予算特別委員会速記録第三号

○三宅委員長 阿部祐美子委員の発言を許します。
   〔委員長退席、宇田川副委員長着席〕

○阿部委員 長引くコロナ禍が、社会の様々な場面、とりわけ社会の弱い立場の人たちにひずみをもたらしています。東京都は、コロナ禍にあっても、令和四年度予算案において、税収は前年度約一一%増、五千八百億円もの伸びを見込んでいます。格差の拡大は社会を閉塞させ、多様性は社会を強くします。誰もが持てる力を十分に発揮できることが持続可能な東京づくりの鍵であり、社会的、経済的、法的に弱い立場にある人たちの力を引き出していくことが東京都の役割だと考えます。
 今日は国際女性デーでもあります。百年余り前の女性参政権を求めた運動をリスペクトして定められたこの記念日は、女性の政治的、経済的活動の拡大を目指すものです。近年では、生物学的性、生理や妊娠など生殖に関わる特性から生まれる社会的な不利益にも注目が集まっています。これらの解消は、少子化をはじめとする社会の諸課題の対策としても欠かせません。この分野でも、知事のリーダーシップに期待したいと思います。
 都政が取り組むべき課題は多岐にわたりますが、本日は、子供や教育の分野を中心に、具体的な課題について質問と提案を行っていきたいと思います。
 初めに、子供に関する施策についてお伺いいたします。
 まず、保育園に関することです。
 知事の施政方針演説にもあったように、保育園待機児童数はいっときに比べて大きく減少をしています。各自治体もそれぞれ工夫や努力をしてまいりましたが、東京都が力強く後押ししたことが大きいと評価をしています。都市部でもここ数年、ゼロ歳児の定員に余裕が出てきました。一方で、依然として一歳児の待機児童は解消がされていません。
 このため、育休を前倒ししてゼロ歳児で入園申請する家庭が少なくなく、親子の時間にも、そして行政としても、双方にとって負担になってしまいます。このような状況を踏まえ、対策を講じるべきだと考えますが、知事のご見解をお伺いいたします。

○小池知事 私は、就任直後から待機児童の解消を都政の最重要課題の一つに位置づけまして、都独自に様々な取組を講じ、保育サービスを拡充してまいりました。
 平成三十年度からは、待機児童の半数以上を占めます一歳児を受け入れるため、余裕スペースなどを活用する取組を支援しております。来年度は、ゼロ歳児の空き定員を一歳児の受入れに活用できますよう、定員変更を行う保育所に補助することといたしておりまして、今後とも、区市町村と連携して、待機児童の解消に取り組んでまいります。

○阿部委員 その最後の定員変更への支援というのは大変重要なところだと思います。これまでゼロ歳児の支援が手厚かったため、保育所経営の観点から、定員変更がなかなか進みませんでした。定員変更は、二歳児にも影響してくるはずですので、ぜひ、引き続きの目配りをお願いしたいと思います。
 なかなか改善が進まない保育士の処遇についてもお伺いします。
 そもそも、各自治体が保育所に運営委託費を出す上で、人件費の積算額はそこまで低いものではありません。昨年三月末に、内閣府は全都道府県宛てに初めて、私立保育園の保育士さんの地域区分別人件費金額を示した通知を出しました。これによって、この金額と実際の保育士さんの年間給与の間には数百万円もの乖離があることが分かりました。
 幾ら処遇改善に税金を投入しても、そもそもの人件費の積算よりはるかに低い額しか給与として支払われなければ、保育士さんの給与は低いままです。東京都は保育士が適切に処遇されるよう努めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○中村福祉保健局長 国の処遇改善等加算におきまして、区市町村は保育所等からの実績報告で賃金改善の状況を確認しております。
 都は、独自に実施しております保育士等キャリアアップ補助について、事業者に対しまして、職責や職務内容等に応じた賃金体系などの届出や、賃金改善の実績報告などの提出を求めるとともに、施設運営の透明性を確保するため、財務情報の公表などを補助の条件としております。
 今後とも、保育士等のキャリアアップや処遇改善が着実に図られるよう取り組んでまいります。

○阿部委員 東京都が補助に当たって実績報告などを求めているのはいいことだと思います。ただ、公表の仕方など、まだまだ改善の余地があるのではないかと思います。保育園が数の拡大から質の向上へとシフトする中で、保育職員の人件費率は重要なところだと思います。穴の空いたバケツに税金を入れるということにならないよう、ぜひ工夫をしていただきたいと思います。
 次に、医療的ケア児への支援についてお伺いします。
 六、七年前になりますが、私は医療的ケアを必要とするお子さんのご家庭から、保育園の入園についてご相談をいただいたことがあります。ずっと自宅で大人に囲まれて過ごしていたお子さんが、保育園に行き始めると、周囲の子供たちに関心を持ち、そして、体を動かし、言葉を発し、見違えるように成長していった姿、本当に感動を持って、目の当たりにいたしました。
 昨年秋の支援法施行に伴い、東京都の新年度予算にも様々な施策が盛り込まれております。大変喜ばしく思います。その一つが、特別支援学校への登下校の専用車両の運行の拡充です。ただ、専用車両利用を現状で利用できないケースも少なくありません。そうしたご家庭の不安の声は、これまでも教育委員会にお伝えさせていただいております。
 都教委として、こうしたお子さんにどのように通学手段の確保を図っていかれるのでしょうか。

○藤田教育長 現在、医療的ケアの内容などについて、保護者から学校への引継ぎが完了するまでの間は、保護者の付添いによる通学をお願いしているところでございます。
 来年度からは、専用通学車両に乗車できるようになるまでの間、福祉タクシー等を利用した場合、通学費の支援対象とすることで、医療的ケア児の通学手段の適切な確保と保護者負担の軽減を図ってまいります。

○阿部委員 とても大切な決断だと思います。医療的ケア児をはじめ、障害や病気のある子供たちの成長機会確保のために、ぜひ引き続き、様々な環境を整えていただければと思います。これは教育長、そして福祉保健局にも、双方にお願いをしていきたいと思います。
 次に、社会的養護を必要とする子供たちへの支援についてお伺いをいたします。
 児童相談所については、昨日の代表質問で質疑がありましたので、ここでは一時保護所についてお伺いをいたします。都立の児童相談所の一時保護所で、コロナクラスターが発生をいたしましたが、都の対応をお伺いいたします。

○中村福祉保健局長 新型コロナの陽性となった児童が入所しております一時保護所では、感染を拡大させないよう、新たな児童の受入れを一時停止いたしました。保健所から随時指導を受け、ごみ処理や防護服の取扱い、陽性者との居室の区分けの方法などの感染対策を取りながら、児童への支援を行いました。
 児童の受入れについては、そのほかの都の保護所で行うとともに、特別区との協定に基づき、区の保護所での受入れ調整を行うなど、一時保護の需要に適切に対応いたしました。

○阿部委員 発生後の対応は適切に行っていただいたということであります。
 ただ、一方で、一時保護所はそもそも定員超過が常態化しており、こうしたこともリスクにつながっているのではないかと思います。余裕のある対応のためにも、目標を示して計画的に整備をすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○中村福祉保健局長 都はこれまで、一時保護所の定員を順次拡大しており、今年度は児童相談センターの一時保護所を拡張いたしました。また、特別区と協定を締結して、保護所の相互利用を行っております。
 現在、令和二年度まで使用しておりました立川児童相談所の一時保護所の改築に向けて準備を進めておりまして、今後とも、不足している定員の充足に向け、一時保護需要等を踏まえ、特別区とも連携しながら必要な定員を確保してまいります。

○阿部委員 不足している定員の充足というのは若干分かりにくい表現だと思いますが、一時保護を必要としている子供の数に比べて、一時保護所がまだ足りていないという認識で整備を進めているということで理解をいたしました。
 施設の整備は、専門人材の確保とセットで行われる必要があります。まずは定員超過の現状を早急に解消するよう、引き続き努力をしていただきたいと思います。
 さて、東京都の一時保護所は、近年、処遇が改善してきていると認識をしております。とはいえ、子供たちはこれまで通っていた学校や周囲の人間関係からいきなり遮断をされる。これは、子供の安全確保という意味では一定の理解もできる面がありますけれども、当然ながら、子供自身の精神的な負担は大きいと考えます。
 例えば、状況に応じて、在籍校の教員等とのコミュニケーションの継続を図るため、オンラインの活用なども行うべきではないかと考えますが、見解をお伺いいたします。

○中村福祉保健局長 児童相談所では、保護児童の学習や進路等に関しまして、必要に応じてオンラインなども活用しながら、在籍校の教員等と連携した相談支援を行っておりまして、今後とも様々な方法により学校との連携を強化し、保護児童を支援してまいります。

○阿部委員 ありがとうございます。
 既に活用が始まっているとのご答弁でした。とはいえ、まだ、児童相談所ごとに差もあるようですので、ぜひ広げていっていただきたいと思います。
 社会的養護に関しては、虐待の未然防止や早期発見、家族の支援、介入、ゼロ日死亡の防止、あるいは弁護士の配置を含めた権利擁護体制、児童養護施設での心理ケア、また、里親委託の拡大、フォスタリング機能の充実、そして進学率の向上、アフターケア、障害のある児童の卒後、そして、国レベルでの法的あるいは司法制度上の整理など課題が山積をしております。全てに今以上の予算もかかります。今回はごく一部に触れただけではありますけれども、今後も引き続き、様々な角度から取り上げていきたいと思います。
 次に、学校教育についてお伺いをいたします。
 都教委は、全公立中学校生徒に英語スピーキングテストを実施するとともに、四年度から、その結果を都立高校入試に活用するとしています。本定例会の一般質問で、私たちの会派の竹井議員からも指摘があったとおりです。
 改めて、令和四年度の同テストの予算額とその内訳についてお伺いをいたします。

○藤田教育長 来年度のスピーキングテストの事業費の予算額は五億七百一万円であり、テスト実施に係る運営費のほか、感染症防止対策等に係る費用として計上しております。

○阿部委員 計五億円余りとのことです。この予算の中で、公立中学校の生徒は全員無料でテストを受けることができます。けれども、私立中学校、その他の生徒については、現段階で徴収するかどうか未定と聞いております。
 これが任意のテストであれば、有料でもおかしくはありません。けれども、都立高校の受検に必要なテストとなると、受験する生徒の在籍が公立中か私立中かによって、受験に要する費用に差が生じるのはおかしいのではないかということをまず指摘しておきたいと思います。
 さて、このスピーキングテストの都立入試への活用については、評価の扱いや不受験者の扱いなど疑問の声も上がっています。
 三月二日の衆議院文部科学委員会で、立憲民主党の吉田はるみ議員がこのテストについて取り上げ、不受験者に対する取扱い等に関して質問をしたのに対し、末松文部科学大臣が、釈然としない部分もあると答弁をされました。
 これに対する都教育委員会の見解、受け止めについてお伺いいたします。

○藤田教育長 文部科学大臣の発言の意図につきましては分かりかねますため、お答えすることができません。
 スピーキングテストについては、中学校における学習成果を的確に評価し、英語の総合的な指導の充実を図るとともに、その結果を都立高校入試に活用することで、高校での学習に円滑に接続することを目的としております。
 スピーキングテストをやむを得ない理由で受けられなかった生徒が都立高校入試を受検する際には、不利にならないように取り扱うことといたしております。その詳細につきましては、保護者や中学校等に対して、適切な時期に周知することといたしております。

○阿部委員 不受験の際の点数の取扱いといった、制度の根幹にも関わる取扱いの詳細がまだ決まっていないまま、テストの申込時期は四か月後に迫っています。大臣でさえ釈然としない中で、当事者である受験生本人や保護者が心から納得できるでしょうか。
 このスピーキングテストにおいて、私が最も心配しているのは、障害等のある生徒への特別措置が不十分ではないかということです。
 特に、発声に関する、声を出すということに関する困難は、本人も病気と気づかないまま悩み、正確な診断にたどり着くまでに数年を要することも少なくありません。吃音だけではない様々な発声の困難、これは、学校や教師の間でもまだほとんど知られていないのが現状です。
 こうした生徒が確実に特別措置を申請できるために、教員の理解が重要であると考えますが、教育委員会の取組についてお伺いをしたいと思います。

○藤田教育長 中学校英語スピーキングテストの実施に当たり、障害のある生徒が安心してテストを受けられるようにするためには、中学校の教員が障害の特性や合理的配慮に関して十分に理解しておくことが必要でございます。
 このため、来年度実施する教員向け説明会においては、吃音や発声に関する障害の特性と、特性に応じた特別措置の内容について情報を提供することとしており、教員による理解を促してまいります。

○阿部委員 心身の困難が生徒の能力を過小評価させることはあってはならないことです。今、情報を提供し理解を促進とおっしゃいましたけれども、それは一朝一夕にできることとはとても思えません。導入されれば、入試という大きな意味を持つテストだけに、専門家の意見も踏まえた十分な配慮、そして時間も必要ではないでしょうか。
 そもそも、今度の受験生は、中学校入学前からコロナ禍で、マスクをしながら授業を受けてきた子供たちです。今、一足飛びに入試まで取り込むことが適切なのか、いま一度考えていただきたいと思います。
 さて、今日は国際女性デーです。学校の中では今も様々な場面でジェンダーの偏りが見られます。
 一つ例を挙げます。PISAの調査から見る高校生の数学リテラシーは、日本も含め、どの国も男女差がほとんどないにもかかわらず、日本での理工系大学の女性比率は二割弱と極端に低い状況にあります。OECD諸国の中で最も女性の理系能力を無駄にしている国とされ、理工系人材の不足が深刻な日本の中で看過できない問題です。
 まず、都立高校の中で、理科、数学それぞれの女性教員の割合と、そこにある課題についてお伺いをしたいと思います。

○藤田教育長 令和三年五月一日現在、都立高校における理科、数学の女性教員の割合は、理科が二六・三%、数学が一七・四%でございます。
 都教育委員会は、教員の採用に当たりましては、能力、適性に基づき適切に選考を実施しているところでございます。

○阿部委員 実態として、都立高校の理科の先生のうち、女性は平均して四人に一人、そして数学は六人に一人しかいません。進路選択には、身近なロールモデルの存在が非常に大きく影響をします。女子生徒が身近に理数系の女性の教師がいたかどうかで、理系への選択率は一一%の開きがあるとの調査もあります。
 つまり、都立高校の中にも、女子生徒が無意識のうちに理系を選ばない構造が隠されているといえます。このままでは、今後も偏りが再生産されてしまいます。無意識の偏りを埋める意図的な工夫が必要です。
 女子生徒が理数分野に関心を持ちやすくするための都立高校の取組についてお伺いをいたします。

○藤田教育長 都立高校では、生徒の理数分野への興味、関心や意欲を高めるため、特色ある教育活動を実践しております。
 こうした活動の中で、例えば、首都圏の中学、高校と連携して、女子生徒による研究発表等を女子中学生にも公開するなど、理数分野に関心を持つ生徒の裾野を広げる取組を行っております。
 また、国内外の女性研究者や学生との交流を目的としたシンポジウムの実施など、キャリア形成と研究活動を支えるネットワークづくりに資する取組を行っております。

○阿部委員 都立高校でも様々な工夫をされていることが分かりました。こうしたことがスーパーサイエンス校など一部の高校にとどまるのでは不十分で、ぜひ面的な広がりを期待いたします。
 さて、子供の能力が十分に引き出されていないという意味では、外国につながりのある生徒についてもしかりです。
 私も、品川区内のNPOなどの活動を通して可能性を広げていったり、逆に優秀でありながら日本語が壁となって高校進学を諦めたりする子供たちを見てまいりました。
 東京都は、高校生世代の外国人数が他県に比べて突出して多いにもかかわらず、都立高校の受入れ枠は増えたとはいえ八校。量的にも質的にも神奈川県や大阪府などのいわゆる先進県には届いておりません。高校在籍率は約三割にとどまっております。
 文科省は、全ての生徒に対し、能力に応じた個別の指導を行う制度を令和五年度からスタートさせたいとしており、四年度のうちにどれだけ準備を整えられるかが肝腎となっております。都教委としての準備状況をお伺いいたします。

○藤田教育長 令和五年度から、高等学校において、一人一人の状況に応じた日本語指導を授業として実施する特別の教育課程の制度化が予定をされております。
 都教育委員会は、今後、国が示す詳細な内容に対応できるよう、教員が指導に活用できるハンドブックを作成するなどの準備を進めているところでございます。

○阿部委員 ハンドブックもこれから作成ということですが、そのスピード感で大丈夫なのか、少々心配なところです。
 外国につながる生徒の多くは、八校以外の多くの定時制、三部制に在籍し、必ずしも十分な支援を受けられていないように見受けられます。
 多文化共生教育の実績を積んできた、例えば都立小山台高校定時制など、幾つかの学校を拠点として支援を行うなど、体制全体を強化するよう検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。

○藤田教育長 都立高校の定時制課程には、外国につながる生徒が在籍しており、都教育委員会は、これらの生徒に対して、一人一人の言語に対応した個別の日本語指導を各学校が実施できるよう、外部人材等の活用を支援しております。
 また、教員の指導力向上を図るため、実践事例を発表する指導体験発表会を開催し、日本語に関する学校設定科目の設置やNPOと連携した進路指導など、外国につながる生徒への指導事例等の共有を図り、各学校における指導の充実に向けた取組を推進しております。

○阿部委員 東京都に暮らす外国につながる子供たちは、特に家族滞在の資格が多いのが特徴です。卒業時に進学や就職に結びつかなければ、家族滞在の場合は在留資格の継続が難しくなります。このことは人生を左右する極めて大きな不利益です。
 外国につながる生徒の卒業後の進路保障を含めた支援の充実が必要と考えますが、重ねて見解を伺います。

○藤田教育長 外国につながる生徒の進路指導においては、生徒の在留資格と進路希望等との状況を踏まえた個別の指導が必要でございますため、各学校において、法律の専門家や関係機関と連携を図るなど、生徒の進路実現に向けた丁寧な指導を行っております。
 都教育委員会は、各学校の指導の充実を図るため、生徒の言語に対応した外部人材等を活用して、個別の指導を行うことができるよう支援するとともに、様々な指導場面で教員が活用できるハンドブックを作成し、外国につながる生徒に対する進路指導等での活用を促すこととしております。

○阿部委員 一定の努力をしていることは分かります。ただ、結果的に高校進学率の向上に結びつかなければ、さらなる工夫が必要であるということでもあります。
 中学校での進路指導、高校でのサポート、在留資格の取得やそのための進学指導、就労支援など、都庁内の様々な部署が連携する必要があることから、その中核となる担当を組織の中に位置づけることを強く要望して、次の質問に移りたいと思います。
 公共交通についてお伺いします。
 東京都本体は、コロナ禍の中でも大幅な税収増とのことですが、都営交通は大幅な減収となり、経営に大きな影響を及ぼしています。
 コロナ以降、この四月までで、都営交通では何路線の路線廃止や減便等を実施または計画しているのでしょうか。また、今後廃止や減便等の対象としているのはどの程度の規模なのか、確認をしたいと思います。

○内藤交通局長 都営バスは地域の暮らしを支える身近な移動手段であり、その機能を安定的、持続的に発揮することが重要でございます。
 これまでも、地域ニーズや代替交通の有無など、路線の特性、需要の変化をきめ細かく把握し、毎年定期的に路線の新設、廃止や増便、減便などの見直しを行ってきたところでございます。
 コロナ禍以降、需要の変化を慎重に見極めてまいりましたが、今後も一〇%程度の減少が続くと見込んでおり、今春のダイヤ改正で、利用が大幅に減少している路線のうち、他路線と重複する三路線の運行を終了、深夜バス三路線を休止いたします。
 また、既に実施したものを合わせまして、計四十八路線で減便となりますが、お客様の利便性に最大限配慮しまして、ほとんどの路線で利用が多い時間帯の運行間隔の拡大を三分程度にとどめております。
 今後とも、地域ニーズや需要動向に合わせまして、適切なダイヤを設定してまいります。

○阿部委員 三路線で運行終了、三路線で深夜バス休止、計四十八路線で減便。安定的、持続的な発展といわれますけれども、サービスの低下や中長期的な人材確保にも影響が出るのではないかと心配をしております。
 例えば、私の地元の品川区八潮地域では、今でも、ベビーカーを利用する方々が、時間帯によっては満員のために都営バスに乗れず、何本も待つ、増便してほしいというお話をコロナ禍であっても寄せられております。
 こうした声に対し、独立採算だから難しいということではなく、厳しい経営環境の中でも、都営交通として、地域の必要性に積極的に応えていただきたいと思いますが、見解をお伺いいたします。

○内藤交通局長 交通局では、お客様や地域のニーズを踏まえまして、安全・安心の確保やサービス向上に取り組むとともに、首都東京の公営交通事業者として、福祉や観光など都の施策とも連携し、東京の発展に資するよう事業を運営しております。
 これまでも、他事業者に先駆け、都営バスで二人乗りベビーカーの取扱いを開始するとともに、新たに策定する経営計画では、安心、快適なご利用に向け、都営地下鉄の全駅でのホームドアの整備、バリアフリールートの充実などに取り組むほか、福祉インフラの整備にも協力するなど、厳しい経営状況におきましても、必要な事業を着実に進めてまいります。
 今後とも、お客様に寄り添い、東京が抱える課題の解決にも貢献していくことで、より信頼され、支持される都営交通を目指してまいります。

○阿部委員 都の施策との連携は、ぜひ大切にしていただきたいと思います。幾ら子供は宝だといっても、用事があるのに、子連れでバスにも乗れないようでは、子育てはしんどいままです。むしろ都営交通でも子供料金の低廉化を図り、週末の家族需要の掘り起こしを図るなど、ぜひ攻めの姿勢で頑張っていただきたいと思います。
 東京都のマイカー保有率は全国でも最も低く、それだけ公共交通の果たす役割は大きいと考えております。単に運賃収入と運行経費だけで評価をするのではなく、地域の公共交通が福祉や観光など多方面に及ぼす効果も含めて評価する考えもあります。こうした考えについて、都はどのように考えているのか、見解をお伺いいたします。

○上野東京都技監 地域公共交通に伴う副次的な効果を評価する考え方につきましては、様々なものがあると認識しております。
 なお、公共交通が生み出す価値の算出方法につきましては、地域公共交通を主体的に担う区市町村の状況も踏まえて、都として研究してまいります。

○阿部委員 ぜひしっかりと研究していただいて、エビデンスに基づいた政策決定をしていただきたいと思います。
 都内でも多摩地域は民間事業者が主体で、さらに厳しい状況にあります。地域公共交通の基本方針を契機として、各自治体が取組を進めていくためにも、都として計画の立案と実施の双方に支援をしていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○上野東京都技監 地域に適した移動サービスを構築し、誰もが活動しやすいまちを実現するためには、区市町村が関係者と緊密な連携を図りながら主体的に取り組むことが重要でございます。
 都は、区市町村が行う計画策定に対しまして支援を開始するとともに、計画の中で位置づけられた取組が推進されるよう後押ししてまいります。
 こうしたことによりまして、区市町村の取組を支援し、地域公共交通の充実を図ってまいります。

○阿部委員 今の民間事業者の現況などから見ても、ぜひ手遅れにならないよう、スピーディーかつ効果的な対応を求めたいと思います。
 最後に、コロナ禍での介護の現場で働く方々への応援、支援についてお伺いをしたいと思います。
 コロナ禍の中で、介護の現場は非常に困難な状況が続いております。特にオミクロン株の感染が急拡大した今年一月、二月、重症化のリスクの高い高齢者の施設ではクラスター発生の危険と日々背中合わせで、施設の職員の方々は常に緊張を強いられてきました。
 また、感染者や濃厚接触者になった職員が頻発し、勤務体制を組むのが困難な状況になっても、業務を継続しなければいけない状況が続いておりました。
 二月には、東京都は、人材派遣を活用した介護施設への応援体制強化事業を始めておりますけれども、応募数に比べて利用実績は伸びておりません。利用できる人材派遣会社が一社のみということも、使いにくさがあるのではないかと思いますが、より柔軟なマッチング制度にしつつ、感染拡大時の人手不足にスピーディーに対応できるようにすることが重要だと思います。
 介護施設への人材派遣を活用した応援体制強化を、今後、来年度も引き続き実施をすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○中村福祉保健局長 都は、新型コロナの感染拡大の影響によりまして、運営体制に支障が生じております高齢者施設に対しまして、人材派遣を活用して代替職員を派遣する事業を実施しているところであります。
 本年四月以降は、今後の感染状況等を踏まえて対応してまいります。

○阿部委員 今の状況を見れば、事業の継続が必要であると考えますので、適切に対応していただくよう、要望をしておきます。
 さて、感染者の急増で入院ができない高齢者が急増いたしましたが、感染者となっても、介護の必要性はなくなりません。訪問介護の現場では、自宅で療養する感染者のケアに当たる際のリスクや、あるいは自分自身を通して他の利用者さんにうつしてしまうのではないかという心配と闘いながら、日々の業務を行ってこられた訪問介護の方々も大勢いらっしゃいます。
 こうした在宅療養者へのハイリスクな訪問に対して、例えば訪問医療や訪問看護では加算が制度化されております。しかし、こうした加算は訪問介護にはないことに事業者から改善を求める声が上がっていました。
 これはお金の問題でもありますけれども、同時に、より本質的な介護者としての誇りの問題でもあります。
 こうした医療と介護の格差に東京都として何らかの手だてができないかということで、担当部署の方と意見交換を重ねてまいりましたが、実はこれ、数日前に厚労省からそれを可能とする通知が新たに出まして、この件は都に重ねて求めることはいたしません。
 ただ、コロナ以降、現場の要望に対する国、特に厚労省の対応のスピードは非常に速くなっている、スピード感が上がっているというふうに感じます。
 ぜひ東京都でも前例や枠組みにとらわれることなく、現場の声に対してスピード感のある政策決定をしていただきたいと期待をいたします。
 介護人材不足はコロナ禍以前から続く深刻な問題です。今はコロナで仕事を失う人が増え、介護資格を取ろうとする人も増えているとは聞いております。ひょっとするとこれが最後のチャンスかもしれません。
 今、そしてこれから介護の仕事に就く方々が介護の仕事で生計を立て、誇りを持って働ける、そのような仕組みを整えていくことが、人材の定着には不可欠であると考えております。このことを指摘いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

○宇田川副委員長 阿部祐美子委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時三十分休憩

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