○鈴木(あ)委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
これより付託議案の審査を行います。
第一号議案から第二十七号議案までを一括して議題といたします。
昨日に引き続き総括質疑を行います。
鈴木隆道副委員長の発言を許します。
○鈴木(隆)委員 それでは私から、まず最初に、オリンピック・パラリンピックについてお伺いをいたします。
私はこれまで、オリンピック・パラリンピックを東京で、そして日本で開催することを強く熱望し、微力ながら、東京招致に全力で取り組んでまいりました。東京が大会開催の栄誉をかち得たのは、惜しくも涙をのんだ二〇一六年大会の招致活動の経験を生かしたからだと考えております。そして、アジアを初め世界中から、東京だからこそできるオリンピック・パラリンピックを期待されたからであると、私は信じています。
成熟した都市東京において、二度目となるオリンピック・パラリンピックを開催するこの意義は、我々が何かを得られるかではなくして、世界に対して何ができるかを問われているといいかえてもいいと、私は考えています。その意味では、世界の諸都市と、スポーツはもとより、伝統、文化、経済などあらゆる面での交流を深めていくことが、最も重要なことになると考えています。
日本国民一人一人が、夢や希望や勇気を取り戻し、その後の人生を豊かに切り開いていくことができる、そのようなオリンピック・パラリンピックであってほしいと、私は願っています。
本日は、そうした問題意識のもと、二〇二〇年東京大会成功に向けてどのように取り組みを進めていくのか、そして世界の諸都市との交流を深めていくのかという点を中心に、さまざまな角度から確認をしていきたいと思います。
まず、二〇一六年リオデジャネイロ大会についてであります。
二〇二〇年大会の開催地が東京に決定をして、それからもう一年半が経過をいたしました。あのときの感動は今でも鮮明に覚えています。同時に、東京招致を応援してくれた世界中の都市や国に対する感謝の気持ちがよみがえってまいります。
東京は、二〇二〇年大会の開催とその準備に向けて鋭意準備を進めているところでありますが、さまざまな形で世界に貢献をすることで日本の姿勢を示していくことが何よりも重要であると私は考えます。
その一つとして、来年夏に南米の地リオデジャネイロで開催されるオリンピック・パラリンピックへの協力があるというふうに思います。
東京は、リオ大会から恐らく多くのことを学び、経験をすることになると思いますが、同時に、リオ大会を一緒になって盛り上げていくことも、次回開催都市としての重要な責務ではないかと考えます。
特に、閉会式での旗の引き継ぎ式は、非常に大きな意味を持っていると考えます。リオ大会の締めくくりとして閉会式に花を添えるとともに、次回開催都市が東京であることを世界中にアピールする絶好の機会となるからであります。
そこで、まず初めに、リオ大会に臨む知事の基本姿勢を伺います。
○舛添知事 来年のリオデジャネイロ大会は、東京が多くのことをじかに学ぶ絶好の機会でありまして、また、次回開催都市として二〇二〇年大会を世界に向けてアピールする出発点となると思っております。
とりわけ閉会式は重要でございます。リオ大会のオリンピックとパラリンピック、それぞれの閉会式で、今、鈴木副委員長がおっしゃったように、リオ市長から引き継ぐ旗を全世界に向けて力強く振ります引き継ぎ式がございますけれども、その場で東京を鮮烈に印象づけてまいりたいと思っております。
そして、続けて行われます東京、そして日本を紹介するプロモーションを通じて、世界中の多くの人々に二〇二〇年大会への期待を高めていただきたいと考えております。
また、リオ大会の開催期間を通じまして、大会組織委員会を初め関係団体と連携しながら、さまざまなアイデアを結集し、伝統文化とイノベーション、おもてなしの心など、東京の魅力を強力に世界へ発信していきたいと考えております。
○鈴木(隆)委員 今、知事からお答えいただきました。たしか八分間の日本の演技時間があると、閉会式の中で聞いています。
このリオデジャネイロでの閉会式は、恐らくさまざまな制約条件、要件があるとは想像ができますが、リオ大会の組織委員会との連携も不可欠になるはずであります。世界中に東京をアピールするための仕掛けを十分に行うためには今から準備を、またしっかりとした戦略を練って臨むことが大変重要であろうというふうに考えます。
今後、具体的にどのように取り組みを進めるのかを伺います。
○中嶋オリンピック・パラリンピック準備局長
東京、そして日本が誇る多様な魅力を世界に向けて発信するためには、大会組織委員会を初め、国、JOCやJPCなど多方面の関係団体との連携が重要でございます。現在、大会組織委員会が中心となり、都も参画しながら、リオ大会の開催期間中に行うPR活動に向け、現地情報の収集を初めとした必要な準備を進めております。
今後、都といたしましては、歴史や文化、自然、先端技術など幅広い視点から東京の魅力を発信するため、PRの具体的な内容等について調査検討を行うとともに、それを効果的にアピールする手段の一つとして、映像を制作するなど、着実に準備を進めてまいります。
○鈴木(隆)委員 東京には、伝統文化からサブカルチャー、さらには食文化など、世界に誇る文化の発信や、観光ブランド都市東京の実現など、世界に類を見ないほど多様な側面があります。リオ大会を絶好の機会と捉え、オリンピック・パラリンピック準備局だけではなく、都の総力を挙げて、東京を世界にアピールをしていただきたいと思います。
ここで一つ提案があります。リオ大会に合わせて、リオデジャネイロで被災地の復興した姿を披露してもおもしろいのではないかと思います。
先月、サンバカーニバルがサンパウロで行われました。これは、日本とブラジルの外交関係樹立百二十周年に当たるということでサンパウロで行われました。実はもう皆さんもご存じのように、青森からねぶたが太平洋を渡ったわけであります。
そこで、来年のリオ大会に合わせて、毎年東北で行われています東北六魂祭をリオで開催することを提案したいというふうに思います。
一昨日、東日本大震災から四年の歳月が流れました。東北六魂祭は、青森ねぶた祭り、秋田竿燈まつり、盛岡さんさ踊り、山形花笠まつり--私は山形の出身でありますので、非常に思いがありますが--仙台七夕まつり、福島わらじまつり、それぞれこの六つが参加をして、テーマとして、スローガンとしては、東北の心は一つ、さらに前へということを掲げ、初開催であった仙台市から盛岡市、福島市、山形市、そしてことしは秋田市で開催を予定されております。
世界の方々にご支援をいただいたことへのありがとうございますという感謝の気持ちを伝えるためにも、また東北復興への思いを乗せたこの六つのまちの魂が、地球の裏側でリオの地に集い、東北の輝きを、リオを訪れた多くの方々や、メディアを通じて世界中の方々に発信をし、心を一つにできるとすれば、私はすばらしいことだと考えています。
そして、この祭りに合わせて東京や東北の食文化を紹介し、東京はもちろんのこと、東北、さらには日本中の産品を世界に発信する絶好の機会となりましょう。
これはロンドン・オリンピックのときには、私も参りましたが、川のほとりに、ありがとうイン・ロンドンということで、テムズ川のほとりに復興支援、復興ということをテーマにして、大きな展示が持たれました。そこには多くの世界中の方々が訪れて、この復興の支援に対してのことを私たちも伝えていただきました。そういうことにもやはり触れて、私たちがもう一度その気持ちを持ってこのことを示していくことが、非常に大切ではないかというふうに思っています。
こうした取り組みは、都だけではなく、国や関係機関との連携も必要だと思いますが、ぜひ柔軟な発想を持って、さすがは東京、日本といわれるような企画を練り上げてほしいと思います。
知事に聞きたいと思いますが、一つこれは私からの提案として受けとめていただければ大変ありがたいと思います。
続きまして、二〇二〇年の東京大会は、オールジャパンで招致機運を高め、かち取ったことを、決して忘れてはならないというふうに思います。だからこそ、日本中の多くの方々が何らかの形でかかわることができる大会とすべきであると思います。
そのために、日本中を聖火ランナーが駆け抜けることや、日本中からボランティアとして大会運営に参加してもらうこと、あるいは長野大会から始まった一校一国運動など、さまざまな取り組みが考えられますが、最も代表的なものとして、事前キャンプの誘致が挙げられると思います。友好都市関係を初めとして、いろいろなつながりがそれぞれの各都市にはあり、その関係を駆使して、鮮烈、熾烈な誘致合戦が繰り広げられることは、簡単に想像できることであります。
しかし、できる限り多くの自治体を巻き込んで、日本各地で事前キャンプが行われることで、真のオールジャパンでの大会になると私は考えます。今後の事前キャンプ誘致に対する取り組みをどのように進めていくのか、見解を伺います。
○中嶋オリンピック・パラリンピック準備局長 事前キャンプは、地域のPR、選手や地域住民との国際交流など、さまざまな恩恵を地域にもたらすものでございます。都は昨年、都内区市町村に対しまして、過去大会における事前キャンプの実例などについての説明会を開催しますとともに、被災地にも赴きまして情報提供を行いました。組織委員会は、四月より、全国から事前キャンプ地としての要件を満たす候補地を募集し、リオ大会までに日本全国の候補地情報を記載したガイドを作成して、ホームページで公表いたします。
全国の自治体の誘致に向けまして、都は、全国知事会に設置されました大会推進本部が進めております、地域の施設情報を海外に発信するためのデータベースの構築に協力しております。
今後、事前キャンプが都内区市町村や被災地、ひいては日本全国で実施され、日本全体の開催機運が盛り上がるよう、積極的に取り組んでまいります。
○鈴木(隆)委員 答弁をいただいたとおりだと思いますが、キャンプの誘致ができれば、大会後においても地域の皆さんの記憶に強く刻まれ、自分たちも二〇二〇年大会を一緒に行ったという意識を持ってもらえるものと確信をしています。ぜひ全国知事会、また大会組織委員会、JOCとも連携をして、多くの自治体がかかわれるような仕組みを検討していただきたいと思います。特に東北三県に関してはお願いをしたい、より強くお願いしたいということを求めていきたいと思います。
先日来日した、知事も面会をされた、ロンドン大会でCEOをお務めになったポール・ダイトン卿は、新聞の取材に対して、大会の成功を何ではかるのか。私の答えは、大会が終わったとき、自分はその一部になれた、参加したと感じる人々がどれだけいるかであると語っておられました。
私自身、前回の東京大会はまだ中学二年でありましたが、非常に心に強く焼きついています。やはり誰もが何らかの形でかかわって、将来、子供や孫に、もしできれば、自慢をできるようにすべきであろうと思います。日本人全員の心に残るようなオリンピック・パラリンピックを目指していくこと、オールジャパンで対応すること、そのことが何よりも重要であることを改めて申し述べておきたいと思います。
続いて、パラリンピックについて伺います。
私は、二〇二〇年大会の成否を分ける最大のポイントの一つがパラリンピックであると考えます。二〇一二年に開催されたロンドン・パラリンピックは、大変すばらしい成果をおさめたといわれています。史上最高のパラリンピックを目指す東京は、このロンドン大会から多くのことを学ぶべきであると思います。
私がロンドン大会の取り組みの中で注目をしているのは、スタープレーヤーを育成したことであります。スタープレーヤーが育てば、多くの人がその選手を見たいと思い、観客動員もふえるし、テレビ放映なども盛んになります。
昨今、錦織選手の活躍に注目が集まるテニス界ではありますが、パラリンピックの世界にも大変すばらしい選手がいます。二、三年前、日本の記者が元シングルス世界一位のロジャー・フェデラー選手に、なぜ日本のテニス界にはあなたのようなスーパースターが出てこないんでしょうかという質問をしたそうであります。これに対して、フェデラー選手は、日本には世界から尊敬される、また私以上のすばらしい技術を持った選手がいますよという答えがありました。その記者は、それは誰でしょうかと聞いたそうです。その選手の名前は、国枝慎吾さんであります。
もう私が申すまでもなく、今は非常にご存じの方が多くなっています。国枝選手は、日本が世界に誇るトップアスリート、車椅子テニスプレーヤーで、北京パラリンピック金メダリストであります。世界を相手に圧倒的な強さを誇り、二〇二〇年の東京パラリンピック大会での活躍も期待をされている選手であります。
私がここで述べたいのは、フェデラー選手でも敬意を払うスーパースターがいる、またその選手である国枝さんを、私を含め多くの日本人がそのときにその認識がなかったということであり、私自身もこのことには大変心に恥じるところがあったということであります。
このことに代表されるように、パラリンピックに関する認知度はオリンピックに比べて極めて低いという現実があります。この理由としては、障害者スポーツに対する理解がまだまだ十分に進んでいないことが挙げられるのではないかと考えます。
都は、障害の有無にかかわらす、誰もが、いつでも、どこでも、いつまでもスポーツに親しむ環境を整備するとさまざまな取り組みを行っていることは、大変評価をいたしますが、二〇二〇年に向けてはさらなる加速が必要であると思います。
私は、都議会では、北京オリンピックに、パラリンピックに、実は委員会の方で視察に参りました。そのときに私たち議員団は、ボッチャという競技を見させてもらいました。最初は、今、正直な気持ちを申し上げて、くだらないからそんなに見なくてもいいやというような気持ちで行ったという、不謹慎なところがあったわけでありますが、実際に見ていたら、全員の議員が一時間半、その競技に、その魅力にとらわれたという現実があります。そして、みんな終わった後に非常な感動と感激を覚えました。
私は、そういう障害者スポーツの魅力を、やはり実際に目で見て、経験をして、体験をして、これから私たちがそれをあまねく多くの人に伝えていくようなことが、東京のこれからやるべきことだというふうに思います。
今後、都はパラリンピックに向け、障害者スポーツの魅力をどのように発信をしていくのか見解を伺います。
○中嶋オリンピック・パラリンピック準備局長 ロンドン・パラリンピックの成功は、テレビを活用したメディア戦略などによるものといわれておりますが、日本におきましては、競技種目の認知度や選手の知名度の低さなどから、障害者スポーツがテレビ等で大きく取り上げられることが少ないのが現状でございます。
都は、パラリンピック大会の開催という絶好の機会を捉えまして、障害者スポーツをメジャーなものへと転換していくため、来年度から予算や人員など体制を強化し、さまざまな媒体を通じて積極的な広報展開を行ってまいります。
具体的には、ただいまお話にありましたが、ボッチャを初めとしました障害者スポーツのだいご味や競技の見どころ、選手の魅力などを、テレビなどのメディアを活用し、多くの都民、国民に発信してまいります。
こうした取り組みを通じまして、都は障害者スポーツの振興を図り、二〇二〇年大会に向けて力を尽くしてまいります。
○鈴木(隆)委員 答弁ありがとうございました。
二〇二〇年に向けて、障害のある方でもない方でもともにスポーツを楽しむことができる環境の整備を目指して努力をしていく。そして、その姿勢をアジア諸国を初め世界に向けて発信をしていくことが非常に大切だというふうに思っています。そうすれば、二〇二〇年の大会はすばらしい大会になると確信をしますし、それが東京オリンピック・パラリンピックが進化をした姿を世界に見せることにつながるというふうに思います。
こうした取り組みを通じて、人々の心の中にある、私も先ほど申したように、自分の心に恥じることがあったわけでありますが、バリアを取り除き、日本人の社会意識を大きく変革をしていくことが重要であるというふうにも思います。このときこそが、またこのことこそが、史上最高のオリンピック・パラリンピック大会にするための大変重要な要素であると、私は考えています。あえて申し上げさせていただきたいと思います。
次に、カルチュラル・オリンピアードに関して質問をさせていただきます。
カルチュラル・オリンピアードに対して、この言葉に対しての理解というのは非常に難しい点があります。東京では今、文化プログラムといっている点があるわけですが、どうも四年間を通してオリンピックへの道筋をつくり上げていくというふうに拡大解釈していいというふうに、私は思っています。それはスポーツもそうです。文化も、それから音楽も、それからそれぞれの歴史、伝統、文化も全て含めて、そしてオリンピックへの道をつくり上げていくというふうに理解をしていただくのが、カルチュラル・オリンピアードの理解をしていただくにはよろしいかなと思いますので、その点を踏まえて質問していきたいと思います。
東京も立候補いたしました二〇一六年大会の開催地は、二〇〇九年十月にコペンハーゲンで開催されたIOC総会で、リオデジャネイロに決定をされました。招致活動を通じて私が強く感じたことは、招致段階からこのカルチュラル・オリンピアード、すなわち今いったことが非常に重要であると。世界の国々からのこれが、実は非常に大きな評価を高めるものであるということであります。
二〇一二年の夏に開催されたロンドン大会では、英国の芸術や伝統を発信する多彩なカルチュラル・オリンピアードが英国全土で展開をされ、大会の成功に大きく貢献をいたしました。
この一つの例を挙げれば、ちょうどロンドン・オリンピックが開催される二年ぐらい前から、世界中から四十人ぐらいになるんでしょうか、脚本家の方を招いて、そして英国全土またはロンドンを中心にして、シェークスピアが演じられました。日本からは蜷川幸雄先生が行かれて、それがすばらしい評価を得て世界的な絶賛を受けたことは、もう皆さんも周知のことだと思います。そういうことを通して、実はそのときに、オリンピックにまさる三倍から四倍、または五倍といわれる方々がイギリスを訪問しているという現実があるということであります。
二〇一三年一月にIOCへ提出した東京二〇二〇年立候補ファイルには、ロンドン大会でのさまざまな取り組みを大いに参考とし、世界中から大勢のクリエーターが集うことや、若手も高齢者も障害者等もともに創作すること、さらには、東京という都市全体を大きな劇場にすることなどを盛り込み、招致をかち取ったということであると。そして、このカルチュラル・オリンピアードは間違いなく大きな勝因の一つであったと、私は今でも信じています。
今後、二〇二〇年に向けては、立候補ファイルに記載したさまざまなコンセプトの実現に向け、カルチュラル・オリンピアードを積極的に展開することが、東京大会を成功に導くための重要な鍵になるであろうというふうに、私は考えています。そのためには、まず、多くの人々の知恵や経験を取り込むとともに、伝統文化や歴史などの日本、東京の文化の魅力を中心としつつも、広く世界から多くの人々の参加を得て、夢や志を世界にしっかりと訴えるプログラムを展開し、大会の評価につなげることが必要であります。
そこで、カルチュラル・オリンピアードについて、国内外の英知を結集し、オリンピック・パラリンピックの歴史に残るようなプログラムが展開されるよう、パラリンピックの重要性も十分踏まえた上で、今後どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。
○小林生活文化局長 二〇二〇年東京大会では、スポーツだけでなく文化の面でも史上最高のプログラムを展開して、大会全体の成功につなげていく必要がございます。特にパラリンピックは、障害を持つ方々の芸術文化活動に世界の注目を集める絶好の機会でありまして、こうした活動に対する理解を高める取り組みを展開することが重要であると考えております。
このため、東京文化ビジョンの素案では、お話にありましたように、リオ大会終了後の四年間を通じて、東京のダイナミズムを象徴する先進的で他に類を見ない文化プログラムを展開していくことを掲げており、来年度からは、先導的プロジェクトとして、さまざまな分野の芸術家がまちをめぐり公演を行う東京キャラバンや、障害者と芸術家がともに創作する障害者アートプログラムを実施してまいります。
今後、組織委員会と連携し、東京芸術文化評議会を初め、国内外の多くの人々の知恵や経験を結集し、文化プログラムの具体化を進めてまいります。
○鈴木(隆)委員 カルチュラル・オリンピアードを契機に、東京招致を応援してくれた、特にアジアの国々からさらなる信頼と尊敬を得られるよう、アジアの国々が東京に何を望んでいるのか、またアジアに対して東京、日本は何ができるのかを真剣に考え、文化交流を含めて全ての交流を進化させる必要があり、そのために東京がみずから行動する責任があると考えます。
二〇二〇年東京大会に向けて海外との文化交流を拡大することが必要だが、見解を伺います。
○小林生活文化局長 これまで都は、アジア舞台芸術祭や、アジアの若手映画人を育成するタレンツ・トーキョー、国際的な演劇祭であるフェスティバルトーキョーなど、海外との文化交流事業を進めてまいりましたが、二〇二〇年東京大会に向けまして、アジアを初め世界各国との文化交流をさらに進めることは極めて重要であると認識をしております。
そのため、今後、東京文化ビジョンの素案にも掲げました、北京やソウルなどの都市歴史博物館との連携や、先導的プロジェクトである東京キャラバンを海外においても展開させるとともに、海外の劇場との共同公演や世界の美術館との連携による展覧会の開催など、アジアを初めとした海外との幅広い分野での文化交流を一層推進してまいります。
○鈴木(隆)委員 それでは、都市外交に移りたいと思います。
昨年末に策定されました都市外交基本戦略や、これまでの我が党の質問を通して、今後も都市外交により、都市に共通する課題の解決に取り組んでいくという都の基本的姿勢を確認することができました。アジアで初めて、二回目のオリンピック・パラリンピック開催都市となる東京にとって、世界の都市、とりわけASEANを初めとするアジア諸都市との信頼関係の構築は、アジアや世界の発展と平和にこれまで以上に積極的に貢献をしていく決意を示す意味で、大変重要であると考えます。
国には国の外交がありますが、台北、ヤンゴン、バンコクにおける無収水対策事業での協力や、マレーシアにおける下水道整備プロジェクト、大気汚染対策や廃棄物処理に関するアジア諸都市との交流など、都がこれまでに行ってきた海外都市との実務や具体の事業を通じた交流、協力は、まさに相手側が求めるニーズに合致したものであり、相手側からも高い評価を得ているところであります。
こうした相手側のニーズに合わせた実務的で具体的な協力、交流を行うこと、その意思をしっかりと相手に示すことこそが、東京の都市外交ではないかと思います。そして、これらは東京への信頼や評価を高め、ひいては国際的な地位向上にもつながっていくと考えます。
今後、東京都ならではの都市外交をどのように深化させていくのか、知事の見解を伺います。
○舛添知事 二〇二〇年大会を成功させ、また、それを契機に東京を世界一の都市へと発展させていくためにも、東京の国際的な地位を高めるとともに、諸都市とともに学び合いながら、信頼関係を強固なものにしていくことが重要でございます。上下水道、環境、防災など、これまで各局が蓄積してきました技術力やノウハウを活用しながら実施いたしますさまざまな取り組みは、まさに東京のプレゼンスを高めることに大きく寄与するものと考えております。
一方では、世界の諸都市と交流を行うことで、例えばエネルギー政策や感染症対策など、都政のさまざまな分野で都市問題の解決に向けまして知見を高めることも可能となります。
今後とも、きめ細かい実務的な都市外交を行うことで、海外諸都市と友好関係を深めつつ、ウイン・ウインの関係を築いてまいりたいと考えております。
○鈴木(隆)委員 大変ありがとうございました。
これまで以上に、海外諸都市との間で現実的な課題解決に取り組み、そして、より実効性のある交流を行うためには、相手方の状況を正確に把握することが不可欠であります。
例えば、マレーシアはビジョン二〇二〇を掲げ、二〇二〇年までの先進国入りを目指しています。急速な経済成長の陰で、廃棄物処理が喫緊の課題となっている。こうしたことは、実際に現地に行かないとなかなか見えてこないものであります。外務省在外公館や自治体国際化協会等を通じて、ある程度の現状を把握することはできても、海外に拠点を持たない都が相手都市の情報を収集することは容易ではありません。
一方で、都内には百五十余の各国大使館を初め、諸外国、地域の代表事務所が集積をしています。都議会自民党が長年地道に関係を構築してきたアジア諸国、そして特にASEAN諸国を初めとし、在京大使館の中には、本国の大臣級の大使もいらっしゃいます。彼らが持つ本国との強いパイプ、情報を活用しない手はないというふうに思います。やはり人脈こそが一番大切であり、そのための努力を長年積み重ねていくことが必要だということが、まさに今、問われているし、これから我々がしなければならないことだというふうに思います。
実際に、昨年私も参加した都議会自民党のマレーシア行政調査では、在京マレーシア大使経由で依頼した視察調査や要人との意見交換を、極めてスムーズに行うことができました。東京都もこうした実情をしっかりと認識をし、在京大使館等を通じた都市外交を積極的に行うべきであると思います。
そこで、今後の在京大使館との連携強化について伺います。
○川澄政策企画局長 都はこれまでも、東京都総合防災訓練での視察や、外国企業誘致の取り組み等において、大使館等との連携強化に努めてまいりました。一月には、百名近い大使等を江戸東京博物館に招き、江戸文化等の紹介や都幹部との意見交換会を行ったところでございます。
また、今月末には、新たに、大使館所在地の区が開催する大使館等との実務者連絡会に都職員が参加することといたしました。
引き続き、大使館等と顔と顔の見える関係の構築に努め、海外諸都市の状況把握にも役立てていくとともに、東京の魅力発信などでも緊密な連携を進めてまいります。
○鈴木(隆)委員 私自身も、ASEAN諸国の大使の方々とも親しく交流をしていただいている中で、非常に実感をしていますが、一口にアジアといっても、それぞれの国あるいは都市、発展段階の差という以上に、独自の歴史や文化的背景、また理想とする姿などが異なっています。都は、そうした違いを理解をしながら、一つ一つの都市と真剣に向かい合い、その都市にふさわしい交流事業を行うべきであります。
きのう、高木理事からも質問がありました、アジア人材育成基金を活用した、こうした成長著しい都市とともに、共同事業を実施し、環境対策や経済交流などさまざまな分野の事業を進めてきたことは、承知はしております。これまで以上に、アジアの諸都市とのきめ細やかな交流を深めていくべきだと考えます。
東京、日本にとって、これからもアジアが大切であることは変わらないし、アジアにとっても、東京、日本が大切であることは変わらないと考えます。スポーツや伝統文化はもちろんのこと、経済交流、技術交流、それ以外のさまざまな分野でも連携をし、アジアのさらなる発展につなげていくことが重要だと考えます。
新基金への移行をきっかけとして、これまでのアジアの人材育成事業をさらに発展させるべきと考えます。そこで、アジア人材育成基金の成果を踏まえた上で、今後、事業をどのように展開するのか伺います。
○川澄政策企画局長 アジア人材育成基金は、首都大学東京の高度研究や留学生の受け入れ、行政課題別の共同事業などを通じ、東京とアジアがともに発展していくための礎を築いてまいりました。
その成果を踏まえ、アジアからの留学生を受け入れてきた首都大学東京では、留学生の対象を姉妹友好都市などさまざまな都市に拡大するとともに、受け入れ課程についても、これまでの博士後期課程のみから、博士前期課程まで広げ、日本の企業や現地の日系企業、あるいは現地の行政機関へ、より多くの知日派人材を供給することを目指してまいります。
また、これまで取り組んできた共同事業につきましても、アジア諸都市を中心とした多都市間の実務的協力事業として展開し、都や海外諸都市に共通した課題への対応や施策の連携を進めてまいります。
○鈴木(隆)委員 ありがとうございました。今後も、アジアの諸都市との実質的な交流を進めてもらいたいと思います。
先ほども申し上げましたが、二〇二〇年大会まであと五年であります。世界から多くの方々に日本に来てもらうためにも、また準備に当たっても、世界の諸都市から知恵をかりたり応援してもらえるよう、ぜひ都市外交人材育成基金を活用しながら都市外交を展開し、さまざまな都市と強固で良好な関係構築を図ってもらいたいと思います。
アジアはもとより、世界の中の多くの都市は、経済交流や技術支援などさまざまな分野で東京に非常に多くの期待をしています。まだまだ水道や下水道のインフラ整備、ごみ処理や大気質の改善が進んでおらず、東京の力を必要としている都市がたくさんあります。その意味では、都市外交人材育成基金を活用して、アジアを初めとする諸都市の人材を育成したり、ともに行政課題の解決を図っていくという都の姿勢を評価させていただきたいと思います。
また、一方で、旺盛な経済力を取り込み、都がともに発展することも大変重要なことであります。
昨年の都議会第三回定例会における我が会派の一般質問に対し、知事は、経済面でも中小企業の海外展開の支援や、産業交流展を初め国際見本市での交流など、具体的な取り組みを進めていきたいと答弁をしています。特に、経済交流展でベンチャー大賞をとった企業を、各都市との間で交流をしていくということを、やはり私たちは多く望んでいるわけでありますが、東京または東京が持っているその技術力というのは、アジアまたは世界的に非常に多くの評価を受けている点があります。このことをきちっと理解をして、またこれからも、そういう方々が海外に進出できるような力もぜひ添えていただければありがたいと思います。
多都市間の実務的な協力事業での経済交流について伺います。
○川澄政策企画局長 アジア諸都市におけるさまざまな課題に対して、東京の先進的な技術を活用し、経済交流を通じて課題の解決を目指す経済交流促進のプラットフォームを、一昨年の十一月に立ち上げました。現在、環境、省エネルギーをテーマに取り組んでいるところでございます。
この事業は、テーマに関する調査研究、技術開発、人材育成、市場展開から成り、今年度は、アジア諸都市の現状及び東京の先進的な技術のアジア市場への参入可能性の調査と、国際環境見本市への出展を実施いたしました。
来年度はこの調査等を踏まえ、技術開発、人材育成に関する産学官の連携による共同研究を開始する予定でございます。
今後、国際見本市への研究成果等の発信を通じて、経済におけるウイン・ウインの関係を築いてまいります。
○鈴木(隆)委員 ありがとうございました。
最後に、中小企業支援についてお伺いをさせていただきたいと思います。
私はこれまでも、アジア市場を目指す都内中小企業に対する支援を強化し、企業同士の経済交流を進めるべきと申し上げてきました。先ほども申し上げたようなアジア各都市が抱える課題解決に向け、中小企業の技術が活用されることは、東京の産業の活性化とともに、アジア各都市の発展にも資することとなり、ともに繁栄していくウイン・ウインの関係の構築につながってまいります。
私は個人的に、アジア諸国の大使の方々とも親しくはさせていただいておりますが、東京の企業間交流を通じてともに発展していきたいという声を本当によく聞きます。東京に今、求められているのは、こうしたアジア諸国の求めにしっかりと応えていくことです。
外交は国の専権事項であるということは承知はしておりますが、都みずから現地の声に耳を傾ける必要があります。例えば、どういう分野で協力してほしいのか、どのような技術を求めているのか、東京とともにどのような取り組みを進めていきたいのかといったぐあいに、求められていることを十分に理解しなければなりません。
本当の意味での経済交流を進めていくためには、各国大使館との連携のほか、都が現地のさまざまな機関と密接なネットワークをつくり、現地の課題やニーズを正確に把握して、都内中小企業とのビジネスに生かしていくことが必要であります。
きのう、高木理事からの質問で、中小企業振興公社のタイの拠点の取り組みについて伺いましたが、都内中小企業の海外展開の支援に力を入れていくべきということを踏まえて、今いったことをタイ拠点ではどのように取り組んでいるのかを改めて伺いたいと思います。
○山本産業労働局長 タイの拠点では、さまざまな機関と連携、交流をいたしまして、現地ニーズの把握に努め、中小企業の取り組みをサポートいたします。具体的には、中小企業振興公社が業務連携協定を締結しているタイのカシコン銀行と連携をいたしまして、現地で求められる技術や製品の情報をもとに、販売代理店や技術提携先等を紹介してまいります。
また、国の支援機関であるジェトロとの連携をさらに深め、支援策の相互活用や商談会の共催など、中小企業の幅広いニーズを酌み上げたきめ細かい支援を行ってまいります。
さらに、政府機関や商工団体、日系金融機関、他の自治体の現地拠点など、幅広い機関とネットワークを構築し、生きた情報を中小企業に提供してまいります。
○鈴木(あ)委員長 鈴木隆道副委員長の発言は終わりました。(拍手)
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