予算特別委員会速記録第二号

   午後三時五十分開議

○上野副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 橘正剛理事の発言を許します。

○橘委員 都議会公明党を代表いたしまして総括質疑を行います。
 最初に、財政運営について質問いたします。
 東京都の平成二十八年度予算案では、堅調な企業収益を背景に、都税収入が五年連続の増となるなど、一見、都の財政は盤石といえます。しかしながら、都の歳入というのは、景気の変動に左右されやすい不安定な構造を持っていることから、現状では、税収が好調だといっても安心できるものではありません。
 こうした懸念材料がある中で、二十七年度最終補正予算や二十八年度予算で計上されている基金の積み立てを、都民のために使わずため込んでいるなどという意見があります。こうした見方は、都の財政の構造や、これまでの基金運用の工夫等を見れば、いささか無責任であるといわざるを得ません。
 都の基金のうち、いわゆる財源として活用可能な基金に焦点を当てまして、都の財政における基金の重要性について整理しておきたいと思います。
 そこでまず、二十七年度最終補正予算と二十八年度予算の全体で、財源として活用可能な基金の積み立ての工夫、また、活用する際の判断基準について伺います。

○長谷川財務局長 平成二十七年度最終補正予算と二十八年度予算を一体として捉えますと、まず、二十七年度最終補正予算では、年度途中の都税収入の増や歳出予算の執行状況の総点検により生み出しました財源を活用することで、社会資本等整備基金などに一千六百三十六億円を積み立てております。そして、二十八年度予算では、社会資本等整備基金を初め、財源として活用可能な基金を六百五十四億円取り崩すこととしておりまして、これをインフラ整備や福祉施設整備のほか、子育て支援、福祉人材の育成などの事業に充当して安定的な施策展開に活用をしております。
 この結果、財源として活用可能な基金は、二十八年度末で一兆一千五百八十七億円の残高を確保しております。

○橘委員 税収の増、それから予算執行の節減等で出た財源をすぐに使うというのではなくて、いざというときの基金という備えに回す、ただし、政策展開等で必要な分は基金から支出するという、入れたり出したり、この機動的で弾力的な手法をとっているわけであります。
 こうした手法によって、安定した強固な財政運営を可能にして、政策展開を通して都民への還元にも計画的な対応を可能にしていると理解しております。
 さて、このフリップを見ていただきたいのですが、これは基金の重要性について、いかに効果があるか、活用できるか、基金という財源として活用可能な基金を重点的にわかるように簡略化した図でございます。
 平成三年からバブル経済が崩壊過程に入っていきます。そうしますと、三年ぐらいあるんですけれども、バブル崩壊が始まって、この局面で税収はどんどんどんどん落ちていきます。
 これを補うために、この政策活動支出が必要になってきます、景気が低迷しますから。それで、政府の経済対策も大量に投入されていきます。そうしますと、これに基づきまして、東京都も出資をしていく、予算をつけていく、景気を維持するためにはそうせざるを得ません。
 そのことによって何が起きたかといいますと、この税収の減、それから行政活動支出、これのギャップが大きく、格差が大きくなったわけであります。それを補ったのが、この格差を補ったのが何かといいますと、これが都債の大量発行でありました。
 けれども、都債の大量発行というのは、いずれツケとして後世に回っていきますので、いずれ払わなきゃならない。これがやっぱり借金となっていくわけです。それを補ったのが、この下の方でだんだん下降曲線をたどっていきます、この財源として可能な基金なわけです。これがなかったらどうなるか、借金だけが残ったという、そういう事態になったと思います。この基金がこの時点でも効果を発揮した、使われたということが、この図で、簡略でありますけれども、いえるかと思います。
 それからもう一つ、リーマンショック、このときは、このなだらかな税収減ではなくて急激な税収減が起きたときであります。このときにどうしたかといいますと、このときは、都債の大量発行ではなくて、どんどんどんどん積み立てていった。そしてまた、いざというときに使えるように、その積み立てた財源として活用可能な基金、これがここまで復活しているわけですね。これはここの段階で、行政改革であるとか、税の節減であるとか、さまざまな血のにじむような努力をしまして、そしてこれが、この基金というのができ上がったわけです。この基金によって、リーマンショックで急激に落ち込んだ都税収入が、この基金によって救われたといっても過言ではありません。
 結果として、この行政活動支出、政策的経費でありますけれども、これがずっと維持されたということになるわけであります。
 そうしますと、これで、本当の概略で申しわけありませんが、バブル崩壊の時点、リーマンショックの時点、この時点で、東京都の財政にとって基金がいかに重要な役割を果たしているか、こういう見方をすることができると思います。
 そこで、このように見ていきますと、都税収入の減収局面において、基金をどう活用してきたか、今後の都の財政運営を論ずる上では大事なポイントであると思います。
 そこで、都の財政運営における基金運用の位置づけ、どのように位置づけをしているのか、また、今私が申し上げたように、過去の推移、そして具体的な対応も含めて局長の所見を伺います。

○長谷川財務局長 ただいまお話がございましたが、バブル経済の崩壊によりまして、都税収入が急激に落ち込む中で、都は財源対策として基金を徐々に取り崩して対応してまいりました。その結果、平成元年度には一兆円を超えておりました活用可能な基金の残高は、十一年度には八百六十九億円とほぼ底をつくことになりました。
 その後、財政再建の取り組みが実を結び、また、二十年度にかけては都税収入が堅調であったこともございまして、基金の積み立てを着実に行い、二十年度には一・五兆円台の残高を確保しておりました。
 一方、二十年のリーマンショック後、東京都は、一年間で約一兆円の減収に直面したわけでございますが、こうした中にありまして、自己改革の取り組みを徹底して、無駄を排除いたしますとともに、必要な行政サービスを安定的に展開するというために、二十一年度から二十三年度にかけて、基金を合計約六千億円取り崩すことで、厳しい財政環境を乗り切ってまいることができたというふうに考えております。

○橘委員 それでは、知事にお伺いいたします。
 このように税収が乱高下する中で、積み立てた基金があったからこそ、リーマンショック後の大幅な税収の減少局面でも乗り切ることができたわけであります。まさに努力して培ってきた財政対応力を効果的に活用して、都民に対する行政サービスを低下させなかったという実例であるわけであります。これが、この視点が大事かと思います。
 また、原則として、ハード事業にしか充当できない都債と比べて、基金は幅広い分野へ充当が可能でありまして、ソフト事業が中心となる福祉施策を安定的に展開していく上でも、大いに寄与するものと私は考えております。
 今後、社会保障関係費の増加が見込まれる中で、景気が大きく変動する状況にあっても、基金を有効に活用して、将来にわたって安定した福祉サービスを支え得る財政運営を行っていくべきと考えますが、知事の所見を伺います。

○舛添知事 都政を預かる者の使命は、いかなる状況にありましても、都民の暮らしを守り、都民福祉の向上をなし遂げていくことでありまして、そのためには、これを支える強固な財政基盤の構築は極めて重要であります。
 橘理事が今、図表でお示しいただきましたように、とりわけこの都財政は元来不安定な構造にありますことから、子育て支援や超高齢化社会への対応など、今後増大が見込まれます社会保障の分野においても、安定した施策展開を支え得る将来への備えもしっかりと講じておく必要があると思っております。
 こうした考えのもと、私は、福祉先進都市実現基金を初め、施策の着実な推進に必要な基金を創設するなど、おっしゃいましたような財政対応力の強化、これに努めてまいりました。
 今後とも、自己改革の取り組みを一層徹底することはもとよりでありますけれども、基金の計画的かつ戦略的な活用を図るなど、中長期的な視点に立った財政運営を行うことで都政に課されました使命を確実に果たしてまいります。

○橘委員 東京都は、基金をため込みというような、ためにする意見に紛動されることなく、揺るぎない信念で財政運営に当たっていただきたいということを求めまして、次の質問に移ります。
 次に、福祉予算について一点確認しておきたいと思います。
 平成二十八年度予算案の目的別内訳で、福祉と保健、この分野は一兆一千六百六十八億円で過去最高となっております。また、福祉保健局予算の一般会計予算の政策的経費であります一般歳出は、平成二十七年度予算と比較して五百八十五億円増の一兆一千百二十四億円となっております。
 この結果、三年連続で福祉保健局の予算は一兆円を上回ることになりました。これは、舛添知事が就任以来、福祉施策に重点的に配分してきたことによるものでもあると思いますが、同時に、福祉と保健の分野の予算は、都民の健康や生活に密接する分野だけに、我が党も一貫して、特段に注視しまして力を入れてまいりました。
 しかし、こういうふうにして努力したにもかかわらず、日本共産党東京都議会議員団は、来年度の都の予算原案発表に当たっての談話の中で、この福祉予算について、このようにいっています。保育園整備のための区市町村への支援が増額され、特別養護老人ホーム整備も補助制度が一部改善され、予算も増額されていることは重要と一定の評価をしているものの、その前振りとしまして、前段階で、福祉予算はふえていますが、そのほとんどは国の社会保障制度による義務的経費が高齢者人口の増加などに伴ってふえるものにすぎませんと、あたかも福祉予算の増加は義務的経費の押し上げによるものだといった、いいがかり的なコメントをしております。
 確認のため伺いますけれども、福祉保健局長、このコメントで指摘している、ほとんどが国の社会保障制度による義務的経費がふえているにすぎないというのは、事実でしょうか。見解を伺います。

○梶原福祉保健局長 平成二十八年度予算案のうち、福祉保健局の一般歳出は、対前年度比で五百八十五億円の増となっております。
 その内訳を見ますと、新規、拡充事業で約三百五十一億円の増となっており、新規事業では、地域医療構想推進事業や子供の居場所創設事業など、総額で約七十三億円を計上し、拡充は、保育士等キャリアアップ補助、介護職員キャリアパス導入促進事業などで、約二百七十八億円となっております。
 介護保険や国民健康保険、後期高齢者医療など、国の制度に基づいて負担する法定負担金などは、高齢者人口の増加等により、約四百二十七億円の増となっておりますが、一方、国庫補助が間接補助から直接補助へ変わることなどの国の制度改正や、施設整備の終了による減などのいわゆる当然減も約二百二十四億円であり、私どもとしては、福祉先進都市東京の実現に向け、さまざまな新たな施策を盛り込み、充実を図っていると認識しております。

○橘委員 ただいま答弁にありましたけれども、前年度の予算と比較すると、福祉予算は五百八十五億円ふえております。
 これに対し、国制度に基づく法定負担金等の増が、約四百二十七億円ということでありました。
 共産党は、この金額を殊さら強調して、ほとんどは国の社会保障制度による義務的経費が増加したものにすぎないといっているのだと思います。
 五百八十五億円、それから四百二十七億円と並べれば、対前年度の増のうち、大半を占めているように見えますけれども、今答弁にもありましたように、国の制度改正や事業終了などによるいわゆる当然減が二百二十四億円もあります。法定負担金等の増は、対象者の増加などに伴う増であり、実質的に当然増ともいえます。そうであれば、当然増だけをあげつらうのではなくて、当然減もしんしゃくすべきであると思います。
 実際、平成二十八年度の福祉保健局の予算案には、創意工夫によるさまざまな拡充施策が盛り込まれ、新規、あるいは拡充策で三百五十一億円もふえております。そうした予算の内容を二の次に、予算額の多寡や高齢化などに伴う義務的経費の増加額を引き合いにして、都の福祉保健行政をこれ見よがしに批判することは、ためにするものだと指摘しておきたいと思います。
 次に、介護対策について質問いたします。
 本定例会の代表質問において我が党は、都民が抱える介護不安の大きな要因の一つとして、介護人材の不足を指摘し、対策を求めたところであります。予算審議に当たり、この点をもう少し詰めておきたいと思います。
 介護ニーズは、今後ますます増大し、それに対応できるサービスを、質、量ともに充実していくためには、そのサービスを支える人材の確保が重要であることはいうまでもありません。介護不安の最大の要因は、介護人材の不足であります。そうした状況下で、国は昨年六月に、平成三十七年度における介護職員数が約三十八万人不足するという推計を発表しております。
 そこで、都内における介護職員の現在の就労人数と平成三十七年度の不足数について、都の見込みを伺います。

○梶原福祉保健局長 都が昨年三月に行った推計では、都内における介護職員数は、平成二十四年十月現在、約十四万八千人であり、今後の高齢化の進展に伴う介護需要の増加により、平成三十七年度には約二十四万八千人が必要となります。
 そのため、平成三十七年度までに、さらに約十万人必要となりますが、現状の離職率や入職者数等の推移などから推計すると、平成三十七年度には約三万六千人不足することが見込まれております。

○橘委員 平成三十七年度には約三万六千人も不足するという課題への対応には、あらゆる対策の積み重ねが大事であると考えます。
 まず、何といっても、介護人材の賃金水準の改善、これが一番大事なものであると思います。
 昨年四月に行われた介護報酬改定では、介護職員の安定的な確保を図るため、介護職員処遇改善加算が拡充されました。この拡充によって、改定前の介護職員処遇改善加算の一人当たり月額一万五千円相当に加えまして、新たに創設された加算区分では月額一万二千円相当が上乗せされました。
 そこで、拡充された介護職員処遇改善加算の取得状況について、まず伺っておきたいと思います。

○梶原福祉保健局長 処遇改善加算は、四段階に分かれておりまして、今年度から創設された最上位の加算Ⅰでは、職位、職責等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること及び職員の資質向上のための計画を策定して、研修の機会を設けることなどが要件とされております。
 本年二月一日時点で、都内対象事業所の八七・一%に当たります九千四百十七カ所から処遇改善加算の届け出があり、そのうち八〇・七%の七千六百四事業所が、最上位の加算区分Ⅰを取得しております。

○橘委員 ただいまの答弁によりますと、九割近くの事業所等が処遇改善加算を取得しまして、そのうち八割は、最も高い加算を取得しているとのことであります。
 しかし、こうした加算が、本当に賃金上昇に結びついていくためには、国も都も、さらに全力を挙げて取り組みを進めていく必要があります。
 昨年の第一回定例会の代表質問で、我が党は、報酬改定がマイナス査定となった際の国の経営実態調査がサンプル調査であり、現状を必ずしも十分に反映したものとはいえない点を指摘いたしました。その上で、都として、国とは別に精度の高い調査を行い、介護報酬改定の影響を正確に把握すべきと主張いたしました。
 これに対し都は、二十八年度にその調査を行うとのことでありますが、その調査結果をできる限り早期にまとめて公表しまして、国に改善を求めるべきと申し上げておきたいと思います。
 その上で、このような状況下で介護サービスに従事している職員の定着を促進するためには、具体的で即効性のある取り組みも必要であります。
 都では来年度から、介護職員用の宿舎を借り上げる事業者を支援する都独自の補助制度を創設するとしております。この事業については、今定例会の本会議代表質問で、我が党の長橋幹事長が、事業の効果を一層高めるため、幅広い補助の適用を求めたのに対し、補助要件の詳細について、制度の趣旨を踏まえ、今後検討していくとの答弁がありました。
 ここで大切な点は、新規の宿舎だけが対象となるのか、既存の宿舎も対象となるのかということであります。この事業は、災害時の福祉避難所と人材の確保が目的でありますが、同時に、家賃負担の緩和を通し、介護人材の可処分所得額の改善を図ることにもあります。
 事業者が既に宿舎を借り上げている場合であっても、補助の対象とすべきと私は思いますが、改めて局長の見解を伺います。

○梶原福祉保健局長 本事業は、住宅費負担の軽減等による働きやすい職場環境の確保と、福祉避難所の災害時の運営体制強化を目的としております。
 事業実施に当たりましては、今後、補助要件等の詳細を検討することとしておりますが、お話のありました事業者が既に借り上げている職員宿舎につきましても、入居者を災害対応要員と位置づけ、かつ、その職員の家賃負担を一層軽減するなど、今回の事業の目的や趣旨に沿う場合には補助の対象とする方向で検討してまいります。

○橘委員 ただいまの答弁は、我が党の主張の趣旨を十分理解していただきまして、既に宿舎を借り上げている場合も補助対象となると受けとめました。どうか、これを強力に推進していただきたいと思います。
 次に、公社住宅を活用した子育て支援策について質問いたします。
 我が党は、子育て支援などを進めるため、公共住宅の活用を要望し、都営住宅につきましては、子育て世代の入居機会の拡大に関してさまざまな提案を行ってまいりました。
 しかし、保育所の不足による待機児童問題や子育て世帯向けの住宅がいまだ十分な量が確保できていない現状におきましては、都のみならず、都の住宅政策を支える重要なパートナーである住宅供給公社も、積極的に子育て支援に取り組んでいくことが必要であります。
 建設年代が古く、更新時期を迎えている公社住宅の建てかえにおいて、公社は、地元自治体等の地域の要望を踏まえながら、建てかえにより創出した用地の活用や住宅への併設により、保育施設など子育て支援施設の整備を進めていくと聞いておりますけれども、現在の状況と今後の取り組みについて伺います。

○安井東京都技監 東京都住宅供給公社は、都の政策の一翼を担う重要なパートナーでございまして、少子高齢化が進行する中、公社住宅におきましても、子育て支援に向けた取り組みを充実させていくことが重要でございます。
 現在、公社では、住宅の再編整備計画に基づきまして、老朽化した住宅の建てかえなどを実施しており、その際、住宅の高層化などにより創出した用地の活用や住棟内にスペースを確保して子育て支援施設等を整備しております。
 平成二十六年度には、世田谷区の烏山住宅、板橋区の向原住宅で、創出した用地に保育所が開設され、また建てかえに着手してございます中野住宅では、住棟内における子育て支援施設の併設が検討されております。
 今後とも、公社は、住宅の建てかえにおきまして、区市町村を通じ、地域のニーズを把握しながら、子育て支援施設の整備を推進することとしてございます。

○橘委員 公社は、住宅の建てかえを通じた子育て支援施設の整備に加えまして、都内に抱える約七万戸の既存住宅においても、子育て世帯のニーズに対応した取り組みを進めることが重要であります。
 UR都市機構では、既存住宅において、集会所での子育てサークルといったコミュニティ活動等の支援や空きスペースでの保育ママ事業への活用など、子育てしやすい環境づくりに取り組んでおります。
 公社は、既存住宅において子育て世帯を積極的に受け入れるとともに、子育て支援の充実を進めるべきと考えますが、見解を求めます。

○安井東京都技監 公社では、既存住宅の入居者募集時に、子育て世帯が他に先行して申し込める制度や、エレベーターがない上層階で幼児を育てる世帯を対象にいたしまして、低層階住戸へのあっせんを行っており、引き続き同様に取り組むこととしてございます。
 また、子育てなどの福祉目的で活動するNPO法人等が利用しやすいよう、空き店舗の賃料を減額し、貸し出すなどの制度も設けてございます。
 今後、これらの制度がさらに利用され、空きスペースを活用した保育事業など、子育て支援の取り組みが一層充実するよう、地元自治体や事業者に対して積極的に働きかけることとしてございます。

○橘委員 この子育て支援、それから今の保育所の不足、待機児童がなかなか解消できないといった事態を考えますと、これで全ての解決策ではありませんけれども、ぜひ、これは意欲的に推進していただいて、少しでも貢献できるような、そんな体制を組んでいただきたいと思います。
 次いで、保育士不足に対する対応として、ことしから行われている保育士試験の年二回実施について質問いたします。
 保育士不足の要因については、さまざまなことが指摘をされておりますけれども、保育士の資格取得の機会そのものをふやす取り組みである保育士試験の年二回実施は、有効な対策であるかと思います。
 昨年、第一回定例会において、我が党の代表質問に対して、東京都は、年二回の試験実施に向けて検討を行っていくとの答弁をされました。
 そこで、まず、保育士試験の二回実施に至るこれまでの経緯と今後のスケジュールについて伺います。

○梶原福祉保健局長 保育士試験は、全ての都道府県が同一の試験機関を指定し、年一回、全国統一で実施しておりましたが、資格取得の機会を拡大するため、都は国に対し、試験回数をふやすよう繰り返し提案要求してまいりました。
 国は昨年一月、年二回化の方針を示し、本年から、都に加え四十四の道府県が年二回の全国統一試験を実施する予定でございます。
 試験日程につきましては、一回目は、筆記試験が四月二十三日と二十四日、実技試験が七月三日、最終合格通知の発送が八月六日から十四日まで、また二回目は、筆記試験が十月二十二日と二十三日、実技試験が十二月十一日、最終合格通知を一月下旬ごろに発送する予定でございます。
 なお、一回目の筆記試験の申し込みは既に締め切っておりまして、四月上旬に受験票を送付する予定となっております。

○橘委員 詳細なスケジュールまでありがとうございます。
 今後、都は、潜在保育士の掘り起こしだけでなく、保育補助者向けの保育士資格の取得や、ひとり親世帯の親の就労資格取得支援などを通じて、保育士試験の年二回実施を有効に活用できるよう、準備と周知に努めていただきたいと思います。
 それを踏まえて質問いたしますけれども、四月の第一回目のこの試験で惜しくも不合格となった人が、この方は、最終的に合否がわかるのは八月になるわけですね。その八月の時点で、これは不合格とわかった、そうしますと、二カ月後の十月に第二回目の試験があるわけですが、この試験に再チャレンジしたいという人も出てくることが考えられると思います。これは受験が可能なのかどうか伺います。

○梶原福祉保健局長 保育士試験は、筆記試験を受験し合格した上で、その後の実技試験を受験できる仕組みとなっております。
 今回、一回目の筆記試験を不合格だった方に対しては、試験結果とあわせて、二回目実施分の受験申請書を送付することとなっております。
 また、実技試験で不合格だった方に対しても、同様に二回目の実技試験の受験申請書を送付いたします。
 このように一回目の試験で不合格となった方に対しては、二回目の受験機会を逃すことのないよう対応することとしております。

○橘委員 こういう微に入り細にわたりの配慮というもの、こういう支援策というのは大事だと思います。一人の保育士を確保するため、どれだけ大変かという、そういったことも踏まえますと、こういった細かい配慮が必要だと思います。今の答弁で、同一年度内に再チャレンジも可能ということであり、この点を合格発表の際に知らせていただきたいと、これもまた徹底していただきたいと思います。
 もう一点伺います。
 二回目の試験の合格発表が、年明けの二月近くになるということについて確認をしたいのですけれども、このスケジュールでいきますと、二月に発表になって、そして、四月の働き始めの直前、この二カ月で、非常に短い期間で就職活動をしなきゃならない。二月にはわかって、四月にはもう就職なんですね。
 そうしますと、保育人材の定着を図るためには、就職時のミスマッチを防ぐことが大事だとよくいわれております。というのは、このミスマッチが原因で潜在保育士がふえる要因ともなっていると、こういう指摘もあるわけですから、ここにもまた配慮が必要だと思います。
 そこで、新たに資格を取得した保育士さんたちが、短期間で、それぞれ自分に合った職場を見つけられるように支援することが必要と考えますが、この点について、どういう対策を講じていくのか見解を伺います。

○梶原福祉保健局長 都は、保育人材・保育所支援センターに、保育士資格を持ち、保育所等での勤務経験があるコーディネーターを配置しておりまして、就労希望者には、資格の有無にかかわらず、保育所等への就職に関する相談に応じますとともに、求人情報を提供しております。
 また、保育士の資格取得見込み者も対象に、就職活動のポイントをまとめた講義などを行う就職支援研修と、都内保育所等に直接保育の方針や勤務条件等について質問、相談ができる就職相談会を一体的に行っております。
 これらの取り組みによりまして、保育士試験受験者が、それぞれ自分に合った職場を見つけられるよう、資格取得前から就職活動を支援しているところでございます。

○橘委員 ぜひ、よろしくお願いします。
 次に、都の障害者雇用について質問いたします。
 知的障害者、精神障害者については、公務分野での雇用が課題となっていた平成十九年度に、国が、成績主義適用外である非常勤の制度としてチャレンジ雇用を打ち出しました。
 これを受けまして、我が党がいち早く議会質問で取り上げ、都においても実施するよう要望いたしました。そして、都は平成二十年度にチャレンジ雇用を開始したという、そういう経緯がございます。
 就労が困難とされる知的障害者、精神障害者の雇用において、チャレンジ雇用は、障害者の福祉、雇用就業施策の観点から極めて重要でありますが、公務の職場における雇用という意味でも、まさに先駆けとなった取り組みであります。
 そこで、まず、これまでのチャレンジ雇用の実績と今後の取り組みについて見解を伺います。

○梶原福祉保健局長 都は、平成二十年度から雇用にチャレンジ事業を開始し、平成二十六年度までの七年間で、百八十八人の障害者を受け入れてまいりました。
 このうち、福祉保健局では百六十人の方を受け入れ、平成二十七年七月末時点で、七九・四%に当たる百二十七名の方が企業等へ就職をしております。
 来年度からは、庁内各局からさまざまな業務を受注し、障害者がより幅広い業務経験を積むことができるよう、新たに東京チャレンジオフィスを開設いたします。
 また、雇用期間を最長三年間まで更新可能とするほか、一カ月程度の短期実習制度も導入し、障害者の就労に向けた支援を充実してまいります。

○橘委員 今答弁で、このチャレンジ雇用を経験して、それを踏まえまして約八割の方が就職をしていると。その就職という目標を達成していること、これは大変評価したいと思います。
 しかしながら、知的障害者、精神障害者及びその家族、保護者にとっては、就職することがゴールではなくて、本人が安心して働き続けることができ、いわゆる親亡き後も安定的に就労を継続できるようにしたいというのが強い強い願いなんであります。
 そうした思いに応えていくことができるよう支援していくべきと考えますが、具体的な対策があればと思います。見解を求めます。

○梶原福祉保健局長 都は、障害者の就労や職場定着を支援するため、身近な地域で生活と就労の支援を一体的に行う区市町村障害者就労支援センターの設置を促進してまいりました。
 センターでは、就職した障害者が安心して働き続けられるよう、職場を定期的に訪問し、本人からの相談に対応いたしますとともに、企業に対しましては、働きやすい職場の環境づくりやトラブルが生じたときの対処方法等について必要な助言を行っております。
 今後とも、区市町村等と連携し、チャレンジ雇用終了者を初め、障害者の就労継続を支援してまいります。

○橘委員 社会全体で障害者雇用の確保を進めていく上で、就労支援として行われるチャレンジ雇用は大きな役割を果たしているように思います。
 しかし、都庁などの職員としての採用は行われていないのが現状であります。
 国では成績主義などを理由に、いまだ知的障害者、精神障害者の常勤の雇用は進んでおりませんが、今回の障害者雇用促進法改正の趣旨から考えれば、都としても、常勤雇用への先鞭をつけていくことも重要であるかと思います。
 そこで、都庁において、知的障害者、精神障害者の長期的かつ安定的な雇用の確保に向けて、一歩前に進めるための環境整備を行っていく必要があると思いますけれども、見解を伺います。

○中西総務局長 いわゆる成績主義は、国、地方を問わず、公務員の任用における根本原則であり、知的、精神障害者の方の雇用においても、現行の公務員法のもとでは、この原則に基づき運用されなければなりません。
 そのため、雇用に当たりましては、障害者の特性にかなった職務の見きわめ、その職務に求められる能力水準の設定、さらには将来を見据えた段階的な任用など、制度全体の体系的な整理が必要となります。また一方で、支援員の配置や勤務形態の工夫など、個々の状況を踏まえたきめ細かな職場環境の整備も欠かせません。
 都では、来年度から開設いたします東京チャレンジオフィスにおける業務の集約化や、都立学校のチャレンジ雇用でのさらなる業務の開拓など、まずは障害者の適性を生かせる職域の確立に向けて、人事委員会事務局等とも連携して、引き続き必要な検証と改善を積み重ねてまいります。

○橘委員 今答弁に人事委員会事務局とありましたけれども、その事務局にちょっとお尋ねします。
 先駆的な取り組みを行ってきた都におきまして、知的障害者、精神障害者の採用についても、モデルケースをつくって発信する役割を東京都に担っていただきたいと私は思っております。
 ぜひ、人事制度や運用面における検証を重ねて、知的障害者、精神障害者が安心して継続的に働くことができる雇用を実現してほしいと強く要望しておきます。
 ところで、この人事委員会事務局、これは試験に関係するわけでありますけれども、職員の採用におきましては、地方公務員法によりまして、受験による成績など能力実証に基づいて、平等の条件で行わなければならないこととなっております。したがって、職員となるためには、人事委員会の行う競争試験または選考に合格する必要があるわけであります。
 その中で、身体障害者については、各採用試験を受験する際、車椅子受験生への配慮や、拡大文字、点字による筆記試験の実施等、いわゆる合理的配慮というさまざまな支援が制度化されておりまして、身体障害者を対象とした高等学校卒業程度の採用選考を別枠で実施しております。
 一方で、都の採用試験の受験資格を改めて確認いたしましたところ、法に定める欠格条項以外、全ての人に平等に受験機会が与えられているわけであります。したがって、知的障害者や精神障害者の方々も、受験することは可能なわけであります。
 しかし、筆記試験におきまして、一般の受験生と同程度の能力の実証を求められることになれば、合格するには困難な面があるということもまた事実であります。こうしたこともございまして、公務員の常勤雇用に至っていないわけであります。
 今回の障害者雇用促進法改正の趣旨を踏まえれば、障害のある方も障害のない方も、不公平がないようにする合理的、客観的要件のもとで、これらの方々の障害の特性に応じた採用試験の実施を考えていく必要があるのではないかと思います。
 そこで、別枠での採用試験の実施など、障害の特性に応じた能力実証のあり方について、検討すべき段階に来ていると私は考えますが、東京都人事委員会の見解を求めます。

○藤田人事委員会事務局長 職員を採用するに当たりましては、地方公務員法に定める成績主義に基づき、採用後に従事する職務内容等に応じた適切な能力実証を実施しているところでございます。
 具体的には、事務や技術などといった従事する職務分野のほか、その職務に求められる能力水準等に応じまして、出題の範囲やレベルを設定いたしまして、採用区分ごとに試験を実施しております。
 このため、知的障害者や精神障害者の方々を常勤職員として採用する場合には、任命権者における職の設定等を踏まえまして、その職に必要とされる能力や適性等を客観的に実証する手法を検討する必要がございます。
 今後、任命権者と連携をし、障害の特性に応じた適正な能力実証のあり方や手法等について、調査検討を行ってまいります。

○橘委員 ただいまの答弁は、採用に向けた可能性を大きく開くものでありまして、知的障害者、また、精神障害者並びに保護者にとって大きな希望になると思います。ぜひとも、詰めて詰めて、なるべく早くこれが実現できるようにお願いしたいと思います。
 次に、盲ろう者支援センターの整備について質問いたします。
 台東区内にある東京都盲ろう者支援センターは、全国に誇る都の障害者福祉の象徴的施設であります。都議会公明党は、この設置を提唱いたしまして、二〇〇九年五月の開所以来、一貫してその充実を推進してまいりました。
 盲ろう者は、家の中に閉じこもっているケースが多く、人数など、その実態は最近まで余り判明しておりませんでした。視覚と聴覚の両方の身体障害者手帳ベースで見ますと、都内には八百四十名いらっしゃいます。このうち、盲ろう者支援センターで提供されるサービスを利用するための登録を行っている方は百三十一名いらっしゃいます。
 この方たちが通っている支援センターでは、さまざまな手法によるコミュニケーション訓練、生活訓練、パソコン等の電子機器の活用訓練など幅広い分野にわたり丁寧なサービスが行われております。
 専門的で多岐の分野にわたる訓練は、支援センターに通わなければ、ほとんど縁をしない体験でございまして、利用者にとっては、介助者と一緒にいたり、支援センター内でサービスを利用している時間帯が、社会との交流を体験できる貴重な時間になっているとのことであります。より多くの盲ろう者が支援センターのサービスを利用できるようになれば、どれほどの喜びになるか、はかり知れないと思います。
 このため公明党は、多摩地域にも都の盲ろう者支援センターが必要であることを繰り返し訴えてまいりました。これを受けて、来年度、支援センター事業の多摩展開を行うことになりましたが、これは実に大きな前進であると思います。
 そこでまず、具体的な事業内容について伺います。

○梶原福祉保健局長 東京都盲ろう者支援センターでは、盲ろう者の自立と社会参加を促進するため、来所、電話による相談やコミュニケーション手段などの訓練、指点字やお菓子づくりなどの学習会や交流会を実施しております。これらのサービスは、多摩地域の盲ろう者の方も利用しており、交流会については多摩地域でも開催をしております。
 来年度からは、多摩地域の盲ろう者の方が、より身近な地域でセンターのサービスを利用することができるよう、新たに多摩地域に会場を確保し、毎月一回程度、定期的に日常生活などに関する相談や各種訓練を実施してまいります。

○橘委員 月に一回でも、多摩地域で盲ろう者支援センターのサービスが展開されるようになる意義は非常に大きいものがあります。ぜひ、区市町村を通じて、関係者によく周知し成功をおさめてもらいたいと思います。
 拠点会場で実施するというのは、これは大きな前進ではありますけれども、地域が広い多摩地域では、何カ所かを順繰りに巡回するなど、できる限り盲ろう者の生活の現場に近い場所で実施することも必要ではないかと思いますけれども、これについて見解を求めます。

○梶原福祉保健局長 平成二十四年度に全国盲ろう者協会が実施した調査では、多摩地域在住の盲ろう者の方は二十四市に二百三十人いらっしゃいます。
 都といたしましては、今後、多摩地域の盲ろう者の方が、できるだけ身近な場所でセンターのサービスを利用できるよう巡回実施に向け、センターと協力して会場の確保に努めてまります。

○橘委員 次々と、この盲ろう者に対する支援というのは充実されておりまして、感謝しています。これはやはりきめ細かでないとできないことでありまして、まず巡回、それから拠点、それから、この先には施設、これをしっかりと多摩地域にも設置していただきたい、このことを改めて要望しておきたいと思います。
 今、さまざまに盲ろう者支援を初め障害者への支援、この課題について質問してまいりましたけれども、質疑を踏まえまして、舛添知事に伺います。
 東京が名実ともに福祉先進都市であるためには、施策の先進性、充実度、そして何よりも都民や利用者から喜んでいただけるものでなければなりません。舛添知事が目指す都政の姿においても、福祉先進都市は、都民に具体的なイメージと実感を持って受けとめられるべきと期待するものであります。
 二度目のパラリンピックを開催する都市として、障害者福祉施策の充実について、舛添知事の決意を伺います。

○舛添知事 障害のある人もない人も、社会の一員として、お互いに尊重し支え合いながら、地域の中でともに生活する社会が私の目指す共生社会であります。
 その実現のため、都はこれまで、障害福祉計画を策定し、さまざまな障害者施策を展開してまいりました。その一つが、橘理事、先ほどお話しの東京都盲ろう者支援センターであります。このセンターは、公明党の皆さんの要望を受けまして、平成二十一年に全国で唯一、盲ろう者のための専門的な訓練や相談等を行う拠点として開設したものであります。
 センターの事業につきましては、これまでも拡大を図っておりまして、平成二十八年度予算でも、今局長が申しましたように多摩地域への展開など、新たな取り組みを盛り込んでおります。
 東京は、世界で初めて二回目のパラリンピックを開催する都市であります。そのレガシーとして、女性や高齢者、障害のある方など、誰もが持てる能力を十二分に発揮して活躍できる環境を整えることが必要でございます。
 今後、世界一の福祉先進都市東京の実現に向けまして、心のバリアフリーの推進やユニバーサルデザインのまちづくりなど、ソフト、ハードの両面から障害者施策の充実に全力で取り組んでまいります。

○橘委員 次に、医療サービスの充実について質問いたします。
 病院経営本部では、全ての都立病院、公社病院に患者支援センターを設置いたしまして、患者に対する相談支援機能を強化しております。
 患者支援センターは、医療連携や医療相談を通じて、患者が適切な医療を受けられるよう支援したり、患者が安心して受診できるよう支援したり、また、円滑に地域社会に戻ることができるように支援する部門であります。患者を支え、病院と患者、地域を結びつける窓口の役割を持つ部門として非常に重要な役割を担っております。
 我が党でも、早くからこの重要性に着目いたしまして、充実を一層進めるべきと主張してまいりました。
 昨年六月までに、全都立病院に患者支援センターを設置いたしまして、相談機能を強化してきているわけでありますが、患者支援センターの現状、また、これまでの取り組みについて伺います。

○真田病院経営本部長 患者支援センターでは、医療ソーシャルワーカーや退院調整看護師、医療連携担当職員等、患者を支える複数の部門を一体的に組織し、情報共有を図りつつ、ワンストップの相談窓口対応を行っております。
 また、患者が安心して入院できるよう、入院前に手術の説明等を行う入院サポートを新たな事業として開始いたしました。
 さらに、院内の多職種チームにより行っている在宅療養移行支援の取り組みを充実するため、地域の訪問看護ステーションや包括支援センター等との意見交換を行うなど、連携関係の強化を図っております。
 これらの機能を基本とし、各病院の医療機能や地域の特性に応じた取り組みを進め、患者に対する支援の強化に努めてまいります。

○橘委員 相談機能の強化、それからスムーズな在宅医療への移行は、患者や家族にとって重要なことでありまして、引き続きしっかりと対応していっていただきたいと思います。
 一方、社会的に見れば、超高齢社会に伴う高齢者の一人世帯や老老介護の問題、経済的弱者の増加、虐待問題など、患者を取り巻く環境は常に変化しております。患者支援もこうした多様化、複雑化するニーズを踏まえながら適切に対応していかなければならないと思います。
 そこで、患者支援センターを運営する中で、これまで見えてきた課題と、今後の取り組みについて伺います。

○真田病院経営本部長 患者を取り巻く環境の変化に伴いまして、患者支援センターには、患者だけでなく、家族や地域も対象とした事業展開の必要性や、治療だけでなく医療周辺分野へも対応することの重要性などが課題として見えてまいりました。そのため、駒込病院では、がん患者が治療を行う際に、仕事との両立ができるよう、ハローワークの職員が病院に来て、ソーシャルワーカーとともに、就労の具体的なアドバイスを提供する就労支援事業を、来年度から新たに実施していきます。
 また、各都立病院において、がん教育への支援や都民向け講演会などの疾病予防のための普及啓発活動を充実させるとともに、患者や家族が相互に支え合う交流の場の提供など、患者以外にも対象を拡大した多様な活動に取り組んでまいります。
 今後とも、患者支援センターの充実を図り、こうした課題に適切に対応してまいります。

○橘委員 すばらしい取り組みであります。すごい充実度と思います。
 これは、私は、メディカルソーシャルワーカー、MSWさんに、たまに取材したりして聞くことがあるんですけれども、最近、相談というのは、かなり、入院、退院、転院、また入所とか、そういったことだけではなくて、さまざまな家庭環境から経済的なものまで、すごく広い分野の相談がふえていると聞いております。そうしたことに対応するために、やっぱりこういった体制でなければ、患者さんに、また家族に対応できないんですね。これはすばらしい取り組みだと思います。ぜひまた強化していっていただきたいと思います。
 患者は、病院からの支援を非常に頼りにしているわけです。ぜひ、今の答弁にあったように、家族や地域、また医療周辺分野も視野に入れた支援が必要であるという問題意識を大切にしながら、さらに事業展開に向けて、引き続き力を注いでいっていただきたいと思います。
 次に、多摩メディカルキャンパスの整備について質問いたします。
 難病は、患者数が少なく、原因不明で効果的な治療法が未確立である上、確率は低いものの、誰にでも発症の可能性がある病気であります。難病患者は、どこに行っても診断がつかない、治療経験のある医師が見つからないなど、医療を受ける上で多くの困難に直面しております。
 このため、難病の診断、治療に対応できる高い専門性と経験を有する医療機関が中心となり、難病医療を充実していくことが重要であります。
 そこで、多摩メディカルキャンパスの一角にある神経病院の改築に当たっては、都の難病医療の拠点として整備するとのことでありますが、具体的な機能強化について伺います。

○真田病院経営本部長 現在、神経病院では、神経系難病に対する入院医療を提供しており、外来やリウマチ膠原病系、消化器系などの難病医療は、多摩総合医療センターで対応しております。
 今回の整備では、多摩総合医療センターが実施する難病機能を神経病院に集約し、診療範囲を拡大いたします。
 また、専門性の高い外来診療体制を新たに整備することにより、神経病院を多くの難病に対し、外来、入院から在宅移行後の支援に至るまで、一貫して高度な医療を提供する難病総合医療センターとして再構築いたします。
 こうした機能を生かし、難病患者が自宅での療養中、急に容体が悪化した場合でも、確実に受け入れ、専門性の高い治療を行う病床を整備するなど、難病患者を支える地域医療機関を支援し、都の難病医療の拠点としての機能強化を図ってまいります。

○橘委員 難病は、根本的な治療法が困難な病気でありますが、昨今の医療の進歩により、少しずつではありますが、治療法の選択肢が広がってきております。これから整備する難病総合医療センターでは、新たな治療法にも積極的に取り組んで、難病医療の発展に貢献することを期待しております。
 医療の進歩は、がん診療においても目覚ましく、これまで発見の困難な超早期の段階のものでも発見可能になってきたことに加えまして、より体に負担の少ない治療方法も開発されていると聞いております。
 また、医療機器の技術革新も目覚ましいものがございまして、がんの検査、診断から、治療に至るがん診療体制の高度化を図るためには、最新の機器の活用は非常に有効であるかと思います。
 そこで、多摩メディカルキャンパスの整備に当たりましては、最新の機器の活用による、がん医療の機能強化の具体的な取り組みを行うべきと考えますけれども、見解を伺います。

○真田病院経営本部長 キャンパスにおけますがん医療を一層強化するためには、先端的な医療機器の導入が必要であると認識しております。このため、まず、診断機器といたしましては、これまでの検査では発見できなかった小さながんにも対応できる最新のPETCTや、従来の乳がん検査と比べ超早期の段階で発見できることに加え、苦痛も大幅に緩和される、関東では二施設しか導入されていない乳がん専用のPET、いわゆるPEMなど高精度な診断機器の導入を検討いたします。
 また、治療機器といたしましては、複雑な形状の腫瘍への照射が可能で、正常な組織への影響を極力抑えた強度変調放射線治療、いわゆるIMRTの専用装置や腫瘍を立体的な画像で捉え、二センチ程度の小さな傷口で、より正確な手術が実施できる内視鏡手術支援ロボットなどの導入を検討し、体への負担が小さい高度な治療を推進してまいります。

○橘委員 ぜひ、日本でも、もう随一といわれるような、そういった体制を組んでいただきたいと思っております。
 次に、中小企業支援について二問質問いたします。
 初めに、中小企業の海外展開における支援について伺います。
 舛添知事は、今定例会の施政方針表明の中で、販路開拓先としてのニーズが高い海外都市において、経済団体と連携してすぐれた技術をPRすると述べられました。こうした取り組みは、東京の中小企業が多く出展する海外の展示会でこそ有効でありまして、実際に海外取引の拡大といった具体的なメリットにつなげていくことが重要であります。
 しかしながら、経営資源の限られている中小企業が、数多くのライバル企業がいる展示会の中で、企業名や製品を確認してもらうのはとても難しく、企業の方々は大変な努力をしてPRを行っていると聞いております。まさに、こうした場で、行政と経済団体等が一体となり、チームとしての東京をPRすることで、発信力も高まり、他の出展者との差別化を図ることもできるかと思います。
 そこで、その発信力をさらに高めるためにも、知事みずからがトップセールスを行い、都内中小企業の海外での販路開拓を強力にサポートし、新たな商談や取引につなげていくことが必要と考えますが、知事の所見を伺います。

○舛添知事 中小企業のさらなる成長発展のためには、海外市場を積極的に切り開いていくことが重要であります。
 これまで都は、中小企業が販路拡大を図るために、自社製品の需要が見込まれる国におきまして、一度に多くの商談やPRができるような展示会の出展を支援してまいりました。
 来年度からは、こうした支援を強化するため、経済団体とともに私みずから海外展示会に出向きまして、これまで諸外国にたくさんのネットワークを築いてまいりましたので、そのネットワークを活用して、新たな取り組みを開始したいと思っております。
 具体的には、展示会の開催に合わせまして、東京の製品や技術を売り込むためのPRを行うビジネスセミナーを実施するほか、現地の政府機関、経済団体、企業などとの交流会を開催いたしまして、さらなる人的ネットワークをつくって新たなビジネスにつなげていきたいというふうに思っております。
 私自身もそうした場で先頭に立ちまして、東京の産業力を力強く発信し、中小企業の販路拡大を後押ししていく決意でございますので、どうか都議会の皆さん方のご支援を賜りたいと思います。

○橘委員 知事が現地に直接行って、都内の中小企業や東京の産業力を強く発信するということは、展示会に出展する中小企業にとって、とても心強いと思います。ぜひとも、効果の高いPRに取り組んでいただき、中小企業のビジネスチャンスの拡大につなげていただきたいし、また、その成果というものは、都民に還元していただく、目に見える形で還元していただく。そうすればまた、知事の海外での活躍というものも評価されるかと思いますので、どうかそういった観点で頑張っていただきたいと思います。
 さて、次に、ビジネスチャンスナビ二〇二〇、この活用について伺います。
 昭和三十九年の東京オリンピック・パラリンピックでは、まちの洋品店の方が、選手団や役員のユニホームの仕立てや寸法直しを行ったりして大会を手伝ったというお話を先日伺いました。もう昼夜突貫工事というそんな感じの作業だったらしいんですけれども、納期に追われながら大変だったけれども、今も大会に、三十九年の東京オリンピック・パラリンピックに貢献したという誇りや、また、自分たちの思い出になっているというお話を伺いました。
 東京都は、現在、中小企業への受注機会の拡大のために、二〇二〇年大会に向けてさまざまな発注情報を一元的に集約したポータルサイト、ビジネスチャンスナビ二〇二〇の構築を進め、四月には開設する予定と聞いております。
 このサイトは、中小企業だけでなく、協同組合の利用登録も可能とのことでございますので、組合員である小規模事業者や個人の事業者のサイトに対する期待や関心が今後ますます高まっていくものと思います。
 私は、このサイトの活用により、次の東京大会でも、ぜひとも、小規模事業者、また、まちの洋品店もあります、また個店もあります。そういった、この方たちの技術や技能、こういったものにもう一度光が当たって、活躍の場が得られるようにしてもらいたいと思っております。
 そのためにはまず、このサイトの活用の仕方を、小規模事業者や個人事業者の団体である協同組合を含めまして、広く中小企業に徹底的に周知していただきたいと思います。
 また、協同組合や中小企業からすると、登録手続やサイトの記載など、なれない作業が伴うと思いますので、さまざまな相談などを行う窓口があれば安心できるかと思います。
 東京都は、サイトの周知や利用者相談等についてきめ細かに対応すべきと考えますが、見解を伺います。

○山本産業労働局長 都は、ビジネスチャンスナビ二〇二〇の利用促進を図るため、中小企業支援機関と連携し、サイトの機能や登録、活用方法等を解説したPR用リーフレットを作成し、協同組合を含む中小企業に広く配布するとともに、各種セミナーなど、あらゆる機会を捉えて説明を行い、積極的に周知を図ってまいります。
 また、中小企業振興公社を初めとするさまざまな支援機関が行う中小企業への巡回相談等におきましても、サイトの活用を働きかけていくとともに、利用方法等についての相談窓口を設け、きめ細かく対応いたします。
 こうしたさまざまな手法によりサイトの利用を促進し、中小企業の受注拡大につなげてまいります。

○橘委員 ぜひ、このサイトを使って、まちの個店である個人事業者が、また元気になるように、そんな支援もよろしくお願いしたいと思います。
 次に、再生可能エネルギーの普及拡大について質問いたします。
 東京都は先月、太陽光発電の導入量を二〇三〇年までに百三十万キロワットまで高めるという目標を明らかにいたしました。
 近年、国の固定価格買い取り制度により太陽光の導入量は大幅に拡大しておりますが、全国的には急激な拡大に伴う系統連系の問題など、幾つかの課題が顕在化してきております。
 この先も、太陽光を初めとする再生可能エネルギーを安定的にふやしていくためには、固定価格買い取り制度だけに依存しない導入促進策を講じていく必要があると思います。
 今後の具体的な対策について見解を求めます。

○遠藤環境局長 電力系統への接続や賦課金による国民負担の抑制など、固定価格買い取り制度が直面している課題に対処しながら、再生可能エネルギーの導入拡大を図っていくためには、都民、事業者がつくり出した電力をみずから消費するよう促す方策が有効でございます。
 このため、来年度から、家庭向けには、日中使い切れない太陽光発電による余剰電力を電力会社に売電するのではなく、夜間に有効利用できるよう、蓄電池等の導入費用の一部を補助するエネルギー利用高度化促進事業を新たに実施いたします。
 また、事業所向けには、太陽光や風力、小水力などで発電した電力を自家消費する場合、五千万円を上限に設備導入費用の一部を補助する地産地消型再生可能エネルギー導入拡大事業を開始いたします。

○橘委員 再生可能エネルギーといいますと、とかく電力ばかりが注目されますけれども、熱エネルギーは、熱源の確保でというふうにいわれることもございます。給湯や暖房などに必要なエネルギーを太陽熱や地中熱で賄うことができれば、CO2排出量の削減にもつながります。
 また、地域で生み出した熱エネルギーを地域で消費する地産地消が進めば、地域経済の活性化や災害時におけるエネルギーの自立性向上にもつながります。
 そこで、再生可能な熱エネルギーの利用拡大を進めることが重要と考えますが、都の見解を求めます。

○遠藤環境局長 再生可能な熱エネルギーの利用拡大に向けて、来年度に東京の特性を踏まえた取り組みを実施してまいります。
 まず、太陽熱につきましては、都内の新築分譲数の約三分の二を占める集合住宅への施工技術等をガイドブックにまとめ、住宅供給事業者に対する普及啓発を行ってまいります。
 また、地中熱につきましては、地中からとれる熱量の目安を示すポテンシャルマップを年度内に公開し、都民、事業者の認知度及び導入意欲の向上を図ってまいります。
 このほか、事業所向けの補助事業では、これまでの太陽熱や地中熱に加え、廃棄物等の都市型バイオマスや未利用木材を活用した熱利用設備などにも補助対象を広げ、その導入を支援してまいります。
 こうした取り組みを通じ、多様な再生可能熱エネルギーの利用を促進してまいります。

○橘委員 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会の競技施設につきましては、我が党はかねてより、地中熱利用のヒートポンプ、複数の施設のネットワーク化によるエネルギーの有効利用、再生可能なエネルギーなど、さまざまな環境対策を行うよう提案してまいりました。
 都は、二〇二〇年東京大会に向けて、大規模な競技施設を整備しておりますが、それらの施設について積極的な環境対策を行うべきであります。また、施設ごとに、環境対策を世界からの観戦者にPRできるように提示すべきでありますが、都の見解を求めます。

○中嶋オリンピック・パラリンピック準備局長 都が整備する大規模施設でありますアクアティクスセンター及び有明アリーナにつきましては、省エネ・再エネ東京仕様を適用しますとともに、日本のグリーンビルディング認証制度、CASBEEの最高ランクSを目指すなど、環境負荷の少ない施設整備を進めることとしております。
 具体的には、地中熱利用のヒートポンプ、コジェネレーションシステムなど、再生可能エネルギー、省エネルギー技術を積極的に導入し、エネルギー消費量及びCO2の排出量を従前からの標準的な設備を使用した場合に比べて約三割削減する設計となっております。
 こうした環境対策について、競技施設を訪れる観戦者へPRしていきますことにつきましては、今後検討する大会時の会場レイアウトや運営方法などを踏まえながら、会場やその周辺での掲示や展示など効果的な方法を検討してまいります。

○橘委員 二〇一六年大会の誘致の際の目玉は、先進的な環境対策でありましたが、この思想は決して忘れてはならないと思います。
 昨年、パリで開催された国連気候変動枠組条約の第二十一回の締約国会議、いわゆるCOP21が地球温暖化防止の目標を定めたことを受けまして、東京が掲げた目標達成へ、具体的に取り組む必要があります。
 また、大きなイベントでも、着実に温室効果ガスを削減していることをアピールするためにも、二〇二〇東京大会のエネルギー消費量、CO2排出量の目標を定めるべきと考えますが、見解を伺います。

○中嶋オリンピック・パラリンピック準備局長 二〇二〇年大会は、世界一の環境先進都市に向けて、持続可能な低炭素型都市のモデルを示す好機となります。二〇二〇年大会における持続可能性への対応につきましては、現在、組織委員会において、大会の準備、運営を行う上での原則となります持続可能性に配慮した運営計画の策定を進めております。
 今後、その中で、大会に伴って発生する温室効果ガスについて、削減に係る目標、排出量の把握方法や削減策など、温室効果ガスの削減に向けた排出量の管理について検討が行われます。
 引き続き、組織委員会と連携いたしまして、持続可能性に配慮した大会の準備、運営に努めますとともに、大会施設などでのエネルギー利用の効率化、最適化を図るなど、大会を契機に環境対策を一層推進してまいります。

○橘委員 次に、同じオリンピック・パラリンピック関係ですけれども、話題を変えまして、オリンピック・パラリンピック教育について質問いたします。
 本年一月に公表されました東京都オリンピック・パラリンピック教育の実施方針では、教育の基本的な枠組みが示されております。
 そこで、オリンピック・パラリンピックの基本理念と、学校教育の目指す目標との関係について、教育長に改めて確認しておきたいと思います。

○中井教育長 オリンピック・パラリンピックは、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の奨励や、スポーツを通した人間形成といった崇高な理念を掲げております。
 これは、平和で民主的な社会の形成者として必要な資質を備え、心身ともに健康な人間を育成するという学校教育が目指す目的と相通ずるものがございます。
 都教育委員会といたしましては、こうした点をしっかり踏まえながら、全ての学校でオリンピック・パラリンピック教育を展開していくこととしております。

○橘委員 今答弁にありましたオリンピック・パラリンピックの崇高な理念と学校教育が目指す目的が相通じるものであるとの捉え方は、これは非常に教育の分野から見ても重要な視点だと私は思っております。
 二〇二〇年大会に向けた教育現場における関連事業を、単なるイベントとして捉えるのではなくて、崇高な人間形成の大切な教育機会と捉えることが重要だと私は思います。そうした信念をしっかり基本に据えて、今後の事業に取り組んでいただきたいと思います。
 さて、オリンピック・パラリンピック教育それ自体、教員にとっては初めてのことであり、少なからず不安を覚えている教員もいるようでございます。まず、指導に当たる教員がオリンピック・パラリンピックの意義や果たす役割を理解することが大切であります。
 そこで、都教育委員会は、学校の教員に対して十分な教育活動ができるように支援を行っていくべきと考えますが、見解を伺います。

○中井教育長 オリンピック・パラリンピック教育を推進するには、理事ご指摘のとおり、教員一人一人がオリンピック・パラリンピックに関する教育の意義や狙いを的確に理解した上で、この教育を進めるための実践的な指導力を高める必要がございます。そのため、都教育委員会は、四月に、都内全ての教育委員会関係者や校長約二千五百人を集め、この教育の意義を深めるための連絡会を開催するとともに、各学校の担当教員を対象とした説明会を実施いたします。
 また、学校の夏季休業日等には、教員みずからが効果的な授業を展開するための指導法等を学ぶ研修会を実施いたします。さらに、体験や活動を重視した教育の展開に向け、教員専用のウエブサイトでの学習指導案や指導事例の提供、学校と教育活動支援団体等とのコーディネートの実施など、本教育の充実に向けた支援を積極的に進めてまいります。

○橘委員 次に、アスリートとの交流事業について質問いたします。
 東京都は、オリンピアンやパラリンピアンを学校に派遣する、夢・未来プロジェクトを昨年八月から十一月にかけて実施いたしました。そこでは、数多くの困難を乗り越えてきた方ならではの心に響く話が語られるなど、非常に教育効果があったと聞いております。
 学校においては、一流のアスリート、特にパラリンピアンといった障害者アスリートとの交流を促進することによって、卓越した運動技術や精神などを本物から学び、よりよい人間形成を図る教育を一層推進していくべきと考えますが、見解を伺います。

○中井教育長 都教育委員会では、本年度、オリンピアンやパラリンピアン等を学校に派遣する夢・未来プロジェクトを、都内公立学校百十二校で実施いたしました。
 参加した子供たちからは、パラリンピアンとの交流を通じ、諦めずに前向きに取り組む大切さを学んだ、夢や目標に向かって努力するたっとさに気づいたなどの声が多く聞かれ、学校からも、ニーズの高い事業との評価を得ております。
 四月からの全校展開に当たり、来年度は、派遣規模を二百二十校に拡大し、このうち障害者理解のさらなる促進に向けて、障害者アスリートを今年度の約三倍となる九十校に派遣してまいります。こうした取り組みを通じて、自己実現に向けて努力する意欲や困難に立ち向かう勇気、思いやりの心の育成をより一層図ってまいります。

○橘委員 この夢・未来プロジェクトではありませんけれども、東京都の補助事業で広域支援型商店街事業というのがございまして、この事業を使いまして、板橋区内でユニバーサルスポーツ大会というのを企画した商店街がございました。私も伺ったんですが、これは障害者スポーツをなさっている方、しかも全国レベルの方といっておりましたけれども、そこに接した子供たちは、ルールを学んだり、そしてまた自分で実際に一緒にやってみたり、そうすることによって、目の輝きがもうがらっと変わってくるんですね。これは驚きました。
 やはりこういった超一流の選手と接すること、これによって、パラリンピックに対する理解は深まると思いますし、同時に、オリンピックへの理解も深まる。また、あわせて配慮というものが、そこで自然のうちに培われると、そんなことを目の当たりにいたしました。どうぞますます力を入れて取り組んでいただきたいと思います。
 さて、最後のテーマになりますけれども、小笠原空港について質問をいたします。
 先ほどの質疑でもございましたけれども、小笠原諸島にとっては、内地との交通アクセスはもう生命線でありますけれども、航空路の開設は、島民の生命の安全、離島振興のために必要であると考えております。
 これまで都においても、洲崎地区活用案、硫黄島活用案、水上航空機案の三案を中心に調査検討を行っていることは我が党も承知しております。
 そこで、まず小笠原航空路に関する現状と平成二十八年度の取り組みについて伺います。

○中西総務局長 小笠原航空路につきましては、これまで、お話の三案を中心に調査を重ねるとともに、小笠原村等の関係機関と実務的な検討や情報共有を行ってまいりました。
 世界自然遺産であり、本土から一千キロメートル離れた小笠原諸島における航空路の開設に当たっては、自然環境への影響を初め、費用対効果、運航採算性などさまざまな課題がございます。
 こうした課題の解決に向け、平成二十八年度予算案では、航空路に関する調査費を今年度予算の約一・六倍の一億一千万円に増額し、動植物の生態に与える影響や運航採算性等について鋭意調査を行ってまいります。

○橘委員 地理的条件や自然環境等、厳しい条件下にある小笠原航空路の開設に当たっては、運航可能な機材も必然的に限られてくるわけであります。
 国内に目を向けますと、天草エアライン株式会社が、航空機メーカーのATR社製のプロペラ機でありますATR42型機を日本で初めて導入し、先月、我が党は実際に現地に行って搭乗してまいりました。
 天草エアライン株式会社によりますと、航続距離は約一千五百キロメートルと本土から小笠原の父島までの距離を満たすとともに、天草空港のように比較的短い滑走路での離着陸も可能であるとのことであります。
 既に都も調査していることとは思いますが、こうした新しい機材の可能性も視野に入れて検討してはどうかと思います。どうかこの件も考慮しながら、都が真剣に検討していくといったこともお願いしたいと思いますが、見解を伺いたいと思います。

○中西総務局長 検討案の一つでございます洲崎地区活用案は、父島の洲崎地区に空港を整備し、東京と父島をプロペラ機で結ぶ案でございます。
 これまでも運航可能な機材について調査検討を実施してまいりましたが、この案の場合におきましても、空港の整備に当たりましては、自然改変の影響や周辺景観の悪化が大きな課題となります。
 今後とも、航空路に関する調査費を活用いたしまして、小笠原航空路に適切な機材の選定に係る調査を幅広い観点から実施してまいります。

○橘委員 小笠原航空路の開設は、昭和四十三年の返還以来、小笠原村民にとって悲願であります。また、半世紀近くたった現在においても、いまだ実現に至っていないことに、やはりこれはいら立ちもあるようでございます。
 航空路開設は、島民生活の安定に大きく寄与するとともに、世界自然遺産である小笠原が改めて脚光を浴びまして、国内外からの観光客の増加につながるなど、観光振興にも貢献するものであります。
 そこで、小笠原の航空路開設について、舛添知事の見解を伺います。

○舛添知事 小笠原の航空路開設は、島民生活の安定と産業振興を図る上で極めて重要でありまして、本土復帰以来の小笠原村民の切なる願いであることは私も強く認識しております。
 航空路の開設に当たりましては、さまざまな課題がありますことから、関係機関との調整を一層緊密に、かつ丁寧に行うとともに、今、局長が話しましたような最新機材の開発動向や自然環境への影響などに係る調査を幅広い視点に立って実施してまいります。
 こうした調査の結果や関係機関との調整等を踏まえまして、世界自然遺産である小笠原で実現可能な航空路案が取りまとめられるように精力的に検討を進めてまいります。

○橘委員 ただいま舛添知事から、航空路開設について、幅広い視点に立った調査を行って精力的に検討を進めていくとの力強い答弁をいただきました。小笠原において残された重要な課題の一つは航空路開設であります。ぜひ、東京都として、今後の検討に全力を傾注していただきますよう要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)

○上野副委員長 橘正剛理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時十五分休憩

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