予算特別委員会速記録第四号

○両角委員長 菅原直志委員の発言を許します。
   〔委員長退席、木村副委員長着席〕

○菅原委員 それでは、質疑をさせていただきます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 先日、東京マラソンのスタートの応援をさせていただきました。三万六千人のランナーの皆さんが、二十五分とか三十分ぐらいでしょうか、かけて私たちの前を走っていきました。多くの関係者の皆さんのご尽力で、ここまで大きな世界的なマラソン大会となったことに感謝をしながら、走り去るランナーの皆さんを応援させていただきました。
 同時に、かつて自殺対策の勉強会での話も思い出しました。日本の自殺者の推移の中で、平成十五年の三万四千四百二十七人が一番多いといわれております。東京マラソンの参加者数三万六千人と、平成十五年の自殺者数三万四千人というのは同じぐらいの数字。日本の各地で一年をかけて失われる命は見えにくく、想像しにくかったのですが、三万人を超える人々というボリュームは、あの東京マラソンのスタートラインを三十分かけて駆け抜けることと同じだということです。
 今では、日本の年間の自殺者数は二万五千人ぐらいで推移をしておりますけれども、それは、この二十年の自殺対策に取り組んできた先輩方の努力の成果です。
 華やかな東京マラソンを応援するすばらしい時間ではありましたが、同時に、社会的にも大きな関心を集めた自殺者数三万人という現象を実感する貴重な時間でもありました。
 まずは、自殺対策について質問をさせていただきます。
 冒頭で、自殺対策に対する私の考え方をご理解いただきたいと思い、少しお時間をいただきます。
 自殺対策は生きる支援ともいわれます。日本の自殺者数は、先進国の中でも格段に多いのは既にご存じのとおりです。それは、生きづらさを抱える人々を支えられない日本の現状を物語っています。しかし、近年、国の法律制定を踏まえ、官民挙げての自殺対策が進められる中で、自殺者数は減ってまいりました。
 パネルを示させていただきました。日本は、平成九年までは、年間の自殺者数が二万人台だったんです。しかし、平成十年度に自殺者数は三万人を超えました。それでは、この平成九年と十年度の間には、何があったのでしょうか。
 平成九年度は、消費税が三%から五%に上がりました。そして、山一證券、北海道拓殖銀行などが破綻した年度です。経済が大きく荒れた年といわれます。その年度末の三月に、一月の自殺者数が三千人になったのです。その前の二月までは一月二千人でした。一月二千人の自殺者数ならば年間で二万人台、三千人超えれば三万人台ということがいえると思います。
 私は、年間三万人の自殺者数の胎動は、この九年度の決算月、三月にあるのではないかと思っています。そして、ふえた自殺者は、経済的に追い込まれた経済死である可能性が高いと考えています。
 みずからの命を絶つのはそれぞれの理由があるので、単純には整理できません。しかし、ある程度の傾向を把握することはできます。
 例えば、失業率が高くなれば自殺者がふえる、失業率が減れば自殺者が減る傾向があります。経済の状況と自殺には相関関係があるといわれるのです。
 自殺は、社会が生きにくくなった結果、追い込まれた末の死の部分があるのではないか、それならば、社会をやわらかく、生きやすくすることで自殺は減らせるのではないかと思っております。
 そして、平成十五年、日本の自殺者数は三万四千人を超えました。これらの背景の中、国は、平成十八年に自殺対策基本法を制定し、官民挙げての取り組みが始まった。
 そして、平成二十四年、自殺者数は三万人を切りました。これは、自殺対策を進めれば効果が出るということだと思います。
 私は、三十年前から、自殺で親を亡くした子供たち、自殺遺児と向き合ってまいりました。夏の集いの中で、高校生や大学生の子供たちの隣に座り、彼らの言葉に耳を傾けてまいりました。自殺遺児たちは、私にこのように語りかけました。自分の親が生き切れなかった社会に生きていく自信がないんだ、自分は親に捨てられた、親に捨てられた子供は、家族を持つ資格がないんじゃないですか。私は、彼らの言葉に何も反応できませんでした。ずっと隣に座るしかありません。
 自殺は、本人に近しい人々、少なくとも五人に大きな衝撃を与えるともいわれます。例えば、二万五千人の自殺は十二万五千人に、三万人の自殺は十五万人に大きな衝撃を与える、その可能性があります。
 NPO法人のライフリンクは、自殺で家族を失った家庭への聞き取り調査を展開し、その結果を発表しました。自殺には、最低四つの複合的な要因が重なるという見解を表明したのです。例えば、病気になる、仕事をやめる、家族からの孤立、そして社会からの孤立、例えばそのように、四つほどの大きな要因が複合的に絡み合うのだといわれるのです。
 しかし、見方を変えれば、支えるきっかけが四つもあるというふうにもいえると思います。そこに、行政のサポートの可能性があると思うのです。今まで自殺問題と向き合ってきた福祉保健の関係者、医療関係者の皆さんの活動に敬意を表しながら、さらに、向き合うべき行政機関を巻き込んでいくことが必要だと思うのです。
 そのためには、東京都の条例化が必要ではないかと思います。
 基礎自治体で最初に自殺対策の条例を制定したのは、平成二十年の神奈川県平塚市です。東京都内では、平成二十三年に日野市が制定いたしました。都道府県では、平成二十四年に京都府が自殺対策の条例を制定いたしました。
 日野市は、条例策定を踏まえて、自殺総合対策基本計画を策定しました。日野市の行政全体で自殺のゲートキーパーになる可能性、これが議論をされたのです。
 借金や鬱病、いじめ、虐待、相続の問題、商売などの経済的な問題、高齢に伴う悩みなど、自殺につながる多くの担当部署も自殺対策のメンバーとして取り組むことになったのです。多くの行政機関を巻き込む取り組みが必要だと思います。
 私は、東京都でも、総合的に取り組むための条例化が必要だと思っています。条例の策定は必要ですが、その具体策となる基本計画を先行して進めるという考え方もあると思います。東京都の自殺対策の計画としては、これは仮称ですけれども、東京都自殺総合対策計画を策定していると聞いております。その進捗状況を伺います。お願いいたします。

○小池知事 自殺対策の進捗状況に対してのお尋ねでございます。
 都といたしまして、現在、福祉、医療、経済、教育などの関係団体、そして民間団体、有識者から成ります自殺総合対策東京会議のもとにおきまして、仮称でございますが、東京都自殺総合対策計画、この策定を進めているところでございます。
 この計画におきましては、平成二十七年と比較いたしまして、自殺死亡率や自殺者数を十年間で三〇%以上減少させる、そのことを目標といたしまして、都の現状などを踏まえて、若年層対策や職場の自殺対策を進めることを重点施策として位置づけているところでございます。
 また、心の悩みや就労問題、多重債務の問題など、さまざまな悩みに対しての相談、支援の充実を図ります。そのほか、高齢者の見守り、産後鬱予防に取り組む区市町村を支援するなどなど、関係機関と連携した取り組みも盛り込んでいるところでございます。
 ちなみに、来週から計画案に対するパブリックコメントを行います。そして、来年度の早期に策定する予定となっております。

○菅原委員 ありがとうございます。
 平成三十年度の東京都の予算にはこの自殺対策について、新しい取り組みを進めるという予算が組み込まれていると思います。
 その点について、改めてご説明をお願いしたいと思います。お願いいたします。

○梶原福祉保健局長 都は毎年、三月と九月の自殺対策強化月間に、自殺防止東京キャンペーンとして、大学生と協働した講演会や民間団体と連携した特別相談等を行っており、今回その一環として、LINEを活用した自殺相談を実施いたします。
 来年度は、この相談事業の結果を検証しながら、都民ニーズに合った相談体制を構築することとしており、若年層の自殺対策を強化してまいります。
 また、働く人の自殺を防ぐため、企業経営者や人事担当者等を対象としたメンタルヘルスに関する講演会などの開催、相談ダイヤルの情報など、従業員向けのテキストデータの作成、提供等により、職場における自殺対策を進めてまいります。

○菅原委員 ありがとうございます。新しい年度、例えば、今、LINEによる相談と、若者のコミュニケーションのツールにそれをうまく利用したということで説明をいただきました。ありがとうございます。
 日本全体では、自殺者が減っております。しかし、今お話がありましたけれども、十八歳までの小中学生、そして高校生、ここに限っていくと自殺者は減っておりません。ちょっともう一度パネルを示していただけますか。実は、この緑の部分が全体の自殺者数ですけれども、その下の赤の部分、これが大体三百人ぐらいなんです。この三百人というのは変わっていないんです。子供たちが減っても、自殺者数はずっと三百人です。日本の全体の自殺者が減っても、子供たち、十八歳までの自殺者は減っていません。
 東京都教育委員会として、公立の小中学生や高校生を対象としての自殺対策が展開されてきました。その新年度の取り組みについて伺いたいと思います。お願いいたします。

○中井教育長 都教育委員会はこれまで、教員とスクールカウンセラーの連携による教育相談体制の充実を図るなど、学校における自殺対策を推進してまいりました。
 また、今年度設置した医療等の専門家を含む自殺予防教育推進委員会で、過去の自殺事案の検証に基づき、学校で行うべき取り組みをまとめるとともに、子供に困難やストレスへの対処方法を指導するためのDVD教材を開発し、学校に配布いたしました。さらに、自分や友達を大切にしてほしいとの願いを込めた都教育委員会からのメッセージを都内公立学校に在籍する全ての子供たちに伝えているところでございます。
 今後、都教育委員会は、学校がDVD教材等を活用し、子供が悩みを抱えたときに、信頼する大人に助けを求められるようにするための教育等を計画的に実施できるよう指導助言を行い、自殺対策の強化を図ってまいります。

○菅原委員 ありがとうございます。やりとりの中で、また資料も読ませていただく中で、職員の方が真摯にこの問題と向き合っているということはよく伝わっております。ぜひ一緒に進めていければと思います。
 それでは、がん対策について議論を進めさせていただきたいと思います。
 東京都はかねてから、がん対策に積極的に取り組んでまいりました。私は、そのがん対策をさらに充実し、そして分厚くするために質問させていただきたいと思います。
 がん対策は、予防、そして医療、そして共生、そして教育、この四つの要素で成り立っていると思います。予防と医療は、多くの施策展開がされてまいりました。予防と医療の発展は大事なテーマです。しかし、それだけではないと思うのです。
 現代のがんは、患者の六割が通常の生活に戻るというデータがあるように、がんとともに生きるという視点が大事だと思います。がん患者として生きていく、または闘病しながら、仕事をしながら、人生を楽しみながら生きていくというがん患者もふえてまいりました。
 家族も同じです。闘病を支え、生活を支えながら生きることになります。そこで、共生、ともに生きるということが一つのテーマになります。
 そして、教育です。がんは情報戦といわれるように、がん教育が必要になります。がん患者が自分のがんを知ることは大切です。また、家族が、その患者のがんを知り、一緒に闘病することも大切です。がんとどのように向き合うのか、生活の質を保ちながらがんと闘うためには、教育が必要です。
 がんは、細胞分裂の際のコピーミスが原因となるケースが多いので、細胞分裂を学ぶ中学生くらいからのがん教育が効果的といわれます。そして、細胞分裂のコピーミスを修復する力が免疫力です。免疫力を高めるためのがん教育というのもあると思います。
 日野市では、がん患者が小学生に自分の体験を話すがん教育も行われました。がん患者が自分の言葉で病を語る教育は、単にがんを知るだけではありませんでした。がんによって、一度は死を意識し、生きることを意識した患者が、その後、人生と向き合って、自分の子供と向き合った経験を語ってくれました。まさに命の教育の時間となりました。
 今までのがん対策は、予防と医療の取り組みに比べて、共生と教育の取り組みが弱かったように思うのです。これからのがん対策は、この四つの取り組みをそれぞれ強く展開していくことが大事だと思います。このパネルでいうと、この共生の部分をもっと分厚くしていこうというのが提案でございます。
 次に、近隣のがん対策の状況について、全体で共有したいと思います。パネルお願いします。
 関東近県のがん対策関係の施行状況についてまとめてきました。出典は、国立がん研究センターがん情報サービスというホームページからです。
 まずは、就労関係に関する情報です。
 これは、東京都は積極的に行っているように思います。後ほど具体的な部分については質問をさせていただきます。
 患者会については、大小いろいろとありますので、調べることも難しいと思います。それでも、東京都でも報告事例がございます。
 条例化について、関東近県の中で、茨城、群馬、埼玉、千葉、神奈川が条例化をしています。栃木県と東京都が条例化をしておりません。全国の四十七都道府県の中、がん対策を条例化しているのは三十七自治体、条例化していないのは十都道府県です。
 がん患者の就労については、既に一般質問の中でも議論されました。新年度の事業の中、がん患者の治療と仕事の両立支援事業があります。
 この事業の具体的な取り組みについてご説明をいただきたいと思います。お願いいたします。

○梶原福祉保健局長 がん患者の治療と仕事の両立支援事業は、がん患者が治療を受けながら、その人らしく働き続けられるよう、働きやすい職場環境づくりや、自宅や職場の近くなど、希望する場所で治療が受けやすい環境の整備を推進していくことを目的としております。
 来年度は、まず、患者や家族のニーズ、企業における両立支援の取り組み状況、医療機関のがん診療や相談支援等について、改めて実態調査を行う予定でございます。
 また、東京都がん対策推進協議会のもとに、がん医療の専門家や企業関係者等で構成する検討会を設置し、がんと診断された患者が早期に離職しないよう、相談支援につなぐ仕組みや、治療に伴う不安や負担を軽減する環境づくりなどについて検討してまいります。

○菅原委員 東京都の状況を伺いました。
 今後、がん患者がふえるということが予想されます。現在、がん患者の八割以上が病院で最期を迎えておりますが、がん患者がふえて、いわゆる多死社会を迎える我が国では、病院のベッドも足りなくなるということが予想されます。
 また、がん患者の中には、自宅やホスピスで最期を迎えたいという希望もあります。しかし、日本の住宅事情や介護をするスタッフの不足など、本人がコントロールできない理由によって、実現できない状況というのもあります。
 患者本人の希望を実現できるような医療体制、社会体制の構築が急がれます。がん患者が希望する形でのみとり、この取り組みについて伺いたいと思います。お願いいたします。

○梶原福祉保健局長 都は、現在、患者の希望に応じ、自宅や施設などの住みなれた暮らしの場でのみとりを実現するため、在宅療養体制の整備を進めており、医療、介護従事者を対象に、みとりに関する理解を深め、対応力を強化する研修を実施するほか、みとりに対応できる個室など、環境整備のための改修経費を支援しております。
 また、がん患者が在宅やホスピスなどで最期を迎えたいと希望する場合には、身体的な痛みや精神的なつらさの緩和にも対応する必要があるため、来年度は都内の病院や在宅緩和ケアを提供する診療所、訪問看護ステーションなどを対象に、緩和ケアの実施状況を調査いたします。
 この結果をもとに、がん患者が治療の場や自分らしい最期を選択できるよう、今後の緩和ケアの提供体制のあり方や支援策を検討してまいります。

○菅原委員 がん患者や家族の団体というのが各地で今設立されております。
 例えば、日野市では、がんの患者会、家族会が設立されて運営されております。その運営は、市民団体が担っておりますけれども、日野市の市立病院や日野市自体も支えております。毎月のがんカフェは、多くの患者や家族が集います。勉強会を開けば、いつも会場は満席、百五十人ぐらいがすぐに集まります。日野市のがん対策の計画策定の際には、この患者会から計画策定委員が選ばれて、日野市のがん対策の議論も深まってまいりました。
 予防、医療中心だったがん対策は、これから、共生、教育の部分が注目されてきます。そのときに、がんの患者会、家族会の存在が重要になると思うのです。
 がんの患者会、家族会の支援について、その取り組みを伺います。

○梶原福祉保健局長 現在、都内のがん診療連携拠点病院等が設置をいたしますがん相談支援センターや患者団体等は、患者や家族が気軽に語り合えるサロンやがん経験者がみずからの体験を生かした相談を行うピアサポートなどを実施しております。都は、こうした取り組みに関する情報を、東京都がんポータルサイトで広く提供をしております。
 今後、より多くの患者団体等の活動内容に関する情報などを拠点病院等へ提供しまして、患者、家族への相談支援に活用するよう、働きかけてまいります。

○菅原委員 ありがとうございます。
 それでは、次、少し角度を変えて、今度は子供の貧困対策について伺いたいと思います。
 子供の貧困対策については、九月の第三回定例会の一般質問でも取り上げましたが、改めて質問させていただきたいと思います。
 子供の貧困というのは、見えにくいという特徴があります。見えないから、施策展開がおくれてきたという指摘があります。
 しかし、国や民間団体の取り組みの中、徐々に見えてまいりました。そして、子供の貧困は、子供自身が貧困なのではなくて、子供を取り巻く社会全体が貧困なのだという考え方のもと、施策展開が始まりました。
 子供の貧困対策は、今を生きる子供たちへの投資であり、それは未来への投資です。この投資は、遠くない未来に社会還元される投資だと思います。
 子供の貧困というのは三つの要素から成り立っている。一つ目は経済的な貧困、二つ目は社会関係性の貧困、三つ目は文化の貧困。よく昔はみんな貧困だったといわれますけれども、それは経済的な貧困だけを取り上げた議論という指摘がございます。経済の成長に支えられて、ご近所の助け合いの精神があって、みんなで囲む食卓があった時代には、社会関係性や文化的な部分は豊かだったように思うのです。
 残念ながら、現代はそうではありません。複合的な貧困からはい上がれず、貧困の連鎖を生み出している可能性があるのです。これは既に個人の人生での選択で整理できるレベルではなくて、社会全体で取り組む必要があります。
 私は、子供の貧困対策は社会全体で取り組む施策だと定義をしました。社会全体で取り組む場合、例えば東京では、東京都全体での取り組みが必要です。東京都の子育て施策の範疇を超えるのではないかと思います。社会全体での子供の貧困対策のために、多くの部署を巻き込む視点が必要だと思うのです。
 内閣府の調査によると、四十七の都道府県の中、子供の貧困対策の計画を策定している自治体は二十九自治体です。この動きは今後も広がると思います。
 東京都も、子育て施策での取り組みではなくて、子供の貧困対策を別途取り上げて、計画の策定や、将来的には条例化も進めていくことが大切だと思います。
 知事は施政方針表明において、子供・子育て支援総合計画の見直しに当たり、貧困の連鎖を断つための施策を盛り込むとしておりますが、子供の貧困対策における都知事の見解を求めます。お願いいたします。

○小池知事 菅原委員におかれましては、長年この子供の貧困問題に取り組んでおられます。そのご質問といたしまして、子供の貧困ということについて、それは、すなわち親の貧困であるということかと思います。貧困の連鎖を断ち切って、全ての子供が夢に向かって輝ける社会を実現させなければならないと考えております。
 都といたしまして、現在、子供・子育て支援総合計画に基づいて、福祉、教育、就労など、さまざまな分野の関係機関と連携しながら、子供の貧困対策を総合的に進めております。
 また、今年度行っております計画の中間見直しですが、子供食堂に対する運営費の助成や子供の貧困対策に取り組んでいる区市町村への支援、そして高校生を対象とした給付型奨学金なども、新たに盛り込むことといたしております。
 今後とも、子供の将来が、その生まれ育った環境で左右されることのないように、さまざまな施策を展開いたしまして、子供、そして、その家庭を応援していきたいと考えております。

○菅原委員 ありがとうございます。
 二〇一六年度、東京都は子供の生活実態調査を行いました。第三回定例会の一般質問の中で、サービスを知らないために東京都の施策に結びつかない家庭や子供がいることが見えてきたということを指摘させていただいた経緯がございます。
 東京都からは、区市町村と連携をして子育て支援施策の周知を図っていくという答弁をいただきました。その具体的な取り組みについて伺いたいと思います。お願いいたします。

○梶原福祉保健局長 お話のように、昨年度行った子供の生活実態調査では、さまざまな施策を行っているわけですが、子育て家庭に、その必要な情報というものが十分に届いていないということが明らかになったわけでございます。
 そのため、都は今年度、都や区市町村が地域で実施をしているさまざまな子育て支援サービスを掲載した冊子、とうきょう子育て応援ブックを二十万部、今年度は作成をいたしました。
 この冊子は、子育てをサポートしてほしい、勉強を見てほしい、相談したいなど、ニーズを六つに分類をし、わかりやすくまとめるとともに、QRコードで、より詳細な内容や問い合わせ先などを確認できるよう工夫しておりまして、都内の公立小学校に通う一年生の保護者全員に、学校を通じて配布をしております。
 また、区市町村を通じて、母子健康手帳交付時や転入時等、さまざまな機会を捉えて配布するほか、都のホームページにも掲載をしているところでございます。

○菅原委員 ありがとうございます。
 東京都の子供・子育て支援総合計画の中間年の見直しに当たり、新たに子供食堂への支援が盛り込まれると聞いております。子供食堂は、先ほど提示をした一緒に食卓を囲むという文化的な役割を持っていると思います。地域の大人と子供が一緒に集う場の存在は、地域コミュニティの醸成につながるのではないかと思うのです。
 一時期は、子供食堂イコール子供の貧困と捉える部分もありましたが、そのように狭く捉えていくと、子供食堂の持つ可能性が狭まるように思います。
 多くの子供食堂は、その運営をボランティアに頼っており、継続的な運営が難しい状況にあります。その子供食堂に対して、東京都の支えを進めることは重要です。
 来年度、東京都が開始する子供食堂推進事業の具体的な中身について答弁をお願いいたします。

○梶原福祉保健局長 現在、NPO法人を初めとする多くの民間団体が、地域の子供たちに食事や交流の場を提供する子供食堂の取り組みを行っておりまして、本年一月現在、区市町村が把握している都内の子供食堂の数は二百九十二カ所となっております。
 都は、区市町村が行う子供の居場所づくりを支援しておりまして、今年度からは、この居場所と連携する地域の子供食堂に対しても支援を行っております。
 来年度は、月一回以上開催することや、区市町村が子供食堂との連携を深めるための連絡会を設置することを要件にいたしまして、運営に必要な食材費や会場使用料等に対して、一回につき上限一万円、年間二十四万円まで区市町村を通じて助成をし、地域における子供食堂の活動を支援してまいります。

○菅原委員 ありがとうございます。一つ一つ施策が見えてきたというのが感想です。ぜひ届く支援をお願いしたいと思います。
 子供の貧困対策については、地域の実情を知り、子供たちの実情を知っている区市町村が、さまざまな取り組みを行っております。先進的な取り組みをしている区市町村と、まだ検討に入っていない区市町村もあると思います。
 区市町村の情報交換などの場を設けることや全体の底上げを進めること、または、東京都の施策を区市町村にも理解して使ってもらうことなどが求められていると思います。
 区市町村の子供の貧困対策への取り組みを進めるため、都はどのように支援をしていくのか、見解を求めます。

○梶原福祉保健局長 お話のように、現在、区市町村は、食事支援ボランティアの派遣や学習支援等を行う民間団体のネットワーク構築など、さまざまな子供の貧困対策に取り組んでおり、都はこうした取り組みを包括補助で支援をしております。
 また、今年度は、いつも同じ服を着ている、朝食を食べてこないことがあるなど、保育所や学校の職員が、支援を必要としている子供に気づくためのチェックシートの作成など、地域の先進的な取り組みを盛り込んだ事例集を作成いたしますとともに、首都大学東京と連携して、区市町村向けの研修会を二回実施し、生活実態調査の手法や活用方法に関する講演、先進事例を取り上げたパネルディスカッションを行っております。
 今後とも、より多くの区市町村で子供の貧困対策が進むよう支援をしてまいります。

○菅原委員 ありがとうございます。ぜひ一個一個、前に進めていただければと思います。
 少し、角度を変えて進めてまいります。
 犯罪被害者の支援、そして、再犯防止推進計画、これらについてでございます。
 日本は、治安のよい国ですが、それでも犯罪は起こります。そして、加害者と被害者が生まれます。加害者については、既に今回の都議会一般質問の中で、佐野議員が取り上げました。再犯防止推進計画を中心に丁寧な議論が行われましたので、私からは、この場では、犯罪被害者の部分に絞って質問させていただきたいと思います。
 日本の被害者支援というのは、世界標準からは一周おくれといわれてまいりました。犯罪被害者等基本法が制定されたのは平成の十六年です。その後、基本計画が策定をされました。法制化を受けて、全国に犯罪被害者のための相談の窓口や被害者支援センターなどが設立されてまいりました。同時に、被害者の自助グループも各地に設立され、緩やかな連携を保ってまいりました。
 また、交通犯罪被害者が立ち上がって、危険運転致死傷罪の法制化のための署名運動を行って、実際に法令化されたのもご存じの方が多いかと思います。
 私は、基本法制定の前から、この問題に取り組み、特に犯罪被害者団体のネットワークの設立から十年ぐらい事務局的な役割を担ってまいりました。その間、全国の犯罪被害者から直接声を聞いて、そして支援者の声も聞き続けてまいりました。その経験から、東京都の取り組みを進めていただきたいということで取り上げました。
 東京都には、被害者支援都民センターがございます。民間団体ではありますが、東京都と連携をしております。都内の犯罪被害者の相談や、裁判の場合のサポート、その後の生活支援など、真摯に取り組んでいただいております。
 しかし、この施設は新宿区にあり、多摩地域の犯罪被害者からは、遠くて通いにくいという声があります。
 パネルを用意しました。今回はわかりやすいように、東京都と鳥取県を比較する例といたしたいと思います。
 東京都の人口は一千三百万人程度です。鳥取県の人口は五十六万五千人程度。犯罪認知件数、これは東京都は十四万八千件程度でございます。鳥取県は三千件程度というご報告がありました。発生率ですけれども、東京都は千人当たり十一件、これは毎年です。一年間に、千人いれば十一件、百人に一件ぐらいあるんだということです。鳥取県は千人当たり六件、半分といってもいいぐらい。そして、それぞれに一カ所の被害者支援センターということなんです。
 被害者支援の基本は途切れない支援です。被害者支援センターのような施設は、都内に複数あってもいいのではないかと思います。すぐには実現が難しいかもしれません。
 しかし、そのような状況の中で、都や区市町村が被害者に寄り添った支援を都内全域で行っていくために、今まで以上の取り組みを進めていく必要があると思いますが、東京都の見解を伺います。

○多羅尾総務局長 都はこれまでも、知識や経験が豊富な民間団体である被害者支援都民センターと協働して、都内全域を対象とする東京都総合相談窓口を運営し、相談や裁判所等への付き添い、精神的ケア等の支援を行っているほか、必要に応じて相談員が市役所などに出向いて相談を行っております。
 また、全ての市区町村に相談窓口が設置されていますが、必ずしも犯罪被害者の方々のニーズに応えられていないという課題がございます。
 そこで、対応窓口の機能強化を支援するため、体制整備に資する助言や、担当者のスキルアップのための研修、また、都が作成したリーフレットの提供などを行っております。
 今後も、市区町村と連携し、こうした取り組みをより一層充実させ、被害者の方々に寄り添った支援を都内全域で実現してまいりたいと考えております。

○菅原委員 ありがとうございます。
 きょう取り上げましたのは、自殺対策、がん対策、子供の貧困対策、そして犯罪被害者、この対策でございます。この四つには実は共通点があります。それは、どれも条例がないということなんです。
 今回の質疑の準備のために、担当の職員の皆さんにもいろいろと教えていただいてまいりました。担当職員の皆さんは、目の前の課題と真摯に向き合って、そして、その解決のために取り組んでいることが本当によくわかりました。
 公務員は、議会の議決に沿って仕事を進めます。大事なことだからといって勝手に事業を展開することはできません。常に議会の議決が必要となります。
 東京都の計画があるから大丈夫という議論もございます。しかし、東京都の計画の多くは議会の議決案件とはいえない。国が定めた法律に沿った計画もありますが、それでも都議会の議決案件でないことが多いと思います。
 よりよい東京都政のためにも、行政も議会も問題を共有して、そしてその課題に取り組むためには、条例化が一番わかりやすいのではないかと思うんです。
 自殺対策、がん対策、子供の貧困問題、そして犯罪被害者の対策などは、本当に大きな仕事です。それだけに、条例の形で議会の議決を経て事業を進めることは、自治立法権を大切にした仕事、その進め方が求められるように思います。
 以上で私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○木村副委員長 菅原直志委員の発言は終わりました。

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