予算特別委員会速記録第三号

○宇田川副委員長 田村利光理事の発言を許します。
   〔宇田川副委員長退席、委員長着席〕

○田村委員 まず、都税収入について伺います。
 令和四年度当初予算案における都税収入は、前年度比約五千九百億円増加しました。税目別に見ると、法人二税が約四千八百億円増加しており、企業収益が堅調に推移するものと見込んでいます。
 最近では、上場企業の令和三年四月から十二月期の純利益合計が過去最高という新聞報道もありました。しかしながら、依然として経営状況が厳しい企業も多いはずです。
 そこで、企業の規模別に見た場合、その黒字、赤字など、どのような採算状況なのか、また、税収面ではどのような影響があるのか、主税局長に伺います。

○砥出主税局長 都税収入は、法人二税の占める割合が高く、景気動向に左右されやすい構造となっております。
 その法人二税の申告状況を利益法人と欠損法人の割合で見ますと、ここ数年の傾向では、大企業、中堅企業は約三割が欠損法人であるのに対し、中小企業は約七割が欠損法人でございます。
 中小企業の欠損法人は、法人都民税法人税割と法人事業税所得割について税額が生じないことから、利益法人数の増加は、都税収入の増に寄与するものと認識しております。
 なお、国の法人企業統計調査によれば、令和三年度上半期の中小企業の経常利益を前年同期と比較すると、約二倍に増加しております。

○田村委員 令和三年度の中小企業の業績は、令和二年度よりも上向いているとのことですが、これは前年度がコロナによる減収の影響が大きかったためと思われます。
 また、一般企業では、大口顧客からの売上げが全体の三割を超えると、売上先の偏りが大きく、経営リスクが高いともいわれています。一概に都財政に当てはめるわけではありませんが、都も大企業からの税収の比率が高い分、大企業の経営状況の影響を受けやすく、特定の一社の業績が悪化することによる減収リスクがあります。
 つまり、都税収入を安定的に確保するには、都内法人の九割以上を占める中小企業の支援、活性化を図ることは欠かせないことだと思います。
 中でも、付加価値の高い技術力を持つ中小企業が多い多摩地域の産業振興を進めることが必要です。
 多摩地域に集積するこうした中小企業や大学、大企業の研究機関などが集い、行政と地域の経済団体などと連携し、新たなネットワークを構築することで、イノベーションを生み出す。そうした多摩のイノベーションの創出に向けて、都としてどのように取り組んでいくのか、知事の見解を伺います。

○小池知事 多摩地域は、優れた技術力を持つ中小企業が多く、研究機関や大学が集積をしておりまして、これらの力を合わせることで、社会的な課題の解決を実現できる高いポテンシャルを有しています。
 こうした多摩の力を引き出すために、都は、地元の経済団体や中小企業を支援する様々な団体と連携をいたしましたネットワーク組織をつくりまして、地域課題の解決に向けた取組方針の策定を進めております。
 来年度ですが、こうした方針を踏まえまして、ネットワーク組織が中小企業や研究機関のほか、大企業なども加えましたグループによるプロジェクトを選定いたします。そして、その実施を支援いたします。
 また、こうした機会をきっかけといたしまして、様々な主体が交流することで、より一層連携を強める仕組みをつくり上げまして、将来のエコシステムの創出に結びつけてまいります。
 多摩地域のポテンシャルを引き出す取組を多面的に進めるということで、地域の課題の解決、そして活力の向上を実現してまいります。

○田村委員 多摩地域には、産業に関する多くの魅力があります。しかし、その魅力が点になっており、発信力がありません。点と点を結んで線にして、線と線を重ね合わせて面にすることで、日本のみならず世界へ発信できる魅力になるはずです。ぜひ多摩の産業の魅力をつなげる取組を強化していただきたいと思います。
 次に、地域経済の活性化にも大きな影響力を持つ地域公共交通への取組について伺います。
 都内では、コミュニティバスのみでなく、デマンド型の公共交通など、新たなモデルを検討する自治体も増えています。
 また、地区によって高齢化の状況は異なり、特に多摩地域では、急な坂道の移動など、公共交通へのアクセスに課題を抱える地域も多く、それぞれの事情に応じた移動手段の確保が重要です。
 先日の代表質問では、移動手段の充実に向けて市区町村への支援を強化していくとありましたが、それぞれの地域事情に応じた移動手段を確保するために、どのように取り組んでいくのか伺います。

○上野東京都技監 高齢者をはじめ、誰もが移動しやすく利便性の高い都市を実現していくには、路線バスやコミュニティバスに加え、デマンド交通など、地域特性に応じた移動手段の選択肢の充実が必要でございます。
 このため、デマンド交通につきましては、公共交通の空白地域などにおきまして、住民の方々の需要に応じた効率的な移動サービスの実現に有効であることから、令和二年度に開始いたしました実証運行に係る区市町村への財政支援を本格運行にも適用してまいります。
 また、高低差や狭隘道路などの地形的な課題に対しましては、小型で低速の電気自動車であるグリーンスローモビリティーの導入経費を新たに補助の対象といたしまして、自宅から最寄り駅やバス停までの区間、いわゆるラストワンマイルの移動手段を充実してまいります。

○田村委員 次に、東京における地域公共交通の基本方針の内容について伺います。
 現在、市区町村が運行する地域の公共交通は、行政区域で区切られている場合がほとんどです。しかし、人の移動は行政区域を意識することなく行われます。こうした利用者の移動ニーズにきめ細かく応えるためには、運行データや移動実態を把握し、隣接する市区町村同士で共有するなど、連携して取り組むことが有効であると考えられます。その際、都が広域的な視点に立って、こうした取組を先導していくことが重要です。
 そこで、基本方針では、データ利活用を取組テーマの一つとして掲げていますが、どのように取り組んでいくのか伺います。

○上野東京都技監 行政区域を意識することなく、身近な地域における移動の利便性を向上させるためには、情報技術を最大限活用していくことが重要でございます。
 そのため、区市町村がコミュニティバス等の導入への補助を活用するに当たりまして、交通機関の利用状況や移動実態に関するデータを収集することを要件といたしまして、それを運行計画に反映するよう働きかけるなどによりまして、移動サービスの質の向上につなげてまいります。
 また、乗換え利便性の向上などのために、各交通事業者などの持つデータを広く共有できるよう、データのオープン化や利用可能性につきまして、意見交換の場を設置するとともに、議論の内容を区市町村とも共有してまいります。
 こうした取組を通じて、利用しやすい地域公共交通サービスを実現してまいります。

○田村委員 私の地元西多摩の瑞穂町ではコミュニティバスの実証実験が、日の出町ではコミュニティバスの路線拡張が、あきる野市ではデマンド交通の実証実験が予定、実施されています。狭隘で坂道の多い西多摩地域では、来年度、都が支援を始めるグリーンスローモビリティーなども効果が期待されます。
 また、福生駅西口付近で計画されている再開発が広域の地域公共交通の結節点になり、名実ともに西多摩の玄関口として機能することも期待されます。都としても、地域公共交通の広域化への支援をお願いいたします。
 次に、つながる東京の取組について伺います。
 モバイル通信ネットワークは基幹的なインフラであり、生活のあらゆる場面で、もはや欠かせないものであります。
 しかし、私の地元西多摩地域など、都内には通信環境が脆弱な地域がまだ一部に存在します。こうした地域では、5G等の最先端通信技術もさることながら、まずは4Gの整備によって通信環境の充実を図ることが必要です。
 都は、足元の状況をしっかりと見極めた上で、都のみならず、民間事業者を含めた多様な関係者の連携による取組が求められます。
 そこで、西多摩地域でどのように通信環境の向上を図っていくのか、その具体的な取組内容と今後の方向性について伺います。

○寺崎デジタルサービス局長 デジタル通信基盤の構築に向けましては、5Gはもとより、携帯電話の電波が届きにくい通信困難地域における4Gの整備も急がなければなりません。
 そのため、来年度は、通信困難地域の解消に向けた電波状況の実測調査の対象を西多摩地域などで大幅に拡大し、取組を本格化するとともに、さらなるアセット開放に向け、多摩地域を中心に事業を展開する民間事業者を積極的に掘り起こしてまいります。
 今後、こうした取組を通じまして、整備エリアを具体化することで、西多摩地域のアセットを活用した5Gや4Gのアンテナ基地局の設置につなげていくなど、スピード感を持って取り組んでまいります。

○田村委員 西多摩の山間部は、多くの都民が登山を楽しむ地域でもあり、通信ネットワークは万が一のときの命綱になります。また、通信環境が脆弱な地域は財政面も脆弱です。ぜひ財政面での支援もお願いいたします。
 さて、我が会派としても、通信インフラの整備を大変重視しており、先日の代表質問でも、島しょ地域の通信環境の向上について取り上げたところです。都は、新たな取組を開始し、島しょ地域の通信困難地域の解消に向けて動き出すとのことでした。
 そこで、来年度新たに実施するこの事業について、具体的な内容を伺います。

○寺崎デジタルサービス局長 来年度新たに実施予定のネットワーク環境整備事業は、通信困難地域の環境改善を目的に、島しょ地域における携帯電話のアンテナ基地局整備の促進を図るものでございます。
 町村が国の補助制度を活用して事業を行う場合に必要な整備計画の策定について、基地局の設置場所の選定や躯体の検討に係る調査費用などを都が全額補助するとともに、ケーブルやアンテナの設置工事に係る費用についても、町村負担分の全額を負担いたします。
 通信困難地域の解消に向け、町村と緊密に連携を図り、その取組をしっかり後押しをしてまいります。

○田村委員 町村への支援では、町村負担分まで都が負担するとのことでありますが、なぜ都が町村負担分まで支援できたのか、理由をお尋ねいたします。

○寺崎デジタルサービス局長 デジタル通信基盤の構築に向けて、5Gはもとより、携帯電話の電波の届きにくい通信困難地域の解消に向けて急がなければならないということを先ほどご答弁させていただきました。
 今回におきましては、来年度の予算につきましては、ネットワークの効用が高い、遠隔地であります離島地域を対象にして支援をすることとしたものでございます。

○田村委員 先ほどの答弁で、西多摩地域でも今後調査を拡大していくというお話でした。ぜひ、その結果を見て、島しょと劣らぬ支援を西多摩地域にもよろしくお願いしたいと思います。
 次に、無電柱化について伺います。
 都では、いわゆるセンター・コア・エリア内の都道で整備がおおむね完成するなど、一定の進捗が図られています。
 一方で、都内全体で見れば、島しょ地域や私の地元西多摩地域などでは、無電柱化はまさにこれからという状況です。このうち、島しょ地域では、台風などに伴う電柱倒壊や断線による停電など、日常生活に甚大な被害も発生しており、着実に無電柱化を進めていかなければなりません。
 そこでまず、島しょ地域の都道の無電柱化をどのように進めていくのか伺います。

○中島建設局長 都は、本年一月に東京都島しょ地域無電柱化整備計画を策定いたしました。この計画では、島しょ地域の都道のうち、約百七十キロメートルを対象といたしまして、防災性向上を早期に実現する観点から、緊急整備区間、優先整備区間、一般整備区間に区分して計画的に整備を進め、二〇三〇年代の完了を目指すこととしております。
 このうち、被災リスクを低減させる効果が大きい緊急整備区間約十キロメートルにつきましては、来年度、全区間で設計に着手し、二〇二五年度までに整備を完了させてまいります。
 整備に当たりましては、沿道の電力需要や道路状況等、島しょ地域の特性を考慮し、簡易な構造の採用や道路側溝の下の空間を活用するなど、工期短縮やコスト縮減を図ってまいります。

○田村委員 島しょ地域の無電柱化を着実に進めていただきたいと思います。
 次に、西多摩地域の無電柱化について伺います。
 西多摩地域は、市街地だけでなく自然豊かな山間部も有しており、無電柱化事業を進める上で、地形、地質条件など地域特有の課題を抱えていると認識しています。今後、激甚化する風水害などに対する防災性の向上や良好な景観の創出を図るためには、こうした地域特性も考慮して、西多摩地域の都道の無電柱化を着実に進めるべきです。
 そこで、西多摩地域における今後の無電柱化の取組について伺います。

○中島建設局長 東京都無電柱化計画におきましては、防災性の向上などを図るため、第一次緊急輸送道路や利用者の多い駅周辺などの都道につきまして、二〇三五年度の完了を目指すこととしております。
 西多摩地域ではこれまで、第一次緊急輸送道路である五日市街道などで無電柱化に取り組んでおりまして、来年度は、新奥多摩街道の福生市役所付近で新たに電線共同溝本体工事に着手いたします。
 また、山間部の道路の無電柱化につきましては、曲線部が多く、岩盤など様々な地質を有することから、地域特性が類似する島しょ地域の事例も踏まえまして、新たな材料の活用や、管路を浅く埋設する手法などを取り入れてまいります。
 引き続き、安全・安心で魅力ある多摩・島しょ地域の実現に向けまして、無電柱化を着実に推進してまいります。

○田村委員 無電柱化は都民の安全・安心を守る重要な事業です。また、防災のみでなく、良好な景観を保つ効果もあります。観光振興も進めたい山間・島しょ地域を含めた都内全域の無電柱化の着実な実施をお願いいたします。
 次に、アスベスト対策について伺います。
 国は、令和二年に解体工事等におけるアスベストの取扱いを規制する大気汚染防止法を改正し、規制対象となるアスベスト建材の拡大や解体作業ルールの厳格化を行いました。こうした規制強化を受け、区市の事務負担の増加も懸念されます。
 都は、今年度から区市への支援を行っているとのことですが、これまでの取組と来年度の支援策について伺います。

○栗岡環境局長 法改正により、解体工事等におけるアスベスト規制が強化される中、その飛散防止を徹底するには、現場指導を行う区市を支援し、指導内容を充実させる必要がございます。
 都は、アスベスト総合対策事業を通じまして、一部の区市に対し、現場で建材中のアスベストを迅速に測定できる分析機の購入費や、区市職員がアスベスト関連の国家資格の取得に要した経費について全額補助を実施しました。
 来年度は、分析機については全額補助や都からの貸出しにより、全ての区市でその整備を完了させるとともに、国家資格についても支援対象を拡大するなど、ハード、ソフト両面で区市への支援を拡充いたします。
 また、都自らも、多摩環境事務所でアスベストGメンなど専門職員を三名増員するなど、区市からの相談や技術支援の依頼に対応できる体制を一層強化してまいります。

○田村委員 都の支援はおおむね好評だと聞いていますが、引き続き現場の職員を支援していただきたいと思います。
 さて、今回の法改正により、区市だけでなく、解体業者やリフォーム業者の負担も増大します。令和五年十月からは、解体、改修工事の元請業者が工事前に実施するアスベスト調査において、国家資格を含めた有資格者による調査が義務づけられています。しかし、業界団体からは、資格取得に係るコスト負担などから、有資格者不足が懸念されるとの声も上がっています。
 法改正による事業者の負担の増加が見込まれる中、都は今後どのように取り組んでいくのか伺います。

○栗岡環境局長 都は、業界団体に法改正の内容を周知するため、職員を派遣して説明会を開催したほか、一般紙や業界紙への広告掲載、チラシの配布、改正法の解説動画のウェブ配信など、様々な周知活動を行ってまいりました。
 この活動の中で、業界団体からアスベスト調査を実施する有資格者の確保について心配の声をいただいており、都は今年度、有資格者の増員について国に要望を行ったところでございます。
 あわせて、業界団体のご意見も踏まえ、都は来年度、解体、リフォームの業界団体にヒアリング調査を行い、有資格者の確保等について具体的な課題を整理いたします。また、区市職員にもヒアリングを行い、今後のアスベスト調査に向けた事業者の準備状況なども情報収集いたします。
 こうした情報を基に、事業者自らが適切にアスベスト調査が実施できるよう、具体的な方策を検討してまいります。

○田村委員 アスベストという負のレガシーを安全に処理し、都市の更新を円滑に進めることができるよう、事業者への支援策の検討を強く要望いたします。
 さて、アスベストが直接人体に有害な環境問題であれば、温室効果ガスは間接的に地球をむしばむ環境問題です。
 そこで、ゼロエミッション東京への取組について伺います。
 都は、二〇五〇年カーボンニュートラルに向け、二〇三〇年カーボンハーフの目標を掲げました。
 都の温室効果ガス排出量の内訳は、約五割が業務、産業部門であり、そのうち約四割が大規模事業所によるものです。つまり、全体の約二割が大規模事業所からの排出です。
 そこで、大規模事業所の削減対策についてお聞きします。
 大規模事業所の削減施策の柱はキャップ・アンド・トレード制度です。先般公表された第二計画期間、二〇一五年から二〇一九年の実績では、全ての事業所が削減義務を達成しました。そして、その大部分は省エネによる削減でありました。しかし、省エネによる削減には限界があります。今後、第三計画期間以降は、再エネ導入による温室効果ガス削減策が必須になります。
 そこで、都は、今後のキャップ・アンド・トレード制度における再エネ利用の拡大にどのように取り組んでいくのか伺います。

○栗岡環境局長 キャップ・アンド・トレード制度では、削減義務の履行のため、省エネ対策とともに、事業所内に設置した再エネの自家消費や、都が認定する電気事業者から低炭素な電力の調達をした場合等にCO2削減量に算定できる仕組みを導入し、第三計画期間からこれを拡充してございます。
 現在、環境審議会におきまして、二〇二五年度からの第四計画期間における制度の在り方について、再エネの調達を目指す事業所の増加等の動きも考慮し、再エネ割合の高い電気の購入や、事業所内はもとより都外での再エネ設置、証書による環境価値の購入など、調達手法の多様化を踏まえた取扱い等を検討してございます。
 今後、省エネの深掘りと併せて、再エネ利用拡大を促すための検討をさらに深め、二〇三〇年カーボンハーフに向けて、大規模事業所におけるCO2削減につなげてまいります。

○田村委員 これからは、省エネだけでなく、再エネに力を入れていくことが必要です。ぜひ、ここまで協力してくれた事業所が、引き続きゼロエミッション東京へ向けてさらなる協力を惜しまない政策を要望いたします。
 次に、森林によるCO2吸収効果について伺います。
 東京都の排出するCO2は年間約六千万トン。一方、東京都の森林によるCO2吸収量は年間約十万トン。占有率にすると一%にも及びません。しかし、二〇五〇年ゼロエミッション東京に向け、省エネと再エネで東京の排出するCO2が着実に減少したとき、ゼロエミッション東京へのラストワンマイルは、省エネでも再エネでもなく、吸収や活用によって達成されるものだと確信しています。
 そこで、気候変動対策における森林吸収源の考え方について、知事に伺います。

○小池知事 お尋ねの件でございますが、二〇五〇年のCO2排出実質ゼロに向けまして、省エネの推進、そして再エネの基幹エネルギー化で排出量を最小化した上で、なお残る部分につきましては、森林吸収や革新的な技術開発などによって相殺していく必要がございます。
 森林や緑地などの自然環境は、生物多様性の保全、そのほか、土砂災害の防止や水源の涵養、そしてCO2の吸収源など多面的な機能を有しておりまして、気候変動の緩和と適応にも重要な役割を担っております。
 現在、環境基本計画の改定に向けまして、今後の施策の在り方についても検討中でございます。省エネ、再エネ施策はもとより吸収源対策ともなります緑の保全を併せて進めまして、気候危機を回避し、持続可能で豊かな都市を構築してまいります。

○田村委員 二〇一五年に採択されたパリ協定においても、森林等によるCO2吸収源が規定されています。しかし、吸収源としてカウントするためには、植林などのほか、森林を適切な状態に保つための森林経営や保全が必要です。
 森づくりは百年の計。森林の整備や保全を進めることは一朝一夕でできるものではありません。現在、環境基本計画の改定について議論を進めているとのことですが、ぜひこうした視点を取り入れていただきたいと思います。そして、二〇五〇年、森林の吸収効果によって、ゼロエミッション東京のゴールテープを切りたいと思います。
 次に、森林環境譲与税について伺います。
 多摩の森林は、水源の涵養や土砂災害の防止、先ほど質問したCO2吸収効果など様々な役割を果たし、都民に広く恩恵をもたらしています。こうした森林の公益的機能の増進に向けて、国は、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保するため、森林環境譲与税を創設し、令和元年度から各都道府県及び区市町村への交付を行っています。
 森林のない都市部の自治体にも交付される森林環境譲与税が、特に多摩の森林の整備に活用されるよう、広域自治体である都が橋渡しを担うことが重要です。
 森林を有する多摩の市町村と都市部の区市との連携に向けた都の取組について伺います。

○坂本産業労働局長 都は、区市町村が森林環境譲与税を財源として森林の整備を効果的に進めることができるよう、多摩と区部の自治体連携の必要性に対して理解を広げる取組を進めているところでございます。
 具体的には、都市部の自治体職員を対象に、森林における伐採等の現場を見学する機会を設けるほか、連携による森林整備の好事例を紹介しているところでございます。
 今後は、こうした連携を後押しするため、伐採や植林などが必要な場所を示して、その実施を多摩地域と都市部の各自治体に提案し、マッチングにつなげてまいります。
 また、複数の自治体が協力して森林整備を行うことができる新たな広域的な仕組みづくりも進めてまいります。
 これらによりまして、区市町村の森林環境譲与税の有効な活用を後押ししてまいります。

○田村委員 都市部へ交付された森林環境譲与税が東京都の森林へ活用されることで、東京にも豊かな自然があることが広く都民に認識され、ふるさと東京への誇りにつながることを期待します。
 次に、江戸前アユの遡上回復、安定化について伺います。
 多摩川を天然遡上する江戸前アユについてですが、都の発表によると、江戸前アユの遡上数は、平成十八年以降百万尾を超えるまでに回復していましたが、令和元年の台風十九号以降大幅に減少し、令和二年は約三十七万尾、令和三年は約三十二万尾にとどまったと聞いています。さらに多摩川では、毎年九月から十月にかけて多くのカワウが飛来し、産卵期に入ったアユを捕食しているとの話も漁業協同組合などから伺っています。
 そこで、内水面漁業にとって重要な資源である江戸前アユの遡上数の回復と安定に向け、一層の取組が必要と考えますが、都の取組を伺います。

○坂本産業労働局長 都は、江戸前アユの遡上の数を回復して、その安定化を図るため、魚道の整備や遡上の妨げとなる土砂の撤去を行っております。また、産卵数の増加に向け、親アユの最適な産卵の環境や条件を把握するほか、漁業協同組合に対する人工授精技術の指導などを実施しているところでございます。
 さらに、アユがカワウに捕食され、川釣りなどに影響が出ていることを踏まえまして、来年度からデジタル技術を活用した新たな対策を開始いたします。
 具体的には、捕獲したカワウに小型のGPSを備えた記録装置をつけ、行動範囲やねぐらなどを明らかにして、効果的な対応に結びつけてまいります。
 こうした取組によりまして、江戸前アユの遡上の回復などを進めてまいります。

○田村委員 多摩川の支流秋川のアユは、二〇一九年、全国の品評会で二度目の準グランプリに輝きました。死の川と呼ばれた多摩川が、東京都の取組などで清流へと生まれ変わりつつある証拠です。都民の皆さんにも、全国でも有数の江戸前アユをたくさん楽しんでいただけるよう、今後とも取組をお願いいたします。
 次に、東京農産物の地産地消促進について伺います。
 東京の農業では、農産物直売所などで多くの農産物が販売されており、収穫後すぐに店頭に並び、鮮度が高く、来店者には大変好評です。地元で取れて地元で消費される農産物は、旬の時期の取れたての野菜など、糖分やビタミンなどの栄養価が高いともいわれています。また、それらを都内で消費することは、輸送に伴う温室効果ガスの排出抑制にもつながります。
 こうした様々なメリットを有する地産地消を一層推進するため、東京農産物の持つ魅力を都民に広く発信するとともに、大消費地である都心部も含め、消費の拡大を図るべきと考えますが、都の見解を伺います。

○坂本産業労働局長 東京産の野菜や果物の地産地消を推進する上で、その認知度を高めるPRを行うとともに、都内での流通の拡大を図ることが必要でございます。
 このため、都は来年度、消費者の興味や関心を喚起し、購買意欲を一層高める動画を制作して、鉄道の車内のサイネージで流すほか、映画館や街頭の大型ビジョンにおいて、年間三回、二週間ずつ放映し、効果的なPRを行います。
 また、多摩地域等で取れた農作物を都心の百貨店などで購入できるよう、都内に集荷や受け取りの拠点を合計十か所設け、配送車が巡回して輸送する仕組みを新たに構築いたします。
 こうした取組によりまして、東京産農産物の地産地消をより効果的に進めてまいります。

○田村委員 農産物の地産地消が人間と地球の健康のためにいかにいいことか、データをもって都民に周知し、促進していただくことを要望いたします。
 二〇一〇年に都内に七千六百七十ヘクタールあった農地が、二〇二〇年には六千五百三十ヘクタールまで減少しました。十年で約一千百四十ヘクタール減少しています。その対策として、西多摩に多く見られる遊休農地の活用が活路になると思います。
 一方、コロナ禍を契機としてテレワークが普及し、旅行地に滞在しながら仕事もできるワーケーションと呼ばれる新たな働き方も広がりを見せています。この機を捉え、山間地域において、ワーケーションが可能な滞在型の体験農園などを整備し、都市住民を呼び込むことは、地域の活性化や農地の新たな活用方法として有効と考えます。
 こうした取組を都として積極的に支援していくべきと考えますが、都の見解を伺います。

○坂本産業労働局長 都は、多摩の山間部や島しょ地域の活性化とともに、遊休農地の有効活用を図るため、地元自治体や農業団体等が滞在施設のついた農園を整備して、ほかのエリアの住民に提供する取組を後押ししております。
 具体的には、こうした農園を造る際に、計画の策定から、滞在するための家屋や地域住民との交流施設等の整備まで幅広く支援の対象といたしまして、その経費の四分の三に助成を行っております。この事業では、ワーケーションに役立つ仕事部屋やWi-Fiなどの施設や機器も支援対象としております。
 今後は、市町村等に対して、好事例を紹介するとともに、都の支援事業の活用に向けた働きかけを積極的に行います。
 こうした取組によりまして、地域の活性化に合わせた農業振興を適切に進めてまいります。

○田村委員 テレワークプラス農業だけでなく、テレワークプラス林業、漁業と、地域活性化にも一役買える、潜在能力のある働き方の形態だと思います。ぜひさらなる促進に力を入れていただきたいと思います。
 次に、旅行者の受入れ機運の醸成について伺います。
 観光の振興は、地域経済の活性化に欠かすことができません。コロナ終息後には、再び旅行者の誘致を進めて消費の拡大を図り、都内各地の観光産業を盛り上げていくことが必要です。
 しかしながら、観光に直接携わる人とそうでない人との間には、旅行者の受入れに対する意欲や認識に乖離があります。このため、都民が観光振興の重要性を理解し、自ら参画することで、地域が一体となって旅行者を受け入れる土壌を築き上げていくことが必要です。
 都は、こうした観点から、旅行者の受入れ機運の醸成に向けて、今後どのように取り組んでいくのか伺います。

○坂本産業労働局長 東京の観光振興を図る上で、地域の住民や様々な主体がその重要性を理解し、誘客に向けた取組を進めることが重要でございます。
 このため、都は今年度、二つの大学と連携をいたしましてシンポジウムを開催し、観光による地域活性化の事例とその意義を幅広く発信をしたところでございます。
 来年度は、各エリアの観光協会に働きかけ、住民等が旅行者を受け入れるメリットを学ぶ機会をつくります。また、地域の経済や雇用にもたらす効果などに関して、事例も交えた動画を新たに作成し、啓発活動を行います。さらに、地元の観光関連団体と協力し、地域で旅行者を受け入れる機運を高めるキャンペーンを実施してまいります。
 これらによりまして、地域が一体となって観光振興を進める取組を後押ししてまいります。

○田村委員 観光によって、多くの人に自分の地域を楽しんで好きになってもらう、そのことは地元への誇りを醸成します。こうした観光の副次効果によって、都民が東京を誇りと思い、東京がよきふるさとと思えるまちになることを願います。
 次に、不登校児童への一人一台端末を利用した取組について伺います。
 国のGIGAスクール構想に基づき、都内公立小中学校では一人一台端末が整備され、それを活用して、様々な教育活動でオンラインによる学習が進められています。この一人一台端末を効果的に活用することにより、学校に通うことができない子供たちへの支援を充実させることができると考えます。
 現在、教育支援センターで、不登校の子供たちに対して様々な取組がなされていると聞いています。
 そこで、教育支援センターにおける取組事例について伺います。

○藤田教育長 区市町村が、学校に通うことができない子供への支援のために設置しております教育支援センターでは、子供が一人一台端末等を利用して、学校の朝の会及び授業のライブ配信に参加し、クラスの子供たちとコミュニケーションを取りながら学習に取り組んでいる事例や、デジタル教材を活用し、自分のペースで主体的に学習を進めている事例がございます。
 また、教育支援センターに通うことが難しい子供に対して、支援員が家庭訪問を行い、端末の利用を促したことで、教育支援センターに通うことができるようになった事例などもございます。

○田村委員 一方で、様々な理由で学校に通えない子供たちに対し、十分な支援が行われていない状況があると聞いています。特に、病気などの子供たちの学びの保障に課題があると感じています。
 誰一人取り残さない、学びを止めない観点から、一人一台端末が整備された今だからこそ、病気により学校に行くことができない子供たちの実態を把握し、教育支援センターでの取組を参考に学びを保障していくべきだと考えます。都教育委員会の見解を伺います。

○藤田教育長 各学校では、様々な理由で登校できない子供に対し、一人一人の状況に応じて学習支援や心のケアを行っております。一人一台端末の配備により、オンライン授業の実施など多様な支援手法が可能となってございます。
 これまで都教育委員会は、家庭等でも学習できる各教科等のデジタル教材を各学校に提示し、登校できない子供に対する支援に活用するよう促してまいりました。
 今後、区市町村教育委員会と連携して、病気等で登校できない子供たちに対し、各学校が行っている支援の状況を把握してまいります。
 その上で、教育支援センターにおける取組事例などを参考に、授業のライブ配信や学習課題の提示など、一人一人に応じた支援方法を各学校に紹介してまいります。

○田村委員 小児がんに罹患した子供は、その多くが病気を克服するといわれています。しかし、抗がん剤治療で長期間学ぶ機会を失い、学校へ復帰したときには、学力のみならず、友達との絆も失っています。そのことが、その後の人生においてどれだけ大きな影響を及ぼすか、想像を超えるものがあるでしょう。誰一人取り残さない、学びを止めない、都の取組に期待します。
 次に、発達障害児者への支援について伺います。
 発達障害者支援については、さきの各会計決算特別委員会でも取り上げ、早期発見、早期支援の重要性を指摘しました。
 先日、東京都発達障害者支援センター、TOSCAを視察した際に、幼児期の親子関係がその後の成長にとって大変重要であるとの話を伺いました。
 具体的には、安定した親子関係の中で育つことで、素直に他者に支援を求めることができるスキルを身につけられ、そのことが、その後の学校生活や社会生活においても生かされていくとのことで、大変印象に残る話でした。
 一方で、発達障害の子供は、じっとしていられなかったり、友達とのトラブルが絶えなかったりするため、親のしつけが悪い、育て方に問題があるなど周囲から誤解されがちです。また、親自身も、何度もいい聞かせているのになぜ分かってくれないのだろうと、子育てに自信を失うことも多いと聞きます。
 安定した親子関係を築くためには、発達障害の子を育てる親に対する支援も必要であると考えますが、取組を伺います。

○中村福祉保健局長 都は、発達障害のある子供を養育した経験がある親をペアレントメンターとして養成し、同じ悩みを持つ親に共感したり、自らの経験を生かして、子供への関わり方を助言するなどの取組を実施しております。
 ペアレントメンターの登録数は、事業を開始した平成二十九年度の二十六名から、現在は百三十四名に増加しており、令和二年度は、親の悩みを傾聴し、自身の体験談を紹介する集会などに延べ三百二十名を派遣しております。
 今後とも、ペアレントメンターの養成や派遣を進め、発達障害児の家族を支援してまいります。

○田村委員 ペアレントメンター事業は、現在子育てに悩んでいるご両親にとっての支援としても大変重要です。さらに、発達障害のあるお子さんを育てた経験を持っているお父さんやお母さんにとっても、自分の子育て経験を生かすことで、自信や生きがいを感じられるという面でも大変意義のある事業です。一層の事業の拡充をお願いして、次に、TOSCAにおける相談支援について伺います。
 TOSCAを視察した際に、都の相談拠点であるTOSCAには、遠方から相談に訪れる方もいらっしゃるとの話もありました。私自身も視察の当日は、地元の西多摩からTOSCAに伺ったのですが、その経験から考えてみると、発達障害のあるお子さんと一緒に遠くからTOSCAに相談に訪れることを負担に感じるご家族もいるのではないかと想像します。
 さらに、新型コロナウイルスが流行してからは、移動自体をためらう人もいます。
 そこで、TOSCAにおいて、オンラインを活用した相談を実施すべきと考えますが、見解を伺います。

○中村福祉保健局長 発達障害がある方の中には、自閉傾向やコミュニケーションの課題などから、ひきこもりの傾向になることがあり、東京都発達障害者支援センター、TOSCAへの来所による相談が難しい場合があります。
 また、新型コロナ感染症の流行により、対面での相談に様々な制約が生じております。
 このため、来年度から、TOSCAにウェブ相談の環境を整えまして、オンラインを活用して、発達障害者やその家族からの様々な相談に対応してまいります。

○田村委員 私が発達障害の問題に取り組むのは、会社経営の経験からです。
 ある若い社員が、自分が発達障害ではないかと悩み、適切な診断を受けられないまま、他の精神疾患を患って退職をしました。彼は、職場のムードメーカーとして人気もあり、会社にとっても、本人にとっても、そして社会にとっても大きな損失だったと思います。
 このようなことを防ぐためにも、私も力を尽くしてまいりますことを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

○三宅委員長 田村利光理事の発言は終わりました。

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