予算特別委員会速記録第五号

○早坂委員長 小松久子委員の発言を許します。

○小松委員 最後の質問者です。
 まず、認知症問題について伺います。
 認知症の高齢者が列車にはねられて鉄道会社に損害を与え、家族が責任を負うべきか争われた訴訟で、今月の初め、最高裁判決は、同居の夫婦だからといって、直ちに監督義務になるわけではなく、介護の実態を総合考慮して責任を判断すべきという初めての判断を示し、鉄道会社側の請求を棄却しました。認知症の家族の苦労や努力が理解されたと安心いたしましたが、一方で、認知症になっても安心して外出できる社会の体制づくりが求められていると考えます。
 広く都民に、認知症について正しい知識を持ち、認知症の人とのつき合い方を理解して応援してもらう、そのことは、認知症の人が在宅生活を続ける上で非常に重要です。
 認知症高齢者が今後急増していくことが見込まれる中で、都として、認知症の人を支えていく取り組みが必要と考えますが、知事の所見を伺います。

○舛添知事 認知症の方は、記憶障害や認知障害から不安に陥りまして、その結果、周りの人との関係が損なわれたり、被害に巻き込まれてしまうことも少なくありません。
 しかし、周囲の理解やさりげない気遣い、支えがあれば穏やかに生活することが可能だといわれております。
 そのため、都はこれまで、都民の方々に認知症に対する理解を深めていただけるように、シンポジウムを開催するほか、認知症チェックリストを盛り込んだ普及啓発用パンフレットを配布してまいりました。
 また、行方不明となった高齢者を早期に発見するネットワークの構築や、認知症サポーターの養成に取り組む区市町村を支援しております。
 今月の三十日には、タクシー、コンビニなど十六の団体や事業者と、高齢者等の見守りや認知症の方への支援に関する協定も締結することとしておりまして、今後とも、認知症の方とその家族が地域で安心して暮らすことができますように、社会全体で見守り支える取り組みを積極的に推進してまいります。

○小松委員 成年後見制度は、認知症等により判断能力が十分でない人の意思を尊重し、本人にかわって財産管理や契約を締結することで、本人を保護する制度です。
 今後、認知症高齢者の増加に伴い、成年後見の活用もますます進むことが見込まれておりまして、親族や専門職後見人ではない、いわゆる市民後見人を養成し、後見活動の担い手を確保することが重要と考えます。
 そこで、市民後見人の養成に関する取り組みについてお伺いいたします。

○梶原福祉保健局長 都におきましては、平成十七年度から、区市町村が推薦する都民等を対象に、後見業務に必要な基本的知識を習得するための基礎講習を実施し、平成二十五年度までに五百九十名が修了をいたしております。
 平成二十六年度からは、この基礎講習を含め、市民後見人の候補者の募集、選考、実習活動、選任に向けた調整、選任後のフォローなどを区市町村が一貫して実施しておりまして、都は包括補助で支援しております。
 平成二十六年度の基礎講習修了者は二百二名、平成二十七年度は二百五十名の見込みでございまして、今後も市民後見人が着実に養成されるよう、区市町村の取り組みを支援してまいります。

○小松委員 次に、社会的養護についてです。
 児童虐待の加害者の六割以上が実親ですが、子供を虐待してしまう親も養育困難を抱える親でも、自分の子を里親に委託することには消極的だといいます。
 その一方、施設入所は抵抗が小さいといい、であれば、家庭的養護を六割にという目標の達成のためにも、せめて児童養護施設より小規模で家庭的なグループホームでの養育を推進していくことが必要です。
 子供の暮らしを考えたとき、グループホームで働く職員の役割は重要ですが、児童養護施設やグループホームの職員の勤続年数が短い傾向があると現場から聞いています。職員が交代してしまうと、入所している子供は見捨てられたと感じてしまう。また、退所した子供が施設に頼ろうとしても、担当職員がやめていて相談もできず、孤立感を深めるとも聞きました。
 子供たちがグループホームで安心して生活を継続していくためには、そこで働く職員の確保、定着を図っていく必要があると考えます。都はどのような支援を行っていくのか伺います。

○梶原福祉保健局長 都は現在、グループホームで生活する児童への支援体制の充実を図るため、家事援助などの日中業務等を行う補助者や児童の養育に関する助言指導や緊急時等の後方支援を行う職員の増配置経費など、独自の支援を行っております。
 来年度は、グループホーム等を設置する児童養護施設での職員の確保、育成を支援するため、グループホーム等を三カ所以上設置する場合、助言指導や後方支援を行う常勤職員を増配置できるよう、運営費への補助を増額いたしますとともに、箇所数に応じた加算を行うこととしております。

○小松委員 都は、二〇一二年度から自立支援コーディネーターを設置し、入所中から退所後まで継続的な相談支援を行うとともに、施設職員に進路指導等に関する助言を行うほか、区市町村や地域で活動しているNPO法人等の社会資源とも連携しながら、一人一人の状況に応じた支援を行っていると聞いています。
 施設の子供の多くは、高校卒業後、就職先を決めて退所しますが、自立の準備や生活環境の整備が不十分なために、最初の就職先を早々にやめてしまうケースも多いと聞いています。
 このような子供たちが、自分がやりたい仕事を見出したとき、退所後でも、美容師や看護師などの資格取得のために専修学校へ進学するなど、チャレンジできるような支援が必要と考えますが、自立生活スタート支援事業などの取り組みについてお伺いいたします。

○梶原福祉保健局長 都は現在、独自に、児童養護施設退所者等に対しまして、大学や専修学校等の入学や技能習得、転居等に必要な資金を貸し付ける自立生活スタート支援事業を実施しており、卒業や一定期間就業を継続した場合には償還を免除しております。
 この貸し付けは退所後五年以内の方を対象とし、自立支援コーディネーター等と連携しながら貸し付けの決定を行っております。
 来年度は入学時の貸し付けを二年次の授業料等まで拡大いたしますとともに、国の補正予算で創設されました家賃や生活費などを貸し付ける自立支援資金貸付事業も開始することとしており、この貸し付けにおきましても、一定期間就業を継続した場合には償還を免除する予定でございます。

○小松委員 続いて、ひきこもりについてです。
 都の実態調査では、都内の十五歳から三十四歳までのひきこもり状態の若者は、およそ二万五千人と推定されています。
 二〇一四年には、ひきこもりに悩む家庭への訪問相談が開始されました。全区市町村に申込受付窓口を置き、若者やその家族を支援するさまざまな相談支援機関につないでいます。
 また、将来的には、東京の子供、若者がひとしく支援を受けられるよう、区市町村が支援体制を整備することを目標としていると聞いています。
 そこで、訪問相談の実績とともに、都は、社会的自立に困難を抱える若者への支援に取り組むに当たり、区市町村と今後どのように連携していくのか、見解を伺います。

○廣田青少年・治安対策本部長 東京都ひきこもりサポートネットの訪問相談の実績は、平成二十六年六月の事業開始から本年二月末までで八十件となっております。
 相談においては、臨床心理士が医師と連携してきめ細かな対応に努めており、国の就労支援機関である地域若者サポートステーション等につなげた事例やアルバイトを始めた事例等があります。
 この取り組みから得られたノウハウや自治体の先進的取り組みについては、情報交換会等の機会を通じて区市町村に還元しております。
 また、東京都子供・若者計画の策定を契機に、区市町村の子供・若者計画の策定と子供・若者支援地域協議会の設置を促進することで、若者の自立を支援する体制整備を都内全域で推進してまいります。

○小松委員 それでは、水道事業について伺います。
 先ごろ、今後五年間を計画期間とする東京水道経営プラン二〇一六が出されました。東京水道施設整備マスタープランに基づいて、老朽化した浄水場の更新が始まります。
 浄水場の更新工事の取り組み状況について伺います。

○醍醐水道局長 将来にわたりまして安定給水を継続するためには、災害や事故に伴い浄水場が停止するリスク時にも給水を維持できる施設能力を保有する必要があります。
 そこで、浄水場更新に当たりましては、更新工事に伴い低下する施設能力を補うため、あらかじめ境浄水場及び三郷浄水場に代替浄水施設を整備していきます。
 今後、境浄水場は平成二十九年度から、三郷浄水場は平成三十年度から、本体工事に着手する予定です。

○小松委員 多摩地域では、地下水が水道水源として使われています。しかし、この十年ほど揚水量がどんどん減少しています。一日平均二十八万立方メートル近く使われていましたが、二〇一四年度には二十万立方メートルを割り込んでしまいました。
 この間、井戸の掘りかえやポンプの補修工事などが実施されていますが、揚水量復活の見通しについて、最後にお伺いいたします。

○醍醐水道局長 将来の揚水量につきましては、各井戸水源の水位や水質、維持補修工事の状況等、井戸の状態に左右されるため、今後の見通しを明示することは困難でございます。
 地下水につきましては、地盤沈下や水質の動向等に十分配慮しつつ、これまでと同様適切に活用していきます。

○早坂委員長 小松久子委員の発言は終わりました。
 以上をもちまして付託議案に対する締めくくり総括質疑は終了いたしました。
 お諮りいたします。
 第一号議案から第二十七号議案までに対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○早坂委員長 異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑はいずれも終了いたしました。
 なお、明日は午前十一時から理事会を控室一で、また、午後一時から委員会を本委員会室で開会いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後七時三十八分散会

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