予算特別委員会速記録第四号

   午後六時四十五分開議

○鈴木(隆)副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 鈴木錦治委員の発言を許します。

○鈴木(錦)委員 私からは、初めに多言語対応について伺います。
 外国人旅行者が大幅に増加する中、二〇二〇年に向け、受け入れ環境整備の柱である多言語対応は喫緊の課題です。
 先日の本会議における我が党の質問に対し、知事から、翻訳アプリの活用を初め、二〇二〇年を見据え、多言語対応のツールとしてICTを積極的に導入していくとの答弁がございました。
 そして、都の長期ビジョンには多言語対応の取り組みが数多く掲げられ、この中には、翻訳アプリやデジタルサイネージなどのICTの活用が打ち出されております。飛躍的に進歩するICTは、言葉の壁を乗り越え、今後の取り組みに大いに役立つものと考えます。
 多言語対応におけるICTの活用に向けた、都の今後の取り組みについて伺います。

○中嶋オリンピック・パラリンピック準備局長 二〇二〇年大会に向けICTを効果的に活用するには、ご指摘のとおり、さまざまな取り組みを積み重ねて明らかになった課題を解決し、実用性を高めていくことが不可欠でございます。
 都は、国による技術開発を促すため、今回の東京マラソンにおいて、外国人ランナーの案内に翻訳アプリを活用いたしましたが、これにつきましては、一千件を超える利用がございました。
 利用したボランティアからは、外国人とコミュニケーションを行える便利なツールであるとの評価がある一方、音声が聞こえにくいなどの課題を指摘する意見もございました。
 都は、こうした意見を取りまとめ、二〇二〇年大会に向け、翻訳アプリの一層の機能向上が図られるよう国へ要望したところでございます。
 今後も、国や市区町村などと連携し、こうした場の拡大と検証を繰り返すことを通じまして機能の向上を促進し、ICT導入に向けた環境づくりを積極的に推進してまいります。

○鈴木(錦)委員 大会本番に向けてICTの実用性を高めていくため、実証の場を拡大していくとの答弁がございました。
 我が国を訪れる外国人旅行者が急速な勢いで増加する中、多言語対応の推進は全国の課題でもあります。
 折しも、ラグビーワールドカップ二〇一九の開催都市が決まり、今後東京を含む各都市において、競技開催のみならず、選手や外国人観戦客に対するおもてなしの機運はさらに高まっていきます。
 そこで、多言語対応を全国に波及させるための都の具体的な取り組みについて伺います。

○中嶋オリンピック・パラリンピック準備局長 都はこれまで、多言語対応の全国への拡大を図るため、全国知事会における取り組み方針の周知やポータルサイトを活用した先進的事例の紹介などの取り組みを行ってまいりました。
 今後、さらなる拡大を図るには、これまでの取り組みに加え、技術革新著しいICTを初めとした支援ツールや全国の最新事例など、より実践的な情報を自治体や民間事業者が共有することが重要でございます。
 このため、来年度の多言語対応協議会では、有識者によるセミナーの開催、最新のICTに関する視察ツアーの実施、先進的事例のケーススタディーや在留外国人との意見交換などを通じ、ノウハウ共有のさらなる充実強化を図ってまいります。
 こうした取り組みにより、新たにラグビーワールドカップの開催都市とも連携をしながら、多言語対応の取り組みを全国へと拡大してまいります。

○鈴木(錦)委員 二〇一九年のラグビーワールドカップ開催時には、各開催都市とともに、多言語対応によるおもてなしが実現できるよう、利用者の目線で、よりスピーディーに取り組みを進めていただくことをお願いして、次の質問に移ります。
 次に、伝統文化について伺います。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会を控え、二〇一六年リオ大会以降に展開される文化プログラムにおいても、海外からの注目度が高い伝統文化をその中核に据えて、東京の文化発信を行っていくことが重要であります。
 文化ビジョンの素案でも、文化プログラムの先導的役割を果たすリーディングプロジェクトとして、日本の多彩な伝統文化等を発信するとの記述がございますが、これまで積極的に海外への発信に取り組んできた民間団体によるすぐれた公演を助成するという方策が有効です。
 一方、日本を訪れる海外からの旅行者がふえている中、外国人に対して伝統文化を紹介する機会を提供していくことも非常に効果的であります。
 今後、外国人に向けて伝統文化の魅力を伝えるとともに、より興味を持ち、理解を深めてもらうためには、どのような取り組みをしていくのか伺います。

○小林生活文化局長 外国人に伝統文化の魅力を伝えるためには、民間芸術団体等による海外での意欲的な活動を支援するとともに、日本を訪れる外国人に向けた伝統文化体験の充実を図ることが必要でございます。
 都はこれまで、日本舞踊、鷺娘の欧州公演など、海外向けに工夫を凝らした民間の取り組みを支援してまいりました。
 来年度からは、日本絵画や能楽など幅広い分野で、海外での展覧会や公演等を充実させるとともに、国際文化機関とアーツカウンシル東京の連携のもと、海外公演を行う芸術文化団体への支援を充実いたします。
 また、来年度から新たに、日本舞踊、演芸等の実演家による短時間の体験事業を江戸東京博物館等で一年を通して実施するとともに、能楽堂等での時間をかけた本格的な実演鑑賞によって日本文化の奥深さに触れられるプログラムを、多言語対応の解説資料を準備して開催いたします。

○鈴木(錦)委員 世界に向けて日本の伝統文化を発信する上で、日本人自身、特に子供たちが伝統文化の価値を正しく理解し、継承、発展させていくことも非常に重要であります。
 都はこれまで、希望者を対象に体験事業を実施してきましたが、全ての子供が本物の伝統文化に触れる機会を持つことで、日本人としての自覚と日本の文化に対する愛着が深まります。
 私の地元には府中ばやしや武蔵国府太鼓などの郷土芸能が伝えられていますが、子供たちが地域の芸能にも興味を持ってくれれば、地域の活性化にもつながると思います。
 より多くの子供たちが伝統文化に親しむ機会を確保するには、教育の場での体験機会をふやすことが重要ですが、伝統文化の専門的知識がある教員は少なく、学校だけでの取り組みは難しい状況であります。
 実演家が指導を行うことで、伝統の正しい価値がわかりやすく伝わると思いますが、学校との連携への取り組みについて伺います。

○小林生活文化局長 より多くの子供たちに伝統文化の体験機会を創出するには、学校など教育現場との連携を図ることが重要と認識しております。
 このため、来年度から、都内全域の小中学校や特別支援学校等を対象として、若手実演家等を学校へ派遣し、能楽、三味線などの体験と実演鑑賞を組み合わせたプログラムを展開してまいります。
 事業を円滑に進めるため、学校の実情と伝統芸能の双方を熟知したコーディネーターが、学校の希望等を考慮したプログラムを構築し、子供たちが本物を体験することができる機会を確実に提供してまいります。

○鈴木(錦)委員 ぜひ、伝統文化に親しんだ子供たちが、地域に根差す郷土芸能にも大きな関心を寄せてくれることを願っています。
 日本はこれまで、古来よりさまざまな外来文化に影響を受けながら、それらを発展させ、独自の豊かな文化を形成してきました。世界を見回しても、これだけの歴史や文化を持っている国はありません。
 しかし、すばらしいものを持ちながら、現在はその価値に気がついてない人が多いように思われます。
 ここまで伝統文化の発信のためのさまざまな施策について伺ってきましたが、伝統の魅力を国内外に伝えるためには、日本文化、とりわけ伝統文化の価値に対する認識を、最終的な文化ビジョンの取りまとめにおいて、まず示す必要もあるのではないでしょうか。
 その上で、人々に日本の文化と魅力が正しい形で伝わるよう、プロの実演家から各地域で地道に文化振興に励んでいる人まで幅広い方々の協力を得て、本格的な施策を実施するべきと考えますが、知事の見解を伺います。

○舛添知事 古来、長い歴史の中で、海外からの影響を受けながらも、世界でも類いまれな独自の歩みと形を持つ我が国の伝統文化は、日本固有の価値であると考えております。
 また、現在の東京は、日本人の精神性を体現する伝統文化の普遍性と現代の多様な文化が融合し、独自の価値観や魅力を発する多面的、重層的な文化都市であります。
 先ほどウイリアム王子のご来訪のことをお話ししましたけれども、海外から東京、日本を眺めてみると、このことがよりよくわかると思います。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックに向けましては、伝統文化を中心に置きながら、こうした東京の文化都市としての魅力を、国内外に強力に発信する必要がございます。
 このため、文化ビジョンの素案では、伝統芸能を初めとする世界クラスの都市型芸術祭の開催や、都内の文化施設や地域団体を中心とする伝統文化の紹介と普及事業の実施など、新たな取り組みを数多く盛り込んでおりまして、来年度以降、これらを着実に実行に移してまいります。
 今後、文化ビジョンの取りまとめにおいて、日本文化が伝統を基軸としつつ、多様な文化を受け入れ、培われてきたとの認識を盛り込むとともに、日本人自身がこうした日本文化の価値を正確に理解し、これを海外に伝える重要性を改めて訴えてまいりたいと思っております。

○鈴木(錦)委員 次に、子供の体力向上施策について伺います。
 先月八日に、第六回目となる中学生東京駅伝大会が味の素スタジアムで開催されました。私は当日、参観をいたしましたが、都内二十三区二十六市一町の選抜チームが参加し、雨が降りしきる中、厳寒の中、地元の期待を受けて懸命に走る中学生の姿と、多くの保護者や地域の方々の応援に感動いたしました。こうした取り組みは、ぜひ継続し、子供の体力向上に大きく貢献してほしいと思います。
 健全な精神は健全な肉体に宿るといわれます。体力は、学力とともに学校教育の両輪であり、いずれも十代のときにしっかり鍛えなければなりません。
 都教育委員会は、平成二十二年度に総合的な子供の基礎体力向上方策を策定し、学校における一校一取り組み運動の展開や、全ての子供たちを対象とした東京都統一体力テストの実施など、さまざまな取り組みを展開してきたと聞いています。
 そこでまず、そうした体力向上の取り組みの成果と課題について伺います。

○比留間教育長 東京都の子供の体力は、全国平均を大きく下回っていることから、都教育委員会は、外遊びや運動、スポーツを積極的に行うなど、さまざまな対策を盛り込んだ総合的な子供の基礎体力向上方策を平成二十二年度に策定をいたしました。
 区市町村教育委員会及び学校は、この方策を踏まえ、授業における実際の運動時間をふやすこと、始業前、休み時間、放課後に運動する時間の確保、運動部活動のより一層の活性化に取り組んでまいりました。
 その結果、小学生は全体として向上傾向に転じ、平成二十六年度調査において全国平均以上の水準となっております。
 一方、中学生の体力は依然として四十七都道府県で最も低い水準にあることや、学年が上がるにつれて運動しない子供がふえることなどが現在の大きな課題となっております。

○鈴木(錦)委員 体力は、子供たちの健全な発達、成長を支え、健康で充実した生活を送る上での基礎基本です。子供の体力が親の世代に比べ低下していると聞きますが、このことは、現在のみならず、将来の社会から活力が失われていくことにもつながる極めて深刻な問題であると考えます。
 ましてや、東京オリンピック・パラリンピックを開催する地元東京の子供たちの体力が全国水準を大きく下回る状況は、何とかしていかなければなりません。二〇二〇年とその後も見据え、もっとスポーツに打ち込み、しっかり体を鍛え、力強い人生を送ってほしいと願っています。
 そこで、都教育委員会は、今後どのように体力向上の対策を講じていくのか伺います。

○比留間教育長 東京都の小中学生の体力を高めていくためには、児童生徒が運動やスポーツに日常的に親しみ、基礎体力をバランスよく育むことができるよう、計画的に取り組んでいくことが重要でございます。
 ある教育委員会の取り組みとして、家庭、地域と連携した体力向上プランの策定、実施や、小中学校が連携し九年間を見通した指導により、体力を大きく向上させた例がございます。
 こうしたすぐれた実践を踏まえ、今後、都教育委員会は、体力向上に関する目標や具体的取り組みを定めるアクティブプランを策定するとともに、全ての区市町村教育委員会及び学校も具体的な目標や計画を定めるよう推進し、東京都全体で児童生徒の体力向上に取り組んでまいります。

○鈴木(錦)委員 都教育委員会には、あすの東京を担う子供の体力向上にしっかりと取り組んでいただくことをお願いし、次の質問に移ります。
 次に、多摩地区の水道事業について伺います。
 知事は就任以来、視察で何度も多摩に足を運んでおられ、多摩の発展に力を入れていただいております。
 多摩地域は豊かな緑に恵まれているとともに、多様な産業も集積し、東京の発展に多摩地域の果たす役割はまことに大きいといえます。
 その多摩の発展を支えるために重要な都市インフラである多摩の水道について、知事の率直な見解を伺います。

○舛添知事 私は常々、東京を世界一の都市とするためには、多摩の発展が不可欠であるといってまいりました。
 多摩地域は東京の人口の三分の一を擁し、豊かな自然環境に恵まれた多様な魅力を持っております。江戸時代には玉川上水が整備され、また、現在でも水道水源林、小河内ダムなどがありまして、多摩はまさに東京の発展を支える礎を担ってきた重要な地域であります。
 この多摩地域では、昭和三十年代以降、急速な都市化を迎える中、都は、本来は各市町が行う水道事業を都営に一元化するなど、広域化を全国に先駆けて推し進めてきた経緯がございます。
 今後とも、地域の発展を支える重要な都市インフラであります多摩地区水道のさらなる充実を図ってまいりたいと考えております。

○鈴木(錦)委員 知事の力強い答弁、ありがとうございました。
 今、知事の答弁にもあったとおり、多摩地区の水道事業は、市や町ごとに独自に整備、運営されていたものを都営一元化し、小規模施設の維持管理など、住民に直接給水するために必要な業務を各市や町に委託する、いわゆる事務委託方式を長年採用してきました。
 こうした区部とは異なる歴史的経緯等により、施設整備などの面では多くの課題が存在していると思います。
 そこで、改めて多摩地区の水道施設の課題について伺います。

○吉田水道局長 多摩地区においては、主要な送水管として、拝島給水所と聖ヶ丘給水所を結ぶ直径一・五メートルの多摩丘陵幹線が今年度中に全線完成するなど、広域的なネットワークの構築を進めてまいりました。
 しかし、給水所などからお客様のご家庭まで水をお届けするための配水管につきましては、市町ごとに整備されてきた経緯から、市町域を越えた管路が十分でないなど、区部と比べて管網の整備が進んでおりません。
 また、浄水所などにつきましては、各市町が整備してきたものに遠隔制御設備などを導入することにより、維持管理の効率性向上に努めてまいりましたが、小規模な施設が多数点在しており、約八割の浄水所が築造後四十年以上を経過しているなど、老朽化が進行している状況にございます。

○鈴木(錦)委員 水道局では、これまでもさまざまな努力をしていますが、まだ課題も多いことがわかりました。
 本定例会の我が党の代表質問において、市や町への事務委託の完全解消を契機に、施設のレベルアップに本格的に取り組む旨の答弁がございました。
 そこで、現在の具体的な取り組みについて伺います。

○吉田水道局長 水道管路の整備につきましては、管網の骨格となる配水本管の新設を積極的に進めており、平成二十五年度実績は、市町への事務委託解消前の平成二十三年度に比べて倍増しております。
 小規模な浄水所などにつきましては、老朽化の進行状況に応じ、配水池容量が不足している施設などから計画的に整備しており、府中市にある幸町浄水所など三カ所で事業を進めております。
 また、清瀬市内に、周辺の市域も配水区域とする新たな多摩北部地域の拠点となる給水所の設計に着手しております。
 さらに、自然流下方式の配水によるエネルギー効率の向上に向けて、多摩丘陵幹線から受水する八王子市内にある鑓水小山給水所の配水区域を町田市の南部にまで順次拡大しているところでございます。

○鈴木(錦)委員 配水本管の強化や小規模施設の計画的な更新などを強力に進めていることは評価いたします。
 また、昨年の第二回定例会一般質問では、水道局から、起伏に富んだ多摩地域の地域特性も踏まえ、市町域にとらわれない合理的な配水区域への再編、また、エネルギー効率や維持管理の効率性を向上させていく旨の答弁もございましたが、そうした取り組みを着実に実施しているようであり、心強く思います。
 老朽化施設の更新時期の到来を絶好の機会と捉え、施設の再構築や切迫性が指摘される地震への対応など、これまでの取り組みをさらに進めて、水道システムの強靱化を図っていくことが重要であると考えます。
 そこで、今後の多摩水道のレベルアップに向けた局の見解について伺います。

○吉田水道局長 多摩地区水道のレベルアップには、施設の現状や東日本大震災の教訓を踏まえ、老朽化施設の更新や震災への対応などの取り組みをさらに進めていく必要がございます。
 そのため、主要な送水管路や市町域を越えた配水管網の整備による水道管路のネットワーク化を図るとともに、バックアップ機能を確保することにより、これまでできなかった管路の更新や、多数点在する老朽化した小規模施設の統廃合を進め、多摩地区の水道施設を再構築してまいります。
 また、施設の耐震化や自家用発電設備の増強などに重点的に取り組むことにより、震災時や事故時などにも給水の確保が図られるよう、災害対応力を強化してまいります。
 こうした取り組みを積極的に推進することで、都営水道にふさわしい、多摩地区水道のレベルアップを図り、給水安定性を一層向上させてまいります。

○鈴木(錦)委員 次に、多摩メディカルキャンパスについて伺います。
 多摩メディカルキャンパスにおいては、都立病院の再編整備により多摩総合医療センター、小児総合医療センターが開設されてから五年が経過し、この間、救急医療や小児医療の充実などにより、多摩地域における医療拠点としての役割を着実に果たしてきました。
 一方、超高齢社会の到来や地域医療構想の策定など、今後、医療環境が一層急速に変化していくことから、医療関係施設が集積するこのキャンパスに対する期待はますます大きなものとなります。
 また、東京都長期ビジョンでは、多摩地域の医療の充実を図るため、多摩メディカルキャンパスにおいて新たな医療課題に積極的に対応するとともに、先進医療や専門性の高い医療を提供していくとあります。
 このような状況の中、多摩メディカルキャンパスを取り巻く現状と課題について、どのように認識しているのか伺います。

○醍醐病院経営本部長 多摩メディカルキャンパスは、救急や小児医療など多摩地域の医療拠点としての役割を果たすとともに、将来の医療需要や医療提供体制について多摩全域を鳥瞰し、その課題を把握することが重要であると認識をしております。
 多摩地域の医療環境は、急速な高齢化の進行により、合併症や重症化した患者の増加が見込まれる一方、高度な医療を提供する拠点病院が偏在をしております。そのため、地域医療のネットワークの核となり、医療水準の向上を図ることが必要であります。
 さらに、災害時におきましては、近隣に拠点となる病院が少ないため、医療救護活動の拠点として病院等関係機関との連携が不可欠であり、地元や近隣の自治体、地域医療機関との広域的な連携体制を構築しなければならないとも認識をしております。

○鈴木(錦)委員 多摩メディカルキャンパスには高度な総合医療機能、小児や神経難病における高度な専門医療機能を有する病院もございます。
 ここでは、これまで以上に集積メリットを高めることにより、多摩地域から新たな医療の姿を発信していくことも可能ではないかと考えており、そのような視点での検討も必要であると思いますが、いかがでしょうか。

○醍醐病院経営本部長 多摩メディカルキャンパスにおきまして、それぞれの病院が提供しております医療機能をこれまで以上に高めるためには、各医療機関を一定のエリアに集約いたしまして、医療ゾーンを形成することが必要であります。
 あわせて、高度な総合診療基盤を充実させ、専門医療機能を最大限発揮し、集積メリットを生かした相互連携のあり方について検討していくことが重要であると考えております。
 そのため、本年二月、外部有識者や病院長などで構成する検討会を設置し、機能強化の方向性や多摩メディカルキャンパスのあり方について検討を進めております。
 今後は、来年度末を目途に、検討会におきまして、ソフト、ハードの両面から多摩地域の医療推進を牽引していくための多摩メディカルキャンパスの将来像をまとめていきます。

○鈴木(錦)委員 多摩地域の医療水準を牽引するためには、地域の医療機関との連携が不可欠であります。
 一方で、多摩地域の公的医療機関では、依然として医師の確保に苦労しているとの声を聞きます。
 さきの本会議における我が党の質問に対し、多摩地域の医療機関における医師の確保についても、新たな東京医師アカデミーの課題として検討を進めていくとの答弁もいただきました。
 キャンパスの医療機能を活用し、複数の疾患を持つ患者を総合的に診療できる医師の育成や、医師が不足している多摩地域の医療機関の支援についても具体的に検討を進めていただきたいと思います。
 次に、生物多様性の保全について伺います。
 都が昨年行った世論調査によると、生物多様性という言葉を聞いたこともないとする都民の割合が三七%に上り、認識の低さが改めて浮き彫りとなりました。
 生物多様性は専門的でわかりづらいということだと思いますが、私は、それぞれの地域で、本来の生態系やそこに昔から生息している動植物を保全することだと考えています。
 私の地元、府中市にも、ムサシノキスゲという美しい花が咲く希少な植物の群落がございます。かつて武蔵野一帯で見られたこの野草も、今では府中市内に残るのみであり、地元ボランティアによる雑木林の手入れによってその保全が図られています。
 多摩地域全体を眺めると、丘陵地の里山や雑木林などを中心に都が指定した五十の保全地域があり、それぞれにトウキョウサンショウウオやカタクリなどの絶滅危惧種、いわゆる希少種が現存しています。こうした保全地域には、近年、身近な自然を求めて多くの都民が訪れていますが、希少種を持ち去る行為が見られるほか、手入れが行き届かなくなった樹林や湿地などでは、希少種が消滅してしまった事例もあると聞きます。自然は一度損なわれると、回復するまでには大変時間がかかるため、希少種が失われるのをいかに未然に防ぐかが重要です。
 都は多摩地域の、ひいては都民全体の財産である保全地域の希少種を今後どのように保全していくのか、見解を伺います。

○長谷川環境局長 多摩の丘陵地などにある保全地域には、昔ながらの東京の生態系が維持され、数多くの希少種が現存していることから、これらを守る活動は東京の生物多様性の保全に資する重要な取り組みと認識しております。
 このため、都は、地元やボランティアなどの全ての活動団体を対象に説明会を開催し、樹林地、水辺、湿地などそれぞれの環境に適した保全作業をまとめたガイドラインを周知するほか、一部の地域では、現地に専門家を派遣し、希少種の適正な維持管理方法を指導助言するとともに、保護柵や監視カメラを試行的に設置し、持ち去り等の抑制を図る取り組みを開始しております。
 今後、こうした取り組みを全ての保全地域で展開していくとともに、より多くの都民が保全活動に主体的に参加できる機会を拡充し、希少種の保全活動を活発化させるなどして東京の貴重な生態系を次世代に継承してまいります。

○鈴木(錦)委員 生物多様性を取り巻く課題として、外来生物の問題もあります。
 都は現在、アライグマ等の外来生物の駆除経費を区市町村に補助するなど、生態系の保全を主眼とした対策を講じています。
 しかし、ご記憶のある方もいると思いますが、昨年九月にセアカゴケグモというオーストラリアの毒グモが都内二カ所で相次いで発見され、人への健康被害という新たな課題が顕在化してきています。幸いにも、毒グモの事例では都民に健康被害は発生しなかったようですが、子供のいるご家庭では不安を抱かれた方も多いと思います。
 外来生物の問題は、国際物流の発達により、海外からの侵入機会がふえていることに加え、地球温暖化の影響で、東京でも熱帯性の生物が生育しやすくなっていることが背景にあり、今後も危険な外来生物が侵入し、定着することが懸念されます。
 今回のセアカゴケグモ発見事例を踏まえ、都として、こうした都民の安全を脅かす新たな課題に迅速に対応することが必要であると考えますが、見解を伺います。

○長谷川環境局長 国が指定しております特定外来生物のうち、人に健康影響を及ぼす外来生物は十六種ございまして、既に国内で七種、都内でもセアカゴケグモなど四種の侵入が確認されるなど、危険な外来生物への対策は、安全な生活を守るための重要な課題となっております。
 このため、都は、来年度から新たに、地域の外来生物対策を担う区市町村を対象として、対策マニュアルを策定し、担当職員向けの講習会を開催するとともに、緊急駆除を行う際の経費を支援してまいります。また、都民への普及啓発を拡充し、学校の教材としても活用できる子供向けのウエブサイトの構築も行ってまいります。
 こうした区市町村の現場対応力の向上への支援や都民への普及啓発に、関係局と連携して取り組み、危険な外来生物から都民を守り、安心して生活できる都市の実現を目指してまいります。

○鈴木(錦)委員 次に、交差点すいすいプランについて伺います。
 これまでに局所的渋滞対策として進められてきた交差点すいすいプランは、交差点の交通渋滞の解消のため大変重要であります。
 以前、道路の工事により右折レーンが使えず、片側一車線の従来どおりの状況で、渋滞により長蛇の車列に巻き込まれたことがありましたが、道路の工事が終了すると右折レーンが復活し、渋滞することなく交差点を通過することができました。交差点すいすいプランは、このような大きな効果が期待できる事業であると実感しており、高く評価しています。
 第二次交差点すいすいプランの計画期間が本年度で終了することを踏まえて行いました昨年の第四回定例会における私の質疑において、都は、本年度中に新たに第三次交差点すいすいプランを策定するとご答弁されました。
 そこで、第三次交差点すいすいプランの内容について伺います。

○横溝東京都技監 お話のように、交差点すいすいプランは、片側一車線の道路において新たに右折車線等を設置し、右折待ち車両による渋滞を緩和することを目的とするもので、今般、第三次計画を策定いたします。
 本計画では、ビッグデータによる渋滞情報や現況調査をもとに、交差点の通過に二分以上要しているなどの条件から、整備箇所として七十六カ所を選定いたしました。
 事業の実施に当たりましては、用地取得が完了していない段階でも、右折待ちスペースの確保が可能な場合には暫定整備を行い、早期に事業効果の発現を図ってまいります。
 また、整備箇所となっている交差点の多くは歩道が狭いことから、新たに歩道を拡幅して整備し、歩行者の安全やバリアフリーにも配慮して事業を進めてまいります。
 今後とも、地元市などと緊密に連携し、地域の理解と協力を得ながら、渋滞緩和に向け積極的に取り組んでまいります。

○鈴木(錦)委員 次に、離島航空路線について伺います。
 現在、伊豆諸島の島々へは、府中市と三鷹市に隣接する調布飛行場と羽田空港からそれぞれ定期便が運航され、島民や観光客の貴重な足として利用されています。
 こうした中、平成二十五年六月、調布飛行場において、就航率の向上を待ち望んでいた島民にとって長年の悲願であった計器飛行方式が導入されました。
 そこでまず、調布飛行場への計器飛行方式の導入の効果について伺います。

○多羅尾港湾局長 計器飛行方式の導入により、平成二十六年の就航率は九一・二%となりました。
 計器飛行方式が導入されていなければ八五・一%にとどまっていたところであり、六・一ポイント、便数としては年間五百四十一便の就航が可能となるなど改善効果が見られ、計器飛行方式の導入は就航率の向上に確実に貢献しております。

○鈴木(錦)委員 計器飛行方式導入により就航率が高まったことは、大変喜ばしいことであります。
 さらに、調布飛行場では、計器飛行方式の導入に続き、平成二十六年四月、大島、新島、神津島路線に加え、新たに三宅島路線が開設され、調布飛行場を起点とする離島航空路線は、近年、とみに充実してきています。
 これまでの三宅島の航空路線は火山ガスの影響で就航率が低いと聞いておりますが、新設された調布三宅島路線の運航状況はどうなったのか伺います。

○多羅尾港湾局長 三宅島路線は、平成二十五年度までは全日空が羽田との間を五十六人乗りの機体で一日一往復運航していましたが、就航率は火山ガスの影響で極端に低く、平成二十五年度は三八%でございました。
 平成二十六年度からは、新中央航空が十九人乗りの機体で調布から一日三往復で運航しており、小回りがきく小型機の導入により、火山ガスを避けて離着陸することも可能となりました。
 これにより、平成二十七年二月までの就航率は九〇%と前年度同期間の二倍以上となるなど、その利便性が飛躍的に向上しております。

○鈴木(錦)委員 調布三宅島路線は予想をはるかに超える就航率を上げ、島民からは、航空路線の存続と利便性向上を喜ぶ声も聞こえております。こうした計器飛行方式の導入、調布三宅島路線の新設の事例からもわかるように、調布飛行場はこれまで以上に島しょの空の玄関口として重要な役割を担っております。
 しかし、調布飛行場が市街地の中にある空港であることを忘れてはなりません。
 そこで、地元に対し最大限の配慮をしつつ、調布飛行場を離島航空路線のかなめとして一層充実していくべきと考えますが、都の所見を伺います。

○多羅尾港湾局長 委員ご指摘のとおり、調布飛行場は市街地の中にある空港であるため、安全対策、騒音対策等には万全を期す必要があると考えており、地元の三鷹市、府中市、調布市との協定では、特に年間の離着陸回数について上限を二万三千回と定め、さらに削減に努めるとしております。
 このため、都は、三市との協定を厳守しつつ離島航空路線の充実を図るため、平成二十五年度から自家用機等の利用制限を強化しております。その結果、平成二十六年の離着陸回数は、三宅島路線の新設等で本来なら二千回程度ふえるところでございましたが、その半分以下の約八百回増で済み、年間一万六千回程度にとどまっております。
 今後とも、自家用機等の利用を制限するなど地元への配慮を最優先で行いつつ、離島航空路線の拠点として、より一層の充実を図ってまいります。

○鈴木(錦)委員 調布飛行場が東京の島々の発展に貢献し、島しょと多摩のかけ橋になることは大変意義のあることと考えています。引き続き、調布飛行場の安全対策、騒音対策に万全を期した上で、地域と共存を図りつつ、一層の利便性の向上にも努めていただくことをお願いし、私の質問を終わります。(拍手)

○鈴木(隆)副委員長 鈴木錦治委員の発言は終わりました。