委員長 | 小沢 昌也君 |
副委員長 | 高木 けい君 |
副委員長 | 増子 博樹君 |
理事 | 伊藤 ゆう君 |
理事 | 高倉 良生君 |
理事 | 鈴木あきまさ君 |
田中 健君 | |
伊藤 興一君 | |
笹本ひさし君 | |
山崎 一輝君 | |
三宅 茂樹君 | |
佐藤 広典君 | |
清水ひで子君 | |
鈴木貫太郎君 |
欠席委員 なし
出席説明員中央卸売市場 | 市場長 | 岡田 至君 |
管理部長 | 後藤 明君 | |
事業部長 | 大橋 健治君 | |
新市場担当部長 | 野口 一紀君 | |
新市場建設調整担当部長 | 宮良 眞君 | |
参事 | 大朏 秀次君 | |
参事 | 横山 宏君 | |
参事 | 砂川 俊雄君 | |
参事 | 黒川 亨君 |
委員外の出席者
参考人
東京都水産物卸売業者協会会長 伊藤 裕康君
日本環境学会土壌汚染ワーキンググループ長 坂巻 幸雄君
国立大学法人和歌山大学理事・元豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議座長 平田 健正君
本日の会議に付した事件
中央卸売市場関係
報告事項(参考人からの意見聴取)
・豊洲新市場予定地における環境影響評価に関する現地調査結果について
○小沢委員長 ただいまから経済・港湾委員会を開会いたします。
初めに、傍聴人の数についてお諮りいたします。
本委員会室の定員は三十二名でありますが、傍聴希望者が定員以上でございますので、さらに二十名を追加したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小沢委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。
○小沢委員長 過日の委員会で理事会にご一任いただきました参考人招致の詳細につきましては、お手元配布の実施要領及び質疑時間の取り扱いに関する申し合わせのとおりとし、本日及び一月二十六日の委員会で行うことといたしました。ご了承願います。
本日は、お手元配布の会議日程のとおり、中央卸売市場関係の報告事項に対する参考人からの意見聴取を行います。
これより中央卸売市場関係に入ります。
報告事項、豊洲新市場予定地における環境影響評価に関する現地調査結果についてに対する参考人からの意見聴取を行います。
ご紹介いたします。東京都水産物卸売業者協会会長の伊藤裕康さんです。
本日はご多忙のところ委員会にご出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして御礼申し上げます。
これより伊藤参考人からの意見聴取を行います。
初めに、伊藤参考人のご意見をお伺いいたします。発言席にご移動願います。
なお、伊藤参考人には、ご着席のままご発言していただきたいと思います。ご了承願います。
それではよろしくお願いいたします。
○伊藤参考人 ご紹介いただきました伊藤でございます。
きょうは、こういうことは初めてでございまして、大変緊張しておりますが、遺漏のないように発言させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、座ったままでしゃべらせていただきます。
築地市場には、大体一万四千人の人が日々働いているわけでございますけれども、大きく分けて六団体、業種別に六団体で構成されているといわれております。水産の卸、仲卸、買参、それから小売、そして青果の卸、仲卸、買参、そしてそれらを全部補助するお仕事をなさっていらっしゃる関連事業者、こういうことで青果を一くくりにいたしますと、六団体ということになります。
その六団体の中で、一団体、仲卸さんだけがご意見が分かれておりますので、それら仲卸さんを別にした五団体、そこに仲卸さんの有志の方が加わって、今お手元にお配りした役員名簿がございますけれども、新市場建設推進協議会というのを組織してございます。私ども通称、この六団体の中の五・五団体といっておるんでございますが、ほとんど多くの方々が意見を一つにしておりますので、この人たちを会員として、新市場建設推進協議会というのを組織いたしまして、現在、私がその代表になっております。ここに役員名簿がございますが、これがそれぞれの各団体の長、そして仲卸さんの場合は、それの有志の代表という形でここに入っております。
実は昨年の十一月に、私ども、この組織といたしまして、東京都さん、それから東京都議会さん、そしてまた都議会各党の代表の方々に要望書をお持ちして、私以下で直接お手渡し申し上げて要望を申し上げたところでございますが、この二つ目の資料に要望書が載ってございますので、五分間でございますけれども、これをちょっと簡単に読み上げさせていただきたいと存じます。
「平素は、築地市場の運営につきまして、格別のご指導、ご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。 さて、先般の都議会議員選挙、そして衆議院選挙においても、民主党が第一党となり、都議会においては、築地市場の移転・再整備に関する特別委員会の設置が決定されました。さらに、民主党からは、築地市場の現在地再整備を改めて検討するための検討機関の設置、シンポジウムや公開討論会の開催が求められていると聞いております。 このような昨今の情勢に対し、築地市場の役割や移転決定に至る過去の経緯が十分に理解されないまま、政治的な争点とされていることに強い危惧を感じております。 私ども市場業界といたしましては、生鮮食料品を安定的に供給し、都民の公共の利益に資する中央卸売市場としての重責を鑑み、築地市場の整備について、昭和六十一年以降、長い年月をかけ、あらゆる角度から真摯に検討を進めてまいりました。しかしながら、平成三年に現在地再整備に着手したものの、本格着手前に中断せざるを得ず、再整備は不可能であるとの結論に至り、市場の維持・発展を考えた苦渋の選択として、豊洲地区への移転を決定したことは、ご高承の通りと存じます。 近年、市場に対しては、産地や顧客からの要請が厳しくなっており、施設が老朽化し、市場の本来的機能である物流や衛生面での課題が抜本的に解決できない築地市場では、将来的な展望が見出せない状況にあります。 私ども業界としましては、築地市場の現状に強い危機意識を持ち、豊洲新市場の実現に希望を託し、計画推進に一致協力し、準備を進めてきたところです。新市場の開場は、当初予定の平成二十四年度末から既に二年近くも遅れており、市場を取り巻く環境が激変する中、これ以上の遅滞は経営面でも大きな打撃となり、一刻の猶予もありません。 現在地再整備の議論に立ち戻ることなく土壌汚染対策に万全を期して取り組み、安全性を揺るぎないものとし、私ども業界の二十年来の悲願である豊洲新市場の建設を一日でも早く実現していただきますよう、特段のご高配を切にお願い申し上げます。」
以上が私どもが十一月にご提出申し上げた要望書でございます。
現在、築地の場合、何が一番問題なのか、何が一番困っているのかと申しますと、老朽化と、それから設計自身の古さでございます。これは、老朽化は、先ごろも天井からコンクリートの塊が落っこってくるというようなことがあって、幸い、その下に人がいなくて、無事でございましたけれども、どうもいろいろ調べてみますと、鉄筋コンクリートの中の鉄筋自身が相当にもう傷んでおりまして、これがさびて、しかも、さびてくると、容積がふえるんだそうでございますね。そうしてコンクリートを押し下げるといいますか、押し上げるといいますか、そういうことで、破裂するような形でコンクリートが落っこってくると。コンクリートの層が薄いところほど危険があるわけでございまして、私どもは日々これが大変不安でございます。
なお、片や、この築地市場ができましたのが、昭和九年の年末と聞いておりますが、建築にかかったのが昭和五年でございまして、したがって、設計したのはそれよりも二、三年前ということになりますですね。そういうときの市場に対するニーズ、どうしたものを、どうした設備をすればいいのかという考え方に基づいて設計されたわけですけれども、現在とは全く必要な要件が違っております。
何が一番違うかというと、まず交通の手段でございますが、当時は、貨車輸送が圧倒的に多かったんでございます。貨車、そしてそれを補うものが船であり、さらにそれを補佐するといいますか、それが自動車だったのでございます。したがって、汐留の操車場から、この市場を半円形に取り巻くレールを敷きまして、そしてそのレールに沿って、毎日三編成ないし四編成の長い貨車の列がこの市場に入って、そして荷おろしし、そして出ていって、また次の編成が入ってくるというようなことをやるためにつくられた、そういう市場でございます。
船も一時はかなり運搬船やら、あるいは漁船すらたくさん入っておりました。自動車は全くそれの補佐役でございました。そして、レールのところでおろした荷物は、そこがすぐにぐるっと半円形状になった競り場でございまして、その内側に配置された仲卸の店舗から、仲卸の方々がそこに集まり、卸は卸でその競り場を利用して、そこで競りが行われる、あるいは相対取引が行われるということがありました。
そして、その仲卸さんたちは、それをお買いになって、それをさらに真ん中の丸いサークルみたいなところがございますけれども、そこは今度はお買いになった方々が地域別にそれを集荷すると。そして、例えば中野地区は中野地区、麹町地区は麹町地区、それぞれのお客様がそこに集まって、そこに荷物を集めてお持ち帰りになる、そういう仕組みでございまして、当時としては大変に理想的な、かなり革新的な設計だったと思うんです。
ところが、今やそれがどうかといいますと、もう貨車は使っておりません。船も一、二杯程度の運搬船が来る程度でございまして、ほとんど船便というのは姿を消しております。圧倒的に多数がトラック輸送、自動車輸送でございます。現在私どもは、これをレールを埋めて、そうしていろいろ建物を増改築したり、いろんな工夫をしながら使っておるんですけれども、設計の思想が根本的に違うから大変に不便でございます。車の動線を確保することすら、あるいはトラック同士がすれ違うことすら大変困難な状態でございます。
そういう古い設計思想の中で、私たちは、これ、だましだまし使っておるんですが、そういう市場、しかも老朽化が激しい。既に御年七十五歳でございます。こういう古い設備の中で、しかも、今要求されることは安心・安全でございます。
しかも、この市場というのは、あくまでも都民のため、都民に安定供給、健全な、健康なお魚を、あるいは野菜を都民のところに安定してお届けするというのが本来の役割でございます。それだから公設なんです。それで、私どもは、それを果たすために日々大変に苦労しております。いかにそれぞれの商品の鮮度を保って、いかに早くお届けするか、鮮度劣化をいかに防いだらいいのかという点で大変に苦労しております。こういう点で、これらの老朽化と設計の古さが今日の築地の最大のネックでございます。これは一日も放置することができません。
今ここにご用意させていただいた資料が、カラー刷りのものが四ページございますけれども、これは私どもがまとめた今日までの築地市場の再整備についての経緯でございます。実は、昭和三十年代から、大井へ行かないか、大井へ移転しようかという話がまず持ち上がった。ところが、それがいろいろ議論の末に、昭和六十年に至って、築地でぜひやりたい、大井移転は無理だということになりまして、業界の総意で築地再整備を決議したわけでございます。本願寺大会というのがございました。そして、御都、東京都はそれを受けられて、昭和六十一年になって第四次の整備計画、二ページ目にございますけれども、築地市場での現在地再整備を決定されたわけでございます。そうして、ここに書いてございますように、そのかわり、工期は十四年間かかるぞと、種地がないんですから。そうして、工区を六つに分けて、順次やっていこうということでスタートいたしまして、準備を終えて、平成三年からこの工事がスタートしたわけでございます。
ところが、おっとどっこい、なかなかこれがうまく進まない。三ページ目の上の方に縦長でいろんな理由が書いてございますけれども、仲卸さんは、その六工区の中に入る方、入らない方、あるいは順序がどうなるかということで、大変公平、不公平がございまして、それらの不満がある。
それから、第一工区に選ばれたその茶屋の方々が、仮設の茶屋はとても使いにくい、品物がそこでは集まらない、現実に無理だということで、これもストップしちゃいました。冷蔵庫の方は、当初の見積もりに比べて何倍もする建設費がかかっちゃって、これじゃ無理だということになりました。
一方、東京都さんの方も、当初見積もった金額に比べてどんどん建設費が高騰するというようなことになってまいりまして、当時の私どもが聞いた話では三千四百億ぐらいかかる。しかし、それでもおさまらないんじゃないかというような話が出てまいりました。とてもじゃないけど、我々そこで経験しておりますけれども、これだけ練りに練った築地再整備のそのプランが全部とんざしました。いろんなことをお考えになって、資材を入り口から入れたのではとても不便でしようがないから、あるいは邪魔になってしようがないから、資材は隅田川から運び入れようということで、隅田川に面した場所に工台をつくって、そこで資材を荷おろしするということまで計画し、それの工事すら全部やったわけでございます。現在もそれは残っております。そして、立体駐車場も新しいものができました。
しかし、そこまでやった段階で、これ以上進まなくなっちゃったんです。無理なんです。それで、この築地再整備はとんざいたしまして、先ほどの文章にありましたように、私どもまさに苦渋の選択でございましたけれども、新しい土地を求めて、そこに行かなければ、実際に築地を直そうとしても無理だと。年数が何ぼかかっても無理だということが、我々、体験でわかったわけです。
そのために、ここで豊洲ということが登場してまいりました。残念ながら、その豊洲の市場の土地自身が汚染があるということがわかり、さらにそれをお調べになった結果、さらに非常に汚染度が高いものが入っておるということがわかりました。それに対しては、東京都さんの方でいろいろ専門家なり技術者の会議なり、長期間かけて、しかもオープンでこれをおやりになった結果、現在のご提案のように、こういうふうに浄化すればいいんだ、大丈夫だというふうなお答えを私どもいただいておりますが、この安心・安全については、まず市場の第一前提でございまして、我々は何としても安心・安全が確保されなきゃいけないと。したがって、御都のこういうご計画のもとで、専門家の偉い先生方がさんざんお調べになり、ご協議なさった上での答えでございますので、これを尊重していただいて、そうしてでき上がった末に、この安心・安全を確認した上で、新市場の建設にかかっていただきたい。
そして、私どもとしては、申し上げたいのは、築地再整備なり、あるいは一時どこか晴海のようなところに仮移転というご意見も承っております。仮移転してまた築地へでき上がったもので戻ったらどうだと。その場合には、二回の引っ越し、移転の負担がかかります。現在私どもは、リーマンショック以降、市場流通の環境も非常によくない、厳しい状況にございます。我々の体力は徐々に奪われております。そういう中で、二回の引っ越しというのは大変に無理でございます。
それから、もう一つは、これだけの建設費をおかけになった場合に--もし仮にできるとしても、おかけになった場合に、大変に費用がかかるんではないか。それがまた私どもの業界の負担にかかっては困ります。使用料がうんとかさむようでは、とてもじゃないけど私どもはそこで仕事をしていくことができません。この点もご理解いただきたいと存じます。
以上、ちょっと時間超過いたしましたが、私どもの今の考え方を申し上げました。時間超過して済みません。
○小沢委員長 いいえ、超過しておりません。ありがとうございます。伊藤参考人の発言は終わりました。
次に、伊藤参考人に対する質疑を行います。
なお、伊藤参考人に申し上げます。ご答弁の際は、手を挙げて、委員長の許可を得てから発言していただきますようお願いいたします。
それでは発言を願います。
○増子委員 民主党の増子でございます。
きょう私どもの委員会にわざわざお出ましいただいてありがとうございます。私ども何年も前から、関係者の方や、あるいは専門家の方にぜひ議会にお越しいただきたいということで求めてまいりましたけれど、きょう本当に実現してありがたいと思っております。そして、都民の食の台所を日々お守りいただいておりますことにも感謝を申し上げたいと思っております。
今、伊藤会長さんからお話がございました。過去の経緯についてもお話がありました。かつては、一度は業界の皆さん挙げて現在地を目指したという中で、その後さまざま動きがあって、移転ということで多くの団体が今そちらに向かっているというお話もございました。
ただ、水産の仲卸の団体の皆さんは、平成十年ぐらいでしょうか、組織として移転の反対をお決めになって、その後も組織としては移転の賛成をしておらないというふうに思うんですけれども、これもやっぱり業界の皆さん、市場の中の皆さんの合意というのも非常に大切だと私どもも思っておるんですけれども、この点について伊藤会長さんからごらんになって、市場の中のコンセンサスができていないんじゃないかと思うんですけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
○伊藤参考人 今お話しのとおりでございます。まさにそうでございます。先ほど冒頭申し上げましたように、私ども残念ながら現在五・五団体でございます。仲卸さんの方々のうち移転するのに反対だという方がいらっしゃることは、私どももよく存じております。ただ、仲卸さんも私どもの仲間でございます。同じ市場で日々お取引もするし、商売を毎日分け隔てなく私どもやっているお仲間でございます。しかも、いいお取引をしたい、いい仕事をしたいという気持ち、それから安心・安全を目指さなきゃいけないという考え方、それも全く私は共通していると思うんですね。そして、さらに、豊洲の土地の土壌が汚れておる、汚染しておるということの認識も全く一緒でございます。ただ、違うのは、これから先どうしたらいいんだというところが違うんだろうと思うんですね。
伺うところによりますと、仲卸さんの場合は、豊洲へ行くのがいいのか、築地でそのまま再整備がいいのかという問いかけに対して、そういう問いかけがあれば、豊洲へ行くよりも築地の方がいいというようなお考えの方がかなりいらっしゃるというふうに承っておりますけれども、それは、築地でできる、築地再整備ができるということが前提になってのお話だと思うんですよね。もし仮に、私が先ほど申し上げましたように、現実に我々これだけ二十年間苦労してできなかったわけですから、築地再整備が無理だということに答えが出たときに、そのときに、それらの方々のお考えは、かなり私は変わると思うんですよ。
同じようなそういう条件のもとで私ども日々一緒にお仕事をしている仲間でございますので、おいおいこれは時間をかけながら、共通の認識に立つように、私どもはその仲間の方々にもお声をかけながら、一体になった、そういう考え方が持てるようになれば、一番ありがたいというふうに思っております。
大田の例でございますように、神田市場の移転において、どうしても反対なさる方が神田に残ってしまったというようなことで大変不幸な結果になっておりますけれども、ああいうことのないように、皆さん条件は一緒なんでございますから、その点は仲間同士でよく話し合いができればいいなというふうに思っております。
○増子委員 ありがとうございます。
今、伊藤会長さんからもお話がありました、現在地再整備がだめだとなったときに、反対されている方々もご意見が変わるかもしれないというお話もございました。一方、都民の方々の意識というのが、例えば昨年の東京新聞の世論調査などでも、移転を支持しないという方が六割ぐらいいらっしゃいますし、昨年ですか、十一月の産経新聞さんの調査でも、やはり築地で再整備してほしいという方が七割ぐらいいらっしゃったという中で、先ほど会長さんが都民の皆さんのためというお話もございましたので、都民の皆さんのこういった世論の声というようなことはどのようにお感じになっておられますか。
○伊藤参考人 まさに都民の方のご支持がなければ市場は成り立たないと思っています。ですから、この方々に十分に今の状況をわかっていただいて、そして土地の浄化というものがどういう結果をもたらすんだと、それで完全に安心・安全の点で全く心配のない土地になって、そうしてその上に市場ができるんだということをわかっていただく、納得していただくということが最大の仕事だと思います。これは東京都さんにもそういうことをぜひ強力にお願いしたいんでございますが、その過程でああやって専門家会議なり何なりがオープンに開かれたということも、都民の方々にオープンで現在の状況をわかっていただくという意味でおとりになった手段だと思っておりますし、オープンのもとで、透明性の高いお話し合いの中で、そういうものが、答えが出せれば一番ありがたい。私ども自身もそのことを望んでおります。ぜひお願いしたいと思います。
○増子委員 ありがとうございます。
それと、先ほど来お話がございましたとおり、現在、築地での再整備なるものが、今もいろんなところから再整備案を検討している人がいるよというような声も聞こえてくるわけですけれど、そういった意味で、現在地再整備案がいろんな形で出てきたときに、やはり市場の中の皆さんでもしっかり議論をしていただいて、そしてその上でやはり各事業者さんの意向調査を私どもはちゃんとしていかなければならないのではないかと。一般に、五・五団体と会長さんおっしゃいましたけれど、いろんなところがいろんな調査をしている中では、実際には各個店、事業者さんたちは、組織の意向とは別にやはり築地の方がいいんじゃないかと思っていらっしゃる方もたくさんいらっしゃるということですから、やはり現在地再整備案も今後出てきたときに議論をしていただいて、我々ももちろん議論しますけれど、市場の中でもぜひ議論していただいて、その上でもう一度事業者の皆さんの意向をお聞きになっていただくと。それは、協議会なのか都なのか、そこはまた議論があるかと思いますけれど、そういったふうに私たちはすべきだというふうに思っておるんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
○伊藤参考人 先生おっしゃるように、意向調査というのも一つの方法だと思います。ただ、問題は、それの設問の仕方というか、条件設定といいますか、どういう条件のもとでこれはどういうふうに考えたらよろしいのかというふうなことでないと、今のように条件が非常にあいまいなままにやっても難しい。
そしてまた、私どもから見ますと、各団体の主に長の意見でございますが、団体同士でいろいろお話ししていると、大体答えは一緒なんでございますよ。現実にこの築地で再整備することは、我々がもう経験してわかっているじゃないかと。これだけ年数をかけ、これだけ費用をかけてやった、我々も随分この期間、ただいたずらに時間だけ浪費してしまったということは、我々にとっても大変な不幸でございます。これらは、本当に、じゃ、あのときの本願寺大会が完全にみんなの意思が結集してあったんだろうか、そこまで掘り下げた、きちっとした、何というか、調査というか、我々の検討があったんだろうか。一時の感情で走ってはならない。
それから、本当に市場としてどういう機能が必要なんだと。そのために、築地でいいのか、築地の再整備で年数を長い間かけて、そしてやっていって本当にできるのか。我々できなかったんですよ、二十年かけて。それがまた同じ過ちを繰り返すのかということが、私、一番、今念頭にあることでございまして、そういう条件設定をきちんとしなければ、幾ら意向調査をやっても、みんなの意思が、みんなの考え方の土台が違っているところでは、意向調査といっても私は無理だと思います。それが私の意見でございます。
○増子委員 ありがとうございました。
○高木委員 参考人であります伊藤会長様には、きょうは本当にお忙しい中ありがとうございました。
伊藤会長は、築地市場の再整備に取り組んでいただいた当時から今日まで業界を代表するお立場、そしてこの問題に携わってこられて、また新市場建設推進協議会の会長も務められている。本日はその団体の代表として、またその総意としてお越しをいただいているものと私たちは拝察をいたしております。現場の声を直接お聞きするには最適な方にお越しをいただいた、そういうふうに考えております。
配布をされました要望書や、ただいま伊藤会長が述べられたご意見から、抜本的な施設改善ができない築地市場の将来に強い危機感を抱かれ、また理想的な市場をつくろうと取り組んでこられた業界の皆様方の切実な思いが伝わってまいりました。我が党といたしましては、業界の皆様の思いに一日も早くこたえて新市場を開場させることこそが、生鮮食料品の安定供給、そして都民サービスの向上につながるものと確信をいたしております。伊藤会長には、新市場の整備に関して、さらに幾つかの質問を通じて現場の率直な声をお聞かせいただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
まず、豊洲新市場は、商品特性に応じて温度管理が行える施設計画となっていると聞いていますが、近年の生鮮食料品流通において、このような施設整備が必要とされる理由を、もう一度、産地や顧客の声、さらに築地市場の現状も含めて具体的にお聞かせ願えますでしょうか。
○伊藤参考人 よく以前からコールドチェーンという言葉があるんでございますが、いわゆる低温の流通の中で物が動いていくということが一番大事なことでございます。私ども生鮮食品、特に水産、魚でございますね。それから青果物。特に魚は非常に鮮度落ちが速いんです。鮮度落ちが速いのは、それを我々押し戻すわけにはいきませんので、鮮度低下のスピードを極力遅くするというためには、やはり低温であることが第一に必要だと。第一前提でございます。
ところが、現在の時点では、残念ながら、市場へ来るまでは皆さん低温流通で来ているんです。いろんなもう、甚だしい例は、マグロに至っては、超低温で保管され、しかもそれが非常に温度の低い状態で保持できる車で運ばれている。市場まではきちっとした低温で来ているんです。ところが、市場が今は、我々の努力で低温売り場というものをつくりまして、そうしてそこにマグロなり、あるいは生のマグロもそういうところへ入れておりますけれども、それでも、これでも不完全でございます。しかも、スペースが限られていて、入荷がちょっと多いとはみ出しちゃう、ドアをあけざるを得ない、何のための低温だかわからない、こういうような状態でございますけれども、この低温に保つことが、まず鮮度保持の第一前提だと思います。
ですから、コールドチェーンが市場で途切れないように、一貫して産地から消費者のお手元まで届けるのに、今、例えば宅急便でも冷凍あり冷蔵ありですよね。ここまで世の中は進んでいるんです。ところが、市場だけがこれが途切れちゃってるというのは大変残念でございます。幸いにして、今鮮魚なんかも発泡スチロールの中に入れることによって鮮度劣化がかなり防げるという状態はございますけれども、しかし、それでも不完全でございます。市場としては、低温になること、低温で流通させること、市場でこれを途切らせないこと、これが一番肝要だと今思っております。
○高木委員 業界の皆さんが検討を尽くして、築地から豊洲移転しかないという結論に達して、全力を挙げて新市場開設に向けて準備を進めてきていただいたというふうに思いますが、にもかかわらず、改めて再整備を検討すべきであるという声もあるやに聞いております。本日配布された要望書の中にも、再整備が不可能であるとの結論に至り、市場の維持発展を考えた苦渋の選択として豊洲への移転を決定したというふうにありますが、今なら築地で再整備が実現できるという、その意見や声に対して率直に会長はどのようにお考えになりますか。
○伊藤参考人 築地が今、非常な人気があるんでございますね。例えば、ことしの初荷で千六百万円のマグロが売れたとか、そういうこともあり、あるいは築地の市場の中の食堂街が大変に皆さんに人気がある。あるいは、日々の競り場へ、外人さんが主体でございますけれども、日々訪れて築地を見たいという要望がある。築地というものに対するネーミングもある。そして、こういうものに対するあこがれといいますか、これを何としても壊すことはないじゃないかと。築地を大事にとっておきたい、築地を大事にしたい、そういうお気持ちが皆さん一般的にあることは私どももよく承知しております。
しかしながら、この市場は築地で何であるかというと、ここで取引ができ、ここから都民の皆様に安心・安全な魚を提供申し上げるという、これが最大の役割でございます。それを見落としていないでしょうか。先ほど私、るる申し上げましたように、いろんな欠点がたくさんございます。危険もございます。そういう中で、このままやっていく、続けることは、私は絶対に無理だと思っている。
ですから、そういう意味で、もう一度、築地再整備というのはもう一回皆さんで考えていただいて、いかにしても無理だということをわかっていただきたいんです。私はきょう、そのために来たんです。その点、ご理解いただきたいと存じます。
○高木委員 現在地再整備は無理だ、それは大変重く私たち議会は受けとめなければいけないと思っています。
この件に関連して、築地市場から一時的に晴海に青果あるいは水産、仮移転をして、その間に築地再整備が行えるという、こういう主張も一部にはあります。この仮移転によって築地での再整備を行うことへの見解も、どうぞ率直にお願いしたいと思います。
○伊藤参考人 かつて築地再整備をやるときに、汐留に仮移転してやったらどうかというご意見が出たことはあります。これ、現実に検討してみて無理だったんでございますけれども、現在の時点では、先ほど冒頭、私、申し上げましたように、仮移転することはよろしいんですけれども、引っ越しを二回しなきゃいけない。その二回の負担に我々、卸も仲卸もみんながそれにたえられるだろうかと。私は無理だと思っています。大変な、結構な負担になると思います。
例えばコンピューター一つにしても、きょうまでここで、こっちでは動いている。新しいところで、あしたから同じような仕事ができなきゃいけない。そういうようなことで、いろんな点で、設備もしなきゃならぬ。しかも、本体の引っ越しを二回やらなきゃいけないという点では大変に無理だし、もう一つは、それだけ仮設をつくる、それから築地本体を直す、建てかえる、そういうための費用がどれだけかかるんでしょうか。私、膨大なものだと思いますね。それだけのものは今の市場会計であれば、ほとんどが私どものお支払いする使用料にはね返ることに原則なっておるように思います。それでは私どもはとても負担できません。現状の使用料でやっとの負担でございます。
そういう意味で、我々、体力的にもそれは無理でございます。そういう点で意見として申し上げたいと存じます。
○高木委員 仮移転についても業界の立場から不可能である、これははっきりよくわかりました。
要望書に、これ以上の遅延は経営面にも大きな打撃、一刻の猶予もありません、こう書いてあります。計画の遅延によって経営面で具体的にどのような問題が生じるのか、教えていただきたいと思います。
○伊藤参考人 現在、特にこのリーマンショック以降でございますが、政府自身がお認めになっているように、現在、デフレが進行して、私ども、その中にあって、この市場自身が大変苦しんでおります。取り扱いの量も低下するし、さらに、今までの市場の原則であれば、量が減れば値段が上がるんです。ところが、上がらない。逆に下がるんです。
そういう現象が現在続いておりまして、そういう中で、私どもも、業者といたしましては、それぞれに、卸も仲卸も大変苦しい経営状態にあることは事実でございます。今後の政府のかじ取りかげんにもよるんでございましょうけれども、私どもとしては、一刻も早く今の経済情勢が好転して、いい環境のもとで仕事ができることを望んでおりますが、まだしばらくはこういう苦しい期間が続くのではないかというふうに予測しております。
○高木委員 ありがとうございました。
○伊藤(興)委員 本日は、当委員会にお越しくださいまして、心より御礼を申し上げます。公明党の伊藤興一でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
公明党といたしましても、これまでも現地に直接、何度か築地を視察させていただいてまいりました。また、本日、お二人の委員のお話も、やりとりを聞かせていただいて、やっぱり現場の最前線でやっていらっしゃる会長の一言一言に非常に重みがあると、このように受けとめさせていただいているところでございます。
この現場の最前線におられる伊藤会長に何点か質問させていただきたいというふうに思っております。
まず、築地とこの豊洲を比較しますと、現在の築地が二十三ヘクタール、そして、新豊洲の方は四十ヘクタールと、大幅に敷地面積が増加することになると思いますけれども、築地市場の取扱量が減少している中で、このような広い敷地が必要なのかどうか、まず伺いたいということとともに、この築地の現状の、日々の業務の中でご苦労されている実態や課題なども含めて、この敷地のことでまず一点伺いたいということとともに、もう一つは、仮に現在地で整備するとなると、売り場等の施設を重層的に、立体的につくらなきゃならないということになると思います。その場合に、物流等の面でどのような支障が生じてしまうのか、伺いたいと思います。
○伊藤参考人 公明党の先生方が市場に皆様でお越しいただいて、お調べいただいたということを承っております。ちょうどその日は雨で、雨漏りが激しくて、築地の設備がいかに老朽化しているかというのをよくごらんになっていただいたと思いますけれども、そういう中で今やっておるわけでございますが、今、先生のお話の中で、取り扱いが減少していく中で、面積的に今の築地ではできないのかと、そういうお話でございますが、実は私は、これ、気になっておりまして、きのうも調べたんですけども、先ほど申し上げましたように、築地市場ができるときに、どの程度の取扱量を想定しておったんだろうかということを調べたんです。
今、減ったとはいえ、現状が約八十九万トンぐらいの扱いを水産、青果でしております。それ以外に、通過物がございます。これも大変な量でございます。そういうものと当時の築地を比較しますと、少なくとも現状の四分の一程度のものしか想定してつくられてないんでございます。
二十三ヘクタールとはいっても、全く面積的には、現在も我々は狭くてしようがないんです。困っておるんです。ごらんになったかと思いますけれども、雨降りの中に、ぬれて、段ボールがみじめな姿をさらしておるのはごらんになったかと思いますけれども、大変に苦労しております。
しかも、市場というのは、もちろん立体化というのはやらなきゃいけない部分があるんでございますが、しかし、競り場その他は立体化するのは非常に難しい。つまり、上げ下げが、みんながやらなきゃいけない。売る人も買う人も、荷物を運ぶ人、それから運び出す人、それぞれが上下、上がりおりをしなきゃならぬという点で、大変に不便でございます。
したがって、でき得ることであれば、全部平面であることが望ましいんです。もちろん一部、例えば事務所であるとか、そういうもの。あるいは冷蔵庫であるとか、そういうものでエレベーターを使ってできる部分は立体化で構わないと思いますけれども、それ以外、原則的には、私、やはり平面利用が理想的でございます。その中で、やむを得ない部分だけは立体化ということになるんでございましょうけれども。
私も、築地で何とかできないかということで、いろいろ考えてもらったことがあるんです。ところが、現実にはいろんな面でのネックが余りにも多過ぎて無理だと。立体化でも無理なのかといったら、無理だというふうに、私どもの聞いた、我が団体その他は、そういう答えを私にはされております。
したがって、立体化でいくということは、しかも築地でやるということは、私は無理だと思っております。
○伊藤(興)委員 ありがとうございます。
次に、私の周りの何人かの都民の方に、築地に対して、また、新豊洲に対して心配なことはないかと、何かと、こう聞いたときに、一番やっぱり多い意見は、一つはこの土壌汚染の問題。そしてもう一つは、これまで培ってきた、積み重ねてきた築地ブランドがなくなってしまうと、この心配。この大きく二つ、心配が多く聞かれました。
伊藤会長の立場から見て、この二つの問題、率直にどのように受けとめていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
○伊藤参考人 一つの問題は、今、築地ブランドというお話でございますけれども、私、実は十日ほど前にお客様から手紙をいただきました。伊藤さん、とにかく今のままじゃおれたち--これは市場からお買いになる方ですね、お買いになる方が、今のままじゃもう我慢できないよと。ちゃんとした設備のもとでちゃんとした魚を供給してくれなければ、おれたちもう買いに行けないよと。
その中で、築地ブランドという言葉はあるけれども、実際のブランドというのは、それぞれの産地のブランドじゃないのかと。築地ブランドという、表現は築地ブランド、マスコミの方もそういう表現をいたしますけれども、築地という土地で、築地、築地ということで、そこで取引が行われていて、築地が一つのメッカのような存在として見られておりますけれども、私どもが思いますのは、一番大事なのは、そこでちゃんとした取引が、ちゃんとした魚が、ちゃんとした野菜がそこで取引されているのかと。きちんとした供給ができるのかと。お客様をだますような、あるいは、人が買って、それからいろいろな事故が起きるような、そういうようなことがないのかと。それが一番の基本だと思います。
それが第一前提で、その次に、いわゆる築地という名前、ネーミングの問題が出てくるんだと思いますけれども、まずやることは、市場をきちんとやること。それが一番大事だと。それがまた公設市場としての役目だというふうに私は思っております。
○伊藤(興)委員 ありがとうございます。
ちょっと時間がないので最後の質問でありますけれども、近年、物流環境が非常に激しく変化する中におきまして、今後の生鮮食料品の流通の見通しと、そして、豊洲新市場の整備の必要性についてお聞かせをいただきたいと思います。
また、豊洲新市場の整備によって、これが一番私が聞きたいところですが、都民にどのようなメリットがあるのか、会長のご意見を聞きたいと思います。
○伊藤参考人 まず私どもが一番考えますのは、都民の方への供給でございます。これが、いろんな事態があっても、きちんと安定して供給していけるということが第一前提だと思っております。
それは、我々自身がこの市場で働くということは、私たちは実はテナントなんでございますね。市場の目的におまえは合うと思うから、おまえはここで仕事をしなさいということで我々は選ばれて、そして、ここで仕事をさせてもらっています。全部の業者がそうでございます。家業ではないんでございます。自分たちの仕事ではないんです。東京都の市場としての仕事をやるために我々は来ているわけでございまして、その点で、都民の方に対して、今よりもなおすぐれて安定した供給、いわゆる健康で安心な、そういうものがお届けできる、そういうものがまず第一の仕事だと思っております。
さらにつけ加えれば、今、私ども、いろんな形で研究しておりますけれども、市場からの発信で、今、どういうものがおいしいんだと、今、何がしゅんなんだと、そして、どういう料理法がいいんだということまであえて踏み込んで、消費者の方々にもそういうことがご提供できればよろしいなと。
これは私どもの、私自身としても一つの夢でございますけれども、さらに産地と消費地がつながって、そして一貫して--今、私は水産の方でございますけれども、水産で大変残念なことは、生産から消費に至るまで一貫して、どの業態をとっても全部赤字なんです。全部苦労しているんです。とる人も、流通する人も、加工する人も、それから小売で売る方も、みんなが苦労してます。これを何とか乗り切らなきゃいけない。これが今、我々の大きな課題でございます。
したがって、それは市場が勝手に考えるんじゃなくて、全体の中で考えていかなくちゃいけない。そして、みんながよくなるように、それがひいては消費者の方にもいい状態でお届けできる、そして、どういうものを召し上がったらよろしいのかということをお勧めできる、そういう市場でありたいと思っております。
そういう面に向かって、まだまだ我々は努力が全く足りないんでございますけれども、さらに一段とそういう努力をしていきたいと思っております。
○伊藤(興)委員 ありがとうございました。
○清水委員 よろしくお願いいたします。日本共産党の清水ひで子です。
本日は、当委員会に参考人にご出席いただきましてありがとうございました。
先ほど冒頭の発言でも触れられました、また、要望書の中でも書かれておりますけれども、土壌汚染問題で、その対策に万全を期すこと、安全性を揺るぎないものとすることなどを要望されておられます。そのことが一番大事な問題だと先ほどもお話がありました。
この点にかかわっての問題でお伺いしたいと思いますが、今、都民の中でも大きな不安の要素になっている豊洲の安全を考える上で、焦点の一つが、東京都が、汚染を通さない不透水層としている有楽町層以下の状況についてです。
後でも専門家の方がお二人見えられてお話しされるかもしれませんが、私どもは、これまで、有楽町層の多くは水を通しにくい難透水性層であって、水を通さない不透水層ではないこと、有楽町層以下に汚染が拡大している危険があることを指摘してきたわけです。
日本環境学会からも同じ指摘がされているところです。有楽町層以下をこのままにして建設を進めてよいというふうにお考えでしょうか。お願いいたします。
○伊藤参考人 今、先生への私のお答えはないんでございます。私も専門家会議は毎回必ず傍聴させていただいたし、資料も全部拝見させていただいておりますが、その不透水層とか、そういう問題については、私、素人でよくわかりません。
したがって、冒頭から何回も申し上げているように、専門家の先生方、あるいは、もう一つの会議がございましたですね、そういう先生方がいろんな知恵を集めて、それから、一般からも公募なさったいろんなやり方を選んで採用なさるということをお決めになったということの裏には、そういう問題が十分に解決できるという確信があっておやりになっていることだと私どもはとっております。
しかも、我々は市場を建設する前に、きちんとしたそういう浄化というものが完全に行われているのか、大丈夫かということを、東京都さんからもはっきりその辺の、安全の証明というんでしょうか。それをいただいて、その上で行こうということでございますから、そうでなければ、皆さん、一般の都民の方も納得していただけないだろうと思うんです。
ですから、そういう意味で、私どもは、自分たち素人はよくわかりませんので、その辺については十分にお調べになり、十分に安全を期していただきたいということをお願いするのみでございます。
○清水委員 その問題がこの二年間ぐらい、本当に議論をされてきたところで、皆様方が願っておられる安全性を揺るぎないものにできるのかどうなのかということに私はかかっていると思いまして、やはり私も素人ですけれども、また、伊藤会長さんもそういうふうにいっておられますけども、本当に安全性が揺るぎないものになっているかという点でまた見ていただきたいと思います。
また、実証実験が後から、間もなく当局から実施され、年度内に間に合わせるというふうに、詳細は聞いてないんですけれども、聞いています。そうすると、大体一カ月ぐらいの検査で結果を出すということになるわけですけれども、これが専門の業者の方々も首をかしげているわけです。だれもが納得できるような形で安全が証明できるというふうには思えないんですけども、これから東京都が予算の審議に向けて間に合わせようとしているその実証実験、詳細なことは新聞で報道されていることしか私もわかりません。しかし、今の説明でいくと、大体一カ月ぐらいの期間の中でやるわけなんですよね。
しかし、私たちが直接聞いてきている中には、そういうものというのは一年ぐらいバイオの処理などにはかかるということがいわれているわけなんですけども、そうしたことで安全が証明できるというふうにお考えに、どうお考えになるんでしょうかということをお聞きしたいと思います。
○伊藤参考人 清水先生、大変ご心配いただいておるようでございますけれども、実はその心配は、私どもの方が先生よりもはるかに、何倍も心配なんです。ですから、僕たちは安心・安全を必ず実現してほしいということを強い要望として東京都さんに申し上げているわけでございまして、その具体的なやり方とか、あるいは、今、実験というお話がございましたけれども、実験をおやりになるということも聞いておりますが、それもそれで、私どももいろいろ関心もあるし、我々なりに見させていただきますけれども、ともかく、いろんな方法をとっても、とにかく安心・安全を期していただきたいということを、もうそれ以外にいいようがないのでございます。
我々はそれが最大の問題だというふうに思っておりますし、都民の方にも十分に納得していただいて、そして、一日も早く、安心・安全な状態の中で市場が移転できることを強く望んでおるわけでございます。
○清水委員 ありがとうございます。
築地の問題を解決するためには、都民、専門家や関連業界の知恵を総結集することが不可欠だと考えています。
現在地再整備については、先ほどから繰り返しお話がされておりますので、お立場は理解するわけですけれども、私は、不可能とするのではなく、さまざまな意見やプランを募って検討してみるというのも、今の時代、一つの方法ではないかというふうに考えるわけです。
伊藤会長さん、行かれてるでしょうか、韓国のソウル市では、カラック市場というところで、最近、現在地再整備をするに当たりまして、建設プランの公募を行ったわけです。そして、その公募の中で選ばれたのだと思います。ホームページで調べたのですけれども、また現地に行った方からも聞いているわけですけれども、築地市場でも、現在地では再整備は無理だということではなくて、今のこの技術は日々進歩しているということで、それこそ民間の知恵もかりて、広くプランを公募するなどして、検討の余地があるというふうに考えるわけですけれども、どうでしょうか。
○伊藤参考人 先生が今、韓国の例をおっしゃいましたけれども、韓国まで行かなくても、現実に、例えば大阪は現在地再整備をやり遂げたわけですよね。あれは六年か七年かけたわけでございますけれども、そういう例は我々の身近にございます。
ただ、私が申し上げているのは、何でこれだけの資料をお持ちして説明したか、何でこれだけの時間をかけてお話をしているかということをわかっていただきたいんです。僕らは二十年かけたんです。それで無理なんですよ、築地再整備が。これだけ練りに練った計画で、六工区に分けて、しかも十四年間もかけてやるんだといったやつが、全然はかどらない。行けない、できない。しかも、四百億もお金をかけちゃったんです。それでもだめだったんです。これ以上の実例がございますか。
いかに技術が進歩したとはいえ、私は、今--どうぞ築地にいらしてお調べくださいませ。私たちは、どうやってもこの築地再整備というのは本当に無理だと。
今、先生おっしゃるように、それはいろんな方のご意見を求め、専門家の意見を聞くのは結構でございますけれども、しかし、その中でも、我々はこれだけの失敗してるんです。もう二度とやりたくないんです。もう私の命はもちません。これからまだ何十年もかかるのであれば、とても無理です。しかも、市場はだめになっちゃいます。それでいいんでしょうか。私は、築地再整備は無理だというふうに何回も申し上げているのは、その意味でございます。その点をご理解いただきたい。
確かに机上の議論では、いろんな工夫をし、これだけ進歩をしている建設技術の中で、必ずできるはずだと今おっしゃいますけれども、そういう手はあるのかもしれません。しかし、現実にその中に働く一万四千人の人たちがそれに納得して、本当に動いてくれるのか。それだけの保証があるのか。私はないです。無理です。
何かの種地があり、そこから動いていくということでもあればまた話は別なんでしょうけども、現在の中で築地再整備というのは、私自身は、いかにしても無理だというふうに思っております。
○清水委員 ありがとうございました。
○小沢委員長 ありがとうございました。
ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
伊藤参考人からの意見聴取はこれをもって終了したいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小沢委員長 異議なしと認め、伊藤参考人からの意見聴取は終了いたしました。
伊藤さん、本日は貴重なご意見、まことにありがとうございました。心より厚く御礼申し上げます。
それでは、どうぞご退席、お願いいたします。
○小沢委員長 それでは、ご紹介いたします。日本環境学会土壌汚染ワーキンググループ長の坂巻幸雄さんです。
本日は、ご多忙のところ委員会に出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして御礼申し上げます。
これより坂巻参考人からの意見聴取を行います。
初めに、坂巻参考人のご意見をお伺いいたします。発言席にご移動願います。
なお、坂巻参考人には、ご着席のままご発言していただきたいと思います。ご了承願います。
それでは、坂巻参考人、よろしくお願いいたします。
○坂巻参考人 坂巻幸雄でございます。
伺うところによれば、こういう参考人招致というのは非常に珍しいことだそうで、その場でもって発言の機会を与えていただいたことを本当にありがたく存じます。
きょうは、豊洲の築地市場の移転予定地の土壌汚染について、私たちの学会としましても、それから、私、研究者個人といたしましても、今までいろいろなところでお話ししてきたことがありますが、その内容について簡潔にご説明したいと思います。
最初に、私の氏素性についてちょっとお話をしておいた方がいいかと思いますが、私が土壌汚染の問題に手を染めるようになったのは、実は大分前からのことでして、定年までは通産省の下にあります地質調査所という国立の研究所に勤めておりました。それで、そこで専ら地球化学探査、これは川の水や地下水を調べて、どこに経済的に価値のある地下資源があるかというのを探す手法なんですが、その研究を随分やっておりました。
それで、この同じメソッドは、とにかく有用な鉱物であるか、それとも汚染物質であるか、それを問わなければ、全く同じシステムが土壌汚染の場合についても適用できることがわかりまして、それで、在職中から環境省の、当時は環境庁でしたが、それの特別研究の分担もいたしておりました。
定年後は、そういうようなこともございましたので、いろいろ市民団体の方々なんかとご一緒に土壌汚染の調査をやっておりましたところ、たまたま築地の仲卸の方々から、豊洲の問題があるんだということを伺いまして、そして、それについての調査研究に手を染めたいと思うように至ったわけです。
ただ、調査研究といいましても、専門家会議の先生方と違いまして、私たちは現場へ入る機会がほとんど与えられておりません。それから、市場の方にいろいろなデータの提供や、それからサンプルの閲覧、それから分譲、そういうようなお願いをこれまでも何度となくしてまいりましたけれども、残念ながら、とにかく専門家会議というものがあって、そこで結論を出すことになってるから、別にあなた方にやってもらわなくてもいいということでもって、非常に不十分な形でしかタッチができませんでした。
したがって、きょうお話しすることは、その不十分な中身から、そのほかの場所等について私たちがやってきたことを加味しまして、一応私たちとしての大まかな状況をつかんでいる、その内容についてお話しすることになるかと思います。
それで、時間が二十分と限られてますので、ゆっくり話していると結論が飛んでしまいますので、まず結論から申し上げますと、少なくとも今の時点で、今、我々が持っているデータからは、とにかく食品を扱う場として豊洲の地に築地市場を持っていくということは、非常にまだ不安があると。言葉をかえれば、まだ安全ということはいえない段階にあると。
したがって、その行動を起こすに当たっては、慎重な上にも慎重を期さなければいけないし、それから、今の状況でもって、とにかくあそこに移るということを既成事実として流れをつくっていくということはやめた方がよろしかろうというのが結論でございます。
それで、いろいろこの間の問題について見ますと、ブラックボックスがあります。一つのブラックボックスは、とにかく今までのデータをコンピューターに入れて、それで解析をしてみると、それほど大きな危険はないから大丈夫だという説が一方でございます。
しかし、コンピューターの中でそういう操作をするには、現実を非常によく調べて、その現実のモデルをコンピューターの中へつくっていかないといけません。その第一段階になる現実の把握という点が、確かに調査の点数はふえてはおりますけれども、肝心かなめのところで抑えがきいているかというと、必ずしもそうはいえないと。そういう質の余りよくないデータを数だけ集めてみても、これは正確な結論には到達できません。
したがって、コンピューターでもって安全だからというような話は、今は甚だ時期尚早であって、まだそこまではとてもいえないんじゃないかということを私たちは主張しております。
事実がよく見えていないということはどういうことかということを、きょうご了承を得まして、お手元に、汚染物質が地層の中でどのように動いているかという例を図面でお示ししておりますので、この図面の説明をまず簡単にさせていただきます。
これは、有機塩素化合物による地質汚染機構という題でもって書いてございますが、これは、私の属していますもう一つの学会、日本地質学会が、土壌汚染問題について一般の方々向けに易しく解説したリーフレットの中にある図面です。
それで、このモデルになったのは、千葉県の君津市のある工場の敷地に、工程の中で出た有機塩素化合物を含む廃棄物を穴を掘って捨てていたと。その穴から漏れた汚染物質がどのように実際には拡散していったかというのを示す図面です。
それで、この中に幾つか難透水層というのがあります。難透水層といいますのは、これは主に粘土とかシルトとかいう目の細かい土からできている地層でして、その中では砂や砂利、れきですね、それに比べて水の動きが非常に弱くなる、遅くなると。だから、そこでもって汚染は食いとめられるだろうと思っていたのが、実際調べてみたら、汚染はそういうようなものを突き通して、もう何層も下にまで及んでいるということを示した図面です。
豊洲の場合は、汚染は有機塩素化合物ではなくて、普通の炭化水素系のベンゼン、シアン、砒素、それからベンゾピレンというようなものが主体ですけれども、ベンゼンなんかについては、物理的性質が有機塩素化合物とほとんど同じですから、動き方としては、恐らくこのような動き方をするだろうと思います。
ここで注意したいのは、水を通しにくいといわれている難透水層であっても、その中には、一面にこう連続してゴムシートを張ったように、そういうような汚染物質を通さない層があるというわけではなくて、幾つも切れ目があり不連続があると。そういうようなところを通して、あるいは一番右側に井戸と書いてありますところで、一番下まで汚染が広がっていますけれども、そういうような人工の穴を通して、汚染は幾らでも広がっていくということを示しております。
豊洲の場合は、とにかく最初の自然地層であります有楽町層という非常に目の細かい粘土ないしはシルトといった地層があります。その上端でもって汚染は食いとめられているから、それから下は調べなくてもいいということで専門家会議は結論を出されました。しかし、このような事例を見るにつけ、それから、その汚染物質を通さないシルト層というのが、必ずしもきちんと連続しているという証拠がいまだに上がっていない状況では、やはりその中でもって汚染物質が食いとめられて下には及んでいないということを対策の前提にするのは間違っているというのが私たちの考えです。
特に食品を扱うに当たって、この汚染の問題をどういうふうに見ていくのかということになりますと、これについては、以前、この前の築地の市場長をやっていらっしゃった比留間さんが、二〇〇八年八月二十九日付の文章で説明していらっしゃる事例があります。ここで比留間さんは、要旨、こういうふうにいっておられます。
移転先としては、広い駐車場と作業スペース用に約四十ヘクタールのまとまった用地が欲しいと。それから、都心部からの交通の便がいいと。それから、築地の商圏に近いと。それから、機能、経営等の継続性が保てると、そういうような条件をもとにして、五つばかりの候補地を当たったけれども、ほかはみんな失格で豊洲だけしか残らなかったということを、その文章の中で説明しておられます。
しかし、この中には、その土地がきれいな土地であるかどうかという要素は一つも入っておりません。それで、きれいな土地でなければ、食品の安全性に対する疑問が起こってくるのは当然で、これはこういうような条件をもとに土地の選定をやるに当たっては、土地の汚染がないということがまず第一の要素になるべきはずなのに、それを避けて--あえて避けてと申しますが、これは二〇〇八年の文書ですから、もう既に汚染があるということはご存じの上でこういうことをいっておられるわけですが、そういうような説明をなさったということは、非常に私たちとしてひっかかるものがあります。
それから、そのような一連の流れの中で、やはりいろいろな対策が専門家会議から出されております。つまり、汚染された表土をはいでしまう。そして、その後に客土をしていく。それから、地下水の動きは封じ込めるというようなことをいっておられますけれども、これは先ほど申し上げたように、十メーター四方に一カ所のボーリングを掘ってやっておられますけれども、それにしても、ボーリングというのはあくまでも点でしかない。そういう点のデータでもっていろいろな判断を下しておられるということは、非常に限界があるといわざるを得ません。
しかも、そのボーリングの中でもって、分析のサンプルを取るのに当たっては、地層のいろいろな変化に対応してサンプルを取っているのではなくて、機械的に当時の工場の操業面から何メーター以下というようなところで決めてサンプルを取っておられる。しかも、本当は、そのサンプルの質が泥なのか砂なのか、そういうような問題をきちんと把握してとらえなければいけないのに、肝心の分析表を見ても、何を分析したかということが書いていないと。そういうようなところでもって、非常にまだこれまでの調査は大きな問題を残していると思います。
特に、このような汚染物質を運ぶ作業をしているのは地下水の流れですけれども、地下水の流れ自体がまだこの全域でもってつかめていない。これはやはり、私たち仲間同士でも討論していますけれども、そういうような地下水の流れをつかまないで、一体これで汚染がどのように将来拡散していくのか、それを見当をつけないで、やはり安全ということはとてもいえないんじゃないかということが大半の意見として出てまいります。
これも先ほど申し上げました、難透水層が汚染を食いとめている、地下水を通さないという思い込みの一つの結論として、やはりそういう地下水の流れというものを非常に軽視しているという一つの論理的な流れの中に、そういうような欠陥が位置づけられているというふうに私たちは考えています。
特にこれまでの調査は、非常に時期的に急いでやられたということが特徴です。それで、本来ならば、十メーター、二十メーターの深いところまできちんと調べなきゃいけないのを、先ほどの不透水層とみなされる粘土層あるいはシルト層に到達したということでもってボーリングをとめてしまっている。ところが、豊洲の土地は、自然地層の上に、終戦後、付近の川底をしゅんせつした土砂をいっぱい積んでいますので、その中にも泥や砂は入り乱れて交互に出てまいります。その中で、ボーリングのわずか数センチの径の中で取ったサンプルでもって、自然地層であるか埋め土であるかの判定というのは非常に難しいと。そこでもって、先ほどの難透水層に到達したということは、何をもって判定しているのかと。これは、現場でもって、現場の公開が二度にわたってなされましたので、その場合、現場の技術者の方々に質問をしてみましたけれども、やはり明確な返事は返ってこない。
つまり、これはあくまでも現実に即した調査ではなくて、あるところにそういう不透水層というものがあるんだという先入観に基づいて、事実をしっかり見ないで調査をやったことを一つの結論にして出しているのではないかと思います。
今度も調査に当たっては、いろいろな技術的な提案が技術会議に対してなされました。それについて何も実証試験をやらないで安全だということをいうのは、これは非常に問題ではないかという指摘を私どもはいたしました。それに従って、今度はこの予算審議の前に、ぜひ実証試験をやりたいということを都知事はおっしゃいましたし、そのための準備が進んでいるように漏れ承っています。
しかし、実証試験というのは、技術会議に提案をしたコンサルの技術者とも話し合ったわけですけれども、やはりそのためには、しっかりした準備としっかりした実験計画が要ります。そして、その実験計画も、特に微生物なんかを使う実験ですと、すぐ適用してすぐ結果が出るというわけにいきません。少なくとも一つのシステムの実験に対して数千万円の費用と一年以上の時間がかかるということは明白です。それをなおざりにした実験であっては、これは今までの調査と同じように、ただ形としては調査のデータは出てきますけれども、それが本質的に意味のあるデータであるかどうかということは確証が得られないまま次のステップにまた進むことになってしまいます。
したがって、私たちとしては、とにかく今までやられてきたデータだけでは、豊洲の安全性を云々することは不十分であると。したがって、先ほど申し上げましたように、もっときちんとした調査を繰り返してやる必要がある。それから、この間いろいろ技術的な意見、専門的な意見も含めて意見の対立があります。それから、もちろん行政の立場の方のお考えもあると思います。そういうようなものを広く都民の前に公開して、公開の場でもってお互いに討議をしようじゃないかというような提案もいたしておりますが、いまだに残念ながら前向きなお返事がいただけておりません。
やはりそういうような、データをオープンにして、何が必要で何が余計なのか、それから、真相を解明するためにはどういうポイントを押さえなきゃいけないのかということを広く公に議論をしながらこの問題に対応していくことが、学問的にも、それから実際的にも、一番理にかなったやり方ではないかなと思っております。
まだいい足りないことも幾らかございますけれども、ご質問にお答えする中で補足したいと思います。ありがとうございました。
○小沢委員長 どうもありがとうございました。坂巻参考人の発言は終わりました。
次に、坂巻参考人に対する質疑を行います。
なお、坂巻参考人に申し上げます。答弁する際は、手を挙げて、委員長の許可を得てからご発言いただきますようお願いいたします。
それでは発言を願います。
○増子委員 民主党の増子博樹でございます。
きょうは、坂巻先生には大変お忙しいところお越しいただいて、ありがとうございます。委員会の皆さんのご理解をいただいて、坂巻先生にここで発言をしていただいているということ自体が画期的なことだと私も思っております。
今、先生からもるるお話がございました。今までもいろんなところで先生のお話を伺う機会もございまして、特に不透水層の欠落部分と断層との関係なども、本当はゆっくりお話ししていただければ一こまぐらいの授業になってしまうのかなと思いますが、時間がそんなにありませんので、私からは、まず、先ほども市場を代表する伊藤さんからもお話があったんですが、建設する前に安全を証明してもらいたいというお話がございました。そうでなければ都民の理解が得られないんだということがございました。
坂巻先生、専門家から見て、先ほどさらに調査が必要だというお話がございましたが、どういった状況になると安全だと宣言をしていいのかということをお聞かせいただきたいと思います。私たちはその調査や対策も、いろんなことがあって、さらに二年間のモニタリングをした上で、その上でないと結論が出せないのではないかというふうにも思ったりもするんですが、専門家の先生から見て、安全宣言とはどういう状態を示すのか、お聞かせいただければありがたいと思います。
○坂巻参考人 先ほども申し上げましたように、とにかく封じ込め方式というのは限界があるだろうと。これは、さっき触れませんでしたけれども、いわゆる首都直下型地震の発生の危険が、今後三十年間に確率としては七〇%。つまり、友達と、これから三十年間地震が起こるか起こらないか、かけようじゃないかといったときには、起こる方にかけた方が分があるということなんですね、これは。
これから建設する市場であってみれば、恐らくハードウエアの寿命のうちにこの大地震がぶつかってくることは当然考えなきゃいけない。そういうときに封じ込めておいたものが破れてくる。そうすると、破れて汚染が広がった時点で、もう既にそこは市場として使えなくなる、そういうようなことがありますので、封じ込め方式は、これはやめた方がいい。
そうなると、今わかっている汚染は徹底的に取りのけなきゃいけない。それが果たして経済的にペイするかどうかと。今の専門家会議の結論は、表層二メーターの除去で、二メーター五十の客土といいますが、技術会議はもう少しこれを値切りまして、とにかく汚染したところは取り除くけど、汚染しないところはそのままにしておくと。これもかなり別の問題があるんですけれども、そういうような形でもって置いておいて、本当に安全といえるのかどうか。
ですから、結論としては、汚染物質を全部のけて、あと整地をし直して、水も汚染された水は全部くみ上げて、もうこれ以上、汚染源もなければ汚染もないよという状態にして、なお念を入れて、先生のおっしゃるように二年間以上。私は十年ということをいったこともありますけれども、それぐらいの長期間を見て、現実に汚染がもうなくなったということをいえてから、初めてそこへ、じゃ、市場を持っていこうかという話になるのが私は筋だと思いますけど。
ですから、少なくとも、封じ込めをやったり、汚染水のとにかく当面のくみ上げだけでもって話が進むと思わない方がいいと思っております。
よろしゅうございましょうか。
○増子委員 ありがとうございます。
それと、先ほど来、不透水層のお話も出ました。私どもも、不透水層の下もちゃんと調査をしないと全容を解明できないんじゃないかということを、これまでも委員会でも議会でも申し上げてきたところです。特にこの豊洲、保留地だけでも、いわゆるくいですね、PCのくいや鋼管のくいなどを合わせても、六千本ぐらいはそのまま残っているんじゃないかという数字もありますし、そのくいの長さも、十メートルぐらいから三十メーター以上のものまであるということで、不透水層を突き抜けちゃって打っているのが相当あるだろうというふうに思っております。
恐らくその保留地内にコンクリートの基礎も相当あるでしょうし、貯水槽なんかもあったりするんですが、そういう意味では、このことが、くいが残っているとか、あるいはくいを伝って汚染が拡大するとかということを含めて、きちんと不透水層下のことも調査する、あるいは対策を打つということが必要だというふうに私たちもいってきたんですが、先生のご見解をぜひお聞かせいただきたいと思います。
○坂巻参考人 今ご指摘になったことは、実に基礎的な問題で大事なことだと思います。
それで、専門家会議は、不透水層を破ると、今、表層にとどまっている汚染が、それこそ地下に行ってしまうじゃないかと。先ほどの図面でお目にかけました、右側に井戸というのがありまして、その井戸を伝って下に汚染が広がっていると。そういうようなことがあるから、ボーリングは不透水層の上、五十センチ入ったところだけでとめさせているんだと。したがって、その下は調べる必要はないということをいわれたわけですが、今、先生のご指摘のとおり、昔の工場の基礎のくいというのは、五街区の例を挙げられましたけど、恐らく六街区も七街区も同じようなケースがあると。それから、ガス工場ですから、当然配管なんかも地中に埋まっていると。そういうようなものが汚染物質の通路になり得ることは十分考えられます。
ですから、やはり専門家会議のいうように、不透水層に入って五十センチでもってとめろというのは、更地ならそれでもいいかもしれませんが、ああいう場所についての調査方法としては全く不適切で、今私が申し上げた不透水層の下のブラックボックス、これはぜひ解明する必要があると考えております。
○増子委員 ありがとうございます。
それと、リスクコミュニケーションについてちょっとお聞きしたいんですけれども、意見の対立があるということで、先ほど先生もおっしゃいました。そういう意味では、私たちも今までもクロスチェックのようなことをする必要があるといってきたんですけれども、特に専門家会議にも調査結果が報告されていなかったようなことがあったりとかしています。そんな中で、私たちは同じサンプルを、先ほどあった対立のある意見の中でちゃんとクロスチェックができるというリスクコミュニケーションが必要だというふうに思っているんですけれど、先生のご見解をお聞かせいただきたいと思います。
○坂巻参考人 そのことはまさに私たちが当初から主張してきたことで、いやしくも科学的な検証であるというからには、それに対する反証の機会を与えていただかないと、これは本当のサイエンスにはならないと。ある一方の解析なり主張なりがあって、それに対する反証の便宜を図らないでおいて、これが科学的なものだからそれを信用しろというのは、サイエンスのイロハを知らない人のいうことなので、これはあってはならないことだと思っております。
ぜひそういう意味では、公の場でもって、お互いに議論のできるような環境と雰囲気を整えていただくことを、ぜひ東京都におかれましても考えていただきたいと思っております。
○増子委員 ありがとうございました。
○伊藤(興)委員 本日はありがとうございます。公明党の伊藤興一でございます。
私からは、一点だけ先生に伺わせていただければというふうに思います。
先ほどの質問ともちょっと重複するところはございますけれども、冒頭の先生の話にも、専門家会議、また技術会議の検討結果をもとにした都の土壌汚染対策では十分な安全は担保されていないというご主張、そしてまた、先ほども、封じ込め作業には限界があるんだというご意見であったと思います。
それでは、私の方から逆に、先生の専門的なお立場から、この豊洲の土地を活用するためには、どういった土壌対策をとればよいのか。先ほども、取り除き方式とおっしゃったんでしょうか、もうちょっと詳しく具体的にお話を伺えればというふうに思います。
○坂巻参考人 豊洲の土地を利用するといっても、いろんな利用の仕方があるわけで、例えば築地市場の移転先というような食品を扱わないでいいと。例えば機械の倉庫のように、人が必ずしも常駐していなくてもいいというようなことを考えれば、汚染対策はもっと緩めてもいいかなという気はいたします。
ただ、築地のように食品を扱う、それから常時人が出入りする、あるいは汚染物質があれば、その食品を通じて消費者の方にまで負荷がかかってくる。そういうことを考えますと、これは徹底した浄化ということが当然求められてくると。
徹底した浄化というのは、今、汚染の全貌は、さきのご質問にありましたように、明確ではありません。表層部についてわずかにわかっているといった方が正確かもしれませんが、少なくとも十メーターから先、深いところにどこまで汚染が広がっているかということは全くデータがありませんので、まずそのデータをきちんととって、それから先でないと正確なお答えにはならないんですが、恐らく今の専門家会議の二メーターの客土ということを考えましても、これを無条件に客土をやりますと、大体百万立米を超します。それだけの費用をかけて、果たして、これは経済的な効率からいっても、それが成り立ち得るものかどうか、私は非常に大きな疑問を持っております。
ですから、そういう意味からいいますと、先ほど比留間市場長のお書きになったものを引用しましたけれども、少なくとも市場の移転先としましては、汚染の有無ということは、まず第一の条件として挙げなきゃいけないんじゃないかと。むしろそれを取るということが現実的に可能なのかどうかという点で見ますと、私は経済効果まで考えたら、恐らく不可能に近いのではないかという悲観的な意見を持っております。
よろしゅうございましょうか。
○伊藤(興)委員 結構です。
○清水委員 本日は、当委員会に参考人として意見聴取に応じていただきまして、ありがとうございます。日本共産党の清水ひで子です。
それでは、お伺いいたしますけれども、先生は毎回の専門家会議、また技術会議、これは傍聴できなかったわけですけれども、専門家会議を傍聴されて、発言も何回かされておられました。この二つの会議などについて、石原知事は、日本で権威ある研究者がそろっていて結論を出しているのだから間違いないんだというふうにいわれていますが、先ほども少し冒頭の発言でありましたが、同じ研究者、専門家として、この二つの会議をどのように見られておられたでしょうか、ご意見をお伺いいたします。
○坂巻参考人 今のご質問の中で、石原都知事が、とにかく一流の学者に任しているんだから、それでもって間違いはないんだということをいわれたということは、漏れ承っておりますし、それから、先ほども申し上げましたけれども、私たちが自前に調査をやりたいので便宜を図ってほしいという申し入れをやりましたときに、とにかく専門家の方々にもう既にお願いしているんだから、あなた方は別に手を出してもらう必要はないといって断られたというお話をしました。
いずれも、名前を連ねていらっしゃる先生方は、とにかく私のように今まで表立つことの少なかった人間とは違って、いろんなところでご活躍しておられますので、お名前は私もよく存じ上げておりますし、世間的にもそのお仕事はよく知られているところだと思います。
ただ、一つ私が気になりましたのは、専門家会議の先生方というのは四人しかおられなかったわけです。そして、その四人の方々、お一人お一人みんな専門分野が違う。私が自分の身に置きかえて考えてみますと、これは非常にきつい条件だなと思いました。とにかくいろいろなデータが出てきて、それに対する意見をその場で求められる。いっても、同じ専門の者と相談して見解を述べるということができないわけです。とにかく右か左か迷うような事案が出てきた場合に、自分だけの意見でもってどちらかを決めなきゃいけないというのは、研究者として非常にきついだろうと。
それからもう一つは、私は、専門家会議というからには、かなり先生方、しょっちゅう現場にいらっしゃって、現場のいろんな作業の進行を見ておられるのかと思ったんです。ところが、皆さんご遠方だということもありますし、そういうことはなさっていなかったようですね。ですから、実際の作業はコンサルがやって、もちろんスペックも都の方から出てきたスペックに従って、コンサルが実際の作業をやって、そのコンサルのデータないしレポートをもとにして専門家の先生方が意見をいわれるということが主だったように思います。
ただ、私の現場経験からいいますと、それでは本当に科学者として正確なことがいえるかといいますと、これはどんなに能力の高い方でもそれは無理だと思います。やはり自分が現場へ足を運んで、その現場でもって、いろんな作業の過程をつぶさに見て、考えて、その上でないと見えてくるものも見えてこないということがあります。
私が今までやってきたいろんな現場の地質調査の経験から見ますと、大体年数にすると五年ないし十年。延べ日数にしますと百日、それぐらいを超えて現場に張りついていますと、何かそこでもって基本的な問題についてのヒントが得られるということが多々あります。ですから、今回与えられた条件では、専門家の先生方の能力に関係なく、やはりそこでおっしゃられることには限界があったんだなというのが私の率直な感想でございます。
よろしゅうございましょうか。
○清水委員 ありがとうございます。
先ほど、実証実験についても冒頭のご発言がありましたが、まだ詳細についてはこれから私たちも伺うんですけれども、新聞の記事などでの説明でしかわからないんですけども、しかし、石原知事の発言の中では、一カ月ぐらいの期間で結論を出すというようなことになっているのかなと思うわけです。
先ほども少しありましたけれども、実証実験というのならば、ほかの専門家に聞いたという話ではありますけれども、一年以上微生物の状態を調べることが必要だとか、もう少しお金をかける必要があるというような、意味のあるものにする必要があるというようなことを冒頭の発言でいわれたわけですけれども、その根拠というのでしょうか、それはどういうふうなことでそのようにお考えになるのか、お聞かせいただきたいと思います。
○坂巻参考人 坂巻でございます。
実証実験というのは、これは本当に大事なことなんですけれども、やり方も非常に難しくて、それは慎重にやらないといけないんですね。といいますのは、やはり実証というからには、実験を始める前がどういう状態で、実験の中間でどういうことがあって、実験が終わった段階でもってどういうような結果が得られて、しかも豊洲の場合ですと、その実験の結果がずっと安定して持続するのかどうかということを確かめないといけないわけです。
私、コンサルの人に聞いてみたんですが、それじゃ、実証実験をおたくの社でやってくれといわれたときに、今までの都が何回となく繰り返してやったいろんなステップの土壌の分析のデータはそのままお使いになりますかと。そうしたら、それは使えないというんですね。とにかく自分たちでもって、やっぱりもう一遍調べ直して、実験を始める前の状態がこういうことであったということをつかまないと、やはり使用前、使用後の違いがわかってこない。そうすると、我が社の技術が本当に有効であったかないかの議論はできないと。
ですから、そういう意味では、とにかく一カ月でできるような話ではない。やっぱり実験区画の水どめからして始めなきゃいけませんし、それから今お話ししたように、実験前の状態の詳細な記載もやらなきゃいけない。そういうようなことを考えていくと、先ほど申し上げましたように、少なくとも数千万のお金と一年以上ぐらいの時間はどうしてもかかってしまうと。
ですから、技術会議が結論を出された時点から既に実証試験が始まっていれば、恐らく今ごろは中間的な成果がある程度評価できるような形で出たかもしれませんけれども、少なくとも、今から始めて、とにかく来期の予算に対してイエスかノーかをいうまでの短い期間に結論を出すということは、とても無理ではないかというのが私の感想でございます。
○清水委員 あと一分半ぐらい残っているんですけれども、冒頭で、もう少し時間があればお話ししたいことがあるということですので、もうあと一分半ぐらいなんですけれども、もしいい足りないことがあれば、お知らせください。
○坂巻参考人 繰り返しになりますけれども、やはりこういうような問題はいろんな見解が分かれていることが、いろんな面での支障になっているわけです。ですから、いろんな立場の方々が、やっぱりフランクに意見を持ち寄って、オープンな場でもってお互いに議論をし合うということが一番大事なのではないかと思います。
それで、きょうは軽くしか触れませんでしたけれども、本当に地震のときの問題ですとか、食品の安全性はどうやって確保していくべきものなのかというようなことですとか、いろいろ課題は山ほどあるわけです。そういうところがまだほとんど議論できてない課題もあります。そういうようなことについて、いろんな立場の人がフランクに意見を交わしながら、どういう方向に収れんしていくのか、それを探っていくことが一番賢明なやり方ではないかと思っております。
○清水委員 ありがとうございました。
○小沢委員長 ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
坂巻参考人からの意見聴取はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小沢委員長 異議なしと認め、坂巻参考人からの意見聴取は終了いたしました。
坂巻様、本日は貴重なご意見、まことにありがとうございました。心より厚く御礼申し上げます。
それではどうぞご退席ください。
この際、議事の都合によりおおむね十五分間休憩いたします。
午後二時五十三分休憩
午後三時十分開議
○小沢委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
参考人からの意見聴取を続行いたします。
ご紹介いたします。国立大学法人和歌山大学理事で元豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議座長の平田健正さんです。
本日はご多忙のところ、委員会にご出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして御礼申し上げます。
これより平田参考人からの意見聴取を行います。
初めに、平田参考人のご意見をお伺いいたします。発言席にご移動願います。
なお、平田参考人には、ご着席のままご発言していただきたいと思います。ご了承願います。
それでは、平田参考人、よろしくお願いいたします。
○平田参考人 ただいま紹介いただきました和歌山大学の平田でございます。平成二十年の七月二十六日に閉じました専門家会議の座長を務めてございまして、その関係で、専門家会議で行いました検討内容あるいは土壌汚染に対する提言内容について、二十分という限られた時間ではございますが、要領よく説明を申し上げたいと思います。
ご承知のように、豊洲の埋立地といいますのは、かつて都市ガス製造工場がございました。当時の都市ガスといいますのは、今のガスとは違いまして、石炭を乾留する、蒸し焼きにするという、そういう感じでございます。その蒸し焼きをしたガスの処理とか、あるいは残渣等々による汚染ですね、シアンとベンゼンが中心になりますけれども、そういった物質による汚染が顕在化してございます。このベンゼンやシアンによる土壌や地下水の汚染対策を検討する、そういう目的で専門家会議が設置をされました。
構成四名でございまして、専門は、私が環境水理学と申しますか、水や物質の移動を担当する、そういう研究者でございますし、私以外には、土壌地下水学、それから地質学、さらには健康影響リスクを専門とする研究者四名で構成をいたしました。
その中で、まず検討した内容の概要でございますが、まず実際に土壌や地下水の汚染の状態を知ってみようということでございます。そういう意味では、かつての調査、対策と必要であれば追加調査を行うと、そういうこともございます。
二つ目は、こういった調査に基づいて、じゃ、どういうふうにすればリスクを低減できるのか。専門的な見地から、特に、何といいますか、科学的知見をもとにして学術的な方面から解析をして提言をすると、そういうことでございます。最も重要なことは、私たちは、豊洲の地に一生涯、これは七十年になりますけれども、七十年生活をいたしまして健康影響が生じないような対策を目指そうということでございました。
こういった中で、当初から専門家会議に対して幾つかのクレームといいますか、ご注意とかご意見等もたくさんございました。その中で特に私たちが大変気にしましたのは、築地市場との関係を議論されまして、市場の移転ありきの議論をしているのではないかと、そういうことを常にいわれ続けたんですね。この席をかりまして、私、あえて座長として申し上げておきますけれども、決して移転ありきの議論をしたわけではございませんし、移転の議論をしたことは一度もございません。また、東京都が何らかの予算を使って対策等々行うのであれば、東京都の、何といいますか、都民の意見を集約ができる、それは都議会しかないというふうに私たち以前から申し上げておりまして、移転にいたしましても、豊洲の土壌、地下水汚染の対策にいたしましても、最終的に判断をするのは都議会であるということは常に申し上げてきておりました。
といいますのは、専門家会議、四名でございます。これを十名にして、さらに百名にしたところでも、私は築地の将来、あるいは同じことが、豊洲の将来につきましても責任はとれないと思うんですね。そういう意味で、そういうふうな重要な決定をするのは都議会で実施するということは、これまでも十分に何回も申し上げてきたところでございます。ただし、私たち専門家としまして、豊洲の土壌や地下水の汚染については責任を持って対策を提言するということがまず第一点です。
それから、第二点は、情報はすべて開示をするということです。といいますのは、例えば築地の方、あるいは事業者である東京都、またメディアとかあるいは専門家、そういった方々が偏ったデータで議論いたしますと、必ず議論はかみ合わない。疑心暗鬼が生まれるんですね。こういうような疑心暗鬼を生まないためにもデータはすべて開示する、そういう方向で行ってまいりました。実際にこういう二つの基本的な姿勢を維持しながら、全部で九回の専門家会議を行いました。
まず最初に行いましたのは平成十九年の五月十九日でございます。このときには、それまでに行われました東京ガスの調査と対策のことを報告してございます。私たち、そういう結果を見ながら、また将来、豊洲の地につきましては地下水の管理をする必要があるということは、これは十分検討してございますので、地下水に少し軸足を移したような調査を行いました。もちろん、鉛直方向にも土壌の調査は不足している部分がございますので、それについても追加の調査を行うということを決定したわけです。
その結果として大変重要な結果が出てまいりました。それは、D-12という地点の地下水ですけれども、これは六街区の中ほどにある地点になります。そこからベンゼンにいたしまして一〇ミリグラム・パー・リットルの汚染が見つかったんですね。環境基準が〇・〇一ですので、環境基準に比べますと千倍濃度の高い汚染であるということが見つかったわけですね。濃度が高いということももちろん重要ではあるんですけれども、専門家会議四名が最も重く受けとめましたのは、D-12という地点なんですね。それまでの東京ガスの調査の結果からいいますと、D-12というのは、そこの地下水につきましては汚染がないか、あっても軽微であるという結果だったんですね。汚染がないだろうと思ったところから千倍のベンゼンが出てきたということを非常に私たちは重く受けとめました。ということは、豊洲の地四十ヘクタール全域を、汚染のおそれのある土地としての再調査が必要である、そういう結論に達したわけです。
なぜこういうふうなことになったのかといいますと、これは調査の方法が違っているからであります。東京ガスの方は、汚染のおそれのあった深さ、それは旧地盤面になるんですけれども、これはA.P.でいきますと四メーターのところになります。A.P.といいますのは荒川ペールで、荒川のある部分の地点を基準にした高さをあらわしているんですが、A.P.四メーターが旧地盤面になります。旧地盤面から下三メーター、そこを中心に調査をしてございます。三メーターといいますのは、東京ガスが形質変更をした可能性のある深さである。つまり、掘削をしたりとか、そういう工事をした可能性のあるところだと思うんですね。だから、三メーターまでの調査にとどまっていたと。
それに対しまして私たちは、地下水を非常に重要視しておりましたので、平均的な地下水の濃度を調べようということで、地下水面から有楽町層のごく上面までを対象に平均的な地下水を採取いたしまして分析をしたわけですね。結果として、地下水の中にも濃度の高いベンゼンが含まれているということがわかったわけです。そういう意味で、豊洲の地四十ヘクタール全域に対しまして、汚染のおそれのある地としての再調査をする、そういうことを決定いたしました。
その調査といいますのは、今現在の土壌汚染対策法に照らし合わせますと、これは十メートル掛け十メートルのメッシュに一点のボーリングをするということになってございますので、百平米に一カ所のボーリングを行うと。土壌を採取する位置といいますのは、汚染のおそれのある位置ですね。これは旧地盤面になりますので、A.P.四メートルの下〇・五メーターのところで土壌を採取するということでございます。
これは理にかなった話でございまして、で、さらにもう少し踏み込んだ調査も行いました。地下水なんですね。通常、地下水は、そこからは地下水の調査はしないんですけれども、同じ土壌を採取する四千百二十二地点の土壌と、同じ地点の地下水も採取をして分析を行いました。ここが非常に重要なところだと思います。
じゃ、なぜ地下水を採取するんだということになるんですけれども、通常やらないんですね。やらないんですけれども、地下水を採取する理由は幾つかございます。
まず、将来ここの地は地下水を管理していかなければいけないということで、地下水の汚染の状況を調べなければいけないということがまず第一義的にあります。
二つ目は、土壌を採取するといいましても、ボーリングなんですね。ボーリングといいますのは、直径が五センチぐらいのコアになりますので、このぐらいのコアが上がってくるんです。長いのが上がってくるんですけれども、こういうコアが十メーター掛け十メーター、百平米の調査に対しまして代表性があるのかどうかという問題点があります。これは何も豊洲だけではなくて全国的に問題になるんですけれども、ルールはルールでございますので、十メーター掛け十メーター、百平米に一カ所の採取を行ったということになります。
それから、もう一つ重要なのは、土壌といいますのは本当にこういうちっちゃいコアですので、今申し上げましたように代表性が問題になるんですが、その代表性を補うために地下水の調査を行ったんですね。地下水といいますのは、土壌から溶出した有害物質を含んでいるんですね。豊洲の地下水の流れというのは決して速くはありませんけれども、やはり拡散をしてございますので、土壌を調べるよりは地下水を調べた方がより汚染の範囲を広くとらえられるということなんですね。それが二つ目の理由です。
それから、三つ目につきましては、これも重要な話なんですが、豊洲の地はタールなどの油の汚染があるんですね。油の汚染が共存しているような場所ではなかなか土壌ガスをとらまえることが難しいと、そういうことがマニュアルにも書き込まれておりますので、そういう意味で、ガスを調査するよりは地下水を調べた方がより的確な調査ができる、そういう結論で、土壌と地下水の調査を行ったわけであります。四千百二十二地点というのは極めて膨大な調査で、多分我が国で最大規模の調査であろうというふうに私たちは考えてございます。
その結果といたしまして、じゃ、何が見つかったのかということになりますと、極めて高濃度なベンゼンが見つかったと。これも平成二十年の五月の連休前だったでしょうか、新聞報道がありまして、大変センセーショナルに報道されたことを私も記憶してございます。値は四三〇ミリグラム・パー・リットルという濃度なんですね。溶出濃度です。土壌からの汚染ですね。環境基準が〇・〇一ですので、四三〇ミリグラム・パー・リットルといいますのは、四万三千倍の濃度ということになります。
じゃ、なぜ四万三千倍のベンゼンが土壌の中で見つかるのかということで、その周辺の調査も行ったんですね。同じ地点で鉛直方向にもう一度ボーリングをし直しまして、その汚染が見つかった位置から〇・五メーター上、それから〇・五メーター下、さらにもう少し深くまで調べてみましたけれども、汚染が見つかった位置の〇・五メーター上にも〇・五メーター下にも四万三千倍なんていうような濃度はないんですね。さらに、水平方向でいきますと、五メーター離れた地点で、これは十字に切りまして、四地点でボーリングを行っているんですけれども、その水平方向にもそういう濃度がないんですね。
結果として、この汚染は何だといったときに、これはあくまでも中を見ておりませんのでわかりませんけれども、恐らくということで予想したのは、薄い、厚さにして五十センチぐらい、それから大きさにして五メーターぐらいの薄いパッチ状といいますか、布切れですね、パッチ状の汚染がそこに存在をしていた。タールだまりだと思うんですけれども、それを打ち抜いてコアをとってしまったということだと思うんですね。
じゃ、振り返って、四千百二十二地点のボーリングでそういうタールだまりがすべて検出をされているかといいますと、それは難しいだろうという結論になったんですね。じゃ、どうするんだということになるんですが、そのタールだまりをすべて除去するためには方法は一つしかないんですね。汚染の存在する可能性があるのは、旧地表面から将来地下水として管理されるA.P.二メーターですね、A.P.二メーターというのは地下水脈のところなんですが、そのA.P.四メーターからA.P.二メーターまでの二メートルの区間というのは、これはもうすべて除去して、新しいきれいな土壌と入れかえる必要があると、これが一つの結論なんですね。
土壌につきましてはそうなんですが、じゃ、A.P.二メートルよりも下にある地下水はどうするんだと、そういう議論になります。
そのときも重要なことは、やはり建物が建つ可能性がございますので、建物が建ったときに、建物の下というのはなかなか対策をすることは難しいんですね。そういう意味で、建物建設地の中と外については明確に区別をして対策をする必要があるということでございます。
そういう意味で、建物が建つところにはすべて矢板を打ちまして止水構造にして、矢板の中、建物建設地の中につきましては、ベンゼン、砒素、そういった操業由来の汚染土壌はすべて除去すると。地下水も環境基準以下にしようと、そういうことでございます。
それに対して建物の外につきましては、これはもう雨も入ってきます。私は個人的には上から水を入れた方がいいとは思っているんですが、そういった意味で地下水の管理をする必要があるんですね。地下水の管理をするということは、そこは地下水を揚水をして水位を下げる、A.P.二メーターの位置まで下げる、そういう作業が必要になってまいります。
じゃ、抜いた地下水はどうするかというと、これは当然捨てなきゃいけないんですけれども、あそこの場合ですと下水道に排出するということになると思うんですね。下水道に排出するときに、本来は対策をして処理をして流すんでしょうけれども、それでは長い長い管理の間では大変無理が生じると。それであれば、下水道に直接流せるような濃度にまで下げましょうと。下水道に直接流せる濃度といいますのは、排出基準といいまして環境基準の十倍でございます。ですから、建物の外の地下水につきましては、環境基準ではなくて排出基準、環境基準の十倍でもって対策を行いましょうと。ただし、長い将来に対しましては、当然のことながら環境基準を目指そうというわけです。
そういうようなことをやりましても、土壌が汚染をされていますと、どうしても地下水はきれいにならないということになりますので、建物の外につきましても、土壌につきましては、操業由来のベンゼン、シアン等々の汚染は除去をしようということになります。
こういうふうにいたしますと、基本的に土壌の汚染、操業由来の土壌の汚染は、豊洲の地ではなくなるんですね。
残るのは地下水なんです。地下水は建物の下は環境基準以下になっておりますけれども、建物の外は、排水基準ですから、環境基準の十倍の汚染の濃度が残っているということになります。
そこでまた問題点を指摘されましたのは、例えば揮発性物質が地下から上昇してくる、揮発をする、大気に出てくる。その大気に出てきたときに、人が呼吸をすることによって暴露される。さらには、もしあそこに市場等々の生鮮食料品を扱う、そういうふうな業種が立地した場合に、生鮮食料品に付着する可能性がある。ベンゼン、シアンですね。そのおそれを指摘されました。
実は、ここでは大変難しい問題があるんですが、何が難しいかといいますと、地下から揮発性物質が上昇してくる。それで、人もしくは生鮮食料品が汚染をされるというふうな、そういう暴露経路は日本では想定をされてございません。現在、環境基準の中にいろいろございますけれども、地下から上がってくる揮発性物質を評価して、人への健康影響を評価しようとか、そういうルールはないんですね。
ないものですから、何らかの形で暴露量を計算しなければいけないということで、専門家会議では、世界で最も信頼性のあるアメリカの材料試験協会と申しますけれども、ASTMですが、そこでつくられたRBCAというモデルを使って計算をしたんですね。計算いたしますと、私たちが提案している地下水の対策を行いますと、間違いなく大気の環境基準を満たすことができるということと、その濃度がありますけれども、実際に生鮮食料品に付着をするといいますか、分配するといいますけれども、その分配される濃度といいますのは、水に分配されることになりますので、その濃度は水道水質基準の千分の一、ベンゼンで千分の一ぐらいになります。シアンで十分の一になります。実際は、環境基準あるいは排水基準にいたしますので、もっと下がることになります。ベンゼンだと、環境基準にいたしますと十万分の一ぐらいの濃度に下がるんじゃないかなというふうに思います。シアンも数百分の一になると思います。こういうふうに対策をすれば、一生涯人が住んでも健康上問題はないと。あるいは、生鮮食料品にいたしましても大きな影響はないと、全くないと、私たちはそう考えてございます。
ただし、問題は、我々専門家がいっていますのは、安全ということをいっているわけですね。科学的に見て、あるいは数学的なモデルで計算をいたしまして安全ですよといっているわけですけれども、やはり一般市民の方あるいは築地市場の方々にとりましては、安全だけではだめだと、安心をしたいという、その気持ちがあると思うんですね。
その安心を担保する方法は何だと申しますと、私たちが考える限りは、やはり将来管理をするのであれば、その管理そのものにいろんな方が参加をいただくと。例えば築地市場の方々、事業を担当する東京都の方々、専門家あるいはメディア、そういった方々が一堂に会して、その中で管理をしていく。一般市民の方々もそこに、全員じゃありませんけれども、代表者が来て実際に管理に参加をする。場合によっては解析にも参加をする、そういうふうな集いが必要であろうということを提案したわけでございます。
報告書の中には、協議会という言葉を使っておりますけれども、その協議会に参加をして、みずからそこでデータを扱って納得をしていただく、それ以外に安心を担保する方法はないだろうと。我々専門家がいかに安全だと申しましても、恐らく安心を担保するのは、みずから確認をしていただく方法しかないだろうと。そのためには、まずデータはすべて開示をするというのが本当に基本原則だと思うんですね。そういうことを専門家会議は行ってまいりました。
最後にこれ、いろんな方からいろんなご意見をいただいたんですね。そういう意味で、たしか専門家会議が終わります二十年七月二十六日のメディアのブリーフィングのときもお礼を申し上げたんですけれども、本当にいろんな方からたくさんのご意見をいただきました。そういった中でも、一番やはり胸にしみるといいますか、報告書の作成に影響を与えましたのは、第三回から一般傍聴者の方と会議が終わった後で意見交換を行ったんですね。そのときも時間制限はほとんどなしということで、十分かどうかはわかりませんけれども、交換を行いました。
そのときに、専門家というのは、まず公平にしようと、偏らないと。我々は移転ありきの議論をしないということを前提にいたしますと、まさにデータをもとにした、いってみれば、極めて無機的な議論にならざるを得ないんですね。議論をする中身も専門用語が飛び交いまして、恐らく一般の方から見れば何をいっているかわからないと、そういう事態にもなるんですけれども、いろんな方とその場で話し合うということは、基本的に専門家会議の議論、あるいは使っている言葉につきましても、一般市民の目線に合わせると、そういう役割を果たしているんだ、私はそういうふうに思ってございますし、私自身、大変勉強になったというふうに思っております。
さらに、安全・安心ということをいつもいわれるんですけれども、安心・安全、それを担保するために豊洲の地では、将来、土地利用の一つのあり方として生鮮食料品を扱うような、そういうふうな立地になるかもしれないと。そういったときに、上乗せ的な対策をしなければいけない。ただし、これは全国すべてに通用するような話では私はないとは思うんですけれども、でも、上乗せ的な対策を提言するという、その原動力になったことは事実だと思うんですね。そういう意味で、いろんな方と現場でお話ができたということは、専門家会議の議論を進める上で大変大きな力になったということがございますので、私の説明の最後に、皆様方に厚くお礼を申し上げて説明の終わりとしたいと思います。
以上でございます。
○小沢委員長 どうもありがとうございました。平田参考人の発言は終わりました。
次に、平田参考人に対する質疑を行います。
なお、平田参考人に申し上げます。答弁する際は、手を挙げて、委員長の許可を得てから発言していただきますようお願いいたします。
それでは発言を願います。
○増子委員 民主党の増子博樹でございます。
きょうは本当にお忙しいところ、ありがとうございます。また、専門家会議、本当にお疲れさまでございました。
先生にお伺いさせていただきたいことが幾つかございますが、時間もないので端的に聞きますが、先生からも安全と安心が非常に大切だというお話がございました。その意味で、私たちも委員会や議会等の議論の中でも、不透水層の下は大丈夫なんだろうかという議論を随分してまいりました。それをすると長くなっちゃうのでしませんが、特に、既にかつて一たん不透水層を抜いて調査したこともありますし、その後、セメントで固めたから大丈夫だという答弁もあったんですが、そのほかにも数例、例えば保留地にも六千本ぐらいのくいだとか、しかも多分、木のくいもあるでしょうし、PCやあるいは鋼管ぐいなどもたくさん入っていて、しかも長さも十メーターから三十メーター以上のものまであったりとかしています。しかも、コンクリートの基礎もあったり、あるいは貯水槽があったりして、深度方向もかなり深いものもあるというふうにされています。
そういう意味では、予測されている問題として、操業以降の増築時などに設けるくいの打ち込みだとか、あるいは基礎を築造したときに汚染を巻き込まなかっただろうかというようなことですとか、そういったリスクというのは考えられるんだろうというふうに思っておりますが、こういったことについては専門家会議の中ではご議論があったのかどうか。それと、不透水層の下をあけてもセメントで埋めれば、実際には調査もできるわけですが、そういった意味で、汚染を広げずに調査をする必要が本当にないのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
○平田参考人 まず、くいの巻き込みの件ですけれども、厳密にいえば、わからないといわざるを得ないと思いますね。ただ、打ち込みというのは圧縮の方に働きますので、巻き込みはしにくいだろうとは思います。でも、現実には全く巻き込みはないのかといいますと、わからないということをいわざるを得ないと思いますね。
でも、今は非常に、逆に締め固まっておりますので、ある意味、液状化対策的なものにはなっていると。要は、断面が、ある一定の断面のところに、くいという、そういうものが入っておりますので、横にぐっと押しのけていますよね。そういう意味では、そういう対策といいますか、そういう効果はあるんだろうと。でも、下に入ってるかどうかはわからないということでございます。
それから、不透水層より下の話はどうかという話なんですが、例えば専門家会議で行われました調査といいますのは、汚染があるかないかの調査なんですね。その調査といいますのは、揮発性物質であれば十メーターまでのボーリングを行う。あるいは、重金属であれば五メーターのボーリングを行う。そこで決定をするんです。それを行いまして、汚染があると、将来対策をしなければいけないということになりますと、汚染の深度を確定をする必要がございます。
また、汚染があるなしの話ですので、確定をするときには、底面管理と申しまして、二深度、一深度一メーターなんですが、二深度続けて、ということは二メーター続けて土壌は環境基準を満たす必要があると、そういう調査をしなきゃいけないんです。
その調査で二深度、二メーター区間汚染がないということをもって、ここで汚染は終わりだということを決めるわけですけれども、そういう調査で確定をしますので、それは先にやるか後にやるかの違いはありますけれども、専門家会議では、実際に対策を行うときに底面管理を行えばいいということだと思うんです。そういう意味で、汚染の範囲もわかるということだと思います。
それから、もう一つ、深い方の地下水が汚れているかどうかということで、今なぜ調べられないかということなんですが、対策のときに--要は二深度を調べていきますので、くいのあるところもあればくいのないところもあるとは思うんですけれども、実際にそういう調査を行いますので、あるかないかはわかると思います。
じゃあ、あったらどうなるんだということになるんですが、例えば液状化対策は、恐らくほとんどのところで行うことになりますので、下にありましても上に上がってくる可能性は私は低いというふうに思っています。そのためにやるわけですから。
じゃあ、実際にその下にある、もし仮にあったとして、有害物質はどうなるんだということになりますと、まず地下水は飲まないので、飲用による健康影響はないわけです。
じゃあ、後はどうなるかといいますと、いつか東京湾に出るかもしれない。でも、東京湾といいますのは海ですので、無限の希釈があるということだと思うんです。これまでだめだということになりますと、恐らく東京湾に流し込んでいる河川の中に含まれている有害物質はとんでもない量がございますので、それまでだめになるということになりますので、そこまで規制はできないということで、深い方にたとえあったとしても、現実的には大きな影響はないというふうに私たちは理解をしてございます。そういう結論だったと思います。
だから、今そういう調査をする必要はなくて、対策をやるときには底面管理を行うから、そのときに行えばいいということを何回も申し上げたと思います。
○増子委員 ありがとうございます。
すると、先ほども先生が、安全なんだけれど、安心はこれからの管理だというお話がございまして、どこが安全宣言なのかなというのが私たちも大変気になるところですが、例えば最低限、提言されている対策が完全に実施されて、地下水などについてもモニタリングをするということですから、そういう意味でいうと、二年間のモニタリングで環境基準を超える汚染が検出されない、例えばです。そういったような状況を見て、対策に対する検証があって安全宣言ということがいえるのではないかというふうにも思いますし、改正土対法上も、要管理区域になるんでしょうか。そういう意味でも、やっぱり二年間のモニタリングの途中で何か出てくると、またそこから二年間というようなことも将来あり得る可能性もあると思うのですが、そういった意味で、安全宣言とは何かということについて、先生のご見解をいただければと思います。
○平田参考人 土壌汚染の場合、対策を行ったと。その後、その対策が完了したというのは、おっしゃるとおり地下水で見ていくんです。二年間、環境基準を満たすということになります。一年間に四回調査をする。それは季節的な変化を押さえるという意味で四回調査をする。合計八回の調査を行わなきゃいけないのですが、その八回とも環境基準を地下水が満たしていると、その条件で完了ということになることになります。
それから、途中で、例えば二年目の一回目に環境基準を超えてしまったとなりますと、またそこから二年間チェックをすると。おっしゃるとおりでございます。そういうことになろうかと思います。
それから、新しい土壌汚染対策法、対策法といいますか、改正をされてございます。四月一日から施行されるんですけれども、まだすべて出ていないんです。多分あすぐらいには出るのかなというような情報もあるのですが、出ていないのですが、先走って申し上げるのはいかがなものかと思うんですが、今までわかっている範囲でいきますと、豊洲は必ず指定区域にかかるんですけれども、二つございまして、要措置区域、必ず措置をしなさいという要措置区域と、もう一つは形質変更時要届け出区域、それになるんです。
要措置区域になるためには、健康影響の蓋然性があるということになりますので、例えば地下水を飲んでいると。それが要件ですね、一つ。
もう一つは、土壌の含有基準を超えていると。土壌は食べる可能性がありますので、その場合には上に盛り土とか覆土とか、そういうことをされていれば、要措置区域の対象には私はならないんじゃないかなと。私が勝手に判断しちゃいけないんです。これは環境サイドが判断することなんですが、そういう話だと思います。
○増子委員 じゃあ、最後に一つだけ。済みません。ありがとうございます。
それでは、もう時間がないのであれですが、情報を都民の皆さんや関係者と共有するというのは非常に大切だと思います。
そういう意味では、昨年、公表値の百十五倍のベンゾ(a)ピレンが検出されたんだけれども、専門家会議に報告してなかったということがあって、先生も情報開示の改善を期待するんだというコメントを出されたというふうに記憶しておりますが、そういう意味では、やっぱりいろんな意見の対立がある中で、クロスチェックといいますか、反対の方にも科学的反証をしていただいて、それをちゃんと受けるということもこれは必要なのかなというふうに思うんですけど、都側は今まではそういう必要はないんだとおっしゃってきたんですが、科学者として先生のご見解をいただければと思います。
○平田参考人 まず、報告書全体につきましては、これはどういうモデルを使ったのか、そういったことはすべて書き込んでございます。ここまで普通は書かないんですね。こういうモデルで、こういうケースで、こういうふうになりまして、結果がこうですということにはならないんですが、この報告書は、一から読んでいただきますと、すべてトレースできるようになってございます。だれでもチェックができることになってございますので、それはだれかがチェックをすればいいということになろうかと思います。
それから、クロスチェックで、特に分析なんかのことが問題になると思うんですが、これは実際に、分析に関しましては、含有量と、それから水溶解度、水の濃度につきましてはクロスチェックは行ってございます。
非常に難しいのは、環境省なんかでもクロスチェックをやるんです。ばらつくんですが、プラス・マイナス三〇%ぐらいの範囲に入っていればいいという、ちょっと乱暴ではあるんですけれども、そこがばらつくんです。
そういう意味で、どれが正しい値かということはわからないので、実際には公的な機関に分析もしてもらう。それから、実際の担当する業者にも分析をしていただくと。それがある範囲に入っているということでクロスチェックということになってございます。
土壌の含有量と、それから、水溶解、水濃度につきましてはクロスチェックはやってございますので、それについてはご懸念はないのかなというふうに思ってございます。
ただし、だれか別にまたお願いをするということになりますと、逆にまたその方のデータが正しいかどうかのクロスチェックが必要になってくるということで、もうエンドレスになっていくんですね。そういう意味で、やはり全員が、分析する機関がすべて分析をして、ある範囲に入っているかどうかというのが、私はクロスチェックの一番重要なところかなというふうに思ってございます。
○増子委員 ありがとうございました。
○高木委員 自民党の高木です。
きょうは、平田先生には大変遠くから都議会までお越しをいただきまして、心から御礼を申し上げたいと存じます。
専門家会議では、平成十九年の五月から十四カ月にわたって、豊洲新市場予定地における汚染状況の調査、市場用地としての安全を確保するための対策を検討していただきまして、市場用地としての安全性を確保するために、人が生涯にわたりこの地に住み続けても健康への影響がない対策を提言していただいたわけであります。
汚染状況を掌握するための調査や提言の内容について、これまで議会で議論してきており、提言をしていただいた内容を確実に実施していくことで、私どもは市場用地の安全、そして、先ほどもご提言がありました安心の問題というのは十分確保されると思っております。
しかしながら、対策の内容が専門的で、安全確保に不安を感じている方もいらっしゃると聞いております。そこで、何点か確認も含めてご質問させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。
専門家会議の中で、開催中、先生から、移転の是非を議論したのではなくて、市場用地として利用可能なよう、科学的な知見に基づいて調査、対策についての検討をしたものというお話があったと思います。再度、確認のために先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○平田参考人 先ほど申し上げましたように、専門家会議というのは、やっぱり科学者の集まりでございますので、土壌は地下水の汚染に対してどうだというのはできるとは思うんですが、その土地の将来に、特に経済的な面からの責任を負うというようなことは、四人だからできないんではなくて、先ほど申し上げましたように、十人であれ、百人であれ、私はできないと思うんですね。
そういう意味で、まさにきょうお集まりの先生方の都議会の方で議論をしていただく必要があろうと。そのためのデータをちゃんとつくったというのが専門家会議の姿勢であると、そのことは何回も申し上げているとおりでございます。そのとおりでございます。
○高木委員 専門家会議では、食の安全・安心の観点から土壌汚染対策の妥当性を検討していますが、土壌汚染対策法では、地下水の飲用がない場合は、封じ込め対策として五十センチメートル以上の覆土を行えば汚染物質を除去しなくても建物を建設できるというふうに私どもは聞いております。
専門家会議が提言をした対策は、先ほど来お話がありましたけれども、二・五メートルの覆土に加えて、ガス工場操業時の地盤面から二メートル下までを土壌掘削をして、清浄な土と入れかえる。その下については、建物建設地では土壌、地下水の操業に由来する汚染物質を環境基準以下に除去、浄化をするなどして、法で規定をする対策に比べて非常に手厚い内容となっていると思います。
なぜこれほどまでの手厚い対策を取りまとめたのか、そのお考えをお聞かせください。
○平田参考人 それも私の説明の中で少し説明を申し上げたんですが、例えば東京都でしかできない対策、これは私は少々問題があると思うんです。それが先導ということになりまして、すべて四十六の道府県がそれに倣わなければいけないというような事態になりますと、多分大変な経済的な負担になると。これは事実でございます。
ただし、これほどまでに大きな問題となって、現実にベンゼン、シアンの汚染の問題があって、それに対して安全では足りないと。安心であると。私たち、あくまでも、あそこに一生涯住んで、七十年ですね、住んでも健康影響がないということを前提に対策はいたしましたけれども、その中で土地利用の一つの形態として市場という、生鮮食料品を扱う、そういう立地があった場合に、じゃあ、どうするんだと、そういうことを指摘をされますと、当然のことながら安全だけではなくて安心という、そういうものをつけ加えざるを得ないと思うんです。
そういうようなことが、やはり専門家会議の中でいろんな意見を通して出てきたということでございますので、あれが日本の一般的な土壌地下水汚染に対して適用できる方法では私はないというふうに思ってございますし、それについては何度も申し上げてきてございます。あくまでも食の安全の場として使われる可能性があるから、そこまでの手厚い対策を行ったということでございます。一般的な手法ではございません。
○高木委員 それほどまでに手厚い対策を、市場だからこそというふうにまとめていただいたんだろうと私どもは理解をしています。
次に、これまでの議会で議論されている内容について、二点お伺いしたいと思います。
一つは、新市場予定地の、先ほども若干触れられました不透水層の問題であります。不透水層であっても全く水を通さないわけではなくて、不透水層が汚染されているのではないか。あるいは、不透水層が確認できていない地点があって、このような箇所から不透水層の下に汚染が広がっているんじゃないか、そんな意見も聞かれるわけであります。
そこで、不透水層の中やその下に汚染があった場合に、提言をしていただいた対策で安全を確保できるのか、まずこの問題をお伺いします。
○平田参考人 お答えいたします。
不透水層の問題は、先ほども少しお答えいたしましたけれども、将来、対策をもし行うのであれば、実際に底面管理というものを行っていきます。二深度続けて環境基準、つまり、二メートル区間環境基準を満たさないと底面管理にはならないということがございますので、それを行っていけば汚染の範囲がわかるというふうに私たちは考えてございます。
実際に、もしずっと掘っていって、もう有楽町層がなくなったというふうになれば、技術的な話になりますと、また改めて有楽町層に相当する不透水層をつくればいいと、技術的にはそういうようになると思います。
それから、いわゆる不透水層が確認されていない地点、これは二地点あるというふうにいわれてございますが、これは五街区だと思うんです。五街区は、結構浅いところまで有楽町層が上がってきてございます。結構乱されている可能性はあると思うんです。ただ、その周りに四地点で改めてボーリングをして、そこでは確認はされているということは、私も情報はいただいてございます。
じゃあ、本当にどうなのといわれますと、わからないんですよね。それをやるためには、恐らくボーリングではもうだめで、実際に、そこまで実際に掘ってみないとわからないということになると思います。
それから、あえて申し上げますけれども、五街区の対策といいますのは、あそこは恐らく液状化対策をやるときに、かなりの部分、有楽町層の中まで入らざるを得ないんです。さらに、あそこはベンゼンの汚染がございますので、ベンゼン汚染があるところでは、基本的にはコンクリートで固めるというふうな対策はできないんです。環境上許されておりません。土対法の中でも許されていないんです。
要は、ベンゼンの汚染を除去した、つまり、第一種有害化学物質がない状態、基準値以下の状態でなければ、あそこにはコンクリートの構造物--実際に土壌にまぜちゃいますので、そういうことはできないんです。そういう対策を行っていきますと--多分行わざるを得ないんです。そういう意味で、その過程で十分その深さまでは掘り進まれるだろうと思います。
だから、実際に対策をするときに、本当にないのかどうかを確認すればいいと。なければ、先ほど申し上げましたように、そこに改めて有楽町層に相当する粘土層をつくればいいということだろうと思います。
○高木委員 私ども、対策はそのとおり、先生がおっしゃられたように、専門家会議の提言どおりでできるというふうに思っております。
最後に、調査に際して、汚染物質を分析をするとともに、土質や地質の状況を確認するために採取したボーリングコアの廃棄が現在問題にされています。
ボーリングコアからは、汚染物質の分析、土質状況の図化などを目的としたデータ、すべて得ている。そして、公表もしていることから、私どもは補完の必要性というのはそれほど感じておりませんが、先生のお考えをお伺いをさせていただきます。
○平田参考人 ボーリングコアは、これは一般的な話といたしまして、ボーリングコアを取って、コアをチェックをいたしまして、分析をする試料を採取をして、その段階でもう終わりということになりますね。後は適切に処理をすると。特に豊洲の場合は汚染物質を含んでございますので、早く適切に処理をした方が私はいいとは思います。
ただし、問題は、豊洲の地というのはいろんなところで問題が指摘をされているわけです。賛成派、反対派、いろんな議論がある中での話でございますので、廃棄をするなら廃棄をするで、十分な説明をして、お互い納得の上でなければ、やはり話は前に進まないだろうと。
そういう意味では、やはり互いに話し合いの場を持って、十分に情報管理といいますか、同じ情報を共有をした上で次の行動に入っていく、それが私は一番の基本だろうと思います。
そういう意味では、やはり十分な説明は必要であるし、説得ではなくて、相手の方に理解をしていただく、そういう取り組みが必要であろうというふうに思っています。
○高倉委員 公明党の高倉でございます。
きょうは大変お忙しいところご出席いただきまして、ありがとうございます。
土壌汚染の問題は高度に専門的でありまして、平田先生を初め専門家の方々にお任せをして、その提言の対策が確実に行われているのか、これをチェックしていくのが私ども都議会の役割ではないかというふうにも思います。専門家でない立場の議論だけでは、なかなか自然の真理を確かめるというところまでいかない部分もありますし、まして多数決で対策による安全性の可否が決まるものでもないというふうに思っております。
そうした点を踏まえまして、この問題に関して議論となっている点についてお尋ねをいたしますけれども、ぜひ専門家としてのお立場からご教授いただければと思います。
まず最初に、専門家会議の提言により、都は新市場予定地の汚染状況を把握するために、敷地全域を十メートル区間に区分をしまして、四千百二十二カ所の土壌と地下水の詳細調査を実施されました。
しかし、この調査では汚染状況の把握が不十分であるというような主張が一部にあるわけでありまして、対策の検討に当たって、この汚染状況の全容は十分に把握をできたのでしょうか。この点についてお考えをお伺いしたいと思います。
○平田参考人 お答えをいたします。
専門家会議で行いました調査は、汚染があるのかないのか、あるいはどの程度の汚染があるのかということを調査をいたしました。
実際に対策を行うということになりますと、先ほどいいましたように、汚染の深度までを決める必要があると思うんです。そこまではやっていない。やっていないんだけれども、詳細調査で一部絞り込み調査も入ってはおりますけれども、それを汚染の範囲の中で汚染範囲の、水平方向の汚染の範囲、鉛直方向の概略を押さえられたというふうに思っているんです。
ですから、今後どういうふうなデータが出てきましても、専門家会議が提案をいたしました提言の内容が、私は変わることはないと。そういうふうな提案になってございます。
というのは、どういう技術を使って浄化をするとか、そういう話ではないんです。あるところはきれいにしましょう、あるところは管理をしていきましょうというふうに、めり張りをつけた対策になってございますので、その基本的な対策の構造というのはどういうふうな調査結果が出ましても変わることはありません。
そういう意味では、対策、提言をする上での調査はデータとしてはよかったというふうに思っているところです。
○高倉委員 土壌汚染に関する調査対象物質は、ガス工場の操業に由来をするベンゼンなどの七物質というふうになっております。土壌汚染対策法に定める二十五物質すべてを対象とすべきではないかと、こういった意見もあるわけでありますけれども、二十五物質すべてを調査する必要はあるんでしょうか。この点についてのご見解をお伺いしたいと思います。
○平田参考人 お答えいたします。
土壌汚染対策法で調査をするときの項目といいますのは、操業に由来をする物質。それ以外の物質まで環境サイドとして調査対象にさせるということは過剰な負担になりますので、多分どの自治体でもそこまで踏み込んだ指示はできないだろうというふうに思っています。
実際に、豊洲の石炭乾留につきましては、ベンゼンとシアンの汚染は明確にあるということです。それから、砒素はガス等々の処理に使っているということでございますけれども、それ以外の物質、四つございますが、それにつきましても、恐らくその範囲が私は限界かなと。それは東京都の環境部局も確認をしていることだと思います。
全二十六物質を調査をしなさいというのは、少し私は、たとえどういうふうな場所であれ、そこまで求めるのは少し行き過ぎかなと。
実際にその業者といいますか企業と、提出をする、書類を受け取る環境サイドで議論をする話ではありますけれども、七物質ぐらいが限界かなというふうに私は思ってございます。
○高倉委員 地下水についてお伺いをいたしますけれども、地下水が移動することで汚染物質が拡散をするということが考えられるわけでありますけれども、この地下水の流動に関する調査というものは行う必要はないんでしょうか。このことについてのお考えをお伺いしたいと思います。
○平田参考人 まさにおっしゃるとおり、地下水を調べるというのは、地下水の拡散、地下水の中に含まれている物質がどの程度拡散をするかということを調べるために行うわけです。
それに対しまして、豊洲の場合、ちょっと過剰ともいえる調査を行っているんです。四千百二十二カ所でボーリングを行って、すべての地点で地下水を取って、七物質につきましては濃度を明確にしているんです。
例えば、ちょっと私、きょう、データは先生方もお持ちだとは思うんですけれども、その結果を図示をしていると思います。濃度を濃淡をつけて、差をつけてあらわしている図があると思うんですけれども、まさにその絵が地下水の調査をあらわしているわけです。
実際にこういうデータを普通はとれないものですから、地下水の調査で補おうというわけなんですが、実際に地下水の濃度を四千百二十二カ所も調べて、それで絵をかいているという、その結果がまさに地下水の流れといいますか、汚染の範囲を押さえていると、そういう調査になっているはずでございます。
例えばこういう図面ですね。(資料を示す)こういう絵というのは、ほとんどの汚染現場では出てまいりません。東京都だからこそできた調査だと思うんですが、まさにこれが地下水の流れといいますか、拡散をあらわしている絵であるというふうに思っておりますので、四千百二十二カ所の地下水の調査で、地下水調査については、私は余りある結果であろうというふうに思ってございます。十分だと思います。
○高倉委員 地下に汚染物質を通さない不透水層があるということから、不透水層以下の汚染状況を調査をしておりませんけれども、仮にこの汚染物質があった場合に、震災のような事態が発生をしたときに、汚染物質が上がってきて食品に付着をするとか、あるいはベンゼンなどが気化するおそれがあるのではないか、こういった指摘があるわけであります。これについての先生のご見解をお伺いしたいと思います。
○平田参考人 これも何度も説明を申し上げたんですけれども、実際に地下から汚染物質が上がってくるかこないか、それはあくまでも液状化対策がうまくいくかどうかにかかっていると思うんです。
現在、液状化対策といいますのは、緩く水の中に土壌が浮いているといいますか、余り締め固まっていないところをきちっと締め固める対策なんですが、それは土壌の特性にもよるんですが、地下十五メーターから二十メーターぐらいまでを対策をするということになると思うんです。
その液状化対策をきちっとしておれば、何といいますか、仮に地下深いところに汚染物質がありましても、地下から地表面に上がってくるおそれは少ないと。
じゃあ、絶対に上がってこないのかといわれますと、やはり人間がやることですから、絶対ということは使えないと思うんです。じゃあ、上がってきたときにどうするかといえば、これは速やかに除去をすると。でも、何もしないよりははるかに上がってくる量は少ないというふうに思ってございます。
そういう意味で、地下にありましても、液状化対策をきちっとやるということをすれば、現実にはふたをされるということになりますので、地下深いところに汚染がありましても影響はないだろうということでございます。
さらに、もう一つ申し上げれば、先ほど申し上げましたように、環境基準の地下水の濃度で制御をいたしますと、実際の生鮮食料品の表面にある水に付着をするベンゼンの濃度といいますのは、環境、水道水質基準、同じですけれども、その濃度の一万分の一から十万分の一ぐらいの濃度になりますので、そういった懸念は私は直ちにはないと。
第一、そういう状況になったときに、実際に、いわゆる市場となっておりましても、そこは市場として機能しているかどうかの方が私は問題だなというふうに思ってございます。
○高倉委員 若干時間がございますので、もう一点だけ。
地下水の汚染対策について、専門家会議では、矢板で囲い、そして旧地盤面から二メートル下で水位を保つといった対策をとるというふうにしておりますけれども、矢板で地下水を遮断するのが困難であって、また、地下水の水位を一定に保つのも技術的には無理ではないかと、こういった主張も聞かれるわけですけれども、この点についての先生のお考えをお聞きしたいと思います。
○平田参考人 どういうことを想定するのかにもよるとは思うんですが、例えば地下水位が十メーターもあると。右と左で十メーター差があって、そこに矢板を入れて、止水矢板で水をとめようというのは、これはもう極めて困難な話だろうというふうに思います。
ただし、豊洲の敷地の中の地下水の差というのは、私は、多分将来、一メートルもすることはまずないと。数十センチぐらいだろうというふうに思っております。そういう意味で、止水矢板で完璧にとまるかといいますと、それは若干問題があるかもしれませんけれども、ほとんどとめることはできるだろうというふうに思います。
それから、地下水の制御をするのは大丈夫かということになるんですけれども、実際に地下水面の上に五十センチのれき層を置くんです。これは毛管水縁といいまして、地下水が上に上昇するのを防ぐために、れきという非常に水を通しやすい層をつくるんです。そのれき層を通して、多分地下水を管理をするということになりますので、それほど地下水が--もちろん何もしないで、今のような状態で地下水を管理をするというのは、私は極めて困難だろうと思います。
でも、将来、上にれき層という水の流れやすい層をつくるために、その層を通して地下水の管理を行っていくということになると思うんです。それはやっぱり工夫次第だと思いますので、全域をやるというのではなくて、五街区、六街区、七街区、各街区ごとに、さらにまた、その街区の中でも恐らく区分をしながら管理をしていく、それは十分可能だろうというふうに思います。
○清水委員 日本共産党の清水です。
本日は遠くからご苦労さまです。よろしくお願いいたします。
何点かお聞きしたいと思います。
まず一点目は、有楽町層は不透水層だけで構成されているのでしょうかということです。
それから、二点目は、先生は昨年一月二十六日に、新聞の記事の中で、部分的に粘性土層が連続していない可能性はあると述べておられますが、実際、調査のデータを見ると、これはちょっと場所があれかもしれませんが、五街区のN40-9という地区では、粘性土有楽町層は五メートルの距離で三メートルの段差がありました。この場合、有楽町層が連続していない、断絶があるというふうに考えることが科学的だと思いますが、その二点について、まずお願いいたします。
○平田参考人 有楽町層が連続しているかどうかということになりますと、部分的にはやはり切れているところがあるかもしれません。それは明確にどういう地層であれ、完全に連続というのは基本的には考えにくいですよね。例えば地震があって断層があるとか、そういったことは存在するということは可能性があると私は思ってございます。
ただし、そういったものも、何度も申し上げておりますけれども、対策をもし行うのであれば、実際に底面管理を行っていくわけですので、それは目視で見えるかどうかはともかく、もし目視で見えるようなものであれば、修復は可能だと思います。
もう一点の方、部分的に欠落している可能性があるという、先ほどありましたけれども、有楽町層の、あれは五街区の二カ所あるんですね。ボーリングしたんだけれども、二カ所について有楽町層が確認できなかったというところですよね。そのときに五メーター離れたところで四カ所ボーリングしているんですが、有楽町層のそこが非常に、何ていいますか、高さに違いがあるという話でございますが、そこは恐らく、何らかの形で終局をしているのか、不連続な面になっている可能性もあると思います。可能性はあると思います。
ただし、今の段階で、じゃ、それがどうなのということになりますと、恐らく実際に、先ほど申し上げましたけれども、底面管理といいますか、対策をするときに、あそこはかなり掘削をしなければいけないところなんです。恐らく十五メーターないし二十メーターまでは液状化対策に入ることになると思いますので、そのときに実際の構造がより明確になるというふうに私は思ってございます。あのままで対策はできません。ですから、先ほども申し上げましたけれども、ベンゼンという揮発性の物質が含まれている限りは、現地でそのままの形では固化できないんです。そういう意味では、あそこでは、ベンゼンを取る、土壌を除去すると、そういう対策をしていきながら見ていくということになると思います。
だから、そういう意味で、そのときにもし亀裂があるのであれば修復をすればいいと、私はそう思います。
○清水委員 ありがとうございます。
何度も今、ほかの委員も聞いておられるかと思いますが、先ほど何度かお答えされていますが、そうすると、その下に汚染が漏れているということについて、いろいろ対策とかいわれておられますけども、それについてはどういうふうに見られておりますか。
○平田参考人 下に漏れているかどうかの議論は以前からございます。実際に私たちが専門家会議で申し上げてきたのは、まず底面管理をしていくんだと。上からどんどん取っていくわけです。それで、もし有楽町層がなくなってしまえば、そこに改めて有楽町層に相当する粘性といいますか、不透水層をつくるということになると思うんです。
じゃ、その下にある地下水はどうなんだと。汚染されている可能性があるんじゃないかということになるんですけれども、じゃ、その下の地下水が汚れていて、私たちの生活に対してどういうふうな影響があるのかということになると思うんです。現実には、液状化対策を行って、下のものは上に上がらないようにしましょうということが一つあります。それから、地下水は飲まないということがあると思うんです。さらに、下にある水というのは、将来どうなるんだといいますと、恐らく東京湾のどこかに流出していく可能性があるということだと思うんですけれども、東京湾というのは海ですので、無限の希釈ということで、私たちは基本的には考慮しないということになっております。そういう意味では、人に対する影響はないと。
ただし、液状化対策が不十分で上に上がってくる可能性は、これは否定はできませんけれども、恐らく可能性としてはその一点だと思います。でも、可能性は低いとは思います。
○清水委員 ありがとうございます。
別の質問です。昨年一月の記事では、有楽町層の欠落とともに、先ほどもほかの委員からありましたけれども、報告書に未記載のベンゾ(a)ピレンの存在が都民に指摘され、専門家会議の信頼性が疑われてしまったわけですが、座長として、先生は、この存在をご自身でデータをチェックされていたのでしょうかということと、どこにこの原因があったのかというふうにお考えになりますか、お聞かせください。
○平田参考人 極めて高濃度なベンゾ(a)ピレンが、一月ぐらいでしたか、新聞に出たときのことですね。専門家会議は七月二十六日に閉じてございます。私たちのところにそのデータが来ましたのは十一月だったと思いますので、専門家会議のメンバーが報告書を作成するときには、そのデータは知らないということになります。チェックはしてございません。おっしゃるとおりでございます。
実際に、ベンゾ(a)ピレンにつきましては、どれだけの高濃度なものが存在しましても、専門家会議の提言した内容には変化がないんですね。ありません。なぜかと申し上げますと、A.P.二メーター、地下水面より上には汚染の土壌はなくなるんです。A.P.四メーターから二メーター、A.P.二メーターの二メーター区間は全部土壌を入れかえちゃいますので、存在しなくなるんです。A.P.四メーターから上、二・五メーターのA.P.六・五メーターまではきれいな土壌の覆土ということになります。だから、存在する可能性があるのは、A.P.二メーター地下水面よりも下ということになるんです。
その地下水面の下に極めて高濃度なベンゾ(a)ピレンが存在をしたとして、どういう影響があるかと申しますと、もともとベンゾ(a)ピレンというのは、ほとんど揮発はしないんですけれども、少し揮発するんです。その揮発をして、地下水から揮発をして、不飽和層を通って地表面まで上がってくるということになると思うんですが、これは発がん物質でございますので、発がんのリスクを、普通は十のマイナス五乗、十万人に一人ということでカウントするんですけれども、同じように十万人に一人、呼吸をして、地下から上がってきたベンゾ(a)ピレンを摂取して、一生涯住んで、七十年住んでがんになる確率を十万人に一人ということで計算をいたしますと、地下水中のベンゾ(a)ピレンの濃度は、かなり濃度が高くならないと存在しないんです。
ベンゾ(a)ピレンというのは揮発もしにくいし、水にも溶けにくいと。水に溶ける最大の濃度が飽和溶解度と申しますが、その飽和溶解度よりもはるかに超えた濃度でなければ、人の健康には影響を及ぼさないという計算結果になってございますので、存在はしましても、影響はないんですね。そういう意味では、提言の内容には変化はございません。
ただし、なぜ公表しなかったんだということにつきましては、これは東京都といいますか、市場の関係者の落ち度であろうというふうに私は思ってございます。
○清水委員 ありがとうございます。
先生の前の参考人の方、日本環境学会の先生から先ほどお話を伺ったんですけれども、まだまだいろんなところで私たちは話をお聞きしたい、両方の方からお聞きしたいなというような感想を持ったわけですけれども、先ほどクロスチェックの問題もありました。その問題はもうお答えいただいたんですけれども、やはりまだまだ都民は、いろんなことで、不透水層の問題、その下の問題、本当に疑問を持っています。私は先生と、この前の先生、そのほかの専門家会議の先生などが一緒の場で公開討論など--それぞれ今までも東京都に要求しているわけですけれども、これからでも遅くはないと思いますので、そうした公開討論の要望にこたえていただけないでしょうか、お伺いいたします。(発言する者あり)
○小沢委員長 お答えできる範囲で結構でございます。
○平田参考人 討論会をやることはやぶさかではございません。ただし、何ていいますか、それこそ移転反対ありきの議論と、私たちのことを移転ありきの専門家会議であるという、そういう認識のもとに立てば、どういうふうな利益があるのか、私自身は非常に疑問に思うところでございます。そういう意味では、きょうのところはそのぐらいにさせていただきたいというふうに思っております。
○小沢委員長 ありがとうございました。
ほかに発言がなければ、お諮りいたします。
平田参考人からの意見聴取はこれをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小沢委員長 異議なしと認め、平田参考人からの意見聴取は終了いたしました。
平田様、本日は貴重なご意見、まことにありがとうございました。心より厚く御礼申し上げます。
それでは、どうぞご退室ください。
お諮りいたします。
本件に対する参考人からの意見聴取は、本日のところはこの程度にとどめ、後日の委員会で続行いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小沢委員長 異議なしと認め、そのように決定いたしました。
以上で中央卸売市場関係を終わります。
これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
午後四時十九分散会
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