予算特別委員会速記録第四号

   午後三時二十分開議

○鈴木(あ)委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 小宮あんり委員の発言を許します。

○小宮委員 東日本大震災から四年がたちました。私はその直後の四月に都議会議員になりましたので、三・一一後の東京の震災対策に、この四年間、都議会自民党の一員として取り組んできました。この間、東京都は二度にわたり地域防災計画を修正し、帰宅困難者対策条例の施行や、木造住宅密集地域における不燃化特区の制定など、東京の抱える課題を示し、その対策に力を注いでまいりました。四年という年月が過ぎ、震災に対する意識が変化する、そうした面もいわれておりますが、地域を見れば、あの震災をきっかけにして、多くの町会、自治会の方々が、きょうも傍聴に来てくださっておりますけれども、自分たちのまちの課題に合った防災訓練を実施したり、いざというときには支え合って何とかしようと積極的に活動してくださっています。
 そうした多くの都民の自助、共助の取り組みに加えて、私たち政治や行政が集中しなければならないのは、災害に強いまちをつくるということです。そのために、東京都がこの四年間で取り組んできたまちづくりの進捗状況と、今後の目指す方向性を伺います。
 震災後、東京都が全国に先駆けて取り組んだ事業の一つとして、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化があります。災害が起こったときに、緊急車両が通行したり、さまざまな物資を運ぶ、まさに都民の生命線となる道路を東京都は特定緊急輸送道路に指定しました。この沿道においては、平成二十四年から耐震診断の実施が義務化をされ、対象となる建築物について、所有者の協力を得て診断を進めてきました。
 中でも、都民の住まい方として総世帯数の約四分の一が居住する分譲マンションについては、私もこの間、多くの住民の方から診断や改修にまつわる相談を受けてきました。
 そこでまず、特定緊急輸送道路沿道におけるマンションの耐震診断の取り組み状況について伺います。

○安井都市整備局長 特定緊急輸送道路沿道におけますマンションにつきましては、耐震診断の助成制度などを周知してきた結果、診断の義務を課した約千二百件のうち、一月末現在で既に九五%以上が着手しており、特定沿道建築物全体の着手率を上回ってございます。
 先月、期限を示しまして診断を指示したにもかかわらず実施しない建築物について、耐震化を促すために、第一回目の公表を実施いたしました。公表の事前に改めて電話等により督促した結果、公表予定件数の約三割、十一件は、区分所有者等が診断着手に向けた検討を開始いたしました。
 いまだ診断を行っていないマンション約六十件がございますので、引き続き区市町村や関係団体と連携いたしまして、個別訪問を行うなど一〇〇%の耐震診断着手を目指して取り組んでまいります。

○小宮委員 診断については、ご答弁のように、既に九五%以上が着手をしたということで、かなり進捗していることがわかります。今後は、改修に向けて動き出した所有者に対して助成を延長するなどの後押しが重要であるとともに、マンションの耐震改修では、多くの区分所有者の合意形成を図らなければなりません。また、新築の場合と異なり、既に個々の居住者の生活がその中で営まれている。その中で、引っ越しが必要かどうか、あるいは費用がどの程度かかるかといった居住者の不安を解消していくことが不可欠です。
 診断結果を受けて改修に向けて取り組もうとしても、やはり個人や管理組合だけでは、どのように進めていったらよいか不案内ですから、そこで立ちどまってしまうというケースがあるかと思います。改修のために必要な情報が十分に提供されているともいえません。
 そこで、今後の耐震改修に向けて、マンションの所有者が抱える課題にどのように対応していくのか伺います。

○安井都市整備局長 マンションの耐震改修につきましては、お話のように個々に抱える事情に応じまして、所有者の改修に関する理解を深め、合意形成につなげることが重要でございます。
 このため、毎年開催している現場見学会では、改修を実現した管理組合から、合意までの経緯や工事中の状況などについて、直接話を聞く機会をふやしてまいります。
 また、診断に関与し状況を把握している建築士をアドバイザーとして派遣いたしまして、管理組合と施工者との調整役を担ってもらうことといたします。さらに、建設業団体などと連携いたしまして、例えば免震工法など、居住を続けながらも改修できる工法に豊かな実績を持つ建設業者に、工事内容や費用等の具体的な相談に応じてもらうなど、適切な情報提供を行ってまいります。
 こうした取り組みによりまして、特定沿道建築物のマンションにおける合意形成を支援し、耐震改修に結びつけてまいります。

○小宮委員 一方、さきの震災以降、老朽化したマンションの現状を正面から捉えて、この際、改修ではなく、建てかえをしようという機運も高まっております。その検討に着手したマンション管理組合もあります。しかしながら、緊急輸送道路沿道に限らず、年数のたったマンションほど、建てられた当時以降、都市計画の変更などによって、新たな建てかえが制限される、そういう物件が数多くあります。
 私が委員を務めている住宅政策審議会では、先月、マンション部会からの中間報告がありました。おおむね築四十年以上のマンションの約四割が、現行の容積率制限に不適合という推計が示されています。審議会の場でも申し上げましたが、こうした問題は、個々のマンションでは対応が難しいため、面的なまちづくりの中で対策を進めていく必要があると思います。都の所見を伺います。

○安井都市整備局長 容積率や絶対高さ制限などによりまして、既存不適格となっている老朽マンションにつきましては、市街地の環境に配慮しながら、例えば敷地の共同化等を条件に規制を緩和するなど、まちづくりと連携して建てかえに向けた合意形成を支援していくことが有効でございます。
 このため、耐震性の低いマンションが一定程度集積しており、市街地の安全性や活力などの低下が見られる地域を対象に、こうしたまちづくりの課題にも対応し、都市計画の規制緩和が可能となる都市開発諸制度等を活用いたしまして、マンションの建てかえなどを支援、促進していく新たな制度を検討してまいります。
 来年度は、先行モデル事業を実施いたしまして、その成果を踏まえ、平成二十八年度中の制度創設を目指します。

○小宮委員 地域が抱えるまちづくりの課題に対して、柔軟かつ迅速に対応していくためには、住民に身近な区や市の役割も重要です。
 都は、区市のまちづくりへの取り組みを促すとともに、先行モデル事業を通じて、区市と連携してその地域の課題に合った制度をつくっていただきたいというふうに思います。
 そこで、来年度の先行モデル事業について、どのように進めていくか伺います。

○安井都市整備局長 まちづくりの手法を活用して老朽マンションの建てかえ等を促進していくためには、地元区市が主体となってまちづくりの計画を策定することが重要でございます。このため、先行モデル事業の実施に当たりましては、区市による計画策定についても積極的に支援してまいります。
 具体的には、駅周辺の再開発や緊急輸送道路沿道建築物の耐震化、大規模住宅団地の再生などに積極的に取り組む意欲のある区市に対しまして、老朽マンションの建てかえを含むまちづくり計画の策定等について、財政的支援や技術的助言等を行ってまいります。
 来月より区市からの提案を募集いたしまして、夏までに数地区のモデル事業実施地区を選定し、新たな制度の構築に反映させてまいります。

○小宮委員 緊急輸送道路の安全の確保やマンションの再生というのは、マンションに住んでいる人だけではなく、周辺の多くの都民の命を守ることにもつながります。地域に身近なまちの課題を把握しているのは区市であるとしても、まちづくりの困難な課題の多くは、区市だけで解決できるものではありません。先行モデル事業から新制度の設計に当たって、都の積極的な関与をお願いします。
 さて、緊急輸送道路の安全を確保するためには、建物の耐震化とあわせて電線の地中化による無電柱化の推進が必要です。無電柱化は、災害に強いまちをつくるだけでなく、都市景観の向上や歩行空間の確保など、子供やお年寄り、障害のある人にとっても歩きやすい快適なまちをつくる重要な要素です。
 私はこの四年間、常にこの事業の推進を訴えてまいりました。地域の方々も、震災後は、無電柱化への関心も高く、自分たちの住むまちが、いつ、どこから無電柱化されるのか、無電柱化はどの程度進んだのか、そういったご質問をいただきます。無電柱化には長い時間と費用がかかり、技術的な課題も多い中で、やはり災害対策に寄与するという観点からも、優先順位を示しながら広く都民にその推進をご理解いただく必要があります。
 そうしたことを踏まえて、昨年十二月に都は新たな五カ年計画である東京都無電柱化推進計画を策定しました。
 まずは、都における無電柱化事業のこれまでの整備状況と、災害に強いまちをつくるという視点に立った今後の取り組みについて伺います。

○横溝東京都技監 無電柱化は、都市防災機能の強化や良好な都市景観の創出、安全で快適な歩行空間の確保を図る上で重要でございます。
 都は、平成二十一年度から五カ年の推進計画に基づき、センター・コア・エリア内における計画幅員で完成した都道の無電柱化に重点的に取り組んできた結果、このエリア内で百三キロメートルを整備し、地中化率を八五%に引き上げました。
 今後は、都市防災機能の視点をより重視し、新たな推進計画に基づき、周辺区部や多摩地域の緊急輸送道路、主要駅周辺を中心に事業を展開してまいります。
 特に、災害時の避難や救急活動、物資輸送を担う第一次緊急輸送道路については、その五〇%を今後十年間で無電柱化してまいります。

○小宮委員 第一次緊急輸送道路には、甲州街道といった国道を初め、環七や環八、青梅街道など計八十五路線が指定をされています。整備が進むセンター・コア・エリア、この後は、その外側を取り巻く環状七号線、これは震災時に都心部への一般車両の進入を規制する流入禁止区域の境界となっている重要な路線ですけれども、この無電柱化事業について、杉並区内整備も含めた今後の取り組みを伺います。

○横溝東京都技監 今お話がございましたとおり、震災時に都心への一般車両の進入を規制する流入禁止区域の境界となっておりますことから、第一次緊急輸送道路の中でも、特に環七は重要な路線でございます。
 平成二十六年度末の環状七号線の地中化率は、二七%の見込みでございまして、今後、整備を加速させ、十年間で無電柱化の完了を目指してまいります。
 また、杉並区内の環状七号線については、青梅街道から甲州街道までの区間が未整備となっておりますが、五年以内に順次事業化してまいります。
 このうち、方南町駅付近につきましては、これまでに実施した現況測量や予備設計をもとに、平成二十七年度に電線共同溝の整備路線に指定するとともに、工事着手に向けた詳細設計を実施してまいります。

○小宮委員 今ご指摘にありました方南町駅の周辺というのは、ちょうど現在、杉並区のバリアフリー重点整備地域にも指定をされておりますし、かつ、沿道には東京都の木造住宅密集地域不燃化特区に指定をされた方南一丁目地区というのがございます。無電柱化の舗装復旧工事に合わせた道路の段差の解消や勾配の改善といったバリアフリー化はもちろんですけれども、そうしたさまざまな事業がうまく連携して、災害に強いまち、人に優しいまちをつくっていただきたいというふうに思います。
 また、たびたび申し上げてきましたが、今後は、さらに都道だけではなく、区市町村道においても、東京都が積極的に無電柱化を促進することが重要です。その整備促進に向けた都の取り組みについて伺います。

○横溝東京都技監 都内全域で無電柱化を図っていくためには、区市町村道の事業を促進することが不可欠でございます。このため、これまで区市町村に対する財政支援や技術支援を行ってまいりましたが、平成二十七年度からは、補助の対象に緊急輸送道路など防災に寄与する道路を新たに加え、財政支援を強化いたします。
 また、幅の狭い区市町村道では、地上機器の設置場所の確保が課題となっておりまして、現在新たにモデル地区を設定し、面的な広がりを持つ無電柱化の推進策を検討しております。具体的には、地上機器を公園等の公共空間や民地に設置することや、区道と接道する都道を活用して設置する仕組みについて、計画段階で、地元区と技術的検証を行うとともに、税制の取り扱いなどについて関係局などと検討してまいります。
 今後とも、無電柱化を積極的に推進し、高度防災都市の実現と風格ある都市景観の形成に向け取り組んでまいります。

○小宮委員 今ご答弁にありました、狭い区道に置けない地上機器を、接する都道に設置する仕組みというのは、これまでにない取り組みとして大変評価をしたいと思います。
 防災上の優先順位や技術的な課題、長い時間と費用もかかるなど、無電柱化を一気に推し進めることは簡単なことではありません。だからこそ、民間でもなく区市町村でもなく、東京都こそが国に先駆けたさまざまな先進的取り組みを示していただいて、東京から電柱をなくす、災害に強く、人に優しいまちをつくる、その先頭に立っていただくことをお願いして、次の質問に移ります。
 さて、災害に強いまちをつくると同時に、私たちの命を守るのが水であり、水道の安定給水は東京都に課せられた重要な役割の一つです。東日本大震災では、被災地において広範で大規模な断水が長期間にわたり発生しました。震災以降、浄水場など水道水をつくり出す施設や水を送る管路の耐震化を加速しています。
 一方で、安全でおいしい水の供給も目指し、オゾンや生物活性炭を使った高度浄水処理の導入や、各家庭への直結給水方式の促進によって、世界に誇れる水道をつくってきていただいたと思います。
 安全で、しかもおいしくなった。その次に東京都が目指すところは、そのことを都民に伝え、実感していただくことです。
 昨年の第三回定例会において我が党の村上英子幹事長が、戸別訪問による水質調査の実施や都民からのさまざまな意見を集約する必要があると提案し、水道局長からは、実施に向けて早急に検討に入るとご答弁がありました。
 そこで、今後の具体的な取り組みと実施体制を伺います。

○吉田水道局長 全てのお客様に高品質の水道を実感していただくとともに、意見などをきめ細かく把握し、水道事業に反映していくことは有意義であることから、全戸約七百五十万戸を対象とした訪問調査を平成二十七年度から実施することといたしました。
 具体的には、お客様の立ち会いのもとで水質状況を確認していただき、その結果を専門的な視点から説明するとともに、簡易な漏水調査やPR冊子の配布、意見や要望などを把握するためのアンケート調査を実施いたします。調査に当たりましては、水道や水質などに関するさまざまな知識やノウハウを有し、都内全域で給水装置工事などを実施する事業者との連携を想定するとともに、当局と監理団体が一体となって、全体の調整や進行管理などを行ってまいります。
 今後、さらに関係者と調整を進め、円滑な調査実施に向け、体制を構築してまいります。

○小宮委員 水道局と監理団体だけでは、広く都民の意見を吸い上げることには限界があります。訪問調査については、今ご答弁にもございましたが、事業に精通した民間事業者との連携をぜひ図りながら、その調査内容や体制について、事前に詳しく調整の上臨んでいただきたい旨、要望しておきます。
 さて、災害に備えて、この東京でその多面的機能が見直されているのが、都市の農地であり農業です。これまでも都市の農地は、身近で新鮮な農産物を提供するだけでなく、都市環境の向上や、子供たちにも作物を収穫する喜びを与えるなど、教育的役割も果たしてきました。これに加えて、震災後は、都会に残された貴重な緑地、空地として、災害時の一時避難スペースとなるなど、防災的役割が期待されています。
 地元杉並区では、農地の八割が災害時の防災協力農地として、都と区の支援を得て防災兼用井戸の整備を進めるなど、地域に貢献しています。また、近隣住民が農作業に親しみ、交流できる区民農園も十一カ所整備され、地域コミュニティの形成にも効果を発揮しています。
 区民農園の募集倍率は、近年、二倍程度とニーズもありますが、農家の方が区や市などに農地を貸す場合は、相続税の納税猶予制度が適用されないなど、制度上の理由から、その開設は進んでいません。
 都として、今後都民にとって防災を初めとする多面的機能を有する農地をどのように保全していくのか、所見を伺います。

○山本産業労働局長 都市農地は、農産物の生産だけでなく、防災や環境保全、地域コミュニティの形成など、多面的な機能を有しており、区市等がこうした機能を生かし都市農地の保全を図ることは、効果的な取り組みでございます。
 このため、都は来年度、多面的機能を生かして都市農地の保全を図る都市農地保全支援プロジェクトの実施規模を、四区市から七区市に拡大をいたしまして、区や市が行う防災兼用農業用井戸のほか、地域や環境に配慮した農薬飛散防止施設の整備などに対し支援をしてまいります。
 また、都民が身近な場所で農作業に親しみ、地域住民が交流できる市民農園の開設を促進するため、農業者が自治体等に農地を貸し付けた場合にも相続税納税猶予制度が適用されるよう、都市農業特区の国提案に盛り込んでまいります。

○小宮委員 東京都は、これまでもパイプハウスの整備費補助など、施設の整備などで都市の農業を支援してきました。しかし、担い手の高齢化や相続時の高額な税負担など、都市の農地はこの十年で一千ヘクタール減少しています。
 昨年来、国においては、都市農業基本法の制定に向けた動きが見られ、その制定を見越して、今ご答弁にもありましたが、東京都が都市農業特区の提案、特に農地制度や税制上の優遇措置等について盛り込んだことは、かつてない大変画期的なことであると思います。その期待の声も、都市農業を営む方々から伺っています。
 しかし、多岐にわたる関係法令の改正が必要であり、簡単なこととはいえません。都市の貴重な緑であり、防災上の観点からも、都市の農地は守っていかなければ失われてしまう。そうした決意が、今後、国に対して強く必要であると思います。
 特区提案に向けた知事の決意を伺います。

○舛添知事 都内では、全国で二位の生産量のコマツナを初め、キウイの東京ゴールドなど、多様な農産物が生産されておりまして、新鮮で高品質な食材を提供できることが、東京ならではの魅力であります。
 しかし、こうした魅力を支える都市農業は、担い手の高齢化や高額の相続税の負担等により、生産基盤である農地が急激に減少するなど、大都市特有の課題も抱えております。
 そこで、都市農業振興基本法の制定を見据えつつ、国に農業特区を提案し、農地制度や相続税制度などの具体的な制度改善に取り組み、都市農業のモデルを構築していきたいと思っております。特区では、現行の法規制を緩和して、生産緑地の貸借を促進するなど、農業者の高齢化が進む中でも、新たな担い手を確保し、都市農地の保全と生産性の向上を図ることを狙いとしております。
 具体的な例としまして、高齢化等によりみずから耕作することが困難となった農業者が、今おっしゃったような市民農園を開設する自治体や経営規模の拡大を志向する農業者に対して生産緑地を貸し付けることで、農地を有効に活用することが可能になります。
 今後、都市農業の再生を図るため、特区の実現に向け、区市町村や生産者団体とも連携して、全力を挙げて取り組んでまいります。

○小宮委員 ありがとうございました。
 ともに力を合わせて、ハードルを乗り越えて特区を実現し、都心に残された、農家の方々が代々守られてきた貴重な空間が、今後は広く都民の安心・安全のためにも安定的に活用されることを期待したいと思います。
 さて、さきの震災は、私たちの豊かな生活に不可欠な電力供給のあり方について多くの国民が考えさせられる、そういう契機ともなりました。現在は、電力の約九割を火力発電に頼っている状況にあります。燃料費負担の増加などにより、電気料金は家庭向けで二割、産業向けで三割上昇しています。
 こうした状況が短期間で劇的に改善する見込みはなく、一層の省エネ対策や分散型電源の導入といった対策が必要となってまいりますが、資金力やノウハウが乏しい中小事業者にとっては、これらは大きな負担です。とりわけ、日ごろから都民が身近で頼りにしているベッド数二十床から二百床未満の中小医療機関や特別養護老人ホームといった福祉施設は、空調や給湯などで熱を多く使いますから、エネルギー利用の効率化の余地が大きいわけですが、具体的な対策に踏み込むには行政の支援も必要です。
 都は今年度より、中小医療機関、福祉施設の省エネ、創エネ対策を支援する事業に取り組んできました。これまでの実績と今後の取り組みについて伺います。

○長谷川環境局長 お尋ねの事業は、熱を多用する中小医療福祉施設において、ESCO事業を活用して、初期投資の負担なく、コージェネレーションなどの創エネルギー機器の導入や省エネ設備への改修を図り、エネルギー利用の効率化を促進するものでございます。
 昨年七月の事業開始以降、高齢者施設や病院から十九件の申請があり、その中には、エネルギー使用量の一割以上の削減を見込む事例もございます。また、小規模な施設に対しましては、限られたスペースでも導入効果が見込まれる太陽熱の利用システムの設置への支援も開始しており、グループホームからの申請事例が出てきております。
 こうした制度の内容や削減効果などについて、事業者団体などを通じて幅広く周知を図りながら、中小医療福祉施設の省エネの取り組みを積極的に支援してまいります。

○小宮委員 今後も、地域医療や介護の一翼を担う中小医療機関や福祉施設に対して、エネルギーの効率的かつ安定的な確保のための支援を推進していただきたいと思います。
 さて、今のご答弁にありましたコージェネレーション、電気と熱を同時につくり出すシステムについては、将来のまちの環境性と防災性を高めるすぐれた分散型電源として、積極的に導入を図っていく必要があります。このコージェネレーションを効率よく運転するためには、つくり出された熱を余すことなく利用するということが不可欠で、そのためには、つくり出したエネルギーを一棟、建物一棟だけで使うのではなくて、面的に、まち全体で利用するということが重要です。
 今後、こうしたエネルギーの面的利用を促すために、都として具体的にどう取り組むのか伺います。

○長谷川環境局長 お話のとおり、エネルギーの面的利用は大変重要でございまして、これを促すため、来年度より新たにコージェネレーションによる熱や電気を建物間などで面的に融通するための熱導管や電力線の整備を支援してまいります。
 また、コージェネレーションの設備本体に対する支援につきましても、エネルギーを地域で面的に融通する場合の補助率及び上限額を、来年度から建物単体で利用する場合と比べて優遇することで、エネルギーの面的利用を促進してまいります。
 これらの支援策を、東京都環境公社に五十五億円の基金を設け、平成三十一年度までの五年間、集中的に実施いたしまして、民間の取り組みを積極的に後押しし、低炭素、快適性、防災力を兼ね備えたスマートエネルギー都市の実現につなげてまいります。

○小宮委員 コージェネレーションは、環境に優しいだけでなく、停電してもエネルギーがつくり出せる、災害時の安心にもつながります。今は都心での取り組みが中心のようですけれども、例えば各地にある都営住宅などの建てかえに際しては、いざというとき、その周辺住民の安心にもつながる、そういうシステムにもなり得るものとして、ぜひ普及に向けた取り組みを期待したいと思います。
 ここからは、五年後の東京五輪パラリンピック開催に向けた取り組みについて、何点か伺ってまいります。
 オリンピック・パラリンピックは、競技大会の開催だけでなく、子供たちへの文化教育や障害者スポーツの推進、ボランティアの育成や観光振興など、さまざまなチャンスがあふれています。その貴重な機会に、子供たちと参加したいとか、何らかの形で大会にかかわりたいというお声をよく聞くようになりました。
 その最も具体的で身近な機会が、ボランティアであろうかと思います。ボランティアには、大会の運営サポートや観光、交通案内などを担ういわゆる大会関連ボランティアもありますし、また、若い人からお年寄りまで気軽に参加できる、協力できる、外国人おもてなし語学ボランティアがあります。
 この育成事業は、来年度から本格的に始まるとのことですが、その準備を兼ねて今年度実施したトライアル講座、お試し講座ですけれども、その目的と状況について伺います。

○小林生活文化局長 都は、二〇二〇年大会に向けまして、外国人おもてなし語学ボランティアを三万五千人育成する予定でございます。来年度からの本格実施に向けまして、専用のカリキュラムや教材を開発し、先月、トライアル講座を都内三カ所で実施したところ、定員七十二名に対しまして、約四十倍となる約二千九百人の応募があり、都民の関心の高さがうかがえたところでございます。
 トライアル講座では、外国人とのコミュニケーション手法と簡単な英単語を用いた語学の講座を行い、講師にネーティブスピーカーを招いてロールプレーイングを行うなど、工夫を凝らした内容といたしました。修了した受講生からは、外国人と簡単な英会話ができる語学が習得できた、楽しく学ぶ中で自然とおもてなしの心が身についたなど、おおむね好評な感想をいただいております。

○小宮委員 大変な反響があった上に、多くの受講者の方が満足をしているということですし、トライアル講座とはいえ、外国人おもてなし語学ボランティア育成事業が順調にスタートをしたことは、大変さい先がいいと思います。
 講座の定員七十二名に対して、倍率が四十倍ということで、つまり、希望しながらも受講できなかった方が約二千八百人もいらっしゃるということです。こうした意識の高い方々の思いに応えて、次の育成講座に確実につなげていくことが大切ではないでしょうか。また、受講者あるいは申込者の中には、かなり英語が話せる方もいたと聞いています。
 そこで、このような方々への講座のあり方も考えるべきですし、こうした都民の関心の高さに目を向けて、前倒しで育成を進めていくべきと考えます。見解を伺います。

○小林生活文化局長 今回受講できなかった方の要望に応えて、来年度の本格育成では、個別に受講案内を行い、希望の会場や日程での受講に応えるなど、きめ細かく対応してまいります。また、一定程度の語学力がある受講者に関しましては、コミュニケーションを学ぶおもてなし講座の受講のみでボランティアとして登録できるようにしてまいります。
 これに加えまして、企業や町会、自治会等、さまざまな団体からの提案に応じて、こうした団体に会場と受講者を確保していただき、都が講師派遣や専用教材の提供を行うなど、多くのボランティアの育成、登録につながる仕組みづくりを進めてまいります。
 こうした取り組みによりまして、多くの都民の受け入れを促進することで、長期ビジョンで掲げた来年度の年次目標三千人にとらわれることなく、育成を前倒しで進めてまいります。

○小宮委員 ボランティアの育成には、今回のトライアル講座に手を挙げた都民一人一人への対応を初め、今ご答弁にあったように、町会、自治会、企業といった団体からの期待にも積極的に応えていただきたいと思います。前倒しの育成にもぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 東京五輪大会を支えたい、日本のよさを伝えたい、温かいおもてなしの心で多くの観光客を迎えたい、そうした都民のやる気と善意を、ぜひしっかりと受けとめていただきたいと思います。
 そこで、外国人おもてなし語学ボランティア三万五千人育成の決意とあわせて、ボランティア文化の定着を目指す東京の知事として、どのようにリーダーシップを発揮し進めていくおつもりなのか伺います。

○舛添知事 二〇二〇年大会の開催は、これを契機としまして、都民を挙げたおもてなしを実現できる絶好の機会であります。昨年十月に小金井市で開催しました、知事と語ろうと、こういうイベントでは、私も実は参加しましたけれども、英語による道案内事例の寸劇で、言葉のバリアフリーの実現が小さなきっかけと勇気で十分可能であることを参加者に理解していただきました。
 先ほど局長が話しましたように、今回のトライアル講座に約二千九百人、四十倍の応募がありましたし、最年少が十八歳、最高齢は八十七歳の方が応募してこられました。ですから、多くの都民がおもてなしの心でボランティアをしたいと願っているあかしでありまして、大変心強いと思っております。ぜひ育成目標であります三万五千人を実現したいと考えております。
 また、外国人おもてなし語学ボランティアが活躍する二〇二〇年大会を契機として、この東京を、幅広い世代の都民がボランティアを身近に感じ、福祉、防災や自然環境保護など、多様な分野で活動が盛んなまちとしていきたいと考えております。
 そのため、行政や企業、NPOなどによります協力体制の構築や情報提供、マッチングの強化等に取り組みまして、都の支援のあり方について早急に具体的な方針を示したいと思っております。
 今後、私自身が先頭に立ちまして、ボランティア活動への理解を深めていくことで、二〇二〇年大会のレガシーとして、このボランティア文化を東京にしっかりと根づかせたいと考えております。

○小宮委員 さて、大会開催が決まり、諸外国から日本文化に対する関心が高まっています。そうした中で、日本文化の一つともいえる公衆浴場が外国人観光客の話題になっているそうです。
 都はこれまで、施設整備やクリーンエネルギー化などの支援を充実させてきましたし、公衆浴場は健康づくりや地域住民の交流の場として、その役割も果たしています。今後は、銭湯の文化を守る意味からも、既に利用の多い高齢者に加えて、子供や若者、外国人観光客への情報発信により、利用促進を図っていく必要があります。見解を伺います。

○小林生活文化局長 今日の公衆浴場は、入浴機会の提供だけでなく、デイサービスなど、福祉や観光施策との連携、さらには日本の伝統文化としての海外発信等の役割が期待をされております。
 こうした役割を果たし、公衆浴場が今後とも持続的に発展していくためには、我が国独自の入浴文化や、家風呂にない銭湯ならではの魅力を伝え、外国人や若者など新規利用者を掘り起こしていくことも極めて重要でございます。
 その第一歩として、公衆浴場組合は来月からホームページをリニューアルし、多言語化するとともに、新たに都民から広く銭湯サポーターを募集して、SNS等を活用した銭湯の魅力発信に取り組む予定となっております。
 都は、こうした広報PRに係る経費を助成するなど、公衆浴場組合の取り組みを積極的に支援し、公衆浴場の利用促進を図ってまいります。

○小宮委員 さて、大会開催を契機に、都内産業の活性化にも取り組むべきです。
 二〇一二年のロンドン大会では、さまざまな契約機会が中小企業へも広く行き渡るよう、ロンドン市商工会議所などによる事業者ネットワークとロンドン市が連携し、国や大会組織委員会などの協力も得ながら、中小企業が契約案件にアクセスできるウエブサイトが立ち上げられました。そして、このウエブサイトは今もなお、英国内のインフラ整備事業における受発注などで活用されているそうです。
 こうした取り組みを参考に、東京大会でもその開催効果を中小企業へ波及させるための実効性のある仕組みを構築すべきです。中小企業にとっても、関連する工事や、大会を盛り上げるイベントの開催、グッズの製作など、多くの受注が見込める機会です。
 今後の具体的な取り組みについて伺います。

○山本産業労働局長 都は来年度、中小企業振興公社に二十億円の基金を設置し、二〇二〇年大会に向けた中小企業の取り組みを集中的に支援する中小企業世界発信プロジェクトを開始いたします。
 来年度は、関係者による協議会を早期に設置し、中小企業が工事や物品調達等、大会関連のさまざまな発注情報などを容易に取得できるポータルサイトを構築いたします。国、区市町村、大手企業などにも協力を呼びかけ、このサイトに多岐にわたるビジネス諸情報を集約し、受注機会の獲得を後押ししてまいります。
 さらに、協議会では、中小企業の創意あふれる製品、サービスを発掘するコンペティションの開催や、国内外の展示会を活用したPR活動、大会開催を機に新たに取り組む製品開発への支援など、さまざまな取り組みを企画し、大会に向けて順次実施をしてまいります。

○小宮委員 このように、東京五輪パラリンピック開催に向けて、ボランティアの育成や文化の発信、産業の活性化など、さまざまな可能性が広がります。そして、忘れてはならないのが、パラリンピックに向けて、障害者との共存、共生の理念がどれだけ多くの都民、国民に広がるかということです。
 我が国は、諸外国に比べて、障害者スポーツに対する意識が必ずしも高いとはいえません。既に本定例会における我が党の質問に対して、オリンピック・パラリンピック準備局からは、障害者スポーツ振興のために、ハード面での施設改修支援やイベント支援といったソフトの取り組みも示されたところで、今後、区市町村において大いに活用していただくことを期待しますが、やはり障害者スポーツをやるための施設が都民の身近にあるということ、各区市町村ごとの拠点の確保というものは重要です。
 しかし、これからの時代、新たに専用の施設をつくることはなかなか難しい。そこで、今地域にある資源を有効に活用するという観点から、ぜひ、その一つとして、一般的な体育館と比べて障害者に対応した設備が充実している都立特別支援学校を、地域と障害者をつなぐ開かれた施設として、その開放や公開講座の取り組みを充実させていくべきと考えます。
 教育長の見解を伺います。

○比留間教育長 特別支援学校では、障害者団体への優先的な使用など、障害者に配慮した体育館やグラウンド等の体育施設の開放事業や、障害者本人を対象とするスポーツ関連の公開講座などを実施しております。
 今後、都教育委員会は、体育施設の利用を促進するため、施設情報を検索するホームページを改善するとともに、関係局とも連携し、障害者団体の意向と開放可能な施設とのマッチングを新たに行ってまいります。また、特別支援学校では、障害のある人とない人とがスポーツ体験を共有できる公開講座等を充実し、障害者スポーツへの理解を深めるとともに、活動を支えるボランティアを育成してまいります。
 こうした取り組みを通じて競技人口の増加を図り、地域への普及啓発を進めることにより、障害者スポーツの振興に努めてまいります。

○鈴木(あ)委員長 小宮あんり委員の発言は終わりました。(拍手)