予算特別委員会速記録第三号

   午後六時三十五分開議

○のがみ副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 伊藤こういち委員の発言を許します。

○伊藤(こ)委員 それでは、私からは、まず初めに、羽田空港の機能強化に伴う飛行機の増便計画について伺います。
 国交省から羽田空港機能強化に伴う飛行機の増便計画案が示されております。増加するインバウンドに対応するため、今の飛行ルートでは限界があるためということでございます。
 まず、パネルをごらんいただきたいと思いますけれども、今現在は、皆様ご案内のとおり、羽田空港に着陸する飛行機、千葉県の方から海沿いを通って羽田空港に着陸をしていく、こういうコースでありますけれども、このたびの計画案では、二つのルートから--こっち側とこっち側ですね、二つのルートから羽田空港に着陸するとのことで、上空を通過する関係区、影響を受ける区は、東京では十三区、都内は十三区に及ぶということでありますけれども、とりわけ、こちらの図を見ていただくと、ぐっと飛行機が飛行場に近づいていくときに、品川区内を二つのルートが並行して進入をしてくる、こういう計画となっております。
 また、計画では、右側のこちらの赤い方のルートでありますけれども、一時間に三十便、ということは二分に一本です。左側の緑のラインの方は一時間に十四便、約四分に一本、一便が入ってくると。
 加えて、品川区は着陸直前の地域でありまして、飛行機の高度は、住宅や商店、あるいは企業が密集している大井町でありますけれども--ここが大井町です、大井町のあたりでは高度が約三百メートル、その先の立会川の駅の方に行きますと、約二百メートルということでございます。
 都庁の第一庁舎の高さが二百四十三メートルでありますので、都庁の高さは大体大井町と立会川の駅の中間点、この辺ということになるわけでありますけれども、昨年、大阪で飛行機のパネルの落下によります乗用車への直撃事故、あるいはまた、成田空港周辺での部品落下事故など、飛行機から落下物、あるいは部品脱落事故が相次いでおります。
 人の命を守るという観点から、このルート案に対しては決して私は看過できない、こういう思いでいっぱいです。
 また、落下物に加えて、騒音の心配のほか、不動産価格が下落してしまうのではないか、こういう声も寄せられておりまして、地元品川区から選出をしていただいている議員として、私は大変に憂慮をしているところであります。
 一方、東京二〇二〇大会が二年後に迫っております。大会開催期間中には、世界中から選手、応援団、大会関係者のほか、多くの外国人観光客が東京に集ってまいります。
 東京二〇二〇大会の成功は、都民、国民、そして世界中の人々の願いでありまして、開催都市東京としても、何としても成功させなければならないことはいうまでもありません。
 そこで、私がまず申し上げておきたいことは、羽田空港新飛行ルート案は、東京二〇二〇大会成功のためのルートとし、将来にわたって固定化するのではなく、例えば、茨城空港や静岡空港などの周辺空港も活用するなど、都心の人口密集地域上空の飛行ルートにならない方策の検討も同時に開始すべきであると都と国に強く求めておきたいと思います。
 その上で、早急に講じていただきたい対策などについて質問をしてまいります。
 まず、このたびの羽田空港機能強化がなぜ必要なのか、なぜ都心上空を飛行しなければならないのか。私は国交省から説明は聞いておりますけれども、改めて、都が国から受けている説明を都民にわかりやすく答えていただきたいと思います。

○邊見東京都技監 羽田空港は都心に近く、国内外に豊富なネットワークを有する基幹的なインフラでありまして、東京二〇二〇大会の円滑な実施や、さらには、その後の航空需要に応えていくためには、容量拡大による機能強化が必要不可欠でございます。
 現行の飛行経路の運用のみでは、空港容量の拡大に限界があることから、国はさまざまなケースを検証した結果、飛行経路の見直しを提案いたしました。
 羽田空港の運用は、年間平均で北風時が約六割、南風時が約四割でございます。このうち南風時については、国際線の集中する十五時から十九時までのうち三時間程度に限定した上で、都心側から着陸、海側へ離陸する新たな飛行経路を運用するものでございます。

○伊藤(こ)委員 国交省は、オープンハウス型の説明会を開催しておりますけれども、品川区民、都民は、今回の計画と内容を知らない人が圧倒的に多いです。自分の居住地域上空を飛行機が飛ぶということを住民が知らないまま計画が進められていくということが大問題なのであると私はそう思います。
 そこで、関係区一律ではなく、品川区や港区など、影響の多い地域は重点区として徹底した周知と情報提供を行うよう、都は強く国に働きかけるべきであると思いますけれども、見解を求めます。

○邊見東京都技監 国が提案した飛行経路の見直しに対し、都は、地元への丁寧な情報提供と騒音影響を軽減する方策の検討や、徹底した安全管理に取り組むことを国に要請してきてございます。
 これを受けて国は、特設ホームページや日刊紙への広告掲載などに加え、これまで四期にわたりオープンハウス型説明会を開催し、職員がマンツーマンで対応するなど、きめ細かな情報提供を行っており、今後も継続的に実施する予定でございます。
 さらに国は、オープンハウス型説明会を補完するものとして、関係自治体と相談の上、個別に情報提供の場を設けてございます。
 一方、新飛行経路について、お話のようにまだ知らない住民が多いとの意見もあり、都は、都民の理解が一層深まるよう、丁寧な情報提供を国に対し求めてまいります。

○伊藤(こ)委員 本当に都民、特に品川区民、また港、目黒、こうした空港に近いところの区民は、この情報を知りません。現場で聞かれるのは私たち議員です。なぜ私たちが国交省の説明をしなきゃいけないのか、いつもそのことを疑問に思っております。
 飛行機からの落下物や部品脱落事故が相次いで報道されております。先日の三月四日には、成田空港から北に、空港の滑走路から北に七キロの地点の山林の中から、航空機のアンテナ部分、長さが四十二センチ、幅が二十五センチ、厚さ三センチ、重さ九百二十グラムですから約一キログラムの部品が発見をされました。しかし、いまだに、いつ、どの飛行機から落下したものか判別できておりません。
 先ほども見ていただきました、これ品川区のところでありますけれども、この事態、仮にこの事故が羽田空港の新ルート上で起きてしまったならば、七キロの地点といえば品川区の大崎駅--この辺です、あるいはこっちでいえば天王洲アイルのあたりになりますけれども、大惨事になりかねないわけであります。
 万が一にも事故があってはならない。もしもの場合、誰がどんな補償を行うのかとの声も含めて、何よりも、かけがえのない生命と財産を守るために、落下物事故が絶対に起きないよう、万全の安全対策を講じるよう、都は、国に対し厳に求めるべきだと思いますが、見解を求めます。

○邊見東京都技監 都の要請を受けて、国は、航空機をチェックする新たな体制の構築や、落下物の原因者である航空会社に対する処分の仕組みづくりなどを進めており、新飛行経路の運用開始までに実施するとしてございます。
 加えて国は、最近の落下物事案を踏まえ、外国航空会社を含む全ての航空会社から部品欠落の報告を求める運用を昨年十一月から開始してございます。
 さらに、世界的にも類を見ない落下物防止に特化した対策基準案を、今年度内を目途に取りまとめる予定でございます。
 また、万が一、落下物による被害が発生した場合に備え、原因者が全く特定できない際にも補償される制度の創設を検討するなど、補償の充実にも取り組んでございます。
 都は、引き続き国に対し、安全管理の徹底を図るよう要請してまいります。

○伊藤(こ)委員 落下物のみならず、航空機からの騒音についても、心配の声が多く上がっております。
 私は以前、今回の計画の同程度の高さで飛行機が飛ぶ、大阪の伊丹空港と福岡空港の周辺を視察調査いたしました。そのとき、高層ビルの谷間では音が反響したり、風向きなどによってはかなりの騒音に感じました。
 このように、飛行高度が低く、影響の大きい地域での、学校や保育施設、病院や高齢者施設などに対する騒音対策を十分に講じることも含め、騒音影響の軽減を図るよう、都として国に求めるべきと考えますが、見解を伺います。

○邊見東京都技監 国は、騒音影響の軽減方策として、飛行高度の引き上げを提案するとともに、国際線の着陸料を見直し、騒音の要素を加味した新たな料金体系を昨年四月から導入することで、より静かな機体の使用を促してございます。
 さらに、都の要請を受けて、来年度から防音工事に対する補助制度について、騒音発生時間数などの要件を緩和することで、これまで対象にならなかった飛行経路周辺の学校、病院、特別養護老人ホームなどに補助できるようにするとともに、小規模保育施設などを新たに対象に追加する予定でございます。
 都は、引き続き国に対し、最新の技術開発の動向等も踏まえ、騒音影響の軽減に取り組むよう要請してまいります。

○伊藤(こ)委員 落下物、騒音のみならず、不動産価値が下落してしまうのではないか、こんな心配の声も上がっております。こうした不安についても、しっかりと対策を講じるよう、都は国に求めていただきたいと要望しておきます。
 品川区民の中には、飛行機の機影そのものが怖いと感じる方もおります。騒音も、人によっては環境基準以下であっても苦痛を感じる人もおります。
 こうした心理的不安がある方や、計画について情報を知りたい方や、また意見をいいたい方など、住民の声を丁寧にしっかりと受けとめる窓口を拡充するよう、国に働きかけていただきたいと考えますけれども、見解を求めます。

○邊見東京都技監 国はこれまで、丁寧な意見聴取が可能なオープンハウス型説明会を都内で延べ九十六日間開催し、約一万四千人の方が来場しており、国は、来場者からさまざまな意見や要望を伺ってきてございます。
 さらに国は、関係自治体と相談の上、個別に情報提供し、お話を伺う場を設けてございます。
 また、平成二十七年七月に特設の電話窓口を設置し、昨年四月からは開設時間を一時間延長しておりまして、これまでに合計約二千件の意見や要望を個別に伺ってきたと聞いてございます。
 都は国に対し、引き続き地元の声に真摯に耳を傾け、丁寧に対応するよう求めてまいります。

○伊藤(こ)委員 この羽田空港機能強化の問題については、決して軽い問題ではありません。どうか冒頭申し上げたとおり、私自身も決して看過できない、このように思っておりますので、都としてもしっかり都民の声を聞いていただいて、国に届けていただきたい、このように思います。
 次に、命を守る観点から、防災対策の強化について質問をいたします。
 まず、三・一一東日本大震災から七年がたちました。改めて被災者の皆様にお見舞いを申し上げますとともに、とうとい失われた命、そしてまた、ご家族の皆様に心から哀悼の意をささげたいと思います。
 私たちは、これまでの災害からの教訓をしっかりと受けとめ、それを次の対策に生かしていかなければなりません。
 私は、平成十七年初当選以来、緊急地震速報の機能強化について一貫して取り上げてまいりました。それは、阪神・淡路大震災での体験、一瞬で両親を亡くした私の友人が、数秒前でも地震が来るぞと知らせてあげることができたらば、助かった人が何人いただろうか、こういう友人とともに神戸のまちで涙したことが私の原点でもあります。
 平成七年一月十七日、あのとき、あの場所で目に入ってきた光景、ガスの漏れたにおい、人々の叫び声、映像や写真ではなく、その場にいた人しかわからない、こうしたことがたくさんあります。小池都知事は、現地でこの体験をされたということで、何度も聞かせていただいておるところでございますけれども、私もしっかりとこの首都東京の防災対策の強化、取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 緊急地震速報につきましては、皆様ご案内のとおりでございます。P波、S波というふうにいわれておりますけれども、いわゆる地震が来たとき、まず、カタカタと揺れるこのP波は、一秒間で七キロ進んでいきます。カタカタと来たとき七キロ進む。後から追いかける、このセカンドウエーブ、これが大きな被害をもたらします。これは一秒間に四キロ進んでいきます。一秒間に四キロですから、この時間差を使って大きな被害をもたらすS波が到達する前に速報を出していく、これが緊急地震速報であります。
 きのうも委員会中に皆さんの顔が変わった、あのときにカタカタと来たのが、恐らく先に発したP波です。その後、ゆらゆらっと来た、あれがS波です。あの時間差を使って、その先にある地点に地震が来るということを知らせる、これが緊急地震速報であります。
 しかし、気象庁が発する緊急地震速報は限界があり、これまでの地震の経験値からも、半径三十キロ圏内では速報が間に合っておりません。気象庁のホームページにも限界があることが記載をされております。
 仮にですけれども、海ほたるのあたりが震源地で地震が発生した場合、三十キロで円を引くと、神奈川県庁、横浜市役所、川崎市役所、品川区役所、国会議事堂、東京都庁を初め行政の主要な機関に緊急地震速報は現在のところ間に合わない。
 つまり、首都直下地震の際には、東京にいる人たちに現行の緊急地震速報は間に合わないということを多くの都民は知りません。このままでは、いきなり大きな地震が東京と首都圏を襲うことになります。
 私は、首都直下地震の際に機能する首都直下地震版緊急地震速報の確立に向けて、都が研究を進めるとともに、国に対し緊急地震速報の改善を急ぐよう重ねて求めてまいりました。
 そこで、これまでの都の取り組みと、緊急地震速報の改善について、進捗状況を伺います。

○多羅尾総務局長 緊急地震速報は、重要なシステムですが、首都直下地震のような震源の近い地震には、技術的に速報が揺れの到達に間に合わないなどの課題があるため、都は平成二十六年度より、毎年気象庁に緊急地震速報の迅速性や精度の改善を求める要望を行っております。
 その結果、気象庁が、観測地点の増設や、従来の手法を高度化したIPF法の導入などを行ったことにより、最大一秒程度、迅速性が向上いたしました。
 さらに、今月二十二日には、新たに既存の震度計四百地点を活用したPLUM法を運用開始の予定でございます。
 この新たな手法と従来の手法を組み合わせることで、より精度の高い緊急地震速報を発表することが可能となります。

○伊藤(こ)委員 四年前の前回の予算特別委員会で私が求めてきて以来、都は、平成二十六年から毎年、緊急地震速報の改善を国へ提案要求をしているということでございました。四年間で一秒でありますけれども、速くなったということで感謝をしております。
 また、今答弁にあった新たなPLUM法は、東日本大震災発生のときに、震源地から離れた東京などの地域に正確な速報を出せなかったことを教訓にされたもので、三月二十二日、もう間もなくですけれども、導入が始まると聞いております。
 危険性が高まった南海トラフ地震が発生をした際にも、東京地方にもこのPLUM法が効果があるということで、大きく評価をしたいと思います。
 そして、首都直下地震に対し、少しでも早く速報を出すための改善策について、直結するものとはいえないというふうに認識をしているところでございます。
 都は、毎年の国への要請の中で、地震計の増設を求めてくれています。
 先日、防災科学研究所がシンポジウムを開催しまして、民間の地震計のデータを大学などの研究機関が利用して高密度に地震の揺れを捉え、詳細な揺れの予測につなげるという新たな取り組みが報告をされました。
 民間では東京ガスのほか、携帯通信事業者やJRを初め鉄道事業者も独自に地震計を設置して、既に活用をしております。
 また、東京には研究機関や大学が集積をしており、今後はこうした民間の地震計や実績データと学術機関とが連携するなど、官民学一体でこの問題に対処してほしいと要望したいと思います。
 いずれにしても、首都直下地震の当事者は、知事、東京です。首都圏の各県であります。どうか都がリーダーシップを発揮して、九都県市にも働きかけて、さらに研究を進めるとともに、首都直下地震にも機能する緊急地震速報の確立を強く国に求めていくべきと思いますが、見解を伺います。

○多羅尾総務局長 首都直下地震が発生した場合、国の被害想定によりますと、東京都のみならず、近隣県にも甚大な被害が生じることになるとされております。
 都は、緊急地震速報の改善について国への要望活動を行ってきたところでありますが、首都圏の機能を維持するためには、より広域的な取り組みが重要でございます。
 このため、都は、九都県市を構成する他の自治体に働きかけ、昨年七月に、大規模地震対策として、緊急地震速報の改善について九都県市から国へ要望を行ったところでございます。
 首都直下地震等の被害軽減のためには、迅速かつ正確な速報発表が重要なことから、首都圏において広域的に展開している鉄道会社等から情報収集を進めるとともに、九都県市で連携しながら、国へ改善を引き続き求めてまいります。

○伊藤(こ)委員 この首都直下地震については、東京の問題です。首都圏の問題です。国の気象庁は全国のことをやらなきゃいけない。それは当然のこととして、東京都は自分のこととして、この緊急地震速報首都直下版の研究をぜひしていただきたい、このように思います。
 次いで、防災対策の強化に関連をしまして、無電柱化について質問します。
 小池知事就任直後の二〇一六年第三回本会議一般質問で、私は、先ほどの阪神・淡路大震災での経験をもとに、無電柱化の取り組み、とりわけ都民生活に一番身近な区市町村道、いわゆる生活道路の対策を急ぐべきと訴えました。
 その際、知事からは、区市町村道のような道幅の狭い道路こそが大事である、区市町村に対する技術的支援と財政的支援を行うと答弁をしていただきました。
 そこで、これまでの無電柱化に向けた都から区市町村への支援の状況と、そしてまた、私は、区市町村道の中でも子供たちが毎日通う学校の周辺道路、つまり通学路は、災害時には学校避難場所への重要な道路となると考えております。
 都は、区市町村の意見や要望をよく聞きながら、こうした道路の無電柱化を積極的に支援し、事業を加速すべきであると考えます。あわせて都の取り組みを伺います。

○西倉建設局長 都はこれまで、区市町村に対しまして、防災に寄与する道路などを対象にしました財政支援等を行ってまいりました。
 今年度から、道幅の狭い道路に低コスト手法を導入する事業等に対しまして全額補助いたします無電柱化チャレンジ支援事業を開始し、十七区市に支援を行いますとともに、区市町村が設置する技術検討会に直接都の職員が参加するなど、技術支援も強化しております。
 平成三十年度は、支援を三十九区市に拡大いたしますとともに、区市町村などと連絡会議を設置し、取り組み事例等の情報共有や意見交換を行うなど、一層の連携を図ってまいります。
 こうした取り組みによりまして、道幅の狭い生活道路や通学路等での無電柱化のノウハウを蓄積し、その成果を共有することで、区市町村がこれまで以上に積極的に事業を進めるよう支援してまいります。

○伊藤(こ)委員 防災対策に関連して、災害時を含む要支援者への対応について質問をいたします。
 先日の小池知事の所信表明では、人に焦点を当てた施策について述べられました。国連が提唱する持続可能な世界の実現、SDGsの誰ひとり置き去りにしないとの理念は、まさに人に焦点を当てた世界的な取り組みでありまして、公明党の人間主義とも合致をしております。
 私は以前、自閉症の障害がある子供がいる一人の母親から要望を受け、災害時や交通トラブルなどが発生した際に、見た目ではわからなくても支援が必要な人が支援を求めやすく、また周囲の人が支援をしやすい社会を築くべきと、ヘルプカードの取り組みを訴えてきました。私は、誰にも気づいてもらえない、誰にも声が届かない、制度のはざまで埋もれているこうした人にもしっかりと光を当てることが政治の役割だと考えております。
 そこで、SDGsの誰ひとり置き去りにしないという理念と人に焦点を当てた都政について、知事の所見を伺います。

○小池知事 男性も女性も、若者もシニアも、そして障害のある方もない方も、誰もがあすへの夢を持って生き生きと輝く、そして持続可能な社会をつくっていく、その取り組みこそ、私が今行っている政治の根本でございます。
 そうした姿勢をより明確にするために今般発表いたしましたのが、実行プランの政策の強化版でございます。そして、その中に重点政策方針二〇一七に掲げる人に着目をいたしました戦略を反映させて、政策の新規構築、そしてまた、見直しを行ったところでございます。
 お話のSDGsでございますが、持続可能な世界を実現するために、ご指摘のように、誰ひとり取り残さないということを基本理念としております。そして、おっしゃるように、私が目指しております都政とも合致をするところでございます。
 例えば、人が輝く東京に向けた取り組みといたしましては、今回の施政方針表明で申し述べました、高齢者や障害者などの福祉の向上、貧困対策、教育の格差や生涯学習への対応などは、いずれもSDGsの目標として挙げられているものでございます。
 SDGsの目標というと、Gはゴールですから重なるんですけれども、いずれにせよ、SDGsを目指して政策を研ぎ澄ますということでございます。
 このような人に焦点を当てた政策こそが都民一人一人の活力を呼び起こします。そして、人口減少、超高齢化の中にありましても、持続可能な東京をつくり上げることにつながっていると確信しております。
 これまでも、そしてこれからも、東京を支えるのは人であることはいうまでもございません。そのためにも、一人一人にきめ細かく目を配って、都民とともに持続可能な都市東京の実現に向けて邁進していきたいと考えております。

○伊藤(こ)委員 このヘルプカードの取り組み、私は都議会で何度も訴えてまいりました。そうしている矢先、三・一一東日本大震災が発生をした。あのときは、被災地の避難所でも、そして、この東京においても、三百五十万人というあの帰宅困難者の列の中に、助けを求めたくても求められなかった人がいた。
 私は、再び、三たび都議会で訴え、ようやくこのヘルプカードを東京都が標準様式としてつくっていただくことが決まりました。そして同時に、このヘルプマークも発表していただいたわけでありますけれども、取り組みを始めていただいて、もう六年になります。今やこれが全国へ、マークもカードも広がっております。
 このヘルプマーク、ヘルプカードの全国の普及状況について伺うのが一つ。そしてもう一つ、せっかくこのカードをもらったのに、マークをつけたのに気づいてもらえなかった、支援をしてほしいことを求めたけれども、そのことが通じなかった、こういう声も入っております。
 私は、とりわけ災害時の帰宅支援ステーションに位置づけられているコンビニなどの従事者がヘルプカードの意味をわかっていないと、いざというときに適切に対応することができないと思います。
 そこで、今、都が検討を進めている障害者差別解消条例には、ヘルプカード、ヘルプマークの趣旨もあわせて、都民や事業者に周知、普及を啓発するべきと考えますけれども、あわせて見解を伺います。

○梶原福祉保健局長 都は、ヘルプカード、ヘルプマークの普及に取り組む区市町村を包括補助で支援しておりまして、ヘルプカードは、本年二月末現在、都内の五十二の区市町村で導入されております。
 また、障害者が都内に限らずどこでも支援を受けられるよう、作成・活用ガイドラインを配布するなど、他の自治体や民間企業等への普及を推進しており、昨年七月には、全国共通のマークとして、JIS規格の案内用図記号にヘルプマークが追加をされました。
 都が把握をしております都外の導入自治体は、本年二月末現在、ヘルプカードが十二道府県百市町村、ヘルプマークは十九道府県二十五市町村となっております。
 また、障害者差別の解消との関係でございますが、現在検討している障害者差別の解消に向けた条例では、事業者に対して障害者への合理的配慮の提供を義務づける考えでございまして、障害があることが外見からわからない障害者等が援助や配慮を得やすくするというヘルプカード、ヘルプマークの趣旨を事業者に周知することは、この取り組みを進める上でも有効でございます。
 都は来年度、コンビニエンスストアなど、地域の事業者に条例の趣旨や内容を理解していただくため、さまざまな障害特性や配慮すべき事項をまとめたハンドブック等を配布するほか、説明会やシンポジウムなどを開催する予定でございまして、ヘルプカード、ヘルプマークにつきましても、こうした機会を活用して積極的に周知してまいります。

○伊藤(こ)委員 続きまして、二〇二〇年東京大会、特にボランティアのことについて伺いたいと思います。
 二〇一三年九月に開かれたスポーツ祭東京、いわゆる東京国体が開かれまして、私は都議会公明党のメンバーとともに視察をいたしました。
 このときには、メーンゲートの内外で情報支援ボランティアの活躍が輝いておりました。手話や要約筆記の技術を用いて、選手、役員、観客などの中で、聴覚障害者に対して通訳や案内業務を担っておりました。
 情報は大切なものです。せっかく大会会場に来ても、大会の情報などがわからなかったら、楽しさや感動は半減してしまうものだと思います。私は、その配慮に感激したのと同時に、なぜ聴覚障害者支援だけなのとの疑問も感じました。
 東京二〇二〇大会では、とりわけパラリンピック開催時には、世界中からさまざまな障害がある方々も集うわけであります。おもてなしがテーマである東京大会は、これまで以上に情報支援サービスを充実させることが重要であると考えます。
 ここで、あくまで参考にしていただきたいことは、平成二十年、厚生労働省の調査によれば、聴覚障害者のうち、手話をコミュニケーション手段としている方は約二割です。視覚障害者のうち、点字をコミュニケーション手段としている方は約一割であります。ちなみに、手話や点字は国によって異なります。
 東京二〇二〇大会におけるボランティアが行う情報支援内容は、例えば、聴覚障害者には手話に加えて要約筆記や筆談、視覚障害者には点字に加えて読み書き支援や大活字での案内表示など、工夫と充実が必要であります。
 そこで、東京二〇二〇大会において情報支援を積極的に行え、そして、一人一人が知識と技能を備えたボランティアとなれる人材育成を着実に行っていくべきと考えますが、見解を伺います。

○潮田オリンピック・パラリンピック準備局長 全ての観客の方が不安なく大会を楽しんでいただけるよう、アクセシビリティーに配慮した案内やボランティアによるサポートを行っていく必要がございます。
 そのため、都と組織委員会は、ボランティア全員に共通研修として、障害者を初めとする多様性の理解を深めるためのダイバーシティー研修や、障害特性に応じたきめ細かな対応を習得していただくための研修等を実施してまいります。
 具体的には、Tokyo二〇二〇アクセシビリティ・ガイドラインを参考に、視覚や音声による情報が得にくい方、知的障害のある方、それぞれの方へのコミュニケーション方法等、多様な障害特性に適切に対応できるよう、実技研修等を通じ学習していただくことを検討しております。

○伊藤(こ)委員 答弁にありましたように、全てのボランティアにしっかりと研修を受けていただくということでございました。丁寧におもてなしを展開していただきたい、このように思います。
 さて、ボランティア文化が根づいているロンドンでさえ、二〇一二ロンドン大会開始前までは、その活躍は余り期待をされていなかったようでございます。しかし、ロンドン大会では、一生に一度のチャンスと捉えた二十四万人が応募して、選ばれた七万人がボランティアとして活躍をしました。そして、大会が終わってみれば、大成功に導いたのはボランティアであったと、アスリートとともにボランティアが世界中から称賛をされました。
 ボランティアに対する周囲の意識がなぜ変わったのか。それはボランティア一人一人が、マイオリンピック、マイパラリンピックとして捉え、単なるお手伝いではなく、自分が、みずからが大会をつくる人、ゲームズメーカーとして見事にその大役を果たし切ったからであるといわれております。
 私は、こうした大会にかかわるボランティアこそが、東京二〇二〇大会を成功に導くかなめであって、大会後のレガシーであると考えます。
 また、大会にかかわるボランティアだけでなく、都民、国民の心の中に人や社会に貢献するボランティア文化を定着、発展させ、後世に引き継いでいくことも二〇二〇大会のレガシーになると考えますが、知事の所見を伺います。

○小池知事 伊藤委員ご指摘のように、ボランティアは、大会を成功させる上で大きな役割を担うものでございます。そして、その活動を後世に引き継いでいくということは極めて重要だと、このように共有したいと思います。
 大会を契機に高まりましたボランティアへの参加機運を大会後後も維持発展させていくため、今ご指摘のようなロンドン大会と同じように、活動を継続できる仕組みのあり方についても今後検討してまいりたいと考えております。
 また、次世代を担う子供たちにとっても、東京二〇二〇大会でボランティアを体験した、そのような記憶、多くの人とともに大会をつくり上げるという記憶、大会に携わった感動を深く心に刻んで、将来の心のレガシーとして残るようにしたいと考えます。
 年齢や性別、そして障害の有無にかかわらず、多くの皆様に東京二〇二〇大会のボランティアとしてご活躍いただいて、ボランティア文化が、おっしゃるようにレガシーとして東京に根づくように取り組んでまいります。

○伊藤(こ)委員 このボランティアについては、私もそうですし、ほかの議員の皆さんにもそうだと思います、さまざまな世代の方から問い合わせが入っております。多くの都民の皆様がこの東京大会に対して、何らかの形で役に立ちたいという意欲の高さを実感しているところでございます。
 いよいよボランティアの募集がことし九月中旬から始まります。東京都がつくったこの戦略の中には、応募条件検討の方向性として、二〇二〇年四月一日の時点で十八歳以上の方が対象となっております。
 それでは、その時点で十八歳に達していない次世代を担う子供たちの参画はどうするのか、また、インターネットにふなれな高齢者などの応募方法についてはどうするのか、見解を伺いたいと思います。
 また、あわせて、東京二〇二〇大会は、猛暑、酷暑の中で開催をされます。働く世代や子育て世代などの比較的若い方々のボランティア参加についても期待をされております。
 都が募集を行う都市ボランティアの活動日数は、オリとパラの期間を通じて五日以上となっておりますけれども、こうした方々がボランティアとして活動しやすい工夫を凝らした募集を行うべきだと考えますけれども、都の見解を伺いまして、質問を終わります。

○潮田オリンピック・パラリンピック準備局長 まず、ボランティアへの子供たちの参画につきましては、子供たちが大会にボランティアとして参加することで、人生の糧となるかけがえのないレガシーを心に残していくことは意義がございます。
 そのため、大会開催時には多くの中学生や高校生が大会のボランティア体験をできるよう、教育庁を初め関係機関と連携し、検討してまいります。
 なお、都市ボランティアの応募方法につきましては、高齢者も含め、多くの方に参加いただけるよう、ウエブを通じた応募のほか、郵送やファクスによる応募も受け付ける予定であります。東京二〇二〇大会では、さまざまな方々に体験も含め参加をいただけるよう取り組んでまいります。
 あわせまして、次に、働く世代と子育て世代の方のボランティアの募集に当たりましては、性別、障害の有無などにかかわらず、さまざまな方が参加しやすい環境を整備してまいります。
 大会に向け、今年度より企業におけるボランティア休暇の制度導入に向けた支援の実施とともに、大会期間中の休暇取得の促進を経済団体等に働きかけております。また、子育て世代がボランティア活動に参加できるよう、託児所の利用等の取り組みを関係機関と連携し、検討しております。
 都市ボランティアにつきましては、オリンピック・パラリンピック両期間を通じ、五日以上活動していただくこととしておりますが、引き続く日程でなくても参加いただけるようにするなど、働く世代や子育て世代にとっても参加しやすくなるよう取り組んでまいります。

○のがみ副委員長 伊藤こういち委員の発言は終わりました。(拍手)

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