予算特別委員会速記録第四号〔速報版〕

   午後五時五十五分開議

○菅原副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 龍円あいり委員の発言を許します。

○龍円委員 私は、誰もが自分らしく輝きながら、参加しているという実感が持て、居場所がある社会、インクルーシブな社会の実現を目指しております。その実現には、教育におけるインクルーシブな環境の推進が最も重要だと考えております。
 二〇〇六年に国連で採択された障害者権利条約には、その内容をより細かく解説したハンドブックというものがありますが、そこに、インクルーシブな教育がなぜ重要なのかというのが記されているので、一部ご紹介させていただきます。
 インクルーシブ教育が、知的障害のある子供たちも含めた最良の教育環境を提供するだけではなく、障壁を打ち破り、ステレオタイプの打破にも挑戦するのに役立ちます。このアプローチは、障害があることについて恐れるのではなく、障害があることを容易に受け入れ、抱き留める社会をつくり出すのに役立ちます。障害のある子供とない子供が一緒に成長し、同じ学校で隣り合って学ぶと、お互いに対する、より深い理解と尊敬が育ちますと書いてあります。
 日本はこの条約を二〇一四年に批准していますが、二〇二二年には、日本における条約の取組について、国連の障害者権利委員会からの総括所見が示されました。その中で、障害のある子たちが分離された環境で教育を受けていることに強い懸念が示されまして、インクルーシブな教育へとシフトしていくべきだとの勧告が出されたところであります。
 そこで、日本の現状を見ていきたいと思います。
 こちらは文科省の資料なんですけれども、平成二十二年から令和二年までの十一年間の障害種別ごとの特別支援学校に在籍する子の数の推移となっております。
 ほかの障害種別が横ばいであるのに対しまして、オレンジ色で示されている知的障害のある子供たちの数が増えています。一番下に小さく特別支援学校の数も出ているんですけれども、千三十九校から千百四十九校と、百十校が新設されています。
 そして、こちらは文科省の令和五年の学校基本調査です。小中学校の児童生徒の数は過去最少になったのに対して、特別支援学校は前年に比べて二千七百人増加して、十五万千人と過去最多になったということであります。
 これを総合して見てみますと、これまでは地域の小中学校で学んでいたような知的障害のあるお子さんたちが、より特別支援学校で学ぶようになっていて、そのトレンドが途切れることなく進んでいるということが見えてまいります。
 東京都の現状を見てみますと、インクルーシブな教育環境の推進に関する調査、そして研究、実践的な研究を着実に進めてくれているというふうに認識しております。
 しかし、現状としては、特別支援学校の対象になる五つの障害種別のある子供の約三五%が特別支援学校で、そして約五五%が特別支援学級で学んでおりますので、つまり九割のお子さんが分離した環境で学んでいるということになります。
 特別支援学校への就学についても増え続けていることから、令和元年の計画では、特別支援学校を十一校新設して、八校の増改築の計画が示されておりました。
 特別支援学校は、うちの息子も通っているんですけれども、非常に優れた教育をしていて、それを否定するものではございません。ただ、現状ではこのような分離した場所における教育というのが主流になっている中で、よりインクルーシブな教育環境を進めていくために何ができるのか、何をするべきなのかということを考えていく必要があります。
 そこで、日本においては分離をしていくという方向に川が流れている状況なんですけれども、その川の流れを反対にしようというのは非常に難しいというのが現実です。何か一つのスイッチを押せば、インクルーシブな教育が進むということではなくて、複合的かつかなり長期にわたった取組が求められています。
 その中でも、まず初めに取り組んでいくべきと私が考えている三つがこちらになっております。
 一つ目は、区市町村の小中学校で学ぶということを選べるようになるということであります。
 現在、障害のある子が就学先を決定する際には、本人、保護者の意見を最大限尊重するということになっているんですけれども、実際は選べるという環境にはまだなっていないといわざるを得ません。
 その最大の要因は、区市町村の小中学校では、特別なニーズのある児童生徒を受け入れる体制が十分には整っていないということがあると思います。その体制が十分に整えられない背景には、予算的な構造があるということをこれまでも申し上げてまいりました。
 特別支援学校の教育費というのは一人当たり約七百五十万円ということなんですが、区市町村は、ここにお子さんが行くと予算的な負担がありません。一方で、特別支援学校相当のお子さんが地元の小中学校で学ぼうとすると、その教育費の差額、約六百万円相当の合理的配慮や支援員の予算を区市町村が負担するという必要があります。ただ、実際には、この差額相当を区市町村が負担するのは難しいかと思います。
 なお、子供の就学先を決定するのは、東京都ではなくて、区市町村の教育委員会であることから、教育的な観点とは別に、予算上の理由でも、特別支援学校へと障害のある子供を押し出す見えない力があるというふうにお話ししてまいりました。
 私は、障害のあるお子さんと保護者が地域の小中学校で学びたいという意思があっても、それを選ぶことがなかなか可能とならないのは、こういった予算的な背景がボトルネックになっていると考えております。
 去年の第四回定例本会議の一般質問で、教育長から、都教委は、支援員の活用等によるインクルーシブな教育をより一層推進するため、区市町村への新たな支援策を検討するとの答弁をいただきました。来年度の具体的な取組内容についてお伺いいたします。

○浜教育長 都教育委員会は、来年度、新たに、特別支援学校への就学が適当と判定された児童生徒が身近な公立小中学校で学ぶことを希望する場合について、インクルーシブ教育支援員として区市町村が支援員を配置するための経費を支援してまいります。
 具体的には、該当児童生徒が一名または二名の小中学校には支援員一名分まで、三名以上の場合には二名分までの人件費について、二分の一を補助いたします。

○龍円委員 インクルーシブ教育支援員制度の創設を受けて、私のところには既に複数の保護者から、来年度は毎日支援員がつくことになったという声が届いております。これまで自費で支援員に約月十数万円払っていたという親御さんは、その負担がなくなるということで、学校に通えることについて喜んでおりました。
 また、来年度、地元の学校に就学を希望していた親からは、支援員が週五日つくことになって、学校長からの入学の許可が出たということであります。こういう喜びの声を聞きながら、本当に涙が出るほどうれしく思います。
 今回の支援策は、障害のある子供たちが地元の学校で学ぶことを選択できる一歩になるというふうに確信しております。
 次に、取り組むべき二つ目の項目なんですけれども、全ての学びの場においてインクルーシブな環境が得られるということであります。
 インクルーシブ教育は万人のための教育というふうにいわれていて、全てのお子さんが対象となっている教育でございます。特別支援学校や特別支援学級に在籍している児童生徒であっても、日常的なインクルーシブな教育環境が保障されるようになる必要があります。
 都教委では、特別支援学級におけるインクルーシブな教育を推進させるために、これまでに支援級のある全ての学校を対象とした調査をしております。
 それによりますと、運動会とか学芸会といった年数回程度のイベントのことで交流をしているのが主流ということで、日常的な交流や共同学習が行われているのは少ないという実態が見えてまいりました。
 都では、より日常的で計画的な交流と共同学習をするために、豊島区などで実践的な研究をしてまいりました。これらの成果を生かして、今後、日常的な交流や共同学習が可能となる取組を推進していただきたいというふうに考えております。
 都教育委員会はこれまで、特別支援学級と通常の学級の子供たちが共に学ぶ、交流及び共同学習の充実に向けて取り組んできましたが、今後の取組についてお伺いいたします。

○浜教育長 都教育委員会では今年度、より多くの学校で交流及び共同学習が実施されるよう、中学校の知的障害学級や小中学校の自閉症・情緒障害学級での事例の収集や取組の検証を行っており、来年度、その成果を取りまとめて普及を図っていきます。
 また、来年度は、特別支援学級の児童生徒が交流及び共同学習として通常の学級で学ぶ際の支援員についても、インクルーシブ教育支援員として新たに補助対象とし、小中学校での交流及び共同学習を一層推進してまいります。

○龍円委員 特別支援学級の児童生徒が通常の学級で交流や共同学習する際にも、インクルーシブ教育支援員が活用できるということが新たに分かりました。
 特別支援学級の児童生徒が誰の支援も得ずに、一人で通常の学級に出向いていって、そこで慣れない環境で、慣れない先生と、慣れない通常学級の児童生徒たちと一緒に交流と共同学習をするというのは、非常に難しい面がありました。しかし、これまではこの交流とか共同学習のための人的な支援がありませんでした。
 しかし、このインクルーシブ教育支援員を活用すれば、日常的な交流、共同学習が可能となるはずです。ぜひ多くの支援学級の児童生徒に利用していただきたいと思っております。
 さて、インクルーシブ教育支援員が効果的に力を発揮していただくためには、その支援員がインクルーシブな教育について理解して、どうしたら障害のある子がほかの児童生徒と一緒に学ぶことができるのかという支援の方法を知っていることも重要であります。
 というのも、支援者が支援をする対象の子だけを見て支援をしてしまうと、授業とは全く別のことを一人だけしていたりとか、同級生とその子の間に支援者が入ってしまって、インクルーシブな交流が生まれにくくなってしまうというケースがあるからです。
 インクルーシブ教育支援員の質の確保についても都教委として取り組むべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。

○浜教育長 支援員の質の確保につきましては、児童生徒を円滑に支援できるよう区市町村において必要な研修を実施しています。
 こうした支援員の研修用に、都教育委員会は来年度、特別な支援が必要な児童生徒の特性等の基礎的な知識や、教員との連携等について取り上げた動画を作成いたします。
 これを区市町村に提供して活用を促すことにより、支援員の質の確保に取り組んでまいります。

○龍円委員 支援員の質を確保するために区市町村における研修をして、支援員が学べる動画などを作成するということです。きめ細やかな制度設計に感謝いたします。
 全ての学びの場でのインクルーシブな環境の確保ということで、特別支援学校での副籍交流についてもお伺いしたいところなんですけれども、時間の都合上、これは明日の文教委員会にて質問させていただきたいと思います。
 さて、三つ目なんですけれども、地域の小中学校における特別支援教育力を向上させていく取組も重要であります。
 これは、いうのは簡単なんですけれども、実際に実現するのは非常にハードルが高いポイントとなっております。
 私のダウン症のある息子を地域の学校の通常の学級に三年半、通わせていただいたんですけれども、その中で教員の皆様の様子を拝見しますと、本当に頑張ってくださっているんですけれども、なかなかこの教育をするということに自信を持って取り組むのが難しいんだなというのをうかがい知ることができました。
 ですので、こういった教員の方々の特別支援教育力の向上というのが絶対に必要だというふうに実感しているところであります。
 特別支援学校への就学が適当と判定された子供たちを小中学校で受け入れるのであれば、様々な観点から総合的に環境を整備して、インクルーシブな教育を推進することが必要だと考えますが、都教委の見解をお伺いいたします。

○浜教育長 都教育委員会は来年度、特別支援学校への就学が適当と判定された児童生徒が身近な小中学校で学ぶことを希望した場合に、支援員に係る経費を補助するほか、重点地区に指定した区市町村については、指導体制を総合的に支援してまいります。
 具体的には、児童生徒の特性に応じた教材、教具等の購入や、教員研修のための費用を支援するとともに、特別支援学校のより専門性の高い教員について、人事交流による当該地区指定校への配置を調整するなど、インクルーシブ教育システムの体制整備に取り組んでまいります。

○龍円委員 インクルーシブな教育の重点地区を指定して、総合的な支援を行っていくということが分かりました。
 この特別支援学校の教員と地域の学校の教員の人事交流を計画的にするというのは、本当に念願でありました。特別支援学校の教員が地域の学校に来ることで、その学校にいる特別なニーズのある児童生徒へ、より効果的な教育ですとか支援をすることが可能になりますし、それはその学校のほかの教員も学ぶことができます。
 また、地域から特別支援学校に行った教員は、様々な障害のあるお子さんへの教育や支援方法について経験を積みますので、地域に戻った後は、特別支援学校判定のお子さんがクラスに来たとしても、大丈夫と自信を持って受け入れることができるはずです。
 特別な教材を用意する費用についても支援し、地域における教員のスキルアップのための研修費用も負担するということでありました。こういった総合的な取組で、インクルーシブな教育を担える地域の教育環境が築かれていくことに期待が高まります。
 今日の質疑で、都教委が本気でインクルーシブな教育環境を推進しようとしてくれていることが伝わってまいりました。
 二〇二四年は、東京のインクルーシブ教育元年になったと後でいわれるような年になるのではないかというふうに期待しております。どうぞ、しっかりした取組をお願いいたします。
 さて、私が生まれ育ちましたスウェーデンでは、子供、若者、ユースが実際に困ったときに、悩んだときに頼れるユースクリニックがあります。スウェーデン全土に約二百五十か所ありまして、十三歳から二十代前半のユースが無償で気軽に安心して相談できる公的な機関であります。
 助産師、看護師、心理士、ソーシャルワーカー、産婦人科医が常駐していて、体や性のこと、学校や家庭の悩み、アルコール、DV、自傷、摂食障害など、ユースが抱えやすい様々なことへの相談支援が行われています。
 性的マイノリティーに関する専門的な職員もいらっしゃることで、性自認や性的指向に関する相談も可能です。生理用品や避妊具の提供のほか、医療機関なので緊急避妊薬の提供、感染症や妊娠の検査、治療をしています。
 ユースクリニックは、学校の性教育の一環で紹介されますので、困ったらユースクリニックというふうにユースに幅広く知られていまして、ユースにとってはセーフティーネットになっています。
 東京では、スウェーデンのユースクリニックも参考にした東京ユースヘルスケア事業、わかさぽが立ち上がったことを大変評価しております。看護師や助産師などの専門性のある相談支援員がユースの相談を適切に行えるよう、研修を受けて配置されています。
 去年十一月には、常設の相談会場が開設されたことによって、より相談しやすい環境になりました。待合室はこんな感じなんですけれども、リラックスできる雰囲気で、ユースがお茶とかお菓子を食べながら様々な情報にアクセスができ、一方で、相談ブースではプライバシーへの配慮がされています。
 私たちは、スウェーデンのユースクリニックのように、わかさぽでも、困っているユースについて、その解消につながる支援をしていただきたいというふうに要望をしてまいりました。
 本会議の代表質問では、今後、緊急避妊薬を必要としている場合は、医療機関への同行支援をするという答弁がありました。大切な一歩を踏み出そうとしていることを評価いたします。
 そこで、わかさぽにおける具体的な支援についてお伺いしてまいります。
 相談に訪れるユースの中には、性感染症の可能性がある方もいると思います。東京都感染症センターによると、若い世代の梅毒感染が増加していて、二〇二三年は十代でも百十五件の感染があったそうです。
 性感染症については、親や学校に相談することはハードルが高く、かといって自身で検査に行くことも難しいことから、わかさぽにおいての支援が求められます。
 わかさぽにおいて、性感染症の不安がある相談者にはどのような支援を行うのか、お伺いいたします。

○佐藤福祉局長 わかさぽにおきまして、性感染症の疑いのある相談があった場合には、本人に寄り添いながら状況を確認するとともに、性感染症の症状や感染経路等に関する情報の提供や、保健所等の案内を行っております。
 また、対面相談におきまして、本人が希望する場合には、保健所等への同行支援を実施いたします。

○龍円委員 無料の感染症検査を実施している保健所などに同行して、支援につなげるということが分かりました。重要なことです。
 次に、妊娠したかもしれないという悩みへの支援についてです。
 妊娠検査薬を薬局で買うということは、十代にとっては恥ずかしいし、怖いと感じることもあると思います。しかし、心配なまま放っておくことは避けるべきです。
 わかさぽでは、妊娠について心配している相談者に対してはどのように対応するのかお伺いいたします。

○佐藤福祉局長 わかさぽの対面相談におきまして、予期せぬ妊娠への不安や悩みを抱える相談があった場合には、本人に寄り添いながら状況を確認するとともに、本人の希望により、相談会場に常備しております妊娠検査薬を提供いたします。
 また、避妊用品を紹介しながら、正しい避妊方法についても説明をしております。

○龍円委員 予期せぬ妊娠とならないように、子供、若者に正しい知識をお伝えしていくことはとても重要であります。
 わかさぽでは、講演、イベントをするなど、積極的な取組をしていると認識しております。そして、具体的な相談があった場合は、避妊用品を紹介しながら正しい避妊方法も説明するとともに、本人が希望する場合は、妊娠検査薬を提供するということでありました。
 さて、妊娠検査薬で陽性になった場合、またあるいは、避妊に失敗した場合などは、医療機関へのアクセスが必要になります。そのような場合に相談することにちゅうちょしないように、医療費についても支援するべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。

○佐藤福祉局長 予期せぬ妊娠への不安や悩みを抱えている若者により一層寄り添えるよう、都は現在、わかさぽの対面相談におきまして、妊娠検査薬で陽性が判明した場合や緊急避妊が必要な場合の、医療機関の受診に係る同行支援の実施に向けて準備を進めております。
 同行支援によりまして医療機関を受診した際の医療費につきましては、経済的理由で受診をためらうことのないよう、相談者による自己負担が困難な場合は、わかさぽで支援をしてまいります。

○龍円委員 妊娠検査薬で陽性だった方や緊急避妊薬が必要な方に対しては、医療機関への同行支援をする準備を進めていることが分かりました。そして、その医療費についても、相談者の自己負担が困難な場合は支援をしていくということでありました。
 緊急避妊薬は一万五千円から二万円程度と高価でありますので、ユースにとって負担することは簡単ではないことから、とても重要なことだと考えます。
 この質疑を通じて、ユースヘルスケア、わかさぽは、東京版のユースクリニックともいえるほどの踏み込んだ、積極的なユースへの支援を本格的にスタートさせていくことが分かりました。
 東京のユースが性と健全に向き合いながら、いざというときに安全に困り事を相談できるセーフティーネットとなる取組になっていくと思います。一歩一歩確実に進めていただきますようお願いいたします。
 二〇二〇年の都議会の一般質問で、障害や病気で成長に違いがある子の親は、母子手帳に傷ついているという話をさせてもらいました。
 都は、その後、全てのお子さんの成長を祝福できるような東京都の母子手帳モデルを更新したほか、ダウン症であれば、「+Happyしあわせのたね」といった子供の特性に応じた手帳を区市町村の窓口で配布できるような支援を創設いたしました。都のこの取組は、多くの保護者からよかったという声をいただきました。
 ただ、そんな中、生まれてからNICUに長期入院したお子さんの保護者らからは、東京都NICU退院支援手帳「のびのび」と保護者らの声を集めた「たからもの」について、もっと私たちに寄り添った内容にしていただきたいというお声をいただいていたところであります。
 日本NICU家族会機構という、日本全国のNICUを利用したお子さんの保護者団体の連合があるんですけれども、去年、周産期医療を受けた家族が医療従事者に伝えたい思いをまとめたものがあります。
 親や家族が、医療従事者に対して面と向かってはいえなかったんだけれども、本当は知ってもらいたかった、あのとき感じていた思いというのを集めて、まとめたものになっております。
 この冊子がなぜつくられたのかというと、医療従事者が、当事者家族の思いをもっと理解して、一歩踏み込んだ対応をしていきたいという気持ちを持っていることを知ったから、まとめたということなんです。医療を提供する側と、それを受ける側のかけ橋になるような冊子になっているところであります。
 さて、この団体から伺ったのが、退院後の生活が全く見えなくて不安だった、障害のあるお子さんと違って、退院するといきなり支援がなくなってしまって困ったというようなお声でありました。
 東京都NICU退院支援手帳「のびのび」と「たからもの」について、もっとこういう情報が欲しかったというようなお声を聞きながら、ご家族のニーズに即した、より利用しやすいものとなるように改定を行うべきだと考えますが、都の見解をお伺いいたします。

○雲田保健医療局長 都は、NICUを退院した子供のご家族に、成長や発達を継続的に記録できる退院支援手帳と、同じ経験を持つご家族の体験手記を配布し、不安解消等に努めております。
 来年度は、これらの手帳や手記がより実用的な内容となりますよう、小児、周産期医療の専門家等のほか、NICUを退院した子供のご家族にも参画いただくワーキンググループを設置し、当事者のご意見もお聞きしながら改定に向けた検討を行うこととしており、退院後に利用できる制度やサービスにつきましても盛り込んでまいります。
 今後も、NICUを退院した子供とそのご家族が、在宅で安心して療養生活を送れますよう、取組を進めてまいります。

○龍円委員 来年度、のびのびとたからものについて改定に向けたワーキンググループを立ち上げて、NICUから退院したお子さんの家族も参加する中で話合いが進められるということが分かりました。
 まさに、その話合いの過程そのものが、NICUで過ごされているお子さんたちと家族、そして、退院していく際の環境をよりよいものにしていただけるというふうに感じております。よろしくお願いいたします。
 次に、インクルーシブツーリズムについてであります。
 自然と触れ合うことは、ストレスを軽減して、幸福度を向上させる効果があります。また、文科省の調べでは、自然体験活動をより多くした子供は、課題解決能力や豊かな人間性が育つということが分かっているところであります。
 しかし、障害のある人にとって、自然体験活動は簡単ではありません。
 自然界は天然のバリアだらけではありますが、それをバリアフリー化するということは現実的ではありません。
 また、支援者がいないという課題もあります。自然活動は、その土地について熟知していて、天候や気候などの知見ですとか経験値が重要なため、福祉分野の支援者がいきなりできるというものではありません。
 かといって、ふだん自然体験をアテンドするような事業者の方々は、障害についての知識が少なく、サポートする方法をご存じないことがほとんどかと思います。
 また、スキーであれば、チェアスキーといったような、いつも使っているものとは別のサポート器具が必要なこともあります。しかし、それを、障害のある本人が持っていることは少なく、また、そういった事業者が装備していることも少ないかと思います。
 これらを踏まえると、障害のある人たちが自然体験活動を楽しむのは、現状では難しい状況にあります。
 この課題については、長野県の信州ユニバーサルツーリズムが参考になる先行事例でございます。
 この政策には、三つの側面があります。
 一つ目が、人の育成であります。長野県では、障害のある人の野外活動を指導できるインクルーシブ野外活動指導員を育成しています。
 そして、二つ目が、物への支援であります。アウトドア用車椅子などの特別な器具の補助をしています。
 そして、三つ目が、場所の開発で、地域ごとにその特性を生かした特色のあるユニバーサルフィールドという自然体験のコースをつくっております。
 私がこの信州ユニバーサルツーリズムを知ったのは、息子と軽井沢の二泊三日のキッズアウトドアプログラムに参加したのがきっかけでありました。
 付き添ってくださいといわれることを覚悟して行ったんですけれども、インクルーシブ野外活動指導員がいらっしゃって、むしろ付き添わないでくださいといわれました。
 指導員は、息子の手指がどの程度発達しているのか、どのくらいコミュニケーションが取れるのかなどを確認した上で、最終日には、この写真のように包丁を使って野菜を切らせてくださったので、びっくりしました。息子はこれで自信をつけたようで、それ以降は、家でも自ら料理のお手伝いをするようになりましたので、目覚ましい成長がありました。
 東京には、多摩地域や島しょ部に豊かな自然があり、すばらしい自然体験活動を展開している場所があります。障害のある人も、豊かな自然の中で活動を楽しめるインクルーシブツーリズムの推進を、我が会派の重点要望として訴えてまいりました。
 東京都では来年度、障害の有無にかかわらず、誰もが楽しめる自然体験型観光について進めていくとしていますが、具体的な施策についてお伺いいたします。

○坂本産業労働局長 東京の観光振興を図る上で、障害のある方や高齢者などが東京の自然を安心して楽しむツアーを増やすことは重要でございます。
 このため、都は来年度、そうした方の観光に役立つ様々なノウハウを観光関連の事業者が学ぶ機会を提供いたします。
 年三回のセミナーを開き、障害者等が自然を楽しむツアーで利用する水陸両用の車椅子など最新の機器を紹介し、その活用方法の知識などを提供いたします。
 また、こうした機器の導入などに必要となる経費について、二百万円を上限に五分の四の助成を行います。
 さらに、障害者等が自然の中でアクティビティーを楽しめるスポットやサービスを、ウェブサイトを通じ幅広く紹介をいたします。

○龍円委員 障害のある方や高齢者が、東京の自然を安心して楽しむツアーを増やすことは重要というふうに明言していただきました。その上で、人、場所、器具に対する支援も始めていくことが示されました。東京都におけるインクルーシブツーリズムが動き始めるということで、大いに期待を寄せさせていただきます。
 次に、選挙のバリアフリーという観点からの質問です。
 日本では、二〇一六年に障害者差別解消法が施行されまして、行政による合理的配慮の提供が義務化されました。選挙においても、代理人投票、点字投票、郵便による不在者投票など様々な合理的な配慮がされているというふうに認識しています。
 しかし、実際は、障害のある人は、ない人に比べて投票率が低く、特に知的障害がある人や重度の身体障害がある人にとって、投票することは簡単ではないという報道もあります。
 障害のある成人がいらっしゃるご家族にヒアリングしてみたんですけれども、投票所において合理的な配慮について申し出ていいと知らなかったですとか、具体的にどんな合理的配慮があるのか事前に分からないので、投票所に行くのが不安といったようなことを伺いました。
 そこで、インターネットでどんな合理的な配慮があるのかと調べてみたんですけれども、十分な情報がなくて、あれ、もしかして十分な合理的配慮は提供されていないのかもしれないという不安を抱きまして、今回の質疑になっております。
 さて、ヒアリングをしていますと、狛江市の取組を耳にするようになりました。障害のある人も投票しやすい環境の推進を熱心に進めてくださっております。
 職員向けに、投票所における支援方法の研修を実施したり、どのような支援が受けられるのか事前に見られる動画があったり、どのような支援が必要か事前に記入して、こちらに出ているんですけれども、投票所に持参することができる支援カードというのを作成したりですとか、あとは、投票所には、このポスターのように、私たちは障害のある人の投票を支援します。お気軽に係員にお声がけくださいという貼り紙で、支援について申し出しやすくなるような工夫もされていて、よい取組だなというふうに思っております。
 東京都の選挙管理委員会においても、障害のある人やその家族や支援者に対して、合理的な配慮を提供していることを積極的に周知するとともに、区市町村が合理的配慮について依頼しやすい投票所の環境づくりを推進できるように支援をしていく必要があると思いますが、現在の取組についてお伺いいたします。

○副島選挙管理委員会事務局長 東京都選挙管理委員会といたしましては、投票所の運営を担う区市町村選管向けの手引におきまして、障害のある方への合理的配慮を行うよう、具体的な取組を周知しております。
 また、毎年、東京都心身障害者福祉センターから講師を招き、区市町村選管職員向けの研修を実施いたしまして、様々な障害の特性や接遇のポイントなどにつきまして説明を行っております。
 都選管ホームページのQ&Aにおきましても、障害のある方が活用できる制度や備品類とともに、総務省が取りまとめました投票所における対応例なども紹介しております。
 引き続き、区市町村選管と連携いたしまして、ホームページやSNSなどを含めた周知啓発に取り組んでまいります。

○龍円委員 成人年齢が十八歳に引き下げられてからは、都立特別支援学校においても選挙の練習をしているというふうに伺っております。
 例えば、選挙管理委員会の方がこういう学習の場に出向いてもらうことで、障害のある方たちがどんなところで困ったりするのかを知っていただき、今後より一層、さらに適切な合理的配慮を提供できるような取組につなげていただきたいと思いますので、ご要望させていただきます。
 では、次に、インクルーシブ公園におけるプレーリーダーの活用についてであります。
 都立砧公園のみんなのひろばがインクルーシブ公園として誕生してから、障害のある子が遊んだというふうに聞きますと、どうだったというふうに聞くようにしています。楽しかったという声がほとんどなんですけれども、中には、健常児たちが物すごい勢いで遊んでいて、危なくて、結局、いつもどおり、遠くから見ているだけだったというような声も耳にしています。
 我が家の息子は、一般の人よりも距離感が近くて、いきなり、ほか子の頭をなでてしまって、びっくりさせてしまうことがあります。
 先日、プレーリーダーの方と一緒に、こちらのインクルーシブ公園で遊んでいた際にも同じような場面がありました。すると、プレーリーダーが、仲よくしたいんだね、でも、少しびっくりしちゃったみたいだねと、さりげなく双方の気持ちを代弁しながら、円滑なコミュニケーションを図ってくれるようにしたことで、結果として、全員が和やかに笑顔で遊べました。
 まだまだ障害のある子と一緒に遊ぶことに慣れていないこの日本においては、インクルーシブ公園にインクルーシブな遊びのプロフェッショナルであるプレーリーダーがいてくれることで、より一層、インクルーシブな交流が生まれやすくなると感じております。
 インクルーシブ公園において、プレーリーダーを活用するなど、インクルーシブな遊びに関する普及に向けた東京都の取組状況と、今後の取組について見解をお伺いいたします。

○中島東京都技監 都立公園では、障害の有無にかかわらず、誰もが気軽に楽しめる環境づくりを進めております。
 例えば、砧公園のみんなのひろばでは、今月の十七日と二十日に、プレーリーダーにもサポートしてもらいながら、全ての子供が一緒に楽しめる縁日や、音楽やダンスを取り入れたイベントを開催いたします。
 来年度は、新たな取組として、ユニバーサルデザインのプランターを使用し、花壇ボランティアと連携して、車椅子利用の方も楽しめる植付け体験を実施いたします。
 このほか、子育て支援団体など地域の団体と連携したイベント等を通じまして、インクルーシブな公園づくりに取り組んでまいります。

○龍円委員 砧公園でプレーリーダーを活用したイベントを開催するということでありました。ぜひ、こういう取組を通じて、インクルーシブな遊びについて積極的に実践を続けていただきたいと思います。
 また、今後は、普通の日でもプレーリーダーを配置して、インクルーシブな遊びの機会を広げていただきますよう要望させていただきます。
 次に、障害者への虐待がない社会に向けた質問です。
 八王子市の精神科病院における障害者虐待事件は、当事者や家族に暗い影を落としております。障害のある人たちは、虐待の被害に遭うハイリスク層にあり、ほかの病院でも同じような虐待が起きる可能性があり、心配が募っております。都内のどの病院においても、虐待が起きないことを確かにしていく必要があります。
 精神保健福祉法が改正されまして、今年の四月からは、精神科病院において虐待防止のための研修実施が義務化されます。
 そこで、都内の全ての精神科病院において障害者への虐待が起きぬよう、人権や権利擁護に関する病院職員の意識向上と、患者への関わり方のスキルアップにつながる研修が求められると考えますが、都の見解についてお伺いいたします。

○佐藤福祉局長 都は来年度、精神科病院における入院患者への虐待防止と早期発見に向けた体制の構築を支援するため、都内全ての精神科病院の管理監督層を対象に、虐待の早期発見、未然防止に向けた組織づくり等に関する研修を開始いたします。
 また、現場のリーダー層には、虐待防止に係る知識のほか、アンガーマネジメント手法等の研修を実施いたします。
 これらの研修は、オンラインも活用いたしまして、より多くの精神科病院職員が受講できる機会を確保してまいります。

○龍円委員 都内全ての精神科病院を対象に、研修を実施していくということでありました。
 障害のある方に対する虐待というのは、日常生活のあらゆる場面で起きることがあります。いわゆる一般的に誰もが想像する虐待だけではなくて、その障害の特性により起きやすい虐待というのもありますことから、対応するには専門的な経験と知見が必要になってまいります。
 障害者虐待防止法において、養護者や障害者施設などで発生する障害者虐待については、区市町村が相談、通報、届出を受け付けて、事実確認を行うことになっております。しかし、区市町村の担当者は、必ずしも障害者虐待について深い知見があるわけではないことが課題だなというふうに感じているところであります。
 対応に当たっては、虐待の未然防止、早期発見、障害者の安全確保などの視点が重要であり、区市町村職員の対応力のスキルアップが必要だと考えます。都の見解をお伺いいたします。

○佐藤福祉局長 都は、区市町村職員等を対象に、虐待防止に係る専門性の強化や意識向上に向け、障害者虐待防止・権利擁護研修を実施しております。
 来年度からは、複雑化する虐待事案に対応するため、新たに事例を用いた演習を追加いたしまして、より実践的な内容といたします。
 さらに、区市町村等に対して困難事例の助言などを行う東京都高齢者、障害者権利擁護支援センターにおきまして、虐待対応マニュアルを作成することとしており、区市町村職員等のさらなる対応力向上に向けて取り組んでまいります。

○龍円委員 区市町村の職員向けの虐待対応マニュアルを作成して、対応力向上に取り組んでいくということでありました。障害のある人は、自身が虐待されていることについて声を上げにくいということもありまして、都においては、今後も不断の取組を通じて、障害者虐待が起きない、起きにくい社会づくりの推進をお願いいたします。
 一問、すみません、飛ばさせていただきます。
 さて、グローバルなイノベーションを生み出す上でも、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンはとても重要でございます。
 スタートアップ戦略や国際金融都市構想の実現に当たっては、海外からの人材や企業を東京に呼び込むことが必要ですが、そのためには、ビジネス面だけではなくて、高度外国人材が住みやすい環境の整備も重要であります。
 世界のスタートアップ情勢に詳しい有識者にお話を伺うことがあったんですけれども、アジアの拠点として東京にそれを構えることを考えているスタートアップや投資家は少なくないそうなんです。
 しかし、ビジネスとは直接関係のない理由なのですけれども、東京で暮らす上でネックとなるのが、学校なのだそうです。働き盛りの世代は、子育てをしている世代でもあります。
 お子さんにも、グローバルな活躍が可能となる教育を受けさせたいと考えていることが多いそうなのです。その際に、東京都心部に世界トップクラスの大学に進学が可能なレベルのインターナショナルスクールが少ないということが、東京に住めない理由につながっているそうであります。
 来日する外国人の家族のためのインターナショナルスクール等の教育施設が不足していると指摘されている中で、対策を強化すべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。

○吉村スタートアップ・国際金融都市戦略室長 東京にグローバルな人材や企業を呼び込むための環境づくりとして、都はこれまで、国家戦略特区を活用し、インターナショナルスクールの整備を促進してまいりました。
 こうした取組をさらに推進するため、都は、海外に向けて都市の魅力を発信する取組を進めるとともに、来年度、誘致拡充の候補となるインターナショナルスクールの把握や実現に向けた課題を洗い出す調査を行い、これらを踏まえた支援スキームを検討いたします。
 関係局とも緊密に連携し、世界標準のビジネス、生活環境の整備に向けて取り組んでまいります。

○龍円委員 海外からの人材や企業をしっかり呼び込めるよう、よろしくお願いいたします。
 繰り返しになりますけれども、グローバルなイノベーションにおいて、多様性はとても重要です。属性が異なる様々な人々が関わることで、際立ったイノベーションが起きるといわれています。
 Tokyo Innovation Baseでは、異彩を放てをキャッチフレーズにしている、知的障害のある作家の作品を様々な形で公共空間に展示しているスタートアップ、ヘラルボニーの家具が採用されていることも、とても象徴的だと感じています。
 多様性をイノベーションの現場でもどんどんと実践していただきたいと考えます。都としてどのように取り組むのか、最後に知事にお伺いいたします。

○小池知事 新たなイノベーションは、多様な人々が出会い、それぞれの違いを認め合い、交流を深める中で生まれてまいります。そのためには、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンを一層高めていくことが、ご指摘のように重要であります。
 様々な場面で、他者との違いを当たり前に感じ、交わることのできる環境を整える。そして、日々の生活を通じて、多様性や包摂性への理解を深めていく。
 人材の多様化に向けましても、言葉の壁の克服やインターナショナルスクールの誘致など、あらゆる人々が安心して暮らせる生活、教育環境などの整備を促進しまして、グローバルスタンダードを実現していきます。
 そして、ご指摘ありましたイノベーションの実践の場、TIBにおきましては、人々が気兼ねなく集い、交流できる環境を整えます。
 それぞれの強みをぶつけ合いながら、社会を変革するサービスの創出に挑戦して、多様性にあふれた社会の実現に貢献してまいります。

○菅原副委員長 龍円あいり委員の発言は終わりました。(拍手)

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