予算特別委員会速記録第四号

○木村副委員長 けいの信一委員の発言を許します。
   〔木村副委員長退席、中山副委員長着席〕

○けいの委員 新型コロナウイルスについて質問いたします。
 昨年秋に発生した台風による被害で、国の支援制度の対象となっていない一部損壊住宅の補修工事について、都議会公明党の要望に応え、都は独自に支援の対象としたことは被害者から大変に喜ばれました。
 しかし、補修工事を進めようとしたところ、今回の新型コロナウイルスの影響を受け、中国からの資材調達ができず、工事が延期、中断しているところがあります。間もなく迎える年度末の補助金制度終了までに工事が終わらないとの声が届いております。
 そこで、この補助金制度について、年度をまたいでも柔軟に対応すべきと考えますが、見解を求めます。

○榎本住宅政策本部長 本事業の実施に当たりましては、各区市町村がそれぞれの状況等に応じて補助要綱を作成し、都は区市町村とともに今年度の事業として取り組んでまいりました。
 しかしながら、ご指摘のとおり、今般の新型コロナウイルス感染拡大により、資材、部品等の供給が滞るなど被災した住宅の修繕にも影響が及ぶことに鑑み、今後、各区市町村と丁寧に協議し、速やかに対応を検討してまいります。

○けいの委員 また、東京二〇二〇大会に向け、東京都受動喫煙防止条例が来月四月一日から全面施行となります。飲食店を初めとする多くの施設は、原則屋内禁煙となることから、喫煙専用室を設置するなど準備を進めていたところでございます。
 しかし、先ほどと同様に、このたびのコロナウイルスの影響で部品調達がままならず、工事が延期、中断してしまっているところがあります。
 こうした工事に限らず、年度を繰り越す補助金などの適用について、都は全庁的に柔軟に対応すべきと考えますが、知事の見解を求めます。

○小池知事 都はこれまで、事業の執行におくれが生じた場合に対応するために、主に道路や橋梁などの工事におきましては、予算の繰越制度を活用してまいりました。これによって、年度をまたいだ事業執行が可能となりまして、翌年度における早期の事業完了につなげてきたということであります。
 今般の新型コロナウイルス感染症の影響に伴います納期のおくれ等でございますが、都の補助金の適用を受けた企業などが、事業の完了期限である年度末までに当該事業を完了させることが困難な状況が生じていることはご指摘のとおりでございます。
 刻一刻と変化する状況のもとで、工事に限らず補助金などにつきましても、広く繰り越し制度の活用を図りまして、切れ目のない事業執行につなげてまいります。

○けいの委員 ありがとうございます。
 次に、障害者手帳について質問いたします。
 私は昨年の第二回定例会一般質問において、四月の省令改正で従来の紙の手帳の様式例が削除され、自治体の判断で障害者手帳を交付できるようになったことを取り上げ、希望する方に一刻も早くカード型障害者手帳を交付できるよう準備を進めるよう求めました。
 内藤福祉保健局長は、障害当事者の意見を聞きながら、カード形式での障害者手帳の発行について検討を進めると応じました。
 そこで、その検討の結果はどうなったのか、来年度のカード型障害者手帳の導入について都の対応を伺います。

○内藤福祉保健局長 障害者手帳は、お話のように、カード形式での交付が可能となったことから、都は来年度後半から、身体、精神及び知的の三障害の手帳全てにカード形式を導入することといたします。
 その仕様の検討に当たっては、様式例等を定めた国の通知を踏まえるとともに、利用者である障害者団体等の意見もお聞きし、視覚障害者が判別しやすい切り欠き加工やパールインキ等の偽造防止対策を施すほか、プライバシーに配慮するため、身体障害の障害名はカード裏面に記載することとしております。
 また、現行の障害者手帳には、税の減免の証明等を記載する欄を設けており、カード形式でもこうしたスペースを確保するため、証明事項等の記載用の別冊を合わせて配布するなど、利便性にも配慮しております。

○けいの委員 多くの方が待ち望んだカード型が来年度中に実現する、そして利便性にも配慮するということでございました。
 その上で、利用者の利便性だけではなく、社会的に、全体への周知徹底も課題でございます。
 昨年も取り上げましたが、あるコンサート入場時に身分証明書の提示を求められ、都の療育手帳である愛の手帳を提示した方が入場を断られるという事態が生じました。開催地が他県であったことや療育手帳に対する係員の認識不足などが原因だったと思われます。
 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳は法律で規定されているのに対し、療育手帳は発行する都道府県によって名称や形が異なっており、障害者手帳として認識されにくいことが一番の問題です。認識不足によって障害者が不利益を受けることは断じてあってはなりません。
 障害者手帳のカード化を機に、障害当事者だけではなく、一般の方にもわかりやすくするために、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、そして愛の手帳の三障害手帳を共通サイズ、共通デザインにすべきと考えますが、見解を求めます。

○内藤福祉保健局長 都が新たに導入するカード形式の手帳は、交通運賃や各種料金の支払い等の際に、手帳の提示を受ける民間事業者等にわかりやすいよう、手帳の名称をカードの中央上部に記載し、顔写真を左上に配置するなど、三種類とも基本的なレイアウトを同様のものとする予定でございます。また、サイズも健康保険証や運転免許証などと同じものとする予定でございます。
 来年度後半に、カード形式での手帳の利用が始まることから、事前に民間事業者団体に説明するとともに、都民に向けてもホームページなど都の広報媒体を通じまして、広く周知してまいります。

○けいの委員 カード型の障害者手帳の導入を希望する方が多い一方で、障害や使用する際の状況によっては、従来型の紙形式の手帳の方がよいという障害当事者もおられます。
 新たなカード型か、従来の紙形式かの選択ができるよう十分に配慮するべきと考えますが、見解を求めます。

○内藤福祉保健局長 カード形式での手帳の交付が可能となった後は、新規または更新の申請時に、紙形式かカード形式のどちらかを選択していただくことになります。また、既に交付した紙の手帳につきましては、希望に応じてカードに交換することも可能といたします。
 このことにつきまして、障害者団体等に説明し、周知を図るとともに、手帳の申請窓口である区市町村等を通じて、利用者に対しまして丁寧に説明してまいります。

○けいの委員 続いて、ひきこもり支援について質問します。
 ひきこもりで悩む当事者やその家族への支援は、誰も置き去りにしないとのSDGsの目線に立って強力に推進すべき社会課題の一つです。
 都は今年度から、福祉保健局において、ひきこもりに係る支援施策に取り組んでおり、既にひきこもりサポートネットに、高年齢対応相談員の配置や訪問相談の対象年齢拡大など相談体制を強化しております。
 これに加え、学識経験者や関係機関だけでなく、我が党の提案により当事者団体や家族会をメンバーとする会議体を新たに立ち上げましたが、支援協議会の検討状況と今後の進め方について伺います。

○内藤福祉保健局長 都は現在、学識経験者、当事者団体や家族会等で構成するひきこもりに係る支援協議会におきまして、当事者等の状況に応じた切れ目のない支援のあり方について検討を進めております。
 本年度開催した二回の協議会では、相談しやすい体制づくり、地域での連携ネットワークの構築、安心できる居場所の確保や社会参加への支援の必要性などについて、各委員の福祉、医療などの専門的な視点や当事者、家族の目線から幅広い意見が出されております。
 今後、区市町村や関係機関の協力をいただき、相談体制や関係機関の連携状況、訪問相談や居場所の提供などの支援状況につきまして調査を実施することとしております。
 本年秋には、本協議会におきまして、今後の支援の方向性について取りまとめていく予定でございます。

○けいの委員 ひきこもり当事者を支えていくためには、居場所が大変に重要でございます。各地域において居場所づくりが進むことを期待して、次の質問に移ります。
 都市型軽費老人ホームについてお尋ねいたします。
 都議会公明党は、地価の高い都市部においても、低所得高齢者が住みなれた地域で安心して暮らし続けられるよう、住まいの確保が重要であると訴えてまいりました。こうした要望を受け、都は、国に働きかけ、二十三区と武蔵野市の全域、三鷹市の一部で都市型軽費老人ホーム制度が実現しました。
 私の地元荒川区では、制度創設から間もない平成二十三年度に最初の施設が開設し、現在では六カ所、総定員数九十九名まで整備され、低所得高齢者の住まいとして重要な役割を担っております。
 そこで改めて、都市型軽費老人ホームの概要と現在の状況についてお伺いいたします。

○内藤福祉保健局長 都市型軽費老人ホームは、地価の高い都市部において、身体機能の低下等により在宅生活に不安を感じる低所得高齢者が、低額な料金で見守り等の生活支援を受けられる施設でありまして、平成二十二年に老人福祉法上の軽費老人ホームの新たな類型として制度化されたもので、整備地域は、都内では二十三区、武蔵野市の全域及び三鷹市の一部地域とされております。
 施設の居室面積や職員配置基準等は、都市部の実情を反映いたしまして、他の軽費老人ホームと比較して緩和しており、本年三月一日現在、八十一カ所、定員にしまして千四百一人分が開設してございます。

○けいの委員 制度開始から十年目、整備が着実に進んでいるという状況をご報告いただきました。
 私は地元の施設を訪問し、事業者から直接お話を伺ってまいりました。家賃や食費のほとんどは都の運営費補助で賄うことができ、入居者の毎月の実質負担額は約一万円程度で生活ができます。生活保護受給者も入所可能で、低所得高齢者の住まい確保に今後も需要の増加が想定されます。
 しかし、低額な料金なのは利用者にとってはよい反面、事業者には運営費の課題としてつきまとってまいります。例えば、職員を定着させ、処遇改善を行うのが難しいということでありました。都市型軽費老人ホームの定員数は二十人までと定められており、利用者をふやすことでの事業収入増は見込めません。
 都は、都市型軽費老人ホームの運営についても支援を行っていますが、職員が長く勤務できるような取り組みも必要です。支援の具体的な内容についてお伺いいたします。

○内藤福祉保健局長 都市型軽費老人ホームの運営に要する費用は、利用者から徴収して賄うこととしておりますが、人件費など施設でのサービスの提供に要する費用のうち、利用者の収入に応じて減免した額を都独自に補助しております。
 この補助では、常勤職員の平均勤続年数に応じまして、サービスの提供に要する費用について、三%から一六%まで八段階の加算率を設定しており、職員の経験を評価する仕組みとしてございます。

○けいの委員 職員給与分を勤続年数に応じて補助の上乗せの配慮がされているとのことで、段階的に三%から一六%の給与補助ということでありました。
 しかし、五年、十年と勤めて最大の一六%を上乗せしたとしても、例えば月給二十万円だった職員は、三万二千円増加の二十三万二千円で頭打ちになってしまいます。これでは介護職に定着できず、業界全体の課題解決にはつながりません。安心して働き続けられるよう、さらなる待遇改善施策を求めます。
 加えて事業収入の増加が見込めなければ、施設の維持メンテナンスにまで手が回らず、結果的に劣悪な住環境しか提供できないという事態になりかねません。また、昨今の建築価格の高騰で、建築に要する資金調達も困難です。
 ひとり暮らしの高齢者は増加していくことが見込まれており、都市型軽費老人ホームのさらなる整備が必要です。建築費の補助を行うなど、開設へのさらなる支援が必要と考えますが、見解を求めます。

○内藤福祉保健局長 都は、都市型軽費老人ホームの整備を促進するため、国の基金による補助に加えまして、整備費補助の上乗せや地域密着型サービスを併設する場合の加算、都有地の減額貸付など、独自の支援策を講じております。
 また、土地所有者や株式会社など多様な事業者の参入を促しており、来年度、新たに五カ所、八十九人分が開設予定となってございます。
 来年度は、建築価格の高騰に対応できるよう、創設時の整備費補助について、定員一人当たり単価四百万円に百万円の加算を新たに行い、最大で一施設当たり一億二千万円まで補助することとしてございます。
 今後とも、区市と連携し、都市型軽費老人ホームの整備を促進してまいります。

○けいの委員 合計で、開設に向けた建築費補助が一億二千万円ということでございました。事業者への支援、職員への支援、そして入居者への支援と三者への総合的な支援を行うことを高く評価させていただきます。今後も低所得高齢者が安心して住み続けられるよう、ますます推進していただきたいと思います。
 次に、大きく災害対策について何問か質問させていただきます。
 初めに、中小企業支援について。二〇一一年の東日本大震災による大規模な計画停電や胆振東部地震によるブラックアウト、さらに相次ぐ大型台風による千葉県での大規模停電の長期化など、この十年間に続いた大災害により、災害時の非常用電源の確保の重要性が改めて浮き彫りになりました。特に、中小企業にとっては、大規模停電や計画停電などは、事業継続に極めて大きな影響を与えるものであります。
 都議会公明党は、東日本大震災以前から、災害時の事業継続のための非常用電源の確保を含めたBCPの策定の重要性を訴えてまいりました。
 都は、こうした要望に応え、平成二十二年度から中小企業のBCPの策定支援に取り組み、二十三年度には、自家発電機の導入支援の取り組みを始めました。
 今後も中小企業が災害発生などの非常時の事業継続への備えを進めていくために、都が支援していくことの重要性がますます高まっております。
 そこでまず、都では、こうした企業のBCPの策定に対して、現在どのような支援を行っているのか伺います。

○村松産業労働局長 これまで中小企業におけるBCPの普及を促進するため、策定のプロセスや方法を学ぶBCP策定支援講座を実施しておりまして、今年度は十七回開催いたしました。また、この講座の受講企業のうち、実際に策定を行う百社を対象に、専門のコンサルタントを派遣し、各企業の実態を踏まえた計画の策定を完了まで一貫して支援しているところでございます。また、既にBCPを策定済みの企業に対しましては、年二回のフォローアップセミナーを開催し、継続的な取り組みや計画の改善などを支援しております。
 来年度は、未策定の企業に対する普及啓発を強化するため、企業を巡回して策定を働きかけるアドバイザーを新たに配置しまして、中小企業のBCPの策定をより一層後押ししてまいります。

○けいの委員 引き続きBCPの策定が進むよう取り組んでいただきたいと思います。
 次に重要なのは、こうしてつくられたBCPを実効性あるものにしていくための具体的な取り組みです。大規模停電を想定し、計画に記載していても、実際に自家発電機や蓄電池などを備えていなければ、BCPの効果は発揮されません。
 そこで、こうしたBCPの実行に必要な非常用電源などの設置導入に対し、都はどのように支援を行っているのか伺います。

○村松産業労働局長 先ほどご答弁申し上げました支援講座を受講しました企業を対象に、策定したBCPを実行するために必要な経費の一部を助成する事業を行っております。
 具体的には、自家発電システムや蓄電池、データバックアップシステムの導入や、備蓄品、土のうなどの購入等に必要な経費につきまして、千五百万円を上限に、中小企業につきましては二分の一、特に小規模企業につきましては三分の二を助成しているところでございます。

○けいの委員 小規模企業に最大で一千五百万、三分の二補助、これが広く企業に知れ渡り、使われていくようにしていただきたいと思います。
 昨年七月、中小企業等経営強化法の一部が改正されました。そして、防災、減災に取り組む中小企業が事業継続力強化計画を作成し、国から認定を受けると、税制優遇や金融支援、補助金の加点などの支援策が受けられる制度を創設しました。こうした国の制度に取り組んでいる中小企業に対しても、都は、積極的に支援をしていくべきです。
 今後、都は、国の認定を受けた企業に対し、どのように扱っていくのか見解を求めます。

○村松産業労働局長 国が認定いたします事業継続力強化計画は、中小企業が発災時に行う安否確認や被害の確認等の初動対応手順、災害時の具体的な対策など、BCPの策定のベースとなるものでございます。
 そのため、都では来年度、国の認定を受けた事業者につきましても、都の支援講座の受講企業と同様に、策定したBCPの実行に必要な経費の一部を助成してまいります。

○けいの委員 国の制度で認定を受けても、東京都の支援を同様に受けていけるというご答弁をいただきました。
 しかし、私は先日、事業者団体との懇談の折、都のBCP策定支援事業を紹介しましたが、残念ながら多くの事業者さんは都の取り組みを全く知りませんでした。こうした支援策の効果を高めていくためには、事業をしっかりとわかりやすく現場に届けていかなければなりません。
 都は、このBCPに関する事業を初めとする各種の中小企業の振興施策について、どのように周知していくのか伺います。

○村松産業労働局長 BCP策定の支援につきましては、セミナーの開催やパンフレットの配布のほか、専用のポータルサイトによる周知を図っております。このサイトでは、支援メニューの詳細に加え、具体的な策定事例や企業のインタビュー記事などを掲載し、わかりやすい情報発信に努めているところでございます。来年度は、風水害など近年の災害状況を踏まえました事例など、コンテンツを充実してまいります。
 また、BCP策定支援を初めといたします中小企業振興施策をコンパクトにまとめたリーフレットにつきまして、助成金の申請時期の記載など、内容を充実するとともに、作成部数を約一万部ふやし、十四万部を配布してまいります。
 こうしたPRを経済団体や金融機関等とも連携しながら行うことで、より多くの企業が活用できるよう取り組んでまいります。

○けいの委員 都財政の中でも重要な都税は、景気の影響を受けやすい法人税が大きなウエートを占めているということは、これまで何度も指摘されてきました。
 都内企業の九九%は中小企業といわれるように、万が一の災害時、中小企業が速やかに事業の再開、継続をすることができなければ、都財政が立ち行かなくなってしまいます。
 中小企業のBCP作成や非常用電源設置への支援は、事業者を守るだけでなく、都財政、都民全体を守ることになると強く訴えておきたいと思います。
 次に、高潮特別警戒水位についてお伺いいたします。
 都は、平成三十年三月に、想定し得る最大規模の高潮による氾濫が発生した場合の高潮浸水想定区域図を公表し、浸水が想定される区域や浸水の深さ及び継続時間を公表しました。
 この浸水想定を踏まえ、都議会公明党は、平成三十年第二回定例会の一般質問で、都民の的確な避難行動につなげるための高潮特別警戒水位の設定に向けた検討を進めるべきと求めましたが、昨年の台風第十五号、十九号のように、近年の気象災害の激甚化の状況を見ると、特別警戒水位の重要性はさらに高まっていると思われます。
 そこで、都は、高潮特別警戒水位を早期に設定すべきと考えますが、見解を求めます。

○古谷港湾局長 都は、防潮堤の整備など高潮対策を着実に講じておりますが、想定し得る最大規模の台風により、万が一高潮による氾濫の危険がある場合には、都民にみずからの生命を守る避難行動を促すため、氾濫危険情報を発表することとしておりまして、その指標となるのが、ご指摘の高潮特別警戒水位でございます。
 この設定に向け、学識経験者等による委員会において検討を進め、先月、その内容を取りまとめました。
 具体的には、高潮による浸水が発生する前に都民が避難により身を守る時間が確保できる最終段階の水位を特別警戒水位といたしまして、堤防の高さ等を踏まえ、地域ごとに設定することとしております。
 現在、関係区等と最終的な調整を進めており、来月開催いたします水防協議会で特別警戒水位を決定、公表してまいります。

○けいの委員 来月開催する水防協議会で特別警戒水位を決定、公表していくとのことでありますが、大事なことは、設定した高潮特別警戒水位に基づき、いざというときに都民の的確な避難行動につなげることができるかどうかであります。そのためには、正確な情報を迅速に共有、発信することが必要です。
 そこで、都民の的確な避難行動につなげるための実効性ある仕組みの構築が重要と考えますが、見解を求めます。

○古谷港湾局長 都民に的確な避難行動を促すには、地域の実情を熟知し避難計画を担う各区と円滑な連絡体制を構築の上、情報を都民へ積極的に伝達することが重要でございます。
 都は今後、浸水が予測される非常時には、早い段階から水位観測所の潮位データをきめ細かく各区へ通知するとともに、高潮氾濫危険情報の発表に当たりましては、それに加えて、報道機関の協力を得て、広く都民に発信してまいります。
 さらに、来年度、新たな情報システムを構築し、令和三年度からは、潮位データに加え、海面のライブ映像、気象情報等をウエブ上にリアルタイムで公開してまいります。
 都は、高潮の氾濫が予測される非常時に正確かつ迅速な情報発信を行うことで、都民の的確な避難行動につなげ、高潮への備えを強化してまいります。

○けいの委員 大規模水害後に一刻も早く復旧、復興するためには、まずは排水対策の計画をしっかり準備していくことが極めて重要であります。
 高潮浸水想定区域図によると、浸水が一週間以上継続する区域が広範囲にわたっています。地盤が海面下にあるゼロメートル地帯では、ポンプによる排水が不可欠です。
 都は、高潮による大規模水害時の排水対策の検討に向け、荒川などを管理する国土交通省を入れた連絡会を平成三十年八月に設置したと聞いていますが、近年、全国で自然災害が頻発している中で、大規模水害時のレジリエンスを強化するためにも、国土交通省とも連携して、排水対策の検討を進めることが重要であると考えます。
 そこで、大規模水害時の排水対策の検討状況について伺います。

○三浦建設局長 大規模水害時の東部低地帯におきまして、都民生活を早期に復旧、復興していくためには、速やかな排水により浸水を解消することが重要でございます。
 このため、都は、想定し得る最大規模の高潮による浸水想定区域図を踏まえまして、昨年十二月に、関係局や国などを構成員とする大規模水害時の排水作業準備計画検討委員会を設置し、必要な対策の検討を開始しております。
 令和二年度は、浸水想定範囲を河川や地形などで分割した排水ブロックを設定し、それぞれの想定排水量や排水機場など既存施設の浸水時の排水能力などを踏まえまして、ポンプ車の配置計画等の検討を進めてまいります。
 引き続き、荒川などを管理する国を初め関係機関と連携して、高潮による大規模水害時の排水対策について検討を進め、速やかな都民生活の復旧、復興に努めてまいります。

○けいの委員 少し地元の話題に入らせていただきたいと思います。
 私の地元荒川区は、北側から東側までぐるっと隅田川に接しており、さらにその外側には荒川が流れております。常に水害の脅威にさらされているといっても過言ではありません。揺れに弱い、火に弱い、水に弱いと東京都お墨つきの、東京で最も危険な町屋四丁目に私は住んでおります。
 昨年、台風十九号の接近を受け、荒川区では当初、防災センターや区民事務所などの区立五施設を自主避難所として開設しました。台風接近の模様を伝えるテレビ報道では、各地で起きる風水害の模様や堤防の高さぎりぎりまでどんどん上がってきた荒川の水位が映し出され、多くの方が自主避難を開始しました。
 もともと広くないこの五施設は、あっという間にいっぱいになり、地域住民からの避難所開設要望が相次ぎ、公民館など五十六カ所を自主避難所として開放しました。しかし、その多くは、二階の天井までつかってしまう浸水想定五メートル以上の高さには満たしていない施設でありました。
 下町荒川区のような地域では、垂直避難できる公的な施設はほとんどありません。不足する水害時の避難先の確保に向け、区市町村を支援していくことが必要と考えますが、都の取り組みについてお伺いいたします。

○遠藤総務局長 都はこれまで、区市町村に対し、地震災害に対するものに加え、洪水、土砂災害などの水害から命を守るための指定緊急避難場所の確保を進めるため、制度の趣旨につきまして周知や早期の指定を促してまいりました。
 今後は、指定が進んでいない区市町村に対し、指定の考え方や手順をまとめたマニュアルなどを使い、防災担当職員向けの研修を行うとともに、指定後は東京都防災アプリも活用いたしまして、災害種別ごとの避難先の位置や順路などについて住民に周知するなど、区市町村の取り組みを支援してまいります。
 また、都立一時滞在施設を風水害時の避難先として活用していくため、区市町村と順次協定を締結していくなど、水害時の避難先の確保に向けて、連携した取り組みを進めてまいります。

○けいの委員 首都大学東京の荒川キャンパスや南千住にある高専を開放してほしいと、風雨の中、多くの方から直接連絡をいただきました。そして、このとき、五十六カ所の自主避難所を全て訪問してまいりました。強い風雨の中、乳幼児を連れた方は、離乳食やおむつを両手いっぱいに荷物を抱え、傘も差さずにびしょ濡れで避難してまいりました。車椅子を利用する高齢者と、押してきたそのご家族も、傘を差すことができずびしょ濡れでした。万が一にも飛来物に当たったり、風によって倒されていたと思うと、本当に怖い思いをしました。このほか、障害のある方や付き添われるご家族も、避難所に行くこと自体が困難で、自主避難を断念したとの声を伺いました。
 荒川区内には、三階や四階の高所に駐車場がある大型スーパーや商業施設が幾つかあります。こうした民間施設の協力をいただいて、必要な荷物を自家用車に積み込んで風雨を避け、そのまま自家用車で高所にある駐車場に避難することはできないでしょうか。
 大規模風水害が想定される際の避難先として、大規模商業施設の駐車場など民間施設の活用も進めていくべきと考えますが、見解を求めます。

○遠藤総務局長 大規模な水害が発生した場合で、住民が高台等に移動するための時間的な余裕や手段などがない場合には、近隣の高い建物へ緊急的に移動する垂直避難を行うこととなりまして、あらかじめ具体的な避難先を確保していくことが重要でございます。
 このため、ハザードマップによる浸水エリア内であっても上層階が浸水しない都有施設等の公共施設のデータベース化を進め、区市町村に対しその情報を提供することで、避難先の拡充を進めてまいります。
 また、ご指摘にありましたように、民間施設の活用につきましては、現在、個別に大規模商業施設と協定を結んで避難先として確保している先行的な事例などを各区に紹介するとともに、対象施設を選定するに当たっての留意点や避難時の運営方法などについて検討を進め、区市町村による取り組みを支援してまいります。

○けいの委員 あわせて、警視庁さんと消防庁さんにもお伺いしましたが、消防車、救急車、パトカー、こうしたものも、荒川区内にある消防署、警察署の車は逃がしておくところを検討はしているけれども、明確な逃がし場所がないということで、いざというときにはこうした緊急車両すら流されてしまうということが懸念されております。
 東部低地帯には高台がなく、高い建造物に逃げ、垂直避難することでしか命をつなぐすべがありません。
 東日本大震災後、津波被害の教訓を生かし、いざというときに高所へ駆け上がれるやぐらのような建造物、いわゆる津波タワーと呼ばれるものがつくられました。しかし、区内面積の六割が木造住宅密集地域である荒川区などでは、津波タワーを新たに建てるのではなく、既にある建造物を活用していくのが現実的です。
 さまざま困難な状況はあるかと思いますが、いろんな運営方法や災害後の生活を求めているのではなくて、川が氾濫したとき、溢水したとき、命を守るために駆け上がれる場所が必要なんです。荒川区内をくまなく歩いて探しました。
 その結果、例えば日暮里・舎人ライナーの駅、足立区側から尾久橋通りの上をずうっと足立区から荒川、隅田川と渡って荒川区に入ってきて最初の駅が熊野前駅です。この熊野前駅は、皆さんがご想像する津波タワーと全く同じ形です。一直線に階段とエスカレーターで上がっていって、地上六メートル以上にある駅まで上がっていくことができます。
 そこで生活をしたいわけではありません。岩淵水門が仮に決壊したとしたときに、荒川区に水が届いてくるのは二時間後と想定されています。もし川が氾濫してからでもいいんです。そのときに高所へ逃げられるようにしていただきたい。日暮里・舎人ライナーのこうした駅、逃げられないのかどうか確認させていただきたいと思います。
 台風十九号の際、日暮里・舎人ライナーの駅の出入り口がどのような状況であったのか、交通局長にお伺いします。

○土渕交通局長 日暮里・舎人ライナーでは、台風十九号が接近した昨年十月十二日の午後二時から翌十三日の午前七時まで、全線で運休いたしました。
 お話のとおり、日暮里・舎人ライナーの駅は高架部にあり、運休に合わせて、改札口の内側につきましては安全上速やかに閉鎖いたしましたが、地上から改札口への通路につきましては通常の終電時刻まで通行できる状態としておりました。

○けいの委員 昼間だったので入り口の部分はあけてあったということでした。こうしたことを、本当の究極の災害のときには区民がちゅうちょなく高いところに逃げられるように、いざというときは逃げられる、こういうアナウンスをしておかなければいけないと思います。
 次に進ませていただきます。
 高齢ドライバー施策についてお伺いします。
 相次ぐ高齢ドライバー事故が大きな社会問題となっています。こうした状況を踏まえて、昨年六月、都議会公明党は、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防ぐ装置の取りつけ補助を知事に緊急要望いたしました。これを受け、都は七月に、踏み間違い装置設置の九割補助を速やかに開始いたしました。来年度予算にも十六億円が計上されており、評価いたします。
 事故がふえたかのような発言も幾つかあったようですけれども、仮に踏み間違い装置を設置したからふえたということは、曲がりなりにもあり得ないと思います。これがなければどれほど、これから進む高齢社会にあって事故を未然防止できなかったのかと憂うものであります。
 加えて、来年度は、危険な状況や運転の癖をデータ化するAI付ドライブレコーダーモニタリング事業が新規事業として始まります。
 先日、政府は、運転免許更新時に実車による検査を導入するなどの道路交通法改正案を閣議決定したところであり、運転を続けたい、あるいは運転が生活に欠かせないという方に対して、都としても、二重三重のさらなる施策で高齢ドライバーの交通事故未然防止に向けてのサポートを拡大するよう求めておきます。
 一方で、免許返納に向けた取り組みについての確認をさせていただきます。
 昨年四月、十人が死傷する事故が都内で発生したのを初め、相次ぐ高齢ドライバーによる事故が連日のように報道されました。こうしたこともあり、昨年一年間の免許返納者数が、全国で六十万人に急増したと先日報道されました。重大事故の加害者になる前にとの判断だと思われます。
 しかし、返納後の日常生活を考えてちゅうちょする方も少なくありません。免許返納と引きかえに交付される運転経歴証明書を提示することで、美術館や博物館などで優待を受けられることや、ホテル、デパート、スーパーなどでさまざまな特典が受けられることは余り知られておりません。
 この視点を踏まえて、都として、免許の自主返納の制度の周知や、とりわけ返納後のサポートに関する情報をご高齢者がより目にしやすい媒体を利用して周知していくべきと考えますが、見解を求めます。

○國枝都民安全推進本部長 都はこれまでも、警視庁等と連携し、春、秋の全国交通安全運動において、高齢ドライバーに対し、運転免許証自主返納制度等の周知を行ってまいりました。
 具体的には、運転免許証自主返納制度に加え、返納者が申請により交付を受けられ、運転免許証と同様に公的な本人確認書類として利用できる運転経歴証明書についても周知を行ってまいりました。あわせて、約百五十の企業、団体が加盟し、運転経歴証明書の提示により、さまざまな特典を提供している高齢者運転免許自主返納サポート協議会についても、都民に情報提供をしているところであります。
 来年度は、多くの高齢者が日常的に目にしているということで、あえて新聞折り込み広告も活用し、周知を行うこととしております。
 今後とも、警視庁等と密接に連携しながら、自主返納制度等について普及に努めてまいります。

○けいの委員 警視庁さんとサポート協議会が協力して、高齢者の運転免許自主返納サポートという、こういうリーフレットがあります。これも私の父が先月返納したので、これを父から見せてもらって--百五十以上の企業に協力をいただいております。
 その中に、例えば、有名なスポーツ用品のお店がありました。今度中学一年になる息子を連れて、そのスポーツ用品店に行って、グローブを買うと一〇%引きなんです。それで、おじいちゃんを連れてスポーツ用品店に行くと、高額な商品も一〇%引きで買えるということで、こうしたことが、例えば、育児施設、産婦人科のようなところに置いてあることで、おじいちゃん、お買い物に行こう、おばあちゃん、一緒にお使いに行こうということにつながるのではないかということを提案して、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○中山副委員長 けいの信一委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時五十四分休憩

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