予算特別委員会速記録第二号

   午後五時四十五分開議

○高橋副委員長 休憩前に引き続きまして委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 野上ゆきえ副委員長の発言を許します。

○野上(ゆ)委員 東京改革議員団を代表して、総括質疑を行います。
 まず初めに、豊洲新市場の移転の問題については、ただいま百条委員会において過去の経緯や責任の所在を明らかにするために真相解明に取り組んでいるところです。また、今後の対応については、特別委員会において、地下水のモニタリング結果などを踏まえて審議を行う予定となっておりますので、ここでは、私から一点について質問をさせていただきます。
 先ほどの質問で、ネズミのパネルを示すなどして、現在の築地市場がいかに不衛生であるかを繰り返す発言がありましたが、現に営業を続けている築地市場で風評被害をあおらんとする姿勢は看過できません。仲卸の人は、今まで一度も食中毒を起こしたことはないと胸を張って毎日仕事をしているんです。
 問題の発端は、敷地全面にするとしていた盛り土を初め、汚染物質の除去、地下水位の管理など、土対法を上回る対策を講じるとしていた東京都の約束がほごにされたことにあります。都民の信頼が損なわれている状況の中、まずは情報公開の徹底で都民に真実を伝え、信頼を回復していくということが、今後の都政にとって何よりも重要なことであります。
 このような状況の中、私は、現在も営業を続けている人たちがいる築地市場において、殊さら風評被害をあおるべきではないと考えますが、小池知事の見解を伺います。

○小池知事 ご指摘のとおりかと思います。築地市場は現に営業を行っております。多くの市場関係者が胸を張って日々働いておられます。
 先ほども申し上げたとおり、築地市場につきましては、法令上、安全、そして都民の絶大な信頼を得ているという二つの意味において、安全・安心だと、このように思います。むやみに不安をあおるということは厳に慎んでまいりたいと考えております。

○野上(ゆ)委員 それでは、質問に移ります。
 平成二十九年度東京都予算と財政運営について伺います。
 平成二十九年度予算は、都税収入が昨年までのバブル崩壊後初の五年連続増収という状況から六年ぶりの減収という局面の中、小池知事のもと編成されました。都財政を取り巻く環境が大きく変化する中で、私たちはこれまでも将来を見据えた中長期の財政の健全化を求めてまいりました。
 世界情勢の先行きが不透明感を増し、経済も予断を許さない中、オリンピック・パラリンピック開催を三年後に控えて、平成二十九年度予算は将来世代にツケを回すことのないよう、どのような取り組みを行ったのか伺います。

○武市財務局長 平成二十九年度予算案は、新しい東京の未来を切り開くため、必要な施策には積極的に投資を行うと同時に、一般会計の規模を五年ぶりに減とするなど、めり張りのついた予算案としているところでございます。
 こうした中、都債につきましては、発行額を前年度と比べて一六%減少させることなどにより、都債残高はピーク時から二七%減少し、今後の人口構造の変化などを見据えた発行余力を培うとともに、将来の都債償還で生じる財政負担の軽減を図ったところでございます。
 さらに、三つのシティー実現に向けた基金と財源として活用可能な基金を合わせました、将来に向けて安定的な財政運営を行うための基金残高は、平成二十九年度末におきまして一兆九千億円確保するなど、将来世代への負担にも配慮し、中長期的な視点からの備えを講じたところでございます。

○野上(ゆ)委員 ただいまご答弁にあった状況のような中においても、私たちは、めり張りのある予算によって、未来への投資となる子供、子育て支援、待機児童解消や非正規雇用対策などに思い切った予算を投じることを知事に求めてまいりました。
 こうした優先順位の高い政策を安定的に、そして継続的に実施していくためにも、都財政をめぐる環境が年々厳しさを増す中で、都財政の健全性を維持することを肝に銘じなければなりませんが、今後の財政運営について小池知事の見解を伺います。

○小池知事 都財政についてお尋ねがございました。
 都税の収入は、ご指摘のように景気に左右されやすいものでございます。加えまして、少子高齢化は急速に進みつつあります。さらに、老朽化が進む社会資本ストックの維持更新への対応など、避けることのできない膨大な財政需要を都は抱えております。
 こうした中にありましても、未来への成長創出のための施策を力強く進めて、誰もが生き生きと輝ける東京の明るい未来を築いていくことは何よりも重要かと思います。そのためには、これを支える強靭な財政基盤が欠かせないのはご指摘のとおりかと思います。
 こうした考え方のもとにおきまして、平成二十九年度の予算編成では、施策の効率性、そして実効性を高める取り組みを進める、そして今後の財政運営の備えを講じる、つまり、その先を見ての計画を立てていくということなど、都民ファーストの視点で財政構造改革の一層の推進を図ったと自負しております。
 都民の皆様の共感を推進力として、大義ある政策を前に進める、これは私の思想、政治信条でございます。都民ファーストの都政が導くあすへの希望を実感していただける、そこまで持っていきたい。そしてまた、時代の変化に応じて適応できる、そのような健全な財政運営を進めてまいりたいと考えております。

○野上(ゆ)委員 ぜひとも都民ファーストの視点に立った財政構造改革を一層進めていただくよう、要望いたしておきます。
 次に、行財政改革について伺います。
 十六年度の包括外部監査で、水道局が随意契約を行っている検針業務について特命随意契約を見直すべきという意見がありました。水道局がとった改善措置として、競争入札を導入する旨、報告されておりますが、その措置は継続されているのでしょうか。現在の状況を伺います。

○醍醐水道局長 検針業務の委託につきましては、平成十六年度の包括外部監査意見を受けまして、随意契約から競争入札に見直すこととし、平成十九年度の契約におきまして一部地域に導入をいたしました。
 その結果、新規の事業者が落札をしましたが、履行能力が不足をしていたことから業務継続が困難となり、契約を解除する事態に至ったため、当該地域のお客様への検針がおくれるなど、業務に大きな支障を来した次第であります。
 このため、平成二十年度以降の契約は、競争性や透明性を確保しつつ、安定した履行能力を担保する履行能力等審査方式を一部の地域から順次実施しているところでございます。
 さらに、契約の客観性をより高めるため、外部有識者の視点を取り入れた総合評価方式による競争入札へと変更することとし、外部監査人から承認をいただきました計画に基づきまして、平成三十一年度からの導入に向け、現在、制度設計や運用手続の策定などに取り組んでいるところでございます。

○野上(ゆ)委員 これまでの経過について答弁いただきましたけれども、結果としては今も随意契約をしているということです。答弁では、監査を受けてしっかりと考えているということでありますが、結果的には長期間同じ業者と随意契約をしている。いわれたら変える、そしてまた、いわれたら変えるということを繰り返しているにすぎません。
 平成三十一年に総合評価方式に変えるというふうにいいますが、平成十六年からどれだけ時間がたっているのでしょうか。スピード感を持って抜本的な対策をとるべきです。
 水道の検針は大変重要な業務ではありますが、発注者側が賢い支出を行っていくためには、新規事業者が参入しやすい仕組みをつくることも必要です。総合評価方式の導入に当たっては、新規事業者の参加しやすさも含めて、競争性に十分留意して検討いただきたいと思います。
 次は、直接的には監査が対象となっていない、対象にもならないケースについて取り上げたいと思います。
 一般財団法人東京都営交通協力会です。東京都営交通協力会は、交通局と一体的な事業運営を行っている団体ですが、監理団体ではなく、指導監督権限は法令上ない団体です。東京都が法令上、監理をしておらない団体です。
 ここに都管理職OBの再就職及び現役の都派遣職員は何名いるんでしょうか。理事会、評議員会のメンバーには都管理職OB、現役職員は何名か、さらに収益に占める交通局支出の金額、割合、交通局資産を使用して得ている収入の金額を伺います。

○山手交通局長 東京都営交通協力会に常勤で在籍しております都管理職退職者の人数は十九名でございまして、現役の都派遣管理職は二名でございます。
 理事会の構成メンバー六名のうち、都管理職退職者は二名、都派遣職員は二名でございます。評議員会の構成メンバー九名のうち、都管理職退職者は一名でございまして、都現役管理職が五名兼職しております。
 協力会の平成二十七年度決算における収入は、総額で約百十億円でございますが、このうち地下鉄駅業務の委託など交通局からの支出は総額で約六十億円、割合としては約五五%でございます。
 駅構内における売店の運営など、交通局の資産を活用して行う協力会独自の収益事業の収入は約五十億円でございます。

○野上(ゆ)委員 交通局からの収入と、交通局の土地や建物、あるいは車両などの資産を利用して事業を行っている団体である。収入の全てが交通局関連です。さらに人的な派遣もしている。現役派遣です。
 こうした団体が監理団体でも報告団体でもないわけですから、監理団体が行うような経営目標の設定や、その評価を総務局の監督のもとで行うこともありません。経営情報の公開も不十分であるため、透明性を欠いており、都民の目から見て納得できる状況ではないといわざるを得ません。
 東京都営交通協力会が都民の利益に資する形で発展し、従業員の待遇などが向上するようにしていくためには、都や議会に経営計画などを報告しチェックを受ける、一定の情報公開義務を負う監理団体に指定すべきです。
 平成十一年の導入以来、包括外部監査によって千六百件余りの指摘を受けています。順次改善措置がとられてきましたが、包括外部監査で指摘された事項の改善状況については、これまでの質疑でわかるように、まだまだ都民の目から見て疑念が残るケースが存在いたします。
 また、監理団体についても、当然指定を受けるべきと考えられる団体が指定を受けていないということがわかりました。監理団体であれば、総務局の監理を受け、情報公開も行われるわけです。
 小池知事は、二〇二〇改革プランの策定作業を始めて、監理団体の戦略的活用などに取り組んでいくと答弁されました。改革プランは、知事の東京大改革の青写真ともいえる重要な計画です。包括外部監査の指摘事項、監理団体などについて一斉点検を行い、策定作業を進めると考えますが、知事の所見を伺います。

○小池知事 ご指摘のように、東京大改革、これをぜひとも前へ一歩一歩進めてまいりたいと考えております。
 そのためには、まず透明化を根づかせて、そしてさらには、従来の延長線を超えた新たな発想を常に生み出すために、都政が自律改革を重ねなければならないと思っております。そして、都政の手法と体質を変えていくということが東京大改革の一つの大目的でございます。
 こうしたことから、ご質問にもございました二〇二〇改革プランを策定することといたしまして、作業は四月からかかってまいります。そこで業務の効率化、そして官と民の適切な役割分担、そしてご指摘の監理団体の戦略的活用などに一つ一つ取り組んでまいる考えでございます。
 改めて各局の事業、それから予算、人員、サービス水準などの適正性がどうなのか、ほかに、より有効な政策がないかなどの観点から、幅広く点検と検証を進めていく考えでございます。
 また、監理団体についてもお尋ねがございました。都民ファースト、そして賢い支出の観点から必要な検証を行いまして、まさしく戦略的に活用できるように、そのための改革の取り組みとしていきたいと考えております。
 新しい東京をつくり上げていくには、この改革をしっかり進めなければならないと考えております。

○野上(ゆ)委員 次に、退職管理制度、いわゆる天下りについても伺います。
 知事は、尾崎幹事長の代表質問に対し、職員の再就職は、都民から公正な都政運営が損なわれるといった疑念を持たれることがあってはならない、新たな行政改革に取り組んでいく予定だが、幹部職員の再就職も、今後こうした取り組みとあわせて、監理団体のあり方とともに必要な検証を進めると答弁をされております。本日は、その検証について伺いたいと思います。
 当時の民主党の追及で、平成十八年より天下りの情報を公開いたしております。その後、地方公務員法の改正によりまして退職管理の適正確保が求められ、退職管理の条例が制定されたところです。
 まず、都の退職管理委員会発足以来の開催状況並びに審議件数を伺います。

○多羅尾総務局長 都では、職員の再就職に関する公正性、透明性を高める観点から、昨年度制定した退職管理条例において、新たに外部有識者による退職管理委員会を設置いたしました。
 委員会はこれまでに三回開催しており、昨年三月に開催した委員会では、地方公務員法に基づき、働きかけ規制の適用を除外する団体の指定や、都政の現場を支える監理団体等、都の事務事業と密接な関連を有するため適材を推薦する団体の選定について審議を行ったところでございます。
 その後開催した二回の委員会では、民間企業等からの求人に対する人材情報の提供、職員の利害関係企業等への求職活動の承認について、合計で十五件の審議を行いました。
 また、監理団体等に対する人材の推薦状況についても、あわせて報告を行ったところでございます。

○野上(ゆ)委員 今答弁でありましたけれども、この審議状況、審議件数は十五名ということですが、本当に驚きです。
 この委員会で、東京都から多額の出資を受け、多くの業務を受託している監理団体は、全て適材推薦団体と認定されています。都職員の再就職は、単に届けるだけでよく、都が人材を紹介している状況です。
 天下りにお墨つきを与えるだけではないかといわれることのないよう、その紹介等において、職員の所掌事務や職務遂行の実態をしっかりと精査する必要があると考えますが、どのように把握し、判断しているのか伺います。

○多羅尾総務局長 都では、幹部職員について、退職時の職務に関して利害関係のある企業等への求職活動を条例で原則禁止としております。
 条例における利害関係とは、当該企業等に対して許認可や検査の権限を有していたり、補助金の交付を行っていたり、契約を締結している場合等が該当いたします。
 利害関係の有無を判断するに当たっては、個々の職員について、退職時の職務内容とともに、職員から求職活動申請のあった企業や、企業から都への求人内容を詳細に把握し、精査を行うことで、利害関係の要件に該当しないことを確認しております。

○野上(ゆ)委員 届け出を受けるだけではなくて、再就職先での職務内容、従事の実態を調査したり、あるいは短期間で再就職をしたりなど、やはり都民に疑念を持たれないような、そうした確認が必要だと思います。出社していなかったり、実際の業務についていなかったり、あるいは業務分担が曖昧など、都への影響力行使ではなく、その人の能力を求められての再就職ならば、あり得ない勤務実態ではないか、確認すべきというふうに考えます。
 就職した後の実際の勤務内容等について、どのように把握しているのか伺います。

○多羅尾総務局長 都においては、再就職の前に、職員の求職活動申請や企業等の求人内容について文書での提出を求めることなどにより、再就職後の業務内容、勤務形態等を具体的に把握しております。
 また、再就職した職員については、業務内容等を含め、文書での届け出を義務づけており、虚偽の届け出を行った場合には罰則を科すなど、実効性を確保しております。
 このように、再就職の前後において文書で業務内容の確認を行うだけでなく、必要に応じて本人や再就職先に対しても勤務状況等についての聞き取りを行うなど、実態の把握に努めているところでございます。

○野上(ゆ)委員 再就職後の状況について聞き取り調査を行っているとの答弁がありましたが、実態は、都庁にたまたま来たときに、ただ聞き取りをしている、聞いただけというものであり、制度であるとか、あるいは仕組みとしてこうした聞き取りの調査をしているわけではないと伺っています。実質的にはやっていないというのも同然ではありませんか。
 知事は、天下りについて文部科学省の問題も受け検証すると述べておられます。都においても、豊洲新市場移転問題にかかわっていた幹部職員が東京ガスに天下りをしていたなど、都民に誤解を与えかねない事例も見られます。
 近畿大学中林教授の研究によれば、一人の天下りを受け入れるたびに落札確率が〇・七ポイント上昇するとしています。天下り受け入れの見返りとなっている、市場経済の健全性を脅かしている可能性があると示唆するものだと報告されたところです。
 都の退職管理制度がまだまだ今の状況では終着点ではないのは、今の質疑からもわかりました。このような統計的手法を用いるなど、個々の関係性だけではなく、全体をフォローできる手法を取り入れれば、都民に疑念が持たれない。そうしたおかしな動きが認められた場合、そのポイントを重点的に調査することもできます。
 こうした手法を取り入れて適正性を担保するべきと考えますが、退職管理のあり方について知事の見解を伺います。

○小池知事 職員の再就職についてのお尋ねでございます。
 都民から公正な都政運営が損なわれるといったような疑念を持たれることがあってはならないと考えます。ご指摘のように、昨年の四月から退職管理条例を施行し、さまざまな規制を導入するとともに、外部有識者で構成されます退職管理委員会を新たに設置、運用しながら、再就職のより一層の公正性、透明性の確保に努めてきたところでございます。
 また、私が知事に就任した後には、公益通報制度の見直しを行いました。そして、新たに外部窓口も設置をして、都民の方々からの通報を可能とするようにいたしております。そして、法令違反などが疑われる事例が発生した場合でも、迅速に幅広く把握できる仕組みも整えたところでございます。
 さまざまな取り組みをすることによりまして、再就職に関する公正性、透明性の確保についても努めているところでございますが、今後新たに取り組んでいく行政改革と軌を一にして、職員の再就職についても、また監理団体のあり方とともに必要な検証を進めてまいりたいと考えております。

○野上(ゆ)委員 ぜひとも東京大改革を進める知事のもとで一層推進をしていただきたいと思っております。
 次に、テーマを変えまして、オリンピック・パラリンピック競技大会について伺います。
 昨年、都は、水泳やバレーボール、ボート・カヌースプリントなど三会場の整備費用約四百億円を削減したところです。新たな恒久競技施設については、オリンピック・パラリンピック大会会場として使用されます。大会後は長く都民が使う施設であり、都は維持管理と運営の責任を担っております。
 恒久競技施設は、公共的な位置づけや需要を踏まえて整備を行い、大会レガシーとして都民が利用しやすく、また負の遺産とならないようにすべきと考えますが、改めて見解を伺います。

○塩見オリンピック・パラリンピック準備局長 新規恒久施設を大会後も有効に活用していくため、都はこれまで、外部有識者や民間事業者、競技団体、地元自治体など幅広い意見を聞きながら、具体的なニーズを踏まえた大会後の運営計画について検討してまいりました。
 各施設は、アスリートの競技力強化や都民のスポーツ実践の場として活用し、東京のスポーツ振興の拠点としていくとともに、文化、レジャー、教育など幅広い分野で活用してまいります。また、点から面への視点で周辺地域との連携を強化し、多くの人々が集うにぎわいの拠点としてまいります。
 引き続き、大会後の具体的な活用を見据え、施設を着実に整備するとともに、都として、大会後の施設運営計画の検討をさらに進め、新規恒久施設を多くの都民に利用される貴重なレガシーとして引き継いでまいります。

○野上(ゆ)委員 ぜひ都民が納得して、そして参加できる後利用計画を早急に策定していただくことを求めておきます。
 私たちは、知事の掲げる東京大改革に賛同しております。また同時に、二〇二〇年東京大会においても、組織委員会の大改革を進めるべきだと考えております。大会経費を初めとした組織委員会の決定や行動は、いまだ不透明なものとなっており、このことは、結果、都民が不利益をこうむることにつながります。
 私たちは、組織委員会を大改革して、情報の見える化、ワイズスペンディング、賢い支出の取り組みを東京都とともに図っていくべきと考えております。
 昨年十月の定例議会において、組織委員会の情報公開の質問で、知事は、大会に対する都民、国民の理解や協力を得ていくためには、組織委員会の運営のより一層の透明化を図り、さらなる積極的な情報公開を求めていくと述べられました。
 しかしながら、組織委員会の情報公開は、職員数もみずから公表していない状況にあり、まだまだ道半ばにあります。
 組織委員会の見える化、すなわち東京都民、そして国民への情報公開の徹底に取り組むべきと考えますが、知事はどのように取り組んでいくのか伺います。

○小池知事 二〇二〇大会の組織委員会に関するご質問でございました。
 この大会の準備を万全に行って大会を成功に導くためには、その準備状況について都民、国民に丁寧に説明をし、理解を得ていくこと、これは不可欠でございます。理解が高まれば高まるほど、大会の成功が約束されるといっても過言ではないかと、このように思います。
 そのために、都はもちろん組織委員会におきましても、情報公開にしっかりと取り組んでもらう必要がございます。
 そして、例えば大会経費につきましては、昨年の末、組織委員会が全体経費とあわせて、みずからバージョンワン予算をIOCに提出をして公表したところでございます。今後さらに精査が進む中で、適時適切な情報公開をしっかりと求めていきたいと考えております。
 あと三年と迫りました二〇二〇年大会でございますが、開催準備はこれからもっともっと加速していくことでございましょう。また、そうあらねばならないと考えております。
 組織委員会との連携は一層強化して、ともに、より積極的な情報公開を進めてまいりたいと、このように考えております。

○野上(ゆ)委員 次に、組織委員会のワイズスペンディング、賢い支出についてです。
 組織委員会は、二〇二〇年東京大会の総経費が最大で上限約一兆八千億円かかると発表しております。大会終了後、組織委員会に負債があれば、それを保証するのは東京都となっております。
 都として、大会経費や組織委員会のコスト縮減により賢い支出をすることが求められております。支出の削減、縮減とあわせて、組織委員会の収入増の取り組みも積極的に図っていかなくてはなりません。
 代表質問においても組織委員会の増収を図るべきと求めてまいりましたが、組織委員会における増収をどのように図っていくのか、都の見解を伺います。

○塩見オリンピック・パラリンピック準備局長 現時点の組織委員会の収入は、IOCからの負担金やチケット売り上げなど計五千億円と見込まれております。
 組織委員会と組織委員会以外との経費の区分については確定しておりませんが、さらなる経費縮減や組織委員会の収入の増加は極めて重要でございます。
 そのため、組織委員会には、さらなる国内スポンサーシップの増加や、効果的なチケット販売戦略、魅力ある公式ライセンス商品の開発などにより、増収の努力をさらに求めてまいります。
 都といたしましても、公式商品の開発、PR、販売に協力するなど、組織委員会の多様な財源の確保に向けた取り組みをしっかりとバックアップしてまいります。

○野上(ゆ)委員 組織委員会において徹底した情報公開による見える化と賢い支出の改革を進めるためには、都が、やはり組織委員会の事務局を掌握することが必要であるというふうに考えます。
 現在、財務省OBである武藤事務総長が組織委員会の事務方トップであられますが、そして組織運営を行っておりますが、国が二〇二〇年東京大会への応分の負担をしないならば、大会負債の保証を行う都が責任を持って人材を送るべきというふうに考えております。
 都として、組織委員会の人事についてどのように考えているのか、知事の見解を伺います。

○小池知事 組織委員会の人事についてのお尋ねでございました。
 現在、組織委員会の職員の三割は都から派遣されていることはご存じのとおりでございます。そして要所要所に局長級、部長級を配して、業務の中核を担って運営を支えているところでございます。
 また、組織委員会の副会長一名、評議員二名の合計三名が東京都の副知事でありまして、都の立場から重要な事項の決定に関与しているところでございます。
 今後、組織委員会がそのガバナンスを強め、役割をしっかりと果たせるように、かなめとなる適材を派遣いたしまして、開催まであと三年と迫りました大会準備には万全を期してまいりたいと、このように考えます。
 また、先ほどのご質問で組織委員会の増収案についてのお話ございました。五十七億円の出資金が突然返ってきたわけでございますけれども、むしろ組織委員会がどのようにして増収できるのかということについても、東京都としてもしっかりバックアップ、連携していきたいと考えております。

○野上(ゆ)委員 ぜひ、この東京大会は、東京のみならず被災地を含めてオールジャパンで開催し、そして多くの皆様が参加する国際大会です。組織委員会の公明正大な組織運営につながるよう期待するものです。ぜひとも大会成功へと進めていただきたいと思っております。
 次に、オリンピック・パラリンピックにも多くのお客様がいらっしゃいますが、訪日外国人の旅行者の受け入れ環境整備について伺いたいと思います。
 世界の旅行市場の動向を見ると、国際旅行者数は年間十億人を突破しております。その成長率は三%から四%と見込まれております。我が国を訪れる外国人旅行者の数は、二〇一六年、前年比で二一・八%の増加、二千四百四万人となり、最多となっております。
 経済成長著しいASEAN、インドといったイスラム教徒が多い地域の海外渡航者数は、毎年一〇%近い伸び率を示しております。
 これら地域に加え、富裕層の多い中東諸国からの旅行者が有望な市場であることは論をまちません。これまで十分に進んでいなかったムスリム旅行者の受け入れ体制や整備充実をより一層進めていくことが重要というふうに考えております。
 例えば、彼らは食事の不安から、ハラールのインスタントラーメンなどを持参する方もいらっしゃるというふうに伺っております。滞在中に楽しみたい項目の中には、買い物に加えて日本食も挙がっていますが、日本でハラール食材を提供できる飲食施設はなかなか多くない、少ない状況です。ハラールレストランに関するリストや情報も不足をしております。
 世界遺産にも登録された日本の伝統食、和食は、豚由来の成分不使用、アルコール不使用でも多彩に提供できますので、魅力的な観光資源にもなるものであるというふうに考えます。ムスリム旅行者向けの提供体制を整えるとともに、PRしていくべきと考えます。
 ムスリム旅行者向けの食の対応をどのように進めていくのか伺います。

○藤田産業労働局長 都は、観光関連の事業者によるムスリム旅行者の受け入れ環境の整備を後押しするため、飲食店や宿泊施設などを対象とするハンドブックの配布やセミナーの開催により、基本的な知識や対応事例の紹介等を行っております。
 来年度は、ハラールなどに関するセミナーの内容や規模を充実し、ムスリムの観光客の受け入れ環境の向上に結びつけてまいります。
 また、ムスリム旅行者向けには、その受け入れに取り組んでいる飲食店などを案内するガイドブックを作成し、観光情報センター等で配布を行っております。
 今後は、ムスリムの方に人気のある和食の店舗の掲載をふやすなど、より利便性の高い内容の冊子としてまいります。
 これらにより、ムスリム旅行者にとりまして快適な受け入れ環境づくりを進めてまいります。

○野上(ゆ)委員 食の対応もそうですけれども、医療機関における対応も大変重要であります。
 例えば、ムスリムの女性は夫以外の男性に肌を見せたりさわらせたりするのはタブーとされております。宗教や文化、慣習を尊重し、できる限り配慮する必要があるというふうに考えます。
 また、患者の症状や既往症などの情報を得るためにも、コミュニケーションがとれなければ十分な対応ができません。
 来年度予算においては、医療機関における外国人患者受け入れ体制の整備に向けた事業が充実されておりますが、このような点にも十分配慮した取り組みを進めていくべきと考えますが、どのように取り組むのか伺います。

○梶原福祉保健局長 都は、医療機関におけます外国人患者の円滑な受け入れを支援するため、今年度から、ハラール食への配慮など、文化や宗教等の違いを踏まえた対応や適切なコミュニケーションの重要性などに関する研修を実施しております。
 また、受け入れ対応、患者サービスなどの五つの分類で評価する外国人患者受け入れ医療機関認証制度、JMIPの認証取得に取り組む医療機関を独自に補助しております。
 来年度は、新たに、外国人向けのパンフレットやホームページの作成、問診票や説明書等の翻訳、音声翻訳ソフトの導入などを行う医療機関への補助を開始し、医療機関における外国人患者の受け入れ体制の充実を支援してまいります。

○野上(ゆ)委員 例えば、旅行中も例外なく一日五回の礼拝をムスリムの方は行うそうですが、非常に苦労されているようであります。
 観光中にお祈りに利用できるスペースの確保はよくいわれておりますけれども、これに加えて、礼拝に先立って、蛇口から流れ出る水を用いて行うウドゥーがしやすい環境整備も求められていることは意外と知られてはおりません。現在、旅行者の多くはトイレなどの洗面台で足や手を洗うというか、非常に洗いにくく、大変苦労されているところです。
 これまでムスリムの旅行者の例をとりまして質問させていただいておりましたけれども、受け入れ側はできる限りの文化や宗教、あらゆる対応を行って、提供できるサービスを正しく伝えていくことが必要であるというふうに考えます。
 そこで、アラビア語が堪能で、かつてはアラファト議長のインタビューを初め、あるいは数々の重要人物への取材で親交を結んできた小池知事であります。先般もサウジアラビアのサルマン国王との面会をされたというふうに伺っております。ムスリムの生活や文化はもちろんですが、異文化コミュニケーション、そして外国の方の相手の心を開かせるコツについても熟達されているのではないかというふうに思います。
 日本の伝統、現代文化のコンテンツ、日本的優しさ、まちの清潔さといった魅力の上に、相手の宗教や文化的背景などの理解と配慮を重ねていくことで、何度も来たくなる魅力ある都市へと東京を磨き上げていく必要があるというふうに考えます。
 東京における外国人旅行者受け入れ拡大に向けた知事の見解を伺います。

○小池知事 インバウンド観光客をもっとふやすためにも、イスラムにも目を向けよといったご趣旨のご質問だったと思います。
 東京が世界各国からの旅行者にとって安心して滞在できる観光地となるように、多様な文化や習慣などにもしっかりと配慮をする、そして、受け入れの環境を整えるということが大切であります。
 このため、駅、そして、まち中での多言語対応の充実やトイレの洋式化など、それから先ほどはウドゥーという礼拝の際のさまざまな決まり事等がございます、水回りを確保するといったことなど。それから、一日五回の礼拝は、サウジアラビアの聖地といわれるメッカの方向に向かって礼拝をするわけでありますけれども、大体ホテルには、キブラといいまして、方向、矢印が書いてあるんですね。こっちがメッカの方向ですよというのを示すというのを、それぞれの部屋にそのシールが張ってあるというふうなことなども、まさしく細やかな気配りを持っていくことの一つかと思います。
 また、ハラール、これはイスラムの教えにのっとった、よいこととしてのハラールでございますけれども、食品などもそうであります。それに対しての理解をしっかりと持って、ムスリムの旅行者をしっかりと受け入れることのできるように、都内の飲食店、そして宿泊施設が基礎となる、このハラールの基礎であったり、イスラムの基礎であったり、それからノウハウ、それから対応の具体的な事例などを共有できるような、都といたしまして、対応を後押ししていきたいと考えております。
 ご承知のように、イスラム人口は世界の中で二十億を超えております。最大がインドネシア、二億を優に超えております。このお客様をどうやって安心して、また楽しく日本を、東京をエンジョイしてもらうかということを考えるのは、私たちの目標でありますインバウンド、訪都観光客二千五百万人に近づくものだと思います。
 こうした取り組みを展開いたしまして、海外から幅広い旅行者を数多く迎え入れまして、世界で最高レベルのPRIME観光都市・東京への発展を目指してまいります。

○野上(ゆ)委員 知事の答弁にもありましたけれども、安心して東京に来ていただきたい。そのためには、やはり二〇二〇年の東京大会に向けた危機管理体制も必要であるというふうに考えます。
 政府は、訪日外国人観光客を二〇二〇年までに年間三千万人というふうに目標を掲げております。都も、今答弁がありましたけれども、先日発表されましたPRIME観光都市・東京において、訪都外国人旅行者数を二〇二〇年に二千五百万人、二〇一五年の二倍を掲げております。
 外国人旅行者の増加は経済的にも好ましい限りでありますが、しかし一方で、感染症を初めとするリスクの増大にも目を向ける必要があります。海外の感染情報を常に監視し、そのリスクに応じた対策を講じていくことは当然です。
 一方で、一たび感染症が出てしまった場合は、パンデミックが起きてしまった場合、一刻も早く感染源や感染ルートを特定し、感染症が拡大しないよう、またウイルスに感染しないよう対策を講じていく必要があります。
 来年度予算では、疫学調査等支援ツールの整備が新規事業として掲げられておりますが、増大する訪日外国人が感染症になった場合にも有効に活用できるよう取り組んでいく必要があると考えます。
 そこで、今後、東京二〇二〇大会に向けて、外国人対応を含めた感染症対策についてどのように取り組んでいくのか伺います。

○梶原福祉保健局長 来年度、都は、感染症発生時に保健所が実施する疫学調査や蔓延防止のための保健指導を医療機関や患者の自宅等でタブレット端末を用いて行うことができるアプリを開発いたします。
 このアプリは、疾患別に表示された調査項目を端末から入力することで、疫学調査の迅速化を図りますとともに、マスクや手洗いなどの指導内容をイラストでわかりやすく表示し、適切な保健指導につなげることを目的としておりまして、外国人患者も想定し、多言語対応とする予定でございます。
 また、都のホームページで提供している感染症の発生状況等の情報も十三の言語に翻訳をして発信することとしておりまして、二〇二〇年東京大会に向けまして、外国人への対応も含め、感染症対策を一層強化してまいります。

○野上(ゆ)委員 今の現状では、例えば想定人数に含まれていない観光客や外国人が被災した場合には、その地域の病院だけで対応するのが非常に難しい、できない状況であります。非常時のための平時の備えは、災害対策だけのためではありません。多くのお客様をお迎えし、開催するこの東京大会に向けての備えでもあります。
 ふなれな外国人観光客をどう災害から守るのか、オリンピック開催中のテロや大規模事故、日本に存在しない、免疫がない、外国からのウイルスなどの感染によるパンデミックから東京をどう守るのかを想定した医療体制が必要です。
 三月十一日で東日本大震災から六年が過ぎました。都は、災害時の連携体制の充実に向け、どのように進めていくのか伺います。

○梶原福祉保健局長 都は、区市町村、地区医師会、地区薬剤師会、医療機関などで構成をいたします地域災害医療連携会議を二次保健医療圏ごとに設置し、災害医療コーディネーターを中心として、緊急医療救護所の設置、運営、病院と診療所との役割分担や連携など、圏域内の体制づくりを進めております。
 また、昨年度策定した災害時医療救護活動ガイドラインでは、大規模災害時には他の医療圏からの傷病者の受け入れも想定されることから、搬送ルールの設定など、具体的な連携方法についても連携会議の中で検討することとしております。
 今後、さまざまな場面を想定した図上訓練や総合防災訓練を通じた検証を行い、災害医療コーディネーターの意見も踏まえ、必要に応じてガイドラインを見直しながら、災害時の連携体制を充実させてまいります。

○野上(ゆ)委員 こうした仕組みをしっかりと活用し、実際に運用できるように訓練をしていただき、医療チームの配置や医薬品の配分など、迅速に、的確に行うこと、また、医療機関だけではなくて、地域の医療従事者の方にもご参加をいただいたり、皆さんに広くお知らせして、大規模災害への対応、その先にある、やはり東京大会に向けての備えでもありますし、万全を期していただくことを希望いたします。
 危機管理の関連から、次に、サイバーテロ対策について伺います。
 近年、公的機関や企業を狙ったサイバー攻撃が相次いでおります。昨年二月、代表質問に対して総務局長は、東京都CSIRTを設置し、体制の強化を図っていくと答弁されています。
 そこで私は、こうした体制強化を踏まえ、東京二〇二〇大会を見据え、さらにサイバーセキュリティー対策の強化を図っていくべきと考えますが、見解を伺います。

○多羅尾総務局長 東京二〇二〇大会を見据え、サイバーセキュリティー対策については計画的かつ迅速に取り組む必要があると認識しております。そこで、昨年度策定したロードマップに基づき、対策の強化を進めているところでございます。
 具体的には、メールやウエブ閲覧におけるセキュリティーを強化し、サイバー攻撃などを早期に発見する自治体情報セキュリティークラウドの運用を、都については今月末より、区市町村についても順次開始してまいります。
 また、サイバー演習を充実させ、インシデント対応に当たる都職員のスキル向上を図ってまいります。
 さらに、東京二〇二〇大会に向け、国、警視庁、組織委員会等との連携体制を一層強化し、全体として漏れのないサイバーセキュリティー体制を構築してまいります。

○野上(ゆ)委員 危機管理という観点からいえば、さらに私は、東京二〇二〇大会開催期間中に首都直下型地震が発生した場合をも想定した対策を講じていく必要があるというふうに考えております。
 現在、都では、会場周辺に着目したバリアフリー化や無電柱化に取り組んでおりますが、同様に、オリンピック会場、あるいはその周辺の宿泊施設などの防火安全対策を徹底して取り組んでいくことも必要であるというふうに考えます。
 また、日本の消防救急は一一九番通報であることなど、外国人旅行者に対し、地震や火災などに関する情報を積極的に提供していくべきというふうに考えております。
 そこで、東京二〇二〇大会を見据えた防火防災対策について消防庁の見解を伺います。

○高橋消防総監 東京消防庁では、東京二〇二〇大会に向けた防火防災対策として、主要な宿泊施設、百貨店など約一万六千対象を選定し、順次立入検査を実施しているところでございます。
 また、競技会場等に対しましては、法令基準に加え、監視カメラを活用した火災の早期発見、外国人や障害者などの避難を考慮した対策を推進しております。
 さらに、来年度は一一九番通報や地震発生時の行動要領について、多言語対応のリーフレットや消防広報ビデオを制作し、宿泊施設や駅舎等への配布を予定しております。
 今後とも、これらの取り組みを推進することにより、大会開催時の都民及び来訪者の安全を確保してまいります。

○野上(ゆ)委員 現在、都は、東京二〇二〇大会に訪れる全ての人の安全・安心を確保するため、庁内横断的な安全・安心部会を設け、治安対策、サイバーセキュリティー、災害対策、感染症対策の視点を洗い出し、各種事態を想定した対処要領の策定と実践的な訓練を実施するというふうに伺っております。
 この対処要領は二〇一八年に策定としておりますが、大会直前まで内容の充実を図り、新たなリスクにも対応できる要領にしていくことが重要です。
 そこで、東京二〇二〇大会の安全・安心に向けた知事の見解を伺います。

○小池知事 東京の安全・安心なくして大会の成功はないと、このように確信をしております。開催都市として、万全の体制で世界から訪れるアスリート、そして大会関係者、観客の安全・安心を確保していかなければなりません。
 そのため、現在では、治安対策、サイバーセキュリティー、災害対策、感染症対策、この四つの視点から庁内横断的な検討を進めております。そして、さまざまな事態を想定いたしまして、どうするかという対処要領、ご指摘のように平成二十九年度中に策定をいたします。
 こうして策定した対処要領をベースにして実地訓練を重ね、また新たなリスクにも対応できるように、要領の検証であるとか見直し、そして実効性を高めていくなど、積み重ねてまいりたいと考えます。
 それから、二〇一九年には、ご承知のようにラグビーワールドカップが行われるわけでございますけれども、そのためにも実施するさまざまな取り組み、ここから得られる知見も二〇二〇年大会に生かせるものと考えます。
 セキュリティー対策に大きな役割を果たす国とも十分連携をしながら、大会時の危機管理体制の充実強化に、開催都市の長として万全を期してまいりたいと考えております。

○野上(ゆ)委員 ぜひとも二〇一九年ラグビーのワールドカップ、そして二〇二〇年の東京大会、そしていつ起こるかわからない首都直下型地震に備えて、危機管理体制を万全に整えていただくよう求めておきます。
 次に、環境政策について伺います。
 知事は、政策の大きな柱である三つのシティーのうちの一つにスマートシティーを示し、そのトップにスマートエネルギー都市の実現を据えております。
 東京の都市機能、都民生活は、新潟や福島といった原子力発電所立地地域にこれまで支えられてきました。また、東日本大震災から六年が経過いたしました。原発に頼らない社会を実現するために、東京都は何をしてきたのか、これから何をしていくのか、これを今示さなければならないというふうに考えております。
 福島第一原子力発電所事故による電力不足を契機として、私たちが議員提案し、成案となった省エネ条例に基づき、より一層の省エネ、再エネを進めるべきというふうに考えております。
 また、エネルギーの安定確保の観点からも、都が掲げる二〇二四年までに再エネ比率を二〇%、二〇三〇年までに三〇%に高めるという目標は重要であります。需要、供給両面から達成を図るべきです。
 FITで太陽光発電は急速に普及いたしました。二〇一一年から二〇一四年で三倍近くに増加、そしてパネル価格の低下で新築住宅では標準仕様とされることも多くなっております。
 一方、太陽熱利用などは余り普及されておりません。私が以前から主張しております家庭やオフィスビルにおけるエネルギー消費の半分を占める熱に着目した太陽熱利用促進は、コストも低く、電力消費量そのものを削減する取り組みであります。二〇二〇年を考慮した中期目標達成のため、着実に取り組みを進めるべきですが、今後の取り組みについて伺います。

○遠藤環境局長 都は、再生可能エネルギーの導入を拡大するため、東京ソーラー屋根台帳を活用した住宅等への太陽熱、太陽光発電の普及促進や、事業者向けに自家消費型の再生可能エネルギー設備への補助等を実施しております。
 また、キャップ・アンド・トレード制度において、低炭素電力を選択する仕組みを導入し、電力の需要側からの取り組みにより、再生可能エネルギーの供給拡大を促しております。
 さらに、エネルギー消費そのものを削減していくための取り組みとして、家庭の白熱電球とLED電球の交換促進事業や、エコハウスの普及等を進めてまいります。
 こうした需給両面からの取り組みにより、二〇二〇年に向けた実行プランにおいて定めた再生可能エネルギーに係る目標の達成を図ってまいります。

○野上(ゆ)委員 都は、世界で最も環境負荷の少ない都市東京の実現に向けて、都みずから率先行動の一つとして、都有建築物に省エネ・再エネ東京仕様を適用し、東京都建築物環境計画書制度の最高評価を目指してきました。
 私は、環境基本計画で意欲的な目標を定め、都民に環境行動を促している東京都は、最新の省エネ技術等の動向を十分注視して、都有建築物のさらなる環境負荷低減を図っていくべきと考えますが、見解を伺います。

○武市財務局長 都はこれまで、都有建築物の改築等に当たりまして、高い省エネ性能を目指した設計の標準仕様を策定し、順次改正しながら最新技術を導入するなど、率先して環境負荷の低減を図ってまいりました。
 具体的には、屋根、外壁の断熱性能の向上、LED照明の標準化、自然換気システムや高効率な設備機器の導入等に加えまして、太陽光発電設備を積極的に設置しております。
 本年四月から、建築物環境計画書制度における一次エネルギー消費量の低減率が最高評価で一一%から二五ないし三〇%に引き上げられますが、現在の取り組みにより、引き続き最高評価を達成できると考えております。
 今後も、技術の進展を踏まえ、省エネ・再エネ東京仕様のさらなる充実を図り、スマートシティーの実現に向けて取り組んでまいります。

○野上(ゆ)委員 また、非住宅建築物の対策も重要であるというふうに考えております。
 最新の省エネ技術を総合設計した建築物で、再生可能エネルギーの利用などをあわせてネット・ゼロ・エネルギーとするのがZEBですが、クリーンな企業イメージと技術力のシンボルとして、本社ビルなどをZEBとしている企業があります。
 都においても、東京の環境政策の先進性をPRすべく、ZEB化に取り組み、都民にアピールすることは意義が高いものというふうに考えております。
 都有施設のZEB化では、三万点以上の重要文化財を保有する東京都公文書館をZEB化実証建築として整備するというふうに伺っております。
 公文書館は、貴重な文書を次世代に良好な状態で引き継ぐため、三百六十五日二十四時間、一定の湿度、温度をキープする必要があります。ZEB化による環境貢献度は高いものというふうに考えております。
 都施設のZEB化を積極的に進めていくべきと考えますが、見解を伺います。

○武市財務局長 ゼロ・エネルギー・ビルディング、ZEBは、大幅な省エネ化と再エネ利用によりまして、一次エネルギーの年間消費量をおおむねゼロとする究極のエコ建築物でございます。
 この導入に向けまして、東京都公文書館におきましては、東京都で最初のZEB化実証実験建築として、来年度、グリーンボンドを充当いたしまして、工事に着手することといたしました。屋根、外壁の二重化等により高断熱化を図るほか、最新の高効率機器、空調や照明の最適制御技術など、さまざまな省エネ技術を導入いたします。
 再エネ利用では、建築技術革新支援事業で民間から提案がありました、年間を通して効率的な発電が見込める大容量の太陽光パネルを設置いたします。
 これら技術導入につきまして、施工性や運用時における維持管理性、費用対効果等の課題を検証し、その結果をこれからの都有建築物のZEB化推進に生かしてまいります。

○野上(ゆ)委員 既にパリ協定が発効し、日本も締結しているわけであります。新しいルールでの環境政策に向けて世界が動き出す中、我が国のエネルギーベストミックス実現に重要な役割を果たすのが、水素エネルギーです。
 知事は国会議員時代、水素議連の会長を務めておられたというふうに伺っております。資源輸入国である我が国のエネルギー安全保障の観点から活動され、エネルギー基本計画に初めて本格的に水素を盛り込むことにつなげるなど、東京都よりも早くから水素関連政策を牽引してこられたと伺うところです。
 私が前から主張してきましたCO2フリー水素、すなわち再生可能エネルギーを使った水素技術の普及は、エネルギーのベストミックス実現に鍵を握っているというふうに考えております。再エネの弱点である天候に左右される点も克服できるものであり、しっかりと取り組むべきであると考えます。
 IPCCのパチャウリ議長は、温暖化をとめる技術は既に人類の手の中にある、ないのはやる気だけだと述べておられます。
 都は、環境分野で先進的な取り組みを進めてきましたが、五十年、百年先の未来に対し、私たちの世代ができることを、先進的な施策が常に求められております。
 都民は、環境大臣を務めた小池知事に環境施策のエキスパートであるとの印象を持ち、斬新な施策を期待しています。小池知事のもと、東京の環境施策を次のステージへ進めていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。

○小池知事 私は、この東京を世界一のスマートシティーにしていきたいと考えております。ご指摘のように、パリ協定が発効いたしまして、世界の気候変動対策は実行段階に移っていると、このように思います。新しいアメリカの政権がどのような方向に行くのかについては、まだよくわかりません。
 昨年のCOP22で、温室効果ガスを大幅に削減するには、あらゆる主体の行動が重要という認識が共有されたところでございます。こうした中で、世界の温室効果ガスの七割を排出しているのは都市でございまして、その都市の役割というのは極めて重要で、東京のような大都市が率先して排出削減に取り組む必要があるかと思います。
 先ほどから環境局長の方から環境対策についてお話をさせていただいておりますけれども、それに加えて、次世代のエネルギーである水素の活用についてもお触れいただきました。燃料電池自動車や燃料電池バスなどの導入支援、そして水素蓄電の調査、温室効果ガス削減の切り札ともなりますCO2フリー水素--これは究極の理想形だと思いますが、それに向けての研究を進めてまいります。
 二〇二〇年大会とその先を見据えまして、我が国が有しております技術を存分に活用しながら、世界をリードするスマートエネルギー都市の実現に向け、大義と共感をしっかりと掲げながら、全力で取り組んでまいります。

○野上(ゆ)委員 時間も余りないので、最後に、教育政策について何点か伺わせていただきます。
 私たちは、以前から教育の無償化に取り組み、当時の民主党政権で公立高校授業料の無償化を実現させました。しかしながら、私立高校における授業料無償化は積み残しとなっており、国会で私立高校生徒への教育費負担軽減のために支援充実を求める附帯決議を付して、実現に取り組んでまいりました。
 来年度、都は、国制度の上乗せとして、私立学校の特別奨学金の充実に取り組み、教育の無償化が進むことになりました。大変評価するものであります。
 私立高校授業料の無償化に対する知事の見解を改めて伺います。

○小池知事 将来を担う子供たちの希望ある未来のために、教育の機会の格差、この解消は重要な課題でございます。教育への投資は、まさに未来への投資と考えます。
 都は、国の就学支援金制度が始まる以前から、特別奨学金により、私立高等学校などに在学する生徒の保護者の授業料負担の軽減に努めてまいりましたが、教育費の公私間格差は依然として存在しております。
 そこで、都内の高校生の約六割が私立に在学するという、私立学校が公教育に果たす役割を踏まえまして、年収約七百六十万円未満の世帯に対して、国の就学支援金とあわせて平均授業料額まで支援できるよう、特別奨学金の支給額を大幅に拡充するものでございます。
 東京の未来を担う人に焦点を当てた支援を拡充して、誰もが個性と能力に応じて希望する教育を受けられる、そのような環境を整えてまいります。

○高橋副委員長 野上ゆきえ副委員長の発言は終わりました。(拍手)

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