予算特別委員会速記録第三号

○両角委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十八号議案まで及び第百二十号議案を一括して議題といたします。
 昨日に引き続き総括質疑を行います。
 岡本こうき委員の発言を許します。

○岡本委員 皆さん、こんにちは。本日は眼鏡なんですが、この時期、花粉症で目のかゆみや痛みに悩んでおります。花粉症ゼロ政策に期待をする者の一人であります。
 では、本題に入ります。
 昨年十二月八日の本会議一般質問において、たばこ問題、受動喫煙問題について取り上げさせていただきましたが、本日も、まずこの問題から質疑させていただきます。
 昨年の第三定例会において、議員提案により、東京都子どもを受動喫煙から守る条例が上程され、十月五日の本会議で可決、成立いたしました。施行を前にして、福祉保健局において、チラシやポスターを作成してくださり、既に啓発に取り組まれておられますことに深く感謝申し上げます。
 本定例会三月一日の本会議において、我々都民ファーストの会の代表質問におきまして、この条例の普及啓発の取り組みについて、各関係部局にお伺いいたしました。その内容を踏まえて、さらに具体的な質問をさせていただきます。
 まず、福祉保健局にポスターやチラシの配布状況についてお伺いいたします。
 代表質問において、保育所、幼稚園、小中学校、区市町村など八千カ所に配布した旨、ご答弁いただきました。改めて、その内訳や部数について伺います。また、医療機関への配布状況の詳細についても伺います。
 次に、子連れが多い飲食店へは、研修会やステッカー配布で周知とのご答弁でした。飲食店事業者向けのチラシの配布状況や、飲食店組合との連携について伺います。

○梶原福祉保健局長 本年四月の条例の施行に向けまして、都は、趣旨や目的をわかりやすく示したポスター約六百三十部、チラシ約五万三千部を、幼稚園、小中高校など約三千六百カ所、保育所などの児童福祉施設約四千カ所、各区市町村の保健衛生主管課など約五百三十カ所に加え、東京都医師会や東京都薬剤師会を通じて、約一万四千六百カ所の医療機関等に配布をいたしました。
 また、飲食店に対しましては、従業員のための受動喫煙防止対策パンフレットも盛り込んだチラシを作成し、受動喫煙防止対策研修会や店頭表示ステッカーの配布とあわせて、約五千五百部配布いたしますとともに、飲食店関係団体等を通じて、条例の周知を図っております。

○岡本委員 ありがとうございます。積極的な普及活動を行っていただいていることがわかりました。引き続きよろしくお願い申し上げます。
 チラシ表面やポスターは、わかりやすく印象に残りやすい絵が表示され、子供を受動喫煙から守ろうとの呼びかけが非常によいと思います。私から提案ですが、このほかに、子供の健康への悪影響の具体的な内容についても啓発を図ってはいかがでしょうか。
 条例の提案理由として、昨年九月二十九日の厚生委員会で述べさせていただきましたが、重要なので、フリップに示しながら、改めて述べたいと思います。
 このフリップは、厚生労働省のホームページで発表されているものですが、日本では、受動喫煙が原因で、年間一万五千人が死亡と推計されています。肺がんだけでなく--この円グラフですね。肺がんだけでなく、心臓や脳の血管への悪影響も非常に大きいということがわかります。
 そして、この円グラフの下ですが、受動喫煙による乳幼児突然死は、年間七十三人と推計されております。すなわち、五日間に一人の割合で赤ちゃんの命が受動喫煙で奪われていることになります。
 また、別の厚生省心身障害研究において、父母ともに習慣的喫煙ありは、父母ともに習慣的喫煙なしに比べて、乳幼児突然死のリスクが約四・七倍に高まることが示されています。また、別の研究で、三歳児のぜんそく様気管支炎は、家庭内喫煙がない場合に比べ、母親が喫煙する場合には三倍に増加することが示されています。
 厚労省発表のたばこ白書では、受動喫煙と肺機能低下、子供の肺機能低下、せき、たん、喘鳴、息切れ、中耳疾患などとの因果関係も示唆されています。このほか、受動喫煙が子供の脳の発達や学力に悪影響を与えることも示した研究があります。
 こうした医学的な知見が都民にわかりやすく伝わるよう、検討をお願い申し上げます。
 また、この条例第十二条には、都は、禁煙の効果及び禁煙治療に関する知識の普及啓発を講ずるものとするという内容の規定を設けております。これは、子供の家族の禁煙が抜本的な解決策になるからです。
 実際に、練馬区では、赤ちゃんがいるご家族へ、ご自身のため、ご家族のため、禁煙を始めてみませんかという、禁煙支援パンフレットを作成し、頒布しています。こうした例も参考に、ぜひ子供がいる家庭向けに、禁煙や禁煙治療に関する啓発も行っていただきたいということを提案いたします。
 次に、チラシやポスター以外に、ウエブ、電子媒体、広報誌等での啓発の状況についてお伺いいたします。

○梶原福祉保健局長 都は、子どもを受動喫煙から守る条例の周知を図るため、ホームページ、とうきょう健康ステーションに、条例とともに、先ほど申し上げましたポスターやチラシのデータを掲載するほか、福祉保健局ツイッターで広く発信をしております。
 また、「広報東京都」一月号、月刊「福祉保健」十二月号などの広報誌等や、新宿駅のデジタルサイネージ、渋谷駅スクランブル交差点の大型ビジョンなど、さまざまな媒体を活用して本条例の趣旨や目的を広く周知しているところでございます。

○岡本委員 ありがとうございます。ここでも積極的な普及活動を行っていただいていることがわかりました。取り組みに感謝するとともに、引き続きよろしくお願い申し上げます。
 次に、公園についてお伺いします。
 三月一日の代表質問では、建設局から都立公園について、港湾局から海上公園について、環境局から自然公園について、これまでの取り組みと、条例施行に伴う今後の取り組みについてご答弁いただきました。その内容を踏まえて、より具体的な質問をさせていただきます。
 都立公園において、喫煙ルールを定め、喫煙マナーの向上を呼びかけ、吸い殻入れの撤去を進めているとのことでしたが、具体的に利用者にどのような方法で呼びかけているのか、お伺いします。
 また、条例の趣旨や内容を利用者にどのような方法で、今後呼びかけていくのか、具体的な方法についてお伺いします。
 例えば、吸い殻入れ設置場所は、まさに喫煙する方々が集まる場所ですので、そうした場所においてポスターを掲示するなどの方法が喫煙者への啓発として効果的であると考えますが、建設局の所見をお伺いします。

○西倉建設局長 公園は都民の憩いの場であり、子供も多く利用する施設であるため、受動喫煙対策の取り組みを進めることは重要でございます。
 都立公園では、喫煙に関するルールを定めました。歩行喫煙を禁止いたしますとともに、妊娠中の女性や子供の周囲では喫煙しないよう、園内の掲示板やホームページ等で周知を図っております。
 また、四月から施行されます子どもを受動喫煙から守る条例の趣旨をわかりやすく示したポスターを、園内の掲示板や吸い殻入れの設置場所等に掲示いたしまして、周知に努めてまいります。
 今後、条例の趣旨も踏まえまして、受動喫煙対策に取り組みまして、誰もが快適に過ごせる公園づくりを進めてまいります。

○岡本委員 ありがとうございます。ぜひ今後とも効果的な啓発を積極的に進めていただきたいと思います。
 また、港湾局及び環境局におかれましても、引き続き効果的な啓発を期待いたします。
 次に、教育についてお伺いいたします。
 この条例の第十三条は、教育について定めています。代表質問では、全公立学校に対して、教職員、保護者、近隣住民等への条例の内容の周知を行うよう求めたとのご答弁をいただきました。本日は、教育内容について伺います。
 学校教育では、保健の授業において喫煙防止教育が行われています。学校によっては、医師や薬剤師やNPOを講師に招いて、たばこの有害性、依存性などの講義をしているところもあります。私自身も、こうした講演に参加したことがあります。
 そうした場で、生徒からの質問や相談があり、親あるいは祖父がたばこを吸っているけれども、お願いをしてもたばこをやめてくれない、なぜたばこをやめられないんですか、どうしたらいいですかといった、子供からの質問や切実な相談に遭遇することがあります。
 喫煙をやめることが困難である理由は、ニコチンの依存性にあります。まさに、これこそがたばこの本質です。使用者が依存症になる依存のなりやすさは、ヘロイン、コカインなどよりもニコチンが上回っており、また依存症の人がやめる難しさは、ニコチンはコカイン、ヘロインと同程度であると報告されています。
 一九八七年に米国精神医学診断基準、DSM-Ⅲ-Rにおいて、ニコチン依存が診断対象とされ、一九九二年に国際疾病分類ICD-10において、たばこ使用による精神及び行動の障害として疾病分類されました。
 我が国でも、ニコチン依存症は病気であると認識されるようになり、二〇〇六年、平成十八年度診療報酬改定より、ニコチン依存症の治療、いわゆる禁煙治療が保険適用になりました。たばこの本質であるニコチンの依存性や、禁煙のための治療があるといったことを、教育の場で伝えることは重要と考えます。
 この条例の制定を受け、学校で行う喫煙防止教育において、がん教育や薬物乱用防止教育と関連づけながら、受動喫煙防止及びニコチンの薬理作用による依存症についても、指導の充実を図るべきと考えますが、取り組みを伺います。

○中井教育長 児童生徒の健康を喫煙の害から守るためには、学校で行う喫煙防止教育において、児童生徒自身が、喫煙がもたらすさまざまな害やニコチンの強い依存性について正しく理解できるようにすることが重要でございます。
 これまで学校では、保健の授業におきまして、喫煙が心身の健康に及ぼす害や受動喫煙による影響を理解させるとともに、たばこへの好奇心や友人関係、また広告、宣伝といった社会環境が喫煙行動を助長することなどを取り上げ、それらへの適切な対処法を指導してまいりました。
 都教育委員会は、今後、各学校ががん教育において、喫煙はもとより、受動喫煙もがんの罹患率を高めることに触れたり、薬物乱用防止教室において、ニコチンが深刻な依存症を引き起こすことを取り上げるなどして、喫煙防止教育を一層充実できるよう指導してまいります。

○岡本委員 ありがとうございます。子供は社会の宝、未来を担う子供たちにぜひとも教育の充実をお願い申し上げます。
 次に、都営住宅において、子供のいる家族世帯向けに本条例の啓発を図っていただきたいと考えますが、取り組み方針を伺います。

○邊見東京都技監 都営住宅においては、毎月、全世帯に配布している広報紙「すまいのひろば」などにより、人権問題の啓発や、省エネ、節電のお願いなど、都の取り組みについてお知らせをしてきたところでございます。
 都営住宅には、満十八歳未満の子供が同居している世帯が約三万世帯ございます。受動喫煙の防止を図るため、本条例の内容について「すまいのひろば」に記載するなどして、周知に努めてまいります。

○岡本委員 全世帯配布とのこと、大変積極的なご答弁をいただき、うれしく思います。
 以上で、子どもを受動喫煙から守る条例に関する質問を終え、次に、受動喫煙のトラブルに関する問題に移ります。
 私が弁護士として受動喫煙の法律相談を数多く受けてきたことは、十二月八日の一般質問で述べたとおりですが、その二大類型は、近隣住宅と職場です。
 近年、職場等での禁煙化が進み、住宅、特にベランダでの喫煙が増加したのではないかと考えられます。マンション、アパート等において、ベランダ喫煙や居室内換気扇下での喫煙により、たばこの煙や臭気が周囲の居住者の生活空間にも流入し、トラブルが多数起きています。窓をあけることができない、あるいは窓を閉め切っても室内にたばこのにおいが入ってくるなどの苦情が上がり、隣人同士の争いになったり、時には一一〇番通報や警察沙汰になったり、弁護士が関与したり、あるいは裁判や民事調停もなされています。私が弁護士登録した二〇〇六年から相談があり、二〇〇九年以後、新聞等にもたびたび取り上げられています。
 近隣住宅からの受動喫煙問題は、人が最も安心して生活する住居空間において悪臭や有害物質が入ってくるもので、しかも日々継続的に起こるという点で、被害者の被害意識も非常に強い。他方で、喫煙者の側も、自己の専有、専用空間で喫煙して何が悪いといった考え方をする者もいるなど、双方ともに激しい感情的な対立を伴うことがしばしばです。こうした事態は、双方にとって不幸だと思います。
 平成二十四年十二月十三日、名古屋地裁で判決がありました。不利益を受けている側から、喫煙する住人にベランダでの喫煙をやめるよう申し入れがあった場合には、これに配慮せずベランダ喫煙を継続することは不法行為となるという判断基準を示し、原告の慰謝料請求を認めました。どちらが先に住み始めたかは問わないし、また、規約や使用細則等でベランダ喫煙を禁止していない場合であっても同様ということです。詳しくは、弁護士会が発行している書籍、住環境トラブル解決実務マニュアルにも取り上げられています。
 しかし、この判決後もトラブルは絶えません。昨年五月に近隣住宅受動喫煙被害者の会が発足しました。テレビや新聞にも繰り返し取り上げられています。現在、全国で千六百名の登録があったということです。
 アメリカ・カリフォルニア州では、マンションやアパートにおける喫煙を禁止する条例が施行されている市もあります。賃貸あるいは分譲所有を問わず、居室内全て禁煙としています。アメリカでは、民間の賃貸住宅も公営住宅も、建物内を禁煙とする住宅が多く、またふえています。
 しかし、我が国では、建物内全面禁煙のマンション、アパートというのはさほど多くはなく、余り普及していません。分譲マンションは管理規約で禁煙を定め、賃貸マンションは賃貸借契約書に禁煙の条項を設け、また喫煙者ではないことの誓約書をとる例もあります。禁煙マンションといった選択肢を普及させ、住宅の分煙化を図ることが、双方にとってトラブルを未然に防止することにつながると考えます。
 ところで、住宅火災で、出火原因別死者数の一位はたばこというデータがあります。住宅火災で最も多くの人命を奪っているのは、たばこということです。火災については、東京消防庁の平成二十九年十月二十五日の報道発表資料によれば、喫煙率が低下しているにもかかわらず、たばこ火災件数が増加しているとのことです。私の推測としては、昔に比べて隠れて吸ったり急いで吸ったりすることで、火の不始末による火災がふえているのではないかと思います。
 都として、住民同士のトラブルの防止のため、また受動喫煙防止及び健康施策の推進のため、さらには火災防止のため、全面禁煙マンションの普及を後押しし、周知、普及や、助成金、あるいは固定資産税の優遇等の施策を検討していただきたいと考えます。
 その取り組みのまず第一歩として、分譲マンションにおいて、ベランダでの喫煙によるトラブルが発生しないように、都は対応を検討すべきと考えますが、見解を伺います。

○邊見東京都技監 分譲マンションにおいては、住まい方のルールを管理規約などに定めることが、居住者のトラブル防止の観点から有効でございます。ベランダでの喫煙の是非についても、居住者間で議論の上、必要に応じて管理規約などに定めることが望ましいと考えてございます。
 都は、管理規約の定め方や相隣関係への配慮など、マンション管理の留意点をまとめたガイドラインを作成してございます。これをホームページなどで紹介するとともに、概要版を作成して、都や区市町村の窓口で配布をしてございます。
 今後とも、管理組合等を対象としたセミナーなどを通じて、ガイドラインが活用され、トラブル防止につながるよう努めてまいります。

○岡本委員 今後、さらなる施策についても検討をお願い申し上げます。
 次に、職場に話を移します。
 三月二日の入江のぶこ都議の一般質問のセクハラに関して、産業労働局から、セミナーや冊子等により啓発に取り組んでいるとの答弁がありました。
 職場の受動喫煙について安全配慮義務違反を認めて、損害賠償を肯定した江戸川区役所事件、東京地裁平成十六年七月十二日判決が出て以後、原告勝訴の裁判や和解が蓄積してきました。私が担当した東京地裁平成二十四年八月二十三日判決では、社内禁煙化を要望した労働者に対する本採用拒否、解雇の無効が認められ、四百七十五万円を勝ち取りました。さらに、私が担当した横浜地裁平成二十七年十一月十九日判決の事件では、テレビでも各局に取り上げられ、スモークハラスメント、スモハラという言葉を世間に広めました。
 なお、こうした裁判の到達点と今後の展望に関する記事が、ことし一月に、日弁連の機関誌、自由と正義に掲載され、日本全国約四万人の全弁護士に配布されました。
 さて、そこで、スモークハラスメント、スモハラについても、職場向けに啓発をしていただきたいと考えますが、産業労働局に見解を伺います。

○藤田産業労働局長 使用者は、労働契約法により、労働者が生命及び身体等の安全を確保しながら働けるよう、安全配慮義務を負っております。また、労働安全衛生法におきまして、受動喫煙防止に向けて適切な措置を講ずるよう努めるものとされているところでございます。
 職場における受動喫煙に関する労働者からの相談に対しましては、労働相談情報センターにおいて、使用者にはこうした法律上の義務があるということを説明し、適切な助言を行うことといたしております。
 今後、関係局と連携し、使用者向けの労働セミナー等におきまして、受動喫煙防止に向けた啓発資料の配布も検討してまいります。

○岡本委員 ありがとうございます。ぜひ産業労働局と福祉保健局のさらなる連携をよろしくお願いいたします。
 次に、二〇二〇東京大会において、選手村や競技会場の受動喫煙防止対策はどのようなものか伺います。

○潮田オリンピック・パラリンピック準備局長 IOCは、二〇一〇年に、世界保健機構、WHOと共同して、たばこのないオリンピックを実現することに合意をしております。
 また、WHOは、大規模イベントを実施する施設内を禁煙とすることなどにつきまして、主催者等に努力を求めておりまして、IOCも選手村や競技会場における禁煙環境の確保を求めております。
 近年の過去大会におきましても、屋外の指定された喫煙所以外は禁煙の取り扱いとなっておりました。
 都といたしましては、こうした過去大会の取り扱いや、東京都子どもを受動喫煙から守る条例の趣旨などを踏まえ、組織委員会と連携し、東京二〇二〇大会において、選手や大会関係者、観客などの健康を守るよう、適切な受動喫煙防止対策に取り組んでまいります。

○岡本委員 ありがとうございます。
 このほか、本日は割愛いたしましたが、路上喫煙の規制が区市町村によってまちまちであり、その周知が重要な課題となっております。
 多言語での対応も必要です。この点は、本会議代表質問において質問しましたし、また、関連する陳情が厚生委員会において継続審議となっております。
 ここまでの質問を通じて、受動喫煙という一つのテーマで、多くの局をまたいで取り組みが必要であるということが明らかになったと思います。ぜひとも都庁一丸となって、受動喫煙防止のための施策に取り組んでいただきたいと思います。
 まず隗より始めよとして、四月一日以降、庁舎内の喫煙所を大幅に減らし、また、都職員は庁舎内禁煙を徹底するとのことです。現状は、庁舎内に喫煙室を設置して分煙としていますが、喫煙室からの煙が漏れたり、喫煙者の衣服に濃厚なたばこのにおいが付着したりと、受動喫煙を防止するのに不十分です。
 屋内の喫煙室はWHOも推奨しないとしています。たばこ規制枠組み条約の第八条ガイドラインにおいても、換気や喫煙区域の使用は不完全な措置としています。いずれも屋内完全禁煙を要請しています。また、国の健康増進法改正案でも、行政機関の屋内の喫煙専用室は認められないことになりそうです。都の四月一日からの方針は、これらの方向性に合致するものと考えます。
 さらに具体的にお聞きしますが、四月一日以降、都職員は、敷地内の屋外喫煙所での喫煙はどうなるのか。敷地外はどうか。勤務中に敷地外まで喫煙に出向くことになれば、公務への影響も懸念されますが、所見を伺います。

○多羅尾総務局長 都が東京二〇二〇大会の開催都市として、また事業主として、庁舎で働く職員や施設利用者を受動喫煙から守ることは当然の責務であり、本年四月以降、各職場の受動喫煙対策を強化いたします。具体的には、全ての職場において、建物内は全面禁煙とし、屋外に喫煙所がある場合も、職員の利用は厳に慎むよう徹底いたします。
 職員が職務と関係なく職場を離れ、公務に支障を来すことは、喫煙にかかわらず許されるべきものではなく、勤務時間中の敷地外での喫煙も同様でございます。
 職員共済組合による禁煙講習会や禁煙外来の紹介など、職員への禁煙サポートもあわせて推進し、全庁を挙げて、職場の受動喫煙対策に徹底して取り組んでまいります。

○岡本委員 大変意義深いことであり、重要なことだと考えます。
 さて、ここまで受動喫煙を中心に議論してまいりましたが、他人を傷つける他者危害である受動喫煙をなくすべきことは、もはや当然のことです。
 次に、喫煙者自身の能動喫煙や喫煙率について述べたいと思います。
 世界百八十一カ国が締約しているたばこ規制枠組み条約を我が国は当初から批准し、平成十七年二月に発効しました。この条約は、受動喫煙のみならず、そもそもたばこの使用、たばこの消費を減少させることを目的としています。
 条約第七条は、課税以外のたばこの消費を減少させるための措置を規定し、締約国に効果的な措置をとるよう義務づけています。
 我が会派の代表質問において、増子ひろき幹事長が述べたように、私たちは、たばこ対策の原点は、受動喫煙、能動喫煙、いずれも減らしていくことにあると考えます。IOCとWHOの合意も、受動喫煙だけではなく、たばこのないオリンピックです。
 たばこについては、税収二兆円の重要性がいわれることがありますが、たばこによる医療費や都民、国民に及ぼす損害を考えれば、負の影響が大きく、たばこ税のあり方については考え方を変えていくべきです。喫煙による医療費が一兆七千億円と税収に匹敵する金額になります。ほかのものも足せば税収を上回ります。
 政府は、平成二十四年六月八日に、第二期がん対策推進基本計画を閣議決定しました。平成二十二年、二〇一〇年に一九・五%であった喫煙率から約四割減らし、平成三十四年、二〇二二年度までに、禁煙希望者が禁煙することにより、成人喫煙率を一二%とするとの目標を定めました。それ以前は、数値目標化について、自民党議員の反発や抵抗もあって、厚労省が断念してきたということが、経済雑誌に書かれています。民主党政権下で、数値目標化が初めて実現しました。
 それから五年を経て、昨年十月二十四日に第三期がん対策推進基本計画が閣議決定され、また先週九日の閣議決定で、望まない受動喫煙の対策を盛り込む変更がなされました。第三期計画が受動喫煙の数値目標を削除したことは、メディアからも批判的に論じられていますが、能動喫煙の喫煙率については、先ほど述べた一二%を引き続き目標として掲げています。二〇一〇年と比べて四割減らすということです。
 計画には、次のことも書かれています。喫煙は、がんに最も大きく寄与する因子でもあるため、がん予防の観点から、たばこ対策を進めていくことは重要である、成人の喫煙率は、平成二十七年、二〇一五年で一八・二%、現在の喫煙率は依然として高い水準にあり、喫煙率減少のためのさらなる取り組みが求められている、特に、四十代前半の男性の喫煙率が四一・一%と高いことも指摘しています。
 取り組むべき施策として、さまざまな企業、団体と連携し、特定保健指導等のさまざまな機会を通じて、禁煙希望者に対する禁煙支援を図るなどが記載されています。
 こうした状況も踏まえて、改めて知事にお伺いします。
 都民の健康、命を守る観点からも、健康寿命の延伸、生活習慣の改善など、喫煙、受動喫煙防止対策を一層推進していくことが必要と考えます。そこで、喫煙、受動喫煙防止に関するこれまでの取り組みと今後について、知事の見解を伺います。

○小池知事 お尋ねにお答えいたします。
 喫煙は、肺がんを初め、さまざまながんの要因となる生活習慣の一つであるということは、議員が既に指摘されておられるとおりでございます。また、脳卒中、COPDなどの病気の原因でもあり、健康に悪影響を与えることは、科学的にも明らかとなっております。
 都といたしまして、東京都健康推進プラン21や、東京都がん対策推進計画におきまして、健康寿命の延伸であるとか、がんによる死亡者を減少させる、そのためにも喫煙率の減少と受動喫煙の防止を目標に掲げているところでございます。
 また、これまででございますが、たばこの健康影響に関します正しい知識の普及啓発を行うとともに、東京都受動喫煙防止ガイドラインを策定いたしまして、公共の場の受動喫煙防止対策を進めてきております。
 現在改定中の東京都がん対策推進計画では、受動喫煙をなくすことを目標に掲げまして、受動喫煙防止に向けました新たな取り組みも盛り込むことといたしておりまして、今後、喫煙率の減少や受動喫煙の防止に向けた取り組み、一層推進をしてまいる所存でございます。

○岡本委員 本日、受動喫煙防止の観点から、関係各局に質問させていただきましたが、今、知事にご答弁いただきました喫煙率の減少についても、取り組みをお願いいたします。
 たばこ規制枠組み条約といった法的根拠があり、締約国としての責務を負っていること、また行政として目指すべき目標があるということを、関係各局、再度ご確認いただきまして、都庁一丸となって受動喫煙防止及び喫煙率減少の取り組みを進めていただきたいと期待いたします。
 さて、国の健康増進法改正の法案では、飲食店に対して大幅な例外措置を設けています。
 都が現在検討中の罰則つき受動喫煙防止条例では、国の不十分な点を補うべきであり、特に飲食店における受動喫煙防止を進めるべきです。また、条例の目的を、望まない受動喫煙防止に限定せず、二〇二〇ホストシティーとして、たばこのないオリンピック、たばこの使用の減少をも目指すべきことを提言申し上げます。
 また、もし仮に、激変緩和措置として、暫定的に例外を設ける場合は、店舗面積ではなく、人に着目すべきです。従業員を雇っていないことなどを要件とすべきですし、かつ、顧客が専ら特定の者に限定されている会員制であることなども要件とすべきです。
 この点、神奈川県受動喫煙防止条例二十条に、会員制施設に関する知事の認定という例外規定があり、参考となります。加えて、顧客名簿の備え置きなども義務づけるべきです。
 以上、私の提案を述べまして、次の質問に移ります。
 東京都のエコ農産物認証制度に関して伺います。
 都では、安全・安心な農産物を消費者に届けるとともに、環境に負荷をかけない農業を推進するためとして、平成二十五年度から、化学農薬と化学肥料を削減してつくられる農産物を認証する東京都エコ農産物認証制度を設けています。この趣旨に、私も大いに賛同いたします。
 持続可能な開発目標、サステーナブル・ディベロップメント・ゴールズ、SDGsの趣旨にも合致するものと考えます。また、都市農業では、住宅と農地が隣接していることからも一層重要といえます。
 そこで、事業開始から五年を経た東京都エコ農産物認証制度の普及状況と今後の取り組みについて、見解を伺います。

○藤田産業労働局長 東京都エコ農産物認証制度は、安全・安心な農産物を生産する農業者を支援するため、環境負荷の少ない生産技術を用いて、都が定めました化学合成農薬や化学肥料の使用基準から一定程度使用量を削減して栽培された農産物を認証する制度でございます。
 制度を開始した平成二十五年度から五年間で、五百十四人の生産者が栽培したトマトやコマツナなどの農産物を、延べ二千八百六十五点認証しているところでございます。
 今後も、都の指導員が技術講習会等の場において、本制度の意義やメリットを説明し、制度のさらなる周知を図ることに加え、エコ農産物の生産情報を掲載したPR冊子を飲食店などに配布し、販路を拡大するなど、一層の普及を図ってまいります。

○岡本委員 ありがとうございます。このような取り組みは非常に重要であると思います。
 さて、私を含む日本全国全ての弁護士が登録する日本弁護士連合会、日弁連が、昨年十二月二十二日付で、農林水産大臣に意見書を提出しました。
 ネオニコチノイド系農薬の使用禁止に関する意見書と題するもので、ネオニコチノイド系農薬の一部四種及びフィプロニルについて、農薬取締法に基づく三年ごとの再登録をしないことなどを求めるものです。
 その理由として、ミツバチの大量死、他の昆虫や昆虫を食物源とする鳥類など生態系への悪影響の可能性を挙げています。また、人への健康影響、とりわけ子供の脳の発達に有害な影響を及ぼすおそれがあることを示した研究結果を挙げて、胎児、子供への発達神経毒性の懸念があることを理由としています。
 ネオニコチノイド系農薬の特徴について、次のように述べています。
 たばこの有害成分であるニコチンの殺虫作用をまねて開発されたものである。特徴は、浸透移行性、残効性、神経毒性にある。浸透移行性があるため、根から吸収された農薬は、植物内部に取り込まれて、葉、茎、花、果実にまで行き渡り、殺虫効果を持続する。農薬が植物内に深く浸透するので、洗っても落とすことができない。また、残効性が高く、害虫の神経を打撃して一網打尽に殺虫するので、農薬使用量が少なくて済み、減農薬栽培に多用されているのが実情である。
 減農薬栽培に多用されているのが実情であるということです。
 二〇一三年十二月、欧州連合、EUで、三種類のネオニコチノイド系農薬の使用が禁止となりました。欧州食品安全機関、EFSAは、二種類について、低濃度でも人間の脳や神経の発達に悪影響を及ぼすおそれがあるとの見解を発表したとのことです。韓国も、EU規制を受けて使用を禁止したとのことです。子供の自閉症、ADHDなどの発達障害との関連性を危惧する論者もいます。
 さて、現在、東京都エコ農産物認証制度では、化学農薬と化学肥料の削減割合について、二五%以上、五〇%以上と、不使用の三区分が設けられています。
 この化学農薬の削減というのは、使用回数によって判断されています。慣行使用基準に比べて、化学合成農薬の使用延べ回数が削減されていることが要件とされています。
 他方で、ネオニコチノイド系農薬は、先ほど述べたように、浸透性、残効性が高く、農薬使用回数を少なくできる農薬であるため、エコ農産物認証制度におけるエコ二五やエコ五〇では、単純に使用回数削減に基づいて、ネオニコチノイド系農薬使用に係る農産物も認証されることになりかねません。
 以上を踏まえて質問いたします。
 認証制度の中では、化学合成農薬と化学肥料を使用せずに、不使用として栽培された東京エコ一〇〇の認証を一層ふやすよう、支援すべきと考えますが、都の所見を伺います。

○藤田産業労働局長 化学合成農薬と化学肥料を使用しない東京エコ一〇〇の認証取得は、環境負荷の軽減や消費者の信頼向上につながる取り組みでございます。
 一方、農薬等を使用しない栽培は、東京のような温暖多湿の気候条件下では、病害虫や雑草が発生しやすく、品質や収量が不安定となるなどの課題もございます。
 このため、都は、東京エコ二五や東京エコ五〇から、東京エコ一〇〇へのステップアップを目指す意欲ある生産者に対しまして、病害虫に強い品種の利用や有機質の肥料による土づくりなど、化学合成農薬や化学肥料のさらなる削減に向けたノウハウを提供しているところでございます。

○岡本委員 ありがとうございます。ぜひ東京エコ一〇〇について、生産者にも、また消費者にも、普及拡大していただきたいと思います。
 他方、東京エコ二五とエコ五〇に関しては、現在のところ、その認証要件には、ネオニコチノイド系農薬を使用したものは除外するといったような除外規定などはありません。安全・安心、環境に負荷をかけないことを目的とし、エコという名称を掲げることからすれば、エコ二五やエコ五〇においても、単純な使用回数だけではなく、特定の農薬の使用は認めないといった要綱の見直しも検討していただきたいと思います。
 なお、高知県園芸連の登録制度であるエコシステム栽培では、基本的にネオニコ系農薬は使わない栽培方法となっています。県の特別栽培農産物における農薬使用回数五割減においても同様、基本的にネオニコ農薬は使わないとされています。
 あるいは、群馬県渋川市では、農薬使用回数を基準とする県の特別栽培農産物と並行して、これとは別に、ネオニコチノイド系、有機リン系などの農薬を使用せず生産したことを要件とする、渋川市選別農薬農法、愛称しぶせんの認証制度を設けています。ぜひ、こうした取り組みも参考としつつ、東京都でよりよい制度を検討していただきたいと思います。
 各国がネオニコチノイド系農薬の禁止に向かう中、日本では、むしろその残留基準を緩和するなど、むしろ逆の方向に向かっており、強固な農薬利権があるがゆえに、国には期待できないということもいわれています。
 ぜひ東京都で、安全・安心かつ環境に負荷をかけない農業を推進することに、引き続き期待をいたしまして、私の発言を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○両角委員長 岡本こうき委員の発言は終わりました。

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