予算特別委員会速記録第三号

○中山副委員長 田村利光委員の発言を許します。
   〔中山副委員長退席、山崎副委員長着席〕

○田村委員 質問に先立ち、一言申し上げます。
 先ほど、我が党の川松委員の質問に、小池知事及び多羅尾副知事の答弁は的を得ず長いものでした。理事者の皆様におかれましては、答弁は的確かつ簡潔にお願いをいたします。
 私にとって初めての予算特別委員会の質疑に当たり、一都民としての素朴な疑問を知事にお聞きしたいと思います。
 小池知事就任以来、きょうまでマスコミが一貫して取り上げている知事の学歴詐称問題です。(パネルを示す)折しもアメリカでは、昨年の十一月、トランプ大統領に抜てきされた女性が、学歴詐称を報じられたことを受けて、辞表を提出したというニュースが報じられました。公職につく者にとって、学歴詐称は決してあってはならないのは世界共通のようです。
 ところが、大変残念なことに、小池知事に学歴詐称の疑いがあるという報道が絶えることはありません。こうした不名誉な話は、知事にとっても、東京都民にとっても看過できるものではありません。
 そして、小池知事ご自身も、都知事選に出馬されたときに、マスコミの質問に対し、卒業証書を直ちに公開すると回答されています。
 ところが、知事の任期が最終年度を迎える現在、私どもの知る限りでは、知事は卒業証書を公開されていません。なぜ公開されないのか理由を聞かせてください。

○小池知事 先ほどからの答弁に関しましては、丁寧にお答えをしているものであって、ただ長いということではございませんので、その点は訂正いただきたいと存じます。
 なお、卒業証書につきましての提示でございますが、今こちらに見ていただいているように、既に提示は何度もしているということで、新たに公表する予定はございません。

○田村委員 これでは見えないんですよ。はっきりと見えるものを提示していただきたい。
 知事、卒業証書、そして卒業証明書を都民の皆様にお見せいただけるのか、イエスかノーでお答えください。

○小池知事 今まさに見ていただいているのが、右側が証明書で、こちらが証書でございます。

○田村委員 私は、知事はアラビア語より英語が得意だと思ったので、イエスかノーと申し上げたのですが、そうではなかったようです。
 それでは、母国語の日本語で、はいかいいえでお答えください。

○小池知事 先ほどお答えさせていただいたとおりでございます。

○田村委員 このやりとりが、都の、そして国の子供たちの目に触れないことを祈ります。
 もし卒業されたのなら、卒論をお書きになったのでしょうか。お書きになっているのであれば、そのテーマをお聞かせください。また、卒業するために追試を受けたとお聞きしておりますが、受けたのは何月でしょうか。

○小池知事 済みません、五十年前の話を思い出しつつ申し上げたいと存じます。
 卒論という制度は学部、学科によって異なります。そして、私の卒業いたしました文学部社会学科でございますけれども、こちらでは卒論はございませんでした。当時の同級生たちもそのように申しております。多分、取材をなさったところは別の学科の方ではないかと、このように思います。いかがでしょうか。

○田村委員 ならば、なぜ卒業証書を見せないのでしょうか。なぜ卒業証書を見せるという単純かつ簡単なことをかたくなに拒否されるのか、全く理解できません。
 私は、卒業証書の公開によって知事の汚名が返上されると思っています。
 そして、本来それは知事与党の仕事だと思っています。(発言する者あり)しかし、それがなされない。なので、我々は……

○山崎副委員長 ご静粛にお願いいたします。

○田村委員 野党ですけれども、知事のためを思ってやっているんです。なぜか。世界一の都市を目指す東京の知事がその資格を有することを証明することは、世界の都市間競争のスタートラインに立つ条件だからです。一千四百万人都民のためであります。
 四年前、知事が公約に掲げた満員電車ゼロについては、今もなお、満員電車はいつになったら解消されるのか、二階建て電車はいつできるのかと聞かれることがあります。それだけ皆さん、満員電車ゼロに期待していたのだと思います。
 しかしながら、知事の就任後、混雑率は緩和するどころか逆行しています。満員電車ゼロは一体どこに行ったのでしょうか。知事の目指す満員電車ゼロとは、いつまでに、どういう状態を指すのか、終期と到達目標数値を伺います。

○小池知事 今、満員電車ゼロへということでご質問いただきました。
 全然減っていないじゃないかといわれますけれども、しかし、このところ、まさしく、このコロナウイルスの感染症の問題、そしてまた、これまで長年取り組んできた複線化が行われてきた、さまざまな技術的革新なども行われてきたわけでございます。
 満員電車ゼロへは目指すべき姿でありまして、昨年末公表いたしました未来の東京戦略ビジョンにおきましても、目指す二〇四〇年代の東京の姿として、満員電車は過去のものになっているという姿をお示ししたところでございます。
 その背景は、ハード、ソフトの両面からのさまざまな総合的な取り組みによるものでございます。
 ハード施策では、複々線化、そして車両を長編成化するという取り組みでございます。これらに加えまして、鉄道ネットワークのさらなる充実に向けて、国の答申に位置づけられました六路線を中心に検討も進めているところでございます。
 さらに、今年度からは、輸送力の強化、この観点から、先端技術を活用した運行システムの改良などの検討も開始をいたしております。
 それから、ソフト施策でございますが、平成二十九年度から、先ほども、時差ビズですね、オフピーク通勤を推進する時差ビズを開始いたして、昨年からは総称としてのスムーズビズで、テレワーク、交通需要マネジメントと一体的に進めているところでございます。
 この間、鉄道事業者には、ポイントを付与することに加えまして、臨時列車の運行であるとか、混雑の見える化などを実施していただいているところであります。
 また、参加する企業の方ですけれども、このスムーズビズに対しての参加企業、こちらが延べ六千社を超えるということでございます。昨年夏に駅の周辺企業と鉄道事業者が連携して取り組むなど、着実にムーブメントの輪は広がっていることを実感しております。
 こうしたスムーズビズによる取り組みは、台風等によります計画運休が行われましたよね、特に昨年の台風が続いたとき、そしてまた、今は感染症の拡大防止対策ということで、今、見えざる敵と戦っているというこの中において、企業の事業継続にも、BCPにも効果的であるということから、今般、二〇二〇大会に向けた準備を前倒しして実施するように企業に呼びかけているところでございます。
 テレワーク、時差出勤など、これまでにないほど多くの方々に取り組んでいただいておりまして、その結果として、ラッシュ時間帯の利用者、都営地下鉄で一割から二割、主要ターミナル駅で約二割減少するなど、東京全体で大きな効果が出ておりますので、そもそもただいまのご質問は若干古いのではないかと思うわけでございます。
 ロンドン大会の場合、大会を機にテレワークがレガシーとして根づきまして、働き方を大きく変えたということ、これは有名であります。
 そして、今まさに多くの企業の皆様にスムーズビズの取り組みが広がりつつあるわけでございまして、さらに、これから大会にも向けまして、企業や都民の皆様の一層の協力を得ながら、スムーズビズが大会のレガシーとして社会に根づく。そのことで全ての人々が生き生きと働いて活躍できる、そういった皆さんが願っている社会の実現を目指していきたいと考えております。

○田村委員 知事、私がお聞きしたのは、満員電車ゼロのどういう状態かということです。ですので……(発言する者あり)ちょっとまだ途中です。ですので、二〇四〇年に満員電車が過去のものだということであれば、どういう状態が過去のものなのか、どういう状態になったら過去のものといえるのか、それをお聞かせください。もし同じ答弁であれば、同じ答弁必要ございませんので。

○小池知事 満員電車ゼロへというのは一つの課題を解決すればいいというものではありません。意識から、技術から、経済性から、社会性から、それらが総合的によって行われるものであり、それは、いい方を変えればハードでありソフトであるということを申し上げたわけであります。よって、同じ答えでございます。

○田村委員 最後の同じ答えですのみで結構です。
 満員電車の定義も曖昧、到達目標も曖昧。これでは知事のいうエビデンスベースでの事業評価をどうやってやるのでしょうか。
 都における満員電車の定義は何か。都としての目標数値は今後も設けないまま取り組み続けるのかお聞きします。

○小池知事 満員電車ゼロへは目指すべき姿だと申し上げました。
 一昨年九月に策定いたしました都市づくりのグランドデザインというのをお読みいただいているかと存じます。そこに、二〇四〇年代の都市づくりの挑戦の一つとして、鉄道のピーク時の混雑を解消すると書いてございます。
 今後とも、鉄道の混雑の緩和にハード、ソフトの両面から総合的に取り組みまして、快適な通勤環境を創出していくということでございます。
 そして、東京圏におけます今後の都市鉄道のあり方について、交通政策審議会が平成二十八年四月に答申を出しております。
 目標年次とすればおおむね二〇三〇年ごろ、そして、混雑率の目標でございますけれども、ピーク時におけます主要三十一区間の平均混雑率を一五〇%に、そしてピーク時におけます個別路線の混雑率を一八〇%以下にすることを目指しているというのが答申となっております。

○田村委員 それでは、知事が満員電車ゼロの私案として示されて話題を呼んだ二階建て電車の構想についてお聞きします。
 まず、担当所管局の都市整備局長に伺いますが、小池知事から二階建て電車の導入等について具体的な検討の指示がありましたか。

○佐藤東京都技監 二階建て車両につきましては、混雑緩和の解消を果たす一つの象徴ということでございまして、快適な通勤環境の創出に向けて、ハード、ソフト両面から、多様な手法を用いて混雑対策に取り組むよう指示を受けております。

○田村委員 ということは、指示を受けていたということでよろしいでしょうか。

○佐藤東京都技監 東京都として、混雑緩和の解消という施策を進めるようにということを指示を受けておるわけでございまして、そのための一つの手段として二階建て車両ということの検討もしておりますが、二階建てにつきましては、さまざまな駅施設などの大規模な改良が必要となります。非常にコストがかかることから、他の施策ということで、現在、オフピーク通勤の促進などさまざまな施策を投入して検討しております。

○田村委員 それでは、同じ質問を事業局でもある交通局長に伺います。

○土渕交通局長 知事からは、さまざまな機会を通じて混雑対策を積極的に進めるよう指示を受けておりまして、当局といたしましては、ハード、ソフト両面から、多様な手法を用いて混雑対策に鋭意取り組んでいるところでございます。
 なお、お話のありました二階建て通勤電車につきましては、満員電車の混雑緩和を果たす一つの象徴として提案をされたものと、このように受けとめております。

○田村委員 象徴ということは具体的に検討はされていないものと認識します。
 二階建て電車については、就任後、知事は一切口をつぐんでいますけれども、知事はまだやる気があるのか、やるならば、現在どの程度まで検討を進めているのか、知事にお聞きします。

○小池知事 満員電車ゼロへというのは都民の願いでございます。
 それをいかにして解決するかは、先ほどから申し上げておりますように、ハード、ソフト全体的な、総合的に進めるからこそ意味があるのであって、その一つだけをとっていうというのは非常に野党的だと、このように思うわけでございます。
 二階建ての通勤電車につきましてはさまざまな考え方がございますが、例えばコストの面から考えますと、駅、そして鉄道施設に大規模改修で多大な事業費を要するということでございます。
 しかしながら、今後とも、さまざまな方策によりまして、鉄道の混雑緩和にハード、ソフトの両面から総合的に取り組むことについては全く変わっておりません。

○田村委員 先日公表された二〇四〇年代の東京を描いた未来の東京戦略ビジョンの10のビジョンには、満員電車は過去のものと書いてあります。高度経済成長期の時代から、都民は満員電車の解消を願い、何十年も、鉄道会社も都も一緒に取り組んできて、ようやく今の状況なのです。夢を描くことは知事の自由ですが、都政の責任者としては見通しが大変甘く、言葉が余りにも軽い。知事はもっと自覚をされるべきです。そう苦言を呈して、次の質問に移ります。
 我が会派が常々苦言を呈してきた小池知事の思いつき事業について、都は、執行率が極めて悪いにもかかわらず予算を計上し続けてきました。そして、そのうちの幾つかは、来年度も事業が継続されます。そうした思いつき事業とは別に、高額補助のばらまき事業は、LED電球に懲りず展開されています。
 昨年四月の池袋での事故を初め、高齢者の運転操作ミスによる事故が多発し、メディアで多く取り上げられてきました。こうした中、六月、知事の定例会所信表明で突然発表された高齢者安全運転支援装置設置補助制度は、装置の設置に係る経費の九割を上限とする制度で、八億五千万を原資に二万台を目標としてスタートしました。そして、本年九月からは、五割補助に補助率を変更して運用していくと聞いています。
 この事業は、都内の自動車保有車両数のうち、安全運転支援装置が搭載されていないものを約二百六十五万台と推定し、これに高齢者の免許保有数の割合や、免許を返納せず運転を続けると想定される人の割合を考慮し、実際に制度を利用される人の割合を五割と想定して約六万台を対象と設定し、今年度中に申し込みがあると見込まれる台数を約二万台と算出したものです。また、事業の終期については令和三年度としています。
 現在まで一万台程度がこの装置を設置済みと聞きますが、設置によって安全性の確保につながることこそが重要です。知事はこの事業をどのように事業評価しているでしょうか。

○小池知事 高齢運転者のブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故は、これはもうもはや社会問題となってきたわけであります。だからこそセーフシティー東京を実現する、そのためにも痛ましい事故を一件でも減らそうと、都民を守ることが必要だと考えるのは当然だと、このように考えます。まさしく都民ファーストの考えであります。
 昨年七月に緊急対策として開始しましたこの補助制度でございますが、踏み間違いによります急発進を防ぐ装置の設置を促進して、安全に運転を続けたいという高齢者の方々を支援するということで始めました。
 制度開始をいたしましてから装置を設置した台数は、半年間で一万台を超えております。年度末には一万五千台に及ぶ見込みでございます。これは、高齢の運転者が補助金を活用して装置を設置することで、生じた可能性のある悲惨な事故の防止に役立っていると、このように存じます。

○田村委員 知事は評価をされているということですけれども、それならば、この事業の導入後、高齢者ドライバーのブレーキとアクセルの踏み違いを要因とする人身事故の発生件数は減少しているのでしょうか。知事にお聞きします。

○小池知事 担当の者から答えさせます。

○國枝都民安全推進本部長 データについては田村委員ご指摘のとおりでありますが、先ほど知事がご答弁申し上げましたとおり、都民の反響も大きく、年度末には一万五千台に及ぶ見込みであると承知しているところでございます。

○田村委員 こちらのグラフは、警視庁からいただいた平成二十九年から令和元年までの三年間の踏み間違いを起因とする交通人身事故件数の推移です。全体としては減少傾向にあります。しかし、七十歳以上のいわゆる高齢者ドライバーに限りますと減少していません。それどころか、知事が突然発表された高齢者安全運転支援装置設置補助制度がスタートした八月以降を切り出してみますと、実は一番高齢者ドライバーの事故の割合は高くなっています。このデータだけで装置の評価はいたしませんが、本当に事故を減らす効果があるのかどうかには、しっかりと調査、把握にこだわっていただきたいと思います。
 事業には予算が必要となります。都民の貴重な財源を投下するわけですから、都民に受けがいいかどうかではなく、事業効果があるかどうかで評価をしていただきたいと思います。
   〔発言する者あり〕

○山崎副委員長 静粛にお願いいたします。

○田村委員 知事は、平成二十九年度から都民による事業提案制度を実施しました。この中の一つに、森と自然を活用した保育推進事業があります。予算一億八千万円、単年度事業として実施されました。予算の執行状況は、しかし、わずか七%にすぎませんでした。予算規模約三千七百カ所に対し、取り組んだ事業所は三百八十八カ所と、一割程度という結果になっています。
 こうした結果でありながら、来年度予算に都民提案事業として保育所等における園外活動支援事業という事業があります。事業名を見ると、森と自然を活用した保育推進事業と同じ内容にも見えるのですが、この事業はどのような内容なのか伺います。

○内藤福祉保健局長 都は、子供の主体性や想像力、思考力などの生きる力を育むため、平成三十年度に森と自然を活用した保育推進事業を実施し、森林、里山等の自然環境を活用した園外活動に取り組む保育事業者を支援いたしました。
 お尋ねの来年度実施する保育所等における園外活動支援事業は、認可保育所や認定こども園等の事業者が子供たちを公園などにバス等で送迎することにより、豊かな自然の中で外遊びの機会を日常的に提供する取り組みを支援するものでございます。
 事業者には、外遊びの際に、施設間の交流を複数回実施することを求めており、他の施設の子供たちとの交流を通じまして、人とかかわる力を育んでいくとともに、保育者同士がお互いの保育実践を知る機会とすることで、保育の質の向上を図っていくものでございます。

○田村委員 事業目的がバスを活用した園外活動を支援するということで、事業内容が異なることは理解しました。
 しかし、この事業が多くの保育所で活用されなければ意味がありません。森と自然を活用した保育推進事業の二の舞にならないようにお願いいたします。
 次に、新型コロナウイルスの感染症対策について伺います。
 流行拡大に伴い、都内中小企業においては、事業活動にさまざまな影響が生じています。感染症の流行の終息が見通せない中、経営資源に限りがある中小企業に対しては、減少した売り上げを回復させるための支援も必要と考えますが、見解を伺います。

○村松産業労働局長 都は、令和元年度補正予算におきまして、今般の新型コロナウイルス感染症の影響で経営面に課題を抱える中小企業への支援を強化いたしました。
 具体的には、経営や法律の専門家を無料で派遣する取り組みを新たに実施することといたしまして、三月六日から申請を受け付けておりまして、令和二年度も引き続き行ってまいります。
 加えまして、今般の感染症の影響により売り上げが減少した都内中小企業に対しては、新たな販路開拓を支援するために、国内外の展示会の出展に要する経費の五分の四について百五十万円を上限として助成いたします。
 こうした取り組みによりまして中小企業が経営を継続できるよう支援してまいります。

○田村委員 終息の見通しがつき、観光事業のリバウンド需要が起きた際に、それをしっかり受け入れられる環境整備をつくることも重要であることを申し添えておきます。
 次に、近年、日本の各地で、その地域の観光やレジャーを楽しむ傍ら、テレワークを活用し働くワーケーションという手法が広がりつつあります。
 都は、来年度の予算にモデル事業を盛り込んでいますが、来年度の都の施策について所見を伺います。

○村松産業労働局長 来年度、多摩・島しょ地域におきまして、観光資源を効果的に生かし、地域のにぎわい創出にも資するワーケーションのモデル事業を実施いたします。
 具体的には、地元市町村と連携を図りまして、観光地の近隣にサテライトオフィスを試験的に設置し、ワーケーションの体験機会を提供しながら、利用ニーズなどさまざまな課題について調査分析してまいります。
 モデル事業の成果は、地元市町村などに提供し、各地域におけるワーケーションへの取り組みを促してまいります。

○田村委員 ワーケーションは、ワークとバケーションからできた造語です。そういう意味では、観光の要素を含み、新型コロナウイルス終息後の観光の受け皿になることも期待して、次の質問に移ります。
 昨年の台風十五号、十九号では、東日本各地で河川の氾濫などによる大量の災害廃棄物が発生しました。いっときに大量に発生する廃棄物を迅速に処理するための方策についても、あらかじめ検討する必要があります。
 今後とも発生が懸念される台風被害等に備えて、各自治体の災害対応力の強化を図るとともに、産業廃棄物処理業者とも連携し、多摩地域における新たな施設整備も含めた処理体制の強化を検討すべきと考えますが、都の見解を伺います。

○吉村環境局長 近年、気候変動の影響とも指摘される大規模な風水害が発生しており、災害廃棄物に対する対応力の強化は喫緊の課題でございます。
 一方、都内区市町村における災害廃棄物処理計画の策定率は約四割と、全国平均の約五割を下回っており、策定に向けた取り組みの後押しが必要でございます。
 このため、都は、区市町村を対象とした研修やワークショップなどを通じ、計画策定に向けた働きかけをさらに強化するとともに、必要な経費の支援を実施してまいります。
 加えて、産業廃棄物処理施設の活用も含め、多摩地域の災害廃棄物処理について、業界団体と意見交換を重ね、発災時の円滑な処理ルート等の検討に取り組んでまいります。

○田村委員 大規模災害に対する備えを都内自治体や業界団体と連携を密にして進めることを要望して、次の質問に移ります。
 台風十九号の際、都は、道路の崩落により孤立した奥多摩町の集落に対し、都として初めて目視外飛行によるドローンの物資輸送を実施しましたが、事前に離発着地点の選定等に時間を要したほか、機体の輸送能力の面が課題であったと聞いています。
 そこで、今後、西多摩地域における災害時のドローンを活用した物資輸送について、都としてどのように取り組んでいくのか伺います。

○遠藤総務局長 昨年の台風第十九号の際にも、都では道路が崩落した奥多摩町において孤立した日原地区の集落に対しまして、ドローンを活用した物資の支援を行いました。
 この取り組みを通じまして、生活物資等の緊急輸送に対するドローンの有効性が確認できたと同時に、離発着地点の選定や機材の積載能力の向上など、あらかじめ検討しておくべき課題についても明らかになったところでございます。
 大規模風水害の検証を行った結果、都は来年度、西多摩地域において複数の地区を選定し、目視外飛行に必要なルートを事前に確保する調査を実施するとともに、物資輸送力の向上に向けまして、大型ドローンを活用した実証実験に取り組んでいくこととしております。

○田村委員 ドローンについては、消防庁など他局でも利用する動きがあるようです。ぜひ情報共有を密にして、効率のいい導入を図っていただきたいと思います。
 私は、令和元年第四回定例会の一般質問で、特別支援学校にこそ早急にICT環境を整備すべきと訴えました。そのような中、都は、都立学校のICT環境整備を進めていくとしています。
 そこで、今後の都立特別支援学校の整備予定について、都教育委員会の見解を伺います。

○藤田教育長 近年、ICT技術が進展し、特に障害福祉分野では、日常の生活や他者とのコミュニケーションを支援するツールとしての活用が進んでおります。そのため、特別支援学校におきましても、障害の種類や程度に応じて、ICT機器の有する多面的な効果を活用し、子供たちの学ぶ意欲に応え、その力を伸ばすとともに、自立や社会参加の可能性を広げていくことが求められております。
 今後、都教育委員会は、令和二年度から四年度にかけ、特別支援学校を含む全ての都立学校の普通教室、特別教室等に順次無線LAN環境を整備いたします。
 また、活用事例等の周知や外部人材による技術的な支援などにより、特別支援学校におけるICT活用を促進してまいります。

○田村委員 重度の障害のある児童生徒の生命のリスク回避と社会参加への動機づけのために、ぜひ尽力をいただきたいと思います。
 次に、水素エネルギーの普及拡大に不可欠な水素ステーションの整備促進について伺います。
 まず、既存の中小ガソリンスタンドへの水素ステーション併設に向けた都の取り組みについて伺います。

○吉村環境局長 都内のガソリンスタンドは比較的小規模なものが多いことから、都は、限られた敷地でも水素ステーションの整備が可能となるよう、国に対して規制緩和を要望してまいりました。
 また、補助事業において、併設等を支援するため、水素供給設備の整備に加え、既存の給油設備等の撤去、移設費用にも都単独で補助を拡充しております。
 さらに、業界団体と協力し、実在のガソリンスタンドに併設する場合のレイアウトや整備費等を取りまとめた冊子を事業者に配布するとともに、講習会や相談事業の開催などにより、事業者の併設等の検討を支援しているところでございます。

○田村委員 昨年八月には、国の規制緩和でガソリンスタンドの給油スペースへの水素充填機の併設が認められるなど、機は熟しつつあります。しかし、これまで具体的な整備の動きはありません。
 併設の動きが進まない理由について、事業者や業界団体の声をどのように認識しているのか、都の見解を伺います。

○吉村環境局長 中小事業者や業界団体からは、規制により、隣地との間に高い障壁が必要になるなど、いまだレイアウト上の制約が大きく、整備や運営の費用も高額との意見がございました。また、併設に係る工事のために、休業や長期間の部分営業が生じ、利用者へのサービス低下や収益減少への影響が大きいことも課題とされました。さらに、燃料電池自動車は、メーカーや車種が限られるなど、普及を懸念する声も多うございました。
 こうしたことから、整備費等で生じる多額の自己負担とそれに見合う収益の見通しが立てられないことが課題ということで認識しているところでございます。

○田村委員 今答弁がありましたように、ガソリンスタンドへの併設ならではの解決すべき課題が多くあります。とりわけ資金力に余裕のない中小ガソリンスタンド事業者にとって、自己負担や収益面の課題は極めて重いものです。これらの課題に対して、先ほど答弁いただいた都の支援策では不十分だといわざるを得ません。
 水素関連の都の補助事業は、現状では二〇二〇年度までの時限となっていると聞いていますが、二〇二一年度以降の展開も見据えながら、業界団体や事業者からの声によく耳を傾け、取り組みを前に進めることを要望して、次の質問に移ります。
 東京都の森林整備について伺います。
 東京都には、多摩地域と島しょ部に約八万ヘクタールの森が広がっています。都はさまざまな施策を展開しています。これに関連して幾つか伺います。
 まず、環境局所管の多摩の森林再生事業について伺います。
 この事業は、東京都が森林所有者と二十五年間の協定を結び、その間に二回の間伐など、手入れを都が実施する事業であるとのことですが、この事業の目的と実績について伺います。

○吉村環境局長 都は、手入れが行われず荒廃が進む多摩の杉、ヒノキの人工林のうち、約九千ヘクタールを対象に間伐を行う多摩の森林再生事業を実施しております。
 本事業は、土砂流出防止、生物多様性保全などの森林の公益機能を回復させることを目的とし、将来的には杉やヒノキだけでなく、広葉樹もまじった豊かな森林を目指すものでございます。
 平成十四年度から事業を開始し、平成三十年度末までに約七千五百ヘクタールの森林について所有者と協定を締結し、間伐を実施しております。

○田村委員 間伐により森に日光が入り、樹木の成長を促し、土砂災害、洪水の防止、生物多様性の保全が達成される東京の森を育てるために、引き続き尽力をいただきたいと思います。
 次に、水道水源林について伺います。
 多摩川上流域には約四万五千ヘクタールの森林が広がっており、このうち約二万四千ヘクタールは、水道局が水道水源林として水源涵養機能の維持向上のため、定期的に間伐などを行い、適正に管理していますが、近年、鹿による食害などの課題が顕在化しています。
 一方で、約二万一千ヘクタールを占める民有林では、林業の不振により整備が行き届かず、森林の荒廃が進行しています。
 このような中、将来にわたり都民の貴重な水と緑を育む水道水源林は当然のこと、民有林についても健全な状態で次の世代につなげていくため、水道局として、産業労働局、環境局、地元町村を初め、多様な主体と連携した森づくりの取り組みを強化すべきと考えますが、見解を伺います。

○中嶋水道局長 水道水源林や民有林の多様な主体との連携強化につきまして、まず、水道水源林では、山梨県など地元自治体との鹿捕獲事業の対象区域を拡大いたします。
 また、森林保全に賛同いただく企業と協働して森づくりを行う東京水道企業の森事業に、令和二年度から五年間で延べ七百五十名の受け入れを目指します。
 次に、民有林では、ボランティアによる森林整備を推進する多摩川水源森林隊の参加人数として、この五年間で延べ七千五百名を予定しております。
 さらに、民有林と水道水源林を効率的に保全するため、森林経営管理制度を活用する地元自治体等関係機関と連携し、作業道などの整備を検討してまいります。

○田村委員 多様な主体と連携した森づくりにも一歩踏み出すということはすばらしい試みだと思いますが、森づくりの担い手不足の課題もあるので、そうした対応にもぜひ取り組んでいただくことをお願いし、次の質問へ移ります。
 先ほども述べましたとおり、外国産材の輸入拡大により国内林業が衰退、そのため、手の行き届かない森林が東京都でも増大しました。植え、育て、使い、また植える、この森林循環がいかに大切なことか。
 例えば、森林の大きな機能であるCO2吸収機能は、木が光合成によって成長することと、伐採され利用されることで木材に固定化されることで果たされます。そういう意味でも、林業の復活が重要課題であります。
 そのような中、国は、令和元年度に森林環境譲与税を導入いたしました。
 そこで、東京の林業の復活には、森林のない区市が森林環境譲与税を多摩の森林整備や多摩産材の利用拡大に利用することが重要と考えますが、都の取り組みを伺います。

○村松産業労働局長 これまで都は、区市町村に交付される森林環境譲与税が都内の森林整備や多摩産材の利用促進に効果的に活用されますよう、相談窓口を設置するとともに、区市町村の担当者を対象とした説明会を開催してまいりました。
 今後は、これらの取り組みに加えて、都市部の自治体の担当者向けに、多摩の森林での現地見学会や多摩産材の建築等に関する技術研修会を開催いたします。
 また、木造建築の設計や什器の購入等に役立つ、多摩産材の資材や製品情報を掲載したカタログを製作し、ウエブ上に掲載するとともに、区市町村等に配布するなど、都市部における多摩産材の利用拡大につなげてまいります。

○田村委員 都や区市町村へ交付された森林環境譲与税が東京都の森林整備に有効に活用されるよう、引き続き取り組みを強化していただきたいと思います。
 次に、林道整備について伺います。
 東京都の林業は、地方の林業に比べスケールメリットがありません。加えて、急峻な地形により搬出コストがかかることが課題となっています。
 都は、この課題を克服するために林道整備を実施していますが、今後の取り組みについて伺います。

○村松産業労働局長 林道は木材搬出や森林整備に不可欠な基盤施設でございまして、林業コストの削減につながることから、都は計画的に整備を進めてまいりました。来年度は五路線八百十メートルの林道を新たに整備してまいります。
 また、市町村が実施いたします六路線六百十メートルの林道整備について支援を行っていくこととしております。
 既存林道につきましては、橋梁の強化や道幅の拡張などの高規格化を進めるとともに、その他の路線におきましても舗装等の改良工事を実施してまいります。

○田村委員 林道の整備は、生産林のみでなく保全林整備の課題でもあります。非常に地道な取り組みになりますが、継続して尽力していただくことを要望します。
 都は昨年末、未来の東京戦略ビジョンを公表しました。それに先立つ一昨年十一月、全国育樹祭に向けて、五十年、百年先の東京の森林の将来展望、東京フォレストビジョンを発表しました。私も経営者の端くれとして、ビジョンの重要性とその達成の難しさは痛感しております。
 そこで、東京フォレストビジョンについてお聞きします。
 まず、ビジョンとは、将来のある時点の姿を示すことだと思いますが、東京フォレストビジョンの表題には、五十年、百年先とあります。五十年先の森林の姿なのか、百年先の姿なのか。また、ビジョン達成の難しさは、それに取り組む人に達成のイメージを持ってもらうことだと思います。そのためには、ビジョンをできる限り数値で示し、その根拠を示す必要があります。
 ところが、フォレストビジョンにはほとんど数字であらわされたメッセージがありません。改めて目標年次や数値を示すつもりがあるのかお聞きします。

○村松産業労働局長 東京フォレストビジョンは、行政計画のように年次を区切って目標を定める、そういうものとは異なりまして、一昨年の十一月に開催いたしました全国育樹祭におきまして、森づくりへの機運を醸成することを目的に、メッセージとして発信したものでございます。
 なお、現在、東京都農林・漁業振興対策審議会におきまして、今後の森林整備等について諮問しておりまして、その答申を踏まえ、具体的な年次目標や数値を含む計画を来年度中に策定する予定となっております。

○田村委員 しかし、森林計画とこのビジョンはどこかでつながっているのでしょうか。

○村松産業労働局長 現在、策定に向けて東京都農林・漁業振興対策審議会に諮問しております。これは森林整備等の計画を策定するために諮問しておりまして、その答申を踏まえて、年次目標や数値を含む行政計画を来年度中に策定する予定でございます。
 東京フォレストビジョンの考え方、理念、こうしたものもそういった行政計画に生かされてくるものと考えております。

○田村委員 私もその審議会の委員ですので。ただ、全く、フォレストビジョンの話はほぼ出てきておりません。ぜひ答申に生かされるようにお願いしたいと思います。
 もう一つのビジョンの達成の難しさは、輝かしい未来を語っておきながら、取り組むのは地べたをはうような地道な課題だということです。そして、そうした努力が、ある時期根本的な課題解決につながり、大きくビジョンに近づく。そのモチベーションでさらに地道な努力に加速がつく。今まで私が見てきたビジョンを達成する組織のたどった道です。
 そこで、東京の森林の根本的な課題は、林道と森に携わる人材です。先ほど質問させていただいたとおり、それぞれの局ではそれぞれの課題に一生懸命取り組んでいますが、そこにはこの共通の課題が横たわります。
 この課題を解決するには、水道局の他局と連携した試みもありますが、局横断的な組織をつくるとか、どこかの局に森林整備の権限を全て集中させる必要があると思いますが、知事の見解を伺います。

○小池知事 東京の多摩、そしてまた島しょ地域もそうでありますが、森林が大変豊かであります。その森林による木材生産に加えまして、水源の涵養、生物の多様性の保全など多くの役割を果たして、豊かな都民生活に貢献をしてもらっています。
 都におきましては、こうした貴重な森林を守って、そして育てていくために、関係の局がそれぞれの専門性を生かしながら連携して取り組んでいるところでございます。
 引き続き、各局が連携をして森林の整備、保全を進めていく考えであります。

○田村委員 計画のない目標はただのお願い事であり、数字のない目標はただの思い込みです。戦略ビジョンがただの願い事にならぬよう、フォレストビジョンがただの思い込みにならないように、知事には具体的に取り組んでいただきたいと思います。
 そして、先ほどの冒頭の知事の答弁で答弁漏れがありました。カイロ大の追試の件です。
 知事ご自身が卒業するために追試を受けたとお話しされているようですが、追試を受けたのは何月でしょうか、お聞かせください。

○小池知事 前世紀の話でございますが、基本的に追試というのは--基本的な話として、エジプトの教育制度で九月もしくは十月から新学期が始まって、ぐるっとあって、そして五月、六月、試験があって、夏休みがどおんとあるというのが一年間の流れであります。
 その上で、普通ですと五月、六月の試験で最終的に結果が出るわけでありますが、その際に取りこぼしたのはたしか九月の追試になろうかと、このように思います。それを受けることによって、九月か十月、ちょっとここよく覚えておりませんが、結果はその後出てくるわけでございます。
 いろいろとご質問があったようでございますけれども、ベースにしておられるデータそのものが、私からすると何か違うものをかき集めてきておられるようでございまして、そちらの方につきまして、それが正しいかどうかということについては、よくお調べになる必要があるのではないでしょうか。
 いずれにしましても、私の五十年前の話でございまして、しっかりとそれらについて私はなし遂げてやってきたと、このことでございます。
 委員長がいなくなりましたが、これで終わります。
   〔山崎副委員長退席、委員長着席〕

○本橋委員長 田村利光委員の発言は終わりました。(拍手)
 以上で本日予定しておりました質疑は全て終了いたしました。
 なお、あすは午前十一時から理事会を控室一で、また、午後一時から委員会を本委員会室で開会いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後七時五十八分散会

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