来累計実績の一番下の合計欄にございますとおり、利用者数が七十五万五千六百三十二人、就職者数が五万七千九百九人となってございます。
 続きまして、一三ページから一四ページにかけまして、過去五年間の都立職業能力開発センターの応募状況と職業紹介実績及び就職率をお示ししてございます。
 一三ページに応募状況を、また、一四ページに職業紹介の実績及び就職率をそれぞれ掲げてございます。
 一五ページをお開きください。就職チャレンジ支援事業における正社員採用助成金支給実績をお示ししてございます。
 以上、甚だ簡単ではございますが、要求資料の説明を終わらせていただきます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○西岡委員長 説明は終わりました。
 ただいまの資料を含めまして、これより本件に対する質疑を行います。
 発言を願います。

○伊藤(ゆ)委員 それでは、私から、東京観光情報センターなどについてお伺いしてまいりたいと思います。
 去る十月二十一日に、都民、また、国民にとって待望の羽田空港の本格的な国際化が実現いたしました。このことは大変喜ばしいことであり、他都市に負けない国際都市東京の新しい戦いが始まったことを予感させるものであります。関係者の皆様のご努力に心から敬意を表します。
 さて、その分だけに、東京の観光に行きたいと注目が集まっています。そこで、官民協力体制が必須の観光振興において、大きな役割を果たすはずの東京観光財団と、財団から業務委託を受けていた民間企業についてお伺いしてまいります。
 まず、東京観光財団が都から委託契約を受けている東京観光情報センターについて伺います。既に報道されているとおり、同情報センターでは、来場者の集計に当たって水増しを行っていたと指摘されています。こうした水増しというものはあったんでしょうか、お伺いいたします。

○横山観光部長 東京観光情報センターの来場者の集計でございます。来場者数につきましては、案内業務を行うスタッフが案内業務を行いつつカウントするということで、正確な把握が非常に困難でございます。
 そこで、東京観光財団の職員が定期的にカウントを行い、その数値をもとに補正を行っていたとの報告を観光財団から受けてございます。
 これは、実際の来場者数を推計するための補正であったというふうに聞いてございます。

○伊藤(ゆ)委員 昨年一年間で何回の水増し、今の都の言葉をあえて借りれば、補正があったんでしょうか。
 また、いつから、だれの指示で、何のためにこうした行為が繰り返されていたんでしょうか、お伺いしたいと思います。

○横山観光部長 来場者数の補正につきましては、東京観光財団の判断によりまして、混雑状況等の課題を踏まえ、実際の来場者数を推計するために補正を行ったとの報告を受けてございます。
 なお、いつからということについては不明でございます。
 こうした考えから、日々、補正が行われていたというふうに考えるところでございますが、東京観光財団からは、都への報告後、補正前の数字に関する資料を処分しており、補正した数字がどれだけであったのかは把握できていないと報告を受けてございます。

○伊藤(ゆ)委員 正確を期すために補正を行っているといいながら、そのもとになるカウントされていたデータを残していなかったこと自体、私は不正確なカウントだったというふうにいわざるを得ないと思います。
 そして、補正というのは、私はこれは見苦しいいい逃れだというふうに感じています。当時、カウンタースタッフとして勤務していた告発者からいただいた平成十九年八月三十一日の業務日誌によれば、カウンタースタッフが確認し、上司に報告した一日の来場者数は七百七十六人でした。しかしながら、もう一通の業務日誌が作成されており、改ざんされたとされるその日誌には、一千八百二十七人と記載されていました。
 東京観光情報センターについては、ここにいらっしゃる方はご存じのとおりでありますが、この東京都庁の一階と二階に入っており、また、上野にも支社があります。また、羽田空港にも同様に観光情報センターが入っておりますが、ここでは東京都庁内部にある、本部といわれるところについてお伺いしていきます。
 この仕組みとしては、カウンタースタッフが来場者数をみずから手で集計して、正の字を書いて、具体的には一時間当たりの来場者数というものを記録してまいります。それを一日の集計をして、センターの中に派遣されている東京観光財団の職員に報告するという形になっておりました。
 そういう意味では、カウンタースタッフの皆さんは一生懸命、正の字を書いて、見落としがないように努力をされていたというふうに伺っております。
 その女性の話によれば、例えば一日に十人とか二十人の見落としがあったとしても、七百人が一千八百人になるような見落としは絶対になかったというふうにいわれております。一生懸命そういう仕事に携わっていた分だけに、こうした改ざんが行われていたことに対して、非常に悔しい思いをしたと、こういうふうに訴えられておりました。
 二倍以上の来場者数を計上することが、果たして補正といえるんでしょうか。私は、都庁マンの良心として、補正といい切ることに申しわけなさがあるんではないかというふうに思っております。
 今回の財団がとった行為は都民の信頼を大いに損なうものであり、上乗せ報告、あるいは水増し報告というのは厳に改められなければならないというふうに思うのですが、所見をお伺いします。

○横山観光部長 先ほどご答弁申し上げましたとおり、実際の来場者数を推計するための補正であったというふうに聞いてございます。
 しかしながら、財団の補正に対する法則性、これが必ずしも明確ではなかったということで、都民の皆様に疑念を与える結果になったことは非常に残念でございます。
 東京観光情報センターの来場者数については、可能な限り的確に把握することが求められていることから、補正の方法を、昨年度までの財団職員による週一回のカウントによる補正から、今年度、毎日一回カウントをして補正するというやり方に見直しをしてございまして、今後、見直し後の方法に基づいて適切な把握に努めていくように指導してまいります。

○伊藤(ゆ)委員 今の答弁だけでは納得しがたいものがあります。このことについては、後ほど改めて局長に見解をお伺いしていきたいと思っております。
 さて、その東京観光情報センターの委託先として、平成十四年から平成二十一年の八年間に東京都が選定していたのは、この東京観光財団、東京都の監理団体であります。文書が保存されている五年間に、東京都が財団に支払った総額は幾らになるんでしょうか。

○横山観光部長 平成十七年度から二十一年度まで、この五年間で、東京観光情報センター等の運営事業費として東京都から観光財団に支払われた総額は、決算ベースで七億九千九十三万六千九百三十三円となってございます。

○伊藤(ゆ)委員 今度は、この東京観光情報センターの委託契約についての仕組みをこの表の中にあらわしました。東京都--観光部ですけれども、東京都が東京観光財団に、すべての観光情報センターの運営の委託を毎年されて、その委託を受けた東京観光財団が二つの民間企業にこの観光情報センターの運営をさらに委託していると、こういうことで理解いたしております。
 委託を受けた観光財団がさらに委託先として選定していた民間企業というのは、ここにはムーン社と書いてありますが、有限会社のムーンクリエイティブ社であります。平成二十一年度の、上野と都庁内にある情報センターを運営しているムーン社と財団との契約金額と契約方式についてお伺いしたいと思います。

○横山観光部長 平成二十一年度の東京観光財団と有限会社ムーンクリエイティブ社との契約金額は、総額で一億六百二十万三千七百七十二円でございます。
 契約方式につきましては、平成二十年度末に企画提案方式による審査を実施し、五社の中から同社が選定され、契約を締結したとのことで観光財団から報告を受けてございます。

○伊藤(ゆ)委員 年間一億円以上に上る契約金額があったということはわかりました。
 それでは、このムーン社への業務委託は何年続き、その総額は幾らになったんでしょうか。

○横山観光部長 平成十四年十月に東京観光情報センターが開設されておりまして、その当初から平成二十一年度まで、約八年間でございます。その総額は、決算ベースで七億二千四十二万三千八百七円となってございます。このように東京観光財団から報告を受けてございます。

○伊藤(ゆ)委員 一億円を超える委託契約が八年、ことしも入れれば九年ということになります。これ自体、いささか契約継続年数が長いように感じますが、私からは、さらにお伺いしていきたいことがございます。
 この八年間にわたって財団がムーン社と契約を結んできた中で、一体、価格の適正というのはどのように図られてきたのでしょうか。

○横山観光部長 東京観光情報センターの運営委託に要する経費につきましては、東京観光財団が毎年度、必要な経費を見積もり、適正な価格を積算しているとの報告を受けてございます。
 その上で、同センター開設当初の平成十四年度、そして、十七年度、十八年度及び十九年度、この四つの年度につきましては、複数社から見積もりを徴収し、比較を行った上で契約しております。
 また、平成二十一年度は、さらに進めて企画提案方式を採用するということで、競争性の確保に努めたとしてございます。

○伊藤(ゆ)委員 一般的には、見積もり比較といわれても、多くの方がおわかりにならないかと思います。補足的に申し上げれば、一般競争入札があり、また、指名競争入札などの入札方式がある一方で、企画の内容を諮るのが企画コンペであります。
 それ以外に、東京都の場合は極めて少額な契約、例えば文房具を買うといったような、十万円、二十万円のような契約の場合においては、わざわざ入札を開くまでもないという理解のもとに、業者さんから見積書を提出してもらうという正式な入札を経ない契約方式があるというふうに聞いております。まさにこの見積もり比較とは、そういうコンペ方式に当たるわけであります。
 そういう意味でお伺いしてまいりますけれども、四度にわたる見積もり比較を実施したといわれておりますけれども、毎年一億円近い契約であったにもかかわらず、一般競争入札はおろか、企画コンペ方式などの入札にかけず、業者からの見積もりの取り寄せだけで委託先と契約金額を決定したことは契約の透明性を欠いているといわざるを得ません。
 都において、一億円近い契約を見積もり比較で発注するということが一般的にあり得るのでしょうか、お伺いします。

○三枝総務部長 一般に、都道府県におきまして、見積もりを比較することによって随意契約ができる場合は、地方自治法施行令というものがございますが、これの第百六十七条の二の規定によりまして、例えば、工事または製造の請負については二百五十万円以下、財産の買い入れについては百六十万円以下等とされております。
 ただし、同施行令では、特に必要がある場合は、金額によらず、随意契約により契約することができるとされてございます。
 なお、東京都の監理団体におきましては、東京都監理団体指導監督基準等に基づく都の指導を踏まえまして、各団体の状況に応じて契約制度を設けているというふうに承知してございます。

○伊藤(ゆ)委員 契約の規定については、今、ご答弁いただいたとおりです。
 私が伺っておりますのは、都において、一億円近い契約を見積もり比較で発注することができるのかと、もうちょっといえば、例えば、東京都の産業労働局はこういう発注の仕方をされたことがあるのかという意図でお伺いいたしました。こういう発注の仕方をしたことはないと私は理解しているのですが、そのような理解でよろしいんでしょうか。

○三枝総務部長 ただいま先生からお尋ねの条件であれば、都においては入札と相なります。
 なお、責任を持ってお答えができる平成二十一年度の産業労働局の契約案件では、そうした事例はございません。

○伊藤(ゆ)委員 東京観光財団は、いうまでもなく東京都の監理団体です。監理団体とは、東京都のルールに準じて契約、あるいは情報公開がなされるものということを、東京都が日ごろから表明されていますので、今の答弁に照らせば、東京都の中ではほとんどあり得ない、こういう契約の仕方というものが財団の中において行われていたということ自体、私は極めて疑念を持たれる契約だというふうに思います。
 さて、さらに伺ってまいりたいと思いますが、四度にわたる見積もり比較を実施されたことを答弁されました。適切な見積もり比較だとすれば、比較すべき金額は個別の企業から提示させ、価格の妥当性と請負企業の能力を図るべきだというのはいうまでもありません。そういう理解でよろしいでしょうか。

○横山観光部長 まず、東京観光財団の契約につきましては、東京観光財団が定める財務規則によりまして、平成十九年十一月まで、金額の多寡にかかわらず随意契約とすることとされておりました。
 東京観光財団は、その規定に従って見積もり比較を行ったところでありまして、理事ご指摘の趣旨で実施したものと考えております。

○伊藤(ゆ)委員 つまり、今、私が申し上げたような意図で見積もり比較が行われたということでした。しかし、私が調査した結果、見積もり比較に参加していた企業の多くがムーンクリエイティブ社と何らかの関係のある企業でありました。ムーンクリエイティブ社と関係のある、あるいはムーンクリエイティブ社を知っているなどの企業が、この見積もり参加企業の中にどれほどあったんでしょうか、お伺いします。

○横山観光部長 本契約に関しまして、東京観光財団が聞き取り調査を行ったところによりますと、平成十四年、十七年、十八年、十九年度に見積もり比較に参加した企業がムーンクリエイティブを除き七社ございますが、有限会社ムーンクリエイティブが知っているとした企業は六社でございまして、この七社のうち、取引のある企業が二社であるというふうに報告を受けてございます。

○伊藤(ゆ)委員 驚くべき答弁をいただきましたが、一方で、財団と取引があった企業は何社あるんでしょうか。

○横山観光部長 同じく平成十四年、十七年、十八年、十九年の各年度の見積もり比較に参加した企業、ムーンクリエイティブを含み八社ございますが、このうち、観光財団との契約実績がある企業といたしましては、有限会社ムーンクリエイティブを含め二社と報告を受けてございます。

○伊藤(ゆ)委員 つまり、財団と取引関係にあった企業は、ムーン社を入れても二社だけだったということで、ムーン社を除く見積もりに参加した企業七社のうち六社は、逆に、この受注企業であるムーン社と何らかの関係にある会社であったわけです。
 私が調査した結果、社長一人しかいらっしゃらない企業も見積もり比較に参加されており、一億円の事業を財団から請け負えるのか、甚だ疑問でありました。ムーン社とのつながりのある企業が七社中六社あったことを考えれば、これは偶然とは考えられず、ムーン社が自社に有利な企業を相見積もりに参加させたと考えるのが自然ではないでしょうか。どういう経緯でこれらの企業が見積もり比較の参加企業に選ばれたのか、お伺いしたいと思います。

○横山観光部長 東京観光財団によりますと、当時の契約締結に当たって、複数社から提出された見積書は保存されておりますが、どの企業から見積書を提出させるかについての選定経過に関する記録が残っていないため、当時の事実関係を明確にすることができなかったと聞いております。

○伊藤(ゆ)委員 私が聞いているのは、十年も二十年も前の話ではないんです。最後に相みつがあったのは平成十九年ですから、わずか三年前のことであります。記録が残っていなくても、担当者の記憶には残っているはずで、そうした答弁がいただけないというのは大変残念であります。
 しかし、少なくとも、これらの企業から見積書が提出されているはずであります。それぞれの企業が、それぞれの相みつのあった年度に見積書を独自に制作され、財団に提出されたはずですが、その見積書の実態とはどのようなものだったんでしょうか。

○横山観光部長 当時、事業者から提出された見積書でございますが、観光財団が確認をしたところ、形式等が類似していた箇所があるとの報告を受けました。

○伊藤(ゆ)委員 私が都から受けている説明では、見積もりに参加された企業には、基本的に仕様書はお見せしましたと、しかしながら、統一の見積書のフォーマットになるような書式は一切お渡ししてないはずですというふうに説明を受けております。
 にもかかわらず、答弁にもあったように、各社が個別に出した相みつの提案書に酷似していた部分があったというのは、これは極めて不可解であり、むしろ見積書が酷似していたことは、見積もり比較に不正があったことがうかがえます。
 一億円を超える契約にもかかわらず、記録がなく、企業の選定理由を答えられないこと自体、問題だと思いますが、どのようにお考えなんでしょうか。

○横山観光部長 東京観光財団から報告を受けまして、見積書について形式等が類似していた箇所があるということでしたので、その見積書徴収に関して、東京観光財団に調査をするよう都から指示を行ったところでございます。
 それを受けまして、東京観光財団が改めて事業者に対して聞き取り調査をした結果、各社はそれぞれの判断で東京観光財団に見積書を提出しており、問題はないとのことでございました。
 こうしたことではございますけれども、選定経緯が残っていないということもございまして、本契約の当事者としての東京観光財団と民間企業との契約についての調査を慎重に行わせたということでございます。
 しかしながら、これは観光財団と民間企業との契約であるということ、また、本契約は、契約当時の観光財団の財務規則に違反をしていないということから、都としてはこれ以上回答を申し上げることができないものでございます。
 契約において、適正性や公平性が求められるということにつきましては、いうまでもないことでございます。
 観光財団におきましては、平成十九年の十一月以降、財務規則の改正ですとか、東京都監理団体指導監督基準によりまして、契約の適正化に努めているところでございまして、今後も、より一層の適正化に向け、都として指導していく所存でございます。

○伊藤(ゆ)委員 慎重に調査をしていただいたということではあるんですけれども、しかし、当事者の方々は、不正がありましたかといわれれば、そう簡単にはありましたと認められるものではないと思います。認められないからといって不正がなかったという立場に立つんだとするならば、これは監理団体をまさに監理する東京都の姿勢として、極めて無責任なものだというふうにいわざるを得ないと思います。
 今後も、今、答弁にあったとおり、契約のあり方については徹底的に調査をしていただいて、契約の改善を図っていただきたいと思います。
 そこで、財団は、都からの業務をムーン社と、先ほどパネルでお見せしたとおりB社に再委託しているわけですが、(パネルを示す)ここですね、東京都から入ってきた委託金と、東京観光財団が二社に支払う委託金の間には、当然、差額が生まれてまいります。それが財団の収入にもなっているわけでありますけれども、差額収入の五年間の総額というのは、財団にとって幾らになるんでしょうか。

○横山観光部長 まず、今のご質問の中で、収入、あるいは差額収入というふうにご表現をされていらっしゃいますけれども、これは、東京観光財団で処理すべき業務に充てられている経費でございます。
 東京観光情報センター等の運営事業費として、決算ベースで申し上げますと、平成二十一年度が四千九十六万一千二百十四円、これを含む五年間で総額一億八千三百三十四万八千三円が東京観光財団で執行されております。
 この運営事業費は、平成二十一年度で申し上げますと、東京観光情報センターを管理するに当たって専任常駐する職員が二名おりますが、これらを含む人件費といたしまして、約一千八百八十五万円、通信運搬費、大型映像機器等の借入費など、物件費として約二千二百十万円、こうした経費に充てられているものでございます。

○伊藤(ゆ)委員 大変大きな金額が財団に、今、経費といわれていましたけれども、いずれにしても収入として入っていたということは間違いありません。
 そして、今、情報センターの管理に当たる専任常駐職員が二名いて、その人件費としては一千八百八十五万円だったということが答弁にありました。ということは、簡単に割り返せば、一人九百万円以上の給料をもらっている方が観光情報センターの中に常駐されているということであります。その問題点については、もう一つ、次の質問で触れたいと思います。
 その前に、観光財団には、都からの派遣職員及び都OB職員が何人いて、東京都からの財政支出額は年間幾らになるのか、お伺いしたいと思います。

○横山観光部長 まず、職員数でございます。観光財団の職員数といたしましては、平成二十二年八月一日現在、四十一名でございます。そのうち、都からの派遣職員数は六名でございまして、うち一名が常勤の常務理事を務めてございます。
 次に、OB数でございますが、同じく平成二十二年八月一日現在、一名が常勤の専務理事として就任してございます。
 このほか、都OB三名が無報酬の非常勤役員として就任してございます。
 また、都から財団に対する支出でございますが、二十一年度の決算によりますと、委託料が約六億五千六百二十万円、補助金が約七千百九十九万円、合計で約七億二千八百十九万円となってございます。

○伊藤(ゆ)委員 都からの財政支出額が、今、約七億二千万円だったということがわかりました。その財団にとって、ムーン社に発注をしていた一億円余りの委託業務は、最も大きな契約案件であります。
 その契約から、年間四千万円の収入を財団は得ておいて、やっていることは説明のつかない見積もり比較と来場者の水増し報告であるならば、財団を介さずに東京都が委託企業を直接選定した方がいいのではないかという声が上がってくるんじゃないかというふうに私は思います。
 観光情報センターの問題は、財団と受注企業のなれ合いによる不正が強く疑われ、観光事業が食い物にされたといわれても仕方ありません。都は、財団の契約案件を調査し、真に競争の働く契約方式に切りかえるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○横山観光部長 先ほど申し上げましたとおり、平成十七年度、十八年度、十九年度の契約につきましては、当時の東京観光財団財務規則の規定にのっとったものでございます。
 しかしながら、東京都監理団体指導基準に照らしまして、財団の財務規則の規定の見直しが、他団体と比較しておくれをとったということは否めない部分でございます。
 その後、東京観光財団は、平成十九年度、平成二十一年度にそれぞれ財務規則の改正を行いまして、現在では東京都監理団体指導基準に沿ったものに改めているところでございます。
 今後も、改定後の基準に従って、契約の適正化に努めるように強力に指導してまいります。

○伊藤(ゆ)委員 民間企業で考えれば、担当していた社員が見積もり比較において不正が疑われるような行為を働いていたとすれば、これは処分物だと思います。ですから、私は、より厳しい対応というものを東京都にはとっていただきたいと思っておりますが、少なくとも契約の改善をすることが納税者に対する最大の報いだというふうに思いますので、この契約改善には積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 最後に、情報センターの問題を初め、ずさんな財団の運営責任が明らかになってまいりました。所管する産業労働局長の見解をお伺いします。

○前田産業労働局長 民間、あるいは各種団体、行政などが総力を挙げて東京の観光振興を図っていくという視点に立ちますれば、東京観光財団はこれまでも、そしてこれからも、東京都の行政上、重要な役割を持っているものと考えます。
 しかし、同時に、東京観光財団は、監理団体として日々の業務執行の適正さを常に確保することが求められていると、このように考えます。その点で、今般、観光情報センター来場者数に係る報道、あるいは過去の契約について取り上げられるということなど、過去の東京観光財団の対応について、都民の皆様に誤解や疑念を招く結果となってしまったことについては、まことに遺憾であります。
 先ほど観光部長から答弁申し上げましたとおり、東京観光財団は事業運営の見直しを急速に進めており、来場者数の推計方法や契約に関する規定の改善が図られました。引き続き、事務手続の改善に向けた検討も行っているところであります。
 東京観光財団の契約手続や事業運営につきましては、申し上げるまでもなく、事業の効率的かつ効果的な運営を図っていく観点から、常に不断の見直しや工夫を行っていく必要があります。
 東京観光財団が東京の観光振興を強力に進められる団体として、その役割を十分果たせますよう、所管する産業労働局として適時適切かつ強力に指導監督してまいります。

○山崎委員 本日は、まず東京の観光振興に向けた取り組みについてお伺いいたしますが、最初に、国内外の旅行者に対し観光情報を提供する東京観光情報センターの件について、二点確認させていただきます。
 先ほど来質疑にありましたが、先日、東京観光情報センターの来場者数のカウントについて、東京観光財団が水増しを行っていたという趣旨の報道がなされ、都民に対して不信感を与えることになったことは、大変残念に思います。
 そもそも来場者数をカウントしている趣旨は何なのか、お伺いします。

○横山観光部長 この事業を実施します上で、どれぐらいの来場者があったかなど、概数を把握することは必要と考えてございまして、そのために、都が東京観光財団に来場者数の報告を義務づけております。
 カウントにつきましては、これまで財団職員が週一回、一時間程度、手動式計測器を使用してカウントし、同じ時間帯に窓口業務のスタッフが計測したカウント数との照合を行いまして、その数値の差をもとに補正を行ってきたところでございますが、過去の東京観光財団のカウント方法が、都民の皆様に対して疑念や疑義を抱かせたことは大変遺憾であると考えてございます。
 このため、本年四月以降は、財団職員が観光情報センターの出入り口全体を見渡せる位置に立ちまして、一日一回、一時間計測を行うとともに、窓口業務スタッフが計測したカウント数との照合を厳格に行いまして、その差を補正率とし、一日の来場者数を推計する方法に変更し、精度の向上に努めていると、このように報告を受けてございます。

○山崎委員 もう一点、来場者数が事業実績として報告されていると思いますが、私としては、その数値が、その後の都の観光財団の委託契約の金額に影響があったかどうか、大いに気になります。明確にしてもらいたいです。答弁をお願いします。

○横山観光部長 本事業の委託経費は、観光情報センターの開設時間に必要な人件費のほか、電話通信費や光熱水費、パソコンなどのリース料といった物件費の項目で構成されております。来場者数の増減が経費の算定基礎となっている項目は、一切ございません。
 来場者数は、参考として利用者全体の傾向を見るというものでございまして、これらのことから、来場者数の増減をもって本事業の委託経費には全く影響を及ぼすものではございません。

○山崎委員 来場者数が委託契約の金額に影響がないということがはっきりわかり、その点については安心いたしました。
 ただ、確かにこれまでの推計の方法では必ずしも精度が高くなかったという点を十分に重く受けとめていただき、既に見直しがされているとはいえ、今後は、財団に対し強く指導し、都民の信頼の回復のため、しっかりやってもらうことを強く要望し、本論に入ります。
 現下の都内の経済、雇用情勢を考えると、観光を今後の都内経済の活性化の一つの活路としてとらえ、その振興に取り組んでいくことも必要なのではないかと考えるからです。
 観光は、関連する産業のすそ野が広いことから、多くの産業に経済波及効果を及ぼし、雇用や税収面で大きな効果をもたらすとされております。
 都では、石原知事のもと、国に先駆けて観光産業振興プランを策定し、積極的に施策を展開してきたことと思います。
 しかし、近年、観光を取り巻く環境は大きく変化し、先週二十一日の羽田空港国際化や成田空港からの都内交通アクセスの改善に加え、世界観光機関の資料によれば、二〇二〇年には国際観光客数が現在の一・五倍の十五億人超となることが予想されるなど、世界各地から旅行者の増加が期待されております。
 こうした中、都では先日、十月十四日に開かれた東京都観光事業審議会に、今後の観光振興について諮問していると聞いております。改めて、今回の東京都観光事業審議会の諮問に当たっての基本的な考え方をお伺いします。

○横山観光部長 都は、平成十九年度に策定いたしました東京都観光産業振興プランに基づきまして、東京の魅力発信、観光資源の開発、旅行者の受入体制を整備する、こういった柱で施策を推進してまいりました。
 現行のプランは、平成二十三年度までのものであることから、平成二十四年度以降の東京の観光振興の取り組みにつきまして、学識経験者等で構成する東京都観光事業審議会の場でさまざまな角度から議論を重ね、具体的に検討していただくために今回諮問した次第でございます。
 諮問の視点といたしましては、観光を重要な柱とした産業振興・活力の向上、都内を訪れる旅行者目線、行政・民間・都民等との一体的な取り組み、そして、何度も訪れたくなる都市東京、この四つを挙げてございます。
 審議会での諮問に当たりましては、これらの視点に加えまして、羽田空港の国際化や新たな観光施設の開設、時代の変化を的確にとらえ、ビジネスチャンスを創出させるなど、観光の持つ潜在的な経済活力資源を顕在化し、交流人口の増大や消費拡大を通じた産業の持続的発展に結びつけていく、こういったことが重要であると考えております。
 このような認識のもと、東京の活力向上を図る観光振興の戦略的な取り組み、こうしたテーマで東京都観光事業審議会より答申をいただく予定でございます。

○山崎委員 今、答弁にありました、観光を柱とする産業振興と活力向上や旅行者目線などは、とても興味深い視点ですが、特に行政や民間など、各主体が一体となった取り組みは、今後の東京の観光振興にとって非常に重要なキーワードではないかと思います。こうした行政、民間などの役割を現状をどう認識し、連携策としてどのようなものがあるのか、お伺いします。

○横山観光部長 東京の観光振興に向けましては、民間事業者、観光関連団体、行政、それぞれの役割を果たしつつ、適宜連携した取り組みを行っているところでございます。
 民間事業者は、旅行者ニーズに対応した適正な商品づくり、商業施設等における外国人が利用しやすいサービスの提供などの役割を担っていると考えます。
 観光協会などの観光関連団体は、各地域の魅力の掘り起こしや情報発信、イベントの実施によるにぎわいの創出などを担っていると考えます。
 そして、行政の代表でございます都は、旅行目的地としての東京の国際的な認知度の向上、民間等の観光産業振興の取り組みへの協力、支援などの役割を担ってございます。
 各主体が連携して行っている取り組みといたしまして、例えばピクトグラムや外国語標記の普及、地域の特色を生かしたまちづくりの推進、国内外からの旅行者誘致に向けた商品開発、こういったテーマで連携している事業がございます。

○山崎委員 現在も都や民間、そして観光関連団体等が連携を図っていること、そして今後さらにその連携を強化していく必要性を再認識いたしました。
 さて、行政、民間が連携をより強化していく上で、東京観光財団もその取り組みの重要な柱を担っていく必要があり、積極的に活用していくべきと考えます。我が党の三宅茂樹議員が、先日の都議会本会議での代表質問においても、行政と民間の双方の力を兼ね備えた都政の重要なパートナーである監理団体を有効活用していくことが、目指すべき都政の姿であると主張しています。
 観光は、民間の旅行者誘致に向けた多様な発想や取り組みを側面支援していくことが特に求められる分野であり、行政としても、弾力的かつ機動的な取り組みが必要不可欠であります。この分野で公共性を確保しつつ、柔軟な対応が可能な監理団体を活用することは、とりわけ効果が大きいと考えます。
 そこで、これまでの東京の観光振興施策を展開してきた中で、東京観光財団がどのような役割を果たしてきたのか、お伺いします。

○横山観光部長 東京観光財団は、観光関連団体や民間事業者等が創設いたしました社団法人東京コンベンション・ビジターズ・ビューローを母体といたしまして、平成十五年に設立され、東京の観光及びコンベンション振興を目的とする唯一の公益的法人といたしまして、中立、公平な立場で観光振興策を展開しております。都内観光協会を初め宿泊、旅行、交通、観光・文化施設の各事業者などを会員に持ちまして、観光業界とのネットワークを生かした事業展開が可能となっております。
 また、過去、社団法人として活動していた期間も含めまして、長年にわたり東京の観光振興に取り組んできた、こういった点からノウハウの蓄積もございます。
 こうした点を生かしまして、東京全体の広域的な視点から、都が進める観光振興施策の実施主体といたしまして、観光プロモーション事業を初め、観光情報センターや東京フィルムコミッションの運営などの事業を展開しております。
 今後、財団が都と民間のかけ橋といたしまして、東京の観光振興の中核を担える団体となれるよう、これまで以上にその専門性やネットワークを積極的に活用していきたいと考えております。

○山崎委員 東京観光財団が持つ強みを生かした事業展開を行っていることがよくわかりました。今後とも、国内外からの旅行者誘致の推進や、観光振興に向けた都と民間のつなぎ役として、遺憾なく力を発揮していただきたいと思います。
 次に、今後の東京の観光振興を支えていく担い手の確保について伺います。
 観光分野に実際に携わり、その振興に寄与する人材を早急に確保し育てていくことは、非常に重要なわけでございます。
 海外に目を向けると、シンガポール、ソウルといったアジアの都市は、観光がもたらす高い経済波及効果に着目し、都市全体の活力向上を図るため、観光振興に大きな力を注いでおります。
 特に、MICEと呼ばれる、企業会議や企業の報奨旅行、国際コンベンションや展示会などの誘致では、さまざまな支援制度に加え、優秀な人材を育て活用していると聞いております。
 こうしたアジアを初めとする海外都市との熾烈なMICE誘致競争の中で、その競争に勝ち抜いていける人材を育成、確保していかなければなりません。都でもコンベンション人材育成事業を実施しているようですが、その内容やこれまでの成果をお伺いします。

○横山観光部長 コンベンション人材育成事業は、経済への波及効果が大きい国際コンベンションを初めとするMICEを東京に誘致する人材を早急に育成する目的で、平成二十年度から実施している事業でございます。
 ホテル事業者や旅行会社といった即戦力となり得る都内観光事業従事者を対象といたしまして、具体的事例を用いた演習などを通じて、実践的スキルの向上を図るプログラムなどを、東京観光財団を通じて提供しております。
 これまでに百名以上が受講しておりまして、本事業で得たスキルを生かし、百二十名規模の企業会議や六百名規模の国際コンベンション誘致など、着実な成果につながっております。引き続き、国際間競争に勝ち抜ける観光人材の育成を推進してまいります。

○山崎委員 第一線で誘致業務を担う人材を育成することは、今後の産業振興を支えていく大きな財産になりますので、引き続き、観光財団とともに、より効果的な取り組みを展開していただきたいと思います。
 一方で、実際に東京に来られた外国人に対して、温かく迎え入れる取り組みも重要です。東京には、語学力や地域の歴史、文化に精通した人など、旅行者をサポートできる知識や意欲を持った人材が多く存在しております。こうした人材を活用し、日本人の美徳であるおもてなしの心を伝えていくことは、外国人旅行者の増加にもつながると考えます。
 都では、海外からの旅行者に対して、こうした人材を活用した取り組みを講じているとのことですが、具体的な内容をお伺いします。

○横山観光部長 帰国子女の方ですとか海外駐在経験者などを観光ボランティアといたしまして募集、登録し、旅行者の利便性向上を図るなど、平成十四年度からボランティアを通じた人材の確保、活用の事業を展開してございます。
 おもてなしの一環といたしまして、国際会議やイベント等への派遣、都内主要観光ルート十コースのガイドサービス、また都庁案内ツアー、これらの事業を多言語で提供しております。
 本年度の上半期分の実績を加えまして、これまでに二万七千人以上の旅行者の方にご利用いただいておりまして、人気も高いことから、登録者数を現在の三割増程度の五百名規模に拡大させる予定でございまして、昨日から募集を開始したところでございます。今後も、ボランティアの資質向上を図りつつ、こうした貴重な人材を観光振興に活用してまいります。

○山崎委員 都民を初めとしたボランティアを観光に活用する取り組みは、非常に有益なことであると思います。今後とも積極的に取り組んでいただきたいと強く要望いたします。
 ここまで東京の観光振興について聞いてきましたが、都と東京観光財団は、東京の観光振興に向けた車の両輪となり、民間、そして都民をも巻き込んだ取り組みを積極的に展開していくことを強くお願いしておきます。
 次の質問に移ります。
 農林水産振興についてですが、先日、都内産農林水産物を使用している飲食店等を登録する、とうきょう特産食材使用店の登録決定のプレス発表がありました。テレビや新聞等でも反響があったところです。
 第一期登録として、区部では六十四店舗、多摩地域では三十五店舗、合計九十九店舗の登録をしたということで、私の地元でも登録されていたお店がありました。地元でも話題を呼んでおります。
 そこで、まず、この登録制度のねらいと今後の具体的な方策についてお伺いします。

○岩田安全安心・地産地消推進担当部長 都内では、新鮮かつ安全・安心で多様な農林水産物が生産されています。このような都内産農林水産物の使用状況や来店者への食材情報の発信方法など、飲食店での地産地消推進の取り組みを審査した上で、九十九店舗を登録いたしました。
 登録店を核として、都内産農林水産物をより多く使用し、積極的にPRしてもらうことで、都内産農林水産物の魅力を広く消費者に発信して、消費と生産の拡大を図っていくことを目的に登録制度を組み立てております。
 登録した飲食店に対しては、登録ボード等のPRグッズを提供するとともに、東京都のホームページや広報等でPRしてまいります。また、都内産農林水産物の入手のために有用な出荷情報等も提供してまいります。さらに、都内産農林水産物を使用した料理レシピのコンクール等も開催していく予定でございます。
 今後も、この登録制度を着実に推し進め、その他の取り組みともあわせまして、都内産農林水産物の地産地消を積極的に推進してまいります。

○山崎委員 次に、都内では新鮮で安全・安心な農産物が生産されており、都民の豊かな食の一端を支えております。このため、我が東京都議会自由民主党は、これまでも都議会において、都市農業の振興と都市農地の保全に向け、農業経営力の向上対策や、農業、農地を生かしたまちづくり対策など、さまざまな提案を行ってきました。都においても、こうした提案を真摯に受けとめ、さまざまな都市農業振興対策を講じていることは大いに評価するところであります。
 ただいま、東京産農林水産物の使用店について質問しましたが、都内では品質のすぐれた多様な農産物が生産されております。こうした都内産農産物の地産地消を推進することは、消費者の東京の農業に対する理解を醸成し、農業の振興にも寄与するものと思います。
 都内産農産物の地産地消の取り組みについて、さらに積極的に取り組んでいただくためには、今後、都内産農産物の一層の生産振興と農業者への経営支援を図っていく必要があります。都はどのように取り組んでいくのか、お伺いします。

○保坂農林水産部長 地産地消の取り組みは、東京の農業振興のために大変重要な施策であり、今後、農産物の生産量拡大や農業者の経営力強化を図りながら、さらに農業者の意欲を高めていく必要があると考えております。
 そこで、東京都は、今年度から新たに、みずから経営改善計画を策定し、農業経営に積極的に取り組む農業者に対し、生産施設整備などの支援とあわせて、経営の専門家などを派遣する都市農業経営パワーアップ事業をスタートさせております。
 今年度の事業では、農産物共同直売所に一年を通じて農産物を提供するためのパイプハウスの整備、農業体験農園やブルーベリーの摘みとり農園の整備など、都内各地域の実情を踏まえた支援を行っております。また、農産物共同直売所の売り上げアップと出荷農家の経営改善に向けて、専門家を派遣するなどの支援を行っています。
 今後もこうした取り組みを通じて、都内産農産物の生産振興と農業者の経営改善を積極的に支援してまいります。

○山崎委員 次に、新銀行東京について伺います。
 新銀行東京については、その設立目的である中小企業の支援という役割を再び果たすために、着実に再建を進めることが何よりも重要であります。我が党はこれまでも、本会議や予算特別委員会、経済・港湾委員会において、繰り返しその旨主張してまいりました。
 新銀行東京は、再建計画三年目を迎え、経営陣の努力もあり、当期利益の黒字化が果たせるまでになりました。その新銀行東京に関して、中小企業に役立っておらず、清算するべきであるなどの主張があります。
 こうした主張は、貸し出しが伸びていないとか、中小企業向けの融資件数が減っているとか、一部の数字を殊さらに取り上げて根拠にしておりますが、これは経営再建中の銀行の経営というものを全く顧みないし、経営再建のために知事も我々も苦渋の思いで決断した四百億円の追加出資を無価値にする、まさに批判のための批判であるといわざるを得ないものです。
 そこで、まず、そもそも新銀行東京が経営危機に陥った原因について、いま一度確認いたします。

○斎藤金融監理部長 新銀行東京は、高い事業意欲を持ちながらも、資金繰りに窮する中小企業を支援するために設立された銀行でございます。しかしながら、平成十七年の開業前後から、不良債権を処理し、体力を回復した大手銀行等が貸し渋り、貸しはがしといったそれまでの融資姿勢を一変させ、中小企業融資に積極的に参入するなど、経営環境の大幅な変化にさらされることとなりました。
 こうした状況にあったにもかかわらず、当時の経営陣が融資残高拡大路線に固執し、スコアリングモデルに過度に依存した融資を実施するなど、質より量を優先した業務運営を行い、適切なリスク管理を行わなかった結果、多額の不良債権の発生を招いたことが経営危機に陥った主な原因でございます。
 なお、新銀行東京は、旧経営陣に対して損害賠償請求訴訟を提起し、現在、審理が進められており、都としてはこの状況を見守ってまいります。

○山崎委員 ただいま答弁があったとおり、適切なリスク管理を行わなかったこと、やみくもに拡大路線に固執したことが経営危機を招いた原因でございます。すべては、この苦い教訓から出発しなければならないことであって、今は四百億円の追加出資を生かして、再建を着実に進めることが何よりも大切であります。
 新銀行東京がまず行うべきことは、過去の負の遺産を解消し、赤字という出血をとめ、経営を立て直し、常に黒字を計上できる筋肉質的な体質に転換することであります。こうしたことによってのみ、再び中小企業支援を十全に行う道が開かれるわけであります。
 再建期間中の現在は、資金繰りに窮する中小零細企業への支援にも可能な限り対応しつつも、過去の反省に立ってリスク管理をしっかり行い、決して件数や残高だけをむやみに積み上げるようなことはせず、堅実な経営を行っていかなければなりません。
 これまでも本委員会において、その都度、報告を受けていますが、黒字化を達成した今、改めて、追加出資以降二年余りの間、新銀行東京が再建に向けてどのような取り組みを重ねてきたのか、具体的に伺います。

○斎藤金融監理部長 追加出資を受け、経営再建を課せられた新銀行東京のとるべき道は、融資拡大路線と決別し、過去の反省に立って、厳格なリスク管理のもと、堅実な経営を行うことである、このことは山崎議員ご指摘のとおりでございます。
 この二年間、新銀行東京は、さまざまな努力により再建を目指してまいりました。やや長くなることをお許しいただきたいと思いますが、まず経費面でございますが、店舗の集約化や人員体制の見直し、システムの適正化によるコストの削減など、徹底した営業費用の圧縮を行い、低コスト構造への転換を図ってまいりました。
 また、リスク管理面では、行内体制を整備して融資管理や延滞管理を徹底し、デフォルトの発生を抑制、その結果として、不良債権残高の減少を見ているところでございます。
 さらに、リレーションシップの強化による顧客へのきめ細かい対応や、金融円滑化法施行前からリスケジュールに取り組むなど、延滞の防止や倒産の回避に努めてまいりました。
 四百億円の追加出資と今申し上げたような経営陣の努力によりまして、過去に計上した貸倒引当金の戻り入れが見込まれ、信用コストの圧縮が可能となったことなどにより、新銀行東京は、平成二十一年度通期決算において、開業以来初の黒字を計上するとともに、今期の業績予想で五億円の黒字を見込んでいるところでございます。
 過去の経営の失敗がもたらした傷の深さを考えますと、再建に向けた道のりは依然平たんとはいえないと考えておりますが、新銀行東京は、現在でも他の金融機関では支援が難しい赤字、債務超過先、約四千社を支援しております。今後も、可能な限り中小零細企業を支援しながら、実質業務純益の黒字化を目指し、引き続き経営再建に取り組んでまいります。

○山崎委員 新銀行東京が、過去の負の遺産を抱えながら、この二年余りの間、経営再建に向けて着実に努力し、当期利益の黒字化という段階に至ったことは評価するわけでございますが、再建はいまだ道半ばであります。
 中小企業金融は、とりわけきちんとしたリスク管理体制が求められる分野であり、経済金融情勢の先行きが不透明な中、新銀行東京と株主である都には、再建に向け、引き続き気を緩めることなく、しっかりと努力されることを求め、質問を終わります。

○藤井委員 私からは、まず、地域の金融機関と連携した新たな保証つき融資制度について伺います。
 一昨年秋のリーマンショック、これに端を発しました世界同時不況が起こり、中小企業の経営環境は大変厳しい中で、その資金調達環境は危機的な状況に陥ったわけであります。今も円高、デフレ不況、こういう中で、中小企業は苦しい経営環境にあることは変わりません。
 そうした中、東京都は、その資金繰りを支援するために、地域の金融機関と連携した新たな保証つき融資制度、これを創設いたしました。取扱金融機関による融資受付開始から一年が経過したわけでございますが、この制度、私たち公明党も大きく推進を訴えてまいりましたが、改めまして、この制度の目的、これについてまず確認したいと思います。

○櫻井金融部長 地域の金融機関と連携した新たな保証つき融資制度につきましては、緊急保証制度をもってしても資金調達が困難な中小企業が存在しており、本制度はそうした中においても、高い技術力やすぐれたビジネスプラン等により、現下の厳しい経営環境を乗り切れれば、将来的に展望が開ける中小企業を資金面から支援することを目的として創設いたしました。これは、国の信用補完制度に基づく制度融資とは異なり、都独自の制度でございます。
 取扱金融機関につきましては、都内に本店があり、日ごろから中小企業の顔が見える関係にございます地域の金融機関としており、その目ききの力を活用することとしております。
 融資の対象は、こうした地域の金融機関と一定期間取引を継続している中小企業としているところでございます。

○藤井委員 私は、昨年の予算特別委員会におきまして、今回の新たな支援策が目指すものは、厳しい経営環境に立たされている都内の中小零細企業の資金繰りに対する緊急的な支援であるというふうに申し上げたところであります。あくまでも危機的な状況に陥っている中小企業の立場から、この制度を創設するよう訴えました。都としても、そのような認識のもと、創設したということでございます。
 重要なのは、この緊急保証制度を初めとします制度融資を利用することが困難な、先ほど答弁にもありましたように、厳しい経営環境を乗り切れば将来的に展望が開ける、こういった中小企業、あるいは高い技術力や、また、すぐれたビジネスプランを持った中小企業、あるいは経営者の大変前向きな人柄、こういった要素を加味して、新たな資金調達の道を開いたところにあります。
 こうした観点から、これまで中小企業に利用されてきた利用実態、利用実績についてお伺いしたいと思います。

○櫻井金融部長 本制度を利用している中小企業につきましては、緊急保証制度を初めとする制度融資を既に利用している企業が八割を超えております。こうしたことから、これらの中小企業の中には、制度融資の信用保証枠を使い切っていたり、また、条件変更を行っているなどで、制度融資による資金調達が難しい企業も含まれているものと考えております。
 また、取扱金融機関の方からは、制度融資を申し込んだものの、これ以上の融資が困難だったため、直ちに本制度を申し込んだところ、当面の運転資金を確保することができた中小企業もありましたというようなお話も聞いております。
 本制度は、厳しい経営環境のもと、資金繰りに苦しんでいる中小企業に資金を供給し、資金調達の多様化に貢献しているところでございます。

○藤井委員 今、答弁ありましたように、取扱金融機関の話は、まさに私どもがこの制度で目指したものであります。しかしながら一方で、私の地元、大田区、中小企業が多いんですけれども、この中小企業の方から、経営者の方から、この制度を利用しようと思って申し込んだけれども、審査が通らないで断られてしまったというような声も何社か私の方に聞いております。
 この制度の実績については、資料要求をさせていただいておりますけれども、一一ページにありますように、平成二十一年度の十月から三月までが申し込みが千四百七十件、承諾された件数が九百九十七件ということであります。
 また、平成二十二年四月から平成二十二年九月、先月までの申込件数は四百四十件、承諾件数は二百五十九件ということで実績がありますけれども、この制度の実績から見ますと、特に現在の保証承諾の状況について、これ、まずどうでしょうか。

○櫻井金融部長 承諾の状況でございますが、申し込みから保証承諾までの若干の時間差というものもございますが、昨年の十月にこの制度の取り扱いを開始して、本年の九月末日までの保証承諾率を単純に計算いたしますと、まず件数のベースではおよそ六六%、金額ではおよそ六八%となっているところでございます。

○藤井委員 今のご答弁によりますと、保証承諾率、件数、金額とも約七割であるということでございますが、逆にいえば約三割の中小企業がこの制度を申し込みしたけれども、利用することができなかったというわけであります。
 このような承諾率になっていることについて、都の認識について、まず伺いたいと思います。また、保証機関はどのような視点で保証審査を行っているのか、あわせて伺います。

○櫻井金融部長 本制度は、比較的信用リスクが高い中小企業層をも融資の対象としておりまして、こうしたリスクの高い中小企業に対して、運転資金を無担保で提供するものでございます。また、保証につきましては、できる限り中小企業の資金需要にこたえるという側面と、一方で、デフォルトを抑制し、制度全体を安定的に運営するという側面がございまして、この両者をバランスよく運営していく必要があるというふうに考えております。
 本制度の現在の保証承諾率は、今、ご説明いたしましたような状況や考え方を反映したものと考えております。
 保証機関は、中小企業の財務情報はもとより、事業内容やその将来性、経営者の人となりなど、定性的な情報を踏まえた上で、さらに、これまで蓄積してまいりました信用情報などを活用し、信用保証協会とは異なる独自の視点から、精度の高い審査を実施しているところでございます。

○藤井委員 この制度の保証機関、オリックスと全国しんくみ保証という二社が行っているわけですけれども、私が聞いたところによりますと、この保証機関は、経営者個人の信用情報などを独自の経路で入手していると。ですから、一般の金融機関が知り得ない、そういった情報もこの二社は持っているというふうに聞いております。
 そういった意味で、先ほどありましたように、来た中小企業に何でも融資しろといっているわけではございませんが、この制度は比較的信用リスクが高い中小企業を対象としているわけですので、保証承諾率が現行の水準になっているというのは理解せざるを得ないかなと考えております。
 しかし、こういった厳しい経営環境に立たされております中小企業、都内にたくさんあるわけでございますので、こういった頑張っている中小企業の資金繰りを支援するために、今後とも、この制度のさらなる拡充、充実に取り組むよう要望していきたいと思います。
 次に移ります。雇用対策についてお伺いいたします。
 東京都内の雇用情勢、大変厳しい状況が続いているわけでございますが、企業の求人が落ち込む中で、職業経験が少ない、新卒者を初めとする若者の就職環境に深刻な影響が出ているのではないかというふうに懸念しております。それに対し、都は、我が党の要望を受けまして、平成十六年に東京しごとセンターを開設いたしました。
 以来、きめ細かいワンストップの就業支援を実施してこられたわけですが、その時々の雇用問題に対応し、ネクストジョブ事業あるいは就職チャレンジ支援事業、こういった各種の事業を展開しております。こうした取り組みを我が党は高く評価したいと、こう思います。また、求人状況が厳しい中にあって、着実に就職者数を伸ばしている点など、大変頑張っているというふうに考えております。
 そこで、このしごとセンターにおける具体的な取り組みについて、まず伺います。

○日請雇用就業部長 まず、三十歳未満の若年者の新規利用者数でございますが、二十一年度は、しごとセンターの開設以来最も多い八千五百三十七人でございまして、前年度と比較いたしましても、約二割増加しております。今年度も、新規利用者数はさらに増加しておりまして、二十二年度上半期の若年者の新規利用者数は四千五百九十五人でございまして、前年同期と比較いたしまして一割の増加というふうになっております。
 就職者数につきましても、開設以来、実績が伸びておりまして、これまでに約一万七千人を就職に結びつけております。今年度上半期の就職者数は二千二十二人でございまして、前年の同時期と比較いたしまして一三%の増加というふうになっております。求人状況が大変厳しい中にございましても、個別担当制のカウンセリングを初めといたしましたきめの細かい支援によりまして、着実に実績を上げているところでございます。

○藤井委員 就職者数については、これまで約一万七千人が就職しているということでございましたけれども、今、若者の就職環境を見ますと、大変厳しい状況であります。大学生で、就職のために十社、二十社面接を受けても内定がとれないというような人も少なくないというふうに聞いておりますし、就職のために留年している方や、また卒業後も就職活動を継続している方が大勢おります。
 我が党は、以前から新卒者の就職対策の充実を要望してまいりましたが、都もこれにこたえて、昨年度は新たに合同就職面接会を実施し、また、しごとセンターに新卒者向けの専用相談窓口も開設するなどの対応をしてまいりました。
 そこで、この新卒者について引き続き対策を進めて、一人でも多くの若者の就職を実現していただきたいというふうに思いますし、今回は就職氷河期世代ともいわれる若者の問題についてお聞きしたいと思います。
 つい先日の新聞にも、今も、現在も、この就職氷河期時代と同じような就職状況であるというふうな記事も載っておりました。かつて、就職氷河期と呼ばれたこの時期に学校を卒業した方々は、今、三十代になっております。いまだに安定した職につけないままフリーターを続けていたり、非正規雇用についている方がたくさんいるわけでございます。
 新卒者の就職は、まさにこの景気に左右されやすく、就職活動が雇用情勢の悪い時期に当たっただけで、安定した雇用の道が閉ざされるというのでは、余りにも理不尽だといわざるを得ません。
 こうした問題意識から、私は、年長フリーターなど就職氷河期の世代の人たちが、ぜひ正社員になれるよう、正社員化に向けて積極的な対策を進めるべきであると要望してまいりました。これにこたえまして、東京都はネクストジョブ事業を実施しておりますけれども、これについて何点か伺います。
 まず、ネクストジョブ事業、これまでの実績はどうだったか伺いたいと思います。

○日請雇用就業部長 ネクストジョブ事業の実績についてでございますが、都は、就職氷河期世代の三十歳代の非正規労働者の正規雇用化を支援するため、平成二十年十一月からネクストジョブ事業を飯田橋のしごとセンターにおいて開始しております。昨年十月からは、しごとセンター多摩におきましても事業を実施しているところでございます。
 具体的な支援といたしましては、個別カウンセリング、グループワーク、職業紹介、職場定着までを一貫して行うものというふうになっております。
 事業開始から平成二十二年九月末までに、ネクストジョブ事業の専用相談窓口を二千六百九十三人の方が利用されまして、このうち八百二十六人が正社員として就職しているところでございます。

○藤井委員 非正規での仕事が長かった方がフルタイムで働くということには、いろんなギャップが生じているというふうに考えます。このネクストジョブ事業を通じて就職した方の、就職した後の悩みについて担当者の方にお聞きしたところ、一つは社風が合わないとか人間関係になじめないだとか、そういうほかに、思ったより残業が多いとか、あるいは自分の趣味の時間がとれないというような不満も多くあったというふうに聞いております。
 フルタイムで働くことによって、これまでの生活スタイルを変更せざるを得なくなることへの抵抗感もあると思いますけれども、これを乗り越えてもらわなければならないわけであります。
 今の若者は忍耐力が欠けているというふうにいってみても仕方がないわけで、この事業の支援策の中で、現実とのギャップを埋めながら、就職を実現していくきめ細かい取り組みを進めることが重要であるというふうに考えます。
 そこで、このネクストジョブ事業では、正規雇用化に向けての具体的な支援策、これはどうなっているか伺います。

○日請雇用就業部長 ネクストジョブ事業におきましては、正規雇用化に向けて、求職者の状況に応じたキャリアカウンセリングを行いますほか、少人数でのグループワークを実施しております。グループワークには、非正規労働者がこれまでの仕事の経験を振り返り、みずからの強みや志望を明確にし、正規雇用で働くことについての理解を深めるためのセミナーや企業訪問などの内容を盛り込んでいるところでございます。今年度は、昨年度よりも受講者規模を倍以上にふやしまして実施しております。
 さらに、職業紹介に当たりましては、専門相談員として配置しておりますジョブコーディネーターが、求人企業の状況について求職者にきめ細かく情報提供を実施しております。

○藤井委員 今、ご答弁がありましたように、こういうきめ細かい対応を積み重ねることによりまして、就職した後にこんなはずじゃなかったということを防止することにつながるのではないかというふうに期待するところであります。
 そこで、重ねて伺います。ネクストジョブ事業には、定着を支援するサービスがあるというのが特色だということですけれども、その具体的な対応について伺います。

○日請雇用就業部長 ネクストジョブ事業では、非正規雇用での職歴が長い方が正規雇用として就職後、スムーズに職場に定着できるよう、就職後六カ月間、先ほど申し上げましたジョブコーディネーターによる定着支援のサービスを実施しております。
 まず、正社員での勤務が始まった段階で、ジョブコーディネーターが就職先企業を職場訪問し、企業と就職者の双方と面接の上、職場定着や人材育成等についての相談に応じております。その後も、必要に応じまして職場を訪問し、企業と就職者双方の橋渡しを行っております。
 特に就職者につきましては、メールや電話で気軽に相談できる体制をとっておりまして、職場の不安や悩みなどにつきまして助言を行っており、継続的に支援を行っているところでございます。

○藤井委員 このネクストジョブ事業によって、一人でも多くの若者の正社員化が実現できるよう、今後ともしっかりと支援をお願いしたいと思います。
 今までの質疑で、若者の就業支援がこのしごとセンターにおいて実施されているということでございます。しかし、仕事そのものがなくてはどうにもならないわけでありまして、これは本質的には政府の雇用問題、雇用創出の問題であります。しかし、今の民主党政権の取り組みでは十分ではないというふうにいわざるを得ません。今の円高、デフレ不況の中で、企業は、特に大手企業は、円高によって海外、いわゆる輸出関連の企業は大変苦しんでいるわけでございまして、そうなると、結局どうなるかというと、人件費、あるいは土地の安い海外にそういった支店をつくらざるを得ない。そうすれば、海外に仕事が行ってしまえば、それに関連する下請の中小企業の仕事がなくなるというような、まさに深刻な問題に陥っているわけでございます。
 そういう中にありまして、今の政府は、こういった対策に対応する、いわゆる明確な成長戦略がありません。さらには、我が党は九月の二日に、こういった対策に取り組むよう緊急経済対策を発表いたしましたが、政府はようやく十月の下旬になって補正約四兆円、我が党が要望いたしました四兆円の補正予算額と同じ予算を提出した。まさにツーレートであります。
 こういった状況の中にあって、まさにこの求人開拓など、都としてやれることについては、ぜひ積極的に取り組む必要があると考えますが、若者の求人確保に向けた都の取り組みについてお伺いいたします。

○日請雇用就業部長 ただいまご指摘がございましたとおり、若年の雇用問題の本質的解決のためには、国が明確な成長戦略のもとに実効ある経済対策を進め、雇用の創出につなげていくことが不可欠であるというふうに思います。
 しかしながら、現在の厳しい状況を踏まえまして、都としても可能な限りの対応を実施しておるところでございます。新規学卒者を初めとする若者の求人確保に向け、国と連携して、都内経済団体に対する採用の要請を実施しております。さらに、来る十一月十一日に開催を予定しております未内定新規学卒者等を対象といたします合同就職面接会につきましても、現在、二百社が参加する予定でございます。この中で約千七百人分の求人を確保したところでございます。
 加えまして、しごとセンターにおける取り組みといたしましては、併設のハローワークや民間事業者において、若者を対象といたします求人を確保し、職業紹介を実施しております。また、就職チャレンジ支援事業やネクストジョブ事業におきましても、当該事業利用者向けの求人開拓を行い、個別の職業紹介のほか、就職面接会なども実施しております。
 今後とも、若者の安定した就職に向け、積極的な対応をしてまいります。

○藤井委員 こういった将来の社会を担う若者の就業対策に、今後とも積極的に取り組むよう強く要望して、次の課題に移ります。
 先ほど観光情報センターの話題が出ました。来客数の水増しをしたという問題でございますけれども、こういったことでマスコミをにぎわせて、まじめに一生懸命仕事をしている職員の人たちに多大な迷惑をかけるということについては、しっかり、今後ともこういうことがないように厳しく指導、監督をしていただくよう要望したいと思います。
 さて、先週の二十一日に、羽田空港の新国際ターミナルビルがオープンいたしました。当日は、搭乗客のほかに見物客も多くの方が押し寄せ、五万六千人が来場したという報道もありました。
 また、東京都では、今回の羽田の再拡張、国際化に合わせまして、これまで第一旅客ターミナルにあった観光情報センターを、新しい国際線ターミナルに移転させましたが、新たな観光情報センターの国際化への対応について、まずお伺いいたします。
 また、二十一日の開設から、ちょうど一週間がたちますけれども、この一週間の観光情報センターの利用状況について、また旅行者から具体的にどういう問い合わせが多いのか、この点についてもお伺いいたします。

○横山観光部長 羽田空港の国際線ターミナルビルの供用開始に合わせまして、今月の二十一日、二階の到着ロビーに東京観光情報センターを移転開設いたしました。ここでは、従来の日本語、英語に加えまして、新たに中国語、韓国語で対応できるスタッフを配置してございます。また、開設時間も午前九時から夜の十一時までと、従来より一時間延長させていただきました。
 さらに今回は、東京観光情報センターと同じスペースに首都圏や地元区のPRコーナーも併設してございます。また、交通切符の発券や宿泊施設予約ができるチケットセンターも併設されておりまして、これらとの連携により、利便性の高い観光情報の提供を行ってまいります。
 東京観光情報センターの羽田の利用状況でございますが、オープン初日の二十一日は、オープン当初ということもございまして七百十七人のご利用がございました。二十二日は三百九十一人、土曜日である二十三日は五百七十八人、連日多くの来場者が訪れております。その後も、連日、二百人を超える来場者があるという状況でございまして、具体的な問い合わせ内容でございますが、観光名所や交通アクセスについての相談が多いと聞いてございます。

○藤井委員 実は、私、三日前に国際ターミナルに行ってきましたけれども、驚いたのは、搭乗客よりも、四階、五階にある、食べる、江戸小路とか、それからプラネタリウム、こっちの方に一般のいわゆる飛行機には乗らない方たちが大勢来てました。食べるところなんか列をなして、一時間も二時間も待たされるみたいな状況の中で大変にぎわっておりました。そういう中で、この観光情報センターは、東京都を訪れる旅行者にとって非常に重要な施設になると思います。
 私も観光情報センター、行ってきました。もう二回目、行ってきました。ただ、残念なのは、到着ロビーのところの端っこにありまして、探さないとわからないんですよ。というのは、看板が出てないから。ぱっと見るとコーヒーショップが目立つんですけど、あれ、あそこかなと思って行ったら、コーヒーショップの奥にあるのが観光情報センター、それも東京都専属じゃないんですね。どのぐらいの部屋かな、この部屋の半分ぐらいのところに、右側は大田区のコーナー、その後ろが神奈川、横浜、こういったところのコーナー、左端に東京都のコーナー、だから、共同ですかね。
 しかし、できれば、天下の東京ですから、東京だけで立派な観光情報センターがあって、いろんな情報が内外の方に提供できるような--やっぱりそのぐらいあってもいいんじゃないかなと思いますね。
 だから、まずは、ここが観光情報センターですよとわかるような目印の看板、早くつけてください、部長。お願いしておきます。
 それから、今月三十一日には、いよいよ新たな国際線定期便が就航いたします。今まで中国、韓国の一部だった国際定期便が、いよいよアメリカ、あるいはヨーロッパに二十四時間で行けるわけでございます。今まで年間約三十万回だった離発着が、将来的には四十五万回ということでございますので、まさに羽田が東京、日本の玄関になるわけでございます。当初は年間七百万人の海外からの旅行客、これが四十五万回になりますと一千二百万にふえますけれども、まさに多くの方たちが、海外からのお客が来て、この方たちをぜひ東京でとどめていただきたい。東京で観光して、東京でよさを知っていただく。もっといえば、東京でお金を落としていただく。泊まっていただき、食べていただき、遊んでいただいて、この経済波及効果、あるいは東京の経済活性化につなげていくことが重要だというふうに思うわけでございます。
 そこで、東京観光情報センターだけでなくて、国際線の到着ロビー、あるいは空港乗り入れの交通事業者の案内窓口、こういったところを活用して、ぜひ東京のよさを知っていただくパンフレットや、あるいはさまざまな情報提供を行っていると聞いておりますが、今後とも、東京の観光情報を効果的に提供することを希望したいと思っております。
 次に、今回の羽田空港の国際化を受けまして、東京の魅力というものを改めて提供していくことが、東京を訪れるリピーターをつくることにつながるというふうに考えます。特に、東京にはすばらしい観光資源があります。しかし、それがなかなか活用されていないという状況にあると思います。
 例えばお台場や、あるいは東京湾上からの夜景というのは、非常にすばらしいんですね。陸地から見た東京湾、臨海もきれいですが、海上から見た東京湾とか、あるいは臨海、こういったものをぜひ海外のお客さんに見ていただきたいというふうに私は思うわけでございます。
 日本の三大夜景ってありますね。北海道の室蘭じゃないや(発言する者あり)函館ですね。函館の夜景、それから神戸の六甲の夜景、それから長崎の夜景、私、三つ見てきました。それにも劣らないのがこの東京湾の夜景だというふうに思うわけでございます。東京湾上から夜景を見るツアーなど、まだ一部の人しか利用されていないわけでございまして、都内の各地域には、国内外の旅行者の方を引きつける、こういうさまざまな観光名所が多数あるわけでございます。
 こうした観光資源を活用して、これまでにないコースをつくったり、そして、海外からの旅行者、国内外からの旅行者を誘致することにつなげていく具体的な取り組みが非常に重要と考えますが、この点についていかがでしょう。

○横山観光部長 ただいまお話しいただきました夜景なども含めまして、各地域が新たな観光資源を発掘し、発信していくということは、旅行者誘致にとって大変重要な取り組みであると考えております。
 これまで都は、地域の積極的な取り組みを支援してきてございまして、例えば羽田空港の地元であります大田区と品川区が連携して広域の観光マップをつくるということなど、地域の観光資源を積極的に発信する取り組みを進めております。
 また、今年度は、旅行業者、マスコミ向けのPRツアーを実施するという予定にしてございまして、地域の魅力を生かした新たな観光ルートの開発につなげてまいります。

○藤井委員 数ある東京の観光資源の中でも、特にこの水辺は重要な観光資源であるというふうに考えます。かつて、江戸は河川や運河が縦横に走って、船による運送が物流を支えてきた、まさに水辺の都市が東京であります。また、その様子は、当時江戸を訪れた外国人によって、水の都ベネチアに例えられたといわれております。
 このような観光資源としての水辺のにぎわいを取り戻すためには、新たな活用を図るとともに、水辺を活用する機運の醸成を進める必要があると考えます。
 新たな活用方法として、私は、水上バス、これを活用して、羽田を起点に、東京湾や、あるいは臨海地域の回遊ルートをつくるなどを進めていくことが重要だというふうに考えます。
 また、都民の水辺に対する意識の向上というものも重要でありますが、これらの東京の魅力を向上させるために、水辺の取り組みを進めるよう、都として新たな対策をとるべきと考えますけれども、この点についていかがでしょうか。

○横山観光部長 観光資源としての水辺の活用は非常に重要なことだと認識しております。そのため、例えば浅草・両国、芝浦・天王洲など、水辺マップを作成して、観光資源としての水辺を広報するなどの取り組みを進めてまいりました。
 また、機運の醸成というお話がございましたが、水辺の活性化を支える人材の確保が重要と考えております。そのため都では、水辺に関するシンポジウムの開催などを通じまして、都民の意識向上に努めてまいりました。
 今年度は、特に若い世代に重点的に広報を行いまして、将来の水辺の活動を担う人材の確保につながるようにシンポジウムを企画してございます。
 水辺の取り組みにつきましては、ハード、ソフト、さまざまな取り組みがあろうかと考えておりますので、今後も、引き続き建設局及び港湾局などと連携しながら、東京の水辺の魅力向上に努めてまいります。

○藤井委員 ぜひお願いします。
 具体的には、水上バスとか--私はこの前、水陸両用バスも見てきました。大阪でやっているんですね。こういうようなものもぜひ--羽田から水陸両用で東京湾に行き、臨海副都心を通って、そして、また都心にバスで行けるというような、そういうようなときが来るように期待しているわけですが、いずれにいたしましても、水上バスの整備については、親水テラスの整備であるとか、水上レストランであるとか、あるいはまた、船が泊まれるような護岸の整備、さまざまな課題があります。
 ぜひ産業労働局が中心で、先ほど答弁にありましたように、港湾局や、あるいは建設局等々、連携をとりながら、魅力ある水辺の活用についてぜひご尽力をお願いしたいと思います。
 最後に、局長に伺います。金融を初めとした中小企業対策、あるいは雇用対策、観光政策など、本日取り上げましたさまざまな政策を初め、これを展開されているのが産業労働局というふうに承知しておりますが、依然厳しい経済状況、あるいは雇用状況の中で、都民の皆様は必死に生活をしております。こうした中、都民の生活を支える産業の活性化、これがますます重要となってきております。
 今、東京都が牽引役となってこれらの産業の活性化を進めていくべきと考えますが、産業を所管する局長の決意をお伺いして、質問を終わります。

○前田産業労働局長 一昨年の秋に端を発しました世界経済危機以来、大きく落ち込んだ日本経済は、ことしに入り、緩やかながらも若干持ち直しが見られましたものの、円高による影響が懸念されるなど、いまだ予断を許さない厳しい状況でございます。都内経済についても同様の状況にあります。
 また、失業率の上昇など、都民生活にも厳しい経済状況の影響が出ており、都民の雇用の場を確保するという意味でも産業の活性化が重要であると、このように認識しております。
 こうした認識のもと、中小企業支援や雇用就業の促進など、緊急的な課題に適切に対応するとともに、観光産業や農林水産業の振興など、東京の持つ幅広いポテンシャルを引き出し、伸ばしていくことが重要と考えております。
 このため、経済、雇用情勢に十分留意しながら、それぞれの状況に応じた施策一つ一つを確実に実行していくとともに、この東京都が我が国の産業活性化の牽引役となるべく、中長期的視点に立った施策に全力で取り組んでまいります。

○西岡委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時五十七分休憩

   午後三時十六分開議

○西岡委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○清水委員 まず、職業訓練について伺います。
 厳しい雇用情勢の中で、非正規雇用で働き、職業訓練の受講機会に恵まれない若者や離職を余儀なくされた方々の就職には、新たな技術、技能の習得やスキルアップを支援する職業訓練が求められています。
 この間、都では、この直営の訓練から、民間委託への拡大によって進められている結果、問題があらわれてきております。
 伺います。都は、施設内委託訓練の一部を学校法人嘉榮学園に委託しておりますが、その契約方法についてお伺いいたします。

○穂岐山事業推進担当部長 施設内委託訓練の契約方法についてでございますが、六カ月訓練につきましては、総合評価一般競争入札で、事業計画書で技術面の審査、入札書で価格点の評価、採点を行い、落札者を決定、契約してございます。
 三カ月訓練、二カ月訓練は、受託申込書の教科内容、施設講師体制、就職支援体制等を審査いたしまして、業者選定委員会で決定、契約を締結してございます。

○清水委員 総合評価入札方式ということを今お話しされましたけれども、その経緯についてお伺いいたします。

○穂岐山事業推進担当部長 入札の方式を採用している理由は、訓練効果を最大限に発揮できる委託先を選定するとともに、費用対効果についても勘案して決定する方式をとっているものでございます。

○清水委員 先ほど契約のご説明がありましたけれども、契約先の学校法人嘉榮学園の所在地はどこになりますか。

○穂岐山事業推進担当部長 中野区中野二の二十の三でございます。

○清水委員 その契約に基づいて、実際に都が契約した訓練の実施場所というのはどこになりますか。

○穂岐山事業推進担当部長 新宿区北新宿一の二十一の十、大智学園高等学校内でございます。

○清水委員 先ほどのご説明は、契約先が学校法人嘉榮学園であるわけですけれども、それで、今の訓練の実施場所とどういうふうな関係になってくるわけですか。

○穂岐山事業推進担当部長 学校の所在地と訓練実施場所が異なるというご質問かと思いますが、民間による委託訓練の実施に当たりましても、こうしたケースもあり、賃貸借契約による訓練実施場所の確保も可能としており、特に問題はないというふうに考えております。

○清水委員 それでは、私たちの調査によりますと、新宿区のITセンターが入居している建物は、実際には株式会社コーチング・スタッフが新宿区との間で賃貸借契約をしている物件です。
 ここに定期建物賃貸借契約書というものがありますけれども、その賃貸借契約書によりますと、利用目的が書いてあるのですが、第三条で、これは相手が新宿区なんですけれども、区と用途を決めて、コーチング・スタッフは--契約先は乙なんですけど、乙は、本物件を単位制、通信制高等学校の学習センターとして使用するものとしているわけです。
 今、お話がありましたのは都の訓練なんですけれども、これは、こことの契約の中には入っていないんですけれども、それはどういう説明になりますか。

○穂岐山事業推進担当部長 先ほどお話しの契約につきましては、区と民間との間の契約でございまして、都は関知する立場にないというふうに考えております。

○清水委員 しかし、区とコーチング・スタッフとの契約というのは、通信制高等学校の学習センターだという契約になっているんですね。それで、この賃貸借契約の九条で、この指定用途以外に使用しないというふうに定められているわけです。これについてどう考えますか。

○穂岐山事業推進担当部長 繰り返しになりますが、区と民間との間の契約であり、都は関与する立場にないというふうに考えております。

○清水委員 この契約というのは、東京都が行っている民間訓練というのは、明らかにこの契約に違反しているというふうに認識していますか。

○穂岐山事業推進担当部長 訓練は適切に実施されておりまして、契約は適切に履行されているというふうに考えてございます。

○清水委員 何いってるんですか。おかしいじゃないですか。だって、契約した先と、今、行っている場所とは、新宿区の旧新宿区立淀橋中学校の校舎を使ってやっているんですけれども、新宿区との契約では、ここは高等学校、学習センター以外には使わないよという契約になっているわけでしょう。それが都の委託訓練がされているということを、じゃあ、承知していたんですか。

○穂岐山事業推進担当部長 区と民間の関係につきましては、承知しておりませんでした。そういった意味で、先ほど区と民間との契約であり、都は関与する立場にはなく、そういった意味合いにおいて承知していないというふうにお答えした次第でございます。

○清水委員 そうすると、区とコーチング・スタッフという株式会社との契約に、今、入っている民間の訓練、これは明らかに違反しているというふうに認識しますか。

○日請雇用就業部長 私どもが委託契約しておりますのは嘉榮学園という法人でございまして、そこと委託訓練契約を結んでおります。
 その契約の中身は、訓練場所は受託者が責任を持って確保するとなっておりまして、新宿区と契約をされている会社とは、都とは契約関係もその他の関係も一切ございませんので、私どもは区とその会社との関係に関与する立場ではないというふうに思っております。

○清水委員 私たちが新宿区に確認すると、新宿区も、この事実をお知らせしたら知らなかったということをいわれていました。新宿区としては、すぐに調査するというふうにいわれたんです。
 都として、嘉榮学園と契約したんだから、それが違反の場所で訓練をしていようとかかわりないというのはおかしいじゃないですか。すぐ調査すべきじゃないですか。

○日請雇用就業部長 私どもが契約しておりますのは嘉榮学園でございまして、この契約の中身がいろんな理由で履行できないということであれば、私どもとしても契約に基づく対応をしたいと思っておりますが、先生がおっしゃっているのは、新宿区と民間企業との関係でございますので、私どもが調査、その他の関与をする立場にはないというふうに思っております。

○清水委員 嘉榮学園が経営する渋谷外国語専門学校は、中野区で五つの学科について届け出がされています。中野区でやっているものについてはね。しかし、この新宿ITセンターについては、新宿区に対して、ここで専門学校としての届け出がされていないし、分室なりの届け出もされておりません。委託契約として瑕疵があるといわざるを得ないと思いますが、どうですか。

○日請雇用就業部長 私ども、委託契約の中では、受託者が、訓練場所は受託者の責任で確保すると、こういう内容になっておりまして、瑕疵はないというふうに思っており、現在、確保されているというふうに考えております。

○清水委員 実際には届けなければいけないものが届けられていないわけですから、瑕疵がないということにはならないんじゃないですか。
 都が委託すれば、もうそれでそこがやっているんだということが、この無責任な民間委託から発生した問題だと思うわけです。それでは、新宿区の調査で、これが明らかに契約違反だと、契約違反というか、賃貸借違反だということになったら、訓練はどうするんですか。

○日請雇用就業部長 私どもは、私どもの委託契約が履行できないというようなことになれば、私どもの契約に従って対処したいというふうに考えております。
 新宿区と業者との賃貸借契約につきましては、うちが関与する問題ではないというふうに思っております。

○清水委員 契約した民間業者との間の問題だということについて、都として何も問題がないんだということは許されないというふうに思うわけです。これまで、委託訓練というのは、二〇〇七年度からの市場化テストを受けて、二〇〇九年度から本格実施に至りました。その市場化テストは、サービスの向上とコストの縮減を図るとか、民間で同種のサービスが行われて、競争原理にさらすということによって、官と民が競争してサービスの質の向上とか効率性が期待できるというものを対象に実施として開始されたわけですが、私たちは市場化テストの当初から問題点を取り上げてきました。
 入札で最高得点を獲得した民間の事業のアンケートでは、教材や授業の進め方やカリキュラムの見直しを求める声など、事業そのものにかかわる指摘も多かったんです。就職率も五〇%に達せず、改善指導とされた点などです。
 ところが、東京都は、二〇〇八年八月、モニタリング及び事業実施後の評価として、民間委託でも同程度の効果が、結果が得られたとして、今後、民間委託を進めていくと報告書をまとめて、二〇〇九年度から本格実施に至っています。
 私は、今回、そちらは民間のことだといわれますけれども、しかし大変な問題点だというふうに思います。ずさんだったということは、監督責任ということは明らかだと思います。
 さらに、今後も自前の職業訓練を統廃合する計画を進めるのではなくて、安易に民間委託を拡大することはやめて、みずからの施設、設備、人材を活用する直営の公共訓練を拡充する方向に切りかえるべきです。
 仮に、民間委託を行う場合は、対策として、選定の経過、実施後の状況など、一般の訓練と同様に情報を公開すべきことを要求しておきます。
 次に移ります。
 すべての世代が影響を受けて就職が困難になっていますが、特に深刻なのが、これから社会に出ようとする新規学卒者の就職の問題です。
 来年三月に学校を卒業する学生の就職内定率の現状については、まだ国の発表がありませんが、求人が減少していることに加え、昨年度、就職留年した人や卒業後に就職活動を継続している人が全国で十一万人にも上るという調査結果もあることから、間もなく厳しい結果が出てくるのではないかと懸念しています。
 民間研究所の発表によれば、来春卒業予定者の大卒求人倍率は、全体では一・二八倍ですけれども、従業員三百人未満の中小企業では四・四一倍です。一方で、従業員五千人以上の大企業では、求人倍率は〇・四七倍にとどまっています。経営悪化のもとでも大企業は利益を確保し、内部留保を積み上げている状況があるわけですから、新卒者の採用数を絞り込む必然性はありません。
 かつての就職氷河期時代に企業が新卒採用を絞り込んだために、社員の年齢構成に大きな穴ができ、企業としても困っているというようなことを耳にします。現在のような状況が続けば、また同じような問題が起こり、後々社会的に大きな影響が出てきかねません。
 そこでお伺いしますけれども、大企業に対し、新卒採用をふやすための働きかけを知事を先頭に行うべきだと思いますが、どうですか。

○日請雇用就業部長 新卒者の求人の拡大のためには、先ほど申し上げましたが、政府の実効性ある経済対策のもとで、雇用の創出が図られることが不可欠というふうに考えております。しかしながら、現在の厳しい状況を踏まえまして、都としては、可能な限りの対応を実施することが必要でございます。
 このため、既に東京労働局と連名で、都内経済団体に対しまして、新規求人の拡大について要請を実施しているところでございます。

○清水委員 私は、これまでも繰り返しいってまいりましたけど、知事自身が、こういう状況の中でその先頭に立って、行動を起こすべきだということをいっているわけです。加えて要望しておきます。
 去る十月四日には、NHKの朝のニュースを見られた方もいるかと思いますが、帝京大学の就職支援の取り組みが紹介されていました。厳しい就職環境に対応して、特徴のある支援を行っているようなので、早速、私は帝京大学を訪問して話を聞いてきました。
 具体的には、これまで有料で販売していた履歴書用紙を、キャリアセンターで無料で配布することで、学生との接触機会をふやすということに始まり、就職活動中の全学生の連絡先を把握して一人一人に電話したり、保護者向けの就職ガイドブックを新たに作成、配布することにより、親にも就活への理解を深めてもらう仕組みづくりなどを行っていることがわかりました。また、大学独自に、学内での企業説明会なども積極的に実施していました。
 就職活動を主体的に進めている人のことは、大学でも把握できますけれども、活動が進んでいない人や、活動がうまくいかずに悩んでいる人にコンタクトをとることは、かなり大変なことです。もちろん行政がそこまで踏み込むことは無理であり、大学みずからが学生の連絡先を把握し、きめ細かいフォローを行うことは非常に重要だというふうに思います。
 また、学生が企業を選択する際には、どうしても、コマーシャルで見た企業であるとか、商品のメーカーであるとか、身近に知る機会が多い大企業になりがちです。何とかして採用意欲のある中小企業にも目を向けてもらうことが必要であり、学内での企業説明会を実施することで中小企業の魅力を知ってもらう取り組みや、保護者にも企業のことをよく知ってもらい、応援してもらう取り組みを大学が行うということは、非常に有効だというふうに思います。
 ことし、多いようですけれども、百社、二百社回っても内定がとれないという学生が本当にたくさんいるという実態があって、本当にそういう学生の相談に乗りたいということをいっておられました。中には、自分が社会から相手にされないんだと思い込んでしまう学生も生まれているそうです。昨年より六割も七割も減っている求人という実情だからこそ、就職活動について相談できるような居場所、就職支援が必要だとのお話を聞き、そのとおりだというふうに思いました。
 そうした中で、独自に十分な取り組みを進められず、支援を必要とする大学には、大学間の格差を補うために、また、実施しているところでもさらに充実できるよう、都としての支援を行うことが求められていると思いますが、どうでしょうか。見解を求めます。

○日請雇用就業部長 大学生の就職支援は、大学本来の役割というふうに考えておりますが、しかしながら、学生の多様なニーズに対応できないなどの理由から、行政に支援を希望するという大学もございます。
 こうした要請がございましたところにつきましては、しごとセンターにおけるノウハウを活用しまして、都が支援を行うというふうにしております。具体的には、しごとセンターが就職支援アドバイザー等を大学に派遣いたしまして、キャリアカウンセリングやセミナーを実施することによりまして、大学生の就職支援の充実を図っております。
 今年度は、九月末時点で、十五大学からこうした依頼がございまして、延べ千三百十四人の大学生を対象に、キャリアカウンセリングやセミナーを実施しております。今後とも、大学側の要望を踏まえながら、適切に対応してまいります。

○清水委員 都がやっていることは重要なことだというふうに思います。しかし、用意した施設に、こちらに行きなさいという方は、就職活動を熱心に行っている人なんですよね。そうでない人にも、本当にことしの状況というのは目を向けなきゃいけないよというのが、この帝京大学の取り組みなんですよ。連絡の来ない学生に何度も何度もメールを送ったり、携帯電話の番号を知らせてくださいと、そうすればこっちから情報を発信しましょうという、そういうきめ細かい体制をとってきたわけですよ、大学が独自で。そういうところで国の方も、多少の企業説明会の支援をしていると。都のことを聞いたら、そういういろんなところは紹介しているけれど、直接支援はないということなので、私はそのことも、ことしの重要な問題として認識していただきたいということを申し上げているわけです。
 今後とも、大学の要望を踏まえながら、その取り組みをサポートしていただきたいと思います。新卒のときに正社員で就職ができないと、その後の正社員就職は極めて難しくなるという新卒一括採用の問題もありますが、根本的にはこの見直しが必要ですが、当面、今回、私が紹介し、取り上げた、卒業時に一人でも多くの学生が希望に合った就職が可能となるように、都としても総力を挙げて取り組んでいただきたいということを要望しておきます。
 次に、区市町村が実施する、若者の就業支援に対する東京都のサポートについてです。
 私は、区市町村に、独自に取り組みを行っていますかということを調査いたしました。そうしたところ、現在、十五区九市一町が、就業支援や地域若者サポートステーションの設置、青少年の健全育成事業などの若者向けの何らかの事業を実施していることがわかりました。地域の身近なところで支援が受けられれば、若者にとっては大変便利であります。いろいろな選択肢が広がるわけです。就職につながる確率も高くなると思います。
 独自に熱心な取り組みを進めている区市もありますが、中には雇用関係の担当課がまだ設けられていないというところも多く、地域での取り組みをさらに活発化するためには、区市町村へのこれまで以上の都の支援が必要となっています。都は、区市町村の就業支援の取り組みを直接支援するべきだというふうに考えますが、どうですか。

○日請雇用就業部長 しごとセンターにおきましては、都内各区市町村が各年齢層の求職者を対象として、就職を支援するために開催いたしますセミナー、あるいはイベント等に対しまして、就職支援アドバイザーを講師として派遣する支援事業を実施しております。
 若年者向けといたしましては、各区市町村の希望に応じまして、求職活動支援セミナー、あるいはキャリアカウンセリングに講師を派遣しているところでございます。
 二十一年度は、五区六市から要望がございましたので、この要望にこたえまして、個別カウンセリングや適職診断、応募書類の書き方、面接対策などのセミナーの支援をしてまいったほか、就職説明会のサポートなどを行ってきたところでございます。

○清水委員 ある市の、その市は雇用関係は産業政策課が担当していたんですけれども、担当者と意見交換した際には、東京都が実施する補助事業については十分な説明の機会があるけれども、都の単独事業についてはなかなか周知されないと--そちらは区市町村に説明しているというふうにいわれるかもしれませんけれども、そういう感想を聞いてまいりました。しごとセンターの支援事業とか、区市町村が活用可能な就業支援のいろいろな取り組みを行っているわけですから、その情報を適切に周知しているのかどうかということについてお伺いいたします。

○日請雇用就業部長 先ほど申し上げました、しごとセンターにおける区市町村の支援事業、あるいは都が実施している各種の就業支援事業につきましては、毎年度初めに各区市町村の担当者が参加いたします連絡会議で周知を図っているところでございます。
 このほか、各種事業の実施に当たりましては、随時資料を送付いたしますとともに、必要に応じて説明会を行うなどの方法で事業の周知を図っているところでございます。今後とも、こうした方法で周知してまいります。

○清水委員 雇用対策については、これまで国や都の仕事であるという認識で、区市町村なども本腰を入れて取り組んでいなかったところも多かったんですけれども、現在の厳しい雇用情勢の中では、そうもいっていられないという状況になっています。
 私が行った市では、来年度の中小企業の重点政策は何ですかというふうに最初にお聞きしたところ、雇用ですというふうに答えられたんですね。来年度においても、各区市町村において、本当に雇用対策が政策の中心になってくるんだなというふうに実感したわけです。
 都は、さまざまな事業を展開する中で、効果の高い事業の実施を模索しているというふうに思っていますが、東京都独自の先ほどの機関もあるし、経験とかノウハウとか、これを区市町村に生かしていただきたいというふうに思います。
 区市町村みずからが踏み込んだ取り組みを行うことが求められますけれども、幅広く連携し、都内全域の就業支援対策の底上げを図っていただきたいというふうに求めておくものです。
 次に、中小企業勤労者サービスセンターについてお伺いいたします。
 勤労者福祉は、安心して働くことのできる労働条件や環境の整備の一つであり、働く人がその能力を十分に発揮する上で、大変重要なものであると考えています。
 特に大企業と中小企業との福利厚生の格差の是正というのが、就職活動を進める上でも重要だなということを改めて感じたわけです。こうした事業目的を掲げて、全国各地においては中小企業勤労者サービスセンターが設置されてまいりました。中小企業単独では実施が困難な健康診断とか人間ドック利用などの助成、それから、レジャー施設の割引サービスなどの提供などを、中小企業の事業主と従業員を会員として実施しているわけです。
 サービスセンターは、中小企業に勤務する勤労者に対し、さまざまな福利厚生事業を行い、職場環境の整備に大きく寄与しています。国は、二〇一〇年度限りで、このサービスセンターに対する助成を廃止するというふうに聞いていますが、本事業の運営にとって影響は大変大きなものがあるというふうに思います。
 そこで、中小企業勤労者のための共済事業や福利厚生事業を実施するサービスセンターに対するこれまでの国や都の支援策をお伺いいたします。

○日請雇用就業部長 サービスセンターに対します支援策でございますが、中小企業の福利厚生の実施に関しましては、中小企業勤労者福祉サービスセンター、あるいは東京都中小企業振興公社が実施しておりますジョイランドなどのサービスが代表的なものというふうになっておりますが、このうち都内のサービスセンターは、各区市が主体となって設立されているものでございまして、現在、十九区十二市に設置されております。
 これらのサービスセンターは、中小企業の事業主と従業員を会員といたしまして、事業内容といたしましては、会員の不慮の事故、傷病等に対する給付事業、健康増進のためのスポーツ施設の利用あっせん、宿泊施設や遊園地等の利用割引、財産形成等、幅広い事業を取り扱っているところでございます。
 国と都は、各区市に対しまして、サービスセンターの運営に係る経費について期間を限定した補助を行っておりまして、国は、その補助対象とする経費の二分の一、都は、市に対しては四分の一、区に対しましては都区財政調整制度の中で算定することによって支援しているという状況でございます。
 補助期間につきましては、具体的には、平成十四年度までに補助指定を受けた区市に対しましては十五年間、平成十五年度以降に新規指定されました区市につきましては十年間というふうにいたしておりますが、国は平成十八年度に補助制度の見直しを行いまして、新規の補助区市の指定を停止いたしましたほか、既に補助対象としていた区市に対しましても、平成二十二年度限りで補助を停止するというふうにしているところでございます。これによりまして、一区三市が補助打ち切りの対象となる予定となっております。

○清水委員 昨今の厳しい経営環境のもと、特に中小企業の福利厚生費の削減が進んでいる結果、サービスセンターの中には会員数の減少により資金不足が生じるなど、厳しい財政運営を迫られているところもあります。
 今お話、ご説明がありましたが、今回の国の補助廃止は大きな痛手となるかと思います。このような状況に対して、都として支援を充実させる必要があると考えますし、また、国に対してもサービスセンター事業の補助を働きかけるべきと考えますが、どうでしょうか。

○日請雇用就業部長 サービスセンター事業の運営は、国や都からの財政支援終了後は自立して行われるというふうにされております。これまでに、先ほど申し上げましたが、十九区十二市にサービスセンターを設置しておりますが、このうち十七区九市については、既に国、都ともに補助期間が終了いたしまして、それぞれの努力によりまして自立化が図られているところでございます。
 現在、国と都の補助を受けている二区三市につきましても、それぞれが策定いたしました自立化推進計画に基づき、事業に取り組んでおります。
 こうした取り組みに対しまして、都は、自立化を支援していくこととしておりまして、サービスセンター事業を都内中小企業に広く普及させるために、周知用リーフレットやポスターの作成、配布を都独自で行っておりますほか、サービスセンターの健全な経営に向けての事業の共同化、会員の拡大、公益法人化の説明会等を開催するなどの支援を実施しております。
 また、国に対しましては、平成十五年度に設定いたしました補助期間が終了するまでの間、補助を実施するよう要望しているところでございます。

○清水委員 八王子市では、会員が約六千数百人いらして、それで一人企業から四人企業までが六割、七割、中小零細企業の方々が圧倒的な会員さんなんですね。
 やはり一人のところは採用というのはないかもしれないけれども、四人程度のところは、そういうところに採用していく、来てもらうわけなんですけれども、そういうときに福利厚生がどうなっているのか、そういうものを今の若者って見ると思うんですよ。親だって福利厚生がどうなのというようなところを見るわけですよ。
 ですから、やっぱり小さいところ、区市町村の仕事だというけれども、しかし、一つ一つの企業は、全部東京都の企業の中の一社になるわけですから、やはり東京都としても--やがては国からも都からも財政支援がなくなってしまうという区市のサービスセンターについて、何らかの支援をお願いしたいし、来年度の市長会の要望の中にも、これが触れられていましたので、私はそれを見て、自分で実感したわけです。私たちが東京都にいわなきゃいけないなということを思ったわけです。
 最後に、買い物難民についてお伺いいたします。
 国は、地域生活インフラを支える流通のあり方研究会を立ち上げて、五月に報告書を公表しました。この中で、商店街の衰退や大型店の撤退で、いわゆる買い物難民と呼ばれる高齢者が全国で六百万人に上ると推計しています。
 国としての初めての提言がされましたけれども、これをどう認識しているのか、お伺いしたいと思います。

○山手商工部長 お話しの国の提言は、買い物に不便を感じている方々について、全国の状況を踏まえ、まとめられたものと、こういうふうに認識してございます。

○清水委員 国の提言では、買い物弱者が六百万人というふうにいわれているわけですけれども、あくまで推計値であり、実態把握には至っていません。
 さらに、国の報告書では、都市近郊の団地などでも問題化しているというふうにも指摘しています。都内でも、私が把握した範囲なんですけれども、小金井市、青梅市、福生市、日の出町などはそうかもしれません。立川市、昭島市、そして二十三区でも文京区、新宿区などでも、そういう地域が、今のところ把握した中でも出ています。
 その実態というのは、タクシーで商店まで行き、帰りは荷物を宅配便にお願いしているとか、八十歳になっても免許が返上できず、車でないと行けないとか、スーパーに行けない高齢者はコンビニしかなくなり、生鮮三品の購入ができないとか、団地の坂道の行き来がとても大変などという--私のところで把握した中にもあります。
 また、三鷹市では、第三回定例会で、「買い物難民」を生まないため地域経済に欠かせない商店街を守り、振興することを求める意見書というのを採択しているわけです。私は、都として、都内におけるそういう地域が、これは地方の問題だというふうな認識でなくて、実態についてきちんと調査することが重要だというふうに思います。
 今、都は商店街調査を、三年に一度の調査を行っているということですから、ちょうどことしがその年だというふうに伺っているわけですが、調査項目に、その一項目、入れるというふうな事項があるんでしょうか。

○山手商工部長 都はこれまでも、地域の実態を十分に把握した上で、商店街の振興に強力に取り組んでおります。買い物難民については、地域社会により身近な区市町村がその実態を把握するなどの対応を行うことが適切と考えてございます。今年度実施を予定している商店街実態調査において、買い物難民に関する調査を行う予定はございません。

○清水委員 そういう考えじゃなくて、今、国もそういう方向でいろいろ動き始めたわけです。そういうものをいち早くつかんで、都として、地方の問題もありますけれども、しかし、実際には私だっていっぱい聞いているわけですよ。ですから、やはりこういう調査項目に入れるべきじゃないかなというふうに思うわけです。
 このことについては、第二回定例会の文書質問で質問させていただいていますけれども、その際、買い物難民に対する支援策は、新・元気を出せ商店街事業で対応しているんだという回答でした。高齢者にとって、身近なところに商店街が存在していることは極めて重要です。商店街における高齢者の買い物支援策の取り組みへの支援を、さらに充実させるべきなんです。
 幾つかの自治体では、生鮮品を中心に地域住民の台所としての機能を果たしている、いわゆる公設市場がビルのフロアなどを活用して設けられたり、また、食料品、日常生活に必要不可欠な商品を安定的に供給できるという公設市場などをつくっているところがあります。空きスペースや商店街の空き店舗を活用した公設市場の設置などについて支援すべきだというふうに考えますが、どうですか。

○山手商工部長 既に、新・元気を出せ商店街事業などのさまざまな商店街振興施策を通じまして、地域の住民の方々が便利で安心して買い物ができるような対応を進めてございます。空き店舗の活用についても必要な支援を行ってございます。

○清水委員 国の報告書の中には、いろいろな例が今、出ているわけなんで、行政が主導して買い物サービスを代行するNPO法人の設立を支援するとか、商店街の取り組みだけでなくて、個人、NPO法人などが買い物支援の取り組みを行う場合の支援の仕組みを検討するということも重要だというふうに思います。
 世田谷区で取り組んでおられますコミュニティバス事業などは、高齢者の買い物の貴重な手段となっているし、文京区などでは、区の支援のもと、商店街が運送業者と連携して宅配事業に取り組むなど、高齢者の買い物支援の取り組みを開始しています。
 この問題は産業労働局だけでということではなくて--国でも経済産業省を初め総務省、農林水産省、国土交通省が連携して提言を検討していますが、都においても、産業振興という視点だけではなくて、福祉保健局、都市整備局などと連携して横断的に取り組む体制を整える必要があることを要望しておきます。
 最後に、新・元気を出せ商店街事業の特定施策推進型商店街事業についてです。
 老朽化した街路灯電柱の交換は、特定施策推進型商店街事業を活用していましたが、今年度から電柱の交換は補助対象外とし、LEDランプの交換に限定してしまいました。これは商店街支援に逆行するものだとして、私たちは、本年度の特定施策推進型商店街事業の申請開始に当たり、五月に、老朽化した街路灯電柱の交換についても、これまでどおり特定施策推進型商店街事業の対象にすべきだという主張をしてまいりました。
 本年度、何件の商店街から申請があり、何件が決定したのかお伺いいたします。そして、こうした私たちの要望に対して、どのような検討をしてきたのかお伺いします。

○山手商工部長 今年度、特定施策推進型商店街事業におきまして、LEDランプの交換は七十九件の申請がございまして、今年度からLED街路灯の補助対象をCO2削減に直接つながるランプ交換に重点化いたしまして、都が進める地球温暖化対策をより一層推進することといたしました。
 街路灯電柱を、この特定施策推進型商店街事業で今後も補助対象とする考えはございません。(清水委員「確定件数」と呼ぶ)七十九件でございます。

○清水委員 この問題については、先ほど紹介した東京都市長会からも、耐用年数を大幅に超えている街路灯が多数あり、災害時において倒壊などのおそれがあることから、LEDランプの交換だけでは対応できないのが現状である、そのため、災害対策及び消費電力削減に伴う温室効果ガス排出量の削減に寄与するため、当該街路灯の設置を補助対象に復活するよう図られたいという来年度要望も出されています。現場からの貴重な意見を踏まえて、真摯に対応することを強く望み、質問を終わります。

○田の上委員 私からは、森林資源に関して、それから障害者雇用に関して質問をしてまいります。
 木材の生産量と価格は年々減少し、林業生産活動が停滞する原因となっています。伐採してもお金にならない。それは、伐採放置林や管理放棄林の増大を引き起こします。また、さらに間伐材や枝葉の利用は利潤が生まれにくいことからなかなか進まず、間伐材が除去されずに残され、荒廃した民有林が課題となっています。
 産業労働局は、森づくり推進プランにおいて、森林整備と林業振興について体系的に計画を立てて取り組み、「十年後の東京」実行プログラムの森林の循環再生プロジェクトでは、森林の循環の回復に取り組んできていると認識しております。
 東京都では、年間一千ヘクタール程度のエリアで杉、ヒノキを間伐していると聞きますが、間伐材が搬出される森林は、面積に換算して約三十ヘクタールしかありません。林道網のさらなる整備が必要なことや、搬出経費が高いことが間伐材を搬出できない原因となっています。
 木材供給を促進することは、林業の再生だけでなく、健全な森林保全に貢献します。間伐材や枝葉を活用した資源循環の受け皿については、さまざまなアイデアが提起され、技術開発が行われています。
 資源循環の受け皿として、今まで余り利用されてこなかった間伐材や枝葉が積極的に活用され、需要が多くなれば、放置されている間伐材を取り除き、健全な森林を取り戻せるのではないかと考えます。間伐材や枝葉の利用について、既に取り組んでいることがあればお聞かせください。

○保坂農林水産部長 都では、手入れ不足の込んだ森林を間引きして、優良な木材の生産と水源涵養などの機能を維持増進するため、間伐を実施しております。
 搬出された間伐材の用途でございますけれども、細い木や曲がった木では、植栽木の支柱や木さくなどの資材として、また、チップ加工して燃料や遊歩道の敷材として使われているほか、他の産地では、木とプラスチックとを原料にした合成木材が生産されており、デッキなどの外構工事に使われるなどの事例がございます。
 また、多摩の杉やヒノキの人工林の多くは、三十年代から四十年代に植えられており、木材として利用可能な林齢になっております--木の年齢です。こうした森林から伐採される太い木は、柱材などの通常の建築用材としても利用されており、都では、このような間伐材の利用を促進するために、搬出に対する助成制度を設けておりますが、多摩の地形が急峻なことや、小規模所有者が多く、小ロットのために、搬出コスト高となり、条件のよい一部の森林でしか進まないのが現状でございます。また、お話の枝葉のことでございますけれども、非常にかさばることから重量当たりの搬出コストが極端に高くなるため、搬出されておりません。

○田の上委員 例えば活性炭は、既にごみ焼却施設などにおいてダイオキシン類除去に利用されていますが、間伐材や枝葉を活用し、消臭やダイオキシン吸着としての効果のある活性炭をつくれば、東京都の下水道施設やし尿処理施設などで石炭系の化石燃料から森林資源を活用した活性炭利用へと変更することもできるのではないかと考えます。
 また、先ほどチップを遊歩道の敷材として使っているというお話もいただきましたが、森林資源を活用したウッドミックス舗装で、公園などの遊歩道をコンクリート舗装から資源循環の道へとしていくことができるのではないかなど、さまざまな活用が考えられます。間伐材や枝葉の有効利用で需要を拡大するために、今後、さらに受け入れ先の拡大に取り組んでいく必要があると考えますが、ご見解をお聞かせください。

○保坂農林水産部長 委員ご指摘のとおり、間伐材の有効利用は望ましく、既に全国各地でその活用に向けた研究に取り組んでいると聞いております。しかしながら、先ほど申し上げましたとおり、間伐材を有効活用するためには、まず、間伐材を搬出することが前提となります。そのため、東京都では、平成二十一年度から森林の循環再生プロジェクト事業を開始し、伐採搬出に不可欠な林道を重点的に整備するとともに、小規模森林所有者を集約化するなど、施業の効率化に向けた支援を実施してまいります。

○田の上委員 間伐材などの受け入れ先をふやすことで搬出を促す、それと同時に、搬出するための林道整備をするという二つの側面が重要だと考えます。
 ですので、おっしゃるとおり、森林の整備を促進するために、基盤となる林道や作業道の整備が不可欠だと考えます。森林の循環再生プロジェクトでは、林道を重点的に整備するとされていましたが、どのように行われてきたのか、その整備、進捗状況について教えてください。

○保坂農林水産部長 これまでも、森林整備と木材生産にとって不可欠な基盤である林道整備を進めてまいりましたが、さらに林道の整備を加速するために、平成二十一年度から、先ほど申し上げました森林の循環再生プロジェクトを実施しております。
 森林の循環再生プロジェクトにおける平成二十一年度の林道整備の実績は、八百六十六メートルでございます。今年度につきましては、昨年度実績の約三・五倍の三千メートルを予定してございます。これに従来の林道整備事業を加えますと、約四千七百メートルの整備を予定しているところでございます。

○田の上委員 林道整備は、所有者との話し合いも含め、なかなか簡単に進むものではないと思っておりますが、引き続きご努力をいただきたいと思います。
 多摩産材の活用では、今までにも産業労働局がさまざまな分野に広げてきたと認識しております。先ほど申し上げました間伐材や枝葉の活用幅がさらに広がれば、間伐材の搬出を促し、森林整備及び森林保護が進むものと考えますので、林道整備も含めて、業界の方々との話し合いを進めながら、今後とも、東京の貴重な資源である森林の整備及び保護に努めていただきたくお願いいたします。
 続きまして、次の質問です。
 民間企業の障害者雇用率平均は、以前に比べれば大分改善されたとはいえ、平成二十一年六月で東京都が一・五六%、全国では一・六三%で、いずれも一・八%を下回っている状況です。
 そんな中、障害者の雇用の促進等に関する法律が改正され、平成二十一年四月より施行されました。ことし七月からは、障害者雇用納付金制度の対象が常用雇用労働者二百人を超える事業主にまで拡大され、平成二十七年四月からは、さらに常用雇用労働者百人を超える事業主にまで拡大されることになります。今までは大企業にしか課されていなかった雇用の義務が、段階的に百人以上の規模の事業主にまで課されるということです。
 また、それに伴って、週二十時間以上三十時間未満の短時間労働者も〇・五としてカウントされるようになりました。障害者の就業希望の増大に伴い、就労先も開拓しなければならない中、雇用促進のための法改正です。
 産業労働局では、東京ジョブコーチ支援事業や、特例子会社設立支援事業、中小企業障害者雇用支援助成事業などの雇用促進策があります。国のさまざまな雇用促進の事業や助成金などとともに、障害者雇用を進めるものです。
 そこで質問いたします。猶予期間としての減額特例が五年間あるとはいえ、平成二十七年には百人以上の規模の事業主にも事実上、障害者雇用が義務づけられるわけですが、本格的な景気の回復が見られない中、また、円高の影響の中、苦しんでいる中小企業は、リストラをしたり経費の削減を図ったりと大変な状況です。
 都がこれまで、企業に対して障害者雇用の理解に努めてきた経緯はわかりますが、現実的に障害者雇用にまで手が回らない中小企業に、どのように障害者雇用を促していくのか、お考えをお聞かせください。

○日請雇用就業部長 都内におけます障害者雇用のすそ野を広げるためには、障害者雇用が進んでいない中小企業への支援が重要であるというふうに認識しているところでございます。
 このため都は、障害者雇用の促進に資するための諸制度の周知、あるいはノウハウの提供、定着支援等の取り組みを行っております。また、国は、障害者を雇用する中小企業に対しまして助成金を支給しておりますが、都では、この国の助成金の支給終了後におきましても、引き続き、障害者雇用を継続する企業に対しまして、賃金の一部を補てんする助成制度を実施しております。
 具体的には、国の助成金支給終了後、最大で二年間、重度障害者等につきましては月額三万円、それ以外の方につきましては月額一万五千円を事業主に対しまして支給するものでございます。こうした施策によりまして、都内の中小企業における障害者雇用の促進に努めてまいります。

○田の上委員 国や都のさまざまな助成金もありますが、余り周知されていないとも聞きます。規模の小さい企業への取り組みには、特に助成金などの制度のさらなる普及に努めていただきたいと思います。
 私もいろいろヒアリングを重ねてまいりましたが、障害者のデイサービスの事業所でさえ、障害者雇用によって費やす時間や労力は、実際は大変なものだといっております。国の賃金助成とあわせて、中小企業障害者雇用支援助成金の月額一万五千円を受け取ったところで、こんな不景気で大変な中、中小企業がやっていけるのかというような懸念があります。
 法の方向性として、規模の小さい企業が対象になるのは当然の流れですが、現実的には乗り越えなければならない課題が多いと思います。そこで、今後の雇用促進の課題と解決策を模索するために、中小企業に対して障害者雇用に関するアンケートなどを実施し、検討材料としたらどうかと考えますが、いかがでしょうか。

○日請雇用就業部長 現在、雇用に当たり、困難性の高い方を雇用する企業に対しまして、雇用管理に関する意識調査を実施いたしております。これにより、障害者を採用する上での課題、あるいは雇用管理に当たっての課題等について把握することとしております。
 この調査は、都内三百社の企業を対象に実施しておりまして、その結果をもとに、年度内に障害者雇用促進のためのリーフレットを作成し、普及啓発に生かしてまいりたいというふうに思っております。

○田の上委員 困難性の高い方を雇用する企業に対して調査を行っているとのことですが、今後、一番課題になってくるのは、大手よりも中小企業であります。実際に中小企業が障害者雇用を進めるためにどうしたらよいのか、中小企業の生の声を聞くための取り組みが必要と考えますが、その点についてはいかがでしょうか。

○日請雇用就業部長 今年度から、東京しごと財団におきまして、障害者雇用企業等ネットワーク構築事業を実施しております。この中で、企業の労務管理者同士が障害者雇用に関する疑問点などを議論する連絡会を開催しておりまして、都は、この会議を通じて雇用促進に向けた課題の把握を行っております。
 本年七月に開催されました第一回の連絡会では、中小企業も参加して、障害者を雇用する企業の現場が直面する課題などにつきまして意見交換が行われたところでございます。

○田の上委員 意見交換された課題などをぜひ生かしていっていただきたいと思います。また、冒頭、東京都の雇用率に触れさせていただきましたが、今まで雇用率未達成の企業がなぜ達成できなかったのか、原因を探っていくべきだと申し上げます。
 障害者雇用促進法は、雇用促進を図るためとはいえ、事業主に対する義務づけの法律です。もちろん、雇用促進の第一歩として義務づけから入るのは順当ですが、さらに考えていかなければならないことがあります。
 雇用率は、身体障害と知的障害の重度障害者を週三十時間以上で雇用すると二カウントですが、重度でなければ一カウント、週二十時間から三十時間だと〇・五カウントです。こうした計算のもと、軽度の知的障害の方が雇われにくいと聞いたことがあります。法定の雇用率を満たすために雇用するだけで、生産システムにカウントしていないため、こういった状況が起きるのではないかと考えます。
 いろいろヒアリングを重ねていくと、障害を持った方たちは、就労したはよいが続かない、やめてしまうことが多いと聞きます。企業側は単に雇っただけで、実際には企業を支える、働く一員になっていないため、精神的に続かない、コミュニケーションが図れないなどという問題があるようです。
 障害者雇用を進めるに当たって、企業向けのシンポジウムやセミナーなども開催されていますが、社会でバリアフリーやユニバーサルの普及ができていない中、企業側に認識が不足しているのは否めません。
 現実的に申し上げれば、障害は就労においてハンディキャップであり、その事実も込みで雇用する意識がなければ、障害者就労、障害者雇用は形だけになってしまうのではないでしょうか。インクルージョンの考え方など、啓蒙、啓発を含めた企業への働きかけをするべきだと考えますが、ご見解を伺います。

○日請雇用就業部長 障害者雇用の促進に当たりましては、雇用の受け皿でございます各企業に対します意識啓発、あるいは情報提供が必要でございます。
 特に、平成二十年に障害者雇用促進法が改正され、法定雇用率に達しない場合に課される納付金の対象範囲が拡大されましたこと等につきまして、企業の理解促進を働きかけることがとりわけ重要であるというふうに考えております。
 都では、東京しごと財団におきまして、中小企業向け障害者雇用セミナーを年六回開催いたしました。法や制度に関します周知を行っておりますほか、障害者に対する理解の促進、あるいは障害者雇用の意義についても啓発を図っているところでございます。
 今後とも、企業の意識を高め、障害者雇用の拡大に資する内容のセミナーなどを実施してまいります。

○田の上委員 意識を高めることが本来一番大切であり、義務で雇用するだけでは限界がありますので、ぜひ力を入れていっていただきたいと思います。
 就労支援に関しては、区市町村の障害者就労支援事業などの訓練を経て、一般社会での就労になるわけですが、企業システムの中の訓練ではないため、実際の就労においてギャップが生じると聞いたことがあります。
 受け入れ側も就労者も、ある程度の共通認識を持った上で就労に至るように、創意工夫が必要です。例えば、企業内研修などのような形で訓練を実施するように促すことはできないのでしょうか、ご見解を伺います。

○穂岐山事業推進担当部長 障害者雇用を確保していく上で、就労している障害者の方々の実践的な職業能力を高めていくことは重要と考えております。このため都では、区市町村の障害者就労支援事業等における訓練に加えまして、東京障害者職業能力開発校において、障害を持つ在職者の職業能力の開発、向上を促進するための能力向上訓練を実施しております。
 また、講師が企業に出向いて実施する現場訓練支援事業や、職業能力開発センターの設備、講師を活用しましたオーダーメード訓練など、企業の要望に応じた訓練を実施しており、このような訓練の中から、企業のニーズに応じて適切な訓練を提供しております。
 今後とも、職業能力開発センターの人材アドバイザーが企業訪問等を行うことによりまして、このような訓練の情報を提供し、障害者の方々に対する企業内訓練等の実施を促してまいります。

○田の上委員 現場に即した訓練になるように、企業のみならず、就労者の視点からも工夫した訓練をお願いいたします。
 厚生労働省の平成二十年度障害者実態調査によると、雇用するに当たっての課題に、従業員が障害特性について理解することができるかが挙げられています。仕事において、障害特性を理由にしてはいけないということはありますが、障害種別の知識がないと理解できない部分がたくさんあります。
 例えば精神障害の方は、一見して障害がわからないため受け入れられやすく、比較的雇用されやすいともいえると思いますが、その後問題が発生すると、双方の立場から継続が難しいとも聞きます。
 企業においても、障害特性に関する理解を高めて、雇用継続に向けての工夫が必要だと考えますが、ご見解をお聞かせください。

○日請雇用就業部長 企業におけます採用後の定着のためには、職場や障害者の方々の実情に応じたきめ細かな支援を行う必要があるというふうに認識しております。このため、平成二十年度から、研修により専門の知識を身につけたジョブコーチが障害者を雇用する企業に出向きまして、障害者の職場への適応及び定着を、最大二十日間でございますが、支援する東京ジョブコーチ支援事業を実施しております。
 今年度は、ジョブコーチの人員を昨年度より二十名増員いたしまして、六十名としたほか、新たに進行管理や困難事例への対応を行う統括コーディネーターを三名配置いたしまして、実施体制を充実させておるところでございます。
 こうした取り組みによりまして、継続雇用に向けた支援を実施しているところでございます。

○田の上委員 ジョブコーチの支援を行っていることは理解しております。しかしながら、人数の限りがあることや、二十日という支援日数が決められていることもあり、すべての対応ができるのだろうかという懸念もあります。必要に応じて延長するなどの工夫も必要ですし、先ほど例示させていただいた精神障害の場合のように、一たんは終了したジョブコーチであっても、就労の継続に当たって発生した問題に対応できるような柔軟な取り組みが必要だと考えますが、ご見解を伺います。

○日請雇用就業部長 ジョブコーチによる支援につきましては、支援対象となる障害者の特性を踏まえるとともに、受け入れ企業の実態を見きわめ、支援対象者ごとの支援計画を策定いたしまして、職場における定着を支援しております。
 当該事業では、支援日数は原則として最大二十日というふうにしておりますが、この支援期間終了後においても、新たな問題が発生した場合などにつきましては、企業や障害者の状況を踏まえまして、適切に対応しているところでございます。

○田の上委員 障害特性を理解しながら受け入れる体制づくりをしていただきたい。また、就労だけでなく、継続の視点も含めての支援をお願いいたします。
 産業労働局では、今まで国の事業を補完したり、また、新たな視点からさまざまな取り組みをしてきました。しかし、個々の事業は一貫したものではなく、福祉保健局や教育庁などと連携しながら体系的な仕組みをつくり、就労支援のみならず雇用継続に向けての取り組みをしていくべきではないかと考えます。
 受け入れ側の企業における啓蒙、マッチング、就労訓練、問題を克服し、継続就労というぐあいに、一連の流れの中で必要な支援を考えるべきではないかと思うのですが、ご見解をお聞かせください。

○日請雇用就業部長 障害者雇用の促進を図るためには、関係局等との連携を図りながら、取り組みの実効性を高める必要がございます。このため、経済団体、企業等や、あるいは庁内の関係部局等によりまして構成されます障害者就労支援協議会を開催し、障害者雇用の促進に向けた取り組みを行っているところでございます。
 また、産業労働局におきましては、福祉保健局及び教育庁とも連携して企業向けセミナーを開催しております。
 さらに、東京しごと財団を通じまして、地域の就労支援機関と連携し、職場見学会、あるいは企業合同説明会等を実施しております。
 今後とも、関係機関と連携し、効果的な障害者の就労支援を実施してまいります。

○田の上委員 ご説明いただきました細かな取り組み、対策については理解しているところです。一つ一つ必要に応じた施策を立てることも大切ですが、全庁的な障害者への理解のもと、教育から訓練、就業、心のケアまで含めた一貫した流れの中で対策を工夫していっていただきたいと思います。今後もさらなるご努力をお願いいたしまして、質問を終わります。

○鈴木委員 産業振興、雇用対策について質問させていただきます。
 一昨年秋のリーマンショックによる経済危機によって、中小企業経営や都民生活に深刻な影響が及ぶ中、我が都議会自由民主党は、中小企業への資金繰り対策や受注確保に加えて、雇用対策においても雇用創出策等の緊急対策を都に要請して、その実現を強く推進してまいりました。
 こうした取り組みによって、東京の経済は厳しいながらも回復の途上にありましたが、急激な円高や海外経済の減速等によって、景気の下振れリスクというのは強まっているというふうに私は強く感じております。
 また、雇用情勢についても、新規採用の抑制などから若年者を中心に失業率が上昇しておりまして、平成二十二年四月から六月期における東京の完全失業率は六・三%と、非常に高い水準にあるわけです。
 このように、経済雇用情勢は予断を許さない状況にあり、こうした状況が長く続けば、東京の産業を支える中小企業はさらに体力をすり減らして、経営を維持できなくなる企業が多くなるなど、この東京の産業の活力が低下することも懸念されます。
 また、働く意欲のある人材が就業できないことは、本人が不安定な生活状況を余儀なくされるだけではなくて、適切なキャリア形成の機会を得られないことにつながる重大な問題でもあります。このまま雇用環境が改善しなければ、社会全体として産業を支える人材の力が弱まり、将来の産業基盤を揺るがしかねません。
 私どもも、先般、都議会自民党ものづくり推進議連としても、十月二十日に城南地域中小企業振興センター、あるいは城南職業能力開発センター、あるいは民間の企業--溶接機や切削機など、世界の最先端製品を日本や、あるいは東京の中小企業へと紹介し続けているすばらしい民間企業の一つだと思っておりますけど、愛知産業さんという、そういうような民間の現場も視察してまいりました。
 今、この難局を打開するためには、すぐれた技術を持った中小企業や、産業を支える多様な人材など、東京の産業基盤について、現在の危機を乗り越えて、将来に向けてしっかりと維持発展させることが重要だと考えております。
 本日は、こうした認識に立って質問させていただきたいと考えております。現在、東京都が行っている中小企業への支援が、来年度予算でしっかりとレベルアップをしていっていただきたい、そんな思いを持っております。
 そこで、まず雇用対策について伺います。
 依然として厳しい雇用情勢の中、新たに就職しようとする方や、再就職を目指す方々にとっては、技術、技能の習得やスキルアップを図るための公共職業訓練は、大変重要であります。
 我が党も、公共職業訓練などにより、企業が求める人材を育成するとともに、求職者への職業支援を行うべきとかねてから主張してまいりました。
 そこで、就職しようとする方々に対して職業訓練を実施し、一人でも多くの方々を就職に結びつけていくことが一層必要となっていると考えますが、公共職業訓練の実施に当たっての都の考え方と、現在の訓練規模について、まずお伺いをいたします。

○穂岐山事業推進担当部長 職業訓練は就業に必要な能力を身につける役割を担っておりまして、ご指摘のとおり、厳しい雇用情勢の中で重要性を増してきております。
 そのため、都では、雇用情勢に的確に対応し、求職者を着実に就職に結びつけるために、職業能力開発センターが直接実施する訓練と、民間の教育訓練機関に委託して実施する訓練を組み合わせ、それぞれの特性を生かして、柔軟かつ機動的に職業訓練を実施しております。
 また、都の施設で行う訓練では、ものづくり系の科目など産業の基盤技能を支える分野や、施設、設備に多額の負担が生ずる分野などを実施しております。
 また、民間のノウハウや活力を活用する観点から、民間の実施が可能で、例えば最新OA機器などを都が長期保有することなく民間の設備が有効活用できるメリットがあるなど、大きな事業効果が認められる場合や、一度に大量の離職者が発生し、緊急に対応する必要がある場合などには、民間教育訓練機関に職業訓練を委託しておりまして、その委託する意義は大きいと考えております。今後とも、民間を活用した多様な訓練を着実に充実してまいります。
 なお、民間職業教育訓練機関に職業訓練を委託して実施する場合は、都立職業能力開発センターが民間教育訓練機関に対して情報提供や巡回指導を行うなど、効果的な実施に向けた支援、指導を実施しております。
 ところで、平成二十二年度の実施規模は、職業能力開発センターで行う訓練が五千六十人、また、民間教育訓練機関へ委託して実施する職業訓練については、急激に悪化した雇用情勢に的確に対応するため、一万六百人と大幅に規模を拡大しており、年間の合計では一万五千六百六十人を超える規模で職業訓練を実施しております。
 こうした職業訓練の積極的な展開により、求職者等を安定的な就業につなげてまいります。

○鈴木委員 年間の合計では一万五千六百六十人を超える規模で職業訓練を実施していると。今後とも、現状を踏まえて、今の施策をしっかりと進めていただきたいというふうに思っているんですが、一つ感じましたのは、せんだって城南職業能力開発センターを視察したときに、ものづくり系の訓練の拠点として、訓練生の方々が非常に熱心に勉強して、礼儀正しい姿も目の当たりにしてまいりました。
 訓練の受講は高校卒業程度となっているものが多いようですが、中学校卒業の方であっても学歴に関係なく学び、技能を身につけられるようにすることが必要であるというふうに考えております。
 特に、この城南職業能力開発センターでは、中学卒業程度の方でも、配管とか物流管理実務、ビルクリーニング管理とか、あるいは介護サービス、建築塗装等々、こういったことで、このコース、科目に対して、勉強できるということは十分理解はしておりますけれども、日本のものづくりの振興、雇用対策のためにも重要なことでありますし、意欲ある訓練生の入校については、より柔軟に対応していただくよう要望しておきたいと思っております。
 さて、雇用情勢が厳しい中、都民にとって雇用の問題は喫緊の課題です。求職者が技術、技能を身につけ、それを生かして仕事につけるように、今後も公共職業訓練の充実強化を図っていただきたいと思っております。
 一方、産業構造の変化や技術革新の進展により、産業界の人材ニーズも変化しつつあります。このような中で、求職者が円滑に就職を果たしていくためには、将来の経済成長の芽となる新しい分野で、就職につながる訓練を的確に実施することが効果的です。
 とりわけ環境や福祉の分野は、今後、地域において新たなビジネスの創造や多くの雇用が期待できると考えます。
 そこで、環境や福祉などの新規成長分野で、今後、職業訓練が実施されることが重要であると考えておりますが、都の取り組みについて伺います。

○穂岐山事業推進担当部長 環境、福祉などの成長分野では新たな雇用が見込まれることから、都としても、こうした分野で就職に結びつく職業訓練を進めることは大変重要であると認識しております。
 このため、環境分野において、水質大気測定の技術を習得する環境分析科、屋上緑化の最新知識、技能を学ぶグリーンエクステリア科等を設置しているほか、太陽光発電システム施工技術訓練等を新たに実施しております。
 また、福祉分野におきましては、介護福祉士、保育士等を養成する訓練を実施し、福祉人材の育成に積極的に取り組んでおります。
 今後とも、産業界の動向や求人ニーズを的確にとらえて訓練科目や訓練規模を設定し、一人でも多くの人材が円滑に就業できるよう、職業訓練の充実を図ってまいります。

○鈴木委員 新しい成長産業を支える人材を育成していくということは、東京の経済を支えていく上でも不可欠であります。今後も産業界の動向や求人ニーズの把握に努めて、訓練内容の充実や実施方法に工夫を凝らして、より実践的な求職者への就職支援に努めていただくことを要望しておきたいと思います。
 次に、新卒者の就職問題について、二点、質問させていただきます。
 十月一日は多くの企業が正式内定を出すということで、内定式の様子がテレビなどを通じて報じられていることを見ました。
 それで、めでたく内定を得て、就職活動を終えることができた学生がいる一方で、まだまだ多くの学生が内定をとれずに活動を続けているというのがむしろ現実ではないでしょうか。ことしの十月時点の就職率の発表はまだのようですけれども、昨年度の例からすれば、大学生の就職率は六〇%程度にとどまっているんですね。内定がとれていない学生が四割もいるわけでございます。本当にことしはもっと厳しいんじゃないか、これが本当に現実ですし、心配ですね。
 都は、こうした学生の支援をしごとセンターで行う一方で、昨年度からは、まだ内定していない、未内定の学生を対象とする大規模な合同就職面接会を新たに実施しています。今年度は、第一回目の開催を十一月に予定しているようですけれども、雇用情勢が厳しい中にあっても、学生の選択肢を広げるという意味で多様な企業に参加してもらうことが重要でありますし、ぜひ多くの企業に参加していただきたい、こういうふうに思っているわけです。
 そこで、まず、十一月に実施する就職面接会への現在の企業の参加状況はどうなっていますでしょうか、お伺いいたします。

○日請雇用就業部長 都では、未内定の新規学卒者の支援のために、人材を求める企業を広く集めました合同就職面接会を昨年度から実施しておりますが、今年度は来る十一月と来年二月の二回実施することというふうに予定しております。十一月十一日には東京ビッグサイトを会場といたしまして、第一回目の面接会を開催いたします。
 開催に当たりましては、広く企業にご参加いただくために、ホームページ、あるいは広報用印刷物による周知に加えまして、都内経済団体には会員企業への事業周知を依頼しております。これによりまして、昨年よりも五十社多い二百社が面接会に参加する予定というふうになっております。既に各企業名も公表しているところでございます。
 求人数につきましても、厳しい求人状況でございますが、昨年度を約五百人上回る千七百人分の求人を確保したところでございまして、参加企業の業種や職種なども多岐にわたっておりますことから、学生は幅広い企業の中から面接先を選ぶことが可能であるというふうに考えているところでございます。

○鈴木委員 千七百人分、これは確保しているということなんですが、学生さん側も笑顔になって、企業側も笑顔になると、そういうような状況がこの合同就職面接会で見られるという光景をぜひ期待したいと思っております。
 こうした面接会は、企業の側からすれば、コストをかけずにいい人材を採用できるチャンスでもあります。広く参加を呼びかけることは、学生のためにも企業のためにもなるわけですから、引き続きしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 今年度は、企業の求人倍率がさらに低下していることや、就職浪人して再度チャレンジする学生の増加などによって、昨年度にも増して新卒者の就職環境は厳しくなると思っております。当日、多くの学生が来場すると思いますが、事前に面接企業を絞り込んでおけるかどうかなど、事前の準備が非常に学生さんにとってみればポイントになるというふうに私は考えております。
 それでは、企業の求人内容を含めて、この面接会についての学生への情報提供はどのように行われているのか、その点を伺います。

○日請雇用就業部長 面接会当日は、昨年の例から見ましても多数の学生が来場するものと思われまして、先生ご指摘のように事前の情報提供が重要であるというふうに考えております。
 今回の面接会の開催に当たりましては、都内を初め、首都圏に所在する大学、短大、専門学校等、七百六十三校にポスターや案内を送付いたしまして、広く周知したところでございます。
 また、TOKYOはたらくネットにも当該面接会の情報を掲載しておりまして、パソコンからでも携帯電話からでも情報収集が可能となっております。
 面接会に参加する企業の求人票につきましては、十月二十二日からホームページ上で公開しておりまして、すべて事前に見ることができるようになっております。
 これらの求人票からは、企業の事業内容、あるいは勤務条件などを個別に確認することができます。学生は、面接までに企業研究、あるいは面接対策などの準備を十分行うことができるようになっているというふうに考えております。
 面接会を通じまして、一人でも多くの学生が内定を得られるよう、今後ともきめ細かく対応してまいります。

○鈴木委員 この学生への情報提供等は、最近は携帯電話からの情報提供--iモードを使っての、こういうものも学生さんにとっては一番情報が得やすいところだと思いますので、そんなところにもぜひ力を入れていただければなというふうに思っております。
 今回の面接会のような機会を設けることはもちろんですけれども、新卒者を初めとする若者の就職支援について、さらに取り組みを進めていただきますよう要望しておきたいと思います。
 次に、商店街支援について伺ってまいります。
 地域における商業活動を活発にしていくため、地域コミュニティの核として重要な役割を担っている商店街をどのように活性化していくかという視点は、極めて重要であります。
 都はこれまでも、商店街みずからの意欲的な取り組みを支援するため、新・元気を出せ商店街事業によって、各種のイベントや地域おこし企画について、経費の一定部分の助成を行ってまいりました。都の支援によって、商店街が独自の資金だけでは実施できない内容も数多く実現にこぎつけた例があると聞いております。まさに、こういった施策を産業労働局の皆さんと私ども都議会自民党商工部、皆さんと一緒になってつくり上げてきたというふうに私どもは自負しております。
 しかしながら、総事業費が多額になるアーケードや街路灯の設置や、ICカードの導入などのハード整備については、商店街としての負担も大きくなることなどから、なかなか取り組みが進まない場合が多いと思っております。
 経費負担が大きい施設整備については、やはり国や東京都、そして区市町村、こういった行政として、一体になって協力して支援を行うことが不可欠ではないでしょうか。東京都は、麻生政権のときに制定された地域商店街活性化法に基づく国の補助事業に合わせて助成を行う中小商業活力向上施設整備費補助事業というのを新たに創設して、国や区市町村と連携して、商店街のさまざまな施設整備を支援するということといたしました。
 こうした施設の整備によって、商店街の雰囲気が一新されて、より高い集客に結びつくことが期待されますが、現段階までの具体的な支援について、都はどういうふうに考えているのか、お伺いさせていただきます。

○山手商工部長 商店街は、地域の消費生活を支える経済的な役割のみならず、さまざまな活動を通じて住民が交流したり、防犯や防災の拠点として人々の安全と安心を守るなど、地域コミュニティの核として社会的な役割をも果たしてございます。
 こうした商店街の役割に着目いたしまして、国では商店街の施設整備等を支援する中小商業活力向上事業を立ち上げまして、整備経費のうち、最大で三分の二を補助する事業を開始いたしました。
 国の補助制度の中で商店街の負担となる部分について区市町村が支援する場合には、その二分の一を都が中小商業活力向上施設整備費補助事業により助成することとしてございます。
 具体的には、今年度、大田区の大森、あるいは台東区の浅草の商店街で、老朽化したアーケードを地震等の災害に強いものに更新する案件につきまして、補助金の申請が出ております。また、江東区では、地球温暖化対策に配慮した街路灯の整備を対象に、補助制度の活用を検討しているところでもございます。
 本事業におきましては、国の定める補助要件として商店街が法人格を備えている必要があるとされておりまして、利用が可能な商店街が限定されるというような指摘もございますが、今後とも、国、都、区市町村が連携して施設整備を効果的に支援いたしまして、商店街の集客に向けた力を高め、また、社会的な役割も確実に果たすことができるよう取り組みを進めてまいります。

○鈴木委員 国の商店街への支援は、まさに東京都が目を向けさせた、誘導していったといってもいいと思っております。今後も、それぞれの区や市の代表的な商店街の集客を高めるためには、国、都、区市町村が連携して施設整備を促進することが効果的であるし、また、重要であると考えております。
 次に、商店街への地球温暖化対策についてお伺いいたします。
 いうまでもなく、都政における重要な課題であって、地域社会や都民による幅広い取り組みが必要となっております。こうした中、多くの人々が訪れる商店街においても、環境問題への対応を進めることは重要であり、商店街としての具体的な動きを都が支援していくべきものと考えております。
 都はこれまで、さまざまな政策課題の解決に貢献する商店街の取り組みについて、特定施策推進型商店街事業による支援を行ってきたところであります。特に、同事業によって、環境対策として支援を行った街路灯のLED化は、環境問題に対する前向きな姿勢が地域の住民などからも高く評価されているところであります。
 ただ、環境問題のような大きなテーマについては、商店街の街路灯のLED化でとどまっていていいというわけではありません。周辺の地域社会や都民が、広く地域温暖化対策に本気で取り組んでいくんだという雰囲気を高めていくことが重要であると考えております。
 そのためには、新しい制度として、今後、LED街路灯を含め、太陽光発電や風力発電など、さまざまな環境対応の仕組みを商店街の中に取り入れることで、商店街としての環境問題への取り組みを充実させながら、こうした姿勢をより明確に買い物客に、地球温暖化対策の必要性を地域にしっかりと伝えていく努力が必要であると考えております。商店街での買い物を通じて、まさにこの地球温暖化対策の意識づけをしっかり行っていくということが必要であるんじゃないでしょうか。
 さきの第三回定例会で、我が党の高木けい議員が、こうした問題意識から一般質問を行って、これを受けた来年度予算要求が行われているということについて十分評価いたしております。
 そこで、この予算要求に係る事業の内容と考え方について、改めて伺います。

○山手商工部長 商店街が、環境に配慮した設備を導入して地球温暖化対策に寄与することは、商店街のイメージを向上させ、集客効果を高めることになります。
 また、地域コミュニティの核として商店街の持つ情報発信力を活用し、環境対策とその成果をアピールすることにより、地域社会での環境配慮の取り組みが広がるものと強く認識してございます。
 都はこれまで、特定施策推進型商店街事業において、都の施策であるCO2削減に寄与する街路灯のLED化を支援してまいりましたが、今後は、これに加え、さまざまな地球温暖化対策の方法について、商店街や地域に向け、わかりやすく伝えていく工夫を凝らして、積極的にPRする取り組みの充実が必要です。
 こうした観点から、ご提案いただきました太陽光発電、風力発電を活用した街路灯の設置など、商店街の環境対策についての先駆的な取り組みをも含めた総合的な支援策が実現するよう、来年度の新規事業として環境対応型商店街活性化事業を予算要求したところでございます。

○鈴木委員 お買い物は地元の商店街でということで集客をしつつ、商店街を通して地球温暖化対策を進めて、積極的にこのPRを行っていく、この新規事業、私ども自民党もしっかりと応援させていただきたいと考えております。
 次に、東京のものづくり産業の技術力の強化についてお伺いしてまいります。
 東京の産業振興のためには、将来性のある技術を持つベンチャー企業を数多く育て、新たな産業分野を発展させる取り組みを行うとともに、これまでの東京が養ってきたものづくり産業の基盤の維持や強化を図っていくことが必要です。
 東京のものづくり産業は、世界最高水準の技術力と国際的な競争力を持っていますが、これは金型、切って削る切削加工やメッキなどの基盤技術を持つ町工場を初めとする数多くの中小企業が、製品に求められる精度や性能のレベルの向上に不断に取り組んできたからにほかなりません。
 しかし、こうした技術を持つ企業は、厳しい景況が続いて廃業に追い込まれたり、後継者難で技術のレベルを維持することが困難となる場合がふえるとともに、昨今のアジア諸国による技術や経営の両面からの追い上げにも遭っておりまして、かつてない苦境に追い込まれております。
 こうした状況を踏まえて、中小企業がみずから持つ基盤技術の向上を図るとともに、付加価値の高い製品開発にしっかりと取り組み、国際的な市場でも十分に通用する製品を生み出していけるよう支援を行うことが不可欠であります。例えば、国際化の中で国際規格を満たす製品を生み出すといった支援であるとか、中小零細企業、まち工場がこういった分野には非常に弱いわけであります。
 来年度には、臨海副都心に、東京のものづくり産業の技術支援の拠点となる都立産業技術研究センターの新本部が開設されるわけですが、同センターにおいて、この国際市場をも視野に入れた技術などに対する支援ニーズにどう対応していくのか、お伺いいたします。

○山手商工部長 東京のものづくり産業の活性化と発展を実現するためには、多様な基盤技術を持つ中小企業の集積を十分に生かしつつ、より高度な先端技術を活用した製品を数多く生み出しまして、世界のさまざまな製造業種の企業との厳しい競争に打ち勝っていくことが重要であるというふうに考えてございます。
 特に、国際的な市場で販売取引を行うに当たって、取り扱う製品が人体や環境に悪い影響を及ぼす物質を含んでいないかなどにつきまして、厳しい規制や安全基準が設けられております。そうした国際規格を満たす製品を中小企業がつくり出していくことが重要になるというふうに考えてございます。
 このため、来年五月に江東区青海に開設する産業技術研究センターの新本部では、国際的な市場で通用する製品に係る技術支援にも力を入れながら、新たな支援体制を整備することとしております。
 具体的には、国際的な基準に適合した素材を用いた製品であることを高い精度で分析することのできる高度分析開発セクターを設置するとともに、国際競争力のある高付加価値な製品について、製品設計から試作品の製作、評価までを一貫して支援するシステムデザインセクターを整備することとしてございます。
 また、国際基準を十分にクリアする耐久性を持つ製品であることを試験する実証試験セクターを整備したり、国際的な取引で必要となる試験証明書の発行ができる試験所としての認定を受ける取り組みを進めることといたしております。
 こうしたさまざまな取り組みを進めることで、世界に通用する中小企業の技術力の向上を実現する支援機能を高めてまいります。

○鈴木委員 今、お話のあったように、規格、素材、耐久性が国際基準である、国際的なマーケットで勝負ができる製品を、東京のものづくり中小企業が生み出すことができるような支援をすることが非常に大事な視点だというふうに考えております。
 次に、創業支援のあり方について伺います。
 先日の新聞報道によれば、我が国の製造業の開業数がこの十年間で最低の水準に落ち込んで、廃業も三年連続して増加するなど、ものづくり産業の基盤が弱まっているとの状況が、残念ながら明らかになっております。
 こうした危機的な局面にあるからこそ、逆風の中で果敢に創業に挑む方々を、あすの東京の経済を担う貴重な存在と考えて、都としても積極的に支援していくべきだと考えております。
 創業を支援する取り組み策として、ベンチャー企業などに低廉な賃料で事業スペースを提供するインキュベーション施設があります。都では、みずから施設を運営するとともに、区市町村が行う施設整備についても助成をして、施設の増加に努めていると伺っております。なるべく多くの挑戦者を支援できるよう、引き続き努力していただきたいと考えております。
 一方で、さらに重要なのは、このような施設でどのような支援を展開していくのかということです。単に低廉な賃料のオフィスを用意すればいいというものではなくて、その施設において良質なサービスを提供して、入居している事業者をいかに成長させていくかといった視点に立った支援策の充実が必要であります。
 入居者の頭の中にいかにすぐれたアイデアがあろうとも、知識も人脈もなしに一人でできることは限られています。広い人脈と経験、そして熱意を持って支援に当たる施設の顔ともいうべき専門家が常駐することで、施設の内外に強いネットワークが構築されて、これを活用した強力な起業家支援が行われる、これこそがインキュベーション施設の真の目指すべき姿であると考えております。
 さきの定例会での我が党からの質問に対し、都の一部の施設では、経営支援の専門家を常駐させ、着実な成果を上げているとの答弁がありましたが、このような取り組みをほかにも広げていくことが必要です。そうした取り組みを今後どのように進めていくのか、伺います。

○山手商工部長 都では、現在、八カ所のインキュベーション施設を運営し、起業家に対する着実なサポートを実施してございます。
 入居者が経営上の課題を克服して会社の発展を確実なものとするためには、施設の整備とともにソフト面での支援を充実させていくことが重要であるというふうに考えてございます。このためには、販路開拓や資金調達など、会社の成長に必要なさまざまなサポートを行うインキュベーションマネジャーを施設に配置することが望ましいと考えております。
 都において先駆的にインキュベーションマネジャーを配置している三施設では、入居している企業の多くで売り上げが伸びるなど、高い成果が上がってございまして、現在、他の施設にも同様の支援を広げていくことを検討しているところでございます。
 今後とも、入居者に対するソフト面の支援の質の向上を図りまして、各施設の機能の向上に努めてまいります。

○鈴木委員 次に、中小企業の経営革新に対する支援についてお伺いします。
 中小企業を取り巻く経営環境の変化は、これまでにも増して厳しくなっております。経済環境の荒波の影響を受けやすく、順調で安定した成長が難しい中小企業にとって、外部の経営環境の状況を正確に理解して、新たな事業展開に向けて迅速な経営判断を行うことはますます重要になっていると考えます。
 実際に、みずからの会社の持つすぐれた製品、さらには独自の販売ノウハウなどを最大限に生かすことができるよう、経営のあり方そのものを不断に変革しながら着実な業績拡大を実現している中小企業の話を聞くことも数多くあります。
 先般も、ベンチャー企業として出発して--アロマ製品を扱っているんですけれども、それでベンチャーから始まって年商二十億円くらいまでになったんですけれども、ここでさらにこの事業を拡大しようということで、外国の、いってみれば新しい技術者等を招聘するという場合でも、なかなかこの技術者に、すぐに国内に来て働いてもらうことができないなんていうことがあったわけなんですけれども、そういったときにも商工部の調整課長に大変お世話になりまして、うまくいったケースなどがありました。
 企業にはより高いところを目指して発展してもらいたいというふうに考えているわけですけれども、実際に、みずからの会社の持つすぐれた製品、さらには、独自の販売ノウハウなどを--こういうような企業、経営のあり方をもう一度見直して、新たな事業を計画的に行う取り組みをサポートするために、東京都では法律に基づいて、経営の革新に意欲的な企業から計画書を申請してもらって、その内容がすぐれているものについて承認した上で、国などの各種の支援策の利用につなげているというふうにも伺っております。
 実際にそうした計画について承認を受けた企業は、金融機関から低利の融資が可能となるとともに、事業活動が高く評価されたとして、従業員のモラールのアップになったとの例も聞いております。
 このような効果的な取り組みについて、都として事業計画の承認にとどまることなく、企業の事業展開を適時適切にフォローして、より高い成果の実現に結びつけることが重要と考えておりますが、所見を伺います。

○山手商工部長 中小企業が、新商品の生産や新たな販売方式の導入などに取り組んで新規の事業展開を図り、経営内容のレベルの向上を実現することは極めて重要でございます。
 都では、中小企業新事業活動促進法に基づきまして、中小企業のこうした経営革新に向けた計画を承認し、金融機関による低利の融資ですとか設備投資に係る減税など、国の用意しましたさまざまな優遇措置を受けられることとしてございます。
 平成十一年度から、これまでに累計五千三百二件、年平均約五百件の経営革新計画を承認してきたところでございます。
 平成二十年度からは、計画に着手して間もない企業を対象に、さまざまな課題に対して専門家がアドバイスを行います実施支援フォローアップを行うとともに、その成果を事例集に取りまとめまして、他の中小企業に紹介してございます。
 また、今年度から新たに、計画期間が残りわずかとなった企業を対象にいたしまして、終了時フォローアップとして、これまでの取り組み成果を今後の活動に反映するためのアドバイスも行ってございます。
 さらに、すぐれた実績を上げた企業につきましては、ことしの産業交流展で表彰するとともに、表彰企業の展示コーナーを設けまして、経営革新の成功のノウハウ等も紹介いたします。
 今後とも、中小企業の経営革新の実現に向けたフォローアップに、より一層取り組んでまいります。

○鈴木委員 経営革新計画の承認を受けた企業については、表彰などの方法で経営内容のレベルアップを支援することは極めて重要であります。
 その一方で、経営革新計画に沿って生み出された新製品を売り込むためには、性能がすぐれているのはもちろんのこと、製品そのものの認知度を高めることや、国内外の各種の規制をクリアしているかを確認するなど、数多くのハードルがあるように思います。
 そうした課題の解決も含めた総合的なフォローの必要性を改めて申し上げておきたいと思います。
 次に、一昨年秋の、百年に一度といわれる未曾有の経済不況の中で、都は、我が党の要望を受けて、都内中小企業の資金繰りを支えるために、地域の金融機関と連携した新たな保証つき融資制度を創設したところであります。
 それで、既にお伺いさせていただきましたところ、昨年の十月二十六日の取扱開始から本年の九月末までにおける保証承諾実績は、千二百五十六件、百十二億円ということでございますが、どのような都内中小企業に利用されているのでしょうか。
 また、本制度の目標額は、本年度六百億となっており、これは現在の都内中小企業を取り巻く厳しい経営環境を踏まえて、その資金繰りに万全を期したものと理解しておりますけれども、この保証承諾実績との間に大きな開きが見られるのも事実でございます。その原因についての見解もあわせてお伺いいたします。

○櫻井金融部長 地域の金融機関と連携した新たな保証つき融資制度につきましては、この制度を利用しております中小企業は、緊急保証制度を初めとする制度融資を既に利用している企業が八割を超えており、製造業からサービス業、建設業、不動産業など幅広い業種に及んでいるところでございます。
 ご指摘のございました目標額と保証承諾実績の開きにつきましては、昨年十月の取扱金融機関による融資受付開始以降、国におきまして、貸付条件の変更等を促進する中小企業金融円滑化法が施行されたこと、また、緊急保証制度の対象業種が拡大されたことなどが影響しているものと考えております。
 また、このほか、中小企業全般におきまして、資金の借り入れに対して慎重になっていることなども本制度の利用状況に影響を及ぼしているものと考えられます。

○鈴木委員 既存の制度融資をもってしても対応することが困難な都内中小企業が、この制度を利用することによりまして、資金調達の可能性を広げていくということはわかりました。
 しかしながら、都内中小企業を取り巻く経営環境は依然として厳しく、政府の無策から、さらには急激な円高の進行など、先行き感は全く不透明といった感が漂う中で、都としては、引き続き都内中小企業の資金繰りの円滑化を図ることが重要と考えます。
 この制度の今後の一層の利用拡大に向けての取り組みについて、所見を伺います。

○櫻井金融部長 ことしの八月以降の急激な円高などにより景気の先行きの不透明感が強まっている中で、ご指摘のとおり、都としても中小企業の資金繰りの円滑化に引き続き万全を期していくことが重要であると考えております。
 本制度は、緊急保証制度を初めとする制度融資に加えまして、中小企業にとって新たな資金調達の手段となっており、これまでも資金繰りに苦しむ中小企業に適時適切に資金を供給してきたところでございます。
 制度開始以来、取扱金融機関の拡大に努めてきており、現在では、地方銀行、信用金庫、信用組合をあわせて十七の金融機関が本制度を取り扱っております。
 都としては、より多くの都内中小企業が本制度を利用することができるよう、引き続き取扱金融機関の拡大を図るなど、厳しい経営環境に直面する中小企業の資金繰りに万全を期してまいります。

○鈴木委員 取扱金融機関である地銀とか信金、信組の体力といいますか、こういった情報も、十分都としては情報収集しつつ、この取扱金融機関の、今後、拡大を図るなど、ぜひお願いしたいと思っております。
 これまでの答弁から、制度の利用状況について理解することができました。この本保証つき融資制度の利用促進がされるように、一層の努力を望みます。
 ここまで、都における雇用就業対策や、商業、工業など多岐にわたる産業振興施策についてお伺いしてまいりました。現在、先行きが不透明な厳しい経済情勢にありますが、都が施策を多面的に展開し、産業の活性化と安定した雇用の創出を図ることで、事業者やそこで働く人々が将来に希望を見出す、光を見出すと申しましょうか、生き生きと活躍できる環境を整えることが何よりも大切であると考えます。
 そこで、最後に、現在の厳しい経済、雇用情勢の克服と、東京の産業基盤の維持発展に向けた局長の決意をお伺いさせていただきまして、私の質問を終わります。

○前田産業労働局長 東京の産業は、日本経済を牽引する大きな役割を担うとともに、都民の多様な雇用の場を提供しており、産業の基盤を強固なものにすることが、東京の、ひいては日本のさらなる発展につながるものと認識しております。
 現在の経済、雇用情勢は、副委員長ご指摘のとおり、依然として厳しいものがございます。都として、中小企業の経営力の強化や資金繰りに対する支援、産業を支える人材への支援等を着実に実施することが重要であります。
 現在、二十二年度事業を確実に行うことはもちろん、これらの取り組みに必要な経費を内容とする二十三年度予算の要求をしておりまして、今後とも万全を期して進めてまいります。
 あわせて、意欲的な事業者の支援や新しい産業の育成など、東京の将来を見据えた施策を展開し、東京の産業発展と雇用就業機会の拡大を図ってまいります。

○大松委員 私の方からは、まず、クリエーティブ産業、コンテンツ産業の振興策について伺います。
 先日、秋葉原UDXで、アニメの最新情報やビジネス情報を提供する、東京国際アニメ祭二〇一〇秋が開催されました。これは、来春十回目を迎えます東京国際アニメフェアの関連イベントということで、私もお邪魔してまいりましたけれども、会場には、多くのアニメ制作会社が出品、国内外から多数のバイヤーが訪れまして、大変にぎわっておりました。
 日本のアニメは国際的に大変高い評価をいただいておりまして、「ポケットモンスター」、「ポケモン」、これはアメリカを初め世界六十数カ国で放映されておりまして、冒険ドラマであります「ワンピース」は、中学三年生の私の娘も夢中になってコミックを読んでおりますけれども、ヨーロッパの国々で大流行しているわけでございます。
 そして、この秋葉原での会場におきまして、出品をしている制作会社の方にお伺いしましたら、ターゲットは海外バイヤーですということでございまして、海外バイヤーの方も、日本のアニメにつきまして、品質が高く、独創性があると絶賛している様子がテレビでも報道されておりまして、深刻な円高の中にありましても、日本のアニメが大変競争力がある商品であるということを実感してまいりました。
 こうしたアニメを初め、映画、音楽、ゲームなどのコンテンツ産業の市場規模は、世界的に急速に拡大しておりまして、日本では二〇〇三年時点で十二兆円、自動車産業の約二分の一、鉄鋼産業の約二倍に匹敵しております。
 しかしながら、コンテンツ産業がGDPに占める割合を見ますと、アメリカが五・一%であるのに対して、日本はその半分以下の二・二%にとどまっておりまして、この日本のコンテンツの持つ力がビジネスとしてまだまだ生かし切れていない状況があるわけでございます。
 一方、コンテンツ産業の振興にいち早く国を挙げて取り組んだ韓国は、世界各地で韓流ブームを巻き起こしておりまして、我が家におきましても、部屋のあちこちにペ・ヨンジュンさんとかイ・ビョンホンさんのプロマイド、ポスターが張られるようになっております。
 中国も急速に市場規模を拡大しておりまして、日本を追い抜き、世界第二位になる勢いであります。
 日本の政府も、韓国に大きく出おくれながらも、国家戦略としてコンテンツ産業の振興策に取り組んでいるわけでございますけれども、この業界の事業所も就業者も東京に集中しておるわけでございます。やはり東京都としての取り組みが大変重要になってまいります。
 都は、いわゆるコンテンツ産業にファッション、デザイン、出版なども加えた幅広い分野であるクリエーティブ産業と位置づけられ、支援されていらっしゃいます。
 そこで、このクリエーティブ産業についてお伺いいたしますが、まず、この東京都内でクリエーティブ産業がどのくらいの規模を占めているのか、お伺いいたします。

○澤産業企画担当部長 クリエーティブ産業とは、広く使われている英国政府の定義によりますと、アニメやゲームなどのコンテンツ産業に加えまして、芸術、舞台芸術、ファッション、デザイン、広告、出版、工芸なども含む幅広い産業分野を指しております。
 全国の事業所の数、従業者数等を調査した事業所・企業統計調査をもとに、英国での定義を用いまして東京都内のクリエーティブ産業分野に該当する業種を集計いたしますと、平成十八年時点で、都内にはクリエーティブ産業分野の事業所が約三万七千事業所、従業者数約七十二万人となっております。
 事業所の数では都内全産業の約五%、また、従業者数では約九%を占めておりまして、事業所の数、従業者の数ともに医療、福祉企業と同程度、あるいはそれ以上の規模となっております。

○大松委員 クリエーティブ産業の規模が医療、福祉と同程度の規模ということでございます。
 それでは、この全国のクリエーティブ産業がどれくらい東京に集積しているのか、また、近年、伸びているのか、東京都の認識を伺います。

○澤産業企画担当部長 クリエーティブ産業分野における東京都の全国シェアを見ますと、事業所数で約二七%、従業者の数で約四四%と非常に高く、クリエーティブ産業が東京に集積していることが示されております。
 また、近年の伸びについてでありますが、平成十三年と比べた平成十八年の事業所数の伸び率を見ますと、全産業平均がマイナス五%であったのに対しまして、クリエーティブ産業ではプラス四%でありました。
 また、従業者の数の伸び率は、全産業平均がプラス二%、これに対しまして、クリエーティブ産業ではプラス一六%となっておりまして、産業規模は拡大しております。

○大松委員 クリエーティブ産業の資本、資源は人そのものでございます。日本のアニメの世界的なヒットは、日本人がすぐれた才能、技術を持っているという証左でありまして、まだ眠っているすばらしい才能を発掘し、ビジネスチャンスを提供していかなければなりません。
 そして、先ほどの答弁でもございましたように、全国のこのクリエーティブ産業の従業者の四四%、半分近くの方が東京で働いていらっしゃるわけでございます。アニメ産業におけるこのすぐれたクリエーターの発掘を、東京都は支援していくべきであります。都の取り組みについて伺います。

○横山観光部長 平成十三年度から開催されております東京国際アニメフェアでございますが、総入場者数十三万人を超える世界最大の総合アニメイベントでありまして、参加者が楽しむことができる各種催しのほか、国際的な商談の提供の場である見本市、そして優秀なアニメ作品を表彰するコンペティションと、こういったものから構成されております。
 この見本市の一形態といたしまして、次世代を担うクリエーターのキャリアアップを支援するクリエーターズワールドを展開してございます。今までに多くの若手クリエーターが参加いたしまして、国内外のバイヤー、プロダクション、アニメ関連企業とのビジネス交流によりまして、世に出るきっかけの場となってございます。
 また、コンペティションの公募部門におきましては、新しい才能、人材発掘の場として広くアニメ作品の公募を行いまして、優秀な作品を選定し、表彰を行っております。
 アニメフェアは、今年度開催のもので十周年を迎えます。魅力的なプログラムの充実、世界じゅうへの情報発信の強化などによりまして、今後もさらなるクリエーターの発掘の場となるよう、都として引き続き支援してまいります。

○大松委員 人材を発掘して、その次に求められるのが、その人をしっかり育てるという人材の育成、ビジネスとして成り立つように支援していくことであります。
 東京都は、平成二十年度から、中野区に東京コンテンツインキュベーションセンターを設置し、アニメだけでなく、映画、テレビ、音楽などを含めた幅広いコンテンツ産業の分野で、創業間もないクリエーターを支援しています。これまでの同センターにおける人材育成の取り組みについて伺います。

○山手商工部長 東京コンテンツインキュベーションセンターは、創業間もない起業者に低廉な価格で施設を提供する創業支援施設の一つでございまして、今後成長が見込まれるコンテンツ、アニメ産業の創業を重点的に支援することを目的に、平成二十年八月、中野区に設置いたしました。
 同センターにおける人材育成の取り組みといたしまして、これまで計十二回のセミナーを実施しておりまして、業界内のキーマン等から、今後の業界の展望や体験談を聞き、直接意見交換をする機会を提供してございます。
 また、入居者や卒業した企業による交流会を定期的に開催いたしまして、クリエーター同士で切磋琢磨する環境を醸成いたしますとともに、共同でのプロジェクトの創出等につなげてございます。
 これまでに累計三十一の事業者が同センターを利用しており、その六割以上が売り上げを増加させるなど、徐々ではございますが、成果が出始めてございます。
 今後もこうした支援を通じまして、コンテンツ、アニメ関連産業分野における人材育成を推進してまいります。

○大松委員 先ほどお話ししました韓国では、人材を養成する学校への支援とともに、海外市場開拓マーケティング支援というものも行っております。東京都としても、この人材の発掘と育成に加えまして、海外販路の拡大支援なども今後検討していくよう求めておきます。
 次に、ファッション分野における人材の発掘、育成について伺います。
 東京のファッションは、世界から注目されているにもかかわらず、世界を舞台に活躍する若手デザイナーが余り輩出されていないといわれております。ファッション産業においても人材輩出を目指し、東京都が積極的に支援していくべきです。都の取り組みを伺います。

○山手商工部長 都は一昨年、若手ファッションデザイナー発掘・育成プロジェクトを立ち上げまして、人材の発掘、育成からビジネス支援に至る一貫した育成の仕組みを構築いたしまして、東京から世界で活躍できる若手デザイナーの輩出を目指すことといたしました。
 具体的には、ファッション関係の団体と都が共催で実施するコンテストでございます新人デザイナーファッション大賞を通じて、有望な人材発掘を行い、それらの人材を対象に、ブランドの立ち上げに向けた実務セミナーの開催や展示会への出展支援などを行いまして、早期の自立を目指した人材育成、ビジネス支援に努めてございます。
 これまでに、こうした展示会への出展支援等を通じて、既に若手デザイナーの中には、大手百貨店との取引を開始している者も見受けられます。また、国内外のファッションショーへの参加の機会を得るなどの成果にもつながっております。今後とも、若手デザイナーの人材育成支援を着実に展開してまいります。

○大松委員 日本のクリエーティブ産業は、大変強い国際競争力を持っているわけでありますけれども、その一方で、それに従事する人たちの就労環境がよくないという課題がございます。
 特に、このアニメ産業では、制作会社の門をたたく新人の方にまず聞くことが、実家から通えますかということだそうでありまして、要するに、食べていくのは大変ですよということだというお話を、先日、業界の関係者の方から伺ったことがございます。
 クリエーティブ産業を国や東京をリードする産業に育てていくためには、クリエーターやデザイナーが夢を持って働けるようにしなければなりません。クリエーター等へのさらなる支援を求めて、次の質問に移ります。
 次に、新銀行東京について伺います。
 今年度の第一・四半期決算が八月五日に発表されました。それによりますと、当期利益は、平成二十一年度に引き続き二・六億円の黒字計上でありまして、再建に向けて着実な歩みを続けているものと理解しております。今後とも、実質業務純益の黒字化を初め、財務構造の改善に努めていくことが第一に重要でありますけれども、そうした中にありましても、本来の設立趣旨であります中小企業支援について、できる限りの努力を傾けていかなければなりません。
 こうした観点から、今回の決算資料を見させていただいているわけでございますけれども、平成二十二年六月末の与信残高につきまして、約一千百四十九億円と、前年同期と比べ二十二億円余り減少しているわけでございますが、その中にありましても、このうち中小企業向け貸し出しは約五百七十三億円と、前年同期比で四十八億円増加しているということも私どもは確認させていただいているところでございます。
 そこで、この新銀行東京が中小企業向けに行っている与信には、貸し出し、保証のほかに、公共工事代金債権信託という商品が、特徴的な取り組みとして注目されております。新銀行東京が平成十七年から取り扱っておりますけれども、この商品の仕組み、また、中小企業にとってのメリットについて、まずお伺いいたします。

○十河金融支援担当部長 公共工事代金債権信託は、信託の仕組みを用いて商品化した新銀行東京独自の商品でありまして、具体的には、公共工事の受注業者が工事代金債権を新銀行東京に譲渡し、信託化することで、本来、工事完成後に受け取る工事代金の一部を完成前に得られるようにするものでございます。
 これにより、公共工事の施工を請け負う中小企業の資金需要に柔軟にこたえるとともに、下請事業者への支払い円滑化にも寄与するものでございます。
 この商品を利用することのメリットでありますが、一般の銀行借り入れと異なることから、利用者にとっては、資金調達する際に決算書の提出や連帯保証人が不要であることや、工事代金債権を譲渡することにより現金化できるため、いわゆるオフバランス化と呼ばれる会計上の効果により、財務諸表の改善が図れることなどのメリットがございます。

○大松委員 新銀行東京が、信託の手法を生かして独自の商品を開発し、中小企業に新たな資金調達の手段を提供していることは、中小企業支援を設立理念とする新銀行東京ならではの取り組みであると思います。
 それで、実際どの程度の利用がなされているのか、これまでの実績を伺います。

○十河金融支援担当部長 公共工事代金債権信託のこれまでの実績についてでありますが、まず取扱団体につきましては、当初は東京都の発注工事のみが対象でありましたが、昨年一月に取り扱いを開始した江東区を初め、現在では八区三市二村に拡大しており、そのほかに五つの東京都関連団体でも取り扱うようになっております。
 また、利用実績につきましては、取り扱いを開始した平成十七年度には、件数が三十五件、実行金額は十億円だったものが、その後、毎年増加を続け、平成二十一年度、昨年度には、件数で三百七十一件、実行金額で百七億円となっており、件数、金額とも着実な伸びを示しているところでございます。

○大松委員 与信全体の中に占める割合としては、まだそれほど大きな位置を占めているとはいえませんけれども、実績が順調に伸びていることから見まして、中小企業にとって利用価値の高い商品であることが徐々に認知されてきているのではないかと考えております。
 それで、国も同様に、公共工事受注者の資金需要に注目した融資制度を創設したと伺っておりますけれども、新銀行東京の商品との違いは何か伺います。

○十河金融支援担当部長 委員お話しのとおり、平成二十年度に、国土交通省が国、地方公共団体等が発注する工事を対象とした地域建設業経営強化融資制度というものを創設いたしました。これは、建設業者で構成された事業協同組合等が、受注者から工事代金債権の譲渡を受け、これを担保に受注者に対し融資を行うものでございます。
 一方、新銀行東京による公共工事代金債権信託は、債権を信託化して資金供給を行うもので、債権を担保として融資する国の制度とは、その点で大きく異なります。
 そのため、先ほど申し上げました会計上のオフバランス化など、公共工事代金債権信託には独自のメリットがございます。新銀行東京では、こうしたメリットを都内自治体や業界団体などに対して強調して説明するなどの営業努力を行いまして、取扱団体や利用実績のさらなる拡大に取り組んでいるところでございます。

○大松委員 そもそも新銀行東京は、中小零細企業支援を目的として設立された銀行でありまして、その設立理念は正しいものでございます。経営再建の途上にありましても、公共工事代金債権信託のような可能な選択肢を見出して、中小企業を支援していく経営姿勢は、今後も大切にしていただきたいわけでございまして、私どもは、この新銀行東京がこうした努力を重ねていくことが、再建にも寄与し、銀行の企業価値を高めることにもつながるものと考えております。
 撤退や清算などと軽々しく論ずる方がいらっしゃいますけれども、こうした新銀行東京の経営努力と、これに支えられている多くの中小企業の存在を無視した極めて乱暴な議論にほかなりません。
 今後とも、今回取り上げた公共工事代金債権信託を含め、赤字、債務超過先企業への継続的な支援など、中小零細企業の支援にさまざまな方法で精いっぱい取り組んでいただきたいと考えますが、見解を伺います。

○斎藤金融監理部長 新銀行東京は、追加出資を得て再建に着手いたしましてからも、困難な経済金融情勢の中、日々堅実なかじ取りに努め、その結果、再建に向けた道筋を少しずつ明確にしつつある段階であると考えております。
 こうした中で、公共工事代金債権信託が徐々に取扱高を伸ばし、他団体にも拡大しつつあるということは、銀行の努力の成果の一つであり、喜ばしいことと考えております。
 新銀行東京は、高い事業意欲を持ちながらも資金繰りに窮している中小零細企業を支援するために設立された銀行でございまして、これまで他の金融機関では支援が難しい赤字、債務超過先を初めとする多くの中小零細企業に対して支援を行ってまいりました。この方針は現在も変わることはございません。
 新銀行東京が経営再建に向けた努力を重ね、中小零細企業の支援という本来の役割を再び十全に果たしていけるよう、都としては引き続き監視と支援に努めてまいります。

○西岡委員長 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時四十七分休憩

   午後六時六分開議

○西岡委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 発言を願います。

○しのづか委員 私からは観光行政について、主に情報発信やシティーセールスという視点からお伺いいたします。
 東京都はこれまで、観光を産業と位置づけて、平成十三年に観光産業振興プランを策定して、具体的な施策の展開を図ってまいりました。そして、平成十九年にこれまでの成果を踏まえ、観光をめぐる新たな要因であるオリンピック招致、羽田空港の国際化の進展、少子高齢社会などへの的確な対応が不可欠となり、「十年後の東京」が示す都市像を目指し、行政、民間事業者、都民が一体となって観光産業振興に取り組むための行動指針として、その改訂版が策定されたところであります。
 しかし、去年の十月にオリンピック招致が失敗に終わり、大きくその背景が変化する中で、都としては、目標値として、五年後に外国人旅行者年間七百万人、そして国内旅行者年間五億人、経済波及効果十・七兆円、雇用効果六十六万人、さらには「十年後の東京」の平成二十八年には、外国人旅行者年間一千万人の誘致を実現すると掲げられております。しかし、これらを実現するためには、より一層の施策の充実が求められると思います。
 そこで、まず、このオリンピック招致失敗を受けて、都として、これまでの間、どのような検討がなされてきたのか、お伺いいたします。

○横山観光部長 「十年後の東京」におきましては、都市の魅力や産業力で東京のプレゼンスを確立するという事項を項目の一つに掲げまして、その中で、訪都外国人旅行者一千万人を目指すとされております。
 また、平成十九年に作成いたしました東京都観光産業振興プランにおきましても、活力と風格ある世界都市東京の実現を目指し、平成二十三年に訪都外国人旅行者七百万人、国内旅行者五億人を誘致目標に掲げております。
 施策の柱といたしまして、東京の魅力を世界に発信、観光資源の開発、受け入れ体制の整備の三つを柱としまして、観光産業の振興に取り組んできてございます。
 二〇一六年のオリンピック招致は実現しなかったわけでございますが、そうでありましても、こうした取り組みは着実に実施すべきものと認識しております。
 今後とも、東京の観光振興を図るため、「十年後の東京」や東京都観光産業振興プランに掲げられた事業を的確に実施してまいります。

○しのづか委員 背景は変わったものの、その目標は変えずに、三つの柱を基軸に、振興プランに基づいて各種事業を着実に実施していくというお答えであったと思います。
 しかし、二〇一六年の東京オリンピックという大きな観光資源を失ってしまった現状においては、このプランに掲げた取り組みの着実な遂行はもちろんのこと、新たな観光資源の発掘や戦略の見直し、そして、世界に向けて、このメガロポリス東京の積極的なシティーセールスが必要だと考えます。
 では、東京都観光産業振興プランの中で、戦略的取り組みとしてシティーセールスの積極的な展開を挙げられておりますが、具体的にはどのような施策展開を考えているのでしょうか、お伺いをいたします。

○横山観光部長 都は、海外の市民に対して東京のPRを積極的に行うとともに、旅行商品の開発を促進し、東京を旅行の目的地として認識してもらうよう、シティーセールスを展開しております。
 そのため、平成十四年度より、欧米豪地域九カ国におきまして、東京の観光関連事業者とともに赴きまして、現地旅行事業者を対象とした商談会を開催する観光プロモーションを行い、また、東京のしゅんの情報や観光資源、伝統文化など、多彩な東京の魅力を紹介するセミナーを実施してまいりました。さらに、現地メディアに対しましても、セミナーなどの機会を活用し、東京の最新情報を提供いたしまして、幅広く東京の魅力を記事にしてもらうよう働きかけてまいりました。
 今後とも、こうした取り組みを進めまして、東京の魅力を効果的に発信し、東京への外国人旅行者の誘致につなげてまいります。

○しのづか委員 旅行の目的地として--商談会の開催やセミナー、そして現地メディアを活用しての観光情報の発信というお答えだったと思うんですが、まずは現状を分析して、旅行者のニーズを把握することが大事だと思います。
 そこで、東京都では観光マーケティング調査として、現地での観光プロモーションマーケティング調査、東京都観光客数等実態調査などを行っておりますが、この東京都観光客数等実態調査の結果の推移を見ますと、観光客数、そして観光消費額、生産波及効果ともに、調査開始の平成十六年度から平成二十年までは順調にこれが推移していたものが、去年、平成二十一年度については、それぞれ対前年比一〇から一六%ぐらい、軒並みマイナスになっております。
 この原因としてはどうとらえているのか、また、ことし、平成二十二年の傾向はどのようになっているのか、あわせてお伺いいたします。

○横山観光部長 平成二十一年度の訪都外国人旅行者数でございますが、四百七十六万人でございまして、前年対比一〇・八%の減少を示す結果となってございます。同様に、平成二十一年に、日本全国でございますが、日本を訪れた外国人旅行者の数は六百七十九万人でございまして、こちらも対前年比一八・七%の減少という結果でございました。これは、平成二十年秋以降に発生した世界同時不況や新型インフルエンザの影響によるものと考えてございます。
 なお、日本政府観光局の推計値によりますと、平成二十二年上半期の訪日外国人旅行者数、日本を訪れた外国人旅行者数の推計では、前年同期比で三五・八%の増となってございます。

○しのづか委員 平成二十一年度四百七十六万人で、ことしは、上半期なんですが、三五・八%持ち直しているというご答弁だったんですけど、やはり二〇一六年、この「十年後の東京」の計画の目標の時期の場合、ことしを入れてあと六年しかないんですよね。ちょうど折り返しの地点で今の五百万人と推定すると、その倍、観光客を、特に外国人旅行者を誘致していくということで、オリンピックがもし開催されるんであれば、必然的にそういう外国からの訪問者というのはふえると思います。この計画そのものが、やはりそのための受け入れ体制を整備するというような性格も持ち合わせていると思うんですよね。その大きな柱を失った今としては、やはりその辺をもう少し見直しをかけていかなければいけないと私は思います。
 そして、この東京都観光客数等実態調査では、外国人旅行者全体の推移については把握することはできるんですけど、例えばアジアやヨーロッパといったエリア別とか、それぞれの国別の旅行者の増減の傾向というものが見られません。
 訪問目的を調査する外国人旅行者行動特性調査についても、エリア別の傾向というものは見られるものの、サンプル数が毎年全体で約千四百程度と少なく、エリアごとのサンプル数も毎年ばらつきがあるとお伺いしております。
 今後こういった調査をもとに効果的な対策を講じるためには、旅行者の国別の傾向を見たり、行動特性調査についてもサンプル数をふやしたりして、より細かい分析をする必要があると思いますが、見解はいかがでしょうか。

○横山観光部長 東京都観光客数等実態調査では、六百を超える観光関連施設や宿泊施設等を調査対象に、東京を訪れる内外の旅行者数などを把握してございます。
 また、それに合わせて、外国人旅行者の消費行動、満足度等を把握するために、副委員長ご指摘のように、千四百のサンプルで効率的に行動特性調査というものも実施してございます。さらに、日本政府観光局による国別の動向調査の結果もございまして、これも参考に旅行者の傾向把握に努めているところでございます。
 なお、サンプル数でございますが、欧州の主要国についてはそれぞれ百サンプル、アジア主要国はそれぞれ二百サンプル程度を用いまして、計約千四百サンプルとなってございまして、これは、傾向を把握できる数値であるとの専門機関の見解のもとに設計、実施しているものでございます。

○しのづか委員 一応意見として、先ほど設問しましたが、やはりもう少し細かい分析をしていただきたい。これは意見として申し上げます。
 それと、この外国人旅行者行動特性調査の訪問目的を見ますと、傾向として、主にヨーロッパやアメリカ、そしてオセアニアといった人たちは、散策や日本の伝統文化、歴史的施設、そしてまた風景など、東京のまち並みの観光を目的とした人たちが多いのに比べて、アジアの人は、買い物や飲食、温泉、レジャーなど、生活に直結した目的というものが多い傾向がうかがえます。
 このような傾向をとらえて、都としてはどのような取り組みを考えているのか、お伺いいたします。

○横山観光部長 都はこれまで、現地旅行者の視点を有し、東京取材を希望する海外のメディアに対しまして積極的な情報提供を行い、より魅力的な記事の作成を働きかけてまいりました。その過程におきまして、対象となる国の旅行者の傾向を踏まえ、取材先の提案を行い、また、取材する記者の要望にこたえる視察先の調整を行ってまいりました。
 これによりまして、例えば、韓国の雑誌で東京の流行のスポットやお買い物情報が取り上げられ、また、スペインの雑誌では、浅草、新宿などのエリア情報や日本の文化などが現地に関心の高い記事として掲載されたところでございます。
 今後も、対象となる国の市民の関心に応じまして、観光情報の効果的発信を行ってまいります。

○しのづか委員 そういった発信は本当に重要だと思うんですが、それとともに今行われているのが、観光プロモーションと連動して東京観光レップというものが、平成十六年から、特にヨーロッパ、アメリカ地域を中心に順次設置されていると思います。
 今現在、どちらかというと、観光客、外国人の訪問者がふえている傾向が多いのはアジアからの旅行者だと思うんですが、アジアからの旅行者がふえている現状や今後の展開を考えますと、アジアでの観光プロモーションの展開や観光レップの設置というものが有効的と考えますが、見解をお伺いいたします。

○横山観光部長 旅行目的地としての認知度が必ずしも高くないと考えられます欧米豪地域におきましては、観光プロモーションを行った後に、引き続き現地への情報提供や情報収集を行うためにレップを設置しまして、旅行者誘致を図ってまいりました。
 一方、東京の認知度が既に一定程度ありまして、東京の情報を入手しやすいアジア地域におきましては、観光ルートなどの具体的な東京の魅力をPRするために、中国、韓国等の地域において有力な旅行誌等に広告を掲載するとともに、現地での旅行博への出展や現地旅行事業者への商談訪問の機会を活用しまして、市民や旅行事業者へのPRを行ってまいりました。
 平成二十二年度からは、対象地域をシンガポール、タイ、マレーシアへも拡大しております。
 これらの取り組みによりまして、アジアからの旅行者誘致に結びつく事業を着実に実施してまいりたいと考えております。

○しのづか委員 情報発信という側面では、ウエブサイトの活用が有効であると考えます。これまで、対応言語の増加や利用目的別に分けるなど、一定の工夫は評価するものの、サイトを見る側のニーズをとらえて、都としての戦略性をもっと打ち出すべきと私は考えます。
 例えば、トップページで季節ごとのイベント、お祭りとか、そういう東京ならではの、日本ならではの文化を発信したり、食べ歩きや買い物マップといったものを紹介するなど、いろいろと打ち出し方は考えられると思います。
 このウエブサイトにおける情報発信、活用についての見解をお伺いいたします。

○横山観光部長 都では、観光情報を発信するウエブサイトとして「東京の観光」を運営しております。
 このサイトは、東京を訪れる方々に幅広く観光情報を提供するということを趣旨としておりまして、旅行者が東京を訪問、滞在するに当たり、必要な基本情報を提供しております。
 あわせまして、トップページにおきましては、旅行者が求めるしゅんな情報の提供も既に行っております。例えば、季節に応じた東京のスライド写真の紹介、毎週更新するトピックス欄では、イベント情報などをいち早く紹介しております。さらに、旅行目的に合わせた観光スポットや、都内各地でさまざまな体験ができるまち歩きルート等も紹介しております。
 今後とも、東京を訪れる方々にタイムリーな情報を、効果的かつ幅広く発信してまいります。

○しのづか委員 これは私がホームページとかを見させていただいての感想なんですけど、やはり行政の方がつくってしまうと、公平性を担保しなきゃとか、いろいろな、いわゆる百貨店的な品ぞろえはあるんだけれども、これといった打ち出し方がなかなかできにくいというか、そのように感じてしまいます。
 例えば、表現が適切かどうかわからないですけれども、オリンピック招致のときには、とある大手広告代理店にPRを全面的に任せたはずなんですよね。こういったように、もちはもち屋に、きちんとそういったものを任せていく、そして、民間、プロならではの大胆な発想みたいなものが、東京をもっと売り込んでいくというものに関しては、私はそういった視点というものが必要ではないかと思います。これは、ぜひ今後の検討にしていただきたいと思います。
 そしてまた、羽田空港が国際化されました。この羽田空港の国際化を契機に、羽田新空港のコンセプトである江戸を想像させるまちづくり、連想させるまちづくりみたいなものと、今、東京にある歴史的な建造物といったものをタイアップさせるような観光資源の打ち出しなども、私は考えられると思います。
 そして、次に、もう一つ観光資源として活用できると私が思っているのは、フィルムコミッションであります。
 東京都では、東京におけるロケーション活動の円滑化を図り、東京のPRに資する映画やテレビドラマなどの撮影の支援を通じて東京の文化の発信力を高めることを目的に、平成十三年に、フィルムコミッション事業としての東京ロケーションボックスを生活文化局所管で発足させました。
 そしてその後、平成十六年に、海外からの撮影に関する相談の増加などに対応するために、窓口業務の一部を民間事業者に委託して、平成二十年には、このフィルムコミッション事業が生活文化局から産業労働局へと移管されました。
 その目的について、まずお伺いいたします。

○横山観光部長 フィルムコミッション事業は、円滑なロケ撮影のための支援を行い、映画やテレビドラマ等を通して東京の文化の発信力を高めることを目的といたしまして、平成十三年度から生活文化局で実施してきたものでございます。
 ご指摘のように、平成二十年度からは産業労働局に移管されております。産業労働局への事業移管でございますが、それまでのロケ撮影のための支援に加えまして、区市町村レベルの地域におけるフィルムコミッションの設立を促進し、一層のロケ撮影の誘致や映像作品を活用した観光振興を図るということを目的としたものでございます。

○しのづか委員 では、具体的にどのように事業が変わったのか、お伺いいたします。

○横山観光部長 事業移管を機に、円滑なロケ撮影を推進するため、情報提供をするロケ施設を拡大いたしました。また、撮影場所の新規開拓の推進、窓口対応時間の延長などによりまして、その機能を強化しております。
 加えて、地域におけるフィルムコミッションの設立の啓発、支援事業や、国内外へのPR活動も新たに開始しております。

○しのづか委員 事務事業概要によりますと、東京フィルムコミッション事業としては、観光財団に業務委託をしている東京ロケーションボックスの運営とともに、地域におけるフィルムコミッション設立の啓発や支援、国内外へのPR活動などを行っています。
 地域におけるフィルムコミッション設立の啓発、支援事業の実績について、お伺いいたします。

○横山観光部長 フィルムコミッションでございますが、地方自治体だけではなく、NPO法人ですとか観光協会などが運営主体となり設立されるケースも多いものでございます。
 都は、地域におけるフィルムコミッションの設立を促すために、フィルムコミッション事業を通して地域の活性化に成功した経験者や、多くのロケ誘致の実績を持つフィルムコミッションの担当者を講師といたしまして、ロケ撮影がもたらす地域活性化や、観光振興の現状と課題の検討などの講習会を開催しておりまして、区市町村を含む多くの団体の参加を得てございます。
 フィルムコミッション設立に意欲がある団体に対しましては、設立準備作業を支援するアドバイザー派遣制度を設けておりまして、派遣を実施しております。これらの事業の参加者から、平成二十一年五月には多摩市において、平成二十二年一月には府中市において、フィルムコミッションが設立されたという実績がございます。

○しのづか委員 平成二十一年五月、私の地元の多摩市でフィルムコミッションができております。その後、府中市ということで--ただ、これは東京都の取り組みによってできたわけじゃないんです。もうずっと長い経過の中で、五年ぐらいの準備期間があって、やっと設立につながったということで、これは、二十年度から設立支援というのはやっていると思うんですけど、ぜひ充実していっていただきたいと思います。
 そして、平成二十二年十月現在では、まだ都内の区市町村のフィルムコミッションは八団体しかないんです。区部は台東区の一団体、多摩地域は六団体、そして島しょ、八丈島の一団体ということで、東京都内にはこういった組織はいまだ八団体しかありません。
 やはり、設立に向けて、担い手ですとか財政的な問題ですとか、さまざまな課題があります。そしてまた、実際に活動している団体についても、フィルムコミッション事業というのは一応非営利ということになっているので、事業継続というものが財政的にもなかなか難しいというのが現状であります。
 都として、今までの支援の取り組みの中で、これらの課題をどうとらえて、そして実際の設立につなげていこうと考えているのか、お伺いいたします。

○横山観光部長 フィルムコミッションの設立を検討している団体に対しましては、先ほどお答え申し上げました講習会の開催、アドバイザーの派遣を行っておりまして、その中で、地域資源の発信につながるようなロケを受け入れる方針で設立するにはどうしたらよいかなどという課題に対応しているところでございます。
 フィルムコミッション設立後の団体に対しましては、連絡会を開催しておりまして、例えば経費がかかる、ロケ受け入れが制作側の単なる下請になっているなど、運営上の課題を共有する形で、新たな情報の提供も行っているところでございます。

○しのづか委員 いわゆる、既存の八区市町はいいんですが、こういった講習会やアドバイザー派遣によってフィルムコミッションが設立された地域は、そこでさらに具体的なロケ撮影支援というものが行われていくことになるんですけれども、圧倒的に設立につながっていない地域が多いという中では、やはり広域的な自治体である東京都の東京ロケーションボックスの存在というものが重要になってくると思います。
 設立されていない地域に対しての撮影支援というものを、都としてこれからどのように行っていくのか、お伺いいたします。

○横山観光部長 フィルムコミッションのない地域におきましては、都として可能な限りロケ撮影のサポートを実施しております。
 なお、東京都のフィルムコミッションは、広域的なフィルムコミッションの役割もあわせ持っておりまして、各地域間のコーディネーターとして、各区市町村への情報提供やロケ受け入れ調整といったものも図っております。

○しのづか委員 フィルムコミッションの役割はいろいろあると思いますが、やはりシティーセールスにつながるように、東京ロケーションボックスの取り組みをもっと情報発信していく必要があると私は思います。
 その一つとして、例えば提案させていただきたいんですが--もう既に、平成十三年からですから、来年で約十年になります--先ほども提案しましたが、支援実績があるロケ地の情報というものを、ウエブ上で発信していくなど、例えば、この映画のあの場面というものを映像で発信していくことによって視覚に訴える、それによって、あの撮影が行われた場所を訪れたいという人がふえてくるんではないかと思います。
 私も、市議会時代にフィルムコミッションを視察させていただきました。藤沢のフィルムコミッションですとか、姫路のフィルムコミッションというところを視察させていただいたんですが、姫路などは、ちょうどそのとき「ラスト サムライ」が撮影された後で、これがアカデミー賞作品になったことによって、その後の経済波及効果というのは、ちょっと今、数字は思い出せませんが、直接、ロケ撮影隊の支援でたしか八億円。これは年間ですよ。その後の、観光客がふえたことによる間接的な経済波及効果というものが、その倍以上あったと思います。これが恒常的に、その映画一本のことによってこういった効果が生まれると。
 もっとすごい例をいうと、例えば「ローマの休日」でオードリー・ヘップバーンがソフトクリームを食べたあの階段で、皆さん同じような体験をしたいというような、そういった映像を使った情報発信というものが、私は本当に必要だと思うんですが、この点について、このウエブ化について、ご見解をお伺いいたします。

○横山観光部長 都では、ロケ地を新たな観光資源として紹介し、都民のロケ撮影への関心を高めるとともに、ロケ撮影を積極的に受け入れている地域の集客効果を目的といたしまして、ロケ地マップを平成二十年度から作成、配布しております。
 あわせて、ロケ撮影支援の内容や都立施設でのロケの際の手続などの情報、積極的にロケ撮影の受け入れを行う施設をデータベース化しまして、日英の二カ国語によりまして、東京都フィルムコミッションのホームページで紹介しております。
 今後も、ロケ地としての東京の魅力を国内外へアピールし、観光客誘致と地域の観光振興を図ってまいります。

○しのづか委員 ロケ地マップというお答えがあったんですが、いただきました。これです。本当に内容が充実していていいです。例えば、今あるホームページにこれをこのまま張りつけるということだって、一つの方法だと思います。
 今のところ、多摩市、葛飾区、八丈島、立川、日野、上野、浅草周辺ということで、非常にいいものをつくっているんだけれども、なかなかこれ、ここにおられる皆さん、多分知らないと思うんですよね。もっともっと積極的な情報発信をしていったらいいと私は思います。
 なぜそれをいうのかというと、実は、この東京ロケーションボックス、平成十六年の事務事業評価の対象事業になっております。そのときの総合評価の項目を見させていただくと、第一次評価、第二次評価という評価がされているんですが、第一次評価が事業所管局、そして第二次評価が、その当時は知事本局がしていたわけです。当時の事業所管局は生活文化局なんですが、読み上げますと、今後も、撮影活動の円滑化を図り、東京の魅力を海外に発信するとともに、観光客誘致等の経済効果も視野に入れつつ、こうした取組を着実に実施していく必要があると。
 第二次評価で知事本局は何をいっているかというと、今後は、映画などの撮影の誘致が東京を訪れる観光客の増加にもつながるよう、ロケ地の場所を観光資源としてアピールするなど、観光振興施策とのタイアップを図り、事業効果をより一層高めていく必要があると、このように事務事業評価で指摘されております。
 それに基づいて産業労働局へ所管が移ったのかとは思うんですが、全くやっていないとは申し上げないんですが、いまいちそれが効果につながっていないんではないかと私は思います。これは指摘させていただきたいと思います。
 ぜひ、こういった情報の発信というのが、やはりまず東京を知ってもらうということが必要だと思いますし、そのためには、先ほどから重ねて申し上げますけれども、民間の発想、いわゆる東京の区市町村すべて公平にというような載せ方ではなくて、東京の魅力は何なんだと、売りは何なんだということで、もっともっと戦略的に発信していただきたいと思います。
 以上申し上げて、私の質問を終わります。

○伊藤(興)委員 それでは、私からは、まず初めに商店街の振興について伺いたいと思います。
 商店街は、いうまでもなく、売る、買う、そうしたことだけではなくて、今や防犯や、あるいは防災の拠点としての役割を担ったり、また、高齢者にとって憩いの場となったり、空き店舗を改装して保育施設を設けるなど、商店街が地域のコミュニティの核として実に幅の広い機能を担ってくださっております。
 こうした商店街の振興は、地域の身近な基礎的自治体である区市町村に加えて、都としてもしっかり支援することが大切だと思いますけれども、国では、これは自公政権のときに新たに法律をつくって、商店街の施設の整備などに補助を行う仕組みを立ち上げて、それに合わせた区市町村補助について、都は、中小商業活力向上施設整備費補助事業によって、今年度から支援を行うこととしております。
 こうした事業の効果的な活用に向けて、国、都、区市町村の三者が相互に連携を取り合いながら、商店街の支援に向けて、これまで以上に協力体制を強めていくことが重要であると思います。
 そうした三者の協力のあり方を含めて、本事業の推進に当たって、都はどのように取り組んでいくのか、まず伺いたいと思います。

○山手商工部長 商店街が地域の消費生活を支える経済的な役割などを果たすため、施設の整備や更新をしっかりと進めていくことが重要でございます。
 このため、国は地域商店街活性化法に基づきまして、商店街の施設の整備等に対し、事業経費の最大で三分の二を補助する、中小商業活力向上事業を実施してございます。この制度の活用が進むよう、都は今年度から、商店街の負担となる経費部分について区市町村が支援する場合、その支援額の二分の一を補助する中小商業活力向上施設整備費補助事業を設けまして、商店街の取り組みを後押ししているところでございます。
 本事業による補助は、国と都と区市町村が関係するため、相互の緊密な連携が重要と考えまして、都ではまず、制度の根拠となる法律を所管する国とともに、都内の商店街向けにパンフレットを作成し、配布することで、制度の周知とともに協力体制の強化に向けた取り組みを行ったところでございます。
 また、区市町村との連携を図るため、本年一月と四月に、都は区市町村に対して説明会を開催いたしまして、制度の内容やメリット等を説明し、区市町村による支援の実施や地元の商店街への周知を行うよう、強く働きかけてまいりました。
 商店街による補助金の申請について、都は国や区市町村と連絡を密にいたしまして対応を図っておりますが、引き続き連携体制の確立に向けた取り組みを進めて、本制度の効果的な運用が図られるよう努めてまいります。

○伊藤(興)委員 補助金の申請についても、三者の連携を密に図りながら進めているという答弁でありました。
 国とか都とか、あるいは区市町村相互に、補助がさまざまな形であるこうした事業については、それになれている方だったらいいんでしょうけれども、商店街の方がこうした制度を使いたいときに、国の書類、都の書類、区市町村の書類、もう書くのだけでも、そろえるのだけでも本当に大変だというふうに私は思います。
 行政による補助を、補助ですから税金を財源にしているわけですから、その使い道がどういうものなのかを書類を通じてしっかりとチェックしていくということは非常に大事なことだとは思いますけれども、こうした事務手続について、書類を必要最小限に絞り込んだ上で、その記入などについて、行政として何らかの支援をすべきだというふうに私は考えております。
 そこで、本事業に係る商店街からの必要書類の作成について、都として適切なサポートを行うことが重要と思いますけれども、何か考えていることがあれば、お願いしたいと思います。

○山手商工部長 商店街が、先ほど申し上げました中小商業活力向上施設整備費補助事業を活用する場合、事業計画を国に提出いたしまして、承認を受ける必要がございます。
 申請手続において、書類の作成等が商店街にとって過大な負担となることのないように、都は、国が商店街を支援するために設立いたしました全国商店街支援センターと連携いたしまして、補助金を活用する際に必要なアドバイスや申請手続に関するサポートを行っているところでございます。
 また、全国商店街支援センターでは、申請手続を十分に理解した専門家を一定期間商店街に無料で派遣し、事業計画の策定や書類作成のアドバイスを行っておりますが、こうした仕組みが商店街でより一層利用されるように、都も同センターを積極的に紹介しているところでございます。
 今後とも、本事業の利用を検討する商店街に対して、申請手続の負担を含めたさまざまな課題を着実に解決できる、きめ細かな支援を実施してまいります。

○伊藤(興)委員 都の中小商業活力向上施設整備費補助事業は、アーケードの新設や更新、あるいは街路灯の設置などの大型の施設の整備に力を入れる取り組みを支援する事業でありますけれども、施設そのものについて、地域社会や住民から商店街に寄せられるさまざまな期待をきちんと反映しているものとして整備を行う視点が大切であるというふうに思います。防犯や防災、さらには少子高齢化社会への対応も含めて、商店街がいわゆるハード面からそのレベルの向上に努めていくことを行政が着実に支援するという姿勢こそが大事であります。
 今年度の申請においては、耐震性の確保が懸念される老朽化したアーケードを建てかえ、安心・安全な空間をつくり上げるとともに、高齢者や子ども連れの買い物客が使いやすい施設に整備する取り組みを実施するものがあると聞いております。
 本事業を活用すると、商店街の費用負担はどのくらい軽減されるのか、都では、本事業のこれからの展開に向けて、どのような考え方で臨んでいくのか、所見を伺いたいと思います。

○山手商工部長 商店街におきまして、アーケードや街路灯などの施設の整備や更新を着実に行って快適な買い物空間の実現を図り、集客力を高めて、地域の消費生活を支える経済的な役割を適切に果たしていくことが重要でございます。
 その一方で、商店街には地域コミュニティの核として、住民の安全や安心を守る防犯や防災の拠点としての機能や、高齢者や子育て世代への支援などの社会的な役割も期待されており、そうした視点を十分に踏まえながら施設の整備等を図ることも必要であるというふうに考えています。
 施設の整備は多額な経費が必要なだけに、資金をどの程度用意すべきか、商店街から関心の集まるところではございますが、本事業を活用した場合、例えば総事業費が三億円であれば、国が三分の二、商店街負担額--これは残り三分の一の、その二分の一を都と区市町村で補助した場合、商店街の自己負担は全体の六分の一、五千万円に軽減されるものでございます。
 また、都では、特定施策推進型商店街事業におきまして、都政の重要課題である防災、環境、福祉などの分野に係る商店街の取り組みにつきまして、ハード面の施設整備が進むよう支援を行ってきました。
 中小商業活力向上施設整備費補助事業による補助の前提となる国の補助事業においても、地域住民の安全や安心の確保、環境問題、少子高齢化対策などの社会的課題への対応を要件としているため、都のこれまでの取り組みと軌を一にした商店街支援が可能になるというふうに考えています。
 都は、施設整備に係る補助事業を効果的に活用いたしまして、商店街が地域社会からの要望にこたえて社会的役割を十分に果たしていけるよう、積極的な支援を行ってまいります。

○伊藤(興)委員 ありがとうございます。
 次に、産業支援拠点の再整備について、何点か質問させていただきます。
 東京には全国の約一割を占める事業所が存在するとともに、都内の各地域には、それぞれ特色を持った多くの中小企業が地域の特性に応じて集積し、そうした集積の多様性こそが、産業としての力を生み出す源になっていると思います。
 具体的に、多摩地域を例にとると、同地域は都内の製造品出荷額等の半数を占めるとともに、先端技術を有する数多くの企業や大学、研究機関が集積して、これからの産業の発展に向けた高いポテンシャルを有しております。
 こうしたポテンシャルを最大限に生かし、産業振興を実現するため、都はことしの二月、多摩地域における産業支援拠点として、産業サポートスクエア・TAMAを昭島市に開設しました。私たち経済・港湾委員会のメンバーも、このオープニングに行かせていただきました。
 同拠点には、都の産業振興に必要なさまざまな施設が整備されておりますけれども、多摩の産業特性に対応した技術支援を行うために、多摩テクノプラザが開設されております。
 多摩地域における新たな技術支援の拠点となる多摩テクノプラザについては、地元の企業などから高い期待が寄せられて、開設後、産業界や自治体からも既に多くの見学者が訪れていると聞いておりますけれども、こうした施設がその力を十分に発揮して、産業振興に大きく寄与していくことが望まれております。
 そこで、この多摩テクノプラザの特色について改めて伺うとともに、その成果や実績が、半年を過ぎてどのようになっているのか、教えていただければと思います。

○山手商工部長 多摩テクノプラザでは、多摩地域の産業の特性として、エレクトロニクスや精密機械の分野の企業や、製品や技術の開発に力を入れる企業が数多く集積していることを踏まえまして、こうした企業からの利用のニーズを重視した技術支援の体制を整備してございます。
 例えば、エレクトロニクス分野への支援として、電磁波による電子機器の誤動作などの試験を行うために、全国の公設試験研究機関ではトップクラスの機能を有します十メートル法電波暗室や、電子回路の設計開発に欠かせないクリーンルームを整備してございます。また、試作品開発を迅速に進めることを可能とする高速造形機を導入いたしますとともに、精密機械が振動や温度差にどの程度の耐久力を持つかを検査する環境試験機器の充実を図ってございます。
 こうした対応によりまして、同プラザの利用実績は着実に伸びてございまして、四月から九月までの半年間の利用実績は、同プラザを整備する前の八王子支所などと比較すると、技術相談は約一・八倍の六千六十三件、依頼試験は約一・六倍の五千八百五十六件、機器利用サービスは約二・八倍の五千九百八十三件となっております。
 特に、この電波暗室の利用は既に千五百件近くに達するなど、高い稼働実績となってございます。さらには、同プラザの技術支援によりまして、水耕栽培用の省エネ型照明装置の開発など、中小企業の製品化の事例も出始めてございます。
 今後とも、多摩地域の産業特性を最大限に生かした中小企業の技術支援を、的確に実施してまいります。

○伊藤(興)委員 多摩テクノプラザには最新鋭のすぐれた機器も多く、万全の体制で中小企業の要望にこたえる取り組みを進めているということがよくわかりました。特に、電磁波を測定するための全国でもトップクラスの設備を整えて、利用者も多いという状況については、多摩地域としての地域特性を的確に踏まえての対応であると受けとめて、高く評価したいと思います。
 さらに、こうした多摩テクノプラザに続いて、来年の五月には、臨海副都心に産業技術研究センターの新しい本部が開設されるということでございます。このような新本部の設置による新たな支援体制のスタートと同時に、産業技術研究センターの第二期の中期目標期間が、平成二十三年の四月からスタートすることにもなります。
 この第二期中期目標の内容については、私は、先日の第三回定例会の本委員会において質問させていただきましたけれども、産業技術研究センターが、区部と多摩それぞれで技術支援の拠点として中小企業をサポートしていくとの状況を聞いて、非常に心強いものを感じているところでございます。
 そこで、産業技術研究センターの事業展開のかなめとなる新本部の整備の考え方と、その施設の機能に具体的にどのような特色を持たせていくのか、その辺を伺いたいと思います。

○山手商工部長 東京の産業の活性化と発展を実現するためには、中小企業がこれまで培ってきた基盤技術のさらなる高度化と、高付加価値な製品の開発に対する効果的な支援が必要となってございます。
 このため、現在、臨海副都心に整備中の産業技術研究センターの新本部は、こうした中小企業の技術支援ニーズにきめ細かく対応できる機能を持った施設として、多摩テクノプラザなどと連携しながら、中小企業の技術開発の支援のかなめとして十分な力を発揮できるよう整備を進めてございます。
 新本部の具体的な支援として、基盤技術の高度化に不可欠な超精密の部品開発を支援する高度分析開発セクターや、高付加価値な製品の企画から完成品の評価までの一連の取り組みを支援いたしますシステムデザインセクターを整備することによりまして、都内中小企業の技術のレベルや製品を生み出す力の向上を目指してまいります。
 また、新技術の開発に取り組む中小企業が二十四時間利用可能な研究スペースを提供いたします製品開発支援ラボを設置するなどの、きめ細かな支援体制も整備することとしています。
 産業技術研究センターの新本部の整備により、都内中小企業に対する技術支援の一層の充実を図ってまいります。

○伊藤(興)委員 多摩地域では多摩テクノプラザ、そして区部には来年完成するという新本部、いずれにしても、それぞれが技術支援の拠点として中小企業をしっかりとサポートしていく、こういう拠点として活躍されることを、私は大いに期待してまいりたいというふうに思います。
 次に、産業に関連してロボット分野の振興について質問させていただきます。
 我が国では、急速な少子高齢化と人口減少が同時に進み、団塊の世代が七十五歳以上になる二〇二五年には人口構成の高齢化のピークを迎え、これまで私たちが経験したことのない超高齢社会という状況に直面します。高齢社会に対応した社会のシステムを新たに整備することが急務となる一方で、これをビジネスチャンスととらえ、将来に向けた産業の振興につなげていくという視点も必要であります。
 こうした考え方に立つと、高齢化によって需要が膨らんでいく介護の仕事と、これまで中小企業が培ってきた技術力を結びつける視点は重要になると思います。例えば、介護分野で活躍するロボットの開発というのは、今後非常に有望であると考えます。身体障害者や高齢者の運動補助をするため、スーツ形式の器具を体に装着するようなものや、お年寄りにいやしを与えるペット型のものなど、ロボット技術を活用した取り組みは既に幾つか実用化されております。
 世界に誇る東京の高いロボット技術を介護分野に活用していくことは、我が国の高齢社会で生じるさまざまな問題の解決を図るだけでなく、海外向けの輸出産業の発展に結びつけていくことも可能であると考えます。
 公明党は、さきの参議院選挙のマニフェストの中でも、重点投資戦略により育成すべき成長産業の一つとして介護ロボットを挙げており、現在、その実用化を積極的に支援していくための検討を進めているところであります。
 そこで、都として、介護ロボットを初めとしたロボット産業の振興にどのように取り組んでいるのか、伺いたいと思います。

○山手商工部長 ロボット産業は、高い成長性と経済波及効果が期待できるため、東京都産業振興指針の中でも、都として戦略的に育成することとしております。
 これまで都は、東京の都市としての機能に着目した産業振興の取り組みである都市機能活用型産業振興プロジェクト推進事業の一分野といたしまして、ロボット産業の育成を推進する組織であるロボット産業推進機構を立ち上げ、産学公金のネットワークを構築するとともに、共同研究等の企画立案や販路開拓に向けた活動を実施し、中小企業がロボット産業で事業展開が可能となるように支援を行ってございます。
 同推進機構には、百四十五の企業、団体が参加しておりまして、各種セミナーを開催するとともに、そうした活動の中から参加企業が連携して製品開発を行うプロジェクトを立ち上げることのできるよう、コーディネーターによるマッチング活動を進めておりまして、その中では介護分野での取り組みについても検討されてございます。将来に向けて成長が期待できる有望な産業の一つとして、引き続きロボット産業の育成に取り組んでまいります。

○伊藤(興)委員 次に、機械・設備担保融資について伺ってまいりたいと思います。
 現下の厳しい経済情勢のもとでは、資金を必要とする中小企業へのサポートが重要であります。緊急保証制度の円滑な運用に加え、特に財務基盤の弱い中小零細企業に対しては、資金調達手段の多様化が大切であると考えます。都議会公明党は、かねてより、不動産担保に依存しない新たな融資手法として、機械や設備を担保とする融資を実施すべきだと主張してまいりました。これにこたえ、本年三月、都は、機械や設備を担保とした新しい融資制度を独自に創設しました。
 そこで、改めて本制度の導入の経緯と目的を伺いたいと思います。

○櫻井金融部長 都はこれまで、制度融資の中に売掛債権や棚卸資産といった流動資産を担保とした融資メニューを設けまして、不動産担保等に依存しない資金調達の方法の確保に取り組んでまいりました。
 こうした取り組みに加えまして、本年三月には、機械や設備を担保とした、都独自の新しい融資制度でございます、機械・設備担保融資制度を創設いたしまして、信金中央金庫を保証機関としたスキームの取り扱いを開始いたしました。
 さらに、九月には、日立キャピタル株式会社を保証機関といたしましたスキームの取り扱いも開始したところでございます。
 この制度は、企業が保有いたします工作機械や車両等の動産を担保とすることとしており、保証機関が担保となる動産の評価、管理等を担い、取扱金融機関に対する保証を行うものでございます。
 また、従業員数が製造業では三十人以下、卸、小売、サービス業では十人以下の小規模企業を対象としており、保証料を都が全額補助することにより、利用者の負担軽減を図るとともに、保証機関に損失が生じた場合には、都がその一部を補助することによりまして、小規模企業の信用リスクをより積極的にとることができる制度となっております。

○伊藤(興)委員 都議会公明党がこれまで求めてきたとおり、小規模企業に十分に配慮した制度になっており、とても、大変に評価できる事業であると思います。
 ところで、一つの融資制度の中に信金中央金庫と日立キャピタルの二つのスキームがあるということでありますけれども、それはなぜでしょうか、伺いたいと思います。

○櫻井金融部長 動産を担保とする融資は、まだその歴史が浅く、ノウハウの蓄積が少ないことから、担保価値の評価システムや担保物件の標準的な管理手法が十分には確立されておらず、多種多様な動産に対し、適切な評価や管理を安定して行うことが求められます。このため、複数の保証機関によるスキームを創設することで、こうした課題に対応する考えでございます。
 具体的には、まず、信金中央金庫のスキームでは、三つのリース会社を共同保証機関とし、それぞれが持つ経験や専門的ノウハウ等の強みを活用することによりまして、担保物件の種類に応じたより適切な評価、管理等が行われることを期待しております。
 日立キャピタルのスキームでは、同社がメーカー系のリース会社としてこれまで培ってきました、特に建設機械や産業機械の評価、管理等に関する経験や専門的ノウハウを活用することを期待しております。
 こうした二つのスキームによりまして、本制度を着実に推進してまいります。

○伊藤(興)委員 ただいまの答弁で、本制度において二つのスキームがある、この理由がよくわかりました。
 ところで、この取り扱いを開始した三月からこれまでの約半年の利用の実績、また、状況はどうなのか、伺いたいと思います。

○櫻井金融部長 信金中央金庫を保証機関とするスキームでは、本年三月、都内五つの信用金庫で取り扱いを開始いたしまして、現時点では十一の信用金庫にまで取扱金融機関を拡大しているところでございます。その中で、この九月には、印刷機械を担保とした一件の保証が実行されたところでございます。
 また、日立キャピタルを保証機関とするスキームは、九月に東京都民銀行を取扱金融機関として開始したところでございます。

○伊藤(興)委員 三月の制度開始から半年を経過したわけでありますけれども、ただいまの答弁でも、利用実績が一件ということでありました。これは少ないように私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

○櫻井金融部長 動産を担保とする融資の手法は、一般の中小企業にとりましてはもちろん、金融機関の現場でもなじみが薄いものでございます。加えまして、都独自の新たな取り組みといたしまして、損失補助や保証料補助といった仕組みも、本制度には導入されております。
 このため、各保証機関や金融機関においては、実際に本制度を扱う担当者に理解してもらうために説明会を開催するなど、本制度の浸透に時間をかけてきた面がございます。
 九月には、日立キャピタルのスキームが取り扱いを開始したところでございまして、信金中央金庫のスキームと相まって、今後、実績を伸ばしていきたいと考えております。

○伊藤(興)委員 ただいまの答弁で、金融機関等の担当者に対して制度の周知を図っているということでありましたけれども、こうした取り組みに加えて、小規模企業の経営者に対しても制度の仕組みやメリットを丁寧に説明し、より一層の利用を促進することが大事だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○櫻井金融部長 多くの小規模企業が積極的に本制度を活用できるよう、都としては、これまでもさまざまな方法で周知に努めてまいりました。
 まず、業界団体に対するPRにつきましては、印刷業を初めとした各種業界団体に対しまして、直接のPRを行ってまいりました。また、東京都中小企業振興公社、東京商工会議所等の商工団体や区市町村などと連携いたしまして、メールマガジンや機関紙への掲載、セミナー等の機会を利用した周知を行ってまいりました。
 さらに、この九月には、二つの融資スキームの取り扱いの開始に伴いまして、それぞれのスキームの特徴をわかりやすく説明したリーフレットを新たに作成し、関係機関に配布したところでございます。
 今後も、さまざまな手段や機会を活用したPRなど、制度の周知に努めることによりまして、小規模企業の利用を促してまいります。

○伊藤(興)委員 一昨年秋の未曾有の景気悪化に対応するため、制度融資、その中でも特に緊急保証制度が、資金繰りに苦しむ都内の中小企業に極めて重要な役割を果たしてまいりました。しかし、予想を超える不況が続く中、既に数度にわたる緊急保証制度の利用によって、これ以上の無担保での資金調達が困難になった中小企業の声も多く聞いております。
 このような状況においてこそ、ただいまお尋ねしてまいりました不動産担保に依存しない機械・設備担保融資、こうしたものは、そうした企業の新たな資金調達の道を開く制度であると私は思います。
 今後は、本制度の対象企業の規模の条件を緩和するなど、多くの中小企業が本制度を利用することができるよう要望したいと思います。
 次に、仕事と家庭の両立支援について伺いたいと思います。
 ここ数年、育児・介護休業法の改正や自治体の首長の育児休業取得なども話題となるなど、環境整備が進んでまいりましたけれども、私の地元でも、育児休業を利用しにくい雰囲気があるという従業員からの悩みの声や、あるいは、残ってほしかった社員が出産を機にやめてしまったという企業からの声も聞きます。安心して子どもを産み育てられる社会を実現するためには、仕事と家庭の両立を応援する企業をふやす政策が必要であります。
 さきの第一回定例会予算特別委員会において、都議会公明党は、育児休業等の取得支援について取り上げ、勤労者本人が希望する期間について十分な育児休業を取得できるように、また、育児休業から復帰しやすくするための短時間勤務の取得が促進されるよう、企業に対する支援の充実を求めました。
 それに対し、都は、育児休業や職場に復帰したときの短時間勤務の取得について、企業の取り組みを支援していくと答弁がありましたけれども、現在、具体的にどのような支援を行っているのか、取り組み状況を伺いたいと思います。

○日請雇用就業部長 出産前後の女性の就業状況を見ますと、出産や育児のために仕事をやめざるを得ないという方が六割を超えているという状況でございます。このため、仕事と家庭の両立のために、企業におけます雇用環境を整備していくことは極めて重要であるというふうに認識しております。
 都では、平成十九年度に、中小企業における従業員の仕事と家庭を両立させる取り組みを支援するために、中小企業両立支援推進助成金を創設いたしまして、その中で、特に育児休業者の代替要員確保を支援する育児休業応援助成金を設けまして、育児休業を取得しやすい職場環境整備を推進しております。
 本年度は、より多くの方が制度を利用しやすくするために助成要件を緩和し、短期間から長期間まで本人の希望する期間取得できるよう、さらなる支援を行っているところでございます。
 また、本年度より、育児短時間勤務制度利用促進助成金を新設いたしまして、育児休業取得後、短時間勤務を利用して職場復帰した従業員がいる企業に対しまして、手厚い支援を行っております。
 さらに、従業員が希望する期間で育児休業を取得できるよう、両立支援推進責任者向け研修におきまして、企業に積極的に啓発しております。
 今後も、中小企業を中心に積極的なPRを行いまして、助成金の利用促進も含め、働きながら育児をしやすい職場環境の整備を推進してまいります。

○伊藤(興)委員 都が具体的な支援策の拡充を行い、積極的にPRなどに取り組んでいるということについてよくわかりました。育児休業の取得促進に向けた自主的な取り組みがおくれている中小企業を支援する大変よい事業だと思いますので、これを一層実効性のあるものにしていただきたいと思います。
 さて、さまざまな制度を整え、事業主、勤労者の意識の向上を図ることを通じて、何とか希望どおりの育児休業を取得できたとしても、まだ多くの課題が残されていると思います。例えば、休業中は職場の情報が届かないため、自分の席がなくなってしまうのではないかとか、仕事に復帰した後、仕事についていけるだろうかなどと精神的な不安を感じたり、また、キャリアが落ちてしまうのではないかとスキルに関する不安を感じる方も多いというふうに思います。こうした育児休業中のブランクを埋めて、スムーズな職場復帰を後押しするためには、休業中の不安を軽減するような取り組みを行う企業への支援が必要であります。有能な社員が子育てをしながら元気に職場復帰を果たし、活躍することは、企業にも、その社員にも、また、社会全体にも有益なことだと思います。
 都は、さきの予算特別委員会において、先進的な取り組みをしている企業の事例を紹介するなど、育児休業中の社員を支援するすぐれた取り組みの普及啓発に努めると答弁されましたけれども、その取り組み状況と今後の方向性について伺いたいと思います。

○日請雇用就業部長 近年、中小企業におきましても、仕事と生活の調和を図るワークライフバランスに取り組む企業が増加してきておるところでございます。
 都では、平成二十年度から、こうした先進的な取り組みを行っている中小企業を東京ワークライフバランス認定企業として選定しておりまして、これまで二十二社を認定しております。こうした認定企業の取り組みを広く発信することで、他の企業にも取り組みを促すとともに、社会機運の醸成を図っているところでございます。
 認定企業の具体的な取り組み事例といたしましては、育児・介護休業復帰支援プログラムの導入、あるいは休業者とその上司との定期的な情報交換、休業者に対する定期的な訪問による助言、育児休業者の不安軽減や復帰支援の取り組みを行っているものなどがあります。これらの事例を都のホームページ等で紹介し、他の企業に普及啓発しているところでございます。
 また、労働相談情報センターで行っております両立支援推進責任者向けの研修におきまして、育児休業中の従業員の不安を軽減し、復帰を支援する制度等につきましての説明を実施し、企業に導入を呼びかけております。
 今後とも、こうした先進的な企業の取り組み事例を積極的に発信し、育児休業からの復帰支援を行う企業が拡大するよう、普及啓発してまいります。

○伊藤(興)委員 ただいまご答弁のあった東京ワークライフバランス認定企業の取り組みが広く社会に認知されることなどを通じて、多くの企業が導入可能な、育児休暇からのスムーズな復帰に効果的な取り組み事例の発信を、今後も行っていただきたいと思います。
 働きながら子育てをしやすい職場環境を中小企業が整備するには、社会全体でワークライフバランスの機運を高めていくことが重要であります。
 都は、ワークライフバランスについて考え、実践するきっかけとなるよう、東京しごとの日を創設しましたけれども、私は、さらにこうした取り組みを一層進め、自治体や企業、都民が一体となって、社会全体で仕事と家庭生活の両立が進むよう、さらに効果的、集中的にPRする機会、例えば、仕事と家庭の両立ウイークなるようなものを設定してはどうかというふうに思います。
 いずれにしても、この都庁を挙げて、また、都民挙げて、企業挙げて、区市町村挙げて、社会、仕事と家庭の両立をみんなでつくり上げていこう、こうした機運をつくっていく、こうした取り組みが必要であるということを提案を申し上げて質問を終わります。
 ありがとうございました。

○佐藤委員 東京都産業労働局は、平成二十一年十月より東京都新保証つき融資制度を実施しました。無担保で最大一千万円までの融資制度であり、目標値は平成二十一年度中に約五百億円、平成二十二年度中に六百億円としておりました。
 一方、これまでの実績を見ると、平成二十一年から平成二十二年九月末までに千二百五十六件、約百十二億円が保証機関によって保証承諾されております。目標値にはほど遠い実績となっております。
 先ほど、鈴木副委員長からも質疑がありましたが、産業労働局として、取扱金融機関をふやすよう努力すべきではないかと考えますが、見解を伺います。

○櫻井金融部長 地域の金融機関と連携した新たな保証つき融資制度についてでございますが、一昨年秋からの経済不況の中、緊急保証制度をもってしても十分な資金調達のできない中小企業が存在しており、本制度は、こうした資金繰りに苦しむ中小企業を緊急的に支援するために創設したものでございます。これまで千二百五十六件、百十二億円の実績を上げ、運転資金の確保に困窮する中小企業の資金繰りの改善に役立ってきております。
 目標額と保証承諾額の開きにつきましては、昨年十月の取扱金融機関による融資受け付け開始以降、国において、中小企業金融円滑化法が施行されたほか、緊急保証制度の対象業種が拡大されたことなどが影響しているものと考えております。
 現在では、十七の金融機関において本制度を取り扱っておりますが、都としては、より多くの都内中小企業が利用できますよう、引き続き取扱金融機関の拡大に取り組んでまいります。

○佐藤委員 この制度は、中小企業が取扱金融機関に申し込み、保証料を保証機関に払います。そして、融資が焦げついた場合には東京都が八割補助し、金融機関と保証機関が一割ずつ補助するわけです。この制度において、保証機関は一から三%の保証料を取って保証を行い、融資額の一〇%を補てんするという枠組みになっておりました。これは、保証機関にとって有利な制度ではないかという疑問を持っております。
 過去、似たような制度を東京都の環境局が二つ実施しておりましたので、環境局に融資実績を集計いただいて比較してみました。
 東京都ディーゼル車特別融資とNOx・PM法買いかえ特別融資あっせん制度です。
 東京都ディーゼル車特別融資は、平成十五年三月から平成十六年に実施されており、保証機関にとっての融資に伴う収入は四・五%の保証料であり、融資破綻時の負担は融資枠の一〇〇%を補てんすることとなっておりました。融資総額は千二百四十三件、約七十九億七千五百二十二万円で、当初保証料が千二百四十三件、約九億七千二百五十万円であり、代位弁済額は七十二件、約二億六千四百七十五万円でした。
 一方、利子補助金や信用保証料補助金等の都の支出は、合計で約九億二千万円でした。
 一方、NOx・PM法買いかえ特別融資あっせん制度については、平成十七年から十八年に実施されており、保証機関にとっての融資に伴う収入は三・六%の保証料であり、融資破綻時の負担は、融資額の一〇〇%を補てんすることとなっておりました。融資総額は百二十一件、約九億二千六百七十四万円で、当初保証料が百二十一件、約九千百万円であり、代位弁済額が七件、約四千四百二十一万円でした。
 一方、利子補助金や信用保証料補助金等の都の支出額は、合計で約八千万円でした。
 いずれの制度も、物的担保として保証機関が購入車両の所有権を留保した上で保証料を取って、融資破綻時には融資額の一〇〇%を補てんすることとなっておりました。ここからわかるように、東京都ディーゼル車特別融資とNOx・PM法買いかえ特別融資あっせん制度では、保証機関は利益が出る仕組みとなっていたわけです。
 この二つの制度と今回の保証つき融資制度を比較した場合、保証機関にとってさらに有利な制度になっているのではないかと考えております。といいますのも、保証つき融資制度では、融資が焦げついた場合、都が八割を補てんし、金融機関と保証機関は一割ずつを補てんする制度であるわけです。そして、保証料が一から三%であり、金利負担が二・五%と伺っております。ただ、この保証料が妥当なのかどうか、若干疑問を持っております。
 といいますのは、保証機関の補てん割合は焦げついた融資総額の一〇%にすぎませんし、保証つき融資制度を利用する企業の大半が制度融資を使っているわけですから、企業情報を金融機関も十分に把握しているわけです。通常の保証と比較をしても保証料を低く抑えることができるのではないでしょうか。破綻時の負担割合は低く、保証機関にとって利益の出る仕組みとなっているのではないでしょうか。ぜひ都として保証料を下げるよう交渉するべきではなかろうかと思いますが、都の見解を伺います。

○櫻井金融部長 本制度は、ふだんから経営者の顔が見えている地域の金融機関の目ききの力と、民間保証機関が蓄積している審査ノウハウの両者を活用することにより構築しております。金融機関と保証機関がそれぞれ応分のリスク負担をすることによりまして、精度の高い審査がなされることを期待しており、もって制度の安定性の確保を図っているところでございます。
 本制度の保証料につきましては、取扱金融機関と保証機関との間の個別の協議の上で設定されているものでございまして、都としては、貸付原資の預託や損失の補助といった財政措置を講じることによりまして、金利や保証料の軽減を図っております。
 その結果、金利、保証料を合わせた、中小企業が負担するオールインコストは、三%前半から五%後半に抑制されております。本制度は、比較的信用リスクが高い中小企業に対しても、運転資金を無担保で融資するものでございまして、この水準は適正なものであると考えております。

○佐藤委員 さきの委員会でも申し上げたわけですが、環境局の融資実績、いわゆる焦げつき額が明らかになっていない中、産業労働局として新しい制度をつくったわけです。本来ならば、環境局の二つの制度の実績を集計して、都の負担を検証するべきであったのではないでしょうか。今回、環境局の二つの制度、そして、産労のつくった制度、いずれの制度も保証機関に同じ企業が入っていたわけですから、実績データの提出をお願いした方がよかったのではないでしょうか。
 今回、産労としても、制度をつくる上で保証機関と交渉されたと思いますが、保証機関としては実績のデータがあり、産労としては実績のデータがない中で交渉されたわけです。やはり実績に対する分析をもとにして、そして、産業労働局と環境局が情報交換をした上で新しい制度設計をするべきであったのではないでしょうか。
 環境局が融資状況を集計したところ、先ほど申し上げたように、保証機関の利益は出ておりました。産業労働局としても、今回の制度をつくる際に、環境局の行った二つの制度、その融資の実績を参考にしていなかったわけですから、組織のノウハウを共有して新しい制度を設計するべきであったのではないかと思いますが、見解を伺います。

○櫻井金融部長 本制度の構築に当たりましては、制度融資を初めとする中小企業金融の長年にわたり蓄積したノウハウを十分に活用し、具体的な制度設計をしたところでございます。
 環境局が、かつて実施いたしました自動車公害対策のための融資制度と比較しながら、本制度の保証料につきましてお話がございましたが、本制度とは、制度創設の目的や取り巻く経済金融環境のほか、資金使途、融資限度額、担保提供の有無を初めとする融資条件等の前提要件が大きく異なっております。
 特に、環境局の制度では、融資に当たりましては、車両を担保として提供する必要があるのに対しまして、私どもの制度では無担保で融資を行うものであり、単純に比較することは適切ではないと考えております。

○佐藤委員 今回の東京都新保証つき融資制度の利息と保証料を合わせると、先ほどお答えいただいたように、三%前半から五%後半ということですが、資金調達コストは新銀行よりも安くなるのではないでしょうか。さまざまな取り組みは結構なことですが、結果として新銀行の市場を奪う結果につながっているのは皮肉なことではないでしょうか。
 続きまして、新銀行東京について伺います。
 九月の経済・港湾委員会で新銀行のファンドについて確認しましたが、もう少し、内容について議論させていただきたいと思います。
 平成二十年三月十四日の予算特別委員会で、我が都議会民主党の今村委員が次のような指摘をしております。平成十六年より、産業労働局のもとで二つのベンチャー投資法人が設立され、そこから七つの有限責任組合に出資されています、これは、都が百億円を出資し、金融機関が運用者として有限責任組合に投資するというものであります、既に、新銀行以上にファンドを通じた中小企業への支援を行っているではありませんか、都が直接資金を出した取り組みを行っているわけでありますけれども、なぜ、さらに新銀行東京を通じてファンドで中小企業への支援をふやす必要があるのでしょうか、このように、これまで都議会民主党としても、元本保証がされないファンド投資の危険性を十分指摘してきたわけです。
 まず、伺いますが、平成二十二年三月末時点で、約三十五億六千万円の出資残高があったようですが、そもそも開業以降のファンド投資全体の収益はどういった状況なのでしょうか。
 また、個別のファンド収益とファンド投資全体の収益をお答えください。
 また、支払った手数料の総額についてもお答えください。

○斎藤金融監理部長 個別のファンドの収益につきましては、個別案件に当たりますため、新銀行東京は明らかにしておりません。
 また、全体の収益につきましては、決算期ごとに損益計算書におきまして他の有価証券の損益とあわせて公表しております。
 また、ファンドの手数料などの投資条件につきましても、同様に個別案件に当たりますため、新銀行東京は明らかにしておりません。

○佐藤委員 個別のファンドの内容についてはお答えできないという答弁でありましたが、私の方でも新銀行が投資しているファンドの内容を確認してみましたが、公開されている情報というものがあるわけです。
 そこで、いま一度確認しておきたいのが--新銀行東京が出したくないのか、それとも、産業労働局は知ってはいるが、議会に報告したくないのか、それとも、産業労働局はファンドのことは関心がなく、これまで一切情報収集をしてこなかったのか、いずれかに当てはまるだろうと考えております。
 個別のファンドについてお答えいただけないようでありますが、今、お話をしたように、新銀行東京が報告しないのか、それとも、都は把握しているが議会に説明しないのか、どちらなのでしょうか。
 また、新銀行から、都にファンドの目論見書や契約書、そして、実績状況等は提出されているでしょうか、あわせてお答えください。

○斎藤金融監理部長 個別のファンドの収益など、個別の取引にかかわる事項につきましては、先ほど答弁いたしましたとおり、新銀行東京は明らかにしておりません。
 お話の目論見書というのは、投資家を公募する場合には作成、交付することが関係法令で義務づけられておりますが、私の募集、私募の場合には必ずしも作成が義務づけられているものではございません。
 いずれにいたしましても、目論見書や契約書といった書面は、ファンド運営会社と投資家との間で取り交わされるものでございまして、都には提出されておりません。

○佐藤委員 今、お答えありましたが、バーゼルⅡでは、バーゼルⅠと比較して、さらに細かいリスク管理を求められているわけです。適切なリスク管理ができなければ、それだけ多くの引当金を積むか、もしくは自己資本をふやすかしなければ自己資本率が下がることになります。果たして新銀行は十分なリスク管理ができているのでしょうか、また、都が十分な監視をしているといえるのでしょうか、疑問を持たざるを得ません。
 また、いつファンドの利益を計上しているのか、また、閉じたファンドの経理について、どういった経理の処理をしているのか、お答えください。

○斎藤金融監理部長 ファンドによって異なってまいりますが、例えば年二回などのファンドの決算期ごとに分配金として収益分配がございますほかに、投資期間が満了した際に償還損益、譲渡した際には譲渡損益が計上されます。
 閉じたファンドの経理処理、いわば投資期間が満了した際に発生する償還損益につきましては、有価証券利息配当金として損益計算書に計上されるものでございます。

○佐藤委員 平成二十年三月十四日の予算特別委員会で、佐藤産業労働局長は、今回の再建計画は、今までの実績に基づいて利益が上がっている部分を中心に組み立てた再建計画、そういう計画なんですね、ですから、それは、ファンド投資も今までの実績の中で利益を上げている部分、そういうところとして選ばれた計画であるわけです、と述べています。
 つまり、当時の産業労働局長自身が、毀損するリスクを顧みず、新銀行の再建計画の中でファンド投資を追認されてきたわけです。都が新銀行のファンド投資の監視を十分に行っていない、しかも、議会に十分な報告がないことに納得ができません。
 四百億追加出資以降に投資されたファンドは幾つあるのでしょうか。また、追加出資前と後で分けてお答えいただきたいんですが、新銀行のファンド投資を決定した担当者はだれになるのでしょうか。
 また、ファンドの選定方針ですが、収益率なのか、何を基準としているのでしょうか、お答えください。

○斎藤金融監理部長 四百億の追加出資を行った平成二十年四月以降に投資したファンドの本数は四件でございます。
 ファンドの選定方針について、何を基準にしているのかというお尋ねでございますが、ファンドへの投資は、そもそも企業再生ですとか、ベンチャー企業育成など、中小企業支援という目的のもと、適切な手続を経た上で銀行の経営判断として行っているものでございます。
 融資においても、信用リスクに応じた引き当てを積むなど、十分なリスク管理を行うのは当然でございますし、投資においても同様にリスク管理を適切に行っていくということは、これは銀行経営として当たり前のことであろうというふうに思います。
 どのファンドにどれだけ投資するかについては、単に収益率によるなどではなく、リスクとリターンのバランスを総合的に勘案した上での経営判断であろうと思います。
 なお、当然のことでありますが、追加出資の前と後でこのような方針が変わるものではございません。

○佐藤委員 元本保証はされないファンド投資が、再建中の新銀行にとって当たり前の経営判断なのかどうか、私は非常に疑問を持っています。
 前回の委員会では、平成二十二年三月末時点で約三十五億六千万円の残高があったということですから、追加出資前に投資したファンド残高が約二十億六千万円、追加出資後に投資したファンドが約十五億円ということになるわけです。
 それにしても、四百億円追加出資後に投資が毀損される可能性も高いファンドに対して、四つのファンドに十五億円も投資していたことには大いに疑問を覚えます。
 また、ファンドの投資年数が複数年にわたっているわけですが、どの社長の時代に、どのファンドで幾らの投資を行ったのか、都は把握しているのでしょうか、お答えください。

○斎藤金融監理部長 新銀行東京が出資しているファンドが、企業再生やベンチャー支援などという、その目的を達成いたしますためには一定の期間が必要でございまして、投資期間が複数年にわたるのは当然のことと考えます。
 新銀行東京は、毎年の決算におきまして、ファンドへの投資残高について明らかにしておるところでございます。

○佐藤委員 新銀行の経営責任を問うならば、ファンドの投資実績はどうであったか、そして、その経営判断についても検証する必要があるのではないでしょうか。
 都から情報が出てこないものですから、私もファンドの内容について照査してみました。
 新銀行は、首都圏企業再生ファンド投資事業有限責任組合のファンドを、二〇〇六年三月十三日に設立しております。このファンドに都は、平成十九年十二月時点で二十五億円の出資コミット契約を結んでおりました。
 このファンドの契約が、平成二十三年の一月三十一日に切れるわけです。延長した場合も、平成二十五年の一月三十一日が契約期限となっています。平成二十二年三月三十一日時点で、二十一社に九億四百万円の投資を行っているようでありますが、新銀行の投資方針はどうなっているのか、そして、都は、このファンドについてどういう見解を示しているのか、お答えください。

○斎藤金融監理部長 SBIキャピタルが組成したファンドであります、首都圏企業再生ファンドとの契約につきましては、平成二十三年一月三十一日、または延長した場合、平成二十五年一月三十一日で終了いたします。
 その後の取り扱いにつきましては、その時点で新銀行東京が経営上の判断により決定するものというふうに考えております。

○佐藤委員 ファンドの中で、平成十九年十二月時点の出資コミット金額が大きかったのが、今、お話しした首都圏企業再生ファンド投資事業有限責任組合が二十五億円であり、ディーアイティー第一号投資事業有限責任組合が十億円であったわけです。
 このディーアイティー第一号投資事業有限責任組合ですが、ディーアイティー・パートナーズ株式会社が運営しております。この企業は、平成十八年六月十二日に、開業前から新銀行のコンサルティングを行っていたアビームコンサルティング株式会社や、都も出資している東京中小企業投資育成株式会社などと一緒に、新銀行東京が出資して設立したファンド運営会社です。つまり、都が出資して新銀行をつくり、新銀行が他企業と一緒に合弁会社をつくっていたわけです。
 この企業設立に新銀行が参加し、ファンド投資した経緯について、都はどういった報告を受けていたのでしょうか。また、現在はどういった状況なのでしょうか、収益は出ているのでしょうか、お答えください。

○斎藤金融監理部長 ディーアイティー・パートナーズ株式会社の設立や、同社が運営しておりますディーアイティー第一号投資事業有限責任組合への投資につきましては、ベンチャー企業の育成を支援するファンド運営会社に出資するとともに、そのファンドへ出資したと報告を受けております。
 なお、個々のファンドの状況につきましては、個別案件でございまして、新銀行東京は明らかにしておりません。

○佐藤委員 都は、新銀行から合弁会社を設立したと報告を受けているということでしたが、今まで議会には全く報告はありませんでした。これは、四百億円の追加出資以前の話ですから、追加出資を受けるに際して、議会に対して説明をするべきだったのではないでしょうか。
 ディーアイティー第一号投資事業有限責任組合ファンドの契約期間が終了した後は、新銀行が出資したディーアイティー・パートナーズ株式会社を解散するのでしょうか。また、新銀行東京から、都はどういった説明を受けているのでしょうか。そして、新銀行が合弁会社をつくるといった企業への出資について、都はどういった見解を持っているのか、お答えください。

○斎藤金融監理部長 そもそものお話になりますが、金融機関によるファンドへの投資というのは、当然のことながら、新銀行東京に限らず、通常多くの金融機関で幅広く行われているものでございます。
 金融機関の経営上の責任において、リスク管理を行いながら行っていくということが広く行われているということは、ご理解いただけるんではないかというふうに思います。
 ご指摘のファンドの件ですが、ファンドの投資期間が終了した時点で、ファンド運営会社を解散するか存続するかは、その時点での経営者及び各出資者の判断によるものと考えます。
 また、新銀行東京のファンドへの出資についての都の見解でございますが、ファンドの目的や、リスクとリターンを勘案して、新銀行東京の経営判断として行っているものというふうに認識しております。
 それから、ただいまお話がございました、本件に関して今まで議会に全く報告がなかったと、追加出資を受ける際には説明すべきだったのではないかというお話でございますけれども、追加出資をご審議いただいておりました平成二十年の予算特別委員会におきまして--公明党の東村先生が委員でいらっしゃったようですが、当時の佐藤産業労働局長は、ご質問にお答えする中で、本件に言及しております。
 参考までに読み上げますと、これまでのファンド投資において実績のあるSBIキャピタル、また、東京中小企業投資育成、こういったところと連携することで、従来実績を積み上げてきたわけでございますが、今後とも堅実な投資先と提携することによって、というような、投資の相手方のお名前も含めて言及しているということは、ご参考までに申し添えさせていただきたいと思います。

○佐藤委員 ただいま、予算特別委員会でご説明があったということでありますが、私どもも都議会民主党といたしましては、資料要求をいたしました。
 それで、当時、新銀行が投資していたファンドの一覧表というものを出していただいたわけです。当然、そこには、このディーアイティー第一号投資事業有限責任組合ですか、この名前もあったわけです。ただ、それはファンドとしてご説明いただいただけで、新銀行がまさか合弁会社をつくっていたという説明は全くなかったわけです。まさか私たちも、税金を使ってつくった新銀行が合弁会社を勝手につくっていた、そんなことは全く予想をしてなかったわけです。
 今回、確認させていただいたわけでありますが、果たしてファンド投資のためにつくったこういう会社が、ファンド投資の契約が終わっても存続するのかどうか、これは私たちもしっかりと監視していきたいと思っていますし、都が出資した新銀行東京、また、都が株主でもある東京中小企業投資育成株式会社ですか、こういったところが一緒になって合弁会社をつくったわけですね--このコンサルをやっていたアビームコンサルティング株式会社も一緒になった、この設立の経緯が、果たしてどういった経緯があったのかということは、やはり明らかにしていく必要があるだろうと思っております。
 今、お話をしたように、新銀行が出資したファンドの運営に、新銀行が合弁会社を設立したのも疑問ですし、ファンドが終わった後もその法人を解散させないというのは、何のために設立した法人なのであるのか疑問です。
 先ほどより申し上げてまいりましたが、ファンドの投資は利回りが高い反面、元本保証というものはありませんから、投資に失敗したら毀損する可能性があります。複数年契約であり、途中解約が難しいわけですし、その間に社長も変わってしまうため、経営責任があいまいになってしまいます。
 実質業務純益が黒字になっていない再建中の新銀行にとっては、元本保証のないファンド投資というのは、リスクが高過ぎるのではないかと考えております。
 また、今、申し上げたように、情報公開の面でも課題があります。議会に対して四百億円の追加出資をお願いするときにはお願いだけしておいて、その後は説明しないということには納得ができません。
 今まで実質業務純益が黒字になっているわけではありませんから、今後も慎重な監視が必要だと考えております。
 ファンド運用と情報開示について見直していただくよう強く要望しておきます。
 以上です。

○西岡委員長 発言がなければ、お諮りいたします。
 本件に対する質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○西岡委員長 異議なしと認め、事務事業に対する質疑は終了いたしました。
 以上で産業労働局関係を終わります。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後七時四十六分散会