予算特別委員会速記録第四号

   午後三時二十五分開議

○早坂委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 大場やすのぶ委員の発言を許します。

○大場委員 初めに、子供の健全育成、特にいじめの問題について、何点か伺います。
 子供たちは、かけがえのない貴重な存在であります。特に、今後一層高齢化が進むことが見込まれる中、時代の先端を進む若者の存在は、社会の活力を維持し、安心して暮らせる地域社会であり続けるという点でも、なくてはならないものであります。
 このためには、子供たちには、思いやりや他者と協働する姿勢など、豊かな心を持ち、心身ともに健全でバランスのとれた人間へと成長させることが重要となります。
 しかしながら、少年による重大事件や、いじめ、暴力行為など、生命にかかわる重大な案件が依然として後を絶ちません。また、残念ながら、自身の悩みや家庭の問題などで、子供たちがみずからの命を絶ってしまうという事案も耳にします。
 日本の将来を担う宝ともいうべき子供たちが、他者を傷つける、あるいはみずからの命を絶つといった重大な問題は、社会全体で考えながら子供たちを育てていくことが私は重要だと考えています。
 この点について、知事の見解を伺います。

○舛添知事 大場委員ご指摘のとおりで、広島の府中で自殺した中学生、あれは本当にひどいミスだと思いますけれども、大変心を痛めております。
 そういうようなことで、いじめや暴力行為、自殺、本当に子供たちをめぐるさまざまな問題が起こっておりますけれども、生命や心身の健全な成長、これに重要な影響を及ぼすものでありまして、絶対にこういうことがあってはならないと思っております。
 どういう背景があるのかと考えてみますと、子供たちの心の問題、それから人間関係などの要因があると思います。学校と福祉分野の人材が連携して、まず相談体制の充実を図る、それから、さまざまな機関が協力して、子供たちの心のケア、それから立ち直りを支援するような取り組みを推進していくことが必要だと思っております。
 加えまして、簡単に人を殺すというようなことが起こっていますので、子供たち自身が、命の大切さと、それから友情のとうとさ、こういうことを、他人ごとじゃなくて自分の問題として話し合うことも必要ですし、実際にそういうことに基づいて行動をするということが必要だと思います。みずから、そして他人、自他の価値や尊厳を重んじる心を育んでいく必要があると思います。
 そのためには、学校、家庭、地域、それから関係機関、社会が総がかりでこの問題に対応しないといけないと思いますので、東京都としても全力を挙げて取り組んでまいります。

○大場委員 ただいま、こうした問題には、社会全体で取り組んでいくというご答弁を知事からいただきました。
 特にいじめ問題については、学校現場において着実に取り組むべき課題の一つであります。
 平成二十五年九月施行のいじめ防止対策推進法を踏まえ、翌二十六年六月には東京都いじめ防止対策推進条例が成立し、社会全体の力を結集して、いじめ問題の解決に向けて取り組む体制が整備されました。
 また、公立学校においては、条例成立にあわせて策定されたいじめ総合対策に基づいて、さまざまな取り組みを組織的に推進することが求められています。
 我が党は、このいじめ総合対策の策定に当たって、いじめは、人間の尊厳を傷つける許されない行為であることから、学校は、いじめの未然防止や早期対応に全力を尽くすべきであると訴えてきました。
 法令やいじめ総合対策に基づき、学校におけるいじめ防止の取り組みはどのように推進されているのか伺います。

○中井教育長 都教育委員会は、いじめ防止対策推進法の規定に基づき設置された組織である学校いじめ対策委員会の取り組みが各学校で適切に行われるよう、これまで、校長や生活指導主任を対象とした研修等を通して、いじめ総合対策の周知徹底に努めてまいりました。
 これを受けて、各学校では、児童生徒に、いじめは絶対に許されないことを理解させる授業の工夫、いじめの早期発見のための定期的なアンケートの実施、スクールカウンセラーの活用による学校教育相談体制の充実など、さまざまな取り組みが行われております。

○大場委員 学校が、いじめ問題の解決に向けて全力で取り組んでいることに敬意を表します。
 一方で、全国的に、いじめにより重大な事態に至ってしまう事例も少なくありません。
 こうした事例の中には、いじめへの対応を学級の担任が一人で抱え込み、同僚の教員や上司にも報告していなかったという報道がありました。
 また、いじめを受けている本人だけではなく、友達がいじめられているのを見た子供も、学校の教員や身近な大人に伝えられなかったために、いじめが重篤化してしまったという事例を聞いたことがあります。
 都においても、こうした状況が発生しないよう、学校の取り組み状況を把握し、課題を解決していくことが必要です。
 いじめ総合対策のさらなる推進に向けて、取り組みの改善を図っていくべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。

○中井教育長 委員ご指摘のとおり、いじめ防止等の対策が確実に行われるようにするためには、学校の取り組みが形骸化することのないよう、専門的な視点も含め、さまざまな観点から不断の検証を行い、改善を図ることが必要でございます。
 そのため、都教育委員会は、毎年度実施している調査を通して各学校の課題を明らかにし、条例により設置された教育委員会の附属機関であるいじめ問題対策委員会で、その課題を解決する方策について検討してまいりました。
 今後、教員の意識向上、学校いじめ対策委員会の機能強化、相談体制の充実等について議論を深め、本年十二月を目途に、いじめ総合対策を改定いたしてまいります。
 また、子供がいじめを見て見ぬふりをせず主体的に行動する態度を育成するため、新たにホームページやアプリケーションを開発するなど、いじめ防止の取り組みを一層推進してまいります。

○大場委員 いじめ総合対策の改定が、いじめ問題の解決に一層の効果をもたらすことを期待して、次の質問に移ります。
 昨年秋、大阪府八尾市の中学校の運動会で、巨大ピラミッドが崩れ、下敷きになった生徒が腕を骨折する事故が起こりました。この事故をきっかけに、全国各地で組み体操の危険性や安全対策上の問題が指摘されるようになり、今では、大きな社会問題へと発展しています。
 こうしたことから、文部科学省は、三月中に、組み体操の事故防止のための方針を示す考えを明らかにしました。その後も、名古屋市が来年度からピラミッドやタワーの高さを制限したり、流山市が運動会の組み体操を全面的に廃止したりするなど、組み体操に関する対策を打ち出す動きが相次いでいます。
 組み体操には、児童生徒がわざをつくり上げる過程で、コミュニケーション能力や団体力を高めたり、一体感や達成感を味わう中で自信をつけたりするなど、さまざまな教育効果が認められています。しかし、教育効果を求める余りに、児童生徒の能力を超えたわざに挑戦させ、児童生徒に大きなけがを負わせるようなことがあったとしたら、本末転倒です。
 運動会などで行われる組み体操は、何よりも安全を第一に優先し、安全確保に軸足を置いた対策が必要と考えますが、見解を伺います。

○中井教育長 学校の体育的活動においては、児童生徒の安全が最優先になされなければなりません。
 しかし、日本スポーツ振興センターによれば、平成二十六年度に都内国公私立学校の運動会等で行われた組み体操の事故は、小学校で五百六十三件、中学校で百四十六件、高等学校で十九件と報告されております。
 こうしたことから、都教育委員会は、本年一月、体育的活動における安全対策検討委員会を設置し、現在、組み体操を中心に、安全対策のあり方を検討しております。その検討結果とともに、ただいまいただいたご意見等も参考にさせていただきながら、本年三月末までに、都教育委員会としての対策の方向性を打ち出してまいります。

○大場委員 よろしくお願いいたします。
 次に、高齢者の就業支援について伺います。
 少子高齢化が進展し、我が国の総人口が減少局面を迎える中、六十五歳以上人口が総人口に占める割合である高齢化率は、二〇六〇年には四〇%近い水準となることが推計されています。
 こうした中で、東京において、働く意欲のある高齢者が、知識や経験を生かし、年齢にかかわりなく働き続けられるような環境を整備していくことは、一億総活躍社会を実現する上で重要であります。
 都ではこれまで、高齢者の職場体験事業や、地域のNPO活動など社会参加に向けたサポートを実施するなど、多様なニーズに応じた就業支援を実施していますが、こういった事業に対するニーズは、潜在的なものを含め、非常に高いのではないかと考えます。
 しかし一方で、こうした高齢者向けのさまざまな就業支援があることを知らない、または、働くきっかけをつかめないままでいる高齢者も大勢いるのではないでしょうか。
 このような高齢者の潜在的な就業ニーズを掘り起こし、長年培ってきた知識と経験を生かして働くことができるよう、都はしっかりと後押しすべきであると考えますが、来年度の取り組みを伺います。

○山本産業労働局長 高齢者の就業に関しては、本人の意欲や健康状態など個人差があることから、都はこれまで、企業現場でのフルタイム就業や地域での短時間の就業など、高齢者のニーズに応じた多様な就業への支援を行ってまいりました。
 来年度は、地域における高齢者の潜在的な就業ニーズを掘り起こすため、都は新たに、八カ所程度の区市町村と連携し、地域のシニア層を対象にした事業を開始いたします。
 具体的には、再就職やNPOへの参加などをテーマとしたセミナーや個別相談を行うことにより、高齢期の働き方のイメージづくりと理解を促すとともに、就業支援機関等の情報提供も行ってまいります。

○大場委員 高齢者が身近な区市町村でセミナーや個別相談を受けることで、高齢期においても、それぞれの事情やニーズに合った多様な働き方ができることが浸透していけば、能力や経験を生かして働く高齢者がふえていくことが期待できるので、ぜひともしっかり事業を実施していただくよう要望いたします。
 さて、高齢者の多様な働き方の一つで、地域での就業の受け皿となっているものに、都内五十八カ所のシルバー人材センターがあります。日々、多くの高齢者の方が地域に密着した活動を続けています。
 これまでにさまざまな経験を積み重ねてきた高齢者が持つ能力は、地域の貴重な資源でもあり、シルバー人材センターで活躍されている元気な高齢者の方々へ、期待がこれまで以上に高まっていると感じています。
 しかし一方で、シルバー人材センターについては、駐輪場の整備や植木の剪定など、限られた作業を行っているというイメージを持つ方も少なくありません。
 団塊の世代が六十代半ばを過ぎた今、多様な経験、能力を持つ多くの元気な高齢者が、生き生きと働く機会を広げていくことが必要です。新年度予算では、シルバー人材センターを活用し、高齢者の就業機会を拡大することなどが盛り込まれていますが、具体的にどのように取り組むのか伺います。

○山本産業労働局長 都では、シルバー人材センターが行う業務を拡大していくこととしており、今年度新たに、十二カ所のセンターにコーディネーターを配置して、共働き世帯や介護の必要な方などに対する福祉家事援助サービスを推進しております。来年度は、これを都内の約七割のセンターに拡充することを目指します。
 また、従来の請負就労に加え、就労現場で直接指示を受けて業務を行う労働者派遣事業についても、今年度三カ所で試行しているものを、来年度は本格実施に移行し、希望する全てのセンターで取り組めるようにいたします。
 こうした取り組みとあわせ、センターの魅力をPRし、会員登録につなげるイベントを区部と多摩で開催することなどによりまして、元気な高齢者の就業機会の拡大を図ってまいります。

○大場委員 高齢化が進み、地域の支え手が少なくなっている中で、地元のシルバー人材センターの元気な高齢者の方々が、支援が必要なお年寄りを支えたり、現役世代の子育て支援を行うなど、さまざまな場面で活躍されることは、働く本人にとって生きがいを得ることにつながることはもちろん、地域コミュニティの形成や維持にも大きく貢献するなど、多方面でよい効果を生み出します。シルバー人材センターを初めとする、こうした地域での就業支援に引き続きしっかりと取り組んでいただくことを要望いたします。
 次に、高齢者施策について伺います。
 いわゆる団塊の世代が七十五歳以上となる平成三十七年度以降、医療や介護を必要とする高齢者がさらに増加することが見込まれています。
 高齢者が住みなれた地域で、安心して暮らし続けられるようにしていくために、地域包括ケアシステムの構築が喫緊の課題となっています。その構築には、医療や介護サービスのみならず、食事の用意、見守り、日常生活でのちょっとした困り事などへの手助けなど、互助の充実も必要です。今後、互助としての地域貢献活動の重要性が一層増大すると思われます。
 町会、自治会やNPOなどで地域貢献活動に取り組まれている方には、高齢者が多いように見受けられます。誰もが地域の一員として、できることを協力し合っていくことで、世代を超えてさまざまな交流が生まれ、地域社会の支え合いが充実します。
 高齢者はもとより、幅広い世代に地域貢献活動への参加を働きかけ、地域包括ケアシステムの構築に資するサービスの充実を進めていくことが必要です。
 都は今年度から、東京ホームタウンプロジェクトとして、多様な主体の地域貢献活動を活性化させていく取り組みを開始しているが、本年度の取り組み状況を伺います。

○梶原福祉保健局長 今年度開始いたしました東京ホームタウンプロジェクトでは、ビジネススキルや専門知識を有した企業人等がボランティアとして、地域貢献活動に取り組む団体を支援しており、今年度は二十四の団体に対して、ウエブサイトの作成や住民ニーズ調査などの支援を行いました。
 また、区市町村や社会福祉協議会などが、地域のニーズを的確に把握して地域貢献活動の担い手を創出し、その担い手とニーズを結びつけることなどができるよう、必要なノウハウを習得するセミナーを開催いたしました。
 こうした取り組みの状況は、ホームページで逐次発信いたしますとともに、先月には、一年目の取り組みを総括するイベントを開催し、プロジェクトにおける支援事例の紹介やパネルディスカッションなどを実施したところでございます。

○大場委員 多くの企業や人材が集まる東京の強みを生かして、地域貢献活動を充実させていく取り組みとして、大いに評価をいたします。
 今後、東京の全域で地域貢献活動の機運を高めていくには、支え合う地域づくりを進めていく主体となる区市町村が、具体的に取り組みを進めていけるよう、実践的な支援もあわせて行っていく必要があると考えます。
 支え合う地域づくりに当たっては、地域によって、近所づき合いの密度や活動団体の有無など資源の状況も異なるため、市区町村は、地域の実情をよく踏まえ、さまざまな創意工夫を凝らしながら取り組んでいかなければなりません。
 都は、今年度開始した東京ホームタウンプロジェクトを引き続き推進するとともに、そこで得られたノウハウを区市町村に提供するなど、支え合う地域づくりに区市町村とともに取り組んでいくべきと考えますが、所見を伺います。

○梶原福祉保健局長 今お話にありましたように、支え合う地域づくりを進めていくためには、区市町村において、それぞれの地域で異なる課題や特性に応じた取り組みを行う必要があるというふうに考えてございます。
 そのため、都は来年度、ホームタウンプロジェクトの中で、地域特性の異なる五つの地域を選定し、地域貢献活動の活性化を図る区市町村や社会福祉協議会等の取り組みを支援してまいります。
 具体的には、地域に不足しているサービスを提供するコミュニティビジネスの立ち上げや、退職者の地域デビューの支援など、地域の実情に応じたさまざまな取り組みを都が派遣するアドバイザーが支援することとしております。
 こうした事業の成果は、他の区市町村にも広く周知し、都内全域で支え合いの地域づくりが進むよう取り組んでまいります。

○大場委員 さまざまな地域貢献活動が、東京の各地域に根づいていくとともに、活動を通じて、支え合いの輪が地域に広がっていくことを期待いたします。
 次に、養育家庭への支援について伺います。
 都内には、社会的養護を必要とする子供が約四千人います。そのうち養育家庭、ファミリーホーム、グループホームなど、家庭的養護のもとにいる子供は、全体の約三割です。
 都は、昨年四月に策定した社会的養護施策推進計画において、社会的養護における家庭的養護の割合を、平成四十一年度までにおおむね六割に引き上げるという目標を示しました。
 家庭的養護の中心的な役割を担っているのは養育家庭です。家庭的養護六割という目標を達成するためには、養育家庭が積極的に子供を引き受けてくれることが重要であると考えます。
 やむを得ず親元を離れ、心が傷ついた子供を養育家庭が引き受けるためには、養育家庭と子供が関係をつくり、一緒に生活するための相性を見きわめるなど、委託前の一定期間、きめ細やかな支援が必要と考えますが、都の取り組みと今後の施策について伺います。

○梶原福祉保健局長 児童を養育家庭へ委託するに当たりましては、児童相談所、乳児院、児童養護施設、里親支援機関などが、養育家庭と児童の状況等の把握に努め、児童の気持ちを大切にしながら、継続的に丁寧な支援を行うことが必要でございます。
 そのため、まず養育家庭に対し、児童の心身の発達状況などを説明した上で、養育家庭と児童の面会を開始いたします。その後、日帰りの外出、養育家庭への短期外泊、長期外泊と、段階を経て進めており、委託に至るまでは、通常三カ月から四カ月程度、児童等の状況や交流頻度によりましては、半年程度の期間を要しております。
 現在、こうした児童との交流期間の経費は支給されていないため、来年度からは、交通費等を補助する独自の支援を開始し、養育家庭への委託を進めてまいります。

○大場委員 そうした取り組みを進め、養育家庭への委託を促進していただきたいと思います。
 もう一点、養育家庭への委託を促進する上では、保育サービスについて考える必要があります。
 それぞれの家庭の生活や働き方に応じて必要となる保育サービスの内容や時間はさまざまです。養育家庭についても、多様な保育サービスを利用できる仕組みを構築することが、委託を促進していく上でも重要と考えます。
 都は、養育家庭の保育サービス利用についてどのように支援を充実していくのか伺います。

○梶原福祉保健局長 現在、養育家庭に委託されている児童が保育所等を利用する場合、国の制度に位置づけられております認可保育所や認定こども園、地域型保育事業の利用料は、国の通知によりまして免除となっております。
 しかし、認証保育所など、国の制度に位置づけられていない保育サービスは免除とならず、延長保育料につきましては認可保育所等であっても免除になっておりません。
 そのため、都は来年度から、養育家庭が多様な保育サービスを利用できるよう、認証保育所等の利用料と、認可保育所、認証保育所等の延長保育料について独自に支援をいたします。

○大場委員 社会的養護を必要とする子供たちのために、家庭的養護の割合をおおむね六割にするという目標が確実に達成されますよう、養育家庭を支援する施策の充実に期待をいたします。
 次に、交通政策について伺います。
 東京の最大の弱点である交通渋滞を解消し、世界で一番の都市東京を実現するためには、都内の交通総量を削減するとともに、道路容量を拡大するために、三環状道路や都市計画道路を着実に整備し、都市間あるいは都市内の道路をネットワーク化していくことが重要であります。交通渋滞の原因となる踏切などのボトルネックを解消する対策も必要です。
 しかし、こうした道路整備には多くの時間を要します。交通渋滞の解消のためには、用地買収などを必要としない既存の道路における対策をあわせて実施していくことが重要であります。私は、渋滞解消のためには、道路整備などのハード対策と、既存の道路を活用した対策、どちらか一方だけではなく、どちらの対策も必要だと思います。
 先月の本会議で、我が党の代表質問に対し、ハード対策については、道路整備の推進により渋滞を緩和する旨、都技監から強い答弁をいただきました。
 そこで、本日は、既存道路を活用したソフトを中心とした渋滞対策についてお聞きしたいと思います。
 来年度予算には、新たなハイパースムーズ作戦が計上されていますが、まず、初めに確認の意味で、これまでのハイパースムーズ作戦について伺います。

○廣田青少年・治安対策本部長 渋滞解消のためには、道路整備とともに、既存の道路空間を活用した即効性のある渋滞対策を効果的に実施することが非常に重要であり、各局が連携した渋滞対策事業として、ハイパースムーズ作戦を実施してまいりました。
 具体的には、渋滞の著しい区部の三十路線区間を対象に、交差点に到着する交通量を予測し、信号制御を行う需要予測信号制御の導入など、ITS技術を活用した対策や、用地買収を伴わない道路施設の改善などを総合的に実施し、渋滞の解消を図ってまいりました。

○大場委員 これまで都が、渋滞解消に向け、道路整備というハード対策のみではなく、信号制御などのソフト対策を進めてきたことを確認しました。
 しかし、まだ都内には多くの渋滞が残っていることも事実です。早期の渋滞解消に向け、これまで以上に道路整備に加えて、ソフト対策としての渋滞対策も含めて進めていく必要があります。
 ITS、いいかえますと、高度道路交通システムの技術については、カーナビから自動運転まで、技術の進歩が目覚ましい中、最新の技術を対策に積極的に取り入れていくことが重要です。
 そこで、既存の道路空間を活用した渋滞対策として、新たなハイパースムーズ作戦を進めていく上で、最新の技術をどのように活用していくのか、伺います。

○廣田青少年・治安対策本部長 信号制御による渋滞対策を進めるためには、高度な交通管制システムなどのITSの最新技術を活用することが効果的でございます。
 このため、今後は、これまで進めてきた対策に加えて、画像解析による需要予測信号制御や、広域交通情報板など、最新の技術を効果的に導入し、主要渋滞箇所、四百三十三カ所の中から効果が見込まれる箇所を選定し、実施してまいります。
 これからも、ITS技術を活用した渋滞対策を、多摩を含めて都内全域に拡大して、一層進めてまいります。

○大場委員 都内全域で最新の技術を活用した対策を行っていくことがわかりました。
 ただ、こうした技術は、私も、都民にもわかりにくいもので、ITS技術を活用した対策、画像解析による需要予測信号制御や、広域交通情報板がどのようなものか、より具体的に伺います。

○廣田青少年・治安対策本部長 画像解析による需要予測信号制御は、センサーにより車を感知する現在の仕組みに加えて、交差点映像から渋滞の状況を自動判定できる技術を活用するもので、交差点に到着する交通量の予測精度をこれまで以上に高め、より正確に把握することを可能とするものでございます。
 また、広域交通情報板は、より広域的な範囲のリアルタイム渋滞情報をルート別に提供し、ドライバーの的確なルート選択を促すことにより交通量を分散するものであり、いずれも渋滞の緩和が期待されるものでございます。
 今後とも、渋滞対策には、こうした最新のITS技術を積極的に導入していくように、検討を進めてまいります。

○大場委員 最新の技術を活用した渋滞対策に大いに期待をいたします。
 今後とも、警視庁及び庁内各局と連携して、着実かつ効果的に事業を進め、渋滞解消に向けて、可能な限り取り組みを推進していくことを希望いたします。
 次に、税収確保の視点から伺います。
 都の財政基盤を支える税収の確保は、予算を執行する上で、絶対条件です。
 平成二十六年度決算における都税の徴収率は過去最高の九八・一%を記録していますが、個人都民税の徴収率は九四・三%で、都税全体の徴収率に比べると、依然として低く、まだ引き上げの余地があると考えます。
 都税収入のうち、個人都民税の占める割合は約二割であり、個人都民税は、固定資産税、都市計画税、法人二税に次ぐ基幹税目です。
 一方、区市町村における個人住民税は、税収に占める割合が、特別区では九割以上、市でも四割を超えています。個人住民税は、区市町村の行財政運営になくてはならないものになっているといえます。
 都の個人都民税は、都が直接徴収するのではなく、区市町村が個人住民税とあわせて徴収していることから、都には、区市町村への支援をさらに強化してほしいと思っています。
 そこで、都として、個人都民税を含む個人住民税の徴収率のさらなる向上にどのような対策が必要と考えているのか、所見を伺います。

○小林主税局長 都では、平成十六年度に個人都民税対策室を設置して以来、区市町村から長期累積事案の引き受けを精力的に行ってまいりました。
 直近の三カ年では、平均して年間約三百四十件、約十億円に及ぶ滞納を引き受け、いずれも一年以内には解決に結びつけております。
 しかしながら、区市町村では、現年度に課税された個人住民税のうち、約四百億円が毎年未収入になっているという現状がございます。
 今後、個人住民税の徴収率をさらに向上させるためには、滞納を累積させることなく早期に解消することが必要であり、現年度課税分の滞納、いわゆる新規の滞納解消に力を入れていくことが不可欠であると考えております。

○大場委員 個人住民税の徴収率の向上のため、新たに発生した滞納を解消することに力を入れていく必要があるとのことですが、区市町村の中には、滞納整理の知識、経験にたけた人員を十分確保することが難しいところもあります。
 都内区市町村の平成二十六年度決算によれば、個人住民税の税収は、総額で約二兆円であることから、税収率が一ポイント上昇すれば、約二百億円の税収増が見込まれます。このことから、先ほどの答弁にあった約四百億円は、極めて大きな数字であります。
 さて、平成二十八年度の地方税法の改正で、現年度分のみの滞納も引き継ぐことができるようになると聞いています。これにより、都は、より積極的に区市町村から早期に滞納を引き受ける使命を負ったことになります。
 今回の法改正が税収確保に及ぼす効果について、さらに平成二十八年度から、都が区市町村の困難な事案の早期引き受けにどのように取り組んでいくのか伺います。

○小林主税局長 今回の法改正は、都が平成二十年から国に対して強く求めて実現したものでありまして、この改正によりまして、現在認められている累積した滞納に加えて、現年度課税分のみの滞納についても、都は区市町村から引き受けることができるようになります。
 これまでも、納税者の所在が不明な困難案件や、滞納額が五千万円を超える高額事案などを都が短期間で解決した事例もありますことから、早くから滞納整理に着手することで納税に結びつけることができれば、都の個人都民税はもとより、区市町村の個人住民税の税収確保にも大きく寄与できるものと考えております。
 今後は、これまで以上に区市町村との情報の共有、連携を密にし、現年度課税分の滞納の早期引き継ぎを働きかけるとともに、主税局に設置しております個人住民税の滞納整理専門チームの体制を一層強化するなど、区市町村への支援に、より積極的に取り組んでまいります。

○大場委員 都が今回の法改正を実現し、滞納整理に早期着手することで、区市町村の個人住民税の税収確保に極めて大きな効果があるということがわかりました。
 ぜひとも、これまで以上に、区市町村と綿密な連携を繰り返し、都及び区市町村の円滑な事業推進に必要な税収の一層の確保をお願いして、次の質問に移ります。
 夏のリオ大会終了後には、いよいよ東京二〇二〇年大会に向けた文化プログラムがスタートします。
 東京は、能や歌舞伎、工芸といった多くの伝統文化が息づくとともに、アニメやデザインなど新しい文化の発信地でもあります。文化プログラムでは、こうした芸術文化の魅力を伝える象徴的なプログラムが必要です。
 東京では、民間みずからが多くの文化事業を主催し、企業メセナなどの文化活動が活発に行われています。例えばオフィス街で行われる薪能のように、質が高く、すばらしい事業も多数あり、シンボリックな文化プログラムの実現に向けては、このような民間の活用が欠かせません。
 しかし、民間の事業では、参加者数などの面で十分な広がりがあるとはいえず、より多くの人が楽しめるようなイベントにしていくとともに、規模、質ともに充実させていくためには、民間の力だけでは限界があります。
 こうした民間の事業を、東京の芸術文化の魅力を伝えるインパクトのある事業に発展させ、東京二〇二〇大会の一翼を担う重要なプログラムとしていくためにも、都が戦略的に後押ししていくべきと考えますが、見解を伺います。

○多羅尾生活文化局長 文化プログラムを成功に導くためには、行政だけでなく、文化団体や民間企業などさまざまな担い手により、発信力の高い文化事業を多数展開し、東京全体で祝祭感を醸成していくことが重要でございます。
 民間には、斬新な発想や幅広いノウハウといったポテンシャルがありますが、それらを最大限引き出し、より多くの都民が楽しめる事業へと発展させていくためには、行政の後押しも必要でございます。
 そこで、民間が主体となって実施する、東京の文化発信の柱となり得る事業を支援するため、来年度、新たな助成制度を創設いたします。
 こうした施策により、行政と民間、地域が一体となって多彩な文化プログラムを展開し、二〇二〇年の史上最高の東京大会へとつなげてまいります。

○大場委員 この助成が呼び水となりまして、民間の力も大いに活用され、文化プログラムが東京全体で盛り上がっていくことを期待いたします。
 次に、シニアスポーツの振興について伺います。
 私は、雨と雪の日を除きまして、毎日欠かさず駒沢オリンピック公園に行き、ラジオ体操後にランニングやジョギングをしています。始めてから十三年になりますが、そこでは元気な高齢者が健康増進、認知症予防の観点から、毎日百人以上の方がラジオ体操やウオーキングで汗を流しています。
 先日行われました東京マラソンでも、参加者のおよそ八%が六十歳以上の方であり、私もその一人でしたが、ここ五年間を見ても最高と聞いています。
 都は、二〇二〇年大会を機に、スポーツが日常生活に溶け込み、誰もが生き生きと豊かに暮らせる東京を実現するとしています。
 今後、高齢化が急速に進む中で、シニア世代のスポーツ振興はますます重要であると考えますが、都はどのようにシニアスポーツの振興に取り組むのか、見解を伺います。

○中嶋オリンピック・パラリンピック準備局長 都はこれまで、シニア健康スポーツフェスティバルの開催や、ねんりんピックに東京都選手団を派遣するほか、平成二十四年度からは、シニアスポーツ振興事業を開始し、地区体育協会や地域スポーツクラブなどを通じて、高齢者を対象としたスポーツ協議会などを支援してまいりました。
 昨年度、地区体育協会を通じたシニアスポーツ振興事業では、一万一千人を超える参加者を得て、百七十四事業を実施しました。高齢者に対しましては、身近な地域で気軽に参加できる機会の提供が重要でありますことから、来年度は、ほとんどの区市町村を網羅する、この地区体育協会への補助を大幅に拡充し、よりきめ細かな支援につなげてまいります。
 今後とも、幅広くシニアスポーツを振興し、二〇二〇年大会を契機として、誰もがいつまでも健康で、生き生きと過ごせる環境の整備に取り組んでまいります。

○大場委員 ぜひともよろしくお願いいたします。
 最後に、施設のバリアフリー化について伺います。
 地域でのシニアスポーツの一層の振興を図っていくということですが、昨年十二月に公表された二〇二〇年に向けた東京都の取組-大会後のレガシーを見据えて-によりますと、現在都内には、九百六十六の区立スポーツ施設と八百二十九の市町村立スポーツ施設がありますが、その中には、バリアフリー化が進んでいない施設が相当数あるのではないかと考えられます。
 バリアフリーは、障害者だけではなく、高齢者にとっても、施設を安全に安心して利用するためには、重要です。
 二〇二〇年大会に向けてバリアフリーに配慮した新しい会場を建設することも大切ですが、身近なスポーツ施設のバリアフリー化も積極的に推進していく必要があると考えます。
 都の取り組みについて伺います。

○中嶋オリンピック・パラリンピック準備局長 都は、身近な地域におきますスポーツ活動を促進するため、区市町村のスポーツ施設の整備費に対する補助制度を平成二十六年度に創設し、バリアフリー化のための工事などを支援する仕組みを整えました。
 この二年間で、手すりやスロープ、誰でもトイレの設置などの工事を実施した十二区市町村に対しまして、二十件の補助を行いました。
 来年度につきましては、さらにバリアフリー化を促進させるため、補助制度全体の予算額を、今年度の十二億円から二十億円へ大幅に増額計上しております。
 このほか、区市町村に対して、補助申請の際にこれまでの取り組み事例を紹介しますとともに、新たに作成した障害者のスポーツ施設利用促進マニュアルを活用し、障害者が使いやすい施設のあり方や工夫について、適宜アドバイスを行ってまいります。
 今後とも、こうした取り組みを通じ、高齢者を初め、誰もがスポーツに親しめる環境づくりを積極的に進めてまいります。

○早坂委員長 大場やすのぶ委員の発言は終わりました。(拍手)

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