予算特別委員会速記録第三号

○鈴木(あ)委員長 橘正剛委員の発言を許します。
   〔委員長退席、小磯副委員長着席〕

○橘委員 初めに、二〇二〇年東京五輪大会のパラリンピックの成功に向けた取り組みについて質問いたします。
 二〇一二年のロンドン・パラリンピック大会は、多くの競技で観客席がいっぱいになるなど、これまでにない盛り上がりを見せました。
 今定例会における舛添知事の施政方針表明におきましては、ロンドン大会を超えるすばらしい二〇二〇年東京パラリンピック大会にするため、全力を挙げて取り組んでいくとの決意が示されました。
 また、大会組織委員会が発表した開催基本計画では、二〇二〇年の大会ビジョンの一つ、多様性と調和を実現する上にあっては、パラリンピック大会の成功が極めて重要な要素であるとしております。
 このように、互いに認め合う社会の構築に向け、パラリンピック大会は極めて重要な意義を持つものと考えます。
 しかし、現実には、パラリンピックではどのような競技が行われているのか、競技のルールを知らないという人も多いというのが実情ではないかと思います。また、競技以外でも、パラリンピックに関連する芸術文化プログラム、観戦や観光で国内外から訪れる障害者等への配慮など、史上最高のパラリンピックにしていくには課題も多いのが現状だと思います。
 そこで、教育、芸術文化、観光分野の取り組みについて、事例を踏まえながら提案をさせていただきたいと思います。
 まず、教育分野についてであります。
 パラリンピック・ロンドン大会の教育プログラムが一つの参考になるかと思います。ロンドン大会の成功の背景には、児童生徒等の青少年を対象にイギリス全土で展開された公式教育プログラムであるゲットセットプログラムの果たした役割が大きかったといわれております。
 ゲットセットといいますと、なじみのない単語でございますけれども、陸上競技でいう、位置について、用意ドンの用意に当たる部分が、国際競技でもゲットセットというふうにして表現されているようでございますので、これは準備段階という、そういった意味になろうかと思います。このゲットセットは、参加国チームの選手を応援したり、オリンピック・パラリンピック競技を学習することなどによって、青少年が大会の意義や価値を学ぶものであります。
 私がロンドン大会のこのプログラムの中で特に注目したのは--このゲットセットというのは、かなり幅広い、いろんなものが組み込まれているようでございますけれども、その中でも特に注目しましたのは、児童生徒等にパラリンピックに関心を持ってもらうための取り組みでございます。
 まず、全部が全部じゃなくても、一部の児童生徒であっても、パラリンピックの競技のルーツ、なぜこんなふうなゲーム形式になったのか、それからルール、これを学んで、その上で観戦をしてもらう。そうしたら楽しみがわかってくる。それを今度、友達や家族に伝える。聞いた家族や友達がまたそれを伝える。また見に行く。そういったことを繰り返すことによって、これも一つの要因となって、本番のパラリンピックの競技大会の会場はほとんど埋まったというふうに聞いております。
 しかしながら、これは全部が全部このゲットセットによるものじゃありません。チャンネル4とかマスメディアの影響というのが大きいというのはわかっております。けれども、その大きな一つの要因になったことは間違いないと思います。
 そして、大会終了後に大きな成果を生んだといわれております、これがレガシーの部分になるわけですけれども、このプログラムを通しまして、一人が一人に伝え、そしてまた一人に伝える、これによって声と声がつながっていって、障害者に対する社会全体の理解が非常に深まった、ぐらついたものではなくて定着していったというふうに聞いております。これはすばらしいことだと私は思います。
 私自身に当てはめてみましても、関心のあるスポーツと関心の薄いスポーツがあります。なぜ関心が薄いのかというと、ルールを余りよく理解していないからなんです。ルールを理解していないところは関心も薄くなってくる、これはやむを得ないかと思います。したがいまして、まずルールを知るということ、そのルーツを学ぶということ、そういったところから障害者に対する理解というのは広がっていくんだろうと思います。
 かといいましても、ロンドン大会をそのまま東京に導入しろというつもりはございません。それは東京大会らしさを失うことになります。けれども、一人から一人という、こういった原点というのは学んでいく必要があろうかと思います。
 二〇二〇年東京大会に向けて、教育プログラムの中にこうした精神、取り組みというものを反映させていくべきと考えますが、教育委員会の所見を伺います。

○比留間教育長 現在、オリンピック・パラリンピック教育推進校では、パラリンピック大会の意義、歴史等の学習を初め、車椅子の実体験やボランティア活動などを通して、障害者理解に取り組んでおります。
 こうした取り組みを加速させ、全ての児童生徒がパラリンピックの理解をより深められるよう、有識者会議において、お話のゲットセットを初め、過去の大会での教育プログラムを分析しております。この結果を踏まえ、二〇二〇年東京大会における教育の基本コンセプトや、児童生徒が行う具体的な取り組み内容等を検討してまいります。
 さらに、今後、教育推進校における障害者理解の取り組み内容や有識者会議における検討の成果を、大会組織委員会が取りまとめる教育プログラムへと反映するよう働きかけてまいります。

○橘委員 次に、文化プロジェクトに関連して質問いたします。
 ハンドスタンプアートというプロジェクトが小さな声、小さな一歩から始まり、広がりを見せております。
 このプロジェクトは、障害児や難病の子供の手形のスタンプを国内を初め世界中から寄せてもらいまして、それをもとに大きなアート作品を制作するという取り組みでございます。一人の小さな手がたくさん集まれば大きなことができるということを体現するため、ギネスブックの申請と東京パラリンピックでの作品の展示を目標にしているとのことであります。
 このプロジェクトに自主的に参加している方の多くは、何らかの形で我が子を東京でのパラリンピック大会に参加させたい、ハンドスタンプを通して生きているあかしを残したいという思いで参加しているとのことでございます。
 このパネルをごらんいただけますでしょうか。これは、この活動を広げるためにつくられたポスターでございまして、プロジェクトの皆さんの許可を得まして紹介をさせていただいております。
 全国から寄せられている手形の一部でございますけれども、この中には手を開くことができないお子さんの手形もありまして、さまざまでございます。しかしながら、生きているあかしを残したい、手形でパラリンピックに参加したいという思いが込められたものでございまして、これだけではアートといえないかもしれません。しかし、そんな思いが込められた、命のアート、希望のアートだと私は思います。
 この右下にありますのは、これは花をデザインしたイメージイラストでございまして、このイラストをもとにして運動を展開しているとのことでございます。
 このプロジェクトの代表の方と支援している方に先日お話を伺いましたら、こんなことをおっしゃっておりました。入院生活や通院が長くなると孤独になる、悩みを抱えることもある、そんな中で誰もが夢を見ることができ、元気になれるものが欲しいというのが発想の原点なんですと。病院のベッドからでも、字を書くことができない子も、都合のいいときに比較的簡単にできることをと考えました、手は人と人がつながる部分、物をつくることができる部分、その人しかない指紋がある部分ということで、手形のスタンプを発想いたしましたと。この手形の一つ一つに子供や家族の思いが詰まっているんですと。
 そして、この運動は、青年海外協力隊員の紹介によりまして、ヨルダン、モロッコ、ガーナでも参加が始まっているそうでございます。その地域というのは、地雷等で手足を失った子供たちもたくさんいらっしゃるそうなんです。医療が行き届かなく、十分でなくて、障害になった子供もたくさんいるそうなんです。そうした子供たちも全部参加してのパラリンピックで何らかの形で展開したいという、そんな思いだそうでございます。
 実は、一昨年の九月に東京のオリンピック招致が決まった段階で、この皆さん方は、オリンピック・パラリンピックと自分たちは無縁のものだというふうにしか発想が湧かなかったそうであります。けれども、何らかの形で我が子を参加させたい、そんな思いで知恵を絞った結果、これを手形によって--手形が押せない子供もいらっしゃるんですって。開かないという子供もいらっしゃる。そうしたら握り拳でも構わない。そしてまた、手が使えなかったら足でも構わない、足形でも構わない。足も使えなかったら肩でも構わない、ほっぺでも構わない、お尻でも構わない、何らかの体の一部で一つのあかしを残したいという、そんな思いで始めて、今少しずつ広がっているそうであります。ただし、現在まだ千枚程度しか集まっていない、これから地道にやっていきますという、そんな言葉でございました。大変な思いの中でやっていると思います。
 私は、この団体だけを、このグループだけを特別に扱ってもらいたいなんて毛頭思っておりません。こういった世間に広く知られていないグループもいっぱいあります。けれども、東京のパラリンピック大会というのは、こうした人たちにも光を当てて、そしてそこを育んでいくという、そういったことが大事なんではないかと私は考えております。
 このオリジナルの障害者の文化芸術活動、ここに光を当てて支援すべきであると思いますが、見解を伺います。

○小林生活文化局長 障害を持つ方々が芸術文化活動に参加し、発表できる機会を得られるようにすることは、極めて重要であると考えております。
 これまでも都は、芸術家としての障害者の創作活動の支援に加えまして、全ての障害者が芸術文化に触れることのできる環境を確保するため、活動の発表の場としての展覧会の開催や鑑賞支援などを行ってまいりましたが、来年度からは、多くの障害者が芸術文化活動に参加できるよう新たな助成制度を創設いたします。
 さらに、オリンピック文化プログラムの先導プロジェクトといたしまして、障害者と健常者が一緒に創作活動に挑戦する障害者アートプログラムの展開や、都立文化施設に障害者アートの発表の場を設けるなど、東京文化ビジョンに基づき、ご提案も十分踏まえまして、障害者の芸術文化活動への参加を促す取り組みを行ってまいります。

○橘委員 この皆さん方は、お話を聞きますと、目標は、パラリンピックの大会の会場のいずれかで展示をさせていただければと、そんなこともおっしゃっておりましたけれども、その前に、途中の段階でも幾つかの展示会なんかをさせてもらえれば、運動の共感が広がるんではないかと、そんなこともおっしゃっていました。そういった配慮についてもよろしくお願いしたいと思います。
 次に、障害者や高齢者に配慮した観光について質問いたします。
 障害者や高齢者は、旅行に行きたい、観光スポットに行ってみたいと思っても、観光地は安全に回ることができるのか、必要なサポートが受けられるのか、宿泊施設のバリアフリーはどうなっているかなど、不安を抱えることが多くあると聞いております。
 ましてや、二〇二〇年の東京大会の観戦や観光等で国内外から東京を訪れる障害者等にとって、バリアフリーに関する情報は不可欠の要素になると思われます。
 障害者の安全を確保するため、観光地のバリアフリー化は一定の部分では必要でありますけれども、これが過度になりますと観光地のよさが損なわれてしまうし、広い区域を全て対象とすることにも限界がございます。これが観光地のバリアフリー化ということの限界になるわけです。
 そこで注目されているのが、バリアフリー観光という発想でございます。
 私は先週、バリアフリー観光に積極的に取り組んでおります三重県のNPO法人伊勢志摩バリアフリーツアーセンターを視察してまいりました。そこでは、観光に訪れたい障害者の障害の状態、障害の部位、観光地でどういうことをしたいのかなど、一人一人に合ったものを紹介し、同時にバリアの有無、バリアフリーの状況なども事前にわかるようにする取り組みが行われておりました。
 例えば、車椅子の方が、自分は伊勢志摩の砂浜を歩いてみたい、また、海にもつかってみたい、そういった希望があっても、車椅子の場合は砂浜は行けません。けれども、底に幅の広いゴムタイヤのようなタイヤが四つついていますと、自由に砂浜の上を押すことができる、それから、そのまま海にも、ちょっとであればつかることもできる、そういった取り組み、準備もされておりました。これはそういう希望に沿った対応なんです。
 それから、宿泊施設でもバリアフリーは行き届いておりました。ところが、私が現地に行って初めて知ったんですけど、聞かせていただいたんですけれども、我がホテルのこの部屋はバリアフリー仕様でございますといっても、ある障害者にとっては、それはむしろバリアの場合があるんだそうです。
 というのは、左半身が不自由な方、左手が使えない方、トイレに左側に手すりがついていた場合は、それは逆にバリアになるそうなんです、使えないわけだから。それは右になきゃならない。けれども、その泊まったホテルでは左にあります。けれども、別のホテルの一室は右についている、ならばこちらを紹介しようというふうに、きめ細かな配慮がなされていることがありました。
 それからもう一つ、お風呂ですけれども、観光地に行ったらお風呂にも入ってみたい。けれども、お風呂との間には高さがあります。これがバリアになるわけです。けれども、その高さと同じように板をずっと脱衣所から張っておけば、お尻をついて、すって中にそのまま入ることできる、そういった配慮もされておりました。これがバリアフリー観光。
 つまり、その人の障害の程度に合ったものにどういうふうに対応できるか、それを全部調べた上で紹介するという、こういった発想でございました。私はこれは非常に大事かなと思います。
 そして私は、それは事前にも聞いておりましたけれども、そういうこともございまして、第四回の代表質問で我が党は、バリアフリー観光というものを積極的に取り組むべきだと提案いたしました。
 それを受けまして、都は、来年度の予算ではバリアフリー観光の推進という新規事業を計上されておりまして、調査と情報発信をしていくというふうにして発表しております。これは、我が党の提案に対して真摯に取り組んでいただいたことを高く評価いたします。
 そこでまず、この事業で実施する調査の内容について伺いたいと思います。

○山本産業労働局長 都は来年度、障害者や高齢者の方が安心して都内観光を堪能することができるように、障害者等が観光スポットの見学、体験や移動を行う上で必要な情報の調査を実施いたします。
 具体的には、下町の江戸体験など、旅行者に人気のあるテーマでコースを設定をいたしまして、コース内の観光施設や交通機関等において、段差等のバリアの有無や施設職員によるサポート体制などを調査いたします。
 また、障害者及び介助者、福祉の専門家などが、調査を行った各コースを体験するモニターツアーを実施いたしまして、移動しやすいルート等を検証してまいります。

○橘委員 今答弁にございました障害者、介助者、福祉の専門家などが調査を行ったコースを体験するということ、これが非常に、伊勢志摩へ行ったときもそれを感じました。体験してみないと、気がつくところがまた違うようなんですね。これが大事かと思います。
 この調査結果をもとにしまして情報発信にも取り組むという、そこまで都は踏み込んでいただきまして--情報発信に取り組む、これがやっぱり一番のみその部分でございまして、大変に大事かと思います。これを情報発信していきますと、今度、観光事業者などの意識啓発ができていくんですね。これも効果があると思います。この情報発信についてどういうふうに取り組んでいかれるのか、お聞きします。

○山本産業労働局長 本事業で調査したコースにおけるバリアの有無やサポート体制、移動しやすいルート等に関する情報につきましては、都の観光公式サイトにモデルコースとして掲載いたしまして、幅広く発信をいたします。また、障害者や高齢者、観光関連事業者などに向けまして、関連団体等を通じて効果的に情報を提供してまいります。
 こうした取り組みによりまして、障害者等の旅行意欲を高めるとともに、観光施設や交通機関など、民間事業者のバリアフリー観光に対する理解を促進し、受け入れ機運の醸成に努めてまいります。

○橘委員 舛添知事にお伺いいたします。
 パラリンピック大会に向けて、今、機運を盛り上げるために大きなプロジェクトとか、それから地域等での大きな事業、そういったものがやられることによって、これは大きく機運も盛り上がっていく、そして、そうしていかなきゃならないという要素もございます。これを大きく動かすには大きなプロジェクトも必要でございます。しかしながら、一人一人に焦点を当ててそれを育んでいくという、これも大事であろうかと思います。
 なぜならば、今、障害者スポーツ、障害者雇用、障害者アート、ハード面でのバリアフリー化、こういったものは、法律とか制度はある程度整ってまいりましたけれども、社会全体の理解と納得の広がりに欠けるのではないかと思います。
 そういった観点から、私が今取り上げましたゲットセット、それからハンドスタンプアート、バリアフリー観光、これは一つの意図を持って取り上げました。まず一人に光を当てて、そこから発想を広げていく、また行動を広げていく、そういった共通点があるから、この三つを選んで取り上げたわけでございます。
 こうした手法を原点に据えたプロジェクトへの参加というのが、二〇二〇年のパラリンピック大会の機運を大きく盛り上げ、また、これが東京大会らしさでもあり、息の長い、波及性のある、大きなレガシーとして多くの人の心の中に残すことができるのではないかと私は考えますが、知事の所見を伺います。

○舛添知事 大変示唆に富む例を挙げていただきまして、ありがとうございました。
 IPC、国際パラリンピック委員会は、スピリット・イン・モーション、すなわち躍動する精神ということをモットーとして掲げております。
 パラリンピアンのすぐれたパフォーマンスが人々を勇気づけ、感動させ、前進させるというこのメッセージを、二〇二〇年パラリンピック大会を成功させることで、多くの都民、国民に伝えていきたいと思っております。
 満員の観客とアスリートが一体となった熱気あふれるすばらしい舞台の実現に向けまして、パラリンピアンとの触れ合いや競技体験などの機会を積極的に提供するなど、子供たちを初め多くの方々のパラリンピックへの関心、興味を高めていきたいと思います。
 また、教育プログラム、文化プログラムなどさまざまな取り組みにおきましても、パラリンピックにかかわる一人一人の主体的な行動を促し、多くの人々の参加によって、史上最高のパラリンピックをつくり上げていきたいと考えております。
 そして、参加者の中に生まれます、大会を成功させたんだという経験を新たなレガシーとして、その先に続く、障害のある人とない人がともに生きる社会の実現につなげていきたいと考えております。

○橘委員 ありがとうございました。
 次に、東日本大震災により都内に避難されている方々に対する支援について質問いたします。
 震災から四年が経過した今も、都内には約七千五百人の方々が避難生活を余儀なくされているわけでございます。都は、こうした避難者の生活状況や意識動向を把握し、効果的な支援を行うために、毎年アンケート調査を行っております。
 ただし、書面でのアンケート調査はやっぱり限界がございます。本当の生の声が聞けないという、そういった限界もありますので、我が党は昨年の三月のこの予算特別委員会におきまして、避難者の動向をさらに詳細に把握するために、直接の面談での調査が必要であると主張いたしました。
 これを受けて東京都は、今年度、面談調査を行ったわけでございますが、どのように実施したのか、面談調査によって把握された避難者の方々の実態といいますか、状況、これについてどういうふうにして把握されているのか、伺います。

○中西総務局長 都内の避難者の置かれている状況を調査し、必要な支援を行うため、今年度、初めて面談調査を行ったところでございます。
 昨年二月に実施いたしましたアンケート調査に回答をいただいた方の中から、都と被災県が協力して戸別に訪問し、面談に応じていただいた二百三十五世帯から聞き取りを行いました。
 今回の調査により、都内への定住を希望する方が多い一方、将来の居住先について、いまだ判断を保留している方も一定数いるという傾向が把握できました。
 これまで、避難元自治体や都がさまざまな手段で情報提供を行ってまいりましたが、被災地の復興状況など有益な情報が十分に伝わっていないと感じている避難者もいらっしゃいました。
 また、地域コミュニティの形成が進行しているものの、周囲との交流が少ない方もいらっしゃるなど、避難生活に関する多様な悩みを抱えていることが明らかになったところでございます。

○橘委員 この面談調査で、今答弁がございましたけれども、気になるのは、避難者の方々の多くが、自分の出身地である地元からの必要な情報が十分届いていないという、こういうことなんです。これは、被災県によりますと、十分な情報は提供しているというふうにおっしゃっているんですけれども、ここにちょっと乖離があるような感じがいたします。
 そういう面で、私たち公明党は、避難者に対する情報提供をしっかりやっていくべきだというふうに重ねてやってまいりました。そしてまた、声も聞いてもらいたいというふうにしてやってまいりました。
 ところが、被災県の体制の問題もあるかもしれません。なかなか十分に対応できないという部分があるかもしれません。しかしながら、都内に避難をされている方個々人、それから個々の家庭によって状況が全部違う。けれども、東京は受け入れている側であって、応援するしかないわけであります。
 この被災県の対応をもう少し促していただくと同時に、東京都もさらに力を入れて、こういった実態が調査でわかったわけでありますから、地元県との連携を密にする機会を設けるなど、これまで以上に寄り添った形の避難者支援に当たるべきだと、私はもう一歩の努力をお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。

○中西総務局長 都はこれまで、都庁内に総合相談窓口を設置いたしますとともに、避難生活に関する情報を定期的に発信してまいりました。
 今後は、これまでの取り組みをさらに進め、避難者の置かれている状況に応じ、よりきめ細かく支援することが重要でございます。
 このため、来年度から、都内に避難者のための相談スペースを設け、新たに相談員を配置し、避難元自治体の支援員と密接に連携するなど、支援体制を強化いたします。
 また、避難生活全般や法律等専門分野への相談対応に加え、災害公営住宅の状況など最新の情報が閲覧できるようにいたします。
 今後も、避難元自治体や関係機関と連携し、都内避難者支援を充実させてまいります。

○橘委員 新たな支援員を採用して、これに当たっていくという、本当に力を入れていることがよくわかりました。また、調査に当たった総務局の支援課の皆さん方も、一人に対して三十分、四十分とじっくりお話を聞かれたということも聞いております。こうしたことが都内避難者の方々にまた伝わっていくかと思いますので、どうか最後まで力を入れて支援をしていただきたいと思います。
 次に、動産・債権担保融資、いわゆるABL制度の活用促進について質問いたします。
 私は、平成十八年の予算特別委員会におきまして、動産を担保とする資金調達について初めて質問いたしました。そのころは、まだ金融機関の関心がこうした融資に対してふなれでございまして、積極的な取り組みは見られなかったわけでございます。その当時は、今もそうですけれども、やはり担保というと不動産、土地というふうになりまして、動産を担保にするというのは余りなじまないというふうにいわれておりました。
 そうした中にあっても、都は、平成二十二年に、機械や設備を担保にできる独自の融資を創設いたしまして、昨年はこれに売掛債権や在庫を担保対象に加えまして、総合的なABL制度として発展をさせてまいりました。この努力は多としたいと思います。
 ようやく全体的な姿が見えてきたという感じがいたしますけれども、これは経営者にとっては大変心強いことでございまして、今後の活用が大いに期待されるところでございます。
 まず初めに、都のABL制度にはどのような特徴があるのか、聞いておきたいと思います。

○山本産業労働局長 都のABL制度では、車両、工作機械、在庫商品、売掛金など、中小企業が持つ動産や債権を幅広く活用して資金の借り入れができる点が特徴となっております。
 これらの担保物件の評価を適切に行うため、専門的なノウハウや実績を持つ機関を、担保の種類に応じまして六つ選定をいたしまして、取扱金融機関による融資をサポートしております。
 また、本制度を利用する中小企業の負担軽減を図るため、融資額の四%を上限として、担保の評価等に係る費用の二分の一を、特に小規模企業の場合には全額を、都が補助をしております。
 このような工夫を講じることによりまして、中小企業の新たな資金調達手法であるABL制度の円滑な運用を図っているところでございます。

○橘委員 都内には、担保として活用できる土地や建物などの不動産を持っておらず、資金の借り入れに苦労している零細企業も多いかと思います。このABL制度は、日常の取引で生じる売掛金や在庫品、業務用の機械類や保有している自動車などを担保とすることから、まさに中小企業向けの資金調達といえると思います。
 まだ制度創設から一年を経過していない段階ではありますけれども、金融機関の取り組みや融資の事例など、ABL制度の今年度の取り組み状況について伺いたいと思います。

○山本産業労働局長 ABL制度では、担保の種類ごとに専門機関と連携する取扱金融機関を選定しておりまして、その数は、制度開始当初の十九行から、現在では二十六行にまでふえております。
 これまで、まず動産を担保とした事例といたしましては、倉庫に保管してある出荷前の在庫商品を担保とした融資、毎日の作業で稼働しているトラックやクレーンを担保とした融資、工場に設置している金属部品製造用の工作機械を担保とした融資などがございます。
 また、債権を担保とした事例といたしましては、取引先数十社に対する売掛金を一括して担保とした融資などがございまして、個々の中小企業の事業の実態に応じた、多様な担保を活用した融資が着実に実行されております。

○橘委員 今答弁で、ABL制度に参加する金融機関がふえている、それに比例して融資の事例も増加しているということ、そういう状況がよくわかりました。これは来年度以降、さらに利用が進むものと期待できるかと思います。
 この制度の利用促進というのは、今後、中小企業にとって大変大事なことだと思います。私どもも、いろんな商店街の会合等で、金融機関の職員の方とかお会いする機会があって、その折、いろいろ話を伺ったりするんですけれども、制度の内容がわかっていない、それから、自分の信金などでは、扱っているんだけど自分は説明を受けていないとか、そういった話もたまに聞くわけでございます。もう少し徹底がされていれば、いろんな機会に、そういった機会でもアピールできるというのがあるかと思います。
 これを促進していくためには、より多くの中小企業の経営者の方は当然でございますけれども、銀行や信用金庫等の職員の方に制度の中身を十分理解してもらう必要があろうかと思います。
 そこで、ABL制度の利用促進に向けて、さらに力を入れた取り組みをすべきと考えますけれども、見解を伺います。

○山本産業労働局長 都はこれまで、ABL制度の積極的な活用を促すため、パンフレットの配布や都のホームページによる周知を行うとともに、商工団体等や取扱金融機関に対する説明会などを実施しております。
 今後は、本制度のさらなる利用促進を図るため、中小企業の経営者に向けては、商工団体等が発行しております広報誌などを活用いたしまして、制度の仕組みやメリットをわかりやすく解説するなどのPRを行ってまいります。
 また、取扱金融機関の本店だけではなく、支店にも出向きまして、融資の窓口となる営業職員に対して詳細な説明を行うなど、より一層きめ細かい普及啓発に取り組んでまいります。
 加えて、取扱金融機関のさらなる増加を図るなど、多くの中小企業がABL制度を利用できるよう取り組んでまいります。

○橘委員 次に、地元問題でございますけれども、都営地下鉄三田線の地域貢献、それから利便性の向上という点で何点か質問いたします。
 板橋区は現在、高島平地域の将来的な課題を予測しつつ、持続的発展を可能とする都市再生モデル、高島平地域グランドデザインの策定を進めております。この計画の具体化に当たっては、高島平団地を抱えておりますURなど関係する機関とか部門も協力して推進していくという、そういった計画を描いております。
 お手元に簡単な地図をお示ししておりますけれども、この計画地域が、三田線の西台駅から高島平、新高島平、西高島平と、この計画の対象地域となっているど真ん中を貫いているのが都営地下鉄三田線なんです。地下鉄ではありますけれども高架を走っているところなんです。したがいまして、将来的な駅の改造であるとかそういったことと、このグランドデザインとは、これは必ず深く関係してくる可能性が十分にあるところなんです。
 したがいまして、これは板橋区から要望されて、駅をこういう構造にしてもらいたい、こういう協力をしてもらいたいというふうに、その都度要望されて動くのではなくて、これは目に見えているわけですから、最初の段階から協議体等に参加しまして、この依頼を待つのではなくて、最初から積極的に参加していってはどうかと思いますが、これがまた地域貢献になるかと思いますが、いかがでしょうか。

○新田交通局長 都営地下鉄と沿線地域とは極めて密接な関係にございまして、相互に影響し合って発展してまいりました。
 今回、都営三田線の高島平駅等四駅を中心とした利便性の高い都市の生活核の形成などを目指しまして、板橋区が、お話の高島平地域グランドデザイン素案を公表したことは、私どもも承知しております。
 高島平地区における都営三田線は高架区間にあり、交通局といたしましては、地上部駅舎や高架下用地などを有しておりますことから、今後、区におけるグランドデザインの策定過程や、また、策定後におきましても、当局施設に係る具体的な要望などがあれば、可能な限り協力してまいります。

○橘委員 グランドデザインでは、三田線の高架下を活用した地域のにぎわいの創出という、こういったことがありまして、それから同時に、子育て支援サービスという東京都全体で取り組んでいかなければならない大きな課題もあります。それに対応する場所も、この高架下にあるのではないかと思います。
 したがいまして、三田線の高架下のスペースを、福祉インフラの整備、これも当然地元区の要望があってのことでございますけれども、これに優先的に提供していくべきと考えますが、どうでしょうか。

○新田交通局長 福祉インフラ整備は都政の重要課題であり、交通局といたしましても、これまで、江東区東大島駅付近の新宿線高架下や、江戸川区一之江の駅ビルなどの資産を活用して、保育所の設置に協力してまいりました。
 現在、三田線高架下につきましては、東日本大震災の教訓を踏まえまして、安全性をより高めるために、橋脚のさらなる耐震補強を実施しておりまして、既存の店舗等は、所定の補償を行った上で順次移転していただいております。
 耐震補強終了後の高架下用地の利用に当たりましては、交通局の大切な資産として有効利用を図りつつ、店舗の設置などによってにぎわいを創出いたしますとともに、福祉インフラ整備につきまして、地元板橋区から具体的な要望があれば、十分協議の上、設置に協力していくなど、地域への貢献を果たしてまいります。

○橘委員 この板橋区内の地下鉄三田線の沿線は、今もマンションが結構立て続けに建設されておりまして、人口がふえ続けている地域でもございます。そして、グランドデザインの具体化とともに、にぎわいの創出もこれから見込まれる地域でございます。
 そうした状況を踏まえまして、利便性、快適性の面から、三田線の輸送力増強ということを具体的に検討すべき段階に入っているかと思います。また実施すべきだと思いますが、見解を求めます。

○新田交通局長 都営三田線の輸送力を増強するためには、まずは現行の六両編成における増備等による対応を行うこととなり、それを上回る需要の増加によりましてさらなる対応が求められる場合に、八両編成化ということも取り組んでいくことになろうかと思います。
 この八両編成化に当たりましては、車両の増備に加えまして、ホームドアの増設や信号設備の改修、さらには火災対策基準に基づく駅の防災改良工事が必要になるなど、大規模な設備投資を要しますことから、国庫補助金の導入などが前提となってくると考えております。
 したがいまして、交通局といたしましては、継続的な乗客量調査等により混雑状況を把握してまいりますとともに、三田線と相互直通運転を行っております関係各社の動向なども踏まえまして、今後、総合的に判断してまいります。

○橘委員 どうかよろしくお願いいたします。
 最後に、同じく地元問題でございますけれども、鉄道の立体交差事業について伺います。
 現在、板橋区内の東武東上線大山駅付近において、連続立体交差事業の事業候補区間に位置づけられまして、そして、ここと交差する補助二六号線、これがこの付近で、五年後の平成三十二年に、幅約二十メートル、三百七十五メートルの区間、これが東武鉄道と交差することになっております。
 しかしながら、五年後に特定整備路線の補助二六号線が開通したとしても、今度、東武東上線の線路はそのまま、候補区間になったといえども、立体化の工事をこれからやっていきますと、大体一般的にいいますと約二十年かかってしまうんです。ということは、道路は五年後にできるけれども、鉄道の立体化については、これがまだ二十年後、つまり十五年間はそのままということになります。そうしますと、いざというときに避難通路として使えないということも出てくるわけです。そしてまた渋滞の要因ともなるわけです。
 こういったことは、やはり、鉄道の立体化、それから道路についても、いろんな工夫が必要だと思います。これについて、あわせてですけれども、建設局と都市整備局の工夫について、これからどういう努力をしていくのかお聞きします。

○横溝東京都技監 鉄道立体化の実現には長い時間を要することから、早期に事業化を図ることが重要であると考えてございます。
 東武東上線大山駅付近は、長年、補助第二六号線の整備と鉄道立体化について、地域住民の合意形成やまちづくりの検討を進めてきたところでございまして、昨年三月には、道路整備と地元商店街が共存するまちづくりの方向性が定まり、板橋区が大山まちづくり総合計画を作成したところでございます。このことを踏まえまして、都は昨年九月に、本区間を連続立体交差事業の事業候補区間に位置づけたところでございます。
 その後、東武鉄道と直ちに協定を締結し、航空測量や鉄道敷地内の測量を開始しております。
 引き続き、来年度からは、事業範囲や構造形式などについて、スピード感を持って必要な調査を進めてまいります。

○安井都市整備局長 補助二六号線大山区間は、地域の防災性向上に不可欠な特定整備路線でございまして、本年二月に事業に着手し、平成三十二年度の完成を目指しております。
 一方、鉄道を立体化するには、お話のとおりかなりの時間を要することから、道路整備が完成いたしました後も、拡幅された道路がしばらく鉄道と平面で交差することになります。
 この間、災害時も含め、踏切を横断する歩行者等の安全性を確保することは大変重要でございます。今後、鉄道運行上の安全と両立を図りながら、歩道の設置を含めた踏切を拡幅するなど、鉄道事業者を初めとする関係機関と協議してまいります。

○小磯副委員長 橘正剛委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時五分休憩

   午後三時二十分開議