午後七時十分開議
○吉原副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
質疑を続行いたします。
田村利光委員の発言を許します。
○田村委員 東日本大震災より本日で十年。改めて、被災された皆様にお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
人が集まることが始まりであり、人が一緒にいることで進歩があり、人が一緒に働くことが成功をもたらしてくれる。これはフォード自動車の創業者ヘンリー・フォードの言葉ですが、今回のコロナウイルスは、この言葉をこっぱみじんに打ち砕く破壊力がありました。
しかし、我々は負けてはいけません。負けるつもりもありません。そのためにも、ポストコロナを見据え、再び参集するための移動手段を確保しておくことが重要です。
そこで、まず、地域公共交通について質問します。
近年、地域公共交通の分野では、運行ダイヤや発着地等を柔軟に運用するデマンド交通に注目が集まっています。
そうした中、都は今年度から、市区町村による導入調査や実証運行等に対する補助を開始しており、現在、東久留米市の実証実験に対し財政支援を行っています。
一方、地域公共交通の充実に向けた取り組みは市区町村が主体的に担っていますが、住民移動ニーズの把握や運行路線の検討などが一つの自治体にとどまりがちです。
しかし、都民は日々、行政界を意識することなく闊達に移動しており、移動ニーズと交通インフラのミスマッチが生じている事例も少なくありません。地域公共交通を広域的な観点からも捉えた上で施策を展開することが重要です。
そこで、都のデマンド交通の補助制度は、こうした広域的な視点を考慮しているのか、また、東京都が広域調整機能を発揮し、市区町村間の連携に基づく取り組みを促していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
○上野東京都技監 東京は、区市町村域を越えて市街地が連担しておりますが、区市町村域を越えた輸送サービスの提供が不足している場合も見受けられることから、近接自治体相互の連携を促進する取り組みを強化していく必要がございます。
都は、有識者等とともに、二〇四〇年代における地域公共交通のあり方を検討する中で、区市町村の区域を越える路線の導入など、広域的観点からの検討も行っておりまして、得られた知見につきましては、区市町村の施策の検討に資するよう情報提供するとともに、意見交換を行ってまいります。
また、お尋ねの補助制度につきましては、区市町村の区域を越えて都内の他の自治体内を運行する場合のほか、都内の複数自治体が共同で運行する場合なども補助の対象としております。
こうした取り組みを通じ、区市町村の主体的な取り組みを支援しまして、地域公共交通の充実を図ってまいります。
○田村委員 私の地元あきる野市でも、デマンド交通の導入が検討されています。将来は西多摩地域において、広域デマンド交通が実現することを期待いたします。
次に、デマンド交通も機能の一つとして組み入れた観光型MaaS事業について伺います。
昨年の夏は、コロナ禍の夏休みであり、多くの都民に西多摩地域へ来訪いただきました。しかし、そこは渋滞の海でした。私も、ふだんなら三十分で到着する檜原村まで一時間半以上かかりました。
このように西多摩地域は、観光資源は豊富なものの、交通手段が貧弱なため、地域のよさを面的に味わっていただくことができません。
そのような中、都は、多摩地域において、観光型MaaSの導入支援事業に取り組むとのことですが、今後どのような取り組みをしていくのか伺います。
○村松産業労働局長 都は、多摩地域において、観光地をめぐる際の利便性の向上を目指し、これまでシェアサイクルの導入支援や電動アシスト自転車と公共交通を組み合わせたモニターツアーなどを実施してまいりました。
今後は、スマートフォンの一つのアプリで交通機関や観光スポット等の情報検索や予約、決済などが可能となる観光型MaaSの実証実験を青梅市で実施いたします。現在、地元自治体や交通事業者等と実施に向けた協議を進めておりまして、感染状況等を見きわめつつ、事業を開始いたします。
また、ことしの後半は、さらに対象のエリアを拡大して実証実験に取り組む予定としております。
こうした取り組みにより、地域の回遊性を向上し、多摩の観光の活性化を図ってまいります。
○田村委員 観光客は市町村境を意識しません。観光型MaaSの広域化は、地域の魅力の増加につながると思います。
また、都は、町田市、多摩市において、生活利便性向上のためのMaaSの実証実験を行いました。多摩地域での二つのMaaS事業は、それぞれの地域の特性、課題を考慮した取り組みといえます。
さて、デマンド交通と観光型MaaS事業について質問をしましたが、ポイントは広域性と地域の特性に焦点を当てていることです。私の地元西多摩で今必要なのは、緩やかで強力な自治体の連携です。
また、同じ多摩地域でも、エリアによって強みや弱みの特性は大きく異なります。
都は来年度、新たな多摩振興プランを策定します。ぜひ広域の視点と地域の特性を意識した具体的なプランを策定していただくことを要望します。
次に、林業における人材育成についてお聞きします。
二酸化炭素の吸収や土砂災害の防止など、森林の有するさまざまな機能は、豊かな都民生活に欠くことができません。そうした機能を高めていくには、切って、使って、植えて、育てるという森林の循環を推進していく必要があります。
今後、多摩産材の利用をさらに拡大していくには、林道から離れた奥地や急傾斜地からも木材を切り出してこなければなりませんが、そのためには高度な技術が必要です。都内においてこうした技術者は減少傾向にあり、育成が急務です。
都は今年度、東京トレーニングフォレストを整備し、来年度開設しますが、そこでの人材育成の具体的な内容について伺います。
○村松産業労働局長 都は、急峻な地形等から木材を伐採し搬出できる技術者を育成するため、東京トレーニングフォレストを日の出町に整備し、来年度から研修を開始いたします。
具体的には、三年以上の林業従事経験者五名を対象に、都の試験林を活用して、木と木の間にワイヤーロープを張り、急傾斜地で木材を搬出するための技術や、伐採してから丸太に切りそろえるまでの一連の作業を自動で行う高性能林業機械の操作等に関する研修を行ってまいります。
加えて、労働災害の発生率が他産業に比べて高い林業の特徴を踏まえまして、作業を安全に行うための労働安全管理に関する法令等についての講義を実施いたします。
高度な技術を有する人材育成を図り、林業の振興につなげてまいります。
○田村委員 私も作業の現場を訪れた際、立っているのもままならないほどの急峻な斜面に、強い危険性と、それを回避するための高い技術の必要性を感じました。この東京トレーニングフォレストが林業の安全性と効率化につながる取り組みになることを期待します。
林業従事者の活躍の場は、多摩川上流域の森林保全にまで及びます。
そこで、水道水源林について伺います。
水道局では、多摩川上流域の森林約四万五千ヘクタールのうち約二万四千ヘクタールを水道水源林として適切に管理しています。
一方、面積約二万一千ヘクタールを占める民有林では、林業不振などにより荒廃が進行していることから、水道局では、小河内ダムへの土砂流出が特に懸念される民有林について、民有林重点購入地域と位置づけて積極的に購入し、みずからが保全に取り組んでいます。
こうした取り組みは今後も着実に進めていくことが必要ですが、民有林の購入が進めば、管理する面積が広大になっていくことから、従来の管理方法では十分に対応し切れないことも考えられます。
また、水道局がまだ購入できていない民有林についても、ダム湖への影響が懸念される場合には対応を検討する必要もあると考えます。
これらの課題に対し、このたび策定された、みんなでつくる水源の森実施計画二〇二一では、どのように対応していくこととしているのか伺います。
○浜水道局長 水道局ではこれまでも、民有林を積極的に購入し、適切に保全してまいりました。しかし、管理面積がふえたことや、購入した民有林に急峻な地形が多く、現地までの移動や調査に時間を要することから、より効率的な管理が必要となっております。
そのため、新たな計画では、多摩川上流域の森林について、航空レーザー測量などのデジタル技術を活用した効率的な調査を行い、購入した民有林の保全管理の優先順位や、林道など必要な基盤整備の検討を行っていくこととしております。
また、所有者の意向などで購入が困難な民有林につきまして、調査によって荒廃の進行や斜面の崩壊が懸念される箇所を確認した場合は、所有者や地元自治体等に対して適切な管理が行われるように働きかけてまいります。
○田村委員 デジタル技術を活用した新たな取り組みも検討されているとのことで、今後、一層効率的な管理が進められることを期待します。
水源林の水源涵養機能等により、小河内ダムは都民の水がめとして六十年以上にわたって運用されてきました。我が党は、本定例会の代表質問で、小河内ダムを今後百年以上使用し続けていくためには、長期的な視点に立った総合的な予防保全計画が必要であると主張し、水道局は、その事業計画を策定していくと答弁しました。この予防保全計画の策定に当たっては、地元の関係者等の理解を得ることが必要です。
また、小河内ダムは、これまでも周辺の環境に配慮した運用を行ってきています。例えば、ダム完成当時は、ダム湖の中層部の冷たい水が放流されていましたが、表層部の自然に近い水温の水を放流できるよう施設の改良を行った結果、川遊びやアユの生育等にとって良好な環境へと改善しました。今後も、このように周辺の環境に配慮した運用を行っていくことを望みます。
そこで、計画の策定に当たっては、周辺環境への配慮についてどのように検討するのか伺います。
○浜水道局長 小河内ダムの運用におきましては、これまでも周辺環境への配慮として、ダム放流水の冷水対策や、流入河川のしゅんせつで発生した砂利を林道舗装材に再利用するなどの取り組みを行ってまいりました。
予防保全計画の策定に当たっては、これまでの取り組みに加えて、砂利の再利用先の拡大を検討するほか、管理用通路等を設置する際の生態系や景観への影響、建設機械による騒音、振動や排出ガス、工事による濁水や魚類等への影響などの周辺環境に配慮した上で、効果的な対策について検討を進めてまいります。
○田村委員 周辺環境への配慮についても十分留意した上で、予防保全計画を策定することを要望します。
次に、水源林が生んだ清流、多摩川を遡上する天然アユについてお聞きします。
江戸前アユは、水質の改善などにより、ここ十年の平均遡上数は五百万尾を超えるまでに回復し、都民の関心も高まっています。
しかし、遡上数は年による変動が大きく、平成二十九年は推定約百五十八万尾、平成三十年は約九百九十四万尾、平成三十一年は約三百三十三万尾と上下し、さらに、令和二年の遡上数は、一昨年の台風十九号の影響などにより約三十七万尾にとどまったと聞いています。
内水面漁業にとって重要な資源である江戸前アユの遡上数の安定に向けた都の取り組みを伺います。
○村松産業労働局長 江戸前アユの遡上の回復のため、これまで都は、魚道の整備や遡上を阻害する土砂の撤去などを実施してまいりましたが、アユの遡上数は産卵期における降水や水温などの河川環境等に大きく左右されます。
このため、都は来年度より、多摩川において安定した産卵が確保できますよう、人工の産卵場において、産卵に最適な水温や放流数等の調査研究を実施いたします。
また、人工授精技術も活用し、より多くの稚魚を確保できますよう、漁業協同組合に専門家を派遣し、技術指導等を行ってまいります。
江戸前アユの遡上安定化を図る取り組みを通じまして、内水面漁業の振興につなげてまいります。
○田村委員 江戸前アユは、水産資源としてだけでなく、東京の自然環境改善の象徴でもあります。人工授精だけでなく、自然産卵を促す環境整備も必要です。都の支援を引き続き要望します。
東京の農業では、多種多様な野菜や果物などが生産されており、新鮮で安全・安心な食材として、生産地に近い多摩地域のJAの共同販売所で販売されています。
一方、都心部に住む都民は生産地から離れており、東京産農産物を知る機会が少なく、その認知度は必ずしも十分といえません。
そこで、都心部でも東京産農産物の魅力を広く都民にPRし、需要の喚起を図っていくことが重要と考えますが、都の見解を伺います。
○村松産業労働局長 これまで都は、東京産農産物の認知度向上に向け、新宿のJA東京アグリパークでの販売支援や、都心のスーパー等での販売イベントを行ってまいりました。
来年度は、これらの取り組みに加えて、より多くの都民へ効果的にPRするため、検索サイトのリスティング広告を活用し、新鮮で高品質といった東京産農産物の特徴や、購入できる場所などをホームページで紹介するほか、地下鉄の車内広告でPR映像を放映するなど、情報発信を強化し、さらなる需要の喚起につなげてまいります。
こうした取り組みによりまして、東京産農産物の魅力を発信し、東京農業の振興を図ってまいります。
○田村委員 私の地元羽村市を取水口とする玉川上水は、千川上水などの分水を通じて、農業用水として東京の農業を支えてきました。その結果、現在の東京の多種多様な農産物を生み出しました。ぜひ多くの都民の皆さんに東京の農産物を味わっていただきたいと思います。
木を知る者は水を知り、水を知る者は土を知り、土を知る者は人を知る。水源林から農業までの質問で思い出した言葉です。東京都は、二千メートル以上の標高差の中に、木、水、土、人の要素を持った、世界でも有数の首都です。
私の地元西多摩も、人は少ないですが、木も、水も、土も豊富にあります。都が、コロナ禍でも、コロナ後も、これらの要素を最大限に生かし、東京を世界一の都市へ導くことを強く要望し、私自身も力を尽くすことをお誓い申し上げ、次の質問に移ります。
最後に、ZEV導入支援についてお聞きします。
都は、購入支援策の強化により、自動車ユーザーの負担を軽減し、普及をさらに進めようとしています。
しかし、二〇三〇年の目標達成に向けては、補助金によるコストダウンだけでなく、ZEVを供給する自動車メーカーの動向を踏まえ、その道筋をつけていくための新たな取り組みが必要と考えますが、都の見解を伺います。
○栗岡環境局長 最近のZEV供給の状況は、昨年来、FCVの代表車種がモデルチェンジされるとともに、EVの新車が海外を含め各メーカーから販売され、ZEV化に向けた動きが進展する一方、その車種はまだ限られてございます。
そこで、都は、自動車メーカーの開発意欲を高めるため、来年度、ZEVに対するユーザーのニーズなどの調査を実施し、その結果を踏まえ、メーカーに開発インセンティブを与えるような新たな補助制度の構築に向け、検討を行ってまいります。
この取り組みを進めながら、多様なガソリン車にかわるZEVのラインナップの増加と、各メーカーのZEV供給の促進を図り、二〇三〇年の目標達成に向けた道筋をつけてまいります。
○田村委員 二〇三〇年の目標達成に向け、これまでの取り組みに加え、新たな施策に積極的に取り組んでいくことを確認しました。
また、都の調査によると、ZEV普及による産業への経済的な影響は、都内でガソリン消費の低下等が見込まれますが、モーター等の部品需要では増加が見込まれるなど、業種により影響が異なるとのことでした。
一方、全国的に見れば、産業構造を一変するほどのインパクトがあるという声もあります。自動車関連産業が雇用、納税に果たす役割を維持拡大し、非ガソリン化へソフトランディングすることが必要です。
メーカーや周辺産業、そしてユーザーの窓口となる販売店の声も踏まえ、非ガソリン化を推進していくことを要望し、私の質問を終わります。(拍手)
○吉原副委員長 田村利光委員の発言は終わりました。
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