予算特別委員会速記録第四号

○早坂委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十七号議案までを一括して議題といたします。
 昨日に引き続き総括質疑を行います。
 大松あきら委員の発言を許します。
   〔委員長退席、上野副委員長着席〕

○大松委員 まず、教育について伺います。
 中国の古典「荀子」の一節に、「国の将に興らんとするや、必ず師を貴びて傳を重んず」「国の将に衰えんとするや、必ず師を賤みて傳を軽んず」とあります。国が栄えるときは必ず師匠が尊敬され、人を育てる人が重んじられている。国が衰えるときは必ず師匠が侮蔑され、人を育てる人が軽んじられているとの箴言です。明るく平和な未来を望むなら、物事を教えてくれる先生を敬い、学校を大切にするという気風というものを、日本はつくっていかなければならないと考えます。
 こうした観点から、何点か質問いたします。
 まず、学校の教育力を向上させるには、現場の教員の皆様方に持てる力を存分に発揮していただくことであり、そのための環境を整えることが大切です。
 その整えるべき環境の一つは、現場の教員の皆様方が主体となった研修、研究の充実です。教育とは、子供の成長を促す技術であり、科学であり、きわめれば芸術の域にも及ぶものと考えます。そして、教育の技術は、医学と同様に、現場における実践と理論に基づく研究との往復作業の中で磨かれていくものであり、実践と連動した研究と研修の充実は必要不可欠です。
 特に昨今は、グローバル人材の育成、学力低下、いじめ、不登校、特別支援教育など、教育課題は多様化、複雑化しています。これらに的確に対応しながら日々の授業の改善を図るためには、現場と連動した教科等の研修研究機能の強化が不可欠です。
 まず、都教育委員会の取り組み状況について伺います。

○中井教育長 委員ご指摘のとおり、教育の成否は、子供たちの教育に直接携わる教員の指導力にかかっており、日常における教科等の研修や研究を通して、教員の資質、能力の向上を図ることは極めて重要でございます。
 そのため、都教育委員会では、初任者研修や十年経験者研修等の法定研修に加え、教科指導や教育課題にかかわる専門性を向上させる研修を行ってきております。また、教職経験年数四年目以降の教員約千人を対象として、東京教師道場事業を実施し、年間千七百回以上の授業研究等を通して、指導力の向上を図っております。
 さらに、主任教諭や主幹教諭等が、教科等におけるみずからの指導力を高めるとともに、他の教員に対する指導的役割を果たすことができるよう、教育研究員制度や研究開発委員会制度などを設けております。

○大松委員 都教育委員会は独自の教育研究制度を持ち、実践的な研究を通して、教材の開発や指導方法の工夫や改善に取り組んでいます。そのうち、教育研究員制度は平成二十二年度に、研究開発委員会制度は平成二十五年度に、それぞれ拡充しています。研究機能の強化は公明党の考え方と一致するもので、高く評価いたします。
 教育研究員や研究開発委員になられた教員の皆様方は、日々教壇に立ちながら、現場で直面している課題、新しい教材のアイデアなどを仲間と共有し、研究活動に意欲的に取り組まれていると伺っています。
 教育力向上のためには、こうした現場を土台にした教育研究制度を着実に充実させていくべきです。都教育委員会の所見を求めます。

○中井教育長 教育研究員制度及び研究開発委員会制度は、実践的な研究を通して、教材研究や指導方法の工夫等に取り組み、教育研究活動の中心となる教員の育成を狙いとした都独自の教員研修事業でございます。
 これらは、都の教育課題を踏まえ、教員が主体的に研究主題を設定して、一年間グループで研究するものでございまして、これまでに多くの指導主事や管理職を輩出するなど、都の教育の充実にとって極めて重要な事業であることから、この間、教科等の部会数をふやすなど、その拡充を図ってまいりました。
 今後は、研究団体と連携して制度を一層周知し、意欲のある教員の参加を促すとともに、アクティブラーニング等の今後の教育に重要な学習指導方法に関する研究を推進するなどして、内容面の充実をさらに図ってまいります。

○大松委員 次に求められる環境は、海外の学校や教育機関との交流、協力です。いわゆるグローバル人材の育成が求められる中で、生徒の留学を促進するとともに、教える側の教員自身が、国際交流を通して国際的な広い視野を持っていくことが大切です。
 また、国が違えば文化も違い、教育方法も違ってくると思いますが、子供の成長を促すという教育の課題は、国を超えて共有できる普遍性があります。違いを知ることで、自国のすぐれたところを発見し、それを伸ばし、さらに磨いていくことができます。
 都教育委員会は、昨年、カナダのブリティッシュコロンビア州の教育省及び高等教育省との間で、教育交流の覚書を締結されました。こうした国際交流は、東京の教育力の向上に大きく寄与するものであり、高く評価いたします。
 都教育委員会として、覚書を取り交わしたブリティッシュコロンビア州を初め、海外の教育行政機関との連携を深め、学校相互の国際交流を一層推進していくべきと考えますが、都教育委員会の所見を求めます。

○中井教育長 現在、十四の都立高校が、語学研修や修学旅行での交流をきっかけとして、オーストラリアや韓国など、七カ国の学校と姉妹校提携を結び、相互に学校訪問や短期留学を行っております。
 このような海外の学校との継続的な交流は、生徒の豊かな国際感覚を醸成し、コミュニケーション能力を向上させる上で大変有効でございます。そのため、都教育委員会は、ブリティッシュコロンビア州を初めとする海外の教育委員会と連携を図り、新たに姉妹校を開拓するなどして学校を支援し、平成二十八年度は三十校を目途に姉妹校を拡大してまいります。
 こうした取り組みにより、今後とも生徒や教員が海外の学校と交流する機会をふやし、都立高校における国際交流を一層推進してまいります。

○大松委員 今、世界の主要国は、首脳会談とは別に、教育大臣会合を折に触れ開くようになっております。教育改革を世界共通の課題として、教育で国際協力をしていくという時代を迎えているというふうに考えます。
 そこで重要なことは、現場の教育者同士の交流です。都教育委員会として、海外の教育委員会、教育機関との交流をさらに広げていっていただきたいと思います。
 次に求められる環境は、学校、地域、保護者との協力関係の構築です。
 子供の幸福を願う気持ちは、親も地域も教育者も同じであり、その三者が三位一体となって協力できれば、学校の教育力は大きく向上いたします。
 そこで、その協力関係をつくるツールとして注目されているのが、コミュニティスクールです。PTAや地域住民が学校運営に参加し、教職員と協働して学校の教育力を高めていくものですが、まず、コミュニティスクールの仕組みと都内の設置状況について答弁を求めます。

○中井教育長 コミュニティスクールは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律で規定された、学校運営協議会を教育委員会の指定により設置する学校のことを申します。この学校運営協議会は、教育委員会が任命する地域住民、保護者等の委員で構成され、校長が作成する学校の運営に関する基本的な方針を承認する役割を持ち、学校の運営に関する意見を教育委員会または校長に述べることができるなど、校長とともに学校運営に責任を負うものでございます。
 なお、都内区市町村立小中学校のコミュニティスクールの指定校数は、平成二十七年四月一日現在、小学校では七区七市一村で百七十八校、中学校では六区四市一村で八十四校となっております。

○大松委員 私は、昨年十一月、コミュニティスクールとして運営されております武蔵村山市立の小中一貫校であります村山学園を、そして、ことしの二月には北区立西ヶ原小学校を視察してまいりました。両校とも、校長先生を初め教職員の皆様方が大変にご努力をされ、また地域の皆様方の献身的なご協力をいただきながら、全国の模範となる運営をされていました。
 例えば、武蔵村山市教育委員会では、学校と地域と家庭が協力をして、礼儀作法の習得に取り組んでいました。これまでは、学校側が地域や家庭にお願いできるのは、早寝、早起き、朝ご飯という三項目ぐらいまでといわれておりましたけれども、この武蔵村山市では、こうした礼儀作法読本というものも作成をいたしまして、社会人として求められるマナーまで教えております。
 また、北区の西ヶ原小学校では、町会の協力を得まして、まちで出会ったら、こんにちは、大丈夫など、温かい声をかけ合う、心をつなぐ言葉かけ運動も展開をしております。
 こうした一歩踏み込んだ協力関係を、学校と地域、家庭の間でつくれることが、コミュニティスクールの大きな利点の一つでございます。
 そして、コミュニティスクールのもう一つの利点は、学校と地域、保護者との協力関係が安定し、継続するようになることです。例えば、課外授業やクラブ活動では、文化やスポーツの各分野で秀でた住民の方に協力していただいている例が少なくありません。それが教職員の個人的な人間関係で支えられている場合、その教職員が異動すると関係が途絶してしまうことがあります。
 村山学園や西ヶ原小学校では、そうした活動をコミュニティスクールの中で位置づけ、継続的な協力関係のもと、幅広いさまざまな分野の方に学校づくりに参加していただくようになっております。
 コミュニティスクールにはこうしたすぐれた利点があるわけでありますけれども、実は小中学校における導入率は全国平均で七%、都内は全国より進んではいますが、それでも一四%と、いずれも高くありません。
 このたび、国の方針として、全ての公立学校をコミュニティスクールにしていくことを目指すことになりましたが、コミュニティスクールに対する都教育委員会の評価と課題について、所見を求めます。

○中井教育長 学校が抱える複雑化、困難化した課題を解決し、子供たちの生きる力を育むためには、地域住民等の参画を得た学校運営が求められており、学校と地域が目標を共有し、一体となってよりよい教育の実現に取り組んでいくことが必要でございます。
 コミュニティスクールは、学校と地域との連携、協働が組織的、継続的に行われ、地域とともにある学校を実現していく上で一つの効果的な仕組みであると考えます。
 一方、国の調査結果では、コミュニティスクールを導入しない理由として、既に学校評議員制度や保護者と地域の声を反映する仕組みがあるため必要ないとの意見が上位に挙げられております。都内区市町村においても、導入していない学校の約九割に何らかの地域連携の取り組みがあることから、同様の課題があると認識しております。

○大松委員 コミュニティスクールの導入が進んでいない大きな原因の一つが、そもそもコミュニティスクールとはどのような学校なのか、どのような効果があるのかについて、住民や保護者の皆様方に正確に理解が広がっていないということでございます。
 そこで、都教育委員会として、コミュニティスクールについて理解が広がるように取り組み、着実に導入を進めていくべきです。都教育委員会の所見を求めます。

○中井教育長 都内区市町村立小中学校におけるコミュニティスクールの導入に向けては、区市町村教育委員会、学校、地域がコミュニティスクールの意義や仕組みを踏まえ、既にある学校と地域との連携、協働体制をコミュニティスクールに取り込んでいくことが有効であると考えます。
 このため、都教育委員会は、学校関係者に対し、コミュニティスクールの導入の先行事例や、既にある地域連携の取り組みからコミュニティスクールに移行した事例を紹介する研修会を開催するなど、普及啓発を行ってまいります。
 さらに、区市町村教育委員会がコミュニティスクールの導入を検討する際、外部有識者の意見を聞いたり、先進地区の視察を行う場合の経費を補助するなどの支援も行ってまいります。

○大松委員 大切なことは、校長先生のリーダーシップのもとで、学校、地域、家庭の実質的な協力関係をつくっていくことでございます。制度が先行して形骸化することのないように、着実に進めていくべきと考えます。
 次に、福祉について伺います。
 高齢化が進み、特別養護老人ホームなどの増設が求められていますが、都心部では地価が高く、用地の確保が困難です。
 そこで、限られた土地を最大限に有効活用するために、複数の施設を同一敷地内に合築、併設する複合型施設の整備を促進していくことが求められます。
 都議会公明党は、かねてより特別養護老人ホーム等の高齢者施設の整備において、複合型施設の整備を推進するよう提唱してきましたが、これまでの都の取り組みについて伺います。

○梶原福祉保健局長 都はこれまで、認知症高齢者グループホームや都市型軽費老人ホームに介護事業所等を併設する場合や、特別養護老人ホームに地域密着型サービス等を併設する場合に、整備費補助に加算を行う都独自の支援策を実施してまいりました。また、区市町村や事業者向けの補助制度の説明会において、社会福祉法人と医療法人の連携による特別養護老人ホームと介護老人保健施設の合築など、複合型施設の整備に資する手法についても広く紹介をしてまいりました。
 平成二十七年度に補助内示を行った特別養護老人ホームについて見ると、十七施設のうち十四の施設が、他の福祉施設や介護事業所等を併設しております。

○大松委員 東京都独自の加算制度などによりまして、複合型施設の整備が進んでいることが確認できました。
 そこで、このたび国は、かねてからの都の提案要求を受け、社会福祉法人が建物を自己所有しなければならないとする要件を緩和いたしまして、賃貸物件による特養ホームの運営も認めることになりました。
 こうした国の動きも活用して、複合型施設の整備をさらに促進すべきと考えます。都の見解を求めます。

○梶原福祉保健局長 今般、国の緊急対策におきまして、特別養護老人ホームの建物自己所有要件の緩和が盛り込まれました。これによりまして、例えば民間の開発事業者が集合住宅や商業施設等を含む大規模な建物を整備し、その一部を社会福祉法人が借り受けて特別養護老人ホームを運営するなど、お話の複合型施設の整備も含め、新たな事業展開も可能となります。
 都は来年度から、こうした賃貸目的で特別養護老人ホームを整備する場合にも、施設整備費の補助を実施することとしており、今後とも、さまざまな取り組みにより、介護サービス基盤の整備を積極的に推進してまいります。

○大松委員 大変すばらしい答弁、ありがとうございます。
 この点につきまして、これまで議会で何回もやりとりがございましたけれども、今回のように具体的な答弁をいただいたのは初めてでございまして、大変重要な答弁と受けとめております。
 答弁によれば、例えば民間事業者が二十階建てのビルを建てまして、その十階以上の高層部は住宅にして、そして、この中層部のフロアには特別養護老人ホームを賃貸で入れるということも可能になるわけでございます。介護事業者には大変活用しやすい制度でありまして、介護事業の都心部への進出を促し、都市機能の向上に大きく寄与していくことが期待されるわけでございます。
 ぜひこの制度の周知を図りまして、都心部での特別養護老人ホームの増設につながるよう、都の取り組みを求めておきます。
 次に、大規模水害対策について質問します。
 地球温暖化に伴う気候変動により、東京においても、雨の降り方が、局地化、集中化、激甚化する傾向にあります。昨年九月の豪雨では鬼怒川が決壊しましたが、仮にあの雨が群馬県吾妻川流域に降っていれば、利根川、江戸川が危険になっていましたし、埼玉、山梨県の荒川水系や多摩川水系に降っていれば、都内が甚大な洪水に見舞われていた可能性が指摘されております。
 そして、ことしも夏から秋にかけまして、昨年と同様の、もしくはそれ以上の豪雨に襲われる可能性がございます。堤防の整備などハード対策とともに、ソフト対策として、住民の皆様方に、おくれることなく逃げていただく避難体制を整えることが大切です。
 人の命を守る、この一点に徹して、大規模水害対策を進めていくべきです。舛添知事の所見を伺います。

○舛添知事 ご指摘のように、昨年は、昭和二十六年の統計開始以来、初めて十二カ月連続で台風が発生しましたほか、台風十八号に伴う、ご指摘のような関東・東北豪雨によりまして、各地に甚大な被害が生じるなど、近年の異常気象を考えますと、水害対策に万全を期すことは極めて重要だと思っております。
 これまで都は、防潮堤の耐震対策などを進めましたけれども、区部では時間最大七十五ミリ、それから多摩地域では最大六十五ミリの降雨に対応する河川の護岸などの整備を行うなど、水害対策に取り組んでおります。
 こうしたハード対策に加えまして、自助の力を強化するため、都内の全ての家庭に、昨年、防災ブックであります「東京防災」を配布してまいりました。
 また、関東・東北豪雨の際に、市の境を越えた避難が必要だったということを踏まえまして、広域避難のあり方につきまして、国や関係自治体などと検討を進めるなど、ソフトの対策についても取り組んでいるところでございます。
 今後とも、ハード、ソフト両面から、水害対策を一層推進して、世界一安全・安心な都市東京の実現に全力を挙げてまいります。

○大松委員 水害は地震と比べまして発生を予測しやすいことから、事前の避難が可能でありまして、危険が迫る地域に漏れなく避難勧告等の情報を伝えて、避難行動を促すことが大切です。
 そのためには、まず区市町村長が時期を逸することなく、避難勧告等を発令することが重要です。そして、区市町村長が迷わずに的確に判断できるよう、時間軸に沿って防災行動を事前に決めておくタイムラインの策定が求められるところでございます。そして、タイムラインは単独の区市町村ではなく、流域ごとに複数の自治体で、また交通事業者も加えて作成するべきでありまして、都としても積極的に取り組むように要望しておきます。
 その上で、区市町村長が避難勧告等を発令した場合、防災行政無線、携帯電話への緊急速報メール、消防団等による車両からの広報などが行われますが、携帯電話を持っていない高齢者は多く、外国人旅行者や在住外国人が急速にふえる中で、災害情報の多言語化は進んでおりません。発令された避難情報をどう伝えていくのか、ここに大きな課題があるわけでございます。
 避難勧告等の発令は区市町村長の権限ですが、災害対策基本法は、区市町村は都道府県知事に対し災害時の応援を要請することができると規定をしておりますので、この法の趣旨を踏まえ、都としても、区市町村が避難勧告等を的確に発令できるように促すとともに、高齢者や外国人など要配慮者に対しても避難情報等を正しく伝えられるよう、区市町村長を支援するべきと考えます。都の所見を求めます。

○中西総務局長 水害による生命、身体の危機を回避するためには、区市町村が避難勧告や避難指示等の発令を的確に行うとともに、対象住民に対しまして迅速、確実に伝達していく必要がございます。
 そのため、都といたしましては、引き続き区市町村に対し、国が昨年八月に改定いたしました避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドラインを踏まえた判断基準の設定が徹底されるよう促すとともに、有事の際は、空振りを恐れず、的確に発令するよう適時働きかけてまいります。
 また、区市町村が発令した避難勧告等につきましては、その内容が行き渡るよう、現在、地域の特性を踏まえ、災害の事象別に区市町村との協議を始めたところであり、今後、高齢者や外国人などの要配慮者に対する伝達手段の確保についても協議を行ってまいります。

○大松委員 次に、大規模地下街の浸水対策について伺います。
 東京都区部では、ターミナル駅などの大規模地下街や地下鉄が網の目のように広がり、大規模水害時には大量の水が都心の地下空間に流れ込みまして、多くの人々の命に危険が及ぶ危険性があります。ハード、ソフト対策、両面を強化しなければなりません。
 昨年、水防法が改正をされまして、想定し得る最大規模の降雨を前提に浸水想定が行われることになりました。また、河川からの洪水だけではなく、下水道からの内水氾濫、そして高潮による浸水も想定されることになります。
 そこで、浸水に対して脆弱な地下街については、こうした新しい浸水想定を踏まえ、集中豪雨や高潮、河川決壊等のさまざまな浸水パターンを想定した避難誘導体制を構築すべきです。また、多くの地下空間は複数の区にまたがっておりまして、区が違っても統一した避難誘導計画が策定できるよう、都は関係区や地下街管理者などと調整を図るべきです。
 大規模地下街における避難誘導体制の構築に向けた都の取り組みについて伺います。

○安井東京都技監 都は、八重洲など九つの大規模地下街におきまして、昨年十月、地下街や隣接ビルの管理者、鉄道事業者、地元区など関係者が連携して、浸水対策に取り組むための協議会を設置いたしました。この協議会では、各施設の管理区分にかかわらず、一定の地下空間の広がりを考慮いたしまして、対策エリアを設定し、東海豪雨や荒川氾濫の浸水想定を踏まえた避難誘導方法などを検討しております。来年度には、浸水対策計画として取りまとめる予定でございます。
 お話の水防法改正を受けまして、今後、浸水想定が見直される場合には、改めて浸水リスクを検証し、計画に反映させてまいります。
 また、複数の異なる区にまたがるような対策エリアにおきましては、例えば地上の浸水情報を速やかに地下で共有するための情報連絡体制を構築するなど、地下街の関係者が一体的な計画のもとに浸水対策を行えるように取り組んでまいります。

○大松委員 次に、都営地下鉄の浸水対策について質問します。
 都営地下鉄では、二日間で五百八十九ミリを記録した東海豪雨を想定した対策を講じていますが、昨年の関東・東北豪雨のような想定を超える水害から利用者の命を守るためには、地下街と同様、これまで以上に対策を強化しなければなりません。
 都営地下鉄は浸水対策に全力で取り組むとともに、想定を超える水害にも対応すべきです。都の見解を求めます。

○塩見交通局長 都営地下鉄では、当局が管理する駅出入り口への止水板や防水扉の設置、通風口への浸水防止機の設置など、東海豪雨を想定したハード面の対策は既に完了しております。
 あわせて、全ての地下駅で水防法に基づく避難確保計画を策定し、各駅で訓練を実施するとともに、毎年、局を挙げた水害対策訓練を実施するなど、水害への職員の対応力を向上させているところでございます。
 さらに、民間の気象情報会社から駅ごと、時間ごとの詳細な情報を入手し、いち早く必要な対策、対応がとれるよう備えております。
 また、荒川下流域を対象としたタイムラインの検討にも参加しており、新たな浸水想定区域が公表された場合には、これを踏まえた対応を講じてまいります。
 さらに、今後は、駅に接続する出入り口を管理する民間事業者と連携した訓練の実施等により、引き続き安心・安全の確保に全力を尽くしてまいります。

○大松委員 次に、木造家屋の耐水対策について伺います。
 昨年九月の豪雨では鬼怒川が決壊し、家屋が流される映像を目の当たりにしました。東京においても、一たび大河川が決壊すれば、家屋は甚大な被害を受けます。特に木造家屋は、水が一階の天井まで上がると、浮力で家が浮き上がり、流失する可能性が高くなります。現行の建築基準法では、基礎と土台をつなぐアンカーボルトの数について、地震と風害に対する配慮はありますが、水害による浮力は考慮されておりません。
 公明党は国に対し、木造家屋の浮力を考慮した建築基準法の改正を求めておりますけれども、対策は急がなければなりません。
 改正水防法の施行に伴い作成される新しい浸水想定区域図の中では、洪水時に家屋が倒壊するおそれのある区域が、洪水時家屋倒壊危険ゾーンとして示されることになっています。
 そこで、水防法改正に伴う洪水時家屋倒壊危険ゾーンへの取り組みについて伺います。

○佐野建設局長 国のマニュアルによりますと、洪水時家屋倒壊危険ゾーンは、浸水想定区域図の中に、家屋の流出、倒壊等のおそれがある範囲を示すもので、避難判断に有効な情報でございます。危険ゾーンの設定に当たりましては、氾濫シミュレーションにより水深と流速を明らかにし、それに基づき算定された洪水の力が一般的な木造二階建て家屋の強度を上回る区域を示すこととなっております。
 都は、水防法改正に対応するため、平成二十七年十月に検討会を立ち上げ、神田川等の浸水想定に向けた検討に着手しております。一方、国は、東部低地帯を流れる荒川等の浸水想定区域図の作成に合わせて、危険ゾーンの設定を検討しております。
 今後、検討結果に基づき、国や区等の関係機関と連携し、洪水時家屋倒壊危険ゾーンの周知を図ってまいります。

○大松委員 問題は、家屋倒壊危険ゾーンが公表されても、そこに居住される都民の皆様方が、自分の家が流される危険性を実感できずに避難されないという心配があります。住民の皆様方が水害の危険性を理解して、的確な避難行動につなげてもらうためには、行政からの一般的な広報だけではなく、地域防災を担う町会、自治会に対し、水害についての知識を普及し、地域の危険性を周知徹底することが重要です。
 地域への普及啓発への都の取り組みについて所見を求めます。

○中西総務局長 水害発生時の危険性を認識するためには、住民がその居住する地域の特性を十分に理解するとともに、行政により、水害に関するさまざまな知識や避難行動などを普及啓発していくことが重要でございます。
 このため、都は、希望する町会や自治会等に対して、防災活動の専門家によるセミナーと住民同士の意見交換の場を提供してまいりました。このセミナーでは、地域の課題に対応した複数のコースから内容を選択することとしており、来年度からは、新たに風水害への対策についてのコースも加え、強化を図ることとなってございます。
 こうした取り組みにより、水害に対する地域の危険性についての住民の認識を高め、自助、共助の取り組みを推進し、地域防災力を向上させてまいります。

○大松委員 次に、納税者の利便性向上について質問します。
 都税の納付について、納税者の多様なライフスタイルに対応できるよう、さまざまな納税手段をきめ細かく提供し、納税者の利便性の向上に取り組むことが重要です。
 東京都は、公明党のかねてからの要望を受け、平成二十三年度から自動車税でクレジットカード納税を実現し、本年度からは、都税のほぼ全ての税目でクレジットカード納税ができるようになり、納税者から、クレジットカード利用が拡大して便利になったという声を伺っております。
 そこで、拡大初年度におけるクレジットカード納税の最近の利用状況について伺います。

○小林主税局長 平成二十八年一月末現在、自動車税におけるクレジットカード納税は、件数で約十七万七千件の利用があり、納付件数に占める割合は五・九%でございます。導入した二十三年度が、それぞれ約八万七千件、二・八%であったのと比べますと、約二倍に増加をしております。
 一方、今年度から新たに対象となりました固定資産税、都市計画税につきましては約十七万四千件、納付件数に占める割合は一・七%でございます。そのほかにも、不動産取得税や個人事業税等を含めると、全体では約三十六万七千件、納付件数に占める割合は二・四%となってございます。

○大松委員 今、最近の利用状況について伺いましたが、自動車税については導入から五年目でほぼ二倍にふえるなど、普及が進んでおりますが、固定資産税、都市計画税については、導入初年度とはいえ、一・七%の利用にとどまっております。それは、固定資産税、都市計画税の口座振替の場合、一回の申し込みで継続的に納付ができますが、クレジットカード納税の場合は、年四回の納期ごとに、その都度、納付の手続が必要になる煩雑さがあるためと考えられます。
 納税者にさらに利用を促すためには、個人情報の保護等にも万全の配慮をして、継続的な納付が可能になるような仕組みを早急に導入することが重要です。
 そこで、固定資産税、都市計画税のクレジットカード納税における継続払いの導入に向けて、今後の取り組みについて都の見解を求めます。

○小林主税局長 一年間に納期が複数回ございます固定資産税、都市計画税につきましては、ご指摘のように、一度の手続によって継続的にクレジットカードで決済できる継続払いを導入することが、さらなる納税者の利便性向上に大きく寄与するものと認識をしております。
 導入に当たりましては、納税者のカード情報の長期にわたる適正な管理や簡便な手続を重視した使い勝手の向上など、さまざまな課題を解決しながら、納税者にとって安全でかつ利用しやすい仕組みを構築していく必要がございます。
 そのため、都といたしましては、クレジットカード会社等の関係機関との調整に速やかに着手し、万全のセキュリティー対策を講じますとともに、来月には都民へのアンケート調査を実施し、納税者ニーズを的確に把握して、より利用しやすいシステムへの改修を検討するなど、固定資産税、都市計画税の継続払いの早期実現に向けて取り組んでまいります。

○大松委員 今、固定資産税、都市計画税のクレジット納税継続払いの導入に向けた明確な答弁をいただきました。納税しやすい環境づくりが大きく前進することになります。できるだけ早く継続払いを導入するように、さらなる取り組みを求めておきます。
 そして最後に、私の地元北区の大規模都営団地であります桐ヶ丘団地の建てかえについて質問いたします。
 都営桐ヶ丘団地は、昭和二十九年度から建築が始まり、五千戸を超える都内で二番目の都営団地です。最初の入居が始まってから現在五十年以上が経過し、建物の老朽化は進み、居住者の高齢化も著しいわけでございます。
 バリアフリー化された住宅への建てかえは平成八年度から始まりまして、以来、約二十年がたちましたけれども、いまだ事業は継続中でございます。新しい住宅に移られた方からは喜びの声が上がる一方、まだ建てかえを待っていらっしゃる居住者の皆様方からは、一日も早く建てかえをという切実な声が寄せられております。この桐ヶ丘都営団地の建てかえ事業を急ぐべきでございます。
 都営桐ヶ丘団地の建てかえにつきまして、これまでの経過と今後の取り組みを、答弁を求めまして、質問を終わります。

○安井東京都技監 都営桐ヶ丘団地は、平成八年度から全体で六期にわたる建てかえ事業に着手してございまして、第三期までに計二千六十五戸の建てかえが完了しております。
 平成二十五年度に第四期、平成二十七年度に第五期の建てかえ事業に着手し、現在、二つの事業期を合わせまして約七百七十戸の建てかえ工事を進めてございます。
 引き続き、来年度以降も工事発注を行いまして、古い住棟にお住まいの全ての居住者が早期に新しい住宅に移転できるよう、取り組んでまいります。

○上野副委員長 大松あきら委員の発言は終わりました。(拍手)

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