予算特別委員会速記録第四号

○鈴木(隆)副委員長 田中朝子委員の発言を許します。
   〔鈴木(隆)副委員長退席、委員長着席〕

○田中(朝)委員 私からは、障害児施策について、まず幾つかお伺いをいたします。
 最初は、障害児の専門保育園、ヘレンについて伺います。
 働きたいと望んでいたり、また、働かなければならない親が障害のある子供を持っていても働き続けることができるように、保育の現場での障害児の受け入れを推進していくことは非常に重要です。
 昨年九月に、杉並区内にNPOが運営する全国で初めての障害児専門保育園、ヘレンが開設されました。この保育園では、障害児通所支援である児童発達支援事業を利用し、NPOが独自に実施する保育事業と組み合わせて、児童発達支援事業にはない長時間の預かりを実施しています。杉並区は、この保育園は認証保育と同じ扱いにしていて、保育料の補助をしています。
 一番の特徴は、普通の保育園ではなかなか受け入れてもらえない重症心身障害児や、日常的に医療的ケアの必要な障害児を多く受け入れているというところです。
 先日、私もこの保育園、ヘレンを視察いたしました。ヘレンの開設は非常に話題となり、杉並区の近隣だけではなくて、遠方からの利用希望者の問い合わせや申し込みも数多く来ているとのことで、その需要の多さがわかります。また、他の区や市からも、障害児専門保育園をやりたいと、多くの自治体からの見学が来ているそうです。今、来ているところは、世田谷区や大田区、横浜市、あと雲仙市の市長さんもいらっしゃったとお聞きをしました。
 しかし、その運営の仕組みを知ると、実施は難しいと尻込みをするということを聞いています。この尻込みをする理由、ネックとなっている問題点を幾つか指摘したいと思います。
 まず一つは、児童発達支援事業の収入というのは給付費で賄われていますけれども、制度上、日払いになっています。要するに、来た日だけ給付費が出るということです。しかし、重症心身障害児や医療的ケアの必要な障害児は健康状態が安定せずに、急に休んだり、入院などで長期の休みをとることが非常に多いんです。そうなると、その間の事業者の方の収入が減ってしまって、その間、かわりの子供を入れるというわけにもいきませんので、安定的な運営が非常に困難になっている状況です。
 このことから、日額払いの給付ではなくて、利用定員での給付、要するに定数払いにするべきと考えますが、いかがでしょうか。

○梶原福祉保健局長 児童福祉法に基づく児童発達支援事業所には、国の定める報酬基準によりまして、利用実績に応じて、日額払いで児童発達支援給付費が支給される仕組みとなっております。また、濃厚なケアを必要とする重症心身障害児につきましては、重症心身障害児者通所事業によりまして、児童が居住している区市町村を通じて、都独自で運営費の上乗せ補助を行っております。

○田中(朝)委員 この問題は、この専門保育園のヘレンのみならず、全ての児童発達支援事業に当てはまる問題ですので、ぜひ都として何らかの対応をお願いしたいと思います。
 先ほども申し上げたように、この保育園では重症心身障害児を数名預かっていて、重症心身障害児者通所運営費補助事業により、さらに一定の補助を受けています。しかし、同じように手厚い看護が必要な医療的ケアを必要とする児童は、重症心身障害児には該当しないと補助の対象にはなりません。
 現在、重症心身障害児の範囲は、四十三年前につくられた大島分類という分類法で決められていますけれども、この分類方法だと、手厚い看護が必要な医療的ケアを必要とし、はいはいや伝い歩き程度、少し動くことができる児童は、重症心身障害児には該当しません。これ、動くか動かないかというところで、この大島分類というのが決まっているんです。
 しかし、四十三年前であれば命を落としていたかもしれない子供たちが、今は医療の発達によって生まれられて、そして生き続けることができるようになり、今、経管栄養や胃瘻、また、たんの吸引など、日常的に医療ケアを必要とする障害児が増加をしています。
 重症心身障害児に該当しなくても、医療的ケアが必要な児童は、重症心身障害児と同じように手がかかって、支援が必要です。動ける、動けないだけの判断では、現在の障害児の状況には対応できません。
 重症心身障害児であるかどうかにかかわらず、障害児を持つ親が働き続けられるよう、ヘレンのような長時間の預かりができる施設をふやしていくことが必要と考えます。医療的ケアを必要とする児童の受け入れを進めるために、都はどのような支援を行っていくのか、お伺いをいたします。

○梶原福祉保健局長 お話の障害児専門保育園は、児童発達支援事業とNPO法人が独自に行う長時間の預かり事業をあわせて実施しているものと認識をしております。
 児童発達支援事業は、児童本人に対して療育を行うことを目的としておりまして、日常生活における基本的な動作の指導や、知識、技能の付与、集団生活への適応訓練等を行うものでございます。また、児童本人の成長、発達の観点から、保護者に対しても、親子での通所等を通じまして、日ごろの育児に関する指導など、さまざまな支援を行っております。
 医療的ケアを必要とする就学前の障害児につきましては、医療型児童発達支援センターのほか、福祉型児童発達支援センターや児童発達支援事業所においても、医療機関等と連携しながら、受け入れを行っているところでございます。

○田中(朝)委員 ありがとうございます。障害児支援というのは、あくまで児童本人の発達に焦点を当てたものであるということは理解ができます。障害児に対するこのような支援は必要であると思いますし、もちろん、しっかり取り組んでほしいと思います。
 しかし、本来、働く親が働き続けられるように支援していくことは、子供が健常者であっても、障害児であっても、同様に必要です。特に日本では、障害のある子供のいる家庭は、離婚率が健常児世帯の六倍に上ります。また、障害児の母親の九五%が、フルタイムの仕事につけていません。ひとり親で障害のある子がいて働けなかったら、多くの場合は生活保護を余儀なくされます。にもかかわらず、現状では障害児、特に重症心身障害児や、日常的に医療的ケアが必要な障害児を預かる保育園が非常に少ないです。
 保育を必要とする障害児に対し、もっと積極的な支援を行っていく必要があると思いますが、いかがでしょうか、お伺いをいたします。

○梶原福祉保健局長 都におきましては、これまで、保育所における障害児の受け入れが進むよう、障害児保育等を行う保育所の職員に対し、療育技術等を指導いたしますとともに、都独自の子育て推進交付金等により区市町村の取り組みを支援してまいりました。また、児童福祉法の改正に伴いまして、平成二十四年度から児童発達支援センター等の指導員が保育所を訪問し、障害児が集団生活に適応できるよう、その障害特性に応じた専門的な支援を行っております。
 さらに来年度からは、障害児等の特に配慮が必要な児童に対する保育の充実を図るため、サービス推進費補助を再構築し、保育サービス推進事業を創設いたします。
 今後とも、保育が必要な障害児の受け入れを進める区市町村を支援してまいります。

○田中(朝)委員 今、ご答弁にありました保育サービス推進事業を四月から始められるということですけれども、これは本当にすばらしいことを始められると思います。この事業により、保育園での障害児受け入れがより進んでいくことを期待しています。
 しかし、保育サービス推進事業は、この今申し上げているヘレンには当てはまらないんですね。これ、認可保育園とはされていないからです。東京都は、この事業を従来の障害児通所支援である児童発達支援事業というのを当てはめているわけですけれども、ヘレンはそれに加え、保育という視点が非常に重要になってくると思います。東京都もぜひ新しい視点で、障害児施策と保育が連携してこの新しい事業に当たり、東京からこの取り組みが全国に広がるようにしてほしいと要望をいたします。
 次に、児童養護施設の障害児について伺います。
 現在、児童養護施設にいる児童の多くが被虐待児であることは知られていますけれども、同時に、自閉症など知的障害や発達障害、何らかの障害を持つ児童も数多く入所しています。厚労省の統計では、児童養護施設では約二割が障害を持つ児童とされていますけれども、私が何カ所か見学をさせていただいた児童養護施設の方々のお話では、現場の実感としては、約半数の子供がこうした傾向を示しているということです。障害児だから虐待を受けてきたという子供さんも多いと思います。
 こういった傾向を持つ子供たちにとって、できる限り早期に適切な医療的リハビリや指導訓練などの療育プログラムを受けることが非常に重要になっています。これにより、知的障害や発達障害などがあっても、適正な行動がとれるようになり、実社会に適応できるようになるわけです。
 障害のある児童の場合、家族のかかわり方がその児童の療育に及ぼす影響が非常に大きいんですけれども、この養護施設に入っている障害児には、家族がかかわることができないわけですから、なおさら養育の必要性は高いといえます。しかし、現在、この児童養護施設に入所している障害児は、いわゆる福祉の二重措置ですね。二重措置になるからという理由で、療育プログラムを受けることができません。
 杉並区には五カ所、児童養護施設があります。これは非常に多いんですけれども、そこに通っている障害児は、杉並区独自の支援で、区のこども発達センターの療育プログラムを受けられるようになっています。しかし、これは杉並区の児童養護施設の障害児だけが行ければいいというわけではありませんから、杉並区だけでなくて、どこの児童養護施設の障害児も療育プログラムを受けられるようにするべきです。
 都は、専門機能強化型児童養護施設として、精神科医など独自に支援を行っていらっしゃるようですけれども、それは被虐待児童には効果があっても、発達障害児には十分対応し切れていないようだという話です。
 区の独自支援に頼ったり、区の施設を利用するのではなくて、都として、児童養護施設に入所している障害児に対する療育プログラムの支援を強化すべきと考えますが、ご見解を伺います。

○梶原福祉保健局長 都におきましては、虐待などを受けた児童への専門的なケアを充実するために、精神科医と心理職員を配置する専門機能強化型児童養護施設に対して補助を行っております。
 また、サービスの質の向上を図るため、知的障害や発達障害等の個別的な援助が必要な児童に対する養育支援など、各施設が行う努力や実績に応じた補助も行っているところでございます。
 来年度からは、虐待などにより重い情緒障害、行動上の問題を抱える児童に対しまして、生活、医療、教育の部門が連携して一体的に支援を行う連携型専門ケア機能モデル事業を、都立石神井学園で開始する予定でございます。

○田中(朝)委員 ありがとうございます。今おっしゃった連携型専門ケア機能モデル事業、このモデル事業が広がることを望んでおります。
 ヘレンのように新しい事業を始めれば、必ずそこには新しい解決すべき課題が出てきます。また、昔からある制度でも、社会状況の変化によって、児童養護施設の障害児のように、その制度のはざまに落ち込んで救われない子供も出てきます。ぜひ東京都は、そういう子供たちや保護者を救うために、国に先駆けて支援し、国の制度の問題が障害になるようだったら、国へ強く要望していくべきであると思います。問題がわかっていることへの積極的な支援を要望いたします。
 次に、社会的養護について幾つかお伺いをいたします。
 まず、里親委託事業について伺います。
 国においては、平成二十三年度に社会的養護の課題と将来像が取りまとめられて、その中では、今後十数年で、家庭養護、家庭的養護、施設養護の割合をそれぞれ三分の一ずつにしていくという考えを示しています。東京都においても、里親委託を推進してはいるものの、結果として、養育家庭も養子縁組家庭も、ここ数年、大きくふえているという状況にはありません。今後どのように委託を推進していくのか、大変気になっているところです。
 今、里親委託の措置の権限を持つ児童相談所には、虐待相談や対応が集中しています。私の自宅の隣が杉並児童相談所なので、私も児童相談所の現場を見て、お話もお聞きしてきましたけれども、本当に一人一人の職員の方々は頑張っていらっしゃいます。今、一人当たり百件ほど担当しているというお話をお聞きしました。毎晩夜遅くまで児童相談所の電気もついています。
 ただ、虐待ではないかという通告があれば、四十八時間以内に現場に行って子供の安全を確認しなければならず、今、虐待対応に相当の時間を要している状況です。里親委託の推進まではなかなか手が回らず、結果、進みづらい状況であるようだと思います。
 平成二十一年の里親支援事業制度改正により、児童相談所の行政処分、いわゆる措置権ですが、それを除くその他の里親業務全般を民間に委託できるようになりました。
 それを受けて、静岡市では、平成二十五年から措置権だけを児童相談所に残して、その他の業務、いわゆる里親支援機関事業、これは里親の開拓とかマッチング、また委託後のフォロー、そして親子の関係悪化などで委託を中断する不調を防いだりする、こういった事業ですけれども、この里親支援機関事業を里親機関支援事業者に委託をしています。それによって、短期間で静岡市の里親委託率は四〇%にも達しました。
 東京都もこうした取り組みを参考に、里親機関支援事業者に委託できるものは委託すべきと考えますけれども、ご見解を伺います。

○梶原福祉保健局長 若干、都の養育家庭制度のところを、頭にちょっとつけ加えさせてください。
 四十八年度に養育家庭制度ができて、その当時、養育家庭センターという形で、里親の制度をつくりました。そのときには、認定と措置以外の業務を委託をした形があったんですが、実はやっぱりその中で、児童相談所とそこが措置権だけ切れていることのために、子供のケースワーク上、十分な情報が入ってこなかった。そこがなかなかうまくいかなかったので一回やめたという経緯があります。その後、改めて平成二十年度にこの里親支援機関事業を始めました。
 私どもとしてはやっぱり里親をふやしていく、あるいは里親委託をふやしていくというのは、同じ気持ちであるというふうに思っています。
 その前提のもとで、都は現在、里親家庭への支援などの業務を総合的に行い、里親委託を推進するために、里親支援機関事業を全ての児童相談所で実施しており、臨床心理士会やNPO法人等の民間団体に、家庭訪問やカウンセリングなどの支援の一部を委託しているところでございます。
 東京都児童福祉審議会では、今後の東京の社会的養護のあり方について検討がなされ、昨年十月には、民間団体との連携強化による家庭的養護の推進など、都の施策の方向性についての提言をいただきました。
 今後、都におきましては、この提言も踏まえながら、里親支援機関事業の活用も含め、民間団体との連携などについて、学識経験者等の専門家の意見も聞きながら検討していく予定でございます。

○田中(朝)委員 今、その前段のところ、私ちょっと、きょう初めてお聞きをしましたけれども、東京都は、今ご答弁にあったように、家庭訪問とかカウンセリングなど一部、民間委託はもうしていらっしゃるんですけれども、この静岡の効果が上がったのは、これはまるっと全部委託したことによって四〇%に達したということをお聞きしていますので、ぜひこういったことを検討して実現させていただきたいと思います。
 また、東京都では里親体験発表会を開催するなど、里親制度を広く都民に知ってもらうための普及啓発活動も行っていらっしゃいます。この体験発表会では、里親さんから里子を育てる悩みや感動などの声を直接聞くことができると、大変好評とお聞きをいたしました。
 しかし、それ以外の周知は余り効果が上がっていないのではないでしょうか。里親制度に限らず、普及啓発とか広報活動というのは、どちらかというと行政の苦手とするところだと思います。
 行政には行政にしかできない強みがありますけれども、民間には民間が得意な強みがあります。普及啓発などの広報活動などは、より機動性の高い民間と連携すべきと考えますけれども、ご見解をお伺いいたします。

○梶原福祉保健局長 都は、養育家庭制度を広く都民に周知し、理解を促進するため、十月、十一月の里親月間を中心に、区市町村や児童養護施設等と連携した体験発表会を開催するとともに、ホームページ、広報誌、フリーペーパーを活用した啓発活動などを行っております。
 体験発表会等のアンケートを見ますと、制度や体験発表会を知ったきっかけは、広報誌、ポスターなどの割合が高い結果となっております。
 今後、区市町村や里親支援機関事業を担っているNPO法人、児童養護施設の里親支援専門相談員などと一層連携をいたしまして、養育家庭制度の普及啓発に努めていきたいというふうに考えております。

○田中(朝)委員 ありがとうございます。
 次に、昨年の一般質問でも取り上げました特別養子縁組について伺います。
 戸籍上のつながりは発生しない、今申し上げた里親制度とは違い、特別養子縁組は、養子が戸籍上養親の子となり、実親との親子関係がなくなる制度で、養子となる子供の年齢は、原則六歳未満の乳幼児です。
 東京都の特別養子縁組の委託状況は、年度で変動はあるものの、年間約二十人前後で推移していて、ふえている状況にはありません。また、乳幼児への虐待や虐待死から守るセーフティーネットになるはずの新生児の特別養子縁組は、東京都ではいまだにありません。
 昨年、厚生労働省が発表した二〇一二年度の児童虐待死亡事例の検証結果報告書によると、心中以外の子供の虐待死は五十一人、年齢別に見ると、ゼロ歳が最も多く二十二人、これは四三・一%に上ります。この半分の十一人が、生後二十四時間以内に命を奪われています。死亡事例の実母の状況は、望まない出産が多く、未成年、未婚、経済的問題など、子供を養育できない状況にあることから、妊娠中から相談に乗り、どうしても育てられない場合は特別養子縁組の希望里親に橋渡しをして、新生児の時期から家庭を与えることは、ゼロ歳児の虐待を未然に防ぐことにつながります。
 二〇一一年に厚生労働省は、里親ガイドラインの中で、愛知県の児童相談所による新生児の養子縁組、里親委託を愛知方式として、初めて好事例として認め、全国に通知しており、ほかの地域の児童相談所にも少しずつ広がっていますが、東京都では、児童相談所での新生児の特別養子縁組はまだないのが現状です。
 一方、この制度で生みの親と育ての親をつなぐ、民間のNPO等の養子縁組あっせん事業者が都内には五団体あります。今、特に新生児の特別養子縁組を望む方々の多くは、こうした事業者から子供をあっせんしてもらっている状況にあります。
 平成二十四年度、このような民間団体が行った養子縁組成立数は百十五件と、全体の三分の一以上を占めています。この五年で、その数は五倍以上に急増しています。また、養子あっせん事業だけでなく、児童相談所がなかなか取り組めていない妊娠時からの相談事業や養子縁組のアフターフォローをも、この団体は担っています。
 民間事業者にはそれぞれの特徴があるにしても、今後、東京都の児童相談所は、こうした団体と連携をして特別養子縁組をもっと促進していくべきと考えますけれども、ご見解を伺います。

○梶原福祉保健局長 私も児童相談センターの次長として児童相談所の現場で働いた期間がございまして、この特別養子縁組のケースワークの中で何例も扱った経験がございます。
 これは、なかなかいろんな現行の日本の制度上、あるいは法制度上でいろいろ超えなければならない課題というのがあるというふうに思っています。
 今お話のあった養子縁組の民間とのあっせんの関係でございますけれども、これにつきましても、養子縁組あっせん事業は、社会福祉法の第二種の社会福祉事業でございまして、事業者は営利を目的としたあっせん行為や実費相当以外の金品の受領が禁止をされております。
 ただ、事業者の活動内容自体はさまざまでございまして、金品等の取り扱いの透明性などに課題があったため、一昨年でございますけど、平成二十五年七月から九月にかけて、これは大きく報道でも載りました、都内全事業者に対して訪問調査を行い、あっせん行為の透明性の確保、あるいは適正な金品の処理等について指導を行ったところでございます。
 また、昨年五月には国の指導基準が改定され、指導の強化を図っていることから、現時点での連携にはなかなか課題が多いというふうに認識をしております。
 ただ、現在、国は養子縁組あっせんの適切な手法や児童相談所と民間事業者との連携のあり方などについて調査研究を実施しておりまして、都といたしましては、こうした国の研究成果なども踏まえながら今後の対応を検討してまいります。

○田中(朝)委員 今おっしゃった養子縁組あっせん事業者、金品等の取り扱いの透明性に課題があったので訪問調査を行ったということでしたけれども、これは全部問題がなかったということがわかったということをお聞きしていますけれども、そういったところで問題がないにもかかわらず、現時点での連携には課題があるということでしたらば、なぜ東京都でもっと新生児の特別養子縁組を進めないんでしょうか。
 これ、いつまでも今後の対応を検討していくでは、救われないお子さんがいっぱい出てくるわけですから、ぜひお願いしたいと思います。
 今、障害児とか社会的養護が必要な子供などお子さんに関する施策を幾つか聞いてまいりました。私たち大人にとって、三、四年というのはそんなに長い時間ではありません。また、行政での施策実現も三、四年で実現すれば、とっても早いという方かもしれません。しかし、あっという間に成長する子供にとっての三、四年というのは、とっても長いんです。三、四年たてば、今、きょう生まれたばかりの新生児はもう幼児、幼稚園です。小一の子供は小学校高学年になってしまいます。
 要するに、子供への支援というのは、今やらなければ手おくれになるということです。特に、障害児や社会的養護を必要とする子供たちは、親や施設の努力だけではなくて、社会や行政が責任を持って育てていかなければなりません。
 大人が本気になって課題や問題解決に一日も早く動かなければ、何も支援を受けられずに育ってしまう子供を今この瞬間も何人も出してしまうことになります。ぜひお子さんに対する支援や施策実現は、本気で素早い対応をしていただくよう強く要望をいたします。
 次に、動物愛護についてお聞きをいたします。
 平成二十五年に環境省は、人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトを立ち上げ、昨年にはプロジェクトの行動計画、いわゆる牧原プランが発表されました。
 この牧原プランは、犬猫の殺処分をできる限り減らし、最終的にはゼロにすることを目的とし、そのために飼い主、事業者、ボランティア、NPO、行政等が一体となって取り組みを展開、推進するという行動計画です。
 平成二十五年の東京都の犬の殺処分数は八十八頭。東京都の犬の登録数、これは約五十一万六千頭です。登録していない方もいらっしゃいますから、もうちょっと多いと思いますけれども、それからすると非常に少ないといえますけれども、残念ながら、東京都は平成二十六年の動物愛護管理推進計画、ハルスプランの中で殺処分ゼロを目指すとは明記をしていません。
 以下、この状況を踏まえて幾つか質問をいたします。
 まず、飼い主への犬の返還率向上について伺います。
 殺処分ゼロを達成するには、これはもう何よりも飼い主が捨てない、迷わせない、持ち込まない、こういった適正飼養、終生飼養をすることが一番大切です。
 しかし、現在、実際犬がいるわけですから、それだけでなく、愛護センターに収容された犬や猫をもとの飼い主にできる限り多く返還する取り組みが重要です。
 平成二十五年の都の犬の返還率は約五四%です。殺処分ゼロにした自治体の返還率を見ても、神奈川県が五三%、川崎市五八%、熊本市五二%、仙台市は六九%も、いずれも高い。このことから、返還率を向上させることが殺処分ゼロに効果的だということがわかります。
 飼い主へ返還するには、何よりも探している飼い主への情報発信が必要ですが、東京都のホームページから収容動物情報にたどり着くまでが非常にわかりにくく、また収容動物の写真も一枚だけ、体の大きさも曖昧で、首輪や特徴などの詳細な情報もありません。
 一方、他の返還率が高い自治体のホームページは、収容動物情報にたどり着きやすいなど、さまざま工夫をしています。
 また、最近はフェイスブックやツイッターなどのSNSを使って収容動物の情報発信する自治体も出てきています。
 また、東京都では地域に身近な各警察署での迷い犬の収容も年間五百頭近く、これ愛護センターで扱っている数とそんなに違わないんです。それぐらいあって、警察署からの飼い主への返還は、何と八割です。これは持ち込んだ方が、やっぱり私が飼うわということとか、あと警察の方が、いや、殺されちゃったらかわいそうだから自分が飼うよと、こういうことも含めてですけれども、それにしても八割以上にはなる。非常に返還率が高いんです。
 現在、警察署においてマイクロチップリーダー導入も検討中とのことです。ぜひ警察署との情報共有も進めるべきだと思います。
 東京都でも犬の返還率を向上させるために、動物愛護相談センターが保護、収容している犬を飼い主が速やかに発見できるよう、積極的に情報発信すべきと考えますけれども、ご所見を伺います。

○梶原福祉保健局長 動物愛護相談センターが保護した飼い主の不明な動物につきましては、保護した場所の区市町村の掲示板に一定期間公示するほか、収容した動物の種類や特徴、収容した場所、収容日などの基本的な情報を写真とともにセンターのホームページに掲載し、問い合わせに対しまして、飼い主ならば知っている情報を確認した上で返還をするということになっております。
 また、警察等が動物を保護し、直ちに、大体一日から二日間飼い主が見つからない場合などにはセンターに情報が入りまして、センターが保護することとなっております。
 来年度は、センターの役割や連絡先を多くの方に知っていただくため、動物用品店や動物病院などにもパンフレット等を配布する予定でございまして、今後とも、保護した動物が飼い主に返還されますよう工夫を行いながら情報発信に努めてまいりたいと考えております。

○田中(朝)委員 犬を逃がしてしまった方とかは、どこに問い合わせていいかわからないという方も結構いらっしゃると聞いていますので、ぜひそういった情報発信をお願いしたいと思います。
 返還とともにさらに進めていかなければならないのが、新しい飼い主を探す譲渡事業です。東京都は、比較的古くからほかの自治体に先駆けてボランティア保護団体との連携のもとで、犬猫の譲渡事業を始めていたと聞いています。
 現在、東京都の登録ボランティア団体は四十六団体。平成二十五年の都の譲渡実績数の約九割は、この保護団体がセンターから引き出して譲渡に結びつけたもので、東京都の殺処分数が減り続けているのは、このボランティア保護団体の努力によるところが非常に大きいです。
 今後、都はこの保護団体に任せて終わりではなく、その先の新しい飼い主捜しの支援もしていくべきです。保護団体が引き取った犬や猫の飼い主がその先でなかなか見つからないと、次にセンターに来た犬や猫の引き出しが保護団体ができなくなってしまう、そこでとまっちゃうということです。この保護団体は、小さな規模で頑張っているところが多く、週末などに行う犬や猫の譲渡会の会場探しや確保に非常に苦労しています。
 殺処分ゼロにした神奈川県では、県庁前広場--駐車場とかです。それから、県庁の会議室を土日に保護団体の譲渡会に会場提供をしています。東京都も愛護センターやドッグランのある都立公園を譲渡会場として提供することをぜひ考えていただきたいと思います。
 また、東京都は、譲渡の対象になった犬や猫の不妊去勢手術やマイクロチップの装着については、飼い主の責任として行うように指導しているだけで、いずれの措置も東京都の側ではせずに個人や民間保護団体に譲渡しており、本当に飼い主が譲渡後不妊去勢手術を受けさせたかどうかの確認が一〇〇%できているわけではありません。
 一方、このボランティア保護団体は、センターから引き出した犬や猫全てに必ず不妊去勢手術をして、マイクロチップも入れた上で新しい飼い主に譲渡をしています。
 横浜市では、愛護センターから譲渡する犬猫には、個人、団体問わず、全てに不妊去勢手術を施してから渡しています。横浜市と同様に、東京都も動物管理行政の責任において不妊去勢済みの動物を譲渡するべきと考えます。
 殺処分数のさらなる減少に向け、動物愛護相談センターが保護、収容している動物の譲渡については、ボランティア保護団体と積極的に連携協力し、都として責任を持った取り組みを一層推進していくことが重要と考えますが、所見をお伺いします。

○梶原福祉保健局長 都におきましては、動物愛護相談センターで保護している動物を譲渡するため、飼育経験が豊富で譲渡活動に実績のあるボランティア団体を登録し、これらの団体を通じて譲渡を実施しております。
 登録団体は年々増加をしておりまして、現在、ボランティア団体としては四十五、その他の団体を入れて四十六団体ということになっております。
 また、動物の譲渡を進めるため、対象となる動物のデータベースを現在構築しておりまして、来月からはボランティア団体とインターネットを通じた情報共有を開始することとしております。
 今後とも、ボランティア団体との連携を一層強化し、譲渡の拡大を推進してまいります。

○田中(朝)委員 次に、動物愛護相談センターのあり方についてお伺いいたします。
 都の三カ所の動物愛護センターは、いずれも建物が築三十年から四十年と非常に古くなっています。年間何万頭もの犬猫を収容し、殺処分するための施設としてつくられていて、譲渡や殺処分ゼロへの新しい流れには、つくりが今もう全く合っていません。
 長期間犬猫が滞在するには適さず、また収容数の多い多摩支所や本所には、負傷動物が運ばれてきても応急処置を行う処置室しかなく、治療をしたり不妊去勢手術をする手術室がありません。
 現場の職員は、限られた条件の中で動物愛護法改正後も業務がふえる中、頑張っておられますけれども、やはり三十年から四十年前に今と全く異なるコンセプトでつくられた施設や設備では、新たな事業展開には限界があります。
 全国に約四百カ所ある動物収容所のうち、五十カ所以上が数年以内に保護シェルター機能を持つ施設に建てかえや改修を予定しています。
 先日、三年前に新しくできた横浜市の動物愛護センターを見てきました。横浜市は、それまで畜犬センターしかなかったんです。譲渡をやっていなかったんです。
 動物愛護行政の新しいコンセプトに基づき、長期間犬猫が滞在できる保護シェルター機能を持ち、市民が自由に見学や利用できる開かれた愛護センターとして地元にも受け入れられていました。建物は、まるでドイツのティアハイムのようで、広い芝生の庭やずらっと並んだ清潔な犬舎や猫の家、手術室はもちろん、トリミング室や体育館のような室内ドッグランまであり、土曜日には犬や猫を見に来る家族連れで非常ににぎわうという、従来の都の愛護センターとは百八十度イメージが違うのに驚きました。
 東京都も殺処分ゼロを目指して、保護ボランティア団体やNPOなどと連携した新たな譲渡事業を進めるなど、動物愛護の拠点となる、地域や都民に開かれた新しい動物愛護センターを検討しなければならないときが来ています。
 動物愛護管理行政の新しい流れの中、今後の都の動物愛護相談センターのあり方、役割についてどのようにお考えになっているのか、お伺いをいたします。

○梶原福祉保健局長 動物愛護相談センターは、狂犬病予防法に基づいて犬の捕獲、収容を行うとともに、動物愛護管理法等に基づきまして、動物の適正飼養の普及啓発、保護した動物の譲渡、動物取扱業の監視指導、動物由来感染症対策、災害時の動物救護などを行っておりまして、都における動物愛護や危機管理の拠点としての役割を担っております。
 また、地域において動物愛護の取り組みが進むよう、動物愛護推進員やボランティア等を対象とした専門研修など、動物愛護を担う人材育成を行っております。
 昨年三月に改定いたしました東京都動物愛護管理推進計画では、動物の適正飼養の啓発と徹底、事業者による動物の適正な取り扱いの推進、動物の致死処分のさらなる減少を目指した取り組みの推進、災害対策を初めとする危機管理への的確な対応を柱に位置づけておりまして、センターは、その取り組みの中核を担っていくことが必要だというふうに私どもは認識しております。

○田中(朝)委員 この動物愛護センターは、もう本当に今、いろいろな取り組みをしているところが多くて、例えば旭川市は、二〇一二年にそれまで郊外にあった愛護センターをまちの中心部、これは市役所のすぐそばだそうですけれども、移転をしています。名前も「あにまある」というかわいい名前に変えました。アクセスが便利になったことによって、見学者が年間四千人、東京都は年間三カ所合計四百六十一人ですから、この多さがわかります。そして、一年後、翌年に、二〇一三年殺処分ゼロを達成いたしました。
 このセンターですけれども、近い将来的には、この譲渡事業とそれから普及啓発事業を民間に委託してもいいんじゃないかと思います。その方がいろいろなことができるのではないかと私個人では考えています。
 次に、都の殺処分の方法について、ちょっと一言申し上げます。
 現在、殺処分するにしても、殺処分機を使わずに麻酔薬注射等による安楽死に一〇〇%転換している自治体がふえている中、東京都では年間何万頭もの犬猫を殺処分していたころと同じく、炭酸ガスで窒息死させる大型殺処分機をいまだに使い続けています。しかし、東京都の殺処分数は、ここ数年特に激減しており、現在でも一部は麻酔薬注射等による安楽死の方法をとっていると聞きます。動物の肉体的苦痛軽減の観点からも、いたし方なく殺処分になるとしても、せめて最期は苦痛のない安楽死にできないものでしょうか。
 まだ東京都より殺処分数の多い横浜市や神戸市でさえ、既に殺処分機は一切使っていません。都も麻酔薬注射等による安楽死に一〇〇%転換する、殺処分の適正化を強く要望したいと思います。
 最後に、今後の動物愛護管理行政についてお伺いをいたします。
 ここ十年ほどで犬猫に対する人々の捉えはさま変わりをいたしました。番犬や野良犬、野良猫からペットはもう家族、家の中で飼っている方が圧倒的に多いです。また、収容、殺処分から新しい飼い主への譲渡へ。今、日本の動物愛護管理行政は大きな転換期に来ています。
 以前、東京都の動物管理行政は先進的だったようですけれども、ここ数年、この新しい流れの中、東京都よりもおくれていた自治体が幾つも殺処分ゼロを達成したり、さまざまな新しい試みを始めていて、今や都の動物愛護管理行政は残念ながら、幾つかの自治体から追い抜かれている状況といわざるを得ません。
 欧米先進各国に比べ、日本の動物愛護行政は、いろいろな面でおくれているところがある、これは皆さんもご存じのことだと思いますけれども、そのおくれている日本の中で、なお首都東京の動物愛護行政がおくれをとるようなことがあってはなりません。
 東京都が殺処分ゼロを達成したり、さらには、こっちの方が本当の目的だと思いますけれども、捨て犬、捨て猫をゼロにしたり、民間保護団体との新しい形の事業連携などを始めれば、全国へのよい影響ははかり知れません。
 より多くの人が動物愛護や殺処分ゼロに関心を持ち、命を大切にし、人と動物が共生する社会を実現できるよう、今後、東京都は世界一の動物愛護管理行政になるよう、一層施策を充実していくべきと考えますけれども、最後に知事の所見をお伺いいたします。

○舛添知事 動物は飼い主にとりまして、家族の一員として生活に潤いを与えてくれる大切な存在であります。
 人と動物が地域の中で共生していくためには、飼い主がルールやマナーを守るとともに、動物を飼っている人もそうでない人もお互いに理解を深めながら生活することができる環境づくりに取り組んでいくことが必要でございます。
 都としては、人と動物との調和のとれた共生社会の実現を目指し、都民やボランティア、関係団体と連携しながら、国と力を合わせて動物愛護の施策の推進に取り組んでまいりたいと考えております。

○田中(朝)委員 どうもありがとうございます。東京都の動物愛護行政には、本当に多くの保護団体の方たち、それから各ほかの自治体の方が注目をしていますので、ぜひ今後よろしくお願いをいたします。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○鈴木(あ)委員長 田中朝子委員の発言は終わりました。