予算特別委員会速記録第三号

○上野副委員長 内山真吾委員の発言を許します。
   〔上野副委員長退席、伊藤副委員長着席〕

○内山委員 それでは、私からは、まず、教育界の悲願でもありました三十五人学級の実現に向けての取り組みをお伺いしたいと思います。
 今般、国は、義務標準法を改正して、小学校においてですけど、まだ三十五人学級が実現をしていない学年に対して、五年かけて三十五人に引き下げるという決断をいたしました。
 そういった中で、私もこれは大歓迎でありまして、本当に悲願がかなったなという思いがあるんですが、一方で、この都議会において、三十五人学級やるべきじゃないか、どうなんだという質問をこれまでできなかった背景には、やはり、これを本当に実現したときに、実現可能性があるのかどうか、困難性があるのではないかというところがまだ強くありました。
 ですので、今回の国の、あえて英断と申し上げますが、この三十五人学級の英断は、感動しながら、支持しつつも、新たな東京都としての課題が目の前にあるのではないかなというふうに思っています。そのあたりをまずはこの質疑を通して議論をしていきたいなと思います。
 この三十五人学級の実施に当たっては、全国で一万四千人の教員が新たに必要となるというふうにいわれておりまして、国はどうやってやるかというと、少子化による子供の減少と、あとは加配の定数の振りかえによって対応していくというようにいっています。これ、ちょっとよくわからないと思うので、少しここは丁寧に説明します。
 まず最初の子供の自然減のところですが、確かに全国的に見れば少子化ですから、子供たちの数が減っていく中で、教員の採用を控えなければ、必然的に一学年当たりの人数を減らしていくことができると。これはわかるような気がするんです。
 しかし、採用は全国で一律でやっているわけではなくて、各都道府県ですから、それが本当に、地方で子供が減っているからといって、この東京都、特に首都圏はまだまだ子供の数がふえている中で、果たしてそこがうまくいくのかどうかという懸念が一つあります。
 もう一つは、加配定数の振りかえによって対応していくということですが、これは何かというと、東京都は今、算数の習熟度別少人数だとか、そういった形でさまざま加配をしているわけですね。この加配を振りかえて、四十人学級を三十五人学級にするかのようなことをいっていたかに思うんです。
 それはかなり、もしそうだとすると、ただ三十五人学級というのは絵に描いた餅で、むしろ各学校現場からすると、自由度が縛られてしまって、かえってよくないのではないかなと思うんです。
 そこで、まずお伺いしたいのが、令和三年度は小二の加配を振りかえるだけなので影響はほとんど生じないんですけど、令和四年度からは都にも影響が生じてくるものと思われますが、都はどのように対応していくのか伺いたいと思います。

○藤田教育長 国は従来から、小学校における習熟度別指導など、各自治体が指導方法を工夫できるよう、教員の追加配置、いわゆる加配を行っているところでございます。
 今回の三十五人学級の段階的な実施に当たりましては、お話のとおり、その一部を削減し、振りかえることで必要な教員を確保することが検討されているというふうに伺っております。
 都教育委員会では、現在、この追加配置制度を活用して、お話のように、小学校の算数において学級を複数の学習集団に分け、児童の習熟の程度に応じた指導を行い、成果を上げているところでございます。仮に令和四年度以降に国が振りかえ措置を行った場合、都の習熟度別指導の継続に影響が生じる懸念がございます。
 このため、引き続き習熟度別指導を維持しつつ、三十五人学級を実施できるよう、都は国に対し、必要な教員数を確保することを現在も要望をしているところでございます。
 今後も、あらゆる機会を通じて適切な対応を求めてまいります。

○内山委員 ありがとうございます。こちらは本当に重要なポイントだと思いますので、引き続き国に対する要望をしていっていただきたいなと思います。
 続きまして、この次の段階になったときに、じゃあ教員をそもそも確保できるのかという課題が出てくるかと思います。こういった話題になると、メディアでも、ただでさえ今、東京都は小学校の教員の採用倍率が二前後ということで、本当に教員の数が確保できるのかという懸念が出てきているわけでありますが、果たして、どういった分析で教員の倍率が下がってきているのか。
 一つは、萩生田文科大臣がコメントしているように、学校は大変な職場というイメージがあるから、そういうのを払拭していきたいんだと、こういうこともいって、確かにこれもそうかと思うんですが、教員の採用選考の受験者数の減少が指摘されている中で、果たして受験者層についても何か変化があるのか。まず、どういう分析を行っているのか、これをお伺いしたいと思います。

○藤田教育長 都の小学校教員採用選考の受験者数は、平成二十八年度の約四千六百人から、令和二年度では約三千四百人まで減少しております。
 この受験者の内訳を見てみますと、新卒受験者は、同期間においておおむね千五百人前後で推移しているところでございますが、一方、既卒受験者は、平成二十八年度の約三千人から、令和二年度では約一千九百人へと大きく減少してきております。
 この数字の意味でございますが、近年の大量採用に伴い、既卒受験者の多くが既に教員として採用され、既卒受験者層が総体として減少していることが主な要因というふうにも考えられております。
 文部科学省の教員採用選考実施状況調査の分析結果においても、同様のことが指摘されているところでございます。

○内山委員 ありがとうございます。都としても、文科省としても、団塊の世代の大量の退職に伴って、大量に採用しなきゃならないということで、採用をどんどんしていった結果、実は新卒者というのはそんなに変わらないんだと。ただ、ふえていた既卒の部分からどんどんどんどん採用になってきているから、それで実際にこの受験者数が減ってきたんだという分析でありました。
 これは、私はかなり重要な指摘ではないかなというように思っています。となると、とるべき対応というのはまた多少変わってくるのかなと思っています。
 文科省の調査によると、全国的な退職者のピークはもう過ぎているということで、採用者数も全国的には減少に転じているということでありました。
 しかし、ここで三十五人学級の教員の確保という新たな課題が出てきて、都は、先ほども申し上げましたけれども、首都圏も含めて児童数は減ってきていないので、まだまだ楽観視できない状況があるのではないかなというように思います。
 そうなると、考えなきゃいけないのは二つになってきています。その二つは何かというと、首都圏においての教員の確保、人材獲得競争に勝たなきゃならない。もう一つは、そもそもの教員のなり手をふやしていく。これは本来、国の役割のような気もしますけれども、そんなこともいっていられないので、東京都もそういったことをしていかなきゃならないということだと思います。
 一つ目の、まず、他県との差別化という意味において、人材獲得競争に勝つために、東京都の教員採用選考の受験者をふやすためには、東京ならではの魅力などをわかりやすく多様な手法でPRすることが重要だと思いますが、都の取り組みを伺いたいと思います。

○藤田教育長 都教育委員会は、小学校の教員採用選考の受験者確保のために、東京の教育の特色や充実した研修制度など、東京で教員として働く魅力の発信に努めているところでございます。
 具体的な内容を申し上げますと、経験や職層に応じて専門性を高める豊富な研修科目や、現場で新人教員がベテラン教員から学級経営を学ぶ研修、あるいは最新の英語教授法等を学ぶ海外派遣研修といった都独自の取り組み、また、国の機関や文化施設などの豊富な教育資源を授業に活用できる、まさに東京の強みなどでございます。
 こうした内容を現職教員が経験談として直接伝える説明会を実施するとともに、さらに幅広く周知するため、若者に訴求力のある動画やインスタグラム、漫画等を効果的に活用して広報することに努め、都の魅力を発信し、受験者確保に努めてまいります。

○内山委員 ありがとうございます。都独自の取り組みはかなりこの間されておりますので、それをしっかりと対象に伝わるようにPRをしていっていただければというように思っています。
 保育士の確保についても、家賃の補助であったりとか、給与がほかの業種に比べて少ないということも保育士の場合はありましたので、そこに対してインセンティブをつけたりとかしながら確保に取り組んできました。教員の場合は公務員ですから、そういった金銭的な支援ができるかどうかというハードルがあると思いますが、ぜひここは教員の確保という意味で頑張っていただきたいなと思います。
 二つ目の方向性の教員のなり手をふやすことに関して、都教育委員会の取り組みとしては、今回新しく幼稚園の教員経験者への小学校教諭免許取得支援と新規の予算が措置されております。これを事業化した背景について伺いたいと思います。

○藤田教育長 幼稚園教員の経験者は、既に保護者対応や子供の指導を行っており、その経験は小学校にも有用なものでございます。また、都内では、幼稚園教員が年間一千二百人程度退職をしているというような状況もございます。
 加えまして、幼稚園教員の経験がある者につきましては、これまでの教職経験を評価することで、新規学卒者よりも少ない期間と費用で小学校教員免許状を取得できる教育職員免許法の特例的な免許取得制度がございます。
 このように、幼稚園教員経験者は、小学校教員のなり手として有望な層であることから、本事業を開始することといたしたものでございます。

○内山委員 ありがとうございます。都内で大体年間一千二百人程度が退職しているということで、これ、全員が全員ではないですけど、比較的、結婚されたり、妊娠をされたりすると退職をされるという幼稚園の先生方は、いまだに多いというふうに聞いています。
 そういった中で、この千二百人のうちの一割でも二割でも、結婚しても出産をしても仕事を続けられる。あとは、幼稚園の先生ですから、小学校低学年の子供たちに対する対応というのはかなり慣れたものがあると思いますので、この活用というのは私はかなり有用なのではないかなと思います。
 では、その具体的な事業の内容についてお伺いしたいと思います。

○藤田教育長 都教育委員会は来年度から、特例的な免許取得制度を活用し、幼稚園教員経験者に小学校教員免許取得を促すための新たな補助制度を開始いたします。
 具体的には、大学の通信課程において必要な単位を取得し、都の教員採用選考を経て教員となった者を対象に、十五万円を上限として免許取得費用について補助を行うというものでございます。
 この取り組みにより、小学校教員免許の取得しやすさや、幼稚園での経験を小学校で生かせることなどを広く周知し、小学校教員の新たななり手の確保に努めてまいります。

○内山委員 こちらはかなり私は期待できる事業だと思いますので、ぜひ実効性のある取り組みをお願いしたいと思います。
 ここからは、コロナ禍によって今まで以上に重要となってきた各種のセーフティーネットについて質問させていただきたいなと思います。
 まずは、児童相談所の一時保護所についてであります。
 平成三十年度には第三者委員から意見書が出され、都は、それを受けまして検討会を開催するなど、支援改善に向けて取り組みをしてまいりました。私も二年前のこの予算特別委員会でも質疑をさせていただきましたし、その後の一般質問等でも逐一質問、提案をさせていただいている分野でございます。
 都は、この一時保護所の定員数や人員体制の強化、支援内容の改善など、一時保護所に入所する児童への支援をさらに充実すべきと考えますが、知事の見解を伺います。

○小池知事 児童相談所で受ける虐待の相談、そして通告の件数は、近年増加の一途をたどっております。一時保護所で保護する児童も増加しているということです。
 都は、一時保護需要の増加に対応するために、来年度、児童相談センターの一時保護所の定員拡大を図ります。そのほか、新宿区が設置する施設を新たに借り上げまして、保護所として活用するとともに、立川児童相談所一時保護所の改築にも着手をいたします。
 また、一時保護を行った児童へのケアを充実するために、職員を国の基準よりも手厚く配置をいたすとともに、来年度は、心理、そして看護などの専門職を増員いたします。
 さらに、今年度からは、一時保護所の第三者委員の意見も聞きながら、児童に対する支援力の向上や、児童が安心を実感できるような環境づくりなど、さまざまな取り組みを行っております。
 今後とも、一時保護所の体制強化、そしてケアの充実に取り組みながら、一人一人の児童に寄り添った丁寧な支援を行ってまいります。

○内山委員 ありがとうございます。二年前にこちらで質疑をさせていただいたときは本当に、一時保護所のある種、少年院かとやゆされるような運用の内容というものが明らかになったところでございました。
 しかし、そこから二年間かけて、東京都は、その状況はかなり改善されてきているやに聞いています。第三者委員からも、ちょうど十日前、三月一日には、またこの活動実施状況というのが報告をされておりまして、職場全体の、職員全体の支援改善の意識が高まってきているとか、子供の表情が明るくなってきているとか、こういうことも意見が出されてきています。
 一方で、まだ一部では、自由な会話が禁止されていると感じている児童がいたりだとか、自分の先行きに不安を募らせている児童が見られるという、まだ改善内容も指摘をされています。ぜひ引き続きの支援、改善を図っていただきたいというように思っています。
 この一時保護所の入所児童というのは、基本的には学校に通えないという状況があります。長い児童は、数カ月にわたって一時保護所で学習支援を受けるということになっていますが、基本的には、子供たちに教育を受けさせる義務というのは、教育委員会、教育にあるわけですが、一時保護されている子供というのは、身体に対する危険があるわけですから、そこでは一時保護所が一時的にその役割を担うということになっています。
 しかし、そこでもなかなか難しいのは、いろんな年齢層の子供たちが来て、しかも、その中でも家庭環境はさまざまなもので、習熟度もばらばらという中で、学習支援員が、幾ら教員免許を持っている人がやっているとはいえ、そこにしっかり対応できるかどうかということは、かなりこれまでもさまざまなところから指摘をされてきていました。
 そこで、我が会派のもり愛議員からも提案をさせていただいた、一時保護所の児童へのタブレット端末の導入を今回予算化していただいているわけですが、一時保護児童の学習を保障するために、一時保護所における学習環境の充実を図る必要がある中で、来年度における都の取り組み、このタブレット端末の導入も含めて伺いたいと思います。

○吉村福祉保健局長 都は現在、一時保護所に教員免許を有する非常勤の学習指導員を配置し、学年や学習の習熟度に応じた学習指導を行うとともに、進学時期の児童に対しては、在籍校と緊密に連携した受験対策なども実施しております。
 来年度は、一人一人の学力に合わせた、よりきめ細やかな対応ができるよう、Wi-Fi環境を整備した上で、お話にありましたタブレット端末を配備し、アプリなどを活用した学習を開始いたします。あわせて、これらを効果的に活用できるよう、職員向けの研修も開始いたします。
 また、体育や音楽など専門性の高い教科への対応を充実するため、外部講師を導入するとともに、家庭教師を活用し、受験に向けた個別指導も行うなど、さらなる学習環境の充実に努めてまいります。

○内山委員 ありがとうございます。GIGAスクール構想も含めて、学校では一人一台端末というものが実現をします。その中で、一時保護所の子供たちも、そういった同じ学習環境で、ともすると、支援が必要な子供たちですから、さらに手厚い学習支援が私は必要なんじゃないかなと思います。ですので、ICTの導入支援員も教育の分野ではつきますから、この一時保護所にも、ぜひ保護所の教員がしっかりとICTを使えるように、引き続きというか、支援をしていただきたいなと思っています。
 また、アプリだけではなくて、AI教材とか、反転授業等で使われるような動画学習だとか、こういったものもありますので、ぜひご活用をいただきたいなというように思います。(発言する者あり)ありがとうございます。
 では、続きまして、困難状況にある女性の支援、セーフティーネットについてお伺いをしたいと思います。
 このコロナ禍において、DVや虐待、貧困などにより、困難な状況にある女性がふえております。こうした女性に対する相談支援や、安全・安心の確保などが重要となっておりますが、知事の見解を伺いたいと思います。

○小池知事 コロナ禍という未曽有の危機の中にあります。その中にあって、生活や仕事、さらには配偶者からの暴力など、さまざまな悩みを抱える女性を必要な支援につないでいく必要がございます。
 都は、女性相談センターや東京ウィメンズプラザで、DVを初めとする女性からのさまざまな相談を受けるほか、緊急的な対応が必要な場合には、女性相談センターで一時保護を行いまして安全を確保しているところでございます。
 また、福祉事務所などと連携しまして、婦人保護施設への入所や生活保護の受給など、一人一人の状況に応じた支援も行っております。
 さらに、住まいや仕事を失った方への相談、緊急的な一時宿泊場所の提供、キャリアカウンセラーによる就労支援なども実施をしております。
 また、現在、都におきましては、さまざまな困難を抱えた若年女性の自立を図るため、三つの民間団体と連携をいたしまして、SNSを活用した相談や、夜間の見回り等のアウトリーチ支援などをモデル事業として行っております。来年度から、本格実施として団体をふやすなど、相談支援体制を強化してまいります。
 私は、女性がみずからの希望に応じた生き方を選択して自分らしく輝ける社会を実現していきたい、こう思っております。このコロナ禍にありましても、不安や悩みを抱え込むことなく安心して暮らせる、そんな女性にしっかり寄り添いながら、きめ細かく支援をしてまいります。

○内山委員 ありがとうございます。私もこれまで、そんなに詳しい分野じゃなかったんですが、子供の保護というので児童相談所や一時保護所があるように、特に十八歳以上の女性には、児童相談所に当たるところは女性相談センターがあって、そこにも一時保護所がある、こういうことであります。
 今、知事の答弁にもありましたように、三年間行われてきました若年被害女性等支援モデル事業が令和三年から本事業になるということで、まさにコロナ禍によってかなり、今まで以上に重要な事業になってきたんだと思います。そこで見えてきた諸課題について、少し質問、提案させていただきたいと思います。
 女性相談センターの一時保護所では、携帯電話が一律で使えない、その他、ルールもかなり厳しいため、この時点で婦人保護施設への入所を諦めてしまう女性が少なくないというふうに聞いています。
 そこで、女性相談センターにおける一時保護所の携帯電話の取り扱いについて改善すべきと考えますが、見解を伺います。

○吉村福祉保健局長 女性相談センターは、DV被害者の一時保護所としての機能を有していることから、入所者の安全・安心を確保するため、居場所が特定されないよう、現在、携帯電話などの通信機器は預かるなど、一定のルールを定めてございます。
 国は、昨年十二月、婦人相談所の一時保護所や婦人保護施設における携帯電話などの使用に関する基本的な対応方針を策定し、加害者からの追跡の回避など、入所者の安全・安心を最優先としつつ、さまざまな制約の中でも、可能な限り入所者の希望に沿った対応を行うべきであるなどといたしました。
 今後、都は、女性相談センターでの携帯電話などの通信機器の取り扱いについて、改めて検討してまいります。

○内山委員 改めて検討していくという重要な答弁がありました。当然、DV被害者等、位置を探られないために使用を控えていく、厳しくしていく必要がある一方で、携帯の使用ができないと、なかなかここで保護につながらないという女性もいます。ぜひグラデーションのある支援を検討していっていただきたいなと思います。
 続きまして、一時保護所があって、虐待でいうと、そこから児童養護施設という支援がある一方で、この女性支援に関しては、一時保護所から婦人保護施設というルートがあります。
 ただ、この婦人保護施設に入るためには、センターの一時保護所に一旦入らないと入所できないということがありまして、先ほど申し上げましたセンターの一時保護所のルールがかなり厳しいために、女性にはかなり大きな負担となって、そこにつながらない課題があるというふうに聞いています。
 そこで、都は、そこのセンターの一時保護ではなくて、一時保護委託先から婦人保護施設への直接入所を今後検討していくべきだと考えますが、見解を伺います。

○吉村福祉保健局長 さまざまな困難を抱える女性を適切な支援につなげるためには、女性の状況を丁寧に把握する必要がございます。
 都は、女性相談センターの一時保護所に医師や心理などの専門職を複数配置して、インテークや心理面接などをきめ細かく行い、施設入所や自立支援など、個々の状況に応じた支援につなげております。
 お尋ねの一時保護委託先からの婦人保護施設への直接入所については、一時保護委託先で今後の支援に向けた女性の状況把握をどのように行うか、また、婦人保護施設が直接入所を受けるに当たり、どのような対応や体制をとる必要があるかなど、実施に係るさまざまな課題を今後幅広く検討してまいります。

○内山委員 こちらも非常に重要な答弁かと思います。婦人保護施設を私も先日視察に行ってきましたが、婦人保護施設の所長さんからは、コロナで大変なはずなのに、入所率が極めて低いということが相談で寄せられました。
 都内で五カ所、大体二十名から四十名定員ですから、百数十名定員しかないにもかかわらず、少ないところでは、四十名定員のところに、たった四人しか入っていないという状況があります。
 一方で、女性の保護だとか支援が必要だと、先ほどの若年被害女性等支援モデル事業の民間の方々は、この女性、この子たちをどうにかしてほしいといいながら、一方で、こっちはがらがらというミスマッチが今も続いています。ぜひこういったところも、一時保護委託からの直接入所というところでも大分変わってくると思いますので、検討していっていただきたいなというように思っています。
 私も女性相談センターも直接視察をさせていただきましたが、本当にさまざまな課題があるなというように感じました。平成十年に建てられて、当時の法のたてつけの中から、売春した女性を更生させるような施設という前提から、今は、DVだとかさまざまな支援の方に、ケア施設に生まれ変わるべきなのに、なかなか生まれ変われていないという印象を受けました。
 そういった中で、例えば、女性ですから、子供を連れて入所してくるというケースもある。これは同伴児童という呼び名らしいんですが、そういう中で、じゃあ、その子供のケアができているかというと、これもなかなかできていない。そもそも東京都の女性相談センターの一時保護所の定員が三十名しかいない。子供を五人連れてきたら、二十五人しかないですよ、定員が。
 こういう状況というのは、ちょっと私、考えられないと思いますので、ぜひ、もう建てられて二十三年たつ施設でもありますし、もうあのハードでは、ソフトを幾ら変えてもなかなか厳しいと思いますので、これは抜本的な建てかえも含めた運用の見直しについて意見をさせていただきたいというように思います。
 続きまして、コロナ禍によって残念ながら増加してしまっている、最後のセーフティーネット、自殺対策についてお伺いをしたいと思います。
 平成二十三年までは増加傾向にあって、年間三万人を超えてきた自殺者数ですが、そこからずっと十年間減少に転じてきましたが、残念ながら、昨年コロナ禍の影響によって、令和二年六月以降は増加傾向、そして児童生徒の自殺者数は過去最多となってしまいました。
 皆さんも恐らく、ご自分の周りの方や大切な方が、みずから命を絶つという経験をされている方もいらっしゃるんじゃないかなというように思います。私も大学時代の親友、そして社会人になってからの職場の先輩、もう肩を組んで笑い合うような先輩が、みずから命を絶つという経験をしてきました。今もそういった苦しい環境にいる人と向き合っています。
 この自殺というのは、病気とか事故だったら病気や事故のせいにできるんですけど、自殺をされてしまって残された方は、自分に何かできなかったか、こういうことを思ってしまうんです。
 そういった中で、最後のセーフティーネットの自殺対策、この現状をどのように認識していて、どのように取り組んでいるのか伺いたいと思います。

○吉村福祉保健局長 昨年の都内の自殺者数は、女性や若者が大きくふえるなど一昨年と比較して増加しており、新型コロナウイルス感染症の影響により、今後も自殺リスクの高まりが懸念されます。
 自殺の背景にはさまざまな要因が複雑に絡み合っていることから、都は、関係機関や区市町村などから成る自殺総合対策東京会議を設置しており、コロナ禍における自殺防止策について検討を重ねてまいりました。
 こうした検討も踏まえまして、昨年六月からSNS相談と電話相談の体制を強化するとともに、昨年十二月からは悩みを抱える方を社会全体で支える取り組みや相談事業の拡充、普及啓発の強化などの緊急対策を進めております。
 また、自殺防止東京キャンペーンを例年より時期を早めて先月から開始しており、今月下旬にはSNSと電話の受け付け時間を延長する特別相談を実施いたします。

○内山委員 その中で、電話相談、東京都自殺相談ダイヤルというものがあります。調べてみたら、応答率がかなり低いということがわかりました。私も今、相談を受けている人にかけてみてといったら、つながらなかった。
 調べてみたら、一千四百万都民が生活する東京都において、回線が幾つあるかといったら二つなんですよ、二つ。二人かけたら、もうつながらないんですよ。
 私、電話かける状態、どういう状態でかけるかって、もうわらにもすがる思いで、一縷の望みをかけて電話をかけるのに、そこでつながらなかった。それがたった二回線しかない中で、かなり多くの方がつながらないということを考えると、これが一つの自殺へのトリガーになってしまう危険性すらあるというように私は懸念しているんです。
 この二回線で予算は七千三百万円ですよ。だとしたら、このお金、民間団体にそのまま支援につなげて投げた方が、こんな電話番号なくしてしまった方が私はいいとすら思っています。
 なので、ちょっともう時間の関係で質問しませんけど、ぜひ、この二回線だったらやめた方がいいです。どうせだったら、ぜひふやしていただきたいなということを強く要望させていただきたいというように思います。
 最後です。高校生へのセーフティーネットについてお伺いをしたいと思います。
 高校の授業料が実質無料化されても、残念ながら、経済的な理由で高校を中退するということはいまだに起きてしまっています。
 全国のデータで申し上げますと、平成三十年度の高校中退は四万八千五百九十四人で、うち経済的な理由による中退は九百八十八名、まあ千人ぐらいです。
 東京都では、大体毎年百人程度が経済的な理由で学びを続けられない、退学をしているということです。
 東京都内に高校生は三十万人いますから、その中の百人となると、もう〇・一%以下ですよ、〇・〇三%ぐらい。ですけど、百人の人生がここにかかっているということなんだと思います。これが、コロナ禍によってふえてきているんではないかという指摘があります。
 国際NGOであるセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの皆さんが、住民税非課税相当のひとり親世帯で高校生の子供を持つ保護者を対象に、経済的負担に関する調査を行っておりまして、その調査結果によると、回答者の約三割が新型コロナウイルスによる経済的な理由によって、今後、高校就学を続けられなくなる可能性があると答えていることがわかりました。
 セーブ・ザ・チルドレンの皆さんところに、支援につながれた方々も、そんな多くないですよ。そもそも三百人から四百人ぐらい。その三割ですから、やっぱり百人から二百人ぐらいですよ。
 そういった中で、都は、高校生の子供を持つ住民税非課税世帯等を対象に奨学給付金を支給していますが、このセーブ・ザ・チルドレンさんの調査では、回答者の約二割が、奨学給付金を利用できる可能性がありながら、同制度について、利用したことがない、わからないと答えております。
 ほかの調査によっては、ひとり親家庭のさまざまな貧困格差の中に、情報格差、情報の貧困というものがあります。
 ですから、必要な支援を整備しても、そこに届いているかどうかということはチェックが必要なのではないかと思うんです。
 いまだ終息に至らないコロナ禍において、子供たちが学びを経済的な理由で諦めてしまうということは絶対、絶対あってはならないというように思うんです。
 都としてもしっかり支援をしていく必要があると考えますが、知事の見解を伺いたいと思います。

○小池知事 まず、高校生への就学支援についてのご質問にお答えいたします。
 まず、学ぶことこそ貧困から脱却する道でございまして、そのことは歴史が証明しているかと存じます。
 将来の可能性を広げる時期にある高校生が、どのような家庭の経済状況にあっても、子供たちの学ぶ環境を整えて、可能性を広げるということは重要です。
 都は、国の就学支援金、そして都の特別奨学金で、高等学校の授業料の負担軽減を図っているのはご承知のとおりかと思います。年収約九百十万円未満の世帯は実質無償化でございます。
 低所得世帯を対象とした奨学給付金ですが、コロナによる影響を踏まえまして、令和二年度から、当年の所得減少があった家計急変世帯も新たに対象としております。来年度には支給単価が増額をされることとしております。
 さらに、支援に関する情報が必要な家庭に行き渡るように、生徒や保護者向けのリーフレット、そしてSNSなどのさまざまな広報媒体に加えまして、ひとり親の家庭向けの支援ポータルサイトを新たに活用して、よりきめ細かな周知を実施してまいります。
 かけがえのない存在である全ての子供たちの学び続けたいという気持ちに応えていくために、都は全力を注いでまいります。
 また、先ほど自殺の関連の相談窓口である電話相談が、二本で七千三百万円というお話がございました。
 あたかも一本ずつにしますと幾らというような計算ができがちでありますけれども、昨年六月から自殺の防止策でSNS相談と電話相談の体制を強化しておりまして、特に昨年十二月からは、悩みを抱えた方々、社会全体で支えていこうということで、相談事業の拡充や普及啓発の強化などを行っております。
 また、自殺防止東京キャンペーンというのは例年行っているものでございますけれども、時期を早めまして先月から開始をして、今月の下旬には、今の電話と、それからSNSの受け付け時間の延長をする特別相談を予定いたしていることをつけ加えさせていただきます。

○内山委員 ありがとうございます。就学継続が困難な高校生の問題というのは、教育だけでとどまるものではないと思います。ぜひ局を超えて、福祉保健局と、福祉と教育が連携をして、例えば高校に、経済的な理由で、万が一高校をやめなきゃならないと思っている人は相談してくれというようなポスターを張って、そこにワンストップ窓口等を設置すれば、実態把握にもなるし、そういったメッセージもつながるのではないかなと思います。
 ぜひ、ふえたといっても三十万人のうちの二百名程度ですから、〇・一%以下、でも二百人の人生を救いたいと思っています。よろしくお願いします。ありがとうございました。(拍手)

○伊藤副委員長 内山真吾委員の発言は終わりました。