予算特別委員会速記録第三号

○早坂委員長 和泉武彦委員の発言を許します。
   〔委員長退席、秋田副委員長着席〕

○和泉委員 初めに、財政運営について伺います。
 私は、都政運営の基本は、施策の展開を支えている財政だと思います。そこで、きょうは、都財政のポイントとなる基金と都債について質問します。
 まず、貯金に当たる基金について質問いたします。
 景気変動に左右される都財政は、従来から、財源として活用可能な基金として財政調整基金などに積み立ててきましたが、昨年、集中的、重点的な取り組みを図るための基金というものを創設しました。これらの基金の意味について、都民の方々、特に将来を担う若い世代の人たちにも、わかりやすい説明をして十分理解を得るべきです。
 そこで、まずは、集中的、重点的な取り組みを図るための基金について、財源として活用可能な基金と比較しながら、家計に例えてわかりやすく説明していただきたいと思います。

○長谷川財務局長 財源として活用可能な基金でございますが、これは、財政調整基金や社会資本等整備基金など、年度間の財源を調整する性格を持つ、使途が限定的でない基金でございます。家計に例えますと、給料の減少などに備えた貯金といえると思います。
 一方で、防災街づくり基金などの集中的、重点的な取り組みを図るための基金でございますが、これは、二〇二〇年に向け、集中的、重点的に取り組むべき施策を着実に実施していくための基金でございます。家計に例えますと、年老いた両親との同居を一年後に控えて、その準備に向けて自宅のバリアフリー化の工事を行うための資金を貯金するというようなものだというふうに思います。
 このように、それぞれの基金の役割に応じまして適切に活用していくということが、安定的かつ積極的に施策を展開していく上で重要であると考えております。

○和泉委員 ありがとうございました。安定的な家計を運営していく上にも、目的に応じた貯金というものは必要なことであり、このことは都財政においても同様です。
 これまで都財政は、常に景気の荒波にさらされてきました。そうした中、何とか幾多の苦難を乗り越えてこれたのも、貯金であるこの基金と、借金であるこの都債を上手に活用してきたからであります。私は昨年、財務局と何度も年次財務報告書についての意見を交わしてきました。
 私自身、歴史を振り返る中で、改めて、過去のような財政危機は絶対に繰り返してはならない、そして、将来世代に誇れる財政運営を行っていくことの重要性というものを再認識いたしました。だからこそ、今回の予算はこうした考えがどう反映されるのか、特に基金と都債に注目していたところでございます。
 今回の予算では、先ほど取り上げた集中的、重点的な取り組みを図る基金を戦略的に活用するとともに、財源として活用可能な基金は一兆円の残高を確保しております。また、都債の発行額も、当初予算では、平成二十一年度以来の三千億円台に抑制しております。私は、ここにこそ将来を見据えた舛添知事の明確な意思が示されていると考えます。
 今後も財政規律をしっかりと確保しながら、中長期的な観点から基金と都債を効果的に活用していくべきと考えますが、知事の所見を伺います。

○舛添知事 財政基盤について、大変いい質問をしていただきまして、ありがとうございます。やはり先々を十分見通して、どんな状況にありましても都民の負託に確実に応えていくと、これが都政を預かる知事の責任であると思っております。
 そのためには、将来にわたって積極的な施策展開を支え得る強固で弾力的な財政基盤が不可欠でありまして、とりわけ、今おっしゃったような都財政の歴史を振り返りましても、この基金と都債、これをいかに活用するかということが大変重要な鍵になるというふうに思っております。
 こうした考え方に基づきまして、今、幸い、都税収入が好調でありますので、ここでしっかりと基金残高を確保すると。いわば貯金ですね。それによって将来の備えをしっかりと講じたわけであります。
 同時に、二〇二〇年に向けまして、さらにその先に向けて、集中的かつ重点的に取り組むべき施策の財源としての基金の活用を図るということが必要であります。
 都債につきまして、これから人口減少社会も見据えないといけません。そういう中で、若い人にということを先ほどおっしゃいましたけど、投資的経費がやっぱり増加する、そういう中において、次の世代が余りに負担が多くなるということは、これは考えないといけないと思いますので、やはり都債については、発行を抑制して、将来に向けた発行余力、今はゆとりがありますから、できるだけ抑えると、こういう方針をとりました。
 今後とも、この基金と都債を戦略的に、かつ計画的に活用しながら、中長期的な視点に立って、未来に対して責任ある財政運営を行っていく決意でございます。

○和泉委員 知事が財政規律の確保にも十分留意しているということで予算編成を行ったことはわかります。評価したいと思います。
 過去から学び、将来につなげていくと、こうした点を常に意識し、今後も財政運営を行うことを希望し、次の質問に移らせていただきます。
 次は、オリンピック・パラリンピック教育におけるボランティアマインドの醸成について伺います。
 世界最大のスポーツの祭典といわれるこのオリンピック・パラリンピックの成功の一翼を担うのが、大会を支えるボランティアの存在であります。こうしたボランティアには、相手の立場に立って何をすべきかを考えて行動することが求められます。こういった資質というものは、子供のときからしっかりと育成していくことが重要です。
 特に、高齢化が進む今の日本では、お年寄りや障害のある方、困っている方を助けようとする優しさや思いやりの心というものを育て、さらに日本人が昔から引き継いできたおもてなしの心を育んでいくことが大切です。
 都教育委員会もオリンピック・パラリンピック教育の中で、重点的に育成すべき資質の一つにボランティアマインドの醸成を挙げております。
 そこで、改めてボランティアマインドを醸成する意義についてお伺いします。

○中井教育長 各学校では、学習指導要領に基づき、社会貢献の精神を育むため、奉仕活動等を行ってまいりましたが、内閣府の調査では、日本の若者は諸外国に比べ、ボランティアへの意識が低いという結果も示されており、必ずしも社会貢献意欲が定着しているとはいえない状況がございます。
 このため、都教育委員会は、ボランティアマインドをオリンピック・パラリンピック教育の重点的に育成すべき資質の一つに位置づけ、都内全ての公立学校で、社会に貢献しようとする意欲を育む教育を展開してまいります。
 今後、この教育を通して、これからの高齢化社会に必要となる社会性や互いに認め合う心を持って他者と接する力を身につけさせ、共生社会の実現や国際社会の平和と発展に貢献できる人間を育成してまいります。

○和泉委員 今、共生社会の実現というのがありました。オリンピック・パラリンピックが目指す理念の中には、この共生社会の実現というものがあります。この担い手である人間というものをどのように育成していくべきかということが重要でございます。
 そこで、こうした理念を教育に結びつけ、具体的な教育活動を展開して、子供たちを育てていくというのが学校現場だと考えますけれども、ボランティアマインドを確実に醸成するために、各学校でどのような取り組みを行うのか見解をお伺いします。

○中井教育長 各学校では、オリンピック・パラリンピックの精神、スポーツ、文化、環境の四つのテーマに、ボランティアマインドの醸成を狙いとする活動を組み合わせ、体験と活動を重視した三つのプロジェクトを実施いたします。
 具体的には、各学校がこれまで行ってきた高齢者施設訪問や環境美化等の活動を、東京ユースボランティアとして充実させ、社会貢献の意欲を育みます。また、障害者との交流を行うスマイルプロジェクト、パラリンピアン等との交流を行う夢・未来プロジェクトといった二つのプロジェクトにも、相手を思いやる心等を育む取り組みを取り入れてまいります。
 ボランティアマインドは一朝一夕に醸成できるものではなく、今後、二〇二〇年東京大会に向けて、さまざまな活動の中で、計画的、継続的に育成を図ってまいります。

○和泉委員 今定例会の我が党の代表質問での、ボランティアの募集、育成などに計画的に取り組んでいくための具体的な取り組みについての質問に対して、都は、ことしの秋を目途に、東京二〇二〇大会のボランティアの確保に向けた戦略を策定するというご答弁もいただきました。
 この戦略を実効性のあるものにしていくためには、子供たちが学校で身につけた資質、能力を実社会で発揮していくことが重要であります。
 子供たちが地域社会の中で実際のボランティアの担い手として活動を実践していくことが望ましい姿であり、この大会を支えるボランティアの確保にもつながるものとなります。
 そこで、都教育委員会として、こうした意欲ある子供たちの自主的な活動を促していく仕組みが必要であると考えますが、見解を伺います。

○中井教育長 委員ご指摘のとおり、ボランティアマインドは学校の取り組みだけではなく、子供たちが地域社会等で社会貢献活動への意欲、関心を高めたり、二〇二〇年東京大会を支えるボランティアに主体的に参加したりすることで、醸成していくことが重要でございます。
 このため、関係各局と連携し、ボランティア講座に中学生や高校生を参加させ、実際の地域社会での活動を行うための意欲や関心等を高めていくとともに、子供たちの自主的な活動を促していくため、ボランティア活動の情報を提供する新たな仕組みであるTOKYO BOYS&GIRLS、これは仮称ではございますが、これを来年度構築してまいります。
 これらの活動を通して、学校でのボランティアマインドの醸成に係る教育活動を活性化させ、みずから積極的にボランティアに参加する若者をふやしてまいります。

○和泉委員 自主的な活動を促していくための新たな仕組みを構築していくということですが、子供たちがみずからボランティアをやりたいという気持ちを活動に結びつけていくことが大切だと考えます。
 例えば、子供たちが事前に登録をしておいて、時間ができたり、やる気が起きたときに、すぐに活動に参加できるような仕組みというものをぜひ構築していただきたいと思っております。
 ボランティアに積極的に参加する子供たちの姿は、大人たちをも変える力を持って、ひいては東京、そして日本の社会全体を変えていく可能性を秘めております。それこそが、まさに大会のレガシーであるといっても過言ではありません。
 オリンピック・パラリンピックという二度とないこの貴重な機会を捉えて、将来の東京、そして日本を支える子供たちに必要な資質、能力を育んでいくことは、今の大人である我々の責務であります。
 都教育委員会には、教育プログラムを確実に各学校が取り組んでいただけるように支援をお願い申し上げまして、次の質問に移ります。
 次に、ボランティア等、外国人のおもてなしに当たっては、多様性や海外の文化への理解といった国際感覚と、日本人としての自覚や誇りを持ち、英語を用いてコミュニケーションを図ることが望ましいと考えます。
 現在、TOEFLのスコアの国際比較において、日本は、アジア諸国との比較で三十カ国中二十七位、とりわけスピーキングのスコアは最下位であります。聞くこと、話すこと、こういったことができる英語力を高めていくことが課題です。
 しかし、子供たちが日常生活の中で外国人と触れ合う機会というのは極めて少なく、コミュニケーションの仕方がわからず身につかないというのが現状です。学校で学んだ語学力をコミュニケーションの手段にまで高めていくためには、体験したり、実践する場が必要です。こうした場の提供に役立つのが、外国の疑似体験ができる英語村であると考えます。
 知事は施政方針において、グローバル化への対応策の一つである英語村の事業者公募について言及しており、いよいよこの事業が構想段階から次のステップに移るということであります。
 そこで、都教育委員会は、英語村開設に向けて、今後どのように準備を進めていくか伺います。

○中井教育長 都教育委員会は、体験的で実践的な英語学習を通じ、英語を使用する楽しさや必要性を体感でき、児童生徒の英語学習への意欲を向上させる場として、英語村の整備を進めてまいります。
 こうした施設の整備運営に当たっては、民間の創意工夫や効率的経営を生かす観点から、民間事業者を活用することとし、先般、事業実施方針を策定いたしました。
 今後はこの実施方針に基づき、三月末ごろに募集要項を公表し、本年九月には事業予定者を決定するなど、平成三十年九月末までに開設できるよう、着実に準備を進めてまいります。

○和泉委員 魅力的なプログラムの提供、そして、施設運営のできる民間事業者を選び、子供たちが英語で積極的にコミュニケーションする意欲が高まるよう、しっかりと準備を進めていただきたいと思います。
 英語村は、子供たちが国際感覚を肌で感じ、国際都市東京にいることを体感することができるよう、外国人留学生や旅行者が多く訪れる地域にあることが望ましいと思います。
 今回公表された実施方針では、英語村を臨海副都心にあるタイム二十四というビルに開設することが発表されましたが、近隣には東京国際交流館、商業施設や展示施設等が集まっており、外国人留学生や観光客が多く訪れることから、英語村の設置場所としては大変ふさわしいものと感じております。
 一方、実施方針では、英語村は都内の子供たちを主な対象とすることが発表されました。開設場所が決定した今、次に重要なことはプログラムの内容です。
 そこで、今後、子供たちに提供するプログラムの基本的な考え方についてお伺いします。

○中井教育長 実施方針では、英語村は、小学校段階から高等学校段階までの幅広い年齢層の児童生徒を主な対象としております。
 このため、英語や外国の生活、文化に触れ、なれ、親しむことを目的とした初歩的なレベルから、海外留学や国際社会で活躍する場面を想定した高度で実践的なレベルのものまで、英語村では多様なプログラムを提供することといたします。
 また、通所型と宿泊型のプログラムを用意し、児童生徒の多様な学習ニーズに対応するとともに、国際交流が行える場ともしてまいります。
 このように、発達段階や個人に応じたプログラムを幅広く提供することにより、学校や児童生徒の利用を促し、国際都市東京を支えるグローバル人材の育成を推進してまいります。

○和泉委員 英語村が、二〇二〇年大会後には、子供たちと外国人との交流拠点として、未来の子供たちに残すオリンピック・パラリンピック教育のレガシーとなることを期待して、次の質問に移らせていただきます。
 次に、公衆浴場対策について伺います。
 公衆浴場を取り巻く経営環境というものは依然として厳しく、都内の浴場数は、昨年一年間だけで四十一軒廃業し、十二月末現在、六百二十八軒にまで減少しております。
 一方、こうした状況から脱却するため、公衆浴場組合の新たな取り組みも始まっております。
 昨年四月から、銭湯の応援団である銭湯サポーターを募集し、既に一千名以上集まり、サポーターならではの情報発信が行われております。
 十二月には、銭湯サポーターフォーラムを開催し、銭湯の将来をテーマにサポーターと浴場事業者との交流が行われました。これは、公衆浴場業界が銭湯の愛好家や利用者と協力、協同し、公衆浴場の活性化を図っていこうとする注目すべき取り組みであると思います。
 そこで、新しく始まった銭湯サポーターフォーラムなど、公衆浴場組合が実施するこうした意欲的で独創的な取り組みに対して支援していくべきと考えますが、所見を伺います。

○多羅尾生活文化局長 都はこれまで、施設整備に対する各種助成制度を充実させるとともに、公衆浴場組合が行うホームページやSNSなどによる銭湯情報の発信を支援してまいりました。
 今後、公衆浴場を維持発展させていくには、こうした取り組みに加え、利用者拡大策に新たな手法を導入していくことが必要でございます。
 お話の銭湯サポーターフォーラムの開催は、利用者側の視点から銭湯の魅力を発信し、新規顧客層の開拓を図るこれまでにない意欲的な取り組みであることから、都は来年度、この催しを大規模に開催できるよう支援してまいります。
 さらに、利用者の裾野を広げるため、外国人や若者に、我が国独自の入浴文化や銭湯ならではの魅力を体験してもらう銭湯見学会に助成するなど、公衆浴場組合の新たな取り組みを積極的に支援してまいります。

○和泉委員 次に、公衆浴場組合が行う銭湯の利用促進の取り組みに対する都営交通の協力について伺います。
 交通局では、先月発表した新たな経営計画において、東京の発展に貢献することを経営方針の一つに掲げております。都営交通は、公営交通事業者として都のさまざまな施策とも連携し、東京の魅力向上や産業の発展に貢献していくという役割が求められております。
 こうした中、銭湯は、観光資源としての役割も期待されていることから、都営交通が銭湯の魅力を発信していくことは、銭湯の利用促進の取り組みを後押しするだけではなく、地域の活性化や東京の観光振興にも寄与するものと考えます。
 そこで、交通局は、都営地下鉄などを活用して、銭湯のPRや情報発信に協力していくべきと考えますが、見解を伺います。

○塩見交通局長 交通局では、都営地下鉄などの沿線の区や施設と連携し、観光スポットやイベントなど地域の活性化や乗客の誘致に資する情報を、沿線情報誌やポスター、局のホームページなどを通じて発信しているところでございます。
 銭湯につきましては、ご指摘のとおり、観光資源としての役割も期待されていることから、公衆浴場組合とタイアップいたしまして、まずは、五月のショウブ湯に合わせて、銭湯のイベント情報と都営交通一日乗車券の案内を掲載したPRポスターを都営地下鉄各駅に掲出いたします。
 また、組合を通じて、各銭湯に都営交通オリジナルグッズを提供してまいります。
 さらに、駅などで配布している沿線の情報誌に、近隣の銭湯を含めた散策コースの紹介や銭湯の特集記事を掲載するなど、積極的に情報を発信してまいります。

○和泉委員 ありがとうございました。ぜひお願いします。
 次に、地域の観光協会の活性化について伺います。
 都内では、それぞれの地域の観光協会が、旅行者の誘致に向けさまざまな工夫を凝らしながら事業を行う例は多いのですが、新しい展開を図るためには、自治体の区域にとらわれることなく、他の自治体にある観光関連の団体と協力する体制をつくったり、あるいは、都の観光施策と連携するような対応も必要になるかと考えます。
 そうした内容の実現に向け、観光協会が新しい発想で計画をつくったり、それらを実行に移す場合に生じる負担というものを、人材や財源の面から下支えするような配慮も重要になるものと考えますが、都として、地域の観光協会に対してどのような施策を行う考えであるのか、所見を伺います。

○山本産業労働局長 都はこれまで、各地域の観光協会に対し、旅行者誘致に役立つ情報を、シンポジウムの開催や事例集の配布により提供するとともに、専門家を派遣するなど、地域の観光まちづくりの取り組みをサポートしてまいりました。
 来年度は、観光協会等の課題や要望を調査し、共通する問題の解決につなげるための研修会や、個別のニーズに応えるオーダーメード研修を実施いたします。
 また、大学の観光学部の学生が観光協会等に出向く学生インターンを実施し、知識やノウハウを活用して新たな視点から事業を企画するなど、観光協会の活動を一層活性化させてまいります。
 さらに、これにより計画された事業等にかかる経費の三分の二について、百万円を上限に補助を行うなど、地域の観光関連団体への支援を着実に進めてまいります。

○和泉委員 次に、外国人旅行者の多様な文化、習慣について伺います。
 海外からの旅行者が増加するにつれ、文化や生活上の習慣の違いから、宿泊場所などで外国人への応対に苦慮される事例がふえているという話を聞きます。
 特に食生活の面では、文化的な背景や宗教上の問題から、一定の食材を避ける観光者がいることは事実です。また、トイレの使い方なども、日々の生活の基本的な部分の違いもあり、そうした外国人旅行者の行動の意味を正確に把握して、事業者の理解や応対の方法にしっかりと反映させる取り組みというものは極めて重要であります。
 しかし、このような事業者に役立つ情報や知識というものは、いまだ十分には整理されておりません。
 私は、昨年の第四回定例会において、世界の各国の文化や食生活、マナーなどの特性を具体的に分析し、その結果を受け入れ環境整備に生かしていくべきだという提案を行いましたが、都は来年度、具体的にどのように取り組むのか伺います。

○山本産業労働局長 都はこれまで、外国人観光客の生活習慣の違いから宿泊施設等で生じた課題を踏まえまして、例えば入浴方法など、日本の生活ルールを多言語で説明する取り組みを民間事業者に紹介してまいりました。
 来年度は、外国人旅行者の食や習慣の実情を把握し、民間事業者の適切な対応に役立てる調査を実施いたします。
 具体的には、訪日観光客の多い十カ国等を対象とし、食に関する宗教上の制約やベジタリアンの現状等について、大学や研究機関などへのヒアリングを行ってまいります。また、トイレ利用等の生活習慣につきまして、宿泊や飲食などの業界団体に聞き取り調査を行うとともに、空港等で旅行者へのアンケートも実施してまいります。
 こうした調査の結果を踏まえまして、多様な文化や習慣を持つ外国人旅行者が快適に滞在できる環境の整備を進めてまいります。

○和泉委員 次に、マンションの管理不全の予防、改善に向けた取り組みについて伺います。
 築年数の経過したマンションほど高齢化や賃貸化が進み、区分所有者の管理組合活動への参加が困難となったり、管理に無関心な居住者がふえて、役員のなり手がいなくなるなど、管理上の問題を多く抱える傾向が見られます。こうした状況を放置すれば、今後、管理不全に陥るマンションは確実に増加し、居住性はもとより、地域の生活環境にも悪影響を及ぼすことが懸念されます。
 そのような事態を引き起こさないためにも、管理不全を未然に防止していくことが重要と考えますが、都の取り組みについて伺います。

○安井東京都技監 マンションの管理は、管理組合がみずからの責任で適正に行うことが基本でございますけれども、お話のように、管理不全に陥った場合、周辺地域にも悪影響を及ぼすおそれがあることから、行政の一定の関与も必要でございます。
 都としては、管理不全の兆候が見られる場合には、悪化する前に改善を促していくことが重要と考えておりまして、来年度からは、区市町村とも連携し、管理組合の活動状況を把握するための仕組みの構築に取り組んでまいります。
 具体的には、全てのマンションを対象に、建物概要や管理形態等の基本情報を把握するための登録制度を設けることといたします。
 また、築年数の経過とともに管理不全の懸念が高まることから、一定のマンションにつきましては、管理組合の活動状況等を定期的に報告してもらう制度を導入することといたします。

○和泉委員 ガイドラインの策定とかアドバイザーの派遣とか、今までは、普及啓発中心のこれまでの施策というものは、管理に対する意識が高く、そして管理の適正化に向けて努力しようとする管理組合には有効ですけれども、区分所有者が管理に無関心で、管理組合が機能していない、このようなマンションには効果が期待できませんでした。
 その点、今回の新たな取り組みというものは、管理に問題のあるマンションを把握し、早期に改善を図ろうとするものであり、従来の施策に比べると、かなり踏み込んだものといえます。
 区市町村と連携し、全国自治体の手本となるような仕組みをつくってほしいと思いますけれども、都は、新たな仕組みの構築に向け、どのように取り組んでいるのかを伺います。

○安井東京都技監 個々のマンションの管理状況の把握に当たりましては、地域に身近な自治体でございます区市町村と十分な意見交換を行いながら、仕組みを検討していく必要がございます。
 このため、来年度から、建物概要などの基本情報の登録に加えまして、例えば計画修繕の取り組みや組合の活動状況等について、数区市と連携して、試行的にマンション管理の報告を求めることといたします。
 試行を通じまして、マンション管理業者や分譲住宅などの関係業界団体の協力も得ながら、制度設計や運用に当たっての課題の把握、有効性の検証などを行いまして、管理不全の予防、改善につながる実効性のある制度を構築してまいります。

○和泉委員 仕組みの実効性を高めるには、制度の条例化というものも視野に検討することも必要だと思います。その点についても考慮しながら、制度構築を進めてもらいたいということを要望いたします。
 次に、地下水についてお伺いします。
 先日、我が党は代表質問で、地下水の保全と利用の問題を取り上げました。東日本大震災以降、地下水利用に関する社会的関心が高まっております。災害時などには、上水道の断水に備えて、地下水を代替手段として確保したいという話も聞いております。
 一方、東京はかつて、地下水を過剰にくみ上げた結果、大変な地盤沈下が生じました。そのため、法や条例に基づき揚水規制を行ってまいりました。
 そこでまず、これまで都が行ってきた揚水規制の取り組みの成果と現状についてお伺いします。

○遠藤環境局長 都内では、区部東部を中心に大正時代から地盤沈下が進行し、最大四・五メートルの累積沈下を記録するなど著しい地盤沈下を経験しております。このため、都は、法律の規制に加え、条例による独自の揚水規制を行っており、近年、地盤沈下は鎮静化しつつあります。
 しかしながら、地盤の沈下は不可逆的であり、一たび沈下すると、もとの地盤高に回復することはございません。このため、現在でも区部東部には、地盤高が満潮面以下の地域、いわゆるゼロメートル地帯が、二十三区の面積の二割に相当する百二十四平方キロメートルにわたって広がっている状況でございます。

○和泉委員 沈下した地盤高は回復しないが、揚水規制により、さらなる沈下は食いとめられているということでございます。
 揚水規制については、この間、規制対象の拡大などの見直しが図られていますが、時代や状況の変化に応じて規制の検証が必要だということはいうまでもありません。
 その一つに、揚水ポンプの問題があります。主に家庭用の小型ポンプは、現行条例の規制対象ではありませんけれども、製品が改良され、そして物によっては大量の水をくみ上げることができます。この種のポンプが普及すれば、地下水がまたたくさんくみ上げられることになります。しかし、条例の規制対象外であるため、事務を所管する区からも、手の打ちようがないという話を聞いております。
 こうしたことから、昨年十一月、我が党は揚水規制の適正化の要望書を都に提出したところであります。
 都は、条例の趣旨が徹底されるよう、揚水規制の適正な実施、運用に向けて早急に取り組むべきでありますけれども、見解を伺います。

○遠藤環境局長 都は、環境確保条例に基づきまして、法で規制されていない小規模な井戸については、揚水量を一日当たり十立方メートル以下などとする揚水規制を行っております。しかしながら、お話のように、出力三百ワット以下のポンプを使用した井戸については、主に家庭用での使用を想定し、規制対象外としてまいりました。
 ところが、近年、出力三百ワット以下でありながら、一日二十立方メートル以上の揚水が可能なポンプが設置された事例も確認しております。条例の趣旨を逸脱いたしましたこのような事例が広がっていけば、揚水規制の実効性が損なわれるものと認識しております。
 このため、現在、区市と協議を行っており、原則としてポンプの出力にかかわらず規制対象とする条例施行規則の改正について、速やかに実施を図ってまいります。

○和泉委員 地下水というものは貴重な資源であるため、保全が図られた上で活用されるということは有効であります。
 ただ重要なことは、地下水の保全と利用の調和です。例えば、東京駅の地下に大量に水があふれたという報道から、地下水は豊富にあるんじゃないかという印象を抱くかもしれません。しかし、それだけで全体を推しはかれるほど地下水の実態は単純ではなく、地下水への対応というものは、常に危機感を忘れずに、その実態に向き合って、慎重に対応していくべきだと思っております。
 都は、揚水規制の適正な運用を速やかに実施し、その上で、地下水の実態把握を進めていただくことを望んで次の質問に移ります。
 最後に、地域医療構想に関して、とりわけ療養病床についてお伺いをします。
 地域医療構想というものは医療法に定められる医療計画に位置づけられるものであって、病床を高度急性期、急性期、それから回復期と慢性期、この四つの機能に分かれて、そして、それぞれの将来の病床の必要量と、地域医療構想の達成に向けた病床の機能分化、すなわち役割分担及びそれら相互の連携の推進に関する事項を記載しているものです。
 この地域医療構想では、二〇二五年の病床の必要量の設定に当たって、都内の病院への受診を希望される他県の患者の病床数については、その県と協議を行った上で都の病床数に算定することができることになっております。
 高度急性期から回復期は、埼玉、千葉、神奈川の三県を中心に、東京の高度医療を求める患者さんというものは受け入れておりますが、慢性期は逆の傾向が見られます。
 都は、こうした状況を踏まえて、相手県との協議を行っていると聞いておりますが、ぜひ都にふさわしい構想の策定に向けて努力をしていただきたいと思っております。
 一方、国は、介護療養病床を平成三十年に廃止する方針を掲げており、昨年、療養病床の在り方等に関する検討会を設置し、先般、今後のあり方が示されました。国の推計によると、二〇二五年に必要な慢性期の病床数は過剰になるといわれていますが、行き場のない患者さんが発生しないよう、療養病床のあり方というものをしっかりと考えていくべきであります。
 そのためには、都において、療養病床の利用実態、それから患者の状況などの実態把握に努めるのが重要です。
 そこで、国における療養病床のあり方検討の状況と、それを踏まえた都の対応についてお伺いをします。

○梶原福祉保健局長 国の療養病床の在り方等に関する検討会は、本年一月に、介護療養病床等の今後のあり方として、介護老人保健施設などの既存のサービス提供類型に加え、施設類型の新たな選択肢の整理を行いました。
 新たに提案された施設類型は、サービスの特徴、利用者像、医療機能、介護機能を踏まえ、医療内包型二種類と医療外づけ型一種類の計三つの類型となっております。
 制度の内容等については、今後、国の社会保障審議会医療部会や介護保険部会等で議論されることとされており、都は、その動向を注視いたしますとともに、都としても、今後、都内の医療療養病床や介護療養病床を有する医療機関における入院患者の状況など、療養病床の利用実態について把握する考えでございます。

○和泉委員 今も話がありましたけれども、今度、医療療養病床が三つに分かれるということであります。ただでさえ、介護療養病床、そして医療療養病床ということで非常にわかりづらい基準で、さらにここからまた三つに分かれて、さらに複雑な分類になってしまうということでありますから、どういった方々が、どの状況で、どのステージで、その患者さんが、入院病床、療養病床に行くことができるのかということをわかりやすく説明することが必要だと思います。
 先ほども話がありました病床機能を分けるというものは、疾患を抱えている患者さんがどのステージにいるべきか区別するという意味では、非常にわかりやすいと思うんです。だけれども、ベルトコンベヤーみたいにステージ別に患者さんの流れをつくっていくと、あなたは急性期です、次には、ベルトコンベヤーのように回復期です、次には療養期ですということで、このような形になっていると、患者中心の医療からは、かけ離れたものになってしまいます。
 患者にとってみれば、同一の場所で診てもらうということは、情報の共有、医師の連携、そしてストレスの回避ということを考えると極めて有意義であり、実際に急性期と慢性期が並列している病院はあっても、回復期が急性期とセットで存在しているということはありません。ですから、こういった対応というものも、国でも、都立病院を含めて考えていったりとか、さまざまな考え方が必要だと思います。
 また、もう一つは、かかりつけ医制度というものも充実が必要です。大病院に集中、この間、特定機能病院は紹介状なしでは初診料の自己負担という議論もありましたけれども、こういったものも重要なテーマであり、我々の同期もしくは先輩は、これによって大分、必要な患者さんの医療の提供に専念ができるようになったということもいっておられます。
 ですから、こういった役割分担、そのためには、かかりつけ医制度というものも極めて重要であると思います。こういったことも東京都は十分に検討していただいて、考えていただいて、将来の医療をしっかりと見据えていただきたいと思います。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○秋田副委員長 和泉武彦委員の発言は終わりました。

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