予算特別委員会速記録第三号

   午後三時十六分開議

○鈴木(隆)委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 神野次郎委員の発言を許します。

○神野委員 先ほどの、きたしろ委員、そして小松委員への知事の答弁を聞きまして、築地市場の移転問題について幾つか確認したいことがございます。
 最初に、一月二十日、豊洲市場の検査済み証の報告を受けた知事は、どう認識をいたしましたでしょうか。

○小池知事 報告を受け、そして、ようやくここまで来ているのだなという感覚を持ったのを記憶いたしております。

○神野委員 都民に知らせるべき重要な情報だとは思いませんでしたか。

○小池知事 市場に関する行政手続、法的手続の一環だと、このように感じました。

○神野委員 都民に公表すべき事項とはお考えになりませんでしたか。

○小池知事 ようやく建築に、その許可がおりたということでは意味があると思っております。これは、移転に伴う、また新しい市場建設に伴う行政手続の一つであるという認識でございました。

○神野委員 それでは、知事は、今現在、どうすべきだったと思っているでしょうか。

○小池知事 建設に関しても、その間、盛り土などの件、そしてまた地下空間の存在等々、もっと早く情報公開をすべきであり、その中でもって、建築の確認が最終的にとれたというのならば、話はより信頼感の多いものだったと、このように思っております。

○神野委員 検査済み証の交付に関しては都民に公表すべきだったかどうか、今になって知事はどうお考えになっているかをお答えください。

○小池知事 よって、公表させていただいております。

○神野委員 それでは、昨日の答弁でございますけれども、築地は衛生、建築面などに課題があると答弁をされました。また、それでも食中毒などがなく、消費者の信頼、知事の言葉では安心が得られているのは業者の努力のたまものだと考えますが、知事はどう考えますか。

○小池知事 市場は都民の財産でもございます。業者、そしてまた都といたしましても、これまで最大限の努力をし、また、それが消費者に愛されてきた最大のポイントだと、このように理解しております。

○神野委員 知事は、安心は業者の努力によってなされている、それをそのままにしておいていいというお考えでしょうか。

○小池知事 市場の業者の方々は、さまざまなたゆまぬ努力をされてこられた、積み重ねてこられた、それによって消費者の安心が得られたものと、そのこれまでのご努力については敬意を表すべきであり、また、市場の業者の方々と、そして都の市場と相まって、これまでさまざまなやりとりの中で苦労を重ねて、今の市場、築地市場が存在するものだと、このように理解しております。

○神野委員 それでは、知事は、安心を業者の努力に任せて、行政としては特に対策を打つ必要はないと感じているのでしょうか。

○小池知事 もう少し私の答弁を全体的にお取り上げいただきたいと存じます。そういう意味ではございません。これは、業者の方々の努力、そして市場当局それぞれが、あるときはあうんの呼吸もこれあり、そしてまたあるときはいろいろと業者からのご叱責もいただきながら、これまでの長い歴史を紡いできたと、このように思っております。

○神野委員 昨日の答弁で、知事は、開放型の築地と閉鎖型の豊洲でどちらが安全かという質問に答えられませんでした。
 グローバルスタンダードという言葉をふだんから使っている知事はもちろんご存じだと思うんですけれども、国際基準、HACCP、これは閉鎖型でないと当然できない。にもかかわらず、開放型の築地でも問題ないというふうにお考えなのでしょうか。

○小池知事 ご承知のように、法令は年々、改善をされ、改正をされていくわけでございます。あのままではいけないということから、さまざまなこれまでの模索があって、そしてさまざまなご努力があって、今、大きなこの市場移転という課題に我々は直面をしているわけでございます。
 衛生面での法的な問題につきましては、今申し上げましたように、年々変わっていくわけでございまして、そのためにも、築地につきましては、開放型であるがゆえにさまざまな課題を抱えておりますが、しかしながら、これまでの安心という点については、消費者の、また業者の安心を捉えてきたと、このように思っております。
 しかしながら、世界の趨勢につきましては、ご承知のように、HACCPなど閉鎖型でと、そして、これを温度管理などもちゃんとしていくということでございますので、そういう流れとすれば、確実にそのような方向であるということでございます。

○神野委員 それから、豊洲と築地を比べた場合に、やはり閉鎖型の豊洲というのは、先ほど知事が答弁されたように、コールドチェーン、温度管理がしっかりとできると。あと、今問題となっている地下水も、これ、特に使わないわけですね。
 そういった意味では、よりよい環境を提供する、これが市場設置者の知事としての責務と考えるんですが、知事はどのようにお考えでしょうか。

○小池知事 それがゆえに、東京都としてこれまで、どうすべきなのかと長年議論を重ねてこられたのではないでしょうか。そして、この都議会においてもいろんな議論を踏まえてこられたのではないでしょうか。
 そして、そういう中において、先ほどから築地の開放型についての衛生面の話もございました。これについては、雨風、そしてちりなど自然の影響を受けない閉鎖型が衛生面ですぐれているということについては否定するものではございません。だからこそ、これまで長年の時間をかけて、そしてあれほどの多額なお金をかけて、それを確保しようとしている。
 しかし、それについて、安全性、安心性、両方の面で、これからの有識者会議も開かれることによって総合的に判断していく、今そういう状況にあるということでございまして、私は、この点について、これまでの長年の知事の方々がご努力をされて、今それをきっちりと整理をしているという段階でございます。
 以上です。

○神野委員 今、知事の答弁で、大きな金額をかけたという話がありました。今までかけた金額は、もう回収はできないわけです。これから政策を進めていく上では、これからどうするかというのが大切だと思います。
 今までかけたお金、これ、サンクコストといいます。以前、知事、どこかでサンクコストにならないようにしないといけないというわけのわからないことをいっていたんですが、サンクコストは既にかけたお金ですから、もうかけたものは変わらない。ですから、かけたものをどうするかと今から話しても、もうしようがないわけですね。これはこれからやることを判断していく上では特に関係がないことだと思いますが、知事の所見を伺います。

○小池知事 これまでかけられた土壌汚染対策の費用、そしてまた高級ホテルをしのぐ建築の費用、これについて、都民の方々は今、その額について大変驚かれているという状況だと思います。
 そしてその上で、これだけ、おっしゃるようにサンクコストであります。あの豊洲に移転した場合には、物流が変化した中で、これからどのような使われ方をしなければならないのか、そして、この市場の会計を、健全性を保っていくのか、これこそ次に考えていかなければならないテーマだということでございますので、総合的に判断をするということをずっと申し上げているわけでございます。
 特にそういう経営面でのご経験のある先生がゆえに、そのような今後にかかるお金についての計算等もぜひご議論いただきたいと、このように思っております。

○神野委員 本会議の代表質問で、公明党の方から、あくまでもキャッシュ・フローを考えろというようなお話がありました。共産党からは減価償却という話がありましたけれども、減価償却というのは、まさにサンクコストを将来の会計に反映していくというだけのことなんですね。ですから、これからのキャッシュ・フローを考えて、これからしっかりと取り組んでいっていただきたいというふうに思います。
 市場問題についてはこれからも都議会自民党から引き続き質問させていただくと思いますが、私からはこれで終わりまして、続いて、都債についての質問をさせていただきます。
 これから急激な高齢化の進行が見込まれている都にとって、財務体質の強化は必須であります。そのために都債残高を減らすという主張には、正しい面もあります。
 しかし、都税収は年度により大幅に変動することがあることや、首都直下型地震発生の可能性もあることから、都は、歳入の大幅な減少や歳出の大幅な上昇がいつ発生してもおかしくない状況に置かれています。そのような緊急時に備え、いつでも債券市場から資金調達ができるようにしておくことも求められます。
 そのためには、毎年一定規模の都債を発行することにより、債券の発行体としての存在感を維持することも重要であるといえます。
 上場企業の多くが、資金ニーズがそれほどない場合でも取引金融機関から融資を継続するのは、いざというときに融資を受けられるように危機管理をしているからと聞きますが、都は、危機管理という観点も含め、どのような方針に基づいて都債を発行していく考えなのか伺います。

○武市財務局長 都債の発行におきましては、資金調達の安定性と調達コストの低減の両立を図ることが重要でございます。
 そのため、基幹年限である十年債を毎月定期的に発行することで、市場における流動性を確保し、安定的な調達を図っているところでございます。
 また、市場環境や投資家ニーズに応じまして、償還年限が十年未満の中期債、あるいは三十年の超長期債などを機動的に発行し、商品の多様化と金利環境を捉えた調達コストの低減、発行年限の分散による償還額の平準化を図っております。
 さらに、外債や個人向け都債の継続的な発行により、国内外の幅広い投資家からの資金調達にも取り組んでおります。
 今後とも、戦略的に都債を発行し、地方債市場においてベンチマークとなっております都債の価値を高め、安定的かつ有利な資金調達を図ってまいります。

○神野委員 次に、グリーンボンドについて聞かせていただきます。
 知事は来年度、二百億円規模の東京グリーンボンドを発行すると表明しております。
 投資の世界には、罪深き業種という意味のシンフルインダストリーという表現がありまして、これは武器、ギャンブル、酒、たばこなどに関連する業種のことを通常示します。
 昔からシンフルインダストリーへの投資を行わないという方針の海外年金や生命保険会社は存在していましたけれども、最近は、より積極的に社会的責任、ソーシャルレスポンシビリティーに基づいた投資を行っていこうという機運が高まってきているように感じます。
 その中でも、環境に配慮したエコ投資というものは、個人を含め世界的に大きな支持を集めており、数多くのエコファンドが設立されています。
 東京グリーンボンドの発行は、東京都の環境問題に対する取り組み姿勢をアピールするとともに、エコファンドといった投資家層へのアクセスも可能とするものであり、大きな意義があると思います。
 そこで、グリーンボンドの発行に向けた知事の意気込みを伺います。

○小池知事 グリーンボンドに関するご質問、まことにありがとうございます。
 ご承知のように、地球規模での対策が求められます温室効果ガスの削減、それに取り組んでいくためには、省エネの推進、そして再エネの導入などなど、環境への寄与が高い事業に幅広く資金を投入していくというのが必要でございます。
 そういったことから、今回、海外ではもう既に普及しておりますけれども、日本でまだ発行が少ない、このグリーンボンドを東京都といたしまして発行することといたしたわけでございます。
 ちなみに、まだ発行が日本では少ないということから、日本の機関投資家がパリ市のグリーンボンドに投資をすることによって、パリ市の環境がよくなるということに寄与してきたという現実がございます。
 そこで、都といたしまして、国内自治体では初めてでございます、このグリーンボンドを発行して、投資を通じて環境をよくしよう、したい、そういった投資家の思いに応えまして、投資家というのも、個人、それから事業者、それぞれでございます、国内の貴重な資金が国内の環境対策に活用される、そういった流れをつくっていきたいという考えのもとでございます。
 ご指摘のように、ESGという考え方というのは、もう既に金融と環境の世界では定着をしている。それを一つの具体例として、このグリーンボンドにしていくということでございまして、国内のグリーンボンド市場の活性化を図っていきたいと考えております。
 都民や企業の幅広い投資を通じた後押しを、東京の環境をよくしていく流れにつなげていきたいという考えであり、また、スマートシティーの実現に向けた取り組みとして着実に進めてまいりたいと考えております。

○神野委員 国立研究開発法人産業技術総合研究所によりますと、平均的な日本人の一日当たりの呼吸量は十七・三立方メートル、つまり一万七千三百リットルとなっています。
 空気の比重は一立方メートル当たり一・二九三キログラム、つまり一リットル一・二九三グラムですから、平均的な日本人は一日当たり二十二・四キログラムもの空気を、呼吸によって体内に取り入れているということになります。一日に摂取する水や食料よりも多くの空気が体内に入るということから、大気環境が健康に大きく影響するというのは自明の理だと思います。
 そこで、現在、都における大気環境の現状について、環境基準を満たしているのかどうかを含め、伺います。

○遠藤環境局長 都では、住宅地や主要道路沿道等に、大気環境の測定局を八十二局設置いたしまして、大気汚染状況を常時監視しております。
 これまでのディーゼル車規制などの取り組みにより、都内の大気環境は大幅に改善し、浮遊粒子状物質、二酸化窒素等は、おおむね全ての測定局で環境基準を達成しております。
 一方、光化学スモッグの原因物質である光化学オキシダントにつきましては、環境基準を達成している測定局はなく、PM二・五については、年平均濃度が環境基準程度まで低減はしているものの、発生源が広域にわたることなどから、全測定局での環境基準達成にはいまだ至っておりません。

○神野委員 空気は全ての都民が呼吸するものですから、良好な大気環境の実現は急務といえます。
 都では、人体に大きな影響を及ぼす大気環境の改善のために、光化学オキシダントの発生源となるVOC、揮発性有機化合物について新たなモデル事業を始めるとしておりますが、具体的にどのように取り組むのか伺います。

○遠藤環境局長 新たなモデル事業では、業界団体及び事業者それぞれの取り組みに対して支援を行ってまいります。
 業界団体に対しましては、作業手順の見直しの徹底など、排出抑制策を盛り込んだ自主行動計画の策定に係る経費や、人材育成セミナーの開催等の経費に対し、三分の二を補助いたします。
 一方、事業者に対しましては、自主行動計画に基づきVOC回収装置などの設備機器を購入する際に、対象経費の二分の一を業界団体を通じて補助することで、中小事業者などでは取り組みが困難であった対策の実施を促進いたします。
 また、VOCアドバイザーの派遣による技術支援を拡充し、有機溶剤を扱う事業所の作業環境の改善にもつながるVOC削減の取り組みを後押ししてまいります。

○神野委員 屋外よりも室内で過ごす時間の方が長いという方も多いと思います。したがって、屋外だけではなく室内の空気環境にも気を使う必要があります。
 人体に大きな影響を及ぼす有害物質が多数含まれるたばこの煙は、呼吸する空気には含まれていないことが望ましいといえます。
 受動喫煙が問題となりやすい場所として、さまざまな人が利用する飲食店がまず挙げられますが、飲食店における受動喫煙防止に対する都の取り組みについて、見解を伺います。

○梶原福祉保健局長 都はこれまで、飲食店における受動喫煙防止対策を推進するため、店舗での禁煙、分煙を呼びかけるリーフレットを作成し配布いたしますとともに、具体的な対策事例を紹介する研修会を開催し、自主的な取り組みを働きかけてまいりました。
 また、利用者が飲食店を選択する際の参考となるよう、店内の禁煙、分煙等の取り組み状況を店頭に表示するステッカーを作成し、配布してまいりました。
 来年度は、飲食店の禁煙、分煙の取り組み状況や店頭表示状況等の実態調査を行いますとともに、複数の飲食店が入居する商業施設を通じて、施設内の店舗へ店頭表示の趣旨や重要性を説明し、店頭表示ステッカーを普及してまいります。

○神野委員 次に、中小企業支援について伺います。
 東京都動産・債権担保融資制度、いわゆるABL制度ですが、これは中小企業が機械、設備、売掛債権、在庫などを担保に金融機関から融資を受ける際に、担保評価や保証料などの経費を助成するものです。
 予算額は、平成二十六年度に一億七千二百万で始まったものが、平成二十九年度案では五億一千万円までふえており、ニーズが拡大していることが読み取れます。
 そこで、本制度の創設から現在までの実績の推移について伺います。

○藤田産業労働局長 東京都動産・債権担保融資制度、いわゆる都のABL制度でございますが、これまでの融資実績は、平成二十六年度が六十一件、約二十八億円、平成二十七年度が九十一件、約四十一億円でございます。
 また、今年度は十二月末日時点で百二十七件、約百八億円の融資実績となっており、既に昨年度の実績を大幅に上回ってございます。
 担保の種類別では、特に売掛債権、また在庫を担保として活用した融資の実績が大幅に伸びているところでございます。
 また、取扱金融機関数でございますが、制度開始当初は十九機関でございましたが、現在では三十機関まで拡大しております。

○神野委員 件数、金額、取扱金融機関数、全てが順調にふえていることがわかりました。
 担保の種類では売掛債権と在庫が多いということでしたけれども、売掛債権の状況を把握するということは、企業の営業活動を詳細に理解することにつながりますし、また、在庫の状況を知ることで、企業がどのような事業予測を立てているのか把握する材料となります。したがって、金融機関が融資先に対する理解を深める上でいい傾向だと思います。
 都のABL制度が創設されるまで、売掛債権を担保とした融資を受けることをちゅうちょしていた企業があった。それがABL制度の導入によって実行に踏み切れたという話を聞きました。
 売掛債権を担保として提供する際には、形式的には債権を譲渡するという形をとります。取引先には債権が譲渡されたと通知が行きますので、以前は、この通知によって、売掛債権を譲渡しなければならないほど資金繰りに困っているのかという誤解を与えてしまうということを恐れていたそうですけれども、東京都のABL制度が導入されたことによって、都の制度を用いた融資だという説明ができるようになって、心配が解消されたということでした。
 このように、中小企業にも金融機関にもメリットがある本制度をより多くの中小企業が利用できるようにするため、今後、都はどのように取り組まれるのかを伺います。

○藤田産業労働局長 平成二十九年度のABL制度につきましては、事業開始以来の実績の伸び等を踏まえまして、融資規模が二百億円に拡大するものと見込んでいるところでございます。
 今後、さらに中小企業の利用を促進するためには、地域に密着した金融機関の積極的な取り組みが不可欠でございます。
 このため、中小企業に対して、商工団体等を通じた制度の周知を引き続き行いますとともに、担保物件の評価や保証を行う専門機関と連携し、本制度のメリットや活用事例を紹介する金融機関向けの勉強会や説明会を、来年度は信用金庫や信用組合などに対して重点的に実施をしていく予定でございます。
 こうした取り組みによりまして、本制度のさらなる普及を図り、中小企業の円滑な資金調達を支援してまいります。

○神野委員 次に、ベンチャーファンドについて伺います。
 都は来年度、東京における創業支援などを目的に、官民合同のベンチャーファンドを設立し、最大十億円の出資をすることを予定しています。
 昨年設立された中小企業連携促進ファンドへの投資額の三十億円より少ない金額となりますが、ベンチャーファンドは最も資金調達が困難である創業期、あるいは創業してから日の浅い企業への株式投資を行う予定であることから、創業支援に直接結びつく、より意義のあるものとなっていると思います。
 国内で投資家層が薄いといわれる分野への投資となりますが、本ファンドが同様の投資に対する呼び水となることを期待しております。
 そこで、都が本ファンドを設立する狙いと具体的な取り組みについて伺います。

○藤田産業労働局長 都は来年度、IoTやAIなど先端技術を活用したイノベーションの創出に向け、新たなファンドを創設いたします。
 このファンドは、特に資金が集まりにくいとされる起業初期のベンチャーに対し、資金供給とともに手厚い経営支援をあわせて行うことで、東京のさらなる成長を支えるベンチャーの挑戦を後押ししていくものでございます。
 ファンドの規模は、都の出資する十億円を呼び水とし、民間資金と合わせて二十億円以上を目標としております。来年度、ファンド運営事業者を企画提案方式により選定し、平成三十年一月の設立を予定しているところでございます。投資期間は五年程度、回収を含め十年程度の期間を見込んでおります。
 この取り組みにより、ベンチャー企業の創出、育成につなげてまいります。

○神野委員 次に、多摩格差について伺います。
 私は、多摩には多摩のよさがあり、区部には区部のよさがあると考えておりますので、多摩格差、三多摩格差といった言葉は好きではありませんが、区部と多摩とでは制度の違いによってさまざまな違いが出てしまうということがあるのは事実です。
 平成二十九年度に、さらなる待機児童解消策として予定されている民有地を活用した保育所等整備促進税制もその一つで、これは、二十三区に限り、保育所等が有料で借りている土地の固定資産税と都市計画税を五年間にわたって免除するというものです。
 本来であれば、東京都全域で同時に導入されることが望ましいものですが、多摩地域では課税権者が各市町村となるため、今後、各市町村の判断で導入の有無を決定していくことになります。
 子育て支援策は、導入に時間がかかってしまいますと子供が対象年齢から外れてしまうこともありますので、できるだけ早期に実行することが重要といえます。
 そのような観点から、今回は二十三区のみの先行導入となったのは仕方がない面もあると思いますが、多摩に住む都民が不公平感を持たないように、多摩においても保育所整備の促進策として固定資産税と都市計画税の減免を行えるよう、市町村を支援すべきと考えますが、都の見解を求めます。

○多羅尾総務局長 保育所等における待機児童解消を市町村も含めた東京全体で進めるためには、都と区市町村の連携協力が重要でございます。
 民有地を活用した保育所等整備促進税制をどのように実施するかは、課税権を有する各市町村が独自に判断するものですが、都は、本制度の実施に当たり、市長会、町村会の場を通じて理解と協力を求めるとともに、市町村が必要とする情報提供等を実施いたしました。
 今後、市町村における導入状況も踏まえつつ、市町村の意見やその課税自主権にも配慮しながら、適切な財政補完に努めてまいります。

○神野委員 今回の保育所等整備促進税制に限らず、多摩と区部で都民が受けるサービスが同質のものとなるよう、一層の市町村との連携と財政支援を求め、次の質問へと移ります。
 私の地元の昭島市では、昭島観光まちづくり協会という組織がさまざまな観光振興を行っていますが、その中で、昭島ロケーションサービスという、テレビ番組、映画、コマーシャル、写真などの撮影をアレンジするという事業があり、この事業は観光振興という点で大きな可能性があり、都にはそのような取り組みを支援していただきたいと思います。
 先日、昨年から大ヒットしているアニメ映画の「君の名は。」を見ましたが、岐阜県の飛騨高山や都内の風景が多く使われており、既に海外から、映画に出ていた場所に行くことを目的とした観光客が来日していると聞きます。
 日本発のコンテンツとして世界的に競争力があるものの代表がアニメ映画だと思います。都ではアニメを用いた観光振興に取り組むと聞いておりますが、どのような取り組みなのかを伺います。

○藤田産業労働局長 現在、都は、アニメを含む多様なテーマを選んで観光振興に取り組む区市町村に対し、事業で必要となる経費の半分を助成するサポート等を行っております。
 来年度は、アニメの登場人物などのコンテンツを利用した観光振興について、自治体の単独の取り組みのほか、複数の自治体が連携して事業を行う場合、それらの経費の三分の二を上限に助成をいたします。
 また、観光協会等が実施の主体となる際は、事業費の五分の四まで補助を行います。
 さらに、より多くの旅行者にアニメの舞台となった場所を訪れてもらえるよう、都内の十カ所程度を選び、それらを回遊するPRイベントを行ってまいります。この取り組みでは、海外向けの宣伝のため、外国人のブロガーが参加をする工夫も行ってまいります。
 これらによりまして、アニメ等のコンテンツを効果的に活用した観光振興を展開してまいります。

○神野委員 スマートフォンの翻訳機能の進歩によって多言語対応の必要性は低下しているように思われるかもしれませんが、標識などを初めとした視覚から入る情報は重要であると考えます。
 特に、訪日外国人が交通機関などを円滑に利用し、スムーズに目的地に向かうためには、案内表記をわかりやすくすることが重要です。
 日本語も、スマートフォンの翻訳機能を使った場合に正しく翻訳されるような簡潔でわかりやすい表現を心がけ、外国語表記は日本語の直訳ではなく、ネーティブスピーカーの意見を取り入れ、わかりやすい表現にすべきと考えます。
 そこで、多言語表記に関する都の取り組みについて伺います。

○塩見オリンピック・パラリンピック準備局長 都は、国と連携のもと、多言語対応協議会を設置し、交通事業者や道路管理者などを含む幅広い関係者の参加を得て、外国人旅行者の円滑な移動や快適な滞在に資するさまざまな取り組みを推進しております。
 お話の外国人にわかりやすい表記を実現するため、日本語自体のわかりやすい表記、翻訳の際のネーティブチェックの必要性、さらには外国人にとってわかりにくい英訳の事例などについて、専門家や外国人講師による講演を通して、参加者に実際に役立ててもらっております。
 また、その内容をポータルサイトに掲載することで、広く関係者に周知し、認識の共有化にも努めております。
 今後もこうした取り組みを通じて、官民の幅広い関係者とともに、外国人旅行者のためのさらなる環境整備を図ってまいります。

○神野委員 次に、下水処理について伺います。
 下水道局は都内の電力使用量の一%を消費しているため、省エネルギーが実現すれば大きな効果が見込めるといえます。
 私の地元の昭島市にある多摩川上流水再生センターを視察した際に、下水処理で最も電力を消費するのは、バクテリアを用いて汚れを分解させる際に空気を送り込む工程であると聞きました。
 下水道局では、エネルギー価格が高騰していた時期には、水質は高度処理には及ばないものの、二〇%超の省エネルギー化が図れる準高度処理の導入を進め、最近は、高度処理とほぼ同じ水質を実現しながら、エネルギーの消費量を二〇%抑制できる新たな高度処理を開発するなど、水質改善と消費するエネルギー量のバランスをとりながら改良を重ねてきており、その技術力は高く評価されるべきと考えております。
 平成二十六年十月には、東京の下水道の技術が採用されたマレーシアのランガット地区における約五百億円規模の下水道整備プロジェクトが始まりました。このプロジェクトは、下水道施設の設計、建設、維持管理を六年間にわたって行うものですが、東京で培われた下水処理技術が、このような国際プロジェクトを通して世界の水環境を改善する原動力となる可能性を持っているわけです。
 そのような観点からも、引き続き省エネルギー技術の向上に取り組んでいただきたいと思いますが、下水道局の省エネルギーへの取り組みについて伺います。

○石原下水道局長 下水道局では、平成二十六年にスマートプラン二〇一四を策定し、省エネルギーのさらなる推進や再生可能エネルギーの活用拡大に取り組んでまいりました。
 省エネルギー対策といたしましては、これまで、委員お話しの準高度処理や新たな高度処理の導入を進めるなど、積極的に電力使用量の削減に努めてまいりました。
 平成二十九年度は、準高度処理や新たな高度処理のほか、執務室の照明のLED化や省エネルギー型の濃縮機、脱水機の導入を拡大してまいります。
 さらに、汚泥の水分量を一層削減して焼却時の補助燃料を不要にする新たな脱水機と、焼却廃熱を活用した発電により、焼却炉の運転に必要な電気を自給できる焼却炉を組み合わせたエネルギー自立型焼却システムの導入も進めてまいります。
 今後とも、東京下水道がこれまで培ってまいりました技術力を最大限発揮するとともに、先進的な技術を持つ民間企業等と連携を図ることで、省エネルギー化の取り組みを強化してまいります。

○神野委員 次に、燃料電池バスについて伺います。
 先日、知事の定例記者会見で、三月二十一日から都営バスの営業路線で燃料電池バスを運行開始することが発表されました。
 一昨年の夏に都が実証走行を実施した際に、私も燃料電池バスに試乗をしました。
 乗用車二台分の燃料電池でバスを動かすと聞いて、最初は不安に思いましたけれども、路線バスのスピードに合わせて低速向けのチューニングがされていたんだと思いますけれども、十分な出力が得られるということを実感しました。
 また、車内の静かさや発進時のスムーズさなど、従来のバスに比べて乗り心地も快適に感じました。
 燃料電池バスの大きな特徴の一つに、走行時に水しか出さない、つまり排気ガスを排出しないという点があります。これは、住宅地を初めとした人々の生活空間の近くを走行する路線バスにとって大きなメリットであると考えます。
 排気ガスを発生しないという点では充電池を用いた電動バスも共通はしていますが、電動バスは航続距離が短い、さらに、冬季に暖房を使用すると、ただでさえ短い航続距離がもっと短くなってしまうという大きな弱点があります。
 これは、暖房の熱源として、燃料電池であれば水素から電力を得る際に発生する熱が使えるというのに対して、電池の場合は電力を用いて熱を発生させないといけないということからも生じる違いですが、都は、燃料電池バスを二〇二〇年までに百台以上導入することを目標にしています。目標達成にどのように取り組むのかを伺います。

○遠藤環境局長 先月、国内メーカーから新たに燃料電池バスが市販されまして、都営バスに、その第一号、第二号として二台が導入をされました。
 しかし、燃料電池バスは、市販開始直後で価格がまだ高く、普及にはバス事業者への財政的な支援が必要となります。
 このため、都は国と合わせて、通常のバスと同程度の負担で導入ができるよう補助を実施しております。
 また、燃料電池バスには一度に大量の水素を充填することから、これに対応するステーションが必要になります。こうしたステーションは既存のものと比べて高い性能が求められ、整備費も高額となるため、現在の補助制度を拡充し、整備を後押ししてまいります。
 都は今後、これらの支援策を周知し、民間のバス事業者へも導入を働きかけながら、燃料電池バスの普及を図ってまいります。

○神野委員 私は、燃料電池バスというのは水素エネルギーの使い道としては大変有効であると思っています。
 ただ、水素エネルギー全てバラ色かというと、そうではないと思います。水素にも多くの課題があります。
 一番大きな課題というのが、体積当たりのエネルギー量が少ないということです。エネルギー量でいうと、メタンの三分の一、LPガスの主成分であるプロパンやブタンと比べますと、それぞれ八分の一、十分の一になっております。
 さらに、LPガスの原料であるプロパンやブタンというのは、八・五気圧、二・一気圧で液化をする。ですから、簡単に圧縮ができるんですけれども、そして、液化した場合に、体積が二百五十分の一になるんですね。
 ですけれども、水素の場合は、室温では幾ら圧力をかけても液体にはならない。ですから、この燃料電池車で使う水素というのは、七百気圧という非常に高い気圧で圧縮をすることになっております。気体を圧縮すると熱を発生させるんです。ですから水素ステーションでは、水素というのは、あらかじめ、ある程度圧縮して、マイナス三十度からマイナス五十度で冷やしておかないといけない。
 そういったエネルギーもかかるといったことで、全てがいいことではないんですが、ぜひこれからも水素の強みを生かして、そういったところで生かしていっていただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終えます。

○鈴木(隆)委員長 神野次郎委員の発言は終わりました。

ページ先頭に戻る