予算特別委員会速記録第三号

○早坂委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十七号議案までを一括して議題といたします。
 昨日に引き続き総括質疑を行います。
 三宅正彦理事の発言を許します。

○三宅委員 まず、都立病院について伺います。
 知事は、来年度の予算原案において、平成三十五年度に都立広尾病院を旧青山病院跡地等に移転改築し、これは仮称ですが、首都災害医療センターとして整備する方針を打ち出しました。
 この新病院には、構想の基本となる二つのコンセプトがあるとのことです。一つは、都心部唯一の基幹災害拠点病院としての機能を抜本的に強化すること、二つ目は、新たにスポーツ医学に基づく医療や国際化に対応した医療に取り組むことということです。
 まずは、この二つのコンセプトについて確認しておきたいと思います。
 一つ目の基幹災害拠点病院としての機能強化については、今定例会の我が党の宇田川幹事長の代表質問に対し、移転改築に当たっては、移転先である旧青山病院跡地等の立地を生かして、テロやNBC災害に対応する新たな拠点として整備していく旨の答弁がありました。
 具体的な検討は来年度から開始されると思いますが、広尾病院がこれまで担ってきた災害拠点としての機能を引き継ぐとともに、災害医療のさらなる充実を図っていくことが重要だと考えます。
 そこで、首都災害医療センターは、都心部唯一の基幹災害拠点病院として、その立地を生かして、どのように整備していくのか所見を伺います。

○真田病院経営本部長 仮称でありますが、首都災害医療センターの整備予定地である旧青山病院跡地等は、国家機能が集中する霞が関周辺や交通結節点である渋谷駅、大規模な避難場所である代々木公園などに近い上、敷地が接する青山通りは、発災時には緊急車両の専用道路となることから、災害時の移動や患者搬送に有利な立地でございます。
 加えて、現在地と比較して敷地面積も広く、基幹災害拠点病院としての機能拡張が可能であることから、移転改築を決定いたしました。
 整備に当たっては、自然災害だけでなく、テロやNBC災害にも対応できる最新の医療設備の導入や、医療人材の確保と育成を通じて、災害医療体制を強化いたします。
 また、免震構造を採用するとともに、ライフラインの多様化を図るなどにより、病院機能の継続性を確保してまいります。
 今後、有識者の意見等も踏まえ、さらに検討してまいります。

○三宅委員 ぜひ、将来にわたり首都東京の安全と安心を守っていくために、我が国を代表する最高レベルの機能を備えた災害医療の拠点として整備していただきたいと思います。
 また、検討に際して、基幹災害拠点病院としての機能だけではなく、患者の動向や経営に与える影響についても考慮することが重要になります。
 基本構想の策定に当たっては、新たな立地の特性を分析した上で、災害医療や救急医療の質の向上だけではなく、平常時の医療提供体制についても十分に検証し、効率的な経営の実現にもしっかりと取り組んでもらいたいと思います。
 次に、二つ目のコンセプトである国際化に対応した医療について伺います。
 平成二十七年の訪日外国人数は、統計をとり始めてから最大の伸び率を示し、過去最高でした。また、東京を訪れる外国人旅行者も同様にふえています。
 現在でも、広尾病院では、在留外国人、訪日外国人の患者への診療対応を日常的に行うとともに、外国人患者の受け入れ体制の充実に努めていると聞いています。
 二〇二〇東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、国際都市東京の存在感は高まっていくものと考えます。新病院ではどのように国際化に対応した医療を目指していくのか、考え方を伺います。

○真田病院経営本部長 在留外国人や訪日観光客が快適に滞在できる都市を実現するには、病気になったときにも、言葉や文化の隔てなく、安心して受診できる医療機関の存在が重要でございます。
 そのため、都立病院では職員の語学研修等に取り組むなど、多言語による診療体制の整備に努めております。中でも、広尾病院には英語と中国語の通訳を配置しており、国の医療通訳拠点病院に指定されております。
 今後は、これまでの取り組みの成果をもとに、多言語による医療サービスの提供を推進していきます。また、首都災害医療センター(仮称)の建設に当たっては、セキュリティーやプライバシーの確保、さまざまな国の文化的慣習への配慮など、施設面での充実を図っていきます。さらに、医療の質においても国際水準に対応するなど、国際都市東京にふさわしい病院を目指してまいります。

○三宅委員 移転先の周辺は、外国人旅行者も多く訪れる地域であり、国際水準に対応した医療へのニーズは高いと思われますし、また、多言語対応を進めることにより、外国人患者との意思疎通がより円滑になり、言葉の壁が一つの要因となる未収金の発生防止にもつながるものと考えます。
 ぜひ、そうした取り組みを進めて、国際的な医療機関としてすぐれた医療を提供していただくようお願い申し上げます。
 ところで、広尾病院にはもう一つ重要な役割があります。それは、島しょ医療の基幹病院としての役割です。島しょ地域は、既に約三人に一人が六十五歳以上であるなど、少子高齢化が急速に進んでおり、医療を取り巻く環境は厳しさを増す一方です。
 都が長期ビジョンに掲げる質の高い医療が受けられ、生涯にわたり健康に暮らせる環境を実現するためには、島しょ地域への積極的な支援が不可欠です。島民にとっても広尾病院はなくてはならない存在であり、今回の移転改築案についても、島民の関心は大変強いものがあります。
 ここで知事に確認したいのですが、この新病院では島しょ医療はどのように位置づけられるのか伺います。

○舛添知事 三宅正彦理事のご自身のご体験にも基づく極めて有意義なご質問だと思います。
 島しょ地域は、高度専門医療を担う医療資源が少ない上、地理的にも離れているなど、医療を受ける環境は大変厳しい状況にあります。私自身もいろんな島を訪れまして病院も視察しましたけど、これはもう絶対に命を救うため、さまざまな手が必要だということを痛感しております。
 このような状況下におきましても、生涯にわたり健康に暮らせる医療環境を確保するための支援は、まさに都立病院が果たすべき行政的医療の一つの大きな役割であると考えております。こうした島しょ医療に対する島民の期待が大きいことも十分に認識をしております。
 広尾病院につきましては、これまでも島しょ医療の基幹病院として、多くの救急患者や入院患者を受け入れてまいりました。また、高度な急性期医療を提供するとともに、画像伝送による診療支援を行うなど、島しょ地域の医療機関との連携を通じまして、医療水準の向上に努めてまいりました。
 首都災害医療センターにつきましても、島しょ医療の基幹病院としての位置づけはいささかも変わるものではなく、移転改築を機に、さらに島しょ医療の充実を図ってまいる決意でございます。

○三宅委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。
 ここまで首都災害医療センターに関連して質問してきましたが、移転改築するまでの間、島しょ医療については、当面できることから地道に進めていくことが重要となります。
 現在、広尾病院では、入院や通院の際に島しょ地域の患者やその家族が宿泊できる施設が敷地内に三部屋用意されています。患者だけではなく、付き添いの家族なども高齢化しており、すぐに泊まれる施設を確保していくことは何物にもかえがたい安心です。
 この宿泊施設については利用者からも評価されており、大変有意義な取り組みではあるものの、日によっては満室で利用できないことがあり、その場合は、他の宿泊先がなかなか見つからないケースも多いと聞いています。特に最近では、インバウンドの増加により、そういったケースがますますふえております。
 島しょの町村長からも、数年来、住民の一層の利便性の確保に向け、部屋数の拡充を要望しているところですが、この宿泊施設の拡充に早急に取り組むべきと考えます。見解を伺います。

○真田病院経営本部長 島民の皆様に質の高い医療を提供するためには、救急搬送体制や診療体制の確保に加え、治療を受ける期間にわたり患者さんや家族が不安を感じることなく滞在できる環境を提供することが重要でございます。
 広尾病院はこれまでも、利用実績などを勘案しながら、宿泊施設の必要数を確保してまいりました。一方、今後は高齢化に伴う重症患者の増加などにより、宿泊希望者の増加や滞在期間の長期化を余儀なくされるケースがふえることが予想されます。
 このため、患者や家族に対する支援強化の一環として、来年度から、現在三室ある施設を五室に拡充することとし、早急に準備を進めてまいります。
 今後も、島しょ地域へのきめ細かい支援策を通じて、島しょ医療の振興を図る取り組みを進めてまいります。

○三宅委員 具体的な答弁をいただきましてありがとうございます。引き続き、島しょ地域の患者や家族に対する支援に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、多摩メディカルキャンパスにおける島しょ医療の取り組みについて伺います。
 医療資源が少ない島しょ地域にとっては、多摩メディカルキャンパスに集積する高度で専門的な医療に対する期待が高まっています。
 平成二十五年に発生した大島の土石流災害では、広尾病院を中心に救急搬送患者を受け入れましたが、区部や島しょ地域でさらに深刻な災害が起きた場合なども想定し、複数の受け入れ環境を整備していくことが重要となります。
 先月取りまとめられた多摩メディカルキャンパスのあり方報告書では、島しょ医療が今後さらなる充実が求められる医療として位置づけられていますが、この多摩メディカルキャンパスにおいても島しょ医療を充実することとした認識と、今後どのような機能強化が図られるのか伺います。

○真田病院経営本部長 多摩メディカルキャンパスは、子供から大人まで高度な総合診療基盤に支えられた医療を提供するとともに、患者数が少なく、高い専門性が必要な難病医療にも積極的に取り組んでおります。
 また、離島航空路線の拠点である調布飛行場や、立川広域防災基地にある立川飛行場とも近接した立地にあり、今後、島しょ医療に果たす役割も一層重要になっていくと認識しております。
 加えて、区部や島しょ地域における大規模災害時には、島しょ医療の基幹病院である広尾病院を補完することも必要になると考えております。
 こうした認識のもと、救急搬送患者の受け入れ体制を強化し、キャンパスが有する機能を最大限活用することにより、島しょ医療の一層の充実を図ってまいります。

○三宅委員 第二の拠点として十分に検討されることを期待します。そして、これからも病院経営本部が担う医療を通じて、島しょ地域はもとより、区部から多摩まで、東京都全域に安全と安心をもたらす施策を力強く進めるよう要望し、次の質問に移ります。
 情報通信施策について伺います。
 現在、ICTは、教育、医療、金融、農業など数多くの分野で、都民生活の向上、ビジネスが展開しやすい環境の実現、新サービスの創出などに向け活用が進められています。
 一方、ICTの活用を進めていく上では、サイバー空間におけるセキュリティーの確保が重要ですが、昨今、サイバー攻撃は、被害報道を聞かない日がないほど激しさを増しています。
 こうした中、都においても来年度から東京都CSIRTを設置し、サイバーセキュリティーレベルの向上を図っていくこととしています。
 セキュリティー事故への迅速な対応や事前の準備等を行うためには、高度な専門性を有する人材が不可欠ですが、都はどのように東京都CSIRTの体制を整備し、具体的にどのような活動を行っていこうとしているのか見解を伺います。

○中西総務局長 東京都CSIRTは、サイバーセキュリティーへの対処を行う全庁横断的な組織として、専門性の高い人材が必要であることから、活動を指揮する部課長級について外部から人材を登用するほか、セキュリティーに関する知見や技術力を有する民間企業を活用するなど、実効性の高い体制を整えてまいります。
 こうした体制のもと、事例を想定したサイバー演習を実施し、初動体制や事態対処の習熟を図るなど、インシデント対応に当たる職員のスキル向上に取り組んでまいります。
 さらに、国や警視庁等との連携により、最新のサイバー攻撃の技術動向や事例等の収集を行うとともに、それらを分析、評価し、区市町村を含めたセキュリティー対策の強化を図り、今後も増加が見込まれますサイバー攻撃に適切に対処してまいります。

○三宅委員 十分な体制を整備し、区市町村を含めたサイバーセキュリティー対策の一層の強化に努めてもらいたいと思います。
 都民生活を豊かにし、持続的な経済成長を実現させるためには、サイバーセキュリティー対策を必要不可欠のものとしつつも、ICTを都政運営において積極的に活用していくことが重要だと考えます。
 既に都においても、東京都長期ビジョンに掲げたさまざまな取り組みにおいてICTの活用を進めていると聞いていますが、ICTは、二〇二〇東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けて加速的に進歩していくことが見込まれていることから、ICTの進歩の速さにも目を向け、ICTの活用に関する都の考え方を整理しておく必要があるのではないでしょうか。
 都は今般、東京都における情報通信施策の展開に向けた現状・課題と今後の方向性の素案を公表しましたが、この報告書の基本的な考え方を伺います。

○中西総務局長 ICTは、経済成長やさまざまな社会的課題を解決する手段として期待されることから、セキュリティー確保を前提としつつ、今後の都政運営において積極的に利活用していくことが重要でございます。
 そこで、今回取りまとめました報告書では、都におけるICT利活用の適否について、有効かつ適切、さらに安全をキーワードに、導入しようとする技術が行政課題の解決に資するか、費用対効果は適正か、十分なセキュリティー対策がとられているかなどの観点から総合的に判断していくといった取り組みの考え方を示したところでございます。
 今後、こうした考え方を都庁全体へと浸透させていくことで、ICT利活用における職員のスキルを向上させ、都政運営においてICTの積極的な利活用を進めてまいります。

○三宅委員 本報告書では、基本的な考え方に加え、幾つかの技術について、東京都版ICT導入・利活用モデルがまとめられていますが、このモデルの内容と今後の具体的な取り組みについて伺います。

○中西総務局長 東京都版ICT導入・利活用モデルとは、基本的な考え方を踏まえて、それぞれの技術ごとに、標準的な仕様、仕組み、運用ルールなどを定めたものでございます。
 例えば、現在、都がさまざまな場所に設置しておりますデジタルサイネージは、データの送受信の仕組みが統一されていないことなどにより、即時に一斉情報の発信ができません。そこで、デジタルサイネージ端末についての東京都版共通仕様などを定め、今後はこれに基づいた整備を進めることで、一斉情報の発信を可能といたします。
 このように都民が、いつでも、どこでも、必要な情報、必要なサービスを受けることが可能となる仕組みを構築し、都庁一丸となって整備を進めることにより、東京の情報通信環境のさらなる向上を図り、都民生活の質の向上を目指してまいります。

○三宅委員 ICTは、今後の都政運営においても積極的に活用していくものですが、ICTの活用に際しては、これまで議論してきたサイバーセキュリティー面でのリスクを初め、導入に多大な経費を要する、導入した技術がすぐに旧式なものになってしまうというおそれがあるなど、気をつけなくてはならない点が多くあります。
 都においてはこうした点を十分注意し、世界で一番の都市東京の実現のため、ICTを都政運営に有効、適切、安全に取り入れていくよう要望し、次の質問に移ります。
 島しょの都立高校について伺います。
 これまで我が党は、島外の生徒を島の高校で受け入れることによって、高校の活性化、ひいては島の振興にもつなげていくべきであると主張してきました。
 こうした中、二月二十六日、都立大島高校のツバキ園が、教育機関としては世界で初めて国際優秀ツバキ園の認定を受けました。大島高校のツバキ園は昭和五十二年に設置されて以来、生徒が教職員と一緒になって育て、今では約三百七十種、一千本のツバキが毎年花を咲かせます。
 現在、大島では椿まつりが開催されていますが、この大島高校のツバキ園のほかに、都立大島公園と民間施設の椿花ガーデンも国際優秀ツバキ園の認定を受け、大島町は今大変活気づいています。
 他の高校も含め、大島高校のような特色ある取り組みを積極的にPRすれば、島外から島の高校への進学を希望する生徒も確実にふえるはずです。
 知事は本定例会の施政方針において、島外の生徒が島にホームステイをして高校に進学する取り組みについて、雄大な大自然の中で、島の温かい人情に触れながら学ぶ経験は、これからの人生の大きな財産になる、この四月に始まる神津島から、今後、他の島にも広げていきたいと述べられました。
 また、先月、都教育委員会が策定した都立高校改革推進計画新実施計画においても、今後、島外の生徒の受け入れを進めていくとされています。
 そこで、都教育委員会は、この島外生徒の受け入れの拡大に向け、具体的にどのように進めていくのか伺います。

○中井教育長 本年四月、神津高校に進学する島外生徒一名の受け入れを、神津島村が開始いたします。
 平成二十九年度には、神津島村が島外生徒のさらなる受け入れを、また、八丈町が八丈高校に進学する島外生徒の受け入れの開始をそれぞれ計画しております。
 このような動きを支援するため、都教育委員会は、島外の中学生が島の生活を体験するショートステイ事業や生徒のホームステイに際し、町村が負担する経費の一部を補助してまいります。
 ご指摘のとおり、大島高校のように島の高校には多くの魅力がございます。今後、これらの魅力を島外の中学生に一層PRするともに、島しょの町村とさらに密に連携を図りながら、島外生徒の受け入れの拡大を積極的に進めてまいります。

○三宅委員 積極的に進めていただけるということで期待してまいります。
 次に、都立大島海洋国際高校について伺います。
 同校の特色である航海実習が、船員の体制が整わないことを理由に、計画した時期に実施できておらず、現在の二年生に予定されていた国際航海実習が延期されている状況にあります。
 同校の生徒の多くは、自分の将来の進路やつきたい職業を考えてこの学校を選び学んでいますが、教育効果の観点からも、三年間で習得すべき教育内容は、卒業するまでの間にしっかりと行われるべきです。
 私は、昨年の第四回定例会においてこの問題を取り上げましたが、教育長から、早急に船の運航体制を整え、航海実習を着実に実施していくとの答弁がありました。
 そこで、その後の船員確保の取り組みと延期されている航海実習への対応、また、他の学年の来年度の航海実習についてどのように取り組んでいくのか伺います。

○中井教育長 船員の確保については、本年二月一日に一名を採用したほか、四月一日にはさらに一名の採用を予定しております。これらにより、船員二名を確保し、確実に航海実習を実施するための運航体制を整備いたします。
 また、延期した二年生の航海実習につきましては、生徒や保護者の意向を踏まえますとともに、生徒の進路選択や大学受験などを考慮した結果、航海日数を短縮し、航海先を国内に変更いたしますが、昼夜を通して数日間に及ぶ連続航海を行うなど教育効果の高い内容を組み入れた上で、平成二十八年度の第一学期から実施することとしております。
 この実習を確実に実施いたしますとともに、他の学年についても教育効果が高まる実習内容を計画し、平成二十八年度の航海実習を安全かつ着実に実施してまいります。

○三宅委員 大島海洋国際高校は、平成十八年度に大島南高校の水産科を改編し、新たに海洋国際科として開設された学校です。ことしで開校からちょうど十年という節目を迎えたこともあり、ここで一度、同校のこれまでの成果を検証し、よりよい学校づくりに向け、改めて検討する時期が来ていると思います。
 都立高校改革推進計画新実施計画においては、海洋国際教育の充実を図るため、より効果的な教育課程や航海実習を検討していくとされています。航海実習をより効果的なものとするためには、実習船の活用が欠かせません。
 そこで、都教育委員会は、今後の海洋国際教育の充実に向け、実習船の活用策も含めてどのように検討を進めていくのか伺います。

○中井教育長 大島海洋国際高校は、国際感覚豊かなたくましい人間の育成を目指し、船を活用した海洋実習や国際交流等の取り組みにより、開校以来、海洋系、国際系を初めとする大学、短期大学や、船員を養成する上級学校への進学などの成果を上げてまいりました。その一方で、海洋基本法の制定など、海洋教育を取り巻く状況は変化してきております。
 このため、都教育委員会は、他の道府県の海洋教育の内容を調査するとともに、外部有識者を交えた検討委員会で、同校における実習船を活用した教育の充実策について議論を重ねてまいりました。
 今後は、その議論なども踏まえ、具体的な教育課程等を策定していくとともに、専門の調査機関を活用して、同校の教育内容を充実するために必要となる実習船のあり方についても検討を進めてまいります。

○三宅委員 次に、防災関係について伺います。
 平成二十五年十月の台風二十六号により大きな被害を受けた大島では、復興に向けた土砂災害対策が進められており、ことしで三年目を迎えます。ハード、ソフトの両面から土砂災害対策を推進しているこれまでの都の取り組みを評価したいと思います。
 引き続き、これまでの取り組みに加え、被害が発生した大金沢下流域においても、復興に向けた対応が求められています。
 そこで、建設局における現在の対応状況と平成二十八年度の取り組み予定について伺います。

○佐野建設局長 島民の安全・安心を早期に確保し、大島町の復興に資するため、都は、ハード、ソフト両面から、スピード感を持ち、土砂災害対策を進めております。
 ソフト対策では、平成二十七年六月に、島内全域で土砂災害警戒区域等を指定し、町と連携してハザードマップを作成し、警戒避難体制を整備いたしました。
 ハード対策では、被害の大きかった大金沢の神達地区におきまして、斜面崩壊対策や導流堤の整備を進めており、二十八年度に完了させ、安全を確保いたします。
 また、大金沢下流域の屈曲した流路の改修に二十八年度から着手し、安全性を向上させてまいります。改修に当たっては、流路沿いに新たな町道を整備する町と用地取得を協力して行うなど、連携を強めてまいります。
 今後とも、大島町の復興を積極的に支援してまいります。

○三宅委員 災害のあった大島だけではなく、島しょ部全域での土砂災害対策も喫緊の課題です。
 平成二十六年に土砂災害防止法が改正され、都も基礎調査の前倒しを図るなど、ソフト対策の重要性が改めて認識されました。
 二十七年九月の関東・東北豪雨など、豪雨災害が各地で頻発しており、島しょ部の土砂災害対策を一層推進することが不可欠です。
 そこで、平成二十八年度の取り組み内容について伺います。

○佐野建設局長 気象条件が厳しく、地形が急峻な島しょ部におきまして、土砂災害から島民の命を守るためには、ハード対策の推進とあわせてソフト対策を迅速に実施することが重要でございます。
 ハード対策につきましては、新たに着手する大島元町地区の急傾斜地崩壊対策事業や、八丈島大里一ノ沢の砂防事業を含む四支庁五島の十八カ所におきまして事業を実施いたします。
 ソフト対策につきましては、土砂災害防止法に基づく区域指定が完了した大島に引き続き、平成二十七年度は、三宅島など五つの島において基礎調査に着手しております。
 二十八年度は、新たに八丈支庁と小笠原支庁の管内におきましても基礎調査に着手し、二十九年度までに島しょ部全域で完了させることにより、警戒避難体制の整備を促進してまいります。
 今後とも、島しょ部の土砂災害対策に全力で取り組んでまいります。

○三宅委員 一層取り組まれることを望みます。
 さて、災害時の避難、救援活動を円滑に行うには、道路の整備も必要です。道路整備においては、国土強靱化の視点から見れば、島しょ部のみならず、山間部を抱える多摩地域での取り組みも重要です。
 都はこれまで、多摩・島しょ地域において、都道や国道に比べ整備がおくれている市町村道の新設や改良等に対して継続的な補助を行い、地域の発展と災害に強いまちづくりを支えてきた取り組みは評価します。
 一方、老朽化した市町村道の橋梁やトンネル等の道路施設について、長寿命化などの対策を計画的に進めることが急務です。財政の厳しい市町村に対して、道路の新設、改良とともに、老朽化対策への補助の拡充が求められています。
 そこで、市町村から要望の強い橋梁等の老朽化対策も支援すべきです。都の見解を伺います。

○佐野建設局長 市町村道は、都道や国道と一体となって道路ネットワークを形成し、地域交通を支えるとともに、災害時における避難、救援など防災性の向上にも寄与する重要な都市基盤でございます。
 都は、市町村道の新設等に対し、補助金による財政的支援及び施工上の技術的支援を行い、多摩・島しょ地域の道路整備とまちづくりを推進してまいりました。
 一方、市町村では橋梁等の老朽化対策が進まず、災害時には交通の遮断など地域に大きな影響を及ぼすことも危惧されます。
 このたび、多くの市町村が橋梁の長寿命化修繕計画を策定したことを踏まえ、新設及びかけかえの補助に加え、新たに老朽化対策である長寿命化についても早期の対策を促すため、補助対象といたします。
 今後、市町村とさらなる連携を図りながら、計画的に老朽化対策を推進してまいります。

○三宅委員 道路施設には橋梁のほかにトンネルなどがあります。これらについても、防災上の観点から見て、老朽化対策を着実に進めることが必要です。
 今後、市町村の修繕計画の策定状況や国の動向を注視しながら、その他の施設についても補助対象とし、老朽化対策がさらに充実されるよう期待いたします。
 次に、大島のキョン対策について伺います。
 ここに持ってきましたのが、実物大のキョンの写真です。(「連れてこいよ」と呼ぶ者あり)いや、実物は連れてこられない。
 都立大島公園にある動物園から昭和四十年代後半に逃げたキョンが繁殖し、野生の植物や農作物に被害をもたらしています。また、現在では車と衝突するなどの事故も起きております。
 我が党は昨年七月に、大島町とともに捕獲に向けた積極的な対策を講じるよう、都に要望を行いました。
 そこで、まず初めに、今年度、都はキョンの問題についてどのように取り組んできたのか伺います。

○遠藤環境局長 昨年六月、大島には従来の推定を大きく上回る約一万一千頭のキョンが生息していることが判明し、都は、キョンの年間捕獲目標を、従前の千二百頭から、自然増加分に相当する一千七百頭に改めました。
 これに伴い、捕獲効率のよい張り網や猟銃による捕獲をふやすなどの対策の強化を行うとともに、大島町が新たに行う住宅や農地周辺でのわななどによる捕獲に対して財政支援を行うことといたしました。
 このように、都と大島町が連携を密にして、効果的なキョンの捕獲に努めた結果、平成二十七年度は、四月から十二月までの九カ月で、既に平成二十六年度の千二十二頭を上回る千二十六頭を捕獲したところでございます。

○三宅委員 目標の千七百頭に向けて、引き続き捕獲の手を緩めることなく取り組んでいただきたいと思いますが、問題は次のステップです。千七百頭を捕獲したとしても、これ以上ふえないようにしただけで、地元からは、島の主要な農産物であるアシタバなどへの被害をなくすために、さらなる捕獲の強化を望む声が上がっています。
 キョンは、本来、大島に生息していないはずの動物ですから、最終的には根絶しなければならないわけですが、都は今後、どのような対策を講じていくのか伺います。

○遠藤環境局長 これまでの大島における取り組みから、キョンを根絶するには、生息域を柵で分断した上で、柵の中を順次根絶し、根絶したエリアを広げていくことが有効でございます。
 そこで、来年度は、キョンの生息域を分断する柵の設置、鉄砲や張り網を用いた捕獲の強化などに要する経費として、今年度の三倍に当たる約二億八千万円を予算案に計上いたしました。
 平成二十八年度から五年間をめどに、まずは市街地を中心に柵を順次設置し、その中のキョンを根絶することで、市街地においてキョンが目撃されない程度まで個体数を減らしてまいります。

○三宅委員 効率よく、かつ安全に捕獲を進めることで、少しでも早くキョンを根絶することと、また、被害を受けている農家への支援策を要望して、次の質問に移ります。
 海水浴事業について伺います。
 海水浴といえば、東京の島々が透明度などもよく最もお勧めですが、時間や費用がかかり気軽に楽しむということにはいかないというのが現実です。
 そのような中、去年の夏、葛西海浜公園で海水浴体験の社会実験が行われ、約半世紀ぶりに都区内で海水浴体験が楽しめたと、多くの新聞やニュース番組で報道されました。
 環境汚染により水質が悪化し、海が都民から遠い存在になったわけですが、その後の取り組みで水質がよくなった結果だと思います。ただ、水質がよくなったとはいえ、降雨後は水質の悪化が見られるようです。
 本来は水質調査をし、安全を確認した上で海水浴を認めるべきですが、調査に時間がかかることから、今回の社会実験では、水質を事前に予測し、その精度を見るという新たな取り組みを実施したと聞きました。
 そこで、その結果はどのようなものであったか伺います。

○武市港湾局長 今年度は、雨量や風向きなどの気象情報やこれまでの蓄積データ等を活用し、前日に海水浴場の水質予測を行いました。
 海水浴は、七月十八日海の日から八月三十日までのうち、土曜、日曜、お盆期間の計二十日間にわたり実施いたしましたが、このうち事前の水質予測では、八日間を不適といたしました。
 一方で、実際の結果は、二十日間のうち三日間が不適でありましたが、いずれも八日間のうちに含まれており、事前予測はおおむね妥当であったと考えております。

○三宅委員 一定の精度が認められたということですので安心しました。
 さて、最近は夏休み取得がかつてほどお盆休みに集中せず、分散化が進んでいます。お盆に限らず平日でも海水浴を楽しみたい家族連れが多いのではないでしょうか。
 葛西海浜公園は都心から気軽に行ける立地にあります。また、売店などを含め、快適に楽しめる環境を整備することも重要です。
 半世紀ぶりに海水浴が復活したこの公園は、継続的に安心して多くの方が海水浴を快適に楽しめる場にしてほしいと思います。
 そこで、今回の社会実験を踏まえ、今後どのような取り組みを実施するのか伺います。

○武市港湾局長 今年度は、天候にも恵まれ、昨年度の二・五倍の約三万八千人の方々に楽しんでいただきましたが、海水浴の定着のためには、より快適で安全な場を確立することが必要であります。
 そのため、来年度は、アンケートで要望が高かった売店やシャワーなどの拡充による快適性の向上、毒針を有するアカエイ侵入の防止対策など、安全対策の強化に取り組んでまいります。
 また、今後の需要も見据えながら、実施日の拡大も視野に入れてまいります。

○三宅委員 安全確保やニーズへの対応にはそれなりの時間がかかると思いますが、都の責任において改善に向けた取り組みを強化し、安全で快適な公園にしていただきたいと要望しまして、次の質問に移ります。
 東京で外国人観光客が急速にふえていますが、こうした旅行者が、都心にとどまらず、多摩や島しょのエリアにも訪れる流れを、より一層確かなものとする取り組みは重要です。
 このため、外国人の意見を聞きながら観光スポットとしてのポテンシャルを調べ、その結果を反映し、民間の力の活用を通じ観光ルートをつくり上げるとともに、旅行者がツアーに参加するように行政として後押しすることも必要になると考えます。
 来年度に、都は、多摩・島しょ地域の観光振興にどう取り組んでいくのか所見を伺います。

○山本産業労働局長 都はこれまで、多摩や島しょ地域の自然を生かし、さまざまな観光スポットを結ぶツアー等を民間事業者の力を活用してつくり上げる取り組みへの支援を行ってまいりました。
 来年度は、多摩や島しょで外国人旅行者の関心の高い観光資源を調べるため、モニターツアーを計二回実施いたします。その結果を踏まえまして、民間事業者が三年間で多摩と島しょで、それぞれ十の観光ツアーコースを造成し、その際に必要となる経費の三分の二を上限一千万円で助成いたします。
 また、ツアーを海外向けに販売する広告経費への助成も行ってまいります。
 こうした取り組みによりまして、多摩・島しょ地域の観光振興を着実に進めてまいります。

○三宅委員 最後に、都内産食材について伺います。
 新鮮で安全・安心な都内産の食材を、都民がもっと身近なところで入手できるようになれば、都内産農林水産物の魅力を知っていただくために大きな効果があると思います。
 そこで、都内産農林水産物をもっと容易に手に入れられる環境を整えていく必要があると思いますが、所見を伺います。

○山本産業労働局長 都心部において、都内産農林水産物に関する情報を効果的に発信するため、都は来年度、農業関係団体と連携し、新宿で都内産の農林水産物等をPRする情報発信の拠点づくりに取り組んでまいります。
 ここでは、デジタルサイネージを活用し、都内産農林水産物を販売する店舗情報等をわかりやすく発信するほか、新鮮な食材や加工品の販売を行います。あわせて、実際に魅力ある食材を味わうことのできる軽飲食コーナーや各種セミナー、体験学習などが可能なイベントスペースも設置いたします。
 今後は、この拠点を積極的に活用し、都内産農林水産物の一層のPRに取り組むことにより、地産地消の拡大を目指してまいります。

○早坂委員長 三宅正彦理事の発言は終わりました。(拍手)

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