予算特別委員会速記録第四号

○木村委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 この際、議事の都合により、暫時休憩いたします。
   午後一時一分休憩

   午後二時四十分開議

○木村委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 再開までお時間をいただきましたことをおわび申し上げます。
 理事者の欠席について申し上げます。
 副知事の梶原洋君は、所用のため、本日の委員会に出席できない旨の申し出がありました。ご了承願います。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十八号議案まで、第百一号議案及び第百二号議案を一括して議題といたします。
 昨日に引き続き総括質疑を行います。
 もり愛委員の発言を許します。

○もり委員 都の高齢者施策について質問いたします。
 高齢者の課題は健康面だけではありません。高齢者といっても、現役で元気に働いている方、また、蓄えがなく生活に困窮されている方もいらっしゃいます。一人一人が抱えている課題はさまざまで、一人一人の生き方と人格を尊重した、いわばオーダーメードに近い形の支援が必要です。
 令和三年度予算案では、高齢者の社会参加の促進に三百二十六億円が計上されています。これまでは、高齢者施策といえば、福祉保健局の介護予防の推進と支え合う地域づくりなど、高齢者支援施策がほとんどでしたが、未来の東京戦略においても、高齢者が人生百年時代に元気に活躍し、心豊かに暮らす東京がビジョンとして描かれ、都において高齢者を社会に貢献する主体として捉え、それを支援する施策が講じられるようになり、高く評価いたします。
 学問的研究では、高齢者の社会参加のステージを重層的に捉え、金銭的報酬による責任が伴う就労のステージ、就労が困難になった場合の無償の社会貢献であるボランティアのステージ、他者への直接的な貢献に負担を感じるようになると、趣味、生涯学習などの自己啓発のステージ、生活機能が低下すると、グループ活動の制約に縛られない私的な交流や近所づき合いのステージ、そして、要支援、要介護状態に進むと、通所サービスや地域のサロンの利用のステージへと移行されるとされています。高齢者の社会参加は、介護予防の観点からもとても重要です。
 高齢者の社会参加を促進する取り組みのうち、金銭的報酬による責任が伴う就労のステージにおいて、どのような就労支援を行っているのかについて伺います。
 毎年公表されている労働力調査の結果を確認すると、都内の六十五歳以上で就業する高齢者の方は、平成二十一年は六十万人でしたが、最新の令和元年では八十四万人に上り、この十年間の間に約四割もの増加となっています。
 このように、年齢にかかわらず働き続けられる高齢者の方がふえていることについてデータにもあらわれており、これは多くの高齢者の方が現役として元気に働かれているという私たちの肌感覚を裏づけるものです。
 一方で、就業率を見てみると、二十一年の二三%であったのに対して、令和元年は二六%と横ばいを続けています。
 高齢化が加速度的に進展し、六十五歳以上の人口が増加する中にあって、就業率が横ばいにとどまっているというのは、働きたい元気も意欲もあるシニアの方が、仕事探しに行っても、なかなか希望する仕事に出会えないというミスマッチが要因の一つになっているのではないでしょうか。
 また、企業側も採用に当たっては、年齢が高齢というだけで採用を敬遠しがちということも、ミスマッチの大きな原因になっているといえます。
 このように、高齢の求職者のニーズに合致したマッチングの機会は限られており、就業を諦める方も少なくありません。
 そこで、意欲ある高齢者と企業側のミスマッチを解消し、より多くの高齢者がその希望に応じて働き続けられるよう支援に取り組むべきと考えます。都の見解を伺います。

○村松産業労働局長 意欲ある高齢者の就業を一層推進するためには、高齢者が新たな業種や職務分野にチャレンジできるよう支援するとともに、受け入れる企業の理解の促進を図り、就業の場を拡大していく取り組みが必要でございます。
 このため、都は、高齢者が希望する業種や職種でトライアルでの派遣就労を行い、必要な業務スキルをOJTで身につけ、再就職につなげる事業を実施しているところでございます。
 来年度は、中小企業団体等との連携を強化いたしまして、より幅広い業種でトライアル就労が可能となりますよう、受け入れ企業を開拓してまいります。また、高齢者が活躍している企業の事例とともに、高齢者活用のメリットのほか、その雇用ノウハウをまとめた啓発冊子や動画を作成し、ウエブ広告等により広く発信するなど、高齢者雇用を促進してまいります。

○もり委員 ありがとうございます。ぜひ希望する多くの方が活用できるよう、区市町村とも連携をしていただきながら、届く広報をお願いいたします。
 生涯にわたって教育と就労のサイクルを繰り返すリカレント教育は、人の能力を高めるために重要な教育制度です。
 都立大学プレミアム・カレッジの運営として二億円が計上されており、五十歳以上のシニアを対象としたリカレント教育の一つとして、人生百年時代の都民のクオリティー・オブ・ライフの実現をするために、今後もシニアの高い学習意欲に応える取り組みを充実すべきだと考えます。都の見解をお伺いいたします。

○山手総務局長 都立大学プレミアム・カレッジでは、首都東京をフィールドに学ぶをテーマに、歴史学、自然科学、建築学などの幅広い科目や新たな仲間と切磋琢磨するゼミナールなど、シニアの学びや交流のニーズに応える教育プログラムを展開してございます。
 これまでも、履修科目の拡充や、本科に引き続き二年目も学べる専攻科を設置するなど、受講生の声にも耳を傾けながら、プログラムの充実を図ってまいりました。その結果、来年度の本科生につきましては、五十名の募集を大きく上回る百七十九名の方々からご出願をいただきました。
 来年度は、担当教員による個別指導を受けながら、自身の興味、関心のある分野について研究するコースを新設いたしまして、最大で四年間、本格的に学べる場を整備することで、人生百年時代にふさわしい学習環境を提供してまいります。

○もり委員 ありがとうございます。学ぶ意欲を受けて大きく拡充していただいているということで、期待をいたします。
 学びたい意欲を応援することはもちろん大切なことです。知識も能力もある高齢者の方が、専門的な学習や研究の成果をぜひ社会にも還元していただきたいと考えます。
 令和三年度予算案では、誰もが集える居場所やコミュニティづくりの推進に三十億円、また町会、自治会の取り組みへの支援事業として、地域コミュニティの活性化に向けたパイロット事業があります。地域活動に興味のある個人と自治会、町会をマッチングするパイロット事業とのことで、コロナ禍において地域のつながりが持ちづらくなっている中、地域力のかなめである町会、自治会の高齢化が顕著であり、今後の地域の担い手の確保として期待されます。
 今後、プレミアム・カレッジの卒業生の方が、学習成果を生かして、地域の社会課題にプロボノとして参加していただく等、ぜひ局ごとに行われている事業を結びつけて、一足す一が三の効果を生み出すような局を超えた連携もあわせて要望をいたします。
 次に、動物と共生社会の実現に向けて伺います。
 令和三年度予算案に、動物介在活動による高齢者の健康寿命の延伸等、福祉対策の一助となるよう動物との共生社会の拠点を形成する事業として、大学と自治体、企業、NPOの協働による高齢者の福祉向上を目的とした動物との共生社会の実現と拠点形成に四千八百万円が計上されており、大変評価をいたします。
 日本動物愛護協会を初めとして、一般社団法人ねこと今日の取り組みなど、動物との共生社会を実現するためには、アニマルウエルフェアの観点、動物と暮らし始めてから最期をみとるまでの全てに責任を持てるような動物とのつき合い方の心得も必要です。
 このような観点から、民間の団体の意見も聞きながら、動物との暮らし、共生を進めることが必要だと考えます。知事の見解をお伺いいたします。

○小池知事 もり愛委員のご質問にお答えいたします。
 動物についてであります。動物は、私たちの生活に潤い、そして癒やしを与えてくれる大切な存在です。
 私は、こうした考えのもとで、飼い主への適正飼養、終生飼養の啓発、そして、地域の飼い主のいない猫対策、保護された動物の譲渡推進など、さまざまな動物愛護施策に力を注いでまいりました。
 ボランティアや関係団体の多大なご協力をいただきながら、施策を進めております。今お話ございました、川上麻衣子さんのねこと今日という団体でありますけれども、猫と人が暮らしやすい社会の構築に向けて、東京から発信するとして、さまざまな活動をしておられまして、ちょうどおとといお話を詳しく伺ったばかりなんです。
 都は、動物愛護施策に係る重要事項について審議をするために、日本動物愛護協会初め、動物愛護の関係団体から成る審議会を設置しております。本年度に改定いたします動物愛護管理推進計画につきましても、ご議論をいただいております。
 この改定案でも、ボランティア、そして関係団体は、動物愛護施策の推進に大きく貢献しておられまして、今後もその活躍が期待されるなどしております。パブリックコメントを通じて、都民の皆様などからも貴重なご意見もいただいております。
 引き続き、人、そして動物との調和のとれた共生社会の実現を目指しまして、多くの関係者と一層連携協力を図りながら、動物愛護施策の推進に取り組んでまいります。

○もり委員 ありがとうございます。ただいま知事より、人と動物との調和のとれた共生社会の実現を目指すと前向きなご答弁をいただきました。
 小池知事のもとで、東京都は殺処分ゼロを実現し、また、その先の動物との共生を進めていくためには、学術的な基礎やそれに基づく知識の普及も重要だと考えます。
 獣医学的な観点ではなく、動物の育て方、売買、暮らし、みとり方など、暮らしの課題、また社会的な仕組みとして体系的に研究し、その成果を普及していくための調査研究やオープン講座を都民のための大学として都立大学に設けることも検討すべきだと考えます。
 啓発のみならず、真の動物との暮らし、共生を進めるために、ぜひ都が都民のニーズに応えていくべきだと考え、要望させていただきます。
 加齢により、心身が老い、衰えた状態、いわゆるフレイル予防対策は、都民ファーストの会東京都議団として重点的に取り上げてきた課題であり、要支援、要介護状態にならないために必要不可欠な対策です。
 コロナ禍の長引くステイホームは、高齢者にとって、筋力や認知機能の低下のリスクが高まっており、介護事業所の方からも、自粛が長引き、利用者さんが転倒しやすくなったとの声を伺います。フレイル対策は喫緊の課題です。
 コロナ禍において、高齢者のフレイルを予防するために、都はどのように取り組んできたのかお伺いをいたします。

○吉村福祉保健局長 都は、コロナ禍でも高齢者一人一人が健康的な生活習慣を維持し、フレイルを予防することができるよう、室内でも実践可能な筋力維持に効果の高い運動などを区市町村を通じて周知したほか、ホームページで動画配信等も行っております。
 また、感染対策をした上での定期的な外出や適度な運動を促すとともに、低栄養を防ぐために特に摂取すべき食品などを紹介するリーフレットを作成し、高齢者の方々に届くよう、区市町村の協力を得て、公民館などに配置しております。
 さらに、地域で高齢者が安心して運動できる機会を提供するため、オンラインでの体操教室を実施している事例を区市町村の担当者会議等で共有するなど、コロナ禍での高齢者のフレイル予防を進めてまいります。

○もり委員 感染症対策を行っている通所施設の利用や密の状況を避けた運動、公園に出かける等の呼びかけを行うことも大切だと考えます。
 自粛によって引きこもり、対人コミュニケーションが乏しい高齢者は、交流機会の減少によって認知機能の低下、アルツハイマー型認知症の発症率が八倍高くなるとの報告もある中で、認知症の進行、フレイルの進行が懸念をされます。
 現在、地域で住民が主体的に取り組む通いの場等の活動は、コロナ禍により、その多くが中止や縮小を余儀なくされており、従前のような活動ができないとの声を聞いています。
 そのため、今こそオンラインでのコミュニケーションやフレイル対策を大きく前に前進させることが求められます。
 そこで、新しい日常において、高齢者がフレイル予防に取り組めるよう支援を強化していくべきだと考えます。都の見解を伺います。

○吉村福祉保健局長 高齢者が集う通いの場は、地域の人と交流することで生きがいにもつながることから、コロナ禍にあっても継続して活動環境を確保していく必要がございます。
 このため、都は来年度から、対面、非対面双方でのフレイル予防に取り組む区市町村を支援いたします。具体的に申し上げますと、集合形式での活動に必要なマスクや消毒液など感染予防に必要な衛生用品の購入経費や、三密を避け、グループを小規模化するための会場借り上げ経費のほか、高齢者が自宅にいながら、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器を活用し、オンラインで仲間と一緒に行う健康づくりの取り組みなどへの補助を行います。
 今後、新しい日常のもとでも高齢者がフレイル予防に取り組めるよう、区市町村と連携して支援してまいります。

○もり委員 ぜひ地域の取り組みが進むようお願いをいたします。
 高齢者が家を借りるに際して、家主側としては、孤独死や残存財産の処分に困るなどの理由で、家を貸してもらうことが大変難しいとの声が聞かれます。
 東京都では、要配慮者の入居を拒まない、東京ささエール住宅の供給を進めておりますが、地元の居住支援協議会の皆様からは、なかなか理解が行き届いていない、また、高齢で精神障害等の疾患があるととても難しいとの声を伺います。
 そこで、高齢者の住まいの確保のため、都は、孤独死や残存家財の整理について家主の心配に対応し、一層要配慮者への提供が進むよう、さらなる支援が求められると考えます。
 高齢者の住まいの確保のために、都はどのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

○榎本住宅政策本部長 高齢者の居住の安定を確保するためには、高齢者を初めとした住宅確保要配慮者の入居に対し、孤独死等、貸し主のさまざまな不安を軽減する取り組みが必要不可欠でございます。
 都はこれまで、残存家財の整理費等、入居者の死亡に伴い、貸し主がこうむる損失を補償する少額短期保険の保険料や見守り機器の設置費等への補助を独自に実施するなど、貸し主の不安軽減策を実施してまいりました。
 今後は、これまでの区市町村や不動産団体等との連携に加えまして、見守り機器や保険の取扱事業者等とも協力し、都の取り組みについて貸し主への周知を図ってまいります。
 また、来年度に実施予定の安心居住パッケージ事業により、個々の要配慮者の実情に応じたきめ細かい居住支援サービスの提供を支援するなど、貸し主の不安軽減に資する取り組みを一層推進してまいります。

○もり委員 ありがとうございます。二十三区は、特に都営住宅の倍率も高く、入れない方が多くいらっしゃるので、ぜひそういった高齢者の方が安心して住まいにつながるようお願いをいたします。
 高齢者が住みなれた地域で安心して暮らすためには、医療、介護、生活支援などを一体的に提供する仕組みづくり、すなわち地域包括ケアシステムの実現は欠かせません。
 そうした中で、地域の最前線で高齢者の総合支援業務を担う地域包括支援センターは大変重要です。そのため、区市町村は、地域のさまざまな課題解決に向けて、センターの機能強化に取り組んでいると理解しています。
 また、在宅の高齢者、特にひとり暮らし高齢者は、ふだんから行政による支援の手が届きにくく、センターが担う相談支援のニーズはますます重要になっていると考えます。
 ひとり暮らし高齢者が孤立しないためには、訪問等により積極的に安否確認等を行う見守り活動は大変重要な取り組みです。
 コロナ禍により、ひとり暮らし高齢者がより孤立を深めることが非常に懸念され、今こそ在宅高齢者への支援強化が求められます。
 都として、地域包括支援センターの機能強化や地域の見守り活動の体制づくりに取り組む区市町村を支援すべきと考えますが、都の見解を伺います。

○吉村福祉保健局長 都は、地域包括支援センターが、地域の相談支援の拠点として、高齢者や家族からの相談に適切に対応し、医療や介護など必要なサービスにつなぐことができるよう、職員の研修を行うほか、地域の関係機関などとのネットワークづくりを進める専門職の配置に取り組む区市町村を支援しております。
 また、ひとり暮らし高齢者への訪問や安否確認などを行う相談窓口の設置、高齢者を日常的に見守るサポーターの養成や民生委員などによる見守り活動など、地域の実情に応じた区市町村の取り組みも支援しております。
 さらに、非接触型の見守りなどの地域での実践を踏まえ、コロナ禍における見守りのあり方について検討を開始しており、今後も、在宅高齢者への支援の強化を図ってまいります。

○もり委員 ありがとうございます。
 次に、ひきこもり対策について伺います。
 社会的孤立が生んだひきこもりの八〇五〇問題では、ひきこもりが長期化し、親御さんの高齢化により、自宅に介護に行った介護ヘルパーさんが、引きこもっている子の存在に気づき、初めて社会や医療とつながるケースもふえています。
 子供が引きこもった際に、親の育て方が悪い等の批判を恐れ、さらに家族ごと地域から孤立を深めることもあり、社会的孤立を放置するべきではありません。親亡き後の居場所も大きな課題です。
 我が会派では、たびたびこの課題に取り組み、青少年・治安対策本部から福祉保健局へと所管がえから二年、福祉的な社会的資源との接点を持ちながら、ひきこもり当事者とご家族の社会参加への支援は、地域家族会の役割が大変重要です。
 足立区と江戸川区では、先ほど質問させていただいた地域包括支援センターを拠点として、ひきこもり家庭と地域資源を結ぶモデルをつくる動きがあると伺いました。
 東京都では、福祉保健局に所管がえ以降、都としてのひきこもり支援の取り組みについて、地域の好事例が都内に広がるよう、区市町村と連携しながら体制整備を行うべきと考えます。都の見解を伺います。

○吉村福祉保健局長 都は、昨年度設置いたしました学識経験者、当事者団体、区市町村等から成るひきこもりに係る支援協議会において、当事者や家族の状況に応じた切れ目のない支援のあり方を検討しております。
 協議会では、区と関係機関が連携し、年代を問わない支援を行うなどの好事例も共有しながら検討を進め、昨年十月、支援に係る課題や基本的な考え方を整理した中間の取りまとめを公表いたしました。
 今後、区市町村や保健所等を対象に実施した支援の現状等に関する調査の結果も踏まえまして、さらに議論を重ね、支援の方向性について来年度提言をいただくこととしており、引き続き、区市町村と連携し、当事者や家族を支援してまいります。

○もり委員 ありがとうございます。ぜひ切れ目のない支援に向けたさまざまな連携の中で、誰ひとり取り残さない地域づくりに向けて、よろしくお願いいたします。
 次に、人生のライフステージにおいて、都においてもさまざまな相談窓口などがありますが、高齢者については、介護や福祉の相談窓口はありますが、元気なうちに自宅などの財産を将来どのように管理し、処分するかなどについて整理をしておく、いわゆる終活の相談は、一部の区市町村社会福祉協議会がエンディングノートを配布する等の取り組みがありますが、いまだ行政の課題とはなっていません。
 終活は、結婚の婚活や就職の就活と同じく、個々人で対応すべき課題ではありますが、今や個々人に任せておくだけでは、残された自宅が空き家となって処理されず、相続手続に多くの社会的資源が割かれ、また、生前においても、認知症が進めば財産管理などに支障が生じます。
 高度成長期に東京に移り住んできた方たちの持ち家比率は高く、住んでいる家の処理に加え、出身地で相続している実家もあり、空き家問題は東京にとどまりません。
 令和二年九月十五日時点で、東京の高齢者人口は三百十一万人、これを民間に委ねているだけでは、社会経済上大きな損失になると考えます。
 東京都の空き家の現在の状況、傾向はどのようになっているのか伺います。また、相続に起因する空き家はどのぐらいの割合になっているのかお伺いをいたします。

○榎本住宅政策本部長 平成三十年の国の住宅・土地統計調査によりますと、都内の空き家数は約八十一万戸であり、平成二十五年の前回調査と比べ、若干減少しております。
 一方で、空き家のうち、一般に管理が行き届かない可能性が高い長期不在、取り壊し予定等のいわゆるその他空き家は約十八万戸ございまして、前回調査から約二万八千戸増加しております。
 また、同調査の中で、その他空き家を所有する都内の世帯に対し、その取得方法を調査した結果、回答のおおむね六割が相続や贈与によるものでございました。

○もり委員 高齢者の住宅が、相続をきっかけに多くの空き家を生み出してしまう現状があるとのことで、都において、増加する高齢者対策の一環として、相続に伴う空き家の問題の解決に資するため、高齢者が元気でみずから判断できるうちに住まいを円滑に次の世代に引き継いでいくための準備を行う住まいの終活など、空き家が地域資源として活用されるよう、空き家対策を積極的に進めていくべきと考えます。知事の見解をお伺いいたします。

○小池知事 空き家の増加でございますが、防災や治安の面で問題となるとともに、地域の活力や生活環境にも影響を及ぼすことはご指摘のとおりであります。空き家を都市問題として顕在化させることのないように、効果的な対策を講じていくことは重要です。
 東京には、高齢者のみで持ち家に居住している世帯が約八十八万ありまして、大切に使用されてきた住宅について、円滑な相続の準備に資するよう、お話のありましたような住まいの終活を支援するということは、すなわち空き家対策を進める上で不可欠でございます。
 都はこれまでも、区市町村と連携しながら、弁護士、税理士などの団体等と協力をいたしました専門家による無料相談窓口を設置するとともに、民間事業者によります先進的な空き家対策を支援するモデル事業の実施など、空き家の発生抑制、適正管理、有効活用、この三つの視点から総合的に取り組んでまいりました。
 来年度は、民間事業者がそのノウハウを生かしまして、専門家を高齢者の住まいなどに直接派遣をし、相談に対応する取り組みを開始いたしますとともに、空き家が地域で効果的に活用されますよう、テレワークの拠点やコミュニティ施設などへの改修を支援してまいります。
 こうした施策を通じまして、良質な住宅ストックが円滑に次の世代へ引き継がれて、東京の資源として有効に活用されますよう、空き家対策を重層的に展開してまいります。

○もり委員 ありがとうございます。今、知事より、空き家を未然に防ぐための前向きなご答弁をいただきました。さらに、空き家というハードの面のみではなく、多くの課題を抱えている人に着目した終活についても取り組んでいただきたいと思います。
 地域の好事例も参考にしながら、認知症になる前の財産管理の方法の決定による介護生活の安定、相続紛争による経済的損失の最小化など、福祉的支援と住宅政策本部が連携をしながら、孤独死や空き家の発生を防ぐため、中野区では、独自に孤独死を防ぐための条例化を行った例なども伺っています。高齢者を支える地域の好事例も参考にしながら、民間の専門家と協力し、東京都として終活プロジェクトを立ち上げるべきだと考えます。
 高齢化率の高い東京都は、地方と異なり、核家族が進み、独居高齢者の割合が高い東京だからこそ必要な事業だと考えますので、強く要望いたします。
 次に、高齢者の医療について伺います。
 高齢者は多くの疾病や病状を抱えており、また、病院への通院が難しい方もいます。
 高齢者への医療を充実するためには、在宅療養の推進が必要だと考えます。在宅療養の推進に向けた都の取り組みについてお伺いをいたします。

○吉村福祉保健局長 都は、住みなれた地域で安心して暮らし続けられるよう、在宅患者や家族の相談に応じ、療養生活を支援する窓口を設置する区市町村への支援や在宅患者等への支援に携わる医療、介護従事者向けの研修などを実施してまいりました。
 また、在宅患者を支える医療、介護関係者間の情報共有システムが、地域によって規格が異なっていても、情報を共有できる東京都多職種連携ポータルサイトの運用を昨年十月に開始いたしました。
 今後とも、区市町村の取り組みへの支援や在宅療養にかかわる多職種の人材育成、デジタル技術を活用した医療、介護関係者の情報共有などに取り組み、地域における在宅療養体制を整備してまいります。

○もり委員 ありがとうございます。今、コロナ禍で、六十五歳以上は宿泊療養の対象とはなっておらず、自宅療養の高齢者がふえている中、おひとり暮らしのコロナにかかった地域の方から、自宅での療養が大変不安だったとの声も聞きました。自宅療養の方にオンラインを活用した、東京都でLINEを活用した健康観察も開始していただいていますが、デジタル技術の活用を推進する都として、コロナ禍の今だからこそ、ぜひオンライン診療に向けた取り組みも推進していただきたいと要望いたします。
 高齢者について最後の質問は、緩和ケアについて伺います。
 医学の進歩により、生物学的に人を生かす医療が進展してきました。人には寿命がありますが、延命治療を拒み、自分で寿命の決定を下すことは、法的にも倫理的にも困難な問題です。一方で、緩和ケアを施して残された時間を過ごすホスピスもありますが、その病室も多くはありません。
 誰もが住みなれた地域でその人らしく暮らし、希望に沿った最期を迎えられるようにするためには、前もって自分の思いや考えを伝え、話し合う取り組みであるアドバンス・ケア・プランニングが重要であると考えます。
 アドバンス・ケア・プランニングの推進に向けた都の取り組みについてお伺いをいたします。

○吉村福祉保健局長 都は、本年二月、患者や家族を支える医療、介護関係者を対象に、アドバンス・ケア・プランニングの理解促進に向けた研修を実施いたしました。
 また、都民が、自身や家族のアドバンス・ケア・プランニングについて、かかりつけ医などとの話し合いを進められるよう、今年度、具体的な事例や用語解説などを記載した啓発用の冊子を作成し、今月から医療機関等を通じて広く配布することとしております。
 今後とも、都民一人一人が、自身や家族の希望する医療やケア等について日ごろから考え、人生の最期を望みどおり迎えられるよう、アドバンス・ケア・プランニングの普及啓発を進めるとともに、医療、介護関係者の対応力向上を支援してまいります。

○もり委員 前向きなご答弁ありがとうございます。ぜひ都民一人一人が最期を望むように迎えられるよう、取り組みの推進をお願いいたします。
 次に、コロナ禍における困窮する女性の支援について伺います。
 生活保護制度による最低生活費の算出において、女性のみ必要な経費、ナプキンですとか、鎮痛剤について加算されるよう国に要望されたいと、我が会派の緊急知事要望においても国への要望をいたしました。
 我が会派ではこうした、先日もまつば先生の議論にあったように、生理の貧困について、厚生部会として議論を深め、年明けに知事要望にも盛り込ませていただきました。
 コロナ禍で、生活困窮が深まった折、貧困で生理用品を買えない女性は世界で五億人ともいわれております。また、#みんなの生理の皆さんの調査結果では、若い女性の二四%、まさに四人に一人が生理用品の購入に困窮をしている状態が伝えられています。
 英国では二〇二〇年、世界に先駆けて、全ての女性に対し生理用品を無料にする生理用品の無償化提供に関する法案が可決をしました。また、ことし一月から生理用品の購入が非課税となり、ヨーロッパ各地でこの動きが広がっているとのことですが、日本では、生理用品は軽減税率の対象外で、一〇%の消費税がかかっています。
 また、コロナ禍で、生理用品を購入できない学生さんが学校に通うことができないとの声を伺いました。虐待を受けているご家庭では、生理用品を買ってもらえない、買ってほしいと伝えることができないということはとても深刻です。
 学校のお手洗いに常設してほしいと考えますが、虐待の実態を見逃さないためにも、都としては、保健室で手渡しをするのが基本だとの都の見解を伺いました。理由を話せばもらえるとのことですが、打ち明けることがつらいお子さんもおり、毎回もらっていることがいじめの対象となってしまう等、学校現場での配慮が必要だと考えます。
 コロナ禍で、衛生的な生理用品に困窮する方がいる現状を踏まえ、都として国に対し、こうした点を踏まえた生活保護の基準とするよう要望書を上げるべきと考えます。都の見解をお伺いいたします。

○吉村福祉保健局長 生活保護の基準は、生活保護法に基づき、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮して、国が定めております。
 国は、生活扶助の基準について、定期的に評価、検証を行っており、昭和六十年に、消費支出の実態に合わせて、それまで男性の方が高く設定されていた男女別の基準を廃止いたしました。
 現在、国は、令和五年度に予定している基準の見直しに向けた検討を進めており、都は、男女別の生活上の需要や消費支出の実態等を把握した上で、適切に基準を設定するよう要望してまいります。

○もり委員 ぜひ、本当に困っている方がいる、これは所管がすごく難しくて、学校現場に置いてほしいという場合は教育庁なんですけれども、貧困対策は福祉保健局ということで--けれども、日本でも今、七人に一人のお子さんが貧困状態にあるという中で、そういった局を超えた支援が必要だと思いますので、引き続き、ぜひ取り組みについて検討を強く要望いたします。
 都はこれまで、警視庁、区市町村、弁護士等の関係機関と連携して、被害者に寄り添った支援を行うとともに、犯罪被害者支援条例の制定、犯罪被害者見舞金制度の創設など、支援策の充実を図ってきました。今後も、犯罪に遭われた方々に寄り添い、個々の背景に配慮したきめ細やかな支援など、都みずからの施策や支援対策の一層の強化を図ることにより、犯罪被害者やそのご家族を社会全体で支えていくことが重要です。
 昨年第四回定例会において、我が会派の支援体制の強化を求める代表質問に対し、小池知事は、関連機関との調整や被害者等の相談を担うコーディネーターや多摩地域における相談支援窓口の設置を表明いたしました。
 これまでの支援の実績を重ねる中で、犯罪被害に遭われた方が、代理人等として弁護士に依頼をする案件も多くあり、例えば、弁護士のさらなるサポートを切実に求める生の声も届いています。
 被害者に寄り添ったきめ細やかな支援の実現に向け、実効ある支援体制の構築とともに、現場のニーズを踏まえた支援体制のさらなる充実が必要と考えますが、今後の都の取り組みについてお伺いをいたします。

○山手総務局長 犯罪被害者等が抱える問題は多岐にわたっておりまして、各支援機関の相談窓口において、被害者等の状況や要望をしっかり聞き取り、それに即した支援を実施していくための体制整備や施策の充実を図っていくことが重要でございます。
 そこで、新たな取り組みとして、どの機関で相談を受けても、都の被害者等支援専門員に情報が集約され、適切な支援を提供できる体制を構築いたします。
 また、区部のみであった総合相談窓口を立川市内にも設置し、裁判所への付き添い支援等も実施いたします。
 さらに、刑事裁判に参加する際の経済的負担が大きいとの被害者等の声を踏まえ、都道府県として初めて、十万円を上限に弁護士費用の助成を開始いたします。
 こうした取り組みにより、被害者等に一層寄り添った支援を推進してまいります。

○もり委員 ありがとうございます。十万円を上限に弁護士費用の助成も開始していただけるということで、本当に、被害に遭われた方々に寄り添う支援体制の充実、大変求められております。どうぞよろしくお願いいたします。
 最後に、東京ベイeSGプロジェクトについてお伺いをいたします。
 江戸のまちは、水路が縦横にめぐらされ、豊かな水辺を活用した都市として繁栄してきました。地元大田区は、東京湾、多摩川に囲まれ、都民が水辺に触れ、親しむことのできる多くの水辺空間に恵まれております。
 私自身、これまで干潟の保全、海洋プラスチックごみ問題や舟運など、親水空間の整備に向け、注力してまいりました。
 先日公表された東京ベイeSGプロジェクトでは、自然と便利が融合する持続可能な都市という考え方が盛り込まれました。
 五十年、百年先を見据え、さまざまな将来像が描かれておりますが、ベイエリアでの美しい水辺空間を生かしたまちづくりは、我が会派が主張してきたものでもあります。美しい東京湾の自然環境を次の世代の子供たちに残していくためにも、非常に夢のあるプロジェクトであり、高く評価いたします。
 東京ベイeSGプロジェクトにおける水辺空間を生かしたまちづくりに込めた思いについて、知事にお伺いをいたします。

○小池知事 このプロジェクトの舞台でありますベイエリアでありますが、自然に恵まれた立地条件にございます。それをいかに活用していくかが、プロジェクトを成功させる上での要素、重要な要素になっております。
 歴史を振り返りますと、江戸のまちというのは、河川、水路が網目のようにめぐって、人や物を運ぶさまざまな船が行き交った、そしてにぎわいや活気に満ちあふれた、まさに東洋のベネチアとも称されるほど水辺を中心に栄えておりました。
 現在のベイエリアには、日本を代表する物流ターミナルを初め、お台場など人々が憩い、そして水に親しめる空間や、東京二〇二〇大会の会場であります海の森水上競技場、さらには将来的にベネチアの二倍もの大きさにまでなる広大な埋立地など、さまざまなポテンシャルが存在いたします。
 こうしたロケーションにおいて最先端のテクノロジーを活用することなどによって、水辺の空間を最大限生かしたまちづくりを進め、交通、観光手段としての舟運、船ですね、この活性化、そして泳げる東京湾の実現など、世界の範となる海と緑が調和した都市をつくり上げてまいります。

○もり委員 ありがとうございます。
 葛西海浜公園がラムサール条約湿地に登録をされました。我が会派は、三枚洲を視察し、干潟の重要性を訴えてまいりました。知事の公約の中にも、東京都の干潟の保全が掲げられており、この貴重な浅場を保全していくための都の今後の取り組みについて、最後にお伺いをいたします。

○古谷港湾局長 葛西沖の浅場は、都民にとって身近な存在であり、気軽に海の自然と触れ合うことができる貴重な場所であることから、しっかりと保全していく必要がございます。
 そこで、都は、平成二十六年度から二十九年度までに、幅五十メートル、延長一・三キロメートルの潮通しをよくいたします小水路を葛西沖の浅場に整備することで、海水が循環しやすい海底面を維持し、水生生物の住みやすい環境の形成を図りました。
 今年度は、小水路の機能維持のため、その一部でしゅんせつを実施するとともに、整備効果を検証するため、小水路周辺における水生生物調査を開始いたしました。
 ご要望も踏まえ、今後も継続的に調査を実施し、整備効果の検証を行いながら、自然豊かな葛西沖の浅場の保全に取り組んでまいります。

○木村委員長 もり愛委員の発言は終わりました。(拍手)