予算特別委員会速記録第二号〔速報版〕

○川松委員長 西崎つばさ理事の発言を許します。
   〔委員長退席、松田副委員長着席〕

○西崎委員 初めに、予算全般の枠組みにおいて、次世代への投資という観点から、教育について伺います。
 二〇二二年における日本の公的な支出のうち、教育費が占める割合は八%と、OECD加盟三十六か国で下から三番目となっています。
 このほど、国においても、高校無償化の動きがありましたが、その際には、高所得者優遇、教育が滅ぶ、経済学者の七〇%が反対など、メディア等で否定的な意見も目立ちました。それでもなお、我々は、立憲ビジョン二〇二三で、高校無償化の所得制限撤廃を三本柱の一つに掲げたように、この施策の意義は大きいと考えます。
 本来、教育によって機会の平等が確保され、頑張った者がきちんと報われる、そういった社会を目指すべきであって、むしろ教育によって格差が再生産されてしまうような風潮には、徹底的に抗うべきであると考えます。
 教育の原則無償化は当然であり、さらなる予算の充実で教育の質を高め、親ガチャとも表現される教育格差をなくしていかなければなりません。
 二〇五〇東京戦略に記載されたAIによる都民意見の集約では、二〇五〇年代の教育に関して、多くの人々が教育の無償化や多言語教育の強化を求めているとあります。
 そこで、まず、昨今の動きも含め、教育無償化に関する知事の見解を伺います。

○小池知事 お尋ねの教育についてでございます。
 教育は、子供の健全な育ちを支える基盤でございます。そして、子供が安心して学ぶことができる環境を実現していくことは重要でございます。
 都はこれまでも、教育費の負担軽減をはじめ、子育て世帯への支援の充実強化に取り組んでいるところでございます。

○西崎委員 我々立憲民主党は、社会全体で子供たちの育ちを支えていくことを掲げています。教育も大きなウエートを占めることはいうまでもありません。
 このたびの予算案の概要では、というより定番となっているコラムでは、都民一人当たりの予算が、三十年前との比較で示されています。二〇二五年度予算案では、都民一人当たりの教育と文化は、十万二千四百九十六円、一九九五年度は十万二千百九十九円でした。若干増えてはいるものの、他の増減項目と比べると大幅に増えているとはいいがたい状況です。
 予算案における歳出の目的別内訳では、教育と文化の予算が一兆四千五百五十五億円と示されていますが、ここで伺います。このうち、公立、私立の学校教育等に係る予算額及び一般会計予算に占める割合についてお聞かせください。

○山下財務局長 令和七年度予算における教育と文化のうち、学校教育等に係る歳出を計上いたします教育費及び学務費の合計は一兆三千六百四十九億円、一般会計予算に占める割合は一四・九%となっております。
 なお、平成七年度の教育費及び学務費の合計一兆九百十一億円と比較いたしますと、約二千七百億円増加しておりまして、都内のゼロ歳から十八歳までの子供一人当たりで見ましても、令和七年度予算は約六十九万円、平成七年度と比べまして約十五万円増加しております。

○西崎委員 平成七年度というのは、一九九五年度のことでありますけれども、今のご答弁で、九五年度との比較もお示しをいただきましたけれども、教育費及び学務費の増が約二千七百億円というのは、率にすると約二五%の増加であります。
 一九九五年度の一般会計予算規模は六兆九千七百億円ほどということでありまして、今年、今回の予算案が九兆一千五百八十億円ですから、当時から、一般会計は約三一%増加していることになります。つまり、予算規模全体の増加に、教育費、学務費は、必ずしも追いついているわけではないということもできます。(山下財務局長発言を求む)何でしょう。

○松田副委員長 指しますか。質問しますか。訂正……。

○西崎委員 何も質問していないですよ。よろしいですか。

○松田副委員長 どうします、質問、続行する……。

○西崎委員 質問続けます。

○松田副委員長 どうぞ。

○西崎委員 子供たちが抱える課題は、ますます入り組んだものとなっています。いじめや不登校、多様な学びや居場所、体験格差、言語の課題、インクルーシブや家庭の問題等、個々の事情に合わせ、誰一人取り残さない体制を強化していくことが求められます。
 さらに、社会を見渡せば、予算案でもうたわれているように、不確実性が高まり、複雑化、多様化する中において、子供たちが主体的に学び、考え、判断し、行動する力が今まで以上に求められています。二〇五〇東京戦略でも、新たな教育スタイルなどをビジョンとして打ち出していますが、無償化で終わりではなく、多様で質の高い教育への改革も同時に行わなければならないと考えます。
 イギリスの教育学者マイケル・バーバーが提唱する教育の四十年ギャップ、すなわち、今の子供たちに必要なのは、二十年後を見据えた教育であるにもかかわらず、今、教育を施すのは、二十年前に教育を受けた人間であるという四十年のギャップ、これは、変化が著しく速い現代において、年数は同じでも、さらに大きなものになっているということは容易に想像されますから、こうしたギャップや壁に立ち向かうためには、従来の延長線上にない教育施策が重要であると考えます。
 教育への投資は、未来への投資そのものです。山積する課題を解きほぐし、質の高い教育を実現するために、教育費の思い切った増額が必要であると考えますが、知事の見解を伺います。

○坂本教育長 東京の将来を担う子供たちが、社会や経済の急速な変化に適切に対応する力を習得できるよう、新たな教育のスタイルの導入等の様々な施策を進めることは重要でございます。
 引き続き、誰一人取り残さず、全ての子供が将来への希望を持って、自ら伸び、育つ教育の実現に向けて取り組んでまいります。

○西崎委員 今、教育長にお答えをいただきましたけれども、定められた教育予算の中で、ぜひ奮闘していただくということは期待をしたいと思います。
 しかし、予算編成権者として、ぜひ、知事に教育予算の見解を伺いたいと思います。先ほど、知事は、教育は子供の健全な育ちを支える基盤であるとおっしゃいました。そのとおりだと思います。そして、二問目で明らかになりましたように、三十年前に比べて、教育予算は、財政規模の膨らみなりにしか増えていません。ぜひ、教育予算の増額、これからの社会を見据えて、実施していくべきだと思いますが、知事いかがでしょうか。

○小池知事 先ほど教育長がお答えしておりますけれども、東京の将来を担っていく子供たちが、社会、経済の急速な変化に適切に対応する力を習得できるよう、新たな教育スタイルと、それを導入いたしまして、また、そのほか様々な施策を進めることは重要だと考えております。
 そして、冒頭申し上げましたように、引き続き、誰一人取り残さず、全ての子供が将来の希望を持って、自ら伸び、育つ教育の実現に向けて取り組んでまいります。

○西崎委員 今、お答えをいただきましたように、将来を見据え、子供たちの様々な課題、ぜひ知事のリーダーシップで、これは教育費の増額、ぜひ目指していただきたいということを申し上げておきます。
 ここからは、子供の事故予防、特に学校における事故予防について伺います。
 都の先駆的な理念、すなわち、保護者の見守りだけでは限界がある、変えられるものを変えるという考え方において、このたびの予算案においても、様々な取組が計上されているものと認識しております。
 一方で、この間、国レベルで議論されてきたのが、学校の安全の推進でありまして、教室の窓からの転落やゴールポストの転倒など、学校の施設や設備に由来する事故が繰り返し発生してきたことから、二〇二三年三月には、消費者安全調査委員会が調査報告書を公表し、学校の安全点検の手法改善、担い手の支援などの必要性を指摘しました。
 文部科学省でも、この間、有識者会議を設けて議論を進めてきましたけれども、その最中にも事故は発生しています。例えば、都内でも、二〇二三年の三月には、杉並区立小学校の校庭のくぎによって児童がけがを負い、文科省が全国の学校に点検を要請する事態となりました。さらに、昨年十二月には、足立区立小学校の体育館で、床から剥離した木片が児童に刺さってけがをするという事故があり、その直後、今年の一月にも、都内中学校の体育館で同様の事故、また、宮城県の小学校の体育館でも、床から飛び出たねじで負傷する事故が起こるなど、立て続けに発生しています。
 こうした体育館の施設に起因する事故も、実は繰り返し発生してきたものであり、八年前の二〇一七年、文科省、スポーツ庁から通知が出ておりますけれども、その二年後、二〇一九年二月にも、五日間に二件の事故が立て続けに発生したことを受けて、事務連絡が出されています。
 足立区では、その後、区内の学校を調査したところ、全体の四分の一の体育館で、危険そうな箇所が見つかったということでありますが、まず、都の対応について伺います。都立学校の点検や区市町村の状況確認など、足立区の事故を受けて、都教委はどう対応したんでしょうか、お聞きいたします。

○坂本教育長 都立学校や公立の小中学校では、国の法令に基づき、毎学期一回以上、施設と設備の安全点検を実施しております。
 昨年十二月に、都内の小学校の体育館で、児童に剥離した床板が刺さり、負傷した事故が発生をしたことを受け、この一月、国は、全国の教育委員会等に通知を出したところでございます。その中におきましては、体育館の利用者の安全確保に万全を期すため、学校における維持管理の徹底を図ることを要請しているところでございます。
 これを受けまして、都教育委員会は、都立学校や区市町村教育委員会に対してこの通知を送付し、学校施設の維持管理の徹底を図るよう、既に周知をしているところでございます。

○西崎委員 各校、また教委に周知をしたということですが、文科省の通知が発出されたのが二月七日であります。昨年十二月から一月にかけて、都内で二件、立て続けで同じような事故が発生しています。都教委も報告を受けていると思いますし、都内で迅速に事例を共有できるような体制が必要なのではないでしょうか。
 間もなく公開予定の子供の事故情報データベースの活用も含めて、学校における事故情報を横断的に把握し、すぐに対策を打てる取組を求めておきたいと思います。
 そして、いうまでもなく、事故の事例共有以前に、事故を防ぐことが重要でありますけれども、今回の足立区におきましても、定められた学校施設の点検は実施をされていました。それでも体育館の床の劣化を見つけることはできなかったんです。
 文科省は、昨年三月、初めて学校における安全点検要領を策定しました。床面の点検については、まさに今回発生した事故を想定したようなリスクや、また、点検の視点が写真つきで記載をされており、さらに親切にも、解説動画のユーチューブリンクまで貼られていますけれども、文科省の通知から一か月以上が経過している現在でも、床面の点検方法の動画再生回数は、昨日時点で五百四十三回でした。
 新たに作成された安全点検要領は、本当に生かされているのでしょうか。この安全点検要領がどのように活用されているのか、ここでは直接関わる立場にある都立学校についてお聞きをいたします。

○坂本教育長 国では、学校の安全の推進に関し、有識者会議を開き、点検の在り方について検討を行ったところです。これによりまして、国は、学校現場等において、質の高い実効性のある安全点検を実施するための参考となるよう、学校における安全点検要領を作成をし、ウェブサイトで公表をしたところです。これにあわせまして、昨年三月、要領の活用について、全国の教育長等に通知がございました。
 本通知については、都教育委員会は、都立学校に対して既に周知をしております。各都立学校は、その内容を参考にして、施設と設備の安全点検を適切に実施をしております。

○西崎委員 各学校で適切に実施をされているということを願うばかりでありますけれども、このたびの文科省の有識者会議でも、外部人材等の活用も含めて、様々な取りまとめが出るというふうに聞いております。そうしたものを含めて、教員の、今、現場は大変に逼迫をしているということでありますけれども、そうした業務負担の軽減、さらには、学校の安全点検の実効性を高めるという観点から、取組を進めていただくよう要望いたします。
 続いて、教員不足や現場の逼迫に関連して伺ってまいります。
 教員を目指す若者の減少が重大な課題であることは、昨年十二月の代表質問でも指摘をしておりますが、今日は、ジェンダーの視点から数字を確認しつつ伺ってまいります。
 まず、最も厳しい状況にある小学校教員の採用試験に絞って見ていきますけれども、全国の受験者数のピークは、二〇一一年度実施分で五万九千二百三十名でした。その後は減少の一途をたどっており、比較のしやすさの観点から、少し前の数字で恐縮ですが、二〇一八年度を見ると、四万七千六百六十一名となっており、一万千五百六十九名、七年で約二〇%減少していることが分かります。
 重要なのはここからで、今申し上げたように、ピーク時から、受験者数は一万千五百六十九名の減ですが、そのうち女性の減が実に一万二十六名と大部分を占めているんです。受験者数の減の八七%は女性なんです。受験者数のうち、女性の割合について十年ごとの推移を見てみますと、九八年度は六七・八%、二〇〇八年度、五八・一%、二〇一八年度が五〇・五%となっており、明らかに女性の受験者数の割合が下がってきています。直近では、恐らく五割を切っているでしょう。
 残念ながら、東京都における詳細な数字が確認できていないんですけれども、少なくとも、受験者数全体の減少幅が全国よりも大きいという状況であります。
 そこで伺います。こうした女性の受験者数の減少傾向について、都としてどのように分析しているんでしょうか。

○坂本教育長 都の教員採用選考の受験者の減少の主な理由として、性別を問わず、近年の全国的な大量採用により、既卒受験者の多くが既に教員として採用をされており、そうした層が総体として減少していることが挙げられております。
 国が昨年十二月に公表した令和六年度(令和五年度実施)になりますが、公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイントにおきましては、都道府県や指定都市等の教育委員会が実施をした公立学校教員採用選考試験の実施状況について、既卒の受験者数の減少が大きい旨が掲載されているところでございます。

○西崎委員 性別を問わず、既卒受験者の減少が大きいということですが、やはり男女の差に着目すべきではないでしょうか。
 繰り返しになりますが、七年間で男性が千五百四十三名の減少に対して、女性の受験者数が一万二十六名の減少、どう考えても、この男女の傾向に差があるのは明らかです。
 そして、何で東京都じゃなくて全国の数字で出しているかというと、都は、二〇二〇年度実施の採用試験から、男女別の数を把握しないことになっているからです。つまり、現時点で、どれだけ女性の受験者数が減少しているのか分からないんです。ただ、このことを一概に責めるつもりはありません。多様な性への配慮から、不要な性別欄の廃止を求めるという考え方には賛同いたします。
 一方で、政府の男女共同参画基本計画、ここではジェンダー統計の重要性に言及しており、二〇二二年には、内閣府にジェンダー統計からの性別欄検討ワーキンググループが設置をされ、議論が行われています。中には、性的マイノリティーの当事者を支援する団体の方も入っておりますけれども、その方も、目的や合理性を無視した性別情報の一律の不取得や非開示に対して懸念が表明をされたということが示されておりまして、議論の取りまとめでは、日本の男女間格差の解消に向けて、男女別のデータを確実に取得することが重要であるとの合意が得られています。
 正直に申し上げて、難しい問題であるとは思います。しかし、教員採用試験の受験者数において、明らかに男女の差異が生じてきたことに鑑みると、この取得は意義あるものと思います。
 そこで、教員採用試験における受験者のジェンダー統計の必要性について見解を伺います。

○坂本教育長 教員採用選考における受験者の人権への配慮は重要な視点でございます。
 都の人権尊重条例では、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別の解消や啓発等の推進を図るため、基本計画を定めることを規定をしているところです。
 この計画に基づきまして、都教育委員会は、教員採用選考の申込みに当たり、性別の記載を求めないこととしているところでございます。
 なお、国の内閣府のワーキンググループの取りまとめにおいて、性別欄が存在することで、差別に通ずる困難に直面する人たちの存在を理解し、配慮することも必要である旨の記載がございます。

○西崎委員 配慮が必要と書いてありますが、その資料の上に、大きな赤字で、ジェンダー統計の必要性、強調して書かれています。教員試験の受験者数の減少がほぼ女性の減だというこの事象に対して、現状分析や対策に向けたジェンダー統計が本当に必要ないのか、ぜひご検討いただきたいと思います。
 次に、教職員の男女賃金格差について伺います。
 都教委も、男女の給与の差異の情報を公表しているわけでありますけれども、勤続年数別の差異を見ると、一年から五年は九七%であるものが、年数が長くなるほど、具体的には二十五年の区分まで、段階的に女性の給与の割合が低くなるという有意な相関が見てとれます。
 これについて、どのように分析されているのでしょうか。

○坂本教育長 学校現場の教職員の給与に関し、性別にかかわらず同一の仕組みが適用されるため、制度上男女の差異は生じないことになります。一方で、諸手当の受給状況等によりまして、実際の給与の支給に影響が生じる場合がございます。
 具体的には、扶養手当等について、男性職員の受給額が多くなっております。

○西崎委員 今、扶養手当ぐらいしかお示しになりませんでしたが、本当にそれだけでしょうか。明らかな有意の相関という、これを扶養手当だけで本当に説明をするというのは、普通、無理であるんじゃないかと考えます。
 むしろ、すぐに思い当たるのは、いわゆる管理職の割合であったり、職級の影響ではないでしょうか。例えば、もう事例、細かくいいませんけれども、二〇二三年度、小学校では、校長が男性九百二十五名に対して女性は三百十九名、副校長は八百九十一名に対して四百二十四名、主幹教諭でも男性千七百九十四名で女性九百三十七名、こうした明らかな差があるわけです。これが男女の差異に影響していると考えるのが自然ではないでしょうか。
 女性活躍推進法が男女の給与の差異を公表するということを求めているのは、その実態を見える化し、分析した上で改善を図るということが必要だからではないでしょうか。今の見解ですと、自己分析があまりに軽いのではないかと憂慮します。
 続けて、先生方の精神疾患等の状況について確認します。
 文科省の資料から東京都を抜き出しましたけれども、病気休職者及び一か月以上の病気休暇取得者の出現率、これ男女別に見ると、精神疾患に起因するものも含めて、過去五年間全てで女性の数値が男性を上回っています。すなわち、女性の方が精神疾患も含め、病気休職または一か月以上の病気休暇を取得する傾向が強いということです。
 これをどのように分析するか伺います。

○坂本教育長 国の公立学校教職員の人事行政状況調査は、公立学校の教職員の人事管理に役立てるため、毎年度、都道府県と政令指定都市の教育委員会に調査をした結果となっております。
 この中におきましては、教職員の精神疾患による病気休職の数などを調べ、公表をしております。また、精神疾患による病気休職者の理由に関し、各教育委員会の考え方を取りまとめております。これによるところでは、休職の理由は、仕事や職場の人間関係などが多くなっております。さらに、病気休職者と一か月以上の病気休暇を取得した場合の内訳について、男女別の人数はございますが、理由などは出ておりません。
 心の病は、様々な要因が絡み合って発生するものと考えております。

○西崎委員 ちょっとあまりに人ごとのようなお答えではないかと思います。男女別の理由などは出ていないということでしたけれども、教育長、責任者じゃないですか。むしろ、それを明らかにして、対策を講じていく立場ではないでしょうか。
 教職員が現場で疲弊して休職等を余儀なくされる、これは男女にかかわらず取り組むべき課題でありますけれども、事実として、女性に多く出る傾向にあるわけですから、ジェンダー視点からも対策を検討すべきであるということを申し上げておきたいと思います。
 教職員に関しては最後になりますが、これまで幾つかの角度から、ジェンダー視点に立った課題を抽出し、質疑をしてまいりました。
 そもそも教育現場の負担軽減、働き方改革を進めるべきであることはいうまでもありませんが、特にジェンダーの視点からも、職場環境の分析や改善を行うべきと考えますが、見解を伺います。

○坂本教育長 産休や育業に入る教員について、国では七月末までに産休等を取得する場合、年度当初に代替となる教員、代替教員の採用のできる仕組みとしております。これ以外の場合になりますと、産休等の開始に合わせて代替教員を確保するというルールとなっております。一方で、都教育委員会では、年間を通じ産休等に入る最大四か月前から代替教員を採用できる制度を導入しているところでございます。
 また、男性の教員の育業を後押しするため、育児に役立つ制度や情報をまとめたガイドブックを公立学校に配布をしております。そうした冊子を活用し、校長や副校長が男性の教員に面談を行い、計画的に育業を行うよう働きかけをしております。

○西崎委員 産休、育休の取得推進の方が大事だと思いますけれども、これまでの議論を振り返ると、都教育委員会には、ジェンダー視点からの問題意識がほとんどないというふうに感じます。
 女性の受験者数が減少していることは、そもそも把握しておらず、ジェンダー統計の必要性も認識していない。男女の給与の差異についての深い分析はなく、休職や病気休暇の出現率も女性が高く出ているという事実を直視しない。これでは女性の教員志望が減るのは無理ないんじゃないですか。
 しつこいようですが、教員試験の受験者数の減少は、ほとんどが女性の減です。背景の一つには、以前に比べて、民間企業における女性活躍の取組が充実し、流れていっているということも推測されますけれども、裏を返せば、教職が女性に選ばれなくなっている、民間に敗北しているということです。
 坂本教育長、産業労働局長時代に、都内企業や労働者に対してすばらしい支援、届けてこられたじゃないですか。それを今度は教育委員会で実践するべきじゃないですか。
 こうした取組は、最後は子供たちによりよい教育環境を用意するということにほかなりませんから、ぜひ総点検していただくことを要望し、次の質問に移ります。
 ここからは、教育現場にとどまらず、広く社会の働き方改革に関して伺います。
 ノーベル経済学賞を受賞したことでも注目をされたチャイルドペナルティー、すなわち、子供を授かった後に生じる所得の低下、特に男女間の賃金格差、現在注目を受けているところでありますけれども、先月の五日には、日本の研究グループが、国内の大手製造業の人事データから、日本の課題を解き明かす結果を公表しました。
 これによれば、女性が出産や育休、時短勤務などから通常勤務に戻った後にも、子育て期の労働時間の制約によって昇進機会が制限されるため、それが役職手当の差となって男女の格差につながり、第一子の誕生後十年間で、男性の賃金は八%上昇する一方、女性の賃金は四六%も下落するという結果が見られました。
 さらに、役職のない一般社員の評価には、年間総労働時間の多寡が強く影響するにもかかわらず、管理職ではその相関関係がないこと、すなわち、一般社員は、不合理に労働時間によって評価されていることが示唆されており、この評価基準を見直すことが、男女賃金格差の解消、女性が活躍しやすい職場づくり、さらには企業の生産性向上性にも寄与する可能性があると指摘をしています。
 そこでお聞きしますが、こうした研究結果に鑑みると、都内企業の賃金制度や評価基準の見直しを促すような支援が必要であると考えますが、見解を伺います。

○田中産業労働局長 都は、働き方改革に関する普及イベントなどにおきまして、長時間労働の是正や労働生産性を重視する人事評価制度への見直しに取り組む企業の事例紹介を行っております。
 また、持続的な賃上げを目指す企業に対し、そのノウハウを伝えるセミナーにおきましても、課題に応じた人事制度のつくり方を示しており、来年度は、相談窓口を設けることとしております。

○西崎委員 もとより賃金体系や評価基準というのは、企業ごとの判断ではありますけれども、ぜひ、そうした促進ということについて取り組んでいただきたいと思います。
 現在、ワーク・ライフ・バランス、都でいうライフ・ワーク・バランスですが、予算案でも多岐にわたる取組が行われているということは承知をしておりますけれども、一方で、特にコロナ禍を経て、テレワークや在宅ワークの普及、デジタル化の加速、さらには副業の推進等も相まって、仕事とプライベートを対立的な概念として捉えることに限界が近づいてきているように感じます。
 この中で注目をされ始めたのが、ワーク・ライフ・インテグレーション、すなわち仕事と生活の統合という考え方です。
 その読書は仕事なのかプライベートなのか。育児や介護に振り向けた時間や経験は仕事にも生きるのではないか。趣味のサークル活動がアイデア創出につながったり、社内ベンチャーに発展することもあるのではないか。こうした観点、現に、労働者を対象としたある民間調査では、仕事と私生活の充実に関係性があると七〇%が回答しています。
 企業にとっても、多様な働き方、キャリア形成などに加え、従業員のプライベートも支援するなどの取組により、従業員のエンゲージメントを高め、生産性を向上させ、ウエルビーイングを達成することは望ましいといえます。
 そこで、これまでの歩みをさらに一歩進め、ワーク・ライフ・インテグレーションという考え方の下、企業、労働者の双方を支援する取組を強化することを提案をいたしますが、見解を伺います。

○田中産業労働局長 都は、残業が少ない働き方の実現に積極的に取り組み、一定の成果を上げた場合に、登録企業として幅広く紹介するなど、仕事と生活を両立しやすい職場環境づくりを促進しております。
 来年度は、週休三日制など働き方の自由度を高める取組などを行う企業に対し奨励金を支給するとともに、従業員が時間や場所を自ら選び、業務効率を最適化するオフィス環境の整備への支援も開始することとしてございます。
 都といたしましては、ライフ・ワーク・バランスの実現に向けた様々な働き方改革を進めてまいります。

○西崎委員 現在でも方向性は遠からずと思いますので、ぜひ、さらなる発展を期待したいと思います。
 さて、ここからは我々が非常に重視をしている住宅政策について伺ってまいります。
 本日も様々な議論がありました。東京都が住めないまちになりつつあるという懸念、これまでも示してきたとおりであります。かねてから要望している家賃補助についても、課題をあげつらうばかりで、先に進まないということは大変残念に思います。
 さて、予算案のうち、金融スキームを活用したアフォーダブル住宅の供給促進について、今日も様々議論ありましたけれども、さきの代表質問でも、一体どれぐらいの水準の住宅がどれほど供給されるのかは、全く示されていません。
 ファンドを通じた事業は、成果が見えづらいという、こういった特徴もあります。今回、スタ・国、そして産労局から、分野を問わず、過去の成果を事前にお聞きしましたけれども、確かに成長した企業があって、社会的意義のある事業が行われているということは分かるんですけれども、出資額が少し増えて返ってきた以上のことは、なかなか判断しづらいというのが率直な感想です。
 しかし、今回は、アフォーダブル住宅の供給という明確なゴールがあります。これまでのファンド事業に比べて、定量的な評価がしやすいように思いますが、この事業の経過及び実施後の成果は、どのように公表、検証するのか伺います。

○吉村スタートアップ・国際金融都市戦略室長 都が来年度立ち上げます新たなファンドでございますが、アフォーダブル住宅の供給に先導的に取り組もうとする事業者を支援することで、民間での供給を促進するものでございます。
 ファンドの運営状況につきましては、ファンド組成の際の運営事業者の募集、決定、出資等のタイミングでその概要を、ファンドの清算の際に結果の概要等をそれぞれ公表いたしますほか、住宅供給等の状況につきましても、守秘義務等に配慮しつつ、適時適切に公表することとしております。
 また、こうしたファンドの運営状況等を共有し、民間主体での供給機運の醸成につなげていくことで、子育て世帯等が住みやすい環境の形成に取り組んでいくこととしております。

○西崎委員 守秘義務という留意事項はあるにせよ、住宅供給等の状況も公表するよう意図しているということでありますので、できる限りご報告をいただき、成果を見える化していただきたいと思います。また、優れた事業スキーム等があったのならば、それを横展開で支援、促進に移行するなど、柔軟かつ機動的な対応も要望しておきます。
 一方で、これまでのファンド事業でも、これも先ほども議論ありました、時間がかかるという課題があります。
 二〇五〇東京戦略でも、この住宅供給は、二〇三五年に向けた政策の方向性として位置づけられており、やはり、今まさに住宅問題にあえいでいる方々に届けるのは、なかなか難しいという課題がございます。よって、より直接的な都の支援が求められてくるわけでございます。
 そこで、ここからは幾つかの切り口から、住宅問題の解消に向けた議論を行ってまいります。
 まず、賃貸住宅の断熱・再エネ集中促進事業について伺います。
 既存の賃貸住宅の断熱改修を大きく進めていくための取組ですが、予算案の概要では、オーナーと入居者の双方にメリットが感じられる取組とあります。
 ここでいわれている入居者のメリットとは何なんでしょうか、伺います。

○須藤環境局長 環境性能の高い住宅への改修は、一般的に居住者にとって、ヒートショックの抑制などの健康効果、光熱費削減による経済的メリットなどがございます。

○西崎委員 健康効果があるということは分かるんですけれども、それを決め手として賃貸物件を選ぶ入居者というのはどれほどいるのかなと、若干思うわけでございます。ましてや昨今の状況でありますから、どうしても家賃が決め手になるということもあろうかと思います。
 また、光熱費削減も、部屋の規模等にもよりますけれども、せいぜい年間で数万円としたとしても、改修費用を少し家賃に乗せられたらもう飛んでしまうわけでございます。オーナーに対する十分の十の省エネ診断、三分の二の改修費補助、これは手厚いと思いますけれども、残りの部分が家賃に跳ね返る可能性は大いにあると思います。
 そこでお聞きしますが、入居者に対しても、何らかインセンティブを付与できないでしょうか。今年の四月からは断熱等級四、二〇三〇年には五が義務化されますけれども、例えばその上の六など、一定以上の性能を持つ賃貸住宅において、入居者側への奨励金支給などのインセンティブを高めることで、環境性能の高い賃貸住宅の促進を図るべきと考えますが、見解を伺います。

○須藤環境局長 環境性能の高い賃貸住宅では、改修費用を家主が負担するため、改修が進みにくくなっております。
 そのため、都は、省エネ性能診断や改修の助成に加え、家主の伴走型支援などにより、家主を支援する取組を強化してまいります。

○西崎委員 オーナーに対する支援は全く否定はいたしませんし、都の補助を活用して改修が進むということは期待をいたしますけれども、これに伴って家賃が上がるということがあれば、やはり断熱化の壁になってしまう可能性もあるかと思います。
 もし入居者への支援も併せて実施できれば、賃貸住宅の断熱改修は進む、都民の居住支援にもなる、社会全体の脱炭素化は加速するといった、まさに三方よしの施策展開になるのではないかと思います。省エネ、再エネ化の推進、これは異論はありませんので、事業の進捗を確認しながら、さらなる対策を検討いただくよう求めておきます。
 次に、都市計画税について伺います。
 都は一九八八年から、独自に小規模住宅用地への都市計画税二分の一軽減を行っていますが、この目的及び税収への影響額について伺います。

○武田主税局長 小規模住宅用地に係る都市計画税を二分の一とする軽減措置は、二十三区の固定資産評価額が全国と比較して極めて高い水準になっていることなどから、都民の税負担を緩和するため実施しているものでございます。
 令和七年度当初予算における都税収入への影響額は、約四百九億円を見込んでおります。
 なお、本軽減措置は、都議会をはじめ、多くの区議会や様々な団体からの継続を求める声が届いていることなども踏まえまして、令和七年度も継続することとしたものでございます。

○西崎委員 今のお答えでは明言されておりませんでしたけれども、もともとは都民の定住確保という目的もあったかのように思います。都税収への影響が四百九億円ということですが、こうした物価が上昇、そして物件価格も上がるという中、本措置の意義は大きいものと認識をしております。
 今おっしゃっていただいたように、我々も全会一致の意見書を受けて要望しているものでありますが、一方で、近年の物件価格の上昇要因の一つである投資目的で保有されているような物件にもひとしく軽減が実施をされてしまうという弱点もあるわけでございます。
 そこで、その一つの対策となり得るのが、空き家税でないかと思います。
 京都市では、二〇二二年三月に、非居住住宅利活用促進税条例が成立をし、一年後には総務大臣の同意も得たことから、二〇二九年度には、非居住住宅の所有者を対象とした非居住住宅活用促進税、いわゆる空き家税を課すことになっています。
 このことを知らせる京都市のホームページを拝見すると、手頃な住宅を求めて若年、子育て層が近隣都市などに流出しており、都市の持続性を脅かす最重要課題の一つとなっています。空き家や別荘、セカンドハウスなどの非居住住宅の存在は、防災、防犯や生活環境に多くの問題を生じさせ、地域コミュニティの活力を低下させる原因の一つになっていますと説明されています。
 まさに、東京都も似たような状況に置かれていないでしょうか。もちろん、都の実情に応じた様々な制度研究は必要かと思いますけれども、空き家の流通や利活用によって住宅供給を促進する、さらには、その税収を住宅政策に振り向けていくということは、一考に値すると考えます。
 そこでお聞きをいたします。京都市の非居住住宅利活用促進税のように、空き家に課税するような仕組みを検討すべきと考えますが、見解を伺います。

○武田主税局長 特定の対象に追加の税負担を求めることは、税の公平性、社会経済や区市町村に与える影響、実務上の課題など、様々な観点から慎重に検討することが必要でございます。
 なお、空き家への税制上の措置としては、適切な管理が行われていない一定の空き家に対して、土地の固定資産税額が三から四倍程度になる措置を講じております。

○西崎委員 これは一足飛びに導入できるというようなものではないことは承知しておりますが、都の住宅問題を少しでも改善させる可能性として、ぜひご注目をいただきたいと思っております。
 そして、今おっしゃっていただいた空き家に関してでありますけれども、特措法の改正、新設された管理不全空き家として勧告を受けると、固定資産税、都市計画税の住宅用地の特例から除外をされるということでございます。
 ただ、二十三区においては、現場の確認や勧告などは特別区が実施をすることになっている一方、特例除外による税収増は東京都に入ってくることになります。固定資産税はめぐりめぐって特別区に返ってくるという解釈もできなくはないですが、都区財調にも様々な議論があるという事情に鑑みると、特別区にとって税収面からのインセンティブは働きづらいのではないかと思います。
 もちろん、空き家対策は、環境や景観の維持、コミュニティ活性化など様々な側面がありますけれども、都内各地域の取組が着実に進められるよう、自治体の管理不全空き家対策への支援策の拡充が必要であると考えますが、見解を伺います。

○小笠原住宅政策本部長 都は、令和五年十二月十三日に施行された空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律で創設された管理不全空き家等に関する制度の活用を区市町村が進めることができるよう、今年度から取組を拡充しております。
 具体的には、管理不全空き家等の実態を把握するための調査や空き家等対策計画の作成などへの財政支援について、補助率の引上げなどを行っております。また、都内の全区市町村が参加する協議会を通じて、管理不全空き家等の判断基準に関するノウハウの向上を図るなど、技術的支援にも取り組んでおります。

○西崎委員 まだ改正特措法からそれほど時間がたっていない、これから対策も本格化をしていくということと思いますけれども、空き家の利活用や流通を促すという、そういう側面があろうかと思いますので、そうした支援をさらに強めていただくということをお願いしておきたいと思います。
 住宅政策に関連する最後に、改めてアフォーダブル住宅について伺います。
 バブル経済の頃、土地価格が高騰して人口の流出に苦しんでいた都心区では、一定規模以上の開発事業者に対して、住宅附置義務を課すなど様々な取組を行ってきました。
 現在も、例えば港区では、延べ面積が三千平方メートル以上の開発事業者に、その一〇%をサービス付高齢者住宅などの良質な住宅を附置するよう義務づけていますし、中央区のように、一定規模以上の開発事業者に開発協力金を課すことで、従前居住者への家賃補助等の支援に充てているという事例もあります。
 そもそもアフォーダブル住宅は、欧米諸国などにおいて、都市計画や開発許可、税制などを通じて政策誘導を行い、低廉な住宅を供給するという概念が一般的です。
 そこで、私は、国内外の事例を参考に、幅広い都民に対して、手頃な家賃の住宅を供給する東京都版アフォーダブル住宅附置義務制度を提案いたします。
 例えば、都内における一定規模以上の開発事業者に対しては、開発協力金の提供をはじめ、既存住宅の活用を含めたアフォーダブル住宅供給の義務づけを検討すべきです。これこそが、都がより直接的に関与すべき住宅政策の本丸といえるのではないでしょうか。
 こうしたまちづくりの制度を活用したアフォーダブル住宅の供給について、見解を伺います。

○谷崎東京都技監 子育て世帯などが手頃な価格で安心して住むことができるアフォーダブル住宅の供給が求められております。
 都といたしましては、開発に合わせたアフォーダブル住宅の導入に向けた促進策についても検討することとしております。

○西崎委員 大きな方向性としては、何らかの取組を進めていくということを想定しているんではないかと思います。
 目下の住宅事情は大変厳しい状況で、繰り返し、本日も指摘があったところでございます。一刻も早く、即効性、実効性の高い施策を展開していただく、我々の提案もぜひ検討いただきたいということを求めておきます。
 ここまで、都による直接的な取組に関連して、環境性能の高い住宅への入居支援、空き家対策の強化を通じた利活用や流通の促進、さらには、まちづくり制度としての低廉な住宅供給などを求めてまいりました。もちろん、かねてから訴えている家賃補助の制度も必要であるということは申し添えておきます。
 また、本日は質問しませんでしたけれども、ライフステージの変化などに伴って、手に余る住宅にお住まいの方の住み替え支援なども考えられますし、昨年、我が会派の議員から提案をさせていただいた非居住外国人や外国法人の投資規制なども検討すべきです。
 あらゆる施策を通じて、住宅問題を解消し、都民が住めるまちを取り戻すことが極めて重要であると改めて訴え、次の質問に移ります。
 最後に、救急体制について少し伺ってまいります。
 救急搬送、通報から現場到着までの到着時間、これにつきましては、なかなか課題があり、当然にこれは短縮、短くするということが求められながらも、様々な課題を抱えているところでございます。
 こうした中で、本日、逼迫する救急要請に対し、救急車の適正利用ということを進めていく観点から、シャープ七一一九の周知徹底はもちろん必要でありますが、さらに、一一九番通報時のトリアージの検討を提案したいと思うんです。
 東京消防庁は、二〇〇七年から、通報を受けて出動した救急現場で、明らかに緊急性が認められない方に対して、ご自身で医療機関の受診をお願いする救急搬送トリアージを実施しておりますけれども、これを一一九番通報時にも行えないでしょうか。
 既に東京消防庁は、不要不急の一一九番通報は、最後まで話を聞かずにガチャ切りする運用を実際しておりますけれども、状況によってはシャープ七一一九に転送するなどして、緊急性が高い人への救急車の出動を優先することが重要と考えますが、見解を伺います。

○吉田消防総監 東京消防庁では、一一九番通報で救急要請を受けた際には、原則として、直ちに救急隊を出動させ対応しておりますが、症状の相談や救急車を呼ぶか迷っているといった通報内容の場合には、救急相談センター、シャープ七一一九への転送を行っております。
 また、明らかに消防業務とは無関係な内容である場合には、電話を途中で切断する対応も取っております。
 なお、通報内容から緊急性が高いと判断した場合には、救急車に加え、近くのポンプ車も同時に出場をさせております。
 今後も、一一九番通報の内容に応じた適切な対応を行ってまいります。

○西崎委員 現在も、通報内容によってはシャープ七一一九へ転送するという運用も取られているということでありますけれども、こうした取組も重ねながら、必要な方の下へ迅速に出動できる体制を模索していただきたいと思います。
 最後に、救急といいますか、応急手当て、特にAEDの使用について伺います。
 万が一、誰かが心肺停止になった際には、その場に居合わせたバイスタンダーが応急手当てを行うことで命が助かる、または社会復帰の可能性が高まるということが期待をされます。
 私自身、消防団活動を通じて応急手当指導員の資格を持っておりますけれども、いわゆる善きサマリア人の法、命を救うための善意の行動が罪に問われることがないということは、とにかくためらわずに行動を起こしていただくという観点から、救命講習などでも教わる極めて重要な考え方です。
 しかしながら、最近、AEDを使って女性を助けたところ、強制わいせつで訴えられたというSNS投稿を取り上げたネット番組が話題となり、大きな議論を呼びました。結果的には、真偽の裏づけが困難として、番組自体が謝罪の上、取り下げられましたけれども、命にも関わる悪質なデマであると、私も憤りを持って受け止めています。
 一方で、京都大学が行った調査によると、心肺停止になった子供へのAEDパッドの装着について、小中学生ではあまり差がないものの、高校生になると大きな男女差が出ていることが示されています。この研究チームは、倒れた女子高生に対して、肌に触れる、素肌を露出させることへの抵抗感が出た結果であると分析をしています。根拠のないデマは言語道断ですが、事実として、こうしたちゅうちょがあることが明らかとなっています。
 AEDの使用は、一分遅れるごとに救命率が一〇%ずつ下がるといわれており、こうした誤解やデマ、また、都民の意識にあるちゅうちょなども念頭に、AEDの使用方法を学ぶ機会を拡大していくべきと考えますが、見解を伺います。

○吉田消防総監 傷病者の救命率向上のためには、バイスタンダーがAEDを適切に活用することが重要でございます。
 このことから、東京消防庁では、AEDの操作方法を含む各種救命講習の受講を促進しており、日中に受講することが難しい方でも受講できるよう夜間の講習を開催するとともに、eラーニングを活用して、会場での講習時間を短くすることで受講者の負担を軽減するなど、より多くの都民が受講できるように取り組んでおります。
   〔松田副委員長退席、委員長着席〕

○西崎委員 最後に、私は、こうした応急手当ての普及や理解を促進するための条例制定を提案したいと思います。
 千葉県では、実際に、そうしたAEDの使用を促進する条例、これを議員提案で制定をしております。立法事実は、実際にAEDの装着率に差があるということから明らかです。
 ぜひ、こうした命に関わる話でありますから、この普及促進を図っていく、そうしたルールづくりを我々も検討してまいりたいと思っております。
 このことを最後に申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○川松委員長 西崎つばさ理事の発言は終わりました。
 以上で本日予定しておりました質疑は全て終了いたしました。
 なお、明日は午後一時から委員会を本委員会室で開会いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後九時十三分散会