予算特別委員会速記録第三号

○鈴木(隆)副委員長 堀宏道委員の発言を許します。
   〔鈴木(隆)副委員長退席、委員長着席〕

○堀委員 私は初めに、道路管理の新たな展開についてお伺いをいたします。
 東京が、都市としての魅力を一層高めていくためには、地域の特性を生かしつつ、道路空間も含めたまちの魅力向上を考えていく必要があります。
 一方、国の規制緩和により、道路空間を生かした多様な試みが可能となったことで、地域による活気とにぎわいのあるまちづくりを進めることができる環境が整いました。
 私の地元、豊島区におきましても、池袋駅東口駅前のグリーン大通りの歩道にオープンカフェの設置を試みております。新庁舎への動線としてさらに進めていくとのことです。
 先日、ワールドビジネスサテライトにも取り上げられまして、注目を集めました。にぎわいの創出と憩いの場の提供という意味で非常に有効だと思います。
 こうした中、都は昨年、第四回定例会における知事の所信表明や東京都長期ビジョンにおきまして、道路管理の一部を地域団体が担い、まちの魅力向上を図る、新たな道路管理の仕組みをつくることを明らかにいたしております。
 しかし、地域によるまちづくりについては、既にエリアマネジメントとして、地域の住民などにより、まちの魅力や価値を高める取り組みが行われていると認識しております。
 そこで、まず、従来のエリアマネジメントとは異なる新たな仕組みとして、都はどのような道路管理の仕組みをつくろうとしているのか、お伺いをいたします。

○横溝東京都技監 従来のエリアマネジメントは、土地区画整理事業や市街地再開発事業が実施された区域において、自治会等の地域団体が主体となり、主に美化清掃や防火、防犯パトロールなどを展開する取り組みでございます。
 これに対し、新たな仕組みとしてのパブリックエリアマネジメントは、道路空間における地域の創意工夫を生かした管理を通じ、まちの魅力向上を図るものでございます。
 具体的には、国家戦略特別区域法等による、道路占用の特例が適用される都道において、法人格を持たせた上で、地域団体が主体となり、イベントや広告等の収益事業を展開し、その収益の一部を歩道の補修や街路樹の剪定など維持管理に還元させることで、道路管理にかかわる都民負担の軽減を図りつつ、魅力あるまちの創出を図るものでございます。

○堀委員 まちづくりの機運が高く、国家戦略特区の指定を受ける地域におきましては、今後、新しい道路管理の仕組みであるパブリックエリアマネジメントを進めていくとの答弁でございましたけれども、では、パブリックエリアマネジメントについて、平成二十七年度はどのような取り組みを行うのかについてお伺いをさせていただきます。

○横溝東京都技監 現在、国家戦略特別区域法による道路占用の特例の活用が予定されている丸の内地区において、現在、都、千代田区及び地域団体で構成する勉強会を立ち上げてございまして、パブリックエリアマネジメントの実施に向け、地域団体による維持管理の範囲やイベント等の収益事業など、具体的な内容について協議を進めております。
 こうした協議を踏まえ、当面、行幸通りを対象として平成二十七年度にパブリックエリアマネジメントの社会実験を開始する予定でございます。
 この実験を通して、地域団体の運営体制や収支計画、収益の還元方法等の仕組みについて具体的に検証を行った上で、他の地域への展開も視野に入れ、本格的な運用を目指してまいります。

○堀委員 次に、中小規模事業所の省エネルギー対策についてお伺いをいたします。
 私の地元、豊島区には、区内に一万八千に上る事業所があり、高密狭隘な事務所なども数多くございます。
 都内の経済活動を支える数多くの中小規模事業所は、業務、産業部門から排出されるCO2の約六割を排出しておりますが、こうした中小規模事業所が気候変動対策に取り組んでいくことは重要でございます。
 都は、こうした中小規模事業所の取り組みに対しては、これまでも無料省エネ診断や業界と連携した研修会などでエネルギー削減を支援しております。
 我が豊島区には教育施設が数多くございますが、こうした施設を対象に無料省エネ診断が行われており、また、先月には区と連携した省エネ研修会を開催したとも聞いております。また、事業者の自主的な省エネ努力を引き出す方策として、地球温暖化対策報告書制度を平成二十二年度より始めております。
 先般、この報告書による平成二十五年度の排出量実績の集計結果が発表されましたが、中小規模事業所の省エネルギー対策の成果などについて、都の認識をお伺いいたします。

○長谷川環境局長 お尋ねの地球温暖化対策報告書制度は、中小規模事業所のCO2排出量と地球温暖化対策の状況を都に報告いただくものでございまして、報告書の作成を通じて、中小規模事業者がみずから地球温暖化対策を継続して実施するよう促すことを目的としております。
 今回、四年連続して報告書を提出された約二万五千の事業所の集計結果では、平成二十五年度のCO2排出量は、震災前の平成二十二年度と比較して約一一%減少しており、同程度の削減が平成二十三年度から三年間継続しております。
 また、別途行ったアンケートの結果でも、九八%の事業者が、今後も省エネ対策を徹底していくと回答されております。
 こうしたことから、本制度を初めとする中小事業者への支援によりまして、事業者の省エネ意識は着実に定着し、取り組みが継続しているものと認識しております。

○堀委員 答弁のように、省エネが継続しているということでございますけれども、この制度の一層の普及に向けて、業界団体などとの連携を強めるなど、引き続き取り組むよう要望いたしておきます。
 次に、低炭素ビルの普及策についてお伺いをいたします。
 中小規模事業所の省エネ対策を進めていく上では、テナントビル入居者に評価されることが重要でございます。
 都は、我が党の意見を踏まえ、中小テナントビルのオーナーがビルの省エネルギー性能を自己評価し、入居希望者などに示すことで、省エネ性能にすぐれたテナントビルの選択に役立てるための制度として、カーボンレポートを昨年六月に始めたと聞いております。
 このカーボンレポートは、低炭素ビルの普及に効果をもたらす制度と理解をいたしておりますが、不動産取引の場などで確実に使われることが必要であると思います。
 そこで、環境性能にすぐれたテナントビルの普及拡大に重要なカーボンレポートの今後の展開について、都の見解をお伺いいたします。

○長谷川環境局長 お尋ねのカーボンレポートにつきましては、制度開始以降、各種説明会での周知、不動産仲介事業者などへの協力のご依頼、業界紙への掲載などによりまして積極的なPRを行ってまいりましたが、中小テナントビルの省エネを着実に進めていくためには、この制度のメリットが事業者に浸透するよう、さらに取り組みを進めていく必要があると認識しております。
 そこで、省エネ性能にすぐれた中小テナントビルの市場での評価を向上させる方策などについて、ビルオーナーや不動産仲介事業者など関係する団体や有識者と議論をする、中小テナントビル低炭素パートナーシップを来年度早々に立ち上げてまいります。
 今後、このパートナーシップでの議論を踏まえ、カーボンレポートのさらなる普及と積極的な活用を図り、中小テナントビルの低炭素化を促進してまいります。

○堀委員 カーボンレポートの利用拡大に向けて、新たに低炭素パートナーシップの取り組みを準備していることがわかりました。有識者などの意見や助言に基づいて、しっかりと取り組んでいくように要望いたします。
 ただいまの答弁で、カーボンレポートの普及によってビルの省エネ性能向上に取り組むことが重要であると理解をいたしましたけれども、都内の中小規模事業所では、取り扱うデータの増加からICTに関連する消費エネルギーも膨大なものになってきており、積極的な取り組みが必要でございます。
 第四回定例会における我が党の提案に応えて、来年度予算には、中小規模事業所のICTに関連をする省エネルギーを支援する仕組みとして、クラウド利用による省エネルギー対策が盛り込まれております。
 そこで、セキュリティーの面からも経費の面からも意義があるこの事業を、今後どのように取り組んでいくのかお伺いをいたします。

○長谷川環境局長 ICTの進展により増大するエネルギー消費を削減するためには、事業者が保有するデータサーバーを、インターネットを利用した省エネ性能の高いデータセンターに移行、集約することが有効でございます。
 しかしながら、こうしたクラウドサービスを利用するためには、単にデータサーバーの移しかえだけでなく、システムの再構築などを伴い、新たな費用を要することから、移行が進みにくい状況にございます。
 そこで都は、業界団体と連携して省エネ性能の高いデータセンターの評価、認定を行い、その上で中小規模事業所のデータサーバーの移行に係る費用の一部を支援してまいります。
 これにより、より省エネ性能にすぐれた環境配慮型データセンターへの移行とその普及を促し、中小規模事業所の省エネを推進してまいります。

○堀委員 中小規模事業所の省エネ対策支援について、データサーバーの移設を検討している事業所にとってよりよいものとなるように、事業の早期実施を要望いたします。
 次に、水道局のエネルギー対策についてお伺いをいたします。
 我が党は、世界一の環境都市の実現のため、再生可能エネルギーの導入を積極的に図ることなどを提言してまいりました。
 昨年十二月に策定されました都の長期ビジョンでは、都の率先行動として、都有施設の太陽光発電を二〇二〇年までに現在の一万キロワットから倍以上の二万二千キロワットまで拡大することとしております。
 これまで水道局では、二〇〇五年に朝霞浄水場にメガワット級となる太陽光発電設備を導入するなど積極的に取り組んでいることは評価をいたしております。
 しかしながら、水道局の宿命として、安全でおいしい水を安定的に供給するために、大量の電力を使用せざるを得ない状況にあります。
 一方で、社会全体として再生可能エネルギーに転換をしていくことが求められる中、さらに工夫を凝らして太陽光発電を積極的に導入すべきと考えますが、今後、どのように取り組まれるのかについてお伺いをいたします。

○吉田水道局長 水道局では、これまで、都内総電力使用量の約一%を使用する大量消費者として、再生可能エネルギーの拡充など、エネルギーの効率化に努めてまいりました。
 さらなる太陽光発電の導入に当たりましては、設置スペースや費用対効果などさまざまな条件を総点検し、導入余地を洗い出したところであり、今後、実施年度などを示したロードマップを早急に策定いたします。
 このロードマップに基づき、太陽光発電の導入を着実に進め、五年後までに累計八千キロワットに拡充してまいります。

○堀委員 八千キロワットは、長期ビジョンで掲げられる都有施設導入目標の二万二千キロワットに対し、約四割に相当します。
 今後とも着実に導入するようお願いをいたします。
 次に、常用発電とその排熱を活用するコージェネレーションシステム、いわゆるコージェネについてお伺いをいたします。
 このコージェネは、震災時に六本木ヒルズでみずからの電力を確保したことにより注目をされましたが、私が視察した金町浄水場では、六本木ヒルズ以前に導入されておりました。
 こうしたコージェネの導入を含め、さらにエネルギー効率化を進めていくべきと考えますが、今後の取り組みについてお伺いをいたします。

○吉田水道局長 お話のコージェネレーションシステムにつきましては、これまで、金町浄水場など、四カ所の浄水場に常用の自家用発電設備として導入してまいりました。
 このコージェネの導入を初め、エネルギー効率の高い水道システムに転換していくことを目指し、都の長期ビジョンを踏まえ、本年二月に東京水道エネルギー効率化十年プランを改定いたしました。
 今後、さらに三郷浄水場にコージェネを導入していくことにより、大規模浄水場全てに導入を完了させ、二〇二四年には、累計五万四千キロワットとする予定であります。
 こうした取り組みを含め、エネルギー効率化十年プランを着実に実施していくため、進捗管理の新たな仕組みを構築するなど、エネルギー対策に万全を期してまいります。

○堀委員 長期ビジョンでは、コージェネを二〇二四年までに都内全域で六十万キロワットを導入することを目標としております。
 ただいま答弁のあった水道局の導入規模五万四千キロワットは、およそ一割であり、非常に大きな数字でございます。
 こうした取り組みを含め、十年プランの進捗管理をしっかりと行い、エネルギー対策に取り組んでもらいたいと思います。
 次に、海浜公園における海水浴促進の取り組みについてお伺いをいたします。
 昨年十二月に公表された長期ビジョンでは、海浜公園において海水浴ができる環境を提供すべく、平成二十七年度、葛西海浜公園において海水浴体験の社会実験を実施するとされております。
 都心に近い海で泳げる機会があるということは、都民に海と触れ合える貴重な機会を提供する有意義なことだと思っております。
 加えて、世界有数の大都会の目と鼻の先で泳ぐことができるということは、東京の環境のすばらしさを内外に強くアピールする素材としても有効であり、二〇二〇年大会を控え、東京の魅力はより一層増すのではないでしょうか。
 平成二十五年度に実施された都政モニターアンケートでも約四割の人が海浜公園で泳ぎたいといっておりますが、一方で、東京港の水質については、泳ぐにはまだまだ課題が多いともいわれており、不安を感じる都民にはきちんと応えていく必要があります。
 そこで、海浜公園における海水浴について質問をいたします。
 まず、海浜公園における海水浴利用に関する現状認識についてお伺いをいたします。

○多羅尾港湾局長 葛西海浜公園などの海浜公園は、直接海と触れ合えることが特徴であり、さまざまなレクリエーション利用の一つとして海水浴利用も想定しております。
 しかし、その水質は、環境省の基準に満たないときもあり、また場所によっては水深や危険な生き物の生息などの問題も見られることから、現時点では、いつでも自由に海水浴を楽しむ状況には至っておりません。
 このため、地元区やNPO等が実施する海水浴イベントでは、参加者の健康管理や指導監視の体制が行き届くなど、安全性が十分に確保されていることから、こうした場合に限り海水浴利用を認めてまいりました。
 一方で、地元を中心に海水浴利用の機会拡大を望む声も多く寄せられており、こうしたニーズに応えていく必要があると認識しております。
〔「何がいるの」と呼び、その他発言する者あり〕

○堀委員 ちょっと答弁が心もとなかったですけれども、海浜公園において、大きな都民のニーズに応えて、限定的とはいえ、海水浴が可能になったのかなというふうに思いますけれども、これは一歩前進かなと思います。
 東京の歴史を振り返ってみますと、江戸時代に水の都とも呼ばれた江戸東京の水辺は、戦後、経済成長と引きかえに汚れた水が流れ込み、隅田川が死の川とも呼ばれ、昭和三十年代ごろには海水浴場が姿を消すなど、劣悪な状況にございました。
 このような中で都は、下水道の普及を積極的に進め、さらに、高度処理の導入などの取り組みを精力的に進めてまいりました。
 海水浴イベントが可能となったのは、下水道事業の水質改善の取り組みによるところが大きいと思います。
 そこで、改めて、下水道局における水質改善の取り組みについてお伺いをいたします。

○松田下水道局長 下水道局では、昭和三十年代の高度成長期から下水道の普及を本格化いたしまして、平成六年度に一〇〇%普及概成を達成いたしました。
 これにより、海や川へ直接放流されていた生活排水や工場排水は下水道で処理されることになり、公共用水域の水質改善に大きく寄与してまいりました。
 さらなる良好な水環境を創出するため、赤潮の発生要因であります窒素とリンを大幅に削減する高度処理の導入を水再生センターで順次進めております。
 また、合流式下水道の改善対策についてでございますが、雨天時により多くの下水を送水するための遮集管などの整備はおおむね完了しておりまして、現在は、降雨初期の特に汚れた下水の貯留施設や、雨天時に汚濁物を二倍程度多く除去できる高速ろ過施設などの整備を進めているところでございます。
 今後も、さらなる技術開発に取り組みまして、実効性ある対策を着実に進め、東京湾の水質改善に一層貢献してまいります。

○堀委員 今のご答弁から、下水道局が下水道の普及だけでなく、幅広い視点から着実に水質改善に取り組んでいることを改めて確認をさせていただきました。
 この取り組みの結果、東京の水辺環境は大きく改善されてまいりましたが、今後とも、江戸以来の遺産であった水の都の再生に向けて、さらに対策を進めてもらいたいと思います。
 さて、海水浴は限定的なものにならざるを得ないという状況においては、安全性の担保された海水浴イベントを拡充していくことでニーズに応えていくことが有効であり、そのためには地元区やNPO等によるイベントの継続性の確保に向けて、都による必要な環境整備などが今後必要だと思われます。
 都民の海水浴ニーズに応えられるよう、都としてどのように取り組むのか見解をお伺いいたします。

○多羅尾港湾局長 ご指摘のとおり、地元区やNPOによる海水浴イベントの継続性の確保を可能とする支援が重要でございます。
 具体的には、天候による変動の大きい水質について、過去のデータを分析し、水質予測を行い、その情報を利用者にわかりやすく提供できる仕組みを新たに構築してまいります。
 あわせて、地元区やNPOによるイベントに際しては、利用者ニーズを把握するための実態調査を行い、その結果を踏まえ、安全、快適に楽しんでいただくために必要な施設の整備等を実施していきます。
 これらにより、今後継続的な海水浴イベントの実現を図り、都民が海と触れ合える機会を拡充してまいります。
 なお、危険な生物とは、アカエイなど、人をかむ魚がおるということでございます。

○堀委員 訪れた人々が海と触れ合えるような機会が継続的に提供され、海浜公園をよりすばらしい観光資源とするためにも、ぜひ地元区やNPO等民間団体と連携しながら、都としても安全対策など環境整備を確実に実施してもらいたいと思います。
 そうすることで、意欲的な民間団体が継続して活動し、夏の間、いつ訪れてでも海水浴ができるような、より豊かな公園利用が期待できると思います。
 先日、現地の視察をしてまいりましたが、夏の間だけでも、更衣テントの設置などが使用者のためには必要ではないかと感じました。
 また、今、局長からお話があったアカエイという魚に触れますと、ひどく腫れるということも聞いておりますので、そういった侵入のネットなんかも東京都が支援してもよいのではないかと思います。
 観光資源としての海浜公園の魅力を高めて、都民のさまざまな要望にも応えられる取り組みを今後も期待して、次の質問に移ります。
 次に、中小企業振興についてお伺いいたします。
 ものづくり中小企業が持続的に成長していくためには、自社の技術だけにとらわれるのではなく、他の企業や大学等が持つ技術やアイデアを積極的に活用し、イノベーションを推進していく必要がございます。
 東京には、グローバルで活動する大企業や最先端分野の研究機関等に加え、デザイナーを初めとするクリエーティブな人材も集積しております。
 そこで、まず初めに、こうした東京の強みを生かした、ものづくり中小企業の製品開発の支援についてお伺いをいたします。
 我が国には約百四十万件の特許がありますが、大企業等では技術防衛を目的に取得することも多く、半数の七十万件が有効に活用されていない状況にございます。
 一方で、大手の電機メーカーでは自社で使わない特許を開放し、それを利用する企業からライセンス料を得る等の事例も出始めております。
 さらに最近では、自動車メーカーが燃料電池車を普及させるため、自社の特許を一部無償化するなど、戦略的に活用される動きも見られます。
 私はこの機を逸することなく、大企業等の知的財産を活用した中小企業の製品開発の取り組みを活発化させていくべきだと考えます。
 しかしながら、すぐれた技術を有していても、中小企業にとっては、知的財産に詳しい人材を確保することは難しく、大企業等がどのような特許を保有しているのかを調査したり、権利を利用する契約を結んだりすることは困難だと思います。
 中小企業の製品開発を加速させるためにも、大企業等が保有する特許を活用した新たな仕組みづくりが必要と考えますが、知事の所見をお伺いいたします。

○舛添知事 東京には、高い技術力や開発力を有する中小企業が数多く存在しておりまして、日々新しい技術や製品の創造に挑んでおります。
 こうした中小企業が、自社の力だけでなく、さまざまな企業が保有する特許などを活用することにより、多くの革新的な製品を生み出すことは、今、堀委員ご指摘のように、東京の産業競争力を高める上で極めて重要だと考えます。
 そのため都は、来年度から、専門家を活用しまして、大手企業や研究機関の未利用特許等を掘り起こし、意欲のある中小企業に橋渡しをしていくことで、眠れる知的財産を生かした、付加価値の高い製品開発を促進してまいります。
 中小企業によるイノベーションで新たな価値を創出し、東京のものづくり産業をさらに発展させていきたいと考えております。

○堀委員 知事からも前向きなご答弁を頂戴しました。
 大企業等が保有する特許を活用することにより、中小企業では、これまでにない製品開発につながり、研究開発にかかる時間と経費を大幅に削減する効果もございます。
 大企業等にとっても、ライセンスの収入だけではなくて、社会貢献による企業イメージの向上など、さまざまな効果が期待できます。
 大企業等と中小企業がお互いにメリットのあるこうした取り組みを都として着実に進めていただきたいと思います。
 大企業等が所有する知的財産の活用と同様に、これからのものづくりにはデザインが欠かせないと私は思っております。
 経済性や効率性だけでなく感性が重視される今日において、デザインは、単なる商品の形や色だけではなく、製品の価値そのものを大きく左右する本質的な要素として、ものづくりには欠かすことのできないものとなっております。
 中小企業も製品開発に当たっては、デザインに深く配慮していくべきと考えます。
 ある中小企業では、乾くと簡単に剥がせる塗料を、デザイナーのアイデアで、ガラスや金属などの表面に自由に描くことができる塗料に改良し、おしゃれなペンの形をしたカラフルな絵の具として製品化し、一年半で一万本以上販売するなど大きな成功をおさめております。
 都としても、こうした成功事例をより多く輩出していくため、デザイン活用に関心の高い中小企業とデザイナーとの出会い、マッチングの機会をより多くつくっていくべきと考えますが、来年度の都の取り組みについてお伺いをいたします。

○山本産業労働局長 都は来年度より、中小企業振興公社におきまして、デザイナーを活用して付加価値の高いものづくりに取り組む中小企業への支援を開始いたします。
 まず、ものづくり企業と連携を希望するデザイナーの経歴や実績等の情報を集めたデータベースを新たに構築いたしまして、中小企業が自社の製品開発に適したデザイナーをネット上で容易に検索できるようにしてまいります。
 また、デザイナーと中小企業との交流会、デザイナーによる工場見学会や展示会ツアー等を実施いたしまして、両者の出会いの場づくりを積極的に進めてまいります。
 さらに、こうした取り組みを具体的な製品開発につなげるための商談会を開催するなど、中小企業とデザイナーの交流と連携を強力に支援してまいります。

○堀委員 強力に支援をしていただけるということでご答弁を頂戴しました。
 中小企業のものづくり競争力を高めていくためには、デザインを積極的に活用し、他社にないオリジナリティーある製品を創出していくことが大切だと思います。
 都としても、こうした事業を通して、中小企業とデザイナーとの連携による製品開発をしっかりと後押しするようにお願いをいたします。
 次に、観光振興についてお伺いをいたします。
 昨年、日本を訪れた旅行者は過去最高を記録しました。年が明けてもその勢いは続いております。まち中では、外国人の方々が観光や飲食、ショッピングを楽しむ光景を目にすることが多くなりました。
 二〇二〇年には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控えております。今後一層、多くの旅行者が東京を訪れることが期待されます。
 観光には、異国の伝統や歴史、人との触れ合いの中で、その地に根づく文化や習慣を知り、理解を深めるというだいご味がございます。東京には、多種多彩な美術館、博物館があり、日本の伝統や文化を物語る展示物を鑑賞するため、多くの旅行者が訪れております。
 しかし、興味や関心を持って訪れた旅行者の中には、外国語による案内表示や展示品の解説の不足などに不便を感じる人が少なくないと聞きます。多言語対応が進むことによって、旅行者は日本の伝統文化に深く触れ、展示物の魅力をより一層味わうことができるなど、旅の満足度が高まるのではないでしょうか。
 二〇二〇年に向けて、都は、こうした民間の美術館、博物館における受け入れ環境の整備を後押しすべきと考えますが、今後の具体的な取り組みについてお伺いをいたします。

○山本産業労働局長 美術館、博物館は、多くの外国人旅行者が訪れる観光スポットでございまして、旅行者が日本の文化や歴史に対する理解を深める上で多言語表記の充実が必要でございます。
 このため都は、美術館、博物館などが参考にできる表示、標識等のガイドラインを新たに作成し、外国人旅行者が展示物の価値をより深く理解できるように、ICTツールなど多様な媒体を活用した多言語対応の取り組みを促しております。
 二〇二〇年に向け、各施設での取り組みを後押しするため、民間の美術館、博物館に対しまして、展示物の説明サインの多言語化や音声ガイドの導入、無料Wi-Fiの設置などに係る経費の二分の一につきまして、来年度から五年間の合計で一千万円を上限とする補助制度を創設し、外国人旅行者の受け入れ環境を整えてまいります。

○堀委員 少し視点が変わりますが、旅行者にとって、日本の食文化に触れることも旅行の目的の一つとなっております。四季折々の食材を伝統的な器に美しく盛りつけ、目でも楽しむことができる日本の食を、ぜひ体験してもらいたいものでございます。
 都は先日、飲食店のメニューを多言語で作成できるウエブサイト、EAT東京を開設しました。多言語のメニューを普及させ、これを提供する飲食店をふやしていくことは、外国人旅行者が日本の多様な食を楽しむ機会を広げ、東京観光をより充実させるものと考えます。
 多言語メニューを提供する飲食店を拡大していくための具体的な取り組みについてお伺いをいたします。

○山本産業労働局長 多言語メニューを提供する飲食店の拡大に向けまして、本年一月、今お話しのウエブサイト、EAT東京を開設して以降、実際にこれを使用してメニュー作成を行う研修を十回開催いたしました。
 加えて、専用のヘルプデスクを設置いたしまして、メニューの具体的な作成方法等に関する問い合わせに対応するなど、飲食店の取り組みを支援しております。
 今後は、このヘルプデスクでの問い合わせ内容や研修後のアンケートで得られました意見や要望を踏まえ、EAT東京の一層の使い勝手向上に努めてまいります。
 また、研修内容の充実を図るなど、引き続き、飲食店に対するきめ細かなサポートを提供することで、多言語メニューのさらなる普及を進め、外国人旅行者が東京の食の魅力を堪能できる環境を整備してまいります。

○堀委員 EAT東京は、日本のさまざまな食文化を旅行者に堪能してもらうために、非常に重要なツールだと認識しております。
 私も、地元豊島区の飲食業の方々に紹介したところ、大変に好評であり、ぜひ取り組みたいとのことでありました。さらなる普及に向けた取り組みをお願いしておきます。
 外国人旅行者が都内で観光するさまざまな場面において、多言語対応を初めとするおもてなしの環境をしっかりと整えていただきたいと思います。
 こうした取り組みに加えて、旅行者を東京に呼び込むための誘致活動も重要ではないかと考えております。
 都はこれまで、欧米豪地域とアジア地域を中心に現地での旅行者誘致に取り組んできましたが、近年は、ビザの緩和措置などを受け、経済成長著しい新興国の旅行者の増加が顕著となっております。
 二〇二〇年大会を追い風として、さらに多くの旅行者を獲得するためには、こうした動向を的確に捉え、現地での誘致活動を積極的に実施すべきであると考えますが、今後の具体的な取り組みについてお伺いをいたします。

○山本産業労働局長 都は、海外、現地での誘致活動を、欧米豪地域などに加えまして、経済成長が著しく今後旅行者の大幅な増加が見込まれる国にも対象を拡大しております。
 平成二十五年度からは、ベトナムとインドネシアを加えまして、現在、十七の国と地域で誘致活動を行っております。
 来年度は、新たにフィリピンを対象国といたしまして、現地の旅行事業者に向けた商談会やセミナー等を開催するなど、東京への旅行商品の造成を促進し旅行者の増加を図ってまいります。
 二〇二〇年に向けまして、世界の旅行市場の動向を見据え、さらに対象国の拡大を図るなど、旅行者誘致を積極的に展開してまいります。

○堀委員 新たに取り組む市場を含め、きめ細かなプロモーションを積極的に展開して、さらなる旅行者を東京に呼び込んでもらいたいと思います。
 実際に東京を訪れた旅行者が、日本の伝統や文化、習慣にじかに触れ、理解と共感を得ることで、東京の魅力が世界中に広く伝われば、国際社会における東京のプレゼンスを高めることにつながります。
 二〇二〇年に向けて観光振興に積極的に取り組み、東京のさらなる発展につなげていくことを切に要望しておきます。
 最後に、交通施策についてお伺いをいたします。
 公共交通機関には、高齢者や障害者はもとより、東京五輪開催も見据え、国内外から訪れる全ての人が、安全に安心して移動できる環境整備が求められております。
 とりわけ、鉄道を利用する上で欠かすことができない駅のホーム上の安全対策として、ホームドア整備は最も有効な手段であり、私の地元豊島区を走る三田線は、早くからホームドアが設置され、転落事故の心配もなく、安心して利用できます。
 我が党は、これまでもホームドアの整備促進に向け積極的に取り組んでまいりました。
 昨年五月に交通局が発表した新宿線のホームドア整備も、我が党の質問を契機に実現したものであり、東京五輪開催までには、その整備が完了するよう、着実に取り組んでいただきたいと考えております。
 一方、残る浅草線は、多くの路線と相互直通運転を行っており、全駅に整備するにはさまざまな課題があると聞いておりますが、東京五輪の開催も控え、東京を世界で一番の都市にするためにも、誰もが安全で安心して利用できる地下鉄の実現に向け、ホームドアの整備を一歩でも先に進めるべきと考えます。
 そこで、浅草線へのホームドアに関して、具体的な整備の考え方についてお伺いをさせていただきます。

○新田交通局長 浅草線へのホームドア整備につきましては、乗り入れ各社の車両数が多く、従来方式による導入には多くの課題がありますため、引き続きさまざまな検討をしていく必要がございます。
 しかし、その一方におきまして、浅草線は、重要な空港アクセス路線であり、二〇二〇年大会期間中に多くのお客様の利用が見込まれますことから、より安全性を高めていくことが求められております。
 そこで、一日の利用者数が十万人以上の浅草線の当局管理の乗りかえ駅につきまして、従来方式と異なる、車両の改修を伴わない方式によりまして、ホームドアを先行整備していくことといたしました。
 具体的には、国立競技場駅のある大江戸線との乗りかえ駅である大門駅と、近隣にJR新駅が予定されております泉岳寺駅の二駅につきましては、二〇二〇年大会までにホームドアを設置してまいります。
 今後とも、世界一の都市東京の実現に向けまして、相互直通各社と精力的に協議を進め、ホームドア整備を牽引してまいります。

○鈴木(あ)委員長 堀宏道委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね三十分休憩いたします。
   午後六時十一分休憩