予算特別委員会速記録第二号〔速報版〕

   午後一時開議

○内山委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 委員会の要求資料について申し上げます。
 先ほど委員会として要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 これより総括質疑を行います。
 この際、一言申し上げます。
 質疑に当たりましては、さきにご決定いただいております委員会実施要領等に従いまして運営してまいります。委員の皆様方には、円滑かつ充実した審議が行われますよう、ご協力をお願いいたします。
 なお、持ち時間につきましては、電光掲示板に残り時間を表示いたします。さらに、振鈴で五分前に一点、時間満了時に二点を打ち、お知らせいたします。
 また、委員の皆様に申し上げます。
 質疑に際しましては、持ち時間の範囲内で答弁まで行えるようご協力をお願いいたします。
 次に、理事者に申し上げます。
 答弁に際しましては、委員の質疑時間も限られておりますので、短時間で明快に答弁されますようお願いいたします。
 なお、発言に際しましては、必ず職名を告げ、委員長の許可を得た上で発言されますようお願いいたします。
 これより順次発言を許します。
 菅原直志副委員長の発言を許します。

○菅原委員 質疑に先立ち申し上げます。
 能登半島での地震は、大きな被害をもたらしました。お亡くなりになった皆様へのお悔やみを申し上げ、全ての被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
 また、震災復旧のため、都の職員や関係者の多くが活動を続けています。復旧に関わる全ての皆様に感謝を申し上げます。
 都民ファーストの会東京都議団を代表し、質疑に入ります。
 少子高齢化、人口減少など、先送りにしてきた構造的な課題に加え、相次ぐ戦争や激甚化する気候変動など、将来を脅かす危機がますます高まっています。
 これらの課題に向き合い、この先も人が輝き、活力あふれる東京の実現に向けた令和六年度予算案は、知事が都民の共感を得ながら進めてきた政策を、さらに強化する予算となっています。
 人に焦点を当てた施策を持続可能な財政運営の下で展開していくことは重要です。また、次の世代に負担を先送りするような財政運営は無責任です。
 この点、小池都知事は就任して以降、自ら知事報酬を半減し改革の姿勢を示すとともに、私たちの提案により、外部有識者の意見を取り入れた、より客観性の高い評価、事業展開のスピードアップ、政策評価と事業評価に加えグループ連携事業評価の一体的な実施などを取り入れながら、ワイズスペンディングに徹底して取り組まれてまいりました。
 例えば、事業評価の取組を通し、八年間で約八千百億円の財源確保につなげるなど、着実に成果を上げています。
 知事就任以来取り組んできたワイズスペンディングの取組について、今後も一層のブラッシュアップをするなど、持続可能な財政運営に取り組んでいくべきと考えますが、知事の見解を伺います。

○小池知事 菅原直志副委員長のご質問にお答えいたします。
 成長と成熟が両立した明るい未来の東京の実現に向けまして、戦略的に施策を展開する、そのためには、これを支える強靱な財政基盤の堅持が不可欠でございます。
 こうした考えの下で、私は、知事就任しましてから、東京大改革を掲げ、また、ワイズスペンディングの取組の強化を図ってきたところでございます。
 具体的には、全ての事業に終期、終わりの期を設定することによりまして、事後検証を徹底する仕組みを導入いたしました。
 また、施策単位で事業の方向性を評価する政策評価の実施に加えまして、今年度は、都と政策連携団体の取組に着目いたしました新たな事業評価を実施するなど、施策の効率性、実効性の向上に取り組んでまいりました。
 加えまして、都債の発行抑制に努めてまいりました。これによって、都民一人当たりの残高を、平成二十八年度の四十三万円から、来年度末の見込みでは三十四万円へと減少させるなど、将来に備えた財政対応力を培っております。
 今後とも、こうした取組に一層の磨きをかけまして、持続可能な財政運営に取り組むことによって、東京の未来を切り開く施策を強力に推し進めてまいります。

○菅原委員 ただいまのご答弁の中で、都債残高について触れられておりました。この八年間で四十三万円から三十四万円と、おおよそ二割減少しています。
 都は、持続可能な財政運営の下、東京の強みやポテンシャルを生かし、明るい未来を切り開く積極的な施策展開に取り組まれていることを確認させていただきました。
 昨日三月十一日は、東日本大震災から十三年目でした。
 都は、関東大震災から百年目の節目に当たり、被害想定の見直しを行うとともに、百年先も安心して過ごせる東京を実現するためのTOKYO強靱化プロジェクトを発表いたしました。
 このプロジェクトに沿った取組として、新耐震基準の木造住宅や緊急輸送道路沿道建築物などの耐震化施策をバージョンアップするために、昨年三月、東京都耐震改修促進計画を改定、戸建て住宅の耐震化を進めてきました。
 能登半島地震における家屋の被害状況を踏まえ、取組をさらに進めていかなければいけません。
 戸建て住宅の耐震化を進めるに当たっての知事の決意を伺います。

○小池知事 能登半島地震では、多数の住宅が倒壊し、多くの尊い命が奪われました。都民の生命と財産を守る、そのためには、戸建て住宅における耐震化が重要であることを改めて認識をいたしました。
 住宅の耐震化を促進するためには、都民一人一人が自らの問題として備えていくことが何よりも重要でございます。
 防災意識が高まっている今、このときを捉えまして、拡充する助成制度やアドバイザー制度を広く都民に知っていただく、周知するなど、耐震化に向けました機運を高めてまいります。
 戸建て住宅の耐震化に向けた取組を加速しまして、安全・安心な都市を実現してまいります。

○菅原委員 戸建て住宅耐震化には、建物崩壊による死亡者が減るだけではなくて、避難所や医療施設の受入れの抑制、道路の確保など多くのメリットがあります。ぜひ進めていただくようお願いいたします。
 TOKYO強靱化プロジェクトでは、マンションを含めた全ての住宅の耐震化率が過去十年で八一・二%から九二%に向上したとされています。
 令和四年度決算特別委員会での私たちの質疑に対して、都からは、戸建て住宅の耐震改修への助成件数は、令和三年度が五百七十件、令和四年度は九百六十六件と、着実に助成件数が増加しているとの説明がありました。
 戸建て住宅の耐震化の目標と進捗、過去三年間の予算額と執行率について伺います。

○谷崎都市整備局長 令和七年度末までに旧耐震基準の耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することを目標としており、戸建て住宅の耐震化率につきましては、平成二十二年度末は七一%、令和元年度末では八六・九%であり、九年間で約一五ポイント上昇しております。
 また、過去三年間の住宅耐震化助成の執行状況につきましては、令和二年度は当初予算額二億六千万円に対し、執行率は約四四%、令和三年度は約三億二千万円に対し、約五七%、令和四年度は約三億六千万円に対し、約七七%でございます。

○菅原委員 耐震化率が過去約十年で一五ポイント上昇しており、戸建て住宅の耐震化は着実に進んでいるということ、また、執行率から、申請のあったものについて全て支援できていることを確認いたしました。
 令和元年度末現在の住宅全体の耐震化率が九二%であったことは既に述べたとおりです。残り八%は約五十六万戸に相当し、特定沿道建築物という一部の建物の耐震化とは異なり、都が助成などを通じて関与できる範囲は限定的にならざるを得ません。
 戸建て住宅の耐震化を進めるためには、耐震化に対する理解と共感を広げ、これに取り組む都民を増やす丁寧な取組が必要です。特に、リフォームや修繕など、様々な機会を捉えて働きかけるべきです。
 来年度以降、目標達成に向けてどのように取り組んでいくのか伺います。

○谷崎都市整備局長 戸建て住宅の耐震化を促進するため、令和六年度からは、耐震改修等の都費の補助限度額を引き上げることとしております。
 また、省エネ化やバリアフリー化などの改修に合わせて耐震化を進めるため、ワンストップで助言が受けられるようアドバイザー制度を拡充いたします。
 あわせて、デジタル広告など様々な媒体を活用し、都民への普及啓発を図ってまいります。
 区市町村と連携し、これらの取組を進めることで、戸建て住宅の耐震化を強力に推進してまいります。

○菅原委員 補助限度額の引上げに加えて、アドバイザー制度の拡充、様々な媒体による普及啓発と、一層強力に推進すること、確認をいたしました。
 能登半島地震では、上下水道の損傷が大きく、復興の遅れにつながっています。
 上水が損傷したときに頼りになるのが、災害時給水拠点です。
 断水した場合に主要な給水拠点となるのは、災害時給水ステーションです。ここでは、成人に必要な一日三リットルを目安に水が配られます。
 現在、災害時給水ステーションでは、おおむね半径二キロメートルに一か所存在していますが、高齢者が三リットルの水を持ち、災害後の不安定な道路を往復で四キロメートル歩くことは現実的とはいえず、万が一断水してしまった際にも身近な避難所などで給水できる体制の強化が必要です。
 能登半島地震での断水被害の影響が多大であったことも踏まえて、災害時給水体制のさらなる支援強化を図るべきと考えますが、知事の見解を伺います。

○小池知事 ご指摘のように、能登半島地震では、生命を維持し、衛生環境を確保するために不可欠な水の不足が喫緊の課題となりました。応急の給水体制の重要性が改めまして浮き彫りになったところでございます。
 都はこれまで、災害などで断水した際に応急給水を行うために、給水所などの給水拠点を含みまして約四千六百か所の災害時給水ステーションを都内各地に整備をいたしております。
 このうち、被災した方々の当面の生活の場となります避難所におきましては、管路や給水管の耐震化によって災害時にも速やかに水道水が供給できるように、応急給水栓を設置いたしております。
 今般の能登半島地震におけます教訓も踏まえまして、災害時の機能維持のため設備を更新していくとともに避難所に配備する応急給水栓の拡充を検討するなど、災害時におけます都民への給水に万全を期して、東京の強靱化を推進してまいります。

○菅原委員 私たちは、会派の中に令和六年能登半島地震PT、プロジェクトチームを設置し、小池都知事へも要望書を提出いたしました。この要望から幾つか取り上げて質疑をいたします。
 まずは、罹災証明手続の迅速化です。
 能登半島地震では、罹災証明の発行とその基礎情報となる家屋調査などを迅速に行うことの重要性が明らかになりました。
 罹災証明の発行スピードアップについては、改定された地域防災計画にも明記されており、具体的な取組が期待されます。
 家屋調査や罹災証明などのスピードアップを進めるべきと考えますが、見解を求めます。

○野間総務局長 都は先般、罹災証明書の交付に必要な住家被害認定調査について、内閣府の示す認定方法が複雑なことや、認定に必要な知識や経験のある職員が限られることから、国に対し、手続の抜本的な見直し等について早期に実現するよう緊急要望を行いました。
 災害発災時には、罹災証明書を速やかに交付する必要があることから、都は、証明書を交付するシステムを区市町村と共同で運営するとともに、AIが家屋の損傷程度を判定する、早期復旧のためのツールを開発してございます。
 加えて、証明書を交付するための受援応援体制を強化するなど、被災者の速やかな生活再建につなげてまいります。

○菅原委員 家屋調査や罹災証明などについてのご答弁もいただきました。私たちの要望を受け、このたび、都が国に対して手続の抜本的な見直しなどを緊急要望したことを評価いたします。
 今回の能登半島地震では、都がオンラインで家屋調査を支援する取組も行われました。この経験を生かして、罹災証明のスピードアップに取り組んでいただきたいと思います。
 次に、都内の基礎自治体の受援応援計画の策定についてです。
 東京都災害時受援応援計画とは、大規模災害発生時に、全国の自治体や関係機関などからの応援受入れや、都内区市町村、都外自治体への応援を円滑に行うための具体的な手順やルール、体制などを示す計画です。都は平成三十年にこれを策定し、昨年十一月にこれを改定いたしました。
 しかしながら、受援応援のルールなどをまだ定めていない区市町村は多くあります。この件は、十二月の総務委員会でも私が取り上げさせていただきました。
 現在の受援応援計画を策定している自治体の数について伺います。
 加えて、受援応援計画の必要性と期待されるその効果、さらに、今後の取組について伺います。

○野間総務局長 令和五年六月時点で受援応援計画等を策定している都内区市町村は十九でございます。
 また、二十六の自治体が地域防災計画などに受援応援等に関する記載がございます。
 大規模災害が発生した場合、全国の自治体や関係機関等からの応援を円滑に受け入れ、迅速な災害対応を行うことが重要でございます。
 このため、各自治体が、具体的なルール等を明確にした受援応援計画等を策定しておく必要がございます。
 東京都地域防災計画では、二〇三〇年までの都内全区市町村の受援応援計画策定を目標としてございます。
 今後、能登半島地震の検証を踏まえ、計画策定のガイドラインを改定するなど、受援応援体制の早期整備を支援してまいります。

○菅原委員 受援応援について、何らかの計画を策定している自治体はやっぱり半数未満という報告でございました。都は、二〇三〇年、令和十二年までに全ての区市町村の受援応援計画策定の方針を示していただきました。確実に進めていただきたいと思います。
 大規模災害の市民ボランティアの課題の一つに、ボランティアの宿泊施設の不足が挙げられます。
 能登半島地震では、珠洲市や穴水町に市民ボランティアの宿泊施設を開設したことで、金沢市からの往復にかかっていた時間を大幅に短縮できています。
 東日本大震災では、石巻の専修大学敷地内に、そして熊本地震では崇城大学敷地内にボランティアキャンプ村が設置されました。ボランティアセンターの出張窓口が設置できれば、大学をスタート、ゴールとした取組が可能となります。
 私自身も、東日本大震災のときには、この石巻専修大学におりましたし、熊本地震のときには、熊本市内のホテルに泊まれなかったために、福岡市に宿泊をして高速バスで熊本に通いました。
 東京が被災した際、多くの市民ボランティアの受皿が必要です。大学を活用した宿泊型キャンプ村は、その解決策となります。
 大学の中には、広域避難場所の指定を受けているものもあり、課題はそれぞれ違うと思いますが、今こそ、前に進めるべきです。
 あらかじめ、都内の大学などと宿泊型のボランティアキャンプ村の設置の協定を結ぶなど、大規模災害に備える検討をすべきと考えますが、見解を伺います。

○横山生活文化スポーツ局長 災害が発生しました際には、様々な支援団体やボランティアが被災地の復旧、復興に関わりますことから、支援団体との連携や活動拠点は検討を進めるべき重要な課題でございます。
 都は、地域の社会福祉協議会などの支援団体と、災害時のボランティア活動に関しまして、日頃から、情報交換を行い、関係構築を図っております。
 こうした団体や区市町村等のニーズも踏まえまして、東日本大震災や熊本地震など、過去の事例や大学の実態などを参考にしながら、東京が被災した際の支援団体や大学等との連携、協力の在り方について検討を重ねてまいります。

○菅原委員 災害ボランティア元年といわれた阪神・淡路大震災以後、日本の災害ボランティアは確実に進化してきました。これからは、宿泊場所を含めたボランティア拠点の整備が課題となります。早急な取組を要望いたします。
 私たちは、ペット同行避難についても継続して取り上げてきました。
 厚生労働省も、そして東京都も、避難所へのペット同行避難を進めています。
 しかし、現状は、ペット受入れの是非自体が議論になったり、合理的かつ具体的な対策が示されていないため、衛生状態や鳴き声、アレルギー対応が想定されていない避難所もあるなど、その取組は十分とはいえません。
 ペットとの同行避難ができないと、被災者が車中泊を選択するなど、健康被害のリスクが高まります。ペットと共に避難する被災者を重点的に受け入れる避難所の設置が進むよう、都が働きかけるべきです。
 都として、各自治体にペット重点避難所の事例を周知するなど、誰もが気兼ねなくペット同行避難できる避難所の設置を促していくべきですが、見解を伺います。

○野間総務局長 ペットとの同行避難は、飼育している方の安全な避難行動を促し、生命の安全を確保する点からも重要でございます。
 このため、都は、避難所での同行避難への対応等を盛り込んだマニュアルを作成するほか、専門家の招聘や避難所で必要となるペット用ケージ等の備蓄に要する経費を支援してまいりました。
 今後は、区市町村に対し、同行避難の重要性や避難所のペット受入れに係る具体的な手法などの動画を作成して示してまいります。
 また、新たに令和六年度に実施する避難所開設訓練に盛り込んでまいります。
 都は、専門家の意見を伺いながら、受入れに係る準備等の相談にも対応してまいります。
 こうした取組によりまして、ペット同行避難を進めてまいります。

○菅原委員 ペット同行避難は、避難所に関わる全ての人の問題です。避難所設置は区市町村の役割であり、運営は市民に委ねる場合が多いことから、これまでは議論が深まりませんでした。
 さらに、ペット同行避難は総務局、避難所提供は教育委員会、ペット飼育は保健医療局と、複数局をまたいだ調整も必要です。
 ペット同行避難は喫緊の課題であり、東京都が主体的に課題を把握し、必要な施策を進めるべきと考えます。今後の取組に期待をいたします。
 能登半島地震の避難生活において、顔見知りだから避難所生活が耐えられた、落ち着いて過ごせたとの声が届いています。
 都が進めるTOKYO強靱化プロジェクトの計画段階から、私たちはコミュニティの視点の強化を、中でも、都民の七割の世帯が居住していながら、行政からの働きかけが難しかったマンション防災の強化を訴えてきました。
 担当職員の皆様と共に、防災対策に工夫を重ねているマンションを実際に視察するなど、共に理解を深める取組を重ねた結果、来年度予算において町会マンションみんなで防災訓練として、マンション防災の強化に向けた地域コミュニティの支援が予算化されたことを評価いたします。
 これを機に、マンションと地域の連携が進み、様々な地域において災害対応力が向上することを期待するものです。
 事業の推進によって、町会とマンションのつながりを創出し、災害時の連携の重要性を広めるべきと考えますが、都の取組を伺います。

○横山生活文化スポーツ局長 地域コミュニティのつながりの強化は災害への対応において喫緊の課題でありますため、来年度は町会、自治会の住民とマンション居住者の合同防災訓練を支援する事業を開始いたします。
 町会、自治会から申請を受け付けて防災訓練のコーディネーターを派遣し、住民同士がつながるきっかけづくりなど、準備から振り返りまでのトータルでの支援を行います。
 令和六年度は三十の町会を目途に連携支援を行うほか、町会とマンションにおける共助の重要性を分かりやすく普及するための動画も作成し、助け合いの輪が広がるよう順次取組を広げてまいります。

○菅原委員 町会とマンションが共に行う防災訓練をトータルで支援するという新しい事業であり、地域性を考慮した様々な事例が生まれることを期待いたします。
 百年前に発生した関東大震災では、配給、救援、相互扶助において住民の組織が一定の役割を果たしたことから、町内会の整備と事業振興の大切さが評価されました。その結果、地域社会の再編成が行われ、町内会組織が増加したということです。
 しかしながら、都が発行する東京都区市町村年報によれば、都内二十三区と二十六市の四十九区市で、自治会、町内会など地縁団体の数は、現在の定義で集計を始めた平成二十八年には八千九百三十一だったのが、二〇二二年には八千七百八十七と、百四十四減少するなど、ソーシャルキャピタルの減少が懸念されます。
 都では、地域の底力発展事業助成をはじめ、新設する町会マンションみんなで防災訓練など、各局がコミュニティ活性化に取り組んでいますが、それらが本当に地域の皆様の関係性強化につながったのかを、例えば中学校区で比較ができる定点調査を行うなど丁寧に検証し、事業のブラッシュアップを重ねていく必要があります。
 地域住民のつながりの状況を、防災の観点から把握し、地域防災力向上の施策展開に生かしていくべきと考えますが、見解を伺います。

○野間総務局長 大規模災害等の被害を軽減するためには、地域のコミュニティの活性化を図り、防災力を強化することが重要でございます。
 都はこれまで、防災に関する都民の意識調査等を通じて、地域や各家庭における取組状況等を把握し、地域の防災訓練への参加や日常備蓄など災害に対する備えを進めるよう働きかけてまいりました。
 今後、災害の際の住民のつながりについて、本調査の精度を上げることや、その結果を都民の防災意識をより高め、具体的な行動につなげる手法などについて、専門家の意見も聞きながら議論を深めてまいります。

○菅原委員 ご答弁は、地域住民のつながりの状況を防災の観点から把握して、施策の精度を高めていくという、これまでにない取組であり、今後に期待をいたします。
 次に、子供、子育て政策について伺います。
 小池都知事が進めてきた東京大改革は、子育て環境整備、気候変動対策、国際競争力強化、性別や障害の有無で差別のない社会の実現に向けた取組と、多岐にわたり、振り返ればいずれも欠かせないものばかりです。
 そして、その中でも大きなインパクトを与えた取組が子育て支援策の強化ではないでしょうか。
 政治の仕事の勘どころは、政策の優先順位づけです。
 小池都知事の就任前は、都政においても子育て環境整備の優先順位は長らく低いままであり、都内の保育園の待機児童数は平成二十九年までの十年間にわたり、八千五百人を超えていました。
 知事は、就任以降、待機児童対策の予算を抜本的に拡充、知事の進める改革を共に進めることへの期待を受けた都民ファーストの会が、第一会派として予算編成に賛同してきた結果、待機児童数は大幅に減少、令和五年には都内で二百八十六人にまで減少をいたしました。
 待機児童の劇的な解消は小池知事の都政における大きなレガシーの一つです。
 そして、日本の政治における子育て支援策の優先度を大きく高めたのが、昨年、私たちが都民の声を小池都知事に届けて実現した、所得制限なしでの全ての子供たちへの月五千円の給付をする〇一八サポートです。実質的な子育て世代への支援であるだけではなく、社会全体で子育てを応援するというムーブメントを引き起こしました。
 結果、児童手当の所得制限を進めてきた国政与党も異次元の少子化対策を進めると発表、子供政策連携室に遅れること一年、こども家庭庁を設けるという組織改編も起きました。
 国においては財源の後ろ盾がないという問題が今頃、噴出していますが、子育て環境整備においては、都が国を牽引しているといっても過言ではありません。
 この〇一八サポートについて、私たちは先日、都民アンケートを行いました。多くの喜びの声が届く一方、手続面では改善を求める声も届いております。
 例えば、多くの場合、子供は父親の扶養に入っているため、母親が手続をする場合はより煩雑になることや、対象区分が分かりにくい、必要書類が多いなどの指摘がありました。
 今年度手続をした方に対しては、これまで会派が主張してきたワンスオンリーの考えに基づき来年度は原則としてプッシュ型で支給するとのことですが、来年度、新規に申請する方はより簡単、便利に手続できるようにするほか、支給の迅速化も図り、都民目線での工夫を強化すべきと考えますが、見解を伺います。

○佐藤福祉局長 都は来年度、〇一八サポートを新規に申請する方に対して、従来の申請方法に加え、国と連携し、保護者と子供両方のマイナンバーカードをかざすだけで申請が完了する新たな方法を導入いたします。
 また、従来の方法で申請する場合につきましても、住民基本台帳の情報で出生日や転入日を確認することで、それらの確認書類の提出を省略するなど、手続を簡素化いたします。
 給付金につきましては、来年度は、子供の育ちをきめ細かくサポートするため、八月、十二月、来年四月の年三回に分けて支給をいたします。

○菅原委員 書類の簡素化や、支給をこれまでの年に一回から三回に分けるなど、引き続き都民の声に耳を傾けながら、施策のブラッシュアップをよろしくお願いをいたします。
 〇一八サポートに限らず、児童手当の申請、予防接種のクーポン、保育、幼児教育の無償化、学童の申請など、子育て関係の支援を受けようとすると、何度も同じような書類を記入することがあります。
 また、子育て支援に関わるサービスを提供する主体は、国、都、区市町村、民間事業者など多岐にわたることから、子育て世代にとっては、情報の把握も大きな負担となっています。これらの課題をデジタルの力で解決していくことが重要です。
 さきの第四回定例会における私たちの、こどもDXの成果を早く出すよう求めた質問に対し、知事からは、二〇二五年度までに利用者の声を反映させ、サービスを実装するとの答弁がありました。
 都民の負担を軽減し、便利で快適な子育てサービスを実現するためには、行政や民間などが垣根を越えてデータ連携するなどの取組をスピード感を持って、都が先駆的に進めていくことが必要ですが、今後、どのように取り組むのかを伺います。

○山田デジタルサービス局長 デジタルの力で子育て世代の利便性を向上させるこどもDXにつきましては、現在、六自治体の子育て支援制度のデータベース整備を先行的に進めており、ふだん利用しているアプリを通じて給付金などの情報をプッシュ型で届けるサービスを今月末から順次開始をいたします。
 来年度は、都内全域での情報配信に向け、国と連携して取組を進めます。
 また、保活ワンストップサービスについては、都は全国に先駆けて、様々な主体をつなぐシステムの構築を目指しており、今後、共に取組を進める自治体の募集を開始いたします。
 保護者や保育関係者の声も聞きながら、施設見学から入所申請までを一元的に行える利便性の高いサービスの実現に向けて取組を進めてまいります。

○菅原委員 今月末からアプリを通じたプッシュ型の情報提供を始め、来年度には都内全域で情報配信を開始するとのことでした。繰り返しになりますが、都民の声に耳を傾け、アジャイルに改善を重ねることで、忙しい子育て世代を助けるサービス提供をお願いいたします。
 子育て世代への情報提供に加えて、子供を持ちたいと考えている方への情報提供も大切です。
 晩婚化が進む中で、夫婦の四・四組に一組が不妊検査や治療をしているという調査結果もあります。
 こうした状況を踏まえ、私たちは不妊治療の対象拡大や卵子凍結補助などの不妊治療への支援拡大に加え、不妊治療に至る前の段階で、自らの体を知り将来設計に生かすプレコンセプションケアを推進してきました。
 これを受け、都は今年度より、出産に向けた正しい知識を伝える講座の開催や、体に残された卵子の目安を知り、妊活、不妊治療に生かすことのできるAMH検査支援を始めています。
 当然ですが、不妊の原因は、女性だけではなく男性にも同じ程度あります。しかしながら、男性の不妊に対する意識は低く、自分が原因だと思っていないケースも少なくありません。女性のみならず男性への不妊に対する情報の普及啓発や不妊治療への支援が必要です。
 今後、より多くの方がプレコンセプションケアを進められるよう支援すべきと考えますが、見解を伺います。

○佐藤福祉局長 都は現在、プレコンセプションケアに関する講座を受講した方のうち、AMH検査の受検を希望する方が、無料で、地域の医療機関において検査を受けまして、その結果につきましては、国立成育医療研究センターの医師から助言を受けられるよう支援を行っております。
 来年度は、新たに男性向け検査への支援を開始するとともに女性向け検査の種類も拡大をいたします。
 また、より多くの方が支援を受けられますよう、地域の医療機関で検査から助言まで実施できるようにいたします。
 さらに、性別、年代別の啓発動画を作成いたしまして、SNS等で発信するなど、若い世代が将来の妊娠、出産に関する正しい知識を身につけられるよう支援してまいります。

○菅原委員 新たに男性の検査にも支援拡大をするという前向きな答弁でした。将来、子供を持ちたいと考える全ての都民が正しい知識を得ることのできる体制を求め、次の質疑に移ります。
 小池都知事は、スピーキングテストの導入や都立高校への国際交流プログラムの新設、教員の海外派遣など、グローバル人材育成を強力に推し進めています。人が宝であるこの国において、大変重要な取組です。
 私たちは、これらの教育プログラムが、これからを生きる子供たちにとって必要不可欠であるからこそ、エビデンスベースで、かつ長期的な視点を持って施策の質を高める重要性を指摘してまいりました。
 私たちの求めに応じ、来年度に新設したグローバル人材育成の成果検証事業において、生徒の成長をどのように継続的に把握し、事業のブラッシュアップに生かしていくのかを伺います。

○浜教育長 未来を担う子供たちは、英語力を基盤として、社会の様々な課題を主体的に解決していく力や多様な人々と協働する力などを身につけることが重要でございます。
 都教育委員会は、来年度、グローバル人材育成に係る施策に関して、生徒にアンケートを実施し、生徒の意識や行動の変化などと、都の様々な事業の取組状況を併せて分析することで、施策の成果検証を推進してまいります。
 さらに、都独自の留学制度である次世代リーダー育成道場や海外派遣に参加した生徒について、卒業後も継続的に進路やキャリア形成の状況を把握することで、長期的な視点も踏まえて検証し、施策の充実を図ってまいります。

○菅原委員 グローバル人材育成に係る施策については、個々の生徒の意識や行動の変容などについて、留学した生徒については、進路やキャリア形成などの卒業後の状況も含めた検証に取り組むとの答弁でした。本質的な取組であり、グローバル人材育成に関わる施策のブラッシュアップに生かしていただくよう要望をいたします。
 Society五・〇時代を生きる子供たちのため、教育環境整備、GIGAスクール構想の後押しを受け、令和四年度には都立高校への一人一台端末と通信環境の整備が完了いたしました。
 ハード面の整備に加え、私たちの提案により進めた当時のICTサポート人材、現在のデジタルサポーターの各学校への配置は、現場からは大変喜ばれ、当初の委託事業から今年度より会計年度職員への移行も進んでいます。
 一方で、私たちの下には、デジタル利活用が進んだからこその様々な課題についてのお声もいただいています。
 都立学校におけるデジタル利活用を定着させ、子供たちに質の高い情報教育を提供するために、資格試験の活用などデジタルサポーターの質の向上につながる仕組みを創設するとともに、学校現場の声を丁寧に聞き取り、デジタル環境を一層向上する取組を改めて行うべきと考えますが、見解を伺います。

○浜教育長 都教育委員会は、都立学校のネット回線の高速化などデジタル環境を充実するとともに、デジタルサポーターを全校に常駐させ、学校を支援しております。
 今後は、国のDXハイスクール事業なども活用し、プログラミングを学ぶロボット教材や高性能なコンピューターを購入するなど、各学校の実態に応じてハード面の整備を進め、デジタル環境の充実を一層図ってまいります。
 また、学校で使用するシステムや授業支援のノウハウをまとめたガイドブックを作成するとともに、業務に関連する資格取得について研修で情報提供を行い、デジタルサポーターの技量の向上を図ってまいります。

○菅原委員 学校のデジタル化を、デジタル環境の整備というハード、デジタルサポーターの技量向上というソフト、この両面から支援を確実に行っていただくよう求めます。
 子供たちに、デジタルの消費者ではなくてデジタルを使って創造する側になるための教育機会を平等に設けることも重要です。
 私たちの要望を受け、都は今年度より、米国ボストン発祥のコンピュータークラブハウスを参考に、子供たちが初歩のプログラミングや創作活動など幅広い体験や学びができる、子供向けデジタル体験向上プロジェクトをスタート、来年度には、定期的な開催に向けて予算を組んだことを評価いたします。
 都内IT企業の中には、社会貢献と人材育成を目的として教育プログラムを提供している企業もあります。取組を広げていくためには、こうした企業と連携することも重要です。
 都民にこの取組が伝わるよう分かりやすい名称をつけるとともに、都内IT企業の協力を得ながら取組を広げていくべきと考えますが、都の見解を伺います。

○山田デジタルサービス局長 都は今年度、NPOや企業等の知見も得ながら、子供たちに幅広いデジタル体験を提供する事業を都内十五自治体で実施いたしました。
 来年度は、この取組をさらに広げるため、規模を拡充し、区市町村と連携して児童館などの子供に身近な場所二十か所で様々なプログラムを実施いたします。
 さらに、自治体が主体となって継続的に実施するデジタル体験は、都が人的支援を含め伴走型でサポートいたします。加えて、いつでも体験ができる常設の拠点をSusHi Tech Squareに新たに設置いたします。
 今後、子供たちに親しみやすい事業名称を検討するとともに、都内IT企業や大学などの協力も得て内容をさらに充実させ、東京全体で子供たちの創造性を育むデジタル体験のムーブメントを創出していきます。

○菅原委員 一歩ずつ着実に取組を広げていることを確認いたしました。
 以上、子供に関わる施策について幾つか取り上げてきました。いずれも、変化の激しい時代にあって、子供たちの生きる力を育む大変重要な事業です。
 一方で、私は、子供が生きるための支援である自殺対策について一貫して調査研究、そして提案を重ねてきました。
 自殺対策の法律制定などを経て、国内の自殺者数が三万人から年間二万人前後まで減少する中、若者の自殺は増えています。昨年、全国小中高生の自殺者が五百七人に上りました。コロナ禍前はおおむね三百人前後で推移していたことと比較をすると、子供たちの自殺リスクはより高まっていることになります。
 若者の自殺未遂への対応として専門の対応チームの設置などを提案してきましたが、自殺リスクの高い若年層への支援について伺います。

○雲田保健医療局長 児童生徒の自殺者数が増加傾向にあることを踏まえまして、都は、若年層の自殺対策を自殺総合対策計画の重点項目に位置づけ、こころといのちのサポートネットにおきまして、自殺未遂者など自殺リスクの高い方を、若年層を含め、地域での継続的な支援や精神科医療につなげております。
 来年度は新たに、このサポートネットに多職種の専門家による子供サポートチームを設置し支援を充実するほか、学校や地域の支援機関を対象に、子供の自殺に関する理解や対応力向上のための研修を実施するなど、自殺リスクの高い子供への支援を一層強化してまいります。

○菅原委員 私たちの求めに応じ、都は今年度より、自死遺族への支援として、とうきょう自死遺族総合支援窓口を設置いたしました。行政による自死遺族支援事業は全国初であり、注目されています。
 さらに、コロナ禍の自殺増加への対策として国が実施してきた自殺防止対策交付金事業が今年度末で終了する中、都は、国の交付金を活用して行ってきた都の民間補助事業を縮小せず、来年度以降も予算措置を行うとしました。若者の死因の第一位が自殺であるのはG7の中でも日本だけという状況を踏まえると、都の判断は適切であり、高く評価いたします。
 コロナ禍を経て孤立を深め、鬱状態にある若者が増えている現状に鑑み、都としてさらなる取組が必要です。
 私たちは昨年、長野県の自殺対策を視察し、若者の自殺未遂に対し専門の対応チームの設置などを提案してまいりました。自殺対策は、自殺予防ではなく生きる支援といわれます。コロナ禍で進めてきた自殺対策に加え、子供の生きる支援を様々な切り口で進めていただきたいと思います。
 子供の自殺対策について、都全体としての取組の必要があると考えますが、知事の見解を求めます。

○小池知事 議員が長年取り組んでおられる子供の自殺の問題でございますが、子供の自殺の背景には、家庭そして学校での問題、健康に関する問題など様々な要因がございます。そういったことから、関係の機関が連携して、社会全体で子供をサポートしていく必要がございます。
 先月公表いたしましたこども未来アクション二〇二四ですけれども、子供の自殺対策を重点アクションに位置づけまして、福祉、医療そして教育などとの連携の下で様々な困難を抱える子供に寄り添う、そして一人一人の状況に応じた支援を強化するということといたしております。
 次の時代、次代を担う子供たちのかけがえのない命を守る、そのために私、先頭に立ちまして、区市町村、そして関係機関と一丸となって、誰もが将来に希望を抱くことのできる社会の実現を目指してまいります。

○菅原委員 日本赤十字社が行った、コロナ禍の令和二年四月の緊急事態宣言から令和三年九月の宣言解除までの間を対象とした若者の心の変化の調査では、大学生のうち四九%が無気力になった、三五%が孤独を感じる、二五%が悲しい気持ちになる、涙が止まらないなどと答えています。私たちが思う以上に子供世代の状況は厳しい状態にあることを想像し、子供の自殺対策を進めなければいけません。
 知事からは、先頭に立つという力強い答弁もいただきました。一緒に子供の自殺対策を進めていきたいと思います。
 私たちはかねてからCDR、チャイルド・デス・レビューの必要性を訴えてきました。都は令和四年度から、福祉、保健、教育などの関係機関と連携しながら子供の死亡事例に関わる情報を収集し、予防可能な要因について検証、効果的な予防対策を提言することにより将来の子供の死亡減少につなげる、予防のための子供の死亡検証をスタートしています。
 この三月には、関係機関連絡調整会議や多機関検証ワーキンググループが開催され、具体的な検証は令和六年度から実施される予定です。
 都は、CDRの取組を推進しておりますが、CDRではどのように情報収集するのかを伺います。

○佐藤福祉局長 チャイルド・デス・レビューでは、子供の死亡について予防可能な要因を検証するため、直接の死因に加えまして、子供の状況や家庭環境等の情報を収集いたします。
 都は今年度、都内の子供の死亡に関する全体傾向を把握するため、国や都内の保健所から、人口動態調査における年齢別死因や死亡数等のデータを収集しております。
 来年度は、全体の傾向等の把握に加えまして、個別事例の検証を行うため、東京都こども救命センターに指定している四病院の協力の下、遺族の同意を得て、亡くなった子供に関する情報を関係機関から収集してまいります。

○菅原委員 私は、市議会議員の時代から二十年以上、全国の犯罪被害者の方々の話を聞き、社会に訴える活動を続けています。被害者遺族の皆さんの共通した願いは、真実を知りたい、これ以上被害者を出さないでほしいということです。私が話を聞いてきたご遺族の中には、お子さんを失ったケースもありました。登下校や校舎内での死亡事例では事実関係を知ることが難しい状況も数多くあります。
 CDRの導入は、真実を知りたいというご遺族の根源的な要望に沿うものであり、次の被害を生み出さないためにも重要な取組です。
 全国の小中高校で平成二十八年度から七年間に起きた死亡事故について、災害共済給付を行う日本スポーツ振興センターが見舞金などの対応した事例が四百五十六件だったのに対し、国に報告があったのは三割にとどまったという報道がありました。
 現在のルールでは、児童生徒の死亡事故があった場合、学校は、まず教育委員会経由で国に一報を入れ、その後に事故状況を調べることになっています。しかし、このルールが徹底されていない可能性があります。
 まずは教育委員会に伺います。平成二十八年度から七年間に起きた死亡事故について、教育委員会が把握している数を伺います。

○浜教育長 都教育委員会が把握している都内公立学校における死亡事故は、平成二十八年度から令和四年度までの七年間で九件発生しております。

○菅原委員 今、報告をいただいた数字には、私学分が、私立の分が入っていないと聞いています。
 私学の死亡事故の数についても教えてください。お願いします。

○横山生活文化スポーツ局長 都内私立学校における死亡事故は、平成二十八年度から令和四年度の七年間で三件発生しております。

○菅原委員 合計十二件という報告をいただきました。
 国は、今年度中に事故報告の徹底を図り、事故の再発防止のため、学校事故対応指針の改定を進めていると伺っています。
 都教育委員会としても早急に対応を進めるべきと考えますが、教育委員会の見解を伺います。

○浜教育長 今後も、国の学校事故対応に関する指針改定の趣旨を踏まえ、事故対応を確実に行うことについて、都内公立学校及び区市町村教育委員会に改めて周知するとともに、学校及び区市町村教育委員会担当者向けチェックリストを作成し、報告漏れを防いでまいります。
 また、都教育委員会が報告を受けた事案につきまして、国への報告を徹底するとともに、各事案につきまして、原因分析と再発防止を進めてまいります。

○菅原委員 信号の赤、青のタイミングを分ける歩車分離信号は、八王子の小学生の死亡事故を受けたご遺族が社会に訴えたことから始まりました。医療事故による死亡事例は、正確な状況把握と検証を経て、次の医療事故の未然防止につながっています。電車のホームドアの設置も、死亡事例への反省から加速してまいりました。
 私たちの社会の安全は、大切な人の死亡事例を把握して検証し、そして改善される、その繰り返しの上に成り立っています。学校の死亡事故も同じです。早急な体制の再構築を求めて、次の質疑に移ります。
 小池都知事のもう一つの大きな成果が、ゼロエミッション東京の実現に向けた脱炭素化の取組です。
 気候危機が一層深刻化し、地球沸騰と呼ばれる事態となる中、この危機を回避するには、省エネを徹底するとともに、化石燃料への依存から脱却し、再生可能エネルギーの導入の加速化が急務です。
 知事は、再生可能エネルギーの中でも太陽光発電と水素エネルギーに着目し、東京での実装に向けた取組を牽引してまいりました。
 都内のCO2排出量の七割以上は建物由来であり、中でも家庭部門、すなわち住宅のCO2排出量は全体の約三割を占めています。
 これに対して、知事は、約二年前に太陽光設備の個人宅への導入推進を表明。手厚い支援を行うとともに都民を啓発、事業者をも育ててきました。
 電力の大消費地である東京都のリーダーとして、地方で発電した電気を消費する立場に安住しない、そして、国内のエネルギーミックスにおける再エネの割合を高めることに大きく貢献するものです。
 そこで、太陽光発電設備の設置義務化など、新制度の導入を契機とした住宅などの環境性能向上について伺います。
 都が令和七年四月から施行する建築物環境報告書制度は、断熱、省エネ性能を高め、再エネ設備などの設置を促進する実効性の高い施策です。都は、条例改定以降、私たちの要望も踏まえ、様々な支援策を講じながら、施行に向けた取組を丁寧に進めています。
 先月には、新制度の開始に先駆け、環境性能の高い建設物の普及に取り組む事業者を対象とする、東京エコビルダーズアワードの表彰式が開催されました。そこでは、大手ハウスメーカーのみならず、地域工務店においても極めて優れた取組を行っている事例が紹介されました。
 今後、都が先頭に立ち、環境性能の高い住宅の標準化に向けた取組の輪をさらに広げていくことが重要と考えますが、新制度の施行に向けた決意と併せて、知事の見解を求めます。

○小池知事 新制度の導入を契機といたしまして、脱炭素化に向けて、また、それに加えまして、快適性、防災性の観点からも建物の環境性能の向上を推進することが重要でございます。
 東京エコビルダーズアワードについてのお尋ねでございました。
 これは、高い断熱性能と太陽光パネルを標準搭載する企業など二十六社を表彰したものでございます。企業の規模を問わずに、創意工夫を凝らした取組が進展していることを実感いたしております。
 太陽光パネル設置義務化などの制度につきましては、都と川崎市に続いて、長野県や相模原市などにおいて検討を開始する旨、表明されておりまして、都といたしましても、積極的に協力連携を図ってまいります。
 新制度の開始によって、例えば新技術がさらに促進をされるなど、我が国におけます建物の脱炭素化の流れを大きく前進させる、そのような契機と、また、転機ともなりますよう、今後とも、都民、事業者とともに取り組んでまいります。

○菅原委員 住宅の脱炭素化を実現する具体的な施策として、都の新制度は、ほかの自治体や海外都市からも高い関心を集めていると聞いています。引き続き、制度の円滑な施行と他都市への政策支援を通じて、脱炭素社会の実現に貢献していただくよう要望をいたします。
 新制度を実効性あるものにするためには、制度対象となる事業者の積極的な取組をいかに促していくかが重要です。また、新制度は環境性能の高い住宅の普及を目指しているため、中小企業などの制度対象外の事業者にも分け隔てなく後押しをする必要があります。
 そこで、都は、住宅供給事業者をはじめとする様々な事業者に対し、環境性能の高い住宅の普及を加速させるための取組を継続的に行うべきだと考えますが、具体的にどのような取組を行っていくか伺います。

○栗岡環境局長 都は、これまでに大手事業者等を五回以上訪問し、制度の理解促進と取組状況に応じた補助金の活用を促すなど、事業者の取組を後押ししてございます。
 その結果、屋根形状を見直し、大容量パネルを搭載する住宅など、商品ラインナップの多様化が進んでございます。
 今後、義務対象事業者に加えまして、より多くの企業による任意での制度参加を促し、取組の裾野を広げてまいります。
 さらに、業界団体と連携し、地域工務店等によるパネル設置に必要な認定の取得や施工の効率化など、技術向上に向けた取組を一層促進してまいります。
 都は、制度開始に向け、企業の実情に応じたきめ細かな支援によりまして、環境性能の高い建物の普及拡大を図ってまいります。

○菅原委員 事業者の規模の大小にかかわらず、制度開始に向けた積極的な企業の動きを確認することができました。
 これまで都が義務対象となり得る事業者を何度も直接訪問し、信頼関係を構築するなど、きめ細かな対応を行った成果であると考えます。今後も、業界団体とも連携し、住宅供給事業者だけではなく、中小事業者をも含めた業界全体の底上げを図るよう、引き続き、都による積極的な支援を要望いたします。
 制度の円滑な施行には、住宅供給事業者の取組はもとより、都民の理解促進が不可欠です。都はこれまで様々な広報を行ってきましたが、都民が太陽光パネルを備えた住宅のメリットなどについての理解を深め、具体的な行動に移せるよう、継続的な取組が必要です。
 また、先日の能登半島地震の発生後、太陽光パネルに対し、都民に誤解を与えかねない情報がSNS上で飛び交っていました。都は、あらゆる災害時を想定した太陽光パネルの取扱いなどについて、既にQ&Aにより周知を行っていますが、今後、能登半島地震による太陽光パネルを設置した住宅の被害状況なども確認した上で、正確な情報を分かりやすく都民に発信すべきと考えます。
 そこで、条例成立後のこれまでの取組の成果と、令和七年四月からの新制度の開始に向け、どのように都民の理解促進に取り組んでいくのかを伺います。

○栗岡環境局長 都は昨年一月に、制度に関する相談窓口を開設し、これまで約四千五百件の問合せに対応してきたほか、対象に応じた媒体によりまして、きめ細かな広報を行ってまいりました。
 これらの取組によりまして、昨年十一月に行ったウェブアンケート調査では、三年以内に都内で住宅の新築を検討されている方の制度の認知度は七割を超えてございます。
 また、停電時に太陽光発電を自立運転させる方法や災害時の注意点について、従来からQ&A等を通じて発信しており、引き続き正しい情報の提供に努めてまいります。
 今後、これらに加えまして、都民が住宅の環境性能を検討する際に役立つ情報を分かりやすい動画等にまとめて提供することなどによりまして、都民の理解を一層促進してまいります。

○菅原委員 引き続き、環境性能の高い建物の普及拡大に向けた社会全体の機運醸成に努めていただきながら、都がしっかりと都民、事業者の後押しを行っていただくことを改めて要望して、次の質疑に入ります。
 私たちは昨年、八丈島を視察。離島ならではの様々な課題について学び、既に予算要望や議会の質疑を通じて対応を求めてきました。中でも、離島でのゼロエミッション推進は、災害時のエネルギー供給の継続、燃料輸送コストの削減、再生可能エネルギー関連事業による地域経済の活性化など様々な効果が期待されます。
 島しょ地域において、グリーン電力拡大に資する太陽光発電設備の支援を拡充すべきと考えますが、見解を伺います。

○栗岡環境局長 島しょ地域における太陽光発電設備等の設置については、強風や塩害など、区部や多摩地域とは異なる地域特有の自然条件等への対応が必要なため、導入費用が高くなる場合がございます。
 こうしたことを踏まえまして、都は令和四年度より、島しょ地域向けの手厚い補助事業を実施してございまして、設備費や強風、塩害などの対策等に係る経費の四分の三を上限一億円まで助成してございます。
 来年度は、助成内容を拡充し、蓄電池の補助上限容量を撤廃することで、停電時の電源確保などレジリエンス向上や、再エネの地産地消の観点から、島しょ地域の取組を後押ししてまいります。

○菅原委員 島しょにおける太陽光発電設備の導入には、強風対策や塩害対策が必要であり、設置事業者が限られるとのことです。対応する事業者の一覧をホームページに掲載するなど、導入しやすい工夫をしていただくよう要望いたします。
 女性活躍です。
 女性活躍は、小池都知事のライフワークともいえるものです。知事は、東京にとどまらず、日本全体で女性の活躍を後押しするため、ご自身の発信力を生かして先導的な役割を果たされてきました。
 私たちの要望もあり、今年から始まった東京くらし方会議では、企業における女性の登用についても議論され、本年一月には、大企業を含め三十社の企業と、女性活躍とダイバーシティ経営の推進に向けた共同宣言が出されました。
 特に基調講演では、経営者自身からトップの行動を促す力強い発言もあり、共同宣言をきっかけに、女性の登用を積極的に行う企業のつながりもできたと聞いています。
 今後、この企業同士の輪をさらに広げる取組やネットワークを生かして新たな取組を行うとともに、将来を担う若い世代にも働きかける工夫が必要であると考えますが、都の見解を伺います。

○坂本産業労働局長 働く女性の活躍を推進する上で、その管理職への登用を増やすことは重要でございます。
 これまで都は、会社の女性管理職を増やすため、そのメリットを経営者に伝えるセミナーを開くほか、その登用に向けた制度の導入に係る相談対応を行ってまいりました。
 これに加えまして、来年度は、女性の登用に意欲を持つ企業同士のネットワークづくりを後押しいたします。
 具体的には、本年一月の女性活躍を推進するイベントに参加をした三十社の企業が中心となり、様々な会社に働きかけ、百社以上のグループをつくります。このつながりを通じ、女性管理職を増やすノウハウの共有や、その候補にふさわしい人材の育成等を進めます。
 また、高校生などの若い世代への啓発活動も展開をしてまいります。

○菅原委員 経営者のサポートや企業のネットワーキング、ノウハウの共有や人材育成、そして、若い世代への働きかけと重層的に取り組むことを確認いたしました。
 先週は国際女性デーであり、国内外で女性の活躍を一層推進しなければならないとの共通認識が図られたところです。ご自身が女性リーダーのパイオニアである知事の下、都庁では女性活躍が進み、都内でも女性の首長が目覚ましく増加しました。
 さきに述べた東京くらし方会議では、女性を取り巻く社会に着目し、日々の暮らしや基盤となる働き方について幅広く議論がなされました。その成果も踏まえ、国への提案や多くの企業トップが集まるイベントの開催、さらに、私たちの提案を受け、いわゆる年収の壁への対策も来年度予算に手厚く盛り込まれました。
 ここまでの到達点を踏まえ、今後、女性活躍施策を一層進めていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。

○小池知事 我が国最大の未活用エネルギー、それは女性の力と何度も申し上げてまいりました。その力を経済の分野で遺憾なく発揮できる社会をつくってまいりたいと考えております。
 女性のこれからの活躍が東京の都市としての存在感を大きく左右してまいります。これは都民の生き方、そして働き方を考えるということで、東京くらし方会議でご議論いただいておりますが、その中でも同じことが明らかになっております。
 企業の最前線の現場で働く女性に立ちはだかります、ご指摘もありました年収の壁でありますけれども、これを正確な知識と冷静な判断で乗り越える、その後押しをしていきたいと考えております。職場での一層の活躍に役立つスキルも身につけて新たなキャリアに踏み出す、そのような支援にも力を入れてまいります。
 マネジメントを担う女性のネットワークをつくって、課題解決に向けたやり取りを通じて高め合っていく、こうした切磋琢磨のつながりの大切さを多くの企業に伝えてまいりたいと考えております。
 これまでの働き方を根本から見直す、そして男性が家でリモートで仕事をこなし、育業にも確実に取り組むといったような、これらを支える柔軟な勤務の仕組みを意欲を持って導入する会社を増やしていく、そして女性の活躍の場を広げてまいります。
 これらによって、女性が仕事で輝く東京を実現してまいります。

○菅原委員 男性優位の日本社会で東京都知事として意思決定を行う知事の姿に、どれほど多くの女性が勇気を与えられてきたことでしょうか。
 ご答弁にあったマネジメントを担う女性のネットワークづくり、切磋琢磨のつながりは、まさに小池都知事のご経験に基づく取組だと思いました。引き続き、都から女性活躍施策を牽引していただくようお願いを申し上げます。
 私たちはかねてより、カスタマーハラスメントに悩む多くの都民の皆様の声を継続して取り上げてまいりました。知事もこれを大変重く受け止められており、私たちの今定例会の本会議での代表質問に対し、条例の制定を検討するとの答弁がなされました。全国初の条例制定でもあり、私たちにも多くの期待の声が届いています。
 実効性の確保には、専門家などによる議論を深める必要がある一方で、カスハラは待ったなしの課題であり、ルールづくりと並行して悪質な迷惑行為がなくなるよう、こうしたハラスメントの認知を高めていくことが求められます。
 都は、条例の検討と併せて、顧客などからのハラスメント行為に関し、普及啓発の取組を幅広い関係者に伝わるよう、しっかりと進めていくべきと考えますが、具体的な取組内容について伺います。

○坂本産業労働局長 過大な要求や不当なクレームを受け、働く方がダメージを受けるハラスメントへの対応について、現在、専門家等が検討を進めているところでございます。
 一方、現場では顧客とのやり取りを行う従業員に対して、社会的な常識や通念を超えた言動を行う状況がございまして、これを速やかに抑えるため、来年度、都は、啓発活動に力を入れます。
 具体的には、従業員への苦情を常識を超えた言動で行うことは適切ではないとするポスターに関し、店舗等への配布に加えまして電子データも提供し、掲示の箇所を増やす工夫も行います。
 また、苦情から社員を守る必要性を伝える掲出物も会社に提供をいたします。さらに、これらの内容を発信するサイトを立ち上げるほか、普及啓発を集中的に行う月間も設けます。

○菅原委員 カスハラを防ぐため、様々な普及啓発の取組を行うことが確認できました。
 答弁にあったポスターですが、カスハラは現場で働く従業員の人格を傷つけるものであり、決して許されないということがしっかりと伝わるものをぜひ作成いただきたいと思います。
 都民などに広く呼びかけていくことに加え、カスタマーハラスメントのない東京を実現するためには、企業が現場の最前線に立つ従業員を守るための取組を後押ししていくことも必要です。
 都は、カスハラ防止に向けて企業が置かれている状況に応じた支援を強化すべきと考えますが、見解を伺います。

○坂本産業労働局長 顧客からの過大な要求や不当なクレームから働く方を守る上で、会社の事業の内容に応じたきめの細かい対応は重要でございます。
 これまで都は、顧客からの過大な要求等による従業員のダメージを防ぐための知識や情報の提供に向け、セミナーの開催や専門家派遣を行ってまいりました。
 来年度は、生産やサービス等の事業に応じた実例や対応方法などを紹介するセミナーを開くほか、専門家派遣の規模を六百件に増やし、きめの細かい支援を展開いたします。
 また、普及啓発に向けたウェブサイトの中で様々な会社の事例を動画で紹介し、業務に即した対応の方法やノウハウに関しまして幅広く共有する取組を進めてまいります。

○菅原委員 カスタマーハラスメントをなくすため、条例の速やかな制定と併せ、答弁にあったような普及啓発や企業に対する支援を着実に進めていただくよう要望して、次の質疑に移ります。
 エネルギーや原材料の価格上昇に負けない賃上げに取り組むのと同時に、就業継続できる環境整備も大切です。特に高齢社会の日本では、働き盛りの世代が介護を担う仕事と介護の両立は大きな課題です。
 国においては、介護離職防止のため、育児・介護休業法などの改正法案を今国会に提出する動きがあります。この改正案では、家族の介護に直面した労働者に制度の周知や意向の確認を事業主に義務づけているほか、テレワークの制度を努力義務とするなど、介護離職を防止する措置が盛り込まれています。
 都においても、介護によって仕事をやむなく辞めざるを得なくなる方を一人でもなくすよう、これまで以上に介護離職の防止に向けた取組を強化すべきと考えますが、見解を伺います。

○坂本産業労働局長 会社で働く方が介護と仕事を両立することができるよう、職場環境の整備を効果的に進める支援は介護離職を抑える上で重要でございます。
 中小企業が法令を上回る日数の介護休業等を取得できるルールを設け、従業員の十五日以上の休業とその後の職場復帰を実現した場合、都は奨励金を支給しております。来年度はこの規模を倍増し、六十社に拡充をいたします。
 また、働く方が家族を介護しながら勤務をする際に役立つテレワークの仕組みや機器を導入する会社に最大百万円の助成を開始いたします。
 さらに、今後、会社は従業員に介護休暇等の仕組みを伝える必要性が高まるため、経営者に対し、介護と仕事の両立に取り組む企業の事例を紹介するシンポジウムに関しまして、新たに従業員向けのものも開催をいたします。

○菅原委員 介護離職防止については、主要な支援制度である介護休業制度の利用率ですら三割を下回るなど、制度があっても使われていないという課題があります。この問題についても都が先頭に立って機運醸成を行っていただくことを要望し、次の質疑に入ります。
 私は日野市の選出で、会派内の多摩部会の議論を踏まえて質疑をいたします。
 多摩のインフラについては、歴史的経緯から東西方向の道路交通ネットワークが先行し、その後、南北方向の整備が進められることで、交通基盤の充実が図られてきました。今後、リニア中央新幹線の開通など多摩の交通アクセスは大きく変わっていくことが見込まれます。
 多摩地域の発展に向けては、こうした道路交通ネットワークの整備と連携したまちづくりが重要です。都が公表した多摩のまちづくり戦略の素案の中では、インフラと連携したまちづくりを地元自治体とも連携して、都がプロジェクトとして推進することが示されました。
 整備が進む交通基盤を生かしながら、多摩のまちづくりを着実に進めるべきと考えますが、見解を伺います。

○谷崎都市整備局長 多摩地域は、都心へのアクセスのよさ、企業や大学の集積など多様な魅力を有しており、その発展には、交通基盤と連携したまちづくりを進めることが重要でございます。
 多摩の基幹交通である多摩都市モノレールの箱根ケ崎方面延伸部におきましては、周辺のまちづくりを進め、開業区間と一体となって連携や交流を促進いたします。
 立川周辺におきましては、広域防災拠点へのアクセスルートの確保や交通環境の改善につながるモビリティーの導入、エネルギーの自立化などを図るプロジェクトを推進し、首都東京のレジリエンスを高めてまいります。
 今後、多摩のまちづくり戦略を取りまとめ、魅力あふれる多摩の実現に向け取り組んでまいります。

○菅原委員 多摩都市モノレールは多摩地域全体の交通ネットワークの要であり、延伸によって、その存在価値はさらに高まることになります。かねてからの課題であった多摩都市モノレールへのシルバーパスの適用について、具体的に検討を進めることを要望して、次の質疑に移ります。
 インクルーシブシティ東京の実現に向けた取組も、日本初のソーシャルファーム条例制定をはじめ、小池都知事の下、着実に進められてきました。
 さきの第一回定例会における私たちの代表質問に対し、知事からは、二〇二五年の世界陸上、デフリンピックの両大会について、共生社会への変革の推進力とすること、大会に向けたムーブメントや、誰もが円滑にコミュニケーションできるデジタル技術の社会実装などの取組をレガシーにするとの答弁をいただきました。今後は、二〇二五年への指針としてまとめたアクションブックに記載された取組をしっかりと着実に進めていく必要があります。
 様々な人々と共に一緒に大会をつくり上げていく方針を体現する取組の一つが寄附、協賛です。特に、デフリンピックについては、共生社会への理解を広め、大会を社会全体で支えていくためにも、私たちは寄附、協賛の仕組みを早期に進めるよう要望してきました。
 そこで、デフリンピックの成功に向け、多くの方からの賛同が得られるよう寄附や協賛の仕組みの工夫と早期の実施が必要と考えますが、見解を伺います。

○横山生活文化スポーツ局長 デフリンピックの成功には、みんなでつくる大会として多くの都民や企業に参画していただくことが不可欠でありまして、そのためには、様々な参画手法を整えることが重要でございます。
 このため、寄附につきましては、都民がアクセスしやすいよう広く認知されているクラウドファンディングサイトの活用も検討しております。また、協賛につきましては、大会全体だけではなく、各競技への支援も募るなど、企業等のニーズに合わせた参画しやすい仕組みとしてまいります。
 こうした寄附、協賛の詳細検討を早期に進め、運営組織におきまして、年度内から段階的に募集を開始いたします。

○菅原委員 デフリンピックについては、多くの皆様が参画できる仕組みをつくっていくことが分かりました。今後、より幅広い皆様の賛同が得られる取組を進めていくよう要望いたします。
 東京のDXを推進するに当たり大切なのは、誰一人取り残されないデジタル共生社会を実現することです。
 二〇二五年にデフリンピックが開催される今こそ、障害の有無にかかわらず、デジタル技術を活用して誰とでも円滑にコミュニケーションが取れる社会にしていく必要があります。
 私たちは、昨年の第三回定例会の代表質問において、障害のある方の生活の質の向上に真に役立つサポートを進めていくべきと訴えております。
 都は、障害者の方が日常生活を送る上で便利なアプリやサービスを使いこなせるよう、スマホ体験会などの充実を図るとともに、生活の質を高められるよう、デジタルを活用した支援を充実させるべきと考えますが、見解を伺います。

○山田デジタルサービス局長 視覚、聴覚に障害のある方向けのスマホ体験会では、プログラムに便利なアプリなどの体験を盛り込むとともに、手話や要約筆記の提供、点字や音声教材の事前配布など、障害特性に応じてサポートをしております。
 来年度はフォローアップの場を新たに設け、個別相談に加え、参加者同士で便利な使い方の共有が図れるようにいたします。また、参加後に気軽に相談できる窓口も開設いたします。
 さらに、スマホアプリを活用し、障害者の外出時の困り事をサポートする仕組みを、店舗等の協力を得てまちに導入する取組を開始いたします。
 障害者団体の意見も聞きながら、デジタルの力で障害者の生活の利便性が向上するよう支援を充実させてまいります。

○菅原委員 デジタル共生社会の実現に向け、コミュニケーションをサポートする技術の社会実装を確実に進めていただくようお願いをいたします。
 医療政策に関して伺います。私たちは、社会保障関連費が増大する中、質の向上と効率化に関して継続して取り上げてまいりました。
 新型コロナ感染症の感染拡大が進む中、私たちの提案を受け、都は、東京iCDCを設置いたしました。人口が集中する首都東京には、国とは別に独自の感染症対策が必要であり、適切な取組でした。
 一方で、今年に入り、アメリカのCDCが、感染症リスクの高い東アジアに拠点が必要という判断により、東京に事務所を構えるという報道がありました。
 アメリカをはじめとした諸外国との密な連携により、感染症への対応を進めることが必要と考えますが、知事の見解を伺います。

○小池知事 感染症には国境がございません。そして、未知のウイルスに備えるためには、最新情報、そして科学的知見の共有に向けまして、国内外のネットワークを拡充することは大切であります。
 都は、東京iCDC、こちらには八十名もの国内外の専門家の皆さんから助言をいただいて、そして、この間、新型コロナと闘ってきたわけでございます。
 そこから得た知見を取りまとめて、国、そして研究機関、大使館などと共有をいたしました。そして、アメリカCDCやシンガポールの政府機関も訪問いたしまして、今後の感染症対策などについて意見交換も行ってまいりました。
 今後ですが、アメリカをはじめといたしました世界各国のCDCや大学、研究機関などとのネットワーク強化をいたしまして、顔の見える関係を構築することで様々な感染症の脅威に備えてまいりたいと考えています。

○菅原委員 近年、医療の進化によって、SMA、脊髄性筋萎縮症とSCID、重症複合免疫不全症は、早期発見と早期治療ができれば自立歩行ができるまで回復するケースがあることが分かりました。
 ところが、これらの病気の検査が新生児マススクリーニングの対象に含まれておらず、その結果、発見が遅れるという問題がありました。
 私たちは、令和五年第一回定例会の代表質問や厚生委員会において、新生児マススクリーニングにこれらの病気の早期発見のための項目を入れる提案をしてきました。
 都は来年度、どのように取り組んでいくのかを伺います。

○佐藤福祉局長 新生児マススクリーニング検査は、国の通知に基づきまして、これまで先天性代謝異常等の二十疾患を対象として都道府県が実施してまいりました。
 今般、国が、この二十疾患以外で新しい治療法が開発されている重症複合免疫不全症、脊髄性筋萎縮症の二疾患についても、検査を行うモデル事業を開始いたしました。
 都は、この二疾患と同時に検査結果が判明するB細胞欠損症を独自に加えた計三疾患につきまして、本年四月から新たに公費負担を開始いたします。
 今後、さらに検査対象に追加すべき疾患につきましても、専門医の意見などを聞きながら検討を進めるとともに、国に対しては公費負担の対象拡大を求めてまいります。

○菅原委員 それでは、次の質問に入ります。
 毎年約三千名もの女性が命を落としている子宮頸がんの予防策として、HPVワクチンの接種は有効です。しかしながら、日本では、副反応に対する懸念から長らく接種が控えられ、その結果、接種率は先進国の中で最低水準にとどまっています。
 現在、積極的勧奨の差し控えで接種する機会を逃した方に向けた救済措置、いわゆるキャッチアップ接種が行われています。無料で定期予防接種を受けることができますが、対象世代の約六割が認知していないという調査もあります。
 キャッチアップ接種の期限は来年三月末までとなっており、来年度当初から早急に制度周知や正しいHPVワクチンに関する意識啓発をすべきですが、見解を伺います。

○雲田保健医療局長 HPVワクチンは、標準的には三回接種の完了までに六か月が必要とされており、キャッチアップ接種の実施期限である令和六年度末までに計画的に接種していただく必要がございます。
 都は、実施期間の終了を見据え、都立高校や都内の大学への情報提供のほか、区市町村に対し未接種者への個別勧奨の依頼を行うなど、幅広く周知を図っております。
 来年度は新たに、対象となる年齢層にターゲットを絞った啓発動画を配信するとともに、リーフレットやポスター、SNSなどを活用した接種期限の周知に取り組み、教育所管部局とも引き続き連携を図りながら、効果的な情報発信を早期に展開し、接種を促進してまいります。

○菅原委員 年度当初からの重層的な周知、広報が行われることを確認できました。特に重要なのは学校との連携となりますので、教育庁とも連携しながら効果的な周知をお願いいたします。
 定期接種の対象となっていない男性の場合、ワクチンが自費となり、接種が進んでいません。私たちは令和五年第三回定例会において、国に先駆けた男性のHPVワクチン接種助成を求め、知事からは制度創設に取り組むとの前向きな答弁がありました。男性接種の助成が予算案に盛り込まれたことは画期的です。
 既に二十程度の区市町村で実施に向けた検討が進んでいると聞いていますが、男性のHPVワクチン助成が多くの自治体で進むよう、都としても関係者へ積極的に働きかけを行うべきと考えますが、見解を伺います。

○雲田保健医療局長 都は、HPVワクチンの男性への接種が定期接種化されるまでの措置として、来年度から独自に、小学六年生から高校一年生相当の男性を対象に、区市町村が負担する接種費用の二分の一を補助いたします。
 本事業の趣旨や仕組みにつきまして、東京都医師会等を通じて地域の医療機関に周知するほか、区市町村向けの説明会を行うなど、様々な機会を捉え丁寧に説明することで、都の補助事業の活用を促してまいります。
 あわせて、国に対し、定期接種化に向けた検討の促進を改めて働きかけてまいります。

○菅原委員 既に諸外国においては、男女とも公的接種の対象になっていますが、日本では遅々として議論が進んでいません。国に先駆けた都の取組が日本全体に広がるよう、しっかりと国に働きかけていただくよう求めます。
 介護離職をなくすためには、そのための社会システムの構築が不可欠です。これを担うのが介護人材です。女性が担うことが多いためか、古い政治では、介護人材の待遇は長く据え置かれたままでしたが、私たちは現場の声を丁寧に拾い、伝えてきました。
 ケアマネジャーから寄せられる課題の一つに更新研修の負担があります。この研修は、長時間の研修に何日も通う必要があり、研修時間が長い、最新の内容が反映されていないなどの意見が寄せられています。オンライン化などにより負担軽減に取り組んでいることは承知しておりますが、抜本的な改善にも着手すべきです。
 介護支援専門員の更新研修において、ワーキングチームなどを開催し、改善に向けた議論を進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。

○佐藤福祉局長 介護支援専門員は、五年ごとに資格の更新が義務づけられておりまして、更新に当たりましては、法令により国が定める研修の受講が必要でございます。
 都はこれまで、研修のオンライン化を進めまして受講者の負担軽減を図ってまいりましたが、研修時間数の多さや科目間での内容重複など、実務経験を有する介護支援専門員にとっては負担となっております。
 また、主任資格の更新には、法令に定める研修に加え、区市町村等が実施する研修の受講も要件とされており、さらに負担が大きくなっております。
 今後、こうした区市町村等が実施する研修の義務化を見直すなど、都独自の負担軽減を図ります。さらに、都としても、学識経験者や事業者団体等の意見も伺いながら、質の担保と負担軽減が両立した研修内容となるよう検討いたしまして、国に対して見直しを提案してまいります。

○菅原委員 児童相談所の件、伺います。
 埼玉県が構築した児童相談所と警察本部の双方が児童虐待情報を入力し、共有できる児童虐待情報システムは、今では全国約半数の自治体が導入しています。私たちは埼玉県の取組を視察いたしましたが、導入予算は一千万円程度とのことでした。
 ハイリスク状態にある子供たちを守るためには、児童相談所だけではなくて、多くの関係者や多様な職種の関わりが必要です。そのために大切なのが情報共有です。
 都は、児童虐待情報システムをできるだけ早いタイミングで導入すべきと考えます。見解を伺います。

○佐藤福祉局長 都は、平成三十年九月に警視庁と協定を締結いたしまして、虐待に該当しないケースや児童相談所の助言指導で終了したケースなどを除き、リスクが高いと考えられるケースを全て共有しておりまして、定期的にケースの一覧データを情報提供するとともに、緊急性が高いケースはその都度提供しております。
 さらに、児童虐待に関する情報を都内の児童相談所と警察署の間でリアルタイムの共有ができるよう、システムの構築に向けて、現在、警視庁と鋭意協議を進めております。

○菅原委員 先日の台東区で起きた四歳児の死亡事件は本当に悲しいことでした。この事件については警察の捜査によって全容が解明されると思います。
 今回の質疑に向けたやり取りの中で、台東区の死亡事件について、児童相談所から警視庁への情報提供が三回であったことが分かりました。今後予定されている今回の台東区の事件に関する都の検証においては、児童相談所と警視庁の情報提供の状況についても検証するよう要望をいたします。
 最後に、知事に伺います。
 私たち都民ファーストの会東京都議団は、一部の人間、集団の利益のための政治と決別し、都民ファーストの視点で、人が輝くための政策を知事と共に前へと進めてきました。
 知事は、就任以降、セーフシティ、ダイバーシティ、スマートシティの三つのシティ、さらにはその核となるChildren、Choju、Communityの三つのCなど、人に着目し、東京を成長と成熟の両立した都市へと発展させるべく、様々な改革を断行してきました。とりわけ、二期目においては、新型コロナウイルスとの闘いの先頭に立ち続けながら、旧来の常識にとらわれることなく、大胆な発想で、都民と共に東京大改革をさらに前へと推し進めてきました。知事の行動を改めて評価いたします。
 知事は、これまでの成果をどのように捉えているのかを伺い、質疑を終わります。

○小池知事 まず、鳥の目で見ますと、我が国は今、少子高齢化、人口減少など、長年先送りにし続けてきた構造的な様々な課題が先鋭化しているといっていいと思います。まさに今、大きな転換点を迎えております。
 そこで、将来、一体どうなるんだろうかという、都民の皆さんは明るい未来への展望、道筋が見えないということが不安につながっていると、このように考えなければなりません。だからこそ、今、手を打たなければならないという課題、これについて取り組んできたわけでございます。都民ファーストの視点から、東京大改革、全身全霊で努めて、推し進めてきたと、このように考えております。
 なすべきは、時代の行く末をしっかりと見定めることであります。そして、覚悟を持って社会の形を変えるということで、東京のポテンシャル、最大限に引き出すことだと考えております。その鍵は、まず三つのシティがありますけれども、それを支える核であり、鍵となるのはやはり人です。そして、Children、Choju、Community、この三つの観点から様々な政策を練り上げて、果敢に展開をしてまいりました。
 待機児童の解消、チルドレンファースト社会の実現などなど、全て人が関係しております。女性、高齢者、障害者など、そしてまた、スタートアップも人がなし得るものでございます。TOKYO強靱化プロジェクトの立ち上げで安全・安心を守っていく、その取組にも全力で取り組んできたところでございます。また、デジタルの力、これも世界に追いつき、追い越していく必要がございます。
 東京大改革、これまで足跡を幾つか残してまいりました。それはすなわち、大都市東京がこれから伸びていく、それも持続的に発展していくために必要な軌跡だと、このように考えております。

○内山委員長 菅原直志副委員長の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時三十九分休憩

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