予算特別委員会速記録第二号

   午後五時四十五分開議

○植木副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 大山とも子委員の発言を許します。

○大山委員 質疑に入る前に、先ほどの都議会公明党の橘理事の我が党に対する発言について、一言申し上げます。
 予算原案の談話について発言されましたが、我が党は、福祉予算についても、当然のことながら増額、減額、両方の内容と理由を精査しています。当然減についてもしんしゃくした上で、福祉予算が全体として増額となった主要な要因は何かということを、予算原案に対する談話の中で示しているのです。
 執行機関が議会に提出する予算案を都民の立場から厳しくチェックするのは、議会として、政党として当然の責務です。
 ちなみに、東京都は、決算の状況という資料を毎年十二月に発行していますが、その中で、民生費の増減理由について簡潔に示しています。
 直近の平成二十六年度決算の状況では、民生費は対前年比四百八億円の増額となっており、これは後期高齢者医療財政安定化基金積立金が皆減となったものの、安心こども基金積立金、介護保険給付費負担金、国民健康保険基盤安定負担金の増などによるものだと記述しています。つまり主要な増額要因は、国の社会保障制度に伴うものだとしているのです。
 新年度の福祉予算についても、主要な増額要因が国の社会保障制度に伴うものだという点では、おおむね同じような構造であり、我が党の予算原案への談話が、いいがかり的なコメントなどという指摘は全く当たりません。
 大体、議場の場で理事者の答弁を利用して他の党を誹謗しようというやり方は、政党としてのあり方が厳しく問われることを指摘しておきます。
 日本共産党を代表して総括質問を行います。
 初めに、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会を理由とした財政負担問題です。
 知事、ご承知と思いますが、保育園に落ちた方の切実な訴えを記したブログが大きな話題となり、共感の声が広がっています。ブログは、一億総活躍社会といいながら、保育園に入れず、仕事につけない現実を告発し、オリンピックで何百億円無駄に使ってんだよ、保育園つくれよと訴えています。ブログの訴えは、多くの人々の思いを示すものではないでしょうか。
 ところが、東京五輪をめぐって、二兆円かかる、いや三兆円、そういう話が軽々しく飛び交っています。知事も昨年十月、訪問先のパリで、オリンピックの事業費について、日本でも三兆円ぐらいかかることを念頭に置いた方がいい、こう発言し、ことし二月六日の新聞紙上でも、三兆円くらいかかると発言しています。
 知事は、何を根拠に三兆円くらいかかると発言しているんですか。その中身はどのようなものなのですか。知事のいう三兆円ぐらいのうち、組織委員会が責任を持つものは幾らで、東京都の負担は幾らですか、知事。

○舛添知事 三兆円という数字は、ロンドン大会などの例を参考に申し上げた次第であります。
 ロンドン大会を含めて過去の経験に照らせば、それぐらいかかるということを念頭に置いて、不断に大会経費を精査していかなければならないと、そういう趣旨で申し上げたわけでございまして、今後、国や組織委員会と連携して、どのような事業がどの程度必要なのか、経費の精査も含め、おのおのが責任を持ってしっかりと役割を果たしていけるように取り組んでまいります。

○大山委員 経費を不断に精査していく趣旨だといいながら、具体的な根拠も示さず、三兆円という金額を示すことは、知事として不適切であり、無責任です。
 しかも、大会まであと四年という時点で、いまだに事業費がわからず、二兆円か、三兆円かなどと論じていることは、余りにもずさんではありませんか。
 知事、立候補ファイル発表から三年が経過しながら、最新の組織委員会の運営費は示されず、報道によって推定額が出るという事態は、都民の不安を募らせるものです。節目節目で、対策も含め、運営費を公表するようにすべきではありませんか。

○舛添知事 今後、東京都は、国、組織委員会と連携して大会経費について不断に精査いたしますとともに、都民、国民に丁寧に説明をしてまいります。

○大山委員 知事ね、不断に精査するといいますけれども、いまだに立候補ファイルで示した収支計画以降、組織委員会の収支計画は全く示されていないではありませんか。
 そもそも立候補ファイルでは、大会組織委員会予算の資金不足補填メカニズムの項で、大会組織委員会は、全体予算を月単位で厳しく監視すると書いてあります。この公約はどうなったんでしょうか。知事は、組織委員会に求めてこなかったんでしょうか。お答えください。

○舛添知事 都はこれまでも、レガシーや都民生活への影響のほか、コスト縮減という視点から会場計画の再検討などに精力的に取り組んでいることは、大山委員もご承知のとおりだと思います。
 また、施設整備につきましては、さらに専門の方々からご意見をいただく諮問会議を通じて、設計内容やコストなどを管理しております。
 お尋ねの経費につきましては、何度も申しますけれども、組織委員会や国と連携しながら不断に精査していきますが、大会の成功と有形無形のレガシーにとって必要な事業は、果敢に実施していきたいと思っております。

○大山委員 事業費全体が示されていないでしょうということなんですよね。
 知事は、ロンドンを参考にといいましたけれども、そのロンドンでは、二〇〇七年、五輪開催の五年前から毎年半年ごとに、その後は四半期ごとに総事業費を公表し、かつそれが適切か否かを監査し、監査報告も国民に公表してきたではありませんか。これが、知事が見本としているロンドンですよ。直ちに組織委員会に対し、現時点での運営費を明らかにさせるべきです。
 知事はにわかに、都と国、組織委員会の新たな役割分担を決めるといい始めましたが、大会の運営費の全体像が明らかにされていない中で、新たな役割分担など論ずべきではありません。
 最新の組織委員会運営費、全体の事業費を明らかにし、やるべきことは、新たな役割分担ではなくて、費用が膨らむとしたら、いかに抑制するか、削減するかということこそ取り組むべきではありませんか。
 既に東京都の負担は、競技施設関係の費用は当初計画に比べて一・五倍に増加し、新国立競技場の負担まで加えれば二倍近くになります。選手村の基盤整備を初めとした負担もあります。その上さらなる負担を負うことは、都民は到底納得しません。
 大会経費を抑えるために、今後、知事はどう取り組むのですか。

○舛添知事 今定例会の本会議で役割分担について申し上げた趣旨は、テロの脅威が今増大をしております。それから、資材や人件費も高騰しております。こういうことなど、大会準備が数多くの課題に直面しているため、今後、開催都市である我々東京都が、国、組織委員会とともに役割と責任をしっかりと決めていくということでございます。

○大山委員 私が今聞いたのは、大会経費を抑えるために今後知事はどう取り組むのですか、こう聞いたんです。どうですか。

○舛添知事 先ほど申し上げたと思いますけれども、レガシーや都民生活への影響のほか、コスト縮減の視点から会場計画の再検討に取り組んできたのは、大山委員がご承知のとおりであるというふうに申し上げました。今後とも、そういう姿勢で臨んでいきたいと思っております。

○大山委員 先ほどもいいましたけれども、懸念されるのは、知事の新たな役割分担発言です。知事は今定例会で、二〇二〇年大会は、既に招致のときの想定をはるかに超える膨大な事業となりつつあると述べました。開催都市である都が、組織委員会、国とともに新たな役割分担と答弁しました。新たな役割分担を決めるというのは、本来、組織委員会や国が負担すべきものを、開催都市である都が新たに負担することにつながるんじゃないんですか。

○舛添知事 そういうご想像のもとでおっしゃるんではなくて、私は一つ一つ、根拠のあることをいっているわけで、例えばテロの脅威が非常に増してきていますけれども、例えばセキュリティーというのは、誰がどういうふうにやるのかと。東京都のセキュリティーは誰がやるんですか。国全体のセキュリティーは誰がやるんですか。じゃ、競技場内は誰がやるんですか。そういうことについてきちんと議論をして、納得のいくようにしなければならないということをいっているわけであります。

○大山委員 もちろん、当初予想できなかった事態への対応やセキュリティー対策の強化はあるでしょう。
 しかし、セキュリティー対策でいえば、予定した警備人員の検討はあるとしても、十人予定したけど、予定よりももっと、二十人になるかもしれない、そういう警備人員の検討はあるとしても、立候補ファイルで基本的な役割分担は既に定められているではありませんか。
 警備要員の大部分は、警視庁、東京消防庁、海上保安庁などの公的機関で対応しますね。それから大会組織委員会は、主として競技会場の警備において、豊富な経験を持つ民間警備業者の専門警備員を利用する。民間警備業者は大会組織委員会と契約し、その訓練、管理のもと、オリンピック競技大会を初めとする大会関係の警備業務を担う、このように明記されています。
 そして、その費用についても、治安警備、警護等の費用は国、雑踏警備については都が受け持つ、競技会場の警備については大会組織委員会が受け持つと伺っています。
 知事は、開催都市の責任があることをもって、東京都が本来負担する必要もない新国立競技場の整備費まで負担を受け入れました。今度は新たな役割分担だとして、これまでのルールを超えて、ほかの事業まで都負担を拡大することになりかねません。そんなことをしたら、都負担は天井知らずに膨れ上がり、都財政にも都民施策にも重大な影響をもたらすことは避けられません。そのことを厳しく指摘して、次の質問に移ります。
 子供の貧困対策についてです。
 知事は本会議の答弁で、未来への投資を積極果敢に行うとして、具体的にイの一番に挙げたのは、子供の貧困対策です。知事は、支援に向けて国を先導する、国に先行してやると答弁しています。
 知事は、国の不十分な取り組みに対してどのような考え方で取り組んでいるんですか。

○舛添知事 子供の貧困対策を初め、貧困の連鎖を断ち切る取り組みを着実に推進していくためには、国としっかりと連携しながら、現場を持つ都が、国に先駆けました施策を展開し、取り組みの効果を最大限発揮させることが重要であります。
 そのため、来年度予算では、子供の居場所づくりを初め、不登校、中途退学対策、非正規雇用対策などにおいて、東京の実情に応じて都独自に取り組みを強化しまして、人生の各段階における学びや仕事に意欲のある人々への支援を充実させております。
 例えば、子供の居場所創設事業で八千四百万円、首都大学東京と連携した子供の貧困対策の推進に五千万円、校内の寺子屋千四百万円、正規雇用等転換促進助成事業に三十二億八千九百万円をこれは計上しておりますので、ぜひ共産党の皆さんにも全面的にご賛同願いたいと思っておりますが、引き続き国と連携を密にしながら、誰もが意欲と能力を十分発揮して、活躍できる社会の実現を目指してまいります。

○大山委員 それが取り組む考え方ですね。
 それでは、子供の貧困対策について、予算案の概要では、予算額六百八十億円、これを子供の貧困対策について投入します、こうされていますけれども、この六百八十億円に対応する二〇一五年度の予算額は幾らですか。

○長谷川財務局長 東京都予算案の概要に掲載をいたしました子供の貧困対策の総額六百八十億円に対応いたします平成二十七年度予算額は、約六百七十億円でございます。

○大山委員 今年度が六百七十億円、そして来年度が六百八十億円、思い切って子供の貧困対策、力を入れるということなんですけれども、ふえてはいますけれども、約十億円、一・五%の増額にとどまっています。今後は、補正も含めて大幅にふやしていくことが重要です。
 国に先駆けた施策を展開する東京都といいましたけれども、それなら、大学生に対する給付制奨学金に取り組むことが重要です。
 国では、文部科学大臣が必要性を認めているにもかかわらず、財務大臣は難色を示しています。東京都が踏み出すなら、国を動かす大きな力になることは明らかです。
 知事は、子供の貧困対策に関して、とりわけ貧困の連鎖を断ち切るためには、教育を重視して、本会議でも、親の経済状況によって子供が教育を受ける機会を失うことがあってはならないと考えております、こう答弁されています。
 同時に、我が党が大学生に対する奨学金制度に踏み出す自治体がふえていることを紹介しつつ、知事の認識を伺いましたが、知事は、大学は全国から学生が集まる場だから、国全体の教育政策の中で議論されるべきこと、こう答弁しました。それでは、知事が本会議で、学びや仕事に意欲ある人々の支援に向けて国を先導する、国に先行してやる、こう答弁したこととも違うのではないでしょうか。
 知事もご存じだと思いますけれども、学生支援機構の奨学金は、今や大学生の四割が借り、しかも有利子の奨学金が七割を占めています。卒業と同時に平均三百万円、多い場合は一千万円以上の借金を背負うことになります。全労働者の四割が非正規雇用という状況で、学歴に関係なく低賃金が拡大しています。
 そんな中、学生支援機構の有利子の奨学金は、返済が大きな負担になっています。知事はどう認識されていますか。

○舛添知事 大学生の教育費の負担の軽減につきましては、奨学金も含めまして、高等教育機関の所轄である国の責任において制度設計されるべきと思っております。
 大学などで学ぶ学生を対象としました奨学金事業は、国の所管する独立行政法人日本学生支援機構が実施をしております。奨学金返済の負担の軽重は、それぞれの借り受け人の置かれた経済状況により異なるものと考えております。
 どういうふうに実際にこの有利子奨学金含めて奨学金制度を構築するのかと。今から一時間いただければ私の考えを開陳いたしますけれども、大山委員の質問のほかの時間がなくなりますので、本会議で私が申し上げましたように、制度設計にはそれぞれプラス、マイナスがあります。モラルハザードということもあります。それから、大学卒業した後、それぞれの社会人になった方々の経済状況によってもいろいろ違うので、一義的にこうだということはできないと思いますし、そしてまた公的機関、つまり学生支援機構だけじゃなくて、民間の有志の方々の奨学金とか、さまざまな形で貧困の連鎖を断ち切る努力が必要だというふうに思っております。

○大山委員 貧困の連鎖を断ち切る、そして国に先行して先導してやる、そして東京都が今何をできるのか、それを今議論しているわけですね。東京都がやることが何なのかということなんですよ。
 今、知事は、奨学金返済の負担の軽重は、それぞれの借り受け人の置かれた経済状況による、そう答弁されました。余りにも冷たいいい方ではないんでしょうか。
 中には、高収入の仕事について、楽々返せる人もいるでしょう。でも今は、知事の時代のように終身雇用が当たり前で、年々給与が上がるという時代ではなくなっているんです。
 奨学金に関するアンケート調査の結果がつい最近、発表されています。どこが実施したかといいますと、労働者福祉中央協議会という、勤労者福祉活動のための労働団体や生協などの緩やかな中央組織です。知事も昨年の大会にメッセージを送っていらっしゃいますね。
 知事、この調査によりますと、奨学金の借入総額は平均三百十二万九千円、月の返還額の平均は一万七千円です。借入額が五百万円以上である層も一割見られ、これらの層は月三万円以上の返済をしている人が四割を超えています。奨学金の返還の負担感について、少し苦しいとかなり苦しいを合わせて四割以上に上ります。雇用形態別で見ると、非正規労働者では五六%ですから、六割近い方々が苦しいと答えているんです。知事、この状況をどうごらんになりますか。

○舛添知事 まさにそのアンケートでおっしゃったように、個々の状況が違うわけです。ですから、総収入の何割以内までに返済額を抑えるというような緻密な工夫も、今、国の方でおやりになっていると思いますから、そういう具体的な制度設計をしないといけないというふうに申し上げたいと思います。

○大山委員 国会で、国で制度改善しようと、無利子のを広げよう、それは重要ですよ。
 と同時に、返済額、国が今検討しているのは、収入がゼロでも二、三千円だったら毎月返せるでしょう、そういう改善でしかないんですよ。それが本当に改善になるのかということじゃないでしょうか。
 パネルを用意しました。皆さんのお手元にもプリントが行っています。しかも、どうして学生が平均三百万円もの奨学金を借りるのかというと、学費を払って学生生活を維持できないからなんですね。知事、このパネルは、知事が学生だったころ、五十年前から現在までの国公立大学の初年度納付金と大卒の初任給の推移です。
 知事が大学に入学された五十年前の国立大学の初年度納付金は一万六千円、現在は八十一万七千八百円です。何と五十一倍になっています。一方、大卒の初任給は五倍にしかなっていません。私立大学だったら、初年度納付金は平均でも百三十万円です。四年間の学費は四百万円ですよ。
 かつてに比べても格段に厳しい状況に置かれていると思いますけれども、知事は、このグラフ、パネルを見て、どう思いますか。

○舛添知事 これだけ国立大学の初年度納付金が高くなっているというのは、私もずっと認識はしております。

○大山委員 認識していらっしゃるわけですね。私立大学が平均で百三十万円ですから、もっと高いところもあるんですよ。それだったら、本当に、教育を受ける権利を奪わない、そのために東京都が何ができるか、それを考えるべきじゃないんでしょうか。
 この学費負担の軽減なしに、学生の学ぶ権利を保障する、親の経済状況にかかわらず安心して学べるようにすることはできません。
 我が党は代表質問のとき、大学生に対する奨学金制度に踏み出す自治体が広がっていることを紹介し、知事の受けとめを伺いました。知事は、今も答弁されていましたけれども、大学生への奨学金は国の所管だといって、答えられませんでした。
 知事、長野県も、沖縄県も、そして足立区なども踏み出しているではありませんか。都として真剣に検討するべきときではないんでしょうか。どうですか。

○舛添知事 まずその前に、国立大学の学費については、国立大学ですから国がやるべきであって、国権の最高機関である国会できちんと議論をしていただきたいというふうに思っております。
 そういう観点から、まず、国会でしっかりと改善すべきは改善する、国が方針を出していただく。我々はそれに従いたいと思っています。

○大山委員 国に先駆けるといいながら、国任せとは、余りにも冷たいんじゃないんでしょうか。今いっているのは学費じゃなくて--学費が高いんですよ。その現状をどうするんだと、教育権どうするんだということですよ。
 他県は、県民のために頑張っているんですよ。特に、進学率が低いことが国の子供の貧困対策に関する大綱でも改善に取り組む課題として取り上げられている生活保護世帯などの子供たちは大変です。
 生活保護世帯でも、頑張って大学などに進学している子供たちの推移が、予算特別委員会でさっきいただいた資料の129号にあります。
 二〇一三年度は三八%、二〇一四年度は三九・二%になっています。児童養護施設出身者も年々大学等に進学する割合がふえています。
 しかし、全体の進学率は七割です。まだまだ低いといえます。やはり給付制の奨学金もないし、生活費もアルバイトしなければならない状況ですから、大きな困難を抱えているんですね。大学進学の場合、せめてですよ、せめて生活保護受給世帯出身者、養護施設出身者に給付制の奨学金を給付する検討が必要ではないんでしょうか。

○梶原福祉保健局長 生活保護世帯の子供や児童養護施設の退所者が大学等に進学した際には、就学に必要となる授業料や生活費について、都道府県社会福祉協議会の生活福祉資金の教育支援資金や、日本学生支援機構の奨学金などの公的な支援を受けられるほか、各大学においても、奨学金や、授業料等の減免、猶予など、さまざまな支援制度が用意されております。
 また、児童養護施設の退所者につきましては、都独自に大学等の入学時に必要な資金等を貸し付けており、貸し付けを受けて入学した学校を卒業した場合には、償還を免除しております。

○大山委員 結局、借金をしなさいということじゃないんですか。東京都社会福祉協議会の教育支援資金は、大学だったら月額六万五千円です。四年間で三百十二万円です。学生支援機構の奨学金を借りたら、有利子の奨学金が七割を占めるんです。私立大学だったら、これでは授業料すら賄えません。
 実際、生活保護世帯のある大学生は、高校生のとき成績優秀で、先生にも勧められて私立大学に進学しました。社会福祉協議会から入学金などを借りて、民間の給付制奨学金も頑張って取って、年間二十万円もらえることになり、もちろん貸与制の奨学金も借り、学費だけではなく、生活費全て自分で賄わなければなりませんから、アルバイトもして頑張っていました。二年生までは大学に通っていたこの学生は、アルバイトと学業に疲れ果て、単位を落としてしまいました。このまま通っていても借金が大きくなるだけだと、とうとう退学してしまいました。やめて気持ちは楽になったけれど、二百八十万円の奨学金の返済をしなければなりません。
 こういう話は珍しくありません。貧困の連鎖を本気で断ち切る気があるんでしょうか。
 東京都として実施している制度の拡充も重要なことです。東京都の制度として、受験生チャレンジ支援貸付という制度があります。二〇〇八年度から始まって、利用者もふえていると聞いています。高校と大学の受験のための塾代と受験料の貸与で、合格すれば返還を免除するというものです。
 事業発足時と昨年度の実績、返還免除率を教えてください。

○梶原福祉保健局長 受験生チャレンジ支援貸付事業を開始した平成二十年度の貸付件数は、中学三年生の学習塾等受講料が五百三十五件、高校三年生の学習塾等受講料が二百八十四件、大学等受験料が三百九十二件、合計は千二百十一件であり、貸付金額は一億六千三百八十一万余円、償還免除率は九九・三%でございます。
 平成二十六年度は、中学三年生の学習塾等受講料が三千七百四十三件、高校等受験料が二千八百五十五件、高校三年生の学習塾等受講料が千五百三十五件、大学等受験料が二千十八件、合計は一万百五十一件であり、貸付金額は十二億四百六十一万余円、償還免除率は九九・六%となっております。

○大山委員 頑張って勉強して、ほとんどの子たちが合格して返還免除されたということです。東京都も受験生の皆さんを応援していますよ、だから頑張って、そういうメッセージが伝わる、本当にうれしい制度なんです。
 受験生チャレンジ支援貸付を借りるためには保証人が必要です。受験料や塾代を借りなければならないときに、保証人をお願いするのが困難であることが二の足を踏むことになるケースもあります。
 ある自営業者の方が、親の後を継いだものの負債が大きくて、厳しい取り立てに苦しみながら何とか返済し完済して、現在も頑張って商売を続けています。娘さんたちには、学ぶことを諦めてほしくないと、大学受験のためにチャレンジ貸付を受けようと思ったんですけれども、連帯保証人が必要といわれて、こんな金額も出せないほど困窮しているのかと思われたら、せっかく立て直した商売に支障が出ると、借りることを諦めたそうです。
 ほとんどが返済免除になる制度なのですから、保証人をなくすべきではありませんか。

○梶原福祉保健局長 来年度からは、連帯保証人の確保が困難な場合は、子供を連帯借り受け人とすることで連帯保証人を不要とするよう、既に制度を改正することとしておりまして、現在手続を進めております。

○大山委員 とても重要な前進です。ほかの制度でも、保証人の確保が難しいことが利用のハードルになっているものがさまざまあります。例えば保育士の修学資金貸付は、五年間働けば返済免除ですが、連帯保証人については、都の基準は国よりも厳しくて二人つける、そういう規定になっています。ほかの制度もぜひ見直していただきたいと思います。
 さらに、先ほど申し上げた生活保護世帯の子供たちには、大学受験のときの塾代も受験料も、この制度、チャレンジ貸付を受けることができません。私の知り合いで、不登校でつらい時期もあった生活保護世帯の高校生が、自分のような子供たちの役に立ちたいと、スクールカウンセラーになることを目標に大学に進学することを決意しました。
 しかし、生活保護費には大学受験料は入っていません。受験生チャレンジ支援貸付は対象外です。結局、受験勉強は自力で行い、私立大の受験料は三万円以上するために、一校しか受験できなかったそうです。
 受験生チャレンジ支援は、生活保護基準の一・一倍の所得以下の世帯に貸与されるものです。当然、それ以下の収入しかない生活保護世帯なのですから、対象にするべきではありませんか。

○梶原福祉保健局長 生活保護世帯の中学生に対しましては、全ての区市町村で学習塾の費用助成等が行われており、高校の受験料は生活保護費で支給されております。
 また、生活保護世帯の高校生は、生活困窮者自立支援法に基づく学習支援事業の対象となっており、また大学進学に必要な入学料等については、保護費などの中から積み立てた預貯金を充てられるほか、高校在学中のアルバイト収入を充てることが可能となっております。
 さらに、都道府県社会福祉協議会が行っている生活福祉資金の教育支援資金では、入学に必要な費用として、上限五十万円まで無利子で貸し付ける制度がございます。
 福祉事務所におきましては、生活保護世帯の子供が将来自立した生活を営めるよう、進路選択に当たって、本人の置かれている状況や、希望、適性を踏まえ、こうした各種制度を案内しながら、きめ細かく助言を行っております。

○大山委員 いろいろとおっしゃいましたけれども、要するに生活保護世帯の高校生については、保護費からの貯金とアルバイトと借金で賄えということですね。
 保護費から貯金をするといいますけれども、生活保護制度だって改悪されて、ぎりぎりの生活で、どうやって貯金せよというんでしょうか。アルバイトだって、学校に行きながら、受験勉強しながらです。大変なことですよ。どうして生活保護の子に、そこまで無理を強いるんですか。
 ところで、先ほど、中学生には全ての区市町村で学習塾等の助成が行われていると答弁されました。福祉保健局の、生活保護の被保護者自立促進事業という包括補助のことですね。これは、高校生まで範囲を広げることが必要だと思いますが、どうでしょうか。区市が提案すれば認めるのですね。

○梶原福祉保健局長 生活保護とそれ以外の世帯ということで一・一倍のところをいったんですが、生活保護というのは、日常生活に必要な費用を賄う生活扶助を初め、世帯の状況に応じて教育扶助、住宅扶助などが給付され、医療費については医療扶助、介護保険料については生活扶助が全額を給付されております。
 それに対して受験生チャレンジの一・一倍の所得のところ、いわゆる生活保護ではない低所得の世帯というのは、健康保険あるいは介護保険、年金の各種保険料、NHK受信料など、日常生活にかかわる各種の支出が多いという実態があると、そのことを踏まえる必要があるというふうに思っております。
 それから、被保護者自立促進事業におきましては、生活保護世帯の小学四年生から中学三年生までを対象に、学習塾の費用助成等を行う区市を包括補助で支援しておりまして、高校生に対する学習支援につきましても、被保護者の自立に資する事業になっていると認められる場合は、補助対象とすることが可能でございます。

○大山委員 高校生も対象にできるということですから、そのことを区市にも知らせて、ぜひ積極的に対応してください。
 次は、子供の貧困の中でも、とりわけ深刻なひとり親への支援についてです。
 知事、ひとり親家庭への経済支援についての重要性をどう認識していますか。

○舛添知事 ひとり親家庭の親は、子育てと生計の担い手と、この二つの役割を一人で担うために、大変負担が大きゅうございます。世帯収入も、両親がいる世帯と比較しますと、低い傾向にあると思います。
 こうした生活実態を踏まえまして、都は昨年三月に、東京都ひとり親家庭自立支援計画を改定いたしまして、相談体制の整備、就業支援、子育て支援や生活の場の整備、経済的支援を柱に、ひとり親家庭の支援に取り組んでいるところでございます。

○大山委員 経済的支援は、柱として重要であるという認識でいいですね。
 しかし、我が党が代表質問で児童育成手当の額の引き上げを求めたことに関し、児童育成手当を創設した当時は、不十分だった国の所得保障を補完する役割があった、しかし、現在その位置づけは大きく変わっている、こういう趣旨の答弁でした。
 知事は、児童扶養手当でひとり親への所得保障は十分だという認識なんでしょうか。

○梶原福祉保健局長 児童扶養手当は、児童扶養手当法に基づく国の制度であり、その金額につきましては、ひとり親家庭の現状を踏まえながら、国で議論すべきものと考えております。
 国は、現在の状況を踏まえ、二人目以降について本年八月から手当を引き上げる予定としております。
 ひとり親家庭に対しましては、安定的な就業と収入を確保するための就業支援を基本としながら、一人一人が抱える課題に適切に応えるための相談体制の整備、子育て支援や生活の場の整備、経済的支援が必要であり、現在、都は、昨年三月に策定したひとり親家庭自立支援計画に基づき、関係各局が連携して、福祉、医療、雇用、住宅、教育など、さまざまな分野で取り組みを進めております。

○大山委員 私は、知事に、ひとり親への所得保障は児童扶養手当だけで十分なんだという認識なんですか、そう伺ったんです。もちろん、今、福祉保健局長が答弁されたように、さまざまな分野での施策をより充実していくことが求められます。
 しかし、経済的支援、児童扶養手当については国が考えることだとして、そういう姿勢では、ひとり親家庭への支援を的確に行っていくことができるんでしょうか。
 安定的な就業収入を確保するための就労支援を基本としながらといいますけれども、日本のひとり親世帯のお父さん、お母さんは懸命に働いているんです。
 パネル二枚目ですけれども、皆さんのお手元にもあります。このパネル、ごらんください。
 OECDの資料をもとにつくったひとり親世帯の貧困率です。日本の子供の貧困で国際的にも特異な状況といわれているのが、ひとり親の貧困率の高さです。しかも、ほかの国では働くことが貧困から抜け出すことにつながりますが、日本ではそうならないために、就労率は非常に高いのに、貧困率が高いんです。働いても働いても貧困から抜け出せないのが、日本のひとり親の現状です。
 青の棒がひとり親全体の貧困率、赤が就労しているひとり親の貧困率です。ほかの国と比べると一目瞭然です。
 知事、この状況をどう思いますか。経済的支援の充実が必要なのは明白なんじゃないんでしょうか。

○舛添知事 何度も申し上げておりまして、局長も答弁しておりますように、ひとり親世帯について、教育支援、生活支援、保護者に対する就労支援、経済的支援、さまざまな支援策をやっております。国は国できちんと国の政策をやっていただく。我々は我々の政策をきちんとやっている。何の問題もないと思っております。

○大山委員 就労支援をやっているんだというんですけれども--就労支援も重要な課題ですよ。しかし、同時に、どうやって働いているかといったら、ダブルワーク、トリプルワーク、そして子育ての時間を削って目いっぱい働いても貧困から抜け出せない状況の中で、ひとり親の世帯が暮らしているんですよ。直接的な経済的支援の拡充が必要なんです。
 二〇〇九年のひとり親の相対的貧困率は五〇・八%で、OECDの諸国三十三カ国中、最下位です。平成二十五年国民生活基礎調査では五四・六%に、さらにひとり親の貧困率が上がっています。働いているのに最下位、まさに異常事態といわなければなりません。だからこそ、働く条件も経済的支援もしっかりと拡充しなければならないんです。いかに不十分かということなんですけれども、具体的に事例でお話しします。
 介護の仕事をしているお母さんは、社員になれないため収入は安定しません。給料は月十万円ぐらいです。半分以上が家賃でなくなってしまいます。毎月の給料で支払いが追いつかないんです。その追いつかなかった分は、児童扶養手当だとか児童育成手当が出た月に支払ったりしているんです。給料前になると、食事にカップ麺やふりかけだけというときもしばしばあります。毎月の収入をふやそうと頑張ると、年間の収入所得が数千円でもふえると手当が下がってしまうんです。
 別のお母さんは、子供が大きくなって友達と出かけるときのお金が心配、小さいときとは違って洋服にもお金がかかるようになって、私の収入では我慢してねというときが本当に心苦しいです、私はただ普通の生活を送りたいだけです、お金の心配をしながらの生活は、精神的につらいです、こう話していました。
 知事は本会議の答弁で、人々の生活水準を押し上げて豊かな暮らしを実現すること、そうもいっていました。国に先行してというんだったら、東京のどの子にも普通の生活ができるようにすることこそ、知事、やるべきではないんでしょうか。どうですか、知事。
 知事、今の実態を、私、話しましたよ。ちょっと答えてください。
   〔梶原福祉保健局長発言を求む〕

○植木副委員長 舛添知事、どうですか。
   〔発言する者あり〕

○梶原福祉保健局長 個々の生活実態というのは、当然さまざまであるというふうに思います。それが今、教育支援、生活支援、それから就労支援、経済的支援ということで、四つの柱で我々はひとり親家庭への支援をやっている。
 ただ、それが、この四つを、就労を基本としたといいながら、経済的支援をなぜ都が付加するのか。経済的支援というのは、基本的には所得の再配分機能であって、これはいわゆる福祉国家といわれるところは、国が責任を持ってやるべきものであります。いわゆる所得の格差を是正し、社会的な公平と活力をもたらすための経済政策、これは租税制度と社会保障制度を通じて所得の再分配を行っている。児童扶養手当にしても、しかりであります。
 その配分というのは、財源が国民の負担であります。手当を配るのも、当然その元は税金でありますから、ある人からある人に財源を移転するということです。ですから、その手法や対象水準というのは、国によってさまざまです。
 OECD諸国の話を常になさいますけれども、国際比較をするのであれば、財源についてもあわせて議論すべきです。例えば、いつもフランスだとか挙げておっしゃいますが、日本の国民負担率はGDP比三〇・一%です。フランスは四六・二%です。付加価値税は日本は八%です。フランスは二〇%です。
 要はトータルの、例えば税というものを取るというのはみんな反対だというのは、これはいいかもしれませんが、当然、財政的にいえば、給付と負担のバランスをとりながら、いかに社会保障制度を持続可能なものにするかと、そこの視点をなくして、我々は社会保障制度を論じられないというふうに思っています。

○大山委員 知事ね、リアルな実態を述べて、そして聞いたわけですよ、知事の受けとめを。
 しかし、福祉保健局長は、個々の生活実態はさまざまだと。それはそうですよ。しかし、私が紹介したケースだけでなくて、多くのひとり親家庭が同じような困難を抱えているんですよ。
 子供の貧困率が一六・三%でしょう。それを東京の子供たちに当てはめてみたら、東京には二十九万人以上の子供たちが、貧困ライン以下の生活を余儀なくされているということじゃないですか。
 あわせて、今、福祉保健局長が財源のことだとか国民負担率だとかって、おっしゃいました。もちろん、財源のことはあわせて議論すべきと思いますけれども、私たちは、財源については抜本的な提案をしていますし、都議会でも取り上げてきました。
 所得税は、所得が多くなるほど税率が上がるというのが当たり前の応能負担の原則ですが、日本では、所得が一億円を超えると逆に税率が下がっていきます。また、日本では大企業の方が、中小企業よりも法人税の実際の負担は軽くなっています。財源だというのだったら、富裕層と大企業にふさわしい負担を求めることこそ必要です。
 にもかかわらず、安倍政権は逆に大企業には法人税減税をしています。財源を議論すべきだというのだったら、こうしたことを国に求めることこそ必要じゃないでしょうか。
 そして、国民負担率、おっしゃいました。いかにも国民負担率というと、一見、国民の負担の重さを示しているように聞こえますけれども、税と社会保険料を貧困層が払うのも、富裕層が払うのも、大企業が払うのも、全て一緒くたにしてGDPなどで割ったもので、国民負担率の数字からは、誰がどのように負担しているのか、国民の暮らしにどのような影響を与えているのかはわからないんです。
 必要なのは、税と社会保険料の内容を具体的に分析することで、そうすれば日本の問題が、大企業、富裕層の負担が軽過ぎることにあることは明らかです。
 今、私は何を指摘していたかというと、ひとり親の子供たちの状況です。しかし、経済的な支援は地方自治体も取り組むべきことなんですよ。知事も参議院議員として賛成した子どもの貧困対策の推進に関する法律には、その第十三条で、国及び地方公共団体は、各種の手当等の支給--各種の手当等の支給ですよ、貸付金の貸し付けその他の貧困の状況にある子供に対する経済的支援のために必要な施策を講ずるものとすると明記しています。
 知事は、どう受けとめているんですか。これは知事ですよ。ほら、手を挙げています。

○舛添知事 いろいろおっしゃいましたけれども、東京の子供だけが貧困から脱して、ほかの地域は貧困のままでいいなんていうことは私は思いません。
 そして負担の問題、どういう社会保障制度を構築するか、それは国がやる。つまり国権の最高機関で決めることであって、共産党の議員も含めて国会議員がおられますけど、そこが民主主義のルールに基づいて多数決で決定したということに我々は従うということは何のおかしいことでもないし、それが民主主義の原則であるというふうに思っております。
 それから、経済的支援をやっていない、やっていないとさっきからおっしゃっていますけれども、児童育成手当の支給をやったり、児童扶養手当の支給をやったり、ひとり親家庭高等職業訓練促進等の資金の貸付事業をやったり、さまざまやっていますし、先ほどいった四つぐらいの柱でやっているわけであります。
 ですから、そういう正確な姿をちゃんと見ていただいて、おっしゃるように、個々のケースはたくさんありますよ。
 私は、自分のことをいうのは余り好まないけど、私も母子家庭でしたから、中学以来は。しかし、あのとき物すごく苦労した。この中にも母子家庭の方がおられると思いますけど、あのころ、親がいかに苦労したか。そして我々も、私も働いて奨学金だけで大学を出ましたから、それだけ苦労したことに比べると、今の世に生まれておきたかったな、今の東京都に生まれておきたいなと。こんな支援制度なんてなかったわけですから。
 そういうことも……(発言する者あり)それでさらにやらないといっているんじゃなくて、そういうこともきちんと見て、何か今が最悪で劣悪のようなことをいうのは、ちょっとやっぱり正しくないんじゃないかなと思っています。

○大山委員 経済的支援は、子どもの貧困対策の推進に関する法律十三条で、はっきりと位置づいていることです。だから、経済的支援をやっているんだと今答弁されましたから、経済的支援はやるんだという立場ですね。それで……(発言する者あり)やっている。
 だから私たちは、二十年間も、二十年間ですよ、児童育成手当の単価が変わらないんですよ。こういうのってありますか。だから、もっと拡充しましょうと。だから子供の貧困率、ひとり親の子供の貧困率だって高くなっているんですよ。
 そして、知事のときの奨学金と、それから授業料と大卒の初任給を示しましたよ。国立大学だけでも、授業料だけでも五十一倍ですよ、初年度の。それで初任給は五倍しかなっていない。だから、今の子供たちをどう見るのか。そしてこの貧困率をどう下げていくのか。だから、ほかの県は給付制の奨学金をやっているということをいっているわけですね。
 ひとり親世帯が、働いても働いても貧困から抜け出せないということは、単に経済的な困難だけではないんですよ、知事。経済的な困難が、子供から親を奪っている。そのことは、子供たちの豊かな成長を保障するという点から見ても重大なことなんです。
 千葉明徳短期大学の山野良一氏は、社会生活基本調査をもとにした推計で、六歳未満の子供を持つ働いているひとり親の母親の場合、年間収入が百九十九万円以下だと労働時間は長く、育児時間が短いという報告をしています。つまり、親と子供との触れ合う時間の短さが、子供の情緒面を含めた発達や健康にとってさらなる困難を生んでいる、そのことを指摘しています。収入が低いほど働く時間が長いというのは、非正規雇用だとダブルワーク、トリプルワークをせざるを得ないということだと思います。
 経済的な支援が充実すれば--やっているとおっしゃるのだから、それをさらに充実しましょうよ。そうすれば、ダブルワーク、トリプルワーク、それから、子供との接する時間を削らなくても生活をすることができるんです。子供と過ごせる時間をふやすことができるんです。
 相談や就業支援、それから子育て支援や生活の場の整備ももちろん重要ですから、それはそれでさらに拡充していくことです。しかし、それを理由に経済的支援を曖昧にしてはいけないことは、国際的にも明らかです。
 子供の貧困率を改善している国は、現物給付も現金給付も同時に充実しているんです。児童育成手当は、さっき述べました二十年間も同じ額であること自体、現実を見ないということじゃないんでしょうか。せめて単価を上げるべきだということを強く求めておきます。
 児童育成手当とともに、さまざまな経済的な支援が求められます。ひとり親家庭にとって、家賃が非常に大きな負担になっています。空き家の活用が大切です。
 都として、都営住宅の整備、増設を初め、居住支援協議会への支援強化などによって、生活の苦しいひとり親家庭が低家賃で借りることができるようにすることが重要ですが、いかがですか。

○安井東京都技監 都はこれまでも、都営住宅などの公共住宅ストックを有効に活用しておりまして、例えば都営住宅では、ひとり親世帯に対する優遇抽せんや、抽せんによらないポイント方式による入居者の選考、また公社住宅におきましても、子育て世帯倍率優遇制度や子育て世帯など優先申込制度などの入居支援を実施してございます。
 また、民間住宅におきましても、東京都居住支援協議会による区市町村協議会の設立促進と活動支援などを行ってございまして、例えば子育て世帯など住宅確保に配慮を要する都民に賃貸する空き家のバリアフリー化改修助成の財政的支援や、民間賃貸住宅への入居支援を行う区市町村の、先ほど申しましたけれども、協議会の設立促進と活動支援を行っているところでございまして、今後とも、こういった取り組みを通じまして、ひとり親世帯の居住の安定確保に努めてまいります。

○大山委員 都営住宅の増設だとか家賃補助などを含め、支援を強化することを求めておきます。
 子供の医療費助成です。
 多くの子育て家族に大いに役立ち、なくてはならないものになっているのが子供の医療費助成です。厚労省の調査では、全ての都道府県及び市区町村が、乳幼児などに係る医療費の援助を実施していたことがわかっています。
 厚労省は、子どもの医療制度の在り方検討会で、子供の医療費の自己負担のあり方、国保の国庫負担のあり方などについて検討を開始しました。国制度として、子供の医療費を無料化するよう強く求める必要があると思いますが、いかがですか、知事。

○梶原福祉保健局長 都は、これまで国に対し、少子化対策の観点からも、乳幼児医療費の患者一部負担金の割合を現行の二割からさらに軽減するとともに、対象年齢を義務教育終了まで拡大することを提案要求しております。
 また、全国知事会などを通じて、子供の医療費助成制度の創設など、子供に対する医療費の負担軽減に取り組むよう要望しております。

○大山委員 引き続き強く求めていってほしいと思います。
 子供の医療費の助成を高校卒業年齢まで対象にしている自治体は都内にもありますけれども、全国では二百一自治体になります。知事は、このことをどう受けとめていますか。

○梶原福祉保健局長 子供の医療費助成事業の実施主体は区市町村であり、それぞれの自治体が地域の実情を勘案しながら、議会においてさまざまな審議を経て、条例を定めて実施しているものと認識しております。

○大山委員 子供の医療費助成の制度については、直接は区市町村で決めています。
 しかし、乳幼児医療費助成から始まって、都内でも区市町村によって格差があったものを、東京都が制度をつくることによって底上げすることができたではありませんか。その底をさらに引き上げる制度を東京都がつくれば、区市町村はさらに上乗せもできるんです。東京都の役割は大きいといえます。福島県は、県として高校生までやっています。
 私たちが、なぜ高校生年齢まで子供医療費助成を拡大することが必要だと考えているのかっていいますと、高校生を持つ世帯が、教育費や部活などの費用を初め家計の負担が大きくなる世帯なんですね。低所得層にとっては、中学生まではあった就学援助もなくなり、家計の負担が一気にふえるときです。子育て世帯の負担軽減、子供の貧困対策からいっても、重要な施策となります。また、既に行っている自治体では、病状が重くなる前に病院に行ってもらえるので、医療費の抑制にもなっているとの報告もあります。
 仮に、現在の義務教育就学児医療費助成と同様に、十八歳まで拡大した場合の所要額の推計を示してください。

○梶原福祉保健局長 厚生労働省が算出いたしました平成二十五年度の十五歳から十九歳の一人当たり医療費をもとに、平成二十七年一月の都内の十六歳から十八歳の人口で推計いたしますと、義務教育就学児医療費助成制度の対象を十八歳まで拡大した場合の所要額は、約六十四億円と見込まれます。

○大山委員 現行の助成制度で対象を十八歳まで拡大したら、所要額は六十四億円というのは初めて伺いました。切実な問題として、ぜひ十八歳まで子供医療費助成を拡大することを強く求めておきます。
 そして、今、四月からの保育園入園に向けて、ことしもいわゆる保活に保護者が悪戦苦闘しています。保育園に入れなかったら仕事を続けられないのですから、深刻です。現在、多くの自治体で一次の入園判定会議が終わり、承諾、不承諾という通知が送られています。
 保育園や特養ホームの増設を進めていくために大きな課題になっているのが、保育士、介護職の圧倒的な不足です。この問題の解決なしには増設は進みません。
 保育士、介護職の不足、確保、定着が困難になっている大きな原因が、仕事に比べて圧倒的に低い賃金であることも、多くの都民、国民の共通認識になってきています。
 保育の仕事は、乳幼児の養護と教育であり、子供たちの豊かな発達を保障する仕事です。介護職は、高齢者の尊厳を守り、その人らしく生きていくことを保障するというもので、それぞれ高い専門性が求められる仕事です。職員の確保、定着なくして、質の確保も人員不足の解消もできないことは明確です。
 そのためには、賃金を初めとした待遇改善と人員増が欠かせません。きょうは質疑する時間がありませんけれども、今、ことし介護報酬が減ってどうなったのか。そして、東京都が制度を変えてキャリアアップ補助にしたことがどうなったのか。そして、実際に、知事が公約していた、保育士一人当たり月額三万円アップというのが実現できているのか。できていなかったら、どこがどうなのかということをきちんと把握して、より一層拡充していっていただきたいと思います。
 そして、特養ホームや保育園を増設するために欠かせないのが、人のことと土地の問題です。東京都の都有地の活用も進んでいるわけですが、さらに加速させることが必要です。
 具体的に伺いますけれども、新宿区の都営角筈アパートの跡地は、十年間暫定利用のままです。障害者や高齢者の福祉施設をつくってほしいなど、地元の皆さんにはさまざまな要望があります。区から具体的に使いたいという要望が出れば、直ちに対応できるんですかということと、足立区の都営梅田アパートには、建てかえにより活用できる土地が生まれており、福祉施設整備に活用するよう、区とも相談しながら進めることが求められます。それぞれお答えください。

○安井東京都技監 都営住宅の建てかえに伴う創出用地は、都民の貴重な財産でございまして、これまでも道路、公園の整備や緑の充実、福祉施設の整備、防災性の向上など、都の政策目的の実現や地域の課題解決などに活用しております。
 都営角筈アパート跡地につきましては、その立地状況等から、まちづくりへの活用が期待されてございます。
 このため、地元区等の意向も確認しながら、整備の方向について検討を進めてまいりましたが、具体的な活用方策が定まるまでには、しばらく時間を要する見込みでございまして、当面、住宅展示場用地として暫定利用を続けます。
 もう一つのお尋ねの都営梅田アパートの建てかえに伴う創出用地につきましては、既に居住者の移転が完了しており、今後、退去後の建物を除去することになってございます。
 先ほど述べましたように、創出用地は都民の貴重な財産でございまして、これまでも地元区市とも連携しながら、まちづくりなど都の政策目的の実現や地域の課題解決に幅広く活用していく考えでございます。

○植木副委員長 大山とも子委員の発言は終わりました。(拍手)

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